(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】フェムト秒パルス顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20241024BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N21/64 E
G01N21/64 B
G02B21/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525748
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 NL2022050602
(87)【国際公開番号】W WO2023075597
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524156294
【氏名又は名称】フラッシュ パソロジー ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】ファン モーリック,フランク
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043EA01
2G043FA02
2G043FA03
2G043HA01
2G043HA09
2G043KA08
2G043KA09
2H052AA07
2H052AA09
2H052AC34
2H052AF25
(57)【要約】
フェムト秒パルス顕微鏡、好ましくは非線形顕微鏡、の為のシステム及び方法が開示されている。顕微鏡システムは、一連のフェムト秒パルスを含む1つのパルス列を提供する為のレーザ光源;及び、パルスの1以上のバーストを前記パルス列から選択する為のパルスピッカーを備えている。前記1以上のバーストの各々は複数の連続パルスを含む。前記1以上のバーストは、前記パルス列の前記パルスの25%未満、好ましくは15%未満、を含んでいてもよい。前記顕微鏡システムは、サンプルを、パルスの前記1以上のバーストで照らす為の光学系;並びに、パルスの前記1以上のバーストと前記サンプルとの相互作用によって生じる信号を検出する為の検出器を更に備えている。前記検出器は、前記1以上のバーストの各々について単一の信号を生成するように構成されていてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェムト秒パルス顕微鏡の為の方法であって、
フェムト秒レーザパルスを含む1つのパルス列からパルスの1以上のバーストを選択すること、ここで、前記1以上のバーストの各々は複数の連続パルスを含み、前記1以上のバーストは、前記パルス列の前記パルスの25%未満、好ましくは15%未満、を含む、
サンプルを、パルスの前記選択された1以上のバーストで照らすこと、及び、
パルスの前記1以上のバーストと前記サンプルとの相互作用によって生じる信号を検出すること、ここで、前記信号は、パルスの前記1以上のバーストのうちの1つに対応する、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記選択は、パルスのバーストを繰り返し選択することを含み、
前記方法は、
焦点スポットを前記サンプル上の異なる位置に移動させること、ここで、好ましくは、前記サンプル上の位置は、前記サンプルのターゲット領域におけるサンプルピクセルのラスターを画定し、各サンプルピクセルは、パルスの1つのバーストによって照らされる、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の画像ピクセルを含む1つの画像を決定すること、ここで、各画像ピクセルはサンプルピクセルに対応し、及び各画像ピクセルは、パルスの前記バーストと前記対応するサンプルピクセルとの相互作用によって生じる前記検出された信号に基づくピクセル値を有する、
を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成された顕微鏡システム、好ましくは非線形顕微鏡システム、であって、前記顕微鏡システムが、
一連のフェムト秒パルスを含む1つのパルス列を提供する為のレーザ光源;
パルスの1以上のバーストを前記パルス列から選択する為のパルスピッカー、ここで、パルスの前記1以上のバーストの各々は複数の連続パルスを含み、前記1以上のバーストは、前記パルス列の前記パルスの25%未満、好ましくは15%未満、を含む、
サンプル、好ましくは採取されたばかりの生検又は生きているサンプル、を、パルスの前記1以上のバーストで照らす為の光学系;並びに、
パルスの前記1以上のバーストと前記サンプルとの相互作用によって生じる信号を検出する為の検出器、ここで、前記検出器は、前記1以上の選択されたバーストの各々について単一の信号を生成するように構成されている、
を備えている、前記顕微鏡システム。
【請求項5】
前記パルスピッカーが、1バースト当たりのパルス数を変化させるように構成されていることができる、請求項4に記載の顕微鏡システム
【請求項6】
前記顕微鏡システムが、1パルス当たりのピーク強度を調整するように構成されていることができ、好ましくは、前記パルスピッカーが、1パルス当たりの前記ピーク強度を調整する、請求項4又は5に記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
前記パルスピッカーが音響光学変調器を備えている、請求項1~6のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項8】
前記パルスピッカーが、2~20個、好ましくは3~10個、より好ましくは4~8個、の連続パルスを有する1つのバーストを選択するように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項9】
前記パルスが、前記サンプルで測定された場合に、1パルス当たり少なくとも1nJ、好ましくは1パルス当たり少なくとも1nJ、より好ましくは1パルス当たり少なくとも2nJ、のエネルギーを有し;及び/又は、
前記パルスが、前記サンプルで測定された場合に、1パルス当たり10nJ以下、好ましくは1パルス当たり5nJ以下、のエネルギーを有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項10】
前記パルス長が、250fs以下、好ましくは100fs以下、である、請求項1~9のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項11】
前記レーザ光源が、1000~1200nm、好ましくは約1050nm、の波長を有する;又は、
前記レーザ光源が、700~900nm、好ましくは750~850nm、より好ましくは約800nm、の波長を有する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項12】
前記パルスピッカーが、パルスのバーストを繰り返し選択するように構成されており;及び、
前記光学系が、前記サンプルのターゲット領域をスキャンニングする為のラスタースキャナーを備えており、ここで、前記ラスタースキャナーは、前記ターゲット領域におけるピクセルの2次元ラスターを画定し、各ピクセルは、パルスの1つのバーストによって照らされる、
請求項1~11のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項13】
前記ラスタースキャナーが、ガルボ-スキャナーシステム又はMEMSミラーシステムを備えている、請求項12に記載の顕微鏡システム。
【請求項14】
前記パルスピッカーが、少なくとも0.1MHz、好ましくは少なくとも0.5MHz、より好ましくは1~5MHzの範囲、の周波数を有するバーストを繰り返し選択するように構成されているコントローラを更に備えている、請求項12又は13に記載の顕微鏡システム。
【請求項15】
前記ターゲット領域における各ピクセルについて、信号を前記少なくとも1つの検出器から受信するように構成されている、請求項12~14のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの検出器が光電子増倍管を備えている、請求項1~15のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの検出器が、第2の高調波信号、第3の高調波信号、自己蛍光信号及び/又は多光子信号を検出するように構成されている、請求項1~16のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項18】
前記パルスピッカーを、並びに好ましくは、前記ラスタースキャナーを、及び/又は前記少なくとも1つの検出器からのデータ取得を制御する為のコントローラ、好ましくはFPGA、を更に備えている、請求項1~17のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項19】
前記コントローラが、前記レーザ光源と同期されている、請求項18に記載の顕微鏡システム。
【請求項20】
顕微鏡システムの為の制御モジュール、好ましくはFPGA、であって、前記制御モジュールが請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、前記制御モジュール。
【請求項21】
コンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品は、請求項20に記載の制御モジュールによって実行されたときに、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されているソフトウェアコード部分を含む、前記コンピュータプログラム製品。
【請求項22】
請求項21に記載のソフトウェアコード部分を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、請求項20に記載の制御モジュールによって実行されたときに、前記制御モジュールが請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を実行させる、前記コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形顕微鏡に関し、特には、これに限定されるものではないが、フェムト秒パルス顕微鏡の為の方法及びシステム、並びにコンピュータシステムがそのような方法を実行することを可能にするコンピュータプログラム製品に関する。
【0002】
手術の間に及び内視鏡処置の間に、組織サンプル、例えば生検、を顕微鏡を用いて迅速に検査することが望ましい場合がある。このようにして、医師は、例えば、腫瘍の切除面がきれいであるかどうか、又はより大きな体積の切除が必要であるかどうかを判断しうる。場合によっては、医師は対象(例えば患者)の一部である生きたサンプル(living sample)を検査したい場合がありうる。これらの場合に、例えば固定、染色、又は例えば病理学の実践によって一般的な他の処理によるサンプルの調製は、典型的には不可能であるか、又は少なくとも望ましくない。その上、例えば該組織がまだ生きている為に又は他の検査目的の為の後で使用されうるように、該組織サンプルが検査の間に損傷しないことが要求される場合がある。
【0003】
しかしながら、これらの要件により、良好な顕微鏡画像を得る際に様々な課題がもたらされる。例えば、染色無しに十分なコントラストを得ることは、特に短時間において、典型的には困難であり、該組織が固定されていなかった場合には又はさもなければ生きている場合にはなおさらである。
【0004】
染色又は標識化がオプションでない場合にコントラストを高める為に様々なオプション、例えば多光子顕微鏡(multi-photon microscopy)又は非線形光学顕微鏡(non-linear optical microscopy)、が用いられてもよい。非線形光学顕微鏡法は、高次信号、例えば第2の高調波及び第3の高調波、の検出を包含する。しかしながら、高次信号は、高いピーク光強度又は長い積分時間(従って、長い取得時間)のいずれかを必要とする。高いピーク光強度は、例えば、多光子イオン化のような非線形損傷メカニズムを通じて、又はさもなければキャビテーションを通じて、該組織を損傷する危険性がある。低いピークパワーを使用する場合、積分時間における必要な増加により、より高い総光線量と組織を(過剰に)加熱するリスクとをもたらす。長い撮影時間は、ベッドサイド(bed side)での迅速な意思決定の為に必要な高速画像取得の要求には適合しない。その上、長い撮影時間はまた、特にはサンプルが固定されていない場合において、モーションアーチファクト(motion artifacts)を生じる場合がある。
【0005】
G.-J.Bakker et al.,‘Intravital deep-tumor single-beam 3-photon,4-photon,and harmonic microscopy’,eLife 11 (2022),e63776は、高強度赤外顕微鏡における高すぎる単一パルスエネルギーの悪影響(例えば、熱損傷)を記載し、それにより、より高い単一パルス強度を優先して繰り返し率(repetition rate)を下げることにより、該サンプルにおける平均エネルギーだけを下げる可能性が制限される。
【0006】
米国特許出願公開第US2018/0106729A1号明細書は、高速でラスター画像を得る為に4kHzの共振スキャナーを使用する、多光子顕微鏡の為のベッドサイド顕微鏡(bedside microscope)を記載する。しかしながら、許容可能な信号対ノイズ比を有する為に、0.1秒又は0.2秒の間隔で得られる4~8枚の連続画像が平均化される。これらの時間スケールでは、新鮮な生検(fresh biopsies)及び生きているサンプル(living sample)は典型的には動的な挙動を示し、従って、平均化により、空間分解能の低下が及び/又はアーチファクトの発生がもたらされる。
【0007】
欧州特許出願公開第EP2365338A1号明細書は、高精度の酸素濃度測定の為の時間分解蛍光顕微鏡(time-resolved fluorescence microscopy)、例えば時間分解多光子蛍光(time-resolved multi-photon fluorescence)を包含する時間分解蛍光顕微鏡、を記載する。
【0008】
国際公開第WO2021/210768A1号パンフレットは、多光子顕微鏡であって、該多光子顕微鏡が、パルスレーザから放出される光パルス列を時間ゲート検出の為の繰り返し率に下げる繰り返し率チューナーを備えている上記の多光子顕微鏡を記載する。
【0009】
B.R.Masters et al.,‘Mitigating thermal mechanical damage potential during two-photon dermal imaging’,Journal of Biomedical Optics 9:6 (Nov/Dec 2004) pages 1265~1270は、2光子励起蛍光顕微鏡法を記載し、赤外励起光の1光子吸収に関連付けられた熱損傷に関するものである。
【0010】
国際公開第WO2014/205413A2号パンフレットは、ファイバーレーザを用いた多光子イメージングに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故に、前述された欠点を低減又は少なくとも緩和するところの、サブミクロンの解像度を持つ大視野を有する高速顕微鏡システムが当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示における実施態様の目的は、前処理を全く行わないか又はほとんど行わないサンプルに対して、サブミクロンの解像度で大きな視野(少なくとも0.5×0.5mm2、好ましくは少なくとも1×1mm2)を持つ高速画像取得(好ましくは、1ピクセル当たりのドウェル時間(dwell time)1μs以下)を可能にするところの顕微鏡システム及び方法を提供することである。該システム及び方法は、コントラストを提供する為に、非線形信号、例えば、第2の高調波及び第3の高調波、自家蛍光、並びに多光子相互作用、を使用しうる。該システム及び方法は好ましくは、非破壊的であり、すなわち、それらは、該サンプルに全く損傷を与えず又は最小限の損傷しか与えない。
【0013】
第1の観点において、本発明は、顕微鏡システム、好ましくは非線形顕微鏡システム、に関しうる。該顕微鏡システムは、一連のフェムト秒パルスを含む1つのパルス列を提供する為のレーザ光源;及び、パルスの1以上のバーストを該パルス列から選択する為のパルスピッカーを備えている。該1以上のバーストの各々は複数の連続パルスを含む。該1以上のバーストは、該パルス列の該パルスの25%未満、例えば15%未満、を含みうる。該顕微鏡システムは、サンプルを、パルスの該1以上のバーストで照らす為の光学系(optics);並びに、パルスの該1以上のバーストと該サンプルとの相互作用によって生じる信号を検出する為の検出器を更に備えている。該検出器は、該1以上のバーストの各々について単一の信号を生成するように構成されていてもよい。
【0014】
該フェムト秒パルスは高強度パルスであってもよい。例えば、高開口数顕微鏡対物レンズ(high numerical aperture microscope objective)を有する顕微鏡の場合、該パルスは、サンプルで測定された場合に、1パルス当たり少なくとも0.1nJ、好ましくは1パルス当たり少なくとも1nJ、より好ましくは1パルス当たり少なくとも2nJ、のエネルギーを有しうる。同じパルス長を有するパルスの場合、1パルス当たりのエネルギーが高いほど、より高いピーク光強度に関連付けられており、より強い高次信号を可能にし、従って、信号対ノイズ比(signal-to-noise ratio)が高くなる。しかしながら、該パルスエネルギーは該サンプルへの(非線形の)損傷によって制限される場合がある。従って、1パルス当たり10nJ以下、好ましくは1パルス当たり5nJ以下、のエネルギーを有していてもよい。
【0015】
本開示において、パルスエネルギーは、特に明記されていない限り、該サンプルでのパルスエネルギーを云う。
【0016】
該パルス長は、250fs以下、好ましくは100fs以下、でありうる。許容可能な且つ最適な値は、システムの仕様、例えば、開口数(numerical aperture)、焦点サイズ、パルス長及び波長、によって異なりうる。一般的に、該サンプル中の非線形光-物質相互作用についての信号品質はピーク光強度と相関があるため、より長いパルス及び/又はより低い集光度のパルスはより高いパルスエネルギーを有していてもよく、逆に、より短いパルス及び/又はより高い集光度のパルスはより低いパルスエネルギーを有しうる。
【0017】
高い(ピーク)パルス強度を持つレーザを使用することによって、十分なコントラストをなお提供しながら、幾つかの画像を一緒にする(例えば、平均化する)必要性を排除し、高品質の高次画像が得られうる。ピクセル当たりわずか数パルスを有するバーストを選択することによって、該組織の過熱が避けられうる。典型的な実施態様において、連続的に移動するミラーを備えているラスタースキャナーにより、複数のピクセルが連続してレーザビームに曝露される。(該パルスピッカーがなければ該ピクセルを曝露したであろうパルスの数と比較して)1ピクセル当たりの少数のパルスのみを選択することによって、ピクセル当たりの曝露時間が制限され、モーションアーチファクト、例えばラスタースキャナーの連続的な動きによるモーションアーチファクト、例えばスミアリング(smearing)、が低減される。
【0018】
その上、複数の画像を一緒にする必要性を回避することによって、サンプルの動的な挙動によるアーチファクトが回避されることができる。このことはハンドヘルドシステムに更に関連し、ここで、高フレームレートが望まれ、及び取得ヘッドが画像取得の間に移動する可能性があり、それにより、異なる時点で取得された画像を一緒にすることが更に困難になる。ハンドヘルドスキャニング装置は、例えば外科手術の間に及び/又は内視鏡処置の間に、イン・シチュ(in situ)で顕微鏡検査を実行する場合がある。
【0019】
従って、本明細書において記載された顕微鏡システムは病理顕微鏡として使用されてもよく、ここで、該ラスタースキャナー及び光源が、単一のラスタースキャンにおいて(病理)画像を得ることができるように、十分な信号、及び該信号における十分なダイナミックレンジ(dynamic range)を生成するように構成されている。このようにして、固定化されていない組織の遅い動態(slow dynamics)が顕微鏡分解能に影響することはない。
【0020】
該サンプルは、例えば手術中の画像処理の間において前処理されていないサンプル、例えば、採取されたばかりの生検(freshly taken biopsy)又は生きているサンプル(living sample)、であることができる。
【0021】
幾つかの実施態様において、該レーザは、1000~1200nm、例えば約1050nm、の波長を有しうる。この波長範囲におけるレーザは比較的経済的である可能性がある。加えて、第3の高調波信号の検出の為には、光学素子、例えば対物レンズ、が一般的に、照明光に、並びに照明光の3分の1の波長を有する第3の高調波信号の両方において適している(例えば、透明である)必要がある。例えば、波長1050nmのレーザ光源を使用する場合に、350nm~1050nmの波長の為に適した光学素子が使用されることができる。波長350nm以上の為に適した光学素子、例えば高開口数対物レンズ、は典型的に、より短い波長、例えば300nm未満、の為に適したものよりもより経済的である。
【0022】
その上、水による光吸収は、1050nm付近で極小値を有し、及び波長が長くなるほど実質的に高くなる。生物学的サンプルは典型的には、かなりの量の水を含む故に、水によるエネルギー吸収を最小化することにより、組織の加熱が軽減される。より短い波長では、第3の高調波信号はスペクトルの紫外端へとシフトし、該サンプルによるより高い吸収を再びもたらし、従って信号が弱くなる。
【0023】
他の実施態様において、該レーザは、700~900nm、好ましくは750~850nm、より好ましくは約800nm、の波長を有しうる。これらの波長を有するレーザ光源は特には、第3の高調波信号を測定しないシステムの為に適している。約800nmでは、水による光吸収が1050nmよりも更に低く、照明光と第2の高調波信号との両方が可視スペクトル内にあるか又は可視スペクトルに少なくとも近く、適切な光学部品(センサーを含む)の入手性が一般的に良い。
【0024】
1つの実施態様において、該レーザ光源は、10~100MHzの範囲、好ましくは20~40MHzの範囲、のパルス繰り返し率(pulse repetition rate)を有しうる。該パルス繰り返し率は、サンプルの高速スキャンニングを可能にする為に十分に高速であるべきである。加えて、周波数が高いほど曝露時間が短くなり、従って、モーションアーチファクト(motion artifacts)が少ないか又は小さくなる。
【0025】
1つの実施態様において、該パルスピッカーは、1バースト当たりのパルス数を変化させるように構成されていることができる。このようにして、例えば組織タイプ又はスキャンニング深度に基づいて、該信号を最適化するようにサンプルの照明が調整されることができる。1バースト当たりのパルス数を調整することは、幾つかの信号タイプ、例えば第2の高調波信号、第3の高調波信号及び自家蛍光信号、の強度に直線的な様式で等しく影響する。
【0026】
1つの実施態様において、該顕微鏡システムは、1パルス当たりの該ピーク強度を調整するように構成されていることができる。1パルス当たりのピーク強度を調整することはまた、1パルス当たりのエネルギーに影響する。このようにして、例えば組織タイプ又はスキャンニング深度に基づいて、該信号を最適化するようにサンプルの照明が調整されることができる。1パルス当たりのピーク強度を調整することは、異なる信号タイプ、例えば第2の高調波信号、第3の高調波信号及び自家蛍光信号、に異なる様式で影響を与える。従って、1パルス当たりのピーク強度を調整することにより、あるタイプの信号が異なるタイプの信号に相対的に高められうる。
【0027】
幾つかの実施態様において、1パルス当たりのピーク強度はパルスピッカーによって調整されうる。このことにより、追加コンポーネント、例えばフィルタリングコンポーネント、の必要性が減少し、システムが簡素化され、そして、コストが削減される。
【0028】
1つの実施態様において、該パルスピッカーは、音響光学変調器を備えている。このことは、高速(典型的には、立ち上がり時間約10ns)で且つ十分な効率(典型的には、80%超の効率)でスイッチングすることができるパルスピッカーを実装する為の効率的で且つ経済的な様式である。音響光学変調器は、フェムト秒発振器によって生成されたパルス列から単一のパルスを選択するように容易に制御されてもよく、又は、多数の連続パルスを選択する為に使用されるこができる。その上、該音響光学変調器はまた、該パルスエネルギーを元のパルスエネルギーの0%から80%超で下げる為に使用されることができる。従って、単一の素子により、パルス列から任意の所定数のパルスを含む1つのバーストを選択すること、及び該選択されたパルス(selected pulses)のエネルギーを調整することの両方の為に使用されることができる。
【0029】
1つの実施態様において、該パルスピッカーは、パルスの1以上のバーストを該パルス列から選択するように構成されており、ここで、該1以上のバーストの各々は、2~20、好ましくは、3~10個、より好ましくは4~8個、の連続パルスを含む。バーストは、該パルス列から少なくとも1つの選択されていないパルス(non-selected pulse)によって互いに分離される。典型的には、十分な長さのパルス列の場合に、該選択されていないパルスの数は、該選択されたパルスの数と少なくとも同数である。典型的な例において、該レーザ光源は、約40MHz又は80MHzの周波数を有する。従って、ピクセルレートが1MHz(1μsのドウェル時間(dwell time)に相当する)である場合に、n個の連続パルスを含むバーストの後には、夫々、40-n個又は80-n個の選択されていないパルスが続く。
【0030】
一般的に、1バースト当たりのパルス数が少ないほど、顕微鏡システムの空間分解能が向上しうる。スキャナーの高速軸は典型的には、共振スキャナー(resonant scanner)として、又は連続振動モード(continuous oscillating mode)で動作するガルボミラー(galvo mirror)若しくはMEMSミラーとして実装されている故に、全ての光パルスは該サンプル内のわずかに異なるスポットを励起する。該バースト内の連続パルスによって生じた信号は通常、(検出器の特性により)互いに区別できない故に、このスミア効果は短いバーストで最小限に抑えられることができる。一方、パルス数が多いほど、照明が増加し、従って、信号強度が直線的な様式に変化させる。
【0031】
その上、典型的な光検出器、例えば光電子増倍管、は、複数のパルスが使用された場合に、より信頼性の高い信号を与えうる。これは、第2の高調波信号及び第3の高調波信号が、照明パルスと同じオーダーの持続時間、典型的には1ns以下、を有するという事実に起因する。その結果、該光電子増倍管内のピークに達した空間電荷がゲイン(gain)を飽和させ、ダイナミックレンジを狭め及び/又は非線形効果をもたらす場合がある。これにより、今度は、顕微鏡画像の定量的評価の可能性が低下する。
【0032】
1つの実施態様において、該少なくとも1つの検出器は、第2の高調波信号、第3の高調波信号、自己蛍光信号、及び/又は多光子信号を検出するように構成されている。このようにして、高コントラストの病理学的画像が、サンプルを調製すること無しに、特にはサンプルを染色する必要無しに、得られうる。
【0033】
1つの実施態様において、該パルスピッカーは、パルスのバーストを繰り返し選択するように構成されている。このことは、場合によってはサンプルの異なる部分を繰り返し観察することを可能にする。そのような実施態様において、該光学系は、サンプルのターゲット領域をスキャンニングする為のラスタースキャナーを備えていてもよい。該ラスタースキャナーは、ターゲット領域のピクセルの2次元ラスターを画定し得、ここで、各ピクセルは、好ましくはパルスの単一バーストによって、照射される。このようにして、該サンプルの2次元画像が、高い空間分解能と低い取得時間で取得されうる。この目的の為に、該顕微鏡システムは、ターゲット領域内の各ピクセルについて、少なくとも1つの検出器からの信号を受信するように構成されたコントローラを備えていてもよい。
【0034】
1つの実施態様において、該パルスピッカーは、少なくとも0.1MHz、好ましくは少なくとも0.5MHz、より好ましくは約1~5MHz、の周波数を有するパルスバーストを選択するように構成されている。この周波数はバースト周波数として言及されうる。該パルスピッカーの選択周波数は好ましくは、ラスタースキャナーによって定義される各ピクセルが単一のバーストで照らされるように選択される。従って、該パルスピッカーの周期は好ましくは、該スキャナーのピクセル当たりのドウェル時間(dwell time)に対応する。
【0035】
該検出器は、パルス繰り返し率よりも実質的に小さく、バースト周波数(又はスキャン速度)よりも大きい帯域幅を有するように構成されうる。例えば、該パルス繰り返し率が80MHzであり且つバースト周波数が1MHzである場合に、該検出器の帯域幅は1.5~20MHzの範囲でありうる。好ましくは、該検出器の帯域幅はバースト周波数よりもそれほど高くなく、例えば約1.5~4倍高く、例えば約2倍高い。このことにより、ノイズが抑制される。
【0036】
1つの実施態様において、該ラスタースキャナーは、ガルボ-スキャナーシステム(galvo-scanner system)又はMEMSミラースキャナー(MEMS mirror scanner)である。これらの種類のラスタースキャナーは、十分に高速であり、高い画像取得速度を可能にする。加えて、それらは、制御すること及びシステムへ実装することが容易であることができる。
【0037】
1つの実施態様において、該顕微鏡システムは、該パルスピッカーを、並びに好ましくは、該ラスタースキャナーを、及び/又は該検出器からのデータ取得を制御する為のコントローラ、好ましくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmable gate array)を更に含んでいてもよい。複数の構成要素を制御する為に単一のコントローラを使用することにより、これらの構成要素が容易に同期されうる。1つの実施態様において、該コントローラはレーザ光源と同期されている。このようにすることで、全ての関連コンポーネントが本質的に同期される。
【0038】
更なる観点において、本発明は、フェムト秒パルス顕微鏡(femtosecond pulsed microscopy)の為の方法に関しうる。本方法は、フェムト秒レーザパルスを含む1つのパルス列からパルスの1以上のバーストを選択することを含みうる。該1以上のバーストの各々は、複数の連続パルスを含む。該1以上のバーストは、該パルス列の該パルスの25%未満、例えば15%未満、を含む。該方法は更に、サンプルを、パルスの該1以上のバーストで照らすこと、及び、パルスの該1以上のバーストとサンプルとの相互作用によって生じる信号を検出することとを含む。該信号は、該1以上のバーストのうちの1つに対応する。
【0039】
1つの実施態様において、該選択は、パルスのバーストを繰り返し選択することを含む。そのような実施態様において、該方法は、焦点スポットを該サンプル上の異なる位置に移動させることを更に含みうる。好ましくは、該サンプル上の位置は、該サンプルのターゲット領域におけるサンプルピクセルのラスターを画定し、ここで、サンプルピクセルは、パルスの1つのバーストによって照らされる。
【0040】
1つの実施態様において、該方法は、複数の画像ピクセルを含む1つの画像を決定することを更に含み得、ここで、各画像ピクセルはサンプルピクセルに対応し、及び各画像ピクセルは、パルスの該バーストと該対応するサンプルピクセルとの相互作用によって生じる該検出された信号に基づくピクセル値を有する。
【0041】
これらの方法工程のうちの1以上は、上に記載されたような顕微鏡システムによって実行されてもよい。結果的に、前述された顕微鏡システムは、これらの方法工程のうちの1以上を実行するように構成されうる。
【0042】
本開示の1つの観点は、上に記載されたような顕微鏡システムの為の制御モジュール、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、に関する。該制御モジュールは、上に記載された1以上の方法工程を実行するように、又は該1以上の方法工程を該顕微鏡システムに実行させるように構成されうる。幾つかの実施態様において、該制御モジュールは、コンピュータ可読記憶媒体であって、該コンピュータ可読記憶媒体に埋め込まれたコンピュータ可読プログラムコードを有する上記コンピュータ可読記憶媒体と、該コンピュータ可読記憶媒体に接続されたプロセッサ、好ましくはマイクロプロセッサ、とを備えていてもよく、ここで、該コンピュータ可読プログラムコードの実行に応答して、該プロセッサは、本明細書において記載された方法のいずれかを実行するように構成されている。
【0043】
本開示の1つの観点は、少なくとも1つのソフトウェアコード部分、又は少なくとも1つのソフトウェアコード部分を記憶するコンピュータプログラム製品を含む、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムスイートに関し、ここで、該ソフトウェアコード部分は、例えば上に記載されたようなコンピュータシステム、例えば制御モジュール、上で実行されるときに、本明細書において記載された方法のいずれかを実行するように構成されている。
【0044】
本開示の1つの観点は、少なくとも1つのソフトウェアコード部分を記憶する非一過性のコンピュータ可読記憶媒体に関し、ここで、該ソフトウェアコード部分は、コンピュータによって実行又は処理されるときに、本明細書において記載された方法のいずれかを実行するように構成されている。
【0045】
当業者には理解されるように、本発明の観点は、システム、方法又はコンピュータプログラム製品として具現化されうる。従って、本発明の観点は、完全にハードウェアの実施態様、完全にソフトウェアの実施態様(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を包含する)、又はソフトウェアの観点とハードウェアの観点とを組み合わせた実施態様の形態をとってもよく、これらは全て、本明細書において一般的に、「回路」、「モジュール」又は「システム」として言及されうる。本開示において記載された機能は、コンピュータのマイクロプロセッサによって実行されるアルゴリズムとして実装されてもよい。その上、本発明の観点は、その上に具現化された、例えば記憶された、コンピュータ可読プログラムコードを有する1以上のコンピュータ可読媒体において具現化されたコンピュータプログラム製品の形態をとってもよい。
【0046】
1以上のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用されてもよい。該コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体であってもよく、又はコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。コンピュータ可読記憶媒体は例えば、電子式、磁気式、光学式、電磁式、赤外線式、又は半導体式の、システム、装置若しくはデバイス、又はこれらの任意の適切な組み合わせであってもよいが、これらに限定されるものでない。該コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(網羅的でないリスト)は、1以上のワイヤを有する電気接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)、リードオンリーメモリ(ROM:read-only memory)、消去可能なプログラム可能なリードオンリーメモリ(EPROM:erasable programmable read-only memory、又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM:compact disc read-only memory)、光学記憶装置、磁気記憶装置、又は前述したものの任意の適切な組み合わせを包含する。本明細書の文脈において、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置若しくはデバイスによって、又はそれらに関連して使用する為のプログラムを含む又は記憶することができるところの任意の有形媒体であってもよい。
【0047】
コンピュータ可読信号媒体は、例えば、ベースバンドにおいて又は搬送波の一部として、その中にコンピュータ可読プログラムコードが具現化された伝搬データ信号を含んでいてもよい。そのような伝搬信号は、電磁気的、光学的、又はそれらの任意の適切な組み合わせを包含するがそれらに限定されない、様々な形態のいずれかを取ってもよい。コンピュータ可読信号媒体は任意のコンピュータ可読媒体であってもよく、該任意のコンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読記憶媒体でなく、及び命令実行システム、装置又はデバイスによって、又はそれらに関連して使用する為のプログラムを、通信、伝播又は伝送することができる。
【0048】
コンピュータ可読媒体上に具現化されたプログラムコードは、無線、有線、光ファイバ、ケーブル、RF等、又は前述の任意の適切な組み合わせを包含するがこれらに限定されない、任意の適切な媒体を使用して伝送されてもよい。本発明の観点の為の動作を実行する為のコンピュータプログラムコードは1以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されていてもよく、該プログラミング言語は、関数型又はオブジェクト指向プログラミング言語(例えば、Java(登録商標)、Smalltalk、C++等)、及び慣用的な手続き型プログラミング言語、例えば、「C」プログラミング言語又は類似のプログラミング言語、を包含する。該プログラムコードは、完全にユーザのコンピュータ上で実行されてもよく、一部はユーザのコンピュータ上でスタンドアロンソフトウェアパッケージとして実行されてもよく、一部はユーザのコンピュータ上で実行し且つ一部はリモートコンピュータ上で実行されてもよく、又は完全にリモートコンピュータ、サーバ若しくは仮想化されたサーバ上で実行されてもよい。後者のシナリオでは、リモートコンピュータは、任意のタイプのネットワーク、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)若しくはワイドエリアネットワーク(WAN:wide area network)を包含する上記の任意のタイプのネットワーク、を通じてユーザのコンピュータに接続されてもよく、又は(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通じて)外部のコンピュータに接続されてもよい。
【0049】
本発明の観点が、本発明の実施態様に従う、方法、機器(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して以下において説明される。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック、並びにフローチャート図及び/又はブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実装されることができることが理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、又は他のプログラム可能なデータ処理機器のプロセッサ、特にはマイクロプロセッサ又は中央処理装置(CPU:central processing unit)、又はグラフィック処理装置(GPU:graphics processing unit)、に提供されて、該コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理機器、又は他の装置のプロセッサを介して実行される命令がフローチャート図及び/又はブロック図の1つのブロック又は複数のブロックにおいて指定された機能/行為を実装する為の手段を作成するように、機械を生成しうる。
【0050】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ可読媒体中に記憶され、該コンピュータ可読媒体中に記憶された命令が、フローチャート図及び/又はブロック図の1つのブロック又は複数のブロックにおいて指定された機能/行為を実装する命令を含む製造品を製造するように、該コンピュータプログラム命令は、該コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理機器、又は他の装置に特定の様式で機能するように指示することができる。
【0051】
該コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置、又は他の装置上にロードされて、該コンピュータ、該他のプログラム可能な処理装置、又は該他の装置上で一連の動作工程を実行させ、該コンピュータ又は該他のプログラム可能な処理装置上で実行される命令が、フローチャート図及び/又はブロック図の1つのブロック又は複数のブロックにおいて指定された機能/行為を実装する為のプロセスを提供するように、コンピュータに実装されたプロセスを生成しうる。
【0052】
図中のフローチャート及びブロック図は、本発明の様々な実施態様に従うところの、システム、方法及びコンピュータプログラム製品のありうる実装のアーキテクチャ、機能性及び動作を図示する。これに関して、フローチャート図又はブロック図の各ブロックは、指定された1以上の論理機能を実装する為の1以上の実行可能命令を含む、コードのモジュール、セグメント又は部分を表しうる。幾つかの代替的な実装において、該ブロックにおいて記載された機能は、図において記載された順序から外れて生じうることにまた留意されるべきである。例えば、連続して示されている2つのブロックは、事実、実質的に同時に実行されてもよく、又は該複数のブロックは、関与する機能に依存して、時には逆の順序で実行されてもよい。ブロック図及び/又はフローチャート図の各ブロック、並びにブロック図及び/又はフローチャート図における複数のブロックの組み合わせは、指定された機能又は行為を実行するところの特別な目的のハードウェアベースのシステム、又は特別な目的のハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって実装されることができることにまた留意されたい。
【0053】
その上、本明細書において記載された方法を実行する為のコンピュータプログラム、並びにコンピュータプログラムを記憶する非一過性のコンピュータ可読記憶媒体が提供される。コンピュータプログラムは例えば、既存のデータ処理システムにダウンロードされてもよく(更新されてもよく)、又はこれらのシステムの製造に応じて記憶されてもよい。
【0054】
特定の実施態様について又は特定の実施態様に関連して論じられる要素及び観点は、明示的に別段の記載がない限り、他の実施態様の要素及び観点と好適に組み合わされてもよい。本発明の実施態様は、本発明に従う実施態様を概略的に示す添付図面を参照して更に説明されるであろう。本発明は、これらの特定の実施態様に何ら限定されないことが理解されるであろう。
【0055】
本発明の観点が、添付の図面において示されている例示的な実施態様を参照してより詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、1つの実施態様に従う顕微鏡システムを概略的に図示する。
【
図2】
図2A~
図2Dは、1以上の連続パルスを含む1つのバーストを選択することを概略的に図示する。
【
図3】
図3は、サンプルの照明に対するパルスピッカーの影響を図示する。
【
図4】
図4は、レーザ光源とラスタースキャナーとの両方に同期されるところの、パルスピッカーの制御信号を図示する。
【
図5】
図5は、検出器によって生成された信号に対するパルスピッカーの効果を図示する。
【
図6】
図6は、パルスエネルギーと画質の関係を図示する。
【
図7】
図7は、1つの実施態様に従うフェムト秒パルス顕微鏡の為の方法を図示する。
【
図8】
図8は、本願において記載されている方法及びソフトウェア製品を実行する為に使用されうる例示的なデータ処理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
[詳細な説明]
本開示における実施態様は、コントラストの為に非線形光学系を使用して、準備されていないサンプル、例えば新鮮な生検又は生きている組織、の高速画像を得る為の方法を記載する。非線形光学系は例えば、第2の高調波、第3の高調波、自家蛍光、及び多光子相互作用を包含しうる。従って、本実施態様は、手術及び/又は内視鏡検査の間に高解像度の(病理)画像を得ることを可能にし、病理学的情報に基づいて手術及び/又は内視鏡処置が調整されることを可能にする。本明細書において与えられている実施例は病理学的用途に主に向けられたものであるが、他の用途、例えば工業的品質管理、が排除されるものでない。
【0058】
図1は、1つの実施態様に従う顕微鏡システムを概略的に図示する。顕微鏡システム100は、フェムト秒レーザ、例えばモードロックチタン(Ti):サファイアレーザ(mode-locked Ti:sapphire laser)又はYbファイバーレーザ(Yb fibre laser)、を備えている光源102を備えている。現在、好適なレーザ光源は典型的には、10~100MHz、例えば約80MHz、の繰り返し率を有するパルス列126を生成する。後述されているように、繰り返し率が高いほど、サンプルの照明強度をより細かく選択することをもたらしうる。
【0059】
適切なレーザ光源の選択は、幾つかのトレードオフを含みうる。一般的には、各パルスのピーク強度が高いほど、非線形光学系信号がより強くなる。例えば、第2の高調波はピーク強度の2乗でスケールされ、第3の高調波はピーク強度の3乗でスケールされる。しかしながら、ピーク強度が高すぎると、サンプル110に、所謂、非線形損傷(non-linear damag)をもたらしうる。一方、ピーク強度が低すぎる場合には、十分な画質を得る為に、より長い照明時間が必要であり得、それは、パルス(従って、1パルス当たりのエネルギーがより高い)をより長くすることによって及び/又は1ピクセル当たりパルス数をより多くすることによって得られうる。このことは、今度は、該組織の過熱による熱損傷をもたらしうる。組織損傷が生じるエネルギーは、なかんずく、組織の種類、パルス強度、パルス持続時間、波長、開口数、及び焦点サイズに依存しうる。典型的には、1パルス当たりのエネルギーは少なくとも0.1nJ、好ましくは約1~5nJの範囲、であるべきである(サンプルで測定された)。パルス持続時間は250fs未満、好ましくは100fs未満、である。しかしながら、他の用途では、異なるパラメータを使用しうる。特には、熱損傷が問題とならない用途において、画質を最適化する為に、はるかに広いパラメータ範囲が考慮されてもよい。生物学的サンプルをイメージングすることの典型的な例において、開口数1を有するシステムと波長1050nmを有するレーザ光源とが、100fs未満のパルス時間及び1パルス当たり約1nJのエネルギーを用いて使用されてもよい。
【0060】
同様に、レーザ光源の波長は、顕微鏡システムの想定される使用に基づいて選択されうる。生物学的サンプル(病理学的サンプルを包含する)は典型的には、高い水分含有量を有する。それ故に、最大透過深度を増加させる為に及びサンプルによるエネルギー吸収を減少させる為には、低い水吸収を有する照明波長、例えば約800nm又は1000~1200nm、好ましくは約1050nm、を選択することが有益でありうる。水の吸収スペクトルは、およそ800nmで最小を有し、及びおよそ1050nmで極小を有する。
【0061】
該第2の高調波信号は照明波長の半分である波長を有し、及び該第3の高調波信号は照明波長の3分の1である波長を有する。従って、800nmの照明波長の場合に、該第2の高調波信号の波長は400nmであり、及び該第3の高調波信号の波長は267nmである。後者は電磁スペクトルの(中)紫外部分にあり、及びサンプルによる高い吸収を有してもよく、弱い信号をもたらす。加えて、標準的な光学部品は紫外光に適していない場合があり、好適な部品は可視光の為に最適化された部品よりもより高価でありうる。
【0062】
従って、第3の高調波信号を測定するように構成されていない顕微鏡システムにおいて、約800nmの波長を有するレーザ光源が使用されうる。第3の高調波信号を測定するように構成された顕微鏡システムにおいて、レーザ光源はおよそ1050nmの波長を有する光を生成しうる。その場合に、該第2の高調波は525nmの波長を有し、及び該第3の高調波は、350nmの波長を有する。これらの波長は、典型的な生物学的サンプルによる相対的に低い吸収を有する。その上、350~1050nmの範囲で透明である光学部品が使用されてもよく、それは(より深い)赤外線又は紫外線の範囲において使用する為の光学部品よりも簡単に入手可能である及び/又はより経済的である傾向がある。
【0063】
レーザ光源の下流にあるパルスピッカー104は、パルス列126から1以上の連続レーザパルスを含むバースト122を選択する。一般的に、1バースト当たりの最適なパルス数は、とりわけサンプル、イメージング深度、繰り返し率、及び1パルス当たりのエネルギーに依存する。バーストは、1~20個、好ましくは2~10個、より好ましくは4~8個、の連続パルスを含みうる。バーストは、パルス列から少なくとも1つの選択されていないパルス(non-selected pulse)によって互いに分離される。
【0064】
典型的には、十分な長さのパルス列の場合に、選択されていないパルスの数は選択されたパルスの数と少なくとも同程度である。好ましくは、該バーストは相対的に短く、すなわち、選択されたパルスの割合はパルスの総数と比較して相対的に低く、例えば、パルスの総数の30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、である。
【0065】
該パルスピッカーは、音響光学変調器(AOM:acousto-optic modulator)140を備えていることができる。該音響光学変調器は、音響源142、例えばピエゾ素子(piezo element)、によって駆動されうる。レンズ144は、音響光学変調器内の該レーザパルスを集光しうる。典型的には、1次回折信号は(first-order diffracted signal)パルス列126からパルス122を選択する為に使用され、一方、0次非回折信号(zeroth-order non-diffracted signal)は選択されていないパルス124を含む。
【0066】
音響光学変調器は、例えば、TeO2結晶、溶融シリカ、又は水晶を含むことができる。他の好適な音響光学変調器は当技術分野において知られている。該音響光学変調器は、20~400MHz、例えば約250MHz、の音響周波数を有することができる。
【0067】
音響光学変調器は、迅速(典型的には、約10nsの立ち上がり時間)且つ高効率(典型的には、選択されたパルスの効率は80%超、及び選択されていないパルスの効率は実質0%)に切り替えることができるパルスピッカーを実装する為の効率的且つ経済的な様式である。音響源のオンとオフとを切り替えることによって、フェムト秒発振器によって生成されたパルス列から、多数の連続パルス、又は単一パルスを選択するように音響光学変調器が簡単に制御されうる。ポッケルス・セル(Pockels cell)は、理論的には、レーザ・バンドルの送信と遮断との間で迅速且つ正確に切り替える為に使用されることができるが、ポッケルス・セルを動作させる為に必要な高い駆動電圧により、MHzの周波数での切り替えの為にはあまり適していない。光学MEMSスイッチ、例えばミラーに基づく光学MEMSスイッチ、は、MHzの周波数でスイッチングするには、現在のところ遅すぎる。しかしながら、それらは、より遅いシステムにおいて使用出来る可能性がある。より高速なスイッチが利用可能である場合には、それらがまた使用されうる。
【0068】
フェムト秒パルスは必然的にかなりのスペクトル幅を有し、音響光学変調器は本質的に回折格子(音響波の波長を回折格子周期とする)である為に、「選択された」ビームとして使用される回折光ビームは歪みうる。この歪みは、該フェムト秒パルスにおける異なる波長に対する回折角における違いによるものであり、レーザ・バンドルの分散をもたらす。該歪みは、該レーザビームの形状及び集光する特性に影響を与える場合がある。
【0069】
該分散は、少なくとも部分的には、分散プリズム146を用いて補償されうる。250MHzの音響周波数を有するTeO2音響光学変調器が使用される場合に、SF11ガラス製の正三角形分散プリズムが分散補償の為に使用されうる。該分散プリズムは、該音響光学変調器の上流又は下流に配置されうる。しかしながら、該分散プリズムが該音響光学変調器の上流に配置される場合に、該音響光学変調器の効率が向上することが分かっている。溶融シリカ又は石英をベースとした音響光学変調器は、TeO2をベースとした音響光学変調器よりもレーザビームにおける小さい分散をもたらし、分散補正の為の必要性を低減又は無くす。一方、TeO2をベースとした音響光学変調器は、選択されたパルスの回折角が大きく、該選択されたパルスと該選択されていないパルスとの分離が容易になる。
【0070】
該システムは、1パルス当たりのピーク強度、従って、1パルス当たりのエネルギー、を調整する、好ましくは動的に調整する、為のエネルギーフィルタを更に備えていてもよい。このようにして、該ピーク強度又はエネルギーは、例えば該サンプルの種類及びイメージング深度に基づいて最適化されうる。該パルスピッカー及び該エネルギーフィルタは同じコンポーネント(又は、コンポーネントのグループ)、例えば上述されたような音響光学変調器に基づくパルスピッカー、であることができる。
【0071】
従って、該音響光学変調器は同時に、動的に調整可能なパルスピッカーとして、及び動的に調整可能なフィルターとして機能しうる。これにより、相対的に簡単で、操作しやすい様式で、1バースト当たりのパルス数と1パルス当たりのピーク強度又はエネルギーの両方を変えることを可能にする。慣用的なフェムト秒レーザ顕微鏡システムは、バックスイープ(backsweep)の間に、例えばポッケルス・セル(Pockels cell)を使用して、サンプルの照明をオフにする手段を備えていてもよい。しかしながら、上述されているように、ポッケルス・セルは、パルスピッカーとして機能する為に十分に高い率で切り替えられることができない。例えばポッケルス・セルに比べて、音響光学変調器ははるかに高い率でオン及びオフを切り替えられることができる。
【0072】
それにもかかわらず、他の実施態様は、パルスピッキングとエネルギー調整との為に別々の装置を使用してもよい。
【0073】
図示されたシステムは、二次元ラスタースキャナー106、典型的にはパルスピッカーの下流にある二次元ラスタースキャナー106、を更に備えている。該ラスタースキャナーは、一対のガルボミラーを備えているガルボスキャナーを備えていてもよい。他の実施態様は、異なるラスタースキャナー、例えば、MEMSミラーに基づくラスタースキャナー、又は共振ミラーに基づくラスタースキャナー、を使用してもよい。
【0074】
該システムは、該パルスをサンプル110に集光する為の対物レンズ108を更に備えている。該対物レンズは好ましくは、小さな焦点スポットを可能にする為に高開口数、例えば1以上の開口数、を有する。開口数が大きいことにより、焦点スポットサイズが小さくなり、従って空間分解能が高くなり、及びピーク光強度が高くなり、従って信号強度が高くなる。
【0075】
該システムは、サンプルによって反射された光及び/又は該サンプルを通過した光を検出する為の1以上の検出器112、114及び116を更に備えている。該光は、例えば部分反射ミラー(partially reflective mirror)113及び/又はダイクロイックミラー(dichroic mirror)115を用いて分割されうる。例えば、該システムは、該対物レンズとは反対側のサンプルで、透過された信号を検出する為の検出器112を備えていてもよい。
【0076】
該システムは、第2の高調波を検出する為の検出器114を備えていてもよい。第2の高調波光は、入射光の波長の半分の波長を有する。それ故に、1050nmの波長を有するレーザ光源が使用される場合に、該第2の高調波光は、525nmの波長を有する。該第2の高調波光は、ダイクロイックミラー115を用いて選択されることができる。該第2の高調波光はまた、カラーフィルター、又は当技術分野において知られている他の手段を使用して選択されることができる。
【0077】
該システムは、第3の高調波を検出する為の検出器116を備えていてもよい。第3の高調波光は、入射光の波長の3分の1の波長を有する。それ故に、1050nmの波長を有するレーザ光源が使用される場合に、該第3の高調波光は、350nmの波長を有する。該第3の高調波光は、ダイクロイックミラーを用いて選択されることができる。該第3の高調波光はまた、カラーフィルター、又は当技術分野において知られている他の手段を使用して選択されることができる。
【0078】
該システムは、他の信号を検出する為の1以上の更なる検出器(図示せず)、例えば自家蛍光の光を検出する為の検出器、を備えていてもよい。
【0079】
該検出器の1以上は、光電子増倍管(photomultiplier tube)を備えていてもよい。他の実施態様において、例えば電荷結合素子(CCD:charge-coupled devices)に基づく他のタイプの検出器が使用されてもよい。該光電子増倍管は典型的には、非常に高い感度を有し、単一光子を測定することができる。従って、該光電子増倍管は、しばしば弱い非線形信号、例えば第2の高調波信号及び第3の高調波信号、を、相対的に低い、従って損傷を与えないピーク光強度で、検出する為に適している。
【0080】
しかしながら、各ピクセルが単一パルスによってのみ照らされるように、単一パルスによるパルスバースト(pulse bursts)が使用される場合(「シングルショットアプローチ」)(single-shot approach)、以下に説明されているように、信号対ノイズ比は光電子増倍管の固有の特性によって制限される場合がある。
【0081】
該検出器の(暗)ノイズは典型的には、無視できるほど小さく、典型的には1MHzのピクセル率で1ピクセル当たり1光電子よりはるかに小さいが、検出されることができる信号の大きさは制限される可能性が。信号対ノイズ比は、検出された光子数の平方根で変化する。例えば、100の信号対ノイズ比を得る為には、1ピクセル当たり少なくとも10,000個の光子を検出する必要がある。
【0082】
しかしながら、第2の高調波及び第3の高調波を検出する為の単一のフェムト秒パルスからの応答は非常に短く、サンプル中で多重散乱(multiple scattering)を受けた後であってさえも、典型的にはナノ秒の範囲か又はそれよりも短い(このことは、関与する励起状態の寿命によってブロードニングされる多光子蛍光信号についてもある程度当てはまる)。このことにより、光電子増倍管における空間電荷効果がもたらされ、そして、ダイノードチェーン(dynode chain)における線形増幅は必ずしも可能ではない。
【0083】
その結果、そのような検出器が単一の光パルスからの応答を検出するときに、該検出された信号は相対的に高い非直線性を有することが見出され、一方、複数のパルスを含むバーストに対する検出器の応答は、相対的にはるかに高い直線性を有する。多くの用途、例えば、顕微鏡画像の定量分析、特にはAIベースの分析、の場合に、線形応答が典型的には好まれる故に、複数のパルスを含む1つのバーストが好まれる場合がある。
【0084】
1ピクセル当たりのパルスのうちの数を2以上の低い数、例えば5~10個のパルス、を使用することにより、該信号の到達時間が広がり、空間電荷の影響が避けられ、そして、信号の直線性が向上されうる。
【0085】
該システムは、コントローラ118、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を更に備えている。好ましくは、単一のコントローラが、該パルスピッカー、該ラスタースキャナー、及びデータ取得システムを制御する。このようにして、リアルタイム制御と最適な同期とが達成されうる。ラスタースキャナーとの良好な同期を有する相対的に短いバーストを実行することにより、該検出器のアナログ帯域幅が、解像度における低下をもたらすことはない。該測定は、「ストロボスコープ」とみなされうる場合がある。
【0086】
該コントローラは、データ接続130を介してホストコンピュータに接続可能でありうる。システムパラメータ、例えば、スキャンパラメータ、例えば、1バースト当たりのパルス数、及び1パルス当たりのエネルギー、は、該ホストコンピュータから該コントローラにロードされることができ、そして、取得したデータは、該コントローラから該ホストコンピュータにストリーミングされることができる。
【0087】
図2A~
図2Dは、1以上の連続パルスを含む1つのバーストを選択することを概略的に図示する。音響光学変調器がパルスピッカーとして使用される場合に、該音響光学変調器に提供される制御信号を調整することによって、1つのバースト内のパルス数と該パルスの振幅(エネルギー)とが調整されることができる。実際には、該選択されたパルスの振幅は、入力の0%~約80%で変化させることができる。
【0088】
これらの例において、該レーザ光源は、80MHzの周波数を有するパルス列200(従って、2つのパルス間の期間は12.5ns)を生成する。フェムト秒パルスの幅は、視認性を向上させる為に誇張されている。
【0089】
図2Aは、レーザ光源と同期した、パルスピッカーの為の制御信号202を図示する。該制御信号は、4MHzの周波数、約37.5nsのパルス幅、及び最大振幅を有する。このことにより、結果として、該パルス列から20パルス毎に3つの連続パルスを含むバースト204が選択される。従って、相対的なバースト長は3/20=15%である。選択されたパルスの該バーストにおけるこれらのパルスは、入力パルスの約80%の振幅を有する。
【0090】
図2Bは、該レーザ光源と同期した、パルスピッカーの為の制御信号212を図示する。該制御信号は、4MHzの周波数、約37.5nsのパルス幅、及び最大振幅の半分の振幅を有する。このことにより、結果として、該パルス列から20パルス毎に3つの連続したパルスを含むバースト214が選択される。選択されたパルスの該バーストにおけるこれらのパルスは、入力パルスの約40%の振幅を有する。このことは、前の例と比較して、第2の高調波の検出が約4分の1に、及び第3の高調波の検出が約8分の1に、減少することを意味する。
【0091】
図2Cは、レーザ光源と同期した、パルスピッカーの為の制御信号222を図示する。該制御信号は、4MHzの周波数、約62.5nsのパルス幅、及び最大振幅を有する。このことにより、結果として、該パルス列から20パルス毎に5つの連続パルスを含むバースト224が選択される(相対バースト長25%)。選択されたパルスのバーストにおけるこれらのパルスは、入力パルスの約80%の振幅を有する。
図2Aにおいて図示されている状況と比較すると、このことにより、結果として、全ての検出器について、照明及び信号がおよそ40%増加する。しかしながら、照明がより空間的に広がる故に、空間分解能が潜在的に低い。
【0092】
図2Dは、該レーザ光源と同期していない、パルスピッカーの為の制御信号232を図示する。該制御信号は、3.95MHzの周波数、約37.5nsのパルス幅、及び最大振幅を有する。このことにより、結果として、該パルス列から20.25パルス毎に2~3個の連続パルスを含むバースト234が選択される。図示されている例において、第1のバーストは、該入力パルスの約80%の振幅を有する3つのパルスを含む。第2のバーストは、該入力パルスの約80%の振幅を有する2つのパルスと、入力パルスの約40%の振幅を有する制御信号の立ち下がりエッジの間に該パルスピッカーを通過した1つのパルスとを含む。第3のバーストは、該入力パルスの約80%の振幅を有する2つのパルスのみを含む。
【0093】
このことは画質に影響し、縞模様の形成をもたらしうる。この影響は、異なる信号の種類について異なりうる。一般的に、各バーストがより多くのパルス数を含む場合に、影響はあまり顕著でなく、バースト、例えば5以上又は8以上のパルスを有するバースト、ではほとんど見えなくなる場合がある。
【0094】
図3は、サンプルの照明に対するパルスピッカーの影響を図示する。一般的に、選択された各パルスは該サンプル上に照らされたスポットを生じ、その大きさは回折限界によって制限され、従って、波長に依存する。1050nmのレーザパルスの場合に、焦点の大きさは約0.5マイクロメートルである(回折限界によって与えられ、非線形効果の故に実効的なスポットサイズは小さくなる)。1kHzのライン周波数及び0.5mmの視野(典型的には、集光光学系によって制限される)並びに80MHzレーザ(最も一般的なタイプ)で動作するラスタースキャナーでは、後続のスポットは約12.5nmシフトする。これは、約500ナノメートルのスポットサイズのほんの一部であり、従って、後続のパルスに関連付けられた複数のスポットは重なり合う。該図において、個々のスポットの視認性を保つ為に、スポット間の距離は概略的なものにすぎない(そして、大幅に誇張されている)。
【0095】
第1の例において、該パルスピッカーはパルス列302から全てのパルスを選択する。該パルスピッカーはやはり、可変減衰器(variable attenuator)として機能しうる。この場合において、上で説明されているように、後続のパルスによって照らされるスポット304の間には実質的な重なりがある。該与えられた例において、サンプルの各部分には、40個の後続パルスが照らされ、サンプルが大幅に加熱され、サンプルが損傷する可能性がある。その上、通常、個々のパルスからの信号を時間的に分離することは容易ではなく、空間分解能を低下させる。
【0096】
第2の例において、該パルスピッカーはピクセル毎に単一のパルス306のみを選択する。理論的には、これにより、最も高い空間分解能と最も低いサンプル加熱をもたらしうる。この場合において、後続のパルスに関連付けられたスポット308は重なり合わないか、又は無視できる量だけ重なり合う。しかしながら、このモードには2つの実用的な欠点を有しうる。まず、良好な信号を得る為にピークパルス強度が十分に高い場合、サンプルに非線形損傷が生じる高い危険性がある。生物学的サンプルの場合に、非線形損傷は典型的には、1パルス当たりおよそ5nJで発生し始める(サンプルで測定された;実際の値は波長とパルス長に依存する)。第2に、上で説明されているように、該検出器は単一の非常に短いパルスに対して(強く)非線形応答を示す場合がある。
【0097】
第3の例は、連続パルスの数が1よりも大きい比較的少ない数を有するバースト310を表し、この場合において、1バースト当たり3つのパルスである。各ピクセルは3つのスポット312によって照らされ、従って、エネルギー堆積は上記第1の例の3/40=7.5%に過ぎない。同時に、ピークパワーは上記の例2よりも小さくすることができ、非線形サンプルの損傷を低減又は防止することができる。加えて、バースト内のパルスは、検出器内の空間電荷効果を回避する為に十分な様式で時間的に分離され、及び該バーストは、各信号をピクセルに容易に関連付ける為に十分に時間的に分離されている。
【0098】
図4は、レーザ光源とラスタースキャナーとの両方に同期されるところの、パルスピッカーの制御信号を図示する。図示されている例において、該ラスタースキャナーは低速ミラーと高速ミラーとを備えている。該高速ミラーはサインパターン(sine pattern)408に従う。その結果、該ミラーは視野の中心に近いピクセル410
i上では相対的に速く動き、及び視野の端に近いピクセル410
1及び410
n上では相対的に遅く動く。その結果、一定の照明が使用される場合に、端に近いピクセルは中央に近いピクセルに比べて露出過剰になる。
【0099】
幾つかの顕微鏡システムにおいて、検出器信号を調整することによって該顕微鏡システムが補償されうるが、このことはサンプルの過熱を防がない。加えて又は代替として、幾つかのシステムは、ミラーモーションの中央部分のみを効果的に使用し、ターニングポイントの近くで光源を切り替えることによって、この影響を軽減する。幾つかのシステムにおいて、ミラー範囲の約3分の1のみが使用される。このことにより、視野が制限され、取得時間が長くなる。
【0100】
このことは、該ラスタースキャナーの速度に基づいて制御信号404で該パルスピッカーを制御することによって解決されることができる。特には、該パルスピッカーの速度は、ラスタースキャナーの速度に、特にはラスタースキャナーの高速ミラーの速度に、ほぼ比例することができる。
【0101】
図に示されているように、各ピクセルの中心に近い一定数のパルスが選択される。
図2と同様に、該レーザ光源は80MHzの繰り返し率でパルス列402を生成する。該パルスピッカーはレーザ光源に同期されている為に、各バースト406は同数のパルスを含み、従って、各ピクセルの照明は同じになる。この例において、該ミラーは0.47MHzの周波数で発振し、0.96MHzのライン周波数をもたらす。この例において、該ミラーがレーザ光源と同期しておらず、結果として、該バーストがピクセルの中心に正確に一致しない場合がある。
【0102】
幾つかの実施態様において、共振ミラーが高速ミラーとして使用されうる。そのような場合に、該レーザ光源と該高速ミラーとを同期させることが不可能である場合がある。共振ミラーは、非共振ミラーよりも高速であり、取得時間を短縮することができる。しかしながら、該ミラーの移動速度が速すぎる場合には、このことにより、モーションアーチファクトがもたらされる場合があり、又は得られた画像の信号対ノイズ比が低下したりする場合がある。幾つかの実施態様において、このことは、既知のソフトウェアを使用する為に少なくとも部分的に修正されることができる。
【0103】
他の実施態様、例えば
図1に図示されている実施態様、において、高速ミラーは制御信号によって駆動されてもよい。その場合、該ミラーの動きはレーザ光源に同期されてもよい。
【0104】
幾つかの実施態様において、より直線的な制御信号、例えば三角信号、がミラーを駆動する為に使用されてもよい。そのような実施態様において、該ミラー速度は、ミラー動作の大きな範囲にわたって本質的に一定であってもよい。これらの実施態様において、高速ミラー速度に基づいて可変パルスピッカーレートを使用する必要性が少ないか、又は全くない場合ありうる。該パルスピッカーは、ミラー運動の非線形部分において照明を効果的にオフにする為に使用されてもよい。
【0105】
該ラスタースキャナーと該検出器との同期化については、
図5を参照して以下に詳述される。
【0106】
絵的に明確にする為に、図示されている例は各ラインに7ピクセルしか含まないが、より現実的な例はライン毎に数百ピクセル以上あってもよい。
【0107】
図5は、検出器によって生成された信号に対するパルスピッカーの効果を図示する。図示されている実施態様において、1MHzのピクセルレートが選択されている。制御信号504がパルスピッカーに提供されて、35MHzのパルス列502から5パルスのバースト506が選択される。このことにより、検出器信号508がもたらされる。
【0108】
ここで、該検出器信号は、約2MHzの帯域幅を有するトランスインピーダンス増幅器(trans-impedance amplifier)による増幅後の光電子増倍管からの信号の概略的な印象を表す。これらの増幅器により低ノイズが結果として生じるが、1バンチ(bunch)当たり5個の個々のパルスからの信号を分離する為には帯域幅が不十分である。より高い帯域幅を有する増幅器により、5つのパルスの各々に対応する信号が別々に登録されることができるが、これにはノイズが大きくなるという代償が伴う。
【0109】
図3を参照して上に議論されているように、該バーストが相対的に短い場合に、対応する光パルスはサンプルのほぼ同じスポットに入射する故に、個々のパルスを区別する必要はない。しかしながら、各検出を正しいピクセルに割り当てる為には、該データ収集システムと該ラスタースキャナーとの間で適切な同期が必要とされる。該ラスタースキャナーが実質的に均一でない速度を有する場合に、該データ取得速度はそれに応じて調整されうる。代替的には、該データ取得速度がピクセル速度よりも実質的に高くあってもよく、オーバーサンプリングをもたらしうる。次に、各ピクセルの中心に最も近いデータ点が選択されうる。
【0110】
該バーストを単一のユニティとして測定することにより、相対的に低速のトランスインピーダンス増幅器、例えば、2MHzの帯域幅と高ゲイン(300KV/A)とを有するそれら、が使用されることができる。これにより、検出電子機器(detection electronics)が簡素化され、ノイズが低減され、及びコストが削減される。
【0111】
図6は、第3の高調波信号の為のパルスエネルギーと信号強度との関係を図示する。全ての画像は同じ顕微鏡システムで得られたものであり、それは、
図1において図示されたシステムと同様である。該画像は、13MHzのパルス繰り返し率を有するYbファイバーレーザで得られた。パルスピッカーとして音響光学変調器が使用された。該パルスピッカー、ラスタースキャナー及び検出器は単一のFPGAによって制御され、従って、相互に同期される。5つの画像は全て、1ピクセル当たり3パルスのバーストモードで記録された。選択されたパルスのバーストにおけるパルスのエネルギーは、入力エネルギーの0~80%で変化させることができた。図中のパーセンテージは、該パルスピッカーによって供給されることができる最大出力エネルギーのパーセンテージを表す。
【0112】
該画像は50マイクロメートルのグリッドを有する校正グリッド(Ibidi)を示す。測定され且つ図示されている信号は、グリッド表面での第3の高調波信号である。サンプルに送出される1パルス当たりの、左から右に向かって行くパルス出力を約0.4nJ、約0.7nJ、約2.2nJ、約3.5nJ、約5nJへと変化させることによって、第3の高調波信号の3次電力依存性(cubic power dependence)が実証されている。上段では、全ての信号が同じようにスケーリングされており、ここで、該スケーリングは100%画像に基づいている。下段は上段と同じデータを示しているが、該画像を高める為にコントラストスケーリングが使用されている。
【0113】
明らかに、信号が100%の場合よりも2000分の1((1/0.08)3)低い8%の出力で記録された画像でさえ、ノイズを大幅に上回っており、それは、スキャンが約4000のダイナミックレンジを有することを実証する。このことは1チャンネル当たり12ビットに相当し、又は3チャンネルを使用するときには最大36ビットのデータに相当する。このことは、24ビットのRGBディスプレイ上で表されることができる情報よりも多いという贅沢な問題を提起する。
【0114】
1バースト当たりのパルス数を変えることによって、該サンプル上の出力を調整するときに、このことにより、全てのチャンネルに同じ効果を有することに注意することが重要である。第3の高調波であれ、第2の高調波であれ、又は更にはリニア信号であれ、全てのチャンネルは、1バースト当たりのパルス数に比例してスケールされる。
【0115】
パルスエネルギーを変えることによって光強度を調整するときに、第3の高調波信号はパルス出力の3乗でスケールされ、及び第2の高調波信号はピーク出力の2乗でスケールされる。それ故に、バースト幅を変化させることは典型的には、該サンプル上の該出力を調整する為の最良の様式である。
【0116】
図7は、1つの実施態様に従うフェムト秒パルス顕微鏡法の為の方法を図示する。これらの方法工程のうちの1つ以上は、
図1を参照して上に記載されたような顕微鏡システムによって実行されうる。第1の工程702において、本方法は、パルスの1つのバーストを、フェムト秒レーザパルスを含む1つのパルス列から選択することを含む。該バーストは、1以上の連続パルスを含みうる。バーストは、1以上の選択されていないパルスによって、どちらかの側で境界が定められていてもよい。
【0117】
工程704において、サンプル、例えば生物学的サンプル、例えば生きている組織又は新鮮な生検、が、パルスの選択されたバーストで照らされる。このことは典型的には、パルスの選択されたバーストをサンプル上の或る位置で集光する光学系を用いて行われる。好ましくは、高開口数対物レンズが使用され、例えばNA≧1である。工程706において、パルスのバーストとサンプルとの相互作用によって生じる信号が検出される。
【0118】
典型的な実施態様において、工程702~706は、何回か繰り返される。2回の繰り返しの間に、工程708において、焦点スポットが該サンプル上の異なる位置に移動してもよい。好ましくは、該サンプル上の位置は、該サンプルのターゲット領域におけるサンプルピクセルのラスターを画定する。これは、上に記載されたようなラスタースキャナーを使用することによって達成されうる。各サンプルピクセルは、パルスの少なくとも1つの、好ましくは正確に1つの、バーストによって照らされうる。このことは、工程702を実行するパルスピッカーと工程708を実行するラスタースキャナーとの制御を同期させることによって達成されることができる。
【0119】
任意の工程710において、該方法は、複数の画像ピクセルを含む1つの画像を決定することを更に含んでいてもよく、ここで、各画像ピクセルはサンプルピクセルに対応し、及び各画像ピクセルは、パルスの該バーストと該対応するサンプルピクセルとの相互作用によって生じる該検出された信号に基づくピクセル値を有する。該結果として得られた画像は、表示されることができ及び/又は更なる分析をされることができる。この工程は、
図8を参照して以下に記載されているようなデータ処理システムによって実行されうる。
【0120】
図8は、本開示において記載されている例示的なデータ処理システムを示すブロック図である。データ処理システム800は、システムバス806を通じてメモリ要素804に接続された少なくとも1つのプロセッサ802を備えていてもよい。このように、データ処理システムは、メモリ要素804内にプログラムコードを記憶していてもよい。更に、プロセッサ802は、システムバス806を介してメモリ要素804からアクセスされたプログラムコードを実行してもよい。1つの観点において、データ処理システムは、プログラムコードを格納及び/又は実行する為に適したコンピュータとして実装されてもよい。しかしながら、データ処理システム800は、本明細書内で記載されている機能を実行することができるプロセッサ及びメモリを包含する任意のシステムの形態で実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0121】
メモリ要素804は、1以上の物理メモリデバイス、例えば、ローカルメモリ808及び1以上のバルクストレージデバイス810、を包含しうる。ローカルメモリは、プログラムコードの実際の実行の間に一般的に使用されるランダムアクセスメモリ又は他の1以上の非永続的メモリデバイスを言及しうる。バルクストレージデバイスは、ハードドライブ又は他の永続的データ記憶デバイスとして実装されてもよい。処理システム800はまた、実行の間にプログラムコードがバルクストレージデバイス810から取り出されなければならない回数を減らす為に、少なくとも一部のプログラムコードの一時的な記憶を提供するところの1以上のキャッシュメモリ(図示せず)を備えていてもよい。
【0122】
キーデバイス812及び出力デバイス814として図示されている入出力(I/O)デバイスは任意的に、データ処理システムに接続されることができる。キーデバイスの例は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス(例えばマウス)、を包含しうるが、これらに限定されない。出力デバイスの例は、例えば、モニタ又はディスプレイ、スピーカ等を包含しうるが、これらに限定されない。キーデバイス及び/又は出力デバイスは、直接的に又は介在するI/Oコントローラを通じて、データ処理システムに接続されてもよい。ネットワークアダプタ816はまた、介在するプライベートネットワーク又はパブリックネットワークを通じて、他のシステム、コンピュータシステム、リモートネットワークデバイス、及び/又はリモートストレージデバイスに接続されるようにする為に、該データ処理システムに接続されることを可能にする。該ネットワークアダプタは、該システム、デバイス及び/又はネットワークから該データに送信されるデータを受信する為のデータ受信機と、該システム、デバイス及び/又はネットワークにデータを送信する為のデータ送信機とを備えていてもよい。オペレーションモデム、ケーブルオペレーションモデム、及びイーサネットカードは、データ処理システム800と共に使用されてもよい異なるタイプのネットワークアダプタの例である。
【0123】
図8において図示されているように、メモリ要素804は、アプリケーション818を記憶しうる。データ処理システム800は、アプリケーションの実行を容易にすることができるオペレーティングシステム(図示せず)を更に実行しうることが理解されるべきである。アプリケーションは、実行可能なプログラムコードの形態で実装され、データ処理システム800、例えばプロセッサ802、によって実行されることができる。アプリケーションの実行に応答して、データ処理システムは、本明細書において更に詳細に記載されている1以上の動作を実行するように構成されていてもよい。
【0124】
1つの観点において、例えば、データ処理システム800は、クライアントデータ処理システムを表しうる。その場合、アプリケーション818は、実行されると、「クライアント」を参照して本明細書において記載されている様々な機能を実行するようにデータ処理システム800を構成するクライアントアプリケーションを表しうる。クライアントの例は、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、携帯電話等を包含することができるが、これらに限定されない。
【0125】
別の観点において、データ処理システム800はサーバを表しうる。例えば、データ処理システム800は、(HTTP)サーバを表してもよく、その場合、アプリケーション818は、実行されるときに、(HTTP)サーバオペレーションを実行するようにデータ処理システム800を構成してもよい。別の観点において、データ処理システムは、本明細書において言及されているようなモジュール、ユニット又は機能を表しうる。
【0126】
本明細書において使用される語は、特定の実施態様を説明する為だけのものであり、本発明を限定することが意図されるものでない。本明細書において使用される場合に、単数形1つ(「a」及び「an」)並びに該「the」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形を同様に包含することが意図されている。本明細書において使用される場合に、語「~を含む(comprises)」及び/又は「~を含んでいる(comprising)」は、記載された特徴、整数、工程、操作、要素及び/又は構成要素の存在を特定するが、1以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、構成要素及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものでないことが更に理解されるであろう。
【0127】
添付の特許請求の範囲における全ての手段又は工程プラス機能要素の対応する構造、材料、行為及び等価物は、具体的に特許請求されるように、他の特許請求される要素と組み合わせて機能を実行する為の任意の構造、材料又は行為を含むことが意図されている。本発明の説明は、例示及び説明の目的で提示されたものであるが、網羅的であること、又は開示された形態の本発明に限定されることが意図されるものでない。本発明の範囲及び精神から逸脱されること無しに、多くの修正及び変形が当業者に明らかであろう。該実施態様は、本発明の原理及び実際の適用を最もよく説明する為に、及び、当業者が、企図される特定の用途に適した様々な変更を伴う様々な実施態様について本発明を理解することを可能にする為に、選択され、説明されたものである。
【国際調査報告】