(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】耐火物用フェノール樹脂、耐火物用フェノール樹脂の製造方法、及びそれを含む耐火物
(51)【国際特許分類】
C08G 8/24 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C08G8/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526469
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 KR2022015724
(87)【国際公開番号】W WO2023080486
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0149889
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジョン ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユ ソン
【テーマコード(参考)】
4J033
【Fターム(参考)】
4J033CA01
4J033CA02
4J033CA04
4J033CA05
4J033CA09
4J033CA11
4J033CA12
4J033CA16
4J033CA26
4J033CA29
4J033CB02
4J033CC01
4J033CD02
4J033CD06
4J033HA02
4J033HA03
4J033HA13
4J033HB01
(57)【要約】
本発明は、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a);アルデヒド類化合物に由来する繰り返し単位(b);及びリグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)を含むフェノール樹脂であり、該フェノール樹脂において、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)のモル数に対する、リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数の比率(モル%)は、1ないし23モル%である耐火物用フェノール樹脂、及び、その製造方法によるものであり、該耐火物用フェノール樹脂は、向上された耐熱性、加工性及び強度が要求される耐火物に、より適するように使用されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)と、
アルデヒド類化合物に由来する繰り返し単位(b)と、
リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)と、を含むフェノール樹脂であり、
前記フェノール樹脂において、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)のモル数に対する、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数の比率(モル%)は、1ないし23モル%である、耐火物用フェノール樹脂。
【請求項2】
前記リグニン類化合物の数平均分子量(Mn)は、2,200ないし15,000g/モルであり、重量平均分子量(Mw)は、5,000ないし32,000g/モルであり、PDI(polydispersity index)は、1ないし6である、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂。
【請求項3】
前記リグニン類化合物は、クラフトリグニン、アルカリリグニン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂。
【請求項4】
前記リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)の重量は、前記リグニン類化合物100重量部を基準に、3.0重量部以下である、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂。
【請求項5】
前記フェノール類化合物は、下記化学式1で表される化合物である、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂:
[化学式1]
前記化学式1で、
R
1は、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基またはニトロ基;
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C
6-C
60アリール基、またはその任意の組み合わせで置換または非置換の、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、sec-イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、tert-ペントキシ基、ネオペントキシ基、イソペントキシ基、sec-ペントキシ基、3-ペントキシ基、sec-イソペントキシ基、n-ヘキソキシ基、イソヘキソキシ基、sec-ヘキソキシ基、tert-ヘキソキシ基、n-ヘプトキシ基、イソヘプトキシ基、sec-ヘプトキシ基、tert-ヘプトキシ基、n-オクトキシ基、イソオクトキシ基、sec-オクトキシ基、tert-オクトキシ基、n-ノノキシ基、イソノノキシ基、sec-ノノキシ基、tert-ノノキシ基、n-デコキシ(decoxy; decyloxy)基、イソデコキシ基、sec-デコキシ基またはtert-デコキシ基;
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C
1-C
20アルキル基、C
1-C
20アルコキシ基、C
6-C
60アリール基、またはその任意の組み合わせで置換または非置換の、フェニル基、ペンタレニル基、ナフチル基、アズレニル基、インダセニル基、アセナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘプタレニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基またはオバレニル基;あるいは
-Si(Q
1)(Q
2)(Q
3)、-N(Q
1)(Q
2)、-C(=O)(Q
1)または-S(=O)
2(Q
1)であり、
Q
1ないしQ
3は、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C
1-C
20アルキル基、C
1-C
20アルコキシ基またはC
6-C
60アリール基であり、
a1は、0ないし5である整数である。
【請求項6】
前記アルデヒド類化合物は、下記化学式2で表される化合物である、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂:
[化学式2]
前記化学式2で、
R
2は、水素、重水素または-C(=O)(Q
14);
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C
6-C
60アリール基、またはその任意の組み合わせで置換または非置換のメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、sec-イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、tert-ペントキシ基、ネオペントキシ基、イソペントキシ基、sec-ペントキシ基、3-ペントキシ基、sec-イソペントキシ基、n-ヘキソキシ基、イソヘキソキシ基、sec-ヘキソキシ基、tert-ヘキソキシ基、n-ヘプトキシ基、イソヘプトキシ基、sec-ヘプトキシ基、tert-ヘプトキシ基、n-オクトキシ基、イソオクトキシ基、sec-オクトキシ基、tert-オクトキシ基、n-ノノキシ基、イソノノキシ基、sec-ノノキシ基、tert-ノノキシ基、n-デコキシ(decoxy; decyloxy)基、イソデコキシ基、sec-デコキシ基またはtert-デコキシ基;あるいは
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C
1-C
20アルキル基、C
1-C
20アルコキシ基、C
6-C
60アリール基、またはその任意の組み合わせで置換または非置換のフェニル基、ペンタレニル基、ナフチル基、アズレニル基、インダセニル基、アセナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘプタレニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基またはオバレニル基;であり、
Q
14は、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C
1-C
20アルキル基、C
1-C
20アルコキシ基またはC
6-C
60アリール基である。
【請求項7】
前記耐火物用フェノール樹脂において、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数の比率(モル%)は、前記耐火物用フェノール樹脂に含まれた全体の繰り返し単位のモル数に対し、0.5ないし20モル%である、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂。
【請求項8】
前記耐火物用フェノール樹脂において、前記フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)全体のモル数に対する、前記アルデヒド類化合物に由来する繰り返し単位(b)全体のモル数の比は、1ないし7である、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂。
【請求項9】
前記耐火物用フェノール樹脂の残炭率は、20%ないし50%である、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂。
【請求項10】
前記耐火物用フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、300g/モルないし800g/モルであり、重量平均分子量(Mw)は、500g/モルないし2,000g/モルであり、PDI(polydispersity index)は2ないし5である、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂。
【請求項11】
前記耐火物用フェノール樹脂の25℃における粘度は、400cpsないし3,000cpsである、請求項1に記載の耐火物用フェノール樹脂。
【請求項12】
(a)フェノール類化合物、アルデヒド類化合物及びリグニン類化合物を触媒存在下で反応させ、フェノール樹脂組成物を得る段階を含むフェノール樹脂の製造方法において、
前記フェノール樹脂を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物の重量に対する、前記リグニン類化合物のモル数の比率(モル%)は、約1ないし23モル%である、耐火物用フェノール樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記フェノール樹脂組成物を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物のモル数に対する、前記アルデヒド類化合物のモル数の比は、1ないし7である、請求項12に記載の耐火物用フェノール樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記フェノール樹脂を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物の重量に対する前記触媒の重量の比率(重量%)は、0.5ないし5重量%である、請求項12に記載の耐火物用フェノール樹脂の製造方法。
【請求項15】
前記リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)の重量は、前記リグニン類化合物100重量部を基準に、3.0重量部以下である、請求項12に記載の耐火物用フェノール樹脂の製造方法。
【請求項16】
前記触媒は、塩基性触媒または酸性触媒を含む、請求項12に記載の耐火物用フェノール樹脂の製造方法。
【請求項17】
前記フェノール樹脂組成物を得る(a)段階の以後に、(b)前記フェノール樹脂組成物に、増粘剤及び中和剤を添加する段階をさらに含む、請求項12に記載の耐火物用フェノール樹脂の製造方法。
【請求項18】
前記増粘剤はグリコール類増粘剤を含み、前記中和剤はカルボン酸類中和剤を含む、請求項17に記載の耐火物用フェノール樹脂の製造方法。
【請求項19】
前記増粘剤及び前記中和剤を添加する(b)段階において、添加される前記中和剤のモル数に対する前記増粘剤のモル数の比は、1ないし15である、請求項17に記載の耐火物用フェノール樹脂の製造方法。
【請求項20】
請求項1ないし11のうちのいずれか1項に記載の耐火物用フェノール樹脂を含む、耐火物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火物用フェノール樹脂、耐火物用フェノール樹脂の製造方法、及びそれを含む耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹皮、間伐材、建築廃材などの木質系廃材(バイオマス)は、これまで廃棄処分された。しかしながら、最近、環境汚染イシュー(問題)が重要課題になることにより、前記バイオマスの再利用方法、リサイクル方法が検討され始めた。
【0003】
前記バイオマスの主要成分は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含む。そのうち、約30重量%の比率で含まれるリグニンは、芳香族環やフェノール性水酸基、アルコール性水酸基を豊富に含む構造を有しているために、樹脂原料としての利用が検討されている。
【0004】
それと係わり、樹脂のような化学製品は、石油といった化石資源を原料にしていた。しかしながら、最近、炭素中立の概念が導入されることにより、前記バイオマスを原料として使用しようとする需要が多くなっていた。それにより、包装資材、家電製品の部材、自動車用部材のようなプラスチック製品に対し、植物由来樹脂(バイオプラスチック)で置き換える動きが活発になっている。
【0005】
特に、樹木は、親水性の線状高分子多糖類(セルロース及びヘミセルロース)と、疎水性の架橋構造リグニンとの相互侵入高分子網目(IPN:interpenetrating polymer network)構造を形成している。これらのうちで、バイオマス中の植物由来の耐熱性樹脂材料の原料として、リグニンが注目されている。リグニンは、ヒドロキシフェニルプロパン単位の基本骨格を有する架橋構造の高分子である。リグニンは、樹木の約25質量%を占め、ポリフェノールの化学構造を有しており、石油由来のフェノール樹脂の代替材料として期待されていた。
【0006】
しかしながら、一般的な植物由来の耐熱性樹脂材料の原料として製造された樹脂は、十分な耐熱性、加工性及び強度を同時に満足し難いという問題点が存在した。特に、リグニンは、ポリ乳酸に代表される他のバイオプラスチックに比べ、すぐれた耐熱性が期待されるにもかかわらず、アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基を有しているために、一般的なフェノール樹脂に比べ、軟化温度及び融点が高く、加工性が低下されるという問題が存在した。従って、自動車部品やオフィスオートメーション(OA)関連用部品、耐火物及び鋳物製品などに適用するにおいて限界が存在した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする技術的課題は、向上された、耐熱性、加工性及び強度を有する耐火物を得ることができる耐火物用フェノール樹脂及びその製造方法を提供するところにある。また、前記耐火物用フェノール樹脂を含む耐火物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)、アルデヒド類化合物に由来する繰り返し単位(b)、及びリグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)を含むフェノール樹脂であり、前記フェノール樹脂において、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)のモル数に対する前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数の比率(モル%)は、約1ないし23モル%である耐火物用フェノール樹脂に係わるものである。
【0009】
本発明の他の態様は、(a)フェノール類化合物、アルデヒド類化合物及びリグニン類化合物を触媒存在下で反応させ、フェノール樹脂組成物を得る段階を含み、前記フェノール樹脂組成物を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物のモル数に対する前記リグニン類化合物のモル数の比率(%)は、1モル%ないし23モル%である、耐火物用フェノール樹脂の製造方法に係わるものである。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、前記耐火物用フェノール樹脂を含む耐火物に係わるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明による耐火物用フェノール樹脂は、向上された耐熱性及び加工性を有しうる。また、本発明による耐火物用フェノール樹脂の製造方法は、耐熱性及び加工性が向上された耐火物用フェノール樹脂を容易に製造しうるのである。それにより、前記耐火物用フェノール樹脂を含む耐火物は、向上された加工性、耐熱性及び強度を有しうる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明のさまざまな態様、及び多様な具現例につき、より具体的に説明する。
【0013】
本明細書、及び特許請求の範囲に使用されている用語や単語は、一般的であったり辞書的であったりする意味に限定されて解釈されるものではなく、本発明者は、自身の発明を、最も最善の方法でもって説明するために、用語の概念を適切に定義しうるという原則にのっとり、本発明の技術的思想に符合する意味と概念とによって解釈されるべきである。
【0014】
本発明で使用された用語は、単に特定の実施例について説明するために使用されたものに過ぎず、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上、明白にそれに限って意味しない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせが存在するということを指定するものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないものと理解されなければならない。
【0015】
具体的には、本発明の一態様は、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)、アルデヒド類化合物に由来する繰り返し単位(b)、及びリグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)を含むフェノール樹脂であり、前記フェノール樹脂において、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)のモル数に対する前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数の比率(モル%)は、約1ないし23モル%である耐火物用フェノール樹脂に係わるものである。
【0016】
例えば、前記フェノール樹脂において、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)のモル数に対する、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数の比率(モル%)は、約1ないし23モル%、約3ないし23モル%、約5ないし23モル%、約1ないし21モル%、約1ないし20モル%、約1ないし17モル%、約3ないし23モル%、約5ないし23モル%、または約5ないし17モル%でありうる。
【0017】
例えば、前記フェノール樹脂において、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)全体のモル数に対する、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)全体のモル数の比率(%)が、前記範囲を満足する場合、前記フェノール樹脂を含む組成物の粘度が低減されうる。それにより、前記フェノール樹脂の加工性が向上され、そこから製造された耐火物の気孔率が低減され、耐火物の強度が向上されうる。
【0018】
例えば、前記リグニン類化合物は、グアイアシルリグニン(G型)、シリンギルリグニン(S型)、P-ヒドロキシフェニルリグニン(H型)などの基本骨格によって構成される高分子フェノール性化合物を意味しうる。
【0019】
例えば、前記リグニン類化合物は、グアイアシルリグニン(G型)、シリンギルリグニン(S型)、P-ヒドロキシフェニルリグニン(H型)などの基本骨格によって構成される高分子フェノール性化合物を意味しうる。
【0020】
前記リグニン類化合物は、植物全般に含まれた化合物であり、広葉樹系、針葉樹系及び草本類系の木材のうちのいずれか一つに由来する化合物を意味しうる。例えば、該広葉樹系の木材に由来するリグニンは、G型リグニン及びS型リグニンを含むのでありうる。例えば、該針葉樹系の木材に由来するリグニンは、G型リグニンを含むのでありうる。例えば、該草本類系の木材に由来するリグニンは、H型リグニン、G型リグニン及びS型リグニンを含むのでありうる。
【0021】
前記リグニン類化合物は、木材に含まれた天然リグニンを抽出したものでありうる。例えば、前記リグニン類化合物は、前記木材に対し、工業的方法を使用してパルプに変形する過程において排出される溶液に含まれた化合物でありうる。例えば、前記リグニン類化合物は、前記木材に対し、ソーダ法、亜硫酸法、クラフト法などを使用し、パルプに製造する過程で排出される廃液中に含まれたアルカリリグニン、ソーダリグニン、亜硫酸塩リグニン、クラフトリグニンなどを意味しうる。
【0022】
例えば、前記リグニン類化合物は、クラフトリグニン、アルカリリグニン、またはそれらの組み合わせを含むものでありうる。
【0023】
前記リグニン類化合物は、硫黄(S)を含み、前記リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)の重量は、前記リグニン類化合物100重量部を基準に、約3.0重量部以下でありうる。
【0024】
一具現例によれば、前記リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)の重量は、前記リグニン類化合物100重量部を基準に、約0ないし3.0重量部でありうる。例えば、前記リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)の重量は、前記リグニン類化合物100重量部を基準に、約0ないし2.9重量部、約0ないし2.8重量部、約0ないし2.0重量部、約0ないし1.5重量部でありうる。
【0025】
例えば、前記リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)の重量は、前記リグニン類化合物100重量部を基準に、約1ないし3.0重量部でありうる。例えば、前記リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)の重量は、前記リグニン類化合物100重量部を基準に、約1ないし2.5重量部、または約1.5ないし2.5重量部でありうる。
【0026】
例えば、リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)の含量は、有機元素分析(OEA:organic elemental analysis)を通じて測定されうる。例えば、リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)の含量は、Flash EA 1112 Elemental Analyzer(Thermo Fisher社製)を使用して測定されうる。
【0027】
前記リグニン類化合物に含まれた硫黄(S)含量が、前記範囲を満足する場合、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(C)を含むフェノール樹脂は、粘度及び残炭率が特定範囲に容易に調節され、そこから製造された耐火物の耐熱性及び強度が同時に向上されうる。
【0028】
一具現例によれば、前記リグニン類化合物の数平均分子量(Mn)は、約2,200ないし15,000g/モルでありうる。例えば、前記リグニン類化合物の数平均分子量(Mn)は、約2,500ないし15,000g/モル、約5,000ないし15,000g/モル、約8,000ないし15,000g/モル、約2,500ないし14,000g/モル、または約2,500ないし12,000g/モルでありうる。
【0029】
例えば、前記リグニン類化合物の重量平均分子量(Mw)は、約5,000ないし33,000g/モルでありうる。例えば、前記リグニン類化合物の重量平均分子量(Mw)は、約10,000ないし33,000g/モル、約12,000ないし33,000g/モル、約15,000ないし33,000g/モル、約5,000ないし30,000g/モル、約5,000ないし28,000g/モル、または約5,000ないし25,000g/モルでありうる。
【0030】
例えば、前記リグニン類化合物のPDI(polydispersity index)は、約1ないし6でありうる。例えば、前記リグニン類化合物のPDI(polydispersity index)は、約1.5ないし6、約2ないし6、約1.5ないし5、約1.5ないし3、または約1.5ないし2.5でありうる。
【0031】
例えば、前記リグニン類化合物の平均分子量及びPDI(polydispersity index)が、前記範囲を満足する場合、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(C)を含むフェノール樹脂の粘度及び残炭率を、特定範囲に容易に調節しうる。それにより、それを含む耐火物の強度及び耐熱性が、より向上されうる。
【0032】
前記フェノール類化合物は、下記化学式1で表される化合物でありうる。
【0033】
【0034】
前記化学式1で、
R1は、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基またはニトロ基;
【0035】
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C6-C60アリール基、またはその任意の組み合わせで置換または非置換のメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、sec-イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、tert-ペントキシ基、ネオペントキシ基、イソペントキシ基、sec-ペントキシ基、3-ペントキシ基、sec-イソペントキシ基、n-ヘキソキシ基、イソヘキソキシ基、sec-ヘキソキシ基、tert-ヘキソキシ基、n-ヘプトキシ基、イソヘプトキシ基、sec-ヘプトキシ基、tert-ヘプトキシ基、n-オクトキシ基、イソオクトキシ基、sec-オクトキシ基、tert-オクトキシ基、n-ノノキシ(nonoxy; nonyloxy)基、イソノノキシ基、sec-ノノキシ基、tert-ノノキシ基、n-デコキシ(decoxy; decyloxy)基、イソデコキシ基、sec-デコキシ基またはtert-デコキシ基;
【0036】
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C20アルキル基、C1-C20アルコキシ基、C6-C60アリール基、またはその任意の組み合わせで置換または非置換のフェニル基、ペンタレニル(pentalenyl)基、ナフチル基、アズレニル(azulenyl)基、インダセニル(indacenyl)基、アセナフチル(acenaphthyl)基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル(pyrenyl)基、クリセニル(chrysenyl)基、ペリレニル(perylenyl)基、ペンタフェニル基、ヘプタレニル(heptalenyl)基、ナフタセニル(naphthacenyl)基、ピセニル(picenyl)基、ヘキサセニル(hexacenyl)基、ペンタセニル(pentacenyl)基、ルビセニル(rubicenyl)基、コロネニル(coronenyl)基またはオバレニル(ovalenyl)基;あるいは
【0037】
-Si(Q1)(Q2)(Q3)、-N(Q1)(Q2)、-C(=O)(Q1)または-S(=O)2(Q1)であり、
【0038】
Q1ないしQ3は、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C20アルキル基、C1-C20アルコキシ基またはC6-C60アリール基でありうる。
【0039】
a1は、0ないし5の整数でありうる。例えば、a1は、0または1でありうる。
【0040】
例えば、a1は、R1の個数を意味し、a1が2以上である場合、2以上のR1は、互いに同一であるか、あるいは異なるのでありうる。
【0041】
例えば、前記フェノール類化合物は、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、レゾシノール、カルダノール、ビスフェノール類化合物、またはそれらの組み合わせを含むのでありうる。
【0042】
例えば、ビスフェノール類化合物は、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールC2、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ、ジニトロビスフェノールA、またはそれらの組み合わせを含むのでありうる。
【0043】
前記アルデヒド類化合物は、下記化学式2で表される化合物でありうる。
【0044】
【0045】
前記化学式2で、
R2は、水素、重水素または-C(=O)(Q14);
【0046】
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C6-C60アリール基、またはその任意の組み合わせで置換または非置換のメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、sec-イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、tert-ペントキシ基、ネオペントキシ基、イソペントキシ基、sec-ペントキシ基、3-ペントキシ基、sec-イソペントキシ基、n-ヘキソキシ基、イソヘキソキシ基、sec-ヘキソキシ基、tert-ヘキソキシ基、n-ヘプトキシ基、イソヘプトキシ基、sec-ヘプトキシ基、tert-ヘプトキシ基、n-オクトキシ基、イソオクトキシ基、sec-オクトキシ基、tert-オクトキシ基、n-ノノキシ基、イソノノキシ基、sec-ノノキシ基、tert-ノノキシ基、n-デコキシ(decoxy; decyloxy)基、イソデコキシ基、sec-デコキシ基またはtert-デコキシ基;あるいは
【0047】
重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C20アルキル基、C1-C20アルコキシ基、C6-C60アリール基、またはその任意の組み合わせで置換または非置換のフェニル基、ペンタレニル基、ナフチル基、アズレニル基、インダセニル基、アセナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘプタレニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基またはオバレニル基;であり、
【0048】
Q14は、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C20アルキル基、C1-C20アルコキシ基またはC6-C60アリール基でありうる。
【0049】
例えば、R2は、水素、重水素、メチル基、エチル基、プロピル基、メチルエチル基、n-ブチル基、イソ-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基または-C(=O)(Q14);あるいは
【0050】
重水素、メチル基、エチル基、プロピル基、メチルエチル基、n-ブチル基、イソ-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはフェニル基で置換された、C1-C20アルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フラン基でありうる。
【0051】
例えば、前記アルデヒド類化合物は、ホルムアルデヒド(formaldehyde)、アセトアルデヒド(acetaldehyde)、プロピオンアルデヒド(propionaldehyde)、ベンズアルデヒド(benzaldehyde)、グリオキサール(glyoxal)、フルフラール(furfural)、またはそれらの組み合わせを含むものでありうる。
【0052】
一具現例によれば、前記フェノール樹脂において、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数の比率(モル%)は、前記フェノール樹脂に含まれた繰り返し単位全体のモル数に対し、約0.5モル%ないし20モル%でありうる。
【0053】
例えば、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数は、全体リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)全体の重量を、グアイアシルリグニン(G型)の分子量、シリンギルリグニン(S型)の分子量、及びP-ヒドロキシフェニルリグニン(H型)の分子量の平均値(179g/モル)で除した値を意味しうる。例えば、グアイアシルリグニン(G型)の分子量は、179g/モルであり、シリンギルリグニン(S型)の分子量は、209g/モルであり、P-ヒドロキシフェニルリグニン(H型)の分子量は、149g/モルでありうる。
【0054】
例えば、前記フェノール樹脂において、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数の比率(モル%)は、前記フェノール樹脂に含まれた繰り返し単位全体のモル数に対し、約0.5モル%ないし20モル%、約0.5モル%ないし15モル%、約0.5モル%ないし12モル%、約0.5モル%ないし11.5モル%、約0.5モル%ないし11モル%、約1モル%ないし20モル%、約1.5モル%ないし20モル%、約2モル%ないし20モル%、約2.1モル%ないし20モル%、約2モル%ないし11モル%、約2.1モル%ないし11モル%、約2モル%ないし11モル%でありうる。
【0055】
例えば、前記フェノール樹脂において、前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)が占める比率が、前記範囲を満足する場合、前記耐火物用フェノール樹脂を含む組成物の粘度が低減され、その加工性が向上されうる。また、前記耐火物用フェノール樹脂を含む耐火物の強度が向上されうる。
【0056】
一具現例によれば、前記フェノール樹脂において、前記フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)のモル数に対する前記アルデヒド類化合物に由来する繰り返し単位(b)のモル数の比は、約1ないし7でありうる。例えば、前記フェノール樹脂において、前記フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)のモル数に対する、前記アルデヒド類化合物に由来する繰り返し単位(b)のモル数の比は、約1.5ないし7、約1.6ないし7、約1.61ないし7、約1ないし5、約1ないし3、約1ないし2.9、約1ないし1.8、約1ないし1.75、約1ないし1.71、または約1.51ないし1.7でありうる。
【0057】
一具現例によれば、前記フェノール樹脂において、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)のモルの比率(モル%)は、前記フェノール樹脂に含まれた繰り返し単位全体のモル数に対し、約10モル%ないし70モル%でありうる。
【0058】
例えば、前記フェノール樹脂において、フェノール類化合物に由来する繰り返し単位(a)モル数の比率(%)は、前記フェノール樹脂に含まれた繰り返し単位全体のモル数に対し、約20ないし60モル%、約20ないし50モル%、約20ないし40モル%、約24ないし70モル%、約25ないし70モル%、約33ないし70モル%、約35ないし70モル%、約20ないし50モル%、約20ないし41モル%、約24ないし38モル%、約28ないし38モル%、約33ないし38モル%、または約33ないし37モル%でありうる。
【0059】
例えば、前記耐火物用フェノール樹脂に含まれた繰り返し単位のモル数比が、前記範囲を満足する場合、前記耐火物用フェノール樹脂を含む組成物の粘度が低減されうる。それにより、前記耐火物用フェノール樹脂の加工性が向上され、そこから製造された耐火物の気孔率が低減され、前記耐火物の強度が向上されうる。
【0060】
一具現例によれば、前記フェノール樹脂の残炭率は、約20%ないし50%でありうる。
【0061】
例えば残炭率は、前記フェノール樹脂を1,200℃で1時間加熱させて炭化させたとき、炭化前のフェノール樹脂の重量に対する炭化後のフェノール樹脂の重量の比を意味しうる。
【0062】
例えば、残炭率は、下記数式1を通じて計算されうる。
【0063】
【0064】
例えば、残炭率は、炭化後に残存したフェノール樹脂の重量を示すものであり、残炭率が大きいほど、残存したフェノール樹脂の重量が増加されうる。それにより、残炭率が大きいほど、前述の残存したフェノール樹脂の重量が増加されることにより、フェノール樹脂の耐熱性が向上されうる。ただし、残炭率が、前記範囲以下である場合、十分な強度、及び耐熱性向上の効果を期待し難いのであり、残炭率が、前記範囲を超える場合、耐火物用フェノール樹脂の粘度が過度に増大され、耐火物用フェノール樹脂の加工性が低下され、それを含む耐火物の気孔率が増大され、前記耐火物の強度が低下されうる。それにより、本願の耐火物用フェノール樹脂は、残炭率が特定範囲を満足し、それを含む耐火物の耐熱性及び強度が、より向上されうる。
【0065】
他の具現例によれば、前記耐火物用フェノール樹脂の残炭率は、約21%ないし50%、約32%ないし50%、約34%ないし50%、約21%ないし43%、約32%ないし43%、約34%ないし43%、約21%ないし38%、約32%ないし38%、または約34%ないし38%でありうる。
【0066】
一具現例によれば、前記耐火物用フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、約300g/モルないし800g/モルでありうる。例えば、前記耐火物用フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、約300g/モルないし600g/モル、約300g/モルないし510g/モル、約300g/モルないし480g/モル、約300g/モルないし475g/モル、または約300g/モルないし445g/モルでありうる。
【0067】
一具現例によれば、前記耐火物用フェノール樹脂のPDI(polydispersity index)は、約2ないし5でありうる。例えば、前記耐火物用フェノール樹脂のPDI(polymer density index)は、約3ないし4、約3.1ないし4、約3.1ないし3.8、または約3.2ないし3.8でありうる。
【0068】
一具現例によれば、前記耐火物用フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は、約500ないし2,000g/モルでありうる。例えば、前記耐火物用フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は、約700ないし1,700g/モル、約900ないし1,700g/モル、約1,050ないし1,700g/モル、約500ないし1,650g/モル、約500ないし1,600g/モル、または約700ないし1,600g/モルでありうる。
【0069】
例えば、前記耐火物用フェノール樹脂の平均分子量及びPDI(polymer density index)が、前記範囲を満足する場合、前記耐火物用フェノール樹脂を含む耐火物の耐熱性及び強度が同時に向上されうる。
【0070】
一具現例によれば、前記耐火物用フェノール樹脂の粘度は、約400cpsないし3,000cpsでありうる。例えば、前記耐火物用フェノール樹脂の粘度は、約800cpsないし3,000cps、約120cpsないし3,000cps、約400ないし2,000cps、約400ないし1,700cps、約400ないし1,650cps、約1,200ないし1,650cps、約1、400ないし1,650cps、1,200ないし1,600cps、または1,200ないし1,535cpsでありうる。
【0071】
本発明の他の一態様は、(a)フェノール類化合物、アルデヒド類化合物及びリグニン類化合物を触媒存在下で反応させ、フェノール樹脂組成物を得る段階を含み、前記フェノール樹脂を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物の重量に対する前記リグニン類化合物の重量の比率(%)は、1重量%ないし45重量%である耐火物用フェノール樹脂の製造方法を提供しうる。
【0072】
例えば、前記フェノール類化合物、前記アルデヒド類化合物、並びに前記リグニン類化合物の種類及び物性、前記耐火物用フェノール樹脂の物性は、前述の記載を参照する。
【0073】
一具現例によれば、前記フェノール樹脂を得る段階において、フェノール類化合物の重量に対するリグニン類化合物の重量の比率(重量%)は、約1重量%ないし45重量%でありうる。例えば、前記フェノール樹脂を得る段階において、前記フェノール類化合物の重量に対する前記リグニン類化合物の重量の比率(%)は、約1重量%ないし43重量%、約1重量%ないし32重量%、約2重量%ないし45重量%、約7重量%ないし45重量%、約10重量%ないし45重量%、約10重量%ないし43重量%、または約10重量%ないし32重量%でありうる。
【0074】
本発明の他の一態様は、(a)フェノール類化合物、アルデヒド類化合物及びリグニン類化合物を触媒存在下で反応させ、フェノール樹脂組成物を得る段階を含み、前記フェノール樹脂組成物を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物の重量に対する前記リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)のモル数の比率(モル%)は、約1ないし23モル%である、耐火物用フェノール樹脂の製造方法を提供しうる。
【0075】
例えば、前記フェノール樹脂組成物を得る段階において、フェノール類化合物のモル数に対する、前記リグニン類化合物のモル数の比率(モル%)は、約1ないし23モル%、約3ないし23モル%、約5ないし23モル%、約1ないし21モル%、約1ないし17モル%、約3ないし17モル%、または約5ないし17モル%でありうる。
【0076】
例えば、前記リグニン類化合物のモル数は、全体リグニン類化合物に由来する繰り返し単位(c)全体の重量を、グアイアシルリグニン(G型)の分子量、シリンギルリグニン(S型)の分子量、及びP-ヒドロキシフェニルリグニン(H型)の分子量の平均値(179g/モル)で除した値を意味しうる。
【0077】
例えば、フェノール類化合物の重量に対するリグニン類化合物の重量の比率(重量%またはモル%)が、前記範囲を満足する場合、製造される耐火物用フェノール樹脂の粘度及び残炭率を、特定範囲に容易に調節しうる。それにより、製造された耐火物用フェノール樹脂は、耐熱性及び加工性にすぐれ、それを含む耐火物の耐熱性及び強度が、より向上されうる。
【0078】
例えば、フェノール樹脂組成物を得る(a)段階は、フェノール類化合物、アルデヒド類化合物及びリグニン類化合物を触媒存在下で反応させ、フェノール樹脂を含むフェノール樹脂組成物を製造しうる。
【0079】
例えば、フェノール樹脂組成物を得る(a)段階は、約70ないし100℃の温度範囲で、約1ないし5時間遂行されうる。
【0080】
例えば、フェノール樹脂組成物を得る(a)段階は、フェノール類化合物、アルデヒド類化合物及びリグニン類化合物を触媒存在下で反応させ、フェノール樹脂を含むフェノール樹脂組成物を生成した後、それを冷却しうる。例えば、前記フェノール樹脂組成物を約30ないし50℃まで冷却させうる。
【0081】
一具現例によれば、前記フェノール樹脂組成物を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物のモル数に対する前記アルデヒド類化合物のモル数の比は、約1ないし7でありうる。より望ましくは、前記フェノール樹脂組成物を得る段階において、前記フェノール類化合物のモル数に対する前記アルデヒド類化合物のモル数の比は、約1.5ないし7、約1.6ないし7、約1.61ないし7、約1ないし5、約1ないし3、約1ないし2.9、約1ないし1.8、約1ないし1.75、約1ないし1.71、または約1.51ないし1.7でありうる。
【0082】
一具現例によれば、前記フェノール樹脂組成物を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物の重量の比率(重量%)は、前記フェノール樹脂組成物に含まれた前記フェノール類化合物の重量、前記アルデヒド類化合物の重量、及び前記リグニン類化合物の重量の総計に対し、約10ないし70重量%でありうる。
【0083】
例えば、前記フェノール樹脂組成物を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物の重量の比率(重量%)は、前記フェノール樹脂組成物に含まれた前記フェノール類化合物の重量、前記アルデヒド類化合物の重量、及び前記リグニン類化合物の重量の総計に対し、約20ないし60モル%、約20ないし50モル%、約20ないし40モル%、約24ないし70モル%、約25ないし70モル%、約33ないし70モル%、約35ないし70モル%、約20ないし50モル%、約20ないし41モル%、約20ないし38モル%、約32ないし38モル%、約33ないし38モル%、または約33ないし37モル%でありうる。
【0084】
一具現例によれば、前記フェノール樹脂を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物の総重量に対する前記触媒の重量の比率(重量%)は、約0.5ないし5重量%でありうる。例えば、前記フェノール樹脂を得る(a)段階において、前記フェノール類化合物の重量に対する前記触媒の重量の比率(重量%)は、約1ないし5重量%、約1.5ないし5重量%、約3ないし5重量%、約0.5ないし4重量%、約0.5ないし3重量%、または約1ないし3重量%でありうる。
【0085】
例えば、前記触媒は、塩基性触媒または酸性触媒を含むのでありうる。例えば、前記触媒が塩基性触媒を含む場合、前記耐火物用フェノール樹脂は、レゾール樹脂でありうる。例えば、前記触媒が酸性触媒を含む場合、前記耐火物用フェノール樹脂は、ノボラック樹脂でありうる。
【0086】
一具現例によれば、前記塩基性触媒は、NaOH、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Mg(OH)2、KOH、NH4OH、N(CH2CH2OH)3、N(CH2CH3)3、ヘキサミン、テトラエチルアミン、テトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、またはそれらの組み合わせを含むものでありうる。
【0087】
他の具現例によれば、前記酸性触媒は、塩酸、硝酸、硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、3,4-ジクロロベンゼンスルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、オクチルフェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、1-ナフトール-4-スルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リン酸、シュウ酸、ギ酸、またはそれらの組み合わせを含むものでありうる。
【0088】
一具現例によれば、前記耐火物用フェノール樹脂の製造方法は、(b)前記フェノール樹脂組成物に、増粘剤及び中和剤を添加する段階をさらに含むのでありうる。
【0089】
例えば、前記フェノール樹脂組成物に、増粘剤及び中和剤を添加する段階は、前記増粘剤及び前記中和剤により、前記フェノール樹脂組成物に対する脱気工程を遂行することにより、耐火物用フェノール樹脂を得ることができる。
【0090】
例えば、前記フェノール樹脂組成物に、増粘剤及び中和剤を添加する段階は、フェノール樹脂組成物の物性を調節し、製造された耐火物用フェノール樹脂を含む耐火物の強度及び耐熱性を向上させうる。例えば、前記フェノール樹脂組成物に、増粘剤及び中和剤を添加する段階は、フェノール樹脂組成物の粘度、残炭率、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びPDI(polydispersity index)を調節し、製造された耐火物用フェノール樹脂を含む耐火物の強度及び耐熱性を向上させうる。
【0091】
例えば、添加される前記中和剤のモル数に対する前記増粘剤のモル数の比は、約1ないし15でありうる。例えば、前記中和剤のモル数に対する前記増粘剤のモル数の比は、約1ないし13、約1ないし12.5、約1ないし12、約5ないし15、約9ないし15、約9.5ないし15、約9.5ないし13、または約9.7ないし13でありうる。
【0092】
前記中和剤のモル数に対する前記増粘剤のモル数の比が、前記範囲を満足する場合、耐火物用フェノール樹脂の残炭率を、特定範囲に容易に調節しうる。それにより、前記耐火物用フェノール樹脂を含む耐火物の強度及び耐熱性が、より向上されうる。
【0093】
一具現例によれば、増粘剤は、天然多糖類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エステル系増粘剤またはグリコール類増粘剤を含むものでありうる。例えば、該増粘剤は、グリコール類増粘剤を含むものでありうる。
【0094】
一具現例によれば、前記増粘剤は、-O-基を含み、沸点が150℃ないし300℃である化合物を含むものでありうる。例えば、前記増粘剤は、-O-基を含み、沸点が150℃ないし300℃であるグリコール類化合物を含むものでありうる。
【0095】
例えば、増粘剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、またはそれらの組み合わせを含むのでありうる。
【0096】
一具現例によれば、前記中和剤は、NaOH、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Mg(OH)2、KOH、NH4OH、N(CH2CH2OH)3、N(CH2CH3)3、ヘキサミン、テトラエチルアミン、テトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、塩酸、硝酸、硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、3,4-ジクロロベンゼンスルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、オクチルフェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、1-ナフトール-4-スルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リン酸、シュウ酸、ギ酸、またはそれらの組み合わせを含むのでありうる。
【0097】
一具現例によれば、前記中和剤は、ギ酸、カルボン酸(carboxylic acid)、プロピオン酸、酪酸(butanoic acid)、吉草酸(pentanoic acid)、またはそれらの組み合わせを含むものでありうる。
【0098】
本発明の他の一態様は、前記耐火物用フェノール樹脂を含む耐火物が提供される。
【0099】
例えば、前記耐火物用フェノール樹脂は、向上された強度及び耐熱性を要求される耐火物に、制限なしに適用されうる。例えば、前記耐火物は、耐火レンガなどでありうる。
【0100】
一具現例によれば、耐火物が耐火レンガである場合、前記耐火物は、アルミナクリンカー、炭化ケイ素及び黒鉛をさらに含むものでありうる。他の具現例によれば、前記耐火物は、アルミナクリンカー、炭化ケイ素、黒鉛及びピッチをさらに含むのでありうる。他の具現例によれば、前記耐火物は、アルミナクリンカー、炭化ケイ素、黒鉛、ピッチ、ホウケイ酸フリット及び金属粉末をさらに含むものでありうる。
【0101】
例えば、前記耐火物は、アルミナクリンカー70ないし85重量部、前記炭化ケイ素5ないし10重量部、前記黒鉛10ないし20重量部、及び前記耐火物用フェノール樹脂3ないし4重量部を含むものでありうる。
【0102】
例えば、前記黒鉛は、鱗状黒鉛、膨張黒鉛、またはそれらの組み合わせを含むのでありうる。
【0103】
例えば、前記アルミナクリンカーは、前記耐火物の耐食性を向上させうる。例えば、前記炭化ケイ素は、前記耐火物の耐酸化性を向上させうる。例えば、前記鱗状黒鉛は、耐熱衝撃性及び耐浸潤性を向上させうる。例えば、前記膨張黒鉛は、前記耐火物の弾性率を低め、構造安定性を向上させうる。
【0104】
例えば、前記ホウケイ酸フリットは、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)及び一酸化鉛(PbO)、酸化ナトリウム(Na2O)を含むものでありうる。例えば、ホウケイ酸フリットは、酸化ケイ素(SiO2)60重量%、酸化アルミニウム(Al2O3)10重量%、酸化ホウ素(B2O3)15重量%、酸化カルシウム(CaO)5重量%、酸化マグネシウム(MgO)1重量%、一酸化鉛(PbO)4重量%、及び酸化ナトリウム(Na2O)5重量%を含むものでありうる。
【0105】
例えば、前記耐火物は、前記ホウケイ酸フリットを1ないし2重量部、さらに含むのでありうる。
【0106】
例えば、前記金属ケイ素粉末は、炭素より先に酸化されるか、あるいは炭素と反応し、炭化ケイ素になった後、さらに酸化され、炭素を析出させることにより、前記耐火物の耐酸化性を向上させうる。
【0107】
例えば、前記耐火物は、前記金属ケイ素粉末を1ないし2重量部、さらに含むのでありうる。
【0108】
[用語の定義]
本明細書においてC1-C60アルキル基は、炭素数1ないし20の線状または分枝状の脂肪族炭化水素の一価(monovalent)基を意味し、その具体例には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、sec-イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基などが含まれる。
【0109】
本明細書においてC1-C60アルコキシ基は、-OA101(ここで、A101は、前記C1-C20アルキル基である)の化学式を有する一価基を意味し、その具体例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基などが含まれる。
【0110】
本明細書においてC6-C60アリール基は、炭素数6ないし60個の炭素環芳香族系を有する一価基を意味し、フェニル基、ペンタレニル基、ナフチル基、アズレニル基、インダセニル基、アセナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘプタレニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基などが含まれる。前記C6-C60アリール基が2つ以上の環を含む場合、前記2つ以上の環は、互いに連結されうる。
【0111】
以下、実施例を介し、本発明について、より詳細に説明する。それら実施例は、ただ本発明について、より具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例によって制限されるものではないということは、本発明が属する技術分野で、通常の知識を有する者において自明であろう。
【0112】
<実施例1.耐火物用フェノール樹脂の製造>
撹拌基、コンデンサ、温度計を具備した4口フラスコに、(1)フェノール類化合物であるフェノール546g(5.80モル)、(2)アルデヒド類化合物である40%ホルムアルデヒド1,305g(17.38モル)、(3)リグニン類化合物としての、数平均分子量(Mn)が10,000±2,000g/モルで、重量平均分子量が20,000±5,000g/モル、PDI(polydispersity index)が2±0.5であり、硫黄含量が、リグニン類化合物100重量部を基準に、3.0重量部以下であるリグニン6g(0.03モル)、及び、(4)50%NaOH 12gを投入した。その後、85℃まで昇温し、2時間反応させた後で冷却し、耐火物用フェノール樹脂を含む組成物を得た。
【0113】
その後、40℃で、前記組成物に、カルボン酸類中和剤であるギ酸7g(0.15モル)、及び、グリコール類増粘剤であるエチレングリコール91g(1.47モル)を添加した後、3時間脱気させ、耐火物用フェノール樹脂を得た。製造された耐火物用フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、523であり、重量平均分子量は1,608g/モルであり、PDI(polydispersity index)は3.12であり、粘度は1,645cpsであり、残炭率は36%であった。
【0114】
<実施例2.耐火物用フェノール樹脂の製造>
撹拌基、コンデンサ、温度計を具備した4口フラスコに、(1)フェノール類化合物であるフェノール546g(5.80モル)、(2)アルデヒド類化合物である40%ホルムアルデヒド741g(9.87モル)、(3)リグニン類化合物としての、数平均分子量(Mn)が10,000±2,000g/モルで、重量平均分子量が20,000±5,000g/モル、PDI(polydispersity index)が2±0.5であり、硫黄含量が、リグニン類化合物100重量部を基準に、3.0重量部以下であるリグニン60g(0.34モル)、及び、(4)50%NaOH 12gを投入した。その後、85℃まで昇温し、3時間反応させた後、冷却し、耐火物用フェノール樹脂を含む組成物を得た。
【0115】
その後、40℃で、前記組成物に、カルボン酸類中和剤であるギ酸7g(0.15モル)、及び、グリコール類増粘剤であるエチレングリコール118g(1.90モル)を添加した後、3時間脱気させ、耐火物用フェノール樹脂を得た。製造された耐火物用フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、423であり、重量平均分子量は1,406g/モルであり、PDI(polydispersity index)は3.32であり、粘度は1,450cpsであり、残炭率は38%であった。
【0116】
<実施例3.耐火物用フェノール樹脂の製造>
撹拌基、コンデンサ、温度計を具備した4口フラスコに、(1)フェノール類化合物であるフェノール546g(5.80モル)、(2)アルデヒド類化合物である40%ホルムアルデヒド741g(9.87モル)、(3)リグニン類化合物としての、数平均分子量(Mn)が10,000±2,000g/モルであり、重量平均分子量が20,000±5,000g/モルであり、PDI(poly dispersity index)が2±0.5であり、硫黄含量が、リグニン類化合物100重量部を基準に、3.0重量部以下であるリグニン170g(0.95モル)、及び、(4)50% NaOH 12gを投入した。その後、80℃まで昇温し、4時間反応させた後、冷却し、耐火物用フェノール樹脂を含む組成物を得た。
【0117】
その後、40℃で、前記組成物に、カルボン酸類中和剤であるギ酸7g(0.15モル)、及び、グリコール類増粘剤であるエチレングリコール118g(1.90モル)を添加した後、2.5時間脱気させ、耐火物用フェノール樹脂を得た。製造された耐火物用フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、442であり、重量平均分子量は1,413g/モルであり、PDI(polydispersity index)は3.55であり、粘度は1,520cpsであり、残炭率は38%であった。
【0118】
<実施例4.耐火物用フェノール樹脂の製造>
撹拌基、コンデンサ、温度計を具備した4口フラスコに、(1)フェノール類化合物であるフェノール546g(5.80モル)、(2)アルデヒド類化合物である40%ホルムアルデヒド655g(8.72モル)、(3)リグニン類化合物としての、数平均分子量(Mn)が10,000±2,000g/モルであり、重量平均分子量が20,000±5,000g/モルであり、PDI(polydispersity index)が2±0.5であり、硫黄含量が、リグニン類化合物100重量部を基準に、3.0重量部以下であるリグニン239g(1.34モル)、及び、(4)50% NaOH 12gを投入した。その後、80℃まで昇温し、5時間反応させた後、冷却し、耐火物用フェノール樹脂を含む組成物を得た。
【0119】
その後、40℃で、前記組成物に、カルボン酸類中和剤であるギ酸7g(0.15モル)、及び、グリコール類増粘剤であるエチレングリコール118g(1.90モル)を添加した後、3時間脱気させ、耐火物用フェノール樹脂を得た。製造された耐火物用フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、478であり、重量平均分子量は、1,632g/モルであり、PDI(polydispersity index)は3.55であり、粘度は1,538cpsであり、残炭率は39%であった。
【0120】
<比較例1.耐火物用フェノール樹脂の製造>
撹拌基、コンデンサ、温度計を具備した4口フラスコに、(1)フェノール類化合物であるフェノール546g(5.80モル)、(2)アルデヒド類化合物である40%ホルムアルデヒド655g(8.72モル)、(3)リグニン類化合物としての、数平均分子量(Mn)が10,000±2,000g/モルであり、重量平均分子量が20,000±5,000g/モルであり、PDI(polydispersity index)が2±0.5であり、硫黄含量が、リグニン類化合物100重量部を基準に、3.0重量部以下であるリグニン327.6g(1.83モル)、及び、(4)50% NaOH 12gを投入した。その後、80℃まで昇温し、5時間反応させた後、冷却し、耐火物用フェノール樹脂を含む組成物を得た。
【0121】
その後、40℃で、前記組成物に、カルボン酸類中和剤であるギ酸7g(0.15モル)、及びグリコール類増粘剤であるエチレングリコール118g(1.90モル)を添加した後、3時間脱気させ、耐火物用フェノール樹脂を得た。製造された耐火物用フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、512であり、重量平均分子量は1,701g/モルであり、PDI(polydispersity index)は3.84であり、粘度は1,692cpsであり、残炭率は39%であった。
【0122】
<比較例2.耐火物用フェノール樹脂の製造>
撹拌基、コンデンサ、温度計を具備した4口フラスコに、(1)フェノール類化合物であるフェノール546g(5.80モル)、(2)アルデヒド類化合物である40%ホルムアルデヒド960g(12.79モル)、(3)リグニン類化合物としての、数平均分子量(Mn)が10,000±2,000g/モルであり、重量平均分子量が20,000±5,000g/モルであり、PDI(polydispersity index)が2±0.5であり、硫黄含量が、リグニン類化合物100重量部を基準に、3.0重量部以下であるリグニン436.8g(2.44モル)、及び、(4)50% NaOH 12gを投入した。その後、80℃まで昇温し、5時間反応させた後、冷却し、耐火物用フェノール樹脂を含む組成物を得た。
【0123】
その後、40℃で、前記組成物に、カルボン酸類中和剤であるギ酸7g(0.15モル)、及び、グリコール類増粘剤であるエチレングリコール118g(1.90モル)を添加した後、2時間脱気させ、耐火物用フェノール樹脂を得た。製造された耐火物用フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、639であり、重量平均分子量は1,832g/モルであり、PDI(polydispersity index)は3.98であり、粘度は1,684cpsであり、残炭率は39%であった。
【0124】
<実験例1.リグニンの物性評価>
(1)平均分子量及びPDI(polydispersity index)
実施例1ないし4、並びに比較例1及び2でそれぞれ使用されたリグニンを、1重量%となるようにDMFに希釈させた後、0.45μm PTFEシリンジフィルタを利用してフィルタリングした後、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)を使用し、各リグニンの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びPDI(polydispersity index)を測定し、下記表1に記載した。
【0125】
また、実施例1ないし4、並びに比較例1及び2のフェノール樹脂を、0.5重量%となるようにDMF:THF=4:6溶液に希釈させた後、0.45μm PTFEシリンジフィルタを利用してフィルタリングした後、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)を使用し、各フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びPDI(polydispersity index)を測定した。
【0126】
<実験例2.耐火物用フェノール樹脂の粘度評価>
実施例1ないし4、並びに比較例1及び2による耐火物用フェノール樹脂に対し、Brookfield粘度計を使用し、25℃における粘度を測定した。それぞれの測定結果を、下記表1に記載した。
【0127】
<実験例3.耐火物用フェノール樹脂の残炭率評価>
実施例1による耐火物用フェノール樹脂15gを、135℃で1時間乾燥させ、乾燥サンプルを準備した。前記乾燥サンプル7.5gを、1,200℃で1時間加熱し、炭化を施した。
【0128】
前記乾燥サンプルの炭化前後の重量を測定し、下記式1により、残炭率(%)を計算し、下記表1に記載した。
【0129】
【0130】
実施例2ないし4、並びに比較例1及び2による耐火物用フェノール樹脂についても、実施例1による耐火物用フェノール樹脂と同一方法でもって残炭率を計算し、それぞれ下記表1に記載した。
【0131】
<実験例4.耐熱性評価>
実施例1による耐火物用フェノール樹脂15gを含む試料を準備した。前記試料を徐々に高い温度で加熱し、前記試料の重量が、加熱前の重量の50%になったときの温度を測定した。
【0132】
実施例2ないし4、並びに比較例1及び2による耐火物用フェノール樹脂についても、実施例1によるリグニン変性フェノール樹脂と同一方法でもって温度を測定し、それぞれ下記表1に記載した。
【0133】
<実験例5.耐火物の物性評価>
実施例1による耐火物用フェノール樹脂3.5gと、支持体としての、MgO 80g、SiC 8g及びC 15gとを混合した後、1,000kg/cm2の圧力で、240mmX240mmX150mmに成形して試料を準備した。
【0134】
(1)湿潤性及び流動性:前記試料に対し、実施例1を基準(O)に、相対的に湿潤性及び流動性を評価した。
【0135】
実施例1よりも、湿潤性及び流動性にすぐれる場合を◎と表示し、実施例1よりも、湿潤性及び流動性が相対的に劣化された場合を△と表示した。
【0136】
(2)可使時間:前記試料につき、湿潤性及び流動性が消滅する時間を測定し、下記表1に記載した。
【0137】
(3)気孔率、体積比重及び強度:前記試料につき、常温及び高温の気孔率は、KS L3304にしたがって測定した。常温及び高温の体積比重も、KS L3304にしたがって測定した。常温及び高温の強度は、KS L3315-1にしたがって測定した。測定結果を下記表1に記載した。
【0138】
実施例2ないし4、並びに比較例1及び2による耐火物用フェノール樹脂についても、実施例1による耐火物用フェノール樹脂と同一方法でもって、常温及び1,400℃における強度を測定し、それぞれ下記表1に記載した。
【0139】
【0140】
前述の表1に示されているように、実施例による耐火物用フェノール樹脂は、比較例による耐火物用フェノール樹脂と比較するとき、
耐火物用フェノール樹脂の製造に使用されたフェノール類化合物のモル数に対するリグニン類化合物のモル数の比(モル%)が、1~23モル%の範囲を満足する実施例は、前記範囲を満足しない比較例よりも、粘度及び残炭率を、特定範囲に容易に調節することができた。従って、向上された耐熱性、加工性及び強度を有する耐火物を容易に製造することができた。
【0141】
従って、本発明による耐火物用フェノール樹脂は、強度、加工性及び耐熱性が向上された耐火物を製造することができ、向上された加工性、耐熱性及び強度が要求される耐火物(例えば、耐火レンガ(煉瓦)など)に適するように使用されうる。
【0142】
前述の実施例及び比較例は、本発明について説明するための例示であり、本発明は、それらに限定されるものではない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であるならば、それらから多様に変形し、本発明を実施することが可能であるので、本発明の技術的保護範囲は、添付された特許請求の範囲によって定められるべきである。
【国際調査報告】