(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】組換えシルクを含む化粧品及びパーソナルケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20241024BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241024BHJP
C07K 14/435 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K8/64
A61Q5/00
A61Q19/00
C07K14/435 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525787
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 US2022079160
(87)【国際公開番号】W WO2023081711
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516079198
【氏名又は名称】ボルト スレッズ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】2261 Market Street, STE 5447 San Francisco, CA 94114 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】レイ リンジー
【テーマコード(参考)】
4C083
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB231
4C083AC011
4C083AC012
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4C083AC072
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC152
4C083AC171
4C083AC172
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4C083AC302
4C083AC311
4C083AC352
4C083AC371
4C083AC372
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4C083AC542
4C083AC661
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC792
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4C083AC862
4C083AC901
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4C083AD091
4C083AD092
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4C083AD201
4C083AD351
4C083AD352
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4C083AD571
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4C083AD662
4C083BB01
4C083BB04
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4C083BB07
4C083BB11
4C083BB21
4C083BB48
4C083BB51
4C083BB53
4C083BB60
4C083CC03
4C083CC38
4C083DD17
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4C083EE17
4C083EE21
4C083EE22
4C083EE28
4H045BA10
4H045CA51
4H045EA15
4H045FA71
4H045GA01
(57)【要約】
本明細書では、組換えシルクポリペプチドを含む組成物、並びに皮膚及び毛髪の特性に影響を与えるための美容及びパーソナルケア配合物におけるシリコーン(「流体」及び「エラストマー」の両方)置き換え物としてのその使用が開示され、配合物粘度の増加などの配合物自体への利益を含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン置き換え物を有する化粧品、皮膚、又はヘアケア組成物であって、
化粧品、皮膚、又はヘアケアのための1つ以上の活性成分と、
組換えシルクポリペプチドを含むシリコーン置き換え構成成分と
を含み、
実質的にシリコーンを含まない、組成物。
【請求項2】
前記シリコーン置き換え構成成分が、少なくとも同じ性能を提供しながら、シリコーンの従来の負荷レベル未満の負荷レベルで存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記性能が、マット仕上げを付与すること、毛髪のもつれを解消すること、皮膚に柔らかい感触を付与すること、シルクのような滑らかでさらさらの感触を付与すること、前記皮膚のテカリの減少、前記毛髪の輝きの増強、鮮やかで効果的な顔料の送達、容易な展延性、迅速な吸収時間、しわを隠す効果、毛髪のスタイル保持、毛髪の耐熱性、UV及び汚染防御、並びに粘度の増加のうちの1つ以上である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組換えシルクポリペプチドが、粉末の形態で存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記シリコーン置き換え組成物が、溶媒を更に含み、前記粉末が、前記溶媒中に懸濁されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶媒が、水性溶媒、極性溶媒、非極性溶媒、油溶媒、ワックス溶媒、又は界面活性剤である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記シリコーン置き換え組成物が、保存剤又はキレート剤を更に含む、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記シリコーン置き換え物が、前記組換えシルクポリペプチドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記シリコーン置き換え物が、希釈剤中に懸濁された前記組換えシルクポリペプチドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
シリコンエラストマー置き換え物が、ランダムに構造化されたゲルとして前記組換えシルクポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ゲルが、保存剤又はキレート剤を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
1部の組換えシルクポリペプチドが、最大60部のシリコーンの置き換え物を提供することができる、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組換えシルクポリペプチドが、前記組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約30重量%の量で存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~0.5重量%の組換えシルクポリペプチド、0.05重量%~5重量%の組換えシルクポリペプチド、0.5重量%~5重量%の組換えシルクポリペプチド、1重量%~5重量%の組換えシルクポリペプチド、又は5重量%~30重量%の組換えシルクポリペプチドを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記シリコーン置き換え物が、同じ量のシリコーンを有する組成物と比較して、G’及びG”レオロジー曲線によって測定した際に前記組成物の粘度を増加させる一方で、同じ量のシリコーンを有する前記組成物についてのG’及びG”レオロジー曲線と実質的に同じ形状を有するG’及びG”レオロジー曲線を維持する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記シリコーン置き換え物が、溶媒中に懸濁された前記組換えシルクポリペプチドを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組換えシルクポリペプチドが、前記シリコーン置き換え物の総重量に基づいて、約1重量%~約40重量%の量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記溶媒が、水性溶媒、アルコール、又は油性溶媒である、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
前記溶媒が、水、グリセリン、脱イオン水、オリーブ油、及びペンチレングリコールのうちの1つ以上である、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項20】
前記組換えシルクポリペプチドの長さが、100アミノ酸より長い、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組換えシルクポリペプチドが、半結晶状態へと自己組織化されている、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組換えシルクポリペプチドの結晶部分が、ベータ-シート架橋を特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
組換えシルクが、3~8のpHでの水、他の極性及び非極性溶媒(例えば、ヘキサノール、ヘキサン、ベンゼン)、油、ワックス、界面活性剤(例えば、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性)からなる群から選択される溶媒中で乏しい溶解度を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
組換えシルクが、3~8のpHでの水、他の極性及び非極性溶媒(ヘキサノール、ヘキサン、ベンゼン)、油、ワックス、界面活性剤(アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性)からなる群から選択される溶媒中で不均一分散体を形成する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組換えシルクポリペプチドが、配列番号1を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
SPF配合物、カラー化粧品、洗い流す毛髪シャンプー、皮膚セラム、皮膚プライマー、又は毛髪セラムである、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
水を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
水、グリセリン、及び安息香酸ナトリウムを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
酸化亜鉛、アロエベラ(Aloe Barbadensis)葉汁、水、シア(Butyrospermum Parkii)ナッツ抽出物、チャノキ(Camellia Sinesis)(緑茶)葉抽出物、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリロイルグリセリン/セバシン酸コポリマー、カプリリル/カプリルグルコシド、セテアリルアルコール、セテアリルグルコシド、ココカプレート/カプリレート、ココグルコシド、ココナッツアルカン、コハク酸ジヘプチル、グリチルリチン酸二カリウム、エチルヘキシルグリセリン、グリセリン、加水分解ホホバエステル、イソステアリン酸、レシチン、フェノキシエタノール、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、ポリヒドロキシステアリン酸、ソルビン酸カリウム、リンゴ(Pyrus Malus)果実抽出物、スクレロチウムガム、安息香酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、スクワラン、トコフェロール、キサンタンガム、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
水、ブラシカグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、セテアリルアルコール、CI77491、キュウリ抽出物、グルコノラクトン、グリセリン、ステアリン酸グリセル、ヒマワリ(helianthus annuus)種子ワックス、水素化ポリシクロペンタジエン、酸化鉄、ホホバエステル、ムラサキ(lithospermum erythorhzon)根抽出物、ポリアクリレートクロスポリマー-y、ポリグリセリン-3、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、シリカ、ホホバ(simmondsia chinensis)種子油、安息香酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、トコフェロール、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
水、ポリアクリレートクロスポリマー-6、グリセリン、クエン酸、グルコノラクトン、安息香酸ナトリウム、塩化セトリモニウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
染料を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記シリコーンが、シリコーンエラストマーである、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、皮膚及び毛髪の特性に影響を与えるための美容及びパーソナルケア配合物中に、シリコーン(「流体」及び「エラストマー」の両方)置き換え物として組換えシルクポリペプチドを含む、組成物、並びにその使用に関し、配合物粘度の増加などの配合物自体への利益を含み得る。皮膚の場合、これらの特性としては、長時間の耐久性、シルクのような柔らかい感触、マット仕上げ、増強された顔料送達、展延性、迅速な吸収、しわを隠す効果、並びにUV及び汚染防御が挙げられ得る。毛髪の場合、これらの特性としては、長時間の耐久性、輝き、非油脂性、縮れ制御、毛髪の密度の追加、スタイリング保持、耐熱性、並びにUV及び汚染防御が挙げられ得る。
【背景技術】
【0002】
背景
シリコーンポリマーは、ポリマーの骨格を構成する交互のケイ素原子及び酸素原子という共通性を有する広範な化学ファミリーである。一般的に言えば、「液体」シリコーンポリマー又は「シリコーン流体」は、官能基を含有しても含有しなくてもよい高分子量シリコーンポリマーを指す。これらのポリマーは、「ジメチコン」と称され得る。シリコーンエラストマーは、線形シリコーンポリマーが架橋されてゲル状ネットワークを形成したシリコーンのタイプを指す。
【0003】
シリコーン流体及びシリコーンエラストマーは、美容及びパーソナルケア業界で広く使用されている。例えば、シリコーンエラストマーは、皮膚を柔らかくベルベットのような感触にし、並びに皮膚にマットな仕上げを与えることで知られている。シリコーンのいくつかの一般的な用途には、BBクリーム、老化防止しわ低減剤、プライマー、液体ファンデーション、ムースファンデーション、ゲル状アイシャドウなど多くある。
【0004】
流体シリコーン及びシリコーンエラストマーは、皮膚、毛髪、及びパーソナルケア用途に利益を提供するが、シリコーンは、洗い流すのが難しく、毛穴に留まり得る。これは、シリコーンが疎水性であり、水をはじくためである。この理由のため、シリコーンベースの製品は容易に洗い流されない。また、シリコーンは環境に優しくない-環境において生分解速度が非常に遅く、したがって生体内に蓄積し得る。シリコーンを排水管に洗い流すと、海洋及び水路の汚泥汚染の蓄積をもたらし、数十年又は数百年にわたって分解され得ない(Horii Y.,Kannan K.(2019)Main Uses and Environmental Emissions of Volatile Methylsiloxanes.In:Homem V.,Ratola N.(eds)Volatile Methylsiloxanes in the Environment.The Handbook of Environmental Chemistry,vol 89.Springer,Cham.https://doi.org/10.1007/698_2019_375(非特許文献1))。
【0005】
今日まで、シリコーンエラストマーと同じ性能レベルを満たす一方でバイオベース及び生分解性であるシリコーンエラストマー代替成分のニーズは満たされていない。シクロシロキサン希釈剤(通常、シリコーンエラストマーを伴う)をバイオベースの代替物で置き換えることによって、「よりグリーンな」シリコーンエラストマーを作製するための多くの成分の態様がある。これは正しい方向へのステップであるが、シリコーンエラストマーが依然として生分解性ではないという目下の問題を解決するにははるかに及ばない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Horii Y.,Kannan K.(2019)Main Uses and Environmental Emissions of Volatile Methylsiloxanes.In:Homem V.,Ratola N.(eds)Volatile Methylsiloxanes in the Environment.The Handbook of Environmental Chemistry,vol 89.Springer,Cham.https://doi.org/10.1007/698_2019_375
【発明の概要】
【0007】
【図面の簡単な説明】
【0008】
前述及び他の目的、特徴、及び利点は、本発明の特定の実施形態の下記の説明から明らかであり、同様の参照文字が異なる図面を通して同じ部分を参照する添付の図面に例示される。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本発明の様々な実施形態の原理を例示することに重点を置く。
【0009】
【
図1A】SPF配合物のトップダウン図を例示する。
【
図1B】SPF配合物の盲検試験比較からのデータをプロットするスパイダーチャートを示す。
【
図1C】全てのSPF配合物(組換えシルクポリペプチド及びシリコーンを含まない)で使用される成分を示す。
【
図1D】SPFベース配合物、1.5%の組換えシルクポリペプチドを有するSPF配合物、及び2%のシリコーンを有するSPF配合物の、弾性係数、粘性係数、及び位相角対周波数を例示する。
【
図1E】SPFベース、及び1%のb-シルクタンパク質(すなわち、18Bシルク;配列番号2878を含む組換えシルク)又は5%のシリコーンエラストマー成分とともに配合されたSPFベースの光学顕微鏡画像を示す。また、水中に懸濁された1%の組換えシルクポリペプチド粉末の参照画像が示される。
【
図2A】1%の組換えシルクポリペプチド又は10%のシリコーンエラストマーを有する眼/頬/唇用3-イン-1クリーム配合物(すなわち、カラー化粧品)のトップダウン図を例示する。
【
図2B】皮膚への顔料送達及び実証化のためのカラー化粧品の評価のためのフローチャートを例示する。
【
図2C】i)1%の組換えシルクポリペプチド、ii)5%のシリコーンエラストマー、及びiii)10%のシリコーンエラストマーを有するカラー化粧品の適用及びカラー化粧品の拭き取りの代表的な画像を示す。
【
図2D】全てのカラー化粧品配合物(組換えシルクポリペプチド及びシリコーンを含まない)で使用される成分を示す。
【
図2E】カラー化粧品ベース、及び1%の組換えシルクポリペプチド又は5%のシリコーンエラストマー成分とともに配合されたベースの光学顕微鏡画像を示す。
【
図2F】カラー化粧品ベース、1%の組換えシルクポリペプチドを有するカラー化粧品、及び5%のシリコーンエラストマーを有するカラー化粧品の弾性係数、粘性係数、及び位相角対周波数のチャートを示す。
【
図3A】1%の組換えシルクポリペプチド及び5%のシリコーンエラストマーを有する場合及び有さない場合の毛髪セラム配合物の光学顕微鏡画像を示す。また、水中に懸濁された1%の組換えシルクポリペプチド粉末の参照画像が示される。
【
図3B】i)処理されていない、ii)セラムベースで処理されている、iii)1%の組換えシルクタンパク質を有するセラムベースで処理されている、及びiv)5%のエラストマーを有するセラムベースで処理されている、150倍及び800倍の倍率でのヤクの毛髪のSEM画像を示す。
【
図3C】カラー毛髪セラムベース、1%の組換えシルクタンパク質を有する毛髪セラムベース、及び5%のシリコーンエラストマーを有する毛髪セラムベースの弾性係数、粘性係数、及び位相角対周波数(下列)又は対剪断ひずみ(上列)のチャートを示す。
【
図3D】毛髪セラムベース配合物(組換えシルクポリペプチド及びシリコーンエラストマーを含まない)で使用される成分の表である。
【
図4A】弾性係数、粘性係数、及び位相角対周波数(上列)又は粘度対剪断速度(下列)のチャート上での、工業標準シリコーンエラストマーゲル(30%の乾燥固体)及び12%の組換えシルクポリペプチドのG’及びG”の比較を示す。
【
図4B】150倍及び800倍の倍率でヤクの毛髪上に分散させた純粋な組換えシルクポリペプチド及びシリコーンエラストマーのSEM画像を示す。
【
図5】セラムベースのみ、又は1%のシルクポリペプチド、1%のケラチン成分、若しくは5%のシリコーンエラストマー成分のいずれかを有するセラムベースを含有する洗い流さない毛髪セラムを適用した後のカール保持試験への曝露後の毛髪の見本の画像を示す。
【
図6】実施例6に記載の洗い流すシャンプー配合物(組換えシルクポリペプチド及びシリコーンエラストマーを含まない)で使用される成分の表である。
【
図7】実施例7に記載の洗い流さない皮膚セラム(組換えシルクポリペプチド及びシリコーンエラストマーを含まない)で使用される成分の表である。
【
図8】実施例8に記載の洗い流さない皮膚プライマー(組換えシルクポリペプチド及びシリコーンエラストマーを含まない)で使用される成分の表である。
【
図9A】プラセボと比較した、異なる量の組換えシルクポリペプチドを含有する
図6の組成物の剪断速度の関数としての剪断粘度のグラフである。
【
図9B】
図9Aで試験した組成物の、プラセボからの粘度の変化を示すチャートである。
【
図10A】
図9Aで試験した組成物のレオロジー(G’及びG”)の変化を示すチャートである。
【
図10B】
図9Aで試験した組成物のレオロジー(G’及びG”)の変化を示すチャートである。
【
図11】異なる量の組換えシルクポリペプチドを有する
図7の組成物の、プラセボからの粘度の変化を示すチャートである。
【
図12A】プラセボと比較した、異なる量の組換えシルクポリペプチドを含有する
図8の組成物の剪断速度の関数としての剪断粘度のグラフである。
【
図12B】
図12Aで試験した組成物の、プラセボからの粘度の変化を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明の様々な実施形態の詳細は、下記説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに態様から明らかになるであろう。
【0011】
本発明は、化粧品、皮膚、及び毛髪に、通常は線形シリコーン及びシリコーンエラストマーに関連するであろう利益を提供するための、パーソナルケア及び/又は化粧品組成物内のシリコーン置き換え物としての組換えシルクポリペプチドの使用に関する。本開示の皮膚、毛髪、又は化粧品組成物は、活性成分、顔料、及び添加剤を含む、そのような組成物に典型的に含まれる任意の標準成分を有し得る。組換えシルクポリペプチドを含むシリコーン置き換え物を、任意の標準的なヘアケア、スキンケア、又は化粧品成分と組み合わせて使用して、そのような組成物に典型的に含まれるシリコーン(流体又はエラストマー)が置き換えられた本開示の組成物を形成することができる。例えば、SPF配合物、カラー化粧品、洗い流す毛髪シャンプー、皮膚セラム、皮膚プライマー、又は毛髪セラムに限定されないシリコンエラストマー置き換え構成成分とともに使用するための任意の皮膚、毛髪、又は化粧品組成物のタイプが、本明細書で企図される。組換えシルクポリペプチドは、シリコーン構成成分と比較して、等しい又は減少した負荷レベルでこれらの利益を送達し得る。有利には、シリコーン置き換え物としての組換えシルクポリペプチドは、シリコーンを含む場合と同様のG’及びG”レオロジー曲線形状を維持し得ることが観察されている。更に、いくつかの組成物では、組換えシルクポリペプチドは、等量のシリコーンと比較して配合物の粘度を顕著に増加させ、それによって、シリコーンと比較して組換えシルクポリペプチドの負荷レベルを顕著に低減させることができることが見出された。更に、シリコーン構成成分は生分解性ではないが、組換えシルクポリペプチドは生分解性であり、環境中で(例えば、排水管に洗い流すと)分解する。
【0012】
本開示による化粧品、毛髪、又はスキンケア組成物は、組換えシルクポリペプチドと、化粧品、皮膚、又はヘアケアのための1つ以上の活性成分とを含むシリコーン置き換え構成成分を含む。本開示の組成物は、シリコーンを実質的に含まないことができる。本明細書における「シリコーン」への言及は、別段の定めがない限り、シリコーン流体及びシリコーンエラストマーの両方を含むと理解されるべきである。例えば、本開示の組成物は、0.1%未満のシリコーンを有し得る。例えば、本開示の組成物は、0.1%未満のシリコーンエラストマーを有し得る。
【0013】
組換えシルクポリペプチドは、架橋及び半結晶状態へとエントロピー的に自己組織化した高分子量ポリペプチドである。組換えポリペプチドは、粉末として組成物中に含まれ得る。例えば、組換えシルクポリペプチドの中空粒子を粉砕し、粉砕粉末として組成物に含めることができる。シリコーン置き換え構成成分は、溶媒中で現に懸濁された組換えシルクポリペプチドを含み得る。シリコーン置き換え構成成分は、ランダムに構造化されたゲルとして組換えシルクポリペプチドを含み得る。マクロレベルでは、これは、水性溶媒中に懸濁された低粘度の弱いゲル(「スラリー」と称されることがある)から、乾燥した中空粉末粒子(<15%の水分含有量)までの範囲であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドを含む組成物、並びに美容及びパーソナルケア配合物中のシリコーン置き換え物としてのその使用が、本明細書に提供される。
【0015】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、>100アミノ酸を超える長さ及び90kDaアミノ酸未満の長さの高分子量ポリペプチドである。
【0016】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、結晶部分が、3~8のpHでの水、他の極性及び非極性溶媒(ヘキサノール、ヘキサン、ベンゼン)、油、ワックス、界面活性剤(アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性)への溶解度に耐性であるが、これらの材料中に容易に分散して、不均一分散体を形成するベータ-シート架橋基を特徴とする、半結晶状態へと自己組織化される。
【0017】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、ランダムに構造化されたゲルとして存在する。このゲルはまた、保存剤及びキレート剤の存在も含み得る。様々な態様において、組換えシルクポリペプチドは、中空粉末として存在する。中空粉末は、粉末が粉砕粉末として組成物に組み込まれるように粉砕され得る。粉末はまた、保存剤及びキレート剤を含み得るか又はそれらと混合され得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、水性、極性、非極性、油、ワックス、又は界面活性剤希釈剤に懸濁された中空粉末として存在する。この混合物もまた、保存剤及びキレート剤の存在を含み得る。
【0019】
組換えシルクポリペプチドは、組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約30重量%の量で組成物中に含まれ得る。例えば、組換えシルクポリペプチドは、組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%~約5重量%、約0.5重量%~約5重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、約0.1重量%~約0.5重量%、約0.05重量%~約5重量%、約0.5重量%~約5重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約30重量%、約25重量%~約30重量%、約10重量%~約25重量%、又は約1重量%~約5重量%の量で組成物中に含まれ得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、洗い流さない配合物又は洗い流す配合物内に適用されると、皮膚及び毛髪に特有のかつ検出可能なフィルムを形成する。
【0021】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、洗い流す配合物内に適用されると、洗浄又は角質除去するのに役立つ。
【0022】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、粉末が5~100倍の対物レンズで観察され得る顕微鏡による視覚検査によって証明されるように、(洗い流さない又は洗い流す)配合物内で検出され得る。更に、組換えシルクポリペプチドは、SEC-HPLCを使用して、50kDa~90kDaの高分子量ピークによって検出され得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、同じ濃度またはそれ以下で、スキンケア、ヘアケア、化粧品、パーソナルケア、制汗剤/消臭剤配合物におけるシリコーンエラストマーの性能に匹敵する。
【0024】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、同じ濃度またはそれ以下で、スキンケア、ヘアケア、化粧品、パーソナルケア、制汗剤/消臭剤配合物におけるシリコーンエラストマーの性能よりも優れている。
【0025】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、シリコーンエラストマーを少なくとも1:1の比~最大1:60の比で置き換え、つまり、1部のシリコーンエラストマーを1部の組換えシルクポリペプチドで置き換えることができ、最大60部のシリコーンエラストマーを1部の組換えシルクポリペプチドで置き換えることができることを意味する。例えば、シルクポリペプチドをシリコーン置き換え物として有するシャンプーを産生し、シルクポリペプチドは、組成物の総重量に基づいて、0.05重量%の量で存在するが、同じ組成物は、同じ性能を達成するために3重量%(60倍の増加)の量のシリコンエラストマーを必要とした。
【0026】
いくつかの実施形態において、組成物の性能特徴は、
a)シルクのような滑らかでさらさらの感触
b)皮膚のテカリの減少
c)毛髪の輝きの増強
d)鮮やかで効果的な顔料の送達
e)容易な展延性
f)迅速な吸収時間
g)マット化(すなわち、油脂が少ない使用感)
h)しわを隠す効果
i)毛髪のスタイル保持及び耐熱性
j)UV及び汚染防御
k)配合物粘度の増加
のうちの1つ以上を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、極性及び非極性溶媒、油、ワックス、脂肪酸、湿潤剤、並びに(日焼け止め)活性剤などの多種多様な一般的な化粧品構成成分と互換性がある(その構造及び性能が維持されることを意味する)。
【0028】
異なる溶媒中の組換えシルクポリペプチド膨潤の違いゆえに、これらの違いは、配合物加工助剤として使用され得る。例えば、組換えシルクポリペプチドは、油、ワックス、又は非極性溶媒中、非膨潤状態で配合物に添加することができ、次いで、水と接触すると膨潤する。組換えシルクポリペプチドは、水によって皮膚及び毛髪から完全に又は部分的に除去され、界面活性剤によって完全に除去される。
【0029】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、嫌気性及び好気性消化条件の両方において生分解についてシリコーンエラストマーよりも優れている。経済協力開発機構(OECD)301分解度試験において、組換えシルクポリペプチドは、最初の3~5日間に少なくとも5~15%の急速な生分解を経験する。その後の5~90日間のインキュベーションの間、組換えシルクポリペプチドは、20日超の間、プラトーなしで一定した生分解増加を示す。OECD(1992),Test No.301:Ready Biodegradability,OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Section 3,OECD Publishing,Paris,doi.org/10.1787/9789264070349-en、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
定義
以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有するものと理解される。
【0031】
シルクタンパク質に関して本明細書で使用される「安定性」という用語は、シルクタンパク質の自己凝集によるゲル化、変色、又は濁りを形成しない製品の能力を指す。例えば、米国特許公開第2015/0079012号(Wray et al.)は、全長シルクフィブロインを含むスキンケア製品の貯蔵安定性を高めるための、グリセロールを含む湿潤剤の使用を対象としている。米国特許第9,187,538号は、最大10日間保存可能である全長シルクフィブロインを含むスキンケア配合物を対象としている。これらの刊行物は両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸分子」という用語は、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語には、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノム若しくは合成DNA)及びRNA分子(例えば、mRNA又は合成RNA)、並びに非天然ヌクレオチド類似体、非天然ヌクレオシド間結合、又は両方を含有するDNA又はRNAの類似体が含まれる。核酸は、任意のトポロジー的立体配座であり得る。例えば、核酸は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、四重鎖、部分的に二本鎖、分岐状、ヘアピン状、環状、又は南京錠の立体配座であり得る。
【0033】
別段の指示がない限り、一般的なフォーマット「配列番号」の下で本明細書に記載される全ての配列についての一例として、「配列番号1を含む核酸」とは、その少なくとも一部分に、(i)配列番号1の配列、又は(ii)配列番号1に相補的な配列のいずれか、を有する核酸を指す。2つの間の選択は、文脈により決定される。例えば、核酸がプローブとして使用される場合、2つの間の選択は、プローブが所望の標的に相補的であるという要件によって決定される。
【0034】
「単離された」RNA、DNA又は混合ポリマーとは、その天然の宿主細胞において、天然のポリヌクレオチドに天然に付随している他の細胞構成成分、例えば、天然に関連しているリボソーム、ポリメラーゼ、及びゲノム配列から実質的に分離されているものである。
【0035】
「単離された」有機分子(例えば、シルクタンパク質)とは、それが由来する宿主細胞の細胞構成成分(膜脂質、染色体、タンパク質)から、又は宿主細胞が培養されていた培地から実質的に分離されているものである。この用語は、生体分子が、他の全ての化学物質から分離されていることを必要としないが、ある特定の単離された生体分子は、ほぼ均一に精製され得る。
【0036】
「組換え」という用語は、生体分子、例えば、遺伝子又はタンパク質であって、(1)その天然に存在する環境から取り出されているもの、(2)自然界でその遺伝子が見られるポリヌクレオチドの全部若しくは一部分に会合していないもの、(3)自然界では連結していないポリヌクレオチドに作動可能に連結されているもの、又は(4)自然界では生じないもの、を指す。「組換え」という用語は、クローン化DNA単離物、化学的に合成されたポリヌクレオチド類似体、又は異種系によって生物学的に合成されたポリヌクレオチド類似体、並びにそのような核酸によってコードされるタンパク質及び/若しくはmRNAに関して使用され得る。
【0037】
生物のゲノム中の内在性核酸配列(又はその配列のコードされたタンパク質産物)は、この内在性核酸配列の発現が変化するように、内在性核酸配列に隣接して異種配列が置かれている場合、本明細書では「組換え」とみなされる。この文脈において、異種配列は、その異種配列がそれ自体内在性(同じ宿主細胞又はその子孫に由来する)、又は外因性(異なる宿主細胞又はその子孫に由来する)であるかどうかにかかわらず、天然では内在性核酸配列に隣接していない配列である。例として、プロモーター配列は、宿主細胞のゲノム中の遺伝子の天然プロモーターを(例えば、相同組換えによって)置換して、この遺伝子が変化した発現パターンを有するようにすることができる。ここで、この遺伝子は、それに天然に隣接している配列のうちの少なくともいくつかから分離されているため、「組換え」となるであろう。
【0038】
核酸もまた、それが、ゲノム中の対応する核酸に対する、天然では生じない任意の改変を含有する場合に「組換え」とみなされる。例えば、内在性コード配列は、それが人為的に、例えば、ヒトの介入によって導入された挿入、欠失又は点変異を含有する場合に「組換え」とみなされる。「組換え核酸」には、異種部位で宿主細胞染色体内に組み込まれた核酸、及びエピソームとして存在する核酸構築物も含まれる。
【0039】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、短いポリペプチド、例えば、典型的には約50アミノ酸長未満、より典型的には約30アミノ酸長未満のものを指す。本明細書で使用される用語は、類似体、及び構造機能を模倣し、したがって生物学的機能を模倣する模倣物を包含する。
【0040】
「ポリペプチド」という用語は、天然に存在する及び天然に存在しない両方のタンパク質、並びにその断片、変異体、誘導体、及び類似体を包含する。ポリペプチドは、モノマーであってもポリマーであってもよい。更に、ポリペプチドは、その各々が1つ以上の別個の活性を有する多数の異なるドメインを含んでよい。
【0041】
「単離されたタンパク質」又は「単離されたポリペプチド」という用語は、その起源又は誘導体源という点で、(1)その天然の状態ではそれに付随する天然での会合成分と会合していないか、(2)自然界では見られない純度で存在し、その場合、純度は、他の細胞物質の存在に関して判定可能であるか(例えば、同じ種からの他のタンパク質を含まない)、(3)異なる種からの細胞によって発現するか、又は(4)自然界では生じない(例えば、それは自然界に見られるポリペプチドの断片であるか、あるいはそれは自然界では見られないアミノ酸類似体若しくは誘導体、又は標準ペプチド結合以外の連結が含まれる)、タンパク質又はポリペプチドである。したがって、化学的に合成されるか、又はそれが天然での起源となる細胞とは異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、その天然での会合成分から「単離されている」。ポリペプチド又はタンパク質は、当該技術分野で周知のタンパク質精製技術を使用して単離することにより、天然での会合成分を実質的に含まないようにしてもよい。このように定義した場合、「単離された」とは、そのように記載されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、又はオリゴペプチドが、その天然の環境から物理的に除かれていることを必ずしも必要としない。
【0042】
「ポリペプチド断片」という用語は、全長ポリペプチドと比較して、欠失、例えば、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端の欠失を有するポリペプチドを指す。好ましい実施形態において、ポリペプチド断片は、その断片のアミノ酸配列が、天然に存在する配列内の対応する位置と同一である、連続した配列である。断片は、典型的には、少なくとも5、6、7、8、9又は10アミノ酸長、好ましくは少なくとも12、14、16又は18アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長、より好ましくは少なくとも25、30、35、40又は45アミノ酸、更により好ましくは少なくとも50又は60アミノ酸長、更により好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。
【0043】
タンパク質をコードする核酸配列が、第2のタンパク質をコードする核酸配列と同様の配列を有する場合、そのタンパク質は第2のタンパク質に対して「相同性」を有するか、又は「相同」である。あるいは、2つのタンパク質が「同様の」アミノ酸配列を有する場合、そのタンパク質は第2のタンパク質に対する相同性を有する(したがって、「相同タンパク質」という用語は、2つのタンパク質が同様のアミノ酸配列を有することを意味するように定義される)。本明細書で使用される場合、アミノ酸配列の2つの領域間の相同性(特に、予測される構造的類似性に関して)は、機能の類似性を意味すると解釈される。
【0044】
タンパク質又はペプチドに関して「相同」が使用される場合、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によってしばしば異なることが認識される。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されているものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、パーセント配列同一性又は相同性の程度を上方に調整して、置換の保存的性質について修正してよい。この調整を行うための手段は、当業者には周知である。例えば、Pearson,1994,Methods Mol.Biol.24:307-31及び25:365-89(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0045】
20種の従来のアミノ酸及びそれらの略語は、従来の使用法に従う。参照により本明細書に組み込まれる、Immunology-A Synthesis(Golub and Gren eds.,Sinauer Associates,Sunderland,Mass.,2nd ed.1991)を参照されたい。20種の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)、非天然型アミノ酸、例えば、α-,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸など、及び他の非従来型アミノ酸も、本発明のポリペプチドのために好適な構成成分であり得る。非従来型アミノ酸の例としては、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、N-メチルアルギニン、並びに他の同様のアミノ酸及びイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で使用されるポリペプチド表記法では、標準的な用法及び慣例に従って、左側末端はアミノ末端に対応し、右側末端はカルボキシ末端に対応する。
【0046】
以下の6つの群は各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)セリン(S)、スレオニン(T)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0047】
パーセント配列同一性と呼ばれることもあるポリペプチドの配列相同性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group(GCG)、University of Wisconsin Biotechnology Center、910 University Avenue,Madison,Wis.53705を参照のこと。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、様々な置換、欠失、及び他の改変に割り当てられた相同性の尺度を使用して、同様の配列を一致させる。例えば、GCGには、「Gap」及び「Bestfit」などのプログラムが含有されており、これらをデフォルトのパラメータにより使用して、密接に関連するポリペプチド間、例えば、生物の異なる種からの相同ポリペプチド間など、又は野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の、配列相同性又は配列同一性を決定することができる。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。
【0048】
特定のポリペプチド配列を、異なる生物からの多数の配列を含むデータベースと比較する際に有用なアルゴリズムは、コンピュータプログラムBLASTであり(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990);Gish and States,Nature Genet.3:266-272(1993);Madden et al.,Meth.Enzymol.266:131-141(1996);Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997);Zhang and Madden,Genome Res.7:649-656(1997))、特にblastp又はtblastnである(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997))。
【0049】
BLASTpの好ましいパラメータは、期待値:10(デフォルト);フィルター:セグメント(デフォルト);ギャップを開くためのコスト:11(デフォルト);ギャップを広げるためのコスト:1(デフォルト);最大アライメント:100(デフォルト);ワードサイズ:11(デフォルト);説明の数:100(デフォルト);ペナルティマトリックス:BLOWSUM62である。
【0050】
BLASTpの好ましいパラメータは、期待値:10(デフォルト);フィルター:セグメント(デフォルト);ギャップを開くためのコスト:11(デフォルト);ギャップを広げるためのコスト:1(デフォルト);最大アライメント:100(デフォルト);ワードサイズ:11(デフォルト);説明の数:100(デフォルト);ペナルティマトリックス:BLOWSUM62である。相同性について比較するポリペプチド配列の長さは一般に、少なくとも約16アミノ酸残基、通常は少なくとも約20残基、より通常は少なくとも約24残基、典型的には少なくとも約28残基、好ましくは約35残基より長い。多数の異なる生物からの配列を含有するデータベースを検索する場合、アミノ酸配列を比較することが好ましい。アミノ酸配列を使用するデータベース検索は、当該技術分野で既知のblastp以外のアルゴリズムによって測定することができる。例えば、ポリペプチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムであるFASTAを使用して比較することができる。FASTAは、クエリー配列と検索配列との間の最良の重複領域のアライメント及びパーセント配列同一性を提供する。Pearson,Methods Enzymol.183:63-98(1990)(参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、アミノ酸配列間のパーセント配列同一性は、参照により本明細書に組み込まれるGCGバージョン6.1で提供されるFASTAをそのデフォルトパラメータにて使用して決定することができる(2のワードサイズ、及びPAM250のスコアリングマトリックス)。
【0051】
本明細書及び態様を通して、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、記述されている整数又は整数群を含むが、任意の他の整数又は整数群を除外しないことを意味すると理解される。
【0052】
本明細書で使用される「ガラス転移」という用語は、物質又は組成物の硬い、堅い、又は「ガラス状」状態から、より柔軟な「ゴム状」又は「粘性」状態への転移を指す。
【0053】
本明細書で使用される「ガラス転移温度」という用語は、物質又は組成物が、ガラス転移を受ける温度を指す。
【0054】
本明細書で使用される「溶融転移」という用語は、物質又は組成物のゴム状の状態から、規則性の低い液相への転移を指す。
【0055】
本明細書で使用される「溶融温度」という用語は、物質が溶融転移を受ける温度範囲を指す。
【0056】
本明細書で使用される「可塑剤」という用語は、ポリペプチド配列と相互作用して、ポリペプチド配列が三次構造及び結合を形成することを防止し、並びに/又はポリペプチド配列の移動度を増加させる任意の分子を指す。
【0057】
本明細書で使用される「粉末」という用語は、顆粒形態で存在する組成物を指し、水又はセラムなどの溶媒と複合体形成又は凝集していてもしていなくてもよい。「乾燥粉末」という用語は、「粉末」という用語と互換的に使用され得るが、本明細書で使用される「乾燥粉末」は、単に造粒された材料の全体的な外観を指し、別段の指示がない限り、材料が複合体形成又は凝集した溶媒を完全に含まないことを意図するものではない。乾燥粉末は、噴霧乾燥、凍結乾燥によって、及び/又は当該技術分野で既知の方法に従って産生することができる。
【0058】
「担体」という用語は、表面の水和、表面の洗浄、表面の防御、表面の解毒、表面の角質除去、表面の改善、着色、並びに/あるいは、皮膚、毛髪、又は爪などの表面への水、グリセリン、アルコール、シロキサン、油、湿潤剤、皮膚軟化剤、閉塞剤、活性剤、及び/若しくは化粧品補助剤を含むがこれらに限定されない様々な添加剤又は溶媒の送達に使用される組換えタンパク質を指す。本明細書で使用される担体は、外側シェル及び中空コア、例えば18Bタンパク質を含む。
【0059】
本明細書で使用される「化粧品」という用語は、メイクアップ、ファンデーション、スキンケア、ヘアケア、及びネイルケア製品が含まれる。
【0060】
本明細書で使用される「メイクアップ」という用語は、ファンデーションを含む顔に黒及び茶の色を残す製品、すなわち、マスカラ、コンシーラー、アイライナー、アイブローカラー、アイシャドウ、頬紅、リップカラー、パウダー、固形エマルジョンコンパクトなどを指す。
【0061】
本明細書で使用される「ファンデーション」という用語は、皮膚の全体的な色を均一にするために化粧品会社によって作り出されるか又は再導入される液体、クリーム、ムース、パンケーキ、コンパクト、コンシーラーなどの製品を指す。
【0062】
本明細書で使用される「スキンケア製品」という用語は、皮膚の処理をする若しくは手入れをするために、又は何らかの形で保湿する、改善する、若しくは清潔にするために使用されるものを指す。「スキンケア製品」という語句によって想定される製品には、クリーム、ミスト、セラム、クレンジングジェル、アンプル、接着剤、パッチ、包帯、歯磨き粉、無水閉塞性保湿剤、制汗剤、脱臭剤、パーソナルクレンジング製品、粉末洗濯洗剤、柔軟仕上げタオル、閉塞性薬物送達パッチ、マニキュア液、粉末、ティッシュ、ワイプ、無水ヘアコンディショナー、シェービングクリームなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書で使用される「たるみ」という用語は、真皮エラスチン、筋肉及び/又は皮下脂肪の喪失、損傷、変質、及び/又は異常の結果として生じる皮膚の弛緩、緩みなどの状態を意味する。
【0064】
本明細書で使用される「処理する」又は「処理」という用語は、状態(例えば、皮膚状態)の処理(例えば、症状の軽減若しくは排除、及び/又は治癒)及び/又は予防若しくは抑制、あるいは症状の緩和を指す。
【0065】
例示的な方法及び材料を以下に記載するが、本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料も本発明の実行に使用することができ、当業者には明らかとなるであろう。本明細書で言及される全ての刊行物及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含めて本明細書が優先する。該材料、方法、及び実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図しない。
【0066】
組換えシルクタンパク質
本開示は、合成タンパク質性コポリマー(すなわち、組換えポリペプチド)から合成された繊維を含む本発明の実施形態を記載する。好適なタンパク質性コポリマーは、2016年8月45日に公開された米国特許公開第2016/0222174号、2018年4月26日に公開された米国特許公開第2018/0111970号、及び2018年3月1日に公開された米国特許公開第2018/0057548号に論じられており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
いくつかの実施形態において、合成タンパク質性コポリマーは、シルク様ポリペプチド配列から作製される。いくつかの実施形態において、シルク様ポリペプチド配列は、1)シルクポリペプチド配列に由来する反復ドメインを混合及び一致させることによって生成されるブロックコポリマーポリペプチド組成物、並びに/又は2)工業的に拡張可能な微生物からの分泌によって、有用な成形体組成物を形成するのに十分に大きなサイズ(およそ40kDa)を有するブロックコポリマーポリペプチドの組換え発現である。ほぼ全ての公開されているシルクポリペプチドのアミノ酸配列からの配列を含む、シルクの反復ドメイン断片から遺伝子操作された大きな(およそ40kDa~およそ100kDa)ブロックコポリマーポリペプチドは、本明細書に記載される改変微生物で発現させることができる。いくつかの実施形態において、シルクポリペプチド配列は、成形体形成が可能な、高度に発現及び分泌されるポリペプチドを産生するように一致及び設計される。
【0068】
いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、シルクポリペプチド配列空間にわたるシルクポリペプチドドメインの組み合わせ混合から遺伝子操作される。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、拡張可能な生物(例えば、酵母、真菌、及びグラム陽性菌)で発現及び分泌させることによって作製される。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーポリペプチドは、0以上のN末端ドメイン(NTD)、1つ以上の反復ドメイン(REP)、及び0以上のC末端ドメイン(CTD)を含む。実施形態のいくつかの態様において、ブロックコポリマーポリペプチドは、100個超のアミノ酸の単一ポリペプチド鎖である。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーポリペプチドは、その全体が参照により組み込まれる、国際公開第WO/2015/042164号、「Methods and Compositions for Synthesizing Improved Silk Fibers」に開示されているブロックコポリマーポリペプチドの配列と、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるドメインを含む。
【0069】
いくつかのタイプの天然スパイダーシルクが、同定されている。天然に紡がれたシルクの各タイプの機械的特性は、そのシルクの分子組成と密接に関連していると考えられている。例えば、Garb,J.E.,et al.,Untangling spider silk evolution with spidroin terminal domains,BMC Evol.Biol.,10:243(2010);Bittencourt,D.,et al.,Protein families,natural history and biotechnological aspects of spider silk,Genet.Mol.Res.,11:3(2012);Rising,A.,et al.,Spider silk proteins:recent advances in recombinant production,structure-function relationships and biomedical applications,Cell.Mol.Life Sci.,68:2,pg.169-184(2011);及びHumenik,M.,et al.,Spider silk:understanding the structure-function relationship of a natural fiber,Prog. Mol.Biol.Transl. Sci.,103,pg.131-85(2011)を参照されたい。例えば、以下が挙げられる。
【0070】
房状(AcSp)シルクは、適度に高い強度と適度に高い伸張性とが組み合わされた結果、高い靭性を有する傾向がある。AcSpシルクは、多くの場合、ポリセリン及びGPXのモチーフを組み込む大きなブロック(「アンサンブル反復」)のサイズによって特徴付けられる。小管状(TuSp又は円筒状)シルクは、適度な強度及び高い伸張性を有する、大きな直径を有する傾向がある。TuSpシルクは、それらのポリセリン及びポリスレオニンの含有量、並びにポリアラニンの短い管(short tract)を特徴とする。大瓶状(MaSp)シルクは、高い強度及び適度な伸張性を有する傾向がある。MaSpシルクは、2つのサブタイプ:MaSp1及びMaSp2のうちの1つであり得る。MaSp1シルクは、一般に、MaSp2シルクよりも伸張性が低く、ポリアラニン、GX、及びGGXモチーフによって特徴付けられる。MaSp2シルクは、ポリアラニン、GGX、及びGPXモチーフによって特徴付けられる。小瓶状(MiSp)シルクは、適度な強度及び適度な伸張性を有する傾向がある。MiSpシルクは、GGX、GA、及びポリAモチーフによって特徴付けられ、多くの場合、およそ100のアミノ酸のスペーサーエレメントを含有する。鞭毛状(Flag)シルクは、非常に高い伸張性及び適度な強度を有する傾向がある。Flagシルクは通常、GPG、GGX、及び短いスペーサーモチーフによって特徴付けられる。
【0071】
各シルクタイプの特性は、種ごとに異なり得、別個の生活様式を送るクモ(例えば、定住性のシロアリモドキ 対 放浪性のサシガメ)又は進化的により古いものは、上記の説明とは特性が異なるシルクを産生し得る(クモの多様性及び分類の説明については、Hormiga,G.,and Griswold,C.E.,Systematics,phylogeny,and evolution of orb-weaving spiders,Annu.Rev.Entomol.59,pg.487-512(2014);及びBlackedge,T.A.et al.,Reconstructing web evolution and spider diversification in the molecular era,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,106:13,pg.5229-5234(2009)を参照されたい)。しかしながら、天然シルクタンパク質の反復ドメインに対する配列類似性、及び/又はアミノ酸組成類似性を有する合成ブロックコポリマーポリペプチドは、天然シルクポリペプチドから作製された対応する成形体の特性を再現する特性を有する、一貫した成形体を商業規模で製造するために使用することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、推定シルク配列のリストは、関連用語、例えば、「スピドロイン」「フィブロイン」「MaSp」についてGenBankを検索することによって編集することができ、それらの配列は、独立した配列決定の試みによって得られた更なる配列とともにプールすることができる。次いで、配列をアミノ酸へと翻訳し、重複エントリーについてフィルタリングし、手動でドメイン(NTD、REP、CTD)へと分割する。いくつかの実施形態において、候補アミノ酸配列を、ピキア(コマガタエラ)パストリス(Pichia(Komagataella)pastoris)における発現のために最適化されたDNA配列へと逆翻訳する。DNA配列を発現ベクターへと各々クローニングし、ピキア(コマガタエラ)パストリスへと形質転換する。いくつかの実施形態において、成功した発現及び分泌を示す様々なシルクドメインを、続いて、組み合わせ様式で組織化し、成形体形成が可能なシルク分子を構築する。
【0073】
シルクポリペプチドは、非反復領域(例えば、C末端及びN末端ドメイン)が隣接する反復ドメイン(REP)から特徴的に構成される。実施形態において、C末端ドメイン及びN末端ドメインの両方の長さは、75~350アミノ酸である。反復ドメインは、階層的構造を示す。反復ドメインは、一連のブロック(反復単位とも呼ばれる)を含む。ブロックは、シルクの反復ドメイン全体にわたり、時には完全に、及び時には不完全に(準反復ドメインを構成する)反復される。ブロックの長さ及び組成は、異なるシルクタイプ間で、及び異なる種にわたり変化する。表1Aは、選択された種及びシルクタイプからのブロック配列の例を列挙し、更なる例は、Rising,A.et al.,Spider silk proteins:recent advances in recombinant production, structure-function relationships and biomedical applications,Cell Mol.Life Sci.,68:2,pg169-184(2011)、及びGatesy,J.et al.,Extreme diversity,conservation,and convergence of spider silk fibroin sequences,Science,291:5513,pg.2603-2605(2001)に提示されている。場合によっては、ブロックは、規則的なパターンで配置され、シルク配列の反復ドメインにおいて複数回(通常2~8回)出現する、より大きなマクロ反復が形成され得る。反復ドメイン又はマクロ反復の内部の反復したブロック、及び反復ドメイン内の反復したマクロ反復は、スペーシングエレメントによって分離されていてもよい。いくつかの実施形態において、ブロック配列は、グリシンリッチ領域、続いてポリA領域を含む。いくつかの実施形態において、短い(約1~10)アミノ酸モチーフは、ブロックの内部に複数回出現する。本発明の目的のために、異なる天然シルクポリペプチドからのブロックは、円順列を参照せずに選択することができる(すなわち、別様にシルクポリペプチド間で同様の同定されたブロックは、円順列のために整列しなくてもよい)。したがって、例えば、SGAGG(配列番号2871)の「ブロック」は、本発明の目的のためには、GSGAG(配列番号2872)と同じであり、かつGGSGA(配列番号2873)と同じであり、それらは全てまさに互いの円順列である。所定のシルク配列について選択される特定の順列は、他の何よりも利便性によって決定され得る(通常Gにより始まる)。NCBIデータベースから得られたシルク配列は、ブロック及び非反復領域へ区分化され得る。
【0074】
【0075】
本発明のある特定の実施形態による、ブロック及び/又はマクロ反復ドメインからの繊維形成ブロックコポリマーポリペプチドは、参照により組み込まれる国際公開第WO/2015/042164号に記載されている。GenBankなどのタンパク質データベースから、又はデノボ配列決定によって得られた天然シルク配列は、ドメイン(N末端ドメイン、反復ドメイン、及びC末端ドメイン)によりばらばらにされる。繊維又は成形体への合成及びアセンブリの目的で選択されたN末端ドメイン及びC末端ドメイン配列には、天然アミノ酸配列情報、及び本明細書に記載の他の改変が含まれる。反復ドメインは、シルクのタイプに依存して通常1~8個の代表的なブロックを含有する反復配列へと分解され、これは、重要なアミノ酸情報を取り込む一方で、アミノ酸をコードするDNAのサイズを、容易に合成可能な断片へと縮小させる。いくつかの実施形態において、適切に形成されたブロックコポリマーポリペプチドは、少なくとも1つの反復配列を含む少なくとも1つの反復ドメインを含み、任意選択的に、N末端ドメイン及び/又はC末端ドメインに隣接する。
【0076】
いくつかの実施形態において、反復ドメインは、少なくとも1つの反復配列を含む。いくつかの実施形態において、反復配列は、150~300アミノ酸残基である。いくつかの実施形態において、反復配列は、複数のブロックを含む。いくつかの実施形態において、反復配列は、複数のマクロ反復を含む。いくつかの実施形態において、ブロック又はマクロ反復は、複数の反復配列にわたって分割される。
【0077】
いくつかの実施形態において、反復配列は、DNAアセンブリ要件を満たすために、グリシンで始まり、かつフェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、システイン(C)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、メチオニン(M)、又はアスパラギン酸(D)で終わることはできない。いくつかの実施形態において、反復配列のうちのいくつかは、天然配列と比較して変更され得る。いくつかの実施形態において、反復配列は、ポリペプチドのC末端に対するセリンの付加などによって変更され得る(F、Y、W、C、H、N、M、又はDでの終止を回避するため)。いくつかの実施形態において、反復配列は、別のブロックからの相同配列により不完全なブロックを埋めることによって改変され得る。いくつかの実施形態において、反復配列は、ブロック又はマクロ反復の順序を再配置することによって改変され得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、非反復N末端ドメイン及びC末端ドメインは、合成のために選択され得る。いくつかの実施形態において、N末端ドメインは、例えば、SignalP(Peterson,T.N.,et.Al.,SignalP 4.0:discriminating signal peptides from transmembrane regions,Nat.Methods,8:10,pg.785-786(2011)によって同定されるような、リーディングシグナル配列の除去によるものであり得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、N末端ドメイン、反復配列、又はC末端ドメイン配列は、アゲレノプシス・アペルタ(Agelenopsis aperta)、アリアチプス・グロサス(Aliatypus gulosus)、アフォノペルマ・シーマニー(Aphonopelma seemanni)、アプトスチチュス(Aptostichus)種AS217、アプトスチチュス種AS220、アラネウス・ディアデマツス(Araneus diadematus)、アラネウス・ゲムモイデス(Araneus gemmoides)、アラネウス・ヴェントリコサス(Araneus ventricosus)、アルギオペ・アモエナ(Argiope amoena)、アルギオペ・アルゲンタタ(Argiope argentata)、アルギオペ・ブルエンニチ(Argiope bruennichi)、アルギオペ・トリファスシアタ(Argiope trifasciata)、アチポイデス・リヴェルシ(Atypoides riversi)、アヴィキュラリア・ジュルエンシス(Avicularia juruensis)、ボスリオシルツム・カリフォルニカム(Bothriocyrtum californicum)、デイノピス・スピノサ(Deinopis Spinosa)、ディグエチア・カニチエス(Diguetia canities)、ドロメデス・テネブロサス(Dolomedes tenebrosus)、エウアグルス・キソセウス(Euagrus chisoseus)、エウプロスセノプス・オーストラリス(Euprosthenops australis)、ガステラキャンタ・マンモサ(Gasteracantha mammosa)、ヒポキルス・トレルリ(Hypochilus thorelli)、ククルカニア・ヒベルナリス(Kukulcania hibernalis)、ラクトロデクツス・ヘスペルス(Latrodectus hesperus)、メガヘクスラ・フルヴァ(Megahexura fulva)、メテペイラ・グランディオサ(Metepeira grandiosa)、ネフィラ・アンチポディアナ(Nephila antipodiana)、ネフィラ・クラヴァタ(Nephila clavata)、ネフィラ・クラヴィペス(Nephila clavipes)、ネフィラ・マダガスカリエンシス(Nephila madagascariensis)、ネフィラ・ピリペス(Nephila pilipes)、ネフィレンギス・クルエンタタ(Nephilengys cruentata)、パラウィキシア・ビストリアタ(Parawixia bistriata)、ペウセチア・ヴィリダンス(Peucetia viridans)、プレクトレウリス・トリスチス(Plectreurys tristis)、ポエシロセリア・レガリス(Poecilotheria regalis)、テトラグナタ・カウアイエンシス(Tetragnatha kauaiensis)、又はウロボルス・ディヴェルサス(Uloborus diversus)に由来し得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、シルクポリペプチドヌクレオチドコード配列は、アルファ接合因子ヌクレオチドコード配列に作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、シルクポリペプチドヌクレオチドコード配列は、別の内在性又は異種の分泌シグナルコード配列に作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、シルクポリペプチドヌクレオチドコード配列は、3X FLAGヌクレオチドコード配列に作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、シルクポリペプチドヌクレオチドコード配列は、6~8個のHis残基などの他のアフィニティータグに作動可能に連結される。
【0081】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、アルギオペ・ブルエンニチ種などのMaSp2に由来する組換えスパイダーシルクタンパク質断片配列に基づいている。いくつかの実施形態において、合成された繊維は、2~20個の反復単位を含むタンパク質分子を含有し、各反復単位の分子量は、約20kDa超である。コポリマーの各反復単位内には、約60超のアミノ酸残基があり、多くの場合、いくつかの「準反復単位」に編成された60~100アミノ酸の範囲にある。いくつかの実施形態において、本開示に記載のポリペプチドの反復単位は、MaSp2ドラグラインシルクタンパク質配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0082】
良好な機械的特性を有する繊維を形成するタンパク質性ブロックコポリマーの反復単位は、シルクポリペプチドの一部分を使用して合成され得る。これらのポリペプチド反復単位は、アラニンリッチ領域及びグリシンリッチ領域を含有し、長さが150アミノ酸以上である。本開示のタンパク質性ブロックコポリマーにおいて反復として使用され得るいくつかの例示的な配列は、その全体が参照により組み込まれる、共同所有のPCT公開第WO2015/042164号に提供されており、ピキア(Pichia)発現システムを使用して発現することを示していた。
【0083】
いくつかの実施形態において、シルクタンパク質は、反復単位(反復単位は150超のアミノ酸残基、及び少なくとも10kDaの分子量を有する);少なくとも80%のアラニン含有量を含む、6つ以上の連続するアミノ酸を有するアラニンリッチ領域;少なくとも40%のグリシン含有量及び30%未満のアラニン含有量を含む、12個以上の連続するアミノ酸を有するグリシンリッチ領域、のうちの少なくとも2つの出現を含み、繊維は、550cN/tex超の弾性係数、少なくとも10%の伸張性、及び少なくとも15cN/texの最終引張強度からなる群から選択される少なくとも1つの特性を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、組換えシルクタンパク質は、反復単位を含み、各反復単位は、2~20個の準反復単位を含む配列に対して、少なくとも95%の配列同一性を有し、各準反復単位は、{GGY-[GPG-X1]n1-GPS-(A)n2}を含み、式中、各準反復単位について、X1は、SGGQQ(配列番号2874)、GAGQQ(配列番号2875)、GQGOPY(配列番号2876)、AGQQ(配列番号2877)、及びSQからなる群から独立して選択され、n1は、4~8であり、n2は、6~10である。反復単位は、複数の準反復単位から構成されている。
【0085】
いくつかの実施形態において、3つの「長い」準反復には、3つの「短い」準反復単位が続く。前述のように、短い準反復単位は、n1=4又は5のものである。長い準反復単位は、n1=6、7、又は8であるものとして定義される。いくつかの実施形態において、短い準反復のうちの全てが、反復単位の各準反復単位内の同じ位置に、同じX1モチーフを有する。いくつかの実施形態において、6つのうちの3つ以下の準反復単位が、同じX1モチーフを共有する。
【0086】
追加の実施形態において、反復単位は、反復単位内で、同じX1を続けて3回以上出現させて使用しない準反復単位から構成されている。追加の実施形態において、反復単位は、準反復単位から構成されており、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20の準反復は、反復単位の単一の準反復単位において、同じX1を3回以上使用しない。
【0087】
いくつかの実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、配列番号2878のポリペプチド配列(すなわち、18B)を含む。いくつかの実施形態において、反復単位は、配列番号2879を含むポリペプチドである。これらの配列は、表1Bに提供される。
【0088】
(表1B)組換えタンパク質及び反復単位の例示的なポリペプチド配列
【0089】
いくつかの実施形態において、記載される組換えシルクポリペプチドから形成された繊維の構造は、ベータシート構造、ベータターン構造、又はアルファヘリックス構造を形成する。いくつかの実施形態において、形成された繊維の二次、三次、及び四次タンパク質構造は、ナノ結晶ベータシート領域、非晶質ベータターン領域、非晶質アルファヘリックス領域、非結晶マトリックスに埋め込まれたランダムに空間的に分布したナノ結晶領域、又は非結晶マトリックスに埋め込まれたランダムに配向したナノ結晶領域を有すると説明される。理論に拘束されることを意図するものではないが、スパイダーシルク内のタンパク質の構造特性は、繊維の機械的特性に関連すると理論が立てられる。繊維の結晶領域は繊維の引張強度に関連付けられている一方で、非晶質領域は繊維の伸張性に関連付けられている。大瓶状(MA)シルクは、鞭毛状シルクよりも強度が高く、伸張性が低い傾向があり、MAシルクはまた、鞭毛状シルクと比較して、結晶領域の体積分率が大きい。更に、スパイダーシルクタンパク質の結晶領域及び非晶領域の分子動力学に基づく理論モデルにより、結晶領域が繊維の引張強度に関連付けられ、非晶領域が繊維の伸張性に関連付けられているという主張が裏付けられている。理論モデリングにより更に、組換えタンパク質繊維(RPF)の機械的特性に対する二次、三次、及び四次構造の重要性が裏付けられている。例えば、ランダム、平行、及び直列の空間分布におけるナノ結晶ドメインのアセンブリと、非晶質領域内の絡み合った鎖間、及び非晶質領域とナノ結晶領域との間の相互作用力の強さの両方が、得られた繊維の理論的な機械的特性に影響を及ぼした。
【0090】
いくつかの実施形態において、シルクタンパク質の分子量は、20kDa~2000kDa、又は20kDa超、又は10kDa超、又は5kDa超、又は5~400kDa、又は5~300kDa、又は5~200kDa、又は5~100kDa、又は5~50kDa、又は5~500kDa、又は5~1000kDa、又は5~2000kDa、又は10~400kDa、又は10~300kDa、又は10~200kDa、又は10~100kDa、又は10~50kDa、又は10~500kDa、又は10~1000kDa、又は10~2000kDa、又は20~400kDa、又は20~300kDa、又は20~200kDa、又は40~300kDa、又は40~500kDa、又は20~100kDa、又は20~50kDa、又は20~500kDa、又は20~1000kDa、又は20~2000kDaの範囲であり得る。
【0091】
組換えスパイダーシルクポリペプチド粉末の不純物及び分解の特徴評価
異なる組換えスパイダーシルクポリペプチドは、タンパク質によって形成される二次及び三次構造の強度及び安定性に基づいた、溶融温度及びガラス転移温度などの異なる物理化学的特性を有する。シルクポリペプチドは、モノマーの形態で、ベータシート構造を形成する。他のモノマーの存在下で、シルクポリペプチドは、ベータシート構造の三次元結晶格子を形成する。ベータシート構造は、ポリペプチド配列の非晶質領域から分離しており、かつ散在している。
【0092】
ベータシート構造は、高温で非常に安定しており、ベータシートの溶融温度は、高速走査熱量測定により測定した際におよそ257℃である。Cebe et al.,Beating the Heat-Fast Scanning Melts Silk Beta Sheet Crystals,Nature Scientific Reports 3:1130(2013)を参照のこと。ベータシート構造は、シルクポリペプチドのガラス転移温度を超えてもそのままであると考えられているため、組換えシルクポリペプチドのガラス転移温度で見られる構造転移は、ベータシート間の非晶質領域の移動度の増加によるものであると仮定されている。
【0093】
可塑剤は、非晶質領域の移動度を増加させ、潜在的にベータシート形成を妨害することにより、シルクタンパク質のガラス転移温度及び溶融温度を低下させる。この目的に使用される好適な可塑剤には、水、並びにグリセロール、トリグリセロール、ヘキサグリセロール、及びデカグリセロールなどのポリアルコール(ポリオール)が含まれるが、これらに限定されない。他の好適な可塑剤としては、ジメチルイソソルバイト、アジピン酸、ジメチルアミノプロピルアミンとカプリル酸/カプリン酸とのアミド、アセトアミド、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
シルクポリペプチドの親水性部分は、湿気として空気中に存在する周囲の水を結着し得るため、ほとんど常に水は存在しており、結着した周囲の水は、シルクポリペプチドを可塑化し得る。いくつかの実施形態において、好適な可塑剤は、単独、又は水若しくは他の可塑剤との組み合わせのいずれかで存在するグリセロールであり得る。他の好適な可塑剤は、上で論じられている。
【0095】
加えて、組換えシルクポリペプチドが発酵によって産生され、そこから組換えシルクポリペプチド粉末として回収される場合、可塑剤として作用するか、又はさもなければ三次構造の形成を阻害する不純物が、組換えシルクポリペプチド粉末中に存在し得る。例えば、残留脂質及び糖は、可塑剤として作用し、したがって、三次構造の形成を妨げることにより、タンパク質のガラス転移温度に影響を与え得る。
【0096】
組換えシルクポリペプチド粉末又は組成物の純度及び相対的組成を評価するために、様々な確立された方法が使用され得る。サイズ排除クロマトグラフィーは、相対的なサイズに基づいて分子を分離し、その全長のポリマー及びモノマー形態の組換えシルクポリペプチドの相対量、並びに組換えシルクポリペプチド粉末中の高分子量、低分子量、及び中分子量の不純物の量を分析するために使用することができる。同様に、迅速高速液体クロマトグラフィーは、組換えシルクポリペプチドのモノマー形態などの、溶液中に存在する様々な化合物を測定するために使用され得る。イオン交換液体クロマトグラフィーは、脂質及び糖などの不純物を含む、溶液中の様々な微量分子の濃度を評価するために使用され得る。質量分析法などの、様々な分子のクロマトグラフィー及び定量の他の方法は、当該技術分野で十分に確立されている。
【0097】
実施形態に応じて、組換えシルクポリペプチドは、組換えシルクポリペプチド粉末の他の構成成分に対する、モノマー形態の組換えシルクポリペプチドの重量による量に基づいて計算された純度を有し得る。様々な例において、純度は、組換えシルクポリペプチドのタイプ、並びに組換えシルクポリペプチド粉末を回収、分離及び後処理するために使用される技術に応じて、50重量%~90重量%の範囲であり得る。
【0098】
サイズ排除クロマトグラフィー及び逆相高速液体クロマトグラフィーはどちらも、全長組換えシルクポリペプチドの測定に有用であり、処理前及び処理後の組成物中の全長シルクポリペプチドの量を比較することにより、処理ステップが組換えシルクポリペプチドを分解したかどうかを判断するための有用な技術となる。本発明の様々な実施形態において、処理前及び処理後の組成物中に存在する全長組換えシルクポリペプチドの量は、最小限の分解を受ける可能性がある。分解の量は、0.001重量%~10重量%、又は0.01重量%~6重量%、例えば、10重量%又は8重量%又は6重量%未満、又は5重量%未満、3重量%未満、又は1重量%未満の範囲であり得る。
【0099】
シリコーン置き換え構成成分
シリコーン置き換え構成成分は、組換えシルクポリペプチドを含む。シリコーン置き換え構成成分は、組換えシルクポリペプチドからなり得る。シリコーン置き換え構成成分は、溶媒及び/又は1つ以上の添加剤、例えば、保存剤及びキレート剤を有する組換えシルクポリペプチドを含み得る。シリコーン置き換え構成成分は、シリコーン置き換え構成成分の総重量に基づいて、約1重量%~約40重量%の量で、又は化粧品、スキンケア組成物、若しくはヘアケア組成物中の組換えシルクポリペプチドの最終的に所望される負荷を達成するために必要な任意の他の好適な量で、組換えシルクポリペプチドを含み得る。
【0100】
理論に拘束されることを意図するものではないが、本発明の様々な実施形態において、シリコーン置き換え構成成分を誘導することは、モノマー組換えシルクポリペプチドの、その結晶ポリマー形態への凝集を防止すること、又は処理の後期に、組換えシルクポリペプチドの、その結晶ポリマー形態への転移を制御することが望ましい用途において使用され得る。他の実施形態において、そのような誘導は必要とされない。
【0101】
1つの特定の実施形態において、シリコンエラストマー置き換え構成成分は、組換えシルクポリペプチドを第2のポリマーとブレンドする前に、組換えシルクポリペプチドの凝集を防止するために使用され得る。別の特定の実施形態において、シリコンエラストマー置き換え構成成分は、組換えシルクポリペプチドがそのモノマー形態でベース中に存在する化粧品又はスキンケア製品のベースを作成するのに使用され得る。この実施形態において、基剤中に組換えシルクポリペプチドをそのモノマー形態で有することにより、皮膚との接触時に、又は様々な他の化学反応を介して、モノマーがその結晶ポリマー形態へと凝集するのを制御することが可能になる。
【0102】
様々な実施形態において、組換えシルクポリペプチドを有するシリコンエラストマー置き換え構成成分が加熱される温度は、組換えシルクポリペプチドの分解を最小限に抑えるか又は完全に防止するために最小限に抑えられる。特定の実施形態において、組換えシルク溶融物は、120℃未満、100℃未満、80℃未満、60℃未満、40℃未満、又は20℃未満の温度に加熱される。多くの場合、溶融物は、処理中に10℃~120℃、10℃~100℃、15℃~80℃、15℃~60℃、18℃~40℃、又は18℃~22℃の範囲の温度にある。他の実施形態において、シリコンエラストマー置き換え構成成分は、加熱されない。そのような実施形態において、シリコンエラストマー置き換え構成成分を形成するために熱の存在は必要ではない。
【0103】
組換えシルクポリペプチドの分解の量は、様々な技術を使用して測定され得る。上に論じたように、組換えシルクポリペプチドの分解の量は、存在する全長組換えシルクポリペプチドの量を測定するためのサイズ排除クロマトグラフィーを使用して測定され得る。様々な実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、それが成形体に形成された後、6.0重量%未満の量で分解される。別の実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、成形後4.0重量%未満、3.0重量%未満、2.0重量%未満、又は1.0重量%未満の量で分解され、結果としてその分解量は、0.001重量%~10%、8%、6%、4%、3%、2%、若しくは1重量%、又は0.01重量%~6%、4%、3%、2%、若しくは1重量%の範囲となり得る。別の実施形態において、組成物中の組換えシルクタンパク質は、実質的に分解されない。同様の実施形態において、組成物中の組換えシルクタンパク質は、少なくとも1日、1ヶ月、1年、又は5年の期間にわたって実質的に分解されない。
【0104】
いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、物理的に安定している。様々な実施形態において、構成成分は、長期間その材料形態、例えば、粉末のままであり、長い貯蔵寿命を有する。長期間の使用において、シリコーン置き換え構成成分は、実質的に安定したままである。いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、シリコーン及び/又はシリコーンエラストマーの安定性と実質的に同じ安定性を有する。
【0105】
いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、シリコーン及び/又はシリコーンエラストマーの材料特性と実質的に同様の材料特性を有する。様々な実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、シリコーン及び/若しくはシリコーンエラストマーと実質的に同様のレオロジーを有し、かつ/又はシリコーン及び/若しくはシリコーンエラストマーの包含と同様のレオロジーを本開示の組成物に付与する。
【0106】
本発明のほとんどの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、粉末形態にある。シリコーン置き換え構成成分は、粉末中の組換えシルクポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、噴霧乾燥される。他の実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、フリーズドライ又は真空乾燥である。「噴霧乾燥」及び「噴霧乾燥された」という用語は、本明細書では簡潔性のために使用されるが、当業者は、フリーズドライ又は凍結乾燥及び真空乾燥が、必要に応じて噴霧乾燥の代わりになり得ることを理解するであろう。これらのシリコーン置き換え構成成分は、乾燥して保管され得る。
【0107】
18Bタンパク質は、水性スラリーよりも乾燥形態でより安定している。いくつかの実施形態において、噴霧乾燥された組換えシルクは、以下のように得られる:抽出された組換えシルクを含むスラリー組成物が、乾燥ステップの間、冷却された状態で維持される。得られた粉末の水分含有量が厳密に制御される、背の高い形状の噴霧乾燥機にポンプで送られる。タンパク質粉末は吸湿性であるため、水分の再導入を最小限に抑えるように最終的な粉末の収集及び梱包が行われる。梱包材の設計は、水分及び光への曝露を最小限に抑えるべきである。
【0108】
いくつかの実施形態において、細胞培養物からの組換えシルクポリペプチドの回収及び分離は、以下のように行われる:i)抽出及び分離、ii)限外濾過による尿素の除去、iii)沈殿による洗浄、iv)塩の除去及びタンパク質の濃縮、並びにv)噴霧乾燥。
【0109】
いくつかの実施形態において、組成物をフリーズドライするために、組成物が固化するまで冷却し、減圧下に置いて、組成物中のほとんどの揮発性成分を昇華させる。固体残留物は、微粉末を形成するためにミリングを必要とする単一の塊を形成し得る。典型的なフリーズドライ粉末は、多孔性の不規則な形状の粒子を含み、容易に水和する。フリーズドライは強い熱を必要としないため、揮発性成分を含む粉末の産生に使用される。いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、約-100℃未満の温度で深くフリーズドライされる。
【0110】
シリコーン置き換え構成成分の形成後、シリコーン置き換え構成成分の結晶性が増加し、それによって、組成物を強化することができる。いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、同じままであるか、又は減少する。いくつかの実施形態において、X線結晶学によって測定した際にシリコーン置き換え構成成分の結晶性指数は、2%~90%である。いくつかの他の実施形態において、X線結晶学によって測定した際にシリコーン置き換え構成成分の結晶性指数は、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、又は少なくとも7%である。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、固体又はフィルムである。いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、粉末である。いくつかの実施形態において、固体又はフィルムは実質的に均質であり、光学顕微鏡によって検査した場合、材料が介在物又は沈殿物を少量有するか、又は全く有さないことを意味する。いくつかの実施形態において、光学顕微鏡を使用して複屈折を測定することができ、これは、組換えシルクの三次元格子へのアライメントの代わりとして使用することができる。複屈折は、光の偏光及び伝搬に依存する屈折率を有する材料の光学特性である。具体的には、複屈折によって測定される高度の軸方向秩序は、高い引張強度に関連付けることができる。いくつかの実施形態において、組換えシルクの固体及びフィルムは、最小限の複屈折を有する。様々な実施形態において、固体はビーズである。いくつかの他の実施形態において、固体は角質除去剤として機能する。組換えシルク固体は、皮膚に優しいスキンスクラブの形態であってもよい。いくつかの実施形態において、材料の形態は、ロール、ペレット、シート、又はフレークである。
【0112】
いくつかの実施形態において、組換えシルクタンパク質は、中空コア及び/又はシェルを含む。いくつかの実施形態において、組換えシルクタンパク質は、直径約1μm~約30μm、約5μm~約20μm、又は直径約10μm~約50μmの範囲であり、水中の組換えシルクタンパク質は、直径約20~約80μm、約30μm~約70μm、又は直径約40μm~約100μmの範囲である。本開示の組成物に組み込む前に、組換えシルクタンパク質中空粉末を粉砕し、粉砕粉末として組み込むことができる。
【0113】
溶媒
いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、1つ以上の溶媒を含み得る。例えば、組換えシルクポリペプチドは、溶媒中に懸濁され得る。溶媒は、水性溶媒、アルコール、又は油性溶媒であり得る。例えば、溶媒は、水、グリセリン、脱イオン水、オリーブ油、及びペンチレングリコールのうちの1つ以上であり得る。例えば、組換えシルクポリペプチドは、中空コアが液体水又はグリセリンなどの溶媒を、液体水自体の形態で、又は液体水溶液として、液体水を含有するエマルジョンとして、又は水性分散液としてのいずれかで含有するように、溶媒で処理され得る。いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、グリセリン中の約25重量%の溶液を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、溶媒は水である。理論に拘束されることを意図するものではないが、組換えシルクポリペプチドを水などの溶媒に供することは、拡張又は膨潤した組換えシルクポリペプチドをもたらし、タンパク質は、溶媒(例えば、水)を含有する担体として機能する。これらの組成物は乾燥状態で保存することができ、水中に浸漬した後、部分的に再水和可能であり、膨張粒子の液体又は半液体水性懸濁液を直接形成する。
【0115】
いくつかの実施形態において、組換えシルクタンパク質は、中空コアの一部を膨張させることができる。いくつかの他の実施形態において、組換えシルクタンパク質は、シェルの一部を膨張させることができる。溶媒が水であるそのような実施形態において、組換えシルクタンパク質はヒドロゲルに変化する。溶媒が水である他の実施形態において、組換えシルクタンパク質は、ペーストに変化する。様々な実施形態において、組換えシルクタンパク質組成物を更に処理するために、熱及び/又は圧力を加えることができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、溶媒は、一般に、組換えシルクポリペプチドの総重量に対して55~90重量%の範囲の割合で存在する。この範囲は、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、及び85重量%を含む、全ての特定の値及びこれらの間の部分範囲を含む。いくつかの実施形態において、組換えシルクタンパク質は、様々な異なるpHレベルの水、グリセリン、アルコール、シロキサン、及び油を含む様々な溶媒に不溶である。
【0117】
いくつかの実施形態において、溶媒は水性タイプである。そのような実施形態において、溶媒は水である。溶媒は、6~12の範囲のpHを有し得る。いくつかの実施形態において、溶媒はpH6を有する。いくつかの他の実施形態において、溶媒は、0~5、2~7、4~9、6~11、8~13、又は10~14の範囲のpHを有する。
【0118】
他の実施形態において、溶媒は、比較的短い乾燥時間を得るために、様々な揮発性有機溶媒の混合物を含む。いくつかの実施形態において、溶媒はアルコールである。
【0119】
溶媒には、水、エチルアルコール、トルエン、塩化メチレン、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、ヒマシ油、オルガノポリシロキサン油、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及びテトラヒドロフランが含まれる。
【0120】
いくつかの実施形態において、オルガノポリシロキサン油は、揮発性、不揮発性、又は揮発性及び不揮発性シリコーンの混合物であり得る。この文脈で使用される「不揮発性」という用語は、周囲条件下で液体であり、約100℃超の引火点(1つの大気圧下で)を有するシリコーンを指す。この文脈で使用される「揮発性」という用語は、全ての他のシリコーン油を指す。好適なオルガノポリシロキサンは、広範囲の揮発性及び粘性にわたる多種多様なシリコーンから選択することができる。好適なシリコーンは、1991年12月3日に発行された米国特許第5,069,897号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。好適なオルガノポリシロキサンの例としては、ポリアルキルシロキサン、アルキル置換ジメチコン、ジメチコノール、ポリアルキルアリールシロキサン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ポリアルキルシロキサン、ジメチコン、及びシクロメチコンが使用され得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、溶媒は植物油及び硬化植物油である。いくつかの実施形態において、溶媒は遊離脂肪酸である。植物油及び硬化植物油の例としては、ベニバナ油、ヒマシ油、ヤシ油、綿実油、メンハーデン油、パーム核油、パーム油、落花生油、大豆油、菜種油、亜麻仁油、米ぬか油、松油、ゴマ油、ヒマワリ種子油、前述の供給源からの部分及び完全硬化油、並びにそれらの混合物が挙げられる。動物脂肪及び油、例えば、タラ肝油、ラノリン及びその誘導体、例えば、アセチル化ラノリン及びイソプロピルラノレートが使用され得る。ポリプロピレングリコールのC4-C20アルキルエーテル、ポリプロピレングリコールのC1-C20カルボン酸エステル、及びジ-C8-C30アルキルエーテルもまた有用であり、その例には、PPG-14ブチルエーテル、PPG-15ステアリルエーテル、ジオクチルエーテル、ドデシルオクチルエーテル、及びそれらの混合物が含まれる。
【0122】
本発明の組成物は、ペトロラタム、ラノリン及びラノリン誘導体、ステロール(例えば、エトキシル化大豆ステロール)、高分子量ポリブテン及びカカオバターなどの半固体炭化水素を実質的に含まなくてもよい。本明細書で使用される「実質的に含まない」とは、半固体炭化水素の濃度が10%未満、又は5%未満、又は2%未満又は0%であることを意味する。
【0123】
化粧品配合物としての組換えシルクタンパク質
様々な実施形態において、組換えシルクタンパク質は、シルク化粧品又はスキンケア製品(例えば、皮膚又は毛髪に適用される溶液)に配合される。具体的には、組換えシルクタンパク質は、組換えシルクポリペプチドがそのモノマー形態又は低結晶形態でベース中に存在する化粧品又はスキンケア製品のベースとして使用されるシリコーン置き換え構成成分に組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、組換えシルクポリペプチドが半結晶形態でベース中に存在する化粧品又はスキンケア製品のベースとして使用され得る。そのような実施形態において、組換えシルクポリペプチドは、その単量体形態では基剤中に存在しない。
【0124】
ほとんどの実施形態において、化粧品配合物は物理的に安定である。そのような実施形態において、組換えシルクタンパク質及び任意の他の成分は、その配合物中に長期間留まり、長い貯蔵寿命を有する。長期間の使用において、シリコーン置き換え構成成分は実質的に安定したままであり、成分は配合物から沈殿しない。
【0125】
本発明の組成物は、対象の皮膚、爪、毛髪又は粘膜に組成物を接触させることにより、シルクタンパク質を皮膚、爪、毛髪又は粘膜に適用するために使用され得る。好ましくは、本発明の組成物はヒト対象に使用される。
【0126】
ほとんどの実施形態において、化粧品配合物は、化粧品が適用される対象の宿主に対して無毒又は非アレルギー性である。組織を永久的に染色せず、水性洗剤による通常の洗浄によって除去することができる、毛髪及び表皮接触用の化粧品組成物を産生することも当該技術分野において望ましい。
【0127】
様々な実施形態で論じられる固体、フィルム、エマルジョン、ヒドロゲル、及び他の材料形態は、実施形態及び配合物の所望される効能に応じて、様々な湿潤剤、皮膚軟化剤、閉塞剤、活性剤、及び化粧品補助剤を含有し得る。いくつかの実施形態において、組換えシルクタンパク質は担体として機能する。いくつかの実施形態において、組換えシルクタンパク質は、皮膚、毛髪、又は爪などの表面に1つ以上の薬剤を送達する担体である。
【0128】
いくつかの実施形態において、化粧品配合物は、可塑剤を含む。組成物中の可塑剤の好適な濃度は重量で、例えば、1~60重量%、10~60重量%、10~50重量%、10~40重量%、15~40重量%、10~30重量%、又は15~30重量%の範囲である。いくつかの実施形態において、可塑剤は、グリセロールである。いくつかの実施形態において、可塑剤は、トリエタノールアミン、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、飽和脂肪酸、又は不飽和脂肪酸である。
【0129】
水が可塑剤として使用される場合、組成物中の水の好適な濃度は重量で、例えば、5~80重量%、15~70重量%、20~60重量%、25~50重量%、19~43重量%、又は19~27重量%の範囲である。水が別の可塑剤と組み合わせて使用される場合、水は、例えば、5~50重量%、15~43重量%、又は19~27重量%の範囲で存在し得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、好適な可塑剤としては、ポリオール(例えば、グリセロール)、水、乳酸、アスコルビン酸、リン酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエタノールアミン、酸アセテート、プロパン-1,3-ジオール、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。様々な実施形態において、可塑剤の量は、組換えシルクタンパク質の純度及び相対的組成に応じて異なり得る。例えば、高純度の粉末は、可塑剤として作用し得る低分子量化合物などの不純物が少なく、したがって、より高い重量パーセンテージの可塑剤の添加を必要とし得る。
【0131】
いくつかの実施形態において、組成物は、湿潤剤又は皮膚軟化剤を含む。本明細書で使用される「湿潤剤」という用語は、水分子と結合を形成する吸湿性物質を指す。好適な湿潤剤には、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタリエン(pentalyene)グリコール、トレメラ抽出物、ソルビトール、ジシアンアミド、乳酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アロエベラ抽出物、アルファヒドロキシ酸、及びピロリドンカルボキシレート(NaPCA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
本明細書で使用される「皮膚軟化剤」という用語は、皮膚表面のひび割れを埋めることによって、皮膚に柔らかい又はしなやかな外観を提供する化合物を指す。好適な皮膚軟化剤としては、シアバター、カカオバター、スクワレン、スクワラン、オクタン酸オクチル、ゴマ油、ブドウ種子油、オレイン酸を含有する天然油(例えば、甘扁桃油、アルガン油、オリーブ油、アボカド油)、ガンマリノール酸を含有する天然油(例えば、月見草油、ルリジサ油)、リノール酸を含有する天然油(例えば、ベニバナ油、ヒマワリ油)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
いくつかの例において、皮膚軟化剤又は湿潤剤は、閉塞剤(occlusive agent)であってもよく、本開示は、様々な実施形態において、組成物中への閉塞剤の包含を企図する。「閉塞剤」という用語は、水分を保持するために皮膚表面にバリアを形成する化合物を指す。他の好適な閉塞剤には、蜜蝋、カヌバ(canuba)蝋、セラミド、植物蝋、レシチン、アラントインが含まれ得るが、これらに限定されない。理論に拘束されることを意図するものではないが、本明細書に提示されるシリコーン置き換え構成成分のフィルム形成能力は、組換えシルクポリペプチドが水分子を引き付け、湿潤剤としても作用するため、水分保持バリアを形成する閉塞剤を作製する。
【0134】
任意選択的に、化粧品配合物は、活性剤を含む。「活性剤」という用語は、化粧品配合物中の顔料を含む、ヘアケア、スキンケア、又は化粧品配合物において既知の有益な効果を有する任意の化合物を指す。様々な活性剤としては、酢酸(すなわち、ビタミンC)、アルファヒドロキシル酸、ベータヒドロキシル酸、酸化亜鉛、二酸化チタン、レチノール、ナイアシンアミド、他の組換えタンパク質(全長配列として、又は部分配列若しくは「ペプチド」に加水分解されているかのいずれか)、銅ペプチド、クルクミノイド、グリコール酸、ヒドロキノン、コウジ酸、l-アスコルビン酸、アルファリポ酸、アゼライン酸、乳酸、フェルラ酸、マンデル酸、ジメチルアミノエタノール(DMAE)、レスベラトロール、抗酸化物質を含有する天然抽出物(例えば、緑茶抽出物、松の木の抽出物)、カフェイン、アルファアルブチン、コエンザイムQ-10、及びサリチル酸が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0135】
「化粧品補助剤」という用語は、界面活性剤、乳化剤、防腐剤、及び増粘剤を含むがこれらに限定されない、商業的に望ましい特性を有する化粧製品を作成するために使用される様々な他の薬剤を指す。
【0136】
本明細書に記載されるように、様々な実施形態において、組換えシルクタンパク質は、分散可能な半固体又はゲル状構造を形成し得る。組換えシルクタンパク質がスキンケア配合物に配合される様々な実施形態において、組換えシルクタンパク質は、皮膚の表面上で分散可能な液体に変化するゲル又はフィルムなどの不可逆的な三次元構造を形成し得る。
【0137】
様々な実施形態において、組換えシルクタンパク質は、水中に懸濁されて(「水性懸濁タンパク質」)、化粧品又はスキンケア配合物中に組み込まれ得る(すなわち、配合され得る)フィルム、ゲル、又はベースの形態のシリコーン置き換え構成成分が形成され得る。実施形態に応じて、水性懸濁タンパク質中の水に対する組換えシルクタンパク質の量は異なり得、組換えシルクタンパク質中の添加剤に対する組換えシルクポリペプチド粉末の相対比も異なり得る。いくつかの実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、10~33重量%の組換えシルクポリペプチド粉末を含む。いくつかの実施形態において、水とは異なる溶媒が使用される。いくつかの実施形態において、組換えシルクタンパク質を水に懸濁して、1~40%が組換えシルクタンパク質であり、60~99%が水である水性懸濁タンパク質を作り出す。特定の実施形態において、シリコーン置き換え構成成分は、水中に懸濁されて、シリコーン置き換え構成成分の総重量に基づいて、10重量%の組換えシルクポリペプチド粉末、30重量%の添加剤、及び60重量%の水である水性懸濁タンパク質が作成される。特定の実施形態において、タンパク質は、水中に懸濁されて、シリコーン置き換え構成成分の総重量に基づいて、6重量%の組換えシルクポリペプチド粉末、18重量%の添加剤、及び76重量%の水である水性懸濁タンパク質が作成される。特定の実施形態において、タンパク質は、水中に懸濁されて、シリコーン置き換え構成成分の総重量に基づいて、10重量%の組換えシルクポリペプチド粉末及び90重量%の水である水性懸濁タンパク質が作成される。
【0138】
実施形態に応じて、水性懸濁タンパク質は、水に再懸濁する際に、任意選択的に加熱及び撹拌され得る。いくつかの実施形態において、水性懸濁タンパク質を加熱及び撹拌することにより、水性懸濁タンパク質中で組換えシルクポリペプチドの相転移が起こり得る。具体的には、水性懸濁タンパク質を加熱及び撹拌することは、遠心分離によって評価される3つの別個の相をもたらす:1)遠心分離後の上清とは別個のゲル相、2)遠心分離後の上清から濾過され得るコロイド相、及び3)上清からコロイド相を濾過した後に残る溶液相。組換えシルクポリペプチドの分解を防ぐために水性懸濁タンパク質を長時間加熱に供してはならないという条件で、加熱、撹拌及び遠心分離の様々な組み合わせを使用することができる。特定の実施形態において、タンパク質は、90℃で5分間穏やかに撹拌され、16,000RCFで30分間遠心分離される。
【0139】
様々な実施形態において、水性懸濁タンパク質の様々な相(すなわち、コロイド相、ゲル相、及び溶液)又は水性懸濁タンパク質のいずれかは、化粧品又はスキンケア配合物に組み込まれて、組換えシルクタンパク質の供給源が提供され得る。実施形態に応じて、水性懸濁タンパク質は、スキンケア配合物に組み込む前に、加熱の有無にかかわらず撹拌に供され得る。任意選択的に、水性懸濁タンパク質は、遠心分離及び/又は濾過によって上記の相に分離され得る。実施形態に応じて、スキンケア配合物は、エマルジョン(例えば、クリーム又はセラム)又は主に水溶液(例えば、ゲル)であり得る。ある特定の実施形態において、組換えシルクタンパク質は、水性再懸濁液なしで、本明細書に記載の化粧品、スキンケア、又はヘアケア配合物のうちのいずれかに組み込まれ得る。これらの組成物では、ホモジナイザー又は同様の機器を使用して、組換えシルクタンパク質が組成物中に均一に分布されることを確実にすることができる。
【0140】
いくつかの実施形態において、水性懸濁タンパク質を、加熱及び撹拌に供し、次いで平らな表面に流延し、乾燥させてフィルムにすることができる。いくつかの実施形態において、水性懸濁タンパク質を、加熱及び/又は撹拌に供することなく、平らな表面に流延し、乾燥させてフィルムにすることができる。そのような実施形態において、水性懸濁タンパク質を平らな表面に流延し、追加の処理に供することなく、乾燥させてフィルムにすることができる。いくつかの実施形態において、水性懸濁タンパク質をエマルジョンに組み込み、次いで平らな表面に流延し、乾燥させてフィルムにすることができる。実施形態に応じて、様々な異なる乾燥条件を用いることができる。好適な乾燥条件には、真空を用いた及び用いない、60℃又は80℃での乾燥が含まれる。真空を使用する実施形態において、15Hgが好適な量の真空である。他の乾燥方法は、当該技術分野で十分に確立されている。
【0141】
様々な実施形態において、水性懸濁タンパク質のみを含むフィルムは、低い溶融温度を有する。様々な実施形態において、水性懸濁タンパク質のみを含むフィルムは、体温(約34~36℃)よりも低い溶融温度を有し、皮膚との接触時に融解する。理論に拘束されることを意図するものではないが、組換えシルクポリペプチドは、半固体構造(すなわち、フィルム)を作製するのに十分な分子間相互作用を形成するが、この構造は、皮膚接触時に可逆的であり、皮膚表面に分散した後に再形成され得る。様々な実施形態において、フィルムは、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって測定されるように、組換えシルクタンパク質又は組換えシルク粉末と比較して結晶化度が低減している。様々な実施形態において、水性懸濁タンパク質を含むフィルムは、皮膚に接触しても融解しない。そのような実施形態において、フィルムはバリアとして機能する。様々な実施形態において、フィルムは低密度の疎水性フィルムである。フィルム又はバリアは、厚さ約1μm~約50μm、約10μm~約30μm、又は厚さ約20μm~約40μmの範囲であり得る。皮膚との接触時に、表皮層の表面にバリアが形成され、皮膚表面への強固な非特異的接着が実現される。いくつかの実施形態において、フィルムの厚さは、組換えシルクタンパク質の濃度及び適用表面積に応じて変化する。
【0142】
いくつかの実施形態において、バリアは長期間持続し、風、湿度、刺激の強い添加剤、汚染、摩耗、汚れ、及び油脂を含む、1つ以上の環境ストレス要因から防御する。バリアは、手による少なくとも100回の摩擦、少なくとも200回の摩擦、少なくとも400回の摩擦、少なくとも600回の摩擦、又は少なくとも800回の摩擦に相当する摩耗に耐えることができる。
【0143】
1つの特定の実施形態において、水性懸濁タンパク質又はタンパク質をエマルジョンに組み込み(例えば、ホモジナイズし)、次いで平らな表面に流延し、凍結乾燥して多孔質フィルムを作り出すことができる。実施形態に応じて、フィルムを-80℃で30分間凍結することを含む様々な技術を凍結乾燥に用いることができる。他の凍結乾燥技術は、当業者に周知である。
【0144】
様々な実施形態において、上述のフィルムは、局所スキンケア剤として使用することができる。このフィルムは、皮膚に直接適用されてもよく、再水和させて、皮膚に取り込まれる分散可能な粘性物質を形成することができる。本明細書で論じられるように、様々な皮膚軟化剤、湿潤剤、活性剤、及び他の化粧品補助剤がフィルムに組み込まれ得る。このフィルムは、皮膚に直接適用されてもよく、皮膚との接触により皮膚に吸着するか、又はフィルムを皮膚に軽く擦り込んだ後に皮膚に吸着する。いくつかの実施形態において、フィルムは、皮膚に直接適用されてもよく、追加の摩擦又は接触なしに皮膚に吸着する。いくつかの実施形態において、水溶液に再懸濁したタンパク質を顔に適用し、次いでミストを介してプロピレングリコールなどの凝固剤に曝露して、ゲル化可能なマスクを形成することができる。
【0145】
実施形態に応じて、流延されるフィルムは、平らなフィルム(すなわち、表面のばらつきがない)であり得るか、又は微細構造を組み込んだ金型に流延され得る。特定の実施形態において、皮膚の表面を刺して活性剤の送達を助けるマイクロニードル構造を組み込んだ金型に流延されるフィルムである。
【0146】
別の実施形態において、水性懸濁タンパク質は、化粧製品として使用されるエマルジョンに添加され得る。エマルジョンは、皮膚又は毛髪に適用されてもよく、次いで乾燥時に皮膚の表面にフィルムを形成させることができる。本明細書で論じられるように、様々な皮膚軟化剤、湿潤剤、活性剤、及び他の化粧品補助剤がエマルジョンに組み込まれ得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、クリーム、ローション、及びゲルなどの液体又は半固体であり得る。本発明で有用な組成物は、当該技術分野で既知の多種多様な製品形態にすることができる。これらには、粉末、ローション、クリーム、ゲル、パッチ、セラム、アンプル、粉末、スティック、スプレー、軟膏、ペースト、ムース、軟膏、液体、エマルジョン、フォーム、又はエアロゾルが含まれるが、これらに限定されない。これらの製品形態は、本明細書で更に論じられるように、溶液、エアロゾル、エマルジョン、ゲル、固体、及びリポソームを含むが、これらに限定されない、いくつかのタイプの添加剤を含み得る。本発明の組成物及び方法において活性である化合物は、当業者に既知の任意の手段によって局所的に送達され得る。
【0148】
いくつかの他の実施形態において、組成物は、基本的な化粧品組成物、例えば、化粧水、クリーム、エッセンス、クレンジングフォーム、及びクレンジングウォーターなどの洗顔料;パック及びボディオイル;ファンデーション、口紅、マスカラ、及びメイクアップベースなどのカラー化粧品組成物;シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、及びヘアジェルなどの毛髪製品組成物;石鹸などであり得る。化粧品配合物は、本明細書に記載のシリコーン置き換え構成成分を、任意選択的に、化粧品組成物を調製する分野で一般的に使用される少なくとも1つの担体及び/又は添加剤と一緒に使用して、当該技術分野で既知の任意の方法で調製され得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つの化粧剤を含む。化粧剤の例には、皮膚軟化剤、湿潤剤、着色剤、顔料、芳香剤、保湿剤、粘度調整剤、及び任意の他の化粧形成剤が含まれる。1つ以上の化粧剤を化粧品組成物に含めることができる。別の実施形態において、皮膚柔軟剤、皮膚浸透増強剤、着色剤、芳香剤、乳化剤、及び増粘剤を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知であり、本明細書に記載の追加の活性成分も使用することができる。また、化粧品組成物は、例えば、物理的特性を改善する目的で、香料、顔料、殺菌剤、抗酸化剤、防腐剤、及び/又は保湿剤、並びに無機塩及び合成ポリマー物質を更に含み得る。
【0150】
組成物は、ローションを介して局所的に送達することもできる。水中油型及び油中水型のローション及びクリームなどの単一エマルジョンのスキンケア調製物は、化粧品の分野で周知であり、本発明において有用である。水中油中水型などの多相エマルジョン組成物も、本発明において有用である。一般に、そのような単相又は多相エマルジョンは、必須成分として水、皮膚軟化剤、及び乳化剤を含有する。
【0151】
本発明の組成物はまた、固形配合物(例えば、ワックスベースのスティック、固形石鹸組成物、粉末、ビーズ、角質除去剤、又は液体若しくは粉末を含有するワイプ)に配合することもできる。
【0152】
本発明の組成物は、ゲル(例えば、好適なゲル化剤を使用した水性ゲル)として配合することができる。水性ゲルに好適なゲル化剤としては、天然ガム、アクリル酸及びアクリレートポリマー及びコポリマー、並びにセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース)が挙げられるが、これらに限定されない。油(鉱油など)に好適なゲル化剤には、水素化ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー及び水素化エチレン/プロピレン/スチレンコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。そのようなゲルは、典型的には、そのようなゲル化剤を約0.1重量%~5重量%含む。いくつかの実施形態において、そのような組成物には、組換えシルクタンパク質、水(Aqua)、C14-16オレフィンスルホン酸ナトリウム、グリセリン、カカオベタイン、安息香酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、グルコン酸カルシウム、ヒアルロン酸ナトリウム、プロパンジオール、キサンタンガム、グルコノラクトン、及びグルタミン酸二酢酸四ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、組成物は、クレンジング洗剤、石鹸、セラム、又は化粧水を含む。特定の実施形態において、セラムは水性ベースである。別の特定の実施形態において、化粧水はアルコールベースである。
【0153】
本発明において有用な組成物は、エマルジョンとして配合され得る。組成物がエマルジョンである場合、いくつかの実施形態において、組成物の約1%~約10%又は約2%~約5%が乳化剤を含む。乳化剤は、非イオン性、アニオン性又はカチオン性であり得る。好適な乳化剤は、例えば、INCI Handbook、pp.1673-1686に開示されている。ローション及びクリームは、エマルジョンとして配合され得る。いくつかの実施形態において、組成物はエマルジョンであり、組換えシルクタンパク質は乳化剤である。いくつかの実施形態において、組成物はエマルジョンであり、組換えシルクタンパク質は乳化剤であり、組成物は他の乳化剤を含まない。
【0154】
更に別のタイプの組成物は軟膏であり得る。軟膏は、動物油若しくは植物油又は半固体炭化水素の単純な基剤を含み得る。軟膏は、約0.1%~約2%の増粘剤に加えて、約2%~約10%の皮膚軟化剤を含んでもよい。増粘剤の例としては、例えば、セルロース誘導体(メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース)、合成高分子量ポリマー(例えば、カルボキシビニルポリマー及びポリビニルアルコール)、植物ハイドロコロイド(例えば、カラヤガム及びトラガントガム)、粘土増粘剤(例えば、コロイド状マグネシウムアルミニウムシリケート及びベントナイト)、カルボキシビニルポリマー、カルボン酸ポリマー、架橋ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0155】
本発明において有用な組成物は、前述の構成成分に加えて、皮膚、毛髪、及び爪に使用するための組成物に従来から使用されている多種多様な追加の油溶性物質及び/又は水溶性物質を、その分野で確立されたレベルで含有し得る。
【0156】
本発明の組成物は、皮膚に直接適用され得るか、又はワイプ、スポンジ、ブラシなどの他の送達器具に適用され得る。組成物は、皮膚の上に放置する、皮膚から拭き取る、又は皮膚から洗い流すように設計された製品に使用することができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、組成物は、皮膚のハリ/ふっくら感の増加、弾力性の増加、全体的な皮膚の健康の改善、水分補給の増加、創傷治癒の促進及び/若しくは改善、汚染防御の改善、皮膚科学的老化の低減、皮膚脆弱性の減少、コラーゲン及び/若しくはエラスチンの喪失の防止及び回復、皮膚萎縮の防止、細胞の代謝回転の促進/加速、遺伝子発現の増加、皮膚のきめの改善、小じわ及びしわの防止及び減少、皮膚の色調の改善、皮膚の厚さの増強、毛穴のサイズの減少、皮膚の変色の最小限化、皮膚の光沢の回復、疲労の兆候の最小限化、皮膚バリア機能の改善、皮膚の乾燥の最小限化、色素沈着過剰の防止、低減、若しくは処理、皮膚のミトコンドリア機能の改善、角質除去の改善、毒性の低減、皮膚のマット化、酸化ストレスレベルの低減、汚染誘発酸化ストレスの減退、UVA若しくはUVB誘発酸化ストレスの減退、又はそれらの任意の組み合わせなどの皮膚の外観を改善する。
【0158】
様々な実施形態の組成物は、汚染物質及び他の刺激物から防御する。その結果として、ニキビ、酒さ(大人のニキビ)に関連する発赤、及び他の炎症状態などの多くの皮膚状態を、化粧品配合物の適用によって積極的に管理することができる。
【0159】
凝固剤
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような組成物及び/又はシリコーン置き換え構成成分を含有する組換えシルクポリペプチドは、凝固剤に曝露される。これによって組成物/構成成分の特性を変化させて、シルクベースの組成物におけるシルクの制御された凝集を促進することができる。いくつかの実施形態において、組成物/構成成分は、凝固剤に浸される。いくつかの実施形態において、組成物/構成成分は、凝固剤ミスト又は蒸気に曝露される。一実施形態において、水性タンパク質組成物は、凝固剤を含むか、又は凝固剤に浸漬されるか、又は凝固剤と混合される。いくつかの実施形態において、フィルムなどのシルクベースの固体又は半固体は、凝固剤を含む蒸気に浸漬されるか又は曝露される。いくつかの実施形態において、メタノールが有効な凝固剤として使用される。
【0160】
いくつかの実施形態において、アルコール(例えば、イソプロパノール、エタノール、又はメタノール)は、凝固剤又は溶媒として使用され得る。いくつかの実施形態において、60%、70%、80%、90%、又は100%のアルコールが凝固剤として使用される。いくつかの実施形態において、塩は、凝固剤として使用され得る。塩の例としては、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び20~60℃の温度で有効な他のタンパク質沈殿物塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
いくつかの実施形態において、以下の化学物質のクラスを含むがこれらに限定されない、水、酸、溶媒、及び塩のうちの1つ以上の組み合わせを、凝固剤として使用することができる:ブレンステッド・ローリー酸、ルイス酸、二元水素化物酸(binary hydride acid)、有機酸、金属カチオン酸、有機溶媒、無機溶媒、アルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩。いくつかの実施形態において、酸は、希釈塩酸、希釈硫酸、ギ酸、又は酢酸を含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、t-ブチルアルコール、酢酸エチル、プロピレングリコール、又はエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態において、塩は、LiCl、KC1、BeC12、MgC12、CaC12、NaCl、ZnCl2、FeCl3、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又は硝酸、硫酸、若しくはリン酸の他の塩を含む。いくつかの実施形態において、凝固剤は、2.5~7.5のpHである。
【0162】
他の添加剤
いくつかの実施形態において、本開示による組成物及び/又はそのシリコーン置き換え構成成分は、1つ以上の添加剤を含み得る。これにより、皮膚と相互作用する際に、組成物の特性を変化させることができる。いくつかの実施形態において、シルクベースの組成物は添加剤に浸漬される。いくつかの実施形態において、組成物/構成成分は、添加剤のミスト又は蒸気に曝露される。一実施形態において、水性タンパク質組成物は、添加剤を含むか、又は添加剤に浸漬されるか、又は添加剤と混合される。いくつかの実施形態において、フィルムなどのシルクベースの固体又は半固体は、添加剤を含む蒸気に浸漬されるか又は曝露される。いくつかの実施形態において、シルクベースのゲルは、中空粉末形成の前に添加剤に曝露される(例えば、シルクベースのゲル及び添加剤は、一緒に共噴霧乾燥される)。
【0163】
添加剤は、それ自体が不活性であり得るか、又は独自の皮膚科学的利点を有し得る。添加剤はまた、本明細書に記載の必須構成成分と物理的かつ化学的に適合性であるべきであり、本発明の組成物に関連する安定性、効能、又は他の使用利益を必要以上に損なうべきではない。本発明で利用される添加剤のタイプは、組成物に所望される製品形態のタイプに依存する。いくつかの実施形態において、添加剤は酸性繊維染料である。
【0164】
顔料は、皮膚への適用に望ましい色を実現するために、化粧品配合物に頻繁に添加される。そのような顔料は既知であり、所望の着色を達成するために必要な濃度は容易に決定することができる。顔料は、無機であっても有機であってもよい。無機顔料には、酸化鉄(赤、黒、褐色)、マンガンバイオレット、ウルトラマリン(緑、青、ピンク、赤、又は紫の硫酸アルミニウム)、アクアマリン、銅粉、雲母、粘土、シリカ、及び二酸化チタンが含まれる。米国FDAによって化粧品としての使用が認定された有機染料は、一般に、「D&C」という接頭辞と、色及び数字の接尾辞とを有する(例えば、D&C緑3番)。
【0165】
本発明のある特定の実施形態は、無水顔料重量基準で、約0%~約30%、約1%~約20%、約2%~約15%、又は約5%~約15%の着色剤を含有する。これらは通常、アルミニウム、バリウム、カルシウムの塩又はレーキである。染料は、約0%~約3%の濃度で存在し得、真珠光沢剤などは0%~約10%の濃度で存在し得る。組換えシルクタンパク質と組み合わせたそのような染料は、安定であり、長い貯蔵寿命を有する。そのような組成物の貯蔵寿命は、約6ヶ月、約1年、又は約2年であり得る。いくつかの実施形態において、そのような組成物の貯蔵寿命は、少なくとも5年であり得る。
【0166】
組成物に使用される顔料、着色剤、又は充填剤粉末に関して特定の制限はない。各々が、体質顔料、無機白色顔料、無機着色顔料、パール剤などであってもよい。具体例として、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、ウルトラマリン、ポリエチレン粉末、メタクリレート粉末、ポリスチレン粉末、シルク粉末、結晶セルロース、デンプン、雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、オキシ塩化ビスマスなどが挙げられる。
【0167】
追加の顔料/粉末充填剤としては、無機粉末、例えば、ガム、チョーク、フラー土、カオリン、絹雲母、白雲母、金雲母、合成雲母、レピドライト、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、ケイ酸アルミニウム、デンプン、スメクタイト粘土、アルキル及び/又はトリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学修飾ケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機修飾モンモリロナイト粘土、水和ケイ酸アルミニウム、ヒュームドアルミニウムデンプンオクテニルスクシネートバリウムシリケート、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、金属タングステン酸塩、マグネシウム、シリカアルミナ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼成石膏)、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ハイドロキシアパタイト、セラミック粉末、金属石鹸(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、及びステアリン酸アルミニウム)、コロイド状二酸化ケイ素、及び窒化ホウ素;有機粉末、例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、シクロデキストリン、ポリメタクリル酸メチル粉末、スチレンとアクリル酸とのコポリマー粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ(四フッ化エチレン)粉末、及びカルボキシビニルポリマー;セルロース粉末、例えば、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム;モノステアリン酸エチレングリコール;並びに酸化マグネシウムなどの無機白色顔料が含まれるが、これらに限定されない。他の有用な粉末は、1997年11月18日に発行されたEl-Nokaly et al.の米国特許第5,688,831号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの顔料及び粉末は、独立して又は組み合わせて使用することができる。
【0168】
シルクタンパク質に加えて、本発明による組成物は、フィルム形成物質を更に含むことができる。フィルム形成物質の例としては、例えば、セルロース誘導体、ニトロセルロース、アクリルポリマー又はコポリマー、アクリル、スチレン、アクリレート-スチレン及びビニル樹脂、ビニルコポリマー、ポリエステルポリマー、アリールスルホンアミド樹脂、並びにアルキド樹脂が挙げられる。
【0169】
いくつかの実施形態において、組成物は、両性界面活性剤、リン脂質、又はワックスを含んでもよい。
【0170】
他の添加剤の例として、カンナビジオール、発泡性界面活性剤、色素脱失剤、反射剤、もつれ解消/ウェットコーミング剤、アミノ酸及びその誘導体、抗菌剤、アレルギー抑制剤、抗ニキビ剤、老化防止剤、しわ防止剤、殺菌剤、鎮痛剤、鎮咳剤、鎮痒剤、局所麻酔剤、脱毛防止剤、発毛促進剤、発毛阻害剤、抗ヒスタミン剤、抗感染剤、炎症抑制剤、制吐剤、抗コリン剤、血管収縮剤、血管拡張剤、創傷治癒促進剤、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質、脱臭剤及び制汗剤、医薬品、皮膚軟化剤及び皮膚保湿剤、皮膚引き締め剤、ヘアコンディショナー、毛髪柔軟剤、毛髪保湿剤、ビタミン、日焼け剤、美白剤、抗真菌剤、脱毛剤、シェービング調製物、外用鎮痛剤、香水、抗刺激剤、痔疾用剤、殺虫剤、ツタウルシ製品、ウルシ製品、火傷薬、おむつかぶれ防止剤、あせも剤、メイクアップ調製物、ビタミン、ハーブ抽出物、レチノイド、フラベノイド、感覚剤、抗酸化剤、スキンコンディショナー、ヘアライトナー、キレート剤、細胞代謝回転エンハンサー、日焼け止め、抗浮腫剤、コラーゲンエンハンサー、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
好適なビタミンの例としては、チアミン、ニコチン酸、ビオチン、パントテン酸、コリン、リボフラビン、ビタミンB6、ビタミンB12、ピリドキシン、イノシトール、カミチンを含むビタミンB複合体;ビタミンA、C、D、E、K、及びそれらの誘導体、例えば、ビタミンAパルミテート及びプロビタミン(例えば、パンテノール(プロビタミンB5)及びパンテノールトリアセテート)、並びにそれらの混合物が非排他的に挙げられる。
【0172】
日焼け止め剤の例として、アボベンゾン、ベンゾフェノン、ボルネロン、ブチルパバ、シンナミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジスチリルビフェニルジスルホン酸二ナトリウム、パバ、メトキシケイヒ酸カリウム、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクチルメトキシケイ皮酸、オキシベンゾン、オクトクリレン、サリチル酸オクチル、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ヒドロキシプロピルアミノ安息香酸エチル、アントラニル酸メンチル、アミノ安息香酸、シノキサート、メトキシケイ皮酸ジエタノールアミン、アミノ安息香酸グリセリル、二酸化チタン、酸化亜鉛、オキシベンゾン、パジメートO、赤色ワセリン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
組成物と組み合わせる添加剤の量は、例えば、添加剤が皮膚、毛髪、又は爪に浸透する能力、選択された特定の添加剤、所望される特定の利益、使用者の添加剤に対する感受性、使用者の健康状態、年齢、並びに皮膚、毛髪、及び/又は爪の状態などに応じて異なり得る。要するに、添加剤は「安全かつ有効な量」で使用され、これは、健全な医学的判断の範囲内の妥当なリスク対ベネフィット比で、所望の皮膚、毛髪、又は爪の利益をもたらすか又は処理されるある特定の状態を修正するには十分に高いが、重大な副作用を回避するのに十分に低い。
【0174】
本明細書に例示的に開示される発明は、本明細書に具体的に開示されていない構成成分、成分、又はステップを欠いた状態で好適に実施され得る。本発明の性質及びそれを実施する方法を更に説明するために、いくつかの例を以下に示す。しかしながら、本発明は、その詳細に限定されるとみなされるべきではない。
【0175】
本発明の組成物及び方法は、シリコーンエラストマーを含有する組成物と比較して、柔らかさ、迅速な吸収、容易な展延性(又は「プレイタイム」)、軽量のフィルム形成、及び非油脂性の使用感について、同等又はより良好な性能を皮膚に提供する。更に、皮膚がSPF組成物で処理されている場合、本発明は、白浮きの低さについて、同等又はより良好な性能を提供する。本発明の組成物及び方法は、長時間の耐久性、輝き、非油脂性、縮れ制御、毛髪の密度の追加、スタイリング保持、静電特性、耐熱性、並びにUV照射及び汚染防御について、同等又はより良好な性能を毛髪に提供する。
【0176】
同等物及び範囲
当業者は、本明細書に記載の本発明による特定の実施形態に対する多くの同等物を認識し、又は日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、むしろ添付の態様に記載されているものである。
【0177】
態様において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」などの冠詞は、その反対が示されるか、又はそうでなければ文脈から明白でない限り、1つ、又は2つ以上を意味し得る。グループの1つ以上のメンバーを含む「又は」メンバー間の態様又は説明は、反対のことが示されるか、又はそうでなければ文脈から明白でない限り、所与の製品又はプロセスにグループメンバーのうちの1つ、2つ以上、又は全てが存在する、採用される、又は他の方法で関連する場合、満たされているとみなされる。本発明は、グループのうちの厳密に1つのメンバーが、所与の製品又はプロセスに存在する、採用される、又は他の方法で関連する実施形態を含む。本発明は、グループメンバーのうちの2つ以上、又は全てが、所与の製品又はプロセスに存在する、採用される、又は他の方法で関連する実施形態を含む。
【0178】
「含む」という用語は、オープンであることが意図され、許容されるが、追加の要素又はステップを含む必要はないことも留意されたい。したがって、「含む」という用語が本明細書で使用される場合、「からなる」及び「から本質的になる」という用語も包含され、開示される。
【0179】
範囲が与えられている場合、端点が含まれる。更に、別段の指示がない限り、又はそうでなければ文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が別の方法で明確に指示しない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本発明の異なる実施形態において記載された範囲内の任意の特定の値又は部分範囲を想定することができることが理解されるべきである。
【0180】
全ての引用された情報源、例えば、本明細書で引用された参考文献、刊行物、データベース、データベースエントリー、及び技術は、引用で明示的に記載されていなくても、参照により本出願に組み込まれる。引用された情報源及び本出願の記述が矛盾する場合には、本出願の記述を優先するものとする。
【0181】
セクション及び表の見出しは、限定することを意図していない。
【実施例】
【0182】
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の実施例である。実施例は、例示のみを目的として提供されており、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、当然ながら、若干の実験誤差及び偏差は許容されるべきである。
【0183】
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当該技術分野の範囲内で、タンパク質化学、生物化学、組換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法を採用する。そのような技術は、文献で完全に説明されている。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993)、A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.)、Remington′s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990)、Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0184】
実施例1:SPF配合物中のシリコーンの置き換え物としての組換えシルクポリペプチド
本実施例では、組換えシルクポリペプチドが、SPFスキンケア製品のある特定の特徴について、シリコーン(すなわち、線形シリコーンとシクロシロキサンとのブレンド)に匹敵し、かつそれよりも優れていることを示す。2%の組み合わされた線形シリコーン及びシクロシロキサン(各構成成分の1%)を元々含有する鉱物SPF配合物を、1.5%の組換えシルクポリペプチドで再配合し、その審美的プロファイルについて評価した。組換えシルクポリペプチドは、白浮き、吸収、フィルム感、及び油っぽさの盲検比較において、シリコーン配合物よりも好ましく、プレイタイム及び柔らかさ性能においてシリコーン配合物に匹敵した。
【0185】
方法:SPF配合物を当該技術分野での標準的技法と同様に調製した。水相成分を別で混合し、油相成分を別で混合した。2つを、80~85℃の高温で穏やかに混合することで組み合わせた。成分を、均一になるまで連続的に混合し、次いで30~45℃に冷却した。水相及び油相を混合し、30~45℃に冷却した後、配列番号2878を含む18B組換えシルクポリペプチドを、配合物に添加した。配合物を、室温に冷却しながら連続的に混合した。水を使用して、配合物間の組換えシルクポリペプチド及びシリコーンエラストマーの重量パーセントの差を補った。この配合物については、粉末形態の組換えシルクポリペプチドを使用した。
【0186】
スパイダーチャートを盲検比較試験で用意し、ここで、対象は、6つの異なる属性について1~5のスケールで2つの配合物を比較するように求められた(キー:1=好ましくない、2=悪い、3=満足、4=良い、5=優れている)。10人の異なる個人が、1週間にわたって顔で製品を試験した。皮膚のタイプは、油性、乾性、及び混合のように異なる。
【0187】
図1Aは、SPF配合物のトップダウン図を例示する。
【0188】
図1Bは、10人の対象の盲検試験比較からのデータをプロットするスパイダーチャートを示す。1.5%の組換えシルクポリペプチド配合物は、望ましい白浮き、吸収、フィルム感、及び油っぽさに関して、2%のシリコーン配合物よりも優れていた。1.5%の組換えシルクポリペプチド配合物は、展延性及び柔らかさに関して、2%のシリコーン配合物と同様の性能を示した。
【0189】
図1C:SPF配合物で使用される成分の表(組換えシルクポリペプチド及びシリコーンを含まない)。
【0190】
図1D:1.5%の組換えシルクポリペプチドを含有するSPF配合物は、望ましい白浮き、吸収、フィルム感、及び油っぽさに関して、2%のシリコーン配合物よりも優れていたが、レオロジーデータは、3つの配合物間の類似性を示す。周波数掃引は、G’及びG”曲線の同様の大きさ及び形状を示す。このデータは、SPF配合物が同様のゲル状構造特性を有することを支持する。
【0191】
図1E:SPFベース、及び1%の組換えシルクポリペプチドタンパク質又は5%のシリコーンエラストマー成分とともに配合されたSPFベースの光学顕微鏡画像。SPFベース及び5%のシリコーンエラストマーサンプルは、より透明な領域と不透明な他の領域とを有する典型的な分散形態を示す。1%の組換えシルクポリペプチドサンプルは、中空であり、直径が2~200μmであり、明るい円として現れる粒子の目に見える存在を明らかに有する。白い矢印が図に追加されて、例示的なシルク粉末粒子を指し示す。水に懸濁された1%の組換えシルクポリペプチド粉末の参照画像を含む。
【0192】
実施例2:カラー化粧製品中のシリコーンの置き換え物としての組換えシルクポリペプチド
組換えシルクポリペプチドは、カラー化粧製品のある特定の特徴について、シリコーンエラストマーに匹敵し、かつそれよりも優れている。1%の組換えシルクポリペプチド、又は5%若しくは10%のシリコーンエラストマーのいずれかを用いて、眼/頬/唇用着色3-イン-1クリーム配合物を調製し、その審美的プロファイルについて評価した。組換えシルクポリペプチド配合物は、シリコーンエラストマーよりも優れており、改善された展延性を提供し、更に、均一な顔料送達、及び柔らかいドライダウン(すなわち、シリコーンエラストマーバージョンのように粘着性又は油脂性ではない)を提供し、また拭き取り耐性もあった。
【0193】
方法:カラー化粧品配合物を、当該技術分野での標準的技法と同様に調製した。全てのワックス、油、及び溶媒を室温にするか、又は別々に高温、例えば、37℃を超えるが90℃未満にした。油及び溶媒を顔料と混合し、軽く粉砕した。次いで、ワックスを混合物に添加し、冷却した。b-シルクタンパク質(すなわち、配列番号2878を含む18B組換えシルクポリペプチド)及び/又はシリコーンエラストマー成分は、プロセスの任意の段階で添加することができる。水を使用して、配合物間の組換えシルクポリペプチド及びシリコーンエラストマーの重量パーセントの差を補った。この配合物には、粉末形態の組換えシルクポリペプチドを使用し、およそ30%の固体を有するシリコーンエラストマー成分を使用した。
【0194】
顔料適用及び拭き取りの試験には、1cm×1cmの面積に10mgの製品を適用し、製品を15分間乾燥させることが含まれる。拭き取りを試験するために、皮膚上に白いティッシュペーパーを置き、皮膚上に200gの塊を置いた。ティッシュを皮膚の上で3回引っ張り上げ、拭き取り特徴を視覚的に評価した。
【0195】
レオロジー測定を、2度/20mmの円錐及びプレートの形状を使用して、Kinexus Lab+のレオメーターを用いて行った。材料のG’及びG”を測定するために、周波数掃引を0.1%ひずみ速度で行った。開始周波数は100s-1であり、終了周波数は0.01s-1であった。
【0196】
【0197】
図2B:カラー化粧品の皮膚への顔料送達及び強固さをどのように評価したかを段階的に視覚化したもの。
【0198】
図2C:製品のカラー適用及び拭き取りの代表的な画像。5%及び10%のエラストマー製品と比較して、組換えシルクポリペプチドは、皮膚上により均一に広がる顔料を有し、拭き取りの間、皮膚に対してより強固に付着していた。
【0199】
図2D:カラー化粧品配合物に使用される成分の表(組換えシルクポリペプチド及びシリコーンを含まない)。
【0200】
図2E:カラー化粧品ベース及び1%のb-シルクタンパク質又は5%のシリコーンエラストマー成分とともに配合されたベースの光学顕微鏡画像。SPFベース及び5%のシリコーンエラストマーサンプルは、より透明な領域と不透明な他の領域とを有する典型的な分散形態を示す。1%の組換えシルクポリペプチドサンプルは、中空であり、直径が2~200μmであり、明るい円として現れる粒子の目に見える存在を明らかに有する。白い矢印が図に追加されて、例示的なシルク粉末粒子を指し示す。
【0201】
図2F:1%の組換えシルクタンパク質を含有するカラー化粧品配合物は、性能特徴及び顕微鏡によって測定した際に5%及び10%の配合物とは明確に異なるが、レオロジーデータは、3つの配合物間の類似性を示す。周波数掃引は、G’及びG”曲線の同様の大きさ及び形状を示す。このデータは、カラー化粧品が同様のゲル状構造特性を有することを示す。
【0202】
実施例3:毛髪セラム中のシリコーンエラストマーの置き換え物としての組換えシルクポリペプチド
1%の組換えシルクポリペプチド又は5%のシリコーンエラストマーのいずれかを有する洗い流さない毛髪セラムを調製した。配合物は、輝き、カール保持、及び縮れ制御を含むスタイリングについて同様に挙動した。
【0203】
方法:毛髪セラム配合物を、当該技術分野での標準的技法と同様に調製した。穏やかに混合して、全ての成分を完全に均一になるまで合わせた。水を使用して、配合物間の組換えシルクポリペプチド(すなわち、18Bシルク)及びシリコーンエラストマーの重量パーセントの差を補った。この配合物には、粉末形態の組換えシルクポリペプチドを使用し、およそ30%の固体を有するシリコーンエラストマー成分を使用した。
【0204】
レオロジー測定を、2度/20mmの円錐及びプレートの形状を使用して、Kinexus Lab+のレオメーターを用いて行った。材料のG’及びG”を測定するために、振幅掃引を、0.01%~250%の剪断ひずみの範囲にわたって1s-1周波数で行った。更に、周波数掃引を0.1%ひずみ速度で行った。開始周波数は100s-1であり、終了周波数は0.01s-1であった。
【0205】
毛髪上の配合物の形態を評価するために、0.25gの配合物を、優しくマッサージしながら0.35gのヤクの毛髪上に均等に広げた。次いで、毛髪を、乾燥した感触が得られるまで200℃で5分間、熱風で乾燥させた。走査型電子顕微鏡(SEM)は、二次電子を介して材料の形態を評価するために、焦点電子ビームを使用した。電子ビームがラスタパターンで走査されて、1mm~10nm又は10X~100,000Xの倍率で、顕微鏡写真を収集した。SEM法は、低真空(1~10torr)を使用し、生体サンプルを脱水又はスパッタコーティングする必要を回避した。
【0206】
光学顕微鏡画像を使用して、配合物の粉末形態を検査し、10倍の対物レンズを使用するLeica DM750P光学顕微鏡を使用してその画像を得た。顕微鏡を、補完的なPCベースの画像分析Leica Application Suite,LAS V4.9に連結して、画像を捕捉した。
【0207】
図3A:1%の組換えシルクポリペプチド及び5%のシリコーンエラストマーを有する場合及び有さない場合の毛髪セラム配合物の光学顕微鏡画像。ベースセラム及びシリコーンエラストマーサンプルは、視覚的に異なる特徴がないことによって証明されるように、均一な構造を有する。1%の組換えシルクポリペプチドサンプルは、中空であり、直径が2~200μmである組換えシルクポリペプチド粒子の目に見える存在を明らかに有する。
【0208】
図3B:ヤクの毛髪上に分散させた毛髪セラム配合物のSEM画像。およそ0.25gのセラムを、0.35gの毛髪上に分散させた。未処理のものと比較して、全てのセラムサンプルは、毛髪の束をコーティングする。組換えシルクポリペプチドセラムのみが、滑らかなフィルムの領域、粗いフィルムの領域、及び粒子の領域によってマークされる異なる表面形態をもたらした。
【0209】
図3C:1%の組換えシルクタンパク質を含有するセラム配合物は、顕微鏡によって測定した際には明確に異なったが、レオロジーデータは、3つの配合物間の類似性を示した。振幅掃引は、線形粘弾性領域の同様の大きさ及び長さを示す(G’曲線を参照されたい)。更に、周波数掃引は、G’曲線の同様の大きさ及び長さを示す。このデータは、毛髪セラムが同様のゲル状構造特性を有し、レオロジー的に同様の性能を示す。
【0210】
図3D:毛髪セラム配合物に使用される成分の表(組換えシルクポリペプチド及びシリコーンを含まない)。
【0211】
実施例4:組換えシルクポリペプチドとシリコーンエラストマー成分とのレオロジー比較及び形態比較
方法:レオロジー測定を、2度/20mmの円錐及びプレートの形状を使用して、Kinexus Lab+のレオメーターを用いて行った。材料のG’及びG”を測定するために、周波数掃引を0.1%ひずみ速度で行った。開始周波数は100s-1であり、終了周波数は0.01s-1であった。10年ごとに3つのサンプルを採取した。粘度測定を、0.1s-1~1000s-1の剪断速度でサンプルを剪断することによって行った。全てのレオロジー及び粘度測定を22~27度で行った。組換えシルクタンパク質溶液(18Bシルクを含む)を、高剪断ミキサー中で粉末をDI水と混合することによって調製した。
【0212】
毛髪上の配合物の形態を評価するために、0.25gの配合物を、優しくマッサージしながら0.35gのヤクの毛髪上に均等に広げた。次いで、毛髪を、乾燥した感触が得られるまで200℃で5分間、熱風で乾燥させた。走査型電子顕微鏡(SEM)は、二次電子を介して材料の形態を評価するために、焦点電子ビームを使用した。電子ビームがラスタパターンで走査されて、1mm~10nm又は10X~100,000Xの倍率で、顕微鏡写真を収集した。SEM法は、低真空(1~10torr)を使用し、生体サンプルを脱水又はスパッタコーティングする必要を回避した。
【0213】
図4A:工業標準シリコーンエラストマーゲル(30%の乾燥固体)及び12%の組換えシルクポリペプチドのG’及びG”の比較。シリコーンエラストマー及び組換えシルクポリペプチドは、非常に異なる分子構造、架橋化学、及び巨大分子形態を有するにもかかわらず、両方の材料は、同様の流動学的特性を示す。これは、レオロジー周波数掃引における平坦なG’曲線によって表される。この平坦な曲線は、両方の材料が構造化されたゲルであることを示す。粘度曲線では、両方の材料は、ポリマー溶液及び懸濁液に典型的な同様の非ニュートン的剪断薄化プロファイルを示す。
【0214】
図4B:ヤクの毛髪上に分散させた純粋な組換えシルクポリペプチド及びシリコーンエラストマーのSEM画像。およそ0.25gのセラムを、0.35gの毛髪上に分散させた。未処理のものと比較して、組換えシルクポリペプチド及びシリコーンエラストマーの両方が、毛幹上に目に見えるフィルムを堆積させた。シリコーンエラストマーフィルムは、比較的滑らかである。組換えシルクポリペプチドフィルムは、その表面から突出する目に見えるピット及び粒子を有するより粗い表面を特徴とする。
【0215】
この実施例4に示す粘度測定値はまた、以下のように、希釈剤中の市販のシリコーンエラストマー及び水中の18B組換えシルクポリペプチドについても得られた。1)Specsil K-13(Innospec、Englewood, Colorado)、シクロペンタシロキサン中10%w/w、2)Silmer G-162-F5(Siltech、Toronto, Ontario)、ジメチコン中15%w/w、3)CHT- beausilゲル8055(CHT、Tubingen, Germany)、ジメチコン中5%w/w、4)Dowsil HMW 2220非イオン性エマルジョン(Dow、Midland, Michigan)、C12-13 Pareth-23及びC12-13 Pareth3中、60%w/w、及び5)18B組換えシルクポリペプチド(水中の19%組換えシルクポリペプチド、水中の22%組換えシルクポリペプチド、水中の25%シルクポリペプチド、及び水中の27%シルクポリペプチド)。試験された全ての材料は、ポリマー溶液及び懸濁液に典型的な同様の非ニュートン的剪断薄化プロファイルを示した。
【0216】
CHT-beausilゲル8055、ジメチコン中5%w/wと水中27%の18Bの組換えシルクポリペプチドとのG’及びG”の比較も行った。両方の材料は、1~100Hzの角周波数範囲にわたって30Pa~最大16000Paの大きさの範囲でG’がG”を上回る同様の曲線を示した。
【0217】
実施例5:組換えシルクポリペプチドを含有する洗い流さないヘアスタイリングセラムのスタイル保持試験
処理を行っていない毛髪(ミディアムブラウン、3g、幅1インチ、長さ8インチ、ホットメルトで密封)の毛髪見本を、1gの洗い流さない毛髪セラムで処理した。洗い流さない毛髪セラムは、セラムベースのみ、又は1%のシルクポリペプチド、1%のケラチン成分、若しくは5%のシリコーンエラストマー成分のいずれかを有するセラムベースを含有した。セラムベースの配合物を
図3Dに概説する。毛髪見本を直径3/4インチのカーラーにしっかりと巻き上げ、幅1cmのマーキングのあるグリッドボードに取り付けた。サンプルをオーブン内で50℃、70%の湿度で8時間インキュベートした。8時間後、サンプルをオーブンから取り出し、室温に冷却し、巻きをほどいた。
【0218】
図5は、上記のようなカール保持試験様式に曝露した後の毛髪の見本の画像を示す。組換えシルクポリペプチドサンプルは、他の全てのサンプルよりも優れており、改善されたカール保持を有した。カール保持試験様式に曝露した後の毛髪の見本の長さの定量化を表2に示す。組換えシルクポリペプチドは、ベースセラムよりも35%高いカール保持、及びシリコーンエラストマーサンプルよりも28%高いカール保持を示した。
【0219】
【0220】
実施例6:洗い流すシャンプー配合物
ある範囲(0.05%、0.5%、及び1%)のシルクポリペプチドを含有する洗い流すシャンプー配合物を開発した。これらの配合物を、プラセボ(シルクポリペプチドを除去し、より多くの水を添加することによって差をカバーした配合物)と比較した。シリコーンエラストマーバージョンも作製した-シルクポリペプチドを除外し、3%の負荷レベルでシリコーンエラストマーに置き換えた(質量の差は、より少ない水を添加することによって補った)。
【0221】
シャンプー配合物を、実施例3に概説される標準的技法と同様に調製した。この配合物には、粉末形態の組換えシルクポリペプチドを使用し、およそ60%の固体を有するシリコーンエラストマー成分を使用した。ある範囲の負荷レベルを有する配合物中の成分(シルクポリペプチド又はシリコーンエラストマーを含まない)のリストを
図6に提供する。
【0222】
粘度及びレオロジーを、実施例3の方法を使用して評価した。配合物の粘度曲線は、全ての配合物が同様の剪断薄化挙動を示したことを示した。
図9A及び9Bは、1~1000s
-1の剪断速度の範囲にわたって、シルクポリペプチドサンプルがプラセボから34%を超えて逸脱しなかったことを示した。配合物のレオロジー曲線は、全ての場合において、配合物が同様の形状を示し、G’がG”を上回ることを示した。
図10A及び10Bは、0.1Hz~10Hzの角周波数の範囲にわたって、シルクポリペプチドがプラセボからG’について31%を超え、G”について19%を超えて逸脱することがないことを示したレオロジー曲線データ点の表を含む。本明細書に記載のようにシルクポリペプチドの包含は、シャンプープラセボと比較して、レオロジープロファイルを顕著には変化させなかった。
【0223】
光学顕微鏡検査を、実施例3の方法を使用して評価した。シルクポリペプチドは、0.05%の負荷レベルで視覚的に検出することができる。
【0224】
スプリットヘッド評価では、頭部の各側面を濡らし、シャンプーサンプル2gを毛髪に約45秒間マッサージした。毛髪を3分間すすいだ。毛髪を梳き、次いで5~10分間ブロー乾燥させた。0.05%のシルクポリペプチド負荷レベルは、スタイル制御の点で、シリコーンエラストマーサンプルと同様の性能を示した。シルクポリペプチド濃度が増加するにつれて、シルクポリペプチドサンプルは、スタイル制御についてシリコーンエラストマーよりも優れていた。
【0225】
様々な製品がどのように毛幹上に堆積するのかのSEM画像が得られた。およそ0.25gのシャンプーを0.35gの毛髪上に分散させ、約45秒間マッサージした。次いで、DI水で45秒間毛髪をすすいだ。毛髪の見本を周囲温度/湿度で24時間乾燥させた。実施例3の方法を使用して、サンプルをSEMで評価した。材料(シルクタンパク質 対 シリコーンエラストマー配合物)が毛幹の表面にどのように影響するかについて顕著な差は検出されなかった。
【0226】
ある範囲の負荷レベルを有する配合物中の成分(シルクポリペプチド又はシリコーンエラストマーを含まない)のリスト。
【0227】
実施例7:洗い流さない皮膚セラム
ある範囲(0.1%、0.25%、0.5%、及び0.75%)のシルクポリペプチドを含有する洗い流さない皮膚セラム配合物を開発した。これらの配合物を、プラセボ(シルクポリペプチドを除去し、より多くの水を添加することによって差をカバーした配合物)と比較した。シリコーンエラストマーバージョンも作製した-シルクポリペプチドを除外し、0.75%の負荷レベルでシリコーンエラストマーに置き換えた(質量の差は、より少ない水を添加することによって補った)。
【0228】
皮膚セラム配合物を、実施例1に概説される標準的技法と同様に調製した。この配合物には、粉末形態の組換えシルクポリペプチドを使用し、およそ15%の固体を有するシリコーンエラストマー成分を使用した。ある範囲の負荷レベルを有する配合物中の成分(シルクポリペプチド又はシリコーンエラストマーを含まない)のリストを
図7に提供する。
【0229】
粘度及びレオロジーを、実施例3の方法を使用して評価した。配合物の粘度曲線は、全ての配合物が同様の剪断薄化挙動を有したことを示した。
図11は、1~100s
-1の剪断速度の範囲にわたって、シルクポリペプチドサンプルがプラセボから最大137%逸脱し、粘度の顕著かつ有益な増加を表すことを示した粘度曲線データ点の表である。しかしながら、G’及びG”曲線の形状は、本開示の組成物とプラセボとの間で実質的に同様のままであることが観察された。
【0230】
光学顕微鏡検査を、実施例3の方法を使用して評価した。シルクポリペプチドは、0.1%の負荷レベルで視覚的に検出することができる。
【0231】
実施例8:洗い流さない皮膚プライマー
2%のシルクポリペプチドを含有する洗い流さない皮膚プライマー配合物を開発した。配合物を、プラセボ(シルクポリペプチドを除去し、より多くの水を添加することによって差をカバーした配合物)と比較した。シリコーンエラストマーバージョンも作製した-シルクポリペプチドを除外し、7.5%の負荷レベルでシリコーンエラストマーに置き換えた(質量の差は、より少ないカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを添加することによって補った)。
【0232】
皮膚プライマー配合物を、実施例1に概説される標準的技法と同様に調製した。この配合物には、粉末形態の組換えシルクポリペプチドを使用し、およそ15%の固体を有するシリコーンエラストマー成分を使用した。
【0233】
図12A及び12Bを参照すると、粘度曲線データ点は、1~100s
-1の剪断速度の範囲にわたって、シルクポリペプチドサンプルがプラセボから35%を超えて逸脱しなかったことを示した。
【0234】
他の実施形態
使用されている言葉は、限定ではなく説明の言葉であり、そのより広範な態様における本発明の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく、添付の態様の範疇内で変更がなされ得ることを理解されたい。
【0235】
本発明は、いくつかの記載された実施形態に関して、ある程度の長さで、かつある程度の特殊性とともに記載されているが、任意のそのような詳細若しくは実施形態、又は任意の特定の実施形態に限定されるべきであることを意図するものではないが、先行技術を考慮して、そのような態様の可能な限り広範な解釈を提供し、したがって、本発明の意図された範囲を効果的に包含するように、添付の態様に対する参照と解釈されるべきである。
【0236】
本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、セクション見出し、材料、方法、及び実施例は例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0237】
態様
1.組換えシルクポリペプチド及び溶媒を含む、組成物。
2.組成物が、化粧品又はスキンケア製品である、態様1に記載の組成物。
3.組成物が、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.01%未満、0.005%未満、又は0.001%未満のシリコーンエラストマーを含む、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
4.組成物が、シリコーンエラストマーを含まない、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
5.組成物が、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%の組換えシルクポリペプチドを含む、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
6.組成物が、化粧品又はスキンケア製品である、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
7.組換えシルクポリペプチドの長さが、100アミノ酸より長い、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
8.組換えシルクポリペプチドが、半結晶状態へと自己組織化されている、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
9.組換えシルクポリペプチドの結晶部分が、ベータ-シート架橋を特徴とする、態様8に記載の組成物。
10.組換えシルクが、3~8のpHでの水、他の極性及び非極性溶媒(例えば、ヘキサノール、ヘキサン、ベンゼン)、油、ワックス、界面活性剤(例えば、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性)からなる群から選択される溶媒中で乏しい溶解度を有する、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
11.組換えシルクが、3~8のpHでの水、他の極性及び非極性溶媒(ヘキサノール、ヘキサン、ベンゼン)、油、ワックス、界面活性剤(アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性)からなる群から選択される溶媒中で不均一分散体を形成する、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
12.組換えシルクポリペプチドが、ランダムに構造化されたゲルの一部を形成する、態様1~7のいずれか1つに記載の組成物。
13.ゲルが、保存剤又はキレート剤を含む、態様12に記載の組成物。
14.組換えシルクポリペプチドが、中空粉末の一部を形成する、態様1~7のいずれか1つに記載の組成物。
15.粉末が、保存剤又はキレート剤を含む、態様12に記載の組成物。
16.中空粉末が、溶媒中に懸濁されている、態様14又は15に記載の組成物。
17.溶媒が、水性溶媒、極性溶媒、非極性溶媒、油溶媒、ワックス溶媒、又は界面活性剤からなる群から選択される、態様16に記載の組成物。
18.溶媒が、保存剤又はキレート剤を含む、態様16又は17に記載の組成物。
19.0.01~0.5%の組換えシルクポリペプチド、0.05%~5%の組換えシルクポリペプチド、0.5%~5%の組換えシルクポリペプチド、1%~5%の組換えシルクポリペプチド、又は5%~20%の組換えシルクポリペプチドを含む、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
20.組換えシルクポリペプチドが、組成物において従来使用されるシリコーンエラストマーを置き換える、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
21.組換えシルクポリペプチドが、1:1~10:1のシリコンエラストマー:シルクポリペプチド比で、シリコーンエラストマーを置き換える、態様20に記載の組成物。
22.シルクのような滑らかでさらさらの感触、皮膚のテカリの減少、毛髪の輝きの増強、鮮やかで効果的な顔料の送達、容易な展延性、迅速な吸収時間、マット化、しわを隠す効果、毛髪のスタイル保持、毛髪の耐熱性、UV及び汚染防御、並びに粘度の増加からなる群から選択される性能特徴を含む、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
23.組換えシルクポリペプチドが、配列番号2878を含む、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
24.SPF配合物、カラー化粧品、又は毛髪セラムである、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
25.水を含む、態様1~24のいずれか1つに記載の組成物。
26.水、グリセリン、及び安息香酸ナトリウムを含む、態様1~24のいずれか1つに記載の組成物。
27.酸化亜鉛、アロエベラ(Aloe Barbadensis)葉汁、水、シア(Butyrospermum Parkii)ナッツ抽出物、チャノキ(Camellia Sinesis)(緑茶)葉抽出物、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリロイルグリセリン/セバシン酸コポリマー、カプリリル/カプリルグルコシド、セテアリルアルコール、セテアリルグルコシド、ココカプレート/カプリレート、ココグルコシド、ココナッツアルカン、コハク酸ジヘプチル、グリチルリチン酸二カリウム、エチルヘキシルグリセリン、グリセリン、加水分解ホホバエステル、イソステアリン酸、レシチン、フェノキシエタノール、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、ポリヒドロキシステアリン酸、ソルビン酸カリウム、リンゴ(Pyrus Malus)果実抽出物、スクレロチウムガム、安息香酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、スクワラン、トコフェロール、キサンタンガム、又はそれらの任意の組み合わせを含む、態様1~24のいずれか1つに記載の組成物。
28.組水、ブラシカグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、セテアリルアルコール、CI77491、キュウリ抽出物、グルコノラクトン、グリセリン、ステアリン酸グリセル、ヒマワリ(helianthus annuus)種子ワックス、水素化ポリシクロペンタジエン、酸化鉄、ホホバエステル、ムラサキ(lithospermum erythorhzon)根抽出物、ポリアクリレートクロスポリマー-y、ポリグリセリン-3、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、シリカ、ホホバ(simmondsia chinensis)種子油、安息香酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、トコフェロール、又はそれらの任意の組み合わせを含む、態様1~24のいずれか1つに記載の組成物。
29.水、ポリアクリレートクロスポリマー-6、グリセリン、クエン酸、グルコノラクトン、安息香酸ナトリウム、塩化セトリモニウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む、態様1~24のいずれか1つに記載の組成物。
30.溶媒が、水性溶媒、アルコール、油性溶媒、又はシリコーンを含む、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
31.溶媒が、水、グリセリン、脱イオン水、オリーブ油、及びペンチレングリコールからなる群から選択される、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
32.皮膚を洗浄する、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
33.染料を更に含む、上記の態様のいずれか1つに記載の組成物。
【配列表】
【国際調査報告】