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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】補体阻害剤投与レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/60 20170101AFI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K47/60
A61P43/00 111
A61K9/08
A61P7/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P21/00
A61P25/00
A61P27/02
A61P7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526596
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 US2022048890
(87)【国際公開番号】W WO2023081318
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/275,274
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513283268
【氏名又は名称】アペリス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APELLIS PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221578
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】デシャテレッツ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】グロッシ,フェデリコ
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC17
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF31
(57)【要約】
補体は、感染性病原体から体を守るのに重要な役割を果たす自然免疫系の武器である。補体を阻害する組成物は既知であるが、補体を急性的に阻害することができる組成物に対する必要性が依然として存在する。補体を阻害するための方法及びPEG化コンプスタチン類似体を含む組成物を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において補体を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、約100mg~約2500mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含み、補体が、投与後約2時間~約336時間、阻害または低減される(例えば、対照レベルに対して約100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、またはそれ以下のレベルになる)、前記方法。
【請求項2】
単回用量の前記PEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単回用量が、注入である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
約200mg、約600mg、約1500mg、または約2300mgの前記PEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
約6.5mg/分~約80mg/分の速度で前記注入を投与することを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
約6.5mg/分、約20mg/分、約50mg/分、または約75mg/分の速度で前記注入を投与することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
約15分~約1時間の時間にわたって前記注入を投与することを含む、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
約30分間にわたって、約200mg、約600mg、約1500mg、または約2300mgの前記PEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
2回以上の用量の前記PEG化コンプスタチン類似体を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
補体阻害が、前記対象の血清試料中の補体活性のレベルを測定することによって評価される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
補体活性のレベルが、代替的経路アッセイ、古典的経路アッセイ、またはそれらの両方を使用して測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、補体媒介性障害を有するか、またはそのリスクを有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記補体媒介性障害が、溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血、寒冷凝集素症、C3糸球体症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、重症筋無力症、糸球体腎炎、視神経脊髄炎(NMO)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性神経障害、腎症、または血管炎であり、任意選択で、静脈内投与ステップの後に前記対象に前記PEG化コンプスタチン類似体を皮下投与することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
補体媒介性障害の治療を必要とする対象を治療する方法であって、それを必要とする対象に、約100mg~約2500mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与し、それによって前記補体媒介性障害を治療することを含む、前記方法。
【請求項15】
前記補体媒介性障害が、溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血、寒冷凝集素症、C3糸球体症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、重症筋無力症、糸球体腎炎、視神経脊髄炎(NMO)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性神経障害、腎症、または血管炎である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
投与ステップの後、前記対象における補体が、投与後約2時間~約336時間阻害または低減される(例えば、対照レベルに対して約100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、またはそれ以下のレベルになる)、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
単回用量の前記PEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記単回用量が、注入である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
約200mg、約600mg、約1500mg、または約2300mgの前記PEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含む、請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
約6.5mg/分~約80mg/分の速度で前記注入を投与することを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
約6.5mg/分、約20mg/分、約50mg/分、または約75mg/分の速度で前記注入を投与することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
約15分~約1時間の時間にわたって前記注入を投与することを含む、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
約200mg、約600mg、約1500mg、または約2300mgの前記PEG化コンプスタチン類似体を約30分間にわたって静脈内投与することを含む、請求項14~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
2回以上の用量の前記PEG化コンプスタチン類似体を投与することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
補体阻害が、前記対象の血清試料中の補体活性のレベルを測定することによって評価される、請求項14~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
補体活性のレベルが、代替的経路アッセイ、古典的経路アッセイ、またはそれらの両方を使用して測定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、前記障害の増悪の治療を必要とする、請求項14~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
PNHに罹患している対象において急性溶血を治療する方法であって、前記対象に集中療法を施すことを含み、前記集中療法が、(i)約540mg~約2160mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を、前記対象に静脈内投与すること、または(ii)約540mg~約2160mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を、前記対象に3日間連続して各日に皮下投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
前記集中療法が、約540mg~約2160mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を、前記対象に静脈内投与することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記集中療法が、約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を、前記対象に静脈内投与することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記集中療法が、約540mg~約2160mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を前記対象に3日間連続して各日に皮下投与することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記集中療法が、約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を前記対象に3日間連続して各日に皮下投与することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記急性溶血の前に、前記対象が、週に2回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療されており、前記集中療法の後、前記対象が、3日ごとに皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体での治療を受ける、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記急性溶血の前に、前記対象が、3日ごとに皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療されており、前記集中療法の後、前記対象が、週に3回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体での治療を受ける、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記急性溶血の前に、前記対象が、C5阻害剤で治療されており、前記集中療法の後、前記対象が、週に2回、3日ごとに、または週に3回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体での治療を受ける、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記急性溶血の前に、前記対象が、C5阻害剤で治療されており、前記集中療法の後に、前記対象が、週に2回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体での治療を受ける、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、前記集中療法を受けた後、前記C5阻害剤による治療を4週間継続し、次いで前記C5阻害剤による治療を中止する、請求項35または請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記急性溶血の前に、前記対象が、補体阻害剤で治療されておらず、前記集中療法の後、前記対象が、週に2回、3日ごとに、または週に3回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体での治療を受ける、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記急性溶血の前に、前記対象が、補体阻害剤で治療されておらず、前記集中療法の後、前記対象が、週に2回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体での治療を受ける、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記集中療法の前に、前記対象が、少なくとも2倍のULNのLDHレベルを有していた、請求項28~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記集中療法の投与前に、前記対象から得られた血液試料中の少なくとも2倍のULNのLDHレベルを検出することを含む方法によって、前記対象が急性溶血を経験していると決定することをさらに含む、請求項28~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記集中療法後2週間以内に、前記対象から得られた血液試料中のLDHを測定することをさらに含む、請求項28~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記PEG化コンプスタチン類似体が、それに結合された少なくとも2つのコンプスタチン類似体部分を有するPEGを含む、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記PEG化コンプスタチン類似体が、各末端に結合したコンプスタチン類似体部分を有する直鎖状PEGを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
各コンプスタチン類似体部分が、配列番号3~36、37、69、70、71、及び72のうちの1つのアミノ酸配列を含む環状ペプチドを含む、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記PEG化コンプスタチン類似体が、1つ以上のコンプスタチン類似体部分に結合した1つ以上のPEG部分を含み、各コンプスタチン類似体部分が、N末端、C末端、またはその両方で1つ以上の末端アミノ酸によって伸長された、配列番号3~36のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する環状ペプチドを含み、前記アミノ酸のうちの1つ以上が、一級または二級アミンを含む側鎖を有し、任意選択でオリゴ(エチレングリコール)部分を含む剛性または可撓性スペーサーによって前記環状ペプチドから分離され、各PEGが、結合部分を介して、1つ以上のコンプスタチン類似体部分に共有結合し、前記結合部分が、不飽和アルキル部分、非芳香族環状系を含む部分、芳香族部分、エーテル部分、アミド部分、エステル部分、カルボニル部分、イミン部分、チオエーテル部分、及び/またはアミノ酸残基を含む、請求項43~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
各コンプスタチン類似体部分が、N末端、C末端、またはその両方で1つ以上のアミノ酸によって伸長された環状ペプチドを含み、前記1つ以上のアミノ酸が、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEAc)または11-アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン酸を含む剛性または可撓性スペーサーによって前記ペプチドの前記環状部分から分離されている、請求項43~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記環状ペプチドが、配列番号28のアミノ酸配列を含み、前記スペーサーが、AEEAcを含む、請求項43~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記PEG化コンプスタチン類似体が、図1に示される構造を含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月3日に出願された米国仮特許出願第63/275,274号の優先権を主張し、その全体の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
補体は、感染性病原体から体を守るのに重要な役割を果たす自然免疫系の武器である。補体系は、古典的経路、代替的経路、及びレクチン経路として知られる3つの主要な経路に関与する、30を超える血清及び細胞タンパク質で構成されている。補体を阻害する組成物は既知であるが、補体を急性的に阻害することができる組成物に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、対象において補体を阻害する方法の方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、対象において補体を阻害する方法は、それを必要とする対象に、約100mg~約2500mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、補体は、投与後約2時間~約336時間、阻害または低減される(例えば、対照レベルに対して約100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、またはそれ以下のレベルになる)。
【0004】
別の態様では、本開示は、補体媒介性障害の治療を必要とする対象を治療する方法であって、それを必要とする対象に、約100mg~約2500mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することによって補体媒介性障害を治療することを含む、方法を特徴とする。
【0005】
いくつかの実施形態では、方法は、単回用量のPEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、2回以上の用量のPEG化コンプスタチン類似体を投与することを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、単回用量は、注入である。
【0007】
いくつかの実施形態では、方法は、約200mg、約600mg、約1500mg、または約2300mgのPEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、約200mg、約600mg、約1500mg、または約2300mgのPEG化コンプスタチン類似体を約30分間にわたって静脈内投与することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、方法は、約6.5mg/分~約80mg/分の速度で注入を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、約6.5mg/分、約20mg/分、約50mg/分、または約75mg/分の速度で注入を投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は、約15分~約1時間の時間にわたって注入を投与することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、補体阻害は、対象の血清試料中の補体活性のレベルを測定することによって評価される。
【0011】
いくつかの実施形態では、補体活性のレベルは、代替的経路アッセイ、古典的経路アッセイ、またはその両方を使用して測定される。
【0012】
いくつかの実施形態では、対象は、補体媒介性障害を有するか、またはそのリスクを有する。いくつかの実施形態では、補体媒介性障害は、溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血、寒冷凝集素症、C3糸球体症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、重症筋無力症、糸球体腎炎、視神経脊髄炎(NMO)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性神経障害、腎症、または血管炎である。
【0013】
いくつかの実施形態では、方法は、任意選択で、静脈内投与ステップの後に、対象にPEG化コンプスタチン類似体を皮下投与することをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、投与ステップの後、対象における補体は、投与後約2時間~約336時間、阻害または低減される(例えば、対照レベルに対して約100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、またはそれ以下のレベルになる)。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象は障害の憎悪の治療を必要とする。
【0016】
別の態様では、本開示は、対象、例えば、補体媒介性障害に罹患している対象、例えば、PNHに罹患している対象において急性溶血を治療する方法であって、対象に集中療法を施すことを含む方法を特徴とし、集中療法は、(i)約540~約2160mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を、対象に静脈内投与すること、または(ii)約540~約2160mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を、対象に3日間連続して各日に皮下投与することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、集中療法は、約540mg~約2160mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を対象に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中療法は、約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を対象に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中療法は、約540mg~約2160mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を対象に3日間連続して各日に皮下投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中療法は、約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体を対象に3日間連続して各日に皮下投与することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、急性溶血の前に、対象は、週に2回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療され、集中療法の後に、対象は、3日ごとに皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療される。いくつかの実施形態では、急性溶血の前に、対象は、3日ごとに皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療され、集中療法の後に、対象は、週に3回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療される。いくつかの実施形態では、急性溶血の前に、対象は、C5阻害剤で治療され、集中療法の後に、対象は、週に2回、3日ごとに、または週に3回投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療される。いくつかの実施形態では、急性溶血の前に、対象は、C5阻害剤で治療され、集中療法の後に、対象は、週に2回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療される。いくつかの実施形態では、急性溶血の前に、対象は、補体阻害剤で治療されず、集中療法の後に、対象は、週に2回、3日ごとに、または週に3回投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療される。いくつかの実施形態では、急性溶血の前に、対象は、補体阻害剤で治療されず、集中療法の後に、対象は、週に2回皮下投与される約1080mgの、約40kDのPEGを含むPEG化コンプスタチン類似体で治療される。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象は、集中療法を受けた後4週間、C5阻害剤による治療を継続し、次いで、C5阻害剤による治療を中止する。
【0020】
いくつかの実施形態では、集中療法の前に、対象は、少なくとも2倍のULNのLDHレベルを有していた。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は、任意選択で、集中療法の投与前に対象から得られた血液試料中の少なくとも2倍のULNのLDHレベルを検出することを含む方法によって、対象が急性溶血を経験していると決定することをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、任意選択で、集中療法後2週間以内に、対象から得られた血液試料中のLDHを測定することをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体は、それに結合した少なくとも2つのコンプスタチン類似体部分を有するPEGを含む。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体は、各末端に結合したコンプスタチン類似体部分を有する直鎖状PEGを含む。いくつかの実施形態では、各コンプスタチン類似体部分は、配列番号3~36、37、69、70、71、及び72のうちの1つのアミノ酸配列を含む環状ペプチドを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体は、1つ以上のコンプスタチン類似体部分に結合される1つ以上のPEG部分を含み、各コンプスタチン類似体部分は、N末端、C末端、またはその両方で1つ以上の末端アミノ酸によって伸長された、配列番号3~36のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する環状ペプチドを含み、1つ以上のアミノ酸は、一級または二級アミンを含む側鎖を有し、任意選択でオリゴ(エチレングリコール)部分を含む剛性または可撓性スペーサーによって環状ペプチドから分離され、各PEGは、結合部分を介して1つ以上のコンプスタチン類似体部分に共有結合され、結合部分は、不飽和アルキル部分、非芳香族環状系を含む部分、芳香族部分、エーテル部分、アミド部分、エステル部分、カルボニル部分、イミン部分、チオエーテル部分、及び/またはアミノ酸残基を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、各コンプスタチン類似体部分は、N末端、C末端、またはその両方において1つ以上のアミノ酸によって伸長された環状ペプチドを含み、1つ以上のアミノ酸は、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEAc)または11-アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン酸を含む剛性または可撓性スペーサーによってペプチドの環状部分から分離されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、環状ペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列を含み、スペーサーは、AEEAcを含む。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体は、図1に示される構造を含む。
【0027】
本明細書に記載の本教示は、添付の図面とともに読んだ場合、以下の様々な例示的な実施形態の記載からより十分に理解される。なお、以下で説明する図面は単に説明を目的とするものであり、いかなる意味においても本教示の範囲を限定するように意図されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】例示的なPEG化コンプスタチン類似体の構造を示す。
図2】コホートについて約40キロダルトン(kD)のPEGを有する、図1のPEG化コンプスタチン類似体の平均血清レベルを示す。PEG化コンプスタチン類似体は、図面においてPEGと称される。
図3】PEG化コンプスタチン類似体コホートの平均AH50(U/mL)レベルを示す。PEG化コンプスタチン類似体は、図面においてPEGと称される。
図4】約40キロダルトン(kD)のPEGを有する、図1のPEG化コンプスタチン類似体(ペグセタコプラン)を使用した急性溶血(AH)患者の集中療法のための例示的な治療レジメンの図を示す。患者は、ペグセタコプランの静脈内(IV)(上部経路)または集中的な皮下(SC)(下部経路)投与を受けた。LDH=乳酸デヒドロゲナーゼ、Q3D=3日ごと、TIW=1週間に3回、ULN=正常値の上限。
図5】急性溶血を有する患者における集中療法の1日目からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の変化のパーセントを示す。患者は、約40キロダルトン(kD)のPEGを有する図1のPEG化コンプスタチン類似体の集中的な皮下(SC)(破線)または静脈内(IV)(実線)投与を受けた。PEG化コンプスタチン類似体は、図面においてPEGと称される。
図6】急性溶血を有する患者における集中療法の1日目からの平均ヘモグロビン(Hb(g/L))レベルを示す。患者は、約40キロダルトン(kD)のPEGを有する、図1のPEG化コンプスタチン類似体の集中投与を受けた。上のデータライン(正方形)は、赤血球(RBC)輸血を受けなかった患者(N=9)を表し、下のデータライン(円)は、少なくとも1回のRBC輸血を受けた患者(N=4)を表す。各時点についてHbレベルの測定値が収集された患者の数は、X軸のすぐ上の下部の数字によって示される(上の行=輸血なし(Tx)、下の行=輸血(Tx))。破線の水平線は、男性(上部)及び女性(下部)の正常下限(LLN)を表す。W1=1週目、W2=2週目、W3=3週目、W4=4週目。
【0029】
定義
抗体:本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、抗原に結合することができる免疫グロブリンドメインを含有する免疫グロブリンまたはその誘導体を指す。抗体は、任意の種、例えば、ヒト、げっ歯類、ウサギ、ヤギ、鶏などであり得る。該抗体は、以下のようなヒトクラスのうちのいずれをも含む、あらゆる免疫グロブリンクラスのメンバーであってもよい:IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE、またはIgG1、IgG2等のそれらのサブクラス。本発明の様々な実施形態では、抗体は、抗原結合部位を保持するFab’、F(ab’)、scFv(一本鎖可変)または他の断片等の断片、または組換え産生断片を含む組換え産生scFv断片である。例えば、Allen,T.,Nature Reviews Cancer,Vol.2,750-765,2002、及びその中の参考文献を参照されたい。抗体は、一価、二価、または多価であり得る。抗体は、例えば、げっ歯動物起源の可変ドメインがヒト起源の定常ドメインに融合され、したがってげっ歯動物抗体の特異性を保持するキメラまたは「ヒト化」抗体であり得る。ヒト起源のドメインは、それがヒトで最初に合成されるという意味で、ヒトに直接由来する必要はない。代わりに、「ヒト」ドメインは、ゲノムにヒト免疫グロブリン遺伝子が組み込まれているげっ歯類で生成されてもよい。例えば、Vaughan,et al.,(1998),Nature Biotechnology,16:535-539を参照されたい。抗体は、部分的または完全にヒト化され得る。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得るが、本発明の目的のためには、モノクローナル抗体が一般に好ましい。実質的に任意の目的の分子に特異的に結合する抗体を産生するための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、(例えば、分子またはその抗原性断片への自然曝露またはそれによる免疫化に続いて)抗体を産生する動物の血液または腹水から精製することができ、細胞培養またはトランスジェニック生物において組換え技術を使用して産生することができ、または少なくとも部分的に化学合成によって作製することができる。
【0030】
およそ:本明細書で使用されるとき、数に関して「およそ(approximately)」または「約(about)」という用語は、一般に、特段他に明記されていない限り、または文脈から他が明らかな場合を除いて、数のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)で5%、10%、15%、または20%の範囲内にある数を含むと解釈される(ただし、かかる数が0%未満または可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0031】
併用療法:本明細書で使用されるとき、「併用療法」という用語は、2つ以上の異なる医薬品が重複したレジメンにおいて投与されて、対象が同時に両方の薬剤に曝露される状況のことを指す。併用療法において使用されるとき、2つ以上の異なる薬剤は、同時にまたは別個に投与され得る。この併用における投与は、同じ剤形における2つ以上の薬剤の同時投与、別個の剤形における同時投与、及び別個の投与を含むことができる。すなわち、2つ以上の薬剤は、同じ剤形において一緒に製剤化され、同時に投与されることができる。代替的に、2つ以上の薬剤は、同時に投与されることができ、その際、薬剤は、個の製剤中に存在する。別の代替では、第1の薬剤に続いて、1つ以上の追加の薬剤を投与することができる。別個の投与プロトコールでは、2つ以上の薬剤を、数分間隔、または数時間間隔、数日間隔、または数週間間隔で投与し得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤を1~2週間間隔で投与し得る。
【0032】
補体成分:本明細書で使用されるとき、「補体成分」または「補体タンパク質」という用語は、補体系の活性化に関与するか、または1つ以上補体媒介活性に関与する分子である。古典的補体経路の成分としては、例えば、C1q、C1r、C1s、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、及び膜侵襲複合体(MAC)とも称されるC5b-9複合体、ならびに前述のいずれかの活性断片または酵素的切断産物(例えば、C3a、C3b、C4a、C4b、C5aなど)が挙げられる。代替的経路の構成要素としては、例えば、因子B、D、H、及びI、及びプロペルジンが挙げられ、因子Hは経路の負の調節因子である。レクチン経路の構成要素としては、例えば、MBL2、MASP-1、及びMASP-2が挙げられる。補体成分としては、可溶性補体成分の細胞結合受容体も挙げられる。かかる受容体としては、例えば、C5a受容体(C5aR)、C3a受容体(C3aR)、補体受容体1(CR1)、補体受容体2(CR2)、補体受容体3(CR3)などが挙げられる。「補体成分」という用語は、補体活性化の「トリガー」として機能する分子及び分子構造、例えば、抗原-抗体複合体、微生物または人工表面に見られる外来構造などを含むことを意図していない。
【0033】
同時投与:本明細書で使用されるとき、2つ以上の薬剤、例えば、治療薬剤に関する「同時投与」という用語は、投与された薬剤が体内、例えば、体内の1つ以上の作用部位で、無視できない量で一定の時間間隔にわたって一緒に存在するように、用量及び時間間隔を使用して行われる投与である。時間間隔は、分(例えば、少なくとも1分、1~30分、30~60分)、時間(例えば、少なくとも1時間、1~2時間、2~6時間、6~12時間、12~24時間)、日(例えば、少なくとも1日、1~2日、2~4日、4~7日等)、週(例えば、少なくとも1週間、2週間、または3週間等)であり得る。したがって、薬剤は、単一の組成物の一部として一緒に投与され得るが、必ずしもそうではない。加えて、薬剤は、本質的に同時に(例えば、5分未満、または1分未満の間隔で)、または互いの短い時間内(例えば、1時間未満、30分未満、10分未満、約5分間隔で)投与されてもよいが、必ずしもそうではない。本開示の様々な実施形態によれば、かかる時間間隔内に投与される薬剤は、実質的に同じ時間に投与されるとみなされ得る。本開示のある特定の実施形態では、同時投与される薬剤は、時間間隔にわたって体内(例えば、血液中及び/または局所補体活性化部位)に有効濃度で存在する。同時に投与される場合、特定の生物学的応答を誘発するために必要な薬剤の各々の有効濃度は、単独で投与される場合の各薬剤の有効濃度よりも低くなり得、それによって、薬剤が単一の薬剤として投与される場合に必要とされる用量と比較して、1つ以上の薬剤の用量の減少が可能になる。複数の薬剤の効果は、相加的または相乗的であり得るが、必ずしもそうではない。薬剤は、複数回投与し得る。無視できない薬剤の濃度は、例えば、特定の生物学的応答、例えば、所望の生物学的応答を誘発するために必要となる濃度の約5%未満であり得る。
【0034】
連結される:本明細書で使用されるとき、「連結される」という用語は、2つ以上の部分に関して使用される場合、部分が物理的に結合または互いに接続されて、部分が、結合が形成される条件、好ましくは、新しい分子構造が使用される条件下、例えば、生理学的条件下で結合されたままであるように十分に安定な分子構造を形成することを意味する。本発明の特定の好ましい実施形態では、連結は、共有結合的な連結である。他の実施形態では、連結は、非共有結合的である。部分は、直接的または間接的に連結され得る。2つの部分が直接連結している場合、それらは、互いに共有結合しているか、または2つの部分間の分子間力がそれらの結合を維持するように十分に近接している。2つの部分が間接的に連結されている場合、それらは各々、第3の部分に共有結合または非共有結合のいずれかで連結されており、これにより、2つの部分間の結合が維持される。一般に、2つの部分が「リンカー」または「連結部分」または「連結部」によって連結されていると称される場合、2つの連結部分間の連結は間接的であり、典型的には、連結部分の各々は、リンカーに共有結合している。リンカーは、部分の安定性と一致する条件下で(条件に応じて適切に保護され得る)、十分な量で、合理的な期間内に連結される2つの部分と反応して合理的な収量を生じる、任意の好適な部分であり得る。
【0035】
逐次投与:本明細書で使用されるとき、2つ以上の薬剤の「逐次投与」という用語は、薬剤が対象の体内、または体内の関連する活性部位に、無視できない濃度を超えて一緒に存在しないように、対象に2つ以上の薬剤を投与することを指す。薬剤の投与は、代替することができるが、必ずしもそうではない。各薬剤は、複数回投与され得る。
【0036】
対象:本明細書で使用されるとき、「対象」または「被験者」という用語は、提供される化合物または組成物が、例えば、実験、診断、予防、及び/または治療の目的で、本発明に従って投与される任意の生物を指す。典型的な対象としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒト、昆虫、蠕虫など)が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、及び/または状態に罹患している、及び/または罹患しやすい場合がある。
【0037】
実質的に:本明細書で使用されるとき、「実質的に」という用語は、目的の特徴または特性の全体またはほぼ全体の範囲または度合を示す、定性的な状態を指す。生物学分野の当業者は、生物学的及び化学的現象が、もし存在する場合、めったに完了しないこと、及び/またはめったに完全に進まないこと、または絶対的な結果を達成または回避することはめったにないことを理解するであろう。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的現象及び/または化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捕捉するために本明細書で使用される。
【0038】
罹患している:疾患、障害、及び/または状態に「罹患している」個人は、疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状があると診断されているか、及び/または疾患、障害、または状態の1つ以上の症状を示している。
【0039】
全身性:本明細書で使用されるとき、補体成分に関して「全身性」という用語は、補体タンパク質が、肝臓肝細胞によって合成されて血流に入るか、または循環マクロファージまたは単球または他の細胞によって合成されて血流に分泌されることを指す。
【0040】
治療薬剤:本明細書で使用されるとき、「治療薬剤」という語句は、対象に投与された際に、治療効果を有し、及び/または所望の生物学的及び/または薬理学的効果を誘発する、任意の薬剤を指す。いくつかの実施形態では、治療薬剤は、対象に投与されたときに、本明細書に記載のウイルスベクターに対する免疫応答等の望ましくない副作用を防止することができる薬剤であり得る。いくつかの実施形態では、治療薬剤は、疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状または特徴を緩和する、改善する、軽減する、阻害する、予防する、発生を遅延させる、重症度を低減させる、及び/または発生率を低減させるために使用され得る、任意の物質である。
【0041】
治療有効量:本明細書で使用されるとき、「治療有効量」という用語は、治療レジメンの一部として投与されたときに所望の生物学的応答を誘発する物質(例えば、治療薬剤、組成物、及び/または製剤)の量を意味する。いくつかの実施形態では、物質の治療有効量は、疾患、障害、及び/または病態に罹患しているまたは罹患しやすい対象に投与された場合に、疾患、障害、及び/または病態を治療する、診断する、予防する、及び/またはその発症を遅延するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、物質の治療有効量は、疾患、障害、及び/または病態に罹患しているまたは罹患しやすい対象に投与された場合に、本明細書に記載のウイルスベクターに対する免疫応答などの望ましくない副作用を、治療する、予防する、及び/またはその発症を遅延するのに十分な量である。当業者に理解されるであろうが、物質の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される物質、標的細胞または組織などの因子に応じて変化し得る。例えば、疾患、障害、及び/または病態を治療するための製剤中の化合物の有効量は、疾患、障害、及び/または病態の1つ以上の症状または徴候の発生を緩和、改善、緩和、阻害、予防、発症の遅延、重症度の低減、及び/または低減する量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、単回用量で投与され、いくつかの実施形態では、治療有効量を送達するために複数の単位用量が必要である。
【0042】
治療すること:本明細書で使用されるとき、「治療すること」という用語は、治療を提供すること、すなわち、対象の任意のタイプの医学的または外科的管理を提供することを指す。治療は、疾患、障害、もしくは状態の進行を逆転、緩和、阻害、予防もしくは低減するために、または疾患、障害、もしくは状態の1つ以上の症状もしくは徴候を逆転、緩和、その進行を予防、その可能性を低減するために、提供され得る。「予防する」とは、少なくとも一部の個人において、少なくとも一定期間、かかる疾患、障害、状態、または症状もしくは徴候が起こらないようにすることを指す。治療することは、補体媒介性状態を示す1つ以上の症状または徴候の発症後に、例えば、状態を逆転、緩和、重症度を軽減、及び/またはその進行を阻害もしくは予防するために、及び/または、状態の1つ以上の症状もしくは徴候を逆転、緩和、重症度を軽減、及び/または阻害するために、対象に薬剤を投与することを含むことができる。本開示の組成物は、補体媒介性障害を発症している、または一般集団のメンバーと比較してそのような障害を発症するリスクが高い対象に投与することができる。本開示の組成物は、予防的に、すなわち、症状の発症または状態の徴候の前に投与することができる。この場合、典型的には、対象は症状を発症するリスクを有するであろう。
【0043】
核酸:「核酸」という用語には、任意のヌクレオチド、その類似体、及びそれらのポリマーが含まれる。本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語は分子の一次構造を指すため、二本鎖及び一本鎖DNA、二本鎖及び一本鎖RNAが含まれる。これらの用語には、同等物として、ヌクレオチド類似体及び、例えばメチル化、保護及び/またはキャップされたヌクレオチドまたはポリヌクレオチド(ただし、これらに限定されない)などの修飾ポリヌクレオチドから作られたRNAまたはDNAの類似体が含まれる。この用語には、ポリまたはオリゴリボヌクレオチド(RNA)及びポリまたはオリゴデオキシリボヌクレオチド(DNA)、核酸塩基及び/または修飾核酸塩基のN-グリコシドまたはC-グリコシドから誘導されるRNAまたはDNA、糖及び/または修飾糖から誘導される核酸、ならびにリン酸架橋及び/または修飾リン原子架橋(本明細書では「ヌクレオチド間結合」とも称される)から誘導される核酸が含まれる。この用語には、核酸塩基、修飾核酸塩基、糖、修飾糖、リン酸架橋または修飾リン原子架橋の任意の組み合わせを含む核酸が含まれる。例としては、リボース部分を含有する核酸、デオキシリボース部分を含有する核酸、リボース部分及びデオキシリボース部分の両方を含有する核酸、リボース部分を含有する核酸、ならびに修飾リボース部分が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、接頭辞「ポリ」は、2~約10,000個、2~約50,000個、または2~約100,000個のヌクレオチドモノマー単位を含む核酸を指す。いくつかの実施形態では、接頭辞「オリゴ」は、2~約200個のヌクレオチドモノマー単位を含む核酸を指す。
【0044】
ベクター:本明細書で使用されるとき、「ベクター」という用語は、それが連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つの種類のベクターとして、さらなるDNAセグメントをライゲートすることができる環状二本鎖DNAループのことを指す「プラスミド」がある。別の種類のベクターとして、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲートすることができるウイルスベクターがある。特定のベクターは、ベクターが導入された宿主細胞内で自律的に複製することが可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性の哺乳動物ベクターなど)。他のベクター(例えば非エピソーム性の哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれることができ、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定のベクターはベクターが機能的に連結された遺伝子の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。当業者は、本明細書に記載の「ウイルスベクター」が、本明細書に記載の導入遺伝子、例えば、カプシドタンパク質に加えてウイルス成分を含むことを理解する。
【0045】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換の標準的な技術が使用される(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当該技術分野において一般的に行われるようにして、または本明細書に記載されるようにして行うことができる。上記の技術及び手順は一般に、当該技術分野では周知の従来の方法に従って、かつ本明細書全体を通して引用され、考察される、一般的かつより具体的な様々な参考文献に記載されるようにして行うことができる。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたく、これは、任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示は、本明細書に記載されるPEG化コンプスタチン類似体の投与開始後、補体阻害レベルが比較的速やかに低下する、所定の期間にわたって補体を阻害する方法及び組成物を提供する。
【0047】
I.補体系
補体は、自然免疫と獲得免疫の両方で重要な役割を果たす、数多くの血漿タンパク質及び細胞結合タンパク質からなるシステムである。補体系のタンパク質は、様々なタンパク質相互作用及び切断事象によって一連の酵素カスケードで作用する。本開示の理解を容易にするために、本発明をいかなる意味でも限定しようとするものではないが、このセクションでは補体及びその活性化経路の概要を与える。さらなる詳細は、例えば、Kuby Immunology,6th ed.,2006、Paul,W.E.,Fundamental Immunology,Lippincott Williams & Wilkins;6th ed.,2008、及びWalport MJ.,Complement.First of two parts.N Engl J Med.,344(14):1058-66,2001に記載されている。
【0048】
補体は、感染性病原体から体を守るのに重要な役割を果たす自然免疫系の武器である。補体系は、古典的経路、代替的経路、及びレクチン経路として知られる3つの主要な経路に関与する、30を超える血清及び細胞タンパク質で構成されている。古典的経路は通常、抗原とIgMまたはIgG抗体の複合体がC1に結合することによって引き起こされる(ただし、特定の他の活性化因子も経路を開始することができる)。活性化されたC1は、C4とC2を切断して、C2aとC2bに加えて、C4aとC4bを生成する。C4bとC2aは、結合してC3コンバターゼを形成し、それはC3を切断してC3aとC3bを形成する。C3bがC3コンバターゼに結合すると、C5コンバターゼが生成され、C5がC5aとC5bに切断される。C3a、C4a、及びC5aは、アナフィラトキシンであり、急性炎症反応における複数の反応を媒介する。C3aとC5aは、好中球などの免疫系細胞を誘引する走化性因子でもある。初期に用いられていた「C2a」及び「C2b」の名称は、科学文献では後に逆になっている点が理解されよう。
【0049】
代替的経路は、例えば微生物表面及び様々な複合多糖類によって開始され、増幅される。この経路では、低レベルで自発的に発生する、C3からC3(HO)への加水分解により、B因子の結合がもたらされ、それがD因子によって切断され、C3をC3aとC3bに切断されることによって、補体を活性化する液相C3コンバターゼが生成される。C3bは細胞表面などの標的に結合し、因子Bと複合体を形成する。これは、後に因子Dによって切断され、C3コンバターゼになる。表面に結合したC3コンバターゼは、さらなるC3分子を切断して活性化し、活性化部位にごく近接した急速なC3b沈着をもたらし、さらなるC3コンバターゼを形成し、これにより、さらなるC3bが生成される。このプロセスにより、C3切断とC3コンバターゼ形成のサイクルが生じ、応答が大幅に増幅される。C3の切断及びC3bの別の分子のC3コンバターゼへの結合は、C5コンバターゼを生じさせる。この経路のC3及びC5コンバターゼは、細胞分子CR1、DAF、MCP、CD59、及びfHによって調節される。これらのタンパク質の作用様式は、崩壊加速活性(すなわち、コンバターゼを解離させる能力)、因子IによるC3bまたはC4bの分解における補因子として機能する能力、またはその両方のいずれかを伴う。通常、細胞表面に補体調節タンパク質が存在すると、その上で有意な補体活性化が起こるのを防ぐ。
【0050】
両方の経路で生成されたC5コンバターゼは、C5を切断してC5aとC5bを生成する。次に、C5bは、C6、C7、及びC8に結合してC5b-8を形成し、C9の重合を触媒してC5b-9膜侵襲複合体(MAC)を形成する。MACは、それ自体を標的細胞膜に挿入し、細胞溶解を引き起こす。細胞膜上の少量のMACは、細胞死以外の様々な結果をもたらし得る。TCCが膜に挿入されない場合、可溶性sC5b-9(sC5b-9)として血液中を循環することができる。血中のsC5b-9のレベルは、補体活性化の指標として機能し得る。
【0051】
レクチン補体経路は、マンノース結合レクチン(MBL)及びMBL関連セリンプロテアーゼ(MASP)の炭水化物への結合によって開始される。MB1-1遺伝子(ヒトではLMAN-1として知られる)は、小胞体とゴルジ体の間の中間領域に局在するI型膜内在性タンパク質をコードしている。MBL-2遺伝子は、血清中に見られる可溶性マンノース結合タンパク質をコードしている。ヒトのレクチン経路では、MASP-1とMASP-2は、C4とC2のタンパク質分解に関与し、上記のC3コンバターゼをもたらす。
【0052】
補体活性は、補体制御タンパク質(CCP)または補体活性化(RCA)タンパク質の調節因子と称される様々な哺乳動物タンパク質によって調節される(米国特許第6,897,290号)。これらのタンパク質は、リガンドの特異性と補体阻害のメカニズム(複数可)に関して異なる。それらは、コンバターゼの通常の崩壊を加速し、及び/または第I因子の補因子として機能し、C3b及び/またはC4bをより小さな断片に酵素的に切断し得る。CCPは、ショートコンセンサスリピート(SCR)、補体制御タンパク質(CCP)モジュール、またはSUSHIドメインとして知られる、4つのジスルフィド結合システイン(2つのジスルフィド結合)、プロリン、トリプトファン、及び多くの疎水性残基を含む保存されたモチーフを含む長さ約50~70アミノ酸の複数の(通常4~56)相同モチーフの存在を特徴としている。CCPファミリーには、補体受容体1型(CR1、C3b:C4b受容体)、補体受容体2型(CR2)、膜補体タンパク質(MCP、CD46)、崩壊促進因子(DAF)、補体因子H(fH)、及びC4b結合タンパク質(C4bp)が含まれる。CD59は、CCPとは構造的に無関係な膜結合型補体調節タンパク質である。補体調節タンパク質は通常、哺乳動物の細胞または組織、例えばヒト宿主で発生する可能性のある補体活性化を制限する働きをする。したがって、「自己」細胞は通常、補体の活性化がこれらの細胞で進行することで生じる有害な影響から保護される。補体調節タンパク質(複数可)の欠損または欠陥は、様々な補体媒介性障害の病因に関与している。
【0053】
II.コンプスタチン類似体
本開示の方法は、コンプスタチン類似体の投与を含む。コンプスタチンは、C3に結合し、補体の活性化を阻害する環状ペプチドである。米国特許第6,319,897号は、Ile-[Cys-Val-Val-Gln-Asp-Trp-Gly-His-His-Arg-Cys]-Thr(配列番号1)の配列を有し、括弧で示された2つのシステイン間のジスルフィド結合を有するペプチドを記載している。「コンプスタチン」という名称は、米国特許第6,319,897号では使用されていないが、それはその後、科学文献及び特許文献(例えば、Morikis,et al.,Protein Sci.,7(3):619-27,1998を参照されたい)で採用され、米国特許第6,319,897号で開示される配列番号2と同じ配列を有するが、表1に示されるようにC末端でアミド化されている(配列番号8)ペプチドを指すのに適用さられたことは理解されよう。「コンプスタチン」という用語は、本明細書ではかかる使用法と調和して使用される(すなわち、配列番号8を指す)。コンプスタチンよりも高い補体阻害活性を有するコンプスタチン類似体が開発された。例えば、WO2004/026328(PCT/US2003/029653)、Morikis,D.,et al.,Biochem Soc Trans.32(Pt 1):28-32,2004、Mallik,B.,et al.,J.Med.Chem.,274-286,2005、Katragadda,M.,et al.J.Med.Chem.,49:4616-4622,2006、WO2007062249(PCT/US2006/045539)、WO2007044668(PCT/US2006/039397)、WO/2009/046198(PCT/US2008/078593)、WO/2010/127336(PCT/US2010/033345)及び以下の考察を参照されたい。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「コンプスタチン類似体」という用語は、コンプスタチン及びその任意の補体阻害類似体を含む。「コンプスタチン類似体」という用語には、コンプスタチン、ならびに、コンプスタチンに基づいて設計または同定され、その補体阻害活性が、例えば、当該技術分野で認められている任意の補体活性化アッセイまたは実質的に類似もしくは同等のアッセイを使用して測定したときに、コンプスタチンの補体阻害活性の少なくとも50%の大きさである他の化合物、が包含される。特定の好適なアッセイは、米国特許第6,319,897号、WO2004/026328、Morikis,前出、Mallik,前出、Katragadda2006,前出、WO2007062249(PCT/US2006/045539)、WO2007044668(PCT/US2006/039397)、WO/2009/046198(PCT/US2008/078593)、及び/またはWO/2010/127336(PCT/US2010/033345)に記載されている。アッセイは、例えば、代替的経路または古典的経路により媒介される赤血球溶解を測定し得るか、またはELISAアッセイであり得る。いくつかの実施形態では、WO/2010/135717(PCT/US2010/035871)に記載されているアッセイが使用される。
【0055】
表1は、本開示において有用なコンプスタチン類似体の非限定的なリストを提供する。類似体は、親ペプチドであるコンプスタチンと比較して、指定された位置(1~13)での特定の改変を示すことにより、左の列の省略形で参照される。当該技術分野での使用と調和して、本明細書で使用される「コンプスタチン」、及びコンプスタチンの活性と比較した本明細書に記載のコンプスタチン類似体の活性は、C末端でアミド化されたコンプスタチンペプチドのものを指す。別途示されない限り、表1のペプチドはC末端でアミド化されている。太字のテキストは、特定の改変を示すために使用される。コンプスタチンと比較した活性は、そこに記載されている公開されたデータ及びアッセイに基づいている(WO2004/026328、WO2007044668、Mallik,2005、Katragadda,2006)。特定の実施形態では、表1に列挙されたペプチドは、本開示の治療組成物及び方法において使用される場合、2つのCys残基間のジスルフィド結合を介して環化される。ペプチドを環化するための代替手段もまた、本開示の範囲内である。
【表1-1】
【表1-2】
【0056】
本開示の組成物及び方法の特定の実施形態では、コンプスタチン類似体は、配列9~36から選択される配列を有する。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体は、配列番号28の配列を有する。本明細書で使用されるとき、「L-アミノ酸」は、タンパク質に通常存在する天然に存在する左旋性アルファ-アミノ酸またはそれらのアルファ-アミノ酸のアルキルエステルのいずれかを指す。「D-アミノ酸」という用語は、右旋性アルファ-アミノ酸を指す。別段の定めがない限り、本明細書で言及される全てのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0057】
いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体(例えば、本明細書に開示されるコンプスタチン類似体のいずれか)の1つ以上のアミノ酸(複数可)は、N-アルキルアミノ酸(例えば、N-メチルアミノ酸)であり得る。例えば、非限定的に、ペプチドの環状部分内の少なくとも1つのアミノ酸、環状部分のN末端の少なくとも1つのアミノ酸、及び/または環状部分のC末端の少なくとも1つのアミノ酸は、N-アルキルアミノ酸、例えば、N-メチルアミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、コンプスタチン類似体は、例えば、コンプスタチンの位置8に対応する位置及び/またはコンプスタチンの位置13に対応する位置に、N-メチルグリシンを含む。いくつかの実施形態では、表1のコンプスタチン類似体のうちの1つ以上は、例えば、コンプスタチンの位置8に対応する位置及び/またはコンプスタチンの位置13に対応する位置に、少なくとも1つのN-メチルグリシンを含む。いくつかの実施形態では、表1のコンプスタチン類似体のうちの1つ以上は、例えば、コンプスタチンの位置13に対応する位置に、少なくとも1つのN-メチルイソロイシンを含む。例えば、配列が表1に列挙されているペプチドまたは他の任意のコンプスタチン類似体の配列のC末端またはその近くのThrは、N-メチルIleで置き換えられ得る。理解されるように、いくつかの実施形態では、N-メチル化アミノ酸は、位置8にN-メチルGly及び位置13にN-メチルIleを含む。
【0058】
コンプスタチン類似体は、アミノ酸残基の縮合を介して当該技術分野で知られているペプチド合成の様々な合成方法によって調製することができ、例えば、従来のペプチド合成方法に従って、インビトロでの発現によって、または当該技術分野で知られている方法を使用して、生細胞において、コンプスタチン類似体をコードする適切な核酸配列から調製することができる。例えば、ペプチドは、Malik、上記、Katragadda、上記、WO2004026328、及び/またはWO2007062249に記載されるように、標準的な固相法を使用して合成され得る。アミノ及びカルボキシル基、反応性官能基等の潜在的に反応性の部分は、当該技術分野で既知の種々の保護基及び方法論を使用して保護され、その後脱保護され得る。例えば、“Protective Groups in Organic Synthesis”,3rd ed.Greene,T.W.and Wuts,P.G.,Eds.,John Wiley & Sons,New York:1999を参照されたい。ペプチドは、逆相HPLCなどの標準的なアプローチを使用して精製され得る。ジアステレオマーペプチドの分離は、必要に応じて、逆相HPLCなどの既知の方法を使用して実施され得る。調製物は、必要に応じて凍結乾燥し、その後、好適な溶媒、例えば水に溶解させ得る。得られた溶液のpHは、例えば、NaOHなどの塩基を使用して、生理学的pHに調整することができる。ペプチド調製物は、必要に応じて、例えば、質量及び/またはジスルフィド結合の形成を確認するために、質量分析によって特徴付けられ得る。例えば、Mallik,2005、及びKatragadda,2006を参照されたい。
【0059】
コンプスタチン類似体は、ポリエチレングリコール(PEG)などの分子を付加して、化合物を安定化し、その免疫原性を減少させ、体内でのその寿命を延ばし、その溶解度を増加及び減少させ、及び/または分解に対するその耐性を高めることによって改変できる。ペグ化の方法は当該技術分野でよく知られている(Veronese,F.M.& Harris,Adv.Drug Deliv.Rev.54,453-456,2002、Davis,F.F.,Adv.Drug Deliv.Rev.54,457-458,2002)、Hinds,K.D.& Kim,S.W.Adv.Drug Deliv.Rev.54,505-530(2002)、Roberts,M.J.,Bentley,M.D.& Harris,J.M.Adv.Drug Deliv.Rev.54,459-476;2002)、Wang,Y.S.et al.Adv.Drug Deliv.Rev.54,547-570,2002)。ポリペプチドを便利に結合できる誘導体化PEGを含む、PEG及び修飾PEGなどの多種多様なポリマーは、Nektar Advanced Pegylation 2005-2006 Product Catalog,Nektar Therapeutics,San Carlos,CAに記載されており、適切なコンジュゲーション手順の詳細も提供されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、配列番号9~36のいずれかのコンプスタチン類似体は、N末端、C末端、またはその両方において1つ以上のアミノ酸によって伸長され、ここで、アミノ酸の少なくとも1つは、コンプスタチン類似体にPEGを結合するための反応性官能基との結合を促進する、一級もしくは二級アミン、スルフヒドリル基、カルボキシル基(カルボキシレート基として存在し得る)、グアニジノ基、フェノール基、インドール環、チオエーテル、またはイミダゾール環などの反応性官能基を含む側鎖を有する。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体は、一級または二級アミン、例えば、Lys残基を含む側鎖を有するアミノ酸を含む。例えば、Lys残基、またはLys残基を含む配列は、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、配列番号9~36のいずれか1つを含むコンプスタチン類似体)のN末端及び/またはC末端に付加される。
【0061】
いくつかの実施形態では、Lys残基は、剛性または可撓性スペーサーによってコンプスタチン類似体の環状部分から分離されている。スペーサーは、例えば、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル鎖、オリゴ(エチレングリコール)鎖、及び/または、例えば、リンカーに関して本明細書に記載されるような他の部分を含み得る。鎖の長さは、例えば、2~20個の炭素原子であり得る。他の実施形態では、スペーサーは、ペプチドである。ペプチドスペーサーは、例えば、長さが1~20アミノ酸、例えば、長さが4~20アミノ酸であり得る。好適なスペーサーは、例えば、複数のGly残基、Ser残基、またはその両方を含むか、またはそれらからなることができる。任意選択で、一級もしくは二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸及び/またはスペーサー中の少なくとも1つのアミノ酸は、D-アミノ酸である。様々なポリマー骨格または足場のいずれかを使用することができるであろう。例えば、ポリマー骨格または足場は、ポリアミド、多糖、ポリ無水物、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリペプチド、ポリエチレンオキシド、またはデンドリマーであり得る。好適な方法及びポリマー骨格は、例えば、WO98/46270(PCT/US98/07171)またはWO98/47002(PCT/US98/06963)に記載されている。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格または足場は、カルボン酸、無水物、またはスクシンイミド基などの複数の反応性官能基を含む。ポリマー骨格または足場は、コンプスタチン類似体と反応する。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体は、ポリマー骨格上の適切な基と反応する、カルボン酸、無水物、またはスクシンイミド基などの、いくつかの異なる反応性官能基のいずれかを含む。代替的には、互いに結合してポリマー骨格または足場を形成することができるモノマー単位を最初にコンプスタチン類似体と反応させ、得られたモノマーを重合させる。いくつかの実施形態では、短鎖は、予備重合され、官能化され、次いで、異なる組成の短鎖の混合物が、より長いポリマーに組み立てられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体部分は、直鎖状PEGの各々の末端に付着している。鎖の各々の末端に反応性官能基を有する二官能性PEGを、例えば、本明細書に記載されるように使用し得る。いくつかの実施形態では、反応性官能基は同一であり、一方、いくつかの実施形態では、異なる反応性官能基が各々の末端に存在する。
【0063】
一般に、そして本明細書に示される化合物について、ポリエチレングリコール部分は、繰り返し単位の右側または繰り返し単位の左側に酸素原子を伴って描かれる。1つの配向のみが描かれている場合、本開示は、所与の化合物もしくは属のポリエチレングリコール部分の両方の配向(すなわち、(CHCHO)及び(OCHCH)を包含するか、または、化合物もしくは属が複数のポリエチレングリコール部分を含む場合、配向の全ての組み合わせが本開示に包含される。
【0064】
いくつかの実施形態では、二官能性直鎖状PEGは、その末端の各々に反応性官能基を含む部分を含む。反応性官能基は、同じ(ホモ二官能性)であっても、または異なるもの(ヘテロ二官能性)であってもよい。いくつかの実施形態では、二官能性PEGの構造は、対称的であり得、同じ部分が、反応性官能基を-(CHCHO)鎖の各々の末端の酸素原子に接続するために使用される。いくつかの実施形態では、2つの反応性官能基を分子のPEG部分に接続するために、異なる部分が使用される。例示的な二官能性PEGの構造を以下に示す。説明のために、反応性官能基がNHSエステルを含む式が示されているが、他の反応性官能基(複数可)を使用することもできるであろう。
【0065】
いくつかの実施形態では、二官能性直鎖状PEGは、式Aのものである:
【化1】
式中、各々のT及び「反応性官能基」は、独立して以下に定義され、本明細書のクラス及びサブクラスに記載され、nは、上記に定義され、本明細書のクラス及びサブクラスに記載される。
各Tは、独立して、共有結合またはC1-12の直鎖もしくは分枝鎖炭化水素鎖であり、ここで、Tの1つ以上の炭素単位は、任意選択でかつ独立して、-O-、-S-、-N(R)-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-N(R)C(O)-、-C(O)N(R)-、-S(O)-、-S(O)-、-N(R)SO-、または-SON(R)-で置き換えられ、各Rは、独立して、水素またはC1-6脂肪族である。
反応性官能基は、構造-COO-NHSを有する。
【0066】
式Aの例示的な二官能性PEGには以下が含まれる:
【化2】
【0067】
いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体上の官能基(例えば、アミン、ヒドロキシル、またはチオール基)は、本明細書に記載の「反応性官能基」を有するPEG含有化合物と反応して、そのようなコンジュゲートを生成する。例として、式Iは、以下の構造を有するコンプスタチン類似体コンジュゲートを形成することができ:
【化3】
式中、
【化4】
は、コンプスタチン類似体上のアミン基の結合点を表す。特定の実施形態では、アミン基は、リジン側鎖基である。
【0068】
特定の実施形態では、そのようなコンジュゲートのPEG成分は、約5kD、約10kD、約15kD、約20kD、約30kD、または約40kDの平均分子量を有する。特定の実施形態では、かかるコンジュゲートのPEG成分は、約40kDの平均分子量を有する。
【0069】
「二機能性」または「二機能化」という用語は、本明細書では、PEGに連結した2つのコンプスタチン類似体部分を含む化合物を指すために使用されることがある。かかる化合物は、「BF」と略記し得る。いくつかの実施形態では、二官能化化合物は、対称的である。いくつかの実施形態では、二官能化化合物のPEGと各々のコンプスタチン類似体部分との間の結合は、同じである。いくつかの実施形態では、二機能化化合物のPEGとコンプスタチン類似体との間の各々の結合は、カルバメートを含む。いくつかの実施形態では、二官能化化合物のPEGとコンプスタチン類似体との間の各々の結合は、カルバメートを含み、エステルを含まない。いくつかの実施形態では、二官能化化合物の各々のコンプスタチン類似体は、カルバメートを介してPEGに直接連結されている。いくつかの実施形態では、二官能化化合物の各々のコンプスタチン類似体は、カルバメートを介してPEGに直接連結され、二官能化化合物は、以下の構造を有する:
【化5】
【0070】
本明細書に記載の式及び実施形態のいくつかの実施形態では、
【化6】
は、以下の構造を有するコンプスタチン類似体におけるリジン側鎖基の結合点を表す:
【化7】
式中、記号「
【化8】
」は、分子または化学式の残りの部分への化学的部分の結合点を表す。
【0071】
1つ以上の反応性官能基を含むPEGは、いくつかの実施形態では、とりわけ、NOF America Corp.White Plains,NYまたはBOC Sciences 45-16 Ramsey Road Shirley,NY 11967,USAから得られてもよく、または当該技術分野で既知の方法を使用して調製されてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、リンカーを使用して、本明細書に記載のコンプスタチン類似体と本明細書に記載のPEGを接続する。コンプスタチン類似体とPEGを接続するための好適なリンカーは、上記及び本明細書のクラス及びサブクラスで広範に記載されている。いくつかの実施形態では、リンカーは、複数の官能基を有し、1つの官能基は、コンプスタチン類似体に接続され、別の官能基は、PEG部分に接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは、二官能性化合物である。いくつかの実施形態では、リンカーは、NH(CHCHO)nCHC(=O)OH(式中、nは1~1000である)の構造を有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEAc)である。いくつかの実施形態では、リンカーは、コンプスタチン類似体のポリマー部分または官能基とのコンジュゲーションのために活性化されている。例えば、いくつかの実施形態では、AEEAcのカルボキシル基は、リジン基の側鎖のアミン基とコンジュゲートする前に活性化されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体上の好適な官能基(例えば、アミン、ヒドロキシル、チオール、またはカルボン酸基)は、直接またはリンカーを介して、PEG部分とのコンジュゲーションのために使用される。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体は、アミン基を介して、リンカーを通じて、PEG部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、アミン基は、アミノ酸残基のα-アミノ基である。いくつかの実施形態では、アミン基は、リジン側鎖のアミン基である。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体は、NH(CHCHO)nCHC(=O)OH(式中、nは1~1000である)の構造を有するリンカーを通じて、リジン側鎖のアミノ基(ε-アミノ基)を介して、PEG部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体は、AEEAcリンカーを介して、リジン側鎖のアミノ基を通じて、PEG部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、NH(CHCHO)nCHC(=O)OHリンカーは、コンジュゲート後に、コンプスタチンのリジン側鎖上に-NH(CHCHO)nCHC(=O)-部分を導入する。いくつかの実施形態では、AEEAcリンカーは、コンジュゲート後に、コンプスタチンのリジン側鎖上に-NH(CHCHO)CHC(=O)-部分を導入する。
【0074】
いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体は、リンカーを介してPEG部分にコンジュゲートされ、リンカーは、AEEAc部分及びアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体は、リンカーを介してPEG部分にコンジュゲートされ、リンカーは、AEEAc部分及びリジン残基を含む。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体のC末端は、AEEAcのアミノ基に接続されており、AEEAcのC末端は、リジン残基に接続されている。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体のC末端は、AEEAcのアミノ基に接続されており、AEEAcのC末端は、リジン残基のα-アミノ酸に接続されている。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体のC末端は、AEEAcのアミノ基に接続され、AEEAcのC末端は、リジン残基のα-アミノ基に接続され、PEG部分は、上記リジン残基のε-アミノ基を通じてコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、リジン残基のC末端は、修飾されている。いくつかの実施形態では、リジン残基のC末端は、アミド化によって修飾されている。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体のN末端は、修飾されている。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体のN末端は、アセチル化されている。
【0075】
特定の実施形態では、コンプスタチン類似体は、M-AEEAc-Lys-Bとして表され得、式中、Bは、ブロッキング部分、例えば、NHであり、Mは、配列番号9~36のいずれかを表し、ただし、配列番号9~36のいずれかのC末端アミノ酸は、ペプチド結合を介してAEEAc-Lys-Bに連結されている。単官能性または多官能性(例えば、二官能性)のPEGのNHS部分は、リジン側鎖の遊離アミンと反応して、単官能化(1つのコンプスタチン類似体部分)または多官能化(複数のコンプスタチン類似体部分)のPEG化コンプスタチン類似体を生成する。様々な実施形態では、反応性官能基を含む側鎖を含む任意のアミノ酸を、Lysの代わりに(またはLysに加えて)使用することができる。好適な反応性官能基を含む単官能性または多官能性PEGは、NHS-エステル活性化PEGとLysとの反応と同様の方法でかかる側鎖と反応させることができる。
【0076】
上記の式及び構造のいずれかに関して、コンプスタチン類似体成分が本明細書に記載の任意のコンプスタチン類似体、例えば、配列番号9~36の任意のコンプスタチン類似体を含む実施形態が明示的に開示されていると理解されるべきである。例えば、限定されないが、コンプスタチン類似体は、配列番号28のアミノ酸配列を含み得る。コンプスタチン類似体成分が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、例示的なPEG化コンプスタチン類似体を図1に示す。PEG部分は、本明細書に記載の様々な実施形態では、様々な異なる分子量または平均分子量を有し得ることが理解されるであろう。特定の目的のある特定の実施形態では、コンプスタチン類似体は、図1の化合物の構造を有するペグセタコプラン(「APL-2」)であり、nは、約800~約1100であり、PEGは、約40kDの平均分子量を有する。ペグセタコプランは、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、α-ヒドロ-ω-ヒドロキシ-、N-アセチル-L-イソロイシル-L-システイン-L-バリル-1-メチル-L-トリプトフィル-L-グルタミニル-L-α-アスパルチル-L-トリプトフィルグリシル-L-アラニル-L-ヒスチジル-L-アルギニル-L-システイニル-L-トレオニル-2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチル-N-カルボキシ-L-リジンアミド環状(2-->12)-(ジスルフィド)を有する15,15’-ジエステル、またはO,O’-ビス[(S,S12-シクロ{Nアセチル-L-イソロイシル-L-システイニル-L-バリル-1-メチル-L-トリプトフィル-L-グルタミニル-L-α-アスパルチル-L-トリプトフィルグリシル-L-アラニル-L-ヒスチジル-L-アルギニル-L-システイン-L-トレオニル-2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチル-L-リジンアミド})-N6.15-カルボニル]ポリエチレングリコール(n=800~1100)とも称される。さらなるコンプスタチン類似体は、例えば、WO2012/155107、WO2014/078731、及びWO2019/166411に記載されている。
【0077】
III.投与方法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体、例えば、本明細書に記載のPEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランは、対象に静脈内投与される。いくつかの実施形態では、対象は、比較的速い(例えば、投与の約15分、30分、45分、1時間、または2時間以内の)補体の阻害及び/または規定の期間にわたる(例えば、投与開始後の少なくとも約4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、144時間、168時間、またはそれ以上)補体の阻害を必要とする。PEG化コンプスタチン類似体の投与に関する本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、PEG化コンプスタチン類似体は、ペグセタコプランであり得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランは、それを必要とする対象に、約100mg~約2500mg(例えば、約100mg~約600mg、約600mg~約1500mg、約1500mg~約2500mg、約200mg~約2300mg、約100~120mg、約120~140mg、約140~160mg、約160~180mg、約180~200mg、約200~220mg、約220~240mg、約240~260mg、約260~280mg、約280~300mg、約300~320mg、約320~340mg、約340~360mg、約360~380mg、約380~400mg、約400~420mg、約420~440mg、約440~460mg、約460~480mg、約480~500mg、約500~520mg、約520~540mg、約540~560mg、約560~580mg、約580~600mg、約600~620mg、約620~640mg、約640~660mg、約660~680mg、約680~700mg、約700~720mg、約720~740mg、約740~760mg、約760~780mg、約780~800mg、約800~820mg、約820~840mg、約840~860mg、約860~880mg、約880~900mg、約900~920mg、約920~940mg、約940~960mg、約960~980mg、約980~1000mg、約1000~1020mg、約1020~1040mg、約1040~1060mg、約1060~1080mg、約1080~1100mg、約1100~1120mg、約1120~1140mg、約1140~1160mg、約1160~1180mg、約1180~1200mg、約1200~1250mg、約1250~1300mg、約1300~1350mg、約1350~1400mg、約1400~1450mg、約1450~1500mg、約1500~1550mg、約1550~1600mg、約1600~1650mg、約1650~1700mg、約1700~約1750mg、約1750~1800mg、約1800~1850mg、約1850~1900mg、約1900~1950mg、約1950~2000mg、約2000~2050mg、約2050~2100mg、約2100~2150mg、約2150~2200mg、約2200~2250mg、約2250~2300mg、約2300~2350mg、約2350~2400mg、約2400~2450mg、約2450~2500mg)、またはそれ以上投与される。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランを、約200mgで対象に静脈内投与する。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランを、約600mgで対象に静脈内投与する。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体を、約1500mgで対象に静脈内投与する。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体を、約2300mgで対象に静脈内投与する。いくつかの実施形態では、補体は、静脈内投与の開始後、少なくとも約4時間、8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、28時間、32時間、36時間、48時間、72時間、144時間、168時間、192時間、216時間、240時間、264時間、288時間、312時間、336時間、またはそれ以上阻害される。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体の静脈内投与の後、補体が阻害または低減される(例えば、対照レベルに対して約100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、またはそれ以下のレベルになる)。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体の静脈内投与後、AH50及び/またはCH50が阻害または低減される(例えば、対照レベルに対して約100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、またはそれ以下のレベルになる)。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体の静脈内投与後、補体は、投与後約168時間、192時間、216時間、240時間、264時間、288時間、312時間、336時間、360時間、408時間、456時間、504時間、またはそれ以上の後に、阻害または低減されない。いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体は、例えば、本明細書に記載の注入として、持続時間にわたって静脈内投与され、補体は、投与開始から約30分、45分、1時間、2時間、3時間、または4時間以内に阻害または低減される(例えば、対照レベルに対して約100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、またはそれ以下のレベルになる)。いくつかの実施形態では、対照レベルは、PEG化コンプスタチン類似体の静脈内投与前に、同じ対象において検出または測定されるレベルである。いくつかの実施形態では、対照レベルは、参照レベルである。
【0079】
いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体は、単回用量として静脈内投与される。いくつかの実施形態では、単回用量は、ボーラスである。いくつかの実施形態では、ボーラスは、例えば、IV注入によって、約2時間、1時間、45分、30分、20分、10分、5分、またはそれ以下にわたって投与されるPEG化コンプスタチン類似体の量である。
【0080】
いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体は、約0.25mg/分~約85mg/分、例えば、約6.5mg/分~約80mg/分、約20mg/分~約50mg/分の速度で注入として投与される。いくつかの実施形態では、注入速度は、約5mg/分、約6mg/分、約6.5mg/分、約7mg/分、約20mg/分、約50mg/分、約70mg/分、約75mg/分、または約80mg/分である。いくつかの実施形態では、注入は、約15分~約2時間、例えば、約15分、約30分、約45分、約1時間、または約2時間の期間にわたって投与される。
【0081】
いくつかの実施形態では、PEG化コンプスタチン類似体は、2回以上の用量として静脈内投与される。例えば、上記の量のいずれかは、時間的に接近して、例えば、最大30分間隔、最大60分間隔、最大2時間間隔、または最大12時間間隔で静脈内投与される2回の用量として投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、約2160mgの量を、各々約1080mgの2回の用量として、最大で約12時間間隔で投与し得る。いくつかの実施形態では、第1の用量(例えば、負荷用量)及び第2の用量(例えば、維持用量)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の用量及び第2の用量は、同じ量のPEG化コンプスタチン類似体を含む。いくつかの実施形態では、第1の用量及び第2の用量は、異なる量のPEG化コンプスタチン類似体を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、対象は、成人である(すなわち、対象は少なくとも18歳である)。いくつかの実施形態では、対象の年齢は、18歳未満である。いくつかの実施形態では、対象の年齢は、少なくとも12歳である。いくつかの実施形態では、対象の年齢は、12~18歳(例えば、12~17歳)である。いくつかの実施形態では、対象の年齢は、6~12歳である。いくつかの実施形態では、対象の年齢は、1~12歳である。
【0083】
いくつかの実施形態では、補体媒介性障害を治療する方法は、複数用量の本明細書に記載のPEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランを投与することを含み、その際、500mg~2500mgの用量が静脈内投与され、及び追加の用量が皮下投与され、第1の皮下(SC)用量は、静脈内(IV)用量の3日以内、例えば、IV用量の投与後3日以内に投与される。第1の用量は、迅速に(例えば、投与後1時間以内に)コンプスタチン類似体の標的血清濃度を達成し、補体活性化を迅速に低減する負荷用量として機能し得る。維持療法と称され得る後続の用量は、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランの治療上有効なレベルを維持するために投与され得る。いくつかの実施形態では、ペグセタコプランの負荷用量は、投与後1時間以内に、約500μg/mL~約800μg/mL、例えば、約500μg/mL~約625μg/mL、または約625μg/mL~約750μg/mLのペグセタコプラン血清濃度をもたらすのに十分である。いくつかの実施形態では、補体媒介性障害は、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランのIV負荷用量を投与し、続いて皮下投与される維持療法によって治療され得る。ある特定の実施形態では、補体媒介性障害の治療を必要とする対象は、所与の日に、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランのIV用量(複数可)を受け、これは、1日目と称され得、次いで、第2日目、第3日目、または第4日目に、ペグセタコプランの第1のSC用量を受け、その後、本明細書に記載のSC投与レジメンのいずれかに従って、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランのSC投与による治療を継続する。例えば、PCT/US2018/026753(WO2018187813)及び米国特許第11,040,107号に記載されるように、ペグセタコプランは、用量当たり990mg~1215mg、例えば、用量当たり約1080mgの用量で週2回、3日ごと、週3回、または週1回皮下投与され得る。いくつかの実施形態では、SC用量は、約54mg/mLの濃度で約20mLの体積で投与される。いくつかの実施形態では、SC用量(例えば、20mLの体積における1080mg)は、シリンジポンプまたは体内送達デバイスを使用して投与される。いくつかの実施形態では、患者は、SC用量を自己投与し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体、例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランは、本明細書に記載されるように、疾患の増悪を経験している補体媒介性障害に罹患している対象に静脈内投与される。「発作」、「発作」、または同様の用語とも称され得る「増悪」は、以前の状態、例えば、対象の通常の健康状態、例えば、安定状態からの慢性状態の比較的突然の悪化を指す。憎悪は、多くの慢性疾患の共通の特徴である。憎悪は通常、最長数時間、最長1日、最長1週間、または最長2週間の期間にわたって現れる。増悪は、典型的には、障害の1つ以上の症状の顕著な増加、及び/または健康な個体における患者の通常の状態と比較して、及び/またはパラメータの正常範囲と比較して、1つ以上の生理学的パラメータの顕著な変化(悪化を示す)を特徴とする。補体媒介性障害の増悪は、その対象に典型的であるか、または健康な個体に典型的である補体活性化のレベルと比較して、補体活性化のレベルの増加に少なくとも部分的に起因する、及び/または関連することがあり得る。いくつかの実施形態では、補体媒介性障害の増悪を経験する対象は、補体阻害剤、例えば、ペグセタコプランによる療法をまだ受けていないことがあり得る。いくつかの実施形態では、補体媒介性障害の増悪を経験する対象は、補体阻害剤、例えば、皮下投与されたペグセタコプランによる治療を既に受けていることがあり得る。障害は、通常、皮下投与されるペグセタコプランによって十分に制御され得るが、増悪の場合、対象は、本明細書に記載のペグセタコプランのIV投与によって達成される補体の急速な減少から利益を得ることがあり得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、方法は、対象が補体媒介性障害(例えば、本明細書に記載の補体媒介性障害のいずれか)の増悪を経験していることを決定することと、対象に、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランを、500mg~2500mg、例えば、1100mg~2500mg、例えば、1500mg~2500mg、例えば、約1500mgまたは約2300mgの用量で1回以上静脈内投与することとを含む。いくつかの実施形態では、約2160mgの用量が投与され得る。いくつかの実施形態では、990mg~1215mg、例えば、1080mgの用量が投与され得る。いくつかの実施形態では、1215mg~2000mg、例えば、1500mgの用量が投与され得る。いくつかの実施形態では、2000mg~2500mg、例えば、2160mgまたは2300mgの用量が投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は、所望の補体阻害の持続時間に少なくとも部分的に基づいて選択され得る。例えば、いくつかの実施形態では、1500mgの用量が、例えば、代替的経路補体活性化をほぼ完全にまたは完全に(例えば、検出不能なレベルまで)約24~36時間抑制するように選択され得る。いくつかの実施形態では、約2300mgの用量が、例えば、代替的経路補体活性化をほぼ完全にまたは完全に(例えば、検出できないレベルまで)約72~96時間抑制するように選択され得る。いくつかの実施形態では、例えば、より長い補体阻害期間が増悪の治療に望まれる場合、対象は、2回以上のIV用量、例えば、2、3、4、または5回の用量で治療され得、この用量は、連続した日、または1日おき、または3日おきに投与される。増悪の治療のために、PEG化コンプステイン類似体、例えば、IVペグセタコプランのIV投与を受けた対象は、その後の増悪のために、静脈内投与される、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、IVペグセタコプランによる後続の治療を受け得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体、例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプランは、補体活性化に潜在的に関連する事象(例えば、手術、ワクチン接種)の前に、集中投与レジメンを使用して対象に投与される。いくつかの実施形態では、かかる事象(例えば、手術またはワクチン接種)の前に、対象は、約500mg~約2500mg、例えば、約540mg~約2160mg、例えば、約1100mg~約2500mg、例えば、約1500mg~約2500mg、例えば、約1500mgまたは約2300mgの、ペグセタコプランの静脈内投与を含む集中投与レジメンで治療される。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約1080mgのペグセタコプランの静脈内投与を含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約2160mgのペグセタコプランの静脈内投与を含む。いくつかの実施形態では、ペグセタコプランは、補体活性化(例えば、手術、ワクチン接種)に潜在的に関連する事象の約1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日以上前に、対象に静脈内投与される。いくつかの実施形態では、ペグセタコプランは、補体活性化(例えば、手術、ワクチン接種)に潜在的に関連する事象の約1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日以下前に、対象に静脈内投与される。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約500mg~約2500mg、例えば、約540mg~約2160mg、例えば、約1100mg~約2500mg、例えば、約1500mg~約2500mg、例えば、約1500mg~約2300mgのペグセタコプランを3日間連続して毎日皮下投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約1080mgのペグセタコプランの3日間連続した毎日の皮下投与を含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約2160mgのペグセタコプランの3日間連続した毎日の皮下投与を含む。いくつかの実施形態では、ペグセタコプランは、3日間連続して毎日対象に皮下投与され、連続日の3日目は、補体活性化(例えば、手術、ワクチン接種)に潜在的に関連する事象の約1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日以上前である。いくつかの実施形態では、ペグセタコプランは、3日間連続して毎日対象に皮下投与され、連続日の3日目は、補体活性化(例えば、手術、ワクチン接種)に潜在的に関連する事象の約1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日以下前である。
【0087】
いくつかの実施形態では、補体媒介性障害に罹患している対象は、既に治療、例えば、通常、対象の溶血を制御する補体阻害剤による治療を受けている間に、急性溶血を示す。いくつかの実施形態では、方法は、補体媒介性障害を有する対象が急性溶血を呈していることを決定する(すなわち、対象を急性溶血を呈しているとして特定する)ことと、集中投与レジメンを使用して対象にペグセタコプランを投与することとを含む。いくつかの実施形態では、対象は、約500mg~約2500mg、例えば、約540mg~約2160mg、例えば、約1100mg~約2500mg、例えば、約1500mg~約2500mg、例えば、約1500mgまたは約2300mgのペグセタコプランを対象に静脈内投与することを含む集中投与レジメンで治療される。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約1080mgのペグセタコプランを静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約2160mgのペグセタコプランを静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約500mg~約2500mg、例えば、約540mg~約2160mg、例えば、約1100mg~約2500mg、例えば、約1500mg~約2500mg、例えば、約1500mg~約2300mgのペグセタコプランを、3日間連続して毎日、対象に皮下投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約1080mgのペグセタコプランを3日間連続して毎日皮下投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約2160mgのペグセタコプランを3日間連続して毎日皮下投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、急性溶血の事象の前に、既に療法、例えば、補体阻害剤による療法で治療されており、集中投与レジメンの投与後にかかる療法を継続する。
【0088】
いくつかの実施形態では、補体媒介性障害は、PNHであり、対象は、通常、対象における溶血を制御する補体阻害剤、例えば、ペグセタコプランによる皮下治療中に急性溶血を示す。いくつかの実施形態では、方法は、PNHを有する対象が急性溶血を呈していることを決定する(すなわち、対象を急性溶血を呈していると特定する)ことと、対象をペグセタコプランの集中投与レジメンで治療することとを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約500mg~約2500mg、例えば、約540mg~約2160mg、例えば、約1100mg~約2500mg、例えば、約1500mg~約2500mg、例えば、約1500mgまたは約2300mgのペグセタコプランを対象に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約1080mgのペグセタコプランを静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約2160mgのペグセタコプランを静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約500mg~約2500mg、例えば、約540mg~約2160mg、例えば、約1100mg~約2500mg、例えば、約1500mg~約2500mg、例えば、約1500mg~約2300mgのペグセタコプランを、3日間連続して毎日、対象に皮下投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約1080mgのペグセタコプランを3日間連続して毎日皮下投与することを含む。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンは、約2160mgのペグセタコプランを3日間連続して毎日皮下投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、急性溶血の事象の前に、週に2回投与される1080mgの用量のSCペグセタコプランで既に治療されており、集中投与レジメンの投与後にかかる治療を継続する。いくつかの実施形態では、対象は、急性溶血の事象の前に、週に2回投与される1080mgの用量のSCペグセタコプランで既に治療されており、集中投与レジメンの投与後3日ごとにペグセタコプランで治療される。いくつかの実施形態では、対象は、急性溶血の事象の前に、週に2回投与される1080mgの用量のSCペグセタコプランで既に治療されており、集中投与レジメンの投与後に週に3回(すなわち、週3回)ペグセタコプランで治療される。いくつかの実施形態では、対象は、急性溶血の事象の前に、3日ごとに投与される1080mgの用量のSCペグセタコプランで既に治療されており、集中投与レジメンの投与後にかかる治療を継続する。いくつかの実施形態では、対象は、急性溶血の事象の前に、3日ごとに投与される1080mgの用量のSCペグセタコプランで既に治療されており、集中投与レジメンの投与後に週に3回(すなわち、週3回)ペグセタコプランで治療される。いくつかの実施形態では、対象は、急性溶血の事象の前に、週に3回(すなわち、週3回)投与される1080mgの用量で既にSCペグセタコプランで治療されており、任意選択で、事象の前よりもより頻繁なSC投与で、集中投与レジメンの投与後にかかる療法を継続する。いくつかの実施形態では、集中投与レジメンの最後の用量は、再開された維持用量の第1の用量である。例えば、いくつかの実施形態では、対象は、1日目に、ペグセタコプランの静脈内投与を含む集中投与レジメンで治療され、1日目は、週に1回、週に2回、3日ごと、週に3回などの後続の投与レジメンの最初の日である。いくつかの実施形態では、対象は、3日間連続して(例えば、1日目、2日目、及び3日目に)ペグセタコプランを皮下投与することを含む集中投与レジメンで1日目に治療を開始し、3日目は、週に1回、週に2回、3日ごと、週に3回などの後続の投与レジメンの最初の日である。いくつかの実施形態では、対象が、正常上限(ULN)の少なくとも2倍、すなわち、少なくとも2倍のULNである測定されたLDHレベルを示す場合、対象は、溶血(例えば、急性溶血)を経験している(例えば、示すものとして識別されている)と判定され得る。いくつかの実施形態では、正常値の上限は約225U/Lであり、例えば、いくつかの実施形態では、225U/Lである。いくつかの実施形態では、対象は、溶血(例えば、ヘモグロビンの減少(例えば、少なくとも1g/dLまたは少なくとも2g/dLの減少、または10g/dL未満のHbの減少)、ヘモグロビン尿、または疲労の増加(例えば、より高い値がより少ない疲労を示す、FACIT上の少なくとも3点の減少)の少なくとも1つの追加の徴候または症状を追加的に示す場合、溶血(例えば、急性溶血)を示すと特定され得る。いくつかの実施形態では、対象は、かかる対象が、正常上限(ULN)の2倍を超えるLDHの存在下で、溶血(例えば、疲労、ヘモグロビン尿症、腹痛、嚥下困難、呼吸困難、貧血(例えば、ヘモグロビン<10グラム(g)/デシリットル(dL))、重大な有害血管事象(血栓症を含む)、または勃起不全)の少なくとも1つの新たなまたは悪化する症状または徴候を示す場合、溶血(例えば、急性溶血)を示すと特定され得る。いくつかの実施形態では、対象は、所定のレベル未満、例えば、1.5×ULN未満のLDHを一定期間、例えば、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間有した後、そのような対象が少なくとも2倍のULNのLDHを示す場合、溶血(例えば、急性溶血)を示していると特定され得る。このように識別された対象を、本明細書に記載のIVペグセタコプランで治療してもよく、その治療の後に、SCペグセタコプランで治療してもよい。いくつかの実施形態では、皮下投与されるペグセタコプランによる治療は、PNHの治療のために、1年以上、例えば、無期限に継続し得る。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載の集中投与レジメンによる治療後にLDHレベルの低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、集中投与レジメンの完了の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、10日、11日、12日、13日、14日、及び/または15日後に、LDHレベルの低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、集中投与レジメンの完了後約2日目に、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%のLDHレベルの低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、集中投与レジメンの完了後約8日目に、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%のLDHレベルの低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、集中用量レジメンの完了後約15日目に、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%のLDHレベルの低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランの3日間連続した毎日のSC投与後に、LDHレベルの低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランの3日間連続した毎日のSC投与の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、10日、11日、12日、13日、14日、及び/または15日後に、LDHの減少を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランの3日間連続した毎日のSC投与の約2日後に、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%の減少を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランの3日間連続した毎日のSC投与の約8日後に、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%の減少を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランの3日間連続した毎日のSC投与の約15日後に、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%の減少を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランのIV投与後にLDHの減少を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランのIV投与の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、10日、11日、12日、13日、14日、及び/または15日後に、LDHの減少を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランのIV投与の約2日後に、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%の減少を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランのIV投与の約8日後に、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%の減少を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ペグセタコプランのIV投与の約15日後に、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%の減少を示す。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、IVペグセタコプランで静脈内に治療される補体媒介性障害に罹患している対象は、SCペグセタコプランで既に治療されておらず、その後、対象は、SCペグセタコプランで治療を開始してもよく、その際、SCペグセタコプランの第1の用量は、IV投与と同じ日に投与される。いくつかの実施形態では、対象が既にSCペグセタコプランで治療されていない場合、対象は、IV投与の翌日に第1用量のSCペグセタコプランが投与されるSCペグセタコプランで治療を開始してもよい。いくつかの実施形態では、対象が既にSCペグセタコプランで治療されていない場合、対象はSCペグセタコプランで治療を開始してもよく、SCペグセタコプランの第1の用量は、IV用量の1日後の間隔で投与されてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、IV投与によるペグセタコプランで治療される対象が、既にSCペグセタコプランで(例えば、1080mgの用量で、週に2回、3日ごと、週に3回、または週に1回投与される)治療されている場合、及び対象のSCペグセタコプランの次の用量が通常、IV用量の投与と同じ日に投与される場合、対象は、彼または彼女の通常のスケジュールに従って(すなわち、IV用量と同じ日に)SC用量を受け得る。いくつかの実施形態では、対象が既にSCペグセタコプランで治療されており、対象のSCペグセタコプランの次の用量が通常、IV用量の投与と同じ日に投与される場合、SCペグセタコプランの次の用量は、代わりに、翌日に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、対象が既にSCペグセタコプランで治療されており、対象のSCペグセタコプランの次の用量が通常、IV用量の投与と同じ日に投与される場合、SCペグセタコプランの次の用量は、代わりに、IV用量の後1日の間隔で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、対象が既にSCペグセタコプランで治療されており、対象のSCペグセタコプランの次の用量が通常、IV用量の投与の翌日に投与される場合、SCペグセタコプランの次の用量は、1日遅らせてもよい。いくつかの実施形態では、ペグセタコプランを皮下投与した治療は、慢性補体媒介性障害の治療のために、1年以上、例えば、無期限に継続し得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、補体活性化を誘発する急性事象、例えば、脳卒中、心筋梗塞、外科的手順、外傷、または遺伝子治療ベクター等の薬剤の投与、もしくは補体活性化を誘発する外来物質への他の曝露を経験する対象は、本明細書に記載のPEG化コンプスタチン類似体、例えば、IVペグセタコプランで静脈内治療され得、かかる治療は、対象が補体媒介性障害の新たな診断を受けたか、または補体活性化のための別の誘発事象を経験しない限り、補体阻害剤、例えば、ペグセタコプランのさらなる投与が続かない。いくつかの実施形態では、補体活性化を誘発する急性事象、例えば、脳卒中、心筋梗塞、外科的手順、外傷、または遺伝子治療ベクター等の薬剤の投与、もしくは補体活性化を誘発する外来物質への他の曝露を経験する対象は、本明細書に記載のIVペグセタコプランで治療され得、かかる治療に続いて、補体阻害剤、例えば、ペグセタコプラン(例えば、皮下投与)を限られた期間、例えば、最大1、2、3、または4週間、例えば、1ヶ月以下でさらに投与され得る。
【0092】
IV.医薬組成物
本明細書に記載の補体阻害剤、例えば、PEG化コンプスタチン類似体は、医薬組成物に組み込むことができる。かかる医薬組成物は、とりわけ、インビボまたはエクスビボでの対象への投与及び送達に有用である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。かかる賦形剤としては、任意の医薬品、例えば、それ自体が組成物を投与される個体に有害な免疫応答を誘導せず、過度の毒性なしに投与され得る医薬品が挙げられる。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される」及び「生理学的に許容される」という用語は、生物学的に許容される製剤、気体、液体もしくは固体、またはそれらの混合物であり、1つ以上の投与経路、インビボ送達または接触に好適であるものを意味する。薬学的に許容される賦形剤としては、水、生理食塩水、グリセロール、糖、及びエタノールなどの液体が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩などもまた、そこに含めることができる。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が、かかるビヒクルに存在してもよい。
【0093】
医薬組成物は塩として提供することができ、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されない多くの酸により形成することができる。塩は、対応する遊離塩基の形態よりも水性または他のプロトン性の溶媒に溶けやすい傾向にある。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥された粉末であり得る。
【0094】
医薬組成物は、医薬投与またはインビボでの接触もしくは送達と適合性がある、溶媒(水性または非水性)、溶液(水性または非水性)、エマルション(例えば、水中油型または油中水型)、懸濁液、シロップ、エリキシル、分散液及び懸濁媒体、コーティング、等張性及び吸収促進剤または吸収遅延剤を含み得る。水性及び非水性の溶媒、溶液及び懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含み得る。かかる薬学的に許容される担体としては、錠剤(コーティングされたまたはコーティングされていない)、カプセル(ハードまたはソフト)、マイクロビーズ、粉末、顆粒及び結晶が挙げられる。補助的な活性化合物(例えば、防腐剤、抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗真菌剤)もまた、組成物に組み込むことができる。
【0095】
医薬組成物は、本明細書に示されるかまたは当業者に既知の特定の投与または送達の経路と適合するように製剤化され得る。したがって、医薬組成物は、様々な経路による投与に好適な担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
【0096】
非経口投与に好適な組成物は、活性化合物の水溶液及び非水溶液、懸濁液またはエマルションを含むことができ、これらの製剤は、典型的には無菌であり、意図されるレシピエントの血液と等張であることができる。非限定的な例示的な例としては、水、緩衝生理食塩水、ハンクス液、リンガー液、デキストロース、フルクトース、エタノール、動物油、植物油、または合成油が挙げられる。水性の注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、マンニトール、またはデキストラン等の懸濁液の粘度を増加させる物質を含んでもよい。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油注射懸濁液として調製され得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。任意選択で、かかる懸濁液は、好適な安定剤または高度に濃縮された溶液の調製を可能にする医薬品の溶解度を増加させる薬剤も含有し得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酢酸ナトリウム(例えば、約5mM~約30mM、例えば、約10mM)、NaCl(例えば、約0.5%~約2%、例えば、約0.9%)及び水を含み、約4~約7、例えば、約5のpHを有する。いくつかの実施形態では、IV投与の前に、かかる医薬組成物を等張の生理食塩水中で希釈する。
【0097】
共溶媒及びアジュバントを製剤に加えることができる。共溶媒の非限定的な例としては、ヒドロキシル基または他の極性基、例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテルなどのグリコール;グリセロール;ポリオキシエチレンアルコール及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルが挙げられる。アジュバントとしては、例えば、大豆レシチン及びオレイン酸などの界面活性剤、ソルビタントリオレエートなどのソルビタンエステル、及びポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0098】
医薬組成物が調製された後、それらは適切な容器に入れられ、治療のために標識され得る。かかる標識には、用量、投与の頻度、及び投与方法を含めることができる。
【0099】
本開示の組成物、方法及び使用に適切な医薬組成物及び送達系は、当該技術分野で既知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy.21st Edition.Philadelphia,PA.Lippincott Williams & Wilkins,2005を参照されたい)。
【0100】
いくつかの態様では、コンプスタチン類似体、例えば、PEG化コンプスタチン類似体(例えば、ペグセタコプラン)の単位用量は、本明細書に記載の量のいずれかを含有し得る。いくつかの実施形態では、この単位用量は、540mg超、例えば、少なくとも541mg、例えば、少なくとも545mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、1080mg超、例えば、少なくとも1081mg、例えば、少なくとも1085mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、2160mg超、例えば、少なくとも2161mg、例えば、少なくとも2165mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、540mg未満、例えば、最大539mg、例えば、最大535mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、1080mg未満、例えば、最大1079mg、例えば、最大1075mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、2160mg未満、例えば、最大2159mg、例えば、最大2155mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、約540mg~約2500mg、約545mg~約1690mg、約630mg~約930mg、約795mg~約885mg、約585mg~約2510mg、約900mg~約1395mg、約990mg~約1215mg、約1215mg~約1395mg、約1080mg~約1500mg、約1500mg~約2160mg、約2160mg~約2520mg、約1500mg~約2500mg、または約1080mg~約2160mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、約540mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、約1080mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、約2160mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、約1500mgである。いくつかの実施形態では、この単位用量は、約2300mgである。単位用量は、本明細書に記載される範囲のいずれか内の量、または前記範囲内の任意の特定の値を含み得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書において、かかる単位用量を含む容器、カートリッジ、注射器、または薬物送達デバイスが記載される。本開示を読む当業者は、当分野の標準的な慣行に従って、本明細書に記載の特定の容量を含む容器が、指定された特定の容量(例えば、単位用量)が投与のために容器から引き出されるのを可能にするのに十分な追加の容量を含み得ることを理解するであろう。
【0102】
本明細書に記載のペグ化コンプスタチン類似体は、任意の好適な経路によって投与することができる。投与経路及び/または投与様式は、望ましい結果に応じて変化し得る。本開示の方法及び使用には、全身的、局部的、もしくは局所的、または任意の経路、例えば注射または注入による送達及び投与が含まれる。投与方法は、施術者の裁量に委ねられる。インビボでの医薬組成物の送達は、一般に、従来の注射器を使用する注射を介して達成され得るが、対流増強送達などの他の送達方法も使用され得る(例えば、米国特許第5,720,720号を参照)。例えば、組成物は、皮下、表皮、硬膜外、脳内、皮内、鼻腔内、髄腔内、眼窩内、粘膜内、腹腔内、静脈内、胸膜内、網膜下、動脈内、舌下、肝内、門脈を介して、及び筋肉内に送達され得る。いくつかの実施形態では、投与は、静脈内注入、例えば、中枢または末梢の静脈内注入を介して行われる。臨床医は、投与のための最適な経路を決定できる。
【0103】
V.疾患、障害、及び状態
提供される技術は、様々な状態、障害または疾患、例えば、本明細書に記載される状態、障害または疾患を予防または治療するために有用である。いくつかの実施形態では、本開示は、状態、障害または疾患に罹患しやすい対象に、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、有効量の本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)を投与することを含む、状態、障害または疾患を予防するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、状態、障害または疾患に罹患している対象に、治療有効量の本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、治療有効量の本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)を投与することを含む、状態、障害または疾患を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、C3を本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)と接触させることを含む、C3活性化を低減する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、C3コンバターゼを本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)と接触させることを含む、C3コンバターゼ活性を低下させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)を系に投与することを含む、系における補体活性化を低減するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)を系に投与することを含む、系におけるC3活性化を低減するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)を系に投与することを含む、系におけるC3コンバターゼ活性を低下させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)を系に投与することを含む、系におけるC3aの生成を低減するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、系は、対象における複数の細胞、組織、または臓器である。いくつかの実施形態では、系は、血液であるか、または血液を含む。いくつかの実施形態では、系は、動物である。いくつかの実施形態では、系は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0104】
いくつかの実施形態では、状態、障害または疾患は、補体媒介性の状態、障害または疾患である。いくつかの実施形態では、状態、障害または疾患は、臓器、組織、または細胞に対する補体媒介性の損傷であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、別の治療薬剤、例えば、異なる補体阻害剤と併用投与される。
【0105】
A.血液関連障害
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、単独で、または本明細書に記載の1つ以上の追加の補体阻害剤と組み合わせて、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、自己免疫性溶血性貧血、慢性寒冷凝集素症、HELLP症候群、及び/または温式自己免疫性溶血性貧血などの補体媒介性血液関連障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、循環器系に影響を与える補体媒介性障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、障害は、血栓性微小血管症(TMA)または血管炎(例えば、IgA血管炎)または血管炎症、例えば、血管及び/またはリンパ管炎症に関連する他の障害である。いくつかの実施形態では、血管炎は、結節性多発動脈炎、低相補性蕁麻疹性血管炎、肺血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、巨大細胞動脈炎、チュルクストラウス症候群、顕微鏡的多発血管炎、ポーシ免疫性血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、高安動脈炎、川崎病、またはベーチェット病である。いくつかの実施形態では、障害は、非定型溶血性尿毒症症候群に二次的なTMAである。いくつかの実施形態では、対象は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)に対して陽性である。
【0106】
B.眼障害
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、黄斑変性(例えば、加齢性黄斑変性(AMD)及びスターガルト黄斑ジストロフィー)、糖尿病性網膜症、緑内障、またはブドウ膜炎(例えば、後部ブドウ膜炎または前部ブドウ膜炎)などの補体媒介性眼障害の治療のために対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象はAMDに罹患しているか、またはAMDのリスクを有する。いくつかの実施形態では、AMDは、血管新生(滲出型)AMDである。いくつかの実施形態では、AMDは、乾性AMDである。当業者に理解されるように、乾性AMDには、地理的萎縮症(GA)、中期AMD、及び初期AMDが含まれる。いくつかの実施形態では、GAを有する対象は、疾患の進行を遅らせるかまたは停止させるために治療される。例えば、いくつかの実施形態では、GAを有する対象の治療は、網膜細胞死の速度を低下させる。網膜細胞死速度の低下は、対照(例えば、偽投与を受けた患者)と比較して、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)で治療された患者におけるGA病変成長速度の低下によって証明され得る。いくつかの実施形態では、対象は、中期AMDを有する。いくつかの実施形態では、対象は、初期AMDを有する。いくつかの実施形態では、中期または初期AMDを有する対象は、疾患の進行を遅らせるかまたは停止させるために治療される。例えば、いくつかの実施形態では、中期AMDを有する対象の治療は、進行型のAMD(血管新生AMDまたはGA)への進行を遅らせるかまたは防止し得る。いくつかの実施形態では、初期AMDを有する対象の治療は、中期AMDへの進行を遅らせるかまたは防止し得る。いくつかの実施形態では、眼は、GA及び血管新生AMDの両方を有する。いくつかの実施形態では、眼は、GAを有するが、滲出型AMDを有さない。
【0107】
いくつかの実施形態では、対象は、黄斑変性、脈絡膜血管新生(CNV)、網膜血管新生(RNV)、眼の炎症、または前述の任意の組み合わせを特徴とする眼の障害を有する。黄斑変性症、CNV、RNV、及び/または眼炎症は、この障害の定義及び/または診断上の特徴となり得る。これらの特徴の1つ以上を特徴とする例示的な障害としては、これらに限定されるものではないが、黄斑変性関連症状、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、増殖性硝子体網膜症、ブドウ膜炎、角膜炎、結膜炎、及び強膜炎が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、眼炎症の治療を必要とする。眼炎症は、結膜(結膜炎)、角膜(角膜炎)、上強膜、強膜(強膜炎)、ブドウ膜路、網膜、血管系、及び/または視神経などの多くの眼の構造に生じ得る。眼炎症の証拠としては、眼内の白血球(例、好中球、マクロファージ)などの炎症関連細胞の存在、内因性炎症メディエーター(複数可)の存在、眼痛、充血、光過敏、かすみ目、及び飛蚊症などの1つ以上の症状が挙げられ得る。ブドウ膜炎は、眼のブドウ膜、例えば虹彩、毛様体、または脈絡膜を含むブドウ膜の構造のいずれかにおける炎症を指す一般用語である。ブドウ膜炎の特定の種類としては、虹彩炎、虹彩毛様体炎、毛様体炎、扁平部炎及び脈絡膜炎が挙げられる。いくつかの実施形態では、眼の障害は、ベーチェット病である。いくつかの実施形態では、眼の障害は、緑内障などの視神経損傷(例えば、視神経変性)を特徴とする眼の障害である。追加の眼の障害としては、例えば、網膜色素変性症、黄斑浮腫、Vogt-Koyangi-Harada症候群、鳥ショット網膜絨毛膜炎、交感神経性眼炎、眼の二斑性天疱瘡様天疱瘡、眼の天疱瘡、非動脈性虚血性視神経障害、術後炎症、及び網膜静脈閉塞が挙げられる。
【0108】
C.神経系障害
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、神経系、例えば、中枢神経系(CNS)及び/または末梢神経系(PNS)に影響を及ぼす補体媒介性障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、神経系(例えば、中枢神経系(CNS)及び/または末梢神経系(PNS))に影響を及ぼす補体媒介性障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象に投与される。このような障害の例としては、例えば、神経変性障害、例えば、多発性硬化症、他の脱髄性疾患(例えば、視神経脊髄炎または慢性炎症性脱髄性多発性神経障害(CIDP))、筋萎縮性側索硬化症、慢性疼痛、線維筋痛、脳卒中、脳内出血、アレルギー性神経炎、糖尿病性神経障害、ハンチントン病、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、ルビー小体認知症(すなわち、ルビー小体を伴う認知症またはパーキンソン病認知症)、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、皮質基質底症候群、ピック病、軽度認知障害、外傷性脳損傷、外傷性脊髄損傷、多系萎縮、慢性外傷性脳炎、クルツェルトジャコブ病、ギルラインバレ症候群、自己免疫神経性脳炎、及び脳髄性転移症が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、神経因性疼痛、例えば、末梢神経の小繊維及び/またはCNSの脊椎-視床皮質系への損傷を伴う体性感覚経路を伴う病変から生じる。
【0109】
ある特定の実施形態では、障害は脳卒中であり、方法は、1つ以上の脳卒中症状の発症直後、例えば、1つ以上の脳卒中症状の発症(例えば、脱力の突然の発症、ぼやけたまたはそうでなければ視覚障害、マラリアまたはそうでなければ言語障害)から約5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、または4時間以内、に脳卒中を経験した対象に、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、PEG化コンプスタチン類似体(例えば、ペグセタコプラン)を投与することを含む。ある特定の実施形態では、障害は、急性の発症を有し、症状は、数分または数時間にわたって(例えば、24時間以下の期間にわたって、または48時間以下の期間にわたって)現れる。いくつかの実施形態では、方法は、脳卒中の診断後すぐに(例えば、約5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、または4時間以内に)脳卒中を経験した対象に、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用してPEG化コンプスタチン類似体を投与することを含む。
【0110】
D.腎臓障害
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、補体媒介性腎臓障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、補体媒介性腎臓障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象に投与される。かかる障害としては、例えば、腎炎、例えば、糸球体腎炎、例えば、膜増殖性糸球体腎炎(MPGN)(例えば、MPGN I型、MPGN II型、またはMPGN III型)、例えば、免疫複合体膜増殖性糸球体腎炎(IC-MPGN)が挙げられる。いくつかの実施形態では、障害は、IgA腎症(IgAN)、原発性膜性腎症、または糖尿病性腎症である。いくつかの実施形態では、障害は多嚢胞性腎疾患(PKD)である。いくつかの実施形態では、障害は、C3糸球体症である。いくつかの実施形態では、障害は、腎臓における1つ以上の補体活性化産物、例えばC3bを含む糸球体沈着物によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療は、かかる沈着物のレベルを減少させる。いくつかの実施形態では、補体媒介性腎臓障害に罹患した対象は、タンパク尿(尿中の異常に高いレベルのタンパク質)及び/または異常に低い糸球体濾過量(GFR)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療は、タンパク尿の減少及び/またはGFRの増加もしくは安定化をもたらす。
【0111】
E.呼吸器障害
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、補体媒介性腎臓障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、補体媒介性腎臓障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、急性呼吸窮迫症候群に罹患しているか、またはそのリスクを有する。いくつかの実施形態では、呼吸器疾患は、例えば、喘息(例えば、アレルギー性喘息)、肺気腫、慢性炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、放射線誘発性肺損傷、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎(アレルギー性肺炎としても知られる)、好酸球性肺炎、間質性肺炎、サルコイド、ウェゲナー肉芽腫症、肺塞栓症及び梗塞、呼吸困難、喀血、気管支収縮、または閉塞性気管支炎である。
【0112】
F.筋骨格障害
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、筋骨格系に影響を及ぼす補体媒介性障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、骨格筋系に影響を与える補体媒介性障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象に投与される。このような障害の例としては、炎症性関節状態(例えば、関節リウマチまたは乾癬性関節炎などの関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、ライター症候群、痛風)が挙げられる。いくつかの実施形態では、筋骨格系疾患は、冒された身体部分(複数可)の痛み、硬直及び/または運動制限などの症状をもたらす。炎症性筋疾患としては、皮膚筋炎、多発性筋炎が挙げられ、その他の様々な疾患は、筋力低下を引き起こす原因不明の慢性筋肉炎症の障害である。いくつかの実施形態では、補体媒介性筋骨格系障害は、重症筋無力症である。
【0113】
G.移植
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、補体媒介性損傷から移植片を保護するために使用される。移植片は、本開示の様々な実施形態では、移植前、移植中、及び/または移植後に、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)と接触させることができる。別の実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、移植片の除去前に(例えば、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して)ドナーに投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、移植片の導入中及び/または導入後に(例えば、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して)レシピエントに投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、移植片の導入前に(例えば、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して)レシピエントに投与される。いくつかの実施形態では、対象は、移植片を受けた後(例えば、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して)、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)を受ける。
【0114】
いくつかの実施形態では、移植片は、腎臓、肝臓、肺、膵臓、または心臓などの実質臓器であるかまたはこれらを含む。いくつかの実施形態では、移植片は、骨、軟骨、筋膜、腱、靱帯、角膜、強膜、心膜、皮膚、心臓弁、血管、羊膜、または硬膜であるかまたはこれらを含む。いくつかの実施形態では、移植片は、心肺移植片または膵臓腎臓移植片などの複数の臓器を含む。いくつかの実施形態では、移植片は、完全な臓器または組織未満を含む。例えば、移植片は、臓器または組織の一部、例えば、肝葉、血管の一部、皮弁、または心臓弁を含み得る。いくつかの実施形態では、移植片は、元の組織から単離されているが少なくとも一部の組織構造、例えば膵島を保持している単離細胞または組織断片を含む調製物を含む。いくつかの実施形態では、調製物は、結合組織を介して互いに付着していない単離細胞、例えば、末梢血及び/または臍帯血、または全血、または赤血球(RBC)もしくは血小板などの任意の細胞含有血液製剤に由来する造血幹細胞または前駆細胞を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、移植片は、異種移植片(すなわち、ドナー及びレシピエントは異なる種である)、自己移植片(すなわち、体の一部から同じ個体における体の別の部分への移植片)、同移植片(すなわち、ドナー及びレシピエントは遺伝的に同一である)、または同種移植片(すなわち、ドナー及びレシピエントは遺伝的に同一でない同じ種のメンバーである)である。
【0116】
H.虚血/再灌流傷害
虚血再灌流(I/R)傷害は、外傷後の組織損傷、ならびに心筋梗塞、脳卒中、重度の感染症、血管疾患、動脈瘤修復、心肺バイパス、移植などの一時的な血流の中断に伴うその他の状態における組織損傷の要因である。外傷の場面では、全身性低酸素血症、低血圧、打撲、コンパートメント症候群、血管損傷による局所的な血液供給の遮断により虚血が引き起こされ、代謝が活発な組織に傷害を与える。血液供給の回復は、強力な全身性炎症反応を引き起こす。再灌流後、3つの主要な補体経路は全て活性化され、協調的または独立して作用し、多数の臓器系に影響を及ぼすI/R関連の有害事象に関与する。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、最近(例えば、以前の2、4、8、12、24、または48時間以内に)外傷、例えば、例えば、全身性低酸素血症、低血圧、及び/または血液供給の局所的中断に起因して、対象をI/R傷害の危険にさらす外傷を経験した対象に(例えば、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して)投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、血管内に(例えば、本明細書に記載される用量及び/または投与レジメンを使用して)、任意選択で、負傷した身体部分を供給する血管内に、または身体部分に直接投与され得る。いくつかの実施形態では、対象は、脊髄傷害、外傷性脳傷害、熱傷、及び/または出血性ショックを有する。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、外科的手順、例えば、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、組織、臓器、または体の部分への血流を一時的に阻害すると予想される外科的手順、例えば、一時的に阻害する外科的手順、例えば、組織、臓器、または体の部分への血流を一時的に阻害すると予想される外科的手順の前(例えば、その前の1、2、4、8、12、24、または48時間以内)、または後(例えば、その後の1、2、4、8、12,24、または48時間以内)に、対象に投与される。かかる手順の例としては、心肺バイパス術、血管形成術、心臓弁修復/置換術、動脈瘤修復、または他の血管手術が挙げられる。本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、外科的手順の前、後、及び/またはそれと重複する期間に(例えば、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して)投与され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、MI、血栓塞栓性脳卒中、深部静脈血栓症、または肺塞栓症に罹患している対象に投与される。いくつかの実施形態では、コンプスタチン類似体は、事象の後1、2、4、8、12、24、または48時間以内に投与される。本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)(例えば、アルテプラーゼ(アクチベーターゼ)、レテプラーゼ(レタバーゼ)、テネクテプラーゼ(TNKase))、アニストレプラーゼ(エミナーゼ)、ストレプトキナーゼ(カビキナーゼ、ストレプトカーゼ)、またはウロキナーゼ(アボキナーゼ)などの血栓溶解剤と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、血栓溶解剤の前、後、及び/またはそれと重複する期間に投与され得る。
【0120】
I.その他の障害
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、外皮系に影響を及ぼす補体媒介性障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、外皮系に影響を与える補体媒介性障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象に投与される。このような障害の例としては、例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、類天疱瘡、天疱瘡、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、強皮症、強皮筋炎、シェーグレン症候群、及び慢性蕁麻疹が挙げられる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、胃腸系に影響を与える補体媒介性障害、例えば、炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、消化器系に影響を及ぼす補体媒介性障害、例えば、炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎に罹患している、またはそのリスクを有する対象に投与される。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、鼻副鼻腔炎または心筋炎などの補体媒介性炎症性障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、鼻副鼻腔炎または心筋炎などの補体媒介性炎症性障害に罹患している、またはリスクを有する対象に投与される。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、産後甲状腺炎)、肝炎(例えば、C型肝炎)、膵炎、パンニキュラ炎、またはMYH9関連障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して、甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、産後甲状腺炎)、肝炎(例えば、C型肝炎)、膵炎、扁桃体炎、またはMYH9関連障害に罹患しているか、またはそのリスクを有する対象に投与される。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)は、IL-2療法中のインターロイキン-2誘発性毒性、心筋梗塞、心肺バイパスもしくは腎バイパスにおけるポンプ後症候群、アテローム性動脈硬化、血液透析、腎虚血、大動脈再建後の腸間膜動脈再灌流、感染症もしくは敗血症、免疫複合体障害及び自己免疫疾患、肝線維症、線維性粉塵疾患、鼻ポリーポシス、寄生虫症、グッドパスチャー症候群、免疫複合体関連炎症、抗リン脂質症候群、がん、歯周炎、歯肉炎、または肥満症を(例えば、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用して)治療するために使用される。
【0125】
いくつかの実施形態では、補体媒介性の状態、障害または疾患は、別の治療剤または診断剤の投与に二次的な補体活性化である。例えば、いくつかの実施形態では、補体媒介性の状態、障害または疾患は、遺伝子治療(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、またはレンチウイルスベクター等のウイルスベクターによる遺伝子治療)に二次的な補体活性化または細胞治療に二次的な補体活性化である。いくつかの実施形態では、対象は、造血幹細胞移植(HSCT-TMA)に二次的にTMAに罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、薬物誘発性TMAに罹患している。いくつかの実施形態では、別の治療薬剤の投与の前及び/または後における、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)の本明細書に記載のコンプスタチン類似体の投与は、かかる治療薬剤の有効性及び/または安全性を高め得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、補体媒介性の状態、障害または疾患は、血液透析または体外膜酸素化(ECMO)中に生じるような、異物への血液の曝露に二次的に生じる補体活性化である。いくつかの実施形態では、方法は、(i)透析手順の開始前(例えば、透析の開始の約2時間、1時間、30分、または15分前)、及び/または(ii)透析手順中、及び/または(iii)透析手順の終了後(例えば、透析手順の終了後、約15分、30分、1時間、または2時間)、対象にPEG化コンプスタチン類似体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、(i)ECMOの開始前(例えば、ECMOの開始前の約2時間、1時間、30分、または15分前)、及び/または(ii)ECMOの間、及び/または(iii)ECMOの終了後(例えば、透析手順の終了後の約15分、30分、1時間、または2時間)に、対象にPEG化コンプスタチン類似体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、透析またはECMO回路の1つ以上の成分(例えば、チューブ、膜)に血液が曝露される対象における補体活性化を阻害する方法は、本明細書に記載の対象にPEG化コンプスタチン類似体を静脈内投与することを含む(例えば、本明細書に記載の用量及び/または投与レジメンを使用する)。
【0127】
VI.併用療法
いくつかの態様では、本開示の方法は、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)を単独で、または1つ以上の追加の療法と組み合わせて投与することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の療法は、免疫応答を調節する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、ペグセタコプラン)は、別の免疫調節療法を用いた療法を既に受けている対象に投与される。いくつかの実施形態では、別の免疫調節療法が、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)を受ける対象に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)及び別の免疫調節療法の両方が、対象に投与される。
【0128】
免疫調節療法の例としては、がんワクチン、養子縁組T細胞または抗体療法、免疫チェックポイント遮断またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫調節療法としては、インターロイキン等の薬剤(例えば、IL-2、IL-7、IL-12);顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)等のサイトカイン、インターフェロン;CXCL13、CCL26、CXCL7等の様々なケモカイン;抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-Ll、抗LAG3及び抗B7-H3等の免疫チェックポイント遮断のアンタゴニスト;合成シトシンホスフェート-グアノシン(CpG)、オリゴデオキシヌクレオチド、グルカン、シクロホスファミド等の制御性T細胞(Treg)のモジュレーター、または他の免疫調節剤が挙げられる。一実施形態では、免疫調節療法は、4-IBBに対するアゴニスト抗体(CD137)を含む。いくつかの実施形態では、免疫調節療法は、マクロファージモジュレーター、例えばビンダリットである。いくつかの実施形態では、免疫調節療法は、TNFα阻害剤、例えばヒュミラである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、PEG化コンプスタチン類似体、例えば、ペグセタコプラン)の投与は、かかる第2の療法単独の投与と比較して、第2の療法の低減された投与レジメン(例えば、個々の用量のより少ない量、投与頻度の低減、用量の低減、及び/または全体的な曝露の低減を伴う)の投与を可能にし得る。理論に拘束されることを望むものではないが、いくつかの実施形態では、第2の療法の低減投与レジメンは、それがなければ生じ得る1つ以上の望ましくない有害作用を回避し得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、かかる低減された用量は、本明細書に記載のコンプスタチン類似体(例えば、ペグセタコプラン)の投与または第2の療法単独と比較して、より少ない体積で、またはより低い濃度を使用して、またはより長い投与間隔、または前述の任意の組み合わせを使用して投与することができる。
【0130】
GenBank受託番号を含む、本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。さらに、材料、方法、及び実施例は、例示的なものにすぎず、限定的であることを意図するものではない。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載されているものと類似または同等の方法及び物質を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法及び物質を本明細書に記載する。
【0131】
本開示は、以下の実施例によってさらに説明される。実施例は、説明の目的のためにのみ提供される。それらは、本開示の範囲または内容をいかなる形でも限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0132】
実施例1-例示的なPEG化コンプスタチン類似体の用量増加試験
方法
健康なヒトボランティアを4つのコホートに分け、その際、各コホートには、図1に示される約40kDのPEG(「PEG」)を有するPEG化コンプスタチン類似体を受ける4人の対象を含ませ、また各コホートには、プラセボを受ける1人の対象を含ませた。PEG化コンプスタチン類似体は、図面においてPEGと称される。PEG化コンプスタチン類似体(すなわち、PEG)を、酢酸緩衝生理食塩水(0.9%NaCl中の10mM NaOAc、pH5.0)中で製剤化し、以下の投与スケジュールに従って、シリンジポンプを使用して約30分間にわたって投与される単一のIVボーラス注射によって投与した。
【表2】
【0133】
分析の時点
PEG化コンプスタチン類似体(「PEG」)濃度の薬物動態分析、及び代替補体経路溶血活性(AH50)、総補体溶血活性(CH50)、C3及びC3aレベルの薬物動態分析のための血液試料を、投与後15、30、及び60分、4、8、12、及び24時間、ならびに3、4、5、6、7、8、15、22、29、及び43日目に採取した。対象は、身体検査、ECG、血液学、血清化学、注射部位反応のモニタリング、及び治療突発性有害事象(TEAE)について、2日目から8日目までの安全性期間中にモニタリングされた。15日目、22日目、29日目、及び43日目にフォローアップ安全性評価を行った。
【0134】
分析方法
AH50の方法:細胞表面上の補体の活性化に起因するウサギ赤血球(RA)の溶解に基づく溶血アッセイによって、AH50を測定した。AH50(50%代替補体溶血用量)を、試験血清または血漿の制限量を添加することによって、各成分について決定した。このアッセイでは、カルシウムを必要とする古典的経路の活性を遮断するような緩衝液を作製する。試験片の連続希釈液を等体積のRAと混合した。この機能的アッセイは、標的細胞が補体の作用によって溶解されたときに放出されたヘモグロビンの量を測定し、これから、溶解された細胞の割合を算出した。ヘモグロビンスペクトルの主要なピークを415nmの波長で読み取った。各アッセイについて、ランを5点標準及び5点の特徴付けられたQC対照で検証した。
【0135】
AH50の計算:アッセイラン間の検証可能な連続性のために、AH50アッセイは、既知のAH50活性を有するヒト血清標準を使用して行った。標準の連続希釈を使用して、その50%溶解点(血清(X)の希釈の逆数に対するパーセント溶解(Y)から形成された最良の適合線が50%に達する点)を確立した。希釈系列が50%ポイントにまたがる溶解を生じた場合、50%ポイントに最も近い3つのポイントを使用して、線の傾き及び切片を線形回帰によって決定した。パーセント溶解が非常に低く、希釈液のいずれも50%溶解を生じなかった場合、S状曲線がその下限に達するとスロープが劇的に変化するため、シリーズの2つの最高点を使用した。試験からの各検体を同じ方法で希釈し、個々の50%溶解点を線形回帰によって決定した。
【0136】
C3a分割生成物の試験:C3aに対する特異的モノクローナル抗体でプレコーティングしたマイクロタイタープレートを使用して、ELISA(BD Pharmingen optEIA)によって、C3aを測定した。標準試料、対照試料及び試験試料を希釈し、重複してウェル内に配置し、インキュベートして、ウェル内において分割生成物を抗体に結合させた。非結合タンパク質を洗い流した後、酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲートした抗分割生成物二次抗体を、プレート上の一次抗体に結合した分割生成物と反応させた。適切なインキュベーション時間及び洗浄後、酵素の発色基質をウェルに添加し、発生した色の強度を分光光度法で決定した。各アッセイにおいて3つのQC検体のランを行った。
【0137】
C3a ELISAの計算:アッセイのための標準を含有する各ウェルの光学密度(OD)を、標準の濃度(キットメーカー、BD Pharmingenによって提供される)が独立変数(X)である線形回帰計算(Microsoft Excel)において従属変数(Y)として入力した。次いで、ログ-ログの回帰分析から得られた勾配(m)及び切片(b)を使用して、未知数(対照及び試験片)の濃度を計算した。直線の式を使用して、ログ/ログ解を使用して未知の値を計算した。LnY=mLnX+b、Xに関する:X=exp(LnY-b)/m*希釈。
【0138】
C3: C3レベルを、BindingSite SPA Plusで測定した。SPA Plusは、比濁イムノアッセイによってタンパク質濃度を測定する。試験する検体を、目的とする分析物に対する過剰なポリクローナル抗体の固定濃度と混合する。これは、大きな抗原-抗体免疫複合体の形成をもたらす。検体を希釈して、抗原濃度が抗体と同等の点に近い点に到達する。光が懸濁液を通過すると、一部が透過し、光学レンズシステムによってフォトダイオード上に集束される。透過光の量は、試料中の特定のタンパク質濃度に間接的に比例する。濃度は、較正曲線を参照して自動的に計算される。したがって、試料中の分析物(凝集を引き起こしているC3)の量を容易に決定することができる。C3濃度は、g/Lとして表される。
【0139】
C3の計算:比濁アッセイの場合、吸収される光の量の変化(透過量の逆)は、分析物と特定の抗体との間の凝集量に依存する。それによって、試料中の分析物(凝集を引き起こしているC3)の量が決定される。
【0140】
結果
20人の対象を登録し、コホートごとに4:1でPEGまたはプラセボに割り当てた(PEG-200mg、n=4;PEG-600mg、n=4;PEG-1500mg、n=4;PEG-2300mg、n=4;プールしたプラセボ、n=4)。単回のIV投与後、ほとんどのコホートについて、投与後1時間(注入開始)にPEGのピーク濃度(Cmax)が観察された(平均血清濃度:PEG-200mg、61μg/mL;PEG-600mg、193μg/mL;PEG-2300mg、708μg/mL))が、ただしPEG-1500mgを除く(4時間で542μg/mL)。注入終了時のPEG濃度は、観察されたCmaxと同様であった。PEG濃度は、単一指数関数的に低下し、末端除去半減期は、コホート1~3で200~222時間の範囲であり、コホート4では285時間に増加した(図2)。IV投与後のPEGの全身クリアランスは、コホート間で類似していた。
【0141】
全てのPEGコホートにおいて、平均AH50値の早期、即時の減少が1時間以内に検出され、1500mg及び2300mgの用量が、投与開始後1時間から検出不可能なレベルまでAH50を減少させた(図3)。平均AH50値の減少は、それぞれ200、600、1500、及び2300mgのPEGの単回用量の後、少なくとも12、72、144、及び168時間維持された。全てのPEG群は、プラセボと比較して、統計的に有意に大きいAH50の平均最大減少を示した(p<0.0001)。
【0142】
平均CH50は、全てのコホートで投与すると直ちに減少した(データ示さず)。投与開始1時間後にPEG-2300mg群でベースラインからの最大平均減少(-71.3U/mL、-28.23%)が生じ、投与開始24時間後までにベースラインに戻った。PEG-1500mg群における平均CH50の減少(最大平均減少-59.8U/mL、-23.80%)は、少なくとも48時間保持された。PEG-1500mg用量群のみが統計的に有意であり(p<0.05)、プラセボと比較して平均CH50の平均最大減少幅が大きかったが、この結果は、投与後336時間でCH50の減少幅がはるかに大きかったこの群の1人の被験者によって歪んでいた可能性がある。
【0143】
遅延後、全てのPEG群において平均C3が増加し、PEG-600mg群を除く全てのPEG群において投与開始168時間後にピークに達し、投与開始120時間後にピークに達した(データ示さず)。平均C3レベルは、4週目をはるかに超えて上昇したままであった。C3レベルの最大平均増加は、PEG-2300mg群で生じた(+1.0923mg/mL、+90.33%)。C3の平均最大増加量は、用量とともに増加した。PEG-600mg、PEG-1500mg及びPEG-2300mg群は全て、プラセボと比較して、統計的に有意に大きいC3の平均最大増加を達成した(p<0.05)。
【0144】
全てのPEG群は、平均C3aレベルにおいて1時間以内に初期の急速な低下を有し、全ての用量群は投与の24時間以内にトラフ平均C3aレベルを有した(データ示さず)。平均C3aにおける用量関連の減少は観察されず、全ての用量は、投与開始4時間後にPEG-1500mg群においてベースラインからの最大平均C3a減少(57%の減少)を生じさせる、47%~57%の最大平均減少を記録した。プラセボでは、C3aレベルの変化は見られず、全てのPEG群は、プラセボと比較して、統計学的に有意なC3aの平均最大減少を示した(p<0.05)。
【0145】
本試験に参加した20名の被験者のうち、11名(55.0%)が治療関連有害事象(TEAE)を経験した。PEG群で最も一般的なTEAEは、頭痛(n=6、37.5%)、季節性ウイルス感染に起因する上気道感染症(n=2、12.5%)、下痢(n=2、12.5%)であった。重篤な有害事象、死亡、または重篤なTEAEは発生しなかった。PEG-2300mgコホートの1人の被験者(5.0%)は、中等度のTEAE(注入関連反応、めまい、ぬるぬる、吐き気)を経験し、試験の中止に至った。
【0146】
これらの結果は、酢酸ナトリウム溶液中のIV PEGの投与が、良好な安全性プロファイルを有し、健康な対象において、投与後1時間以内に補体活性を低下させながら、PEG血清濃度を効果的に増加させることを示唆する。
【0147】
実施例2-例示的なPEG化コンプスタチン類似体の集中投与試験
方法
ペグセタコプラン(PEGASUS(NCT03500549)、PADDOCK(NCT02588833)、及びPRINCE(NCT04085601)試験を含む)のPNHオープンラベル拡張試験に登録した患者であって、急性介入を正当化する急性溶血を経験した患者には、治験責任医師の裁量で、約40kDのPEGを有する、図1に示されるPEG化コンプスタチン類似体(「PEG」)の集中的な皮下(SC)または集中的な静脈内(IV)投与を受ける機会を提供した。集中投与レジメンの適格性基準には、正常上限(ULN)の2倍超の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、及び1つの新たなもしくは悪化する溶血の徴候もしくは症状(例えば、ヘモグロビン(Hb)の減少、ヘモグロビン尿症、または疲労)を含めた。
【0148】
集中投与レジメンを図4に示す。1080mgのPEG SCを週に2回投与され、急性溶血を示した患者は、1080mgの単回用量のIV PEG、または1080mgのSC PEGを24時間ごとに3回用量(集中的なPEG治療)で受け、続いて3日ごとに1080mgのSC PEGの増加した維持レジメンを受けた。3日ごとまたは週3回1080mgのSC PEGを投与され、急性溶血を示した患者は、集中的なPEG治療を受け、続いて1080mgのSC PEGの維持用量を週3回受けた。集中的なPEG治療を受けた後に追加の急性溶血事象を経験した患者は、追加の用量の集中的なSC PEGまたは集中的なIV PEGを受けた。さらに、13人の患者のうち4人(9人の集中的なSC PEGのうち3人及び4人の集中的なIV PEG治療患者のうち1人)は、急性溶血の事象の管理中(1~19日目の間)に少なくとも1回の赤血球(RBC)輸血を受けた。解析されたデータは、患者が複数の急性溶血事象を経験した場合の第1の事象に関連する。
【0149】
急性溶血事象中のHb(1日目)及びLDH(1日目、2日目、7~12日目、14~19日目)のレベルを測定した。7~12日目及び14~19日目の測定については、集中的なPEG治療の7日以上及び14日以上後の最初の利用可能な測定をそれぞれ使用した。各患者について、少なくとも6日間は、7日目~12日目及び14日目~19日目の測定の間であった。安全性は、有害事象の発生率及び重症度によって評価した。
【0150】
結果
合計で、20~72歳の非盲検拡張試験に参加した137人の患者のうち13人が集中的なPEG治療を受けた。オープンラベル拡張試験に参加したとき、これらの13人の患者は、平均LDHレベルが249U/L(5人の患者>ULN、11人の患者<1.5倍のULN)であり、平均Hbレベルが12.0g/dL(範囲:8~15g/dL)であった。
【0151】
集中的なPEG治療の前から1日目まで、Hbは、6人の患者で2g/dL未満、7人の患者で2g/dL超低下した。1人の患者における最大の低下は、4.9g/dL(11.4g/dLから6.5g/dLへ)であった。さらに、図6に示すように、平均Hbは、少なくとも1回のRBC輸血を受けた患者において、及びRBC輸血を受けなかった患者において増加した。LDHレベルは、一連のローカルラボ及び中央ラボによって決定され、ローカルラボの値は、それぞれのラボからの通常の範囲に基づいて中央ラボに標準化された。1日目に、9人の患者は、LDH<10倍のULNを有し、4人の患者は、LDH>10倍のULNを有した(集中的なSCPEGで治療された2人の患者、及び集中的なIVPEGで治療された2人の患者)。急性溶血事象の管理には、9人の患者における集中的なSCPEG投与、及び4人の患者における単一の集中的なIVPEG投与が含まれる。図5に示すように、LDHレベルは、評価可能な患者12人中8人(集中的なSCPEGで治療された患者8人中4人、集中的なIVPEGで治療された患者4人中4人)、及び7~12日目の13人全てで、1日目から2日目まで低下した。LDHレベルは、13人の患者のうち11人(集中的なSCPEGで治療された9人の患者のうち7人、及び集中的なIVPEGで治療された4人の患者のうち3人)において、7日目~12日目から14日目~19日目までさらに低下した。
【0152】
有害事象の発生率及び重症度は、全体的な非盲検延長試験で見られたものと同様であった。13人の患者のうち9人(69%)が治療中に発生した有害事象を経験し、13人の患者のうち4人(31%)が重篤な有害事象を経験した。治療中に発生した有害事象の大部分(76%)は軽度であった。髄膜炎や血栓症の有害事象は発生しなかった。重篤な有害事象を経験した4人の患者のうち、3人は、別のラウンドの集中療法につながる第2の溶血事象を経験した。有害事象のいずれも、治療中止に至らなかった。
【0153】
これらの結果は、PEGの集中的なSCまたは集中的なIV投与レジメンが、急性溶血事象の効果的な管理及びLDHレベルの潜在的な迅速な制御を提供し得ることを示唆する。さらに、PEGによる集中的な治療は、良好な安全性及び忍容性プロファイルを示した。
【0154】
均等物
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、以下の特許請求の範囲に記述されるようなものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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【国際調査報告】