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特表2024-540319肺粘膜炎症の処置のための低分子量ヒアルロン酸の使用
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  • 特表-肺粘膜炎症の処置のための低分子量ヒアルロン酸の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】肺粘膜炎症の処置のための低分子量ヒアルロン酸の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/728 20060101AFI20241024BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K31/728
A61K31/573
A61P11/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526661
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2022080807
(87)【国際公開番号】W WO2023079072
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21306554.3
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】505296810
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ランス・シャンパーニュ-アルデンヌ
(71)【出願人】
【識別番号】504169485
【氏名又は名称】アグロ アンデュストリー ルシェルシュ エ デヴロップマン(アー.エール.デー.)
【氏名又は名称原語表記】AGRO INDUSTRIE RECHERCHES ET DEVELOPPEMENTS(A.R.D.)
(71)【出願人】
【識別番号】524162826
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニヴェルシテール・ドゥ・ランス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE REIMS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】コロー,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】ルチカ,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ポーレット,ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】アダム,ダミアン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086EA25
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZC75
(57)【要約】
嚢胞性線維症又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性炎症性呼吸器疾患では、細胞及び機能のバランスが破壊されている可能性があり、その結果として、扁平上皮化生及び/又は基底細胞若しくは分泌細胞の過形成の存在を伴う上皮再形成又は再構築領域が生じる。したがって、肺粘膜炎症を処置することが可能な薬物を特定する必要性がある。本発明者らは、驚くべきことに、15,000~50,000ダルトンの低分子量のヒアルロン酸(HA)が、肺粘膜炎症に対して抗炎症特性を有することを示す。したがって、本発明は、15,000~50,000ダルトンの低分子量を有するヒアルロン酸の治療有効量を対象に投与することを含む、嚢胞性線維症又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っている対象における肺粘膜炎症を処置する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
15,000~50,000ダルトンの低分子量を有するヒアルロン酸の治療有効量を対象に投与することを含む、嚢胞性線維症又は慢性閉塞性肺疾患を患っている対象における肺粘膜炎症を処置する方法。
【請求項2】
嚢胞性線維症を患っている対象が、F508del-CFTR、R117H CFTR及びG551D CFTRを含むがそれらに限定されないCFTR遺伝子における少なくとも1つの変異を保有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
肺粘膜炎症が、肺感染症、特にウイルス感染症から生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象が、COVID-19を患っている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ヒアルロン酸が、塩の形態で対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記塩が、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム、アルミニウム又はアンモニウムの塩であり、使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ヒアルロン酸が、ナトリウム塩の形態で使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ヒアルロン酸が、分泌細胞の分化を調節する;ムチン分泌の調節に関与する;かつ/又は、CFTRを介した、特に、F508del/F508del変異CFTRを介した、塩化物イオンの分泌をモジュレートする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ヒアルロン酸が、副腎皮質ステロイドと組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
副腎皮質ステロイドが、フルニソリド、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、デフラザコート及びベタメタゾンからなる群より選択され、副腎皮質ステロイドが、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、ベクロメタゾンジプロピオナート、ブデソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルニソリド、フルチカゾンプロピオナート、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、ベタメタゾンジプロピオナート、ベタメタゾンバレラート、デソニド、デスオキシメタゾン、フルオシノロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、クロベタゾールプロピオナート、及びデキサメタゾンである、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、医薬の分野、特に、呼吸器学における発明である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
呼吸上皮は、外部環境と永続的に接触しており、総交換表面積はおよそ100~130m2である。非病理学的な場合、呼吸上皮は、吸入を通じて、上皮病変を誘発する可能性のある様々な病原体又は粒子に継続的に曝されている。これらの病変に直面すると、気道上皮は、そのすべての機能、特にその防御及びバリア機能を取り戻すために、修復及び再生機構を通じてその完全性を回復することができるはずである。よって、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息又はアレルギーなどの慢性炎症性呼吸器疾患では、細胞及び機能のバランスが破壊されている可能性があり、その結果として、扁平上皮化生及び/又は基底細胞若しくは分泌細胞の過形成の存在を伴う上皮再形成又は再構築領域が生じる。したがって、肺粘膜炎症を処置することが可能な薬物を特定する必要性がある。
【0003】
ヒアルロン酸(HA)は、結合組織、上皮組織及び神経組織全体に広く分布しているアニオン性の非硫酸化グリコサミノグリカンである。様々なヒアルロン酸の供給源が存在し、典型的には、細菌源(例えば、ストレプトコッカス・ズーエピデミクス(Streptococcus zooepidemicus)由来)が挙げられるが、鳥類源(例えば、鶏冠由来)及びウシ源(例えば、ウシ硝子体液由来)も挙げられる。HAは、炎症反応に関与するが、その役割は、その分子量に依存していると言われている。実際、高分子量(HMW)HAは、抗炎症性及び免疫抑制的な役割を有する一方、HAオリゴ糖(o-HA)と呼ばれるより小さな断片は、炎症誘発性及び免疫刺激性である(HUANG, T., CHAN, Y., CHENG, P., YOUNG, Y., LOU, P.et YOUNG, T. Increased mucociliary differentiation of human respiratory epithelial cells on hyaluronan-derivative membranes. Acta biomaterialia. 2010a. Vol.6, n 3, p.1191-1199.;OCHOA, C., GARG, H., HALES, C. et QUINN, D. Low molecular weight hyaluronan, via AP-1 and NF-κB signalling, induces IL-8 in transformed bronchial epithelial cells. Swiss medical weekly. 2011. Vol.141, p.13255.;RUPPERT, S., HAWN, T., ARRIGONI, A., WIGHT, T. et BOLLYKY, P. Tissue integrity signals communicated by high-molecular weight hyaluronan and the resolution of inflammation. Immunologic research. 2014. Vol.58, n 2-3, p.186-192.)。軟骨細胞に対して、HA及びレスベラトロールゲルが、病原体のLPS誘導炎症を阻害し、IL-1β分泌を低減させることが示されている(SHEU, S., CHEN, W., SUN, J., LIN, F. et WU, T. Biological characterization of oxidized hyaluronic acid/resveratrol hydrogel for cartilage tissue engineering. Journal of biomedical materials research. Part A. 2013. Vol.101, n 12, p.3457-3466.)。ENaCチャネルのβサブユニットを発現するホモ接合F508del-CFTRマウスでの最近の研究から、高分子量HA溶液の吸入が、TNF-α及びMIP-2(マクロファージ炎症性タンパク質-2)などの炎症誘発性サイトカインのタンパク質発現の減少によって具体化された、抗炎症効果を発揮することが実証された(GAVINA, M., LUCIANI, A., VILLELLA, V., ESPOSITO, S., FERRARI, E., BRESSANI, I., CASALE, A., BRUSCIA, E., MAIURI, L. et RAIA, V. Nebulized hyaluronan ameliorates lung inflammation in cystic fibrosis mice. Pediatric pulmonology. 2013. Vol.48, n 8, p.761-771.)。
【0004】
国際公開第2004050187号及び国際公開第2009024677号は、上気道の呼吸器疾患の処置のための30,000~45,000ダルトンの低分子量のHAの薬学的使用を開示している。特に、国際公開第2004050187号は、前記HAが、上皮を修復することに、また呼吸器粘液表面特性を変化させて繊毛活動によるその輸送を促進することに適している可能性があることを教示している。国際公開第2009024677号は、上皮への攻撃後の結合複合体の防御機能を回復させるための前記HAの使用を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要:
本発明は、特許請求の範囲によって定義される。特に、本発明は、肺粘膜炎症を処置する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の詳細な説明:
本発明者らは、驚くべきことに、15,000~50,000ダルトンの低分子量のHAが、炎症性疾患(例えば、嚢胞性線維症又はCOPD)を患っている対象の肺粘膜炎症に対して抗炎症特性を有することを示す。
【0007】
したがって、本発明の第一の目的は、15,000~50,000ダルトンの低分子量を有するヒアルロン酸の治療有効量を対象に投与することを含む、嚢胞性線維症又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っている対象における肺粘膜炎症を処置する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】気液界面(ALI)で培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞をバイコンパートメントチャンバー内に播種し、液液条件でコンフルエンスに達するまで培養した。コンフルエンス時に、上部チャンバーからの培養培地を除去して、上皮細胞分化に有利に働く気液界面(ALI)を作製した。ALI作製から、異なる処置(15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~30kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-30kDa)(Sigma Aldrich)又は30~50kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 30-50kDa)(Sigma Aldrich))を、1mg/mLで、基底チャンバー内の培養培地に加えた。培養培地を週3回新たに供給した。ALIで15日目、培養培地を、いかなる処置も行わずに新鮮培地に交換した。4時間後、この培養培地を収集し、ELISAアッセイによってIL-8含有量を判定した。n=5名の異なるF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図2】単層として培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)で24時間処置した。その後、細胞を、Cytomixと、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、又は1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~30kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-30kDa)(Sigma Aldrich)若しくは30~50kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 30-50kDa)(Sigma Aldrich)とを含有する組み合わせで、以降24時間処置した。最後に、培養培地を収集し、ELISAアッセイによってIL-8含有量を判定した。n=7名の異なるF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図3】単層として培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)と、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~30kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-30kDa)(Sigma Aldrich)、又は30~50kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 30-50kDa)(Sigma Aldrich)とを含有する組み合わせで、24時間処置した。次に、培養培地を収集し、IL-8含有量を判定した。n=7名のF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図4】気液界面(ALI)で培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞をバイコンパートメントチャンバー内に播種し、液液条件でコンフルエンスに達するまで培養した。コンフルエンス時に、上部チャンバーからの培養培地を除去して、上皮細胞分化に有利に働く気液界面(ALI)を作製した。ALI作製から、異なる処置(15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム(HA-Ca 15-45kDa;ARD)、又は15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(HA-K 15-45kDa;ARD))を、1mg/mLで、基底チャンバー内の培養培地に加えた。培養培地を週3回新たに供給した。ALIで15日目、培養培地を、いかなる処置も行わずに新鮮培地に交換した。4時間後、この培養培地を収集し、ELISAアッセイによってIL-8含有量を判定した。n=4名の異なるF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図5】単層として培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)で24時間処置した。その後、細胞を、Cytomixと、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、又は1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム(HA-Ca 15-45kDa;ARD)若しくは15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(HA-K 15-45kDa;ARD)とを含有する組み合わせで、以降24時間処置した。最後に、培養培地を収集し、IL-8含有量を判定した。n=7名の異なるF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図6】単層として培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)と、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、又は1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム(HA-Ca 15-45kDa;ARD)若しくは15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(HA-K 15-45kDa;ARD)とを含有する組み合わせで、24時間処置した。次に、培養培地を収集し、IL-8含有量を判定した。n=7名の異なるF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図7】気液界面(ALI)で培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞をバイコンパートメントチャンバー内に播種し、液液条件でコンフルエンスに達するまで培養した。コンフルエンス時に、上部チャンバーからの培養培地を除去して、上皮細胞分化に有利に働く気液界面(ALI)を作製した。ALI作製から、15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)を、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL及び2mg/mLで、基底チャンバー内の培養培地に加えた。培養培地を週3回新たに供給した。ALIで15日目、培養培地を、いかなる処置も行わずに新鮮培地に交換した。4時間後、この培養培地を収集し、ELISAアッセイによってIL-8含有量を判定した。n=3名の異なるF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図8】気液界面(ALI)で培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌されたムチンMUC-5BのELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞をバイコンパートメントチャンバー内に播種し、液液条件でコンフルエンスに達するまで培養した。コンフルエンス時に、上部チャンバーからの培養培地を除去して、上皮細胞分化に有利に働く気液界面(ALI)を作製した。ALI作製から、異なる処置(15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~30kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-30kDa)(Sigma Aldrich)、又は30~50kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 30-50kDa)(Sigma Aldrich))を、1mg/mLで、基底チャンバー内の培養培地に加えた。培養培地を週3回新たに供給した。ALIで15日目及びALIで25日目、上部チャンバー内の培養液を、いかなる処置も行わずに、PBS、次に、少量の新鮮培地ですすぎ、上皮の先端部と接触させた。4時間後、この先端培養培地を収集し、ELISAアッセイによってMUC-5B含有量を判定した。n=3名の異なるF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図9】気液界面(ALI)で培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌されたムチンMUC-5BのELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞をバイコンパートメントチャンバー内に播種し、液液条件でコンフルエンスに達するまで培養した。コンフルエンス時に、上部チャンバーからの培養培地を除去して、上皮細胞分化に有利に働く気液界面(ALI)を作製した。ALI作製から、異なる処置(15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム(HA-Ca 15-45kDa;ARD)、又は15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(HA-K 15-45kDa;ARD))を、1mg/mLで、基底チャンバー内の培養培地に加えた。培養培地を週3回新たに供給した。ALIで15日目及びALIで25日目、上部チャンバー内の培養液を、いかなる処置も行わずに、PBS、次に、少量の新鮮培地ですすぎ、上皮の先端部と接触させた。4時間後、この先端培養培地を収集し、ELISAアッセイによってMUC-5B含有量を判定した。n=3名の異なるF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図10】気液界面(ALI)で培養したF508del/F508del CFヒト気道上皮細胞によって分泌されたムチンMUC-5BのELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞をバイコンパートメントチャンバー内に播種し、液液条件でコンフルエンスに達するまで培養した。コンフルエンス時に、上部チャンバーからの培養培地を除去して、上皮細胞分化に有利に働く気液界面(ALI)を作製した。ALI作製から、15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)を、2mg/mL、1mg/mL又は0.5mg/mLで、基底チャンバー内の培養培地に加えた。培養培地を週3回新たに供給した。ALIで15日目及びALIで25日目、上部チャンバー内の培養液を、いかなる処置も行わずに、PBS、次に、少量の新鮮培地ですすぎ、上皮の先端部と接触させた。4時間後、この先端培養培地を収集し、ELISAアッセイによってMUC-5B含有量を判定した。n=3名の異なるF508del/F508del CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図11】気液界面(ALI)で培養した非CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞をバイコンパートメントチャンバー内に播種し、液液条件でコンフルエンスに達するまで培養した。コンフルエンス時に、上部チャンバーからの培養培地を除去して、上皮細胞分化に有利に働く気液界面(ALI)を作製した。ALI作製から、異なる処置(15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~30kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-30kDa)(Sigma Aldrich)、又は30~50kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 30-50kDa)(Sigma Aldrich))を、1mg/mLで、基底チャンバー内の培養培地に加えた。培養培地を週3回新たに供給した。ALIで15日目、培養培地を、いかなる処置も行わずに新鮮培地に交換した。4時間後、この培養培地を収集し、ELISAアッセイによってIL-8含有量を判定した。n=1名の非CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図12】単層として培養した非CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)で24時間処置した。その後、細胞を、Cytomixと、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~30kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-30kDa)(Sigma Aldrich)、又は30~50kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 30-50kDa)(Sigma Aldrich)とを含有する組み合わせで、以降24時間処置した。最後に、培養培地を収集し、ELISAアッセイによってIL-8含有量を判定した。n=8名の異なる非CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図13】単層として培養した非CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)と、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~30kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-30kDa)(Sigma Aldrich)、又は30~50kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 30-50kDa)(Sigma Aldrich)とを含有する組み合わせで、24時間処置した。次に、培養培地を収集し、IL-8含有量を判定した。n=8名の異なる非CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図14】気液界面(ALI)で培養した非CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞をバイコンパートメントチャンバー内に播種し、液液条件でコンフルエンスに達するまで培養した。コンフルエンス時に、上部チャンバーからの培養培地を除去して、上皮細胞分化に有利に働く気液界面(ALI)を作製した。ALI作製から、異なる処置(15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム(HA-Ca 15-45kDa;ARD)又は15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(HA-K 15-45kDa;ARD))を、1mg/mLで、基底チャンバー内の培養培地に加えた。培養培地を週3回新たに供給した。ALIで15日目、培養培地を、いかなる処置も行わずに新鮮培地に交換した。4時間後、この培養培地を収集し、ELISAアッセイによってIL-8含有量を判定した。n=1名の非CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図15】単層として培養した非CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)で24時間処置した。その後、細胞を、Cytomixと、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム(HA-Ca 15-45kDa;ARD)、又は15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(HA-K 15-45kDa;ARD)とを含有する組み合わせで、以降24時間処置した。最後に、培養培地を収集し、IL-8含有量を判定した。n=8名の異なる非CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図16】単層として培養した非CFヒト気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)と、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム(HA-Ca 15-45kDa;ARD)、又は15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(HA-K 15-45kDa;ARD)とを含有する組み合わせで、24時間処置した。次に、培養培地を収集し、IL-8含有量を判定した。n=8名の異なる非CF患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図17】単層として培養したヒトCOPD気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)で24時間処置した。その後、細胞を、Cytomixと、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~30kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-30kDa)(Sigma Aldrich)、又は30~50kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 30-50kDa)(Sigma Aldrich)とを含有する組み合わせで、以降24時間処置した。最後に、培養培地を収集し、ELISAアッセイによってIL-8含有量を判定した。n=5名の異なるCOPD患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図18】単層として培養したヒトCOPD気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)と、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~30kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-30kDa)(Sigma Aldrich)、又は30~50kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 30-50kDa)(Sigma Aldrich)とを含有する組み合わせで、24時間処置した。次に、培養培地を収集し、IL-8含有量を判定した。n=5名のCOPD患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図19】単層として培養したヒトCOPD気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)で24時間処置した。その後、細胞を、Cytomixと、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、又は1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム(HA-Ca 15-45kDa;ARD)若しくは15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(HA-K 15-45kDa;ARD)とを含有する組み合わせで、以降24時間処置した。最後に、培養培地を収集し、IL-8含有量を判定した。n=5名の異なるCOPD患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
図20】単層として培養したヒトCOPD気道上皮細胞によって分泌された炎症誘発性ケモカインIL-8のELISAアッセイによる測定。気道上皮細胞を48ウェルプレート内に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。次に、細胞を、Cytomix(Cy)と呼ばれる炎症誘発性ケモカインカクテル(TNFα、IL1β及びIFNγ;各10ng/mL)と、抗炎症性デキサメタゾン(Dexa;10-6M)、1mg/mLの15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)(ARD-Pomacle-France-国際公開第2004050187号に従って調製される)、15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム(HA-Ca 15-45kDa;ARD)、又は15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(HA-K 15-45kDa;ARD)とを含有する組み合わせで、24時間処置した。次に、培養培地を収集し、IL-8含有量を判定した。n=5名の異なるCOPD患者。p<0.001(***);p<0.01(**);p<0.05()。ns:有意でない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、齧歯類、ネコ、イヌ及び霊長類などの哺乳動物のことを表す。特に、本発明に係る対象は、ヒトである。用語「対象」は、用語「患者」を包含する。
【0010】
本明細書において使用される場合、用語「炎症」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、局所反応及び結果として生じる形態学的変化、傷害性材料の破壊又は除去、並びに修復及び治癒を導く応答を含めた、物理的、化学的又は生物学的作用因子(例えば、細菌、ウイルス…)によって引き起こされる傷害又は異常な刺激に応答して組織で起こる動的な細胞学的及び組織学的反応群からなる基礎的な病理学的過程を説明するために使用される。炎症のいわゆる主徴候は、腫れ、疼痛、そして、ある特定の場合には、標的器官の機能の阻害又は喪失である。腫れは、通常、鬱血及び滲出から起こり;神経末端の圧迫(又は伸長)並びに浸透圧及びpHの変化は、顕著な疼痛を招く恐れがあり;機能の妨害は、解剖学的部位又は器官の運動障害又は実破壊をもたらし得る。いくつかの態様では、炎症は、肺路、とりわけ肺に限局しており、本発明の方法によって良好に処置される。とりわけ、口腔粘膜、例えば、頬及び舌下;鼻粘膜;肺粘膜;気管支粘膜に限局している炎症が、本発明の方法によって良好に処置される。
【0011】
本明細書において使用される場合、表現「肺粘膜炎症」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、肺粘膜の腫れ又は刺激作用のことを指す。使用される場合、用語「粘膜」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、粘液を分泌し、上皮で覆われた、体腔を覆う湿った組織を意味する。
【0012】
いくつかの態様では、対象は、呼吸器系を冒し、典型的には嚢胞性線維症及び慢性閉塞性肺疾患を含む、粘膜の炎症性疾患を患っている。
【0013】
したがって、いくつかの態様では、対象は、嚢胞性線維症を患っている。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「嚢胞性線維症」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、嚢胞性線維症膜貫通コンダクター制御因子(CFTR)をコードする遺伝子に対する変異を伴う遺伝性の常染色体疾患のことを指す。本発明の方法は、例えば、嚢胞性線維症の世界保健機構分類において改訂され、E84グループから選択されるあらゆる種類の嚢胞性線維症:ムコビシドーシス、肺症状を伴う嚢胞性線維症、腸症状を伴う嚢胞性線維症及び他の症状を伴う嚢胞性線維症に対して実施され得る。いくつかの態様では、対象は、F508del-CFTR、R117H CFTR及びG551D CFTRを含むがそれらに限定されないCFTR遺伝子における少なくとも1つの変異を保有する(CFTR変異については、例えば、http://www.genet.sickkids.on.ca/cftrを参照のこと)。
【0015】
いくつかの態様では、対象は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っている。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「COPD」は、慢性閉塞性肺疾患のことを指す。用語「COPD」は、一般的に、気管支気流の持続的な閉塞を特徴とする慢性呼吸器疾患過程に適用される。COPD患者は、気管支炎又は肺気腫などの病態を患っている可能性がある。
【0017】
いくつかの態様では、肺粘膜炎症は、肺感染症から生じ得る。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「肺感染症」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、病原微生物による患者の肺組織への侵入、それらの増殖、並びにそれらの微生物及びそれらが産生する毒素に対する肺組織の反応を意味する。いくつかの態様では、患者は、慢性肺感染症を患っている。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「慢性感染症」は、顕性、非顕性又は潜伏感染症であり得る長期感染症のことを指す。いくつかの態様では、患者は、急性肺感染症を患っている。
【0020】
いくつかの態様では、肺感染症は、細菌性肺炎などの細菌感染症である。
【0021】
いくつかの態様では、細菌感染症は、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌とも称される)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルス・パラインフルエンゼ(Haemophilus parainfluenzae)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、ボルデテラ・パータシス(Bordatella pertussis)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、シトロバクターファミリー由来の細菌、アシネトバクターファミリー由来の細菌、及びマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)又はマイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)からなる群より選択される細菌によって引き起こされる。いくつかの態様では、肺感染症は、真菌感染症である。いくつかの態様では、真菌感染症は、ヒストプラズマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jiroveci)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及びニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)(ニューモシスチス症とも呼ばれるニューモシスチス肺炎(PCP)を引き起こす)又はアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)からなる群より選択される真菌によって引き起こされる。いくつかの態様では、肺感染症は、ウイルス感染症、例えば、ウイルス性肺炎である。いくつかの態様では、ウイルス感染症は、インフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB)、呼吸器多核体ウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス(例えば、hPIV-1、hPIV-2、hPIV-3、hPIV-4)、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、単純ヘルペスウイルス、コロナウイルス(SARS-Cov1又はSARS-Cov2などのSARS-コロナウイルス)、及び天然痘からなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる。いくつかの態様では、ウイルス肺感染症は、ニューモウイルス科、パラミクソウイルス科及び/又はコロナウイルス科のメンバーによる可能性があり、特に、ヒト呼吸器多核体ウイルス(hRSV)A型及びB型、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)A型及びB型;パラインフルエンザウイルス3型(PIV-3)、麻疹ウイルス、エンデミックヒトコロナウイルス(HCoV-229E、-NL63、-OC43、及び-HKU1)、重症急性呼吸器症候群(SARS)並びに中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスによる上気道及び下気道感染症からなる群より選択される。特に、本発明の方法は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の処置に適する。より具体的には、本発明の方法は、COVID-19を患っている患者における肺粘膜炎症の処置に適する。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「処置」又は「処置する」は、疾患に罹るリスクのある又は疾患に罹っていると疑われる患者並びに病気である又は疾患若しくは医学的症状を患っていると診断された患者の処置を含めた、防止的又は予防的処置と治癒的又は疾患を根治する処置の両方のことを指し、臨床的再発の抑制を含む。処置は、医学的障害を有する対象又は最終的に障害を得る恐れのある対象に対して、障害又は再発性障害を予防、治癒、その発症を遅延、その重症度を低下、又はその1つ若しくは複数の症状を改善するために、あるいは対象の生存をそのような処置のない場合に予想される生存より延長させるために施行され得る。「治療レジメン」とは、病気の処置のパターン、例えば、治療中に使用される投薬のパターンのことを意味する。治療レジメンは、導入レジメンと維持レジメンを含み得る。語句「導入レジメン」又は「導入期間」は、疾患の初回処置に使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)のことを指す。導入レジメンの一般的な目標は、処置レジメンの初期期間に患者に高レベルの薬物を提供することである。導入レジメンは、(部分的又は全体的に)「負荷レジメン」を採用することができ、これは、維持レジメンの間に医師が採用するであろうよりも高用量の薬物を投与すること、維持レジメンの間に医師が投与するであろうよりもより頻繁に薬物を投与すること、又はその両方を含むことができる。語句「維持レジメン」又は「維持期間」は、例えば、患者を長期間(数ヶ月間又は数年間)寛解状態に保つために、病気の処置中に患者の維持に使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)のことを指す。維持レジメンは、持続的療法(例えば、薬物を規則的な間隔で、例えば、毎週、毎月、毎年など、投与すること)又は間欠療法(例えば、中断された処置、間欠処置、再発した際の処置、又は特定の所定の基準[例えば、疾患の兆候など]に到達した際の処置)を採用することができる。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「ヒアルロン酸」又は「HA」は、式:
【化1】

(式中、nは、繰り返し単位の数である)
を有する高分子のことを指す。細菌源及び鳥類源を含めたすべてのヒアルロン酸の供給源が本発明において有用である。しかしながら、細菌起源のヒアルロン酸が好ましい。本発明において有用なヒアルロン酸は、15,000~50,000ダルトンの分子量(「低分子量」)を有する。好ましくは、本発明のヒアルロン酸は、25,000ダルトンの分子量を有する。いくつかの態様では、本発明のヒアルロン酸は、塩の形態で対象に投与される。いくつかの態様では、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム、アルミニウム又はアンモニウムの塩が使用される。特に、本発明のヒアルロン酸は、ナトリウム塩の形態で使用される。ヒアルロン酸の商業的供給源として、典型的には、Sigma-Aldrichからのもの(例えば、CAS Number: 9067-32-7又はCAS Number: 9067-32-7)が挙げられる。
【0024】
「治療有効量」とは、任意の医学的処置に適用可能である妥当なベネフィット/リスク比の肺粘膜炎症の処置のために十分な本発明のHAの量のことを意味する。化合物の総1日使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されよう。任意の特定の対象に対する具体的な治療有効用量レベルは、対象の年齢、体重、全体的な健康、性別及び食事;投与の時間、投与の経路、及び用いられる具体的な化合物の排出の速度;処置の継続時間;用いられる具体的なポリペプチドと組み合わせて又は同時に使用される薬物;並びに医学技術分野において周知の類似の要因を含めた多種多様な要因に左右されよう。例えば、化合物の用量を所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、当技術分野の技能の周知の範囲内である。しかしながら、薬品の1日投与量は、1日当たり成人1人につき0.01~1,000mgの幅広い範囲にわたって変動し得る。好ましくは、組成物は、処置されるべき対象への投与量の対症調整(symptomatic adjustment)のために0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgの活性成分を含有する。医薬は、典型的には、約0.01mg~約500mgの活性成分、好ましくは、1mg~約100mgの活性成分を含有する。薬物の有効量は、通常、1日当たり0.0002mg/kg~約20mg/kg(体重)、とりわけ、1日当たり約0.001mg/kg~7mg/kg(体重)の投与量レベルで供給される。
【0025】
さらに、肺粘膜炎症の低減のために、本発明のヒアルロン酸の使用は、付加的効果を組み合わせることができる。特に、本発明のヒアルロン酸は、分泌細胞の分化を調節ことができ、したがって、ムチン分泌の調節に関与することができ、かつ、CFTRを介した、特に、F508del/F508del変異CFTRを介した、塩化物イオンの分泌をモジュレートすることができる。
【0026】
いくつかの態様では、ヒアルロン酸は、副腎皮質ステロイドと組み合わせて投与される。使用される場合、用語「副腎皮質ステロイド」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、抗炎症活性を備えた水素化されたシクロペントペルヒドロフェナントレン環系を有する活性成分のクラスのことを指す。副腎皮質ステロイド薬として、典型的には、コルチゾン、コルチゾール、ヒドロコルチゾン(11β,17-ジヒドロキシ,21-(ホスホノオキシ)-プレグナ-4-エン,3,20-ジオン ジナトリウム)、ジヒドロキシコルチゾン、デキサメタゾン(21-(アセチルオキシ)-9-フルオロ-1β,17-ジヒドロキシ-16α-m-エチルプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン)、及び高度に誘導体化されたステロイド薬、例えば、べコナーゼ(ベクロメタゾンジプロピオナート、これは、9-クロロ-11-β,17,21,トリヒドロキシ-16β-メチルプレグナ-1,4 ジエン-3,20-ジオン 17,21-ジプロピオナートである)が挙げられる。副腎皮質ステロイドの他の例としては、フルニソリド、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、デフラザコート及びベタメタゾンが挙げられ、副腎皮質ステロイドは、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、ベクロメタゾンジプロピオナート、ブデソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルニソリド、フルチカゾンプロピオナート、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、ベタメタゾンジプロピオナート、ベタメタゾンバレラート、デソニド、デスオキシメタゾン、フルオシノロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、クロベタゾールプロピオナート、及びデキサメタゾンである。
【0027】
典型的には、本発明の活性成分(すなわち、本発明のHA)は、薬学的組成物を形成するために、薬学的に許容し得る賦形剤、及び場合により生分解性高分子などの持続放出マトリックスと組み合わされる。用語「薬学的に」又は「薬学的に許容し得る」は、必要に応じて、哺乳動物、とりわけヒトに投与されたときに、有害な、アレルギー性の又は他の不都合な反応を生じることのない分子実体及び組成物のことを指す。薬学的に許容し得る担体又は賦形剤は、あらゆる種類の無毒の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料又は製剤化助剤のことを指す。担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物及び植物油を含有する、溶媒又は分散媒であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の抑制は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいだろう。注射組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に使用することによって達成することができる。本発明の薬学的組成物では、本発明の活性成分は、従来の薬学的支持体との混合物として、単位投与形態で投与することができる。好適な単位投与形態は、経口経路形態、例えば、錠剤、ジェルカプセル、粉末、顆粒及び経口懸濁液又は溶液、舌下及び頬投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下(subcutaneous)、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下(subdermal)、経皮、髄腔内及び鼻腔内投与形態並びに直腸投与形態を含む。いくつかの態様では、本発明の薬学的組成物は、局所的に(すなわち、対象の気道に)投与される。それゆえ、組成物は、スプレー、エアロゾル、溶液、乳濁液の形態、又は当業者に周知の他の形態で製剤化することができる。本発明の方法が組成物の鼻腔内投与を含む場合、組成物は、エアロゾル形態、スプレー、ミスト又は液滴の形態で製剤化することができる。特に、本発明に従って使用するための活性成分は、加圧パック又は噴霧器から、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適な気体)を使用してエアロゾルスプレー提示の形態で簡便に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。化合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、吸入器又は吹入器で使用するためのカプセル及びカートリッジ(例えば、ゼラチンから構成される)を製剤化することができる。
【0028】
本発明は、以下の図面及び実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いかなる方法でも、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0029】
嚢胞性線維症を患っている患者の気道上皮に対する15~50kDaのヒアルロン酸の抗炎症効果:
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮の再生及び分化中に抗炎症効果を示す(図1)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、対照条件と比較して、ヒトCF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(52%)を導き、Ha-Na 15-30kDa(57%の減少)及びHA-Na 30-50kDa(67.2%の減少)による処置もまた同様である。
【0030】
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮に対して治癒的な抗炎症効果を示す(図2)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、ヒトCF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(32.1%)を導き、HA-Na 15-30kDa(44.2%の減少)、HA-Na 30-50kDa(42.2%の減少)及び対照の抗炎症性デキサメタゾン(30.9%の減少)もまた同様である。
【0031】
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮に対して併用処置で抗炎症効果を示す(図3)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、ヒトCF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(33.9%)を導き、HA-Na 15-30kDa(40.2%の減少)、HA-Na 30-50kDa(30.1%の減少)及び対照の抗炎症性デキサメタゾン(21.4%の減少)もまた同様である。
【0032】
15~50kDaのヒアルロン酸は、そのナトリウム及びカルシウム形態で、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮の再生及び分化中に抗炎症効果を示す(図4)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、対照条件と比較して、ヒトCF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(55.5%)を導き、Ha-Ca 15-45kDa(59.25%の減少)による処置もまた同様である。
【0033】
15~50kDaのヒアルロン酸は、そのナトリウム及びカリウム形態で、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮に対して治癒的な抗炎症効果を示す(図5)。特に、15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na)による処置は、ヒトCF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(32.1%)を導き、デキサメタゾン(30.9%の減少)及び15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(47.5%の減少)もまた同様である。15~45kDaのヒアルロン酸カルシウムは、33.6%のIL-8分泌の有意でない減少を導く。
【0034】
15~50kDaのヒアルロン酸は、そのナトリウム及びカリウム形態で、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮に対して併用処置で抗炎症効果を示す(図6)。特に、15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)による処置は、ヒトCF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(33.9%)を導き、デキサメタゾン(21.4%の減少)及び15~45kDaのヒアルロン酸カリウム(30%の減少)もまた同様である。15~45kDaのヒアルロン酸カルシウムは、11.6%のIL-8分泌の有意でない減少を導く。
【0035】
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮の再生及び分化中に用量応答抗炎症効果を示す(図7)。特に、15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na)による処置は、2mg/mL(65%の減少)、1mg/mL(62%の減少)、0.5mg/mL(47.3%)でヒトCF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少を導くが、0.1mg/mLではもはや効果を有しない。
【0036】
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮の再生中にMUC-5Bムチン分泌の減少を導く(図8)。特に、HA-Na 30-50kDaによる処置は、対照条件と比較して、ヒトCF気道上皮細胞によるMUC-5B分泌の有意な減少(ALIで15日目:68.7%;ALIで25日目:67.1%)を導くが、HA-Na 15-45kDa及びHA-Na 15-30kDaによる処置は、MUC-5B分泌の有意でない減少(ALIで15日目:それぞれ、37.3%及び14.1%;ALIで25日目:それぞれ、33.2%及び17.3%)を導く。
【0037】
15~50kDaのヒアルロン酸は、そのナトリウム、カルシウム及びカリウム形態で、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮の再生中にMUC-5Bムチン分泌の減少を導く(図9)。特に、HA-Ca 15-45kDaによる処置は、対照条件と比較して、ALIで15日目にヒトCF気道上皮細胞によるMUC-5B分泌の有意な減少(85.5%の減少)を導き、ALIで25日目に有意でない減少(58.8%)を導く。HA-Na 15-45kDa及びHA-K 15-45kDaによる処置は、対照条件と比較して、ALIで15日目にMUC-5B分泌の有意でない減少(それぞれ、37.3%及び34.7%の減少)を導く。HA-Na 15-45kDaによる処置は、対照条件と比較して、ALIで25日目にヒトCF気道上皮細胞によるMUC-5B分泌の有意でない減少(33.2%の減少)を導く。
【0038】
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、F508del/F508delクラスII変異を保有するヒト嚢胞性線維症(CF)気道上皮の再生中にMUC-5Bムチン分泌の用量依存的な減少を導く(図10)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、対照条件と比較して、ALIで15日目及びALIで25日目に、2mg/mLでヒトCF気道上皮細胞によるMUC-5B分泌の有意な減少(それぞれ、97.9%及び81.2%の減少)を導き、1mg/mLでMUC-5B分泌の有意でない減少(ALIで15日目:37.3%の減少;ALIで25日目:33.2%の減少)を導くが、0.5mg/mLではいかなる効果も有しない。
【0039】
非CF患者の気道上皮に対する15~50kDaのヒアルロン酸の抗炎症効果:
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、非CF患者のヒト気道上皮の再生及び分化中に抗炎症効果を示す(図11)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、対照条件と比較して、ヒト非CF気道上皮細胞によるIL-8分泌の減少(69.7%)を導き、HA-Na 15-30(60.6%の減少)及びHA-Na 30-50kDa(66.6%の減少)による処置もまた同様である。
【0040】
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、肺の炎症を患っている非CF患者のヒト気道上皮に対して治癒的な抗炎症効果を示す(図12)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、ヒト非CF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(39.6%)を導き、HA-Na 15-30kDa(46.1%の減少)、HA-Na 30-50kDa(34.8%の減少)及び対照の抗炎症性デキサメタゾン(21.1%の減少)もまた同様である。
【0041】
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、肺の炎症を患っている非CF患者のヒト気道上皮に対して併用処置で抗炎症効果を示す(図13)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、ヒト非CF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(41.6%)を導き、HA-Na 15-30kDa(38.1%の減少)、HA-Na30-50kDa(32.1%の減少)及び対照の抗炎症性デキサメタゾン(33.9%の減少)もまた同様である。
【0042】
15~50kDaのヒアルロン酸は、そのナトリウム、カルシウム及びカリウム形態で、非CF患者のヒト気道上皮の再生及び分化中に抗炎症効果を示す(図14)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、対照条件と比較して、ヒト非CF気道上皮細胞によるIL-8分泌の減少(69.7%)を導き、Ha-Ca 15-45kDa(70.5%の減少)及びHA-K 15-45kDa(57.9%の減少)による処置もまた同様である。
【0043】
15~50kDaのヒアルロン酸は、そのナトリウム形態で、肺の炎症を患っている非CF患者のヒト気道上皮に対して治癒的な抗炎症効果を示す(図15)。特に、15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na)による処置は、ヒト非CF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(39.6%)を導き、デキサメタゾン(21.1%の減少)もまた同様である。15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム及び15~45kDaのヒアルロン酸カリウムは、IL-8分泌の有意でない減少(それぞれ、6.5%及び17.8%)を導く。
【0044】
15~50kDaのヒアルロン酸は、そのナトリウム形態で、肺の炎症を患っている非CF患者のヒト気道上皮に対して併用処置で抗炎症効果を示す(図16)。特に、15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)による処置は、ヒト非CF気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(41.6%)を導き、デキサメタゾン(33.9%の減少)もまた同様である。15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム及び15~45kDaのヒアルロン酸カリウムは、IL-8分泌の有意でない減少(それぞれ、8.5%及び22.2%)を導く。
【0045】
COPDを患っている患者の気道上皮に対する15~50kDaのヒアルロン酸の抗炎症効果:
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、COPD患者のヒト気道上皮に対して治癒的な抗炎症効果を示す(図17)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、ヒトCOPD気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(60.2%)を導き、HA-Na 15-30kDa(65%の減少)、HA-Na 30-50kDa(69.5%の減少)及び対照の抗炎症性デキサメタゾン(68.8%の減少)もまた同様である。
【0046】
15~50kDaのヒアルロン酸のナトリウム形態は、COPD患者のヒト気道上皮に対して併用処置で抗炎症効果を示す(図18)。特に、HA-Na 15-45kDaによる処置は、ヒトCOPD気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(33.4%)を導き、HA-Na 15-30kDa(43.1%の減少)及び対照の抗炎症性デキサメタゾン(32.1%の減少)もまた同様である。HA-Na 30-50kDaは、IL-8分泌の有意でない(p=0.0511)減少(30.8%の減少)を導く。
【0047】
15~50kDaのヒアルロン酸は、そのナトリウム、カルシウム及びカリウム形態で、COPD患者のヒト気道上皮に対して治癒的な抗炎症効果を示す(図19)。特に、15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na)による処置は、ヒトCOPD気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(60.2%)を導き、デキサメタゾン(68.8%の減少)及び15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム又はヒアルロン酸カリウム(HA-Ca 15-45kDa:61.5%の減少;HA-K 15-45kDa:61.1%の減少)もまた同様である。
【0048】
15~50kDaのヒアルロン酸は、そのナトリウム形態で、COPD患者のヒト気道上皮に対して併用処置で抗炎症効果を示す(図20)。特に、15~45kDaのヒアルロン酸ナトリウム(HA-Na 15-45kDa)による処置は、ヒトCOPD気道上皮細胞によるIL-8分泌の有意な減少(33.4%)を導き、デキサメタゾン(32.1%の減少)もまた同様である。15~45kDaのヒアルロン酸カルシウム又はヒアルロン酸カリウムは、IL-8分泌の有意でない減少(それぞれ、12.9%の減少及び27.5%の減少)を導く。
【0049】
参考文献:
本出願全体を通して、様々な参考文献が、本発明が関係する技術分野の最新技術を記載している。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】