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特表2024-540197P53におけるR175H変異を認識するT細胞受容体およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】P53におけるR175H変異を認識するT細胞受容体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/725 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20241024BHJP
【FI】
C07K14/725
C12N15/12 ZNA
C12N5/10
C12N15/63 Z
A61K39/00 H
A61K35/17
A61P35/00
A61P37/04
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525767
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022078929
(87)【国際公開番号】W WO2023077100
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/273,372
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524157822
【氏名又は名称】ホウ,ヤフェイ
(71)【出願人】
【識別番号】524157833
【氏名又は名称】ホウ,デイビッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ヤフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,デイビッド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4C085AA02
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、変異ヒトp53R175Hに対する抗原特異性を有する単離されたまたは精製されたT細胞受容体(TCR)を提供する。本明細書における本発明のTCRは、HLA-A2拘束性変異体p53R175Hペプチド(HMTEVVRHC)を認識できるが、野生型p53R175ペプチド(HMTEVVRRC)を認識できない。本明細書における本発明のTCRはまた、HLA-A2において変異されたヒトp53R175Hを有する腫瘍細胞により活性化できる。本発明はさらに、本発明のTCRに関連する関連のポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団および医薬組成物を提供する。哺乳動物における癌を処置するまたは予防する方法が、本発明によってさらに提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1(α鎖)および第2(β鎖)の鎖を含む単離されたまたは精製されたTCRであって、前記第1および第2の鎖の各1つが、第1、第2および第3の相補性決定領域(CDR)を含み、α鎖CDR1が、アミノ酸配列:DSVNN(配列番号7)を含み、α鎖CDR2が、アミノ酸配列:IPSGT(配列番号8)を含み、α鎖CDR3が、アミノ酸配列:CAVNQAGTALI(配列番号3)を含み、β鎖CDR1が、アミノ酸配列:SNHLY(配列番号9)を含み、β鎖CDR2が、アミノ酸配列:FYNNEI(配列番号10)を含み、β鎖CDR3が、アミノ酸配列:CASMGTGDEAF(配列番号4)を含む、単離されたまたは精製されたTCR。
【請求項2】
前記第1の鎖が、配列番号11または配列番号24のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域をさらに含み、かつ前記第2の鎖が、配列番号12または配列番号23のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域のアミノ酸配列をさらに含む、請求項1に記載の単離されたまたは精製されたTCR。
【請求項3】
配列番号26、配列番号28または配列番号45のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域、および配列番号25、配列番号27または配列番号46のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域をさらに含む、請求項1に記載の単離されたまたは精製されたTCR。
【請求項4】
(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むα鎖および配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖、(b)配列番号47のアミノ酸配列を含むα鎖および配列番号48のアミノ酸配列を含むβ鎖、または(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むα鎖および配列番号50のアミノ酸配列を含むβ鎖を含む、請求項1に記載の単離されたまたは精製されたTCR。
【請求項5】
HLA-A*02分子における変異されたp53R175HペプチドHMTEVVRHC(配列番号1)に対する抗原特異性を有する、請求項1に記載の単離されたまたは精製されたTCR。
【請求項6】
請求項1に記載のTCRの機能的部分を含む単離されたまたは精製されたポリペプチドであって、前記機能的部分が、(a)配列番号11、(b)配列番号12、(c)配列番号23、(d)配列番号24、(e)配列番号11および12の両方、または(f)配列番号23および24の両方のアミノ酸配列を含む、単離されたまたは精製されたポリペプチド。
【請求項7】
請求項6に記載のTCRの機能的部分を含む単離されたまたは精製されたポリペプチドであって、前記機能的部分が、(a)配列番号5、(b)配列番号6、(c)配列番号47、(d)配列番号48、(e)配列番号49、(f)配列番号50、(g)配列番号5および6の両方、(h)配列番号47および48の両方、または(i)配列番号49および50の両方のアミノ酸配列を含む、単離されたまたは精製されたポリペプチド。
【請求項8】
配列番号3、7および8のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、ならびに配列番号4、9および10のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含む、請求項1に記載の単離されたまたは精製されたタンパク質。
【請求項9】
(a)配列番号11のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と配列番号12のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、または(b)配列番号23のアミノ酸配列と配列番号24のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含む、請求項8に記載の単離されたまたは精製されたタンパク質。
【請求項10】
(a)配列番号5のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と配列番号6のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、(b)配列番号47のアミノ酸配列と配列番号48のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、または(c)配列番号49のアミノ酸配列と配列番号50のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含む、請求項8に記載の単離されたまたは精製されたタンパク質。
【請求項11】
請求項1に記載のTCR、請求項6に記載のポリペプチドまたは請求項8に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたまたは精製された核酸。
【請求項12】
配列番号16、17、35、36、37、38、39、40、41および42からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む請求項11に記載の単離されたまたは精製された核酸。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸を含む組換え発現ベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸を含む請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項15】
mRNA、環状RNA、1本鎖DNA、2本鎖DNA、プラスミド、トランスポゾンまたはウイルスベクターからなる群より選択される、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項16】
請求項12に記載の核酸または請求項15に記載の組換え発現ベクターを含む単離されたまたは精製された宿主細胞であって、前記宿主細胞が、ヒトリンパ球であり、前記リンパ球が、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞、または本明細書における細胞由来のT細胞株からなる群より選択される、単離されたまたは精製された宿主細胞。
【請求項17】
前記宿主細胞で処置される前記哺乳動物に対し自己由来であるか本明細書において前記宿主細胞で処置される前記哺乳動物と同種である請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
請求項16に記載の単離されたまたは精製された宿主細胞ならびに薬学的に許容されるものを含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の医薬組成物の有効量を使用することにより哺乳動物における癌を処置するまたは予防するための方法であって、前記癌が、ヒトp53におけるR175H変異およびHLA-A2対立遺伝子を含むことが知られている、方法。
【請求項20】
HLA-A*02分子における変異されたp53R175HペプチドHMTEVVRHC(配列番号1)に対する抗原特異性を含む請求項1に記載の単離されたまたは精製されたTCR。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年10月29日に出願された米国仮特許出願第63/273,372号に対する利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
配列表
本出願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。上記XMLコピーは、2022年10月22日に作成され、ファイル名が「IMSYN001PCT-p53.xml」であり、サイズが63,207バイトである。
【0003】
本発明の実施形態は、癌免疫療法における適用のためのペプチド、タンパク質、核酸、および細胞に関する。本発明のいくつかの実施形態は、HLA-A*02:01分子を含む、HLA-A*02分子により提示される変異体TP53エピトープを発現する腫瘍を特異的に認識するように設計されたT細胞受容体を使用する、TP53(p53)変異を有する癌の免疫療法に基づく予防または処置のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
新たな有効で安全な癌処置の選択肢に対する一般的な要望がある。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、または遺伝子組換えT細胞を用いる養子細胞療法(ACT)は、癌に対する最も有望な免疫療法の1つであることが証明されている(N Engl J Med 2017;377:2545-2554)。固形腫瘍を有する患者にTILから生成されたT細胞または腫瘍抗原に対する特異的T細胞受容体(TCR)を発現するように遺伝子操作されているT細胞を養子移入することは、臨床的有用性を示した(Adv Immunol.2016;130:279-94)。種々の固形腫瘍のためのTCRベースのT療法(TCR-T)の臨床試験は現在、異なる相で実行されている(Technol Cancer Res Treat.2019;1-13)。研究は、ネオアンチゲン特異的T細胞が、臨床応答に不可欠であることを明らかにした。ネオアンチゲンは、腫瘍における体細胞変異などのゲノムコドン交替により生成され、細胞表面上で主要な組織結合性複合体(MHC;ヒトにおけるヒト白血球抗原(HLA)としても既知)により提示され、Tリンパ球により認識され得る(Science.2007;318:1108-1113)。ネオアンチゲンを標的化する養子T細胞療法は、固形癌を処置するための最も有望な免疫療法アプローチの1つである。癌を有する患者にネオアンチゲン標的免疫療法を転換することにおける1つの課題は、各患者の特有のネオアンチゲンレパートリーである。同様の組織学的癌種を有する患者間であっても、患者間で共通の変異される標的はほとんどない。しかし、共通の免疫原性ネオアンチゲンを標的化する治療レジメン(therapeutic regiments)の同定は、癌を有する患者により幅広く適用できる治療の開発を促進するであろう。
【0005】
変異されたTP53は、理想的な共通の抗原標的を表す。4つの異なる汎癌配列決定研究の評価において、TP53は、肺癌の89%、結腸直腸癌の72.7%、および食道癌の70.7%を含む、幅広い範囲の癌種を示す、配列決定された場合のおよそ50%で変異されると認められた(Nat Med 2017;23:703-13)。さらに、TP53変異を有する癌は頻繁に、アミノ酸のR175位、G245位、R248位、R249位、R273位、およびR282位で「ホットスポット」変異を有する。したがって、これらのTP53変異を特異的に標的にできる免疫原性薬剤は、癌の診断、処置および/または予防において潜在的な有効性を有する。アミノ酸のR175位は、最も頻繁に変異される残基の1つであり、TP53におけるすべての同一の変異のおよそ5%を含む。94%が、ヒスチジン置換をもたらす(Cancer Discov.2012;2(5):401-4)。この特異的なホットスポット変異は、多数の癌細胞病理にとっての治療標的であり得る。さらに、HLA-A*02は、およそ16%のアフリカ系アメリカ人および48%の白人系アメリカ人患者に見られ、米国において最も優勢なMHCクラスI HLAの1つである(Nucleic Acids Res.2015;43:784-8)。
【発明の概要】
【0006】
HLA-A*02により提示される変異されたP53 p.R175Hエピトープを標的とするTCR-T療法は、癌を有する多数の患者の処置に適用できる。以下の実施形態およびその態様は、システム、ツールおよび方法と組み合わせて説明され例証され、これらは例示的で例証的であり、範囲を限定するものではない。
【0007】
本発明の実施形態は、MHCクラスI分子により提示される変異されたヒトp53R175Hペプチドに対する抗原特異性を含む単離されたまたは精製されたT細胞受容体(TCR)を提供する。いくつかの実施形態において、変異されたp53R175Hペプチドは、アミノ酸配列:HMTEVVRHC(配列番号1)を含む。いくつかの実施形態において、MHCクラスI分子は、HLA-A*02である。いくつかの実施形態において、MHCクラスI分子は、配列番号2のアミノ酸配列を含む、HLA-A*02:01である。
【0008】
本発明の実施形態は、変異されたヒトp53R175Hに対する抗原特異性を含む単離されたまたは精製されたT細胞受容体(TCR)を提供し、TCRは、第1および第2の鎖を含み、第1および第2の鎖の各1つは、第1、第2および第3の相補性決定領域(CDR)を含む。第1の鎖の第3のCDR(CDR3)は、アミノ酸配列:CAVNQAGTALI(配列番号3)を含み、第2の鎖の第3のCDR(CDR3)は、アミノ酸配列:CASMGTGDEAF(配列番号4)を含む。
【0009】
一実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、ホモ・サピエンスTRAV22*01およびホモ・サピエンスTRJ15*01の組み合わせのアミノ酸配列(配列番号11)を含む第1の鎖を含む。TRAV22*01領域とTRJ15*01領域の間の挟まれた接合領域は、アミノ酸配列:CAVNQAGTALIF(配列番号43)を含む。
【0010】
一実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、ホモ・サピエンスTRBV02*01、ホモ・サピエンスTRJ1-1*01およびホモ・サピエンスTRD1*01(配列番号12)の組み合わせのアミノ酸配列を含む第2の鎖を含む。TRBV02*01領域とTRJ1-1*01領域の間の挟まれた接合領域は、アミノ酸配列:CASMGTGDEAFF(配列番号44)を含む。
【0011】
一実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、アミノ酸配列:DSVNN(配列番号7)を含む第1のCDR(CDR1)を含む第1の鎖を含む。
【0012】
一実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、アミノ酸配列:IPSGT(配列番号8)を含む第2のCDR(CDR2)を含む第1の鎖を含む。
【0013】
一実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、アミノ酸配列:SNHLY(配列番号9)を含む第1のCDR(CDR1)を有する第2の鎖を含む。
【0014】
一実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、アミノ酸配列:FYNNEI(配列番号10を含む第2のCDR(CDR2)を含む第2の鎖を含む。
【0015】
一実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、それぞれ配列番号7、配列番号8および配列番号3のアミノ酸配列を含むその第1、第2および第3のCDRを有する第1の鎖、ならびにそれぞれ配列番号9、配列番号10および配列番号4のアミノ酸配列を含むその第1、第2および第3のCDRを含む第2の鎖を含む。この点について、TCRは、例えば、配列番号11、配列番号12、配列番号23および配列番号24のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0016】
一実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、配列番号11のアミノ酸配列を含む可変領域と配列番号28のアミノ酸配列を含むアルファのマウス定常領域とを有する、配列番号5に示す第1の完全長鎖を含む。別の実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、配列番号11のアミノ酸配列を含む可変領域と配列番号26に示すヒト定常領域とを含む、配列番号47に示す第1の完全長鎖を含む。別の実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、配列番号11のアミノ酸配列を含む可変領域と配列番号45に示すデルタ鎖のヒト定常領域とを含む、配列番号49に示す第2の完全長鎖を含む。
【0017】
一実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、配列番号12のアミノ酸配列を含む可変領域と配列番号27のアミノ酸配列を含むベータ鎖のマウス定常領域とを含む、配列番号6に示す第2の完全長鎖を含む。別の実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、配列番号12のアミノ酸配列を含む可変領域と配列番号25に示すベータ鎖のヒト定常領域とを含む、配列番号48に示す第2の完全長鎖を含む。別の実施形態において、単離されたまたは精製されたT細胞受容体は、配列番号12のアミノ酸配列を含む可変領域と配列番号46に示すガンマ鎖のヒト定常領域とを含む、配列番号50に示す第2の完全長鎖を含む。
【0018】
一実施形態において、本発明のTCRの第1の鎖は、可変領域と定常領域との組み合わせを含み、例えば、本発明のTCRの第1の鎖は、配列番号11のアミノ酸配列を含む可変領域と配列番号25のアミノ酸配列を含むベータ定常領域とを含み、本発明のTCRの第2の鎖は、配列番号12のアミノ酸配列を含む可変領域と配列番号26のアミノ酸配列を含むアルファ定常領域とを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、TCRの機能的部分を含む単離されたまたは精製されたポリペプチドは、配列番号5、6、11、12、23、24、47、48、49、50からなる群より選択されるアミノ酸配列または複数の配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、1本鎖ポリペプチドは、本発明の単離されたまたは精製されたT細胞受容体の第1の鎖の可変領域(配列番号23)および第2の鎖の可変領域(配列番号24)を含むかそれからなり、TCRの第1の鎖および第2の鎖の可変領域は、リンカーペプチド、例えば、可動性リンカーペプチド、例えば、(GlyGlyGlyGlySer)nリンカーにより接続され得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、本発明の単離されたまたは精製されたT細胞受容体の第1および第2の鎖を含む2つの別個のポリペプチドを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、TCR、ポリペプチド、またはタンパク質は、本発明のTCR、ポリペプチド、またはタンパク質に対して実質的または有意な配列同一性または類似性を含み、例えば、HLA-A2により提示される変異されたヒトp53R175Hペプチド(配列番号1)に対する抗原特異性を含む変異体であるかまたは、それに対し親ポリペプチドまたはタンパク質が、親TCR、ポリペプチド、またはタンパク質と同様の程度、同じ程度、またはより高い程度に特異的に結合する、TCR、ポリペプチド、またはタンパク質の生理活性を保持する。この点について、TCR、ポリペプチド、またはタンパク質は、例えば、配列番号3、4、7、8、9、10、11、12、23、24の群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つとアミノ酸配列において少なくとも約75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超えて同一であり得る。
【0023】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、またはタンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたまたは精製された核酸を提供する。核酸は、合成されるか天然源から得られる(例えば、単離されるおよび/または精製される)、1本鎖または2本鎖であり得る、DNAまたはRNAであり得る。
【0024】
本発明の実施形態は、5’から3’に、(a)第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列、または(b)第2のヌクレオチド配列および第1のヌクレオチド配列、を含む単離されたまたは精製された核酸を提供し、第1のヌクレオチド配列は、配列番号5、11、24、47、49の群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つをコードし、第2のヌクレオチド配列は、配列番号6、12、23、48、50の群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つをコードする。
【0025】
本発明の一実施形態において、単離されたまたは精製された核酸はさらに、第1および第2のヌクレオチド配列の間に挟まれた第3のヌクレオチド酸配列を含み、そのため第1および第2の鎖は、2つの別個のポリペプチドへと切断されるか、2つの別個のポリペプチドとして発現される。適切な配列は、T2A、P2A、E2A、F2AまたはIRES配列であり得る。本発明の一実施形態において、単離されたまたは精製された核酸は、配列番号13からなるアミノ酸(ammo acid)配列をコードする。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、単離されたまたは精製された核酸分子は、配列番号16、17および29~40のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明のTCRの第1および第2の鎖のそれぞれの3つのCDR(それぞれ配列番号3、7、8および配列番号4、9、10)を含む抗原結合ドメインは、1本鎖ポリペプチドとして発現されるように構成される。第1および第2の鎖は、HLA-A2においてp53R175Hペプチド(配列番号1)に特異的な抗原結合ドメインを形成するように、可動性リンカーにより結合される。T細胞共刺激ドメイン、例えば、CD28、4-1BB、CD27またはOX40からの共刺激ドメインおよびT細胞活性化シグナル伝達(singling)ドメイン、例えば、CD3からのITAMドメインと結合される本明細書の抗原結合ドメインは、HLA-A2においてp53R175Hペプチド(配列番号1)に特異的である抗原標的化剤を形成できる。
【0028】
本発明の一実施形態において、本発明で説明される単離されたまたは精製されたTCR、ポリペプチド、またはタンパク質は、組換え発現ベクターにより発現され得る。組換え発現ベクターは、プラスミド、環状RNA(circulate RNA)、1本鎖DNA、トランスポゾンもしくはCRISPR-Cas9を含むベクター、またはウイルス(virial)ベクター例えば、レンチウイルスベクターであり得る。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、単離されたまたは精製されたTCR、ポリペプチド、またはタンパク質は、本明細書に記載の核酸またはベクターのいずれかによりコードされるか、細胞での本明細書に記載の核酸またはベクターのいずれかの発現から生じる。
【0030】
本発明の別の実施形態は、HLA-A2により提示される配列番号1のペプチドに対する抗原特異性を有するTCRを発現する宿主細胞を生成する方法を提供する。
【0031】
本発明の一実施形態において、宿主細胞は、初代ヒトリンパ球、ヒトリンパ球前駆体またはT細胞に分化できる幹細胞を含む。一実施形態において、宿主細胞は、不死化ヒト細胞株である。
【0032】
一実施形態において、宿主細胞は、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞、またはナチュラルキラー(NK)細胞からなる群より選択される細胞を含む。
【0033】
一実施形態において、本発明は、変異されたp53R175Hに対して抗原特異性を有する本明細書に記載のTCRまたはTCR変異体、ポリペプチド、タンパク質、核酸、ベクターおよび宿主細胞のいずれかならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0034】
本発明の一態様は、哺乳動物において癌を処置することにおける使用のための、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換えベクター、宿主細胞、および/または医薬組成物のいずれかを提供する。一実施形態において、癌は、胆管癌、黒色腫、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、骨髄腫、白血病、非小細胞肺癌(NSCLC)、膠芽腫、子宮頸癌、頭頸部癌、乳癌、膵臓癌、肉腫、または膀胱癌を含むがこれらに限定されない。本発明の別の態様は、癌に進行する可能性がある哺乳動物における前癌状態および病変を予防することにおける使用のための、本明細書における本発明のTCRのいずれかを提供する。一実施形態において、多種多様の臓器系に影響する前癌状態および病変は、結腸ポリープ、子宮頸部異形成、上皮内癌、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、骨髄異形成症候群または日光角化症を含むがこれらに限定されない。別の実施形態において、本明細書に記載の本発明は、リー・フラウメニ症候群からの癌発生を予防することにおいて使用される。一実施形態において、癌細胞または前癌細胞は、HLA-A2対立遺伝子および変異されたp53R175Hを保持する。本発明の別の態様は、R175Hのミスセンス変異を含むp53の存在を検証するために対象由来の試料を配列決定すること、および対象がHLA-A*02対立遺伝子を有することを検証するためにHLAタイピングすることを含む方法を提供する。
【0035】
本明細書における実施形態では、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」は、ある特定の実施形態において、用語「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」で置き換えることができる。
【0036】
代表的な実施形態を、図面の参照図で説明する。本明細書で開示される実施形態および図面は、限定的ではなく、むしろ例証的であるとみなされることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、HLA-A2+の健康なドナーの血液のPBMCから生成されたp53R175Hペプチド特異的CTLおよびCTLクローンの表現型を示す。図1Aは、変異p53R175Hペプチド(配列番号1)を用いて再刺激されインビトロでサイトカインを用いて拡大された細胞培養由来の代表的なフローサイトメトリープロットを示す。細胞を、APC標識抗CD8aおよびPE標識HLA-A2/p53R175H四量体で染色し、その後フローサイトメトリー(リンパ球上でリビングゲートした)により分析した。四量体+ゲートは、対照T細胞に基づいて設定された。CD8+HLA-A2/p53R175H四量体+T細胞の頻度は、リビングゲートしたリンパ球から表された。正方形ゲートした集団は、T細胞クローニングについて分類されたCD8+四量体+T細胞を表す。図1Bは、FACSソーティングにより、続いてCD3/CD28ビーズでのインビトロ刺激により生成された全58個のT細胞クローンからの代表的なフローサイトメトリープロットを示す。全17個のCD8+四量体-T細胞クローンを得(左上のプロットにより表される)、41個のCD8+四量体+T細胞クローンを得た(他のプロットにより表される)。
図2A図2Aは、本発明のTCRの発現のためのレンチウイルスベクターの概略図を示す。本明細書に記載の変異p53R175Hエピトープに特異的なTCRをコードするヌクレオチド配列(配列番号16)は、pCDH-EF1α-MCS-(PGK-GFP)双方向レンチウイルスベクターのMCS領域中にクローン化された。組換えレンチウイルスのヌクレオチド配列(pCDH-p53)は、本発明のTCRをコードする核酸を含み、EF1αプロモーターおよびWPRE領域が隣接する。U3領域のエンハンサーにおける欠失(U3 del)は、レンチウイルス構築物の自己不活性化を保証する。本明細書に記載のp53R175Hペプチド特異的TCRは、可変配列(TCR-βV、配列番号12)およびマウス定常配列(マウスTCR-βC、配列番号27)を有するベータ鎖と、可変配列(TCR-αV、配列番号11)およびマウス定常配列(マウスTCR-αC、配列番号28)を有するアルファ鎖と、リンカー配列(配列番号13)を含む。太字の下線付きのものは、AV22*01とTRJ15*01の間の本発明のTCR-αVの接合領域(配列番号43)およびTRBV02*01とTRJ1-1*01の間の本発明のTCR-βVの接合領域(配列番号44)のアミノ酸配列である。
図2B図2Bは、本発明のTCRをコードする組換えレンチウイルスでトランスフェクトされたPBMCが、HLA-A2/p53R175H四量体により検出できる外来性TCRを発現できたことを示す。GFPを、ウイルストランスフェクションマーカーとして使用した。形質導入T細胞を、APC標識抗CD8a抗体およびPE標識HLA-A2/p53R175H四量体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。左側のグラフは、組換えレンチウイルスで形質導入されたT細胞を表す、リビングゲートしたリンパ球集団におけるGFP+T細胞の割合を示す。右側のグラフは、ゲートされたCD8-GFP+T細胞集団(左側プロット)およびゲートされたCD8+GFP+T細胞集団(右側プロット)におけるHLA-A2/p53R175H四量体+T細胞の割合を示す。
図2C図2Cは、p53R175H特異的TCRをコードする組換えレンチウイルスでトランスフェクトされたT細胞株が、HLA-A2/p53R175H四量体により検出できる外来性TCRを発現できたことを示す。Jurkat細胞株由来でありかつ内因性TCRを発現しないJ.RT3-T3.5(JRT)細胞および外来性ヒトCD8を発現するJurkat細胞(Jurkat-CD8)を、p53R175H特異的TCRをコードするレンチウイルスで形質導入した。形質導入細胞を、抗CD8-APCおよびHLA-A2/p53R175H四量体-PEで染色し、フローサイトメトリーにより分析した。ゲートされたGFP+JRT細胞における四量体+細胞の割合を、左側プロットに示す。ゲートされたGFP+Jurkat-CD8細胞における四量体+細胞の割合を、右側プロットに示す。
図3図3は、HLA-A2において変異p53R175Hペプチド(配列番号1)に特異的な本発明のTCRを発現するように形質導入された初代T細胞およびT細胞株の機能分析を示す。図3Aは、JRT細胞により発現されたp53R175H特異的TCRが、T2細胞上のHLA-A2により提示された変異p53R175Hペプチドを認識できたことを示す。組換えレンチウイルス(pCDH-p53)で形質導入されたJRT細胞を、16時間1000ng/mlから開始する変異p53R175Hペプチドの10倍希釈系列でパルスされたT2細胞と共培養した。細胞を、抗CD69抗体で染色して、フローサイトメトリーにより、ゲートされたGFP+細胞における活性化CD69+細胞の割合を分析した。X軸は、p53R175Hペプチドの濃度であり、Y軸は、ゲートされたGFP+JRT細胞におけるCD69+細胞の割合である。図3Bは、PBMCから生成された初代T細胞により発現された本発明のTCRが、変異p53R175Hエピトープペプチドを認識できたが、T2細胞上でHLA-A2により提示された野生型p53R175ペプチド(配列番号20)を認識できなかったことを示す。組換えレンチウイルス(pCDH-p53)で形質導入されたPBMC細胞を、24時間1000ng/mlから開始する変異p53R175Hペプチド(四角)または10ug/mlから開始する野生型p53R175ペプチド(三角)の10倍希釈系列でパルスされたT2細胞と共培養した。細胞を、APC標識抗CD8aおよびPE標識抗CD137抗体で染色して、フローサイトメトリーにより、ゲートされたGFP+細胞におけるCD8+CD137+細胞の割合を分析した。X軸は、p53R175Hペプチドの濃度であり、Y軸は、ゲートされたGFP+生存リンパ球におけるCD8+CD137+細胞の割合である。
図4図4は、腫瘍細胞株に対する変異p53R175Hペプチドに特異的な本発明のTCRを発現する初代T細胞の機能分析を示すグラフである。図4Aは、標的腫瘍細胞上でのHLA-A2発現のプロットを示すグラフである。細胞を、PEで標識された抗HLA-A2抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。左側のグラフは、3種の腫瘍細胞株によるHLA-A2発現を示す。ライトグレーの線は、陰性対照であり、ミディアムグレーの線は、IFN-ガンマで前処理されていない腫瘍株を表し、ダークグレーの線は、24時間200u/mlでIFN-ガンマを用いて前処理された腫瘍細胞株を表した。右側のグラフは、外来性HLA-A2を発現するように形質導入された腫瘍細胞株によるHLA-A2発現を示す。ライトグレーの線は、陰性対照であり、ミディアムグレーの線は、HLA-A2を発現するように形質導入された腫瘍株を表し、ダークグレーの線は、HLA-A2を発現するように形質導入された腫瘍細胞株を表す。図4Bは、本発明のTCRを発現するように形質導入されたPBLが、内因性変異p53R175Hを有するHLA-A2+腫瘍細胞を認識できたことを示すグラフである。活性化PBMCを、HLA-A2における変異p53R175Hペプチドに特異的な本発明のTCRを発現するように組換えレンチウイルス(pCDH-p53)で形質導入し、HLA-A2とR175H変異を有するp53タンパク質との両方を発現する腫瘍細胞株(KMS26、KLE、SKUT1-A2BM、SKUT1-A2、293T-A2-mp53およびK562-A2-mp53)、R175H変異のみを有するp53タンパク質を発現する標的細胞(SKUT1)またはHLA-A2のみを発現する標的細胞(293T-A2、SKOV3-A2)を含む、種々の標的細胞と共培養した。293T-A2、SKOV3-A2、SKUT1-A2およびSKOV3-A2は、外因的にHLA-A2を発現するように形質導入された細胞株である。SKUT1-A2BMは、外因的にHLA-A2およびベータ2-ミクログロブリン(beta2-microgluboine)を発現するように形質導入された細胞株である。293T-A2-mp53およびK562-A2-mp53は、外因的にHLA-A2およびR175H変異を有するp53タンパク質の両方を発現するように形質導入される。標的細胞は、処理されなかった(塗りつぶした棒)か、24時間200ng/mlでIFN-ガンマを用いて処理された(破線の棒)。いくつかの混合培養物を、2ug/mlで抗HLA-ABC抗体を用いて処理した(白色の棒)。陰性対照として形質導入されたPBMC単独を使用する。陽性対照として100ng/mlで変異p53R175Hペプチド(T2+mt-p53ペプチド)を用いてパルスされたT2細胞を使用する。24時間インキュベートした後、細胞を、抗CD8a-APCおよび抗CD137-PE抗体で染色して、フローサイトメトリーにより、ゲートされたGFP+生存リンパ球におけるCD8+CD137+細胞の割合を分析した。CD137は、T細胞活性化マーカーである。X軸は、標的であり、Y軸は、ゲートされたGFP+生存リンパ球におけるCD8+CD137+細胞の割合である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下は、特定の実施形態を詳細に説明し、本開示の図面を参照するが、本発明を限定するものではない。本開示の基本原則に基づいて、当該技術分野の技術担当者によりなされる変更または改善は、本開示の基本原則にしたがう限り、本発明の範囲内である。
【0039】
本明細書で使用されるように、用語「CTL」は、CD8陽性の細胞傷害性T細胞(CTL)を指す。CD8+CTLは、標的細胞の表面上のMHCクラスI分子により提示された抗原エピトープを認識できる。同様に、「CD4+Th」は、CD4陽性のTヘルパー細胞(T help cell)を指す。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「抗原」は、免疫応答を誘導できる分子を指す。用語「エピトープ」は、免疫応答を刺激できる抗原の一部を指す。例えば、エピトープは、MHCクラスI分子に結合され、それによってMHC-I/ペプチド複合体を形成する、ペプチドであり得る。MHC-I/ペプチド複合体は、細胞傷害性T細胞の特異的T細胞受容体(TCR)により選択的に認識され得る。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「T細胞応答」は、エフェクターT細胞のTCRが同種抗原により活性化される場合のエフェクターT細胞の増殖および活性化を意味する。例えば、MHCクラスI拘束性CTLのT細胞応答は、標的細胞の溶解、サイトカインの分泌、またはエフェクター分子(例えば、CD69および/または4-1BB)の発現を含み得る。本明細書において、エフェクター分子は、バイオマーカーとして使用されて、同種抗原刺激に対するT細胞応答を誘導できる。TCRは、TCRを発現するT細胞の数の少なくとも2倍が、HALクラスI分子により提示される変異エピトープペプチドを発現する標的細胞との共培養時にエフェクター分子(例えば、CD69および/または4-1BB)を発現する場合、活性化されるまたは変異標的に対する「抗原特異性」を有するとみなすことができる。
【0042】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、および宿主細胞(それらの集団を含む)は、単離されおよび/または精製され得る。本明細書で使用される用語「単離された」は、その自然環境から取り除かれていることを意味する。本明細書で使用される用語「精製された」は、純度が高められていることを意味し、「純度」は、相対的な用語であり、必ずしも絶対純度として解釈されるものではない。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、60%、70%、80%、90%、95%であり得るか、それより大きい可能性があるか、100%であり得る。
【0043】
本明細書で使用されるように、用語「変異体」は、タンパク質またはポリペプチドにおいて、アミノ酸残基の1個または2個またはそれより多くが、他のアミノ酸残基で置換されることを意味し、一方で変異体は、変更されないタンパク質と実質的に同じ生物学的機能を保持する。
【0044】
用語「処置する(treat)」、「処置している(treating)」および「処置(treatment)」は、望ましい臨床結果を得るためのアプローチを指す。望ましい臨床結果は、疾患の少なくとも1つの症状の低減または軽減を含み得るがこれらに限定されない。例えば、処置は、疾患の少なくとも1つの症状の減弱、疾患の程度の減弱、病状の安定化、疾患の拡大の予防、疾患の進行の延期もしくは遅延、疾患の寛解、疾患の再発の減弱、疾患の鎮静、疾患を伴う生存期間の延長、または疾患の完全な根絶であり得る。用語「予防する(prevent)」、「予防(prevention)」および「予防している(preventing)」は、それにより個人が、特に、疾患の危険因子を有する、例えば、p53遺伝子におけるミスセンス変異を有する個人が、疾患の発生または進行を予防するために処置される、手順を指す。
【0045】
腫瘍タンパク質p53(「TP53」または「p53」とも呼ばれる)は、例えば、細胞分割を調節することにより腫瘍抑制因子として機能する。p53タンパク質は、細胞の核内に位置し、そこでそれは、DNAに直接結合する。野生型p53(この後は、WT p53、配列番号18)。p53の変異は、完全長WT p53のアミノ酸配列を参照して本明細書で定義され、特定の位置に存在するアミノ酸残基、続いてその位置番号、続いてこれによりその残基が検討中の特定の変異において置換されているアミノ酸、を参照して本明細書で記載される。p53は、9個の既知のスプライスバリアントを含む。本明細書に記載のp53変異は、全9個のp53スプライスバリアントすべてにわたって保存されている。変異は、配列番号18の393-アミノ酸配列の示された位置に対応するp53の特定のスプライスバリアントのアミノ酸配列におけるアミノ酸残基の置換を指し、スプライスバリアントにおける実際の位置が異なっている場合があることが理解される。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語「p53R175H」または「R175H」は、p53のコドンの175位でのミスセンス変異体を指し、野生型のアルギニン残基は、ヒスチジン残基に変異される(配列番号19)。用語「p53R175Hペプチド」または「p53R175Hエピトープペプチド」は、もともとp53のコドンの175位でのミスセンス変異を含有するペプチドを指し、野生型のアルギニン残基は、ヒスチジン残基に変異される(配列番号1)。用語「野生型p53R175ペプチド」または「p53R175エピトープペプチド」は、WT p53由来のペプチドを指し、アルギニン残基は、p53のコドンの175位にある。
【0047】
本明細書で使用されるように、用語「T細胞受容体」または「TCR」は、特に指定されない限り、T細胞受容体の機能的部分および機能的変異体を指す。TCRは、2つのポリペプチド(すなわち、ポリペプチド鎖)、例えばTCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖、またはそれらの組み合わせを含む。本発明のTCRは、養子細胞移植に使用されるエフェクター細胞により発現される場合を含む、多くの利点を提供する。変異されたp53は癌細胞により発現され正常細胞により発現されないので、本発明のTCRを発現するように変更されたエフェクター細胞は、癌細胞を特異的に破壊するが、正常細胞の破壊を最小化するまたは排除する。
【0048】
本発明の一実施形態において、TCRは、配列番号19により定義されるように、175位で変異を有するヒトp53に対する抗原特異性を含む。175位でのp53変異は、任意のミスセンス変異であり得る。本発明の一実施形態において、TCRは、R175H変異を有するヒトp53に対する抗原特異性を含む。他の実施形態において、TCRは、R175G変異、R175L変異、R175A変異、R175C変異またはR175D変異を有するヒトp53に対する抗原特異性を含む。変異されたp53は、本明細書において、任意の変異されたp53タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを指す。本発明の好ましい実施形態において、TCRは、HMTEVVRC(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかそれからなる変異p53R175Hペプチドに対する抗原特異性を含む。TCRは、HMTEVVRC(配列番号20)のアミノ酸配列を含むかそれからなる、対応する野生型p53ペプチドを認識できない。p53R175Hペプチドの長さは、ペプチドが本発明のTCRにより認識され得る限り変化してよく、いくつかの実施形態において、配列番号1のアミノ末端またはカルボキシル末端に1~5個の追加のアミノ酸を含む可能性がある。
【0049】
本発明の一実施形態において、TCRは、HLA(ヒト白血球抗原)分子により提示される変異p53ペプチドを認識できる可能性がある。この点について、TCRは、HLAクラスI分子において変異体p53R175Hペプチドを認識する可能性がある。本発明の一実施形態において、HLAクラスI分子は、HLA-A分子である。HLA-A分子のα鎖、ベータ2-ミクログロブリンおよび変異体p53R175Hペプチドは、標的細胞の表面上で発現され本発明のTCRにより特異的に認識されるHLA/ペプチド複合体を形成する。本発明の一実施形態において、HLAクラスI分子は、HLA-A2分子である。HLA-A2分子は、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07、またはHLA-A*02:11、HLA-A*68:02を含むがこれらに限定されない、HLA-A2分子またはHLA-A2スーパータイプのいずれかであり得る。好ましくは、HLAクラスI分子は、HLA-A*02:01分子である。
【0050】
本発明のTCRは、特異性を有するHLA-A2において変異されたp53R175Hペプチドを認識できる。TCRは、初代T細胞またはTCRを発現するT細胞株が低濃度の変異されたp53ペプチド(例えば、約0.5ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、10ng/ml、50ng/ml、100ng/ml、1000ng/mlまたは上記値のいずれか2つにより定義される範囲)でパルスされたHLA-A2陽性標的細胞との共培養時にT細胞活性化マーカー、例えば、CD137またはCD69の発現をアップレギュレートする(活性化T細胞)場合、変異されたp53に対する抗原特異性を有するとみなされてよい。T細胞活性化マーカーを発現する活性化T細胞の頻度は、陰性対照の量と比較して少なくとも2倍であるべきである。さらに、TCRは、TCRを発現するT細胞が配列番号1の配列を有するエピトープペプチドを含む変異されたp53R175Hタンパク質を内因的に発現するHLA-A2陽性標的細胞、または変異されたp53R175Hを発現するように核酸で形質導入されるHLA-A2陽性標的細胞との共培養時にT細胞活性化マーカーの発現をアップレギュレートする場合、変異されたp53R175Hに対する抗原特異性を有するとみなされてよい。T細胞活性化マーカーの発現は、上述の標的細胞での刺激後、例えば、フローサイトメトリーにより測定できる。あるいは、TCRは、本発明のTCRを発現するT細胞が陰性対照により生成されるIFN-γまたはGM-CSFの量と比較して変異されたp53ペプチドでパルスされたHLA-A2陽性標的細胞、または変異されたp53R175Hを内因的に発現するHLA-A2陽性標的細胞、または変異されたp53R175Hを発現するようにヌクレオチド酸で形質導入される標的細胞との共培養時に少なくとも2倍多くIFN-ガンマまたはGM-CSFを生成する場合、変異されたp53R175Hに対する抗原特異性を有するとみなされてよい。IFN-γまたはGM-CSF分泌は、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)または酵素結合イムノスポット(ELISOT)アッセイなどの当該技術分野で既知の方法により測定できる。
【0051】
本発明の一実施形態において、本発明のTCRは、そのそれぞれが相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変領域を含む、2本のポリペプチド鎖を含む。本発明の一実施形態において、TCRは、α鎖CDR1(CDR1α)、α鎖CDR2(CDR2α)、およびα鎖CDR3(CDR3α)を含む第1のポリペプチド鎖と、β鎖CDR1(CDR1β)、β鎖CDR2(CDR2β)、および鎖CDR3(CDR3β)を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。本発明の一実施形態において、本発明のTCRは、それぞれ、本発明のTCRのCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、およびCDR3βに相当する、変異されたp53R175Hに対して特異的なTCRの6個のCDR領域である配列番号7、8、3、9、10、4のアミノ酸配列を含む。
【0052】
本発明の一実施形態において、本発明のTCRは、CDR1α、CDR2αおよびCDR3α(それぞれ配列番号7、8、3)を含むα鎖可変領域、またはCDR1β、CDR2β、およびCDR3β(それぞれ配列番号9、10、4)を含むβ鎖可変領域を含む。一実施形態において、本発明のTCRは、2つのアミノ酸配列がそれぞれ本発明のTCRのα鎖の可変領域およびβ鎖の可変領域に相当する、配列番号11および12のアミノ酸配列の両方を含む。本明細書に記載の本発明のTCRは、変異されたp53R175Hに対する抗原特異性を有する。
【0053】
本発明の一実施形態において、本発明のTCRは、それぞれ天然のシグナルペプチド(配列番号22)または天然のシグナルペプチド(配列番号21)を含むα鎖またはβ鎖を含む。別の実施形態において、本発明のTCRは、別の分泌されるタンパク質または膜に結合されるタンパク質のシグナルペプチドを含むα鎖またはβ鎖を含む。別の実施形態において、本発明のTCRは、シグナルペプチド(配列番号24)がない成熟Vα鎖またはシグナルペプチド(配列番号23)がない成熟Vβ鎖を含む。
【0054】
本発明の一実施形態において、TCRは、定常領域を含む。TCR定常領域は、例えば、ヒトまたはマウスなどの他の種に由来する可能性がある。一実施形態において、TCRは、ヒトα鎖定常領域(配列番号26)およびヒトβ鎖定常領域(配列番号25)を含む。一実施形態において、TCRは、マウスα鎖定常領域(配列番号28)およびマウスβ鎖定常領域(配列番号27)を含む。マウス定常領域を使用する利点は、外来性TCR鎖、例えば、アルファ鎖およびベータ鎖と、内因性TCR鎖、例えば、アルファ鎖およびベータ鎖との誤対合を制限することである。本発明のTCRは、α鎖可変領域およびβ鎖定常領域を含む鎖、もしくはβ鎖可変領域およびα鎖定常領域を含む鎖、またはα鎖可変領域およびβ鎖定常領域ならびにβ鎖可変領域およびα鎖定常領域を含む2本の鎖の両方を含み得る。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態において、TCRは、本発明の親TCRのTCR変異体であり得る。本明細書に記載のTCR変異体は、親TCRに対して実質的もしくは有意な配列同一性または類似性を有するTCRを指し、親TCRの生理活性を保持する可能性がある、例えば、p53R175Hに対する抗原特異性を有するか、親TCRと同様の程度、同じ程度、もしくはより高い程度に変異されたp53R175Hと特異的に反応できる可能性がある。親TCRならびにCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、およびCDR3β(それぞれ配列番号7、8、3、9、10、4)を含むその6個のCDR領域と比較して、本発明のTCR変異体およびその6個のCDR領域は、例えば、それぞれ親TCRおよびその6個の各CDR領域に対しアミノ酸配列において少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはそれより多く同一である。
【0056】
本明細書に記載の本発明のTCR変異体は、例えば、親TCRならびに少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有するCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、およびCDR3β(それぞれ配列番号7、8、3、9、10、4)を含むその6個のCDR領域のアミノ酸配列を含むことができる。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野で既知であり、ある特定の物理的特性および/または化学的特性を有する1個のアミノ酸が同じ化学的特性または物理的特性を有する別のアミノ酸と交換される、アミノ酸置換を含む。
【0057】
本明細書に記載の本発明のTCR変異体は、例えば、少なくとも1つの置換されたアミノ酸を含む3個のCDR(配列番号7、8、3)を有するα鎖、および少なくとも1つの置換されたアミノ酸を含む3個のCDR(配列番号9、10、4)を有するβ鎖を含むことができる。そのようなTCR変異体の生物活性は、親TCRと比較して上昇されてよい。一実施形態において、TCR変異体は、置換されたCDRを有するα鎖、β鎖のいずれか1つまたはその両方を含み、例えば、α鎖は、アミノ酸配列:SVNN、DVNN、DSNN、DSVNもしくはDSVNのいずれか1つを有する置換されたCDR1α;アミノ酸配列:PSGT、ISGT、IPGT、IPSTもしくはIPSGのいずれか1つを有する置換されたCDR2α;またはアミノ酸配列:VNQAGTALI、ANQAGTALI、AVQAGTALI、AVNAGTALI、AVNQGTALI、AVNQATALI、AVNQAGALI、AVNQAGTLI、AVNQAGTAIもしくはAVNQAGTALのいずれか1つを有する置換されたCDR3αを含む。β鎖は、アミノ酸配列:NHLY、SHLY、SNLY、SNHYもしくはSNHLのいずれか1つを有する置換されたCDR1β;アミノ酸配列:YNNEI、FNNEI、FYNEI、FYNEI、FYNNIもしくはFYNNEのいずれか1つを有する置換されたCDR2β;またはアミノ酸配列:SMGTGDEAF、AMGTGDEAF、ASGTGDEAF、ASMTGDEAF、ASMGGDEAF、ASMGTDEAF、ASMGTGEAF、ASMGTGDAF、ASMGTGDEFもしくはASMGTGDEAのいずれか1つを有する置換されたCDR3βを含む。ここで、Xは、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンである。本明細書に記載のTCR変異体の各置換されたCDRは、それぞれ配列番号7、8、3、9、10、4で示される親CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2βまたはCDR3βの対応するアミノ酸配列を含まない。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明のTCRまたはTCR変異体は、本発明のTCR CDRのいずれかの機能的部分または配列番号3~12、21~28および43~50に記載の本発明のTCRのいずれか一部もしくはフラグメントを含むポリペプチドまたはタンパク質(例えば、1本または複数本のポリペプチド鎖を含む分子)であり得、例えば、機能的部分は、親TCR CDRの約10%、約25%、約30%、約50%、約68%、約80%、約90%、約95%、もしくはそれより多くを含むことができる。機能的部分は、変異されたp53R175Hに対する抗原特異性を有するか、親TCRと同様の程度、同じ程度、またはより高い程度に癌を検出、処置、または予防することを意味する。適切な変異体は、本発明のT細胞受容体の機能的部分のドメインを含む、例えば、本発明のTCRのα鎖可変領域、本発明のTCRのβ鎖可変領域またはその両方を含む、1本鎖ポリペプチドであり得る。一実施形態において、本明細書に記載の1本鎖ポリペプチドは、生理活性を有する、例えば、変異されたp53R175Hに対する抗原特異性を有しエフェクター分子を送達できる、例えば、二重特異性のT細胞エンゲージャーとして抗CD3 scFv鎖を送達する、または薬物コンジュゲートとして変異されたp53R175Hを有する腫瘍細胞に当該技術分野で既知の癌細胞毒性ペイロードを送達する、可溶性分子の一部として作られ得る。別の実施形態において、本明細書に記載の1本鎖ポリペプチドは、典型的な抗体scFvフラグメントの代わりにキメラ抗原受容体(CAR)構築物に挿入でき、そのため本明細書に記載の1本鎖ポリペプチドは、CAR構築物のシグナル伝達ドメインと相互作用して、癌細胞に向けての望ましい細胞傷害性活性を引き起こす。シグナル伝達ドメインは、適切な共刺激ドメイン(例えば、CD8、CD27、CD28、4-1BB、ICOS、0X40、MYD88、IL1-R1、CD70)、ならびにCAR構築物の特徴を強化することを意図した任意の他のドメイン、例えば、ITAMドメインを有するCD3ζまたはCD3εセグメントを含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明のTCRまたはTCR変異体は、例えば、当該技術分野で既知の方法、例えば、ジスルフィド架橋、または重合、またはコンジュゲートにより、グリコシル化される、アミド化される、カルボキシル化される、リン酸化されるように修飾され得る。
【0060】
本発明のTCRまたはTCR変異体は、当該技術分野で既知の方法により合成される合成の、組換えの、単離された、および/もしくは精製されたポリペプチド、ならびに/またはタンパク質であり得るか、当該技術分野で既知の標準組換え法を使用して組換え技術で生成できるか、企業により商業的に合成できる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態は、上述の本発明のTCRまたはTCR変異体をコードする、それに組み込むまたはそれに関連する核酸、組換えベクター、宿主細胞、細胞の集団および医薬組成物に関する。
【0062】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の本発明のTCR、TCR変異体またはそのCDRのいずれかを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。「核酸」は、本明細書で使用されるように一般的に、1本鎖または2本鎖の、合成されたか、天然源から得られた(例えば、単離されたおよび/または精製された)ものであり得るDNAまたはRNAのポリマーを意味する。本明細書に記載の核酸は、組換え型であり得る。用語「組換え型」は、生存細胞で複製できる核酸分子に天然または合成の核酸セグメントを結合させることにより生存細胞の外側で構築される分子を指す。
【0063】
本発明の一実施形態において、本発明の核酸は、配列番号29のヌクレオチド配列;配列番号30のヌクレオチド配列;配列番号31のヌクレオチド配列;配列番号32のヌクレオチド配列;配列番号33のヌクレオチド配列;配列番号34のヌクレオチド配列に示される、本発明のTCRのCDRのヌクレオチド配列のいずれか1つを含む可能性がある。一実施形態において、核酸は、配列番号29~31のすべて;配列番号32~34のすべて;配列番号29~34のすべてのヌクレオチド配列を含む。本発明の一実施形態において、核酸は、配列番号35;配列番号36;または配列番号35および36の両方のヌクレオチド配列を含む可能性がある。本発明の一実施形態において、核酸は、配列番号41、配列番号42、または配列番号41および42の両方のヌクレオチド配列を含む可能性がある。本発明の別の実施形態において、核酸は、ヒト由来の定常領域を有する完全長TCRをコードでき、配列番号37、配列番号38、または配列番号37および38の両方のヌクレオチド配列を含む。本発明の別の実施形態において、核酸は、例えば、マウスなどの他の種由来の定常領域を有する完全長TCRをコードするヌクレオチド配列を含む可能性がある。この点について、核酸は、配列番号39;配列番号40;または配列番号39および40の両方のヌクレオチド配列を含む可能性がある。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の核酸は、例えば、スキッピング配列またはmRNA分子の5’末端以外の部位での翻訳の開始を可能にする配列、例えば、T2A、P2A、E2A、F2AもしくはIRES配列;または2つの別個のポリペプチドが1本鎖mRNA、例えば、最小の切断部位Arg-X-X-Argなどを有するフーリン切断配列から翻訳されることを可能にする任意の他の配列などのリンカーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む可能性がある。切断配列は、本発明のTCRの第1および第2の鎖の間に挟まれており、そのため、第1および第2の鎖は、1本鎖ポリペプチドとして発現され、その後、2つの別個のポリペプチドに切断または翻訳される。別の実施形態において、核酸は、配列番号13に示されるリンカーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む可能性がある。
【0065】
本発明の一実施形態において、本発明の核酸は、本明細書に記載のTCRまたはTCR変異体およびそのCDRのいずれかをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、天然のコドンを、同じアミノ酸をコードするが宿主細胞中でより効率的に翻訳され得る別のコドンに置換することを伴う可能性がある。
【0066】
本発明の一実施形態において、ヌクレオチド配列を含む本発明の核酸は、本明細書に記載のTCRまたはTCR変異体およびそのCDRのいずれかをコードする本発明の核酸のいずれかと少なくとも約60%またはそれより多い、例えば、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一である。
【0067】
本発明の一実施形態において、ヌクレオチド配列を含む核酸は、本明細書に記載のTCRまたはTCR変異体およびそのCDRのいずれかをコードする本発明の核酸のいずれかのヌクレオチド配列と相補的である。
【0068】
本発明の核酸は、組換え発現ベクター中に組み込まれ得る。本発明の組換え発現ベクターは本明細書において、本明細書に記載のTCRまたはTCR変異体およびそのCDRのいずれかをコードする核酸のいずれかを含む。本発明の組換え発現ベクターは、合成されたか一部が天然源から得られた、1本鎖または2本鎖であり得、かつ天然の、非天然の、または変更されたヌクレオチドを含有できるDNAおよびRNA(例えば、mRNA)を含むがこれらに限定されない任意の種類の核酸を含むことができる。本発明の組換え発現ベクターは、任意の適切な組換え発現ベクターであり得、プラスミドまたはウイルスを含むがこれらに限定されない任意の適切な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするために使用できる。ウイルスベクターは、例えば、レトロウイルスベクター(モロニーマウス白血病ウイルス由来)、レンチウイルスベクター(ヒト免疫不全I型ウイルス(HIV)由来)を含むがこれらに限定されない。組換え発現ベクターは、宿主細胞の種類に特異的である転写および翻訳の開始および終止コドンなどの、調節配列を含む。組換え発現ベクターは、一過性発現、安定な発現のいずれか、またはその両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、恒常的発現のため、または誘導的発現のために作られてよい。一態様において、本発明のTCR遺伝子を含む上記組換え発現ベクターは、当該技術分野における従来の組換え技術で生成できる。
【0069】
いくつかの実施形態において、組換え発現ベクターは、本明細書に記載の本発明のTCR、TCR変異体およびそのCDRのアミノ酸配列に加えて、他の機能性分子をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、他の機能性分子は、インビボでのT細胞の追跡のための蛍光タンパク質(例えば、GFPタンパク質など)である。別の実施形態において、組換え発現ベクターは、養子T細胞療法の安全性を改善するために自殺遺伝子を含む。自殺遺伝子は、養子移植された細胞の選択的破壊を可能にする遺伝的にコードされた分子である(Front.Pharmacol.,2014;5(254):1-22)。自殺遺伝子でコードされる分子は、例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、ガンシクロビル、シトシンデアミナーゼ、5-フルオロシトシン、5-フルオロウラシル、誘導性FAS、誘導性カスパーゼ9、トランケートされたCD20、EGFR、c-mycまたはRQR8を含む。自殺遺伝子をコードするヌクレオチド配列および本発明のTCRをコードするヌクレオチド配列は、異なるプロモーターにより;または同じプロモーターにより独立して制御されるが、TCR遺伝子および自殺遺伝子は、上述の自己切断リンカーペプチドと接続される。
【0070】
いくつかの実施形態において、TCR変異体、および他の機能性分子を含む本発明のTCRの発現は、2つの異なるプロモーターにより駆動され得る。プロモーターは、強力なプロモーター、弱いプロモーター、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、または分化特異的プロモーターを含む。プロモーターは、PGK1プロモーター、EF-1aプロモーター、CMV最初期エンハンサーおよびプロモーター、SV40プロモーター、Ubcプロモーター、CAGプロモーター、TREプロモーター、CamKIIaプロモーター、ヒトベータアクチンプロモーターなどのウイルス源または非ウイルス源(例えば、真核生物プロモーター)由来であり得る。いくつかの実施形態において、2つのプロモーターが2つの遺伝子を駆動する場合、デュアルプロモーターは、反対方向または同じ方向に配置される。
【0071】
本発明の実施形態はさらに、本明細書に記載の本発明のTCRまたはTCR変異体、ポリペプチド、タンパク質、または核酸のいずれかを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、真核細胞、例えば、動物細胞であり得るか、原核細胞、例えば、細菌細胞であり得る。宿主細胞は、培養細胞または例えば、生物、例えば、ヒトから直接単離された初代細胞であり得る。宿主細胞は本明細書において、遺伝子ベクター(例えば、大腸菌(E. coli))を増幅するため、または組換えTCRポリペプチドまたはタンパク質(例えば、VERO、COS、またはHEK293)を生成するために使用できる。最も好ましくは、宿主細胞は、例えば、ヒト末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)などのヒト細胞である。より好ましくは、宿主細胞は、T細胞である。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のT細胞は、初代T細胞、T細胞株由来のT細胞、またはT細胞前駆体もしくは幹細胞(例えば、造血性幹細胞または人工多能性幹細胞)から分化されるT細胞を含む任意のT細胞であり得る。T細胞は、例えば、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、もしくは腫瘍組織または体液を含む多種多様の資源から得ることができる。T細胞は本明細書において、例えば、CD8+T細胞、CD4+T細胞、アルファ/ベータT細胞、ガンマ/デルタT細胞、NKT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞などを含むT細胞の任意の種類であり得る。
【0073】
哺乳動物細胞のインビトロ培養の通常の方法にしたがって、T細胞は、培養され、適切な培養条件下で増殖される。例えば、細胞は、それらが70%を超えるコンフルエンスに到達すると継代でき、培地は通常、2~3日で新鮮な培地に入れ替えられる。細胞が一定の数に達すると、直接使用するか、または当該技術分野のプロトコルにしたがって凍結する。インビトロ培養時間は、24時間内であり得るか、14日以上である可能性がある。凍結された細胞は、解凍後に次のステップで使用できる。
【0074】
一実施形態において、T細胞は、数時間~14日間、またはその間の任意の時間の間インビトロで培養できる。T細胞の培養条件は、RPMI1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM(a-MEM)、F-12、X-Vivo15およびX-Vivoを含むがこれらに限定されない基本培地の使用を含む。細胞生存および増殖に必要とされる他の条件は、血清(ヒトまたはウシ胎児血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TGF-ベータおよびTNF-a、他の培養添加物(アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、ビタミンC、2-メルカプトエタノール、成長ホルモン、成長因子を含む)の使用を含むがこれらに限定されない。T細胞は、適切な培養条件、例えば、温度が37℃、32℃、30℃、または室温であり得、空気条件が、例えば、5%CO2を含有する空気であり得る条件に置くことができる。
【0075】
任意のポリペプチド、タンパク質、核酸および組換え発現ベクターを含む本発明のTCRまたはTCR変異体、ならびに本明細書に記載の宿主細胞は、医薬組成物などの組成物に配合できる。一実施形態において、本発明は、変異されたp53R175Hに対する抗原特異性を有する本発明のTCRまたはTCR変異体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、任意のポリペプチド、タンパク質、核酸および組換え発現ベクターを含む本発明のTCRまたはTCR変異体と、本明細書に記載の宿主細胞とを、化学療法剤、免疫調節剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカインなど)などの別の薬学的に活性がある薬剤または薬物、または治療用抗体またはワクチンなどの他の薬剤と組み合わせて含むことができる。
【0076】
医薬組成物を調製するための方法は、当該技術分野において既知である。薬学的に許容される担体は、使用の条件下で有害な副作用または毒性がないものであることが好ましい。当該分野の技術担当者は、本発明の治療薬が、薬学的または生理学的媒体、賦形剤、希釈剤(生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水を含む)を含む創薬可能な賦形剤および添加物も含む可能性があることを理解できる;添加物は、炭水化物、脂質、ペプチド、アミノ酸、抗酸化剤、アジュバント、保存剤および当該分野で既知の他のものを含む。
【0077】
本発明の医薬組成物は、配合され、以下の経路:動脈内、静脈内、皮下、皮内、腫瘍内、リンパ内、脊髄内、脳脊髄内、骨髄内、筋肉内または腹腔内の投与、を通じて提供できる。
【0078】
一実施形態において、対象(例えば、ヒト)に投与される本明細書に記載の本発明の医薬組成物(例えば、TCRもしくはTCR変異体、ポリペプチド、またはタンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団)の量または投与量は、合理的な時間枠にわたって対象において、例えば、治療的または予防的応答といった影響を及ぼすのに十分であるはずである。用量は、本明細書に記載の特定の本発明の医薬組成物の有効性、および対象の状態、例えば、処置される対象の体重によって決定される。本発明の医薬組成物の投与量は、特定の本発明の医薬組成物の投与に付随する可能性がある任意の有害な副作用の存在、性質および程度によって決定される。典型的に、担当医師は、年齢、体重、全身健康状態、食事、性別、投与される本発明の医薬組成物、投与経路、および処置されている癌の重症度などの多種多様の要因を考慮して、個々の患者をそれぞれ処置するための本発明のTCR医薬組成物の投与量を決定する。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、細胞の集団(例えば、本発明のTCRまたはTCR変異体を含むT細胞)であり、1回の注入で投与される細胞の数は、例えば、約1×10~約1×1012個の細胞またはそれより多くで変わる可能性がある。ある特定の実施形態において、1×10個の細胞より少ない数を投与できる。
【0079】
一実施形態において、任意のポリペプチド、タンパク質、核酸および組換え発現ベクターを含む本発明のTCRまたはTCR変異体、本明細書に記載の宿主細胞および医薬組成物は、癌を処置または予防する方法で使用できる。この点について、本発明は、哺乳動物における癌を処置または予防するのに有効な量で、任意のポリペプチド、タンパク質、核酸および組換え発現ベクターを含む本発明のTCRまたはTCR変異体、本明細書に記載の宿主細胞および医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における癌を処置または予防する方法を提供する。
【0080】
本明細書に記載の腫瘍および/または癌は、例えば、乳癌、頭頸部癌、膠芽腫、滑膜肉腫、腎臓癌、肉腫、黒色腫、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、脳癌、肝臓癌、骨癌、絨毛癌、神経内分泌腫瘍、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、肛門癌、胆管細胞癌、膀胱癌、尿道癌、神経膠腫、神経芽腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨腫瘍、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルチノイド腫瘍、間葉系腫瘍、パジェット病、子宮頸癌、胆嚢癌、眼癌、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部肉腫、網膜芽細胞腫、腸腫瘍、胃癌/胃癌(stomach/gastric cancer)、胸腺癌腫、妊娠性絨毛性腫瘍、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、菌状息肉症、インスリノーマ、心臓肉腫、髄膜癌腫瘍、原発性腹膜癌および悪性胸膜中皮腫を含む。
【0081】
一実施形態において、癌は、変異されたp53を発現する癌である。癌は、175位で変異を有する、より好ましくは、変異されたp53R175Hを有するp53を発現する。別の実施形態において、本発明のTCRでの処置に供されるヒトのHLA-I型は、HLA-A2ホモ接合性またはヘテロ接合性である。より好ましくは、処置される対象のHLA-I型は、HLA-A*0201である。
【0082】
本明細書における実施形態では、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」は、ある特定の実施形態において、用語「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」で置き換えることができる。
【0083】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、もちろん、いかなる方法であってもその範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。特に明示しない限り、以下の実施例で使用される実験方法は、当該技術分野の技術担当者によって理解され、日常的に実行されている実験手順、操作、材料、および条件を使用して実行される。例えば、組換えプラスミドおよびウイルスベクター、またはポリペプチドおよびタンパク質は、標準組換え法(Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,2012)を使用する本明細書に記載の核酸を使用して組換え技術により生成できる。
【0084】
実施例1~5に記載の実験では、以下の材料および方法を使用した。
【0085】
材料と方法
1.細胞株:
レンチウイルス粒子を調製するために使用した細胞株は、293T細胞(ATCC CRL-3216)である。抗原提示細胞株は、174xCEM.T2細胞(T2、ATCC CRL-1992)である。外来性TCR遺伝子発現および機能分析のための細胞株は、J.RT3-T3.5(JRT細胞、ATCC TIB-153)である。標的細胞として使用された腫瘍細胞株は、ヒト骨髄腫細胞株KMS26(JCRB JCRB1187)、ヒト子宮腺癌細胞株KLE(ATCC CRL-1622)、ヒト卵巣癌細胞株SKOV3(ATCC HTB-77)、ヒト子宮平滑筋肉腫細胞株SKUT1(ATCC HTB-114)、およびヒト骨髄性白血病細胞株K562(ATCC CCL 243)を含む。外来性HLA-A2を安定に発現するSKOV3、SKUT1-A2、293T-A2およびK562-A2細胞株を、HLA-A*0201をコードする組換えレンチウイルスベクター(System Biosciences CD811A-A2)を有するこれらの細胞株をトランスフェクトすることにより生成した。SKUT1-A2BM細胞株を、HLA-A*0201およびベータ-2マクログロブリン(CD811A-A2BM)の両方をコードするレンチウイルスベクターでSKUT1細胞をトランスフェクトすることにより生成した。293T-A2-mp53およびK562-A2-mp53細胞株を、変異p53R175Hタンパク質(配列番号19)をコードする組換えpCDNA3.3プラスミド(サーモフィッシャーK830001)で293T-A2およびK562-A2細胞をトランスフェクトすることにより生成した。
【0086】
2.細胞培養培地:
KLE、SKUT1、293Tおよびそれらの形質導入細胞を、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミンが補充された高グルコースを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(VWR cat#VWRL0101-0500)で培養した。他の細胞株を、ウシ胎児血清(ATCC 30-2020)、2mmol/L L-グルタミン酸、1×必須アミノ酸50倍濃縮(インビトロジェン11130-051)、1×ストレプトマイシン/ペニシリン100倍濃縮(インビトロジェン15140-122)、1×ピルビン酸ナトリウム100倍濃縮(インビトロジェン11360-070)、および1×2-メルカプトエタノール1000倍濃縮(サーモフィッシャー21985023)が補充されたRPMI-1640完全培地(ロンザ、cat#12-115F)で培養する。
【0087】
3.末梢血:
健康なドナーのヒト末梢血製剤を、スタンフォード血液センターから購入した。末梢血単核細胞(PBMC)を、メーカーの説明書にしたがって、Ficoll-Paque PLUS密度勾配溶液(GEヘルスケアcat#17144002)を用いるフェレーシス(LRSチャンバ)を介して残留白血球から生成した。PBMCを、新鮮なまま使用するか、50%FCS血清および10%DMSOを含有するRPMI培地中で凍結保存し、-80℃で穏やかに、または-196℃で保管した。
【0088】
4.TCR抗原特異性機能を試験するための標的細胞の調製:
SKOV3-A2、SKUT1-A2、293T-A2およびK562-A2細胞を、メーカーの説明書にしたがって、リポフェクタミン3000(サーモフィッシャーL3000015)を用いてHLA-A*0201のためのcDNAをコードする組換えレンチウイルスベクターをトランスフェクトすることにより生成した。レンチウイルスベクター中のHLA-A*0201配列を、配列決定により検証した。細胞を、抗HLA-A2-PE抗体(Biolegend、クローンBB7.2、cat#343305)で染色し、SH800Sセルソーター(ソニーバイオテクノロジー)でソートした。完全長の変異p53R175HをコードするcDNAを、メーカー推奨のプロトコルにしたがって、SuperScript II逆転写酵素RT-PCRキット(サーモフィッシャーcat#18064014)を用いてKMS26細胞から生成しpCDNA3.3ベクター(pCDNA3.3-mp53)中にクローン化した。p53R175Hを、配列決定により検証した。293T-A2およびK562-A2細胞を、pCDNA3.3-mp53でトランスフェクトして、外来性p53R175Hを一時的に発現させた。T2+mt-p53ペプチドは、p53R175Hペプチド(配列番号1)でパルスされたT細胞であった。
【0089】
5.ペプチド:
変異p53R175HペプチドHMTEVVRC(配列番号1)および野生型p53R175ペプチドHMTEVVRC(配列番号20)を、ペプチド2.0(peptide2.com)により合成した。ペプチドは、分析用高速液体クロマトグラフィおよび質量分析により示されるように、純度が>95%であった。ペプチドを10mg/mLの濃度で水に溶解し、使用するまで-80℃で保管した。
【0090】
6.インビトロでのp53R175Hペプチド特異的CTLの誘導:
PBMCを、メーカーの説明書にしたがって、Ficoll-Paque Premium(シグマ-アルドリッチcat#GE-17-5442-02)を用いて末梢血から精製した。PBMC調製物の一部を、抗HLA-A2抗体(Biolegend cat#343303)で染色し、MACSQuantアナライザー10(ミルテニーバイオテク)により分析した。HLA-A2+PBMCを使用して、p53R175Hペプチド特異的CTLを生成した。最初に、樹状細胞を、当該技術分野のプロトコルにしたがって生成した。簡潔に言うと、HLA-A2+PBMC由来のプラスチック接着細胞を、1,000単位/mLの組換えヒトGM-CSF(Peprotech cat#300-03)および500単位/mLのヒトIL-4(Peprotech cat#200-04)が補充された完全RPMI1640培地で7日間培養し、未熟な樹状細胞をその後、10ng/mlでヒトTNF-アルファ(サーモフィッシャーcat#PHC3015)を用いて48時間刺激した。1ウェルあたり10個の成熟樹状細胞および2×10個の自己由来PBMCを、終濃度5ug/mlで24ウェルプレート中にてp53R175Hペプチドと共培養した。100u/mlのヒトIL-2(Peprotech cat#200-02)、5ng/mlのIL-7(Peprotech cat#200-07)、5ng/mlのIL-15(Peprotech cat#200-15)および5ng/mlのIL-21(Peprotech cat#200-21)を、5%CO2および37℃でのインキュベーションの16~24時間後に培養物に添加した。培地の半分を、3日ごとに上述のサイトカインカクテルを含有する新しい培地と交換した。10~14日目に、CD8+細胞を、ヒトCD8+T細胞単離キット(ミルテニーバイオテクcat#130-096-495)を使用して濃縮し、ペプチド抗原を用いて再刺激した。簡潔に言うと、10個の精製CD8+T細胞を、マイトマイシンC(サンタクルーズバイオテクノロジーcat#sc-3514)を用いて25μg/mlで2時間、5%CO2および37℃のインキュベーションで前処理された2×10個のHLA-A2+自己由来PBMCと共培養した。1ug/mlのp53R175Hペプチドおよび上述のサイトカインカクテルを、第1の抗原刺激として手順にしたがい培養物に添加した。抗原刺激の2サイクル後に、増殖したT細胞を、分析およびT細胞クローンの作成のために回収した。
【0091】
7.p53R175Hペプチド特異的CTLクローンの作成
p53R175H特異的CTLクローンを分析し単離するため、PEで標識されたp53R175H/HLA-A2四量体を、メーカーの説明書にしたがいp53R175Hペプチド(配列番号1)およびFlex-T(商標)HLA-A*02:01モノマー(Biolegend cat#280003)を使用して生成した。T細胞を、回収し、APC(Biolegend cat#300912)で標識された抗ヒトCD8抗体1ulおよびPEで標識されたp53R175H/HLA-A2四量体1ulを含有するDPBS緩衝液50ulに懸濁した。4℃で30分間のインキュベーションの後、細胞をフローサイトメトリー(MACSQuantアナライザー10)により分析し、データをFlowjoソフトウェア(Flowjo、LLC)により分析した。T細胞クローンを、FACSソーターを用いてシングルセルソーティングを行うことにより生成した。p53R175Hペプチド特異的CTLを、抗CD8-APCおよびp53R175H/HLA-A2四量体-PEで染色し、1%FBSを有するDPBS400ulに再懸濁し、シングルセルソーティングを、メーカーの説明書にしたがいソニーSH800セルソーターで実行した。細胞を、4℃で一晩2ug/mlの抗CD3抗体(Biolegend、クローンOKT3 cat#317303)および2ug/mlの抗CD28抗体(Biolegend cat#302914)で前処理した96ウェルU底プレートにソートした。25μg/mlでマイトマイシンC(Cayman、cat#11435)を用いて2時間前処理されたHLA-A2+PBMCを、フィーダー細胞として使用した。ソートしたシングルセルを、100u/mlのIL-2、5ug/mlのIL-7、15および21が補充された完全RPMI1640培地中でフィーダー細胞(1ウェルあたり10個のフィーダー細胞)と共培養した。培地の半分を、T細胞がCD8抗体およびp53R175H/HLA-A2四量体を用いて分析されTCR遺伝子を単離するのに十分な数に増殖するまで、3日ごとに上述のサイトカインカクテルを含有する新しい培地と交換した。
【0092】
8.TCR遺伝子のクローニング:
全RNAを、メーカーの説明書にしたがって、Zymo Quick-RNA Microprepキット(Zymo Research cat#R1050)を用いてp53R175Hペプチド特異的CTLクローンから精製した。cDNAを、Smarter RACE 5’/3’キット(タカラバイオcat#634858)を用いるRT-PCRを通じて生成した。キットにより提供された5’-CDSプライマーおよびTCRベータ鎖3’プライマー5’-GGC AGA CAG GAC CCC TTG CTG G-3’(配列番号14)またはTCRアルファ鎖3’プライマー5’-CTT TTC TCG ACC AGC TTG ACA TCA-3’(配列番号15)を使用して、メーカーの説明書にしたがいQ5ハイフィデリティDNAポリメラーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボcat#M0491)を用いてPCRを実行した。TCRアルファ鎖およびベータ鎖の得られたPCR産物を、精製し、Smarter RACE 5’/3’キットにより提供されたpRACEベクターにライゲートした。プラスミドを、TCRアルファ鎖およびベータ鎖のライゲーション物で形質転換されたStellarコンピテントセル(タカラバイオ、cat#634858)から精製した。プラスミド上のインサートの遺伝子配列決定を実行して、TCRV-アルファおよびV-ベータの配列を得た。
【0093】
9.組換えTCRレンチウイルスベクターの調製:
本発明のTCR遺伝子を、複製欠損性レンチウイルスベクターpCDH-EF1α-MCS-PGK-GFP(System Biosciences cat#CD811A-1)中にクローン化した。HLA-A*02:0におけるp53R175Hペプチドに特異的な本発明のTCRのTCR-アルファのV-J領域の配列およびTCR-ベータのV-D-J領域を、各p53R175H特異的CTLクローンから生成されたTCRV-アルファおよびV-ベータの配列にしたがい決定した。マウスTCR-アルファ定常鎖およびマウスTCR-ベータ定常鎖の配列を、参照配列にしたがって決定した(それぞれジェンバンクKU254562およびEF154514.1)。TCR Vβ鎖(配列番号36)を含むヌクレオイド配列を有する核酸、マウスTCR-ベータ定常鎖(配列番号27)、TCR Vα鎖(配列番号35)をコードする核酸、マウスTCR-アルファ定常鎖(配列番号28)をコードする核酸ならびにTCRアルファとベータ鎖の間のフーリン酵素切断ペプチドおよびF2Aペプチド(配列番号13)をコードするリンカー核酸を、合成した(Integrated DNA Technologies)。合成された核酸(配列番号16)を、メーカーの説明書にしたがって、レンチウイルスベクターpCDH-EF1α-MCS-PGK-GFPのEF-1αプロモーターの下流でマルチクローニングサイト中にクローン化した。GFPの発現を駆動するPGKプロモーターは、逆向きである。発現カセットのヌクレオチド配列を、配列番号17に示す。p53R175Hエピトープに特異的なTCRを発現するレンチウイルスベクターを、pCDH-p53として示す。挿入された核酸を配列決定し、エラーや変異は認められない。レンチウイルスベクタープラスミドを、stellarコンピテント細菌(タカラバイオcat#636763)中に形質転換して、レンチウイルス粒子を作るためのプラスミドストックを調製した。
【0094】
10.組換えTCRレンチウイルス粒子の調製:
TCRレンチウイルス粒子を、レンチウイルスベクターpCDH-p53でトランスフェクトされた293T細胞から生成した。簡潔に言うと、6ウェルプレートで増殖した293T細胞を、メーカーの説明書にしたがってリポフェクタミン3000トランスフェクション試薬(インビトロジェンcat#11668019)を使用することにより、pCDH-p53プラスミドおよびpPACKH1-lentivectorパッケージングキット(System Biosciences LV500A-1)を用いて共トランスフェクトした。5%CO2および37℃でのインキュベーションの48時間後、上清を回収し、0.4μmの濾過膜に通して濾過した。ウイルス上清を、メーカーの説明書にしたがってLenti-X(商標)濃縮試薬(タカラ、cat#631231)を用いて濃縮した。作りたてのTCR-レンチウイルスを使用して、JRT細胞または活性化PBMCを感染させた。
【0095】
11.本発明のTCRを発現するT細胞の調製:
本発明のTCRを発現させるための活性化ヒトT細胞を生成するため、PBMC細胞(1ウェルあたり2×10個)を、PBS中一晩4℃で2μg/mlの抗ヒトCD3抗体(Biolegend cat#317303)および2μg/mlの抗ヒトCD28抗体(Biolegend cat#302914)を用いて前処理された24ウェルプレートで培養した。24時間のインキュベーション後、培地を、100IU/mlのIL-2、5ng/mlのIL-7、5ng/mlのIL-15および5ng/mlのIL-21のサイトカインカクテルが補充された完全RPMI-1640培地と交換した。本発明のTCRを発現させるためのT細胞株を生成するため、Jurkat細胞株由来のベータ鎖欠損変異体であるJRT(J.RT3-T3.5)細胞株およびヒトCD8(Jurkart-CD8)を発現させるために形質導入されたJurkat細胞を、使用した。本発明のTCRをコードするレンチウイルスでT細胞をトランスフェクトするため、活性化PBMC、JRT細胞またはJurkat-CD8細胞を、作りたてのレンチウイルス上清1mlまたは濃縮ウイルスを含有する完全RPMI1640培地1mlを含む24ウェルプレート中で再懸濁した。ポリブレン(サンタクルーズバイオテクノロジーcat#sc-134220)を、終濃度10μg/mlで添加した。細胞を、32℃で2時間、1000gで遠心分離した。5%CO2および37℃で4~6時間のインキュベーション後、培地を、サイトカインカクテルが補充された完全RPMI-1640培地と交換した。培地の半分を、サイトカインカクテルが補充された新しい培地と3日ごとに交換した。細胞をまた、メーカーの説明書にしたがいRetroNectinディッシュ(RetroNectinプレコートディッシュ、35mm)(タカラT110A)を使用することによりトランスフェクトできた。一般的に、表現型および機能分析を、72時間後に実行できた。ウイルスベクターがGFPを有した場合、GFP陽性細胞は一般的に、トランスフェクション後48~72時間、蛍光顕微鏡下で観察できた。より抗原特異的なT細胞を得るために、トランスフェクトされたT細胞は、マイトマイシンCで再度処理されかつ1ug/mlのp53R175HペプチドでパルスされたHLA-A2+PBMCを含有する培養物中にてペプチド抗原で再刺激できた。サイトカインカクテルを用いた増殖後、T細胞を、さらなる研究のために回収した。
【0096】
12.フローサイトメトリーによる細胞表現型分析:
PBMCによる外来性TCRの発現を分析するため、JRT細胞またはJurkat-CD8細胞を、本発明のTCRをコードするレンチウイルスでトランスフェクトし、細胞を、1%FBSを有するDPBS緩衝液(2.7mM KCl、1.5mM KH2PO4、136.9mM NaCl、8.9mM Na2HPO4・7H2O、pH7.4)に再懸濁し、APC標識抗ヒトCD8抗体(Biolegend 300912)および上述したように生成されたPE標識p53R175H/HLA-A2四量体で染色する。フローサイトメーターは、MACSQuantアナライザー10(ミルテニーバイオテク社)であり、結果は、Flowjoソフトウェア(Flowjo社)により分析される。標的細胞によるHLA-A2の発現を分析するため、細胞を、FITC抗ヒトHLA-A2抗体(Biolegend 343303)で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。
【0097】
13.T細胞機能分析:
JRT細胞により発現された本発明のTCRの特異性および機能を評価するため、抗原刺激後のJRT細胞上の活性化マーカーとしてCD69の発現を、当該技術分野の方法(Cytometry.1996;26(4):305-10)にしたがって、フローサイトメトリーにより分析した。簡潔に言うと、96ウェルプレートで、pCDH-p53レンチウイルスで形質導入されたJRT細胞を、標的細胞と16時間共培養した、例えば、種々の濃度で変異p53R175Hペプチドを用いてパルスされたT2細胞と混合培養した(E:T比は1:1であった)。インキュベーション後、細胞を、PE標識抗CD69抗体(Biolegend 310905)で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。JRT細胞により発現されたTCRがHLA-A2においてp53R175Hペプチドを特異的に認識できた場合、JRT細胞は、活性化され、表面上でCD69を発現する。GFP+JRT細胞は、本発明のTCRおよびGFPの両方をコードするレンチウイルスベクターにより形質導入された細胞を表した。GFP+CD69+JRTの頻度は、本発明のTCRを発現する活性化T細胞集団を表した。PBMCにおける初代T細胞により発現された本発明のTCRの特異性および機能を評価するため、抗原刺激後のT細胞によるCD137の特異的発現を、当該技術分野の方法にしたがってフローサイトメトリーにより測定した。研究は、CD137+腫瘍浸潤性Tリンパ球がインビトロで腫瘍反応性を保持しかつインビボで優れた抗腫瘍効果を媒介したことを示す(Clin Cancer Res 2014;20(1)44-55)。CD137アッセイは、活性化T細胞によるIFNgまたはTNFaの分泌を評価するためのサイトカインフローサイトメトリーアッセイとの、および活性化T細胞の脱顆粒(細胞傷害)を評価するためのCD107a動員シフトアッセイとの優れた相関を有する(Blood 2007;110(1):201-210)。簡潔に言うと、96ウェルプレートで、組換えレンチウイルスベクター(pCDH-p53)で形質導入されたPBMCを、標的細胞と24時間共培養し(E:T比は5:1であった)、インキュベーション後、細胞を、PE標識抗CD137抗体(Biolegend 309803)およびAPC標識抗CD8抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。T細胞により発現されたTCRがHLA-A2においてp53R175Hペプチドを特異的に認識できた場合、T細胞は、活性化され、表面上でCD137を発現する。GFP+CD8+細胞は、本発明のTCRおよびGFPの両方をコードするレンチウイルスベクターにより形質導入された細胞傷害性T細胞を表した。GFP+CD8+CD137+T細胞の頻度は、本発明のTCRを発現し、抗原刺激により活性化したCTL集団を表した。
【0098】
実施例1
この実施例は、p53R175Hペプチド特異的細胞傷害性T細胞(CTL)が、健康なドナーの血液から精製されるHLA-A2+PBMCから誘導され得、抗原特異的CTLクローンが、p53R175Hペプチド特異的CTLから生成され得ることを示す。
【0099】
上述の方法を使用して、p53R175Hペプチド特異的CTLを、p53R175Hペプチド(HMTEVVRC、配列番号1)での抗原刺激の2サイクル後にPBMCから誘導した。得られたT細胞を、フローサイトメトリーにより分析した。
【0100】
図1Aは、リビングゲートされたリンパ球の0.106%が、p53R175H/HLA-A2四量体(p53R175H-四量体)を結合できるCD8陽性細胞傷害性T細胞であったことを示す。結果は、健康なドナーの天然のT細胞レパートリーにおいて、HLA-A2においてp53R175Hペプチドを認識できる特異的T細胞が存在するが、このT細胞集団の頻度が非常に低いことを示す。HLA-A2+正常人の末梢T細胞レパートリーにp53R175Hペプチド特異的TCRが予め存在することは、正常細胞に対する交差反応や、本発明のTCRを有するT細胞集団により自己免疫反応を引き起こす安全性リスクが低いことを示唆し、このことは本発明のTCRを有するT細胞を養子T細胞療法に適したものにする。p53R175Hペプチド特異的CTLを、樹状細胞により提示されIL-2、IL-7、IL-15およびIL-21を含むサイトカインを用いて増殖されたp53R175Hペプチド抗原を用いてインビトロで生成できた。さらに、p53R175H/HLA-A2四量体の蛍光強度に基づき、CD8+四量体+T細胞は、様々なTCR結合親和性を有する多様なT細胞集団を含んだ。高親和性T細胞を有する支配的な集団が、誘導され、増殖された。このT細胞集団を、ゲートし、CTLクローンを生成するためにシングルセルソーティングに供した。
【0101】
ゲートされたCD8+四量体+T細胞からのシングルセルを、ソニーSH800 FACSソーターを使用して96ウェルプレートの各ウェルにソートした。全288個のCD8+四量体+単一T細胞を、各ウェルにソートし、上記方法で説明された条件下で培養した。サイトカインを用いる抗原再刺激および増殖の後、全58個のT細胞クローンは、TCR遺伝子の分析および単離に十分な数に到達するまで増殖した。各T細胞クローンの細胞の一部を、回収し、フローサイトメトリーにより分析した。58個の分析されたクローンのうち41個のクローンは、CD8+p53R175H/HLA-A2四量体+であり、このことは、これらのT細胞クローンがHLA-A2においてp53R175Hペプチドを認識できたことを示唆した。図1Bは、抗CD8抗体およびp53R175H/HLA-A2四量体で染色された全T細胞クローンを表した4個のクローンのフロー分析を示す。左上のプロットは、p53R175H/HLA-A2四量体を結合できなかったT細胞クローンを示す。このT細胞クローンは、培養条件下で非特異的に増殖される可能性がある。他の3つのプロットは、p53R175H/HLA-A2四量体を結合できた3個のT細胞クローンを示す。
【0102】
全RNAを、3個のCD8+p53R175H/HLA-A2四量体+T細胞クローンから精製した。TCRV-アルファおよびV-ベータの可変領域を、この方法で説明された方法を使用してクローン化し、それらの配列を、遺伝子配列決定により同定した。TCRV-アルファのヌクレオイド配列を、配列番号35として示す。TCRV-ベータのヌクレオイド配列を、配列番号36として示す。3つの異なるクローン由来のTCRは、同一であると判明し、このことは、このp53R175Hペプチド特異的TCRを有するT細胞クローンが、この方法で説明された培養条件下でPBMBから優勢に増殖したことを示した。
【0103】
実施例2
T細胞により発現された本発明のTCRの抗原特異性および機能を評価するため、本発明のTCRのα鎖およびβ鎖の核酸を、複製欠損性レンチウイルス発現ベクター中にクローン化した。図2Aは、本発明のTCRをコードする組換えレンチウイルスベクターの模式図を示す。ヒトTCRα鎖およびβ鎖の定常領域を、それぞれマウスα鎖およびマウスβ鎖の定常領域と置き換えた。TCRβ鎖およびα鎖をコードする核酸を、切断可能な連結ポリペプチドをコードする核酸(配列番号13)により連結した。本発明のTCRα鎖およびβ鎖(配列番号16)の発現を、EF-1αプロモーターにより駆動した。このプロモーターは、真核細胞における高発現プロモーターであり、機能の喪失を引き起こす可能性があるメチル化および他の要因の影響を受けず、したがってインビボでの外来遺伝子の長期発現に適している。TCRα鎖およびβ鎖を、F2A配列により連結し、それによってTCRα鎖およびβ鎖遺伝子を同時に転写でき、続いてリボソームスキッピングを介して翻訳して、別個のTCRα鎖ポリペプチドおよびβ鎖ポリペプチドを生成できた。この設計は、等しい量のTCRα鎖およびβ鎖を確実にして、TCR二量体の形成を促進する。TCRのTCRα鎖とβ鎖の間のフーリン制限部位は、β鎖のC末端で過剰のペプチドを除去できる。
【0104】
実施例3
この実施例は、変異p53R175Hに特異的な本発明のTCRを発現する健康なドナー由来の初代T細胞が、HLA-A2においてp53R175Hペプチドを認識できることを示す。
【0105】
本発明のTCRが本発明のTCRおよびGFPをコードする組換えレンチウイルス(pCDH-p53)でトランスフェクトされた後に初代T細胞で発現され得るかどうかを評価するため、健康なドナー由来のPBMC細胞を、抗CD3および抗CD28抗体で処理し、活性化されたT細胞を、この方法で説明された方法を使用して、本発明のTCR遺伝子を保持する組換えレンチウイルス粒子でトランスフェクトした。細胞を、抗原再刺激およびサイトカインカクテルを用いる増殖の後に回収した。抗CD8およびp53R175H/HLA-A2四量体染色を、実行した。図2Bの左側のグラフは、リビングゲートのリンパ球の15.5%が、組換えレンチウイルスで形質導入されたT細胞集団を表すCD8+GFP+CTLであったことを示す。GFP+細胞がリンパ球集団からリビングゲートされたので、CD8-GFP+細胞の1.23%は、組換えレンチウイルスで形質導入されたCD4+T細胞集団である可能性が最も高かった。
【0106】
初代T細胞により発現された本発明のTCRがHLA-A2において変異p53R175Hペプチドを認識できたかどうかを評価するため、GFP+細胞を、ゲートし、p53R175H/HLA-A2四量体の結合について分析した。図2Bの右側のグラフは、ゲートされたCD8-GFP+集団(左側プロット)およびゲートされたCD8+GFP+集団(右側プロット)におけるp53R175H/HLA-A2四量体+細胞の頻度を示す。結果は、形質導入されたCD8+CTLの82.9%が、p53R175H/HLA-A2四量体を結合できたことを示し、このことは、このCD8+CTL集団により発現された本発明のTCRが、HLA-A2において変異p53R175Hペプチドを認識できたことを示す。しかし、CD4 T細胞を表すCD8-GFP+T細胞の一部のみが、p53R175H/HLA-A2四量体を結合でき、このことは、本発明のTCRによるp53R175H/HLA-A2四量体の結合が、CD8の存在に依存していることを示唆する。
【0107】
本発明のTCRのp53R175H/HLA-A2四量体への結合がCD8依存性(CD8-depandant)であったかどうかをさらに評価するため、Jurkat株由来のCD8陰性JRT細胞および外来性CD8aを発現するように形質導入されたCD8陽性Jurkat細胞(Jurkat-CD8)を、本発明のTCRを発現するように形質導入し、抗CD8抗体およびp53R175H/HLA-A2四量体で染色した。GFP+形質導入細胞を、ゲートして、T細胞によるp53R175H/HLA-A2四量体の結合を分析した。図2Cの左側プロットは、CD8発現がないと、JRT細胞により発現された本発明のTCRは、四量体を結合できなかったことを示す。しかし、CD8の助けにより、Jurkat-CD8細胞により発現された本発明のTCRは、四量体を結合できた(図2Cの右側プロット)。この結果は、本発明のTCRが、可溶性のp53R175H/HLA-A2四量体を結合するためにT細胞上でCD8を共受容体として必要とすることを示す。CD8非依存性HLA/ペプチド四量体結合を行うTCRの正確な親和性閾値はまだ定義されていないが、研究は、CD8非依存性のためのTCR親和性の最小K閾値が、およそ3~6μMの範囲であることを示し(Immunology.2009;126(2):165-176)、このことは、本発明のTCRが、3~6μMのK値を有するTCRよりも高くないHLA-A2におけるp53R175Hペプチドに対する結合親和性を有している可能性があることを示唆する。
【0108】
実施例4
この実施例における本発明のTCRの機能分析は、T細胞により発現された本発明のTCRが、HLA-A2においてp53R175Hペプチドを高いアビディティーで認識できることを示す。
【0109】
JRT細胞により発現された本発明のTCRの機能を評価するため、JRT細胞を、本発明のTCRをコードする組換えレンチウイルス(pCDH-p53)で形質導入し、1ug/mlから開始するp53R175Hペプチドの10倍希釈系列でパルスされたT2細胞と共培養した。16時間の抗原刺激後、GFP+細胞を、ゲートし、CD69+JRT細胞の割合を、フローサイトメトリーにより分析した。図3Aは、pCDH-p53で形質導入されたJRT細胞が、抗原性ペプチドでの刺激後にCD69を発現したことを示し、このことは、JRT細胞がHLA-A2により提示されるp53R175Hペプチドにより活性化され、その活性化は、ペプチド用量依存的反応であったことを示す。JRT細胞は、p53R175Hペプチドの添加がない対照群と比較して、CD69+細胞の頻度の2倍の増加に基づいて、10ng/mlの濃度と同程度に低い濃度で、p53R175Hペプチドにより活性化できた。結果は、共受容体CD8なしに、T細胞上の本発明のTCRが、低濃度でp53R175Hペプチドを効果的に認識できることを示す。その同種抗原性ペプチドに対する本発明のTCRのアビディティーは、他の研究で報告されたネオエピトープに対して特異的なTCRの高いアビディティー(Cancer Immunol Res.2019;7(4):534-543)に匹敵する。
【0110】
初代T細胞により発現された本発明のTCRの機能を評価するため、活性化されたPBMC細胞を、本発明のTCRをコードする組換えレンチウイルス(pCDH-p53)で形質導入し、1ug/mlから開始する変異p53R175Hペプチドの10倍希釈系列、または10ug/mlから開始する野生型p53R175ペプチドの10倍希釈系列を用いてパルスされたT2細胞と共培養した。24時間の抗原刺激後、GFP+細胞を、ゲートし、CD8+CD137+T細胞の割合を、フローサイトメトリーにより分析した。図3Bは、TCR-遺伝子形質導入CTLが、HLA-A2により提示される変異p53R175Hペプチドでの刺激により活性化され得たことを示す。活性化は、ペプチド用量依存的応答であった。形質導入されたT細胞は、p53R175Hペプチドを添加していない対照群と比較して、CD8+CD137+細胞の頻度が2倍増加したことに基づき、1ng/mlといった低い濃度でp53R175Hペプチドにより活性化され得た。形質導入されたT細胞により発現された本発明のTCRは、10ug/mlの高濃度であっても野生型p53R175ペプチドを認識できなかった。この結果は、本発明のTCRはHLA-A2により提示された変異p53R175Hエピトープペプチドを特異的に認識できるが、高濃度でのHLA-A2における野生型の対応するエピトープを無視することを示す。T細胞上の共受容体CD8は、CD8陰性JRT細胞上のTCRと比較して10倍の増加により、本発明のTCRのアビディティーを促進する。
【0111】
TCR機能的効力が、TCR親和性のみによって決定されるのではなく、TCRおよびCD8の複合的な寄与によって決定されるアビディティーにより決定されることを示す研究があった。TCR親和性は、10μMの閾値までアビディティーに寄与し、その後、さらなる増加は、より高いアビディティーと、その結果としてより強力なT細胞機能には繋がらない(PNAS 2013;110(17):6973-6978)。本発明のTCRは、CD8の助けなしにp53R175H/HLA-A2四量体を結合することを可能にするような超高親和性を有しない可能性があるが、他の報告された高いアビディティーのTCRと比較して高いアビディティーでp53R175Hペプチドを依然として認識できた。さらに、本発明のTCRの適切な親和性は、超高親和性を有するTCRにより引き起こされる潜在的な交差反応性自己免疫に関連する安全への懸念を回避できる。実施例で示された本発明のTCRの高いアビディティーは、それが変異p53R175Hを有する癌細胞などの標的細胞上のHLA-2により提示されるp53R175Hエピトープペプチドの非常に低い発現を検出することを可能にする。
【0112】
実施例5
この実施例は、変異p53R175Hを有するHLA-A2+腫瘍細胞が、本発明のTCRを発現するように形質導入される初代T細胞により認識され得ることを示す。
【0113】
腫瘍細胞株上のHLA-A2の発現を、PE標識抗HLA-A2抗体(Biolegend cat#343305)で評価した。腫瘍細胞株KLE、KMS26およびSKUT1を、5%CO2および37℃のインキュベーションで24時間ヒトIFN-ガンマ(200u/ml)で前処理した。IFN-ガンマで前処理した、または前処理していない腫瘍細胞を、抗HLA-A2抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。図4Aの左側のグラフは、PE標識アイソタイプ抗体で染色された対照群(ライトグレーの線)、IFN-ガンマで処理されなかった腫瘍細胞(ミディアムグレーの線)およびIFN-ガンマで前処理された腫瘍細胞(ダークグレーの線)を含む、腫瘍細胞株によるHLA-A2の発現を示す。結果は、腫瘍細胞株KLEおよびKMS26が、細胞表面上でHLA-A2を発現し、HLA-A2の発現が、IFN-ガンマ刺激により、特にKLE細胞で促進され得ることを示す。SKUT1細胞株は表面上でHLA-A2を発現しないが、この細胞株は、TRON細胞株ポータルによるヘテロ接合型のHLA-A2対立遺伝子を有する。IFN-ガンマ処理は、SKUT1細胞上でのHLA-A2発現をアップレギュレートできない。HLA-A2+SKUT1細胞を生成するため、SKUT1細胞を、HLA-A2またはHLA-A2/ベータ2-ミクログロブリン(beta2-microglubine)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。右側プロットは、HLA-A2単独(ミディアムグレーの線)またはベータ2-ミクログロブリン(beta2-microglubine)と共にHLA-A2(ダークグレーの線)で形質導入されたSKUT1細胞が、表面上でHLA-A2を発現できることを示す。SKUT1細胞株のほかに、SKOV3、293TおよびK562細胞株もまた、外来性HLA-A2を発現するように形質導入した。
【0114】
TRON細胞株ポータルによれば、KLE、KMS26およびSKUT1細胞株は、変異p53p.R175Hを保持している。「100万個のマップされたリードあたりの、転写物のキロベースあたりのリード」(RPKM)として与えられるこれらの細胞株におけるp53の転写産物発現を、以下のように報告する:KMS26株は、187.2RPKMでp53を発現し、KLE株は、232.4RPKMでp53を発現し、SKUT1は、310.2RPKMでp53を発現する。
【0115】
腫瘍細胞を認識するように初代T細胞により発現された本発明のTCRの機能を評価するため、活性化PBMC細胞を、本発明のTCRをコードする組換えレンチウイルス(pCDH-p53)で形質導入し、HLA-A2のみ、変異p53R175Hのみ、またはHLA-A2と変異p53R175Hとの両方を発現する腫瘍細胞を含む多種多様の標的細胞株と共培養した。100ng/mlのp53R175HペプチドでパルスされたT2細胞は、陽性対照であった。標的細胞なしに形質導入されたPBMCは、陰性対照であった。24時間の抗原刺激後、GFP+細胞をゲートし、CD8+CD137+T細胞の割合を、フローサイトメトリーにより分析した。図4Bは、原発性CTL細胞により発現された本発明のTCRが、外来性HLA-A2を発現するように形質導入されたKMS26、KLE、SKUT1、変異p53R175Hを発現するように形質導入された293T-A2および変異p53R175Hを発現するように形質導入されたK562-A2を含むHLA-A2+p53R175H+標的細胞(塗りつぶした棒)を認識することにより活性化され得たことを示す。HLA-A2のみ(293T-A2およびSKOV3-A2)を発現する標的細胞は、本発明のTCRを有するT細胞を活性化できなかった。HLA-A2陰性SKUT1は、IFN-ガンマで刺激しても本発明のTCRを有するT細胞を活性化できなかったが、外来性HLA-A2を発現するSKUT1-A2は、本発明のTCRを有するT細胞を活性化でき、このことは、内因性p53R175HエピトープペプチドがSKUT1-A2細胞上で外来性HLA-A2により提示され得、かつ本発明のTCRにより認識され得ることを示す。抗HLA-ABC抗体(Biolegend cat#311427)を、混合培養中に添加し、HLA-Iをブロックすることが、本発明のTCRを有するCTL上でCD137の発現を阻害できた(白色の棒)ことを示し、このことは、本発明のTCRが、HLAクラスI分子により提示される抗原性ペプチドにより活性化されたことをさらに説明した。IFN-ガンマでの前処理は、KLE細胞上でHLA-A2発現を促進でき、これは、IFN-ガンマで前処理されたKLE細胞がより高レベルで本発明のTCRを活性化した、という結果を説明できる可能性がある。しかし、IFN-ガンマで前処理されたKMS26細胞は、本発明のTCRを有するT細胞をより低レベルで活性化した。この理由は、不明のままであるが、IFN-ガンマ刺激後におそらくアップレギュレートされたKMS26上でのPD-L1が推測され得る。この実施例は、初代T細胞により発現された本発明のTCRが、腫瘍細胞上でHLA-A2により提示された内因性p53R175Hエピトープペプチドの低発現を検出するのに十分高い感度を有することを示す。
【0116】
実施例6
この実施例は、実施例2で構築されたTCRを含む、本発明のTCRのアミノ酸配列を示す。これらのTCRのTCRアルファおよびベータ鎖のアミノ酸配列を、表1に示す。CDRは、太字であり、下線をつけている。
【0117】
【表1】
【0118】
結論
本発明において、HLA-A2における変異p53R175Hエピトープペプチド(配列番号1)に特異的である新規のTCRが、同定され、健康なヒトドナーから生成された。本発明のTCRは、標的細胞上でHLA-A2により提示される外来性および内因性p53R175Hエピトープペプチドを認識する高いアビディティーを有するが、対応する野生型p53R175ペプチドに応答しない。p53R175Hに対する抗原特異性および高いアビディティーは、本発明のTCRを、HLA-A2対立遺伝子および変異p53R175Hを保持する癌を特異的に標的化する免疫療法レジメン(regiments)の開発に適切なものにする。本発明のTCRを外因的に発現するように形質導入されたT細胞は、癌を有する患者を処置するための養子T細胞療法に適用できる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
【配列表】
2024540197000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024540197000001.xml
【国際調査報告】