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特表2024-540274ナノ粒子を利用した標的物質の増幅または検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ナノ粒子を利用した標的物質の増幅または検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20241024BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20241024BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6806 Z
C12M1/34 Z
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526509
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 KR2022017238
(87)【国際公開番号】W WO2023080710
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0151779
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0159555
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ユンヘ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ジュワ ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,スンギ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA21
4B029BB20
4B029CC13
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR66
4B063QR83
4B063QS15
4B063QS24
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX01
4B063QX02
(57)【要約】
本出願は、複数の部分的に二本鎖である(partiallydouble-stranded)プローブを含むナノ粒子、およびこれを利用した、標的物質の増幅、検出、定量化、確認(identifying)および/または視角化(visualizing)のための組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法を提供する。
前記ナノ粒子は、(1)(i)標的オリゴヌクレオチドに対する相補的配列を含む標的クローニング部位(target cloning site)および(ii)標的核酸断片の一部に対する相補的配列を含む標的結合部位(target binding site)を含む鋳型鎖、および(2)前記標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含み、鋳型鎖の標的クローニング部位にハイブリダイズする標的-クローニング鎖を含むことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)以下を含む鋳型鎖(template strand):
(i)標的オリゴヌクレオチドと相補的な標的-クローニング部位(target-cloning site)、および
(ii)標的オリゴヌクレオチドの一部と相補的な標的-結合部位;および
(2)標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含む標的-クローニング鎖(target-cloning strand)
を含み、
前記鋳型鎖の標的-クローニング部位と前記標的-クローニング鎖が相補的結合して二本鎖を形成し、前記標的-結合部位は一本鎖である、
部分的二本鎖オリゴヌクレオチド(partially double-stranded oligonucleotide)。
【請求項2】
前記鋳型鎖は10-100nt長さである、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
複数の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを含み、
それぞれの部分的二本鎖オリゴヌクレオチドは、
(1)以下を含む鋳型鎖(template strand):
(i)標的オリゴヌクレオチドと相補的な標的-クローニング部位(target-cloning site)、および
(ii)標的オリゴヌクレオチドの一部と相補的な標的-結合部位;および
(2)標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含む標的-クローニング鎖(target-cloning strand)
を含み、
前記鋳型鎖の標的-クローニング部位と前記標的-クローニング鎖が相補的結合して二本鎖を形成し、前記標的-結合部位は一本鎖であり、
前記鋳型鎖の一末端が表面に固定化された、ナノ粒子。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、金、銀、シリカ、白金、銅、または金、銀、白金、銅などからなる群より選択された2種以上の合金である、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
(a)標的オリゴヌクレオチドの一部(第1部分)と相補的な複数の標的-捕捉鎖が表面に固定された基質粒子、および
(b)複数の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを含むナノ粒子
を含み、
それぞれの部分的二本鎖オリゴヌクレオチドは、
(1)(i)標的オリゴヌクレオチドと相補的な標的-クローニング部位、および
(ii)標的オリゴヌクレオチドの一部(第2部分)と相補的な標的-結合部位を含む鋳型鎖;および
(2)標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含む標的-クローニング鎖
を含み、
前記鋳型鎖の標的-クローニング部位と前記標的-クローニング鎖が相補的結合して二本鎖を形成し、前記標的-結合部位は一本鎖であり、
前記鋳型鎖の一末端が前記ナノ粒子の表面に固定化されたものであり、
前記標的オリゴヌクレオチドの第1部分と第2部分は重複しないものである、
標的物質の増幅、検出、定量化、または可視化用組成物。
【請求項6】
前記基質粒子およびナノ粒子は、互いに異なる標的オリゴヌクレオチドに対する2種以上のものであり、2種以上の標的物質の増幅、検出、定量化、または可視化に使用するためのものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
以下の段階を含む、標的物質の増幅、検出、定量化、または可視化方法:
(A)標的オリゴヌクレオチドまたは試料を表面に複数の標的-捕捉鎖を含む基質粒子に添加して、前記標的オリゴヌクレオチドの一部(第1部分)と前記標的-捕捉鎖をハイブリダイズさせる段階;
(B)前記段階(A)で得られた混合物に複数のナノ粒子を添加して基質粒子とナノ粒子間の複合体を形成する段階であって、それぞれのナノ粒子は、表面に複数の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを含み、それぞれの部分的二本鎖オリゴヌクレオチドは以下を含み:
(1)(i)標的オリゴヌクレオチドと相補的な標的-クローニング部位、および
(ii)標的オリゴヌクレオチドの一部(第2部分)と相補的な標的-結合部位を含む鋳型鎖;および
(2)標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含む標的-クローニング鎖、
前記鋳型鎖の標的-クローニング部位と前記標的-クローニング鎖が相補的結合して二本鎖を形成し、前記標的-結合部位は一本鎖であり、
前記基質粒子表面に標的-捕捉鎖と部分的にハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチドの他の部分(第2部分)と前記標的-結合部位とのハイブリダイゼーションにより基質粒子とナノ粒子間の複合体が形成される;および
(C)前記部分的二本鎖オリゴヌクレオチドの脱ハイブリダイゼーション(dehybridizing)、前記複合体の解離(disassembling)、またはこれら両方を行って、標的オリゴヌクレオチドと同一の核酸配列を有する標的-クローニング鎖を放出する段階。
【請求項8】
前記段階(C)で放出された標的-クローニング鎖を前記段階(A)の標的オリゴヌクレオチドとして使用して、段階(A)~(C)を2回以上繰り返すことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基質粒子およびナノ粒子は、互いに異なる標的オリゴヌクレオチドに対する2種以上のものあり、2種以上の標的物質の増幅、検出、定量化、または可視化することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ポリメラーゼを使用しないことを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項5または6に記載の組成物を含む、標的物質の増幅、検出、定量化、または可視化用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2021年11月5日付大韓民国特許出願第10-2021-0151779号および2021年11月18日付大韓民国特許出願第10-2021-0159555号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、複数の部分的に二本鎖である(partially double-stranded)であるプローブを含むナノ粒子、およびこれを利用した、標的物質の増幅、検出、定量化、確認(identifying)および/または視角化(visualizing)のための組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
現場感知(Onsite sensing)および診断方法は、特別な装備なしにまたは最小限の装備で急性疾患、感染、または生物学的および化学的兵器(warfare agent)の原因(sources)を識別することができる、迅速で、安価で、直接的な手段を提供するという点から利点を有し、特にポータブルプラットフォーム(portable platform)上で有用である。このような方法のうち、比色法(colorimetric methods)は、専門知識や装備なしでも標的を肉眼で探知することができるため、強力かつ広範囲に適用することができる方法である。しかし、大部分の場合、ナノ粒子に基づく比色分析法(nanoparticle-based colorimetric assays)は、ナノ物質の光学特性のみに依存し、これは感度、信頼性および定量化能力を制限する要因になる。したがって、比色分析は、一般に実際使用範囲が狭く、信頼度が低く、高い敏感度を要求する分析に適用するには適切でないとの問題点がある。一般に、超高感度検出方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または高度に精巧な増幅、感知およびイメージング技術を基づく。
【0004】
したがって、より簡便ながらも感度に優れた生物学的検出技術の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感度に優れ、迅速で、安価で、簡便な標的物質の検出手段を提供するために、本出願は、多数の部分的二本鎖プローブを有するナノ粒子およびこれを利用した標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法を提供する。
【0006】
より具体的に、一例は、以下を含む部分的二本鎖オリゴヌクレオチド(partially double-stranded oligonucleotide)を提供する:
(1)(i)標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズ可能な標的-クローニング部位(target-cloning site)、および
(ii)標的オリゴヌクレオチドの一部とハイブリダイズ可能なまたは相補的な標的-結合部位
を含む第1鎖(鋳型鎖);および
(2)標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含む第2鎖(標的-クローニング鎖または標的-増幅鎖)。
【0007】
他の例は、表面に前記部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを2個以上含むナノ粒子を提供する。
【0008】
他の例は、(a)表面に標的オリゴヌクレオチドと部分的にハイブリダイズする標的-捕捉鎖を含む基質粒子、および/または(b)前記ナノ粒子を含む標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための組成物、アレイ、キット、および/または装置を提供する。
【0009】
他の例は、(a)表面に標的オリゴヌクレオチドと部分的にハイブリダイズする標的-捕捉鎖を含む基質粒子、および/または(b)前記ナノ粒子を利用した、標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化方法を提供する。
【0010】
他の例は、(a)表面に標的オリゴヌクレオチドと部分的にハイブリダイズする標的-捕捉鎖を含む基質粒子、および/または(b)前記ナノ粒子の、標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、特定構造のナノ粒子およびこれを使用する「ナノ粒子連鎖反応(Nanoparticle Chain Reaction;NCR)」技術が提供される。前記NCR技術は、核酸分子増幅方法の一つであり、ポリメラーゼを代替して特定構造を有するナノ粒子を使用する酵素フリー(enzyme-free)技術であるという点から既存のPCR(polymerase chain reaction)とは差別化され、既存技術より簡単ながらも増幅効率が顕著に高いため、核酸分子および核酸分子を通じて増幅可能な多様な標的物質の検出に非常に有用に使用され得る。
【0012】
以下、本出願をより詳しく説明する:
【0013】
用語の定義
本明細書で、用語「標的物質(target material)」は、本明細書で提供される増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法で最終的に増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化しようとする物質を意味するものであり、生物学的活性を有する全ての物質中で選択されたものであり得る。一例で、前記標的物質は、増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化しようとする有機体(各種真核細胞または原核細胞;例えば、ウイルス、バクテリア、真菌類など)または生物学的活性物質、例えば、核酸分子(例、全ゲノム遺伝体(DNAまたはRNA)、遺伝体断片、遺伝子、遺伝子断片、siRNA、miRNA、バイオマーカ(biomarker)、その他DNAまたはRNA断片など)、蛋白質、ペプチド、高分子、小分子化学物質(例、各種金属イオン、有機化合物などからなる群より選択された1種以上を含む化学薬物など)などからなる群より選択された1種以上であり得るが、これに制限されるのではない。一例で、前記核酸分子、蛋白質、ペプチドなどの生体活性物質は、前記の有機体(例えば、ウイルス、バクテリア、真菌など)に由来するものであり得るが、これに制限されるのではなく、組換え的または化学的に合成されたものであってもよい。
【0014】
本明細書で、用語「試料」は、標的物質の存在有無および/またはレベルを測定しようとする全ての生物学的および/または環境試料を意味するものであり得る。例えば、生物学的試料は、対象(患者)から分離された細胞、組織、血液、リンパ、唾液、痰、鼻水、尿、便、その他体液などからなる群より選択され得るが、これに制限されない。前記対象は、ヒト、家畜(例:ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)、鳥類(ニワトリ、カモ、ガチョウ、シチメンチョウ、ダチョウ、ウズラなど)などが挙げられるが、これに制限されるのではない。
【0015】
本明細書で、用語「標的オリゴヌクレオチド(target oligonucleotide)」は、本明細書で提供される連鎖反応により直接的に増幅されるオリゴヌクレオチドを意味するものであり、「標的鎖(target strand)」とも称され、二つの用語は同等な意味で互換可能である。一例で、用語の標的オリゴヌクレオチドは、
-前記標的物質が核酸分子である場合、その全部(前記核酸分子がDNA断片および/またはRNA断片である場合)またはその一部(増幅対象配列;例えば、前記核酸分子に固有の部分)であり、
-前記標的物質が蛋白質、ペプチド、高分子、または小分子化学物質である場合、後述する標的-クローニング鎖と同一のものと理解され得る。
【0016】
本明細書で、用語「鋳型鎖(template strand)」は、本明細書で提供されるNCR技術で標的オリゴヌクレオチド増幅のためにテンプレート(template)として使用される一本鎖オリゴヌクレオチドを意味し、標的オリゴヌクレオチドの全ゲノム配列と相補的な核酸配列を有する標的-クローニング部位と前記標的オリゴヌクレオチドの一部と相補的な核酸配列を有する標的-結合部位を含むものであり得る。前記鋳型鎖は、10-1000nt、10-500nt、10-200nt、10-100nt、10-90nt、10-80nt、10-70nt、10-60nt、10-55nt、10-50nt、または10-45nt長さのオリゴヌクレオチドであり得るが、これに制限されるのではない。
【0017】
本明細書で、用語「標的-クローニング鎖(target-cloning strand)」は、標的オリゴヌクレオチドと同一の核酸配列または標的の一部の増幅対象配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを意味し、鋳型鎖の標的-クローニング部位とハイブリダイズ(相補的結合)が可能である。
【0018】
本明細書で、用語「標的-捕捉鎖(target-capturing strand)」は、標的オリゴヌクレオチドを基質粒子に捕捉するように機能するものであり、標的オリゴヌクレオチドの前記鋳型鎖の標的-結合部位と相補的な部分とは異なる部分と相補的な核酸配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0019】
本明細書で、核酸分子または蛋白質が「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を有する」とは、前記配列を含むか、または本質的に前記配列からなることを意味し得る。
【0020】
部分的二本鎖オリゴヌクレオチド(partially double-stranded oligonucleotide)
一例は、以下を含む部分的二本鎖オリゴヌクレオチド(partially double-stranded oligonucleotide)を提供する:
(1)以下を含む第1鎖(長い(拡張された)鎖;以下、鋳型鎖(template strand)とも称する):
(i)標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズ可能な(相補的な)標的-クローニング部位(target-cloning site)、および
(ii)標的オリゴヌクレオチドの一部とハイブリダイズ可能なまたは相補的な標的-結合部位、この時、前記標的-クローニング部位および標的-結合部位は互いに連結される(例えば、標的-クローニング部位の3’-末端と標的-結合部位の5’-末端が結合されるか、または標的-クローニング部位の5’-末端と標的-結合部位の3’-末端が連結され得る);および
(2)標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含む(つまり、前記第1鎖の標的-クローニング部位と相補的な(ハイブリダイズ可能な)配列を含む)第2鎖(短い鎖(第1鎖より短い);以下、標的-クローニング鎖(target-cloning strand)または標的-増幅鎖(target amplifier strand)とも称し、二つの用語は同等な意味で互換可能である)、
この時、前記標的-クローニング鎖は、前記鋳型鎖の標的-クローニング部位とハイブリダイズ(相補的結合)して二本鎖構造(つまり、部分的二本鎖オリゴヌクレオチドの二本鎖の部分(部位))を形成し、前記鋳型鎖の標的-結合部位は一本鎖の形態で露出される。
【0021】
前記鋳型鎖は、10-1000nt、10-500nt、10-200nt、10-100nt、10-90nt、10-80nt、10-70nt、10-60nt、10-55nt、10-50nt、または10-45nt長さのオリゴヌクレオチドであり得るが、これに制限されるのではない。標的-クローニング鎖は、前記第1鎖の標的-クローニング部位とハイブリダイズし、標的-結合部位を露出させる長さのオリゴヌクレオチドであり得、例えば、標的オリゴヌクレオチドと同一であり得る。
【0022】
ナノ粒子(nanoparticles;NCRプローブ)
他の例は、一つ以上(例えば、2個以上または複数)の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを表面に含むナノ粒子を提供する。前記部分的二本鎖オリゴヌクレオチドは、前述のとおりである。例えば、前記部分的二本鎖オリゴヌクレオチドは、鋳型鎖の一末端(例えば、鋳型鎖内の標的-クローニング部位の両末端のうち、標的-結合部位と連結された末端とは異なる末端)で、直接またはリンカー(第1リンカー)を通じて、ナノ粒子表面に固定(付着)されたものであり得る。
【0023】
言い換えると、前記ナノ粒子は、その表面に、
(1)以下を含む鋳型鎖:(i)前記表面に直接またはリンカー(第1リンカー)を通じて固定された標的-クローニング部位、および(ii)前記標的-クローニング部位の一末端(例えば、ナノ粒子表面に固定された末端とは異なる末端)と連結された標的-結合部位;および
(2)前記鋳型鎖の標的-クローニング部位とハイブリダイズ可能な(相補的な)標的-クローニング鎖
を含むことができる。この時、前記鋳型鎖(第1鎖)の標的-クローニング部位と標的-クローニング鎖(第2鎖)がハイブリダイズして部分的に二本鎖の構造を有する部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを形成し、鋳型鎖の標的-結合部位は露出された形態であり得る。
【0024】
前記ナノ粒子1個当たり表面に固定(付着)された部分的二本鎖オリゴヌクレオチドの個数は、1個以上、2個以上、10個以上、20個以上、50個以上、70個以上、100個以上、120個以上、150個以上、または170個以上(上限値に特別な制限はなく、ナノ粒子表面に付着可能なオリゴヌクレオチドの最大個数であり得(ナノ粒子の表面積を基準として適切に決定され得る)、例えば、10,000個、5,000個、2,500個、1,000個、750個,500個、250個、または200個であり得るが、これに制限されるのではない)であり得るが、これに制限されるのではない。
【0025】
一例で、前記ナノ粒子は、可視化可能(例えば、肉眼検出可能(naked-eye-detectable))および/または生分子(biomolecule;例えば、核酸分子、抗体など)接合可能な材質からなるものであり得、例えば、金(例えば、金ナノ粒子)、銀(例えば、銀ナノ粒子)、白金、銅、合金(例えば、金、銀、白金、銅などからなる群より選択された2種以上を含む)などのような金属、シリカ、ヒドロゲル、カーボンナノチューブ、量子ドット(Quantum dot)など材質のものであり得るが、これに制限されるのではない。他の例で、前記ナノ粒子は、表面に結合されたオリゴヌクレオチドに含まれている蛍光標識により可視化され得る。前記ナノ粒子のサイズ(平均直径)は、1~1000nm、1~500nm、1~200nm、1~100nm、10~1000nm、10~500nm、10~200nm、または10~100nmであり得るが、これに制限されるのではない。前記ナノ粒子は、その構造および/または形態に特別な制限がなく、例えば、ソリッド構造、コア-シェル構造、ハロー構造(hollow structure)などを有するか、および/または円形、楕円形、チューブ状、多角形構造などを有することができるが、これに制限されるのではない。場合によっては、ナノ粒子の種類により生分子結合、増幅および/または可視性レベルを調節することができる。
【0026】
一例で、前記ナノ粒子は、標的オリゴヌクレオチドを検出または増幅するためのプローブ(NCRプローブ)として使用され得る。
【0027】
前述したような、部分的二本鎖オリゴヌクレオチドまたはこれを表面に付着したナノ粒子は、標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズ可能な(相補的配列を有する)部位(標的-結合部位)および前記標的-オリゴヌクレオチドと同一の核酸配列を有する標的-クローニング鎖を含むため、前記標的オリゴヌクレオチドまたは標的物質の検出および/または増幅に有利に使用され得る。
【0028】
一具体例で、標的物質が核酸分子以外の物質である場合、前記ナノ粒子は、前述の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドに加えて、前記標的物質の結合物質をさらに含むことができる。前記標的物質の結合物質は、標的物質が一部と結合(例えば特異的結合)可能な抗体、アプタマー、小分子化学物質などからなる群より選択された一つ以上であり得る。
【0029】
基質粒子(substrate particles)
本明細書で、用語「基質粒子(substrate particle)」は、標的物質の捕捉物質(例えば、オリゴヌクレオチド、抗体、ペプチド、高分子化合物など)を固定させることができる表面を有する全ての形態の粒子を意味する。
【0030】
一例で、標的オリゴヌクレオチドの一部とハイブリダイズ可能なまたは相補的配列を有する一つ以上(例えば、2個以上または複数)の標的-捕捉鎖(target capturing strand;または標的-捕捉オリゴヌクレオチド(target capturing oligonucleotides))が表面に固定(付着、接着)された基質粒子が提供される。前記標的-捕捉鎖は、基質粒子表面に直接またはリンカー(第2リンカー)を通じて固定(付着)されたものであり得る。
【0031】
後述するように、前記基質粒子に、前記ナノ粒子に含まれている標的-クローニング鎖の個数をNCRサイクル回数だけ掛けた個数だけのナノ粒子が結合されるため、前記基質粒子1個当たり表面に固定(付着)された標的-捕捉鎖の個数は前記ナノ粒子の個数をカバーできるほど十分に多くならなければならない。例えば、前記基質粒子1個当たり含まれている標的-捕捉鎖の個数は、10個以上、50個以上、10個以上、10個以上、10個以上、10個以上、10個以上、または10個以上(上限値に特別な制限はなく、基質粒子表面に付着可能なオリゴヌクレオチドの最大個数であり得(基質粒子表面積を基準として適切に決定され得る)、例えば、1012個、1011個、1010個または10個であり得るが、これに制限されるのではない)であり得るが、これに制限されるのではない。
【0032】
前記基質粒子は固形材質からなるものであり得、前記ナノ粒子と形成する複合体の収集/精製などを容易にするために、磁性粒子、ビード(例、磁性ビードなどからなる群より選択された1種以上であり得るが、これに制限されるのではない。一例で、前記基質粒子は、金(例えば、金ナノ粒子)、銀(例えば、銀ナノ粒子)、白金、銅、合金(例えば、金、銀、白金、銅などからなる群より選択された2種以上含む)などのような金属、シリカ、ヒドロゲル、カーボンナノチューブ、量子ドット(Quantum dot)など材質のものであり得るが、これに制限されるのではない。また、前記基質粒子のサイズ(平均直径)は、前記ナノ粒子より十分に大きくならなければならず、ナノ粒子のサイズ (平均直径)の2倍以上、5倍以上、10倍以上、20倍以上、30倍以上、40倍以上、または50倍以上であり得、例えば、0.1~100μm、0.1~50μm、0.1~20μm、0.1~10μm、0.1~8μm、0.1~5μm、0.1~3μm、0.5~100μm、0.5~50μm、0.5~20μm、0.5~10μm、0.5~8μm、0.5~5μm、0.5~3μm、1~100μm、1~50μm、1~20μm、1~10μm、1~8μm、1~5μm、または1~3μmであり得るが、これに制限されるのではない。前記基質粒子は、その構造および/または形態に特別な制限がなく、例えば、ソリッド構造、コア-シェル構造、ハロー構造(hollow structure)などを有するか、および/または円形、楕円形、チューブ状、多角形構造などを有することができるが、これに制限されるのではない。
【0033】
一具体例で、標的物質が核酸分子以外の物質である場合、前記基質粒子は、前述の標的-捕捉鎖に加えて、前記標的物質の捕捉物質をさらに含むことができる。前記標的物質の捕捉物質は、標的物質が一部と結合(例えば特異的結合)可能な抗体、アプタマー、小分子化学物質などからなる群より選択された一つ以上であり得る。この時、基質粒子に含まれる標的物質の捕捉物質とナノ粒子に含まれる標的物質の結合物質は、標的物質の互いに異なる部位に結合するものであり得る。つまり、標的物質で、前記捕捉物質と結合物質の結合する部位は互いに重複しないものであり得る。
【0034】
本出願で、前記鋳型鎖(標的-クローニング部位)をナノ粒子表面に固定(付着)させるに使用可能なリンカー(第1リンカー)および前記標的-捕捉鎖を基質粒子に固定(付着)させるに使用可能なリンカー(第2リンカー)は、オリゴヌクレオチドを固形の粒子表面に付着させることができる全ての物質の中から適切に選択され得、例えば、化学的官能基(例えば、チオール基(SH)、アミン基(NH2など)、結合蛋白質類(例、ビオチンなど)などからなる群より選択された1種以上であり得るが、これに制限されるのではなく、付着粒子の表面材質などにより適切に選択され得る。前記リンカーは、前記鋳型鎖と標的-捕捉鎖がそれぞれナノ粒子および基質粒子表面に結合する末端(例えば、鋳型鎖の場合は3’末端、標的-捕捉鎖の場合は5’末端)に結合されているか、および/またはナノ粒子および/または基質粒子表面に結合されていてもよい。また、前記鋳型鎖および/または標的-捕捉鎖は、ナノ粒子および/または基質粒子表面からの所定の間隔の維持のためにそれぞれナノ粒子および基質粒子表面に結合する末端(例えば、鋳型鎖の場合は3’末端、標的-捕捉鎖の場合は5’末端)にスペーサ(spacer)をさらに含むことができる(前記鎖がリンカーを含む場合、前記スペーサは鋳型鎖と第1リンカーとの間(第1スペーサ)、および/または標的-捕捉鎖と第2リンカーとの間(第2スペーサ)に含まれ得る)。前記スペーサは所定の間隔を付与することができる長さ/体積を有する全ての物質の中から適切に選択され得、例えば、オリゴヌクレオチド(例えば、Poly A(例えば、A2~20)など)、高分子(例、ポリエチレングリコール(PEG)など)、炭素数1-6のアルキルなどからなる群より選択された一つ以上であり得るが、これに制限されるのではない。一例で、前記スペーサは、poly A、PEG、またはこれらの組み合わせ(第1スペーサ)、またはpoly A、炭素数1-6のアルキル、またはこれらの組み合わせ(第2スペーサ)であり得るが、これに制限されるのではない。
【0035】
標的物質(核酸分子)の検出および/または増幅
他の例は、前述のような一つ以上の基質粒子および一つ以上のナノ粒子を含む標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための組成物(または用途)、アレイ、キット、および/または装置を提供する。前記組成物、アレイ、キット、および/または装置は、前記基質粒子および/またはナノ粒子を適切な媒質(例えば、液体媒質)内に分散および/または懸濁させた形態で含むものであり得る。
【0036】
具体的に、前記組成物、アレイ、キット、および/または装置は、以下を含むことができる:
(a)標的オリゴヌクレオチドの一部とハイブリダイズ可能なまたは相補的な配列を有する一つ以上(例えば、2個以上または複数)の標的-捕捉鎖(target capturing strand;または標的-捕捉オリゴヌクレオチド(target capturing oligonucleotides))が表面に固定(付着、接着)された一つ以上(例えば、2個以上または複数)の基質粒子、および
(b)一つ以上(例えば、2個以上または複数)のナノ粒子、この時、それぞれのナノ粒子は、表面に一つ以上(例えば、2個以上または複数)の部分的二本鎖オリゴヌクレオチド。この時、前記ナノ粒子および部分的二本鎖オリゴヌクレオチドは前述のとおりである。
【0037】
一具体例で、前記標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための組成物、アレイ、キット、および/または装置は以下を含むことができる:
(a)標的オリゴヌクレオチドの一部(第1部分)とハイブリダイズ可能なまたは相補的な配列を有する一つ以上(例えば、2個以上または複数)の標的-捕捉鎖が表面に固定(付着、接着)された基質粒子、および
(b)一つ以上(例えば、2個以上または複数)のナノ粒子、この時、それぞれのナノ粒子は、表面に一つ以上(例えば、2個以上または複数)の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを含み、それぞれの部分的二本鎖オリゴヌクレオチドは以下を含む:
(1)以下を含む第1鎖(鋳型鎖):
(i)標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズ可能な(相補的な)標的-クローニング部位(target-cloning site)、および
(ii)標的オリゴヌクレオチドの一部(第2部分)とハイブリダイズ可能なまたは相補的な標的-結合部位、この時、前記標的-クローニング部位および標的-結合部位は互いに連結される(例えば、標的-クローニング部位の3’-末端と標的-結合部位の5’-末端が結合されるか、または標的-クローニング部位の5’-末端と標的-結合部位の3’-末端が連結され得る);および
(2)標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含む(つまり、前記鋳型鎖の標的-クローニング部位と相補的な(ハイブリダイズ可能な)配列を含む)第2鎖(標的-クローニング鎖)、
この時、前記標的-クローニング鎖は、前記鋳型鎖の標的-クローニング部位とハイブリダイズして二本鎖構造(つまり、部分的二本鎖オリゴヌクレオチドの二本鎖の部分(部位))を形成し、前記鋳型鎖の標的-結合部位は一本鎖の形態で露出される。
【0038】
前記標的-捕捉鎖は、標的オリゴヌクレオチドの一部(第1部分)とハイブリダイズ可能な部位を必須で含み、その一末端(例えば5’末端または3’末端)が直接またはリンカー(第2リンカー)を通じて基質粒子表面に固定(付着)されたものであり得る。
【0039】
前記標的オリゴヌクレオチドにおいて、前記基質粒子上の標的-捕捉鎖がハイブリダイズされる部分(第1部分)と、前記ナノ粒子上の第1鎖の標的-結合部位がハイブリダイズされる部分(第2部分)とは、互いに重複しないように設計されたものであり得る。例えば、標的-捕捉鎖が標的オリゴヌクレオチドの5’末端側の一部(第1部分)とハイブリダイズされる場合、標的-結合部位は前記標的オリゴヌクレオチドの3’末端側の一部(第2部分)とハイブリダイズされるものであり得、他の例で、標的-捕捉鎖が標的オリゴヌクレオチドの3’末端側の一部(第1部分)とハイブリダイズされる場合、標的-結合部位は前記標的オリゴヌクレオチドの5’末端側の一部(第2部分)とハイブリダイズされるものであり得る。
【0040】
本出願で提供される組成物、アレイ、キット、および/または装置において、標的オリゴヌクレオチド(一本鎖)またはこれを含む試料が前記基質粒子と接触すると、前記標的オリゴヌクレオチドの一部(第1部分)が基質粒子上の一つ以上の標的-捕捉鎖とハイブリダイズされて、前記標的オリゴヌクレオチドのハイブリダイズされずに一本鎖の状態で露出された第2部分を一つ以上生成する。このように露出された一つ以上の第2部分は前記ナノ粒子上の鋳型鎖内の標的-結合部位と結合することによって、一つ以上のナノ粒子が基質粒子に結合して基質粒子-ナノ粒子のサンドイッチ複合体を形成する。その後、脱ハイブリダイゼーション処理を通じて、前記それぞれのナノ粒子に標的-クローニング鎖が鋳型鎖の標的-クローニング部位と脱ハイブリダイズされて放出される。このように放出された標的-クローニング鎖は前記標的オリゴヌクレオチドと同一の核酸配列を有するため、再び基質粒子上の標的-捕捉鎖と第1部分でハイブリダイズされて次のサイクルを繰り返すことができる。このような過程により、サイクルが繰り返されるにつれ、基質粒子表面に結合されたナノ粒子の個数が幾何級数的に増加して蓄積(濃縮)される。理論的には、一つの基質粒子を基準として、ナノ粒子に含まれている標的-クローニング鎖の個数をサイクル回数だけ掛けた数のナノ粒子が基質粒子に結合して蓄積(濃縮)される[(ナノ粒子当たりの標的-クローニング鎖の個数)、nはサイクル回数]。これは標的オリゴヌクレオチドの増幅および/またはナノ粒子の検出可能なレベル、例えば肉眼で検出可能なレベルの濃縮効果を示す(つまり、蓄積(濃縮)されたナノ粒子による溶液の色変化などを通じて標的オリゴヌクレオチドの存在有無および/または濃度の検出が容易である)。
【0041】
他の例は、前記基質粒子およびナノ粒子を利用した標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化方法を提供する。前記方法は以下を含むことができる:
(A)標的オリゴヌクレオチドまたは試料を表面に複数の標的-捕捉鎖を含む基質粒子に添加(または適用または接触)して、標的オリゴヌクレオチドの一部(第1部分)と標的-捕捉鎖をハイブリダイズさせる段階;
(B)前記段階(A)で得られた混合物に複数のナノ粒子を添加(または適用または接触)して基質粒子とナノ粒子間の複合体を形成する段階であって、前記ナノ粒子は、それぞれ表面に複数の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを含み、それぞれの部分的二本鎖オリゴヌクレオチドは以下を含み:
(1)以下を含む第1鎖(鋳型鎖):
(i)標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズ可能な(相補的な)標的-クローニング部位、および
(ii)標的オリゴヌクレオチドの一部(第2部分)とハイブリダイズ可能なまたは相補的な標的-結合部位;および
(2)標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含む第2鎖(標的-クローニング鎖)、
基質粒子表面に標的-捕捉鎖と部分的にハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチドの他の部分(第2部分)と前記標的-結合部位とのハイブリダイゼーションにより基質粒子とナノ粒子間の複合体が形成される;および
(C)前記部分的二本鎖オリゴヌクレオチドの脱ハイブリダイゼーション(dehybridizing)および/または前記複合体の解離(disassembling)を行って、標的オリゴヌクレオチドと同一の核酸配列を有する標的-クローニング鎖を放出する段階。
【0042】
前記段階(A)において、標的オリゴヌクレオチドまたは試料を表面に複数の標的-捕捉鎖を含む基質粒子に添加すると、前記標的-捕捉鎖は標的オリゴヌクレオチドの一部(第1部分)にハイブリダイズ可能であり、前記標的オリゴヌクレオチド試料内に存在する標的オリゴヌクレオチド(試料内に存在する場合)を捕捉することができる。
【0043】
前記段階(B)で使用される複数のナノ粒子は、それぞれ表面に複数の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを含み、それぞれの部分的二本鎖オリゴヌクレオチドは以下を含むことができる:
(1)以下を含む第1鎖(鋳型鎖):
(i)標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズ可能な(相補的な)標的-クローニング部位(target-cloning site)、および
(ii)標的オリゴヌクレオチドの一部(第2部分)とハイブリダイズ可能なまたは相補的な標的-結合部位、この時、前記標的-クローニング部位および標的-結合部位は互いに連結される(例えば、標的-クローニング部位の3’-末端と標的-結合部位の5’-末端が結合されるか、または標的-クローニング部位の5’-末端と標的-結合部位の3’-末端が連結され得る);および
(2)標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を含む(つまり、前記第1鎖の標的-クローニング部位と相補的な(ハイブリダイズ可能な)配列を含む)第2鎖(標的-クローニング鎖)。
【0044】
この時、前記標的-クローニング鎖は、前記鋳型鎖の標的-クローニング部位とハイブリダイズして二本鎖構造(つまり、部分的二本鎖オリゴヌクレオチドの二本鎖の部分(部位))を形成し、前記鋳型鎖の標的-結合部位は、一本鎖の形態で露出されて、前記基質粒子上の標的-捕捉鎖と(第1部分で)部分的にハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチドの他の一部(第2部分)と標的-結合部位間にハイブリダイズ可能にして、基質粒子とナノ粒子間のサンドイッチ複合体アセンブリー(sandwich complex assembly)を形成するようにすることができる。つまり、標的オリゴヌクレオチド内の第1部分はナノ粒子上の鋳型鎖の標的-結合部位と、第2部分(前記第1部分と重複しない)は基質粒子上の標的-捕捉鎖と結合(ハイブリダイズ)される。
【0045】
前記段階(C)において、前記部分的二本鎖オリゴヌクレオチドの脱ハイブリダイゼーション(dehybridizing)および/または前記サンドイッチ複合体アセンブリー(sandwich complex assembly)の解離(disassembling)(例えば、前記脱ハイブリダイゼーションによるものであり得る)は通常の脱ハイブリダイゼーション手段により行われ得る。例えば、前記脱ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション反応と比較して、pH増加(例えば、塩基条件)、温度増加(例えば、50~100℃、52~100℃、55~100℃、50~90℃、52~90℃、55~90℃などの範囲に増加)、塩(salt)濃度減少などからなる群より選択された一つ以上により行われ得、一具体例(本出願の実施例)では、塩溶液を蒸溜水に交替し、温度を低めて行ったが、これに制限されるのではない。これにより、標的-捕捉鎖および標的-結合部位とハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチドおよび/または標的-クローニング部位とハイブリダイズされた標的-クローニング鎖(互いに同一の核酸配列を有する)がそれぞれ脱ハイブリダイズされて一本鎖の形態で放出される。また、前記過程で、脱ハイブリダイゼーションによる標的オリゴヌクレオチドと、ナノ粒子上の鋳型鎖の標的-結合部位および基質粒子上の標的-捕捉鎖間の結合(ハイブリダイゼーション)も解離されて、前記標的オリゴヌクレオチドを通じて複合体を形成していたナノ粒子と基質粒子が分離(放出)される。このように放出された標的-クローニング鎖とナノ粒子は以降のサイクルに使用され得る。
【0046】
前記方法において、段階(B)の後に、前記複合体を分離、収集、および/または濃縮する段階をさらに含むことができ(B-1)、ここで分離、収集、および/または濃縮された複合体に対して段階(C)を行うことができる。前記複合体の分離、収集、および/または濃縮は、磁場印加(例えば、磁石使用など;基質粒子が磁性粒子である場合)、および/または遠心分離などの方法で行うことができるが、これに制限されるのではなく、使用された粒子の材質、特性などを考慮して適切に選択された通常の方法で行うことができる。
【0047】
一例で、前記段階(A)~(C)は、2回以上繰り返すことができる(段階(A)~(C)が1サイクル)。この時、前記段階(C)で一本鎖の形態で放出された、標的オリゴヌクレオチドと同一の配列を有する標的-クローニング鎖は、再び段階(A)の標的オリゴヌクレオチドとして使用され、段階(C)で放出されたナノ粒子は、NCRプローブとして使用されて次のサイクルが行われ得る。この時、一つの標的オリゴヌクレオチドが一つのナノ粒子に含まれている標的-クローニング鎖の個数だけ増幅されて、次のサイクルでは一つの基質粒子に前記標的-クローニング鎖の個数だけのナノ粒子が結合されて段階が行われる。したがって、一つの標的オリゴヌクレオチドがナノ粒子当たり含まれている標的-クローニング鎖の個数がサイクル回数だけ掛けられた数だけ増幅されるようになる。つまり、サイクル遂行による標的オリゴヌクレオチドの数は、最初個数のm倍(mはナノ粒子当たりの標的-クローニング鎖の個数(実施例で174個が例示される)、nはサイクル回数)であり得る。通常のPCRの増幅レベルが最初個数の2倍であるのと比較すると、本明細書で提供するNCR技術の増幅レベルは顕著に高い。
【0048】
一例で、前記ナノ粒子当たりの標的-クローニング鎖の個数(m)は、2個以上、10個以上、20個以上、50個以上、70個以上、100個以上、120個以上、150個以上、または170個以上(上限値に特別な制限はなく、ナノ粒子表面に付着可能なオリゴヌクレオチドの最大個数であり得(ナノ粒子の表面積を基準として適切に決定され得る)、例えば、10,000個、5,000個、2,500個、1,000個、750個、500個、250個、または200個であり得るが、これに制限されるのではない)であり得るが、これに制限されるのではない。例えば、ナノ粒子当たりの標的-クローニング鎖の個数(m)は、2~1,000個、2~500個、50~1,000個、50~500個、100~1,000個、または100~500であり得るが、これに制限されるのではない。一例で、前記サイクル回数(n)は、1~20回、1~15回、1~10回、1~5回、2~20回、2~15回、2~10回、2~5回、3~20回、3~15回、3~10回、または~3~5回であり得るが、これに制限されるのではない。
【0049】
一具体例で、標的物質が核酸分子以外の生体活性物質である場合、前記標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための組成物、アレイ、キット、装置および/または方法において、
前記(a)の基質粒子は、前述の標的-捕捉鎖に加えて、前記標的物質の捕捉物質をさらに含み、
前記(b)のナノ粒子は、前述の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドに加えて、前記標的物質の結合物質をさらに含むものであり得る。
【0050】
前記標的物質の結合物質は、標的物質が一部と結合(例えば特異的結合)可能な抗体、アプタマー、小分子化学物質などからなる群より選択された一つ以上であり得る。この時、基質粒子に含まれる標的物質の捕捉物質とナノ粒子に含まれる標的物質の結合物質は、標的物質の互いに異なる部位に結合するものであり得る。つまり、標的物質において、前記捕捉物質と結合物質の結合する部位は互いに重複しないものであり得る。
【0051】
標的物質が核酸分子以外の生体活性物質である場合、前記標的物質または試料を前記標的物質の捕捉物質が固定化された基質粒子と接触させると、前記標的物質の一部が前記捕捉物質と結合し、ここに標的物質の結合物質が含まれているナノ粒子を処理すると、前記結合物質が前記捕捉物質との結合部位とは異なる部位で標的物質と結合することによって基質粒子とナノ粒子の複合体を形成する。このように複合体が形成されると、前記ナノ粒子上の部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを脱ハイブリダイズさせて、標的-クローニング鎖を放出させる。前記放出された標的-クローニング鎖は標的オリゴヌクレオチドと同一の核酸配列を有するため、その一部が前記基質粒子表面の標的-捕捉鎖とハイブリダイズし、その後の過程は前述の(A)~(C)と同一の過程を経ることによって、核酸分子以外の生体活性物質が標的-クローニング鎖により増幅および/または検出され得る。つまり、試料内の前記生体活性物質の存在有無および/またはレベルを前記のように増幅された標的-クローニング鎖および/または蓄積(濃縮)されたナノ粒子を通じて測定することができる。
【0052】
本出願で提供される標的核酸分子または標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法において、ナノ粒子が基質粒子表面に濃縮されるようにするために、ナノ粒子を基質粒子より十分に多量(個数)で使用することができ、理論的には、基質粒子1個当たりナノ粒子の最小個数を2個~基質粒子1個当たり標的-捕捉鎖の個数の中から適切に選択することができるが、これに制限されるのではない。一例で、ナノ粒子と基質粒子の使用量は、検出条件、標的配列の特性などにより適切に調節することができる(例えば、標的配列がハイブリダイゼーション(結合)強度が強い核酸配列(例えば、「GC-rich」配列)を有する場合、ナノ粒子の使用量を比較的に小量にすることができ、ハイブリダイゼーション程度が弱い配列(例えば、「AT-rich」配列)を有する場合、ナノ粒子の使用量を比較的に多量にすることができるが、これに制限されるのではない)。
【0053】
本出願で提供される標的核酸分子または標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法は、ポリメラーゼの使用を伴わないものであり得る(enzyme-freeまたはpolymerase-free)。
【0054】
また、本出願で提供される標的核酸分子または標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための方法は、液状で行われるものであり得る。
【0055】
一例で、可視化可能なナノ粒子を使用することによるナノ粒子自体による検出/定量/可視化に追加したりこれを代替して、前記標的-クローニング(標的-増幅)鎖をラベリングして検出/定量/可視化することができる。例えば、前記標的-クローニング(標的-増幅)鎖は通常の標識物質でラベリングされ得る。使用可能な標識物質に特別な制限がなく、オリゴヌクレオチドのラベリングに使用可能な全ての標識物質の中から選択して使用することができ、例えば、蛍光物質(例、蛍光染料および/または蛍光蛋白質)であり得るが、これに制限されるのではない。
【0056】
本明細書で提供されるNCR技術は、互いに異なる標的物質に対する2種以上のナノ粒子を使用することによって、互いに異なる2種以上の標的物質の多重検出(bionsensing)および/または増幅に適用され得る(multiplexibility)。
【0057】
より具体的に、本明細書で提供される標的物質の増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化のための組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法は、互いに異なる標的物質(標的核酸分子)に対する鋳型鎖および標的-クローニング鎖を含む2種以上のナノ粒子および/または互いに異なる標的物質(標的核酸分子に対する標的-捕捉鎖を含む2種以上の基質粒子を使用することによって、2種以上の標的物質(標的核酸分子)を同時に増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化することができる、組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法を提供する。前記多重検出/増幅において、2種以上の標的物質の中の一つ以上が核酸分子以外の物質である場合、前記ナノ粒子は前記核酸分子以外の標的物質に対する結合物質をさらに含むものであり得る。
【0058】
前記多重検出/増幅において、各標的物質別に標的-クローニング鎖に異なる標識をすることによって、2種以上の標的物質を一度に増幅、検出、定量化、確認、および/または可視化することができる。
【0059】
本明細書で提供される組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法により、標的物質に対する相当高い検出感度を達成することができる。例えば、本明細書で提供される組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法の標的物質の検出感度は、試料内の標的物質(例えばDNA(例えば、gDNA)またはRNA)の量を基準として、10-7ng以上、10-6ng以上、10-5ng以上、10-4ng以上、または10-3ng以上であり得る(つまり、検出可能な試料内の標的物質の量の下限値(検出限界)は、10-7ng、10-6ng、10-5ng、10-4ngまたは10-3ngであり得る)。これはポリメラーゼを使用した通常のPCRよりも顕著に高い(例えば、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも1,000倍、または少なくとも10,000倍)の検出感度を示す(図12b参照)。一具体例で、ナノ粒子一つ当たり174個の標的-クローニング鎖がローディングされたNCRプローブを使用して、3回のNCRサイクル後、溶液の色変化(solution color change)またはUV-Vis吸光度変化(UV-Vis absorbance change)(例えば、400~650nm波長で測定)に基づく標的物質(DNA)の動的範囲(dynamic range)は100zM~100pM程度に現れた。また、UV-Visスペクトル(UV-Vis spectrum)統合領域で確認された検出限界(Limitation of detection、LoD)は、NCRの場合、PCRと比較して、約2倍以上、約10倍以上、約50倍以上、約100倍以上、約500倍以上、約1,000倍以上、約5,000倍以上、または約10,000倍以上高いことが確認された(図12c参照)。
【0060】
本明細書で提供されるNCR技術(組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法)は、定量化診断プラットホーム(quantitative diagnostic platform)に適用可能である。本明細書で提供される組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法は、既存の通常のPCR技術を代替/拡張して多様な標的物質の増幅/検出/定量に適用され得、前記標的物質と関連した疾病および/または症状の診断にも適用され得る。また、本明細書で提供される組成物、アレイ、キット、装置、および/または方法は、LFA(Lateral Flow Assay)のような迅速診断技術にも適用され得、例えば、ストリップセンサーのような迅速診断キットに適用され得るが、これに制限されるのではない。
【0061】
前述の通り、本出願では、enzyme-based target-amplifying thermal cyclesを繰り返すPCRを変形して、可視化可能なナノ粒子を利用して標的物質を検出(例、colorimetric detection)するナノ粒子連鎖反応技法(nanoparticle chain reaction;NCR)を開発した。以下、標的物質がDNAであり、ナノ粒子が金ナノ粒子(AuNPs)である場合を例に挙げて図面を参照して本出願をより具体的に説明すると以下のとおりである:
【0062】
標的DNAと同一の配列(標的-クローニングDNA;target-cloning DNA)および相補的配列が部分的に二本鎖を形成するDNAが結合されたナノ粒子(DNA-AuNPs)で放出される多数のハイブリダイズされた標的-クローニングDNAを通じて標的DNAを増幅する。前記増幅は、DNA変調(結合)磁性粒子を使用して標的DNAサンドイッチ複合体を形成および分離し、脱塩プロセス(desalting process)を通じて前記ナノ粒子から標的DNA鎖と共に標的クローニングDNA鎖を放出させることによって行われ得る。本明細書で提供されるNCR技法は(ナノ粒子当たりの標的-クローニングDNAの数)だけ標的DNAを幾何級数的に増加させることができ、ここでnはサイクル回数である。また、NCR技法は、溶液でナノ粒子の数を劇的に増加させることによってプラズモンナノ粒子により誘導された明確な溶液の色変化は肉眼で感知することができるようにする。NCRは蓄積されたDNA-ナノ粒子の数が肉眼に基づく比色検出またはUV-Vis分光光度計に基づく定量化を行うのにおいて、十分に高いレベルになる時までサイクルを繰り返すことができる。
【0063】
より具体的に、磁場を印加してサンドイッチ複合体を分離した後、標的-クローニングDNAローディングAuNP(NCRプローブ)が脱ハイブリダイゼーションにより前記複合体から放出される。標的-クローニングDNA配列は標的DNAの標的部位配列と正確に同一であり、アッセイ(assay)前にNCRプローブ表面にプリローディング(preloading)されている。この過程で標的配列と共に多数の標的-クローニングDNA鎖も共に放出される。放出された標的-クローニング鎖は後続サイクルでNCRプローブ-磁性粒子(磁性プローブ)間のサンドイッチ複合体の形成に使用されて、NCRプローブ-磁性粒子の複合体の形成の機会を高いレベルに誘導する(図1a)。一旦標的-クローニング鎖がローディングされたNCRプローブが標的-クローニング鎖を放出(dehybridization)すると、NCRプローブは標的-クローニング鎖がないunloaded NCRプローブとなる(図3参照)。図3はローディングされたNCRプローブから標的-クローニング鎖の放出を模式的に示すものであり、ローディングされたNCRプローブには予めハイブリッド化された標的-クローニング鎖(緑色)と鋳型鎖(赤色)の標的結合部位が含まれており、ローディングされたNCRプローブが脱ハイブリダイズされると予めハイブリッド化された標的-クローニング鎖が放出されることによって、ローディングされたNCRプローブはunloaded NCRプローブになり、標的増幅のための次のサイクルに使用されることを示す。
【0064】
NCRサイクルが繰り返されるにつれ、NCRプローブも高いレベルに蓄積され、これによりプラズモンAuNPの濃度が高くなって溶液が前記濃度に比例して赤色を帯びるようになり、反応溶液で標的鎖と捕捉されたNCRプローブの総数は幾何級数的に増加する(図1b)。NCRプローブ-磁性粒子のサンドイッチ複合体の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを通じてNCRサイクルが繰り返されるにつれ、磁性粒子表面に捕捉されたNCRプローブの数が増加し、溶液の赤色の色強度が増加することを確認できる(図1c、2dおよび4)。
【0065】
前記の内容を実験的に証明するために、本出願で提供されるNCR技術を使用して炭疽菌致死因子(anthrax lethal factor)DNA塩基配列を検出した。感染性病原体の検出において、特別な装備なしに迅速かつ敏感に検出することができる現場感知技術の重要性が高いため、このような感染性病原体の代表例として炭疽菌関連遺伝子を試験した。
【0066】
実施例1.3に例示されるように、NCRプローブは金ナノ粒子(AuNPs)にチオール化された鋳型鎖を付着(接合)させた後、過量の標的-クローニング鎖を添加して、前記標的-クローニング鎖が鋳型鎖に部分的にハイブリダイズされるようにして生成することができる。
【0067】
この場合、鋳型鎖に含まれている標的-結合部位が標的-クローニング鎖の一部と相補的であるため、標的-クローニング鎖と前記標的-結合部位間の所望しないハイブリダイゼーションがあり得、これは不活性NCRプローブを生成して本来の機能を果たすことができなくなり、NCRアッセイの選択性および感度を深刻に低下させることがある。したがって、標的相補体(target complements;toehold sequence)を添加してトーホールド媒介変位(toehold-mediated displacement)を誘発させることによって、鋳型鎖の標的-結合部位に所望せずにハイブリダイズされた標的-クローニング鎖を除去し、鋳型鎖の標的-結合部位を完全に露出させて標的配列との結合のための標的-結合部位をオープンさせることによって、活性NCRプローブを形成することができる(図1d)。不活性NCRプローブおよびNCRプローブ(toehold配列添加)のゲル電気泳動結果を図2aに示した。図2aに示されているように、toehold配列の添加により標的-結合部位を露出させる意図したトーホールド媒介変位(toehold-mediated displacement)が起こったことを確認できる。また、不活性NCRプローブと活性NCRプローブの動的光散乱(dynamic light scattering)測定結果を図8に示した。図8で確認されるように、不活性NCRプローブが活性NCRプローブより直径が大きく、unloaded NCRプローブが最も大きい直径を示した。また、ゼータ電位測定結果を図9に示した。図9のゼータ電位結果はNCRプローブ表面に接合されたDNAによる表面負電荷状態を示し、図10はAuNP、鋳型鎖-変調(接合)AuNP、不活性NCRプローブ、および活性NCRプローブが多様なUV-Visスペクトルを生成することを示す。特に260nmではDNAによる吸収ピーク、532nmでは金ナノ粒子による吸収ピークが確認された。重要なことに、2回のNCRサイクル後、不活性および活性NCRプローブ間の比較により、活性NCRプローブの改善された選択性が立証された(図2b、8)。活性NCRプローブは、標的配列でのみ赤色を示す反面、非標的および1塩基ミスマッチ配列(single-base mismatch sequences)に対しては検出可能な色がほとんど観察されなかった。反面、不活性NCRプローブは、標的、非標的および1塩基ミスマッチ配列の全てに対して強い赤色を示して、標的配列に対して非常に低い選択性が示された。
【0068】
捕捉されたNCRプローブの増加された個数はNCRサイクル反復による標的核酸の増幅された数に対応する。重要なことに、NCRサイクル回数が増加するにつれ、NCRアッセイ産物のAuNP誘導赤色強度が増加する(図2c)。肉眼によるNCRアッセイの検出限界は1回、2回および3回のNCRサイクル後に、それぞれ1pM、1fMおよび100zM程度の低いレベルを示すと確認された。全般的にNCRアッセイ産物の赤色強度は標的DNA濃度が増加するにつれて次第に増加した。比較のためにNCRアッセイを通じて10pMの非標的および1塩基ミスマッチ配列検出を行い、その結果、二つの場合共に感知可能な溶液の色変化がなかった。AuNPに基づくスペクトル変化を統合して標的DNAの量をより正確に定量するためにUV-Vis測定も行い、AuNP-誘導スペクトル変化を広範囲に含むために、AuNPsの量は400~650nm波長でUV-Visスペクトル領域を積分して求めた(図2d)。重要なことに、NCRサイクルの回収が増加するにつれて標的濃度が増加することによる検出信号強度のより明らかな増加が観察されており、3回のNCRサイクル後、100zM~100pMの標的濃度までの非常に広い動的範囲(dynamic range)が得られた。
【0069】
その後、Cy3-標識鋳型鎖とCy5-標識標的-クローニング鎖で蛍光信号を測定してNCRサイクルの増加が標的DNAの量に及ぼす影響を定量化した。前記蛍光団-変調(標識)鎖を使用してNCRプローブを形成し、AuNPを最終的にKCNで溶解して、オリゴヌクレオチドの蛍光に基づく定量化のためにDNA鎖を完全に放出した。図2eはNCRサイクル回数が5回目のサイクルまで増加するにつれ、非常に広い動的範囲にわたってより急激に標的-クローニング鎖の数が増加することを示す。ナノ粒子は高い表面積対体積比(surface-to-volume ratio)を提供して多数の核酸分子がAuNPの表面に接合され得る。本実施例の場合、鋳型鎖の平均数はAuNP当たり430個であり、予めハイブリダイズされた(pre-hybridized)標的-クローニング鎖の数はAuNP当たり174個である(図9、10)。したがって、単一のNCRプローブはNCRサイクル当たり最大174個の標的-クローニング鎖を放出することができる。原則的にPCRは標的配列を2倍に増幅する反面、本出願で提供されるNCRは理論的に一つのナノ粒子に結合された標的-クローニング鎖の数である174のn乗(174)倍に標的鎖を増幅することができる(nはサイクル回数を示す)。しかし、蓄積されたunloaded NCRプローブはloaded NCRプローブとDNA-接合された磁性粒子間の標的媒介ハイブリダイゼーションを妨害することがあるという点に留意しなければならない。本実施例での分析結果は、unloaded NCRプローブが標的結合においてloaded NCRプローブよりも好まれることを示した(図11)。したがって、NCRサイクルの増幅効率は現在アッセイで最大化されておらず、追加の最適化が必要である。それにもかかわらず、NCRアッセイは単に3回のNCRサイクル後に、zeptomolar標的濃度の肉眼検出を可能にした。
【発明の効果】
【0070】
新たなナノ粒子連鎖反応(NCR)技術を利用して、極少量の標的物質も安定的に増幅/検出/可視化することができる検出および/または診断技術を提供する。前記NCR技術は酵素を使用しないため、別途の装備を不要とすると共に、非常に優れた検出感度を達成することができるため、現場検出/診断手段として適用可能であり、既存のPCRと比較してより長いDNA(例:ゲノムDNAなど)を非常に高い感度に検出することができるため、検出限界を改善することができる。また、本明細書で提供するNCRは、現場感知のためのラテラルフローアッセイ(lateral flow assay)(迅速キット)の検出限界の改善に寄与するため、ラテラルフローアッセイ(lateral flow assay)(迅速キット)にも有用に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1a図1はナノ粒子連鎖反応の原理を示すものであり、図1aはナノ粒子連鎖反応の1回のサイクル過程を示し;
図1b図1bは反復的なNCRアッセイ周期を模式的に示し;
図1c図1cは標的分析物の10pM濃度により始まったNCRプローブと磁性基質粒子のサンドイッチ複合体のSEMイメージであり(Scale bar、200nm;挿入図はアンローディングされたNCRプローブの数が増加するにつれて肉眼で感知できる色の見え(color appearance)である)。
図1d図1dはトーホールド媒介鎖変位反応(toehold-mediated strand displacement reaction)を通じたNCRプローブの合成準備過程を模式的に示し;
図1e図1eは標的-クローニング鎖(緑色)および鋳型鎖(赤色)上に標的-結合部位(赤色)を含むNCRプローブの概略図である。
図2a図2は比色NCRアッセイ(Colorimetric NCR assay)結果を示すものであり、図2aは所望のNCRプローブ準備過程を示すためにゲル電気泳動を行った結果であり、NCRプローブ準備の各段階には異なるDNA長さが得られることを示し、
図2b図2bは多様な濃度の分析物質(標的物質)に対するNCR結果(UV-Visスペクトル(UV-Vis spectrum))を示すグラフであり、非標的配列(N;non-target sequence)および1塩基ミスマッチ配列(S:single-base mismatch sequence)は検出しない反面、標的物質は高い感度(100zM以上)に検出し、検出能はサイクル回数に比例することを示し、
図2c図2cは肉眼で検出可能なNCRアッセイ結果を示す。
図2d図2dは肉眼で検出可能なNCRアッセイ結果を示す。
図3図3はローディングされたNCRプローブから標的-クローニング鎖の放出を模式的に示す。
図4図4はNCRアッセイの間のサンドイッチ複合体のSEMイメージを示すものであり、NCRアッセイは標的配列濃度10pMで行われ、NCRサイクル回数が増加するほどサンドイッチ複合体の生成が増加することを示す(Scale bar:1μm)。
図5図5は2回のNCRアッセイサイクル後のUV-Vis吸光度領域測定結果を示すグラフである。
図6図6はNCRプローブ上の標的-クローニング鎖を定量した結果を示すグラフである。
図7図7はNCRプローブ上の鋳型鎖を定量した結果を示すグラフである。
図8図8はNCRプローブの動的光散乱(dynamic light scattering;DLS)測定結果を示すグラフである。
図9図9はNCRプローブのゼータ電位測定結果を示す。
図10図10はNCRプローブのUV-Visスペクトル測定結果を示すグラフである。
図11図11はローディング(標的-クローニング鎖とハイブリダイズされた部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む)およびアンローディング(鋳型鎖だけを含む)NCRプローブの標的鎖の捕捉の程度を示すグラフである。
図12a図12は比色NCRアッセイ(Colorimetric NCR assay)結果をPCRと比較して示すものであり、図12aはNCRとPCR間のgDNA検出過程の比較概略図であり、
図12b図12bはバクテリアから抽出したgDNAをNCRまたはPCRで検出した結果を示すものであり、NCRアッセイは肉眼検出可能であるが(検出限界:10-7ng)、PCRはゲル電気泳動結果を通じて確認可能であることを示し(検出限界:10-3ng)、
図12c図12cはNCRおよびPCR分析結果(UV-Visスペクトル)を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳しく説明する。しかし、下記の実施例は本発明の内容を例示するものに過ぎず、下記の実施例により本発明の権利範囲が制限されない。
【0073】
実施例1
1.1.材料準備
50-nmクエン酸塩-安定化金ナノ粒子をBBI Solutions(Cardiff、UK)から購入した。Dynabeads(登録商標)M-270カルボン酸(carboxylic acid)はThermo Fisher Scientific(Waltham、MA、USA)から購入した。全ての化学物質はSigma-Aldrich(St. Louis、MO、USA)から購入し、入手された状態で追加の精製なしに使用した。下記の実施例で使用されたオリゴヌクレオチドはIntegrated DNA Technologies,Inc.から入手した。蒸溜水はMillipore system(>18.0MΩ、Milli-Q)から入手し、全ての実験に使用した。Perfect Hyb(商標名)Plus Hybridization buffer(Sigma-Aldrich)および1x PBS bufferを1:3の比率で混合した混合溶液をNCRアッセイのハイブリダイゼーション緩衝液(hybridization buffer)として使用した。
【0074】
本出願の効果を実験的に証明するために、検出対象の標的オリゴヌクレオチド(以下、標的鎖または標的配列とも記載される)は、炭疽菌致死因子(anthrax lethal factor)のDNA塩基配列(GAG GGA TTA TTG TTA AAT ATT GAT AAG GAT;配列番号1)を選択して、以降の試験を進行した。感染性病原体の検出において、特別な装備なしに迅速かつ敏感に検出できる現場感知技術の重要性が高いため、検出対象として感染性病原体の代表例である炭疽菌関連遺伝子を選択した。
【0075】
1.2.基質粒子(磁性プローブ)の作製
カルボン酸-官能化された磁性粒子(直径2.8μm)は使用前に10分間完全にボルテックスした。磁性粒子200μlを新たなチューブに移した。前記磁性粒子を25mMの2-[N-モルホリノ]エタンスルホン酸(2-[N-morpholino] ethane sulphonic acid;MES)緩衝液(pH4.8)で2回洗浄し、同一の緩衝液20μlに再懸濁させた。100mM MES(pH4.8)に溶解されたN-エチル-N’-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(100mg/ml)8μlおよび5’-アミン化オリゴヌクレオチド(標的-捕捉鎖)(10nmol;5’-NH-(CH-A10-ATC CTT ATC AAT ATT-3’:NH-(CH-A10-[配列番号3])の混合物を前記洗浄された磁性粒子溶液に添加した。室温で4時間ボルテックスしながらインキュベーションした後、磁性粒子を3回洗浄し、ハイブリダイゼーション緩衝液に分散させた。前記で得られた磁性粒子は下記の実施例で標的物質検出のための基質粒子として使用した。
【0076】
1.3.NCRプローブの作製
ジスルフィド-変調された鋳型鎖(5’-TAA CAA TAA TCC CTC ATC CTT ATC AAT ATT TAA CAA TAA TCC CTC (A)10-3’;[配列番号2]-(A)10)は、室温で2時間インキュベーションを通じて100mMホスフェート緩衝液(pH8)に溶解された100mMジチオトレイトール(dithiothreitol;DTT)を使用して還元させて、3’-チオール化鋳型鎖(5’-[配列番号2]-PEG-A10-SH-3’)を準備した。還元後、NAP-5カラム(Fisher Scientific)を使用して過量のDTTを除去した。新たに還元されたチオール(thiol)化鋳型鎖を10pmoleの量で0.1%(v/v)のSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)および平均直径50nmの金ナノ粒子(AuNPs)5.17moleが含まれている蒸溜水溶液に添加した。このように得られた混合溶液を室温で2時間インキュベーションした後、最終のリン酸塩濃度が100mM(pH7.4)になるように調整した。0.01%SDSが含まれている2M NaClの6個の分取量を30分間隔で添加して、最終の塩濃度が0.3Mになるようにした。前記で得られた混合物を各塩添加後、10分間80℃で加熱した。最終の混合物を室温で徐々に冷却させて一晩中インキュベーションして、表面に多数の鋳型鎖が結合(接合)された金ナノ粒子懸濁液を得た。懸濁液を遠心分離(8000rpm、10分)を通じて洗浄し、得られた粒子溶液を蒸溜水に再分散させた。鋳型鎖-接合された金ナノ粒子を300mM NaCl緩衝液で過量の標的-クローニング鎖(5’-GAG GGA TTA TTG TTA AAT ATT GAT AAG GAT-3’;配列番号1)と共に55℃で10分間インキュベーションした後、室温で1時間 冷却させた。過量の標的-クローニング鎖を遠心分離(11000rpm、2分)で除去した。0.1%(v/v)SDSが含まれている40-mM MgCl2緩衝液にある過量のtoehold DNA(配列番号4)を同一のチューブに添加し、43℃で30分間インキュベーションした後、3時間室温で冷却して、表面に鋳型鎖が結合され、前記鋳型鎖に標的-クローニング鎖が部分的にハイブリダイズされている形態のNCRプローブを得た。連続的なハイブリダイゼーション後、得られたNCRプローブを遠心分離(11000rpm、2分)を通じて4回洗浄し、ハイブリダイゼーション緩衝液に再分散させた。
【0077】
前記実施例1.2および1.3に使用されたオリゴヌクレオチドの配列を下記の表1に整理した:
【0078】
【表1】
【0079】
1.4.NCRアッセイ
増幅前に、PerfectHyb(商標名)Plus Hybridizationbuffer(Sigma-Aldrich)を1x PBS bufferと1:3の比率で混合して準備した。ハイブリダイゼーションのために、標的配列(GAG GGA TTA TTG TTA AAT ATT GAT AAG GAT;配列番号1)100μlと磁性基質粒子(実施例1.2)10μl(5mg/ml)をチューブに入れて混合した後、10分間インキュベーションした。前記チューブにNCRプローブ(実施例1.3)15μl(1OD)(5.17x10-2pmole/ml)(775amole)を添加した後、20分間インキュベーションした。磁性分離機を通じて磁性基質粒子をハイブリダイゼーション緩衝液で3回洗浄した後、30ulの蒸溜水に分散させて80℃で2分間インキュベーションして脱ハイブリダイズさせた。次のサイクルのアッセイのために、ハイブリダイゼーション緩衝液を添加して塩濃度を増加させた後、10分間インキュベーションした。NCRプローブ15μl(1OD)(5.17x10-2pmole/ml)(775amole)添加、20分間インキュベーション、核酸の洗浄および放出過程を繰り返してアッセイ産物(assay product)がより高い赤色強度を示すようにした。
【0080】
1.5.NCRアッセイ産物のUV-Vis測定
NCRアッセイ産物を磁気分離機を通じて即時分離し、UV-Vis測定前に核酸放出のために80℃で培養した。それぞれの放出されたNCRアッセイ産物の吸光度スペクトルはultraviolet-visible spectrometer(S-3100、SCINCO)を使用して測定した。金ナノ粒子プローブ(NCRプローブ)から測定された赤色UV-Vis強度を532nmで測定した。
【0081】
1.6.ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Polyacrylamide gel electrophoresis)
toehold-媒介変位反応を含む活性NCRプローブ作製過程を検証するためにポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。30%(w/v)acrylamide/Bis溶液、脱イオン水、5X TBE(Tris-Borate-EDTA)緩衝液、過硫酸アンモニウム、およびTEMED(tetramethylethylenediamine)を使用して15%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを製造した。DNAが結合された金ナノ粒子(実施例1.3)を0.1M KCN溶液で処理して溶解した。ローディング染料が含まれている金-溶解されたDNAサンプルを1.5mm厚さのゲルの各ウェルに添加した。ゲル上でのDNA分子量の確認のために、20bpDNAラダー(DNA ladder)を他のウェルにローディングした。電源供給装置を使用して前記ゲルに電場(130V)を70分間印加して電気泳動した。電気泳動後、SYBR Green I(Lonza)を使用してゲルを10分間染色し、ゲルイメージャー(gel imager)により306nmでUV光励起を使用してゲルを映像化した。
【0082】
1.7.走査電子顕微鏡(Scanning electron microscopy;SEM)
各サイクルでの標的配列(配列番号1)の存在下の磁性基質粒子とNCRプローブのサンドイッチ複合体を電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope;FE-SEM;SUPRA 55VP、Carl Zeiss、Germany)で観察した。サンドイッチ複合体の構造粒子を銅グリッドにローディングし、Ptコーティング(EM ACE200、Leica、Austria)処理し、イメージ化した。FE-SEMイメージングは、NICEM(National Instrumentation Center for Environmental Management;Seoul National University、Seoul、South Korea)で行った。
【0083】
1.8.オリゴヌクレオチドの定量化
標的オリゴヌクレオチドの定量化のために蛍光染料付着された(Fluorescent dye-modified)オリゴヌクレオチドを使用してAuNPに基づくPCRプローブを作製した。蛍光光度計(F200 Pro、TECAN)を利用して蛍光信号を測定した。鋳型鎖と標的-クローニング鎖は5’末端にそれぞれCy3染料(鋳型鎖)とCy5染料(標的-クローニング鎖)を使用して標識した。塩処理(salting)およびNCRアッセイ後、金ナノ粒子を10mM KCNに溶解した。残存する蛍光-標識オリゴヌクレオチドを使用して蛍光強度を測定した。染料サンプルの知られた濃度の検量線(calibration curve)を定量化に使用した。
【0084】
1.9.動的光散乱法(dynamic light scattering;DLS)およびゼータ電位測定を通じた粒子特性の分析
NCRプローブと磁性基質粒子のサイズ特性および表面電荷特性の分析のために、前記NCRプローブおよび/または磁性基質粒子を蒸溜水溶液に分散させた後、動的光散乱光度計(Malvern Instrument、Malvern)を利用して粒子サイズおよび電荷を測定し、3回の測定後に平均値を利用した。
【0085】
データの利用可能性(Data availability)
この論文内のプロットを裏付けるデータおよびこの研究のその他結果は、合理的な要求により責任著者から入手できます。(The data that support the plots within this paper and other findings of this study are available from the corresponding author upon reasonable request.)
【0086】
実施例2.比色NCRアッセイ(Colorimetric NCR assay)
実施例1.2および1.3でそれぞれ作製された磁性プローブとNCRプローブに10pM濃度の標的オリゴヌクレオチド(GAG GGA TTA TTG TTA AAT ATT GAT AAG GAT;配列番号1)を処理した後、各サイクルでのNCRプローブと磁性プローブ間に形成されたサンドイッチ複合体を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し(実施例1.7参照)、反応液の色変化を肉眼で観察した。このように得られたSEMイメージおよび溶液の色変化を図1c(Scale bar、200nm;挿入図はアンローディングされたNCRプローブの数が増加するにつれて肉眼で感知できる色の見え(color appearance)である)および図4(Scale bar:1μm)に示した。これら結果に示されているように、NCRサイクルが繰り返されるにつれ、磁性プローブ表面に捕捉されたNCRプローブの数が増加し、溶液の赤色の色強度が増加することを確認できる。
【0087】
また、実施例1.3でのように、toehold配列(配列番号4)を添加して作製されたNCRプローブで、鋳型鎖の標的-結合部位と標的-クローニング鎖間の所望しない結合が起こるか否かを確認するために、実施例1.6を参照してゲル電気泳動を行った。比較のために、toehold DNAを処理していないNCRプローブに対して同一の試験を行った。前記で得られたゲル電気泳動結果を図2aに示した。図2aに示されているように、実施例1.3でのようにtoehold配列が添加された場合、鋳型鎖の標的-結合部位と標的-クローニング鎖間の結合なしに、鋳型鎖の標的-クローニング部位と標的-クローニング鎖間の適した結合が行われ、標的-結合部位が一本鎖で露出された活性化(active)状態のNCRプローブが得られる反面、toehold配列が添加されていない場合には鋳型鎖の標的-結合部位と標的-クローニング鎖間の結合が起きて標的-結合部位が露出されない不活性化(inactive)状態のNCRプローブが得られることを確認できる。このような結果は、toehold配列の添加により標的-結合部位を露出させる意図したトーホールド媒介変位(toehold-mediated displacement)が起こったことを示す。
【0088】
実施例3.NCR assay(UV-Visスペクトル)
標的オリゴヌクレオチド濃度またはtoehold配列の使用有無によるNCRアッセイ結果をUV-Visスペクトル(UV-Vis spectrum)で確認した(実施例1.4および1.5参照)。
【0089】
標的特異性の確認のために、比較例として、非標的配列(N;non-target sequence;配列番号6)および1塩基ミスマッチ配列(S:single-base mismatch sequence;配列番号5)を使用して同一の試験を行った。
【0090】
前記で得られた結果を図2b~2dに示した。
【0091】
図2bは多様な濃度の標的配列に対するNCR結果(UV-Visスペクトル(UV-Vis spectrum))を示すグラフであり、非標的配列(N;non-target sequence)および1塩基ミスマッチ配列(S:single-base mismatch sequence)は検出しない反面、標的配列は高い感度(検出限界:100zM以上)に検出し、検出能はサイクル回数に比例することを示す。図2c(1サイクル遂行)および2d(1~3サイクル遂行)はNCRアッセイ結果を肉眼で確認した結果を示すものであり、これも、NCRアッセイが非標的配列および1塩基ミスマッチ配列は検出しない反面、標的配列は高い感度に検出できることを示す。このような結果は本出願で提供されるNCRアッセイが標的-特異的であると共に、高い感度に標的物質を増幅/検出/可視化できることを示す。また、図2cは鋳型鎖の標的-結合部位が露出された活性化NCRプローブがNおよびS配列と標的配列を肉眼で明確に区分可能であることを示す。
【0092】
また、2回のNCRアッセイサイクル後のUV-Vis吸光度領域を測定して、図5に示した。図5で、初期標的配列濃度は10pMにし、NとSはそれぞれnon-target sequenceとsingle-base mismatch sequenceを示し、optical extinction値は532nmで測定した(Error bars show the s.d. of the extinction values from three independent experiments)。図5に示されているように、鋳型鎖の標的-結合部位が露出された活性化NCRプローブがNおよびS配列と標的配列を肉眼で明確に区分可能なようにすることを示す。
【0093】
実施例4.オリゴヌクレオチドの定量化
実施例1.8の方法で実施例1.3で準備されたNCRプローブ上のオリゴヌクレオチドの定量化を行い、その結果を図6および図7に示した。
【0094】
図6はNCRプローブ上の標的-クローニング鎖を定量した結果を示す。AuNP上の標的クローニング鎖の数は蛍光強度を測定して計算した。Cy5染料で標識された標的-クローニング鎖を使用して作製されたNCRプローブを試験に使用した。Cy5染料の知られた濃度と連続希釈されたサンプルは標準曲線を準備した。NCRプローブ(AuNP)は10mM KCNに溶解して使用し、標準曲線の青色の三角形表示がNCRプローブ溶液で測定された蛍光強度を示す。
【0095】
図7はNCRプローブ上の鋳型鎖を定量した結果を示す。AuNP当たり鋳型鎖の数は蛍光強度を測定して計算した。Cy3染料で標識された鋳型鎖をAuNPに接合させて得られたNCRプローブを試験に使用した。希釈された試料およびCy3染料の知られた濃度により標準曲線を準備した。NCRプローブ(AuNP)は10mM KCNに溶解して使用した。標準曲線の赤色の三角形表示は鋳型鎖-結合AuNPで測定された蛍光強度である。
【0096】
実施例5.動的光散乱(dynamic light scattering;DLS)測定結果
実施例1.9を参照してNCRプローブの動的光散乱(dynamic light scattering;DLS)測定を行い、その結果を図8~11に示した。
【0097】
図8はNCRプローブの動的光散乱(dynamic light scattering;DLS)測定結果を示す。NCRプローブ製造過程中の粒子サイズの変化をDLSで測定した。鋳型鎖で変形(結合)された金ナノ粒子は78.82nmのZ-平均サイズを示す。標的-クローニング鎖のハイブリダイゼーションを通じて製造された不活性NCRプローブは Z-平均サイズ(Z-average size)が91.28nmに測定されて、鋳型鎖結合された金ナノ粒子よりDNA長さが長く現れた。Toehold sequenceを通じて過量の標的-クローニング鎖を除去した後の活性NCRプローブは、Z-平均サイズ(Z-average size)が69.51nmに測定されて、減少されたDNA長さを有することを確認した。鋳型鎖変形AuNPとNCRプローブの塩基数は同一であるが、活性NCRプローブは二本鎖螺旋構造のDNAを含むため、Z-平均サイズがより小さく測定された。
【0098】
図9はNCRプローブのゼータ電位測定結果を示す。NCRプローブ作製過程中の表面電荷変化はゼータ電位で測定され得る。
【0099】
図10はNCRプローブのUV-Visスペクトル測定結果を示す。NCRプローブ作製中の多様な段階のUV-Vis吸光度スペクトルを測定した。NCRプローブはDNA鎖が金ナノ粒子の表面に接合されることによってUV-Visデータが青色移動することを示す。
【0100】
図11はローディング(標的-クローニング鎖とハイブリダイズされた部分的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む)およびアンローディング(鋳型鎖だけを含む)NCRプローブの標的配列の捕捉の程度を示すグラフである。アンローディングNCRプローブはNCRアッセイ中に生成され、次のサイクルで所望するサンドイッチ複合体の形成を妨害する。NCRアッセイの間にアンローディングされたNCRプローブの影響を決定するために、アンローディングされたNCRプローブとローディングされたNCRプローブの動力学を単一サイクルNCRアッセイを通じて測定した。比較のために、二つのプローブ共に標的配列と同一の濃度、つまり、10pMに対してそれぞれ添加された混合物に対して同一の試験を行った。ローディングされたNCRプローブとアンローディングNCRプローブの混合物は1:1比率で準備した。アンローディングNCRプローブがローディングNCRプローブに比べて良好な反応を示すと確認された。
【0101】
実施例6.比色NCRアッセイ(Colorimetric NCR assay)とPCRとの比較
バクテリア(Bacillus cereus)の遺伝体DNA(gDNA)を本出願の比色NCRアッセイ(Colorimetric NCR assay)および既存のPCRで検出して、その結果を比較した。
【0102】
前記バクテリアは、実施例1.1~1.3で標的として使用された配列番号1を共有するため、前記NCRアッセイ(NCR assay)は実施例1.1~1.3で準備された磁性プローブおよびNCRプローブを使用して、実施例1.4の方法で行った。
【0103】
PCRは下記のプライマ-配列および条件で行った:
F-primer:5’-CTGGCTCAGGATGAACGC-3’(配列番号7)
R-primer:5’-CGACTTCGGGTGTTACAA-3’(配列番号8)
【0104】
PCR条件:95Cで1分、53Cで30秒、72Cで1分30秒の3段階を35サイクル繰り返す。
【0105】
前記で得られた 比色NCRアッセイ(Colorimetric NCR assay)およびPCRの比較結果を図12a~12cに示した。図12aはNCRとPCR間のgDNA検出過程の比較概略図であり、NCRアッセイ(NCR assay)の場合、検出のための装備が不要であり、PCRより短時間に遂行可能である。図12bはバクテリアで抽出したgDNAをNCRまたはPCRで検出した結果を示すものであり、NCRアッセイは肉眼検出可能であるが(検出限界:10-7ng)、PCRはゲル電気泳動結果を通じて確認可能であることを示す(検出限界:10-3ng)。図12cはNCRおよびPCR分析結果(UV-Visスペクトル(UV-Vis spectrum))を比較して示すグラフであり、NCRアッセイ(NCR assay)がPCRアッセイ(PCR assay)よりほぼ10倍高い感度を示すことを確認できる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図12c
【配列表】
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【国際調査報告】