(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ及び車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 V
H02M3/28 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526460
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022081028
(87)【国際公開番号】W WO2023083766
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021005548.9
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・オーナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ウェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・トレースター
(72)【発明者】
【氏名】ウルス・ベーメ
(72)【発明者】
【氏名】アキン・カンディール
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーアス・クルスペル
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ラインフェルダー
(72)【発明者】
【氏名】キース レン チャン・オング
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB21
5H730BB82
5H730CC01
5H730ZZ01
5H730ZZ11
(57)【要約】
本発明は、DC-DCコンバータ(8)に関する。本発明によると、このDC-DCコンバータは、互いに相違する電気的な入力電圧及び出力電圧を有する複数のDC-DCコンバータモジュールを有し、複数のDC-DCコンバータモジュールは共通の統合された構成要素として設計されており、高電圧の電圧をさまざまな低電圧の電圧へと変換可能であるように、複数のサブシステム(A、B、C)として互いに電気的に接続可能である。更に本発明は、車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC-DCコンバータ(8)であって、
互いに相違する電気的な入力電圧及び出力電圧を有する複数のDC-DCコンバータモジュールにより特徴づけられるものであり、前記複数のDC-DCコンバータモジュールは、共通の統合された構成要素として設計されており、高電圧の電圧をさまざまな低電圧の電圧へと変換可能であるように、複数のサブシステム(A、B、C)として互いに電気的に接続可能であることを特徴とする、前記DC-DCコンバータ(8)。
【請求項2】
1つのDC-DCコンバータモジュールは、高電圧の電圧を低電圧の電圧へと変換するために設けられ、別のDC-DCコンバータモジュールは、低電圧の電圧を別の低電圧の電圧へと変換するために設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のDC-DCコンバータ(8)。
【請求項3】
前記サブシステム(A、B、C)は、互いに独立して作動可能かつ作動解除可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のDC-DCコンバータ(8)。
【請求項4】
前記サブシステム(A、B、C)のうちの少なくとも1つは常時アクティブであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のDC-DCコンバータ(8)。
【請求項5】
車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成(1)であって、請求項1から4のいずれか一項に記載のDC-DCコンバータ(8)を含む、前記コンポーネント配置構成(1)。
【請求項6】
複数の電気コンポーネント(K)について共通のEMCフィルタ(2)と共通の中間回路(3)とが設けられ、これらの電気コンポーネント(K)は前記共通のEMCフィルタ(2)及び前記共通の中間回路(3)とともに共通のハウジング(4)の中に配置されることを特徴とする、請求項5に記載のコンポーネント配置構成(1)。
【請求項7】
前記共通のEMCフィルタ(2)及び前記共通の中間回路(3)が設けられる前記電気コンポーネント(K)は、前記車両を駆動するための少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス(5)、整流器(6)、及び/又はDC-DCコンバータ(8)であることを特徴とする、請求項6に記載のコンポーネント配置構成(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC-DCコンバータ及び車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているような従来技術より、高電圧車載電装システムを有する車両が知られている。この高電圧車載電装システムは2つの部分領域に下位区分され、第1の部分領域は車両の第1の設計スペースに配置され、第2の部分領域は車両の少なくとも1つの第2の設計スペースに配置される。両方の部分領域への高電圧車載電装システムの下位区分は、車両の第1の設計スペースでは、高電圧車載電装システムの第1の部分領域の電圧のもとでの動作だけが可能であり、車両の少なくとも1つの第2の設計スペースでは、高電圧車載電装システムの第2の部分領域に電圧のない状態のときの動作が可能であるように構成される。
【0003】
特許文献2には、電気的に互いに接続されて電気エネルギーを貯蔵するために構成された複数の貯蔵セルを有する少なくとも1つの高電圧バッテリを、乗用車のモノコックボディに配置することが記載されている。高電圧バッテリ、及び高電圧バッテリに追加して設けられて高電圧バッテリと電気接続される高電圧コンポーネントは、少なくとも間接的にボディで保持される。ボディは、乗用車の温度調節装置によって温度調節可能な高電圧安全セルを形成し、その中に高電圧バッテリ及びその他の高電圧コンポーネントが配置される。
【0004】
特許文献3より、自動車のための電気的な車載電装システムが公知である。これは少なくとも1つの第1及び第2の電位線を含み、用途に即した作動時にそれぞれの電位線の間で直流電圧が加えられるように構成されている。この車載電装システムは、第1の接続部によって電位線のうちの1つと、及び第2の接続部によって基準電位と電気的に結合される少なくとも1つのYコンデンサを有している。切換部材が、少なくとも1つのYコンデンサに対して並列につながれる。
【0005】
特許文献4には、高電圧車載電装システムを有する車両が記載されている。この高電圧車載電装システムは3つの部分領域に下位区分され、第1の部分領域は車両の第1の設計スペースに配置され、第2の部分領域は車両の第2の設計スペースに配置され、第3の部分領域は、車両のこれら両方の設計スペースの外部に配置される。
特許文献5には、車両のための車載電装システム、車載電装システムを有する車両、及び車両のための車載電装システムを作動させる方法が記載されている。この車載電装システムは、2つのバッテリ電位接点を有するバッテリと、2つの充電電位接点を有する車両側の直流充電接続部とを含んでいる。DC-DCコンバータが設けられている。第1のバッテリ電位接点は、DC-DCコンバータの出力側の第1の電位接点と電気的に結合可能であり、又は結合される。第2のバッテリ電位接点は、第2の充電電位接点と電気的に結合可能であり、又は結合される。それぞれの充電電位接点は、DC-DCコンバータの入力側のそれぞれの電位接点と電気的に結合可能であり、又は結合される。DC-DCコンバータの出力側の第2の電位接点は、DC-DCコンバータの入力側の第1の電位接点と電気的に結合可能であり、又は結合される。DC-DCコンバータの入力側の電位接点は、第1のコンデンサの接続接点とそれぞれ電気的に結合される。DC-DCコンバータの出力側の電位接点は、第2のコンデンサの接続接点とそれぞれ電気的に結合可能であり、又は結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE102019008835A1
【特許文献2】DE102018004498A1
【特許文献3】DE102018002926A1
【特許文献4】DE102019008825A1
【特許文献5】DE102021003831
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来技術に比べて改善されたDC-DCコンバータ、及び従来技術に比べて改善された、車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は,本発明に基づき、請求項1の特徴を有するDC-DCコンバータによって解決され、また請求項5の特徴を有する、車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成によって解決される。
【0009】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0010】
特に車両のためのDC-DCコンバータは、本発明によると、互いに相違する電気的な入力電圧及び出力電圧を有する複数のDC-DCコンバータモジュールを有し、これらのDC-DCコンバータモジュールは、特に共通のコンバータハウジングの中に、共通の統合された構成要素として設計されており、高電圧の電圧をさまざまな低電圧の電圧へと変換可能であるように、複数のサブシステムとして互いに電気的に接続可能である。DC-DCコンバータはDC/DCコンバータとも呼ばれ、高電圧の電圧が複数の低電圧の電圧へと変換されることからLV-DC/DCコンバータとも呼ばれる。
【0011】
特に、1つのDC-DCコンバータモジュールは高電圧の電圧を低電圧の電圧へと変換するために設けられており、別のDC-DCコンバータモジュールは低電圧の電圧を別の低電圧の電圧へと変換するために設けられている。そしてこの別のDC-DCコンバータモジュールは、たとえば高電圧の電圧を変換するDC-DCコンバータモジュールとそれぞれ結合可能であり、それにより当該DC-DCコンバータモジュールの低電圧の電圧を別の低電圧の電圧へと変換する、あるいは更に別のDC-DCコンバータモジュールの出力側と結合可能であり、それにより当該DC-DCコンバータモジュールの低電圧の電圧を別の低電圧の電圧へと変換する。
【0012】
このように、本発明によるDC-DCコンバータはモジュール形式で設計され、それにより複数の役割を果たすことができ、特に、複数の低電圧車載電装システムに供給をすることができ、ないしは結合することができる。たとえば12Vと48Vの異なる電圧レベルを同時に配線することができ、そのために異なるサブシステムを内部でオン又はオフにすることもできる。
【0013】
本発明によるDC-DCコンバータは、たとえば車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成で適用可能である。したがって本発明によるコンポーネント配置構成は、そのようなDC-DCコンバータを含む。このコンポーネント配置構成は、変換ボックスとも呼ばれる。このコンポーネント配置構成では複数のコンポーネントについて、共通のEMCフィルタ(EMC=電磁両立性)と共通の中間回路とが設けられ、これらの電気コンポーネントは共通のEMCフィルタ及び共通の中間回路とともに共通のハウジングの中に配置される。共通のEMCフィルタ及び共通の中間回路が設けられる電気コンポーネントは、特に、車両を駆動するための少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス、整流器、及び/又はDC-DCコンバータである。このコンポーネント配置構成では、有利には高電圧システムの主要なすべての構成要素がボックスの中に、すなわち共通のハウジングの中に配置され、相互に接続可能であり、それにより、このボックスは特に同一構造であり、有利には汎用的に利用可能である。したがって、このコンポーネント配置構成の各構成要素も汎用的である。このことは、ここで説明している例では、特に、複数の役割を果たすことができ、かつ複数の低電圧車載電装システムを操作することができるDC-DCコンバータに当てはまる。
【0014】
DC-DCコンバータは、有利にはすべての要件を同時に満たすことができる。個々の機能は、たとえばソフトウェア及び/又はスイッチによって作動可能ないし作動解除可能である。したがってDC-DCコンバータ及び有利にはコンポーネント配置構成もまた、考えられるすべての要件のために特に同一構造で利用することができ、その適用ケースではソフトウェア側で、ないしはアプリケーションによって所望の機能が果たされるように調整することができる。
【0015】
コンポーネント配置構成のハウジングには、有利にはそのために必要なすべての低電圧接続部が設けられており、DC-DCコンバータと電気的に結合されている、又は結合可能である。次に、コンポーネント配置構成のそれぞれの使用目的について、それぞれ使用されない低電圧接続部はたとえばカバーなどで閉止される。
【0016】
特に、上で説明したさまざまな考えられる機能に合わせて、及びそのために必要なさまざまな低電圧の電圧に合わせて、またさまざまな必要な出力にも合わせて適合化するために、DC-DCコンバータのサブシステムは互いに独立して作動可能かつ作動解除可能であるのが有利である。このとき、サブシステムのうちの少なくとも1つが常時アクティブであるように意図されていてもよい。それにより、簡素化された構造を実現することができる。なぜなら、DC-DCコンバータのすべてのサブシステムが停止可能である必要はないからである。
【0017】
上で説明したとおり、DC-DCコンバータモジュールは共通の統合された設計単位として、特に共通のコンバータハウジングの中で構成される。したがって、これは単なる複数のDC-DCコンバータの並列回路ではない。
【0018】
変換ボックスとも呼ぶコンポーネント配置構成での、上で説明したDC-DCコンバータの利用法の代替として、たとえばDC-DCコンバータが独立したアセンブリとして、そのようなコンポーネント配置構成の外部に、又はそのようなコンポーネント配置構成なしに、高電圧システムへ直接的に接続されるように意図されていてもよい。
【0019】
それでも、独立したアセンブリのEMCフィルタ及び中間回路を共同で利用しない場合、高電圧システムによるEMC両立性と中間回路の確保が必要になるため、ほとんどの場合、独立したアセンブリが独自の、アセンブリに付属するEMCフィルタと中間回路とを有することになる。そして、これらは特にアセンブリのハウジングの中に格納されることになるかもしれない。
【0020】
本発明によるDC-DCコンバータは、そのモジュール形式の構成により、複数の低電圧車載電装システムの構造を低コストで可能にする。このことは特に電動車両では、セーフティクリティカルな機能を作動させるために、並びに異なる消費部や供給部を同時に作動させるために、独自の低電圧車載電装システムにおいて必要となる。
【0021】
DC-DCコンバータモジュールは、有利にはそれぞれ低い出力を有している。DC-DCコンバータモジュールは、上で説明したとおり、それぞれ異なる低電圧車載電装システムのために利用される。比較的高い低電圧出力が必要なときは、DC-DCコンバータモジュール又はサブシステムのうちの複数が出力側で並列につながれる。それにより、部分負荷動作での効率的な動作が可能となる。
【0022】
本発明によるDC-DCコンバータは、すでに述べたとおり、低電圧の電圧の変換でそれぞれ異なる機能について1つのモジュールシステムが利用されることによるコスト削減と、それぞれの低電圧車載電装システムにおける低い低電圧負荷のもとで1つ又は複数のサブシステムが的確に停止されることによる効率の向上とを可能にし、それはDC-DCコンバータがその最大の効率を定格動作点に有しているからである。また本発明によるDC-DCコンバータは、車両での複数の低電圧車載電装システムの簡易な製作可能性を可能にする。更に、、たとえば車載電装システム要件が増加したり、ソーラールーフのための追加変換器が必要となっりした場合など、機能要件の変更に対するDC-DCコンバータの新規開発が不要となる。
【0023】
更に、本発明によるDC-DCコンバータは、セーフティクリティカルな用途で、たとえば高度に自動化された走行やステアバイワイヤのために、安全な低電圧の電圧を生成するのに利用可能であるという利点がある。
【0024】
以下では、本発明の実施例を、図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
いずれの図においても、相互に対応する部分には、同一の参照符号を付している。
【0027】
図1は、特に車両のためのDC-DCコンバータ8の実施形態の模式図を示している。このDC-DCコンバータは、互いに相違する電気的な入力電圧及び出力電圧を有する複数のDC-DCコンバータモジュールを有し、これらのDC-DCコンバータモジュールは、特に共通のコンバータハウジング10の中に、共通の統合された構成要素として設計されており、高電圧の電圧をさまざまな低電圧の電圧へと変換可能であるように、複数のサブシステムA、B、Cとして互いに電気的に接続可能である。
【0028】
このようにDC-DCコンバータモジュールは、特に高電圧バッテリ7を有する電動車両において、特にさまざまな低電圧の電圧を有する複数の低電圧車載電装システムが接続できるように、電気的に配線することができる。
【0029】
図示した例では、DC-DCコンバータ8は、このような方式で、たとえば消費部及び低電圧バッテリのために第1の低電圧の電圧レベルを有する低電圧車載電装システム11と、これとは相違する第2の低電圧の電圧レベルを、たとえば別の消費部及び別の低電圧バッテリのために有する低電圧車載電装システム12と、たとえばソーラーモジュール及び/又はダンパシステムのためのエネルギー回収部13と、特に高電圧・エレクトリクス/エレクトロニクス取付けスペースの低電圧コンポーネントのための自己供給部14とのために利用される。
【0030】
DC-DCコンバータ8はDC/DCコンバータとも呼ばれ、高電圧の電圧が複数の低電圧の電圧へと変換されることからLV-DC/DCコンバータとも呼ばれる。
【0031】
サブシステムA、B、Cは、特に、バスバーによるDC-DCコンバータモジュールの電気配線に基づき、たとえばそれぞれレールとも呼ばれる。しかしながら、ケーブルによる電気配線も可能である。
【0032】
このように、上述した解決法は、高電圧の電圧をさまざまな低電圧の電圧へと変換するためのモジュール形式のDC-DCコンバータ8であり、この低電圧の電圧を、特に電動車両として構成される車両で利用可能である。
【0033】
特に、1つのDC-DCコンバータモジュールは高電圧の電圧を低電圧の電圧へと変換するために設けられ、別のDC-DCコンバータモジュールは低電圧の電圧を別の低電圧の電圧へと変換するために設けられている。そしてこの別のDC-DCコンバータモジュールは、たとえば高電圧の電圧を変換するDC-DCコンバータモジュールとそれぞれ結合させることができ、それにより当該DC-DCコンバータモジュールの低電圧の電圧を別の低電圧の電圧へと変換するか、更に別のDC-DCコンバータモジュールの出力側と結合させることができ、それにより当該DC-DCコンバータモジュールの低電圧の電圧を別の低電圧の電圧へと変換する。
【0034】
このようにして、第1のDC-DCコンバータモジュールによりたとえば800Vの高電圧の電圧が、特にガルバニック絶縁されながら、たとえば48Vの低電圧の電圧へと変換される。たとえばそれより低い低電圧の電圧が必要である場合、特にガルバニック結合された別のDC-DCコンバータモジュールにより、このようなより低い、たとえば12Vの低電圧電圧を生成することができる。そのために、これら両方のDC-DCコンバータモジュールがサブシステムA、B、Cを形成するように互いに電気的に接続される。高電圧の電圧を変換するための第1のDC-DCコンバータモジュールは、例示として、すでに独自のサブシステムA、B、Cを形成することができる。すなわち例示として説明しているケースでは、DC-DCコンバータ8は、入力電圧としての高電圧の電圧及び出力電圧としての高い低電圧の電圧を有するサブシステムA、B、Cと、入力電圧としての高電圧の電圧及び出力電圧としての低い低電圧の電圧を有する別のサブシステムB、C、Aとを有している。
図1に示す例では3つのサブシステムA、B、Cが設けられており、これらがそれぞれ上述した方式で構成されているか、互いに電気的に結合されたDC-DCコンバータモジュールとともに構成されていてよい。
【0035】
有利には、各々のサブシステムA、B、Cは、出力側で、以下において特に
図2との関連で別のEMCフィルタ9と呼ぶEMCフィルタ9と接続される。
【0036】
DC-DCコンバータモジュールは、有利には双方向式に作動することができる。それにより、車両の高電圧車載電装システムの予備充電が可能となる。
【0037】
個々のDC-DCコンバータモジュールは、特に、たとえば500Wの低い定格出力に合わせて設計される。
【0038】
考えられる1つの実施形態では、第1のDC-DCコンバータモジュール、すなわち高電圧の電圧をたとえば48Vの高い低電圧の電圧へと変換するためのDC-DCコンバータモジュールは、機能的に確実で安全な動作に合わせて設計される。その場合、このDC-DCコンバータモジュールは、短絡保護をする統合された断路部を高電圧側に追加的に含み、機能要件を追加的に満たし、たとえばASIL Dのための高いASILレベルを実現する。それによってこのDC-DCコンバータモジュールは直接的に、特に接触遮断器なしに、高電圧バッテリ7に接続することができ、セーフティクリティカルな機能のために、たとえばステアバイワイヤや高度に自動化された走行機能のために、追加の低電圧バッテリなしで使用することができる。
【0039】
図1に示すように、個々のサブシステムA、B、Cは高電圧側、すなわち入力側で電気的に並列に接続されている。このような方式により、上ですでに述べたように、複数の低電圧車載電装システムを低電圧側で生成することができる。
【0040】
必要な低電圧車載電装システム出力が、それぞれのサブシステムA、B、Cから提供される出力を上回っている場合、有利には複数のサブシステムA、B、Cが出力側でも、すなわち低電圧側でも並列に接続される。作動中に負荷が変化すると、負荷ケースに応じて個々のサブシステムA、B、Cをオンにすることができ、ないしは再びオフにすることができる。それにより、それぞれ作動中の個々のサブシステムA、B、Cが、低い低電圧負荷のもとでも高い効率で作動することが実現される。
【0041】
DC-DCコンバータ8は、低電圧の電圧変換でそれぞれ異なる機能について1つのモジュールシステムが利用されることによるコスト削減と、それぞれの低電圧車載電装システムにおける低い低電圧負荷のもとで1つ又は複数のサブシステムA、B、Cが的確に停止されることによる効率の向上とを可能にするものであり、それはDC-DCコンバータ8がその最大の効率を定格動作点に有しているからである。またこのDC-DCコンバータ8は、車両での複数の低電圧車載電装システムの簡易な製造可能性を実現する。更に、たとえば車載電装システム要件が増加したり、ソーラールーフのための追加のコンバータが必要となったりした場合など、機能要件が変更されたときでも、DC-DCコンバータの新規開発が不要となる。
【0042】
更にDC-DCコンバータ8は、上で説明したとおり、有利には、セーフティクリティカルな用途のもとで、たとえば高度自動化された走行やステアバイワイヤのために、安全な低電圧の電圧生成に利用可能である。
【0043】
DC-DCコンバータ8は、例示として
図2に示すように、たとえば車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成1で適用可能である。
【0044】
このコンポーネント配置構成1では、複数の電気コンポーネントKについて共通のEMCフィルタ2と共通の中間回路3とが設けられており、この電気コンポーネントKは、共通のEMCフィルタ2及び共通の中間回路3とともに共通のハウジング4の中に配置されている。
【0045】
共通の中間回路3は、たとえばコンデンサとして構成される。
【0046】
ハウジング4を有し、またハウジング4の中にある電気コンポーネントK、共通のEMCフィルタ2、及び共通の中間回路3を有するユニットは、変換ボックスとも呼ばれる。
【0047】
この解決法は、車両の高電圧システムの簡素化された統一的な構造を可能にする。というのも、さまざまな電気コンポーネントKが共通の中間回路3と共通のEMCフィルタ2とを共有することができるからであり、これらの部品は、すなわち中間回路3とEMCフィルタ2は、これらすべてのコンポーネントKのために機能を果たすことができるように設計される。このようにして、これらのコンポーネントK自体は独自のEMCフィルタや中間回路を有さなくてすみ、いっそう小型でコンパクトに製作することができる。したがって、この解決法では、有利には車両のための高電圧システムの主要なすべての構成要素が1つのハウジング4の中に、すなわち1つのボックスの中に配置されて、互いに接続されているので、このボックスは特に同一構造であり、特に異なる車両型式についても、汎用的にさまざまな車両に利用可能である。
【0048】
共通のEMCフィルタ2と共通の中間回路3とが設けられる電気コンポーネントKは、例示として
図2に示すように、車両を駆動するための少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス5、特に車両の高電圧バッテリ7の交流充電のためのAC/DCコンバータとも呼ばれる整流器6、及びDC-DCコンバータ8である。
【0049】
少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス5はガルバニック結合を有しており、整流器6並びにDC-DCコンバータ8はガルバニック絶縁をそれぞれ有している。
【0050】
任意選択として、それぞれのコンポーネントKの出力部に別のEMCフィルタ9を配置するように設けることもでき、すなわち、1つ又は複数の、又はすべてのコンポーネントKが、それぞれの出力部にそれぞれ独自の別のEMCフィルタ9を有していてよい。このとき、それぞれのこの別のEMCフィルタ9は、たとえば共通のハウジング4の中に配置されていてよい。図示した例では、パワーエレクトロニクス5と整流器6について、そのような別のEMCフィルタ9が示されている。DC-DCコンバータ8は複数の出力部を有しているので、それぞれの出力部に、すなわち1つ又は複数の出力部に、又はすべての出力部にそれぞれ1つの別のEMCフィルタ9を設けることができる。
【0051】
考えられる別の実施形態では、高電圧バッテリ7の交流充電のためのAC/DCコンバータとも呼ばれる整流器6について別個のコンポーネントKが存在するのでなく、少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス5の周波数変換器が同じくこの機能を担うように設けられていてよい。交流充電の機能、及びインバータ又は周波数変換器とも呼ばれる機械逆変換装置の機能は、ここでは特に半導体回路によって具体化される。この実施形態では、少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス5の出力部には、交流充電機能を具体化するための交流充電接続部の方向に、有利には、たとえば少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス5と別のEMCフィルタ9との間に配置される安全性ユニットが設けられている。この安全性ユニットは、安全性とEMCの規格を順守するために用いられる。ガルバニック結合は、たとえば非常停止やPE漏れ電流の中性化などの追加の方策を必要とする。
【0052】
別の実施形態では、たとえば交流充電機能が統合されないように設けられていてよい。その場合、共通の中間回路3及び共通のEMCフィルタ2を共有するコンポーネントKは、少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス5、及びDC-DCコンバータ8だけになる。
【0053】
上述したように、上に挙げたコンポーネントKは直流側で、共通の中間回路3と共通のEMCフィルタ2とを共有する。これらは更に、図示した例では高電圧バッテリ7に対して分離可能な出力部を有する。そのための分離部材15は、たとえば半導体ヒューズ又は接触器/CSIDとしてそれぞれ構成される。このとき、たとえばそれぞれ1つの半導体ヒューズが両方の極に、又は接触器/ヒューズの組合せが両方の極に、又はそれぞれ1つの接触器/CSIDが両方の極に、又は1つの接触器が一方の極及び1つの半導体ヒューズが他方の極に設けられていてよい。
【0054】
コンポーネントKは、特に、それぞれ半導体コンポーネントとして構成される。
【0055】
これに加えて、同じくハウジング4の中に配置されるマイクロコントローラが設けられていてよい。このマイクロコントローラも、特に半導体コンポーネントとして構成される。
【0056】
共通の中間回路3及び共通のEMCフィルタ2は、特にそれぞれパッシブな構成部品として構成される。
【0057】
分離部材15は、特にそれぞれパッシブな半導体コンポーネントとして、たとえば半導体ヒューズとして構成される。その代替として分離部材15は、たとえば接触器又はCSIDとして実施されていてよく、これは上記と異なり機械式の構成部品である。
【0058】
それぞれの別のEMCフィルタ9は、それが設けられる場合、特にパッシブな構成部品として構成される。
【0059】
上で説明した、特にハウジング4の中に配置される、コンポーネント配置構成1の各構成要素、特に変換ボックス、特に上で説明したコンポーネントKは、高集積パワーエレクトロニクスの形態において共同で具体化される。すなわち、コンポーネント配置構成1は、特にハウジング4の中に個々の構成要素を有するのではなく、高集積パワーエレクトロニクスを有する。
【0060】
上述した解決法は、たとえば電気的な切換、充電、変換、周波数変換などの高電圧機能性のコンパクトな集積化を可能にし、このことは、たとえばいっそうコンパクトな設計形態及び/又はコスト削減も可能にする。
【0061】
上述した解決法は、有利には、すべての高電圧機能性のために、特に切換、充電、変換、周波数変換のために、共通の設計スペースを利用する。共通のEMCフィルタ2や中間回路キャパシタンス、すなわち共通の中間回路3などのパッシブな構成部品が共同で利用されることで相乗効果が利用される。それによってコンパクトな設計形態が可能となる。機械式のヒューズ部材/断路部材、特に接触器が、高電圧バッテリ7からの分離のための半導体スイッチによって代替されることで、切換機能のための機械式構成部品が不要となる。特に切換、変換、充電、周波数変換などのすべての中核機能を具体化するために、パワーエレクトロニクス半導体が利用される。
【0062】
すべての主要な機能がこのように半導体によって具体化されることで、高い半導体集積度を実現することができる。たとえば特別装備に基づく、たとえば交流充電の特別装備に基づく機能バリエーション及び/又は追加機能の具体化は、従来のようにハードウェアの変更を通じてではなく、有利にはソフトウェア側で行われる。というのも、高電圧パワーエレクトロニクス全体から、個々の機能を取り外すことは可能でないからである。更に、それによって車両製造後にも、機能を購入してリリースすることができる。
【0063】
共通のEMCフィルタ2をすべての機能性に利用できるようにするために、個々の半導体グループの制御が相互に調整される。
【0064】
すでに述べたとおり、上述した解決法は、有利には、特に切換、充電、変換、周波数変換などのすべての高電圧機能性のために共通の取付けスペースを利用する。高電圧バッテリ7の交流充電のための整流器6の機能が、少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス5の周波数変換器によって担われ、それにより別個の整流器6が設けられない実施形態では、パッシブな構成部品における相乗効果が利用されるだけでなく、これに加えて、モータ制御及び交流充電機能性のために半導体回路が利用される。すなわちパッシブな構成部品における相乗効果に追加して、モータ制御及び交流充電機能性のために半導体回路のレベルでの相乗効果も利用される。駆動部の変換器や交流充電のためのアクティブな構成部品においてもこのように相乗効果が追加的に利用されることで、いっそうコンパクトな設計形態と追加のコスト削減が可能である。特に交流充電機能や、少なくとも1つの電気式の駆動機械による走行機能などの異なる機能を融合して、上位のエネルギー変換の機能にすることは、二次電池式の車両分野で高集積化へと向かうトレンドの一貫した発展形態であり、半導体開発のトレンドを考慮に入れている。
【符号の説明】
【0065】
1 コンポーネント配置構成
2 共通のEMCフィルタ
3 中間回路
4 ハウジング
5 パワーエレクトロニクス
6 整流器
7 高電圧バッテリ
8 DC-DCコンバータ
9 別のEMCフィルタ
10 コンバータハウジング
11 第1の低電圧の電圧レベルを有する低電圧車載電装システム
12 第2の低電圧の電圧レベルを有する低電圧車載電装システム
13 エネルギー回収部
14 自己供給部
15 分離部材
A、B、C サブシステム
K コンポーネント
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC-DCコンバータ(8)であって、
互いに相違する電気的な入力電圧及び出力電圧を有する複数のDC-DCコンバータモジュールにより特徴づけられるものであり、前記複数のDC-DCコンバータモジュールは
、高電圧の電圧をさまざまな低電圧の電圧へと変換可能であるように、複数のサブシステム(A、B、C)
を形成するように互いに電気的に接続可能である
、前記DC-DCコンバータ(8)において、
前記複数のDC-DCコンバータモジュールは、共通の統合された構成要素として設計されており、前記サブシステム(A、B、C)のうちの少なくとも1つは常時アクティブであることを特徴とする、前記DC-DCコンバータ(8)。
【請求項2】
1つのDC-DCコンバータモジュールは、高電圧の電圧を低電圧の電圧へと変換するために設けられ、別のDC-DCコンバータモジュールは、低電圧の電圧を別の低電圧の電圧へと変換するために設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のDC-DCコンバータ(8)。
【請求項3】
前記サブシステム(A、B、C)は、互いに独立して作動可能かつ作動解除可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のDC-DCコンバータ(8)。
【請求項4】
車両の高電圧車載電装システムのためのコンポーネント配置構成(1)であって、請求項1
又は2に記載のDC-DCコンバータ(8)を含む、前記コンポーネント配置構成(1)。
【請求項5】
複数の電気コンポーネント(K)について共通のEMCフィルタ(2)と共通の中間回路(3)とが設けられ、これらの電気コンポーネント(K)は前記共通のEMCフィルタ(2)及び前記共通の中間回路(3)とともに共通のハウジング(4)の中に配置されることを特徴とする、請求項
4に記載のコンポーネント配置構成(1)。
【請求項6】
前記共通のEMCフィルタ(2)及び前記共通の中間回路(3)が設けられる前記電気コンポーネント(K)は、前記車両を駆動するための少なくとも1つの電気式の駆動機械のためのパワーエレクトロニクス(5)、整流器(6)、及び/又はDC-DCコンバータ(8)であることを特徴とする、請求項
5に記載のコンポーネント配置構成(1)。
【国際調査報告】