(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】活性アルデヒドおよびケトンの光誘導放出のための環状アセタールおよびケタール
(51)【国際特許分類】
C07D 317/26 20060101AFI20241024BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20241024BHJP
C07D 319/06 20060101ALI20241024BHJP
C07D 493/10 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241024BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07D317/26
C11B9/00 N
C11B9/00 K
C11B9/00 J
C11B9/00 L
C07D319/06 CSP
C07D493/10
A61Q13/00 101
A61K8/49
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526621
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2022080523
(87)【国際公開番号】W WO2023078909
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲアリー ウォーマック
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヘルマン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB332
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC642
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC742
4C083AC782
4C083AC841
4C083AC842
4C083AC852
4C083AC862
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD202
4C083AD282
4C083CC23
4C083CC33
4C083CC38
4C083KK02
(57)【要約】
本発明は、活性な揮発性カルボニル化合物を光への曝露時に制御された様式で周囲に未封入させることができる、式(I)の化合物、すなわち光応答性環状アセタールまたはケタール化合物をベースとする送達系に関する。さらに、本発明は、香料における前記化合物の使用、および本発明の化合物を含む賦香組成物または着香消費者製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
[式中、
nは、0または1であり;
Xは、酸素原子またはNR
9基であり、R
9は、水素原子またはメチル基であり;
R
1は、C
1-18炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子および/または1~2個の窒素原子および/または1個の硫黄原子を含むものを表し;R
2は、水素原子またはR
1基を表すか;あるいはR
1およびR
2は、一緒になった場合、C
5-16シクロアルキル基、C
5-16シクロアルケニル基、C
4-14ヘテロシクロアルキル基またはC
4-14ヘテロシクロアルケニル基を形成し、前記基はそれぞれ任意に、C
1-15アルキル基、C
2-15アルケニル基、C
1-15アルコキシ基、C
3-15シクロアルキル基、C
5-15シクロアルケニル基、C
6-10アリール基および/またはC
6-10アリールオキシ基のうちの1つ以上で置換されており、前記基はそれぞれ任意に、C
1-8アルキル基、C
1-8アルコキシ基、カルボン酸基および/またはC
1-4カルボン酸エステル基のうちの1つ以上で置換されており、ここで、ヘテロ原子は、1つ以上の酸素原子を表し;
R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子、C
1-6アルコキシ基またはC
1-12アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-6アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものを表すか、あるいは隣接する2つのR
3基は、一緒になった場合、C
3-8直鎖状アルカンジイル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-3アルキル基および/またはC
1-3アルコキシ基のうちの1つ以上で置換されたものであり;
R
5は、水素原子またはC
1-6炭化水素基を表すか、あるいはR
4およびR
5は、一緒になった場合、C
1-4直鎖状、分岐状または環状アルカンジイル基であって、任意に酸素原子を1つ含むものを表し;
R
6は、水素原子またはメチル基を表し;
R
7およびR
8は、互いに独立して、水素原子またはC
1-6アルキル基を表し;かつ
基R
1およびR
2は、合計で少なくとも4個の炭素原子を有する]の化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態。
【請求項2】
R
7およびR
8が、互いに独立して、水素原子またはメチル基、好ましくは水素原子を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R
6が水素原子を表す、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R
5が、水素原子、またはC
1-4直鎖状もしくは分岐状アルキル基、またはC
2-4直鎖状もしくは分岐状アルケニル基を表し、好ましくは、R
5が水素原子を表す、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
Xが酸素原子であり、nが0である、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R
3およびR
4が、互いに独立して、水素原子、C
1-3アルコキシ基またはC
1-6アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-3アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものを表すか、あるいは隣接する2つのR
3基が、一緒になった場合、C
3-4直鎖状アルカンジイル基であって、任意にヒドロキシ基および/またはC
1-3アルキル基のうちの1つ以上で置換されたものである、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
R
1が、C
1-12炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子を含むものを表すか、またはR
1およびR
2が、一緒になった場合、C
5-16シクロアルキル基またはC
5-16シクロアルケニル基を形成し、前記基はそれぞれ任意に、C
1-8アルキル基、C
2-8アルケニル基、C
1-8アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基、C
5-8シクロアルケニル基、C
6アリール基および/またはC
6アリールオキシ基のうちの1つ以上で置換されており、前記基はそれぞれ任意に、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、カルボン酸基および/またはC
1-4カルボン酸エステル基のうちの1つ以上で置換されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
前記式(I)の化合物が、1-フェニル-3-(2-フェニル-1,3-ジオキサン-4-イル)プロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、1-フェニル-3-(2-(2-フェニルプロピル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン、1-フェニル-3-(2-(ウンデカン-2-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン、3-(2-(デカ-9-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-(2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-(2-(4,4-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)エチル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、1-フェニル-3-(2-(ウンデカ-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン、3-(2-(2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)プロピル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-(6-メチルヘプタ-5-エン-2-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、(E/Z)-3-(2-(4,8-ジメチルノン-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、(E/Z)-3-(2-(5-シクロヘキシル-4-メチルペンタ-4-エン-2-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-メチル-2-フェニル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-メチル-2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(6-ペンチル-1,4-ジオキサスピロ[4.4]ノナン-2-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、1-フェニル-3-(2-フェニル-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(4-メトキシフェニル)プロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(p-トリル)プロパン-1-オン、3-(2-(4-メトキシフェニル)-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-(4-エチルフェニル)-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメチル-3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン-1-オン、3-(5-メチル-2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、および3-(5,5-ジメチル-2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オンのいずれか1つの立体異性体の形態からなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
持続的な匂いを提供するための賦香成分としての、請求項1から8までのいずれか1項で定義された式(I)の化合物の使用。
【請求項10】
賦香組成物、前記賦香組成物の周囲の空気、表面または着香物品の匂い特性を付与、増強、改善または変更する方法であって、前記方法は、請求項1から8までで定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量を前記組成物、前記空気もしくは前記物品に添加するか、または請求項1から8までで定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量を前記表面と接触させるか、または請求項1から8までで定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量で前記表面を処理することを含む、方法。
【請求項11】
i)請求項1から8までのいずれか1項で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物と、
ii)香料担体および香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分と、
iii)任意に、少なくとも1つの香料アジュバントと
を含む、賦香組成物。
【請求項12】
請求項1から8までのいずれか1項で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物か、または請求項11に定義された賦香組成物を含む、着香消費者製品。
【請求項13】
前記着香消費者製品が、香水、布地ケア製品、ボディケア製品、化粧品、スキンケア製品、エアケア製品、またはホームケア製品である、請求項12記載の着香消費者製品。
【請求項14】
前記着香消費者製品が、ファインパフューム、スプラッシュパフュームまたはオードパフューム、コロン、シェーブローションまたはアフターシェーブローション、液体洗剤または固形洗剤であって、任意にポッドまたはタブレットの形態であるもの、布地用柔軟剤、液体または固体のセントブースター、乾燥機用シート、布地用リフレッシュ剤、アイロニングウォーター、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品、シャンプー、リーブオンヘアコンディショナーまたはリンスオフヘアコンディショナー、カラーリング用調製物、カラーケア製品、整髪用製品、デンタルケア製品、殺菌剤、インティメイトケア製品、ヘアスプレー、スキンクリームまたはスキンローション、バニシングクリーム、デオドラントまたは制汗剤、脱毛剤、タンニング用製品または日焼け用製品、ネイル用製品、皮膚洗浄剤、化粧品、石鹸、シャワームースまたはバスムース、オイルまたはジェル、フット/ハンドケア製品、衛生製品、エアフレッシュナー、「すぐに使用可能な」粉末状エアフレッシュナー、カビ除去剤、家具ケア製品、ワイプ、食器用洗剤または硬質表面用洗剤、皮革ケア製品、車用エアフレッシュナー、ポリッシュ、ワックスまたはプラスチッククリーナーである、請求項13記載の着香消費者製品。
【請求項15】
前駆体化合物から、以下:
a)式
【化2】
[式中、
R
1は、C
1-18炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子および/または1~2個の窒素原子および/または1個の硫黄原子を含むものを表し;R
2は、水素原子またはR
1基を表すか;あるいはR
1およびR
2は、一緒になった場合、C
5-16シクロアルキル基、C
5-16シクロアルケニル基、C
4-14ヘテロシクロアルキル基またはC
4-14ヘテロシクロアルケニル基を形成し、前記基はそれぞれ任意に、C
1-15アルキル基、C
2-15アルケニル基、C
1-15アルコキシ基、C
3-15シクロアルキル基、C
5-15シクロアルケニル基、C
6-10アリール基および/またはC
6-10アリールオキシ基のうちの1つ以上で置換されており、前記基はそれぞれ任意に、C
1-8アルキル基、C
1-8アルコキシ基、カルボン酸基および/またはC
1-4カルボン酸エステル基のうちの1つ以上で置換されており、ここで、ヘテロ原子は、1つ以上の酸素原子を表す]のカルボニル化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態と、
b)式
【化3】
[式中、
R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子、C
1-6アルコキシ基またはC
1-12アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-6アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものを表すか、あるいは隣接する2つのR
3基は、一緒になった場合、C
3-8直鎖状アルカンジイル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-3アルキル基および/またはC
1-3アルコキシ基のうちの1つ以上で置換されたものであり;
R
5は、水素原子またはC
1-6炭化水素基を表すか、あるいはR
4およびR
5は、一緒になった場合、C
1-4直鎖状、分岐状または環状アルカンジイル基であって、任意に酸素原子を1つ含むものを表し;R
6は、水素原子またはメチル基を表す]のケトンのいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態と
からなる群から選択される化合物を、前記化合物が加水分解される環境に放出する方法であって、
前記前駆体化合物は、式(I)
【化4】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義されたものと同じ意味を有し;nは、0または1であり;Xは、酸素原子またはNR
9基であり、R
9は、水素原子またはメチル基であり;R
7およびR
8は、互いに独立して、水素原子またはC
1-6アルキル基を表す]の化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態であり、
前記放出を、前記式(I)の前駆体化合物の光への曝露により行う、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性な揮発性カルボニル化合物を光への曝露時に制御された様式で周囲に未封入させることができる、式(I)の化合物、すなわち光応答性環状アセタールまたはケタール化合物をベースとする送達系に関する。さらに、本発明は、香料における前記化合物の使用、および本発明の化合物を含む賦香組成物または着香消費者製品に関する。
【0002】
背景技術
香料産業では、複数のフレグランスを同時に混合した混合物の賦香効果を、ある期間にわたって延長または増強することができる組成物や添加剤が特に重要である。それ自体では揮発性が高すぎる、あるいは残香性が乏しい、あるいは最終用途の表面に少量しか付着しない標準的な香料原料について、持続性を得ることが特に望まれている。さらに、香料成分の一部、特にアルデヒドは不安定であり、使用前に緩慢な分解から保護する必要がある。持続性香料は、例えば、ファインパフューマリーや機能性香料、美容調製物などの様々な用途に望ましい。テキスタイルの洗濯や柔軟仕上げは、特に、洗濯、柔軟仕上げ、乾燥後に一定期間、活性物質、特に香料の効果を有効にすることができることが常に求められている分野である。実際、この種の用途に特に適した匂いを持つ物質の多くは、洗濯物に対する付着性に欠けるか、すすいでも洗濯物に残らないことが知られており、その結果、その賦香効果は短時間しか得られず、あまり強くもない。香料産業におけるこの種の用途の重要性を考慮し、この分野の研究は、特に、前述の課題に対する新しい、より効果的な解決策を見出すことを目的として、続けられてきた。
【0003】
今般、驚くべきことに、本発明による感光性環状アセタールまたはケタールが、上記の課題を解決し、多くの実用的な用途において、いくつかの活性な揮発性カルボニル化合物を光への曝露時に効率的に未封入させることができることが見出された。本発明者らの知る限り、式(I)の感光性アセタールおよびケタール化合物が、揮発性化合物の制御放出のための送達系として実際に好適であり得ることを示唆するまたは期待させる先行技術文献は、存在しない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】キセノンランプによる光照射後に
1H-NMR分光測定を行った際の、式(I)による環状アセタールまたはケタールからの式(III)のフェニルケトン誘導体および式(II)のカルボニル化合物(アルデヒドまたはケトン)の光誘導放出を示す図である。化合物1(上)は、アセトフェノンおよびベンズアルデヒドを放出し、化合物2(下)は、アセトフェノンおよびウンデカナールを放出する。
【
図2】キセノンランプによる光照射後に
1H-NMR分光測定を行った際の、式(I)による環状アセタールまたはケタールからの式(III)のフェニルケトン誘導体および式(II)のカルボニル化合物(アルデヒドまたはケトン)の光誘導放出を示す図である。化合物13(上)は、アセトフェノンを2分子放出する(放出されたアセトフェノンの記録された
1H-NMR積分値を、2モル当量に対応するように調整した)。化合物16(下)は、アセトフェノンおよびベンズアルデヒドを放出する。
【0005】
発明の説明
活性な揮発性アルデヒドまたはケトンを活性な揮発性フェニルケトン誘導体と共に光への曝露時に所与の表面から周囲環境に放出する送達系として式(I)の化合物を有利に使用できることが、今般発見された。
【0006】
したがって、本発明の第1の主題は、式
【化1】
[式中、
nは、0または1であり;
Xは、酸素原子またはNR
9基であり、R
9は、水素原子またはメチル基であり;
R
1は、C
1-18炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子および/または1~2個の窒素原子および/または1個の硫黄原子を含むものを表し;R
2は、水素原子またはR
1基を表すか;あるいはR
1およびR
2は、一緒になった場合、C
5-16シクロアルキル基、C
5-16シクロアルケニル基、C
4-14ヘテロシクロアルキル基またはC
4-14ヘテロシクロアルケニル基を形成し、前記基はそれぞれ任意に、C
1-15アルキル基、C
2-15アルケニル基、C
1-15アルコキシ基、C
3-15シクロアルキル基、C
5-15シクロアルケニル基、C
6-10アリール基および/またはC
6-10アリールオキシ基のうちの1つ以上で置換されており、前記基はそれぞれ任意に、C
1-8アルキル基、C
1-8アルコキシ基、カルボン酸基および/またはC
1-4カルボン酸エステル基のうちの1つ以上で置換されており、ここで、ヘテロ原子は、1つ以上の酸素原子を表し;
R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子、C
1-6アルコキシ基またはC
1-12アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-6アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものを表すか、あるいは隣接する2つのR
3基は、一緒になった場合、C
3-8直鎖状アルカンジイル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-3アルキル基および/またはC
1-3アルコキシ基のうちの1つ以上で置換されたものであり;
R
5は、水素原子またはC
1-6炭化水素基を表すか、あるいはR
4およびR
5は、一緒になった場合、C
1-4直鎖状、分岐状または環状アルカンジイル基であって、任意に酸素原子を1つ含むものを表し;
R
6は、水素原子またはメチル基を表し;
R
7およびR
8は、互いに独立して、水素原子またはC
1-6アルキル基を表し;かつ
基R
1およびR
2は、合計で少なくとも4個の炭素原子を有する]の化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態である。
【0007】
明確にするために述べると、「化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物」などの表現は、当業者に理解される通常の意味であり、すなわち、式(I)の化合物は、純粋なエナンチオマー(光学活性の場合)であってもよいし、ジアステレオマーであってもよいことを意味する。換言すれば、式(I)の化合物は、いくつかの立体中心を有することができ、前記立体中心はそれぞれ、2つの異なる立体配置(例えば、RまたはS)を有することができる。式(I)の化合物は、純粋なエナンチオマーの形態であってもよいし、エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態であってもよい。式(I)の化合物は、ラセミ形態であってもよいし、スカレミ形態であってもよい。したがって、式(I)の化合物は、1つの立体異性体であってもよいし、様々な立体異性体を含むかまたはそれからなる物質組成物の形態であってもよい。
【0008】
「・・・炭化水素基・・・」とは、前記基が、水素原子および炭素原子からなり、脂肪族炭化水素、すなわち直鎖状または分岐状飽和炭化水素(例えば、アルキル基)、直鎖状または分岐状不飽和炭化水素(例えば、アルケニル基またはアルキニル基)、飽和環状炭化水素(例えば、シクロアルキル)または不飽和環状炭化水素(例えば、シクロアルケニル基またはシクロアルキニル基)の形態であってもよいし、芳香族炭化水素、すなわちアリール基の形態であってもよいし、前記タイプの基の混合物の形態であってもよいことを意味すると理解され、例えば、特定の基は、1つのタイプのみに対する特定の限定が言及されない限り、直鎖状アルキル、分岐状アルケニル(例えば、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する)、(ポリ)シクロアルキルおよびアリール部位を含むことができる。同様に、本発明のすべての実施形態において、ある基が、2つ以上のタイプのトポロジー(例えば、直鎖状、環状または分岐状)の形態であること、および/または飽和もしくは不飽和(例えば、アルキル、芳香族またはアルケニル)であることが言及される場合、それもまた、上記で説明されるように、前記トポロジーのいずれか1つを有するかまたは飽和もしくは不飽和である部位を含むことができる基を意味する。同様に、本発明のすべての実施形態において、基が、1つのタイプの飽和または不飽和の形態であると言及される場合(例えば、アルキル)、前記基は、任意のタイプのトポロジー(例えば、直鎖状、環状または分岐状)であるか、または様々なトポロジーを有するいくつかの部位を有することができることを意味する。
【0009】
「炭化水素基であって、任意に・・・を含むもの」という用語は、前記炭化水素基が、アルコール、ケトン、アルデヒド、エーテル、チオエーテル、エステル、カルボン酸、アミン、アミド、カルバメート、ニトリルまたはチオール基を任意に含むことを意味すると理解される。これらの基は、炭化水素基の水素原子を置換して前記炭化水素に対して横方向に結合していてもよいし、炭化水素基の炭素原子を置換して(化学的に可能であれば)炭化水素鎖に組み込まれていてもよい。例えば、-CH2-CH2-CHOH-CH2-基は、アルコール基(水素原子の置換)を含むC4炭化水素基、すなわち、酸素原子を含むC4炭化水素を表し、-CH2-CH2-COO-CH2-CH2-CH2-CH2-基は、1個のエステル基(炭素原子の置換/炭化水素鎖への組み込み)を含むC6炭化水素基、すなわち、2個の酸素原子を含むC7炭化水素を表し、同様に、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-基は、2個のエーテル基を含むC6炭化水素基、すなわち2個の酸素原子を含むC6炭化水素を表す。
【0010】
「任意に」という用語は、任意に置換されたまたは任意に含まれるある基が、ある官能基で置換可能であるかもしくは置換不可能であること、またはある原子を含むことが可能であるかもしくは不可能であるものと理解される。「1つ以上」という用語は、ある官能基1~7個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個で置換されているものと理解される。
【0011】
「アルキル」および「アルケニル」という用語は、分岐状および直鎖状アルキル基およびアルケニル基を含むものと理解される。「アルケニル」、「シクロアルケニル」および「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、1、2または3個のオレフィン性二重結合、好ましくは1または2個のオレフィン性二重結合を含むものと理解される。「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」、「ヘテロシクロアルキル」、「ヘテロシクロアルケニル」および「複素環式」という用語は、単環式または縮合、スピロおよび/または橋かけされた二環式または三環式シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、ならびに複素環式基、好ましくは単環式シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基およびヘテロシクロアルケニル基を含むものと理解される。
【0012】
「アリール」という用語は、フェニル基、インデニル基、インダニル基、ベンゾジオキソリル基、ジヒドロベンゾジオキシニル基、テトラヒドロナフタレニル基またはナフタレニル基のような芳香族基を少なくとも1つ含む任意の基を含むものと理解される。
【0013】
「オキソ基」という用語は、式=Oの任意の基、すなわちケトンまたはアルデヒドなどを含むものと理解される。換言すれば、任意にオキソ基で置換されたC1-6アルキル基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、これらの炭素原子のうちの1個は、末端炭素であっても、2個の水素原子の代わりに1個の=O基で置換されていてもよい。
【0014】
「基R1およびR2は、合計で少なくとも4個の炭素原子を有する」という用語は、R1基の炭素原子とR2基の炭素原子との合計が4個以上であるものと理解され、すなわち、R2基が水素原子である場合、R1基は、ブチル基などのC4-18炭化水素基であるか;またはR1基がメチル基である場合、R2基は、プロピル基などのC3-18炭化水素基である。
【0015】
本発明の任意の実施形態によれば、R7は、水素原子またはC1-4アルキル基であってよい。特に、R7は、水素原子またはC1-3アルキル基であってよい。特に、R7は、水素原子またはメチル基またはエチル基であってよい。特に、R7は、水素原子またはメチル基であってよい。さらにより特には、R7は、水素原子であってよい。
【0016】
本発明の任意の実施形態によれば、R8は、水素原子またはC1-4アルキル基であってよい。特に、R8は、水素原子またはC1-3アルキル基であってよい。特に、R8は、水素原子またはメチル基またはエチル基であってよい。特に、R8は、水素原子またはメチル基であってよい。さらにより特には、R8は、水素原子であってよい。
【0017】
本発明の任意の実施形態によれば、R6は、水素原子であってよい。
【0018】
本発明の任意の実施形態によれば、R5は、水素原子、またはC1-6直鎖状もしくは分岐状アルキル基、またはC2-6直鎖状もしくは分岐状アルケニル基であってよい。特に、R5は、水素原子、またはC1-4直鎖状もしくは分岐状アルキル基、またはC2-4直鎖状もしくは分岐状アルケニル基であってよい。特に、R5は、水素原子、またはC1-3直鎖状もしくは分岐状アルキル基、またはC2-3直鎖状アルケニル基であってよい。特に、R5は、水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基またはアリル基であってよい。特に、R5は、水素原子またはメチル基であってよい。さらにより特には、R5は、水素原子であってよい。
【0019】
本発明の任意の実施形態によれば、R9は、水素原子であってよい。
【0020】
本発明の任意の実施形態によれば、Xは、酸素原子またはNH基であってよい。特に、Xは、酸素原子であってよい。
【0021】
本発明の任意の実施形態によれば、nは、0であってよい。
【0022】
本発明の任意の実施形態によれば、本発明の化合物は、式
【化2】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、上記で定義されたものと同じ意味を有する]の化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態である。
【0023】
本発明の任意の実施形態によれば、本発明の化合物は、式
【化3】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、上記で定義されたものと同じ意味を有する]の化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態である。
【0024】
本発明の任意の実施形態によれば、各R3は、互いに独立して、水素原子、C1-5アルコキシ基またはC1-10アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C1-3アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものであってよい。特に、各R3は、互いに独立して、水素原子、C1-4アルコキシ基またはC1-8アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C1-3アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものであってよい。特に、各R3は、互いに独立して、水素原子、C1-3アルコキシ基またはC1-6アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C1-3アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものであってよい。特に、各R3は、互いに独立して、水素原子、メトキシ基またはC1-4アルキル基であってよい。特に、1つまたは2つのR3は、互いに独立して、水素原子、メトキシ基またはC1-4アルキル基であってよく、他は水素原子である。特に、1つまたは2つのR3は、互いに独立して、水素原子、メトキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基またはsec-ブチル基であり、他は水素原子である。特に、1つまたは2つのR3は、互いに独立して、水素原子、メトキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基であってよく、他は水素原子である。特に、1つのR3は、互いに独立して、水素原子、メトキシ基またはメチル基であってよく、他のR3は水素原子である。さらにより特には、R4のメタ位のR3は、水素原子、メトキシ基またはメチル基であってよく、他のR3は水素原子である。
【0025】
本発明の任意の実施形態によれば、隣接する2つのR3基は、一緒になった場合、C3-6直鎖状アルカンジイル基であって、任意にヒドロキシ基、C1-3アルキル基および/またはC1-3アルコキシ基のうちの1つ以上で置換されたものであってよい。特に、隣接する2つのR3基は、一緒になった場合、C3-4直鎖状アルカンジイル基であって、任意にヒドロキシ基および/またはC1-3アルキル基のうちの1つ以上で置換されたものであってよい。特に、隣接する2つのR3基は、一緒になった場合、C3-4直鎖状アルカンジイル基であって、任意にC1-3アルキル基のうちの1つ以上で置換されたものであってよい。さらにより特には、隣接する2つのR3基は、一緒になった場合、C3-4直鎖状アルカンジイル基であって、任意にメチル基、エチル基またはイソプロピル基のうちの1つ、2つ、3つ、4つまたは5つで置換されたものであってよい。
【0026】
本発明の任意の実施形態によれば、R4は、水素原子、C1-4アルコキシ基またはC1-8アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C1-3アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものであってよい。特に、R4は、水素原子、C1-3アルコキシ基またはC1-6アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C1-3アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものであってよい。特に、R4は、水素原子、メトキシ基またはC1-4アルキル基であってよい。特に、R4は、水素原子、メトキシ基またはC1-3アルキル基であってよい。特に、R4は、水素原子、メトキシ基またはメチル基であってよい。さらにより特には、R4は、水素原子であってよい。
【0027】
本発明の任意の実施形態によれば、R4およびR5は一緒になって、C1~C3直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表すことができる。特に、R4およびR5は一緒になって、メタンジイル基またはプロパン-2,2-ジイル基を表すことができる。
【0028】
本発明の任意の実施形態によれば、R1およびR2は、式R1CHO(すなわち、R2は水素原子である)の活性アルデヒドまたは式(R1)(R2)C=Oのケトンから誘導され;前記アルデヒドまたはケトンは、80~230g/molである分子量を有し、C5~C18化合物である。
【0029】
本発明の任意の実施形態によれば、R1は、C1-15炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子および/または1~2個の窒素原子および/または1個の硫黄原子を含むものであってよい。特に、R1は、C1-12炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子を含むものであってよい。特に、R1は、C1~C10炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子を含むものであってよい。特に、R1は、C1~C9炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子を含むものであってよい。さらにより特に、R1は、C1~C8炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子を含むものであってよい。
【0030】
本発明の任意の実施形態によれば、R1およびR2は、一緒になった場合、C5-16シクロアルキル基またはC5-16シクロアルケニル基を形成し、前記基はそれぞれ任意に、C1-8アルキル基、C2-8アルケニル基、C1-8アルコキシ基、C3-8シクロアルキル基、C5-8シクロアルケニル基、C6アリール基および/またはC6アリールオキシ基のうちの1つ以上で置換されており、前記基はそれぞれ任意に、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、カルボン酸基および/またはC1-4カルボン酸エステル基のうちの1つ以上で置換されている。特に、R1およびR2は、一緒になった場合、C5-16シクロアルキル基またはC5-16シクロアルケニル基を形成し、前記基はそれぞれ任意に、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C3-6シクロアルキル基、C5-6シクロアルケニル基、C6アリール基および/またはC6アリールオキシ基のうちの1つ以上で置換されており、前記基はそれぞれ任意に、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基、カルボン酸基および/またはC1-3カルボン酸エステル基のうちの1つ以上で置換されている。さらにより特に、R1およびR2は、一緒になった場合、C5-16シクロアルキル基またはC5-16シクロアルケニル基を形成し、前記基はそれぞれ任意に、C1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、C1-4アルコキシ基、C3-6シクロアルキル基、C5-6シクロアルケニル基、C6アリール基および/またはC6アリールオキシ基のうちの1つ以上で置換されており、前記基はそれぞれ任意に、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、カルボン酸基および/またはC1-2カルボン酸エステル基のうちの1つ以上で置換されている。
【0031】
上記実施形態のいずれか1つによれば、前記式(I)の化合物は、1-フェニル-3-(2-フェニル-1,3-ジオキサン-4-イル)プロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、1-フェニル-3-(2-(2-フェニルプロピル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン、1-フェニル-3-(2-(ウンデカン-2-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン、3-(2-(デカ-9-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-(2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-(2-(4,4-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)エチル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、1-フェニル-3-(2-(ウンデカ-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン、3-(2-(2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)プロピル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-(6-メチルヘプタ-5-エン-2-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、(E/Z)-3-(2-(4,8-ジメチルノン-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、(E/Z)-3-(2-(5-シクロヘキシル-4-メチルペンタ-4-エン-2-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-メチル-2-フェニル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-メチル-2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(6-ペンチル-1,4-ジオキサスピロ[4.4]ノナン-2-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、1-フェニル-3-(2-フェニル-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(4-メトキシフェニル)プロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(p-トリル)プロパン-1-オン、3-(2-(4-メトキシフェニル)-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-(4-エチルフェニル)-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-デシル-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメチル-3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン-1-オン、3-(5-メチル-2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン、または3-(5,5-ジメチル-2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オンのいずれか1つの立体異性体の形態である。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、以下の化合物は式(I)から除外される:メチル3-メトキシ-2-(2-メチル-5-(4-(3-オキソ-3-フェニルプロピル)-1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンジル)アクリレート、メチル3-メトキシ-2-(メチル(3-(4-(3-オキソ-3-フェニルプロピル)-1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)アミノ)アクリレート、メチル2-(メトキシイミノ)-3-(2-メチル-5-(4-(3-オキソ-3-フェニルプロピル)-1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)プロパノエート、2-(メトキシイミノ)-N-メチル-3-(2-メチル-5-(4-(3-オキソ-3-フェニルプロピル)-1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)プロペンアミドおよび3-(2-(3-(2-(5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル)-2-(メトキシイミノ)エチル)-4-メチルフェニル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン。
【0033】
任意の実施形態によれば、式(I)の化合物は、不揮発性であり、実質的に無臭である。同時に、それらは、賦香組成物または着香消費者製品において比較的安定である。
【0034】
不揮発性で実質的に無臭の化合物は、有利には、ソフトウェアEPIwin v.3.10(2000年、米国環境保護庁にて入手可能)を用いた計算により得られる蒸気圧が2.0Pa未満であることを特徴とする。好ましくは、前記蒸気圧は0.2Pa未満であり、さらにより好ましくは0.02Pa未満である。
【0035】
式(I)による化合物は、分解反応により、式
【化4】
[式中、
R
1、R
2は、上記と同じ意味を有する]の活性カルボニル化合物を、式
【化5】
[式中、
R
3~R
6は、上記と同じ意味を有する]のフェニルケトン誘導体と共に放出することができる。
【0036】
「カルボニル」という用語は、R2基の意味に応じてアルデヒドまたはケトンを表し、すなわち、式(II)のカルボニル化合物は、R2が水素原子を表す場合にはアルデヒドであり、式(II)のカルボニル化合物は、R2が水素原子でない場合にはケトンである。
【0037】
式(II)の化合物および式(III)の化合物の放出をもたらす分解反応は、光、特に300nmを超える波長、好ましくは330nmを超える波長、さらにより好ましくは350nmを超える波長の光によって誘発されると考えられる。式(I)の化合物は、光への曝露時に分解して、式(III)のフェニルケトン誘導体および4-メチレン-1,3-ジオキソラン誘導体(n=0およびX=O)、4-メチレンオキサゾリジン誘導体(n=0およびX=NR9)、4-メチレン-1,3-ジオキサン誘導体(n=1およびX=O)または4-メチレン-1,3-オキサジナン誘導体(n=1およびX=NR9)を形成すると考えられる。それぞれのジオキソラン誘導体、オキサゾリジン誘導体、ジオキサン誘導体またはオキサジナン誘導体は、加水分解的に不安定であり、加水分解して式(II)のカルボニル化合物を形成する。本発明の加水分解的に安定な環状アセタールまたはケタールまたはオキサゾリジンまたは1,3-オキサジナンの開裂は、このように光によって誘導され、これにより加水分解的に不安定な中間体が形成され、この中間体が、2工程のシーケンスで目的化合物を放出する。構造によっては、3つ(n=0でR7およびR8が水素原子の場合)または4つ(n=1でR7およびR8が水素原子の場合)を除くすべての炭素原子が活性化合物に変換されるため、本発明による送達系は非常に原子経済的である。
【0038】
【0039】
任意の実施形態によれば、式(II)の化合物および式(III)の化合物は、有利には、ソフトウェアEPIwin v.3.10(2000年、米国環境保護庁にて入手可能)を用いた計算により得られる蒸気圧が1.0Paを超えることを特徴とする。別の実施形態によれば、前記蒸気圧は、5.0Paを超えるか、またはさらには7.0Paを超える。
【0040】
特定の実施形態において、R2が水素原子である式(II)の化合物;すなわち式R1CHOのアルデヒドは、ベンズアルデヒド、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、3-ブトキシベンズアルデヒド、5-シクロヘキシル-2,4-ジメチルペンタ-4-エナール、デカナール、2,4-デカジエナール、2-デセナール、4-デセナール、8-デセナール、9-デセナール、3-(6,6-ジメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプタ-2-エン-2-イル)プロパナール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(Triplal(登録商標)、供給元:International Flavors & Fragrances、ニューヨーク、米国)、3,5-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、1-(3,3-ジメチル-1-シクロヘキシル)-1-エタノン、3-(4,4-ジメチルシクロヘキサ-1-エニル)プロパナール、5,9-ジメチル-4,8-デカジエナール、4,8-ジメチル-4,9-デカジエナール、5,9-ジメチルデカ-4-エナール、2,6-ジメチル-5-ヘプテナール(メロナール)、(E/Z)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール(シトラール、ネラール)、3,7-ジメチルオクタナール、3,7-ジメチル-6-オクテナール(シトロネラール)、(3,7-ジメチル-6-オクテニル)アセトアルデヒド、ドデカナール、2-ドデセナール、3-ドデセナール、4-ドデセナール、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、4-エチルベンズアルデヒド、3-(2-および4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、2-フランカルバルデヒド(フルフラール)、2,4-ヘプタジエナール、4-ヘプテナール、2-ヘキセナール、3-ヘキセナール、2-ヒドロキシベンズアルデヒド、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール(ヒドロキシシトロネラール)、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4-および3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(Lyral(登録商標)、供給元:International Flavors and Fragrances、ニューヨーク、米国)、3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナール、3-(4-イソブチルフェニル)プロパナール、4-イソプロピルベンズアルデヒド(クミンアルデヒド)、3-(4-イソプロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール、3-(3-イソプロピルフェニル)ブタナール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、2-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール、4-メトキシベンズアルデヒド(アニスアルデヒド)、6-メトキシ-2,6-ジメチルヘプタナール(メトキシメロナール)、8(9)-メトキシトリシクロ[5.2.1.0.(2,6)]デカン-3(4)-カルバルデヒド(Scentenal(登録商標)、供給元:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、4-メチルベンズアルデヒド、3-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタナール、2-メチルデカナール、2-(4-メチレンシクロヘキシル)プロパナール、1-メチル-4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(Precyclemone(登録商標)B、供給元:International Flavors and Fragrances、ニューヨーク、米国)、4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(Empetal、供給元:Givaudan-Roure SA、ヴェルニエ、スイス)、(4-メチルフェノキシ)アセトアルデヒド、(4-メチルフェニル)アセトアルデヒド、3-メチル-5-フェニルペンタナール(Phenexal(登録商標)、供給元:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、3-メチル-3-フェニルプロパナール、2-メチルウンデカナール、2,4-ノナジエナール、2,6-ノナジエナール、2-ノネナール、3-ノネナール、6-ノネナール、8-ノネナール、4-(オクタヒドロ-5H-4,7-メタノインデン-5-イリデン)ブタナールオクタナール、2-オクテナール、フェノキシアセトアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3-フェニルブタナール(Trifernal(登録商標)、供給元:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、2-フェニルプロパナール(ヒドラトロプアルデヒド)、3-フェニルプロパナール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール(Lilial(登録商標)、供給元:Givaudan-Roure SA、ヴェルニエ、スイス)、3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール(Bourgeonal(登録商標)、供給元:Quest International、ナールデン、オランダ)、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-4-カルバルデヒド、エキソトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-エキソカルバルデヒド(Vertral(登録商標)、供給元:Symrise、ホルツミンデン、ドイツ)、2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-カルバルデヒド(ホルミルピナン)、2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1,3-ジエン-1-カルバルデヒド(サフラナール)、2,4,6-および3,5,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-アセトアルデヒド(カンホレンアルデヒド)、2,6,10-トリメチル-2,6,9,11-ドデカテトラエナール、2,5,6-トリメチル-4-ヘプテナール、3,5,5-トリメチルヘキサナール、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール、ウンデカナール、2-ウンデセナール、10-ウンデセナールまたは9-ウンデセナール、ならびにそれらの混合物、例えば、Intreleven aldehyde(供給元:International Flavors and Fragrances、ニューヨーク、米国)、およびAldehyde Supra(供給元:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、および4-ビニルシクロヘキサ-1-エン-1-カルバルデヒドからなる群から選択することができ;ここで、下線が付された化合物は、本発明の好ましい実施形態において特に有用なアルデヒドを表す。
【0041】
特定の実施形態において、R2が水素原子ではない式(II)の化合物;すなわち、式(R1)(R2)C=Oのケトンは、4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-ブタノン、2-ブタノン、(4E/Z,8E/Z)-シクロドデカ-4,8-ジエン-1-オン、2-シクロヘキシル-4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタデカノン、(Z)-シクロペンタデカ-4-エン-1-オン、(Z)-シクロヘプタデカ-9-エン-1-オン、1-(3,5-ジイソプロピルフェニル)エタン-1-オン、1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)エタン-1-オン、1-[2,6-ジメチル-4-(2-メチル-2-プロパニル)フェニル]エタノン、2,5-ジメチル-2-オクテン-6-オン、4,7-ジメチル-6-オクテン-3-オン、2,6-ジメチル-7-オクテン-4-オン(ジヒドロタゲトン)、4-(1,1-ジメチルプロピル)シクロヘキサン-1-オン、(5-E/Z)-6,10-ジメチルウンデカ-5,9-ジエン-2-オン、2-エチル-4,4-ジメチルシクロヘキサン-1-オン、4-エチル-8-メチルオクタヒドロナフタレン-1(2H)-オン、1-(4-エチルフェニル)エタン-1-オン、1-(3-エチル-1.1,3,6-テトラメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、2-ヘプチルシクロペンタン-1-オン、4,4a,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1,4-メタノナフタレン-5(1H)-オン、1-(1,1,2,3,3,6-ヘキサメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エタノン(Phantolid(登録商標)、供給元:PFW Aroma Chemicals、バルネフェルト、オランダ)、1-(3,5,5,6,8,8-ヘキサメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフタレニル)エタン-1-オン(Fixolide(登録商標)、供給元:Givaudan SA、ヴェルニエ、スイス)、2-ヘキサノン、2-(5-ヘキセン-1-イル)シクロペンタン-1-オン、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1-イソプロピル-4-メチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-オン、5-イソプロピル-2-メチルシクロヘキサン-1-オン、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-オン(メントン)、1-(5-イソプロピル-2-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)プロパン-1-オン、1-(3-イソプロピル-1,1,2,6-テトラメチル-5-インダニル)エタン-1-オン、4-(4-メトキシフェニル)-2-ブタノン、1-(4-メトキシフェニル)エタン-1-オン(アセトアニソール、供給元:Givaudan SA、ヴェルニエ、スイス)、1-(2-メトキシフェニル)プロパン-1-オン、7-メチル-2H-ベンゾ[b][1,4]ジオキセピン-3(4H)-オン、2-(2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)プロピル)シクロペンタン-1-オン、3-メチルシクロペンタデカン-1-オン、3-メチルシクロペンタデカ-4-エン-1-オン、3-メチルシクロペンタデカ-5-エン-1-オン、5-メチル-3-ヘプタノン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、7-メチルオクタヒドロ-1,4-メタノナフタレン-6(2H)-オン、メチル(Z)-2-(3-オキソ-2-(ペンタ-2-エン-1-イル)シクロペンチル)アセテート(ジャスモン酸メチル)、メチル2-(3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチル)アセテート、1-(4-メチル-1-フェノキシ)-2-プロパノン、3-メチル-1-フェニルブタン-1-オン、1-(4-メチルフェニル)エタン-1-オン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-メチルフェニル)プロパン-1-オン、1-[4-(2-メチル-2-プロパニル)フェニル]エタン-1-オン、2-(1-メチルプロピル)シクロヘキサン-1-オン、2-ノナノン、4-ノナノン、1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン(異性体混合物、Iso E Super(登録商標)、供給元:International Flavors & Fragrances、ニューヨーク、米国)、2-オクタノン、3-オクタノン、オクタ-2-エン-4-オン、2-ペンタデカノン、2-ペンタノン、2-ペンチルシクロペンタン-1-オン(Delphone、供給元:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、1-フェニルブタン-1-オン、4-フェニル-2-ブタノン、1-フェニルエタン-1-オン(アセトフェノン)、1-フェニルヘキサン-1-オン、1-フェニルペンタン-1-オン、1-フェニル-4-ペンテン-1-オン(Lavonax、供給元:International Flavors & Fragrances、ニューヨーク、米国)、1-フェニルプロパン-1-オン(プロピオフェノン)、7-プロピル-2H-ベンゾ[b][1,4]ジオキセピン-3(4H)-オン、1-(5-プロピルベンゾ[d][1,3]ジオキソール-2-イル)エタン-1-オン、2-(tert-ブチル)シクロヘキサン-1-オン、4-(tert-ブチル)シクロヘキサン-1-オン、1-(6-tert-ブチル-1,1-ジメチル-4-インダニル)-1-エタノン(Crysolide、Givaudan SA、ヴェルニエ、スイス)、1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフタレニル)エタン-1-オン(Florantone(登録商標)、供給元:高砂香料工業株式会社、東京、日本)、3,6,8,8-テトラメチルヘキサヒドロ-1H-3a,7-メタノアズレン-5(4H)-オン、1,1,5,5-テトラメチルヘキサヒドロ-2H-2,4a-メタノナフタレン-8(5H)-オン(イソロンギフォラノン)、2,4a,8,8-テトラメチルオクタヒドロシクロプロパ[d]ナフタレン-3(1H)-オン(ツジョプサン-4-オン)、2,2,7,9-テトラメチルスピロ[5.5]ウンデカ-7-エン-1-オン、2-トリデカノン、1,3,3-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、2,2,4-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-オン、2,6,6-トリメチルシクロヘプタン-1-オン、2,2,6-トリメチルシクロヘキサン-1-オン、4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン(ジヒドロ-α-イオノン)、4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン(ジヒドロ-β-イオノン)、2,3,3-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタン-1-オン、2-ウンデカノンおよび5-ウンデカノンからなる群から選択することができ;ここで、下線が付された化合物は、本発明の好ましい実施形態において特に有用なケトンを表す。
【0042】
特定の実施形態において、式(III)の化合物は、1-[2,6-ジメチル-4-(2-メチル-2-プロパニル)フェニル]エタノン、1-(3,5-ジイソプロピルフェニル)エタン-1-オン、1-(4-エチルフェニル)エタン-1-オン、1-(3-エチル-1,1,3,6-テトラメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エタノン、1-(1,1,2,3,3,6-ヘキサメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エタノン(Phantolid(登録商標)、供給元:PFW Aroma Chemicals、バルネフェルト、オランダ)、1-(3,5,5,6,8,8-ヘキサメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフタレニル)エタン-1-オン(Fixolide(登録商標)、供給元:Givaudan SA、ヴェルニエ、スイス)、1-(3-イソプロピル-1,1,2,6-テトラメチル-5-インダニル)エタン-1-オン、1-(4-メトキシフェニル)エタン-1-オン(アセトアニソール、供給元:Givaudan SA、ヴェルニエ、スイス)、1-(2-メトキシフェニル)プロパン-1-オン、3-メチル-1-フェニルブタン-1-オン、1-(4-メチルフェニル)エタン-1-オン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-メチルフェニル)プロパン-1-オン、1-[4-(2-メチル-2-プロパニル)フェニル]エタン-1-オン、1-フェニルブタン-1-オン、1-フェニルヘキサン-1-オン、1-フェニルペンタン-1-オン、1-フェニル-4-ペンテン-1-オン(Lavonax、供給元:International Flavors & Fragrances、ニューヨーク、米国)、1-フェニルエタン-1-オン(アセトフェノン)、1-フェニルプロパン-1-オン(プロピオフェノン)、1-(6-tert-ブチル-1,1-ジメチル-4-インダニル)-1-エタノン(Crysolide、Givaudan SA、ヴェルニエ、スイス)、1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフタレニル)エタン-1-オン(Florantone(登録商標)、供給元:高砂香料工業株式会社、東京、日本)、1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オンおよび2,3,3-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オンからなる群から選択することができ;ここで、下線が付された化合物は、本発明の好ましい実施形態において特に有用なフェニルケトン誘導体を表し、1-フェニルエタン-1-オン(アセトフェノン)が、最も好ましいフェニルケトン誘導体である。
【0043】
本発明はまた、式(I)の少なくとも1つの化合物を含むマイクロカプセルに関する。一実施形態において、式(I)の少なくとも1つの化合物は、コアシェルマイクロカプセルにカプセル化されており、式(I)の少なくとも1つの化合物は、シェルに囲まれたコアに収容されている。一実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、式(I)の化合物を環境から保護する。シェルは、式(I)の少なくとも1つの化合物ならびに/または式(II)および/もしくは(III)の化合物を放出することができる材料でできている。一実施形態において、シェルは、シェルの破壊時におよび/またはシェルを通じた拡散によって式(I)の化合物ならびに/または式(II)および/もしくは(III)の化合物を放出することができる材料でできている。当業者であれば、前記マイクロカプセルの製造方法を熟知している。したがって、式(I)の少なくとも1つの化合物を含むマイクロカプセルは、本発明の1つの主題である。
【0044】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物のカプセル化は、式(I)の化合物のすべてまたは一部が分解することができ、それによって式(II)の個々のカルボニル化合物およびフェニルケトン(III)がカプセル内に放出される環境をカプセル内に提供することができる。好ましい実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、透過性バリアとして作用することができ、それによって、式(II)の個々のカルボニル化合物およびフェニルケトン(III)のカプセルからの漏出が妨げられる。
【0045】
特定の実施形態によれば、マイクロカプセルのシェルは、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート(すなわち、ポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート)、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素とホルムアルデヒドとのポリマー、メラミンとホルムアルデヒドとのポリマー、メラミンと尿素とのポリマー、またはメラミンとグリオキサールとのポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。シェルはまた、ハイブリッドであってよく、すなわち、架橋された少なくとも2種類の無機粒子から構成されるハイブリッドシェルのような有機-無機のものであってよく、またさらにはポリアルコキシシランマクロモノマー組成物の加水分解および縮合反応から生じるシェルであってもよい。
【0046】
特定の実施形態によれば、コアシェルマイクロカプセルは、異なるまたは2つ以上のカプセル化方法を使用することによっても得られる。
【0047】
好ましい実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、各々独立して、アミノプラストシェル、ポリアミドシェル、ポリエステルシェル、ポリ尿素シェルおよびポリウレタンシェル、ならびにそれらの混合物の群から選択することができる。
【0048】
特定の実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、メラミン-ホルムアルデヒドまたは尿素-ホルムアルデヒドまたは架橋メラミンホルムアルデヒドまたはメラミングリオキサールのようなアミノプラストコポリマーを含む。
【0049】
特定の実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、これらに限定されるものではないが例えば、イソシアネート系モノマーと、炭酸グアニジンおよび/またはグアナゾールのようなアミン含有架橋剤とから製造されるポリ尿素系である。あるポリ尿素マイクロカプセルは、少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1つのポリイソシアネートと、アミン(例えば、水溶性グアニジン塩およびグアニジン)からなる群から選択される少なくとも1つの反応物と重合の反応生成物であるポリ尿素壁;コロイド安定剤または乳化剤;およびカプセル化香料を含む。しかし、アミンの使用は省略することができる。
【0050】
特定の実施形態において、コロイド安定剤は、0.1%~0.4%のポリビニルアルコール、0.6%~1%のビニルピロリドンのカチオン性コポリマーおよび四級化ビニルイミダゾールの水溶液を含む(すべてのパーセンテージは、コロイド安定剤の総重量に対する重量で定義される)。特定の実施形態において、乳化剤は、アニオン性または両親媒性のバイオポリマーであり、例えば、アラビアガム、大豆タンパク質、ゼラチン、カゼインナトリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0051】
特定の実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、これらに限定されるものではないが例えば、ポリイソシアネートおよびポリオール、ポリアミド、ポリエステルなどから製造されるポリウレタン系である。
【0052】
特定の実施形態において、マイクロカプセルは、複合コアセルベーションで得られたポリマーシェルを有し、このシェルは、架橋されている場合がある。
【0053】
コアシェルマイクロカプセルの特定の実施形態において、コアシェルマイクロカプセルは、疎水性活性剤、好ましくは式(I)の少なくとも1つの化合物を含む油性コアと、第1の材料および第2の材料を含む複合シェルとを含み、第1の材料および第2の材料は異なり、第1の材料はコアセルベートであり、第2の材料はポリマー材料である。
【0054】
特定の実施形態において、第1の材料と第2の材料との重量比は、50:50~99.9:0.1である。
【0055】
特定の実施形態において、コアセルベートは、好ましくはタンパク質(ゼラチンなど)、ポリペプチドまたは多糖類(キトサンなど)から選択され、最も好ましくはゼラチンである第1の高分子電解質と、好ましくはアルギン酸塩、セルロース誘導体、グアーガム、ペクチン酸塩、カラギーナン、ポリアクリル酸およびメタクリル酸またはキサンタンガム、あるいはアカシアガム(アラビアガム)のような植物性ガムであり、最も好ましくはアラビアガムである第2の高分子電解質とを含む。
【0056】
第1のコアセルベート材料は、グルタルアルデヒド、グリオキサール、ホルムアルデヒド、タンニン酸、またはゲニピンなどの適切な架橋剤を用いて化学的に硬化させることも、トランスグルタミナーゼなどの酵素を用いて酵素的に硬化させることもできる。
【0057】
第2のポリマー材料は、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素とホルムアルデヒドとのポリマー、メラミンとホルムアルデヒドとのポリマー、メラミンと尿素とのポリマー、またはメラミンとグリオキサールとのポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択することができ、好ましくはポリ尿素および/またはポリウレタンである。第2の材料は、マイクロカプセルスラリーの総重量に対して好ましくは3%w/w未満、好ましくは1%w/w未満の量で存在する。
【0058】
コアシェルマイクロカプセルの水性分散液/スラリーの製造は、当業者に周知である。特定の実施形態において、マイクロカプセル壁材料は、任意の適切な樹脂を含むことができ、特にメラミン、グリオキサール、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステルなどを含むことができる。適切な樹脂としては、アルデヒドとアミンとの反応生成物が挙げられ、適切なアルデヒドとしては、ホルムアルデヒドおよびグリオキサールが挙げられる。適切なアミンとしては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、およびそれらの混合物が挙げられる。適切なメラミンとしては、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、イミノメラミン、およびそれらの混合物が挙げられる。適切な尿素としては、ジメチロール尿素、メチル化ジメチロール尿素、尿素レゾルシノール、およびそれらの混合物が挙げられる。製造に適した材料は、以下の企業のうち1社以上から入手可能である:Solutia Inc.(セントルイス、ミズーリ州、米国)、Cytec Industries(West Paterson、ニュージャージー州、米国)、Sigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州、米国)。
【0059】
コアシェルマイクロカプセルの特定の実施形態において、コアシェルマイクロカプセルは、
- 疎水性活性剤、好ましくは式(I)の少なくとも1つの化合物を含む油性コアと、
- 任意に、重合した多官能性モノマーでできた内側シェルと、
- タンパク質を含むバイオポリマーシェルであって、少なくとも1つのタンパク質が架橋されているものと
を含む。
【0060】
特定の実施形態によれば、タンパク質は、乳タンパク質、カゼイン酸塩、例えば、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼイン、乳清タンパク質、加水分解タンパク質、ゼラチン、グルテン、エンドウ豆タンパク質、大豆タンパク質、絹タンパク質、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましいのはカゼインナトリウムである。
【0061】
特定の実施形態によれば、タンパク質は、カゼインナトリウムおよび球状タンパク質を含み、好ましくは、乳清タンパク質、β-ラクトグロブリン、オボアルブミン、ウシ血清アルブミン、植物性タンパク質、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0062】
タンパク質は、好ましくはカゼインナトリウムと乳清タンパク質との混合物である。
【0063】
特定の実施形態によれば、バイオポリマーシェルは、カゼインナトリウムおよび/または乳清タンパク質からなる群から選択される架橋タンパク質を含む。
【0064】
特定の実施形態によれば、マイクロカプセルスラリーは、少なくとも1つのマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセルは、
- 疎水性活性剤、好ましくは式(I)の少なくとも1つの化合物を含む油性コアと、
- 重合した多官能性モノマーでできた内側シェル;好ましくは、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するポリイソシアネートと、
- タンパク質を含むバイオポリマーシェルであって、少なくとも1つのタンパク質が架橋されており;該タンパク質は、好ましくはカゼインナトリウムと球状タンパク質、好ましくは乳清タンパク質とを含む混合物を含むものとする、バイオポリマーシェルと、
- 任意に、少なくとも外側の無機層と
でできている。
【0065】
一実施形態によれば、カゼインナトリウムおよび/または乳清タンパク質は、架橋タンパク質である。
【0066】
カゼインナトリウムと乳清タンパク質との重量比は、好ましくは、0.01~100、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~5である。
【0067】
特定の実施形態において、マイクロカプセルは、以下:
1)香油と、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するポリイソシアネートとを混合して、油相を形成する工程と、
2)アミノプラスト樹脂と任意に安定剤とを水に分散または溶解させて、水相を形成する工程と、
3)油相と水相とを混合して、平均液滴径が1~100ミクロンである水中油型分散液を製造する工程と、
4)硬化工程を実施して、前記マイクロカプセルの壁を形成する工程と、
5)任意に、最終分散液を乾燥させて、乾燥コアシェルマイクロカプセルを得る工程と
を含む方法によって得ることができる、1シェルアミノプラストコアシェルマイクロカプセルである。
【0068】
特定の実施形態において、コアシェルマイクロカプセルは、ホルムアルデヒド不含のカプセルである。ホルムアルデヒド不含のアミノプラストマイクロカプセルスラリーの典型的な製造方法は、
1)以下:
a.メラミン、またはメラミンと2つのNH2官能基を含む少なくとも1つのC1~C4化合物との混合物の形態のポリアミン成分;
b.グリオキサールと、C4-62,2-ジアルコキシエタナールと、任意にグリオキサレートとの混合物の形態のアルデヒド成分であって、前記混合物は、グリオキサール/C4-62,2-ジアルコキシエタナールのモル比が1/1~10/1であるものとする、アルデヒド成分;および
c.プロトン酸触媒;
の反応生成物を含むかまたはこれらの反応により得ることができるオリゴマー組成物を製造する工程と、
2)液滴径が1~600ミクロンであり、かつ以下:
a.油;
b.水媒体:
c.工程1で得られた少なくとも1つのオリゴマー組成物;
d.以下:
i.C4~C12芳香族または脂肪族のジ-またはトリ-イソシアネートおよびそれらのビウレット、トリウレット、トリマー、トリメチロールプロパン付加物およびそれらの混合物;ならびに/または
ii.式:
Q-(オキシラン-2-イルメチル)m
[式中、mは、2または3を表し、Qは、2~6個の窒素および/または酸素原子を任意に含むC2~C6基を表す]のジ-またはトリ-オキシラン化合物;
から選択される少なくとも1つの架橋剤;
e.任意に、2つのNH2官能基を含むC1~C4化合物;
を含む水中油型分散液を製造する工程と、
3)分散液を加熱する工程と、
4)分散液を冷却する工程と
を含む。
【0069】
上記の方法は、国際公開第2013/068255号に詳細に記載されている。
【0070】
コアシェルマイクロカプセルの特定の実施形態において、コアシェルマイクロカプセルは、
- 疎水性活性剤、好ましくは式(I)の少なくとも1つの化合物を含む油性コアと、
- 以下:
・塩化アシル、
・第1のアミノ化合物、
・第2のアミノ化合物
を含むかまたはそれらから得ることができるポリアミドシェルと
を含むポリアミドコアシェルポリアミドマイクロカプセルである。
【0071】
特定の実施形態によれば、ポリアミドコアシェルマイクロカプセルは、
疎水性活性剤、好ましくは式(I)の少なくとも1つの化合物を含む油性コアと、
以下:
・塩化アシルであって、好ましくは、5~98%、好ましくは20~98%、より好ましくは30~85%w/wの量のもの、
・第1のアミノ化合物であって、好ましくは、1%~50%w/w、好ましくは7~40%w/wの量のもの;
・第2のアミノ化合物であって、好ましくは、1%~50%w/w、好ましくは2~25%w/wの量のもの、
・安定剤、好ましくはバイオポリマーであって、好ましくは、0~90%、好ましくは0.1~75%、より好ましくは1~70%の量のもの
を含むかまたはそれらから得ることができるポリアミドシェルと
を含む。
【0072】
特定の実施形態によれば、ポリアミドコアシェルマイクロカプセルは、
- 疎水性活性剤、好ましくは式(I)の少なくとも1つの化合物を含む油性コアと、
- 以下:
・塩化アシル、
・アミノ酸である第1のアミノ化合物であって、好ましくはL-リジン、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-トリプトファンおよび/またはそれらの混合物からなる群から選択されるもの、
・エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、シスタミンおよび/またはそれらの混合物からなる群から選択される第2のアミノ化合物、
・カゼイン、カゼインナトリウム、ウシ血清アルブミン、乳清タンパク質および/またはそれらの混合物からなる群から選択されるバイオポリマー
を含むかまたはそれらから得ることができるポリアミドシェルと
を含む。
【0073】
第1のアミノ化合物は第2のアミノ化合物と異なることがある。
【0074】
典型的には、ポリアミド系マイクロカプセルの製造方法は、
a)少なくとも1つの塩化アシルを疎水性材料、好ましくは香料に溶解させて、油相を形成する工程と、
b)工程a)で得られた油相を、第1のアミノ化合物を含む水相に分散させて、水中油型エマルションを形成する工程と、
c)硬化工程を実施して、スラリー状のポリアミドマイクロカプセルを形成する工程と
を含み、
油相および/または水相に安定剤を添加し、水中油型エマルションの形成前の水相および/または工程b)の後に得られた水中油型エマルションに、少なくとも1つの第2のアミノ化合物を添加する。
【0075】
特定の実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、ポリ尿素系またはポリウレタン系である。ポリ尿素系およびポリウレタン系マイクロカプセルスラリーの製造方法の例は、例えば、国際公開第2007/004166号、欧州特許第2300146号明細書および欧州特許第2579976号明細書に記載されている。典型的には、ポリ尿素系またはポリウレタン系マイクロカプセルスラリーの製造方法は、
a)少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つのポリイソシアネートを油に溶解させて、油相を形成する工程と、
b)乳化剤またはコロイド安定剤の水溶液を製造して、水相を形成する工程と、
c)油相を水相に添加して、平均液滴径が1~500μm、好ましくは5~50μmである水中油型分散液を形成する工程と、
d)界面重合を誘導してスラリー状のマイクロカプセルを形成するのに十分な条件を適用する工程と
を含む。
【0076】
特定の実施形態において、マイクロカプセルは粉末状であることができ、これは特に、マイクロカプセルスラリーを噴霧乾燥のような乾燥工程に供して、マイクロカプセルをそのような形態、すなわち粉末状で提供することによって得ることができる。このような乾燥を行うために当業者に知られている任意の標準的な方法も適用可能であることが理解される。特に、スラリーを、好ましくはポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、天然または加工デンプン、アラビアガム、植物性ガム、ペクチン、キサンタン、アルギン酸塩、カラギーナンまたはセルロース誘導体のような高分子担体材料の存在下で噴霧乾燥して、粉末状のマイクロカプセルを提供することができる。
【0077】
しかし、押出成形、メッキ、噴霧造粒、流動床プロセス、またはさらには国際公開第2017/134179号に開示されているような特定の基準を満たす材料(担体、乾燥剤)を用いた室温での乾燥など、他の乾燥方法を挙げることもできる。
【0078】
式(I)の化合物は、式(III)のフェニルケトン誘導体から2工程のシーケンスで製造することができる。第1の工程では、M. Rueping, V. B. Phapale, Green Chemistry, 2012, Vol. 14, pages 55-57に記載されているように、(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノール(ソルケタール)(n=0)または4-(ヒドロキシメチル)-2-フェニル-1,3-ジオキサン(n=1)を用いて、[Ir(cod)Cl]2の存在下でフェニルケトンをα-アルキル化する。[Ir(cod)Cl]2は、水素移動触媒として作用し、まず第一級アルコール官能基を脱水素してアルデヒドを形成し、このアルデヒドがフェニルケトンとアルドール縮合を生じる。次に、得られたα,β-不飽和ケトンがIr触媒で水素化される。この結果、環状アセタールとして保護された3,4-または3,5-ジオール官能基を有するフェニルケトンが得られる。本方法の第2の工程において、ジオール官能基を保護するカルボニル化合物を、酸触媒によるトランスアセタール化反応によって式R1CHOの所望の活性アルデヒドまたは式(R1)(R2)C=Oのケトンで置換して、式(I)の化合物を形成する。式(I)(n=0)の化合物を得るための別の合成戦略は、式(III)の化合物のカルボニル基に対するアルキル炭素α上にアリル基を導入することである。アルケン基の1,2-ジヒドロキシル化の後に式(II)のカルボニル化合物でのアセタール化を行うことにより、式(I)の化合物が得られる。アリル化は、式(I)のカルボニル化合物のその場で形成されたアリルエノールエーテルのクライゼン転位によって達成することができる。これを、酸触媒の存在下でフェニルケトンのジメチルアセタールとアリルアルコールとの混合物を加熱することにより達成した。カルボニル基をNaBH4でアルコールに還元し、次いで酢酸エステルに変換することで、その後の反応でカルボニル基をマスクした。メタクロロ過安息香酸を用いてアルケンをエポキシ化した。得られたエポキシドをFeCl3の存在下にアセトンで処理することにより、対応するアセトニドに転化させた(S. Saha, S. K. Mandal, S. C. Roy, Tetrahedron Letters, 2008, Vol. 49, pages 5928-5930)。このアセトニドを酸触媒で加水分解すると、式(II)のカルボニル化合物の環状アセタールの製造に使用できる1,2-ジオールが得られた。また、アセトニドと式(II)の活性カルボニル化合物との酸触媒によるトランスアセタール化反応によって、これを1工程で達成した。塩基性条件下でのメタノリシスによるアセテート基の除去により、アルコール官能基が改質され、アルコールからケトンへの酸化により、式(I)の化合物が得られた(n=0)。
【0079】
本発明の式(I)の化合物は、特定の条件下で活性化合物を放出することができる送達系である。
【0080】
「活性化合物」、「活性な揮発性化合物」、「活性な揮発性アルデヒド、ケトンまたはフェニルケトン」または同様の用語は、本明細書において、該用語が指すアルデヒド、ケトンまたはフェニルケトンが、その周囲の環境に有益性または効果をもたらすことができることを意味する。特に、活性化合物は、賦香成分、フレーバリング成分、医薬品成分、美容成分、農薬成分、悪臭中和成分、抗微生物成分および昆虫忌避または誘引性成分からなる群から選択される。したがって、「活性化合物」であるとみなされるためには、その化合物が、賦香成分、フレーバリング成分、医薬品成分、美容成分、農薬成分、悪臭中和成分、抗微生物成分および昆虫忌避または誘引性成分として有用である少なくとも1つの特性を有していなければならない。また、前記活性アルデヒドまたはケトンが本質的に揮発性化合物であることは当業者に明らかである。
【0081】
「賦香成分」という用語は、快楽的効果を付与するために賦香調製物または組成物の活性成分として主要な目的で使用される化合物であると理解される。換言すれば、賦香成分であるとみなされる化合物は、単に匂いを有するだけでなく、組成物の匂いをポジティブにまたは心地よく付与または変更することができるものと香料の当業者に認識されなければならない。賦香成分は、匂いを変更または付与すること以外の付加的な有益性を付与することができ、例えば、持続性、ブルーミング、悪臭中和、美容的効果、抗微生物効果、抗ウイルス効果、微生物安定性、または害虫駆除が挙げられる。「フレーバリング成分」という用語は、試食者のパレットに味覚を与えることができるものと理解される。「悪臭中和成分」とは、悪臭、すなわち人間の鼻にとって心地よくないまたは不快な匂いの知覚を低減することができるものと理解される。「美容成分」という用語は、例えば、保湿効果やスキンケア効果などの美容効果を提供することができるものと理解される。「抗微生物成分」という用語は、微生物を死滅させる、またはその増殖および/もしくは蓄積を低減もしくは防止することができるものと理解され、抗細菌成分、抗生成分、抗真菌成分、抗ウイルス成分および抗寄生虫成分を含む。「昆虫誘引または忌避性」という用語は、昆虫に対して好影響または悪影響を及ぼす化合物であると理解される。昆虫誘引または忌避性成分の例は、参考文献や同様の性質を持つ他の著作物、例えば、A. M. El-Sayed, The Pherobase 2005, http://www.pherobase.netに記載されている。
【0082】
本発明の上記および下記のすべての実施形態によれば、送達系である本発明の式(I)の化合物は、放出される活性な揮発性アルデヒド、ケトンまたはフェニルケトンが、賦香成分、すなわち、賦香アルデヒド、ケトンまたはフェニルケトンである場合に特に有用である。「賦香アルデヒド、ケトンまたはフェニルケトン」とは、香料産業で現在使用されている化合物、すなわち快楽的効果を付与するために賦香調製物または組成物の活性成分として使用される化合物である。換言すれば、賦香性であるとみなされるこのようなアルデヒド、ケトンまたはフェニルケトンは、単に匂いを有するだけでなく、組成物の匂いをポジティブにまたは心地よく付与または変更することができるものと香料の当業者に認識されなければならない。前記賦香アルデヒド、ケトンまたはフェニルケトンは、天然由来であっても合成由来であってもよい。これらの補助成分の多くは、いずれにせよ、S. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版のような参考文献や、同様の性質の他の著作物、および香料の分野における多数の特許文献に挙げられている。
【0083】
以下で、本発明者らは、前記「賦香アルデヒド、ケトンまたはフェニルケトン」を「賦香化合物」とも呼ぶ。
【0084】
実際に、本発明は、活性ケトンまたはフェニルケトンの正確な特性とは無関係に全く同様に実施される。したがって、本明細書において以下で「賦香化合物」を具体的に参照して本発明がさらに説明される場合であっても、以下の実施形態は、他の活性アルデヒドまたはケトンにも適用可能であることが理解される(すなわち、「賦香」という表現を、例えば、「フレーバリング」、「医薬品」、「農薬」、「悪臭中和」、「美容」、「抗細菌」、「抗微生物」、「昆虫誘引性」または「昆虫忌避性」と置き換えることが可能である)。本発明の特定の実施形態によれば、好ましくは活性アルデヒドが使用される。
【0085】
したがって、本発明の別の主題は、賦香化合物を放出するための送達系としての上記の式(I)の化合物の使用;すなわち、持続的な匂い/効果を提供するための賦香成分としての上記で定義された式(I)の化合物の使用である。換言すれば、これは、賦香組成物、該賦香組成物の周囲の空気、表面または着香物品の匂い特性を付与、増強、改善または変更する方法であって、該方法は、上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量を前記組成物もしくは物品に添加するか、または上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量を表面と接触させるか、または上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量で表面を処理することを含む方法に関する。「本発明の化合物の使用」とは、本明細書において、前記化合物を含み、かつ活性成分として香料産業で有利に使用することができる任意の組成物の使用であるとも理解されなければならない。
【0086】
本明細書で使用される「表面」という用語は、式(I)の少なくとも1つの化合物を含むまたは含有する賦香組成物が適用される、使用者の皮膚、毛髪、テキスタイルまたは硬質表面を指すことができる。
【0087】
わかりやすくするため、ある時間後、例えば、数時間後または数日後に所与の化合物が参照化合物よりも多く量の匂いを環境中に放出する場合には、持続的な効果が通常は達成される。
【0088】
実際に賦香成分として有利に使用することができる前記組成物もまた、本発明の主題である。
【0089】
したがって、本発明の別の主題は、
i)賦香成分としての、上記で定義された本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物と、
ii)香料担体および香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分と、
iii)任意に、少なくとも1つの香料アジュバントと
を含む、賦香組成物である。
【0090】
「香料担体」とは、本明細書において、香料の観点から実質的にニュートラルである、すなわち賦香成分の官能特性を著しく変化させない材料を意味する。前記担体は、液体であっても固体であってよい。
【0091】
液体担体としては、非限定的な例としては、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系、または香料に一般的に使用される溶媒を挙げることができる。香料において一般的に使用される溶媒の性質および種類については、すべてを余すことなく詳細に記載できるものではない。しかし、非限定的な例としては、最も一般的に使用されている、ブチレングリコールまたはプロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(ロジン樹脂、Eastmanより入手可能)、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノ、クエン酸トリエチルまたはそれらの混合物などの溶媒、あるいはグリセリンのような天然由来の溶媒や、パーム油、ヒマワリ油、亜麻仁油のような様々な植物油も挙げることができる。香料担体および香料ベースの双方を含む組成物については、先に規定したもの以外の適切な香料担体として、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、商標Isopar(供給元:Exxon Chemical)で知られているようなイソパラフィン、または商標Dowanol(供給元:Dow Chemical Company)で知られているようなグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、または商標Cremophor RH 40(供給元:BASF)で知られているような水添ヒマシ油を挙げることができる。
【0092】
固体担体とは、賦香組成物または賦香組成物の一部の成分が化学的または物理的に結合できる材料を意味する。総じて、このような固体担体は、組成物を安定化させるか、または組成物もしくはいくつかの成分の蒸発速度を制御するために使用される。固体担体は当技術分野で現在使用されており、当業者は所望の効果を得る方法を知っている。しかし、固体担体の非限定的な例としては、吸収性ガムもしくはポリマーまたは無機材料、例えば、多孔質ポリマー、シクロデキストリン、デキストリン、マルトデキストリン、木質系材料、有機もしくは無機ゲル、クレイ、石膏、タルクまたはゼオライトを挙げることができる。
【0093】
固体担体の他の非限定的な例としては、カプセル化材料を挙げることができる。そのような材料の例には、壁形成性および可塑化材料、例えば、グルコースシロップ、天然もしくは加工デンプン、ヒドロコロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチン、植物性ガム、例えば、アカシアガム(アラビアガム)、尿素、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、炭水化物、糖類、例えば、スクロース、単糖類、二糖類、三糖類および多糖類、および誘導体、例えば、キトサン、デンプン、セルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ポリオール/糖アルコール、例えば、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトールおよびイソマルト、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリジン(PVP)、ポリビニルアルコール、アクリルアミド、アクリレート、ポリアクリル酸および関連構造、無水マレイン酸コポリマー、アミン官能性ポリマー、ビニルエーテル、スチレン、ポリスチレンスルホネート、ビニル酸、エチレングリコール-プロピレングリコールブロックコポリマー、ペクチン、キサンタン、アルギン酸塩、カラギーナン、クエン酸または任意の水溶性固体酸、脂肪アルコールまたは脂肪酸およびそれらの混合物、あるいはさらにはH. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996のような参考文献に挙げられている材料が含まれ得る。カプセル化は、当業者には周知のプロセスであり、例えば、噴霧乾燥、凝集またはさらには押出成形のような技術を使用して実施することができ;またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化からなる。
【0094】
固体担体の非限定的な例としては、特に、任意に高分子安定剤またはカチオン性コポリマーの存在下で重合、界面重合、コアセルベーション、またはそれらすべてによって誘導される相分離プロセスのような技術を用いた(前記技術はすべて先行技術に記載されている)アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素もしくはポリウレタンタイプの樹脂またはそれらの混合物(前記樹脂はすべて当業者に周知である)を含むコアシェルカプセルを挙げることができる。
【0095】
樹脂は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒドおよびそれらの混合物)と、尿素、ベンゾグアナミン、グリコウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾールなどのアミンおよびそれらの混合物との重縮合によって製造することができる。あるいはUrac(登録商標)(供給元:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(供給元:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)またはLuracoll(登録商標)(供給元:BASF)の商標で市販されているような、予め形成された樹脂であるアルキロール化ポリアミンを使用することができる。
【0096】
他の樹脂は、グリセリンのようなポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、またはキシリレンジイソシアネートの三量体のトリメチロールプロパン付加物(Takenate(登録商標)の商品名で知られている、供給元:三井化学株式会社)のようなポリイソシアネートとの重縮合によって製造されるものであり、ポリイソシアネートのうち、キシリレンジイソシアネートの三量体のトリメチロールプロパン付加物およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットが好ましい。
【0097】
アミノ樹脂、すなわちメラミン系樹脂とアルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関連する影響力のあるいくつかの文献には、K. Dietrichらによって公開されたActa Polymerica, 1989, Vol. 40, pages 243, 325および683、ならびに1990, Vol. 41, page 91などの論文が含まれる。そのような論文には、先行技術の方法にしたがったそのようなコアシェルマイクロカプセルの製造に影響を及ぼす様々なパラメータが既に記載されており、これらは、特許文献にもさらに詳述および例示されている。Wiggins Teape Group Limitedによる米国特許第4396670号明細書は、後者の適切な初期の例である。それ以降、多くの他の著者がこの分野の文献を充実させてきており、発表されたすべての進展結果を本明細書で網羅することは不可能であるもの、カプセル化技術における一般的な知識は非常に重要である。そのようなマイクロカプセルの適切な使用を開示しているより最近の関連性のある刊行物は、例えば、K. BruyninckxおよびM. Dusselierの論文であるACS Sustainable Chemistry & Engineering, 2019, Vol. 7, pages 8041-8054である。
【0098】
本明細書で意味するところの「香料ベース」とは、少なくとも1つの賦香補助成分を含む組成物である。
【0099】
賦香補助成分は、本発明による化合物ではない。さらに、「賦香補助成分」という用語は、上記で定義された賦香成分を意味する。
【0100】
ベース中に存在する賦香補助成分の性質および種類について、本明細書におけるより詳細な説明は保証されないが、いずれにしても網羅できるものではなく、当業者は、自身の常識に基づいて、意図する使用または用途および所望の官能効果に応じてそれらを選択することができる。一般論として、これらの賦香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、チオール、テルペン炭化水素、含窒素または含硫複素環式化合物および精油のような様々な化学的クラスに属し、賦香補助成分は、天然由来であっても合成由来であってもよい。特に、香料配合物において一般的に使用される、以下のような賦香補助成分を挙げることができる:
- アルデハイド調成分:デカナール、ドデカナール、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、オクタナール、ノナナールおよび/またはノネナール;
- アロマティックハーバル調成分:ユーカリ油、カンフル、ユーカリプトール、5-メチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン-4-オン、1-メトキシ-3-ヘキサンチオール、2-エチル-4,4-ジメチル-1,3-オキサチアン、2,2,7/8,9/10-テトラメチルスピロ[5.5]ウンデカ-8-エン-1-オン、メントールおよび/またはα-ピネン;
- バルサミック調成分:エチルバニリンおよび/またはバニリン;
- シトラス調成分:ジヒドロミルセノール、シトラール、オレンジ油、リナリルアセテート、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、1-p-メンテン-8-イルアセテートおよび/または1,4(8)-p-メンタジエン;
- フローラル調成分:ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、シトロネロール、フェニルエタノール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、酢酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、β-イオノン、(E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、(1E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-1-ペンテン-3-オン、(2E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-[2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、2,5-ジメチル-2-インダンメタノール、2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシレート、3-(4,4-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナール、サリチル酸ヘキシル、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、酢酸ベルジル、ゲラニオール、p-メンタ-1-エン-8-オール、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、サリチル酸アミル、高シスジヒドロジャスモン酸メチル、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベルジルプロプリオネート、酢酸ゲラニル、テトラヒドロリナロール、シス-7-p-メンタノール、プロピル(S)-2-(1,1-ジメチルプロポキシ)プロパノエート、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセテート、4/3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、8-デセン-5-オリド、4-フェニル-2-ブタノン、酢酸イソノニル、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、イソ酪酸ベルジルおよび/またはメチルイオノン異性体の混合物;
- フルーティ調成分:γ-ウンデカラクトン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-メチル-4-プロピル-1,3-オキサチアン、4-デカノライド、エチル2-メチルペンタノエート、酢酸ヘキシル、エチル2-メチルブタノエート、γ-ノナラクトン、ヘプタン酸アリル、2-フェノキシエチルイソブチレート、エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテート、3-(3,3/1,1-ジメチル-5-インダニル)プロパナール、ジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、3-メチル-2-ヘキセン-1-イルアセテート、1-[3,3-ジメチルシクロヘキシル]エチル[3-エチル-2-オキシラニル]アセテートおよび/またはジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート;
- グリーン調成分:2-メチル-3-ヘキサノン(E)-オキシム、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、酢酸スチラリル、アリル(2-メチルブトキシ)アセテート、4-メチル-3-デセン-5-オール、ジフェニルエーテル、(Z)-3-ヘキセン-1-オールおよび/または1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;
- ムスク調成分:1,4-ジオキサ-5,17-シクロヘプタデカンジオン、(Z)-4-シクロペンタデセン-1-オン、3-メチルシクロペンタデカノン、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン、1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(9Z)-9-シクロヘプタデセン-1-オン、2-{1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-オキソエチルプロピオネート、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、4,6,7,8,8-ヘキサメチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[g]イソクロメン、(1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル]エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、オキサシクロヘキサデカン-2-オンおよび/または(1S,1’R)-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
- ウッディ調成分:1-[(1RS,6SR)-2,2,6-トリメチルシクロヘキシル]-3-ヘキサノール、3,3-ジメチル-5-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-4-ペンテン-2-オール、3,4’-ジメチルスピロ[オキシラン-2,9’-トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ[4]エン、(1-エトキシエトキシ)シクロドデカン、2,2,9,11-テトラメチルスピロ[5.5]ウンデカ-8-エン-1-イルアセテート、1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、パチョリ油、パチョリ油のテルペンフラクション、Clearwood(登録商標)、(1’R,E)-2-エチル-4-(2’,2’,3’-トリメチル-3’-シクロペンテン-1’-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、メチルセドリルケトン、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オンおよび/または酢酸イソボルニル;
- 他の成分(例えば、アンバー調、パウダリースパイシー調またはウォータリー調):ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランおよびその立体異性体のいずれか、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、オイゲノール、シンナムアルデヒド、チョウジ油、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、2,5,5-トリメチル-1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2-ナフタレノール、1-フェニルビニルアセテート、6-メチル-7-オキサ-1-チア-4-アザスピロ[4.4]ノナンおよび/または3-(3-イソプロピル-1-フェニル)ブタナール。
【0101】
本発明による組成物は、上記の賦香補助成分に限定されず、これらの補助成分の他の多くはいずれにせよ、S. Arctanderによる文献Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはそのより新しいバージョンのような参照文献または同様の性質の他の著作物および香料分野における豊富な特許文献に列挙されている。また、前記補助成分は、プロパフュームまたはプロフレグランスとしても知られる様々なタイプの賦香化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことが理解される。適切なプロパフュームの非限定的な例としては、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-ブタノン、3-(ドデシルスルホニル)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン、(3-メルカプトプロピル)(メチル)ジメトキシシランの線状ポリシロキサンコポリマー、3-(ドデシルチオ)-1-(6-エチル-2,6-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン、2-(ドデシルチオ)オクタン-4-オン、2-(ドデシルスルホニル)オクタン-4-オン、4-オキソオクタン-2-イルドデカノエート、2-フェニルエチルオキソ(フェニル)アセテート、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イルオキソ(フェニル)アセテート、(Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルオキソ(フェニル)アセテート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-イルヘキサデカノエート、ビス(3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イル)スクシネート、(2E,6Z)-2,6-ノナジエニルヘキサデカノエート、(2E,6Z)-2,6-ノナジエン-1-イルテトラデカノエート、(2E,6Z)-ノナ-2,6-ジエン-1-イルドデカノエート、(2E,6Z)-ノナ-2,6-ジエン-1-イルヘキサデカノエート、(2-((2-メチルウンデカ-1-エン-1-イル)オキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(3-メチル-4-フェネトキシブタ-3-エン-1-イル)ベンゼン、(3-メチル-4-フェネトキシブタ-3-エン-1-イル)ベンゼン、1-(((Z)-ヘキサ-3-エン-1-イル)オキシ)-2-メチルウンデカ-1-エン、(2-((2-メチルウンデカ-1-エン-1-イル)オキシ)エトキシ)ベンゼン、2-メチル-1-(オクタン-3-イルオキシ)ウンデカ-1-エン、1-メトキシ-4-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、1-メチル-4-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、(2-フェネトキシビニル)ベンゼン、(2-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)エチル)ベンゼン、4-アリル-2-メトキシ-1-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)ベンゼン、(2-((2-ヘプチルシクロペンチリデン)メトキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、(2-((2-メチル-4-(2、6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-1-エン-1-イル)オキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(2-メチル-3-フェネトキシアリル)ベンゼン、(2-((2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシリデン)メトキシ)エチル)ベンゼン、1-イソプロピル-4-メチル-2-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)ベンゼン、2-メトキシ-1-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)-4-プロピルベンゼン、3-メトキシ-4-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)ベンズアルデヒド、1-イソプロピル-2-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)-4-メチルベンゼン、4-((2-(ヘキシルオキシ)-2-フェニルビニル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド3-メチル-5-フェニルペンチルパルミテート、3-(ドデシルチオ)-2-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン、3,5-ビス(1-(4-イソプロピルフェニル)プロパン-2-イル)ジヒドロ-1H,3H,5H-オキサゾロ[3,4-c]オキサゾール、3,5-ジ(ウンデカン-2-イル)ジヒドロ-1H,3H,5H-オキサゾロ[3,4-c]オキサゾール、3,5-ビス(2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ジヒドロ-1H,3H,5H-オキサゾロ[3,4-c]オキサゾール、エチル2-アセチル-4-メチルトリデカ-2-エノエート、デカ-9-エン-1-イル(E)-3-(2-ヒドロキシフェニル)アクリレート、4-(ドデシルチオ)-4-メチルペンタン-2-オン、メチルまたはエチルN,S-ビス(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキシル-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイネート、1-ブトキシ-3-((1E,4Z)-ヘプタ-1,4-ジエン-1-イル)ベンゼン、2-メトキシ-4-((1E,4Z)-ヘプタ-1,4-ジエン-1-イル)フェノール、2-エトキシ-4-((1E,4Z)-ヘプタ-1,4-ジエン-1-イル)フェノールまたはそれらの混合物を挙げることができる。
【0102】
特定の実施形態において、本発明による賦香組成物は、香料アジュバントを含む。
【0103】
「香料アジュバント」という用語は、色、特定の耐光性、化学的安定性などのようなさらなる付加的な有益性を付与し得る成分を意味する。賦香ベースに一般的に使用されるアジュバントの性質および種類については、すべてを余すことなく詳細に記載できるものではないが、こうした成分は当業者に周知であることを述べなければならない。しかし、特定の非限定的な例として以下のものを挙げることができる:粘性剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤および/またはレオロジー調整剤)、安定剤(例えば、防腐剤、酸化防止剤、熱/光およびまたは緩衝剤またはキレート剤、例えば、BHT)、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、防腐剤(例えば、抗細菌剤または抗微生物剤または抗真菌剤または抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、固定剤、昆虫忌避剤、軟膏、ビタミン類およびそれらの混合物。「モジュレーター」とも呼ばれる「固定剤」とは、本明細書において、該モジュレーターを組み込んだ組成物の匂い、特に蒸発速度および強度が、該モジュレーターの非存在下での同じ知覚と比較して、その観察者または使用者によって経時的に知覚され得る態様に影響を及ぼす能力を有する薬剤であると理解される。特に、モジュレーターは、そのフレグランスが知覚される時間を延長することを可能にする。適切なモジュレーターの非限定的な例としては、メチルグルコシドポリオール;エチルグルコシドポリオール;プロピルグルコシドポリオール;イソセチルアルコール;PPG-3ミリスチルエーテル;ネオペンチルグリコールジエチルヘキサノエート;ラウリン酸スクロース;ジラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、トリステアリン酸スクロース、ヒアルロン酸ジサッカリドナトリウム塩、ヒアルロン酸ナトリウム、プロピレングリコールプロピルエーテル;ジセチルエーテル;ポリグリセリン-4エーテル;イソセテス-5;イソセテス-7、イソセテス-10;イソセテス-12;イソセテス-15;イソセテス-20;イソセテス-25;イソセテス-30;ラウロアンホジプロピオン酸二ナトリウム;ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル;およびそれらの混合物;ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール;エチルヘキサン酸セテアリル;パンテノールエチルエーテル、DL-パンテノール、n-ノナン酸n-ヘキサデシル、n-ノナン酸ノクタデシル、シクロデキストリン、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。賦香組成物の総重量に対して多くとも20重量%のモジュレーターを、着香消費者製品に組み込むことができる。
【0104】
当業者は、単に当技術分野の標準的な知識を適用することによってのみならず試行錯誤法によっても賦香組成物の上記の成分を混合することによって所望の効果を得るための最適な配合物を設計することが完全に可能であることが理解される。
【0105】
式(I)の少なくとも1つの化合物と少なくとも1つの香料担体とからなる本発明の組成物は、本発明の特定の一実施形態から構成されているとともに、式(I)の少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの香料担体と、少なくとも1つの香料ベースと、任意に少なくとも1つの香料アジュバントとを含む賦香組成物からも構成されている。
【0106】
特定の実施形態によれば、上述の組成物は、式(I)の1つ以上の化合物を含み、調香師が本発明の様々な化合物の匂い調性を有するアコードまたは香料を製造することを可能にし、したがって創造目的での新規の構成要素が生み出される。
【0107】
明確にするために述べると、出発物質、中間体または最終生成物として本発明の化合物が含まれていると考えられる化学合成から直接的に得られる混合物、例えば、適切な精製を行っていない反応媒体は、この混合物が本発明の化合物を香料に適した形態で提供しない限り、本発明による賦香組成物とみなすことはできないことも理解される。したがって、特に明記しない限り、未精製の反応混合物は、総じて本発明から除外される。
【0108】
本発明の化合物は、式(I)の化合物が加えられる消費者製品の匂いをポジティブに付与または変更するために、最新の香料の分野、すなわちファインパフュームまたは機能性香料のすべての分野において有利に使用することもできる。したがって本発明の別の主題は、上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物を賦香成分として含む、着香消費者製品にも関する。
【0109】
本発明の化合物は、そのままで添加することも、本発明の賦香組成物の一部として添加することもできる。
【0110】
明確にするために言及しなければならないが、「着香消費者製品」という用語は、消費者製品であって、該消費者製品が適用される表面(例えば、皮膚、毛髪、テキスタイルまたは硬質表面)に少なくとも心地良い賦香効果を提供することが期待されるものを意味する。換言すれば、本発明による着香消費者製品は、本発明の化合物または賦香組成物と、任意に、例えば、コンディショナー、洗剤またはエアフレッシュナーといった所望の消費者製品に応じた追加の有益剤と、本発明による賦香組成物の嗅覚的に有効な量とを含む着香消費者製品である。明確にするために述べると、着香消費者製品は、非食用製品である。
【0111】
着香消費者製品の成分の性質および種類について、本明細書におけるより詳細な説明は保証されないが、いずれにしても網羅できるものではなく、当業者は、自身の常識に基づき、また該製品の性質および所望の効果に応じてそれらを選択することができる。
【0112】
特定の実施形態において、着香消費者製品は、香水、布地ケア製品、ボディケア製品、化粧品、スキンケア製品、エアケア製品、またはホームケア製品である。
【0113】
適切な着香消費者製品の非限定的な例としては、香水、例えば、ファインパフューム、スプラッシュパフュームもしくはオードパフューム、コロン、シェーブローションもしくはアフターシェーブローション;布地ケア製品、例えば、液体洗剤もしくは固形洗剤であって、任意にポッドまたはタブレットの形態であるもの、布地用柔軟剤、液体もしくは固体のセントブースター、乾燥機用シート、布地用リフレッシュ剤、アイロニングウォーター、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品;ボディケア製品、例えば、ヘアケア製品(例えば、シャンプー、リーブオンヘアコンディショナーもしくはリンスオフヘアコンディショナー、カラーリング用調製物もしくはヘアスプレー、カラーケア製品、整髪用製品、デンタルケア製品)、殺菌剤、インティメイトケア製品;化粧品(例えば、スキンクリームもしくはスキンローション、バニシングクリームもしくはデオドラントもしくは制汗剤(例えば、スプレーもしくはロールオン)、脱毛剤、タンニング用製品もしくは日焼け用製品もしくは日焼け後用製品、ネイル用製品、皮膚洗浄剤、化粧品);またはスキンケア製品(例えば、石鹸、シャワームース、シャワーオイルもしくはシャワージェルまたはバスムース、バスオイルもしくはバスジェル、または衛生製品もしくはフット/ハンドケア製品);エアケア製品、例えば、家庭内空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴もしくは車)および/もしくは公共の空間(ホール、ホテル、モールなど)において使用することができるエアフレッシュナーもしくは「すぐに使用可能な」粉末状エアフレッシュナー;またはホームケア製品、例えば、カビ除去剤、家具ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面用(例えば、床用、浴室用、衛生用もしくは窓拭き用)洗剤;皮革ケア製品;カーケア製品、例えば、車用エアフレッシュナー、ポリッシュ、ワックスもしくはプラスチッククリーナーが挙げられる。特に、着香消費者製品は、液体洗剤もしくは固形洗剤、布地用柔軟剤、布地用リフレッシュ剤、アイロニングウォーター、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品、殺菌剤、衛生製品、エアフレッシュナー、「すぐに使用可能な」粉末状エアフレッシュナー、カビ除去剤、家具ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面用洗剤、皮革ケア製品、またはカーケア製品であってよい。
【0114】
特定の実施形態によれば、本発明の着香消費者製品は、パーソナルケア、ホームケアまたはファブリックケア消費者製品、特にシャワージェル、シャンプー、石鹸、布地用洗剤または柔軟剤および万能クリーナーにおいて一般的な成分を含むパーソナルケア、ホームケアまたはファブリックケア消費者製品の形態である。着香消費者製品の主な機能成分は、衣類、カーテン生地、カーペット、家具生地などの様々な性質の布地および/またはテキスタイル、あるいはその他の家庭の表面、皮膚または毛髪を洗浄および/または柔らかくすることができる界面活性剤および/または柔軟剤成分であり、通常、多量の水または水性溶媒中で使用される。したがって、これらは、水の量が多くても20%である石鹸または固形洗剤を除き、水の量が一般的に着香消費者製品の50~99重量%を占める配合物である。
【0115】
そのような布地用洗浄および/または柔軟剤配合物について、本明細書におけるより詳細な説明は保証されないが、現在の液体配合物の多くの説明は、クリーナー/布地用柔軟剤の特許および他の関連文献、例えば、Louis Ho Tan Taiによる教科書である“Detergents et Produits de Soins Corporelsの特に第1~7章, Dunod, Paris, 1999、または液体柔軟剤および万能クリーナー配合物の技術に関連する他の類似および/またはより最近の教科書に見出すことができる。国際公開第2010/105873号も、そのような液体製品の香料以外の典型的な現行の成分について、特に第9頁から第21頁に記載されている限りにおいて、例として引用される。当然のことながら、液体クリーナーおよび/または布地用柔軟剤配合物の他の多くの例が文献に記載されている。任意のそのような液体配合物、すなわち布地用液体クリーナーまたはコンディショナーおよび/または万能クリーナーを、本明細書に記載の組成物に使用することができる。本発明の化合物を組み込むことができる布地用洗剤または柔軟剤組成物の他の例は、国際公開第97/34986号または米国特許第4,137,180号明細書および同第5,236,615号明細書または欧州特許第799885号明細書に記載されている。使用することができる他の典型的な洗剤および柔軟組成物は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. 20, Wiley-VCH, Weinheim, p.355-540 (2012);Flick, Advanced Cleaning Product Formulations, Noye Publication, Park Ridge, New Jersey (1989);Showell, Surfactant Science Series, Vol. 71: Powdered Detergents, Marcel Dekker, New York (1988);Proceedings of the World Conference on Detergents (4th, 1998, Montreux, Switzerland), AOCS printなどの著作物に記載されている。
【0116】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の着香消費者製品は、式(I)の少なくとも1つの化合物および布地用柔軟剤活性ベースを着香消費者製品の総重量に対して85~100重量%の量で含む液体布地用柔軟剤であってよい。布地用柔軟剤活性ベースの主成分は、水または水性溶媒である。布地用柔軟剤活性ベースは、ジアルキル第四級アンモニウム塩、ジアルキルエステル第四級アンモニウム塩、ハンブルグエステルクワット、トリエタノールアミンクワット、シリコーンおよびそれらの混合物を含むことができる。任意に、組成物の成分a)は、液体ベースの総重量に対して0.05~1重量%の量の粘度調整剤をさらに含むことができ;これは、好ましくは塩化カルシウムからなる群から選択される。
【0117】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の消費者製品は、式(I)の少なくとも1つの化合物および万能クリーナー活性ベースを消費者製品の総重量に対して85~100重量%の量で含む万能クリーナーである。万能クリーナー活性ベースの主成分は、水または水性溶媒である。万能活性ベースは、0~4%、好ましくは1~2%の量の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、0~8%、好ましくは2~4%の量の非イオン性界面活性剤、および0.1~0.5%の量のクエン酸などの酸を含むことができる。
【0118】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の消費者製品は、式(I)の少なくとも1つの化合物および液体洗剤活性ベースを消費者製品の総重量に対して85~100重量%の量で含む液体洗剤である。液体洗剤活性ベースの主成分は、水または水性溶媒である。液体洗剤活性ベースは、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、第二級アルキルスルホン酸塩(SAS)、第一級アルコール硫酸塩(PAS)、ラウリルエーテル硫酸塩(LES)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、メチルエステルスルホン酸塩(MES)などのアニオン性界面活性剤;アルキルアミン、アルカノールアミド、脂肪アルコールポリ(エチレングリコール)エーテル、脂肪アルコールエトキシレート(FAE)、エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)コポリマー、アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、アルキルポリグルコサミドなどの非イオン性界面活性剤、またはそれらの混合物を含むことができる。
【0119】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の消費者製品は、式(I)の少なくとも1つの化合物および固形洗剤活性ベースを消費者製品の総重量に対して85~100重量%の量で含む固形洗剤である。固形洗剤活性ベースは、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含むことができる。固形洗剤活性ベース中の界面活性剤は、好ましくは、直鎖アルケンベンゼンスルホン酸塩(LABS)、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、α-オレフィンスルホン酸塩(AOS)、スルホン酸メチルエステル、アルキルポリグルコシド(APG)、第一級アルコールエトキシレート、特にラウリルアルコールエトキシレート(LAE)、第一級アルコールスルホネート、石鹸およびそれらの混合物からなる群から選択される。固形洗剤活性ベースは、TAED(テトラアセチルエチレンジアミン)のような漂白剤;緩衝剤;ゼオライト、炭酸ナトリウムまたはそれらの混合物のようなビルダー;汚れ放出ポリマーまたは汚れ懸濁ポリマー;セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼまたはそれらの混合物のような粒状酵素粒子;腐食防止剤;消泡剤;起泡抑制剤;染料;ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウムまたはそれらの混合物のような充填剤;過炭酸ナトリウムまたは過ホウ酸ナトリウムのような過酸化水素源;およびそれらの混合物からなる群から選択される、粉末洗剤消費者製品に一般的に使用されるさらなる成分を含むことができる。
【0120】
本発明による賦香組成物を前述の種々の物品または組成物に組み込むことのできる割合は、広範囲の値の範囲内で変化する。これらの値は、着香すべき物品または組成物の性質および所望の嗅覚効果に依存するとともに、本発明による化合物を、当技術分野で一般的に使用されている賦香補助成分、溶媒または添加剤と混合する場合には、所与の組成物中の補助成分の性質にも依存する。
【0121】
例えば、賦香組成物の場合には、本発明の化合物の典型的な濃度は、本発明の化合物を組み込む組成物の重量に対して0.001~10重量%以上のオーダーである。着香消費者製品の場合には、本発明の化合物の典型的な濃度は、本発明の化合物を組み込む消費者製品の重量に対して0.0001~1重量%以上のオーダーである。
【0122】
本発明の別の態様は、消費者製品のフレグランスの印象および/またはフレグランスの強度を改善、増強、付与および/または変更するための、本発明による賦香組成物の使用に関する。
【0123】
本発明の別の態様は、消費者製品のフレグランスの印象および/またはフレグランスの強度を改善、増強、付与および/または変更するための方法であって、本発明による賦香組成物を消費者製品に添加する工程を含む方法に関する。
【0124】
本発明の別の態様は、前駆体化合物から、以下:
a)式
【化7】
[式中、
R
1は、C
1-18炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子および/または1~2個の窒素原子および/または1個の硫黄原子を含むものを表し;R
2は、水素原子またはR
1基を表すか;あるいはR
1およびR
2は、一緒になった場合、C
5-16シクロアルキル基、C
5-16シクロアルケニル基、C
4-14ヘテロシクロアルキル基またはC
4-14ヘテロシクロアルケニル基を形成し、前記基はそれぞれ任意に、C
1-15アルキル基、C
2-15アルケニル基、C
1-15アルコキシ基、C
3-15シクロアルキル基、C
5-15シクロアルケニル基、C
6-10アリール基および/またはC
6-10アリールオキシ基のうちの1つ以上で置換されており、前記基はそれぞれ任意に、C
1-8アルキル基、C
1-8アルコキシ基、カルボン酸基および/またはC
1-4カルボン酸エステル基のうちの1つ以上で置換されており、ここで、ヘテロ原子は、1つ以上の酸素原子を表す]のカルボニル化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態と、
b)式
【化8】
[式中、
R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子、C
1-6アルコキシ基またはC
1-12アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-6アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものを表すか、あるいは隣接する2つのR
3基は、一緒になった場合、C
3-8直鎖状アルカンジイル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-3アルキル基および/またはC
1-3アルコキシ基のうちの1つ以上で置換されたものであり;
R
5は、水素原子またはC
1-6炭化水素基を表すか、あるいはR
4およびR
5は、一緒になった場合、C
1-4直鎖状、分岐状または環状アルカンジイル基であって、任意に酸素原子を1つ含むものを表し;R
6は、水素原子またはメチル基を表す]のケトンのいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態と
からなる群から選択される化合物を、該化合物が加水分解される環境に放出する方法であって、
前駆体化合物は、式(I)
【化9】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義されたものと同じ意味を有し;nは、0または1であり、Xは、酸素原子またはNR
9基であり、R
9は、水素原子またはメチル基であり、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素原子またはC
1~C
6アルキル基を表す]の化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態であり、
この放出を、式(I)の前駆体化合物の光への曝露により行う、方法である。
【0125】
さらなる態様において、本発明はまた、以下:
a)式
【化10】
[式中、
R
1は、C
1-18炭化水素基であって、任意に1~3個の酸素原子および/または1~2個の窒素原子および/または1個の硫黄原子を含むものを表し;R
2は、水素原子またはR
1基を表すか;あるいはR
1およびR
2は、一緒になった場合、C
5-16シクロアルキル基、C
5-16シクロアルケニル基、C
4-14ヘテロシクロアルキル基またはC
4-14ヘテロシクロアルケニル基を形成し、前記基はそれぞれ任意に、C
1-15アルキル基、C
2-15アルケニル基、C
1-15アルコキシ基、C
3-15シクロアルキル基、C
5-15シクロアルケニル基、C
6-10アリール基および/またはC
6-10アリールオキシ基のうちの1つ以上で置換されており、前記基はそれぞれ任意に、C
1-8アルキル基、C
1-8アルコキシ基、カルボン酸基および/またはC
1-4カルボン酸エステル基のうちの1つ以上で置換されており、ここで、ヘテロ原子は、1つ以上の酸素原子を表す]のカルボニル化合物と、
b)式
【化11】
[式中、
R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子、C
1-6アルコキシ基またはC
1-12アルキル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-6アルコキシ基またはオキソ基で置換されたものを表すか、あるいは隣接する2つのR
3基は、一緒になった場合、C
3-8直鎖状アルカンジイル基であって、任意にヒドロキシ基、C
1-3アルキル基および/またはC
1-3アルコキシ基のうちの1つ以上で置換されたものであり;
R
5は、水素原子またはC
1-6炭化水素基を表すか、あるいはR
4およびR
5は、一緒になった場合、C
1-4直鎖状、分岐状または環状アルカンジイル基であって、任意に酸素原子を1つ含むものを表し;R
6は、水素原子またはメチル基を表す]のケトンと
からなる群から選択される化合物を、該化合物が加水分解される環境に放出するための前駆体化合物の使用であって、
前駆体化合物は、式(I)
【化12】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、上記で定義されたものと同じ意味を有し;nは、0または1であり、Xは、酸素原子またはNR
9基であり、R
9は、水素原子またはメチル基であり、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素原子またはC
1~C
6アルキル基を表す]の化合物のいずれか1つの立体異性体またはそれらの混合物の形態であり、
この放出を、式(I)の前駆体化合物の光への曝露により行う、使用である。
【0126】
本発明の別の態様は、表面または賦香組成物の周囲の空気における上記で定義された式(II)の少なくとも1つのカルボニル化合物および式(III)の少なくとも1つのケトンの特徴的なフレグランスの拡散効果を強化または延長する方法であって、式(II)の少なくとも1つのケトンまたはアルデヒドおよび式(III)の少なくとも1つのケトンの経時的放出を可能にし得る条件下で、表面または空気を、上記で定義された少なくとも1つの化合物(I)で、または少なくとも1つの化合物(I)を含む組成物もしくは物品で処理する、方法である。
【0127】
さらなる態様において、本発明は、表面上での上記で定義された式(II)の少なくとも1つのカルボニル化合物および/または式(III)の少なくとも1つのフェニルケトンの特徴的なフレグランスの拡散効果および/または知覚を強化または延長するための、上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の使用であって、式(II)の少なくとも1つのカルボニル化合物および/または式(III)の少なくとも1つのフェニルケトンの経時的放出を可能にし得る条件下で、表面を、上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物で、または式(I)の少なくとも1つの化合物を含む組成物もしくは物品で処理する、使用に関する。
【0128】
さらなる態様において、本発明は、賦香組成物、該賦香組成物の周囲の空気、表面または着香物品の匂い特性を付与、増強、改善または変更するための、上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の使用であって、上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量を組成物もしくは物品に添加するか、または上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量を表面と接触させるか、または上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量で表面を処理することを含む、使用に関する。
【0129】
実施例
以下、本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。略称は、当技術分野における通常の意味を有し、温度は摂氏(℃)で示す。NMRスペクトルデータは、CDCl3中でBRUKER AMX 500スペクトロメーターにて、特に断りのない限り1Hについては500MHzで、13Cについては125.8MHzで記録し、化学シフトδは、標準物質としてのSi(CH3)4を基準としてppm単位で示し、結合定数Jは、Hz単位(br.=ブロードピーク)で示した。反応は、標準的なガラス器具を用いてN2下で行った。特に断りのない限り、市販の試薬および溶媒を、さらに精製することなく使用した。
【0130】
いくつかの化合物について特定のコンフォメーションまたは配置が示されているが、これは、これらの化合物の使用を記載された異性体に限定することを意味するものではない。本発明によれば、可能なすべてのコンフォメーションまたは配置の異性体が同様の効果を有することが期待される。
【0131】
本発明の化合物を製造し、本発明の方法を実施するための典型的な様式を、本明細書において以下の実施例で報告する。
【0132】
実施例1
式(I)による環状アセタールまたはケタールの製造
(a)(±)シス-1-フェニル-3-(2-フェニル-1,3-ジオキサン-4-イル)プロパン-1-オン(化合物1)の合成
トルエン(2.5mL)、(±)-シス-4-(ヒドロキシメチル)-2-フェニル-1,3-ジオキサン(2.5g、12.9mmol,B. Herradon, S. Valverde, Tetrahedron Asymmetry, 1994, Vol. 5, pages 1479-1500)、アセトフェノン(3.1g、25.8mmol)、[Ir(cod)Cl]2(0.173g、0.26mmol)、トリフェニルホスフィン(0.20g、0.77mmol)、および水酸化リチウム一水和物(0.22g、5.2mmol)を、還流冷却器および窒素バブラーを備えた25mL丸底フラスコに加えた。暗赤色の溶液を、110℃(オイルバス)で23時間加熱した。この混合物をジエチルエーテル(200mL)で希釈し、水(3×150mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を真空(4.7Pa)下で加熱(100~120℃)して過剰のアセトフェノンを除去し、次いでフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/酢酸エチル(EtOAc)、100:0~80:20)に供して、表題化合物(0.87g、収率23%)を琥珀色固体として得た。
【0133】
【0134】
(b)(±)-3-(2-デシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物2)の合成
第1部 (±)-3-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物2a)の合成。トルエン(30mL)、(±)-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノール(ソルケタール、20.00g、151mmol)、アセトフェノン(27.3、227mmol)、[Ir(cod)Cl]2(2.0g、3.02mmol)、トリフェニルホスフィン(2.37g、9.07mmol)、および水酸化リチウム一水和物(2.55g、60.7mmol)を、還流冷却器および窒素バブラーを備えた100mL丸底フラスコに加えた。暗赤色の溶液を、110℃で21時間加熱した。この混合物をジエチルエーテル(200mL)で希釈し、水(3×150mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。クーゲルロール蒸留(170℃オーブン、3.3Pa)により化合物2a(25.1g、収率71%)を淡黄色油として単離した。
【0135】
【0136】
第2部 化合物2a(1.21g、5.16mmol)、ウンデカナール(2.64g、15.5mmol、3当量)およびパラトルエンスルホン酸一水和物(pTSA、0.06g、0.32mmol、0.06当量)のトルエン(20mL)溶液を、室温(rt)で3時間撹拌した。この混合物をジエチルエーテル(100mL)で希釈し、飽和水性Na2CO3および水で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。過剰のウンデカナールをクーゲルロール蒸留(40℃オーブン、6.7Pa)で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~93:7)により、表題化合物1.2g(収率68%)を淡黄色の粘稠油として得た(ジアステレオマー比(dr)=67:33)。
【0137】
【0138】
(c)(±)-1-フェニル-3-(2-(2-フェニルプロピル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン(化合物3)の合成
化合物2について記載された手順にしたがって、化合物2a(1.21g、5.16mmol)および3-フェニルブタナール(2.3g、15.5mmol)から表題化合物(1.22g、収率73%、無色液体)を製造し、ジアステレオマーの混合物として単離した。
【0139】
【0140】
(d)(±)-1-フェニル-3-(2-(ウンデカン-2-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン(化合物4)の合成
化合物2について記載された手順にしたがって、化合物2a(8.0g、34.1mmol)および2-メチルウンデカナール(12.6g、68.4mmol)から表題化合物(4.68g、収率38%、無色液体)を製造し、ジアステレオマーの混合物として単離した。
【0141】
【0142】
(e)(±)-3-(2-(デカ-9-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物5)の合成
化合物2について記載された手順にしたがって、化合物2a(2.5g、10.7mmol)および10-ウンデセナール(3.6g、21.3mmol)から表題化合物(3.75g、98%収率、無色液体)を製造し、2つのジアステレオマーの混合物として単離した(dr=63:37)。
【0143】
【0144】
(f)(±)-3-(2-(2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物6)の合成
化合物2について記載された手順にしたがって、化合物2a(2.5g、10.7mmol)および2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-カルバルデヒド(2.95g、21.3mmol)から表題化合物(2.41g、収率72%、無色の粘稠液体)を製造し、ジアステレオマーの混合物として単離した。
【0145】
【0146】
(g)(±)-3-(2-(4,4-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)エチル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物7)の合成
化合物2について記載された手順にしたがって、化合物2a(1.75g、7.5mmol)および3-(4,4-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(4.2g、31.4mmol)から表題化合物(1.64g、収率64%、琥珀色油)を製造し、2つのジアステレオマーの混合物として単離した(dr=60:40)。
【0147】
【0148】
(h)(±)-(Z)-1-フェニル-3-(2-(ウンデカ-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン(化合物8)の合成
化合物2について記載された手順にしたがって、化合物2a(1.75g、7.5mmol)および(Z)-4-ドデセナール(5.7g、31.4mmol)から表題化合物(2.11g、収率79%、無色液体)を製造し、2つのジアステレオマーの混合物として単離した(dr=76:24)。
【0149】
【0150】
(i)(±)-3-(2-(2-(4-メチルシクロヘキシサ-3-エン-1-イル)プロピル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物9)の合成
化合物2について記載された手順にしたがって、化合物2a(2.5g、10.7mmol)および3-(4-メチルシクロヘキシサ-3-エン-1-イル)ブチルアルデヒド(3.55g、21.4mmol)から表題化合物(2.53g、収率69%、無色の粘稠液体)を製造し、ジアステレオマーの混合物として単離した。
【0151】
【0152】
(j)(±)-3-(2-(6-メチルヘプタ-5-エン-2-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物10)の合成
化合物2について記載された手順にしたがって、化合物2a(2.5g、10.7mmol)および2,6-ジメチル-5-ヘプテン-1-アール(6.0g、42.8mmol)から表題化合物(1.84g、収率55%、淡黄色液体)を製造し、ジアステレオマーの混合物として単離した。
【0153】
【0154】
(k)(E/Z)-3-(2-(4,8-ジメチルノン-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物11)の合成
トルエン(20mL)中の化合物2a(1.00g、4.3mmol)、(E/Z)-5,9-ジメチルデカ-4-エナール(2.33g、12.8mmol)およびpTSA(0.04g)の溶液を、rtで15時間撹拌した。この反応混合物を飽和水性Na2CO3(15mL)で洗浄し、EtOAc(15mL)で抽出し、脱塩水(15mL)で中和し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。過剰の(E/Z)-5,9-ジメチルデカ-4-エナールをクーゲルロール蒸留(120℃オーブン、0.1mbar)で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘプタン/EtOAc 9:1)により、ジアステレオマーの混合物(dr=66:34)として単離された表題化合物1.11g(収率73%)を無色油として得た。
【0155】
【0156】
(l)(E/Z)-3-(2-(5-シクロヘキシル-4-メチルペンタ-4-エン-2-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物12)の合成
化合物11について記載された手順にしたがって、(E/Z)-5-シクロヘキシル-2,4-ジメチルペンタ-4-エナール(2.49g、12.8mmol)から表題化合物(1.26g、80%収率、無色の粘稠油)を製造し、クーゲルロール蒸留(140℃オーブン、0.1mbar)およびカラムクロマトグラフィーの後にジアステレオマーの混合物として単離した(dr約30:30:20:20)。
【0157】
【0158】
(m)(±)-3-(2-メチル-2-フェニル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物13)の合成
化合物2a(5g、21.3mmol)、アセトフェノン(7.7g、64mmol)およびpTSA(0.22g、1.3mmol)のトルエン(50mL)溶液を、12mbarの真空下、室温で3時間撹拌した。この混合物をジエチルエーテル(200mL)で希釈し、飽和水性Na2CO3および水で洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残った残渣のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~95:5)により、表題化合物1.4g(収率22%)を白色固体として得た(dr=67:33)。
【0159】
【0160】
(n)(±)-3-(2-メチル-2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物14)の合成
化合物13について記載された手順にしたがって、化合物2a(4.0g、mmol)および4-フェニル-2-ブタノン(7.6g、51.2mmol)から表題化合物(2.2g、収率40%、無色油)を製造し、2つのジアステレオマーの混合物として単離した(dr=57:43)。
【0161】
【0162】
(o)(±)-3-(6-ペンチル-1,4-ジオキサスピロ[4.4]ノナン-2-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物15)の合成
化合物13について記載された手順にしたがって、化合物2a(5.0g、21.3mmol)および2-ペンチルシクロペンタノン(9.9g、64mmol)から表題化合物(1.4g、収率20%、白色固体)を製造し、4つのジアステレオマーの混合物として単離した。
【0163】
【0164】
(p)(±)-1-フェニル-3-(2-フェニル-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロパン-1-オン(化合物16)の合成
トルエン(70mL)、ベンズアルデヒドのグリセリンアセタール(15.0g、83.2mmol、5員および6員環状アセタールの混合物)、アセトフェノン(20.0、166mmol)、[Ir(cod)Cl]2(1.12g、1.66mmol)、トリフェニルホスフィン(1.31g、5.0mmol)、および水酸化リチウム(1.4g、58.3mmol)を、還流冷却器および窒素バブラーを備えた丸底フラスコに加えた。暗赤色の溶液を、110℃で22時間加熱した。この混合物をジエチルエーテルおよび水で希釈し、1時間激しく撹拌した。相を分離し、水相をジエチルエーテル(2×150mL)で抽出した。合わせた有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を真空(2.7Pa)下で加熱(170℃)して、過剰の残存試薬を除去した。残渣をショットパス蒸留(bp130℃、2.4Pa)に供し、次いでフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~50:50)に供して、表題化合物(7.2g、収率31%)を無色油として得た(dr=50:50)。
【0165】
【0166】
(q)(±)-3-(2-デシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(4-メトキシフェニル)プロパン-1-オン(化合物17)の合成
第1部 (±)-3-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(4-メトキシフェニル)プロパン-1-オン(化合物17a)の合成。トルエン(25mL)、ソルケタール(5.0g、37.8mmol)、パラメトキシアセトフェノン(8.52g、56.7mmol)、[Ir(cod)Cl]2(0.51g、0.75mmol)、トリフェニルホスフィン(0.59g、2.25mmol)、および水酸化リチウム一水和物(0.64g、26.0mmol)を、還流冷却器および窒素バブラーを備えた100mL丸底フラスコに加えた。暗赤色の溶液を、110℃(オイルバス)で20時間加熱した。この混合物をジエチルエーテル(200mL)で希釈し、水(3×150mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。クーゲルロール蒸留(170~180℃オーブン、3.3Pa)により表題化合物(2.65g、収率26.5%)を無色液体として単離した。
【0167】
【0168】
第2部 化合物17a(1.5g、5.67mmol)、ウンデカナール(2.9g、17.0mmol)およびpTSA(0.29g、1.7mmol)のトルエン(50mL)溶液を、rtで1日撹拌した。この混合物をジエチルエーテルで希釈し、飽和水性Na2CO3および水で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~88:12)により、表題化合物1.3g(収率61%)を得た(dr=59:41)。
【0169】
【0170】
(r)(±)-3-(2-デシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(p-トリル)プロパン-1-オン(化合物18)の合成
第1部 (±)-3-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(p-トリル)プロパン-1-オン(化合物18a)の合成。トルエン(25mL)、ソルケタール(5.0g、37.8mmol)、パラメチルアセトフェノン(7.6g、56.7mmol)、[Ir(cod)Cl]2(0.51g、0.75mmol)、トリフェニルホスフィン(0.60g、2.27mmol)、および水酸化リチウム一水和物(0.63g、15mmol)を、還流冷却器および窒素バブラーを備えた100mL丸底フラスコに加えた。暗赤色の溶液を、110℃(オイルバス)で20時間加熱した。この混合物をCelite(登録商標)の層で濾過し、酢酸エチル(200mL)で希釈し、水(3×150mL)で洗浄した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、95:5)により、表題化合物4.72g(収率50%)を淡琥珀色固体として得た。
【0171】
【0172】
第2部 化合物18a(1.5g、6.0mmol)、ウンデカナール(3.1g、18.1mmol)およびpTSA(0.32g、1.84mmol)のトルエン(20mL)溶液を、rtで2日間撹拌した。この混合物をジエチルエーテルで希釈し、飽和水性Na2CO3および水で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~90:10)により、表題化合物1.5g(収率69%)を白色固体として得た(dr=61:39)。
【0173】
【0174】
(s)(±)-シス-3-(2-(4-メトキシフェニル)-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物19)の合成
トルエン(10mL)、(±)-シス-(2-(4-メトキシフェニル)-1,3-ジオキサン-4-イル)メタノール(6.0g、26.8mmol、B. Herradon, S. Valverde, Tetrahedron Asymmetry, 1994, Vol. 5, pages 1479-1500)、アセトフェノン(4.82g、40.1mmol)、[Ir(cod)Cl]2(0.37g、0.54mmol)、トリフェニルホスフィン(0.42g、1.60mmol)、および水酸化リチウム一水和物(0.45g、10.7mmol)を、還流冷却器および窒素バブラーを備えた丸底フラスコに加えた。暗赤色の溶液を、110℃(オイルバス)で24時間加熱した。この混合物をジエチルエーテルで希釈し、水で洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~70:30)に供して、表題化合物(3.1g、収率35%)を白色固体として得た。
【0175】
【0176】
(t)(±)-シス-3-(2-(4-エチルフェニル)-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物20)の合成
第1部 (±)-シス-(2-(4-エチルフェニル)-1,3-ジオキサン-4-イル)メタノール(化合物20a)の合成。1,2,4-ブタントリオール(14.6g、137mmol)、パラエチルベンズアルデヒドのジメチルアセタール(16.5、92mmol)およびAmberlyst(登録商標)15樹脂のジクロロメタン(120ml)溶液を、rtで7時間撹拌した。この溶液を濾過し、濃縮した。残った残渣をジエチルエーテルに溶解させて、飽和NaHCO3で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。クーゲルロール蒸留により、表題化合物16.5g(収率81%)を約8%のジオキソラン副生成物を含む無色油として得た。
【0177】
【0178】
第2部 トルエン(15mL)、化合物20a(4.0g、18mmol)、アセトフェノン(3.24g、27mmol)、[Ir(cod)Cl]2(0.25g、0.36mmol)、トリフェニルホスフィン(0.28g、1.1mmol)、および水酸化リチウム一水和物(0.30g、7.2mmol)を、還流冷却器および窒素バブラーを備えた丸底フラスコに加えた。暗赤色の溶液を、110℃で24時間加熱した。この混合物をジエチルエーテルで希釈し、水で洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を真空下(2.7Pa)で加熱(120℃)して過剰のアセトフェノンを除去し、次いでフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~80:20)に供して、表題化合物(2.7g、収率46%)を白色固体として得た。
【0179】
【0180】
(u)(±)-シス-3-(2-デシル-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物21)の合成
化合物1(8g、26.9mmol)、ウンデカナール(18.4g、108mmol)およびpTSA(1.4g、8.2mmol)のトルエン(200mL)溶液を室温で1日撹拌した。この混合物をジエチルエーテル(200mL)で希釈し、飽和水性Na2CO3および水で洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。過剰のウンデカナールをクーゲルロール蒸留(95℃オーブン、2.7Pa)で除去した。残った残渣のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~92:8)により、表題化合物3.9g(収率40%)を白色固体として得た。
【0181】
【0182】
(v)(±)-シス-3-(2-デシル-1,3-ジオキサン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物22)の合成
化合物1(6g、20.2mmol)、2-メチルウンデカナール(11.2g、60.7mmol)およびパラトルエンスルホン酸一水和物(1.1g、6.2mmol)のトルエン(150mL)溶液を室温で5日間撹拌した。この混合物をジエチルエーテル(200mL)で希釈し、飽和水性Na2CO3および水で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~95:5)、続いてクーゲルロール蒸留(230℃オーブン、2.4Pa)に供して、表題化合物3.87g(収率51%)を無色油として得た(dr=56:44)。
【0183】
【0184】
(w)(±)-2-メチル-3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物23)の合成
アリルアルコール(25.8g、444mmol)、プロピオフェノンのジメチルアセタール(20g、111mmol、T. Rossolini, B. Ferko, D. Dixon, Organic Letters, 2019, Vol. 21, pages 6668-6673)およびクエン酸(0.43g、2.22mmol)の混合物をオートクレーブ反応器に加え、この反応器を165℃に加熱したオイルバスに入れた。この混合物を1日間撹拌および加熱した。過剰のアリルアルコールを真空下(2.7Pa)で蒸留して除去した。残りの残渣をジエチルエーテルに溶解させて、飽和水性Na2CO3および水で洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物のクーゲルロール蒸留(120℃オーブン、3.3Pa)により、2-メチル-1-フェニルペンタ-4-エン-1-オン(14.3g)を無色液体として得た。
【0185】
ケトン(13.8g、79.2mmol)をメタノール(100ml)に溶解させて、この溶液を氷浴で冷却した。NaBH4(6.0g、158.4mmol)を少量ずつ加えた。この混合物を冷浴から取り出し、rtで1時間撹拌した。この混合物に水(30ml)を加え、ロータリーエバポレーターでメタノールを除去した。残った水性残渣をジエチルエーテルで抽出した。合わせた有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、2-メチル-1-フェニルペンタ-4-エン-1-オール(12.97g)を無色油として得た。これを、さらに精製することなく次の工程で使用した。
【0186】
2-メチル-1-フェニルペンタ-4-エン-1-オールを、氷浴で冷却された塩化アセチル(7.0g)、ピリジン(7.0g)および4-ジメチルアミノピリジン(0.27g)のジクロロメタン(100ml)溶液に少量ずつ加えた。この溶液をrtで一晩撹拌した。この反応混合物を1N HCl(25ml)で洗浄し、分離したジクロロメタン層を真空下で濃縮した。残渣をジエチルエーテルに溶解させて、1N HCl、水、飽和水性NaHCO3、および飽和水性塩化アンモニウムで順次洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。クーゲルロール蒸留(100℃オーブン、3.3Pa)により2-メチル-1-フェニルペンタ-4-エン-1-イルアセテート(12.5g)を無色油として得た。
【0187】
得られた酢酸エステル(11.5g)をジクロロメタン(150ml)に溶解させて、この溶液を氷浴で冷却した。メタクロロ過安息香酸(16.8)を加え、得られたスラリーをrtで1日間撹拌した。20%チオ硫酸ナトリウム水溶液(25ml)を加えた後、この混合物を30分間撹拌し、次いでロータリーエバポレーターでジクロロメタンを除去した。ジエチルエーテル(500ml)を加え、この溶液を飽和水性Na2CO3(3×30ml)および水(2×25ml)で順次洗浄した。エーテル相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、11.7gのエポキシドである2-メチル-3-(オキシラン-2-イル)-1-フェニルプロピルアセテートを淡黄色のわずかに粘稠の油として得た。
【0188】
このエポキシド(11.2g)および無水FeCl3(0.4g)を試薬グレードのアセトン(210ml)に溶解させて、この溶液をrtで3時間撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターでアセトンを除去し、残った褐色の残渣をジエチルエーテルで希釈した。この溶液を、飽和水性Na2CO3および水で洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、12.7gの対応するアセトニドである3-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-2-メチル-1-フェニルプロピルアセテートを帯黄色油として得た。
【0189】
次に、トランスアセタール化反応により、このアセトニドを対応する環状3-フェニルプロパナールアセタールに変換した。アセトニド(12.42g)、3-フェニルプロパナール(22.8g)およびpTSA(0.4g)のトルエン(100ml)溶液を、rtで3時間撹拌した。この混合物をジエチルエーテルで希釈し、飽和水性Na2CO3および水で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。過剰の3-フェニルプロパナールをクーゲルロール蒸留(120~140℃オーブン、6.7Pa)で除去し、3-フェニルプロパナールアセタール、2-メチル-3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロピルアセテート(15.2g)を淡黄色油として得た。
【0190】
上記のアセタール(15g)をメタノール(500ml)およびK2CO3(0.57g)で処理して、アセテート基を除去した。この溶液を、rtで1日間撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターでメタノールを除去した。残った残渣をジエチルエーテルで希釈し、この溶液をブラインで洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、2-メチル-3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オール(11.1g)を淡琥珀色の粘稠な油として得た。
【0191】
ピリジニウムクロロクロメート(11.1g、50.5mmol)を上記アルコール(11g)の撹拌したジクロロメタン(125ml)溶液にrtで加えた。2時間撹拌した後、この反応混合物を、Celite(登録商標)の層で覆ったシリカのパッドで濾過した(登録商標)。濾液を濃縮し、残った残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~80:20)に供して、ジアステレオマーの混合物(dr約45:35:10:10)として単離された表題化合物10.3g(プロプリオフェノンのジメチルアセタールからの全収率36%)を無色油として得た。
【0192】
【0193】
(x)(±)-2,2-ジメチル-3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物24)の合成
化合物23について記載された多工程手順にしたがって、イソブチロフェノンのジメチルアセタールおよびアリルアルコールから出発して表題化合物を製造した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~80:20)により、表題化合物をジアステレオマーの混合物(dr=80:20)として単離された無色の粘稠油として得た。
【0194】
【0195】
(y)(±)-3-(2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン-1-オン(化合物25)の合成
化合物23について記載された多工程手順にしたがって、1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オンのジメチルアセタール(Florantone(登録商標)、供給元:高砂香料工業株式会社、東京、日本)およびアリルアルコールから出発して表題化合物を製造した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~80:20)により、表題化合物をジアステレオマーの混合物(dr=65:35)として単離された白色固体として得た。
【0196】
【0197】
(z)(±)-3-(5-メチル-2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物26)の合成
化合物23について記載された多工程手順にしたがって、アセトフェノンのジメチルアセタールおよび3-ブテン-2-オールから出発して表題化合物を製造した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~80:20)により、表題化合物を単一ジアステレオマーとして単離された無色油として得た。
【0198】
【0199】
(aa)(±)-3-(5,5-ジメチル-2-フェネチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-フェニルプロパン-1-オン(化合物27)の合成
化合物23について記載された多工程手順にしたがって、アセトフェノンのジメチルアセタールおよび2-メチル-3-ブテン-2-オールから出発して表題化合物を製造した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/EtOAc、100:0~90:10)により、表題化合物を無色油として得た(dr=80:20)。
【0200】
【0201】
実施例2
式(I)による化合物の光誘導分解のカイネティクス
式(I)による化合物(約50mg)およびDMSO(内部標準物質として作用、約5mg)をメスフラスコに秤量し、CD
3CNで5mLまで満たした。この溶液を自作のパイレックス(登録商標)ガラスセルに注ぎ、25℃で調温した。その後、この試料にキセノンランプで7.0mWcm
-2(約90000ルクス)にて照射した。照射前(最初のデータポイント)、およびランプ点灯後30分ごとに150分間にわたって(データポイント2~6)、試料のアリコート(750μL)をピペットで採取した。試料を定量
1H-NMR分光法で分析した。式(I)による化合物1、2、13および16の分解を、DMSOシグナルに対する出発化合物の特定のプロトン(例えば、R
2=Hの場合はアセタールプロトン)の積分によって追跡した。アルデヒド、ケトンおよびフェニルケトン誘導体の生成も、DMSOシグナルに対して追跡した。
図1および
図2のデータは、光源への曝露後の式(I)による化合物の迅速な反応を実証している。本発明による感光性環状アセタールまたはケタールは、キセノンランプでの2時間の照射後にほぼ完全に分解し、その際、式(III)の対応するフェニルケトン誘導体が、式R
1CHOのアルデヒドまたは式(R
1)(R
2)C=Oのケトン(式(II)による)と共に形成された。
【0202】
実施例3
消費者製品(布地用柔軟剤)に組み込まれた本発明の式(I)の化合物からの賦香成分の放出の動的ヘッドスペース分析
以下の最終組成の布地用柔軟剤ベースを製造した:
Stepantex(登録商標)VL90 A(供給元:Stepan) 16.5重量%
塩化カルシウム(10%水溶液) 0.6重量%
水 82.9重量%。
【0203】
ビーカー中で、アセトン(0.6mL)中の実施例1に記載された式(I)の感光性環状アセタールまたはケタール誘導体(0.078mmol)の溶液を布地用柔軟剤(5.4g)に加えた。均質化後、試料の一部(1.8g)を脱塩処理した冷たい水道水(600mL)に分散させた。コットンシート1枚(EMPAコットン試験用布地No.221、供給元:Eidgenoessische Materialpruefanstalt、無香料の洗剤粉末で予備洗浄し、約12×12cmのシートにカットしたもの、約3.2g)を加え、手で3分間撹拌し、2分間静置した後、手で絞り、秤量して一定量の残留水(約7.0g)を得た。アセトン(0.6mL)中の放出対象の等モル量(0.078mmol)の対応するアルデヒドまたはケトンからなる参照試料を布地用柔軟剤(5.4g)に加え、同様に分析した。コットンシート(感光性環状アセタールまたはケタール誘導体を加えたものと、放出対象の対応するフレグランスを加えたもの)を暗所で24時間吊り干しした。その後、コットンシートを分析した。測定のために、感光性環状アセタールまたはケタール誘導体を含むシートをヘッドスペースサンプリングセル(内容積約160mL)に入れ、キセノンランプ(CO.FO.ME.GRA Srl製Solarbox 1500、約7~8mW/cm2、約90000ルクス)で照射した。一方、未封入のフレグランスを含むシートは、屋内の自然昼光に曝されたヘッドスペースサンプリングセルに入れた。ヘッドスペースサンプリングセルを25℃に調温し、約200mL/分の一定気流に曝した。空気を活性炭で濾過し、NaClの飽和溶液を通して吸引した(空気湿度を約75%に保つため)。廃ポリ(2,6-ジフェニル-p-フェニレンオキシド)(Tenax(登録商標)TA、100mg)カートリッジに揮発性物質を吸着させながら、系を15分間平衡化した。その後、6回連続して、清浄Tenax(登録商標)カートリッジに10分間、廃Tenax(登録商標)カートリッジに20分間、揮発性物質を吸着させた。175分間で合計6つのデータポイントを収集した。廃カートリッジを廃棄し、他のカートリッジを、HP-1キャピラリーカラム(30m、内径0.32mm、フィルム0.25μm)およびFID検出器を備えたAgilent Technologies 7890Aガスクロマトグラフに接続されたPerkin Elmer TurboMatrix ATD脱着器で脱着した。80℃から出発して260℃まで15℃/分の温度勾配で、揮発性物質をヘリウム(1mL/分)で溶出した。エタノール中の放出されるフレグランスの5つの異なる濃度を用いた外部標準キャリブレーションによって、ヘッドスペース濃度(ng/L空気中)を得た。各キャリブレーション溶液(0.1μL)を清浄Tenax(登録商標)カートリッジに注入し、同じ条件下で脱着および分析した。175分後の異なるフレグランスの放出について得られた結果を表1にまとめた。値はすべて、少なくとも2回の測定の平均値である。
【0204】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0205】
このデータは、本発明の式(I)の化合物からの光誘導フレグランス放出の持続性が、未封入の参照フレグランスに対してかなり改善されていることを明らかに示している。表1のデータは、先に概説した光誘導による2工程機序の第2の工程から生じる式(II)の活性カルボニル化合物の放出に焦点を当てている。総じて、アセトフェノン(式(III)の化合物であり、光誘導による2工程シーケンスの第1の工程で本発明の式(I)の化合物から放出される)の放出について、対応する未封入アセトフェノン(参照)に対してヘッドスペース濃度の非常に大きな増加が観察された。
【0206】
実施例4
消費者製品(万能クリーナー)に組み込まれた本発明の式(I)の化合物からの賦香成分の放出の動的ヘッドスペース分析
以下の最終組成の万能クリーナー(APC)配合物を製造した:
Neodol(登録商標)91-8(供給元:Shell Chemicals) 5.0重量%
Marlon(登録商標)A 375(供給元:Huels AG) 4.0重量%
クメンスルホン酸ナトリウム 2.0重量%
Kathon(登録商標)CG(供給元:Rohm and Haas) 0.2重量%
水 88.8重量%。
【0207】
フラスコ中で、本発明の式(I)の1つの化合物(0.0369mmol)をエタノール(0.1mL)に溶解させた。次に、APC配合物(3.0g)を加え、試料を穏やかに振盪した。これらの試料のアリコート(1mL)をピペットで採取し、脱塩処理した水道水(9mL)で希釈した。この溶液の膜(0.75mL)を多孔質セラミックプレート(約5×10cm)にピペッティングし、室温で暗所に静置した。同様に、エタノール(0.1mL)中の本発明の式(I)の1つの化合物の代わりに未修飾のアルデヒドまたはケトン(0.0369mmol)からなる参照試料を製造し、同様に処理した。
【0208】
1日後、各セラミックプレートをヘッドスペースサンプリングセル(約625mL)内に置き、約200mL/分の一定気流に曝した。空気を活性炭で濾過し、NaClの飽和溶液を通して吸引した(空気湿度を約75%に保つため)。その後、ヘッドスペースサンプリングセルをUVAランプ(中心波長370nm)に約2.2mW/cm2の光エネルギーで曝した。廃Tenax(登録商標)カートリッジに揮発性物質を吸着させることにより、ヘッドスペース系を15分間平衡化した。その後、清浄Tenax(登録商標)カートリッジに10分間、廃Tenax(登録商標)カートリッジに20分間、揮発性物質を交互に吸着させた(6×)。廃カートリッジを廃棄し、清浄カートリッジを脱着し、実施例3に記載されたように分析した。すべての測定を少なくとも2回行った。多孔質セラミックプレート上方で115分間サンプリングした後の実施例1で製造した式(I)の化合物または参照試料から放出されたアルデヒドおよび/またはケトンの平均ヘッドスペース濃度を表2に列挙する。表2には、本発明の式(I)の化合物から放出されたアルデヒドまたはケトンの参照試料に対する倍率も示す。
【0209】
【0210】
このデータは、本発明の式(I)の化合物からの光誘導フレグランス放出の持続性が、未封入の参照フレグランスに対してかなり改善されていることを明らかに示している。
【0211】
実施例5
香油の製造
以下の賦香補助成分を混合することによって、典型的な香油の非限定的な例を製造する:
成分 重量%
2-メチルブタン酸エチル 0.16
酢酸ヘキシル 0.37
リモネン 1.67
2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール 0.94
2-フェニルエタノール 2.15
リナロール 0.73
(2RS,4SR/4RS)-4-メチル-2-(2-メチル-1-プロペン-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン 0.30
2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル 0.32
酢酸ベンジル 2.46
ヘプタン酸アリル 0.38
α-テルピネオール 0.88
3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール 0.55
4-メトキシベンズアルデヒド 1.00
(E)-4-メチル-3-デセン-5-オール 0.37
[シス/トランス-4-(2-プロパニル)シクロヘキシル]メタノール 0.47
1-メトキシ-4-[(1E)-1-プロペン-1-イル]ベンゼン 0.15
(1RS,2RS/2SR)-2-(2-メチル-2-プロパニル)シクロヘキシルアセテート 1.95
1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート 0.95
トリシクロ[5.2.1.02,~]デカ-3/4-エン-8-イルアセテート 3.34
3-シクロヘキシルプロパン酸アリル 0.26
3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール 8.18
(3E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オンおよび
(1E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-1-ペンテン-3-オン 1.13
2-フェノキシエチル2-メチルプロパノエート 5.38
トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ-3/4-エン-8-イルプロパノエート 2.32
5-ヘプチルジヒドロ-2(3H)-フラノン 2.30
サリチル酸2/3-メチルブチル 1.42
サリチル酸(3Z)-3-ヘキセン-1-イル 0.31
1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2-イル)エタノン 16.03
2-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル 5.04
(2E)-2-ベンジリデンオクタナール 21.22
(-)-(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン 0.27
Habanolide(登録商標) 4.78
Exaltolide(登録商標) 3.82
2-ヒドロキシ安息香酸ベンジル 3.01
ジプロピレングリコール 5.39
合計:100。
【0212】
実施例6
本発明の式(I)の化合物を含む液体洗剤配合物の製造
典型的な無香料の液体洗剤配合物を表3に列挙する。実施例5の香油(液体洗剤の総重量に対して0.3~0.8重量%)および本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物(液体洗剤の総重量に対して0.05~0.5重量%)を穏やかに振盪しながら表3の無香料の液体洗剤配合物に加えることにより、着香液体洗剤を製造する。
【0213】
【0214】
実施例7
本発明の式(I)の化合物を含む固形洗剤の製造
モデル粉末洗剤ベースの骨格は、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ゼオライト、C12-15パレス-7、ベントナイト、過ホウ酸塩、TAED、クエン酸、アクリル酸ナトリウム/MAコポリマー、過酸化炭酸ナトリウム、エチドロン酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、セルロースガム、アニリノモルホリノトリアジニルアミノスチルベンスルホン酸二ナトリウム、フェニルプロピルジメチコン、酵素、染料から構成されている。
【0215】
典型的な無香料モデル粉末洗剤ベースは、表4に列挙されるように構成されている。実施例5の香油(固形洗剤の総重量に対して0.3~0.6重量%)および本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物(固形洗剤の総重量に対して0.15重量%)を穏やかに振盪しながら加えることにより、着香固形洗剤を製造する。
【0216】
【0217】
実施例8
本発明の式(I)の化合物を含む漂白剤不含の固形洗剤の製造
代表的な漂白剤不含の粉末洗剤配合物は、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ゼオライト、C12-15パレス-7、ベントナイト、クエン酸、アクリル酸ナトリウム/MAコポリマー、過酸化炭酸ナトリウム、エチドロン酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、セルロースガム、アニリノモルホリノトリアジニルアミノスチルベンスルホン酸二ナトリウム、フェニルプロピルジメチコン、酵素、染料から構成されている。
【0218】
典型的な無香料のモデル粉末洗剤ベースは、表5に列挙されるように構成されている。実施例5の香油(漂白剤不含の固形洗剤の総重量に対して0.3~0.6重量%)および本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物(漂白剤不含の固形洗剤の総重量に対して0.15重量%)を穏やかに振盪しながら加えることにより、漂白剤不含の着香固形洗剤を製造する。
【0219】
【0220】
実施例9
本発明の式(I)の化合物を含む手洗い用食器洗浄剤配合物の製造
典型的な手洗い用食器洗浄剤配合物を表6に列挙する。水、水酸化ナトリウムおよびジエタノールアミドを混合する。次に、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を加える。中和後、残りの成分を加える。pHを確認し(7~8)、必要であれば調整する。実施例5の香油(手洗い用食器洗浄剤配合物の総重量に対して0.4~0.8重量%)および本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物(無香料配合物の総重量に対して0.02~0.5重量%)を穏やかに振盪しながら表6の無香料の手洗い用食器洗浄剤配合物に加えることにより、着香手洗い用食器洗浄剤を製造する。
【0221】
【0222】
実施例10
本発明の式(I)の化合物を含む透明な等方性シャンプー配合物の製造
典型的な無香料の透明な等方性シャンプー配合物を表7に列挙する。ポリクオタニウム-10を水中に分散させることにより、この無香料シャンプー配合物を製造する。相Aの残りの成分を、各添加後によく混合しながら順々に加えることによって別個に混合する。このプレミックスをポリクオタニウム-10分散液に加え、さらに5分間混合する。次に、プレミックス相Bおよびプレミックス相Cを撹拌しながら加える(Monomuls(登録商標)90L-12を、Texapon(登録商標)NSO IS中で加熱して溶融させる)。相Dおよび相Eを撹拌しながら加える。クエン酸溶液でpHを5.5~6.0に調整し、表7に列挙された無香料シャンプー配合物を得る。実施例5の香油(無香料シャンプー配合物の総重量に対して0.1~0.8重量%)および式(I)の少なくとも1つの化合物(無香料シャンプー配合物の総重量に対して0.05~0.5重量%)を穏やかに振盪しながら表7に列挙された無香料シャンプー配合物に加えることにより、着香シャンプー配合物を得る。
【0223】
【0224】
実施例11
本発明の式(I)の化合物を含む真珠光沢シャンプー配合物の製造
典型的な無香料の真珠光沢シャンプー配合物を表8に列挙する。EDTA四ナトリウム、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびポリクオタニウム-10を水に分散させることにより、この無香料シャンプー配合物を製造する。相Aが均質になったら、NaOH(10%水溶液、相B)を加える。次に、予め混合した相Cを加え、この混合物を75℃に加熱する。相D成分を加え、この混合物が均質になるまで混合する。この混合物を冷却する。45℃で、混合しながらE相成分を加える。NaCl(25%水溶液)で最終粘度を調整し、NaOH(10%水溶液)でpHを5.5~6.0に調整する。実施例5の香油(無香料のシャンプー配合物の総重量に対して0.1~0.8重量%)および式(I)の少なくとも1つの化合物(無香料のシャンプー配合物の総重量に対して0.05~0.5重量%)を穏やかに振盪しながら、表8に列挙された無香料の真珠光沢シャンプー配合物に加えることにより、着香真珠光沢シャンプー配合物を得る。
【0225】
【0226】
実施例12
本発明の式(I)の化合物を含むリンスオフヘアコンディショナー配合物の製造
典型的な無香料のリンスオフヘアコンディショナー配合物を表9に列挙する。均一な混合物が得られるまで相Aの成分を混合することにより、この無香料のリンスオフヘアコンディショナー配合物を製造する。Tylose(登録商標)を完全に溶解させる。次に、この混合物を70~75℃に加熱する。相Bの成分を合わせ、70~75℃で溶融させる。次に、相Bの成分をよく撹拌しながら相Aに加え、この混合物が60℃の温度になるまで混合を続ける。次に、相Cの成分を撹拌しながら加え、この混合物が40℃に冷えるまで混合を続ける。クエン酸溶液でpHを3.5~4.0に調整する。実施例5の香油(無香料のコンディショナー配合物の総重量に対して0.2~1.0重量%)および式(I)の少なくとも1つの化合物(無香料のコンディショナー配合物の総重量に対して0.05~0.5重量%)を穏やかに振盪しながら表9に列挙された無香料のリンスオフヘアコンディショナー配合物に加えることにより、着香リンスオフヘアコンディショナー配合物を得る。
【0227】
【0228】
実施例13
本発明の式(I)の化合物を含む構造化シャワージェル配合物の製造
典型的な無香料の構造化シャワージェル配合物を表10に列挙する。実施例5の香油(構造化シャワージェルの総重量に対して0.1~1.5重量%)および本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物(構造化シャワージェルの総重量に対して0.05~0.5重量%)を穏やかに振盪しながら表10の無香料の構造化シャワージェル配合物に加えることにより、着香構造化シャワージェルを製造する。
【0229】
【0230】
実施例14
本発明の式(I)の化合物を含む透明なシャワージェル配合物の製造
典型的な無香料の透明なシャワージェル配合物を表11に列挙する。実施例5の香油(透明なシャワージェルの総重量に対して0.5~1.5重量%)および本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物(透明なシャワージェルの総重量に対して0.05~0.5重量%)を穏やかに振盪しながら表11の無香料の透明なシャワージェル配合物に加えることにより、透明な着香シャワージェルを製造する。
【0231】
【0232】
実施例15
本発明の式(I)の化合物を含む乳白色シャワージェル配合物の製造
典型的な無香料の乳白色シャワージェル配合物を表12に列挙する。実施例5の香油(乳白色シャワージェルの総重量に対して0.1~1.5重量%)および本発明の式(I)の少なくとも1つの化合物(乳白色シャワージェルの総重量に対して0.05~0.5重量%)を穏やかに振盪しながら表12の無香料の乳白色シャワージェル配合物に加えることにより、着香乳白色シャワージェルを製造する。
【0233】
【国際調査報告】