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2024-540177ヘンプ抽出物を使用する子宮内膜がんを処置する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ヘンプ抽出物を使用する子宮内膜がんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/01 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20241024BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/05
A61K31/192
A61K31/352
A61K47/44
A61K31/045
A61K31/01
A61K31/202
A61K31/353
A61K31/355
A61K31/56
A61K31/337
A61K33/243
A61K31/282
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525630
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 US2022078698
(87)【国際公開番号】W WO2023076935
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/263,018
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/263,020
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/263,026
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524152148
【氏名又は名称】エコファイバー ユーエスエイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOFIBRE USA INC.
(71)【出願人】
【識別番号】524153178
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ニューカッスル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NEWCASTLE
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】カパノ、アレクサンドラ エム
(72)【発明者】
【氏名】タンワル、プラディープ シン
(72)【発明者】
【氏名】ナンス、アレックス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB03
4C076BB07
4C076BB13
4C076BB30
4C076EE51
4C084AA22
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA60
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BA08
4C086BA09
4C086DA08
4C086HA12
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA60
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C088AB12
4C088AC03
4C088BA08
4C088MA02
4C088MA52
4C088MA56
4C088MA57
4C088NA05
4C088ZB26
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA04
4C206CA03
4C206CA08
4C206CA19
4C206DA05
4C206DA19
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA77
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
患者に大麻抽出物(CE)を投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法であって、大麻抽出物が、CEの50重量%~99重量%でカンナビジオール(CBD)を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための大麻抽出物であって、カンナビジオール(CBD)を含む、大麻抽出物。
【請求項2】
フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)、CBDアイソレート及びカンナビジオール酸(CBDA)から選択される、請求項1に記載の使用のための大麻抽出物であって、場合により、前記BSHE又はFSHEが、(i)50重量%~90重量%のCBD、及び(ii)Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、Δ-8-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビノール(CBN)、カンナビシクロール(CBL)及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の他のカンナビノイドを含む、大麻抽出物。
【請求項3】
用量あたり10mg~500mgのCBDを含む、請求項1又は2に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項4】
a.前記方法が、経口用量、口腔粘膜用量、膣内用量又はそれらの組み合わせによる、前記患者への前記大麻抽出物の投与を含む、及び/又は
b.前記方法が、少なくとも3日ごとに1回、好ましくは少なくとも1日1回、少なくとも1日2回又は少なくとも1日3回の、前記患者へのある用量の前記大麻抽出物の投与を含む、及び/又は
c.前記方法が、前記患者における標的組織において、少なくとも10μg/mLとなる前記大麻抽出物の濃度を生じるのに十分な前記大麻抽出物の量の投与であって、好ましくは、前記標的組織が女性生殖管のがん性組織である、投与を含む、及び/又は
d.前記方法が、全身血漿中レベルのCBDにより測定される有効治療レベルに到達するのに十分な量の前記大麻抽出物の投与を含む、及び/又は
e.前記方法が、前記患者に1日あたり20mg~500mgのCBDの投与を含む、及び/又は
f.前記大麻抽出物が、酸性pH、好ましくは3.5~6のpHにおいて製剤化される、
請求項1~3のいずれかに記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項5】
a.前記子宮内膜がんが、グレード1、グレード2又はグレード3の子宮内膜がんである、及び/又は
b.前記子宮内膜がんが、化学療法抵抗性子宮内膜がんである、
請求項1~4のいずれかに記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項6】
前記大麻抽出物が、1%~99.9%のCBDを含み、前記方法が、膣内投与により、前記患者に前記大麻抽出物を投与するステップを含み、好ましくは、
a.前記大麻抽出物が、60%~99.9%のCBDを含む、及び/又は
b.前記大麻抽出物が、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)及びCBDアイソレートから選択される、及び/又は
c.前記大麻抽出物がCBDAを含む、
請求項1~5のいずれかによる使用のための大麻抽出物。
【請求項7】
患者における子宮内膜がんを処置する方法に使用するための膣内用組成物であって、請求項1~3及び6のいずれか一項に記載の大麻抽出物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、膣内用組成物。
【請求項8】
前記組成物が、(i)担体として油若しくは脂肪、及び/又は(ii)少なくとも1種のテルペン、少なくとも1種のポリフェノール、少なくとも1種の必須脂肪酸、少なくとも1種の植物栄養素又はそれらの組み合わせを含み、
場合により、前記少なくとも1種のテルペン、少なくとも1種のポリフェノール、少なくとも1種の必須脂肪酸、少なくとも1種の植物栄養素又はそれらの組み合わせが、前記組成物の総重量の1重量%~50重量%を構成し、
更に場合により、
・前記テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール及びそれらの組み合わせから選択される、及び/又は
・前記ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸及びそれらの組み合わせから選択される、及び/又は
・前記必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸及びそれらの組み合わせから選択される、及び/又は
・前記植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル及びそれらの組み合わせから選択される、
請求項7に記載の使用のための膣内用組成物。
【請求項9】
a.前記膣内用組成物が、25mg~500mgの用量の大麻抽出物を含み、前記方法が、膣への挿入により、前記患者に前記組成物を投与するステップを含む、及び/又は
b.前記方法が、前記膣内用組成物の少なくとも2つの用量を1日あたり前記患者に投与するステップを含み、前記膣内用組成物の各用量が、10mg~250mgの大麻抽出物を含む、及び/又は
c.前記膣内用組成物が、酸性pH、好ましくは3.5~6のpHを有する、
請求項7又は8に記載の使用のための膣内用組成物。
【請求項10】
前記方法が、子宮内膜がん及び子宮内膜症を同時に処置するための方法であり、前記方法が、経口用製剤及び膣内用製剤により、前記患者に同時に前記大麻抽出物を投与するステップを含み、好ましくは、前記大麻抽出物が、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)又はブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項11】
前記方法が、患者に有効量の前記大麻抽出物及び有効量の化学治療剤を同時投与するステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための大麻抽出物。
【請求項12】
子宮内膜がんを処置する方法に使用するための化学治療剤であって、前記方法が、患者に、有効量の前記化学治療剤及び請求項1~6のいずれか一項に記載の有効量の大麻抽出物を同時投与するステップを含む、化学治療剤。
【請求項13】
a.前記化学治療剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カルボプラチン及びそれらの組み合わせから選択される、及び/又は
b.前記子宮内膜がんが、化学療法抵抗性がんである、及び/又は
c.前記方法が、患者における、がん性組織の化学療法抵抗性を判定する第1のステップ、及び化学療法抵抗性が確認されると、前記患者に有効量の前記大麻抽出物及び有効量の前記化学治療剤を投与するその後のステップを含む、及び/又は
d.前記有効量の前記化学治療剤が、前記大麻抽出物の非存在下で投与されると、表示用量の前記化学治療剤よりも少なくとも50%少ない、及び/又は
e.前記方法が、前記患者に前記大麻抽出物を1日あたり20mg~500mgの量で投与するステップを含む、
請求項11に記載の使用のための大麻抽出物、又は請求項12に記載の使用のための化学治療剤。
【請求項14】
婦人科系がんを処置する方法に使用するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が大麻抽出物及び有効量のCBDを含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、
a.担体、及び/又は
b.CBDV、THC、CBG、CBN、CBC、CBDA及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1種の追加のカンナビノイド、及び/又は
c.好ましくは、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1種のテルペン、及び/又は
d.好ましくは、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1種のポリフェノール、及び/又は
e.好ましくは、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸及びそれらの組み合わせから選択される、必須脂肪酸、及び/又は
f.好ましくは、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル及びそれらの組み合わせから選択される、植物栄養素
を更に含む、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
患者に有効量の、大麻抽出物(CE)を含む組成物を投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法。
【請求項17】
前記CEが50%~99.9%のカンナビジオール(CBD)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記CEが、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)、CBDアイソレート及びカンナビジオール酸(CBDA)アイソレートからなる群から選択される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記CEが、経口形態、口腔粘膜形態、膣内形態、鼻粘膜形態、直腸形態、注射可能形態又はそれらの組み合わせにより投与される、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
CBDを含む前記有効量の前記大麻抽出物が、1日あたり、10mg~4,250mgのCBDを含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記CEの投与が、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回又は少なくとも1日3回、投与される用量である、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記子宮内膜がんが、グレード1、グレード2又はグレード3の子宮内膜がんである、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記子宮内膜がんが化学療法抵抗性子宮内膜がんである、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記CEが、0.1%~10%の濃度のCBDAを含む、請求項16~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記CEが、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)及び/又はブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)であり、前記BSHE又はFSHEがそれぞれ、50重量%~99重量%のCBD及び0.1%~10%の濃度の少なくとも1種の他のカンナビノイドを含み、前記少なくとも1種の他のカンナビノイドが、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記CEが、60%~99%の濃度のCBD、及び0.1%~10%の濃度の少なくとも1種の他のカンナビノイドを含み、前記少なくとも1種の他のカンナビノイドが、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記CEが、65%~99%のカンナビノイドの全濃度を含む、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸、植物栄養素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物を含み、前記少なくとも1種の追加の化合物が、前記組成物の総重量の0.1%~50%を構成する、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、担体として、油又は脂肪を含む、請求項16~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物の前記有効量が、全身血漿中レベルにより測定すると、有効治療レベルのCBDに到達するのに十分な量である、請求項16~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、酸性pHで投与される、請求項16~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記酸性pHが、3.5~6である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
患者に有効量の化学治療剤を投与するステップ、及び有効量の大麻抽出物(CE)を同時投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法。
【請求項33】
前記化学治療剤及び前記CEが、1種の組成物として、又は2種の異なる組成物として投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記化学治療剤が、パクリタキセル、カルボプラチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ドセタキセル、ゲムシタビン、カペシタビン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記CEを含む組成物が、経口、直腸、膣内、口腔粘膜又は鼻腔の送達用の組成物である、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記経口用組成物の前記有効量が、CBDの全身血漿中レベルにより測定すると、有効治療レベルに到達するのに十分な量である、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記子宮内膜がんが化学療法抵抗性がんである、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
化学治療剤の前記有効量が、表示された個々の用量よりも少なくとも50%少なく、前記CEが、1日あたり20mg~4,250mgで投与される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記大麻抽出物が酸性pHの組成物中で投与される、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記酸性pHが、3.5~6である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記患者に由来するがん性組織の化学療法抵抗性を判定する第1のステップ、及び化学療法抵抗性が確認されると、前記患者に有効量の前記CEを投与するステップを含む、請求項32~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記CEが、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるカンナビノイドを含む、請求項32~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1種のテルペンを更に含む、請求項32~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記テルペンが、
β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1種のポリフェノールを更に含む、請求項32~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
オメガ3、オメガ6、オメガ9及びそれらの組み合わせからなる群から選択される必須脂肪酸を更に含む、請求項32~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
植物栄養素を更に含む、請求項32~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記CBDが、大麻抽出物に由来する植物性カンナビノイドに由来する、請求項32~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
子宮内膜がん処置する方法であって、
a.患者からがん性細胞を採取し、前記がん性細胞に由来するオルガノイドを形成するステップと、
b.前記オルガノイドに対してスクリーニングを行い、前記化学治療薬のIC50用量で生存オルガノイドの存在を50%、低減することができる化学治療薬を決定するステップと、
c.前記患者に、50%~99.9%のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物と共に前記化学治療薬を投与するステップと
を含む、方法。
【請求項52】
子宮内膜がん処置する方法であって、
a.患者から子宮内膜細胞を採取し、前記子宮内膜細胞に由来する少なくとも1種のオルガノイドを形成するステップと、
b.前記少なくとも1種のオルガノイドに対してスクリーニングを行い、前記患者のオルガノイドに応答性の化学治療薬を決定するステップと、
c.前記患者に、50%~99.9%のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物と共に前記化学治療薬を投与するステップと
を含む、方法。
【請求項53】
前記CEが、前記患者に、経口形態、口腔粘膜形態、鼻腔形態、直腸形態、膣内形態、注射可能形態又はそれらの組み合わせ物として投与される、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記CEが、口腔粘膜及び膣内に投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
1重量%~99重量%の大麻抽出物(CE)を含む、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための組成物。
【請求項56】
前記組成物の前記CEが、
a.フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)、CBDアイソレート、CBDAアイソレート又はそれらの組み合わせ、及び/又は
b.前記組成物が、前記組成物の1重量%~99重量%で担体を含む、及び/又は
c.前記組成物が、前記組成物の1重量%~50重量%で1種以上の賦形剤を更に含む、
ことを含む、
請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記組成物が大麻抽出物(CE)を含み、前記CEが、前記組成物の1重量%~100重量%及びそれらのうちのすべての割合を構成する、子宮内膜がんの処置のための組成物。
【請求項58】
前記CEが、前記組成物の10重量%~90重量%、又は20重量%~90重量%、及び好ましくは40重量%~80重量%を構成する、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記CEが、好ましくは、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)、CBDアイソレート又はCBDAアイソレートである、請求項57又は58に記載の組成物。
【請求項60】
前記BSHE及び/又はFSHE及び/又はCBDアイソレート及び/又はCBDAアイソレートが、前記CEの50重量%~99.9重量%を構成する、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記組成物の1重量%~99重量%で担体を含む、請求項57~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
少なくとも1種以上の追加の賦形剤を更に含む、請求項57~61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
前記組成物が粘膜用組成物である、請求項57~62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
20mg~4,250mgのCBDを含む、請求項57~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
患者に有効量の請求項55~64のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法。
【請求項66】
前記有効量が、1日あたり20mg~4,250mgのCBDである、請求項65に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国特許商標庁に、2021年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/263,018号、2021年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/263,026号、及び2021年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/263,020号の利益を主張し、それらの内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(発明の分野)
本明細書において開示されている発明は、有効量の大麻抽出物を単独で又は化学治療剤と組み合わせて投与することによる、子宮内膜がんの組成物及び治療的処置に関する。大麻抽出物は、1種の以上のカンナビノイド、具体的には治療量のカンナビジオール(CBD)を含み、多くの場合、大麻抽出物内に1種以上の追加のカンナビノイド、テルペン又は他の分子を含む。
【背景技術】
【0003】
がんと診断されることは、死亡宣告を手渡されるように感じることがある。多くの場合そうである。そうでない場合でも、化学療法及び/又は放射線による処置の厳しさは、疾患に屈することとは対照的に、患者に処置を受けるという賢明さに疑問を抱くことがある。これは、とりわけ、処置が失敗した場合、及び/又は患者の身体に非常に多くの損傷を与え、最終的に死に至る場合である。実際に、化学療法関連死に関する最近の調査により、化学療法を受けてから30日以内に死亡した患者のほぼ1/2(すなわち、43%)が、顕著な処置関連毒性を有していたことが示された。この毒性が、患者の少なくとも一部の死因であり、がん自体ではなかったと考えられた。言い換えると、調査中の患者の約1/4が、がんを処置しないで放置した場合よりも早く、処置が理由で死亡したと考えられた。
【0004】
ECは、世界中で最も高い頻度で診断される婦人科系がんの1つであり、その有病率は、過去20年間にわたり、50%超で増加している。子宮内膜がんとも呼ばれる子宮内膜がんは、子宮内膜である子宮の内張りの細胞において始まる。ECの症状はたとえあったとしてもほとんどないことがあるので、又は症状が更年期を含む女性の正常な生殖周期によって隠されることがあるので、一部の女性は、ECの初期兆候を見逃し、この疾患をその後期段階でしか発見しない。しかし、他の患者は、子宮の異常出血を呈し、これは疾患の早期診断をもたらすことがある。一旦、検出されると、EC処置は、ほとんど常に、がん性組織又は子宮全体の外科的除去(すなわち、子宮摘出)となる。多くの場合、患者は、全摘又は広汎性子宮全摘出を受けるように、並びにその卵管及び卵巣もまた除去する(両側卵管卵巣摘除術)ように助言される。その後、患者は、化学療法、放射線療法、別のアジュバント療法又はそれらの組み合わせを選択することができる。ECの早期検出は、がんが子宮に留まっているので、化学療法又は放射線療法を行う必要性を抑えることができる。しかし、ECが非常に悪性である場合、初期段階の診断及び組織/器官除去でさえも、少数の見逃された細胞が子宮から移動して、罹患組織の増殖を可能にするおそれがある。この場合、がんが初期に発見され、罹患組織が除去されている場合でさえも、化学療法が妥当である。更に、一次外科的処置は、大部分の場合、有益であるが、EC診断時に進行した転移性疾患の症状が存在しない場合でさえも、患者の約15~20%が再発性疾患を発症する。具体的には、International Federal of Gynecology and Obstetrics(FIGO)によれば、ステージI~IIのECにおける再発の可能性は、10~20%である一方、ステージIII~IVのECにおける再発は50~70%である。
【0005】
したがって、一次処置を改善するEC処置、すなわち、EC細胞を破壊してEC細胞負荷を低減し、ひいては、体内での転移の可能性を低減することができ、任意の非切除腫瘍の腫瘍サイズを縮小することが必要である。前述の各々は、EC寛解又は腫瘍管理のいずれかにより、余命を延長する一方、生活の質を増大するよう、処置の二次的作用を軽減するという最終目標を有する。これらの転帰のいずれも、1名以上の患者における処置の成功を意味し得る。
【0006】
したがって、EC処置選択肢、とりわけ、少なくとも化学療法と同様に又は化学療法と組み合わせて罹患細胞/組織を根絶することが依然として可能でありながら、化学療法よりも健常な細胞/組織に対する毒性/損傷が少ない処置選択肢が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
実施形態では、本発明は、患者における子宮内膜がんを処置する方法に使用するための大麻抽出物であって、カンナビジオール(CBD)を含む、大麻抽出物を提供する。
【0008】
実施形態では、本発明は、患者における子宮内膜がんを処置する方法に使用するための膣内用組成物であって、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、膣内用組成物を提供する。
【0009】
実施形態では、本発明は、患者における子宮内膜がんを処置する方法に使用するための大麻抽出物であって、当該大麻抽出物がカンナビジオール(CBD)を含み、当該方法が、子宮内膜がん及び子宮内膜症を同時に処置するための方法であり、該方法が、経口用製剤及び膣内用製剤により、大麻抽出物を患者に同時に投与するステップを含む、大麻抽出物を提供する。本明細書で定義されているとおり、用語「同時に」とは、経口用製剤及び膣内用製剤が、患者に、72時間以下の間隔を空けて、好ましくは48時間以下の間隔を空けて、より好ましくは24時間以下の間隔を空けて、例えば12時間以下の間隔を空けて、6時間以下の間隔を空けて、4時間以下の間隔を空けて、3時間以下の間隔を空けて、2時間以下の間隔を空けて、1時間以下の間隔を空けて、30分以下の間隔を空けて、又は同時に投与されることを意味する。したがって、実施形態では、本発明は、子宮内膜がん及び子宮内膜症を同時に処置する方法において使用するための経口用製剤であって、当該経口用製剤が、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物及び薬学的に許容される賦形剤を含み、当該方法が、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物及び薬学的に許容される賦形剤を含む膣内用製剤と同時の経口用製剤の投与を含む、経口用製剤を提供する。更なる実施形態では、本発明は、子宮内膜がん及び子宮内膜症を同時に処置する方法において使用するための、膣内用製剤であって、当該膣内用製剤が、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物及び薬学的に許容される賦形剤を含み、当該方法が、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物及び薬学的に許容される賦形剤を含む経口用製剤と同時の膣内用製剤の投与を含む、膣内用製剤を提供する。
【0010】
実施形態では、本発明は、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための大麻抽出物であって、当該大麻抽出物がカンナビジオール(CBD)を含み、当該方法が、患者に、有効量の当該大麻抽出物及び有効量の化学治療剤を同時投与するステップを含む、大麻抽出物を提供する。本明細書で定義されているとおり、用語「同時投与すること」とは、大麻抽出物及び化学治療剤が、患者に、72時間以下の間隔を空けて、好ましくは48時間以下の間隔を空けて、より好ましくは24時間以下の間隔を空けて、例えば12時間以下の間隔を空けて、6時間以下の間隔を空けて、4時間以下の間隔を空けて、3時間以下の間隔を空けて、2時間以下の間隔を空けて、1時間以下の間隔を空けて、30分以下の間隔を空けて、又は同時に投与されることを意味する。
【0011】
実施形態では、本発明は、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための化学治療剤であって、当該方法が、患者に、有効量の当該化学治療剤及び有効量の大麻抽出物を同時投与するステップを含み、当該大麻抽出物がカンナビジオール(CBD)を含む、化学治療剤を提供する。
【0012】
実施形態では、本発明は、婦人科系がんを処置する方法に使用するための医薬組成物であって、大麻抽出物及び有効量のCBDを含む、医薬組成物を提供する。
【0013】
実施形態では、本発明は、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための医薬の製造における、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物の使用を提供する。
【0014】
実施形態では、本発明は、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための医薬の製造における、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物及び薬学的に許容される賦形剤を含む膣内用組成物の使用を提供する。
【0015】
実施形態では、本発明は、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための医薬の製造における、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物の使用であって、当該大麻抽出物が化学治療剤と同時投与される、使用を提供する。
【0016】
実施形態では、本発明は、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための医薬の製造における、化学治療剤の使用であって、当該化学治療剤が、カンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出物と同時投与される、使用を提供する。
【0017】
実施形態では、本発明は、婦人科系がんを処置する方法に使用するための医薬の製造における、大麻抽出物及び有効量のCBDを含む医薬組成物の使用を提供する。
【0018】
膣内施用により、1~99.9%のCBDを含む大麻抽出物を含む、有効量の医薬組成物を患者に投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法。
【0019】
CBDを含むBSHE又はFSHEを含む、有効量の医薬組成物を、膣内施用により、患者に投与するステップ、及びカンナビジオール(CBD)を含むフルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)又はブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)を含む、有効量の併用経口用組成物を当該患者に投与するステップを含む、子宮内膜症及び子宮内膜がんを同時処置する方法。
【0020】
有効用量が、標的組織において、少なくとも10μg/mLとなるBSHE又はFSHEの濃度を生じるのに十分な、前述の実施形態のいずれか1つの方法。標的組織が女性生殖管のがん性組織である、方法。
【0021】
好ましい実施形態では、大麻抽出物がカンナビジオール(CBD)を含む、患者における、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための大麻抽出物。
【0022】
更なる実施形態では、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)、CBDアイソレート及びカンナビジオール酸(CBDA)から選択される、使用のための大麻抽出物であって、場合により、BSHE又はFSHEが、(i)50重量%~90重量%のCBD、及び(ii)Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、Δ-8-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビノール(CBN)、カンナビシクロール(CBL)及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の他のカンナビノイドを含む、大麻抽出物。
【0023】
更なる実施形態では、用量あたり10mg~500mgのCBDを含む、使用のための大麻抽出物。
【0024】
更なる実施形態では、(a)方法が、経口用量、口腔粘膜用量、膣内用量又はそれらの組み合わせによる、患者への大麻抽出物の投与を含む、及び/又は(b)方法が、少なくとも3日ごとに1回、好ましくは少なくとも1日1回、少なくとも1日2回又は少なくとも1日3回、患者へのある用量の大麻抽出物の投与を含む、及び/又は(c)方法が、患者における標的組織において、少なくとも10μg/mLとなる大麻抽出物の濃度を生じるのに十分な大麻抽出物の量の投与であって、好ましくは、標的組織が女性生殖管のがん性組織である、投与を含む、及び/又は(d)方法が、全身血漿中レベルのCBDにより測定される有効治療レベルに到達するのに十分な量の大麻抽出物の投与を含む、及び/又は(e)方法が、患者に1日あたり20mg~500mgのCBDの投与を含む、及び/又は(f)大麻抽出物が、酸性pH、好ましくは3.5~6のpHにおいて製剤化される、使用のための大麻抽出物。
【0025】
更なる実施形態では、(a)子宮内膜がんが、グレード1、グレード2又はグレード3の子宮内膜がんである、及び/又は(b)子宮内膜がんが、化学療法抵抗性子宮内膜がんである、使用のための大麻抽出物。
【0026】
更なる実施形態では、大麻抽出物が、1%~99.9%のCBDを含み、方法が、膣内投与により患者に大麻抽出物を投与するステップを含み、好ましくは、(a)大麻抽出物が、60%~99.9%のCBDを含む、及び/又は(b)大麻抽出物が、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)及びCBDアイソレートから選択される、及び/又は(c)大麻抽出物が、CBDAを含む、使用のための大麻抽出物。
【0027】
好ましい実施形態では、患者における子宮内膜がんを処置する方法に使用するための膣内用組成物であって、大麻抽出物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、膣内用組成物。
【0028】
更なる実施形態では、組成物が、(i)担体として、油又は脂肪、及び/又は(ii)少なくとも1種のテルペン、少なくとも1種のポリフェノール、少なくとも1種の必須脂肪酸、少なくとも1種の植物栄養素又はそれらの組み合わせを含み、場合により、少なくとも1種のテルペン、少なくとも1種のポリフェノール、少なくとも1種の必須脂肪酸、少なくとも1種の植物栄養素又はそれらの組み合わせが、組成物の総重量の1重量%~50重量%を構成し、更に場合により、テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール及びそれらの組み合わせから選択される、及び/又はポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸及びそれらの組み合わせから選択される、及び/又は必須脂肪酸が、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸及びそれらの組み合わせから選択される、及び/又は植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル及びそれらの組み合わせから選択される、使用のための膣内用組成物。
【0029】
更なる実施形態では、(a)膣内用組成物が、25mg~500mgの用量の大麻抽出物を含み、方法が、膣内への挿入により患者に組成物を投与するステップを含む、及び/又は(b)方法が、1日あたり、患者に少なくとも2つの用量の膣内用組成物を投与するステップを含み、膣内用組成物の各用量が、10mg~250mgの大麻抽出物を含む、及び/又は(c)膣内用組成物が、酸性pH、好ましくは3.5~6のpHを有する、使用のための膣内用組成物。
【0030】
更なる実施形態では、当該方法が、子宮内膜がん及び子宮内膜症を同時に処置するための方法であり、方法が、経口用製剤及び膣内用製剤により、患者に同時に大麻抽出物を投与するステップを含み、好ましくは、大麻抽出物が、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)又はブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)である、使用のための大麻抽出物。
【0031】
更なる実施形態では、当該方法が、患者に有効量の当該大麻抽出物及び有効量の化学治療剤を同時投与するステップを含む、使用のための大麻抽出物。
【0032】
好ましい実施形態では、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための化学治療剤であって、当該方法が、患者に、有効量の当該化学治療剤及び有効量の大麻抽出物を同時投与するステップを含む、化学治療剤。
【0033】
更なる実施形態では、(a)化学治療剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カルボプラチン及びそれらの組み合わせから選択される、及び/又は(b)子宮内膜がんが、化学療法抵抗性がんである、及び/又は(c)方法が、患者における、がん性組織の化学療法抵抗性を判定する第1のステップ、及び化学療法抵抗性が確認されると、患者に有効量の大麻抽出物及び有効量の化学治療剤を投与するその後のステップを含む、及び/又は(d)有効量の化学治療剤が、大麻抽出物の非存在下で投与されると、表示用量の化学治療剤よりも少なくとも50%少ない、及び/又は(e)方法が、患者に大麻抽出物を1日あたり20mg~500mgの量で投与するステップを含む、使用のための大麻抽出物又は使用のための化学治療剤。
【0034】
好ましい実施形態では、婦人科系がんを処置する方法に使用するための医薬組成物であって、大麻抽出物及び有効量のCBDを含む、医薬組成物。
【0035】
更なる実施形態では、組成物が、(a)担体;及び/又は(b)CBDV、THC、CBG、CBN、CBC、CBDA及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1種の追加のカンナビノイド、及び/又は(c)好ましくは、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1種のテルペン、及び/又は(d)好ましくは、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1種のポリフェノール、及び/又は(e)好ましくは、オメガ3酸、オメガ6酸、オメガ9酸及びそれらの組み合わせから選択される、必須脂肪酸、及び/又は(f)好ましくは、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル及びそれらの組み合わせから選択される、植物栄養素を更に含む、使用のための医薬組成物。
【0036】
好ましい実施形態では、患者に有効量の、大麻抽出物(CE)を含む組成物を投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法。
【0037】
CEが50%~99.9%のカンナビジオール(CBD)を含む、方法。
【0038】
更なる実施形態では、CEが、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)、CBDアイソレート及びカンナビジオール酸(CBDA)アイソレートからなる群から選択される、方法。
【0039】
更なる実施形態では、CEが、経口形態、口腔粘膜形態、膣内形態、鼻粘膜形態、直腸形態、注射可能形態又はそれらの組み合わせにより投与される、方法。
【0040】
更なる実施形態では、CBDを含む有効量の大麻抽出物が、1日あたり、10mg~4,250mgのCBDを含む、方法。
【0041】
更なる実施形態では、CEの投与が、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回又は少なくとも1日3回、投与される用量である、方法。
【0042】
更なる実施形態では、子宮内膜がんが、グレード1、グレード2又はグレード3の子宮内膜がんである、方法。更なる実施形態では、子宮内膜がんが化学療法抵抗性子宮内膜がんである、方法。
【0043】
更なる実施形態では、CEが、0.1%~10%の濃度のCBDAを含む、方法。
【0044】
更なる実施形態では、CEが、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)及び/又はブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)であり、BSHE又はFSHEがそれぞれ、50重量%~99重量%のCBD及び0.1%~10%の濃度の少なくとも1種の他のカンナビノイドを含み、少なくとも1種の他のカンナビノイドが、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0045】
更なる実施形態では、CEが、60%~99%の濃度のCBD、及び0.1%~10%の濃度の少なくとも1種の他のカンナビノイドを含み、少なくとも1種の他のカンナビノイドが、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、CEが、65%~99%のカンナビノイドの全濃度を含む、方法。
【0046】
更なる実施形態では、組成物が、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸、植物栄養素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物を含み、少なくとも1種の追加の化合物が、組成物の総重量の0.1%~50%を構成する、方法。
【0047】
更なる実施形態では、組成物が、担体として、油又は脂肪を含む、方法。
【0048】
更なる実施形態では、組成物の有効量が、全身血漿中レベルにより測定すると、有効治療レベルのCBDに到達するのに十分な量である、方法。
【0049】
更なる実施形態では、組成物が、酸性pHで投与される、方法。更なる実施形態では、酸性pHが、3.5~6である、方法。
【0050】
好ましい実施形態では、患者に有効量の化学治療剤を投与するステップ、及び有効量の大麻抽出物(CE)を同時投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法。
【0051】
更なる実施形態では、化学治療剤及びCEが、1種の組成物として、又は2種の異なる組成物として投与される、方法。
【0052】
更なる実施形態では、化学治療剤が、パクリタキセル、カルボプラチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ドセタキセル、ゲムシタビン、カペシタビン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0053】
更なる実施形態では、CEを含む組成物が、経口、直腸、膣内、口腔粘膜又は鼻腔の送達用の組成物である、方法。
【0054】
更なる実施形態では、経口用組成物の有効量が、CBDの全身血漿中レベルにより測定すると、有効治療レベルに到達するのに十分な量である、方法。
【0055】
更なる実施形態では、子宮内膜がんが化学療法抵抗性がんである、方法。
【0056】
更なる実施形態では、化学治療剤の有効量が、表示された個々の用量よりも少なくとも50%少なく、CEが、1日あたり20mg~4,250mgで投与される、方法。
【0057】
更なる実施形態では、大麻抽出物が酸性pHの組成物中で投与される、方法。更なる実施形態では、酸性pHが、3.5~6である、方法。
【0058】
更なる実施形態では、当該患者に由来するがん性組織の化学療法抵抗性を判定する第1のステップ、及び化学療法抵抗性が確認されると、患者に有効量のCEを投与するステップを含む、方法。
【0059】
更なる実施形態では、CEが、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるカンナビノイドを含む、方法。
【0060】
更なる実施形態では、少なくとも1種のテルペンを更に含む、方法。更なる実施形態では、テルペンが、β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、α-ピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0061】
更なる実施形態では、少なくとも1種のポリフェノールを更に含む、方法。更なる実施形態では、ポリフェノールが、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン、クロロゲン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0062】
更なる実施形態では、オメガ3、オメガ6、オメガ9及びそれらの組み合わせからなる群から選択される必須脂肪酸を更に含む、方法。
【0063】
更なる実施形態では、植物栄養素を更に含む、方法。更なる実施形態では、植物栄養素が、トコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール、ミネラル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0064】
更なる実施形態では、CBDが、大麻抽出物に由来する植物性カンナビノイドに由来する、方法。
【0065】
好ましい実施形態では、(a)患者からがん性細胞を採取し、がん性細胞に由来するオルガノイドを形成するステップと、(b)オルガノイドに対してスクリーニングを行い、化学治療薬のIC50用量で生存オルガノイドの存在を50%、低減することができる化学治療薬を決定するステップと、(c)患者に、50%~99.9%のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物と共に化学治療薬を投与するステップとを含む、子宮内膜がんを処置する方法。
【0066】
好ましい実施形態では、(a)患者から子宮内膜細胞を採取し、子宮内膜細胞に由来する少なくとも1種のオルガノイドを形成するステップと、(b)少なくとも1種のオルガノイドに対してスクリーニングを行い、患者のオルガノイドに応答性の化学治療薬を決定するステップと、(c)患者に、50%~99.9%のCBDを有する大麻抽出物(CE)を含む有効量の組成物と共に化学治療薬を投与するステップとを含む、子宮内膜がんを処置する方法。
【0067】
更なる実施形態では、CEが、患者に、経口形態、口腔粘膜形態、鼻腔形態、直腸形態、膣内形態、注射可能形態又はそれらの組み合わせ物として投与される、方法。更なる実施形態では、CEが、口腔粘膜及び膣内に投与される、方法。
【0068】
好ましい実施形態では、1重量%~99重量%の大麻抽出物(CE)を含む、子宮内膜がんを処置する方法に使用するための組成物。
【0069】
更なる実施形態では、組成物のCEが、(a)フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)、CBDアイソレート、CBDAアイソレート又はそれらの組み合わせを含む、及び/又は(b)組成物が、組成物の1重量%~99重量%の担体を含む、及び/又は(c)組成物が、組成物の1重量%~50重量%の1種以上の賦形剤を更に含む、組成物。
【0070】
好ましい実施形態では、組成物が大麻抽出物(CE)を含み、CEが、組成物の1重量%~100重量%及びそれらのうちのすべての割合を構成する、子宮内膜がんの処置のための組成物。
【0071】
更なる実施形態では、CEが、組成物の10重量%~90重量%、又は20重量%~90重量%、及び好ましくは40重量%~80重量%を構成する、組成物。
【0072】
更なる実施形態では、CEが、好ましくは、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)、CBDアイソレート又はCBDAアイソレートである、組成物。更なる実施形態では、BSHE及び/又はFSHE及び/又はCBDアイソレート及び/又はCBDAアイソレートが、CEの50重量%~99.9重量%を構成する、組成物。
【0073】
更なる実施形態では、組成物の1重量%~99重量%で担体を含む、組成物。更なる実施形態では、少なくとも1種以上の追加の賦形剤を更に含む、組成物。
【0074】
更なる実施形態では、粘膜用組成物である、組成物。
【0075】
更なる実施形態では、20mg~4,250mgのCBDを含む、組成物。
【0076】
好ましい実施形態では、患者に有効量の組成物を投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法。更なる実施形態では、有効量が、1日あたり20mg~4,250mgのCBDである、方法。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1A】CBDを含む大麻抽出物により処理された子宮内膜がん細胞を図示しており、図1Aは、タンパク質発現に関するデータを捕捉する過程の略図を示す。
図1B】CBDを含む大麻抽出物により処理された子宮内膜がん細胞を図示しており、図1Bは、タンパク質の分化数を図示する。
図1C】CBDを含む大麻抽出物により処理された子宮内膜がん細胞を図示しており、図1Cは、ビヒクル中で上方調節及び下方調節されたタンパク質発現、及びCBDを含む大麻抽出物による処置により上方調節及び下方調節されたタンパク質発現を図示する。
図1D】CBDを含む大麻抽出物により処理された子宮内膜がん細胞を図示しており、図1Dは、処理された子宮内膜がん細胞において上方調節及び下方調節された、上位20種のタンパク質を図示する。
図1E】CBDを含む大麻抽出物により処理された子宮内膜がん細胞を図示しており、図1Eは、さまざまな生理的経路及び病態生理的経路のシグナル伝達及び輸送に対する大麻抽出物の作用を図示する。
図1F】CBDを含む大麻抽出物により処理された子宮内膜がん細胞を図示しており、図1Fは、子宮内膜がん試料における、カンナビノイド受容体1タンパク質発現を図示する。
図1G】CBDを含む大麻抽出物により処理された子宮内膜がん細胞を図示しており、図1Gは、子宮内膜がん試料におけるカンナビノイド受容体2タンパク質発現を図示する。
図2A】大麻抽出物により処理された子宮内膜がんをベースとするオルガノイドを図示しており、図2Aは、BSHEにより送達されたさまざまな濃度の大麻抽出物により処理された細胞の画像を図示する。
図2B】大麻抽出物により処理された子宮内膜がんをベースとするオルガノイドを図示しており、とりわけ、図2Bは、10μg/mLという低い値、及び上記のすべての値において、子宮内膜がんオルガノイドの実質的な根絶を示す結果を要約する。
図3A】大麻抽出物により処理された高いグレードの子宮内膜がんをベースとするオルガノイドを図示しており、図3Aは、BSHEにより送達されたさまざまな濃度の大麻抽出物により処理された細胞を図示する。
図3B】大麻抽出物により処理された高いグレードの子宮内膜がんをベースとするオルガノイドを図示しており、とりわけ、図3Bは、10μg/mL以上において、オルガノイドが治療的処理によって破壊されたことを示す結果を要約する。
図4A】ビヒクルと比較した、2、3、4及び5μg/mLを含む、BSHEとして送達される、さまざまな濃度の大麻抽出物により処理された子宮内膜がんオルガノイドの場合のオルガノイド数の減少を図示する。図4Aは、グレード1の結果を図示する。
図4B】ビヒクルと比較した、2、3、4及び5μg/mLを含む、BSHEとして送達される、さまざまな濃度の大麻抽出物により処理された子宮内膜がんオルガノイドの場合のオルガノイド数の減少を図示する。図4Bは、グレード2の子宮内膜がんオルガノイドの結果を図示する。
図5A】ビヒクルと比較した、3、5、7及び10μg/mLを含む、BSHEとして送達される、さまざまな濃度の大麻抽出物により処理された子宮内膜がんオルガノイドの場合のオルガノイド数の減少を示す図であり、図5Aは、グレード1の結果を図示する。
図5B】ビヒクルと比較した、3、5、7及び10μg/mLを含む、BSHEとして送達される、さまざまな濃度の大麻抽出物により処理された子宮内膜がんオルガノイドの場合のオルガノイド数の減少を示す図であり、図5Bは、グレード2の子宮内膜がんをベースとするオルガノイドに関する結果を図示する。
図6A】2μg/mL及び10μg/mLの範囲の濃度での2つの試験における、BSHEにより処理したグレード3の子宮内膜がんオルガノイドの結果を図示する。
図6B】2μg/mL及び10μg/mLの範囲の濃度での2つの試験における、BSHEにより処理したグレード3の子宮内膜がんオルガノイドの結果を図示する。
図7A】4種の異なる大麻抽出物、すなわち、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)(図7A)、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)(図7B)、CBDアイソレート(図7C)及びCBDA(図7D)に対して試験した、化学療法感受性子宮内膜がん患者由来オルガノイドを図示する。
図7B】4種の異なる大麻抽出物、すなわち、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)(図7A)、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)(図7B)、CBDアイソレート(図7C)及びCBDA(図7D)に対して試験した、化学療法感受性子宮内膜がん患者由来オルガノイドを図示する。
図7C】4種の異なる大麻抽出物、すなわち、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)(図7A)、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)(図7B)、CBDアイソレート(図7C)及びCBDA(図7D)に対して試験した、化学療法感受性子宮内膜がん患者由来オルガノイドを図示する。
図7D】4種の異なる大麻抽出物、すなわち、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)(図7A)、フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)(図7B)、CBDアイソレート(図7C)及びCBDA(図7D)に対して試験した、化学療法感受性子宮内膜がん患者由来オルガノイドを図示する。
図8】マウスに患者由来の子宮内膜がん細胞を注射した、マウス内の子宮内膜がんの腫瘍体積のグラフ表示のチャートを図示する。データは、7日目から21日目の腫瘍体積の変化を示しており、腫瘍体積に対するさまざまな大麻抽出物の治療効力を図示する。
図9A】化学治療剤がパクリタキセルであり、大麻抽出物と共に投与される、患者由来の子宮内膜がんオルガノイドに対して試験した、併用療法処理を図示する。図9Aは、グレード2の子宮内膜がんに関する一方、図9Bは、グレード3の子宮内膜がんに関する。各々は、個別化された処理の代わりの併用処理により、劇的に低下した生存率を示す。
図9B】化学治療剤がパクリタキセルであり、大麻抽出物と共に投与される、患者由来の子宮内膜がんオルガノイドに対して試験した、併用療法処理を図示する。図9Aは、グレード2の子宮内膜がんに関する一方、図9Bは、グレード3の子宮内膜がんに関する。各々は、個別化された処理の代わりの併用処理により、劇的に低下した生存率を示す。
図10】化学治療剤がカルボプラチンであり、3種の異なる大麻抽出物と共に投与される、患者由来の子宮内膜がんオルガノイドに対して試験した、併用療法処理を図示する。個別化された処理と比較した、併用療法に対して劇的に低下した生存率を示す結果。
図11】パクリタキセル及び4種の異なる大麻抽出物のうちの1種の投与を受けたマウスに関する腫瘍体積のデータを図示しており、これは、大麻抽出物と組み合わせた化学療法の複合的影響に関する相乗作用を図示する。21日目までに、併用療法は、単独と比べ、腫瘍体積のほとんど2倍の変化をもたらす。
図12】CBDを含む大麻抽出物による治療的処置が、正常な生殖管及び肝臓細胞を損傷しないことを示す、CBDを含む大麻抽出物により処置されたマウス組織の組織学的画像を図示する。
図13】CBDを含む大麻抽出物の治療効力に対するpHの影響を示すチャートを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0078】
さまざまな実施形態が、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照しながら、本明細書のこれ以降に一層十分に記載される。しかし、実施形態は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書において記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全であるように提示され、実施形態の範囲を当業者に十分に伝達するものである。とりわけ、さまざまな実施形態が、子宮内膜がんの1つ以上の障害の処置における、治療生成物、処置の方法、治療剤の使用であり得る。したがって、以下の説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0079】
子宮内膜がん
大部分の子宮内膜がんは、上皮組織に由来するがんであるがん腫として分類される。上皮細胞は、身体の内部表面及び外部表面を内張りする組織を形成する。特殊な上皮細胞は、汗、涙液及び粘液などの物質を分泌する腺を形成する。このような腺組織から生じるがんは、腺がんと呼ばれる。最も一般的なタイプの腺がんは、類内膜がんとして分類される。類内膜がんの例としては、分泌性乳がん、繊毛がん及び子宮頸部絨毛管状腺がんが挙げられる。別のタイプの上皮細胞は、扁平上皮細胞である。多くの人々が、扁平上皮細胞のタイプである頬細胞を見たことがある。扁平上皮細胞から生じるがんは、上皮細胞がんと呼ばれる。一部の類内膜がんには、腺上皮細胞、並びに扁平分化腺がん、腺扁平上皮がん及び腺棘細胞腫などの扁平上皮細胞が含まれる。他のタイプの子宮内膜がんは、小細胞がん、移行上皮がん及び漿液状がんである。それほど一般的ではないタイプの子宮内膜腺がんには、明細胞がん、膠様腺がん、未分化がん、脱分化がん及び漿液性腺がんが含まれる。後者のそれほど一般的でないタイプの子宮内膜腺がんは、ほとんどのタイプの子宮内膜がんよりも速く成長及び拡散する傾向がある。それらは、診断される時点までに、子宮の外側にまで広がっている。
【0080】
別のタイプの子宮内膜がんは、子宮がん肉腫又はCSである。過去において、CSは、上皮細胞ではなく子宮筋細胞に由来すると考えられていたので、肉腫として分類されていた。現在では、医師は、CSは、子宮内膜がんに起因する細胞の分化が不十分であるようにはもはや見えないほど異常な子宮内膜がんであると考えている。実際、CSは子宮内膜において始まるが、子宮内膜がんと肉腫の両方の特徴を有する。
【0081】
子宮内膜がんは、グレード及び/又はステージによって特徴付けることもできる。グレードは、正常で健常な子宮内膜に見られる腺に似た腺への組織化などのがん細胞の組織化に基づく。グレード1及び2などのよりグレードのより低いがんでは、がん細胞の多くは、組織化されて、腺を形成する。例えば、グレード1の腫瘍では、がん組織の95%以上が腺を形成し、グレード2の腫瘍では、がん組織の50%~94%が腺を形成する。グレード3などのより一層グレードの高いがんでは、がん細胞は、一般に組織化せず、腺を形成しない。実際、グレード3の腫瘍では、がん組織の半分未満しか、腺を形成しない。グレード3のがんは、急速に侵襲的に成長して拡散する傾向があり、したがって、グレードが一層低いがんよりも悪い外観を有する。
【0082】
グレード1及び2の類内膜がんもまた、1型子宮内膜がんである。1型がんは、通常、あまり侵襲的ではない。1型がんは、他の組織に迅速には広がらない。1型子宮内膜がんは、過剰なエストロゲンによって引き起こされると考えられており、時には、子宮内膜における細胞の異常な過成長である異型過形成から発症する。少数の子宮内膜がんは、2型子宮内膜がんである。2型子宮内膜がんは、過剰なエストロゲンによって引き起こされるとは思われない。1型子宮内膜がんと比べ、2型がんは、子宮外で成長及び広がる可能性がより高く、外観がより悪い。したがって、医師は、1型よりも2型がんをより積極的に処置する傾向がある。2型子宮内膜がんの例には、乳頭状漿液性がん、明細胞がん、未分化がん及びグレード3の類内膜がんなどの、1型ではないすべての子宮内膜がんが含まれる。2型子宮内膜がんは、分化が不十分であり得るか、又は高悪性度であり得、正常な子宮内膜のようにはまったく見えない。CSは、2型子宮内膜がんの例である。CS腫瘍は、悪性混合型中胚葉性腫瘍又は混合ミュラー腫瘍(MMMT)としても知られている。それらは、子宮がんの約3%を構成する。
【0083】
上述したように、ECの第一選択処置は、ほとんど常に、グレード又はステージにかかわらず、子宮摘出及び両側卵管卵巣摘出を含む。大部分の場合、手術後に化学療法が推奨される。化学療法の顕著な副作用を考慮して、一部のステージI及びIIの患者は、化学療法処置を省略又は低減する場合がある。しかし、化学療法は、ほとんど常に、ステージIII及びステージIVのEC患者に施される。後期EC患者は、リスク及び恩恵を最適化する目的で、数回の治療を受けることが多い。子宮内膜がん細胞は、多くの場合、子宮から既に移動しているので、リスクは転移性疾患を捕捉するための化学療法処置を含む。化学治療剤は、健常な組織及びがん性組織を攻撃して死滅する際には、いくらか無差別であるので、化学療法はリスクがあると見なされることがある。その結果、化学療法は、患者の生活の質及び寿命に対する影響を含め、顕著な二次的影響を及ぼす。実際に、化学療法ががんの処置に有効である場合でさえも、化学療法の毒性作用は、経時的に、致命的であることが判明することが多い。これらのリスクがあるにもかかわらず、潜在的な恩恵は、良好な生活の質を伴う、がんのない状態である。
【0084】
化学療法は、通常、周期で与えられ、薬物又は薬物の組み合わせ物は、通常、2~6週間の期間にわたって投与される。休止期間の後、患者は、もう1回の治療を受ける。現在、子宮内膜がん処置のための化学療法としては、パクリタキセル、カルボプラチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ドセタキセル、ゲムシタビン、カペシタビン、及びカルボプラチン又はシスプラチンとパクリタキセルなどとの併用療法法が挙げられる。化学療法薬は、通常、異なるクラス:アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、DNA修復酵素阻害剤、植物アルカロイド及び抗新生物剤に分類される。上述の治療剤は、以下のとおり分類される:パクリタキセル及びドセタキセルは、抗腫瘍性植物アルカロイドであり;ドキソルビシンは、抗腫瘍性アントラサイクリン抗生物質であり;カルボプラチン及びシスプラチンは、白金ベースの抗腫瘍性アルキル化剤であり;ゲムシタビン及びカペシタビンは、抗腫瘍性代謝拮抗剤である。パクリタキセルは、シスプラチン又はカルボプラチンのうちの1つ以上と組み合わせて投与されることが多い。EC患者の60%超が、最初に白金ベースの化学療法に応答するが、大部分は再発し、「白金抵抗性」になる。白金抵抗性は、白金ベースの治療の6か月以内に退行する代わりに進行するECを有する患者を指す。これらの患者は、積極的な処置を用いた場合でさえも、とりわけステージIII又はIVのがんまで検出されない場合、疾患に関連する死亡のリスクが最も高い。これらのステージでは、ECは、多くの場合、転移し、最初の診断及び治療から2年及び5年後に低い生存率をもたらす。健常な細胞に対する毒性並びに化学療法抵抗性ECの存在を含む化学療法に伴うリスクのために、化学療法を低減又は置き換える方法を含めた、新たな治療的処置が大いに必要とされている。
【0085】
潜在的治療剤のために、細胞シグナル伝達経路を標的とする努力がなされてきた。がん細胞は、制御不能に成長するので、子宮内膜がんの成長及び転移を推進する主要なシグナル伝達経路に影響を及ぼす薬物が、臨床試験の対象となってきた。しかし、これらの試験は、不良な転帰となることを報告している。子宮内膜がんの不均一的な性質又は複合的な性質が、標的治療の失敗の主要な理由の1つであると推測される。例えば、分子レベルでは、ECの4つの異なるサブタイプが存在し得る。サブタイプの1つは、POLE(例えば、DNAポリメラーゼ)遺伝子を有する超変異症例を含み、25~30%が、ミスマッチ修復の欠損(dMMR)を有するマイクロサテライト不安定性(MSI)表現型を有する。これらのサブタイプのいくつかは、PD-1/PD-L1阻害剤又は免疫チェックポイント阻害剤、及びペンブロリズマブ又はレンバチニブなどの他の分子により処置される。これらの分子は、第1選択化学治療剤と同様に、高い毒性プロファイルを有し、したがって、それらの使用に伴う重大な共存症を有する。更に、標的化されると、それらは、がんの不均一な性質を時として見落とす。
【0086】
大部分のEC患者は、子宮摘出及び両側卵管卵巣摘出を受けるので、そのEC組織は、個別化医薬などの試験に利用可能である。例えば、切除された腫瘍は、腫瘍成長が異なる化学治療薬にどのように応答するかを判定するために使用され得る。一般に、腫瘍細胞は、化学療法に応答する(例えば、化学療法感受性)か、又は化学療法に応答しない(例えば、化学療法抵抗性)かのいずれか一方であり得る。腫瘍が化学療法抵抗性である場合、特定の化学治療薬が処置に意図される場合、治療的処置を修正する必要があることがある。更に又は代替的に、処置の開始時に、化学処置の有効性を確認するために特定の試験が利用されることがあり、その時点で、以前にはない場合、患者/がんは、化学療法感受性又は化学療法抵抗性であると見なされ得る。これは、患者/がんが化学療法抵抗性であると考えられる処置の効力に影響を及ぼすので、重要な差別化要因となる。
【0087】
より詳細には、化学療法抵抗性により、がん細胞は、疾患が進行するように治療剤の作用に抵抗する。化学療法抵抗性疾患は、依然としてある程度の臨床応答を有することがあるが、処置が好適なものにならないほどの高用量の化学療法に頼ることなく疾患進行を予防するレベルにはない。したがって、化学療法感受性は化学療法抵抗性の反対であり、この場合、がん細胞は、化学治療剤に対して感受性であり、その結果、疾患が管理又は軽減される。しかし、化学療法感受性の特徴付けは変わり易い。ECは、ある時点で化学療法感受性であり、化学療法のための典型的なオン/オフサイクルを通じて治療が進行するにつれて、化学療法抵抗性になることがある。実際、現在、化学療法抵抗性腫瘍が存在する場合、緩和医療又は特定時の更なる腫瘍の除去以外の治療計画は、あったとしてもほとんどない。しかし、腫瘍が転移すると、腫瘍の除去はほぼ不可能になる。驚くべきことに、本発明者らは、CBDを含む1種以上の大麻抽出物が、化学療法感受性、化学療法抵抗性及び化学療法ナイーブ(化学療法に接触したことがない)腫瘍に効果的に作用することを見出した。その結果は、このような抽出物を化学療法の補助剤として、化学療法と組み合わせて、更にはECの優れた処置として使用することを支持する。
【0088】
大麻抽出物
大麻抽出物は、疾患の処置のための治療作用に詳細な検討を開始したばかりである。最も関心の高い大麻抽出物中に、通常、見出される2つの分子は、通常、カンナビジオール(CBD)及びΔ-9テトラヒドロカンナビジオール(THC)である。しかし、抽出物は、多数の他のカンナビノイドを含有しており、現在まで、科学者は、ヘンプ植物を含む大麻属の植物によって産生される少なくとも144種のカンナビノイドを同定してきた。ヘンプは、米国では、Δ-THC含有率が、乾燥重量基準で0.3%以下である大麻植物として定義されており、したがって、政治的定義であり、科学的な定義ではない。カンナビノイドを含めたヘンプ植物の副産物は、2014農業法案のセクション7606において規定されているとおり、連邦政府によれば合法であり、2018農業法案において恒久化されている。異なるカンナビノイドのわずか数例としては、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビジバリン(CBDV)及びカンナビノール(CBN)が挙げられる。
【0089】
大麻抽出物は、原料物質として1種以上の大麻植物株に由来し得る。とりわけ、異なる株は、異なる比率の所望の化合物を有する緑色物質を産生し得るが、成育条件の違いが、同じ株であっても各化合物の正確な量に影響を及ぼし得る。大麻抽出物は、分離CBDなどの特定の化合物のアイソレートを含んでもよく、又は広範囲のさまざまなカンナビノイド及び他の物質(フルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)及びブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)と呼ばれるものなど)を含有する生成物を含んでもよく、これらはそれぞれ、一連のカンナビノイド、及び必須脂肪酸、フラボノイド、テルペン及び必須ビタミン及びミネラルなどの他の植物栄養素を含有することがある。BSHEは、検出可能なΔ-テロヒドロカンナビノール(terohydrocannabinol、THC)が存在しない場合に利用される。FSHEは、ある程度THCが抽出物中に残留する場合に利用される。BSHE及びFSHEはそれぞれ、カンナビノイドの組み合わせ物を含有し、天然化合物が連携して消費される場合に現れる不可解な相乗作用を説明するためにRalph Mechoulamによって作成された用語である「アントラージュ効果」として知られるものを提供する。この効果は、大麻抽出物中のさまざまな栄養素からの多経路活性化及びシグナル伝達の結果であると考えられる。
【0090】
本検討において利用される大麻抽出物は、カンナビノイド、テルペン、フラボノイド、及び他の生物活性化合物の最も豊富な供給源である植物の花に主に由来する。植物の他の部分、すなわち種子又はおがら(hurd)は、ある程度のカンナビノイドを有することがあるが、最も可能性の高い供給源は、上記の花からの落下物である。多価不飽和脂肪酸などの他の栄養素が豊富な大麻種子は、有意な濃度でカンナビノイドを含有していない。
【0091】
カンナビノイドは、エンドカンナビノイドシステムに影響を及ぼし、カンナビノイド受容体(CB1及びCB2が、現在、確認されている受容体である)からの応答を誘発する多様なクラスの化学化合物のうちのいずれか1つである。これらの受容体に加えて、それらを活性化するカンナビノイドは、エンドカンナビノイドシステム(ECS)を含む。3つの主要なタイプのカンナビノイド-エンドカンナビノイド、植物性カンナビノイド及び合成カンナビノイドが存在する。内因性カンナビノイドとしても知られるエンドカンナビノイドは、体内で天然に産生されるカンナビノイドである。植物性カンナビノイドは、植物内で産生されるカンナビノイドである。カンナビノイドを産生する植物としては、以下に限定されないが、カバ、ローズマリー、イベルウォート、エレクトリックデイジー、エキナセア、カカオ、ヘリクリサム、コショウの木、ブラックトリュフ、大麻及び酵母の株(ピキア・パストリス(Pichia pastoris))が挙げられる。更に、ある特定のカンナビノイドを合成することができる。しかし、合成カンナビノイドは、今日まで、植物性カンナビノイドと合成カンナビノイドの安全性及び耐容性を比較する複数の系統的総説によって共有される結論である、有害作用という一層大きなリスクがあること、及び治療可能性が一層低いことを示す。
【0092】
植物におけるカンナビノイドの目的は不明のままであるが、最も一般的な仮説は、それらが昆虫、細菌、真菌、紫外線及び乾燥から植物を保護するように作用することを示唆している。対照的に、ヒト身体は、エンドカンナビノイドシステム(ECS)として知られている高度な生理系を有する。この中枢調節系は、身体内のほぼすべての生物系全体にわたる細胞バランスを助長するカンナビノイド(エンドカンナビノイド)を身体内部で作る。ECSは、ヒトの生理の全体に広く分布しており、3つの主要部分から構成される。これらは:(i)カンナビノイド受容体(CB1及びCB2);(ii)内因性のカンナビノイド(エンドカンナビノイド)、並びに最もとりわけ、アナンダミド及び2-AG;並びに(iii)エンドカンナビノイドを分解する酵素(FAAH及びMAGL)である。細胞の表面に見出されるカンナビノイド受容体は、身体全体に広がっており、各細胞の周囲の環境に耳を傾ける。それらは、現在の状態に関する情報を細胞に送信し、それによって適切な細胞応答を活性化させる。適切に機能するカンナビノイド受容体は、身体の細胞においてホメオスタシスを生み出す重要な機能を有する。
【0093】
CB1及びCB2受容体は、ECSにおける主な受容体である。CB1受容体は、脳及び中枢神経系に豊富に存在するが、CB2受容体は、中枢神経系にはわずかであるが、末梢全体、主に免疫細胞上に共通している。カンナビノイド受容体は、身体全体のほとんどすべての器官及び器官系に存在する。それらは、生殖系、心臓、肺、脳、血管、GI管、肝臓、胃などにおける活性に影響を及ぼす。CBDなどのヘンプ(植物性カンナビノイド)に見出されるカンナビノイドは、幅広い身体機能に影響を及ぼし得る。これらの植物性カンナビノイドは、カンナビノイド受容体と相互作用し、それらの活性をモジュレートし、同時にエンドカンナビノイドのレベルを亢進する。例えば、CBDは、天然に産生されるエンドカンナビノイドアナンダミドを分解する酵素であるFAAH(脂肪酸アミドヒドロラーゼ)を阻害することによって、カンナビノイド受容体と共に作用し、したがって、その半減期を延長する。アナンダミドは、身体におけるその他の意味の中でも、ヒトの生殖の調節を部分的に担う。
【0094】
エンドカンナビノイド受容体は、女性生殖器及び中枢神経系に豊富に存在する。それらのシグナル伝達及び輸送は、濾胞形成、卵母細胞成熟、細胞骨格再構成、子宮内膜運動性、子宮内膜遊走及び増殖、脱落膜化、可塑性並びに末梢神経支配を含む、女性生殖の複数の生理的及び病態生理的機能に影響を及ぼす。したがって、カンナビノイドは、深部浸潤性子宮内膜症に対して抗増殖作用を発揮し、カンナビノイドシグナル伝達の増加は、子宮内膜の病変の増殖を低減することができ、その病因は、卵巣がん及び子宮内膜がんといくつかの遺伝的基礎及び病態生理学的重複を共有する。骨盤、卵巣、子宮内膜、外陰、並びに中枢神経系及び末梢神経系におけるカンナビノイド受容体は、これらの治療標的における炎症、侵害受容及び覚醒に影響を及ぼす。カンナビノイドは、病理的な平滑筋収縮及び/又は痙性の局所血管拡張及び弛緩を引き起こす。
【0095】
カンナビノイド受容体は、Gタンパク質共役受容体のスーパーファミリーに属する。それらは、7回膜貫通α-ヘリックスを有する単一ポリペプチドであり、細胞外グリコシル化N末端及び細胞内C末端を有する。CB1及びCB2カンナビノイド受容体はどちらも、G1/0タンパク質に結合している。これらの受容体に加えて、THCの薬理学的作用を模倣することができるこれらの受容体の内因性リガンドも発見されている。このようなリガンドは、エンドカンナビノイドと呼ばれ、アナンダミド及び2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)を含んでいた。アナンダミドは、脳、及び脾臓などの末梢免疫組織において産生される。
【0096】
CB1及びCB2に結合することによってその作用を発揮するTHCとは異なり、CBDは、これらの受容体に容易に結合せず、したがって、向精神性活性を有さない。代わりに、カンナビジオールは、アナンダミドを分解する酵素(脂肪酸アミドヒドロキシラーゼ、「FAAH」)を抑制することによって、内因性カンナビノイドシグナル伝達を間接的に刺激する。CBDはまた、2-AGの放出を刺激する。したがって、CBDの作用機序は複雑であり、多様であり、依然として部分的にしか理解されていない。CBDはアンタゴニストであり、CB1受容体の部分アロステリックモジュレーターである。CBDが5HT1A/2A/3Aセロトニン受容体、TRPV1-2バニロイド受容体及びグリシンチャネルを刺激するという証拠が存在する。CBDは、CB1受容体もCB2受容体にも結合せず、したがって、CBD機構のすべてではないにしても大部分は、CB受容体によって直接媒介されない。
【0097】
したがって、CBDは、身体のシグナル伝達経路に関与している可能性がある。例えば、CBDは、サイトカインに関して調節的役割を果たし得る。サイトカインは、刺激の際に免疫細胞によって合成及び分泌されるシグナル伝達タンパク質である。したがって、CBDによる免疫制御の可能な機構の1つは、TヘルパーサブセットであるT1及びT2によって産生されるサイトカイン間のバランスを乱すことによるものである。ある特定の以前の検討において、抗炎症作用及び炎症誘発性作用の両方が示された。
【0098】
慢性炎症の間、IL-6抑制は、組織損傷を低減することができる。CBD及びTHCを含むカンナビノイドは、IL-6、TNFα、GM-CSF及びIFNγを低減することが示されている。したがって、CBD又はTHCの1つ以上が、炎症を軽減し、疼痛を低減するために複合効果が必要な場合の特定の用途において必要な構成成分であり得る。低用量のTHCは、CBDと組み合わせると、これらの治療作用をもたらすのに好適であり得る。
【0099】
CBDはまた、疼痛知覚、炎症及び体温を媒介することが知られているバニロイド疼痛受容体(TRPV-1受容体)を刺激することも知られている。CBDはまた、ある特定のアデノシン受容体に影響を及ぼすことがあり、このアデノシン受容体は、心血管機能において重要な役割を果たし、全身の抗炎症作用に広く影響を及ぼし、不安及びうつを調節並びに減少させ、幸福感を増大させる。
【0100】
体内への植物性カンナビノイドの取り込みは、その物理的特性によって撹乱される。植物性カンナビノイドは、水にほとんど不溶性であるが、脂質、アルコール、及び非極性有機溶媒に可溶であり、エマルジョン中に懸濁させることもできる。これらの天然カンナビノイドは、ヘンプ植物内の毛状突起として知られる腺構造において産生される粘性樹脂中に濃縮される。カンナビノイドに加えて、樹脂は、カンナビス科の植物の臭気の主な原因であるテルペンに富む。これらの物質は、植物の更なる組織、最もとりわけ、植物の花及び葉にも存在する。
【0101】
本明細書における方法での治療的使用のための大麻抽出物は、大麻属内の植物に由来する毛状突起及び他の緑色物質から所望の物質を除去するための抽出プロセスによって生成される。抽出プロセスにおいて、幅広いカンナビノイドが、大麻植物から単離されており、一部は、大麻植物中に存在することが知られている483種の同定可能な化学構成成分を報告しており、それらの多くは、定量レベル未満のレベルで生成される。しかし、本明細書において利用される大麻抽出物は、好ましくは、高濃度のCBDを有する大麻の株を利用し、生成される生成物は、通常、mg単位のCBD含有量に基づいて評価される。大麻抽出物は更に、好ましくは、ある量の一連のカンナビノイド、並びに必須脂肪酸、フラボノイド、テルペン及び必須ビタミン及びミネラルなどの他の植物栄養素を含む。
【0102】
本開示の大麻抽出物の代表的な非限定的試料は、以下の範囲内のある特定の化合物の濃度を含む:
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
好ましくは、製剤は以下のフィンガープリントを有する:製剤への簡略化手法は、BSHEが、60~95%のCBD、0~5%のΔ-THC及び0.1~20%の追加のカンナビノイドを含むことである。追加の要素としては、0.1~20%のさまざまな脂肪酸及びワックスが挙げられる。BSHEが、好ましくは検出可能なΔ-THCを有さない場合、FSHEは、通常0.01~0.3%の検出可能なΔ-THCを有することと対照的であるが、量は一層高くてもよい。
【0106】
更に好ましい実施形態では、合計で0.1~20%を構成する追加のカンナビノイドは、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。したがって、この意味は、これらのカンナビノイドの1つ以上を含むが、追加のカンナビノイドを除外するものではない。更に好ましい実施形態では、Δ-THC、Δ-THCA、CBDA、CBC、CBDV、CBG、CBGA、CBA、CBN及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加のカンナビノイドが、製剤中に、0.1%~10%の間で存在する。
【0107】
哺乳動物の身体、特に生殖系におけるECSの広範な存在を考慮して、子宮内膜がん細胞タンパク質発現に対するCBDを含む大麻抽出物(CE)の効果を調べた。プロテオミクスは、タンパク質の大規模検討であり、プロテオームは、検討下にある試料によって産生されるタンパク質の全セットである。プロテオームは、細胞ごと及び時間ごとに異なる。したがって、処理細胞と比較した未処理細胞におけるタンパク質発現量の比較により、どのタンパク質が子宮内膜がん細胞において発現量を変化させ、どのタンパク質が同じままであるかに関する洞察がもたらされる。この知識を用いることにより、更なる標的研究が続いて起こり得る。図1Aを参照すると、子宮内膜がん細胞(ECC)を、CBD(1μg/mL)を含むCEで処理するか、又は対照(ビヒクル)として未処理のままのどちらか一方にした。処理後、タンパク質を試験細胞及び対照細胞から抽出し、液体クロマトグラフィー(LC)タンデム質量分析法(MS/MS)による分析を行うために消化した。図1Bを参照すると、ベン図は、LC-MS/MS分析の結果を示し、これは、処理細胞が未処理細胞とは2,842種の異なるタンパク質を発現し、未処理細胞が処理細胞とは2,681種の異なるタンパク質を発現し、処理及び未処理の両方が3,747種の共通タンパク質を発現したことである。明らかに、タンパク質発現量の差に基づくと、CBDを含むわずか1μg/mLのCEによる処理は、専ら発現されるタンパク質及びもはや発現されないタンパク質に対して明らかに影響を及ぼした。図1Cは、特定のタンパク質が未処理細胞及び処理細胞において発現された(又は発現されなかった)程度を比較する。
【0108】
図1Dを参照すると、処理細胞及び未処理細胞で差次的に発現された数千種のタンパク質のうち、上方調節された(例えば、処理細胞のみにおける)及び下方調節された(例えば、未処理細胞さけにおいて)上位20が同定されて列挙されている。ここで図1Eを参照すると、さまざまな生理学的及び病態生理学的経路のシグナル伝達及び輸送に対する、CBDを有するCEによる処置の効果が示されている。一例として、エンドカンナビノイドニューロンのシナプスに関連するタンパク質は、未処理細胞において上方制御され、処理細胞において下方制御されることが示されている。最後に、図1Fを参照すると、子宮内膜がんを有する患者から採取した組織試料を選択的に染色すると、CB1受容体が発現することを示した。図1Gは、CB2受容体発現を示すために、選択的に染色された同様の組織試料である。
【0109】
上記の実験が行われるのとほぼ同時に、CBDを含むCEに対する子宮内膜がんに由来するオルガノイドの応答も検討した。一般に、ECを有する患者を特定し、腫瘍細胞を採集した。EC腫瘍細胞を使用して、患者由来オルガノイドを生成し、その方法を以下の方法の項目に記載する。名称が示唆するように、オルガノイドは、それらすべての複雑さにおいて器官を模倣する小型構造をしている。それらは、生検及び/又は切除された健常な組織若しくは腫瘍により採集された幹細胞に由来する。培養において、それらは、それらが由来する個々の患者の組織を模倣する三次元組織に自己組織化した。すなわち、オルガノイドは、それらが由来する個体と同じ遺伝的指示を有し、したがって、それらのヒト対応物と同一の突然変異、増殖及び疾患進行を実証する。オルガノイドは、分化した細胞タイプを有する器官を複製するように、又は目的の特定された細胞の選択された態様を発現するように作製され得る。臨床試験における高い失敗率に関連する伝統的な細胞系モデルとは異なり、オルガノイドの応答は、正確かつ直接的にヒト応答に転換する。オルガノイドは、十分に確立されており、嚢胞性線維症、膵臓がん、糖尿病及び他の疾患の処置におけるブレークスルーの実現において、医学研究を既に変えた。単純化された例では、オルガノイドを個体の器官のクローンと考える。本質的に、オルガノイドは、身体外に存在する別個の患者の生存している成長中のアバターである。アバターは、腫瘍成長を模倣し、身体内と同様にがんの治療に応答する。この個別化された複製識別子により、数日のうちに、個別化された標的処置の識別が可能となる。それによって、患者が、無効な治療による時間の浪費及び毒性のリスクを回避することが可能になる。
【0110】
グレード1のEC細胞に由来する子宮内膜がんオルガノイドに対する初期実験は、処置のための最低用量としてCBDを含む250μg/mLのBSHEを使用した。この投与量は、子宮内膜がんオルガノイドを死滅させるのに100%有効であり、これは確かに予想外であった。その後の実験は、処理のため、最低用量として100μg/mLのBSHEを使用した。やはり、100μg/mLは、子宮内膜がんオルガノイドを死滅させるのに100%有効であった。その後、子宮内膜がんオルガノイドを、より少ない用量のBSHE、試験した最高用量として50μg/mLで処理した。図2Aにおいて観察することができるように、グレード1の子宮内膜がんから作製されたオルガノイドを、オルガノイドが成長する成長培地である培地のみ、BSHEを他のオルガノイドに送達するために使用されるまさに溶媒であるビヒクルで処理し、次いで、1μg/mL、10μg/mL、25μg/mL及び50μg/mLの試験投与量(各濃度は、ビヒクルに送達される)で処理した。図2B(及び2A)にあるように、ビヒクル及び1μg/mLの投与量は、ほぼ同数のオルガノイドを有した。しかし、10μg/mLという低い濃度で、BSHEはECオルガノイドを完全に死滅させることができた。25μg/mL及び50μg/mLのより高い用量のBSHEもまた、ECオルガノイドの100%死滅率を示した。図2の各試験は、ジメチルスルホキシド(DMSO)であるビヒクル単独を含めて、少なくとも三連で行った。
【0111】
比較のため、オルガノイドを処置した用量を、それぞれ、1日あたり、0、20、200、500及び1000mgのヒト等価用量に変換する。現在、処方されているCBDアイソレートの投与量(米国)は、5~50mgのCBD/kgである。65~85kg(約143ポンド~約187ポンド)の平均体重は、1日あたり325~4250mgのCBDをもたらす。したがって、本発明者らの実際の試験は、これらの処方用量よりも十分に少ない用量から、許容可能な用量の約1/4までの範囲である。本発明者らは、ヒト投薬範囲の上限が、この場合(子宮内膜がん)にもやはり十分に適切であり、100μg/mL以上で実施された実験を再現すると考える。とりわけ、このようなCBD用量の代替として、ほとんど常に化学療法があり、これは、実質的に任意の濃度において、CBDの最高用量よりも有意に悪い副作用プロファイルを有する。
【0112】
図2に要約した実験の驚くべき結果のために、追加の実験を高悪性度子宮内膜がんから形成されたオルガノイドに対して実施し、その結果を図3A及び3Bに詳述する。これらの実験は、オルガノイドの供給源を除いて、前述したものと本質的に同じとした。とりわけ、特に、より低いグレードのオルガノイド実験における対照と比較して、培地のみ(バックグラウンド材料の一部を示す)及びDMSOビヒクル対照において、かなり多くのオルガノイドが成長した。1μg/mLは、オルガノイドのわずかな減少の可能性を示したが(図3Bのデータによって証明される)、CBDを含む、10、25及び50μg/mLのBSHEによる処理は、成長中のオルガノイドを完全に破壊した。言い換えると、子宮内膜がんのより侵襲的な形態からのオルガノイドの成長は、単純に管理されなかった。それは、完全に逆転した。より驚くべき結果を期待することができなかった。したがって、図3Aに示される画像及び図3Bのデータの概要は、少なくとも約10μg/mLの量のCBDを含む大麻抽出物及び一層高い濃度のCBDも含む大麻抽出物を用いる処理による高悪性度子宮内膜がんオルガノイドの除去の成功の全体像を示す。
【0113】
子宮内膜がんを有する患者
上に詳述した実験の直後に、31歳の白人女性が本発明者らを訪れた。彼女は、著しい疼痛及び不快感を呈した後に子宮内膜がんと診断された。彼女は、子宮全摘及び両側卵管卵巣摘出、続いて5ラウンドの化学療法を既に受けていた。化学療法の最初の5ラウンドのそれぞれは、パクリタキセル/カルボプラチンとの併用化学療法であった。この処置は、最終的に無効となり、以前のラウンドが無効であったために、これらの薬剤を用いた6回目のラウンドの化学療法に進まなかった。その後、彼女は、アベマシクリブ、続いてアテゾリズマブで処置されたが、これもまた失敗し、重篤な有害作用をもたらした。彼女の化学療法に対する応答の欠如の結果として、彼女は、化学療法抵抗性子宮内膜がんを有すると考えられた。
【0114】
彼女が本発明者らを訪れた際に、彼女の子宮内膜がんはステージIVであり、がんの化学療法抵抗性及び侵襲的性質のために、彼女は身体全体にわたり広範な転移性疾患も有していた。罹患領域は、彼女の脳、乳房、心臓、胃、肺、腹膜及びリンパ系を含んだ。PETスキャン及び他の技法を使用して、11×7mm~29×10mmの範囲の転移性リンパ節のサイズを求めた。以下の表3及び4を参照されたい。上に詳述した実験を考慮して、オルガノイドを患者の子宮内膜がんから作製して、彼女の化学療法抵抗性を考慮して代替化学療法(7ラウンドの化学療法に失敗後)に対する彼女の応答、及び試験されているBSHEに対する彼女の応答を評価した。彼女のオルガノイドは、ゲムシタビン/カペシタビン(GemCap)に対する部分奏効、彼女が未だ提供を受けていない併用化学療法、及びBSHEに対する有意な応答を実証した。したがって、彼女は、口腔粘膜送達を介して1日2回の30mgのBSHE及び送達を介する1日1回の75mgのFSHEのレジメンと組み合わせた標準プロトコルGemCap処置を開始した。こうして、CBDを含む大麻抽出物の彼女の総1日分用量は、135mgであった。12週間の処置後、経過観察PETスキャンにより、驚くべき結果が報告され、これを表3及び4に詳述する。
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
驚くべきことに、放射線医学は、処置に対する完全な代謝応答を結論付けた。とりわけ、転移のサイズの有意な低下が記録された。更に、頸部、胸部、腹部、骨盤又は鼠径部内には、転移性アデノパシーの新たな部位を示唆する新たな拡大又は代謝亢進結節は存在しなかった。また、新たな代謝亢進性肺転移はなく、リンパ管炎もなく、胸膜又は心嚢液貯留もなく、固形腹部器官における代謝異常もなく、診断CT上での固形腹部内臓疾患又は転移性疾患の証拠もなかった。以前に実証された骨盤領域における悪性腹水は、ほぼ完全に消散し、腹膜沈着物において完全な代謝応答があった。例えば、腹膜は、処置前に22×10mmの最大沈着物のうちの1つを有し、SUV最大は7.2であり、処置後にはもはやPETによって測定不能であり、新たな代謝亢進腹膜沈着物はなかった。更に、脳に代謝異常はなく、低用量非造影CTで疑わしい病変がなく、骨転移を示唆する骨に代謝異常はなかった。
【0118】
上記の特許に由来するオルガノイドに対する試験剤からの更なる結果を表5に示す。IC50値は、このような試験から計算した。この値は、オルガノイドの50%が処置により死滅した用量を示す。表中で見ることができるように、残りの薬剤はIC50値を求めることができるほどの十分な阻害作用を有さなかったので、いくつかのIC50値しか計算することができなかった。言い換えると、それらの薬剤は、患者のオルガノイドを死滅させるのに有効ではなかった。
【0119】
【表5】
【0120】
試験した薬剤のうちのいくつかは、オルガノイド試料に対してわずかに有効であったが、IC50数はCmax未満のままであり、これらを治療的使用にとって不十分な選択肢と特定した。とりわけ、表5に列挙した薬剤のいずれも、患者を治療するために使用した大麻抽出物ほど有効ではなかった。
【0121】
上に列挙した薬剤に加え、いくつかの他の薬物を試験して、それらがオルガノイド成長に影響を及ぼすかどうかを調べた。それらの結果を表6に示す。この場合、結果を、対照と比較して死滅した細胞の%として示す。とりわけ、パクリタキセルは完全に無効であることが示され、したがって、39%の細胞死は、処置を成功させるために投与量を大幅に増加させる必要があることを示す。これは、パクリタキセルによる処置に対する患者の実際の応答の欠如と一致する。
【0122】
【表6】
【0123】
患者は、130mg/日のGemCapとBSHEとを組み合わせて処置された後に寛解を達成したが、その患者は、多数のラウンドの化学療法が理由の広い範囲にわたる器官損傷を有した。この患者は、最終的に器官損傷による合併症で死亡したが、この患者の寿命は約1年、延長されたと推定される。この患者の死亡時に、がん性成長はなかった。したがって、化学療法とCBDを含む大麻抽出物との併用療法が腫瘍成長の低減に非常に有効であることが証明された場合でさえも、化学療法に起因する既存の損傷は致命的であることが判明した。この患者が、化学療法のより早いラウンドの間にCBDを含む大麻抽出物により処置されていれば、この患者が一層早い寛解を達成できたかどうかは分からない。もしそうであれば、この患者は数ラウンドの成功しない化学療法を受けなかったであろう。しかし、本発明者らは、この患者の最後の処置が、化学療法とCBDを有する大麻抽出物との併用療法で有効であったことの証明を確認することができる。
【0124】
本発明者らの初期実験の成功及び生存患者を、CBDを含む大麻抽出物により処置された際に達成された結果により、本発明者らは、非常に精力的に更なる研究を求めた。本発明者らの初期実験により、約10μg/mLのBSHE投与量において、オルガノイド数の完全な低下が示されたので、本発明者らは、本発明者らが、たとえあったとしてもほとんど応答を認めなかった1μg/mLと、本発明者らが100%の応答を認めた10μg/mLとの間の用量のBSHE濃度において、オルガノイドがどのように応答するかを観察することに関心を持った。
【0125】
本発明者らは、異なるグレードの子宮内膜がんを有する多数の患者から組織試料を得ることができた。グレード1の腫瘍は、5%未満の固形非腺、非扁平上皮成長を有すると記載された。言い換えると、グレード1の腫瘍の大部分は、腺及び/又は扁平上皮細胞のようなものを有するものとして示された。対照的に、グレード2の腫瘍は、6%~50%の固形、非腺、非扁平上皮成長を示したが、グレード3の腫瘍は、50%を超える固形、非腺、非扁平上皮成長を示した。本発明者らは、参加者の数及び異なるグレードの腫瘍を用いて、さまざまな用量のBSHEで多数のオルガノイドの成長を試験することができた。オルガノイドを作製するための方法及び実験プロトコルは、以下の方法の項目に記載されている。
【0126】
このセットの実験の場合、グレード1及びグレード3の患者由来試料のそれぞれの6つの異なるセットが存在し、2、3、4及び5μg/mLのBSHEを試験するために、グレード2の患者由来試料の少なくとも9つの異なるセットを調製した。代表的な結果を、図4A、4B及び6Aにおけるグラフ作成のために選択した。図4Aを参照すると、グレード1の子宮内膜がん試料を用いた実験の結果は、ビヒクル中で観察された平均オルガノイド数と比較した、平均オルガノイド数の減少率として示されている。患者1A、4A、5A及び6Aのデータを示す。各場合において、オルガノイドの成長は2μg/mLという低い用量で阻害され、患者1由来の細胞は、この低い用量で最も感受性が高く、こうして、オルガノイド数が50%を超えて減少した。残りの患者に関すると、約3μg/mL~約4μg/mLで50%の減少が生じた。5μg/mLでは、オルガノイド形成は、少なくとも約80%阻害された。図4Bを参照すると、グレード2のオルガノイド数は、大部分のグレード2の組織が約3μg/mL~4μg/mLで平均オルガノイド数の50%の減少を示したことを除くと、類似のパターンに従った。試料はすべて、5μg/mLで平均オルガノイド数の約80%の減少を示した。図6Aに転じると、驚くべきことに、グレード3の子宮内膜がん腫瘍に由来する6セットの試料のすべてが、3μg/mLという低い値で平均オルガノイド数の50%超の減少を示し、5μg/mLでは、100%の減少に近づいた。腫瘍試料の各グレード内において、BSHEによる治療に対する個々の応答はさまざまであった。それにもかかわらず、それらはすべて、投薬スペクトルの下端において応答し、ほとんどの場合、非常に良好であった。
【0127】
同時に、患者由来の試料を、3、5、7及び10μg/mLのBSHEに対する応答についても試験した。図5Aを参照すると、グレード1の組織の代表的な試料は、患者2Bに由来する細胞を除いて、3μg/mL~5μg/mLのオルガノイドの平均数に対して約50%の減少をほとんどが再び示した。しかし、7μg/mLのBSHEによって、すべてのグレード1の患者由来試料は、患者2Bでさえも、オルガノイド数の完全な阻害を示した。図5Bを参照すると、驚くべきことに、このセットにおけるグレード2の試料は、3μg/mLのBSHEによって影響を受け、こうして、示された代表的な試料のうち、4つすべてが平均オルガノイド数の約50%以上の減少を有した。再び、5μg/mLでは、この応答は80%を超える減少となり、7μg/mLのBSHEではオルガノイド形成が100%阻害された。図6Bを参照すると、このセットにおけるグレード3の患者由来試料もまた、驚くべきことに、低用量のBSHEに対して感受性が高く、すべての患者試料に関する平均オルガノイド数の50%減少は3μg/mL未満であった。5μg/mL投与量のBSHEは、平均オルガノイド数の80%を超える減少をやはり示し、7μg/mLではオルガノイドは存在しなかった。
【0128】
したがって、図4A、4B、5A、5B、6A及び6Bに基づくと、グレード1、2及び3のECに由来するオルガノイドは、2μg/mLという低い濃度、及び各場合において、7μg/mLという低い濃度で、ビヒクルと比較してオルガノイドの平均数の劇的な減少を示すことができた。したがって、規定濃度のCBDでCBDを含む大麻抽出物の施用は、ECに由来する生存患者由来オルガノイドの数の減少に有効である。データは、既知量のCBDを有する所与の用量の大麻抽出物が、子宮内膜がんオルガノイド成長を低下させるのに有効であることを明らかにしている。
【0129】
本発明者らは、子宮内膜がんオルガノイドの50%の形成が、BSHEの存在下で阻害される範囲を絞り込んだ後、次に、CBEを含む他の大麻抽出物に注目して、がん性オルガノイド形成の阻害におけるそれらの効力を判定した。したがって、すべての以前の検討の基礎であったブロードスペクトラムヘンプ抽出物(BSHE)を再試験することに加えて、本発明者らは、通常、0.3%未満のΔ-THCを含有するフルスペクトラムヘンプ抽出物(FSHE)、天然由来の分離CBDである分離CBD、及び最後にCBDの前駆体である分離CBDAも試験した。
【0130】
このセットの実験のために、本発明者らは、それぞれ、グレード1、グレード2又はグレード3の子宮内膜がんを有する12人の患者からなる新しいセットから組織試料を得た。これらの患者由来の細胞を、以下の方法の項目に記載されるように調製した。一般に、細胞を各患者から調製して、1、2、3、4、5、7及び10μg/mLのBSHE(図7A)、FSHE(図7B)、CBDアイソレート(図7C)、並びに1、5、10、15、20、25、35及び50μg/mLのCBDA(図7D)の効力を試験した。CBDAは、より低い用量では一般的に感受性が欠如しているので、一層高い濃度で試験した。
【0131】
図7Aを参照すると、グレード1、グレード2及びグレード3の子宮内膜がんオルガノイドに由来する代表的な試料を示す。これらのグラフにおいて、投与量を、各セットの患者由来の試料について100%に設定されたそれぞれのビヒクルと比べた生存オルガノイドの%に対してプロットされている。興味深いことに、グレード2の組織由来のオルガノイドは、BSHEに対して最も感受性が高く、グレード1の組織由来のオルガノイドは、BSHEに対して最も感受性が低く、それぞれおよそ1μg/mL及び4μg/mLのBSHEにおいて、50%の生存率が得られた。グレード3のECは、およそ3μg/mLで50%の生存率であった。したがって、これらの試料において観察された応答に変動があった場合でさえも、50%応答が観察された投与量は、以前に観察されたものと依然として一致していた。更に、代表的な試料のそれぞれについて、10μg/mLで実質的に成長しなかった。すなわち、グレード1の試料に関すると、10μg/mLで最小量の成長があったが、それはわずか約4%であり、これはバックグラウンドノイズのため無視できる。10%未満の生存率は、死滅細胞及びマトリゲルからの残留シグナル伝達に起因して、これらの実験では、95~100%の細胞死と見なされる。
【0132】
図7Bを参照すると、グレード1、グレード2及びグレード3の子宮内膜がんの代表的な試料に関すると、FSHEの投与量に対するオルガノイド生存率への応答が示されている。興味深いことに、図7Aに示される同じ患者に由来するグレード1の細胞は、4μg/mLのBSHEと比べ、およそ2μg/mLのFSHEで50%の生存率を有するBSHEよりもFSHEに対して感受性であった。それにもかかわらず、わずかな割合のオルガノイドが、10μg/mLのFSHEで依然として生存可能であった。グレード2のEC細胞について示されたデータは、2~3μg/mLのFSHEにおいて50%の減少を示し、7及び10μg/mLのFSHEの両方において、ほぼ0個の生存オルガノイドが観察された。グレード3の試料は、4~5μg/mLのFSHEの投与量において、50%の生存オルガノイドであることを示し、7μg/mL及び10μg/mLのFSHEの両方において、無視できる%の生存オルガノイドをやはり示した。したがって、子宮内膜がんの3つのグレードすべてに関して、50%のオルガノイド生存率が、低用量のFSHEにおいて観察された。
【0133】
図7Cは、CBDアイソレートによる処置に応答したグレード1、グレード2及びグレード3の子宮内膜がん由来のオルガノイドの%生存率を示す。興味深いことに、FSHEの場合の約4μg/mLと比べ、同じグレード2の患者由来の細胞の場合の50%生存率が約3μg/mLのCBDアイソレートにおいて観察され、同じグレード3の患者からの細胞の場合の50%生存率がCBDの場合に約3μg/mLであり、FSHEの場合に4~5μg/mLであったので、グレード2及びグレード3の代表的な試料はCBDアイソレートに対していくらか感受性が高いように思われる。それにもかかわらず、グレード2及び3のEC腫瘍の両方に由来するオルガノイドは、7及び10μg/mLのCBDアイソレートの両方において実質的に0であった。興味深いことに、後に一層低い応答者と特定されるグレード1の患者由来の組織は、10μg/mLの場合でさえも完全な応答を示さない。しかし、次に、この患者の組織を15及び20μg/mLのCBDアイソレートに曝露したところ、他の試験と一致して完全奏効を示した。
【0134】
図7Dは、処置薬物としてCBDAを使用する。より低い用量のCBDAは、全体的にオルガノイド生存率に影響を及ぼさなかったので、より高い用量のCBDAを使用したところ、10μg/mL及び15μg/mLの用量でさえも、更に強い患者分化が示され、すべての患者由来オルガノイドにおいて強い応答は見られなかった。したがって、最大で50μg/mLまでの追加投薬は、全患者がほぼ0%の生存オルガノイドの形成を示す前に完了した。CBDAは、CBDの未加工形態であり、植物自体に豊富に存在するが、ほとんど消費されない。CBDAは、脱炭酸を引き起こす熱への曝露により、容易にCBDに変換される。太陽光でさえ、CBDAからCBDへの脱炭酸を引き起こすのに十分な熱を供給することができる。それにもかかわらず、CBDAは、その強力な治療作用及び既知の副作用がほとんどないか0である非中毒性物質として良性性質のために、依然として科学的な関心を集めている。更に、最近の薬物動態学試験により、経口送達されたCBD及び他のカンナビノイドの血清生体利用率が、化合物がCBDAと共に消費される場合に実質的に向上することが実証された。更に、CBDAは、FSHE中で他のカンナビノイドと共に摂取された場合、同用量の分離CBDAを投与した場合と比較して、生体利用率が向上することを実証した。これらのデータは、「アントラージュ効果」を裏付けるものであり、CBDAが、経口摂取されたカンナビノイドの他の不十分な生体利用率を最適化する際に主要な役割を果たすことを示唆する。
【0135】
CBDを含む大麻抽出物の効果に関する検討を更に進めるために、本発明者らは、マウスにおける子宮内膜がん腫瘍体積を調べた。一般に、図7のオルガノイド検討に参加した同じ患者由来のEC幹細胞をマウスに注射し、成長させた。腫瘍が特定のサイズに達した後、マウスに抽出物-送達ビヒクル又は特定の大麻抽出物のいずれかを注射した(3回/週)。一定時間経過後、腫瘍の大きさを測定した。患者由来異種移植片の方法論及び実験プロトコルに関する詳細は、方法の項目に提示する。
【0136】
図8を参照すると、ビヒクル、BSHE、FSHE、CBDアイソレート及びCBDAのそれぞれについて、腫瘍体積の変化率%に対して治療日数をプロットしている。変化%は、処置0日目の開始平均腫瘍体積と比較した、3匹のマウスの腫瘍体積から得た数平均である。変化は、陽性(腫瘍のサイズの増加)又は陰性(腫瘍サイズの縮小)のいずれかであり得る。予想したとおり、ビヒクル(処置なし対照)は、21日間にわたりサイズが連続的に増大し、処置を開始した日からほとんど150%増大した。対照的に、CBDを含む大麻抽出物により処置されたマウスの腫瘍は、サイズが減少した。したがって、少なくとも、本発明者らは、CBDを含む大麻抽出物の全身送達を使用して子宮内膜がんを処置することができることを示した。これは、CBDを含むさまざまな大麻抽出物の生体利用率を確認するので、重要な検証である。
【0137】
しかし、CBDを含むさまざまな大麻抽出物の送達の成功は、腫瘍体積の観察された変化によって検証される。例えば、処置(すなわち、約30mg/kg抽出物を3用量)の1週間後、すべての腫瘍平均値は、サイズの初期増大を示す。しかし、10日目までに、ほとんどの平均腫瘍体積が減少し始め、CBDAで処置したマウスの腫瘍は、3日間にわたり、30%をわずかに超える増加から30%を超える減少までの最大の減少を示した。わずか3日間で60%を超える全体的な縮小があった。BSHE及びFSHEにより処置したマウスは、平均腫瘍体積の増加から平均腫瘍体積の減少への同様の切り替えを示したが、CBDAで観察されたものほど劇的ではなかった。興味深いことに、CBDアイソレートで処置したマウスにおける腫瘍は、他の大麻抽出物で処置したマウスにおける腫瘍ほど応答性ではなく、これは、CBDAがCBDの前駆体であるので、とりわけ驚くべきことである。2週間以内(14日間-合計で6用量)に、大部分の腫瘍は、それらの開始サイズと比較して体積が少なくとも50%減少した。ただし、CBDで処置したマウスは50%未満であったが、平均腫瘍体積は依然として減少した。対照的に、CBDAで処置したマウスは、開始腫瘍体積平均値と比較して70%の腫瘍体積という平均減少を示した。21日目までに、わずか3週間の処置、合計で9用量、処置群の各々における平均腫瘍体積が少なくとも50%減少し、CBDAで処置した群は100%の消散に近づいた。更に驚くべきことは、処置しない状態の場合、平均腫瘍体積が150%超の増大よりもわずかに少なかったことである。したがって、CBDを含む大麻抽出物は、子宮内膜腫瘍体積が増大するのを防止しただけでなく、腫瘍体積を、一部の場合、ほぼ完全に逆転させた。これらの結果により、オルガノイド実験において観察されたこと、及びBSHEで処置されたヒト患者において観察されたことが確認される。
【0138】
とりわけ、マウスモデル実験において使用されるCBDを含む大麻抽出物の濃度は、ヒト患者又はマウスに投与するための治療用量と考えられるものの下限にある。例えば、マウスに投与される30mg/kgは、平均サイズのヒトの場合、約170mgに換算される。CBDアイソレートは、現在、米国では、1日あたり5~50mg/kgの濃度で処方されていることを想起されたい。本発明者らは、マウスを処置するために意図的に低用量を使用し、データを0にするのではなく、マウスに投与される用量の2倍、3倍又はそれ以上の用量(これらの用量の各々は適切なヒト等価用量である)を使用することによって、これらの低用量のCBDを含むさまざまな大麻抽出物の腫瘍体積に対する経時的な影響を示した。更に、低投薬量を用いた場合でさえも、処置の3週間以内に、実質的にすべての試料(とりわけ、CBDAで処置された試料)が、0に向かって進行する腫瘍体積を有した。したがって、マウスで使用した投与量をオルガノイドに適用した用量と比較すると、本発明者らは、マウスにおける各試料がオルガノイドデータからの効力を保持していたことを認めた。言い換えると、同じ患者から得られた子宮内膜がん細胞は、オルガノイド形態と患者由来異種移植片形態の両方において、CBDを含む大麻抽出物に対して応答性であった。したがって、CBDを含むより高い用量の大麻抽出物を投与することにより、マウスモデルにおいて腫瘍体積の一層大きな減少がもたらされる。これらの全実験から、CBDを含む大麻抽出物の投与は、子宮内膜がん腫瘍の体積を大幅に減少させるのに有効であり、これは、本発明者らのマウスモデルにおいて実証されているように、子宮内膜がん腫瘍の成長を遅延せるだけではなく、腫瘍細胞を一緒に根絶することができることがかなり明確である。
【0139】
更に、本発明者らは、CBDを含む大麻抽出物の特定の施用によって、経口、口腔粘膜、膣粘膜によるか、又はECを処置して腫瘍サイズを縮小させるための他の投与によるかにかかわらず、婦人科組織を標的とすることができることを示した。婦人科組織に対する標的手法のために、当業者は、特定の治療剤が膣粘膜を通過して、膣壁上の組織だけでなく、非限定的な組織として子宮、子宮頸部、卵巣などを含む婦人科系管の全体を含む膣壁に隣接する組織の両方に接触することができることを認識している。実際に、これらの組織は一般につながってはいるが、膣への施用は、治療剤が子宮又は卵巣にも移動して影響を与えることを常に保証するわけではない。しかし、図1E及び1Fに示されるように、投与されたカンナビノイドのそのような組織への可能な治療的影響を可能にするために、女性生殖管には豊富なエンドカンナビノイド受容体が存在する。更に、カンナビノイドの経膣送達は、鼠径リンパ節を経由する取り込みをもたらし、生殖管からの更なる全身取り込みをもたらすことがある。
【0140】
CBDを単独で含む大麻抽出物を用いて得られた結果によって促され、本発明者らは、CBDを含む大麻抽出物及び化学治療剤を用いた併用療法がどのように働くかを観察するよう徹底的に促された。化学療法は、健常な組織及びがん性組織に対して非常に有害となるおそれがある。高用量の化学療法、化学療法による長期処置、又はそれらの両方が、処置された者の間で高い罹患率をもたらし得る。化学療法の副作用は、多くの場合、慢性であり、主要器官/器官系(例えば、神経系、循環系、消化系、生殖管など)への損傷を含む。化学療法はまた、経時的に続発性がんをもたらし、最悪の場合、とりわけ化学療法が高用量で投与される場合、早死をもたらすおそれがある。化学療法の期間及び/又は強度を低減させることができることは、患者の生活の質及び期間の両方を改善することを目的として、そのような処置の短期及び長期の両方の有害作用を有意に改善することができる。
【0141】
本発明者らは、再び、患者がCBD療法を含む大麻抽出物と組み合わせて化学治療剤を服用することから利益を得るであろうという本発明者らの考えを試験するために、本発明者らのオルガノイド実験に戻った。これらの実験を実施するために、本発明者らは、患者4由来の細胞(例えば、図7A及び7Cを参照されたい)を使用してグレード2の子宮内膜がんを試験し、患者12由来の細胞(例えば、図7B~7Dを参照されたい)を使用してグレード3の子宮内膜がんを試験した。本発明者らは、本発明者らの以前のオルガノイド検討からのデータを使用して、CBDを含む各大麻抽出物について、両方の患者のIC50用量を計算した。それらの結果を以下の表7に示す。オルガノイドを、化学治療剤単独で、又はCBDを含む特定の大麻抽出物のIC50濃度と共に化学治療剤で処理した。ヒト組織試料からオルガノイドを産生することに関する方法は、本明細書の最後の方法の項目に提示されている。
【0142】
【表7】
【0143】
図9Aを参照すると、パクリタキセル又はパクリタキセルと表示された大麻抽出物との存在下でのオルガノイド生存率に対する応答が示されている。グラフの一番左端の列は、特定の大麻抽出物のIC50投与量を提供することから予想されるオルガノイド生存率の理論50%低下を示す。グラフの中央の列は、IC50用量の所与の大麻抽出物と4nM/mLのパクリタキセル又は4nM/mLのパクリタキセル単独で処理した場合の対照と比較した生存オルガノイドの割合を示しており、グラフの一番右端の列は、パクリタキセルの用量が20nM/mLであることを除いて中央の列と同じである。パクリタキセルもまた、8、12及び16nM/mLで試験したが、直線的な変化は中程度に過ぎず、したがって図面には図示していない。言い換えると、本発明者らは、試験した大麻抽出物がオルガノイド生存率に及ぼす顕著な作用を強調することを選択した。
【0144】
4ナノモル濃度のパクリタキセル単独は、オルガノイド生存率を約30%(100%との比較)に低下させ、これは、それ自体かなり相当大きいように思われる。しかし、所与の大麻抽出物と組み合わせた場合、オルガノイド生存率の割合は、約12~14%に低下した。すなわち、4nM/mLのパクリタキセルと組み合わせた、IC50投与量での各大麻抽出物は、対照と比較して、子宮内膜がんオルガノイドの形成を、ほぼ90%阻止することができ、同じ濃度のパクリタキセル単独よりも約17%~19%高かった。したがって、4nM/mLパクリタキセルと組み合わせて、試験した各大麻抽出物のIC50濃度は、50%を超える阻害作用を実現することができた。更に、より高い投与量のパクリタキセル(20nM/mL)は、投与量が5倍多い場合でさえも、より低い用量のパクリタキセルよりも約12%の改善しか示さなかった。20nM/mLのパクリタキセル単独の結果を、4nM/mLのパクリタキセル+試験した大麻抽出物のいずれかの結果と比較すると、複合阻害作用が、一層高い用量のパクリタキセル単独の場合よりも4%~6%良好である。別の言い方をすれば、5倍多いパクリタキセルだけを投与すると、阻害応答を12%だけ改善したのに対して、4nM/mLのパクリタキセルをIC50用量の所与の大麻抽出物と組み合わせて投与すると、阻害応答を17%~19%改善した。CBDを含む大麻抽出物と組み合わせて、より多くの毒性剤を投与すると、より少ない毒性剤を投与した場合よりも悪い結果が得られるのはなぜかという疑問が起こる。供給された大麻抽出物と組み合わせた20nM/mLのパクリタキセルの結果を無視するわけではなく、結果は驚くべきものであり、わずか約4%~約6%の生存オルガノイドの割合、がん性オルガノイド産生のほぼ完全な阻害を示した。したがって、IC50用量の大麻抽出物のいずれかを採用し、それをパクリタキセルと同時に投与することによって、驚くべき相乗作用が認められ、これは、子宮内膜がんオルガノイドについて低生存率から生存率なしを達成するために、又は一層高い効力を実現するために必要なパクリタキセルの量を劇的に低下させることができ、一層有効な処置をもたらす。
【0145】
図9Bを参照すると、同様であるが、より劇的な結果が観察された。この場合、細胞をグレード3の子宮内膜がん組織から採取し、グレード3の子宮内膜がん由来の細胞と同じ処理を施した。すなわち、4nM/mL及び20nM/mLのパクリタキセルを投与した場合、生存オルガノイドの割合の減少にわずか約5%の改善があった。対照的に、4nM/mLのパクリタキセルを大麻抽出物と組み合わせた場合、生存オルガノイドの%は、FSHEを用いた場合で少なくとも9%、CBDアイソレートを用いた場合で最大19%減少する。したがって、再度、試験した大麻抽出物の1つの存在下でのパクリタキセルのより低い用量は、パクリタキセルの用量の5倍の増加よりも良好な結果をもたらす。更に、パクリタキセルの存在下での試験した大麻抽出物の効果は、いずれか一方が単独である場合よりも実質的に大きい。すなわち、4nM/mL及び20nM/mLのパクリタキセルの存在下の両方で試験した大麻抽出物のIC50用量は、オルガノイド生存率を50%超で阻害した。実際に、20nM/mLのパクリタキセルの存在下では、わずか約8%~5%の生存オルガノイドしか観察されなかった。
【0146】
カルボプラチン単独、並びにBSHE、FSHE、CBDアイソレート及びCBDAの各々のIC50と組み合わせて、患者4に由来する子宮内膜がん細胞の生存率も試験した。図10を参照すると、結果は、パクリタキセルを用いた結果とほぼ同様にグラフ表示で示されている。しかし、この場合、3つの用量:50、100及び250μM/mLのカルボプラチンがグラフに示されている。カルボプラチン単独の存在下でのオルガノイドの生存率%を見ると、50μM/mLでは、生存オルガノイドが約50%低下した一方、100μM/mLでは、50μM/mLと比べ、2%低下し、250μM/mL(50μM/mLの5倍である)では、オルガノイド生存率は、約32%であり、50μM/mLで達成されたものから17%しか低下していない。50μM/mLのカルボプラチンをIC50用量のBSHE及びFSHEと組み合わせた場合、50μM/mLのカルボプラチン単独と比べ、26%及び36%、低下した。カルボプラチンの2倍の用量(100μM/mL)では、生存オルガノイドの割合の低下は更に一層、顕著である。すなわち、BSHEのIC50用量と組み合わせた場合、カルボプラチン単独と比べ、26%低下し、IC50用量のFSHEと組み合わせた場合、カルボプラチン単独よりも40%低下した。更に、IC50用量のCBDアイソレートの存在下でのカルボプラチンもまた、約32%改善された。したがって、100μM/mLのカルボプラチンでは、IC50用量のBSHE、FSHE及びCBDアイソレートの存在において、生存オルガノイド%の結果として生じる低下は、カルボプラチン単独の用量の2倍超によって達成される低下よりも大きい。50μM/mLのカルボプラチンとのIC50用量のBSHE又はFSHEのいずれか一方は、250μM/mLのカルボプラチン単独よりも優れた結果を依然としてもたらした。そこで、CBDを含む大麻抽出物の存在下で、より低い用量の化学治療剤が、より高い用量の化学治療剤単独よりも良好な結果をもたらすという傾向が続く。最良の結果は、BSHE、FSHE及びCBDアイソレートのそれぞれと組み合わせたカルボプラチンの最高用量の場合に得られ、生存細胞の割合は1.3と低かったことに留意すべきである。明らかに、CBDを含む大麻抽出物と化学治療剤との相乗効果は、いずれか一方の薬剤単独よりも良好な結果を生じる。すなわち、併用療法薬は、驚くべきことに、いずれか一方の単独よりもはるかに有効である。
【0147】
したがって、オルガノイドの例を見ると、大麻抽出物を化学治療剤と共に添加すると、パクリタキセル又はカルボプラチンと組み合わせた場合のオルガノイドの数が劇的に減少する。したがって、この結果に基づくと、患者は、EC細胞の同様の破壊を得るために、CBDを含む有効量の大麻抽出物と組み合わせて、大幅に減量した化学治療薬のいずれかを服用することができ、最も高い有効用量であっても、化学治療剤を単独で服用するよりもはるかに大きな影響及び高い死滅率を示す。更に、ECに対して利用される最も一般的な化学治療薬(一方は植物ベースのアルカロイドであり、もう一方は白金ベースである)を試験することによって、本発明者らは、結果が、互いに異なる様式で機能する異なる化学治療剤全体に転換可能であることを認識している。
【0148】
オルガノイドモデルの効力を確認するために、本発明者らは、マウスにおける患者由来異種移植片に再び目を向け、これらの方法は、これらの実験において、本発明者らがやはり体重1kgあたり10mgのパクリタキセルを単独で、又は体重1kgあたり30mg(ヒト用量の場合、約170mg/日である)のCBDを含む大麻抽出物と組み合わせて使用したことを除いて、以前と実質的に同じである。マウスに与えられるパクリタキセルの投与量は、わずか30mg/mの臨床用量に関連しており、これは、有効な治療的処置を実現するためにヒト患者に投与される175mg/mよりもかなり少ない。
【0149】
図11は、パクリタキセル単独と、パクリタキセル及び大麻抽出物の組み合わせ物で処理したものとを比較する、マウス腫瘍体積の結果を詳述する。対照又は未処置は図11に示されていないが、初期腫瘍体積と比べ、21日間にわたり、100%を超える成長をもたらす。例えば、図8を参照されたい。特筆すべきことは、オルガノイドデータにおいて見られ、次に、ここで繰り返されたことである。低用量のパクリタキセルを有効用量の大麻抽出物のいずれかと組み合わせると、パクリタキセル単独と比べ、又は所与の用量の大麻抽出物と比べた場合でさえ、腫瘍体積の劇的により大きな減少をもたらす。図11に示されるとおり、パクリタキセルは、腫瘍体積を縮小するのにそれほど有効ではない。10日目に、約37%の体積の減少があり、これは次の11日間にわたり、実際には変化していない。対照的に、BSHEと組み合わせた場合、パクリタキセルと比べ、腫瘍体積は一層大きく減少する。したがって、より多くのパクリタキセル(例えば、6用量多い)は、BSHEと組み合わせて、より少ないパクリタキセル(例えば、合計6用量)ほど良好な効果をもたらさない。処置の14日目に、パクリタキセル単独で処置したマウスと比べ、BSHEにより処置したマウスでは、平均腫瘍体積が約13%減少し、パクリタキセル単独で処置したマウスと比べ多場合、CBDAにより処置したマウスにおいて平均腫瘍体積が約20%減少した。これは、CBDAにより処置したマウスにおける平均腫瘍体積が40%近く増加する数日前であるので、非常に驚くべきことである。処置の21日目までに、併用療法を受けたマウスの場合の平均腫瘍体積は、パクリタキセル単独での処置の平均腫瘍体積よりも約22%~約39%小さく、最初の測定値からほぼ80%減少した。したがって、既知量のCBDを含む大麻抽出物及びパクリタキセルの同時投与は、驚くべきことに、それらの単独投与よりも有効であった。更に、このデータは、ヒト患者に供給されたCBDを含む大麻抽出物が、実際に患者の寛解の獲得に役立ち、それが化学療法処置単独によるものではなかったという提案を裏付ける。
【0150】
本発明者らの検討において使用したものなどの大麻抽出物は、患者由来異種移植片実験で使用したマウスの組織を損傷もしないし、組織に悪影響も及ぼさなかった。例えば、図12は、CBDを含む大麻抽出物で処置したマウスから採取した組織学的組織試料と健常なマウス組織とを比較している。図12Aは、卵巣及び卵管からの未処置試料及び処置試料を示している。化学療法は、卵母細胞及び卵胞に悪影響を及ぼすことが知られている。ここで、処置マウスは、どちらも健常な成熟卵母細胞及び卵胞を有する。同様に、健常な上皮組織もまた、化学療法によって損傷を受けることが知られており、多くの場合、致死的になり得る、重度の器官/器官系損傷をもたらす。マウスの卵管中の未処置上皮組織と処置上皮組織とを比較すると、どちらも健常に見える。同様に、処置マウス及び未処置マウスの子宮、膣及び肝臓からの組織を図12Bにおいて比較する。肝臓は、とりわけ、化学療法によって損傷を受けた場合に影響を受ける。図12Bにおいて分かるとおり、肝臓試料は、実質的に同じである。これは、非常に重要であり、なぜなら、高用量の化学療法による処置は、時間をかけて投与された場合、無差別であり、これらの細胞を損傷するからである。したがって、低用量であろうとなかろうと、大麻抽出物と組み合わせた化学治療薬の量の低下により、より大きな割合で腫瘍体積を減少させ、化学療法単独よりも大きな総割合まで腫瘍体積を減少させることによって患者の転帰が改善されることができ、そうでなければ、化学療法の使用から生じると思われる生殖管及び肝臓の対応する健常な組織への損傷を引き起こさない。CBDは、非形質転換細胞において非毒性であり、生理学的パラメータ(心拍数、血圧及び体温)、胃腸管の通過又は精神運動又は心理学的機能に影響を及ぼさない。CBDの長期使用及び最大で1,500mg/日までの用量は、ヒトにおいて十分に許容されると確立されている。
【0151】
更に、CBDが優勢な大麻抽出物は、乱用又は依存の可能性がない。これは、2018年11月にジュネーブ(スイス)で開催された世界保健機関の薬物依存に関する第41回専門家委員会の間に最も強調されたことである。会議の報告書の付録1は、「カンナビジオールは国際薬物管理規則内で計画されるべきではない」と述べている。カンナビジオールは、大麻及び大麻樹脂中に見出されるが、精神活性特性を有さず、乱用の可能性がなく、依存を生じる可能性がない。カンナビジオールは、重大な悪影響を有しない。
【0152】
オルガノイドの生存率に対するCBDを含む大麻抽出物の効力に対するpHの影響を見ることによって、更に興味深い観察を行った。図13を参照すると、pH並びにそれぞれ10μg/mLのBSHE及びCBDアイソレートによる処置の関数としての生存オルガノイド%が示されている。この一連の実験では、オルガノイドは、卵巣がん組織に由来した。興味深いことに、担体単独は、オルガノイドを破壊せず、したがってデータは図示されていない。抽出物の天然pHでは、10μg/mLのBSHEの存在下でのオルガノイドの産生は約2%に制限され、同量のCBDアイソレートの存在下では、約12%であった。しかし、pHが向上すると、pH12及び14において示されるように、効力の実質的な改善をもたらした。pHスケールのこの端点、物質は腐食性である傾向があり、14のpHでは、非常に腐食性であり、治療的使用に好適ではないアルカリ濃縮物である。実際、このようなpHは、等張性ではなく、膣内用途にも適切でもない。膣は、細菌のバランスを維持するために必要な酸性pHを有する。しかし、pHの強い改変は、タンパク質の変性又は他の問題をもたらすおそれがある。直ちに明らかなことは、緩衝させようとする最初の試みは、わずかであっても、より悪い結果をもたらしたことである。実際に、この試験において検査した2種の大麻抽出物はそれぞれ、pHを10.5から約10のpHに低下させることによって効力は小さくなった。更に、pHを再び8に低下させると、BSHEはオルガノイドを死滅させる点で天然pHのほぼ2倍弱くなった一方、CBDアイソレートは実質的に変化を示さなかった。中性pHである7のpHでさえも、変化はせいぜい最小である。
【0153】
そのような状況では、pHを更に低下させても、その変化は、通常、天然pHと比べて、一層良くないか又は実質的に変化がなかったので、治療効力の更なる向上には何らつながらない可能性が高いと思われる。代わりに、pHを4に更に低下させることによって、BSHE及びCBDアイソレートのそれぞれについて、生存率(%)の劇的な改善が観察され、こうして、それぞれが、1%未満の生存率となったが、これは、応答が一層悪くなる又は応答への実質的な変化がないという傾向を示す以前のデータに基づくと、予想外であった。したがって、大麻抽出物を供給する場合、とりわけ、大麻抽出物が膣内又は口腔粘膜内に供給される場合、pHを2~6に変更するために緩衝液を利用すると、その天然のpHにおいて大麻抽出物を与える場合と比較して、優れた応答をもたらす。好ましくは、大麻抽出物は、3.5~5.5のpH、より好ましくは4~5のpHを有する担体中で提供される。
【0154】
患者試料の概要:治療法を試験するためのオルガノイドの使用は、本発明者らは、他の種におけるアナログモデルに依存する代わりに、さまざまな治療法に対する応答を判定するために代表的な細胞を使用することができるので面白い。したがって、オルガノイドは、BSHE、又はCBDを含むFSHEと接触させると、さまざまな濃度にわたり破壊されたが、5、7、10又は20μg/mLという低い濃度であることが多いという結果が示される。これは、子宮内膜がんのさまざまなステージ及びグレードのいくつかの異なる患者において示され、すべて同じ成功率であった。これらの数をマウスモデルに変換することにより、同じ効力が確認され、腫瘍成長が停止し、腫瘍体積が総じて減少した。
【0155】
患者
グレード1の子宮内膜がんを有する患者が3名、グレード2の子宮内膜腺扁平上皮がんを有する患者が1名、グレード2の子宮内膜腺がんを有する患者が3名、グレード2の子宮内膜がんを有する患者が3名、グレード3の子宮内膜腺がんを有する患者が1名、及びグレード3の子宮内膜がんを有する患者が1名の、合計12名である。グレード2のがんを有する1名の患者は、未分化がんである。患者はすべて、39~80歳である。手術(子宮全摘出又は子宮全摘出両側卵管卵巣摘出)時に組織試料を採取し、病理学者が疾患を確認した。患者は、子宮起源の疑いのある骨盤塊を有すると診断された場合、連続的かつ予測的に含ませ、臨床的に疑わしい悪性子宮内膜成長の手術のために入院する。登録に適格であるためには、患者は18歳以上であること、及び計画された外科的介入を伴う子宮内膜がんの診断を有することを必要とする。47~56歳の女性の場合、1年の無月経として定義される閉経状態を確認する。47歳未満の患者は、閉経前と考え、56歳を超える女性は閉経後と考える。除外基準は、妊娠、慢性心不全、重度の慢性肝臓又は腎臓疾患などの重大な併発疾患、過去の両側卵巣摘出、骨盤子宮内膜症又は子宮腺筋症又は卵巣原発腫瘍、及びプロトコルの遵守を妨げる可能性のある重症な医学的又は精神医学的状態とした。
【0156】
一部の患者に関しては、ECの遺伝的基礎を確認するため、突然変異の検討を決定した。EC患者は5名で、ECをサンプリングして、以下の突然変異が生じた:患者1:ARID1A、HRAS、KMT2D、PTEN、TP53;患者2:KRAS、MSH6、PMS2、TP53;患者3:ERBB3、JAK1、PTEN、TP53;患者4:PIK3R1、POLE、PTEN、TP53;及び患者5:MAPK3、PIK3R1、PTEN、TP53。これらの患者の各々は子宮内膜がんを有する。
【0157】
生物学的試料の採集及び手術の前に、患者はすべて、完全な書面のインフォームドコンセントを提出することが求められる。手術後、腫瘍は、国際産婦人科連合(FIGO)基準にしたがって、診断、組織学、グレード及びステージ(I~IV)について、熟練した婦人科病理学者によって検査される。病期分類はまた、骨盤洗浄液を得て、両側骨盤及び傍大動脈リンパ節郭清を行うことによって行われる。リンパ節数は必要ではない。完全な外科的病期分類及び病理学的に確認された子宮内膜がんを有する患者だけを本検討に含める。
【0158】
実施形態
したがって、転移性子宮内膜がん性成長の治療的処置は、腫瘍サイズの縮小及び子宮内膜がん細胞の選択的破壊によって処置した。したがって、子宮内膜がんは、膣内用途としてのBSHE又はFSHEの施用によるCBDの膣内施用を介して処置することができる。しかし、用量は1日あたり数回繰り返すことができ、総用量は、1日あたり20~4250mgであってもよい。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEから25~1250mgの用量となるCBDが、少なくとも1日1回、投与される。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは、膣内用途のための担体として脂肪又は油を含む。少なくとも1種のテルペンを更に含む。
【0159】
膣内送達は、十分に検討されており、安全であり、有効であり、かつ十分に耐容されると考えられている。膣内送達は、胃腸管吸収を回避し、初回通過代謝を迂回する一方、局在効果及び安定した持続的治療滴応答を容易にする。膣上皮を介する吸収及び全身送達は、同様の親油性化合物を用いて迅速に行われる。膣上皮の厚さ、並びにpH、子宮頸部粘液の存在及び微生物叢を含む膣液特徴の変動は、吸収速度及び生体利用率に影響を及ぼし得る。
【0160】
直腸坐剤送達は、CBDの経口経路に対して、生体利用率の向上(51~60%)をもたらす。口腔粘膜又は舌下送達に関するデータは、CBDが1.6時間の最大血漿中濃度を有するが、これは一部の個体において遅延され得ることを実証している。経口CBDは約2.5~5時間の最大血漿中濃度を有するが、一部の個体の場合、最大で6時間まで遅延され得る。高脂肪食との同時投与により、最大5倍の濃度でCmaxが向上することが示された。高度に血管新生された鼻粘膜を介するCBDの送達は、急速な取り込み及びおよそ10分間のTmaxをもたらす。しかし、膣粘膜は、治療的処置のためには未だ利用されていない。したがって、膣内吸収によるCBD取り込みは、本明細書に詳述されるように、依然として日和見的な投与経路のままである。
【0161】
したがって、粘膜投薬、特に膣内投薬は、EC細胞の標的処置を可能にすることができる治療効力を有し、これは、局在化腫瘍及び転移腫瘍の両方を処置する。これらのデータは、ヒト患者内での更なる試験によって確認され、これは、CBDによる処置が、身体内で転移した化学療法抵抗性ECの低下に有効であることを示した。
【0162】
したがって、入院患者の処置は、全身に広がっていた子宮内膜がんの有病率の低下に有効であった。膣内による投与及び口腔粘膜投与は、PETスキャンによりがん細胞のサイズの完全な縮小を示した。したがって、第1の方法は、CBDを含む有効量の大麻抽出物を1日あたり5mg~5000mgの用量で、それを必要とする患者に投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法であって、用量が、経口、膣粘膜、口腔粘膜若しくは他の粘膜などの粘膜、皮膚又は別の形態、あるいはそれらの組み合わせを介して投与される方法を対象とする。
【0163】
したがって、転移性子宮内膜がん性成長の治療的処置は、腫瘍サイズの縮小及び子宮内膜がん細胞の選択的破壊によって処置した。膣内用途としてのBSHE又はFSHEの施用によるCBDの膣内施用によって治療され得る。しかし、用量は1日あたり数回、繰り返すことができ、総用量は、1日あたり20~500mgであってもよい。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEから25~250mgの用量となるCBDが、少なくとも1日1回、投与される。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは、膣内用途のための担体として脂肪又は油を含み、少なくとも1種のテルペンを更に含む。
【0164】
したがって、入院患者の処置は、全身に広がっていた子宮内膜がんの有病率の低下に有効であった。膣内による投与及び口腔粘膜投与は、PETスキャンによりがん細胞のサイズの完全な縮小を示した。したがって、第1の方法は、CBDを含む有効量の大麻抽出物を1日あたり5mg~5000mgの用量で、それを必要とする患者に投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法であって、用量が、経口、膣粘膜、口腔粘膜若しくは他の粘膜などの粘膜、皮膚又は別の形態、あるいはそれらの組み合わせを介して投与される方法を対象とする。
【0165】
好ましい実施形態では、BSHE又はFSHEは、50~99.9%のCBDを含む。したがって、10mg用量のBSHE又はFSHEは、5~9.9mgのCBDを含む。BSHE又はFSHEの残りの構成成分は、追加のカンナビノイド、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸及び植物栄養素を含む。CBDの濃度は、医薬組成物中で提供される場合、通常、医薬組成物の5~50mg/mLである。ある特定の組成物は、脂肪、油、MCT油、長鎖トリグリセリド油、超長鎖トリグリセリド油を含むが、これらに限定されない、追加の賦形剤及び成分を含む。β-ミルセン、β-カリオフィレン、リナロール、αピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトールを含むが、これらに限定されない、テルペン構成成分。ポリフェノールは、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン及びクロロゲン酸を含むことができるが、これらに限定されない。オメガ3、オメガ6、及びオメガ9脂肪酸、並びにトコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール及び特定のミネラルなどの追加の植物栄養素が存在してもよい。担体を含むこれらの構成成分は、本医薬組成物の90重量%まで構成することができるが、より好ましくは、CBDを含むCEは、本医薬組成物の1~90重量%を構成する。
【0166】
したがって、好ましい実施形態は、有効量の、CBDを含む薬学的に許容される組成物を患者に投与するステップを含む、子宮内膜がんを処置する方法であって、組成物がBSHE又はFSHEを含む、方法に関する。好ましい実施形態では、有効量とは、標的組織において少なくとも10μg/mLの濃度のBSHE又はFSHEを生成するのに有効な量のことである。更に好ましい実施形態では、有効用量は、1日あたり10~4250mgのCBDであり、当該CBDは、粘膜投薬により、BSHE又はFSHEなどのCEで提供される。本明細書における処置の方法は、不適切な病変、すなわち身体におけるその元の位置から移動した細胞をなくすのに有効である。更に、これらの方法は、親細胞に許容されない損傷を与えることなく、その正常な位置の外側の扁平上皮細胞又は親細胞の成長を停止又は遅延させる。
【0167】
更なる実施形態では、処置の方法は、腺がん、分泌性乳がん、繊毛がん腫、子宮頸部絨毛管状腺がん、扁平上皮がん、腺上皮細胞、扁平分化を伴う腺がん、腺扁平上皮がん、腺棘細胞腫、小細胞がん、移行上皮がん、漿液性がん、明細胞がん、膠様腺がん、未分化がん、脱分化がん、漿液性腺がん、子宮がん肉腫及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるがんを軽減及び処置するためのであってもよい。
【0168】
更なる実施形態では、処置の方法は、口腔粘膜、鼻粘膜、膣内投与又は直腸投与のうちの1つから選択される粘膜投与による薬学的に許容される組成物の施用によって、これらの疾患を処置するステップを含み、当該薬学的に許容される組成物が、CE、及び好ましくはBSHE又はFSHEの総重量の75~99%となるCBDを含むBSHE又はFSHEのうちの1つ、又はCBDアイソレート又はCBDAアイソレートを含む。好ましい実施形態では、有効量とは、標的組織において少なくとも10μg/mLの濃度のCBDを生成するのに有効な量のことである。更に好ましい実施形態では、有効用量は、1日あたり10~4250mgのCBDであり、当該CBDは、薬学的に許容される担体中のCEで提供される。好ましい実施形態において、併用療法は、膣内又は直腸投与に加えて、経口又は口腔粘膜治療薬を含む。
【0169】
好ましい実施形態では、膣内投薬のために穏やかとなるように、治療的投与のための組成物のオスモル濃度を改変することが有利である。更に好ましい実施形態では、通常、酸性である膣のpHにより適切に適合するよう、担体のpHを改変することが適切となることがある。したがって、好ましい実施形態は、膣内用途に好適な担体内で、酸性pH、好ましくは3.5~6を有する組成物である。
【0170】
経口投与の場合、生体利用率を向上するために高脂肪構成成分を添加するか、若しくはこれと同時投与すること、又は口腔粘膜へのCBDの吸収又は取り込みの速度を増大させるためにpH又はオスモル濃度を改変することが好適となることがある。
【0171】
したがって、子宮内膜がんの治療的処置は、腫瘍サイズの減少及び子宮内膜がん細胞の選択的破壊によって処置された。CBDを含むCEを投与することによって治療され得る。患者の必要性に基づいて、好ましくは、投与は、膣内、口腔粘膜、直腸、若しくは鼻道内などの粘膜投薬経路、又はこれらの投薬経路のうちの2つ以上を介する。用量は、3日に1回、2日に1回、1日に1回、毎日、又は1日に2回、3回、4回以上などの1日に数回、提供され得る。治療用量は、好ましくは1日あたり20~4250mgである。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEから25~1250mgの用量となるCBDが、少なくとも1日1回、投与される。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは、CEの投与を助ける担体を含む組成物の一部である。好ましくは、担体は、粘膜送達用担体としての脂肪又は油である。好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは、粘膜施用のための担体としての脂肪又は油を含む。別の好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは少なくとも1種のテルペンを含む。より好ましい実施形態では、FSHE又はBSHEは、膣内用途のための担体として脂肪又は油を含み、少なくとも1種のテルペンを更に含む。投与経路に基づいて、追加の賦形剤又は送達マトリックスが更に添加されてもよい。CEは、好ましくは、CEの重量の50~99.9%のCBDを含む。しかし、CEは、好ましくは、CBC、CBG、CBD、CBDA、CBDV、Δ-THCなどの少なくとも1種の追加のカンナビノイドを更に含み、1種の追加のカンナビノイドの全濃度は、0.1~49%である。更なる実施形態では、CEはまた、テルペン、ポリフェノール、脂肪酸又は植物栄養素のうちの少なくとも1種を含んでもよい。これらの各々は、好ましくは、大麻植物に由来し、抽出プロセスにより存在する。
【0172】
好ましい実施形態では、子宮内膜がんの処置は、化学治療剤、及びまたCBDを含むCEの両方による処置を含む。CEは、上記のように投与される。化学治療剤は、その通常の投与経路で投与される。しかし、化学治療剤は、好ましくは、その通常の用量と比較して低減された用量で投与される。低減した用量は、化学治療剤とCEとの間の求められた相乗作用に基づいて可能である。CEの投与は、任意の好適な経路によるものであってもよいが、好ましくは、口腔粘膜処置の場合、口腔及び咽喉におけるリンパ節に隣接して、CBDの高い生体利用率を可能にし、粘膜投薬による初回通過代謝を低減する。CEは、好ましくは、FSHE又はBSHEであり、CBDの濃度は、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60、65、70、75、80、85、90又は95%であり、FSHE又はBSHEの残りの部分は、少なくとも1種の追加のカンナビノイドをCEの0.1~40重量%の濃度で含む。最も好ましくは、FSHE又はBSHEは、少なくとも2種のカンナビノイドを含み、それぞれがCEの少なくとも0.1重量%の濃度を有する。最も好ましくは、追加のカンナビノイドは、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせのうちの1種以上である。
【0173】
ある特定の実施形態では、処置は、化学的感受性子宮内膜がんに適応される。このような場合、CBDだけを含むCEが、十分であり得るか、又は化学治療剤と一緒に投与されてもよい。ある特定の他の実施形態では、処置は、転移性化学療法感受性子宮内膜がんに適応され、子宮内膜がん細胞は、転移しており、子宮を越えて広がっている。ある特定の実施形態では、子宮内膜がんは、化学療法抵抗性がんである。
【0174】
ある特定の実施形態では、個別化医薬は、最適化された治療的処置を実現する際に重要な役割を果たし得る。したがって、子宮内膜がんを有する患者は、オルガノイドの作製のための組織試料を得ることができる。組織試料は、通常、生検又は切除されたがん性組織から採取される。次に、オルガノイドを成長させて、化学治療剤のパネルに対して試験を行い、最適化された処置計画を特定することができる。好ましい計画は、オルガノイドを根絶するために、CEと組み合わせて、できるかぎり低用量の化学治療剤を利用することである。その後、最適化された化学治療剤及びCEによる患者の処置は、最適化された治療的処置計画を実現する。本明細書中に記載されるように、化学治療剤は非常に毒性であり、化学療法ラウンドの量及び数を少なくする能力により、化学療法からの重大な副作用が低減され得るので、がん処置に対する有意な改善が実現される。
【0175】
好ましい方法では、大麻抽出物はBSHEである。好ましい方法では、BSHEは、50~99%のCBDと、少なくとも1種の追加のカンナビノイドとを含む。ある特定の実施形態では、BSHEは、少なくとも2種の追加のカンナビノイドを含む。更なる実施形態では、CEは、少なくとも3種の追加のカンナビノイドを含む。好ましい実施形態では、追加のカンナビノイドは、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0176】
ある特定の実施形態では、大麻抽出物は、少なくとも0.01~5.0%のΔ-THCを含むFSHEである。好ましい実施形態では、FSHEは、50~99%のCBD、及び0.01~0.3%のΔ-THCを含む。好ましくは、FSHEは、合計51~99.9%の総カンナビノイドを含み、Δ-THC、Δ-THC、Δ-THCV、THCV及びTHCVAを含むTHCの合計は、CEの0.1~10重量%を構成する。
【0177】
更に好ましい方法では、CEは、大麻抽出物に由来するCBDのアイソレートである。したがって、CBDアイソレートはCBDを濃縮するよう求められ、CBDはCEの70~99.9重量%で存在する。ある特定の好ましい実施形態では、CBDのアイソレートは、少なくとも1種の追加のカンナビノイドを更に含む。好ましい実施形態では、分離CBDは、CBN、CBDA又はその両方を0.1~10%の濃度で更に含む。
【0178】
THCとCBDのどちらも、非常に親油性であり、嚥下されると、6~10パーセントの低い経口生体利用率を有し、その量は特定の調製物によって増大させることができる。経口THC製剤は、さまざまな吸収を示し、広範な肝臓初回通過代謝を受け、吸入と比較してより低いピーク血漿THC濃度及びピーク濃度に到達するにはより長い開始(約120分)をもたらす。CBDの経口投与後、経口THCと同様の血漿中濃度-時間プロファイルが観察された。この状況に基づいて、経口用製剤は、吸入などの代替送達方法と比べ、治療血漿中濃度に達するために、より高い濃度が必要であり得るが、より長い期間にわたり症状軽減を必要とする患者にとって有用となり得る。更に、治療レベルのために一層高い投与量が必要とされる場合、広範な初回通過代謝のために、ある特定の肝臓毒性が存在することがある。
【0179】
しかし、カンナビノイドの経皮投与は、初回通過代謝を回避するが、カンナビノイドの極めて疎水性の性質及び高分子量は、真皮の水層を通過する拡散を制限する。この速度制限工程は、透過増強によって、又は送達ツールにおけるような分子の増強若しくは操作によって、又はプロドラッグとしてだけによって改変され得る。有効な皮膚輸送は、通常、透過増強によってのみ得られる。しかし、口腔粘膜、鼻粘膜、膣粘膜又は直腸粘膜のいずれかを介する粘膜輸送は、真皮層と比較して異なる特性を有しており、したがって、これらの組織にわたるより大きな拡散が可能となる。たとえそうであったとしても、ヒト皮膚を用いたインビトロ試験は、CBDの透過能がΔ-THC及びΔ-THCの透過能よりも10倍高いことを決定し、CBDが比較的親油性が低いことと一致する。これは、Δ-THCの場合に比較的利用することができない局所投与の機会をもたらし、これは、真皮皮膚層のバリア機能を克服するという全身拡散の課題のすべてを含まない粘膜投与の場合、更に改善されると思われる。
【0180】
口腔粘膜調製物は、口腔粘膜を介して迅速に吸収を受け(したがって、迅速な軽減を必要とする症状に有用である)、経口送達と比較してより高いが、大麻物質の吸入(喫煙)消費と比べ、低下した血漿中薬物濃度を生じる。しかし、口腔粘膜調製物を利用する場合でさえも、用量の一部が嚥下され、したがって胃を介して摂取され、したがって一部が標準的な経口用製剤になる。
【0181】
カンナビノイドは、良好に血管新生された器官(例えば、肺、心臓、脳、肝臓)に急速に分布し、その後にそれほど血管新生されていない組織に平衡となる。分布は、身体サイズ及び組成、並びに血液組織関門の透過性に影響を及ぼす疾患状態によって影響を受けることがある。したがって、血管新生の少ない器官を標的とする場合、分布及び取り込みは、他の器官と比べて減少し得る。これはまた、治療的処置の典型的な用途の場合のように胃又は口腔粘膜を単に介する代わりに、EC処置するため局所投与という意味合いを暗示する。
【0182】
CBDは、主にアイソザイムCYP450、CYP2C19及びCYP3A4、更に、CYP1A1、CYP1A2、CYP2C9及びCYP2D6によって肝臓により代謝される。7-ヒドロキシカンナビジオール(7-OH-CBD)がヒドロキシル化された後に、更なる肝臓での代謝及びその後の糞便があり、一層少ない程度で、尿、これらの代謝産物の排出がある。CBDは、THCと同様に、長い終末消失半減期を有することも報告されており、静脈内投薬後の平均半減期は24±6時間、及び吸入後は、31±4時間であると観察されている。CBDの毎日の反復経口投与の検討により、2~5日の範囲の排出半減期が導き出された。比較的長い排出半減期が、重度の使用者において観察され、脂肪組織などの深部区画からの遅い再分布に起因する。実際、THC及びCBDのどちらも、反復投与により脂肪組織に蓄積することが知られている。したがって、THC及びCBD濃度1μgl-1は、最後の大麻使用後の24時間を超えて、ヘビーユーザーの血液中で測定可能となり得る。
【0183】
用量-応答及び薬物-薬物相互作用情報が欠如している。酵素又は輸送体の阻害又は誘導による、THC及びCBDの両方と他の薬物との間の薬物動態学的相互作用、及び更には薬力学的薬物-薬物相互作用の可能性が存在する。CBDは、CYP450経路を介して代謝される薬物、具体的には酵素CYP3A4、CYP2C19及びCYP2D6と相互作用する薬物と競合する可能性がある。CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP1A2及びCYP2B6の基質を用いた場合、用量調整が必要となることがある。現在の文献は、20mg/kg/日の用量で臨床的に有意な薬物相互作用を実証している。1つの公開されたケーススタディは、10mg/kgの用量でワルファリンと有意な相互作用があると結論付けた。
【0184】
インビトロ試験により、CBDがP-糖タンパク質媒介性薬物輸送を顕著に阻害することが報告されており、CBDが潜在的に、他の同時投与された薬物の吸収及び体内動態に影響を及ぼし得ることを示唆する。リファンピシン(CYP3A4誘導因子)の同時投与は、CBDのピーク血漿中濃度を顕著に低下させたが、CYP3A4阻害剤であるケトコナゾールの同時投与は、ピーク血漿中薬物濃度をほぼ2倍にした。したがって、より高い血漿中濃度に達するために、又は治療レベルに達するように投与されるCBDの総量を低下させるために、CYP3A4阻害剤をCBDと同時投与することが有用となり得る。更に、インビトロでは、CBDは、CYP2C19酵素の強力な阻害剤であることが観察された。
【0185】
THCは、CB1受容体の部分アゴニストであり、大麻の中毒及び向精神作用が起こり得るメカニズムである。CBDはCB1受容体と結合しないので、THCは、不安、不快気分、鎮静、精神病症状、主観的中毒及び心拍数増加を誘発した一方、CBDは分子の対照試験においてゼロの有害作用となることを実証した。したがって、CBDは、THCに関連する中毒、依存又は離脱のリスクを有さない。CBDは、CB1受容体の強力なアンタゴニスト及びアロステリックモジュレーターであり、したがって、同時投与された場合にTHCの中毒性及び他の有害作用の一部を阻害する。したがって、CBDの同時投与は、THCに関連する有害な向精神作用及び心血管作用(頻脈)を低減することが報告されている。CBDは、報告によれば、疲労及び傾眠に関連しており、CNS活性薬との同時投与によって潜在的に悪化する。
【0186】
婦人科系がんの患者へのCBDの施用は、広域スペクトルCBDの膣内用途を特に標的とされる。とりわけ、手術後の患者には、切除によって完全に除去されなかった残存病変及び成長の両方を標的とするためだけでなく、転移性細胞の拡散を防止することによって転移性疾患に特異的に対処するために、又は身体全体に既に拡散したものを再排除するために、膣内広域スペクトルCBDが提供された。大麻抽出物の投薬及び投与に関すると、膣内用途は、がん細胞又はがん細胞の隣接部における取り込みによって婦人科系がんを特異的に標的とし、次いで迅速な全身取り込みをもたらすので、優れている可能性がある。これは、婦人科系器官への直接施用、並びに局在化したがん及び転移したがんの両方に達するための全身的影響をもたらす。ヒト試験において、これは、身体器官のいずれにおいても、以前に特定された腫瘍のすべてにおいて腫瘍体積を減少させるのに有効であった。
【0187】
患者への投与のための組成物の調製では、CEは、ある特定の実施形態では、追加の担体を必要とすることなく、投与することができる。したがって、患者への投与に好適な組成物は、任意の更なる担体又は賦形剤を含まないCEであってもよい。
【0188】
しかし、好ましい実施形態では、CEは、子宮内膜がんの処置のための組成物中に提供され、組成物は、大麻抽出物(CE)であって、組成物の1~99重量%及びそれらのうちのすべての割合を構成するCE、及び担体を含む。好ましい実施形態では、CEは、組成物の10~90重量%、又は20~90重量%、好ましくは40~80重量%を構成する。CEは、本明細書に詳述されるように、好ましくはBSHE、FSHE、CBDアイソレート又はCBDAアイソレートである。これらの異なるCE、BSHE、FSHE、CBDアイソレート又はCBDAアイソレートのそれぞれにおいて、それらは、CEの50~99.9重量%を構成し、残りはワックス、脂肪、脂肪酸などである。しかし、好ましい実施形態は、組成物の使用症例に応じて、組成物の1~99重量%の担体、及び好ましくは1種以上の追加の賦形剤を利用する。次いで、組成物は、通常、投与されるCBDの投与量(mg)に基づいて投与される。この場合、CBDのmgを満たすのに必要な組成物の量は、各CE内のCBDの量に依存する。
【0189】
したがって、子宮内膜がんの処置の方法は、膣内用途及び口腔粘膜用量との同時投与によって有効である。好ましい実施形態では、大麻抽出物は、50~100%のCBDを含み、残りは賦形剤であり、追加のカンナビノイド、テルペン、ポリフェノール、必須脂肪酸及び植物栄養素を更に含んでもよい。したがって、10mg用量のBSHE又はFSHEは、5~10mgのCBDを含む。
【0190】
好ましくは、組成物はCEを含み、CEは組成物の1~99.9重量%であり、最も好ましくは、組成物の50~99重量%である。CBDの濃度は、医薬組成物中で提供される場合、通常、医薬組成物の5~50mg/mLである。ある特定の組成物は、脂肪、油、MCT油、長鎖トリグリセリド油、超長鎖トリグリセリド油を含むが、これらに限定されない、追加の賦形剤及び成分を含む。β-ミルセン、β-カリオフィレン(ca.ryophyllene)、リナロール、αピネン、シトラール、D-リモネン、ユーカリプトールを含むが、これらに限定されない、テルペン構成成分。ポリフェノールは、カテキン、ケルセチン、カンフラビンA/B/C、ルチン及びクロロゲン酸を含むことができるが、これらに限定されない。オメガ3、オメガ6、及びオメガ9脂肪酸、並びにトコフェロール、ステロール、カロテン、脂肪族アルコール及び特定のミネラルなどの追加の植物栄養素が存在してもよい。担体を含むこれらの構成成分は、本医薬組成物の90重量%まで構成することができるが、より好ましくは、CBDを含むCEは、本医薬組成物の1~99.9重量%を構成する。
【0191】
したがって、好ましい実施形態は、子宮内膜がんの処置の方法であって、大麻抽出物を含む薬学的に許容される組成物の有効量を患者に投与するステップを含む方法に関する。好ましい実施形態では、有効量とは、標的組織において少なくとも10μg/mLの濃度のBSHE又はFSHEを生成するのに有効な量のことである。更に好ましい実施形態では、有効用量は、1日あたり10~1000mgのCBDであり、当該CBDは、大麻抽出物として提供される。好ましい実施形態では、大麻抽出物は、BSHE、FSHE、CBDアイソレート又はCBDAからなる群から選択される。好ましい実施形態では、大麻抽出物は、膣内用途により、経口的に、又は粘膜基質を介して患者に投与される。
【0192】
更に好ましい実施形態では、子宮内膜がんの処置の方法は、有効量の、BSHE又はFSHEに由来するCBDを患者に投与することを含む。好ましい実施形態では、有効用量は、標的組織において少なくとも10μg/mLの濃度のBSHE又はFSHEを生じるのに有効な用量である。更に好ましい実施形態では、有効用量は、患者に1日1回、2回、3回又はそれ以上の回数、投与される25~500mgのCBDであり、当該CBDは、膣内用途によって、又は経口若しくは口腔粘膜用途によって、又はそれらの組み合わせによって、大麻抽出物中で提供される。
【0193】
更に好ましい実施形態では、化学療法抵抗性子宮内膜がんの処置の方法は、大麻抽出物からの有効量のCBDを患者に投与するステップを含む。好ましい実施形態では、有効用量は、標的組織において少なくとも10μg/mLの濃度のBSHE又はFSHEを生じるのに有効な用量である。更に好ましい実施形態では、有効用量は25~500mgのCBDであり、当該CBDは、膣内、経口、若しくは口腔粘膜用途、又はそれらの組み合わせを介して大麻抽出物中で提供される。ある特定の実施形態では、患者は、最初に、その特定のがんに対する化学療法抵抗性について試験され、化学療法抵抗性が確認されると、有効量のCBDで処置する。
【0194】
好ましい実施形態では、大麻抽出物は、膣内投薬のための好適な担体及び賦形剤を含む薬学的に許容される組成物で提供され、大麻抽出物に由来する活性成分が、膣膜を通過して女性生殖系の標的組織に至り、全身への分布のための活性成分の全身取り込みを得る。
【0195】
ある特定の他の用途において、大麻抽出物処置を、進行中の放射線処置又は化学療法処置と同時投与することが好適となり得る。治療的同時投与は、効力を増加させる、かつ/又は用量を低減し、したがって化学療法処置に関連する毒性を低下させるのに好適であり得る。
【0196】
更に好ましい実施形態では、通常、酸性である膣のpHにより適切に適合するよう、担体のpHを改変することが適切となることがある。好ましくは、投与される組成物のpHは3.5~6であり、より好ましくは3.75~5.5である。
【0197】
定義
本明細書において使用する場合、「約」という用語は、それが使用されている数の数値の+5%又は-5%を意味する。したがって、約50%は、45%~55%の範囲を意味し、約20mgは、19mg~21mgを含む範囲を意味する、などである。
【0198】
「投与すること」とは、治療剤と併せて使用される場合、治療剤を対象に直接投与することを意味し、それによって、薬剤が標的に正の影響を及ぼす。治療薬物又は化合物を「投与すること」は、例えば、注射、経口投与、局所投与、粘膜投与によって、及び/又は他の公知技法と組み合わせて達成され得る。投与技法は、加熱、放射線、化学療法、超音波及び送達剤の使用を更に含むことができる。好ましくは、本開示において、投与は、経口、口腔粘膜/舌下及び/又は膣内用剤形による。そのような膣内形態は、通常、担体と共に膣に挿入されることが意図されており、活性成分は膣粘膜を通過する。活性成分はまた、嚥下される経口形態で提供されてもよい。別の経口形態は口腔粘膜用途であり、これは、多くの場合、舌下用途として提供され、これは最終的に嚥下されて胃に入るが、口内、例えば舌下に保持されることが意図されており、活性成分は嚥下される前に口腔粘膜を通過するか、又は唾液作用若しくは物質の能動的嚥下又はそれらの両方によって胃内を通過する。
【0199】
本明細書において使用する場合、「ブロードスペクトラムヘンプ抽出物」(BSHE)は、抽出物を精製するために、少なくともある程度の精製を受けた大麻属の植物に由来する組成物である。通常、BSHEは、60~99.9%のCBDと、0.1~40%のΔ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1種の追加のカンナビノイドとを含む。
【0200】
本明細書において使用する場合、「大麻抽出物」(CE)及び「CBDを含む大麻抽出物」は、大麻属の植物(ヘンプを含む)に由来する組成物である。通常、大麻抽出物はカンナビジオール(CBD)を含有し、より典型的には、CBDと、Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC、CBC、CBCA、CBG、CBGA、CBDA、CBDV、CBN、CBL及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加のカンナビノイドとの両方を0.1~40%で含む。本発明による大麻抽出物は、通常、カンナビジオールが富化されており、1~99.9%のCBD、好ましくは20~99.9%のCBD、より好ましくは50~99.9%のCBD、更により好ましくは70~99.9%のCBD、最も好ましくは90~99.9%のCBDを含んでもよい。フルスペクトラムヘンプ抽出物、ブロードスペクトラムヘンプ抽出物、CBDアイソレート、及びCBDAアイソレートは、CEの非限定例として、本明細書において利用される大麻抽出物の形態である。本出願の全体を通して、CBDという用語は、特定の量のCBDを含有するCE製品を意味するために、CEと互換的に使用されることが多い。他の場合には、読み手には明らかであるが、CBDとはCBDアイソレートを指し、これは、CEが処理されて、CBDを取り出してこれを単離し、CEの実質的にすべての他の構成成分を除去することを意味する。
【0201】
本明細書において使用する場合、「同時投与」とは、大麻抽出物及び化学治療剤を、72時間以下の間隔を空けて、好ましくは48時間以下の間隔を空けて、より好ましくは24時間以下の間隔を空けて、例えば12時間以下の間隔を空けて、6時間以下の間隔を空けて、4時間以下の間隔を空けて、3時間以下の間隔を空けて、2時間以下の間隔を空けて、1時間以下の間隔を空けて、30分以下の間隔を空けて、又は同時に投与することを意味する。
【0202】
本明細書において使用する場合、「同時に」とは、第1の製剤及び第2の製剤が患者に、72時間以下の間隔を空けて、好ましくは48時間以下の間隔を空けて、より好ましくは24時間以下の間隔を空けて、例えば12時間以下の間隔を空けて、6時間以下の間隔を空けて、4時間以下の間隔を空けて、3時間以下の間隔を空けて、2時間以下の間隔を空けて、1時間以下の間隔を空けて、30分以下の間隔を空けて、又は同時に投与されることを意味する。
【0203】
本明細書において使用する場合、「フルスペクトラムヘンプ抽出物」(FSHE)は、CBDと、0を超える、好ましくは0.01~5%、最も好ましくは0.01%~0.3%の量のΔ-THCとを含有する、大麻属の植物に由来する組成物である。FSHEは、追加のカンナビノイドを含み、少なくとも50~99%のCBD、少なくとも0.01~10%のTHC(Δ-THC、THCA、THCV、Δ-THC)、及びCEの重量の50%~99%の総カンナビノイドを含む生成物をもたらすことができる。
【0204】
本出願の目的のために、「ヘンプ」は、乾燥重量基準で0.3%以下のΔ--THC含有率を有する大麻植物である。
【0205】
「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤、アジュバント又は賦形剤を含むがこれらに限定されない構成成分が、製剤の他の成分と適合可能でなければならず、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0206】
本明細書中で使用される場合、用語「組成物」は、指定した成分を指定量で含む生成物、並びに指定した成分の指定量での組み合わせから直接又は間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。「医薬組成物」に関するこのような用語は、担体を構成する活性成分(複数可)及び不活性成分(複数可)を含む生成物、並びに任意の2種以上の成分の組み合わせ、複合体形成若しくは凝集から、又は1種以上の成分の解離から、又は1種以上の成分の他のタイプの反応若しくは相互作用から、直接又は間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。したがって、本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物(単数又は複数)及び薬学的に許容される担体を混合することによって作製される任意の組成物を包含する。
【0207】
本明細書において使用する場合、用語「薬剤」、「活性剤」、「治療剤」又は「治療薬」は、患者の望ましくない状態又は疾患を処置する、これらと戦う、これらを好転させる、予防する又は改善するために利用される化合物又は組成物を意味する。更に、用語「薬剤」、「活性剤」、「治療剤」又は「治療薬」は、本開示に記載されている大麻抽出物及び/又は追加剤を包含する。
【0208】
組成物の「治療有効量」又は「有効量」は、所望の効果を達成するために、すなわち、細胞機能の活性化、遊走、増殖、改変を阻害、遮断又は逆転させて、細胞の正常機能を保存するために計算された所定の量である。本明細書に記載されている方法によって企図される活性は、必要に応じて、医学的な治療的処置及び/又は予防的処置の両方を含み、本発明の組成物は、記載される状態のいずれかにおける改善をもたらすよう使用され得る。本明細書に記載されている組成物は、症状を示さないが特定の障害を発症するリスクがあるおそれがある健常な対象又は個体に投与され得ることも企図される。治療効果及び/又は予防効果を得るために本発明により投与される化合物の具体的な用量は、当然ながら、例えば、投与される化合物、投与経路及び処置される状態を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。しかし、選択された投与量範囲は、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではないことが理解されよう。本発明の化合物の治療有効量は、通常、生理学的に耐容される賦形剤組成物中で投与される場合に、治療的応答を達成するために有効な全身濃度又は組織中の局所濃度を実現するのに十分となるような量である。具体的には、この治療薬は、子宮内膜がんに関連するがん性成長及びそれに関連する転移性疾患の処置において有効となろう。
【0209】
本明細書において使用される用語「処置する」、「処置された」又は「処置すること」という用語は、治療的処置と予防的又は防止的手段の両方を指し、この場合、その目的は、望ましくない生理的状態、障害若しくは疾患を予防又は減速(軽減)させること、あるいは有益な若しくは所望の臨床結果を得ることである。本開示の目的のために、有益な結果又は所望の結果としては、症状の緩和、腫瘍のサイズの縮小などの状態、障害又は疾患の程度の減少;状態、障害又は疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと);状態、障害若しくは疾患の開始の遅延又はそれらの進行の緩徐;状態、障害又は疾患状態の改善;及び検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず寛解(部分的であるか全体的であるかにかかわらない)、あるいは状態、障害若しくは疾患の増強又は改善が挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
方法及び算出
患者由来オルガノイド
患者由来オルガノイドは、手術後に子宮内膜がん組織試料を採集することによって作製した。採集した組織を、氷上で、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)(Life Technologies、15070-063)を含むハンクス緩衝塩溶液(HBSS)(Hyclone、SH30031.02)に浸した。組織試料を、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)及び1%P/Sを用いてシェーカー(70rpm)上で、各洗浄につき15分間で3回、洗浄した。その後、組織試料を、あらかじめ滅菌した細胞培養フード内に入れたまま、滅菌ブレードを用いて細かく切り刻んだ。すべての切り刻んだ部分を、室温で約2.5時間、酵素(Accumax(商標)-Innovative Cell Technologies Inc.、AM105-500)により消化した。2.5時間後、消化後の組織の切り刻み物全体を、37℃の水浴中で更に45分間、TrypLE(商標)express(Gibco、12604-021)により、更なる酵素消化のために移した。この間、溶液を5分間隔で連続的に撹拌した。この後、消化後の組織の溶液を50mLのfalcon管上の70μmフィルターに通した。フィルターを除去し、細胞を含むフロースルーを5%FBS AD+++培地(1%ITS、2%B27、1%N2、25%WRN、hegf-50ng/mL、hfgf-10-100ng/mL、ニコチンアミド-1mM、N-アセチルシステイン-1.25mM、プリモシン-0.2%、エストロゲン-2nm、A8301-0.5μM及びY27632を含む)に採集した。この細胞懸濁液を室温で5分間、1000rpmで遠心分離し、計数のための細胞ペレットを得た。血球計数器で確認すると、細胞数を計算し、オルガノイド培養に処理した。最終的な細胞懸濁液をRBC混入について顕微鏡下で確認し、見出された場合、赤血球溶解緩衝液(Roche Diagnostics,11814389001)を使用してRBCを溶解した。ヒト患者から得られた子宮内膜がん細胞を成長させて、5%COを含む37℃の加湿チャンバ内に維持した。
【0211】
腹水試料に由来するオルガノイドをいくらか、異なる処理を行った。腹水を室温で10分間、1000rpmで遠心分離して細胞懸濁液を得た。次に、細胞懸濁液を赤血球溶解緩衝液(Roche Diagnostics、11814389001)で処理して、最終細胞懸濁液からRBCを除去した。
【0212】
患者由来オルガノイドを培養するために、2~3×10^3個の細胞を、ウェルあたり10μLのマトリゲル(5%FBS AD+++培地)中、事前加温(37℃)した96ウェルプレートにプレート培養した。個々の患者細胞オルガノイドを異なるプレートにおいて個別に培養した。交差汚染の機会を低減するため、個々の患者細胞を個別に取り扱った。細胞をマトリゲルと混合した後、10μLの液滴をウェルに入れ、5%COを含む37℃のインキュベーターに30分間、入れた。内部に細胞を有するマトリゲル液滴が固化すると、プレートを滅菌フード内に置き、マトリゲル液滴を200μLのオルガノイド成長培地に浸漬した。細胞を成熟オルガノイドへと14日間、成長させた。個々のCBD剤(広域スペクトル、フルスペクトル、CBDアイソレート及びCBDA)による処置、又は化学治療剤(パクリタキセル又はカルボプラチン)と組み合わせた処置は、通常、5日目に開始し、個々の薬物又は組み合わせ薬物を成長培地に添加した。ビヒクルのみの対照(薬物処理に使用される最高濃度の培養培地中のジメチルスルホキシド)を含めて、すべての処理を三連で行った。
【0213】
標準式:(M=m/MW1/V、式中、m=グラム単位の質量、MW=物質の分子量、及びV=リットル単位の希釈剤の体積)を使用して、いくつかのヒト等価用量を計算した。例えば、オルガノイドに54.35μMの薬物Xを投与する場合、100μL又は0.0001L(V)の溶質中に0.0032mgの薬物Xが必要である。これは、0.00005435M又は54.35μMの濃度に相当し、この場合、薬物XのMW=588.72g/mol及びm=0.0000032gである。
【0214】
96ウェルプレートを使用する場合、所与の用量をヒト投与量に変換するために、以下の式を使用する。96ウェルプレート中の単一ウェルの表面積は、0.32cmである。したがって、臨床用量当量(mg/m)は、以下の式により100mg/mである:臨床用量(mg/m)=(PDO投与量(mg)/培養プレートの表面積(cm))×100。オルガノイド用量をヒト用量に変換する2つの異なる方法を比較すると、2つの計算は、類似のヒト等価用量、例えば、10μg/mLの当量のオルガノイドの場合、約200mg/日を示す。
【0215】
IC50とは、細胞ベースの細胞毒性試験で薬物効力を決定するために、慣用的に使用されている50%阻害濃度のことである。特定の患者由来オルガノイドのIC50を決定するために、個々の患者オルガノイドを、上記のBSHE、FSHE、CBDアイソレート及びCBDAの各々により処理した。このような処理の結果を使用して、阻害剤(すなわち、特定の大麻抽出物)対正規化後の応答変数勾配に対する最小二乗回帰(Graphpad Prism9における)を使用することによって、個々のIC50を見出した。したがって、各カンナビノイド抽出物及び選択した患者由来オルガノイドのIC50を求めた。その後、CBDを有する大麻抽出物を化学治療剤と組み合わせて試験するために選択した患者由来のオルガノイドのそれぞれについて、オルガノイドを、化学治療剤単独で、又は特定の抽出物/オルガノイドの組み合わせ物について計算したIC50に等価な投与量のカンナビノイド抽出物と組み合わせた化学治療剤のいずれかで処理した。同じIC50用量を、化学治療剤の各漸増用量で投与した。とりわけ、オルガノイド中の各化学治療剤に関して投与される用量は、ヒト投与に好適な最大用量の当量未満である。このように、本発明者らは、CBDを含む所与の大麻抽出物及び低減した量の化学治療剤(パクリタキセル、ドキソルビシン又はカルボプラチン)の具体的なIC50を使用して、標準的なヒト用量の化学治療剤と同量のがん細胞死を得ることができるかどうかを判定することができた。
【0216】
細胞生存アッセイ
処理後のオルガノイドにおける細胞生存率を評価するために、CellTiter-Glo(登録商標)発光アッセイ(Promega#G7572)を使用した。簡単に説明すると、オルガノイド培養の14日目に、オルガノイドを内部に有する各ウェル中のマトリゲル液滴を、製造業者のガイドラインにしたがって、100μLの新しい成長培地及び100μLのCellTiter-Glo(登録商標)試薬に浸漬した。培地及びCellTiter Glo(登録商標)試薬しか含まないブランクウェル(細胞なし)も各プレートに含めた。次いで、プレートを110rpmのシェーカー上に室温で5分間、置き、細胞溶解を誘導し、続いて室温で25分間、置き、発光シグナルを安定化させた。CellTiter Glo(登録商標)試薬を添加した後の各工程は、暗所で行った。FLUOstar OPTIMAプレートリーダー(BMG Lab technologies、オッフェンブルク、ドイツ)で発光を測定した。処理値をビヒクル対照に対して正規化し、ビヒクル対照の百分率としてこれらの値をプロットすることによって解析を行った。Graphpad Prism9において最小二乗回帰を使用して、阻害剤対正規化後応答変数勾配によって、薬物のIC50値を求めた。
【0217】
患者由来異種移植片(PDX)マウスの作製
子宮内膜がん由来のヒト患者細胞を、100μL溶液に再懸濁した後、雌NOD/SCIDガンママウスに皮下注射した。腫瘍が目視可能なサイズに成長すると、すべてのマウスに、CBD剤を含む単一の大麻抽出物を、体重1kgあたり10~30mgの抽出物を単独で使用して、又はCBD剤を含む大麻抽出物を所与の化学治療剤と共に用いて腹腔内に注射し、この場合、所与の大麻抽出物を体重1kgあたり10~30mg/kgで投与し、パクリタキセルを体重1kgあたり最大で20mg/kg投与する、又はビヒクルを週3回、5週間まで投与した。腫瘍サイズを処置前に測定し、次いで、週2回、測定した。すべての処置群のマウスを、薬物注射後10週間まで、又は腫瘍体積が2500mmより大きく成長するまで生存させた。
【0218】
腫瘍サイズを、組織採集時に体重と共に測定した。安楽死させたマウスの体から、すべての腫瘍組織を注意深く取り出した。腫瘍組織試料を、組織学、プロテオミクス、ゲノミクス及び他の下流処理のために保存した。下流処理はすべて、NCI患者由来モデルリポジトリSOPに準拠して完了した。
【0219】
マウスPDXからヒトへの用量変換
米国食品医薬品局(FDA)は、動物用量のヒト用量への外挿が、mg/mで表されることが多い身体表面積(BSA)への正規化によってのみ正確に行われることを示唆している。ヒト等価用量(HED)は、以下の式を用いることによって、より適切に計算することができる:ヒト等価投与量(mg/kg)=マウスへの投与量(mg/kg)×(マウスK/ヒトK)。補正係数(K)は、種の平均体重(kg)をその身体表面積(m)で除算することによって推定される。例えば、ヒトの平均体重は60kgであり、身体表面積は1.62mである。したがって、ヒトの場合のK係数は、60を1.62によって除算することによって計算され、これは37であり、同じ方法でマウスのK係数を計算し、これは3である。ここで、動物又はヒトの用量の単位(mg/kgからmg/m)の交換は、BSAにしたがって、K係数を使用して行う:投与量(mg/m)=K×投与量(mg/kg)。
【0220】
本明細書に記載されている実施形態及び例示は、例として提示されていること、及び本発明は、具体的に開示されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上に説明されているさまざまな特徴の組み合わせ及び部分組み合わせの両方、並びに前述の説明を一読すると当業者に思い付くと思われる、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び変更例を含むものである。したがって、さまざまな組成物及び方法は、本明細書に詳述されるさまざまな方法及びシステムを実施するものによって理解されるように、実施形態の限定のうちの1つ又はすべてを含んでもよく、任意の順序で行われてもよく、又は異なる実施形態からの限定を組み合わせてもよい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
【国際調査報告】