(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】たばこ材料を処理するための方法および処理されたたばこ材料
(51)【国際特許分類】
A24B 15/18 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A24B15/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526548
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022080842
(87)【国際公開番号】W WO2023079089
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ボヴェ ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニ シモン
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BA60
4B043BB16
4B043BB25
4B043BC41
(57)【要約】
たばこ材料を処理するための方法であって、本方法は、たばこ材料を提供すること、たばこ材料を発酵させて発酵たばこ材料を得ることを含み、発酵工程は、#嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすること、#以下の条件:#乳酸の含有量が、たばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、好ましくは80倍を超える、#還元糖の含有量が、たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である、#インドール-3乳酸の含有量が、たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える、#カフェイン酸の含有量が、たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える、#キナ酸の含有量が、たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、#アスパラギンの含有量が、たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満である、#グルタミンの含有量が、たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満である、#L-オルニチンの含有量が、たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超える、#L-ロイシンの含有量が、たばこ材料中のL-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、#L-リジンの含有量が、たばこ材料中のL-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超える、#発酵指数が、50を超え、好ましくは100を超え、より好ましくは250を超え、より好ましくは400を超え、ここで発酵指数は、処理されたたばこ材料中の乳酸の含有量と非発酵たばこ材料の乳酸の含有量との比を、処理されたたばこ材料中の還元糖の含有量と非発酵たばこ材料の還元糖の含有量との比で割って得られる、のうちの少なくとも一つが満たされたとき、発酵を停止すること、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ材料を処理する方法であって、前記方法が、
たばこ材料を提供することと、
発酵たばこ材料を得るために、前記たばこ材料を発酵させることであって、前記発酵工程が、
嫌気性条件下で前記たばこ材料をインキュベートすること、
以下の条件:
・ 乳酸の含有量が、前記たばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、好ましくは80倍を超える、
・ 還元糖の含有量が、前記たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である、
・ インドール-3乳酸の含有量が、前記たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える、
・ カフェイン酸の含有量が、前記たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える、
・ キナ酸の含有量が、前記たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、
・ アスパラギンの含有量が、前記たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満である、
・ グルタミンの含有量が、前記たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満である、
・ L-オルニチンの含有量が、前記たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超える、
・ L-ロイシンの含有量が、前記たばこ材料中のL-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、
・ L-リジンの含有量が、前記たばこ材料中のL-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超える、
・ 発酵指数が、50を超え、好ましくは100を超え、より好ましくは250を超え、より好ましくは400を超え、前記発酵指数は、処理されたたばこ材料中の乳酸の含有量と非発酵たばこ材料中の乳酸の含有量との比を、前記処理されたたばこ材料中の還元糖の含有量と前記非発酵たばこ材料中の還元糖の含有量との比で割って得られる、のうちの少なくとも一つが満たされたとき、前記発酵を停止すること、を含む、発酵させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、または発酵指数のうちの少なくとも一つの初期含有量を測定するための初期測定工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発酵工程中の前記たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、または発酵指数のうちの少なくとも一つの含有量を測定するための測定工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記たばこ材料がダークたばこを含有する場合、2,3ブタンジオールの含有量が、前記たばこ材料中の2,3ブタンジオールの初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、またはジアセチルの含有量が、前記たばこ材料中のジアセチルの初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超えるという条件のうちの少なくとも一つが満たされるときに、前記発酵を停止するために提供される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記たばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルのそれぞれの初期量を得るように、前記発酵前に前記たばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルの初期含有量を測定するための初期測定工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記発酵工程中、1000キログラム/平方メートル~15000キログラム/平方メートル、好ましくは3000キログラム/平方メートル~12000キログラム/平方メートル、より好ましくは5000キログラム/平方メートル~10000キログラム/平方メートルから成る圧力を前記たばこ材料に印加するために提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1か月、好ましくは少なくとも2か月、より好ましくは少なくとも4か月、より好ましくは少なくとも6か月、さらにより好ましくは少なくとも8か月、好ましくは少なくとも10か月、より好ましくは少なくとも12か月の発酵時間の間、前記発酵工程を継続するために提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記発酵工程中、前記たばこ材料の温度を21℃~35℃、好ましくは25℃~31℃から成る温度に保つために提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
たばこ材料であって、
a)以下の化合物、
- 前記たばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、より好ましくは80倍を超える量の乳酸、
- 前記たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である量の還元糖、
- 前記たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える量のインドール-3乳酸、
- 前記たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超える量のカフェイン酸、
- 前記たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える量のキナ酸、
- 前記たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満の量のアスパラギン、
- 前記たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満の量のグルタミン、
- L-オルニチンは、前記たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超える、
- L-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超えるの量のL-ロイシン、
- L-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超えるの量のL-リジン、
- 発酵指数が、50を超え、好ましくは100を超え、より好ましくは250を超え、より好ましくは400を超え、前記発酵指数は、前記たばこ材料中の乳酸の含有量と前記非発酵たばこ材料中の乳酸の含有量との比を、前記たばこ材料中の還元糖の含有量と前記非発酵たばこ材料中の還元糖の含有量との比で割って得られる、のうちの少なくとも一つ、または、
b) 総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギン、または
c) 総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミン、または
d) 総乾燥重量基準で10000ミリグラム/キログラム超の総遊離アミノ酸、または
e) 総乾燥重量基準で少なくとも1マイクログラム/グラム、好ましくは少なくとも2マイクログラム/グラム、より好ましくは少なくとも2.5マイクログラム/グラムのインドール-3乳酸、を含む、たばこ材料。
【請求項10】
前記たばこ材料が、前記たばこ材料を嫌気性条件下でインキュベートすることを含む、処理されたたばこ材料を得るために前記たばこ材料を発酵することを含むプロセスによって得られる、請求項1~9に記載のたばこ材料。
【請求項11】
前記たばこ材料が乾燥されている、請求項9または10に記載のたばこ材料。
【請求項12】
前記たばこ材料が粉砕されている、請求項9~11のいずれか一項に記載のたばこ材料。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載のたばこ材料の総乾燥重量基準で約2.5重量パーセント~総乾燥重量基準で100重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約4重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約10重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約20重量パーセントを含有する、たばこ材料を含む、エアロゾル発生物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこを処理するための方法、および発酵によって処理されたたばこ材料に関する。本発明はまた、発酵によって処理されたたばこ材料を含有するエアロゾル発生物品に関する。特に、発酵は嫌気性発酵である。
【背景技術】
【0002】
たばこ製品に利用されるたばこ材料の全体的な特性または性質を変化させるために、様々な処理方法および添加剤が当技術分野で提案されてきた。例えば、たばこ材料は添加剤で処理されてきた。加えて、これらのたばこ材料の加工中に使用される処理条件は、こうしたたばこ材料から生産されるたばこ製品の化学特性または官能特性を変化させるために、およびこうしたたばこ材料を組み込んだ喫煙物品によって発生される主流煙またはエアロゾルの化学特性または官能特性を変化させるために、制御されてきた。
【0003】
たばこ加工の後の方の段階でたばこ材料の風味および香りを強化または添加するための処理は多くの場合、一つ以上の添加剤をたばこに添加することを伴い、追加の加工工程および装置を必要とする可能性があり、これは費用と時間がかかる可能性がある。さらに、たばこへの添加剤の添加は、一部の消費者に良く思われない場合がある。
【0004】
したがって、添加剤が全くなくて、良好かつ改善された感覚刺激特性を有するたばこ材料を提供するニーズがある。したがって、たばこ自体に外部風味剤を添加することを伴わない、たばこ材料の感覚刺激特性を改善する方法に対するニーズもまたある。さらに、複雑な加工を必要とせずに、こうした異なる感覚刺激材料を表すたばこ材料のニーズがある。
【0005】
また、高い感覚刺激特性と低減された濃度の有害化合物とを、同時に有するたばこ材料を提供するニーズもある。また、ユーザーによる使用時に産生される高い感覚刺激特性と、生成されたエアロゾル中の低減された濃度の有害化合物とを、同時に有するたばこ材料を提供するニーズもある。
【発明の概要】
【0006】
一態様によると、本発明は、たばこ材料を処理するための方法に関し、本方法は、たばこ材料を提供すること、およびたばこ材料を発酵させて発酵たばこ材料を得ることを含む。発酵工程は、嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることを含むことが好ましい。
【0007】
発酵に起因して、たばこ材料中に存在する特定の化合物は変化する場合があり、同様にたばこ材料の感覚刺激特性も変化しうる。さらに、発酵プロセス中、たばこ材料中の一部の化合物の含有量が減少し、一部のさらなる化合物の濃度が増加する。
【0008】
発酵たばこ材料は、感覚レベルで、対応する未発酵の乾燥処理済みたばこ材料と比較して、より高い滑らかさの特徴を一貫して送達する。さらに、発酵たばこ材料は、使用時に花のノートまたは香りの特徴を送達する。たばこ発酵材料は、粗削りな感覚を低減するより滑らかな特徴を有する。したがって、たばこ材料の感覚刺激特性が増加し、ユーザーにとっての体験が改善される。
【0009】
たばこ材料は発酵しうることが知られている。たばこ植物は微生物の宿主となる場合があり、この微生物は次に細菌、カビ、アクチノマイセスを含みうる。研究では、細菌がたばこ中の現存の微生物の大半を占める一方で、カビおよびアクチノマイセスは少数であることが示されている。酵母は低濃度であるか、または全く検出できない。発酵たばこは、当技術分野で周知の様々な適切な技法によって、例えばhttp://www.scirp.org/journal/jbmで入手可能なYang Yangらによって発表された「Research Progress in Tobacco Fermentation」(Journal of Biosciences and Medicines 2018,6,105-114)、または米国特許第5372149号、または米国特許第4528993号、およびその他に記載の通りの技法によって作られることができる。概して、たばこ発酵は、乾燥されて熟成されたたばこの水分含量を、約20パーセント~約60パーセントの水分含量に調整することと、湿らせたたばこを重ねて発酵させることとを含む。発酵は、例えば乾燥または低温貯蔵によって終了させることができる。上述の通り、微生物は概してたばこ植物に天然に存在するため、たばこ発酵は微生物の添加を必要としない。
【0010】
本発明において発酵は、嫌気性条件下で行われる。
【0011】
嫌気性発酵は、酸素の非存在下でのより小さい分子への複雑な有機化合物の変換として定義される。この用語はまた、化学平衡と生化学的活性の両方の結果として、酸化還元反応に酸素を利用できない条件として定義されることができる。代わりに、特定のタイプのエネルギー代謝のために微生物によって使用されることができる他の酸化化合物が存在してもよい。
【0012】
嫌気性条件は好気性条件と共存する場合があり、ガス形態の酸素は、微小環境(例えば、水中に懸濁された岩屑の凝集体など)中の微生物には利用できない場合があり、その一方でそれと同時にマクロ環境(水)中に存在しうる。
【0013】
たばこの嫌気性発酵において、理論に拘束されることなく、主要エネルギー抽出経路は解糖から来てもよく、一部のアミノ酸は炭素/窒素源としても使用される。好ましい窒素化合物には通常、グルタミン、アラニン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸塩、アスパラギン、尿素、アルギニンが含まれる。
【0014】
以下において、「発酵条件」という定義では、たばこが嫌気性条件に供されることを意味する。発酵環境には特定の量の酸素が存在してもよいが、酸素は酸化還元反応には利用できない。
【0015】
嫌気性発酵条件は、アルカロイド、特にたばこ材料のニコチンの含有量に影響を与えない。同時に、たばこ材料の感覚刺激特性が増大する。
好ましくは、方法は、少なくとも一つの所望の条件が満たされたときに発酵工程を停止するために供する。
【0016】
このようにして、特定の望ましい特性を有する処理されたたばこ材料を得ることが可能である。また、長すぎる発酵プロセスを回避することも可能である。したがって、たばこ材料の品質は保たれる。
【0017】
方法は、乳酸の含有量がたばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは20倍を超える時に、より好ましくは50倍を超える時に発酵工程を停止することを含む。方法は、乳酸の含有量がたばこ材料中の乳酸の初期量の70倍を超える時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは80倍を超える時に発酵工程を停止することを含む。
【0018】
乳酸の増加は、たばこ材料の発酵の信頼できる指標である。発酵後のたばこ材料中の乳酸の量は、たばこ材料のタイプ、またはたばこ材料中の乳酸の初期量にも依存しうる。さらに、発酵後のたばこ材料中の乳酸の量は、発酵前のたばこ材料中の他の化合物の含有量に依存しうる。反対に、たばこ材料中の乳酸の増加は、たばこ材料の発酵の程度の信頼できる指標である。このパラメータは、たばこ材料のタイプまたはたばこ材料の組成に依存せず、さらなる外部パラメータによる影響を受けない。
【0019】
乳酸は、二つのエナンチオマー、L-乳酸とD-乳酸とを有する。乳酸という用語を用いた本発明の目的において、二つのエナンチオマー、L-乳酸とD-乳酸との合計が意図されている。それにもかかわらず、発酵たばこでは、主にエナンチオマーL-乳酸が存在するが、一部のD-乳酸も生成される。L-乳酸と比較して、D-乳酸はヒトに対して有毒であり得、すなわち、経口的に毒されたラット当たりのLD50値レベルは、約4.5g/キログラムである(Pohanka,2020)。しかしながら、D-乳酸およびL-乳酸は不揮発性であり、したがってたばこ材料で生成されるエアロゾルに伝達されない。
【0020】
たばこ材料中の乳酸の含有量は、MP 0309 rev 5 2012,Chelab S.r.lにより、分光光度法で判定される。
【0021】
方法は、還元糖の含有量が、たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満である時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である時に、発酵工程を停止することを含む。
【0022】
還元糖は嫌気性発酵によってピルビン酸塩に変換され、ピルビン酸は多くの他の風味化合物の前駆体であり、カラメル褐色の糖および酸の特徴を提供する。したがって、嫌気性発酵に供されるたばこ材料中の還元糖の含有量の減少は、たばこ材料の発酵の程度の良好な指標である。たばこ材料中の還元糖の量は、例えば、たばこのタイプ、収穫領域などの異なる要因に依存しうるが、還元糖の還元速度は発酵プロセスの程度を示す。たばこの葉に最も豊富に天然で存在する糖は、グルコース、フルクトース、スクロースである。糖含量の違いは、たばこの種類間で存在しうる。例えば、バージニアは糖度が高い(概して8パーセント~30パーセントの範囲である)一方で、バーレーは糖度が低い(概して1パーセント~2パーセントの範囲である)特徴がある。しかしながら、たばこ材料に使用されるたばこタイプにかかわらず、本発明の発酵条件下での発酵中の還元糖の含有量の減少が見いだされた。還元糖の量の変化は、たばこ材料の感覚刺激特性、およびたばこ材料で生成される煙またはエアロゾルの感覚刺激特性を変化しうる。
【0023】
たばこ材料中の還元糖の含有量は、CORESTA推奨の方法N°38に従って、連続フローアナライザーによって判定されることが好ましい。
【0024】
方法は、インドール-3乳酸の含有量がたばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは10倍を超える時に、好ましくは20倍を超える時に発酵工程を停止することを含む。好ましくは、インドール-3乳酸の絶対含有量を、UPLC-MSによって、抽出された標準曲線に基づいて計算して判定した。
【0025】
インドール-3乳酸は、たばこの葉中に微量にのみ存在するが、嫌気性発酵中、乾燥処理済み葉材料中に生成され、たばこ材料が嫌気性発酵に供されたことを示す。
【0026】
方法は、カフェイン酸の含有量がたばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは10倍を超える時に、より好ましくは20倍を超える時に発酵工程を停止することを含む。
【0027】
カフェイン酸の存在は、たばこ材料の感覚刺激特性を増大させ、ユーザーの体験を改善する。たばこ材料中のカフェイン酸の含有量は、UPLC-MSを使用したメタボローム解析、非発酵たばこ材料と、処理されたたばこ材料、すなわち発酵たばこ材料または部分的発酵たばこ材料とにおけるカフェイン酸の比較によって推定されることが好ましい。
【0028】
方法は、キナ酸の含有量がたばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは4倍を超える時に発酵工程を停止することを含む。
【0029】
たばこ材料中のキナ酸の含有量は、UPLC-MSを使用したメタボローム解析、非発酵たばこ材料と、処理されたたばこ材料、すなわち発酵たばこ材料または部分的発酵たばこ材料とにおけるカフェイン酸の比較によって推定されることが好ましい。
【0030】
キナ酸およびカフェイン酸は、シンナモイルエステラーゼがクロロゲン酸を異化した結果として、発酵実施後に大幅に増加した。これらの化合物の増加は、発酵に使用されるたばこ基体に依存しない。強力な抗酸化活性、コラーゲン産生の増加、および早期老化の防止の他にも、カフェイン酸は抗菌活性を示し、皮膚疾患の治療に有望であり得る(Magnani et al.,2014)。さらに、キナ酸はまた、前立腺癌と闘う強力な薬剤候補でもある(Inbathamizh et al.,2013)。
【0031】
方法は、アスパラギンの含有量が、たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満である時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満である時に、発酵工程を停止することを含む。アスパラギンの含有量は、MP 2442 rev 0 2021,Chelab S.r.lにより、イオン交換クロマトグラフィーで判定されることが好ましい。
【0032】
アスパラギンの減少は、アクリルアミドへの変換の減少を意味する。たばこ材料は、一定の量のアミノ酸を含有する。アミノ酸は、発酵たばこ材料が含有されている最終製品によって生成される煙またはエアロゾル中の特定の成分のレベルと、煙またはエアロゾルの官能特性とに実質的に寄与しうる。異なるタイプのたばこは、異なる量のアミノ酸を含有しうる。さらに、たばこの葉または先端または葉柄の間で、アミノ酸組成に(主に定量的な)差異がある可能性がある。また、たばこの生育地域により、様々なアミノ酸のレベルの比が変化しうるが、同じたばこアミノ酸でかなり類似した組成が概して維持される。たばこのタイプおよび原産地にかかわらず、本発明の発酵条件下での発酵中に、たばこ材料中のアスパラギン含有量が減少することが観察された。これは、本発明の発酵における発酵細菌が、アミノ酸資源からCおよびNを同化するための特定のアスパラギナーゼを産生することを示唆する。アスパラギンは、アクリルアミドに熱的に変換されうる。アクリルアミドは、潜在的に有害な物質であると考えられている。たばこ材料中のアスパラギンの含有量の減少させることは、アクリルアミド形成の減少を得ることを可能にする。
【0033】
方法は、グルタミンの含有量が、たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満である時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは0.4未満である時に発酵工程を停止することを含む。グルタミンの含有量は、MP 2442 rev 0 2021,Chelab S.r.lにより、イオン交換クロマトグラフィーで判定されることが好ましい。
【0034】
グルタミンの減少は、使用時にたばこ材料から旨味(umami)風味の特徴が放出されることを意味するため、グルタミンの減少がたばこ材料の風味を増加しうる。
【0035】
方法は、L-オルニチンの含有量がたばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは20倍を超える時に、好ましくは50倍を超える時に、好ましくは100倍を超える時に、発酵工程を停止することを含む。L-オルニチンの含有量は、MP 2442 rev 0 2021,Chelab S.r.lにより、イオン交換クロマトグラフィーで判定されることが好ましい。
【0036】
発酵たばこ材料中のL-オルニチンの増加は、発酵に供されるたばこ材料のタイプおよびその初期組成物とは無関係に、たばこ材料の発酵の程度の良好な指標である。たばこ材料のタイプとは無関係に、発酵はたばこ材料中のL-オルニチンの増加を引き起こすことが分かっている。
【0037】
方法は、L-ロイシンの含有量がたばこ材料中のL-ロイシンの初期量の2倍を超える時に、発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは4倍を超える時に発酵工程を停止することを含む。L-ロイシンの含有量は、MP 2442 rev 0 2021,Chelab S.r.lにより、イオン交換クロマトグラフィーで判定されることが好ましい。
【0038】
方法は、L-リジンの含有量がたばこ材料中のL-リジンの初期量の2倍を超える時に、発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは6倍を超える時に発酵工程を停止することを含む。L-リジンの含有量は、MP 2442 rev 0 2021,Chelab S.r.lにより、イオン交換クロマトグラフィーで判定されることが好ましい。
【0039】
L-ロイシンおよびL-リジンの増加は、発酵に供されるたばこ材料のタイプおよびその初期組成物とは無関係に、たばこ材料の発酵の程度の良好な指標である。
【0040】
方法は、3-sec-ブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオンの含有量が、たばこ材料中の3-sec-ブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオンの初期量の20倍を超える時に、発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは40倍を超える時に、より好ましくは60倍を超える時に、より好ましくは80倍を超える時に、発酵工程を停止することを含む。
【0041】
3-sec-ブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン(BHHPPD)は、乾燥処理済みたばこ材料において微量でのみ検出されるが、たばこ材料中のBHHPPDの含有量は、たばこ材料のタイプとは無関係に、発酵の程度と共に増加する。したがって、たばこ材料中のBHHPPDの増加は、たばこ材料の発酵の程度の良好な指標をイミリグラム(imilligramss)する。
【0042】
方法は、セコイソラリシレシノール(SECO)の含有量がたばこ材料中のセコイソラリシレシノール(SECO)の初期量の10倍を超える時に、発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは20倍を超える時に、より好ましくは40倍を超える時に、より好ましくは50倍を超える時に、発酵工程を停止することを含む。
【0043】
セコイソラリシレシノールの微量のみが乾燥処理済みたばこ材料で検出されるが、たばこ材料中のSECOの含有量は、たばこ材料のタイプとは無関係にたばこ材料の発酵と共に増加する。したがって、たばこ材料中のSECOの増加は、たばこ材料の発酵の程度の信頼できる指標である。
【0044】
方法は、発酵指数が50を超える時に発酵工程を停止することを含むことが好ましく、好ましくは100を超える時に、より好ましくは250を超える時に、より好ましくは400を超える時に、発酵工程を停止することを含む。発酵指数は、処理されたたばこ材料中の乳酸の含有量と非発酵たばこ材料中の乳酸の含有量との比を、処理されたたばこ材料中の還元糖の含有量と非発酵たばこ材料中の還元糖の含有量との比で割って得られる。発酵指数は、以下の式によって取得されうる:Fr=(FLA/NFLA):(FRS/NFRS)式中、FLA=発酵たばこ材料中の乳酸の含有量、NFLA=非発酵たばこ材料中の乳酸の含有量、FRS=発酵たばこ材料中の還元糖の含有量、NFRS=非発酵たばこ材料中の還元糖の初期含有量。また、この場合、乳酸は、上述のように、L-乳酸とD-乳酸との合計を示す。
【0045】
発酵指数(Fr)はまた、発酵中のたばこ材料の組成のわずかな変化を検出することも可能にする。さらに、このパラメータは発酵中に、発酵中のたばこ材料のタイプとは無関係に変化するため、パラメータは信頼性が高い。
【0046】
上記の条件のうちの少なくとも一つが満たされた時に発酵工程を停止することは、所望の感覚刺激特性を有する処理されたたばこ材料を得ることを可能にする。本発明の方法で処理されたたばこ材料は、完全に発酵または部分的に発酵されうる。たばこ材料の発酵の程度とは無関係に、上記の条件のうちの一つが満たされた時に発酵工程を停止することによって、特定の特徴を有するたばこ材料を得ることが可能である。
【0047】
本発明の目的において処理されたたばこ材料は、発酵たばこ材料または部分的発酵たばこ材料を示す。
【0048】
好ましくは、方法は、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数のそれぞれ初期量の得るために、発酵工程前のたばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-オルニチン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール、または発酵指数のうちの少なくとも一つの初期含有量を測定するための初期測定工程をさらに含む。
【0049】
この特徴により、たばこ材料中の少なくとも一つの化合物の初期含有量の正確な値を取得してから、発酵プロセスを受けることが可能となる。初期測定工程は、発酵前にたばこ材料の特徴を測定するために供し、言い換えれば、非発酵たばこ材料の特徴が、初期測定工程で測定される。測定された特徴の初期量は、非発酵たばこ材料の特徴の値に対応する。
【0050】
方法は、発酵中のたばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-オルニチン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール、または発酵指数のうちの少なくとも一つの含有量を測定するための測定工程をさらに含むことが好ましい。
【0051】
この特徴により、たばこ材料内の上述の特徴のうちの少なくとも一つの正確な値を得ることが可能である。発酵工程をより正確にモニターし、得られたたばこ材料の特性をより正確に調整することが可能である。このようにして、たばこ材料の発酵の程度の非常に信頼性の高い表示をリアルタイムで取得することが可能である。
【0052】
たばこ材料がダークたばこを含有する場合、方法は、2,3ブタンジオールの含有量がたばこ材料中の2,3ブタンジオールの初期量の5倍を超えるときに、発酵工程を停止するために供することが好ましく、好ましくは10倍を超えるときに発酵工程を停止するために供する。2,3ブタンジオールの存在は、ココアバターの天然臭を与える。2,3ブタンジオールの存在は、嫌気性発酵たばこ材料中に存在する良好な風味のある揮発分に寄与する。
【0053】
たばこ材料がダークたばこを含有する場合、方法は、ジアセチルの含有量がたばこ材料中のジアセチルの初期量の5倍を超えるときに、発酵工程を停止するために供することが好ましく、好ましくは10倍を超えるときに発酵工程を停止するために供する。ジアセチルの存在は、たばこ材料にいくらかの感覚刺激特性を与える。ジアセチルの存在は、嫌気性発酵たばこ材料中の良好な風味のある揮発分の存在に寄与する。
【0054】
方法は、たばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルのそれぞれの初期量を得るように、発酵前にたばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルの初期含有量を測定するための初期測定工程を含むことが好ましい。
【0055】
方法は、発酵中にたばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルの含有量を測定するための測定工程をさらに含むことが好ましい。
【0056】
方法は、非発酵たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルのうちの少なくとも一つの量を含むデータベースを提供することを含むことが好ましい。
【0057】
方法は、複数の異なるたばこ材料について、非発酵たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルのうちの少なくとも一つの量を含むデータベースを提供することを含むことが好ましい。
【0058】
したがって、少なくとも一つのタイプのたばこ材料のための少なくとも一つのデータベースを作成することが可能である。各データベースは、非発酵条件におけるたばこ材料の各タイプについて、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルの通常の量を含みうる。
【0059】
好ましくは、方法は、少なくとも一つのデータベースから、発酵前のたばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、またはブタンジオール、またはジアセチル、または発酵指数のうちの少なくとも一つの初期量を回収するために供する。
【0060】
好ましくは、方法は、発酵たばこ材料および/または部分的発酵たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルのうちの少なくとも一つの量を含むデータベースを提供することを含む。
【0061】
好ましくは、方法は、複数の異なるたばこ材料について、発酵たばこ材料および/または部 分的発酵たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルのうちの少なくとも一つの量を含むデータベースを提供することを含む。
【0062】
好ましくは、方法は、少なくとも一つのデータベースから、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルのうちの少なくとも一つの量を回収するため、および回収された値を、発酵中のたばこ材料における対応する測定された値と比較するために供する。
【0063】
好ましくは、方法は、比較工程の結果に基づいて、発酵工程を停止または継続するために供する。好ましくは、方法は、乳酸、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルの測定された値が、対応する回収された値よりも低い場合、および/または還元糖、またはアスパラギン、またはグルタミン、または発酵指数の値が、対応する回収された値よりも高い場合、発酵工程を継続するために供する。
【0064】
別の態様によると、本発明は、たばこ材料を処理するための方法に関し、本方法は、たばこ材料を提供すること、およびたばこ材料を発酵させて発酵たばこ材料を得ることを含む。好ましくは、発酵工程は、たばこ材料を嫌気性条件下でインキュベートすることと、以下の条件のうちの少なくとも一つが満たされた時に発酵工程を停止することとを含む:
- たばこ材料が、総乾燥重量基準で、少なくとも20ミリグラム/グラム、好ましくは少なくとも50ミリグラム/グラムの乳酸を含有する、
- たばこ材料が、総乾燥重量基準で3パーセント未満の総還元糖を含有する、
- たばこ材料が、総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギンを含有する、
- たばこ材料が、総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミンを含有する、
- たばこ材料が、総遊離アミノ酸の総乾燥重量で10000ミリグラム/キログラム超のアスパラギンを含有する、
- たばこ材料が、たばこ材料中に初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超えるL-オルニチンを含有する、
- たばこ材料が、総乾燥重量基準で50ミリグラム/キログラムを超える、好ましくは80ミリグラム/キログラムを超えるL-オルニチンを含有する。
【0065】
嫌気性条件は、たばこ材料を容器の中に入れることと、容器を閉じることとによって達成されることが好ましい。嫌気性条件は、たばこ材料を容器の中に入れ、容器から空気を除去し、容器を閉じて、達成されることが好ましい。好ましくは、容器は完全な気密の様式で閉じられず、そのため発酵中に生成されるCO2またはその他のガスが容器から漏れ出ることが許容される。このようにして、容器内のこれらの物質の蓄積が回避される。容器は外部環境からしっかりと分離され、嫌気性条件が容器内部に維持されることが好ましい。容器は、容器内で実現される過圧を回避する閉鎖部で閉じられることが好ましい。
【0066】
たばこ材料から空気を除去するために、圧力がかけられることがより好ましい。かけられた圧力は、たばこ材料から空気を押し出し、それによって、容器が閉じられた後、容器中に酸素がもはや存在しないか、または最小限の量でのみ存在する。
【0067】
たばこ材料を容器の中に入れ、空気が密封容器から除去された後に容器を閉めることは、嫌気性条件に迅速に到達することを可能にする。嫌気性条件を達成するこの方法は、コスト効率が良く、実施が容易であるため好ましい。
【0068】
好ましくは、発酵工程は、1000キログラム/平方メートル(キログラム/m2)~15000キログラム/平方メートル(キログラム/m2)、好ましくは3000キログラム/平方メートル~12000キログラム/平方メートル、より好ましくは5000キログラム/平方メートル~10000キログラム/平方メートルから成る圧力を、たばこ材料にかけることを含む。
【0069】
たばこ材料にかけられる圧力は発酵工程中、上記の範囲に維持される。
【0070】
圧力は、任意の手段によってたばこ材料にかけられてもよい。圧力は、容器に不活性ガスをポンプ注入してかけられてもよい。たばこ材料上に重しを置いて、望ましい圧力範囲がたばこ材料にかけられるようにして圧力がかけられてもよい。例えば、湿ったたばこ材料で容器が充填されてもよく、また水が容器から滲出するまで、容器の「リッド」として重しが、たばこ材料と接触して置かれる。好ましくは、圧力は、容器内の所望の圧力を確立するように、容器の閉鎖部および/またはその中に含まれるたばこ材料に加圧する油圧アクチュエータによって印加される。
【0071】
油圧アクチュエータは、たばこ材料に所望の圧力を加えるために使用されることが好ましい。油圧アクチュエータは、容器内で実現される圧力のレベルに依存して選択されうる。油圧アクチュエータは、例えばワインプレスなど、容器に圧力をかけるための当技術分野で公知である。たばこ材料は容器に挿入され、重しはたばこ材料の上または上方に位置して、所望の圧力を及ぼすことが好ましい。その後、容器は閉じられ、容器内部に重しを残し、それによって重しがたばこ材料に圧力をかけ続けうることが好ましい。
【0072】
発酵工程は、発酵中、たばこ材料の水分含量を、たばこ材料の総重量の10~50重量パーセントから成る量に保つことを含むことが好ましい(重量百分率による重量)。発酵工程は、発酵中、たばこ材料の水分含量を、たばこ材料の総重量の35重量パーセント~45重量パーセントから成る量に保つことを含むことがより好ましい(重量百分率による重量)。発酵工程は、発酵中、たばこ材料の水分含量を、約40重量パーセントに保つことを含むことがより好ましい(重量百分率による重量)。乾燥後、たばこ材料の水分は概して低い。したがって、所望の水分レベルに達するために、水がたばこ材料に添加されることが好ましい。少なくとも一か月間、より好ましくは少なくとも2か月間、好ましくは少なくとも6か月間、さらにより好ましくは少なくとも8か月間、好ましくは少なくとも12か月間、好ましくは少なくとも24か月間、たばこ材料の水分量を、たばこ材料の総重量の10~50重量パーセント、好ましくは35重量パーセント~45、より好ましくは約40重量パーセントから成る量に保つために、発酵プロセス中にも水が添加されることがより好ましい。
【0073】
この水分含量に到達するために、たばこ材料は水で湿らせることが好ましい。水がたばこ材料に添加されている。嫌気性条件が創出され保たれる容器に導入される前に、たばこ材料を水で湿らせることが好ましい。
【0074】
さらに、発酵工程中、この水分含量が維持される。したがって、発酵工程中、たばこ材料の水分含量はモニターされることが好ましい。例えば、発酵が起こる容器の中にたばこ材料が導入される場合、容器は開けられてもよく、たばこ材料の水分は、容器が開けられた時に測定されてもよい。たばこの水分の測定を実施するために、容器は一定の間隔で開けられることが好ましい。
【0075】
水分は、容器内部に設けられた水分センサーによって測定されてもよい。このようにして、水分は、たばこ材料が密封容器中にある時も測定されてもよい。
【0076】
たばこ材料の水分は、一定の間隔で測定されることが好ましい。
【0077】
発酵工程は、少なくとも1か月、好ましくは少なくとも2か月、より好ましくは少なくとも4か月、より好ましくは少なくとも6か月、さらにより好ましくは少なくとも8か月、好ましくは少なくとも10か月の発酵時間の間持続することが好ましい。発酵工程は、少なくとも12か月持続することが好ましい。発酵工程は、少なくとも24か月持続することが好ましい。たばこ材料は、36か月未満の発酵時間の間、より好ましくは24か月未満の発酵時間の間、発酵条件に供されることが好ましい。好ましくは、発酵工程は、複数の発酵段階を含み、各発酵段階は発酵期間にわたって持続する。全体的な発酵工程は、少なくとも1か月、好ましくは少なくとも2か月、より好ましくは少なくとも4か月、より好ましくは少なくとも6か月、さらにより好ましくは少なくとも8か月、好ましくは少なくとも10か月、好ましくは少なくとも12か月、好ましくは少なくとも24か月の発酵時間の間持続する。
【0078】
発酵時間は、たばこ材料のタイプ、またはたばこ材料の特徴、または例えば、温度、圧力、相対湿度などの発酵工程のパラメータのうちの少なくとも一つに依存してもよい。
【0079】
発酵条件の適用は、すべての請求された時間(例えば、一か月超、または二か月超、または6か月超、または12か月超、または24か月超)にわたって継続しうる。別の方法として、発酵工程は、特定の発酵期間を持続させる複数の発酵段階を含む。この場合、発酵条件は、複数の時間間隔中に適用され、一連の時間間隔を形成してもよい。異なる発酵段階は、発酵条件が適用されない中断によって互いに分離される。中断は、以下の条件のうちの一つ以上が中断される期間であると考えられる:嫌気性条件の存在、たばこ材料の総重量の25重量パーセント~40重量パーセントから成る水分量、1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る圧力の印加。中断は、たばこ材料を調べるために起こってもよい。例えば、たばこ材料の水分は、中断中に測定されてもよい。中断は、一様な処理されたたばこ材料が得られうるように、たばこ材料を回転させるまたは混合するために起こってよい。中断は最大6時間持続してもよい。
【0080】
それ故に発酵時間は、たばこが上記の発酵条件に供される合計期間であり、これは、発酵条件が実際に適用される各発酵段階のすべての発酵期間を足して計算される。別の方法として、発酵時間は、発酵条件が初めて適用される瞬間から開始して、発酵条件が最後に適用される時に終了し、その後中断の期間を差し引いて計算することができる。
【0081】
例えば、発酵時間T(ここで、たばこ材料が発酵条件に供される合計期間を「発酵時間」とする)が選択された場合、以下の場合が可能である。発酵条件は、Tに等しい総持続時間にわたって連続的に適用され、この場合、一つの発酵段階のみがある。複数の発酵段階が提供され、発酵条件は、N発酵期間:t1、t2、...、tNに適用され、式中、t1+t2+...+tN=Tである。発酵期間tjとその後の時間間隔tj+1との間の時間ギャップは中断である。この合計発酵時間Tは、少なくとも一か月、または少なくとも二か月、または少なくとも6か月、または少なくとも12か月、または少なくとも24か月である)。発酵条件が適用される二つの連続した時間間隔の間に、中断が存在することが好ましい。中断は6時間を超えて持続しない。各発酵段階は約15日間持続することが好ましく、約30日間持続することがより好ましい。各発酵段階は、約30日~約60日持続することが好ましい。
【0082】
好ましくは、方法は、たばこ材料を乾燥して、たばこ材料の総重量の5重量パーセント~10重量パーセントから成る水分含量を有する乾燥たばこ材料を得るために供する。乾燥工程は、発酵条件下での発酵工程が終了した後に実施されることが好ましい。発酵工程が終了した後、処理されたたばこ材料は、それが入れられた容器から取り出されて、たばこにかけられる圧力が減少されることが好ましい。処理されたたばこ材料を次いで、たばこ材料の総重量の1重量パーセント~15重量パーセント、より好ましくは5重量パーセント~10重量パーセントの水分含量まで乾燥される。乾燥は、処理されたたばこ材料が後続の工程で容易に加工されうるように実施される。
【0083】
方法は、発酵工程前にたばこ材料を乾燥する工程を含むことが好ましい。本発明の方法によって加工されたたばこ材料は、乾燥後のたばこを含んでもよい。本明細書で使用される「乾燥後のたばこ」という用語は、乾燥されたたばこを指す。たばこの乾燥は、標準的な手順によって実現されることが好ましく、たばこ材料に含まれるたばこのタイプに依存しうる。たばこ材料は、異なるタイプのたばこ、および異なる乾燥を受けたたばこを含んでもよい。異なるタイプのたばこをブレンドし、その後本発明によって処理してもよい。
【0084】
別の方法として、たばこ材料を容器の中に入れ、空気を除去して水で置き換える。
【0085】
たばこ材料が入れられる容器は、例えばバレルである。バレルは木材、またはコンクリート、または金属、またはこれら三つの材料のいずれかの組み合わせで作製されることが好ましい。
【0086】
嫌気性条件は、所望の発酵工程の期間にわたり保たれる。
【0087】
好ましくは、方法は、たばこ材料の色を評価するために供する。たばこ材料の色の評価は、所望の化学物質の測定に加えて実施されてもよい。たばこ材料の色は発酵工程中に変化する。たばこ材料の色の評価は、発酵の程度に関する表示を簡単に取得することを可能にする。
【0088】
好ましくは、方法は、たばこ材料の色が所望の色に達したときに発酵工程を停止するために供する。例えば、発酵条件は、たばこ材料の所望の色が得られるまで適用されうる。このようにして、本発明の方法の有効性を改善することが可能である。
【0089】
好ましくは、方法は、発酵工程中にたばこ材料の温度を21℃~35℃、好ましくは25℃~31℃から成る温度に保つために供する。好ましくは、発酵工程中(発酵条件が適用される間)のたばこ材料の温度は、21℃~35℃、より好ましくは25℃~31℃の範囲内に含まれたままである。たばこ材料の温度は、発酵工程全体中、この範囲内に実質的に維持される。温度は発酵自体によって維持され、たばこ材料への熱を提供するまたは減じる必要はない。発酵中のたばこ材料のこの温度は、たばこ材料が位置する周囲の周囲温度が好ましくは15℃~25℃から成る時に得られる。
【0090】
方法は、発酵工程中にたばこ材料を回転させる工程を含むことが好ましい。たばこ材料の回転は、均質化の改善を提供しうる。たばこ材料を回転させることは、たばこ材料を上下逆にすることを意味してもよい。たばこ材料を回転させることは、たばこ材料をひっくり返すことを意味してもよい。回転によって引き起こされた、発酵条件の中断は、たばこ材料の特定のパラメータ、例えば水分含量を測定するためにも使用されてもよい。たばこ材料の回転中、発酵条件は、もはや適用されなくてもよい。たばこの回転中、たばこ材料が回転中に嫌気性条件に供されない場合があるという意味で、発酵プロセスは中断されてもよい。回転後、発酵条件をたばこ材料に再び適用することが好ましい。方法は、約30日の時間間隔でたばこ材料を回転させる工程を含むことが好ましい。方法は、約15日の時間間隔でたばこ材料を回転させる工程を含むことが好ましい。
【0091】
発酵工程の異なる発酵段階は、回転工程によって中断されることが好ましい。
【0092】
方法は、たばこ材料を水分保持材料内に確保することを含むことが好ましい。たばこ材料を確保するこの工程は、たばこ材料が発酵条件に供される前に起こることが好ましい。水分保持材料は、たばこ処理プロセス(発酵)中に、分解に耐えることが望ましい。水分保持材料は可撓性材料を含んでもよい。この可撓性材料は、たばこ材料の周りに巻かれてもよい。水分保持材料は、プラスチック材料を含むことが好ましい。別の方法として、または追加的に、水分保持材料は硬質材料を含んでもよい。たばこ材料が中に導入される容器は、水分保持材料として機能してもよい。この場合、容器の材料は、例えば金属、木材、プラスチック、またはコンクリートを含んでもよい。
【0093】
好ましくは、方法はさらに、一定の量の非発酵たばこ材料を望ましい量の発酵たばこ材料または部分的発酵たばこ材料と混合して、たばこ材料中の発酵たばこ材料の量がたばこ材料全体の5重量パーセント~10重量パーセントから成るたばこ材料を得ることを含む。混合工程は、発酵工程の前に提供されることが好ましい。それは混合工程の後に、たばこ材料を発酵工程に供するために提供されることが好ましい。
【0094】
これは、発酵プロセスの効率を改善し、発酵工程に必要な時間を短縮し、発酵工程から得られた発酵たばこ材料の特性を改善する。
【0095】
方法は、たばこ材料が約0.3ミリメートル~約1.4ミリメートルから成る寸法を有する断片で切断される、切断工程を含むことが好ましい。切断工程は、発酵工程前に実施されることが好ましい。これは、発酵工程の効率を改善することになる。これはまた、発酵工程の持続時間、すなわち、たばこ材料の組成物の所望の変化を得るために必要とされる時間を低減する。
【0096】
好ましくは、発酵中、たばこ材料のpHを、4.5~5.5、好ましくは約4.8~5.4から成るpHに維持するための方法がさらに提供される。処理されたたばこ材料は、未処理のたばこ材料よりも少なくとも100倍酸性であることが好ましい。処理されたたばこ材料のpHおよび未処理のたばこ材料のpHは、少なくとも2pH単位異なっていてもよい。異なるたばこ材料において、pHは実質的に変化しないままでありうる。
【0097】
別の方法として、または追加的に、本発明の方法によって処理されたたばこ材料は、再び等級分けされたたばこ、未加工の葉がブレンドされたたばこ、コンディショニングされたたばこ、茎を取ったまたは茎を剥がされたたばこ(または全葉の場合ではない)、乾燥たばこ、または詰めたばこを含んでもよい。
【0098】
別の態様によれば、本発明は、処理されたたばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵することを含むプロセスによって得られるたばこ材料に関し、方法はたばこ材料を嫌気性条件下でインキュベートすることを含む。
【0099】
処理されたたばこ材料は、乳酸を含むことが好ましい。処理されたたばこ材料は、たばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、より好ましくは80倍を超える乳酸の含有量を有することが好ましい。嫌気性発酵において、乳酸は関連する異化産物であることが知られている。乳酸は、ニコチンのえぐさに関して「なめらかにする効果」を有しうる。乳酸は、処理されたたばこ材料のpHの低下の原因でありうる。
【0100】
処理されたたばこ材料は、たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である還元糖の含有量を有することが好ましい。処理されたたばこ材料は、前の態様の方法による処理前の同じたばこ材料中に含有された総還元糖の量よりも少なくとも50パーセント、より好ましくは60パーセント、さらにより好ましくは85パーセント低い総還元糖の量を含むことが好ましい。発酵工程の終了時に、還元糖の量は、処理前の同じたばこ材料中に含有された還元糖の量よりも少なくとも50パーセント、より好ましくは60パーセント、さらにより好ましくは85パーセント低いことが好ましい。還元糖はグルコース、フルクトース、スクロース、マルトースの合計である。処理されたたばこ材料中の還元糖の大半は、変換されうる。出発たばこ材料中に存在するグルコースおよびフルクトースなどの還元糖資源は、嫌気性細菌によってエネルギー源として使用されうる。酸素が存在しない場合、解糖経路は、グルコース(またはフルクトース)をピルビン酸に変換する。これらの化合物のレベルの変化は、処理されたたばこ材料の望ましい味および香りに寄与しうる。
【0101】
処理されたたばこ材料は、たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超えるインドール-3乳酸の含有量を有することが好ましい。
【0102】
処理されたたばこ材料は、たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超えるカフェイン酸の含有量を有することが好ましい。
【0103】
処理されたたばこ材料は、たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超えるキナ酸の含有量を有することが好ましい。
【0104】
処理されたたばこ材料は、たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満のアスパラギンの含有量を有することが好ましい。
【0105】
処理されたたばこ材料は、たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満のグルタミンの含有量を有することが好ましい。
【0106】
処理されたたばこ材料は、たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超えるL-オルニチンの含有量を有することが好ましい。
【0107】
処理されたたばこ材料は、たばこ材料中のL-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超えるL-ロイシンの含有量を有することが好ましい。
【0108】
処理されたたばこ材料は、たばこ材料中のL-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超えるL-リジンの含有量を有することが好ましい。
【0109】
処理されたたばこ材料は、50を超える、好ましくは100を超える、より好ましくは250を超える、より好ましくは400を超える発酵指数を有することが好ましい。発酵指数は、たばこ材料中の乳酸の含有量と乳酸の初期含有量との比を、たばこ材料中の還元糖の含有量と還元糖の初期含有量との比で割って得られる。
【0110】
さらなる態様によれば、本発明は、以下の特徴のうちの少なくとも一つを含有するたばこ処理材料に関する:
- たばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、より好ましくは80倍を超える量の乳酸、
- たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である量の還元糖、
- たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える量のインドール-3乳酸、
- たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超える量のカフェイン酸、
- たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える量のキナ酸、
- たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満の量のアスパラギン、
- たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満の量のグルタミン、
- L-オルニチンは、たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超える、
- L-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超えるの量のL-ロイシン、
- L-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超えるの量のL-リジン、
- 発酵指数は、50を超え、好ましくは100を超え、より好ましくは250を超え、より好ましくは400を超え、ここで発酵指数は、たばこ材料中の乳酸の含有量と非発酵たばこ材料中の乳酸の含有量との比を、たばこ材料中の還元糖の含有量と非発酵たばこ材料中の還元糖の含有量との比で割って得られる。
【0111】
前述のパラメータのうちの一つ以上を有する処理されたたばこ材料は、改善された感覚刺激特性を有する。上述のパラメータは、ユーザーからのたばこ材料の品質および考えられ得る評価を見きわめることを可能にする。さらに、上述のパラメータは感覚刺激特性、したがってたばこ材料の最終的な味に影響を与える。従って、上述のパラメータの値に基づいて、たばこ材料が方向付けられることが好ましいユーザー群を予測することが可能である。示されたパラメータのうちの一つ以上の値に基づいて、実際には、どのユーザーがたばこ材料をより高く評価するかを予測することが可能である。
【0112】
好ましくは、処理されたたばこ材料は、たばこ材料中の3-sec-ブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオンの初期量の20倍を超える、好ましくは40倍を超える、より好ましくは60倍を超える、より好ましくは80倍を超える、3-sec-ブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオンの含有量を有する。
【0113】
好ましくは、処理されたたばこ材料は、たばこ材料中のセコイソラリシレシノール(SECO)の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは40倍を超える、より好ましくは50倍を超える、セコイソラリシレシノール(SECO)の含有量を有する。
【0114】
別の態様によると、本発明は、総乾燥重量基準で、少なくとも20ミリグラム/グラム、好ましくは少なくとも50ミリグラム/グラムの乳酸を含有するたばこ材料に関する。
【0115】
別の態様によると、本発明は、総乾燥重量基準で3パーセント未満の総還元糖を含むたばこ材料に関する。
【0116】
別の態様によると、本発明は、総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギンを含むたばこ材料に関する。
【0117】
別の態様によると、本発明は、総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミンを含むたばこ材料に関する。
【0118】
別の態様によると、本発明は、総遊離アミノ酸の総乾燥重量で10000ミリグラム/キログラム超のアスパラギンを含むたばこ材料に関する。
【0119】
別の態様によれば、本発明は、たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍超、好ましくは20倍超から成るたばこ材料に関する。
【0120】
別の態様によると、本発明は、総乾燥重量基準で50ミリグラム/キログラムを超える、好ましくは80ミリグラム/キログラムを超えるL-オルニチンを含有するたばこ材料に関する。
【0121】
前述の態様のいずれか一つのたばこ材料は、たばこ材料を発酵することを含むプロセスによって得られてもよく、方法はたばこ材料を嫌気性条件下でインキュベートすることを含む。
【0122】
たばこ材料は乾燥されることが好ましい。たばこ材料は、発酵工程に供される前に乾燥されることが好ましい。
【0123】
本発明の別の態様によれば、たばこ材料中の2,3ブタンジオールの初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える2,3ブタンジオールの含有量を有するダークたばこ材料が提供される。
【0124】
本発明の別の態様によれば、たばこ材料中のジアセチルの初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超えるジアセチルの含有量を有するダークたばこ材料が提供される。
【0125】
本発明の別の態様によると、たばこ材料としてバージニアたばこ材料が提供される。
【0126】
本発明のさらなる態様によれば、総乾燥重量基準で約2.5重量パーセント~総乾燥重量基準で100重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約4重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約10重量パーセントを含有するたばこ材料を含むエアロゾル発生物品が提供される。割合は、前述の態様のいずれか一つによるたばこ発酵材料の総乾燥重量基準の重量で示されている。
【0127】
本発明のさらなる態様によると、総乾燥重量基準で少なくとも5ミリグラム/グラム、好ましくは10ミリグラム/グラムの乳酸を含有するエアロゾル発生物品が提供される。
【0128】
本発明の別の態様によると、総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギンを含有するエアロゾル発生物品が提供される。
【0129】
本発明の別の態様によると、総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミンを含有するエアロゾル発生物品が提供される。
【0130】
本発明の別の態様によると、総遊離アミノ酸の総乾燥重量で10000ミリグラム/キログラム未満のアスパラギンを含有するエアロゾル発生物品が提供される。
【0131】
本発明のたばこ材料の利点は、前の態様を参照しながら既に概説されていて、ここでは繰り返さない。
【0132】
たばこ材料は、葉脈が取り除かれた、手で剥がされた葉を含むことが好ましい。
【0133】
たばこ材料はカストリたばこを含むことが好ましい。
【0134】
たばこ材料はバージニアたばこを含むことが好ましい。
【0135】
たばこ材料はダークたばこを含むことが好ましい。
【0136】
本発明の方法によって処理されたたばこは、未処理のたばこに関して、その化学的組成を変化しうる。本文脈における「処理されたたばこ材料」とは、前のプロセスにおいて記述の通りの処理を受けたたばこ材料、すなわち少なくとも一か月間、発酵条件に供されたたばこ材料を意味する。本文脈における「未処理のたばこ材料」とは、前の方法において記述の通りの処理を受けなかったたばこ材料、すなわち発酵工程に供されていないたばこ材料を意味する。未処理のたばこ材料は、例えば本発明の処理が始まる前に容器に挿入されているたばこ材料である。処理されたたばこ材料は、本発明による処理を受けなかった同じたばこ材料(未処理のたばこ材料)と比較される。アスパラギンの減少は、アスパラギン酸塩の増加と関連付けられうる。これは、発酵細菌が、アミノ酸資源からCおよびNを同化するための特定のアスパラギナーゼを産生することを示唆する。この反応はアンモニアを産生しうる。
【0137】
本文脈における非発酵たばこ材料とは、前の方法において記述の通りの処理を受けなかったたばこ材料、すなわち発酵工程に供されていないたばこ材料を意味する。本文脈における発酵たばこ材料または部分的発酵たばこ材料とは、前の方法において記述の通りの処理を受けたたばこ材料、すなわち特定の期間の間発酵工程に供されたたばこ材料を意味する。
【0138】
本明細書で使用される「変化」または「変化した」という用語は、風味または感覚刺激特性の文脈において使用され、熟練した喫煙者によって特定される通りの、一つの全体的な味または官能特性から別の味または官能特性への修正があることを意味する。これには改善が含まれうる。
【0139】
本開示の目的において、「初期」という用語で、たばこ材料を発酵工程に供する前の、化学物質の量、または一般的にたばこ材料のパラメータの値とみなされる。この意味で、初期という語は、非発酵と同義とみなされ得る。
【0140】
その中で使用される場合、「発酵工程」、または「発酵」または「発酵条件」の定義はすべて、材料が、材料の発酵を引き起こすのに好適な条件に望ましい時間にわたって供されることを示す。
【0141】
「たばこ材料」という用語は、たばこ植物の任意の部分、または異なるたばこ植物の混合物を意味し、これには、たばこ葉くず、未加工のたばこ葉くず、たばこの茎、たばこ加工中に発生されたたばこダスト、たばこ葉プライムラミナ細片、およびその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。たばこ材料は、加工済みたばこの部分または断片の形態、本質的に天然のラミナまたは茎の形態の乾燥・熟成されたたばこ、たばこ抽出物、または上記の混合物を有することができ、これには例えば、抽出されたたばこパルプを、粒状化されて乾燥・熟成された天然たばこラミナと組み合わせた混合物がある。たばこ材料は、固体の形態、液体の形態、半固体の形態、またはこれに類するものとしうる。「たばこ材料」という用語は、任意の部分、および例えばNicotiana属の任意のメンバーの葉または茎など、関連する任意の副産物を含むことが好ましい。本発明で使用するためのたばこ材料は、Nicotiana tabacum種由来であることが好ましい。任意のタイプ、スタイル、または様々なたばこを処理しうる。使用されうるたばこの例には、バージニア、バーレー、オリエント葉たばこ、およびこれらのタイプの任意のブレンドが含まれうるが、これらに限定されない。たばこ材料はカストリたばこを含むことが好ましい。処理されるたばこ材料は、乾燥後のたばこを含んでもよいか、またはそれから成ってもよい。
【0142】
本明細書で使用される「乾燥後のたばこ」という用語は、乾燥されたが、たばこ材料の味または香りを変えるためのさらなる処理プロセスを受けていないたばこを指す。乾燥後のたばこは、他のスタイル、種類、またはタイプのたばことブレンドされていてもよい。別の方法として、または追加的に、処理されるたばこ材料は、再び等級分けされたたばこ、未処理の葉がブレンドされたたばこ、コンディショニングされたたばこ、茎を取ったまたは茎をはがされたたばこ(または全葉の場合ではない)、乾燥されたたばこ、または詰められたたばこを含むかまたはそれらから成ってもよい。
【0143】
たばこ材料はラミナたばこ材料を含むことが好ましい。たばこは約70パーセント~100パーセントのラミナ材料を含んでもよい。
【0144】
たばこ材料がラミナたばこ材料を含む時、ラミナは全葉の形態でありうる。一部の実施形態において、たばこ材料は、乾燥された全葉たばこを含む。一部の実施形態において、たばこ材料は、乾燥された全葉たばこを実質的に含む。一部の実施形態において、たばこ材料は本質的に、乾燥された全葉のたばこから成る。
【0145】
一部の実施形態において、たばこ材料は茎たばこ材料を含む。たばこは、最大30パーセントの茎材料を含んでもよい。
【0146】
未乾燥たばこを「乾燥する」プロセスは、収穫したたばこのタイプに依存する。例えば、バージニアフルー(ブライト)たばこは典型的に、熱風乾燥され、その一方でバーレーおよびある種のダークストレインは通常、空気乾燥される。たばこの熱風乾燥は典型的に、五日~七日の期間にわたって行われ、これと比較して空気乾燥は一か月~二か月にわたって行われる。数多くの主要な化学変化および生化学変化は、乾燥プロセス中に始まり、葉の乾燥の初期段階を通して継続される。黄色から褐色へのたばこの転換は概して、ニトロソアミンの形成および著しい蓄積をもたらし、微生物の含量が増加する。
【0147】
異なるタイプのたばこには、異なるタイプの乾燥が使用される。
【0148】
バージニアたばこは概して、「熱風乾燥」されている。たばこの葉は乾燥する納屋に吊り下げられ、そこで加熱された空気が発生されて葉を乾燥する。葉が水分を失うと、独特の香り、質感、色を発現する。農夫は、このプロセスを慎重に進めなければならず、このプロセスには最大一週間かかるが、その間、加熱された空気の温度を絶えず監視し、徐々に上昇させなければならない。プロセスのどの段階においても、熱が高すぎたり低すぎたりすると、たばこの品質にマイナスの影響を及ぼすことになる。
【0149】
バーレーおよびオリエント葉たばこは、異なる方法で乾燥される。バーレーは、熱と湿度が自然換気に由来する納屋内で「空気乾燥」される。乾燥プロセスは最大二か月かかる。オリエント葉たばこは、日の当たる屋外で葉を約二週間吊り下げることによって、「日光乾燥」される。
【0150】
本テキストにおいて、動詞の「comprise(含む)」および「include(含む)」は同義語であり、両方とも特徴の非網羅的リストを示す。動詞「consist(から成る)」は、網羅的なリストを示す。
【0151】
本発明は特許請求の範囲に定義されている。しかしながら、以下に非限定的な実施例の非網羅的なリストを提供している。これらの実施例の特徴のうちのいずれか一つ以上は、本明細書に記載の別の実施例、実施形態、または態様のうちのいずれか一つ以上の特徴と組み合わされてもよい。
【0152】
本発明は、とりわけ以下の実施例によって定義されうる。
【0153】
実施例1.
たばこ材料を処理する方法であって、方法が、
- たばこ材料を提供することと、
- 発酵たばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵させることであって、
- 嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすること、
- および、以下の条件:
- 乳酸の含有量が、たばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、好ましくは80倍を超える、
- 還元糖の含有量が、たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である、
- インドール-3乳酸の含有量が、たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える、
- カフェイン酸の含有量が、たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超える、
- キナ酸の含有量が、たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、
- アスパラギンの含有量が、たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満である、
- グルタミンの含有量が、たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満である、
- L-オルニチンの含有量が、たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超える、
- L-ロイシンの含有量が、たばこ材料中のL-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、
- L-リジンの含有量が、たばこ材料中のL-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超える、
- 発酵指数が、50を超え、好ましくは100を超え、より好ましくは250を超え、より好ましくは400を超え、ここで発酵指数は、たばこ材料中の乳酸の含有量と乳酸の初期含有量との比を、たばこ材料中の還元糖の含有量と還元糖の初期含有量との比で割って得られる、のうちの少なくとも一つが満たされたとき、発酵工程を停止すること、を含む、たばこ材料を発酵させることと、を含む、方法。
実施例2.
たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、または発酵指数のうちの少なくとも一つの初期含有量を測定するための初期測定工程をさらに含む、実施例1に記載の方法。
実施例3.
発酵工程中のたばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、または発酵指数のうちの少なくとも一つの含有量を測定するための測定工程をさらに含む、実施例1または2に記載の方法。
実施例4.
たばこ材料がダークたばこを含有する場合、2,3ブタンジオールの含有量が、たばこ材料中の2,3ブタンジオールの初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、またはジアセチルの含有量が、たばこ材料中のジアセチルの初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超えるという条件のうちの少なくとも一つが満たされる時に、発酵を停止するために提供される、実施例1~3のいずれか一つに記載の方法。
実施例5.
たばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルのそれぞれの初期量を得るように、発酵前にたばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルの初期含有量を測定するための初期測定工程をさらに含む、実施例4に記載の方法。
実施例6.
発酵工程中にたばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルの含有量を測定するための測定工程をさらに含む、実施例4~5のいずれかに記載の方法。
実施例7.
発酵工程中に、1000キログラム/平方メートル~15000キログラム/平方メートル、好ましくは3000キログラム/平方メートル~12000キログラム/平方メートル、より好ましくは5000キログラム/平方メートル~10000キログラム/平方メートルから成る圧力をたばこ材料に印加することを含む、実施例1~6のいずれか一つに記載の方法。
実施例8.
発酵工程中に、発酵中にたばこ材料の水分含量を、たばこ材料の総重量の10重量パーセント~50重量パーセント、好ましくは35重量パーセント~45重量パーセント、より好ましくは約40重量パーセントから成る量に保つことを含む、実施例1~7のいずれか一つに記載の方法。
実施例9.
少なくとも1か月、好ましくは少なくとも2か月、より好ましくは少なくとも4か月、より好ましくは少なくとも6か月、さらにより好ましくは少なくとも8か月、好ましくは少なくとも10か月、より好ましくは少なくとも12か月の発酵時間の間発酵工程を継続するために提供される、実施例1~8に記載の方法。
実施例10.
少なくとも24か月の発酵時間の間、発酵工程を継続するために提供される、実施例1~9のいずれか一つに記載の方法。
実施例11.
たばこ材料を乾燥して、たばこ材料の総重量の5重量パーセント~10重量パーセントから成る水分含量を有する乾燥たばこ材料を得ることをさらに含む、実施例1~10のいずれか一つに記載の方法。
実施例12.
発酵工程の前にたばこ材料を乾燥するための乾燥工程を含む、実施例1~11のいずれか一つに記載の方法。
実施例13.
たばこ材料の温度を21℃~35℃、好ましくは25℃~31℃から成る温度に保つことを含む、実施例1~12のいずれか一つに記載の方法。
実施例14.
好ましくは約15日の時間間隔で、より好ましくは約30日の時間間隔で、好ましくは約30日~約60日の時間間隔でたばこ材料を回転させる工程を含む、実施例1~13の一つ以上に記載の方法。
実施例15.
たばこ材料を水分保持材料内に確保することを含む、実施例1~14の一つ以上に記載の方法。
実施例16.
たばこ材料の総重量の約10重量パーセント~約50重量パーセント、好ましくは総重量の約35重量パーセント~約45重量パーセント、好ましくは総重量の約40重量パーセントから成るたばこ材料の水分含量を達成するように、発酵前に水中でたばこ材料を湿らせることを含む、実施例1~15の一つ以上に記載の方法。
実施例17.
一定の量の非発酵たばこ材料を望ましい量の発酵たばこ材料と混合してたばこ材料を得て、次にたばこ材料を発酵工程に供し、ここでたばこ材料中の発酵たばこ材料の量が、たばこ材料の5重量パーセント~10重量パーセントから成る、実施例1~16のいずれか一つに記載の方法。
実施例18.
発酵工程後のたばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、または発酵指数のうちの少なくとも一つの含有量を測定するための最終測定工程をさらに含む、実施例1~17のいずれかに記載の方法。
実施例19.
発酵中、たばこ材料のpHを、4.5~5.5、好ましくは約4.8~5.4から成るpHに維持するためにさらに供する、実施例1~18のいずれか一つに記載の方法。
実施例20.
たばこ材料を処理する方法であって、方法が、
- たばこ材料を提供することと、
- 発酵たばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵させることであって、発酵工程が、
- 嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることであって、ここで発酵工程中、1000キログラム/平方メートル~15000キログラム/平方メートル、好ましくは3000キログラム/平方メートル~12000キログラム/平方メートル、より好ましくは5000キログラム/平方メートル~10000キログラム/平方メートルから成る圧力をたばこ材料に印加するために提供される、インキュベートすること、を含む、発酵させることと、を含む方法。
実施例21.
たばこ材料を処理する方法であって、方法が、
- たばこ材料を提供することと、
- 発酵たばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵させることであって、発酵工程が、
- 嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることであって、ここで少なくとも1か月、好ましくは少なくとも2か月、より好ましくは少なくとも4か月、より好ましくは少なくとも6か月、さらにより好ましくは少なくとも8か月、好ましくは少なくとも10か月、より好ましくは少なくとも12か月の発酵時間の間発酵工程を継続するために提供される、インキュベートすること、を含む、発酵させることと、を含む方法。
実施例22.
たばこ材料を処理する方法であって、方法が、
- たばこ材料を提供することと、
- 発酵たばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵させることであって、発酵工程が、
- 嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることであって、ここで発酵工程中、たばこ材料の温度を21℃~35℃、好ましくは25℃~31℃から成る温度に保つために提供される、インキュベートすること、を含む発酵させることと、を含む方法。
実施例23.
発酵たばこ材料および/または部分的発酵たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルのうちの少なくとも一つの量を含むデータベースを提供することをさらに含む、実施例1~22のいずれか一つに記載の方法。
実施例24.
複数の異なるたばこ材料について、発酵たばこ材料および/または部分的発酵たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルのうちの少なくとも一つの量を含むデータベースを提供することを含む、実施例1~23のいずれか一つに記載の方法。
実施例25.
少なくとも一つのデータベースから、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルのうちの少なくとも一つの量を回収すること、および回収された値を、発酵中のたばこ材料における対応する測定された値と比較すること、を含む、実施例26または27に記載の方法。
実施例26.
乳酸、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、またはブチルヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン、またはセコイソラリシレシノール(SECO)、または発酵指数、またはブタンジオール、またはジアセチルの測定された値が、対応する回収された値よりも低い場合、および/または還元糖、またはアスパラギン、またはグルタミン、または発酵指数の値が、対応する回収された値よりも高い場合、発酵工程を継続すること、をさらに含む、実施例28に記載の方法
実施例27.
実施例1~26のいずれか一つに記載の方法に従って得られるたばこ材料。
実施例28.
たばこ材料を発酵することを含む方法によって得られるたばこ材料であって、方法が、嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることを含み、ここで以下の条件のうちの少なくとも一つがたばこ材料において満たされる:
- 乳酸の含有量が、たばこ中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、より好ましくは80倍を超える、
- 還元糖の含有量が、たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である、
- インドール-3乳酸の含有量が、たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える、
- カフェイン酸の含有量が、たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超える、
- キナ酸の含有量が、たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、
- アスパラギンの含有量が、たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満である、
- グルタミンの含有量が、たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満である、
- L-オルニチンの含有量が、たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超える、
- L-ロイシンの含有量が、たばこ材料中のL-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、
- L-リジンの含有量が、たばこ材料中のL-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超える、
- 発酵指数が、50を超え、好ましくは100を超え、より好ましくは250を超え、より好ましくは400を超え、ここで発酵指数は、たばこ材料中の乳酸の含有量と非発酵たばこ材料中の乳酸の含有量との比を、たばこ材料中の還元糖の含有量と非発酵たばこ材料中の還元糖の含有量との比で割って得られる。
実施例29.
以下の特徴のうちの少なくとも一つを含有するたばこ材料:
- たばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、より好ましくは80倍を超える量の乳酸、
- たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である量の還元糖、
- たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える量のインドール-3乳酸、
- たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超える量のカフェイン酸、
- たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える量のキナ酸、
- たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満の量のアスパラギン、
- たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満の量のグルタミン、
- L-オルニチンは、たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超える、
- L-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超えるの量のL-ロイシン、
- L-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超えるの量のL-リジン、
- 発酵指数は、50を超え、好ましくは100を超え、より好ましくは250を超え、より好ましくは400を超え、ここで発酵指数は、たばこ材料中の乳酸の含有量と非発酵たばこ材料中の乳酸の含有量との比を、たばこ材料中の還元糖の含有量と非発酵たばこ材料中の還元糖の含有量との比で割って得られる。
実施例30.
前述のたばこ材料が、たばこ材料を嫌気性条件下でインキュベートすることを含む、処理されたたばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵することを含むプロセスによって得られる、実施例1~29に記載のたばこ材料。
実施例31.
総乾燥重量基準で、少なくとも20ミリグラム/グラム、好ましくは少なくとも50mg/グラム、より好ましくは少なくとも60ミリグラム/グラムの乳酸を含有する、たばこ材料。
実施例32.
総乾燥重量基準で3パーセント未満の総還元糖を含む、たばこ材料。
実施例33.
総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギンを含む、たばこ材料。
実施例34.
総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミンを含む、たばこ材料。
実施例35.
総乾燥重量基準で10000ミリグラム/キログラム超の総遊離アミノ酸を含む、たばこ材料。
実施例36.
少なくとも1マイクログラム/グラム、好ましくは少なくとも2マイクログラム/グラム、より好ましくは少なくとも2.5マイクログラム/グラムのインドール-3乳酸を含む、たばこ材料。
実施例37.
たばこ材料が乾燥される、実施例27~36の一つ以上に記載のたばこ材料。
実施例38.
たばこ材料が粉砕される、実施例27~37の一つ以上に記載のたばこ材料。
実施例39.
総乾燥重量基準で約2.5重量パーセント~総乾燥重量基準で100重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約4重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約10重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約20重量パーセントの実施例27~38のいずれか一つに記載のたばこ材料を含有する、たばこ材料を含む、エアロゾル発生物品。
実施例40.
少なくとも5ミリグラム/グラム、好ましくは10ミリグラム/グラムの乳酸を含有する、たばこ材料を含む、エアロゾル発生物品。
実施例41.
総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギンを含有する、たばこ材料を含む、エアロゾル発生物品。
実施例42.
総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミンを含有する、たばこ材料を含む、エアロゾル発生物品。
実施例43.
総遊離アミノ酸の総乾燥重量で10000ミリグラム/キログラムを超えるアスパラギンを含有する、たばこ材料を含む、エアロゾル発生物品。
【0154】
ここで、以下の図を参照しながら実施例をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【
図1】
図1および
図2は、本発明による発酵の前(0T)および6か月後(3T)にそれぞれ測定された、実施例1および実施例2のたばこ材料中の乳酸の量を表すヒストグラムである。
【
図3】
図3および
図4は、本発明による発酵前(0T)および発酵中にそれぞれ測定された、実施例1および実施例2のたばこ材料中の総アルカロイド(TA)レベルの量(総乾燥重量基準DWのパーセント)を表すヒストグラムである。
【
図5】
図5および
図6は、本発明による発酵前(0T)および発酵中に測定された、実施例1および実施例2のたばこ材料(総乾燥重量基準、DW)中のそれぞれグルタミンおよびグルタミン酸の量を表すヒストグラムである。
【
図7】
図7および
図8は、本発明による発酵前(0T)および発酵中に測定された、実施例1および実施例2のたばこ材料(総乾燥重量基準、DW)中のそれぞれアスパラギンおよびアスパラギン酸の量を表すヒストグラムである。
【
図9】
図9および
図10は、本発明による発酵前(VG-BF)、発酵中、および発酵後(VG-AF)にそれぞれ測定された、実施例3のたばこ材料(総乾燥重量基準、DW)中の総アルカロイド(
図9)および還元糖(
図10)の量をそれぞれ表すヒストグラムである。
【
図11】
図11は、発酵プロセス(T1~T7)中および発酵後(AF)の非発酵バージニア(VG)材料(SM)中のTA(総アルカロイド)、RS(還元糖)、およびアンモニア(NH3)を、総乾燥重量基準、DWの割合で示す。
【
図12】
図12は、非発酵バージニア材料(SM)中のバージニアたばこの嫌気性発酵中、および発酵後(AF)のグルコース、フルクトース、クエン酸塩、リンゴ酸塩、ピルビン酸、および乳酸塩の量を示す。
【
図13】
図13Aおよび13Bは、バージニアたばこの発酵前後の消費された(
図13A)および生成された(
図13B)遊離アミノ酸を示す。メタボローム解析から表される比データ(n=3)、統計は、対応t検定である(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001);
【
図14】
図14は、バージニアたばこの発酵におけるキナ酸およびカフェイン酸の生成を示す。メタボローム解析から表される比データ(n=3)、統計は、対応t検定である(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001);
【
図15】
図15は、酵素的L-トリプトファン分解からの非発酵バージニアたばこ(SM)と比較した、発酵たばこ(AF)中のインドール-3-乳酸の蓄積を示す。メタボローム解析から表される比データ(n=3)、統計は、対応t検定である(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)
【
図16】
図16は、実施例4のバージニアたばこ材料のTA、RS、NO3、およびNH3の、開始時(0か月)、ならびに3か月および6か月の発酵後の割合を示す。分析は、スカラー法によって実施された。
【
図17】
図17は、実施例1(RAJ)および実施例2(HS)のたばこ材料における、非発酵材料(対照)と発酵材料(HF)との間のインドール-3-乳酸の変化を示す。
【
図17A】
図17Aは、非発酵たばこ材料(NF)および発酵たばこ材料(F)における、実施例4(VG-CH)のたばこ材料中のインドール-3-乳酸の変化を示す。
【
図18】
図18は、実施例1(RAJ)および実施例2(HS)のたばこ材料における、非発酵材料(対照)と発酵材料(HF)との間のL-オルニチンの変化を示す。
【
図19】
図19は、実施例1(RAJ)および実施例2(HS)のたばこ材料における、非発酵材料(対照)と発酵材料(HF)との間のBHHPPDの変化を示す。
【
図20】
図20は、実施例1(RAJ)および実施例2(HS)のたばこ材料における、非発酵材料(対照)と発酵材料(HF)との間のセコイソラリシレシノールの変化を示す。
【0156】
同じたばこタイプであるが、発酵前に異なる加工を受けた第一および第二のたばこ材料が準備された。たばこ材料はカストリたばこである。
【発明を実施するための形態】
【0157】
実施例1
ダークたばこの葉材料を約10日間完全に日光で乾燥した。日光で乾燥された葉は、ラミナ(手で剥がされた葉)のみを取っておくために剥がされた。このたばこ材料は「HS」と呼ばれる。
【0158】
たばこ材料をコンディショニングして、およそ30パーセントの水分を得た。コンディショニングされているが、まだ発酵されていないこのたばこ材料の試料は0T(「出発材料」)と呼ばれる。
【0159】
次いで、コンディショニングされたたばこ材料を三つのバレルに導入し、各バレルにおよそ100キログラムのたばこ材料が存在する。導入前に、たばこ材料は、得られた水分を維持する材料で包まれる。
【0160】
圧力が各バレルにかけられる。圧力は、1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る。
【0161】
1か月後(1Tと呼ばれる試料)、2.5か月後(2Tと呼ばれる試料)、6か月後(3Tと呼ばれる試料)、および8.5か月後(4Tと呼ばれる試料)に、バレルを開けて、たばこの回転前に、および水分含量をおよそ30パーセント±5パーセントに再調整する前に、試料を各バレルで少なくとも三つ採取した。
【0162】
完全嫌気性条件下での重発酵プロセス中に、バレル内部の温度は特に上昇しなかった(温度は27℃~31℃の範囲内に留まった)。発酵は8.5か月後に停止された。
【0163】
実施例2
ダークたばこの葉材料を二日間黄ばませ、カットフィラーで急速に刻んだ。このたばこ材料は、ラミナと葉脈の両方を含有する。ラミナと中央脈の両方を含有する刻まれた葉を二日間日干しした。このたばこ材料の試料は、以下で「CC」と命名されている。
【0164】
たばこ材料をコンディショニングして、およそ30パーセントの水分含量を得た。コンディショニングされているが、まだ発酵されていないこのたばこ材料の試料は0T(「出発材料」)と呼ばれる。
【0165】
次いで、コンディショニングされたたばこ材料を三つのバレルに導入し、各バレルにおよそ100キログラムのたばこ材料が存在する。導入前に、たばこ材料は、得られた水分を維持する材料で包まれる。
【0166】
圧力が各バレルにかけられる。圧力は、1000キログラム/平方メートル~4000キログラム/平方メートルから成る。
【0167】
1か月後(1Tと呼ばれる試料)、2.5か月後(2Tと呼ばれる試料)、6か月後(3Tと呼ばれる試料)、および8.5か月後(4Tと呼ばれる試料)に、バレルを開けて、たばこの回転前に、および水分含量をおよそ30パーセント±5パーセントに再調整する前に、試料を各バレルで少なくとも三つ採取した。
【0168】
完全嫌気性条件下での重発酵プロセス中に、バレル内部の温度は特に上昇しなかった(温度は27℃~31℃の範囲内に留まった)。発酵は8.5か月後に停止された。
【0169】
目視観察
最初のたばこ材料は発酵の2.5か月後(試料2T)、既に変化していて、HS葉とCC葉の両方の色はより暗くなり、たばこの臭いは良いカラメルバターと発酵した複雑な特徴とを発現していた。暗色はプロセス終了時(8.5か月、4T)のCC葉と比較して、発酵HS葉でより顕著であったが、これはおそらくCC葉の葉の中央脈の存在に起因する。
【0170】
化学分析
以下において、試料に関する値が言及される場合、所与の値は、同じタイプの各試料について得られた幾つかの値の平均を表す。
【0171】
発酵条件が2.5か月間適用された後(試料2Tで見いだされた通り)、たばこ材料の試料(CCとHSの両方)のpHは酸性になり、3.2に達した。これは、(酢酸および/または)乳酸などの有機酸を通常産生する、糖分解を伴う嫌気性発酵のプロセスを反映する。たばこ材料の出発pHは概して、5pH~6pHから成る。
【0172】
図1および
図2は、たばこ材料中の乳酸の存在を示す。図によって示される通り(
図1はHS葉の乳酸含量を表し、
図2はCC葉の乳酸含量を表す)、発酵前に、全試料には乳酸が存在しない(たばこ材料(CCまたはHS)当たり三つの試料0Tが示されている)。発酵後(この場合、6か月後に、3Tと呼ばれるたばこ材料についての三つの試料が、両方のたばこ材料(CCまたはHS)について示されている)、すべての試料(CCとHSの両方の葉)は、可変量であるが乳酸の存在を示す。
【0173】
発酵中にアルカロイドは分解しなかったか、またはわずかだけ分解した。総乾燥重量基準のパーセントでの総アルカロイド(TA)含量(図においてパーセントDWとして示される)が、
図3(HS葉)および
図4(刻まれた葉、CC葉)に示されている。総アルカロイド含量は、発酵中にかなり安定を保っていた。8.5か月後(4T)、HS葉では4パーセントだけ分解し、CC葉では9パーセント分解した。統計的に関連があるものの、こうした小さい変動はサンプリングからのみ生じうる。一部の限定的なアルカロイドヒドロラーゼ活性を除外できない可能性がある。総アルカロイドは、重発酵プロセス中に開始時(0T、n=6試料が分析されている)、1か月後(1T、n=9)、2.5か月後(2T、n=9)、6か月後(3T、n=9)、8.5か月後(4T、n=12)後に収集された試料で分析された。T検定(検定統計量)を対照の未発酵の乾燥されたたばこ(0T)との比較のために行った。結果は、p値を示す
図3および4に示されていて、p値は以下のように示されている:
*、p<0.05;
**、p<0.01および
***、p<0.001。
【0174】
HS葉の試料4TおよびCC葉の試料3Tは、p値<0.01を有し、CC葉の試料1Tおよび4Tは、p値<0.001を有する。これは、発酵たばこ材料と非発酵たばこ材料の間の統計的有意差を示す。
【0175】
硝酸塩含量は重発酵プロセスの影響を受けなかった。しかし、たばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)に幾らかの影響が観察された:NNN(N’-ニトロソノルニコチン)、NNK(ニコチン由来ニトロソアミンケトン)、およびNAT(N’-ニトロソアナタビン)。8.5か月の発酵後、NNKおよびNATについて変化は測定されなかった。しかし、HS(3倍の増加)とCC(5~6倍の増加)の両方において、NNNの増加が観察された。ノルニコチンとして、ニトロ化前のNNNの前駆体は、それに応じて増加しなかった。従って、NATおよびNNKは、発酵を実施中に細菌によって部分的に分解されうるが、NNNは部分的に分解されない場合がある。その理由はNNKおよびNATが最初に2.5か月の発酵まで2倍上昇し、その後、低下して非発酵たばこの初期値に達したからである。この観察は、アルカロイドのニトロ化が重発酵中に起こることを意味しうる。
【0176】
本発明による重発酵中の糖類および遊離アミノ酸の進展が分析されている。たばこ材料の試料で実施された測定の値は表1に収集されている。表1は、実施例1および実施例2にある通り、手で剥がされた(HS)または刻まれた(CC)葉のいずれかを含有するバレル中の発酵条件下での、未処理のたばこ材料試料(試料0T)から発酵プロセスの8.5か月(試料4T)に至る重発酵プロセス中の糖およびアミノ酸の進展を示す。表のすべての値は、総乾燥重量基準である。還元糖の単位は総乾燥重量基準のパーセントである一方で、遊離アミノ酸は、全乾燥たばこ材料の1キログラム当たりのミリグラムである。還元糖の低下は、色の変化およびスラリー酸性化と同調して、2.5か月後(2T、表1を参照)に現れた。グルコースおよびフルクトースは、発酵バレル中で嫌気性細菌が代謝しうる二つのたばこ葉基体である。逆に、大半のアミノ酸はプロセス中に増加した。アスパラギンとグルタミンの両方が大きく減少した。全体として、これらの観察は、主要な発酵活性が一か月目と三か月目の間に生じたことを示しうる。プロリンは嫌気性発酵下で分解されなかった(表1を参照)。オルニチンは、HSとCCの両方で発酵中に大きく(>100倍)増加し、シトルリン(0Tと3Tの間のメタボローム解析から得られたデータ)は、HSにおいて16倍、CCにおいて2倍増加した。これは、(植物由来の)乳酸細菌が、たばこ発酵バレル中で活性であることを示し場合があり、その理由は、こうした細菌が、高レベルでオルニチンおよびシトルリンを産生すると説明されているからである(Rakhimuzzaman et al.,Biol Pharm Bull.2019;42(9):1581-1589)。
【表1】
【0177】
図5~8において、たばこ材料中のグルタミンおよびアスパラギンの量を示す。
図5~8によって示す通り、および表1に提示したデータに基づき、HS葉とCC葉の両方の重発酵プロセス中に起こるグルタミンおよびアスパラギンの脱アミノ化は、グルタミン酸塩およびアスパラギン酸塩の同時増加とそれぞれ相関しうる。これは、発酵細菌が、アミノ酸資源からCおよびNを同化するための特定のグルタミナーゼおよびアスパラギナーゼを産生することを示唆する。どちらの反応もアンモニアを産生し、アンモニアはHS葉とCC葉の両方の嫌気性発酵プロセス中に二倍増加した。
図5および
図6は、HS葉およびCC葉中のグルタミン(白色のヒストグラム)およびグルタミン酸(黒色のヒストグラム)のレベルをそれぞれ示す。発酵中にグルタミンが減少し、グルタミン酸が増加することが、図から明らかである。
図7および
図8は、HS葉およびCC葉中のアスパラギン(縞模様のヒストグラム)およびアスパラギン酸(黒色のヒストグラム)のレベルをそれぞれ示す。発酵中にアスパラギンが減少し、アスパラギン酸が増加することが、図から明らかである。
【0178】
たばこ葉嫌気性発酵プロセスに関連するマーカー分子または経路を特定するために、メタボローム研究を実施した。HS葉とCC葉の両方の出発材料(対照)中に存在するグルコースおよびフルクトースなどの糖資源は、嫌気性細菌によってエネルギー源として使用されうる(表1を参照)。酸素が存在しない場合、解糖経路は、グルコース(またはフルクトース)をピルビン酸に変換し、2つのATPおよび2つのNADH+H+を産生する。嫌気性細菌によって急速に使用されうる他の有機化合物および豊富な炭素化合物は、クエン酸塩およびリンゴ酸塩であり(Bintsis,T,2018,AIMS Microbiology,4(4):665-684)、どちらも植物において最も豊富な有機酸である。クエン酸塩およびリンゴ酸塩も還元糖と同様に、たばこの重発酵中に代謝される。試料の化学分析から、出発たばこ材料(試料0T)、手で剥がされて刻まれた葉の中に存在するグルコースおよびフルクトース、クエン酸塩およびリンゴ酸塩の60パーセント超が、6か月間の重発酵後(試料3T)に異化されることが示されている。こうした有機分子の消費に関連付けられることができる別の観察は、HSとCCの両方の発酵たばこ材料におけるピルビン酸の増加(13~14倍)である。ピルビン酸は、嫌気性条件下で起こりうる幾つかの反応の基質である:(1)主に解糖反応のためのNAD+を再発生するためのD-乳酸の産生、(2)重発酵たばこ中の芳香族化合物および風味の送達に寄与しうる酢酸、ジアセチル、2,3ブタンジオールの産生。ピルビン酸は、乳酸細菌の産物として、2,3-ブタンジオールまたは乳酸などの芳香族化合物の発生をもたらしうる。
【0179】
重発酵たばこのメタボローム解析から、(1)トリプトファンの分解、および(2)クロロゲン酸の異化という二つの他の経路が出現した。
【0180】
トリプトファン分解に関して、経路は、チーズ細菌についてUmmadiおよびWeimerによって説明されていて(2001、J.Dairy Sci.84:1773-1782)、それに応じて適合されている。この場合、出発たばこ材料(試料0T)中に存在するトリプトファンの78パーセント超は、HS葉とCC葉の両方において6か月の発酵後(試料3T)に異化される。経路は、こうした異化反応から生じる産物が主にインドール-3-乳酸であることを示した。これは、HS葉とCC葉におけるそれぞれ14倍および28倍の増加によって示されている。この経路に属する他の化合物は、こうした増加を示さなかった。この化合物について、特定の芳香族特性は報告されていなかった。
【0181】
重要な生物学的に活性な食物ポリフェノールであるクロロゲン酸(CGA)は、たばこなどの特定の植物種によって産生され、コーヒーの主要成分である。重発酵たばこ葉において、CGAは嫌気性発酵プロセス後に完全に分解される。その一方で、CGAの異化から生じる産物、すなわちキナ酸およびカフェイン酸は、HS葉とCC葉の両方において6か月の発酵後に増加した。これはおそらく、Guglielmettiら(2008,Applied and Environmental Microbiology,74,4:1284-1288)によって記録された通り、細菌のシンナモイルエステラーゼ活性に起因する。したがって、キナ酸プールおよびカフェイン酸プールの一部はおそらく、CGAの加水分解に起因し、それらのいずれも風味特性を有すると報告されなかった。
【0182】
乾燥されたたばこと比較して、重発酵たばこ中のピルビン酸、インドール-3-乳酸の上昇の存在、およびクロロゲン酸の欠如は、それらを化学マーカーとして有用なものにしうる。
【0183】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的において、別途示されていない限り、量(amounts)、量(quantities)、割合などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。また、すべての範囲は、開示された最大点および最小点を含み、かつその中の任意の中間範囲を含み、これらは本明細書に具体的に列挙されてもよく、列挙されていなくてもよい。したがって、この文脈において、数字AはA±10パーセントとして理解される。この文脈内で、数字Aは、数字Aが表す特性の測定値に対する一般的な標準誤差内にある数値を含むと考えられてもよい。数字Aは、添付の特許請求の範囲で使用される通りの一部の場合において、Aが逸脱する量が特許請求する本発明の基本的かつ新規の特性に実質的に影響を及ぼさないという条件で、上記に列挙された割合だけ逸脱してもよい。また、すべての範囲は、開示された最大点および最小点を含み、かつその中の任意の中間範囲を含み、これらは本明細書に具体的に列挙されてもよく、列挙されていなくてもよい。
【0184】
実施例1および2のたばこ材料はまた、発酵と接続されうる一部の追加的な化学的化合物について試験されている。
【0185】
図17は、実施例1(RAJ)および実施例2(HS)のたばこ材料における、非発酵材料(対照)と発酵材料(HF)との間のインドール-3-乳酸の変化を示す。これらのデータは、発酵材料中のインドール-3-乳酸の含有量の増加を示す。
【0186】
図18は、実施例1(RAJ)および実施例2(HS)のたばこ材料における、非発酵材料(対照)と発酵材料(HF)との間のL-オルニチンの変化を示し、L-オルニチンの量およびまた、絶対的な変化で示されている。これらのデータは、発酵材料中のL-オルニチンの含有量の増加を示す。
【0187】
図19は、実施例1(RAJ)および実施例2(HS)のたばこ材料における、非発酵材料(対照)と発酵材料(HF)との間のBHHPPDの変化を示す。これらのデータは、発酵材料中のBHHPPDの含有量の増加を示す。
【0188】
図20は、実施例1(RAJ)および実施例2(HS)のたばこ材料における、非発酵材料(対照)と発酵材料(HF)との間のセコイソラリシレシノールの変化を示す。これらのデータは、発酵材料中のセコイソラリシレシノールの含有量の増加を示す。
【0189】
実施例3
バージニアたばこの試料について、アジアでさらなる試験が実施された。たばこ葉材料は、標準手順として熱風乾燥されている。
【0190】
細片の形態のたばこ乾燥処理済み材料を、次にコンディショニングして、およそ30パーセントの水分を得た。コンディショニングされているが、まだ発酵されていないこのたばこ材料の試料は、SM(発酵前の出発材料)と呼ばれる。
【0191】
次いで、コンディショニングされたたばこ材料を二つのバレルに導入し、各バレルにおよそ100キログラムのたばこ材料が存在する。導入前に、たばこ材料は、得られた水分を維持する材料で包まれる。バージニアたばこ材料を含む二つのバレルを、実施例1に記載されるように嫌気性発酵に供した。発酵バレル内部の温度および発酵中のたばこ材料のpHを、実験全体中にモニターした。
【0192】
1か月後(1Tと呼ばれる試料)、2か月後(2Tと呼ばれる試料)、3か月後(3Tと呼ばれる試料)、4か月後(4Tと呼ばれる試料)、5か月後(5Tと呼ばれる試料)、6か月後(6Tと呼ばれる試料)、7か月後(7Tと呼ばれる試料)、および8か月後(AFと呼ばれる試料、発酵後)に、バレルを開けた。
【0193】
二つのバレルのたばこ材料は、実験の7か月の間に毎月回転されている。
【0194】
試料は、以下に報告される表2に示すように、発酵前(VG-SM:出発材料、6回の反復)、発酵プロセス中(VG-T1からVG-T7までのすべての月、1バレル当たり3回の反復)、および発酵後(VG-AF:発酵後、6回の反復)に採取された。試料の特徴を分析した。
【表2】
【0195】
完全嫌気性条件下での重発酵プロセス中に、発酵開始時(VG-T1)の30℃から発酵終了時(VG-AF)の26℃に直線的に変動した発酵プロセス中に、大きな温度変化は観察されなかった。温度は、キャプターを使用してバレル内部で測定された。
【0196】
たばこ材料のpHは、発酵実施(T1~AF)中に著しく変化せず、5.1±0.3に留まった。
【0197】
目視観察
カストリたばこ材料の場合で見られる通り、発酵プロセス終了時(VG-AF)のたばこ材料の色は、出発材料(VG-SM)と比較して著しくより暗くなった。しかしながら、4か月の嫌気性発酵後(VG-T4)、したがって4回の回転後、バージニアたばこ材料はきわめて暗い着色を示さず、これは、実験条件で、4か月ではバージニアたばこ材料の完全な発酵を得るために十分ではない可能性を示唆していた。嫌気性発酵(VG-AF)の8か月後、したがって8回転後、バージニアたばこ材料は4か月後よりも暗い色を有し、それ故にバージニアたばこ材料の完全な発酵が行われたことを示唆していた。さらに、8か月後に、よい香りがして、および花の香りが知覚された。
【0198】
化学分析
以下において、試料に関する値が言及される場合、所与の値は、同じタイプの各試料、反復について得られた幾つかの値の平均を表す。
【0199】
図11は、発酵プロセス中の総アルカロイド(TA)、発酵プロセス中の還元糖(RS)およびアンモニア(NH3)の進展を示す。これらのデータは、アルカロイド、特にニコチン(図示せず)が嫌気性発酵の影響を受けないことを裏付ける。細菌は、発酵基質として主要なアルカロイドを消費しなかった。バージニアを発酵材料として使用した場合、アンモニアの増加は観察されず、このバージニア材料には存在しなかった硝酸塩は、発酵プロセス中および発酵プロセス後にいかなる増加も示さなかった。
図11は、発酵プロセス(T1~T7)中および発酵後(AF)の非発酵バージニア(VG)材料(SM)中のTA(総アルカロイド)、RS(還元糖)、およびアンモニア(NH3)を示す。データは、DWパーセントで表される。発酵(AF)後の非発酵バージニア(VG)材料(SM)中のTA(総アルカロイド)、RS(還元糖)、およびアンモニア(NH3)のデータはまた、非発酵材料と発酵材料との間の値の差が直ちに明らかである
図11のヒストグラムに報告される。
【0200】
その一方で、実施例1および実施例2で既に観察された通り、還元糖は発酵細菌によって基質として使用された。したがって、還元糖(RS)の約60パーセントは、8か月の発酵中に酸化され、乾燥重量(DW)で18.3パーセント(VG-SM)から7.4パーセント(VG-AF)に変わった。より長い発酵期間は、還元糖のより高い分解率につながった可能性がある。
【0201】
出発材料(VG-SM)および発酵材料(VG-AF)中の化合物を比較するために、さらなる化学分析を実施した。
【0202】
分析は、非発酵材料(VG-SM)と比較して、発酵材料(VG-AF)中の乳酸塩(表3のHS ID VG-19-20-NF、HS ID VG-19-20-F)の強力な有意な増加(約10倍)を示す。さらに、発酵材料(VG-AF)中のグルコースおよびフルクトースの量は、出発材料(VG-BF)中のグルコースおよびフルクトースの含有量よりもかなり低い。発酵材料(VG-AF)中のグルコースは、非発酵材料(VG-SM)中のグルコースの0.6未満であり、発酵材料(VG-AF)中のフルクトースは、非発酵材料(VG-SM)中のフルクトースの0.4未満である。したがって、還元糖の発酵後に約60パーセントの減少が観察されうる。さらに、有機酸、クエン酸塩およびリンゴ酸塩も、ダークたばこについて
図1にも示すように、発酵によって影響を受ける。
図12は、バージニアたばこの嫌気性発酵中の、たばこ還元糖、クエン酸塩、およびリンゴ酸塩の異化、続いてピルビン酸および乳酸(乳酸発酵)の蓄積を示す。メタボローム解析から表される比データ(n=3)、統計は、対応t検定である(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)
【0203】
化学分析はまた、アスパラギンおよびグルタミンが、嫌気性細菌によっても消費される還元糖の側にあり、グルタミン酸塩、ヒスチジン、プロリン、およびトリプトファンなどの他の遊離アミノ酸もバージニアたばこの発酵後に著しく分解され、それに対して他のアミノ酸、特にL-ロイシンおよびL-リジンは、バージニアたばこの発酵後に増加することを確認した(
図13Aおよび13Bを参照)。
図13Aおよび13Bはそれぞれ、バージニアたばこの発酵前後の、消費されたおよび生成された遊離アミノ酸を示す。メタボローム解析から表される比データ(n=3)、統計は、対応t検定である(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)
図14は、キナ酸およびカフェイン酸の含有量の変化を示す。実施例1および実施例2で既に観察された通り、発酵たばこ材料中のキナ酸およびカフェイン酸の含有量が非発酵たばこ材料中の含有量と比較されたとき、これらの化合物は発酵後に大幅に増加した。これはおそらく、クロロゲン酸を異化させるシンナモイルエステラーゼの結果である。強力な抗酸化活性、コラーゲン産生の増加、および早期老化の防止の他にも、カフェイン酸は抗菌活性を示し、皮膚疾患の治療に有望であり得る。一方、キナ酸はまた、前立腺癌と戦う強力な薬物候補である。
【0204】
インドール-3-乳酸(
図15)は、たばこ発酵プロセス中に大幅に増加し(>10倍)、トリプトファンの異化に由来する。したがって、乳酸として、有機酸インドール-3-乳酸はまた、乳酸発酵の良好なマーカーである。
【0205】
実施例4
この実験は、実施例3で使用されるのと同じ実験条件で、スイスで実施された。
【0206】
この実験では、湿式たばこ基体を二か月~十か月間加圧することができる金属ワインバレルが使用されている。ブドウに使用され、プロジェクトのニーズに合わせてカスタマイズされた加圧設備が使用されている。バレルは、平坦な底部、慣習的なディスク直径、および慣習的な圧力ゲージを有する。0~8キログラム/平方センチメートルで押圧することができる。押圧は、手動または電動機によってトリガーされ得る。随意の部品として、ステンレス鋼押圧ディスクに木製ディスクが取り付けられる。発酵タンクは、70センチメートルの高さ、57センチメートルの直径、100キログラムの容量で、発酵実施の中間または終了時に材料を回転させるときに基体を開梱するのに役立つ金属タンク(バレル)の後方の開口部を有し、試験目的のために修正されている。
【0207】
ブラジルからのFCたばこ細片(CX B)を、約30重量パーセント~約50重量パーセントの水の最終湿度に達するように水で予め調整した発酵基質として使用した。約100キログラムのたばこ材料が、発酵タンクに装填され、押圧される。圧力は、約0.5キログラム/平方センチメートル~約1キログラム/平方センチメートルに保たれる。たばこ材料は、発酵プロセス全体(6か月)の間、約50重量パーセントの相対湿度および約22°Cの温度に維持される。三か月後、たばこ材料はバレルから取り出され、分離され、混合され、回転される。次いで、たばこ材料に約30重量パーセントの水~約50重量パーセントの水を添加し、次いでバレルに再装填する。
【0208】
圧力および水レベルを定期的にモニターし、標的からの逸脱および任意の好気性発酵を防止するために補正した。タンク内部の温度は、以前に観察されたように、全実施中変化しなかった。
【0209】
6か月後、たばこ材料を、異なる温度範囲で約8分間の総乾燥時間、ベルトオーブン上で予備乾燥した。たばこ材料は、まず約40°Cの温度に供され、次に約(70°C)の温度に供され、次に約60°Cの温度に供される。予備乾燥プロセスにより、約25重量パーセントの相対湿度OV[パーセント]を有するたばこ材料を得ることができ、細片をより細かい粒子に切断することを可能にする。次に、たばこ材料は、約1ミリメートルの切断幅の粒子に切断される。次いで、たばこ材料は、10重量パーセント~約15重量パーセントOV[パーセント]の最終水分含量まで乾燥される。乾燥工程は、約10分間、約90°C~約100°Cから成る温度および約0.6バールの圧力で回転式乾燥機内で行われた。次いで、たばこ材料は最終的に、短い貯蔵のために70マイクロメートルの仕様で粉砕される。
【0210】
二つのバレルのたばこ材料は、実験の6か月の間、二か月に一度回転されている。
【0211】
試料は、発酵前(VG-SM:出発材料、6回の反復)、発酵プロセスの開始から3か月後の発酵プロセス中、および発酵後(VG-AF:発酵後、6回の反復)に採取された。
【0212】
目視観察
発酵プロセス終了時(VG-AF)のたばこ材料の色は、出発材料(VG-SM)と比較して著しくより暗くなった。6か月の嫌気性発酵後、バージニアたばこ材料は、バージニアたばこ材料の完全な発酵が起こったことを示す暗色を呈する。
【0213】
化学分析
以下において、試料に関する値が言及される場合、所与の値は、同じタイプの各試料、反復について得られた幾つかの値の平均を表す。
【0214】
図16は、発酵プロセス中の総アルカロイド(TA)、発酵前、および発酵の三か月後、および発酵プロセスの終了時における還元糖(RS)、硝酸塩(NO
3)、およびアンモニア(NH
3)の含有量の差を示す。総アルカロイド(TA)は嫌気性発酵プロセスによる影響を受けない。還元糖は嫌気性細菌によって消費され、たばこ材料中のそれらの含有量は発酵と共に減少する。発酵の終了時に、たばこ材料中の還元糖のレベルは非常に低い。この場合、還元糖は、6か月の発酵および一回のみの回転後にほぼ完全に消費された。これらのデータは、実施例1、2、および3で得られたデータに相当する。
【0215】
化学分析は、乳酸が重発酵中に生成されることを示す。乳酸細菌中に存在する代謝経路によると、乳酸は、実施例3について既に考察した通り、還元糖(グルコースおよびフルクトース)、ピルビン酸、リンゴ酸およびクエン酸の異化に由来する。
【0216】
図17Aは、実施例4のたばこ材料中のインドール-3-乳酸の変化を示す(VG-CH)。インドール-3-Lacticの含有量は、マイクログラム/グラムで示されている。グラフは、発酵たばこ材料中のインドール-3-乳酸の含有量の著しい増加を示す。インドール-3-乳酸についての上記に示したデータは、超高速液体クロマトグラフィー極性および脂質陽性ならびにGC-MS、極性負イオン化モードでの測定に供された非発酵たばこ材料(VG-NFHS CH VG-19-20-NF)および発酵たばこ材料(HS CH VG-19-20-F)の試料を使用して得られている。試料を、エレクトロスプレーイオン化源(ESI)およびオービトラップ質量分析器から成るThermo-Fisher Exactive質量分析計に結合されたWaters ACQUITY逆相超高性能液体クロマトグラフィー(RP-UPLC)、ならびに電子衝撃イオン化源(EI)および飛行時間(TOF)質量分析器から成るAgilent Technologies質量分析計で測定した。水相のUPLC-MS測定により、極性および半極性の一次代謝物および二次代謝産物の検出が可能となり、有機相では脂質および親油性含有量の検出が可能となった。GC-MS測定により、一次代謝物の分析が可能になる。
【0217】
試料調製
試料調製は、metaSysX標準手順、Salemらの修正されたプロトコールにより実施された(Salem et al.,Plant.Methods.2016 45(12))。20(±2)ミリグラムの粉砕材料を代謝物抽出に使用した。試料をMTBE:MetOH:H2O二相抽出法で抽出する。総(650μl)有機相を収集し、LC-MS脂質測定のために乾燥させる。450μlの極性相を収集し、LC-MS極性代謝物測定のために乾燥させ、150μlの極性相を乾燥させ、GC-MS測定のために誘導体化する。
【0218】
標準曲線調製液
2ミリグラム/mlのインドール-3-lacticのストックを水中で溶解した。標準混合物を、10、5、2、1、0.5、0.25、0.125、0.062μg/mlの濃度で調製した。さらに、200μlの標準混合物を乾燥させ、試料(「例」)と同じ抽出手順(例)に供するか、またはLC-MS分析に直接供するか、または乾燥させ、誘導体化し、GC-MS(例なし)によって分析した。標準の抽出手順および試料は、すべての同一の体積と同一であった。
【0219】
絶対含有量の計算
化合物濃度は、抽出された標準曲線に基づいて計算され、計算のためにすべての点(技術的反復の平均)が取られ、試料重量のミリグラム当たりのマイクログラムとして表される。
【0220】
これらのデータは、以下の表3に報告される。この表は、実施例4の処理されたたばこ材料の試料(VG_IDC_AF)の、実施例4の非発酵たばこ材料(VG_IDC_BF)の、および発酵プロセスに供されない異なるたばこ材料(K326_75、TN90_110、K326_G、K326_110、TN90_G、K326_乾燥処理済み、TN90_75)からの、希釈試料(標準)のインドール-3-乳酸の含有量を示す。
【表3】
【0221】
C-MS測定(親水性および親油性分析物)
試料を、Thermo-Fisher Exactive質量分析計に結合されたWaters ACQUITY逆相超高性能液体クロマトグラフィー(RP-UPLC)で測定した。C8カラムおよびC18カラムをそれぞれ親油性および親水性測定に使用した。クロマトグラムをフルスキャンMSモード(質量範囲[100~1500])で記録した。すべての質量スペクトルを、正イオン化モードおよび負イオン化モードで取得した。
【0222】
LC-MSデータ処理(親水性および親油性分析物)
LC-MSデータの抽出を、ソフトウェアPeakShaper(metaSysX GmbH)を用いて達成した。LC-MSデータのアライメントおよびフィルタリングは、社内ソフトウェアを使用して完了した。クロマトグラムから抽出した後、データは処理され、整列され、冗長ピークに対してフィルタリングされる。各クロマトグラムから抽出されたデータのアライメントは、群のうちの少なくとも一つのすべての反復において特徴が存在する必要があるという基準に従って実施された。この段階では、平均RT値およびm/z値が特徴に与えられる。アライメントは、各タイプの測定値に対して独立して実施された。
【0223】
LC-MSデータ注釈付け(親水性親水性および分析物)
化学化合物の社内metaSysXデータベースを使用して、LC-MS親油性プラットフォームで検出された特徴を一致させた。対象の化合物の注釈付けは、MSXデータベースと照合することによって実施され、測定された標準によって確認された。
【0224】
metaSysX(MSX)データベース
metaSysX社内データベースは、純粋な化合物として利用可能な7500の参照化合物の質量対電荷比および保持時間情報を含み、測定された試料と同じクロマトグラフィーおよび分光測定条件で測定される。さらに、前駆体 m/z、断片化スペクトル、および溶出パターンに基づいて推定的に注釈付けされた1500の脂質および糖エステル。DGDG注釈付けの合致基準は、それぞれ参照化合物質量対電荷比および保持時間から、5パーツ・パー・ミリオンおよび0.085分の偏差であった。
【0225】
GC-MS測定
試料を、EIイオン化源およびTOF質量分析器から成るLeco Pegasus HT質量分析計に結合されたAgilent Technologies GC上で測定した。
【0226】
カラム:30メートルDB35、開始温度:85°Cで2分間、勾配:1分当たり15℃~最高360℃。
【0227】
GC-MSデータ処理および注釈付け
Leco PegasusソフトウェアからエクスポートされたNetCDFファイルを「R」にインポートした。バイオコンダクタパッケージTargetSearch[3]を使用して、保持時間を保持指標(RI)に変換し、クロマトグラムを整列させ、ピークを抽出し、それらを注釈付けした。
【0228】
試料に対して実施された分析は、発酵たばこ材料(VG_IDC_AF)中のインドール-3-lacticの含有量が0.002520006 マイクログラム/ミリグラムであり、発酵たばこ材料(VG_IDC_BF)中のインドール-3-lacticの含有量が0.000113988 マイクログラム/ミリグラムであることを示す。これらのデータは、
図17Aで報告される。
上述の実験で得られた結果を比較すると、化学分析により、実施されたすべての実験において嫌気性発酵後に乳酸が著しく増加したことが確認されることが明らかである。完全発酵たばこ材料が約50ミリグラム/グラム~約100ミリグラム/グラムの乳酸を含有するが、一方で非発酵たばこにおいて4ミリグラム/グラム未満が見出されうる。異なるタイプのたばこについての乳酸のデータを、表2に報告し、この表では、Rajangan(RAJ)たばこRAJ ID KS-18-19、ハンドストリッピングされた(HS)ダークたばこHS ID KS-18-19、ハンドストリッピングされたバージニアたばこHS ID VG-19-20、およびハンドストリッピングされたバージニアたばこHS CH VG-19-20が報告されている。
【0229】
Rajangan(RAJ)たばこID KS-18-19は、実施例2のたばこ材料を示し、HS ID KS-18-19は、実施例1のたばこ材料を示し、HS ID VG-19-20は、実施例3のたばこ材料を示し、HS CH VG-19-20は、実施例4のたばこ材料を示す。
【表4】
【0230】
表4には、発酵たばこ材料(F)および非発酵たばこ材料(NF)中の乳酸の量が示されている。乳酸の量は、たばこ材料の乾燥重量を参照して、ミリグラム/キログラムで示されている。データは、すべてのたばこ材料が発酵後に乳酸の含有量の増加を有することを示す。すべてのたばこ試料は、類似した量の乳酸を有し、それによって、中肋を有する高速乾燥済みカットフィラーたばこおよび対応する手で剥がされた乾燥処理済み材料の両方が、類似したレベルの乳酸に達することを示す。バージニアたばこは、ダークたばこと比較して類似のレベルの乳酸に達した(HS CH VG-19-20-F[68.7ミリグラム/グラム]をHS ID KS-18-19-F[79.2ミリグラム/グラム]と比較する)。
【0231】
これは、たばこ発酵は、異なるたばこタイプ、すなわち、ダークたばこおよびバージニアたばこで実施することができ、糖およびアミノ酸が乳酸細菌ための炭素および窒素の供給源となりうることを確認する。バーレー種およびオリエント葉たばこで試験が実施されていない場合でも、オリエント葉たばこは、嫌気性発酵プロセスによる影響を受けないにもかかわらず、通常はアルカロイドが少ないダークたばこに近いことが多い組成物を有する。
【0232】
発酵たばこで測定される乳酸の大部分は、嫌気性細菌の生化学的経路と一致するエナンチオマーL-乳酸である。しかしながら、一部のD-乳酸も生成される。L-乳酸と比較して、D-乳酸はヒトに対して有毒であり得、すなわち、経口的に毒されたラット当たりのLD50値レベルは、約4.5g/キログラムである(Pohanka,2020)。しかしながら、D-乳酸およびL-乳酸は不揮発性であり、したがってエアロゾル中に移動しない。
【0233】
さらに、実施例1~2および4~5のたばこ材料の発酵比を測定し、データを以下の表4および5に収集する。
【0234】
たばこ発酵比は、以下の式によって与えられる:Fr=(F
LA/NF
LA):(F
RS/NF
RS)式中、
Fr=発酵定量(Fermentation Ration)、F
LA=発酵たばこ材料中の乳酸の含有量、NF
LA=たばこ材料中の乳酸の初期含有量、F
RS=発酵たばこ材料中の還元糖の含有量、NF
RS=たばこ材料中の還元糖の初期含有量。
【表5】
【表6】
【0235】
たばこ発酵指数は、たばこ材料の発酵についてさらなる表示を与える。たばこ発酵定量(fermentation ration)は、たばこ試料中の発酵のレベルをモニターすることを可能にする。表5に示すように、発酵定量(fermentation ration)は、発酵中に大幅に増加する。したがって、発酵定量(fermentation ration)は、たばこ材料の発酵の非常に効率的な指標である。
【0236】
結論として、メタボロームデータは、たばこ発酵中に生成される化合物、すなわち乳酸、インドール乳酸、カフェイン酸、およびキナ酸は、ダークまたは火力乾燥たばこマトリクスの両方を用いて生成されるため、たばこタイプに直接連結していないことを示唆している。しかしながら、それらは、開始たばこ葉材料中に見られる基質化合物の以前の存在量に関して確かに定量的に変化し得る。したがって、嫌気性発酵は、異なるたばこタイプおよび材料に適用可能なプロセスであり、たばこ材料のタイプとは無関係に、たばこ材料中の一部の物質の含有量の変化を引き起こす。
【0237】
一部の物質は、たばこ材料の発酵の程度の指標として使用されてもよく、これらの物質は、発酵の程度の信頼できる表示として使用されてもよい。
【0238】
多くの指標の使用、ならびに例えば色変化、RS消費、および嫌気性細菌による乳酸生成の間の相関は、たばこ材料の発酵の程度を証明し、発酵の程度の非常に信頼性の高い表示を与える。
【0239】
さらに、嫌気性プロセスは、たばこ材料のアルカロイドの含有量に悪影響を及ぼさない。
【0240】
実施された実験は、以下の条件が発酵にプラスの影響を与え、プロセスの効率を高める可能性があるという定義に導く:
- 相対湿度として示される約40重量パーセント~60重量パーセントから成る最終湿度に達するように、手で剥がされた葉材料を水で前処理する、
- 閉じたバレル、タンク、または容器(バレル)を予め調整された細片で充填して、約100キログラムの容量に到達させる、
- 発酵プロセス中の密封容器において、水で約30重量パーセント~50重量パーセントから成る相対湿度を維持する、
- 約22℃の温度で発酵を実施する、
- 発酵プロセス中に温度をほぼ安定に維持する、
- 容器内の嫌気性発酵プロセスを均質化するために、発酵プロセス中に、少なくとも一回転させ、たばこ材料を取り出し、たばこ材料を混合し、および発酵装置内にたばこ材料の再装填することを実施する、
- 発酵プロセス中に、たばこを回転させるときを除いて、約0.5キログラム/平方センチメートル~1キログラム/平方センチメートルから成る圧力を加える
- 二つの工程の乾燥プロセスで発酵たばこ材料を乾燥する
- たばこ材料を、たばこ材料が約60℃の温度に約8分間供されて約25パーセントOVに達する第一の乾燥工程に供すること
- たばこ材料を、約90℃~100℃から成る温度で、約0.6バールの圧力で、約10分間にわたり、10~15パーセントOVに達するように第二の乾燥工程に供すること。
【0241】
その一方で、
図10に描写の通り、かつ実施例1および実施例2で既に観察された通り、還元糖は発酵細菌によって基質として使用された。したがって、還元糖(RS)の約60パーセントは、8か月の発酵中に酸化され、乾燥重量(DW)で18.3パーセント(VG-BF)から7.4パーセント(VG-AF)に変わった。より長い発酵期間は、より高いRS分解率につながった可能性がある。
【0242】
本発明はまた、以下の実施形態を対象とする。
【0243】
実施形態1.
たばこ材料を処理する方法であって、方法が、
- たばこ材料を提供することと、
- 発酵たばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵させることであって、発酵工程が、
・ 嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすること、
・ 以下の条件:
・ 乳酸の含有量が、たばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、好ましくは80倍を超える、
・ 還元糖の含有量が、たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である、
・ インドール-3乳酸の含有量が、たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える、
・ カフェイン酸の含有量が、たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える、
・ キナ酸の含有量が、たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、
・ アスパラギンの含有量が、たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満である、
・ グルタミンの含有量が、たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満である、
・ L-オルニチンの含有量が、たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超える、
・ L-ロイシンの含有量が、たばこ材料中のL-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える、
・ L-リジンの含有量が、たばこ材料中のL-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超える、
・ 発酵指数が、50を超え、好ましくは100を超え、より好ましくは250を超え、より好ましくは400を超え、ここで発酵指数は、処理されたたばこ材料中の乳酸の含有量と非発酵たばこ材料中の乳酸の含有量との比を、処理されたたばこ材料中の還元糖の含有量と非発酵たばこ材料中の還元糖の含有量との比で割って得られる、のうちの少なくとも一つを満たすとき、発酵を停止すること、を含む、発酵させることと、を含む。
実施形態2.
たばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、または発酵指数のうちの少なくとも一つの初期含有量を測定するための初期測定工程をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3.
発酵工程中のたばこ材料中の、乳酸、または還元糖、またはインドール-3乳酸、またはキナ酸、またはカフェイン酸、またはL-オルニチン、またはアスパラギン、またはグルタミン、またはL-ロイシン、またはL-リジン、または発酵指数のうちの少なくとも一つの含有量を測定するための測定工程をさらに含む、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4.
たばこ材料がダークたばこを含有する場合、2,3ブタンジオールの含有量が、たばこ材料中の2,3ブタンジオールの初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、またはジアセチルの含有量が、たばこ材料中のジアセチルの初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超えるという条件のうちの少なくとも一つが満たされる時に、発酵を停止するために提供される、実施形態1~3のいずれか一つに記載の方法。
実施形態5.
たばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルのそれぞれの初期量を得るように、発酵前にたばこ材料中の2,3ブタンジオールまたはジアセチルの初期含有量を測定するための初期測定工程をさらに含む、実施形態4に記載の方法。
実施形態6.
たばこ材料を処理する方法であって、方法が、
- たばこ材料を提供することと、
- 発酵たばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵させることであって、発酵工程が、
- 嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることであって、ここで発酵工程中、1000キログラム/平方メートル~15000キログラム/平方メートル、好ましくは3000キログラム/平方メートル~12000キログラム/平方メートル、より好ましくは5000キログラム/平方メートル~10000キログラム/平方メートルから成る圧力をたばこ材料に印加するために提供される、インキュベートすること、を含む、発酵させることと、を含む方法。
実施形態7.
たばこ材料を処理する方法であって、方法が、
- たばこ材料を提供することと、
- 発酵たばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵させることであって、発酵工程が、
- 嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることであって、ここで少なくとも1か月、好ましくは少なくとも2か月、より好ましくは少なくとも4か月、より好ましくは少なくとも6か月、さらにより好ましくは少なくとも8か月、好ましくは少なくとも10か月、より好ましくは少なくとも12か月の発酵時間の間発酵工程を継続するために提供される、インキュベートすること、を含む、発酵させることと、を含む方法。
実施形態8.
たばこ材料を処理する方法であって、方法が、
- たばこ材料を提供することと、
- 発酵たばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵させることであって、発酵工程が、
- 嫌気性条件下でたばこ材料をインキュベートすることであって、ここで発酵工程中、たばこ材料の温度を21℃~35℃、好ましくは25℃~31℃から成る温度に保つために提供される、インキュベートすること、を含む発酵させることと、を含む方法。
実施形態9.
実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法に従って得られるたばこ材料。
実施形態10.
以下の化合物のうちの少なくとも一つを含むたばこ材料:
- たばこ材料中の乳酸の初期量の10倍を超える、好ましくは20倍を超える、より好ましくは50倍を超える、より好ましくは70倍を超える、より好ましくは80倍を超える量の乳酸、
- たばこ材料中の還元糖の初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満である量の還元糖、
- たばこ材料中のインドール-3乳酸の初期量の5倍を超える、好ましくは10倍を超える、好ましくは20倍を超える量のインドール-3乳酸、
- たばこ材料中のカフェイン酸の初期量の4倍を超える、好ましくは10倍を超える量のカフェイン酸、
- たばこ材料中のキナ酸の初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超える量のキナ酸、
- たばこ材料中のアスパラギンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満の量のアスパラギン、
- たばこ材料中のグルタミンの初期量の0.5未満、好ましくは0.4未満の量のグルタミン、
- L-オルニチンは、たばこ材料中のL-オルニチンの初期量の10倍を超える、好ましくは50倍を超える、好ましくは100倍を超える、
- L-ロイシンの初期量の2倍を超える、好ましくは4倍を超えるの量のL-ロイシン、
- L-リジンの初期量の2倍を超える、好ましくは6倍を超えるの量のL-リジン、
- 発酵指数は、50を超え、好ましくは100を超え、より好ましくは250を超え、より好ましくは400を超え、ここで発酵指数は、たばこ材料中の乳酸の含有量と非発酵たばこ材料中の乳酸の含有量との比を、たばこ材料中の還元糖の含有量と非発酵たばこ材料中の還元糖の含有量との比で割って得られる。
実施形態11.
前述のたばこ材料が、たばこ材料を嫌気性条件下でインキュベートすることを含む、処理されたたばこ材料を得るためにたばこ材料を発酵することを含むプロセスによって得られる、実施形態1~10に記載のたばこ材料。
実施形態12.
総乾燥重量基準で、少なくとも20ミリグラム/グラム、好ましくは少なくとも50ミリグラム/グラム、より好ましくは少なくとも60ミリグラム/グラムの乳酸を含む、たばこ材料。
実施形態13.
たばこ材料であって、
o 総乾燥重量基準で3パーセント未満の総還元糖、および/または
o 総乾燥重量基準で300ミリグラム/キログラム未満のアスパラギン、を含むたばこ材料。
実施形態14.
総乾燥重量基準で70ミリグラム/キログラム未満のグルタミンを含む、たばこ材料。
実施形態15.
総乾燥重量基準で10000ミリグラム/キログラム超の総遊離アミノ酸を含む、たばこ材料。
実施形態16.
総乾燥重量基準で少なくとも1マイクログラム/グラム、好ましくは少なくとも2マイクログラム/グラム、より好ましくは少なくとも2.5マイクログラム/グラムのインドール-3乳酸を含む、たばこ材料。
実施形態17.
たばこ材料が乾燥されている、実施形態19~27のいずれか一つに記載のたばこ材料。
実施形態18.
たばこ材料が粉砕されている、実施形態19~28のいずれか一つに記載のたばこ材料。
実施形態19.
総乾燥重量基準で約2.5重量パーセント~総乾燥重量基準で100重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約4重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約10重量パーセント、好ましくは総乾燥重量基準で少なくとも約20重量パーセントの実施形態9~18のいずれか一つに記載のたばこ材料を含有する、たばこ材料を含む、エアロゾル発生物品。
実施形態20.
総乾燥重量基準で少なくとも5ミリグラム/グラム、好ましくは10ミリグラム/グラムの乳酸を含有する、たばこ材料を含む、エアロゾル発生物品。
【国際調査報告】