(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】無イベント生存期間(EFS)の増加のための回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害剤による処置
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20241024BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/4995 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/38 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P1/16
A61K31/4995
A61K31/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526620
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022048978
(87)【国際公開番号】W WO2023081370
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358246
【氏名又は名称】ミルム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MIRUM PHARAMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】ヴィグ,パメラ
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー,ウィル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BB01
4C086CB09
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
(57)【要約】
本発明は、概して、回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害剤を投与することによって胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、その処置が無イベント生存期間(EFS)の増加をもたらす方法に関する。本発明はまた、EFSを予測することによって、胆汁うっ滞性肝疾患の処置のためのIBAT阻害剤療法に対する反応の予測を提供するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、前記方法は、対象に治療有効量の回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害剤を投与することを含み、前記処置は、
a)総ビリルビン(TB);
b)総血清胆汁酸(sBA);および
c)痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される掻痒スコア
のうちの1つまたは複数を低減させることによって、対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる、前記方法。
【請求項2】
TBは約6.5mg/dL以下に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
sBAレベルは約200μmol/L以下に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ItchRO掻痒スコアは、IBAT阻害剤の初回投与時と比較して、少なくとも約1点低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
TB、sBA、または掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
TB、sBA、または掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
TB、sBA、または掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
TB、sBA、または掻痒スコアは、IBAT阻害剤の初回投与時と比較して低減される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
無イベント生存期間(EFS)を予測することによって、それを必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患の処置のためのIBAT阻害剤療法に対する反応の予測を提供するための方法であって、前記方法は、
総ビリルビン(TB)データ、総血清胆汁酸(sBA)データ、掻痒軽減データ、およびIBAT阻害剤での処置の開始時の対象の年齢のうちの1つまたは複数を得ること;および
前記対象について得られたデータを用いてEFSを予測すること
を含む、前記方法。
【請求項10】
EFSは、TBが約6.5mg/dL未満である場合に予測される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
TBは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
EFSは、IBAT阻害剤での処置後のsBAレベルが約200μmol/L未満である場合に予測される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
EFSは、IBAT阻害剤の初回投与時の掻痒と比較したIBAT阻害剤による処置後の掻痒の軽減が、少なくとも約1点である場合に予測され、掻痒は、痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
EFSは、処置開始時の対象の年齢が約36か月以上である場合に予測される、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
EFSは、肝代償不全、胆道迂回手術、肝移植または死亡のうちの1つまたは複数がない状態での生存期間を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
EFSは、肝移植がない状態での対象の生存期間を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
IBAT阻害剤による処置はさらに、胆汁うっ滞性掻痒症の軽減をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記投与は、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも18か月間の前記対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記投与は、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも2年間の前記対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である、請求項1または24に記載の方法。
【請求項26】
前記投与は、IBAT阻害剤の初回投与後6年間の前記対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である、請求項1、24および25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は小児胆汁うっ滞性肝疾患である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は成人胆汁うっ滞性肝疾患である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は、非閉塞性胆汁うっ滞、肝外胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞、原発性肝内胆汁うっ滞、続発性肝内胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)、PFIC1型、PFIC2型、PFIC3型、良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)、BRIC1型、BRIC2型、BRIC3型、中心静脈栄養関連胆汁うっ滞、腫瘍随伴性胆汁うっ滞、Stauffer症候群、妊娠性肝内胆汁うっ滞症、避妊薬関連胆汁うっ滞、薬物関連胆汁うっ滞、感染関連胆汁うっ滞、デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆石症、アラジール症候群(ALGS)、胆道閉鎖症、葛西手術後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆汁うっ滞、肝移植後関連肝疾患、腸管不全合併肝障害、胆汁酸媒介性肝障害、MRP2欠損症候群、または新生児硬化性胆管炎である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記胆汁うっ滞性肝疾患は、ALGS、PFIC、BRIC、PSC、PBC、または胆道閉鎖症である、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
sBAは、TCA、TUDCA、TCDCA、TDCA、TLCA、GCA、GUDCA、GCDCA、GDCA、GLCA、CA、UDCA、CDCA、DCA、およびLCAのうちの1つまたは複数を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
必要とする対象における掻痒症を伴う胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、前記方法は、治療有効量のIBAT阻害剤またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、前記投与は、痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される掻痒スコアを少なくとも約1点低減させることによって、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも18か月間前記対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる、方法。
【請求項33】
前記掻痒症を伴う胆汁うっ滞性肝疾患は、ALGS、PFIC、BRIC、PSC、PBC、および胆道閉鎖症からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
必要とする対象における総血清胆汁酸(sBA)の上昇を伴う胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、前記方法は、治療有効量のIBAT阻害剤またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、前記投与は、sBAを約200μmol/L以下に低減させることによって、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも18か月間前記対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる。
【請求項38】
前記sBAの上昇を伴う胆汁うっ滞性肝疾患は、ALGS、PFIC、BRIC、PSC、PBC、および胆道閉鎖症からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
sBAは、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
sBAは、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
sBAは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
sBAは、TCA、TUDCA、TCDCA、TDCA、TLCA、GCA、GUDCA、GCDCA、GDCA、GLCA、CA、UDCA、CDCA、DCA、およびLCAのうちの1つまたは複数を含む、請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
必要とする対象における総ビリルビン(TB)の上昇を伴う胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、前記方法は、治療有効量のIBAT阻害剤またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、前記投与は、TBを約6.5mg/dL以下に低減させることによって、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも18か月間前記対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる。
【請求項44】
前記TBの上昇を伴う胆汁うっ滞性肝疾患は、胆道閉鎖症(BA)である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
TBは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記投与は、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも2年間の前記対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である、請求項32~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記投与は、IBAT阻害剤の初回投与後6年間の前記対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である、請求項32~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記IBAT阻害剤は1日1回投与される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記IBAT阻害剤は1日2回投与される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記IBAT阻害剤は、1回あたり約0.1mg~約100mgの量で投与される、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記IBAT阻害剤は、1回あたり約10mg~約100mgの量で投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記IBAT阻害剤は、1回あたり約20mg~約80mgの量で投与される、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記IBAT阻害剤は、約100μg/kg/日~1400μg/kg/日の量で投与される、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記IBAT阻害剤は、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日の量で投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記対象はBSEP欠損症を有する、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記IBAT阻害剤は、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記IBAT阻害剤は、
【化2】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記IBAT阻害剤は、
【化3】
である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記IBAT阻害剤は、
【化4】
である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記対象は小児対象である、請求項1~59のいずれかのいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記小児対象は0~18歳である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記IBAT阻害剤は経口投与される、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
IBAT阻害剤の10%未満が全身に吸収される、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
IBAT阻害剤の30%未満が全身に吸収される、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
必要とする小児対象におけるアラジール症候群を処置する方法であって、治療有効量のマラリキシバットまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、前記投与は、
a)総ビリルビン(TB)を約6.5mg/dL以下に低減させること;
b)総血清胆汁酸(sBA)を約200μmol/L以下に低減させること;および
c)痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される掻痒スコアを少なくとも約1点低減させること
のうちの1つまたは複数によって、マラリキシバットの初回投与後少なくとも18か月間前記対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる、方法。
【請求項66】
前記処置は、マラリキシバットの初回投与後少なくとも18か月間無肝移植生存期間(TFS)を増加させる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
マラリキシバットの初回投与後6年間の無イベント生存(EFS)を予測することによって、それを必要とする対象におけるアラジール症候群の処置のためのマラリキシバット療法に対する反応の予測を提供するための方法であって、前記方法は、
総ビリルビン(TB)データ、総血清胆汁酸(sBA)データ、掻痒軽減データ、およびマラリキシバットによる処置の開始時の対象の年齢のうちの1つまたは複数を得ること、および
前記対象について得たデータを用いてEFSを予測すること
を含む、方法。
【請求項68】
マラリキシバットはマラリキシバット塩化物である、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
sBAは、TCA、TUDCA、TCDCA、TDCA、TLCA、GCA、GUDCA、GCDCA、GDCA、GLCA、CA、UDCA、CDCA、DCA、およびLCAのうちの1つまたは複数を含む、請求項65~68のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2022年3月2日に出願された米国仮出願第63/315,762号、および2021年11月5日に出願された米国仮出願第63/276,480に対する優先権を主張し、これらの開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害剤を投与することによって胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、その処置が無イベント生存期間(event-free survival)(EFS)の増加をもたらす方法に関する。本発明はまた、EFSを予測することによって、胆汁うっ滞性肝疾患の処置のためのIBAT阻害剤療法に対する反応の予測を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患は、肝細胞における胆汁酸/塩の細胞内蓄積に関連しかつそれに続発することが多い、胆汁分泌障害(すなわち、胆汁うっ滞)に関連する肝疾患である。高胆汁血症は、胆汁酸または胆汁塩の血清濃度の上昇を特徴とする。胆汁うっ滞は、臨床病理学的に、閉塞性のしばしば肝外である胆汁うっ滞と、非閉塞性または肝内の胆汁うっ滞の2つの主要なカテゴリーに分類することができる。非閉塞性肝内胆汁うっ滞はさらに、構成的に欠陥のある胆汁分泌に起因する原発性肝内胆汁うっ滞と、肝細胞損傷に起因する続発性肝内胆汁うっ滞の2つの主要な亜群に分類することができる。原発性肝内胆汁うっ滞には、同様の臨床症状を有する主に成人型である良性反復性肝内胆汁うっ滞症、ならびに小児に影響を及ぼす疾患である進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)1型、2型および3型などの疾患が含まれる。
【0004】
小児の胆汁うっ滞性肝疾患は、わずかな割合の小児に影響を及ぼすが、治療には毎年かなりの医療費がかかる。現在、小児胆汁うっ滞性肝疾患の多くは、肝移植や手術などの侵襲的で費用のかかる処置を必要とする。長期無イベント生存期間(EFS)をもたらす効果的で低侵襲性の無移植生存(transplant-free survival)(TFS)処置が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の様々な非限定的な態様および実施形態を以下に説明する。
【0006】
一態様では、本発明は、それを必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、治療有効量の回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害剤を対象に投与することを含み、その処置は、
a)総ビリルビン(TB);
b)総血清胆汁酸(sBA);および
c)痒み報告アウトカム(Itch Reported Outcome)(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される掻痒スコア
のうちの1つまたは複数を低減させることによって、対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる方法を提供する。
【0007】
一実施形態では、TBは、約6.5mg/dL以下に低減される。
【0008】
一実施形態では、sBAレベルは、約200μmol/L以下に低減される。
【0009】
一実施形態では、掻痒のItchROスコアは、IBAT阻害剤の初回投与時と比較して、少なくとも約1点低減される。
【0010】
一実施形態では、TB、sBA、または掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される。一実施形態では、TB、sBA、または掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される。一実施形態では、TB、sBA、または掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される。
【0011】
一実施形態では、TB、sBA、または掻痒スコアは、IBAT阻害剤の初回投与時と比較して低減される。
【0012】
一態様では、本発明は、無イベント生存期間(EFS)を予測することによって、それを必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患の処置のためのIBAT阻害剤療法に対する反応の予測を提供するための方法であって、総ビリルビン(TB)データ、総血清胆汁酸(sBA)データ、掻痒軽減データ、およびIBAT阻害剤での処置の開始時の対象の年齢のうちの1つまたは複数を得ること、および対象について得られたデータを用いてEFSを予測することを含む方法を提供する。
【0013】
一実施形態では、EFSは、TBが約6.5mg/dL未満である場合に予測される。
【0014】
一実施形態では、TBは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される。
【0015】
一実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤での処置後のsBAレベルが約200μmol/L未満である場合に予測される。
【0016】
一実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される。一実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される。一実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される。
【0017】
一実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤の初回投与時の掻痒と比較したIBAT阻害剤による処置後の掻痒の軽減が、少なくとも約1点である場合に予測され、掻痒は、痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される。
【0018】
一実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される。一実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される。一実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される。
【0019】
一実施形態では、EFSは、処置開始時の対象の年齢が約36か月以上である場合に予測される。
【0020】
一実施形態では、EFSは、肝代償不全(hepatic decompensation)、胆道迂回手術(surgical biliary diversion)、肝移植、または死亡のうちの1つまたは複数がない状態での生存期間を含む。
【0021】
一実施形態では、EFSは、肝移植がない状態での対象の生存期間を含む。
【0022】
一実施形態では、IBAT阻害剤による処置はさらに、胆汁うっ滞性掻痒症の軽減をもたらす。
【0023】
一実施形態では、投与は、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも18か月間の対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である。一実施形態では、投与は、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも2年間の対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である。一実施形態では、投与は、IBAT阻害剤の初回投与後6年間の対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である。
【0024】
一実施形態では、胆汁うっ滞性肝疾患は小児胆汁うっ滞性肝疾患である。
【0025】
一実施形態では、胆汁うっ滞性肝疾患は成人胆汁うっ滞性肝疾患である。
【0026】
一実施形態では、胆汁うっ滞性肝疾患は、非閉塞性胆汁うっ滞、肝外胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞、原発性肝内胆汁うっ滞、続発性(secondary)肝内胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)、PFIC1型、PFIC2型、PFIC3型、良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)、BRIC1型、BRIC2型、BRIC3型、中心静脈栄養関連(total parenteral nutrition associated)胆汁うっ滞、腫瘍随伴性胆汁うっ滞、Stauffer症候群、妊娠性肝内胆汁うっ滞症、避妊薬関連胆汁うっ滞、薬物関連胆汁うっ滞、感染関連胆汁うっ滞、デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆石症、アラジール症候群(ALGS)、胆道閉鎖症、葛西手術後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆汁うっ滞、肝移植後関連肝疾患、腸管不全合併肝障害(intestinal failure associated liver disease)、胆汁酸媒介性肝障害、MRP2欠損症候群、または新生児硬化性胆管炎である。
【0027】
一実施形態では、胆汁うっ滞性肝疾患は、ALGS、PFIC、BRIC、PSC、PBC、または胆道閉鎖症である。
【0028】
一実施形態では、sBAは、TCA、TUDCA、TCDCA、TDCA、TLCA、GCA、GUDCA、GCDCA、GDCA、GLCA、CA、UDCA、CDCA、DCA、およびLCAのうちの1つまたは複数を含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における掻痒症を伴う胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、治療有効量のIBAT阻害剤またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、その投与は、痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される掻痒スコアを少なくとも約1点低減させることによって、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも18か月間対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる方法を提供する。
【0030】
一実施形態では、掻痒症を伴う胆汁うっ滞性肝疾患は、ALGS、PFIC、BRIC、PSC、PBCおよび胆道閉鎖症からなる群から選択される。
【0031】
一実施形態では、掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される。一実施形態では、掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される。一実施形態では、掻痒スコアは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される。
【0032】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における総血清胆汁酸(sBA)の上昇を伴う胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、治療有効量のIBAT阻害剤またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、その投与は、sBAを約200μmol/L以下に低減させることによって、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも18か月間対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる方法を提供する。
【0033】
一実施形態では、sBAの上昇を伴う胆汁うっ滞性肝疾患は、ALGS、PFIC、BRIC、PSC、PBC、および胆道閉鎖症からなる群から選択される。
【0034】
一実施形態では、sBAは、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される。一実施形態では、sBAは、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される。一実施形態では、sBAは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される。
【0035】
一実施形態では、sBAは、TCA、TUDCA、TCDCA、TDCA、TLCA、GCA、GUDCA、GCDCA、GDCA、GLCA、CA、UDCA、CDCA、DCA、およびLCAのうちの1つまたは複数を含む。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、それを必要とする対象における総ビリルビン(TB)の上昇を伴う胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法であって、治療有効量のIBAT阻害剤またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、その投与は、TBを約6.5mg/dL以下に低減させることによって、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも18か月間対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる。
【0037】
一実施形態では、TBの上昇を伴う胆汁うっ滞性肝疾患は、胆道閉鎖症(BA)である。
【0038】
一実施形態では、TBは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される。
【0039】
一実施形態では、投与は、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも2年間の対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である。一実施形態では、投与は、IBAT阻害剤の初回投与後6年間の対象の無イベント生存期間をもたらすのに十分である。
【0040】
一実施形態では、IBAT阻害剤は1日1回投与される。
【0041】
一実施形態では、IBAT阻害剤は、1日2回投与される。
【0042】
一実施形態では、IBAT阻害剤は、1回あたり約0.1mg~約100mgの量で投与される。一実施形態では、IBAT阻害剤は、1回あたり約10mg~約100mgの量で投与される。一実施形態では、IBAT阻害剤は、1回あたり約20mg~約80mgの量で投与される。
【0043】
一実施形態では、IBAT阻害剤は、約100μg/kg/日~1400μg/kg/日の量で投与される。一実施形態では、IBAT阻害剤は、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日の量で投与される。
【0044】
一実施形態では、対象はBSEP欠損症を有する。
【0045】
一実施形態では、IBAT阻害剤は、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0046】
一実施形態では、IBAT阻害剤は、
【化2】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0047】
一実施形態では、IBAT阻害剤は、
【化3】
である。
【0048】
一実施形態では、IBAT阻害剤は、
【化4】
である。
【0049】
ある態様において、対象は小児対象である。一実施形態では、小児対象は0~18歳である。
【0050】
一実施形態では、IBAT阻害剤は経口投与される。
【0051】
一実施形態では、IBAT阻害剤の10%未満が全身に吸収される。一実施形態では、IBAT阻害剤の30%未満が全身に吸収される。
【0052】
さらに別の態様では、本発明は、それを必要とする小児対象におけるアラジール症候群を処置する方法であって、治療有効量のマラリキシバットまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、その投与は、
a)総ビリルビン(TB)を約6.5mg/dL以下に低減させること;
b)総血清胆汁酸(sBA)を約200μmol/L以下に低減させること;および
c)痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される掻痒スコアを少なくとも約1点低減させること
のうちの1つまたは複数によって、マラリキシバットの初回投与後少なくとも18か月間対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる方法を提供する。
【0053】
一実施形態では、処置は、マラリキシバットの初回投与後少なくとも18か月間無肝移植生存期間(TFS)を増加させる。
【0054】
さらに別の態様では、本発明は、マラリキシバットの初回投与後6年間の無イベント生存(EFS)を予測することによって、それを必要とする対象におけるアラジール症候群の処置のためのマラリキシバット療法に対する反応の予測を提供するための方法であって、総ビリルビン(TB)データ、総血清胆汁酸(sBA)データ、掻痒軽減データ、およびマラリキシバットによる処置の開始時の対象の年齢のうちの1つまたは複数を得ること、および対象について得たデータを用いてEFSを予測することを含む方法を提供する。
【0055】
一実施形態では、マラリキシバットはマラリキシバット塩化物である。
【0056】
一実施形態では、sBAは、TCA、TUDCA、TCDCA、TDCA、TLCA、GCA、GUDCA、GCDCA、GDCA、GLCA、CA、UDCA、CDCA、DCA、およびLCAのうちの1つまたは複数を含む。
【0057】
本発明のこれらおよび他の態様は、添付の特許請求の範囲を含む以下の本発明の詳細な説明を読んだ後に当業者に明らかになるであろう。
【0058】
特許または出願ファイルは、少なくとも1つのカラーで記載される図面を含む。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開の写しは、請求および必要な手数料の支払いに基づき官庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】マラリキシバットコホート対GALA対照群における無イベント生存率についてのカプランマイヤープロット(Kaplan-Meier Plot)を示す。
【
図2A】変量(48週目の総ビリルビン)ごとのEFSのカプランマイヤープロットを示す。各パネルの下のデータ値は、各時点における患者数を示す。EFS=無イベント生存率。
【
図2B】変量(48週目のsBA)ごとのEFSのカプランマイヤープロットを示す。各パネルの下のデータ値は、各時点における患者数を示す。EFS=無イベント生存率;sBA=血清胆汁酸。
【
図2C】変量(ベースラインからの48週目のItchRO(Obs)の変化)ごとのEFSのカプランマイヤープロットを示す。各パネルの下のデータ値は、各時点における患者数を示す。EFS:無イベント生存率;ItchRO(Obs):痒み報告アウトカム(観察者);pt:点数。
【
図2D】変量(マラリキシバット開始時の年齢)ごとのEFSのカプランマイヤープロットを示す。各パネルの下のデータ値は、各時点における患者数を示す。EFS:無イベント生存率。
【
図3A】ItchRO反応状態ごとのベースラインおよび48週目のHRQoLスコアを示す。
図3AはPedsQL Generic Core Total Scaleスコアを示す。
図3A~
図3Cにおいて、塗りつぶされていない正方形および緑色矢印は、ベースラインおよび48週目における、全レスポンダーおよび全ノンレスポンダーの平均治療反応およびHRQoL値を表す。ベースライン(塗りつぶされていない円)から48週目(塗りつぶされた円)までの個々の変化を、レスポンダー(ピンクの円および矢印)およびノンレスポンダー(青色の円および矢印)について示す。全ての矢印は、ベースラインと48週目の方向性を示す。
【
図3B】ItchRO反応状態ごとのベースラインおよび48週目のHRQoLスコアを示す。
図3BはFamily Impact Total Scaleスコアを示す。
【
図3C】ItchRO反応状態ごとのベースラインおよび48週目のHRQoLスコアを示す。
図3CはMultidimensional Fatigue Total Scaleスコアを示す。
【
図4A】sBA反応状態ごとのベースラインおよび48週目のHRQoLスコアを示す。
図4Aは、PedsQL Generic Core Total Scaleスコアを示す。
図4A~
図4Cにおいて、塗りつぶされていない正方形および緑色矢印は、ベースラインおよび48週目における、全レスポンダーおよび全ノンレスポンダーの平均治療反応およびHRQoL値を表す。ベースライン(塗りつぶされていない円)から48週目(塗りつぶされた円)までの個々の変化を、レスポンダー(ピンクの円および矢印)およびノンレスポンダー(青色の円および矢印)について示す。全ての矢印は、ベースラインと48週目の方向性を示す。
【
図4B】sBA反応状態ごとのベースラインおよび48週目のHRQoLスコアを示す。
図4Bは、Multidimensional Fatigue Total Scale スコアを示す。
【
図4C】sBA反応状態ごとのベースラインおよび48週目のHRQoLスコアを示す。
図4Cは、Family Impact Total Scaleスコアを示す。
【
図5】試験中の患者の傾向(disposition)のプロットである。略語:AE=有害事象、BSEP=胆汁酸塩排出ポンプ(bile salt export pump);FIC=家族性肝内胆汁うっ滞症;nt-BSEP=非短縮型BSEP(nontruncating BSEP);t-BSEP=短縮型BSEP(truncating BSEP)。
【
図6A】sBAレスポンダーにおけるsBAレベルのベースラインから240週目までの個々の変化を示す。黒丸は、7人目のレスポンダーが97週目に1日2回投与を開始したときを示す。略語:sBA=血清胆汁酸。
【
図6B】sBAノンレスポンダーにおけるsBAレベルのベースラインから240週目までの個々の変化を示す。
【
図7A】sBAレスポンダーにおけるItchRO(Obs)スコアのベースラインから240週目までの個々の変化を示す。略語:ItchRO(Obs)=痒み報告アウトカム(観察者);sBA=血清胆汁酸。
【
図7B】sBAノンレスポンダーにおけるItchRO(Obs)スコアのベースラインから240週までの個々の変化を示す。3人のノンレスポンダーは、臨床的に有意であるとみなされるItchRO(Obs)における>1.0点の変化を達成した。略語:ItchRO(Obs)=痒み報告アウトカム(観察者);sBA=血清胆汁酸。
【
図8A】sBAレスポンダーおよびsBAノンレスポンダーにおけるベースラインから240週目までの(A)身長zスコアの平均変化をプロットする。略語:sBA=血清胆汁酸;SE=標準誤差。
【
図8B】sBAレスポンダーおよびsBAノンレスポンダーにおけるベースラインから240週目までの体重zスコアの平均変化をプロットする。略語:sBA=血清胆汁酸;SE=標準誤差。
【
図9】sBAレスポンダー対sBAノンレスポンダー(BSEP欠損症患者、n=25)におけるベースラインから240週目までの平均PedsQL(商標)スコアの変化を示す。略語:PedsQL(商標)=小児の生活の質尺度(Pediatric Quality of Life inventory(商標));sBA=血清胆汁酸;SE=標準誤差。
【
図10-1】7人のsBAレスポンダーにおけるALT、ASTの試験期間中の変化を示す。略語:ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ;AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;U=単位;L=リットル。
【
図10-2】7人のsBAレスポンダーにおけるビリルビン(総ビリルビンおよび直接ビリルビン)の試験期間中の変化を示す。
【
図11】sBAレスポンダーおよびsBAノンレスポンダー(BSEP欠損症患者;n=25)におけるベースラインから240週目までの個々の7α-C4/sBA比の変化を示す。略語:sBA=血清胆汁酸;7α-C4=7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン。
【
図12】sBAレスポンダーおよびsBAノンレスポンダーにおける無移植生存率を示す。略語:sBA=血清胆汁酸。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の詳細な実施形態を本明細書に開示する;しかしながら、開示された実施形態は、様々な形態で具体化され得る本発明の単なる例示であることを理解されたい。さらに、本発明の様々な実施形態に関連して与えられる実施例の各々は、限定的ではなく例示的であることが意図されている。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明を様々に使用するために当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0061】
胆汁酸/塩は、消化酵素を活性化し、脂肪および脂溶性ビタミンを可溶化するのに重要な役割を果たし、肝疾患、胆道疾患および腸疾患に関与する。胆汁酸は、多段階の複数の細胞小器官(multiorganelle)の経路によって肝臓で合成される。ステロイド構造上の特定部位にヒドロキシル基が付加され、コレステロールのB環の二重結合が還元され、炭化水素鎖が3炭素原子短縮され、鎖の末端にカルボキシル基が生じる。最も一般的な胆汁酸は、コール酸およびケノデオキシコール酸(「一次胆汁酸」)である。肝細胞を出て胆汁を形成する前に、胆汁酸は、(グリココール酸またはグリコケノデオキシコール酸を生成するために)グリシンに抱合されるかまたは(タウロコール酸もしくはタウロケノデオキシコール酸を生成するために)タウリンに抱合される。抱合胆汁酸は胆汁酸塩と呼ばれ、その両親媒性により、胆汁酸よりも効率的な界面活性剤になる。胆汁酸ではなく胆汁酸塩が胆汁中に見出される。
【0062】
胆汁酸塩は肝細胞によって毛細胆管(canaliculi)に分泌されて胆汁を形成する。毛細胆管は左右の肝管に流れ込み、胆汁は胆嚢に流れる。胆汁は胆嚢から放出され、十二指腸に移動し、そこで脂肪の代謝および分解に寄与する。胆汁酸塩は回腸末端で再吸収され、門脈を介して肝臓に戻される。胆汁酸塩は、多くの場合、糞便を介して排泄される前に複数回の腸肝循環を経験する。ごく一部の胆汁酸塩は、受動輸送または担体媒介輸送のいずれかのプロセスによって近位腸で再吸収され得る。ほとんどの胆汁酸塩は、回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)と呼ばれるナトリウム依存性の頂端側に位置する胆汁酸トランスポーター(輸送体)によって、遠位回腸で回収される。腸細胞の側底面では、IBATの短縮型(truncated version)が胆汁酸/塩の門脈循環へのベクトル輸送に関与する。腸肝循環の完了は、主にナトリウム依存性胆汁酸トランスポーター(輸送体)によって媒介される輸送プロセスによって肝細胞の側底面で起こる。腸の胆汁酸輸送は、胆汁酸塩の腸肝循環において重要な役割を果たす。このプロセスの分子分析は、最近、腸の胆汁酸輸送の生物学、生理学、および病態生理学の理解に重要な進歩をもたらした。
【0063】
腸管腔内において、胆汁酸濃度は変動し、再取り込みの大部分は遠位腸で起こる。本明細書では、腸管腔内の胆汁酸の濃度を制御し、それによって肝臓における胆汁酸蓄積によって引き起こされる肝細胞損傷を制御し、さらに消化管系有害作用(gastrointestinal adverse effect)を最小限に抑えるために絶食状態で投薬する、特定の組成物および方法が記載される。
【0064】
本開示の主題は、少なくとも部分的に、それを必要とする対象へのIBAT阻害剤による処置が、a)総ビリルビンレベル、b)総血清胆汁酸レベル、およびc)掻痒スコアのうちの1つまたは複数の低減が満たされる患者において長期無イベント生存期間(EFS)をもたらすという驚くべき発見に基づく。
【0065】
胆汁うっ滞および胆汁うっ滞性肝疾患のクラス
本明細書で使用される場合、「胆汁うっ滞」は、胆汁形成および/または胆汁の流れの障害を含む疾患または症状を意味する。本明細書で使用される場合、「胆汁うっ滞性肝疾患」は、胆汁うっ滞に関連する肝疾患を意味する。胆汁うっ滞性肝疾患は、黄疸、倦怠感、掻痒症(痒み)を伴うことが多い。胆汁うっ滞性肝疾患のバイオマーカーには、血清胆汁酸濃度の上昇、血清アルカリホスファターゼ(AP)の上昇、γ-グルタミルトランスペチダーゼの上昇、抱合型高ビリルビン血症の上昇、および血清コレステロールの上昇などが含まれる。
【0066】
胆汁うっ滞性肝疾患は、臨床病理学的に、閉塞性のしばしば肝外の胆汁うっ滞と、非閉塞性のまたは肝内の胆汁うっ滞の、2つの主要なカテゴリーに分類できる。前者では、胆石や腫瘍によって、または肝外胆道閉鎖症においてなど、胆汁の流れが機械的に遮断されたときに胆汁うっ滞が生じる。
【0067】
非閉塞性肝内胆汁うっ滞を有する後者の群は、さらに2つの主要な亜群に分類される。第1の亜群では、胆汁の分泌および修飾のプロセスまたは胆汁成分の合成のプロセスが、胆汁形成を補助するものを含む多くの機能の非特異的障害が予想され得るほど重篤な肝細胞障害に二次的に巻き込まれた場合に、胆汁うっ滞が生じる。第2の亜群では、肝細胞損傷の推定される原因が特定できない。そのような患者における胆汁うっ滞は、胆汁の分泌または修飾あるいは胆汁成分の合成のステップの1つが構成的に損傷した場合に生じると思われる。このような胆汁うっ滞は原発性と見なされる。
【0068】
したがって、本明細書では、高胆汁血症および/または胆汁うっ滞性肝疾患を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセス(adaptive process)の増強を刺激するための方法および組成物が提供される。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度および/またはGLP-2濃度を増加させることを含む。
【0069】
胆汁酸レベルの上昇、ならびにAP(アルカリホスファターゼ)、LAP(白血球アルカリホスファターゼ)、γGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)、および5’-ヌクレオチダーゼのレベルの上昇は、胆汁うっ滞および胆汁うっ滞性肝疾患の生化学的特徴である。したがって、本明細書では、高胆汁血症、ならびにAP(アルカリホスファターゼ)、LAP(白血球アルカリホスファターゼ)、γGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼまたはGGT)、および/または5’-ヌクレオチダーゼのレベルの上昇を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物が提供される。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書では、胆汁酸を糞便中に排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷(overall serum bile acid load)を低減することを含む、高胆汁血症、ならびにAP(アルカリホスファターゼ)、LAP(白血球アルカリホスファターゼ)、γGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼまたはGGT)、および/または5’-ヌクレオチダーゼのレベルの上昇を軽減するための方法および組成物が提供される。
【0070】
掻痒症は、しばしば、高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患に関連する。掻痒症は、末梢痛求心性神経に作用する胆汁酸塩に起因することが示唆されている。掻痒症の程度は個体によって異なる(すなわち、一部の個体は胆汁酸/塩のレベルの上昇に対してより感受性である)。
【0071】
血清胆汁酸の濃度を低減させる薬剤の投与は、特定の個体の掻痒症を軽減することが示されている。したがって、本明細書で提供されるのは、掻痒症を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減させることを含む、掻痒症を処置するための方法および組成物が提供される。
【0072】
高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患の別の症状は、抱合型ビリルビンの血清濃度の上昇である。抱合型ビリルビンの血清濃度が上昇すると、黄疸および暗色尿が生じる。抱合型ビリルビンの血清レベルと高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患の重症度との間に関係は確立されていないため、上昇の大きさは診断上重要ではない。抱合型ビリルビン濃度が30mg/dLを超えることはめったにない。したがって、本明細書で提供されるのは、抱合型ビリルビンの血清濃度が上昇した個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減させることを含む、抱合型ビリルビンの血清濃度の上昇を処置するための方法および組成物が提供される。
【0073】
非抱合型ビリルビンの血清濃度の上昇も、高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患の徴候であると考えられる。血清ビリルビンの一部は、アルブミン(デルタ(δ)ビリルビンまたはビリタンパク質)に共有結合している。この画分は、胆汁うっ滞性黄疸を有する患者において総ビリルビンの大部分を占め得る。大量のδ-ビリルビンの存在は、長期にわたる胆汁うっ滞を示す。臍帯血または新生児の血液中のδ-ビリルビンは、出生前に起こる胆汁うっ滞/胆汁うっ滞性肝疾患の指標である。したがって、本明細書で提供されるのは、非抱合型ビリルビンまたはδ-ビリルビンの血清濃度が上昇した個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減させることを含む、非抱合型ビリルビンおよびδ-ビリルビンの血清濃度の上昇を処置するための方法および組成物が提供される。
【0074】
胆汁うっ滞および胆汁うっ滞性肝疾患は、高胆汁血症を引き起こす。代謝性胆汁うっ滞中、肝細胞は胆汁酸塩を保持する。胆汁酸塩は肝細胞から血清中に逆流し、その結果、末梢循環中の胆汁酸塩の濃度が増加する。さらに、門脈血中の肝臓に入る胆汁酸塩の取り込みは非効率的であり、その結果、胆汁酸塩が末梢循環にこぼれる。したがって、本明細書で提供されるのは、高胆汁血症を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減させることを含む、高胆汁血症を処置するための方法および組成物が提供される。
【0075】
高脂血症は、すべてではないが一部の胆汁うっ滞性疾患に特徴的である。血清コレステロールは、コレステロールの代謝および分解に寄与する循環胆汁酸塩の減少により、胆汁うっ滞において上昇する。コレステロールの保持は、膜コレステロール含有量の増加と膜流動性および膜機能の低下に関連する。さらに、胆汁酸塩はコレステロールの代謝産物であるため、コレステロール代謝の低下は胆汁酸/塩合成の減少をもたらす。胆汁うっ滞の小児で観察される血清コレステロールは、約1,000mg/dL~約4,000mg/dLの間の範囲である。したがって、本明細書で提供されるのは、高脂血症を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減させることを含む、高脂血症を処置するための方法および組成物が提供される。
【0076】
高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患を有する個体において、黄色腫は、過剰な循環コレステロールの真皮への沈着から発症する。黄色腫の発症は、肝細胞性胆汁うっ滞よりも閉塞性胆汁うっ滞に特徴的である。平面黄色腫は、最初に目の周りに発生し、次に手のひらや足の裏のしわに発生し、その後に首に発生する。結節性黄色腫は、慢性および長期の胆汁うっ滞に関連する。したがって、本明細書で提供されるのは、黄色腫を有する個体において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減させることを含む、黄色腫を処置するための方法および組成物が提供される。
【0077】
慢性胆汁うっ滞を有する小児において、高胆汁血症および胆汁うっ滞性肝疾患の主な影響の1つは成長障害(failure to thrive)である。成長障害は、腸への胆汁酸塩の送達の減少の結果であり、それは、脂肪の非効率的な消化および吸収、ならびにビタミンの摂取の減少に寄与する(ビタミンE、D、K、およびAはすべて胆汁うっ滞で吸収不良となる)。さらに、結腸への脂肪の送達は、結腸の分泌および下痢を引き起こす可能性がある。成長障害の処置には、長鎖トリグリセリド、中鎖トリグリセリド、およびビタミンによる食事療法(dietary substitution)および補給が含まれる。一部の胆汁うっ滞状態を処置するために使用されるウルソデオキシコール酸は、混合ミセルを形成せず、脂肪吸収に影響を及ぼさない。したがって、本明細書で提供されるのは、成長障害を有する個体(例えば、小児)において、腸における上皮増殖および/または腸内層の再生および/または適応プロセスの増強を刺激するための方法および組成物である。そのような実施形態のいくつかでは、方法は、腸管腔内の胆汁酸濃度を増加させることを含む。本明細書ではさらに、糞便中に胆汁酸を排泄することによって全体の血清胆汁酸負荷を低減させることを含む、成長障害を処置するための方法および組成物が提供される。
【0078】
原発性胆汁性肝硬変(PBC)
原発性胆汁性肝硬変は、胆管の破壊を特徴とする肝臓の自己免疫疾患である。胆管への損傷は、肝臓における胆汁の蓄積(すなわち胆汁うっ滞)をもたらす。肝臓における胆汁の保持は、肝臓組織を損傷し、瘢痕化、線維症、および肝硬変をもたらし得る。PBCは、通常、成人期(例えば、40歳以上)に発症する。PBCを有する個体は、倦怠感、掻痒症および/または黄疸を呈することが多い。PBCは、個体が、少なくとも6か月間AP濃度の上昇、γGTレベルの上昇、血清中の抗ミトコンドリア抗体(AMA)(>1:40)、および胆管破壊病変(florid bile duct lesions)を有する場合に診断される。血清ALTおよび血清ASTおよび結合ビリルビンも上昇し得るが、これらは診断的であるとは考えられない。PBCに関連する胆汁うっ滞は、ウルソデオキシコール酸(UDCAまたはウルソジオール)の投与によって処置または改善されている。コルチコステロイド(例えば、プレドニゾンおよびブデソニド)および免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロスポリンA、メトトレキサート、クロラムブシルおよびミコフェノール酸エステル)は、PBCに関連する胆汁うっ滞を処置するために使用されている。スリンダク(Sulindac)、ベザフィブラート(bezafibrate)、タモキシフェン(tamoxifen)、およびラミブジン(lamivudine)も、PBCに関連する胆汁うっ滞を処置または改善することが示されている。
【0079】
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)
PFICは、胆汁形成の欠陥によって引き起こされる稀な常染色体劣性障害の群である。PFICは、典型的には肝不全をもたらす進行性肝疾患を引き起こす。PFICの人々では、肝細胞は胆汁を分泌する能力が低い。結果として生じる胆汁の蓄積は、罹患した個体において肝疾患を引き起こす。PFICの徴候および症状は、典型的には乳児期に始まる。患者は、重度の痒み、黄疸、期待される速度で成長しないこと(発育不良)、および肝臓の機能不全の亢進(肝不全)を経験する。この疾患は、米国およびヨーロッパにおいて5万~10万人に1人が罹患すると推定される。6つのタイプのPFICが遺伝的に同定されており、そのすべてが同様に胆汁の流れの障害および進行性肝疾患を特徴とする。
【0080】
小児は、典型的には、生後1年目に、最初に黄疸を、続いて他の胆汁うっ滞の特徴:特に、掻痒症および脂溶性ビタミン(FSV)の欠乏:を呈する。PFICのいくつかのサブタイプは、肝細胞がんの顕著なリスクと関連している。症状への対処における積極的な管理の失敗により、多くの患者は、胆汁酸の腸肝循環の外科的遮断または肝移植を受ける。掻痒症およびその根底にある肝疾患の両方の処置に対する、重要なアンメットニーズが明らかに存在する。
【0081】
肝疾患の進行の予防は常に最重要であるが、PFICの早期管理は、栄養補助と掻痒症の処置によるところが大きい。胆汁うっ滞性掻痒症の内科的処置(medical treatment)は特に満足のいくものではなく、リファンピシン、ウルソデオキシコール酸、胆汁酸結合樹脂、セロトニン再取り込み阻害剤、オピオイド拮抗薬(ナロキソン)、および鎮痒薬(特に抗ヒスタミン剤)の使用が含まれる。掻痒症の内科的処置の失敗は、外科的介入につながっている。移植を除けば、外科的処置の主流は胆道迂回手術(surgical biliary diversion)(SBD)による胆汁酸塩プールサイズの枯渇であった。最近、大規模な遡及的解析により、SBDが、nt-BSEP欠損症の患者における無移植生存期間を15年まで延長することが示された(van Wessel DBE, Thompson RJ, Gonzales E, Jankowska I, Sokal E, Grammatikopoulos T, et al. Genotype correlates with the natural history of severe bile salt export pump deficiency. J Hepatol 2020;73:84-93)。さらに、この研究は、手術後の血清胆汁酸(sBA)の75%の減少または102μmol/L未満への低下が、長期の自己肝生存(native liver survival)と関連することも示した。胆汁の外部化(exteriorization of bile)によるまたは回腸末端での取り込みの防止による胆汁酸塩の枯渇は、胆汁中へのいくらかの残存する胆汁酸塩排泄に依存する。PFICの外科的管理の遡及的解析は、この仮説を確認し、t-BSEPを有する患者では奏功せず、進行して肝移植を必要とすることを示した。
【0082】
現在利用可能な鎮痒薬の有効性が限定的であること、ならびに外科的介入のリスクおよび負担を考慮すると、PFIC患者のための代替処置に対する高いアンメットニーズが依然として存在する。腸肝胆汁酸再循環の薬理学的遮断は、胆汁酸塩プールのサイズを減少させ、胆汁うっ滞性掻痒症を緩和し、肝障害を防ぎ、外科的介入の必要性を減らす可能性を有する。回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)の最小限に吸収される選択的阻害剤であるマラリキシバットは、アラジール症候群の小児における以前の研究において実証されているように、胆汁うっ滞性肝疾患の患者においてsBAレベルを低下させ、成長を改善する。マラリキシバットは、現在、1歳以上のアラジール症候群の患者における胆汁うっ滞性掻痒症の処置についてFDAの承認を受けている。
【0083】
PFIC1
PFIC1(バイラー病またはFIC1欠損症としても知られる)は、ATP8B1遺伝子(FIC1とも呼ばれる)における変異に関連する。P型ATPaseをコードするこの遺伝子は、ヒト18番染色体上に位置し、軽度の表現型、良性反復性肝内胆汁うっ滞症1型(BRIO)およびグリーンランド家族性胆汁うっ滞症でも変異している。FIC1タンパク質は肝細胞の毛細胆管側膜(canalicular membrane)に位置しているが、肝臓内では主に胆管細胞で発現している。P型ATPaseは、外葉と比較して、原形質膜の内葉にホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンを豊富に維持する役割を果たすアミノリン脂質トランスポーターであると思われる。膜二重層における脂質の非対称的な分布は、毛細胆管内腔における高い胆汁酸塩濃度に対して保護的な役割を果たす。異常なタンパク質機能は、胆汁酸の胆汁分泌を間接的に妨害し得る。胆汁酸/塩の異常な分泌は、肝細胞の胆汁酸過負荷をもたらす。
【0084】
PFIC1は、典型的には、乳児(例えば、6~18か月齢)に現れる。乳児は、掻痒症、黄疸、腹部膨満、下痢、栄養不良、および低身長の兆候を示し得る。生化学的には、PFIC1の個体は、血清トランスアミナーゼの上昇、ビリルビンの上昇、血清胆汁酸レベルの上昇、および低いγGTレベルを有する。個体はまた、肝線維症も有し得る。PFIC1の個体は、典型的には、胆管増殖がない。PFIC1のほとんどの個体は、10歳までに末期肝疾患を発症する。PFIC1の長期処置に有益であることが証明されている医学的処置はない。肝外症状(例えば、栄養不良や成長障害など)を軽減するために、小児に中鎖トリグリセリドおよび脂溶性ビタミンがしばしば投与される。ウルソジオールは、PFIC1の個体において有効であることが実証されていない。
【0085】
PFIC2
PFIC2(バイラー症候群、BSEP欠損症としても知られる)は、ABCB11遺伝子(BSEPとも呼ばれる)の変異に関連する。ABCB11遺伝子は、ヒト肝臓のATP依存性毛細胆管胆汁酸塩排出ポンプ(ATP-dependent canalicular bile salt export pump)(BSEP)をコードし、ヒト2番染色体上に位置する。肝細胞毛細胆管側膜において発現するBSEPタンパク質は、極端な濃度勾配に対する一次胆汁酸/塩の主要な輸出体である。このタンパク質の変異は、罹患患者において説明される胆汁酸塩分泌の減少の原因であり、進行中の重度の肝細胞損傷を伴う胆汁流量の減少および肝細胞内への胆汁酸塩の蓄積をもたらす。
【0086】
PFIC2は、典型的には、乳児(例えば、6~18か月齢)に現れる。乳児は掻痒症の兆候を示し得る。生化学的には、PFIC2の個体は、血清トランスアミナーゼの上昇、ビリルビンの上昇、血清胆汁酸レベルの上昇、および低いγGTレベルを有する。個体はまた、門脈の炎症および巨細胞性肝炎も有し得る。さらに、個体はしばしば肝細胞がんを発症する。PFIC2の長期処置に有益であることが証明されている医学的処置はない。肝外症状(例えば、栄養不良や成長障害など)を軽減するために、小児に中鎖トリグリセリドおよび脂溶性ビタミンがしばしば投与される。PFIC2患者集団は、PFIC集団の約60%を占める。
【0087】
PFIC3
PFIC3(MDR3欠損症としても知られている)は、7番染色体上に位置するABCB4遺伝子(MDR3とも呼ばれる)の遺伝的欠損によって引き起こされる。クラスIII多剤耐性(MDR3)P-糖タンパク質(P-gp)は、肝細胞の毛細胆管側膜における胆汁リン脂質(ホスファチジルコリン)の排出に関与するリン脂質トランスロケーターである。PFIC3は、界面活性剤の胆汁酸塩がリン脂質によって不活化されず、毛細胆管および胆管上皮の損傷を引き起こす、胆汁の毒性によって生じる。
【0088】
PFIC3は幼児期にも発症する。PFIC1およびPFIC2とは対照的に、個体はγGTレベルの上昇を有する。個体はまた、門脈の炎症、線維症、肝硬変、および大量の胆管増殖を有する。個体はまた、肝内胆石症も発症し得る。ウルソジオールは、PFIC3の処置または改善に有効である。
【0089】
良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)
BRIC1
BRIC1は、肝細胞の毛細胆管側膜におけるFIC1タンパク質の遺伝的欠損によって生じる。BRIC1は、典型的には、正常な血清コレステロールおよびγ-グルタミルトランスペプチダーゼのレベルであるが、血清胆汁酸塩の上昇を伴う。残存FIC1の発現および機能がBRIC1に関連する。胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の反復性発作にもかかわらず、大多数の患者において慢性肝疾患への進行はない。発作中、患者は重度の黄疸を生じ、掻痒症、脂肪便、体重減少が見られる。一部の患者はまた、腎結石、膵炎、および糖尿病も有する。
【0090】
BRIC2
BRIC2は、ABCB11の変異によって引き起こされ、肝細胞の毛細胆管側膜における不完全なBSEPの発現および/または機能をもたらす。
【0091】
BRIC3
BRIC3は、肝細胞の毛細胆管側膜における不完全なMDR3の発現および/または機能に関連している。MDR3欠損症の患者は通常、正常またはわずかに上昇した胆汁酸レベルの存在下で、血清γ-グルタミルトランスペプチダーゼレベルの上昇を示す。
【0092】
デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群(DJS)
DJSは、MRP2の遺伝性機能障害による抱合型高ビリルビン血症を特徴とする。肝機能は罹患患者において維持される。いくつかの異なる変異がこの状態に関連しており、その結果、罹患患者における免疫組織化学的に検出可能なMRP2の完全な欠如、またはタンパク質の成熟および選別の障害のいずれかをもたらす。
【0093】
後天性胆汁うっ滞性疾患
原発性胆汁性肝硬変(PBC)
PBCは慢性炎症性肝障害であり、罹患患者のほとんどにおいて末期肝不全にゆっくりと進行する。PBCにおいて、炎症プロセスは主に細胆管に影響を及ぼす。
【0094】
原発性硬化性胆管炎(PSC)
PSCは、罹患患者のほとんどにおいて末期肝不全にゆっくりと進行する慢性炎症性肝障害である。PSC炎症では、大規模および中規模の肝内胆管および肝外胆管の線維化および閉塞が優勢である。
【0095】
PSCは進行性胆汁うっ滞を特徴とする。胆汁うっ滞はしばしば、生活の質を著しく損なう重篤な掻痒症をもたらし得る。
【0096】
妊娠性肝内胆汁うっ滞症(ICP)
ICPは、エストロゲンの循環レベルが高い場合に、典型的には妊娠の第3期に生じる、妊婦における一過性胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の発生を特徴とする。ICPは、掻痒症および生化学的胆汁うっ滞または様々な重症度の胆汁うっ滞性肝疾患に関連し、未熟児および子宮内胎児死の危険因子を構成する。強い地域クラスター形成、ICP患者の家族の女性における高い有病率、および経口避妊薬などの他のホルモンチャレンジ下でICP患者が肝内胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を発症しやすいことに基づき、遺伝的素因が疑われてきた。MDR3遺伝子欠損の不均質な状態は遺伝的素因を表し得る
【0097】
胆石症
胆石症は、すべての消化器疾患の中で最も一般的で費用のかかるものの1つであり、白人女性の有病率は17%までにもなる。コレステロールを含む胆石は胆石の主要な形態であり、したがってコレステロールによる胆汁の過飽和は胆石形成の前提条件である。ABCB4変異は、コレステロール胆石症の病因に関与し得る。
【0098】
薬物誘発性胆汁うっ滞
薬物によるBSEP機能の阻害は、薬物誘発性胆汁うっ滞の重要なメカニズムであり、胆汁酸塩の肝臓蓄積とそれに続く肝細胞損傷をもたらす。いくつかの薬物がBSEP阻害に関与している。リファンピシン、シクロスポリン、グリベンクラミド、またはトログリタゾンなどのこれらの薬剤のほとんどは、競合的な様式でATP依存性タウロコール酸輸送を直接的にシス阻害するが、エストロゲンおよびプロゲステロン代謝物は、Mrp2による毛細胆管への分泌後にBSEPを間接的にトランス阻害する。あるいは、MRP2の薬物媒介性刺激は、胆汁組成を変化させることによって胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を促進させることができる。
【0099】
中心静脈栄養(Total Parenteral Nutrition)関連胆汁うっ滞
TPNACは、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患が急速に発生し、早期死亡と高度に関連する最も深刻な臨床シナリオの1つである。通常、未熟児で腸切除を受けた乳児は、成長のためにTPNに依存し、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を頻繁に発症し、通常は生後6か月より前に、線維症、肝硬変、門脈圧亢進症に急速に進行する。これらの乳児における胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の程度および生存の可能性は、おそらく繰り返す腸粘膜を横切るバクテリアルトランスロケーションによって開始される敗血症エピソードの数に関連している。これらの乳児において、静脈内製剤からの胆汁うっ滞の影響もあるが、敗血症メディエータが肝機能の変化に最も寄与する可能性が高い。
【0100】
中心静脈栄養関連胆汁うっ滞
TPNACは、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患が急速に発生し、早期死亡と高度に関連する最も深刻な臨床シナリオの1つである。通常、未熟児で腸切除を受けた乳児は、成長のためにTPNに依存し、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を頻繁に発症し、通常は生後6か月の前に、線維症、肝硬変、門脈圧亢進症に急速に進行する。これらの乳児における胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の程度および生存の可能性は、おそらく繰り返す腸粘膜を横切るバクテリアルトランスロケーションによって開始される敗血症エピソードの数に関連している。これらの乳児において、静脈内製剤からの胆汁うっ滞の影響もあるが、敗血症メディエータが肝機能の変化に最も寄与する可能性が高い。
【0101】
アラジール症候群(ALGS)
アラジール症候群は、肝臓および他の臓器に影響を及ぼす遺伝性疾患である。ALGSは、症候性肝内胆管減少症または動脈肝異形成としても知られている。ALGSは、胆管が異常に狭く、形成不良であり、数が減少し、肝臓における胆汁蓄積および最終的に進行性の肝疾患をもたらす稀な遺伝性障害である。ALGSは、JAG1(症例の>90%)またはNOTCH2における変異によって引き起こされる常染色体優性である。ALGSの推定発生率は、米国およびヨーロッパにおいて30,000または50,000人に1人である。ALGS患者では、肝臓、心臓、腎臓および中枢神経系を含む複数の臓器系が変異の影響を受け得る。胆汁酸の蓄積は、血流からの老廃物を排除するために肝臓が適切に機能することを妨げ、患者の15%~47%において最終的に肝移植を必要とする進行性肝疾患をもたらす。ALGSにおける肝臓損傷から生じる徴候および症状には、黄疸、掻痒症および黄色腫、ならびに成長の低下が含まれ得る。ALGS患者が経験する掻痒症は、慢性肝疾患の中で最も重篤なものの1つであり、生後3年までにほとんどの罹患小児に存在する。
【0102】
ALGSは、乳児期(例えば、6~18か月)から幼児期(例えば、3~5歳)に現れることが多く、10歳を過ぎると安定し得る。症状には、慢性進行性胆汁うっ滞、胆管減少症、黄疸、掻痒症、黄色腫、先天性心臓障害、肝内胆管の不足、線形成長不良、ホルモン抵抗性、後部胎生環、アクセンフェルト異常、色素性網膜炎、瞳孔異常、心雑音、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症、およびファロー四徴症などが含まれ得る。アラジール症候群と診断された個体は、ウルソジオール、ヒドロキシジン、コレスチラミン、リファンピシン、およびフェノバルビタールで処置されてきた。脂溶性ビタミンを吸収する能力が低下するため、アラジール症候群の個体にはさらに高用量のマルチビタミンが投与される。
【0103】
胆道閉鎖症
胆道閉鎖症は、肝臓の内側または外側の胆管に正常な開口がない乳児における生命を脅かす状態である。胆道閉鎖症では、胆汁が閉じ込められ、蓄積し、肝臓に損傷を与える。損傷は、瘢痕化、肝臓組織の喪失、および肝硬変につながる。処置をしなければ、肝臓は最終的に機能しなくなり、乳児は生存を維持するために肝移植が必要になる。2つのタイプの胆道閉鎖症は、胎児期と周産期である。胎児期の胆道閉鎖症は、赤ちゃんが子宮内にいる間に現れる。周産期の胆道閉鎖症はより一般的であり、出生後2~4週まで明らかにならない。
【0104】
葛西手術後の胆道閉鎖症
胆道閉鎖症は、葛西手術と呼ばれる外科手術、または肝移植で処置される。葛西手術は通常、胆道閉鎖症の第1の処置方法である。葛西手術中に、小児外科医は乳児の損傷した胆管を取り除き、腸のループを持ち上げてそれらを置き換える。葛西手術は胆道の流れを回復させ、胆道閉鎖症によって引き起こされる多くの問題を修正することができるが、その手術は胆道閉鎖症を治癒しない。葛西手術がうまくいかない場合、乳児は通常1~2年以内に肝移植が必要になる。手術が成功した後でも、胆道閉鎖症のほとんどの乳児は、何年かにわたってゆっくりと肝硬変を発症し、成人期までに肝移植を必要とする。葛西手術後に起こり得る合併症としては、腹水症、細菌性胆管炎、門脈圧亢進症、および掻痒症が挙げられる。
【0105】
肝移植後の胆道閉鎖症
完全に閉鎖すると、肝移植が唯一の選択肢である。肝移植は一般的に胆道閉鎖症の処置に成功するが、肝移植は臓器拒絶反応などの合併症を引き起こす可能性がある。また、ドナーの肝臓が利用できなくなる場合もある。さらに、一部の患者では、肝移植が胆道閉鎖症の治癒に成功しない場合がある。
【0106】
黄色腫
黄色腫は、特定の脂肪が皮膚の表面下に蓄積する、胆汁うっ滞性肝疾患に関連する皮膚の状態である。胆汁うっ滞は、脂質代謝のいくつかの妨害を引き起こし、血中においてリポタンパク質Xと呼ばれる異常な脂質粒子の形成をもたらす。リポタンパク質Xは、肝臓から血液への胆汁脂質の逆流によって形成され、正常なLDLのようにLDL受容体に結合してコレステロールを全身の細胞に送達することはない。リポタンパク質Xは、肝臓のコレステロール産生を5倍に増加させ、肝臓による血液からのリポタンパク質粒子の正常な除去を遮断する。
【0107】
一般的な定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0108】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形の参照を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、1つまたは複数の方法、および/または本明細書に記載のタイプのステップ、および/または本開示を読むと当業者に明らかになるであろうステップを含む。
【0109】
本明細書で使用される「ベースライン」または「投与前ベースライン」という用語は、試験の開始時に収集された情報、または後のデータとの比較に使用される既知の初期値を指す。ベースラインは、初期時点で取得され、測定可能な状態の変化を探すために経時的に比較するために使用される、測定可能な状態の初期測定値である。例えば、薬物投与前(ベースライン)および薬物投与後の患者の血清胆汁酸濃度。ベースラインは、介入または環境刺激に対する反応を表す値との比較に使用される、測定可能な質の正常レベルまたは開始レベルを表す観測値または値である。ベースラインは、試験の参加者が実験薬剤または介入、あるいは陰性対照を受ける前の時間「ゼロ」である。例えば、「ベースライン」は、一部の例では、1)臨床試験の開始直前の測定可能な量の状態、または2)患者に投与される投薬量レベルもしくは組成物を第1の投薬量レベルもしくは組成物から第2の投薬量レベルもしくは組成物に変更する直前の測定可能な量の状態を指すことができる。
【0110】
本明細書で使用される「レベル」および「濃度」という用語は交換可能に使用される。例えば、「高血清ビリルビンレベル」は、「高血清ビリルビン濃度」と言い換えることができる。
【0111】
本明細書で使用される「正常化された(normalized)」または「正常範囲」という用語は、健康な個体に該当する範囲内にある年齢特異的な値(すなわち、正常値または正常化された値)を示す。例えば、「血清ビリルビン濃度は3週間以内に正常化された」という語句は、血清ビリルビン濃度が、3週間以内に、健康な個体の濃度に該当することが当技術分野で知られている範囲内(すなわち、正常範囲内であり、例えば上昇した範囲ではない)に入ったことを意味する。様々な実施形態において、正常化された血清ビリルビン濃度は、約0.1mg/dL~約1.2mg/dLである。様々な実施形態において、正常化された血清胆汁酸濃度は、約0μmol/L~約25μmol/Lである。
【0112】
本明細書で使用される「ITCHRO(OBS)」および「ITCHRO」(あるいは、「ItchRO(Pt)」)という用語は、ITCHRO(OBS)スケールが18歳未満の小児における掻痒症の重症度を測定するために使用され、ITCHROスケールが18歳以上の成人における掻痒症の重症度を測定するために使用されるという条件付きで交換可能に使用される。したがって、ITCHRO(OBS)スケールが成人患者に関して言及される場合、ITCHROスケールは、示されているスケールである。同様に、ITCHROスケールが小児患者に関して言及されている場合通常、ITCHRO(OBS)スケールは示されているスケールである(一部の年長の小児は、自分のスコアをITCHROスコアとして報告することが許可された)。ITCHRO(OBS)スケールの範囲は0~4であり、ITCHROスケールの範囲は0~10である。
【0113】
本明細書で使用される「胆汁酸(単数または複数)」という用語には、動物(例えば、ヒト)の胆汁中に見出されるステロイド酸(および/またはそのカルボン酸アニオン)、およびそれらの塩が含まれ、非限定的な例として、コール酸、コール酸塩、デオキシコール酸、デオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリココール酸塩、タウロコール酸、タウロコール酸塩、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ウルソジオール、タウロウルソデオキシコール酸、グリコウルソデオキシコール酸、7-B-メチルコール酸、メチルリトコール酸、ケノデオキシコール酸塩、リトコール酸、リトコール酸塩などが含まれる。タウロコール酸および/またはタウロコール酸塩は、本明細書ではTCAと呼ばれる。本明細書で使用される胆汁酸への任意の言及は、胆汁酸、1つおよび1つだけの胆汁酸、1つまたは複数の胆汁酸、あるいは少なくとも1つの胆汁酸への言及を含む。したがって、「胆汁酸」、「胆汁酸塩」、「胆汁酸/塩」、「胆汁酸(複数)」、「胆汁酸塩(複数)」、および「胆汁酸/塩(複数)」という用語は、特に明記しない限り、本明細書で交換可能に使用される。本明細書で使用される胆汁酸への任意の言及は、胆汁酸またはその塩への言及を含む。さらに、薬学的に許容される胆汁酸エステルは、任意選択で、本明細書に記載の「胆汁酸」、例えば、アミノ酸(例えば、グリシンまたはタウリン)に抱合された胆汁酸/塩として利用される。他の胆汁酸エステルには、例えば、置換または非置換のアルキルエステル、置換または非置換のヘテロアルキルエステル、置換または非置換のアリールエステル、置換または非置換のヘテロアリールエステルなどが含まれる。例えば、「胆汁酸」という用語は、グリシンまたはタウリンのいずれかと抱合されたコール酸:それぞれ、グリココール酸およびタウロコール酸(およびそれらの塩)を含む。本明細書で使用される胆汁酸への任意の言及は、天然にまたは合成的に調製された同一の化合物への言及を含む。さらに、本明細書で使用される成分(胆汁酸またはその他)への任意の単数の言及は、そのような成分の1つおよび1つだけ、1つまたは複数、あるいは少なくとも1つへの言及を含むことを理解されたい。同様に、本明細書で使用される構成要素への複数の言及は、特に断りのない限り、そのような構成要素の1つおよび1つだけ、1つまたは複数、あるいは少なくとも1つへの言及を含む。
【0114】
「対象」、「患者」、「参加者」、または「個体」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、例えば、本明細書に記載の障害に罹患している哺乳動物および非哺乳動物を指す。哺乳動物の例には、哺乳網の任意のメンバー(ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、および他の類人猿およびサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、およびネコなどの飼育動物;ラット、マウス、モルモットなどのげっ歯類を含む実験動物)が含まれるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例には、鳥類、魚類などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で提供される方法および組成物の一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0115】
本明細書で使用される「約」という用語は、記載された値の10%以内の任意の値を含む。
【0116】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、組成物と本明細書に記載の方法で投与される組成物の両方の開示を含む。さらに、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載の「製剤」、経口剤形または直腸剤形であるか、あるいはそれらを含む。
【0117】
「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」という用語、および本明細書で使用される他の文法上の同等物には、症状を緩和、抑制または軽減する、疾患または状態の重症度を軽減または抑制する、疾患または状態の発生を低減する、疾患または状態の再発を低減または抑制する、疾患または状態の発症を遅らせる、疾患または状態の再発を遅らせる、疾患または状態を軽減または改善する、症状の根本的な原因を改善する、疾患または状態を阻害する、例えば、疾患または状態の進行を阻止する、疾患または状態を緩和する、疾患または状態の退行を引き起こす、病気や状態によって引き起こされた状態を緩和する、または病気や状態の症状を停止させることが含まれる。これらの用語はさらに、治療効果(therapeutic benefit)を達成することを含む。治療効果とは、治療されている基礎疾患の根絶または改善、および/または患者に改善が観察されるような基礎疾患関連の1つまたは複数の生理学的症状の根絶または改善を意味する。
【0118】
本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」という用語は、例えば、処置されている疾患または状態の1つまたは複数の症状をある程度緩和するなど、対象または個体において所望の結果を達成する、投与されている少なくとも1つの薬剤(例えば、治療活性物質)の十分な量を指す。特定の例において、結果は、疾患の徴候、症状、または原因の減少および/または緩和、あるいは生物学的システムの任意の他の所望の変化である。特定の例において、治療的使用のための「有効量」は、疾患の臨床的に有意な軽減を提供するために必要とされる、本明細書に記載の薬剤を含む組成物の量である。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、用量漸増試験などの任意の適切な手法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤の「治療有効量」または「有効量」は、対象または個体における胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患を処置するのに十分なIBAT阻害剤の量を指す。
【0119】
本明細書で使用される「投与する」、「投与すること」、「投与」などの用語は、生物学的作用が所望される部位への薬剤または組成物の送達を可能にするために使用され得る方法を指す。これらの方法には、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内または注入を含む)、局所投与および直腸投与が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の薬剤および方法とともに任意選択で使用される投与技術は、例えば、Goodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, current ed.; Pergamon; and Remington's, Pharmaceutical Sciences (current edition), Mack Publishing Co., Easton, Paにおいて見ることができ、これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、本明細書に記載される薬剤および組成物は経口投与される。
【0120】
用語「IBAT阻害剤」は、回腸胆汁酸輸送または任意の回復性(recuperative)胆汁酸塩輸送を阻害する化合物を指す。「ASBT阻害剤」という用語は、回腸胆汁酸輸送または任意の回復性胆汁酸塩輸送を阻害する化合物を指す。頂端側ナトリウム依存性胆汁酸トランスポーター(または輸送体)(ASBT)という用語は、回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)という用語と交換可能に使用される。
【0121】
本発明の組成物に関連して使用される場合、「薬学的に許容される」という句は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与されたときに、生理学的に忍容性のあるものでありかつ通常は有害な反応を生じないそのような組成物の分子実体および他の成分を指す。好ましくは、本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」とは、連邦政府または州政府の規制当局によって承認された、または哺乳動物、より具体的にはヒトで使用するために米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に掲載されていることを意味する。
【0122】
様々な実施形態において、本明細書に記載の薬学的に許容される塩には、非限定的な例として、硝酸塩、塩化物、臭化物、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、亜サリチル酸塩、マレイン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、アムソン酸塩(amsonate)、パモ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メシル酸塩などが含まれる。さらに、薬学的に許容される塩には、非限定的な例として、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム依存性またはカリウム)、アンモニウム塩などが含まれる。
【0123】
本明細書で使用する場合、「絶食状態(fasted state)」という用語は、対象が最後の食事を完全に消化吸収し、対象のインスリンレベルが低レベルまたはベースラインレベルである状態として定義される。いくつかの実施形態では、絶食状態は、18歳以上の対象について少なくとも4時間食物を摂取していない状態として定義される。いくつかの実施形態では、絶食状態は、小児対象について少なくとも2時間食物を摂取していない状態として定義される。いくつかの実施形態では、絶食状態は、食事の約30分前の状態として定義される。
【0124】
本明細書で使用される場合、絶食患者は、いかなる食物も食べていない患者、すなわち、IBAT阻害剤の投与前少なくとも4時間(18歳以上の対象について)またはIBAT阻害剤の投与前少なくとも2時間(小児対象について)、およびIBAT阻害剤の投与の少なくとも30分後に、絶食している患者として定義される。IBAT阻害剤は、任意選択で、絶食期間中に水と共に投与され、水は自由に摂取することができる。
【0125】
胆汁酸
胆汁は、水、電解質、および多数の有機分子(胆汁酸、コレステロール、リン脂質、およびビリルビンなど)を含む。胆汁は肝臓から分泌されて胆嚢に貯蔵され、脂肪分の多い食事を摂取することにより胆嚢が収縮すると、胆汁は胆管を通過して腸に入る。胆汁酸/塩は、小腸での脂肪および脂溶性ビタミンの消化および吸収に重要である。成人は、一日に400~800mLの胆汁を生成する。胆汁の分泌は2段階で生じると考えることができる。最初に、肝細胞が胆汁を毛細胆管に分泌し、そこから胆汁が胆管に流れ込み、この肝胆汁は、大量の胆汁酸、コレステロール、およびその他の有機分子を含有する。次に、胆汁が胆管を通って流れるときに、胆管上皮細胞からの水っぽい重炭酸塩に富む分泌物の添加によって胆汁が修飾される。胆汁は、胆嚢に貯蔵されている間に、通常5倍に濃縮される。
【0126】
胆汁の流れは絶食時に最も少なく、その大部分は濃縮のために胆嚢に向けられる。摂取した食事の粥状液が小腸に入ると、酸ならびに部分的に消化された脂肪およびタンパク質がコレシストキニンおよびセクレチンの分泌を刺激し、これらは両方とも胆汁の分泌および流れに重要である。コレシストキニン(コレシスト=胆嚢およびキニン=運動)は、胆嚢および総胆管の収縮を刺激し、結果として腸への胆汁の送達をもたらすホルモンである。コレシストキニンの放出のための最も強力な刺激は、十二指腸における脂肪の存在である。セクレチンは十二指腸の酸に反応して分泌されるホルモンであり、胆管細胞を刺激して重炭酸塩および水を分泌し、それによって胆汁の体積を拡大して腸への流出を増加させる。
【0127】
胆汁酸/塩はコレステロールの誘導体である。食事の一部として摂取されるかあるいは肝臓での合成に由来するコレステロールは、肝細胞において胆汁酸/塩に変換される。このような胆汁酸/塩の例には、コール酸およびケノデオキシコール酸が含まれ、これらは次にアミノ酸(グリシンまたはタウリンなど)に抱合され、毛細胆管に能動的に分泌される抱合形態を生成する。ヒトで最も豊富な胆汁酸塩はコール酸塩およびデオキシコール酸塩であり、それらは通常、グリシンまたはタウリンのいずれかと抱合され、それぞれグリココール酸塩またはタウロコール酸塩を生成する。
【0128】
遊離コレステロールは、水溶液中では実質的に不溶性であるが、胆汁中では胆汁酸/塩および脂質の存在によって可溶性になる。胆汁酸/塩の肝臓合成は、体内でのコレステロール分解の大部分を占める。ヒトの場合、毎日およそ500mgのコレステロールが胆汁酸/塩に変換され、胆汁中に排出される。したがって、胆汁への分泌は、コレステロールを除去するための主要な経路である。毎日大量の胆汁酸/塩が腸に分泌されるが、体から失われるのは比較的少量である。これは、十二指腸に送達された胆汁酸/塩の約95%が、「腸肝循環」として知られるプロセスによって回腸内の血液に吸収されて戻るからである。
【0129】
回腸からの静脈血はまっすぐに門脈に入り、したがって肝臓の類洞を通過する。肝細胞は、類洞血液から胆汁酸/塩を非常に効率的に抽出し、健康な肝臓から体循環に逃れることはほとんどない。次に、胆汁酸/塩は肝細胞を通過して輸送され、毛細胆管に再分泌される。この腸肝循環の正味の効果は、各胆汁酸塩分子が、1回の消化段階中に約20回、多くの場合2~3回再利用されることである。胆汁生合成はコレステロールの主要な代謝運命を表し、平均的な成人が代謝過程で消費するコレステロールの約800mg/日の半分超を占める。これに比べて、ステロイドホルモンの生合成は、1日あたり約50mgのコレステロールしか消費しない。1日あたり400mgをはるかに上回る胆汁酸塩が必要であり、腸に分泌され、これは、胆汁酸塩をリサイクルさせることによって達成される。小腸の上部領域に分泌される胆汁酸塩のほとんどは、小腸の下端でそれらが乳化させた食事性脂質とともに吸収される。それらは食事性脂質から分離され、再利用のために肝臓に戻される。このように、リサイクルされることにより、毎日20~30gの胆汁酸塩が小腸に分泌されることが可能となる。
【0130】
胆汁酸/塩は両親媒性であり、コレステロール由来の部分は疎水性(脂溶性)部分と極性(親水性)部分の両方を含むが、アミノ酸抱合体は一般に極性で親水性である。この両親媒性により、胆汁酸/塩が2つの重要な機能(脂質凝集体の乳化と、水性環境への脂質の可溶化および輸送)を果たすことが可能となる。胆汁酸/塩は、食事性脂肪の粒子に対して洗剤作用を有し、脂肪球を分解または乳化させる。乳化は、脂肪滴の内部にアクセスできないリパーゼによる消化に利用可能な脂肪の表面積を大幅に増加させるので重要である。さらに、胆汁酸/塩は脂質担体であり、ミセルを形成することによって多くの脂質を可溶化することができ、脂溶性ビタミンの輸送および吸収に重要である。
【0131】
本明細書で使用される「非全身性」または「最小限に吸収される」という用語は、投与された化合物の低い全身性バイオアベイラビリティおよび/または吸収を指す。いくつかの実施形態において、非全身性化合物は、実質的に全身に吸収されない化合物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のIBAT阻害剤組成物は、IBAT阻害剤を遠位回腸、結腸、および/または直腸に送達し、全身に送達しない(例えば、IBAT阻害剤のかなりの部分は全身に吸収されない)。いくつかの実施形態において、非全身性化合物の全身吸収は、投与された用量の<0.1%、<0.3%、<0.5%、<0.6%、<0.7%、<0.8%、<0.9%、<1%、<1.5%、<2%、<3%、または<5%(重量%またはmol%)である。いくつかの実施形態において、非全身性化合物の全身吸収は、投与された用量の10%未満(<10%)である。いくつかの実施形態において、非全身性化合物の全身吸収は、投与された用量の15%未満(<15%)である。いくつかの実施形態において、非全身性化合物の全身吸収は、投与された用量の25%未満(<25%)である。いくつかの実施形態では、非全身性化合物の全身吸収は、投与された用量の30%未満である。別のアプローチでは、非全身性IBAT阻害剤は、全身性IBAT阻害剤(例えば、化合物100A、100C)の全身性バイオアベイラビリティと比較してより低い全身性バイオアベイラビリティを有する化合物である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非全身性IBAT阻害剤のバイオアベイラビリティは、全身性IBAT阻害剤のバイオアベイラビリティの<30%、<40%、<50%、<60%、または<70%である(例えば、マラリキシバットまたはボリキシバット)。
【0132】
別の代替アプローチでは、本明細書に記載の組成物は、IBAT阻害剤の投与された用量の10%未満を全身に送達するように製剤化(処方)される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、IBAT阻害剤の投与された用量の20%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、IBAT阻害剤の投与された用量の30%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、IBAT阻害剤の投与された用量の40%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、IBAT阻害剤の投与された用量の50%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、IBAT阻害剤の投与された用量の60%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、IBAT阻害剤の投与された用量の70%未満を全身に送達するように製剤化される。いくつかの実施形態において、全身吸収は、総循環量、投与後にクリアランスされた量などを含む、任意の適切な様式で決定される。
【0133】
イベントフリー生存期間(EFS)
本発明の方法の様々な実施形態において、対象へのIBAT阻害剤の投与は、イベントフリー生存期間(EFS)を増加させる。ある特定の実施形態では、IBAT阻害剤の投与は、a)総ビリルビン(TB);b)総血清胆汁酸(sBA)、およびc)痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される掻痒スコア;のうちの1つまたは複数を低減させることによって、対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる。
【0134】
特定の実施形態では、EFSは、肝代償不全(hepatic decompensation)、胆道迂回手術(surgical biliary diversion)、肝移植、または死亡のうちの1つまたは複数がない状態での生存を含む。特定の実施形態において、肝代償不全は、静脈瘤出血および/または治療を必要とする腹水を含む。
【0135】
特定の実施形態では、本開示は、無イベント生存期間(EFS)を予測することによって、それを必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患の処置のためのIBAT阻害剤療法に対する反応の予測を提供するための方法を提供し、その方法は、総ビリルビン(TB)データ、総血清胆汁酸(sBA)データ、掻痒軽減データ、およびIBAT阻害剤による処置の開始時の対象の年齢のうちの1つまたは複数を取得すること、および対象について取得したデータを用いてEFSを予測することを含む。
【0136】
特定の実施形態では、EFSは、TBが約6.5mg/dL未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、TBが約6mg/dL未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、TBが約5mg/dL未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、TBが約4mg/dL未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、TBが約3mg/dL未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、TBが約2mg/dL未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、TBが約1mg/ml未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、TBが約0.1mg/ml未満である場合に予測される。
【0137】
特定の実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤での処置後のsBAレベルが約200μmol/L未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤での処置後のsBAレベルが約150μmol/L未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤での処置後のsBAレベルが約100μmol/L未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤での処置後のsBAレベルが約50μmol/L未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤での処置後のsBAレベルが約20μmol/L未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤での処置後のsBAレベルが約10μmol/L未満である場合に予測される。特定の実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤での処置後のsBAレベルが約5μmol/L未満である場合に予測される。
【0138】
ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約100週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始の約150週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約200週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約250週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約300週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約300週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約350週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約400週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約450週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約500週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約18週間~約500週間後に決定される。ある特定の実施形態では、sBAレベルは、IBAT阻害剤処置の開始から約48週間~約500週間後に決定される。
【0139】
ある特定の実施形態では、EFSは、IBAT阻害剤の初回投与時の掻痒と比較したIBAT阻害剤による処置後の掻痒の軽減が、約1点を超える場合に予測され、掻痒は、痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される。
【0140】
ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から18週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から24週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から48週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約100週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約150週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約200週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約250週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約300週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約300間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約350週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約400週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約450週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約500週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約18週間~約500週間後に決定される。ある特定の実施形態では、掻痒は、IBAT阻害剤処置の開始から約48週間~約500週間後に決定される。
【0141】
特定の実施形態では、EFSは、処置開始時の対象の年齢が約36か月以上である場合に予測される。
【0142】
本発明の方法の様々な実施形態において、対象へのIBAT阻害剤の投与は、健康関連の生活の質(HRQoL)の改善をもたらす。
【0143】
特定の実施形態では、HRQoLは、痒み報告アウトカム(Itch Reported Outcome)(ItchRO)、小児の生活の質尺度ジェネリックコア(Pediatric Quality of Life Inventory Generic Core)(PedsQL)、家族介護負担感(Family Impact)(FI)、および多次元倦怠感(Multidimensional Fatigue)(MF)スケールスコアを使用することによって決定される。
【0144】
特定の実施形態では、ItchROスケールスコアは、0(0=なし)から4(4=非常に重篤)までの範囲である。特定の実施形態では、臨床的に意味のある掻痒反応は、ベースラインから処置の第48週目までにItchROの≧1点の減少として定義される。
【0145】
特定の実施形態では、PedsQLスケールスコアは0~100の範囲であり、100=最良の生活の質である。
【0146】
IBAT阻害剤
本発明の方法の様々な実施形態において、IBAT阻害剤が対象に投与される。IBAT阻害剤(ASBT阻害剤)は、遠位回腸、結腸および/または直腸を含む遠位消化管(GI)での胆汁酸のリサイクルを低減または阻害する。回腸胆汁酸輸送の阻害は、胆汁酸の腸肝循環を妨害し、結果的により多くの胆汁酸が糞便に排泄され、全身における胆汁酸レベルの低下をもたらし、それによって胆汁酸媒介肝障害ならびに関連する影響及び合併症を低減する。特定の実施形態では、IBAT阻害剤は全身に吸収される。特定の実施形態では、IBAT阻害剤は全身に吸収されない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるIBAT阻害剤は、非全身性になるように修飾または置換される。
【0147】
特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数のキラル中心を有する。したがって、すべての立体異性体が本明細書において想定される。様々な実施形態において、本明細書に記載の化合物は、光学活性体またはラセミ体の形態で存在する。本発明の化合物は、本明細書に記載の治療的に有用な特性を有する、ラセミ体、光学活性体、位置異性体および立体異性体の形態、またはそれらの組み合わせを包含することを理解されたい。光学活性体の調製は、任意の適切な方法で達成され、非限定的な例として、再結晶技術によるラセミ体の分割によって、光学活性出発物質からの合成によって、キラル合成によって、またはキラル固定相を使用するクロマトグラフィー分離によって達成される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の異性体の混合物が、本明細書に記載の治療化合物として利用される。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含む。これらの化合物は、エナンチオ選択的合成および/またはエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物の分離を含む、任意の手段によって調製される。化合物およびその異性体の分割は、非限定的な例として、化学的プロセス、酵素的プロセス、分別結晶、蒸留、クロマトグラフィーなどを含む、任意の手段によって達成される。
【0148】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、
【化5】
である。
【0149】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、
【化6】
(マラリキシバット塩化物、LUM-001、SHP625、ロピキシバット塩化物)、またはその代替の薬学的に許容される塩である。
【0150】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、
【化7】
(ボリキシバット(volixibat)、(2R,3R,4S,5R,6R)-4-ベンジルオキシ-6-{3-[3-((3S,4R,5R)-3-ブチル-7-ジメチルアミノ-3-エチル-4-ヒドロキシ-1,1-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]チエピン-5-イル)-フェニル]-ウレイド}-3,5-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-ピラン-2-イルメチル)硫酸水素塩)、またはその薬学的に許容される塩である。
【0151】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、
【0152】
【化8】
(LUM-002;SHP626;SAR548304;ボリキシバットカリウム)、またはその代替の薬学的に許容される塩である。
【0153】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、
【化9】
(オデビキシバット(odevixibat);AZD8294;WH010706;AR-H064974;SCHEMBL946468;A4250;1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-a-[N-((S)-1-カルボキシプロピル)カルバモイル]-4-ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,5-ベンゾチアジアゼピン)、またはその薬学的に許容される塩である。
【0154】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、
【化10】
(エロビキシバット(elobixibat);2-[[(2R)-2-[[2-[(3,3-ジブチル-7-メチルスルファニル-1.1-ジオキソ-5-フェニル-2,4-ジヒドロ-1λ6,5-ベンゾチアゼピン-8-イル)オキシ]アセチル]アミノ]-2-フェニルアセチル]アミノ]酢酸)、またはその薬学的に許容される塩である。
【0155】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、
【化11】
(GSK2330672;リネリキシバット(linerixibat);3-((((3R,5R)-3-ブチル-3-エチル-7-(メチルオキシ)-1,1-ジオキシド-5-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-8-イル)メチル)アミノ)ペンタン二酸)、またはその薬学的に許容される塩である。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物において使用されるIBAT阻害剤は、マラリキシバット(例えば、マラリキシバット塩化物として)、ボリキシバット(例えば、ボリキシバットカリウムとして)、またはオデビキシバット(A4250)、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0157】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物おいて使用されるIBAT阻害剤は、マラリキシバット、またはその薬学的に許容される塩である。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物において使用されるIBAT阻害剤は、ボリキシバット、またはその薬学的に許容される塩である。
【0159】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物において使用されるIBAT阻害剤は、オデビキシバット、またはその薬学的に許容される塩である。
【0160】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物において使用されるIBAT阻害剤は、エロビキシバット、またはその薬学的に許容される塩である。
【0161】
いくつかの実施形態では、本発明の方法または組成物において使用されるIBAT阻害剤は、GSK2330672、またはその薬学的に許容される塩である。
【0162】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、異なるIBAT阻害剤の混合物を含み得る;例えば、IBAT阻害剤は、マラリキシバット、ボリキシバット、オデビキシバット、GSK2330672、エロビキシバット、またはそれらの様々な組み合わせを含む組成物であり得る。
【0163】
胆汁うっ滞を処置しかつ消化管系有害作用を最小限に抑えるための方法
肝疾患を有する対象における胆汁うっ滞を処置するための方法であって、その処置が対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる方法を本明細書において提供する。この方法は、処置を必要とする対象に頂端側ナトリウム依存性胆汁酸トランスポーター阻害剤(IBAT阻害剤)を投与することを含む。IBAT阻害剤は、マラリキシバットまたはボリキシバット、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。IBAT阻害剤は、約100μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。
【0164】
本明細書では、必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法が提供され、その方法は、治療有効量の回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤(IBAT阻害剤)を対象に投与することを含み、その処置は、1)無イベント生存期間(EFS)の増加、および2)健康関連の生活の質の改善(HRQoL)のうちの1つまたは複数をもたらす。
【0165】
本明細書では、必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置する方法が提供され、その方法は、対象に治療有効量の回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害剤を投与することを含み、その処置は、
a)総ビリルビン(TB);
b)総血清胆汁酸(sBA);および
c)痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツールによって測定される掻痒スコア
のうちの1つまたは複数を低減させることによって、対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる。
【0166】
本明細書では、必要とする小児対象におけるアラジール症候群を処置する方法が提供され、その方法は、治療有効量のマラリキシバットまたはその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含み、投与は、IBAT阻害剤の初回投与後少なくとも18か月間対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる。
【0167】
本明細書では、無イベント生存期間(EFS)を予測することによって、必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患の処置のためのIBAT阻害剤療法に対する反応の予測を提供する方法が提供され、その方法は、総ビリルビン(TB)データ、総血清胆汁酸(sBA)データ、掻痒軽減データ、およびIBAT阻害剤による処置の開始時における対象の年齢のうちの1つまたは複数を得ること、および対象について得られたデータを用いてEFSを予測することを含む。
【0168】
本明細書では、マラリキシバットの初回投与後6年間の無イベント生存(EFS)を予測することによって、それを必要とする対象におけるアラジール症候群の処置のためのマラリキシバット療法に対する反応の予測を提供するための方法が提供され、その方法は、総ビリルビン(TB)データ、総血清胆汁酸(sBA)データ、掻痒軽減データ、およびIBAT阻害剤による処置の開始時の対象の年齢を得ること、および対象について得られたデータを使用してEFSを予測することを含む。
【0169】
本明細書では、それを必要とする対象における胆汁うっ滞性肝疾患を処置するための方法が提供され、その方法は、食物摂取前に治療有効量のIBAT阻害剤を対象に投与することを含み、対象は、IBAT阻害剤の投与に関連する1つまたは複数の副作用の頻度および/または重症度の低減を経験し、処置は、対象の無イベント生存期間(EFS)を増加させる。本方法は、処置を必要とする対象に、食物摂取前にIBAT阻害剤を投与することを含む。ある特定の実施形態では、IBAT阻害剤は、マラリキシバットもしくはボリキシバット、またはそれらの薬学的に許容される塩である。IBAT阻害剤は、約100μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。
【0170】
ある特定の実施形態では、IBAT阻害剤は、絶食状態(または空腹状態)で対象に投与される。ある特定の実施形態では、IBAT阻害剤は、食物の摂取の約1分未満、約5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、または約60分未満前に投与される。特定の実施態様において、IBAT阻害剤は、食物摂取の直前に投与される。
【0171】
様々な実施形態において、肝疾患は胆汁うっ滞性肝疾患である。いくつかの実施形態では、肝疾患は、PFIC、ALGS、PSC、胆道閉鎖症、妊娠性肝内胆汁うっ滞症、PBC、上述の胆汁うっ滞性肝疾患のいずれか、またはそれらの様々な組み合わせである。
【0172】
特定の実施形態において、胆汁うっ滞性肝疾患は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)、PFIC1型、PFIC2型、PFIC3型、アラジール症候群、デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群、胆道閉鎖症、葛西手術後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆道閉鎖症、肝移植後の胆汁うっ滞、肝移植後関連肝疾患、腸管不全合併肝障害(intestinal failure associated liver disease)、胆汁酸媒介性肝障害、小児原発性硬化性胆管炎、MRP2欠損症候群、新生児硬化性胆管炎、小児閉塞性胆汁うっ滞、小児非閉塞性胆汁うっ滞、小児肝外胆汁うっ滞、小児肝内胆汁うっ滞、小児原発性肝内胆汁うっ滞、小児続発性肝内胆汁うっ滞、良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)、BRIP1型、BRIC2型、BRIC3型、中心静脈栄養関連胆汁うっ滞、腫瘍随伴性胆汁うっ滞、スタウファー(Stauffer)症候群、薬物関連胆汁うっ滞、感染関連胆汁うっ滞、または胆石症である。いくつかの実施形態では、胆汁性肝疾患は、小児型の肝疾患である。いくつかの実施形態では、対象は、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(ICP)を有する。
【0173】
特定の実施形態において、胆汁うっ滞性肝疾患は、黄疸、掻痒症、肝硬変、高胆汁血症、新生児呼吸窮迫症候群、肺炎、胆汁酸の血清濃度の上昇、胆汁酸の肝濃度の上昇、ビリルビンの血清濃度の上昇、肝細胞損傷、肝瘢痕化、肝不全、肝肥大、黄色腫、吸収不良、脾腫、下痢、膵炎、肝細胞壊死、巨細胞形成、肝細胞がん、消化管出血、門脈圧亢進症、聴力損失、倦怠感(疲労)、食欲不振、無食欲症(anorexia)、特異臭、暗色尿、薄い便(light stool)、脂肪便、成長障害、および/または腎不全から選択される1つまたは複数の症状を特徴とする。
【0174】
様々な実施形態において、肝疾患はPFIC2であり、対象はABCB11遺伝子に非短縮型変異(non-truncating mutation)を有する。様々な実施形態において、ABCB11遺伝子における非短縮型変異は、ミスセンス変異である。様々な実施形態において、ミスセンス変異は、Byrne, et al., “Missense Mutations and Single Nucleotide Polymorphisms in ABCB11 Impair Bile Salt Export Pump Processing and Function or Disrupt Pre-Messanger RNA Splicing,” Hepatology, 49:553-567 (2009)に列挙されている変異の1つから選択することができ、この文献はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
様々な実施形態において、対象は、BSEP欠損症に関連する、BSEP欠損症によって引き起こされる、またはBSEP欠損症によって部分的に引き起こされる状態を有する。特定の実施形態において、BSEP欠損症に関連する、BSEP欠損症によって引き起こされる、またはBSEP欠損症によって部分的に引き起こされる状態は、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、PFIC2、良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(ICP)、薬物誘発性胆汁うっ滞、経口避妊薬誘発性胆汁うっ滞、胆道閉鎖症、またはそれらの組み合わせである。
【0176】
様々な実施形態において、患者は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18歳未満の小児患者である。特定の実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、乳児、幼児、未就学児、学齢期の子供、思春期前の子供、思春期後の子供、青年期の若者、または18歳未満のティーンエイジャーである。いくつかの実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、乳児、幼児、未就学児、または学齢期の子供である。いくつかの実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、乳児、幼児、または未就学児である。いくつかの実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、乳児、または幼児である。いくつかの実施形態では、小児対象は、新生児、早産児、または乳児である。いくつかの実施形態では、小児対象は新生児である。いくつかの実施形態では、小児対象は乳児である。いくつかの実施形態では、小児対象は幼児である。様々な実施形態では、小児患者は、PFIC2、PFIC1、またはALGSを有する。いくつかの実施形態では、患者は、18、20、30、40、50、60、または70歳を超える成人である。一部の患者において、成人患者はPSCを有する。一部の患者において、成人患者はPBCを有する。一部の患者において、成人患者はICPを有する。一部の実施形態では、小児患者は、正常未満の成長、身長、または体重をもたらす小児の胆汁うっ滞状態を有する。
【0177】
特定の実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のIBAT阻害剤の非全身投与を含む。特定の実施形態では、方法は、それを必要とする個体の遠位回腸および/または結腸および/または直腸を含む消化管をIBAT阻害剤と接触させることを含む。様々な実施形態において、本発明の方法は、腸細胞内(intraenterocyte)の胆汁酸の減少、あるいは胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患によって引き起こされる肝細胞または腸構造への損傷の減少を生じさせる。
【0178】
様々な実施形態において、本発明の方法は、治療有効量の本明細書に記載のいずれかのIBAT阻害剤を個体の回腸または結腸に送達することを含む。
【0179】
様々な実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のIBAT阻害剤の投与を含む、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患による肝細胞または腸の構造もしくは細胞への損傷を低減することを含む。特定の実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のIBAT阻害剤を、それを必要とする個体に投与することによって、腸細胞内の胆汁酸/塩を減少させることを含む。
【0180】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、本明細書に記載の化合物のいずれかを個体に投与することにより、胆汁酸塩のリサイクルの阻害を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるIBAT阻害剤は、投与すると全身に吸収される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のIBAT阻害剤は全身に吸収されない。いくつかの実施形態では、本明細書のIBAT阻害剤は、個体に経口投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のIBAT阻害剤は、個体の遠位回腸に送達されおよび/またはそこで放出される。
【0181】
様々な実施形態において、個体の遠位回腸にIBAT阻害剤(例えば、本明細書に記載の任意のIBAT阻害剤)を接触させることにより、胆汁酸の再取り込みを阻害し、遠位回腸および/または結腸および/または直腸のL細胞の近傍における胆汁酸/塩の濃度を増加させ、それによって腸細胞内の胆汁酸を減少させ、血清および/または肝臓の胆汁酸レベルを低下させ、全体の血清胆汁酸負荷を減少させ、および/または胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患によって引き起こされる回腸構造への損傷を低減させる。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、血清および/または肝臓の胆汁酸レベルの低下は、高胆汁血症および/または胆汁うっ滞性疾患を改善する。
【0182】
本明細書に記載の化合物の投与は、非限定的な例として、経口、腸内(enteric)、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)、鼻腔内、頬側(buccal)、局所、直腸、または経皮投与経路による方法を含む、任意の適切な方法で達成することができる。本明細書に記載の任意の化合物または組成物は、新生児または乳児を処置するのに適切な方法または製剤で投与され得る。本明細書に記載の任意の化合物または組成物は、新生児または乳児を処置するために経口製剤(例えば、固体または液体)で投与され得る。本明細書に記載の任意の化合物または組成物は、食物の摂取前、食物と共に、または食物の摂取後に投与され得る。
【0183】
特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物または化合物を含む組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与される。治療的適用において、組成物は、すでに疾患または状態に罹患している個体に、疾患または状態の症状を治癒させるか、または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。様々な場合において、この使用に有効な量は、疾患または状態の重症度および経過、以前の治療、個体の健康状態、体重、および薬物に対する反応、ならびに処置する医師の判断に依存する。
【0184】
予防的適用において、本明細書に記載の化合物または化合物を含む組成物は、特定の疾患、障害または状態に罹患しやすいか、そうでなければそのリスクがある個体に投与され得る。この使用の特定の実施形態において、投与される化合物の正確な量は、個体の健康状態、体重などに依存する。さらに、いくつかの場合において、本明細書に記載の化合物または組成物が個体に投与される場合、この使用のための有効量は、疾患、障害または状態の重症度および経過、以前の治療、個体の健康状態および薬物に対する反応、ならびに処置する医師の判断に依存する。
【0185】
選択された用量の本明細書に記載の化合物または組成物の投与後に個体の状態が改善しない本発明の方法の特定の実施形態において、医師の裁量により、本明細書に記載の化合物または組成物は任意選択で慢性的に投与され、すなわち、個体の障害、疾患、または状態の症状を改善するか、さもなければ制御または制限するために、個体の生涯にわたる期間を含めて、長期間にわたり投与される。
【0186】
本発明の方法の特定の実施形態において、所与の薬剤の有効量は、特定の化合物、疾患または状態およびその重症度、処置を必要とする対象または宿主の個性(例えば、体重)などのいくつかの因子のうちの1つまたは複数に応じて変動し、例えば、投与されている特定の薬剤、投与経路、処置されている状態、および処置されている対象または宿主などの、症例を取り巻く特定の環境に従って決定される。いくつかの実施形態において、投与される用量は、最大耐用量までの用量を含む。いくつかの実施形態において、投与される用量は、新生児または乳児による最大耐用量までの用量を含む。
【0187】
本発明の方法の様々な実施形態において、所望の用量は、単回投与で、あるいは同時に(もしくは短期間にわたって)または適切な間隔で、例えば1日に2回、3回、4回またはそれ以上のサブ用量として投与される分割投与で、都合よく提供される。様々な実施形態において、単回用量(single dose)のIBAT阻害剤が、6時間ごと、12時間ごと、24時間ごと、48時間ごと、72時間ごと、96時間ごと、5日ごと、6日ごと、または週に1回、投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤の総単回用量(total single dose)は、以下に記載される範囲内である。
【0188】
本発明の方法の様々な実施形態において、患者の状態が改善する場合、医師の裁量により、IBAT阻害剤が任意選択で継続的に与えられる;あるいは、投与される薬物の用量が、特定の期間(すなわち、「休薬」)の間、一時的に減らされるか、または一時的に中断される。休薬期間の長さは、任意選択で、2日~1年の間で変動し、単なる例示として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、または365日などである。休薬期間中の用量減少は、元の用量の10%~100%を含み、単なる例示として、元の用量の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%などである。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤の総単回用量は、以下に記載される範囲内である。
【0189】
患者の状態の改善が生じると、必要に応じて維持用量を投与する。その後、投薬量または投与頻度、あるいはその両方が、症状の関数として、改善された疾患、障害または状態が保持されるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、患者は、あらゆる症状の再発時に長期的に間欠的な処置を必要とする。
【0190】
特定の例では、個々の治療レジメンに関して多数の変数があり、これらの推奨値からのかなりの逸脱が、本明細書に記載される範囲内であると考えられる。本明細書に記載の投薬量は、非限定的な例として、使用される化合物の活性、処置される疾患または状態、投与様式、個々の対象の要件、処置される疾患または状態の重症度、および開業医の判断などの、多くの変数に応じて任意選択で変更される。
【0191】
このような治療レジメンの毒性および治療有効性は、LD50(母集団の50%致死量)およびED50(母集団の50%治療有効用量)の決定を含むがこれらに限定されない、細胞培養物または実験動物における薬学的手順によって任意選択で決定される。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50とED50の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。特定の実施形態において、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータが、ヒトで使用するための投薬量の範囲を策定する際に使用される。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の投薬量は、最小限の毒性を有するED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、任意選択でこの範囲内で変動する。
【0192】
特定の実施形態において、使用または投与される組成物は、吸収阻害剤、担体、ならびにコレステロール吸収阻害剤、腸内分泌ペプチド(enteroendocrine peptide)、ペプチダーゼ阻害剤、展着剤(spreading agent)、および湿潤剤のうちの1つまたは複数を含む。
【0193】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、経口剤形を調製するために使用されるまたは経口投与される組成物は、吸収阻害剤、経口的に適切な担体、任意選択のコレステロール吸収阻害剤、任意選択の腸内分泌ペプチド、任意選択のペプチダーゼ阻害剤、任意選択の展着剤、および任意選択の湿潤剤を含む。特定の実施形態において、経口投与された組成物は、肛門直腸反応を誘発する。特定の実施形態において、肛門直腸反応は、結腸および/または直腸における細胞(例えば、結腸、回腸、直腸、またはそれらの組み合わせの上皮層におけるL細胞)による1つまたは複数の腸内分泌物の分泌の増加である。いくつかの実施形態では、肛門直腸反応は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間持続する。他の実施形態では、肛門直腸反応は、24時間~48時間持続するが、他の実施形態では、肛門直腸反応は、48時間を超える期間持続する。
【0194】
投薬量(Dosage)
様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、マラリキシバットまたはボリキシバット、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0195】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、食物の摂取前に対象に投与される。
【0196】
様々な実施形態において、患者へのIBAT阻害剤投与の有効性および安全性は、7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(7αC4)の血清レベル、sBA濃度、7αC4のsBAに対する比(7αC4:sBA)、血清抱合型ビリルビン濃度、血清オートタキシン濃度、血清ビリルビン濃度、血清総コレステロール濃度、血清LDL-C濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、またはそれらの組み合わせを測定することによって監視される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤投与の有効性は、痒み報告アウトカム(観察者)(ITCHRO(OBS))スコア、HRQoL(例えば、PedsQL)スコア、CSSスコア、黄色腫スコア、身長Zスコア、体重Zスコア、またはそれらの様々な組み合わせを監視することによって測定される。様々な実施形態において、この方法は、7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(7αC4)の血清レベル、sBA濃度、7αC4のsBAに対する比(7αC4:sBA)、血清抱合型ビリルビン濃度、血清総コレステロール濃度、血清LDL-C濃度、血清オートタキシン濃度、血清ビリルビン濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、またはそれらの組み合わせを監視することを含む。様々な実施形態において、この方法は、痒み報告アウトカム(観察者)(ITCHRO(OBS))スコア、体重Zスコア、HRQoL(例えば、PedsQL)スコア、黄色腫スコア、CSSスコア、身長Zスコア、またはそれらの様々な組み合わせを監視することを含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、約または少なくとも約0.5μg/kg、1μg/kg、2μg/kg、3μg/kg、4μg/kg、5μg/kg、6μg/kg、7μg/kg、8μg/kg、9μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、85μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、240μg/kg、250μg/kg、280μg/kg、300μg/kg、360μg/kg、380μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、560μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、880μg/kg、900μg/kg、1,000μg/kg、1,100μg/kg、1,200μg/kg、1,300μg/kg、1,400μg/kg、1500μg/kg、1,600μg/kg、1,700μg/kg、1,800μg/kg、1,900μg/kg、または2,000μg/kgの用量で投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約1μg/kg、2μg/kg、3μg/kg、4μg/kg、5μg/kg、6μg/kg、7μg/kg、8μg/kg、9μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、85μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、240μg/kg、250μg/kg、280μg/kg、300μg/kg、360μg/kg、380μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、560μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、880μg/kg、900μg/kg、1,000μg/kg、1,100μg/kg、1,200μg/kg、1,300μg/kg、1,400μg/kg、1,500μg/kg、1,600μg/kg、1,700μg/kg、1,800μg/kg、1,900μg/kg、2,000、または2,100μg/kgを超えない用量で投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約または少なくとも約0.5mg/日、1mg/日、2mg/日、3mg/日、4mg/日、5mg/日、6mg/日、7mg/日、8mg/日、9mg/日、10mg/日、11mg/日、12mg/日、13mg/日、14mg/日、15mg/日、16mg/日、17mg/日、18mg/日、19mg/日、20mg/日、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、70mg/日、80mg/日、90mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、300mg/日、500mg/日、600mg/日、700mg/日、800mg/日、900mg/日、1000mg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約1mg/日、2mg/日、3mg/日、4mg/日、5mg/日、6mg/日、7mg/日、8mg/日、9mg/日、10mg/日、11mg/日、12mg/日、13mg/日、14mg/日、15mg/日、16mg/日、17mg/日、18mg/日、19mg/日、20mg/日、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、70mg/日、80mg/日、90mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、300mg/日、500mg/日、600mg/日、700mg/日、800mg/日、900mg/日、1,000mg/日、1,100mg/日以下の用量で投与される。
【0198】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、約140μg/kg/日~約1400μg/kg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約または少なくとも約0.5μg/kg/日、1μg/kg/日、2μg/kg/日、3μg/kg/日、4μg/kg/日、5μg/kg/日、6μg/kg/日、7μg/kg/日、8μg/kg/日、9μg/kg/日10μg/kg/日、15μg/kg/日、20μg/kg/日、25μg/kg/日、30μg/kg/日、35μg/kg/日、40μg/kg/日、45μg/kg/日、50μg/kg/日、100μg/kg/日、140μg/kg/日、150μg/kg/日、200μg/kg/日、240μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、250μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、360μg/kg/日、380μg/kg/日、400μg/kg/日、500μg/kg/日、560μg/kg/日、600μg/kg/日、700μg/kg/日、800μg/kg/日、880μg/kg、900μg/kg/日、1,000μg/kg/日、1,100μg/kg/日、1,200μg/kg/日、または1,300μg/kg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約1μg/kg/日、2μg/kg/日、3μg/kg/日、4μg/kg/日、5μg/kg/日、6μg/kg/日、7μg/kg/日、8μg/kg/日、9μg/kg/日10μg/kg/日、15μg/kg/日、20μg/kg/日、25μg/kg/日、30μg/kg/日、35μg/kg/日、40μg/kg/日、45μg/kg/日、50μg/kg/日、100μg/kg/日、140μg/kg/日、150μg/kg/日、200μg/kg/日、240μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、250μg/kg/日、280μg/kg/日、300μg/kg/日、360μg/kg/日、380μg/kg/日、400μg/kg/日、500μg/kg/日、560μg/kg/日、600μg/kg/日、700μg/kg/日、800μg/kg/日、880μg/kg/日、900μg/kg/日、1,000μg/kg/日、1,100μg/kg/日、1,200μg/kg/日、1,300μg/kg/日、または1,400μg/kg/日を超えない用量で投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約0.5μg/kg/日~約500μg/kg/日、約0.5μg/kg/日~約250μg/kg/日、約1μg/kg/日~約100μg/kg/日、約10μg/kg/日~約50μg/kg/日、約10μg/kg/日~約100μg/kg/日、約0.5μg/kg/日~約2000μg/kg/日、約280μg/kg/日~約1400μg/kg/日、約420μg/kg/日~約1400μg/kg/日、約250~約550μg/kg/日、約560μg/kg/日~約1400μg/kg/日、from700μg/kg/日~約1400μg/kg/日、約560μg/kg/日~約1200μg/kg/日、約700μg/kg/日~約1200μg/kg/日、約560μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約700μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約800μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約200μg/kg/日~約600μg/kg/日、約300μg/kg/日~約600μg/kg/日、約400μg/kg/日~約500μg/kg/日、約400μg/kg/日~約600μg/kg/日、約400μg/kg/日~約700μg/kg/日、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日、約500μg/kg/日~約800μg/kg/日、約500μg/kg/日~約900μg/kg/日、約600μg/kg/日~約900μg/kg/日、約700μg/kg/日~約900μg/kg/日、約200μg/kg/日~約600μg/kg/日、約800μg/kg/日~約900μg/kg/日、約100μg/kg/日~約1500μg/kg/日、約300μg/kg/日~約2,000μg/kg/日、または約400μg/kg/日~約2000μg/kg/日の用量で投与される。
【0199】
いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、1回あたり約30μg/kg~約1400μg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、1回あたり約0.5μg/kg~約2000μg/kg、1回あたり約0.5μg/kg~約1500μg/kg、1回あたり約100μg/kg~約700μg/kg、1回あたり約5μg/kg~約100μg/kg、1回あたり約10μg/kg~約500μg/kg、1回あたり約50μg/kg~約1400μg/kg用量、1回あたり約300μg/kg~約2000μg/kg、1回あたり約60μg/kg~約1200μg/kg、1回あたり約70μg/kg~約1000μg/kg、約70~1回あたりμg/kg~約700μg/kg、1回あたり80μg/kg~約1000μg/kg、1回あたり80μg/kg~約800μg/kg、100μg/kg~約800μg/1回あたりkg、1回あたり100μg/kg~約600μg/kg、1回あたり150μg/kg~約700μg/kg、1回あたり150μg/kg~約500μg/kg、1回あたり200μg/1回あたりkg~約400μg/kg、1回あたり200μg/kg~約300μg/kg、または1回あたり300μg/kg~約400μg/kgの用量で投与される。
【0200】
いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約0.5mg/日~約550mg/日の用量で投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約1mg/日~約500mg/日、約1mg/日~約300mg/日、約1mg/日~約200mg/日、約2mg/日~約300mg/日、約2mg/日~約200mg/日、約4mg/日~約300mg/日、約4mg/日~約200mg/日、約4mg/日~約150mg/日、約5mg/日~約150mg/日、約5mg/日~約100mg/日、約5mg/日~約80mg/日、約5mg/日~約50mg/日、約5mg/日~約40mg/日、約5mg/日~約30mg/日、約5mg/日~約20mg/日、約5mg/日~約15mg/日、約10mg/日~約100mg/日、約10mg/日~約80mg/日、約10mg/日~約50mg/日、約10mg/日~約40mg/日、約10mg/日~約20mg/日、約20mg/日~約100mg/日、約20mg/日~約80mg/日、約20mg/日~約50mg/日、または約20mg/日~約40mg/日、または約20mg/日~約30mg/日の用量で投与される。
【0201】
いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、1回あたり約200μg/kg~約400μg/kgの量で1日2回(BID)投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約280μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約20mg/日~約50mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約5mg/日~約15mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約560μg/kg/日~約1,400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、約700μg/kg/日~約1,400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約400μg/kg/日~約800μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は、約700μg/kg/日~約900μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約560μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、700μg/kg/日~約1400μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約200μg/kg/日~約600μg/kg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、約400μg/kg/日~約600μg/kg/日の量で投与される。
【0202】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の用量は、第1の用量レベルである。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の用量は、第2の用量レベルである。いくつかの実施形態において、第2の用量レベルは、第1の用量レベルよりも高い。いくつかの実施形態において、第2の用量レベルは、第1の用量レベルよりも約または少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍または100倍高い。いくつかの実施形態において、第2の用量レベルは、第1の用量レベルの約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、または150倍を超えない。
【0203】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、上記の用量のうちの1つで、または上記の用量範囲のうちの1つの範囲内で、1日1回(QD)投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、上記の用量のうちの1つで、または上記の用量範囲のうちの1つの範囲内で、1日2回(BID)投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の用量は、毎日、隔日で、週に2回、または週に1回投与される。
【0204】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、48、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、または800週間、定期的に投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、48、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、または1000週間を超えない期間投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約または少なくとも約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年の期間、定期的に投与される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または15年を超えない期間、定期的に投与される。
【0205】
胆汁うっ滞性肝疾患の症状の軽減または疾患関連検査値の変化
本発明の上記の方法の様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、胆汁うっ滞性肝疾患の症状の軽減または疾患関連検査値(disease-relevant laboratory measure)の変化(すなわち、患者の状態の改善)をもたらし、それは、約または少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、6か月、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、1年、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、23か月、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、4.5年、5年、5.5年、6年、6.5年、7年、8年、9年、または10年の間維持される。様々な実施形態において、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、sBA濃度の低下、血清7αC4濃度の上昇、7αC4:sBA比の増大、fBA排泄の増加、掻痒症の軽減、血清総コレステロール濃度の低下、血清LDL-Cコレステロール濃度の低下、ALTレベルの低下、生活の質尺度スコア(quality of life inventory score)の増加、倦怠感に関する生活の質尺度スコアの増加、黄色腫スコアの減少、血清オートタキシン濃度の低下、成長の増加、またはそれらの組み合わせを含む。様々な実施形態において、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、ベースラインレベルと比較して決定される。すなわち、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、1)患者に投与されるIBAT阻害剤の用量レベルの変更の前、2)患者が従う投与レジメンの変更の前、3)IBAT阻害剤の投与の開始前、または4)患者における症状の軽減または疾患関連検査値の変化を目的として行われるその他のさまざまな変更の前の、症状の測定値または疾患関連検査値の変化と比較して決定される。様々な実施形態において、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、統計的に有意な低減である。
【0206】
様々な実施形態において、胆汁うっ滞性肝疾患の症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、約または少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、6か月、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、1年、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、23か月、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、4.5年、5年、5.5年、6年、6.5年、7年、8年、9年、または10年の間の症状の漸進的な軽減または疾患関連検査値の変化として測定される。
【0207】
いくつかの実施形態では、患者は小児患者であり、症状の軽減または疾患関連検査値の変化は、成長の増加または改善を含む。いくつかの実施形態では、成長の増加は、ベースラインと比較して測定される。様々な実施形態において、成長の増加は、身長Zスコアまたは体重Zスコアの増加として測定される。様々な実施形態において、身長Zスコアまたは体重Zスコアの増加は統計的に有意である。様々な実施形態において、身長Zスコア、体重Zスコア、またはその両方は、ベースラインに対して、少なくとも0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17.、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6、0.7、0.8、または0.9増加する。いくつかの実施形態では、身長Zスコア、体重Zスコア、またはその両方は、約または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、48、50、60、70、または72週間の期間にわたるIBAT阻害剤の投与中に漸進的に増加する。
【0208】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、血清7αC4濃度の上昇をもたらす。様々な実施形態において、血清7αC4濃度は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、または500倍に増加する。様々な実施形態において、血清7αC4濃度は、ベースラインに対して、約または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1,000%、または10,000%増加する。
【0209】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、7αC4:sBA比をベースラインに対して、約1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍にまたは倍高める。
【0210】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、fBA排泄の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約100%、110%、115%、120%、130%、150%、200%、250%、275%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、1,000%、5,000%、10,000%または15,000%のfBA排泄の増加をもたらす。様々な実施形態において、fBA排泄は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍増加する。いくつかの実施形態では、fBA排泄は、ベースラインに対して、約または少なくとも約100μmol、150μmol、200μmol、250μmol、300μmol、400μmol、500μmol、600μmol、700μmol、800μmol、900μmol、1,000μmol、または1,500μmol増加する。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、fBA排泄の用量依存的な増加をもたらし、より高い用量のIBAT阻害剤の投与は、対応するより高いレベルのfBA排泄をもたらす。様々な実施形態において、IBAT阻害剤は、ベースラインに対して少なくとも約または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍の胆汁酸分泌の増加をもたらすのに十分な用量で投与される。
【0211】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、31%、35%、40%、45%、50%、55%、57%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%のsBA濃度の低下をもたらす。
【0212】
いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、掻痒症の重症度の軽減をもたらす。様々な実施形態において、掻痒症の重症度は、ITCHRO(OBS)スコア、ITCHROスコア、CSSスコア、またはそれらの組み合わせを使用して測定される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.25、2.5、または3の、1~4のスケールでのITCHRO(OBS)スコアの減少をもたらす。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、約または少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10の、1~10のスケールでのITCHROスコアの減少をもたらす。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ITCHRO(OBS)スコア、ITCHROスコア、またはその両方のゼロへの減少をもたらす。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ITCHRO(OBS)スコアまたはITCHROスコアの1.0以下への減少をもたらす。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.25、2.5、または3の、CSSスコアの減少をもたらす。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、CSSスコアのゼロへの減少をもたらす。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のCSSスコア、ITCHRO(OBS)スコア、ITCHROスコア、またはそれらの組み合わせの減少をもたらす。様々な実施形態において、CSSスコア、ITCHRO(OBS)スコア、ITCHROスコア、またはそれらの組み合わせのベースラインに対する値の減少が、日数の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%で観察される。
【0213】
いくつかの実施形態では、より高いベースラインITCHRO(OBS)スコアを有する患者は、より低いベースラインITCHRO(OBS)スコアを有する患者よりも、より大きい症状の軽減または疾患関連検査値の変化を示す。いくつかの実施形態では、少なくとも2、3、もしくは4のベースラインITCHRO(OBS)スコアまたは少なくとも4、5、6、7、8、9、もしくは10のITCHROスコアを有する患者は、掻痒スコアのベースライン重症度がより低い患者におけるより小さい減少と比較して、ベースラインに対して症状のより大きい軽減または疾患関連検査値の大きい変化を有する。様々な実施形態において、PSCおよび少なくとも4のベースラインITCHROスコアを有する患者は、4未満のベースラインITCHROスコアを有する患者よりも、より大きい症状の軽減または疾患関連検査値の変化を示す。様々な実施形態において、本方法は、4未満のベースラインITCHROスコアを有する患者と比較して、患者のベースラインITCHROスコアが少なくとも4である場合に、その患者が、より大きい症状の軽減または疾患関連検査値の変化を有するであろうと予測することを含む。様々な実施形態において、より小さい低減は、より大きい低減の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%もしくはそれら未満である。様々な実施形態において、ベースラインにおいて少なくとも4のITCHROスコアを有する患者とベースラインにおいて4未満のITCHROスコアを有する患者との間の症状の軽減または疾患関連検査値の変化の差(すなわち、より大きい低減とより小さい低減との間の差)は、第1の用量または第2の用量でのIBAT阻害剤の初回投与の約または少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、6か月、25週間、26週間、27週間、28週間。29週間、30週間、31週間、32週間、33週間、34週間、35週間、36週間、37週間、38週間、39週間、40週間、41週間、42週間、43週間、44週間、45週間、46週間、47週間、48週間、49週間、50週間、51週間、52週間、1年、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、23か月、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、4.5年、5年、5.5年、6年、6.5年、7年、8年、9年または10年後に測定される。
【0214】
様々な実施形態において、患者へのIBAT阻害剤の投与によってもたらされる掻痒症の重症度の軽減は、患者におけるsBA濃度の低下と正に相関する。様々な実施形態において、患者におけるsBA濃度のより大きい低下は、掻痒症の重症度の対応するより大きい軽減と相関する。
【0215】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインと比較して、血清LDL-C濃度の低下をもたらす。いくつかの実施形態では、血清LDL-C濃度は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%減少する
【0216】
いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインと比較して、血清総コレステロール濃度の低下をもたらす。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインと比較して、血清LDL-Cレベルの低下をもたらす。いくつかの実施形態では、血清総コレステロール濃度、血清LDL-Cレベル、または両方は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%減少する。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1mg/dL、2mg/dL、3mg/dL、4mg/dL、5mg/dL、10mg/dL、12.5mg/dL、15mg/dL、20mg/dL、30mg/dL、40mg/dLまたは50mg/dLの血清総コレステロール濃度、血清LDL-Cレベル、またはその両方の低下をもたらす。
【0217】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、血清オートタキシン濃度の低下をもたらす。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%のオートタキシン濃度の低下をもたらす。
【0218】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、生活の質尺度スコアの増加、または倦怠感に関する生活の質尺度スコアの増加をもたらす。生活の質尺度スコアは、健康関連の生活の質(HRQoL)スコアであり得る。いくつかの実施形態では、HRQoLスコアは、PedsQLスコアである。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、45%、または50%のPedsQLスコアまたは倦怠感に関するPedsQLスコアの増加をもたらす。
【0219】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインと比較して、黄色腫スコアの減少をもたらす。いくつかの実施形態では、黄色腫スコアは、ベースラインに対して、約または少なくとも約2.5%、5%、10%、15%、20%、35%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%減少する。
【0220】
様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12、日、13日、14日、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年、または2年、または3年、または4年、または5年、または6年までに、症状の軽減または疾患関連検査値の変化をもたらす。
【0221】
様々な実施形態において、血清ビリルビン濃度は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、1か月、5週、6週、7週、8週、2か月、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年、または2年、または3年、または4年、または5年、または6年の時点であるいはそれまでに、投与前ベースラインレベルまたは正常レベルである。
【0222】
様々な実施形態において、血清ALT濃度は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年、または2年、または3年、または4年、または5年、または6年の時点であるいはそれまでに、投与前ベースラインレベルまたは正常レベルである。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、ベースラインに対して、約または少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、または15%のALTレベルの低下をもたらす。
【0223】
様々な実施形態において、血清ALT濃度、血清AST濃度、血清ビリルビン濃度、血清抱合型ビリルビン濃度、またはそれらの様々な組み合わせは、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年、または2年、または3年、または4年、または5年、または6年の時点であるいはそれまでに、正常範囲内であるか、または投与前ベースラインレベルである。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、少なくとも約または約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年、または2年、または3年、または4年、または5年、または6年の期間、血清ビリルビン濃度、血清AST濃度、血清ALT濃度、血清アルカリホスファターゼ濃度、またはそれらのいくつかの組み合わせのベースラインからの統計的に有意な変化をもたらさない。様々な実施形態において、ベースラインで少なくとも4のITCHROスコアを有する成人患者について、IBAT阻害剤の投与は、少なくとも約または約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、4か月、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週。32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、52週、または1年、または2年、または3年、または4年、または5年、または6年の期間、血清抱合型ビリルビン濃度のベースラインからの有意な変化をもたらさない。
【0224】
本発明の上記の方法の様々な実施形態において、IBAT阻害剤の投与は、それを必要とする対象におけるIBAT阻害剤の投与に関連する1つまたは複数の副作用の低減、予防、改善または排除をもたらす。様々な実施形態において、副作用の頻度および/または重症度は、IBAT阻害剤が食物の摂取後、食物と同時に、または食物と混合して投与される場合の副作用と比較して低減される。様々な実施形態において、1つまたは複数の副作用は、下痢、軟便、吐き気、胃腸痛、腹痛、痙攣、肛門直腸不快感、またはそれらの組み合わせである。
【0225】
用量調節
様々な実施形態において、方法は、患者に投与されるIBAT阻害剤の投薬量を調節することを含む。調節は、ベースライン(例えば、IBAT阻害剤の投与前またはIBAT阻害剤の投薬量を調節する(例えば、増加させる)前)での患者の7αC4:sBA比を決定すること、および第1の用量でIBAT阻害剤を投与した後またはIBAT阻害剤の投薬量を第2の用量に調節した(例えば、増加させた)後に7αC4:sBA比をさらに決定することを含む。7αC4:sBA比が、ベースラインから少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加しない場合、その比がベースラインに対して、少なくとも約1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加するまで、IBAT阻害剤の用量が増加される。様々な実施形態において、IBAT阻害剤の用量は、特定の7αC4:sBA比を達成および維持するように増減される。
【0226】
様々な実施形態において、調節することは、7αC4:sBA比が、最初にベースラインから少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加し、その後、減少し始めるか、あるいはベースラインよりも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍未満高い程度まで減少した場合、IBAT阻害剤の用量を第1の用量レベルから、第1の用量レベルよりも高い第2の用量レベルに増加させることを含む。用量レベルは、7αC4:sBA比が、ベースラインから、少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加するまで増やされる。
【0227】
いくつかの実施形態において、調節は、第1の用量のIBAT阻害剤を患者に投与することを含む。7αC4:sBA比が増加しない場合、またはベースラインから少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加しない場合、患者は、次に、第1の用量よりも多い第2の用量のIBAT阻害剤を投与される。患者に投与される用量は、7αC4:sBA比が、ベースラインから、少なくとも1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、または10,000倍に増加するまで増やされ続ける。
【0228】
様々な実施形態において、7αC4:sBA比は、ほぼ毎日、隔週、毎週、隔月、毎月、2か月ごと、3か月ごと、4か月ごと、5か月ごと、6か月ごと、または毎年測定され、IBAT阻害剤の用量は、その比が測定されるたびに必要に応じて調節される。
【0229】
医薬組成物
いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、IBAT阻害剤を含む医薬組成物(組成物または医薬組成物)として投与される。本明細書に記載の任意の組成物は、回腸、直腸および/または結腸送達用に製剤化され得る。より具体的な実施形態では、組成物は、直腸および/または結腸への非全身送達または局所送達用に製剤化される。本明細書で使用される場合、結腸への送達は、S状結腸、横行結腸、および/または上行結腸への送達を含むことを理解されたい。さらにより具体的な実施形態では、組成物は、直腸および/または結腸への非全身送達または局所送達用に製剤化され、直腸に投与される。他の特定の実施形態では、組成物は、直腸および/または結腸への非全身送達または局所送達用に製剤化され、経口投与される。
【0230】
特定の実施形態において、治療有効量の本明細書に記載の任意の化合物を含む医薬組成物が本明細書で提供される。特定の例において、医薬組成物は、IBAT阻害剤(例えば、本明細書に記載の任意のIBAT阻害剤)を含む。
【0231】
特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、医薬用途に適した調製物への活性化合物の処理を容易にする賦形剤および助剤を含む、1つまたは複数の生理学的に許容される担体を用いて、従来の方法で製剤化される。特定の実施形態において、適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。本明細書に記載の医薬組成物の概要は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Mareel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見ることができ、これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0232】
本明細書で使用される医薬組成物は、本明細書に記載の化合物と、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。特定の例において、医薬組成物は、個体または細胞への化合物の投与を容易にする。本明細書で提供される処置または使用の方法を実施する特定の実施形態では、治療有効量の本明細書に記載の化合物が、医薬組成物において、処置される疾患、障害、または状態を有する個体に投与される。特定の実施形態では、個体はヒトである。本明細書で論じられるように、本明細書に記載される化合物は、単独で、または1つまたは複数の追加の治療薬と組み合わせて利用される。
【0233】
特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬製剤は、非限定的な例として、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)、鼻腔内、頬側、局所、直腸、または経皮投与経路など、多様な投与経路の1つまたは複数を含む、任意の方法で個体に投与される。
【0234】
特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、遊離酸もしくは遊離塩基の形態、または薬学的に許容される塩の形態で、有効成分として本明細書に記載の1つまたは複数の化合物を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、N-オキシドとして、または結晶もしくは非晶質形態(すなわち、多形体)で利用される。いくつかの状況では、本明細書に記載の化合物は互変異性体として存在する。すべての互変異性体が、本明細書に提示される化合物の範囲内に含まれる。特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態または溶媒和形態で存在し、溶媒和形態は、任意の薬学的に許容される溶媒、例えば、水、エタノールなどを含む。本明細書に提示される化合物の溶媒和形態もまた、本明細書に記載されていると見なされる。
【0235】
「担体」は、いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤を含み、式I~VIのいずれかの化合物などの本明細書に記載の化合物との適合性、および所望の剤形の放出プロファイル特性に基づいて選択される。例示的な担体材料として、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などが挙げられる。たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Mareel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 1999)を参照されたい;これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0236】
さらに、特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、剤形として製剤化される。したがって、いくつかの実施形態では、個体への投与に適した本明細書に記載の化合物を含む剤形が本明細書において提供される。特定の実施形態において、適切な剤形には、非限定的な例として、水性経口分散液、液体、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、懸濁液、固体経口剤形、エアロゾル、制御放出製剤、速溶製剤、発泡製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、粉末、丸剤、糖衣錠(dragee)、カプセル、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、ならびに混合即時放出および制御放出製剤が含まれる。
【0237】
いくつかの実施形態では、個体における胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の症状を緩和するための組成物であって、腸内分泌ペプチド分泌促進剤(enteroendocrine peptide secretion enhancing agent)、および任意選択で薬学的に許容される担体を含む組成物が本明細書において提供される。
【0238】
特定の実施形態では、組成物は、腸内分泌ペプチド分泌促進剤、および吸収阻害剤を含む。特定の実施形態において、吸収阻害剤は、それが組み合わされる特定の腸内分泌ペプチド分泌促進剤(またはその少なくとも1つ)の吸収を阻害する阻害剤である。いくつかの実施形態において、組成物は、腸内分泌ペプチド分泌促進剤、吸収阻害剤、および担体(例えば、意図される投与方法に応じて、経口投与に適切な担体または直腸投与に適切な担体)を含む。特定の実施形態において、組成物は、腸内分泌ペプチド分泌促進剤と、吸収阻害剤と、担体と、コレステロール吸収阻害剤、腸内分泌ペプチド、ペプチダーゼ阻害剤、展着剤、および湿潤剤のうちの1つまたは複数とを含む。
【0239】
他の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、S状結腸、横行結腸、および/または上行結腸を含む、直腸および/または結腸へのIBAT阻害剤の非全身送達のために経口投与される。特定の実施形態では、経口投与用に製剤化された組成物は、非限定的な例として、錠剤および/またはカプセルなどの、腸溶性コーティングされたまたは腸溶性製剤とされた経口剤形である。
【0240】
吸収阻害剤
特定の実施形態において、IBAT阻害剤の非全身送達用に製剤化されるとして本明細書に記載される組成物は、吸収阻害剤をさらに含む。本明細書で使用される場合、吸収阻害剤には、胆汁酸/塩の吸収を阻害する薬剤または薬剤群が含まれる。
【0241】
適切な胆汁酸吸収阻害剤(本明細書では吸収阻害剤としても記載される)には、非限定的な例として、陰イオン交換マトリックス、ポリアミン、第四級アミン含有ポリマー、第四級アンモニウム塩、ポリアリルアミンポリマーおよびコポリマー、コレセベラム、コレセベラム塩酸塩、コレスタゲル(CholestaGel)((クロロメチル)オキシランと、2-プロペン-1-アミンと、N-2-プロペニル-1-デカンアミン塩酸塩とのN,N,N-トリメチル-6-(2-プロペニルアミノ)-1-ヘキサンアミニウムクロリドのポリマー)、シクロデキストリン、キトサン、キトサン誘導体、胆汁酸と結合する炭水化物、胆汁酸と結合する脂質、胆汁酸と結合するタンパク質およびタンパク質性物質、ならびに胆汁酸と結合する抗体およびアルブミンが含まれ得る。適切なシクロデキストリンには、非限定的な例として、β-シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどの胆汁酸/塩と結合するものが含まれる。適切なタンパク質には、非限定的な例として、ウシ血清アルブミン、卵アルブミン、カゼイン、α-酸性糖タンパク質、ゼラチン、大豆タンパク質、ピーナッツタンパク質、アーモンドタンパク質、および小麦植物タンパク質などの、胆汁酸/塩と結合するものが含まれる。
【0242】
特定の実施形態では、吸収阻害剤はコレスチラミンである。特定の実施形態では、コレスチラミンは胆汁酸と結合する。イオン交換樹脂であるコレスチラミンは、ジビニルベンゼンによって架橋された第四級アンモニウム基を含むスチレンポリマーである。他の実施形態では、吸収阻害剤はコレスチポールである。特定の実施形態では、コレスチポールは胆汁酸と結合する。イオン交換樹脂であるコレスチポールは、ジエチレントリアミンと1-クロロ-2,3-エポキシプロパンとの共重合体である。
【0243】
本明細書に記載の組成物および方法の特定の実施形態では、IBAT阻害剤は吸収阻害剤に連結されるが、他の実施形態では、IBAT阻害剤および吸収阻害剤は別個の分子実体である。
【0244】
コレステロール吸収阻害剤
特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、任意選択で、少なくとも1つのコレステロール吸収阻害剤を含む。適切なコレステロール吸収阻害剤には、非限定的な例として、エゼチミブ(SCH58235)、エゼチミブアナログ、ACT阻害剤、スティグマスタニルホスホリルコリン(stigmastanyl phosphorylcholine)、スティグマスタニルホスホリルコリンアナログ、β-ラクタムコレステロール吸収阻害剤、硫酸化多糖類、ネオマイシン、植物スポニン、植物ステロール、フィトスタノール調製物FM-VP4、シトスタノール、β-シトステロール、アシル-CoA:コレステロール-O-アシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、アバシミブ(Avasimibe)、インプリタピド(Implitapide)、ステロイド配糖体などが含まれる。適切なエンゼチミブアナログには、非限定的な例として、SCH48461、SCH58053などが含まれる。適切なACT阻害剤には、非限定的な例として、Cl-976、3-[デシルジメチルシリル]-N-[2-(4-メチルフェニル)-1-フェニルエチル]-プロパンアミド、メリナミドなどの、トリメトキシ脂肪酸アニリドが含まれる。β-ラクタムコレステロール吸収阻害剤には、非限定的な例として、(3R,4S)-1,4-ビス-(4-メトキシフェニル)-3-β-フェニルプロピル)-2-アゼチジノンなどが含まれる。
【0245】
ペプチダーゼ阻害剤
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、任意選択で、少なくとも1つのペプチダーゼ阻害剤を含む。そのようなペプチダーゼ阻害剤には、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤(DPP-4)、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、および変換酵素阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。適切なジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤(DPP-4)には、非限定的な例として、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、(2S)-1-{2-β-ヒドロキシ-1-アダマンチル)アミノ]アセチル}ピロリジン-2-カルボニトリル、シタグリプチン(Sitagliptin)、(3R)-3-アミノ-1-[9-(トリフルオロメチル)-1,4,7,8-テトラアザビシクロ[4.3.0]ノナ-6,8-ジエン-4-イル]-4-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-1-オン、サキサグリプチン(Saxagliptin)、および(1S,3S,5S)-2-[(2S)-2-アミノ-2-β-ヒドロキシ-1-アダマンチル)アセチル]-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボニトリルが含まれる。そのような中性エンドペプチダーゼ阻害剤には、カンドキサトリラト(Candoxatrilat)およびエカドトリル(Ecadotril)が含まれるが、これらに限定されない。
【0246】
展着剤/湿潤剤
特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、任意選択で、展着剤(spreading agent)を含む。いくつかの実施形態において、展着剤は、結腸および/または直腸における組成物の拡展性を改善するために利用される。適切な展着剤には、非限定的な例として、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、コロイド状二酸化ケイ素、プロピレングリコール、シクロデキストリン、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチル化グリセリド、ポリカルボフィル、ジ-n-オクチルエーテル、Cetiol(商標)OE、脂肪アルコールポリアルキレングリコールエーテル、Aethoxal(商標)B、2-エチルヘキシルパルミテート、Cegesoft(商標)C24、およびイソプロピル脂肪酸エステルが含まれる。
【0247】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、任意選択で湿潤剤を含む。いくつかの実施形態において、湿潤剤は、結腸および直腸における組成物の湿潤性を改善するために利用される。適切な湿潤剤には、非限定的な例として、界面活性剤が含まれる。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、非限定的な例として、ポリソルベート(例えば、20または80)、ヘプタン酸ステアリル、鎖長C12~C18の飽和脂肪アルコールのカプリル/カプリン脂肪酸エステル、ジグリセロールイソステアリン酸イソステアリル(isostearyl diglycerol isostearic acid)、ドデシル硫酸ナトリウム、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、およびミリスチン酸イソプロピル/ステアリン酸イソプロピル/パルミチン酸イソプロピルの混合物から選択される。
【0248】
ビタミン
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、1つまたは複数のビタミンを投与することをさらに含む。
【0249】
いくつかの実施形態において、ビタミンは、ビタミンA、B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、レチノール、βカロテン、ピリドキシン、アスコルビン酸、コレカルシフェロール、シアノコバラミン、トコフェロール、フィロキノン、メナキノンである。
【0250】
いくつかの実施形態において、ビタミンは、ビタミンA、D、E、K、レチノール、βカロテン、コレカルシフェロール、トコフェロール、フィロキノンなどの脂溶性ビタミンである。好ましい実施形態において、脂溶性ビタミンは、トコフェロールポリエチレングリコールサクシネート(TPGS)である。
【0251】
胆汁酸封鎖剤/結合剤
いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤(labile bile acid sequestrant)は、酵素依存性胆汁酸封鎖剤である。特定の実施形態では、その酵素は細菌酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、小腸に見られる濃度と比較して、ヒトの結腸または直腸に高濃度で見られる細菌酵素である。ミクロフローラ(微生物叢)活性化システムの例には、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が含まれる。消化管ミクロフローラ酵素の例には、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが含まれる。
【0252】
特定の実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、時間依存性の胆汁酸封鎖剤である。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10秒の封鎖後に胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、15、20、25、30、35、40、45、50、または55秒の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10分の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、約15、20、25、30、35、45、50、または55分の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11,12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24時間の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、1、2、または3日の封鎖後に、胆汁酸を放出するか、または分解される。
【0253】
いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、一次胆汁酸に対して高い親和性を有し、二次胆汁酸に対して低い親和性を有する。
【0254】
いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、pH依存性の胆汁酸封鎖剤である。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、6より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6.5以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、6.5より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.1以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.1より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.2以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.2より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.3以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.3より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.4以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.4より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.5以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.5より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.6以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.6より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.7以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.7より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.8以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、7.8より高いpHで胆汁酸に対して低い親和性を有する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6.5より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.1より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.2より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.3より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.4より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.5より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.6より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.7より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.8より高いpHで分解する。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、7.9より高いpHで分解する。
【0255】
特定の実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、リグニンまたは修飾リグニンである。いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、ポリカチオン性ポリマーまたはコポリマーである。特定の実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、1つまたは複数のN-アルケニル-N-アルキルアミン残基;1つまたは複数のN,N,N-トリアルキル-N-(N’-アルケニルアミノ)アルキル-アザニウム残基;1つまたは複数のN,N,N-トリアルキル-N-アルケニル-アザニウム残基;1つまたは複数のアルケニルアミン残基;またはそれらの組み合わせ残基を含むポリマーまたはコポリマーである。いくつかの実施形態において、胆汁酸結合剤は、コレスチラミン、およびコレスチラミンを含む様々な組成物であり、これらは、例えば、米国特許第3,383,281号;同第3,308,020号;同第3,769,399号;同第3,846,541号;同第3,974,272号;同第4,172,120号;同第4,252,790号;同第4,340,585号;同第4,814,354号;同第4,874,744号;同第4,895,723号;同第5,695,749号;および同第6,066,336号に記載されており、これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、胆汁酸結合剤は、コレスチポール(cholestipol)またはコレセベラム(cholesevelam)である。
【0256】
投与経路、剤形、および投与レジメン
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物、および本明細書に記載の方法で投与される組成物は、胆汁酸の再取り込みを阻害するか、あるいは血清または肝臓の胆汁酸レベルを低下させるように製剤化される。特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、直腸または経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、そのような製剤は、それぞれ、直腸投与または経口投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、直腸および/または結腸(S状結腸、横行結腸、または上行結腸)への組成物の局所送達のためのデバイスと組み合わされる。特定の実施形態において、直腸投与のために、本明細書に記載の組成物は、浣腸剤、直腸ゲル、注腸フォーム剤、直腸用エアロゾル、坐剤、ゼリー坐剤、または停留浣腸剤として製剤化される。いくつかの実施形態において、経口投与のために、本明細書に記載の組成物は、経口投与および結腸への腸内送達用に製剤化される。
【0257】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物または方法は非全身性である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、IBAT阻害剤を、遠位回腸、結腸、および/または直腸に送達し、全身に送達しない(例えば、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の実質的な部分は全身に吸収されない)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の経口組成物は、IBAT阻害剤を、遠位回腸、結腸、および/または直腸に送達し、全身に送達しない(例えば、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の実質的な部分は全身に吸収されない)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の直腸用組成物(rectal composition)は、IBAT阻害剤を、遠位回腸、結腸、および/または直腸に送達し、全身に送達しない(例えば、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の実質的な部分は全身に吸収されない)。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の90%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の80%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の70%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の60%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の50%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の40%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の30%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の25%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の20%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の15%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の10%w/w未満を全身に送達する。特定の実施形態では、本明細書に記載の非全身性組成物は、IBAT阻害剤の5%w/w未満を全身に送達する。いくつかの実施形態において、全身吸収は、総循環量、投与後にクリアランスされる量などを含む、任意の適切やり方で決定される。
【0258】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物および/または製剤は、少なくとも1日1回投与される。特定の実施形態では、IBAT阻害剤を含む製剤は、少なくとも1日2回投与され、他の実施形態では、IBAT阻害剤を含む製剤は、少なくとも1日3回投与される。特定の実施形態において、IBAT阻害剤を含む製剤は、最大1日5回投与される。特定の実施形態では、本明細書に記載のIBAT阻害剤を含む組成物の投与レジメンは、患者の年齢、性別、および食事などの様々な因子を考慮することによって決定されることを理解されたい。
【0259】
本明細書に記載の製剤で投与されるIBAT阻害剤の濃度は、約1mM~約1Mの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるIBAT阻害剤の濃度は、約1mM~約750mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるIBAT阻害剤の濃度は、約1mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるIBAT阻害剤の濃度は、約5mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるIBAT阻害剤の濃度は、約10mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与される濃度は、約25mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるIBAT阻害剤の濃度は、約50mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるIBAT阻害剤の濃度は、約100mM~約500mMの範囲である。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤で投与されるIBAT阻害剤の濃度は、約200mM~約500mMの範囲である。
【0260】
特定の実施形態において、遠位消化管(例えば、遠位回腸、結腸、および/または直腸)を標的とすることにより、本明細書に記載の組成物および方法は、(例えば、遠位消化管を標的としない経口用量と比較して)腸内分泌ペプチド分泌促進剤の低減された用量で有効性(例えば、微生物増殖の低減および/または胆汁うっ滞もしくは胆汁うっ滞性肝疾患の症状の緩和における有効性)を提供する。
【0261】
結腸送達のための経口投与
特定の態様では、本明細書に記載の1つまたは複数の化合物を含む組成物または製剤は、IBAT阻害剤、または本明細書に記載の化合物を結腸および/または直腸に局所送達するために経口投与される。そのような組成物の単位剤形には、結腸への腸内送達用に製剤化された丸剤、錠剤またはカプセルが含まれる。特定の実施形態において、そのような丸剤、錠剤またはカプセルは、マイクロスフェアに封入または埋め込まれた本明細書に記載の組成物を含む。いくつかの実施形態において、マイクロスフェアには、非限定的な例として、キトサンマイクロコアHPMCカプセルおよび酢酸酪酸セルロース(CAB)マイクロスフェアが含まれる。特定の実施形態において、経口剤形は、医薬製剤の分野で既知の従来の方法を使用して調製される。例えば、特定の実施形態では、錠剤は、標準的な錠剤加工手順および装置を使用して製造される。錠剤を形成するための例示的な方法は、上記の活性薬剤を、単独でまたは1つまたは複数の担体、添加剤などと組み合わせて含む粉末状、結晶状、または粒状の組成物を直接圧縮することによる。代替の実施形態において、錠剤は、湿式造粒または乾式造粒プロセスを使用して調製される。いくつかの実施形態において、錠剤は、湿ったまたはそうでなければ扱いやすい材料から出発して、圧縮されるのではなく成形される。
【0262】
特定の実施形態において、経口投与用に調製された錠剤は様々な賦形剤を含み、それには、非限定的な例として、結合剤、希釈剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、安定化剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、香味剤などが含まれる。いくつかの実施形態では、錠剤に凝集性を付与し、圧縮後も錠剤が無傷のままであることを確実にするために結合剤が使用される。適切な結合剤材料には、非限定的な例として、デンプン(コーンスターチおよびアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ワックス、ならびに天然および合成ガム、例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系ポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)、ビーガム(Veegum)、およびそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態において、実用的なサイズの錠剤が提供されるように錠剤の嵩を増やすために希釈剤が利用される。適切な希釈剤には、非限定的な例として、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、粉末糖、およびそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態において、錠剤の製造を容易にするために滑沢剤が使用される;適切な滑沢剤の例には、非限定的な例として、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびテオブロマの油などの植物油、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、およびそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、錠剤の崩壊を促進するために崩壊剤が使用され、非限定的な例として、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ガム、架橋ポリマー、およびそれらの組み合わせが含まれる。充填剤には、非限定的な例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および微結晶性セルロースなどの材料、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールなどの可溶性材料が含まれる。特定の実施形態では、薬物の分解反応を阻害または遅延させるために安定化剤が使用され、そのような反応には、例示として、酸化反応が含まれる。特定の実施形態において、界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性の界面活性剤である。
【0263】
いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤、または本明細書に記載の他の化合物は、遠位消化管(例えば、遠位回腸、結腸、および/または直腸)への送達に適した担体を伴って経口投与される。
【0264】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、回腸の遠位部分および/または結腸における活性薬剤の制御放出を可能にするマトリックス(例えば、ヒプロメロース(hypermellose)を含むマトリックス)を伴ってIBAT阻害剤または本明細書に記載の他の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、pH感受性であるポリマー(例えば、Cosmo PharmaceuticalsからのMMX(商標)マトリックス)を含み、回腸の遠位部分における活性薬剤の制御放出を可能にする。制御放出に適したそのようなpH感受性ポリマーの例には、酸性基(例えば、-COOH、-SO3H)を含み腸の塩基性pH(例えば、約7~約8のpH)で膨潤するポリアクリル酸ポリマー(例えば、メタクリル酸および/またはメタクリル酸エステルのアニオン性ポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)ポリマー)が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、遠位回腸での制御放出に適した組成物は、微粒子活性薬剤(例えば、微粉化された活性薬剤)を含む。いくつかの実施形態において、非酵素的に分解するポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コアは、遠位回腸への腸内分泌ペプチド分泌促進剤の送達に適している。いくつかの実施形態において、腸内分泌ペプチド分泌促進剤を含む剤形は、遠位回腸および/または結腸への部位特異的送達のために、腸溶性ポリマー(例えば、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)S-100、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸のアニオン性ポリマー、メタクリル酸エステルなど)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、細菌活性化システムは、回腸の遠位部分への標的化送達に適している。ミクロフローラ活性化システムの例には、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が含まれる。消化管ミクロフローラ酵素の例には、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが含まれる。
【0265】
本明細書に記載の医薬組成物は、任意選択で、本明細書に記載の追加の治療化合物、ならびに適合性担体、結合剤、充填剤、懸濁化剤、香味剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑剤、安定化剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせなどの1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤を含む。いくつかの実施形態において、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition (2000)に記載されているような、標準的なコーティング手順を使用して、式Iの化合物の製剤の周囲にフィルムコーティングが提供される。一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、粒子の形態であり、化合物の粒子の一部またはすべてがコーティングされる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子のいくつかまたはすべては、マイクロカプセル化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子は、マイクロカプセル化されておらず、かつコーティングされていない。
【0266】
さらなる実施形態において、IBAT阻害剤または本明細書に記載の他の化合物を含む錠剤またはカプセルは、消化管内の標的部位への送達のためにフィルムコーティングされる。腸溶性フィルムコーティングの例には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール3350、4500、8000、メチルセルロース、疑似エチルセルロース(pseudoethylcellulose)、アミロペクチンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0267】
小児用製剤および組成物
特定の実施形態において、治療有効量の本明細書に記載の任意の化合物を含む小児用製剤または組成物が本明細書で提供される。特定の例において、医薬組成物は、IBAT阻害剤(例えば、本明細書に記載の任意のIBAT阻害剤)を含む。
【0268】
特定の実施形態では、小児用製剤または組成物に適した剤形には、非限定的な例として、水性または非水性の経口分散液、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液、溶液、制御放出製剤、速溶性製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、チュアブル錠、グミキャンディー、口腔内崩壊錠、懸濁液または溶液として再構成するための粉末、スプリンクル (sprinkle)経口粉末または顆粒、糖衣錠、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、ならびに混合即時放出および制御放出製剤が含まれる。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、小児用剤形が、溶液、シロップ、懸濁液、エリキシル、懸濁液または溶液として再構成するための粉末、分散性/発泡性錠剤、チュアブル錠剤、グミキャンディー、ロリポップ、フリーザーポップ、トローチ、経口薄片、口腔内崩壊錠、口腔内崩壊ストリップ、サシェ(sachet)、およびスプリンクル経口粉末または顆粒から選択される、医薬組成物である。
【0269】
別の態様では、少なくとも1つの賦形剤が香味剤または甘味剤である医薬組成物が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、コーティングが本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、噴霧乾燥、湿式造粒、流動床、およびマイクロカプセル化によるニュートラルな味の(taste-neutral)ポリマーによる薬物粒子のコーティング;溶融ワックスと他の医薬補助剤との混合物の溶融ワックスによるコーティング;水性ポリマー分散液の複合体化、凝集または凝固による薬物粒子の捕捉(entrapment);樹脂および無機支持体への薬物粒子の吸着;および薬物と1つまたは複数のニュートラルな味の化合物とが溶融および冷却されるか、または溶媒蒸発によって共沈される固体分散;から選択される矯味(味マスキング)技術が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、速度制御ポリマーまたはマトリックス中に薬物粒子または顆粒を含む遅延放出または持続放出製剤である。
【0270】
適切な甘味剤には、スクロース、グルコース、フルクトース、または高甘味度甘味料、すなわち、スクロースと比較して高い甘味力(例えば、スクロースより少なくとも10倍甘い)を有する薬剤が含まれる。適切な高甘味度甘味料には、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウムまたはカリウムまたはカルシウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、キシリトール、シクラメート、ネオメート、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンまたはそれらの混合物、タウマチン、パラチニット、ステビオシド、レバウディオシド、Magnasweet(登録商標)が含まれる。甘味剤の総濃度は、再構成したときの液体組成物に基づき、実質的にゼロ~約300mg/mlの範囲であり得る。
【0271】
水性媒体で再構成したときの液体組成物の嗜好性を高めるために、1つまたは複数の矯味剤を組成物に添加して、IBAT阻害剤の味をマスキングすることができる。矯味剤(taste-masking agent)は、甘味剤、香味剤、またはそれらの組み合わせであり得る。矯味剤は、典型的には、医薬組成物全体の最大約0.1重量%または5重量%を提供する。本発明の好ましい実施形態では、組成物は甘味剤と香味剤の両方を含む。
【0272】
本明細書における香味剤(flavoring agent)は、組成物の味または香りを増強することができる物質である。適切な天然または合成の香味剤は、標準的な参考書、例えば、Fenaroli's Handbook of Flavor Ingredients, 3rd edition (1995)から選択することができる。本明細書に記載の製剤に有用な香味剤および/または甘味剤の非限定的な例には、例えば、アカシアシロップ、アセスルファムK、アリテーム、アニス、リンゴ、アスパルテーム、バナナ、ババロアクリーム、ベリー、クロスグリ(ブラックカラント)、バタースコッチ、クエン酸カルシウム、カンファー、カラメル、チェリー、チェリークリーム、チョコレート、シナモン、バブルガム、シトラス、シトラスパンチ、シトラスクリーム、綿菓子、ココア、コーラ、クールチェリー、クールシトラス、シクラメート、シラメート(cylamate)、デキストロース、ユーカリ、オイゲノール、フルクトース、フルーツパンチ、ジンジャー(生姜)、グリチルレチネート、甘草(glycyrrhiza)(リコリス)シロップ、ブドウ、グレープフルーツ、ハチミツ、イソマルト、レモン、ライム、レモンクリーム、グリチルリチン酸モノアンモニウム(MagnaSweet(登録商標))、マルトール、マンニトール、メープル、マシュマロ、メントール、ミントクリーム、ミックスベリー、ネオヘスペリジンDC、ネオテーム、オレンジ、ナシ、ピーチ、ペパーミント、ペパーミントクリーム、Prosweet(登録商標)Powder、ラズベリー、ルートビア、ラム、サッカリン、サフロール、ソルビトール、スペアミント、スペアミントクリーム、ストロベリー、ストロベリークリーム、ステビア、スクラロース、スクロース、サッカリンナトリウム、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、マンニトール、タリン、シリトール、スクラロース、ソルビトール、スイスクリーム、タガトース、タンジェリン、タウマチン、トゥッティフルッティ、バニラ、クルミ、スイカ、野生チェリー、ウィンターグリーン、キシリトール、またはこれらの香味料成分の任意の組み合わせ、例えば、アニス-メントール、チェリー-アニス、シナモン-オレンジ、チェリー-シナモン、チョコレート-ミント、ハチミツ-レモン、レモン-ライム、レモン-ミント、メントール-ユーカリ、オレンジ-クリーム、バニラ-ミント、およびそれらの混合物が含まれる。香味剤は、単独で、または2つ以上の組み合わせで使用することができる。いくつかの実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.001%~約5.0%の範囲の濃度で甘味剤または香味剤を含む。一実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.001%~約1.0%の範囲の濃度で甘味剤または香味剤を含む。別の実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.005%~約0.5%の範囲の濃度で甘味剤または香味剤を含む。さらに別の実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.01%~約1.0%の範囲の濃度で甘味剤または香味剤を含む。さらに別の実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の体積の約0.01%~約0.5%の範囲の濃度で甘味剤または香味剤を含む。
【0273】
特定の実施形態では、本明細書に記載の小児用医薬組成物は、遊離酸もしくは遊離塩基の形態、または薬学的に許容される塩の形態で、有効成分として本明細書に記載の1つまたは複数の化合物を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、N-オキシドとして、または結晶または非晶質形態(すなわち、多形)で利用される。いくつかの状況では、本明細書に記載の化合物は互変異性体として存在する。すべての互変異性体が、本明細書に提示される化合物の範囲内に含まれる。特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態または溶媒和形態で存在し、溶媒和形態は、任意の薬学的に許容される溶媒、例えば、水、エタノールなどを含む。本明細書に提示される化合物の溶媒和形態もまた、本明細書に記載されているとみなされる。
【0274】
小児用医薬組成物のための「担体」は、いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤を含み、式I~VIのいずれかの化合物などの本明細書に記載の化合物との適合性、および所望の剤形の放出プロファイル特性に基づいて選択される。例示的な担体材料には、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などが含まれる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa. 1975; Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)を参照されたい;これらはすべて、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0275】
さらに、特定の実施形態では、本明細書に記載の小児用医薬組成物は、剤形として製剤化される。したがって、いくつかの実施形態では、個体への投与に適した、本明細書に記載の化合物を含む剤形が本明細書で提供される。特定の実施形態において、適切な剤形には、非限定的な例として、水性経口分散液、液体、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、懸濁液、固体経口剤形、エアロゾル、徐放性製剤、速溶性製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、粉末、丸剤、糖衣錠、カプセル、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、および混合即時放出および制御放出製剤が含まれる。
【0276】
特定の態様では、1つまたは複数の本明細書に記載の化合物を含む小児用組成物または製剤は、IBAT阻害剤、または本明細書に記載の化合物を結腸および/または直腸に局所送達するために経口投与される。このような組成物の単位剤形には、結腸への腸内送達用に製剤化された丸剤、錠剤またはカプセルが含まれる。
【0277】
いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤、または本明細書に記載の他の化合物は、遠位消化管(例えば、遠位回腸、結腸、および/または直腸)への送達に適した担体を伴って経口投与される。
【0278】
特定の実施形態では、本明細書に記載の小児用組成物は、回腸の遠位部分および/または結腸における活性薬剤の制御放出を可能にするマトリックス(例えば、ヒプロメロース(hypermellose)を含むマトリックス)を伴ってIBAT阻害剤または本明細書に記載の他の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、pH感受性であるポリマー(例えば、Cosmo PharmaceuticalsからのMMX(商標)マトリックス)を含み、回腸の遠位部分における活性薬剤の制御放出を可能にする。制御放出に適したそのようなpH感受性ポリマーの例として、酸性基(例えば、-COOH、-SO3H)を含み腸の塩基性pH(例えば、約7~約8のpH)で膨潤するポリアクリル酸ポリマー(例えば、メタクリル酸および/またはメタクリル酸エステルのアニオン性ポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)ポリマー)が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、遠位回腸での制御放出に適した組成物は、微粒子活性薬剤(例えば、微粉化された活性薬剤)を含む。いくつかの実施形態において、非酵素的に分解するポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コアは、腸内分泌ペプチド分泌促進剤の遠位回腸への送達に適している。いくつかの実施形態において、腸内分泌ペプチド分泌促進剤を含む剤形は、遠位回腸および/または結腸への部位特異的送達のために、腸溶性ポリマー(例えば、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)S-100、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸のアニオン性ポリマー、メタクリル酸エステルなど)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、細菌活性化システムは、回腸の遠位部分への標的化送達に適している。ミクロフローラ活性化システムの例として、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が挙げられる。消化管ミクロフローラ酵素の例として、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが挙げられる。
【0279】
本明細書に記載の小児用医薬組成物は、任意選択で、本明細書に記載の追加の治療化合物、ならびに適合性担体、結合剤、充填剤、懸濁化剤、香味剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑剤、安定化剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせなどの、1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤を含む。いくつかの態様において、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition (2000)に記載されているような、標準的なコーティング手順を使用して、式Iの化合物の製剤の周りにフィルムコーティングが提供される。一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、粒子の形態であり、化合物の粒子の一部またはすべてがコーティングされる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子のいくつかまたはすべては、マイクロカプセル化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子は、マイクロカプセル化されておらず、かつコーティングされていない。
【0280】
液体剤形
本発明の液体医薬剤形は、薬学の分野で周知の技術に従って調製することができる。
【0281】
溶液は、有効成分が液体に溶解している液体製剤を指す。本発明の医薬溶液には、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。懸濁液は、有効成分が液体中の沈殿物中にある液体製剤を指す。
【0282】
液体剤形では、特定のpHを有すること、および/または特定のpH範囲内に維持されることが望ましい。pHを制御するために、適切な緩衝系を使用することができる。さらに、緩衝系は、所望のpH範囲を維持するのに十分な能力を有する必要がある。本発明で有用な緩衝系の例として、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、または当技術分野で知られている他の任意の適切な緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、緩衝系は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムなどを含む。最終懸濁液中の緩衝液系の濃度は、液体剤形に必要な緩衝液系の強度およびpH/pH範囲などの因子によって異なる。一実施形態では、濃度は、最終液体剤形において0.005~0.5w/v%の範囲内である。
【0283】
本発明の液体剤形を含む医薬組成物はまた、活性物質の沈降を防止するために懸濁化剤/安定化剤を含むことができる。時間の経過とともに、沈降により、活性物質が製品パックの内壁に固まり、再分散および正確な分注が困難になる可能性がある。適切な安定化剤には、キサンタン、グアーおよびトラガカントガムなどの多糖類安定化剤、ならびにセルロース誘導体HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メチルセルロースおよびアビセル(Aviccel)RC-591(微結晶性セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム)が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、ポリビニルピロリドン(PVP)も安定化剤として使用することができる。
【0284】
前述の成分に加えて、IBAT阻害剤経口懸濁液形態は、任意選択で、代替溶媒、矯味剤 、抗酸化剤、充填剤、酸性化剤、酵素阻害剤、およびHandbook of Pharmaceutical Excipients, Rowe et al., Eds., 4th Edition, Pharmaceutical Press (2003)(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている他の成分など、医薬組成物に一般的に見られる他の賦形剤を含むことができる。
【0285】
代替溶媒の添加は、液体剤形中の有効成分の溶解性を高め、その結果、対象の体内での吸収およびバイオアベイラビリティを高めるのに役立ち得る。好ましくは、代替溶媒には、メタノール、エタノールまたはプロピレングリコールなどが含まれる。
【0286】
別の態様では、本発明は、液体剤形を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、IBAT阻害剤またはその薬学的に許容される塩を、液体媒体中、グリセロールまたはシロップあるいはそれらの混合物、防腐剤、緩衝系および懸濁化剤/安定化剤などを含む成分と混合するステップを含む。一般に、液体剤形は、これらの様々な成分を液体媒体中において均一かつ均質に混合することによって調製される。例えば、グリセロールまたはシロップあるいはそれらの混合物などの成分、防腐剤、緩衝系および懸濁化剤/安定化剤等を水に溶解して水溶液を形成し、次いで有効成分を水溶液に分散させて懸濁液を形成することができる。
【0287】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.1ml~約50mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.2ml~約40mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.5ml~約30mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約1ml~約20mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.1ml~約20mlの間の体積であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される液体剤形は、約0.1ml~約20mlの体積であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤の量は全体積の約0.001%~約90%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約0.01%~約80%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約0.1%~約70%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約1%~約60%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約1%~約50%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約1%~約40%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約1%~約30%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約1%~約20%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約1%~約10%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約5%~約70%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約5%~約60%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約5%~約50%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約5%~約40%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約5%~約30%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約5%~約20%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約5%~約10%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約10%~約50%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約10%~約40%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約10%~約30%の範囲の量であり得る。いくつかの実施形態では、IBAT阻害剤は全体積の約10%~約20%の範囲の量であり得る。一実施形態では、得られる液体剤形は、0.1ml~30ml、好ましくは0.1ml~20mlの液体体積であり、有効成分は、約0.001mg/ml~約16mg/ml、または約0.025mg/ml~約8mg/ml、または約0.1mg/ml~約4mg/mlの範囲の量であるか、あるいは約0.25mg/ml、または約0.5mg/ml、または約1mg/ml、または約2mg/ml、または約4mg/ml、または約5mg/ml、または約8mg/ml、または約9mg/ml、または約10mg/ml、または約12mg/ml、または約14mg/ml、または約16mg/mlの量であり得る。
【0288】
胆汁酸封鎖剤
特定の実施形態では、本明細書に記載の任意の方法で使用するための経口製剤は、例えば、不安定な胆汁酸封鎖剤を伴うIBAT阻害剤である。不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸に対して不安定な親和性を有する胆汁酸封鎖剤である。特定の実施形態では、本明細書に記載の胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸および/またはその塩を封鎖する(例えば、吸着させる、または装填する)薬剤である。
【0289】
特定の実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸および/またはその塩を封鎖し(例えば、吸着させ、または装填し)、遠位消化管(例えば、結腸、上行結腸、S状結腸、遠位結腸、直腸、またはそれらの任意の組み合わせ)において、吸着または装填された胆汁酸および/またはそれらの塩の少なくとも一部を放出する。特定の実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、酵素依存性胆汁酸封鎖剤である。特定の実施形態では、酵素は細菌酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、小腸に見られる濃度と比較して、ヒトの結腸または直腸に高濃度で見られる細菌酵素である。ミクロフローラ活性化システムの例には、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が含まれる。消化管ミクロフローラ酵素の例には、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、時間依存性胆汁酸封鎖剤である(すなわち、胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸および/またはその塩を封鎖し、ある時間の後に、胆汁酸および/またはその塩の少なくとも一部を放出する)。いくつかの実施形態において、時間依存性胆汁酸封鎖剤は、水性環境において経時的に分解する薬剤である。特定の実施形態において、本明細書に記載の不安定な胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸および/またはその塩に対して低い親和性を有する胆汁酸封鎖剤であり、それにより、胆汁酸封鎖剤は、胆汁酸/塩および/またはその塩が高濃度で存在する環境では胆汁酸および/またはその塩を封鎖し続け、胆汁酸/塩および/またはその塩がより低い相対濃度で存在する環境ではそれらを放出することを可能にする。いくつかの実施形態において、不安定な胆汁酸封鎖剤は、一次胆汁酸に対して高い親和性を有し、二次胆汁酸に対してより低い親和性を有し、胆汁酸封鎖剤は一次胆汁酸またはその塩を封鎖し、一次胆汁酸またはその塩は二次胆汁酸またはその塩に変換される(例えば、代謝される)ため、その後、二次胆汁酸またはその塩を放出する。いくつかの実施形態では、不安定な胆汁酸封鎖剤は、pH依存性胆汁酸封鎖剤である。いくつかの実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6以下のpHで胆汁酸に対して高い親和性を有し、6より高いpHで胆汁酸に対してより低い親和性を有する。特定の実施形態において、pH依存性胆汁酸封鎖剤は、6より高いpHで分解する。
【0290】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の不安定な胆汁酸封鎖剤は、任意の適切なメカニズムを介して、胆汁酸/塩および/またはその塩を封鎖することができる任意の化合物、例えば、マクロ構造化合物を含む。例えば、特定の実施形態において、胆汁酸封鎖剤は、イオン相互作用、極性相互作用、静的相互作用、疎水性相互作用、親油性相互作用、親水性相互作用、立体相互作用などを介して、胆汁酸/塩および/またはその塩を封鎖する。特定の実施形態において、マクロ構造化合物は、マクロ構造化合物のポケットに胆汁酸/塩および/またはその塩を捕捉することによって、および任意選択で、上記のものなどの他の相互作用によって、胆汁酸/塩および/または封鎖剤を封鎖する。いくつかの実施形態において、胆汁酸封鎖剤(例えば、不安定な胆汁酸封鎖剤)には、非限定的な例として、リグニン;修飾リグニン;ポリマー;ポリカチオン性ポリマーおよびコポリマー;N-アルケニル-N-アルキルアミン残基、1つまたは複数のN,N,N-トリアルキル-N-(N’-アルケニルアミノ)アルキル-アザニウム残基、1つまたは複数のN,N,N-トリアルキル-N-アルケニル-アザニウム残基、1つまたは複数のアルケニルアミン残基、またはそれらの組み合わせのいずれか1つまたは複数を含むポリマーおよび/またはコポリマー;あるいはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0291】
薬物と担体の共有結合
いくつかの実施形態において、結腸標的化送達に利用される戦略には、非限定的な例として、IBAT阻害剤または本明細書に記載の他の化合物の担体への共有結合、結腸のpH環境に達したときに送達させるためのpH感受性ポリマーでの製剤のコーティング、レドックス(酸化還元)感受性ポリマーの使用、タイムリリース(time-released)製剤の使用、結腸細菌によって特異的に分解されるコーティングの使用、生体接着システムの使用、および浸透圧制御薬物送達システムの使用が含まれる。
【0292】
IBAT阻害剤または本明細書に記載の他の化合物を含む組成物のそのような経口投与の特定の実施形態では、担体への共有結合が含まれ、経口投与時に、結合した部分は胃および小腸で無傷のままである。結腸に入ると、pHの変化、酵素、および/または腸内ミクロフローラによる分解によって共有結合が切断される。特定の実施形態において、IBAT阻害剤と担体との間の共有結合には、非限定的な例として、アゾ結合、グリコシドコンジュゲート、グルクロニドコンジュゲート、シクロデキストリンコンジュゲート、デキストランコンジュゲート、およびアミノ酸コンジュゲート(担体アミノ酸の高い親水性および長い鎖長)が含まれる。
【0293】
ポリマーでのコーティング:pH感受性ポリマー
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の経口剤形は、結腸および/または直腸へのIBAT阻害剤または本明細書に記載の他の化合物の送達を容易にするために腸溶性コーティングでコーティングされる。特定の実施形態において、腸溶性コーティングは、胃の低pH環境では無傷のままであるが、腸溶性コーティングの化学組成に依存する特定のコーティングの最適溶解pHに達すると容易に溶解するコーティングである。コーティングの厚さは、コーティング材料の溶解特性に依存する。特定の実施形態では、本明細書に記載のそのような製剤で使用されるコーティングの厚さは、約25μm~約200μmの範囲である。
【0294】
特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物または製剤は、組成物または製剤のIBAT阻害剤または本明細書に記載の他の化合物が、腸の上部で吸収されることなく結腸および/または直腸に送達されるようにコーティングされる。特定の実施形態において、結腸および/または直腸への特異的送達は、結腸のpH環境においてのみ分解するポリマーで製剤をコーティングすることによって達成される。代替の実施形態では、組成物は、腸のpHで溶解する腸溶性の被覆(coat)および腸内でゆっくりと侵食される外層マトリックスでコーティングされる。そのような実施形態のいくつかでは、腸内分泌ペプチド分泌促進剤(および、いくつかの実施形態では、薬剤の吸収阻害剤)を含むコア組成物のみが残るまでマトリックスはゆっくりと侵食され、コアは結腸および/または直腸に送達される。
【0295】
特定の実施形態において、pH依存性システムは、胃(pHは1~2、消化中に4に上昇する)から、消化部位の小腸(pH6~7)、および遠位回腸での7~8へと、ヒト消化管(GIT)に沿って漸進的に上昇するpHを利用する。特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物の経口投与のための剤形は、遅延放出を提供し、胃液から腸内分泌ペプチド分泌促進剤を保護するために、pH感受性ポリマーでコーティングされる。特定の実施形態において、そのようなポリマーは、胃および小腸の近位部分のより低いpH値に耐えることができるが、回腸末端および/または回盲部の中性またはわずかにアルカリ性のpHで崩壊する。したがって、特定の実施形態では、コーティングを含む経口剤形が本明細書で提供され、コーティングは、pH感受性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、結腸および/または直腸標的化に使用されるポリマーには、非限定的な例として、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルコポリマー、オイドラギット(Eudragit)L100、Eudragit S100、Eudragit L-30D、Eudragit FS-30D、Eudragit L100-55、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート50、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート55、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートフタレート(酢酸フタル酸セルロース)およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0296】
特定の実施形態において、結腸および/または直腸への送達に適した経口剤形は、結腸内のミクロフローラ(細菌)によって分解される生分解性および/または細菌分解性ポリマー(1つまたは複数)を有するコーティングを含む。そのような生分解性システムにおいて、適切なポリマーには、非限定的な例として、アゾポリマー、アゾ基を含む直鎖型のセグメント化ポリウレタン、ポリガラクトマンナン、ペクチン、グルタルアルデヒド架橋デキストラン、多糖類、アミロース、グアーガム、ペクチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ローカストビーンガム、コンドロイチン硫酸、キトサン、ポリ(-カプロラクトン)、ポリ乳酸およびポリ(乳酸-co-グリコール酸)が含まれる。
【0297】
1つまたは複数のIBAT阻害剤または本明細書に記載の他の化合物を含む組成物のそのような経口投与の特定の実施形態において、組成物は、結腸のミクロフローラ(細菌)によって分解されるレドックス(酸化還元)感受性ポリマーで製剤をコーティングすることにより、腸の上部で吸収されることなく結腸に送達される。そのような生分解性システムにおいて、そのようなポリマーには、非限定的な例として、主鎖にアゾおよび/またはジスルフィド結合を含むレドックス感受性ポリマーが含まれる。
【0298】
いくつかの実施形態において、結腸および/または直腸への送達用に製剤化された組成物は、タイムリリース用に製剤化される。いくつかの実施形態において、タイムリリース製剤は、胃の酸性環境に抵抗し、それによって製剤が結腸および/または直腸に入るまで腸内分泌ペプチド分泌促進剤の放出を遅らせる。
【0299】
特定の実施形態では、本明細書に記載のタイムリリース製剤は、ヒドロゲルプラグを有するカプセル(腸内分泌ペプチド分泌促進剤および任意選択の吸収阻害剤を含む)を含む。特定の実施形態では、カプセルおよびヒドロゲルプラグは水溶性キャップで覆われ、ユニット全体が腸溶性ポリマーでコーティングされる。カプセルが小腸に入ると、腸溶性コーティングが溶解し、ヒドロゲルプラグが膨潤して一定期間後にカプセルから外れ、組成物がカプセルから放出される。ヒドロゲルの量を用いて内容物を放出する期間を調整する。
【0300】
いくつかの実施形態では、多層の被覆を含む経口剤形が本明細書で提供され、被覆は、異なるpH感受性を有するポリマーの異なる層を含む。コーティングされた製剤がGITに沿って移動すると、遭遇するpHに応じて異なる層が溶解する。そのような製剤で使用されるポリマーには、非限定的な例として、適切なpH溶解特性を有するポリメタクリレート、Eudragit(登録商標)RLおよびEudragit(登録商標)RS(内層)、およびEudragit(登録商標)FS(外層)が含まれる。他の実施形態では、剤形は、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)の外殻を有する腸溶性コーティング錠剤である。
【0301】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるのは、セルロースブチレートフタレート、フタル酸水素セルロース、セルロースプロプリオネートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ジオキシプロピルメチルセルロースサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート;アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの組み合わせから形成されるポリマーおよびコポリマー;での被覆を含む経口剤形である。
【0302】
併用療法
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、1つまたは複数の追加の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載の化合物(例えば、IBAT阻害剤)または組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、本発明はまた、1つまたは複数の追加の薬剤とともに化合物(例えば、IBAT阻害剤)を含む組成物を提供する。
【0303】
脂溶性ビタミン
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、1つまたは複数のビタミンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、ビタミンは、ビタミンA、B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、レチノール、βカロテン、ピリドキシン、アスコルビン酸、コレカルシフェロール、シアノコバラミン、トコフェロール、フィロキノン、メナキノンである。
【0304】
いくつかの実施形態において、ビタミンは、ビタミンA、D、E、K、レチノール、βカロテン、コレカルシフェロール、トコフェロール、フィロキノンなどの脂溶性ビタミンである。好ましい実施形態では、脂溶性ビタミンは、トコフェロールポリエチレングリコールサクシネート(TPGS)である。
【0305】
IBAT阻害剤およびPPARアゴニスト
様々な実施形態において、本発明は、IBAT阻害剤と、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(peroxisome proliferator-activated receptor))アゴニストとの組み合わせの使用方法を提供する。様々な実施形態において、PPARアゴニストはフィブラート系薬である。いくつかの実施形態において、フィブラート系薬は、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、シプロフィブラート、ベンザフィブラート、フェノフィブラート、またはそれらの様々な組み合わせである。様々な実施形態において、PPARアゴニストは、アレグリタザール、ムラグリタザール、テサグリタザール、サログリタザール、GW501516、GW-9662、チアゾリジンジオン(TZD)、NSAID(例えば、イブプロフェン(IBUPROFEN))、インドール、またはそれらのさまざまな組み合わせである。
【0306】
IBAT阻害剤およびFXR薬
様々な実施形態において、本発明は、IBAT阻害剤と、ファルネソイドX受容体(FXR)標的化薬物との組み合わせの使用方法を提供する。様々な実施形態において、FXR標的化薬物は、アベルメクチンB1a、ベプリジル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、GW4064、グリキドン、ニカルジピン、トリクロサン、CDCA、イベルメクチン、クロロトリアニセン、トリベノシド、モメタゾンフランカルボン酸エステル、ミコナゾール、アミオダロン、ブトコナゾール、ブロモクリプチンメシル酸塩、ピゾチフェンリンゴ酸塩、またはそれらの様々な組み合わせである。
【0307】
部分的胆汁外瘻術(Partial External Biliary Diversion)(PEBD)
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、肝硬変をまだ発症していない患者の処置として部分的胆汁外瘻術を使用することをさらに含む。この処置方法は、合併症を減らし、多くの患者における早期移植の必要性を防ぐために、肝臓での胆汁酸/塩の循環を減らすのに役立つ。
【0308】
この外科的技術は、腸の残りの部分から、胆汁の導管(胆汁の通過のための通路)として使用するために長さ10cmの腸の部分を隔離することを含む。導管の一端は胆嚢に取り付けられ、他端は皮膚に引き出されてストーマ(排泄物の通過を可能にするために外科的に構築された開口部)を形成する。部分的胆汁外瘻術は、すべての医学的治療に反応しない患者、特に高齢のより大きい患者に使用され得る。この手法は、乳児などの若い患者には役立たない可能性がある。部分的胆汁外瘻術は、掻痒強度を軽減し、血中コレステロールレベルを異常に低くし得る。
【0309】
IBAT阻害剤およびウルソジオール
いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤は、ウルソジオールまたはウルソデキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸、タウロコール酸、ウルソコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸と組み合わせて投与される。いくつかの例において、遠位腸における胆汁酸/塩の濃度の上昇は、腸の再生、腸の損傷の軽減、バクテリアルトランスロケーションの減少、フリーラジカル酸素の放出の阻害、炎症性サイトカインの産生の阻害、またはそれらの任意の組み合わせを誘導する。
【0310】
特定の実施形態において、患者は、約または少なくとも約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、36mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、または3,000mgの1日用量でウルソジオールを投与される。特定の実施形態において、患者は、約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、36mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、または3,500mgあるいはそれら以下の1日用量でウルソジオールを投与される。様々な実施形態において、患者は、約または少なくとも約3mg~約300mg、約30mg~約250mg、約36mg~約200mg、約10mg~約3000mg、約1000mg~約2000mg、または約1500~約1900mgの1日用量でウルソジオールを投与される。
【0311】
様々な実施形態において、ウルソジオールは錠剤として投与される。様々な実施形態において、ウルソジオールは懸濁液として投与される。様々な実施形態において、懸濁液中のウルソジオールの濃度は、約10mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約150mg/mL、約10mg/mL~約500mg/mL、または約40mg/mL~約60mg/mLである。様々な実施形態において、懸濁液中のウルソジオールの濃度は、約または少なくとも約20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、または80mg/mLである。様々な実施形態において、懸濁液中のウルソジオールの濃度は、約25mg/mL以下、30mg/mL以下、35mg/mL以下、40mg/mL以下、45mg/mL以下、50mg/mL以下、55mg/mL以下、60mg/mL以下、65mg/mL以下、70mg/mL以下、75mg/mL以下、80mg/mL以下、または85mg/mL以下である。
【0312】
IBAT阻害剤および第2の有効成分は、組み合わせが治療有効量で存在するように使用される。その治療有効量は、IBAT阻害剤と他の有効成分(例えば、ウルソジオール)の組み合わせの使用から生じ、それぞれが治療有効量で使用されるか、または併用から生じる相加効果または相乗効果により、併用が治療上有効であるという条件で、それぞれが亜臨床的治療有効量(subclinical therapeutically effective amount)、すなわち、単独で使用された場合に本明細書に記載の治療目的の有効性が低下する量で使用されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のIBAT阻害剤と任意の他の有効成分との組み合わせの使用は、それらの相加効果または相乗効果により、併用が治療上有効であることを条件に、IBAT阻害剤または他の有効成分が治療有効量で存在し、もう一方が亜臨床的治療有効量で存在する組み合わせを包含する。本明細書で使用される場合、「相加効果」という用語は、単独で与えられる各薬剤の効果の合計に等しい、2つ(またはそれ以上)の薬学的に活性な薬剤の併用効果を説明する。相乗効果とは、2つ(またはそれ以上)の薬学的に活性な薬剤の併用効果が、単独で与えられた各薬剤の効果の合計よりも大きい効果である。IBAT阻害剤と、前述の他の有効成分の1つまたは複数、ならびに任意選択で他の1つまたは複数の薬理学的に活性な物質との任意の適切な組み合わせは、本明細書に記載の方法の範囲内であると考えられる。
【0313】
いくつかの実施形態において、化合物の特定の選択は、主治医の診断、ならびに個体の状態および適切な処置プロトコルに関する主治医の判断に依存する。化合物は、疾患、障害、または状態の性質、個体の状態、および使用される化合物の実際の選択に応じて、任意選択で、同時に(例えば、同時に、本質的に同時に、または同じ処置プロトコル内で)あるいは逐次的に(sequentially)投与される。特定の例において、投与の順序の決定、および処置プロトコル中の各治療薬の投与の繰り返しの回数は、処置されている疾患および個体の状態の評価に基づく。
【0314】
いくつかの実施形態において、治療有効投薬量は、薬物が処置の組み合わせで使用される場合に変化する。併用療法レジメンで使用するための薬物および他の薬剤の治療有効投薬量を実験的に決定する方法は、文献に記載されている。
【0315】
本明細書に記載の併用療法のいくつかの実施形態において、共投与される(co-administered)化合物の投薬量は、使用されるコドラッグ(co-drug)のタイプ、使用される特定の薬物、処置される疾患または状態などに応じて変化する。さらに、1つまたは複数の生物学的に活性な薬剤と共投与される場合、本明細書で提供される化合物は、任意選択で、生物学的に活性な薬剤と同時にまたは逐次的に投与される。特定の例において、逐次的に投与される場合、主治医は、本明細書に記載の治療化合物と追加の治療薬との適切な順序を決定する。
【0316】
複数の治療薬(そのうちの少なくとも1つは本明細書に記載の治療化合物である)が、任意選択で、任意の順序でまたは同時に投与される。同時に投与される場合、複数の治療薬は、任意選択で、単一の統合された形態、または複数の形態で(単なる例として、単一の丸剤または2つの別個の丸剤のいずれかとして)提供される。特定の例において、治療薬の1つは、任意選択で、複数回投与で与えられる。他の例では、両方が、任意選択で、複数回投与として与えられる。同時でない場合、複数回投与の間のタイミングは、任意の適切なタイミングであり、例えば、0週間超~4週間未満である。さらに、組み合わせ方法、組成物および製剤は、2つの薬剤のみの使用に限定されない;複数の治療的組み合わせを使用することも想定される(本明細書に記載の2つ以上の化合物を含む場合も含まれる)。
【0317】
特定の実施形態において、軽減が求められる状態を処置、予防、または改善するための投与レジメンは、様々な因子に従って変更される。これらの因子には、対象が患う障害、ならびに対象の年齢、体重、性別、食事、および病状が含まれる。したがって、様々な実施形態において、実際に使用される投与レジメンは変動し、本明細書に記載される投与レジメンから逸脱する。
【0318】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の併用療法を構成する医薬品は、配合剤形(combined dosage form)で、または実質的に同時投与を目的とした別個の剤形で提供される。特定の実施形態において、併用療法を構成する薬剤は逐次投与され、いずれかの治療化合物が、2段階投与を要求するレジメンによって投与される。いくつかの実施形態では、2段階投与レジメンは、活性薬剤の連続投与または別個の活性薬剤の間隔を空けた投与を要求する。特定の実施形態では、複数の投与ステップ間の期間は、非限定的な例として、医薬品の効力、溶解度、バイオアベイラビリティ、血漿半減期、および動態プロファイルなどの各医薬品の特性に応じて、数分から数時間まで変動する。
【0319】
特定の実施形態では、併用療法が本明細書で提供される。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、追加の治療薬を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、追加の治療薬を含む第2の剤形の投与を含む。併用療法の特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、レジメンの一部として投与される。したがって、追加の治療薬および/または追加の医薬剤形は、本明細書に記載の組成物および製剤と、直接的または間接的のいずれかで、同時にまたは逐次的に患者に適用され得る。
【0320】
キット
別の態様では、本明細書において、経口投与のためのデバイスおよび本明細書に記載の医薬組成物を含むキットが提供される。特定の実施形態では、キットは、経口投与用の予め充填された(プレフィルド)サシェまたはボトルを含む。特定の実施形態では、キットは、経口・注腸投与用のプレフィルドシリンジを含む。
【0321】
遠位回腸および/または結腸での放出
特定の実施形態において、剤形は、遠位空腸、近位回腸、遠位回腸および/または結腸における活性薬剤の制御放出を可能にするマトリックス(例えば、ヒプロメロースを含むマトリックス)を含む。いくつかの実施形態において、剤形は、pH感受性であるポリマー(例えば、Cosmo PharmaceuticalsからのMMX(商標)マトリックス)を含み、回腸および/または結腸での活性薬剤の制御放出を可能にする。制御放出に適したそのようなpH感受性ポリマーの例には、酸性基(例えば、-COOH、-SC3H)を含み、腸の塩基性pH(例えば、約7~約8のpH)で膨潤するポリアクリル酸ポリマー(例えば、メタクリル酸および/またはメタクリル酸エステルのアニオン性ポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)ポリマー)が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、遠位回腸での制御放出に適した剤形は、微粒子活性薬剤(例えば、微粉化された活性薬剤)を含む。いくつかの実施形態では、非酵素的に分解するポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コアは、遠位回腸へのIBAT阻害剤の送達に適している。いくつかの実施形態において、IBAT阻害剤を含む剤形は、回腸および/または結腸への部位特異的送達のために、腸溶性ポリマー(例えば、Eudragit(登録商標)S-100、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸やメタクリル酸エステルなどのアニオン性ポリマー)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、細菌活性化システムは、回腸への標的化送達に適している。ミクロフローラ活性化システムの例には、ペクチン、ガラクトマンナン、および/またはAzoヒドロゲルおよび/または活性薬剤のグリコシドコンジュゲート(例えば、D-ガラクトシド、β-D-キシロピラノシドなどのコンジュゲート)を含む剤形が含まれる。消化管ミクロフローラ酵素の例には、例えば、D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロピラノシダーゼなどの細菌性グリコシダーゼが含まれる。
【0322】
本明細書に記載の医薬固体剤形は、任意選択で、本明細書に記載の追加の治療化合物、ならびに適合性担体、結合剤、充填剤、懸濁化剤、香味剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑剤、安定化剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせなどの1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤を含む。いくつかの態様では、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition (2000)に記載されているような、標準的なコーティング手順を使用して、IBAT阻害剤の製剤の周囲にフィルムコーティングが提供される。一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、粒子の形態であり、化合物の粒子の一部またはすべてがコーティングされる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子のいくつかまたはすべては、マイクロカプセル化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の粒子は、マイクロカプセル化されておらず、かつコーティングされていない。
【0323】
IBAT阻害剤は、胆汁うっ滞または胆汁うっ滞性肝疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の調製に使用され得る。そのような処置を必要とする個体において本明細書に記載の疾患または状態のいずれかを処置する方法は、本明細書に記載の少なくとも1つのIBAT阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN-オキシド、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、または薬学的に許容される溶媒和物を含む医薬組成物を治療有効量で前記個体に投与することを含み得る。
【実施例】
【0324】
以下の実施例は、本明細書に開示される実施形態のいくつかをさらに説明するために提供される。実施例は、開示された実施形態を例示することを意図しており、限定することを意図していない。
【0325】
実施例1.GALA臨床研究データベースおよびマラリキシバット治療患者のアラジール症候群における6年の無イベント生存解析
リアルワールドエビデンス(RWE)解析は、希少疾患における自然歴比較(natural history comparison)を進歩させ続けている。GALAは、アラジール症候群(ALGS)に関する最大の世界的臨床研究データベースである。マラリキシバット(MRX)は、ALGSにおいて研究されている回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤である。事前に特定された解析計画は、ALGS患者における無イベント生存期間(EFS)を比較する目的で、RWEをMRXコホートと比較するために新規な解析技術を適用した。
【0326】
GALAは、臨床パラメータ、生化学およびアウトカム(転帰)についての遡及的データを含む。MRXデータベースは、最大6年のデータを有する84人のALGS患者を含む。EFSは、肝臓代償不全(静脈瘤出血、治療を必要とする腹水)、胆道迂回手術(surgical biliary diversion)、肝移植(LT)、または死亡の最初のイベントまでの時間として定義された。GALAをフィルタリングして、主要なMRX適格性基準に整列させた。インデックス時間は、最尤推定を介して決定された。ベースライン(BL)変量間のバランスを評価した。患者の選択およびインデックス時間は、臨床アウトカムに対して盲検化した。感度分析およびサブグループ分析、ならびに共変量の調整を適用した。アウトカムデータの欠測は最後の接触で打ち切った。
【0327】
GALAの1,438人の患者のうち、469人が適格であった。年齢、総ビリルビン(TB)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は、群間でバランスがとれており、年齢、変異、領域、TB、GGT、およびALTについて統計的な差は観察されなかった。BLの血清胆汁酸(sBA)の中央値は、MRXコホートにおいて有意に高かった(p=0.003);GALAでは85%のsBAデータが入手できない。MRXコホートにおけるEFS率は、GALA対照で報告されたものよりも有意に良好であり、粗6年EFS:それぞれ73%および50%(
図1)、年齢、性別、TB、ALTについて調整:HR=0.305;95%CI:0.189~0.491;p<0.0001。様々なインデックス時間、逆確率重み付け(weighted inverse probability of treatment weight)、処置群における平均治療効果、LTおよび死亡のみ、領域、sBAサブグループ、12か月までのプルーニングイベント(pruning event)は、初期結果(primary result)と一致した。限界としては、掻痒の標準化された尺度がないこと、GALAにおけるsBAデータが限られていること、臨床試験に参加する患者に固有のバイアスがあることなどが挙げられた。
【0328】
この6年の解析は、ALGS患者におけるMRXによるEFSの改善の可能性を示唆した。このRWE解析は、プラセボ比較が実現可能でない長期介入試験におけるアウトカムを評価するための潜在的方法を提供した。前向き(プロスペクティブ)な実施(prospective conduct)の欠如および固有のバイアスを考慮すると、限界は常に存在するが、感度分析はその緩和を助け解釈を支援することができる。
【0329】
実施例2.アラジール症候群におけるマラリキシバットによる処置に対する反応は健康関連の生活の質の改善に関連する
アラジール症候群(ALGS)は、掻痒症、成長障害および黄色腫に起因する高い疾病負荷および健康関連の生活の質(HRQoL)の低下を伴う。ALGSに対する承認された薬物療法はない。マラリキシバット(MRX)は、回腸胆汁酸トランスポーターの経口最小吸収阻害剤であり、ALGSの小児における胆汁うっ滞性掻痒症の処置について評価されている。ALGS患者におけるHRQoLの変化に対するMRX処置反応の影響を評価した。
【0330】
ALGSの患者における4週間の二重盲検プラセボ対照無作為化休薬期間を設けた試験である、第2相ICONIC試験からの48週間のデータの遡及的解析を行った。患者は、検証された介護者報告の痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツール(0=なし~4=非常に重症)を使用して測定して、中等度~重度の掻痒症を有した。臨床的に意味のある掻痒反応は、ベースラインから48週目までのItchROの≧1点の減少として定義された。HRQoLは、Pediatric Quality of Life Inventory Generic Core(PedsQL;0~100スケール、100=最良の生活の質)、Family Impact(FI)、およびMultidimensional Fatigue(MF)スケールスコアを使用して評価し、介護者を通して収集した。HRQoL評価の臨床的に重要な最小差(MCID)は5点である。HRQoLスケールからの個々の項目のサブセットもまた、治療反応を評価するために独立して選択された。HRQoLスコアおよび選択された項目をベースライン時および48週目に評価し、治療反応の状態によって層別化した。P値は、t検定またはANOVAを使用して算出した。多変量線形回帰モデルを使いて、ベースラインからのHRQoLスコアの平均変化(従属変数)と、治療反応の指標(独立変数)との間の関係を、ベースラインHRQoLを調節しながら評価した。また、以下の変量:年齢、性別、ビリルビン、リファンピシンの使用、身長zスコア、体重zスコア、ItchRO、および血清胆汁酸:について、追加のベースライン共変量の調整も検討した。
【0331】
合計27人のALGS患者が含まれ、平均±SDのベースラインの年齢5.7±4.3歳、ItchROスコア2.90±0.56、PedsQLスコア59.40±16.97、FIスコア55.14±18.61、MFスコア50.95±23.08、および67%が男性であった。HRQoLおよび掻痒スコアを含むベースラインの患者特性は、レスポンダーとノンレスポンダーとの間で同様であった(表1)。48週目に、20人(74%)の患者がItchRO治療反応を達成した。レスポンダーは、ノンレスポンダーよりも大きい平均HRQoLスコアを有した(表2)。さらに、レスポンダーは、ノンレスポンダーと比較して、ベースラインから48週目までのHRQoLのより大きい平均増加を経験した(表2)。
【0332】
【0333】
数値的に、レスポンダーは、全てのスケールにわたりノンレスポンダーと比較して改善されたHRQoL尺度を有した(表2)。ベースラインから48週までのMultidimensional Fatigue Total Scaleスコアの変化は、ノンレスポンダーと比較してレスポンダーにおいて有意に高かった(表2)。ノンレスポンダーにおいて、全てのスケールにわたりベースラインから48週までに臨床的に意味のある変化は観察されなかった。
【0334】
この多変量回帰分析は、ベースラインと比較して、ItchRO治療反応が48週目におけるHRQoLの臨床的に意味のある改善と関連していることを実証した。結果は、FIスコアについて最も強かった。ベースラインのFIスコアを制御すると、レスポンダーのスコアは、ノンレスポンダーと比較して、48週間にわたり平均17点増加した(p<0.05)。PedsQLおよびMFスコアについては、より小さく、統計学的に有意でない点推定値が観察された。個々の解析のために選択された19のHRQoL項目のうち、6つの睡眠関連項目は、ノンレスポンダーと比較して、レスポンダーにおいてベースラインから48週目までの有意に大きい変化を示した:睡眠障害 (Trouble sleeping)(p=0.001)、疲労感(Feeling tired)(p=0.030)、よく寝る (Sleeping a lot)(p=0.014)、夜通し眠ることが困難(Difficulty sleeping through the night)(p=0.003)、起床時の疲労感(Feeling tired upon waking)(p<0.001)、よく昼寝する(Taking a lot of naps)(p=0.020)。
【0335】
【0336】
ItchRO反応状態ごとのベースラインおよび48週目のHRQoLスコアを
図3に示す。PedsQL Generic Core Total Scaleスコア(
図3A)、Family Impact Total Scaleスコア(
図3B)およびMulti dimensional Fatigue Total Scaleスコア(
図3C)はすべて、48週目のItchRO治療反応が、HRQoLのすべての尺度における臨床的に意味のある改善と一貫して関連していることを示す。多変量回帰分析は、ItchRO治療反応が、ベースラインから48週までの3つのHRQoLの尺度すべてについて臨床的に意味のある改善と関連していたことを実証した。
【0337】
レスポンダーのFamily Impact Scaleスコアは、ノンレスポンダーと比較して、48週間にわたり、MCIDの3倍を超える平均16.9点増加した(p=0.05)(表3)。レスポンダーのPedsQL Generic Core Total Scaleスコアは、ノンレスポンダーと比較して、平均して8.8点(p=0.19)増加し、MCIDのほぼ2倍であった。同様に、Multidimensional Fatigueスコアについて、レスポンダーは、ノンレスポンダーと比較して、MCIDの2倍を超える13.9点の平均総合スコアの増加を有した(p=0.11)(表3)。結果は、人口統計学的特性および臨床的特性について調整した後でさえも堅牢なままであった。個々の解析のために選択された19のHRQoL項目のうち、6つの睡眠関連項目は、ノンレスポンダーと比較して、レスポンダーにおいてベースラインから48週目までに有意に大きい変化を示した(表4)。
【0338】
【0339】
【0340】
結論として、マラリキシバット処置を受けている間に掻痒に対する反応を経験したALGS患者は、平均して、掻痒ノンレスポンダーと対比して、ベースラインから48週までにHRQoLのより大きい改善を達成した。Family Impact Scaleの変化は、多変量回帰分析を用いて統計的に有意かつ臨床的に意味のあるものであった。PedsQL Generic Core Scaleの改善は、MCIDのほぼ2倍であった。Multidimensional Fatigue Scaleの変化はMCIDの2倍を超えていた。
【0341】
掻痒ノンレスポンダーと対比してレスポンダーにおいて見られるHRQoLスケールの6つの睡眠関連項目における有意な改善は、マラリキシバットに対する反応と睡眠障害における改善との間の関係のさらなる調査を正当化する。
【0342】
これらのデータは、ICONIC試験の48週目にマラリキシバットで見られる掻痒の有意な改善が臨床的に意味のあるものであり、患者の生活の質(QOL)の改善に関連することを実証する。
【0343】
実施例3.IBAT阻害剤であるマラリキシバットで処置したアラジール症候群の患者における6年無イベント生存の予測因子
難治性掻痒症および肝疾患の進行は、アラジール症候群(ALGS)の患者における肝移植(LTx)の適応(indication)である。長期無イベント生存期間(EFS)および無移植生存期間(TFS)の予測因子を、最大6年間の追跡調査(フォローアップ)で、回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害剤であるマラリキシバット(MRX)の3つの臨床試験に登録されたALGS患者において調べた。
【0344】
3つの長期臨床試験からのMRX処置ALGS患者を、6年までの間、臨床的に重要なイベント(事象)(clinically significant event)(LTx、胆道迂回手術[SBD]、肝臓代償不全[治療を必要とする腹水、および静脈瘤出血]、および死亡)の発生について追跡した。TFS(LTxおよび死亡のみ)も評価した。初回投与から48週間MRXを投与し、48週目に検査結果を有する者をこの解析に含めた。モデルで考慮される変量には以下のものが含まれた:肝臓生化学、血小板、掻痒(ItchRO(Obs)0~4スケールによって評価される)、総血清胆汁酸(sBA)、および年齢。適合度は、Harrell’s concordance statistic(C-statistic(C統計量))を用いて評価した。カットオフはグリッド検索によって決定した。P値は、ログランク検定(log-rank test)によるものである。
【0345】
中等度から重度の掻痒症を有する14~207か月齢のALGS患者(N=76)をこの解析に含めた。3つの長期臨床試験(ClinicalTrials.gov ID:NCT02047318;ClinicalTrials.gov ID: NCT02160782;ClinicalTrials.gov ID:NCT02117713)からのマラリキシバット処置ALGS患者を、最初の臨床的に重要なイベント(LT、胆道迂回手術、肝臓代償不全[治療を必要とする腹水、および静脈瘤出血]、または死亡)の発生について6年まで追跡した。TFS(LTおよび死亡のみ)も評価した。初回投与から48週間マラリキシバットを受け、48週間後に検査結果を有する患者をこの解析に含めた。
【0346】
モデルで考慮される変量には、以下のものが含まれた:肝臓生化学、血小板、掻痒(痒み報告アウトカム[観察者][ItchRO(Obs)]0~4スケールによって評価される)、総sBA、および開始時の年齢。これらをベースライン時、48週目、およびベースラインから48週目までの変化を調査した。適合度は、Harrell’s concordance statistic(C-statistic)を用いて評価した。カットオフはグリッド検索によって決定した。カットオフ群間の統計的比較は、ログランク検定を用いて計算した。
【0347】
この解析は、76人のマラリキシバット処置患者を含み、追跡(フォローアップ)期間の中央値は266週間であった(範囲:53~380)。患者のベースライン特性を表5に示す。
【0348】
【0349】
76人の患者のうち60人が解析時に無イベントのままであった。臨床的イベントを経験した患者は16人であった:LT(n=10)、代償不全(n=3)、死亡(n=2)、および胆道迂回手術(n=1)。EFSを予測する変量には以下が含まれる:48週目の総ビリルビン、48週目のsBA、掻痒(ItchRO[Obs])のベースラインから48週目までの変化、およびマラリキシバット開始時の年齢(表6;
図2)。
【0350】
【0351】
EFSの予測因子として同定された4つの変量は、経時的に高いC-statistics(C統計量)を有し、これらのカットオフが、48週間のマラリキシバット処置後さらに2~5年間安定な予測因子であることを示す。これら4つの変量およびカットオフは、TFSについても同様に予測的であった。
【0352】
59人(79.7%)の患者は、48週間のマラリキシバット処置の終わりに、2つ以下のより悪いEFSの予測因子を有していた(表7)。この群において6年EFSの割合は88%であった。15人(20.3%)の患者は、3つ以上のより悪いEFSの予測因子を有していた。この群において6年EFSの割合は31%であった。
【0353】
【0354】
ALGSの患者において、マラリキシバット処置によるEFSの予測因子は、以下を含む(
図2A~2D):総ビリルビンおよびsBA(両方とも48週目);掻痒の軽減(ベースラインから48週まで);およびマラリキシバット開始時の年齢。掻痒症は、ALGSの患者における肝移植(LT)の適応であることが多く、本データは、マラリキシバットによる掻痒の改善が、無イベント生存期間(EFS)および無移植生存期間(TFS)の改善と有意に関連することを実証した。本データは、マラリキシバット処置を受けている患者における臨床アウトカム(臨床転帰)について患者/提供者ディスカッションでよりうまく知らせ得る潜在的な予後マーカーを同定した。
【0355】
実施例4.長期マラリキシバット処置患者における血清胆汁酸(sBA)の制御は、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)欠損による進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)の子供における自己肝生存期間と関連する
胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)欠損に起因する進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)の小児は、衰弱性掻痒症、低身長、および進行性肝疾患を伴う。NAPPED試験(NCT03930810)は、患者の約50%が10歳までに肝移植を受けるが、部分的胆汁外瘻術後に<100μmol/Lの血清胆汁酸(sBA)レベルを達成する患者は、改善された自己肝生存期間、ならびにアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびビリルビンの低下を示すことを示す。
【0356】
マラリキシバット(MRX)は、1歳以上のアラジール症候群の患者における掻痒症の治療のために承認された回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害剤であり、PFIC患者で評価中である。MRXは、腸肝再循環を遮断し、非盲検長期試験(INDIGO;NCT02057718)において、72週目に掻痒および胆汁うっ滞を軽減し、成長を改善する。本実施例は、MRXでのPFIC患者の>4.5年間の治療を説明する。
【0357】
MRXを48週間、1日1回280μg/kgで投与し、延長において280μg/kgの1日2回投与に増量した。NAPPED sBA閾値(≦100μmol/L)を、>4.5年間試験を継続している患者に適用した。トランスアミナーゼ、ビリルビン、および成長を237週まで評価した。
【0358】
非切断型BSEP変異を有する登録患者(n=19)(年齢の中央値4.1歳、範囲1~13歳;32%男性)のうち、7人がsBAの制御(コントロール)を達成し、237週時点でも試験継続中であった。sBAの減少の平均(SE)は234.4(80.5)μmol/L(p<0.05)であり、平均値は44.2(38.8)μmol/L(ベースライン[BL]では299.6μmol/L)であった。ASTおよびALTの減少の平均は35.4(11.5)および41.1(14.3)U/Lであり、平均値はそれぞれ26.7(BLでは62.1)および16.7(BLでは57.9)であった(両方ともp<0.05)。総ビリルビンおよび直接ビリルビンの減少の平均はそれぞれ、0.1(0.3)および0.4(0.2)mg/dLであり、平均値はそれぞれ、0.7(BLでは0.8)および0.1(BLでは0.6)であった(p=0.8および0.13)。異常なビリルビンを有するものは正常化した。>4.5年間のMRX後に肝移植の対象となった継続中の患者はいなかった。成長(身長zスコア;p<0.01)および掻痒(p<0.001)は有意に改善した。長期MRXは安全であり、忍容性も良好であった;治療下で発現した最も頻度の高い有害事象の重症度は軽度から中等度であった。
【0359】
MRX処置中にsBAの制御を達成した患者は、4.5年を超える自己肝生存期間、改善された肝臓生化学、および改善された成長を有し、MRXの疾患修飾(disease-modifying)の可能性を示唆した。これらのデータは、非短縮型BSEP欠損に起因するPFICの小児に対する手術の潜在的な代替法としてMRXを支持する。
【0360】
実施例5.マラリキシバットの治療反応は、BSEP欠損症の患者における健康関連の生活の質の改善と関連する
胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)欠損は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)の最も一般的な遺伝的原因である。この疾患は、患者の健康関連の生活の質(HRQoL)に悪影響を及ぼす。マラリキシバット(MRX)は、1歳以上のアラジール症候群の患者における掻痒症の治療のために最近承認され、PFICの患者において評価中である、回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)の経口最小吸収阻害剤である。本研究は、BSEP欠損症の患者におけるHRQoLに対するMRX治療反応の影響を評価した。
【0361】
この遡及的解析は、PFICの小児におけるMRXのINDIGO第2相非盲検試験からのBSEP欠損症患者からのデータを含んでいた。掻痒は、検証された介護者報告の痒み報告アウトカム(ItchRO)重症度評価ツール(0=なし~4=非常に重症)を使用して測定した。MRXによる血清胆汁酸(sBA)反応は、ベースラインから>75%の減少またはベースラインから48週までの<102μmol/Lへの低下として定義された。HRQoLは、Pediatric Quality of Life Inventory Generic Core(PedsQL)、Family Impact(FI)、およびMultidimensional Fatigue(MF)スケールスコアを使用して評価され、介護者によって収集された。HRQoL評価の臨床的に重要な最小差(MCID)は5点である。HRQoLスケールからの個々の項目のサブセットもまた、治療反応による評価のために選択された。HRQoLをベースラインおよび48週目に評価し、スコアを治療反応によって層別化した。p値は、t検定またはANOVAを使用して計算した。多変量線形回帰モデルを使用して、HRQoLスコアのベースラインからの平均変化と治療反応の指標との間の関係を評価し、ベースラインHRQoLについて調整した。
【0362】
PFIC2のINDIGO試験からの22人の患者は、48週目に入手可能なHRQoLデータを有し、この解析に含めた(患者のベースライン特性を以下の表8に示す)。
【0363】
【0364】
48週時点で、6人の患者(28.6%)が治療反応を達成した;1人の患者の48週目のsBA反応状態は不明であったため、除外された;15人の参加者はsBA反応の基準を満たさず、ノンレスポンダーとして分類された。ベースラインのHRQoLは、ノンレスポンダーよりもレスポンダー群で低かった。他のベースライン特性は、2つの群間で類似していた。
【0365】
治療報告の状態ごとの平均HRQoLスコアを以下の表9に示す。
【0366】
【0367】
22人のBSEP欠損症の患者が含まれ、平均±SDでのベースラインの年齢は4.7±3.4歳であり、sBAは359.18±148.76μmol/Lであり、ItchRO(Obs)スコアは2.20±0.86であり、PedsQLスコアは64.34±13.54であり、FIスコアは61.22±15.75であり、MFスコアは60.87±22.78である;31.8%が男性であった。48週の時点で、6人の患者が治療反応を達成し、ベースラインのHRQoLはノンレスポンダーよりもレスポンダー群で低かった。レスポンダーは、ノンレスポンダーに対して、全てのHRQoL尺度にわたり、ベースラインから48週までのより大きい変化を経験した(表)。多変量回帰分析は、48週目のsBA反応が、ベースラインから48週目までのHRQoLの臨床的に意味のある改善と関連していることを見出した。ベースラインスコアを調整すると、sBAレスポンダーのPedsQLスコアは、ノンレスポンダーに対して48週間にわたって平均17点増加し(p=0.012)、MFスケールスコアは、ノンレスポンダーに対して平均22点増加した(p=0.037)。FIスコアについては、有意でない差が観察された。10の事前に選択された個々のHRQoL項目のうち5つは、主として睡眠に関連し、ノンレスポンダーに対して、sBAレスポンダーにおいて、ベースラインから48週までの有意な変化を示した:日中の疲労感(p=0.032)、子供の病気が他の家族にどのように影響を及ぼしているか心配(p=0.004)、夜通し眠ることが困難(p=0.002)、朝の起床時の疲労感(p=0.005)、およびよく昼寝する(p=0.004)。
【0368】
レスポンダーは、ノンレスポンダーと比較して、全てのHRQoL尺度にわたり、ベースラインから48週目までに改善を経験した。レスポンダーとノンレスポンダーとの間の統計的に有意な差は、PedsQL Generic CoreスコアおよびMultidimensional Fatigueスコアにおいて観察された(上記の表9)。レスポンダーについてのベースラインから48週目までのFamily Impacteスコアの変化は、MCIDの>1.5倍で臨床的に有意であったが、レスポンダーとノンレスポンダーとの間の差は統計的に有意ではなかった。
【0369】
ベースラインのPedsQL Generic Core Total Scaleスコアについて調整して、多変量回帰分析は、sBAレスポンダーのスコアが、ノンレスポンダーと比較して、48週間にわたって、MCIDの3倍を超えて平均17点増加したことを見出した(p<0.05)(表10)。同様に、Multidimensional Fatigue Scaleについて、レスポンダーの合計スコア(total score)は、ノンレスポンダーと比較して平均22点増加した(p<0.05)。Family Impact Total Scaleスコアについては、より小さく統計学的に有意でない差が観察された。
【0370】
PedsQL Family Impact Scaleにおける10の個々のHRQoL項目のうちの5つは、ノンレスポンダーと比較して、sBAレスポンダーにおいてベースラインから48週目までの有意な変化を示した:日中の疲労感(p=0.03);子供の病気が他の家族にどのように影響を及ぼしているか心配(p<0.01);夜通し眠ることが困難(p<0.01);起床時の疲労感(p<0.01);よく昼寝する(p<0.01)。
【0371】
【0372】
PedsQL Generic Core Total ScaleスコアおよびMultidimensional Fatigue Total Scaleスコアにおいて有意差が認められ、ベースラインから48週までのスコアの変化の平均(標準偏差)は、ノンレスポンダーについての-0.8(10.9)および0.7(16.7)と比較して、レスポンダーについて20.3(17.7)および35.8(15.1)であった;それぞれ、p=0.01およびp<0.01。
【0373】
ノンレスポンダーと比較して、より多くのレスポンダーが、PedsQL Generic Core Total Scaleスコアにおいて≧5点の変化を経験する(80.0%*対15.4%;p=0.02)。PedsQL Multidimensional Fatigue Total Scaleスコアの≧10点の変化は、全てのレスポンダー(100%)および2人のノンレスポンダー(16.7%)が経験した。
【0374】
sBA反応状態ごとのベースラインおよび48週目におけるHRQoLスコアを
図4に示す。PedsQL Generic Core Total Scaleスコア(
図4A)、Multidimensional Fatigue Total Scaleスコア(
図4B)、およびFamily Impact Total Scaleスコア(
図4C)はすべて、個々の患者についての48週目のsBA治療反応が、PedsQL Generic Core Total Scale ScoreおよびMultidimensional Fatigue Total Scaleスコア(
図4)における臨床的に意味のある改善と強く関連していたことを示す。
*1人の患者および3人の患者は、それぞれこれらのメトリックに関するデータが欠落していた。
【0375】
sBAおよび掻痒によって測定されるBSEP欠損症の患者における48週目のMRX治療反応は、複数の次元にわたるHRQoLの統計的に有意かつ臨床的に意味のある改善と関連している。
【0376】
マラリキシバット処置に反応したBSEP欠損症(PFIC2)の患者は、HRQoL(PedsQL Generic Core Total Scaleスコア、Multidimensional Fatigue Total Scaleスコア)において統計的に有意でかつ臨床的に意味のある改善を有した。臨床的に意味のある改善は、Family Impact Total Scaleスコアにおいても見出された。ノンレスポンダーと比較して、統計学的に有意な改善が、マラリキシバットレスポンダーの患者における睡眠および倦怠感の尺度においても見られた。
【0377】
この解析は、BSEP欠損症(PFIC2)の患者における、sBAによって測定される48週目のマラリキシバット治療反応が、複数の次元にわたるHRQoLの統計的に有意でかつ臨床的に意味のある改善と関連することを実証する。
【0378】
実施例6:UHPLC-MS/MSによる縦断的血清胆汁酸プロファイリングは、胆汁酸塩排出ポンプ欠損症を有するマラリキシバット処置患者における胆汁うっ滞性掻痒症の軽減を予測する
胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)欠損による進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は、難治性掻痒症、成長遅延、および最終的には肝不全に至ることによって顕在化する苦痛を伴う疾患である。胆汁酸は長い間、掻痒症の病因に関係づけられてきたが、それが果たす正確な役割は不明である。マラリキシバット(MRX)は、BAの腸肝循環を妨害する非吸収性頂端側ナトリウム依存性胆汁酸(BA)輸送阻害剤である。それは、循環BAおよび肝臓BAの蓄積を低減するその能力のため、小児の胆汁うっ滞関連掻痒症の治療のために最近FDAに承認された。全ての患者が治療に反応するわけではなく、その理由は不明である。本実施例は、胆汁酸メタボロームと胆汁うっ滞性掻痒症との間の関連性を探索し、MRX処置に反応した掻痒の軽減を予測するその可能性を探る、ターゲットメタボロミクスアプローチ(targeted metabolomics approach)について記載する。
【0379】
TCA、TUDCA、TCDCA、TDCA、TLCA、GCA、GUDCA、GCDCA、GDCA、GLCA、CA、UDCA、CDCA、DCA、LCAの主要亜種を含む総および個々の血清BA(sBA)、ならびにBA合成のサロゲート(代用)マーカーである7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(ステロール-C4)を、検証済みの超高速液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析を組み合わせた(UHPLC-MS/MS)アッセイを用いて測定した。内部標準物質である重水素標識標準物質のカクテルを、血清、キャリブレーターおよびQCサンプルに添加した。sBAを抽出し、Kinetex C18(2.6μm、100×3.0mm)カラム(Phenomenex、Torrance、CA)においてグラジエント溶出により分離した。個々のsBAの定量は、選択された遷移の多重反応モニタリング(MRM)によって行った。総C24胆汁酸濃度は、個々の種の合計から計算した。これらのアッセイを、MRXによる治療を受けたBSEP欠損症によるPFICが遺伝的に確認された19人の患者(非盲検第2相INDIGO試験;NCT02057718)からの血清の分析に適用した。痒み報告アウトカム(観察者)(ItchRO[Obs]スコアで測定した掻痒の改善に関連するsBAの組成の変化を72週間にわたり間隔をあけてモニタリングし、≧1スケールの減少と定義された掻痒レスポンダーをノンレスポンダーと比較した。また、線形混合モデルフレームワークを用いて、経時的なsBAおよび掻痒の低減の縦断的プロファイル(longitudinal profile)をモデル化した。
【0380】
19人の患者のうち、11人が掻痒反応の基準を満たし、これは総sBAのベースラインからの減少と相関しており、その減少は縦断的データにおいてノンレスポンダーにおけるものよりも有意に大きかった(p<0.05)。個々のBA亜種においても変化が観察された。グリシンおよびタウリン抱合コール酸(TCA)の減少は、MRX治療後のそう痒症の軽減と関連しており、ItchRO(Obs)スコアの減少パーセンテージと相関していた(ピアソン相関係数:TCA、グリココール酸、および総コール酸[CA]についてそれぞれ、0.58、0.50、0.53)。レスポンダー(9.84±4.87%)では、ノンレスポンダー(0.61±0.24%、p=0.09)と比較して、非抱合型BAの割合が増加する傾向が観察された。さらに重要なことは、GUDCA、GCDCA、TCDCAなどの縦断的sBAプロファイルの変化が、掻痒の軽減と有意に相関していたことである(それぞれ、χ2=13.35、P<0.001;χ2=12.86、P<0.001;χ2=19.50、P<0.001)。血清ステロール-C4の付随する増加が掻痒レスポンダーにおいて観察され(χ2=4.70、P<0.05)、胆汁酸の腸再吸収の遮断におけるMRXの生物学的作用と一致した。
【0381】
質量分析による胆汁酸メタボロームのターゲット解析は、BSEP欠損症の小児におけるMRX療法に対する掻痒反応に関連する有意な変化を明らかにし、血清ステロール-C4の測定は、薬物の有効性をさらに確認した。これらの知見は、胆汁うっ滞および掻痒の軽減に関連するBA亜種プロファイルに関するさらなる解釈を提供し、MRXがBSEP欠損症のための有効な薬物療法であることを実証するデータを強化する。
【0382】
実施例7:掻痒強度は、アラジール症候群の小児におけるマラリキシバット処置後の胆汁うっ滞バイオマーカーおよび生活の質尺度と関連する
これまで、掻痒強度および胆汁うっ滞バイオマーカーの絶対値は、ALGSの小児においてあまり相関しないことが示されている。本研究は、掻痒強度の変化が、マラリキシバットを受けたALGSの小児における胆汁うっ滞バイオマーカーの変化とどのように相関するかを評価する(ICONIC試験;NCT02160782、上記)。
【0383】
本研究の目標は、ALGSの小児におけるマラリキシバット処置後の、痒み報告アウトカム(観察者)(ItchRO)ツールによって測定される掻痒と、sBAおよびsBA亜種、オートタキシン(ATX)、ならびに生活の質尺度を含む、多様なパラメータとの間の相関を特徴付けることである。
【0384】
登録した31人の参加者のうち29人が48週間の治療を完了し、27人がこの解析のために評価された。解析集団のベースライン特性を表11に示す。
【0385】
【0386】
表12に示すように、48週目において、ItchROスコアとの統計的に有意な相関には、CSSスコア、sBA、成長(身長zスコア)、およびATXが含まれ、PedsQL(商標)Family Impact Total Scale(PedsQL(商標)Impact)スコアとの有意性の傾向がみられた。
【0387】
タウロコール酸(TCA)およびグリココール酸(GCA)も、ALGSの患者において掻痒と有意な相関を示した(表12)。ItchROとPedsQL(商標)Multidimensional Fatigue Scale(PedsQL(商標)Fatigue)スコアとの間にも、ベースラインから48週目までの変化として、統計学的に有意な相関が認められた(r=-0.59、p=0.0053;表12)。
【0388】
【0389】
全体の平均ItchROスコアの減少は、48週目に1.6点であった。50%以降の比例的なsBA減少の増加は、より大きいItchROスコアの減少と関連しているようである(以下の表13)。1人の参加者は、ItchROスコアの減少が-3.5点であり正常化した。
【0390】
【0391】
ALGSの試験参加者におけるマラリキシバット処置は、ItchROおよびCSSスコアを使用して、掻痒の有意かつ臨床的に意味のある改善をもたらした。sBAの減少は掻痒強度の軽減と相関しており、両者の因果関係をさらに支持する。ATXおよび身長zスコアとも有意な相関がみられ、PedsQL(商標)Impactスコアとも有意な傾向がみられた。ベースラインから48週目までの変化を評価したところ、掻痒はPedsQL(商標)Fatiguスコアと有意に相関し、掻痒の軽減とともに睡眠が改善されることを示唆した。
【0392】
全体として、ALGS患者におけるマラリキシバットの良好な治療効果(positive treatment effect)は、48週目における多様な臨床的に関連するパラメータとの重要な相関を実証する。
【0393】
実施例8:進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の処置のためのマラリキシバット:長期非盲検第2相試験
胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)および家族性肝内胆汁うっ滞症関連タンパク質1(FIC1)欠損症を含む、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の小児は、成長および生活の質(QoL)に悪影響を及ぼす衰弱性胆汁うっ滞性掻痒症に苦しむ。肝移植を含む外科的介入への依存は、満たされていない治療ニーズを浮き彫りにする。INDIGOは、FIC1またはBSEP欠損症の小児を対象としたマラリキシバットの有効性および安全性を評価する非盲検第2相国際長期試験であり、12の病院で実施された。12か月~18歳までの33人の患者が登録された。8人がFIC1欠損症で、25人がBSEP欠損症であった;6人が両アレルのタンパク質短縮型変異(biallelic, protein truncating mutation)(t)-BSEPを有し、19人が≧1の非切断型変異(non-truncating mutation)(nt)-BSEPを有していた。患者はベースラインから72週目までマラリキシバット266μg/kgを1日1回経口投与され、72週目からは1日2回投与が許可された。長期有効性は240週目に判定された。試験中、血清胆汁酸(sBA)反応(ベースラインから75%超のsBAの減少、または102.0μmol/L未満のsBA濃度)が、nt-BSEPを有する7人の患者(1日1回投与中に6人、1日2回投与に切り替えた後に1人)で達成された。sBAレスポンダーは、sBAおよび掻痒の大幅な低減、ならびに身長、体重、QoLの増加を示した。すべてのsBAレスポンダーは、>5年後にも肝移植を受けないままであった。FIC1欠損症またはt-BSEP欠損症の患者はいずれも、試験期間中にsBAレスポンダー基準を満たさなかった。マラリキシバットの忍容性は、試験期間を通して概ね良好であった。
【0394】
マラリキシバットに対する反応はPFICサブタイプに依存していた;nt-BSEPを有する19人の患者のうち6人が、sBAレベルの急速かつ持続的な低下を経験した。7人のレスポンダーは、最後の追跡調査時に自己肝で生存し、掻痒の臨床的に有意な軽減ならびに成長およびQoLの意味のある改善を経験した。この結果は、マラリキシバットが外科的介入に代わる忍容性の高い代替手段であることを示す。
【0395】
PFICのほとんどの型が、肝細胞の毛細胆管側膜(canalicular membrane)において発現されるトランスポーターにおける変異によって引き起こされる。主要な型のPFICのうちの2つ、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)欠損症または家族性肝内胆汁うっ滞症関連タンパク質1(FIC1)欠損症を、本研究に含めた。BSEP欠損症(またはPFIC2型)は、ATP結合カセットサブファミリーBメンバー11(ABCB11)における変異によって引き起こされる。BSEPは肝細胞から毛細胆管への主要な胆汁酸トランスポーターであり、BSEP欠損症は最も一般的なPFIC型である。BSEP欠損症の患者の大部分は、一部の残存BSEP機能の可能性を有する少なくとも1つの非タンパク質短縮変異(nt-BSEP)を有するが、約15%は、タンパク質切断を引き起こすと予測される2つの変異体(短縮型BSEP[t-BSEP])を有し、BSEP機能の欠如をもたらす。FIC1は、毛細胆管側膜を含む複数の上皮で発現される脂質トランスポーターであるP-type ATPase phospholipid transporting 8B1(ATP8B1)によってコードされる。FIC1欠損症(またはPFIC1型)は、慢性下痢、膵機能不全、腎尿細管機能障害、および成長不全を含む、肝外症状を伴う。
【0396】
ここで、本発明者らは、BSEPまたはFIC1欠損症の小児におけるマラリキシバットの長期有効性および安全性の非盲検第2相試験であるINDIGO(進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の小児患者における胆汁うっ滞性肝疾患の治療におけるLUM001の有効性および長期安全性の非盲検試験;LUM001-501;NCT02057718)からのデータを提示する。INDIGOは、これらの患者における胆汁うっ滞および肝疾患の他の生化学的マーカーとともに、sBAレベルおよび胆汁うっ滞性掻痒症に対するマラリキシバットの効果を調査した。
【0397】
INDIGOは、FIC1欠損症またはBSEP欠損症の小児におけるマラリキシバット(以前はLUM001-501またはSHP625として知られていた)の有効性および安全性を評価するように設計された非盲検第2相国際長期多施設共同試験であった。その試験は、フランス、ポーランド、英国、および米国の12の病院で実施された。スクリーニング評価は、試験開始の6週間前に行った。ATP8B1またはABCB11変異が記録されていない患者において、遺伝子検査を実施した。試験は、初期マラリキシバット用量漸増期間、続いて長期安定投与期間(マラリキシバット266μg/kgまでを、1日1回経口投与[マラリキシバット塩化物280μg/kgに相当、以下「266μg/kg」と称する])を含んでいた。試験実施計画書(study protocol)の修正により、72週目までに事前に規定されたsBAおよび掻痒のベネフィットが達成されなかった場合、266μg/kgを1日2回まで増量することが認められ、また試験の長期延長期間への移行も認められた。
【0398】
有効性プライマリーエンドポイント(有効性主要評価項目)は、intent-to-treat(ITT)試験集団全体におけるベースラインから13週目までの平均空腹時sBAレベルの変化であった。重要な有効性セカンダリーエンドポイント(有効性副次評価項目)は、ITT試験集団全体におけるベースラインから13週目までの観察者評価掻痒(痒み報告アウトカム(観察者)[ItchRO(Obs)])スコアの平均変化であった。その他の有効性副次評価項目には、ITT試験集団全体における総コレステロール、低密度および高密度リポタンパク質コレステロール(それぞれLDL-CおよびHDL-C)、ならびに血清トリグリセリドレベルにおける、ベースラインから13週目までの平均変化が含まれた。さらなる有効性および安全性解析には、sBAレベル、患者の身長および体重、胆汁酸合成(sBAレベルと7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン[7α-C4]レベルとの比によって決定される)、Pediatric Quality of Life Inventory(商標)(PedsQL(商標))によって測定される生活の質、ALT、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、およびビリルビン(総ビリルビンおよび直接ビリルビン)の平均変化、脂質プロファイル、ならびにFSVレベルにおける、ベースラインから72週目および240週目までの変化が含まれた。ItchRO評価は72週目に実施されなかったため、代わりに48週目のデータが用いられた。
【0399】
有効性および安全性解析は、ITT試験集団全体と2つのPFICサブタイプ(FIC1欠損症およびBSEP欠損症)について別々に実施した。BSEP欠損症の患者は、全体で、および変異型(t-BSEPおよびnt-BSEP)ごとに解析した。掻痒スコア、患者の身長、血中脂質、肝臓パラメータ、および無移植生存率の長期変化を、レスポンダー解析に従って評価した。解析は、72週目(試験の2つの主要な期間の間の自然な区切りのため)および240週目(より後の時点で観察される少ない患者数およびデータの欠落の影響を最小限にしながら長期データを提供するために選択された)に行われた。
【0400】
15種類の主要sBAおよび血清7α-C4の定量的分析は、College of American Pathologists/Clinical Laboratory Improvement Amendments認証に準拠する完全に検証された独自のアッセイを用いて、安定同位体希釈エレクトロスプレーイオン化液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS/MS)により、単一施設(シンシナティ)で実施した。試験プロトコルは、ItchRO(Obs)スコアの≧1.0点の減少およびベースラインからのsBAレベルの≧70%の低下または正常化を達成するとして、マラリキシバットに対する複合反応を定義した。腸肝循環の外科的中断後にベースラインから>75%のsBAの減少または<102.0μmol/Lの濃度を達成した個体において改善された無移植生存期間を報告する刊行物を受けて、この試験のための事後(post-hoc)レスポンダー解析においてこの新しい定義を使用するために閾値を変更した。定義にかかわらず、レスポンダーの数は同じままであった。掻痒は、0=「なし」および4=「非常に重度」の5点スケールに基づき胆汁うっ滞性肝疾患の小児の掻痒を評価するために特別に開発されかつ検証されたItchROツールを用いて測定された。このツールは、すべての年齢にわたる小児における胆汁うっ滞性掻痒症の臨床的に関連する変化を検出することが示されており、≧1.0点の変化は臨床的に意味がある。ItchRO測定は、eDiaryを介して1日2回完了した。親/介護者は、全ての患者についてItchRO(Obs)評価を完了した。さらに、9歳以上の小児は、ItchRO(Pt)評価を完了した。ALT、AST、ビリルビン(総ビリルビンおよび直接ビリルビン)、脂質、およびFSVのレベルは、標準的な臨床検査技法を用いて評価した。生活の質は、PedsQL(商標)質問表を用いて評価した。小児報告スコアおよび親/介護者報告スコアの臨床的に重要な最小差は、それぞれ総合スケールスコア(Total Scale Score)4.4または4.5点の変化であった。治療下で発現した有害事象(TEAE)および重篤な有害事象(SAE)の発生を、試験を通して評価した。
【0401】
37人の患者を2014年2月と2015年7月の間でスクリーニングした。3人の患者は低いsBA(sBA<3×ULN(8.5μmol/L))を有し、1人の参加者は上昇したINRを有し、これらは試験に含まれなかった。33人の患者が登録された;合計8人(24%)がFIC1欠損を有し、25人(76%)がBSEP欠損を有した(6人はt-BSEPを有し、19人はnt-BSEPを有する;
図5)。登録された33人の患者のうち:全員が13週目まで試験処置を完了した;22人(67%)は72週目まで試験処置を完了した(6人はFIC1欠損症を有し、16人はBSEP欠損症を有する);11人(33%)が治療を中止した。18人の患者が72週目以降も試験治療を継続することに同意した;6人の患者がこの期間中に中止した(
図5)。266μg/kgの1日2回投与への増量が行われた平均試験週は110週であった(範囲94~152週)。試験終了時(240週目)、合計12人の患者がそれぞれ>4年のマラリキシバット治療を受けていた。
【0402】
短期(13週間)および長期(72週間まで)の両方についての有効性結果を以下に記載する。短期および長期の有効性結果の顕著な差が、疾患サブタイプ間で認められ、nt-BSEP欠損症の患者は、様々なパラメータにおける有意な改善を示した(以下に示す)。
【0403】
ITT試験集団全体(33人の登録患者全て;PFIC1とPFIC2を合わせた)内で、ベースラインから13週までsBAレベルの有意な低下はなかった(-16.9μmol/L[95%信頼区間(CI)-74.830、41.070;P=0.884])。しかし、掻痒は、ITT集団において13週目までに有意に改善し、ベースラインからの平均減少はItchRO(Obs)スコアで-0.8(95%CI-1.04、-0.53;P<0.001)であり、ItchRO(Pt)スコアでは-1.0(95%CI-1.55、-0.47;P=0.002)であった。
【0404】
BSEP欠損症の患者は、疾患タイプによって処置に対して予想通りに様々な反応を示し、nt-BSEPを有する患者(n=19)は、最大の反応を示した。試験中、sBA反応(ベースラインからの>75%のsBAの低下または<102.0μmol/Lの濃度)は、nt-BSEPを有する7人の患者のサブセット(37%)によって達成された(以下、「sBAレスポンダー」と呼ぶ)。これらのsBAレスポンダーは、顕著かつ持続的なsBAの減少、ならびに掻痒および他のパラメータの低減を示した。6人は、266μg/kgを1日1回投与されている間に反応を達成し、1人は、97週目以降に266μg/kgを1日2回投与されている間に反応を達成した。t-BSEPを有するいずれの患者も試験のどの時点でもsBAレスポンダー基準を満たさず、t-BSEPを有する全ての患者が240週目より前に中止した。以下の結果は、BSEP欠損症の全ての患者についての長期有効性をまとめたものであり、sBAレスポンダー対sBAノンレスポンダーのデータを要約する。
【0405】
ベースラインの血清ALT、AST、総および直接ビリルビン、コレステロール、ならびにトリグリセリドはすべて、ノンレスポンダーよりもレスポンダーにおいて有意に低かった。平均sBAレベルの変化を
図6に示す。ベースラインと比較して、sBAレスポンダー内のsBAレベルは、処置を開始すると急速に(2~4週以内に)低下し、ほとんど持続的な反応が試験を通して長期的に維持された(
図6A)。この反応パターンは、sBAノンレスポンダーでは観察されなかった(
図6B)。
【0406】
平均ItchRO(Obs)スコアの変化を
図7に示す。7人のsBAレスポンダーはすべて、sBA反応を達成した後、ItchRO(Obs)スコアの>1.0点の臨床的に意味のある減少を経験し(
図7A)、さらに3人のsBAノンレスポンダーが、ItchRO(Obs)スコアの臨床的に意味のある減少を達成した(
図7Bをサポート)。
【0407】
平均身長zスコアおよび体重zスコアの変化を
図8に示す。sBAレスポンダーは、ベースラインから72週目まで平均身長zスコアおよび平均体重zスコアが徐々に増加した(それぞれ、0.67、95%CI 0.369、0.976;P=0.0016および0.30、95%CI -0.001、0.603;P=0.051であり、これは240週目まで維持された;
図8Aおよび
図8B)。この成長のベネフィットは、72週目に評価したときのsBAノンレスポンダーにおける身長zスコアおよび体重zスコアの減少とは対照的であった(それぞれ、0.49、95%CI -0.948、-0.041;P<0.001対sBAレスポンダー、および-0.30、95%CI-0.606、-0.012;P=0.013対sBAレスポンダー)。
【0408】
平均PedsQL(商標)スコアの変化を
図9に示す。処置を開始するとsBAレスポンダー内で平均PedsQL(商標)スコアにおける臨床的に意味のある改善が観察され、試験を通して一貫して維持された(ベースラインから240週目までの変化は24点、95%CI 6.7、40.6;P=0.014;
図9)。
【0409】
生化学的評価を
図10に示す。sBAレスポンダーは、血清ALT、AST、およびビリルビンレベルの改善および/または正常化を経験した(ベースラインで上昇していた場合;
図10)。マラリキシバットでの処置により、血清7α-C4の平均レベルは、nt-BSEPを有する患者において増加し、試験を通して徐々に増加し、240週目に統計的有意性に達した(+26.29ng/mL、95%CI 4.07、48.50;P=0.027)。
【0410】
処置後の生物学的反応の証拠は、血清7α-C4の増加によって反映される胆汁酸合成の増加を調べることによって評価することができる。sBAの減少と組み合わせると、ベースラインと比較した7α-C4/sBA比は、生物学的反応の感度の高いマーカーになる。BSEP欠損症の患者における7α-C4/sBA比は、sBAノンレスポンダーとは対照的に、sBAレスポンダーにおいて、ベースラインと比較して概して増加した(
図11)。注目すべきことに、7人目のsBAレスポンダーにおける7α-C4/sBA比は、1日1回の投与中には上下していたが、1日2回投与を開始すると明らかな上昇を示した。
【0411】
全てのsBAレスポンダーがマラリキシバットを>5年受けた後に無移植生存を示したのに対して、sBAノンレスポンダーにはいなかった(P<0.001;
図12)。試験の開始時に(難治性掻痒症の適応で)肝移植の候補に挙げられた2人のsBAレスポンダーは、移植待機リストから除外されるほど十分に改善した。
【0412】
FIC1欠損症患者における追加の長期有効性解析を説明するデータは、sBAの平均レベル、ItchRO(Obs)スコア、およびPedsQL(商標)スコアがベースラインから有意に変化しなかったことを示す。FIC1欠損症の患者はいずれも、試験期間中にわたりsBAレスポンダー基準を満たさなかった。4人のFIC1欠損症の患者は、おそらくいくらかの掻痒のベネフィットを受けるため、治験薬の投与を継続した。
【0413】
試験を通して、マラリキシバットは概して安全で忍容性が良好であった(
図5)。全ての患者が1つ以上のTEAEを経験し、ほとんどが軽度または中程度(58%)であり、一過性であった。最も一般的なTEAEは、発熱(20人[61%]の患者)、下痢(19人[58%]の患者)、および咳(18人[55%]の患者)であった。8人の患者(1人はFIC1欠損症、7人はBSEP欠損症)は、試験中の有害事象によりマラリキシバットを中止した(4人は、血清ビリルビンの増加の非重篤な事象に起因するもの;1人は膵炎の非重篤な事象によるもの;1人はビタミンEの減少の非重篤な事象によるもの;1人は掻痒症の非重篤な事象によるもの;1人は、肝腫瘤の非重篤な事象に起因するもの[肝結節のグレード1の事象として報告され、患者はその後肝移植を受けることになった])。膵炎の患者は、マラリキシバットを開始する前の2年以内に生じた膵炎の病歴を有することが報告された(過去に3回のエピソード)。合計15人の患者が、試験中に報告された重篤なTEAEを有し、そのうち腹痛、下痢、および胃腸炎が、1人以上の患者(各2人の患者)において報告された唯一のSAEであった。試験中に死亡は報告されなかった。
【0414】
本試験は、FIC1欠損症またはBSEP欠損症を有する小児において、部分的胆汁外瘻術の効果を模倣する可能性を有する最小限に吸収されるIBAT阻害剤であるマラリキシバットによる最長5年の処置の結果を報告する。この試験では、処置の最初の13週にわたるITT試験集団全体におけるsBA減少の主要評価項目は満たされなかった;しかしながら、重要なことに、処置に対する反応は、異なるPFICサブタイプに依存することが見出された。nt-BSEPを有する7人の患者(37%;7/19)の群(治療sBAレスポンダーとみなされる)は、持続的で、臨床的に関連性があり、かつ統計的に有意な反応を経験し、複数のパラメータが改善した。sBAレベルの低下に加えて、この反応は、ItchRO(Obs)スコアの≧1.0点の減少、血清トランスアミナーゼおよびビリルビンの改善、ならびに生活の質および成長パラメータの改善を含んでいた。とりわけ、これらの患者は、5年以上にわたり無移植のままであり、部分的胆汁外瘻術も受けていない。これらの知見は、SBD後の閾値sBAの低下が同様の生化学的および長期アウトカムをもたらし、自然歴ベネフィットを改善することを示したSBDに関するNAPPEDコンソーシアムの知見と一致する。
【0415】
ABCB11内に少なくとも1つの非タンパク質短縮型変異を有する全てのsBAレスポンダーとは対照的に、t-BSEPを有する6人の患者のいずれもsBA反応を達成しなかった。これらの観察は、残存BSEP機能がマラリキシバット反応に必要であることを強く示唆している。この主張は、ベースライン生化学において見られる差異によって強く支持されており、ビリルビン、肝酵素および脂質のより低いレベルが、その後のレスポンダーにおいて見られた。これらのパラメータはすべて、胆汁うっ滞がより軽度であることを示唆し、BSEP機能がより多く保持されていることと一致する。nt-BSEPを有する患者に、sBAノンレスポンダーがいた。これらの患者はBSEP機能が不十分であった可能性はあるが、他の因子が反応の欠如を決定した可能性がある。これらの因子には、ファルネソイドX受容体(FXR)が胆汁酸合成を制御する程度、IBAT発現のレベル、マラリキシバットの用量、およびさらには少ない腸液量などが含まれ得る。この研究においてFIC1欠損症の患者がマラリキシバットに反応しなかった理由は直ちには明らかではない。上記の因子も一役買っている可能性がある。さらに、これらの患者で観察されたFXR発現の減少は、ASBT発現の増加につながる可能性があり、それは結果的にこのサブグループにおいてより高用量のマラリキシバットを必要とすることになる。
【0416】
7α-C4/sBA比は、sBAレスポンダーにおいて処置を開始すると急速に増加し、試験期間を通して持続し、この比が、血清7α-C4単独の変化よりも良好に、マラリキシバットによる処置に対する反応の高感度予測因子であり得ることを示唆した。7人目のsBAレスポンダーは、1日1回投与中には7α-C4/sBA比が上下していたが、1日2回投与すると明らかに増加し、したがってsBAレスポンダーとなった。相応して、この段階で中止した数人の患者は、sBAレスポンダーの7α-C4/sBA比と同様の7α-C4/sBA比を有し、これらの患者が、1日2回投与を受けた場合に同様の反応を示し得ることを示唆した。したがって、7α-C4/sBA比を、用量増量(dose escalation)から利益を得るであろうsBAノンレスポンダーを同定するために使用できる可能性がある。
【0417】
マラリキシバットは、1日2回投与を受けた患者においてさえ、最大5年間の治療を受けた後に、PFIC患者において忍容性は概して良好であった。12人の患者は、有害事象または疾患進行後の肝移植のためにマラリキシバットによる治療を中止したが、PFICの進行性という性質からこれは予想外ではなかった。試験中に報告されたTEAEの大部分は、軽度から中程度の一過性の消化器系TEAEであり、これはおそらくIBAT阻害後の結腸胆汁酸フラックスの増加によるものであり、治療中止をもたらさなかった。これらの結果は、マラリキシバットの以前の試験で観察された安全性プロファイルと一致した。
【0418】
マラリキシバットでの処置は、FSVまたは肝臓トランスアミナーゼのレベルに対していかなる有意な有害作用も有さなかった。この研究の限界には、プラセボ対照要素がないこと、およびサンプルサイズが比較的小さいことが含まれる。PFICの稀な性質、およびおそらく生命を左右する手術を回避したsBAレスポンダーに対する劇的な治療効果を考慮すると、これらの知見は、非常に適切であり、臨床的に有意であると考えられる。主要評価項目は、全コホートにおける反応に基づいていた。しかしながら、現在では、治療に対する二分的な反応があったことが明らかであり、したがって、レスポンダー解析がより適切であったであろう。最後に、非盲検設計は、対照群の不在下でこの研究から導き出すことができるいくつかの結論を制限するが、>5年のプラセボ対照データを作製することは実現可能ではなかった。対照群の不在は、ベースラインと比較して、sBAレスポンダーにおいて見られる劇的かつ持続的な治療効果によって緩和される。
【0419】
結論として、この研究は、マラリキシバットが、無移植生存をもたらす、nt-BSEPを有する患者におけるsBAレベルの急速かつ持続的な低下、ならびに掻痒の軽減や成長および生活の質の有意な改善をもたらし得ることを実証する。これらのデータは、nt-BSEPにおける治療的胆汁酸枯渇の使用に関するNAPPEDの知見、およびsBAの減少が自己肝生存の予後マーカーであるという観察を支持する。したがって、マラリキシバットは、現実的かつ効果的な治療戦略と考えることができ、疾患症状を緩和し、無移植生存期間を増加させ、さらには胆道迂回手術に代わる忍容性の高い非外科的代替手段を提供することにより、患者および介護者の生活に利益をもたらす。
【参考文献】
【0420】
【0421】
本明細書内のどこかで引用される全ての参考文献は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0422】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態を示し、説明したが、このような実施形態が例示のためにのみ提供されることは当業者には明らかであろう
【0423】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内に入る各別個の値および各終点を個々に言及する簡潔な方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各別個の値および終点は、あたかもそれが本明細書において個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0424】
多数の変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実施する際に採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物がそれによって包含されることが意図される。
【国際調査報告】