(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】保湿効能を有するフレグランス組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20241024BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 9/02 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241024BHJP
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A61Q 11/00 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 9/04 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 19/04 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 3/00 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q19/00
A61K8/49
A61K8/35
A61K8/31
A61K8/92
A61K8/34
A61Q13/00 101
A61Q9/02
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q5/06
A61Q11/00
A61Q17/00
A61Q15/00
A61Q9/04
A61Q17/04
A61Q19/04
A61Q3/00
A61Q19/10
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525621
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2022080449
(87)【国際公開番号】W WO2023078870
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ チャカロヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ローラ メマン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AC011
4C083AC031
4C083AC032
4C083AC061
4C083AC062
4C083AC091
4C083AC092
4C083AC151
4C083AC152
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC242
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB41
4C083BB48
4C083CC06
4C083CC11
4C083CC17
4C083CC18
4C083CC19
4C083CC21
4C083CC23
4C083CC25
4C083CC28
4C083CC32
4C083CC33
4C083CC36
4C083CC38
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD30
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE07
4C083EE17
4C083EE18
4C083EE28
4C083KK02
(57)【要約】
本発明は、フレグランス成分を含む組成物の、皮膚保湿剤としての使用であって、前記フレグランス成分は、組成物の総重量に対して約0.1%~96%の量で存在し、フレグランス成分は、特定のリストから選択される1つ以上の香料成分を含む、使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレグランス成分を含む組成物の、皮膚保湿剤としての使用であって、前記フレグランス成分は、前記組成物の総重量に対して約0.1%~96%の量で存在し、前記フレグランス成分は、以下:酢酸ベンジル、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン、(3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、オキサシクロヘキサデカン-2-オンおよび1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、(+-)-8-メトキシセドラン、1-メチル-4-(1-メチルエテニル)-シクロヘキセン、(3RS,3aRS,6SR,7aSR)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(A)+(3RS,3aSR,6RS,7aRS)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(B)、(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、(+)-2-{(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、アーモンド油、鉱物油、石油ゼリーを含む群から選択される1つ以上の香料成分を含む、使用。
【請求項2】
前記フレグランス成分が、酢酸ベンジル、(+-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、(+-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール(+-)-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2h)-ピラノール、(e)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、(+)-2-{(1s)-1-[(1r)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オンおよび2-フェニルエタノールを含む、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記フレグランス成分が、酢酸ベンジル、(+-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、(+)-2-{(1s)-1-[(1r)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランオキサシクロヘキサデカン-2-オンおよび1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オンを含む、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記フレグランス成分が、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン、3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランおよびオキサシクロヘキサデカン-2-オンを含む、請求項1記載の使用。
【請求項5】
前記組成物が、香料担体および/または賦香補助成分および/または香料アジュバントをさらに含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に定義される組成物を含む香料含有消費者製品の、皮膚保湿剤としての使用。
【請求項7】
前記香料含有消費者製品が、香料、ボディケア製品、化粧用調製物またはスキンケア製品であることを特徴とする、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記香料含有消費者製品が、ファインパフューム、スプラッシュもしくはオードパルファム、コロン、シェーブもしくはアフターシェーブローション、シャンプー、ヘアコンディショナー、カラーリング調製物、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品、殺菌剤、インティメイトケア製品、ヘアスプレー、バニシングクリーム、脱臭剤もしくは制汗剤、脱毛剤、日焼け用もしくは日焼け止め用製品、爪用製品、皮膚洗浄剤、メイクアップ、香料含有石鹸、シャワーもしくはバスムース、オイルもしくはジェル、またはフット/ハンドケア製品、衛生製品であることを特徴とする、請求項7記載の使用。
【請求項9】
賦香組成物または香料含有物品の皮膚保湿特性を付与、増強、改善または変更する方法であって、前記方法は、前記組成物または物品に、有効量の請求項1から8までのいずれか1項に定義される組成物を添加することを含む、方法。
【請求項10】
皮膚の潤いを付与、増強、改善または変更する方法であって、前記方法は、前記有効量の請求項1から9までのいずれか1項に定義される組成物または消費者製品を、それを必要とする対象の皮膚に施与することを含む、方法。
【請求項11】
(i)バイオポリマーを支持する水透過性基材を含むハイドロゲル膜層と、(ii)角質層模倣層とを含む、皮膚再現表面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
本発明は、フレグランスデザインの分野に関する。
【0002】
フレグランスデザインとは、目標のフレグランスの提供を目的とした組成物を形成するための、少なくとも1つのフレグランス成分の選択として定義することができる。フレグランスデザインは、香料の分野で最も顕著に知られており、香料デザイナーによって行われる。
【0003】
フレグランスの評価は通常、フレグランスの性能測定基準およびフレグランスの快楽性のみに基づいて行われる。現在では、例えば人間の鼻によるフレグランスの検出可能性など、いくつかの測定基準が用いられている。一般的に、このような測定基準では、例えば化粧品としての効能など、フレグランスの付加的な効能が考慮されていない。
【0004】
このような測定基準は、前述の二次的な効能によるフレグランスの性能評価に欠けているため、これらの点に関する正確な性能予測が得られない場合がある。このことは、非効率的であるが現在義務付けられている試行錯誤のアプローチによる、研究室での多くの時間の浪費を招く。
【0005】
そのような付加的な効能のひとつに、皮膚の保湿がある。皮膚の保湿は、1)グリセリンのような湿潤剤と呼ばれる親水性化合物による水分の供給、および2)鉱物油のような保湿剤と呼ばれる疎水性化合物による水分蒸散の防止による皮膚の保護という2つの異なる機序により達成可能である。
【0006】
これまで、本発明者らの知る限り、フレグランスは主に、快楽的な恩恵を受けるために使用されてきた。しかし現代では、消費者は快楽的性能以上のものを求めており、化粧品としての効能や衛生品としての効能といったウェルビーイング的な効能を求めている。したがって、心地よい香り以上のものを提供できるフレグランスを創出する必要がある。本発明は、こうした消費者の要求を満たし、化粧品としての二次的な効能を有するフレグランスの特許を請求し、水和性フレグランスという用語、ならびにフレグランスおよびフレグランス組成物の各成分の皮膚水和特性の体系的評価に適した方法を規定するものである。
【0007】
発明の概要
本発明の第1の態様は、フレグランス成分を含む組成物の、皮膚保湿剤としての使用であって、前記フレグランス成分は、該組成物の総重量に対して約0.1%~96%の量で存在し、該フレグランス成分は、以下:酢酸ベンジル、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン、(3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、オキサシクロヘキサデカン-2-オンおよび1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、(+-)-8-メトキシセドラン、1-メチル-4-(1-メチルエテニル)-シクロヘキセン、(3RS,3aRS,6SR,7aSR)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(A)+(3RS,3aSR,6RS,7aRS)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(B)、(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、(+)-2-{(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、アーモンド油、鉱物油、石油ゼリーを含む群から選択される1つ以上の香料成分を含む、使用を提供する。
【0008】
本発明の一実施形態では、フレグランス成分は、酢酸ベンジル、(+-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、(+-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール(+-)-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2h)-ピラノール、(e)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、(+)-2-{(1s)-1-[(1r)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オンおよび2-フェニルエタノールを含む。
【0009】
本発明のさらなる実施形態では、フレグランス成分は、酢酸ベンジル、(+-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、(+)-2-{(1s)-1-[(1r)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランオキサシクロヘキサデカン-2-オンおよび1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オンを含む。
【0010】
本発明のさらなる実施形態では、フレグランス成分は、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン、3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランおよびオキサシクロヘキサデカン-2-オンを含む。
【0011】
本発明のさらなる実施形態では、組成物は、香料担体および/または賦香補助成分および/または香料アジュバントをさらに含む。
【0012】
本発明のさらなる態様は、先の請求項のいずれか1項に定義される組成物を含む香料含有消費者製品の、皮膚保湿剤としての使用である。
【0013】
本発明の一実施形態では、香料含有消費者製品は、香料、ボディケア製品、化粧用調製物またはスキンケア製品である。
【0014】
本発明のさらなる実施形態では、香料含有消費者製品は、ファインパフューム、スプラッシュもしくはオードパルファム、コロン、シェーブもしくはアフターシェーブローション、シャンプー、ヘアコンディショナー、カラーリング調製物、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品、殺菌剤、インティメイトケア製品、ヘアスプレー、バニシングクリーム、脱臭剤もしくは制汗剤、脱毛剤、日焼け用もしくは日焼け止め用製品、爪用製品、皮膚洗浄剤、メイクアップ、香料含有石鹸、シャワーもしくはバスムース、オイルもしくはジェル、またはフット/ハンドケア製品、衛生製品である。
【0015】
本発明のさらなる態様は、賦香組成物または香料含有物品の皮膚保湿特性を付与、増強、改善または変更する方法であって、該方法は、前記組成物または物品に、有効量の本発明の組成物を添加することを含む、方法を提供する。
【0016】
本発明のさらなる態様は、皮膚の潤いを付与、増強、改善または変更する方法であって、該方法は、前記有効量の本発明の組成物または消費者製品を、それを必要とする対象の皮膚に施与することを含む、方法を提供する。
【0017】
本発明のさらなる態様は、(i)バイオポリマーを支持する水透過性基材を含むハイドロゲル膜層と、(ii)角質層模倣層とを含む皮膚再現表面を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】参照系のTEWL測定値の再現性(相対湿度:27%、温度:24℃)を示す図である。
【0019】
発明の詳細な説明
本説明は、すべてを余すことなく網羅するものではない。なぜならば、ある実施形態の各特徴を、他のいずれの実施形態の他のいずれの特徴とも有利な様式で組み合わせることができるためである。ここで、図面は縮尺どおりではないことに留意すべきである。
【0020】
本発明は、フレグランス成分を含む組成物の、皮膚保湿剤としての使用であって、前記フレグランス成分は、該組成物の総重量に対して約0.1%~96%の量で存在し、該フレグランス成分は、以下:酢酸ベンジル、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン、(3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、オキサシクロヘキサデカン-2-オンおよび1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、(+-)-8-メトキシセドラン、1-メチル-4-(1-メチルエテニル)-シクロヘキセン、(3RS,3aRS,6SR,7aSR)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(A)+(3RS,3aSR,6RS,7aRS)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(B)、(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、(+)-2-{(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、アーモンド油、鉱物油、石油ゼリーを含む群から選択される1つ以上の香料成分を含む、使用に関する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「フレグランス成分」という用語は、賦香成分、フレーバー成分、香料担体、フレーバー担体、香料アジュバント、フレーバーアジュバント、香料変調剤、フレーバー変調剤を表す。好ましくは、そのようなフレグランス成分は揮発性である。そのような成分は、天然成分であってもよい。
【0022】
「賦香成分」とは、本明細書では、快楽的効果を付与するために賦香調製物または組成物で使用される化合物を意味する。換言すれば、このような成分は、賦香性であるとみなされるためには、組成物の香りを付与または変更することができると当業者に認識されなければならない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「配合物」という用語は、少なくとも1つの揮発性分子の液体、固体または気体の集合体を表す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「フレグランス」という用語は、少なくとも1つのフレグランス化学化合物による匂い受容体の活性化、増強および阻害の総体から生じる嗅覚知覚を指す。
【0025】
賦香成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、いずれにせよすべてを余すことなく網羅できるものではなく、当業者は、自身の常識に基づいて、目的の使用または適用ならびに所望の官能効果に従ってそれらを選択することができる。一般論として、これらの賦香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫複素環式化合物および精油のような様々な化学的クラスに属し、前記フレグランス成分の補助成分は、天然由来のものであっても合成由来のものであってもよい。前記フレグランス成分は、いずれにせよ、S. Arctander著、Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはそのより新しいバージョンのような参考文献、または類似の性質の他の著作物、および香料の分野における多数の特許文献に列挙されている。また、前記フレグランス成分は、プロパフュームまたはプロフレグランスとしても知られる様々なタイプの賦香成分を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことが理解される。
【0026】
本発明者らは、香料成分の保湿可能性を調査した。この評価を行うために、本発明者らは、皮膚再現表面と呼ばれるモデルを使用し、香料成分サンプルの付着の前後で経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定した。これは、香料成分の保湿活性の指標である。
【0027】
前記保湿活性は、フレグランス成分の付着前後の皮膚再現表面の水分蒸発速度の関数である。
【0028】
フレグランス成分の保湿活性は、以下のように算出することができる。
- フレグランス成分を、制御しながら皮膚再現表面上に付着させる工程、
- フレグランス成分の付着後に皮膚再現表面から蒸発した水分量または皮膚再現表面上に残存する水分量を、各測定時間に測定する工程、
- 測定された蒸発した水分量または残存する水分量に応じて、水分蒸発速度の算出を減少させる工程、
- 測定された水分蒸発速度の関数として保湿活性を算出する工程。
【0029】
制御された付着の工程は、例えば、予め定められた表面上に広がるように設定された予め定められた量のフレグランス成分を皮膚再現表面上に移送することによって実施される。このように予め定めておくことにより、結果を比較することができる。これは、蒸発が、周囲環境と接触しているフレグランス成分で濡れる表面積に依存するためである。設定された、および予め定められたパラメーターが多いほど、水分蒸発速度の測定はより正確になる。
【0030】
当該量のフレグランス成分の移送は、ピペットなどの、液体を好ましくは少量移送するための既知の任意の手段を用いて行うことができる。このような移送は、手動で行うことも自動で行うこともできる。
【0031】
考慮されるフレグランス成分は、液体の形態であっても、固体を液体で希釈した形態であっても、ゲルまたはワックスの形態であってもよい。
【0032】
単一のフレグランス成分の分析に適合させるのではなく、本方法をフレグランス組成物または混合物に用いることができ、それにより、組成物または混合物の二次的な効能性能指標のデータベースが作成される。
【0033】
この制御された付着の工程は、蒸発量の測定中に、温度および湿度を制御しながら行うことが好ましい。
【0034】
水分蒸発速度または皮膚中の水分含量(イン・ビトロまたはイン・ビボ)は、好ましくは、閉じた熱力学系を模倣するために、制御された温度、空気流量および速度、湿度という擬似的な平衡条件下で測定される。
【0035】
測定工程は、例えばフランツセルを用いて行われ、その際、膜として機能する前記セル内に皮膚再現表面が配置され、前記表面上に、分析対象のフレグランス成分サンプルが配置される。測定は通常、フランツセルの上部、すなわち膜の上方で行うことができ、これは、測定が膜の下方に位置するサンプリングポートにより行われるフランツセルの通常の使用とは異なる。
【0036】
他の変形例では、他のいかなるタイプの測定装置を使用することもできる。
【0037】
この測定工程の間に、皮膚もしくは皮膚モデル内(イン・ビボまたはイン・ビトロ)から外部大気への水分蒸散量、または皮膚もしくは皮膚モデルに残存する水分含量が測定される。他の実施形態では、双方が測定される。このような測定は、好ましくは時間の関数として実施される。
【0038】
このような測定は、経表皮水分蒸散量(「TEWL」)または水分含量を代表する値を得るために、水分蒸発量または水分含量の測定装置(vapometerまたはmoistumeter)によって実施することができる。このような測定は、以下の影響を受け得る:
- 温度、
- 人間の皮膚を模した曝露面、
- 付着した化合物の量、
- 空気流体積、および
- 湿度、
- 付着したフレグランス成分の蒸発速度、
- 付着したフレグランス成分の浸透速度。
【0039】
水分蒸発速度の算出の工程は、演算装置でコンピュータソフトウェアを実行させることにより行うことができる。このような演算装置は、例えば、水分蒸発量測定装置と一体型であってもよい。他の実施形態では、そのような演算装置は、水分蒸発量測定装置に付属のコンピュータまたはサーバーであってもよい。算出された水分蒸発速度は、前記水分蒸発速度が、測定された水分蒸発量を蒸発の持続時間を代表する値で割ることによって得られるようなものであってもよい。システムの特性に応じて、そのような持続時間は、30分、1時間、または他のそのような間隔であってもよい。特定の実施形態では、複数の水分蒸発速度が、ある化学化合物についてフレグランス成分付着からの各持続時間で演算される。
【0040】
他の実施形態では、算出された水分蒸発速度は、前記水分蒸発速度が、付着した水分の初期量から残存する水分量を差し引き、得られる測定された水分蒸発量を蒸発の持続時間を代表する値で割ることによって得られるようなものであってもよい。
【0041】
このような水分蒸発速度は、水分蒸発速度を得るために処理される量(絶対量または相対量)で測定することができる。例えば、水分蒸発速度の値は、化学化合物の付着後の皮膚模倣表面について、蒸発により30分間で元の付着水分量の5%が失われる場合に得ることができる。水分蒸発速度(g/m2h)は、時間の関数で相対湿度の増加から算出することができる。保留中の測定の環境オフセットを考慮するため、外部の室内センサーを使用して周囲温度および湿度を記録することができる。
【0042】
本方法は、水分蒸発参照量を測定する工程と、水分蒸発参照速度を算出する工程とをさらに含むことができる。これらの工程はいずれも、上記で開示された測定工程および算出工程と同様に、またはその間に実施することができる。これらの工程では、水分がフレグランス成分に置き換わることにより、蒸発速度の比較のための参照値を規定することができる。
【0043】
本発明者らは、様々な香料成分の保湿可能性を測定することにより、以下:酢酸ベンジル、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン、(3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、オキサシクロヘキサデカン-2-オンおよび1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、(+-)-8-メトキシセドラン、1-メチル-4-(1-メチルエテニル)-シクロヘキセン、(3RS,3aRS,6SR,7aSR)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(A)+(3RS,3aSR,6RS,7aRS)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(B)、(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、(+)-2-{(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、アーモンド油、鉱物油、石油ゼリーの香料が皮膚保湿剤として適した保湿可能性を有すると判断した。
【0044】
この情報から、本発明者らは、多数の各種保湿剤アコードを調製した。
【0045】
一実施形態では、フレグランス成分は、酢酸ベンジル、(+-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、(+-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール(+-)-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2h)-ピラノール、(e)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、(+)-2-{(1s)-1-[(1r)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オンおよび2-フェニルエタノールを含む。
【0046】
別の実施形態では、フレグランス成分は、酢酸ベンジル、(+-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、(+)-2-{(1s)-1-[(1r)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランオキサシクロヘキサデカン-2-オンおよび1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オンを含む。
【0047】
別の実施形態では、フレグランス成分は、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン、3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランおよびオキサシクロヘキサデカン-2-オンを含む。
【0048】
使用可能なさらなる成分の例としては、鉱物油、植物油、エモリエント剤、ワックス、バター、エステル、例えばミリスチン酸イソプロピル、皮膜形成剤、例えばバイオポリマー、合成ポリマー、増粘剤、粒子、例えばマイカ、TiO2、および他のそのような成分が挙げられる。
【0049】
本発明の組成物のさらなる実施形態では、組成物は、香料担体および/または賦香補助成分および/または香料アジュバントをさらに含む。
【0050】
「香料担体」とは、本明細書において、香料の観点から実質的に中性である、すなわち、賦香成分の官能特性を有意に変化させない材料を意味する。この担体は、液体であっても固体であってもよい。
【0051】
液体担体としては、非限定的な例として、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系、または香料に一般的に使用される溶媒を挙げることができる。香料に一般的に使用される溶媒の性質および種類を詳細に説明しても、すべてを余すことなく網羅することはできない。しかし、非限定的な例として、ジオール(ブチレンジオール、プロピレンジオール、ペンチレンジオール、ヘキシレンジオール、オクタンジオールなど)、グリセリン、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノ、クエン酸トリエチル、またはそれらの混合物などの溶媒を挙げることができ、これらは最も一般的に使用される。香料担体と香料ベースとの双方を含む組成物について、先に指定したもの以外の適切な香料担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、イソパラフィン、例えばIsopar(登録商標)(供給元:Exxon Chemical)の商標で知られているもの、またはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えばDowanol(登録商標)(供給元:Dow Chemical Company)の商標で知られているもの、または水添ヒマシ油、例えばCremophor(登録商標)RH 40(供給元:BASF)の商標で知られているものであってもよい。
【0052】
固体担体とは、賦香組成物または賦香組成物のいくつかの要素が化学的または物理的に結合できる材料を表すことを意図している。一般に、このような固体担体は、組成物を安定化させるか、または組成物もしくはいくつかの成分の蒸発速度を制御するために使用される。固体担体は当技術分野で現在使用されており、当業者は、所望の効果を得る方法を知っている。しかし、固体担体の非限定的な例として、吸収性ガムもしくはポリマー、または無機材料、例えば多孔性ポリマー、シクロデキストリン、木材ベース材料、有機もしくは無機ゲル、クレー、石膏タルクもしくはゼオライト、または化粧品的に活性な無臭性分子を挙げることができる。
【0053】
固体担体の他の非限定的な例としては、カプセル化材料を挙げることができる。そのような材料の例には、壁形成性および可塑化材料、例えば単糖類、二糖類もしくは三糖類、天然もしくは化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質もしくはペクチン、またはH. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996などの参考文献に引用されている材料が含まれ得る。カプセル化は、当業者に周知のプロセスであり、例えば、噴霧乾燥、凝集、またはさらには押出成形のような技術を用いて行うことができ;またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化からなる。
【0054】
固体担体の非限定的な例としては、特に、任意に高分子安定剤またはカチオン性コポリマーの存在下で、重合によって誘導される相分離プロセス、界面重合、コアセルベーションのような技術または全体(前記技術はすべて先行技術に記載されている)を用いて、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレアもしくはポリウレタンタイプの樹脂またはそれらの混合物(前記樹脂はすべて当業者に周知である)を用いたコアシェルカプセルを挙げることができる。
【0055】
「香料アジュバント」とは、本明細書では、色、特定の耐光性、化学的安定性などのような付加的に加えられる効能を付与することができる成分を意味する。賦香組成物では一般的に使用されるアジュバントの性質および種類を詳細に説明しても、すべてを余すことなく網羅することはできないが、前記成分は当業者に周知であることを述べなければならない。具体的な非限定的例として、以下を挙げることができる:粘性剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤および/またはレオロジー調整剤)、安定化剤(例えば、防腐剤、酸化防止剤、熱/光および/または緩衝剤またはキレート剤、例えばBHT)、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗微生物剤または抗真菌剤または抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、固定剤、防虫剤、軟膏、ビタミン剤およびそれらの混合物。
【0056】
「香料変調剤」とは、本明細書において、当該変調剤を組み込んだ組成物の香り、および特に蒸発速度および強度が、変調剤の非存在下における同じ知覚と比較して、その観察者または使用者によって経時的に知覚され得る様式に影響を及ぼす能力を有する薬剤を意味する。香料変調剤は、固定剤としても知られている。特に、変調剤により、そのフレグランスが知覚される時間を延長することができる。適切な変調剤の非限定的な例としては、メチルグルコシドポリオール;エチルグルコシドポリオール;プロピルグルコシドポリオール;イソセチルアルコール;PPG-3ミリスチルエーテル;ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール;ラウリン酸スクロース;ジラウリン酸スクロース;ミリスチン酸スクロース;パルミチン酸スクロース;ステアリン酸スクロース;ジステアリン酸スクロース;トリステアリン酸スクロース;ヒアルロン酸ジサッカリドナトリウム塩;ヒアルロン酸ナトリウム;プロピレングリコールプロピルエーテル;ジセチルエーテル;ポリグリセリン-4エーテル;イソセテス-5;イソセテス-7、イソセテス-10;イソセテス-12;イソセテス-15;イソセテス-20;イソセテス-25;イソセテス-30;ラウロアンホジプロピオン酸二ナトリウム;ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル;およびそれらの混合物;ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール;エチルヘキサン酸セテアリル;パンテノールエチルエーテル、DL-パンテノール、n-ノナン酸N-ヘキサデシル、n-ノナン酸n-オクタデシル、エモリエント剤、モノグリセリンエステル(ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルなど)、フィタントリオール、プロフレグランス、シクロデキストリン、カプセル剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
適切な液体担体としては、例えば、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系、またはフレーバーに一般的に使用される溶媒が挙げられる。フレーバーに一般的に使用される溶媒の性質および種類を詳細に説明しても、すべてを余すことなく網羅することはできない。フレーバーに使用される適切な溶媒としては、例えば、プロピレングリコール、トリアセチン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(neobee(登録商標))、クエン酸トリエチル、ベンジルアルコール、エタノール、イソプロパノール、シトラステルペン、植物油、例えば亜麻仁油、ヒマワリ油またはヤシ油、グリセリンが挙げられる。
【0058】
適切な固体担体としては、例えば、吸収性ガムもしくはポリマー、またはカプセル化材料が挙げられる。そのような材料の例には、壁形成性および可塑化材料、例えば単糖類、二糖類もしくは多糖類、天然もしくは化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、アルギン酸塩および酸、カラギーナン、アラビアガム、アカシアガム、またはH. Scherz, Hydrokolloid: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996などの参考文献に引用されている材料が含まれ得る。カプセル化は、当業者に周知のプロセスであり、例えば、噴霧乾燥、凝集、押出成形、コーティング、メッキ、コアセルベーションなどの技術を用いて行うことができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「配合物」という用語は、少なくとも1つの揮発性分子の液体、固体または気体の集合体を表す。
【0060】
本発明の組成物は、皮膚保湿剤として使用するためのものである。「保湿剤」とは、本発明の組成物が、皮膚からの水分蒸散量を減少させることを意味する。
【0061】
本発明のさらなる態様は、皮膚の潤いを改善する方法であって、本発明の組成物を皮膚に施与することを含む、方法を提供する。
【0062】
本発明のさらなる態様は、本発明の組成物を含む香料含有消費者製品を提供する。
【0063】
本発明の組成物はまた、前記組成物が添加される消費者製品の香りをポジティブに付与または変更するために、最新の香料、すなわちファインパフューマリーまたは機能性パフューマリーのあらゆる分野で有利に使用することができる。よって、本発明の別の主題は、上記で定義された本発明の組成物を賦香成分として含む香料含有消費者製品からなる。
【0064】
明確にするために述べると、「香料含有消費者製品」とは、それが施与される表面または空間(例えば、皮膚、毛髪)に少なくとも心地よい賦香効果をもたらす消費者製品を表すことを意図している。換言すれば、本発明による香料含有消費者製品は、機能性配合物と、任意に所望の消費者製品に応じた付加的な効能剤と、嗅覚的有効量の本発明の少なくとも1つの化合物とを含む香料含有消費者製品である。明確にするために述べると、前記香料含有消費者製品は、非食用製品である。
【0065】
本発明の組成物は、そのまま添加することも、本発明の賦香組成物の一部として添加することもできる。
【0066】
香料含有消費者製品の各成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、いずれにせよすべてを余すことなく網羅できるものではなく、当業者は、自身の常識に基づいて、前記製品の性質および所望の効能に従ってそれらを選択することができる。
【0067】
本発明の一実施形態では、香料含有消費者製品は、香料、ボディケア製品、化粧用調製物またはスキンケア製品である。好ましくは、香料含有消費者製品は、ファインパフューム、スプラッシュもしくはオードパルファム、コロン、シェーブもしくはアフターシェーブローション、シャンプー、カラーリング調製物、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品、殺菌剤、インティメイトケア製品、ヘアスプレー、バニシングクリーム、脱臭剤もしくは制汗剤、脱毛剤、日焼け用もしくは日焼け止め用製品、爪用製品、皮膚洗浄剤、メイクアップ、香料含有石鹸、シャワーもしくはバスムース、オイルもしくはジェル、またはフット/ハンドケア製品、衛生製品である。
【0068】
好ましい消費者製品としては、大手消費者製品会社の市場でよく知られた商標を含む、皮膚洗浄製品、皮膚ケア製品、および皮膚消臭製品が挙げられる。このような製品には、固形石鹸、シャワージェル、さらには液体ハンドソープ製品、ロールオンタイプおよびスティックタイプのデオドラント製品が挙げられる。
【0069】
上記の香料含有消費者製品の一部は、本発明の組成物にとって攻撃的な媒体となる可能性があるため、例えばカプセル化により、または酵素、光、熱、pHの変化などの適切な外部刺激により本発明の組成物を放出するのに適した別の化学物質と化学的に結合させることにより、本発明の組成物を早期の分解から保護する必要があり得る。
【0070】
本発明による組成物を前述の様々な製品または組成物に組み込むことができる割合は、広い範囲の値で変化する。これらの値は、調香される物品の性質および所望の官能効果に依存するが、本発明による組成物を当該技術分野で一般的に使用される賦香補助成分、溶媒または添加剤と混合する場合には、所与のベース中の補助成分の性質にも依存する。
【0071】
本発明の組成物を、一般に賦香組成物が消費者製品の必須成分であるファインパフューマリーやエアフレッシュナー以外の香料含有消費者製品に組み込む場合には、本発明の組成物を0.01重量%~5重量%使用することができ、ここで、パーセンテージは、該物品の重量に対する相対値である。
【0072】
本発明のさらなる態様は、賦香組成物または香料含有物品の皮膚保湿特性を付与、増強、改善または変更する方法であって、該方法は、前記組成物または物品に、先の請求項のいずれかに定義される有効量の組成物を添加することを含む、方法を提供する。
【0073】
本発明のさらなる態様は、(i)バイオポリマーを支持する水透過性基材を含むハイドロゲル膜層と、(ii)角質層模倣層とを含む皮膚再現表面を提供する。
【0074】
本発明の文脈において、「皮膚再現表面」とは、人間の皮膚そのものを含め、人間の皮膚に類似した物理化学的特性を呈する任意の表面を指す。このような人工表面の単純な実施形態では、人間の皮膚の厚さ、化学反応性、粘弾性などの限られた数の物理化学的特性を模倣することに焦点を当てることができる。他の実施形態では、人間の皮膚の表皮、真皮層および/または角質層など、人間の皮膚の特定の要素に焦点を当てることができる。
【0075】
このような表面は、ガラス表面のように単純なものであってもよいし、多層モデルのように複雑なものであってもよい。このような表面による人間の皮膚の実際の特性の再現が忠実であるほど、データベース構築の品質が向上し、ダウンストリーム予測の品質が向上する。
【0076】
本発明の文脈において、「皮膚再現表面」とは、人間の皮膚そのものを含め、人間の皮膚に類似した物理化学的特性を呈する任意の表面を指す。このような人工表面の単純な実施形態では、人間の皮膚の厚さ、化学反応性、粘弾性などの限られた数の物理化学的特性を模倣することに焦点を当てることができる。他の実施形態では、人間の皮膚の表皮、真皮層および/または角質層など、人間の皮膚の特定の要素に焦点を当てることができる。
【0077】
実施例
実施例1:イン・ビトロ皮膚モデルおよび評価方法
(i)バイオポリマーを支持する水透過性基材を含むハイドロゲル膜層と、(ii)角質層模倣層とを含む皮膚再現表面。
【0078】
ハイドロゲル膜組成物は、水およびグリセリンを用いてハイドロゲルを形成することができるバイオポリマー(ゼラチン)を含むハイドロゲルの上に編まれた綿片を含むことが好ましい。
【0079】
角質層模倣層は、Vitro-Corneum基質(IMS inc.の製品)であってよい。
【0080】
測定の前に、ハイドロゲル膜とVitro-Corneum基質とを別々に水和チャンバで水和させ、その後、組み立てる。Vitro-Corneum基質は、タンパク質および脂質でできており、人間の角質層の厚さ、粘弾性、化学反応性、および表面特性を模倣している。ハイドロゲルにより、Vitro-Corneum基質は水和状態に保たれる。
【0081】
イン・ビトロ皮膚モデルの作製方法および組成の一例
ゼラチン、グリセリン、および水をウォーターバスで以下の組成にて混合することにより、ハイドロゲルを調製する。好ましくは、ハイドロゲルの約50%がグリセリンであり、約5%がゼラチンであり、水で100%とする。これを支持体表面に加え、固化させる。
【0082】
人工皮膚モデルの両部分は、組み立てる前に水和させる必要がある。ハイドロゲル膜およびVitro-Corneum基質(2×2cm)を、グリセリン/水湿潤液の入った水和チャンバに入れる。ハイドロゲル膜を水和させ、Vitro-Corneum基質を水和させる。水和が完了したら、Vitro-Corneum基質をハイドロゲルに付着させる。これで最終的な皮膚モデルの実験準備が整う。
【0083】
TEWL測定
TEWL(経表皮水分蒸散量)測定を、Delfin Technologies(フィンランド)の製品であるVapometerおよびMoisturemeterを用いて行った。
【0084】
水和させた人工皮膚膜をフランツセルの上に置き、50μLの検査対象製品を膜に施与し、手袋で保護した指で手動で塗り広げる。Vapometerは、装置の中心部にある円筒形の測定チャンバに取り付けられた高感度湿度センサーにより水分蒸発速度を測定する。測定中、チャンバは支持体によって閉じられ、周囲の気流の影響を受けない。水分蒸発速度(g/m2h)を、相対湿度の時間変化から算出する。周囲の温度および湿度を、外部の室内センサーで記録する。
【0085】
本発明者らのTEWL測定法では、各実験は1時間で、この間に異なる時点で数回の測定を行った。
【0086】
参照系
すべての実験を、前処理済み、原料施与なしの水和人工皮膚モデルである参照系と比較した。水和膜を通じた水の蒸発速度は、1時間安定し、再現性があり(
図1)、これは31g/m
2hに相当する(相対湿度:27%、温度:24℃)。各実験では、各成分の施与前に蒸発速度を測定し、TEWLの結果をその値で正規化した。正規化に際して、参照値は、100%の水分蒸発に相当する。
【0087】
実施例2:香料成分の化粧品としての効能
いくつかの香料成分について、化粧品としての効能、より具体的には保湿性を、この目的のために開発されたイン・ビトロ法(実施例1)を用いて測定した。
【0088】
以下は、保湿効果を有する香料成分である:(+-)-8-メトキシセドラン、1-メチル-4-(1-メチルエテニル)-シクロヘキセン、オキサシクロヘキサデカン-2-オン、シクロペンタン酢酸、3-オキソ-2-ペンチル-、2-{(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-オキソエチルプロピオネート、酢酸ベンジル、(3RS,3aRS,6SR,7aSR)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(A)+(3RS,3aSR,6RS,7aRS)-3,6-ジメチルヘキサヒドロ-1-ベンゾフラン-2(3H)-オン(B)、2-{(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-オキソエチルプロピオネート。
【0089】
実施例3.フレグランス組成物の化粧品としての効能
本明細書に示した方法に基づいて、保湿効能のあるフレグランス組成物および保湿効能のないフレグランス組成物を製造した。
【0090】
保湿フレグランス:(3ar,5as,9as,9br)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、オキサシクロヘキサデカン-2-オン、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、(+)-2-{(1s)-1-[(1r)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン。
【0091】
非保湿フレグランス:酢酸ベンジル、(+-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、+-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、(+-)-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2h)-ピラノール、(e)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン(a)+1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(+)-メチル(1s)-トランス-3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート、(+)-2-{(1s)-1-[(1r)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオネート、1-((2rs,3rs)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エテノン、(+-)-(4e)-3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン、2-フェニルエタノール。
【0092】
実施例4:化粧剤の保湿性
よく知られた化粧剤であるジメチコン、鉱物油、ラノリン、石油ゼリーの保湿性を測定して、本方法を検証した。
【0093】
植物油は、エモリエント剤や保湿剤として化粧品に頻繁に使用され、香料では主に香気分子の担体として使用される。これらは、天然で複雑な香気成分の混合物のカテゴリーを形成している。それらの一部の保湿性を評価し、参照となる鉱物油と比較した。以下は、適切な化粧剤のリストである:アーモンド油、鉱物油、石油ゼリー。
【0094】
実施例5:本発明の賦香組成物
実施例として以下に述べる各種群の化合物を、すでに上で説明したように人工皮膚モデルに施与し、60分間のTEWLを測定した。以下の組成物が良好な保湿活性を有することが確認された。
【0095】
【0096】
精油
精油は、何千年もの間、化粧品や医薬品としての効能で知られ、使用されてきた。精油は、天然の香気分子混合物であり、根、種子、花、木、果皮など様々な植物の部分から抽出することができる。
【0097】
本出願人らの方法の有効性を証明するために、4つの精油を選択した:ラベンダー、ゼラニウム、ダマスクスローズ、およびユーカリ・グロブルスの精油。
【0098】
これらの香気組成物の保湿性を評価した。主に鎮静特性、リラックス特性、および防腐特性で知られる汎用精油であるラベンダー精油を除いて、評価した精油はすべて保湿剤とみなすことができる。
【0099】
ゼラニウムおよびローズの精油は、ほとんど同じ組成および特性を有している。保湿力に関しては、どちらの精油も保水力によって皮膚の水和を改善することができる。ゼラニウム精油は、皮膚に対する再生効果および皮脂分泌に対するバランス効果で知られている。ゼラニウム精油にはまた、抗菌および抗炎症作用もある。ゼラニウム精油は、皮膚を落ち着かせながら、その保湿効能によって潤いを保つことができる。ローズ精油は、その価値あるフレグランスに加えて、鎮静特性やアンチエイジング特性など、複数の効能を提供する。この精油は、必須脂肪酸含量が高いため、ゼラニウム油よりも効果的に皮膚の水和レベルを向上させることができる。
【0100】
ユーカリ精油は、抗微生物剤、鬱血除去剤、防虫剤として最もよく知られているが、皮膚からの水分蒸発を減少させることも可能であることが結果から判明した。
【国際調査報告】