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特表2024-540283第一材料および第二材料を含むマイクロスフェア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】第一材料および第二材料を含むマイクロスフェア
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6848 20180101AFI20241024BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C12Q1/6848 Z
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526533
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2022080978
(87)【国際公開番号】W WO2023079140
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21206745.8
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519236918
【氏名又は名称】ブリンク アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】エルマントラウト、オイゲン
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー、トマス
(72)【発明者】
【氏名】レムート、オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】シュタインメッツァー、カトリン
(72)【発明者】
【氏名】クリンガー、スザンネ
(72)【発明者】
【氏名】カニッツ、レア
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045BB03
2G045DA13
2G045DA14
2G045FA11
2G045FB02
2G045FB12
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR90
4B063QS25
4B063QS40
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、第一材料、好ましくは第一ポリマー、および第二材料、好ましくは第二ポリマーを含むマイクロスフェアに関する。また本発明は、複数のかかるマイクロスフェアを含む液相に関する。さらに、本発明は、サンプルから核酸を捕捉する方法およびサンプルから核酸を増強する方法に関する。また本発明は、多様な核酸分析物の検出のためのアッセイにおける複数のマイクロスフェアの使用に関する。さらに、本発明は、多様なサンプル中の単一の核酸分析物の検出のためのアッセイにおける複数のマイクロスフェアの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一材料および第二材料を含むマイクロスフェアであって、第一材料は水溶液に曝露または水溶液を含む場合多孔質ハイドロゲルを形成することができ40℃から90℃までの範囲の融解温度を有し;第二材料は前記多孔質ハイドロゲル内でネットワークを形成する、または前記第二材料は前記第一材料に付着され両材料が一緒になって前記多孔質ハイドロゲル内でネットワークを形成し;前記第二材料はpKa値を有しpHが前記pKa値以上での水性環境において凝結することができ;前記ネットワークは前記第一材料の前記融解温度以上の温度に曝露された場合に収縮することができ;前記マイクロスフェアがa)蛍光標識およびb)磁性粒子のうちの少なくとも1つをさらに含む、マイクロスフェア。
【請求項2】
前記第一材料が第一ポリマー、および前記第二材料が第二ポリマー、オリゴマーまたはモノマーであり;
前記第二材料が第二ポリマーである場合、前記第二ポリマーはそれ自体と架橋したポリマーまたは前記第一ポリマーと架橋したポリマーであり;
前記第二材料がオリゴマーまたはモノマーである場合、前記オリゴマーまたは前記モノマーは第一ポリマーに付着される、
請求項1に記載のマイクロスフェア。
【請求項3】
前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーまたは前記オリゴマーまたは前記モノマーが、さらに、pHが前記pKa値未満で核酸を結合でき、好ましくは前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーまたは前記オリゴマーまたは前記モノマーの前記pKa値が6を超える、
請求項1~2のいずれかに記載のマイクロスフェア。
【請求項4】
前記蛍光標識が、a)50nmから10μmまで、好ましくは100nmから5μmまで、より好ましくは1μmから5μm、さらにより好ましくは1μmから3μmまでの範囲のサイズの蛍光粒子;b)前記第一および/または第二材料、好ましくは前記第一および/または第二ポリマー/前記オリゴマー/前記モノマーに付着された非微粒子蛍光色素;およびc)a)およびb)の組み合わせ、から選択される、請求項1~3のいずれかに記載のマイクロスフェア。
【請求項5】
前記磁性粒子のサイズが、50nmから10μmまで、好ましくは100nmから5μmまで、より好ましくは1μmから5μmまで、さらにより好ましくは1μmから3μmまでの範囲である、請求項1~4のいずれかに記載のマイクロスフェア。
【請求項6】
前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーが、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーへの1つまたはいくつかの増幅プライマーの可逆的かつpH非依存的固定化を可能にする結合メンバーを含み、好ましくは、かかる可逆的かつpH非依存的固定化のために、前記結合メンバーは前記1つまたはいくつかの増幅プライマーに付着された結合体と特異的に相互作用し;より好ましくは、前記マイクロスフェアは、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマー上の前記結合メンバーと、前記1つまたはいくつかの増幅プライマー上の前記結合体との間の前記特異的な相互作用を介して、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーに付着され固定化される結合体を有する1つまたはいくつかの増幅プライマーをさらに含み;さらにより好ましくは、前記結合メンバーが、アビジン、ストレプトアビジンおよびその誘導体から選択され、ならびに前記結合体が、デスチオビオチン、イミノビオチン、切断可能なスペーサーアームを有するビオチン、セレノビオチン、オキシビオチン、ホモビオチン、ノルビオチン、ジアミノビオチン、ビオチンスルホキシド、ビオチンスルホン、エピビオチン、5-ヒドロキシビオチン、2-チオビオチン、アザビオチン、カルボビオチン、ビオチンのメチル化誘導体,およびケトンビオチンから選択される、またはその逆である、先行する請求項のいずれかに記載のマイクロスフェア。
【請求項7】
前記第一材料が、第一ポリマーであり、アガロース、ゼラチン、ヒアルロナン、エラスチン、エラスチン様ポリペプチド、上限臨界溶液温度(UCST)を有する熱応答性ポリマー、例えばポリ(N-アクリロイルグリシンアミド)(PNAGA)、ポリ(アリルアミン)-コ-ポリ(アリルウレア)およびその誘導体、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(N-アクリロイルアスパルギンアミド)、ポリ(N-メタクリロイルグルタミンアミド)、ポリ(アクリルアミド)-コ-(アクリロニトリル)、ポリ(スルホベタイン)、ポリ(ホスホリルコリン);および水溶液に曝露または水溶液を含む場合多孔質ハイドロゲルを形成できかつ40℃から90℃までの範囲の融解温度を有する他のポリマーから選択され;ならびに前記第二材料が、キトサンおよびその誘導体、ゼラチンおよびその誘導体、メチルセルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(pNIPAM)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(2-ジメチル(アミノエチル)メタクリレート)、ポリ(リジン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(アルギニン)、および塩基性アミノ酸が付着するまたはかかる骨格の部分として組み込まれたポリマー骨格から選択される第二ポリマー;または前記第二材料が、オリゴマー、好ましくはオリゴペプチド、ヒスチジン、リジン、およびアルギニンなどの塩基性アミノ酸を含むまたはからなる前記オリゴペプチドから選択されるオリゴマー;または前記第二材料が、ヒスチジン、リジンおよびアルギニンなどの塩基性アミノ酸から選択されるモノマー;のいずれかであり、
但し、前記第一および前記第二材料がそれぞれ第一および第二ポリマーである場合、前記ポリマーは異なり;
好ましくは、前記第一材料が非架橋の第一ポリマーおよび前記第二材料が架橋された第二ポリマーであり;または同様に好ましくは、前記第一材料が第一ポリマーおよび前記第二材料が前記第一ポリマーと架橋された第二ポリマーであり;より好ましくは、前記第一ポリマーがアガロースおよび前記第二ポリマーが架橋キトサンである、先行する請求項のいずれかに記載のマイクロスフェア。
【請求項8】
前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーが多孔質ハイドロゲルの形態となるように水溶液を含む、請求項1~7のいずれかに記載のマイクロスフェア。
【請求項9】
さらにオリゴヌクレオチドプライマーまたはオリゴヌクレオチドプライマーではない核酸を含み、核酸が
-前記水溶液が前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーの前記pKa値未満のpHを有する場合、前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーに結合され、ならびに
-前記水溶液が前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーの前記pKa値以上のpHを有する場合、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの前記多孔質ハイドロゲルのそばのまたは中のマイクロスフェア内にまだ保持されているが、前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーに必ずしも結合されていないか、もしくはもはや結合されていない、
請求項8に記載のマイクロスフェア。
【請求項10】
前記水溶液が以下のいずれかである:
a)洗浄および/もしくは前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーへの核酸の結合を促進するための第一組成物であって、前記第一組成物は前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーの前記pKa値未満のpH値を有する、またはより好ましくは前記第一組成物は前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーのpKa値未満のpH範囲に緩衝化する緩衝液を含む;あるいは
b)核酸増幅を促進および実施するための第二組成物であって、前記第二組成物は核酸増幅を実施するのに適切なpH範囲に緩衝化する緩衝液、モノ-ヌクレオシド-トリホスフェート、適切な核酸ポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼなどの増幅酵素、任意で前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーにまだ固定されていない場合1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマー;および任意で増幅された核酸などの増幅産物の検出のための核酸色素を含み;および/または、任意で、それぞれの分子プローブ、例えば、TaqManプローブもしくは分子ビーコンを含む;;核酸増幅を実施するための適切な前記pH範囲が、前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)の前記pKa値よりも高い、
請求項8~9のいずれかに記載のマイクロスフェア。
【請求項11】
前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーが非凝結形態である、請求項1~10のいずれかに記載のマイクロスフェア。
【請求項12】
前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーが凝結形態である、請求項1~10のいずれかに記載のマイクロスフェア。
【請求項13】
水および水溶液と不混和性液相、例えば油相であって、請求項11に記載の複数のマイクロスフェア、または請求項12に記載の複数のマイクロスフェアを含む、液相。
【請求項14】
核酸またはサンプルからの核酸を捕捉および/または濃縮する方法であって、前記方法は以下のいずれかを含む:
a)請求項1~8のいずれかに定義された複数のマイクロスフェアを前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーへの核酸の結合を促進するための第一組成物中に提供する工程、または前記マイクロスフェアをかかる第一組成物に曝露する工程;前記第一組成物は前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーの前記pKa値未満のpH値を有する、または好ましくは、前記第一組成物は前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーのpKa値未満のpH範囲に緩衝化する緩衝液を含み;これにより、前記マイクロスフェアが前記第一組成物と平衡化し第一組成物を組み込むことを可能にし;好ましくは、前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーの前記pKa値が6を超える;ならびに
b)工程a)からの前記マイクロスフェアを、核酸を含有するまたは含有すると考えられるサンプルへ曝露する工程、これにより存在すれば前記核酸を、前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーに結合させることができ、前記サンプルは、好ましくはpH範囲を前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーのpKa値未満に緩衝化する緩衝液も含み、これにより存在すれば前記サンプル中の核酸を捕捉する;
あるいは
a’)請求項1~8のいずれかに定義された複数のマイクロスフェアを、核酸を含有するまたは含有すると考えられるサンプルに曝露する工程、これにより存在すれば前記核酸を、前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーに結合させることができ、前記サンプルは前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーのpKa値未満のpHを有し、好ましくは、前記サンプルはpH範囲を前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーのpKa値未満に緩衝化する緩衝液を含み;これにより、かかる曝露の結果として、存在すれば前記サンプル中の核酸を捕捉する。
【請求項15】
サンプルから核酸を増強する方法であって、前記方法は請求項14の方法を実施する工程;および以下を含む:
いずれか(オプションA):
c)工程b)または工程a’)からの前記マイクロスフェアを、核酸増幅を促進および実施するための第二組成物に曝露する工程であって、第二組成物は核酸増幅を実施するために適切なpH範囲に緩衝化する第二緩衝液、モノ-ヌクレオシド-トリホスフェート、適切な核酸ポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼなどの増幅酵素を含み、および、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマー上の結合メンバーと、前記1つまたはいくつかの増幅プライマー上の結合体との間の特異的な相互作用を介して、前記マイクロスフェアが前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーに固定された1つまたはいくつかの増幅プライマーをまだ含んでいない場合は、1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマーをさらに含む;これにより前記マイクロスフェアが核酸増幅を促進および実施するための前記第二組成物と平衡化し前記第二組成物を取り込むことを可能にし;任意で、前記第二組成物は、増幅した核酸などの増幅産物の検出のための核酸色素、および/またはそれぞれの分子プローブ、例えば、TaqManプローブもしくは分子ビーコンを更に含み;好ましくは、核酸増幅を実施するために適切な前記pH範囲が前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーの前記pKa値よりも高い;
d)工程c)の前記マイクロスフェアを、核酸増幅を促進および実施するための前記組成物内で増幅プロトコルに供する工程であって、かかるプロトコルは、前記サスペンションを前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの融解温度より高い温度に加熱する少なくとも1つの工程を含む、またはそれに先行してまたはそれに続いて行われ、好ましくは、かかるプロトコルは、核酸が前記マイクロスフェア中に存在する場合、前記マイクロスフェアの前記サスペンションが曝露される温度を、前記1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマーの配列に一致する核酸の増幅を可能にするレベルまで、反復的かつ周期的に上昇および下降させることを含む;
あるいは(オプションB):
e)工程b)または工程a’)からの前記マイクロスフェアを、核酸増幅を促進および実施するための第二組成物に曝露する工程であって、第二組成物は核酸増幅を実施するために適切なpH範囲に緩衝化する第二緩衝液、モノ-ヌクレオシド-トリホスフェート、適切な核酸ポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼなどの増幅酵素を含み、および、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマー上の結合メンバーと、前記1つまたはいくつかの増幅プライマー上の結合体との間の特異的な相互作用を介して、前記マイクロスフェアが前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーに固定された1つまたはいくつかの増幅プライマーをまだ含んでいない場合は、1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマーをさらに含む;これにより前記マイクロスフェアが核酸増幅を促進および実施するための前記第二組成物と平衡化し前記第二組成物を取り込むことを可能する;前記第二組成物は、任意で、増幅した核酸などの増幅産物の検出のための核酸色素、および/またはそれぞれの分子プローブ、例えば、TaqManプローブもしくは分子ビーコンを更に含み;好ましくは、核酸増幅を実施するために適切な前記pH範囲が前記第二材料、例えば、前記第二ポリマーの前記pKa値より高い;
f)工程e)からの前記マイクロスフェアを水および水溶液と不混和性液相、例えば油相に移す工程であって、それにより、前記水不混和性液相、例えば油相により互いに分離される前記マイクロスフェアのサスペンションを生成する工程;および
g)工程f)の前記マイクロスフェアを増幅プロトコルに供する工程であって、かかるプロトコルは、前記サスペンションを前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの融解温度より高い温度に加熱する少なくとも1つの工程を含む、またはそれに先行してまたはそれに続いて行われ、好ましくは、かかるプロトコルは、前記マイクロスフェアの前記サスペンションが曝露される温度を、核酸が前記マイクロスフェア中に存在する場合、前記1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマーの配列に一致する核酸の増幅を可能にするレベルまで、反復的かつ周期的に上昇および下降させることを含み、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの融解温度より高い温度へ加熱する結果として、前記マイクロスフェア中の第二材料、好ましくは前記第二ポリマーが収縮し、それにより各マイクロスフェア内に収縮したコアを生成し、蛍光標識および/または磁性粒子が、それぞれのマイクロスフェアに存在するまたは含まれる場合、前記収縮したコア内に蓄積し、それによりそれぞれのマイクロスフェアの検出および/またはさらなる操作を促進する、好ましくは、i)前記マイクロスフェアの前記収縮したコア内に蓄積された前記蛍光標識および/またはii)前記磁性粒子は、個々のマイクロスフェアまたは複数のマイクロスフェアの位置を特定するおよび/または同定するために使用される。
【請求項16】
さらに以下の工程を含む、請求項15に記載の方法:
h)以下のいずれかにおいて、存在する場合増幅した核酸を検出する工程、
核酸増幅を促進および実施するための前記組成物中(オプションA)、または
前記マイクロスフェア中(オプションB);
ここで、前記増幅プロトコルは、光学的に検出できるシグナルをもたらし、光学的に検出できるシグナルが生成される、
核酸増幅を促進および実施するための前記組成物中(オプションA)、または
それぞれのマイクロスフェアの前記収縮したコアを取り囲むスペース中(オプションB);
ここで前記光学的に検出できるシグナルの検出は増幅した核酸の存在を示す。
【請求項17】
個々のマイクロスフェアまたは複数のマイクロスフェアは、i)前記マイクロスフェアの前記収縮したコア内に蓄積された前記蛍光標識および/またはii)前記磁性粒子を使用して位置を特定および/または同定される、請求項15~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記マイクロスフェアの前記収縮したコア内に蓄積されたi)前記蛍光標識および/またはii)前記磁性粒子;および/またはiii)融合マイクロスフェア内の1つを超える収縮したコアの存在;および/またはiv)非融合マイクロスフェア内の1つだけの収縮したコアの存在を用いて、融合マイクロスフェアが非融合マイクロスフェアと区別される、請求項15~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
多様な核酸分析物の検出のためのアッセイにおける請求項1~12のいずれかに定義される複数のマイクロスフェアの使用であって、前記使用は以下を含む:請求項15~18のいずれかに記載の方法を実施すること、また前記使用が、異なるマイクロスフェアを含み、それぞれのマイクロスフェアが異なる蛍光標識を含み、および前記特定の核酸分析物の増幅のための特異的な増幅プライマーまたは特異的な一組のかかる増幅プライマーを含むことにより特定の核酸分析物の検出に対して特異的である、ここで、前記異なるマイクロスフェアが、前記蛍光標識によって互いに検出可能に区別することができ、またそれぞれのマイクロスフェアは異なる核酸分析物に対して特異的である使用。
【請求項20】
多様なサンプル中の単一の核酸分析物の検出のためのアッセイにおける請求項1~12のいずれかに定義される複数のマイクロスフェアの使用であって、前記使用は以下を含む:請求項15~18のいずれかに記載の方法を実施すること、また前記使用が、異なるマイクロスフェアを含み、それぞれのマイクロスフェアが異なる蛍光標識を含み、前記単一の核酸分析物の増幅のための増幅プライマーまたは一組のかかる増幅プライマーをさらに含み、それぞれのマイクロスフェアは工程b)またはa’)においてかかる特定サンプルに別々に曝露されることにより特定のサンプルに対して特異的であり、前記異なるマイクロスフェアが、前記蛍光標識によって互いに検出可能に区別することができ、またそれぞれのマイクロスフェアが同じ核酸分析物に対して特異的であり、異なるサンプルに対して特異的である使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一材料、好ましくは第一ポリマー、および第二材料、好ましくは第二ポリマーを含むマイクロスフェアに関する。また本発明は、複数のかかるマイクロスフェアを含む液相に関する。さらに本発明は、サンプルから核酸を捕捉する方法およびサンプルから核酸を増強する方法に関する。また本発明は、多様な核酸分析物の検出のためのアッセイにおける複数のマイクロスフェアの使用に関する。さらに、本発明は、多様なサンプル中の単一の核酸分析物の検出のためのアッセイにおける複数のマイクロスフェアの使用に関する。
【0002】
キトサンは、水系でDNAを捕捉するためのポリマーとして使用されてきた(Cao et al. 2006、Anal. Chem.、vol. 78. pp. 7222-7228)。キトサンポリマーで、コーティングされたチャネルを持つマイクロチップを用いて、DNAの完全水性精製プロトコルが確立された。同様のプロトコルは、RNAについても成功裏に使用されている(Hagan et al. 2009, Anal. Chem., vol. 81, pp. 5249-5256; and Zhu et al., 2020, Micromaschines, vol. 11, p. 186, doi: 10.3390/mi11020186)。キトサンでコーティングしたナイロン膜は、高度に希釈した溶液からDNAを濃縮し、その後の膜上でのin-situ PCRに適したマトリックスであることが示されている(Schlappi et al., 2016, Anal. Chem., vol. 88, pp. 7647-7653)。アガロースおよび非架橋ゼラチンを含むマイクロスフェアは、国際特許出願WO 2021/122563およびWO 2021/122579に記載されている。
【0003】
当技術分野には、核酸の効率的な捕捉および/または増幅を可能にする改良されたナノリアクタービーズに対する必要性が存在する。また、当技術分野には、取り扱いがより容易で、捕捉および/または増幅プロトコルでの使用に特に適した、改良されたビーズに対する必要性も存在する。さらに、当技術分野には、例えば、多様な分析物および/または多様なサンプルを含む多重アッセイにおいて使用される汎用性のある改良されたビーズを提供する必要性が存在する。さらに、当技術分野には、特にデジタル増幅および/または検出プロセス中に、個々に位置を特定および/または同定がより容易であり、および/または他のビーズと融合したか否かを確認することがより容易である、改良されたビーズを提供する必要性が存在する。さらに、当技術分野には、異なる検出チャネルを介した複数の異なるビーズの同定および/または検出を可能にする改良されたビーズを提供する必要性が存在する。
【0004】
第一の態様において、本発明は、第一材料および第二材料を含むマイクロスフェアに関し、第一材料は、水溶液に曝露または水溶液を含む場合、多孔質ハイドロゲルを形成することができ、また40℃から90℃までの範囲の融解温度を有する;また第二の材料は、前記多孔質ハイドロゲル内でネットワークを形成する、または前記第二材料は前記第一材料に付着され、両材料が一緒になって前記多孔質ハイドロゲル内でネットワークを形成する;前記第二材料は、pKa値を有し、pHが前記pKa値以上での水性環境において凝結することができる;前記ネットワークは、前記第一材料の前記融解温度以上の温度に曝露された場合に収縮することができる;前記マイクロスフェアは、a)蛍光標識およびb)磁性粒子の少なくとも1つをさらに含む。
【0005】
一実施形態において、前記第一材料は第一ポリマーであり、前記第二材料は第二ポリマー、オリゴマーまたはモノマーであり;
-前記第二材料が第二ポリマーである場合、前記第二ポリマーはそれ自体と架橋したポリマーまたは前記第一ポリマーと架橋したポリマーであり;
-前記第二材料がオリゴマーまたはモノマーである場合、前記オリゴマーまたは前記モノマーは前記第一ポリマーに付着される。
【0006】
一実施形態において、前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーまたは前記オリゴマーまたは前記モノマーは、さらに、pHが前記pKa値未満で核酸を結合でき、好ましくは前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーまたは前記オリゴマーまたは前記モノマーの前記pKa値は6より小さい。
【0007】
一実施形態において、前記蛍光標識は、a)50nmから10μmまで、好ましくは100nmから5μmまで、より好ましくは1μmから5μmまで、さらにより好ましくは1μmから3μmまでの範囲のサイズの蛍光粒子;b)前記第一および/または第二材料、好ましくは前記第一および/または第二ポリマー/前記オリゴマー/前記モノマーに付着された非微粒子蛍光色素;およびc)a)およびb)の組み合わせから選択される。
【0008】
一実施形態において、前記磁性粒子のサイズは、50nmから10μmまで、好ましくは100nmから5μmまで、より好ましくは1μmから5μmまで、およびさらにより好ましくは1μmから3μmまでの範囲である。
【0009】
一実施形態において、前記第一材料、好ましくは、前記第一ポリマーは、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーへの1つまたはいくつかの増幅プライマーの可逆的かつpH非依存的固定化を可能にする結合メンバーを含み、好ましくは、かかる可逆的かつpH非依存的固定化のために、前記結合メンバーは、前記1つまたはいくつかの増幅プライマーに付着した結合体と特異的に相互作用する;より好ましくは、前記マイクロスフェアは、前記第一材料、好ましくは、前記第一ポリマー上の前記結合メンバーと、前記1つまたはいくつかの増幅プライマー上の前記結合体との間の前記特異的な相互作用を介して、さらに前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーに付着し固定化される結合体を有する1つまたはいくつかの増幅プライマーを含む;さらにより好ましくは、前記結合メンバーが、アビジン、ストレプトアビジンおよびその誘導体から選択され、また前記結合体が、デスチオビオチン、イミノビオチン、切断可能なスペーサーアームを有するビオチン、セレノビオチン、オキシビオチン、ホモビオチン、ノルビオチン、ジアミノビオチン、ビオチンスルホキシド、ビオチンスルホン、エピビオチン、5-ヒドロキシビオチン、2-チオビオチン、アザビオチン、カルボビオチン、ビオチンのメチル化誘導体、およびケトンビオチンから選択される;またはその逆である。結合メンバーおよび結合体は、相互作用するように、すなわち可逆的手法で互いに結合するように選ばれることに留意すべきである。
【0010】
一実施形態において、前記第一材料は第一ポリマーであり、アガロース、ゼラチン、ヒアルロナン、エラスチン、エラスチン様ポリペプチド、上限臨界溶液温度(UCST)を有する熱応答性ポリマー(例えば、ポリ(N-アクリロイルグリシンアミド)(PNAGA)、ポリ(アリルアミン)-コ-ポリ(アリルウレア)およびそれらの誘導体から選択される)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(N-アクリロイルアスパルギンアミド)、ポリ(N-メタクリロイルグルタミンアミド)、ポリ(アクリルアミド)-コ-(アクリロニトリル)、ポリ(スルホベタイン)、ポリ(ホスホリルコリン);および水溶液に曝露または水溶液を含む場合多孔質ハイドロゲルを形成できかつ40℃から90℃までの範囲の融解温度を有する他のポリマーから選択され;また前記第二材料は、キトサンおよびその誘導体、ゼラチンおよびその誘導体、メチルセルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(pNIPAM)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(2-ジメチル(アミノエチル)メタクリレート)、ポリ(リジン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(アルギニン)および塩基性アミノ酸が付着するもしくはかかる骨格の部分として組み込まれたポリマー骨格から選択される第二ポリマー;または前記第二材料はオリゴマー、(好ましくはオリゴペプチドから選択され、オリゴペプチドはヒスチジン、リジンおよびアルギニンなどの塩基性アミノ酸を含むまたはからなる);または前記第二材料はモノマー(ヒスチジン、リジンおよびアルギニンなどの塩基性アミノ酸から選択される)のいずれかであり、
但し、前記第一および前記第二材料がそれぞれ第一および第二ポリマーである場合、前記ポリマーは異なり;
好ましくは、前記第一材料は非架橋である第一ポリマーであり、および前記第二材料は架橋である第二ポリマーであり;または同様に好ましくは、前記第一材料は第一ポリマーおよび前記第二材料は前記第一ポリマーと架橋された第二ポリマーであり;より好ましくは、前記第一ポリマーは、アガロースであり、前記第二ポリマーは架橋キトサンである。
【0011】
一実施形態において、マイクロスフェアは、加えて前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーが多孔質ハイドロゲルの形態となるように水溶液を含む。
【0012】
一実施形態において、マイクロスフェアは、さらにオリゴヌクレオチドプライマーではない核酸を含み、核酸は
-前記水溶液が、前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーの前記pKa値未満のpHを有する場合、前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーに結合され、そして
-前記水溶液が前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーの前記pKa値以上のpHを有する場合、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの前記多孔質ハイドロゲルのそばのまたは中のマイクロスフェア内にまだ保持されるが、前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーに必ずしも結合していないか、もしくはもはや結合していない。
【0013】
オリゴヌクレオチドプライマーではなく、第二材料に結合され得る、または第二材料に結合されることなくマイクロスフェアにより保持され得るかかる核酸の例としては、サンプルからの核酸(かかる核酸は微生物もしくはウイルスの核酸である)、またはより一般的には、その存在が検査または検出を意図する標的核酸が挙げられる。
【0014】
一実施形態において、前記水溶液は、以下のいずれかである:
a)洗浄および/または前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)への核酸の結合を促進するための第一組成物であって、前記第一組成物は、前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)の前記pKa値未満のpH値を有する、または、より好ましくは、前記第一組成物は前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)のpKa値未満のpH範囲に緩衝化する緩衝液を含む;あるいは
b)核酸増幅を促進および実施するための第二組成物であって、前記第二組成物は、核酸増幅を実施するのに適切なpH範囲に緩衝化する緩衝液、モノ-ヌクレオシド-トリホスフェート、適切な核酸ポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)などの増幅酵素、任意で、前記第一材料(好ましくは前記第一ポリマー)にまだ固定されていない場合1つ以上の増幅プライマーもしくは1組以上の増幅プライマー;および任意で増幅した核酸などの増幅産物の検出のための核酸色素を含み;および/または、任意でそれぞれ分子プローブ(例えば、TaqManプローブもしくは分子ビーコン)を含み;核酸増幅を実施するために適切な前記pH範囲は前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)の前記pKa値よりも高い。
【0015】
一実施形態において、前記第二材料、好ましくは、前記第二ポリマーは非凝結形態である。このことは、それぞれのマイクロスフェアが、前記第二材料のpKa値以上のpH値に曝露されていない場合に特にそうであり得る。
【0016】
一実施形態において、前記多孔質ハイドロゲル内のネットワークは収縮していない。このことは、それぞれのマイクロスフェアが第一材料、好ましくは第一ポリマーの融解温度より高い温度への加熱による熱処理を受けていない場合に特にそうであり得る。
【0017】
さらなる一実施形態において、前記第二材料、好ましくは、前記第二ポリマーは非凝結形態であり、前記マイクロスフェアの前記多孔質ハイドロゲル内のネットワークは収縮していない。このことは、それぞれのマイクロスフェアが前記第二材料のpKa値以上のpH値に曝露されていない場合、およびそれぞれのマイクロスフェアが第一材料、好ましくは第一ポリマーの融解温度より高い温度への加熱による熱処理を受けていない場合に特にそうであり得る。
【0018】
もう1つの実施形態において、前記第二材料、好ましくは、前記第二ポリマーは凝結形態である。このことは、それぞれのマイクロスフェアが前記第二材料のpKa値以上のpH値に曝露された場合に特にそうであり得る。
【0019】
一実施形態において、前記多孔質ハイドロゲル内のネットワークは収縮している。このことは、それぞれのマイクロスフェアが第一材料、好ましくは第一ポリマーの融解温度より高い温度への加熱による熱処理を受けている場合に特にそうであり得る。
【0020】
さらなる一実施形態において、前記第二材料、好ましくは、前記第二ポリマーは凝結形態であり、前記マイクロスフェアの前記多孔質ハイドロゲル内のネットワークは収縮している。このことは、それぞれのマイクロスフェアが前記第二材料のpKa値以上のpH値へ曝露された場合、およびそれぞれのマイクロスフェアが第一材料、好ましくは第一ポリマーの融解温度より高い温度への加熱による熱処理を受けている場合には、特にそうであり得る。
【0021】
さらなる態様において、本発明は、水および水溶液と不混和性液相、例えば油相に関し、前記液相は、第二材料、好ましくは第二ポリマーが非凝結形態および/または前記ハイドロゲル内のネットワークが収縮していない、複数のマイクロスフェアを含む。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、水および水溶液と不混和性液相、例えば油相に関し、前記液相は、第二材料、好ましくは第二ポリマーが凝結形態および/または前記ハイドロゲル内のネットワークが収縮している、複数のマイクロスフェアを含む。
【0023】
さらなる態様において、本発明は核酸またはサンプルから核酸を捕捉および/または濃縮する方法に関し、前記方法は以下のいずれかを含む:
a)核酸の前記第二材料、好ましくは前記第二ポリマーへの結合を促進するための第一組成物中に、請求項1~8のいずれかに定義された複数のマイクロスフェア(すなわち、捕捉、濃縮、増幅および/検出される1つの(もしくはいくつかの)核酸を(まだ)含んでいない複数のマイクロスフェア)を提供する工程、またはかかる第一組成物に前記マイクロスフェアを曝露する工程;前記第一組成物は前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)の前記pKa値未満のpH値を有する、または好ましくは、前記第一組成物は前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)のpKa値未満のpH範囲に緩衝化する緩衝液を含み;これにより前記マイクロスフェアが前記第一組成物と平衡化し前記第一組成物を組み込むことを可能にし;好ましくは、前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)の前記pKa値が6よりも大きい;および
b)工程a)からの前記マイクロスフェアを、核酸を含有する、もしくは含有すると考えられるサンプルへ曝露する工程であって、これにより存在すれば前記核酸を、前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)に結合させることができ、前記サンプルは、好ましくは、pH範囲を前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)のpKa値未満に緩衝化する緩衝液も含み、それにより存在すれば前記サンプル中の核酸を捕捉する;
あるいは
a’)請求項1~8のいずれかに定義された複数のマイクロスフェアを、核酸を含有するまたは含有すると考えられるサンプルに曝露する工程であって、これにより前記核酸を、存在すれば、前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)に結合させることを可能にし、前記サンプルは前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)のpKa値未満のpHを有し、好ましくは、前記サンプルはpH範囲を前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)のpKa値未満に緩衝化する緩衝液を含み;それによりかかる曝露の結果として、存在すれば前記サンプル中の核酸を捕捉する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、サンプルから核酸を増強する方法に関し、前記方法は、本発明に従い、本明細書に定義の通りの核酸を捕捉および/または濃縮する方法を実施する工程を含み;またその後実施する工程は以下のいずれかである:
(オプションA):
c)工程b)または工程a’)からの前記マイクロスフェアを、核酸増幅を促進および実施するための第二組成物に曝露する工程であって、第二組成物は、核酸増幅を実施するために適切なpH範囲に緩衝化する第二緩衝液、モノ-ヌクレオシド-トリホスフェート、適切な核酸ポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)などの増幅酵素を含み、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマー上の結合メンバーと、前記1つまたはいくつかの増幅プライマー上の結合体との間の特異的な相互作用を介して、前記マイクロスフェアが前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーに固定された1つまたはいくつかの増幅プライマーをまだ含んでいない場合、1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマーをさらに含む;これにより、前記マイクロスフェアが核酸増幅を促進および実施するための前記第二組成物と平衡化し第二組成物を取り込むことを可能にし;さらに前記第二組成物は任意で、増幅した核酸などの増幅産物の検出のための核酸色素、および/またはそれぞれの分子プローブ(例えば、TaqManプローブもしくは分子ビーコン)を含み;好ましくは、核酸増幅を実施するために適切な前記pH範囲は前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)の前記pKa値よりも高い;
d)工程c)の前記マイクロスフェアを、核酸増幅を促進および実施するための前記組成物内で増幅プロトコルに供する工程であり、かかるプロトコルは、前記サスペンションを前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの融解温度より高い温度に加熱する少なくとも1つの工程を含む、またはそれに先行してまたはそれに続いて行われ、好ましくは、かかるプロトコルは、前記マイクロスフェアの前記サスペンションが曝露される温度を前記1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマーの配列に一致する核酸(前記マイクロスフェア中に存在する場合)の増幅を可能にするレベルまで反復的かつ周期的に上昇および下降させることを含む;
あるいは(オプションB):
e)工程b)または工程a’)からの前記マイクロスフェアを、核酸増幅を促進および実施するための第二組成物に曝露する工程であって、第二組成物は、核酸増幅を実施するために適切なpH範囲に緩衝化する第二緩衝液、モノ-ヌクレオシド-トリホスフェート、適切な核酸ポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)などの増幅酵素を含み、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマー上の結合メンバーと、前記1つまたはいくつかの増幅プライマー上の結合体との間の特異的な相互作用を介して、前記マイクロスフェアが前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーに固定された1つまたはいくつかの増幅プライマーをまだ含んでいない場合、1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマーをさらに含む;これにより前記マイクロスフェアが核酸増幅を促進および実施するための前記第二組成物と平衡化し第二組成物を取り込むことを可能にし;さらに前記第二組成物は任意で、増幅した核酸などの増幅産物の検出のための核酸色素、および/またはそれぞれの分子プローブ(例えば、TaqManプローブまたは分子ビーコン)を含み;好ましくは、核酸増幅を実施するために適切な前記pH範囲は前記第二材料(例えば、前記第二ポリマー)の前記pKa値よりも高い;
f)工程e)からの前記マイクロスフェアを水および水溶液と不混和性液相、例えば油相に移す工程であって、それにより前記水不混和性液相、例えば油相により互いに分離される前記マイクロスフェアのサスペンションを生成する;および
g)工程f)の前記マイクロスフェアを増幅プロトコルに供する工程であって、かかるプロトコルは、前記サスペンションを前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの融解温度より高い温度に加熱する少なくとも1つの工程を含む、またはそれに先行してまたはそれに続いて行われ、かかるプロトコルは、好ましくは、前記マイクロスフェアの前記サスペンションが曝露される温度を前記1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマーの配列に一致する核酸(前記マイクロスフェア中に存在する場合)の増幅を可能にするレベルまで反復的かつ周期的に上昇および下降させることを含み、前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの融解温度より高い温度へ加熱する結果として、前記マイクロスフェア中の第二材料、好ましくは前記第二ポリマーが収縮し、それにより各マイクロスフェア内に収縮したコアが生成し、蛍光標識および/または磁性粒子がそれぞれのマイクロスフェアに存在するまたは含まれる場合、前記収縮したコア内に蓄積し、それによりそれぞれのマイクロスフェアの検出および/またはさらなる操作を促進し、好ましくは、i)前記マイクロスフェアの前記収縮したコア内に蓄積された前記蛍光標識および/またはii)前記磁性粒子は、個々のマイクロスフェアまたは複数のマイクロスフェアの位置を特定するおよび/または同定するために使用される。
【0025】
工程の上記スキームにおいて、オプションAはサンプルから核酸を増幅する方法の実施形態を表し、マイクロスフェアは必ずしも互いに分離されておらず、主に核酸の捕捉および濃縮の目的に役に立つ。増幅は(複数の)マイクロスフェアを取り囲むバルクボリューム中で実施される。
【0026】
オプションBはサンプルから核酸を増幅する方法の実施形態を表し、マイクロスフェアは必ず互いに分離され、それらの各々は個々の増幅反応が起こり得る分離された反応スペース/ボリュームとして役に立つ。この実施形態は、デジタルまたは均質なフォーマットで核酸増幅を実施するのに特に有用である。
【0027】
サンプルから核酸を増幅する方法の一実施形態において、該方法はさらに以下の工程を含む:
h)増幅した核酸(存在する場合)を、
核酸増幅を促進および実施するための前記組成物(オプションA)、
または前記マイクロスフェア(オプションB)中のいずれかで検出する工程;
前記増幅プロトコルは、光学的に検出できるシグナルをもたらし、光学的に検出できるシグナルが生成される、
核酸増幅を促進および実施するための前記組成物(オプションA)、
またはそれぞれのマイクロスフェアの前記収縮したコアを取り囲むスペース(オプションB)中のいずれかで検出する工程;
また前記光学的に検出できるシグナルの検出は増幅した核酸の存在を示す。
【0028】
一実施形態において、i)前記マイクロスフェアの前記収縮したコア内に蓄積された前記蛍光標識および/またはii)前記磁性粒子を用いて、個々のマイクロスフェアまたは複数のマイクロスフェアは、位置を特定および/または同定される。
【0029】
一実施形態において、i)前記マイクロスフェアの前記収縮したコア内に蓄積された前記蛍光標識および/またはii)前記磁性粒子;および/またはiii)融合マイクロスフェア内の1つを超える収縮したコアの存在;および/またはiv)非融合マイクロスフェア内の1つだけの収縮したコアの存在を用いて、融合マイクロスフェアが非融合マイクロスフェアと区別される。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、多様な核酸分析物の検出のためのアッセイにおける本明細書に定義の通りの複数のマイクロスフェアの使用に関し、前記使用は以下を含む:本明細書に定義の通り本発明に記載のサンプルから核酸を増幅する方法を実施すること、および前記使用は異なるマイクロスフェアを含み、それぞれのマイクロスフェアは異なる蛍光標識を含み、前記特定の核酸分析物の増幅のための特異的な増幅プライマーまたは特異的な一組のかかる増幅プライマーを含むことにより特定の核酸分析物の検出に対して特異的であること、そして前記異なるマイクロスフェアは、前記蛍光標識によって互いに検出可能に区別することができ、それぞれのマイクロスフェアは異なる核酸分析物に対して特異的である。
【0031】
さらなる態様において、本発明は多様なサンプルにおける単一の核酸分析物の検出のためのアッセイにおける本発明で定義された複数のマイクロスフェアの使用に関し、前記使用は以下を含む:本明細書に定義の通り本発明に記載のサンプルから核酸を増幅する方法を実施すること、および前記使用は異なるマイクロスフェアを含み、それぞれのマイクロスフェアは異なる蛍光標識を含み、さらに前記単一の核酸分析物の増幅のための増幅プライマーまたは1組のかかる増幅プライマーを含み、それぞれのマイクロスフェアは、工程b)またはa’)においてかかる特定サンプルに別々に曝露されることにより特定のサンプルに対して特異的であり、前記異なるマイクロスフェアは、前記蛍光標識によって互いに検出可能に区別することができ、それぞれマイクロスフェアが同じ核酸分析物に対して特異的であり、異なるサンプルに対して特異的である。
【0032】
本願発明者らは、核酸捕捉および/または増幅プロトコルに特に適し、容易にかつ個別に同定して扱うことができる新しいタイプのマイクロスフェアを考案した。本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアは、それぞれのマイクロスフェアによるサンプルからの核酸の効率的な結合/捕捉、ならびにそれに続くマイクロスフェア内での集中/濃縮を可能にする。本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアは、例えば、個々のマイクロスフェアの同定および/または位置を特定および/または検出に必要とするプロトコルにおいて特に有益である熱応答性挙動を示す。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本願発明者らは、集中/濃縮が、ビーズ内に提供される増幅/検出試薬へ任意の標的核酸の改善されたアクセス/接触性を提供すると信じる。同様に本発明に記載のマイクロスフェアは、少なくとも1つのa)蛍光標識およびb)磁性粒子も含むので、任意のかかる蛍光標識および/または磁性粒子は小ボリューム内、すなわち凝結形態で(第二)ポリマーでありうる第二架橋材料を含む小さな集中ボリューム(本明細書では「コア」と称することもある)内のマイクロスフェアの内部に集中される。したがって、マイクロスフェアによって提供されるボリュームの残りは、かかる検出/増幅反応に十分利用可能である、一方、蛍光標識および/または磁性粒子は小ボリューム内に集中され、かかる検出/増幅反応を妨害しない。さらに、マイクロスフェア内に存在する任意の蛍光標識および/または磁性粒子はマイクロスフェアにより限定される反応ボリュームの外側領域から除去されるので、マイクロスフェアの特異的標識(すなわち、個々のマイクロスフェアを特定および指定するために使用されるコード)のために使用される同じ蛍光チャネルにおいて標的特異的シグナルを読み取ることが可能である。任意の標的特異的シグナル(すなわち、増幅した核酸標的からのシグナル)はマイクロスフェアにより限定される反応ボリュームのかかる外側領域において位置が特定されるので、これはマイクロスフェアに対する蛍光標識シグナル(=コード)が物理的かつスペース的に任意の標的特異的シグナルから分離されていることを意味し、これによりかかる2つのシグナル間の区別が可能となる。
【0033】
本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアは、第一材料、好ましくは第一ポリマー、および第二材料、好ましくは第二ポリマーを含み、第一材料、好ましくは第一ポリマーが非架橋であり、第二材料、好ましくは第二ポリマーが架橋されているという意味では、「ハイブリッド」マイクロスフェアである。この文脈で使用される場合、第二材料、例えば第二ポリマーが架橋されていると称される場合、このことはかかる第二材料、例えば第二ポリマーがそれ自体架橋されている、または前記第一材料、例えば前記第一ポリマーに架橋されていることを意味する。
以下では、「第一材料」としての第一ポリマーおよび「第二材料」としての第二ポリマーを含む例示的な実施形態に関して種々の記述がされる。しかしながらかかる記述は、第二材料が前記第一材料、例えば前記第一ポリマーに付着されたオリゴマーまたはモノマーである、実施形態にも同様に適用される。
【0034】
本明細書で使用される用語「付着された」は、典型的には1つの実体と別の実体との結合を指し、かかる実体間には少なくとも1つの共有結合を含む。
【0035】
好ましい実施形態において、用語「架橋」は、第二ポリマーをそれ自体にまたは第一材料、例えば第一ポリマーに結合または連結する1つまたはいくつかの共有結合があるという意味で「架橋」された第二材料、例えば第二ポリマーの特性を指す。言い換えると、かかる「化学的架橋」は1つまたはいくつかの共有結合による前記第二ポリマー(タイプ)の2つ以上の分子の分子間結合、または1つ以上の共有結合による前記第二ポリマー(タイプ)の単一の分子がそれ自体への分子間結合を指す、すなわち、前記第二ポリマー(タイプ)のかかる分子鎖の異なるストレッチは、1つ以上の共有結合により互いに結合される、または1つまたはいくつかの共有結合により、第二ポリマー(タイプ)の1つ以上の分子の前記第一ポリマー(タイプ)の1つ以上の分子への分子間結合に結合される。
第二材料がオリゴマーまたはモノマーである実施形態では、かかるオリゴマーまたはモノマーは前記第一ポリマーに付着される。
【0036】
本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアが油相などの水不混和性液相中に含有されるプロトコルで使用され、かかるプロトコルがマイクロスフェアを第一ポリマーの融解温度よりも高い温度に加熱する少なくとも1つの工程を含む、またはそれに先行してまたはそれに続いて行われる場合、かかる第一ポリマーは、ゲルから可溶性状態への相転移を受け、各マイクロスフェアにより提供される反応コンパートメントは液滴と考えることができる。なぜなら、時折液滴は融合し、これは取扱い、操作および/または処理において潜在的な問題を表し、異なるマイクロスフェア、すなわち、液滴は異なる標的分析物に対して特異的であり得るので、その結果、異なる捕捉/増幅反応がかかる融合の結果として混じり合うかもしれない。しかしながら、本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアは架橋された第二ポリマー(または前記第一ポリマーに付着されたオリゴマーもしくはモノマー)を含み、第一ポリマーの融解温度よりも高い温度にマイクロスフェアを曝露した結果、収縮されたネットワークを形成し、第二ポリマーのかかるネットワークは、マイクロスフェアのボリューム内で容易に認識されうる小型構造になる(卵の中の卵黄に類似)。収縮されたネットワークによって形成されたかかる小型構造を本明細書では、マイクロスフェアの「コア」と称することもある。さらに前記第二ポリマーの収縮されたネットワーク(「コア」)は、マイクロスフェア内に存在する任意の蛍光標識および/または磁性粒子も濃縮し、従ってかかる収縮されたネットワークは個々のマイクロスフェアを同定および/または位置を特定および/または検出するための強固な手段を提供する。またマイクロスフェアの融合を制御し、任意の融合マイクロスフェアを同定するための優れた手段も提供する。なぜなら、かかる融合マイクロスフェアは、マイクロスフェアがかかる融合の一部を形成するのと同数の収縮されたネットワークを含有するからである。これらの収縮されたネットワーク(=「コア」)は、単一のマイクロスフェアボリュームとされるものの中で依然として個々に区別することができ、従ってかかる融合マイクロスフェアは、非融合マイクロスフェアと容易に区別することができる。
【0037】
本明細書で使用される用語「マイクロスフェア」は、本明細書に定義の通りの第一材料、好ましくは第一ポリマーおよび第二材料、好ましくは第二ポリマーを含み、平均直径が20μmから500μmまで、好ましくは20μmから200μmまで、より好ましくは20μmから100μmまでの範囲である、球状体、または実質的に球状もしくは楕円体状またはその他の丸形状体、例えば卵型体を指す。
【0038】
本発明の実施形態によれば、本願発明者らは、第一材料、好ましくは第一ポリマー、および第二材料、好ましくは第二ポリマーを含む1つのマイクロスフェア(および複数のかかるマイクロスフェア)を提供し、好ましくは、第一ポリマーは、水溶液に曝露または水溶液を含む場合多孔質ハイドロゲルを形成できる非架橋ポリマーであり、第一ポリマーの融解温度は40℃から90℃までの範囲である;また第二ポリマーはpKa値を有し、pHが前記pKa値以上での水性環境において凝結することができる架橋ポリマーであり;第二ポリマーはネットワークを形成し、前記ネットワークは前記第一ポリマーの前記融解温度以上の温度に曝露された場合に収縮することができ;また前記マイクロスフェアが、a)蛍光標識およびb)磁性粒子のうちの少なくとも1つをさらに含む。好ましい実施形態において、前記マイクロスフェアはa)蛍光標識およびb)磁性粒子の両方を含む。
【0039】
好ましい実施形態において、用語「架橋」は、第二ポリマーをそれ自体にまたは第一材料、例えば第一ポリマーに結合または連結する1つまたはいくつかの共有結合があるという意味で「架橋」された第二ポリマーの特性を指す。言い換えると、かかる「化学的架橋」は、1つまたはいくつかの共有結合による前記第二ポリマー(タイプ)の2つ以上の分子の分子間結合、または1つ以上の共有結合による前記第二ポリマー(タイプ)の単一の分子がそれ自体への分子間結合を指す、すなわち、前記第二ポリマー(タイプ)のかかる分子鎖の異なるストレッチは、1つ以上の共有結合により互いに結合される、または1つまたはいくつかの共有結合により、第二ポリマー(タイプ)の1つ以上の分子の前記第一ポリマー(タイプ)の1つ以上の分子への分子間結合に結合される。
第一ポリマーが好ましくは「非架橋」であると本明細書で言及される場合、これは、かかる第一ポリマーは、そういうもの、それ自体と架橋されていないことを意味する。かかる非架橋第一ポリマーは、それでもなお第二ポリマーが前記の意味で架橋されているネットワークの一部でありえる。
【0040】
本発明に記載の実施形態において、第二材料、好ましくは、第二ポリマーはpKa値を有し、そのpKa値以上のpH値での水性環境において凝結することができる。さらに好ましくは、第二ポリマーは架橋ポリマーであるので、ネットワークを形成し、かかるネットワークは第一ポリマーの融解温度以上の温度に曝露された場合収縮することができる。本発明に記載のマイクロスフェアを高温(かかる高温は第一材料、例えば第一ポリマーの融解温度以上)に曝露した結果、第二材料、例えば第二ポリマーにより、または第二および第一材料が一緒になって形成されるネットワークが、収縮し、コア、すなわちマイクロスフェアの全ボリューム内に限定されたボリュームを形成し、かかる限定されたボリュームは前記マイクロスフェアの全ボリュームと比較してより小さいボリュームである。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本願発明者らは、形成されたネットワークにおいて、前記第二材料、例えば第二ポリマーのストレッチおよび領域は、前記第一材料、例えば第一ポリマーのストレッチおよび領域と絡み合い、ネットワークの収縮時に、収縮されたネットワーク内の前記第一材料、例えば第一ポリマーのかかる絡み合った領域およびストレッチも引き込んで集中させると考えている。したがって、かかる収縮されたネットワークは、マイクロスフェア内に高密度に集中されたコアを形成する。
【0041】
本発明の実施形態によれば、第一材料が第一ポリマーである場合には、第一ポリマーは非架橋ポリマーが好ましく、これは、それ自体に架橋していないこと、すなわち、分子間または分子内で第一ポリマーをそれ自体に一緒になって結合または連結する1つまたはいくつかの共有結合を有していないという意味で非架橋であることを意味する。しかしながら、かかる実施形態において、第二材料がポリマー、すなわち前記第一ポリマーと架橋した第二ポリマーでもある場合、これは、第一ポリマーが前記第二ポリマーへ連結していることにより効率的に「架橋」にもなることを意味し得る。しかしながら、いずれにせよ第一ポリマーの文脈で使用される場合、用語「非架橋」は、かかる第一ポリマーは架橋ウィットでもなくそれ自体に架橋されていないシナリオを表すことを意味する。
【0042】
好ましい第一ポリマーはアガロースである。好ましい第二ポリマーはキトサンである。本明細書で使用される用語「アガロース」は、かかる誘導体が非架橋(前記意味において)であり、水溶液に曝露または水溶液を含む場合多孔質ハイドロゲルを形成でき、40℃から90℃までの範囲の融解温度を有する限りアガロースの誘導体も含むことを意味する。本明細書で使用される用語「キトサン」は、ランダムに分布したβ-(1→4)-結合D-グルコサミン(脱アセチル化単位)およびN-アセチル-D-グルコサミン(アセチル化単位)から構成される直鎖状ポリサッカライドを指すことを意味する。かかる「キトサン」が本発明の実施形態に記載の第二ポリマーの場合、キトサンはpHがそのpKa値以上での水性環境において凝結することができ、好ましくは、前述と同義で架橋されている。用語「キトサン」は、またキトサンHCl、キトサングルタメート、キトサンラクテート、キトサンアセテートなどのその酸付加物および/または酸塩、ならびにN-カルボキシメチルキトサンなどのそのカルボキシメチル化形態が含まれることを意味する。
【0043】
また本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアは、さらにa)蛍光標識およびb)磁性粒子の少なくとも1つを含み、好ましくは、a)蛍光標識およびb)磁性粒子の両方を含むので、第二ポリマーにより、または第一ポリマーと一緒の第二ポリマーにより形成されたネットワークの収縮時に、かかる蛍光標識および/またはかかる磁性粒子も前記収縮されたネットワーク(コア)内に集中される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本願発明者らは、収縮されたネットワークは、蛍光標識および/または磁性粒子を「引き込む」ほど小さい平均孔径を有すると考える、なぜならそれらのサイズの方が大きいからである。また、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、かかる収縮は、したがって多様な効果を有すると考えられる:第一に、かかる収縮は、マイクロスフェアの残りの内での増幅および/または反応および/または検出が行われる場所であるボリュームを利用可能にすることを提供する。第二に、かかる収縮は、収縮されたネットワーク内の任意の蛍光標識および/または磁性粒子の集中を提供し、これにより前記マイクロスフェアの検出(→前記蛍光標識により)または機械的取扱い(→前記磁性粒子により)を促進する。
【0044】
本明細書で使用される用語「蛍光標識」は、50nmから10μmまで、好ましくは100nmから5μmまで、より好ましくは1μmから5μmまで、さらにより好ましくは1μmから3μmまでの範囲のサイズの蛍光粒子;および前記第一および/または前記第二材料に付着された、好ましくは前記第一および/または前記第二ポリマーに付着された、より好ましくは前記第二ポリマーに付着された非微粒子蛍光色素を指すことを意味する。いずれの場合も、すなわち蛍光標識が微粒子または非微粒子でも、マイクロスフェアを前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの融解温度以上の温度に曝露することにより誘発される前記ネットワークの収縮は、コア、すなわち前記第二ポリマー単独または前記第一ポリマーとの組み合わせにより形成される収縮されたネットワーク内の前記蛍光標識および/または前記磁性粒子の集中を導くだろう。従って、蛍光粒子を含む好ましい実施形態では、かかる蛍光粒子は収縮されたネットワークの平均メッシュまたは孔径よりも大きなサイズを有する。
【0045】
本明細書で使用される用語「磁性粒子」は、磁性挙動を示す粒子を指すことを意味し、したがって、粒子が磁石によって引き寄せられることを可能にする。一実施形態において、かかる磁性粒子は強磁性粒子である。もう1つの実施形態において、かかる磁性粒子は常磁性粒子である。もう1つの実施形態において、かかる磁性粒子はフェリ磁性粒子である。別の実施形態では、かかる磁性粒子は超常磁性粒子である。好ましい実施形態では、かかる磁性粒子は強磁性または常磁性粒子である。本明細書で使用される用語「磁性粒子」は、反磁性粒子を除外することを意味する。本明細書で使用される「磁性粒子」は、50nmから10μmまで、好ましくは100nmから5μmまで、より好ましくは1μmから5μmまで、さらにより好ましくは1μmから3μmまでの範囲のサイズおよび一次元の平均直径または平均長径(long extension)を有する。好ましくは、磁性粒子のサイズおよび一次元の平均直径または平均長径(long extension)は、収縮されたネットワークの平均メッシュまたは孔径よりも大きくなるように、ならびにマイクロスフェアを前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマーの融解温度以上の温度に曝露することにより誘発される前記ネットワークの収縮が、コア、すなわち前記第二ポリマー単独または前記第一ポリマーとの組み合わせにより形成される収縮されたネットワーク内に前記磁性粒子の集中を導くように選択される。
【0046】
以上から、収縮されたネットワークの平均孔径は50nm未満、好ましくは25nm未満、より好ましくは15nm未満、およびさらにより好ましくは10nm未満ということになる。
【0047】
本明細書で使用される表現「前記マイクロスフェアはa)蛍光標識およびb)磁性粒子の少なくとも1つを含む」は、かかるマイクロスフェアが、1つ(タイプ)を超える蛍光標識および/または(1つのタイプ)を超える磁性粒子を含むシナリオを想到または含むことも意味する。本発明に記載の微粒子の一実施形態において、微粒子は少なくとも2つの異なる蛍光標識を含む。
【0048】
本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアを、本明細書においては、「ビーズ」または「ナノリアクタービーズ」と同義的に呼ぶこともある。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアは、a)第一ポリマーが非架橋で40℃から90℃までの範囲の融解温度を有するため、ゲル状態から可溶性状態への相転移を受ける能力;およびb)第二ポリマーおよびそれにより形成されるネットワークが第一ポリマーの融解温度以上の温度に曝露された(される)時に収縮される程度に内部再構成を行う能力を有し、それにより第一ポリマーの融解温度以上の温度に曝露された(される)場合マイクロスフェア内で内部のコンパートメント化を導き、収縮されたネットワークはマイクロスフェア自体により提供されるボリュームよりも大きい(より低密度)のボリューム内に高密度領域またはボリュームまたは「コア」を形成する。かかる「コア」の形態でのかかる内部のコンパートメント化は、可視で検出され得、かかる検出は、前記コア内の蛍光標識および/もしくは磁性粒子の濃縮ならびに/または集中により促進される。同時に、および特にマイクロスフェアが水不混和性液相(すなわち、マイクロスフェアがかかる水不混和性相により他のマイクロスフェアから分離されている)に位置する本発明の実施形態において、かかる上記内部のコンパートメント化は前記コアを取り囲むスペースを生成し、スペースでは増幅反応およびそれに続く検出が行われ得る。本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアを、本明細書において、「ナノリアクタービーズ」または「ナノリアクターマイクロスフェア」と同義的に呼ぶこともあるが、それらが標的核酸の結合および/または増幅が行われ得る反応ボリュームを提供および限定し、ナノリアクタービーズまたはマイクロスフェアは、同時に容易に取り扱われ検出され得るからである。
ナノリアクタービーズまたはナノリアクターマイクロスフェアのかかる反応ボリュームは、ナノリットルの範囲の大きさであるので、それらは単に「ナノリアクター」とも呼ばれることもある。例えば、マイクロスフェアのそれぞれの平均直径は、500マイクロメートル、100マイクロメートルおよび20マイクロメートルであり、それぞれの容量は65ナノリットル、0.5ナノリットルおよび0.004ナノリットルである。
【0049】
好ましい実施形態では、増幅プライマー、すなわち分析物特異的試薬は、可逆的かつpH非依存的に前記第一材料、好ましくは前記第一ポリマー上に固定されている。「可逆的」または「可逆的に固定された」は、1つの実体が別の実体上に「可逆的に固定された」という文脈で本明細書において使用される場合、好ましくは、適切な条件下で、実体間の付着が「元に戻す」ことができるが、また、適切な条件下で、実体が互いに再び付着することを可能にするタイプの付着を指すことを意味する。可逆的固定化の解除は典型的に起こり、実体そのもの、特にそれらの構造および結合能力を変化させずに残し2つの実体の互いへの付着(すなわち結合)および互いからの解除のサイクルの繰り返しを可能にする手法で達成されうる。典型的なかかる可逆的付着の例は、適切な条件、例えばハイブリダイゼーション条件下での2つの核酸相補鎖のハイブリダイゼーションであり、ハイブリダイゼーションは得られた二本鎖が異なる一式の条件、例えば温度上昇に曝露された場合可逆的であり得、その結果二本鎖が融解して再び一本鎖になる。冷却した場合、二本鎖は再びリアニーリングし、このように関与する付着の可逆的性質が実証されうる。前記の意味での「可逆的」でない付着の例は、野生型ビオチンおよび野生型ストレプトアビジン間の結合であり、該結合は公知の非共有結合事象の最も強力な1つであり、一方または両方の実体が構造的に変化しない限り、またはおそらく例えば変性によって破壊されない限り、元に戻すことはできない。
本発明の実施形態に記載のそれぞれの第一材料、例えば第一ポリマー上の増幅プライマーの固定化の可逆的性質は、ユーザーのニーズに従った微粒子のカスタマイズされた製造を容易にし、および微粒子のそれぞれのライブラリーを多種多様な異なる方法に適合させることを可能にもする。それぞれのポイントオブケア環境およびそれらのニーズに応じて、個別化および/またはカスタマイズされたライブラリーをこのように容易に作製することができる。さらに分析物特異的試薬の可逆的付着は、これが望まれる環境下(例えば、分析物特異的試薬の自由な利用可能性(自由に拡散可能)を必要とする方法プロトコルにおいて、かかる分析物特異的試薬がそれに続く反応に利用可能(および自由に拡散可能)であるべき場合)において、かかる分析物特異的試薬をはがすことを可能にする。好ましくは、かかる可逆的固定化は、第一材料上に増幅プライマーを可逆的固定化することを可能にする結合メンバーを有する第一材料、例えば第一ポリマーにより起こる。好ましい実施形態では、かかる結合メンバーはマイクロスフェアの第一材料、例えば第一ポリマーに付着される。かかる結合メンバーは、今度は増幅プライマーにコンジュゲートされる結合体に結合するように設計および意図される。したがって、この好ましい実施形態では、一方のマイクロスフェアの第一材料に付着された結合メンバーと他方の増幅プライマーにコンジュゲートされる結合体の間には相互作用が存在する。好ましい実施形態では、結合メンバーおよび結合体は、可逆的手法で相互作用する、すなわち互いに結合するように選択される。一例として、2つの実体の間の相互作用が可逆的であり、結合が例えば温度上昇などの変化によって再び元に戻ることができる限り、第一材料に付着されたメンバーは、ストレプトアビジンまたはその誘導体であってもよく、増幅(amolification)プライマーにコンジュゲートされる結合体は、デスチオビオチンなどのビオチンまたはビオチン誘導体であってもよく、またはその逆であってもよい(すなわち、試薬結合分子がデスチオビオチンなどのビオチンまたはビオチン誘導体であり、結合体がストレプトアビジンまたはその誘導体である)。例えば、核酸プライマー(または1組の核酸プライマー、および任意で検出プローブ)は、容易にデスチオビオチンにコンジュゲートされ得、あるいはかかるデスチオビオチン化された形態で商業的に提供されていることすらあり得る。他方、第一材料はストレプトアビジンでもよい付着された結合メンバーを有してもよい。エンドユーザーにとって、環境条件下で、目的の分析物に特異的な1組のデスチオビオチン-プライマーを選択し、ストレプトアビジンが付着されたマイクロスフェアの第一材料にこれを可逆的付着/固定化するのは極めて簡単で容易である。環境条件下でのビオチン誘導体とストレプトアビジン間の結合事象は、結合メンバーとしてストレプトアビジンを有する第一材料を含むマイクロスフェアを適切な条件下でかかる(デスチオ)ビオチン誘導体標識プライマーの溶液に曝露するだけで容易に達成する。固定化は、例えば単に温度上昇させることにより容易に元に戻すことができる。
【0050】
2つの異なるポリマーの存在が「ハイブリッド」マイクロスフェアなので、本発明に記載のマイクロスフェアは熱応答性挙動を示す。そのため、それらを「ハイブリッド熱応答性」マイクロスフェアまたはビーズとも称することがある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアの合成(「ビーズ-合成」)のための可能なアプローチを示す。
図2図2は、第一材料/第一ポリマーとしてのアガロースおよび第二材料/第二ポリマーとしてのキトサンを含むマイクロスフェア(「ビーズ」)の合成のための様々な例を示す。
図3図3は、第一材料上の結合メンバーと分析物特異的試薬(例えば、特定標的に特異的な増幅プライマー)上の結合体との間の特異的な相互作用を介して、分析物特異的試薬が第一材料に付着/固定されることになるマイクロスフェア(「ビーズ」)を含む実施形態を示し、分析物特異的試薬は第一材料上の結合メンバーと特異的に相互作用する結合体を付着している。また、異なる段階を示すが、用語「鋳型ビーズ」は、第一材料だけを含み第二材料を(まだ)含まないマイクロスフェアを指し、第二材料は更なる工程でのみ加えられ、それにより「前駆体ビーズ」を生成する。かかる「前駆体ビーズ」に対して、次に分析物特異的試薬が添加され、これにより「前駆体ビーズ」から「分析物特異的ビーズ」に変化する。
図4図4は、図3において製造された本発明の実施形態に記載のマイクロスフェア(ビーズ)が曝露された温度およびpHに応じた、かかるマイクロスフェアの例示的で特徴的な挙動を示す。
図5図5は、増幅反応で使用された前後の本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアの模式図を示す。
図6図6は、本発明の実施形態に記載のマイクロスフェア(本明細書において、「ナノリアクタービーズ」とも称される)を含む模式的ワークフローを示す。
図7図7は、高濃度のカオトロピック塩の存在の有無での本発明に記載の第二ポリマーに付着された蛍光標識を伴うマイクロスフェアの蛍光画像を示す。ビーズは、匹敵する蛍光を示し、蛍光は生成されたマイクロスフェアマトリックスの安定性を表示している。
図8図8は、pH2,0からpH9,0までpHを増加させた緩衝液と混合した1%染色キトサン溶液の写真を示す。
図9図9は、それぞれpH5,0およびpH8,9でインキュベートし、それぞれ25℃および98℃に曝露されたマイクロスフェアの蛍光画像を示す。
図10図10は、室温および95℃でインキュベートした後、室温で画像化した本発明に記載のマイクロスフェアの実施形態を示し、マイクロスフェアは、蛍光標識としてカルボキシフルオセイン(FAM)または蛍光標識としてシアニン-5(Cy5)を含み、これらの標識は、2つの異なるチャネルで検出される。
図11図11は、蛍光微粒子のそれぞれのコア中に集中されたそれらの存在に基づき、それぞれのマイクロスフェアが異なるタイプのマイクロスフェアにわりあてられる実施形態を示す。
図12図12は、図11に示されるのと同じマイクロスフェアの外側マイクロスフェアコンパートメントの蛍光シグナル強度を示し、あるマイクロスフェアにおいてはPCRによる分子標的の増幅が示され、他のマイクロスフェアにおいては増幅の欠損が示される。
図13図13は、gDNAcpアウトプット対gDNAcpインプットの標準校正曲線(パネルA)を示し、図13パネルBは、2つの異なる蛍光チャネル(緑色、ラムダ励起1=550nm)(赤色チャネル、ラムダ励起2=635nm)を用い同じチャンバーに対する完了したPCRプロトコルの画像を示す。それによって、緑色チャネルはすべてのマイクロスフェアを認識するために使用され(セグメンテーション、従ってすべてのマイクロスフェアは標識される)、赤色チャネルはデジタルPCRにより分子標的を検出するために使用される(明るいマイクロスフェア)。
図14図14は、3つの異なる蛍光チャネル、すなわち、標識同定用(赤色:ラムダ励起1=650nm)、分析サンプル中の標的の数が示されたいくつかのマイクロスフェアにおけるHCV特異的増幅シグナルの検出用(青色:ラムダ励起2=470nm)および分析されるそれぞれのマイクロスフェア(micrsopheres)を同定するための画像セグメンテーションアルゴリズムの適用用(緑色:ラムダ励起3=550nm)蛍光チャネルを用いた、チャンバーで完了したPCRプロトコルの3枚の画像を示す。
図15図15は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ゲノムDNAの検出を伴うマイクロスフェアデジタルPCR反応のモニタリングを示し;パネルAは、増幅後のCy5チャネルの視野(PCRシグナル、明暗のマイクロスフェアは明瞭に見える)を示し;PCR前に撮ったCy3画像は分析物特異的マイクロスフェアを明らかにし;FAM画像は、対照ビーズを示す。パネルBは、挿入図に示す個々のビーズのCy5蛍光のリアルタイム曲線およびPCR陽性および陰性マイクロスフェアの平均強度を示す。パネルCは、陽性マイクロスフェアタイプの有効なビーズ618個すべてから推定したCt値の密度分布を示す。
【0052】
より具体的には、もう一度図1~6を参照すると、図1は本発明に記載のマイクロスフェア(ビーズ)の合成方法の可能なアプローチを示す。かかる図1のとおりに、ハイドロゲルビーズは本明細書に記載されるような第1の材料を用いて製造される。第一材料は、水溶液に曝露または水溶液を含む場合、多孔質ハイドロゲルを形成することができ、40℃から90℃までの範囲の融解温度を有する。本発明に記載の第一材料のみ含み、第二材料は含まないかかるハイドロゲルビーズは、本明細書において、「鋳型ハイドロゲルビーズ」または「鋳型ハイドロゲルマイクロスフェア」ともと称することがある。かかる鋳型ハイドロゲルビーズから始め、本発明に記載のマイクロスフェアを作製する1つの代替可能性は、本発明に記載の第2の材料を添加し、その後架橋剤を添加することを含む。かかる架橋剤の添加は、例えば、第二の材料のそれ自体および/または第一の材料への架橋をもたらす。
【0053】
架橋化学物質は当業者に公知であり、典型的には、それぞれのポリペプチド鎖の一級アミン基、カルボキシル基、スルフヒドリル基および/またはカルボニル基を含む。適切な架橋剤は多岐にわたり、例えば、Thermofisherの「Cross Linking Reagents Technical Handbook」に要約され、「https://tools.thermofisher.com/content/sfs/brochures/1602163-crosslinking-reagents-handbook.pdf」からダウンロード可能である。適切な架橋剤の例は、ビス-NHS-PEG(ビス-N-スクシンイミジル-(ペンタエチレングリコール)エステル)およびグルタルアルデヒドである。他の架橋剤は、カルボジイミド、イミドエステル、マレイミド、ハロアセチル基、ピリジルジスルフィド、ヒドラジド、アルコキシアミン、ジアジリンおよび/またはアリールアジドを含む。
【0054】
本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアの合成のこの第一代替ルートの例は、本願の実施例1に記載される。
【0055】
本発明に記載のマイクロスフェアの合成のための代替ルートも、第一材料のみ含む鋳型ハイドロゲルマイクロスフェアから始まり、鋳型ハイドロゲルマイクロスフェアは活性化される。この文脈での活性化は、適切なカップリング試薬が第一の材料に添加されることにより、第一の材料がより活性化され第二の材料との反応が起こるプロセスを意味する。かかる活性化反応の例は、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDIとも略称する)を使用した、第一の材料/第一のポリマーとしてのアガロースのOH基の活性化である。
【0056】
本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアの合成のこの代替ルートの例は、実施例2に記載される。この代替ルートは、第二材料がポリマーではなく、オリゴマーまたはモノマーであり、その結果、かかるオリゴマーまたはモノマーが第一材料に付着する場合にも特に適切である。
【0057】
図2は、第一材料としてアガロースおよび第二材料としてキトサンを用いた、図1の代替合成ルートの例を示す。「架橋」代替は、図の上部に、「活性化」代替は図の下部に示される。
【0058】
図3は、本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアが分析物特異的試薬、例えば増幅プライマーも含む場合の詳細を開示する模式図を示す。プロセスは、いわゆる「鋳型ビーズ」または「鋳型マイクロスフェア」から始まり、これらは本発明に記載の第一材料のみ含むが、この実施例ではすでに蛍光標識および(常)磁性粒子を含む。さらに、第一材料は1つまたはいくつかの増幅プライマー(=「分析物特異的試薬」)の可逆的かつpH非依存的固定化を可能にする結合メンバーを含み、かかる結合メンバーは、それ自体が前記1つまたはいくつかの増幅プライマーに付着された結合体と特異的に相互作用する。1つまたはいくつかの増幅プライマーのかかる可逆的かつpH非依存的固定化は、さらに上記で説明したように、第一材料上の結合メンバーおよび増幅プライマーに付着された結合体の適切な選択により達成されうる。かかる鋳型ビーズまたは鋳型マイクロスフェアに、第二材料、例えばキトサンを添加し、かかる鋳型ビーズに浸漬させることにより、「鋳型ビーズ」が「前駆体ビーズ」に変換される。前駆体ビーズは、「鋳型ビーズ」と対照的に、今やそれ自体および/または第一材料に架橋されうる第二材料(例えば、キトサン)も含む。その後、分析物特異的試薬が添加され、第一材料上の結合メンバーおよび分析物特異的試薬自体上の結合体の間の前記特異的な相互作用を介してそれらは付着される。このプロセスの結果物は特定の分析物に特異的なマイクロスフェア/ビーズである。
【0059】
図4は、図3に記載されたプロセスから得られた分析物特異的マイクロスフェアの典型的な特徴を示し、それらは「ナノリアクタービーズ」とも称される。しかしながら、第一材料/第一ポリマーに可逆的付着された分析物特異的試薬の存在は、それに続く増幅反応のために、これらの分析物特異的試薬が後の段階、すなわち増幅反応が行われるときに別々に添加もされうるという意味において任意であることに留意すべきである。しかしながら、図4に戻ると、本明細書において示される実施形態は、これらの可逆的に付着される分析物特異的試薬をすでに有するが、pH非依存手法で、第一材料および第二材料(例えば、それぞれアガロースおよびキトサン)を含む全成分がマイクロスフェア全体に分布している。第一材料(例えばアガロース)の融点より高い温度に温度上昇した場合、ネットワークは収縮し、第二材料単独または第一材料を伴う第二材料を含む収縮されたネットワークを形成する。pH値を第二材料のpKa値よりも高くした場合、第二材料も凝結し、それによりネットワークの収縮が促進される。収縮されたネットワークの孔径が蛍光標識および/または(常)磁性粒子のサイズよりも小さいので、これらはかかる収縮したコアの中に集中/凝集される。しかしながら、同時に、温度を第一材料の融解温度より上昇させると第一材料は液化し、これにより収縮したコアを取り囲むスペースが存在または発生し、そのスペースには溶液が存在し、かかる溶液は、例えば、温度上昇により放出された分析物特異的試薬を含みうる。さらに、マイクロスフェアが標的核酸などの目的の核酸を含むまたは含んでいた場合、(かかる核酸は、しかしながら図4には示されていない)、かかる標的核酸は、pHを第二材料のpKaよりも低くする限り、かかるpHでの第二材料の核酸結合能力のために、最初に第二材料に濃縮および/または結合される。一旦pH値が第二材料のpKa値よりも上昇すると、目的の核酸は、その後第二材料との結合状態から放出され、収縮したコアを取り囲むスペースに放出される。
【0060】
図4に示す第二工程において、温度を第一材料の融解温度よりも低い温度に再び低下させ、その結果第一材料は再び固化するが、凝集/収縮したコアは原位置に残り、それと共に、蛍光標識および磁性粒子もそこに位置する。かかる本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアの特徴的な挙動は、図4に示すように、特にかかるマイクロスフェアが水不混和性液相内で分離された場合に適用され、その結果として、かかるマイクロスフェアは、つまり第一材料の融点より低い温度では固形または半固形粒子として存在し、第一材料の融解温度よりも高い温度では固形の収縮されたコアを伴う液体の液滴として存在する。
【0061】
図5は、本発明に記載のマイクロスフェアの実施形態の特徴的な外観を示し、例えば、マイクロスフェアは、図3で製造され図4に示され、すなわち分析物特異的試薬、例えば増幅プライマーを含む。増幅反応で使用する前のかかるマイクロスフェアでは、構造は図4および図3に記載の通りであり、すなわち、全成分はマイクロスフェアの全体に分布し、第一材料上の結合メンバーと分析物特異的試薬に付着された結合実体との間の特異的な相互作用を介して分析物特異的試薬は第一材料に固定される。使用中および使用後には、マイクロスフェアは、第一材料の融点/温度よりも高い温度を伴う高温工程に曝露されおよび/または曝露された結果、第二材料は収縮し、その中に蛍光標識および磁性粒子を集中させた収縮したコアを形成する。かかる増幅反応のために、マイクロスフェアも核酸、特に特異的な標的核酸を含有するまたは含有すると考えられるサンプルに曝露される。かかる特異的な標的核酸がかかるサンプルに存在する場合、サンプルは増幅プロトコルに従って増幅反応の間増幅され、増幅された核酸は収縮したコアを取り囲むスペース内に位置するだろう。
【0062】
図6は、「ナノリアクタービーズ」の本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアで実現されうる模式的ワークフローを示す。この図に示すビーズ/マイクロスフェアは、蛍光標識、磁性粒子、最初に第一材料に付着されるか、代わりに増幅プロトコルの実施中に添加されることになるか、いずれかの分析物特異的試薬などのかかるマイクロスフェア内に含まれる成分(前の図に示す)を示しておらず、第一材料および第二材料を含むようなマイクロスフェアのみを図6に示す。かかるマイクロスフェアは、第二材料のpKaよりも低いpHを有する緩衝液中に核酸を含有するまたは含有すると考えられるサンプルに曝露される。好ましい実施形態において、第二材料のpKa値は6を超え、pHは典型的に酸性領域の低pH値であるので、かかるpH値の結果、第二材料はプロトン化/イオン化され、それにより陽性になり、サンプルに含まれる(任意の)(負電荷を有する)核酸に結合する。その結果、マイクロスフェアはそれにおよびそれの内に結合された核酸を含む、なぜなら核酸へのこの親和性を有しマイクロスフェア中に含まれる第二材料は、マイクロスフェアの全体に分布されるからである。(かかるマイクロスフェアは第一材料および第二材料の両方を含むので、この図では「ハイブリッド」マイクロスフェアまたは「ハイブリッド」ビーズと称することもある)。核酸結合マイクロスフェアは示されていない。それに続く工程において、マイクロスフェアは洗浄され、その後増幅のための組成物が充填される。好ましい実施形態において、洗浄用組成物は、第二材料への核酸の結合を促進するための組成物でもあり、好ましくは、かかる洗浄または促進用組成物は第二材料のpKa値よりもまだ高いpH値を有する。
【0063】
「充填」工程では、マイクロスフェアは、核酸増幅反応および検出を促進および実施するための組成物であるさらなる組成物に曝露される(例えば、それと浸す、それに浸漬する等)。好ましい実施形態において、かかる核酸増幅反応は、核酸増幅を実施するのに適切なpH範囲に緩衝化する緩衝液を含む。さらに、好ましくは、かかる組成物は、モノ-ヌクレオシド-トリホスフェート、増幅酵素、および任意で1つ以上の増幅プライマーまたは1組以上の増幅プライマー(かかるプライマーがまだ第一材料に固定されていない場合)も含む。さらに、かかる核酸増幅反応および/または検出を促進および実施するための組成物は、増幅産物の検出のための核酸色素を含んでもよく、任意で、分子プローブ、例えばTaqManまたは分子ビーコンをそれぞれ含んでもよい。好ましくは、多くの実施形態において、かかる組成物のpH値は、第二材料のpKa値よりも高い。一旦マイクロスフェアが核酸増幅を促進および実施するための組成物で充填されると、油相などの水不混和性液相へ移され、その結果、マイクロスフェアはいわば隔離され、それを取り囲む水不混和性相内に水溶液の液滴として存在する。一旦これが起こると、マイクロスフェアは、少なくとも1つの工程(マイクロスフェア(およびかかるマイクロスフェアを含むサスペンション)が第一材料の融解温度よりも高い温度に加熱される)を含む、またはそれに先行してまたはそれに続いて行われる増幅プロトコルに供される。かかる加熱工程の結果、第一材料は液体化し、第二材料は収縮し、これによりマイクロスフェア内に相分離が起き、増幅/検出反応が起こり得るまたは起こるスペースに囲まれた収縮したコアが生じる。コア内に集中された蛍光標識は、マイクロスフェアの同定/検出を可能にする。同様に、コア内に集中された磁性粒子は、かかるマイクロスフェアの効率的な取扱い/操作を可能にし、ならびに,他の蛍光色素(例えば第一材料へ付着される)の存在の有無、分子プローブの有無に応じて、検出スキーム/装置/システムの多数の異なるチャネルを以下のために使用してもよい:個々のマイクロスフェアの位置の特定および/または同定;非融合マイクロスフェアから融合マイクロスフェアの識別;別のマイクロスフェアから1つのマイクロスフェアの識別;異なる増幅産物(存在する場合)の検出および識別;分析される1つまたはいくつかのサンプル中の1つまたはいくつかの増幅産物の有無の検出および識別。
【0064】
本発明の実施形態に記載のマイクロスフェアは、使用される異なる蛍光標識(ならびに使用される非微粒子蛍光色素)の数に関して上限がないという点で高度に多用途である。
【0065】
さらに、マイクロスフェアが第一材料に何らかで関連する非微粒子蛍光色素も含む場合、追加のコーディング(coding)の可能性が起きる、なぜなら、その際に、それぞれのマイクロスフェアの収縮したコアの「色」またはむしろ「色」の混合だけでなく、スペースを取り囲む色(すなわちかかるコアの周囲)も区別のために使用することができるからである。
【0066】
さらに、以下の実施例に言及するが、これは本発明を限定するのではなく、説明するために与えられる:
【実施例
【0067】
実施例1
第二ポリマーの分子を互いに結合させることによる架橋ナノリアクタービーズの調製
コーディングおよび常磁性粒子を用いたアガロースサスペンションの調製
成分1:SeaKem ME アガロース(Lonza)
成分2:1μmコーディング蛍光粒子(Thermo、λex=480nm、λem=520nm)
成分3:1μm Magnefy COOH磁性粒子(Bangslabs)
【0068】
成分1(「第一材料」、「第一ポリマー」)を秤量し、ヌクレアーゼフリー水(Roth)に溶解し、1%(w/v)の均一溶液を調製する。これは、短時間の初期ボルテックス(20’、2000rpm)とサーモミキサー(Eppendorf)による95℃、10分間、1200rpmの加熱によって達成される。不要な不純物は5μmシリンジフィルター(Whatman)で除去する。次にアガロースを他の成分と組み合わせるため、温度を80℃に下げる。
【0069】
成分1の調製は、10倍量のヌクレアーゼフリー水(Roth)で3回洗浄することから始まる。このステップで、保存緩衝液中の望ましくない不純物を取り除く。凝集を防ぐため、粒子を23℃で15分間超音波処理する。
【0070】
サーモミキサー(Eppendorf)で80℃/1200rpmでさらなるプロセッシングまで全成分をポリプロピレンチューブに保存する。
【0071】
典型的な最終濃度は以下の通り:
【0072】
【表1】
【0073】
アガロースは蛍光色素で修飾することもできる。典型的なプロトコルは以下に列挙する。
【0074】
Cy3を用いたアガロースの染色
使用材料:
アガロース(A9793;SeaKem ME)
Cy3モノNHSエステル(GE)
50mMリン酸カリウム緩衝液、pH8,3
【0075】
5mlの1.5%アガロース溶液を50mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.3)で調製する。このためには、75mgのアガロースを5mlの緩衝液と混合し、90℃で20minインキュベートする。室温まで冷却し、溶液を固化させた後、アガロースを機械的に破砕し、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.3)に溶解した色素溶液1.6mgと混合する。染色液の最終容量は10mlである。染色のためのインキュベーション時間は120minである。この間、混合液を室温で30rpmの回転ホイールで回転させる。その後、上清に遊離染料が残らないまでアガロースを蒸留水で数回洗浄する。最後に、アガロースをSpeedvacで乾燥させ、ビーズ調製の準備がされる。
【0076】
単分散鋳型ナノリアクタービーズの生成
単分散鋳型ナノリアクタービーズ(=「マイクロスフェア」)は、改良型μEncapsulatorシステム(Dolomite microfluidics)上で、記載の成分、アガロース、キトサン、およびコーディング粒子および磁性粒子を用いて、単純なフローフォーカスデバイスを用いたエマルション形成のワンステッププロセスで生成される。詳細には、親フッ素性の標準的な接合チップ(100μm)が、4方向リニアコネクターと、チューブとチップ間の流体接続をインターフェースするチップインターフェースHとともに使用される。2台のMitos P-Pumpsがアガロース/粒子サスペンションと乳化剤入りキャリアオイル、例えばPicoSurf(Sphere Fluidics、Novec 7500中2.5~5%、3M)を送達する。
【0077】
この既製システムは、ホットプレートの上に設置する加熱装置を改良し、アガロース/キトサン/粒子サスペンションを液体状態に維持し、キャリアオイルと成分サスペンションがチップ接合部で接触する際に安定した温度を確保しながら駆動液を加熱することを可能にする。アガロース/キトサン/粒子サスペンションリザーバーの加熱カバーは、不要な蒸発を防ぐ。マグネチックスターバーはサスペンションをそのまま保持するために使用される(ホットプレートにより300~600rpmに制御される)。
【0078】
ビーズ製造のために、加熱装置の温度は75℃に設定される。流体ラインは、Flow Control Softwareを使用して、2000mbarで1min間プライミングされる。安定した液滴形成のために、流速を10~50μl/minに調整する。直径などのパラメータは、Dolomite Flow Control Advanced Softwareでモニターする。
【0079】
単分散ビーズは、マイクロ流体チップの出口に接続された200μmPTFEチューブを通して集められる。チューブの中でビーズは冷却され、最終的にチューブ(例えば15ml、BD)に集められ、氷上に置かれ、ハイブリッドハイドロゲルの固化が開始される。油-空気の境界でビーズの水相が失われるのを防ぐため、サンプルは500~1000μlのヌクレアーゼフリー水(Roth)でオーバーレイされる。鋳型ナノリアクタービーズを4℃まで冷却し、少なくとも1hかけて安定なハイブリッドポリマー足場を形成する。
【0080】
オイルサスペンションからの鋳型ナノリアクタービーズの回収
固化した鋳型ナノリアクタービーズは、回収チューブ内のエマルションオイルの上に蓄積する。ビーズを取り除かないように注意しながら、PicoSurfオイルをピペットで注意深く取り除く。PicoSurfの残渣は、溶媒Novec 7500(3M、1:1 回収ビーズの容量)でさらに希釈する。その後、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノール(PFO、Sigma、1:4 回収ビーズに対する容量)を加え、エマルションを破砕する。また、ヌクレアーゼフリー水(Roth、3:1 回収ビーズの容量)を加える。現在ビーズは水相に浮く。このプロセスを加速するため、チューブを5s間ボルテックスし、2500rpmで5s間遠心分離する。
【0081】
最後に、ビーズをチューブの水層からピペットで注意深く採取し、新しいチューブに移す。この操作を繰り返すことで、残存するフルオロカーボンオイルと界面活性剤を除去することができる。回収したビーズを、ヌクレアーゼフリー水(Roth、3:1 回収ビーズの容量)で1回洗浄する。
【0082】
キトサンの架橋による架橋ナノリアクタービーズの生成
2%キトサン溶液を調製し、先に生成した鋳型ナノリアクタービーズ約10.000個を含むサスペンションとおおよそ混合する。キトサンの架橋剤として、ビス-N-スクシンイミジル-(ペンタエチレングリコール)エステル(BIS-NHS-PEG;SIGMA-ALDRICH)を使用する。1mgの固体BIS-NHS-PEGを1mLの蒸留水に溶解してリンカー溶液を調製し、この溶液250μLをサスペンションに加える。サスペンションをボルテックスする。ボルテックスしたサスペンションを30秒間静置する。20mLのPicoSurfオイル(Sphere Fluidics)をサスペンションに加え、直ちにBead Ruptor device(OMNI)に入れ、4m/sで3回5秒間振とうする。その後、ビーズインオイルサスペンションを冷蔵庫に入れ、4℃で一晩静置する。
架橋された鋳型ナノリアクタービーズは、鋳型ナノリアクタービーズの回収のために記載されたプロトコルに従って、PicoSurfオイルから回収される。
【0083】
キトサン自体を非微粒子蛍光色素で標識する場合、典型的なプロトコルは以下に列挙するが、かかる標識キトサンを上記の架橋ナノリアクタービーズ生成プロトコルで使用する前に行ってもよい:
【0084】
Cy5を用いたキトサンの染色
使用材料:
キトサンHCl(Heppe Medical chitosan GmbH)。
Cy5モノNHSエステル(GE)
蒸留水
【0085】
キトサンHCl(1g)を蒸留水に溶解し、2%溶液を調製する。1.6mgのCy5モノNHSエステルを100μlの蒸留水に溶解し、キトサン溶液に加える。短時間撹拌後、溶液を室温、30rpmの回転ホイールの上で一晩インキュベートする。その後、溶液を蒸留水に対して合計48h透析し、水を3回交換する。その後、染色したキトサンポリマーをSpeedvacで2%溶液まで濃縮する。
【0086】
実施例2
第一ポリマー分子と第二ポリマー分子の結合による架橋ナノリアクタービーズの調製
以下の実施形態では、アガロース足場と、第二の材料(ナノリアクタービーズのイオン化可能な捕捉マトリックスとして適用されるキトサンポリマー)から構成される捕捉マトリックスからなるハイブリッドハイドロゲルビーズの生成を示す。この実施例では、キトサンはアガロースマトリックスに架橋され、架橋はキトサンを、あらかじめ作られたハイドロゲルビーズのマトリックスを含む化学的に活性化されたアガロースポリマーに結合させることによって達成される。その結果、キトサン分子は異なるキトサン分子間の結合を形成するアガロース分子と結合する。古典的なキトサンに加えて、様々な水溶性誘導体が利用可能であり、互換的に使用することができる:
-キトサンHCl
-キトサングルタメート(Glutamat)
-カルボキシメチルキトサン
-キトサンラクテート
-キトサンアセテート
(Heppe Medical chitosan GmbH)
【0087】
単分散アガロースビーズの生成
アガロースから構成される単分散ビーズは、改良型μEncapsulatorシステム(Dolomite microfluidics)を用いて作られる。固化したアガロースビーズはエマルションオイルから回収される。余分なエマルションオイルはピペットで注意深く取り除く。1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノールと蒸留水を加えた後、エマルションを破砕し、続いてビーズを水相に移す。アガロースビーズを蒸留水で数回洗浄した後、ビーズはキトサンでさらに処理するために利用できる。
【0088】
活性化アガロースビーズと架橋キトサンの反応
カップリング試薬として1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI;Sigma)を含むバイアルは、結露を防ぐため、開封前に常温に戻しておく。反応は2工程で行われる:
【0089】
工程1:アガロースのOH基の活性化
アガロースビーズサスペンションを700rpmで1min間遠心分離し、上清を捨てる。CDIを2mMのHClに溶解し、200mM溶液を得る。次にビーズをCDI溶液と1:1の比率で混合し、1mMのHCl中で反応させる。反応チューブを室温で、30rpm回転ホイール上で10min間インキュベートする。
【0090】
反応後、ビーズを700rpmで2min間遠心分離して洗浄する。上清を除去し、回収したビーズを等容量の蒸留水に再懸濁し、混合する。この洗浄手順を2回繰り返し、活性化ビーズをその後のキトサン結合のために調製する。
【0091】
活性化反応はpH5.0未満で行う。pHを調整するための1mMのHClの代替品としては、例えば以下である:
-20mMアセテート緩衝液;pH4.0
-20mMシトレート緩衝液;pH4.0
-5mMマロン酸;pH3.0
【0092】
工程2:予め作った前駆体ビーズを含む活性化アガロースポリマーへのキトサンのカップリング
蒸留水で1%キトサン溶液を調製する。第2工程では、活性化ビーズと1%キトサン溶液を1:1の比率で直ちに混合する。この混合物を室温で、30rpm、回転ホイール上で30min間インキュベートする。反応後、ビーズを700rpmで2min間遠心分離して洗浄する。上清を除去し、ビーズを等容量の蒸留水に再懸濁し、混合する。上清中に遊離キトサンがなくなるようにこの洗浄手順を少なくとも10回繰り返す。
【0093】
架橋ポリマービーズの安定性は、Cy5で染色したキトサンを用い、高濃度(3.25M)のカオトロピック塩(例えばグアニジニウムHCl)を添加した後にチェックする。
図7の画像は、カオトロピック条件下で達成されたカップリングの安定性を示す。
【0094】
異なるpH値でのキトサンの溶解性の特性評価
この項では、本発明に記載のマイクロスフェアの特異的な挙動を説明することを試みる。
【0095】
使用材料:
キトサン-HCl(Heppe Medical chitosan GmbH)、より良い可視性のために
Cy5結合キトサン(上記プロトコル参照)を使用する
マロン酸
MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)緩衝液
リン酸カリウム緩衝液
【0096】
250μlの1%染色キトサン溶液を、pHが上昇する緩衝液と混合し、室温で10min間インキュベートする。その後、溶液を2000rpmで2min間遠心分離する。結果を図8に示し、使用した緩衝液は以下である:
【0097】
1 50mM マロン酸;pH2,0
2 50mM マロン酸;pH3,0
3 50mM マロン酸;pH4,0
4 50mM MES緩衝液;pH5,0
5 50mM MES緩衝液;pH6,0
6 50mM MES緩衝液;pH7,0
7 50mM リン酸カリウム緩衝液;pH8,0
8 50mM リン酸カリウム緩衝液;pH9,0
【0098】
その結果は、6より低いpHでは溶液はそのままであるが、キトサンのpKa超え、pH7以上ではポリマーの凝結が起こることを示す。
【0099】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、このpHに依存したキトサンポリマーの凝結/凝集はハイブリッドビーズでも観察され、本発明の重要な部分を形成していると考えられる。
【0100】
以下の実験のために、2つの異なる緩衝液を使用した:
緩衝液1:200mM MES緩衝液;pH5,0、100mM KCl
緩衝液2:200mM トリス/HCl;pH8,9、100mM KCl
【0101】
本実施例2で製造したビーズ50μlを50μlの緩衝液1と混合し、50μlの同じビーズを50μlの緩衝液2と混合する。1分間のインキュベーション後、ビーズを700rpmで1min間遠心分離して凝結させる。上清を除去する。その後、ビーズを非水相(例えば、PicoSurfオイル)に移し、例えばLoncarevic IF, et al., PLOS ONE 16(3):e0242529. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0242529に記載されているように、反応と検出チャンバー(RDC)に移し、異なる温度でインキュベートする。結果を図9に示す。
【0102】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、第二ポリマーとしての架橋キトサンについてのかかる挙動を示した一方で、第二ポリマーとして、架橋形態で使用する場合は同様に他のポリマー(例えばゼラチン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(2-ジメチル(アミノエチル)メタクリレート)、ポリ(l-リジン)、ポリ(ヒスチジン)および類似のポリマーなど)からも同様の挙動を予想する。さらに、活性化された第一ポリマーに結合したオリゴマーまたはモノマーを使用することも可能である。かかるオリゴマーまたはモノマーは、オリゴ-またはモノ-ヒスチジン、オリゴ-またはモノ-リジン、オリゴ-またはモノ-アルギニンおよび他の化学的に類似の分子であり得る。同様に、本発明者らは、第一ポリマーとしてのアガロースについてのかかる挙動を示したが、非架橋形態で使用する場合は同様に他のポリマー(例えば非架橋ゼラチン、メチルセルロース、ヒアルロナン、エラスチン様ポリペプチド、同様のゲル形成および熱応答特性を有する他の誘導ポリマー)によって達成される同様の挙動も予想する。また、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミドやその誘導体もこの目的に使用できる。
【0103】
列挙されたプロトコルに従って生成され、適切な緩衝液で処理されたビーズは、温度変化に対してあらかじめ決められた反応を示す。これを図10で説明する。
【0104】
図10の画像は、温度上昇に伴う蛍光粒子標識の凝集を明瞭に示す。室温まで冷却すると、第一ポリマーおよびこのようにマイクロスフェアも固化するが、収縮した第二ポリマーによって形成されたコアの凝集体の中に、すべての埋め込み微粒子が集中する。
【0105】
E)マイクロスフェア(ビーズ)の標識/コーディングおよびかかる標識/コード化マイクロスフェア(ビーズ)を用いた増幅反応
基本事項
サンプルと分析物の多重化には、ビーズのタイプを区別するために、それぞれのビーズタイプを独自にコード化する必要がある。ビーズコード化のストラテジーは、4つの別々の蛍光チャネル(青色、緑色、赤色および暗赤色)用の蛍光色素で第二ポリマーまたは埋め込み微粒子を標識することに基づく。加熱後、全ての標識/コーディング粒子は内側コンパートメントに位置し、ナノリアクタービーズの外側コンパートメントの蛍光シグナルから明確に区別される。
蛍光レベルを調整するために、特定のチャネルの蛍光色素が存在するかしないかのどちらかを意味するバイナリーコーディングを適用することができる。このストラテジーを用いてコード化できるビーズのタイプの最大数は2=16であり、ここで2は結果として得られる蛍光強度レベル(0と1)の数であり、4は蛍光チャネルの数である。可能なビーズタイプの数は、分析物/標的の存在を示す酵素増幅反応をモニター/検出するために使用しない場合は、多様なレベルの蛍光色素濃度を可能にすることで、あるいは、ビーズの外側コンパートメントで検出可能なアガロースレベルのコーディングを拡張することで、さらに増やすことができる。
【0106】
画像解析
画像解析ソフトウェアは、外側と内側のビーズコンパートメントの円形オブジェクト輪郭を識別するセグメンテーションアルゴリズムを利用する。このセグメンテーション情報に基づいて、平均蛍光強度が定量化される。各ビーズに割り当てられた独立した蛍光シグナル強度の数は、4チャネルと2コンパートメントを考慮すると、4*2=8となる。
【0107】
ビーズデコーディング
内部コンパートメントに位置するコーディング粒子の蛍光強度レベルまたは内部コンパートメント自体の強度レベルに基づき、ビーズデコーディングアルゴリズムを基礎となるビーズライブラリによって特定されたビーズタイプの1つに各ビーズを割り当てる。
図11に説明する実施形態は、青色または赤色のコーディング粒子で標識された2タイプのビーズを用いた実験に由来する。画像はPCR増幅の終了時に取得された。青色および赤色チャネルのコーディング粒子の他に、これらのチャネルは分析物の検出情報も含んでいる。したがって、外側のビーズコンパートメントはPCR陽性または陰性でありうる。各チャネルの画像取得条件は、色素が存在するコーディング粒子を画像化するピクセルが飽和することを確実にするために調整した。色素が存在しない場合のコーディング粒子の絶対蛍光レベルは、外側ビーズコンパートメントにおけるPCRの結果に起因する。その結果、飽和またはそれに近い蛍光レベル(例えば220~256)は、コーディング粒子が存在するとして分類される。蛍光レベルが不明確なビーズ(例えば180~220)は無効と定める。中間および低強度(例えば180未満)は、コーディング粒子なしと分類される。青色と赤色の標識を持つ融合ビーズは無効と定める。
【0108】
データ解析
分析物の検出と定量のための最終的なデータ解析は、外側のビーズコンパートメントで測定された蛍光強度に基づく。コーディングと検出情報がスペース的に分離されているため、ビーズのコーディングに使用されるのと同じ蛍光チャネル内で分析物特異的情報を得ることが可能である。定量はデジタルまたはリアルタイムPCR解析アプローチによって行うことができる。デジタルPCR解析はPCR終了時の画像から推定される蛍光シグナルに依存するが、一方リアルタイム解析はリアルタイムPCRの全サイクル中の画像から推定される蛍光シグナルに基づく。図12は、図11の実施形態における青色および赤色検出チャネルにおける外側ビーズコンパートメントの蛍光シグナル強度を示す。各ビーズタイプに対する4つのサンプルビーズは、それぞれ青色および赤色チャネルにおけるPCR陰性または陽性の結果の4つの可能な組み合わせをカバーする。図11のプロットでマークされた8つのサンプルビーズの強度は、図12の強度プロットで強調表示される。
【0109】
ビーズ融合制御
融合ビーズの検出は、未知のコードの組み合わせの存在の検出(例えば単色コードの場合)、または多様な内部コンパートメントの検出のいずれかによって可能である(図11参照)。
【0110】
実施例3
BLINKナノリアクタービーズによる細菌gDNAの結合と定量
ゲノム長2.8Mbのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株ST8 USA300由来の細菌gDNAを、BLINKナノリアクタービーズを用いてデジタルPCRにより結合および定量した。培養菌は、セラミックビーズとMinilysホモジナイザー装置(Bertin Technologies)を用いて、撹拌レベル3で2min間機械的に溶解した。ライセートをPBSで1:2000に希釈し、-20℃で保存した。使用したナノリアクタービーズは、アガロースハイドロゲル足場(A9793、Sigma)、架橋キトサン-HCl(Heppe Medical chitosan GmbH)捕捉マトリックス、Lumogen Red F 300ナノ粒子(Kremer Pigmente GmbH & Co. KG)による蛍光コーディング標識、セグメンテーション用蛍光標識(A9793-Cy3)および保持用埋め込み5μmポリスチレン磁性微粒子(Sigma)からなる。
【0111】
結合と洗浄
実施例1で製造されたナノリアクタービーズは、単一サンプルの核酸捕捉とそれに続くデジタル増幅反応のための規定量100μmビーズ(n=56000)を含む0.2ml処理チューブに収容された凍結乾燥ペレットとして供給される。ナノリアクターは、捕捉マトリックスのプレコンディショニングを確実にするために必要な成分1に再懸濁され、予備洗浄される。そのため、2倍容量の成分1をビーズに添加する。得られたビーズスラリーをマグネットに入れてビーズを保持し、上清を吸引して捨てる。予備洗浄を2回繰り返し、次の核酸結合に備えた平衡化状態のナノリアクタービーズを得る。
【0112】
成分1:再懸濁緩衝液/予備洗浄緩衝液
10mM MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、pH5.0
【0113】
実施例1で製造したように、DNAをナノリアクタービーズに結合させるために、3つの濃度レベルで希釈したライセート20μLを、56000個のビーズを含む40μLのビーズベッドにピペッティングし、140μLの結合緩衝液(成分2)を添加した。結合ミックスをエッペンドルフのサーモミキサーで25℃、1800rpmで5min間インキュベートした。捕捉後、ビーズがチューブの壁についたまま、上清を磁性チューブラックとピペットを使い静かに取り除いた。
【0114】
成分2:結合緩衝液
50mMマロン酸 pH3.5
【0115】
結合していないDNAや細胞の残骸を除去するためにビーズを300μLの洗浄緩衝液(成分3)で3回洗浄する場合は、同様の手順を洗浄中に行った。
【0116】
成分3:洗浄緩衝液
マロン酸12.5mM(pH3.5)
【0117】
ナノリアクタービーズへの検出試薬の充填
ナノリアクター内のmecA標的検出のための分析物特異的かつ一般的試薬は、成分4と再懸濁された凍結乾燥ペレットとして供給された。プライマーとプローブの配列は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のタンパク質PBP2A(ペニシリン結合タンパク質2A)をコード化するmecA遺伝子を標的としている。得られた成分5と、上流のサンプル調製プロセスから得られた分析物結合ナノリアクタービーズの等容量を合わせる。800rpmで振とうしながら25℃で5min間インキュベートすることにより、多孔質ナノリアクタービーズに検出試薬を取り込ませることを可能にする。余分な液体を、磁力による試薬充填ナノリアクタービーズの保持によって除去する。
【0118】
成分4(一般的PCR緩衝液)
2xRT-PCR緩衝液:40mMトリスHCl、44mM KCl、44mM NHCl、6mM MgCl
【0119】
成分5(一般的かつ特異的RT-PCR試薬)
2xRT-PCR緩衝液:40mMトリスHCl、44mM KCl、44mM NHCl、6mM MgCl
0.4U/μl Hot Start Taq DNAポリメラーゼ(biotechrabbit GmbH)
0.8mM dNTPs(biotechrabbit GmbH)
0.8μMセンスプライマー(mecA_R:5’-TGGCATGAGTAACGAAGAATATAA-3’)(配列番号:1)(Metabion International AG)
0.8μMアンチセンスプライマー(mecA_R:5’-GAGTTGAACCTGGTGAAGTTG-3’)(配列番号:2)(Metabion International AG)
0.8μM TaqManプローブ(mecA_P:5’-Atto647N-AAAGAACCTCTGCTCAACAAGTTCCAGA-BHQ2-3’)(配列番号:3)(Metabion International AG)
0.2%(w/v)低バイオバーデン、プロテアーゼフリー、分子生物学用BSA(Sigma)
【0120】
充填ナノリアクタービーズの相間移動
試薬充填ナノリアクタービーズを非水相(成分6)に移し分散させ、個々のナノリットルサイズの反応スペースを創生した。このため、ビーズに過剰の成分6(100μl)を添加し、Minilysホモジナイザー装置(Bertin Technologies)を用いる撹拌レベル2で2回の撹拌工程により、ビーズを乳化した。適用機械的応力は、水性ナノリアクタービーズ間の引き合う力を破壊し、サスペンション/エマルションを形成する表面張力を生じさせる。ハイドロゲルビーズと余分な水相の両方が油相中で乳化される。副産物として生じるサブミクロンスケールの液滴は、マイクロエマルションが乳化したナノリアクタービーズの下に別の層を形成するため、ピペットで静かに吸引することで除去する。同じエマルション/増幅オイル(成分6)で繰り返し洗浄すると、本質的に望ましくない液滴はすべて除去される。さらに100μlの成分6を加えた。
【0121】
成分6(相間移動オイル)
-HFE-7500フルオロカーボンオイル(3M Deutschland GmbH)に
-2~5%(v/v)PicoSurf(SphereFluidics)または2~5%(v/v)FluorSurf(Emulseo)が補充されたもの
【0122】
ナノリアクタービーズでのデジタルPCR増幅、検出およびgDNA定量
ナノリアクタービーズサスペンションをポリカーボネート製の反応および検出チャンバー(RDC)に移し、250μmの透過性ポリカーボネートフィルムで覆ってチャンバー内高さを約100μmとし、ビーズがチャンバー内で単層として分散することを可能にした。適切な反応および検出チャンバーの例は、Loncarevic IF、et al.、PLOS ONE 16(3):e0242529. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0242529に記載されている。
次に、RDCは、チャンバーの薄膜がペルチェに接触している試験装置上に設置された高性能ペルチェ素子に取り付けられた。PCRは以下のサイクル条件を用いて行った:初期変性に120s95℃、45サイクル(5sec95℃、15sec61℃)。
【0123】
PCRプロトコルが完了すると、図13Bに示す2枚の画像が各チャンバーポジションで取得され、合計2x48枚まで画像が追加される。1チャネルはセグメンテーションに必要であり(緑色:λexc1=550nm)、第2チャネルはmecA特異的増幅シグナルに必要である(赤色:λexc2=635nm)。自動画像取得はBLINK toolboxソフトウェアによって起き、5倍対物レンズ(視野4.416mmx2.774mm)とpE-4000(CoolLED Ltd.)光源を装備した蛍光顕微鏡(Zeiss AxioObserver)を用いて達成される。顕微鏡にはさらに、3つの蛍光フィルターセット(Cy5 ET、Cy3 ET、AHF Analysentechnik)と、反応チャンバーを備えたサーモサイクラーが取り付けられる自動X-Yステージが装備されていた。
【0124】
標的ごとのDNAインプットは、標的ごとに検出された陽性ビーズと陰性ビーズの数に基づいてポイズン分析の実施により定量した。各ライセート濃度レベルについて、直径正規化ラムダ値を計算した。ラムダ値と結合に使用したビーズの初期数を掛け合わせ、gDNAコピーアウトプット(cpアウトプット)を算出した。
【0125】
名目のインプットは、図13Aに示す標準検量線を用いてqPCRで算出した。
【0126】
実施例4
ナノリアクタービーズによる粗サンプルからの核酸抽出
以下の実施形態では、組換えAccuplexTM(SeraCare Life Sciences、Inc.)HCV高力価対照材料(ロット番号10321228)をスパイクしたEDTA血漿サンプルを、RNA抽出と検出を単一のワークフローに統合する本発明に従って、ナノリアクタービーズを使用して単分散エマルション中にカプセル化する。AccuplexTM対照材料は、本当の患者サンプルに見られるウイルスの複雑さに似たシンドビス(Sindbis)ウイルスに基づき、HCV特異的RNA配列を含む。使用したナノリアクタービーズは、アガロースハイドロゲル足場(A9793、Sigma)、架橋キトサン-HCl(Heppe Medical chitosan GmbH)捕捉マトリックス、Lumogen Red F 300ナノ粒子(Kremer Pigmente GmbH & Co. KG)による蛍光コーディング標識、セグメンテーション用蛍光標識(A9793-Cy3)および保持用埋め込み5μmポリスチレン磁性微粒子(Sigma)からなる。これらは基本的に実施例1に記載したように作製した。
【0127】
ナノリアクターの調製
ナノリアクタービーズは、単一サンプルの核酸精製とそれに続くデジタル増幅反応のための規定量の100μmビーズ(n=53000)を含む0.2ml処理チューブに収容された凍結乾燥ペレットとして供給される。ナノリアクターは、捕捉マトリックスのプレコンディショニングを確実にするために必要な成分1に再懸濁され、予備洗浄される。そのため、2倍量の成分1をビーズに添加する。得られたビーズスラリーをマグネットに入れてビーズを保持し、上清を吸引して捨てる。予備洗浄を2回繰り返し、次の核酸結合に備えた平衡化状態のナノリアクタービーズを得る。
【0128】
成分1:再懸濁緩衝液/洗浄緩衝液
-10mM MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、pH6.5
【0129】
ビーズベースRNA抽出
HCV陰性EDTA全血(Universitatsklinikum Jenaより供給)を遠心分離して調製した50μl血漿を、希釈したAccuplexTMHCV対照材料でスパイクし、平衡化したナノリアクタービーズに直接適用する。元のウイルス力価は、製造元の情報によると2.69x10cp/mlであった。対照材料は、最終ウイルス力価2.69x10cp/mlまでヌクレアーゼフリー水で希釈され、そのうちの1μlが、26900ウイルス粒子の分析物インプットサイズに対応してスパイクされた。カオトロピック剤含有成分2を133μlの容量で処理チューブに添加し、その後効率のよいサンプルのホモジナイズ、ウイルス粒子の溶解、放出された脆弱なRNAの安定化のために1800rpmで5min間振とうしながら30℃でインキュベートする。RNAの結合は、結合緩衝液(成分3)を最終結合容量300μlまで添加し、2000rpmで追加時間の5min間振とうしながら25℃でインキュベーションを繰り返すことで達成される。あるいは、等容量の成分2、成分3、ナノリアクタービーズおよびEDTA血漿を含む同じ混合物を用いて、溶解と結合を1つのプロセス工程(25℃で10min間インキュベーション、1800rpmで撹拌)にまとめることもできる。ナノリアクタービーズ内に含まれる磁化された微粒子/ナノ粒子により、洗浄緩衝液(成分1)を含むさまざまなサンプル調製溶液を通してナノリアクターの移動が可能になる。こうして、処理チューブをマグネットラックに移し、ビーズを保持する。結合上清を除去し、ナノリアクターを300μlの成分1に再懸濁する。洗浄を効率的に繰り返す(5×)ことで、ビーズベースサンプル処理を同じコンパートメント内で行われるその後のデジタル増幅反応に適合させる下流の酵素反応に干渉する最も可能性のある阻害物質を実質的に除去する。
【0130】
成分2:溶解緩衝液
-100mM アセテート緩衝液、pH4(Alfa Aesar)
-3M 硫酸グアニジン(Sigma)
-20mM エチレンジアミン四酢酸(Acros Organics)
-10%(v/v)テルジトール(Tergitol)(Sigma)
【0131】
成分3:結合緩衝液
-1M MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、pH6.5
【0132】
ナノリアクタービーズへの検出試薬の充填
ナノリアクター内のHCV検出のための分析物特異的かつ一般的試薬は、成分4と再懸濁される凍結乾燥ペレットとして供給された。得られた成分5と、上流のサンプル調製プロセスで得られた分析物結合ナノリアクタービーズの等量を合わせる。1000rpmで振とうしながら、30℃で5min間インキュベートすることにより、多孔質ナノリアクターに検出試薬を取り込ませることを可能にする。余分な液体は、磁力による試薬充填ナノリアクタービーズの保持によって除去される。
【0133】
下記最終濃度からなる成分4
2xRT-PCR緩衝液:40mM トリスHCl、44mM KCl、44mM NHCl、6mM MgCl
【0134】
下記最終濃度からなる成分5:
-2xRT-PCR緩衝液:40mM トリスHCl、44mM KCl、44mM NHCl、6mM MgCl
-0.4U/μl Hot Start Taq DNAポリメラーゼ(biotechrabbit GmbH)
-0.8mM dNTPs(biotechrabbit GmbH)
-0.8μM センスプライマー(HCV_Brun_F:5’-GTGGTCTGCGGAACCGGTGA-3’)(配列番号:4)(Metabion International AG)
-0.8μM アンチセンスプライマー(HCV_Brun_R:5’-CGCAAGCACCCTATCAGGCAGT-3’)(配列番号:5)(Metabion International AG)
-0.8μM TaqManプローブ(HCV_Brun_P1:5’-Atto488-CCGAGTAGCGTTGGGTTGCGAAAGG-BHQ1-3’)(配列番号:6)(Metabion International AG)
-0.2%(w/v)低バイオバーデン、プロテアーゼフリー、分子生物学用BSA(Sigma)
【0135】
充填ナノリアクターの相間移動
試薬充填ナノリアクターを非水相(成分6)に移し分散させ、個々のナノリットルサイズの反応スペースを作成する。このため、ビーズに過剰の成分6(100μl)を添加し、Minilysホモジナイザー装置(Bertin Technologies)を用いる撹拌レベル2で2回の撹拌工程により、ビーズを乳化した。適用機械的応力は、水性ビーズ間の引き合う力を破壊し、サスペンション/エマルションを形成する表面張力を生じさせる。ハイドロゲルビーズと余分な水相の両方が油相中で乳化される。副産物として生じるサブミクロンスケールの液滴は、マイクロエマルションが乳化したナノリアクタービーズの下に別の層を形成するため、ピペットで静かに吸引することで除去される。同じエマルション/増幅オイル(成分6)で繰り返し洗浄すると、本質的に望ましくない液滴はすべて除去される。さらに100μlの成分6を加えた。
【0136】
成分6:相間転移とシグナル増幅オイル
-HFE-7500フルオロカーボンオイル(3M Deutschland GmbH)に
-2~5%(v/v)PicoSurf(Dolomite Microfluidics)または2~5%(v/v)FluoSurf(Emulseo)が補充されたもの
【0137】
ナノリアクターでのデジタルRT-PCR増幅
ナノリアクタービーズサスペンションをポリカーボネート製の反応および検出チャンバー(RDC)に移し、250μmの透過性ポリカーボネートフィルムで覆ってチャンバー内高さを約100μmとし、ビーズがサスペンションアレイを形成するチャンバー(1)内で単層として分散することを可能にした。RDCは、チャンバーの薄膜がペルチェに接触している高性能ペルチェ素子に取り付けられた。ナノリアクターは、急速な温度サイクルに供し、チャンバー特異的PCR制御モードが確立される。適用した温度条件は以下の通りである:逆転写は50℃で10min間、初期変性は95℃で30s間、その後変性95℃で5s間およびアニーリング/伸長62℃で10s間からなる2段階PCRを30~45サイクル行う。ゾル-ゲルスイッチング能力により、サスペンションは個々の液体ナノリアクターコンパートメントを持つエマルションとなる。
【0138】
サーマルプロトコルが完了すると、図14に示すように、3枚の画像が各チャンバーポジションで取得され、合計2x48枚まで画像が追加される。1チャネルは標識同定用(赤色:λexc1=650nm)、第2チャネルはHCV特異的増幅シグナル用(青色:λexc2=470nm)、第3チャネルはセグメンテーション用(緑色色:λexc3=550nm)に必要である。自動画像取得はBLINK toolboxソフトウェアによって起き、5倍対物レンズ(視野4.416mmx2.774mm)とpE-4000(CoolLED Ltd.)光源を装備した蛍光顕微鏡(Zeiss AxioObserver)を用いて達成される。顕微鏡にはさらに、3つの蛍光フィルターセット(Cy5 ET, Cy3 ET, FITC/FAM HC, AHF Analysentechnik)と、反応チャンバーを備えたサーモサイクラーが取り付けられる自動X-Yステージが装備されていた。
【0139】
ビーズのセグメンテーションとエンドポイント解析
取得されたすべての画像は、BLINKが開発した自動化された多面的画像処理アルゴリズムに供され、個々のナノリアクタービーズが検出およびセグメント化される。各チャネルの蛍光シグナル、位置、直径/容量など、セグメント化されたすべてのナノリアクターの特徴が、続いて収集される。実験データはオープンソースのソフトウェアJupyterで処理される。
【0140】
Accuplex HCVの液滴デジタルPCRデータは1-Dまたは2-Dプロットで表示される。ソフトウェアは各標的の陰性と陽性のフラクションをクラスタ化し、陽性イベントのフラクションをポアソンアルゴリズムに当てはめ、λ値(100μmビーズ直径に正規化)として表されるアウトプットコピー数を決定した。λ値とナノリアクタービーズのインプット数を掛け合わせ、それぞれアウトプットHCVコピー数を決定した。統合されたサンプル調製プロセスとデジタル検出から、平均6697コピー、標準偏差SD=258コピー(n=2)が回収された。
【0141】
実施例5
第一ポリマーに結合したプライマーを用いた増幅およびリアルタイム検出の実施
WO 2021/122563A1に記載されているビオチン化アガロースを用いて、実施例1のプロトコルに従って、ビオチン化アガロースを第一ポリマーとして含むビーズを生成した。分析物特異的ビーズは、標的特異的プライマーおよびプローブを、定義された蛍光コードを有する前駆体ビーズに結合させることにより生成される。すべてのビーズ操作と洗浄工程は、マグネットラック付きの1本の実験用チューブ(1.5ml)内で行う。前駆体ビーズ(100mMトリス緩衝液(pH8.9)中25%容量のビーズベッド)は、室温で、サーモミキサー上で30min間800rpmの一定振とう下で最初にストレプトアビジン(100mMトリス緩衝液(pH8.9)中0.5mg/ml)で誘導体化される。余分のストレプトアビジンは、10倍容量の水で3回洗浄することにより除去する。プライマーに5’ビオチン、プローブに3’ビオチンを添加することにより、ビーズ結合PCR反応は結合していないオリゴヌクレオチドを用いたPCRと比較しても類似の性能を示す。プライマーとプローブは100mMトリス緩衝液(pH8.9)中、室温で、サーモミキサー上で30min間800rpmの一定振とう下で、ビーズに固定化される。インキュベーション後、結合していないオリゴヌクレオチドを5倍容量の水で除去する。ビオチン/ストレプトアビジン結合は、ビーズの架橋キトサンポリマーにゲノムDNA(50mMマロン酸、pH2.5)を続いて捕捉する際の酸性条件下でも安定なままである(室温で、サーモミキサー上で、15min間800rpmで振とう)。DNA捕捉後、ビーズの5倍容量のマロン酸(12.5mM、pH5.0)でビーズを3回洗浄し、続いてオリゴヌクレオチドを含まない2x濃縮PCRミックスをビーズに充填する。その後、100μlのPicoSurfオイル(Spherefluidics)をサスペンションに添加する。チューブを閉じ、ビーズビート装置(Omnilyse、Bertin)に取り付け、50%の速度で5sec3回振とうする。その後、ビーズサスペンションをPCRインキュベーションと画像取得のために適切な検出チャンバーに移す。
【0142】
リアルタイムPCRにおけるTaqMan-PCRプローブを用いたゲノム標的の検出
画像セグメンテーションのバックグラウンドのために提供されるCy3染色アガロースを含むビーズに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のgapA種マーカーを検出するためのデスチオビオチン化プライマーとCy5/デスチオビオチン標識プローブ(0.5μMフォワードプライマー、0.5μMリバースプライマー、0.4μMプローブ)をあらかじめ充填する。ネガティブ対照として、FAMで標識し、プライマーとプローブを結合していないビーズの集団を使用する。
【0143】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)のゲノムDNA単離物(ビーズあたり100ゲノムコピーに設定されたインプット濃度)の捕捉は100μLの結合緩衝液(100mMマロン酸、pH2.5)にビーズを再懸濁し、ビーズサスペンションを同量のサンプルと混合して行う。室温で15min間インキュベートした後、サーモミキサーにおいて800rpmで振とうし、ビーズの5倍容量のマロン酸(12.5mM、pH5.0)でビーズを3回洗浄する。その後、2xPCRマスターミックスをビーズに充填し、ビーズ上に以下のPCR緩衝液組成物を得る:
100mM トリス/HCl pH8.9
22mM 塩化アンモニウム
22mM 塩化カリウム
3mM MgCl
0.35mM dNTPs
0.1% BSA
0.2ユニットDNAポリメラーゼ
【0144】
この分析に使用されたプライマー/プローブ配列は以下の通り:
【0145】
【表2】
【0146】
オイル中で再懸濁後、増幅を行う(2min初期変性、95℃10sec変性後58℃15secアニーリング/伸長を42サイクル)。PCR反応は、アニーリング/伸長段階中のサイクルごとに、Zeiss Axio Observer蛍光顕微鏡の蛍光イメージングによりリアルタイムでモニターされる。
【0147】
画像解析アルゴリズムは、Cy3生成シグナルにつながる緑色チャネルの明るい円盤状の物体輪郭を認識することにより、画像上のビーズをセグメント化する。得られたセグメンテーション情報により、全サイクル(1~42)および関連する全チャネル(PCRプローブシグナルは赤色/Cy5、対照ビーズのコーディングは青色/Fam)における全ビーズの平均蛍光レベルを推定することを可能にする。すべてのビーズは、最初のサイクルにおいて青色チャネル(FAM)で測定されたシグナル強度レベルを用いてビーズタイプに割り当てられる。分析物特異的ビーズは、シグナル強度が低いことを特徴とする一方、陰性対照群のビーズはシグナル値が高い。
【0148】
図15の左上パネルに示す視野では、有効な陽性ビーズの総数は618個、そして有効な対照ビーズの総数は33個である。リアルタイム解析アルゴリズムは、図15の左下パネルに示すように、各単一ビーズの蛍光シグナルコースに非線形関数を当てはめる。当てはめた非線形モデルはシグモイド関数と線形関数を組み合わせたもので、シグモイド成分は増幅動態を表し、線形成分はシグナルのベースラインを表す。サイクル閾値(Ct)は、図15の右パネルに示すように、シグモイド関数の定義値の接線と最大2次導出値およびベースラインとの交点から計算される。
【0149】
より具体的には、図15は黄色ブドウ球菌(S. aureus)ゲノムDNAの検出を伴うビーズデジタルPCR反応のモニタリングを示す。
【0150】
図15左上パネル:増幅後のCy5チャネルの視野を示す(PCRシグナル、明暗のビーズが明瞭に見える)。PCR前に撮影されたCy3画像は分析物特異的ビーズを示し、FAM画像は対照ビーズを示す。Cy5画像において対応するシグナルは、全ての分析物特異的ビーズが陽性PCRシグナルを示しているのに対して、対照ビーズが暗いままであることを示す。この実施例では、標的濃度が非常に高いレベル(約100cp/ビーズ)に設定されているため、非常に高いすべての分析物特異的ビーズは明るいCy5シグナルを示す。左下パネルのグラフは、挿入図に示した個々のビーズのCy5蛍光のリアルタイム曲線と、PCR陽性ビーズと陰性ビーズの平均強度を示す。3つのビーズは陽性ビーズタイプに属し、Ct値約21.6およびリフト比約2.5の強い増幅動態を示す。陽性ビーズタイプの全618個の有効ビーズから推定したCt値の密度分布を図15の右側に示す。4番目のビーズは、蛍光強度の増加のない対照ビーズである。すべてのビーズのリアルタイム曲線を個別に解析してからCt値を要約する代わりに、この方法ではビーズタイプごとに単一の平均蛍光強度を計算することもできる。本実施形態の図15(左側)に示すように、2つの平均リアルタイム曲線があり、1つは陽性ビーズタイプ用、1つは陰性対照ビーズタイプ用である。
【0151】
本明細書、特許請求の範囲、および/または添付図面に開示された本発明の特徴は、別個に、およびそれらの任意の組み合わせの両方で、本発明をその様々な形態で実現するための材料となり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
【配列表】
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【国際調査報告】