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特表2024-540225個体の遺伝子リスクスコアに基づくパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】個体の遺伝子リスクスコアに基づくパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20241024BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525879
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2022082916
(87)【国際公開番号】W WO2023094423
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/282,243
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ハーガー, ヨルク
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
システム及び方法は、個体のパーソナルな遺伝子リスクスコアに基づく個体のニーズとより正確に合致した、個体に推奨される特定の栄養サプリメント、食品、飲料、食事、メニュー、食生活及びレシピを決定するために使用できる。特に好ましい方法は、個体のSNP遺伝子型プロファイルに基づいて、栄養素についての個体の多遺伝子リスクスコアを計算し;個体の多遺伝子リスクスコアに基づいて、複数の遺伝的リスク群のうちの相当する遺伝的リスク群に個体を分類し、複数の遺伝的リスク群のそれぞれは、栄養素が遺伝的リスク群内にある対象にとって十分な血中レベルに達するために必要とされる、その栄養素についての異なる1日用量と関連付けられ、個体に対して、相当する遺伝的リスク群についての栄養素の1日用量を、個体についてのパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量として特定する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体のためのパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量を決定するための方法であって、
(i)前記個体のSNP遺伝子型プロファイルを、前記個体由来のDNAサンプルから確定するステップと、
(ii)前記個体の前記SNP遺伝子型プロファイルに基づいて、前記栄養素についての前記個体の多遺伝子リスクスコアを計算するステップと、
(iii)前記個体の前記多遺伝子リスクスコアに基づいて、前記個体を複数の遺伝的リスク群のうちの相当する遺伝的リスク群に分類するステップであって、
前記複数の遺伝的リスク群のそれぞれが、他の遺伝的リスク群の範囲と重複しない予め定められた多遺伝子リスクスコア又は予め定められた範囲の多遺伝子リスクスコアと関連付けられ、
前記個体についての前記多遺伝子リスクスコアが、前記相当する遺伝的リスク群の前記予め定められた多遺伝子リスクスコアと一致し、又は前記相当する遺伝的リスク群の前記予め定められた範囲内に含まれ、
前記複数の遺伝的リスク群のそれぞれが、前記栄養素が前記遺伝的リスク群内にある対象にとって十分な血中レベルに達するために必要とされる、前記栄養素についての異なる1日用量と関連付けられる、ステップと、
(iv)前記個体に対して、前記相当する遺伝的リスク群についての前記栄養素の前記1日用量を、前記個体についての前記パーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量として特定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の遺伝的リスク群が、遺伝に基づく用量応答モデルによって分類される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝に基づく用量応答モデルが、以下の通りであり、
【数1】

式中、yiは前記栄養素の血中濃度であり、xiは前記栄養素の1日摂取量であり、σεは前記モデルの推定誤差であり、β2(1)~βi(n)はyiと独立に相関する共変量である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記栄養素を、好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月間、最も好ましくは少なくとも1年間、前記パーソナライズされた推奨1日摂取量によって特定される前記1日用量で前記個体に投与するステップを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記栄養素が、ビタミンB12、亜鉛、マグネシウム、ビタミンD3、葉酸、ビタミンB6、コリン、オメガ-3脂肪酸、グルタチオン、及びグリシンからなる群から選択され、
前記栄養素がビタミンB12であり、前記遺伝に基づく用量応答モデルが、
【数2】

である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の栄養素のうちの少なくとも1つについての前記パーソナライズされた推奨1日摂取量が、サプリメント、食品、飲料、又は食事のうちの少なくとも1つについての推奨を含み、該サプリメント、食品、飲料、又は食事が、前記栄養素を含み、かつ、好ましくは前記栄養素の前記1日用量を含むことによって、前記パーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量を満たすように配合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
更に、
(i)1日の間の異なる時点における摂取可能なイベントごとに、コンピュータユーザインターフェースを介して、前記個体についての1日当たりに摂取可能な栄養素摂取量データを収集するステップと、
(ii)前記個体のための新たに推奨される栄養素1日摂取量を満たすために、日中の残りの時間のためのサプリメント、食品、飲料、又は食事のうちの少なくとも1つを推奨することによって、前記個体のための前記パーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量を、前記コンピュータユーザインターフェースを通して提供するステップと、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記栄養素を含む、サプリメント、食品、飲料、又は食事のうちの少なくとも1つを、好ましくは前記個体のための前記栄養素の前記パーソナライズされた推奨摂取量を満たす量で、分配デバイスから前記個体に分配することを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
個体のためのパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量を提供する方法であって、
(i)前記栄養素についての一般的な用量応答モデルを決定するステップと、
(ii)前記栄養素の状態の変化に関連する特定の対立遺伝子について選択された一塩基多型(SNP)を同定し、前記選択されたSNPのそれぞれについて対立遺伝子効果サイズを確定するステップと、
(iii)前記栄養素についての前記一般的な用量反応モデルを修正して、遺伝項を追加し、それによって遺伝に基づく用量反応モデルを形成するステップであって、
前記遺伝項が、対象それぞれに存在する前記選択されたSNPの効果を合計する、ステップと、
(iv)遺伝子リスクスコア効果サイズを使用して、用量応答アルゴリズムを調整し、前記個体のための新たな摂取推奨を作成するステップと、
(v)前記遺伝に基づく用量応答モデルを、前記選択されたSNPのそれぞれについての前記対立遺伝子効果サイズに適用し、それによって、複数の遺伝的リスク群のそれぞれについて、前記栄養素が前記遺伝的リスク群内にある対象にとって十分な血中レベルに達するために必要とされる、前記栄養素についての異なる1日用量を決定するステップであって、前記複数の遺伝的リスク群のそれぞれが、他の遺伝的リスク群のものと重複しない多遺伝子リスクスコア又は多遺伝子リスクスコアの範囲と関連付けられる、ステップと、
(vi)前記個体のSNP遺伝子型プロファイルを、前記個体由来のDNAサンプルから確定するステップと、
(vii)前記個体の前記SNP遺伝子型プロファイルに基づいて、前記個体を前記複数の遺伝的リスク群のうちの相当する遺伝的リスク群に分類するステップであって、
前記個体についての前記多遺伝子リスクスコアが、前記相当する遺伝的リスク群の予め定められた前記多遺伝子リスクスコアと一致する、又は前記相当する遺伝的リスク群の予め定められた範囲内に含まれる、ステップと、
(viii)前記個体に対して、前記相当する遺伝的リスク群についての前記栄養素の前記1日用量を、前記個体についての前記パーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量として特定するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記栄養素についての前記一般的な用量応答モデルを決定するステップが、複数の個体からの前記栄養素についての1日当たりの摂取量データ及び血中濃度データに線形回帰及び最小二乗法(OLS)モデル適合を適用するステップを含み、好ましくは、前記複数の個体からの前記栄養素についての1日摂取量データ及び前記血中濃度データが、1つ以上のデータベースによって提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記栄養素についての前記一般的な用量応答モデルが、
log(yi)=β0+β1log(xi1)+β2Age+β3Gender+σε
であり、式中、yiは前記栄養素の血中濃度であり、xiは前記栄養素の1日摂取量であり、σεは前記モデルの推定誤差である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記選択されたSNPが、ゲノムワイドな関連研究から同定され、前記選択されたSNPのそれぞれについての前記対立遺伝子効果サイズを確定するステップが、1つ以上の選択されたSNPのそれぞれに線形回帰を適用するステップを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝に基づく用量応答モデルが、
【数3】

である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記栄養素が、ビタミンB12、亜鉛、マグネシウム、ビタミンD3、葉酸、ビタミンB6、コリン、オメガ-3脂肪酸、グルタチオン、及びグリシンからなる群から選択され、
任意に、前記栄養素がビタミンB12であり、前記遺伝に基づく用量応答モデルが、
【数4】

である、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたコンピュータ実施システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、個体の遺伝子情報に基づいて、パーソナライズされた推奨1日摂取量、例えば、栄養素についての推奨1日摂取量(recommended daily allowance、RDA)を決定するためのシステム及び方法に関する。いくつかの実施形態では、本システム及び方法は、個体のパーソナルな遺伝子リスクスコアに基づく個体の必要性とより正確に合致した、個体に推奨される特定の栄養サプリメント、食品、飲料、食事、食生活、メニュー、及びレシピを決定するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
栄養素の十分な供給は、個体における健康の維持を確保するために必須である。健康を維持するために人が平均して必要とする栄養素の量を推定するために、ほとんどの国の規制当局は、栄養素についての食事基準値(dietary reference value、DRV)又は栄養素についての1日推奨量(recommended dietary allowance)(RDA)を確立している。RDAは、健康であると推定される集団における食事摂取データに基づく平均値であるが、具体的な個体についての栄養素摂取量閾値の推奨を提供しない。実際に、欧州食品安全機関(EFSA)は、DRVが個体のための栄養目標又は推奨ではなく、むしろ集団のためにガイドラインを確立するためのものであると明示的に述べている。
【0003】
個体に対してより正確な栄養推奨を行うためには、他の因子を考慮する必要がある。特に遺伝的影響は、具体的な個体ごとに栄養素が身体によってどのように吸収され代謝されるかの多様性に影響を与え得る。現在、個体の栄養状態を判定し、個体の栄養必要量と結びつける、正確で非侵襲的な方法は存在しない。ビタミン及びミネラルなどの特定の栄養素は、血液検査によって測定することができるが、これらの検査は、特定の時点での個体の栄養状態のスナップショットビューを提供するだけであり、遺伝的素因に基づく栄養素の欠乏に関する一般的傾向を提供するものではない。
【発明の概要】
【0004】
遺伝子変異は、栄養素が身体によってどのように吸収され代謝されるかに影響する。何百もの遺伝子変異が、ヒトにおける栄養状態に影響する。特定の対立遺伝子の一塩基多型(SNP)である遺伝子変異は栄養状態の変化に関連し、SNPは確定することができる。
【0005】
各対立遺伝子の各SNPについての影響の大きさを知ることにより、所与の栄養素(例えば、ビタミン又はミネラルレベル)についての、個体に存在する全ての対立遺伝子の累積効果を要約する、多遺伝子リスクスコアを確立することができる。次いで、この遺伝的影響は、個体の栄養要求を計算するときに考慮することができ、個体の栄養素の摂取についての推奨を提供でき、それにより、個体の遺伝的プロファイルに基づくパーソナライズされたRDAが確立される。
【0006】
本開示は、システム及び方法のいくつかの実施形態における解決手段を提供するものであり、これには、多遺伝子リスクスコアを個体の栄養必要量についての定量的推奨に変換するためのアルゴリズム計算が含まれる。
【0007】
多くの栄養素に関して、単一の遺伝子変異の効果の程度は小さく、RDAを凌ぐ程には、個体に対して有効に推奨される摂取栄養素量を示せない可能性がある。ビタミンなどのほとんどの栄養素のレベルは、複数の遺伝子変異によって影響を受ける。例えば、ビタミンB12は、血液中のその濃度に影響する30の遺伝子変異を有する。したがって、複数の遺伝子変異を有するこれらの栄養素の評価は複雑であり得る。
【0008】
多遺伝子リスクスコアは、形質に影響を及ぼす全ての遺伝子変異の複合効果の程度を確定するための有力な方法である。例えば、医療用アプリケーションにおいては、多遺伝子リスクスコアは、個体の疾患を発症する傾向を判定するために使用される。栄養面においては、多遺伝子リスクスコアはめったに使用されない。
【0009】
したがって、本開示は、人口集団への推奨であり、典型的には国の規制当局によって設定される、特定の栄養素について一般的な1日推奨量(RDA)に対して、改善を提供する。いくつかの実施形態では、本システム及び方法は、個々のユーザのためにパーソナライズされた推奨栄養素を、ユーザの多遺伝子リスクスコアプロファイルによって確定される個々の遺伝的変異を考慮することによって、提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、栄養形質に関連する対立遺伝子における特定の遺伝子変異に関連する遺伝子情報を変換するためのシステム及び方法は、多遺伝子リスクスコアに組み合わされる。
【0011】
いくつかの実施形態では、多遺伝子リスクスコアを確定するためのシステム及び方法を使用して、複数の栄養素について個体のRDAを調整することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、さまざまな栄養素についての多遺伝子リスクスコアを変換するためのシステム及び方法を使用することにより、個体の栄養学的健康を改善又は維持するためにより正確に合致した、個体に推奨される特定の栄養サプリメント、食品、飲料、食事、食生活、メニュー、及びレシピを決定することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本システム及び方法は、例えば、多遺伝子リスクスコアを1つのアルゴリズムに使用することによって、用量応答計算を遺伝的効果サイズの解析と組み合わせることに基づいて、パーソナライズされたサプリメント推奨及び投与量推奨を提供し、それによって、医療提供者のための実用的な、より良好な患者報告を提供する。例えば、本システム及び方法は、栄養形質についての実現可能性スコアカード、選択された形質についての多遺伝子リスクスコア、及び形質それぞれについての投与量に関する所要量推定アルゴリズムを生成し得る。いくつかの実施形態では、システム及び方法は、用量応答アルゴリズムを使用する。本明細書の実施例3に記載される非限定的な実施形態では、ビタミンB12の多遺伝子リスクスコア及び投与可能な補給推奨へのその変換が成功裏に作成された。多遺伝子リスクスコアを、投与可能な補給推奨に変換するための適切な形質の他の非限定的な例としては、亜鉛、マグネシウム、ビタミンD3、葉酸、ビタミンB6、コリン、オメガ-3脂肪酸、グルタチオン、グリシン、食事応答、及びエストロゲン代謝が挙げられる。本システム及び方法は、これらの形質のうちの1つ以上に対するパーソナライズされた摂取推奨を生成し得る。
【0014】
更にこの点に関して、いくつかの実施形態は、特定の栄養素が、異なる遺伝的リスク群にとって十分な血中レベルに達するために必要な平均摂取量をどのように決定するかという問題に対処する。これらの実施形態は、好ましくは、摂取推奨のために、栄養素摂取量と、遺伝的効果と、血中濃度との間の用量応答関係が考慮されるアプローチを適用する。これらの実施形態によって提供される解決策は、用量応答アルゴリズムが、栄養調査由来の栄養素摂取量及び血中濃度データから作成され、遺伝子データと組み合わされて、特定の遺伝的リスク群に必要とされる特定の栄養素の1日当たりの必要摂取量を推定するアルゴリズムを作成することである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示によって提供される1つ以上の実施形態におけるコンピュータ実施システムの概略図である。
図2】本開示によって提供される1つ以上の実施形態における、遺伝子データ(SNP)を含むパーソナライズされた栄養摂取量推奨を作成するための一般化されたワークフローの概略図である。
図3】多遺伝子リスクスコア(PRS)の五分位数についてビタミンD血漿濃度に対する遺伝的影響を示す。
図4】異なる遺伝子リスクスコアごとに、年齢に基づくビタミンD摂取量の増加を示す。
図5】本明細書の実施例3からの一般的な用量応答モデルを使用した、十分な血中濃度に達するビタミンB12摂取確率のグラフである。
図6】本明細書の実施例3からのビタミンB12についての血中濃度用量応答に対する摂取量の分布のグラフである。
図7】多遺伝子リスクスコアにおける追加の対立遺伝子それぞれについてビタミンB12所要量の増加を示す。
図8】本明細書の実施例3からの異なる多遺伝子リスクスコア群について所要量の変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
食事摂取基準(Dietary Reference Intake、DRI)
食事摂取基準(DRI)とは、ナショナル・アカデミーの医学研究所(IOM)(米国)から出されている栄養推奨システムであり、1日推奨量(Recommended Dietary Allows、RDA)として知られる既存のガイドラインを拡充するために1997年に導入された。
【0017】
推奨1日摂取量(Recommended Daily Allowance、RDA)
推奨1日摂取量(RDA)とは、各ライフステージ及び性別群における、健康な個体の必要量の97.5%を満たすのに十分であると考えられる栄養素の1日の食事摂取レベルである。上記の定義は、この摂取レベルで有害な栄養素欠乏が生じるのはわずか2.5%であることを意味する。RDAは、推定平均必要量(EAR)に基づいて計算され、通常、EARよりも約20%高い。
【0018】
EARの標準偏差(SD)が利用可能であり、栄養素の必要量が対称的に分布している場合、RDAはEARより2SD大きい値として設定される。
RDA=EAR+2SD(EAR)
【0019】
必要量における変動性についてのデータがSDを計算するのに不十分である場合、必要量において利用可能なデータがより大きな変動を示さない限り、EARについての10パーセントの変動係数(CV)が仮定される。CVが10%であると仮定する場合、その2倍の量がEARに加えられたとき、RDAに等しいと定義される。結果として得られるRDAの式は以下のとおりである。
RDA=1.2(EAR)
【0020】
この摂取レベルは、統計的に、その集団(population)の必要量の97.5パーセントに相当する。
【0021】
推定平均必要量(Estimated Average Requirements、EAR)
栄養素の推定平均必要量(EAR)は、科学文献のレビューに基づいて、特定の年齢層の人々の50%の必要量を満たすよう計算される。
【0022】
目安量(Adequate Intake、AI)
栄養素の目安量(AI)は、RDAが確立されていない場合の量であり、特定の人口統計群に適切であると考えられるものに基づく。
【0023】
許容上限摂取レベル(Tolerable upper intake levels、UL)
許容上限摂取レベル(UL)は、多量では有害であり得る栄養素(脂溶性ビタミンなど)の摂取過剰に対して注意するためのものである。これは、各世代区分及び性別群において、健康な個体の97.5%に安全であり、副作用を生じないと思われる最も高レベルの1日栄養素摂取量である。上記定義は、この摂取レベルで有害な栄養素過多を生じるのはわずか2.5%であることを意味する。
【0024】
異なる国及び地域の当局ごとに、異なる食事基準値を有する。例えば、欧州食品安全機関(EFSA)は、RDAの代わりに集団摂取基準(Population Reference Intake、PRI)、及びEARの代わりに平均必要量を用いた、情報の集合的セットを食事基準値(DRV)と呼んでいる。AI及びULは、米国と同じように定義されているが、値は異なり得る。
【0025】
基準RDA
基準RDAは一般に、特定の集団における個体の年齢及び性別ごとに設けられる。
【0026】
例えば、表1は44歳の男性についてのRDAを示しており、これは栄養素ごとのいかなる個々の遺伝子リスクスコアも考慮しない44歳の男性についての「基準RDA」と考えられる。
【表1-1】

【表1-2】

NE:EARが未だ確立されていないか、又は未だ評価されていない;ND:ULを決定することができず、有害作用を防ぐために、これらの栄養素の摂取は食物のみからとすることが推奨される。
【0027】
パーソナライズされたRDA
「パーソナライズされたRDA」又は「個別化されたRDA」とは、特定の栄養素の推奨1日摂取量であって、その栄養素についての個体の多遺伝子リスクスコアに基づいて個体のためにカスタマイズされたものを指す。
【0028】
パーソナライズされたRDAを基準RDAと比較して、特定の栄養素についての個体のニーズが、その栄養素についての基準RDAと比較して、平均未満であるか、平均であるか、又は平均を超えるかを確定することができる。
【0029】
SNPジェノタイピングのためのDNAサンプル
一般的に、用語「サンプル」とは本明細書において使用するとき、体液、又は他の組織サンプルタイプ、例えば、血液、血漿、血清、痰、唾液、汗(発汗)、又は尿を指す。対象からこのようなサンプルを得る技術は既知である。用語はまた、例えば、他の組織サンプル又は呼気などの身体組織との接触により得られる流体サンプルもしくは皮膚との接触により得られる流体サンプルを含む。
【0030】
個体のDNAサンプルは、上に列挙した任意の体液又は組織由来の生体サンプルから解析することができる。好ましい実施形態では、DNAサンプルは、口腔スワブ由来である。このDNAサンプルから、個体のSNP遺伝子型プロファイルにより、個体間の一塩基多型(SNP)の遺伝的バリエーションを測定することができ、そして個体についての栄養素ごとの多遺伝子リスクスコアを確定することができる。
【0031】
一塩基多型
一塩基多型(SNP)とは、遺伝子の対立遺伝子上の単一ヌクレオチドでの相違のことである。多数のヒトの集団から、3億3500万を超えるSNPが発見されている。個体のDNA配列の変異は、どのように疾患を発症し、どのように病原体、化学物質、薬物、ワクチン、及び他の薬剤に応答するか、について異なる影響を及ぼし得る。SNPはまた、栄養素に対する代謝応答などのパーソナライズされた栄養にとって重要である。
【0032】
いくつかの実施形態では、個体のSNPプロファイルを参照SNPデータベースと比較するため、参照SNPデータベースを本システム及び方法において照会してもよい。参照SNPデータベースをいくつか挙げると、以下のとおりである:
dbSNP:National Center for Biotechnology Information(NCBI)のSNPデータベース、
Kaviar:dbSNPを含む複数のデータソースからのSNPの概要、
SNPedia:パーソナルなゲノムアノテーション、解釈及び解析をサポートするwikiスタイルのデータベース、
OMIM:多型と疾患との関連性を記載するデータベース、
dbSAP:タンパク変異検出のための単一アミノ酸多型データベース、
ヒト遺伝子変異データベース(Human Gene Mutation Database):ヒト遺伝性疾患及び機能的SNPを生じる又はそれに関連する遺伝子変異を提供、
国際HapMapプロジェクト(International HapMap Project):研究者らがTag SNPを同定して、各対象に存在するハプロタイプのコレクションを確定することができる。
GWAS Central:ユーザが、1つ以上のゲノムワイドな関連研究において、実際の要約レベルの関連データを視覚的に問い合わせることができる。
【0033】
GWASカタログは、(例えば、多遺伝子リスクスコアを作成するための)メタ解析に使用することができる公開されたゲノムワイドな関連研究及びダウンロード可能な要約統計データの包括的なデータベースを提供する。
【0034】
多遺伝子リスクスコア(PGS又はPRS)
遺伝子リスクスコア又はゲノムワイドスコアとしても知られる多遺伝子リスクスコアは、複数の遺伝子座における変動及びそれらの関連するウエイトに基づく数値である。このスコアは形質の最良の予測として役立つ。多遺伝子スコア(PGS)は、ゲノムワイドな関連解析(GWAS)に由来する「ウエイト」又は効果サイズから構築される。GWASは、通常ではSNPである遺伝子マーカーのセットをトレーニングサンプル上でジェノタイピングし、各マーカーと目的の形質との関連性についてのエフェクトサイズを推定する。次いで、これらのウエイトを使用して、個別化された多遺伝子スコアを、独立した複製サンプルに割り当てる。定量的形質(例えば、BMI、血中ビタミンレベルなど)に関しては、PRSは、形質に対する定量的な遺伝的影響(例えば、ビタミン血中濃度の変化)を、異なる遺伝的リスク群と組み合わせる。
【0035】
したがって、PRSを使用して、栄養形質の遺伝的因子に起因する摂取量対血中濃度の関係の変化を測定することができる。本開示において、目的の形質とは、特定の栄養素の推奨1日摂取量であり、この量は複数の遺伝子変異における変動を考慮して得ることができる。
【0036】
SNPのウエイトを生成するために使用できるさまざまな方法論、及びどのSNPを含めるべきかを決定する方法が存在する。
【0037】
最も単純な、いわゆる「ナイーブ」な作成方法は、各遺伝子変異に対する形質の回帰からの係数推定値と等しいウエイトを設定する。含まれるSNPは、各マーカーがほぼ独立していることを確保しようと試みるアルゴリズムを使用して選択され得る。ランダムでない遺伝子変異の関連を説明できなければ、典型的には、スコアの予測精度が低下する。遺伝的変異が他の近くの変異と相関することが多く、その結果、原因バリアントのウエイトが、ヌル変異よりもその近隣の変異に対してより強く相関する場合に弱められるため、これは重要である。これは連鎖不平衡と呼ばれ、隣接する遺伝子変異の共通の進化歴から生じる一般的な現象である。更なる制限は、種々の閾値で選択されたSNPの異なるセットを多重検定することによって可能となり、例えば、ゲノム全体の統計学的に有意なヒットであるSNPの全て、又はp<0.05のSNPの全て若しくはp<0.50のSNPの全て、並びに更なる解析のために使用される最大性能を有するものが挙げられ、特に、高度に多遺伝子性の形質については、最良の多遺伝子性スコアは、ほとんど又は全てのSNPを使用する傾向がある。
【0038】
ベイズ法は、効果サイズの分布を説明して、多遺伝子スコアの精度を改善する。最も一般的な現在のベイズ法の1つでは、「連鎖不平衡予測」(略してLDpred)を使用して、連鎖不平衡が説明された後のその事後分布の平均に等しいウエイトを各SNPに設定する。LDpredは、特に大きなサンプルサイズに対して、より単純なプルーニング及び閾値設定の方法よりも性能が優れる傾向がある。
【0039】
LASSO及びリッジ回帰などの罰則付き回帰法も、多遺伝子スコアの精度を改善するために使用することができる。罰則付き回帰は、どの程度の数の遺伝子変異が形質に影響を及ぼすと予想されるか、及びそれらの効果の大きさの分布、に対して有益な事前可能性を設定するものとして解釈することができる。言い換えれば、これらの方法は、事実上、回帰モデルにおける大きな係数に「ペナルティを課し」、それらを保存的に縮小する。リッジ回帰は、二乗係数の合計にペナルティを課す項を用いて予測を縮小することによってこれを実施する。LASSOは、絶対係数の合計にペナルティを課すことによって同様のことを実施する。
【0040】
上記方法のいずれかを使用して、特定の栄養素についての多遺伝子リスクスコアを計算することができる。
【0041】
結果(すなわち、血中濃度に対する食事摂取の用量応答)と独立して相関する共変量を考慮する。多くの共変量が利用可能である場合に非常に有用であり得るこれらの変数の自動選択を実行するために、LASSO回帰若しくはリッジ回帰のような方法、又はElastic Net回帰(Zou and Hastie(2005))のようなリッジ法及びLASSO法の利点を組み合わせる方法を使用することができる。共変量は、データセットにおいて利用可能な任意の変数及びタイプから選択することができる。変数リストの非網羅的な例を表2に示す。このリストは単なる例であり、他の研究では、変数は、数値も、最終的にそれをモデルにする共変量に関しても、いずれもが変化し得る。ビタミンB12の例では、ElasticNet回帰は、用量応答モデルのための共変量として年齢及び性別のみを選択したが、共変量の特定の数値及び同一性は栄養素に応じて異なり得る。
【表2-1】

【表2-2】

栄養素
用語「栄養素」とは、例えば、エネルギー、発育、又は健康をもたらすために、身体に有益な効果をもたらす化合物を指している。この用語には、有機化合物及び無機化合物が含まれる。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「栄養素」は、例えば、多量栄養素、微量栄養素、必須栄養素、条件的に必須の栄養素及び植物栄養素を含み得る。
【0043】
これらの用語は、必ずしも相互に排他的ではない。例えば、ある種の栄養素は、特定の分類システム又はリストに応じて、多量栄養素又は微量栄養素のいずれかとして定義することができる。表現「少なくとも1つの栄養素」、又は「1つ以上の栄養素」とは、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、10個、20個以上の栄養素を意味する。
【0044】
用語「1つ以上の栄養素の濃度を測定する」とは、個別の栄養素の代謝物、及び/又はバイオマーカーを測定することを含む。したがって、いくつかの実施形態において、上記の栄養素の1つ以上の代謝物、又は他の指標の濃度が測定される。
【0045】
多量栄養素
用語「多量栄養素」は、当該技術分野において既知であり、本明細書において、生命体の通常の発育及び発達において大量に必要とされる栄養素を指す、標準的な意味に従って使用される。
【0046】
多量栄養素としては、炭水化物、脂肪、タンパク質、アミノ酸、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、カルシウム、塩化物、又はナトリウムなど、いくつかのミネラルもまた、多量栄養素に分類される。
【0047】
微量栄養素
用語「微量栄養素」とは、例えば、エネルギー、発育、又は健康をもたらすために、身体に有益な効果をもたらすが、必要とされる量が少ないか、又は極僅かである化合物を指している。この用語は、有機化合物及び無機化合物の両方、例えば、各アミノ酸、ヌクレオチド及び脂肪酸;ビタミン、抗酸化剤、ミネラル、微量元素(例えば、ヨウ素)、及び電解質(例えば、塩化ナトリウム、及びそれらの塩)、を含む。
【0048】
ビタミンの例示的なリストとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、及びビタミンC、レチノール、酢酸レチニル、レチニルパルミテート、βカロテン、コレカルシフェロール(cholecalcipherol)、エルゴカルシフェロール、D-α-トコフェロール、DL-α-トコフェロール、D-α-トコフェロールアセテート、D-α-トコフェロール酸スクシネート、フィロキノン(phyllochinone)、塩酸チアミン、チアミン硝酸塩、リボフラビン、リボフラビンナトリウム-5’-リン酸、ニコチン酸、ニコチンアミド、D-パントテン酸カルシウム、d-パントテン酸ナトリウム、デキサパンテノール、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキシン-5’-リン酸、ジパルミチン酸ピリドキシン、プテロイル-モノグルタミン酸、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、D-ビオチン、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸カリウム、及びL-アスコルビル-6-パルミテートが挙げられる。
【0049】
ミネラルの例示的なリストとしては、カルシウム(Ca)、塩化物(Cl)、クロム(Cr)、コバルト(Co)(ビタミンB12の一部として)、銅(Cu)、ヨード(I)、鉄(Fe)、フッ化物(F1)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、リン(P)、カリウム(K)、セレニウム(Se)、ナトリウム(Na)、硫黄(S)、及び亜鉛(Zn)が挙げられる。有機酸化物の例示的な例としては、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コリン、及びタウリンが挙げられる。
【0050】
アミノ酸の例示的なリストとしては、L-アラニン、L-アルギニン、L-システイン、L-ヒスチジン、L-グルタミン酸、Lーグルタミン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-オルニチン、L-フェニルアラニン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、及びL-バリンが挙げられる。
【0051】
脂肪酸の例示的なリストとしては、C4:0、C6:0、C8:0、C10:0、C11:0、C12:0、C13:0、C14:0、C15:0、C16:0、C17:0、C18:0、C20:0、C21:0、C22:0、C24:0、C14:1 n-5、C15:1 n-5、C16:1 n-7、C17:1 n-7、C18:1 n-9 trans、C18:1 n-9 cis、C20:1 n-9、C22:1 n-9、C24:1 n-9、C18:2 n-6 trans、C18:2 n-6 cis、C18:3 n-6、C18:3 n-3、C20:2 n-6、C20:3 n-6、C20:3 n-3、C20:4 n-6、C22:2 n-6、C20:5 n-3、及びC22:6 n-3脂肪酸が挙げられる。CX:という表現において、Y、Xは、脂肪酸中の炭素原子の合計数を指し、Yは、脂肪酸中の二重結合の合計数を定義している。
【0052】
植物性栄養素
用語「植物性栄養素」とは、健康に良い効果を伴う、生体活性の植物由来化合物を指す。
【0053】
植物栄養素の例示的で非網羅的なリストには、カロテノイド、トリテルペノイド、モノテルペン及びステロイドなどのテルペノイド(イソプレノイド);フェノール化合物、例えば、天然モノフェノール、ポリフェノール(例えば、フラボノイド、イソフラボノイド、フラボノリグナン、リグナン、スチルベノイド、クルクミノイド、スチルベノイド及び加水分解性タンニン);芳香族酸(例えば、フェノール酸及びヒドロキシ桂皮酸);カプサイシン;フェニルエタノイド;アルキルレゾルシノール;グルコシノレート;ベタレイン及びクロロフィルが含まれる。
【0054】
必須栄養素
用語「必須栄養素」は、本明細書においては、内因的に合成することができないか、又は健康に必要な濃度で合成することができない、栄養素を指す。例えば、必須栄養素は、対象の食生活により得られなくてはならない栄養素であり得る。
【0055】
必須栄養素の例示的な非網羅的リストには、必須脂肪酸、必須アミノ酸、必須ビタミン、及び必須栄養素ミネラルが含まれる。
【0056】
人間の必須アミノ酸としては、フェニルアラニン、バリン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、リシン、及びヒスチジンが挙げられる。
【0057】
人間の必須脂肪酸としては、αリノレン酸、及びリノレン酸が挙げられる。
【0058】
加えて、栄養素は、例えば、対象が特定の病気、疾患、又は遺伝子型をもつかどうかによって、「条件付き必須」であり得る。
【0059】
システム及び方法のユーザ
いくつかの実施形態では、ユーザは、食品製品及び飲料製品、並びに栄養サプリメントの典型的な消費者である。
【0060】
いくつかの実施形態では、ユーザは、個別化された製品の提供を考慮した上で、食品製品及び飲料製品並びに栄養サプリメントの推奨を最適化することに関心を有し得る小売業者である。
【0061】
いくつかの実施形態では、ユーザは、クライアントごとに個別化された推奨栄養含量により、食品製品及び飲料製品並びに栄養サプリメントの推奨を最適化することに関心を有する医療従事者である。
【0062】
いくつかの実施形態では、ユーザは、人間用の食品製品及び飲料製品並びに栄養サプリメントに関心を有する。
【0063】
他の実施形態では、ユーザは、動物用、特にイヌ及びネコなどのコンパニオンアニマル用の食品製品及び飲料製品、並びに栄養サプリメントに関心を有する。
【0064】
システム及び方法
本開示によって提供され開示されるシステム及び方法は、個々の遺伝子変異の重要度を認識することによって、栄養素の推奨1日摂取量を計算するための、一般集団ベースの推奨方法を改善するものである。これは、好ましい実施形態によれば、DNAサンプルから個体のSNPを解析し、栄養素ごとのウエイト付けされた多遺伝子リスクスコアを提供し、複数の栄養素のうちの少なくとも1つの栄養素について個体の推奨1日摂取量を調整することによって決定される。例えば、それぞれの栄養素は、個体の栄養サプリメント、食品、食生活、食事、メニュー、及びレシピの推奨に総合的な影響を及ぼすさまざまな遺伝子リスクスコア構成要素を有し得る。
【0065】
提供されるシステム及び方法は、遺伝子検査を介して個々の遺伝子データを収集することによって栄養素の1日摂取量の推奨方法を更に改善し、したがって、有利なことに、個体ごとに、より正確なRDAを提供する。
【0066】
さまざまな実施形態では、本明細書に開示されるシステム及び方法は、RDA又は他の摂取推奨レジメンのあらゆる知識及び分布特性を用いる。いくつかの実施形態では、開示されるシステム及び方法は、各栄養素の摂取推奨量の上限及び下限を考慮に入れる。本明細書に開示されるシステムのいくつかの実施形態では、EARとRDAとの組み合わせを使用して、集団における基準RDAを決定し、基準RDAと個々の対象のRDAとの比較を行う。次いで、開示されたシステムは、所与の期間にわたる個体の、栄養素ごとのパーソナライズされたRDA量を決定することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、個体の食物摂取からの情報に基づいて、栄養素ごとに、パーソナライズされたRDAと平均集団RDA又は基準RDAとを比較することによって、個体が「低」か、「平均」であるか、又は「高」か、を判定することが可能となる。このようにして、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるシステム及び方法は、実際に摂取された栄養量が、個々のユーザの1日あたりの摂取にわたって、栄養素ごとに推奨されパーソナライズされたRDAからどれだけ乖離しているかの測定を可能にする。
【0068】
いくつかの実施形態では、その十分な摂取量が適正摂取量(AI)値に関して定義される特定の栄養素についての栄養素スコアは、最大スコアと個体によって摂取されるAI値の百分率とのうちの小さい方として算出される。したがって、本明細書に開示されるシステムは、栄養素に対してEAR値及びRDA値が確立されていない場合でも、その栄養素に関するスコアを計算して、特定の栄養素の基準RDAを提供することができる。
【0069】
開示されるシステムの実施形態では、栄養サプリメント、食品、飲料、食事、食生活、メニュー、及びレシピを個別ベースで評価、計画、及び最適化し、個別の推奨栄養摂取量と、実際の摂取栄養素量がパーソナライズされた推奨栄養摂取量からどの程度乖離しているかと、を考慮するための、さまざまなソフトウェア及び解析ツールが提供される。さまざまな実施形態では、開示されるシステムは、栄養素ごとに個体に推奨される1日摂取量を達成するために摂取される最小量の観点から、栄養の妥当性を判定する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるシステム及び方法は、栄養士、ヘルスケア専門家、及び個々のユーザ(例えば、スマートウォッチ又はフィットネストラッカーなどの装着型デバイスのユーザ)によって使用することができる。例示的な実施形態では、本明細書で開示されるシステムは、複数の栄養素のうちの少なくとも1つについての個別化されたRDAを算出するためのアルゴリズムを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備える。この実施形態では、アルゴリズムは、複数の栄養素のうちの少なくとも1つに関するRDAと、個体に特有の摂取に推奨される量とを考慮に入れ、これらを、その個体の食事に含まれる栄養素ごとの複数の栄養素の測定値と比較する。
【0071】
さまざまな実施形態では、本開示のシステムへのユーザ固有の入力は、プログラム可能かつ構成可能であり、性別、年齢、体重、身長、身体活動レベル、妊娠中か授乳中かどうか、などが含まれる。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるシステムは、最大量に関して栄養素摂取量の適切度を評価するように構成される。これらの実施形態では、システムは毒性及び特定の栄養素又は摂取可能物(consumable)を大量に摂取することによる悪影響を考慮に入れる。
【0073】
一実施形態では、本開示のシステムは、食品組成物又は飲料組成物の品目、及び各々の栄養素含有量を含むデータベースを備えるか、又はそれに接続されている。この実施形態では、開示されるシステムは、摂取した(又は摂取する予定の)食品又は飲料をユーザが入力することを可能にするファジー検索機能を備え、それにより、データベースを検索して、ユーザが提供したアイテムに最も近い品目を見つけ、食品組成物又は飲料組成物の品目のそれぞれの栄養素量を計算し、栄養素ごとのRDAと比較することができる。
【0074】
さまざまな実施形態では、開示されるシステムは、食事を構成する各食品組成物又は飲料組成物において利用可能な各栄養素の量を表示するためのインターフェース(例えば、グラフィカルユーザインターフェース)を更に備える。いくつかの実施形態では、このインターフェースにより、ユーザが、摂取するさまざまな食品又は飲料の量を変更することが可能となり、それに応じて、摂取する食品又は飲料の修正量に基づいて栄養量が表示される。他の実施形態では、システムは、1つ以上のバーコード、QRコード(登録商標)、若しくはRFIDタグをスキャンすることによって、又はメニューから注文された品目若しくは食料品店で購入された品目を追跡することなどによって、ユーザの入力以外のデータを使用して摂取する食品又は飲料の量を決定するよう構成される。
【0075】
いくつかの実施形態では、開示されるシステムは、個体の総合的な栄養バランスを最大化することにつながる、個体に特定の食品を推奨する推奨機能を備える。かかる実施形態では、開示されるシステムによって実行されるアルゴリズムは、栄養バランスを、栄養素の推奨1日摂取量に最も近くなるよう改善するための推奨リストを生成し、食事の計画及び評価に関する、栄養士にとって価値のあるツールとなることができる。
【0076】
さまざまな実施形態では、本明細書に開示されたシステムは、所定の期間の個体のカロリー摂取範囲及び対応する栄養摂取量の健康的な範囲に基づいて、個体に合わせた1つ以上の栄養スコアを算出する。算出されたスコアは、栄養素摂取量が健康的な範囲内にあるかどうかに基づいており、栄養素の摂取不足だけでなく、栄養素の過剰摂取によっても影響される。これらのスコアにより、十分な栄養素を摂取しているかを個人が判断することができ、摂取できていない場合には、どの栄養素を追加して摂取する必要があるのかをその個人が判断することができる。開示されたシステムはまた、摂取された(又は食事から除去された)場合にその個体にとって健康的な栄養素範囲内にあると判断された量の栄養素を個体に提供する摂取可能物を追加又は除去するための提案を行う。
【0077】
開示されるシステムのさまざまな実施形態は、本開示により提供される方法によって決定される栄養素ごとの個体のRDA値に関連して、ユーザの栄養ニーズに基づいてカスタマイズされたダッシュボード又は他の適切なユーザインターフェースをユーザに表示する。
【0078】
本開示のシステムのさまざまな実施形態はまた、助言機能も提供する。これらの実施形態では、最初の食事の摂取栄養素量を計算した後に、本発明のシステムが、個体が必要とする栄養素をかかる個体に取得させるために、残りの期間中に摂取され得る摂取可能物の組み合わせを提案する。例えば、朝食及び昼食について特定の食品を食べたことを個体が示した場合、本開示のシステムは、個体にその日に必要な栄養素を確実に全て得させ、かつその個体に適用可能なカロリー摂取量範囲内にあるカロリー量を個体に摂取させて、その個体に栄養素ごとの最適なRDAをもたらす、夕食メニューを提案することができる。この実施形態では、本開示のシステムによって提供される推奨内容が最適化される。本システムは、そのデータベースに記憶された複数の食品が総合的な栄養学的健康スコアに与える影響を判定し、複数の栄養素を最適に増加させる結果となる食品を提案する。
【0079】
さまざまな実施形態では、開示されるシステムは、RDAを算出するために必要な値の一部又は全てを1つ以上のデータベースに保存する。更に、本開示のシステムは、個体の年齢、性別、及び、体重又は体格指数(BMI)に基づいて、個体のカロリー摂取量範囲のテーブルを保存し得る。
【0080】
別の実施形態では、本開示のシステムでは、身体タイプ、身体活動レベルなどの追加の情報をユーザが指定できるようにすることによって、更なるカスタマイズが得られる。この実施形態では、本開示のシステムは、これらの追加の入力を使用して、異なる個体についての最適なカロリー摂取量範囲だけでなく、システムによって追跡される栄養素のRDAをも調節するものである。例えば、個体が、自分は比較的運動量が多く強健であることを示す場合、システムでは、当該個体が追加の炭水化物を必要としているかを考慮して、炭水化物の栄養素範囲を上方に調節することができる。
【0081】
したがって、開示されたシステムのさまざまな実施形態を用いれば、有利なことに、以下のステップを実行することによって、個体の栄養学的健康スコアを算出することができる。
(1)栄養に関連する当局の推奨に基づいて、複数の栄養素の基準RDAを保存するステップ。
(2)複数の栄養素について、遺伝子情報に基づいて個々のユーザのRDAを計算して保存するステップ。
(3)各栄養素について適切であるように、システムが端点を超えた過大摂取と過小摂取を調節できるようにするために、栄養素摂取の端点の指標を保存するステップ。
(4)栄養素及び/又は個体ごとのスコアのウエイト付け及び個体のRDAを保存するステップ。
(5)特定の摂取可能物について、栄養素ごとの栄養成分を計算し、それをその特定の栄養素についての個体のRDAと比較するステップ。
(6)各栄養素にアルゴリズムを適用して、個体の栄養をパーソナライズすることによって、摂取可能物の推奨を行うステップ。
【0082】
本開示のシステムのさまざまな実施形態は、更に有利なことに、算出された栄養素に基づいて、ユーザに栄養アドバイスを提供する。例えば、本開示のシステムの実施形態は、これらの栄養素について健康的な量の範囲内に個体を収める(place)ために必要とされる栄養素の量を決定する。次に、これらの実施形態では、摂取可能物(例えば、食品又は食材)ごとのRDAのデータベースを解析して、当該個体の最適なカロリー摂取量範囲内にユーザを収めつつ、栄養素ごとのRDAの観点から個体の遺伝子情報を考慮して、ユーザを健康量範囲に収めるのに必要な量の栄養素を提供する、摂取可能物の組み合わせを決定する。
【0083】
さまざまな実施形態では、本開示のシステムは、本開示のシステムを使用して個体に関する実際のデータを生成する研究所、又は他の試験施設と連携して動作する。例えば、一実施形態では、開示されるシステムは、ユーザが、個体のSNPプロファイルを確定し、複数の栄養素について個体のRDAを計算するために、DNA検査を受けることを可能にする。
【0084】
別の実施形態では、開示されるシステムは、ユーザが、個体が種々の栄養素を過剰摂取又は過少摂取しているかどうかを判定するために、指先穿刺による血液検査(blood spot test)等の更なる試験を受けることを可能にする。かかる実施形態では、この試験及び研究所での作業により、システムは自身の推奨内容が機能していることを検証すること、即ち、スコア付け関数がユーザの摂取量範囲が所望の範囲内であることを示す場合に、ユーザが実際に十分な栄養素を摂取していることを検証することができる。さまざまな実施形態では、他の体液(例えば、尿、唾液など)を用いてこれらの検証を実施することができる。これらの実施形態では、ユーザの実際の体液組成のデータによって、個体について算出された総合的な栄養スコアが、その個体が実際に十分な量の栄養を摂取していることを意味することを確保できるよう、システムは自らを較正することができる。例えば、栄養素の特定のRDAについて100のスコアを充足するかどうかを決定するために、システムは、体液測定値を使用して、個体が実際に十分な量の当該栄養素を摂取しているかどうかを判定することもできる。個体が所定の栄養素を過小に(又は過大に)摂取している場合には、体液測定結果を使用してスコア付けアルゴリズムを変更して、100のスコアが、特定の個体の特定の栄養素の理想的な摂取量を実際に表すことを確保することができる。
【0085】
さまざまな実施形態において、上記で参照された入力のうちの1つ以上は、栄養情報のデータベースから引き出される。例えば、特定の実施形態では、摂取された栄養素のリストは、ユーザが摂取品目を入力することを可能にすること、及び、その摂取品目に含まれる栄養素のリストを適切な摂取可能物のデータベースで調べること、によって生成することができる。他の実施形態では、ユーザは摂取した栄養素を直接入力する。更に他の実施形態では、ユーザは食品(例えば、ハンバーガ)を入力し、その食品がデータベース内にない場合、ユーザは、その食品中の栄養素の量(例えばナトリウムの量)も入力する。その後、定義された食品(例えば、ハンバーガ)について将来入力されたとき、ユーザに栄養情報を再入力することを要求するのではなく、前回に入力された栄養素を参照することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、開示されたシステムは、特定の食品に固有のいくつかの測定単位及び提供サイズを使用し、それらの間で自動的に変換する機能を含んでいる。したがって、1つの食品の一部は、所定量のグラム、キロカロリーとして、又は、何らかの予め定義されたサイズ(例えば、カップ、テーブルスプーン等)に従って入力することができ、また、データベースに保存されたその食品に関するデータと互換性のある食品摂取量に変換(又は、正規化)することができる。
【0087】
ここで図1を参照すると、コンピュータ化された推奨システムの少なくとも一部を実行するために使用可能なホストデバイス100の電気系統の一例を示すブロック図及び本明細書に開示される栄養素の推奨摂取量が示されている。
【0088】
一実施形態では、図1に示すデバイス100は、以下の機能のいくつか又は全てを提供する1つ以上のサーバ及び/又は他のコンピューティングデバイスに相当する。(a)システムのリモートユーザによる本開示のシステムへのアクセスを可能にすること、(b)リモートユーザが本開示のシステムとインターフェースすることを可能にするウェブページ(単数又は複数)を提供すること、(c)本開示のシステムを実行するのに必要な、推奨カロリー摂取量範囲、パーソナライズされた推奨栄養素摂取範囲、及び食品の栄養素含有量などの基礎データを記憶及び/又は算出すること、(d)栄養成分の推奨1日摂取量又は総合的な栄養学的健康スコアを算出及び表示すること、及び/又は、(e)個体が最適な推奨1日摂取量又は栄養学的健康スコアを達成するのを補助するために摂取することができる食品又は他の摂取可能物の推奨をすること。
【0089】
図1に示すアーキテクチャの例では、デバイス100は、アドレス/データバス113によって、1つ以上のメモリデバイス108、他のコンピュータ回路110、及び/又は1つ以上のインターフェース回路112に電気的に連結された1つ以上のプロセッサ106を好ましくは含む、メインユニット104を含む。1つ以上のプロセッサ106は、INTEL PENTIUM(登録商標)又はINTEL CELERON(登録商標)ファミリのマイクロプロセッサなどの、任意の好適なプロセッサとすることができる。PENTIUM(登録商標)及びCELERON(登録商標)は、Intel Corporationに対して登録された商標で、市販のマイクロプロセッサのことを言う。他の実施形態では、プロセッサ106として、他の市販の、又は特別に設計されたマイクロプロセッサを使用することができることを理解されたい。一実施形態では、プロセッサ106は、特に本開示のシステムで使用するために設計されたシステムオンチップ(「SOC」)である。
【0090】
一実施形態では、デバイス100はメモリ108を更に備える。メモリ108は、揮発性メモリと不揮発性メモリを含むことが好ましい。メモリ108は、後述するように、ホストデバイス100のハードウェア及びシステム内の他のデバイスと相互作用する1つ以上のソフトウェアプログラムを記憶することが好ましい。それに加えて、又はその代わりに、メモリ108に記憶されたプログラムは、クライアントデバイス102(以下で詳細に説明する)などの1つ以上のクライアントデバイスと対話して、それらのデバイスにデバイス100に記憶されたメディアコンテンツへのアクセスを提供し得る。メモリ108に記憶されたプログラムは、任意の好適な方法で、プロセッサ106によって実行することができる。
【0091】
インターフェース回路(単数又は複数)112は、イーサネット(登録商標)インターフェース及び/又はユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースなどの任意の好適なインターフェース規格を使用して、実装することができる。1つ以上の入力デバイス114は、データ及び命令をメインユニット104に入力するためにインターフェース回路112に接続することができる。例えば、入力デバイス114は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、トラックパッド、トラックボール、アイソポイント(isopoint)、及び/又は音声認識システムとしてもよい。デバイス100が遠隔デバイスによってのみ操作され又はインタラクションすれるように設計されている一実施形態において、デバイス100は入力デバイス114を含まなくてもよい。他の実施形態では、入力デバイス114は、データ入力をホストデバイス100に提供する、1つ以上のフラッシュドライブ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、クラウドストレージ、又は他の記憶デバイス若しくはソリューションなどの1つ以上の記憶デバイスを含む。
【0092】
1つ以上の記憶デバイス118もインターフェース回路112を介してメインユニット104に接続することができる。例えば、ハードドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、及び/又は他の記憶デバイスをメインユニット104に接続することができる。記憶デバイス118は、ブロック150によって示されるような、デバイス100によって使用される任意の種類のデータ(好ましい栄養素範囲に関するデータ、さまざまな食品品目の栄養素含有量に関するデータ、システムのユーザに関するデータ、以前に生成された個別の推奨1日栄養素摂取量に関するデータ、栄養学的健康スコアに関するデータ、栄養学的健康スコアを算出するための加重値を表すデータ、栄養学的健康スコアを算出するための感度値、を含む)、及び開示されたシステムを実行するために必要な任意の他の適切なデータを記憶することができる。これに代えて又は加えて、記憶デバイス118は、ストレージ118へのアクセスが、インターネット、又はイーサネット(登録商標)回路112などの他のネットワーク接続回路を介して行われるように、クラウドベースのストレージとして実装されてもよい。
【0093】
1つ以上のディスプレイ120、及び/又はプリンタ、スピーカ、又は他の出力デバイスである119はまた、インターフェース回路112を介してメインユニット104に接続されてもよい。ディスプレイ120は、液晶ディスプレイ(LCD)、好適なプロジェクタ、又は任意の他の好適な種類のディスプレイとすることができる。ディスプレイ120は、ホストデバイス100の動作中に、ホストデバイス100のさまざまなデータ及び機能の視覚的表現を生成する。例えば、ディスプレイ120を使用して、好ましい栄養素範囲のデータベース、さまざまな食品品目の栄養素含有量のデータベース、システムのユーザのデータベース、以前に生成された個別の推奨1日栄養素摂取量に関するデータベース、栄養学的健康スコアのデータベース、及び/又は、デバイス100の管理者が上記の他のデータベースと対話できるようにするデータベースに関する情報を表示することができる。
【0094】
図示された実施形態では、コンピュータ化されパーソナライズされた栄養推奨システムのユーザは、クライアント装置102などの好適なクライアント装置を使用してデバイス100と対話する。さまざまな実施形態におけるクライアントデバイス102は、ホストデバイス100によって提供又は供給されるコンテンツにアクセスすることができる任意のデバイスである。例えば、クライアントデバイス102は、ホストデバイス100へのウェブベースのインターフェースにアクセスするために好適なウェブブラウザを動作させることができる任意のデバイスであってもよい。これに代えて、又はこれに加えて、本明細書で説明される機能のいくつかを提供する1つ以上のアプリケーション又はアプリケーションの一部は、クライアントデバイス102上で動作することができ、この場合、クライアントデバイス102は、栄養素範囲又はさまざまな食品品目の栄養素の含有量に関する、個別の推奨1日摂取量に関するデータデータなどの、ホストデバイス100に記憶されたデータにアクセスするためだけに、ホストデバイス100と接続する必要がある。
【0095】
一実施形態では、デバイス(即ち、デバイス100及びクライアントデバイス102)のこの接続は、クラウド116により図1に例示されるインターネット及び/又は他のネットワークを介したネットワーク接続によって容易になる。このネットワーク接続は、イーサネット(登録商標)接続、デジタル加入者回線(DSL)、WiFi接続、セルラーデータネットワーク接続、電話回線ベース接続、同軸ケーブルを介した接続、又は別の好適なネットワーク接続などの任意の好適なネットワーク接続とすることができる。
【0096】
一実施形態では、ホストデバイス100は、クラウドベースの認証及びアクセス制御、ストレージ、ストリーミング、及びフィードバックの提供などのクラウドベースのサービスを提供するデバイスである。この実施形態では、ホストデバイス100の特定のハードウェアの詳細は、本開示のシステムの実施者にとって重要ではなく、それよりも、かかる実施形態では、本開示のシステムの実施者は、1つ以上のアプリケーションプログラマインターフェース(API)を利用して、簡便な方法で、健康的な栄養範囲を決定するのに役立つそのユーザの属性に関する情報を入力したり、摂取される食品に関する情報を入力したり、以下でより詳細に説明する他の対話を行うなど、ホストデバイス100と対話する。
【0097】
デバイス100及び/又はクライアントデバイス102へのアクセスは、適切なセキュリティソフトウェア又はセキュリティ手段によって管理することができる。個々のユーザのアクセスは、デバイス100によって設定され、個体の素性に応じて、摂取された食品を入力するか、又は算出されたスコアを見る、などの特定のデータ及び/又は動作に限定される。ホストデバイス100又はクライアントデバイス102のいずれかの他のユーザは、それらのユーザの素性に応じて、加重、感度、又健康的な範囲値などの他のデータを変更することができる。したがって、本システムのユーザは、本開示のシステムによって提供されるコンテンツにアクセスする前に、デバイス100に登録することが必要な場合がある。
【0098】
好ましい実施形態では、各クライアントデバイス102は、デバイス100に関して上述したのと同様の構造上又は設計上の構成を有する。即ち、一実施形態における各クライアントデバイス102は、表示デバイス、少なくとも1つの入力デバイス、少なくとも1つのメモリデバイス、少なくとも1つの記憶デバイス、少なくとも1つのプロセッサ、及び、少なくとも1つのネットワークインターフェースデバイスを含む。周知のデスクトップ、ラップトップ、又は(スマートフォン及びタブレットコンピュータなどを含む)モバイルコンピュータシステムに共通のかかる構成要素を含めることにより、クライアントデバイス102では、対応するシステムの複数のユーザによる相互間のインタラクションが容易になることを理解されたい。
【0099】
さまざまな実施形態では、図1に例示されるようなデバイス100及び/又はデバイス102は、実際には、複数の異なるデバイスとして実装することができる。例えば、デバイス100は、実際には、本明細書に記載のメディアコンテンツアクセスシステムを実装するためにともに動作する複数のサーバデバイスとして実装されてもよい。さまざまな実施形態では、図1には示されていない1つ以上の追加のデバイスが、本明細書で開示されるシステムへのアクセスを可能にするため又は容易にするために、デバイス100とインタラクションする。例えば、一実施形態では、ホストデバイス100は、ネットワーク116を介して、1つ以上の公開の、私的な、又は固有の、情報リポジトリ(栄養情報、栄養素含有量情報、健康範囲情報、環境影響情報などの公開の、私的な、又は固有の、情報リポジトリなど)と通信する。
【0100】
一実施形態では、本開示のシステムはクライアントデバイス102を含まない。この実施形態では、本明細書に記載された機能は、ホストデバイス100上で提供され、システムのユーザは、入力デバイス114、表示デバイス120、及び出力デバイス119を使用してホストデバイス100と直接インタラクションする。この実施形態では、ホストデバイス100は、本明細書に記載された機能のうちのいくつか又は全てをユーザ向けの機能として提供する。
【0101】
図1のシステムは、遺伝子情報に基づいて栄養素ごとの個々のユーザの推奨1日摂取量を計算し、1日の間に摂取された又は摂取される予定の食品に基づいて総合的な栄養素スコアを計算するよう構成されている。当業者であれば、この機能が、汎用コンピュータの機能ではなく、コンピュータが、本願明細書の各種の実施形態に記載されている各種のアルゴリズムを使用して行われる、遺伝子情報に基づく具体的な個別ユーザのための栄養素ごとの推奨1日摂取量についての結果を算出するための指示によって特別にプログラムされていることを必要とすることを理解するであろう。
【0102】
さまざまな実施形態では、本明細書で開示されるシステムは、複数のモジュールとして構成され、各モジュールは特定の機能又は機能のセットを実行する。これらの実施形態におけるモジュールは、汎用プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール、専用プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール、適切な専用ハードウェアデバイス上で実行されるファームウェアモジュール、又は、本明細書に列挙する機能を回路によって完全に実行するハードウェアモジュール(特定用途向け集積回路(「ASIC」)など)とすることができる。本明細書で説明する機能の一部又は全部を実行するために特殊なハードウェアが使用される実施形態では、本開示のシステムは、設定を制御するため又はかかる特殊なハードウェアの機能を調整するために、1つ以上のレジスタ又は他のデータ入力ピンを使用することができる。例えば、複数の推奨1日栄養摂取量を栄養素ごとに解析するようにプログラムされたハードウェアモジュールを使用してもよい。更に他の実施形態では、本明細書で説明するさまざまな機能を実行するモジュールがハードウェアによって実行可能なソフトウェアモジュールである場合、これらのモジュールは、特定の事前に決められたオペレーティングシステム環境を実行するプロセッサ上で動作するように設計され得るアプリケーション又はアプリケーションのサブセットの形態をとることができる。
【0103】
別の実施形態では、ユーザが携帯する1つ以上のデバイスは、ユーザが食料品店又はレストランなどの食品購入施設にいるときに、リアルタイム情報を本システムに提供する。RFIDリーダ、NFCリーダ、装着型カメラデバイス、及び携帯電話などのデバイスは、特定の食料品店又はレストランでユーザが利用可能な食品を(RFIDタグのスキャン、バーコードの読み取り、又はユーザの物理的位置の検出などによって)受信する、又は判定することができる。次に、開示されたシステムは、ユーザがどんな食品を直ちに購入又は摂取することができるかを考慮して、推奨を行う。かかる実施形態の1つにおいて開示されるシステムでは、ユーザがレストランの席に座ったときに、所定の期間にわたるユーザの栄養学的健康スコアを最適化するために、メニューから特定の品目をユーザが選択することを推奨する情報をユーザの携帯電話に送信してもよい。更に他の実施形態では、音声認識機能が、ユーザによって音声で提供された入力を認識する。このような一実施形態では、音声認識システムは、ユーザがレストランで注文するのを聞きとる。他の実施形態では、音声認識システムによれば、ユーザは、自分が摂取した又は摂取する予定の品目を直接話すことができる。
【0104】
一実施形態では、本明細書に開示されるシステムは、各栄養素について0.0~100の間のスコアを算出する。この実施形態では、摂取範囲(したがってスコア付け関数)は3つの異なる領域に分割される。(1)0.0と下限の摂取量との間の栄養素の摂取量。これはEARとRDAの組み合わせに基づく。(2)下限摂取量とULに相当する上限摂取量との間の摂取量。(3)上限摂取量を超える摂取量。この実施形態では、第1の範囲の摂取量は欠乏している可能性があることを示している。摂取量がRDAに近いほど、摂取量が実際に不足する可能性が低くなる。第2の範囲は、「止血領域(hemostasis region)」として説明することができ、ここで、スコアは、その栄養素の最大値(例えば、100)に接近し、及び/又は等しくなる。第3の範囲は、過大摂取を表しており、この範囲の慢性的な摂取は一般的に推奨されていない摂取量範囲である。記載された実施形態では、第3の範囲内の特定の栄養素についてのスコアは、それらが最小スコア(例えば、0)に達するまで減少する。
【0105】
図2は、本開示によって提供される一実施形態による一例のシステムを示す。システム200は、ユーザデバイス202及び推奨システム204を備える。本開示によって提供される別の実施形態では、推奨システム204は、図2の推奨システム150の実施形態の一例とすることができる。ユーザデバイス202は、コンピュータ、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、又は、関連するユーザが推奨システム204と通信することができる他の装着型などのコンピューティングデバイスとして実装されてもよい。ユーザデバイス202はまた、例えば、ユーザから音声要求を受信し、ユーザの近くにあるコンピュータデバイス上でローカルに、又はリモートコンピューティングデバイス上のいずれかで(例えば、リモートコンピューティングサーバで)、要求を処理するように構成された音声アシスタントとして実装されてもよい。
【0106】
別の実施形態では、ユーザデバイス202は、推奨システム204と通信して、ユーザの栄養素推奨を受信し、次いで、推奨エンジン212からのユーザの推奨1日摂取量データに基づいて、デバイスの個々のユーザに対してパーソナライズされた栄養サプリメント、食品、飲料、食事、メニュー、又はレシピを分配する、分配デバイスであり得る。
【0107】
推奨システム204は、ディスプレイ206、属性取得ユニット208、属性比較ユニット210、エビデンスベースの食事及び生活習慣の推奨エンジン212、属性解析ユニット214、属性記憶ユニット216、メモリ218、及びCPU220のうち1つ以上を含む。留意すべきこととして、いくつかの実施形態では、ディスプレイ206は、追加で、又はこれに代えて、ユーザデバイス202内に配置されてもよい。一例では、推奨システム204は、複数の栄養素ごとの個別のRDA240を取得するよう構成され得る。例えば、ユーザは、推奨サービスへの登録をユーザに要求するアプリケーションを、ユーザデバイス202にインストールし得る。このサービスに登録することによって、ユーザデバイス202は、栄養素ごとのパーソナライズされたRDA240の要求を送信し得る。別の例では、ユーザはユーザデバイス202を使用して、ユーザ固有の資格情報を使用してウェブポータルにアクセスしてもよい。このウェブポータルを通じて、ユーザは、推奨システム204からのパーソナライズされたRDA推奨をユーザデバイス202に要求させ得る。
【0108】
別の例では、推奨システム204は、複数のユーザ属性222を要求し、取得するよう構成されてもよい。例えば、ディスプレイ206は、属性質問表224をユーザに提示するように構成されてもよい。属性取得ユニット208は、ユーザ属性222を取得するように構成されてもよい。一例では、属性取得ユニット208は、属性質問表224に基づく複数の入力226を取得し、その複数の入力に基づいて複数のユーザ属性222を確定してもよい。例えば、属性取得ユニット208は、ユーザの食事が1日推奨量(「RDA」)と同等であることを示唆する回答を属性質問表224に取得し、次いで、ユーザ属性222が1日当たりのビタミンDのRDAと同等であると判定し得る。別の例では、ユーザデバイスの属性取得ユニット208は、ユーザデバイス202からユーザ属性222を直接取得してもよい。
【0109】
別の例では、属性取得ユニット208は、DNA検査キットの検査結果、医療従事者が執り行った標準健康検査の結果、ユーザが使用した自己評価ツールの結果、又は任意の外部若しくは第三者検査の結果を取得するように構成されてもよい。属性取得ユニット208は、これらの検査又はツールのいずれかからの結果に基づいてユーザ属性222を確定するように構成されてもよい。例えば、ユーザのSNPプロファイルは、RDA栄養推奨の介入の前にDNA検査キットにより確定されてもよい。個々のユーザの多遺伝子リスクスコアを栄養素ごとに計算して、個々のユーザの栄養素ごとのRDA栄養素推奨を決定することができる。この評価は、新たなパーソナライズされた栄養素ごとのRDA介入後の期間に決定されてもよく、それによりユーザの健康状態の改善又は維持があったかどうかを判定してもよい。
【0110】
属性比較ユニット210は、栄養素ごとの基準RDAとベンチマークRDA228とユーザ属性222との間の比較に基づいて、ユーザ遺伝子リスクスコア234を確定するよう構成されてもよい。例えば、スコアは、レタリンググレード、記号、又はランキングの任意の他のシステムを通じて、例えば、「高」、「平均」、「低」、又は「平均を上回る」、「平均」、「平均を下回る」で表されてもよく、それにより、ユーザが、彼らの現在の属性がベンチマーク参照の間でどの程度良好であるか、及び彼らが特定の栄養素についての彼らの遺伝的リスクプロファイルに基づいて栄養素欠乏を有し得るかを解釈することが可能となる。
【0111】
推奨システム204は、複数のユーザ属性222に基づいて、複数のサポート機会238を決定するよう更に構成されてもよい。推奨システム204は、複数のサポート機会238に基づいて、複数の健康に良い推奨240を特定するよう更に構成されてもよい。例えば、エビデンスベースの食事及び生活習慣の推奨エンジン212は、クラウドベースで構成されてもよい。推奨エンジン212は、複数のデータベース242、複数の食事制限フィルタ244、及び最適化ユニット246のうち1つ以上を含んでもよい。推奨エンジン212は、複数の機会238に基づいて、複数のデータベース242、食事制限フィルタ244、及び最適化ユニット246のうち1つ以上に従って、複数の健康に良い推奨240を特定してもよい。
【0112】
一例では、推奨エンジン212は、食品データベース、飲料データベース、栄養サプリメントデータベース、メニューデータベース、レシピデータベース、食生活データベースなどの更なるデータベース242に接続されてもよく、これらのデータベースは全て、栄養素ごとに栄養素組成によって注釈が付けられる。
【0113】
別の例では、推奨エンジン212は、任意のユーザの食物アレルギー又は食品若しくは飲料のパーソナルな嗜好を書き留め得る食事制限フィルタ244に接続されてもよい。
【0114】
別の例では、推奨システム204は、先行のユーザ属性に基づいて継続的な推奨を提供するように構成されてもよい。例えば、推奨システム204は、前述の要素に加えて、属性記憶ユニット216及び属性解析ユニット214を含んでもよい。属性記憶ユニット216は、属性取得ユニット108が複数のユーザ属性222を取得したことに応答して、取得したユーザ属性222を、複数のユーザ属性222がいつ取得されたかに基づいて新しいエントリとして属性経歴データベース248に追加するように構成されてもよい。例えば、ユーザ属性222が属性取得ユニット208によってある日の最初の食事で取得されると、属性記憶ユニット216は、取得したユーザ属性222をエントリの日付、この例ではその日の最初の食事を記して累積的な属性経歴データベース248に追加する。その後、ユーザ属性222が、その日の第2の食事又は更なる食事において属性受信ユニット208によって取得された場合、属性記憶ユニット216はまた、これらの新しい属性を属性履歴データベース248に追加し、それらがその日の第2の食事又は更なる食事において取得されたことを通知する一方で、1日あたりの栄養素ごとのパーソナライズされた推奨1日摂取量を達成するための栄養素ごとの総栄養素量を計算するために、その日の第1の食事から以前の属性も保存する。
【0115】
この属性解析ユニット214は、属性経歴データベース248内に記憶された複数のユーザ属性222を解析するように構成されてもよく、記憶された複数のユーザ属性222を解析することは、長期的調査250を行うことを含む。上述の例を続けると、属性解析ユニット214は、属性経歴データベース248内で見つかる、第1の日からの、第2の日からの、及び他の全てのユーザ属性222の集合のそれぞれからのユーザ属性222の長期的調査を行ってもよい。エビデンスベースの食事及び生活習慣の推奨エンジン212は、少なくとも、属性経歴データベース248内で見つかる記憶されたユーザ属性222及び属性解析ユニット214によって行われる解析に基づいて、複数の健康に良い推奨240を生成するように更に構成されてもよい。
【0116】
一実施形態では、属性解析ユニット214は、属性記憶ユニット216が属性経歴データベース248に新しいエントリを追加したことに応答して、属性経歴データベース248内に記憶された複数のユーザ属性222を繰り返し解析して、事実上、新しいユーザ属性222が取得された直後に属性経歴データベース248内のデータの全てを再解析するように更に構成される。同様に、エビデンスベースの食事及び生活習慣の推奨エンジン212は、属性解析ユニット214が解析を完了したことに応答する、複数の、健康に良い推奨240を繰り返し生成し、それによって、ユーザ属性222の新しいセットが取得されるたびに、過去及び現在の全てのユーザ属性222を考慮に入れた新しい健康に良い推奨240を効果的に生成するように更に構成されてもよい。
【0117】
さまざまな実施形態では、本開示のシステムへのユーザ固有の入力としては、プログラム可能かつ構成可能であり、性別、年齢、体重、身長、身体活動レベル、BMI、などが挙げられる。
【0118】
一実施形態では、本開示のシステムは、食品及び飲料の品目、食事、メニュー若しくはレシピ、及び栄養素ごとのそれらの各々の栄養素含有量を含む複数のデータベース242を備えるか、又はそれに接続されている。この実施形態では、本開示のシステムは、摂取した(又は摂取予定の)食品又は飲料をユーザが入力し、その後ユーザ提供の品目に最も近い品目を見つけるためにデータベースを検索することを可能にするファジー検索機能を備える。この実施形態で開示されるシステムは、マッチする食品品目について記憶された栄養情報を使用して、栄養素ごとのRDAに関して健康に良い品目であるかどうか、及び1日あたりの栄養素ごとに必要とされる総RDAに基づいて良好な選択であるかどうかを判定する。
【0119】
さまざまな実施形態において、本開示のシステムは、食事を構成する各食品に利用可能な各栄養素の量を表示し、摂取されるべき可能なエネルギー量を表示するためのインターフェース(例えば、グラフィカルユーザインターフェース)を更に含む。いくつかの実施形態では、このインターフェースにより、ユーザは、摂取されるさまざまな食品又はエネルギーの量を修正することができる。他の実施形態では、システムは、例えば、1つ以上のバーコード、QRコード、若しくはRFIDタグ、画像認識システムをスキャンすることによって、又はメニューから注文された品目若しくは食料品店で購入された品目を追跡することなどによって、ユーザが入力していないデータを使用して摂取される食品又は摂取されるエネルギーの量を決定するように構成される。
【0120】
開示されたシステムのさまざまな実施形態は、ユーザのニーズに基づいてカスタマイズされた、ダッシュボード又は他の適切なユーザインターフェースをユーザに表示する。本明細書に開示されるシステムの実施形態では、グラフィカルユーザインターフェースが提供されるが、この提供は、ユーザが所与の期間に摂取した食品に関するデータを入力し、消費者の食生活の総合的な栄養量を反映するエネルギー摂取に適切に基づいてスコアの指標を見ることを有利に可能にする、初めてのものである。
【0121】
いくつかの実施形態では、本開示は、個々の遺伝子情報に基づいて栄養素の1日摂取量を推奨する方法を提供し、したがって、より正確な栄養に関する推奨を提供する。
【0122】
いくつかの実施形態では、本開示は、個々の遺伝子情報に基づいて食品、飲料又は栄養サプリメントの推奨を提供することによって、栄養学的健康を改善又は維持する方法を提供する。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示は、個々の遺伝子情報に基づいて食事、メニュー又はレシピの推奨を提供することによって、栄養学的健康を改善又は維持する方法を提供する。
【0124】
一実施形態では、上記の方法は、個体のための栄養素推奨1日摂取量を決定することを含み、上記の方法は、
(i)個々の対象のSNP遺伝子型プロファイルを、上記の対象由来のDNAサンプルから確定するステップと、
(ii)個々の対象のSNP遺伝子型プロファイルを参照SNP遺伝子型プロファイルと比較するステップと、
(iii)複数の栄養素のうちの少なくとも1つについて、栄養素ごとの個体の遺伝子リスクスコアを計算するステップと、
(iv)遺伝子リスクスコア効果サイズを使用して、用量応答アルゴリズムを調整し、個体のための新たな摂取推奨を作成するステップと、
(v)複数の栄養素のうちの少なくとも1つについて、栄養素ごとの個体の遺伝子リスクスコアに基づいて、栄養素の基準推奨1日摂取量を、栄養素の新たな推奨1日摂取量と比較するステップと、
(vi)複数の栄養素のうちの少なくとも1つについて、新たな推奨1日摂取量を個体に提供するステップと、を含む。
【0125】
別の実施形態では、本方法は、複数の栄養素のうちの少なくとも1つの栄養素についての基準推奨1日摂取量と比較して、高い、正常である、又は低い、として分類される栄養素ごとの個体の遺伝子リスクスコアに基づいて、パーソナライズされた推奨1日摂取量を提供する。
【0126】
好ましい実施形態では、本方法は、口腔スワブによって、上記の対象由来のDNAサンプルから確定された個々の対象のSNP遺伝子型プロファイルを提供する。
【0127】
別の実施形態では、本方法は、栄養素ごとの個体の遺伝子リスクスコアに基づいて、パーソナライズされた推奨1日摂取量を提供し、ここで、複数の栄養素のうちの少なくとも1つは、ビタミン及び/又はミネラルを含む群から選択される。
【0128】
好ましい実施形態では、複数の栄養素の少なくとも1つは、ビタミンDである。
【0129】
別の実施形態では、本方法は、栄養素ごとの個体の遺伝子リスクスコアに基づいて、パーソナライズされた推奨1日摂取量を提供し、ここで、複数の栄養素のうちの少なくとも1つに対する新たな推奨1日摂取量は、複数の栄養素のうちの少なくとも1つの新たな推奨1日摂取量を満たすような栄養サプリメントを推奨する。
【0130】
別の実施形態では、本方法は、栄養素ごとの個体の遺伝子リスクスコアに基づいて、パーソナライズされた推奨1日摂取量を提供し、ここで、複数の栄養素のうちの少なくとも1つに対する新たな推奨1日摂取量は、複数の栄養素のうちの少なくとも1つの新たな推奨1日摂取量を満たすような食品、飲料、及び/又は1日の食事計画を推奨する。
【0131】
好ましい実施形態では、本方法は、コンピュータによって実施される。
【0132】
一実施形態では、コンピュータにより実施される方法は、栄養素ごとの個体の遺伝子リスクスコアに基づいて、パーソナライズされた推奨1日摂取量を提供し、ここで、複数の栄養素のうちの少なくとも1つに関する新たな推奨1日摂取量は、
(i)コンピュータユーザのインターフェースとの対話を介して、個々のユーザの1日当たりに摂取可能な栄養素摂取量データを収集すること、
(ii)1日の間の異なる時点における摂取可能なイベントごとに、個々のユーザの1日当たりに摂取可能な栄養素摂取量データを計算すること、
(iii)複数の栄養素のうちの少なくとも1つについて個々のユーザの新たな推奨1日摂取量を満たすように、日中の残りの時間のための栄養サプリメント、食品、飲料、及び/又は食事を推奨することにより、コンピュータユーザのインターフェースを介して前記個々のユーザの栄養素ごとの前記推奨1日摂取量についての推奨を提供すること、を含む。
【0133】
別の実施形態では、コンピュータにより実施される方法は、栄養素ごとの個体の遺伝子リスクスコアに基づいて、パーソナライズされた推奨1日摂取量を提供し、ここで、栄養素についての個々のユーザの推奨1日摂取量は、個々のユーザのためにパーソナライズされた複数の栄養素のうちの少なくとも1つの推奨1日摂取量とともに、栄養サプリメント、食品、飲料、又は一式の食事(complete meals)を分配する、分配デバイスに接続される。
【0134】
いくつかの実施形態では、栄養サプリメント、食品、飲料、食事、食生活、メニュー又はレシピの推奨は、個々のユーザに推奨される、総合的な栄養組成及び総合的な1日のエネルギー摂取を考慮に入れる。
【0135】
特に好ましい実施形態において、本開示は、個体のためのパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量を決定するための方法であって、
(i)個体のSNP遺伝子型プロファイルを、個体由来のDNAサンプルから確定するステップと、
(ii)個体のSNP遺伝子型プロファイルに基づいて、栄養素についての個体の多遺伝子リスクスコアを計算するステップと、
(iii)個体の多遺伝子リスクスコアに基づいて、個体を複数の遺伝的リスク群のうちの相当する遺伝的リスク群に分類するステップであって、複数の遺伝的リスク群のそれぞれが、他の遺伝的リスク群の範囲と重複しない予め定められた多遺伝子リスクスコア又は予め定められた範囲の多遺伝子リスクスコアと関連付けられ、個体についての多遺伝子リスクスコアが、相当する遺伝的リスク群の予め定められた多遺伝子リスクスコアと一致し、又は相当する遺伝的リスク群の予め定められた範囲内に含まれ、複数の遺伝的リスク群のそれぞれが、栄養素が遺伝的リスク群内にある対象にとって十分な血中レベルに達するために必要とされる、その栄養素についての異なる1日用量と関連付けられる、ステップと、
(iv)個体に対して、相当する遺伝的リスク群についての栄養素の1日用量を、個体についてのパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量として特定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0136】
この方法のいくつかの実施形態において、複数の遺伝的リスク群は、遺伝に基づく用量応答モデルは、好ましくは以下によって分類される。
【数1】

式中、yiは栄養素の血中濃度であり、xiは栄養素の1日摂取量であり、σεはモデルの推定誤差であり、β2(1)~βi(n)はyiと独立に相関する共変量である。
【0137】
この方法のいくつかの実施形態では、方法は、好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月間、最も好ましくは少なくとも1年間、パーソナライズされた推奨1日摂取量によって特定される1日用量で栄養素を個体に投与することを更に含む。
【0138】
この方法のいくつかの実施形態では、栄養素は、ビタミンB12、亜鉛、マグネシウム、ビタミンD3、葉酸、ビタミンB6、コリン、オメガ-3脂肪酸、グルタチオン、及びグリシンからなる群から選択される。
【0139】
栄養素がビタミンB12である実施形態では、任意選択で、遺伝に基づく用量応答モデルは以下の通りであってもよい。
【数2】

この方法のいくつかの実施形態では、複数の栄養素のうちの少なくとも1つについてのパーソナライズされた推奨1日摂取量は、サプリメント、食品、飲料又は食事のうちの少なくとも1つについての推奨を含み、サプリメント、食品、飲料又は食事は、栄養素を含み、かつ、好ましくは栄養素の1日用量を含むことによって、パーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量を満たすように配合される。
【0140】
この方法のいくつかの実施形態において、方法は、
(i)1日の間の異なる時点における摂取可能なイベントごとに、コンピュータユーザインターフェースを介して、個体についての1日当りに摂取可能な栄養素摂取量データを収集するステップと、
(ii)個体のための新たに推奨される栄養素1日摂取量を満たすために、日中の残りの時間のためのサプリメント、食品、飲料、又は食事のうちの少なくとも1つを推奨することによって、個体のためのパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量を、コンピュータユーザインターフェースを通して提供するステップと、
を含む。
【0141】
この方法のいくつかの実施形態では、方法は、サプリメント、食品、飲料、又は食事のうちの少なくとも1つを、分配デバイスから個体に分配するステップを更に含み、食品、飲料、又は食事は、栄養素を含み、好ましくは個体のためのパーソナライズされた推奨栄養素摂取量を満たす量で含む。
【0142】
別の実施形態では、本開示は、個体のためのパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量を提供する方法を提供し、方法は、
(i)栄養素についての一般的な用量応答モデルを決定するステップと、
(ii)栄養素の状態の変化に関連する特定の対立遺伝子について選択された一塩基多型(SNP)を同定し、選択されたSNPのそれぞれについて対立遺伝子効果サイズを確定するステップと、
(iii)栄養素についての一般的な用量応答モデルを修正して、遺伝項を追加し、それによって遺伝に基づく用量応答モデルを形成するステップであって、遺伝項が、対象それぞれに存在する選択されたSNPの効果を合計する、ステップと、
(iv)遺伝に基づく用量応答モデルを、選択されたSNPのそれぞれについての対立遺伝子効果サイズに適用し、それによって、複数の遺伝的リスク群のそれぞれについて、栄養素が遺伝的リスク群内にある対象にとって十分な血中レベルに達するために必要とされる、その栄養素についての異なる1日用量を決定するステップであって、複数の遺伝的リスク群のそれぞれが、他の遺伝的リスク群のものと重複しない多遺伝子リスクスコア又は多遺伝子リスクスコアの範囲と関連付けられる、ステップと、
(v)個体のSNP遺伝子型プロファイルを、個体由来のDNAサンプルから確定するステップと、
(vi)個体のSNP遺伝子型プロファイルに基づいて、個体を複数の遺伝的リスク群のうちの相当する遺伝的リスク群に分類するステップであって、個体についての多遺伝子リスクスコアが、相当する遺伝的リスク群の予め定められた多遺伝子リスクスコアと一致する、又は相当する遺伝的リスク群の予め定められた範囲内に含まれる、ステップと、
(vii)個体に対して、相当する遺伝的リスク群についての栄養素の1日用量を、個体についてのパーソナライズされた栄養素推奨1日摂取量として特定するステップと、を含む。
【0143】
この方法のいくつかの実施形態では、栄養素についての一般的な用量応答モデルを決定するステップは、線形回帰及び最小二乗法(OLS)モデル適合を、複数の個体からの栄養素の1日当たりの摂取量データ及び血中濃度データに適用するステップを含み、好ましくは、複数の個体からの栄養素の1日摂取量データ及び血中濃度データは、1つ以上のデータベースによって提供される。
【0144】
この方法のいくつかの実施形態では、栄養素の一般的な用量応答モデルは、
log(yi)=b0+11 log(xi1)+β2(1)+β3(2)+...βi(n)+σε
であり、式中、yiは栄養素の血中濃度であり、xiは栄養素の1日摂取量であり、σεはモデルの推定誤差であり、β2(1)~βi(n)はyiと独立に相関する共変量である。
【0145】
この方法のいくつかの実施形態において、選択されたSNPは、ゲノムワイドな関連研究から同定され、選択されたSNPのそれぞれについての対立遺伝子効果サイズの確定は、1つ以上の選択されたSNPのそれぞれに線形回帰を適用するステップを包む。
【0146】
この方法のいくつかの実施形態では、遺伝に基づく用量応答モデルは、以下である。
【数3】

式中、yiは栄養素の血中濃度であり、xiは栄養素の1日摂取量であり、σεはモデルの推定誤差であり、β2(1)~βi(n)はyiと独立に相関する共変量である。
【0147】
この方法のいくつかの実施形態では、栄養素は、ビタミンB12、亜鉛、マグネシウム、ビタミンD3、葉酸、ビタミンB6、コリン、オメガ-3脂肪酸、グルタチオン、及びグリシンからなる群から選択される。
【0148】
栄養素がビタミンB12である実施形態では、任意選択で、遺伝に基づく用量応答モデルは以下の通りであってもよい。
【数4】

この方法のいくつかの実施形態において、方法は、好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月、最も好ましくは少なくとも1年間、パーソナライズされた推奨1日摂取量によって特定される1日用量で栄養素を個体に投与することを更に含む。
【0149】
本開示によって提供される更に別の実施形態では、コンピュータ実装システムは、好ましくは必要なデータを記憶及び/又は取得することによって、本明細書に開示される方法のうちの1つ以上を実行するように構成される。
【0150】
本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0151】
更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数(integers)、整数(whole)又は分数、を含むものと理解されたい。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲を支持するものと解釈されたい。
【0152】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、別途文脈が明らかに示していない限り、単数形の単語は複数形を含む。したがって、「1つの」、「ある」、及び「当該」(「a」、「an」及び「the」)の言及には、概してそれぞれの用語の複数形が包含される。例えば、「原材料(an ingredient)」又は「方法(a method)」と言及する際は、複数の、そのような「原材料」又は「方法」が含まれる。「X及び/又はY(X and/or Y)」の文脈にて使用される用語「及び/又は(and/or)」は、「X」又は「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。
【0153】
同様に、「含む/構成される(comprise)」、「含む/構成される(comprises)」、及び「含む/構成される(comprising)」という用語は、排他的ではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかしながら、本開示により提供される実施形態は、本明細書で具体的に開示されない任意の要素を含まない場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を使用して規定される実施形態の開示は、開示される構成要素「から本質的に構成される」、及び「から構成される」実施形態の開示でもある。本明細書で使用するとき、用語「例(example)」は、特に、後に用語の列挙が続く場合には、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであるとみなすべきではない。本明細書で開示されるすべての実施形態は、特に明示的に示されない限り、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【実施例
【0154】
実施例1:個体のビタミンDレベルの遺伝的予測
欧州人集団におけるビタミンDレベルに関連する候補SNPのリストから、予測のための遺伝子スコアモデルを設計した。ゲノムワイドな関連研究(GWAS)の文献に記載の、ビタミンDレベルに関連するSNPを、GWASカタログ(https://www.ebi.ac.uk/gwas/、大規模GWAS由来の公的に利用可能な結果を保有する精選されたデータベース)から抽出した。このデータベースをフィルタリングするために、主要評価項目として「ビタミンD測定値」(「ビタミンD欠乏症」ではない)との関連を試験する欧州人(白人起源)の集団において実施されたGWASからの結果に着目した。特に、2つのGWAS、すなわち、4501人の対象に基づくAhnらのGWAS(doi:10.1093/hmg/ddq155)、及び42,274人の対象に基づくManousakiらのGWAS(doi:10.1016/j.ajhg.2017.06.014)の参照が有益であった。nmol/Lの規模での効果に対応する19個のSNPのセットを抽出した。
【0155】
関連シグナルの重複を回避するために、より低いp値(最も強い関連シグナル)を有するSNPから開始して、プロキシとしてr2>0.25を有する(すなわち、同じ関連シグナルを保有する)全ての後続のSNPを除外する、SNPをフィルタリングするためのプルーニングを適用した。同じプロセスを、前のものとの弱い連鎖平衡のために除外されなかった各後続のSNPについて繰り返した。PLINKツールを使用してLDを計算するために、1000人ゲノムプロジェクトの欧州基準集団を基準集団として使用した(https://www.cog-genomics.org/plink2/)。
【0156】
方法
異なる遺伝子組み合わせ(又は「スコア」)に関連するビタミンDレベルを理論的に計算した。
【0157】
16個の有益な2アレル性の遺伝子マーカーを仮定して、全ての組み合わせを計算した(316=43046721個の異なるスコア)。全てのスコアは、スカンジナビアでの非常に低い頻度及び集団の遺伝子選択のために、デンマークの集団では観察されなかった。遺伝子変異間の強い独立性(相互関係なし)が仮定された。各スコアについて、単位増加(unit increase)の値を、異なる遺伝子型にわたるリスク対立遺伝子数の合計に、GWASカタログで入手可能な対応する単位増加を乗じたものとして計算した(以下の表3)。
【0158】
スコア基準は、非リスク対立遺伝子についてのホモ接合体遺伝子型の組み合わせ(すなわち、0リスク対立遺伝子カウント)として定義した。デンマークにおけるビタミンD有病率は、Hansen et al.(2008;doi:10.3390/nu10111801)から計算されるように、非サプリメントユーザである男性(n=1048)及び女性(n=1517; Hansen et al.の表1を参照されたい)におけるビタミンDレベルのウェイト付けされた(集団サイズ)計算を用いて、40.17nmol/Lに設定された。Hansen et al.の表において利用可能な値に関連付けられた大きな(5%~95%)間隔に注目した。
【0159】
この平均値及びスコア関連の単位増加した分布の平均を用いて、基準スコアについてのビタミンD関連値を推定した。次いで、各スコアについて、ビタミンDレベルを、ビタミンD基準スコア値+スコア関連単位増加として計算した。
【0160】
結果
表3は、プルーニング後の選択された候補SNPからの情報を要約したものである。
【表3】

スコア特異的ビタミンDレベル
【0161】
理論計算
平均スコア関連ユニット値は、基準スコアと比較したとき、2.71nmol/L増加と推定された。40.17nmol/LのビタミンD普及率を仮定すると、基準スコアのビタミンDは、37.46nmol/Lと推定された。1~32の範囲の各スコアについて、ビタミンDレベルを、ビタミンD基準スコア値+スコア関連単位増加として計算した。例えば、16個の遺伝子座の各々についての対象ホモ接合性キャリアでは、単位増加は5.42と推定され、ビタミンDレベルは37.46+5.42=42.88nmol/Lと推定された。スコアを条件とするビタミンDは37.46~42.88nmLの値をとった。
【0162】
1000ゲノム集団への適用
次いで、スコア計算プロセスを、1000人ゲノムプロジェクトの欧州集団(n=379対象)に適用した。この集団は、ヨーロッパ人集団の遺伝子レベルで代表的であると予想される。遺伝子情報を16個のSNPについて抽出し、スコアを計算した。単位増加平均は、4.297nmol/Lと推定され、理論的に計算された2.71nmmol/L値の2倍であった。固有スコアの数は、43046721個の可能な組み合わせについて、360(379人の対象において)であった。スコアは16~31の範囲であり、スコア条件付きビタミンDは38.36~41.25mol/Lの値をとった(4.297nmol/Lの平均単位増加を仮定)。2.71nmol/Lの理論値を使用すると、ビタミンDは39.95nmol/L~42.84nmol/Lの範囲であった。
【0163】
この集団は、ビタミンDについてのスコアの一般集団を代表するものではなく、「ファウンダー集団」の特徴及びサンプルサイズに起因する可能性が高い。全ての遺伝子型組み合わせの累積スコア頻度を考慮すると、18~27個のリスク対立遺伝子(1000個のゲノムコホートについて観察された範囲内)のカウントが、最も頻度の高いカウントとして観察された。
【0164】
適切な25(OH)D濃度を決定するための適切なカットオフは、50nmol/Lであり、これは、デンマークにおけるコンセンサスであった(Danish Health Authority、Recommendations for Vitamin D(デンマーク語。https://www.sst.dk/da/sundhed-og-livsstil/ernaering/d-vitamin(2018年10月23日にアクセス))。したがって、25nmol/L未満の25(OH)D濃度は、ビタミンD「欠乏」を示すとみなされ、一方、25~50nmol/Lの間の濃度は、「不足」を示す。春及び現在の計算プロセスの間のサプリメント不使用のデンマーク集団における40.17nmol/Lの普及率を仮定すると、試験された全ての個体がビタミンD不足を示すことが理論的に予想された。サプリメント不使用者についてHansenらにおいて観察されたように、普及率をより高い値に変更させることは、理論上のビタミンDレベルをより高い値(例えば、女性では+50)に変更する可能性が高くなる。
【0165】
先に述べたように、SNP間の異なる効果サイズのために、所与の遺伝子スコアについて、異なる関連リスク、次いでビタミンDレベルが関連付けられる。「測定単位」としてのリスク対立遺伝子の数を使用して、表4に示すようにビタミンD平均レベルを計算した。遺伝子的スコアを表5のクラスに分類した。
【表4】

【表5】

モデルの改良
デンマーク人集団においてビタミンDの大きなばらつきが観察された(Hansen et al.2018;doi:10.3390/nu10111801)。主な因子としては、性別及び年齢に加えて季節及びビタミンDの補給が挙げられる。これらの共因子は、基準サンプル集団からの遺伝子情報に基づいてビタミンDレベルを予測する場合に考慮される必要がある。ここでは、安定したビタミンD普及率を40.17nmol/Lに設定したが、そのモデルは、年齢、性別、季節及び試験対象からのビタミンD補給情報に基づいて異なるビタミンD値に適応させることもできた。
【0166】
ビタミンDアセスメントツールのスクリプト
本実施例に基づくパラメータを使用してビタミンDレベルを計算するために、プログラムRにおいてスクリプトを開発した。これは、異なるセット数のSNP、異なるSNP単位増加値、次いで異なる栄養素についての異なるスコア平均単位増加などのパラメータの差に応じて、栄養素の異なるモデルに適合させることができる。
【0167】
実施例2:ビタミンDの新たな推奨1日摂取量
ビタミンD欠乏症(血清25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D])は、骨折及び骨量減少を含む好ましくない骨格転帰に関連する。<30nmol/L(又は12ng/mL)未満の25(OH)D濃度を伴う重度のビタミンD欠乏症は、過剰な死亡率、感染症、及び多くの他の疾患のリスクを劇的に増加させる。最近の大規模な観察データは、欧州人の約40%がビタミンD欠乏であり、13%が重度に欠乏していることを示唆している。75nmol/L(又は30ng/mL)未満の範囲の血清中/血漿中25(OH)D濃度は、ほとんどの著者によってビタミンD欠乏症であると考えられている。遺伝的関連研究は、遺伝子の多様性が血漿中のビタミンDレベルの減少と有意に関連することを示している(図3)。
【0168】
ビタミンDの多遺伝子リスクスコアの作成
公的に利用可能なゲノムワイドなビタミンD関連データ(https://www.ebi.ac.uk/gwas/efotraits/EFO_0004631)から、多遺伝子リスクスコアを作成するために、165個の一塩基多型を選択した。Arivaleコホートにおける、ビタミンDについて選択されたSNPについて線形回帰を行った。Arivaleコホートは、現在は廃業しているサイエンティフィック・ウェルネス・カンパニーに、2015年~2019年に自己登録した18歳超の個体からなる。簡単に説明すると、Arivale参加者の大部分(約80%)は、プログラム時にワシントン又はカリフォルニアの居住者であった(Arivaleコホートに関する更なる情報については、Wilmanski et al.2021を参照されたい)。PRSの分布は正規分布であり、リスク対立遺伝子当たりのビタミンDの平均減少は0.51ng/mLであった。図3は、多遺伝子リスクスコア(PRS)の五分位数についてのビタミンD血漿濃度に対する遺伝的影響を示す。
【0169】
次に、本発明者らは、ビタミンDレベルに影響することが知られている共変量(年齢、性別、BMI、皮膚色、喫煙及び活動レベル)を考慮して、異なる多遺伝子リスク群についてビタミンD濃度を予測するモデルを開発し、リスク群それぞれの対象の95%について75nmol/Lを超える予測をもたらすために必要なビタミンD摂取量を推定する。これを達成するために、線形モデルが以下の形式でデータに適合される。
Intake(mcg/日)=(77.79528-[(Age×-0.3)+(Gender×-1.196157)+(BMI×-0.392055)+(p1+SkinColor×32.097239)+(Smoking×-1.410527)+(ActivityLevel×1.667853)+(prs5×2.7126])/0.66
【0170】
図4は、異なる遺伝子リスクスコアごとに、年齢に基づき必要とされるビタミンD摂取量の増加を示す。例として、最も低い遺伝子リスクスコアを有する30歳の人は、約60mcg/日のビタミンD(2400IU)を必要とし、一方、最も高い遺伝子リスクスコアを有する同じ年齢の人は、>75nmol/Lの血漿レベルに達するために約90mcg/日(3600IU)を必要とする。
【0171】
実施例3:遺伝子リスクスコアに基づいて、個体が十分なビタミンB12レベルに達するために必要とされる1日当たりのビタミン摂取量を推定するアルゴリズム
ビタミンB12(コバラミン)は、赤血球を産生するために重要であり、神経機能に関与している。ビタミンB12が低レベルであると、神経障害及び冠動脈疾患のリスク増加に関連する(Langan et al.2017及びKumar et al.2009)。ビタミンB12は、主に動物由来の食物源、特に赤肉、魚及び乳製品中に見出される。200~250pcg/mL未満の血清レベルは、ビタミンB12欠乏症を示唆する(Langan,2017;Vidal-Alaball et al.,2005;Wong,2015)。Langan(2017)は、ビタミンB12のレベルが400pcg/mLを超える場合は十分であり、150pcg/mL~400pcg/mLの間である場合は検証されるべきであると設定している。
【0172】
成人におけるビタミンB12の推奨1日摂取量は、ほとんどの国の食品機関によって1日当たり2.4mcg~3mcgに設定されている。しかしながら、これらの値は、疫学研究における健康な集団におけるビタミンB12の平均摂取量レベルに由来し、十分な血中レベルを反映しない。実際、図5に示されるように、米国における大規模国民栄養調査(NHANES)では、一般集団の70%未満が、1日あたり2.4mcgのビタミンB12の摂取で十分な血中レベルに達した。ビタミンB12摂取に対する応答の変動性は、ビタミンB12の吸収及び代謝に影響する遺伝的要因によって部分的に説明される。
【0173】
ビタミンB12のための一般的用量応答アルゴリズム
したがって、個体の所要量を推定するために、ビタミンB12摂取の血中濃度に対する用量応答への遺伝的影響をモデル化する必要がある。
【0174】
ビタミンB12の一般的な用量応答を説明するための1つの解決策は、線形回帰の概念、及び習慣的摂取量と濃度との間の関係をモデル化するために使用される最小二乗法(OLS)モデル適合手順を使用することによって達成することができる。
【0175】
一般的な用量応答モデルを確立するために、1日摂取量及び血中濃度データの両方が必要である。この実施例で使用されるデータは、National Health and Nutrition Survey(NHANES)データベースからのものであり、以下の説明は、National Center for Health Statisticsのパンフレット(National Center for Health Statistics,2014)に基づく。このデータベースは、2年間隔にわたるデータを含むデータセットから構成される。毎年、米国全体の15郡からの約5000人の参加者がいる。データ収集は、研究及び国家政策に有用な健康及び栄養状態データを提供することを目的とする。調査は、24時間の食物想起及び臨床血液生化学を含む、人口統計、社会経済、食生活、及び健康に関連する質問を含む。ビタミンB12の摂取量は、食物データベース及びUSDAのようなプログラムを使用して、24時間の食物想起データから抽出することができる(https://fdc.nal.usda.gov)。図6は、NHANES中のビタミンB12摂取量対血中濃度の生データを示す。このデータから、第1の一般的な用量応答モデルアルゴリズムを以下の形式で導出することができる。
log(yi)=β0+β1log(xi1)+β2Age+β3Gender+σε
【0176】
式中、yiは血中濃度であり、xiは1日摂取量であり、σεはモデルの推定誤差である。Age及びGenderは、用量応答に影響する独立した共変量である。
【0177】
このモデルをNHANESからのビタミンB12データに適用すると、a)等しいビタミンB12摂取レベルで血中B12濃度に大きな変動性があり(図6)、2.4mcg/日(米国のRDA)の摂取では70%の個体のみが十分なビタミンB12血中レベルに達する(図5)ことが示される。応答における変動の一部は、遺伝的要因に起因し得る。
【0178】
ビタミンB12の多遺伝子リスクスコアの作成
公的に利用可能なゲノムワイドなビタミンB12関連データ(https://www.ebi.ac.uk/gwas/efotraits/EFO_0004631)から、多遺伝子リスクスコアを作成するために、一塩基多型を選択した(表6)。
【表6】

Arivaleコホートにおける、ビタミンB12について選択されたSNPについて線形回帰を行った。Arivaleコホートは、現在は廃業しているサイエンティフィック・ウェルネス・カンパニーに、2015年~2019年に自己登録した18歳超の個体からなる。簡単に説明すると、Arivale参加者の大部分(約80%)は、プログラム時にワシントン又はカリフォルニアの居住者であった(Arivaleコホートに関する更なる情報については、Wilmanski et al.2021を参照されたい)。メチル-マロン酸(MMA)を血中B12濃度のバイオマーカーとして測定した。MMAは、ビタミンB12血中レベルと逆相関する。PRSの分布は正規分布であり、リスク対立遺伝子当たりのMMAの平均増加は3.4単位であり(表7)、これはリスク対立遺伝子当たり約9pg/mLのビタミンB12(コバラミン)の減少に相当する。図7は、多遺伝子リスクスコアにおけるそれぞれの追加の対立遺伝子についてビタミンB12所要量の増加を示す。
【表7】

パーソナライズされた所要量を計算するための遺伝的影響を含むビタミンB12の用量応答アルゴリズム
個体のビタミンB12所要量を推定するために、個体に存在する全てのリスク対立遺伝子の効果を合計する遺伝項を、以下の形式で用量応答モデルに加えた。
【数5】

Arivale研究のPRS効果サイズを使用してアルゴリズムを適用すると、最高リスクスコア群(14~18のリスク対立遺伝子)の対象は、低リスク群(0~4のリスク対立遺伝子)と同じ血中レベルに達するために、低リスク群の個体の5倍の摂取を必要とすることが示された。
【0179】
高リスク群の97%についてビタミンB12充足を達成するためには、1日当たりのビタミンB12所要量は、1500mcg/日より高くする必要があり得る(現在のビタミンB12サプリメントは、一般に、1カプセルあたり500~1500mcgの範囲である)(図8)。
【0180】
いくつかの研究はまた、ビタミンB12の吸収が、1日あたり2回のより低用量での適用、又は胃のpHを増加させるマトリックスの添加のような手段によって増加され得ることを示した(Brito et al.2018)。これらの手段は、高い多遺伝子リスクスコアを有する個体のためのパーソナライズされた摂取推奨に含まれ得る。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】