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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車窓アセンブリおよび車両
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20241024BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241024BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20241024BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20241024BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20241024BHJP
   B60J 1/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 M
G02B5/30
G02B1/11
B60R11/04
B60J1/02 Z
B60J1/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526715
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 CN2021128767
(87)【国際公開番号】W WO2022205909
(87)【国際公開日】2022-10-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516151818
【氏名又は名称】フーイャォ グラス インダストリー グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シャン,グイカイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ビンミン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,カンゾン
(72)【発明者】
【氏名】ブ,リンチュン
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
3D020
3D127
4G061
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149AB01
2H149AB04
2H149FA03Z
2H149FA04Z
2H149FA05Z
2H149FA42Z
2H149FC02
2H149FD03
2H149FD09
2H149FD47
2K009BB02
2K009CC02
2K009CC03
2K009CC06
2K009DD02
3D020BA20
3D020BB01
3D020BC02
3D020BD03
3D020BD05
3D127BB01
3D127CC02
3D127DD02
3D127DD03
3D127DD12
3D127DD17
3D127DD25
3D127DF35
3D127EE12
3D127EE20
4G061AA20
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB12
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
本出願では、車窓アセンブリおよび車両が提供される。車窓アセンブリはライダーおよび車窓ガラスを含む。車窓ガラスは、積層された、第1の透明板、熱可塑性中間層、および第2の透明板を含み、ライダーは、熱可塑性中間層と背向する第2の透明板の一側に設けられており、ライダーは、P偏光を生成するために用いられ、P偏光の波長が、800nm~1580nmの波長範囲内にあり、P偏光は、55°~70°の入射角で第2の透明板に入射され、車窓ガラスは、入射されたP偏光に対して90%以上の透過率を有する。ライダーが車窓ガラスの内側に設けられており、また、車窓ガラスが800nm~1580nmの波長範囲内で90%以上のP偏光透過率を有することにより、ライダーによって放出されたP偏光の多くが車窓ガラスを透過するので、ライダーの実際応用に影響を与えることを回避する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車窓アセンブリであって、
ライダーおよび車窓ガラスを含み、
前記車窓ガラスは、積層された、第1の透明板、熱可塑性中間層、および第2の透明板を含み、前記ライダーは、前記熱可塑性中間層と背向する前記第2の透明板の一側に設けられており、前記ライダーは、P偏光を生成するために用いられ、前記P偏光の波長が、800nm~1580nmの波長範囲内にあり、前記P偏光は、55°~70°の入射角で前記第2の透明板に入射され、前記車窓ガラスは、入射された前記P偏光に対して90%以上の透過率を有する、
ことを特徴とする車窓アセンブリ。
【請求項2】
前記第1の透明板および/または前記第2の透明板は、905nmの自然光に対して第1の屈折率を有し、前記第1の透明板および/または前記第2の透明板は、1550nmの自然光に対して第2の屈折率を有し、前記第1の屈折率は前記第2の屈折率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項3】
前記第1の屈折率の範囲は1.450~1.485であり、前記第2の屈折率の範囲は1.435~1.468である、
ことを特徴とする請求項2に記載の車窓アセンブリ。
【請求項4】
前記ライダーによって生成されるP偏光は、純粋なP偏光である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項5】
前記ライダーによって生成されるP偏光は、P偏光およびS偏光を含み、前記S偏光の割合は20%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項6】
前記第1の透明板および/または前記第2の透明板は、905nmの自然光に対して第1の透過率を有し、前記第1の透明板および/または前記第2の透明板は、1550nmの自然光に対して第2の透過率を有し、前記第1の透過率は前記第2の透過率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項7】
前記第1の透明板および/または前記第2の透明板の光吸収係数の範囲が0.04cm-1~0.2cm-1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項8】
前記第1の透明板および/または前記第2の透明板の光吸収係数の範囲が0.05cm-1~0.18cm-1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項9】
前記第1の透明板および/または前記第2の透明板の光吸収係数の範囲が0.07cm-1~0.12cm-1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項10】
前記熱可塑性中間層と背向する前記第1の透明板の表面および/または前記熱可塑性中間層と背向する前記第2の透明板の表面に、反射低減コーティングが設けられており、前記反射低減コーティングは、入射された前記P偏光に対する前記車窓ガラスの透過率を少なくとも1.2%増加させるために用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項11】
前記第2の透明板の前記ライダーに対応する領域に貫通孔が設けられており、および/または前記熱可塑性中間層の前記ライダーに対応する領域に貫通孔が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項12】
前記熱可塑性中間層に近接する前記第1の透明板の表面に反射低減コーティングが設けられており、前記反射低減コーティングは、入射された前記P偏光に対する前記車窓ガラスの透過率を少なくとも1.2%増加させるために用いられる、
ことを特徴とする請求項11に記載の車窓アセンブリ。
【請求項13】
前記反射低減コーティングの積層方向に沿った厚さの範囲が200nm~1200nmである、
ことを特徴とする請求項10または12に記載の車窓アセンブリ。
【請求項14】
前記熱可塑性中間層に近接する前記第1の透明板の表面の少なくとも70%領域に、または、前記熱可塑性中間層に近接する前記第2の透明板の表面の少なくとも70%領域に、赤外線反射コーティングまたは赤外線吸収コーティングが設けられており、
前記熱可塑性中間層に近接する前記第1の透明板の表面の前記ライダーに対応する領域に、または、前記熱可塑性中間層に近接する前記第2の透明板の表面の前記ライダーに対応する領域に、前記赤外線反射コーティングまたは前記赤外線吸収コーティングが設けられていない、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項15】
前記車窓ガラスは50%以下の総太陽エネルギー透過率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項16】
車両であって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の車窓アセンブリとフレームとを備え、前記車窓ガラスは前記フレームに取り付けられており、前記ライダーは前記車窓ガラスまたは前記フレームに取り付けられており、前記ライダーは前記車両の内部に位置する、
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、車両部品の技術分野に関し、特に車窓アセンブリおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は以前から人の重要な移動手段の1つであり、自動運転車技術は近年以来、重要な研究方向となっている。『自動車の運転自動化分級』規格の分類によると、自動運転レベルは、L0(緊急支援)、L1(部分運転支援)、L2(複合運転支援)、L3(条件付き運転自動化)、L4(高度運転自動化)、L5(完全運転自動化)に分けられている。現在、L2以上の車両にはライダー(LiDAR)が搭載されなければならないということが業界の主流の共通認識である。
【0003】
車両に用いられるライダーは、波長905nmおよび1550nmのレーザーを放出する。レーザーは、長い距離にわたって発散せず焦点を合わせる長所を有するが、障害物を避けることができなく、雨、霧、砂嵐等の天気では大きな妨害を受け、さらには作業できない。そのため、市場では、先行技術において車両の外部に取り付けられたライダーを車両の内部に完全に集積し、特にフロントガラスの内面に取り付ける傾向と需要がある。しかし、車内に取り付けられたライダーによって放出されおよび受けられるレーザーは、伝送を実現するために車窓ガラスを透過する必要がある。905nmおよび1550nmの波長はいずれも近赤外線の波長域に属しており、既存の車窓ガラスは、車内の熱的快適性を向上させるために、近赤外線に対して高い遮断率を有する。これにより、波長905nmおよび1550nmのレーザーの、車窓ガラスを透過する透過率が低く、ライダーの実際応用を十分に支えることはできない。
【発明の概要】
【0004】
本出願は車窓アセンブリを提供する。この車窓アセンブリにより、ライダーによって放出されおよび受けられるレーザーの、車窓ガラスを透過する透過率が低いという技術的課題を解決できる。
【0005】
第一態様において、本出願は車窓ガラスアセンブリを提供する。車窓アセンブリはライダーおよび車窓ガラスを含む。車窓ガラスは、積層された、第1の透明板、熱可塑性中間層、および第2の透明板を含み、ライダーは、熱可塑性中間層と背向する第2の透明板の一側に設けられており、ライダーは、P偏光を生成するために用いられ、P偏光の波長が、800nm~1580nmの波長範囲内にあり、P偏光は、55°~70°の入射角で第2の透明板に入射され、車窓ガラスは、入射されたP偏光に対して90%以上の透過率を有する。
【0006】
ライダーが車窓ガラスの内側に設けられており、また、車窓ガラスが800nm~1580nmの波長範囲内で90%以上のP偏光透過率を有することにより、ライダーによって放出されたP偏光の多くが車窓ガラスを透過するので、ライダーの実際応用に影響を与えることを回避する。
【0007】
選択可能に、第1の透明板および/または第2の透明板は、905nmの自然光に対して第1の屈折率を有し、第1の透明板および/または第2の透明板は、1550nmの自然光に対して第2の屈折率を有し、第1の屈折率は第2の屈折率よりも大きい。
【0008】
選択可能に、第1の屈折率の範囲は1.450~1.485であり、第2の屈折率の範囲は1.435~1.468である。
【0009】
選択可能に、ライダーによって生成されるP偏光は、純粋なP偏光である。
【0010】
選択可能に、ライダーによって生成されるP偏光は、P偏光およびS偏光を含み、S偏光の割合は20%以下である。
【0011】
選択可能に、第1の透明板および/または第2の透明板は、905nmの自然光に対して第1の透過率を有し、第1の透明板および/または第2の透明板は、1550nmの自然光に対して第2の透過率を有し、第1の透過率は第2の透過率よりも小さい。
【0012】
選択可能に、第1の透明板および/または第2の透明板の光吸収係数の範囲が0.04cm-1~0.2cm-1である。
【0013】
選択可能に、第1の透明板および/または第2の透明板の光吸収係数の範囲が0.05cm-1~0.18cm-1である。
【0014】
選択可能に、第1の透明板および/または第2の透明板の光吸収係数の範囲が0.07cm-1~0.12cm-1である。
【0015】
選択可能に、熱可塑性中間層と背向する第1の透明板の表面および/または熱可塑性中間層と背向する第2の透明板の表面に、反射低減コーティングが設けられており、反射低減コーティングは、入射されたP偏光に対する車窓ガラスの透過率を少なくとも1.2%増加させるために用いられる。
【0016】
選択可能に、第2の透明板のライダーに対応する領域に貫通孔が設けられており、および/または熱可塑性中間層のライダーに対応する領域に貫通孔が設けられている。
【0017】
選択可能に、熱可塑性中間層に近接する第1の透明板の表面に反射低減コーティングが設けられており、反射低減コーティングは、入射されたP偏光に対する車窓ガラスの透過率を少なくとも1.2%増加させるために用いられる。
【0018】
選択可能に、反射低減コーティングの積層方向に沿った厚さの範囲が200nm~1200nmである。
【0019】
選択可能に、熱可塑性中間層に近接する第1の透明板の表面の少なくとも70%領域に、または、熱可塑性中間層に近接する第2の透明板の表面の少なくとも70%領域に、赤外線反射コーティングまたは赤外線吸収コーティングが設けられている。熱可塑性中間層に近接する第1の透明板の表面のライダーに対応する領域に、または、熱可塑性中間層に近接する第2の透明板の表面のライダーに対応する領域に、赤外線反射コーティングまたは赤外線吸収コーティングが設けられていない。
【0020】
選択可能に、車窓ガラスは50%以下の総太陽エネルギー透過率を有する。
【0021】
第二態様において、本出願は車両をさらに提供する。車両は、第一態様に記載の車窓アセンブリとフレームとを含み、車窓ガラスはフレームに取り付けられており、ライダーは車窓ガラスまたはフレームに取り付けられており、ライダーは車両の内部に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下、本出願の実施形態における技術的解決策をより明確に説明するために、実施形態において用いられる図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明における図面は本出願の幾つかの実施形態に過ぎず、当業者は、創造的な努力なしに、これらの図面によって他の図面を得ることができる。
図1】本出願の1つの実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。
図2】本出願の他の実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。
図3】本出願の他の実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。
図4】本出願の他の実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。
図5】本出願の他の実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。
図6】本出願の1つの実施形態によって提供される車両の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本出願の実施形態の図面を参照しながら、本出願の実施形態における技術的解決策を明確且つ完全に説明する。明らかに、説明される実施形態は、本出願の一部の実施形態に過ぎず、すべての実施形態ではない。本出願の実施形態に基づいて、当業者によって創造的な労働なしに得られる全ての他の実施形態は、本出願の保護範囲に属する。
【0024】
本出願は、車窓アセンブリを提供する。図1を参照して、図1は、本出願の1つの実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。車窓アセンブリ1はライダー11および車窓ガラス12を含む。車窓ガラス12は、積層された、第1の透明板121、熱可塑性中間層124、および第2の透明板122を含む。ライダー11は、熱可塑性中間層124と背向する第2の透明板122の一側に設けられており、ライダー11は、P偏光を生成するために用いられ、P偏光の波長が、800nm~1580nmの波長範囲内にあり、P偏光は、55°~70°の入射角で第2の透明板122に入射され、車窓ガラス12は、入射されたP偏光に対して90%以上の透過率を有する。
【0025】
本実施形態では、車窓ガラス12は合わせガラスであり、第1の透明板121は車窓ガラス12の外側ガラスとされており、第2の透明板122は車窓ガラス12の内側ガラスとされている。ライダー11は、第1の透明板121と背向する第2の透明板122の一側に設けられており、即ち、ライダー11は車内に設けられており、これはライダー11を保護できる。
【0026】
なお、ライダー11は、レーザーを放出し、測定対象物によって反射されたレーザーを受信することで、レーザーの飛行時間(time of flight、ToF)方式または周波数連続変調(frequency modulated continuous wave、FMCW)方式に基づいて、測定対象物とライダー11との間の距離を算出する。ライダ11が車内に取り付けられているため、第1の透明板121および/または第2の透明板122がライダ11によって放出されるレーザーに対して比較的高い透過率を有することが必要とされる。ライダー11の作業波長範囲において、第1の透明板121および/または第2の透明板122は、P偏光に対して自然光よりも高い透過率を有する。
【0027】
P偏光は次のように定義される。光が非垂直角度で光学素子(例えばビームスプリッタ)の表面を透過するとき、反射および透過の特性が偏り現象に依存する。この場合に用いられる座標系は、入射光と反射光を含む平面で定義される。光線の偏光ベクトルがこの平面内にある場合、P偏光と呼ばれ、偏光ベクトルがこの平面に垂直である場合、S偏光と呼ばれる。いずれかの入射偏光状態は、S成分とP成分とのベクトルの和として表すことができる。
【0028】
具体的には、ライダー11によって放出され、第1の透明板121および/または第2の透明板122に入射されるレーザーの入射角は55°~70°であり、すなわち、車窓アセンブリ1の取り付け角が20°~35°であることは、ライダー11によって放出されるレーザーが第1の透明板121および/または第2の透明板122を透過し、フレネル反射の影響を低減することに有利である。
【0029】
理解できるように、本実施形態において、ライダー11が車窓ガラス12の内側に設けられており、また、第1の透明板121および/または第2の透明板122が800nm~1580nmの波長範囲内で90%以上のP偏光透過率を有することにより、ライダー11によって放出されたP偏光の多くが第1の透明板121および/または第2の透明板122を透過するので、ライダー11の実際応用に影響を与えることを回避する。
【0030】
理解できるように、第1の透明板121および/または第2の透明板122は、800nm~1580nmの波長範囲内で93%以上のP偏光透過率を有することもできる。好ましくは、第1の透明板121および/または第2の透明板122は、800nm~1580nmの波長範囲内で95%以上のP偏光透過率を有することもできる。本出願ではこれについて限定されない。
【0031】
1つの可能な実施形態において、図2を併せて参照して、図2は、本出願の他の実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。車窓ガラス12は、順に積層された遮蔽層123および断熱層125をさらに含む。
【0032】
具体的に、遮蔽層123は、車窓ガラス12内の構造を遮蔽するために用いられ、車窓ガラス12の外部から車窓ガラス12内の構造の一部が直接観察されることを回避し、全体的な見栄えを高める。遮蔽層123および断熱層125には、貫通孔126がさらに設けられている。貫通孔126により、ライダー11によって放出された信号が貫通孔126を通じて遮蔽層123および断熱層125を通過すること、または車窓ガラス12の外部から貫通孔126を通じてライダー11に送信される信号を受信することを可能にする。理解できるように、他の可能な実施形態において、遮蔽層123は、第1の透明板121と背向する第2の透明板122の一側にも設けられてもよく、本出願では限定されない。
【0033】
本実施形態において、第1の透明板121および第2の透明板122として、いずれも積層方向の厚さが2.1mmであるガラス板が用いられている。熱可塑性中間層124として、0.76mmのポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)が用いられている。第1の透明板121、熱可塑性中間層124および第2の透明板122は、組み合わせられて合わせガラスを形成する。
【0034】
理解できるように、他の可能な実施形態において、ガラスの種類は用途によって決められる。第1の透明板121が主に外部からの障害物に対する耐久性および耐衝撃性を有することが必要とするため、第1の透明板121は、好ましくは厚いガラスである。軽量化要求を満たすために、第1の透明板121と第2の透明板122との合計の厚さを小さくするので、第2の透明板122として比較的薄いガラスを選択することができる。車窓ガラス12の強度要求を満たすために、第2の透明板122を強化して強度を高めることができる。第1の透明板121および第2の透明板122は、平面形状および曲面形状のいずれか1つであってもよく、本出願ではこれについて限定されない。
【0035】
理解できるように、他の可能な実施形態において、熱可塑性中間層124は、PVB、エチレン-酢酸ビニル共重合体(ethylene-vinyl acetate、EVA)、ポリウレタン(polyurethane、PU)、環状オレフィンポリマー(cyclic olefin polymer、COP)、ポリオレフィンエラストマー(polyolefin elastomer、POE)などであってもよい。PVBは、ガラス板との接着性および耐貫通性に優れ、また、防音の快適性を考慮すると、熱可塑性中間層124は、防音PVBであることが好ましい。熱可塑性中間層124は、少なくとも1層の熱可塑性層によって形成されてもよく、柔らかいコア層をそれより硬い2つの外層で挟んだ3層の熱可塑性層によって形成されてもよい。本出願ではこれについて限定されない。熱可塑性中間層124は、コア層と、第1の透明板121側に設けられた少なくとも1つの外層とを備える複層構造体によって構成されればよい。例えば、熱可塑性中間層124は、コア層と、第1の透明板121側に設けられた1つの外層とを備える2層の熱可塑性層によって形成されてもよい。または、熱可塑性中間層124は、コア層と、コア層を中心とし、コア層の両側に設けられた2層以上の偶数層の外層とを備え、あるいは、コア層と、コア層を挟んだ一側に設けられた奇数層の外層と、コア層を挟んだ他側に設けられた偶数層の外層とを備える。
【0036】
また、外層を1層のみ設ける場合、その外層を第1の透明板121に近接する一側に設けることにより、車外からの外力に対する耐破損性を向上させることができる。また、外層の数が多いほど遮音性能が高くなる。外層材料は、PVBで構成されることができる。コア層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体であってもよく、または、外層を構成するPVBよりも柔らかいPVBで構成されてもよい。柔らかいコア層を中間で挟むことにより、単層の樹脂中間フィルムシートと同等の接着性および耐貫通性を維持し、且つ、遮音性能を大幅に向上させることができる。
【0037】
熱可塑性中間層124は、ヘッドアップディスプレイ用のくさび形の構造を有してもよい。この場合、熱可塑性中間層124のコア層および外層の厚さの最も小さい部分が車窓ガラス12の最下部にあり、第1の透明板121と第2の透明板122とが互いに平行に設けられていなく、このような配置も本出願の車窓ガラス12にも含まれる。
【0038】
本実施形態において、断熱層125は、断熱および日焼けの要求を満たし、車内の快適性を向上させる。断熱層125は、赤外線反射コーティング、または赤外線吸収コーティング等であってもよい。断熱層125が第1の透明板121と第2の透明板122との間に設けられることに影響しない限り、本出願ではこれについて限定されない。ライダー11がレーザーを放出しおよび/または受けることが断熱層125によって遮られないように、車窓ガラス12のライダー11に対応する領域に断熱層125が設けられない。
【0039】
赤外線反射コーティングは、少なくとも1つの金属層または透明導電酸化物層を含む。金属層のフィルム層材料としては、赤外線エネルギーを反射できる任意の材料、例えば、銀、金、アルミニウム、銅等を用いることができるが、これらに限定されない。好ましくは、銀または銀を含む合金を用いる。銀合金は、好ましくは、銀と、金、アルミニウムおよび銅のうちの少なくとも1つとの合金である。金属層を含む赤外線反射コーティングは、例えば、単重の銀コーティング、二重の銀コーティング、三重の銀コーティング、または銀合金コーティングであってもよい。透明導電酸化物(transparent conductive oxide、TCO)層は、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)等であってもよい。また、赤外線反射コーティングは、誘電体層、阻隔層、保護層などを含んでもよい。誘電体層は複数のフィルム層を含むことができる。例えば、Si、ZnSnO、ZnSnMgOまたはZnSnNiOを含むことができる。もちろん、Zn、Sn、Mg、Ti、Ta、Nb、Bi、Zr、Si、Al等の金属およびそれらの金属の合金の酸化物のうちの少なくとも一種を含んでもよく、またはSi、Al、Ti、Ta、Zr、Nb等の金属およびそれらの金属の合金の窒化物、窒素酸化物等から選ばれた少なくとも一種を含む。阻隔層の材料は、Ti、Ni、Cr、Al、Zr、Zn、Nb、Taなどの金属およびそれらの金属の合金の金属、酸化物、窒化物、窒素酸化物、不完全酸化物、不完全窒化物、不完全窒素酸化物のうちの少なくとも1種である。保護層の材料は、SiO、SiN、SiO、SiAlO、SiAlO、SiAlN、ZrO、ZrMOなどである。赤外線吸収コーティングは、ゾル-ゲル法により、ガラスの表面に、無機赤外線吸収成分を作製して硬化させることで形成されることができる。具体的には、無機シリコンアルコキシド、有機溶媒、シランカップリング剤、触媒、脱イオン水を混合攪拌した後、シリカゾルを取得し、次いで、シリカゾル、透明導電酸化物のナノ粒子および助剤を混合攪拌した後、赤外線吸収断熱塗布液を取得することができる。
【0040】
前述したように、断熱層125は多くの種類を有し、工程も大きく異なる。本実施形態において、断熱層125としては、単重の銀コーティング、二重の銀コーティング、三重の銀コーティング、または銀合金コーティングなどを選択することが好ましい。
【0041】
1つの可能な実施形態において、第1の透明板121および/または第2の透明板122は、905nmの自然光に対して第1の屈折率を有し、第1の透明板121および/または第2の透明板122は、1550nmの自然光に対して第2の屈折率を有し、第1の屈折率は第2の屈折率よりも大きい。
【0042】
なお、現在、自動運転車に用いられるライダー技術において、905nmおよび1550nmの近赤外光(Near Infrared、NIR)波長域は、最新適用される2つの主要な波長域である。しかし、先行技術におけるガラスは、NIR波長域に対する透過率が低く、また、フレネル反射により、信号がガラスを通過するたびに損失される。
【0043】
本実施形態では、ライダー11から放出されたレーザーが第1の透明板121および/または第2の透明板122に入射する入射角の範囲が、55°~70°である場合、ライダー11の光源としては、P偏光または主にP偏光からなる光源を選択する。これにより、第1の透明板121および/または第2の透明板122のNIR波長域の信号に対する高い透過率を実現でき、特にブリュースター角で反射のない完全な透過を達成することができる。
【0044】
具体的には、いわゆるブリュースター角(偏光角とも呼ばれる)は、特定の偏りを有する光が透明媒体の表面から反射されることなく透明媒体の表面を完全に透過する入射角である。
【0045】
理解できるように、この実施態様において、第1の透明板121および/または第2の透明板122は、NIR波長域のレーザーに対して比較的小さな屈折率を有し、すなわち、ライダー11によって放出されたレーザーが、第1の透明板121および/または第2の透明板122を透過するとき、少なく屈折される。これは、ライダー11による測定対象物の測定に有利である。
【0046】
1つの可能な実施形態では、第1の屈折率の範囲は1.450~1.485であり、第2の屈折率の範囲は1.435~1.468である。
【0047】
理解できるように、この実施態様において、第1の屈折率および第2の屈折率は、両方とも比較的小さく、これにより、ライダー11によって放出されたレーザーが、第1の透明板121および/または第2の透明板122を透過するとき、少なく屈折される。これは、ライダー11による測定対象物の測定に有利である。
【0048】
1つの可能な実施形態では、ライダー11によって生成されるP偏光は、純粋なP偏光である。
【0049】
具体的には、P偏光とS偏光については上述した説明を参照できるので、ここでは繰り返さない。P偏光が55°~70°の入射角で第2の透明板122に入射される場合、第1の透明板121および/または第2の透明板122が、ライダー11の作業波長範囲内でP偏光に対して自然光よりも高い透過率を有するので、ライダー11によって放出されるレーザーは、P偏光または主にP偏光である。
【0050】
1つの可能な実施形態では、ライダー11によって生成されるP偏光は、P偏光およびS偏光を含み、S偏光の割合は20%以下である。
【0051】
理解できるように、ライダー11によって放出されるレーザーがP偏光およびS偏光である場合、S偏光の割合が10%以下であってもよい。具体的には、S偏光の割合も5%以下であってもよい。好ましくは、S偏光の割合も1%以下であってもよく、本出願ではこれについて限定されない。
【0052】
1つの可能な実施形態において、第1の透明板121および/または第2の透明板122は、905nmの自然光に対して第1の透過率を有し、第1の透明板121および/または第2の透明板122は、1550nmの自然光に対して第2の透過率を有し、第1の透過率は第2の透過率よりも小さい。
【0053】
理解できるように、この実施形態において、第1の透明板121および/または第2の透明板122は、NIR波長域のレーザーに対してより大きな透過率を有するので、ライダー11によって放出されたレーザーが、第1の透明板121および/または第2の透明板122を透過するとき、少なく反射される。これは、ライダー11による測定対象物の測定に有利である。
【0054】
1つの可能な実施形態では、第1の透明板121および/または第2の透明板122の光吸収係数の範囲が0.04cm-1~0.2cm-1である。
【0055】
この実施形態において、光吸収係数は、自然光が第1の透明板121および/または第2の透明板122の1cm当たりを透過するときの内部透過率の自然対数の負の値を指す。ライダー11によって放出されたレーザーが第1の透明板121および/または第2の透明板122に垂直に入射された後、第1の透明板121および/または第2の透明板122の吸収により光強度が減衰するので、第1の透明板121および/または第2の透明板122の自然光透過率を測定することにより、光吸収係数の値を算出することができる。具体的には、光吸収係数の値は、以下の式により算出される。
【0056】
【数1】
【0057】
Kは第1の透明板121および/または第2の透明板122の光吸収係数であり、lは第1の透明板121および/または第2の透明板122の積層方向の厚さであり、nは第1の透明板121および/または第2の透明板122の特定波長のレーザーに対する屈折率であり、Tは第1の透明板121および/または第2の透明板の特定波長のレーザーに対する透過率である。
【0058】
具体的には、他の可能な実施形態において、第1の透明板121および/または第2の透明板122の光吸収係数の範囲が0.05cm-1~0.18cm-1であってもよい。好ましくは、第1の透明板121および/または第2の透明板122の光吸収係数の範囲が0.07cm-1~0.12cm-1であってもよい。
【0059】
1つの可能な実施形態において、図3を併せて参照して、図3は、本出願の他の実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。熱可塑性中間層124と背向する第1の透明板121の表面および/または熱可塑性中間層124と背向する第2の透明板122の表面に、反射低減コーティング127が設けられており、反射低減コーティング127は、入射されたP偏光に対する車窓ガラス12の透過率を少なくとも1.2%増加させるために用いられ、より好ましくは、1.5%増加させるために用いられる。
【0060】
具体的には、反射低減コーティング127が2層フィルムである場合、車窓ガラス12の表面から外に向かって順に高屈折率層/低屈折率層の構造である。反射低減コーティング127が3層フィルムである場合、車窓ガラス12の表面から外に向かって順に高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層の構造、または中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の構造である。反射低減コーティング127が4層フィルムである場合、車窓ガラス12の表面から外に向かって順に高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の構造である。反射低減コーティング127が多層フィルムである場合、車窓ガラス12の表面から外に向かって順に高屈折率層/低屈折率層が交互に配列された構造である。最外層の材料が最も低い屈折率を有する。
【0061】
高屈折率層、中屈折率層および低屈折率層のうちの隣接する2層の屈折率の差は、0.3以上であることが好ましい。高屈折率層の材料は、AlN、Si、Si、TiO、ZrO、Fe、TiN、Nb、Ta、DLC、MoO、CeO、CuO、BiO、CrOから選ばれる少なくとも1種である。中屈折率層の材料は、Al、AlN、Si、TiO、MgO、NdO、SbO、ZnO、ZrO、MoO、CeOから選ばれる少なくとも1種である。低屈折率層の材料は、Al、SiO、SiON、AlON、MgO、MF、WOから選ばれる少なくとも1種である。理解できるように、反射低減コーティング127の材料は、上記の材料に限定されない。
【0062】
本実施形態では、反射低減コーティング127は、貫通孔126に対応して設けられている。理解できるように、他の可能な実施形態では、反射低減コーティング127は、第2の透明板122の表面全体を覆ってもよく、本出願ではこれについて限定されない。
【0063】
なお、断熱層125は、ライダーに対応する領域において除膜される必要がある。反射低減コーティング127は、必要性に応じて、ライダーに対応する領域において保留され、ライダーに対応しない領域において除膜されることができる。具体的には、除膜は、マスキングまたはレーザーなどの技術工程で実現されることができる。理解できるように、反射低減コーティング127および貫通孔126の配置により、車窓ガラス12は、800nm~1580nmの波長範囲内で94%以上のP偏光透過率を有することもでき、本出願ではこれについて限定されない。
【0064】
1つの可能な実施形態において、図4を併せて参照して、図4は、本出願の他の実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。第2の透明板122のライダー11に対応する領域に貫通孔126が設けられており、および/または熱可塑性中間層124のライダー11に対応する領域に貫通孔126が設けられている。
【0065】
具体的には、ライダー11によって放出されたレーザーは、貫通孔126を通じて車窓ガラス12に入射される。理解できるように、この実施形態では、貫通孔126の配置により、ライダー11によって放出されたレーザーのうち、車窓ガラス12によって反射または吸収される部分がさらに減少される。
【0066】
なお、第1の透明板121および第2の透明板122は、いずれも上述の屈折率、光吸収係数の制限を満足する必要がある。第2の透明板122には貫通孔126が設けられた場合、第1の透明板121のみが、上述の屈折率、光吸収係数の制限を満足する必要がある。
【0067】
理解できるように、貫通孔126の配置により、好ましくは、車窓ガラス12は、800nm~1580nmの波長範囲内で95%以上のP偏光透過率を有することもでき、本出願ではこれについて限定されない。
【0068】
1つの可能な実施形態において、図5を併せて参照して、図5は、本出願の他の実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。熱可塑性中間層124に近接する第1の透明板121の表面に反射低減コーティング127が設けられており、反射低減コーティング127は、入射されたP偏光に対する車窓ガラス12の透過率を少なくとも1.2%増加させるために用いられ、より好ましくは1.5%増加させるために用いられる。
【0069】
理解できるように、反射低減コーティング127は、車窓アセンブリ1の他の位置にも設けられてもよく、例えば、反射低減コーティング127は、熱可塑性中間層124と背向する第1の透明板121の表面にも設けられてもよい。本出願ではこれについて限定されない。
【0070】
1つの可能な実施形態において、反射低減コーティング127の積層方向に沿った厚さの範囲が200nm~1200nmである。理解できるように、他の可能な実施形態において、反射低減コーティング127の積層方向に沿った厚さは他の厚さであってもよく、本出願ではこれについて限定されない。
【0071】
1つの可能な実施形態において、熱可塑性中間層124に近接する第1の透明板121の表面の少なくとも70%領域に、または、熱可塑性中間層124に近接する第2の透明板122の表面の少なくとも70%領域に、赤外線反射コーティングまたは赤外線吸収コーティングが設けられている。熱可塑性中間層124に近接する第1の透明板121の表面のライダー11に対応する領域に、または、熱可塑性中間層124に近接する第2の透明板122の表面のライダー11に対応する領域に、赤外線反射コーティングまたは赤外線吸収コーティングが設けられていない。
【0072】
1つの可能な実施形態において、車窓ガラス12は50%以下の総太陽エネルギー透過率を有することにより、車内と車外との間の熱伝達を低減し、車窓ガラス12の断熱性を確保する。
【0073】
次に、断熱層125および反射低減コーティング127の配置について詳細に説明する。
【0074】
具体的には、断熱層125としては機能性銀層を選択する。機能性銀層は、マグネトロンスパッタリングによってガラスの表面に堆積させることができる。機能性銀層は、第2の透明板122に堆積されてもよく、第1の透明板121に堆積されてもよく、フィルム層が熱可塑性中間層124と対向し、かつ熱可塑性中間層124に接続されればよい。
【0075】
断熱層125のフィルム系設計要求に応じて、横型または縦型の真空マグネトロンスパッタリングコーティング装置が用いられ、且つ、基板のサイズが車窓ガラス12の要求を満たす。設計要求により、断熱層125の全面にコーティングする必要がなく、ライダー11の窓領域に対応する領域の断熱層125を除去する必要があり、車窓ガラス12のすべての周縁部(すなわち、印刷された黒縁の対応領域)の断熱層125を除去する必要もあり、異なる顧客に要求されるフィルムの除去幅が異なる。具体的には、局所コーティングを実現するために次の方法がある。1つの直接的な方法として、ガラスの表面の全体にコーティングを施した後、レーザーを用いてコーティングする必要のない部分に対して除膜する。もう1つの方法として、コーティングの過程にマスクを用いて、マスクによって、スパッタされた材料がガラス基板に到達することを遮断し、必要な領域にのみ成膜する。
【0076】
TCOコーティングは、マグネトロンスパッタリング堆積または高温化学気相成長技術によってガラスの表面に断熱層125を形成することができる。
【0077】
なお、本実施形態において、反射低減コーティング127は、800~1580nmの近赤外線波長域に対して高い透過率を実現することができる。反射低減コーティング127のフィルム系設計要求に応じて、横型または縦型の真空マグネトロンスパッタリングコーティング装置が用いられ、連続式または不連続式であってもよく、反応性スパッタリングモードまたは金属スパッタリングモードであってもよく、ドラム回転コーティング装置であってもよく、同時、基板のサイズが自動車フロントガラスの要求を満たす。
【0078】
反射低減コーティング127が小さな領域のみに存在する場合、すなわち局所コーティングが求められる場合、具体的には、局所コーティングを実現するために次の方法がある。1つの直接的な方法として、ガラスの表面の全体にコーティングを施した後、レーザーを用いてコーティングする必要のない部分に対して除膜する。もう1つの方法として、コーティングの過程にマスクを用いて、マスクによって、スパッタされた材料がガラス基板に到達することを遮断し、必要な領域にのみ成膜する。
【0079】
なお、上記の内容では、本出願が提供する断熱層125および反射低減コーティング127の配置方法を具体的に説明したが、本出願は上記した具体的な実施形態の内容に限定されないため、本出願の技術的要点に基づいて行われるいかなる改良、同等な修正及び置換などは、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0080】
次に、異なる素板ガラスを選択して試験を行う。車窓ガラス12は、積層方向に沿った厚さが2.1mmである第1の透明板121と、積層方向に沿った厚さが2.1mmである第2の透明板122と、0.76mm厚のPVBで構成された熱可塑性中間層124とを含む。また、第1の透明板121、第2の透明板122および熱可塑性中間層124の組み合わせができるだけ軽量化要求を満たす車窓ガラス12を選択することもできる。具体的な試験結果は次の表に示される。
【0081】
【表1】
【0082】
ここで、素板n(905nm)は、第1の透明板121および/または第2の透明板122として選択された素板ガラスが905nmの自然光に対して有する第1の屈折率であり、素板n(1550nm)は、第1の透明板121および/または第2の透明板122として選択された素板ガラスが1550nmの自然光に対して有する第2の屈折率である。素板K(905nm)は、第1の透明板121および/または第2の透明板122として選択された素板ガラスが905nmの自然光に対して有する光吸収係数であり、素板K(1550nm)は、第1の透明板121および/または第2の透明板122として選択された素板ガラスが1550nmの自然光に対して有する光吸収係数である。素板TNIR(905nm)は、第1の透明板121および/または第2の透明板122として選択された素板ガラスが905nmの自然光に対して有する第1の透過率であり、素板TNIR(1550nm)は、第1の透明板121および/または第2の透明板122として選択された素板ガラスが1550nmの自然光に対して有する第2の透過率である。ここで、自然光は、偏光現象を直接示さない光であり、測定には通常の光源が用いられ、例えば、ISO9050で採用されるD65標準光源、ISO13837で採用されるA光源等が挙げられる。
【0083】
【表2】
【0084】
素板-P-T(800~1580nm)は、第1の透明板121および/または第2の透明板122として選択された素板ガラスが60度の入射角で入射される800nm~1580nmの波長範囲内のP偏光に対して有する透過率である。合わせ-P-T(800~1580nm)は、積層された第1の透明板121、熱可塑性中間層124、および第2の透明板122が60度の入射角で入射される800nm~1580nmの波長範囲内のP偏光に対して有する透過率である。合わせ+AR-P-T(800~1580nm)は、積層された第1の透明板121、熱可塑性中間層124、第2の透明板122および反射低減コーティング127が60度の入射角で入射される800nm~1580nmの波長範囲内のP偏光に対して有する透過率である。
【0085】
【表3】
【0086】
素板-P-T(800~1580nm)は、第1の透明板121および/または第2の透明板122として選択された素板ガラスが66度の入射角で入射される800nm~1580nmの波長範囲内のP偏光に対して有する透過率である。合わせ-P-T(800~1580nm)は、積層された第1の透明板121、熱可塑性中間層124、および第2の透明板122が66度の入射角で入射される800nm~1580nmの波長範囲内のP偏光に対して有する透過率である。合わせ+AR-P-T(800~1580nm)は、積層された第1の透明板121、熱可塑性中間層124、第2の透明板122および反射低減コーティング127が66度の入射角で入射される800nm~1580nmの波長範囲内のP偏光に対して有する透過率である。
【0087】
上記の試験結果から分かるように、限定された範囲の屈折率、透過率および光吸収係数を有するガラス素板が、入射角が55°~70°である場合、800~1580nmの波長範囲内で少なくとも93%のP偏光透過率を有する。入射角が55°~70°である場合、この素板で作られた合わせガラスが車窓ガラス12として用いられ、且つ反射低減コーティング127が設けられていない場合、車窓ガラス12が800~1580nmの範囲内のP偏光に対して少なくとも90%の透過率を有する。これは、車両の内部に設けられたライダーの高透過率の要求を満たし、ライダーの正常な作業を確保し、精度を向上させることができる。表2および表3から分かるように、車窓ガラス12に反射低減コーティング127が設けられた後、車窓ガラス12が800~1580nmの範囲内のP偏光に対して少なくとも92%の透過率を有する。反射低減コーティング127が設けられていない車窓ガラスと比べて、P偏光透過率を少なくとも1.2%、さらには少なくとも1.5%向上させることができ、反射低減コーティング127の透過率向上効果は明らかである。
【0088】
本出願は車両2をさらに提供する。図6を併せて参照して、図6は、本出願の1つの実施形態によって提供される車両の上面図である。車両2は、上述した車窓アセンブリ1とフレーム21とを備え、車窓ガラス12はフレーム21に取り付けられており、ライダー11は車窓ガラス12またはフレーム21に取り付けられており、ライダー11は車両2の内部に位置する。具体的には、車窓アセンブリ1については上述した内容を参照できるので、ここで繰り返さない。
【0089】
本明細書では、具体的な例を用いて本出願の原理及び実施形態を説明した。上記の実施形態の説明は本出願の核心的な考え方を理解するためのものである。また、当業者にとって、本出願の思想に基づいて、具体的な実施形態及び応用範囲に変更が生じる可能性がある。以上をまとめると、本明細書は本出願を限定するものであると理解されるべきではない。
【符号の説明】
【0090】
1…車窓アセンブリ、11…ライダー、12…車窓ガラス、121…第1の透明板、122…第2の透明板、123…遮蔽層、124…熱可塑性中間層、125…断熱層、126…貫通孔、127…反射低減コーティング、2…車両、21…フレーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
第一態様において、本出願は車窓ガラスアセンブリを提供する。車窓アセンブリはライダーおよび車窓ガラスを含む。車窓ガラスは、積層された、第1の透明板、熱可塑性中間層、および第2の透明板を含み、ライダーは、熱可塑性中間層と背向する第2の透明板の一側に設けられており、ライダーは、レーザーを放出し、測定対象物によって反射されたレーザーを受信するために用いられ、レーザーはP偏光を含み、P偏光の波長が、800nm~1580nmの波長範囲内にあり、P偏光は、55°~70°の入射角で第2の透明板に入射され、車窓ガラスは、入射されたP偏光に対して90%以上の透過率を有する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
選択可能に、ライダーによって放出されるレーザーは、純粋なP偏光である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
選択可能に、ライダーによって放出されるレーザー、S偏光をさらに含み、S偏光の割合は20%以下である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
本出願は、車窓アセンブリを提供する。図1を参照して、図1は、本出願の1つの実施形態によって提供される車窓アセンブリの断面図である。車窓アセンブリ1はライダー11および車窓ガラス12を含む。車窓ガラス12は、積層された、第1の透明板121、熱可塑性中間層124、および第2の透明板122を含む。ライダー11は、熱可塑性中間層124と背向する第2の透明板122の一側に設けられており、ライダー11は、レーザーを放出し、測定対象物によって反射されたレーザーを受信するために用いられ、レーザーはP偏光を含み、P偏光の波長が、800nm~1580nmの波長範囲内にあり、P偏光は、55°~70°の入射角で第2の透明板122に入射され、車窓ガラス12は、入射されたP偏光に対して90%以上の透過率を有する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
赤外線反射コーティングは、少なくとも1つの金属層または透明導電酸化物層を含む。金属層のフィルム層材料としては、赤外線エネルギーを反射できる任意の材料、例えば、銀、金、アルミニウム、銅等を用いることができるが、これらに限定されない。好ましくは、銀または銀を含む合金を用いる。銀合金は、好ましくは、銀と、金、アルミニウムおよび銅のうちの少なくとも1つとの合金である。金属層を含む赤外線反射コーティングは、例えば、単重の銀コーティング、二重の銀コーティング、三重の銀コーティング、または銀合金コーティングであってもよい。透明導電酸化物(transparent conductive oxide、TCO)層は、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)等であってもよい。また、赤外線反射コーティングは、誘電体層、阻隔層、保護層などを含んでもよい。誘電体層は複数のフィルム層を含むことができる。例えば、Si、ZnSnO、ZnSnMgOまたはZnSnNiOを含むことができる。もちろん、Zn、Sn、Mg、Ti、Ta、Nb、Bi、Zr、Si、Al等の金属およびそれらの金属の合金の酸化物のうちの少なくとも一種を含んでもよく、またはSi、Al、Ti、Ta、Zr、Nb等の金属およびそれらの金属の合金の窒化物、窒素酸化物等から選ばれた少なくとも一種を含む。阻隔層の材料は、Ti、Ni、Cr、Al、Zr、Zn、Nb、Taなどの金属およびそれらの金属の合金の酸化物、窒化物、窒素酸化物、不完全酸化物、不完全窒化物、不完全窒素酸化物のうちの少なくとも1種である。保護層の材料は、SiO、SiN、SiO、SiAlO、SiAlO、SiAlN、ZrO、ZrMOなどである。赤外線吸収コーティングは、ゾル-ゲル法により、ガラスの表面に、無機赤外線吸収成分を作製して硬化させることで形成されることができる。具体的には、無機シリコンアルコキシド、有機溶媒、シランカップリング剤、触媒、脱イオン水を混合攪拌した後、シリカゾルを取得し、次いで、シリカゾル、透明導電酸化物のナノ粒子および助剤を混合攪拌した後、赤外線吸収断熱塗布液を取得することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
1つの可能な実施形態では、ライダー11によって放出されるレーザーは、純粋なP偏光である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
1つの可能な実施形態では、ライダー11によって放出されるレーザー、S偏光をさらに含み、S偏光の割合は20%以下である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
【表1】
【手続補正9】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車窓アセンブリであって、
ライダーおよび車窓ガラスを含み、
前記車窓ガラスは、積層された、第1の透明板、熱可塑性中間層、および第2の透明板を含み、前記ライダーは、前記熱可塑性中間層と背向する前記第2の透明板の一側に設けられており、前記ライダーは、レーザーを放出し、測定対象物によって反射されたレーザーを受信するために用いられ、前記レーザーはP偏光を含み、前記P偏光の波長が、800nm~1580nmの波長範囲内にあり、前記P偏光は、55°~70°の入射角で前記第2の透明板に入射され、前記車窓ガラスは、入射された前記P偏光に対して90%以上の透過率を有する、
ことを特徴とする車窓アセンブリ。
【請求項2】
前記第1の透明板および/または前記第2の透明板は、905nmの自然光に対して第1の屈折率を有し、前記第1の透明板および/または前記第2の透明板は、1550nmの自然光に対して第2の屈折率を有し、前記第1の屈折率は前記第2の屈折率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項3】
前記第1の屈折率の範囲は1.450~1.485であり、前記第2の屈折率の範囲は1.435~1.468である、
ことを特徴とする請求項2に記載の車窓アセンブリ。
【請求項4】
前記ライダーによって放出されるレーザーは、純粋なP偏光である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項5】
前記ライダーによって放出されるレーザー、S偏光をさらに含み、前記S偏光の割合は20%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項6】
前記第1の透明板および/または前記第2の透明板は、905nmの自然光に対して第1の透過率を有し、前記第1の透明板および/または前記第2の透明板は、1550nmの自然光に対して第2の透過率を有し、前記第1の透過率は前記第2の透過率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項7】
前記第1の透明板および/または前記第2の透明板の光吸収係数の範囲が0.04cm-1~0.2cm-1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項8】
前記第1の透明板および/または前記第2の透明板の光吸収係数の範囲が0.05cm-1~0.18cm-1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項9】
前記熱可塑性中間層と背向する前記第1の透明板の表面および/または前記熱可塑性中間層と背向する前記第2の透明板の表面に、反射低減コーティングが設けられており、前記反射低減コーティングは、入射された前記P偏光に対する前記車窓ガラスの透過率を少なくとも1.2%増加させるために用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項10】
前記第2の透明板の前記ライダーに対応する領域に貫通孔が設けられており、および/または前記熱可塑性中間層の前記ライダーに対応する領域に貫通孔が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項11】
前記熱可塑性中間層に近接する前記第1の透明板の表面に反射低減コーティングが設けられており、前記反射低減コーティングは、入射された前記P偏光に対する前記車窓ガラスの透過率を少なくとも1.2%増加させるために用いられる、
ことを特徴とする請求項10に記載の車窓アセンブリ。
【請求項12】
前記反射低減コーティングの積層方向に沿った厚さの範囲が200nm~1200nmである、
ことを特徴とする請求項または11に記載の車窓アセンブリ。
【請求項13】
前記熱可塑性中間層に近接する前記第1の透明板の表面の少なくとも70%領域に、または、前記熱可塑性中間層に近接する前記第2の透明板の表面の少なくとも70%領域に、赤外線反射コーティングまたは赤外線吸収コーティングが設けられており、
前記熱可塑性中間層に近接する前記第1の透明板の表面の前記ライダーに対応する領域に、または、前記熱可塑性中間層に近接する前記第2の透明板の表面の前記ライダーに対応する領域に、前記赤外線反射コーティングまたは前記赤外線吸収コーティングが設けられていない、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項14】
前記車窓ガラスは50%以下の総太陽エネルギー透過率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車窓アセンブリ。
【請求項15】
車両であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載の車窓アセンブリとフレームとを備え、前記車窓ガラスは前記フレームに取り付けられており、前記ライダーは前記車窓ガラスまたは前記フレームに取り付けられており、前記ライダーは前記車両の内部に位置する、
ことを特徴とする車両。
【国際調査報告】