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特表2024-540301中空糸膜および該中空糸膜を封止する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】中空糸膜および該中空糸膜を封止する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/00 20060101AFI20241024BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B01D63/00 500
B01D63/02
B01D69/10
B01D69/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024526611
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2022080374
(87)【国際公開番号】W WO2023078838
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021128878.9
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516074388
【氏名又は名称】メンビオン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MEMBION GmbH
【住所又は居所原語表記】Schwerzfelder Str. 33, D-52159 Roetgen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディアク フォルメリング
(72)【発明者】
【氏名】クラウス フォッセンカウル
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA03
4D006JA02A
4D006JA02C
4D006JA10A
4D006JA18A
4D006JA30A
4D006JA30C
4D006JB09
4D006MA01
4D006MA09
(57)【要約】
中空糸膜(40)の片側を封止する方法であって、中空糸膜(40)は、内側空間(41)と、内側空間(41)を径方向で取り囲む壁(42)とを有し、壁(42)は内側のテキスタイル層(43)を有し、低粘度の樹脂(46)の部分(45)が、少なくとも部分的に中空糸膜(40)の端面(48)を通って中空糸膜(40)の端領域(44)内に流れ込み、端領域(44)を外側自由表面(49)でもって封止し、UV光によって硬化させられる、方法が開示される。さらに、中空糸膜(40)であって、内側空間(41)と、内側空間(41)を取り囲む内側のテキスタイル層(43)を備えた壁(42)とを有し、中空糸膜(40)の端領域(44)が、硬化前は低粘度である樹脂(46)の、外側自由表面(49)を有する、UV光によって硬化した部分(45)により封止されている、中空糸膜(40)が開示される。濾過運転中の中空糸膜(40)の端領域(44)同士の間のブロッキングの傾向を低減するために、部分(45)が、過圧を利用して端面(48)を通って端領域(44)内に完全に送達され、最大5秒後に硬化させられ、硬化後に中空糸膜の内部にのみ位置することが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の片側を封止する方法であって、前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は、内側空間(5,29,41,53,66)と、前記内側空間(5,29,41,53,66)を径方向で取り囲む壁(6,35,42,54,67)とを有し、前記壁(6,35,42,54,67)は内側のテキスタイル層(7,23,43,55)を有し、低粘度の樹脂(3,33,46,58)の部分(2,32,45,57)が、少なくとも部分的に前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の端面(10,34,48,60)を通って前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の端領域(11,25,44,56)内に流れ込み、前記端領域(11,25,44,56)を外側自由表面(13,38,49,61)でもって封止し、UV光(15,37)によって硬化させられる、方法において、
前記部分(2,32,45,57)は、
・ 過圧を利用して前記端面(10,34,48,60)を通って前記端領域(11,25,44,56)内に完全に送達され、最大5秒後に硬化させられ、
・ 前記硬化後に前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の内部にのみ位置する、
方法。
【請求項2】
前記内側空間(5,29,41,53,66)の前記外側自由表面(13,38,49,61)は凹状に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記送達は0.5~2.5秒の範囲内で行われ、前記端領域(11,25,44,56)の前記内側空間(5,29,41,53,66)は、最初に前記樹脂(3,33,46,58)で充填され、前記送達の終了とUV照射の開始との間に、前記樹脂(3,33,46,58)が前記内側空間(5,29,41,53,66)から前記壁(6,35,42,54,67)に前記端領域(11,25,44,56)の膜表面(14,36,51)まで浸透し、その際に前記壁(6,35,42,54,67)に染み込む少なくとも1秒の待機時間があり、その間、前記内側空間(5,29,41,53,66)は前記樹脂(3,33,46,58)によって封止されたままであることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の長手方向軸線(4,27)が、前記封止時に水平位置にあることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は、前記封止時に前記端領域(11,25,44,56)の前方でグリッパ(17,26)により保持され、その間、自動化されながら連続して、
・ 管セクション(19)に開口したホッパ(18)を、前記管セクション(19)が膜表面(14,36,51)を密接に取り囲むまで前記端領域(11,25,44,56)に押し被せ、
・ 前記部分(2,32,45,57)を、前記管セクション(19)の自由端部(21)から前記管セクション(19)を通って前記端領域(11,25,44,56)内に送達し、
・ 前記ホッパ(18)を再び前記端領域(11,25,44,56)から押し外し、
・ 前記端領域(11,25,44,56)上にUV硬化ユニット(22)を配置し、前記UV硬化ユニット(22)によって前記端領域(11,25,44,56)にUV光(15,37)を照射し、それによって前記部分(2,32,45,57)を硬化させる
ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
液体を濾過するための膜フィルタ(64,71)であって、それぞれ1つの内側空間(5,29,41,53,66)と、前記内側空間(5,29,41,53,66)を取り囲む内側のテキスタイル層(7,23,43,55)を備えた壁(6,35,42,54,67)とを有する複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)を備え、前記複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は、下部で基礎要素(68,73)に固定されていて、それぞれ上部に、液体中に自由に浮遊する個々に封止された端部(69)を有し、前記基礎要素(68,73)は、前記複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の前記内側空間(5,29,41,53,66)が、前記内側空間(5,29,41,53,66)から濾液を捕集するために接続された透過液捕集室(70)を有する、膜フィルタ(64,71)において、
前記端部(69)は、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法に従って封止されていることを特徴とする、膜フィルタ(64,71)。
【請求項7】
中空糸膜(1,24,40,52,65,72)であって、内側空間(5,29,41,53,66)と、前記内側空間(5,29,41,53,66)を径方向で取り囲む内側のテキスタイル層(7,23,43,55)を備えた壁(6,35,42,54,67)とを有し、前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の端領域(11,25,44,56)が、硬化前は低粘度である樹脂(3,33,46,58)の、外側自由表面(13,38,49,61)を有する、UV光(15,37)によって硬化した部分(2,32,45,57)により封止されている、中空糸膜(1,24,40,52,65,72)において、
前記部分(2,32,45,57)は、前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の内部に完全に位置することを特徴とする、中空糸膜(1,24,40,52,65,72)。
【請求項8】
前記内側空間(5,29,41,53,66)の前記部分(2,32,45,57)の前記外側自由表面(13,38,49,61)は凹状に形成されていることを特徴とする、請求項7記載の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)。
【請求項9】
液体を濾過するための膜フィルタ(64,71)であって、下部で基礎要素(68,73)に固定されていて、それぞれ上部に、液体中に自由に浮遊する個々に封止された端部(69)を有する複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)を備え、前記基礎要素(68,73)は、前記複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の前記内側空間(5,29,41,53,66)が、前記内側空間(5,29,41,53,66)から濾液を捕集するために接続された透過液捕集室(70)を有する、膜フィルタ(64,71)において、
前記複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は、請求項7または8に従って形成されていることを特徴とする、膜フィルタ(64,71)。
【請求項10】
前記基礎要素(68,73)の前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は管(74)によって取り囲まれていることを特徴とする、請求項9記載の膜フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一に、中空糸膜の片側を封止する方法であって、中空糸膜は、内側空間と、内側空間を径方向で取り囲む壁とを有し、壁は内側のテキスタイル層を有し、低粘度の樹脂の部分が、少なくとも部分的に中空糸膜の端面を通って中空糸膜の端領域内に流れ込み、端領域を外側自由表面でもって封止し、UV光により硬化させられる、方法に関する。
【0002】
本発明は、また、中空糸膜であって、内側空間と、内側空間を取り囲む内側のテキスタイル層を備えた壁とを有し、中空糸膜の端領域が、硬化前に低粘度の樹脂のUV硬化部分により、外側自由表面でもって封止されている、中空糸膜に関する。
【0003】
このような方法および中空糸膜を有する膜フィルタは、米国特許出願公開第2013/0240436号明細書および米国特許出願公開第20090039012号明細書に基づき公知である。
【0004】
公知の方法では、中空糸膜の自由端部は、低粘度の光硬化性樹脂(接着剤)中に垂直に挿入され、低粘度の樹脂の部分が、中空糸膜の端面を通って中空糸膜の端領域に部分的に流れ込み、端領域を外側自由表面でもって封止し、UV光により硬化させられる。
【0005】
第一の公知の方法では、中空糸は硬化前に樹脂から取り出され、自由端部に液滴が残り、これが硬化させられる。この場合、液滴が外側に向けて外側自由表面も形成する。第二の公知の方法では、中空糸膜は、樹脂の入った型に挿入され、硬化するまでこの型にとどまる。その後、型が取り外され、封止された端部も同様に型の輪郭を有する外側自由表面を有する。
【0006】
どちらの方法でも、前記部分の一部が、中空糸膜の端領域の内側空間を満たし、別の一部が、端領域の膜の表面の外側を取り囲み、別の一部が、中空糸膜の端面を越えて延び、中空糸膜の端面を封止する。これにより、内側空間だけでなく、テキスタイル層と、それに被着された膜層、つまり、壁を含む中空糸膜全体が確実に封止される。
【0007】
中空糸膜の表面の外側の液滴の樹脂層は、同時に中空糸膜の端領域の厚肉化をもたらす。第一の公知の方法における液滴の最大直径は、中空糸膜の外径よりも0.1~1.6mm大きい。さらに、液滴は、膜の長手方向において、膜の端部断面を越えてかなり突出している。同様の比率は、第二の公知の方法にも当てはまる。
【0008】
このような膜をシングルヘッダ膜フィルタに使用することの欠点は、膜端部が厚肉化することで流路断面が小さくなり、膜フィルタ内の毛髪および繊維状化合物を中空糸膜の束から取り去ることが妨げられることである(殊に、膜束がハウジング、例えば管に一体化されている場合)。さらに、外側の厚肉化と、中空糸膜の端面の後方での材料適用とによって、封止のために、比較的大きな分量の樹脂が必要となる。
【0009】
本発明の背景として、特開平11-319505号公報は、壁が内側のテキスタイル層で補強されていない複数の中空糸膜を同時に封止する方法を記載している。中空糸膜の端部は、第一に、例えば粘着テープで固定することにより、互いに間隔をあけて列状に位置決めされる。続けて、中空糸膜の自由繊維端部は、低粘度の樹脂中に膜の長手方向に垂直に挿入される。この場合、樹脂は、毛細管現象によってのみ中空糸膜の内側空間を上昇し、それも膜端部が挿入されている樹脂リザーバの表面よりもかなり高くなる。
【0010】
中空糸膜が樹脂リザーバから取り出された後、UV光の照射により樹脂が硬化させられる。中空糸膜の間隔を予めあけておくことで、膜の内側空間の毛細管現象による高さと同じ高さまで、毛細管によって膜の間を樹脂が外側にも上昇するのを防ぐことができる。すなわち、中空糸膜の内側空間の樹脂レベルは、中空糸膜の外側よりもかなり高くなる。硬化後、中空糸膜の挿入された端部は膜表面の外側に樹脂層を有する。幾つかの膜がそれらの端部で結着してしまうおそれがある。膜表面で硬化した樹脂によって起こり得る膜の結着および外側の厚肉化を確実になくすために、樹脂が硬化した後に膜の端部を切断し、樹脂の部分が膜の内側空間に依然として残って中空糸膜の端部を封止し、中空糸膜の外側には樹脂が残らないようにする。切断が完了した繊維に残る樹脂のこの部分は、中空糸膜の端面を通して毛細管現象によって純粋に端領域に導入された。内側空間で端部を切断した後、この部分は膜の端面に向かって滑らかな切断面を有する。
【0011】
背景には、この方法を使用するための前提条件として、中空糸膜の内側空間に十分に高い毛細管効果があり、これにより内側空間の樹脂は、挿入されたときの外側での樹脂レベルよりもかなり高く上昇する。このような高い毛細管効果は、一般に、内側空間の直径が非常に細い、テキスタイル層のない中空糸膜にのみ生じる。例として、約0.35mmの内側空間の直径がこの方法の背景に示されている。内側空間の直径が大きくなるにつれて、毛細管効果は減少し、ある時点で樹脂は内側空間の十分な高さまで上昇しなくなり、この方法を使用することができなくなる。
【0012】
同様に、内側のテキスタイル層のない中空糸膜についても、中国特許第110960988号明細書は、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂を溶媒で薄くし、樹脂粒子が繊維層の細孔に浸透するように膜束に加圧下で導入し、ガス流で溶媒を乾燥させ、室温で数時間、またはマイクロ波で少なくとも数分間樹脂を硬化させることを提案している。このような長時間にわたると、薄い樹脂は、内側のテキスタイル層の毛細管現象によって膜の内側空間から完全に吸収されてしまい、それによって内側空間が再び開くことになる。
【0013】
本発明の更なる背景として、国際公開第2012/147932号は、膜フィルタの中空糸膜を補修する方法を記載しており、この方法では、膜はヘッダ内で上部および下部で固定されている。膜の欠陥領域は切り取られ、その結果、切断された中空糸膜の2つの自由端部が生じ、これらは封止されなければならない。この場合、封止はホットグルーガンを使って手作業で行われる。中空糸膜の端部は、第一に、ホットグルーガンの先端部に短い長さで挿入される。この挿入を容易に実施するため、ホットグルーガンの先端部は膜の外径より大きくする。続けて、ホットグルーガンからホットグルーの部分が加圧下で押し出され、その一部だけが端面を通して中空糸膜の内側空間に到達する。続けて、ホットグルーガンは膜端部から取り外され、その後、その部分は冷却により硬化し、繊維端部を封止する。硬化した部分の最大直径は中空糸膜の外径よりもかなり大きく、さらに中空糸膜の端面を越えてかなり突出している。これら2点は、この方法の場合、自由端部を確実に封止するために重要である。なぜなら、ホットグルーは高温状態でも非常に高い粘度を有し、それゆえ膜の壁を貫通してこれを封止しないからである。したがって、ホットグルーが中空糸膜の外径の外側で膜の内側空間にプラグに加えて外層を形成し、さらには中空糸膜の端面を越えて中空糸膜の長手方向に突出している場合にのみ、繊維端部の封止を達成することができる。前述の刊行物では、膜端部の厚肉化については、中空糸膜の外径の1~2倍の値が示されており、中空糸膜の長手方向における端部断面の後方の樹脂層の長さについては、中空糸膜の外径の0.1~0.5倍の値が示されている。
【0014】
課題
本発明の課題は、中空糸膜の端領域同士の間のブロッキングの傾向を低減することである。
【0015】
解決手段
公知の方法から出発して、本発明によれば、前述の部分が、過圧により端面を通って端領域内に完全に送達され、最大5秒後に硬化させられ、硬化後に中空糸膜の内部にのみ位置することが提案される。
【0016】
このことは、中空糸膜の外側領域が樹脂により厚肉化されず、中空糸膜の端面の後方に、例えば樹脂液滴の形で樹脂が蓄積することもないという利点を有する。その結果、中空糸膜を封止するのに必要な樹脂の量はごく少量であり、これにより本発明に係る方法では、材料の使用量が少なく、したがってコスト効率がよい。さらに、過圧を利用して投入されること、および硬化するまでの待機時間が短いことから、中空糸膜を封止するのに必要な時間を制御することができ、したがって極めて少なく抑えることができるため、プロセスの自動化がより容易であり、したがってより経済的である。
【0017】
公知の中空糸膜から出発して、前記部分が中空糸膜の内部に完全に位置することが提案されている。
【0018】
その結果、膜は、その封止された端部に、毛髪および繊維状化合物が付着し得る樹脂厚肉化部がない。その結果、本発明に係る膜はブロッキング傾向が低い。
【0019】
本発明の背景から知られている特開平11-319505号公報による膜においても、硬化後、前記部分は中空糸膜の内部に完全に位置する。しかしながら、この膜は、内側のテキスタイル層を有する壁を有していない。特開平11-319505号公報に記載された方法は、内側空間に高い毛細管現象を有する中空糸膜でのみ機能する。毛細管現象により、内側空間の樹脂は膜の外側よりも高く上昇し、硬化後に樹脂で厚くなった膜の端部を切断できるようにする必要がある。そうして初めて、膜端部に残った樹脂の部分が完全に中空糸膜の内部に入る。この方法は、内側のテキスタイル層を有する壁を備えた中空糸膜の場合、このような中空糸膜の内側空間での毛細管現象が十分ではないため機能しない。その理由は、低粘度の樹脂に対するテキスタイル層の吸引効果が非常に高いため、その結果、内側空間での毛細管効果がほとんど完全に消されてしまうからである。テキスタイル強化中空糸膜の自由膜端部を低粘度の樹脂に挿入すると、内側空間に入った樹脂は直ちにテキスタイル層に吸い込まれる。したがって、内側空間の樹脂レベルは上昇せず、それどころか、中空糸膜が挿入された樹脂表面より下にとどまることさえある。このことは、欧州特許出願公開第2825296号明細書に基づき公知の膜でも実証されている。この公知の文献の図2図2Aおよび図3 B1からは、内側空間の樹脂レベルが、膜端部が挿入された樹脂表面より下でも硬化することが読み取られる。すなわち、内側空間の毛細管効果はほとんど存在していない。したがって、背景技術である特開平11-319505号公報の方法は、このようなテキスタイル強化膜では機能しない。
【0020】
本発明に係る方法の利点は、背景技術の方法のように膜端部を切断することなく、樹脂の部分が中空糸膜の内部に完全に位置することである。その結果、方法工程が省略され、製造プロセスにおける材料収率がより高くなり、すなわち、より多くの膜材料が最終製品に含まれることになる。したがって、本発明に係る方法は、よりコスト効率が高く、より単純である。
【0021】
本発明に係る膜では、一般にポリマー層がテキスタイル層の外側に適用され、これが膜の分離特性を決定する。膜は、好ましくは精密濾過または限外濾過の分野に属するが、ナノ濾過または低圧逆浸透膜の分野に由来してもよい。テキスタイル層は膜に高い機械的強度を与え、このことは、例えば廃水処理のための膜分離活性汚泥法(MBR)の運転時に有利である。ここでは、一般に、細孔径0.02~0.4μmの範囲の精密濾過膜または限外濾過膜が使用される。通常使用される片側が圧締めされた中空糸膜の外径は1.5~3.0mmで、内径は0.7~1.8mmの範囲である。
【0022】
本発明に係る中空糸膜のテキスタイル層は、膜に高い機械的強度を付与し、このことは、廃水処理用の膜分離活性汚泥法(MBR)における過酷な運転条件においてまさに有利である。内側のテキスタイル層が、例えば、織物、経編物もしくは繊維布チューブ、緯編物チューブまたはフリースもしくはフェルトチューブであることは本発明の範囲内である。しかしながら、中空糸膜を強化するのに適した他の任意のテキスタイル材料、例えば、糸、撚糸またはロープでできたストリップであってもよい。
【0023】
このような中空糸膜の壁にテキスタイル層を設けて片側を封止する場合の特に重要な課題は、膜の内側空間だけでなく、その壁、殊にその中にあるテキスタイル層も封止することである。代替的な封止方法では、繊維強化壁の封止は常に、硬化した樹脂が中空糸膜の表面の外側と中空糸膜の端面の後方との連続領域を取り囲むことによって達成され、それによって中空糸膜の壁が端領域に完全に埋め込まれ、この埋め込みを介しても封止される。
【0024】
封止された膜が膜の外側と端面の後方とのそのような連続領域を有しない本発明に係る方法では、樹脂はテキスタイル層を含む端領域の壁に染み込まなければならない。これを達成するためには、高粘度の媒体はテキスタイル層への浸透が悪いため、硬化前の樹脂は低粘度でなければならない(更なる背景技術である国際公開第2012/147932号の方法も参照されたい)。
【0025】
内側空間の硬化した樹脂の部分の外側自由表面が凹状に形成されていることは、本発明の範囲内である。このことは、樹脂の粘度が非常に低い場合に達成される。なぜなら、この場合、樹脂は内側空間からテキスタイル層に素早く浸透し、中空糸膜の端面からも吸い取られるからである。こうして自由表面が内側に凹んで形成されることには、樹脂が硬化する前に膜の外側の端部にある樹脂部分がすべて内側に吸い込まれ、したがって膜端部は非常にきれいで、硬化した樹脂残留物による凹凸がないという利点がある。このことは、中空糸膜の濾過運転で毛髪および繊維状化合物を取り去るのに最適である。
【0026】
テキスタイル層の良好で迅速な染み込みを達成するためには、200~900mPas(cP)の範囲の樹脂の粘度が有利である。
【0027】
この方法が、他のUV硬化性接着剤または同様の粘度を有する他の媒体を用いて封止することも本発明の範囲内であり、これらはすべて、「樹脂」という用語の下に本発明の枠内で本明細書にまとめられている。
【0028】
低粘度の樹脂がテキスタイル層に浸透して染み込むまでの時間があることも、本発明に係る方法の範囲内である。他方で、この時間は長すぎてはならない。さもないと、樹脂が内側空間からテキスタイル層に浸透し、内側空間が再び開いて樹脂によって封止されなくなるおそれがあるからである。つまり、課題は、テキスタイル層に樹脂を十分な時間浸透させ、これに染み込ませ、次いで、内側空間がまだ樹脂で封止されている間に、UV光を使って樹脂を素早く硬化させることである。つまり、硬化は、限られた時間ウィンドウ内で行わなければならない。
【0029】
樹脂の部分の送達も時間的に重要である。これが遅すぎると、樹脂全体がテキスタイル層に直接浸透し、中空糸膜の内側空間が樹脂で満たされず、すなわち自由端部が機能的に封止されない。したがって、送達は、第一に、内側空間を樹脂で満たすのに十分な速さで行わなければならない。これを実現するために、送達は過圧を用いて行われる。
【0030】
樹脂を送達する際の過圧は、ポンプで発生させることもできるし、過圧設定された貯蔵容器に樹脂を入れることもできる。樹脂は、注入針またはピストンを介して膜の端領域に送達することもできる。樹脂の部分は、例えばシリンジまたはポンプを使用する場合、ポンプ容積を規定して予め分離しておくこともできるし、例えばポンプを介してリザーバから連続的に送達することもできる。
【0031】
膜端部の機能的な封止を達成するためには、つまり、封止プロセスの時間的なタイミングが最も重要である。したがって、本発明に係る方法では、送達が0.5~2.5秒の範囲内で行われ、端領域の内側空間が、最初に樹脂で充填され、送達の終了とUV照射の開始との間に、樹脂が内側空間から壁に端領域の膜表面まで浸透し、その際に壁に染み込む少なくとも1秒の待機時間があり、その間、内側空間が樹脂によって封止されたままであることが有利である。
【0032】
さらに、本発明に係る方法では、中空糸膜の長手方向軸線が、封止時に水平位置にある。このことは、重力に起因して樹脂が内側空間から流出するおそれが減少するため、自動化プロセスにとって利点がある。その結果、プロセスがよりきれいに行われ、自動化がより単純になる。
【0033】
方法の可能な自動化の一環として、中空糸膜は、封止時に端領域の前方でグリッパにより保持され、その間、自動化されながら連続して、
・ 管セクションに開口したホッパを、管セクションが膜表面を密接に取り囲むまで端領域に押し被せ、
・ 前記部分を、管セクションの自由端部から端面を通って端領域内に送達し、
・ ホッパを再び端領域から押し外し、
・ 端領域の上方にUV硬化ユニットを位置決めし、UV硬化ユニットによって端領域にUV光を照射し、それによって前記部分を硬化させる。
【0034】
前述のプロセス工程は、最適な封止結果を得るために、先に説明した時間ウィンドウ内で行われることが有利である。したがって、待機時間は、ホッパを押し外す時間と、UV硬化ユニットを中空糸膜の端領域の上方に位置決めしてからUV光による硬化プロセスを開始するまでの時間とからなる。
【0035】
封止される中空糸膜は、自動化プロセスで膜製造プラントから直接取り出され、グリッパにより把持されることは本発明の範囲内である。グリッパは、膜をその端領域で把持し、すなわち、まだ封止されていない膜自由端部は、グリッパを越えて突出している。この場合、膜端部は一方向または別の方向に曲がっていることもある。
【0036】
ホッパは、中空糸膜の自由端部を、封止されたグリッパの後方で「キャッチ」し、ホッパまたは管セクションの軸線の中心に置くことで、ホッパを被せ嵌めた際に膜をホッパに通す役割を果たす。ホッパの角度は45°が有利であることが実証されている。膜がホッパに通されると、膜はホッパの軸線方向に規定された位置にある。次いで、樹脂は管セクションの自由端部から、過圧を利用して樹脂供給装置を介して中空糸膜の端面を通ってその端領域に送達される。
【0037】
送達された後、液状樹脂の残りは、当初、端面の後方に凸状の膨らみとして内側空間から突出することがある。待機時間の間に、テキスタイル層の吸引効果により、樹脂はこの膨らみから繊維に吸い込まれる。さらに、この吸い込みにより、中空糸膜の内側空間の硬化した樹脂プラグは、内側空間に向かって凹んだ内側自由表面と、端面に向かって凹んだ外側自由表面とを有するようになる。樹脂が硬化した後、次の膜を把持し封止する前に、グリッパが膜を離す。
【0038】
さらに、管セクションの内径が中空糸膜の外径よりも0.05~0.2mm大きいことも、本発明に係る方法の範囲内である。一方では、これにより内径が十分に大きくなり、ホッパを被せ嵌めた際に中空糸膜をホッパに容易かつ確実に滑り込ませることができるようになる。他方では、内径は、膜表面と管セクションの内壁との間の隙間に樹脂が可能な限り入り込まないようにするほどに小さい。
【0039】
技術的なプロセスでは、膜表面の楕円度および性質に応じて、ごく少量の樹脂が幾つかの箇所で隙間に入り込むことが避けられない場合がある。このような場合に隙間に入り込む樹脂の量を極めて少なく抑えるためには、管セクションのうち、膜表面を密接に取り囲む部分を可能な限り長くすると有利である。ここでは、少なくとも7mmの長さが有利であることが実証されている。
【0040】
本発明に係る方法では、液体樹脂は中空糸膜の端面を通して端領域に送達されるだけであるため、外部から樹脂の部分へのUV光のアクセスは容易ではない。それにもかかわらず、効果的で迅速な硬化時間を達成するためには、膜表面に到達するUV硬化ユニットの光出力が比較的高くなければならない。テキスタイル層を有する従来の中空糸膜の場合、これは5~40W/cmの範囲にあるべきである。
【0041】
UV光による樹脂の部分の硬化時間は、0.5秒~2.5秒であることが望ましい。光出力が低い、すなわち硬化が遅すぎると、樹脂が内側空間からさらに壁に浸透し、それによって内側空間が再び開いてしまうおそれがある。光出力が高すぎると、膜が損傷したり、膜材料から、例えばグリセリンなどの物質が無秩序に蒸発してUVランプが損傷したりするおそれがある。
【0042】
さらに、本発明に係る方法の間、ホッパが温度制御されていると、封止時の樹脂の温度と、温度とともに粘度とを所定の範囲に維持するために有利であることが実証されている。その結果、封止プロセス中の各方法工程の規定された時間の条件として、樹脂の一定の流動特性が保証される。このことはまた、プロセスの自動化の一環としてプロセスを制御するのに有利である。
【0043】
本発明の範囲には、液体を濾過するための膜フィルタであって、それぞれ1つの内側空間と、内側空間を取り囲む内側のテキスタイル層を備えた壁とを有する中空糸膜を備え、中空糸膜は、下部で基礎要素に固定されていて、それぞれ上部に、液体中に自由に浮遊する個々に封止された端部を有し、基礎要素は、中空糸膜の内側空間が、内側空間から濾液を捕集するために接続された透過液捕集室を有する、膜フィルタもさらに含まれる。本発明によれば、このような膜フィルタの中空糸膜の端部は、本発明に係る方法のうちの1つの方法に従って封止されている。
【0044】
このような膜フィルタは、一般にシングルヘッダ膜フィルタと呼ばれる。本発明に係るこのような膜フィルタは、例えば、廃水を処理するための膜分離活性汚泥法(MBR)での浸漬運転に適している。ここでの利点は、MBR汚泥からの毛髪および繊維状化合物が、膜フィルタの運転中に自由に上方に取り去られ、膜フィルタ内に固着しないことである。
【0045】
本発明の範囲には、中空糸膜であって、内側空間と、内側空間を径方向で取り囲む内側のテキスタイル層を備えた壁とを有し、中空糸膜の端領域が、硬化前は低粘度である樹脂の、外側自由表面を有するUV硬化部分により封止されており、前記部分は、中空糸膜の内部に完全に位置する、中空糸膜もさらに含まれる。
【0046】
内側空間の前記部分の外側自由表面が凹状に形成されていると有利である。なぜなら、その場合、膜の外側の端部に、外向きの樹脂部分による凹凸がないため、膜端部が非常に滑らかできれいであるからである。
【0047】
さらに、本発明の範囲には、液体を濾過するための膜フィルタであって、下部で基礎要素に固定されていて、それぞれ上部に、液体中に自由に浮遊する個々に封止された端部を有する中空糸膜を備え、基礎要素は、中空糸膜の内側空間が、内側空間から濾液を捕集するために接続された透過液捕集室を有する、膜フィルタにおいて、中空糸膜が、直前の2段落のうちの一方に従って形成されることを特徴とする、膜フィルタが含まれる。
【0048】
そのうえ、本発明に係る膜フィルタにおいて、基礎要素の中空糸膜が管によって取り囲まれていると有利である。その結果、例えば、膜分離活性汚泥法(MBR)で膜フィルタが操作される場合、膜を洗浄するために導入された空気が膜束内に保持され、より効果的に利用される。殊にこのような管を使用する場合、膜が端部断面に樹脂の厚肉化部を有しないことが有利である。このような厚肉化部は、流路断面の不利な減少につながり、その結果、濾過される液体の流れが妨げられ、中空糸膜から毛髪および繊維状化合物を取り去ることが妨げられる。
【0049】
以下、実施例を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1a】本発明に係る第1の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図1b】本発明に係る第1の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図1c】本発明に係る第1の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図1d】本発明に係る第1の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図1e】本発明に係る第1の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図1f】本発明に係る第1の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図2a】本発明に係る第1の方法を実施するための更なる詳細を断面で示す図である。
図2b】本発明に係る第1の方法を実施するための更なる詳細を断面で示す図である。
図2c】本発明に係る第1の方法を実施するための更なる詳細を断面で示す図である。
図2d】本発明に係る第1の方法を実施するための更なる詳細を断面で示す図である。
図2e】本発明に係る第1の方法を実施するための更なる詳細を断面で示す図である。
図2f】本発明に係る第1の方法を実施するための更なる詳細を断面で示す図である。
図2g】本発明に係る第1の方法を実施するための更なる詳細を断面で示す図である。
図3a】本発明に係る第2の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図3b】本発明に係る第2の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図3c】本発明に係る第2の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図3d】本発明に係る第2の方法のプロセスステップを断面で示す図である。
図4a】本発明に係る2つの異なる中空糸膜の断面を示す図である。
図4b】本発明に係る2つの異なる中空糸膜の断面を示す図である。
図5】本発明に係る中空糸膜を有する第1の膜フィルタの断面を示す図である。
図6】本発明に係る中空糸膜を有する第2の膜フィルタの断面を示す図である。
【0051】
実施例
図に示された図面は縮尺どおりではない。以下に説明する本発明に係る方法、中空糸膜または膜フィルタの詳細のうち、示されていないものはすべて、先に説明した本発明に係る方法、中空糸膜または膜フィルタの実施形態と同一である。
【0052】
図1a~図1fは、UV光により硬化可能な低粘度の樹脂3の部分2で、組紐強化された中空糸膜1の片側を封止するための、本発明に係る第1の方法のプロセスステップを断面で示す(図1a)。当該部分の体積は50μlである。樹脂3の粘度は300mPas(cP)である。
【0053】
中空糸膜1は長手方向軸線4を有し、この軸線は封止時に水平位置にある。中空糸膜1はさらに、内側空間5と、内側空間5を径方向で取り囲む壁6とを有する。壁6は、中空糸膜1を補強するための内側のテキスタイル層7を有し、壁6の外径8は2.6mm、内側空間の直径9は1.4mmである。
【0054】
部分2は、中空糸膜1の端面10を通って中空糸膜1の端領域11内に過圧で完全に送達される。この場合、樹脂3はまず内側空間5を満たし、部分2が送達され始めるとすぐに樹脂3は壁6とテキスタイル層7とに染み込み始める(図1b)。送達終了時には、部分2は中空糸膜1の内部にのみ存在し、まず端面10の外側後方に液状のままの樹脂3の凸状の膨らみ12を有する(図1c)。送達時間は1秒である。
【0055】
樹脂3が端領域11に送達された後に始まる待機時間の間に、樹脂3は内側空間5から壁6に浸透し、テキスタイル層7を含めてこれに染み込む。この場合、樹脂3は凸状の膨らみ12から中空糸膜1の内側空間5に引っ込む(図1d)。
【0056】
待機時間の更なる経過で、樹脂3が内側空間5にさらに引き込まれ、内側空間5から壁6に浸透するにつれて、部分2の外側自由表面13が内側空間5で凹状に形成される(図1e)。同時に、樹脂は壁を伝って中空糸膜1の外側の膜表面14に浸透する。
【0057】
待機時間は、最後にUV光15を照射して終了し、紫外線15によって樹脂3は硬化する。これにより、端領域11における部分2の現行の分布が固定される。待機時間は合計2秒で、硬化はさらに1.4秒を要する。
【0058】
硬化後、樹脂3の部分2は中空糸膜1の内部にのみ位置し、内側空間5に形成された樹脂プラグ16は凹状の外側自由表面13を有する。このようにして、部分2は、中空糸膜1の膜表面14が、端領域11において中空糸膜1を厚肉化させる樹脂3の層を外側に有することなく、また、中空糸膜1の端面10の外側後方に硬化した樹脂3が存在することなく、テキスタイル層7を含む中空糸膜1の内側空間5および壁6を封止する。
【0059】
図2a~図2gは、本発明に係る第1の方法を実施するための更なる詳細を断面で示す。
【0060】
中空糸膜1は、その連続生産のための製造プロセスから取り出され、端領域11の前方でグリッパ17によって保持される。グリッパ17は、封止プロセス全体にわたって中空糸膜1を保持する。中空糸膜1の端領域11は、把持プロセス中に長手方向軸線4に対して一方向または別の方向にわずかに曲がることができる。端領域11を「キャッチ」し、センタリングするために、管セクション19に開口するホッパ18を、管セクション19が膜表面14を密接に取り囲むまで端領域11に押し被せる(図2a~2b)。膜表面を密接に取り囲む管セクション19の部分は約8mmである。
【0061】
管セクション19は、中空糸膜1の外径8よりも0.1mm大きい内径20、つまり2.7mmを有する。続けて、部分2が管セクション20の自由端部21から端面10を通って端領域11内に送達される。この送達は、5μlという極めて小さなストロークを有するダイヤフラムポンプとして設計されたマイクロ計量ポンプによって行われる。したがって、50μlの樹脂3の部分2は、マイクロ計量ポンプの合計10回のストロークに相当し、これは、樹脂3を送達するのに要する合計時間1秒の間に行われる。
【0062】
中空糸膜の楕円度に応じて、少量の樹脂3が管セクション19の内径20と中空糸膜1の外径8との間の隙間に入り込むことがある。これは、部分2の最大0.1%の割合であり、0.05mm未満の壁6の厚肉化を引き起こす。
【0063】
続けて、待機時間が始まり、その間にホッパ18が端領域11から再び押し外され、ホッパ18の代わりにUV硬化ユニット22が端領域11に押し被せられることによって端領域11の上方に位置決めされる。UV硬化ユニット22を位置決めした後、端領域にUV光15を照射して部分2を硬化させる。UV硬化ユニット22は100Wの設置電力を有し、膜表面14に照射されるUV放射の全光出力は24W/cmである。UV光15による樹脂3の部分2の硬化時間は1.4秒である。
【0064】
硬化後、硬化ユニット22は端領域11から再び押し外され、グリッパ17は中空糸膜1を再び離す。これにより中空糸膜1の自動化された封止プロセスが完了する。
【0065】
図3a~図3dは、本発明に係る第2の方法のプロセス工程を断面で示す。テキスタイル層23で補強された中空糸膜24は、中空糸膜24の長手方向軸線27が注入針28と整列するように、グリッパ26によって端領域25に保持される(図3a)。
【0066】
続けて、注入針28は中空糸膜24の内側空間29に挿入される。注入針28は、内側空間の直径31よりも0.1mm小さい針の外径30を有する(図3b)。
【0067】
その後、樹脂33の部分32が注入針28を通り、ひいては、中空糸膜24の端面34も通って中空糸膜24の内側空間29に送達され、これにより、その部分はまず内側空間29で膨張し、これを封止する。その後、待機時間が始まり、その間に樹脂33が内側空間29から中空糸膜24の壁35に浸透し、テキスタイル層23と壁35全体とに染み込む。
【0068】
待機時間の間に、注入針28は再び内側空間29から引き抜かれる。待機時間は、樹脂33が壁35を通って膜表面36まで浸透したときに終了する。その後、グリッパ26が中空糸膜を再び離す前に、UV光37によってその部分が硬化させられ、封止プロセスが終了する。
【0069】
樹脂33の硬化した部分32は、内側空間に外側自由表面38を有し、これは凹状に形成されている。内側空間29に向いた、内側空間29の硬化した部分32の内側自由表面39も凹状に形成されている。
【0070】
図4aは、内側空間41および壁42を有する本発明に係る第1の方法により製造された本発明に係る第1の中空糸膜40の断面図を示し、壁42は内側のテキスタイル層43を有する。中空糸膜40の端領域44は、UV光により硬化した樹脂46の部分45で封止され、この樹脂46は、テキスタイル層43を含む壁42に浸透し(染み込み)、中空糸膜40の端面48に向かって凹状に形成された外側自由表面49を有するプラグ47を内側空間41に形成する。内側空間41の内側に向いた内側自由表面50も凹状に形成されている。この部分45は、中空糸膜40の端面47を起点として、中空糸膜40の内部にのみ位置している。樹脂46の部分45の0.1%未満のごくわずかな割合が、中空糸膜40の膜表面51の外側にも硬化することがある。これらにより、壁42の最大厚さは0.05mm未満となる。
【0071】
図4bは、本発明に係る第2の中空糸膜52の断面図を示し、この中空糸膜52は、本発明に係る第2の方法により製造され、内側空間53および壁54を有し、壁54は内側のテキスタイル層55を有する。中空糸膜52の端領域56は、UV光により硬化した樹脂58の部分57で封止され、この部分57は、テキスタイル層54を含む壁54に浸透し(染み込み)、中空糸膜52の端面60に向かって凹状に形成された外側自由表面61を有する樹脂プラグ59を内側空間53に形成する。内側空間53に向かって内側に向いた内側自由表面62も凹状に形成されている。部分58は、端面60から距離63を起点として中空糸膜52の内部にのみ位置している。
【0072】
図5は、本発明に係る中空糸膜65で液体を濾過するための第1の膜フィルタ64であって、それぞれ内側空間66と、内側空間66を取り囲む壁67とを有し、中空糸膜65は、下部で基礎要素68に固定されていて、それぞれ上部に、液体中に自由に浮遊する個々に封止された端部を有し、基礎要素68は、中空糸膜65の内側空間66が、内側空間66から濾液を捕集するために接続された透過液捕集室70を有し、端部69は、本発明に係る方法の1つにより封止される膜フィルタ64の断面図を示す。
【0073】
図6は、本発明に係る中空糸膜72を有する液体を濾過するための第2の膜フィルタ71であって、下部で基礎要素73に取り付けられていて、上部で、液体中に自由に浮遊する個々に封止された膜フィルタ71の断面図を示す。膜フィルタ71は、第1の膜フィルタ64とほぼ同じ構造である。さらに、基礎要素73の中空糸膜72は管74によって取り囲まれている。その結果、中空糸膜72をフラッシングするために膜フィルタ71に導入された空気は、中空糸膜72の束の中でより良好に保持され、それによってフラッシング目的のためにより良好に利用される。
【符号の説明】
【0074】
1 中空糸膜
2 部分
3 樹脂
4 長手方向軸線
5 内側空間
6 壁
7 テキスタイル層
8 外径
9 内側空間の直径
10 端面
11 端領域
12 膨らみ
13 外側自由表面
14 膜表面
15 UV光
16 樹脂プラグ
17 グリッパ
18 ホッパ
19 管セクション
20 内径
21 自由端部
22 UV硬化ユニット
23 テキスタイル層
24 中空糸膜
25 端領域
26 グリッパ
27 長手方向軸線
28 注入針
29 内側空間
30 針外径
31 内側空間の直径
32 部分
33 樹脂
34 端面
35 壁
36 膜表面
37 UV光
38 外側自由表面
39 内側自由表面
40 中空糸膜
41 内側空間
42 壁
43 テキスタイル層
44 端領域
45 部分
46 樹脂
47 プラグ
48 端面
49 外側自由表面
50 内側自由表面
51 膜表面
52 中空糸膜
53 内側空間
54 壁
55 テキスタイル層
56 端領域
57 部分
58 樹脂
59 樹脂プラグ
60 端面
61 外側自由表面
62 内側自由表面
63 距離
64 膜フィルタ
65 中空糸膜
66 内側空間
67 壁
68 基礎要素
69 端部
70 透過液捕集室
71 膜フィルタ
72 中空糸膜
73 基礎要素
74 管
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の片側を封止する方法であって、前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は、内側空間(5,29,41,53,66)と、前記内側空間(5,29,41,53,66)を径方向で取り囲む壁(6,35,42,54,67)とを有し、前記壁(6,35,42,54,67)は内側のテキスタイル層(7,23,43,55)を有し、低粘度の樹脂(3,33,46,58)の部分(2,32,45,57)が、少なくとも部分的に前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の端面(10,34,48,60)を通って前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の端領域(11,25,44,56)内に流れ込み、前記端領域(11,25,44,56)を外側自由表面(13,38,49,61)でもって封止し、UV光(15,37)によって硬化させられる、方法において、
前記部分(2,32,45,57)は、
・ 過圧を利用して前記端面(10,34,48,60)を通って前記端領域(11,25,44,56)内に完全に送達され、最大5秒後に硬化させられ、
・ 前記硬化後に前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の内部にのみ位置する、
方法。
【請求項2】
前記内側空間(5,29,41,53,66)の前記外側自由表面(13,38,49,61)は凹状に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記送達は0.5~2.5秒の範囲内で行われ、前記端領域(11,25,44,56)の前記内側空間(5,29,41,53,66)は、最初に前記樹脂(3,33,46,58)で充填され、前記送達の終了とUV照射の開始との間に、前記樹脂(3,33,46,58)が前記内側空間(5,29,41,53,66)から前記壁(6,35,42,54,67)に前記端領域(11,25,44,56)の膜表面(14,36,51)まで浸透し、その際に前記壁(6,35,42,54,67)に染み込む少なくとも1秒の待機時間があり、その間、前記内側空間(5,29,41,53,66)は前記樹脂(3,33,46,58)によって封止されたままであることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の長手方向軸線(4,27)が、前記封止時に水平位置にあることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は、前記封止時に前記端領域(11,25,44,56)の前方でグリッパ(17,26)により保持され、その間、自動化されながら連続して、
・ 管セクション(19)に開口したホッパ(18)を、前記管セクション(19)が膜表面(14,36,51)を密接に取り囲むまで前記端領域(11,25,44,56)に押し被せ、
・ 前記部分(2,32,45,57)を、前記管セクション(19)の自由端部(21)から前記管セクション(19)を通って前記端領域(11,25,44,56)内に送達し、
・ 前記ホッパ(18)を再び前記端領域(11,25,44,56)から押し外し、
・ 前記端領域(11,25,44,56)上にUV硬化ユニット(22)を配置し、前記UV硬化ユニット(22)によって前記端領域(11,25,44,56)にUV光(15,37)を照射し、それによって前記部分(2,32,45,57)を硬化させる
ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
液体を濾過するための膜フィルタ(64,71)であって、それぞれ1つの内側空間(5,29,41,53,66)と、前記内側空間(5,29,41,53,66)を取り囲む内側のテキスタイル層(7,23,43,55)を備えた壁(6,35,42,54,67)とを有する複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)を備え、前記複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は、下部で基礎要素(68,73)に固定されていて、それぞれ上部に、液体中に自由に浮遊する個々に封止された端部(69)を有し、前記基礎要素(68,73)は、前記複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の前記内側空間(5,29,41,53,66)が、前記内側空間(5,29,41,53,66)から濾液を捕集するために接続された透過液捕集室(70)を有する、膜フィルタ(64,71)において、
前記端部(69)は、請求項1または2記載の方法に従って封止されていることを特徴とする、膜フィルタ(64,71)。
【請求項7】
中空糸膜(1,24,40,52,65,72)であって、内側空間(5,29,41,53,66)と、前記内側空間(5,29,41,53,66)を径方向で取り囲む内側のテキスタイル層(7,23,43,55)を備えた壁(6,35,42,54,67)とを有し、前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の端領域(11,25,44,56)が、硬化前は低粘度である樹脂(3,33,46,58)の、外側自由表面(13,38,49,61)を有する、UV光(15,37)によって硬化した部分(2,32,45,57)により封止されている、中空糸膜(1,24,40,52,65,72)において、
前記部分(2,32,45,57)は、前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の内部に完全に位置することを特徴とする、中空糸膜(1,24,40,52,65,72)。
【請求項8】
前記内側空間(5,29,41,53,66)の前記部分(2,32,45,57)の前記外側自由表面(13,38,49,61)は凹状に形成されていることを特徴とする、請求項7記載の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)。
【請求項9】
液体を濾過するための膜フィルタ(64,71)であって、下部で基礎要素(68,73)に固定されていて、それぞれ上部に、液体中に自由に浮遊する個々に封止された端部(69)を有する複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)を備え、前記基礎要素(68,73)は、前記複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)の前記内側空間(5,29,41,53,66)が、前記内側空間(5,29,41,53,66)から濾液を捕集するために接続された透過液捕集室(70)を有する、膜フィルタ(64,71)において、
前記複数の中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は、請求項7または8に従って形成されていることを特徴とする、膜フィルタ(64,71)。
【請求項10】
前記基礎要素(68,73)の前記中空糸膜(1,24,40,52,65,72)は管(74)によって取り囲まれていることを特徴とする、請求項9記載の膜フィルタ。
【国際調査報告】