(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20241024BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241024BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241024BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526702
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 KR2022019890
(87)【国際公開番号】W WO2023113373
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0180099
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0169868
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウ・オ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ハ・アン
(72)【発明者】
【氏名】スン・グク・パク
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM01
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA05
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池を提供する。具体的に、前記リチウム二次電池用非水電解液は、リチウム塩と、非水性有機溶媒と、化学式1で表される化合物を含む第1添加剤と、ビニルエチレンカーボネート(VEC)およびエチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)からなる群から選択された少なくとも1つの第2添加剤と、環状カーボネート化合物および化学式2で表される化合物からなる群から選択された少なくとも1つの第3添加剤と、を含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩と、
非水性有機溶媒と、
下記化学式1で表される化合物を含む第1添加剤と、
ビニルエチレンカーボネート(VEC)、エチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)、またはこれらの混合物を含む第2添加剤と、
ビニルエチレンカーボネート(VEC)を除いた環状カーボネート化合物、下記化学式2で表される化合物、またはこれらの混合物を含む第3添加剤と、
を含む、リチウム二次電池用非水電解液:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~3のアルキレン基であり、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~3のアルキル基、または-CNであり、
[化学式2]
【化2】
前記化学式2中、
nは、1または2の整数である。
【請求項2】
前記Rは、置換もしくは非置換の炭素数1または2のアルキレン基であり、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素または炭素数1または2のアルキル基である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1aで表される化合物である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液:
[化学式1a]
【化3】
【請求項4】
前記第1添加剤は、非水電解液の全重量を基準として0.05重量%~5重量%で含まれる、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項5】
前記第1添加剤および第2添加剤は1:0.5~1:60の重量比で含まれる、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項6】
前記第1添加剤および第2添加剤は1:0.5~1:30の重量比で含まれる、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項7】
前記第1添加剤および第2添加剤は1:0.5~1:15の重量比で含まれる、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項8】
前記第2添加剤は、エチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項9】
前記環状カーボネート化合物は、ビニレンカーボネート(VC)である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項10】
前記化学式2で表される化合物は、1,3-プロパンスルトン(1,3-propane sultone;PS)または1,4-ブタンスルトンである、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項11】
前記第3添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)と化学式2で表される化合物とを含む混合物である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項12】
前記リチウム二次電池用非水電解液は、ハロゲン置換されたカーボネート系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系またはホスファイト系化合物、ボレート系化合物、ベンゼン系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、およびリチウム塩系化合物からなる群から選択された少なくとも1つの第4添加剤をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項13】
負極、正極、前記負極と正極との間に介在したセパレータ、および
リチウム二次電池用非水電解液を含み、
前記非水電解液は、
リチウム塩と、
非水性有機溶媒と、
下記化学式1で表される化合物を含む第1添加剤と、
ビニルエチレンカーボネート(VEC)、エチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)、またはこれらの混合物を含む第2添加剤と、
ビニルエチレンカーボネート(VEC)を除いた環状カーボネート化合物、下記化学式2で表される化合物、またはこれらの混合物を含む第3添加剤と、
を含む、リチウム二次電池:
[化学式1]
【化4】
前記化学式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~3のアルキレン基であり、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~3のアルキル基、または-CNであり、
[化学式2]
【化5】
前記化学式2中、
nは、1または2の整数である。
【請求項14】
前記正極は、コバルト、マンガン、ニッケル、およびアルミニウムの中から選択される1種以上の金属とリチウムとを含むリチウム遷移金属酸化物からなる正極活物質を含む、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【請求項15】
前記第1添加剤および第2添加剤は1:0.5~1:60の重量比で含まれる、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月15日付けの韓国特許出願第10-2021-0180099号および2022年12月7日付けの韓国特許出願第10-2022-0169868号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム塩から発生した分解生成物の除去効果およびSEI強化効果に優れた添加剤を含むリチウム二次電池用非水電解液、およびそれを含むことで高温耐久性が向上したリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、情報社会の発達による個人ITデバイスおよびコンピュータネットワークが発達するに伴い、全般的な社会の電気エネルギーに対する依存度が高くなるにつれ、電気エネルギーを効率的に貯蔵し活用するための技術開発が求められている。
【0004】
特に、環境問題の解決、持続可能な循環型社会の実現に対する関心が台頭するにつれ、二酸化炭素排出量の少ないクリーンエネルギーとして脚光を浴びるリチウムイオン二次電池に関する研究が広範囲に行われている。
【0005】
リチウムイオン二次電池は、個人ITデバイスなどに適用できる程度に小型化が可能であり、エネルギー密度および使用電圧が高いという利点を有しており、ノートパソコン、携帯電話などの電源だけでなく、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源として採用されている。
【0006】
一方、リチウムイオン二次電池は、リチウム含有遷移金属酸化物を主な構成成分とする正極、リチウム合金またはグラファイトに代表される炭素質材料を用いる負極、前記正極と負極との間に介在したセパレータ、および非水電解液を備えている。前記非水電解液は、Liイオンが移動する媒体であり、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などの電解質がエチレンカーボネートやジメチルカーボネートなどの高誘電率の有機溶媒に溶解されたものが用いられている。
【0007】
ただし、前記六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などの電解質は、熱および水分に脆弱であるため、セル内に存在する水分と反応するか、または熱分解されることでPF5などのルイス酸を発生させる。このようなルイス酸は、エチレンカーボネートなどの有機溶媒の分解反応を引き起こすだけでなく、電極-電解質界面に作られた不動態被膜を侵食させ、追加の電解液の分解および正極からの遷移金属イオンの溶出を誘発し得る。
【0008】
溶出した遷移金属イオンは、電解質の分解を促進させてガス発生を加速化するか、または正極に再電着(Re-deposition)して正極の抵抗を増加させ、また、電解液を介して負極に移動後に負極上に電着し、負極の自己放電や、SEI(solid electrolyte interphase)膜の破壊および再生成などによる追加のリチウムイオンの消費および抵抗増加などを引き起こす原因となっている。
【0009】
そこで、リチウム塩の熱分解により生成される副生成物(HFおよびPF5など)を除去するとともに、電極の表面に安定した被膜を形成して遷移金属の溶出を抑制するか、または溶出した遷移金属イオンが負極上に電着するのを抑制することで、安全性だけでなく、高率充放電特性などの電池性能を改善できる非水電解液の組成が要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、リチウム塩から発生した分解生成物の除去効果およびSEI強化効果を向上させることができる添加剤を含むリチウム二次電池用非水電解液を提供しようとする。
【0011】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用非水電解液を含むことで、高温耐久性が向上したリチウム二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態によると、本発明は、
リチウム塩と、
非水性有機溶媒と、
下記化学式1で表される化合物を含む第1添加剤と、
ビニルエチレンカーボネート(VEC)、エチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)、またはこれらの混合物を含む第2添加剤と、
ビニルエチレンカーボネート(VEC)を除いた環状カーボネート化合物、下記化学式2で表される化合物、またはこれらの混合物を含む第3添加剤と、を含む、リチウム二次電池用非水電解液を提供する。
【0013】
【0014】
前記化学式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~3のアルキレン基であり、
R1~R3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~3のアルキル基、または-CNである。
【0015】
【0016】
前記化学式2中、
nは、1または2の整数である。
【0017】
他の実施形態によると、本発明は、
負極、正極、前記負極と正極との間に介在したセパレータ、および
本発明のリチウム二次電池用非水電解液を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のリチウム二次電池用非水電解液に含まれる化学式1で表される化合物は、構造中にプロパルギル基(-C≡C-)と非共有電子対を有する窒素元素を含むルイス(Lewis)塩基系化合物として、充放電時に電池の内部で電解質の分解生成物として発生するルイス酸を容易に除去することができ、正極の表面に堅固な被膜を形成して高温での正極と電解液の副反応を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の非水電解液は、第1添加剤と、電極の表面に安定した被膜を形成可能な第2添加剤および第3添加剤を共に含むことで、電極の表面にさらに堅固な不動態被膜を形成して電極と電解液の副反応を防止することができ、抵抗増加の抑制効果を実現することができる。このような本発明の非水電解液を含むと、高温耐久性が向上したリチウム二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本明細書および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0021】
本明細書において、「含む」、「備える」、「からなる」、または「有する」などが用いられる場合、「~のみ(だけ)」が用いられない以上、他の部分が追加されてもよい。構成要素を単数で表現した場合には、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含む。
本明細書において、「%」は、明示的な他の表示がない限り、重量%を意味する。
【0022】
また、本明細書において、前記「アルキレン基」という用語は、分岐または非分岐の2価の不飽和炭化水素基を意味する。一実施形態において、前記アルキレン基は、置換されていても置換されていなくてもよい。前記アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、3-ペンチレン基などを含むが、これらに限定されず、これらは、それぞれ他の実施形態において選択的に置換されていてもよい。
【0023】
一般的に、リチウム二次電池は、初期充放電時に非水電解液が分解されることで、正極および負極の表面に不動態能力を有する被膜を形成して高温貯蔵特性を確保することができる。しかし、前記被膜は、リチウムイオン二次電池に広く用いられるリチウム塩(LiPF6など)の熱分解により生成されるHFおよびPF5のようなルイス酸物質により劣化し得る。すなわち、ルイス酸物質の攻撃により正極から遷移金属元素の溶出が発生すると、表面の構造の変化により電極の表面抵抗が増加し、レドックスセンターである金属元素が消失することで理論容量が減少し、発現容量が減少し得る。また、このように溶出した遷移金属イオンは、強い還元電位帯域で反応する負極に電着し、電子を消費するだけでなく、電着の際に被膜を破壊し、負極の表面を露出させるため、追加の電解質の分解反応を引き起こし得る。その結果、負極抵抗と不可逆容量が増加し、セルの容量が持続的に低下するという問題がある。
【0024】
そこで、本発明においては、リチウム塩から発生した分解生成物の除去効果およびSEI強化効果に優れた添加剤を含む非水電解液、およびそれを含むリチウム二次電池を提供しようとする。
【0025】
リチウム二次電池用非水電解液
一実施形態によると、本発明は、
リチウム塩と、
非水性有機溶媒と、
下記化学式1で表される化合物を含む第1添加剤と、
ビニルエチレンカーボネート(VEC)、エチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)、またはこれらの混合物を含む第2添加剤と、
ビニルエチレンカーボネート(VEC)を除いた環状カーボネート化合物、下記化学式2で表される化合物、またはこれらの混合物を含む第3添加剤と、を含む、リチウム二次電池用非水電解液を提供する。
【0026】
【0027】
前記化学式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~3のアルキレン基であり、
R1~R3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~3のアルキル基、または-CNである。
【0028】
【0029】
前記化学式2中、
nは、1または2の整数である。
【0030】
(1)リチウム塩
先ず、前記リチウム塩について説明する。
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常用いられるものが制限なく用いられてもよく、例えば、カチオンとしては、Li+を含み、アニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、B10Cl10
-、AlCl4
-、AlO4
-、PF6
-、CF3SO3
-、CH3CO2
-、CF3CO2
-、AsF6
-、SbF6
-、CH3SO3
-、(CF3CF2SO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、BF2C2O4
-、BC4O8
-、PF4C2O4
-、PF2C4O8
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、C4F9SO3
-、CF3CF2SO3
-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、CF3(CF2)7SO3
-、およびSCN-からなる群から選択された少なくともいずれか1つが挙げられる。
【0031】
具体的に、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiAlO4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCH3CO2、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiCH3SO3、LiN(SO2F)2(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide)、LiFSI)、LiN(SO2CF2CF3)2(リチウムビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド(lithium bis(perfluoroethanesulfonyl)imide)、LiBETI)、およびLiN(SO2CF3)2(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、LiTFSI)からなる群から選択された単一物または2種以上の混合物を含んでもよく、特にイオン伝導度の高いLiPF6またはLiBF4などが用いられてもよい。
【0032】
一方、高温環境条件下で非水電解液の有機溶媒が分解されると、前記有機溶媒の分解生成物と前記リチウム塩のアニオンが反応してルイス酸副生成物を発生させ得る。例えば、下記反応式で示したように、リチウム塩としてLiPF6が用いられると、PF5のようなルイス酸副生成物が生成される。このようなルイス酸副生成物は、下記のような連鎖的化学反応によりHFをはじめとする副生成物を生成させ、有機溶媒の自発的分解反応を促進させ、電極界面上に形成されているSEI膜を崩壊させる副反応を招く。
【0033】
【0034】
一方、前記リチウム塩の含量は、通常、使用可能な範囲内で適宜変更してもよいが、最適な電極表面の腐食防止用の被膜形成効果を得るために、電解液中に0.8M~3.0Mの濃度、具体的には1.0M~3.0Mの濃度で含まれてもよい。
【0035】
前記リチウム塩の濃度が前記範囲を満たす場合、最適な含浸性を実現できるように非水電解液の粘度を制御することができ、リチウムイオンの移動性を向上させてリチウム二次電池の容量特性およびサイクル特性の改善効果を得ることができる。
【0036】
(2)非水性有機溶媒
また、非水性有機溶媒に関する説明は次のとおりである。
前記非水性有機溶媒としては、非水電解液に通常用いられる多様な有機溶媒が制限なく用いられてもよいが、二次電池の充放電過程で酸化反応などによる分解を最小化可能であり、添加剤とともに目的とする特性を発揮可能なものであれば、その種類に制限がない。
【0037】
具体的に、前記非水性有機溶媒は、環状カーボネート系有機溶媒、直鎖状カーボネート系有機溶媒、直鎖状エステル系有機溶媒、またはこれらの混合有機溶媒を含んでもよい。
【0038】
前記環状カーボネート系有機溶媒は、誘電率が高く、非水電解液中のリチウム塩をよく解離させる高粘度有機溶媒であり、その具体的な例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、およびビニレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの有機溶媒を含んでもよく、中でも、エチレンカーボネートを含んでもよい。
【0039】
前記直鎖状カーボネート系有機溶媒は、低粘度および低誘電率を有する有機溶媒であり、その具体的な例として、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの有機溶媒を含んでもよく、具体的に、エチルメチルカーボネート(EMC)を含んでもよい。
【0040】
前記直鎖状エステル系有機溶媒は、環状カーボネート系有機溶媒に比べて相対的に高温および高電圧駆動時に安定性が高い溶媒であり、高温駆動時にガス発生を引き起こす環状カーボネート系有機溶媒の短所を改善するとともに、高いイオン伝導度を実現することができる。
【0041】
前記直鎖状エステル系有機溶媒としては、その具体的な例として、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよく、具体的に、エチルプロピオネートおよびプロピルプロピオネートのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0042】
本発明の非水電解液は、必要に応じて、環状エステル系有機溶媒をさらに含んでもよい。
また、前記環状エステル系有機溶媒は、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
一方、前記本発明の非水電解液中のリチウム塩および第1~第3添加剤を除いた残部は、別に言及しない限り、全て非水性有機溶媒であってもよい。
【0043】
(3)第1添加剤
本発明のリチウム二次電池用非水電解液は、第1添加剤として下記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0044】
【0045】
前記化学式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~3のアルキレン基であり、
R1~R3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~3のアルキル基、または-CNである。
【0046】
具体的に、前記化学式1で表される化合物に含まれた窒素元素の非共有電子対は、リチウム塩のアニオンを安定化させ、アニオンの分解生成物であるHFおよびPF5のようなルイス酸の発生を抑制するとともに、前記窒素元素がルイス塩基として作用して電解液中に発生したルイス酸を除去することができるため、ルイス酸に起因する正極もしくは負極の表面における被膜の劣化挙動を抑制することができ、それによる追加の電解液の分解を防止することができる。その結果、二次電池の自己放電を緩和し、高温貯蔵特性を向上させることができる。
【0047】
また、前記化学式1で表される化合物は、構造中に負極の表面で還元されやすいプロパルギル官能基を含んでおり、負極の表面に不動態能力の高いSEI膜を形成することでSEI膜の不安定性(instability)により発生する電解液の追加の還元分解反応を防止することができ、負極自体の高温耐久性を改善することができるため、負極の自己放電反応を抑制することができる。特に、前記化学式1で表される化合物に含まれたプロパルギル基は、正極に含まれた金属性不純物の表面に吸着して不純物の溶出を抑制することができるため、金属イオンが負極の表面に電着するのを抑制し、内部短絡を防止することができる。
【0048】
具体的に、前記化学式1中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数1または2のアルキレン基であり、R1~R3は、それぞれ独立して、水素または炭素数1または2のアルキル基であってもよい。
また、前記化学式1中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数1または2のアルキレン基であり、R1~R3は、それぞれ水素であってもよい。
【0049】
好ましくは、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1aで表される化合物であってもよい。
【0050】
【0051】
前記第1添加剤は、非水電解液の全重量を基準として0.05重量%~5重量%で含まれてもよい。
前記第1添加剤が前記含量範囲で含まれると、添加剤による副反応、容量低下、および抵抗増加などの短所を最大限抑制しながらも、リチウム塩の分解生成物の除去効果に優れ、諸性能がさらに向上した二次電池を製造することができる。
【0052】
具体的に、前記第1添加剤が0.05重量%以上で含まれると、繰り返しの充放電の間にHFまたはPF5除去効果を維持することができる。また、前記第1添加剤が5.0重量%以下で含まれると、添加剤による副反応を防止するとともに、電解液の粘度増加を防止し、それによるイオン伝導度の減少を抑制することができるため、高温貯蔵時のレート特性や低温寿命特性の低下を防止することができる。
具体的に、前記第1添加剤は、非水電解液の全重量を基準として0.05重量%~3重量%で含まれてもよい。
【0053】
(4)第2添加剤
本発明のリチウム二次電池用非水電解液は、第2添加剤をさらに含んでもよい。
【0054】
前記第2添加剤は、下記化学式3で表されるビニルエチレンカーボネート(vinyl ethylene carbonate;VEC)、下記化学式4で表されるエチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(ethyl di(prop-2-yn-1-yl)phosphate;EDP)、またはこれらの混合物の中から選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0055】
【0056】
【0057】
前記化学式3で表されるビニルエチレンカーボネート(VEC)は、負極の表面で還元分解されることで、Li2CO3などのような無機成分を含む堅固なSEI膜を形成することができる。特に、前記ビニルエチレンカーボネートは、ビニレンカーボネート(VC)に比べて熱的にさらに安定するため、高温にさらされても化学的分解反応が相対的に少ないという長所がある。したがって、追加添加剤としてビニレンカーボネートなどと混用して用いる場合、正極の表面で酸化分解されることで安定したポリマー形態の被膜(CEIなど)を形成し、正極界面の安定化をさらに強化することができる。この効果は、Niの含量が80atm%以上の高含量Ni素材の正極材を用いる場合にさらに明らかである。
【0058】
また、構造中に2以上のプロパルギル官能基とホスフェート(Phosphate)官能基を全て含む前記化学式4で表されるエチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)は、前記官能基がラジカル(radical)化することで容易に還元分解され、負極の表面に高密度の安定した被膜を形成することができ、また、正極の表面にLiイオンの透過性(permeability)に優れたP-O系の安定した被膜を形成し、界面抵抗の増加を抑制する効果をもたらすことができる。
【0059】
具体的に、本発明の第2添加剤は、ビニルエチレンカーボネート(VEC)または前記化学式4で表されるエチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)をそれぞれ含んでもよく、またはビニルエチレンカーボネート(VEC)とエチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)を全て含んでもよい。
【0060】
前記第2添加剤として前記ビニルエチレンカーボネート(VEC)とエチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)を全て含む場合、ビニルエチレンカーボネート(VEC)とエチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)は1:1の重量比または1:3の重量比で含まれてもよい。
【0061】
前記ビニルエチレンカーボネート(VEC)とエチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(EDP)が前記比率で含まれると、それぞれ添加剤を単独で用いたときに比べて初期被膜形成効果をさらに向上させることができ、還元電位差により電圧に応じてSEI膜を順次形成し、さらに安定かつ堅固な多層の被膜を形成することができる。
【0062】
また、本発明の非水電解液において、前記第1添加剤および第2添加剤は1:0.5~1:60の重量比で含まれてもよい。
前記第1添加剤および第2添加剤が前記比率で含まれると、表面張力を低くして電解液の濡れ性を向上させることができ、抵抗増加なしに安定したSEI膜を形成して高温での充電時に電極と電解液の副反応を抑制することができる。具体的に、第1添加剤に対して第2添加剤が0.5重量比以上で含まれると、安定したSEI膜を形成することで電極と電解液の副反応を抑制して体積増加率を抑制することができ、第1添加剤に対する前記第2添加剤の比率が60重量比以下で含まれると、電極の表面に過度に厚い被膜が形成されるのを防止して初期界面抵抗の増加を効果的に抑制することができ、出力低下を防止することができる。具体的に、前記第1添加剤および第2添加剤は1:0.5~1:30の重量比、好ましくは1:0.5~1:15の重量比、より好ましくは1:1~1:10の重量比で混合して用いてもよい。
【0063】
(5)第3添加剤
また、本発明のリチウム二次電池用非水電解液は、電極の表面にさらに安定した被膜形成効果を与えるために、第3添加剤をさらに含んでもよい。
【0064】
前記第3添加剤は、ビニルエチレンカーボネートを除いた環状カーボネート化合物、下記化学式2で表される化合物、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0065】
【0066】
前記化学式2中、
nは、1または2の整数である。
【0067】
前記環状カーボネート化合物としては、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
前記ビニレンカーボネートは、前記第1添加剤の置換基であるプロパルギル基がラジカルを形成する際に、共に反応して高分子形態の安定した被膜を形成することができる。したがって、第3添加剤が共に混用される場合、負極の表面にさらに安定した被膜形成効果を与えることができる。
【0068】
また、前記化学式2中、nは1であってもよい。
具体的に、前記化学式2で表される化合物は、1,3-プロパンスルトン(1,3-propane sultone;PS)または1,4-ブタンスルトンであってもよく、好ましくは、1,3-プロパンスルトンであってもよい。
【0069】
前記第3添加剤を含むと、電解液のバルク物性の安定化と電極界面の被膜形成効果を改善し、被膜成分をさらに堅固に改質することができ、リチウムの析出を抑制する効果を達成することができる。したがって、前記第1および第2添加剤とともに、第3添加剤を共に用いる場合、被膜の耐久性を効果的に改善することができる。
【0070】
前記第3添加剤は、非水電解液の全重量を基準として0.01~15重量%、具体的には0.1~10重量%で含まれてもよい。
前記第3添加剤が前記範囲で含まれると、諸性能がさらに向上した二次電池を製造することができる。例えば、前記第3添加剤が0.01重量%以上で含まれると、抵抗増加を最大限抑制する範囲でSEI膜の耐久性を向上させるという効果がある。また、前記第3添加剤が10重量%以下で含まれると、SEI膜の長期メンテナンス効果をもたらすことができ、電池の充放電時の電解液中の過度な副反応を防止することができ、電解液中において未反応物状態で存在するのを防止することができるため、未反応物による抵抗増加を抑制することができる。
【0071】
(6)第4添加剤
また、本発明の非水電解液は、高出力の環境で非水電解液が分解されることで負極崩壊が誘発されるのを防止したり、低温高率放電特性、高温安定性、過充電の防止、高温での電池の膨張抑制効果などをさらに向上させたりするために、必要に応じて、第4添加剤をさらに含んでもよい。
【0072】
前記第4添加剤の例としては、ハロゲン置換されたカーボネート系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系またはホスファイト系化合物、ボレート系化合物、ベンゼン系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、およびリチウム塩系化合物からなる群から選択された少なくとも1つが挙げられる。
【0073】
前記ハロゲン置換されたカーボネート系化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられる。
前記サルフェート系化合物は、例えば、エチレンサルフェート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンサルフェート(Trimethylene sulfate;TMS)、メチルトリメチレンサルフェート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)などであってもよい。
【0074】
前記ホスフェート系またはホスファイト系化合物は、例えば、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、およびトリス(トリフルオロエチル)ホスファイトからなる群から選択された1種以上の化合物であってもよい。
【0075】
前記ボレート系化合物としては、テトラフェニルボレート、負極の表面に被膜を形成可能なリチウムオキサリルジフルオロボレート(LiODFB)、またはリチウムビスオキサレートボレート(LiB(C2O4)2、LiBOB)などが挙げられる。
【0076】
前記ベンゼン系化合物は、フルオロベンゼンなどであってもよく、前記アミン系化合物は、トリエタノールアミンまたはエチレンジアミンなどであってもよく、前記シラン系化合物は、テトラビニルシランなどであってもよい。
【0077】
前記リチウム塩系化合物は、前記非水電解液に含まれるリチウム塩とは異なる化合物であり、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2、LiDFP)またはLiBF4などが挙げられる。
【0078】
このようなその他の添加剤の中でも、初期活性化工程時に負極の表面にさらに堅固なSEI被膜を形成するために、負極の表面に被膜形成効果に優れたエチレンサルフェート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、LiBF4、およびリチウムオキサリルジフルオロボレート(LiODFB)からなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0079】
前記第4添加剤は、2種以上の化合物を混用して用いてもよく、過量の添加剤による副反応を防止するために、非水電解液の全重量を基準として10重量%以下で含まれてもよい。
【0080】
リチウム二次電池
また、本発明の他の一実施形態においては、正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在するセパレータと、前述した本発明の非水電解液と、を含む、リチウム二次電池を提供する。
【0081】
本発明のリチウム二次電池は、正極、負極、および正極と負極との間にセパレータが順次積層されている電極組立体を形成して電池ケースに収納した後、本発明の非水電解液を投入して製造することができる。
【0082】
このような本発明のリチウム二次電池を製造する方法は、当該技術分野で周知の通常のリチウム二次電池を製造する方法が適用されてもよく、具体的には後述するとおりである。
【0083】
(1)正極
本発明に係る正極は、正極活物質を含む正極活物質層を含んでもよく、必要に応じて、前記正極活物質層は、導電材および/またはバインダーをさらに含んでもよい。
【0084】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であり、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、およびアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムとを含むリチウム複合金属酸化物を含んでもよい。
【0085】
具体的に、前記正極活物質は、電池の容量特性および安全性の高いリチウム-コバルト系酸化物、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4など)、およびリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物のうち少なくとも1つを含んでもよい。具体的に、前記正極活物質は、リチウム-コバルト系酸化物または下記化学式5で表されるリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物を含んでもよい。
【0086】
[化学式5]
Lix[NiyCozMnwM1
v]O2
【0087】
前記化学式5中、
前記M1は、遷移金属サイトに置換されたドーピング元素であり、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上の元素であってもよい。
【0088】
前記xは、リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物中で全遷移金属に対するリチウムの原子比率を意味するものであり、0.8~1.2、好ましくは1~1.2であってもよい。
【0089】
前記yは、リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物中で遷移金属のうちニッケルの原子比率を意味するものであり、0.5以上1未満、好ましくは0.7~1未満、より好ましくは0.75~0.98である。遷移金属のうちニッケルの含量が高くなるほど、さらに高い容量を実現することができるため、ニッケルの含量が0.5以上であることが高容量の実現にさらに有利である。
【0090】
前記zは、リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物中で遷移金属のうちコバルトの原子比率を意味するものであり、0超過0.5未満、好ましくは0.01~0.3、より好ましくは0.01~0.25である。
【0091】
前記wは、リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物中で遷移金属のうちマンガンの原子比率を意味するものであり、0超過0.5未満、好ましくは0.01~0.3、より好ましくは0.01~0.25である。
【0092】
前記vは、リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物中の遷移金属サイトにドーピングされたドーピング元素M1の原子比率を意味するものであり、0~0.2、好ましくは0~0.1であってもよい。すなわち、ドーピング元素M1が添加される場合、リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物の構造安定性を改善する効果はあるが、ドーピング元素の含有量が増加すると、容量が低下し得るため、vは、0.2以下の含量で含まれることが好ましい。
一方、前記化学式1において、y+z+w+v=1であってもよい。
【0093】
前記リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物の具体的な例としては、ニッケル含有量が50atm%以上のLi(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.1Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2、またはLi(Ni0.86Mn0.05Co0.07Al0.02)O2などが挙げられ、より具体的には、ニッケル含有量が70atm%以上のLi(Ni0.7Mn0.1Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2、またはLi(Ni0.86Mn0.05Co0.07Al0.02)O2であることがより好ましい。
【0094】
前記正極活物質は、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として80重量%~99重量%、具体的には90重量%~99重量%で含まれてもよい。この際、前記正極活物質の含量が80重量%以下である場合、エネルギー密度が低くなり、容量が低下し得る。
【0095】
また、前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどの炭素粉末;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、またはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、またはニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
前記導電材は、通常、正極活物質層中の固形分の全重量を基準として1~30重量%で添加される。
【0096】
また、前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする成分であり、通常、正極活物質層中の固形分の全重量を基準として1~30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリビニルアルコールを含むポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;およびシラン系バインダーなどが挙げられる。
【0097】
上記のような本発明の正極は、当該技術分野で周知の正極の製造方法により製造されてもよい。例えば、前記正極は、正極活物質、バインダー、および/または導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延して正極活物質層を形成する方法、または前記正極活物質層を別の支持体上にキャスティングした後、支持体を剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネートする方法などにより製造されてもよい。
【0098】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものが用いられてもよい。
【0099】
前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-methyl-2-pyrrolidone)などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含む際に好ましい粘度になる量で用いられてもよい。例えば、正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む活物質スラリー中の固形分濃度が10重量%~90重量%、好ましくは30重量%~80重量%となるように含まれてもよい。
【0100】
(2)負極
次に、負極について説明する。
本発明に係る負極は、負極活物質を含む負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、必要に応じて、導電材および/またはバインダーをさらに含んでもよい。
【0101】
前記負極活物質は、リチウムをドープおよび脱ドープ可能なケイ素系活物質を含んでもよい。
前記ケイ素系活物質は、その代表的な例としてSi、SiOx(0<x<2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)などが挙げられる。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。前記Si-Y合金は、合金の総量に対してケイ素の含量が全金属元素のうち最も多い合金である。
【0102】
また、前記ケイ素系活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質との混合物を用いてもよい。
【0103】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質としては、リチウムイオン二次電池に一般的に用いられる炭素系負極活物質であれば特に制限なく用いてもよく、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらを共に用いてもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成コークスなどが挙げられる。
【0104】
この他にも、前記負極活物質は、リチウム金属、金属またはこれらの金属とリチウムの合金、および金属複合酸化物からなる群から選択された少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0105】
前記金属としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群から選択される金属またはこれらの金属とリチウムの合金が用いられてもよい。
【0106】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5、LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、およびSnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択されるものが用いられてもよい。
前記負極活物質は、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として80重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0107】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であり、負極活物質層中の固形分の全重量を基準として1~20重量%で添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、またはニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0108】
前記バインダーは、導電材、活物質、および集電体間の結合に助力する成分であり、通常、負極活物質層中の固形分の全重量を基準として1~30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリビニルアルコールを含むポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;およびシラン系バインダーなどが挙げられる。
【0109】
前記負極は、当該技術分野で周知の負極の製造方法により製造されてもよい。例えば、前記負極は、負極集電体上に、負極活物質と、選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極活物質スラリーを塗布し、圧延、乾燥して負極活物質層を形成する方法、または前記負極活物質層を別の支持体上にキャスティングした後、支持体を剥離させて得たフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されてもよい。
【0110】
前記負極集電体は、一般的に3~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0111】
前記溶媒は、水またはNMP、アルコールなどの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含む際に好ましい粘度になる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む活物質スラリー中の固形分濃度が50重量%~75重量%、好ましくは40重量%~70重量%となるように含まれてもよい。
【0112】
(3)セパレータ
本発明のリチウム二次電池に含まれる前記セパレータは、一般的に用いられる通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いてもよく、または通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いてもよいが、これに限定されない。
【0113】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型、またはコイン(coin)型などであってもよい。
【0114】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。ただし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形されてもよく、本発明の範囲が後述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0115】
実施例
実施例1.
(リチウム二次電池用非水電解液の製造)
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、第1添加剤として化学式1aで表される化合物0.1重量%、第2添加剤としてビニルエチレンカーボネート(以下、「VEC」と称する)0.3重量%、第3添加剤としてビニレンカーボネート(以下、「VC」と称する)3.0重量%および1,3-プロパンスルトン(以下、「PS」と称する)0.5重量%、および第4添加剤としてエチレンサルフェート(以下、「Esa」と称する)1.0重量%を添加し、非水電解液を製造した(下記表1参照)。
【0116】
(二次電池の製造)
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に正極活物質Li(Ni0.86Mn0.05Co0.07Al0.02)O2、導電材(カーボンブラック)、およびバインダー(ポリビニリデンフルオライド)を97.5:1:1.5の重量比で添加し、正極スラリー(固形分含量:50重量%)を製造した。前記正極スラリーを厚さ12μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行い、正極を製造した。
【0117】
負極活物質(グラファイト)、バインダー(SBR-CMC)、および導電材(カーボンブラック)を97.5:1.5:1.0の重量比で、溶媒である水に添加し、負極スラリー(固形分含量:60重量%)を製造した。前記負極スラリーを厚さ6μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行い、負極を製造した。
【0118】
前記正極、無機物粒子(Al2O3)が塗布されたポリオレフィン系多孔性セパレータ、および負極を順次積層して電極組立体を製造した後、ゼリーロール(jelly-roll)型に巻回(winding)し、それを円筒型電池ケース内に収納し、前記リチウム二次電池用非水電解液を注液し、駆動電圧が4.2V以上の円筒型リチウム二次電池を製造した。
【0119】
実施例2.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、第1添加剤として化学式1aで表される化合物0.1重量%、第2添加剤としてエチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート(以下、「EDP」と称する)0.3重量%、第3添加剤としてVC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、および第4添加剤としてEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0120】
実施例3.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、第1添加剤として化学式1aで表される化合物0.1重量%、第2添加剤としてEDP 0.1重量%、第3添加剤としてVC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、および第4添加剤としてEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0121】
実施例4.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、第1添加剤として化学式1aで表される化合物0.1重量%、第2添加剤としてEDP 0.5重量%、第3添加剤としてVC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、および第4添加剤としてEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0122】
実施例5.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、第1添加剤として化学式1aで表される化合物0.1重量%、第2添加剤としてEDP 1.0重量%、第3添加剤としてVC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、および第4添加剤としてEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0123】
実施例6.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、第1添加剤として化学式1aで表される化合物0.1重量%、第2添加剤としてEDP 3.0重量%、第3添加剤としてVC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、および第4添加剤としてEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0124】
実施例7.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、第1添加剤として化学式1aで表される化合物0.1重量%、第2添加剤としてEDP 6.0重量%、第3添加剤としてVC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、および第4添加剤としてEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0125】
実施例8.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、第1添加剤として化学式1aで表される化合物0.1重量%、第2添加剤としてEDP 0.04重量%、第3添加剤としてVC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、および第4添加剤としてEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0126】
実施例9.
Li(Ni0.7Mn0.1Co0.2)O2を正極活物質として用いて正極を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0127】
実施例10.
Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2を正極活物質として用いて正極を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0128】
比較例1.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、VEC 0.3重量%、VC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、およびEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表2参照)。
【0129】
比較例2.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、EDP 0.3重量%、VC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、およびEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表2参照)。
【0130】
比較例3.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、化学式1aで表される化合物0.1重量%、VC 3.0重量%およびPS 0.5重量%、および第4添加剤としてEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表2参照)。
【0131】
比較例4.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、VC 3.0重量%、PS 0.5重量%、およびEsa 1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表2参照)。
【0132】
比較例5.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、VC 3.0重量%、PS 0.5重量%、Esa 1.0重量%、およびリチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)1.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表2参照)。
【0133】
比較例6.
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPF6が1.0Mとなるように溶解した後、VC 3.0重量%、PS 0.5重量%、Esa 1.0重量%、およびフルオロエチレンカーボネート(FEC)5.0重量%を添加して非水電解液を製造することを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表2参照)。
【0134】
比較例7.
Li(Ni0.7Mn0.1Co0.2)O2を正極活物質として用いて正極を製造することを除いては、前記比較例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表2参照)。
【0135】
比較例8.
Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2を正極活物質として用いて正極を製造することを除いては、前記比較例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表2参照)。
【0136】
【0137】
【0138】
前記表1および表2中、それぞれの化合物の略称は、それぞれ以下を意味する。
VEC:ビニルエチレンカーボネート
EDP:エチルジ(プロパ-2-イン-1-イル)ホスフェート
VC:ビニレンカーボネート
PS:1,3-プロパンスルトン
Esa:エチレンサルフェート
LiDFP:リチウムジフルオロホスフェート
FEC:フルオロエチレンカーボネート
NCM 712:Li(Ni0.7Mn0.1Co0.2)O2
NCM 622:Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2
【0139】
実験例
実験例1:体積増加率の評価実験
前記実施例1~10で製造されたリチウム二次電池と比較例1~8で製造されたリチウム二次電池をそれぞれ4.2Vまで0.33Cで充電した後、充電終了後、蒸留水を用いたアルキメデス法で初期体積値を測定した。
【0140】
次に、前記それぞれのリチウム二次電池を60℃でSOC 100%の状態で12週間貯蔵した後、初期体積に対する高温貯蔵後の増加したリチウム二次電池の体積増加率をアルキメデス法で測定し、測定された体積の変化程度を百分率(%)で計算して下記表3に示した。
【0141】
【0142】
前記表3を参照すると、本発明の非水電解液を備えた実施例1~10で製造されたリチウム二次電池の高温貯蔵後の体積増加率が3.5%以下であって、比較例1~8のリチウム二次電池に比べて著しく減少したことが分かる。
【0143】
一方、第2添加剤が多少少なく含まれた実施例8のリチウム二次電池の高温貯蔵後の体積増加率は3.5%であって、実施例1~7で製造されたリチウム二次電池に比べて多少増加したことが分かる。
【0144】
一方、前記表3を参照すると、正極活物質としてLi(Ni0.7Mn0.1Co0.2)O2を含む正極および本発明の非水電解液を含む実施例9のリチウム二次電池の場合、比較例7のリチウム二次電池に比べて高温貯蔵後の体積増加率が約65%程度低減され、正極活物質としてLi(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2を含む正極および本発明の非水電解液を含む実施例10のリチウム二次電池の場合、比較例8のリチウム二次電池に比べて高温貯蔵後の体積増加率が約75%程度低減されたことが分かり、正極活物質としてLi(Ni0.86Mn0.05Co0.07Al0.02)O2を含む正極および本発明の非水電解液を併用した実施例1のリチウム二次電池の場合、第1添加剤を除き、第2添加剤および第3添加剤だけを含む非水電解液を備えた比較例1のリチウム二次電池に比べて、高温貯蔵後の体積増加率が約80%以上低減されたことが分かる。この結果を参照すると、ニッケル含有量が80atm%以上の正極活物質を含む正極および本発明の非水電解液を組み合わせて適用した際に、体積増加率の抑制効果がさらに向上することを確認することができる。
【0145】
実験例2.高温貯蔵時の抵抗増加率
前記実施例1~7、9、および10で製造された二次電池と比較例1~8で製造されたそれぞれの二次電池を0.1C CCで活性化した後、脱気を行った。
【0146】
次に、25℃で、定電流-定電圧(CC-CV)充電条件で4.20Vまで0.33C CCで充電した後、SOC 50%条件で、2.5Cレート条件でパルス放電させて10秒間降下する電圧を測定し、初期抵抗値を求めた。
【0147】
次に、60℃の高温で12週間貯蔵した後に、電池をSOC 50%まで充電した後、2.5Cレート条件でパルス放電させて10秒間降下する電圧を測定して高温貯蔵後の抵抗値を求めた後、初期抵抗に対して増加した抵抗増加率(%)を算出して下記表4に示した。この際、前記電圧降下は、PNE-0506充放電器(製造会社:(株)PNE solution、5V、6A)を用いて測定した。
【0148】
【0149】
前記表4を参照すると、本発明の非水電解液を備えた実施例1~7、9、および10で製造されたリチウム二次電池の高温貯蔵後の抵抗増加率は約7.1%以下であって、比較例1~8のリチウム二次電池に比べて著しく改善されたことが分かる。すなわち、本発明の非水電解液を備えた実施例の二次電池は、電極の表面に安定したSEI膜を形成し、電池が高温にさらされた際にも高温での被膜破壊を抑制することができ、したがって、被膜の破壊による追加の電解質の分解が少ないため、高温貯蔵後にも優れた抵抗増加の抑制効果をもたらすと見られる。
【0150】
一方、前記表4を参照すると、正極活物質としてLi(Ni0.7Mn0.1Co0.2)O2を含む正極および本発明の非水電解液を含む実施例9のリチウム二次電池の場合、比較例7のリチウム二次電池に比べて抵抗増加率が約54%程度低減され、正極活物質としてLi(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2を含む正極および本発明の非水電解液を含む実施例10のリチウム二次電池の場合、比較例8のリチウム二次電池に比べて抵抗増加率が約58%程度低減されることが分かり、正極活物質としてLi(Ni0.86Mn0.05Co0.07Al0.02)O2を含む正極および本発明の非水電解液を併用した実施例1のリチウム二次電池の場合、第1添加剤を除き、第2添加剤および第3添加剤だけを含む非水電解液を備えた比較例1のリチウム二次電池に比べて、抵抗増加率が約59%以上低減されたことが分かる。この結果を参照すると、ニッケル含有量が80atm%以上の正極活物質を含む正極および本発明の非水電解液を組み合わせて適用する際に、抵抗増加率の抑制効果がさらに向上することが分かる。
【0151】
実験例3.初期抵抗の評価
前記実施例1~7で製造されたリチウム二次電池と比較例6で製造されたリチウム二次電池をそれぞれ0.1C CCで活性化した後、脱気を行った。
【0152】
次に、25℃で、定電流-定電圧(CC-CV)充電条件で4.20Vまで0.33C CCで充電した後、SOC 50%条件で、2.5Cレート条件でパルス放電させて10秒間降下する電圧を測定し、初期抵抗値を求めた。測定された初期抵抗値を下記表5に示した。
【0153】
【0154】
前記表5を参照すると、本発明の非水電解液を備えた実施例1~5で製造されたリチウム二次電池の初期抵抗値は17.5%以下であることが分かる。
これに対し、本発明の第1および第2添加剤を全て含まない比較例6のリチウム二次電池の初期抵抗値は21.4%であって、実施例1~5で製造されたリチウム二次電池に比べて大幅に増加したことが分かる。
【0155】
一方、第2添加剤が多少多く含まれた実施例6および7のリチウム二次電池の初期抵抗値はそれぞれ20.3%および27.7%であって、実施例1~5で製造されたリチウム二次電池に比べて大幅に増加したことが分かる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
前記第3添加剤は、非水電解液の全重量を基準として0.01~15重量%、具体的には0.1~10重量%で含まれてもよい。
前記第3添加剤が前記範囲で含まれると、諸性能がさらに向上した二次電池を製造することができる。例えば、前記第3添加剤が0.01重量%以上で含まれると、抵抗増加を最大限抑制する範囲でSEI膜の耐久性を向上させるという効果がある。また、前記第3添加剤が15重量%以下で含まれると、SEI膜の長期メンテナンス効果をもたらすことができ、電池の充放電時の電解液中の過度な副反応を防止することができ、電解液中において未反応物状態で存在するのを防止することができるため、未反応物による抵抗増加を抑制することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
前記表4を参照すると、本発明の非水電解液を備えた実施例1~7、9、および10で製造されたリチウム二次電池の高温貯蔵後の抵抗増加率は約7.5%以下であって、比較例1~8のリチウム二次電池に比べて著しく改善されたことが分かる。すなわち、本発明の非水電解液を備えた実施例の二次電池は、電極の表面に安定したSEI膜を形成し、電池が高温にさらされた際にも高温での被膜破壊を抑制することができ、したがって、被膜の破壊による追加の電解質の分解が少ないため、高温貯蔵後にも優れた抵抗増加の抑制効果をもたらすと見られる。
【国際調査報告】