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特表2024-540255大型生物または微生物の培養、液体蒸発または液体発酵のための光バイオリアクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】大型生物または微生物の培養、液体蒸発または液体発酵のための光バイオリアクター
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525965
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 IB2022059191
(87)【国際公開番号】W WO2023073454
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】117536
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524162125
【氏名又は名称】ブルーマーテル,エセ.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】フェヘイラ ゴメス,ヌーノ オラシオ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029GB09
(57)【要約】
本願は、藻類、真菌類、細菌などの大型生物または微生物の培養のための光バイオリアクター(1)に関するものであり、液体の処理、COおよび温室効果ガスの回収および軽減、液体蒸発または液体発酵の処理にも応用できる。光バイオリアクター(1)は、上部(2)および下部(3)の2つの部分を備え、上部(2)は、0°から90°の間で変化する傾斜角度を有する前面(4)を備え、太陽が天頂にあるときに前面(4)を入射日光に対して垂直に配置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型生物もしくは微生物の培養、液体蒸発または液体発酵のための光バイオリアクター(1)であって、
固定手段(12)により互いに連結された上部(2)および下部(3)と、さらに当該下部(3)の周縁部に挿入されたOリング(13)と、を備え、
前記上部(2)が前面(4)を含み、
少なくとも1つの下部インレット(5.1)、および少なくとも1つの下部アウトレット(5.2)が前記下部(3)に配置されており、
少なくとも一つの上部インレット(8.1)、および少なくとも一つの上部アウトレット(8.2)が前記上部(2)に配置されており、
前記下部(3)の前記周縁部に配置された取り外し可能な供給チューブ(6)であって、当該供給チューブ(6)の長さに配置されたガスアウトレット穴(7)を有する供給チューブ(6)と、
前記前面(4)に隣接する上面(2.1)、少なくとも1つの開口部(10)、および少なくとも1つの中間穴(11)と、を備え、
前記前面(14)は、0°から90°の間で変化する角度(15)で配置されており、当該角度(15)は、前記前面(4)と下部(3)に平行な水平軸(H)との交点における傾斜によって定義されることを特徴とする、光バイオリアクター(1)。
【請求項2】
前記固定手段(12)は、バネ、ステープル、ネジ、接着剤、熱接着から選択される、請求項1に記載の光バイオリアクター(1)。
【請求項3】
前記光バイオリアクター(1)は透明な合成材料から作られている、請求項1または2に記載の光バイオリアクター(1)。
【請求項4】
前記下部(3)は金属製である、請求項1または2に記載の光バイオリアクター(1)。
【請求項5】
前記上部(2)が、ポリアクリレート、ポリカーボネートまたはポリエチレンから選択される透明材料で作られている、請求項1から4のいずれか1項に記載の光バイオリアクター(1)。
【請求項6】
前記上部インレット(8.1)および前記上部アウトレット(8.2)がオーバーフロー型である、請求項1から5のいずれか1項に記載の光バイオリアクター(1)。
【請求項7】
前記開口部(10)はカバー(23)を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の光バイオリアクター(1)。
【請求項8】
前記前面(4)は、平坦な形状を有するか、または湾曲した形状を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の光バイオリアクター(1)。
【請求項9】
前記光バイオリアクター(1)は、立方体、平行六面体、台形またはプリズム形状などの幾何学的形状を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の光バイオリアクター(1)。
【請求項10】
前記光バイオリアクター(1)は、少なくとも1つの周辺チャネル(21)および少なくとも1つの側面開口部(22)をさらに備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の光バイオリアクター(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の複数の光バイオリアクター(1)と、さらにネジ部品および/または他の締め付け手段(9)と、を備えることを特徴とする光バイオリアクターのモジュール(24,30)。
【請求項12】
請求項11に記載の複数のモジュール(24)と、さらにインレットパイプ(26)およびアウトレットパイプ(27)と、を備えることを特徴とする光バイオリアクターのセクター(25)。
【請求項13】
請求項12に記載の複数のセクタ(25)と、さらにインレットパイプ(26)およびアウトレットパイプ(27)と、を備えることを特徴とする光バイオリアクターのフィールド(28)。
【請求項14】
構造体(31)上に支持される請求項11に記載の複数のモジュール(24,30)と、さらにインレットパイプ(26)およびアウトレットパイプ(27)と、を備える垂直型の光リアクターのフィールド(29)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、大型生物または微生物の培養、液体蒸発または液体発酵のための光バイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光バイオリアクターには閉鎖型バイオリアクターと開放型レースウェイタンクの2つの型がある。
閉鎖型リアクターは通常、管状で、水平または垂直方向に設置され、低い生産性、高価、建設困難性、および大容量ユニットの工業的スケールアップに適用することが不可能であるなどの適用問題を有している。
【0003】
これらのリアクターの別の変形例は、プラスチック袋で構成され、単位体積あたりの高い生産性を示しているが、低い体積容量のため、占有領域あたりの低い生産性を有している。このため、設置や運転のコストが高くなり、工業的な大規模スケールには向かない。この型のリアクターは、数ヘクタールの小規模なユニットにおいて、タンパク質、β-カロチン、アスタキサンチンなどの高付加価値物質を生産するために、すでに工業的に使用されている。
【0004】
しかし、この技術に対する最も有望な市場は、化石燃料、大規模バイオマス生産、工業的CO固着、バイオレメディエーション、水処理、水蒸留である。これらの用途に関心を向けるためには、大規模生産が必要である。これは、現在の最新式の技術によって達成できない。
【0005】
レースウェイタンクについては、低い設置コストを有する開放型リアクターであるが、水柱の日照不足や、細菌、原生動物、真菌による培養の汚染などの問題があるため、低い生産性を有する。このような問題から、藻類の集約的な培養や、例えばバイオディーゼル用の油のように、得られる製品が低い経済的価値を示す場合には、藻類培養は適していない。しかし、代替手段がないことから、現在では最も使用されているシステムである。
【0006】
藻類培養は、新たな市場が出現している段階にあるが、既存の培養解決手法では、生産性または商業的な観点からそれを満たすことができない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、大型生物もしくは微生物の培養、液体蒸発または液体発酵のための光バイオリアクター(1)に関する:光バイオリアクター(1)は、固定手段(12)により互いに連結された上部(2)および下部(3)と、さらに当該下部(3)の周縁部に挿入されたOリング(13)と、を備え、前記上部(2)が前面(4)を含み、少なくとも1つの下部インレット(5.1)、および少なくとも1つの下部アウトレット(5.2)が前記下部(3)に配置されており、少なくとも一つの上部インレット(8.1)、および少なくとも一つの上部アウトレット(8.2)が前記上部(2)に配置されており、前記下部(3)の前記周縁部に配置された取り外し可能な供給チューブ(6)であって、当該供給チューブ(6)の長さに配置されたガスアウトレット穴(7)を有する供給チューブ(6)と、前記前面(4)に隣接する上面(2.1)、少なくとも1つの開口部(10)、および少なくとも1つの中間穴(11)と、を備え、前記前面(14)は、0°から90°の間で変化する角度(15)で配置されており、当該角度(15)は、前記前面(4)と下部(3)に平行な水平軸(H)との交点における傾斜によって定義される。
【0008】
一実施形態では、固定手段(12)は、バネ、ステープル、ネジ、接着剤、熱接着から選択される。
一実施形態では、光バイオリアクター(1)は透明な合成材料から作られている。
【0009】
一実施形態では、前記下部(3)は金属製である。
一実施形態では、前記上部(2)が、ポリアクリレート、ポリカーボネートまたはポリエチレンから選択される透明材料で作られている。
一実施形態では、前記上部インレット(8.1)および前記上部アウトレット(8.2)がオーバーフロー型である。
【0010】
一実施形態では、前記開口部(10)はカバー(23)を備える。
一実施形態では、前記前面(4)は、平坦な形状を有するか、または湾曲した形状を有する。
一実施形態では、前記光バイオリアクター(1)は、立方体、平行六面体、台形またはプリズム形状などの幾何学的形状を備える。
【0011】
一実施形態では、前記光バイオリアクター(1)は、少なくとも1つの周辺チャネル(21)および少なくとも1つの側面開口部(22)をさらに備える。
【0012】
本発明はさらに、複数の光バイオリアクター(1)と、さらにネジ部品および/または他の締め付け手段(9)と、を備える光バイオリアクターのモジュール(24,30)に関する。
【0013】
本発明はさらに、複数のモジュール(24)と、さらにインレットパイプ(26)およびアウトレットパイプ(27)と、を備える光バイオリアクターのセクター(25)に関する。
【0014】
本発明はさらに、複数のセクタ(25)と、さらにインレットパイプ(26)およびアウトレットパイプ(27)と、を備える光バイオリアクターのフィールド(28)に関する。
【0015】
本発明はさらに、構造体(31)上に支持される複数のモジュール(24,30)と、さらにインレットパイプ(26)およびアウトレットパイプ(27)と、を備える垂直型の光リアクターのフィールド(29)に関する。
【0016】
本願で提案する生物学的光バイオリアクターは、培養条件を改良して微細藻類、大型藻類、細菌の生産性を増加させ、付加価値製品に変換できるバイオマスを得ることを目的とした新しい型のバイオリアクターである。光バイオリアクターは、液体蒸発または液体発酵を伴うプロセスにも使用できる。
【0017】
この光バイオリアクターは、複数の目的に使用できるが、最も重要なことは次のことである:
微細藻類を培養して、バイオディーゼル、タンパク質、β-カロチン、糖類、人の消費、化粧品、農業食品産業として関心のある他の物質を生産するのに使用できる油を得ること;
埋立地または工業プロセスからの浸出水など、廃水および濃縮廃液を処理するための微細藻類を培養すること;
アガロース、カラギーナン、ならびに料理および製薬産業で関心のあるその他の物質を生産するために、大型藻類を培養すること;
水素の生産のために、シアノバクテリアおよびその他の微生物を培養すること;
産業用二酸化炭素の固着化、および環境バイオレメディエーションのための微細藻類、大型藻類、およびシアノバクテリアを培養すること;
好気性の、発酵プロセスによる細菌を培養すること;
細菌および真菌類を含むその他の発酵プロセス;
水などの液体の脱塩、精製、または処理;
発酵プロセス。
【0018】
光バイオリアクターの設計は、7つの重要な側面を考慮している:
a)形式 - 光バイオリアクターの形状は、優れた微細藻類リアクターにとって重要な要素である体積と日照とを最適化するように設計されている;
b)寸法 - 製造、輸送、設置コストを削減するために、光バイオリアクターは可能な限り大きく、その製造に利用可能な材料と金型とによってのみ制限され、積み重ね輸送のために2つの部分に分けて作られるべきである;
c)上面傾斜 - それは光バイオリアクターが実施される緯度に適する必要があり、太陽が昼夜平分時の間に天頂にあるときに入射日光に対して垂直でなければならない。
d)材料 - 製造コストを最小限に抑え、耐用年数を通して透明性を維持するため、10年以上の耐用年数を維持できる堅牢かつ信頼性の高い材料;
e)モジュール性 - 適切な水処理システム、または微細藻類およびその他の微生物の培養に必要な光バイオリアクターのモジュール、セクター、およびフィールドを得るために、簡単かつモジュール方式で複数の光バイオリアクターを備えたモジュールの建設を可能にする。
f)自動化と制御 - 個々の光バイオリアクター、光バイオリアクターのモジュール、セクター、およびフィールドは、自動化と制御システムによって自動化できる。
g)製造と物流 - 重なり合ったモジュールで輸送するためのフォーマットを最適化して、スペースと物流のコストを節約する。
【0019】
本願発明の光バイオリアクターは、以下のシナリオに適用できる:
a)独立栄養相、有機栄養相、混合栄養相で付加価値物質を生産するための微細藻類、大型藻類、細菌、シアノバクテリア、真菌類の培養;
b)都市廃水や産業廃水、埋立地やその他の浸出水、養殖や公共の水族館の循環水、池および湖の栄養水、および他の地上水の処理;
c)産業ユニット、発電所、製油所、その他の温室効果ガス排出源から排出されるCOおよびその他の温室効果ガス(GHG)の回収と軽減;
d)アルコール、メタン、水素、その他の価値ある物質を得るための発酵プロセス;
e)海水や汽水、浸出液、廃水、その他の液体から蒸留水を得るための蒸発プロセスである。蒸発プロセスは、太陽エネルギーを利用した水やその他の液体の加温または冷却プロセスにおいて、懸濁成分や溶解成分から水を分離して、液相源からアルコール、メタン、水素、その他の貴重な物質を蒸発させて回収することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本願の理解を容易にするために、好ましい実施態様を表す図を添付書類に添付するが、これは本明細書に開示された技術を限定することを意図するものではない。
【0021】
図1は、光バイオリアクタ(1)の透視図を示す。
図2は、すべての技術的特徴を備えた光バイオリアクター(1)の透視図を示す。
【0022】
図3は、光バイオリアクター(1)が設置される緯度、一年の期間、時間帯、および太陽に対する光バイオリアクターの方位に基づく、光バイオリアクター(1)の前面(4)の異なる太陽光(14)の例を示す。
【0023】
図4は、供給チューブ(6)からのガス(16)の上昇流の動きを示す光バイオリアクター(1)の側面図を示す。
図5は光バイオリアクター(1)の側面図を示し、蒸発した液体(19)の上昇流移動の液体培地(18)、上部(2)の内壁で蒸発した液体の凝縮(20)を示す。
【0024】
図6は、締め付け手段(9)によって相互接続され、光バイオリアクターのモジュール(24)を形成している複数の光バイオリアクター(1)の透視図を示す。
図7は、光バイオリアクターのセクター(25)の透視図を示し、光バイオリアクターのセクター(25)は、インレットパイプ(26)とアウトレットパイプ(27)によって、直列および/または並列に互いに接続されている。
【0025】
図8は、光バイオリアクター(24)の複数のモジュールによって構成される光バイオリアクター(25)の複数のセクターによって構成された光バイオリアクターのフィールド(28)を示す。
図9は、垂直型の光バイオリアクター(29)のフィールドの透視図を示す。
図10は、輸送のために積み重ねられた光バイオリアクターの2つの主要部(2,3)の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本願の好ましい実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、これらは本願の範囲を限定することを意図するものではない。
【0027】
この光バイオリアクター(1)は、図1および図2に示すように、上部(2)および下部(3)の2つの部分を備える。これらの部分は、バネ、ステープル、ネジ、接着剤、熱接着、または上部(2)を下部(3)に接続するのに適した他の固定手段から選択できる固定手段(12)によって互いに接合される。上部(2)はさらに、前面(4)を備えている。
【0028】
図1および図2に示すような本発明の光バイオリアクター(1)は、透明な合成材料から作ることができる。選択された材料は、好ましくは、環境の温度変化に強いものである。
【0029】
上部(2)は、ポリアクリレート、ポリカーボネート、またはポリエチレンテレフタレートプラスチックから選択される透明材料で作ることができるが、これらに限定されない。
【0030】
下部(3)は、上部(2)と同じ材料で作ることができるが、太陽に対する相対的な位置関係により、透明性は最も重要な特性ではない。むしろ、最も重要な特性は、牽引と液体の重量とに対する耐性である。オプションとして、この下部(3)に使用される材料は、ファイバーグラスまたは他の適切な繊維で強化することができる。下部(3)を製造するための他の材料には、金属、例えば鋳造アルミニウムが含まれる。
【0031】
光バイオリアクター(1)は、図2に示すように、下部(3)の周縁部に挿入されたOリング(13)をさらに備える。Oリング(13)は、上部(2)と下部(3)とを接続し、光バイオリアクター(1)を密閉状態に保つのに適している。
【0032】
光バイオリアクター(1)は、さらに下部(3)に配置された少なくとも1つの下部インレット(5.1)および少なくとも1つの下部アウトレット(5.2)を備え、下部インレット(5.1)および下部アウトレット(5.2)は、接種および栄養供給、ならびに液体培地の収穫または再循環に適している。
【0033】
少なくとも1つの上部インレット(8.1)と少なくとも1つの上部アウトレット(8.2)は、光バイオリアクター(1)の上部(2)に、好ましくは上部(2)の側面に配置される。上部インレットおよび上部アウトレット(8.1,8.2)は、好ましくはオーバーフロー型である。これらの上部インレットおよび上部アウトレット(8.1,8.2)は、インライン操作の場合に光バイオリアクター(1)の過充填を避けるため、または光バイオリアクター(1)を満杯にし、そのようにして水平に保つことが必要な場合に上部排出のために適している。
【0034】
供給チューブ(6)は、下部(3)の周縁部、すなわち前面(4)の下端に配置され、空気またはCOのようなガスを供給するのに適している。ガスアウトレット穴(7)は、供給チューブ(6)の長さに配置されている。ガスアウトレット穴(7)は前面(4)の内部側に向けられている。ガスアウトレット穴(7)は、ガスを光バイオリアクター(1)の前面(4)の内部側に向け、前面(4)の接線方向へのガスの循環と光バイオリアクター(1)内の液体の再循環とを確実にするのに適している。ガスアウトレット穴(7)は、前面(4)の内部側面の内部洗浄を行うのにも適している。
【0035】
この供給チューブ(6)は取り外し可能で、空気およびガスアウトレット穴(7)の清掃または詰まり除去が必要な場合に利用できる。
【0036】
光バイオリアクター(1)は、前面(4)に隣接する上面(2.1)をさらに備える。上面(2.1)は、余分なガスを除去するか、水蒸気を凝縮器に導くか、または光バイオリアクター(1)の内部への容易なアクセスを確実にするのに適した少なくとも1つの開口部(10)を備える。上面(2.1)はさらに、光バイオリアクター(1)を測定・制御するためのプローブを配置するのに適した少なくとも1つの中間穴(11)を備える。
【0037】
これらの開口部(10)はまた、洗浄、エアレータまたはコネクタの取り付け、または他の必要な作業のために、光バイオリアクター(1)の内部への容易なアクセスを提供する。これらの開口部(10)は、図5に示すように、蒸発を防止するのに適したカバー(23)を備えることができる。カバーは、防水性または防水性でなくてもよく、光バイオリアクター(1)と同じ材質でも、ゴム、コルク、木材、その他の適切な材質で作られてもよい。
【0038】
図3、4、5に示すように、光バイオリアクター(1)の前面(4)は、入射日光(14)に向かって配置されている。
【0039】
図3に示すように、入射日光(14)に向かって配置される前面(4)の角度(15)は可変であり、光バイオリアクター(1)の設置緯度に依存し、太陽の天頂で入射日光(14)に対して垂直な前面(4)に配置されるように計算される。この前面(4)の角度(15)は、0°(赤道)から90°(極点の緯度)の間で変化し、図3に示すように、前面(4)と光バイオリアクター(1)の下部(3)に平行な水平軸(H)との交点における傾斜によって定義される。この角度(15)の変化の目的は、入射日光(14)に向かって配置された前面(4)の最適な傾斜を得ることにある。当該傾斜は、秋分と春分の期間に太陽が天頂にあるとき、入射日光に対して垂直になる(図3)。
【0040】
角度(15)は、光バイオリアクター(1)が設置される緯度に基づいて計算され、前面(4)が1年間に受ける太陽光を最大にする。この同じ角度(15)は、太陽に面する直交四分円内で任意の値をとることができる。
【0041】
前面(4)は、平らな形状を有することができ、または湾曲した形状を有することもできる。このため、太陽の照射が増え、反射や屈折による光の損失を最小限に抑えることができる(図3)。例えば、ポルトガルの緯度ではこの最適傾斜角度は約40度、ストックホルムの緯度では約60度、マイアミの緯度では約26度となる。
【0042】
この傾斜の変化は、光バイオリアクター(1)の前面(4)の異なる傾斜角(15)によって得ることができ、光バイオリアクター(1)が立方体、平行六面体、台形またはプリズム形状のような幾何学的形状をとることを可能にする(図3)。
【0043】
両部の形状は、金型に材料を注入することにより工業生産用に最適化された。供給チューブ(6)からの気泡(16)の上方循環は、液体培地(18)の内部循環(17)を確実にし、液体の回転を促進し、液体媒体(18)に注入されたCOと他のガスとの混合を促進し、ガスパージ開口部(10)を通じて、余分なガスを大気中に放散することを促進する。気泡(16)の形成により、図4に示すように、前面(4)から差し込む太陽光のシャドーゾーンに存在しうる微生物または大型生物の定期的な接触も可能になる。
【0044】
気泡(16)はまた、レンズの役割を果たし、光バイオリアクター(1)の内部で日射の断続を引き起こすため、太陽光線の集中点を形成する。このことは、特定用途においては、光合成生物の生育を促す。オプションとして、光バイオリアクター(1)は、液体再循環ポンプおよび/または熱交換器もしくは蒸気冷却システムを備えることができる。
【0045】
図5は、蒸発した液体(19)の上昇流移動を伴う液体培地(18)、上部(2)の内部側面での蒸発した液体(19)の凝縮(20)、少なくとも1つの周辺チャネル(21)での凝縮(20)の収集、および凝縮(20)を収集するのに適した少なくとも1つの側方開口部(22)を通じる凝縮した液体の導出を示す、光バイオリアクター(1)の一実施形態の側面図を示す。
【0046】
異なるサイズの光バイオリアクターシステムは、複数の光バイオリアクター(1)間の接続を介して、ネジ部品に基づく接続要素を介して、および/または他の締め付け手段(9)を介して作成することができる。これにより、これらの間の相互接続を確実にするため、パイプ(26,27)により相互接続可能な光バイオリアクター(1)のモジュール(24,30)、セクター(25)またはフィールド(28,29)を構成する。
【0047】
図6は、パイプなどの締め付け手段(9)によって相互接続した複数の光バイオリアクター(1)の透視図を示し、この締め付け手段を介して複数の光バイオリアクター(1)を直列に接続することができ、この光バイオリアクター(1)を通して培養液または蒸発液が循環し、光バイオリアクターのモジュール(24)を形成することができる。
【0048】
光バイオリアクターのモジュール(24)は、複数の光バイオリアクター(1)、ネジ部品、および/または他の締め付け手段(9)を備える。
【0049】
図7は、複数のモジュール(24)からなる光バイオリアクターのセクター(25)の透視図を示す。光バイオリアクター(1)は、光バイオリアクターのセクター(25)内で組み合わせることができる、相互接続された光バイオリアクター(すなわち、モジュール(24))のラインを確実にするために、インレットパイプ(26)およびアウトレットパイプ(27)によって互いに直列および/または並列に接続される。複数の光バイオリアクターのセクター(25)は、光バイオリアクターのフィールド(28)を形成することができる。光バイオリアクターのセクター(25)はさらに、インレットパイプ(26)とアウトレットパイプ(27)を備える。
【0050】
図8は、複数の光バイオリアクターのモジュール(24)を順に備える光バイオリアクター(25)の複数のセクターを備える光バイオリアクターのフィールド(28)を示す。この配置は、水処理、液体蒸発、微細藻類およびその他の微生物の培養、温室効果ガスの回収など、異なる規模の使用に適している。光バイオリアクターのフィールド(28)はさらに、インレットパイプ(26)とアウトレットパイプ(27)とを備える。
【0051】
図9は、複数のモジュール(24,30)を備える垂直型の光バイオリアクターのフィールド(29)の透視図である。複数のモジュール(24,30)は、相互接続されたリアクターのラインを確実にするために、直列および/または並列に互いに接続されている。複数のモジュール(24,30)は、複数のモジュール(30)の複数のセクターで組み合わせることができる。複数のモジュール(24,30)は、垂直型の光バイオリアクター(29)のフィールドに順に組み合わせることができ、構造体(31)に支持され、水処理、液体蒸発、微細藻類やその他の大型生物の培養、温室効果ガスの回収など、異なる規模でこの技術を使用するために頻繁に発生するスペース不足の分野での応用に適している。産業、製油所、その他の汚染構造物、あるいは限られたスペースで微生物を培養することを意図している分野での応用にも適している。垂直型の光バイオリアクターのフィールド(29)は、さらにインレットパイプ(26)とアウトレットパイプ(27)とを含んでいる。
【0052】
図10は、輸送のために積み重ねられた光バイオリアクター(1)の2つの主要部(2,3)の側面図を示す。積み重ねられた上部(31)は、互いに嵌め合わされ、積み重ねられた下部(32)も互いに嵌め合わされる。スペースを節約するために反対方向に配置されるか、または互いに嵌め合わされるため、コンテナまたは他の輸送手段においてより多くのスペースを占めない態様でより多くの光バイオリアクター(1)を輸送することができる。
【0053】
これらの光バイオリアクター(1)は、その目的と培養方法に応じて、直列または並列に、微生物または大型生物の増殖、液体発酵、液体蒸発を促進するために適用することができる(図6図9)。
【0054】
微細藻類を生産するために使用される場合、藻類培養物を一方から他方へ継ぎ足しながら、自動藻類抽出システムによる除去速度を成長速度に等しくして連続的に作動させることもできるし、バッチシステムによって作動させることもできる。バッチシステムは、培地と接種材料を光バイオリアクター(1)に充填・導入することからなり、光バイオリアクターが空になったときに、微細藻類は生産サイクルの終わりに収穫される。モジュール(24)は、バッチシステムの場合、それぞれ異なる培養接種時間を備えるセクタ(25,30)に順に編成され、直列またはフィールド(28,29)の光バイオリアクターセクタに相互接続される。
【0055】
これにより、バッチ生産であっても、接種から収穫までの予測される時間に応じて、光バイオリアクターの均質なセクターから区別して接種することにより、培養微生物の生産を連続的に行うことができる。個々の光バイオリアクター(1)、または光バイオリアクターのモジュール(24)、セクター(25,30)、もしくはフィールド(28,29)の両方は、光バイオリアクターに組み込まれたパラメータのプローブにより自動監視され、パラメータのプローブにより指令され、監視システムに接続された電気または空気圧制御弁の挿入、または水流および空気またはCOの遮断により、自動的に制御される。
【符号の説明】
【0056】
1 光バイオリアクター
2 上部
2.1 上面
3 下部
4 前面
5.1 下部インレット
5.2 下部アウトレット
6 供給チューブ
7 ガスアウトレット穴
8.1 上部インレット
8.2 上部アウトレット
9 締め付け手段
10 開口部
11 中間穴
12 固定手段
13 Oリング
14 入射日光
15 角度
16 気泡
17 循環
18 液体培地
19 蒸発した液体
20 凝縮
21 周辺チャネル
22 側面開口部
23 カバー
24 光バイオリアクターのモジュール
25 光バイオリアクターのセクター
26 インレットパイプ
27 アウトレットパイプ
28 光バイオリアクターのフィールド
29 垂直型リアクターのフィールド
30 複数のモジュールのセクター
31 積み重ねられた上部
32 積み重ねられた下部
H 水平軸
【0057】
もちろん、本明細書は、本明細書に示した実施の形態に何ら限定されるものではなく、この分野における通常の知識を有する者は、特許請求の範囲によって定義された一般的な思想から逸脱することなく、その変更について多くの可能性を提供することができる。上述した好ましい実施の形態は、明らかに互いに組み合わせることができる。以下の特許請求の範囲は、好ましい実施の形態をさらに定義する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】