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特表2024-540213リチウム及びナトリウム電池における新規導電性添加剤
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  • 特表-リチウム及びナトリウム電池における新規導電性添加剤 図1A
  • 特表-リチウム及びナトリウム電池における新規導電性添加剤 図1B
  • 特表-リチウム及びナトリウム電池における新規導電性添加剤 図2
  • 特表-リチウム及びナトリウム電池における新規導電性添加剤 図3
  • 特表-リチウム及びナトリウム電池における新規導電性添加剤 図4
  • 特表-リチウム及びナトリウム電池における新規導電性添加剤 図5
  • 特表-リチウム及びナトリウム電池における新規導電性添加剤 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】リチウム及びナトリウム電池における新規導電性添加剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20241024BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241024BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241024BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241024BHJP
   C01B 32/00 20170101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/36 A
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 B
C01B32/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024525832
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2022079747
(87)【国際公開番号】W WO2023072917
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21204834.2
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524160154
【氏名又は名称】カーボンエックス・アイピー・10・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】CARBONX IP 10 B.V.
【住所又は居所原語表記】Rembrandt Tower,35th Floor,Amstelplein 1,1096 HA Amsterdam,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ラールテン、ルトガー・アレクサンダー・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ソルディ、ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】テン・ダム、イェルン
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AD23
4G146AD25
4G146BA04
4G146CB19
4G146CB35
5H050AA02
5H050BA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050FA16
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA06
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、リチウム又はナトリウム電池中の導電性添加剤としての、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの使用に属する。該炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、0.1~20重量%の量で添加される場合、リチウム若しくはナトリウム電池のカソードに、及び/又は0.1~10重量%の量で添加される場合、リチウム若しくはナトリウム電池のアノードに、有益に使用され得ることが見出されている。利益としては、高い寿命(長期間のサイクル動作にわたる安定性)と、高充電及び放電速度と、製造及び使用時に復元性があることとが挙げられる。多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、多くの技術領域、例えば、スマートフォン、ラップトップ、並びに電気及びハイブリッド車のリチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード中の導電性添加剤として使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池のアノード及び/又はカソード中の導電性添加剤材料としての、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの使用。
【請求項2】
前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記カソードの総質量の0.1~20重量%、好ましくは0.1重量%超、20重量%未満を示し、及び/又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記アノードの総質量の0.1~10重量%、好ましくは0.1重量%超、10重量%未満を示す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記炭素ネットワークが結晶性炭素ナノ繊維を備える、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記炭素ナノ繊維の平均繊維長さが30~10,000nmである、請求項1から3の何れか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有し、好ましくは、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、請求項1から4の何れか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ及びカムコーダに、無停電電源装置(UPS)として、発電装置のエネルギー貯蔵として、医療及び通信システムに、並びに電気及び/又はハイブリッド車に好適である、請求項1から5の何れか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記充電式リチウム電池がリチウム-硫黄(Li-S)電池である、請求項1から6の何れか一項に記載の使用。
【請求項8】
導電性添加剤材料として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、好ましくは、リチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池のアノード及び/又はカソードである、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項9】
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記カソードの総質量の0.1~20重量%、好ましくは0.1重量%超、20重量%未満を示し、及び/又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記アノードの総質量の0.1~10重量%、好ましくは0.1重量%超、10重量%未満を示す、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項10】
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有し、好ましくは、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、請求項8又は9に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項11】
前記アノード及び/又はカソードがまた、0.1~10重量%のバインダを備える、請求項8から10の何れか一項に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項12】
前記カソード及び/又はアノードがまた、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の、導電性カーボンブラック、Super P、アセチレンブラック、炭素ナノ繊維及びカーボンナノチューブから選択される1種又は複数のさらなる導電性添加剤を備える、請求項8から11の何れか一項に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項13】
前記カソードが、導電性添加剤材料として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、硫黄複合体を備える、請求項8から12の何れか一項に記載のリチウム電池カソード。
【請求項14】
電池がリチウム電池であり、前記アノードが、90~99.9重量%の追加の活物質を備え、前記追加の活物質が、黒鉛、ケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)又はこれらの組み合わせである、請求項9から12の何れか一項に記載の電池アノード。
【請求項15】
前記追加の活物質がケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)又はこれらの組み合わせであり、ケイ素、前記ケイ素系化合物(SiO2)若しくはこれらの組み合わせが、前記アノード中の前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークと混合されているか、又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、ケイ素、前記ケイ素系化合物(SiO2)若しくはこれらの組み合わせでコーティングされている、請求項14に記載の電池アノード。
【請求項16】
請求項8から15の何れか一項に記載のアノード及び/又はカソードを備える充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池であって、前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、好ましくはリチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池である、充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池。
【請求項17】
前記充電式の電池が、スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ及びカムコーダに、無停電電源装置(UPS)として、発電装置のエネルギー貯蔵として、医療及び通信システムに、並びに電気及び/又はハイブリッド車に備えられ、好適である、請求項16に記載の充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池。
【請求項18】
前記炭素ネットワークが、反応ゾーン3bと終結ゾーン3cとを含有する反応器3において、結晶性炭素ネットワークeを生成するために、金属触媒ナノ粒子を備える油中水型又は両連続型のマイクロエマルションcを、600℃超、好ましくは700℃超、より好ましくは900℃超、いっそうより好ましくは1000℃超、より好ましくは1100℃超、好ましくは最高3000℃、より好ましくは最高2500℃、最も好ましくは最高2000℃の温度における、前記反応ゾーン3bに注入することと、これらのネットワークeを前記終結ゾーン3cに移送することと、前記終結ゾーンにおいて、水dの中に吹き付けることにより、結晶性炭素ネットワークの形成をクエンチ又は停止することとによって、結晶性炭素ネットワークを生成するためのプロセスによって得られる、請求項1から7の何れか一項に記載の炭素ネットワークの使用、請求項8から15の何れか一項に記載のリチウム電池若しくはナトリウム電池のアノード及び/若しくはカソード、又は請求項16若しくは17に記載の充電式リチウム電池若しくは充電式ナトリウム電池。
【請求項19】
請求項8から15の何れか一項に記載のリチウム電池若しくはナトリウム電池のアノード及び/若しくはカソード、又は請求項16若しくは17に記載の充電式リチウム電池若しくは充電式ナトリウム電池を備える電池を動力とするデバイスであって、前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、好ましくはリチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池である、電池を動力とするデバイス。
【請求項20】
前記デバイスがスマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ、カムコーダ、医療及び通信システム、無停電電源装置(UPS)、発電装置のエネルギー貯蔵デバイス、又は電気及び/若しくはハイブリッド車である、請求項19に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム及びナトリウム電池の分野内にある。特に、本発明は、充電式のリチウム及びナトリウム電池のアノード及び/又はカソードにおける、導電性添加剤に関する。本発明は、好ましくはナトリウムイオン及びリチウムイオン電池に、最も好ましくは(リチウム-硫黄電池を含む)リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
利用可能な種々の種類の電池があるが、今日、リチウムは、負極材料について第一選択である。その理由は、例えば亜鉛及び鉛の比容量よりも遥かに高い、リチウムの比容量にある。リチウムは、高いエネルギー及び出力密度を有する、最も軽く、最も電気的に陽性の金属である。リチウム電池又は「リチウム二次電池」の需要は、とりわけ、携帯用電子デバイス、例えばスマートフォン又はラップトップ(それらの液晶ディスプレイ(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)を含む)のための動力源、発電装置の(すなわち、余剰の風力及び太陽光再生可能エネルギーからの)エネルギー貯蔵、無停電電源装置(UPS)、並びに電気及びハイブリッド車のモータを駆動するための動力源として、増加し続けている。
【0003】
リチウム電池は、最も広く使用されている動力電池であるが、リチウム電池の生産は、リチウム資源の不足の増加、上流材料の価格上昇、及び低い再利用率などの大きな難題に面している。リチウム電池のこれらの難題を克服するために、正極と負極との間のナトリウムイオンのインターカレーションプロセスを利用したナトリウム電池が、堅調な代替選択肢となっている。ナトリウム電池の利点は、ナトリウム資源の埋蔵量が、リチウムの埋蔵量よりも遥かに豊富であることと、その分布がより広範囲にわたることと、ナトリウムのコストがリチウムのコストよりも遥かに低いことであり、これらの理由のため、ナトリウム電池は、低いクーロン効率及び乏しいレート容量などの課題が克服されるか、又は満足のいく均衡点まで縮小される限り、リチウム電池に置きかわる潜在性を有する。
【0004】
リチウム及びナトリウム電池は、典型的には、4つの主要な構成要素:カソードと、アノードと、セパレータと、電解質とから構成される。電解質は、これを通じて電極に、及び電極からリチウムイオンが輸送され得る、導電性媒体としての役割を果たす。電解質は、固体状態又は液体の何れであってもよい。本発明の文脈において、「リチウム電池」又は「ナトリウム電池」には、固体状態(固体電解質を用いた)電池と液体状態(液体電解質を用いた)電池の両方を含む。本発明の文脈において、「リチウムイオン電池」及び「ナトリウムイオン電池」という用語は、液体電解質を用いた電池技術のために確保される。
【0005】
リチウム電池のカソードは、概して、リチウム-金属-酸化物(例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2))を備える。リチウム電池のカソードはまた、硫黄又は硫黄複合体を備え得る。リチウム-硫黄(Li-S)電池は、高い理論容量と比エネルギーを有するという利点を有するため、当技術分野においてますます関心を集めている。しかしながら、硫黄は、低い導電率を有する。さらに、Li-S電池は、ポリスルフィド「シャトル効果」として一般に知られるプロセスに起因して、容易に劣化することが知られる。リチウム電池のアノードにおいて活物質として一般に使用される材料は、インターカレーション化合物と、合金と、変換化合物(遷移金属酸化物)とである。リチウム電池のアノードにおいて使用されるインターカレーション化合物のうち、最も一般的なものは黒鉛である。リチウム電池のアノードにおいて使用される別の一般的な化合物は、ケイ素又はケイ素系化合物である。概して、ケイ素材料は、黒鉛と比較して高い比容量を有する。全般的に、これまで黒鉛は、商業用リチウム電池において優勢なインターカレーションアノード材料のままであるが、これは、黒鉛の性能が安全であり、多くの携帯用動力用途に十分なエネルギー密度とともに、低い作用電位と、低いコストと、良好なサイクル寿命とを提供するためである。しかしながら、黒鉛アノードを用いた電池は、通常、リチウムイオンの炭素材料への拡散速度が比較的遅いこと(10-12cm2/sから10-6cm2/sの間)に起因して、中程度の出力密度を有し、この特性によって、最適以下の電子伝導性と合わせて、黒鉛単独の充電/放電速度が最適でなくなり、したがって、電池の長い充電及び放電時間をもたらす。
【0006】
電池の充電/放電速度を改善するために、導電性添加剤が黒鉛に伝統的に添加され、アノードの電子伝導性が改善される(Roselinら、「Recent Advances and Perspectives of Carbon-Based Nanostructures as Anode Materials for Li-ion Batteries」、Materials 2019、12、1229)。これらの添加剤は、導電性浸透ネットワークを構築して、電極の電気伝導性を上昇させ、保ち、より迅速な充電及び放電を可能にする。加えて、導電性添加剤は電解質を吸収及び保持し、リチウムイオンと活物質との間を密接に接触させる。リチウム電池のための導電性添加剤は、一般に、カーボンブラック、Super P、アセチレンブラック、カーボンナノ繊維及びカーボンナノチューブから選択されるカーボンナノ材料であり、すべて、低重量と、高化学的慣性と、高比表面積とを示す(Zhang Qら、「Carbon nanomaterials used as conductive additives in lithium ion batteries」、Recent Pat Nanotechnol.、2010 Jun;4(2):100~10)。
【0007】
カーボンブラックは、アノードにおける電気化学的活性黒鉛、又はカソードにおける金属酸化物の何れかへの頻用導電性添加剤であり、電子伝導性を改善するため、それによって、リチウム電池の充電及び放電速度を改善するために添加される。実際に、リチウム電池複合体電極は、一般に、調合物中に1~10重量%のカーボンブラック添加剤を組み込む。それでも、サーマルカーボンブラックは、低い電気伝導率をもたらす低い結晶性と、高い脆性と、バッチ間で不均一な特性をもたらす球状粒子の広い粒子サイズ分布とを示す。さらに、カーボンブラックは、特に4.2Vよりも高い電圧において、非常に有機電解質に反応性であり得(米国特許第9368798号)、必然的に安全上のリスクを有する。加えて、Liuら(Liu Zら、「Effects of conducting carbon on the electrochemical performance of LiCO2 and LiMn24 cathodes」、J.Power Sources 2001;97~8:361~5)は、LiCoO2及びLiMn24カソードの電気化学的性能に対するカーボンブラックの効果を調査し、LiCoO2又はLiMn24の性能不良は、主として、酸化物とカーボンブラックとの間の粒子接触が悪化することによって起こる、不完全な充電から生じることを見出した。
【0008】
米国特許第7550232号は、リチウム電池のアノードにおける、カーボンナノチューブ(CNT)と黒鉛との使用を開示している。しかしながら、米国特許第7550232号は、充電及び放電速度の改善を示しておらず、リチウム電池のカソードのための導電性添加剤を提供しない。
【0009】
ナトリウム電池は、それ自体の難題を提起する。例えば、ナトリウムイオン(1.02Å)は、リチウムイオン(0.69Å)よりも55%大きいため、ナトリウムイオンをアノードに可逆的に収容するのはより困難である。実際に、ナトリウム電池において現在までに使用されている黒鉛アノードは、ナトリウムの吸収があまりに少ないため、ナトリウム電池が強力ではなくなることから、リチウム電池においてアノードとして商業的に使用されている黒鉛材料は、ナトリウム電池において許容できる性能を達成できていない。アノード材料としての黒鉛の限界を克服するために、代わりのアノード材料、例えば、赤リン(P)が使用されている。しかしながら、(1)本来の赤Pは非常に低い電気伝導率を有する(約10-14Scm-1);(2)ナトリウム化/脱ナトリウム化の間の大きな体積膨張によって、著しい容量減衰が起こり得る(Wangら、「Influence of Conductive additives on the stability of red phosphorus-carbon anodes for sodium-ion batteries」、Scientific Reports 2019.9:946)。これらのアノード材料の合成に導電性添加剤を導入することで、これらの短所を効果的に克服することができた。
【0010】
ナトリウム電池の場合もリチウム電池の場合も、当技術分野において、リチウム又はナトリウム電池の充電及び放電速度を改善することと、寿命を増大させることと、電池セルの内部抵抗を低下させることと、電解質を保持することとに役に立ち得る、高い導電性を有する導電性添加剤材料を見出すことが依然として必要である。より具体的には、迅速な充電及び放電速度を有しながら、安全な製造及び使用を可能にする物性を有するリチウム又はナトリウム電池を得るために、アノード及びカソードにおける導電性添加剤材料の特性をさらに開発する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、安全な製造と使用とを可能にする物性を有しながら、当技術分野における上記目標、特に、寿命(長期間のサイクル動作にわたる安定性)と、迅速な充電及び放電速度とをすべて実現できる範囲で、既存の導電性添加剤、例えば、リチウム又はナトリウム電池において現在使用されているカーボンブラックを置きかえるために、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが有益に使用され得ることを見出した。
【0012】
有利なことに、本発明者らは、本発明による導電性添加剤としての炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、アノード及び/又はカソードが、電子伝導性を改善することによって、リチウム及びナトリウム電池の寿命(長期間のサイクル動作にわたる安定性)に寄与し得ることを見出した;ここの図3図5及び表4が参照される。本発明による炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの電子伝導性は高いため、充電/放電プロセスの可逆性も強化される、ここの図3及び表4が参照される。重大なことに、本発明者らはまた、リチウム及びナトリウム電池のアノード及び/又はカソードへの添加剤として、本発明による炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを添加することによって、充電及び放電速度が改善され得ることを見出した;ここの図4及び図6が参照される。
【0013】
如何なる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、これらの有利な特性は、リチウム又はナトリウムイオンのインターカレーションの速度を支援し得る、結晶性と、接近可能な多孔性と、フィラメント長さと直径との比と、d間隔とに起因する、ネットワークの固有の電子伝導性と開放細孔構造とに帰属し得ると考えている。加えて、本発明者らは、リチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードへの添加剤としての、本発明による炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの使用が、高い充電/放電速度を可能にし、したがって、電池に低減した充電時間を提供することを見出した。特に、数時間ではなく数分で充電される電池の製造を可能にする。
【0014】
好まれる態様では、これらの多孔質炭素ネットワークは粒子内多孔質ネットワークを形成し、ここにおいて、炭素ナノ繊維はネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、ここにおいて、ネットワーク内の細孔は、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、炭素ナノ繊維は、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有する。多孔質ネットワークは、好ましくは、0.340~0.5nm、より好ましくは0.35~0.45nm、いっそうより好ましくは0.355~0.375nmのd間隔によって特徴付けられる。d間隔は、XRDによって測定される。重大なことに、このd間隔は、黒鉛のd間隔(0.335nm)よりも大きく、リチウム及びナトリウムイオンのインターカレーションを円滑化する。ナトリウムイオンの大きな体積のため、この大きなd間隔は、ナトリウム電池におけるナトリウムイオンのインターカレーションに特に有益である。
【0015】
したがって、本発明は、リチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードへの添加剤としての、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの使用;添加剤としてこれらの炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、アノード及び/又はカソード;並びにこれらのアノード及び/又はカソードを備えるリチウム又はナトリウム電池に属する。本発明は、最も広い意味において、固体状態リチウム及びナトリウム電池にも関し、本発明は、好ましくは、ナトリウムイオン又はリチウムイオン電池、より好ましくはリチウムイオン電池に関する。
【0016】
さらに、本発明者らは、本発明による炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、リチウム-硫黄(Li-S)電池のカソードにおいて、導電性の足場を提供し、硫黄ホスト材料としての働きをし得ることを見出した。有利なことに、本発明のネットワークは、「シャトル効果」を緩和することができる。「シャトル効果」は、Li-S電池のカソードにおいてLi2xが形成され、アノードに拡散し、ここでポリスルフィドに還元され、カソードに戻って拡散するプロセスである。この連続プロセスは、活物質のカソードからの連続的漏出をもたらす。「シャトル効果」は、Li-S電池の放電中の電池の劣化と、大きな硫黄体積膨張との主要な理由である。多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、官能化表面を有する;表2が参照され、ここにおいて、ネットワークのpHは、わずかに酸性から中性であることが示される(5.0~7.0)。言い換えれば、表面は、表面の疎水的性質(炭素に典型的である)をより親水的性質に変化させる基を備える。炭素ネットワークの表面は、カルボキシル基、ヒドロキシ基及びフェノール性物質を備える。これらの基は、表面にいくらかの極性を加え、官能化炭素ネットワークが埋設された化合物材料の特性を変化させ得る。理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明のネットワークは、表面基の官能化によって、「シャトル効果」を緩和できると考えられる。親水性官能化は、炭素により強く結合したポリスルフィドをもたらし、これらのポリスルフィドがアノードへ移動することを防止する。そのため、さらなる側面では、本発明は、Li-S電池のカソードへの添加剤としての、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの使用に属する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】反応器3の軸に沿って、燃焼ゾーン3aと、反応ゾーン3bと、終結ゾーン3cとを含有し、本発明による結晶性炭素ネットワークeを得るために、燃料aを酸素含有ガスbの中で燃やすこと、及び廃棄ガスa1を燃焼ゾーン3aから反応ゾーン3bへ通過させることにより、燃焼ゾーン内に高温廃棄ガスa1の流れを生成することと、高温廃棄ガスを含有する反応ゾーン3b内で単相エマルションcを吹き付ける(噴霧する)ことと、該エマルションを高温で炭化させることと、水dを吹き付けることにより、終結ゾーン3c内で反応をクエンチ又は停止することとによる、本発明に準拠した連続炉カーボンブラック生成プロセスの模式図。
図1B】単相エマルションcが、反応器3の上部におけるノズル4を通して、高温の反応ゾーン3bに噴霧され、高温の該エマルションが、反応ゾーン3bにおいて炭化され、反応器の底部において、結晶性炭素ネットワークeが収集される、セミバッチ式カーボンブラック生成プロセスの模式図。加えて、酸素レベル制御及び/又は消尽のための不活性ガスf、好ましくは窒素を添加するために、並びに炭素含有ガスg、好ましくはアセチレン又はエチレンを反応器に導入するために、上部から反応器に入る2つのガス注入口が存在する。
図2】本発明の態様に準拠した炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備えるアノード5及び/又はカソード6を含む、リチウムイオン又はナトリウムイオン電池としてここに例示される、本発明によるリチウム又はナトリウム電池の模式側面図。リチウムイオン又はナトリウムイオン電池はまた、アノード及びカソードの間のセパレータ7と、電解質8とを備える。アノードからカソードへ向かう電子の放出(酸化)、及びリチウム又はナトリウムイオンの放出が、放電サイクルの間に起こる。
図3】本発明による導電性添加剤としての炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備えるリチウムイオン電池アノードの比容量を示すグラフ。
図4】本発明による導電性添加剤としての炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備えるリチウムイオン電池アノードの種々のCレートにおけるサイクル能を示すグラフ。容量対サイクル、及び異なるCレートにおける一連のサイクル。
図5】本発明による導電性添加剤としての炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウムイオン電池アノードの比容量を示すグラフ。
図6】本発明による導電性添加剤としての炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウムイオン電池アノードの種々のCレートにおけるサイクル能を示すグラフ。容量対サイクル、及び異なるCレートにおける一連のサイクル。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.充電式リチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード中の導電性添加剤材料としての、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの使用。
【0019】
2.該炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、カソードの総質量の0.1~20重量%、好ましくは0.1重量%超、20重量%未満を示し、及び/又は該炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、アノードの総質量の0.1~10重量%、好ましくは0.1重量%超、10重量%未満を示す、態様1に記載の使用。
【0020】
3.炭素ネットワークが結晶性炭素ナノ繊維を備える、態様1又は2に記載の使用。
【0021】
4.炭素ナノ繊維の平均繊維長さが30~10,000nmである、先行する態様の何れか1つに記載の使用。
【0022】
5.炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、ここにおいて、炭素ナノ繊維がネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、ここにおいて、ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、ここにおいて、炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有し、好ましくは、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、先行する態様の何れか1つに記載の使用。
【0023】
6.リチウム又はナトリウム電池が、スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ及びカムコーダに、無停電電源装置(UPS)として、発電装置のエネルギー貯蔵として、医療及び通信システムに、並びに電気及び/又はハイブリッド車に好適である、先行する態様の何れか1つに記載の使用。
【0024】
7.導電性添加剤材料として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、好ましくは、リチウムイオン又はナトリウムイオン電池のアノード及び/又はカソードである、リチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【0025】
8.多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、ここにおいて、該炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、カソードの総質量の0.1~20重量%、好ましくは0.1重量%超、20重量%未満を示し、及び/又は該炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、アノードの総質量の0.1~10重量%、好ましくは0.1重量%超、10重量%未満を示す、リチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【0026】
9.炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、ここにおいて、炭素ナノ繊維がネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、ここにおいて、ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有し、好ましくは、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、態様7又は8に記載のリチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【0027】
10.アノード及び/又はカソードがまた、0.1~10重量%のバインダを備える、態様7~9の何れかに記載のリチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【0028】
11.カソード及び/又はアノードがまた、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の、導電性カーボンブラック、Super P、アセチレンブラック、炭素ナノ繊維及びカーボンナノチューブから選択される1種又は複数のさらなる導電性添加剤を備える、態様7~10の何れかに記載のリチウム又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【0029】
12.リチウム又はナトリウム電池が、好ましくはリチウムイオン又はナトリウムイオン電池である、態様7~11の何れか1つに記載のアノード及び/又はカソードを備える充電式リチウム又はナトリウム電池。
【0030】
13.該電池が、スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ及びカムコーダに、無停電電源装置(UPS)として、発電装置のエネルギー貯蔵として、医療及び通信システムに、並びに電気及び/又はハイブリッド車に備えられ、好適である、態様12に記載のリチウム又はナトリウム電池。
【0031】
14.炭素ネットワークが、反応ゾーン3bと終結ゾーン3cとを含有する反応器3において、結晶性炭素ネットワークeを生成するために、金属触媒ナノ粒子を備える油中水型又は両連続型のマイクロエマルションcを、600℃超、好ましくは700℃超、より好ましくは900℃超、いっそうより好ましくは1000℃超、より好ましくは1100℃超、好ましくは最高3000℃、より好ましくは最高2500℃、最も好ましくは最高2000℃の温度における、反応ゾーン3bに注入することと、これらのネットワークeを終結ゾーン3cに移送することと、終結ゾーンにおいて、水dの中に吹き付けることにより、結晶性炭素ネットワークの形成をクエンチ又は停止することとによって、結晶性炭素ネットワークを生成するためのプロセスによって得られる、態様1~6の何れか1つに記載の使用、態様7~11の何れか1つに記載のリチウム若しくはナトリウム電池アノード及び/若しくはカソード、又は態様12若しくは13に記載のリチウム若しくはナトリウム電池。
【0032】
15.態様7~11の何れか1つに記載のリチウム若しくはナトリウム電池のアノード及び/若しくはカソード、又は態様12若しくは13に記載のリチウム若しくはナトリウム電池を備え、リチウム又はナトリウム電池が、好ましくはリチウムイオン又はナトリウムイオン電池である、電池を動力とするデバイス。
【0033】
16.スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ、カムコーダ、医療及び通信システム、無停電電源装置(UPS)、発電装置のエネルギー貯蔵デバイス、又は電気及び/若しくはハイブリッド車である、態様15に記載のデバイス。
【0034】
17.リチウム電池がリチウム-硫黄(Li-S)電池である、態様1~6の何れか1つに記載の使用。
【0035】
18.カソードが、導電性添加剤材料として多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、硫黄複合体を備える、態様7~11の何れか1つに記載のリチウム電池カソード。
【0036】
19.電池がリチウム電池であり、ここにおいて、アノードが、90~99.9重量%の追加の活物質を備え、ここにおいて、追加の活物質が、黒鉛、ケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)又はこれらの組み合わせである、態様8~11の何れか1つに記載の電池アノード。
【0037】
20.追加の活物質がケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)又はこれらの組み合わせであり、ここにおいて、ケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)若しくはこれらの組み合わせが、アノード中の炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークと混合されているか、又は炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、ケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)若しくはこれらの組み合わせでコーティングされている、態様19に記載の電池アノード。
【0038】
以下は、リチウムイオン(Liイオン)電池によって例示される電池の動作原理を説明する、Roselin(Roselinら、「Recent Advances and Perspectives of Carbon-Based Nanostructures as Anode Materials for Li-ion Batteries」、Materials 2019、12、1229)からのコピーであり、その内容は参照によってここに組み込まれる。
【0039】
電池は、電気化学的酸化還元反応(レドックス反応)によって、化学エネルギーを電気エネルギーに変化させるデバイスである。このようなエネルギー変化を達成する本質的な電気化学的単位は、「セル」として知られる。電池は、相互接続されたセルの群を含有する。利用されるセルの数は、特定の用途に所望される容量と電圧とに依存する。指示される電圧と容量とのリチウムイオン電池を獲得するために、少数の電気化学セルが、配列によって並列に連動する。各セルは、次のパーツを含有する:放電中に電気化学的酸化が起こる、負端子(アノード);電気化学的還元が起こる、正端子(カソード);ある電極から別の電極へのイオンの輸送を促進する、電解質;電極間の電子的隔離を与える、セパレータ;及びその他のセルパーツを含有する、ケーシング。リチウムイオンセルは、アノードとして固体還元体と、カソードとして固体酸化体とを使用する。
【0040】
市販のLiイオン電池の大部分に使用されるカソード材料は、LiCoO2又はLiNiO2であり、アノード材料は炭素質である。セルの充電中、カソード材料はLiイオンを電解質に放出し、外場を適用することによって電子がカソードから取り出され、次いで、アノードに移送される。電荷を補償するLiイオンが、負極によって引き寄せられ、次いで、負極に挿入される。セルの放電中は、逆反応が起こる。すなわち、アノードが、インターカレーションされたLiイオンを電解質に供給し、電子を外部回路に提供する。カソードでは、電解質からLiイオンがインターカレーションし、外部回路から電子の充電を行う。一般的な炭素アノード材料は、黒鉛若しくはコークス型、又は組み合わせた両方であり、一般的なカソード材料としては、LiMn24、LiCoO2及びLiNiO2が挙げられる。電解質は、固体又は液体の何れかであり得る。液体電解質は、通常、Li塩と、エーテル、エステル及びカーボネートを含む様々な溶媒との非水性溶液である。セルの充電及び放電中にカソード及びアノードにおいて起こるセル反応は、次の通り(式(1)~(4))表される:
充電中
カソードにおいて:LiMO2→Li1-xMO2+xLi++xe- (1)
アノードにおいて:xLi++xe-+C→LixC (2)
放電中
カソードにおいて:Li1-xMO2+xLi++xe-→LiMO2 (3)
アノードにおいて:LixC→xLi++xe-+C (4)
電極を外部付加に接続すると、電子が外部回路を流れ、イオンが電解質を通って移動する。電荷の流れは、化学種及び電子を含み、様々な電圧において起こる、電極における電気化学的(すなわちレドックス)反応から生じる。電池の出力電圧は、2つのレドックス反応の間の電圧差によって与えられる。一次電池では、レドックス反応を反転させることはできず、一回放電されることになっており、一方で、二次(すなわち充電式)電池では、レドックス反応が可逆的であり、複数の充電と放電とのサイクルをもたらす。リチウム電池の電気化学的反応の前述の例は、必要な変更を加えて、ナトリウム電池に拡張される。
【0041】
本発明は、二次又は充電式電池に関係し、特に、上記レドックス反応(1)及び/又は(2)における、カソード及び/又はアノードへの導電性添加剤を提供する。本発明の文脈において、「リチウム電池」又は「ナトリウム電池」には、固体状態(固体電解質を用いた)電池と液体状態(液体電解質を用いた)電池の両方を含む。本発明の文脈において、「リチウムイオン電池」及び「ナトリウムイオン電池」という用語は、液体電解質を用いた電池技術のために確保される。
【0042】
第1の側面では、本発明は、リチウム又はナトリウム電池の電極中の導電性添加剤としての、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワーク(すなわち、化学的に相互接続された炭素ナノ繊維を備える、多孔質炭素ネットワーク)の使用として記載され得る。導電性添加剤は、カソード及び/又はアノードに、好ましくはカソードとアノードの両方に適用され得る。この文脈において、「導電性添加剤」は、活物質の固有の特性、例えば電子伝導性を強化するために、カソード及び/又はアノードにおける、主要な活物質(電気化学的充電及び/又は放電反応に自発的に関与する材料)に添加される材料であると理解されるべきである。
【0043】
これに関して、本発明は、活物質の固有の特性を強化するための導電性添加剤として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワーク(すなわち、化学的に相互接続された炭素ナノ繊維を備える、多孔質炭素ネットワーク)を備える、リチウム又はナトリウム電池のためのカソード及び/又はアノードに属する。特に、本発明は、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム又はナトリウム電池のためのカソード及び/又はアノードに属する。
【0044】
好まれる態様では、リチウム又はナトリウム電池のためのカソードは、カソードの0.1~20重量%、好ましくは0.1重量%超、20重量未満、より好ましくは0.5~15重量%、いっそうより好ましくは1~10重量%、最も好ましくは1.5~5重量%の量で、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備え、残りは好ましくは、リチウム又はナトリウムイオンのインターカレーション及び放出ができる活性カソード材料である。好ましくは、先行する文における炭素ネットワークの量に関連して、活物質は、それぞれ、カソードの80~99.9重量%、より好ましくは85~99.5重量%、いっそうより好ましくは90~99重量%、最も好ましくは95.0~98.5重量%の量で存在する。炭素ネットワーク及び活物質の量に関する上の数は、合わせて、カソードの100%を占めることが好まれる。
【0045】
好まれる態様では、リチウム又はナトリウム電池のためのアノードは、アノードの0.1~10重量%、好ましくは0.1重量%超、10重量未満、より好ましくは0.5~8重量%、いっそうより好ましくは1~6重量%、最も好ましくは1.5~5重量%の量で、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備え、残りは好ましくは、リチウム又はナトリウムイオンのインターカレーション及び放出ができる活性アノード材料である。好ましくは、先行する文における炭素ネットワークの量に関連して、活物質は、それぞれ、アノードの90~99.9重量%、より好ましくは92~99.5重量%、いっそうより好ましくは94~99重量%、最も好ましくは95.0~98.5重量%の量で存在する。炭素ネットワーク及び活物質の量に関する上の数は、合わせて、アノードの100%を占めることが好まれる。
【0046】
リチウム電池の場合、好ましくは、アノード中の活物質は、インターカレーション化合物、例えば、黒鉛、合金、例えば、スズ、ケイ素系合金、及び/又は変換化合物、例えば、遷移金属酸化物(MO、式中、MはSn、Mo、Ga、Zn、Si、Ge、Co、Ni、Cu又はFeである)である。好まれる態様では、アノード中の活物質は、黒鉛である。リチウム電池の場合、好ましくは、アノード中の追加の活物質は、インターカレーション化合物、例えば、黒鉛、合金、例えば、スズ、ケイ素系合金、ケイ素若しくはケイ素系化合物、例えばSiO2、及び/又は変換化合物、例えば、遷移金属酸化物(MO、式中、MはSn、Mo、Ga、Zn、Si、Ge、Co、Ni、Cu又はFeである)である。好まれる態様では、リチウム電池のアノード中の追加の活物質は、黒鉛、ケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)又はこれらの組み合わせである。別の好まれる態様では、リチウム電池のアノード中の追加の活物質は、ケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)又はこれらの組み合わせである。最も好ましくは、追加の活物質は、ケイ素又は黒鉛である。アノード中の追加の活物質がケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)又はこれらの組み合わせである場合、ケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)若しくはこれらの組み合わせは、アノード中の本発明の炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークと混合されているか、又は本発明の炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、ケイ素、ケイ素系化合物(SiO2)若しくはこれらの組み合わせでコーティングされている。リチウム電池の場合、好ましくは、カソード中の活物質は、リチウム若しくはナトリウム金属、アルカリ金属、及び/又はリチウム若しくはナトリウム金属酸化物である。好まれる態様では、カソード中の活物質は、リチウムカソードの場合、LiCoO2又はLiMn24である。別の好まれる態様では、カソード中の活物質は、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)である。さらに好まれる態様では、カソード中の活物質は、硫黄、硫黄化合物又は硫黄複合体を備える。
【0047】
ナトリウム電池の場合、好ましくは、アノード中の活物質は、インターカレーション型アノードのための酸化物、例えばTiO2、コンバージョン型アノードのための酸化物、例えばFe23、コンバージョンアロイング型アノードのための酸化物、例えばSnx2及びSb23、又は「ハードカーボン」、非黒鉛化性、非結晶性及び非晶質炭素構造からなる不規則炭素材料である。ナトリウム電池の場合、好ましくは、カソード中の活物質は、O3型層状金属酸化物、例えばNaFeO2、P2型層状金属酸化物、例えばNa0.6MnO2、二相層状金属酸化物、例えばNa0.78Ni0.2Fe0.38Mn0.422、又はアニオン性レドックス能力を有する酸化物である。好ましくは、ナトリウム電池のカソード中の活物質は、酸化ナトリウム(NaMO2、M=V、Fe、Mn、Cu、Co及びNi)、リン酸ナトリウム(Na73(P274、NaFePO4、遷移金属酸化物(V25)又はプルシアンブルー(PB、Na2M[Fe(CN)6])である。
【0048】
リチウムとナトリウム電池の両方のアノード及び/又はカソードはまた、0.1~10重量%、好ましくは2~8重量%、最も好ましくは4~6重量%のバインダを備えてもよい。好ましくは、バインダは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)系及びポリビニリデンフルオリド(PVDF)系バインダから選択される。好ましくは、バインダはPVDF(ポリビニリデンジフルオリド)である。
【0049】
リチウム又はナトリウム電池の電極における導電性添加剤としての、本発明による炭素ネットワークの使用の有利な効果は、より高い電気伝導度である。加えて、炭素ネットワークは、問題を生じることなく、高レベルのFe及び/又は他の金属を通し、これによって、電極の産業用途及び安全性が増大する。本発明による炭素ネットワークは、カーボンブラックと比較してより大きな距離の中間層を備え;これによって、いっそう多くの量の添加剤材料を添加する場合でさえ、カーボンブラックと比較した場合、粘度が低減したまま保つことができる。従来の導電性添加剤の使用は粘度上昇と関係し、加工と最大装填量の両方を妨げるが、本発明の炭素ネットワークは、粘度に不利な影響を及ぼすことなく、増加した数で添加され得る。
【0050】
本発明はまた、上述のカソード及び/又はアノードを備える、二次又は充電式リチウム又はナトリウム電池に関する。好ましくは、二次又は充電式電池は、二次又は充電式のリチウムイオン又はナトリウムイオン電池、最も好ましくはリチウムイオン電池である。さらに好まれる態様では、二次又は充電式電池は、Li-S電池である。
【0051】
前述のアノードとカソードとに加えて、二次又は充電式リチウム又はナトリウム電池はまた、液体又は固体状態であり得る、電解質を備える。液体電解質は、有機溶媒と、アルカリ金属の塩、好ましくは、リチウムイオン及びナトリウムイオン電池の場合、それぞれリチウム又はナトリウム塩とを備え得る。リチウム又はナトリウム電池の電解質はまた、固体状態であってもよく、無機セラミック/ガラスセラミック、有機ポリマー及び/又はセラミック-ポリマー複合電解質を備えてもよい。二次又は充電式リチウム又はナトリウム電池はまた、アノードとカソードとの間にセパレータを備え得る。セパレータは、ポリプロピレンなどのポリマーを備え得る。
【0052】
本発明のリチウム若しくはナトリウム電池のためのカソード及び/若しくはアノード、又はリチウム若しくはナトリウム電池は、電池を動力とする電気デバイスの製造における使用に、特に好適である。したがって、本発明は、本発明による多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム若しくはナトリウム電池のための少なくとも1種のカソード及び/若しくはアノード、又は少なくとも1種のリチウム若しくはナトリウム電池を備える、電池を動力とする電気デバイスに及ぶ。ここで、電池を動力とする電気デバイスは、スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ及びカムコーダ、無停電電源装置(UPS)として、発電装置(すなわち、余剰の風力及び太陽光再生可能エネルギーからの)のエネルギー貯蔵として、医療及び通信システム、並びに電気及び/又はハイブリッド車であり得る。好ましくは、本発明によるリチウム若しくはナトリウム電池のためのアノード、又はリチウム若しくはナトリウム電池は、無停電電源装置(UPS)システム、携帯用消費者電子機器、並びに電気及び/若しくはハイブリッド車に使用される。
【0053】
単独の導電性添加剤として、本発明によるネットワークを使用することは、特に有利であるが、本発明によるリチウム又はナトリウム電池のためのカソード及び/又はアノードは、本発明によるリチウム又はナトリウム電池の電気化学的性能をさらに改善するために、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える添加剤とともに、従来の添加剤(非活物質)をさらに備えてもよい。当技術分野において利用可能な、好適な導電性添加剤を選択することは、当業者の権限の範囲内であると考えられる。好まれる態様では、本発明によるリチウム若しくはナトリウム電池のためのカソード及び/若しくはアノード、又はリチウム若しくはナトリウム電池は、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の、導電性カーボンブラック、Super P、アセチレンブラック、炭素ナノ繊維及びカーボンナノチューブから選択される1種又は複数のさらなる導電性添加剤を含有し得る。好まれる態様では、さらなる導電性添加剤はカーボンブラックである。
[炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワーク]
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワーク、又は化学的に相互接続された炭素ナノ繊維を備える、多孔質炭素ネットワークは、好ましくは次の通り特徴付けられる。
【0054】
当業者は、多孔質ネットワークが、流体又はガスを通過させる3次元構造を指すことを理解する。多孔質ネットワークは、多孔質媒体又は多孔質材料とも表され得る。本発明による多孔質結晶性炭素ネットワーク(又は本発明の多孔質炭素ネットワーク粒子)は、炭素原子が共有結合で元来相互接続している大型分子として見られることもある。ここで、複数の分子又は粒子によって作られた多孔質ネットワークを指し、細孔が、物理的に凝結した粒子又は分子の間の空間によって形成されている粒子間多孔性とは対照的に、多孔質炭素ネットワーク粒子は、粒子内多孔性を有する化学的に相互接続された(すなわち、共有結合した)繊維を有する粒子であることが理解される。現発明の文脈において、本発明による炭素ネットワーク粒子は、細孔が埋設された大型分子として見られることもあるため、粒子内多孔性は、分子内多孔性と表されることもある。したがって、粒子内多孔性及び分子内多孔性は、現文書において同じ意味を有し、互換的に使用され得る。
【0055】
本発明のネットワークは1つの大型分子として見られ得るため、粒子又はネットワークのパーツを相互に融合させる必要はない。したがって、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、粒子内多孔性を有する、融合されていない、粒子内で多孔質の、化学的に相互接続された、結晶性炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークであることが好まれる。理論によって束縛されるものではないが、粒子間多孔性を有する(非晶質)ネットワークを超える、粒子内多孔性を有する結晶性ネットワークを有することの利益は、第1に、力が適用された場合、粉砕又は破壊に対してより堅牢であり、より復元性であることと考えられる。比較の目的のため述べると、カーボンブラックは、3次元構造を形成し得る球状粒子の凝結体又は凝集体からなり、球体同士は、より弱い多孔性を有する非晶質接続で融合されている。粒子間の細孔は、粒子-粒子インターフェースに起因してより弱く、崩壊する傾向にある。粒子内の細孔は、それらを包囲する結晶性配列で共有結合した構造に起因して強く、崩壊することなく大きな力及び圧力に耐えることができる。これは、3次元構造を形成し得る球状粒子の凝結体又は凝集体からなる、球体同士が、個々の粒子間の非晶質接続で融合されている(化学的に「相互接続」していない)、従来のカーボンブラックによる、はっきりと対照的なところである。まとめると、粒子内多孔性(本発明のネットワークについてのトレードマーク)は、細孔を包囲する炭素原子が、結晶形態で共有結合で接続されている状況を指し、ここにおいて、粒子間多孔性は、細孔が、物理的に凝結若しくは凝集した粒子間、又は非晶質接続を有する粒子間にあることを指す。粒子内細孔体積は、水銀圧入式ポロシメトリ(ASTM D4404-10)又は窒素吸収法(ISO 9277:10)の観点で特徴付けられ得る。本発明による多孔性炭素ネットワークの細孔体積は、水銀圧入式ポロシメトリ(ASTM D4404-10)を使用して測定して、0.05~5cm3/g、好ましくは0.1~4cm3/g、より好ましくは0.3~3.5cm3/g、最も好ましくは0.5~3cm3/gである。加えて、又はあるいは、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、水銀圧入式ポロシメトリ(ASTM D4404-10)を使用して測定して、5~200nm、好ましくは10~150nm、最も好ましくは20~130nmの粒子内細孔直径サイズを有することとして特徴付けられ得る。同じASTM試験法に従って、ネットワークは、10~500μm、より好ましくは80~400μmの粒子間細孔直径を有してもよい。
【0056】
多孔質ネットワークは、好ましくは、0.340~0.50nmの範囲内、より好ましくは0.35~0.45nmの範囲内、いっそうより好ましくは0.355~0.375nmの範囲内のd間隔によって特徴付けられる。d間隔は、XRDによって測定される。
【0057】
当業者は、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークにおける、化学的に相互接続されたという用語は、炭素ナノ繊維が、他の炭素ナノ繊維に、化学結合によって相互接続されていることを示唆すると容易に理解する。化学結合は、分子又は共有結合の同義語であることも理解される。典型的に、炭素ナノ繊維が接続される場所は、接続部又は繊維の接続部と表され、したがって、「共有結合接続部」として好都合に指定され得る。これらの用語は、この文書において互換的に使用される。本発明による炭素ネットワークにおいて、接続部は、共有結合で接続された炭素原子によって形成される。さらに、繊維の長さは、繊維質炭素材料によって接続された接続部同士の間の距離として定義されるということになる。
【0058】
好まれる態様では、本発明の炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークにおける繊維の少なくとも一部は、結晶性炭素ナノ繊維である。好ましくは、本発明における炭素ネットワーク中の炭素の少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、いっそうより好ましくは少なくとも60重量%、いっそうより好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%が結晶性である。あるいは、結晶性炭素の量は、本発明の炭素ネットワークにおける全炭素と比較して、20~90重量%、より好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~50重量%である。ここで、「結晶性」は通常の意味を有し、材料における構造秩序の程度を指す。言い換えれば、ナノ繊維中の炭素原子は、ある程度規則的、周期的に配列されている。結晶性である面積又は体積は、微結晶として表され得る。炭素微結晶は、したがって、個別の炭素結晶である。
【0059】
炭素微結晶のサイズの尺度は、黒鉛状層の積層高さである。標準ASTMグレードのカーボンブラックは、これらの微結晶内に、11~13Å(オングストローム)の範囲内の黒鉛状層の積層高さを有する。好まれる態様では、本発明の炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、好ましくは、少なくとも15Å(オングストローム)、好ましくは少なくとも16Å、より好ましくは少なくとも17Å、いっそうより好ましくは少なくとも18Å、いっそうより好ましくは少なくとも19Å、なおもより好ましくは少なくとも20Åの積層高さを有する。必要な場合、100Å(オングストローム)もの大きさの微結晶を含む炭素ネットワークが生成され得る。したがって、本発明の炭素ネットワークは、15~100Å(オングストローム)、より好ましくは最大80Å、いっそうより好ましくは最大60Å、いっそうより好ましくは最大40Å、なおもより好ましくは最大30Åの積層高さを有する。そのため、本発明の炭素ネットワークにおける微結晶内の黒鉛状層の積層高さは、15~90Å(オングストローム)、より好ましくは16~70Å、いっそうより好ましくは17~50Å、なおもより好ましくは18~30Å、最も好ましくは最大25Åであることが理解される。
【0060】
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、化学的に相互接続された炭素ナノ繊維を有するものとして定義され得るが、ここにおいて、炭素ナノ繊維は、接続部のパーツを介して相互接続され、複数の(典型的には3以上、好ましくは少なくとも10以上の)ナノ繊維が共有結合で接合されている。該炭素ナノ繊維は、ネットワークの接続部間のパーツである。カーボンブラック粒子の場合の10~400nmの平均粒子サイズと比較して、繊維は、典型的には、中実(すなわち非中空)であり、好ましくは1~500nm、好ましくは5~350nm、より好ましくは最大100nm、一態様では10~100nmの平均直径又は厚さを有する伸長体である。一態様では、平均繊維長さ(すなわち、2つの接続部の間の平均距離)は、好ましくは30~10,000nm、より好ましくは50~5,000nm、より好ましくは100~5,000nm、より好ましくは少なくとも200~5,000nmの範囲内であり、例えば、SEMを使用して決定され得る。
【0061】
ナノ繊維又は構造は、好ましくは、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4、最も好ましくは少なくとも5、好ましくは最大で50未満の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比の観点で記載され得る;従来のカーボンブラック製造を通じて得られる球状粒子から形成される、非晶質(物理的に会合した)凝結体とははっきりと対照的である。繊維長さと厚さとの平均アスペクト比は、例えば、SEMを使用して決定され得る。
【0062】
炭素ナノ繊維構造は、化学的に相互接続された(共有結合された)炭素ナノ繊維によって形成される炭素ネットワークとして定義され得る。該炭素ネットワークは、液体(例えば、溶媒若しくは水性相)、気体又は任意の他の相であってもよい連続相が接近可能な、炭素ナノ繊維の間の間隙(粒子内多孔性、上記参照)がある、3次元構成を有する。該炭素ネットワークは、すべての次元において、少なくとも直径0.5μm、好ましくは少なくとも直径1μm、好ましくは少なくとも直径5μm、より好ましくは少なくとも直径10μm、いっそうより好ましくは少なくとも直径20μm、最も好ましくは少なくとも25μmである。あるいは、該炭素ネットワークは、2次元において少なくとも直径1μmであり、他の次元において、少なくとも直径5μm、好ましくは少なくとも直径10μm、より好ましくは少なくとも直径20μm、最も好ましくは少なくとも直径25μmである。ここで、及びやはりこの文書全体を通じて、次元という用語は、通常の方法で使用され、空間的次元を指す。互いに直交し、通常の物理的意味において空間を定義する、3つの空間的次元がある。さらに、該炭素ネットワークは、2次元において少なくとも直径10μmであり、他の次元において、少なくとも直径15μm、好ましくは少なくとも直径20μm、より好ましくは少なくとも直径25μm、より好ましくは少なくとも直径30μm、最も好ましくは少なくとも直径50μmであってもよい。これらの測定は、レーザー回折に基づく。
【0063】
炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、レーザー回折(ISO 13320-1)又は動的光散乱分析を使用して測定して、0.1~100μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは1~40μm、より好ましくは5~35μm、より好ましくは5~25μm、最も好ましくは5~20μmの体積に基づく凝結体サイズを有し得る。最も好まれる態様では、ネットワークは、レーザー回折(ISO 13320-1)又は動的光散乱分析を使用して測定して、5~10μmの体積に基づく凝結体サイズを有する。ネットワークは、特に、伝統的なカーボンブラックと比較して、好ましくは、有利には狭い粒子サイズ分布を有する。粒子サイズ分布は、透過型電子顕微鏡を使用して決定して、及び繊維の直径を測定して、10nmから200nmの間、好ましくは10~100nmとして特徴付けられ得る。ネットワークは、それぞれASTM D3493-16/ASTM D2414-16に従って測定されるc-OAN/OAN比によって決定して、0.5から1の間、より好ましくは0.6から1の間の凝結強度によって特徴付けられ得る。c-OANは、好ましくは20~200cc/100gである。これは、有利には、高圧用途においてさえ内部多孔性の崩壊を防止する、高強度である。
【0064】
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークはまた、ネットワークの一部として組み込まれた、カーボンブラック粒子を備えてもよい。これらの粒子は、炭素ナノ繊維の間の接続部の深くに見出されるが、ネットワークの他の部分に存在するカーボンブラック粒子もあってもよい。カーボンブラック粒子は、好ましくは、炭素ナノ繊維の直径の少なくとも0.5倍の直径、より好ましくは炭素ナノ繊維と少なくとも同じ直径、いっそうより好ましくは炭素ナノ繊維の少なくとも2倍の直径、いっそうより好ましくは炭素ナノ繊維の少なくとも3倍の直径、なおもより好ましくは炭素ナノ繊維の少なくとも4倍の直径、最も好ましくは炭素ナノ繊維の少なくとも5倍の直径を有する。カーボンブラック粒子の直径は、炭素ナノ繊維の10倍以下の直径であることが好まれる。このような混合ネットワークは、ハイブリッドネットワークと表される。
【0065】
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、官能化表面を有する。言い換えれば、表面は、表面の疎水的性質(炭素に典型的である)をより親水的性質に変化させる基を備える。炭素ネットワークの表面は、カルボキシル基、ヒドロキシ基及びフェノール性物質を備える。これらの基は、表面にいくらかの極性を加え、官能化炭素ネットワークが埋設された化合物材料の特性を変化させ得る。Brunauer-Emmett-Teller(BET)法(ISO 9277:10)に従って測定した炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの表面積は、好ましくは15~300m2/g、より好ましくは20~270m2/g、いっそうより好ましくは30~250m2/g、最も好ましくは30~210m2/gの範囲内である。
【0066】
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、金属触媒ナノ粒子を備えるが、わずかな量に過ぎず、典型的には、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの重量を基準として、少なくとも10ppmである。これらは、調製法のフィンガープリントである。ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分析法)によって測定されるネットワークの重量を基準として、金属ナノ粒子の5000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、とりわけ2000ppm以下という、好まれる量がある。これらの金属粒子は、ネットワーク中にも埋設される。これらの粒子は、1nmから100nmの間の平均粒子サイズを有し得る。好ましくは、該粒子は、10%以内、より好ましくは5%以内の平均粒子サイズからの逸脱を有する、単分散粒子である。炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークに含まれるナノ粒子の非限定例は、貴金属(Pt、Pd、Au、Ag)、鉄族元素(Fe、Co及びNi)、Ru並びにCuである。好適な金属錯体は、(i)白金前駆体、例えば、H2PtCl6;H2PtCl6・xH2O;K2PtCl4;K2PtCl4・xH2O;Pt(NH34(NO32;Pt(C5722、(ii)ルテニウム前駆体、例えば、Ru(NO)(NO33;Ru(dip)3Cl2[dip=4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン];RuCl3、又は(iii)パラジウム前駆体、例えば、Pd(NO32、又は(iv)ニッケル前駆体、例えば、NiCl2若しくはNiCl2・xH2O;Ni(NO32;Ni(NO32・xH2O;Ni(CH3COO)2;Ni(CH3COO)2・xH2O;Ni(AOT)2[AOT=ビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシネート][式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10から選択される任意の整数であってよく、典型的には6、7又は8であり得る]であり得る。
【0067】
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークは、好ましくは、反応ゾーン3bと終結ゾーン3cとを含有する反応器3において、結晶性炭素ネットワークeを生成するために、熱力学的に安定な油中水型、水中油型又は両連続型のマイクロエマルションc、好ましくは油中水型又は両連続型のマイクロエマルションc、両連続型マイクロエマルションcであって、該マイクロエマルションが金属触媒ナノ粒子を備える、マイクロエマルションcを、600℃超、好ましくは700℃超、より好ましくは900℃超、いっそうより好ましくは1000℃超、より好ましくは1100℃超、好ましくは最高3000℃、より好ましくは最高2500℃、最も好ましくは最高2000℃の温度における、反応ゾーン3bに注入することと、これらのネットワークeを終結ゾーン3cに移送することと、終結ゾーンにおいて、水dの中に吹き付けることにより、結晶性炭素ネットワークの形成をクエンチ又は停止することとによる、結晶性炭素ネットワークの生成のためのプロセスによって得られる。
【0068】
より好まれる態様では、ネットワークは、結晶性炭素ネットワークeを得るために、該反応器が、反応器3の軸に沿って、燃焼ゾーン3aと、反応ゾーン3bと、終結ゾーン3cとを含有する、炉型カーボンブラック反応器3であり、燃料aを酸素含有ガスbの中で燃やすこと、及び廃棄ガスa1を燃焼ゾーン3aから反応ゾーン3bへ通過させることにより、燃焼ゾーン内に高温廃棄ガスa1の流れを生成することと、高温廃棄ガスを含有する反応ゾーン3b内で、油中水型、水中油型又は両連続型のマイクロエマルションc、好ましくは油中水型又は両連続型のマイクロエマルションc、最も好ましくは両連続型マイクロエマルションcであって、金属触媒ナノ粒子を備える、該マイクロエマルションcを吹き付けることと、該エマルションを、600℃超、好ましくは700℃超、より好ましくは900℃超、いっそうより好ましくは1000℃超、より好ましくは1100℃超、好ましくは最高3000℃、より好ましくは最高2500℃、最も好ましくは最高2000℃の温度で炭化させることと、水dの中に吹き付けることにより、終結ゾーン3c内で反応をクエンチ又は停止することとによる、上記プロセスによって得られる。
【0069】
上記において、「化学的に相互接続された」は、ナノ繊維が互いに共有結合しており、物理的凝結体とは明らかに異なることを意味するものと理解される。
【0070】
ネットワークは、好ましくは上記プロセスによって得られ、ここにおいて、さらなる加工の詳細は、ここで下記の「炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを得るためのプロセス」の見出しを付けられたセクション、及び図1Aに提供される。
[炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを得るためのプロセス]
上記多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを得るためのプロセスは、改質カーボンブラック製造プロセスとして最良に記載され得るが、ここにおいて、「改質」は、好適な油、好ましくは少なくとも14C原子(C14よりも大きい)を備える油、例えばカーボンブラック供給原料油(CBFS)が、金属触媒ナノ粒子を備える、油中水型、水中油型又は両連続型の熱力学的に安定なマイクロエマルション、好ましくは油中水型又は両連続型マイクロエマルション、最も好ましくは両連続型マイクロエマルションである単相エマルションの一部として、カーボンブラック反応器の反応ゾーンに提供されることと理解される。エマルションは、好ましくは、エマルションを吹き付けること、したがって、噴霧して液滴にすることによって、反応ゾーンに提供される。プロセスは、バッチ又はセミバッチ式で行われ得るが、改質カーボンブラック製造プロセスは、有利には連続プロセスとして行われる。単相エマルションは、金属触媒ナノ粒子を備えるマイクロエマルションである。好まれる単相エマルションは、CBFS油を備え、本発明の文脈において「乳化CBFS」と呼ばれることもある。
【0071】
炭素ネットワークの生成のためのプロセスは、反応ゾーン3bと終結ゾーン3cとを含有する反応器3において、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを生成するために、油中水型、水中油型又は両連続型のマイクロエマルションc、好ましくは油中水型又は両連続型のマイクロエマルションc、最も好ましくは両連続型マイクロエマルションcである、単相エマルションcを、600℃超、好ましくは700℃超、より好ましくは900℃超、いっそうより好ましくは1000℃超、より好ましくは1100℃超、好ましくは最高3000℃、より好ましくは最高2500℃、最も好ましくは最高2000℃の温度における、反応ゾーン3bに注入することと、これらのネットワークeを終結ゾーン3cに移送することと、終結ゾーンにおいて、水dの中に吹き付けることにより、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの形成をクエンチ又は停止することとによって実行され得る。単相エマルションは、好ましくは、反応ゾーンに吹き付けられる。図1Aが参照される。
【0072】
あるいは、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの生成のためのプロセスは、反応器3の軸に沿って、燃焼ゾーン3aと、反応ゾーン3bと、終結ゾーン3cとを含有する、炉型カーボンブラック反応器3において、燃料aを酸素含有ガスbの中で燃やすこと、及び廃棄ガスa1を燃焼ゾーン3aから反応ゾーン3bへ通過させることにより、燃焼ゾーン内に高温廃棄ガスa1の流れを生成することと、高温廃棄ガスを含有する反応ゾーン3b内で、本発明による単相エマルションc、好ましくは油中水型、水中油型又は両連続型のマイクロエマルションc、好ましくは油中水型又は両連続型マイクロエマルションc、最も好ましくは両連続型マイクロエマルションcを吹き付ける(噴霧する)ことと、該エマルションを、高温(600℃超、好ましくは700℃超、より好ましくは900℃超、いっそうより好ましくは1000℃超、より好ましくは1100℃超、好ましくは最高3000℃、より好ましくは最高2500℃、最も好ましくは最高2000℃の温度)で炭化させることと、水dの中に吹き付けることにより、終結ゾーン3c内で反応をクエンチ又は停止すること(すなわち、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの形成)とによって実行される。反応ゾーン3bは、エマルションを、好ましくは噴霧によって導入するための少なくとも1つの注入口(好ましくはノズル)を備える。図1Aが参照される。
【0073】
炉型カーボンブラック反応器の反応ゾーンにおけるエマルションについての滞留時間は、比較的短くても、好ましくは1~1000ms、より好ましくは10~100msの範囲内であってもよい。より長い滞留時間は、炭素ネットワークの特性に対する影響を有し得る。例は、より長い滞留時間が使用される場合に大きい、微結晶のサイズであり得る。
【0074】
従来のカーボンブラック製造プロセスに準拠して、油相は、芳香族及び/又は脂肪族であり得、好ましくは少なくとも50重量%のC14以上を備え、より好ましくは少なくとも70重量%のC14以上を備える(油の総重量を基準として)。使用され得る典型的な油のリストは、安定なエマルションを得ることには限定されないが、カーボンブラック供給原料油(CBFS)、フェノール系油、アントラセン油、(短中長鎖)脂肪酸、脂肪酸エステル及びパラフィンである。油は、好ましくはC14以上である。一態様では、油は、好ましくは高い芳香族性を有する。この分野内で、芳香族性は、好ましくは、米国鉱山局相関指数(BMCI)の観点から特徴付けられる。油は、好ましくは、50よりも大きいBMCIを有する。一態様では、油は芳香族性が低く、好ましくは15よりも小さいBMCIを有する。
【0075】
CBFSは、本発明の文脈において経済的に魅力的な油供給源であり、好ましくは、主としてC14~C50を備える重質炭化水素ミックスであり、C14~C50の合計は、好ましくは、供給原料の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%に達する。カーボンブラックを生成するために使用される最も重要な供給原料のいくつかとしては、軽油の流体触媒クラッキングから得られる清澄化スラリー油(CSO)、ナフサ蒸気クラッキングからのエチレンクラッカー残留物、及びコールタール油が挙げられる。パラフィンの存在(C15よりも小さい)は適合性を実質的に低減させ、より高い芳香族性が好まれる。芳香族物質の濃度は、炭素核が形成される速度を決定する。カーボンブラック供給原料は、好ましくは、高いBMCIを有し、最小限の熱入力で高収率を提供することができ、したがって、製造のコストが低減する。好まれる態様では、及び現在のCBFS仕様に基づいて、油の混合物を含む油は120超のBMCI値を有する。どれが好適なCBFSであるか、当業者には理解に難くないが、単なる指針として、(収率の観点から、)CBFSについてのBMCI値は、好ましくは120超、いっそうより好ましくは132超であることが留意される。油中のアスファルテンの量は、好ましくは、CBFS重量の10重量%未満、好ましくは5.0重量%未満である。硫黄は生成物の品質に悪影響を及ぼし、より低い収率をもたらし、設備を腐食させるため、CBFSは、好ましくは低い硫黄含有量を有する。
【0076】
ASTM D1619に従った油の硫黄含有量は、8.0重量%未満、好ましくは4.0重量%未満、より好ましくは2.0重量%未満であることが好まれる。
【0077】
エマルション、好ましくはCBFSを備えるエマルションは、「単相エマルション」であり、これは、油相と水相とが、肉眼には油、水又は界面活性剤の物理的な分離を示さない、光学的に1つの混和混合物として現れることを意味するものと理解される。単相エマルションは、油中水型、水中油型又は両連続型のマイクロエマルション、好ましくは油中水型又は両連続型マイクロエマルション、最も好ましくは両連続型マイクロエマルションである。エマルションが完全に破壊される(合体する)、すなわち、系がバルク油相と水相とに分離するプロセスは、概して、4つの異なる液滴消失メカニズム、すなわち、ブラウンフロキュレーションと、クリーミングと、沈降フロキュレーションと、不均化とによって制御されると考えられる。
【0078】
上記のマイクロエマルションが得られるという条件で、水と油との量は限定的であるとは考えられないが、低減した水の量(及び増加した油の量)は、収率を改善することが留意される。水含有量は、典型的には、エマルションの5重量%から50重量%の間、好ましくは10~40重量%、いっそうより好ましくは最大30重量%、より好ましくはエマルションの10~20重量%である。より多量の水を考えてもよいが、収率を犠牲にすることになる。如何なる理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、このようにして得られるネットワークの形状とモルフォロジーとは、水相に帰せられると考える。
【0079】
界面活性剤の選択は、油と水と界面活性剤との組み合わせが、ここで上に定義される安定なマイクロエマルションをもたらす限り、限定的要素であるとは考えられない。当業者へのさらなる指針として、界面活性剤は、系の疎水性又は親水性、すなわち親水性-親油性バランス(HLB)に基づいて選択され得ることが留意される。界面活性剤のHLBは、界面活性剤が親水性であるか親油性であるかの程度の尺度であり、Griffin法又はDavies法によって、分子の種々の領域について値を計算することによって決定される。適当なHLB値は、エマルション中の油のタイプと、油及び水の量とに依存し、上に定義される熱力学的に安定な単相エマルションを保持するという要件に基づいて、当業者によって容易に決定され得る。50重量%超の油を備え、好ましく30重量%未満の水相を有するエマルションは、7超、好ましく8超、より好ましくは9超、最も好ましくは10超のHLB値を有する界面活性剤によって最良に安定化されることが見出されている。その一方で、50重量%以下の油を有するエマルションは、12未満、好ましく11未満、より好ましくは10未満、最も好ましくは9未満、特に8未満のHLB値を有する界面活性剤によって最良に安定化される。界面活性剤は、好ましくは、油相に適合性であるように選択される。油がCBFSを備えるエマルションである場合、CBFSによって、高い芳香族性を有する界面活性剤が好まれ、低BMCIを有する油、例えば15よりも小さいBMCIによって特徴付けられる油は、脂肪族界面活性剤を使用して最良に安定化される。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性若しくは非イオン性、又はこれらの混合物であり得る。収率を上昇させるために、最終生成物に残留イオンが残らないため、1種又は複数の非イオン性界面活性剤が好まれる。きれいなテールガス流を得るため、界面活性剤の構造は、好ましくは硫黄と窒素とが少なく、好ましくは硫黄及び窒素不含である。安定なエマルションを得るために使用され得る、典型的な非イオン性界面活性剤の非限定例は、市販のシリーズであるTween、Span、Hypermer、Pluronic、Emulan、Neodol、Triton X及びTergitolである。
【0080】
本発明の文脈において、マイクロエマルションは、光学的に単一で、熱力学的に安定な液体である、水と油(好ましくはCBFS)と界面活性剤とから作製される分散体であり、分散ドメインの直径は、およそ1~500nm、好ましくは1~100nm、通常10~50nmで変動する。マイクロエマルションにおいて、分散相のドメインは、粒状(すなわち液滴)であるか、又は相互接続されているか(両連続マイクロエマルションを与える)の何れかである。好まれる態様では、界面活性剤のテールは、油中水型、水中油型又は両連続型のマイクロエマルション、好ましくは油中水型又は両連続型マイクロエマルション、最も好ましくは両連続型マイクロエマルションの油相中に、連続ネットワークを形成する。水ドメインは、好ましくは1nmから100nmの間の平均粒子サイズを有する、金属触媒を含有するべきである。
【0081】
単相エマルション、すなわち、油中水型、水中油型又は両連続型のマイクロエマルション、好ましくは油中水型又は両連続型マイクロエマルション、最も好ましくは両連続型マイクロエマルションは、好ましくは1nmから100nmの間の平均粒子サイズを有する、金属触媒ナノ粒子をさらに備える。当業者は、カーボンナノチューブ(CNT)の分野における十分な指針を見出して、これらの種類のナノ粒子を生成し、使用する。これらの金属ナノ粒子は、速度と収率の両方と、再現性との観点で、ネットワーク形成を改善することが見出されている。好適な金属ナノ粒子を製造するための方法は、Vinciguerraら、「Growth mechanisms in chemical vapour deposited carbon nanotubes」、Nanotechnology(2003)14、655;Perez-Caberoら、「Growing mechanism of CNTs:a kinetic approach」、J.Catal.(2004)224、197~205;Gavilletら、「Microscopic mechanisms for the catalyst assisted growth of single-wall carbon nanotubes」、Carbon.(2002)40、1649~1663及びAmelinckxら、「A formation mechanism for catalytically grown helix-shaped graphite nanotubes」、Science(1994)265、635~639に見出され、金属ナノ粒子を製造することについてのこれらの内容は、参照によってここに組み込まれる。
【0082】
金属触媒ナノ粒子は、油中水型、水中油型又は両連続型のマイクロエマルション、好ましくは油中水型又は両連続型マイクロエマルション、最も好ましくは両連続型マイクロエマルションにおいて使用される。有利には、金属粒子の一様性は、該(両連続)マイクロエマルションにおいて、水性相が、最終的に金属粒子に還元される得る金属錯体塩を含有する、第1の(両連続)マイクロエマルションと、水性相が、該金属錯体塩を還元することができる還元剤を含有する、第2の(両連続)マイクロエマルションとを混合することによって制御され、混合すると、金属錯体が還元され、このようにして金属粒子を形成する。制御された(両連続)エマルション環境は、粒子を焼結又はオストワルト熟成に対して安定化させる。触媒粒子のサイズ、濃度及び耐久性は、容易に制御される。例えば、金属前駆体対還元剤のモル比を修正することによって、平均金属粒子サイズを上記範囲内で調整することは、定型的な実験法であると考えられる。還元剤の相対的な量の増加によって、より小さい粒子が得られる。このようにして得られる金属粒子は単分散であり、平均粒子サイズからの逸脱は、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。また、本発明の技術は、還元され得る限り、実際の金属前駆体を束縛しない。炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークに含まれるナノ粒子の非限定例は、貴金属(Pt、Pd、Au、Ag)、鉄族元素(Fe、Co及びNi)、Ru並びにCuである。好適な金属錯体は、(i)白金前駆体、例えば、H2PtCl6;H2PtCl6・xH2O;K2PtCl4;K2PtCl4・xH2O;Pt(NH34(NO32;Pt(C5722、(ii)ルテニウム前駆体、例えば、Ru(NO)(NO33;Ru(dip)3Cl2[dip=4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン];RuCl3、又は(iii)パラジウム前駆体、例えば、Pd(NO32、又は(iv)ニッケル前駆体、例えば、NiCl2若しくはNiCl2・xH2O;Ni(NO32;Ni(NO32・xH2O;Ni(CH3COO)2;Ni(CH3COO)2・xH2O;Ni(AOT)2[AOT=ビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシネート][式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10から選択される任意の整数であってよく、典型的には6、7又は8である]であり得る。非限定的な好適な還元剤は、水素ガス、水素化ホウ素ナトリウム(sodium boron hydride)、重硫酸ナトリウム、ヒドラジン又はヒドラジン水和物、エチレングリコール、メタノール及びエタノールである。クエン酸及びドデシルアミンも好適である。金属前駆体のタイプは、本発明の本質的な部分ではない。(両連続)マイクロエマルションの粒子の金属は、最終的に形成される炭素構造ネットワークのモルフォロジーを制御するため、好ましくは、Pt、Pd、Au、Ag、Fe、Co、Ni、Ru及びCu、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。金属ナノ粒子は、最終的にはこれらの構造の内部に埋設され、金属粒子は、構造に物理的に付着する。これらのネットワークが形成される、金属粒子の最小濃度はないが(実際に、ネットワークは、本発明による改質カーボンブラック製造プロセスを使用して形成される)、金属粒子濃度とともに収率が上昇することが見出された。好ましい態様では、活性金属濃度は、少なくとも1mM、好ましくは少なくとも5mM、好ましくは少なくとも10mM、より好ましくは少なくとも15mM、より好ましくは少なくとも20mM、特に少なくとも25mM、最も好ましくは最大3500mM、好ましくは最大3000mMである。一態様では、金属ナノ粒子は、最大250μMを備える。(両連続)マイクロエマルションの水性相の量に対する触媒濃度はある。
【0083】
単相エマルション、好ましくはCBFSを備えるエマルションの噴霧は、好ましくはノズルシステム4を使用して吹き付けることによって実現され、これによって、エマルション液滴が、反応ゾーン3bにおいて高温廃棄ガスa1と接触し、伝統的な炭化、ネットワーク形成及びそれに続く凝集をもたらし、本発明による炭素ネットワークを生成する。注入ステップには、好ましくは、600℃超、好ましくは700℃から3000℃の間、より好ましくは900℃から2500℃の間、より好ましくは1100℃から2000℃の間の高温が関与する。
[実施例]
【実施例1】
【0084】
本発明による導電性添加剤としての炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備えるリチウムイオン電池のカソード及び/又はアノードの特徴付け
本発明による導電性添加剤としての炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワーク(「炭素ネットワーク」)を備える、カソード及び/又はアノードを備えるリチウムイオン電池の性能を、アノードが人造黒鉛(AG)のみを備え、添加剤を含まないリチウムイオン電池、及び導電性添加剤として導電性カーボンブラック(Super C65)と組み合わせたAGを備えるリチウムイオン電池の性能と比較した。2つのグレードの炭素ネットワークを使用し、ここで、以下ではA及びBとして指定される。グレードAとグレードBの両方は、同じ供給原料を使用することによって、炉型ブラック反応器において製造した。グレードAとBとの滞留時間は、それぞれ、400~800ミリ秒及び10~100ミリ秒の範囲内であった(理論モデルに基づく)。
【0085】
グレードD及びグレードCも、それぞれ、A及びBと同じ供給原料と同じ滞留時間とを使用することによって、炉型カーボンブラック反応器において製造した。グレードDは、Aと比較して30%高い供給速度を使用することによって生成され、一方で、グレードCは、Bと比較して30%低い供給速度を使用することによって生成される。
【0086】
ここで報告される実験はアノードを用いて行われたが、その作業及び結果は、リチウムイオン電池のためのカソードの場合と異なることは一切予想されない。
(アノード(&導電性添加剤)ペースト調製)
PVDF(300mg)を、45分にわたる機械的撹拌を使用してNMP(7.000g)に溶解させた。導電性添加剤(300mg)を添加し、混合中のせん断を上昇させるために、直径4mmのガラスビーズ(1.0g)を添加する。Speedmixer(Hauschildt)において、ペーストを2500rpmで2分にわたって混合した後、さらに2500rpmで10分にわたって混合して、分散体を得た。Speedmixer(Hauschildt)に人造黒鉛(6.00g)を添加し、2500rpmで2分にわたって混合した後、さらに2500rpmで10分にわたって混合して、アノードペーストを得た。
【0087】
【表1】
【0088】
導電性添加剤としてSuper C65を使用した場合のアノードペーストの粘度上昇は、代わりに同じ量のA及びBを使用することと比較した場合、かなり高かった。実際に、アノードペースト組成物中のSuper C65の割合を、400mgを超えて増加させた場合、アノードペーストをキャストできなかった。しかしながら、A含有量を600mgに増加させた場合(他の成分の質量を一定に保ちながら)、キャスト可能なペーストが依然として得られた。したがって、これは、本発明のネットワークを使用した場合、より高い装填量の導電性添加剤を達成することという観点で、明らかな利点があり、加工を改善することができたことを示した。キャスト可能なペーストは、C及びDを用いて得られた。
(アノード調製)
ガラスプレートを徹底的に清掃し、アセトンを使用して乾燥させた。銅箔(99.9%超のCu、厚さ10ミクロン、Nanografi)を所定の位置に保持するために、キャピラリ力によって、数滴のNMPをガラスプレートに添加した。NMPを使用して銅箔を清掃し、続いて、リントフリークロスを使用して乾燥させた。表内に特定した種々の高さに設定したドクターブレードを使用して、アノードペーストをキャストした。ガラスプレートをオーブンに移送し、一晩110℃に保った。アノードを打ち抜いた(直径14mm)。
(ハーフセル調製)
バネと、スペーサと、リチウムディスク(15.6mm)と、数滴の電解質(EC/EMC 1:1 1M LiPF6)と、電解質(EC/EMC 1:1 1M LiPF6)浸漬セパレータ(20mm)と、数滴の電解質(EC/EMC 1:1 1M LiPF6)と、下向きのアノードとを一緒に、グローブボックス内で、CR2032コインセル中にかしめた。グローブボックスからハーフセルを取り出した後、電気化学的試験に直ちに使用した。アノード材料は、表2に特徴付けられる。
【0089】
【表2】
【0090】
a.容量
新しいハーフセルを、電位が0.01Vに低下するまで、0.2Cの一定の放電電流で放電させた(約5時間の放電)。次いで、ハーフセルを1時間にわたって、又は放電電流が初期放電電流の1%未満となるまで、0.01Vに保った。次いで、ハーフセルを1時間にわたって放置して平衡させた後、0.2Cで2.0Vまで充電した(約5時間の充電)。次いで、ハーフセルを1時間にわたって、又は充電電流が初期充電電流の1%未満となるまで、2.0Vに保った。充電電流を、2.0Vに達するまでにかかった時間と乗算することによって、電位を1時間にわたって2.0Vに保つのに要した電流を含む、容量を計算した。
【0091】
【表3】
【0092】
b.サイクル能(サイクル寿命)
新しいハーフセルを、電位が0.01Vに低下するまで、0.2Cの一定の放電電流で放電させた(約5時間の放電)。次いで、ハーフセルを1時間にわたって、又は放電電流が初期放電電流の1%未満となるまで、0.01Vに保った。次いで、ハーフセルを1時間にわたって放置して平衡させた後、0.2Cで2.0Vまで充電した(約5時間の充電)。次いで、ハーフセルを1時間にわたって、又は充電電流が初期充電電流の1%未満となるまで、2.0Vに保った。これが単一のサイクルであった。サイクルをできるだけ多くの回数繰り返し(回数の観点で)、容量の減少を、サイクルの関数としてモニタリングした。
【0093】
図3は、AGアノード(正方形)を使用した場合の比容量が、サイクル数とともに劇的に、着実に減少する一方で、AG/Aアノード(交差)を使用した場合の比容量は、最初からより緩やかな勾配で減少し、100サイクル後には事実上平衡することを示している。図5は、AG/C(交差)及びAG/D(三角形)アノードの場合の比容量が、急勾配では減少しないことを示している。20サイクルから100サイクルまで、容量は95%前後で維持される。この挙動は、50サイクル前後で50%の容量の損失を示したAGアノード(図3)と比べて改善である。これは、本発明によるアノードを使用した場合、より長いサイクル寿命が達成されることを実証している。これらの結果を、表4にもまとめる。
【0094】
【表4】
【0095】
c.充電/放電速度:種々のCレートにおけるサイクル能
リチウムイオン電池アノードを、表5に従って調製した。
【0096】
【表5】
【0097】
新しいハーフセルを、電位が0.01Vに低下するまで、0.5Cの一定の放電電流で放電させた(約2時間の放電)。次いで、ハーフセルを1時間にわたって、又は放電電流が初期放電電流の1%未満となるまで、0.01Vに保った。次いで、ハーフセルを1時間にわたって放置して平衡させた後、0.5Cで2.0Vまで充電した(約2時間の充電)。次いで、ハーフセルを1時間にわたって、又は充電電流が初期充電電流の1%未満となるまで、2.0Vに保った。このサイクルを10回繰り返した。次いで、放電と充電との電流を、1.0C(約1時間の(放電)充電)に変更し、これを10回繰り返した。次いで、放電と充電との電流を、5.0C(12分の(放電)充電)に変更し、これを10回繰り返した。次いで、放電と充電との電流を、10.0C(6分の(放電)充電)に変更し、これを10回繰り返した。次いで、これらの55サイクル後の容量における減少を観測するため、放電と充電との電流を、0.5C(約2時間の(放電)充電)に変更して戻し、これを10回繰り返した。グレードCと、グレードDと、AGとについて、10.0Cにおける10サイクル後、放電と充電との電流を20.0C(3分の(放電)充電)に変更し、これを10回繰り返した。次いで、これらの66サイクル後の容量における減少を観測するため、放電と充電との電流を、0.5C(約2時間の(放電)充電)に変更して戻し、これを10回繰り返した。
【0098】
これらの実験の結果を、図4及び図6に示す。図4は、AG/グレードBアノード(正方形)の比容量は、AGアノード(三角形)の比容量に対して概ね優れている一方で、AG/グレードA(ダッシュ)の比容量は、AGアノード(三角形)の比容量よりも大幅に高いことを示している。図6は、AG/グレードC(三角形)及びグレードD(円)の場合、10Cにおいて、比容量がAG(正方形)の場合ほどには減少しなかったことを示している。最大20Cにおいてさえ、AG/グレードC及びAG/グレードDの容量は、AGよりも優れていた。Cレートを20Cから0.5Cに低減させた場合、AG/グレードCとAG/グレードDについては、依然として、初期容量の95~100%を回復することができた。対照的に、AGの初期容量を回復することはできなかった。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池のアノード及び/又はカソード中の導電性添加剤材料としての、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの使用であって、前記炭素ネットワークにおける前記炭素ナノ繊維は共有結合しており、
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有し、好ましくは、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、炭素ネットワークの使用
【請求項2】
前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記カソードの総質量の0.1~20重量%、好ましくは0.1重量%超、20重量%未満を示し、及び/又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記アノードの総質量の0.1~10重量%、好ましくは0.1重量%超、10重量%未満を示す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記炭素ネットワークが結晶性炭素ナノ繊維を備える、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記炭素ナノ繊維の平均繊維長さが30~10,000nmである、請求項1から3の何れか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ及びカムコーダに、無停電電源装置(UPS)として、発電装置のエネルギー貯蔵として、医療及び通信システムに、並びに電気及び/又はハイブリッド車に適用される、請求項1からの何れか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記充電式リチウム電池がリチウム-硫黄(Li-S)電池である、請求項1からの何れか一項に記載の使用。
【請求項7】
導電性添加剤材料として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備え、好ましくは、リチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池のアノード及び/又はカソードである、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、前記炭素ネットワークにおける前記炭素ナノ繊維は共有結合しており、
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有し、好ましくは、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項8】
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記カソードの総質量の0.1~20重量%、好ましくは0.1重量%超、20重量%未満を示し、及び/又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記アノードの総質量の0.1~10重量%、好ましくは0.1重量%超、10重量%未満を示し、前記炭素ネットワークにおける前記炭素ナノ繊維は共有結合しており、
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有し、好ましくは、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項9】
前記アノード及び/又はカソードがまた、0.1~10重量%のバインダを備える、請求項7又は8に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項10】
前記カソード及び/又はアノードがまた、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の、導電性カーボンブラック、Super P、アセチレンブラック、炭素ナノ繊維及びカーボンナノチューブから選択される1種又は複数のさらなる導電性添加剤を備える、請求項7から9の何れか一項に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項11】
前記カソードが、導電性添加剤材料として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、硫黄複合体を備える、請求項7から10の何れか一項に記載のリチウム電池カソード。
【請求項12】
電池がリチウム電池であり、前記アノードが、90~99.9重量%の追加の活物質を備え、前記追加の活物質が、黒鉛、ケイ素、ケイ素系化合物又はこれらの組み合わせである、請求項7から11の何れか一項に記載の電池アノード。
【請求項13】
前記追加の活物質がケイ素、ケイ素系化合物又はこれらの組み合わせであり、ケイ素、前記ケイ素系化合物若しくはこれらの組み合わせが、前記アノード中の前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークと混合されているか、又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、ケイ素、前記ケイ素系化合物若しくはこれらの組み合わせでコーティングされている、請求項1に記載の電池アノード。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項に記載のアノード及び/又はカソードを備える充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池であって、前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、好ましくはリチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池である、充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池。
【請求項15】
前記炭素ネットワークが、反応ゾーン3bと終結ゾーン3cとを含有する反応器3において、結晶性炭素ネットワークeを生成するために、金属触媒ナノ粒子を備える油中水型又は両連続型のマイクロエマルションcを、600℃超、好ましくは700℃超、より好ましくは900℃超、いっそうより好ましくは1000℃超、より好ましくは1100℃超、好ましくは最高3000℃、より好ましくは最高2500℃、最も好ましくは最高2000℃の温度における、前記反応ゾーン3bに注入することと、これらのネットワークeを前記終結ゾーン3cに移送することと、前記終結ゾーンにおいて、水dの中に吹き付けることにより、結晶性炭素ネットワークの形成をクエンチ又は停止することとによって、結晶性炭素ネットワークを生成するためのプロセスによって得られる、請求項1からの何れか一項に記載の炭素ネットワークの使用、請求項7から13の何れか一項に記載のリチウム電池若しくはナトリウム電池のアノード及び/若しくはカソード、又は請求項14に記載の充電式リチウム電池若しくは充電式ナトリウム電池。
【請求項16】
請求項7から13の何れか一項に記載のリチウム電池若しくはナトリウム電池のアノード及び/若しくはカソード、又は請求項14に記載の充電式リチウム電池若しくは充電式ナトリウム電池を備える電池を動力とするデバイスであって、前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、好ましくはリチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池である、電池を動力とするデバイス。
【請求項17】
前記デバイスがスマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ、カムコーダ、医療及び通信システム、無停電電源装置(UPS)、発電装置のエネルギー貯蔵デバイス、又は電気及び/若しくはハイブリッド車である、請求項1に記載のデバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
これらの実験の結果を、図4及び図6に示す。図4は、AG/グレードBアノード(正方形)の比容量は、AGアノード(三角形)の比容量に対して概ね優れている一方で、AG/グレードA(ダッシュ)の比容量は、AGアノード(三角形)の比容量よりも大幅に高いことを示している。図6は、AG/グレードC(三角形)及びグレードD(円)の場合、10Cにおいて、比容量がAG(正方形)の場合ほどには減少しなかったことを示している。最大20Cにおいてさえ、AG/グレードC及びAG/グレードDの容量は、AGよりも優れていた。Cレートを20Cから0.5Cに低減させた場合、AG/グレードCとAG/グレードDについては、依然として、初期容量の95~100%を回復することができた。対照的に、AGの初期容量を回復することはできなかった。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1]
充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池のアノード及び/又はカソード中の導電性添加剤材料としての、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの使用。
[2]
前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記カソードの総質量の0.1~20重量%、好ましくは0.1重量%超、20重量%未満を示し、及び/又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記アノードの総質量の0.1~10重量%、好ましくは0.1重量%超、10重量%未満を示す、[1]に記載の使用。
[3]
前記炭素ネットワークが結晶性炭素ナノ繊維を備える、[1]又は[2]に記載の使用。
[4]
前記炭素ナノ繊維の平均繊維長さが30~10,000nmである、[1]から[3]の何れか一項に記載の使用。
[5]
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有し、好ましくは、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、[1]から[4]の何れか一項に記載の使用。
[6]
前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ及びカムコーダに、無停電電源装置(UPS)として、発電装置のエネルギー貯蔵として、医療及び通信システムに、並びに電気及び/又はハイブリッド車に好適である、[1]から[5]の何れか一項に記載の使用。
[7]
前記充電式リチウム電池がリチウム-硫黄(Li-S)電池である、[1]から[6]の何れか一項に記載の使用。
[8]
導電性添加剤材料として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、好ましくは、リチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池のアノード及び/又はカソードである、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
[9]
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記カソードの総質量の0.1~20重量%、好ましくは0.1重量%超、20重量%未満を示し、及び/又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記アノードの総質量の0.1~10重量%、好ましくは0.1重量%超、10重量%未満を示す、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
[10]
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有し、好ましくは、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、[8]又は[9]に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
[11]
前記アノード及び/又はカソードがまた、0.1~10重量%のバインダを備える、[8]から[10]の何れか一項に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
[12]
前記カソード及び/又はアノードがまた、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の、導電性カーボンブラック、Super P、アセチレンブラック、炭素ナノ繊維及びカーボンナノチューブから選択される1種又は複数のさらなる導電性添加剤を備える、[8]から[11]の何れか一項に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
[13]
前記カソードが、導電性添加剤材料として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、硫黄複合体を備える、[8]から[12]の何れか一項に記載のリチウム電池カソード。
[14]
電池がリチウム電池であり、前記アノードが、90~99.9重量%の追加の活物質を備え、前記追加の活物質が、黒鉛、ケイ素、ケイ素系化合物(SiO 2 )又はこれらの組み合わせである、[9]から[12]の何れか一項に記載の電池アノード。
[15]
前記追加の活物質がケイ素、ケイ素系化合物(SiO 2 )又はこれらの組み合わせであり、ケイ素、前記ケイ素系化合物(SiO 2 )若しくはこれらの組み合わせが、前記アノード中の前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークと混合されているか、又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、ケイ素、前記ケイ素系化合物(SiO 2 )若しくはこれらの組み合わせでコーティングされている、[14]に記載の電池アノード。
[16]
[8]から[15]の何れか一項に記載のアノード及び/又はカソードを備える充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池であって、前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、好ましくはリチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池である、充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池。
[17]
前記充電式の電池が、スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ及びカムコーダに、無停電電源装置(UPS)として、発電装置のエネルギー貯蔵として、医療及び通信システムに、並びに電気及び/又はハイブリッド車に備えられ、好適である、[16]に記載の充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池。
[18]
前記炭素ネットワークが、反応ゾーン3bと終結ゾーン3cとを含有する反応器3において、結晶性炭素ネットワークeを生成するために、金属触媒ナノ粒子を備える油中水型又は両連続型のマイクロエマルションcを、600℃超、好ましくは700℃超、より好ましくは900℃超、いっそうより好ましくは1000℃超、より好ましくは1100℃超、好ましくは最高3000℃、より好ましくは最高2500℃、最も好ましくは最高2000℃の温度における、前記反応ゾーン3bに注入することと、これらのネットワークeを前記終結ゾーン3cに移送することと、前記終結ゾーンにおいて、水dの中に吹き付けることにより、結晶性炭素ネットワークの形成をクエンチ又は停止することとによって、結晶性炭素ネットワークを生成するためのプロセスによって得られる、[1]から[7]の何れか一項に記載の炭素ネットワークの使用、[8]から[15]の何れか一項に記載のリチウム電池若しくはナトリウム電池のアノード及び/若しくはカソード、又は[16]若しくは[17]に記載の充電式リチウム電池若しくは充電式ナトリウム電池。
[19]
[8]から[15]の何れか一項に記載のリチウム電池若しくはナトリウム電池のアノード及び/若しくはカソード、又は[16]若しくは[17]に記載の充電式リチウム電池若しくは充電式ナトリウム電池を備える電池を動力とするデバイスであって、前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、好ましくはリチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池である、電池を動力とするデバイス。
[20]
前記デバイスがスマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ、カムコーダ、医療及び通信システム、無停電電源装置(UPS)、発電装置のエネルギー貯蔵デバイス、又は電気及び/若しくはハイブリッド車である、[19]に記載のデバイス。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池のアノード及び/又はカソード中の導電性添加剤材料としての、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークの使用であって、
前記炭素ネットワークにおける前記炭素ナノ繊維は共有結合しており、
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有する、炭素ネットワークの使用。
【請求項2】
前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記アノードの総質量の0.1~20重量%示す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記アノードの総質量の0.1~10重量%を示す、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記炭素ナノ繊維が、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記炭素ネットワークが結晶性炭素ナノ繊維を備える、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記炭素ナノ繊維の平均繊維長さが30~10,000nmである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、スマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ及びカムコーダに、無停電電源装置(UPS)として、発電装置のエネルギー貯蔵として、医療及び通信システムに、並びに電気及び/又はハイブリッド車に適用される、請求項1~6の何れか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記充電式リチウム電池がリチウム-硫黄(Li-S)電池である、請求項1~6の何れか一項に記載の使用。
【請求項9】
導電性添加剤材料として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、
前記炭素ネットワークにおける前記炭素ナノ繊維は共有結合しており、
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有する、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項10】
前記炭素ナノ繊維が、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、請求項9に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項11】
多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソードであって、前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、前記アノードの総質量の0.1~20重量%を示し、
前記炭素ネットワークにおける前記炭素ナノ繊維は共有結合しており、
前記炭素ネットワークが粒子内多孔質ネットワークを形成し、前記炭素ナノ繊維が前記炭素ネットワーク内の他の炭素ナノ繊維と、接続部を介して化学結合によって相互接続されており、前記炭素ネットワーク内の細孔が、ASTM D4404-10に従った水銀圧入式ポロシメトリを使用して、5~150nmの粒子内細孔直径サイズを有し、前記炭素ナノ繊維が、少なくとも2の繊維長さと厚さとの平均アスペクト比を有する、リチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項12】
前記炭素ナノ繊維が、0.340~0.5nmの範囲内のd間隔を有する、請求項11に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項13】
前記アノード及び/又はカソードがまた、0.1~10重量%のバインダを備える、請求項9~12の何れか一項に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項14】
前記カソード及び/又はアノードがまた、0.1~10重量%の、導電性カーボンブラック、Super P、アセチレンブラック、炭素ナノ繊維及びカーボンナノチューブから選択される1種又は複数のさらなる導電性添加剤を備える、請求項9~12の何れか一項に記載のリチウム電池又はナトリウム電池のアノード及び/又はカソード。
【請求項15】
前記カソードが、導電性添加剤材料として、多孔質で化学的に相互接続された、炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークを備える、硫黄複合体を備える、請求項9~12の何れか一項に記載のリチウム電池カソード。
【請求項16】
電池がリチウム電池であり、前記アノードが、90~99.9重量%の追加の活物質を備え、前記追加の活物質が、黒鉛、ケイ素、ケイ素系化合物又はこれらの組み合わせである、請求項9~12の何れか一項に記載の電池アノード。
【請求項17】
電池がリチウム電池であり、前記アノードが、90~99.9重量%の追加の活物質を備え、前記追加の活物質がケイ素、ケイ素系化合物又はこれらの組み合わせであり、ケイ素、前記ケイ素系化合物若しくはこれらの組み合わせが、前記アノード中の前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークと混合されているか、又は前記炭素ナノ繊維を備える炭素ネットワークが、ケイ素、前記ケイ素系化合物若しくはこれらの組み合わせでコーティングされている、請求項9~12の何れか一項に記載の電池アノード。
【請求項18】
請求項1~6の何れか一項に記載のアノード及び/又はカソードを備える充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池
【請求項19】
記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、リチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池である、請求項18に記載の充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池。
【請求項20】
前記炭素ネットワークが、反応ゾーン3bと終結ゾーン3cとを含有する反応器3において、結晶性炭素ネットワークeを生成するために、金属触媒ナノ粒子を備える油中水型又は両連続型のマイクロエマルションcを、600℃超の温度における、前記反応ゾーン3bに注入することと、これらのネットワークeを前記終結ゾーン3cに移送することと、前記終結ゾーンにおいて、水dの中に吹き付けることにより、結晶性炭素ネットワークの形成をクエンチ又は停止することとによって、結晶性炭素ネットワークを生成するためのプロセスによって得られる、請求項16の何れか一項に記載の炭素ネットワークの使用、請求項9~12の何れか一項に記載のリチウム電池若しくはナトリウム電池のアノード及び/若しくはカソード。
【請求項21】
請求項9~12の何れか一項に記載のリチウム電池若しくはナトリウム電池のアノード及び/若しくはカソードを備える電池を動力とするデバイス
【請求項22】
前記充電式リチウム電池又は充電式ナトリウム電池が、リチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池である、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記デバイスがスマートフォン、ラップトップ、デジタルカメラ、カムコーダ、医療及び通信システム、無停電電源装置(UPS)、発電装置のエネルギー貯蔵デバイス、又は電気及び/若しくはハイブリッド車である、請求項21に記載のデバイス。
【国際調査報告】