(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】高レートバッテリシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526696
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2022080677
(87)【国際公開番号】W WO2023078999
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522154803
【氏名又は名称】ニョボルト・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シール・サングヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ヒマンシュ・ライ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ・ハッチンス
(72)【発明者】
【氏名】サイ・シヴァレディ
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BA04
5G503BB01
5G503CC02
5G503DA02
5G503DA15
5G503DA18
5G503EA06
5G503GD04
5G503HA03
(57)【要約】
本発明は、複数の接続されたセルから放電される電力を調節して、複数の接続されたセルの入力電圧よりも狭い出力電圧範囲を提供するように動作可能な電力調節回路を備えたバッテリに関する。本発明は、電力調節回路を使用して、複数の接続されたセルを第1の電圧範囲で放電させるステップと、複数の接続されたセルから放電される電力を調節して出力電圧を第2の範囲で提供するステップであって、第2の範囲がセルあたりベースで第1の範囲よりも小さい、ステップとを含む、高レートエネルギー貯蔵システムを放電させる方法にも関する。電力調節回路は、複数の接続されたセルに結合される二段昇圧コンバータを備えてもよい。バッテリは、広セル電圧範囲にわたってセルを放電させ、より狭くかつより使用可能な電圧範囲を負荷に提供して、高速セルサイクリングを促すために使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接続されたセルと、
前記複数の接続されたセルに結合される電力調節回路であって、
前記電力調節回路が、前記複数の接続されたセル、セルあたり下限電圧に対するセルあたり上限電圧の間の差として定義される第1の範囲で放電させるように動作可能であり、
前記電力調節回路が、前記複数の接続されたセルから放電される電力を調節して出力電圧を第2の範囲で提供するように動作可能であり、前記第2の範囲がセルあたりベースで前記第1の範囲よりも小さい、電力調節回路と、
負荷に前記出力電圧を提供するために前記電力調節回路に電気接続される出力端子と
を備える、バッテリ。
【請求項2】
前記第1の範囲がセルあたり1.8V以上である、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
前記第2の範囲がセルあたり1V以下である、請求項1または2に記載のバッテリ。
【請求項4】
前記第1の範囲に対して、
(i)前記セルあたり上限電圧がセルあたり2.7V以上でありおよび/もしくは前記セルあたり下限電圧がセルあたり0.7V以下であり、または
(ii)前記セルあたり上限電圧がセルあたり3.0V以上でありおよび/もしくは前記セルあたり下限電圧がセルあたり0.5V以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項5】
前記第2の範囲の前記出力電圧が、前記電力調節回路から出力されるセルあたり上限電圧と前記電力調節回路から出力されるセルあたり下限電圧との間の差であり、前記セルあたり上限電圧がセルあたり4.5V以下でありおよび/または前記セルあたり下限電圧がセルあたり2.7V以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項6】
前記電力調節回路から出力される前記セルあたり上限電圧がセルあたり4.2V以下であり、および/または前記電力調節回路から出力される前記セルあたり下限電圧がセルあたり3.0V以上である、請求項5に記載のバッテリ。
【請求項7】
前記電力調節回路が、
(i)前記複数の接続されたセルの各セルをセルあたり3.3Vの前記セルあたり上限電圧からセルあたり0.5Vの前記セルあたり下限電圧に放電させるように動作可能であり、または
(ii)前記複数の接続されたセルの各セルをセルあたり3.7Vの前記セルあたり上限電圧からセルあたり0.5Vの前記セルあたり下限電圧に放電させるように動作可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項8】
前記電力調節回路が、
(i)前記複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第1の閾値電圧よりも小さいときに前記複数の接続されたセルを放電させる間に前記負荷に提供される前記出力電圧を上昇させるように動作可能であり、および/または
(ii)前記複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第2の閾値電圧よりも大きいときに前記負荷に提供される前記出力電圧を低下させるように動作可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項9】
前記複数の接続されたセルの前記セルあたり電圧が前記第1の閾値電圧と前記第2の閾値電圧との間であるときに前記電力調節回路が非調節モードにある、請求項8に記載のバッテリ。
【請求項10】
前記第1の閾値電圧が1.5から2V、好ましくは1.6から1.9V、より好ましくは1.7から1.8Vであり、および/または前記第2の閾値電圧が2.5から3V、好ましくは2.6から2.9V、より好ましくは2.7から2.8Vである、請求項8または9に記載のバッテリ。
【請求項11】
前記複数のセルの各セルが電極活物質としてニオブ酸化物材料を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項12】
前記ニオブ酸化物材料が、ニオブ酸化物、ニオブ金属酸化物、ニオブ半金属酸化物、ニオブリン酸化物、ニオブカルコゲナイドおよびそれらの組合せ、好ましくはニオブ酸化物、ニオブ金属酸化物およびそれらの組合せ、より好ましくはニオブ金属酸化物およびそれらの組合せから選択される、請求項11に記載のバッテリ。
【請求項13】
前記ニオブ酸化物がNb
2O
5であり、前記ニオブ金属酸化物がNb
12WO
33、Nb
26W
4O
77、Nb
14W
3O
44、Nb
16W
5O
55、Nb
18W
8O
69、Nb
2WO
8、Nb
18W
16O
93、Nb
22W
20O
115、Nb
8W
9O
47、Nb
54W
82O
381、Nb
20W
31O
143、Nb
4W
7O
31、Nb
2W
15O
50、Nb
2WO
8、Nb
2Mo
3O
14、Nb
14Mo
3O
44、Nb
12MoO
44、Nb
2TiO
7、Nb
10Ti
2O
29またはNb
24TiO
62である、請求項12に記載のバッテリ。
【請求項14】
前記ニオブ酸化物材料が、Nb
16W
5O
55、Nb
18W
16O
93およびそれらの組合せから選択されるニオブ金属酸化物である、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項15】
前記ニオブ酸化物材料が前記セルの放電中にアノードである、請求項11から14のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項16】
前記複数の接続されたセルが直列に接続される、請求項1から15のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項17】
前記複数の接続されたセルおよび前記電力調節回路を含むバッテリパックハウジングを更に備える、請求項1から16のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項18】
前記電力調節回路が降圧コンバータを備え、前記降圧コンバータが、前記複数の接続されたセルの前記セルあたり電圧と比較して前記負荷への前記セルあたり出力電圧を低下させるように動作可能である、請求項1から17のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項19】
前記電力調節回路が昇圧コンバータを備え、前記昇圧コンバータが、前記複数の接続されたセルの前記セルあたり電圧と比較して前記負荷への前記セルあたり出力電圧を上昇させるように動作可能である、請求項1から18のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項20】
前記昇圧コンバータが二段昇圧コンバータであり、前記二段昇圧コンバータが、
コントローラと、
前記複数の接続されたセルに結合され互いに並列である第1の昇圧コンバータおよび第2の昇圧コンバータであって、前記第1の昇圧コンバータおよび前記第2の昇圧コンバータが前記コントローラに動作可能に結合される、第1の昇圧コンバータおよび第2の昇圧コンバータと
を備え、
前記第1の昇圧コンバータが、前記第2の昇圧コンバータを動作させるための電力信号を発生させるように構成され、
前記第2の昇圧コンバータが、前記第2の昇圧コンバータが前記第1の昇圧コンバータから前記電力信号を受信すると前記電源からの入力電圧を昇圧して負荷に出力電圧を提供するように構成される、請求項19に記載のバッテリ。
【請求項21】
前記第1の昇圧コンバータが、前記複数の接続されたセルの前記入力電圧がセルあたり上限電圧とセルあたり下限電圧との間であるときに前記第2の昇圧コンバータを動作させるための前記電力信号を発生させるように構成される、請求項20に記載のバッテリ。
【請求項22】
(i)前記セルあたり上限電圧がセルあたり少なくとも2.7Vでありおよび前記セルあたり下限電圧がセルあたり0.5Vから0.7Vであり、
(ii)前記セルあたり上限電圧がセルあたり少なくとも3.3Vでありおよび前記セルあたり下限電圧がセルあたり0.5Vから0.7Vであり、または
(iii)前記セルあたり上限電圧がセルあたり少なくとも3.7Vでありおよび前記セルあたり下限電圧がセルあたり0.5Vから0.7Vである、
請求項21に記載のバッテリ。
【請求項23】
前記第1の昇圧コンバータが、前記第2の昇圧コンバータの動作電圧よりも低い動作電圧で動作するように構成される、請求項20から22のいずれか一項に記載のバッテリ。
【請求項24】
電力調節回路を使用して、複数の接続されたセルを、セルあたり下限電圧に対するセルあたり上限電圧の間の差として定義される第1の範囲で放電させるステップと、
前記複数の接続されたセルから放電される電力を調節して出力電圧を第2の範囲で提供するステップであって、前記第2の範囲がセルあたりベースで前記第1の範囲よりも小さい、ステップと、
負荷に前記出力電圧を出力するステップと
を含む、バッテリを放電させる方法。
【請求項25】
前記第1の範囲がセルあたり1.8V以上である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の範囲がセルあたり1V以下である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の範囲に対して、
(i)前記セルあたり上限電圧がセルあたり2.7V以上でありおよび/もしくは前記セルあたり下限電圧がセルあたり0.7V以下であり、または
(ii)前記セルあたり上限電圧がセルあたり3.0V以上でありおよび/もしくは前記セルあたり下限電圧がセルあたり0.5V以下である、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の範囲が、前記負荷に提供されるセルあたり上限電圧と前記負荷に提供されるセルあたり下限電圧との間の差として定義され、前記負荷に提供される前記セルあたり上限電圧に対してセルあたり4.5V以下でありおよび/または前記負荷に提供される前記セルあたり下限電圧に対してセルあたり2.7V以上である、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
(i)前記複数の接続されたセルの各セルをセルあたり3.3Vの前記セルあたり上限電圧からセルあたり0.5Vの前記セルあたり下限電圧に放電させるステップ、または
(ii)前記複数の接続されたセルの各セルをセルあたり3.7Vの前記セルあたり上限電圧からセルあたり0.5Vの前記セルあたり下限電圧に放電させるステップ
を更に含む、請求項24から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記電力を調節するステップが、
(i)前記複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第1の閾値電圧よりも小さいときに前記複数の接続されたセルを放電させる間に前記負荷に提供される前記出力電圧を上昇させること、および/または、
(ii)前記複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第2の閾値電圧よりも大きいときに前記負荷に提供される前記出力電圧を低下させることを含む、請求項24から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記複数の接続されたセルの前記セルあたり電圧が前記第1の閾値電圧と前記第2の閾値電圧との間であるときに前記電力調節回路を非調節モードで動作させるステップを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の閾値電圧が1.5から2V、好ましくは1.6から1.9V、より好ましくは1.7から1.8Vであり、および/または前記第2の閾値電圧が2.5から3V、好ましくは2.6から2.9V、より好ましくは2.7から2.8Vである、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数のセルの各セルが、ニオブ酸化物、ニオブ金属酸化物またはそれらの組合せを含む負活物質を含む、請求項24から32のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本件は、2021年11月3日(03.11.2021)に出願されたGB2115818.3の優先権および利益を主張するものであり、その内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示されるのは、高レートバッテリシステムを提供する電力調節回路を備えたバッテリ、および高レートバッテリを放電させる方法である。
【背景技術】
【0003】
バッテリは、多様な種類およびサイズで入手可能であり、広範囲のポータブルデバイスにおいて電源として使用される。バッテリ給電工具のような、高レート用途に対して、より高レートの放電を提供することが可能であるバッテリを提供する必要性が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP2685635
【特許文献2】WO2005/060023
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0305586号
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0126131号
【特許文献5】米国特許出願公開第2013/0320932号
【特許文献6】米国特許出願公開第2013/0043839号
【特許文献7】米国特許出願公開第2010/0156175号
【特許文献8】米国特許第7702369号
【特許文献9】米国特許公開第2021/0218075号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概して、本発明は、複数の接続されたセルから放電される電力を調節して、複数の接続されたセルの電圧範囲より狭い出力電圧範囲を提供するように動作可能な電力調節回路を備えたバッテリに関する。
【0006】
第1の態様において、本発明は、
複数の接続されたセルと、
複数の接続されたセルに結合される電力調節回路であって、
電力調節回路が、複数の接続されたセルを、セルあたり下限電圧に対するセルあたり上限電圧の間の差として定義される第1の範囲で放電させるように動作可能であり、
電力調節回路が、複数の接続されたセルから放電される電力を調節して出力電圧を第2の範囲で提供するように動作可能であり、第2の範囲がセルあたりベースで第1の範囲よりも小さい、電力調節回路と、
負荷に出力電圧を提供するために電力調節回路に電気接続される出力端子とを備えたバッテリを提供する。
【0007】
実施形態は、高レートバッテリを対象とする。
【0008】
概して、本発明は、電力調節回路を使用してバッテリを放電させて、複数の接続されたセルの電圧範囲よりも狭い出力電圧範囲を提供するステップを含む、バッテリを放電させる方法にも関する。非限定的な一例が、電力調節回路を使用して、複数の接続されたセルを、セルあたり下限電圧に対するセルあたり上限電圧の間の差として定義される第1の範囲で放電させるステップと、複数の接続されたセルから放電される電力を調節して出力電圧を第2の範囲で提供するステップであって、第2の範囲がセルあたりベースで第1の範囲よりも小さい、ステップと、負荷に出力電圧を出力するステップとを含む。
【0009】
第2の態様では、本発明は、
電力調節回路を使用して、複数の接続されたセルを、セルあたり下限電圧に対するセルあたり上限電圧の間の差として定義される第1の範囲で放電させるステップと、
複数の接続されたセルから放電される電力を調節して出力電圧を第2の範囲で提供するステップであって、第2の範囲がセルあたりベースで第1の範囲よりも小さい、ステップと、
負荷に出力電圧を出力するステップとを含む、バッテリを放電させる方法を提供する。
【0010】
1つの実施形態において、バッテリは、高レートエネルギー貯蔵システムの部品である。
【0011】
第1の範囲は、典型的にはセルのセルあたり上限電圧とセルあたり下限電圧との間の差である。これは、あらゆる電力調節前の(すなわち電力調節なしの)、セル自体の電圧を指す。言い換えれば、第1の範囲=セルのセルあたり上限電圧-セルのセルあたり下限電圧。セルあたり上限電圧は、セルが100%充電状態(SOC)であるときのセルあたり電圧であってもよい。すなわち、セルあたり上限電圧は、典型的にはセルによって生成される最高電圧である。セルあたり下限電圧は、セルが0%充電状態(SOC)であるときのセルあたり電圧であってもよい。すなわち、セルあたり下限電圧は、典型的にはセルによって生成される最低電圧である。第1の範囲は、「入力」範囲とも称されてもよい。
【0012】
第2の範囲は、典型的には負荷に提供されるセルあたり上限電圧とセルあたり下限電圧との間の差である。これは、電力調節後の(すなわち電力調節回路による電力調節後の)電圧を指す。これは、電力調節回路からの出力の電圧であってもよい。電圧は、電力調節後に負荷に提供されるものでもある。言い換えれば、第2の範囲=負荷に提供されるセルあたり上限電圧-負荷に提供されるセルあたり下限電圧。負荷に提供されるセルあたり上限電圧は、セルがセルのセルあたり上限電圧を提供しているときに(例えばセルが100%充電状態(SOC)であるときに)達成されてもよい。負荷に提供されるセルあたり下限電圧は、セルがセルのセルあたり下限電圧を提供しているときに(例えばセルが0%充電状態(SOC)であるときに)達成されてもよい。第2の範囲は、「出力」範囲とも称されてもよい。
【0013】
第2の範囲は、セルあたりベースで第1の範囲よりも小さい。すなわち、第2の範囲の大きさは、第1の範囲よりも小さい。
【0014】
第2の範囲の終点(負荷に提供されるセルあたり上限または下限電圧)は、第1の範囲の終点(セルのセルあたり上限または下限電圧)の外側または内側であってもよい。第2の範囲の上限終点(負荷に提供されるセルあたり上限電圧)は、第1の範囲の上限終点(セルのセルあたり上限電圧)よりも小さくてもよい。第2の範囲の下限終点(負荷に提供されるセルあたり下限電圧)は、第1の範囲の下限終点(セルのセルあたり下限電圧)よりも大きくてもよい。好ましくは、第2の範囲の上限および下限終点は、第1の範囲の上限および下限終点の内側である。より好ましくは、第2の範囲の1つの終点が第1の範囲の終点によって囲まれる。この場合、好ましくは、第2の範囲の上限終点は、第1の範囲の上限終点よりも大きい。
【0015】
電力調節回路は、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第1の閾値電圧よりも小さいときに負荷に提供される出力電圧を上昇させるように動作可能であってもよい。電力調節回路は、負荷に提供される出力電圧を上昇させる昇圧コンバータを含んでもよい。昇圧コンバータは、典型的には、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第1の閾値電圧よりも小さいときなど、複数の接続されたセルのセルあたり電圧と比較して負荷へのセルあたり出力電圧を上昇させるように動作可能である。
【0016】
電力調節回路は、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第2の閾値電圧よりも大きいときに負荷に提供される出力電圧を低下させるように動作可能であってもよい。電力調節回路は、負荷に提供される出力電圧を低下させる降圧コンバータを含んでもよい。降圧コンバータは、典型的には、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第2の閾値電圧よりも大きいときなど、複数の接続されたセルのセルあたり電圧と比較して負荷へのセルあたり出力電圧を低下させるように動作可能である。
【0017】
好ましくは、電力調節回路は、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第1の閾値電圧より小さいときに負荷に提供される出力電圧を上昇させるように動作可能であり、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第2の閾値電圧よりも大きいときに負荷に提供される出力電圧を低下させるように動作可能である。電力調節回路は、出力電圧を低下させる降圧コンバータ、および負荷に提供される出力電圧を上昇させる昇圧コンバータを含んでもよい。
【0018】
このように、電力調節回路は、セルの入力電圧に応じて電圧を低下または上昇させるように動作可能である。セルの入力電圧は、閾値電圧(例えば所定の閾値電圧)と比較されてもよい。これは、改善されたバッテリ活用および効率を可能にする。これは、電力調節回路が負荷の要求または負荷からの信号に応じて動作可能である公知のシステムと異なる。
【0019】
電力調節回路は、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第1の閾値電圧と第2の閾値電圧との間であるときに非調節モードにあってもよい。
【0020】
バッテリは、複数の接続されたセルおよび電力調節回路を含むバッテリパックハウジングを備えてもよい。言い換えれば、電力調節回路は、バッテリに一体であってもよい。
【0021】
複数の接続されたセルは、直列に、並列にまたはそれらの組合せで接続されてもよい。一部の実施形態において、複数の接続されたセルは、直列の3つ以上のセル、直列の4つ以上のセル、直列の6つ以上のような、直列に接続された2つ以上のセルである。好ましくは、複数の接続されたセルは、直列に接続された2つから10のセル、より好ましくは直列の4つから8つのセル、更により好ましくは直列の5つから7つのセルである。
【0022】
一部の実施形態において、複数の接続されたセルは、並列に接続された2つ以上のセルのバンクであり、2つ以上のセルのバンクは、直列に接続された2つ以上のセルである。好ましくは、複数の接続されたセルは、並列に接続された2つのセルのバンクであり、2つのセルのバンクは、直列に接続された2つ以上のセル、好ましくは直列に接続された2つから10のセル、より好ましくは直列の4つから8つのセル、更により好ましくは直列の5つから7つのセルである。特に好ましくは、複数の接続されたセルは、並列に接続された2つのセルのバンクであり、2つのセルのバンクは、直列に接続された2つのセルである。
【0023】
他の実施形態は、システムおよび装置において上記の方法の特徴を実装する。
【0024】
実施形態は、複数の接続されたセルおよび複数の接続されたセルに結合される二段昇圧コンバータを含むバッテリも対象とする。二段昇圧コンバータは、コントローラと、電源に結合され互いに並列である第1の昇圧コンバータおよび第2の昇圧コンバータとを備える。第1の昇圧コンバータおよび第2の昇圧コンバータは、コントローラに動作可能に結合される。第1の昇圧コンバータは、第2の昇圧コンバータを動作させるための電力信号を発生させるように構成され、第2の昇圧コンバータは、第2の昇圧コンバータが第1の昇圧コンバータから電力信号を受信すると電源からの入力電圧を昇圧して負荷に出力電圧を提供するように構成される。二段昇圧コンバータは、非常に低い入力電圧が一層高い出力電圧に逓昇されるようにする。二段昇圧コンバータは、大きい電圧逓昇がより効率的に行われるようにする。
【0025】
開示された技術を通じて追加の技術的特徴および利益が実現される。本発明の実施形態および態様が本明細書に詳細に記載され、特許請求される対象の一部と考えられる。より良好な理解のために、詳細な説明および図面を参照する。
【0026】
本明細書に記載される専有権の明細は、本明細書の末尾において請求項に詳細に指摘され、明確に請求される。本発明の実施形態の上記および他の特徴および利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】1つまたは複数の実施形態に従って高レートエネルギー貯蔵システムの部品のブロック図である。
【
図2】1つまたは複数の実施形態に従って高レートエネルギー貯蔵システムに使用されるバッテリセルのための電圧プロファイル例である。
【
図3】本発明の1つまたは複数の実施形態に従って高レートエネルギー貯蔵システムに使用される昇圧コンバータ回路を有する電力調節回路のための回路図である。
【
図4】本発明の1つまたは複数の実施形態に従って高レートエネルギー貯蔵システムに使用される降圧コンバータ回路を有する電力調節回路例である。
【
図5】本発明の1つまたは複数の実施形態に従って高レートエネルギー貯蔵システムに使用される昇降圧コンバータ回路を有する電力調節回路例である。
【
図6】本発明の1つまたは複数の実施形態に従って高レートエネルギー貯蔵システムに使用される二段昇圧コンバータ回路を有する電力調節回路例である。
【
図7】本発明の1つまたは複数の実施形態に従ってバッテリパックハウジング内に昇降圧コンバータ回路を組み込んだバッテリパック例700である。
【
図8】本発明の1つまたは複数の実施形態に従って高レートエネルギー貯蔵システムを放電させるための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に描かれる図は例示である。本開示の趣旨から逸脱することなくそこに記載される図または動作に多くの変形があり得る。例えば、行動は異なる順序で行うことができ、または行動は追加、削除もしくは変更できる。また、用語「結合される」およびその異形は、2つの要素間に通信路を有することを述べており、それらの間に介在要素/接続のない要素間の直接接続を意味しない。これらの変形の全てが本明細書の一部と考えられる。
【0029】
1つまたは複数の実施形態が、広電圧範囲にわたってエネルギーを放電させるように動作可能である高レートバッテリを提供する。バッテリは、動力工具から電気自動車に至る種々の用途に対して電気エネルギーを提供するために使用できる。電気エネルギーが負荷に提供されるレートは、各具体的な用途に対して使用される電力源または電源の種類およびサイズの関数であることができる。1つまたは複数の実施形態に従って、負荷に高レートでエネルギーを放電するためにバッテリパックが電力調節回路と一体化される。電力調節回路は、上の閾値に達すると電圧を逓降するように動作可能であり、更に下の閾値に達すると電圧を逓昇するように動作可能である。結果として、出力電圧範囲は、大範囲の入力(セル)電圧にわたって狭くかつ使用可能な範囲にとどまる。
【0030】
電力調節回路と結合された複数の接続されたセルの組合せは、さもなければ未使用のままであろうバッテリセルの残存容量を取り戻すために使用される。公知のシステムでは、セル電圧が低下する(例えば低SOCにある)と、比較的低いセル電圧が低出力電圧に至るので、電力は、狭い電圧ウィンドウにおいてだけ動作し得る負荷によって使用可能でない。しかしながら、本発明において、低セル電圧(例えば低SOCにある)は逓昇されて、負荷への出力電圧を上昇させてもよい。そのため、セル電圧範囲のより大きい割合が負荷によって使用可能である。これは、エネルギー貯蔵システムの効率の上昇に至る。
【0031】
この改善は、大電圧範囲にわたって動作する高レートバッテリに特に重要である。例えば、ニオブ酸化物ベースのバッテリセルは、典型的には、0.6Vから3.1Vなど、または0.7Vから3.0Vなど、0.5Vから3.2Vの電圧範囲を有する。大電圧範囲は、負荷が通常は電圧範囲の一部分に対してバッテリを使用することができるだけであってもよく、セルの使用可能な容量を低減させることを意味する。しかしながら、本発明は、セルからの電力を調節して、より小さい出力電圧範囲を提供する。結果として、セルの電圧の全範囲が負荷によって使用可能であるので、セルは、より高い使用可能な容量を有する。負荷は、約100%から0%SOCまでセルから電力を使用してもよい。
【0032】
入手可能なリチウムイオンセルのような現在の技術は、長サイクル寿命にわたって急速充電および/または放電を行うことは不可能である。リチウムイオンバッテリセルは、一般に3から4.2Vの範囲にわたって動作することに制限される。ニオブ酸化物ベースのバッテリセルは、炭素質負極活物質を使用するリチウムイオンセルよりも高い充電/放電率を提供し、低い電圧で動作できる。加えて、ニオブ酸化物ベースのバッテリセルは、完全充電状態と放電状態との間のより広い電圧範囲を有する。本発明は、代替(例えばニオブ酸化物ベースのセル)セルの電圧を調整して従前のリチウムイオンセルのそれを再現することによって、従前のリチウムイオンセルのために適合された装置に代替バッテリ(例えばニオブ酸化物ベースのセル)が使用されるようにもし得る。
【0033】
EP2685635は、電力コンバータが出力電圧を変化させる昇降圧コンバータを含む移動端末装置について記載している。文書は、多重電力管理集積回路(PMIC)を使用して、セルの電圧を上昇および低下させて装置の種々の部品に合わせることについて記載している。異なる出力電圧が異なる部品に提供される。文書は、負荷への出力電圧範囲がセルからの入力電圧よりもセルあたりベースで小さいことを開示していない。
【0034】
WO2005/060023は、定出力電圧バッテリモジュールに関しており、セル故障を償うために出力電圧を逓昇することによってバッテリモジュールにおける単セル故障を補償できる。WO2005/060023は、電気化学セルの電位によって定められるものよりも広い範囲にわたって電圧を供給して、負荷への出力範囲がセルからの入力電圧よりも小さくないことを意味する、モノブロックバッテリ構造を提供することにも関する。文書は、特にニオブ酸化物ベースのセルでない、セルの使用可能な電圧範囲を拡大することには関係しない。
【0035】
米国特許出願公開第2019/0305586号は、コンピューティング装置のためのバックアップエネルギーデバイスである。デバイスは、コンピューティング装置の要求に応答して出力電圧を調整する昇降圧コンバータを含む。出力電圧は、コンピューティング装置によって決定されており、バッテリ自体によってではなく、出力電圧範囲は、入力電圧よりも小さくない。文書は、バッテリの、特にニオブ酸化物含有セルでなく、使用可能な電圧範囲を改善することには関係しない。
【0036】
米国特許出願公開第2017/0126131号は、電界効果トランジスタ(FET)のための低電圧ドライバを提供する特定の回路について記載している。文書は、回路網によって消費される過剰電圧を低減させることに関する。それは、ニオブ酸化物含有セルのような、セルの使用可能な電圧範囲を改善することには関係しない。米国特許出願公開第2017/0126131号は、降圧および昇圧コンバータ回路が別々の回路で提供される回路について記載している。本発明は、昇降圧コンバータを同じ回路に含んでもよい。
【0037】
米国特許出願公開第2013/0320932号は、降圧または昇圧コンバータとしてインダクタを使用することによって電流を増加または減少させるために必要とされるスイッチの数を低減させることを意図する特定の回路について記載している。文書は、バッテリの使用可能な電圧範囲を改善することには関係しない。
【0038】
米国特許出願公開第2013/0043839号は、種々のバッテリケミストリに耐えることができるバッテリシステムに関する。本発明は、ニオブ酸化物ベースのバッテリのような、単一のバッテリケミストリを使用してもよい。文書は、バッテリの使用可能な電圧範囲を改善することには関係しない。
【0039】
米国特許出願公開第2010/0156175号および米国特許第7702369号は、バッテリおよびバッテリの電圧を逓昇する昇圧コンバータを含むシステムに関する。そのため、負荷への出力電圧は、バッテリからの入力電圧以上であることができるだけである。本発明は、入力電圧範囲よりも小さい出力電圧範囲を提供するために、バッテリ電圧を逓降および逓昇する降圧および昇圧コンバータを含んでもよい。米国特許出願公開第2010/0156175号および米国特許第7702369号は、使用可能な電圧範囲を改善することには関係せず、ニオブ酸化物ベースのセルについても記載していない。米国特許第7702369号は、ワイヤレスコンピュータマウスに固有であり、昇圧コンバータは、ワイヤレス信号が機能しないときに作動されるだけである。
【0040】
一般に、本発明は、内部電力調節回路を使用しており、これはバッテリの一部である。出力電圧は、内部電力調節回路およびバッテリ電圧閾値によって決定される。EP2685635、米国特許出願公開第2013/0043839号、米国特許第7702369号および米国特許出願公開第2019/0305586号に記載される先行技術システムは、代わりに外部信号および電力調節を使用して出力電圧を決定する。加えて、上で論じた先行技術のいずれもニオブ酸化物ベースのバッテリを使用しない。
【0041】
1つまたは複数の実施形態が、ニオブ酸化物ベースのセルを備えたバッテリパックと電力調節回路を一体化することによって先行技術の上記の欠点の1つまたは複数に対処する。実施形態は、出力電圧を調整するために降圧コンバータ、昇圧コンバータまたは昇降圧コンバータの任意の組合せを含むスイッチモードコンバータを含むことができる。詳細には、1つまたは複数の実施形態は、電力調節回路を使用して、負荷に提供される電圧を調整するように構成されており、出力電圧が限られた範囲にわたって負荷に提供される現代のエネルギー貯蔵システムとは対照的である。例えば、現在のリチウムイオンセルは、ほぼ3Vから4.2Vの範囲の間のサイクルに制限される。他方で、本明細書に記載される技術に対するニオブ酸化物ベースのバッテリセルは、より広い範囲、例えば0.5V、0.6Vまたは0.7Vから3.2V、3.1Vまたは3Vを提供する。第1の範囲は、0.5Vから3.2V、好ましくは0.6Vから3.1V、より好ましくは0.7Vから3.0Vであってもよい。そのため、ニオブ酸化物ベースのバッテリセルは、2Vを超える、例えば2.7V、2.6Vまたは2.5Vのセル電圧範囲を提供する。また、開示されるバッテリが昇降圧コンバータを含む電力調節回路を含むので、出力電圧が逓昇および逓降されて、ニオブ酸化物ベースのセルのより広い動作可能な電圧範囲を活用して、より大きなエネルギーを提供できる。
【0042】
1つまたは複数の実施形態が、電力調節回路とニオブ酸化物ベースのセルを一体化してバッテリセルの電圧範囲全体にわたって出力を最大化することによってこれらの既存の解決策の不利点の1つまたは複数の技術的解決策を提供する。
【0043】
複数の接続されたセルは、ニオブ酸化物ベースのセルを含んでもよい。すなわち、セルは、電極活物質としてニオブ酸化物材料を含む。複数の接続されたセルは、基本的にニオブ酸化物ベースのセルを含んでもよい。ニオブ酸化物ベースのセルは、典型的には負極活物質の1つとしてニオブ酸化物材料を有する。負極活物質は、ガルバニック放電中はアノードである。ニオブ酸化物材料は、下記するように、ニオブ酸化物、ニオブ金属酸化物、ニオブ半金属酸化物、ニオブリン酸化物、またはニオブカルコゲナイドであって、酸素を含むカルコゲナイドであってもよい。好ましくは、ニオブ酸化物材料は、ニオブタングステン酸化物のような、ニオブ金属酸化物である。
【0044】
好ましくは、ニオブ酸化物材料は、負極活物質である。言い換えれば、ニオブ酸化物電極活物質は、電気化学セルの放電(例えばガルバニック放電)中はアノードである。
【0045】
ここで
図1に移ると、1つまたは複数の実施形態に従って高レートエネルギー貯蔵システム例100が図示される。高レートエネルギー貯蔵システム100は、複数のバッテリセル104を有するバッテリパック102および電力調節回路110を含む。バッテリパック102は、電力調節回路110に電気結合される。しかしながら、他の実施形態において、電力調節回路110は、バッテリパック102内に一体化できる。バッテリパック102が4つのバッテリセルを含むが、任意の数のバッテリセル104をバッテリパック102に組み込むことができ、4つのバッテリセルに限定されないことを認識できる。各バッテリセル104は、各バッテリセル104に対して放電電圧範囲を定めるセルあたり上限電圧およびセルあたり下限電圧によって特性化される。例えば、ニオブ酸化物材料ベースのセルは、3.2Vから0.5Vの範囲から放電させることができ、炭素質アノードを使用するリチウムイオンセルによって提供されるものよりも大きな電圧範囲、例えば2.8Vを提供する。
【0046】
ニオブ酸化物ベースのセルは、ニオブ酸化物、ニオブ金属酸化物、ニオブ半金属酸化物、ニオブリン酸化物、またはニオブカルコゲナイドであって、酸素を含むカルコゲナイドの少なくとも1つを含むニオブ酸化物材料を含むアノード活物質を有する。ニオブ酸化物材料は、ニオブ、酸素、およびNa、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、As、Y、Zr、Mo、In、Sn、Sb、TaまたはWの少なくとも1つを含んでもよい。ニオブ酸化物はNb2O5であってもよく、ニオブ金属酸化物は、NbおよびTi、V、Cr、Mo、TaまたはWの少なくとも1つを含んでもよい。ニオブ金属酸化物では、ニオブ対金属のモル比、例えば金属MがTi、V、Cr、Mo、TaまたはWの少なくとも1つであってもよいとして、Nb:Mが、ニオブおよび金属の総量に基づいて、0.1、0.2、0.5または1対2、3、4、5、8、10または12であってもよい。NbおよびWまたはMoを含むニオブ金属酸化物が言及される。ニオブ酸化物材料は、Nb12WO33、Nb26W4O77、Nb14W3O44、Nb16W5O55、Nb18W8O69、Nb2WO8、Nb18W16O93、Nb22W20O115、Nb8W9O47、Nb54W82O381、Nb20W31O143、Nb4W7O31、Nb2W15O50、Nb2WO8、Nb2Mo3O14、Nb14Mo3O44、Nb12MoO44、Nb2TiO7、Nb10Ti2O29またはNb24TiO62の少なくとも1つを含んでもよい。好ましくは、ニオブ酸化物材料は、Nb16W5O55、Nb18W16O93およびそれらの組合せから選択される。上記の少なくとも1つを含む組合せが使用されてもよい。ニオブ酸化物材料例のリストが本発明の範囲を限定すると意図されるのではなく、ニオブ酸化物およびニオブ金属酸化物のための例示的な例を提供するために挙げられることを認識できる。
【0047】
カソード活物質はリチウム金属酸化物であってもよく、金属は、Co、Fe、Ni、VもしくはMnのような遷移金属、またはそれらの組合せである。例としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC、LiNiMnCoO2、例えばLiNi0.6Coo2Mn0.2O2)、フルオロリン酸バナジウムリチウム(LiVPO4F)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA、LiNiCoAlO2)、リン酸鉄リチウム(LFP、LiFePO4)またはマンガンベースのスピネル(例えばLiMn2O4)を含む。
【0048】
電解質は、非水電解質であってもよい。電解質は、極性非プロトン性有機溶媒およびリチウム塩を含んでもよい。電解質のために適切な溶媒および塩は、過度の実験なく当業者によって決定できる。エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートのような、炭酸塩の混合物中のLiPF6の溶液が言及される。
【0049】
電気化学セルは、負および正電極間に多孔膜も含んでもよい。多孔膜は、ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたはそのコポリマーを含んでもよい。
【0050】
ニオブ酸化物ベースのセルの追加の詳細が米国特許公開第2021/0218075号に開示されており、その内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
図1は、電力調節回路110を描写する。電力調節回路110は、例えば降圧コンバータ、昇圧コンバータまたは昇降圧コンバータを備える種々のトポロジのDC-DCコンバータを含むことができる。様々なトポロジの詳細は、以下に
図3~
図5を参照しつつ述べられる。電力調節回路110は、バッテリパック102の複数の接続されたセルを第1の範囲で放電させるように構成され、第1の範囲は、セルあたり下限電圧に対するセルあたり上限電圧の間の差として定義される。電力調節回路110は、複数の接続されたセルから放電される電力を調節して、高レートエネルギー貯蔵システム100に結合される負荷(図示せず)に出力電圧を第2の範囲で提供するように動作可能であり、第2の範囲は、セルあたりベースで第1の範囲よりも小さい。例えば、4つのセルを備えたバッテリパック102に対して、電力調節回路110は、所望の出力電圧で電力を提供する。セルあたりベースで第2の範囲のための出力電圧を決定するために、出力電圧がバッテリパック102内のセル数で除算される。この例では、出力電圧は、セルあたりベースで第2の範囲を決定するためにバッテリパック102の4つのセルによって分割される。バッテリパック102が4つのバッテリセルに限定されるのではなく、2、4、8等のような任意の数のバッテリを備えることができることを認識できる。
【0052】
1つまたは複数の実施形態において、第1の範囲は、セルあたり1.8Vであり、またはそれに等しく、セルあたり2Vよりも大きく、例えばセルあたり2.7V、2.6Vまたは2.5Vであり、現在のリチウムイオンセルによって提供されるものよりも大きく、電力調節回路110によって提供される出力電圧のための第2の範囲は、セルあたり1V以下である。第1の範囲は第2の範囲とは異なる。本発明の他の実施形態において、LiFePO4/NbWOベースのセルのようなバッテリセルがセルあたり少なくとも2.7Vのセルあたり上限電圧を有することができ、セルあたり下限電圧がセルあたり0.5Vである一方で、セルあたり4.2Vからセルあたり3Vの第2の範囲で出力電圧を提供する。
【0053】
本発明の更なる実施形態において、LCO/NbWOベースのセルのようなバッテリセルを、電力調節回路110によってセルあたり3.3Vのセルあたり上限電圧からセルあたり0.5Vのセルあたり下限電圧に放電できる。本発明の異なる実施形態において、LMO/NbWOベースのセルのようなバッテリセルを、電力調節回路110によってセルあたり3.7Vのセルあたり上限電圧からセルあたり0.5Vのセルあたり下限電圧に放電できる。
【0054】
好ましくは、第1の範囲は、セルあたり1.8V以上、より好ましくはセルあたり2.0V以上である。好ましくは、セルによって提供されるセルあたり上限電圧は、セルあたり少なくとも2.7V、より好ましくはセルあたり少なくとも2.9V、更により好ましくはセルあたり少なくとも3.0Vである。好ましくは、セルによって提供されるセルあたり下限電圧は、セルあたり0.8V以下、より好ましくはセルあたり0.7V以下、更により好ましくはセルあたり0.6V以下である。
【0055】
好ましくは、第2の範囲は、セルあたり1.5V以下、より好ましくはセルあたり1.0V以下である。好ましくは、電力調節回路から出力されるセルあたり上限電圧は、セルあたり4.5V以下、より好ましくはセルあたり4.3V以下、更により好ましくはセルあたり4.2V以下である。好ましくは、電力調節回路から出力されるセルあたり下限電圧は、セルあたり2.7V以上、より好ましくはセルあたり2.9V以上、更により好ましくはセルあたり3.0V以上である。
【0056】
本開示の1つまたは複数の例示的な実施形態が本明細書に記載される。そのような実施形態は、単に本開示の範囲の例示であり、いかなる形であれ限定であるとは意図されない。したがって、本明細書に開示される実施形態の変形、変更および均等物も本開示の範囲内である。
【0057】
図2は、本発明の1つまたは複数の実施形態に従って
図1の高レートエネルギー貯蔵システム100に使用されるニオブベースのセルのための電圧プロファイル例200を描写する。電圧プロファイル200のx軸は、バッテリセルに関する「放電深度」を表し、y軸は、バッテリセルに関するセル電圧(V)を表す。電圧プロファイル200に図示されるように、バッテリパック102のための放電電圧曲線210は、ほぼ3.3Vから0.5Vまで放電される。
【0058】
一部の実施形態において、バッテリパック102に結合される負荷は、制限されたまたは限られた範囲で入力電圧を受けるだけであってもよい。この例では、負荷は、第1の範囲220に図示される1.8Vから2.6Vの範囲内にある電圧を受けることができる。図示されるように、各バッテリセル104に関する放電深度のための全範囲が使用されるわけではなく、非効率に至る。
【0059】
図1に図示されるもののような高レートエネルギー貯蔵システム100は、負荷の入力範囲の外側であるバッテリセルの未使用容量の一部分を獲得するように動作させることができる。例えば、第2の範囲230は、3.3Vから0.5Vまで放電することができる。第1の範囲220に対して考慮された同じ電圧制約が与えられれば、電力調節回路、例えば昇降圧コンバータを組み込むことによって、個々のセルの全放電深度の完全な活用を達成できる。
【0060】
ほぼ3.3Vから2.5Vまでのセルの上位範囲を取り戻すために、バッテリは、昇降圧コンバータの降圧動作モードを開始して入力電圧を所望の出力電圧レベルに低下させる。ほぼ1.8Vから0.5Vまでのセルの下位範囲を取り戻すために、バッテリは、昇降圧コンバータの昇圧動作モードを使用して電圧を所望の出力電圧レベルに上昇させる。高レートエネルギー貯蔵システム100は、そのためニオブ酸化物ベースのセルの全放電の活用を許容しており、第1の範囲220と第2の範囲230との間の差としてグラフィカルに図示される。バッテリセル104の使用可能なエネルギーが増加される。
【0061】
一部の実施形態において、電力調節回路は、入力電圧範囲の一部分に対しては入力電圧を調節しない。結果として、負荷への出力電圧は、入力電圧範囲のこの部分内ではセルの入力電圧に等しい。例えば、電力調節回路は、1.8Vから2.5Vまでの電圧範囲の一部分に対しては入力電圧を調節しなくてもよい。
【0062】
電力調節回路は、入力電圧範囲の上端または下端において電力を調節するだけであってもよい。一部の実施形態において、電力調節回路は、コンバータの降圧動作モードを使用して、入力電圧を負荷への所望の出力電圧レベルに低下させるだけである。他の実施形態において、電力調節回路は、コンバータの昇圧動作モードを使用して、入力電圧を負荷への所望の出力電圧レベルに上昇させるだけである。
【0063】
好ましくは、電力調節回路は、入力電圧範囲の上端および下端において電力を調節する。好ましくは、電力調節回路は、コンバータの降圧動作モードを使用して、入力電圧を負荷への所望の出力電圧レベルに低下させ、コンバータの昇圧動作モードを使用して、入力電圧を負荷への所望の出力電圧レベルに上昇させる。
【0064】
図3~
図6は、
図1の電力調節回路110のためのアーキテクチャ例を描写する。電力調節回路110は、降圧コンバータ、昇圧コンバータ、昇降圧コンバータ等などであるが限定されない、様々なトポロジのDC-DCコンバータを含むことができる。
【0065】
図3は、昇圧コンバータ回路300の出力電圧Voutを上昇させるまたは逓昇するために昇圧動作モードで動作されてもよい昇圧コンバータ回路300を描写する。昇圧コンバータ回路300は、インダクタ(L1)、スイッチ(S1)およびダイオード(D1)を含むが限定されない、回路素子の配置を含む。出力電圧Voutをフィルタリングするために負荷と並列にコンデンサ(C1)を設けることができる。インダクタL1およびダイオードD1は、昇圧コンバータ回路300の入出力間に直列に接続される。スイッチS1は、金属酸化物半導体デバイス、炭化ケイ素(SiC)デバイスまたは窒化ガリウム(GaN)デバイスとして実装されてもよい。他の実施形態において、スイッチS1は、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)デバイス、絶縁ゲートバイポーラ接合トランジスタ(IGBT)デバイス等のような他の制御可能なデバイスとして実装されてもよい。
【0066】
本発明の1つまたは複数の実施形態において、バッテリパック302に結合される昇圧コンバータ回路300の動作を制御するためにコントローラ306が設けられる。コントローラ306は、スイッチS1を動作させる制御信号(ゲートドライバ信号)を提供するために使用できる入力電圧Vinおよび出力電圧Voutを検出してもよい。また、コントローラ306が、入力または出力電流のようなゲート駆動信号を発生させるために使用される入力として他の信号を検出してもよいことを認識できる。コントローラ306がパルス幅変調(PWM)ベースのコントローラとして実装されてもよく、またはコントローラ306が、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ等のようなデジタルコントローラとして実装されてもよいことが理解されるべきである。コントローラ306は、加えてまたは代わりに、デューティサイクルを制御するようなタイミングを発生させるようにアルゴリズムが構成されたコンピュータソフトウェア、ならびに1つまたは複数のデータ記憶デバイス、プロセッサおよび入出力デバイスのような、関連したコンピュータハードウェアを含んでもよい。昇圧コンバータ回路300およびコントローラ306は、例示目的で設けられており、本発明の様々な実施形態の範囲を限定するとは意図されない。
【0067】
コントローラ306は、出力電圧Voutを所望のレベルに制御する制御信号を発生させる。制御信号は、スイッチS1のためのオン/オフ時間を動作させる。デューティサイクルは、サイクルの期間に対してスイッチS1がオン状態にある時間の部分である。非限定的な一例では、1ミリ秒(ms)の間オンであり3msの間オフであるスイッチは、25%のデューティサイクルを有することになる。コントローラ306は、バッテリパック302内のバッテリセルの各々に対してセルあたり電圧を検出し、入力を使用して出力電圧Voutを変更するように構成できる。
【0068】
動作中、コントローラ306がスイッチS1を最初に切り替えると、インダクタL1は、その磁界内にエネルギーを貯蔵し始めることになる。続いて、コントローラ306がスイッチS1をオフに切り替えると、インダクタL1の磁界に貯蔵されたエネルギーが出力電圧Voutを上昇させることになる。コントローラ306がスイッチS1を再びオンに切り替えると、エネルギーはバッテリパック102から磁界に提供され、そしてコンデンサC1に貯蔵されたエネルギーを負荷へ放電して所望の出力電圧Voutを維持できる。サイクルは、負荷における装置の動作中、継続できる。コントローラ306は、スイッチS1のデューティサイクルを制御して所望の出力電圧Voutを維持する。
【0069】
1つまたは複数の実施形態において、電力調節回路110は、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第1の閾値電圧よりも小さいときに複数の接続されたセルを放電させる間に負荷に提供される出力電圧Voutを上昇させるように動作可能である。本発明の1つまたは複数の実施形態において、セルあたり電圧は、コントローラ306によって検出され、スイッチS1のデューティサイクルを制御するゲート駆動信号を発生させるための入力として使用されてもよい。昇圧動作モード中、出力電圧Voutは、設定可能なレベルのままであるようにコントローラ306によって制御されてもよい。
【0070】
図4は、
図1に図示される高レートエネルギー貯蔵システム100の電力調節回路110として実装されてもよい降圧コンバータ回路400を描写する。バッテリパック402に結合された降圧コンバータ回路400は、出力電圧Voutを負荷404のための所望の電圧に低下させるまたは逓降するためにコントローラ406によって動作されてもよい。
図4に図示されるように、降圧コンバータ回路400は、インダクタ(L2)、スイッチ(S2)およびダイオード(D2)を含むが限定されない、回路素子の配置を含む。負荷のために出力電圧Voutをフィルタリングするために降圧コンバータ回路400の出力にコンデンサC2も設けられる。
図4は、
図3を参照しつつ述べたコントローラ306と同様の部品を含むことができるコントローラ406も図示する。
【0071】
初期動作中、コントローラ406は、スイッチS2を閉じるゲート駆動信号を提供する。インダクタL2は、その磁界にエネルギーを貯蔵し始める。スイッチS2が閉じられると、ダイオードD2は遮断モードにあり、それを通って電流が流れるのを許容しない。インダクタL2がバッテリパック102からエネルギーを貯蔵するにつれて、入力電圧Vinは逓降され、出力電圧Voutは、入力電圧VinとインダクタL2にわたる電圧との間の差であるように近づけられる。スイッチS2が開かれると、インダクタL2およびコンデンサC2が負荷404に出力電圧Voutを供給する。コントローラ406は、スイッチS2のデューティサイクルを制御して出力電圧Voutを所望の電圧に維持する。
【0072】
1つまたは複数の実施形態において、電力調節回路110は、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第2の閾値電圧よりも大きいときに負荷404に提供される出力電圧Voutを低下させるまたは逓降するように動作可能である。電圧プロファイル200を参照しつつ、第2の閾値例は、既定の電圧で電圧を受けることに制限される負荷404に対して3.3Vであることができる。1つまたは複数の実施形態において、複数のセルに対するセルあたり電圧が第2の閾値に達すると、降圧コンバータ回路400の降圧動作モードは中止できる。
【0073】
図5は、高レートエネルギー貯蔵システム100の出力電圧を電圧範囲に調整するために動作させることができる昇降圧コンバータ回路500を描写する。昇降圧コンバータ回路500は、様々なモードで動作していることができる。バッテリパック502に結合された昇降圧コンバータ回路500は、降圧動作モード、昇圧動作モードおよび昇降圧動作モードで動作させることができる。1つまたは複数の実施形態において、昇降圧コンバータ回路500は、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第1の閾値電圧よりも小さいときに負荷に提供される出力電圧を上昇させるように動作可能であり、更に複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第2の閾値電圧よりも大きいときに負荷に提供される出力電圧を低下させるように動作可能である。
【0074】
昇降圧コンバータ回路500は、
図5に図示されるようにインダクタ(L3)、スイッチ(S3)およびダイオード(D3)を含むが限定されない、回路素子の配置を含む。動作中、コントローラ506がスイッチS3を最初にオンに切り替えると、インダクタL3はバッテリパック502によって充電され、ダイオードD3は遮断モードにある。続いて、スイッチS3がオフに切り替えられると、負荷504およびコンデンサC3は、インダクタL3から充電されることになる。ダイオードD3は、順方向にバイアスされて、ダイオードD3を通って再びインダクタL3へ電流が流れるのを許容することになる。スイッチS3がオンに切り替えられると、インダクタL3は再び充電されることになり、コンデンサC3は、負荷504を通して放電されて出力電圧Voutを維持できる。
【0075】
1つまたは複数の実施形態において、電力調節回路110は、複数の接続されたセルのセルあたり電圧が第1の閾値電圧と第2の閾値電圧との間であるときにコントローラ506によって非調節モードで動作されてもよい。電力調節回路110の出力電圧Voutは、電圧のいかなる変換もなく負荷504にとって受け入れ可能である範囲にあってもよい。そのような場合、コントローラ506は、バッテリパック502からの電力が調節することなく負荷504に直接結合されるようにするように構成できる。
【0076】
図6は、バッテリパック602からの入力電圧Vinが極めて低いまたは下の閾値未満である場合に二段昇圧コンバータ回路600の出力電圧Voutを上昇させるまたは逓昇するために動作されてもよい二段昇圧コンバータ回路600を描写する。これは、
図3に図示される従来の昇圧コンバータ回路300のより広範囲のバッテリ電圧下での動作を可能にするので、それと比較して有利である。例えば、参照システムでは、リチウムイオンセルは、セルあたり4.2Vから3Vの間の範囲で動作される。しかしながら、ニオブベースのセルは、セルあたり3.2Vから0.5Vの間で動作できる。
【0077】
参照昇圧コンバータ回路アーキテクチャでは、入力電圧が各セルに対する下の電圧閾値(例えば、リチウムイオンベースのバッテリセルに対してセルあたり3V)よりも小さいレベルに達すると、昇圧コンバータ回路のスイッチを動作させるのに十分な電力がないことがある。この段階で、昇圧コンバータ回路は、回路の制限により負荷に出力電圧を提供するのを中止し得る。本明細書に記載される二段昇圧コンバータ回路600のアーキテクチャは、既存の昇圧コンバータアーキテクチャの能力を越えて低い動作電圧範囲(例えば、3Vよりも小さい)で動作するように提供される。したがって、二段昇圧コンバータ回路600は、各バッテリセルのためのセルあたり電圧がより低い範囲にあるときでも出力電圧Voutを負荷604のための所望の電圧に上昇させるためにコントローラ606によって動作されてもよい。
【0078】
図6を参照しつつ、二段昇圧コンバータ回路600は、2つのインダクタ(L1およびL2)、2つのスイッチ(S1およびS2)ならびに2つのダイオード(D1およびD2)を含むが限定されない、回路素子の配置を備えてもよい。2つのコンデンサ(C1およびC2)が更に設けられてもよく、コンデンサC1は、出力電圧Voutをフィルタリングするために負荷604と並列であり、C2は、スイッチS1に給電するために使用される電圧をフィルタリングするためにスイッチ制御信号(Scon)と並列である。インダクタL1およびダイオードD1は、一次サブ回路610の入出力間に直列に接続でき、インダクタL2およびダイオードD2は、制御サブ回路608の入出力間に直列に接続できる。スイッチS1およびS2は、金属酸化物半導体デバイス、炭化ケイ素(SiC)デバイスまたは窒化ガリウム(GaN)デバイスとして実装されてもよい。他の実施形態において、スイッチS1およびS2は、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)デバイス、絶縁ゲートバイポーラ接合トランジスタ(IGBT)デバイス等のような他の制御可能なデバイスとして実装されてもよい。スイッチS1およびS2は、同じ種類のデバイスとして実装される必要はない。
【0079】
コントローラ606は、スイッチS1およびS2を動作させる制御信号(ゲートドライバ信号)を提供するために使用できる入力電圧Vinおよび出力電圧Voutを検出してもよい。また、コントローラ606が、入力または出力電流のような、ゲート駆動信号を発生させるために使用される入力として他の信号を検出してもよいことを認識できる。
【0080】
コントローラ606は、出力電圧Voutを所望のレベルに制御する制御信号を発生させる。動作中、コントローラ606は、制御サブ回路608におけるスイッチS2を閉じるゲート駆動信号を提供する。インダクタL2は、次いでその磁界にエネルギーを貯蔵し始める。スイッチS2が閉じられると、ダイオードD2は遮断モードにあり、それを通って電流が流れるのを許容しない。コントローラ606がスイッチS2をオフに切り替えると、インダクタL2の磁界に貯蔵されたエネルギーが制御サブ回路608の出力電圧を上昇させ、これがSconを介して搬送されて一次サブ回路610におけるスイッチS1を閉じる信号として使用される。したがって、入力電圧VinがスイッチS1に給電するにはあまりに低い場合、例えば一部の金属酸化物半導体デバイスが動作のために最低動作電圧を必要とするので、一次サブ回路610は、依然動作したままであることができる。本開示の1つまたは複数の実施形態において、制御サブ回路608は、一次サブ回路610の動作電圧よりも低い動作電圧で動作するように構成される。コントローラ606がスイッチS2を再びオンに切り替えると、エネルギーはバッテリパック602から磁界に提供され、そしてコンデンサC2に貯蔵されたエネルギーをSconに放電して所望の出力電圧を維持し、更に一次サブ回路610の動作を維持できる。これは、一次サブ回路610が
図3に前記した昇圧コンバータ回路300と同様の方法で動作されることを可能にする。コントローラ606は、スイッチS1のデューティサイクルも制御して二段昇圧コンバータ回路600の所望の総出力電圧Voutを維持してもよい。
【0081】
1つまたは複数の実施形態において、二段昇圧コンバータ回路600は、バッテリパック602のセルあたり電圧が第1の閾値電圧よりも小さいときにバッテリパック602のセルを放電させる間に負荷に提供される出力電圧Voutを上昇させるように動作可能である。本発明の1つまたは複数の実施形態において、セルあたり電圧は、コントローラ606によって検出され、スイッチS1およびS2のデューティサイクルを制御するゲート駆動信号を発生させるための入力として使用されてもよい。
【0082】
図7は、直列に結合される複数のバッテリセル710を含むバッテリパックのハウジング720内に電力調節回路730を一体化するバッテリパック700のためのアーキテクチャを描写する。バッテリパック700が
図5に図示されるもののような昇降圧コンバータ回路740を描写するが、異なる種類のコンバータを使用でき、
図7に例示されるコンバータによって限定されないことを認識できる。バッテリパック700はこの例では、直列に接続されスイッチ750を通じて昇降圧コンバータ回路740に結合される7つのバッテリセル710を含む。バッテリパック700が任意の適切な数のバッテリセル710を含むことができ、この例によって限定されないことを認識できる。バッテリパック700は、電力調節回路がバッテリパック700内に設けられ、結合される装置以外に設けることができる装置のための単一の一体型ソリューションを提供し得る。
【0083】
図8は、
図1に図示されるもののような高レートエネルギー貯蔵システム100を動作させるための方法800のフローチャートを描写する。方法800は、ブロック802で始まり、ブロック804に進み、ブロック804は、電力調節回路を使用して、複数の接続されたセルを、セルあたり下限電圧に対するセルあたり上限電圧の間の差として定義される第1の範囲で放電させることを定める。第1の範囲は、そのような場合、セルあたり上限電圧およびセルあたり下限電圧によって定義でき、炭素質アノードを持つリチウムイオンバッテリセルによって提供されるものよりも大きい。電力調節回路は、1つまたは複数の閾値に基づいて出力電圧を上昇および/または低下させることによってバッテリセルから受けられた電圧を調節するように動作可能である。電力調節回路は、各バッテリセルのセルあたり電圧が、負荷のための電圧を調節するための第1の閾値と第2の閾値との間であるときには出力電圧を上昇も低下もさせないようにも動作可能である。
【0084】
ブロック806は、複数の接続されたセルから放電される電力を調節して出力電圧を第2の範囲で提供するものであり、第2の範囲はセルあたりベースで第1の範囲よりも小さい。1つまたは複数の実施形態において、第2の範囲は、負荷にとって受け入れ可能な入力電圧範囲に相当することができる。
【0085】
ブロック808は、負荷に出力電圧を出力する。方法800は、ブロック810で終了する。
図8のプロセスフロー図は、方法800の動作が何らかの特定の順に実行されることになること、または方法800の動作の全てがあらゆる場合に含まれることになることを示すとは意図されない。追加的に、方法800は、任意の適切な数の追加の動作を含むことができ、
図8に図示される動作によって限定されない。
【0086】
ニオブ酸化物ベースのバッテリセルおよび電力調節回路を含む高レートエネルギー貯蔵システム100は、既存の技術よりも広い範囲にわたってバッテリセルの放電を可能にし、より小さいセルあたり範囲を有する出力電圧を優先する用途のためにセルにおいて利用可能なエネルギーのより大きな部分の使用を許容することによって、先行技術に比べて改善される。技術的効果および利益は、バッテリセルにより長い耐用年数を提供できる、バッテリセルの各々における使用可能な容量の改善された活用を含む。
【0087】
様々な実施形態が関連図面を参照しつつ本明細書に記載される。本開示の範囲から逸脱することなく代替実施形態を考案できる。様々な接続および位置関係(例えば、上方、下方、隣接、等)が以下の説明においておよび図面において要素間に定められる。これらの接続および/または位置関係は、特記されない限り、直接的または間接的であることができ、本発明は、この点で限定的であるとは意図されない。したがって、実体の結合は直接結合か間接結合かを指すことができ、実体間の位置関係は直接的または間接的位置関係であることができる。その上、本明細書に記載される様々なタスクおよびプロセスステップは、本明細書に詳細に記載されていない追加ステップまたは機能性を有するより包括的な手順またはプロセスへ組み込むことができる。
【0088】
簡潔さのために、本発明の態様を製作および使用することに関連した従来技術は、本明細書に詳細に記載されてもされなくてもよい。特に、本明細書に記載される様々な技術的特徴を実装するコンピューティングシステムおよび具体的なコンピュータプログラムの様々な態様が周知である。したがって、簡潔さのために、多くの従来の実装詳細が本明細書に簡潔に言及されるだけである、または周知のシステムおよび/もしくはプロセス詳細を提供することなく完全に省略される。
【0089】
一部の実施形態において、様々な機能または行為が所与の場所でおよび/または1つもしくは複数の装置もしくはシステムの動作に関連して生じることができる。一部の実施形態において、所与の機能または行為の一部分を第1の装置または場所で行うことができ、機能または行為の残りを1つまたは複数の追加装置または場所で行うことができる。
【0090】
本明細書で使用される技術用語は、単に特定の実施形態を記載する目的であり、限定的であるとは意図されない。本明細書で使用される場合、単数形「a(或る1つ)」、「an(或る1つ)」および「the(その1つ)」は、文脈が別途明示しない限り、複数形も含むと意図される。用語「comprises(備える)」および/または「comprising(備え)」は、本明細書で使用される場合、明言された特徴、完全体、ステップ、動作、要素および/または部品の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、ステップ、動作、要素、部品および/またはその群の存在または追加を排除しないことが更に理解されるであろう。
【0091】
以下の請求項における全ての手段またはステップに加えて機能要素の対応する構造、材料、行為および均等物は、詳細に特許請求される他の特許請求要素と組み合わせて機能を行うための任意の構造、材料または行為を含むと意図される。本開示は例示および説明の目的で提示されたが、網羅的であるとも、開示された形態に限定されるとも意図されない。本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく多くの変更および変形が当業者にとって明らかであろう。実施形態は、本開示の原理、実際的応用を最もよく説明するため、および企図された特定の使用に適した様々な変更を伴う様々な実施形態に関して当業者が本開示を理解することを可能にするために選ばれて説明された。
【0092】
本明細書に描かれる図は例示である。本開示の趣旨から逸脱することなくそこに記載される図またはステップ(もしくは動作)に多くの変形があり得る。例えば、行動は異なる順序で行うことができ、または行動は追加、削除もしくは変更できる。また、用語「結合される」は、2つの要素間に信号経路を有することを述べており、その間に介在要素/接続のない要素間の直接接続を意味しない。これらの変形の全てが本開示の一部と考えられる。
【0093】
以下の定義および略記が請求項および本明細書の解釈のために使用されることになる。本明細書で使用される場合、用語「comprises(備える)」、「comprising(備え)」、「includes(含む)」、「including(含み)」、「has(有する)」、「having(有し)」、「contains(含有する)」もしくは「containing(含有し)」、またはその任意の他の異形は、非排他的包含を網羅すると意図される。例えば、一連の要素を備える組成物、混合物、プロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されるわけではなく、明示的に列記されない、またはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品もしくは装置に固有でない他の要素を含むことができる。
【0094】
追加的に、用語「例証的」は、「一例、事例または例示としての役割をすること」を意味するために本明細書で使用される。「例証的」として本明細書に記載されるいずれの実施形態または設計も、必ずしも他の実施形態または設計よりも好まれるまたは有利として解釈されるものではない。用語「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」は、1以上の任意の整数、すなわち1、2、3、4等を含むと理解される。用語「複数」は、2以上の任意の整数、すなわち2、3、4、5等を含むと理解される。用語「接続」は、間接「接続」も直接「接続」も含むことができる。
【0095】
用語「約」、「実質的に」、「ほぼ」およびその異形は、出願を提出した時に利用可能な機器に基づいて特定の量の測定と関連付けられた誤差の程度を含むと意図される。例えば、「約」は、所与の値の±8%もしくは5%、または2%の範囲を含むことができる。
【0096】
様々な実施形態の説明が例示の目的で提示されたが、網羅的であるとも、開示された実施形態に限定されるとも意図されない。記載された実施形態の範囲および趣旨から逸脱することなく多くの変更および変形が当業者にとって明らかであろう。本明細書で使用される技術用語は、実施形態の原理、実際的応用もしくは市場で見つかる技術に対する技術的改善を最もよく説明するように、または当業者が本明細書に開示される実施形態を理解することを可能にするように選ばれた。
【0097】
(参考文献)
本発明および本発明が属する技術の現状をより完全に説明し、開示するために、上記で多くの刊行物を引用した。これらの文献の完全な引用を以下に示す。これらの各文献の全体は、本明細書に組み込まれる。
EP 2685635
WO 2005/060023
US 2019/0305586
US 2017/0126131
US 2013/0320932
US 2013/0043839
US 2010/0156175
US 7,702,369
US 2021/0218075
【符号の説明】
【0098】
100 高レートエネルギー貯蔵システム
102 バッテリパック
104 バッテリセル
110 電力調節回路
200 電圧プロファイル
210 放電電圧曲線
220 第1の範囲
230 第2の範囲
300 昇圧コンバータ回路
302 バッテリパック
304 負荷
306 コントローラ
400 降圧コンバータ回路
402 バッテリパック
404 負荷
406 コントローラ
500 昇降圧コンバータ回路
502 バッテリパック
504 負荷
506 コントローラ
600 二段昇圧コンバータ回路
602 バッテリパック
604 負荷
606 コントローラ
608 制御サブ回路
610 一次サブ回路
700 バッテリパック
710 バッテリセル
720 ハウジング
730 電力調節回路
740 昇降圧コンバータ回路
750 スイッチ
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
C3 コンデンサ
D1 ダイオード
D2 ダイオード
D3 ダイオード
L1 インダクタ
L2 インダクタ
L3 インダクタ
S1 スイッチ
S2 スイッチ
S3 スイッチ
Scon スイッチ制御信号
【国際調査報告】