(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20241024BHJP
C10M 129/08 20060101ALN20241024BHJP
C10M 159/24 20060101ALN20241024BHJP
C10M 135/20 20060101ALN20241024BHJP
C10M 159/22 20060101ALN20241024BHJP
C10M 133/16 20060101ALN20241024BHJP
C10M 133/56 20060101ALN20241024BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20241024BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20241024BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M129/08
C10M159/24
C10M135/20
C10M159/22
C10M133/16
C10M133/56
C10N10:04
C10N40:04
C10N30:06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526645
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 IB2022060589
(87)【国際公開番号】W WO2023079475
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイス、ケビン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スケルトン、シェルビー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヒューロン、ジョージ ディー.
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB04C
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BE11C
4H104BF03C
4H104BG03C
4H104BG15A
4H104BH03A
4H104CB14A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB06C
4H104DB07C
4H104FA02
4H104LA03
4H104PA03
(57)【要約】
本出願は、機能性流体またはEV流体に関する。機能性流体は、主要量の潤滑粘度の油と、少なくとも1種の過塩基性スルホン酸塩清浄剤と、抗疲労添加剤とを含んでもよい。機能性流体またはEV流体は、驚くべき予期せぬ疲労特性を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性流体またはEV流体であって、
(a)主要量の潤滑粘度の油と、
(b)2~20個の炭素原子を有するアルキルポリオールを含む抗疲労添加剤と、
(c)少なくとも1種の過塩基性スルホン酸塩清浄剤とを含み、
前記抗疲労添加剤の量が、前記機能性流体またはEV流体の総重量に基づいて、約0.001重量%~約1.5重量%である、前記機能性流体またはEV流体。
【請求項2】
前記少なくとも1種の過塩基性スルホン酸塩清浄剤が高過塩基性スルホン酸カルシウムである、請求項1に記載の機能性流体またはEV流体。
【請求項3】
約40mmol以下のカルシウムを提供する量で存在する硫化カルシウムフェネート清浄剤をさらに含む、請求項1に記載の機能性流体またはEV流体。
【請求項4】
前記機能性流体が少なくとも1種の分散剤添加剤をさらに含む、請求項1に記載の機能性流体またはEV流体。
【請求項5】
前記少なくとも1種の分散剤添加剤が、エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミドである、請求項4に記載の機能性流体またはEV流体。
【請求項6】
少なくとも1種の耐摩耗添加剤をさらに含む、請求項1に記載の機能性流体またはEV流体。
【請求項7】
前記少なくとも1種の耐摩耗添加剤がジアルキルジチオリン酸亜鉛である、請求項6に記載の機能性流体またはEV流体。
【請求項8】
前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛が第一級アルコールから誘導される、請求項7に記載の機能性流体またはEV流体。
【請求項9】
前記抗疲労添加剤が、グリセロール、トリグリセロール、1,2,4-ブタントリオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、ジグリセロール、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール、ミオイノシトール、メソエリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、D-(+)-キシロース、D-(+)-グルコース、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、またはポリビニルアルコールである、請求項1に記載の機能性流体またはEV流体。
【請求項10】
前記機能性流体またはEV流体が、前記機能性流体またはEV流体の総重量に基づいて3重量%以下のジチオリン酸亜鉛を含む、請求項1に記載の機能性流体またはEV流体。
【請求項11】
金属表面を機能性流体またはEV流体と接触させることを含む、軸受の疲労時間を増加させる方法であって、前記機能性流体またはEV流体が、
(a)主要量の潤滑粘度の油と、
(b)2~20個の炭素原子を有するアルキルポリオールを含む抗疲労添加剤と、
(c)少なくとも1種の過塩基性スルホン酸塩清浄剤とを含み、前記抗疲労添加剤の量が約0.001重量%~約1.5重量%である、前記方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の過塩基性スルホン酸塩清浄剤が高過塩基性スルホン酸カルシウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記機能性流体またはEV流体が、約40mmol以下のカルシウムを提供する量で存在する硫化カルシウムフェネート清浄剤をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記機能性流体またはEV流体が、少なくとも1種の分散剤添加剤をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記抗疲労添加剤が、グリセロール、トリグリセロール、1,2,4-ブタントリオール、1,1,1,-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、ジグリセロール、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール、ミオイノシトール、メソエリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、D-(+)-キシロース、D-(+)-グルコース、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、またはポリビニルアルコールである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記機能性流体またはEV流体が、前記機能性流体またはEV流体の総重量に基づいて3重量%未満のジチオリン酸亜鉛を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
ハイブリッド自動車またはプラグインハイブリッド自動車用の潤滑油組成物であって、
(a)主要量の潤滑粘度の油と、
(b)2~20個の炭素原子を有するアルキルポリオールを含む抗疲労添加剤と、
(c)少なくとも1種の過塩基性スルホン酸塩清浄剤とを含み、
前記抗疲労添加剤の量が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約1.5重量%である、前記潤滑油組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の過塩基性スルホン酸塩清浄剤が高過塩基性スルホン酸カルシウムである、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
前記潤滑油組成物が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、3重量%以下のジチオリン酸亜鉛を含む、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
前記潤滑油組成物が、約40mmol以下のカルシウムを提供する量のカルシウムフェネート清浄剤を含む、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Kevin J.Chase、Shelby A.Skelton及びGeorge D.Huron
本開示は、疲労に対する保護を強化する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の潤滑油配合物は、多くの場合、相手先商標製品の製造業者によって設定された厳密な仕様に従って配合される。このような仕様を満たすために、潤滑粘度の基油とともに様々な添加剤が使用される。用途に応じて、典型的な潤滑油組成物には、ほんの数例を挙げると、分散剤、清浄剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、防錆剤、腐食防止剤、発泡防止剤、及び摩擦調整剤が含まれる場合がある。
【0003】
様々な用途によって、潤滑油組成物に使用される添加剤の種類が決まる。例えば、従来の路上自動車の潤滑剤は、多くの場合、特定の耐摩耗仕様を満たすことが要求されるが、通常、抗疲労性能については同様の要件がない。しかしながら、他の潤滑油組成物は、抗疲労特性の向上によって利益を得る可能性がある。これらには、例えば、過酷な耐荷重環境で使用される機能性流体及び電気自動車(EV)流体が含まれる。このような環境では、金属表面は、材料の表面疲労強度を超える繰り返し荷重及び接触応力によって引き起こされる孔食または空洞の形成を特に受けやすくなる。
【0004】
機能性流体は、限定されるものではないが、トラクター油圧作動液、動力伝達液(自動変速機液(ATF)、トラクション液、無段変速機(CVT)液及び手動変速機液を含む)、油圧作動液(トラクター油圧作動液、ギア油、パワーステアリング液、風力タービンに使用される液、及びパワートレーン部品に関連する液を含む)を含む様々な流体を包含する用語である。例えば、自動変速機液などのこれらの流体のそれぞれには、様々な変速機が異なる設計を有するため、様々な異なる種類の流体が存在し、著しく異なる機能特性の流体が必要となることに留意すべきである。
【0005】
トラクター油圧作動液に関しては、これらの流体は、エンジンの潤滑を除くトラクター内のあらゆる潤滑油用途に使用される汎用製品である。いわゆるスーパートラクターオイルユニバーサル流体または「STOU」流体もエンジンを潤滑する。これらの潤滑用途には、ギアボックス、パワーテイクオフ及びクラッチ(複数可)、後車軸、減速ギア、湿式ブレーキ、及び油圧アクセサリの潤滑が含まれ得る。トラクター流体内に含まれる成分は、最終的に得られる流体組成物が様々な用途で要求されるすべての必要な特性を提供するように慎重に選択しなければならない。そのような特性には、油浸ブレーキの湿式ブレーキチャターを防止するための適切な摩擦特性を提供すると同時に、湿式ブレーキを作動させて動力取出(PTO)クラッチ性能を提供する能力が含まれる場合がある。トラクター流体は、耐水性/濾過性だけでなく、十分な耐摩耗性、抗疲労性、及び極圧特性を提供しなければならない。一例として、トラクター流体を配合するための既存のアプローチは一般に、高レベルの硫黄含有フェネートを使用して、流体に十分な抗疲労特性を提供する。
【0006】
現在、硫黄含有フェネートのレベルが低減された潤滑油組成物が必要とされていることが認識されている。また、そのような組成物が、軸受の疲労保護の許容限界を維持しながら、及び/または厳しい疲労仕様要件を満たしながら、機能性流体(例えば、建設機械)、電気自動車、ハイブリッド自動車(プラグインハイブリッドを含む)などに使用できれば望ましいであろう。有利には、本出願に記載される組成物は、前述のニーズのうちの1つ以上及びそれ以上を満たす。
【発明の概要】
【0007】
特に、本出願は、強化された抗疲労特性を特徴とする潤滑剤添加剤(「抗疲労添加剤」)組成物に関する。いくつかの実施形態では、抗疲労添加剤は、本明細書に記載されるような潤滑油組成物に強化された抗疲労特性を付与する。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、抗疲労特性を提供するために典型的に使用される比較的低レベルの硫黄含有化合物を含む。これらの硫黄含有化合物には、硫化高過塩基性フェネート及びジチオリン酸亜鉛が含まれる。
【0008】
より具体的には、本出願は、0.001%~1.5%の抗疲労添加剤及びスルホン酸塩清浄剤を含む潤滑油組成物に関する。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、改善された疲労保護及び性能を提供するために、低レベルの金属硫黄含有フェネート(例えば、金属硫化フェネートからの約40mmol以下の金属、例えば、35mmol以下、30mmol以下、25mmol以下、20mmol以下、10mmol以下、及び0mmol)を含む。潤滑油組成物は、グリセロールの添加により、硫黄含有添加剤のレベルが低くても改善された疲労性能を示す。本明細書に記載の組成物は、多くの場合、材料疲労の軽減につながる。この組成物はまた、軸受の形成面疲労、微小孔食もしくは表面下疲労、及び/または孔食の低減を達成することもできる。
【0009】
一実施形態では、本出願は、(a)主要量の潤滑粘度の油と、(b)2~20個の炭素原子を含むアルキルポリオールまたはその誘導体を含む抗疲労添加剤と、(c)少なくとも1種の高過塩基性スルホン酸塩清浄剤及び少なくとも1種の非スルホン酸塩清浄剤とを含む機能性流体またはEV流体に関する。別の実施形態では、抗疲労添加剤の量は、機能性流体またはEV流体の総重量に基づいて、約0.001重量%~約1.5重量%である。別の実施形態では、抗疲労添加剤は、ZF軸受孔食試験で測定したときに、抗疲労添加剤を含まない同等の流体よりも機能性流体またはEV流体の疲労時間を増加させる量で添加される。別の実施形態では、機能性流体またはEV流体は、軸受の疲労時間を増加させる方法に使用することができ、上記方法は、金属表面を機能性流体またはEV流体と接触させることを含む。
【0010】
一実施形態では、本出願は、(a)主要量の潤滑粘度の油と、(b)2~20個の炭素原子を含むアルキルポリオールまたはその誘導体を含む抗疲労添加剤と、(c)少なくとも1種の高過塩基性スルホン酸塩清浄剤及び少なくとも1種の非スルホン酸塩清浄剤とを含むハイブリッド自動車用流体またはプラグインハイブリッド自動車用流体に関する。別の実施形態では、抗疲労添加剤の量は、ハイブリッド自動車用流体またはプラグインハイブリッド自動車用流体の総重量に基づいて、約0.001重量%~約1.5重量%である。別の実施形態では、抗疲労添加剤は、ZF軸受孔食試験で測定したときに、抗疲労添加剤を含まない同等の流体よりもハイブリッド自動車用流体またはプラグインハイブリッド自動車用流体の疲労時間を増加させる量で添加される。別の実施形態では、ハイブリッド自動車用流体またはプラグインハイブリッド自動車用流体は、軸受の疲労時間を増加させる方法に使用することができ、上記方法は、金属表面をハイブリッド自動車用流体またはプラグインハイブリッド自動車用流体と接触させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
以下の用語は、本明細書全体を通じて使用され、別段の指示がない限り、以下の意味を有する。
【0012】
基油の「主要量」という用語は、基油の量が潤滑油組成物の少なくとも40重量%であることを指す。いくつかの実施形態では、基油の「主要量」は、潤滑油組成物の50重量%超、60重量%超、70重量%超、80重量%超、または90重量%超の基油の量を指す。
【0013】
以下の説明において、本明細書に開示されるすべての数値は、用語「約」または「およそ」がそれに関連して使用されるか否かにかかわらず、近似値である。それらには、1%、2%、5%、または、場合によっては10~20%のばらつきがある場合がある。
【0014】
「建設機械」という用語は、掘削機、ブルドーザー、ローダー、チップスプレッダ、舗装機、圧縮機及びクレーンを含むがこれらに限定されないオフロード大型車両及びオフロード車両及び/または機械を指す。
【0015】
「HOB」は、活性物質ベースでTBNが250を超える高過塩基性を指し、「LOB」は、活性物質ベースでTBNが100未満の低過塩基性を指す。
【0016】
「TPP」は、テトラプロペニルフェノールまたはその塩を指す。
【0017】
「全塩基価」または「TBN」という用語は、油サンプル中のアルカリ度のレベルを指し、これは、ASTM規格No.D2896または同等の手順に従って、組成物が腐食性酸を中和し続ける能力を示す。この試験では導電率の変化を測定し、その結果をmgKOH/g(1グラムの生成物を中和するのに必要なKOHの等価ミリグラム数)として表す。したがって、高いTBNは生成物が強い過塩基性であることを反映し、その結果、酸を中和するための塩基の貯蔵量が多いことを示す。
【0018】
本明細書で使用される場合、EV流体は、湿式EVモーターを備えた電気自動車に使用される電気駆動流体を指す。電気駆動流体はトランスミッション液(従来の車両で使用される)に類似しているが、通常は1つ以上の機能が追加されている(例えば、EVモーターの冷却剤として機能し、電気抵抗を提供するなど)。1つ以上の追加機能により、EV流体の配合に独特の課題が生じる可能性がある。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明の潤滑油組成物は、電気モーターを備えたハイブリッド自動車(ハイブリッド自動車用流体)またはプラグインハイブリッド自動車(プラグインハイブリッド自動車用流体)に抗疲労効果を提供することができる。
【0020】
潤滑粘度の油
本明細書に開示される潤滑油組成物は、一般に、少なくとも1種の潤滑粘度の油を含む。当業者に知られている任意の基油を、本明細書に開示される潤滑粘度の油として使用することができる。潤滑油組成物を調製するのに適したいくつかの基油は、Mortier et al.,「Chemistry and Technology of Lubricants」,2nd Edition,London,Springer,Chapters 1 and 2(1996)、A.Sequeria,Jr.,「Lubricant Base Oil and Wax Processing」,New York,Marcel Decker,Chapter 6,(1994)、及びD.V.Brock,Lubrication Engineering,Vol.43,pages 184-5,(1987)に記載されており、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。一般に、潤滑油組成物中の基油の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約70~約99.5重量%であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物中の基油の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約75~約99重量%、約80~約98.5重量%、または約80~約98重量%である。
【0021】
特定の実施形態では、基油は、任意の天然もしくは合成潤滑基油留分であるか、またはそれを含む。合成油のいくつかの非限定的な例としては、エチレンなどの少なくとも1つのアルファ-オレフィンの重合から、またはフィッシャー・トロプシュ法などの一酸化炭素及び水素ガスを使用する炭化水素合成手順から調製されるポリアルファオレフィンまたはPAOなどの油が挙げられる。特定の実施形態では、基油は、基油の総重量に基づいて、約10重量%未満の1つ以上の重質留分を含む。重質留分とは、100℃で少なくとも約20cStの粘度を有する潤滑油留分を指す。特定の実施形態では、重質留分は、100℃で少なくとも約25cStまたは少なくとも約30cStの粘度を有する。さらなる実施形態では、基油中の1つ以上の重質留分の量は、基油の総重量に基づいて、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約1重量%未満、または約0.1重量%未満である。さらなる実施形態では、基油は重質留分を含まない。
【0022】
特定の実施形態では、潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の基油を含む。いくつかの実施形態では、基油は、100℃で約2.5センチストークス(cSt)~約20cSt、約4センチストークス(cSt)~約20cSt、または約5cSt~約16cStの動粘度を有する。本明細書に開示される基油または潤滑油組成物の動粘度は、参照により本明細書に組み込まれるASTM D 445に従って測定することができる。
【0023】
他の実施形態では、基油は、ベースストックもしくはベースストックのブレンドであるか、またはそれを含む。さらなる実施形態では、ベースストックは、抽出、溶媒精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化、及び再精製を含むがこれらに限定されない様々な異なるプロセスを使用して製造される。いくつかの実施形態では、ベースストックは再精製ストックを含む。さらなる実施形態では、再精製ストックは、製造、汚染、または以前の使用によって導入された物質を実質的に含まないものとする。
【0024】
いくつかの実施形態では、基油は、American Petroleum Institute(API) Publication 1509,Fourteen Edition,December 1996(すなわち、API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils)(参照により本明細書に組み込まれる)に指定されている1つ以上のグループI~V中の1つ以上のベースストックを含む。APIガイドラインでは、ベースストックを、様々な異なるプロセスを使用して製造され得る潤滑剤成分として定義している。グループI、II及びIIIのベースストックは、鉱油であり、それぞれが特定の範囲の飽和物量、硫黄含有量及び粘度指数を有する。グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックは、グループI、II、III、またはIVに含まれない他のすべてのベースストックを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、基油は、グループI、II、III、IV、V、またはそれらの組み合わせ中の1つ以上のベースストックを含む。他の実施形態では、基油は、グループII、III、IVまたはそれらの組み合わせ中の1つ以上のベースストックを含む。さらなる実施形態では、基油は、グループII、III、IVまたはそれらの組み合わせ中の1つ以上のベースストックを含み、ここで、基油は、100℃で約2.5センチストークス(cSt)~約20cSt、約4cSt~約20cSt、または約5cSt~約16cStの動粘度を有する。
【0026】
基油は、潤滑粘度の天然油、潤滑粘度の合成油、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、基油には、合成ワックス及びスラックワックスの異性化によって得られるベースストック、並びに原油の芳香族成分及び極性成分を(溶媒抽出ではなく)水素化分解することによって生成される水素化分解ベースストックが含まれる。他の実施形態では、潤滑粘度の基油には、天然油、例えば、動物油、植物油、鉱油(例えば、液体石油及びパラフィン系、ナフテン系または混合パラフィン-ナフテン系の溶媒処理または酸処理鉱油)、石炭または頁岩由来の油、及びそれらの組み合わせが含まれる。動物油のいくつかの非限定的な例としては、骨油、ラノリン、魚油、ラード油、イルカ油、アザラシ油、サメ油、獣脂油、及び鯨油が挙げられる。植物油のいくつかの非限定的な例としては、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、菜種油、コーン油、ごま油、綿実油、大豆油、ひまわり油、ベニバナ油、大麻油、亜麻仁油、桐油、オイチシカ油、ホホバ油、及びメドウフォーム油が挙げられる。このような油は、部分的にまたは完全に水素化されていてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、潤滑粘度の合成油には、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば、重合及び共重合オレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体及び同族体などが含まれる。他の実施形態では、合成油には、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー及びそれらの誘導体が含まれ、ここで末端ヒドロキシル基は、エステル化、エーテル化などによって修飾することができる。さらなる実施形態では、合成油には、ジカルボン酸と様々なアルコールとのエステルが含まれる。特定の実施形態では、合成油には、C5~C12モノカルボン酸並びにポリオール及びポリオールエーテルから製造されたエステルが含まれる。さらなる実施形態では、合成油には、リン酸トリ-n-ブチル及びリン酸トリ-イソ-ブチルなどのリン酸トリアルキルエステル油が含まれる。
【0028】
いくつかの実施形態では、潤滑粘度の合成油には、シリコンベースの油(ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-、ポリアリールオキシ-シロキサン油及びケイ酸塩油など)が含まれる。他の実施形態では、合成油には、リン含有酸の液体エステル、高分子テトラヒドロフラン、ポリアルファオレフィンなどが含まれる。
【0029】
ワックスの水素化異性化から誘導される基油も、単独で、または前述の天然及び/または合成基油と組み合わせて使用することができる。このようなワックス異性化油は、天然もしくは合成ワックスまたはそれらの混合物を水素異性化触媒上で水素異性化することにより生成される。
【0030】
さらなる実施形態では、基油は、ポリ-アルファ-オレフィン(PAO)を含む。一般に、ポリ-アルファ-オレフィンは、約2~約30個、約4~約20個、または約6~約16個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンから誘導することができる。好適なポリ-アルファ-オレフィンの非限定的な例としては、オクテン、デセン、それらの混合物などから誘導されるものが挙げられる。これらのポリ-アルファ-オレフィンは、100℃で約2~約15、約3~約12、または約4~約8センチストークスの粘度を有し得る。場合によっては、ポリ-アルファ-オレフィンは、鉱油などの他の基油と共に使用することができる。
【0031】
さらなる実施形態では、基油は、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体を含み、ここでポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシル基は、エステル化、エーテル化、アセチル化などによって修飾されてもよい。好適なポリアルキレングリコールの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプロピレングリコール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリアルキレングリコール誘導体の非限定的な例としては、ポリアルキレングリコールのエーテル(例えば、ポリイソプロピレングリコールのメチルエーテル、ポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)、ポリアルキレングリコールのモノカルボン酸エステル及びポリカルボン酸エステル、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。場合によっては、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体は、ポリ-アルファ-オレフィン及び鉱油などの他の基油と共に使用することができる。
【0032】
さらなる実施形態では、基油は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)とのエステルのいずれかを含む。これらのエステルの非限定的な例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステルなどが挙げられる。
【0033】
さらなる実施形態では、基油は、フィッシャー・トロプシュ法によって調製された炭化水素を含む。フィッシャー・トロプシュ法では、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して水素及び一酸化炭素を含有するガスから炭化水素を調製する。これらの炭化水素を基油として使用するには、さらなる処理が必要な場合がある。例えば、当業者に公知の方法を使用して、炭化水素を脱蝋、水素異性化、及び/または水素化分解することができる。
【0034】
さらなる実施形態では、基油は、未精製油、精製油、再精製油、またはそれらの混合物を含む。未精製油は、さらなる精製処理なしに天然源または合成源から直接得られる油である。未精製油の非限定的な例としては、レトルト操作から直接得られるシェール油、一次蒸留から直接得られる石油、及びエステル化プロセスから直接得られ、さらなる処理なしで使用されるエステル油が挙げられる。精製油は、未精製油と類似しており、ただし、前者は1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製プロセスによってさらに処理されている。溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸出などの多くのそのような精製プロセスは当業者に知られている。再精製油は、精製油を得るために使用されるプロセスと類似するプロセスを精製油に適用することによって得られる。そのような再精製油は、再生油または再処理油としても知られ、多くの場合、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を目的としたプロセスによってさらに処理される。
【0035】
抗疲労添加剤
本明細書の潤滑油組成物は、抗疲労添加剤を含有する。抗疲労添加剤はアルキルポリオールであり、ここで、アルキルポリオールは、2~20個の炭素原子、例えば、2~19個の炭素原子、2~18個の炭素原子、2~17個の炭素原子、2~16個の炭素原子、2~15個の炭素原子、2~14個の炭素原子、2~13個の炭素原子、2~12個の炭素原子、2~11個の炭素原子、2~10個の炭素原子、2~9個の炭素原子、及び2~8個の炭素原子を有する。アルキルポリオールは、2個以上のアルコール基、例えば、3個以上のアルコール基、4個以上のアルコール基、及び5個以上のアルコール基を含む。本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、特に指定しない限り、C1~C20の飽和直鎖、分岐、環状、第一級、第二級、または第三級炭化水素を含む。
【0036】
好適なアルキルポリオールとしては、グリセロール、エチレングリコール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、1,2,4-ブタントリオール、1,1,1,-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、メソエリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ペンタエリスリトール、及びポリビニルアルコールが挙げられる。好適な環状アルキルポリオールとしては、ミオイノシトール、D-(+)-キシロース、及びD-(+)-グルコースが挙げられる。他のアルキルポリオールとしては、ジグリセロール、トリグリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジペンタエリスリトール、及びトリペンタエリスリトールなどのアルコールエーテルが挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態では、アルキルポリオールは、ZF軸受孔食試験によると、アルキルポリオールを含まない同等の流体よりも潤滑油組成物の疲労時間を増加させる量で潤滑油組成物に添加される。
【0038】
抗疲労添加剤の正確な量は、油の組成及び量または潤滑粘度、特定の清浄剤及び量、並びに潤滑油組成物の他の所望の特性に応じて変化する可能性がある。いくつかの実施形態では、抗疲労添加剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.001、または少なくとも約0.05、または少なくとも約0.1、または少なくとも約0.3、または少なくとも約0.4、または少なくとも約0.4、または少なくとも約0.5、または少なくとも約0.75、または少なくとも約1.0重量%から最大約1.5、または最大約1.25、または最大約1.0、または最大約0.9、または最大約0.8重量%である。
【0039】
清浄剤
潤滑油組成物は金属スルホン酸塩清浄剤を含む。金属は、スルホン酸塩清浄剤の製造に適した任意の金属であり得る。好適な金属の非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属が挙げられる。いくつかの実施形態では、金属はCa、Mg、Ba、K、Na、Liなどである。
【0040】
一般に、清浄剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約10重量%、約0.05重量%~約3重量%、または約0.1重量%~約1重量%である。
【0041】
任意に、潤滑油組成物は、当該技術分野で一般的に知られている追加の清浄剤を含んでもよい。いくつかの好適な清浄剤は、Mortier et al.,「Chemistry and Technology of Lubricants」,2nd Edition,London,Springer,Chapter 3,pages 75-85(1996)及びLeslie R.Rudnick,「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」,New York,Marcel Dekker,Chapter 4,pages 113-136(2003)に記載されており、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。これらの清浄剤の例としては、フェネート、サリチレート、ホスホネートなどが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、清浄剤は、高過塩基性スルホン酸カルシウムなどの少なくとも1種の高過塩基性(活性物質ベースでTBNが250を超える)スルホン酸塩清浄剤を含む。
【0043】
過塩基性金属清浄剤は一般に、炭化水素、清浄酸(例えば、スルホン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキルなど)、金属酸化物または水酸化物(例えば、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)、及び促進剤(キシレン、メタノール及び水など)の混合物を炭酸化することによって生成される。例えば、過塩基性スルホン酸カルシウムを調製する場合、炭酸化において、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムがガス状二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを形成する。スルホン酸を過剰のCaOまたはCa(OH)2で中和して、スルホン酸塩を形成する。
【0044】
一般的に言えば、過塩基性清浄剤は、低過塩基性(LOB)、例えば、活性物質ベースでTBNが100未満の過塩基性塩であってもよい。一態様では、低過塩基性塩のTBNは約10~約100であり得る。別の態様では、低過塩基性塩のTBNは約10~約80であり得る。過塩基性清浄剤は、中過塩基性(MOB)、例えば、活性物質ベースでTBNが約100~約250の過塩基性塩であってもよい。一態様では、中過塩基性塩のTBNは約100~約200であり得る。別の態様では、中過塩基性塩のTBNは約125~約175であり得る。過塩基性清浄剤は、高過塩基性(HOB)、例えば、活性物質ベースでTBNが250を超える過塩基性塩であってもよい。一態様では、高過塩基性塩のTBNは、活性物質ベースで約250~約800であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、低レベルの硫黄含有カルシウムフェネート(例えば、硫化フェネートからの約40mmol以下のCa、例えば35mmol以下、30mmol以下、25mmol以下、20mmol以下、10mmol以下、5mmol以下及び0mmol)を含む。
【0046】
他の添加剤
任意に、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の任意の望ましい特性を付与または改善することができる少なくとも1種の添加剤または改質剤(以下、「添加剤」と称する)をさらに含んでもよい。当業者に知られている任意の添加剤を、本明細書に開示される潤滑油組成物に使用することができる。いくつかの好適な添加剤は、Mortier et al.,「Chemistry and Technology of Lubricants」,2nd Edition.London,Springer,(1996)及びLeslie R.Rudnick,「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」,New York,Marcel Dekker(2003)に記載されており、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、添加剤は、酸化防止剤、耐摩耗剤、清浄剤、防錆剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、多機能性添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、発泡防止剤、金属不活性化剤、分散剤、腐食防止剤、潤滑性向上剤、熱安定性向上剤、曇り止め添加剤、着氷防止剤、染料、マーカー、静電気消散剤、殺生物剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0047】
添加剤の特に好適な組み合わせは、上記の量の抗疲労添加剤、エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミドなどの分散剤添加剤、第一級アルコールから誘導されるもののようなジアルキルジチオリン酸亜鉛などの耐摩耗添加剤、及び少なくとも1種の高過塩基性スルホン酸塩清浄剤(例えば、高過塩基性スルホン酸カルシウム)を含む上記の清浄剤組成物を含む。任意に、潤滑油組成物は追加の清浄剤(例えばフェネート清浄剤)を含んでもよい。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、またはそれらの組み合わせであり、また、潤滑油組成物の3重量%以下(例えば、0.1~1.5重量%、または0.5~1.0重量%)で存在し得る。エチレンカーボネート後処理ビススクシンイミドなどの分散剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、0.1~10重量%(例えば、0.5~8、0.7~7、0.7~6、0.7~6、0.7~5、0.7~4重量%)で存在し得る。
【0048】
一般に、潤滑油組成物中の添加剤のそれぞれの濃度は、使用される場合、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%の範囲であってもよい。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲であってもよい。
【0049】
耐摩耗剤
任意に、本明細書に開示される潤滑油組成物は、1種以上の耐摩耗剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、硫黄含有耐摩耗組成物を含まないか、または実質的に含まない。
【0050】
耐摩耗剤により金属部品の摩耗が軽減される。好適な耐摩耗剤としては、以下の構造のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)などのジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩が挙げられ、
Zn[S-P(=S)(OR1)(OR2)]2
ここで、R1及びR2は、1~18個(例えば、2~12個)の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリール、及び脂環式基などの基を含む同じまたは異なるヒドロカルビル基であってもよい。R1及びR2基として特に好ましいのは、2~8個の炭素原子を有するアルキル基である(例えば、アルキル基は、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシルであり得る)。油溶性を得るために、炭素原子の総数(すなわち、R1+R2)は、少なくとも5である。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、またはそれらの組み合わせである。ZDDPは、潤滑油組成物の3重量%以下(例えば、0.1~1.5重量%、または0.5~1.0重量%)で存在し得る。
【0051】
分散剤
任意に、本明細書に開示される潤滑油組成物は、分散剤をさらに含むことができる。分散剤は、エンジン運転中の酸化によって生じる油に不溶な物質を懸濁液中に保持し、したがってスラッジの凝集及び金属部品への沈殿または堆積を防止する。本明細書で有用な分散剤としては、ガソリン及びディーゼルエンジンでの使用時に堆積物の形成を低減するのに効果的であることが知られている窒素含有無灰(金属を含まない)分散剤が挙げられる。好適な分散剤としては、ヒドロカルビルスクシンイミド、ヒドロカルビルスクシンアミド、ヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ヒドロカルビル置換コハク酸のヒドロキシエステル、並びにヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒド及びポリアミンのマンニッヒ縮合生成物が挙げられる。ポリアミンとヒドロカルビル置換フェニル酸との縮合生成物も好適である。これらの分散剤の混合物も使用することができる。
【0052】
塩基性窒素含有無灰分散剤は周知の潤滑油添加剤であり、それらの調製方法は特許文献に広く記載されている。好ましい分散剤は、アルケニルスクシンイミド及びスクシンアミドであり、ここでアルケニル-置換基は好ましくは炭素原子数が40を超える長鎖である。これらの材料は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸材料をアミン官能基を含有する分子と反応させることによって容易に製造される。好適なアミンの例は、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミン及びポリオキシアルキレンポリアミンなどのポリアミンである。当該技術分野で知られているように、分散剤は、(例えば、ホウ素化剤、エチレンカーボネート、または環状カーボネートを使用して)後処理することができる。窒素含有無灰(金属を含まない)分散剤は塩基性であり、追加の硫酸灰分を導入することなく、当該分散剤が添加される潤滑油組成物のTBNに寄与する。分散剤は、活性物質レベルに基づいて、潤滑油組成物の0.1~10重量%(例えば、0.5~8、0.7~7、0.7~6、0.7~6、0.7~5、0.7~4重量%)で存在し得る。分散剤からの窒素は、完成油中の分散剤の重量に基づいて、0.0050~0.30重量%超(例えば、0.0050~0.10重量%、0.0050~0.080重量%、0.0050~0.060重量%、0.0050~0.050重量%、0.0050~0.040重量%、0.0050~0.030重量%超)で存在する。
【0053】
酸化防止剤
任意に、本明細書に開示される潤滑油組成物は、基油の酸化を低減または防止することができる追加の酸化防止剤をさらに含むことができる。当業者に知られている任意の酸化防止剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、アミン系酸化防止剤(例えば、アルキルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキルまたはアラルキル置換フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化p-フェニレンジアミン、テトラメチル-ジアミノジフェニルアミンなど)、フェノール系酸化防止剤(例えば、2-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-ジ-tert-ブチル-o-クレゾール)など)、硫黄系酸化防止剤(例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、硫化フェノール系酸化防止剤など)、リン系酸化防止剤(例えば、亜リン酸塩など)、ジチオリン酸亜鉛、油溶性銅化合物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。酸化防止剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%で変化し得る。いくつかの好適な酸化防止剤は、Leslie R.Rudnick,「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」,New York.Marcel Dekker,Chapter 1,pages 1-28(2003)に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
摩擦調整剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、可動部品間の摩擦を低下させることができる摩擦調整剤を任意に含むことができる。当業者に知られている任意の摩擦調整剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な摩擦調整剤の非限定的な例としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル、ホウ酸エステル、アミド、金属塩など)、モノ、ジ、またはトリアルキル置換リン酸またはホスホン酸、モノ、ジ、またはトリアルキル置換リン酸またはホスホン酸の誘導体(例えば、エステル、アミド、金属塩など)、モノ、ジ、またはトリアルキル置換アミン、モノまたはジアルキル置換アミド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、脂肪族アミン、エトキシル化脂肪族アミン、脂肪族カルボン酸アミド、エトキシル化脂肪族エーテルアミン、脂肪族カルボン酸、グリセロールエステル、脂肪族カルボン酸エステルアミド、脂肪族イミダゾリン、脂肪族第三級アミンからなる群から選択され、ここで、脂肪族または脂肪族基は、化合物を適切に油溶性にするために約8個を超える炭素原子を含む。他の実施形態では、摩擦調整剤は、脂肪族コハク酸または無水物をアンモニアまたは第一級アミンと反応させることによって形成される脂肪族置換スクシンイミドを含む。摩擦調整剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%で変化し得る。いくつかの好適な摩擦調整剤は、Mortier et al.,「Chemistry and Technology of Lubricants」,2nd Edition,London,Springer,Chapter 6,pages 183-187(1996)及びLeslie R.Rudnick,「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」,New York,Marcel Dekker,Chapters 6 and 7,pages 171-222(2003)に記載されており、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
流動点降下剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、潤滑油組成物の流動点を低下させることができる流動点降下剤を任意に含むことができる。当業者に知られている任意の流動点降下剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な流動点降下剤の非限定的な例としては、ポリメタクリル酸、アクリル酸アルキルポリマー、メタクリル酸アルキルポリマー、フタル酸ジ(テトラ-パラフィンフェノール)、テトラ-パラフィンフェノールの縮合物、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリアルキルスチレンなどを含む。流動点降下剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%で変化し得る。いくつかの好適な流動点降下剤は、Mortier et al.,「Chemistry and Technology of Lubricants」,2nd Edition,London,Springer,Chapter 6,pages 187-189(1996)及びLeslie R.Rudnick,「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」,New York,Marcel Dekker,Chapter 11,pages 329-354(2003)に記載されており、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
抗乳化剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、水または蒸気にさらされる潤滑油組成物中の油-水分離を促進することができる抗乳化剤を任意に含むことができる。当業者に知られている任意の抗乳化剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な抗乳化剤の非限定的な例としては、陰イオン界面活性剤(例えば、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩など)、非イオン性アルコキシル化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドのポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーなど)、油溶性酸のエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。抗乳化剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%で変化し得る。いくつかの好適な抗乳化剤は、Mortier et al.,「Chemistry and Technology of Lubricants」,2nd Edition.London,Springer,Chapter 6,pages 190-193(1996)に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
発泡防止剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、油中の泡を破壊することができる発泡防止剤または消泡剤を任意に含むことができる。当業者に知られている任意の発泡防止剤または消泡剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な消泡剤の非限定的な例としては、シリコーン油またはポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、アルコキシル化脂肪酸、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、分岐ポリビニルエーテル、アクリル酸アルキルポリマー、メタクリル酸アルキルポリマー、ポリアルコキシアミン及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、消泡剤は、モノステアリン酸グリセロール、パルミチン酸ポリグリコール、モノチオリン酸トリアルキル、スルホン化リシノール酸のエステル、ベンゾイルアセトン、サリチル酸メチル、モノオレイン酸グリセロール、またはジオレイン酸グリセロールを含む。消泡剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約5重量%、約0.05重量%~約3重量%、または約0.1重量%~約1重量%で変化し得る。いくつかの好適な消泡剤は、Mortier et al.,「Chemistry and Technology of Lubricants」,2nd Edition,London,Springer,Chapter 6,pages 190-193(1996)に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
腐食防止剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、腐食を低減することができる腐食防止剤を任意に含むことができる。当業者に知られている任意の腐食防止剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な腐食防止剤の非限定的な例としては、ドデシルコハク酸の半エステルまたはアミド、リン酸エステル、チオリン酸、アルキルイミダゾリン、サルコシン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。腐食防止剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約5重量%、約0.05重量%~約3重量%、または約0.1重量%~約1重量%で変化し得る。いくつかの好適な腐食防止剤は、Mortier et al.,「Chemistry and Technology of Lubricants」,2nd Edition,London,Springer,Chapter 6,pages 193-196(1996)に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
極圧剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、極圧条件下で摺動する金属表面の焼き付きを防止することができる極圧(EP)剤を任意に含むことができる。当業者に知られている任意の極圧剤を潤滑油組成物に使用することができる。一般に、極圧剤は、金属と化学的に結合して、高荷重下で対向する金属表面の凹凸の溶着を防止する表面膜を形成することができる化合物である。好適な極圧剤の非限定的な例としては、硫化動物性または植物性脂肪または油、硫化動物性または植物性脂肪酸エステル、リンの三価または五価の酸の完全にまたは部分的にエステル化されたエステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化ディールス・アルダー付加物、硫化ジシクロペンタジエン、脂肪酸エステルとモノ不飽和オレフィンの硫化または共硫化混合物、脂肪酸、脂肪酸エステル及びアルファ-オレフィンの共硫化ブレンド、官能置換ジヒドロカルビルポリスルフィド、チアアルデヒド、チアケトン、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、テルペンと非環式オレフィンの共硫化ブレンド、ポリスルフィドオレフィン製品、リン酸エステルまたはチオリン酸エステルのアミン塩、及びそれらの組み合わせが挙げられる。極圧剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約5重量%、約0.05重量%~約3重量%、または約0.1重量%~約1重量%で変化し得る。いくつかの好適な極圧剤は、Leslie R.Rudnick,「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」,New York,Marcel Dekker,Chapter 8,pages 223-258(2003)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
防錆剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、鉄金属表面の腐食を抑制することができる防錆剤を任意に含むことができる。当業者に知られている任意の防錆剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な防錆剤の非限定的な例としては、油溶性モノカルボン酸(例えば、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、セロチン酸など)、油溶性ポリカルボン酸(例えば、トール油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸などから製造されるもの)、アルケニル基が10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸(例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸など)、600~3000ダルトンの範囲の分子量を有する長鎖アルファ,オメガ-ジカルボン酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。防錆剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%で変化し得る。
【0061】
好適な防錆剤の他の非限定的な例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、及びモノオレイン酸ポリエチレングリコールなどの非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤が挙げられる。好適な防錆剤のさらなる非限定的な例としては、ステアリン酸及び他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、及びリン酸エステルが挙げられる。
【0062】
多機能性添加剤
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、少なくとも1種の多機能性添加剤を含む。好適な多機能性添加剤のいくつかの非限定的な例としては、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン-モリブデン錯体化合物、及び硫黄含有モリブデン錯体化合物が挙げられる。
【0063】
粘度指数向上剤
特定の実施形態では、潤滑油組成物は少なくとも1種の粘度指数向上剤を含む。好適な粘度指数向上剤のいくつかの非限定的な例としては、ポリメタクリル酸系ポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、スチレン-イソプレンコポリマー、水和スチレン-イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン、及び分散剤型粘度指数向上剤が挙げられる。
【0064】
金属不活性化剤
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は少なくとも1種の金属不活性化剤を含む。好適な金属不活性化剤のいくつかの非限定的な例としては、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、及びメルカプトベンズイミダゾールが挙げられる。
【0065】
添加剤濃縮製剤
本明細書に開示される添加剤は、2種以上の添加剤を有する添加剤濃縮物の形態であり得る。添加剤濃縮物は、好適な希釈剤、例えば、適切な粘度の炭化水素油を含んでもよい。そのような希釈剤は、天然油(例えば、鉱油)、合成油及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。鉱油のいくつかの非限定的な例としては、パラフィン系油、ナフテン系油、アスファルト系油、及びそれらの組み合わせが挙げられる。合成基油のいくつかの非限定的な例としては、ポリオレフィン油(特に水素化アルファ-オレフィンオリゴマー)、アルキル化芳香族、ポリアルキレンオキシド、芳香族エーテル、カルボン酸エステル(特にジエステル油)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、希釈剤は、天然または合成の軽質炭化水素油である。一般に、希釈油は、40℃で約13センチストークス~約35センチストークスの粘度を有し得る。
【0066】
一般に、希釈剤は潤滑油可溶性添加剤を容易に可溶化し、潤滑油基油ストックまたは燃料に容易に可溶な油添加剤濃縮物を提供することが望ましい。さらに、希釈剤は、例えば、高揮発性及び高粘度を含む任意の望ましくない特性、並びにヘテロ原子などの不純物を潤滑基油ストックに、ひいては、最終的に完成した潤滑油または燃料に導入しないことが望ましい。
【0067】
本出願はさらに、不活性希釈剤と、全濃縮物に基づいて2.0重量%~90重量%、好ましくは10重量%~50重量%の本出願による油溶性添加剤組成物とを含む油溶性添加剤濃縮組成物を提供する。
【0068】
上述の添加剤を含む機能性流体は、軸受の疲労時間を増加させる方法に使用することができ、上記方法は、金属表面を機能性流体と接触させることを含む。
【0069】
以下の実施例は、実施形態を例示するために提示されるが、本出願を記載された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。別段の指示がない限り、すべての部及びパーセンテージは重量基準である。すべての数値は近似値である。数値範囲が与えられる場合、記載された範囲外の実施形態も依然として本出願の範囲内に含まれ得ることを理解すべきである。各実施例で記載されている特定の詳細は、必要な特徴として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0070】
以下の実施例は、例示のみを目的としており、決して範囲を限定するものではない。
【0071】
ZF軸受孔食試験
ZF仕様03C軸受孔食試験0000 702 232を使用して軸受性能を評価する。本試験では、FE 8スラストころ軸受を使用し、軸力は68kN、回転数は300rpmである。温度は100℃である。本試験では、故障までの時間を測定し、振動が激しくなり、金属片が軸受または軸受と接触するケースから外れると故障と判断され、FE8試験装置が自動的に停止する。除去された金属は軸受またはケース内にピットを残す。ZF 03C仕様の試験に合格するためには、故障までの最小時間は300時間である。試験を実施できる最大時間は750時間である。ZF軸受孔食試験は、Assmann Laboratories,Aachen,Germanyから入手できる。
【0072】
ベースライン配合物
ベースライン配合物は以下を含む。
(i)1重量%のエチレンカーボネートでキャップされた分散剤、
(ii)7.3重量%のリンを含有する第一級アルコールから誘導された1.28重量%のジチオリン酸亜鉛の油濃縮物、
(iii)0.79重量%のCaスルホン酸塩清浄剤の320 TBN油濃縮物、
(iv)0.5重量%の流動点降下剤、
(v)0.6重量%のシール膨潤添加剤、
(vi)0.04重量%の発泡防止剤、
(vii)残部の粘度10WのグループII基油。
【0073】
比較例A
上記のベースライン配合物を使用して、1.46重量%(35mmol Ca)のTBN 263の硫化高過塩基性カルシウムフェネートを添加して比較例Aを調製した。
【0074】
比較例B
上記のベースライン配合物を使用して、1.88重量%(45mmol Ca)のTBN 263の高度に硫化された過塩基性カルシウムフェネートを添加して比較例Bを調製した。
【0075】
比較例C
上記のベースライン配合物を使用して、2.29重量%(55mmol Ca)のTBN 263の高度に硫化された過塩基性カルシウムフェネートを添加して比較例Cを調製した。
【0076】
表1は、比較例A、B、及びCをまとめたものである。表1はまた、グリセロールが存在しない場合、ZF FE 8軸受孔食試験に合格するためには、閾値量の硫化フェネート清浄剤が必要であることも示す。硫化フェネートの量を増やすと、ZF試験の結果が改善された。
【表1】
【0077】
実施例1~6
上記のベースライン配合物を使用して、1.46重量%(35mmol Ca)のTBN 263の硫化高過塩基性カルシウムフェネートを添加して潤滑油組成物を調製した。グリセロールを、以下の表2に示す重量%で配合物に添加した。
【表2】
【0078】
表2は、非常に低い処理速度でグリセロールを添加すると、驚くべきことに、そして予想外に、硫化フェネートの閾値レベル未満でもZF FE 8軸受孔食試験に合格することができたことを示す。グリセロール処理速度を増加させると、ZF試験の性能はZF試験の最大時間(750時間)まで大幅に向上した。
【0079】
実施例7
上記のベースライン配合物を使用して、1.04重量%(25mmol Ca)のTBN 263の高度に硫化された過塩基性カルシウムフェネート及び0.25重量%のグリセロールを添加して実施例7を調製した。
【0080】
実施例8
上記のベースライン配合物を使用して、0.42重量%(10mmol Ca)のTBN 263の高度に硫化された過塩基性カルシウムフェネート及び0.25重量%のグリセロールを添加して実施例8を調製した。
【0081】
実施例9
上記のベースライン配合物を使用して、0.25重量%のグリセロールを添加して実施例9を調製した。
【0082】
実施例10
上記のベースライン配合物を使用して、0.20重量%のグリセロールを添加して実施例10を調製した。
【0083】
実施例11
上記のベースライン配合物を使用して、0.15重量%のグリセロールを添加して実施例11を調製した。
【0084】
実施例12
上記のベースライン配合物を使用して、0.10%重量%のグリセロールを添加して実施例12を調製した。
【0085】
実施例13
上記のベースライン配合物を使用して、0.05重量%のグリセロールを添加して実施例13を調製した。
【0086】
実施例14
上記のベースライン配合物を使用して、0.03重量%のグリセロールを添加して実施例14を調製した。
【0087】
【0088】
表3に示すように、グリセロールを添加すると、硫化フェネートの処理速度が非常に低い場合、または硫化フェネートがまったく存在しない場合でも、ZF FE 8軸受孔食試験に合格することができる。実際、非常に少量のグリセロール及び硫化フェネートの完全な除去によって最大のZF試験性能を達成することができる。
【0089】
実施例15~19
ジチオリン酸亜鉛の存在なしに、上記のベースライン配合物を使用して、表4に示す重量%のグリセロールを添加して実施例15~19を調製した。
【0090】
驚くべきことに、少量のジチオリン酸亜鉛を含有するサンプル、またはジチオリン酸亜鉛が存在しないサンプルでも、軸受の孔食結果の改善が観察された。これらのサンプルでは、グリセロールが本質的に唯一の抗疲労成分である。これは、グリセロールの量が非常に少ない場合(例えば、グリセロールが0.05%まで)でも観察された。
【0091】
表4に示すように、特に低い処理速度での等量のグリセロールにより、ZF FE 8軸受孔食試験で最大750時間の性能が得られた。また、例えば、実施例13を0.05重量%のグリセロール及び1.28%ジチオリン酸亜鉛と比較すると、252時間の不合格結果が得られたが、同等の亜鉛を含まない実施例19では、最大750時間の合格結果が得られた。
【表4】
【0092】
本明細書に開示された実施形態に対して様々な修正を加えることができることが理解されるであろう。したがって、上記の説明は、限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の実施形態の単なる例示として解釈されるべきである。例えば、上記で説明され、動作のために実装された機能は、例示のみを目的としている。当業者であれば、本出願の範囲及び精神から逸脱することなく、他の構成及び方法を実施することができる。さらに、当業者は、本明細書に添付の特許請求の範囲及び精神の範囲内で他の修正を想到するであろう。
【国際調査報告】