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特表2024-540224感染性動物疾患に対する免疫原性融合タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】感染性動物疾患に対する免疫原性融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241024BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 39/187 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/135 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/205 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/265 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/17 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/225 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/275 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/15 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/33 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K14/705
A61K47/64
A61K47/65
A61K47/68
A61K39/187
A61K39/135
A61K39/205
A61K39/265
A61K39/17
A61K39/225
A61K39/12
A61K39/275
A61K39/145
A61K39/15
A61P37/04
C12N15/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525869
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 US2022078832
(87)【国際公開番号】W WO2023081595
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,192
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522432642
【氏名又は名称】ナビキュア バイオファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ウー, チア-マオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC06
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA03
4C085BA54
4C085BA55
4C085BA56
4C085BA59
4C085BA61
4C085BA64
4C085BA73
4C085BA76
4C085BA82
4C085BA85
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
感染性動物疾患に対する免疫原性融合タンパク質。CD40結合ドメイン、病原体の抗原、CD40結合ドメイン及び抗原の間に位置する転移ドメイン、並びにCD40結合ドメイン及び転移ドメインの間に位置するフューリン及び/又はカテプシンL切断部位を含む融合タンパク質が開示される。また、抗原特異的細胞性免疫応答を誘発するための、又はそれを必要とする動物において病原体によって引き起こされる感染性動物疾患を軽減、阻害、治療及び/また若しくは改善するための医薬組成物、発現ベクター、及び本発明の融合タンパク質の使用も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質であって、
(a)CD40結合ドメイン、
(b)病原体の抗原、
(c)前記CD40結合ドメイン及び前記抗原の間に位置する転移ドメイン、並びに
(d)前記CD40結合ドメイン及び転位ドメインの間に位置するフューリン及び/又はカテプシンL切断部位
を含み、
ここで、前記病原体は、ブタコレラウイルス(CSFV)、アフリカブタコレラウイルス(ASFV)、ブタサーコウイルス2(PCV2)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ブタ水疱病ウイルス(SVDV)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)、パルボウイルス、ポックスウイルス、ロタウイルス、及びインフルエンザウイルスからなる群から選択される、少なくとも1つである、融合タンパク質。
【請求項2】
前記転移ドメインは、シュードモナス外毒素A(PE)転移ペプチドであり、及び前記CD40結合ドメインは前記融合タンパク質のN末端に位置する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記転移ドメインは、長さ26~112アミノ酸残基からなるPE転移ペプチドであり、及び配列番号5、6、7、8又は9と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記転移ドメインは、志賀毒素(Stx)転移ペプチドであり、及び前記抗原は前記融合タンパク質のN末端に位置する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記転移ドメインは、長さ8~84アミノ酸残基からなるStx転移ペプチドであり、及び配列番号12、13、14、15又は16と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記フューリン及び/又はカテプシンL切断部位は、配列番号1又は2のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
ペプチドリンカーをさらに含み、並びにフューリン及び/又はカテプシンL切断部位は、前記ペプチドリンカー中に存在する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記CD40結合ドメインは、CD40リガンド(CD40L)若しくはその機能的フラグメントであるか、又はCD40に対して特異的な抗体(CD40特異的抗体)若しくはその機能的フラグメントである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記CD40結合ドメインは、長さ154~261アミノ酸残基からなるCD40Lであり、配列番号17、18又は19と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記CD40結合ドメインは、CD40特異的抗体若しくはその結合フラグメント、又は単鎖可変領域フラグメント(scFv)であり、及び前記CD40特異的抗体又は前記scFvは、
(a)配列番号22を含む重鎖可変領域(VH)、及び
(b)配列番号23を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記CD40結合ドメインは、CD40特異的抗体又はその結合フラグメントであり、前記CD40特異的抗体はVH及びVLを含み、VHはVH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3を含み、並びにVLはVL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含み、さらに、ここで、
(i)前記VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3は、それぞれ、配列番号24、配列番号25及び配列番号26のアミノ酸配列を含み、並びに
(ii)前記VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3は、それぞれ配列番号27、配列番号28及び配列番号29のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記抗原のC末端に位置する小胞体(ER)保持配列をさらに含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記CD40結合ドメイン並びに前記フューリン及び/又はカテプシンL切断部位との間に位置するCD28活性化ペプチドをさらに含み、ここで、前記CD28活性化ペプチドは、28~53アミノ酸残基の長さを有し、及び配列番号35、36及び37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
(a)請求項1に記載の融合タンパク質、及び
(b)医薬的に許容される担体及び/又はアジュバント
を含む医薬組成物。
【請求項15】
抗原特異的細胞性免疫応答を誘発するための、又はそれを必要とする動物において病原体によって引き起こされる感染性動物疾患を軽減、阻害、治療、及び/若しくは改善するための医薬の製造における、請求項1~13のいずれか1項に記載の融合タンパク質、又は請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子配列表の参照
電子配列表(10040-004PCT_sequence listing_ST26.xml、サイズ84KB、及び作成日2022年10月24日)の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、融合タンパク質に関し、そして、より具体的には、感染性動物疾患に対する抗原特異的細胞性免疫応答を誘発するための免疫原性融合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0003】
獲得免疫系には体液性及び細胞性免疫があり、両者とも侵入してきた病原体を破壊する。B-及びT-リンパ球は、それぞれ抗体及び細胞性免疫応答を担っている。病原体に対する獲得免疫は、将来の病原体との遭遇に対する免疫応答の増強につながる。いくつかの獲得免疫療法が臨床の場で評価されてきた。しかしながら、病原体によって引き起こされる感染性動物疾患を治療するための新たな治療用ワクチンの開発が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本発明は、融合タンパク質であって、(a)CD40結合ドメイン、(b)病原体の抗原、(c)上記CD40結合ドメイン及び上記抗原の間に位置する転移ドメイン、並びに(d)上記CD40結合ドメイン及び転位ドメインの間に位置するフューリン及び/又はカテプシンL切断部位を含み、ここで、上記病原体は、ブタコレラウイルス(CSFV)、アフリカブタコレラウイルス(ASFV)、ブタサーコウイルス2(PCV2)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ブタ水疱病ウイルス(SVDV)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)、パルボウイルス、ポックスウイルス、ロタウイルス、及びインフルエンザウイルスからなる群から選択される、少なくとも1つである、融合タンパク質、に関する。
【0005】
別の態様において、本発明は、DNAフラグメント、又は本発明の融合タンパク質をコードするDNAフラグメントを含む発現ベクターに関する。
【0006】
本発明はさらに、本発明の融合タンパク質及び医薬的に許容される担体及び/又はアジュバントを含む医薬組成物又はワクチン組成物に関する。
【0007】
さらに別の態様において、本発明は、抗原特異的細胞性免疫応答を誘発するための、又はそれを必要とする動物において病原体によって引き起こされる感染性動物疾患を軽減、抑制、治療、及び/若しくは改善するための医薬の製造における、本発明の融合タンパク質、医薬組成物、若しくはワクチン組成物の使用に関する。
【0008】
本発明はまた、抗原特異的細胞性免疫応答の誘発に使用するための、又はそれを必要とする動物において病原体によって引き起こされる感染性動物疾患を軽減、抑制、治療、及び/若しくは改善するために使用するための、本発明の融合タンパク質、医薬組成物、又はワクチン組成物に関する。
【0009】
あるいは、本発明は、抗原特異的細胞性免疫応答を誘発するための方法、又はそれを必要とする動物において病原体によって引き起こされる感染性動物疾患を軽減、抑制、治療、及び/又は改善するための方法に関し、上記方法は、有効量の本発明の融合タンパク質、医薬組成物、又はワクチン組成物を、それを必要とする動物に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A-E】図1A~Eは本発明のベクター図である。
図2A-E】図2A~Eは本発明のベクター図である。
図3A-H】図3A~Hは、本発明の種々の実施形態における免疫原性融合タンパク質を例示する模式図である。
図4-6】図4~6は、それぞれ、各動物群からのCD4メモリーT細胞における、IFN-γ、IL-2、及びTNF-αの誘導を示すグラフである。
図7A-B】図7A~Bは、各動物群の脾臓細胞におけるIFN-γ+イムノスポットを示すグラフである。
図8A-B】図8A~Bは、各動物群における21日目の血清抗原特異的抗体レベルを示すグラフである。抗体レベルは、コーティングタンパク質としてCD40L-TPE-E2-NS3p融合タンパク質を用いたELISAにより測定した。
図9A-B】図9A~Bは、各動物群における21日目の血清抗原特異的抗体レベルを示すグラフである。抗体レベルは、コーティングタンパク質としてE2-NS3pペプチドを用いたELISAによって測定した。
図10A-C】図10A~Cは、それぞれ、投与スケジュールを延長した各動物群からのCD4メモリーT細胞における、IFN-γ、IL-2、及びTNF-αの誘導を示すグラフである。
図11図11は、投与スケジュールを延長した各動物群からの脾臓細胞におけるIFN-γイムノスポットを示すグラフである。
図12図12は、投与スケジュールを延長した各動物群における血清抗原特異的抗体レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
プロフェッショナルAPC及び非プロフェッショナルAPCは、MHCクラスI分子を用いて細胞膜上に内因性ペプチドを表示する。MHCクラスII分子を用いるプロフェッショナルAPCによって表示される外来抗原とは対照的に、これらのペプチドは細胞自体に由来する。細胞傷害性CD8+T細胞は、MHCクラスI分子によって提示された抗原と相互作用することができる。
【0012】
CD40は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、及びB細胞)に発現する共刺激性タンパク質である。CD40LのCD40への結合は抗原提示細胞を活性化し、及び様々な下流効果を誘導する。CD40はがん免疫療法の創薬標的である。
【0013】
「CD40結合ドメイン」という用語は、CD40を認識及び結合することができるタンパク質を指す。CD40結合ドメインは、以下の1つから選択してもよい:「CD40リガンド(CD40L)又はその機能的フラグメント」、「抗CD40抗体又はその機能的フラグメント」。
【0014】
「CD40L」、「CD40リガンド」、及び「CD154」という用語は互換性がある。CD40Lは抗原提示細胞(APC)上のCD40(タンパク質)に結合し、標的細胞の種類によって様々な効果をもたらす。CD40Lは、T細胞のプライミング及びCD40発現免疫細胞の活性化を介して、免疫応答の共刺激及び制御に重要な役割を果たしている。US 5、962、406はCD40Lのヌクレオチド及びアミノ酸配列を開示している。
【0015】
「抗CD40抗体」、「CD40特異的抗体」、及び「CD40に対する特異的抗体」という用語は互換性がある。
【0016】
ポリペプチドのアミノ酸配列を記述する際に「実質的にからなる」という用語が使用される場合、それは、タンパク質の翻訳要件に応じて、ポリペプチドの一部としてN末端に開始アミノ酸「M」(開始コドンAUGから翻訳される)を有していてもよく、有していなくてもよいことを意味する。例えば、第2抗原を第1抗原に融合させる場合、第2抗原の開始アミノ酸「M」は省略することも、残すこともできる。
【0017】
本明細書において、「転移ドメイン」とは、融合又は連結した抗原をエンドソーム膜を越えて細胞の細胞質に転移させる生物学的活性を有するポリペプチドである。転移ドメインは、抗原提示のために、抗原がクラスI主要組織適合複合体(MHC-1)経路(すなわち、細胞傷害性T細胞経路へ向かうのを誘導又は促進する。
【0018】
「シュードモナス外毒素A(PE)転移ペプチド(TPE)」という用語は、転移における生物学的活性を有するPEドメインIIペプチド又はその機能的フラグメントを指す。
【0019】
「志賀毒素(Stx)転移ペプチド(TStx)」という用語は、転移における生物学的活性を有するStx転移ドメイン又はその機能的フラグメントを指す。
【0020】
「フューリン及び/又はカテプシンL」又は「フューリン/カテプシンL」という用語は互換性がある。
【0021】
「フューリン及び/又はカテプシンL切断部位」という用語は、フューリン又はカテプシンLによって、あるいはフューリン及びカテプシンLの両方によって切断され得る、少なくとも4個のアミノ酸を有する短いペプチド配列を指す。上述の切断部位はフューリン及び/又はカテプシンLプロテアーゼ感受性ぶいである。それは、融合タンパク質に導入される上述の切断部位を含むペプチドリンカーであってもよい。さらに、フューリン及び/又はカテプシンL切断部位は、融合タンパク質の転移ドメイン中又はそれに隣接して存在するPE又はStx内在性プロテアーゼ切断部位であってもよい。
【0022】
「抗原」及び「免疫原」という用語は互換性がある。抗原とは、病原体に由来する抗原性タンパク質又はポリペプチドを指す。上述の抗原は、望ましい免疫応答を誘導するための少なくとも1つのエピトープを含む。いくつかの実施形態において、抗原は、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、アフリカブタコレラウイルス(ASFV)、ブタコレラウイルス(CSFV)、ブタサーコウイルス2(PCV2)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、ブタ水疱病ウイルス(SVDV)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)、パルボウイルス、ポックスウイルス、ロタウイルス、及びインフルエンザウイルス、からなる群から選択される病原体由来の長さ少なくとも8アミノ酸のポリペプチドである。
【0023】
CD28(Cluster of Differentiation 28)はT細胞に発現するタンパク質の1つで、T細胞の活性化及び生存に必要な共刺激シグナルを提供する。T細胞レセプター(TCR)に加えてCD28を介したT細胞刺激は、様々なインターロイキン(特にIL-6)の産生に強力なシグナルを与える。CD28はCD80(B7.1)及びCD86(B7.2)タンパク質の受容体である。Toll様受容体リガンドによって活性化されると、抗原提示細胞(APC)ではCD80の発現が上昇する。CD28はナイーブT細胞に構成的に発現する唯一のB7レセプターである。ナイーブT細胞のTCRがCD28:B7相互作用なしにMHC:抗原複合体と結合すると、T細胞は反応不顕性となる。
【0024】
「有効量」という用語は、治療対象に治療効果を与えるのに必要な活性融合タンパク質の量を指す。有効用量は、当業者が認識するように、投与経路、賦形剤使用量、及び他の治療的処置との併用の可能性に依存して変化する。
【0025】
「治療する」又は「治療」という用語は、がん若しくは感染症、又はそのような疾患に対する症状若しくは素因を有する、それを必要とする対象に、疾患、その症状、又はそれに対する素因を治癒、緩和、軽減、治療、改善、又は低減、抑制する目的で、有効量の融合タンパク質を投与することを指す。このような対象者は、任意の適切な診断方法による結果に基づいて、医療専門家によって特定され得る。
【0026】
「0~12反復」又は「2~6反復」とは、「0~12」又は「2~6」の範囲内のすべての整数単位量が、本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。したがって、「0、1、2、3、4、...10、11及び12」又は「2、3、4、5及び6」の単位量は、本発明の実施形態において含まれる。
【0027】
略語:MCS、マルチクローニングサイト。Rap1、Ras-proximate-1又はRas-related protein 1。CD40、Cluster of differentiation 40。CDR、相補性決定領域。s.c.、皮下。a.a.、アミノ酸。
【0028】
融合タンパク質
本発明は、融合タンパク質であって、(a)CD40結合ドメイン、(b)病原体の抗原、(c)上述のCD40結合ドメイン及び上述の抗原の間に位置する転移ドメイン、並びに(d)上述のCD40結合ドメイン及び転位ドメインの間に位置するフューリン及び/又はカテプシンL切断部位を含み、ここで、上述の病原体は、ブタコレラウイルス(CSFV)、アフリカブタコレラウイルス(ASFV)、ブタサーコウイルス2(PCV2)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ブタ水疱病ウイルス(SVDV)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)、パルボウイルス、ポックスウイルス、ロタウイルス、及びインフルエンザウイルスからなる群から選択される、融合タンパク質、に関する。
【0029】
本発明の融合タンパク質は、MHCクラスI抗原提示経路を介して抗原特異的T細胞免疫応答を誘発することができる。融合タンパク質は共通の作用機序を有する。CD40L-TPE-Ag(Agは任意の適切な抗原を表す)を例として用いると、作用機序は以下である。
(1)CD40L-TPE-AgはCD40を発現している細胞(例えば、樹状細胞やマクロファージ)に結合し、CD40を介したエンドサイトーシスにより取り込まれる、
(2)CD40L-TPE-Agはエンドソーム内でフューリンプロテアーゼ及び/又はカテプシンLプロテアーゼによって切断され、CD40LフラグメントがTPE-Agフラグメントから取り除かれる、
(3)TPE-Agフラグメントはエンドソーム膜を通過して細胞質に入る、
(4)TPE-Agフラグメントは細胞質プロテアソームによって消化され、エピトープを含む小さな抗原が生じる、
(5)小さな抗原は、抗原提示のためにMHCクラスI経路を介して送達される、及び
(6)CD8+T細胞特異的免疫応答は、T細胞がこれらの提示抗原を認識することによって誘導又は増強される。
【0030】
同じ作用機序がAg-TStx-CD40Lにも当てはまり、フューリン及び/又はカテプシンLプロテアーゼの切断がCD40LフラグメントからAg-TStxフラグメントを除去する。こうして、Ag-TStxフラグメントはエンドソーム膜を通過して細胞質に入り、細胞質プロテアソームによって消化され、エピトープを含む小さな抗原を生じる。この小さな抗原は、抗原提示のためにMHCクラスI経路を経由して送達され、提示された抗原を認識するT細胞によってCD8+T細胞特異的免疫応答が誘導又は増強される。
【0031】
本発明の融合タンパク質では、抗原及び転移ドメインとの間にフューリン及び/又はカテプシンL切断部位は存在しない。フューリン及び/又はカテプシンL切断部位の存在及び融合タンパク質中のその位置は、フューリン及び/又はカテプシンL切断後に融合タンパク質からCD40結合ドメインを除去することを可能にする。
【0032】
一実施形態において、フューリン及び/又はカテプシンL切断部位は、4~20アミノ酸、好ましくは4~10アミノ酸、より好ましくは4~6アミノ酸を含む、又はからなる。他の実施形態において、フューリン及び/又はカテプシンL切断部位は、配列番号1又は2を含む、からなる、又はそれらである。
【0033】
他の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、CD40結合ドメイン及び転移ドメインとの間にペプチドリンカーをさらに含み、フューリン及び/又はカテプシンL切断部位は、上述のペプチドリンカー中に存在する。ペプチドリンカーは、(a)剛直なリンカー (EAAAAK)n又は (配列番号38)n、及び(b)フューリン及び/又はカテプシンL切断部位を含む切断可能なリンカーであって、ここで、nは、0~12、好ましくは2~6、より好ましくは3~4の整数であり、及び上述のフューリン及び/又はカテプシンL切断部位は、配列番号1又は2を含む、切断可能なリンカー、を含んでもよい。一実施形態において、ペプチドリンカーは、(EAAAAK)3及びRX1RX2X3R(配列番号2、ここで、X1はA、X2はY、X3はK)を含む。他の実施形態において、ペプチドリンカーは、RX1X2R(配列番号1、ここで、X1はV、X2はA)及び (EAAAAK)3を含む。
【0034】
転移ドメインは、シュードモナス外毒素A(PE)又は志賀毒素(Stx)から選択されてもよい。一実施形態において、転位ドメインはシュードモナス外毒素A(PE)転位ペプチド(TPE)を含むか、又はそれであり、ただし、CD40結合ドメインは融合タンパク質のN末端に位置する。他の実施形態において、転移ドメインは志賀毒素(Stx)転移ペプチド(TStx)を含むか、又はそれであり、ただし抗原は融合タンパク質のN末端に位置する。
【0035】
一実施形態において、本発明の融合タンパク質は、順次(N末端からC末端まで)、(a)CD40結合ドメイン、(b)フューリン及び/又はカテプシンL切断部位、(c)PE転移ペプチド(TPE)を含む転移ドメイン、並びに(d)病原体の抗原、を含む。
【0036】
他の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、順次(N末端からC末端まで)、(a)CD40結合ドメイン、(b)フューリン及び/又はカテプシンL切断部位を含むペプチドリンカー、(c)PE転移ペプチド(TPE)を含む転移ドメイン、並びに(d)病原体の抗原、を含む。
【0037】
他の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、順次(N末端からC末端まで)、(a)病原体の抗原、(b)Stx転移ペプチド(TStx)を含む転移ドメイン、(c)フューリン及び/又はカテプシンL切断部位、並びに(d)CD40結合ドメイン、を含む。
【0038】
他の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、順次(N末端からC末端まで)、(a)病原体の抗原、(b)Stx転移ペプチド(TStx)を含む転移ドメイン、(c)フューリン及び/又はカテプシンL切断部位を含むペプチドリンカー、並びに(d)CD40結合ドメイン、を含む。
【0039】
TPE又はTStxは、転位における生物学的活性を有する機能的部位である。フューリン及び/又はカテプシンL切断部位は、配列番号1、配列番号2、又はPE若しくはStx内の、若しくはそれらに由来する内在性フューリン切断部位から選択される1つであってもよい。
【0040】
一実施形態において、PE転移ペプチド(TPE)は、シュードモナス外毒素Aタンパク質(全長PE、配列番号4)のドメインII(a.a.残基253~364、配列番号9)又はその機能的部位である。
【0041】
他の実施形態において、PE転位ペプチド(TPE)は、長さ26~112 a.a.残基からなる。PE転位ペプチド(TPE)は、最小機能的フラグメントであるGWEQLEQCGYPVQRLVALYLAARLSW(配列番号5)を含む。
【0042】
一実施形態において、PE転位ペプチド(TPE)は、配列番号5、6、7、8又は9と少なくとも95%、97%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、TPEは、配列番号5、6、7、8及び9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、TPEはPE280-305(配列番号5)、PE280-313(配列番号6)、PE268-313(配列番号7)、PE253-313(配列番号8)、又はPE253-364(配列番号9、全長PEドメインII)である。
【0043】
一実施形態において、Stx転位ペプチド(TStx)は、志賀毒素(Stx)サブユニットA(配列番号10)又は志賀様毒素I(Slt-I)サブユニットA(配列番号11)の機能的フラグメントである。Stx転位ペプチドは転位機能を有するが、サブユニットAの細胞毒性作用はない。志賀毒素(Stx)サブユニットA及びSlt-IサブユニットAの配列の同一性は99%であり、及び2つのタンパク質はたった1アミノ酸の違いしか有さない。
【0044】
他の実施形態において、Stx転位ペプチド(TStx)は、長さ8~84のa.a.残基からなる。Stx転位ペプチド(TStx)は最小機能的フラグメントであるLNCHHHAS(配列番号12)を含む。
【0045】
一実施形態において、Stx転位ペプチド(TStx)は、配列番号12、13、14、15又は16と少なくとも95%、97%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、TStxは、配列番号12、13、14、15及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、TStxは、StxサブユニットAのStx240-247(配列番号12)、Stx240-251(配列番号13)、Stx211-247(配列番号14)、Stx211-251(配列番号15)又はStx168-251(配列番号16)である。
【0046】
CD40結合ドメインは、本発明の融合タンパク質がCD40発現細胞(例えば、樹状細胞又はマクロファージ)上のCD40受容体に結合することを可能にする。CD40結合ドメインは、(i)CD40リガンド(CD40L)又はその機能的フラグメント、及び(ii)CD40特異的抗体又はその機能的フラグメントからなる群から選択される1つであってもよい。一実施形態において、CD40Lの機能的フラグメントは、全長CD40L1-261タンパク質の膜貫通領域及び細胞質領域を実質的に欠く切断型CD40Lである(配列番号17)。
【0047】
他の実施形態において、CD40L又はその機能的フラグメントは、長さ154~261 a.a.残基からなる。他の実施形態において、CD40Lは、最小機能的フラグメントである配列番号19を含む。さらに他の実施形態において、CD40L又はその機能的フラグメントは、長さが154~261のa.a.残基からなり、上述のCD40Lは、最小機能的フラグメントである配列番号19を含む。
【0048】
一実施形態において、CD40Lは、配列番号17、18又は19と少なくとも95%、97%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、CD40Lは、CD40L1-261(配列番号17)、CD40L47-261(配列番号18)及びCD40L108-261(配列番号19)からなる群より選択される。
【0049】
他の実施形態において、CD40結合ドメインはCD40特異的抗体(又は抗CD40抗体)である。CD40特異的抗体は、CD40タンパク質を特異的に認識し、結合する抗体である。CD40特異的抗体は、CD40発現細胞上のCD40タンパク質に結合することができる。
【0050】
一実施形態において、CD40特異的抗体は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号22のアミノ酸配列からなり、及びVLは、配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0051】
他の実施形態において、CD40特異性抗体は、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、二量体(dscFv)、三量体(triabody)、四量体(tetrabody)、二重特異性抗体(bispecific-scFv)、scFv-Fc、scFc-CH3、単鎖抗原結合フラグメント(scFab)、抗原結合フラグメント(Fab)、Fab2、ミニボディ(minibody)及び完全抗体からなる群から選択される。
【0052】
他の実施形態において、CD40結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、並びにVH及びVLを連結する可動性リンカー(L)を含むCD40特異的scFv(抗CD40 scFv)である。一実施形態において、CD40特異的scFvは配列番号20又は21を含む。
【0053】
他の実施形態において、本発明によるCD40結合ドメインは、(i)CD40特異的抗体若しくはその結合フラグメント、又は(ii)CD40特異的単鎖可変領域フラグメント(scFv)若しくはその結合フラグメントであり、上述のCD40特異的抗体又は上述のCD40特異的scFvは、VH及びVLを含み、ここで、(a)VHは配列番号22を含み、及び(b)VLは配列番号23を含む。
【0054】
他の実施形態において、CD40特異的抗体又はCD40特異的scFvは、VH及びVLを含み、VHは、VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3を含み、並びにVLは、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含み、ここで、(i)VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3はそれぞれ配列番号24、25及び26、を含み、及び(ii)VL CDR1、VL CDR2 及びVL CDR3はそれぞれ配列番号27、28及び29、を含む。
【0055】
別の実施形態において、CD40結合ドメインは、VH及びVLを含むCD40特異的scFvであり、ここで、(a)VHは配列番号22を含み、及び(b)VLは配列番号23を含む。
【0056】
他の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、抗原のC末端に位置する小胞体(ER)保持配列をさらに含み、ただし、転移ドメインはPE転移ペプチド(TPE)を含む。ER保持配列は、配列番号30、31、32、33又は34を含んでもよい。一実施形態において、ER保持配列は配列番号30である。
【0057】
他の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、CD40結合ドメイ及びンフューリン及び/又はカテプシンL切断部位との間に位置するCD28活性化ペプチドをさらに含む。
【0058】
一実施形態において、CD28活性化ペプチドは、長さ28~53 a.a.残基からなる。他の実施形態において、CD28活性化ペプチドは、最小機能的フラグメントである配列番号35を含む。他の実施形態において、CD28活性化ペプチドは、長さ28~53 a.a.残基からなり、及び上述のCD28活性化ペプチドは、最小機能的フラグメントである配列番号35を含む。
【0059】
他の実施形態において、CD28活性化ペプチドは、配列番号35、36又は37と少なくとも95%、97%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、CD28活性化ペプチドは、配列番号35、36及び37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、CD28活性化ペプチドは配列番号35、36又は37である。
【0060】
一実施形態において、病原体は、PRRSV、ASFV、CSFV、PCV2、FMDV、PEDV、SVDV、PRV、TGEV、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、NDV、IBV、IBDV、パルボウイルス、ポックスウイルス、ロタウイルス、及びインフルエンザウイルスからなる群から選択される。他の実施形態において、病原体は、PRRSV、ASFV、CSFV、PCV2、FMDV及びPEDVからなる群から選択される。
【0061】
抗原は、PRRSV、ASFV、CSFV、PCV2、FMDV、PEDV、SVDV、PRV、TGEV、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、NDV、IBV、IBDV、パルボウイルス、ポックスウイルス、ロタウイルス、及びインフルエンザウイルス由来の、又はこれらから選択される1つ若しくは複数の抗原性ポリペプチドを含んでもよい。
【0062】
一実施形態において、抗原は、ASFV CP204Lタンパク質、ASFV E183Lタンパク質、CSFV E2タンパク質、CSFV NS3pタンパク質、PCV2 ORF2タンパク質、PEDV S1タンパク質、PRRSV ORF6タンパク質、PRRSV ORF5タンパク質、PRRSV ORF7タンパク質、及びそれらの抗原性ポリペプチドからなる群から選択される又はそれら由来の病原性抗原である。上述の抗原は、少なくとも2つの抗原性ポリペプチドを含む融合抗原であってもよい。例えば、ASFV CP204L及びE183Lの融合抗原、CSFV E2及びNS3pの融合抗原、PRRSV及びPCV2由来の抗原の融合などが挙げられる。
【0063】
一実施形態において、抗原は、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50又は51と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、抗原は、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50又は51と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%同一であるペプチドである。他の実施形態において、抗原は、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50又は51のアミノ酸配列を有するペプチドである。さらに別の実施形態において、抗原は、配列番号39、40、41、42、43又は44のペプチドである。
【0064】
一実施形態において、上述の抗原は、所望の免疫応答を誘導するための少なくとも1つのエピトープを含み、好ましくは1から50エピトープを含有し、より好ましくは1から20エピトープを含有する。
【0065】
抗原は、単一の抗原又はその抗原フラグメントであってもよく、又は2つの抗原性ポリペプチド間のリンカーの有無にかかわらず融合した少なくとも2つの抗原性ポリペプチドを含む融合抗原であってもよい。
【0066】
融合抗原は、2つの異なる抗原性ポリペプチドを連結する剛直なリンカー、(EAAAAK)nを有していてもよく、ここでnは0~12、好ましくは2~6、より好ましくは3~4の整数である。換言すれば、剛直なリンカーは、配列EAAAAK(配列番号38)の0から12反復、2から6反復、又は3から4反復を含む。
【0067】
本発明の融合タンパク質は、CD40結合ドメイン並びにフューリン及び/又はカテプシンL切断部位との間に剛直なリンカーをさらに含んでもよい。剛直なリンカーは、アミノ酸配列EAAAAK(配列番号38)の0~12回の反復を含む。剛直なリンカーは、 (EAAAAK)n、又は (配列番号38)nであってもよく、ここで、nは、0~12、好ましくは2~6、より好ましくは3~4の整数である。一実施形態において、剛直なリンカーは2から6反復又は3から4反復の配列番号38を含む。
【0068】
別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、配列番号52、53、54、55、56、57、58又は59に対して少なくとも90%、95%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む、又は実質的にそれらからなる。さらに他の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、配列番号52、53、54、55、56、57、58又は59からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、又は実質的にそれらからなる。
【0069】
本発明はさらに、抗原特異的細胞性免疫応答及び/又は抗原特異的体液性免疫応答を誘発するための、又はそれを必要とする動物において病原体によって引き起こされる感染性動物疾患を軽減、阻害、治療、及び/又は改善するための医薬の製造における融合タンパク質に関する。一実施形態において、動物は非ヒト動物である。他の実施形態において、動物は病原体に感染していない。
【0070】
医薬組成物/ワクチン
本発明はさらに、
(a)本発明の融合タンパク質、及び
(b)医薬的に許容される担体及び/又はアジュバント
を含む、医薬組成物又はワクチンに関する。
【0071】
本発明のワクチンは、予防及び/又は治療ワクチンである。一実施形態において、融合タンパク質は、未感染の動物において、目的の病原体に対する抗原特異的細胞性免疫応答及び抗原特異的体液性応答を誘発するために使用するためのものである。
【0072】
「担体」又は「薬学的に許容される担体」という用語は、あらゆる全ての溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定化剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、香味剤、染料など、及びそれらの組み合わせを含み、当業者に公知であろう(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Ed. Mack Printing Company、1990、pp.1289~1329を参照)。
【0073】
適切なアジュバントとしては、(1)水中油型(o/w)アジュバント(例えば、MONTANIDETM ISA 15A VG、MONTANIDETM ISA 35 VG、及びMONTANIDETM ISA 28R VG)、(2)油中水型(w/o)アジュバント(例えば、MONTANIDETM ISA 61 VG、MONTANIDETM ISA 71 VG、MONTANIDETM ISA 71R VG、MONTANIDETM ISA 761 VG、MONTANIDETM ISA 78 VG、MONTANIDETM ISA 763B VG、MONTANIDETM ISA 660 VG、及びフロイント不完全アジュバント)、(3)水中油中水型(w/o/w)アジュバント(例えば、MONTANIDETM ISA 201 VG、MONTANIDETM ISA 206 VG、及びMONTANIDETM ISA 207 VG)、(4)アルミニウム塩アジュバント(例えば、水酸化及びリン酸アルミニウム)、(5)サポニンベースのアジュバント(例えば、GPI-0100、Quil A又はQS-21)、(6)Toll様受容体(TLR)アゴニストアジュバント(例えば、ポリI:C、モノホスホリルリピドA、CpGオリゴヌクレオチド)、及び(7)上記のアジュバントの混合物、が挙げられるが、これらに限定されない。CpGオリゴヌクレオチドアジュバントとしては、クラスA CpG(すなわち、CpG1585、CpG2216又はCpG2336)、クラスB CpG(すなわち、CpG1668、CpG1826、CpG2006、CpG2007、CpG BW006又はCpG D-SL01)及びクラスCpG(すなわち、CpG2395、CpG M362又はCpG D-SL03)、が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なCpGアジュバントはCpG1018である。一実施形態において、アジュバントはCpGオリゴヌクレオチドである。他の実施形態において、アジュバントはフロイント不完全アジュバント(FIA)である。
【0074】
医薬組成物/ワクチンは、経皮、経粘膜、鼻咽頭、肺、若しくは直接注射、又は全身(例えば、非経口)若しくは局所(例えば、腫瘍内又は局所内注射)投与に適した、経腸又は非経口剤形であってもよい。非経口注射は、静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、皮下(s.c.)又は皮内(i.d.)経路であってもよい。医薬組成物はまた、経口的に、例えば、錠剤、コーティング錠剤、ドラジェ、硬ゼラチンカプセル及び軟ゼラチンカプセルの形態で投与されてもよい。
【0075】
融合タンパク質の用量は、制御されるべき疾患、患者の年齢及び個々の状態、並びに投与様式によって変化してもよい。用量は、所望の治療応答を達成するための本発明の融合タンパク質の治療的有効量を得るために、それぞれの場合において個々の要求に適合させてもよい。
【0076】
成人患者には、約0.1から50 mg、特に約0.1から5 mgの単回用量が考慮される。疾患の重篤度や正確な薬物動態プロファイルによっては、融合タンパク質を週、隔週、月ごとに1用量ずつ投与してもよく、このような治療を充足させるために全体で1サイクルあたり1~6用量を投与する。
【0077】
一実施形態において、本発明は、本発明の融合タンパク質、及びそれを必要とする動物において病原体によって引き起こされる感染性動物疾患の1つ又は複数の症状を治療するための、その使用についての説明書を含む、キット又は包装された医薬組成物を提供する。
【実施例
【0078】
方法及び材料
表1は、配列番号及び対応するポリペプチド/融合タンパク質を示す。
【0079】
【表1】
【0080】
フローサイトメトリー。脾臓細胞を抗原刺激剤(本発明の融合タンパク質に使用される特異的抗原に対する免疫応答を高めるためのもの)で37℃で2時間刺激し、次いで50 μg/mLのBrefeldin A及びMonensinで37℃で2時間処理した。細胞を回収し、0.5%BSAを含有するPBSで洗浄し、そして、APC/Cy7標識抗CD3抗体、PerCP/Cy5.5標識抗CD4抗体、FITC標識抗CD8抗体、PE標識抗CD44抗体、及びAPC標識抗CD62L抗体で同時に染色した。洗浄後、細胞を透過処理し、固定し、そしてPE標識抗IFN-γ抗体及びPE/Cy7標識抗IL-2抗体及びeFluor450標識抗TNF-α抗体で同時に細胞内染色した。CD8+又はCD4+メモリーT細胞表現型(CD3+/CD44hiCD62Llo)を持つ脾臓細胞の細胞内サイトカイン誘導(IFN-γ、IL-2又はTNF-α)を、Galliosフローサイトメーター及びKaluzaソフトウェアでさらに解析した。
【0081】
酵素結合イムノスポット(ELISpot)アッセイ。脾臓細胞を前処理したマウスIFN-γ捕捉96ウェルプレート(CTL IMMUNOSPOT(登録商標))に抗原刺激物質(免疫反応を高めるためのもの)の存在下又は非存在下で、細胞密度2×105 cells/wellで3ウェルずつ播種した37℃で24時間培養後、細胞を廃棄した。洗浄後、捕捉されたIFN-γを、室温で2時間ビオチン標識抗マウスIFN-γ抗体により検出し、そしてメーカーの説明書に従ってIFN-γ-イムノスポットを形成させた。IFN-γ-イムノスポットのスキャン及びカウントはIMMUNOSPOT(登録商標)S5 Micro analyzer(CTL)で行った。結果は100万脾臓細胞あたりのIFN-γ+イムノスポットとして示した。
【0082】
間接的酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)。採取した全血サンプルは、4℃で30~60分間静置した後、5,000gで10分間遠心分離し、凝血塊をペレット化した。血清サンプルは-20℃で保存した。所望の抗原特異的抗体を捕捉するために、対応する抗原性タンパク質又はペプチドを合成し、コーティングタンパク質として使用した。コーティングタンパク質をPBS緩衝液で希釈し、そして1 μg/ウェルで96ウェルプレートに分注した。4℃で一晩インキュベートした後、96ウェルプレートをPBS中1%BSAで37℃、1時間ブロッキングした。血清サンプルを解凍し、その後1%BSAを含むPBSで10倍連続希釈した。コーティングタンパク質を100 μlの1000倍希釈血清サンプルとともに37℃で2時間インキュベートした。リン酸緩衝生理食塩水TWEEN(登録商標)-20(PBST)で4回洗浄した後、コーティングタンパク質に結合した抗原特異的抗体を、37℃で30分間、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗マウスIgG(希釈度1:10,000、Cat#31430、Thermo Fisher Science)により検出した。PBSTで4回洗浄した後、100 μLのTMB基質存在下でHRPを介した発色を行い、そして100 μLの1N塩酸で消色した。血清サンプル中の抗原特異的抗体の相対力価は、450 nmの吸光度によって決定した。
【0083】
統計解析。t検定を用い、p<0.05のとき有意な結果とした。
【0084】
実施例1
発現ベクターの構築
CD40L-TPE-CP204L-E183L、CD40L-TPE-CP204L、CD40L-TPE-E183L及びCD40L-TPE-E2-NS3p。ベクターCD40L-TPE-CP204L-E183L(図1A)を構築し、(a)切断型CD40リガンドCD40L108-261(配列番号19)、(b)(EAAAAK)3(配列番号3)及びRX1RX2X3R(配列番号2、ここでX1はA、X2はY、X3はK)を含む切断可能なペプチドリンカー、(c)PE転位ペプチドPE280-305(配列番号5)、及び(d)抗原ASFV CP204L(配列番号39)及び抗原ASFV E183L(配列番号40)を含む融合抗原ASFV CP204L-E183L(配列番号41)、を含むCD40L-TPE-CP204L-E183L(配列番号52、図3A)融合タンパク質を作製した。
【0085】
簡潔には、CD40L108-261、切断可能なリンカー及びPE転移ペプチド(PE280-305)を含むHindIIICD40L-Linker-PENcoI、XhoI、SalIをコードするDNAフラグメントをPCR合成し、HindIII/SalIで消化し、そしてHindIII/XhoI切断部位を有するプラスミドpTAC-MAT-Tag-2(カタログ番号E5405、Sigma-Aldrich)に連結させ、プラスミドP07-His-pNCを得た(図1B)。Hisタグを持つ上述の抗原ASFV CP204L-E183Lをコードする別のDNAフラグメントを、NcoI/XhoI部位を介してプラスミドP07-His-pNC(図1B)に挿入し、発現ベクターCD40L-TPE-CP204L-E183Lを作製した(図1A)。
【0086】
切断可能なリンカーは、融合タンパク質からTPE-CP204L-E183Lフラグメントを放出するために、フューリン及び/又はカテプシンLプロテアーゼが本発明の融合タンパク質を切断することを可能にする。
【0087】
上述した同様の方法を用いて、病原体由来の任意の他の目的の抗原(複数可)を、抗原ASFV CP204L-E183 Lに置き換え、及び図1Bのプラスミドに挿入して、目的の抗原(複数可)を含む融合タンパク質を発現するための、図1Aのような発現ベクターを作製してもよい。
【0088】
抗原ASFV CP204L-E183Lを抗原ASFV CP204L(配列番号39)に置き換えることにより、CD40L-TPE-CP204L(配列番号53、図3B)融合タンパク質を作製するための発現ベクター(図1C)を構築した。抗原ASFV CP204L-E183Lを抗原ASFV E183L(配列番号40)に置き換えることにより、CD40L-TPE-E183L(配列番号54、図3C)融合タンパク質を作製するための別の発現ベクター(図1D)を構築した。抗原ASFV CP204L-E183Lを融合抗原CSFV E2-NS3p(配列番号44)に置き換えることにより、CD40L-TPE-E2-NS3p(配列番号55、図3D)融合タンパク質を作製するための別の発現ベクター(図1E)を構築した。
【0089】
ベクターCP204L-E183L-TStx-CD40L、CP204L-TStx-CD40L、E183L-TStx-CD40L、及びE2-NS3p-TStx-CD40L。ベクターCP204L-E183L-TStx-CD40L(図2A)を構築して、(a)抗原ASFV CP204L(配列番号39)及び抗原ASFV E183L(配列番号40)を含む融合抗原ASFV CP204L-E183L(配列番号41)、(b)Stx転移ペプチドStx211-247(配列番号14)、(c)RX1X2R(配列番号1、ここで、X1はV、X2はA)及び (EAAAAK)3(配列番号3)を含む切断可能なペプチドリンカー、及び(d)切断型CD40リガンドCD40L108-261(配列番号19)、を含むCP204L-E183L-TStx-CD40L(配列番号56、図3E)融合タンパク質を作製した。
【0090】
簡潔には、Stx転移ペプチド(Stx211-247)、切断可能なリンカー及びCD40L108-261を含むHindIII、XhoIStx-Linker-CD40LSalをコードするDNAフラグメントをPCR合成し、HindIII/SalI制限酵素で消化し、そしてHindIII/XhoI切断部位を有するプラスミドpTAC-MAT-Tag-2骨格に連結させ、プラスミドP08(RP)-His-pNCを得た(図2B)。Hisタグを持つ上述の抗原ASFV CP204L-E183Lをコードする別のDNAフラグメントを、HindIII/XhoI部位を介してプラスミドP08(RP)-His-pNC(図2B)に挿入し、発現ベクターCP204L-E183L-TStx-CD40Lを作製した(図2A)。
【0091】
切断可能なリンカーは、フューリン及び/又はカテプシンLプロテアーゼによって融合タンパク質を切断し、融合タンパク質からフラグメントCP204L-E183L-TStxを放出することを可能にするので、本発明の融合タンパク質にとって不可欠である。
【0092】
上述した同様の方法を用いて、病原体由来の任意の他の目的の抗原(複数可)を、抗原ASFV CP204L-E183 Lに置き換え、及び図2Bのプラスミドに挿入して、目的の抗原(複数可)を含む融合タンパク質を発現するための、図2Aのような発現ベクターを作製してもよい。
【0093】
抗原ASFV CP204L-E183Lを抗原ASFV CP204L(配列番号39)に置き換えることにより、CP204L-TStx-CD40L(配列番号57、図3F)融合タンパク質を作製するための発現ベクター(図2C)を構築した。抗原ASFV CP204L-E183Lを抗原ASFV E183L(配列番号40)に置き換えることにより、E183L-TStx-CD40L(配列番号58、図3G)融合タンパク質を作製するための発現ベクター(図2D)を同様に構築した。抗原ASFV CP204L-E183Lを抗原CSFV E2-NS3p(配列番号44)に置き換えることにより、E2-NS3p-TStx-CD40L(配列番号59、図3H)融合タンパク質を作製するための別の発現ベクター(図2E)を構築した。
【0094】
実施例2
タンパク質発現
タンパク質発現ベクターCD40L-TPE-E2-NS3pを保有する大腸菌BL21細胞を、選択抗生物質を含有するZY培地(10 g/Lトリプトン及び5 g/L酵母エキス)で37℃で培養した。培養が初期対数期(OD600=2から5)に達した時点で、イソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド(IPTG)(0.5から2 mM)によって融合タンパク質の発現を誘導した。IPTG誘導の4時間後に細胞を回収し、そして超音波処理で破砕した。封入体を単離し、そして可溶化バッファー(6 M塩酸グアニジン、20 mMリン酸カリウム、500 mM NaCl、20 mMイミダゾール、1 mM DTT、pH 7.4)で可溶化し、過剰発現した融合タンパク質を回収した。精製後、融合タンパク質のリフォールディングは、20から50倍量の透析バッファー(10 mM PBS)に対する透析によって、4℃で一晩行った。リフォールディングされた融合タンパク質は、還元条件下(ジチオスレイトールあり、+DTT)と非還元条件下(ジチオスレイトールなし、-DTT)でSDS-PAGE解析を行い、適切にリフォールディングされたかどうかを評価した。
【0095】
融合タンパク質CD40L-TPE-CP204L-E183L、CD40L-TPE-CP204L、CD40L-TPE-E183L、CP204L-E183L-TStx-CD40L、CP204L-TStx-CD40L、E183L-TStx-CD40L、及びE2-NS3p-TStx-CD40Lは上記と同じ方法で発現、精製、リフォールディングされる。
【0096】
実施例3
融合タンパク質の免疫原性解析
CD40L-TPE-E2-NS3p融合タンパク質を本発明の融合タンパク質の代表として選択し、融合タンパク質の生物学的活性を評価するために免疫原性分析に供した。表2は、動物群、ワクチン接種のための融合タンパク質の用量、及び投与スケジュールを示す。「V」:ワクチン接種あり、「-」:ワクチン接種なし。
【0097】
【表2】
【0098】
ワクチンの調製:リン酸緩衝生理食塩水に溶解した本発明の融合タンパク質を、同量のフロイント不完全アジュバント(FIA)と混合し、エマルジョンを形成した。最終製剤は、0.5 mgの融合タンパク質/mL及び50%(v/v)のフロイント不完全アジュバントを含有した。/
【0099】
C57BL/6NCrlBltw雌マウス(5~6週齢)を無作為に6群(各群n=5)に分けた:A群(プラセボ)、B群(被験融合タンパク質50 μg)、CからE群(被験融合タンパク質100 μg)。プラセボ群には0、7、及び14日目にPBSをs.c.投与した。ワクチン接種群(BからE)のマウスには、表2の投与スケジュールに従って、フロイント不完全アジュバントでアジュバント化した融合タンパク質をs.c.注射した。抗原特異的体液性免疫応答を測定するため、0、7、14及び21日目に血清を採取した。21日目に動物を解剖した。脾臓細胞を採取及び培養し、抗原特異的細胞性免疫応答を測定した。
【0100】
この脾臓細胞を、フローサイトメトリーを用いたメモリーT細胞における細胞内サイトカイン誘導(IFN-γ、IL-2、及びTNF-α)の解析に用いた。さらに、IFN-γを分泌する脾臓細胞の頻度を、酵素結合イムノスポット(ELISpot)アッセイを用いて解析した。血液検体中の血清抗原特異抗体レベルは、ELISAを用いて分析した。
【0101】
図4-6は、抗原刺激物質(抗原CSFV E2の配列をカバーする短鎖ペプチドプール)を用いて、又は用いずに脾臓細胞を刺激した後の、IFN-γ、IL-2及びTNF-α誘導の結果をそれぞれ示している。21日目に、異なる用量又は異なるレジメンのCD40L-TPE-E2-NS3pを投与された群のCD4メモリーT細胞におけるIFN-γ、IL-2及びTNF-αの誘導レベルを観察し、そしてプラセボ群と比較した。
【0102】
図7A-Bは、21日目に動物から得た脾臓細胞を、前述したin vitroでの抗原刺激物質を用いて、又は用いずに刺激した後のIFN-γ+イムノスポットの結果を示す。図7Aは、21日目にB群及びC群の動物から得られたIFN-γ分泌脾臓細胞の集団の有意な増加を示しており、B群及びC群の動物には、それぞれ50 μg及び100 μgのCD40L-TPE-E2-NS3pを0日目、7日目及び14日目に、ワクチン接種した。著しく、高用量群は、低用量群と比較して、IFN-γ分泌脾細胞の誘導において、より強力な活性を示した(p=0.006)。図7Bは、プラセボ群と比較して、C、D及びEの動物群におけるIFN-γ分泌脾細胞の集団の有意な増加を示す。C、D及びEの群の動物にはすべて、100 μgのCD40L-TPE-E2-NS3p融合タンパク質をワクチン接種したが、スケジュールは異なっていた(それぞれ、D0-D7-D14、D0-D7及びD0-D14)。
【0103】
本発明の融合タンパク質は、抗原特異的抗体応答を効果的に誘発することができる。図8A-Bは、ELISAで測定した21日目の血清抗体レベルを示す。CD40L-TPE-E2-NS3p融合タンパク質を、捕捉抗原としてELISAプレートのコーティングに使用した。
【0104】
図8Aは、21日目の動物群A、B及びCにおける血清抗原特異的抗体レベルを示す。B群及びC群の動物には、それぞれ50 μg及び100 μgのCD40L-TPE-E2-NS3pを0、7及び14日目にワクチン接種した。B群及びC群における抗原特異的抗体の血清レベルは、いずれもプラセボ群よりも高く、高用量群は低用量群よりも強い抗体応答を誘発した(p=0.015)
【0105】
図8Bは、21日目の動物群A、C、D及びEにおける血清抗原特異的抗体レベルを示す。C群、D群及びE群の動物はすべて、100 μgのCD40L-TPE-E2-NS3pをワクチン接種されたが、レジメンは異なっていた(それぞれ、D0-D7-D14、D0-D7及びD0-D14)。3回投与でワクチン接種した群及び2回投与でワクチン接種した群は、いずれも血清中の抗原特異的抗体価の有意な上昇を示した。著しく、3回目の投与は、2回投与よりも有意に高い抗原特異的抗体応答を誘発することができた。
【0106】
図9A-Bは、動物群における21日目の血清抗体レベルを示す。コーティングタンパク質がCD40L-TPE-E2-NS3p融合タンパク質ではなく、E2-NS3pペプチド(捕捉抗原)であることを除いて、図8A-Bと同様に、抗原特異的抗体レベルをELISAによって測定した。結果は図8A-Bの結果と一致していた。21日目のB群及びC群の抗原特異的抗体の血清レベルは、プラセボ群よりも高く、高用量群は低用量群よりも強い抗体価を誘発した。
【0107】
融合タンパク質CD40L-TPE-CP204L-E183L、CD40L-TPE-CP204L、CD40L-TPE-E183L、CP204L-E183L-TStx-CD40L、CP204L-TStx-CD40L、E183L-TStx-CD40L、及びE2-NS3p-TStx-CD40 Lを免疫原性解析に供した。同じ作用機序に基づき、本発明の抗原保有融合タンパク質は、標的抗原に対する強力な免疫応答を誘導し、抗原特異的抗体の誘導、T細胞の活性化、並びにIFN-γ、IL-2及びTNF-αの誘導をもたらすことが期待される。
【0108】
実施例4
延長した投与スケジュールでの融合タンパク質の免疫原性解析
免疫応答誘導におけるCD40L-TPE-E2-NS3p融合タンパク質の効果も、延長投与スケジュール下で評価した。表3に動物群及び各群の投与スケジュールを示す。「V」:ワクチン接種あり、「-」:ワクチン接種なし。
【0109】
【表3】
【0110】
投与スケジュールの延長及びマウス群を除き、ワクチンの調製、マウス、投与経路、及び解析方法は実施例3に記載したものと同様であった。
【0111】
簡潔には、C57BL/6NCrlBltw雌マウス(5~6週齢)を無作為に4群(各群n=5)に分けた:A群(プラセボ)、B群、C群、D群(100 μg融合タンパク質)。プラセボ群には0、21、及び42日目にPBSをs.c.投与した。B群、C群及びD群のマウスには、表3のBからD群のそれぞれの投与スケジュールに従って、FIAでアジュバント化した被験融合タンパク質をs.c.ワクチン接種した。抗原特異的体液性免疫応答を測定するため、毎週血清を採取した。63日目に動物を解剖し、脾臓細胞を採取、及び培養し、実施例3に記載の解析法を用いて抗原特異的細胞性免疫応答を測定した。
【0112】
図10A-Cは、63日目の動物から得た脾臓細胞を、抗原刺激因子(抗原CSFV E2の配列をカバーする短鎖ペプチドプール)を用いて、又は用いずに刺激した後の、IFN-γ、IL-2及びTNF-α誘導の結果を示す。CD40L-TPE-E2-NS3pの異なるレジメンを投与した群のCD4メモリーT細胞におけるIFN-γ、IL-2及びTNF-α誘導のレベルを観察し、プラセボ群と比較した。
【0113】
図11は、63日目に動物から得た脾臓細胞を、上述のように抗原刺激剤を用いて、又は用いずに処理した後のIFN-γイムノスポットの結果を示す。プラセボ群と比較して、CD40L-TPE-E2-NS3pの異なるレジメンを投与したすべての動物群において、IFN-γ分泌脾臓細胞の集団の有意な増加が観察された。IFN-γ分泌脾臓細胞集団の増加を誘導するには、本発明の融合タンパク質を1回注射するだけで十分であった(図11、群D)。
【0114】
図12は、動物群A、B、C及びDにおける血清抗原特異的抗体レベルをそれぞれ示している。B群、C群及びD群の動物には、異なるレジメン(それぞれ、D0-D21-D42、D21-D42及びD42)でCD40L-TPE-E2-NS3pをワクチン接種した。ELISAで用いたコーティングタンパク質(捕捉抗原)は抗原ペプチドE2-NS3pであった。結果は上記の結果と一致した。融合タンパク質CD40L-TPE-E2-NS3pの1回の投与は、抗原特異的抗体反応を誘導するのに十分であった。著しく、3回投与群では、42日目の3回目の投与後、少なくとも21日間にわたる長期間の抗体応答の持続が観察された。
【0115】
要約すると、本発明の融合タンパク質は、強力なT細胞免疫応答を誘発し、IFN-γ、IL-2及びTNF-αの発現を増加させ、抗原特異的抗体応答を生じさせることができる。
【0116】
本明細書中で引用及び議論されているすべての参考文献は、その全体が、かつ各参考文献が個別に参照により組み込まれるのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
図1A-1D】
図1E
図2A-2C】
図2D-2E】
図3A-3H】
図4
図5
図6
図7A-7B】
図8A-8B】
図9A-9B】
図10A-10B】
図10C
図11
図12
【配列表】
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【国際調査報告】