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特表2024-540176子宮内膜症及び他の非がん性婦人科疾患を麻抽出物で治療する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】子宮内膜症及び他の非がん性婦人科疾患を麻抽出物で治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20241024BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241024BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K31/192
A61K36/185
A61K47/44
A61P15/00
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525627
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 US2022078701
(87)【国際公開番号】W WO2023076937
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/263,020
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/263,022
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/263,026
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524153178
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ニューカッスル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NEWCASTLE
(71)【出願人】
【識別番号】524152148
【氏名又は名称】エコファイバー ユーエスエイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOFIBRE USA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】カパノ、アレクサンドラ エム
(72)【発明者】
【氏名】タンワル、プラディープ シン
(72)【発明者】
【氏名】ナンス、アレックス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA14
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB29
4C076BB30
4C076CC17
4C076DD37
4C076DD41
4C076DD46
4C076DD59
4C076DD70
4C076EE53
4C076EE54
4C088AB12
4C088BA08
4C088BA11
4C088BA23
4C088BA32
4C088CA03
4C088MA16
4C088MA52
4C088MA56
4C088MA59
4C088NA14
4C088ZA81
4C088ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206DA18
4C206KA01
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA79
4C206NA14
4C206ZA81
4C206ZB26
(57)【要約】
非がん性婦人科疾患を治療するための方法であって、患者及びカンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物を含む有効量の組成物に投与することを含み、組成物が、好ましくは、膣内などの、粘膜剤形で投与される、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオール(CBD)を含む、患者の非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法における使用のための大麻抽出物。
【請求項2】
前記大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、及びカンナビジオール酸(CBD A)から選択され、任意選択的に、前記BSHE又はFSHEが、(i)50重量%~99重量%のCBDと、(ii)Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、Δ-8-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビノール(CBN)、カンナビシクロール(CBL)、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含む、請求項1に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項3】
前記大麻抽出物が、用量当たり10mg~4,250mgのCBDを含む、請求項1又は2に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項4】
a.前記方法が、経口用量、口腔粘膜用量、膣内用量、若しくはそれらの組み合わせを介した前記患者への前記大麻抽出物の投与を含み、及び/又は
b.前記方法が、少なくとも3日に1回、好ましくは少なくとも1日に1回、少なくとも1日に2回、若しくは少なくとも1日に3回の前記患者への前記大麻抽出物の用量の投与を含み、及び/又は
c.前記方法が、前記患者の標的組織で少なくとも10μg/mLの濃度の前記大麻抽出物を生成するのに十分な前記大麻抽出物の量の投与を含み、好ましくは、前記標的組織が、女性生殖器官の非がん性組織であり、及び/又は
d.前記方法が、CBDの全身血漿レベルによって測定される有効治療レベルに達するのに十分な前記大麻抽出物の量の投与を含み、及び/又は
e.前記方法が、前記患者への1日当たり20mg~4,250mgのCBDの投与を含み、及び/又は
f.前記大麻抽出物が、酸性pH、好ましくは、3.5~6のpHで製剤化される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項5】
a.前記NCGDが、子宮内膜症であり、及び/又は
b.前記NCGDが、月経困難症であり、及び/又は
c.前記NCGDが、子宮筋腫である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項6】
前記大麻抽出物が、1%~99.9%のCBDを含み、前記方法が、膣内投与を介して前記患者に前記大麻抽出物を投与することを含み、好ましくは、
a.前記大麻抽出物が、60%~99.9%のCBDを含み、並びに/又は
b.前記大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、及びCBD単離物から選択され、並びに/又は
c.前記大麻抽出物が、CBDAを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項7】
請求項1~3及び6のいずれか一項に記載の大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、患者の非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法における使用のための粘膜組成物。
【請求項8】
前記組成物が、(i)担体としての油若しくは脂肪、及び/又は(ii)少なくとも1つのテルペン、少なくとも1つのポリフェノール、少なくとも1つの必須脂肪酸、少なくとも1つの植物栄養素、若しくはそれらの組み合わせを含み、
任意選択的に、前記少なくとも1つのテルペン、少なくとも1つのポリフェノール、少なくとも1つの必須脂肪酸、少なくとも1つの植物栄養素、又はそれらの組み合わせが、前記組成物の総重量の1重量%~50重量%を構成し、
更に任意選択的に、
・ 前記テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は
・ 前記ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は
・ 前記必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は
・ 前記植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の使用のための粘膜組成物。
【請求項9】
a.前記粘膜組成物が、25mg~4,250mgの用量のCBDを含み、前記方法が、口腔粘膜、直腸、膣、若しくは鼻腔から選択される粘膜表面への挿入を介して前記組成物を前記患者に投与することを含み、及び/又は
b.前記方法が、1日当たり少なくとも2回用量の前記粘膜組成物を前記患者に投与することを含み、前記粘膜組成物の各用量が、10mg~2,125mgの大麻抽出物を含み、及び/又は
c.前記粘膜組成物が、酸性pH、好ましくは、3.5~6のpHを有する、請求項7又は8に記載の使用のための粘膜組成物。
【請求項10】
前記方法が、NCGDを治療するための方法であり、前記方法が、粘膜製剤を介して前記大麻抽出物を前記患者に同時期に投与することを含み、好ましくは、前記大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)又はブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項11】
前記方法が、有効量の前記大麻抽出物及び有効量の第2の治療剤を患者に同時投与することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項12】
有効量のCBDを含む大麻抽出物を含む、非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法における使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、
a.担体、並びに/又は
b.Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの追加のカンナビノイド、並びに/又は
c.少なくとも1つのテルペンであって、好ましくは、前記テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのテルペン、並びに/又は
d.少なくとも1つのポリフェノールであって、好ましくは、前記ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのポリフェノール、並びに/又は
e.必須脂肪酸であって、好ましくは、前記必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸、及びそれらの組み合わせから選択される、必須脂肪酸、並びに/又は
f.植物栄養素であって、好ましくは、前記植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせから選択される、植物栄養素を更に含む、請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
患者及び大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物に投与することを含む、非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法。
【請求項15】
前記CEが、50%~99.9%のカンナビジオール(CBD)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記CEが、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、及びカンナビジオール酸(CBDA)単離物からなる群から選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記CEが、経口剤形、口腔粘膜剤形、膣内剤形、鼻粘膜剤形、直腸剤形、注射剤形、及びそれらの組み合わせを介して投与される、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
CBDを含む前記有効量の前記大麻抽出物が、1日当たり10mg~4,250mgのCBDを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記CEの投与が、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、又は少なくとも1日3回与えられる用量である、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記NCGDが、卵巣子宮内膜腫、深部子宮内膜症、月経困難症、又は子宮筋腫である、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記CEが、0.1%~10%の濃度でCBDAを含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記CEが、BSHE又はFSHEであり、前記BSHE又はFSHEの各々が、50重量%~99重量%のCBDと、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される0.1%~10%の濃度の少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含む、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記CEが、60%~99%の濃度のCBDと、0.1%~10%の濃度の少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含み、前記少なくとも1つの他のカンナビノイドが、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記CEが、65%~99%の総濃度のカンナビノイドを含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸、植物栄養素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を含み、前記少なくとも1つの追加の化合物が、前記組成物の総重量の0.1%~50%を構成する、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、担体として油又は脂肪を含む、請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記有効量の前記組成物が、全身血漿レベルによって測定されるCBDの有効治療レベルに達するのに十分な量である、請求項14~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、酸性pHで投与される、請求項14~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記酸性pHが、3.5~6である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記有効量の前記組成物が、CBDの全身血漿レベルによって測定される有効治療レベルに達するのに十分である、請求項14~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、少なくとも1つのテルペンを更に含む、請求項14~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、少なくとも1つのポリフェノールを更に含む、請求項14~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、オメガ3、オメガ6、オメガ9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される必須脂肪酸を更に含む、請求項14~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、植物栄養素を更に含む、請求項14~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記CBDが、大麻抽出物に由来する、フィトカンナビノイドである、請求項14~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法であって、
a.患者から婦人科細胞を採取し、前記婦人科細胞から少なくとも1つのオルガノイドを形成することと、
b.前記少なくとも1つのオルガノイドに対してスクリーニングを実施して、前記患者のオルガノイドに応答する大麻抽出物(CE)を決定することと、
c.50%~99.9%のCBDを有する前記CEを含む有効量の組成物とともに前記患者に前記CEを投与することと、を含む、方法。
【請求項39】
前記CEが、経口剤形、口腔粘膜剤形、経鼻剤形、直腸剤形、膣内剤形、注射剤形、及びそれらの組み合わせとして前記患者に投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記CEが、口腔粘膜及び膣内に投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物(CE)を含む有効量の膣内組成物を患者に投与することを含む、子宮内膜症を治療するための方法。
【請求項42】
前記子宮内膜症が、卵巣子宮内膜腫又は深部子宮内膜症である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物(CE)を含む有効量の膣内組成物を患者に投与することを含む、月経困難症又は子宮筋腫の治療の方法。
【請求項44】
前記CEが、50重量%~99.9重量%のCBDを含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
子宮内膜症、月経困難症、子宮筋腫、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される婦人科疾患の治療のための大麻抽出物(CE)を含む治療薬の使用。
【請求項46】
有効量のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む、子宮内膜症を治療するための治療薬。
【請求項47】
担体を更に含む、請求項46に記載の治療薬。
【請求項48】
Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加のカンナビノイドを更に含む、請求項46又は47に記載の治療薬。
【請求項49】
少なくとも1つのテルペンを更に含む、請求項46~48のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項50】
前記テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項49に記載の治療薬。
【請求項51】
少なくとも1つのポリフェノールを更に含む、請求項46~50のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項52】
前記ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項51に記載の治療薬。
【請求項53】
オメガ3、オメガ6、オメガ9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される必須脂肪酸を更に含む、請求項46~52のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項54】
植物栄養素を更に含む、請求項46~53のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項55】
前記植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項54に記載の治療薬。
【請求項56】
ホルモン療法、GnRH療法、プロゲスチン療法、アロマターゼ阻害剤、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法又は治療薬。
【請求項57】
1重量%~99重量%の大麻抽出物(CE)を含む、非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法における使用のための組成物。
【請求項58】
前記組成物の前記CEが、
a.フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、CBDA単離物、若しくはそれらの組み合わせを含み、及び/又は
b.前記組成物が、前記組成物の1重量%~99重量%の担体を含み、及び/又は
c.前記組成物が、前記組成物の1重量%~50重量%の1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
非がん性婦人科疾患(NCGD)の治療のための組成物であって、前記組成物が、大麻抽出物(CE)を含み、前記CEが、前記組成物の1重量%~100重量%及びその中の全てのパーセンテージを構成する、組成物。
【請求項60】
前記CEが、前記組成物の10重量%~90重量%、又は20重量%~90重量%、及び、好ましくは、40重量%~80重量%を構成する、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記CEが、好ましくは、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、又はCBDA単離物である、請求項59又は60に記載の組成物。
【請求項62】
前記BSHE及び/又は前記FSHE及び/又は前記CBD単離物及び/又は前記CBDA単離物が、前記CEの50重量%~99.9重量%を構成する、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
前記組成物の1重量%~99重量%の担体を含む、請求項59~62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
少なくとも1つ以上の追加の賦形剤を更に含む、請求項59~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
前記組成物が、粘膜組成物である、請求項59~64のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
20mg~4,250mgのCBDを含む、請求項59~65のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項67】
有効量の請求項57~66のいずれか一項に記載の組成物を患者に投与することを含む、非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法。
【請求項68】
前記有効量が、20mg~4,250mgのカンナビジオール(CBD)である、請求項67に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許商標庁に対して2021年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/263,026号、2021年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/263,020号、及び2021年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/263,022号の利益を主張し、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に開示される発明は、有効量の大麻抽出物を単独で又は第2の治療剤と組み合わせて投与することによる、子宮内膜症及び他の非がん性婦人科疾患の組成物及び治療に関する。大麻抽出物は、1つ以上のカンナビノイド、具体的には治療量のカンナビジオール(cannabidiol、CBD)を含み、多くの場合、大麻抽出物内に1つ以上の追加のカンナビノイド、テルペン、又は他の分子を含む。
【背景技術】
【0003】
女性は、現在適切な治療の方法がない多数の非がん性婦人科疾患に直面している。これらの病気としては、子宮筋腫、多嚢胞性卵巣症候群、卵巣嚢胞、癒着、骨盤内腫瘤、骨盤内感染、子宮内膜症、月経困難症、及びその他(まとめて「非がん性婦人科がん」)などの痛みを伴う生命を脅かすことのない疾患が挙げられる。これらの障害の多くは、単なる不快なもの以上であり、多くの場合、顕著な疼痛及び苦痛を引き起こす。
【0004】
月経困難症及び子宮内膜症を含む様々な形態の骨盤痛が、80%を超える女性に影響を及ぼしている。世界的な研究では、30%を超える女性が、学校又は仕事を休むほど重度の骨盤痛を経験していると報告しており、最大80%の女性が、関連症状に起因する生産性の喪失を報告している。月経時の不快感に限定されず、持続期間が3~6か月であることを特徴とする慢性骨盤痛の有病率は、女性の24%に及ぶ。骨盤痛の負の結果は顕著であり、欠勤者の社会経済的影響、生活の質の低下、並びに不安、睡眠障害、及び他の気分障害の報告の増加を含む。鎮痛剤の使用は、頻度に差はあるが、骨盤痛を有する女性の80~93%によって報告されている。合わせて、47%が「常に」又は「頻繁に」鎮痛薬の使用を報告している。研究は、NSAID及びオピオイドなどの麻酔性鎮痛薬の両方の乱用又は不適切な使用が、骨盤痛の健康リスクを更に増加させることを報告している。
【0005】
子宮内膜症は、正常に子宮の内側を覆う組織が子宮外で増殖する疾患であり、妊娠可能年齢のアメリカ人女性の推定6~10パーセントが罹患している一般的な婦人科の病気である。子宮内膜症の現在の治療計画としては、女性に緩和をもたらさない、疾患の経過をモニタリングすること、子宮内膜症と関連付けられた症状を緩和するが、疾患の根本的な原因を治療しない鎮痛薬及び抗炎症薬を処方すること、女性にとって望ましくない副作用を有し得るホルモン療法、腹腔鏡検査若しくは開腹術などの非侵襲的手術であって、これらの外科的処置からの緩和は永久的ではなく、手術後に症状が戻る場合がある、非侵襲的手術、又は非常に回避的であり、女性が将来子供を産むことを妨げる、子宮摘出術が挙げられる。最良の状況下であっても、治療選択肢の多くは、完全に不十分なままである。明らかに、子宮内膜症と診断された女性に利用可能な現在の治療選択肢のいずれも、女性を不妊にし得る劇的な措置を講じることなく、疾患からの長期持続的緩和を提供しない。
【0006】
重度の月経困難症と診断された女性は、子宮収縮によって引き起こされる痛みを伴う月経期間、毎月のうち数日間、正常な日常活動を行うことが妨げられ得る。一部の女性について、重度の疼痛は、下痢、悪心、嘔吐、頭痛、及び眩暈を含む他の症状を伴う。現在、鎮痛剤又は非ステロイド性抗炎症薬の服用、休息、食事の変更、又は運動の増加などの、月経困難症の症状を管理するための選択肢がある。また、子宮内膜アブレーション、子宮内膜を破壊する処置、子宮内膜切除、子宮の内層を除去する処置及び子宮摘出、子宮の外科的除去などの侵襲的処置もある。月経困難症の症状を管理するための非侵襲的手段は、その病気自体を治療せず、外科的処置は、非常に侵襲的であり、出産適齢期の女性に生殖能力の問題を生じさせ得る。
【0007】
1年当たり200,000人を超える女性において診断される一般的な病気である子宮筋腫は、子宮の非がん性増殖である。子宮筋腫は、不快感を引き起こし得、大量出血による、疲労感を引き起こす、赤血球の減少(貧血)などの合併症につながり得る。子宮筋腫の現在の治療計画は、上記に論じられたもの、経過観察、非ステロイド性抗炎症薬、ホルモン療法、外科的除去、又は子宮摘出と同様である。
【0008】
非がん性婦人科疾患の治療は不十分なままである。出願人は、CBDを含む治療レベルの大麻抽出物が、子宮内膜症及び他の非がん性婦人科疾患の治療に有効であることを特定した。特定の実施形態では、これらの大麻抽出物は、経口、口腔粘膜、膣内、及びそれらの組み合わせなどの剤形で提供される。これら及び他の実施形態は、本明細書でより詳細に詳述される。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に開示される特定の実施形態は、CBDを含むBSHE又はFSHE製剤の膣内適用によって、子宮内膜症及び他の非がん性婦人科疾患を治療する方法に関する。特に、製剤は、FSHE又はBSHE内でCBD及び他のカンナビノイド並びに他のテルペン及び分子の膣内送達を可能にし、置換されて不適切に子宮外に存在する子宮内膜細胞の破壊を含む、子宮内膜症の症状を緩和することができる。
【0010】
更なる実施形態では、患者及びカンナビジオール(CBD)を含むフルスペクトル麻抽出物(full spectrum hemp extract、FSHE)又はブロードスペクトル麻抽出物(broad spectrum hemp extract、BSHE)を含む有効量の膣内組成物に投与することを含む、子宮内膜症を治療するための方法。
【0011】
更に好ましい実施形態では、子宮内膜症が、卵巣子宮内膜腫又は深部子宮内膜症である、方法。
【0012】
更なる実施形態では、患者及びカンナビジオール(CBD)を含むフルスペクトル麻抽出物(FSHE)又はブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)を含む有効量の膣内組成物に投与することを含む、月経困難症又は子宮筋腫の治療の方法。
【0013】
上記の方法の更に好ましい実施形態では、ホルモン療法、Gn-RH療法、プロゲスチン療法、アロマターゼ阻害剤、又はそれらの組み合わせを更に含む、使用、又は治療。
【0014】
一実施形態では、本発明は、患者における非がん性婦人科疾患(noncancerous gynecological disorder、NCGD)を治療する方法における使用のための大麻抽出物を提供し、大麻抽出物は、カンナビジオール(CBD)を含み、方法は、子宮内膜がん及び子宮内膜症を同時に治療するための方法であり、方法は、経口製剤及び膣内製剤を介して大麻抽出物を患者に同時期に投与することを含む。本明細書で定義される際、「同時期に(concomitantly)」という用語は、経口製剤及び膣内製剤が、72時間以下の間隔で、好ましくは48時間以下の間隔で、より好ましくは24時間以下の間隔で、例えば、12時間以下の間隔で、6時間以下の間隔で、4時間以下の間隔で、3時間以下の間隔で、2時間以下の間隔で、1時間以下の間隔で、30分以下の間隔で、又は同時に患者に投与されることを意味する。したがって、一実施形態では、本発明は、子宮内膜がん及び子宮内膜症を同時に治療するための方法における使用のための経口製剤を提供し、経口製剤は、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含み、方法は、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む膣内製剤と同時期の経口製剤の投与を含む。更なる実施形態では、本発明は、NCGDを治療するための方法における使用のための膣内製剤を提供し、膣内製剤は、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含み、方法は、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む口腔粘膜製剤と同時期の膣内製剤の投与を含む。
【0015】
一実施形態では、本発明は、NCGDを治療する方法における使用のための医薬組成物を提供し、医薬組成物は、有効量のCBDを有する大麻抽出物を含む。
【0016】
一実施形態では、本発明は、NCGDを治療する方法における使用のための医薬の製造における、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物の使用を提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、NCGDを治療する方法における使用のための医薬の製造における、カンナビジオールを含む大麻抽出物、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、膣内組成物の使用を提供する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、NCGDを治療する方法における使用のための医薬の製造における、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物の使用を提供する。
【0019】
好ましい実施形態では、1%~99.9%のCBDを含む大麻抽出物を含む有効量の医薬組成物を、膣内適用を介して患者に投与することを含む、NCGDの治療方法。
【0020】
更なる実施形態では、有効用量が、標的組織において少なくとも10μg/mLの濃度のCBDを生成するのに十分である、方法。
【0021】
したがって、粘膜投与、特に膣内投与は、EC細胞の標的化治療を可能にし得る治療有効性を有し、これは、局所病変及び内在化組織の両方を治療する。これらのデータは、ヒト患者内での更なる試験によって確認され、これは、CBDによる治療が、子宮内膜症、卵巣子宮内膜腫、深部子宮内膜症、月経困難症、又は子宮筋腫などのNCGDを治療するのに有効であったことを示した。
【0022】
好ましい実施形態では、カンナビジオール(CBD)を含む、患者の非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法における使用のための大麻抽出物。
【0023】
更なる実施形態では、大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、及びカンナビジオール酸(cannabidiolic acid、CBDA)から選択され、任意選択的に、BSHE又はFSHEが、(i)50重量%~99重量%のCBDと、(ii)Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-9-tetrahydrocannabinol、Δ-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(tetrahydrocannabinolic acid、THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(tetrahydrocannabivarin、THCV)、Δ-8-テトラヒドロカンナビノール(Δ-8-tetrahydrocannabinol、Δ-THC)、カンナビクロメン(cannabichromene、CBC)、カンナビクロメン酸(cannabichromene acid、CBCA)、カンナビゲロール(cannabigerol、CBG)、カンナビゲロール酸(cannabigerol acid、CBGA)、カンナビジオール酸(cannabidiolic acid、CBDA)、カンナビジバリン(cannabidivarin、CBDV)、カンナビノール(cannabinol、CBN)、カンナビシクロール(cannabicyclol、CBL)、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含む、使用のための大麻抽出物。
【0024】
更なる実施形態では、大麻抽出物が、用量当たり10mg~4,250mgのCBDを含む、使用のための大麻抽出物。
【0025】
更なる実施形態では、(a)方法が、経口用量、口腔粘膜用量、膣内用量、若しくはそれらの組み合わせを介した患者への大麻抽出物の投与を含み、及び/又は(b)方法が、少なくとも3日に1回、好ましくは少なくとも1日に1回、少なくとも1日に2回、若しくは少なくとも1日に3回の患者への大麻抽出物の用量の投与を含み、及び/又は(c)方法が、患者の標的組織で少なくとも10μg/mLの濃度の大麻抽出物を生成するのに十分な大麻抽出物の量の投与を含み、好ましくは、標的組織が、女性生殖器官の非がん性組織であり、及び/又は(d)方法が、CBDの全身血漿レベルによって測定される有効治療レベルに達するのに十分な大麻抽出物の量の投与を含み、及び/又は(e)方法が、患者への1日当たり20mg~4,250mgのCBDの投与を含み、及び/又は(f)大麻抽出物が、酸性pH、好ましくは、3.5~6のpHで製剤化される、使用のための大麻抽出物。
【0026】
更なる実施形態では、(a)NCGDが、子宮内膜症であり、及び/又は(b)NCGDが、月経困難症であり、及び/又は(c)NCGDが、子宮筋腫である、使用のための大麻抽出物。
【0027】
更なる実施形態では、大麻抽出物が、1%~99.9%のCBDを含み、方法が、膣内投与を介して大麻抽出物を患者に投与することを含み、好ましくは、(a)大麻抽出物が、60%~99.9%のCBDを含み、並びに/又は(b)大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、及びCBD単離物から選択され、並びに/又は大麻抽出物が、CBDAを含む、使用のための大麻抽出物。
【0028】
好ましい実施形態では、大麻抽出物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、患者の非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法における使用のための粘膜組成物。
【0029】
更なる実施形態では、組成物が、(i)担体としての油若しくは脂肪、及び/又は(ii)少なくとも1つのテルペン、少なくとも1つのポリフェノール、少なくとも1つの必須脂肪酸、少なくとも1つの植物栄養素、若しくはそれらの組み合わせを含み、任意選択的に、少なくとも1つのテルペン、少なくとも1つのポリフェノール、少なくとも1つの必須脂肪酸、少なくとも1つの植物栄養素、又はそれらの組み合わせが、組成物の総重量の1重量%~50重量%を構成し、更に任意選択的に、テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又はポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸、及びそれらの組み合わせから選択され、並びに/又は植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせから選択される、使用のための粘膜組成物。
【0030】
更なる実施形態では、(a)粘膜組成物が、25mg~4,250mgの用量のCBDを含み、方法が、口腔粘膜、直腸、膣、若しくは鼻腔から選択される粘膜表面への挿入を介して組成物を患者に投与することを含み、及び/又は方法が、1日当たり少なくとも2回用量の粘膜組成物を患者に投与することを含み、粘膜組成物の各用量が、10mg~2,125mgの大麻抽出物を含み、及び/又は粘膜組成物が、酸性pH、好ましくは、3.5~6のpHを有する、使用のための粘膜組成物。
【0031】
更なる実施形態では、方法が、NCGDを治療するための方法であり、方法が、粘膜製剤を介して大麻抽出物を患者に同時期に投与することを含み、好ましくは、大麻抽出物が、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)又はブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)である、使用のための大麻抽出物。
【0032】
更なる実施形態では、方法が、有効量の大麻抽出物及び有効量の第2の治療剤を患者に同時投与することを含む、使用のための大麻抽出物。
【0033】
好ましい実施形態では、有効量のCBDを含む大麻抽出物を含む、非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法における使用のための医薬組成物。
【0034】
更なる実施形態では、組成物が、(a)担体、並びに/又は(b)Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの追加のカンナビノイド、並びに/又は(c)少なくとも1つのテルペンであって、好ましくは、テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのテルペン、並びに/又は(d)少なくとも1つのポリフェノールであって、好ましくは、ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのポリフェノール、並びに/又は(e)必須脂肪酸であって、好ましくは、必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸、及びそれらの組み合わせから選択される、必須脂肪酸、並びに/又は(f)植物栄養素であって、好ましくは、植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせから選択される、植物栄養素を更に含む、使用のための医薬組成物。
【0035】
好ましい実施形態では、患者及び大麻抽出物(cannabis extract、CE)を含む有効量の組成物に投与することを含む、非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法。
【0036】
更なる実施形態では、CEが、50%~99.9%のカンナビジオール(CBD)を含む、方法。
【0037】
更なる実施形態では、CEが、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、及びカンナビジオール酸(CBDA)単離物からなる群から選択される、方法。
【0038】
更なる実施形態では、CEが、経口剤形、口腔粘膜剤形、膣内剤形、鼻粘膜剤形、直腸剤形、注射剤形、及びそれらの組み合わせを介して投与される、方法。
【0039】
更なる実施形態では、CBDを含む有効量の大麻抽出物が、1日当たり10mg~4,250mgのCBDを含む、方法。更なる実施形態では、CEの投与が、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、又は少なくとも1日3回与えられる用量である、方法。
【0040】
更なる実施形態では、NCGDが、卵巣子宮内膜腫、深部子宮内膜症、月経困難症、又は子宮筋腫である、方法。
【0041】
更なる実施形態では、CEが、0.1%~10%の濃度のCBDAを含む、方法。
【0042】
更なる実施形態では、CEが、BSHE又はFSHEであり、BSHE又はFSHEの各々が、50重量%~99重量%のCBDと、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される0.1%~10%の濃度の少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含む、方法。
【0043】
更なる実施形態では、CEが、60%~99%の濃度のCBDと、0.1%~10%の濃度の少なくとも1つの他のカンナビノイドと、を含み、少なくとも1つの他のカンナビノイドが、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、CEが、65%~99%の総濃度のカンナビノイドを含む、方法。
【0044】
更なる実施形態では、組成物が、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸、植物栄養素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を含み、少なくとも1つの追加の化合物が、組成物の総重量の0.1%~50%を構成する、方法。
【0045】
更なる実施形態では、組成物が、担体として油又は脂肪を含む、方法。
【0046】
更なる実施形態では、有効量の組成物が、全身血漿レベルによって測定されるCBDの有効治療レベルに達するのに十分な量である、方法。
【0047】
更なる実施形態では、組成物が、酸性pHで投与される、方法。更なる実施形態では、酸性pHが、3.5~6である、方法。
【0048】
更なる実施形態では、有効量の組成物が、CBDの全身血漿レベルによって測定される有効治療レベルに達するのに十分である、方法。
【0049】
更なる実施形態では、組成物が、少なくとも1つのテルペンを更に含む、方法。更なる実施形態では、テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0050】
更なる実施形態では、組成物が、少なくとも1つのポリフェノールを更に含む、方法。更なる実施形態では、ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0051】
更なる実施形態では、組成物が、オメガ3、オメガ6、オメガ9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される必須脂肪酸を更に含む、方法。
【0052】
更なる実施形態では、組成物が、植物栄養素を更に含む、方法。更なる実施形態では、植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0053】
更なる実施形態では、CBDが、大麻抽出物に由来する、フィトカンナビノイドである、方法。
【0054】
好ましい実施形態では、非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法であって、(a)患者から婦人科細胞を採取し、婦人科細胞から少なくとも1つのオルガノイドを形成することと、(b)少なくとも1つのオルガノイドに対してスクリーニングを実施して、患者のオルガノイドに応答する大麻抽出物(CE)を決定することと、(c)50%~99.9%のCBDを有するCEを含む有効量の組成物とともに患者にCEを投与することと、を含む、方法。
【0055】
更なる実施形態では、CEが、経口剤形、口腔粘膜剤形、経鼻剤形、直腸剤形、膣内剤形、注射剤形、及びそれらの組み合わせとして患者に投与される、方法。更なる実施形態では、CEが、口腔粘膜及び膣内に投与される、方法。
【0056】
好ましい実施形態では、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物(CE)を含む有効量の膣内組成物を患者に投与することを含む、子宮内膜症を治療するための方法。
【0057】
更なる実施形態では、子宮内膜症が、卵巣子宮内膜腫又は深部子宮内膜症である、方法。
【0058】
カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物(CE)を含む有効量の膣内組成物を患者に投与することを含む、月経困難症又は子宮筋腫の治療の方法。
【0059】
更なる実施形態では、CEが、50重量%~99.9重量%のCBDを含む、方法。
【0060】
好ましい実施形態では、子宮内膜症、月経困難症、子宮筋腫、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される婦人科疾患の治療のための大麻抽出物(CE)を含む治療薬の使用。
【0061】
好ましい実施形態では、有効量のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む、子宮内膜症を治療するための治療薬。
【0062】
更なる実施形態では、担体を更に含む、治療薬。
【0063】
更なる実施形態では、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加のカンナビノイドを更に含む、治療薬
【0064】
更なる実施形態では、少なくとも1つのテルペンを更に含む、治療薬。更なる実施形態では、テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、治療薬。
【0065】
更なる実施形態では、少なくとも1つのポリフェノールを更に含む、治療薬。更なる実施形態では、ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、治療薬。
【0066】
更なる実施形態では、オメガ3、オメガ6、オメガ9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される必須脂肪酸を更に含む、治療薬。
【0067】
更なる実施形態では、植物栄養素を更に含む、治療薬。更なる実施形態では、植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、治療薬。
【0068】
更なる実施形態では、ホルモン療法、GnRH療法、プロゲスチン療法、アロマターゼ阻害剤、又はそれらの組み合わせを更に含む、方法又は治療薬。
【0069】
好ましい実施形態では、1重量%~99重量%のCEを含む、非がん性婦人科疾患を治療する方法における使用のための組成物。
【0070】
好ましい実施形態では、組成物のCEが、(a)FSHE、BSHE、CBD単離物、及び/若しくはCBDA単離物を含み、並びに/又は(b)組成物が、組成物の1重量%~99重量%の担体を含み、並びに/又は(c)組成物が、組成物の1重量%~50重量%の1つ以上の賦形剤を更に含む、組成物。
【0071】
好ましい実施形態では、非がん性婦人科疾患の治療のための組成物であって、組成物が、大麻抽出物(CE)を含み、CEが、組成物の1重量%~100重量%及びその中の全てのパーセンテージを構成する、組成物。好ましい実施形態では、CEが、組成物の10重量%~90重量%、又は20重量%~90重量%、及び、好ましくは、40重量%~80重量%を構成する。CEは、本明細書に詳述されるように、好ましくは、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDA単離物である。これらの異なるCE、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDA単離物の各々では、それらは、CEの50重量%~99.9重量%を構成し、残りは、ワックス、脂肪、脂肪酸などである。しかしながら、好ましい実施形態は、組成物の1重量%~99重量%で担体を利用し、好ましくは、組成物の使用事例に応じて1つ以上の追加の賦形剤を利用する。次いで、組成物は、典型的には、投与されるCBDのmg単位の投与量に基づいて投与される。CBDのmgを満たすのに必要な組成物の量は、CEの各々内のCBDの量に依存する。
【0072】
更に好ましい実施形態では、上記の実施形態のうちのいずれか1つによる有効量の組成物を必要とする患者にそれを投与することを含む、NCGDの治療方法。好ましい実施形態では、有効量が、20mg~4,250mgのカンナビジオール(CBD)である、方法。
【0073】
好ましい実施形態では、1重量%~99重量%の大麻抽出物(CE)を含む、非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法における使用のための組成物。
【0074】
更なる実施形態では、組成物のCEが、(a)フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、CBDA単離物、若しくはそれらの組み合わせを含み、並びに/又は(b)組成物が、組成物の1重量%~99重量%の担体を含み、並びに/又は(c)組成物が、組成物の1重量%~50重量%の1つ以上の賦形剤を更に含む、組成物。
【0075】
好ましい実施形態では、非がん性婦人科疾患(NCGD)の治療のための組成物であって、組成物が、大麻抽出物(CE)を含み、CEが、組成物の1重量%~100重量%及びその中の全てのパーセンテージを構成する、組成物。
【0076】
更なる実施形態では、CEが、組成物の10重量%~90重量%、又は20重量%~90重量%、及び、好ましくは、40重量%~80重量%を構成する、組成物。
【0077】
更なる実施形態では、CEが、好ましくは、フルスペクトル麻抽出物(FSHE)、ブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)、CBD単離物、又はCBDA単離物である、組成物。更なる実施形態では、BSHE及び/又はFSHE及び/又はCBD単離物及び/又はCBDA単離物が、CEの50重量%~99.9重量%を構成する、組成物。
【0078】
更なる実施形態では、組成物の1重量%~99重量%の担体を含む、組成物。
【0079】
更なる実施形態では、少なくとも1つ以上の追加の賦形剤を更に含む、組成物。
【0080】
更なる実施形態では、組成物が、粘膜組成物である、組成物。
【0081】
更なる実施形態では、20mg~4,250mgのCBDを含む、組成物。
【0082】
好ましい実施形態では、有効量の組成物を投与することを含む、非がん性婦人科疾患(NCGD)を治療する方法。更なる実施形態では、有効量が、20mg~4,250mgのカンナビジオール(CBD)である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1A】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、図1Aは、タンパク質発現に関するデータを取り込むプロセスの図を示す。
図1B】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、図1Bは、タンパク質の分化数を図示する。
図1C】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、図1Cは、ビヒクル中及びCBD治療を含む大麻抽出物による上方制御及び下方制御された細胞を図示する。
図1D】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、図1Dは、ECC治療細胞における上位20個の上方及び下方制御されたタンパク質を図示する。
図1E】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、図1Eは、様々な生理学的及び病態生理学的経路のシグナル伝達及び輸送に対する大麻抽出物の効果を図示している。
図1F】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、図1Fは、子宮内膜がん細胞におけるカンナビノイド受容体1タンパク質発現を図示する。
図1G】CBDを含む大麻抽出物で治療されている子宮内膜がん細胞を図示し、図1Gは、子宮内膜がん細胞におけるカンナビノイド受容体2タンパク質発現を図示する。
図2A】大麻抽出物で治療された子宮内膜症ベースのオルガノイドを図示し、図2Aは、BSHEを介して送達される際の様々な量のCBDを含む大麻抽出物を有する細胞を図示する。
図2B】大麻抽出物で治療された子宮内膜症ベースのオルガノイドを図示する。特に、図2Bは、最小発育阻止濃度(オルガノイドの非存在)を示す結果を要約しているが、最低50μg、それを上回る全ての値を示している。
図3A】2、3、4、及び5μg/mLを含む異なる濃度の麻抽出物で治療された子宮内膜がんオルガノイドについて、ビヒクルと比較したオルガノイド数の減少を図示する。
図3B】2、3、4、及び5μg/mLを含む異なる濃度の麻抽出物で治療された子宮内膜がんオルガノイドについて、ビヒクルと比較したオルガノイド数の減少を図示する。
図4A】異なるグレードの子宮内膜がんオルガノイドの3、5、7、及び10μg/mLを含む異なる濃度の麻抽出物で治療された子宮内膜がんオルガノイドについて、ビヒクルと比較したオルガノイド数の減少を図示する。
図4B】異なるグレードの子宮内膜がんオルガノイドの3、5、7、及び10μg/mLを含む異なる濃度の麻抽出物で治療された子宮内膜がんオルガノイドについて、ビヒクルと比較したオルガノイド数の減少を図示する。
図5A】2、3、4、5、7、及び10μg/mLの濃度で2つの試行で試験されたグレード3の子宮内膜がんオルガノイドを図示する。
図5B】2、3、4、5、7、及び10μg/mLの濃度で2つの試行で試験されたグレード3の子宮内膜がんオルガノイドを図示する。
図6A】子宮内膜オルガノイドに対する1、2、3、4、5、7、及び10μg/mL濃度についてのBSHE、FSHE、及びCBD単離物の更なるグラフを図示し、図6Bは、子宮内膜オルガノイドについてのCBDAに対する応答のグラフ描写を図示する。
図6B】子宮内膜オルガノイドに対する1、2、3、4、5、7、及び10μg/mL濃度についてのBSHE、FSHE、及びCBD単離物の更なるグラフを図示し、図6Bは、子宮内膜オルガノイドについてのCBDAに対する応答のグラフ描写を図示する。
図7】患者由来の子宮内膜がん細胞をマウスに注射した、マウス内の子宮内膜がん腫瘍体積のグラフィカルチャートを図示する。データは、7日目から21日目までの腫瘍体積の変化を示し、腫瘍体積に対する様々な大麻抽出物の治療有効性を図示する。
図8A】大麻抽出物で治療されたマウス組織に対して実施された組織病理学の画像を図示し、大麻抽出物による治療行為が正常な生殖器官細胞を損傷しないことを図示している。
図8B】大麻抽出物で治療されたマウス組織に対して実施された組織病理学の画像を図示し、大麻抽出物による治療行為が正常な生殖器官細胞を損傷しないことを図示している。
図9】大麻抽出物の治療有効性に対するpHの影響を示すチャートを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0084】
様々な実施形態が、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照して以下でより完全に説明される。しかしながら、実施形態は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、実施形態の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。とりわけ、様々な実施形態は、非がん性婦人科疾患のうちの1つ以上の苦痛を治療する際の治療薬、治療方法、治療の使用であり得る。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0085】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それが使用されている数の数値の±5%を意味する。したがって、約50%は、45%~55%の範囲を意味し、約20mgは、19mg~21mgを含む範囲を意味し、他も同様である。
【0086】
「投与すること」は、治療薬と併せて使用されるとき、治療薬を対象に直接投与し、それによって、薬剤が標的に正の影響を及ぼすことを意味する。治療薬物又は化合物を「投与すること」は、例えば、注射、経口投与、局所投与、粘膜投与、及び/又は他の公知の技術と組み合わせて達成され得る。投与技術は、加熱、放射線、化学療法、超音波、及び送達剤の使用を更に含み得る。好ましくは、本開示では、投与は、経口、口腔粘膜/舌下、及び/又は膣内剤形を介する。そのような膣内形態は、典型的には担体とともに膣内に挿入されることが意図され、活性成分は、膣粘膜を通過する。活性成分はまた、嚥下される経口形態で提供され得る。別の経口形態は、口腔粘膜適用であり、これは、多くの場合、舌下適用として提供され、これは、最終的に嚥下されて胃に入るが、口の中、例えば、舌の下に保持されることが意図され、有効成分は、嚥下される前に口腔粘膜を通過するか、又は唾液作用若しくは物質の能動的嚥下若しくはその両方によって胃の中に通過する。
【0087】
本明細書で使用される場合、「ブロードスペクトル麻抽出物」(BSHE)は、抽出物を精製するために少なくともいくつかの精製を受けた大麻属の植物に由来する組成物である。典型的には、BSHEは、60~99.9%のCBDと、0.1~40%のΔ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの追加のカンナビノイドと、を含む。
【0088】
本明細書で使用される場合、「大麻抽出物」(CE)及び「CBDを含む大麻抽出物」は、大麻属の植物(麻を含む)に由来する組成物を意味する。典型的には、大麻抽出物は、カンナビジオール(CBD)を含有し、より典型的には、CBDと、0.1~40%のΔ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加のカンナビノイドとの両方を含む。本発明による大麻抽出物は、典型的には、カンナビジオールが濃縮されており、1~99.9%のCBD、好ましくは20~99.9%のCBD、より好ましくは50~99.9%のCBD、更により好ましくは70~99.9%のCBD、最も好ましくは90~99.9%のCBDを含み得る。本明細書に説明されるとき、大麻抽出物のパーセントは、前文のように、総カンナビノイドが大麻抽出物の50~99.9重量%、又は70~99重量%若しくは90~99重量%を構成することを意味する。フルスペクトル麻抽出物、ブロードスペクトル麻抽出物、CBD単離物、及びCBDA単離物は、CEの非限定的な例として、本明細書で利用される大麻抽出物の形態である。本出願を通して、CBDという用語は、多くの場合、特定の量のCBDを含有するCE生成物を意味するように、CEと互換的に使用されることが多いが、一方で、他の場合には、読者には明らかであるが、CBDは、CBD単離物を指し、これは、CEがCBDを除去及び単離するように処理され、CEの実質的に全ての他の成分を除去したことを意味する。
【0089】
本明細書で使用される場合、「同時投与」とは、大麻抽出物及び第2の治療剤を、72時間以下の間隔で、好ましくは48時間以下の間隔で、より好ましくは24時間以下の間隔で、例えば、12時間以下の間隔で、6時間以下の間隔で、4時間以下の間隔で、3時間以下の間隔で、2時間以下の間隔で、1時間以下の間隔で、30分以下の間隔で、又は同時に投与することを意味する。
【0090】
本明細書で使用される場合、「同時期に」とは、第1の製剤及び第2の製剤が、72時間以下の間隔で、好ましくは48時間以下の間隔で、より好ましくは24時間以下の間隔で、例えば、12時間以下の間隔で、6時間以下の間隔で、4時間以下の間隔で、3時間以下の間隔で、2時間以下の間隔で、1時間以下の間隔で、30分以下の間隔で、又は同時に患者に投与されることを意味する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「フルスペクトル麻抽出物」(FSHE)は、CBDと、0を上回る、好ましくは0.01~5%、最も好ましくは0.01%~0.3%の量のTHCと、を含有する、大麻属の植物に由来する組成物である。FSHEは、追加のカンナビノイドを含み得、CEの重量の少なくとも50~99%のCBD、少なくとも0.01%~10%の全てのTHC(Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC)、及び50%~99%の総カンナビノイドを含む生成物が得られる。
【0092】
本出願の目的のために、「麻」は、乾燥重量で0.3%以下のΔ-THC含量を有する大麻植物である。
【0093】
「薬学的に許容される」とは、限定されるものではないが、担体、希釈剤、アジュバント、又は賦形剤を含む成分が、製剤の他の成分と適合性でなければならず、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、特定の成分を特定の量で含む生成物と、特定の成分の特定の量の組み合わせから直接的又は間接的に生じる任意の生成物とを包含することが意図される。「医薬組成物」に関するそのような用語は、担体を構成する活性成分及び不活性成分を含む生成物と、成分のうちの任意の2つ以上の組み合わせ、錯体形成、若しくは凝集から、又は成分の1つ以上の解離から、又は成分のうちの1つ以上の他のタイプの反応若しくは相互作用から、直接的又は間接的に結果的に生じる任意の生成物とを包含することが意図される。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物及び薬学的に許容されるキャリアを混合することによって作製される任意の組成物を包含する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「薬剤」、「活性剤」、「治療剤」、又は「治療薬」という用語は、患者の望ましくない病気又は疾患を治療する、戦う、寛解させる、防止する、又は改善するために利用される化合物又は組成物を意味する。更に、「薬剤」、「活性剤」、「治療剤」、又は「治療薬」という用語は、本開示に説明されるような大麻抽出物及び/又は追加の薬剤を包含する。
【0096】
組成物の「治療有効量」又は「有効量」は、所望の効果を達成するために、すなわち、細胞機能の活性化、遊走、増殖、改変を阻害、遮断、又は逆転させ、細胞の正常な機能を保存するために計算された所定の量である。本明細書に説明される方法によって企図される活性は、必要に応じて、内科治療及び/又は予防的治療の両方を含み、本発明の組成物は、説明される病気のいずれかにおける改善を提供するために使用され得る。本明細書に説明される組成物は、症状を呈さないが特定の障害を発症するリスクがあり得る健常な対象又は個体に投与され得ることも企図される。治療及び/又は予防効果を得るために本発明に従って投与される化合物の特定の用量は、当然ながら、例えば、投与される化合物、投与経路、及び治療される病気を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。しかしながら、選択された投与量範囲は、本発明の範囲を限定することを決して意図しないことが理解されるであろう。本発明の化合物の治療有効量は、典型的には、生理学的に許容される賦形剤組成物中で投与されるときに、治療応答を達成するために有効な全身濃度又は組織中の局所濃度を達成するのに十分であるような量である。具体的には、治療薬は、非がん性婦人科疾患を治療するのに有効であるものとする。
【0097】
本明細書で使用される「治療する」、「治療された」、又は「治療すること」という用語は、治療行為及び予防的又は防止的手段の両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的病気、障害、若しくは疾患を防止若しくは減速(軽減)すること、又は有益な若しくは所望の臨床結果を得ることである。本開示の目的のために、有益な又は所望の結果としては、限定されるものではないが、症状の緩和、腫瘍のサイズの低減などの、病気、障害、又は疾患の程度の減退、病気、障害、又は疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、病気、障害、又は疾患の発症の遅延又は進行の緩徐化、病気、障害、又は疾患状態の改善、及び検出可能であるか若しくは検出不能であるかにかかわらず、寛解(部分的であるか若しくは総合的であるかにかかわらず)、又は病気、障害、若しくは疾患の増強若しくは改善が挙げられる。
【0098】
子宮内膜症と子宮内膜がん(Endometrial cancer、EC)との間の関連は、疫学的、生物学的、及び分子的研究によって間接的に示唆されており、最近の研究は、重複についての遺伝的基礎を示唆している。研究は、約50%の子宮内膜症遺伝率及び27%のEC遺伝率を示した。公開されたSNPの証拠を検討することは、遺伝的相関分析において子宮内膜症と子宮内膜がんとの間の遺伝的重複を特定し、偶然に予想され得るよりも多くのSNPが同じ方向の効果に関連付けられる。疾患横断的メタアナリシスでは、調整後、13個のSNPが複製に関与しているようであった。染色体9p23上に位置するSNP rs2475335は、両方の疾患と最も顕著に関連していた(P=4.9×10-8)。このSNPは、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体D型(protein tyrosine phosphatase receptor type D、PTPRD)遺伝子内に収容される。PTPRD欠失及び突然変異は子宮内膜腫瘍において見出されている。加えて、PTPRDは、子宮内膜症及び子宮内膜がんの両方に関連すると特定されているSTAT3経路に対して効果を発揮する。更に、子宮内膜症及びECは、より高いレベルのエストロゲン曝露と関連付けられ、経口避妊薬及びプロゲステロン含有ホルモン療法の使用に関連するリスクが減少する。
【0099】
子宮内膜症は、子宮内層の組織に類似した組織が子宮外で増殖する有痛性障害である。子宮内膜症は、生殖年齢女性の6~10%及び不妊女性の35~50%に影響を及ぼす。子宮内膜症及び子宮内膜がんは、より高いレベルのエストロゲン曝露と関連付けられ、経口避妊薬及びプロゲステロン含有ホルモン療法の使用に関連するリスクが減少する。子宮内膜症は、最も一般的には、卵巣、ファロピウス管、及び膣を含む骨盤内を覆う組織に関与する。子宮内膜症では、子宮内膜組織は、正常な子宮細胞として作用し、それらは肥厚して崩壊し、したがって、各月経周期で出血する。しかしながら、多くの場合、組織が身体から出る道がない場合、組織が捕捉される。子宮内膜症が卵巣に関与する場合、子宮内膜腫と呼ばれる嚢胞が形成され得る。重要な懸念は、刺激の形成、並びに瘢痕組織及び癒着の発達であり、これらは、骨盤組織及び器官を一緒に粘着させ得る線維組織の帯である。これは、結果的に非常に一般的な副作用をもたらし、副作用は、疼痛であり、時には、特に月経期間中に重度である。更に、いくつかの場合、影響は、生殖能力の問題を引き起こす。
【0100】
子宮内膜症の原因は確かではないが、いくつかの考えられる説明としては、子宮内膜細胞が体外ではなくファロピウス管を通って逆流する、逆行性月経、誘導理論として知られているものにおいて、ホルモン若しくは免疫因子が腹膜細胞の形質転換を促進する、腹膜細胞の形質転換、ホルモンが思春期中に特定の胚細胞を子宮内膜様細胞に形質転換する、胚細胞形質転換、外科的処置後に生じる外科的瘢痕移植、リンパ系の血管を介した子宮内膜細胞輸送、又は免疫系障害からのものが挙げられる。
【0101】
子宮内膜症の治療は限られており、最も一般的な治療としては、鎮痛剤、ホルモン療法、及び外科的処置が挙げられる。ホルモン療法治療としては、様々な形態のホルモン避妊薬、ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin-releasing hormone、Gn-RH)アゴニスト及びアンタゴニスト、プロゲスチン療法、並びにアロマターゼ阻害剤が挙げられる。避妊薬のホルモン療法は、月経出血を短くし、より軽度な期間を有することで、子宮内膜症の副作用のうちのいくつかを軽減しようとするものである。Gn-RH療法は、エストロゲンレベルを低下させ、子宮内膜細胞を収縮させ、本質的に人工閉経を引き起こすことを目的とする。プロゲスチン療法は、月経期間を停止させようとするものであり、子宮内避妊器具、避妊インプラント、又は注射によって達成され得る。最後に、アロマターゼ阻害剤は、上記の治療のうちのいくつかと同様に、体内のエストロゲンを低減する。これらは、単独で、又は互いに組み合わせて、若しくは追加の治療行為と組み合わせて使用され得る。
【0102】
外科的選択肢としては、最も保守的な選択肢として子宮内膜症インプラントの除去が挙げられるが、一方で、より積極的な外科的処置としては、子宮及び/又は卵巣の除去が挙げられる。したがって、治療の選択肢は、限定されたままである。更に、最も攻撃的な外科的選択肢を用いても、子宮内膜組織は、多くの場合、疼痛及び不快感を残し、それらを引き起こし続ける。ECとの類似点に基づいて、EC及び子宮内膜症の発症率は、治療の治療上の必要性に関連する。
【0103】
ECは、世界中で最も頻繁に診断される婦人科がんのうちの1つであり、その有病率は、過去20年間にわたって50%超増加している。子宮内膜がん(子宮内膜がん腫とも呼ばれる)は、子宮の内層(子宮内膜)の細胞で始まる。これは、子宮における最も一般的なタイプのがんである。子宮内膜がんは、顕微鏡下で細胞がどのように見えるかに基づいて異なるタイプに分類され得る。(これらは、組織学的タイプと呼ばれる。)それらとしては、腺がん(ほとんどの子宮内膜がんは、類内膜がんと呼ばれる腺がんの一種である[下記参照])、子宮がん肉腫又はCS、扁平上皮細胞がん、小細胞がん、移行上皮がん、及び漿液性がんが挙げられる。明細胞がん、粘液性腺がん、未分化がん、脱分化がん、及び漿液性腺がんは、あまり一般的ではないタイプの子宮内膜腺がんである。それらは、ほとんどのタイプの子宮内膜がんよりも速く増殖及び拡散する傾向がある。それらは、多くの場合、それらが診断される時点までに子宮外に広がっている。
【0104】
ほとんどの子宮内膜がんは、腺がんであり、類内膜がんは、圧倒的に最も一般的なタイプの腺がんである。類内膜がんは、腺細胞で始まり、多くは正常な子宮内層(子宮内膜)のように見える。これらのがんのうちのいくつかは、扁平上皮細胞(扁平上皮細胞は平坦で薄い細胞である)、及び腺細胞を有する。類内膜がんには多くの変種(又はサブタイプ)があり、腺がん(扁平分化を伴う)、腺棘細胞腫、腺扁平上皮(又は混合細胞)、分泌がん、繊毛がん、絨毛腺がんを含む。
【0105】
子宮内膜がんのグレードは、がん細胞が、正常で健常な子宮内膜に見られる腺のように見える腺にどの程度組織化されているかに基づく。より低いグレードのがん(グレード1及び2)では、がん細胞のより多くが腺を形成する。より高いグレードのがん(グレード3)では、がん細胞のより多くが脱組織化され、腺を形成しない。グレード1の腫瘍は、腺を形成するがん組織を95%以上有する。グレード2の腫瘍は、腺を形成するがん組織を50%~94%有する。グレード3の腫瘍は、腺を形成するがん組織を半分未満有する。グレード3のがんは、攻撃的である傾向があり(それらは速く増殖し、拡散する)、より低いグレードのがんよりも悪い見通しを有する。
【0106】
グレード1及び2の類内膜がんは、1型子宮内膜がんである。1型がんは、通常、あまり攻撃的ではなく、それらは、他の組織に急速に広がらない。1型子宮内膜がんは、過剰なエストロゲンによって引き起こされると考えられている。それらは、時に、子宮内膜における細胞の異常な過剰増殖である異型過形成から発症する。少数の子宮内膜がんは、2型子宮内膜がんである。2型がんは、子宮外で増殖及び拡散する可能性が高く、それらは、より悪い見通しを有する(1型がんよりも)。医師は、これらのがんをより積極的に治療する傾向がある。それらは、過剰なエストロゲンによって引き起こされるようには思われない。2型がんとしては、乳頭状漿液性がん、明細胞がん、未分化がん、及びグレード3類内膜がんなどの、1型ではない全ての子宮内膜がんが挙げられる。これらのがんは、正常な子宮内膜のように全く見えないため、低分化型又は高グレードと呼ばれる。子宮がん肉腫(Uterine carcinosarcoma、CS)は、子宮内膜で始まり、子宮内膜がん及び肉腫の両方の特徴を有する。(肉腫は、子宮の筋細胞で始まるがんである。)過去において、CSは、子宮肉腫と呼ばれる異なるタイプの子宮がんであると考えられていたが(以下を参照されたい)、現在、医師は、CSが、もはや、それが由来する細胞のようにはあまり見えないほど異常である(その低分化の)子宮内膜がんであると考えている。子宮CSは、2型子宮内膜がんである。CS腫瘍は、悪性混合中胚葉腫瘍又は悪性混合ミュラー腫瘍(malignant mixed mullerian tumor、MMMT)としても知られている。それらは、子宮がんの約3%を構成する。
【0107】
子宮内膜がんの増殖及び転移を駆動する主要なシグナル伝達経路の理解にもかかわらず、これらのシグナルを標的化する臨床試験は、予後不良が報告されている。子宮内膜がんの不均一な性質は、標的価された療法の失敗の主要な理由のうちの1つであると疑われている。ECは、典型的には、POLE変異を有する超変異症例、及びミスマッチ修復欠損(mismatch repair deficiency、dMMR)を有するマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability、MSI)表現型を保有する25~30%を含む、4つの分子サブタイプに分けられると理解されている。したがって、これらのサブタイプのうちのいくつかは、PD-1/PD-L1阻害剤、又は免疫チェックポイント阻害剤、及びペンブロリズマブ又はレンバチニブなどの他の分子で治療される。しかしながら、これらの分子は、第一選択化学療法剤と同様に、高い毒性プロファイルを有し、したがって、それらの使用と関連付けられた顕著な併存症を有する。更に、標的化されると、それらは、がんの不均一な性質を見落とすことがある。
【0108】
いくつかの場合、ECは、たとえあったとしてもほとんど症状を示さず、これは、多くのEC患者がより後期の段階のみで疾患を発見する主要な理由の1つである。しかしながら、他の患者については、ECの症状のうちのいくつかが、正常な生殖周期の症状によって、非がん性子宮内膜症によって、及び閉経期中に起こる症状によって覆い隠される。したがって、一部の女性は、交絡因子に起因して、ECの初期徴候を見逃す。しかしながら、他の患者では、ECは、一部分の患者が早期に疾患を検出することを可能にする異常な子宮出血を呈する。一旦検出されると、ECの処置は、ほとんど常に、化学療法及び/又は放射線療法と組み合わせられた、組織及び器官の外科的除去である。いくつかの場合、ECの早期検出は、がんが子宮のみに含まれるため、化学療法又は放射線療法の必要性を防止し得る。しかしながら、ECは、非常に悪性であり、子宮から移動した少数の見逃された細胞でさえ、罹患組織の増殖を可能にし、したがって、臓器の除去後の早期診断においてさえ化学療法の必要性の証拠を提供する。
【0109】
早期(ステージI及びIIのEC)、並びにステージIII及びIVのECの両方について、ECの第一選択治療は、ほとんど常に、子宮摘出及び両側卵管卵巣摘出を含む。ほとんどの場合、これに続いて化学療法を行う。化学療法の重大な副作用を考慮すると、ステージI及びIIの患者のごく一部分は、ステージIII及びIVの患者と比較して、化学療法の使用を省略又は低減し得る。化学療法は、実質的に常に、ステージIII又はステージIVのEC患者に与えられ、多くの場合、リスク及び見返りを最適化する目的で数回の治療が行われる。したがって、ステージIII及びIV ECでは、子宮内膜がん細胞は、多くの場合、既に子宮から移動しているため、器官及び腫瘍の除去に続いて、典型的には、転移性疾患を捕捉するための化学療法治療が行われる。しかしながら、化学療法剤は、それらの殺傷においていくらか無差別であり、したがって、顕著な二次的影響が患者に生じ、生活の質に対する影響につながることが周知である。実際、化学療法が、がんの治療に有効である場合であっても、化学療法の毒性効果は、多くの場合、時間が経つにつれて致命的になる。実質的に全ての場合において、化学療法は、1サイクルで行われ、これは、薬物又は薬物の組み合わせが、通常2~6週間の期間にわたって与えられ、次いで、休止期間が与えられ、その後、第2又はそれ以上の治療期間が続くことを意味する。子宮内膜がん治療に現在利用されている薬物としては、パクリタキセル、カルボプラチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ドセタキセル、及びカルボプラチン又はシスプラチンとパクリタキセルとの併用療法などが挙げられる。
【0110】
ありがたいことに、子宮内膜症は、子宮内膜がんに関連しているが、一方で、全身に転移せず、がんの無秩序な増殖特徴もない。したがって、化学療法剤は、子宮内膜症及び女性生殖系の他の非がん性疾患には適応がない。
【0111】
哺乳動物の身体、特に生殖系におけるECSの広範な存在を考慮して、子宮内膜がん細胞タンパク質発現に対するCBDを含む大麻抽出物(CE)の効果を調べた。プロテオミクスは、タンパク質の大規模研究であり、プロテオームは、調査中の試料によって産生されるタンパク質の全セットである。プロテオームは、細胞毎及び時間毎に異なることになる。したがって、治療済み細胞と比較した未治療細胞におけるタンパク質発現の比較は、どのタンパク質が子宮内膜がん細胞における発現を変化させ、どのタンパク質が同じままであるかに関する洞察を提供する。この知識を用いて、更に的を絞った研究を進めることができる。図1Aを参照すると、子宮内膜がん細胞(endometrial cancer cell、ECC)を、CBD(1μg/mL)を含むCEで治療するか、又は対照(ビヒクル)として未治療のままにした。治療後、タンパク質を試験細胞及び対照細胞から抽出し、液体クロマトグラフィー(liquid chromatography、LC)タンデム質量分析(MS/MS)による分析のために消化した。図1Bを参照すると、ベン図は、LC-MS/MS分析の結果を示し、これは、治療済み細胞が未治療細胞とは2,842個の異なるタンパク質を発現し、未治療細胞が治療済み細胞とは2,681個の異なるタンパク質を発現し、治療済み及び未治療の両方が3,747の共通タンパク質を発現したことを示している。明らかに、タンパク質発現の差異に基づいて、CBDを含むわずか1μg/mLのCEによる治療は、排他的に発現されるタンパク質及びもはや発現されないタンパク質に対して明らかな影響を有した。図1Cは、特定のタンパク質が未治療細胞及び治療済み細胞において発現された(又は発現されなかった)程度を比較する。
【0112】
図1Dを参照すると、治療済み及び未治療細胞で差次的に発現された数千のタンパク質のうち、上方制御された(例えば、治療済み細胞のみで)及び下方制御された(例えば、未治療細胞のみで)上位20が特定され、列挙されている。ここで図1Eを参照すると、様々な生理学的及び病態生理学的経路のシグナル伝達及び輸送に対する、CBDを有するCEによる治療の効果が示されている。一例として、内在性カンナビノイドニューロンシナプスと関連付けられたタンパク質は、未治療細胞で上方制御され、治療済み細胞で下方制御されることが示されている。最後に、図1Fを参照すると、子宮内膜がんを有する患者から採取した組織試料を選択的に染色して、CB1受容体発現を示した。図1Gは、CB2受容体発現を示すために選択的に染色された同様の組織試料である。
【0113】
上記の実験が行われるのとほぼ同時に、CBDを用いたCEに対する子宮内膜がんに由来するオルガノイドの応答も研究した。一般に、ECを有する患者を特定し、腫瘍細胞を収集した。EC腫瘍細胞を使用して患者由来オルガノイドを生成したが、その方法は以下の方法のセクションに説明される。名称が示唆するように、オルガノイドは、全てのそれらの複雑さにおいて器官を模倣する小型構造である。それらは、生検及び/又は切除された健常な組織若しくは腫瘍を介して収集された幹細胞に由来する。培養において、それらは、それらが由来する個々の患者の組織を模倣する三次元組織に自己組織化した。すなわち、オルガノイドは、それらが由来する個体と同じ遺伝的指令を有し、したがって、それらのヒト対応物と同一の突然変異、増殖、及び疾患進行を示す。オルガノイドは、分化した細胞型を有する器官を複製するように、又は関心対象の特定された細胞の選択された態様を発現するように作製され得る。臨床試験における高い失敗率と関連付けられた伝統的な細胞株モデルとは異なり、オルガノイドの応答は、精密かつ直接的にヒト応答に変換される。オルガノイドは、十分に確立されており、嚢胞性線維症、膵臓がん、糖尿病、及び他の疾患を治療することにブレークスルーをもたらし、医学研究を一変させた。単純化された例では、オルガノイドを個体の器官のクローンとして想定する。本質的に、それは、体外に存在する別個の患者の生きている増殖するアバターである。アバターは、腫瘍の増殖を模倣し、体内と同様にがんの治療に応答することになる。この個別化された複製識別子は、数日のうちに個別化された標的化治療の特定を可能にする。それは、患者が、無効な治療による時間の浪費及び毒性の危険を回避することを可能にする。
【0114】
子宮内膜細胞に由来する子宮内膜症ベースのオルガノイドに対する初期実験では、処置のための最低用量としてCBDを含む250μg/mLのBSHEを使用した。この投与量は、子宮内膜症オルガノイドを殺傷するのに100%有効であり、これは確かに予想外であった。その後の実験では、治療のための最低用量として150μg/mLのBSHEを使用した。再び、100μg/mLは、子宮内膜がんオルガノイドを殺傷するのに100%有効であった。その後、子宮内膜症オルガノイドを低用量のBSHEで治療し、試験された最低用量は50μg/mLであった。図2Aに見ることができるように、子宮内膜細胞から作成されたオルガノイドを、オルガノイドが増殖する増殖培地である培地のみで、BSHEを他のオルガノイドに送達するために使用される単なる溶媒であるビヒクルで、次いで、ビヒクルで送達される50μg/mL、100μg/mL、150μg/mL、及び250μg/mLの各濃度の試験投与量で、治療した。図2B(及び図2A)にあり得るように、ビヒクル及び培地のみがほぼ同数のオルガノイドを示す。しかし、50pg/mLという低い濃度で、BSHEは、ECオルガノイドを完全に殺傷することができた。100μg/mL及び150μg/mLのより高い用量のBSHEもまた、ECオルガノイドの100%の殺傷率を示した。図2の試験の各々は、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)であったビヒクル単独を含めて、少なくとも3連で実施した。
【0115】
比較のために、オルガノイドを治療した用量を、最低用量について、それぞれ、1日500mg及び1000mgのヒト等価用量に換算する。現在処方されているCBD単離物の投与量(米国において)は、5~50mgのCBD/kgである。65~85kg(約143ポンド~約187ポンド)の平均体重では、325~4250mg/日の用量のCBDを摂取する。したがって、我々の実際の試験は、完全にこれらのガイドラインの範囲内である。本発明者らは、ヒト用量範囲の上限が、この場合(子宮内膜症)においても十分に適切であると考え、これは、100μg/mL以上で実施された実験を再現することになる。特に、そのようなCBD用量の代替として、NSAID若しくは他の鎮痛剤、外科的除去、又は他のホルモン療法があり、これらのいずれも長期的な成功を示していない。最後に、いくつかの新たに主張された治療は、低い成功率、及びそれらの使用を制限する顕著な副作用を有する。
【0116】
上記で詳述された実験の直後に、31歳の白人女性が本発明者らのところに来た。彼女は、最初に子宮内膜症と診断され、後に、顕著な疼痛及び不快感を呈した後に子宮内膜がんと診断された。彼女は、既に、子宮全摘及び両側卵管卵巣摘出を受け、続いて、5ラウンドの化学療法を受けていた。化学療法の最初の5ラウンドの各々は、パクリタキセル/カルボプラチンとの併用化学療法であった。治療は最終的に無効であり、彼女は、以前のラウンドが無効であったことに起因して、これらの薬剤を用いた6回目の化学療法に進めなかった。その後、彼女は、アベマシクリブ、続いて、アテゾリズマブで治療されたが、これも失敗し、結果的に、重度の有害作用をもたらした。彼女の化学療法に対する応答の欠如の結果として、彼女は、化学療法抵抗性子宮内膜がんを有すると考えられた。
【0117】
彼女が本発明者らのところに来たとき、彼女の子宮内膜がんは、ステージIVであり、がんの化学療法抵抗性及び攻撃的性質に起因して、彼女は、その身体全体にわたって広範な転移性疾患も有していた。罹患エリアは、彼女の脳、乳房、心臓、胃、肺、腹膜、及びリンパ系を含んでいた。PETスキャン及び他の技術を使用して、11×7mm~29×10mmの範囲の転移リンパ節のサイズを決定した。以下の表1及び2を参照されたい。上記で詳述された実験を考慮して、オルガノイドを患者の子宮内膜がんから作製して、彼女の化学療法抵抗性を考慮して代替化学療法(7回の化学療法に失敗した後)に対する彼女の応答、及び試験されていたBSHEに対する彼女の応答を評価した。彼女のオルガノイドは、ゲムシタビン/カペシタビン(gemcitabine/capecitabine、GemCap)に対する部分的応答、彼女がまだ提供されていない併用化学療法、及びBSHEに対する顕著な応答を示した。したがって、彼女は、口腔粘膜送達を介した1日2回の30mgのBSHE、及び膣内送達を介した1日1回の75mgのFSHEの投与計画と組み合わせた標準プロトコルGemCap治療を開始した。したがって、彼女のCBDを含む大麻抽出物の総1日用量は、135mgであった。12週間の治療後、フォローアップPETスキャンは、驚くべき結果を報告し、これは、表1及び2に詳述される。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
驚くべきことに、放射線科は、治療に対する完全な代謝応答を結論付けた。特に、転移のサイズの顕著な低減が記録された。更に、頸部、胸部、腹部、骨盤、又は鼠径部内には、転移性アデノパシーの新たな部位を示唆する新たな拡大又は代謝亢進結節は存在しなかった。また、診断用CTにおいて、新たな代謝亢進肺転移はなく、リンパ管炎もなく、胸水又は心嚢水もなく、固形腹部器官における異常な代謝もなく、固形腹部器官又は転移性の疾患の証拠もなかった。以前に実証された骨盤領域における悪性腹水は、ほぼ完全に消失し、腹膜沈着物において完全な代謝応答があった。例えば、腹膜は、治療前に22×10mmの最大沈着物のうちの1つを有し、SUV最大値は7.2であり、処置後には、もはやPETによって測定不能であり、新たな代謝亢進腹膜沈着物はなかった。加えて、脳に異常な代謝もなく、低用量非造影CTで疑わしい病変もなく、骨の転移を示唆する骨における異常な代謝もなかった。更に、彼女の子宮内膜症もまた、治癒し、彼女のその後のCTスキャンの時点で制御されていた。
【0121】
上記の特許に由来するオルガノイドに対する試験薬剤からの追加の結果が表3に示される。IC50値をそのような試験から計算した。この値は、オルガノイドの50%が治療に起因して殺傷された投与量を示す。Cmax値、表に見ることができるように、残りの薬剤は、IC50値を決定することができるほど十分な阻害効果を有していなかったため、数個のIC50値のみを計算することができた。言い換えると、それらは、患者のオルガノイドを殺傷するのに有効ではなかった。
【0122】
【表3】
【0123】
試験された薬剤のうちの数個は、オルガノイド試料に対してわずかに有効であったが、IC50数は、Cmaxを下回ったままであり、これらを治療用途のための不十分な選択として特定した。注目すべきことに、表3に列挙された薬剤のいずれも、患者を治療するために使用した大麻抽出物ほど有効ではなかった。
【0124】
上記に列挙された薬剤に加えて、いくつかの他の薬物を試験して、それらがオルガノイド増殖に影響を及ぼすかどうかを確認した。その結果が表4に示される。この場合、結果は、対照と比較して死滅した細胞の%として示され、注目すべきことに、パクリタキセルは、完全に無効であることが示され、したがって、39%の細胞死は、治療を成功させるために投与量を大幅に増加させる必要性を示す。これは、パクリタキセルによる治療に対する患者の実際の応答の欠如と一致する。
【0125】
【表4】
【0126】
患者は、130mg/日のGemCap及びBSHEの組み合わせで治療された後にがんの寛解を達成したが、彼女は、多数回の化学療法に起因する広範な器官損傷を有した。彼女は、最終的に器官損傷に起因する合併症で死亡したが、彼女の寿命は約1年延長されたと推定される。彼女の死亡時に、彼女は、がん性増殖がなかった。したがって、化学療法とCBDを含む大麻抽出物との併用療法が腫瘍増殖の低減に非常に有効であることが証明されたにもかかわらず、化学療法からの既存の損傷が致命的であることが証明された。化学療法のより早期のラウンドの間にCBDを含む大麻抽出物で彼女が治療されていたら、彼女がより早期に寛解を達成できたか否かは分からない。もしそうであった場合、彼女は、数回の不成功の化学療法に供されなかったであろう。しかしながら、本発明者らは、彼女の最後の治療が、化学療法と、CBDを有する大麻抽出物との併用療法で有効であることが証明されたことを確認することができる。
【0127】
本発明者らの初期実験の成功及び生きている患者をCBDを含む大麻抽出物で治療したときに達成された結果に起因して、本発明者らは、追加の研究を精力的に進めた。本発明者らの初期実験は、約50μg/mLのCBD投与量を有するBSHEを使用してオルガノイド数の完全な低下を示したため、本発明者らは、オルガノイドがより低い濃度のCEにどのように応答するかを見ることに興味を持った。子宮内膜症及び子宮内膜がんの類似性及び遺伝子プロファイルと、タンパク質シグナル伝達における類似の応答並びにCB1及びCB2受容体の応答とを理由に、子宮内膜がんベースのオルガノイド及び子宮内膜症ベースのオルガノイドの両方を使用して、CBDを含むCE治療の有効性を示す。
【0128】
本発明者らは、異なるグレードの子宮内膜がんを有する多数の患者から組織試料を得ることができた。グレード1の腫瘍は、5%未満の固形非腺性、非扁平上皮性増殖を有すると説明された。言い換えると、グレード1の腫瘍の大部分は、腺及び/又は扁平上皮細胞のようなものを有するものとして提示された。対照的に、グレード2の腫瘍は、6%~50%の固形、非腺性、非扁平上皮性増殖を示したが、グレード3の腫瘍は、50%を超える固形、非腺性、非扁平上皮性増殖を呈した。何人かの参加者及び異なるグレードの腫瘍によって、本発明者らは、種々の用量のBSHEで多数のオルガノイドの増殖を試験することができた。オルガノイドを作成するための方法及び実験プロトコルは、以下の方法のセクションに説明されている。
【0129】
このセットの実験では、グレード1及びグレード3の患者由来試料の各々の6つの異なるセットがあり、グレード2の患者由来試料の少なくとも9つの異なるセットを、2、3、4、及び5μg/mLのBSHEを試験するために調製した。代表的な結果を、図3A図3B、及び図5Aにおけるグラフ化のために選択した。図3Aを参照すると、グレード1の子宮内膜がん試料を用いた実験の結果が、ビヒクル中で観察された平均オルガノイド数と比較した平均オルガノイド数の減少パーセントとして示されている。患者1A、4A、5A、及び6Aのデータが示される。各場合において、オルガノイド増殖は、2μg/mLという低用量で阻害され、患者1からの細胞が、この低用量で最も感受性が高く、それにより、オルガノイド数が50%を超えて減少した。残りの患者については、約3μg/mL~約4μg/mLで50%の減少が生じた。5μg/mLでは、オルガノイド形成は、少なくとも約80%阻害された。図3Bを参照すると、グレード2のオルガノイド数は、ほとんどのグレード2の組織が約3μg/mL~4μg/mLで平均オルガノイド数の50%減少を示したことを除いて、同様のパターンに従った。全ての試料は、5μg/mLで平均オルガノイド数の約80%の減少を示した。図5Aを参照すると、驚くべきことに、グレード3の子宮内膜がん腫瘍に由来する全6セットの試料は、3μg/mLという低い値で平均オルガノイド数の50%超の減少を示し、5μg/mLで100%の減少に近づいた。腫瘍試料の各グレード内で、BSHEによる治療に対する個々の応答は、様々であった。それにもかかわらず、それらは、全て、投与スペクトルの下端で応答し、ほとんどの場合、非常に良好であった。
【0130】
同時に、患者由来の試料を、3、5、7、及び10μg/mLのBSHEに対する応答についても試験した。図4Aを参照すると、グレード1の組織の代表的な試料は、患者2Bからの細胞を除いて、大部分が、3μg/mL~5μg/mLのオルガノイドの平均数に対して約50%の減少を再び示した。しかしながら、7pμ/mLのBSHEによって、全てのグレード1の患者由来の試料は、患者2Bであってもオルガノイド数の完全な阻害を示した。図4Bを参照すると、驚くべきことに、このセットにおけるグレード2の試料は、3μg/mLのBSHEによって影響され、それにより、示された代表的な試料のうち、全4つが、平均オルガノイド数において約50%以上の減少を有した。再び、5μg/mLで応答は80%を超える減少であり、7μg/mLのBSHEではオルガノイド形成が100%阻害された。図5Bを参照すると、このセットにおけるグレード3の患者由来の試料もまた、驚くべきことに、低用量のBSHEに対して感受性が高く、全ての患者試料について平均オルガノイド数の50%減少は、3μg/mLを下回っていた。5μg/mLの投与量のBSHEは、再び、平均オルガノイド数の80%を超える減少を示し、7μg/mLではオルガノイドはなかった。
【0131】
したがって、図3A図3B図4A図4B図5A、及び図5Bに基づいて、グレード1、2、及び3のECからのオルガノイドは、2μg/mLという低い濃度、各場合、7μg/mLという低い濃度で、ビヒクルと比較してオルガノイドの平均数の劇的な低減を示すことができた。したがって、規定濃度のCBDでCBDを含む大麻抽出物の適用は、ECからの生存患者由来オルガノイドの数を効果的に減少させる。データは、既知の量のCBDを有する所与の用量の大麻抽出物が、子宮内膜がんオルガノイド増殖を低減するのに有効であることを明らかにしている。
【0132】
子宮内膜がんオルガノイドの50%がBSHEの存在下で形成を阻害される範囲を狭めた後、次いで、本発明者らは、CBEを含む他の大麻抽出物に注目して、がん性オルガノイド形成の阻害におけるそれらの有効性を決定した。したがって、全ての以前の研究の基礎であったブロードスペクトル麻抽出物(BSHE)を再試験することに加えて、本発明者らは、典型的には、0.3%未満のΔ-THCを含有するフルスペクトル麻抽出物(FSHE)、天然由来の単離されたCBDである単離されたCBD、及び最後にCBDの前駆体である単離されたCBDAも試験した。次いで、これらの大麻抽出物を、子宮内膜ベースのオルガノイドに対して試験し、これは、子宮内膜がんベースのオルガノイド及び子宮内膜症ベースのオルガノイドの両方において、異なる細胞にわたる有効性を確認した。
【0133】
図6Aは、BSHE、FSHE、及びCBD単離物で治療した後の0、1、2、3、4、5、7、及び10μg/mLにおける子宮内膜症ベースのオルガノイドに対する生存率%の試験を図示する。ここでのデータは、驚くべきことに、オルガノイドの各々が、CBD単離物については5μg/mLという低用量で、BSHE及びCBD単離物の両方については7μg/mLで、最後に図6Aで試験された化合物の全3つについては10μg/mLで完全に治療されることを示す。このデータは、子宮内膜がんオルガノイドに対して試験した全ての以前の研究で見られた結果と一致する。
【0134】
次いで、図6Bは、CBDA単離物を用いて同じ子宮内膜ベースのオルガノイドを試験する。ここで、10%を下回る生存率に達するためには、わずかに高い濃度が必要であった。10%未満の生存率は、死滅細胞及びマトリゲルからの残留シグナル伝達に起因して、これらの実験において95~100%の細胞死と考えられる。本発明者らは、15μg/mLで始まる50%弱の生存率を確認し、次いで、25μg/mLで10%を下回る生存率まで急速に減少し、50μg/mLで完全に消失した。しかしながら、これらの研究は、CBDを含むCEの有効性が、子宮内膜がんの異なるグレードにわたって、また子宮内膜症ベースのオルガノイドに対しても保存されたことを確認する。
【0135】
CBDを含む大麻抽出物の効果に関する更なる本発明者らの研究のために、本発明者らは、マウスにおける子宮内膜がん腫瘍体積を調べた。マウス研究は、細胞ベースの適用を行い、全動物系におけるそれらの有効性を確認するのに有用である。更に、マウスは、薬物の全身送達の試験を可能にする。図7は、30mg/kgの4つの異なるCBDタイプの投与による21日間にわたる試験の結果を図示する。マウス試験は、以下の方法のセクションのプロトコルに従って実施した。
【0136】
一般に、子宮内膜がんについてのオルガノイド研究に参加した同じ患者からのEC幹細胞をマウスに注射し、増殖させた。腫瘍が特定のサイズに達した後、マウスに抽出物送達ビヒクル又は特定の大麻抽出物のいずれかを注射した(3回/週)。一定時間経過後、腫瘍サイズを測定した。患者由来異種移植の方法論及び実験プロトコルに関する詳細は、方法のセクションに提供される。
【0137】
図7を参照すると、ビヒクル、BSHE、FSHE、CBD単離物、及びCBDAの各々について、腫瘍体積の%変化に対して治療日数がプロットされている。%変化は、治療0日目の開始平均腫瘍体積と比較した、3匹のマウスの腫瘍体積から得た平均数である。変化は、陽性(腫瘍のサイズが増加する)又は陰性(腫瘍のサイズが減少する)のいずれかであり得る。予想どおり、ビヒクル(治療なし対照)は、21日間にわたってサイズが連続的に増加し、治療を開始した日からほぼ150%増加した。対照的に、CBDを含む大麻抽出物で治療されたマウスにおける腫瘍は、サイズが減少した。したがって、最低でも、本発明者らは、CBDを含む大麻抽出物の全身送達が子宮内膜がんを治療するために使用され得ることを示した。これは、CBDを含む様々な大麻抽出物の生物学的利用能を確認するため、重要な検証である。
【0138】
しかしながら、CBDを含む様々な大麻抽出物の送達の成功は、腫瘍体積の観察された変化によって検証される。例えば、治療(すなわち、約30mg/kg抽出物の3回用量)の1週間後、全ての腫瘍平均は、サイズの初期増加を示す。しかしながら、10日目までに、大部分の平均腫瘍体積が減少し始め、CBDAで治療されたマウスの腫瘍は、3日間にわたって、30%をわずかに超える増加から30%を超える減少までの最大の減少を示し、わずか3日間で60%を超える全体的な減少を示した。BSHE及びFSHEで治療されたマウスは、平均腫瘍体積の増加から平均腫瘍体積の減少への同様の切り替えを示したが、CBDAで観察されたものほど劇的ではなかった。興味深いことに、CBD単離物で治療されたマウスにおける腫瘍は、他の大麻抽出物で治療されたマウスにおける腫瘍ほど応答性ではなく、これは、CBDAがCBDの前駆体であるため、特に驚くべきことである。2週間以内(14日-合計6回用量)に、大部分の腫瘍は、CBDで治療されたマウスにおけるものを除いて、それらの出発サイズと比較して体積が少なくとも50%減少し、これは、50%未満であったが、平均腫瘍体積は、依然として減少していた。対照的に、CBDAで治療されたマウスは、開始腫瘍体積平均と比較して70%の腫瘍体積の平均減少を示した。21日目までに、わずか3週間の治療、合計9回用量で、治療群の各々における平均腫瘍体積が少なくとも50%減少し、CBDAで治療された群は100%の消失に近づいた。更により驚くべきことは、治療せずに放置した場合、平均腫瘍体積が150%増加よりわずかに少なかったことである。したがって、CBDを含む大麻抽出物は、子宮内膜腫瘍体積が増加するのを防止したのみならず、腫瘍体積を、場合によっては、ほぼ完全に逆転させた。これらの結果は、オルガノイド実験において何が観察されたか、及びCEで治療されたヒト患者において何が観察されたかを確認する。
【0139】
注目すべきことに、マウスモデル実験において使用されるCBDを含む大麻抽出物の濃度は、ヒト患者又はマウスに投与するための治療用量と考えられる濃度の下限にある。例えば、マウスに与えられた30mg/kgは、平均的なヒト女性について約170mgに変換される。CBD単離物は、現在、米国で1日5~50mg/kgの濃度で処方されていることを想起されたい。本発明者らは、マウスを治療するために意図的に低用量を使用して、データをゼロにしようとするのではなく、マウスに投与される用量の2倍、3倍、又はそれ以上を使用することによって、これらの低用量のCBDを含む様々な大麻抽出物の腫瘍体積に対する経時的な影響を示し、それらの用量の各々は、適切なヒト等価用量である。更に、より少ない投与であっても、治療の3週間以内に、試料のうちの実質的に全て、特に、CBDAで治療された試料が、ゼロに向かって進行する腫瘍体積を有した。したがって、マウスで使用された投与量をオルガノイドに適用された投与量と比較すると、本発明者らは、マウスにおける各試料がオルガノイドデータからの有効性を保持していたことを確認した。言い換えると、同じ患者から得られた子宮内膜がん細胞は、オルガノイド形態及び患者由来異種移植形態の両方において、CBDを含む大麻抽出物に対して応答性であった。したがって、CBDを含むより高用量の大麻抽出物を投与することは、マウスモデルにおいて腫瘍体積のより大きな低減をもたらすことになる。これらの実験を総合すると、CBDを含む大麻抽出物を投与することは、子宮内膜がん腫瘍の体積を大幅に減少させるのに有効であり、これは、本発明者らのマウスモデルにおいて実証されているように、子宮内膜がん腫瘍の増殖を遅らせるのみならず、腫瘍細胞を一緒に根絶し得ることが非常に明らかである。同様に、子宮内膜症及びNCGDにおける効力は、これらの研究によって確認される。したがって、子宮内膜症などのNCGDを治療するための新しい方法論が提供される。
【0140】
更に、本発明者らは、CBDを含む大麻抽出物の特定の適用によって、経口、口腔粘膜、膣粘膜、又はECを治療し、腫瘍サイズを低減するための他の投与のうちのいずれによっても、婦人科組織が標的化され得ることを示した。婦人科組織に対する標的化されたアプローチのため、当業者は、特定の治療剤が、膣粘膜を通過することができ、膣壁上の組織のみならず、非限定的な組織として子宮、頸部、卵巣などを含む婦人科管の全体を含む膣壁に隣接する組織の両方に接触することができることを認識することになる。実際、これらの組織は一般的に接続されているが、膣への適用は、治療薬が子宮又は卵巣にも移動して影響を与えることを常に確保するわけではない。しかしながら、図1E及び図1Fに図示されるように、女性の生殖器官には豊富な内在性カンナビノイド受容体が存在し、そのような組織への投与されたカンナビノイドの可能な治療的影響を可能にする。更に、カンナビノイドの膣内送達は、結果的に、鼠径リンパ節を介した取り込みをもたらし、生殖器官からの更なる全身取り込みにつながり得る。
【0141】
また、CE組成物が周囲及び他の健常な細胞に著しい損傷を与えることなく患者を治療することができることも非常に重要である。これは、本明細書に詳述されるCBDを含むCEを用いる、本明細書に詳述される非がん性疾患を治療する場合と同様に、がん患者に化学療法を投与するときにも同様に当てはまる。
【0142】
本発明者らの研究で使用したものなどの大麻抽出物は、患者由来異種移植実験で使用されたマウスの組織を損傷せず、又はそれに悪影響を及ぼさなかった。例えば、図8は、CBDを含む大麻抽出物で治療されたマウスから採取された組織学的組織試料と健常なマウス組織とを比較している。図8Aは、卵巣及びファロピウス管からの未治療及び治療済み試料を示す。化学療法は、卵母細胞及び卵胞に悪影響を及ぼすことが知られている。ここで、治療されたマウスは、両方とも健常である成熟卵母細胞及び卵胞を有する。同様に、健常な上皮組織もまた、化学療法によって損傷を受けることが知られており、多くの場合、致命的であり得る重度の器官/器官系損傷につながる。マウスファロピウス管中の未治療上皮組織と治療済み上皮組織との比較において、両方とも健常であるように見える。同様に、治療済み及び未治療マウスの子宮、膣、及び肝臓からの組織が図8Bで比較される。肝臓は、特に、化学療法によって損傷を受けたときを示している。図8Bに見ることができるように、肝臓試料は、実質的に同一である。これは、高用量の化学療法による治療が、時間をかけて与えられた場合、無差別的であり、これらの細胞を損傷するため、非常に重要である。したがって、低用量であろうとなかろうと、大麻抽出物と組み合わせた化学療法薬物の量の低減は、より大きい割合で腫瘍体積を減少させ、化学療法単独よりも大きい総パーセンテージまで腫瘍体積を低減させることによって患者の転帰を改善し得、そうでなくても、化学療法の使用から生じるような生殖器官及び肝臓の対応する健常な組織への損傷を引き起こさない。CBDは、非形質転換細胞において非毒性であり、生理学的パラメータ(心拍数、血圧、及び体温)、胃腸通過又は精神運動若しくは心理学的機能に影響を及ぼさない。CBDの慢性使用及び最大1500mg/日の用量は、ヒトにおいて十分に許容されるものとして確立されている。
【0143】
更に、CBD優勢大麻抽出物は、乱用又は依存の潜在性がない。これは、2018年11月にスイスのジュネーブで開催された世界保健機関の薬物依存に関する41st専門家委員会の間に最も強調された。会議の報告書の付録1は、「カンナビジオールは、国際薬物コントロール規則内でスケジュールされるべきではない。カンナビジオールは、大麻及び大麻樹脂中に見出されるが、精神活性特性を有しておらず、乱用の潜在性がなく、依存を生じる潜在性がない。それは、顕著な悪影響を有していない」と記載している。
【0144】
オルガノイドの生存率に対するCBDを含む大麻抽出物の有効性に対するpHの影響を見ることによって、更に興味深い観察が行われた。図9を参照すると、pH並びに各々10μg/mLにおけるBSHE及びCBD単離物治療の関数として生存オルガノイドの%が示されている。この一連の実験では、オルガノイドは、卵巣がん組織由来であった。興味深いことに、担体単独ではオルガノイドを破壊しなかったため、データは図示されていない。抽出物の天然pHでは、10μg/mLのBSHEの存在下におけるオルガノイド生成が約2%に制限され、同量のCBD単離物の存在下では約12%であった。しかしながら、pHの増加は、12及び14のpHで示されるように、効力の実質的な改善につながった。pHスケールのこの末端では、物質は、腐食性である傾向があり、14のpHでは非常に腐食性であり、治療用途に好適ではないアルカリ濃度である。実際、そのようなpHは、等張性ではなく、膣内適用にも適切ではない。膣は、細菌のバランスを維持するために必要である酸性pHを有する。しかしながら、pHの強い改変は、タンパク質の変性又は他の問題につながり得る。直ちに明らかになったことは、pHをより酸性に緩衝しようとする最初の試みが、わずかであっても、より悪い結果をもたらしたことである。実際に、この試験で調べられた2つの大麻抽出物の各々は、pHを10.5から約10のpHに低下させることによって低い有効性を有した。更に、pHを再び8に低下させると、BSHEは、オルガノイドを死滅させる点で天然pHのほぼ2倍弱くなったが、一方で、CBD単離物は、実質的に変化を示さなかった。中性pHである7のpHでも、変化は、せいぜいわずかである。
【0145】
そのような状況では、pHを更に低下させても、その変化は、典型的には、天然pHと比較してより悪いか、又は実質的に変化がなかったため、治療有効性の更なる増加につながらない可能性が高い。代わりに、pHを4に更に低下させることによって、BSHE及びCBD単離物の各々について、1%の生存率であったような、%生存率の劇的な改善が見られ、これは、より悪い応答又は実質的に変化しない応答に向かう傾向がある事前のデータに基づいて予想外であった。したがって、大麻抽出物を提供するとき、特に、大麻抽出物が膣内又は口腔粘膜に提供される場合、pHを2~6に変更するために緩衝液を利用すると、その天然のpHで大麻抽出物を与える場合と比較して優れた応答をもたらす。好ましくは、大麻抽出物は、3.5~5.5のpH、より好ましくは、4~5のpHを有する担体で提供される。
【0146】
患者試料の概要
治療を試験するためのオルガノイドの使用は、本発明者らが、他の種における類似体モデルに依存する代わりに、異なる治療に対する応答を決定するために代表的な細胞を使用することができるため、刺激的である。したがって、結果は、CBDを含むBSHE又はFSHEと接触すると、オルガノイドが様々な濃度にわたって破壊されたが、5、7、10、又は20μg/mLと低いことが多いことを示す。これは、子宮内膜がん及び子宮内膜症ベースのオルガノイドの様々なステージ及びグレードのいくつかの異なる患者において示され、全て同じ成功率であった。これらの数値をマウスモデルに換算することで、同じ有効性が確認され、腫瘍増殖が停止し、腫瘍体積が全体にわたって低減された。
【0147】
膣内送達は、十分に研究されており、安全であり、有効であり、耐容性が良好であると考えられている。膣内送達は、消化管吸収を回避し、初回通過代謝を回避するが、一方で、局所効果及び安定した持続的治療応答を容易にする。膣上皮を介した吸収及び全身送達は、同様の親油性化合物を用いて迅速に起こる。膣上皮の厚さ、並びにpH、子宮頸部粘液の存在、及び微生物叢を含む膣液特性の変動は、吸収速度及び生物学的利用能に影響し得る。
【0148】
直腸坐剤送達は、結果的に、CBDの経口経路に対して増加した生物学的利用能(51~60%)をもたらす。口腔粘膜又は舌下送達に関するデータは、CBDが1.6時間の最大血漿濃度を有するが、これが一部の個体において遅延され得ることを実証する。経口CBDは、約2.5~5時間の最大血漿濃度を有するが、一部の個体では最大6時間遅延され得る。高脂肪食との同時投与は、最大5倍の濃度でCmaxを増加させることが示されている。高度に血管化された鼻粘膜を介したCBDの送達は、結果的に、急速な取り込み及び約10分のTmaxをもたらす。しかしながら、膣粘膜は、治療行為のためにまだ利用されていない。したがって、膣内吸収によるCBD取り込みは、本明細書に詳述されるように、好都合な投与のための経路のままである。
【0149】
したがって、粘膜投与、特に膣内投与は、EC細胞の標的化治療を可能にし得る治療有効性を有し、これは、局所腫瘍及び転移腫瘍の両方を治療することになる。これらのデータは、ヒト患者内における更なる試験によって確認され、これは、CBDによる治療が、体内で転移した化学療法抵抗性ECを低減させるのに有効であったことを示した。
【0150】
方法及び計算
患者由来オルガノイド
患者由来オルガノイドを、手術後に子宮内膜がん組織試料を収集することによって作成した。収集された組織を、氷上で、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Penicillin/Streptomycin、P/S)(Life Technologies、15070-063)を含むHank’s Balanced Salt Solution(HBSS)(Hyclone、SH30031.02)に浸した。組織試料を、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Dulbecco’s phosphate-buffered saline、DPBS)及び1%P/Sを用いてシェーカー(70rpm)上で3回、各洗浄につき15分間洗浄した。その後、組織試料を、予め滅菌された細胞培養フード内に入れたまま、滅菌ブレードで細かく切り刻んだ。全ての切り刻んだ部分を、室温で約2.5時間酵素的に消化した(Accumax(商標)-Innovative Cell Technologies Inc.、AM105-500)。2.5時間後、消化された組織ミンチ全体を、37℃の水浴中で更に45分間、TrypLE(商標)express(Gibco、12604-021)による更なる酵素消化のために移した。この間、溶液を5分間隔で連続的に撹拌した。その後、消化された組織の溶液を50mLファルコンチューブ上の70μmフィルタに通した。フィルタを除去し、細胞を含むフロースルーを5%FBS AD+++培地(1%ITS、2%B27、1%N2、25%WRN、hegf-50ng/mL、hfgf-10-100ng/mL、ニコチンアミド-1mM、N-アセチルシステイン-1.25mM、プリモシン-0.2%、エストロゲン-2nm、A8301-0.5μM、及びY27632を含む)に収集した。この細胞懸濁液を室温で5分間1000rpmで遠心分離して、計数のための細胞ペレットを得た。血球計数器でチェックした後、細胞数を計算し、オルガノイド培養のために処理した。最終細胞懸濁液をRBC汚染について顕微鏡下でチェックし、見つかった場合、赤血球溶解緩衝液(Roche Diagnostics、11814389001)を使用してRBCを溶解した。ヒト患者から結果的に得られた子宮内膜がん細胞を増殖させ、5%COを含む37℃の加湿チャンバ内で維持した。
【0151】
腹水試料に由来するオルガノイドをいくらか異なって治療し、腹水を室温で10分間1000rpmで遠心分離して細胞懸濁液を得た。次いで、細胞懸濁液を赤血球溶解緩衝液(Roche Diagnostics、11814389001)で処理して、最終細胞懸濁液からRBCを除去した。
【0152】
患者由来オルガノイドを培養するために、2~3×10^3個の細胞を、ウェル当たり10μLのマトリゲル(5%FBS AD+++培地)中の予熱された(37℃)96ウェルプレートに播種した。個々の患者細胞オルガノイドを異なるプレート中で別々に培養した。交差汚染の機会を低減するために、個々の患者細胞を別々に取り扱った。細胞をマトリゲルと混合した後、10μLの液滴をウェルに入れ、5%COの37℃インキュベータに30分間入れた。内部に細胞を有するマトリゲル液滴の固化時、プレートを滅菌フード内に置き、マトリゲル液滴を200μLのオルガノイド増殖培地に浸漬した。細胞を成熟オルガノイドへと14日間増殖させた。個々のCBD剤(ブロードスペクトル、フルスペクトル、CBD単離物、及びCBDA)又は化学療法剤(パクリタキセル又はカルボプラチン)と組み合わせたものによる治療は、通常、5日目に開始し、個々の薬物又は薬物の組み合わせを増殖培地に加えた。ビヒクルのみの対照(薬物治療に使用される最高濃度の培養培地中のジメチルスルホキシド)を含めて、全ての治療を3連で行った。
【0153】
標準式:(M=m/MW×1/V、式中、m=グラム単位の質量、MW=物質の分子量、及びV=リットル単位の希釈剤の体積)を使用して、いくつかのヒト等価用量を計算した。例えば、オルガノイドに54.35μMの薬物Xを投与する場合、100μL又は0.0001L(V)の溶質中に0.0032mgの薬物Xが必要である。これは、0.00005435M又は54.35μM濃度に相当し、薬物XのMW=588.72g/mol、かつm=0.0000032gである。
【0154】
96ウェルプレートを使用するとき、所与の用量をヒト投与量に換算するために、以下の式が使用される。96ウェルプレート中の単一ウェルの表面積は、0.32cmである。したがって、臨床用量等価量(mg/m)は、次式:臨床投与量(mg/m)=(mg/培養プレート表面積cm単位のPDO投与量)×100によって100mg/mである。オルガノイド用量をヒト用量に換算する2つの異なる方法を比較するとき、2つの計算は、類似のヒト等価用量、例えば、10μg/mLのオルガノイド等価物について約200mg/日を示す。
【0155】
IC50は、細胞ベースの細胞毒性試験で薬効を決定するために従来使用されている50%阻害濃度である。特定の患者由来オルガノイドのIC50を決定するために、個々の患者オルガノイドを、上記に説明されたようにBSHE、FSHE、CBD単離物、及びCBDAの各々で治療した。そのような治療の結果を使用して、阻害剤(すなわち、特定の大麻抽出物)対正規化応答変数勾配に対する最小二乗回帰(Graphpad Prism 9)を使用することによって、個々のIC50を見出した。したがって、各カンナビノイド抽出物及び選択された患者由来オルガノイドについてIC50を決定した。その後、化学療法剤と組み合わせたCBDを有する大麻抽出物を試験するために選択された患者由来オルガノイドの各々について、オルガノイドを、化学療法剤単独、又は特定の抽出物/オルガノイドの組み合わせについて計算されたIC50に等価の投与量のカンナビノイド抽出物と組み合わせた化学療法剤のいずれかで治療した。同じIC50用量を、化学療法剤の各増分用量で与えた。注目すべきことに、オルガノイド中の各化学療法剤について与えられる用量は、ヒト投与に好適な最大用量の等価量を下回る。このようにして、本発明者らは、CBD及び低減された量の化学療法剤(パクリタキセル、ドキソルビシン、又はカルボプラチン)を含む所与の大麻抽出物の特定のIC50を使用して、標準的なヒト用量の化学療法剤と同量のがん細胞死を得ることができるかどうかを決定することができた。
【0156】
細胞生存率アッセイ
治療後のオルガノイドにおける細胞生存率を評価するために、CellTiter-Glo(登録商標)発光アッセイ(Promega#G7572)を使用した。簡単に説明すると、オルガノイド培養の14日目に、オルガノイドを内部に有する各ウェル中のマトリゲル液滴を、製造業者のガイドラインに従って100μLの新鮮な増殖培地及び100μLのCellTiter-Glo(登録商標)試薬に浸漬した。培地及びCellTiter Gio(登録商標)試薬のみを含有するブランクウェル(細胞なし)もまた、各プレートに含めた。次いで、プレートを110rpmのシェーカー上に室温で5分間置いて細胞溶解を誘導し、続いて、室温で25分間置いて発光シグナルを安定化した。CellTiter Gio(登録商標)試薬を加えた後の各ステップを暗所で実施した。発光を、FLUOstar OPTIMAプレートリーダー(BMG Lab technologies、Offenburg,Germany)で測定した。治療値をビヒクル対照に対して正規化し、ビヒクル対照のパーセンテージとしてそれらをプロットすることによって分析を実施した。薬物IC50値を、Graphpad Prism 9において最小二乗回帰を使用して、阻害剤対正規化応答変数勾配によって決定した。
【0157】
患者由来異種移植(PATIENT-DERIVED XENOGRAFT、PDX)マウス世代
子宮内膜がんからのヒト患者細胞を、100μLの溶液に再懸濁した後、雌NOD/SCIDガンママウスに皮下注射した。腫瘍が視認可能なサイズに増殖すると、全てのマウスに、CBD薬剤を含む単一の大麻抽出物を、抽出物を単独で10~30mg/kg体重で使用して、又はCBD薬剤を含む大麻抽出物を、所与の化学療法剤と一緒に使用して腹腔内注射し、所与の大麻抽出物を、10~30mg/kg体重で与えるか、パクリタキセルを最大20mg/kg体重で与えるか、又はビヒクルを週3回、最大5週間与えた。腫瘍サイズを治療前に測定し、続いて週2回測定した。全ての治療群のマウスを、薬物注射後最大10週間、又は腫瘍体積が2500mmより大きく成長するまで生存させた。
【0158】
腫瘍サイズを、組織収集時に体重とともに測定した。全ての腫瘍組織を、安楽死させたマウスの体から注意深く除去した。腫瘍組織試料を、組織学、プロテオミクス、ゲノミクス、及び他の下流処理のために保存した。全ての下流処理は、NCI患者由来モデルリポジトリSOPに従って完了した。
【0159】
マウスPDXからヒトへの用量換算
米国食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)は、動物用量のヒト用量への外挿が、mg/mで表されることが多い、体表面積(body surface area、BSA)への正規化によってのみ正確に実施されることを示唆している。ヒト等価用量(human equivalent dose、HED)は、次式:mg/kg単位のヒト等価投与量=マウス投与量(mg/kg)×(マウスK/ヒトK)を使用することによって、より適切に計算され得る。補正係数(K)は、種の平均体重(kg)をその体表面積(m)で除算することによって推定される。例えば、平均ヒト体重は、60kgであり、体表面積は、1.62mである。したがって、ヒトについてのK因子は、60を1.62で除算することによって計算され、これは37であり、同じやり方でマウスK因子が計算され、これは3である。ここで、動物又はヒトの用量の単位の交換(mg/kgからmg/m)は、BSAに従ったK因子を使用して行われる:mg/mの投与量=mg/kg単位のK×投与量。
【0160】
実施形態
好ましい実施形態では、CEは、50~95%のCBDを含む。したがって、10mg用量のCEは、5~9mgのCBDを含む。CEの残りの成分は、追加のカンナビノイド、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸、及び植物栄養素を含む。本明細書の医薬組成物は、組成物の1~99重量%を構成するCEを含む。医薬組成物で提供されるとき、CBDの濃度は、典型的には、医薬組成物の5~50mg/mLの用量として与えられる。特定の組成物は、限定されるものではないが、脂肪、油、MCT油、長鎖トリグリセリド油、超長鎖トリグリセリド油を含む、追加の賦形剤及び成分を含む。限定されるものではないが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトールを含む、テルペン成分。ポリフェノールとしては、限定されるものではないが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、及びクロロゲン酸が挙げられ得る。オメガ3、オメガ6、及びオメガ9脂肪酸、並びにトコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、及び特定のミネラルなどの追加の植物栄養素が存在してもよい。担体を含むこれらの成分は、医薬組成物の最大99.9重量%を構成し得るが、より好ましくは、CBDを含むCEは、医薬組成物の1~99重量%、好ましくは組成物の40~99重量%を構成する。
【0161】
したがって、好ましい実施形態は、有効量のCBDを含む薬学的に許容される組成物を患者に投与することを含む、子宮内膜症の治療方法であって、組成物が、BSHE又はFSHEなどのCEを含む、方法に関する。好ましい実施形態では、有効量は、標的組織において少なくとも10μg/mLのBSHE又はFSHEの濃度、より好ましくは少なくとも20μg/mLの少なくとも標的濃度を生成するのに有効な量である。更に好ましい実施形態では、有効用量は、1日当たり10~4250mgのCBDであり、CBDは、膣内、口腔粘膜/舌下、経鼻、又は直腸などの粘膜適用を介してCE中で提供される。本明細書の治療方法は、不適切な病変、すなわち、体内の意図された場所から移動した細胞を排除するのに有効である。更に、これらの方法は、子宮内膜を傷つけることなく、子宮内膜の外側の子宮内膜細胞の増殖を停止又は遅延させる。更に、本明細書中の方法は、子宮内膜の外側への子宮内膜細胞の移動を制限又は排除し、最終的に、疼痛、出血、並びに瘢痕組織の発達及び癒着につながる子宮内膜腫及び線維組織の形成の低減を含む、症状の制御のためのものである。
【0162】
更なる実施形態では、治療方法は、卵巣子宮内膜腫又は深部子宮内膜症を緩和及び治療するためのものであり得る。更なる実施形態では、治療方法は、膣内投与による薬学的に許容される組成物の適用によって月経困難症又は子宮筋腫を治療することを含み、薬学的に許容される組成物は、CBDをCEの総重量の75~99%で含むCEを含む。好ましい実施形態では、有効量は、標的組織において少なくとも10μg/mLのBSHE又はFSHEの濃度を生成するのに有効な量である。更に好ましい実施形態では、有効用量は、1日当たり10~250mgのCBDであり、CBDは、薬学的に許容される担体中における膣内適用によってBSHE又はFSHE中に提供される。
【0163】
特定の実施形態では、CEは、追加の担体を必要とせずに投与され得る。したがって、患者への投与に好適な組成物は、任意の更なる担体又は賦形剤なしのCEであり得る。
【0164】
しかしながら、好ましい実施形態は、NCGDの治療のための組成物を含み、組成物が、大麻抽出物(CE)を含み、CEが、組成物の1~100重量%及びその中の全てのパーセンテージを構成する。好ましい実施形態では、CEが、組成物の10~90重量%、又は20~90重量%、及び、好ましくは、40~80重量%を構成する。CEは、本明細書に詳述されるように、好ましくは、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDA単離物である。これらの異なるCE、BSHE、FSHE、CBD単離物、又はCBDA単離物の各々では、それらは、CEの50~99.9重量%を構成し、残りは、ワックス、脂肪、脂肪酸などである。しかしながら、好ましい実施形態は、組成物の1~99重量%で担体を利用し、好ましくは、組成物の使用事例に応じて1つ以上の追加の賦形剤を利用する。次いで、組成物は、典型的には、投与されるCBDのmg単位の投与量に基づいて投与される。CBDのmgを満たすのに必要な組成物の量は、CEの各々内のCBDの量に依存する。
【0165】
本明細書で説明される実施形態及び例示は、例として提供され、本発明は、具体的に開示されたものに限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記に説明された様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに上記の説明を読んだときに当業者が想起するであろう、先行技術に開示されていない、それらの変形例及び修正例を含む。したがって、様々な組成物及び方法は、本明細書に詳述される種々の方法及びシステムを実装する者によって理解されるように、実施形態の限定のうちの1つ又は全てを含むか、若しくは任意の順序で実施され得るか、又は異なる実施形態からの限定を組み合わせてもよい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
【国際調査報告】