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  • 特表-熱成形性不織複合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】熱成形性不織複合体
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/542 20120101AFI20241024BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241024BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20241024BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20241024BHJP
   D04H 1/645 20120101ALI20241024BHJP
   D04H 1/485 20120101ALI20241024BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
D04H1/542
B32B27/36
B32B7/027
D04H1/435
D04H1/645
D04H1/485
B32B27/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526636
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 US2022048185
(87)【国際公開番号】W WO2023081064
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/274,740
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和明
(72)【発明者】
【氏名】メイプス、マーク
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AK41A
4F100DG01A
4F100DG03A
4F100DG15A
4F100DG20A
4F100EC09
4F100EH46A
4F100GB07
4F100GB32
4F100GB81
4F100JA04A
4F100JB06A
4F100JB13A
4F100JB16A
4F100YY00A
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA03
4L047BA09
4L047BA15
4L047BA24
4L047BB06
4L047BB09
4L047CB09
(57)【要約】
複数の第1の短繊維、第1の融点を有する複数の第1のバインダ繊維、および第2の融点を有する複数の第2のバインダ繊維を含有し、第1の短繊維、第1のバインダ繊維および第2のバインダ繊維が交差点で絡み合い、交差している不織層を含有する、熱成形性不織複合体。第1の融点と第2の融点との差は、少なくとも約15℃異なり、不織層中の繊維のすべての少なくとも95重量%がポリエステルである。熱成形性不織複合体はまた、第1の樹脂を含有する第1の樹脂調合物を含有する。第1の樹脂は、不織物内に位置し、交差点の少なくとも一部に位置する。第1の短繊維、第1および第2のバインダ繊維、ならびに第1の樹脂は何れも、同じ化学クラスからのポリマーを含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および第2の面を有する熱成形性不織複合体であって
複数の第1の短繊維、第1の融点を有する複数の第1のバインダ繊維、および第2の融点を有する複数の第2のバインダ繊維を含む不織層であり、前記第1の短繊維、第1のバインダ繊維および第2のバインダ繊維が、交差点で絡み合い、交差しており、前記第1の融点と前記第2の融点とは、少なくとも約15℃異なり、前記不織層中の前記繊維のすべての少なくとも95重量%がポリエステルである、不織層;および
第1の樹脂を含む第1の樹脂調合物であり、前記第1の樹脂が、不織物内に位置し、前記交差点の少なくとも一部に位置し、前記第1の短繊維、前記第1のバインダ繊維、前記第2のバインダ繊維および前記第1の樹脂が、同じ化学クラスからのポリマーを含む、第1の樹脂調合物
を含む、熱成形性不織複合体。
【請求項2】
前記第1の短繊維、バインダ繊維および前記第1の樹脂がポリエステルを含む、請求項1に記載の熱成形性不織複合体。
【請求項3】
前記第2のバインダ繊維が、前記第1のバインダ繊維の溶融温度よりも低い溶融温度を有する、請求項1に記載の熱成形性不織複合体。
【請求項4】
前記第1のバインダ繊維が芯/鞘型繊維である、請求項1に記載の熱成形性不織複合体。
【請求項5】
前記第1の樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の熱成形性不織複合体。
【請求項6】
前記第1の樹脂が熱硬化性樹脂である、請求項1に記載の熱成形性不織複合体。
【請求項7】
前記第1の短繊維および前記第1のバインダ繊維の少なくとも一部が、疎水性コーティングを含む、請求項1に記載の熱成形性不織複合体。
【請求項8】
第1の面および第2の面を有する熱成形性不織複合体を形成する方法であって、順に、
複数の第1の短繊維、複数の第1のバインダ繊維、および複数の第2のバインダ繊維をカーディングし、クロスラッピングし、ニードルパンチングして、不織物を形成することであり、前記第1の短繊維、前記第1のバインダ繊維および前記第2のバインダ繊維が、交差点で絡み合い、交差しており、前記第1の融点と前記第2の融点とは、少なくとも約15℃異なり、前記不織層中の前記繊維のすべての少なくとも95重量%がポリエステルである、不織物を形成すること;
第1の樹脂を含む水性コーティング用組成物を形成すること;
前記コーティング用組成物を前記不織物に適用して、コーティング済不織物を形成すること;
前記コーティング済不織物に熱を適用して、水を少なくとも部分的に除去し、前記熱成形性不織複合体を形成すること
を含む、方法。
【請求項9】
前記コーティング済不織物が、約2~12重量%の分散コーティング用組成物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の短繊維および前記第1の樹脂がポリエステルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のバインダ繊維が、前記第1のバインダ繊維の溶融温度よりも低い溶融温度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
熱を適用することが、前記第1のバインダ繊維を少なくとも部分的に溶融する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の樹脂が熱可塑性樹脂であり、前記コーティング済不織物に熱を適用することで、第1の樹脂が少なくとも部分的に合体する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の短繊維および第1のバインダ繊維の少なくとも一部を、カーディング、クロスラッピングおよびニードルパンチングして不織層にする前に、疎水性コーティングでコーティングする、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
請求項8に記載の熱成形性不織複合体を形成する方法を含む、熱成形不織アンダーボディ遮蔽材を形成する方法であって、前記熱成形性不織複合体を型に載置する工程、および前記熱成形性不織複合体の少なくとも前記第1の面に熱および圧力を適用して、前記熱成形不織アンダーボディ遮蔽材を形成する工程をさらに含み、熱成形不織アンダーボディ遮蔽材の前記第1の面がスキンを形成し、前記熱成形不織アンダーボディ遮蔽材の前記第2の面よりも低い表面粗さを有する、方法。
【請求項16】
前記熱成形不織アンダーボディ遮蔽材の前記第1および第2の面が、前記熱成形性不織複合体の前記第1および第2の面よりも疎水性である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、良好な物性を有する、成形性不織複合体および熱成形不織物を提供する。
【背景】
【0002】
[0002]自動車、オフィスおよび家庭用調度品、建築ならびにその他を含む様々な産業において、構造的強度と、断熱、遮音、審美的および/または他の性能の特性の両方を提供するために、z方向の厚さを有する材料を要する、複数の製品が存在する。これらの用途の多くで、材料が、特定の形状および剛性に熱成形可能であることも要する。自動車産業では、これらの製品はしばしば、遮蔽用途、たとえば、自動車のボンネットライナー、アンダーボディの遮蔽材、防火障壁およびトランクライナーにおける、騒音および熱の障壁に使用される。
【0003】
[0003]自動車用途、たとえば、パッケージシェルフ、ドアパネルまたはヘッドライナーに使用される複合材料はしばしば、熱可塑性バインダ繊維によって結合した構造不織複合体層を加熱し、次いで冷間プレスして、装飾層とすることによって生産される。
【0004】
[0004]製造および使用が容易な、熱可塑性材料を使用した複合体を作製でき、現在市場にある他の製品よりも再利用が可能であることが、好ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、第1の面および第2の面を有し、不織層を含有する熱成形性不織複合体に関する。不織層は、複数の第1の短繊維、第1の融点を有する複数の第1のバインダ繊維、および第2の融点を有する複数の第2のバインダ繊維を含有し、第1の短繊維、第1のバインダ繊維および第2のバインダ繊維は、交差点で絡み合い、交差している。第1の融点と第2の融点との差は、少なくとも約15℃異なり、不織層中の繊維のすべての少なくとも95重量%がポリエステルである。
【0006】
熱成形性不織複合体はまた、第1の樹脂を含有する第1の樹脂調合物を含有する。第1の樹脂は、不織物内に位置し、交差点の少なくとも一部に位置する。第1の短繊維、第1のバインダ繊維、第2のバインダ繊維および第1の樹脂は何れも、同じ化学クラスからのポリマーを含有する。
【0007】
[0005]本発明はまた、第1の面および第2の面を有する熱成形性不織複合体を形成する方法に関する。方法は、不織物を形成する複数の第1の短繊維、複数の第1のバインダ繊維、および複数の第2のバインダ繊維をカーディングし、クロスラッピングし、ニードルパンチングする工程を含み、第1の短繊維、第1のバインダ繊維および第2のバインダ繊維は、交差点で絡み合い、交差している。方法はまた、第1の樹脂を含有する水性コーティング用組成物を形成する工程、コーティング用組成物を不織物に塗布する、コーティング済不織物を形成する工程、およびコーティング済不織物に熱を適用して、水を少なくとも部分的に除去する、熱成形性不織複合体を形成する工程を含む。
【0008】
[0006]本発明の態様を、添付図面を参照しながら、例としてここに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0007]図1は、成形性不織複合体の一態様の断面を模式的に図示している。
図2】[0008]図2は、図1の熱成形性不織複合体の拡大部の断面を模式的に図示している。
【発明の詳細な説明】
【0010】
[0009]図1を参照すると、第1の面10aと第2の面10bとを有する熱成形性不織複合体10の一態様が示されている。熱成形性不織複合体10は、第1の面100a、第2の面100bを有する不織層100を含有する。一態様では、不織層100の第1の面100aは、複合体10の第1の面10aを形成する。一態様では、不織層100の第2の面100bは、複合体10の第2の面10bを形成する。不織層100は、1つの不織層として作製された単体の材料であり、互いに接着された、またはそれ以外の方法で接続された2つ以上の層ではない。熱成形性不織複合体10が熱および圧力下で成形されると、成形複合体となる。
【0011】
[0010]一態様では、不織層100の厚さは、約2mm~10mm、より好ましくは約3mm~7mmである。厚さは、不織層100の第1の面100aと第2の面100bとの間の距離として定義される。一態様では、熱成形性不織複合体10の面積重量は、約500~1600g/m、より好ましくは約700~1200g/mである。
【0012】
[0011]熱成形性不織複合体10を形成する方法は、複数の第1の短繊維200、第1のバインダ繊維300および第2のバインダ繊維310を含む不織層100を形成することで始まる。不織層100は、複数の第1の短繊維200およびバインダ繊維300/310を、ブレンドする工程、カーディングする工程、クロスラッピングする工程、およびニードルパンチングする工程によって形成される。一態様では、不織層は、層の第1の面と第2の面とからニードル処理される。第1の短繊維200およびバインダ繊維300/310は、不織層内で全体として一様に位置してもよく、または層をなしてもよく、後者は、特定の繊維の濃度が第1の面100aまたは第2の面100bにおいてより高いことを意味する。
【0013】
[0012]不織層は、複数の第1の短繊維200を含む。好適な第1の短繊維のいくつかの例としては、ガラス繊維、アラミド繊維、ならびに高配向のポリプロピレン繊維、靱皮繊維、ポリエステル繊維および炭素繊維が挙げられる。
【0014】
[0013]第1の短繊維は不織層100および複合体10に、体積、補強および強さをもたらす。第1の短繊維200の追加の例としては、フィラメント当たりのデニールが高い繊維(フィラメント当たり1デニール以上)、高捲縮繊維および中空充填繊維等が挙げられる。これらの繊維は、材料に質量および体積をもたらす。第1の短繊維のいくつかの例としては、ポリエステル、ポリプロピレンおよび綿、ならびに他の低コスト繊維が挙げられる。
【0015】
[0014]一態様では、第1の短繊維200は、高配向ポリマーから作製された繊維、たとえば、ゲル紡糸超高分子量ポリエチレン繊維(たとえば、Morristown、N.J.のHoneywell Advanced Fibers製のSPECTRA(商標)繊維、およびオランダのDSM High Performance Fibers Co.製のDYNEEMA(商標)繊維)、溶融紡糸ポリエチレン繊維(たとえば、Charlotte、N.C.のCelanese Fibers製のCERTRAN(商標)繊維)、溶融紡糸ナイロン繊維(たとえば、Wichita、Kans.のInvista製の高靱性型ナイロン6,6繊維)、溶融紡糸ポリエステル繊維(たとえば、Wichita、Kans.のInvista製の高靱性型ポリエチレンテレフタレート繊維)、ならびに焼結ポリエチレン繊維(たとえば、Charlotte、N.C.のITS製のTENSYLON(商標)繊維)を含んでもよい。好適な第1の短繊維としては、剛性ロッドポリマー、たとえば、リオトロピック剛性ロッドポリマー、複素環式剛性ロッドポリマーおよびサーモトロピック液晶ポリマーから作製されるものも挙げられる。
【0016】
[0015]不織層100は、別の態様では、複数の第2の短繊維を含有する。これらの第2の短繊維は、第1の短繊維と同じ材料の列挙から選択されうる。第2の短繊維は、材料、デニール、ステープル長さ、溶融もしくは引張特性、断面形状または任意の他の特徴において、第1の短繊維と同じであっても異なってもよい。好ましい態様では、第2の短繊維は、複合体10の再利用性を上昇させるために、第1の短繊維と同じ材料、たとえばポリエステルを含有する。
【0017】
[0016]不織層100はまた、複数の第1のバインダ繊維300を含有する。バインダ繊維は、他の繊維との接着またはボンドを形成する繊維であると定義される。一態様では、第1のバインダは、好ましくは、熱で活性化された繊維である。熱で活性化されたバインダ繊維の例は、低温で溶融させることができる繊維、たとえば低融点繊維、および二成分繊維、たとえば、サイドバイサイド型繊維、または鞘が低い溶融温度を有する芯鞘型繊維等である。
【0018】
[0017]一態様では、第1のバインダ繊維は、少なくとも2種の成分を含有する二成分繊維である(3種以上を含有してもよい)。一態様では、二成分繊維は芯/鞘型繊維であり、これは、繊維が、芯ポリマーを含む芯と、鞘ポリマーを含む鞘とを含有することを意味する。芯ポリマーは、鞘ポリマーよりも高い溶融温度を有する。一態様では、芯ポリマーは、少なくとも約180℃の溶融温度を有し、鞘ポリマーは、約180℃未満の溶融温度を有する。別の態様では、芯ポリマーは、少なくとも約180℃の溶融温度を有し、鞘ポリマーは、約160℃未満の溶融温度を有する。好ましくは、芯/鞘繊維は、ポリエステルの芯ポリマーと、異なるポリエステルの鞘ポリマーとを有し、その結果、芯鞘型ポリマーは、溶融温度の制限事項を満たしている。
【0019】
[0018]第1のバインダ繊維は、好ましくは短繊維である。一態様では、熱および圧力下で成形した後、バインダ繊維は依然として、少なくとも部分的に完全な状態の鞘と芯とを識別可能な繊維である。別の態様では、芯/鞘型繊維の芯は完全な状態のままであるが、芯/鞘型繊維の鞘は繊維形状を失い、周囲の材料上のコーティングを形成する。別の態様では、バインダ繊維は、ほとんど完全に繊維形状を失い、周囲の材料上のコーティングを形成する(凝固時)。
【0020】
[0019]不織層100は、別の態様では、複数の第2のバインダ繊維310を含有する。これらの第2のバインダ繊維310は、第1のバインダ繊維と同じ材料の列挙から選択してもよい。第2のバインダ繊維は、材料、デニール、ステープル長さ、溶融もしくは引張特性、断面形状または任意の他の特徴において、第1のバインダ繊維と同じであっても異なってもよい。好ましい態様では、第2のバインダ繊維は、複合体10の再利用性を上昇させるために、第1のバインダ繊維と同じ材料、たとえばポリエステルを含有するが、溶融温度は異なる。好ましい一態様では、第1のバインダ繊維の溶融温度は、少なくとも約15℃、より好ましくは少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約50℃、第2のバインダ繊維310の溶融温度よりも高い。別の態様では、第1のバインダ繊維の溶融温度は、15~130℃、より好ましくは30~120℃、第2のバインダ繊維310の溶融温度よりも高い。
【0021】
[0020]不織層100が、複数の第1のバインダ繊維300と第2のバインダ繊維の両方を含有する場合、好ましくは、2つのタイプの繊維間の溶融温度の差は、少なくとも約15、より好ましくは少なくとも約50である。第1のバインダ繊維と第2のバインダ繊維との重量比は、好ましくは約5~25である。
【0022】
[0021]一態様では、第1の短繊維および/または第1のバインダ繊維の少なくとも一部は、疎水性コーティングによってコーティングされている。一態様では、物品の使用時に防水/氷取り外し性能を与えるために、非フッ化物系撥水剤が、カーディング前の繊維上に噴霧されていてもよい。カーディング前の繊維上に樹脂を噴霧することによって、樹脂が移動して均一に分布して、一様な耐水特性を与えることができる。一態様では、撥水または耐水特性を有するように、繊維の少なくとも一部が処理される。これは、繊維、ヤーンおよび/または形成された布に別々に適用されてもよく、一態様では、第1の樹脂の一部であってもよい。これらの撥水または耐水の化学作用には、フッ素系化学物質を含有してもよく、またはより環境配慮型となるように、好ましくは非フッ素系である。
【0023】
[0022]不織層100が、短繊維を不織層に形成する任意の好適な方法を使用して形成されたとき(第1の樹脂の導入前)、第1の短繊維と層内のすべてのバインダ繊維との重量%比は、約50:50~90:10、より好ましくは約60:40~75:25である。第1の樹脂の導入前、不織層は、好ましくは約10~50%重量、より好ましくは約25~40%のバインダ繊維(すべてのタイプのバインダ繊維を含む)を含む。不織層が形成されたとき(第1の樹脂の導入前)、不織層は、好ましくは約50~95%重量、より好ましくは約30~60%の第1の短繊維を含む。層100内の繊維のすべて(第1の短繊維、任意の第2の短繊維、第1のバインダ繊維、任意の第2のバインダ繊維等)が、交差点で絡み合い、交差している。
【0024】
[0023]不織層100が形成された後、少なくとも部分的に、第1の樹脂を含浸される。第1の樹脂は、不織物内に位置し、交差点の少なくとも一部に位置する。好ましい態様では、第1の樹脂は熱可塑性樹脂であり、これは、樹脂が溶融温度を有するポリマーであることを意味する。
【0025】
[0024]一態様では、第1の短繊維、第1のバインダ繊維および第1の樹脂は何れも、同じ化学クラスからのポリマーを含む。別の態様では、複合体10中の繊維および樹脂のすべてが、同じ化学クラスからのポリマーを含有する。単一材料組成物(同じタイプのポリマーを含む材料)では、化学的相溶性/結合の問題がなくなる傾向がある。加えて、同じタイプの材料を使用した構築物は、寿命の終了時により容易に再利用および再使用されうる。好ましい態様では、繊維および樹脂に使用される材料は、ポリエステルである。ポリエステルは、高い融点と耐久性とを有するため、一部の態様に好ましい。再利用されたポリマー材料は、より環境に配慮して製品を作製する役に立つように、いくつかの最終製品に使用してもよい。別の態様では、繊維および樹脂に使用される材料は、ポリアミドである。好ましい一態様では、複合体中の繊維の本質的にすべて(少なくとも約95重量%を意味する)がポリエステルである。
【0026】
[0025]環境上の理由、ならびに溶媒の取扱いおよび回収に関係するより高いコストのため、溶媒ベースの樹脂系と比べて、水性ベースの樹脂が好ましい。水性樹脂は、任意の好適な手段によって、層100内に注入、コーティング、噴霧、浸漬または導入される。第1の樹脂を不織繊維に加えた後、(好ましくは、周囲のまたは加熱した空気を使用して乾燥させることによって、)水が少なくとも部分的に除去される。これによって、熱成形性不織複合体10が形成される。この乾燥させる工程はまた、第1の樹脂から水の一部またはすべてを除去することに加えて、好ましくは少なくとも部分的に、第1の(および任意に第2の)バインダ繊維を溶融させてもよい。このバインダ繊維を少なくとも部分的に溶融させることで、バインダ繊維を活性化させて複合体10を互いに接着し、その結果、複合体はより容易に取り扱うことおよび輸送することができる。乾燥は、複合体10の中心の温度が約150℃未満、より好ましくは約110℃未満となるように行われる。中心の温度をこの温度未満に保つことは、樹脂をこの工程で溶融または硬化させない(一部の態様では)ためには重要でありうる。好ましくは、湿潤な不織層を乾燥させることで、約90~95重量%の水が、水ベースの熱可塑性樹脂から除去される。
【0027】
[0026]好ましくは、湿潤な不織層を乾燥させることは、過熱水蒸気を使用することを含む。水蒸気は、空気よりも高い熱容量を有し、そのため、必然的により良好な加熱媒体である。水蒸気に伴う問題は、ある特定の温度よりも高く保たなければならず、そうしなければ、凝縮して水に戻り始めることである。これは乾燥において問題である。なぜなら、材料から引き抜かれた水分は、加熱媒体を必然的に冷却する。そのため、飽和水蒸気を使用するならば、水蒸気は凝縮する温度にとても近いため、すぐに凝縮し、ドラム内で水滴となることになる。この問題は、乾燥媒体として過熱水蒸気を使用することによって、回避される。過熱水蒸気はまた、樹脂の架橋/硬化を開始させることなく、含浸構造不織物を乾燥させることができる。
【0028】
[0027]繊維200、300のこのような薄いコーティングを示すのは困難であるため、樹脂400は図1に示されていない。図2は、図1の断面の一部の拡大であり、水ベースの熱硬化性樹脂400のコーティングを、繊維200、300上に認めることができる。コーティングは、一部の態様では非常に薄くてもよく、真のコーティングとして現れるのではなく、繊維が交差する位置にのみ存在してもよい。水の大部分が追い出された後、熱成形性不織複合体は、約1~20重量%の樹脂、より好ましくは約5~15重量%の樹脂を含む。一態様では、複合体中の種々の材料は、第1の短繊維:50~75重量%、第1のバインダ繊維(110℃Tm):20~40重量%、第2のバインダ繊維(180℃Tm):7~20重量%、および第1の樹脂:2~12重量%であってもよい。
【0029】
[0028]この複合体は、樹脂が連続成分であって、いくつかの繊維が樹脂中に懸濁している、いくつかの他の熱可塑性樹脂および繊維複合体とは異なる。この熱成形性不織複合体では、複合体の大部分が繊維であり、樹脂が繊維上にコーティングを形成している。好ましくは、樹脂は、複合体10全体を通じて連続している訳ではない。
【0030】
[0029]熱成形性不織複合体10は、好ましくは、依然として可撓性である。これは、熱成形性不織複合体10は、外観または物性に一切の永久的変化を伴わずに、完全にそれ自体に折り曲げられえ(180度の折り曲げ)、次いで開かれうることを意味する。この可撓性は、複合体をある特定の用途、たとえば、自動車用の成形パーツに使用するためには重要である。
【0031】
[0030]次に、熱成形性不織複合体10を所望の形状およびサイズに切断し、成形してもよい。熱成形性不織複合体10を成形複合体に形成するためには、熱成形性不織複合体10に、熱および任意に圧力を適用するが、複合体を少なくとも約160℃の温度に加熱すると(構造不織層の内平面において測定)、この加熱は、樹脂を溶融または硬化させる役割を果たす。好ましくは、別の態様では、複合体を約180℃超の温度にして、両方のバインダ繊維(第1および第2)を確実に溶融させるが、これは、複合体を接着し、安定化する役に立つ。これによって、第1のバインダ繊維が少なくとも部分的に溶融し、第1の短繊維の少なくとも一部を他の第1の短繊維に結合している第1の樹脂が溶融する。一態様では、硬化によって、第1の樹脂の少なくとも一部が、少なくとも部分的に合体する。
【0032】
[0031]成形複合体において、バインダ繊維の少なくとも一部は、依然として繊維形状を有し、他の繊維がバインダ材料中で溶融していてもよい(バインダ材料は、典型的には、第1の短繊維をコーティングするか、または接着剤の小塊を形成する)。
【0033】
[0032]第1のバインダ繊維が、芯と鞘とを含有する二成分繊維である態様では、好ましくは、繊維の鞘が溶融し、繊維の芯はそのまま(繊維形態)である。好ましくは、鞘ポリマーおよび熱可塑性樹脂が、第1の短繊維の少なくとも一部を他の第1の短繊維に結合させ、第1の短繊維の少なくとも一部を二成分繊維の芯に結合させ、二成分繊維の芯の少なくとも一部を他の二成分繊維の芯に結合させる。
【0034】
[0033]成形された不織複合体は、好ましくは、熱成形性不織複合体よりも剛性となる(より可撓性でないとも言われる)。好ましくは、成形不織複合体は、自重を支え、それ自体の形状を保持するのに十分に硬く、形状が変化することなく追加の重量を支えるのに十分に、いっそう硬くてもよい。一態様では、成形不織複合体は、少なくとも20Nの最大撓み曲げ強度を有する。
【0035】
[0034]一態様では、熱成形性不織複合体10(および成形複合体)は、追加の繊維を含有する。追加の繊維は、不織層100の全体にわたって一様に分散していてもよく、層別の濃度を有してもよい。これらの追加の繊維としては、限定するものではないが、種々のデニール、ステープル長さ、組成または融点を有する追加のバインダ繊維、種々のデニール、ステープル長さまたは組成を有する追加のバルキング繊維、および所望の審美性または機能の利益を提供するエフェクト繊維を挙げることができる。これらのエフェクト繊維は、色、耐薬品性(たとえば、ポリフェニレンスルフィド繊維およびポリテトラフルオロエチレン繊維)、耐湿性(たとえば、ポリテトラフルオロエチレン繊維および局所処理ポリマー繊維)またはその他を付与するために使用してもよい。
【0036】
[0035]一態様では、追加の繊維は、ISO 4589-1によって決定して、20.95以上の限界酸素指数(LOI)値を有する繊維として定義される、耐熱難燃繊維であってもよい。耐熱難燃繊維の例としては、以下に限定するものではないが、酸化ポリアクリロニトリル、アラミドもしくはポリイミドを含む繊維、難燃処理繊維、FRレーヨンまたは炭素繊維等が挙げられる。これらの耐熱難燃繊維は、バルキング繊維としても機能してもよく、バルキング繊維に加えて使用してもよい。
【0037】
[0036]熱成形性不織複合体10(および成形複合体)内の繊維のすべては、任意に、添加剤を含有してもよい。好適な添加剤としては、限定するものではないが、賦形剤、安定剤、可塑剤、増粘剤、流動調整剤、硬化速度遅延剤、接着促進剤(たとえば、シランおよびチタネート)、アジュバント、耐衝撃改良剤、発泡性微小球、熱伝導性粒子、電気伝導性粒子、シリカ、ガラス、粘土、タルク、顔料、着色剤、ガラスビーズまたはグラスバブルズ、酸化防止剤、蛍光増白剤、抗菌剤、界面活性剤、難燃剤ならびにフルオロポリマーが挙げられる。上記添加剤のうちの1つ以上を使用して、得られる繊維および層の重量および/もしくはコストを低減してもよく、粘度を調節してもよく、または繊維の熱特性を改変してもよく、または電気、光学、密度に関する、液体バリアに関する、もしくは接着剤の粘着に関する特性を含む、添加剤の物性作用に由来するある範囲の物性を与えてもよい。
【0038】
[0037]一態様では、熱成形性不織複合体(および成形複合体)は、一切のフッ素化化学物質を含有しない。これは、複合体が全体として、0.01重量%未満のフッ素化化学物質を含有することを意味するものと定義される。別の態様では、熱成形性不織複合体(および成形複合体)は、一切のガラス繊維を含有しない。これは、複合体が全体として、0.01重量%未満のガラスを含有することを意味するものと定義される。ガラスおよびフッ素化化学物質は、環境影響および再利用が困難であることに起因して、いくつかの用途では好ましくない。
【0039】
[0038]一態様では、熱成形性不織複合体10(および成形複合体)は、追加の不織層を含有してもよい。追加の不織層は、不織層100と厳密に同じであってもよく、異なる繊維、密度および比を有してもよい。不織層100について記載した特性は、追加の不織層にも適用できる。追加の不織層は、任意の好適な手段、たとえば、ニードル処理または添加剤によって、不織層100の片面または両面に付着させてもよい。
【0040】
[0039]複合体10はまた、物理的または審美的目的のために、任意の追加の層を含有してもよい。好適な追加の層としては、限定するものではないが、不織布、織布、編物、発泡体層、フィルム、紙製層、接着剤裏付け層、金属箔、メッシュ、弾性布(すなわち、弾性特性を有する、上記の織布、編物もしくは不織布の何れか)、穿孔ウェブ、接着剤裏付け層、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。他の好適な追加の層としては、限定するものではないが、色含有層(たとえば印刷層);異質な平均繊維直径および/もしくは物理組成を有する1つ以上の追加のサブミクロン繊維層;追加の遮蔽性能のための1つ以上の二次微細繊維層(たとえば、メルトブローンウェブもしくは繊維ガラス布);発泡体;粒子の層;金属箔層;フィルム;装飾布層;膜(すなわち、制御された浸透性を有するフィルム、たとえば、透析膜、逆浸透膜等);網;メッシュ;配線配管ネットワーク(すなわち、電気を伝達するための配線、もしくは様々な流体を伝達するためのチューブ/パイプの群の層、たとえば、加熱ブランケットのための配線ネットワーク、およびクーラントが冷却ブランケットを通じて流れるための配管ネットワーク);またはこれらの組み合わせが挙げられる。追加の層は、不織複合体の何れかの面にあっても、両面にあってもよい。たとえば、任意の接着剤層を使用して、生地を不織複合体の片面に適用して、最終使用、たとえばある種の自動車用途のための審美的表面を形成してもよい。
【0041】
[0040]複合体は、複合体を基材または他の表面に付着させることができるように、1つ以上の付着装置をさらに含んでもよい。接着剤に加えて、他の付着装置、たとえば機械的締結具、たとえば、ねじ、爪、クリップ、かすがい、縫合、糸、面ファスナ材料等を使用してもよい。
【0042】
[0041]複合体を多様な基材に付着させるために、1種以上の付着装置を使用してもよい。例示的な基材としては、限定するものではないが、乗り物部品;乗り物の内装(すなわち、乗員区画、モータ区画、トランク等);建築物の壁(すなわち、内装壁表面または外装壁表面);建築物の天井(すなわち、内装天井表面または外装天井表面);建築物の壁または天井を形成するための建築材料(たとえば、天井タイル、木材部品、石膏ボード等);部屋の仕切り;金属シート;ガラス基材;ドア;窓;機械部品;機器部品(すなわち、屋内用機器表面または屋外用機器表面);パイプまたはホースの表面;コンピュータまたは電子部品;音声記録または再生装置;機器、コンピュータ等のためのハウジングまたはケースが挙げられる。別の態様では、成形複合体の第1の面は、成形複合体の第2の面よりも低い表面粗さを有する。
【0043】
[例]
[0042]以下の非限定例を参照しながら本発明をここに記載するが、別段の指示がない限り、すべての部および百分率は重量による。
【0044】
例1
[0043]3種の繊維のブレンド:
1)7重量%の、4デニールポリエステル芯-180℃コポリエステル鞘繊維
2)28重量%の、4デニールポリエステル芯-110℃コポリエステル鞘繊維
3)65重量%の、6デニールポリエステル短繊維
から不織層を形成し、1100グラム/mの斤量を有していた。
【0045】
[0044]繊維(不織層に形成する前)には、非フッ素化系撥水剤が適用されていた。薬剤は20重量%水性溶液の状態にあり、繊維の1%の重量比で適用した。
【0046】
[0045]標準的な産業規模のニードルパンチカーペット生産ラインを使用して、不織層を生成した。上に示した短繊維を混合し、カーディングおよびクロスラッピングを使用してマットに形成した。平らなバーブ付き針を使用してマットを予備ニードル処理して、不織層を形成した。
【0047】
[0046]上記繊維が不織物に形成されたら、ポリエステル(PET)ポリマーを含有する第1の樹脂を、繊維の5%の重量比で噴霧によって適用した。RF(高周波)オーブン中で含浸不織複合体を乾燥させた。PETポリマーの乾燥含浸(add-on)重量は、構造不織層の5%(55gsm)であった。
【0048】
例2
[0047]低融点バインダ繊維を溶融させ、第1の樹脂を架橋するために、プラテン温度を400°Fに設定し、加熱プラテンプレスを使用して例1を凝固させた。サイクル時間は90秒であり、凝固した不織複合体は4.0mmの厚さを有していた。熱および圧力の適用によって、低融点バインダ繊維および第1の樹脂を、ともに第1の短繊維と結合させることができる。
【0049】
[0048]ここに引用する刊行物、特許出願および特許を含むすべての参照文献は、各参照文献が個別かつ具体的に、参照によって組み込まれることが指示され、その全体がここに述べられる場合と同程度に、参照によってここに組み込まれる。
【0050】
[0049]この出願の主題事項を記載する文脈において、「1つの(a)」および「1つの(an)」、ならびに「その(the)」という用語の使用、ならびに同様の指示対象は(とりわけ、次の特許請求の範囲の文脈において)、ここに別段の指示がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を含むものとして解釈される。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」という用語は、別段の注記がない限り、オープンエンドの用語として解釈される(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)。ここでの値の範囲の列挙は、ここに別段の指示がない限り、単に、その範囲内にある各別々の値を個別に言及する短縮法としての役割を果たすことを意図し、各別々の値は、ここに個別に列挙したように、本明細書に組み込まれる。ここに記載するすべての方法は、ここに別段の指示がない限り、またはそれ以外で明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行されうる。ここに提供するあらゆる例または例示的言い回し(たとえば「たとえば(such as)」)の使用は、単に、本出願の主題事項をより良好に説明することを意図するものであり、別段の権利主張がない限り、主題事項の範囲に限定をもたらすものではない。本明細書における言い回しは、特許請求されていない何れの要素も、ここに記載する主題事項の実施に不可欠なものとして指示するものとして解釈されるべきではない。
【0051】
[0050]この出願の主題事項の好ましい態様を、発明者らが知る、特許請求する主題事項を行うための最良の形態を含めて、ここに記載する。これらの好ましい態様の変形は、前述の記載を読むことによって、当業者には明らかとなりうる。発明者らは、当業者がこのような変形を適宜利用することを期待し、発明者らは、ここに具体的に記載した以外の方法で、ここに記載する主題事項が実施されることを意図する。したがって、この開示は、ここに添付する特許請求の範囲に列挙する主題事項の、準拠法によって認められるすべての修正および均等物を含む。さらに、すべての可能なその変形における上述の要素の組み合わせは何れも、ここに別段の指示がない限り、またはそれ以外で明らかに文脈と矛盾しない限り、本開示によって包含される。
図1
図2
【国際調査報告】