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特表2024-540291リチウムを選択的に抽出するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】リチウムを選択的に抽出するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/46 20060101AFI20241024BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 61/54 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/28 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/30 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/36 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/66 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/82 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/08 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/62 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/60 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20241024BHJP
   C22B 26/12 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
B01D61/46 500
C22B3/22
B01D61/44 500
B01D61/54
B01D71/02
B01D69/12
B01D71/40
B01D71/28
B01D71/48
B01D71/30
B01D71/26
B01D71/52
B01D71/38
B01D71/34
B01D71/36
B01D71/32
B01D71/68
B01D71/66
B01D71/64
B01D71/82 500
B01D71/08
B01D71/62
B01D71/70
B01D71/60
B01D71/42
C22B26/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526575
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 US2022049102
(87)【国際公開番号】W WO2023081448
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,921
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャスビー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】フーク, エリック エム.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】サント, ガウラブ エヌ.
【テーマコード(参考)】
4D006
4K001
【Fターム(参考)】
4D006GA17
4D006HA41
4D006KE17R
4D006KE18R
4D006MA03
4D006MA14
4D006MB07
4D006MC03X
4D006MC10
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC24
4D006MC27
4D006MC28
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC32
4D006MC36
4D006MC38
4D006MC39
4D006MC45
4D006MC48
4D006MC57
4D006MC59
4D006MC60
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC65
4D006MC73
4D006MC74
4D006MC78
4D006MC90
4D006NA50
4D006NA62
4D006NA64
4D006PB02
4D006PB08
4D006PB20
4D006PB27
4K001AA34
4K001DB38
(57)【要約】
ポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス内に分散されている金属化合物とを含むイオン選択分離膜を提供する。金属化合物は、HLiを含み、aは1~1.5、bは0~0.1、cは1~2、dは4~4.5であり、Xはマンガンまたはチタンを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスと、
前記ポリマーマトリックス内に分散されている金属イオン化合物と、
を含むイオン選択分離膜であって、
前記金属イオン化合物は、HLiを含み、式中、aは1~1.5、bは0~0.1、cは1~2、dは4~4.5であり、Xはマンガンまたはチタンを含む、前記イオン選択分離膜。
【請求項2】
Xはマンガンまたはチタンである、請求項1に記載のイオン選択性膜。
【請求項3】
Xはマンガンである、請求項1に記載のイオン選択性膜。
【請求項4】
bは0超~約0.1である、請求項1~3のいずれか1項に記載のイオン選択分離膜。
【請求項5】
前記金属イオン化合物は、実質的に結晶性化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のイオン選択性膜。
【請求項6】
前記ポリマーマトリックスは、アニオン交換ポリマーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のイオン選択分離膜。
【請求項7】
前記アニオン交換ポリマーは、メタクリルアミド、ポリ芳香族、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリスチレン、ポリスチレン-ジビニルベンゼン共重合体、フッ素化相互浸透ポリマーネットワーク、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン(相互浸透ポリマーネットワーク)、ポリスチレン-ブロック-エチレンブチレン-ブロック-ポリスチレン、ポリスチレン/ブタジエン、ポリエチレンオキシド、アルコキシシラン官能化ポリエチレンオキシド、アルコキシシラン官能化ポリビニルアルコール、ポリ(エピクロロヒドリン-co-エチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリ(エピクロロヒドリン)、ポリアクリル酸、キトサン、ポリベンゾイミダゾール、グリシジルメタクリレート、3-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アルコキシシラン/アクリレート、エポキシアルコキシシラン、ポリ(ビニルベンジルクロリド)、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリエチレンイミン、ポリ(1,1-ジメチル-3,5-ジメチレンピペリジニウムクロリド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アクリロニトリル-co-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリクロロメチルスチレン、ポリ(ジビニルベンゼン)、ノルボネン/ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、ポリ(フェニレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチル-アクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート-co-ブチル-アクリレート-co-ビニルベンジル)、ポリビニルブチラール、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリスチレン-エチレン-ブチレンスルホン酸コポリマー、エピクロロヒドリン/1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン、カルドポリエーテルスルホン、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)、ポリスルホンポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリ(エーテルイミド)、及びスルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素化重合体-共重合体からなる群から選択されるポリマー骨格を含む、請求項6に記載のイオン選択分離膜。
【請求項8】
前記アニオン交換ポリマーは、第四級アンモニウム、第三級ジアミン、(ベンゾ)イミダゾリウム、グアニジニウム、及びピリジニウムからなる群から選択される官能基を含む、請求項6または7に記載のイオン選択分離膜。
【請求項9】
前記アニオン交換ポリマーは、窒素を含まない官能基を含む、請求項6または7に記載のイオン選択性膜。
【請求項10】
前記アニオン交換ポリマーは、ホスホニウム、スルホニウム、ルテニウム、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される官能基を含む、請求項6~9のいずれか1項に記載のイオン選択分離膜。
【請求項11】
Xはマンガンであり、aは約1.10であり、bは約0.08であり、cは約1.73であり、dは約4.05である、請求項1~10のいずれか1項に記載のイオン選択分離膜。
【請求項12】
複数の埋め込まれたイオン粒子をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のイオン選択分離膜。
【請求項13】
イオン選択分離膜の作製方法であって、
リチウムマンガン酸化物またはリチウムチタン酸化物を準備することと、
前記リチウムマンガン酸化物または前記リチウムチタン酸化物を脱リチウム化して、リチウム吸着剤を得ることと、
前記リチウム吸着剤をポリマーマトリックス中に分散させて、ポリマー吸着剤混合物を形成することと、
前記ポリマー吸着剤混合物を加熱して、合成された前記イオン選択分離膜を得ることと
を含む、前記方法。
【請求項14】
Li/Hイオン交換によって脱リチウム化を行う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも24時間脱リチウム化を行う、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記脱リチウム化は、Li/Hイオン交換後に前記リチウムマンガン酸化物または前記リチウムチタン酸化物を分散液と混合することを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記分散液は酸を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記酸は塩酸を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脱リチウム化は、前記リチウムマンガン酸化物または前記リチウムチタン酸化物を前記分散液と混合した後、洗浄液で洗浄することを含む、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記洗浄液は脱イオン水を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記リチウム吸着剤のpHが中性になるまで洗浄を行う、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記脱リチウム化は、前記リチウム吸着剤を乾燥させることをさらに含む、請求項13~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記リチウムマンガン酸化物を準備することは、リチウムマンガン二酸化物を加熱することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記加熱は、約350℃~約600℃の温度で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記温度は、約450℃である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記加熱は空気中で行われる、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマー吸着剤混合物を加熱することにより、前記混合物の溶媒を蒸発させる、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
前記合成されたイオン選択分離膜は、リチウム吸着剤対ポリマーマトリックスの比率が約1:99~約2:1である、請求項13に記載の方法。
【請求項29】
前記合成されたイオン選択分離膜は、リチウム吸着剤対ポリマーマトリックスの比率が約1:19~約2:1である、請求項13に記載の方法。
【請求項30】
前記合成されたイオン選択分離膜は、リチウム吸着剤対ポリマーマトリックスの比率が約1:3~約2:1である、請求項13に記載の方法。
【請求項31】
複数のイオンを含む極性溶液中のイオンを選択的に分離する方法であって、
請求項1~12のいずれか1項に記載のイオン選択分離膜を準備することと、
前記極性溶液を前記イオン選択分離膜と接触させることと、
前記イオン選択分離膜全体にわたって電位差を印加して、標的イオンを前記膜に通して選択的に輸送することと
を含む、前記方法。
【請求項32】
前記標的イオンが、Liイオンを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数のイオンが、Na、K、Ca2+、及びMg2+のうちの少なくとも1つを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記電位差は、約1V~約50Vである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記電位差に関連する電流は、約0.01A~約0.5Aである、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記電位差に関連する電流は、約0.1Aである、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記極性溶液は、大陸ブライン、地熱ブライン、油田ブライン、採掘作業から得られる浸出液、電池リサイクル作業から得られる浸出液、または分離対象となる標的イオンを含有する任意の他の浸出液を含む、請求項31~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記方法は連続的である、請求項31~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ポリマー骨格及び1つ以上の官能基を有するポリマーマトリックスと、
前記ポリマーマトリックス内に分散されている金属イオン吸着剤と
を含むイオン選択分離膜であって、
前記金属イオン吸着剤は、前記膜全体にわたって電位差が印加されると、前記膜を通して標的イオンの輸送を可能にし、1つ以上の非標的イオンが通過することをブロックするように構成される、前記イオン選択分離膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月8日に出願された米国仮出願第63/276921号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援に関する記述
本発明は、米国エネルギー省から授与された認可番号DE-EE0008391による政府の援助を受けてなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示の実施形態は、一般に、一価の金属イオンを選択的に抽出するための膜に関する。より具体的には、本開示は、ブライン溶液からリチウムイオンを選択的に抽出するための膜に関する。
【背景技術】
【0004】
リチウム化合物は、電池、ガラス、セラミック、潤滑グリース、ならびにその他の工業製品を含む多くの商業用途において、重要な構成要素である。世界のリチウム消費量はここ数十年で大幅に増加しており、2030年までに20万トンに達すると予測されている。リチウム資源は、主に固体形態(例えば、鉱物、鉱石、及びリサイクルするリチウムイオン電池)と液体形態(例えば、海水及び他のリチウムを豊富に含むブライン)で存在する。現在の商業的なリチウム生産は、主に大陸ブライン源に依存している。蒸発沈殿法及び溶媒抽出法などの主流のリチウム抽出技術は、コストがかかり、時間がかかり、環境に優しくないことが示されている。膜ベースの分離技術における最近の進歩により、有望かつ環境に優しいリチウム回収のための代替手段が提供されてきた。
【0005】
膜分離は、エネルギー効率が高く、拡張性があり、連続プロセスでの操作が容易であるという利点がある。例えば、ナノ濾過(NF)は、ドナン阻止、誘電性の排除、立体障害のメカニズムを用いて、一価イオンを抽出可能にする。NFは、逆浸透(RO)と多くの特徴を共有する膜液分離技術である。しかし、事実上、全ての溶解した溶質を高いレベルで除去するROとは異なり、NFは、硫酸塩などの多価イオンを高いレベルで除去し、塩化物などの一価イオンを低いレベルで除去する。
【0006】
膜蒸留結晶化により、低位熱を使用して高塩ブラインから鉱物を回収することができ、選択的電気透析により、電界下で一価カチオンを効率的に分離することができる。上記の膜プロセスでは、ある程度のバルク塩分離機能は提供されているものの、ブライン中に複数の濃度の競合カチオンが存在するため、特にリチウムと他の一価カチオンとの間で、カチオンに対して特異的な選択性のある膜は提供されていない。
リチウムイオンふるい(LIS)は、リチウム抽出用の吸着媒体として製造されてきたが、吸着・脱着工程はバッチモードでのみ操作可能である。当該技術分野で知られているLISについては、Xu et al.,“Extraction of lithium with functionalized lithium ion-sieves.”Progress in Materials Science.Vol84.December2016,Pages276-313に記載されている。吸着速度が遅いとリチウム抽出の効率も悪くなり、連続モードと比較して、このプロセスの大規模適用が制限される。したがって、リチウムイオンの選択的抽出のための材料及びプロセスの改善が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Xu et al.,“Extraction of lithium with functionalized lithium ion-sieves.”Progress in Materials Science.Vol84.December2016,Pages276-313
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
様々な実施形態において、イオン選択分離膜は、ポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス内に分散されている金属化合物とを含む。金属化合物は、HLiを含み、aは1~1.5、bは0~0.1、cは1~2、dは4~4.5であり、Xはマンガンまたはチタンを含む。
【0009】
様々な実施形態において、リチウムマンガン酸化物またはリチウムチタン酸化物を供する、イオン選択分離膜を作製する方法が開示される。リチウムマンガン酸化物またはリチウムチタン酸化物を脱リチウム化してリチウム吸着剤を得る。リチウム吸着剤は、ポリマーマトリックス中に分散され、ポリマー吸着剤混合物を形成する。ポリマー吸着剤混合物を加熱することにより、合成されたイオン選択分離膜が得られる。
【0010】
様々な実施形態において、複数のイオンを含む極性溶液中のイオンを選択的に分離する方法であって、イオン選択分離膜が提供される、当該方法が開示される。極性溶液をイオン選択分離膜と接触させる。イオン選択分離膜全体にわたって電位差を印加することで、膜を通して標的イオンを選択的に輸送する。
【0011】
様々な実施形態において、ポリマー骨格及び1つ以上の官能基を有するポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックス内に分散されている金属イオン吸着剤とを含むイオン選択分離膜が提供される。金属イオン吸着剤は、膜全体にわたって電位差が印加されると、膜を通して標的イオンの輸送を可能にし、1つ以上の非標的イオンが通過することをブロックするように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係るリチウム吸着粒子を含まない鋳造アニオン交換膜(AEM)を示す。
図2】本開示の一実施形態に係るリチウム吸着粒子を含む鋳造AEMを示す。
図3】本開示の一実施形態に係る供給溶液Aのイオン比流束のグラフを示す。
図4】本開示の一実施形態に係る供給溶液Bのイオン比流束のグラフを示す。
図5】本開示の一実施形態に係るイオン選択分離膜を使用してリチウムを排除する装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、リチウム選択性の高い材料を連続膜システムに有利に統合することにより、地熱ブライン、電池リサイクル操作における酸抽出溶液などの複合体水溶液からリチウムを効果的に抽出する方法を提供する。リチウム選択性の高い材料は、多価カチオン及び特定の一価カチオンを排除しながら、標的一価カチオン(例えば、リチウム)を通過させることが可能である。
【0014】
より具体的には、本明細書では、標的金属イオンを他のカチオンから分離するための、例えば標的一価カチオンを他の多価金属イオンまたは一価金属イオン(例えば、Na)から分離するためのイオン選択分離膜が開示されている。さらに、本明細書では、イオン選択分離膜を合成する方法、及びイオン選択分離膜を使用してイオンを分離する方法が開示されている。様々な実施形態において、イオンふるい材料は、酸化還元反応またはイオン交換反応によって、標的イオン(例えば、リチウム)を無機化合物(例えば、金属酸化物)に導入することで合成される。合成されたイオンふるい材料は、標的イオンが組み込まれている結晶構造を含む。標的イオンは、結晶構造に組み込まれた後、溶出液によって結晶位置から溶出され、イオンふるい材料がこの標的イオンの空の結晶部位を保持し、それによって標的イオン(またはより小さなイオン半径を有するイオン)のみが通過することを可能にする。様々な実施形態において、リチウムが標的イオンであり、リチウムは他のカチオンと比較してイオン半径が最も小さいため、リチウムイオンのみが空の結晶位置を通過することができる。様々な実施形態において、イオンふるい材料は、分散または混合などによってポリマーマトリックスと組み合わされる。
【0015】
様々な実施形態において、イオン交換膜は、固定電荷部位を提供する1つ以上の官能基を有するポリマーマトリックス(例えば、ポリマー骨格)を含む。様々な実施形態において、ポリマーマトリックスは、メタクリルアミド、ポリ芳香族、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリスチレン、ポリスチレン-ジビニルベンゼン共重合体、フッ素化相互浸透ポリマーネットワーク、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン(相互浸透ポリマーネットワーク)、ポリスチレン-ブロック-エチレンブチレン-ブロック-ポリスチレン、ポリスチレン/ブタジエン、ポリエチレンオキシド、アルコキシシラン官能化ポリエチレンオキシド、アルコキシシラン官能化ポリビニルアルコール、ポリ(エピクロロヒドリン-co-エチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリ(エピクロロヒドリン)、ポリアクリル酸、キトサン、ポリベンゾイミダゾール、グリシジルメタクリレート、3-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アルコキシシラン/アクリレート、エポキシアルコキシシラン、ポリ(ビニルベンジルクロリド)、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリエチレンイミン、ポリ(1,1-ジメチル-3,5-ジメチレンピペリジニウムクロリド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アクリロニトリル-co-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリクロロメチルスチレン、ポリ(ジビニルベンゼン)、ノルボネン/ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、ポリ(フェニレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチル-アクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート-co-ブチル-アクリレート-co-ビニルベンジル)、ポリビニルブチラール、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリスチレン-エチレン-ブチレンスルホン酸コポリマー、エピクロロヒドリン/1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン、カルドポリエーテルスルホン、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)、ポリスルホンポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリ(エーテルイミド)、及び/またはスルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素化重合体-共重合体のいずれか1つを含む。
【0016】
様々な実施形態において、官能基は、第四級アンモニウム、第三級ジアミン、(ベンゾ)イミダゾリウム、グアニジニウム、及び/またはピリジニウムなどの窒素含有基を含む。様々な実施形態において、官能基は、ホスホニウム、スルホニウム、ルテニウム、ニッケル、及び/またはコバルトなどの窒素を含まない基を含む。
【0017】
特定のイオン選択性に関しては、「イオンふるい効果」により、LISはイオン吸着材料群として満足のいく性能を示している。前述のように、イオンふるい材料は、酸化還元反応またはイオン交換反応によって標的イオンを無機化合物に導入することで合成される。標的イオンを溶出液によって結晶位置から溶出させ、テンプレートイオンまたはより小さなイオン半径を有するイオンのみを収容可能な空の結晶部位を保持する。LISの場合、リチウムイオンは、Na、K、Rb、Cs、Mg2+、Ca2+などの競合カチオンと比較してイオン半径が小さいため、空孔に選択的にアクセスする。
【0018】
一般に、LIS材料には、リチウムマンガン酸化物(LMO)及びリチウムチタン酸化物(LTO)が含まれる。様々な実施形態において、LMOには、リチウムマンガン酸化物(例えば、LiMn、LiMnO、LiMnO、LiMnO)が含まれる。様々な実施形態において、LTOには、チタン酸リチウム(LiTiO)が含まれる。比較すると、LMOタイプのLISはリチウム選択性及び吸着容量が高く、LTOタイプのLISは溶解損失が少なく、リサイクル性に優れている。
【0019】
様々な実施形態において、リチウム選択性の高い材料を連続膜システムに統合して、ブライン源(例えば、リチウム及び1つ以上の他の金属イオンが溶解されている極性溶媒)から効果的にリチウムを抽出する方案を提供し得る。好ましい実施形態において、溶媒は水である。
【0020】
いくつかの実施形態において、ブライン源は、大陸ブライン、地熱ブライン、または油田ブラインである。大陸ブライン堆積物は、典型的には乾燥した気候の場所にある地下貯留層で発見される。ブラインは、閉鎖流域内に保持されており、周囲の岩石層がブラインに溶解した成分の源となっている。地熱ブライン堆積物は、熱流量の高い岩石の地下層で発見される。地熱ブラインは非常に濃縮されており、溶解された金属を多量含有する場合が多い。油田ブライン堆積物は、地下に石油埋蔵量を持つ土地から生成され得る。油田から石油及びガスを採掘する際には、大量のブラインも地表に引き上げられる。これらのブラインには、溶解した金属が豊富に含まれており、場所によってはリチウムを含むこともある。
【0021】
様々な実施形態において、極性溶液は、Liイオン及び少なくとも1つの追加のカチオンを含む。様々な実施形態において、追加のカチオンは、一価カチオン、二価カチオン、またはそれらの組み合わせである。様々な実施形態において、一価カチオンは、アルカリ金属イオン(例えば、Na、K、Rb、Csのうちの1つ以上)である。いくつかの実施形態において、多価イオンは二価イオンである。特定の実施形態において、二価イオンは、Ca2+またはMg2+などのアルカリ土類金属イオンである。
【0022】
様々な実施形態において、イオン選択分離膜は、標的金属イオン(例えば、一価イオン)との特定の相互作用を促進する任意の好適な埋め込まれた粒子(例えば、イオン)を含む。様々な実施形態において、イオン選択分離膜は、印加された電位差の影響下で標的イオンが膜を通過するようにさせる一方、非標的イオンは膜を通過できない(例えば、大きすぎる)ように構成された任意の好適な吸着剤(例えば、金属イオン吸着剤)で形成される。様々な実施形態において、標的イオンは、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)、遷移金属(スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ローレンシウム、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダルムスタチウム、レントゲン、コペルニシウム)、遷移後金属(アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、ビスマス、ニホニウム、フレロビウム、モスコビウム、リバモリウム、テネシン、オガネソン)、ランタニド(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)、アクチニド(アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインシュタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム)、及び/またはスーパーアクチニドの少なくとも1つを含む。
【0023】
様々な実施形態において、イオン選択分離膜は、標的一価イオンを、標的イオン及び少なくとも1つの競合イオンを含む極性溶液から選択的に分離する。様々な実施形態において、競合イオンは、Na、K、Rb、Csなどの別の一価イオン、Ca2+もしくはMg2+などの二価イオン、または一価イオンと二価イオンの任意の組み合わせであり得る。
【0024】
様々な実施形態において、競合イオンに対する標的一価イオンの選択性は、少なくとも1.1である。様々な実施形態において、競合イオンに対する標的一価イオンの選択性は、少なくとも2である。様々な実施形態において、競合イオンに対する標的一価イオンの選択性は、少なくとも5である。様々な実施形態において、競合イオンに対する一価イオンの選択性は、少なくとも10である。様々な実施形態において、競合イオンに対する一価イオンの選択性は、少なくとも50である。様々な実施形態において、競合イオンに対する一価イオンの選択性は、少なくとも100である。様々な実施形態において、競合イオンに対する一価イオンの選択性は、少なくとも200である。様々な実施形態において、競合イオンに対する一価イオンの選択性は、少なくとも1,000である。様々な実施形態において、競合イオンに対する一価イオンの選択性は、少なくとも2,000である。様々な実施形態において、競合イオンに対する一価イオンの選択性は、少なくとも5,000である。様々な実施形態において、競合イオンに対する一価イオンの選択性は、少なくとも10,000である。様々な実施形態において、競合イオンに対する一価イオンの選択性は、少なくとも100,000である。
【0025】
様々な実施形態において、標的一価イオンは、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca+2、Mg+2、Sr+2、Fe+2、Mn+2、Ni+2、Fe+3、Al+3からなる群から選択される1つ以上の金属カチオンである。様々な実施形態において、標的一価イオンはLiである。様々な実施形態において、標的イオンは、アルカリ金属の一種、またはアルカリ土類金属、遷移金属、遷移後金属、ランタノイド、アクチノイド、もしくはスーパーアクチノイド族の一員である。様々な実施形態において、競合イオンは、Na、K、Rb、Cs、Ca+2、Mg+2、Sr+2、Fe+2、Mn+2、Ni+2、Fe+3、Al+3からなる群から選択される1つ以上の金属カチオンを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、提案されたプロセスには、以下のステップが含まれる。
【0027】
ステップ1.LIS吸着材の作製。様々な実施形態において、第1の材料を所定の温度で熱処理することによって、リチウムマンガン酸化物(LMO)またはリチウムチタン酸化物(LTO)を作製する。
【0028】
LMOを作製する場合、第1の材料はLiMnOであり得る。様々な実施形態において、所定温度は、約350℃~約600℃であり得る。様々な実施形態において、所定温度は、約450℃であり得る。様々な実施形態において、熱処理は、大気中で行われ得る。様々な実施形態において、熱処理は、酸素がない環境(例えば、窒素環境)などの特定の気体環境で行われ得る。
【0029】
様々な実施形態において、LMOまたはLTOは脱リチウム化されることにより、得られた結晶構造から大部分(例えば、実質的に全て)のリチウムイオンが除去される。様々な実施形態において、LMOまたはLTOの脱リチウム化は、Li/H交換によって行われる。様々な実施形態において、LIS吸着材は、1時間~24時間の間に脱リチウム化される。様々な実施形態において、LIS吸着材は、少なくとも24時間の間に脱リチウム化される。様々な実施形態において、LIS吸着材は、強酸(例えば、HCl)水溶液中に分散されている。様々な実施形態において、プロトン(酸によって提供される)と標的金属イオン(例えば、LMO中のリチウム)とのモル比は少なくとも50である。様々な実施形態において、得られた材料は標的イオン(例えば、リチウム)吸着剤である。例えば、得られた吸着剤は、化学式HLi(HMO)を含み得る。様々な実施形態において、得られた粒子は、廃水のpHが中性になるまで脱イオン水で洗浄される。様々な実施形態において、得られた粒子は、オーブン内で30℃~80℃の間で乾燥される。様々な実施形態において、Xはマンガンまたはチタンである。様々な実施形態において、aは0~10、bは0~10、cは0~10、dは0~10である。様々な実施形態において、aは0.5~2、bは0~0.2、cは0.5~5、dは1~6である。様々な実施形態において、aは1~1.5、bは0~0.1、cは1~2、dは4~4.5である。様々な実施形態において、aは1~1.2、bは0.07~0.09、cは1.6~1.8、dは4~4.2である。様々な実施形態において、aは約1.1、bは約0.8、cは約1.73、dは約4.05である。特定の実施形態において、bは0超~約0.1である。
【0030】
ステップ2.LIS粒子のポリマー溶液への分散。様々な実施形態において、得られた粒子は、上記に列挙したポリマー骨格及び官能基の組み合わせのいずれかから構成されるアイオノマー溶液中に分散された。いくつかの実施形態において、氷浴中で混合物を約30秒~約1時間(例えば、30秒、60秒、10分、または1時間)超音波処理、撹拌、またはせん断混合することにより、HMO粒子を、第四級アンモニウム基で官能化されたポリ(p-フェニレンオキシド)骨格のアイオノマー溶液中に特定の質量比で分散させた。様々な実施形態において、約1%~約50%の負荷量範囲で(対応するHMO-ポリマー質量比は0.1:1~0.5:1の範囲)得られた粒子(例えば、HMO粒子)が膜に負荷される。
【0031】
様々な実施形態において、得られたリチウム吸着材は、所定の比率でポリマーマトリックスと混合される。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約0.10~約75重量%(吸着剤対ポリマーの比率が約1:999~約3:1)であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約1~約75重量%(吸着剤対ポリマーの比率が約1:99~約3:1)であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約5~約75重量%(吸着剤対ポリマーの比率が約1:19~約3:1)であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約1~約50重量%(吸着剤対ポリマーの比率が約1:99~約2:1)であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約25~約50重量%(吸着剤対ポリマーの比率が約1:3~約2:1)であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の少なくとも1重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約5重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約10重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約15重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約20重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約25重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約30重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約35重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約40重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約45重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約50重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約55重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約60重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約65重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約70重量%であってもよい。様々な実施形態において、吸着材は、ポリマーと吸着剤とを組み合わせた混合物の約75重量%であってもよい。
【0032】
様々な実施形態において、ポリマー吸着剤混合物は、超音波処理装置などの外部装置を介して混合されてもよい。様々な実施形態において、ポリマー吸着剤混合物は、氷浴中で混合されてもよい。様々な実施形態において、ポリマー吸着剤混合物は、最大1分間(例えば、30秒間)混合されてもよい。
【0033】
ステップ3.LISポリマー溶液から混合マトリックス膜(MMM)の製造。様々な実施形態において、ポリマー吸着剤混合物を加熱することにより、ポリマー吸着剤混合物から溶媒を蒸発させ、合成されたイオン選択分離膜を得てもよい。様々な実施形態において、ポリマー吸着剤混合物は、約50℃~約100℃の温度で加熱される。様々な実施形態において、ポリマー吸着剤混合物は、80℃の温度で加熱される。様々な実施形態において、ポリマー吸着剤混合物は、約1時間~約24時間加熱される。様々な実施形態において、ポリマー吸着剤混合物は約20時間加熱される。様々な実施形態において、合成されたイオン選択分離膜は、使用前に試験溶液(例えば、ブライン溶液)に浸漬されてもよい。様々な実施形態において、合成されたイオン選択分離膜は、使用前に脱イオン(DI)水に浸漬されてもよい。
【0034】
ステップ4.ブラインからリチウムを連続抽出するための、MMMシステムに対する駆動力(例えば、電位、濃度または圧力差)の適用。様々な実施形態において、電位差は、約10mV~約1Vであってもよい。様々な実施形態において、膜を通るイオンの輸送速度は、膜全体にわたって印加される電位差の関数である。様々な実施形態において、電位差を増加させると、イオン選択分離膜を通る選択イオンの輸送速度が増加する。様々な実施形態において、電位差を減少させると、イオン選択分離膜を通る選択イオンの輸送速度が減少する。
【0035】
様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも12mVである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも14mVである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも16mVである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも18mVである。様々な実施形態において、印加される電位差は、最大1.8Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、最大1.6Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、最大1.4Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも1.2Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも1Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも1Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも2Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも5Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも50Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、最大1.5Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、最大2Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、最大5Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも10Vである。様々な実施形態において、印加される電位差は、少なくとも50Vである。
【0036】
様々な実施形態において、印加される電位差に関連する電流密度は、少なくとも0.1A/mであってもよい。様々な実施形態において、印加される電位差に関連する電流密度は、少なくとも1A/mであってもよい。様々な実施形態において、印加される電位差に関連する電流密度は、少なくとも10A/mであってもよい。様々な実施形態において、印加される電位差に関連する電流密度は、少なくとも50A/mであってもよい。様々な実施形態において、印加される電位差に関連する電流密度は、少なくとも100A/mであってもよい。様々な実施形態において、印加される電位差に関連する電流密度は、少なくとも200A/mであってもよい。様々な実施形態において、電流密度は、約0.1A/m~約1A/mであってもよい。様々な実施形態において、電流密度は、約1A/m~約10A/mであってもよい。様々な実施形態において、電流密度は、約10A/m~約50A/mであってもよい。様々な実施形態において、電流密度は、約50A/m~約100A/mであってもよい。様々な実施形態において、電流密度は、約50A/m~約200A/mであってもよい。様々な実施形態において、電流密度は、約100A/m~約200A/mであってもよい。
【0037】
図5は、イオン選択分離膜を使用してリチウムを排除する装置を示す。特に、駆動力(起電力、圧力差、浸透圧差)によりブラインからカチオンが陰極に向かって引き寄せられ、標的以外のイオンは排除しながらLi+に富む溶液が膜を通過する。
【実施例
【0038】
ステップ1:二酸化リチウムマンガン(LiMnO)粉末を空気中、450℃で熱処理することによって、リチウムマンガン酸化物(LMO)を製造した。LMOは、Li+/H+イオン交換により24時間脱リチウム化された。1.5gのLMOを1.5Lの強酸(例えば0.5MのHCl)に分散させて、リチウム吸着剤のH1.10Li0.08Mn1.734.05(HMO)を得た。次に、中性pHになるまでHMO粒子を脱イオン(DI)水で完全に洗浄した後、オーブン内で50℃で乾燥させた。
【0039】
ステップ2:混合物を氷浴中で30秒間超音波処理することにより、HMO粒子を一定の質量比でアニオン交換ポリマー溶液に分散させた。10%、25%、及び50%(対応するHMO-ポリマー比は、0.1:1、0.25:1、0.5:1)のHMO負荷量を有する3種類の膜を製造した。
【0040】
ステップ3:HMOポリマー混合物の溶媒をオーブン内で80℃で20時間蒸発させることによって、HMOを含むアニオン交換膜(HMO-AEM)を合成した。作製したHMO-AEM膜は、性能試験の前に試験溶液に24時間浸漬した後、DI水に2時間浸漬した。図1は、HMO粒子を含まない鋳造AEMを示す。図2は、HMO粒子が分散されている鋳造AEMを示す。
【0041】
ステップ4.HMO-AEM膜を2つのガラス製拡散セルの間に挟んだ。駆動力として電位差を印加した。膜性能は定電流(0.1A)条件下で75分間試験した。膜は、2種類の供給溶液を用いて試験した。供給溶液Aは、NaSO(0.017M)、LiSO(0.017M)、及びMgSO(0.017M)を等モルで含む。供給溶液Bは、Na、K、Ca2+、及びMg2+を含む一般的な競合カチオンを含み、カチオン比は、実際の地熱ブライン(Westmorland)の比率を模倣している。供給溶液Bは、そのイオン強度及び硫酸塩濃度が供給溶液Aと同等になるように作製した。すなわち、0.003MのLiSO、0.217MのNaSO、0.018MのKSO、0.008MのCaSO、及び0.017MのMgSOとなる。
【0042】
結果:
式1から算出したイオン比流束を図3(供給溶液A)と図4(供給溶液B)に示す。イオン選択性は、式2に従って算出し、その結果を表1に示す。
【数1】

【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】