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特表2024-540240感染症を防止するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】感染症を防止するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 14/245 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P1/00
A61P31/04
A61K39/39
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 R
A61P43/00 121
C12N1/21
C07K14/245 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525929
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022048262
(87)【国際公開番号】W WO2023076623
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/273,330
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524161542
【氏名又は名称】ヴァクシノヴァ ユーエス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コックス, グラハム ジェイ.エム.
(72)【発明者】
【氏名】エメリー, ダリル
(72)【発明者】
【氏名】ストラウブ, ダレン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘロン-オルソン, リサ
(72)【発明者】
【氏名】タム, パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】カトロン, ドリュー エム.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA26X
4B065AA26Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA43
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA04
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC751
4C085AA02
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA38
4C085CC07
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD23
4C085DD86
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG01
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA11
4H045EA05
(57)【要約】
本発明は、トリ病原性E.coliなどのE.coliから単離可能な単離されたタンパク質を提供する。当該タンパク質の1種または複数種を含む組成物、ならびに当該タンパク質の作製方法および当該タンパク質の使用方法も本発明によって提供される。本開示は、シチメンチョウ、鶏、およびアヒルなどの家禽(domestic fowl)を、腹膜炎、大腸菌症、および敗血症の制御を含め、E.coliの臨床症状に備えて免疫化するために有効な組成物を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号10に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
薬学的に許容される担体、および
アジュバント
を含む組成物。
【請求項2】
配列番号20に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号22に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、または
配列番号20に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質および配列番号22に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質
をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号10に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号20に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、
配列番号22に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、および
配列番号44に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質
から選択されるタンパク質のうちのいずれか2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つを含む組成物であって、
薬学的に許容される担体およびアジュバントをさらに含む、組成物。
【請求項4】
配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、および配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質;
配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質、および配列番号44に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質;
配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質および配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質;
配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質および配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質;または
配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質および配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有する単離されたタンパク質
を含む組成物であって、
薬学的に許容される担体およびアジュバントをさらに含む、組成物。
【請求項5】
対象における腹膜炎を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる腹膜炎を有するまたはそれを有するリスクがある対象に請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与するステップを含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項6】
対象における腹膜炎の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる腹膜炎を有するまたはそれを有するリスクがある対象に請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与するステップを含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項7】
対象における局所大腸菌症を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる局所大腸菌症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与するステップを含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項8】
対象における局所大腸菌症の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる局所大腸菌症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与するステップを含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項9】
対象における敗血症を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる敗血症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与するステップを含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項10】
対象における敗血症の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる敗血症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与するステップを含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項11】
対象における腹膜炎を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる腹膜炎を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、前記組成物が、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項12】
対象における局所大腸菌症を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる局所大腸菌症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、前記組成物が、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項13】
対象における局所大腸菌症の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる局所大腸菌症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、前記組成物が、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項14】
対象における敗血症を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる敗血症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、前記組成物が、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項15】
対象における敗血症の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる敗血症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、前記組成物が、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、前記対象が、家禽である、方法。
【請求項16】
前記家禽が、鶏、シチメンチョウ、またはアヒルである、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも0.01マイクログラム(μg)かつ500μg以下のタンパク質を投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
6種のタンパク質を発現するように操作された、単離された全細胞であって、前記6種のタンパク質が、配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、配列番号10に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、および配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質である、全細胞。
【請求項19】
前記細胞が、E.coliである、請求項18に記載の全細胞。
【請求項20】
微生物の2つまたはそれよりも多くの集団を含む組成物であって、前記集団のそれぞれが、請求項18に記載の6種のタンパク質のサブセットを発現し、全体として考えた前記2つまたはそれよりも多くの集団が、前記6種のタンパク質を発現する、組成物。
【請求項21】
前記微生物が、E.coliである、請求項20に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
【0002】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年10月29日出願の米国仮特許出願第63/273,330号の利益を主張するものである。
【0003】
配列表
【0004】
本出願は、2022年10月28日に作成された表題「0293.000061WO01.xml」、サイズ92キロバイトのASCIIテキストファイルとして米国特許商標庁にEFS-Webを介して電子的に提出された配列表を含む。配列表に含まれる情報は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0005】
背景
【0006】
E.coliは、Enterobacteriaceae科に属するグラム陰性桿菌である。E.coliは、家禽(poultry)の腸の正常細菌叢の構成要素であると考えられているが、例えばトリ病原性E.coli(APEC)に指定されるものなど、ある特定の株は、種々の内臓に広がり、大腸菌症を引き起こし得る。大腸菌症は、世界的に家禽産業における鳥類の病的状態および死亡の主要な原因であり、アヒル、鶏、およびシチメンチョウにおける大発生が報告されており、重度の経済的損失が生じている。この疾患は、気嚢炎、心膜炎、肝周囲炎および腹膜炎などの種々の臨床症状を引き起こすが、卵黄嚢感染症、臍炎、気道感染症、頭部腫脹症候群、敗血症、多漿膜炎、大腸菌性肉芽腫(coligranuloma)、腸炎、蜂窩織炎、および卵管炎とも関連し得る(Kathayat et al., Pathogens. 2021 Apr 12; 10 (4): 467;Kabir, Int. J. Environ. Res. Public Health 2010, 7 (1), 89-114)。
【0007】
商業的な種鶏、採卵鶏、および肉用鶏において、APECは、卵管炎/腹膜炎/卵管腹膜炎(SPS)の原因となり、死亡事象および産卵(egg production)の減少に主に起因して経済的損失が生じる。卵管炎を有する鳥類は、頻繁に膨張し、壁が薄くなり、チーズ様滲出液で満たされた、炎症を起こした輸卵管を示す。輸卵管壁が損なわれることによってE.coliが腹腔内に拡散すると、腹膜炎が併発し(卵管腹膜炎)、チーズ様滲出液が腹腔内に蓄積する。この滲出液は、多くの場合、凝固した卵黄の外観を有し、一般に「卵黄性腹膜炎」として同定される。卵管炎の非存在下で腹膜炎が生じることもあるが、まれである(Jordan et al., Vet Rec. 2005; 157: 573-577;Landman and Cornelissen, Tijdschrift Voor Diergeneeskunde, 01 Nov 2006, 131 (22): 814-822;Barnes et al., Colibacillosis. In Y.M. Saif, A.M. Fadly, J.R. Glisson, L.R. McDougald, L.K. Nolan, & D.E. Swayne (Eds.). Diseases of Poultry 2008, (12 ed., pp. 691732). Ames: Iowa State Press)。卵管炎に伴って卵墜が起こり得、結果として、卵黄が独立して腹腔内に存在することになり得、腹膜炎が生じやすくなり得る(Gross and Siegel, Avian Diseases. Vol. 3, No. 4 (1959), pp. 370-373)。
APEC株は、鶏、シチメンチョウおよびアヒルの胃腸管および気道において疾患を引き起こすことなく定着することができ、日和見病原体として、ストレス要因(産生関連ストレス(production-related stress)、免疫抑制、および同時感染)の存在下では腸管外部位に移動することができることが報告により十分に裏付けられている。APECは、ストレス要因の存在下で、気管上皮および腸上皮の擦過によって胃腸管および気道に侵入し、血流および内臓に到達し、種々の臨床症状をもたらす(Dziva and Stevens, 2008, Avian Pathol. 37: 355-366;Collingwood et al., 2014, Front. Vet. Sci. 1: 5)。腹膜炎の場合では、E.coliの天然の感染経路は、細菌が総排泄腔を経由して輸卵管へ上方向に移動し、腹膜腔内に入ることによるものが大部分であると思われるが、気管内導入および感染も生じ得る(Landman and van Eck, Avian Pathology, 2015, 44: 5, 370-378;Nolan et al., Colibacillosis. 2013, Diseases of Poultry 13 ed, Pages 751-805;Landman et al., 2013. Avian Pathology, 42 (2): 157-162)。感染経路は、ごみが近くにあること、粉塵のひどさ、および環境曝露の点で、飼育の型の影響を受ける可能性が高い。前者の経路は、集中的な産卵の結果としての内部環状膣筋系の弛緩に起因し得ると考えられる(Nolan et al., Colibacillosis. 2013, Diseases of Poultry 13 ed, Pages 751-805;Landman et al., 2013. Avian Pathology, 42 (2): 157-162)。これは、肉用鶏の種鶏および産卵鶏の産卵のピーク付近で死亡事象および腹膜炎の急増が起こるという一般的な産業での知見と一致する。大多数のAPEC分離株は、3種の優性血清型:O1a:K1;O2a:K1;およびO78:K80のものである。疾患大発生においてより低頻度で分離される他の血清学的群は、O3、O6、O8、O11、O15、O22、O55、O74、O88、O95、およびO109である(Zanella et al., 2000. Avian Pathology, 29: 4, 311-317;Huja et al., mBio. 2015 Jan 13; 6 (1): e01681-14)。抗生物質使用の減少ならびに鳥類飼育場および放し飼いでの飼育の増加が、近年観察されているAPEC関連死亡事象および腹膜炎の発症率の上昇の大きな一因であると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kathayat et al., Pathogens. 2021 Apr 12; 10 (4): 467
【非特許文献2】Kabir, Int. J. Environ. Res. Public Health 2010, 7 (1), 89-114)
【非特許文献3】Jordan et al., Vet Rec. 2005; 157: 573-577
【非特許文献4】Landman and Cornelissen, Tijdschrift Voor Diergeneeskunde, 01 Nov 2006, 131 (22): 814-822
【非特許文献5】Barnes et al., Colibacillosis. In Y.M. Saif, A.M. Fadly, J.R. Glisson, L.R. McDougald, L.K. Nolan, & D.E. Swayne (Eds.). Diseases of Poultry 2008, (12 ed., pp. 691732). Ames: Iowa State Press
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の概要
【0010】
本開示は、シチメンチョウ、鶏、およびアヒルなどの家禽(domestic fowl)を、腹膜炎、大腸菌症、および敗血症の制御を含め、E.coliの臨床症状に備えて免疫化するために有効な組成物を対象とする。本開示はまた、腹膜炎鶏モデルの上首尾の開発(実施例12)、ならびに、二価金属イオンに対する金属調節性受容体タンパク質を含む組成物により若鶏および成鶏の死亡事象および定着、および、これだけに限定されないが、採卵鶏を含めた家禽(domesticated fowl)における腹膜炎および大腸菌症に特徴的な病的逸脱を防止することができることを実証することにおけるその使用も記載するものである。
【0011】
本明細書で使用される用語は、特に指定のない限り、関連する技術分野におけるそれらの通常の意味を持つことを理解されたい。本明細書で使用されるいくつかの用語およびそれらの意味を以下に記載する。
【0012】
本明細書に記載のポリヌクレオチド配列はDNA配列として列挙されているが、当業者はDNA配列の相補物、逆配列、および逆相補物を容易に決定することができることが理解される。本明細書においてDNA配列として開示される配列について、各チミジンヌクレオチドをウリジンヌクレオチドで置き換えることによってDNA配列からRNA配列に変換することができることも理解される。
【0013】
別段の指定がない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および「少なくとも1つの(at least one)」は、互換的に使用され、1つまたは1つよりも多くを意味する。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または(or)」という用語は、一般に、内容からそうでないことが明らかでない限り、「および/または(and/or)」を含む意味で使用される。「および/または(and/or)」という用語は、列挙されている要素のうちの1つまたは全て、または列挙されている要素のうちのいずれか2つもしくはそれよりも多くの組合せを意味する。「および/または(and/or)」の使用は、一部の場合では、「または(or)」の使用が含意されておらず、他の場合では、「および/または(and/or)」を意味しないこともある。
【0015】
「好ましい」および「好ましくは」という単語は、ある特定の状況下である特定の利益をもたらし得る本開示の実施形態を指す。しかし、他の実施形態も同じまたは他の状況において好ましい可能性がある。さらに、1つまたは複数の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを意味するものではなく、また、他の実施形態を本開示の範囲から排除するものでもない。
【0016】
本明細書で使用される場合、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」などはそれらのオープンエンドの包括的な意味で使用され、一般に、「これだけに限定されないが、が挙げられる(include, but not limited to)」、「としては、これだけに限定されないが、が挙げられる(includes, but not limited to)」または「これだけに限定されないが、を含めた(including, but not limited to)」を意味する。
【0017】
本明細書において実施形態が「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」などの言葉と共に記載されている場合は必ず、「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載される別の類似の実施形態も提供されることが理解される。「からなる(consisting of)」という用語は、「からなる(consisting of)」という句に先行するいかなるものも含み、かつそれに限定されることを意味する。すなわち、「からなる(consisting of)」は、列挙されている要素が必要または必須であり、かつ、他の要素は存在してはならないことを示す。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、組成物、産物、方法などに関する場合、その組成物、産物、方法などの構成成分が、列挙されている構成成分、および列挙されている要素に関して本開示に明記されている活性または作用に干渉も寄与もしない任意の他の構成成分に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、列挙されている要素が必要または必須であるが、他の要素は必要に応じたものであり、列挙されている要素の活性または作用に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて、存在する場合もあり、存在しない場合もあることを示す。
【0018】
例えば抗原に対する免疫応答を刺激することなどの事象を生じさせるために「適した」条件、または、「適した」条件とは、そのような事象が生じることを妨げない条件である。したがって、これらの条件は、事象を可能にする、増強する、容易にする、かつ/または助長するものである。
【0019】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「ある特定の実施形態」または「一部の実施形態」などへの言及は、その実施形態に関連して記載されている特定の特色、構成、組成物、または特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、そのような句が本明細書全体を通して種々の箇所に見られても、必ずしも本開示の同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特色、構成、組成物、または特徴を任意の適切な様式で組み合わせて1つまたは複数の実施形態にすることができる。
【0020】
本開示全体を通して、本開示の種々の態様は、範囲形式で示される場合がある。範囲形式での説明は、単に便宜および簡潔さのためだけのものであり、本開示の範囲に対する柔軟さのない限定と解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲についての記載は、具体的に開示された全ての可能性ある部分範囲ならびにその範囲内に入る個々の数値を有するとみなされるべきである。例えば、1から6までなどの範囲の記載は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6までなどの具体的に開示された部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を有するものとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず当てはまる。
【0021】
本明細書の記載では、明確にするために、特定の実施形態が別個に記載される場合がある。特定の実施形態の特色が別の実施形態の特色と適合しないことが明白に規定されていなければ、ある特定の実施形態は、1つまたは複数の実施形態に関連して本明細書に記載の適合する特色の組合せを包含し得る。
【0022】
別個のステップを含む、本明細書に開示される任意の方法に関しては、ステップを任意の実行可能な順序で実施することができる。また、必要に応じて、2つまたはそれよりも多くのステップの任意の組合せを同時に実施することができる。
【0023】
本開示の上記の要約は、開示される実施形態それぞれを記載するものではなく、本開示のひとつひとつの実行を記載するものでもない。以下の説明は、例示的な実施形態をより詳細に例証するものである。本出願全体を通して、いくつかの箇所では、例の一覧によって手引きが提供され、それらの例を種々の組合せで使用することができる。各場合において、記載されている一覧は、単に代表的な群としての役割を果たすものであり、排他的な一覧であると解釈されるべきではない。
【0024】
図面の簡単な説明
【0025】
以下の本開示の例示的な実施形態の詳細な説明は、以下の図と併せて読むことにより最も良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、鉄枯渇成長条件下で発現された金属調節性タンパク質を示す、トリE.coli分離株1966(レーン1)および1967(レーン2)の電気泳動プロファイルを示す。MALDI-TOF-MSによって調査された各タンパク質の同定が示されている。以下のタンパク質が同定された:レーン1は、FepA、IroN、IreAおよびChuAを含む;レーン2は、FecA、FepAおよびIutAを含む。レーン1および2は、2種の他の推定外膜タンパク質であるOmpCおよびOmpAを含む。
【0027】
図2図2は、試験パラメータとして齢および異なるワクチン接種-負荷の時間間隔での3つの別々の試験における、ワクチン接種した場合とワクチン接種していない対照の間での総死亡事象の要約を示す。
【0028】
図3図3は、28週齢(WOA)、31WOAでのプライム・ブーストワクチン接種戦略、および33WOAでの負荷を用いた、ワクチン接種した鳥とワクチン接種していない対照鳥の間の器官におけるE.coliの定着または蔓延の差異の要約を示す。
【0029】
図4図4は、10週齢(WOA)、18WOAでのプライム・ブーストワクチン接種戦略、および20WOAでの負荷を用いた、ワクチン接種した鳥とワクチン接種していない対照鳥の間の器官におけるE.coliの定着または蔓延の差異の要約を示す。
【0030】
図5図5は、試験3の、4週齢(WOA)および6WOAでのプライム・ブーストワクチン接種戦略、ならびに8WOAでの負荷を用いた、ワクチン接種した鳥とワクチン接種していない対照鳥の間の器官におけるE.coliの定着または蔓延の差異の要約を示す。
【0031】
図6図6は、試験4のワクチン接種に対する血清学的応答を示す。Y軸に各ワクチン接種群についてのELISAによる幾何平均力価が95%信頼区間(対数変換値に対して算出したもの)と共に示されている。ワクチン接種1および2時点の齢(週数)が示されている。図中の0週でのワクチン接種は1日齢でのワクチン接種である。「なし」は、その時点でその群の鶏に対してワクチン接種を行わなかったことを意味する。全ての鶏から、18週齢時点で血清学的検査のために採血した。群の詳細は表4でも見ることができる。*は、油中水型アジュバントの代わりにAlOHアジュバントを使用したことを示す。群1、ワクチン接種1時点で1日齢、AlOHアジュバントを用いた(0*)およびワクチン接種2時点で16週齢(16);群2、ワクチン接種1時点で1日齢、AlOHアジュバントを用いた(0*)および2回目のワクチン接種は行わなかった(なし);群3、ワクチン接種1時点で1日齢(0)およびワクチン接種2時点で16週齢(16);群4、ワクチン接種1時点で12週齢(12)およびワクチン接種2時点で16週齢(16);群5、1回目のワクチン接種を行わなかった(なし)およびワクチン接種2時点で16週齢(16);群6、1回目のワクチン接種を行わなかった(なし)および2回目のワクチン接種も行わなかった(なし)。
【0032】
図7図7は、個々の組換えタンパク質を用いたワクチン接種したマウスの、ワクチン接種していない対照と比較した、負荷後のパーセント死亡事象を示す。マウスは、3週間空けて2回のワクチン接種し、2回目のワクチン接種の3週間後に負荷した。
【0033】
図8図8は、複数の組換えタンパク質を単一のワクチン製剤として用いたワクチン接種したマウスの、ワクチン接種していない対照と比較した、負荷後のパーセント死亡事象を示す。評価した製剤は、IreAおよびChuAの組合せ、FepAおよびIroNの組合せ、ChuAおよびIroNの組合せ、IreA、ChuA、FepA、およびIroNの組合せ、ならびにIreA、ChuA、FyuA、およびIroNの組合せであった。
【0034】
図9-1】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-2】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-3】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-4】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-5】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-6】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-7】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-8】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-9】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-10】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-11】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-12】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-13】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-14】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
図9-15】図9は、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列の例およびタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
【0036】
タンパク質
【0037】
一態様では、本開示は、タンパク質、タンパク質を含む組成物、ならびにタンパク質の作製方法およびタンパク質の使用方法を提供する。本明細書で使用される場合、「タンパク質」とは、ペプチド結合によって連結したアミノ酸のポリマーを指す。したがって、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、および酵素という用語がタンパク質の定義の範囲内に含まれる。この用語はまた、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などの、タンパク質の1種または複数種の発現後修飾を含み得るタンパク質も包含する。タンパク質という用語は、特定の長さのアミノ酸のポリマーを意味するものではない。タンパク質は、天然の供給源から直接単離可能なものであってもよく、組換え技法、酵素的技法、または化学的技法を活用して調製されるものであってもよい。天然に存在するタンパク質の場合では、そのようなタンパク質は一般には単離される。
【0038】
「単離された」タンパク質とは、その天然の環境から取り出されたタンパク質である。例えば、単離されたタンパク質は、細胞質から、または細胞膜から取り出されており、その天然の環境のタンパク質、核酸、および他の細胞材料の多くがもはや存在しない、タンパク質である。それぞれがその天然の環境から取り出されたものである1つよりも多くのタンパク質の混合物も単離されたものとみなされる。
【0039】
特定の供給源から「単離可能」であると特徴付けられるタンパク質は、適当な条件下で、同定された供給源によって産生されるタンパク質であるが、そのタンパク質は、代替供給源から、例えば、従来の組換え技法、化学的技法、または酵素的技法を使用して得ることができる。したがって、タンパク質を特定の供給源から「単離可能」であるものとして特徴付けることは、そのタンパク質をいずれかの特定の供給源から得なければいけないことを意味するものでもなく、そのタンパク質をいずれかの特定の条件または処理の下で得なければいけないことを意味するものでもない。
【0040】
「精製された」タンパク質とは、その少なくとも60%が、それらが天然では付随する他の構成成分ではない、好ましくは少なくとも75%が、それらが天然では付随する他の構成成分ではない、最も好ましくは少なくとも90%が、それらが天然では付随する他の構成成分ではない、タンパク質である。天然に存在する生物体の外で、例えば、化学的または組換え手段によって作製されるタンパク質は、天然の環境に存在したことがないので、定義により、単離され、精製されたものとみなされる。
【0041】
一般に、タンパク質は、分子量、アミノ酸配列、タンパク質をコードする核酸配列、免疫学的活性、またはそのような特徴の2つもしくはそれよりも多くの任意の組合せによって特徴付けることができる。タンパク質の分子量は、一般にはキロダルトン(kDa)で表され、例えば、ゲル濾過、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、キャピラリー電気泳動を含めたゲル電気泳動、質量分析、液体クロマトグラフィー(HPLCを含む)、および観察されたまたは予測されるアミノ酸配列から分子量を算出することを含めた常套的な方法を使用して決定することができる。別段の指定のない限り、分子量への言及は、約4%のスタッキングゲルおよび約10%の分離ゲルを用いたSDSポリアクリルアミドゲルを使用し、還元・変性条件下でタンパク質を分離することによって決定される分子量を指す。SDS-PAGEによって決定されるタンパク質の分子量は、本明細書では見かけの分子量とも称される。一実施形態では、SDS-PAGEによって同定されるタンパク質の分子量には、明示された値よりも1kDa、2kDa、3kDa、4kDa、または5kDa大きいまたは小さい分子量が含まれる。
【0042】
本明細書に記載のタンパク質は、金属調節性であり得る。本明細書で使用される場合、「金属調節性タンパク質」とは、微生物によって発現されるタンパク質であって、その微生物が低金属条件下で成長している場合に、同じ微生物が高金属条件下で成長している場合と比較して高レベルで発現される、タンパク質である。低金属条件および高金属条件は本明細書に記載されている。例えば、E.coliによって産生されるある特定の金属調節性タンパク質は、その微生物が高金属条件下で成長している間は検出可能なレベルでは発現されないが、低金属条件下で成長している間は検出可能なレベルで発現される。本明細書に記載の他のタンパク質は、その微生物が高金属条件下で成長している間も検出可能なレベルで発現されるが、低金属条件下で成長している間はより多くのタンパク質が発現される。そのようなタンパク質の発現は、本明細書では、低金属条件下で成長している間「増強される」と称される。一般には、低金属条件下で成長している間のタンパク質の発現の増大は、高金属条件下で成長している間のタンパク質の発現と比較して20%から500%の間である。
【0043】
本明細書に記載の通り(実施例1参照)、腹膜炎の臨床徴候または関連する大腸菌症の臨床徴候を示す鶏およびシチメンチョウの感染器官(肝臓、脾臓および/または輸卵管)から、440種のE.coliの野外分離株を得た。各E.coli分離株を、鉄が豊富な培地条件下および鉄が枯渇した培地条件下で成長させ、各分離株から、タンパク質富化抽出物を引き出した。SDS-PAGEによるサイズ分画後、SDSタンパク質バンドプロファイルの目視比較により、数種のタンパク質バンドプロファイル型(すなわち、単一のE.coliによって発現された鉄調節性タンパク質の組合せ)がこの多様な集団にわたって存在することが示された。2種の分離株を、それらのタンパク質バンドプロファイルが、共に、腹膜炎を誘導した分離株のタンパク質の多くが含有される横縞模様を表すものであったことに基づいて選択した(分離株APEC-1966および分離株APEC-1967)。本発明者らは、これらの2種の株によって発現される鉄調節性タンパク質を含む組成物により、野外の大発生で一般に観察される広範なE.coliによって引き起こされる腹膜炎に対する保護がもたらされるという仮説を立てた。
【0044】
分離株APEC-1966およびAPEC-1967からゲルにより単離された鉄調節性タンパク質のトリプシン断片の質量分析、ならびにオープンリーディングフレームの同定により、以下の鉄調節性タンパク質が同定された:ChuA、IroN、IreA、IutA、FecAおよびFepA。分離株APEC-1966およびAPEC-1967に関するPCRによるゲノム解析により、他の鉄調節性タンパク質(FhuE、Fiu、CirA、FhuA、FyuAおよびBtuB)の遺伝子がこれらの分離株に存在することが示されたが、これらの遺伝子が、鉄が制限された抗原産生の間に発現されるかどうかは不明である。
【0045】
表1に、分離株APEC-1966およびAPEC-1967において、鉄非存在下での成長の間に同定されたタンパク質の発現を要約する。
【表1】
【0046】
本開示によって提供されるタンパク質には、配列番号2、4、6、8、10、12、13、14、15、16、17、18、20、22、23、24、44、および45で示されるタンパク質が含まれる(図9)。配列番号2、4、6、8、10、12、13、14、15、16、17、18、20、22、23、24、44、または45のタンパク質と構造的に類似したタンパク質も提供される。本明細書で使用される場合、タンパク質は、そのタンパク質のアミノ酸配列が参照タンパク質と比較して規定された量の配列類似性および/または配列同一性を有する場合、その参照タンパク質と「構造的に類似」したものであり得る。したがって、タンパク質は、参照タンパク質と比較して、十分なレベルのアミノ酸配列同一性、アミノ酸配列類似性、またはこれらの組合せを有する場合、その参照タンパク質と「構造的に類似」したものになり得る。一実施形態では、そのようなタンパク質は、E.coliによって発現される際に金属調節性である。
【0047】
2つのタンパク質の構造的類似性は、2つのタンパク質(例えば、候補タンパク質と、任意の適当な本明細書に記載の参照タンパク質、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、13、14、15、16、17、18、20、22、23、24、44、または45)の残基を、それらの配列の長さに沿った同一のアミノ酸の数が最適化されるようにアラインメントすることによって決定することができる;アラインメントを行う際に、同一のアミノ酸の数を最適化するために一方または両方の配列内へのギャップ挿入が許容されるが、各配列内のアミノ酸はそれらの適当な順序のままでなければならない。参照タンパク質は、必要に応じて、本明細書に記載のタンパク質または任意の公知の金属調節性タンパク質であってよい。候補タンパク質は、参照タンパク質と比較されるタンパク質である。候補タンパク質は、例えば、微生物から単離されたものであってもよく、組換え技法を使用して産生されたものであってもよく、化学的にまたは酵素的に合成されたものであってもよい。
【0048】
本明細書に記載の他の改変がなされる場合を除き、アミノ酸配列のペアワイズ比較分析を、GCGパッケージ(バージョン10.2、Madison WI)内のBESTFITアルゴリズムを使用して行うことができる。あるいは、タンパク質の比較を、Tatiana et al.(FEMS Microbiol Lett, 174: 247-250 (1999))に記載されており、National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイトで入手可能なBLAST2探索アルゴリズムのBlastpプログラムを使用して行うことができる。全てのBLAST2検索パラメータについて初期設定値を使用することができ、それらには、matrix=BLOSUM62;open gap penalty=11、extension gap penalty=1、gap x_dropoff=50、expect=10、wordsize=3、およびfilter onが含まれる。
【0049】
2つのアミノ酸配列の比較では、構造的類似性についてパーセント「同一性」によって言及することができる、またはパーセント「類似性」によって言及することができる。「同一性」は、同一のアミノ酸が存在することを指す。「類似性」は、同一のアミノ酸が存在することだけでなく、保存的置換が存在することも指す。タンパク質内のアミノ酸の保存的置換は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば、特に、タンパク質の、生物活性に直接関連しない領域内において、タンパク質の活性を変更することなく、特定のサイズまたは特徴(例えば、電荷、疎水性、または親水性など)を有するアミノ酸の群分けに属するアミノ酸で別のアミノ酸を置換することができることがタンパク質生化学の技術分野で周知である。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。極性中性アミノ酸として、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸として、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。保存的置換としては、例えば、正電荷を維持するために、LysによるArgの置換またはその逆;負電荷を維持するために、GluによるAspの置換またはその逆;遊離-OHが維持されるように、SerによるThrの置換;および遊離-NH2を維持するために、GlnによるAsnの置換が挙げられる。同様に、タンパク質の機能活性、例えば免疫学的活性が排除されない1つまたは複数の隣接または非隣接アミノ酸の欠失または付加を含有する、タンパク質の生物活性類似体も意図されている。
【0050】
したがって、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のタンパク質への言及および/または1つもしくは複数の配列番号のアミノ酸配列への言及は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列類似性を有するタンパク質を包含し得る。
【0051】
あるいは、本明細書で使用される場合、本明細書に記載のタンパク質への言及および/または1つもしくは複数の配列番号のアミノ酸配列への言及は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質を包含し得る。
【0052】
配列類似性および/または同一性の特定のレベルが本明細書に明確に示されていなければ(例えば、少なくとも80%の配列類似性、少なくとも90%の配列同一性など)、識別された配列番号のアミノ酸配列への言及は、本明細書に記載されている配列類似性のレベルおよび/または配列同一性のレベルを有するバリアントを包含する。
【0053】
配列番号2および13で示されるChuAタンパク質を他のE.coli由来のChuAタンパク質とClustalWなどの容易に利用可能なアルゴリズムを使用して比較して、ChuAタンパク質の保存領域および可変性領域を同定することができることが当業者には認識されよう。この情報を使用することで、当業者は、配列番号2などのタンパク質に対するある特定の保存的置換ではタンパク質の活性が低減しないことを、合理的な期待値で容易に予測することができよう。配列番号4および14で示されるIreAタンパク質、配列番号6および15で示されるIroNタンパク質、配列番号8および16で示されるFepAタンパク質、配列番号10および17で示されるFecAタンパク質、配列番号12および18で示されるIutAタンパク質、配列番号20および23で示されるBtuBタンパク質、配列番号22および24で示されるCirAタンパク質、ならびに配列番号44および45で示されるFyuAタンパク質にも同じことが当てはまる。当業者は、そのようなアラインメントから、タンパク質の、改変されたタンパク質の生物活性に過度に影響を及ぼすことなく、置換、特に保存的置換が許容され得る領域を推定することができる。したがって、本明細書に記載のタンパク質は、例えば、タンパク質が単離および/または同定された元の微生物種または株以外の微生物種または株を起源として、生物学的におよび/または組換えによって生じた相同タンパク質を含めた、ある特定のバリアントを包含し得る。
【0054】
E.coli ChuAタンパク質の他の例として、Genbank受託番号EFO5360954.1、WP_021522278.1、およびWP_054494517.1のタンパク質が挙げられる。E.coli IreAタンパク質の他の例として、Genbank受託番号WP_115722697.1、WP_000792545.1、およびWP_061362196.1のタンパク質が挙げられる。E.coli IroNタンパク質の他の例として、Genbank受託番号WP_097697489.1、WP_001523424.1、およびWP_125108203.1のタンパク質が挙げられる。E.coli FepAタンパク質の他の例として、Genbank受託番号WP_001034893.1、WP_021512183.1、およびWP_032260138.1のタンパク質が挙げられる。E.coli FecAタンパク質の他の例として、Genbank受託番号WP_089602808.1、WP_119122509.1、およびMBB7137362.1のタンパク質が挙げられる。E.coli IutAタンパク質の他の例として、Genbank受託番号WP_001553716.1、WP_039025836.1、およびWP_098722385.1のタンパク質が挙げられる。
【0055】
本明細書に記載のタンパク質は、例えば、カラムへの捕捉または抗体の使用による精製を容易にし得る追加のC末端および/またはN末端アミノ酸のコード配列の付加など、1つまたは複数の追加的な配列がもたらされるように設計することもできる。そのようなタグとしては、例えば、ニッケルカラムでのタンパク質の精製を可能にするヒスチジンリッチタグが挙げられる。そのような遺伝子改変技法および適切な追加的な配列は、分子生物学の技術分野で周知である。本明細書に記載のタンパク質を、C末端および/またはN末端のある特定のアミノ酸が欠失するように設計することもできる。
【0056】
本明細書に記載のタンパク質の「修飾」は、構成物であるアミノ酸の1つまたは複数において化学的または酵素的に誘導体化されたタンパク質(またはその類似体、例えば、その断片)を包含する。そのような修飾としては、例えば、側鎖修飾、骨格修飾、N末端修飾、および/またはC末端修飾、例えば、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化など、ならびに、炭水化物および/または脂質部分、補助因子などの付着、ならびにこれらの組合せを挙げることができる。本明細書に記載の修飾されたタンパク質は、修飾されていないタンパク質の生物活性、例えば免疫学的活性を保持し得る、または修飾されていないタンパク質と比較して低減したまたは増大した生物活性を示し得る。
【0057】
本明細書に記載のタンパク質は、免疫学的活性を有し得る。「免疫学的活性」とは、タンパク質の、動物における免疫学的応答を引き出す能力を指す。タンパク質に対する免疫学的応答とは、動物において、タンパク質に対して細胞性および/または抗体媒介性免疫応答が生じることである。通常、免疫学的応答は、これだけに限定されないが、以下の効果のうちの1つまたは複数を包含する:タンパク質のエピトープ(1種または複数種)を対象とする抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、および/または細胞傷害性T細胞の産生。「エピトープ」とは、それに対して特定のB細胞および/またはT細胞が応答し、したがってそれに対する抗体が産生される、抗原上の部位を指す。免疫学的活性は保護的なものであり得る。「保護的免疫学的活性」とは、タンパク質の、動物においてE.coliによる感染を阻害または限定する免疫学的応答を引き出す能力を指す。タンパク質が保護的免疫学的活性を有するかどうかは、例えば実施例17に記載の方法などの、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。タンパク質は、血清抗体反応活性(seroactive activity)を有し得る。本明細書で使用される場合、「血清抗体反応活性」とは、候補タンパク質の、E.coliに感染した動物由来の回復期血清中に存在する抗体と反応する能力を指す。
【0058】
本明細書に記載のタンパク質(その生物活性類似体および/またはその修飾体を含む)は、ネイティブな(天然に存在する)タンパク質、組換えタンパク質、化学的に合成されたタンパク質、または酵素的に合成されたタンパク質を包含し得る。例えば、本明細書に記載のタンパク質は、天然の供給源、例えば、本明細書に記載のタンパク質の1種または複数種を天然に発現するE.coliからタンパク質を単離することによって調製することができる、または、例えば、細菌または他の宿主細胞において融合タンパク質として調製することを含めた従来の方法によって組換えにより調製することができる。
【0059】
参照微生物によって発現されるタンパク質は、参照微生物を本明細書に記載の低金属条件下で成長させ、その後、本明細書に開示される処理によってタンパク質を単離することによって得ることができる。あるいは、参照微生物によって発現されるタンパク質は、微生物を低金属条件下で成長させた場合により高レベルで発現される、すなわち金属調節性コード領域を同定することによって得ることができる。金属調節性コード領域をクローニングし、発現させ、発現された金属調節性タンパク質を本明細書に記載の処理によって同定することができる。候補タンパク質はE.coliから単離可能であり得る。
【0060】
本開示は、金属調節性、かつE.coliから、低鉄条件下で成長させた後に単離可能なタンパク質も提供する。各タンパク質は、微生物によって、微生物を低金属条件下で成長させた場合に、同じ微生物を高金属条件下で成長させた場合と比較して高レベルで発現されるものであり得る。E.coliによって産生されるある特定の金属調節性タンパク質は、その微生物が高金属条件下で成長している間は検出可能なレベルでは発現されないが、低金属条件下で成長している間は検出可能なレベルで発現される。本明細書に記載の他のタンパク質は、低金属条件下で成長している間「増強される」ものであり、それらのタンパク質は、その微生物が高金属条件下で成長している間も検出可能なレベルで発現されるが、低金属条件下で成長している間はより多くのタンパク質が発現される。
【0061】
E coliから、低鉄条件下で成長させた後に単離可能な金属調節性タンパク質の分子量は、SDS-PAGEによって決定して、82kDa、80~83kDa、78kDa、76kDa、74kDa、または70kDaであり得る(表1参照)。一実施形態では、低鉄条件とは、2,2’-ジピリジルの存在下での成長である。E.coliから単離可能な82kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号10(FecAタンパク質)である。E.coliから単離可能な83~80kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号8(FepAタンパク質)である。E.coliから単離可能な76kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号12(IutAタンパク質)である。E.coliから単離可能な78kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号6(IroNタンパク質)である。E.coliから単離可能な74kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号4(IreAタンパク質)である。E.coliから単離可能な70kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号2(ChuAタンパク質)である。本明細書における分子量への言及は、約4%のスタッキングゲルおよび約10%の分離ゲルを用いたSDSポリアクリルアミドゲルを使用し、還元・変性条件下でタンパク質を分離することによって決定される分子量を指す。SDS-PAGE電気泳動による分子量の決定は、タンパク質の分子量をそのアミノ酸配列に基づいて算出するよりも正確性が劣り、結果として、SDS-PAGEによって同定されるタンパク質の分子量には、明示された値よりも1kDa、2kDa、3kDa、4kDa、または5kDa大きいまたは小さい分子量の範囲が含まれることが当業者には認識されよう。
【0062】
本開示はまた、金属調節性ではない、ある特定のタンパク質も記載するものである。そのようなタンパク質は、金属イオンの存在下で、例えば、塩化第二鉄の存在下で発現され、また、低鉄条件下で成長させた場合でも発現される。E.coliから単離可能なこの型のタンパク質の例は、図1のより低い分子量のOmpCおよびOmpAタンパク質として示される。
【0063】
ポリヌクレオチド
【0064】
本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関して同定することもできる(図9参照)。したがって、本開示は、本明細書に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または、標準的なハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド、およびそのようなポリヌクレオチド配列の相補物を提供する。
【0065】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載のポリヌクレオチドへの言及および/または配列番号1、3、5、7、9、11、19、21、もしくは43のうちの1つもしくは複数の核酸配列への言及は、同定された参照ポリヌクレオチド配列に対して少なくとも50%の配列同一性、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを包含し得る。
【0066】
これに関連して、「配列同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列間の同一性を指す。配列同一性は、一般に、2つのポリヌクレオチドの塩基を、それらの配列の長さに沿った同一のヌクレオチドの数が最適化されるようにアラインメントすること(例えば、候補配列のヌクレオチド配列と、例えば本明細書に開示されるヌクレオチド配列、例えば配列番号1、3、5、7、9、11、19、21、または43を含むヌクレオチド配列をアラインメントすること)によって決定される;アラインメントを行う際に、共有されるヌクレオチドの数を最適化するために一方または両方の配列へのギャップ挿入が許容されるが、各配列内のヌクレオチドはそれらの適当な順序のままでなければならない。候補配列とは、既知の配列、例えば、本明細書に記載のヌクレオチド配列、例えば配列番号1、3、5、7、9、11、19、21、または43を含むヌクレオチド配列と比較される配列である。例えば、2つのポリヌクレオチド配列の比較を、Tatusova et al., (FEMS Microbiol Lett., 174: 247-250 (1999))に記載されており、ワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で入手可能なBLAST2探索アルゴリズムのBlastnプログラムを使用して行うことができる。全てのBLAST2検索パラメータについて初期設定値を使用することができ、それらには、reward for match=1、penalty for mismatch=-2、open gap penalty=5、extension gap penalty=2、gap x_dropoff=50、expect=10、wordsize=11、およびfilter onが含まれる。
【0067】
最後に、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のタンパク質をコードする任意のポリヌクレオチドを包含し得る。したがって、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、そのポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列から推定することができる。
【0068】
全細胞
【0069】
本開示は、微生物の全細胞調製物も提供し、ここで、微生物は、本明細書に記載のタンパク質の1種または複数種を発現する。全細胞調製物中に存在する細胞は、不活化されたものであってよく、したがって、細胞は複製することができないが、微生物によって発現される本明細書に記載のタンパク質の免疫学的活性は維持される。一般には、細胞を、熱または化学薬剤、例えばグルタルアルデヒド、ホルマリン、ホルムアルデヒドなどに曝露させることによって死滅させることができる。一実施形態では、全細胞は、本明細書に記載のタンパク質の1種または複数種を天然に発現するE.coliである。一実施形態では、E.coli細胞は、配列番号2または13(ChuAタンパク質)、配列番号4または14(IreAタンパク質)、配列番号6または15(IroNタンパク質)、および配列番号8または16(FepAタンパク質)と同一であるまたは構造的に類似したタンパク質を産生する。そのようなE.coliの例は、本明細書に記載の分離株1966である。一実施形態では、E.coli細胞は、配列番号8または16(FepAタンパク質)、配列番号10または17(FecAタンパク質)、および配列番号12または18(IutAタンパク質)と同一であるまたは構造的に類似したタンパク質を産生する。そのようなE.coliの例は、本明細書に記載の分離株1967である。本明細書に開示されるタンパク質のサブセットを発現する、例えば、配列番号8もしくは16、配列番号6もしくは15、配列番号4もしくは14、および配列番号2もしくは13と同一であるもしくは構造的に類似したタンパク質を低鉄条件下で発現する、または配列番号10もしくは17、配列番号8もしくは16、および配列番号12もしくは18と同一であるもしくは構造的に類似したタンパク質を低鉄条件下で発現する他のE.coliを、当業者は、本明細書に記載の野生型分離株(実施例1および2)をスクリーニングすることによって同定することができる。本発明者らはこれらのタンパク質6種全てを発現する単一のE.coliは認識していない。
【0070】
一実施形態では、微生物を、本明細書に記載のタンパク質のうちの1つと同一であるまたはそれに対して構造的類似性を有する、組換えによって作製されたタンパク質を発現するように操作する。例えば、細胞を、配列番号2もしくは13(ChuAタンパク質)、配列番号4もしくは14(IreAタンパク質)、配列番号6もしくは15(IroNタンパク質)、配列番号8もしくは16(FepAタンパク質)、配列番号10もしくは17(FecAタンパク質)、配列番号12もしくは18(IutAタンパク質)、配列番号20もしくは23(BtuBタンパク質)、配列番号22もしくは24(CirAタンパク質)、配列番号44もしくは45(FyuAタンパク質)またはこれらの任意の組合せと同一であるまたは構造的に類似したタンパク質を産生するように操作することができる。一実施形態では、全細胞は、E.coliなどのEnterobacteriaceae科のメンバー、またはS.Typhimuriumを含めたSalmonella属のメンバーである。
【0071】
組成物
【0072】
組成物は、本明細書に記載の1種のタンパク質、本明細書に記載の少なくとも1種のタンパク質、または、本明細書に記載の1よりも大きい整数であるいくつか(例えば、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種など)のタンパク質を含み得る。タンパク質の組成物の非限定的な例としては、これだけに限定されないが、ChuA、IreA、IroN、FepA、FecA、およびIutAから選択される1種、2種、3種、4種、5種、または6種のタンパク質;配列番号2、4、6、8、10、または12に対して構造的類似性を有する1種、2種、3種、4種、5種、または6種のタンパク質;図1のレーン1、レーン2のタンパク質およびレーン1とレーン2両方の組合せ;図7に示されているタンパク質のうちの1つまたは複数、および図8の組成物が挙げられる。
【0073】
組換えによって作製されたタンパク質を、適当な宿主細胞に導入されるとタンパク質の発現を可能にするベクターから発現させることができる。宿主細胞は、本明細書に記載の1種または複数種の組換えによって作製されたタンパク質を産生するように構築することができ、したがって、本明細書に記載のタンパク質をコードする少なくとも1種のポリヌクレオチドを含む1種または複数種のベクターを含み得る。したがって、各ベクターは、本明細書に記載の1種または複数種のポリヌクレオチド、すなわち、本明細書に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み得る。E.coliなどの微生物を遺伝子操作するための方法が当技術分野において公知であり、常套的である。
【0074】
例えば、組換えによって作製されたタンパク質を含むものなどのある特定の組成物は、タンパク質を最大数で含み得る。一部の実施形態では、タンパク質の最大数とは、タンパク質の最大総数を指し得る。ある特定の組成物は、例えば、30種以下のタンパク質、25種以下のタンパク質、20種以下のタンパク質、17種以下のタンパク質、16種以下のタンパク質、15種以下のタンパク質、14種以下のタンパク質、13種以下のタンパク質、12種以下のタンパク質、11種以下のタンパク質、10種以下のタンパク質、9種以下のタンパク質、8種以下のタンパク質、7種以下のタンパク質、6種以下のタンパク質、5種以下のタンパク質、4種以下のタンパク質、3種以下のタンパク質、2種以下のタンパク質、または1種以下のタンパク質を含み得る。他の実施形態では、組換えによって作製されたタンパク質の最大数を同様に規定することができる。さらに他の実施形態では、組換えによって作製されたものではないタンパク質の最大数も同様に規定することができる。
【0075】
一実施形態では、組成物は、微生物を本明細書に記載の1種または複数種のタンパク質を発現するように操作する場合、1種の微生物から単離可能なタンパク質を含み得る。一実施形態では、微生物を、ChuA、IreA、IroN、FepA、FecA、およびIutAから選択されるまたは配列番号2、4、6、8、10、もしくは12と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、1種、2種、3種、4種、5種、または6種のタンパク質を発現するように操作する。必要に応じて、微生物を、BtuBタンパク質、およびCirAタンパク質、および/またはFyuAタンパク質、例えば、配列番号20(BtuBタンパク質)および/または配列番号22(CirAタンパク質)および/または配列番号44(FyuAタンパク質)と同一であるまたはそれと構造的に類似したものを発現するように操作する。一実施形態では、組成物は、2種またはそれよりも多くの微生物から単離可能なタンパク質を含み得る。例えば、組成物は、2種またはそれよりも多くの野生型E.coliから単離可能なタンパク質を含み得る。
【0076】
ある特定の実施形態では、組成物は、全細胞調製物を含み得る。一実施形態では、調製物は、それぞれが配列番号2(ChuAタンパク質)、配列番号4(IreAタンパク質)、配列番号6(IroNタンパク質)、配列番号8(FepAタンパク質)、配列番号10(FecAタンパク質)、配列番号12(IutAタンパク質)と同一であるまたは構造的に類似したタンパク質のサブセットを発現する、2つまたはそれよりも多くの全細胞を含む。一実施形態では、E.coli細胞は、配列番号2(ChuAタンパク質)、配列番号4(IreAタンパク質)、配列番号6(IroNタンパク質)、および配列番号8(FepAタンパク質)と同一であるまたは構造的に類似したタンパク質を産生する。そのようなE.coliの例は、本明細書に記載の分離株APEC-1966である。一実施形態では、E.coli細胞は、配列番号8(FepAタンパク質)、配列番号10(FecAタンパク質)、および配列番号12(IutAタンパク質)と同一であるまたは構造的に類似したタンパク質を産生する。そのようなE.coliの例は、本明細書に記載の分離株APEC-1967である。これらの実施形態の一部では、全細胞は、E.coli、例えば野生型E.coliであり得る。
【0077】
一実施形態では、調製物は、本明細書に記載のタンパク質と同一であるまたはそれに対して構造的類似性を有する1種または複数種のタンパク質を発現するように操作された全細胞である。一実施形態では、微生物を、ChuA、IreA、IroN、FepA、FecA、およびIutAから選択されるまたは配列番号2、4、6、8、10、12と同一であるもしくはそれと構造的に類似したタンパク質を発現するように工学的に操作する。必要に応じて、微生物を、BtuB、CirA、および/またはFyuAタンパク質、例えば、配列番号20(BtuBタンパク質)および/または配列番号22(CirAタンパク質)および/または配列番号44(FyuAタンパク質)と同一であるまたはそれと構造的に類似したタンパク質を発現するように操作する。一実施形態では、調製物は、微生物の2つまたはそれよりも多くの集団であり、集団のそれぞれが、タンパク質、例えば、6種のタンパク質(ChuA、IreA、IroN、FepA、FecA、およびIutAから選択される、または配列番号2、4、6、8、10、および/もしくは12、および必要に応じた配列番号20、および/もしくは22、および/もしくは44と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有するタンパク質)のサブセットを発現し、全体として考えた2つまたはそれよりも多くの集団が、6種のタンパク質を発現する。一部の実施形態では、組成物は、2種、3種、4種、5種、または6種の株由来の全細胞調製物を含み得る。
【0078】
一実施形態では、組成物は、微生物(1種または複数種)が低鉄条件下での成長の間にタンパク質を天然に発現する場合、1種または複数種の微生物から単離可能なタンパク質を含み得る。一実施形態では、微生物はE.coliである。一実施形態では、組成物は、SDS-PAGEによって決定される分子量が82kDa、80~83kDa、78kDa、76kDa、74kDa、および70kDaである金属調節性タンパク質を含む。一実施形態では、低鉄条件とは、2,2’-ジピリジルの存在下での成長である。E.coliから単離可能な82kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号10(FecAタンパク質)である。E.coliから単離可能な80~83kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号8(FepAタンパク質)である。E.coliから単離可能な76kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号12(IutAタンパク質)である。E.coliから単離可能な78kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号6(IroNタンパク質)である。E.coliから単離可能な74kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号4(IreAタンパク質)である。E.coliから単離可能な70kDaの金属調節性タンパク質の例は、配列番号2(ChuAタンパク質)である。本明細書における分子量への言及は、約4%のスタッキングゲルおよび約10%の分離ゲルを用いたSDSポリアクリルアミドゲルを使用し、還元・変性条件下でタンパク質を分離することによって決定される分子量を指す。一般には、2種またはそれよりも多くの微生物の抽出物を組み合わせて、6種のタンパク質を有する組成物を実現することができる。一実施形態では、1種のE.coli細胞が、分子量が80~83kDaのタンパク質(FepAタンパク質)、78kDaのタンパク質(IroNタンパク質)、74kDaのタンパク質(IreAタンパク質)、および70kDaのタンパク質(ChuAタンパク質)を産生し、別のE.coli細胞が、分子量が82kDaのタンパク質(FecAタンパク質)、80~83kDaのタンパク質(FepAタンパク質)、および76kDaのタンパク質(IutAタンパク質)を産生する。
【0079】
微生物(1種または複数種)が低鉄条件下での成長の間にタンパク質を天然に発現する場合に1種または複数種の微生物から単離可能なタンパク質を含む組成物はまた、金属調節性ではないタンパク質も含み得る。そのようなタンパク質は、金属イオンの存在下で、例えば、塩化第二鉄の存在下で発現され、また、低鉄条件下で成長させた場合にも発現される。E.coliから単離可能なこの型のタンパク質の例としては、図1に示されている低分子量OmpCおよびOmpAタンパク質が挙げられる。
【0080】
必要に応じて、本明細書に記載のタンパク質を担体タンパク質に共有結合させて、タンパク質の免疫学的特性を改善することができる。有用な担体タンパク質は当技術分野で公知である。本明細書に記載のタンパク質の化学的カップリングは、公知の常套的な方法を使用して行うことができる。例えば、種々のホモ二官能性および/またはヘテロ二官能性架橋試薬、例えば、ビス(スルホサクシニミジル)スベリン酸塩、ビス(ジアゾベンジジン)、アジプイミド酸ジメチル、ピメルイミド酸ジメチル、スベルイミド酸ジメチル(dimethyl superimidate)、スベリン酸ジサクシンイミジル、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミド、スルホ-m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミド、スルホサクシニミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン(cycloheane)-1-カルボキシレート、スルホサクシニミジル4-(p-マレイミド-フェニル)ブチレートおよび(1-エチル-3-(ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミドを使用することができる(Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, generally and Chapter 5, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, NY (1988))。
【0081】
本明細書に記載の組成物は、低濃度のリポ多糖(LPS)を含み得る。LPSは、大多数のグラム陰性微生物の外膜の構成成分であり(例えば、Nikaido and Vaara, Outer Membrane, In: Escherichia coli and Salmonella typhimurium, Cellular and Molecular Biology, Neidhardt et al., (eds.) American Society for Microbiology, Washington, D.C., pp. 7-22 (1987)を参照されたい)、一般には、多糖(O-特異的鎖、外側コアおよび内側コア)ならびにリピドA領域を含む。LPSのリピドA構成成分は、LPS構造の最も生物活性の高い構成成分であり、共に、哺乳動物における広範な病態生理学的影響を誘導する。最も劇的な影響は、発熱、播種性血管内凝固、補体活性化、低血圧性ショック、および死亡である。LPSの非特異的免疫賦活活性により、LPSを含む組成物の投与部位における肉芽腫の形成が増強され得る。そのような反応により、動物に過度なストレスがもたらされる恐れがあり、それによって、動物の摂食または摂水が一定期間減少し、動物における感染性状態が悪化する恐れがある。さらに、注射部位における肉芽腫の形成により、注射部位の組織の瘢痕や汚点が原因でと体の格付が下がる可能性が増大する恐れがある。
【0082】
LPSの濃度は、当技術分野で公知の常套的な方法を使用して決定することができる。そのような方法は、一般には、LPSが結合する色素の測定(例えば、Keler and Nowotny, Analyt. Biochem., 156, 189 (1986)を参照されたい)またはLimulusアメボサイトライセート(LAL)試験の使用(例えば、Endotoxins and Their Detection With the Limulus Amebocyte Lystate Test, Alan R. Liss, Inc., 150 Fifth Avenue, New York, NY (1982)を参照されたい)を含む。一般にLAL試験と共に使用される商業的に利用可能な基本的方法が4種存在する:ゲル凝固試験;比濁(分光光度測定)試験;比色定量試験;および発色試験。ゲル凝固アッセイの例は、商品名E-TOXATE(Sigma Chemical Co.、St.Louis、MO;Sigma Technical Bulletin No.210を参照されたい)、およびPYROTELL(Associates of Cape Cod,Inc.、East Falmouth、MA)の下で入手可能である。一般には、アッセイ条件は、組成物を、カブトガニ、Limulus polyphemusの循環アメボサイトのライセートを含有する調製物と接触させることを含む。LPSに曝露すると、ライセートの不透明度ならびに粘度が増大し、ゲル化し得る。組成物約0.1mLをライセートに添加する。一般には、組成物のpHは6から8の間であり、6.8から7.5の間であることが好ましい。組成物とライセートの混合物を37℃、静置で1時間インキュベートする。インキュベーション後、混合物を観察して、混合物のゲル化が認められるかどうかを決定する。ゲル化により、エンドトキシンの存在が示される。組成物中に存在するエンドトキシンの量を決定するために、エンドトキシンの標準化溶液の希釈物を作製し、組成物を試験するのと同時にその希釈物も試験する。エンドトキシンの標準化溶液は、例えば、Sigma Chemical(カタログ番号210-SE)、米国薬局方(Rockville、MD、カタログ番号235503)、およびAssociates of Cape Cod,Inc.(カタログ番号E0005)から市販されている。一般に、本開示の組成物を、P.multocidaなどの微生物からタンパク質を本明細書に記載の方法(例えば、細胞を破壊し、可溶化し、不溶性タンパク質を採取することを含む方法)によって単離することにより調製する場合、本開示の組成物中のLPSの量は、同じ量の、同じ条件下で破壊したが、可溶化していない微生物の混合物中に存在するLPSの量よりも少ない。一般には、本開示の組成物中のLPSのレベルは、同じ微生物を破壊するが可溶化しないで調製された組成物中のLPSのレベルと比べて、好ましさの低い方から順に、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低下している。
【0083】
本明細書に記載の組成物は、必要に応じて、薬学的に許容される担体をさらに含む。「薬学的に許容される」とは、希釈剤、担体、賦形剤、塩などが組成物の他の成分と適合し、その組成物のレシピエントに対して有害ではないことを指す。一般には、組成物は、組成物が本明細書に記載の通り使用される場合、薬学的に許容される担体を含む。例示的な薬学的に許容される担体としては、緩衝液が挙げられ、一般に、例えば、全血および/または血漿などの血液製剤は除かれる。本明細書で使用される場合、「ワクチン組成物」および「ワクチン」という用語は、本明細書に記載の1種または複数種のタンパク質を含有する医薬組成物を指し、組成物を使用して、対象における疾患または状態を防止または処置することができる。
【0084】
本明細書に記載の組成物を、抗原に対する免疫応答を刺激するために適した経路を含めた、選択された投与経路に適合させた種々の形態の医薬調製物に製剤化することができる。したがって、本明細書に記載の組成物を、例えば、経口的に;皮内、経皮および皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内などを含め、非経口的に、および局所的に、例えば、鼻腔内、肺内、乳房内、膣内、子宮内、皮内、経皮および経直腸などを含めた公知の経路によって投与することができる。動物の体全体を通して分泌性IgA抗体の産生などの粘膜免疫を刺激するために、組成物を、粘膜表面に、例えば鼻または呼吸粘膜に投与することによって(例えば、噴霧またはエアロゾールによって)投与することができることが予測される。
【0085】
本明細書に記載の組成物を持続放出または遅延放出型埋め込み物によって投与することもできる。本開示に従った使用に適した埋め込み物は公知であり、それらとして、例えば、国際公開第2001/037810号および/または国際公開第1996/001620号に開示されているものが挙げられる。埋め込み物は、エアロゾールまたは噴霧によって投与するために十分に小さいサイズに作製することができる。埋め込み物にナノスフェアおよびマイクロスフェアを含めることもできる。
【0086】
本開示の組成物を本明細書に記載のタンパク質または全細胞に対する免疫学的応答をもたらすために十分な量で投与する。組成物中に存在するタンパク質の量を変動させることができる。例えば、タンパク質の投薬量は、0.01マイクログラム(μg)から500μgまで、例えば、0.5μgから300μgまで、または50μgから200μgまでであり得る。一実施形態では、投薬量は100μgである。1種よりも多くの分離株に由来するタンパク質富化抽出物を組み合わせる場合、各抽出物由来のタンパク質を同量で組み合わせることができる。組成物が全細胞調製物である場合、細胞は、1mL当たり細菌10個、1mL当たり細菌10個、1mL当たり細菌10個、または1mL当たり細菌10個の濃度で存在し得る。全細胞の混合物(例えば、タンパク質のある1つのサブセットを発現する細胞の1つの集団と、タンパク質の別のサブセットを発現する第2の集団)を投与する場合、集団の比は、1:1であり得る。注射用組成物(例えば、皮下、筋肉内など)に関しては、タンパク質は、組成物中に、投与される組成物の総体積が0.1~0.5mLを含めて0.05mL~1.0mLになるような量で存在することが好ましい。一般には、1日齢の鶏およびシチメンチョウは0.1mLの用量を受けるが、体積をより小さく、およびより大きくすることが可能である。成体の鶏は0.25mL~0.5mLの用量を受け、成体のシチメンチョウは0.5mLの用量を受けるが、体積をより小さく、およびより大きくすることが可能である。組成物が全細胞調製物である場合、細胞は、組成物中に、投与される組成物の総体積が0.1~0.5mLを含めて0.05mL~1.0mLになるような量で存在することが好ましい。投与される量は、これだけに限定されないが、選択される特定のタンパク質または細胞、動物の体重、体調および齢、ならびに投与経路を含めた様々な因子に応じて変動する。したがって、所与の単位剤形中に含まれる絶対的なタンパク質の重量または細胞の数は変動し得、動物の種、齢、体重および体調、ならびに投与方法などの因子に依存する。そのような因子は、当業者が決定することができる。本開示に適した投薬量の他の例は、Emery et al.(米国特許第6,027,736号)に開示されている。
【0087】
製剤は、単位剤形として提供されることが好都合な場合があり、薬学の技術分野で周知の方法によって調製することができる。薬学的に許容される担体を含む組成物を調製する方法は全て、活性化合物(例えば、本明細書に記載のタンパク質または全細胞)を、1種または複数種の副成分を構成する担体と結び付けるステップを含む。一般に、製剤は、活性化合物を、液体担体、細かく分割された固体担体、またはその両方と均一かつ密接に結び付け、次いで、必要であれば、産物を所望の製剤に形づくることによって調製される。
【0088】
薬学的に許容される担体を含む組成物は、アジュバントも含み得る。「アジュバント」とは、非特異的な様式で作用して特定の抗原に対する免疫応答を増強することができ、したがって、任意の所与の免疫化用組成物に必要な抗原の数量、および/または目的の抗原に対する十分な免疫応答を生じさせるために必要な注射の頻度を潜在的に減少させることができる作用剤を指す。アジュバントとしては、例えば、IL-1、IL-2、乳化剤、ムラミルジペプチド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、アブリジン、水酸化アルミニウム、油、サポニン、アルファ-トコフェロール、多糖、乳化パラフィン(MVP Laboratories、Omaha、NEから商品名EMULSIGEN(登録商標)として入手可能)、RIBI、軽油を使用し、乳化剤としてtween(登録商標)、span(登録商標)またはArlacel Aを使用した油中水型および/または水中油型、市販のmontanideアジュバント、例えば、ISA70、ISA71VG、ISA78VG、ISA71R-VGおよび/またはGel02PR(Sepic Inc、New Jersey)、ポリマー型アジュバント(MVP Laboratories、Omaha、NEから商品名CARBIGEN(商標)およびPOLYGEN(商標)として入手可能、ならびに当技術分野で公知の他の物質を挙げることができる。
【0089】
別の実施形態では、薬学的に許容される担体を含む組成物は、生物学的応答修飾因子、例えば、IL-2、IL-4および/またはIL-6、TNF、IFN-アルファ、IFN-ガンマ、ならびに免疫細胞に影響を及ぼす他のサイトカインなどを含み得る。組成物はまた、キレート化剤、例えば、サクシマーまたはデフェロキサミン、保存剤、例えば、ポリミキシンB、ホルマリン、またはゲンタマイシン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸またはステアリン酸カルシウムなども含み得る。そのような構成成分は、当技術分野で公知である。
【0090】
作製方法
【0091】
本開示は、本明細書に記載のタンパク質および全細胞を得るための方法も提供する。本明細書に記載のタンパク質および全細胞調製物は、E.coliを、本明細書に記載のタンパク質の1種または複数種の発現を促進する条件下でインキュベートによって得ることができる。一実施形態では、FepA、IroN、IreA、およびChuAを発現するE.coliを使用し、FecA、FepA、およびIutAを発現する第2のE.coliを使用し、タンパク質を組み合わせて、本明細書に記載の組成物をもたらす。さらに、そのような微生物は、当技術分野において常套的な公知の技法によって容易に入手可能である。微生物を感染動物から野外分離株として引き出し、本明細書に記載のタンパク質および/もしくは全細胞調製物を得るために使用する、または、後で使用するために、例えば、20%グリセロールを含有する細菌用培地、および他の同様の培地中、冷凍庫で-20℃から-95℃まで、もしくは-40℃から-50℃までで保管することができる。本明細書に記載のタンパク質および全細胞は、タンパク質の1種または複数種を組換えにより発現するように操作された1種または複数種の微生物から単離可能であり得る。
【0092】
本開示は、本明細書に開示される処理によって調製された組成物も包含する。一般には、そのような条件は、低金属条件である。本明細書で使用される場合、「低金属条件」という句は、微生物による検出可能なレベルでの金属調節性タンパク質の発現が引き起こされる量の遊離の金属を含有する環境、一般には細菌用培地を指す。本明細書で使用される場合、「高金属条件」という句は、微生物による低金属条件下での金属調節性タンパク質の発現と比較して低下したレベルでの金属調節性タンパク質の発現が引き起こされる量の遊離の金属を含有する環境を指す。一部の場合では、「高金属条件」は、細胞が本明細書に記載の金属調節性タンパク質の1種または複数種を検出可能なレベルで発現できないようにする環境を指し得る。
【0093】
一部の場合では、「高金属条件」は、金属が豊富な天然の環境および/または金属キレート剤を伴わない金属が豊富な培地中の培養物を包含し得る。対照的に、一部の場合では、「低金属条件」は、下により詳細に記載されている通り、金属キレート剤を含む培地中の培養物を包含し得る。金属は、一般には鉄である。
【0094】
低金属条件は、一般に、細菌用培地への金属キレート化化合物の添加、少量の金属を含む細菌用培地の使用、またはこれらの組合せの結果である。高金属条件は、一般に、キレート剤が培地中に存在しない場合、金属を培地に添加する場合、またはこれらの組合せの場合に存在する。金属キレート剤の例としては、天然化合物および合成化合物が挙げられる。天然化合物の例としては、フラボノイドなどの植物フェノール化合物が挙げられる。フラボノイドの例としては、鉄キレート剤であるミリセチンが挙げられる。合成鉄キレート剤の例としては、2,2’-ジピリジル(当技術分野ではα,α’-ビピリジルとも称される)、8-ヒドロキシキノリン、エチレンジアミン-ジ-O-ヒドロキシフェニル酢酸(EDDHA)、デスフェリオキサミンメタンスルホネート(desferol)、トランスフェリン、ラクトフェリン、オボトランスフェリン、カテコレートおよびヒドロキサメートなどの生物学的なシデロフォア、ならびにシトレートが挙げられる。
【0095】
一実施形態では、2,2’-ジピリジルを鉄のキレート化のために使用する。一般には、2,2’-ジピリジルを培地に少なくとも0.0025マイクログラム/ミリリットル(μg/mL)、少なくとも0.025μg/mL、または少なくとも0.25μg/mLの濃度で添加する。高レベルの2,2’-ジピリジルは10μg/mL、20μg/mL、または30μg/mLであり得る。
【0096】
fur遺伝子の変異を有するE.coliでは、金属調節性タンパク質の構成的発現がもたらされることが予想される。E.coliにおけるfur変異の作製は、例えば、グラム陰性菌において遺伝子ノックアウト変異を生じさせるために有用な、トランスポゾン、化学物質、または部位特異的変異誘発を含めた常套的な方法を使用してもたらすことができる。
【0097】
一実施形態では、本明細書に記載の組成物、例えば単離されたタンパク質を含む組成物または全細胞を含む組成物を作製するために使用するE.coliは、配列番号2もしくは13と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、配列番号4もしくは14と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、配列番号6もしくは15と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、配列番号8もしくは16と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、配列番号10もしくは17と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、配列番号12もしくは18と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、配列番号20もしくは23と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、配列番号22もしくは24と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、配列番号44もしくは45と同一であるもしくはそれに対して構造的類似性を有する、またはこれらの組合せであるタンパク質を組換えにより発現するように操作された1つまたは複数のE.coliを使用して作製することができる。一実施形態では、本明細書に開示されるタンパク質の1種または複数種を天然に産生するE.coliを、1種または複数種の追加的な本明細書に開示されるタンパク質を産生するように操作し、操作されたE.coliの低鉄条件下でのインキュベーション中に、1種または複数種の天然の金属調節性タンパク質と、組換えタンパク質の1種または複数種とが発現される。その結果、金属調節性タンパク質と1種または複数種の組換えタンパク質とを発現するE.coliが得られる。
【0098】
微生物をインキュベートするために使用する培地は決定的なものではなく、また、E.coliの培養のために有用な条件は当業者に公知である。微生物をインキュベートするために使用する培地の体積は変動し得る。E.coliを本明細書に記載のタンパク質を産生する能力について評価する場合、微生物を適切な体積、例えば10mL~1Lの培地で成長させることができる。微生物を、例えば動物への投与に使用するためのタンパク質を得るために成長させる場合、微生物を発酵槽で成長させて、より大量のタンパク質の単離を可能にすることができる。発酵槽で微生物を成長させるための方法は当技術分野において常套的であり公知である。微生物を成長させるために使用される条件は、金属キレート剤、例えば、デスフェラール、デフェロキサミン、デフェラシロクス、デフェリプロン、エチレンジオルトヒドロキシフェニル酢酸(ethylene di-ortho-hydroxyphenyl-acetic acid)(EDDA)および/またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、より好ましくは鉄キレート剤、例えば、2,2’-ジピリジルまたは2,2’-ビピリジル、pH6.5から7.5の間、好ましくは6.9から7.1の間、および温度37℃を含むことが好ましい。
【0099】
本開示の一部の態様では、E.coliを、成長させた後に収集することができる。収集は、微生物を濃縮して体積を縮小させ、成長培地とは異なる培地に懸濁させることを含む。微生物を濃縮する方法は、当技術分野において常套的なものであり、公知であり、それらとして、例えば、濾過および/または遠心分離が挙げられる。一般には、濃縮した微生物を漸減量の緩衝剤に懸濁させる。最終的な緩衝剤は、金属キレート剤、好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むことが好ましい。使用することができる緩衝剤の例は、Tris-base(7.3グラム/リットル)およびEDTA(0.9グラム/リットル)を含有し、pH8.5のものである。必要に応じて、最終的な緩衝剤また、タンパク質分解が最小限になるようにする。これは、最終的な緩衝剤のpHを8.0よりも大きく、好ましくは、少なくとも8.5にし、かつ/または1種もしくは複数種のプロテイナーゼ阻害剤(例えば、フッ化フェニルメタンスルホニル)を含めることによって実現することができる。必要に応じて、好ましくは、濃縮した微生物を-20℃またはそれ未満で、破壊されるまで凍結させる。一実施形態では、細菌細胞を、例えば遠心分離によって濃縮してペレットにし、濃縮した細胞を浸透圧ショック緩衝剤(OMS;7.26グラム/リットルのTris-baseおよび0.93グラム/リットルのEDTA、pH8.5に調整したもの)に懸濁させることができる。細胞のOMSに対する比は、OMS1リットルに対して細胞ペレット50グラム、細胞ペレット60グラム、または細胞ペレット70グラムであり得る。OMS中細胞懸濁液を2~8℃で少なくとも24時間、少なくとも48時間、または少なくとも60時間インキュベートして、過剰なエンドトキシンを細胞から除去することができる。一実施形態では、インキュベーションが72時間を超えないようにする。インキュベーション後、懸濁液を再度遠心分離し、上清を廃棄して、遊離のエンドトキシンおよびあらゆる細胞外材料、例えば分泌型タンパク質を除去する。
【0100】
E.coliを全細胞調製物として使用する場合、収集された細胞を、常套的な公知の方法を使用して処理して、細胞を不活化することができる。あるいは、E.coliを本開示のタンパク質の調製に使用する場合、E.coliを、例えば、フレンチプレス、超音波処理、またはホモジナイゼーションを含めた、当技術分野において常套的な公知の化学的方法、物理的方法、または機械的方法を使用して破壊することができる。ホモジナイゼーションを使用することが好ましい。本明細書で使用される場合、「破壊」とは、細胞を壊してばらばらにすることを指す。微生物の破壊は、例えば、光学濃度の変化を含めた、当技術分野において常套的な公知の方法によって測定することができる。一般には、微生物を、1:100希釈物を測定した場合にパーセント透過率が20%上昇するまで破壊する。破壊処理中の温度は、一般には、さらにタンパク質分解を最小限にするために、4℃に維持される。
【0101】
破壊された微生物を界面活性剤、例えば、アニオン、両性、ノニオン、またはカチオン界面活性剤中に可溶化する。界面活性剤は、サルコシンであることが好ましく、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムであることがより好ましい。本明細書で使用される場合、「可溶化する」という用語は、微生物の破壊処理を行った緩衝剤の水相中に細胞材料(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物)を溶解させ、不溶性細胞材料の凝集体を形成することを指す。可溶化の条件は、本開示のタンパク質の凝集をもたらして、例えば遠心分離または濾過による容易な単離を可能にするために十分な大きさの不溶性凝集体にするものであることが好ましい。
【0102】
サルコシンを、サルコシンと破壊された微生物のグラム単位での重量との最終的な比がペレット塊4.5グラム当たりサルコシン1.0グラムからペレット塊4.5グラム当たりサルコシン6.0グラムの間、好ましくは、ペレット塊4.5グラム当たりサルコシン4.5グラムで添加することが好ましい。微生物の可溶化は、例えば光学濃度の変化を含めた、当技術分野において常套的な公知の方法によって測定することができる。一般には、可溶化が少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、最も好ましくは少なくとも60時間にわたって起こるようにする。破壊処理中の温度は、一般には低温、好ましくは4℃に維持する。
【0103】
本明細書に記載のタンパク質を含む不溶性凝集体を当技術分野において常套的な公知の方法、例えば遠心分離、濾過、またはこれらの組合せによって単離することができる。一実施形態では、不溶性凝集体を接線濾過またはクロスフロー濾過などの濾過によって単離する。接線濾過で使用される分画分子量の例は、40kDa、50kDa、または60kDaである。一実施形態では、接線濾過システムの分画分子量は50kDaである。接線濾過は、残留サルコシンをタンパク質懸濁液から除去することに役立ち得る。接線濾過の結果、タンパク質懸濁液が濃縮される。したがって、不溶性凝集体を著しく低費用で単離することができる。
【0104】
一実施形態では、サルコシンを、単離されたタンパク質から除去する。サルコシンを単離されたタンパク質から除去する方法は当技術分野で公知であり、それらとして、例えば、ダイアフィルトレーション、沈殿、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および/またはアフィニティークロマトグラフィー、ならびに、ダイアフィルトレーションによる限外濾過およびイソプロピルアルコールなどのアルコールでのタンパク質の洗浄が挙げられる。単離後、タンパク質を緩衝剤に懸濁させ、低温、例えば、-20℃またはそれ未満の温度で保管する。
【0105】
本開示のタンパク質を、当技術分野で公知の方法を使用して微生物から単離することもできる。タンパク質の単離は、例えば、Emery et al.(米国特許第7,147,857号)に記載されている通り実現することができる。
【0106】
全細胞調製物を作製する本開示の態様では、E.coliを成長させた後、熱を使用してまたはグルタルアルデヒドもしくはホルマリンなどの作用剤を培養物中の細胞を不活化するために十分な濃度で添加することによって微生物を死滅させることができる。例えば、ホルマリンを0.3%(vol:vol)の濃度で添加することもできる。細胞を不活化するために十分な期間を置いた後、細胞を、例えば、ダイアフィルトレーションおよび/または遠心分離によって収集し、洗浄することができる。
【0107】
他の態様では、本開示の単離されたタンパク質を組換えによって調製することができる。組換えによって調製する場合、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを同定し、適当な発現宿主にクローニングすることができる。組換え発現宿主を上記の通り適当な培地で成長させ、破壊し、タンパク質を単離することができる。
【0108】
使用方法
【0109】
本明細書に記載のタンパク質を使用する方法も提供される。方法は、動物に、本明細書に記載のタンパク質を少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、または少なくとも8種含む組成物の有効量を投与することを含む。タンパク質は、単離されたものであってもよく、1つまたは複数の全細胞の調製物中に存在してもよい。組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、本開示の組成物の「有効量」は、レシピエントにおいて所望の応答を引き出すことができる量である。組成物の投与は、移行抗体が存在する時点、例えば、早ければ1日齢で、または動物の生涯のさらに後の時点で行うことができる。動物は、例えば、シチメンチョウ、鶏、およびアヒルなどの、例えば、トリであり得る。一部の実施形態では、鶏は、採卵鶏、肉用鶏の種鶏、または肉用鶏であり得る。一部の実施形態では、シチメンチョウは、種鳥、実用鳥、または原々種であり得る。一部の態様では、方法は、二次免疫応答を増強または刺激するために動物に組成物を追加的に投与すること(例えば、1回または複数回のブースター投与)をさらに含み得る。ブースターは、組成物の最初の投与後の時点、例えば、最初の投与の1~8週間後、好ましくは2~4週間後に投与することができる。その後のブースターを年に1回、2回、3回、4回、またはそれよりも多く投与することができる。理論に制限されることを意図するものではなく、動物は、野外において、動物に投与される組成物中に存在するタンパク質上に存在するエピトープと同一であるまたは構造的に関連するエピトープを有するタンパク質を発現するE.coliに曝露することによって負荷されるので、毎年のブースターは必要ないことが予想される。
【0110】
一態様では、本開示は、本明細書に記載のタンパク質に対する抗体を、例えば、動物における抗体の産生を誘導することによって、または組換え技法によって、作製するための方法を対象とする。作製される抗体は、組成物中に存在する少なくとも1種のタンパク質に特異的に結合する抗体を含む。本開示のこの態様では、「有効量」とは、動物における抗体の産生をもたらすために有効な量である。動物が、本開示の組成物中に存在するタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するかどうかを決定するための方法は、本明細書に記載の通り決定することができる。
【0111】
本明細書で使用される場合、タンパク質に「特異的に結合する」ことができる抗体とは、抗体の合成を誘導した抗原のエピトープとのみ相互作用する、または構造的に関連するエピトープと相互作用する抗体である。エピトープに「特異的に結合する」抗体は、適当な条件下では、潜在的な結合標的に多様性が存在する場合であっても、エピトープと相互作用する。
【0112】
一態様では、本開示は、E.coliによって引き起こされる動物における感染症を処置することも対象とする。方法は、E.coliによって引き起こされた感染症を有する動物に組成物の有効量を投与するステップ、および、感染症を引き起こしているE.coliが減少したかどうかを決定するステップを含む。感染症がE.coliによって引き起こされたものかどうかを決定するための方法は、当技術分野において常套的であり公知である。
【0113】
別の態様では、本開示は、動物におけるE.coliによる感染症によって引き起こされたものであり得るある特定の状態の1つまたは複数の徴候を処置するための方法を対象とする。E.coli感染症によって引き起こされる状態の例としては、鶏および/またはシチメンチョウの腹膜炎を含めた腹膜炎;鶏および/またはシチメンチョウの気嚢、肝臓、心臓、および/または脾臓の感染症を含めた局所大腸菌症;ならびに敗血症が挙げられる。トリ腹膜炎の徴候の例は当業者には公知であり、それらとして、例えば、産卵の減少ならびに/または輸卵管および/もしくは卵巣にE.coliが存在することが挙げられる。局所大腸菌症の徴候の例は当業者には公知であり、それらとして、鶏および/またはシチメンチョウの気嚢、肝臓、心臓、および/または脾臓にE.coliが存在することが挙げられる。敗血症の徴候の例は当業者には公知であり、それらとして、血流中にE.coliが存在することが挙げられる。
【0114】
これらの状態の処置は、予防的なものであってもよく、あるいは、本明細書に記載の状態が発症した後に開始することもできる。例えば、対象においてE.coliによって引き起こされる状態の徴候が顕在化する前に開始された予防的な処置は、本明細書では、状態が発症する「リスクがある」対象の処置と称される。一般には、状態が発症する「リスクがある」動物は、当該状態を引き起こすE.coliに曝露する可能性が高い動物である。例えば、動物は、当該状態の診断が少なくとも1例の他の動物に対してなされている地域に存在している、ならびに/または、病原性E.coliが風土病である地域および/もしくはE.coliによって引き起こされる状態が蔓延している地域に輸送されている。したがって、組成物の投与を本明細書に記載の状態が生じる前、生じている間、または生じた後に実施することができる。状態が発症する前に開始される処置により、E.coliに曝露した動物において状態のうちの1つの徴候が生じることが防止され得る。状態が発症した後に開始された処置により、状態のうちの1つの徴候の重症度が低下し得、これには徴候が完全に取り除かれることが含まれる。本開示のこの態様では、「有効量」とは、状態の徴候の顕在化を防止するため、または状態の徴候の重症度を低下させる、および/もしくは徴候を完全に取り除くために有効な量である。
【0115】
本明細書に記載の組成物の効力を標準的な方法に従って試験することができる。例えば、トリ病原体E.coliによる腹膜炎の鶏モデルの使用が確立されている(Chaudhari and Kariyawasam, Avian Dis. 58: 25-33, 2014;Huja et al., mBio. 6: 1-13, 2015;Cox et al., Avian Diseases, 65(1): 198-204, 2020、および実施例12)。これらのモデルを使用して、気嚢、肝臓、心臓、および脾臓の定着を評価することもできる。敗血症のネズミモデルの使用が確立されている(Koutsianos et al., 2020 Vet. Sci, 7(3): 80 Pages 2-12)。
【0116】
本開示の組成物を使用して、E.coliによる感染症に対する受動免疫化をもたらすことができる。例えば、組成物を動物に投与して、抗体などの免疫産物の産生を誘導することができ、その免疫産物を産生動物から採取し、別の動物に投与して、受動免疫をもたらすことができる。受動免疫化療法のために、血清、血漿、血液、初乳などから抗体などの免疫構成成分を採取して、抗体組成物を調製することができる。モノクローナル抗体、抗イディオタイプ、および/または組換え抗体を含む抗体組成物を公知の方法を使用して調製することもできる。受動抗体組成物およびその断片、例えば、scFv、Fab、F(ab’)もしくはFvまたは他のその改変形態をレシピエントに血清、血漿、血液、初乳などの形態で投与することができる。しかし、抗体を血清、血漿、血液、初乳などから公知の方法を使用して単離し、後で濃縮または復元された形態で使用するために噴霧乾燥または凍結乾燥することもできる。受動免疫化調製物は、急性全身性疾病の処置、または母体からの初乳を通じて十分なレベルの受動免疫を受けることができなかった若年動物の受動免疫化のために特に有利であり得る。
【0117】
本開示の別の態様は、本開示のタンパク質に特異的に結合する抗体を検出するための方法を提供する。これらの方法は、例えば、動物が本開示のタンパク質に特異的に結合する抗体を有するかどうかを検出すること、および動物がE.coliによって引き起こされた感染症を有し得るかどうかを診断することに有用である。そのような診断システムはキットの形態であることが好ましい。方法は、抗体を、少なくとも1種の本開示のタンパク質を含む調製物と接触させて、混合物をもたらすステップを含む。抗体は、血液などの生体試料中に存在することが好ましい。方法は、混合物を、抗体がタンパク質に特異的に結合して、タンパク質:抗体複合体を形成することを可能にする条件下でインキュベートするステップをさらに含む。本明細書で使用される場合、「タンパク質:抗体複合体」という用語は、抗体がタンパク質と特異的に結合すると生じる複合体を指す。本開示の組成物中に存在するタンパク質を含む調製物は、タンパク質:抗体複合体の形成に適した条件をもたらす試薬、例えば、緩衝剤も含み得る。次いで、タンパク質:抗体複合体を検出する。抗体の検出に関しては当技術分野で公知であり、例えば、免疫蛍光法およびペルオキシダーゼが挙げられる。
【0118】
本開示のタンパク質に特異的に結合する抗体の存在を検出するための方法を、ラジオイムノアッセイおよび酵素結合免疫吸着検定法を含めた、抗体を検出するために使用されている種々のフォーマットで使用することができる。
【0119】
本開示は、本開示のタンパク質に特異的に結合する抗体を検出するためのキットも提供する。キットは、少なくとも1種の本開示のタンパク質を、適切な包装材料中、少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。必要に応じて、本開示を実施するために必要な緩衝剤および溶液などの他の試薬も含まれる。一般には、包装されたタンパク質の使用説明書も含まれる。
【0120】
本明細書で使用される場合、「包装材料」という句は、キットの内容物を収納するために使用される1つまたは複数の物理的構造を指す。包装材料は、公知の方法により、好ましくは、無菌の、夾雑物を含まない環境がもたらされるように構築される。包装材料は、タンパク質が、E.coliによる感染症によって誘導される抗体を検出するために使用することができるものであることを示すラベルを有する。さらに、包装材料は、そのような抗体を検出するためのキット内の材料の使い方を示す説明書を含有する。本明細書で使用される場合、「包装」という用語は、固定された制限の範囲内にタンパク質を保持することが可能なガラス、プラスチック、紙、箔などの固体マトリックスまたは材料を指す。したがって、例えば、包装は、マイクログラム分量のタンパク質が添付されたマイクロタイタープレートウェルであり得る。「使用説明書」には、一般には、試薬の濃度または少なくとも1つのアッセイ方法パラメータ、例えば、混和させる試薬と試料の相対量、試薬/試料混和物の維持期間、温度、緩衝剤条件などが記載された有形表現が含まれる。
【0121】
本発明は特許請求の範囲において定義される。しかし、非限定的な例示的な態様の非包括的な一覧を以下に提示する。これらの態様の特色のうちの任意の1つまたは複数を本明細書に記載の別の例、実施形態、または態様の任意の1つまたは複数の特色と組み合わせることができる。
【0122】
例示的な態様
【0123】
態様1は、単離されたChuAタンパク質、例えば配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIreAタンパク質、例えば配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIroNタンパク質、例えば配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたFepAタンパク質、例えば配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたFecAタンパク質、例えば配列番号10に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIutAタンパク質、例えば配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、薬学的に許容される担体、およびアジュバントを含む組成物である。
【0124】
態様2は、単離されたBtuBタンパク質、例えば配列番号20に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたCirAタンパク質、例えば配列番号22に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、または単離されたBtuBタンパク質および単離されたCirAタンパク質をさらに含む、態様1に記載の組成物である。
【0125】
態様3は、単離されたChuAタンパク質、例えば配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIreAタンパク質、例えば配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIroNタンパク質、例えば配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたFepAタンパク質、例えば配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたFecAタンパク質、例えば配列番号10に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIutAタンパク質、例えば配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたBtuBタンパク質、例えば配列番号20に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたCirAタンパク質、例えば配列番号22に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、および単離されたFyuAタンパク質、例えば配列番号44に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質から選択されるタンパク質のうちのいずれか2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つを含む組成物であって、薬学的に許容される担体およびアジュバントをさらに含む、組成物である。
【0126】
態様4は、単離されたIreAタンパク質、例えば配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたChuAタンパク質、例えば配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたFepAタンパク質、例えば配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、および単離されたIroNタンパク質、例えば配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質;単離されたChuAタンパク質、例えば配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIroNタンパク質、例えば配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、および単離されたFyuAタンパク質、例えば配列番号44に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質;単離されたIreAタンパク質、例えば配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質および単離されたChuAタンパク質、例えば配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質;単離されたFepAタンパク質、例えば配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質および単離されたIroNタンパク質、例えば配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質;または単離されたChuAタンパク質、例えば配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質および単離されたIroNタンパク質、例えば配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質を含む組成物であって、薬学的に許容される担体およびアジュバントをさらに含む、組成物である。
【0127】
態様5は、対象に、態様1から4まで、21、もしくは22のいずれか1つに記載の組成物、または態様19もしくは20に記載の全細胞を、対象において組成物の少なくとも1つのタンパク質に特異的に結合する抗体が産生されるように誘導するために有効な量で投与するステップを含む方法である。
【0128】
態様6は、対象における腹膜炎を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる腹膜炎を有するまたはそれを有するリスクがある対象に態様1から4まで、21、もしくは22のいずれか1つに記載の組成物、または態様19もしくは20に記載の全細胞の有効量を投与するステップを含み、対象が、家禽である、方法である。
【0129】
態様7は、対象における腹膜炎の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる腹膜炎を有するまたはそれを有するリスクがある対象に態様1から4まで、21、もしくは22のいずれか1つに記載の組成物、または態様19もしくは20に記載の全細胞の有効量を投与するステップを含み、対象が、家禽である、方法である。
【0130】
態様8は、対象における局所大腸菌症を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる局所大腸菌症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に態様1から4まで、21、もしくは22のいずれか1つに記載の組成物、または態様19もしくは20に記載の全細胞の有効量を投与するステップを含み、対象が、家禽である、方法である。
【0131】
態様9は、対象における局所大腸菌症の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる局所大腸菌症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に態様1から4まで、21、もしくは22に記載のいずれか1つの組成物、または態様19もしくは20に記載の全細胞の有効量を投与するステップを含み、対象が、家禽である、方法である。
【0132】
態様10は、対象における敗血症を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる敗血症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に態様1から4まで、21、もしくは22のいずれか1つに記載の組成物、または態様19もしくは20に記載の全細胞の有効量を投与するステップを含み、対象が、家禽である、方法である。
【0133】
態様11は、対象における敗血症の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる敗血症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に態様1から4まで、21、もしくは22のいずれか1つに記載の組成物、または態様19もしくは20に記載の全細胞の有効量を投与するステップを含み、対象が、家禽である、方法である。
【0134】
態様12は、対象における腹膜炎を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる腹膜炎を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、組成物が、態様1から4までのいずれか1つに記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、対象が、家禽である、方法である。
【0135】
態様13は、対象における局所大腸菌症を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる局所大腸菌症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、組成物が、態様1から4までのいずれか1つに記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、対象が、家禽である、方法である。
【0136】
態様14は、対象における局所大腸菌症の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる局所大腸菌症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、組成物が、態様1から4までのいずれか1つに記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、対象が、家禽である、方法である。
【0137】
態様15は、対象における敗血症を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる敗血症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、組成物が、態様1から4までのいずれか1つに記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、対象が、家禽である、方法である。
【0138】
態様16は、対象における敗血症の徴候を処置するための方法であって、E.coliによって引き起こされる敗血症を有するまたはそれを有するリスクがある対象に組成物の有効量を投与するステップを含み、組成物が、態様1から4までのいずれか1つに記載の組成物のタンパク質に特異的に結合する抗体を含み、対象が、家禽である、方法である。
【0139】
態様17は、家禽が、鶏、シチメンチョウ、またはアヒルである、態様5から16までのいずれか1つに記載の方法である。
【0140】
態様18は、少なくとも0.01マイクログラム(μg)かつ500μg以下のタンパク質を投与する、態様5から17までのいずれか1つに記載の方法である。
【0141】
態様19は、6種のタンパク質を発現するように操作された、単離された全細胞であって、6種のタンパク質が、単離されたChuAタンパク質、例えば配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIreAタンパク質、例えば配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIroNタンパク質、例えば配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたFepAタンパク質、例えば配列番号8に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたFecAタンパク質、例えば配列番号10に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、単離されたIutAタンパク質、例えば配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有するタンパク質である、全細胞である。
【0142】
態様20は、細胞が、E.coliである、態様19に記載の全細胞である。
【0143】
態様21は、微生物の2つまたはそれよりも多くの集団を含む組成物であって、集団のそれぞれが、態様20に記載の6種のタンパク質のサブセットを発現し、全体として考えた2つまたはそれよりも多くの集団が、6種のタンパク質を発現する、組成物である。
【0144】
態様223は、微生物が、E.coliである、態様21に記載の組成物である。
【実施例
【0145】
実施例
【0146】
本開示を以下の実施例によって例示する。特定の例、材料、量、および手順は本明細書に記載の開示の範囲および主旨に従って広範に解釈されるべきであることが理解されるべきである。
【0147】
(実施例1)
【0148】
E.coli分離株の金属調節性タンパク質の産生に関する評価
【0149】
SRPタンパク質発現をさらに調査するため、およびより良好な理解を得るために、440種のトリ病原性E.coli(APEC)野外分離株のバンドプロファイルを決定した。E.coliを、米国全体の多数の商業施設から入手した、腹膜炎の臨床徴候または関連する大腸菌症の臨床徴候を示している鶏およびシチメンチョウ由来の感染器官(肝臓、脾臓および/または輸卵管)から単離した。
【0150】
各E.coli分離株の金属調節性タンパク質の上方調節に関するより良好な見解を得るために、各E.coli分離株を、鉄が豊富な培地条件および鉄が枯渇した培地条件で増殖させた。簡単に述べると、生物体を、2つの別々の500mLのボトルに植え継ぐことによって成長させた。一方のボトルは、300μMの2,2-ジピリジル(diprydyl)(Sigma-Aldrich St.Louis、MO)を含有する滅菌TSB 200mLを含有するものであり、一方は、第2のボトルは、200μMの塩化第二鉄(Sigma-Aldrich St.Louis、MO)を含有するTryptic Soy broth 200mLを含有するものであった。培養物を37℃、200rpmで絶えず撹拌しながら12時間インキュベートした。12時間のインキュベーション期間後、培養物を、鉄が豊富な培地および/または鉄が枯渇した培地のいずれか500mLに植え継ぎ(1:100)、37℃で8時間インキュベートした。8時間後、各培養物を10,000×gで20分間遠心分離し、浸透圧ショック緩衝剤(7.3g/lのTris Base;1.86g/lのEDTA)、pH8.9 40mL中に再懸濁させた。懸濁液を32,000×gで12分間遠心分離して、清澄化したまたは大きな細胞デブリを除去した。上清を採取し、4%ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを添加して4℃で24時間置くことによって可溶化した。界面活性剤に不溶性の外膜タンパク質が富化された画分を、4℃、32,000×gで2.5時間の遠心分離によって採取した。タンパク質ペレットをTris緩衝剤(pH7.2)200μl中に再懸濁させた。
【0151】
各分離株に由来するタンパク質富化抽出物のサイズ分画を、4%スタッキングゲルおよび10%分離ゲルを使用したSDS-PAGEゲルで行った。電気泳動用の試料を、試料10μlとSDS還元性試料用緩衝剤(62.5mMのTris-HCL、pH6.8、20%グリセロール、2%SDS、5%β-メルカプトエタノール)30μlを合わせ、4分間煮沸することによって調製した。試料を、Protein II xi cell power supply(BioRad Laboratories、Richmond、CA、model 1000/500)を使用し、4℃、18mAの定電流で5時間にわたって電気泳動した。
【0152】
SDS-PAGEによって調査した440種の分離株のSRPバンドプロファイルを目視比較することにより、この多様な集団内の各分離株によって発現されるバンドの数(1、2、3、4、5、6、または7)が示された。表2に、調査した個々のE.coli分離株によって発現されたSRPバンドの数を示す。例えば、9種の分離株が1つのSRPバンドを発現し、87種の分離株が2つのSRPバンドを発現し、130種の分離株が3つのSRPバンドを発現し、106種の分離株が4つのSRPバンドを発現し、58種の分離株が5つのSRPバンドを発現し、48種の分離株が6つのSRPバンドを発現し、2種の分離株のみが7つのSRPバンドを発現した(表2)。3つのSRPバンドを発現する分離株および4つのSRPバンドを発現する分離株が調査した分離株の集団全体の54%を占めた。
【0153】
【表2】
【0154】
2種の分離株(分離株APEC-1966および分離株APEC-1967)を、共に、腹膜炎を誘導した分離株におけるSRPの多くを含有する横縞模様という共通性を表すというそれらのSRPバンドプロファイルに基づいて選択した。分離株APEC-1966は血清型O156であり、分離株APEC-1967は血清型O78であった。本発明者らは、調査したトリ病原性E.coliの大多数に存在したバンドの組成物を使用することにより、野外において腹膜炎に対して、より広範な保護、すなわち、血清型O156およびO78よりも多くの血清型に対する保護をもたらすワクチンが得られるという仮説を立てた。これらの分離株からゲルにより単離されたSRPのトリプシン断片を質量分析することにより、以下のSRPタンパク質:ChuA、IroN、IreA、IutA、FecAおよびFepAが集合的に同定された。PCRによるゲノム解析により、他のSRPの遺伝子(FhuE、Fiu、CirA FhuA、FyuAおよびBtuB)がこれらの分離株に存在することが示されたが、これらの遺伝子が鉄が制限された抗原産生の間に発現されるかどうかは不明である。
【0155】
(実施例2)
【0156】
複数のE.coli野外分離株の金属調節性タンパク質の特徴付け
【0157】
APEC-1966およびAPEC-1967のE.coliタンパク質バンドプロファイルを、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)を使用して特徴付けた。ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して個々のE.coli分離株のタンパク質を分離した後、ゲルをクーマシーブリリアントブルーまたは銀のいずれかを用いて染色して、タンパク質を可視化した。
【0158】
材料および方法
【0159】
切り出しおよび洗浄。SDS-PAGEを使用してタンパク質を分離し、染色して、タンパク質を可視化し、ゲルを、水で2回、10分間ずつ洗浄した。目的のタンパク質バンドそれぞれを、試料中に存在するゲルの量を減少させるためにできるだけタンパク質バンドの近くでカットすることによって切り出した。図1においてFepA、IroN、IreA、ChuA、FecA、IutA、OmpC、およびOmpAと識別されている8つのバンドを使用して8つのゲル断片を調製した。
【0160】
各ゲルスライスを1×1mmの立方体にカットし、1.5mLの管に入れた。ゲル片を水で15分間洗浄した。洗浄ステップに使用した溶媒体積は全てゲルスライスの体積の2倍とほぼ等しくした。次に、ゲルスライスを水/アセトニトリル(1:1)で15分間洗浄した。タンパク質が銀で染色された場合、水/アセトニトリル混合物を除去し、ゲル片をSpeedVac(ThermoSavant、Holbrook、NY)で乾燥させ、次いで、下記の通り還元し、アルキル化した。ゲル片が銀で染色されなかった場合、水/アセトニトリル混合物を除去し、アセトニトリルをゲル片が粘着性の白色に変化するまで覆うように添加し、変化した時点でアセトニトリルを除去した。ゲル片を100mMのNHHCO中で水分を元に戻し、5分後、ゲル片の体積の2倍と等しい体積のアセトニトリルを添加した。これを15分間インキュベートし、液体を除去し、ゲル片をSpeedVacで乾燥させた。
【0161】
還元およびアルキル化。乾燥ゲル片を10mMのDTTおよび100mMのNHHCO中で水分を元に戻し、56℃で45分間インキュベートした。管を室温まで冷ました後、液体を除去し、55mMのヨードアセトアミドと100mMのNHHCOの同体積の混合物をすぐに添加した。これを、暗所、室温で30分間インキュベートした。液体を除去し、アセトニトリルをゲル片が粘着性の白色に変化するまで覆うように添加し、変化した時点でアセトニトリルを除去した。ゲル片を100mMのNHHCO中で水分を元に戻し、5分後、ゲル片の体積の2倍と等しい体積のアセトニトリルを添加した。これを15分間インキュベートし、液体を除去し、ゲル片をSpeed vacで乾燥させた。ゲルをクーマシーブルーで染色した場合に残留クーマシーがまだ認められたときには100mMのNHHCO/アセトニトリルを用いた洗浄を繰り返した。
【0162】
ゲル内消化。ゲル片をSpeed Vacで完全に乾燥させた。ゲル片を4℃、消化用緩衝剤(50mMのNHHCO、5mMのCaCl、1マイクロリットル当たり12.5ナノグラム(ng/μl)のトリプシン)中で水分を元に戻した。十分な緩衝剤をゲル片を覆うように添加し、必要に応じてさらに緩衝剤を添加した。ゲル片を氷上で45分間インキュベートし、上清を除去し、トリプシンを伴わない同じ緩衝剤5-2μlで置き換えた。これをエアインキュベーター中、37℃で一晩インキュベートした。
【0163】
ペプチドの抽出。十分な体積の25mMのNHHCOをゲル片を覆うように添加し、15分間インキュベートした(一般には、バスソニケーター中で)。同体積のアセトニトリルを添加し、15分間インキュベートし(可能であればバスソニケーター中で)、上清を回収した。NHHCOの代わりに5%ギ酸を使用して抽出を2回繰り返した。十分な体積の5%ギ酸をゲル片を覆うように添加し、15分間インキュベートした(一般には、バスソニケーター中で)。同体積のアセトニトリルを添加し、15分間インキュベートし(一般には、バスソニケーター中で)、上清を回収した。抽出物をプールし、10mMのDTTを、1mMのDTTの最終濃度まで添加した。試料をSpeedVacで乾燥させて、およそ5μlの最終体積にした。
【0164】
ペプチドの脱塩。試料の脱塩を、ZIPTIPピペットチップ(C18、Millipore、Billerica、MA)を製造者による提言の通り使用して行った。簡単に述べると、試料を復元用溶液(5:95のアセトニトリル:HO、0.1%~0.5%トリフルオロ酢酸)中に復元し、遠心分離し、pHを確認して、pH3未満であることを検証した。ZIPTIPを、溶液1(50:50のアセトニトリル:HO、0.1%トリフルオロ酢酸)10μlを吸引し、吸引した一定分量を捨てることによって膨潤させた。その後、溶液2(脱イオン化HO中0.1%トリフルオロ酢酸)10μlを吸引し、吸引した一定分量を捨てた。チップで試料10μlをゆっくり吸引することによって試料をチップにローディングし、それを試料管に吐出し、これを5~6回繰り返した。溶液2 10マイクロリットルをチップに吸引し、その溶液を吐出することによって捨て、この処理を5~7回繰り返して洗浄した。氷冷した溶液3(60:40のアセトニトリル:HO、0.1%トリフルオロ酢酸)2.5μlを吸引し、吐出し、次いで、同じ一定分量をチップに再度吸引して出すことを3回行うことにより、ペプチドを溶出した。溶液をチップから吐出した後、管に蓋をし、氷上で保管した。
【0165】
質量分析ペプチドマッピング。ペプチドを5%ギ酸10μL~30μLに懸濁させ、MALDI-TOF MS(Bruker Daltonics Inc.、Billerica、MA)によって分析した。ペプチド断片の質量スペクトルを製造者による提言の通り決定した。簡単に述べると、トリプシン消化物から得られたペプチドを含有する試料をマトリックスシアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸と混合し、標的に移し、乾燥させた。乾燥試料を質量分析計に入れ、照射処理し、各イオンの飛行時間を検出し、それを使用して、組成物中に存在する各タンパク質についてのペプチドマスフィンガープリントを決定した。既知タンパク質を使用して、機械を標準化した。
【0166】
データ解析。各質量スペクトルでペプチドについて実験的に観察された質量とタンパク質の予測質量との比較をMascot検索エンジンのPeptide Mass Fingerprint検索法(Matrix Science Ltd.、London、UK、およびwww.matrixscience.com、Perkins et al., 1999, Electrophoresis 20, 3551-3567を参照されたい)を使用して行った。検索パラメータには以下を含めた:database、NCBInr;taxonomy、細菌(真正細菌);type of search、ペプチドマスフィンガープリント;enzyme、トリプシン;fixed modifications、カルバミドメチル(C)またはなし;variable modifications、酸化(M)、カルバミドメチル(C)、組合せ、またはなし;mass values、モノアイソトピック;protein mass、無制限;peptide mass tolerance、±100ppmから±300ppmもしくは450ppmの間、または±1Da;peptide charge state、Mr;max missed cleavages、0または1;number of queries、25。
【0167】
タンパク質のSDS-PAGE分析により、使用したSDS-PAGE条件下では、1966に由来するタンパク質および1967に由来するタンパク質は、SDS-PAGEによって決定して、83kDa、82kDa、78kDa、76kDa、74kDa、70kDa、および36kDa~33kDaのより低い分子量のタンパク質に移動したことが示される(表1)。MALDI分析およびアミノ酸配列に基づく予測分子量から、SDS-PAGEを使用して推定されたタンパク質の分子量とMALDIを使用して推定されたタンパク質の分子量が良好に一致することが示された(表1)。金属調節性タンパク質発現についてスクリーニングした多数のE.coli分離株のうち、6種の株を、それらの金属調節性タンパク質発現に基づいて以下の実験研究のために選択した。家禽から引き出されたトリ分離株に以下の名称を付けた;APEC-1966、APEC-1967、APEC-O78、APEC-O1およびAPEC-O2。APEC-O1、APEC-O2、およびAPEC-O78の分離株は、実施例1に記載の通りSDS-PAGEによって調査したところ、3つ、5つ、および4つのバンドを有した。さらに、尿路病原性E.coli(UPEC)分離CFT073株を、ネズミマウスモデルにおける、腹膜炎組成物を表した個々の組換えタンパク質の有効性を評価するために使用する負荷株として選択した。MALDI分析により、APEC分離株において見いだされた大多数の鉄調節性タンパク質に、ChuA、FepA、FhuA、IreA、IutA、IroNに加えてBtuB、CirA、FhuE、Fiu、およびFyuAが含まれることが同定された。
【0168】
(実施例3)
【0169】
E.coliシードストックの調製
【0170】
APEC-1966、APEC-1967、APEC-O78、APEC-O1、APEC-O2およびCFT073の元の分離株を保存するために、各分離株のマスターシードストックを、0.34g/Lの2,2-ジピリジル(Sigma-Aldrich St.Louis、Mo.)を含有するtryptic soy broth(TSB、Difco Laboratories、Detroit、Mich.)200mLに適当な分離株を接種することによって調製した。培養物を、37℃、200rpmで撹拌しながら6時間成長させ、10,000×gで遠心分離することによって採取した。細菌ペレットを、20%グリセロールを含有するTSBブロス100mLに再懸濁させ、2mLの低温貯蔵バイアルに無菌的に分注し(バイアル当たり1mL)、使用するまで-90℃で保管した。マスターシードストックを拡大させてワーキングシードにした。予め調製したマスターシードのバイアル1本に300μMの2,2-ジピリジル(Sigma)を含有するTSB 200mLを接種した。培養物を37℃、200rpmで撹拌しながら6時間成長させ、10,000×gで遠心分離することによって採取した。細菌ペレットを、20%グリセロールを含有するTSBブロス100mLに再懸濁させ、2mLの低温貯蔵バイアルに無菌的に分注し(バイアル当たり1mL)、使用するまで-90℃で保管した。
【0171】
(実施例4)
【0172】
E.coli負荷株の選択
【0173】
実施例1の採取し、試験した多数のE.coli分離株のうち、APEC-1966およびAPEC-1967と称される2種の分離株をそれらのSRPバンドプロファイルに基づいて選択した。APEC分離株APEC-O78、APEC-O1、およびAPEC-O2を選択し、それらの、腹膜炎に特徴的な病変を誘導する毒力、および鶏に対する負荷で死亡事象を引き起こす能力について評価した。APEC-O78は血清型O78であり、APEC-O1は血清型O1であり、APEC O2は血清型O2であった。SPF鶏において気管内、静脈内、膣内および腹腔内を含めた複数の接種経路を評価した(Valo BioMedia、Adel、IA))。腹腔内経路によって負荷した場合に再現性のある腹膜炎の臨床徴候を誘導したAPEC-O78と称される1種の分離株を腹膜炎のモデル開発のための負荷株として選択した。
【0174】
(実施例5)
【0175】
ナリジクス酸耐性E.coli負荷株の調製
【0176】
実施例3のE.coli分離株APEC-O78、APEC-O1、APEC-O2およびCFT073をナリジクス酸耐性にした。負荷株において既知の抗生物質に対する耐性を誘導することの重要性は、環境内に広まっていることに起因して負荷した試料中に夾雑し得る他のE.coli株から負荷株を区別することができることにある。抗生物質耐性を誘導するために、各分離株を漸増濃度のナリジクス酸の下で成長させた。簡単に述べると、Tryptic Soy 35gm;酵母抽出物5gmおよび2,2-ジピリジル25μgを含有するTSBのストック溶液1リットルを2つ調製し、30分間オートクレーブ処理した。その時点で4℃まで冷却した。ナリジクス酸をTSBのボトル1本に、0.2μmのフィルターを通して膜濾過することによって添加して、最終濃度を150μg/mLにした。そこでナリジクス酸150μg含有するTSBをストック溶液20mL(50mLの円錐管)にナリジクス酸を伴わないTSBを希釈剤として使用して希釈して、以下の濃度を得た;0(ナリジクス酸なし);25μg;50μg;75μg;100μgおよび無希釈150μg。
【0177】
分離株を凍結保存から取り出し、ヒツジ血液寒天にプレーティングし、37℃で24時間インキュベートした。その時点で、単一のコロニーを選び取り、ナリジクス酸なしの管のうち1本に無菌的に接種し、37℃、200rpmで撹拌しながら3時間インキュベートした。接種の3時間後に、培養物2mLを、37℃に予め温めておいたナリジクス酸25μgの入った20mLの管に移した。培養物を37℃、200rpmで急速に撹拌しながら3時間成長させた。この処理を2回繰り返し、次いで、次の濃度のナリジクス酸に移した。成長が起こらなかった場合、処理を前の濃度で繰り返し、その後、次の漸増濃度に移した。これを、最高濃度のナリジクス酸で成長が確立されるまで各濃度について行った。150μgレベルでの成長が確立されたら、次いで、培養物を、ナリジクス酸80μgを含有するEMBにプレーティングした。各分離株の単一のコロニーを選択し、80μg/mLを含有するTSB 100mLに移した。培養物を37℃で4.5時間または540nmにおけるOD1.0が実現されるまで成長させた。培養物を8000rpmで20分間遠心分離した。その時点で上清を廃棄し、ペレットを、上記の通りであるが20%グリセロールおよび25μg/mLの2,2-ジピリジルを含有するTSB培地90mLに再懸濁させた。各細菌懸濁液1mLの一定分量を2mLのクライオバイアルに分注し、使用するまで-90℃で保管した。
【0178】
(実施例6)
【0179】
SPF鶏におけるE.coliの連続継代
【0180】
負荷株O78、O1およびO2の毒力を増強するために、ナリジクス酸耐性分離株をSPF鶏において連続継代した。簡単に述べると、上記の培養物を使用し、鶏4羽に1.0×10CFU/mLの分離株0.1ccまたは0.2ccのいずれかを静脈内注射した。接種後の24時間、鶏は病的状態になったが死亡はしなかった。鶏を頸椎脱臼によって安楽死させ、腹膜炎に特徴的な肉眼病理病変について調査した。各鶏の肝臓を、火炎殺菌したループを使用し、血液寒天および150μg/mLのナリジクス酸を含有するEosin Methylene Blue(EMB)寒天にプレーティングして培養した。プレートを37℃で24時間インキュベートした。0.2mL用量からのいくつかのコロニーがEMBおよび血液プレートのどちらにおいても成長し、それにより、分離株が全身に及んだことが示される。これらのコロニーを画線して単離し、鶏において同じレジメンを使用して再度継代した。今回は0.2mL用量でおよそ20~50コロニーを得た。これを繰り返した;肝臓を培養し、プレートに100を超えるコロニーを得た。肝臓で培養された分離株を鶏においてさらに2回継代し(全部で3回の連続継代)、その結果、気嚢、心膜炎、肝周囲炎の病変の増大、および腹膜炎に典型的な輸卵管における広範囲にわたる病変がもたらされた。これらの結果から、宿主種(鶏)において分離株を継代することにより、分離株の病原性が増大し、腹膜炎として一般に認められる病変が誘導されることが明白に実証される。
【0181】
(実施例7)
【0182】
マウスにおけるE.coli CFT073の連続継代
【0183】
負荷CFT073株の毒力を増強するために、当該分離株を、Charles River Laboratory(Wilmington、MA)から入手した体重16~22グラムのHarlan CF-1マウスにおいて連続継代した。簡単に述べると、実施例3に記載の培養物を使用し、マウス2匹に1.0×10CFU/mLの各分離株を0.1mLまたは0.2mLで皮下注射した。接種後の24時間、マウスは病的状態になったが死亡はしなかった。マウスを人道的に屠殺し、各肝臓を、火炎殺菌したループを使用し、血液寒天およびナリジクス酸150μgを含有するEosin Methylene Blue(EMB)寒天にプレーティングして培養した。プレートを37℃で24時間インキュベートした。0.2mL用量からのいくつかのコロニーがEMBおよび血液プレートのどちらにおいても成長し、それにより、分離株が全身に及んだことが示される。これらのコロニーを画線して単離し、マウスにおいて同じレジメンを使用して再度継代した。今回は0.2mL用量によりおよそ20~50コロニーを得た。これを繰り返した;肝臓を培養し、プレートで100を超えるコロニーを得た。肝臓で培養された分離株をマウスにおいてさらに2回継代し(全部で5回の連続継代)、それにより、負荷の24時間後に全てのマウスが瀕死状態になった。このことから、アウトカムパラメータとして死亡を用いて、分離株のそれぞれが、毒力の増強により新しい宿主種における成長に適合したことが明白に実証される。
【0184】
(実施例8)
【0185】
凍結ワーキングシードの調製
【0186】
実施例5の鶏で3回連続継代したナリジクス酸耐性E.coli分離株を、EMBプレートから植え継ぎ、拡大させて凍結ワーキングシードにした。簡単に述べると、EMBプレート(5回連続継代)からの単一のコロニーを、TSB 32gm;酵母抽出物5gmおよび25μg/リットルの2,2-ジピリジルを含有するTSB 20mLに植え継いだ。培養物を200rpmで2時間撹拌した。その時点で、37℃に予め温めておいた同じ培地に植え継いだ。2時間の期間を置いた後、各培養物10mLを、2,2-ジピリジルの濃度を25μg/lにした以外は上記の通りの予め温めておいたTSB 100mLに移した。これらの培養物を、540nmにおけるODが1.0に達するまで成長させた。その時点で、8000rpmで10分間遠心分離し、20%グリセロールを含有した以外は上記の通りの低温TSBに90mL中に再懸濁させた。各細菌懸濁液1mLの一定分量を2mLのクライオバイアルに分注し、標識し、使用するまで-90℃で保管した。
【0187】
(実施例9)
【0188】
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)
【0189】
表1に記載されている金属調節性タンパク質からなるE.coliの細菌抽出物に対する血清学的応答を、ELISAによってIgG力価を測定することによって決定した。簡単に述べると、ChuA、IroN、IreA、IutA、FecA、FepA、OmpC、およびOmpAを含む細菌抽出物100μlを、96ウェルポリスチレンプレート(Immunlon 2HB、Thermo-Scientific)96ウェルEIA/RIAプレート(Corning/Costar 3590)のウェル当たり400ngの炭酸-重炭酸緩衝剤、pH9.6中に希釈し、4℃で一晩インキュベートした。残りのステップは全て室温で実施した。プレートを、PBS洗浄緩衝剤(0.05%Tween20を含有するPBS)で3回洗浄し、その後、PBS中1%ポリ酢酸ビニルを用いて1時間にわたってブロッキングし、再度洗浄した。血清試料を、2連で、プレート内で洗浄緩衝剤を使用して1:1,000に希釈し、次いで4倍に希釈し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、その後、ヤギ抗鶏IgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(KPL、Seracare、USA)と一緒に37℃で1時間インキュベートし、その後、最終的な洗浄ステップを行った。ABTS Substrate System(KPL、Seracare、USA)を使用してプレートの展開を行った後、Biotek分光光度計で405~490nmにおいて読み取った。Gen5ソフトウェア(Biotek、USA)を使用して、試料の希釈曲線がプレート上の陽性対照血清の光学濃度平均値の50%と交差する点と定義される力価を算出した。各処理群のそれぞれについて幾何平均力価および信頼区間を報告している。
【0190】
(実施例10)
【0191】
組換えタンパク質の発現および精製
【0192】
E.coli CFT073株からクローニングした組換えタンパク質をE.coliにおいて発現させ、標準的な方法を使用して精製した。簡単に述べると、凍結細菌ストック(100μl)を使用して、適当な選択的抗生物質(pET29bに対してカナマイシン)を含有するLuria-Bertani(LB)Broth 20mLに接種し、培養物を振とうインキュベーター中、37℃、250rpmで成長させた。16時間後、培養物を、適当な選択的抗生物質を含有するLBブロス1L中に希釈し、光学濃度(600nm)が0.6になるまで成長させ、1MのIPTGを添加することによる誘導を行って、最終濃度を1mMにした。あるいは、より大きなバッチに関しては、培養物を使用して、10Lの発酵槽に播種し、IPTGを用いた誘導を行って、最終濃度を1mMにした。細菌細胞ペレットを、4℃、4,000×gで20分間遠心分離することによって収集し、PBSで洗浄し、溶解させるまで-80℃で保管した。不溶性封入体を、BugBuster(Millipore)を用いて処理することによって富化させ、8Mの尿素緩衝剤中に可溶化させた。陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーを利用してエンドトキシンを除去し、その後、緩衝剤交換のための第2のAEXクロマトグラフィーステップを行って、試料を20mMのリン酸ナトリウム、51mMのN-オクチル-β-D-グルコピラノシド(nOG)、300mMの塩化ナトリウム、および300mMの尿素からなる最終的な緩衝剤(pH9.5)に入れた。タンパク質濃度をBCA法(Thermo Scientific、Rockford、IL)を使用して決定し、タンパク質の純度をSDS-PAGEおよびデンシトメトリー(LI-COR Odyssey;LI-COR、Lincoln、NE)によって測定した。
【0193】
(実施例11)
【0194】
金属調節性タンパク質を製造するための大規模処理
【0195】
発酵。ワーキングシードの低温貯蔵バイアル(10CFU/mLで1mL)を使用して、37℃の、34マイクログラム/リットルの2,2-ジピリジル(Sigma)、2.5グラム/リットルの酵母抽出物(Bacto)およびグリセロール(3%vol/vol)を含有するデキストロースを伴わないtryptic soy broth(TSB)(Bacto)500mLに接種した。培養物を37℃、160rpmで撹拌しながら16時間インキュベートし、次いで、上記の培地の1.5Lのボトル2本に分けた。この第2の培養物を37℃でさらに2.5時間成長させた。この培養物を使用して、Mazu DF 204 defoamer(150mL)を添加した上記の培地300リットルを投入した400LのDCI-Biolafitte SIP発酵槽(DCI、St.Cloud、MN)に接種した。発酵のパラメータは以下の通りであった:溶存酸素(DO)を、毎分17~120リットルの空気、毎分0~60リットルの空気および5重量ポンド毎平方インチ(psi)の背圧を注入してかき混ぜを毎分500revに増大させることによって60%+/-20%に維持した。pHを、50%NaOHおよび25%H3PO4を用いた自動滴定によって6.9から7.2の間で一定に保持した。温度を37℃に維持した。5.5時間にわたって発酵させて成長を継続させた。その時点で、発酵槽の温度を15℃に低下させ、25%H3PO4を用いてpHを5.0に低下させることによって発酵を終結させた(1:20の希釈度で540ナノメートルにおける光学濃度15)。培養物を収集に備えて200リットルの槽(LEE Process Systems and Equipment model 2000LDBT)に無菌的に移す。
【0196】
収集。細菌発酵物を、Waukesha Model 130 U2 feed pump(Waukesha Cherry-Burrell、Delevan、WI)と接続した、30 ft2 Alpha 0.1μm open channel filter(Pall Filtron、カタログ番号PSM10C52)を4つ備えたPall Filtron Tangential Flow Maxisette-25(Pall Filtron Corporation、Northboro、MA)を使用して濃縮し、洗浄した。元の培養体積300リットルを、フィルター入口圧30~40psiおよび保持液圧2~15psiを使用して60リットルに低下させた。次いで、細菌保持液を、2.72グラム/リットルの酢酸ナトリウム三水和物で構成される酢酸ナトリウム三水和物溶液、pH5.0 200リットルを使用して洗浄した。次いで、細菌保持液60リットルを、pH8.6に調整した、14.52グラム/リットルのTris-baseおよび1.86グラム/リットルのEDTAを含有する浸透圧ショック緩衝剤(OMS)100リットルで洗浄した。OMS中のEDTAは、LPSの大半を細胞壁から除去することを補助する機能を果たし、一方、pHを上昇させることにより、凍結後のタンパク質分解および破壊の大半を防止した。pHを上昇させる代わりにまたはそれに加えてプロテアーゼ阻害剤を使用することができる。次いで、保持液を40リットルまで濃縮して、あらゆる夾雑外因性タンパク質の除去を補助し、次いで、上記のOMSをさらに200リットル添加して、全ての細菌をフィルターを通して洗い流して収集槽に入れた。保持液を、200リットルの槽中、底部に取り付けられた磁気駆動型ミキサーを使用して徹底的に混合した。保持液を、ガンマ線照射処理した5リットルのInvitro(商標)容器に無菌的に分注し(5リットル)、保管のために-20℃の冷凍装置に入れた。細菌ペレットの凍結は、細胞壁の構造を弱め、それにより下流の破壊をより効率的なものにする機能を果たした。発酵培養物および最終収集物の試料1mLを遠心分離することによってペレット塊の算出を行った。予め秤量した1mLの円錐管をMicrofuge 18において13,000rpmで10分間遠心分離した。上清を流し捨て、ペレットを滅菌水に再懸濁させた。この混合物を再度13,000rpmで5分間遠心分離した後、もう一度デカントした。この洗浄したペレットを125℃の乾燥器に入れて75分間置いた後、秤量および推定を行って、ペレット塊の収集体積を決定した。発酵処理により、2.3キログラムの乾燥ペレット塊を得た。
【0197】
細菌収集のための代替方法を使用することができる。細菌収集を中空繊維フィルター法を使用することによって実施することができる。細菌培養物を、0.2μMから5kDaまでにわたるサイズ範囲、好ましくは750kDaのカートリッジを備えたフィルターカートリッジを使用して収集する。培養物の体積を2~20分の1に低下させ、その後、緩衝剤を用いてダイアフィルトレーションによって1~5回洗浄した後、4℃でまたは-20℃で凍結させて保管する。このようにして、望ましくない培地タンパク質、細菌タンパク質およびLPSを培養物から除去する。別の代替では、細菌収集を、工業規模の遠心分離機を使用することによって、例えば、ディスク型遠心分離機を使用することによって実施することができる。
【0198】
破壊(ホモジナイゼーション)。凍結したOMS中細菌細胞スラリーを4℃で解凍した(ペレット塊2.3kg)。各容器から液体培養懸濁液を無菌的に吸引して、OMS、pH8.5 13リットルを含有する、底部にミキサー(Lightnin Mixer Model MBI610H55)が取り付けられた200リットルの処理槽(Model 200LDBT)に入れた。OMSの体積は、ペレット塊に30.8L/Kgを掛けることによってホモジナイズ体積を算出し、ホモジナイズ体積を取り、発酵収集物から細菌の体積を差し引くことによって決定した。バルク細菌懸濁液を、18Hzで絶えず混合しながら18時間にわたって4℃まで冷却した。その時点でそれをホモジナイゼーションによって破壊した。簡単に述べると、細菌懸濁液を含有する200リットルの槽をAvestin Model EF-C500B Homogenizer(Avestin、Rosemont、IL)と接続した。第2の200リットルの処理槽(空)をホモジナイザーに接続し、したがって、処理槽中の流体をホモジナイザーを通過させて空槽に入れ、また戻すことができるようにし、複数回のホモジナイズ通過を行いながらそれでもなお閉鎖系が維持されることを可能にした。ホモジナイゼーション中の温度は4℃に維持した。各通過の開始時に、流体をWaukesha model 30U2 pump(Waukesha)によって60psiでホモジナイザーを通し(毎時500リットル)、元の槽に戻して循環させながら、ホモジナイザーの圧力は11,000~30,000psiに調整した。最初の通過の前に、2つの前ホモジナイズ処理試料をホモジナイザーから引き抜いて、破壊の程度を決定するためおよびpHをモニタリングするためのベースラインを確立した。破壊の程度を、透過率(1:100の希釈度で540nmにおける%T)をホモジナイズしていない試料と比較することによってモニタリングした。ホモジナイザーを通過させる回数を、可溶化および最終生成物の品質と効率と直接相関した細胞壁の完全性および破壊の程度の変動に基づいて、異なる生物体に対して標準化した。例えば、Salmonellaをホモジナイザーを2回通過させて破壊したところ、得られた最終的なパーセント透過率は1:100の希釈度で78~83%Tであった。E.coliに同じペレット塊および出発ODを用いたところ、2回目の通過後の%Tは80~86%(1:100の希釈度)であった。同一の条件下で、細菌の細胞壁の完全性が異なり、また細菌の破壊される能力が変動することが観察された。この変動は、可溶化の程度および効率ならびに金属調節性タンパク質の回収率に影響を及ぼし得る。一般に、細胞を、最低2回の通過後、透過率が少なくとも80%に達するまでホモジナイザーを通過させた。
【0199】
ホモジナイゼーション後、可溶化のために、ホモジナイズした細菌懸濁液にラウロイルサルコシン酸ナトリウム(Hamptosyl L-30、Chem/Serv)を無菌的に添加した。添加したサルコシン(30%)の量は、リットル単位で可溶化体積の0.083倍に相当するものであった(可溶化体積は、発酵乾燥ペレット塊に34.7L/Kgを掛けることによって決定した)。槽をホモジナイザーから取り外し、2~7℃の冷却器に入れ、18Hzで12~96時間混合を行った。この期間は、完全な可溶化を補助するものであった。pHを上昇させた(8.0~8.5)OMS中での可溶化時間を延長することにより、凝集した金属調節性タンパク質が一緒になって、遠心分離によって容易に取り出すことができる大きな不溶性凝集体を形成することが発見された。可溶化後の最適ODは、通常、540nmにおいて25~30%Tであった。タンパク質収集の12~24時間前に、0.15%ホルマリンを保存剤として最終的な可溶化体積に添加した。
【0200】
タンパク質収集。可溶化された処理流体内の凝集した金属調節性タンパク質を、T-1 Sharples(Alfa Laval Separations、Warminster、PA)を使用して遠心分離によって集めた。簡単に述べると、可溶化されたホモジネートの槽からの供給を、12のSharpleに遠心スピード30,000rpm、11psiで毎分200mLの供給速度で行った。流出液を閉じた滅菌ループによって集めて第2の200リットルの処理槽に入れ、閉鎖系を維持しながら複数回の遠心分離を通過することを可能にした。遠心分離中の温度を4℃に維持した。可溶化されたホモジネートを最大12回、遠心スピード50,000rpm、21psiで毎分150mLの供給速度で遠心分離機を通過させた。最初の通過後にタンパク質を集めて廃棄した。その時点で、可溶化された流体を濃縮して元の体積の1/3にした。体積を低下させることにより、2~12回の通過の処理時間が短縮された。簡単に述べると、可溶化されたホモジネート槽を、濃縮のために、Waukesha Model 130U2 feed pumpに接続した、30.1 ft2 screen-channel series Omega 10kd Maxisette filter(Pall Filtron)を3つ備えたPall Filtron AT25 Holderに接続した。濃縮後、遠心分離を処理完了まで継続した。各通過後にタンパク質を集めた。タンパク質を集め、0.3%ホルマリン(Sigma)を保存剤として含有するTris緩衝剤、pH8.5を含有する8リットルの容器2つを用いて再懸濁および分注を行った。容器をミキサーModel Turbula T10B(M.O.Industries、Wippany、New Jersey)に入れ、タンパク質を緩衝液に再懸濁させるまで混合した。
【0201】
ダイアフィルトレーション。タンパク質懸濁液を、4℃でのダイアフィルトレーションによって洗浄して、タンパク質と結合した可能性があるあらゆる夾雑サルコシンを除去した。タンパク質を容器2つから吸引して、0.3%ホルマリンを含有するTris緩衝剤、pH8.5中、40mL TBW/gの収集されたタンパク質を含有する、20Hzでの混合を行うLightninミキサー、Model MBI610H55が底部に取り付けられた200リットルの槽に入れた。タンパク質を不活化させるために処理槽を33℃のインキュベーターに入れて最低12時間置いた。処理槽を、Waukesha Model 30U2供給ポンプと接続した、26.9ft2 screen-channel series Omega 10K Centrasette filter (Pall Filtron)を2つ備えたMillipore Pellicon Tangential Flow Filter assembly(Millipore Corporation、Bedford、MA)に無菌的に接続した。溶液を濃縮しておよそ35リットルまで減らし、0.1%ホルマリン溶液を含有するTris緩衝剤、pH7.4 200リットルを用いて再懸濁させた。溶液を再度濃縮しておよそ35リットルまで減らし、再度、0.1%ホルマリン溶液を含有するTris緩衝剤、pH7.4 200リットルに再懸濁させた。次いで、溶液を濃縮しておよそ35リットルまで減らし、0.1%ホルマリン溶液を含有するTris緩衝剤、pH7.4 80リットルを用いて再懸濁させた。次いで、溶液を、濾過によって濃縮して、タンパク質ペレット塊の6.5倍という標的体積にした。タンパク質濃縮物を滅菌された20リットルのNalgene容器に無菌的に分注し、最終的な抗原不活化のために33℃のインキュベーターに入れて12~24時間置いた。
【0202】
この処理により、LPSの量が減少しており、残留サルコシンが極めて少ないか全く存在しない、金属調節性タンパク質を含有する組成物が生成された。タンパク質を純度およびバンドプロファイルについてSDS-PAGEによって調査し、また、細菌夾雑、残留サルコシンおよびLPSについても調査した。電気泳動によって調査して、最終生成物のバンドプロファイルから、一致するパターンが示された。組成物をサルコシンについて、改変寒天ゲル内拡散試験を使用することによって試験した。この試験は、ヒツジ赤血球(5%)を寒天基材(1.5%)に組み入れるものであった。ウェルを寒天中に切り入れ、最終生成物の試料を、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1.0%および2.0%の既知濃度のサルコシンという対照試料を共にウェル内に置いた。ゲルを25℃で24時間インキュベートし、溶血の程度を対照と比較して決定した。この処理では、対照試料における最小溶血が示された濃度である0.05%未満の検出可能なサルコシンのレベルは除外される。LPSの濃度を、商品名PYROTELL(Associates of Cape Cod,Inc.、East Falmouth、MA)として入手可能なLimulusアメボサイトライセート(LAL)試験によって調査した。
【0203】
凍結およびホモジナイゼーションによる細胞溶解後、タンパク質を中空繊維法によって収集することができる。細菌ライセートを濾過して、全細胞および大きなデブリを微粒子および可溶性タンパク質から分離した。これは、0.2μMから5kDaまでのサイズ範囲、好ましくは0.65μMの公称孔径を有する中空繊維カートリッジを使用して実現することができる。この様式では、溶解しなかった全細胞および大きなデブリはフィルターに保持され、場合によって濃縮されるが、一方で目的のタンパク質および微粒子はフィルターを通過し、集められる。さらに、目的のタンパク質の収集量を増加させるために、緩衝剤を用いて保持液を1~20回洗浄することが望ましい場合がある。
【0204】
上記の一次収集に続いて、微粒子の細菌膜を上記の通りサルコシンを用いて可溶化し、その後、中空繊維法によってさらなる分画またはタンパク質収集および洗浄を行う。これは3つの機能を果たす:望ましくない細胞質タンパク質の除去、LPSを含めた望ましくない膜構成成分の除去、ならびに所望の金属調節性タンパク質およびポリンタンパク質を疎水性凝集させて、より高分子量の形態にすること。可溶化ステップ後、溶液を、サイズ範囲が0.2μMから5kDaまでの中空繊維カートリッジ、好ましくは実験室規模および/またはパイロット規模の限外濾過カートリッジ(Laboratory and/or Pilot Scale Ultrafiltration Cartridge)(例えば、(UFP-750-E-6A)size 6A Ultrafiltration Hollow Fiber Cartridge(63.5 cm L);必要に応じて孔径750000NMWCのポリスルホン膜、GE Healthcare Pittsburgh、PA)を使用して濾過する。このステップには、望ましくないタンパク質、膜構成成分、DNAおよびサルコシンの除去を増強し、したがって、収集される金属調節性タンパク質およびポリンタンパク質の純度を増大させるために、緩衝剤およびエタノールを用いた濃縮(2~20倍)およびダイアフィルトレーション洗浄ステップ(1回~20回)を含めることができる。
【0205】
上記の通り調製された組成物中に存在するタンパク質の例が図1に示されている。SDS-PAGEゲルでのタンパク質分離後、6種の高分子量タンパク質ChuA、IroN、IreA、IutA、FecA、FepA(ならびに、レーン1および2においてOmpCおよびOmpAと識別されている2種のより低い分子量のタンパク質)が観察された。
【0206】
(実施例12)
【0207】
病原体除去白色レグホーン鶏における腹膜炎モデル開発
【0208】
本明細書のトリ病原性Escherichia coli(APEC)腹膜炎および全身性大腸菌症の鶏モデルを開発するために特定病原体除去白色レグホーン鶏に対する試験を行った。当該モデルを使用して、実施例11のシデロフォア受容体タンパク質およびポリンタンパク質の組成物の有効性を測定した。実施例12~17は、Cox et al., 2020, Avian Diseases, 65(1):198-204、https://doi.org/10.1637/aviandiseases-D-20-00093に記載されている。
【0209】
5つのパイロット試験を、i)E.coli血清型(APEC-O1、APEC-O2およびAPEC-O78)の毒力を、腹膜炎の病変を誘導するそれらの能力に関して比較するため、ii)負荷経路を評価するため、ならびにiii)実用採卵鶏施設において観察される腹膜炎に特徴的な病的逸脱、例えば、広範にわたる器官の感染症、萎縮、変色、卵黄嚢のひだ、およびチーズ様滲出液の存在などをもたらす接種材料の用量を標準化するために実施した。
【0210】
予備モデル開発。実施例4の血清型O1、O2およびO78の分離株を静脈内(IV)、膣内(IVAG)、気管内(IT)および腹腔内(IP)経路によって試験し、様々なレベルの負荷接種で比較を行った。死亡事象および病的状態の観察を毎日行い、剖検時に、肉眼での病変スコアを採点し、内臓の細菌定着を決定した。
【0211】
アウトカムは、各E.coli血清型をIVAG経路およびIT経路で用いた場合の、死亡事象または検出可能な病的逸脱が全く認められず、器官定着が少ないまたは全く認められないというものから、O2およびO78血清型を用いた、それぞれIV経路およびIP経路による負荷後の中~高レベルの死亡事象、病的逸脱および定着まで、変動した。O78血清型により、野外で観察される腹膜炎と一致した病的逸脱がもたらされることが見いだされた。したがって、その後の試験を、O78のみを用いて実施した(表2)。IT経路およびIVAG経路での負荷がどちらも比較的うまくいかなかったことに加えて、IV経路も、一貫性がなく、また、IP経路では観察されなかった跛行が生じることも多かった(表2参照)。最終的なパイロット研究により、用量(約8log10 CFU)をIP経路によって投与することで腹膜炎が再現されることが確認された。さらに、IP経路では、器官の病変、例えば、気嚢炎、心膜炎、および肝周囲炎が誘導された。
【0212】
3つの試験(表3、A、B、C、血清型ごとに群分けしたもの)を最初に実施して、IV、IT、およびIVAG負荷経路を使用してO1、O2およびO78血清型を比較した。目的は、商業的な産卵(egg-laying)施設において観察されているE.coli腹膜炎の病的逸脱の発症を模倣することであった。これらの試験は、IVAGまたはIT負荷経路のいずれかを使用した場合は3種の血清型のいずれでもほとんど効果がなく、IV経路でのみ病的逸脱または定着が生じた。O1血清型を用いた場合の死亡事象が9log10 CFUの負荷で重度であり、8log10 CFUでは死亡事象が認められず、10羽全ての鶏において病的逸脱は観察されなかった。O2血清型を用いた場合、死亡事象は低度であり(4/15羽の鶏)、1羽を除いて全ての鶏が腹腔全体の範囲内に病的逸脱を有した。2羽を除いて全ての鶏がO2負荷定着について陽性であった。O78血清型に関しては、IV経路、8log10 CFUで死亡事象は生じず、観察可能な病的逸脱は存在せず、10羽の鶏のうち2羽のみで定着が生じた。3種の血清型の間で一貫して、IVにより負荷した鶏において跛行が頻繁に認められた(データは示していない)。IT経路およびIVAG経路での負荷投与のいずれでも腹膜炎が認められなかったことから、これらの経路をさらなる考察から除外した。
【0213】
その後の試験において(表3、D)、O78血清型を使用してIV経路をIP経路と比較した。どちらの経路でも腹膜炎、器官定着が生じ、死亡事象は低度であったか全くなかった。しかし、この場合でもまた、IV経路では著しい跛行が生じた(データは示していない)。この跛行に起因して、および天然の感染症をより密接に再現する負荷経路を確立することへの関心から、IV経路をさらなる考察から外した。最終的な2つの試験において(表3、E、F)、O78血清型をIP経路によって用いて負荷用量設定を実施した。総合すると、これらの試験は、7~8log10 CFUの負荷用量で低~中等度の死亡事象、腹膜炎の高発生率、および中レベルの器官定着を特徴とした。これらの最終的なO78血清型試験が首尾よいものであったので、同じ条件を続くワクチン接種/負荷試験に使用した。
【表3】
(実施例13)
【0214】
養鶏
【0215】
上記のモデル開発に基づいて、5つのワクチン接種/負荷試験を実施し、鶏の齢、ワクチン接種の間隔およびワクチン接種と負荷の間隔という変数を調査した。全ての試験について、特定病原体除去(SPF)白色レグホーン鶏または同じ品種の発育鶏卵をValo BioMedia(Adel、IA)から入手し、Epitopix施設において孵化させた、および/または試験に登録されるまで飼育した。試験に登録された鶏を、かんなくずおよびヒマワリ種子外皮を含有する床飼いの囲い(floor pen)内の1羽用スペースに入れて飼育し、自由に摂食および摂水させた。雄鶏および環境エンリッチメントを提供し、飼育密度をUSA National Chicken Council Animal Care Guidelineで推奨されている密度よりも低くした。全ての試験の過程で、食物または水を自力で摂ることができない鶏を人道的に安楽死させた。照明は各試験全体を通して12L:12Dで提供し、照度は15LUXに設定した。17週齢(WOA)を超える成熟した雌鶏を用いた試験については、生殖器官発達および産卵(egg laying)を支持するために照明を16L:8Dおよび30LUXまで増大させた。鶏に対して、試験への登録時に番号を付した翼帯で両翼にタグ付けし、無作為に割り当て、試験の持続時間にわたって混在させた。これらの試験に使用した鶏は、性別が混在する集団であった試験4(表4)以外は全て雌鶏であった。
【0216】
(実施例14)
【0217】
金属調節性タンパク質(ChuA、IroN、IreA、IutA、FecAおよびFepA)を含有する免疫化用組成物の調製
【0218】
実施例11に記載の通りE.coliから調製した金属調節性タンパク質を使用して、実施例12において確立された生きた毒性E.coliによる負荷に対するワクチンの有効性を決定するために鶏に投与するための組成物を調製した。軽油を使用した油中水型エマルションおよび/または水酸化アルミニウム(AlOH)への製剤化のいずれかを使用して2種の別々のワクチン製剤を調製した。
【0219】
油中水型エマルションは以下の構成物を使用して調製した;44.44%タンパク質水性懸濁液(鶏への用量当たり総タンパク質100μg、1966に由来するタンパク質50μgと1967に由来するタンパク質50μgに標準化したもの)、50%Drakeol 6鉱油(VOPAK USA,Inc、Kirkland、Wash.)、3.0%Span(登録商標)85および2.56%Tween(登録商標)85(Ruger Chemicals、Hillside、N.J.)。構成物を合わせ、高速乳化装置(IKA model Process pilot 2000/4または等価物)を備えた容器(vessel)に分注した。乳化装置を60hzに設定し、水溶液をポンプによって油中に供給し、それを4℃まで予備冷却した。ワクチンを、それがポンプによってシリコーンの止め栓およびアルミニウムシールを使用した滅菌高密度ポリエチレンボトルに供給されている最中、絶え間なく撹拌した。ボトルに入れたワクチンを、使用するまで4℃で保管した。水酸化アルミニウム(AlOH)を使用したワクチンは、8.0g/lのNaCl、0.2g/lのKCl、1.44g/lのNa2HPO4および0.24g/lのKH2PO4、pH7.4を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)中、上記の通り総タンパク質250μgの用量レベルで製剤化し、25パーセント(v/v)Rehydragel HPA;(General Chemical;Berkeley Heights;New Jersey)と共に製剤化した。簡単に述べると、抗原/水酸化アルミニウム懸濁液を4℃で24時間撹拌して、タンパク質のアジュバントへの吸着を最大限にし、最終体積0.25mLとした。最終的なワクチンの一定分量を、シリコーンの止め栓およびアルミニウムシールを使用した滅菌高密度500mLポリエチレンボトルに入れ、4℃で使用するまで保管した。上記の各製剤に対するプラセボワクチンを、生理食塩水をタンパク質水性懸濁液の代わりに用いることによって調製した。プラセボワクチンを上記の通り500mLのポリエチレンボトルに入れ、使用するまで4℃で保管した。
【0220】
全てのワクチンおよび負荷レジメンを実施し、その際に鶏の齢、ワクチン接種の間隔、およびワクチン接種と負荷の間隔という変数を調査した。農場および実験室のスタッフに対して全ての負荷処置およびワクチン処置を盲検化し、所見および試料を翼帯番号によってのみ識別した。試験担当者に対しても、表3に記載されている最後の2つの試験(EおよびF)以外は処置および試験群を同様に盲検化した。鶏に対して、別段の指定がない限り、ワクチン0.25mLを用いて頸背部の皮下にワクチン接種を行った。1回目または2回目のワクチン接種の2週間後に、鶏の翼の静脈から血液を採取し、SST管(Becton、Dickinson and Co.、Franklin Lakes、NJ)に入れ、外界温度で4時間にわたって凝固させた。次いで、血清を遠心分離によって採取し、その後、分析するまで-20℃で保管した。ワクチン接種に対する血清学的応答を実施例9のELISAによって測定した。
【0221】
統計学的方法。死亡事象、定着および病的逸脱データの解析を、Graphpad Prism(Graphpad Software,Inc.、La Jolla、CA)を使用し、フィッシャーの正確検定によって実施した。P値<0.05を統計的に有意とみなした。処置群間の抗体価を、対数変換した力価値についてのANOVAおよびTukey’s Honest Significant Differenceによって解析して、いずれの群が互いに異なるかを評価した。
【0222】
(実施例15)
【0223】
ワクチン接種および負荷
【0224】
SPF白色レグホーン鶏に対して、ワクチン接種時の齢およびワクチン接種の間隔について考察する3つの試験を行った。試験を試験1、試験2および試験3と名付けた(表4、1列目);死亡事象、気嚢、肝臓、心臓、脾臓、輸卵管および卵巣における病的逸脱および負荷生物体のクリアランスに対するワクチンの有効性を、プラセボワクチン接種した対照と比較して評価する。試験1では、1回目のワクチン接種を28週齢時点で受け、3週間後にブーストし、2回目のワクチン接種の2週間後に負荷した(28、31、33)。一方、試験2および3では、それぞれ、10週齢時点と18週齢時点、4週齢時点と6週齢時点でワクチン接種し、続いて、2週間後に負荷した(表4、4列目)。
【0225】
全ての鶏に、1”23ゲージの針を付けた1mLのシリンジおよび総排泄腔と竜骨の先端の間の腹膜腔への注射を使用してIP負荷した。負荷用量は1mLの体積中、1.0×10CFUとした。
【0226】
全ての鶏に対して、死亡後または負荷の7日後に剖検を実施した。食物および水を摂取することができず、瀕死状態とみなされた鶏は、疼痛および苦痛を緩和するために安楽死させた。これらの鶏を、統計解析のために死亡事象として計数した。剖検時に、組織の病的逸脱の観察を行い、以下の組織の一部または全部について陽性または陰性のいずれかとして記録した:心臓、肝臓、脾臓、気嚢、ならびに、成熟した雌鶏については輸卵管および卵巣。データ捕捉に含めた具体的な病的逸脱は、心臓の周囲のフィブリン性物質の蓄積(心膜炎)、肝臓の周囲のフィブリン性物質の蓄積(肝周囲炎)皮下組織内の黄色がかったチーズ様滲出液(蜂窩織炎)、腹腔内の黄色がかったチーズ様滲出液(腹膜炎)、輸卵管内のチーズ様滲出液(卵管炎)を含めたチーズ様滲出液、壊死性または点状出血病変、退色および充血、癒着、卵黄嚢融合、萎縮および混濁を包含する。組織を試料採取し、負荷生物体の存在について、ナリジクス酸(80μg/mL)を含有するエオシン-メチレンブルー寒天プレートにプレーティングすることによって試験した。病的逸脱と定着は別々の事象である。負荷生物体は存在しないが病的逸脱について陽性の部位が観察され、また、病的逸脱について陰性であるが定着された部位が観察された。
【0227】
(実施例16)
【0228】
E.coli O78負荷生物体の調製
【0229】
実施例4において前述したE.coli O78分離株を負荷のために使用した。簡単に述べると、実施例8の凍結ストックからの分離株を、1mL当たり25μgの2,2’ジピリジル(Sigma)および80μg/mLのナリジクス酸を含有するtryptic soy broth(Difco)100mLに植え継いだ。培養物を37℃、200rpmで回転させながら12時間成長させた。その時点で、培養物を、上記のtryptic soy brothに1:10で植え継ぎ、最終体積を100mLにした。培養物を37℃、200rpmで回転させながら2~3時間インキュベートし、光学濃度(540nm)を0.9~1.3に到達させた。次いで、培養物を、4℃、8,000×gで15分間遠心分離して、細菌をペレット化した。細菌ペレットを4℃で保持した低温PBSで2回洗浄し、PBS中への最終的な希釈を行って、約1×10CFU/mLを実現した。負荷直後に、最終的な細菌懸濁液を段階希釈し、血液寒天およびエオシンメチレンブルー(EMB)寒天(1mL当たり80μgのナリジクス酸を含有するもの)にプレーティングして、用量当たりのコロニー形成単位(CFU)を数え上げた。
【0230】
(実施例17)
【0231】
結果
【0232】
シデロフォア受容体タンパク質ChuA、IroN、IreA、IutA、FecAおよびFepAを含有する免疫化用組成物の有効性および性能を実証する5つのワクチン試験をここに要約する(表4)。各試験において、SRP-E.coliワクチンの効果は、重度のE.coli負荷にもかかわらず著しいものであった。ワクチン接種した群の全てにわたって、ワクチンにより敗血症が防止され、100%の保護として示され、死亡事象は生じず、それと比較してプラセボワクチン接種した対照鶏における発生率は40%~85%であった(試験1~5)。同様に、ワクチン接種での病的逸脱率は、完全に存在しなかったまたは対照鶏(59%~100%)と比較してはるかに低下した(0%~24%)(試験1~4)。これらのデータと一致して、ワクチン接種での定着の発生率はプラセボで処置した鶏(57%~88%)と比較して著しく低下した(0%~40%)(試験1~3)。ワクチン接種と対照鶏を比較した全ての場合で、これらの群は互いに有意に異なった(p<0.05)。
【0233】
ワクチン試験自体の具体的な関心として、免疫の開始、免疫の持続時間、ならびに、鶏の齢ならびにワクチン接種-負荷の間隔の試験アウトカムに対する可能性のある影響を理解することが挙げられる。試験1は、鶏が産卵ピークにある場合、およびこの状態のストレスが重度の負荷に対する保護のために十分な免疫の発生に干渉すると考えられ得る場合のモデル自体に関する最初の包括的試験として行った。ここで、3週間というワクチン接種の間隔は多くの商業的運用で典型的なものであった。ブースターワクチン接種の2週間後に死亡事象から完全に保護され、免疫の開始が迅速かつ頑強であったことが明白に実証される。これらのデータと一致して、ワクチン接種した鶏では病的逸脱および器官定着の発生率が有意に低下した(表4、試験1)。試験3は、より若齢の鶏に対して行い、死亡事象からの完全な保護がブースターワクチン接種の2週間後に観察されたという点で、免疫の開始は同様であった。さらに、試験3から、2週間という短いワクチン接種の間隔が、若雌鶏を死亡事象、定着および組織の病的逸脱の発症から保護することに関して高度に有効であることが示される(表4、試験3)。処置、齢、および/またはワクチン接種の間隔にかかわらず、試験1、2および3の結果は、E.coli負荷後の死亡事象の減少および器官の定着の減少に関して一致する。図2および表43に、試験1、2および3におけるワクチン接種していない対照とワクチン接種の間での死亡事象を示す。試験1の鳥は、1回目のワクチン接種を28週齢時点で受け、3週間後にブーストし、2回目のワクチン接種の3週間後に負荷した。ワクチン接種していない対照では15羽のうち8羽が負荷後に死亡したことが示されたのとは対照的に、ワクチン接種した鳥では死亡事象は観察されなかった。これらの結果が試験2および3において異なる齢の鳥群でも再び見られ、死亡事象がそれぞれ25羽のうち19羽、および30羽のうち12羽であった(図2)。ワクチン接種したいずれの群の鳥のいずれにも死亡事象は観察されなかった。
【0234】
さらに、ワクチン接種により、負荷後の器官におけるE.coliの定着または蔓延が低減した(図3、4、および5)。結果から、ワクチン接種した場合とワクチン接種していない対照の間のE.coliの発生率を低下させることに関する有効性の差異が明確に示される。試験した全ての器官に関して、結果から、ワクチン接種していない対照と比して統計的に有意な保護が示される。これらの結果から、多くの場合に器官、輸卵管および卵巣の全身感染症に至るE.coli敗血症の防止に関するワクチンの有効性が明白に実証される。
【0235】
ワクチン接種の間隔を変数として追跡調査することは、適用期間範囲が長いことのワクチン効果に対する影響を理解するために興味深い。試験2における間隔(8週間)は、ある特定の商業的な若雌鶏飼育施設における現行の自家SRPワクチン使用と一致しており、死亡事象、定着、および腹膜炎の発症に対して高度に有効であることが本試験において実証された(表4、試験2)。試験4(16週間)および試験5(15週間)におけるワクチン接種の間隔でも、E.coli負荷に対して同様に有効な保護がもたらされた(表4、試験4および試験5)。
【0236】
試験4では、長い間隔を適用したことに加えて、3つの群の鶏に日齢(DOA)段階でAlOHまたは油中水型エマルションのいずれかのアジュバント添加したワクチンを用いてワクチン接種を行い(表4、試験4において0週として示されている)、それらの血清学的応答を測定した。2回のワクチン接種した全ての群に関して、ワクチン接種の間隔または鶏の齢にかかわらず活発な抗体応答がELISAによって実証された(図6)。応答した群にわたる幾何平均力価は互いに有意には異ならず、約87,000から約150,000までにわたった(対数変換した力価値に対するANOVA;p<0.00000001;Tukey’s Honest Significant Differenceにより、群2および6が群1、3、4、および5とは異なることが示されたが(全て調整済p値<0.000001)、これらのクラスター内ではいずれの群も互いに異ならなかった(全て調整済p値>0.8)。無処置の鶏の抗体価および負荷アウトカムと一致して、日齢段階で1回のAlOHアジュバントを用いたワクチン接種した鶏は、18週間後にアッセイバックグラウンを超える抗体価も有さず(図6、(1、なし)および(なし、なし))、負荷からの保護もなされなかった(表4、試験4)。興味深いことに、16週齢で1回の標準的な油中水型アジュバントを用いたワクチン接種した鶏は、ワクチン接種の2週間後、血清IgG力価が2回のワクチン接種した鶏全てと区別不能であり(図6、(なし、16))、死亡事象および病的逸脱から完全に保護された(表4、試験4)。試験5において2つの用量のワクチンについて免疫の持続時間(DOI)を調査した。本試験では、鶏への負荷を2回目のワクチン接種の12週間後に行い、ワクチン接種した場合の死亡事象は、プラセボで処置した鶏の死亡事象が46%であったのと比較して、皆無であった(表4、試験5)。1回または2回ワクチン接種した家禽集団(flock)からのさらなるDOIデータを野外試験から現在収集しており、別途報告する予定である。
【0237】
全ての試験において、ワクチンにより死亡事象に対する高度の有効性が実証され、負荷に対する100パーセントの保護が示された。さらに、ワクチンにより、APEC感染症に典型的な組織定着および病的逸脱が著しく低減した。ワクチンにより、ワクチン接種の間隔が短くても長くても、および若鶏でも成鶏でも、迅速な免疫の開始が引き出された。さらに、ワクチンにより、死亡事象に対する頑強な効果が3カ月の持続時間にわたって持続することが実証された。このワクチンを商業的な飼育条件下で使用することは、幅広く柔軟な使用条件下で若鶏および成鶏に対して病原性E.coli株からの有効な保護をもたらすものになろう。
【表4】
【0238】
(実施例18)
【0239】
E.coli負荷に対する保護に関する組換えシデロフォア受容体タンパク質の評価
【0240】
本試験では、実施例2のMALDIによって同定された個々の組換えタンパク質および2種の他のタンパク質の有効性を評価した。これらの分離株からゲルにより単離されたシデロフォア受容体タンパク質のトリプシン断片の質量分析により、以下のタンパク質が集合的に同定された:ChuA、IroN、IreA、IutA、FecAおよびFepA。PCRによるゲノム解析により、他のシデロフォア受容体タンパク質の遺伝子(FhuE、Fiu、FhuA、CirA、FyuAおよびBtuB)がこれらの分離株に存在することが示されたが、これらが鉄が制限された条件下での成長の間に発現されるかどうかは不明である。組換えタンパク質は、IutA、ChuA、IroN、FepA、およびIreAであり、これらを、実施例10に記載の通りCFT073からクローニングした(図9参照)。2種の追加的な組換えタンパク質、BtuBおよびCirAも実施例10に記載の通りCFT073からクローニングした(図9参照)。CFT073の鉄応答性遺伝子をゲノムプロファイリングしたところ、この分離株がFecAの遺伝子を有さないことが示された。したがって、このタンパク質の遺伝子配列はKlebsiellaから引き出し、発現させた組換えタンパク質を本試験に使用した(図9参照)。Klebsiella由来コード領域によってコードされるFecAタンパク質は、配列番号16のE.coli由来FecAタンパク質に対して98.7%の同一性を有する。組換えタンパク質IutA、ChuA、IroN、FepA、IreA、およびCirAは、N末端HisタグMRGSHHHHHHGS(配列番号46)を伴うように発現させた。組換えタンパク質BtuBおよびFecAは、N末端配列MRGSHHHHHHGSGSGSGIEGRP(配列番号47)を伴うように発現させ、この配列は、N末端Hisタグ、第Xa因子のIE/GR認識部位、およびベクター配列によってコードされる追加的なアミノ酸を含むものであった。さらに、組換えタンパク質の複数の組合せからなる以下の製剤:IreA+ChuA、FepA+IroN、ChuA+IroN、ChuA+IroN+FyuAおよびIreA+ChuA+FyuA+IroNについても調査した。ワクチン有効性を評価するために使用した主要アウトカムパラメータは、i)ネズミ敗血症モデルにおけるCFT073株を用いたE.coli負荷に対する個々の組換えタンパク質それぞれの有効性を評価すること、およびii)単一のワクチン製剤として組み合わせた組換えタンパク質の有効性を決定することであった。
【0241】
簡単に述べると、Charles River Laboratory(Wilmington、MA)から入手した体重16~22グラムの雌Harlan CF-1マウス255匹を1~17と名付けた17の実験群に等しく分けた(マウス15匹/群)(表5)。群2~17のマウスには、単一および/または複数の組換えタンパク質を含有する適当なワクチン製剤を100μlの体積で用いた皮下へのワクチン接種を21日間隔で2回行い、2回目のワクチン接種の21日後に負荷した(表5)。群1のマウスはプラセボワクチン接種した対照としての役割を果たした。群1のプラセボワクチンはタンパク質水性懸濁液の代わりにPBSを用いることによって調製した。マウスをポリカーボネートケージ(Ancore Corporation、Bellmore、N.Y.)にケージ当たりマウス5匹で収容し、食物および水を制約なしに供給した。全てのマウスを1週間気候順化させた後、1回目のワクチン接種を行った。
【0242】
【表5】
マウスを1~17と名付けた17の実験群に分け(マウス15匹/群)、21日間隔で2回のワクチン接種を行った。マウスに対して、2回目のワクチン接種の21日後にE. coli CFT073を用いて負荷した。群6のマウスにはKlebsiella由来の*FecAを用いたワクチン接種を行った。
【0243】
(実施例19)
【0244】
ワクチン調製およびワクチン接種
【0245】
単一の組換えタンパク質を含有するワクチンおよび複数の組換えタンパク質を含有するワクチンを、8.0g/lのNaCl、0.2g/lのKCl、1.44g/lのNa2HPO4および0.24g/lのKH2PO4を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)、pH7.4中、各タンパク質100μgの用量レベルで調製し、20パーセント(v/v)Alhydrogel(Invivogen、San Diego、CA)と共に製剤化して、最終的な注射体積を0.1mLとした(表5)。プラセボワクチンをタンパク質水性懸濁液の代わりにPBSを用いることによって調製した。マウスに21日間隔で2回のワクチン接種を行った。
【0246】
(実施例20)
【0247】
負荷生物体の調製
【0248】
前述の(実施例7)E.coli CFT073分離株を負荷株として使用した。この分離株は、シデロフォア受容体タンパク質の幅広いレパートリーを発現することが以前に示されている。簡単に述べると、実施例4の凍結ストックからの分離株を血液寒天プレートに画線し、37℃で18時間インキュベートした。単一のコロニーを、1mL当たり25μgの2,2’ジピリジル(Sigma)を含有するTryptic Soy Broth(Difco)50mLに植え継いだ。培養物を37℃、200rpmで回転させながら12時間成長させた。その時点で、上記のTryptic Soy Brothに1:100で植え継ぎ、最終体積を50mLにした。培養物を37℃、200rpmで回転させながら3時間インキュベートし、光学濃度(540nm)を0.6~0.8に到達させた。次いで、最後に培養物10mLを、予め温めておいた、1mL当たり25μgの2,2’ジピリジル(Sigma)を含有するTSB 90mLに移すことによって植え継ぎ、37℃、200rpmで回転させながら、540nmにおける光学濃度が0.90~0.95に到達するまでおよそ4時間インキュベートした。各培養物の成長を、4℃でPBS 100mLを添加することによって停止させた。次いで、培養物を4℃、10,000×gで15分間遠心分離して、細菌をペレット化した。細菌ペレットを、4℃、PBS中で遠心分離することによって1回洗浄した。低温PBS25ミリリットルを各細菌ペレットに添加し、勢いよく30秒間ボルテックス処理して、ペレットを徹底的に再懸濁させた。その後、低温PBS 75mLを細菌懸濁液に添加して最終体積を100mLにした。次いで、培養物を低温PBS中1:2に希釈し、負荷に使用した。負荷直前に、最終的な細菌懸濁液1.0mLを10倍に段階希釈し、血液寒天およびエオシンメチレンブルー(EMB)寒天(1mL当たり100μgのナリジクス酸を含有するもの)にプレーティングして、マウス用量当たりのコロニー形成単位(CFU)を数え上げた。
【0249】
(実施例21)
【0250】
負荷
【0251】
2回目のワクチン接種の21日後、群1~17の全てのマウスに対して、1.0×10コロニー形成単位(CFU)の毒性E.coli負荷分離株0.1mLを用いた負荷を皮下に行って、単一のタンパク質の製剤および複数のタンパク質の製剤中の各組換えタンパク質の保護有効性を評価した。死亡事象を負荷後7日間にわたって毎日記録した。表6に、全ての群についてのE.coliを用いた負荷後7日間の観察期間にわたる毎日の死亡事象および総パーセント死亡事象を示す。
【0252】
【表6】
表6に、全ての群についてのE. coli CFT073負荷後の毎日の死亡事象を示す。マウスに対して、21日間隔で2回のワクチン接種を行い、2回目のワクチン接種の21日後に負荷を行った。ワクチン接種した場合とプラセボ対照の間の死亡事象の差異は総パーセント死亡事象として示されていることに留意されたい。アスタリスクが付されている群はワクチン接種していない対照と比較して統計的に有意であった。
【0253】
(実施例22)
【0254】
負荷結果
【0255】
結果から、評価した組換えタンパク質11種のうち7種が負荷後に高度の有効性を示したことが示される。結果から、BtuB、FecA、CirA、IronN、ChuA、IutAおよびFepAについてプラセボ対照と比して統計的に有意な保護が示される。対照的に、以下のタンパク質、FhuE、IreA、FhuAおよびFyuAについては、死亡事象によって測定した保護に関して、ワクチン接種していない/負荷した対照と比較して統計的有意性に達しなかった(表6)。興味深いことに、6種のタンパク質(FecA、CirA、IronN、ChuA、IutAおよびFepA)のうち5種は、実施例14の腹膜炎組成物において同定されており、E.coli全身負荷に対して高度に効果的であり、高度の統計的有意性が示される。IreAタンパク質は、腹膜炎組成物において同定されたが、ネズミ敗血症モデルにおいて、単一のタンパク質として負荷に対する保護を示さなかった唯一のタンパク質であった。1966株および1967株のゲノムプロファイルで遺伝子配列が同定された残りの3種のタンパク質(FhuE、FhuAおよびFyuA)も保護をもたらさなかった(表6、図7)。
【0256】
IreA+ChuA;FepA+IroN;ChuA+IroN、ChuA+IroN+FyuAおよびIreA+ChuA+FyuA+IroNを含むように混合ワクチンとして製剤化された組換えタンパク質は全て、負荷に対して高度に保護的であり、有意性の程度はp<0.05であった(図8)。ChuAおよびIroNタンパク質の2種のタンパク質が、負荷に対する保護を示した各混合ワクチンに共通していたことに留意すると興味深い。
【0257】
さらに、E.coli CFT073分離株を、鉄調節性タンパク質発現のレパートリーが幅広いこと、およびマウスにおける毒力が高いことに基づいて、この負荷モデルにおける使用のために選択した。毒力と、APEC分離株とUPEC分離株に共有される特定の遺伝子との間に相関があることも示されている。トリ病原性E.coli(APEC)とヒト尿路病原性E.coli(UPEC)は、腸管外の場所で感染を確立する際に同様の困難に直面する可能性があるので、同様の毒力遺伝子含有内容および疾患を引き起こす能力を共有する(Kylie et al., 2005, Microbiology, 151 (Pt 6): 2097-110)。APECの、成長および毒力を増強する鉄の獲得および代謝能力が広範囲にわたって実証されており、この能力は、APEC分離株内で大きなプラスミド上に見いだされるいくつかのオペロンによってコードされるタンパク質に起因する。これらのタンパク質の多くが、毒力の増強が類似しているUPEC分離株と共有される。
【0258】
(実施例22)
【0259】
E.coliのGenbankゲノム配列の1966および1967シデロフォア受容体タンパク質と対照した解析
【0260】
データ概要
【0261】
図9-1~9-14に見いだされる、FepA、IroN、IreA、ChuA、FecAおよびIutAタンパク質を表す選択されたゲノム配列と対照して、21,213種の公開ゲノムを検索した。簡単に述べると、E.coli FepAタンパク質間、E.coli IroNタンパク質間、E.coli IreAタンパク質間、E.coli ChuAタンパク質間、E.coli FecAタンパク質間、およびE.coli IutAタンパク質間の同一性が高レベルであることを考慮して、ヒットをe値が0.0000001未満であり、同一性が90%超えるものに限定した。さらに、遺伝子が複数の遺伝子に対するヒットとして計数されることを回避するために、検索をそれぞれ、1つのゲノムから最良ヒット(フィルタリング後のビットスコアが最高のもの)である1つの遺伝子に限定した。調査した分離株の供給源を表す利用可能なデータは存在しなかったこと、および、分離株は密接に関連するE.coli分離株だけでなく異なる動物種からも供給されたものと想定されることに留意することが重要である。
【0262】
結果から、検索した21,213種のゲノムのうち、21,213種のE.coliゲノムの少なくとも99.5%が、1966ワクチン組成物および1967ワクチン組成物に存在するChuA、FecA、FepA、IroN、IreA、およびIutAからなる6種のシデロフォア受容体タンパク質のうちの少なくとも1種を有することが示された。これらの結果は、各ゲノムから選択されたタンパク質のBLAST検索に基づくものであり、BLAST検索に所与のSRPが存在することが確認される;アラインメントは90%を超え、検索で追加的なSRPに対するより高いアラインメントは認められなかった。
【0263】
これらの結果は、実施例18と総合すると、これらのタンパク質のワクチン組成物としての重要性、および当該ワクチンがE.coliの種々の血清群に対して有する複数の動物種における臨床的状態に対する広範囲の保護を示す。
【0264】
引用
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【0309】
本明細書において引用されている特許、特許出願、および刊行物、および電子的に入手可能な資料(例えば、例えばGenBankおよびRefSeqへのヌクレオチド配列提出物、ならびに例えばSwissProt、PIR、PRF、PDBへのアミノ酸配列提出物、ならびにGenBankおよびRefSeqにおいてアノテートされたコード領域からの翻訳を含む)の完全な開示は全て、その全体が参照により組み込まれる。刊行物において参照される補足資料(例えば、補足表、補足図面、補足材料および方法、および/または補足実験データなど)も同様にその全体が参照により組み込まれる。本出願の開示と参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文書の開示(1つまたは複数)の間になんらかの矛盾が存在する場合には、本出願の開示が優先されるものとする。前述の詳細な説明および例は、単に理解を明確にするために示されている。不必要な限定を推察すべきではない。本開示は、示され、説明されている詳細そのものに限定されず、当業者に明白な変形は特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲に含まれる。
【0310】
別段の指定のない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される構成成分の分量を表す数字、分子量などは全て、全ての場合に、「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうでないことが示されていない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る概数である。最低限でも、また、特許請求の範囲に対する均等物の原則を限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁の数字を踏まえ、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0311】
本開示を広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは概数であるが、特定の実施例において記載されている数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、数値は全て、本質的に、それらのそれぞれの試験測定値において見いだされる標準偏差に起因して必ず生じる範囲を含有する。
【0312】
見出しは全て読者の利便性のためのものであり、見出しに続く本文の意味を限定するものと記載されていない限り、限定のために使用されるものではない。
図1
図2
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【配列表】
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【国際調査報告】