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特表2024-540330若いハイビスカス(hibiscus)の花の抽出物及び美容的使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】若いハイビスカス(hibiscus)の花の抽出物及び美容的使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241024BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20241024BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/60
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526716
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2021081149
(87)【国際公開番号】W WO2023083437
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524162893
【氏名又は名称】ソシエテ アンデュストリエル リムジン ダプリカシオン ビオロジック
(71)【出願人】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ポーフィック,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】パーノデット,ネイディーン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チア-ウェン
(72)【発明者】
【氏名】トリヴェロ,ジャクリーン メアリー
(72)【発明者】
【氏名】コラロ,クリストル
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AB501
4C083AC301
4C083AC302
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD241
4C083AD411
4C083CC02
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、Hibiscus sinensisの花から得られる少なくとも1種の抽出物を含む美容有効成分、並びにそれを得るための方法、局所適用のためのその美容的使用、及びそれを含む組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hibiscus sinensisの花から得られる少なくとも1種の抽出物を含む美容有効成分であって、前記抽出物は、少なくとも2ppmのN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)及び/又は少なくとも145ppmのsarmentosinエポキシドを含む、美容有効成分。
【請求項2】
前記抽出物が、Hibiscus sinensisの白色の花及び/又は薄ピンク色の花から得られる、請求項1に記載の美容有効成分。
【請求項3】
前記抽出物が、Hibiscus sinensisのヒドログリコール抽出物である、請求項1又は2に記載の美容有効成分。
【請求項4】
192Daのモル質量を有するクエン酸の前記抽出物ファン異性体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の美容有効成分。
【請求項5】
前記抽出物が、192Daのモル質量を有するクエン酸の異性体を60ppm未満含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の美容有効成分。
【請求項6】
前記抽出物が、前記抽出物の乾燥重量で少なくとも50%の炭水化物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の有効成分。
【請求項7】
前記抽出物中に存在する前記炭水化物の乾燥重量で少なくとも30%が、360~1620Daのモル質量を有するオリゴ糖及び多糖である、請求項1~6のいずれか一項に記載の美容有効成分。
【請求項8】
前記抽出物がミネラル及び/又はタンパク質を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の有効成分。
【請求項9】
前記タンパク質が、2000Da未満のモル質量を有するペプチドである、請求項8に記載の有効成分。
【請求項10】
前記抽出物が20%未満のミネラルを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の有効成分。
【請求項11】
前記抽出物が20%未満のタンパク質を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の有効成分。
【請求項12】
少なくとも2ppmのN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)及び/又は少なくとも145ppmのsarmentosinエポキシドを含む抽出物を得るために、Hibiscus sinensisの花を水/ブチレングリコール混合物中で可溶化する工程を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抽出物を得る方法。
【請求項13】
Hibiscus sinensisの花が白色から薄ピンク色のHibiscus sinensisの花である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
以下の工程:
-花粉末を水/ブチレングリコール混合物中に可溶化すること、
-可溶性相と不溶性相とを分離して、前記可溶性相を回収すること、
-濾過、
-滅菌濾過
を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
Hibiscus sinensisの花から得られる抽出物であって、少なくとも2ppmのN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)及び/又は少なくとも145ppmのsarmentosinエポキシドを含む抽出物を含む美容有効成分、又はそのような有効成分を含む組成物の、皮膚への局所適用のための美容的使用。
【請求項16】
前記有効成分が請求項1~11のいずれか一項に記載の有効成分である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
皮膚の老化を予防及び/又は皮膚の老化に対抗するための、請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
-皮膚再生を促進する、及び/又は
-皮膚老化に関与するエピジェネティック因子を調節する、
-皮膚の細胞解毒を増加させる、
-皮膚炎症を制限する、
-皮膚免疫バリアを強化する、
ための請求項15~17のいずれか一項に記載の使用であって。
【請求項19】
少なくとも0.1重量%の請求項1~11のいずれか一項に記載の液体有効成分を含む化粧品組成物。
【請求項20】
少なくとも0.01重量%の請求項1~11のいずれか一項に記載の固体有効成分を含む化粧品組成物。
【請求項21】
ゲル、エマルジョン又はクリームの形態をとる、請求項19又は20のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項22】
皮膚老化防止効果のために皮膚を処置するための化粧品であって、請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物の前記皮膚への局所適用からなる化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品に関し、特に若いハイビスカス(Hibiscus)の花から得られる特定の美容有効成分に関する。本発明はまた、皮膚への局所適用のための、特に皮膚老化防止効果のための、この有効成分の美容的使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
天然物を使用するスキンケアは、消費者によってますます求められている。これらの製品の中で、花の抽出物は特に化粧品に一般的に使用されている。
【0003】
本発明の1つの目的は、高い美容効果を有し、特に、皮膚再生の促進、皮膚老化の原因となるエピジェネティック因子の調節、皮膚の細胞解毒の増加、皮膚炎症の制限、及び皮膚老化防止効果のための皮膚免疫バリアの強化を同時に可能にする、特定の花の抽出物を提案することである。
【0004】
これを達成するために、本発明は、若い花、日中に色が変化する花、すなわち若いHibiscus sinensisの花を使用することを提案する。
【0005】
中国のハイビスカス(Hibiscus sinensis)は、複数の繊細に折り畳まれた花弁を有する花を有する驚くべき低木である。これらの花の使用は、伝統的な漢方医学において知られている。カリクスは、特に、それらの解毒及び血液温度調節作用で知られている。
【0006】
午前中に花冠を展開すると、花はきれいなアイボリーホワイト色に染色される。1日のうちに、花弁は次第にピンク色になり、開花の終わりには強いピンク色がかった赤色になる。
【0007】
本発明によれば、Hibiscus sinensisの花弁の色の変化は、いくつかの環境因子に曝露される花の寿命に密接に関連している。早朝、若い花は開花し、白い花弁をつける。日中、光及び外部温度への曝露は花に影響を及ぼし、花は成熟してピンク色になる。夕方には、ピンクがかった赤色の花冠がこれらの花の齢を示し、その寿命は2日を超えない。この色の調和は、花粉供与者の行動に強い影響を及ぼし、したがって花粉供与者は、若い花と古い花とを区別し、花の報酬の有効性を評価することができる。これらの色の変化は、1日の経過にわたる花弁の化学組成の変化及び異なる代謝産物の存在によって説明することができる。
【0008】
驚くべきことに、本発明によれば、若い白色から薄ピンク色の花は、より古い赤色又は明るいピンク色の花よりも強力な老化防止活性を有する。
【0009】
先行技術、特に(Journal of Tropical Forest Science 21(4):307-315 Antioxidant properties of Hibiscus:species variation,altitudinal change,coastal influence and floral colour change;SK Wong、YY Lim、EWC Chan)は、Hibiscus sinensisの花弁の抽出物の抗酸化活性が花の色に比例し、したがって花のアントシアン系色素含量に比例し、結果として、赤色の花の花弁の抗酸化効果が若い白色から薄ピンク色の花の抗酸化効果よりも大きいと述べている。さらに逆に、本発明によれば、白色から薄ピンク色のHibiscus sinensisの花は
-皮膚老化に対抗するように作用し、赤色の花にはほとんど又は全く存在しない分子、すなわちN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリン及びsarmentosinエポキシド。
-存在しなくてもよい赤色の花の抽出物よりも皮膚老化防止効果が大きい。
【0010】
したがって、本発明は、Hibiscus sinensisの花から得られる少なくとも1種の抽出物を含む美容有効成分に関し、花は、それらの白色から薄ピンク色で選択される。特にこの選択に起因して、有効成分は、
-少なくとも2ppmのN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリン、及び/又は
-少なくとも145ppmのsarmentosinエポキシド
を含むことを特徴とすることができる。
【0011】
本発明はまた、皮膚への局所適用による、そのような抽出物又はそれらを含有する組成物の健康な皮膚への美容的使用、特に皮膚老化に対抗するための美容的使用に関する。
【0012】
最後に、本発明は、抽出物を含む化粧品組成物、及び皮膚老化防止効果のための健康な皮膚のための美容処置方法に関する。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
本発明の意味において、「美容有効成分」又は「有効成分」は、皮膚に対して美容効果を有する、すなわち皮膚細胞に対して効果を有する少なくとも1つの分子、好ましくは分子のセットを指す。
【0015】
本発明の意味の範囲内で、「Hibiscus sinensis」は、全ての同義語:「Abelmoschus mutabilis」、「Abelmoschus venustus」、「Hibiscus immutabilis」、「Hibiscus javanicus」、「Hibiscus mutabilis」及び「Ketmia mutabilis」を指す。
【0016】
本発明の意味の範囲内で、「白色から薄ピンク色の花」は、白色の花のみ、又は薄ピンク色の花のみ、又は白色及び薄ピンク色の花の混合物を指し、白色の花と薄ピンク色の花の比は無関係である。
【0017】
「エタノール抽出物」は、植物からの抽出工程がエタノール又は水/エタノール溶液中で行われる抽出物を指す。それは、別の溶媒中での抽出工程によって行われる抽出に関連せず、溶媒はその後蒸発され、ペレットはエタノール又は水/エタノール溶液中に再溶解される。
【0018】
「ヒドログリコール抽出物」とは、植物からの抽出工程が水/ブチレングリコール溶液中で行われることを意味する。それは、別の溶媒中での抽出によって行われる抽出に関連せず、溶媒はその後蒸発され、ペレットは水/ブチレングリコール溶液中に再溶解される。
【0019】
美容有効成分
したがって、本発明は、Hibiscus sinensisの花から得られる少なくとも1種の抽出物を含む美容有効成分であって
-少なくとも2ppmのN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリン;N-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリンは、モル質量277Daを有するグリコシル化アミノ酸であり;及び/又は
-少なくとも145ppmのsarmentosinエポキシド;sarmentosinエポキシドはモル質量291Daのグリコシドである。
【0020】
Hibiscus sinensisの花は、白色から薄ピンク色を有する。
【0021】
好ましくは、Hibiscus sinensisの花の抽出物は、Hibiscus sinensis花のヒドログリコール抽出物である。
【0022】
しかし、赤Hibiscus sinensisの花のヒドログリコール抽出物は、これら2つの分子をほとんど又は全く含まない(2ppm未満のN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリン及び145ppm未満のsarmentosinエポキシド)。
【0023】
さらに、本発明による有効成分中に存在する白色から薄ピンク色Hibiscus sinensisの花の抽出物は、成熟マーカー分子をほとんど又は全く含まないが、成熟マーカー分子は、赤色の花中に存在し、すなわちクエン酸及びクエン酸に近い構造を有する別の有機酸である。
【0024】
したがって、好ましくは、本発明による有効成分中に存在するHibiscus sinensisの花の抽出物は
-150ppm未満の192Daのモル質量を有するクエン酸、及び/又は
-192Daのモル質量を有するクエン酸の異性体が60ppm未満。
【0025】
しかし、赤Hibiscus sinensisの花のヒドログリコール抽出物は、これらの2つの分子(150ppmを超えるクエン酸及び60ppmを超える、クエン酸に近い構造を有する別の有機酸)を含む。
【0026】
さらに、好ましくは、本発明の有効成分中に存在する抽出物は、以下の特徴の少なくとも1つ、好ましくはそれらの全てを有する。
【0027】
-抽出物の乾燥重量で少なくとも50%の炭水化物を含み
-抽出物中に存在する炭水化物の少なくとも30乾燥重量%を構成し、360~1620Daのモル質量を有するオリゴ糖及び多糖であり
-それは、ミネラル及び/又はタンパク質、好ましくは20%未満のミネラル及び/又は20%未満のタンパク質を含み、パーセンテージは抽出物の乾燥重量によって与えられ
-抽出物中に存在するタンパク質は、2000Da未満のモル質量を有するペプチドである。
【0028】
抽出物中の糖(炭水化物)含量は、DUBOIS法(Dubois M.et al.,Analytical chemistry,28,3,350-356,1956)を用いて決定することができる。好ましい一実施形態によれば、抽出物の総糖含量は、抽出物の乾燥重量で50~85%である。
【0029】
抽出物中に存在する炭水化物は、好ましくは、少なくとも部分的に、360Da~1620Daのモル質量(又は2より大きく9未満の重合度)を有する単糖及びオリゴ糖である。好ましくは、360Da~1620Daのモル質量を有するオリゴ糖は、抽出物中に存在する炭水化物の少なくとも30重量%、さらにより好ましくは少なくとも40重量%に相当する。
【0030】
抽出物中に存在する炭水化物は、好ましくはフルクトース、サッカロース及びグルコースから構成される。抽出物のこの単純な糖組成は、特にイオン液体クロマトグラフィによって決定することができる。
【0031】
したがって、本発明による抽出物の炭水化物画分は、好ましくは、360Da~1620Daのモル質量を有するオリゴ糖の形態のフルクトース、サッカロース及びグルコースから構成される。
【0032】
本発明による有効成分はまた、ミネラル及び/又はタンパク質及び/又はポリフェノール化合物を含んでもよい。
【0033】
粗灰分(ミネラル)含量は、本発明による有効成分の試料を電気マッフル炉中550℃で焼却して得られる残留物を秤量することによって決定することができる。好ましくは、本発明による有効成分は、抽出物の乾燥重量で20%未満のミネラル(灰分)を含有する。
【0034】
本発明による有効成分中のペプチド化合物(タンパク質)の含量は、KJELDHAL法(参考文献:Official method of analysis of the A.O.C.,12th ed.W Horwitz,E.D.,New-York,15-60,1975)を使用して全窒素をアッセイすることによって決定することができる。好ましくは、本発明による有効成分は、20%未満のペプチドを含有する。本発明による有効成分のペプチドのモル質量は、抽出物の乾燥重量で2000Da未満である。
【0035】
ポリフェノール化合物の含有量は、以下の方法を使用して決定することができる。ポリフェノール化合物は、715nmで検出可能な着色化合物のフェリシアン化カリウムの存在下で形成する。色強度は、ポリフェノール化合物の量に比例する。40~120mg/Lの没食子酸ベンチマーク範囲から読み取りを行う。ベンチマークについて得られた結果は、濃度の関数として光学濃度線を描くことを可能にし、試料のポリフェノールレベルは、線上で直接読み取られる。本発明による抽出物のポリフェノール化合物レベルは、本発明による抽出物の乾燥含量に対する没食子酸当量の百分率で表される。好ましくは、本発明による有効成分は、主にフェノール酸、フラボノイド又はそれらのグリコシド誘導体であるポリフェノール化合物を2%未満含有する。
【0036】
本発明による有効成分は、固体形態又は液体形態をとることができる。
【0037】
液体形態をとる場合、本発明による有効成分は、好ましくは、先に記載した抽出物のみから構成される。それは、一般に、かすかな匂い及び黄色、好ましくは淡黄色を有する透明な液体の形態をとる。しかしながら、当業者に公知の任意の方法を用いて着色及び/又は漂白されてもよい。当業者に周知の防腐剤又は安定剤を本発明による抽出物に添加して、本発明による有効成分を形成することができる。
【0038】
それが固体形態、特に粉末形態をとる場合、それは、本発明によるHibiscus sinensisの花の抽出物及びマルトデキストリンなどの担体から構成される。好ましくは、抽出物は有効成分の少なくとも10重量%に相当し、担体は90%以下に相当する。
【0039】
美容有効成分を得る方法
本発明による有効成分中に存在する抽出物は、エタノール抽出物を除く任意のタイプの抽出方法によって得ることができる。
【0040】
好ましくは、本発明による方法は、白色から薄ピンク色Hibiscus sinensisの花を水/ブチレングリコール混合物中で可溶化するための工程を含む。
【0041】
さらにより好ましくは、本発明による方法は、以下の工程:
-Hibiscus sinensisの花粉末を水/ブチレングリコール混合物中に可溶化すること、
-可溶性相と不溶性相とを分離して、可溶性相を回収すること、
-濾過、
-滅菌濾過
を実行することを含む。
【0042】
清澄化及び/又は漂白及び/又は脱臭工程を加えてもよい。
【0043】
個々に考慮される上述の方法の工程は、天然原料からの有効成分抽出の分野において典型的であり、当業者は、その一般的知識に基づいてその反応パラメータを調整することができる。
【0044】
美容有効成分の使用
本発明による有効成分は、健康な皮膚に対する美容処置に特に有効であり、したがって治療的ではない。
【0045】
特に、本発明による有効成分は、健康な(非病的な)皮膚に対して有効であり、同時に皮膚再生を促進し、エピジェネティック因子を刺激し、細胞解毒をブーストし、皮膚炎症を制限し、皮膚免疫バリア機能を強化する。
【0046】
したがって、本発明はまた、健康な皮膚に局所的に適用される、特に皮膚老化に対抗するための、先に記載された美容有効成分又はそれを含有する組成物の美容的使用に関する。
【0047】
老化の間、皮膚の再生能力は低下する。これは、増殖及び移動する細胞の能力の喪失から生じ、皮膚の一般的な外観の変化によって反映される。実際に、表皮の構造は老化中に変化することが特に注目され、より高齢の表皮は若い表皮と比較して厚さが小さい。
【0048】
有利には、本発明による有効成分は、より高齢の皮膚の表皮の厚さを正常化する。
【0049】
これは、一方で細胞増殖(Ki-67合成の増加を介して見られる)を増加させ、他方で細胞遊走を増加させる。
【0050】
したがって、それは細胞代謝を増加させ、組織再生を促進する。
【0051】
さらに、皮膚の老化を直接制限するために、複数のレベルで作用することが不可欠である。
-水和を維持する
-真皮マトリックスを保存及び強化する、
-寿命因子を活性化する。
【0052】
十分に水和されるために、皮膚は、実質的な水リザーバを形成しなければならず、次いで、それが組織内に適切に分布されることを保証しなければならない。これらの機能は、皮膚の「水資本」を調節する2人の必須プレーヤーによって実行される。
-例外的な水和効果を有する分子であるヒアルロン酸。実際、それは、水中でその重量の1,000倍までを捕捉することができる真の「分子スポンジ」として作用する。したがって、その存在は、主に皮膚からの水の70%を含有する真皮における実質的な貯蔵を保証する。線維芽細胞がヒアルロン酸の合成に必要な酵素機構の全てを含むので、線維芽細胞がこの分子の産生を見るのは、この区画内である(HAS、酵素、ヒアルロン酸合成酵素)。
-細胞膜に組み込まれた小チャネルであるアクアポリン。それらは、水の動的で効率的な循環を可能にする。アクアポリン3は、主に皮膚、特に細胞膜に存在する。表皮の水和レベルは、全ての層におけるこれらのチャネルの最適な分布に依存する。毎秒3,000,000,000分子の水の流れを提供することによって、表皮が表面まで正確に灌注されることを保証する。
【0053】
有利には、本発明による有効成分は、これらの2つの主要な因子の産生を刺激することができる。それは、ヒアルロン酸産生及びアクアポリン3発現を増加させる。したがって、本発明による有効成分は、より高齢の皮膚の水和状態を改善することができる。
【0054】
真皮マトリックスは、老化の主な標的の1つである。実際、このプロセスの間に、それは深刻なリモデリングを経験する。これは、特に、細胞外マトリックス(ECM)の様々な成分の発現の減少によって反映される。これらの成分には、コラーゲン、ECMの基本構造要素、並びにベルシカンなどのプロテオグリカンが含まれる。他のタンパク質は、ECMの維持において主要な役割を果たす。ペリオスチンは、コラーゲンの働きを維持するために必要なタンパク質である。実際、それはコラーゲン原線維の合成に、それらの集合を促進することによって影響を及ぼす。ビメンチンは、中間径フィラメントの形成に関与する細胞内タンパク質である。それは、線維芽細胞の形状及びそれらの細胞質の完全性の維持に関与する。フィビュリン5は、エラスチン前駆体の結合を促進することによって弾性線維の生成に関与する。最後に、インテグリンはコラーゲンの膜受容体である。それは、コラーゲン合成及び新たに合成された細胞外マトリックスの組織化を調節すると記載されている。老化の間、これらのマーカーの全ては、減少した発現/合成を有するようである。
【0055】
有利には、本発明による有効成分は、細胞外マトリックスの成分の産生を刺激することができる。したがって、本発明による有効成分は、コラーゲンI、バーシカン、ペリオスチン、ビメンチン、インテグリンα2及びフィビュリン5の発現を刺激することができる。それはまた、コラーゲンIの前駆体であるプロコラーゲンIの産生を刺激する。
【0056】
結論として、皮膚は、NRF2及びFOXO3Aを含む長寿マーカーのレベルに相関する「若者資本」を有する。これらの2つのマーカーは、寿命に対するそれらの好ましい効果について認識されている。この効果は特に、フリーラジカルストレス応答経路の活性化又は老化への進入の阻害を含む。
【0057】
有利には、本発明による有効成分は、寿命マーカーの発現を刺激することができる。それは、NRF2及びFOXO3Aの発現を増加させる。したがって、本発明による有効成分は、より高齢の皮膚の寿命を改善することができる。
【0058】
遺伝的要素を超えて、老化はエピジェネティック要素に依存する。実際、遺伝子発現は我々の環境によって条件付けられる。エピジェネティック因子は、これらの環境の変化を取り込み、続いて特定の遺伝子の発現を特異的に活性化又は阻害する。これらのエピジェネティック因子の中で、サーチュイン1が最もよく知られている。それはクロマチンを安定化させるが、寿命に対して負に作用するp53などの特定の遺伝子の発現を相殺することにも関与する。
【0059】
有利には、本発明による有効成分は、エピジェネティック因子の発現を刺激することができる。それはSIRT-1の発現を増加させる。
【0060】
さらに、老化は部分的に酸化的損傷の蓄積に起因する。我々の皮膚は、それ自体を保護し、これらの好ましくない状態に適応することを可能にする様々なシステムを備えている。これらの系の中で、フリーラジカル酵素(SOD1、チオレドキシン、カタラーゼ)は、抗酸化分子の分解を助け、一方、ストレス応答タンパク質HSPは、タンパク質を良好な作用状態に保つ。
【0061】
有利には、本発明による有効成分は、細胞解毒に関与する因子の発現を刺激することができる。それは、SOD、チオレドキシン、カタラーゼ並びにHSP72、HSP27及びHSP92などの分子シャペロンの発現を増加させる。HSP、熱ショックタンパク質又はストレスタンパク質は、重要な細胞保護系を構成する。それらはシャペロンとして作用し、ストレスに応答したタンパク質の歪みを制限する。その後、後者は完全に機能し続ける。それらは、タンパク質の3D構造化を促進し、したがって、それらが歪められることを防止するが、不正確に折り畳まれたタンパク質の回復も支持する。
【0062】
皮膚は、毎日異なるタイプの攻撃を受ける。これらはとりわけ微生物又は太陽光であってもよい。それらは、プロスタグランジンE2及びインターロイキン8(IL-8)などのメディエーターの産生によって反映される主要な炎症反応を引き起こす。後者は、皮膚の生理に大きな影響を及ぼし得る。したがって、皮膚がこれらの炎症現象から自身を保護することが必須である。
【0063】
有利には、本発明による有効成分は、炎症現象を減少させることができる。それは、PGE2及びIL-8の産生を減少させる。
【0064】
表皮は、防御系を含む免疫障壁を確立することによって皮膚を防御することに能動的に関与する。ケラチノサイトは、その表面に、望ましくない微生物を検出する能力をケラチノサイトに与える危険センサーを有する。この機能は、TLR(Toll様受容体)ファミリー由来のタンパク質によって行われる。これらのTLR受容体は、外来微生物の存在を識別する能力を有する。ケラチノサイトのTLR受容体の関与は、いくつかのシグナル伝達カスケード、特に抗微生物ペプチドの産生を活性化する。これらの重要な分子には、β-デフェンシン(hBD)が含まれる。有利には、本発明による有効成分は、免疫バリア機能に作用する。それは、TLR-2受容体及びhBD2の発現を活性化する。
【0065】
したがって、本発明による有効成分は、特に以下に使用される。
-特に表皮再生、Ki-67増殖の重要なマーカーの合成及び細胞遊走を刺激することによって、皮膚再生を促進する。
-特に、水和の重要なメディエーター(アクアポリン3、ヒアルロン酸)を調節及び活性化することによって、コラーゲンI、バーシカン、ペリオスチン、ビメンチン、インテグリンα2及びフィビュリン5などの細胞外マトリックスの化合物を刺激することによって、並びにNRF2及びFOXO3Aなどの細胞寿命に関与するタンパク質を刺激することによって、皮膚老化に対抗する。
-エピジェネティック因子、特に、寿命に対して負に作用するp53などの遺伝子の発現の制御において必須の役割を果たすSIRT-1(サーチュイン1)を調節する。
-フリーラジカル酵素(SOD1、チオレドキシン及びカタラーゼ)及び熱ショックタンパク質ストレス応答因子(HSP72、HSP27及びHSP90)を調節することによって細胞解毒を活性化する。
-様々な発作中のPGE2及びインターロイキンIL-8産生を減少させることによって皮膚炎症を制限する。
-TLR2危険受容体及び皮膚の抗菌ペプチド、特にhBD2の産生を刺激することによって免疫バリア機能を調節する。
【0066】
したがって、本発明による有効成分は、健康な皮膚、特に、より高齢の健康な皮膚の状態を改善するため、特に老化防止効果のために皮膚の皮膚パラメータを改善するための多機能性を有する。
【0067】
本発明による有効成分は、好ましくは美容的に許容される媒体を含む組成物中で使用される。それは、皮膚への局所適用に適した異なる剤形の組成物を含む。
【0068】
これらの組成物は、特に、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、任意にマイクロエマルジョン若しくはナノエマルジョンであってもよい多重エマルジョン(水/油/水若しくは油/水/油)の形態、又は溶液、懸濁液、水分散液、水性ゲル若しくは粉末の形態をとり得る。それらは、多かれ少なかれ流体であってもよく、クリーム、エマルジョン若しくはゲルの外観、又はスキンケア化粧品の任意の他の外観を有してもよい。
【0069】
それは、少なくとも0.1%、好ましくは0.5~10%の本発明による液体有効成分を含むか、又は少なくとも0.01%の本発明による固体有効成分(好ましくは粉末)を含む組成物を含み得る。
【0070】
これらの組成物は、有効成分とは別に、生理学的に許容され、好ましくは美容的に許容される媒体、すなわち、発赤、緊張又は刺痛などの不快感を使用者に引き起こさない媒体を含む。
【0071】
本発明による組成物は、添加剤として、以下の中から選択される少なくとも1種の化合物を含有してもよい。
-特に、直鎖状又は環状の揮発性又は不揮発性油の中から選択され得る油
-ワックス、例えば、オゾケライト、ポリエチレンワックス、蜜蝋又はカルナウバワックス
-シリコーンエラストマー、
-界面活性剤、好ましくは乳化剤、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性のいずれであっても
-直鎖脂肪アルコールなどの共界面活性剤
-増粘剤及び/又はゲル化剤
-グリセリンのようなポリオールなどの保湿剤
-染料、防腐剤、充填剤
-テンソルエージェント、
-金属イオン封鎖剤
-フレグランス、
及びそれらの混合物であり、このリストは網羅的ではない。
【0072】
このような添加剤の例は、特に、CTFA Dictionary(Personal Care Product Councilによって出版されたInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook)に引用されている。
【0073】
もちろん、当業者は、混合物の有利な特性が考慮される添加によってほとんど又は全く変化しないように、任意の追加の化合物(それらが活性であるか否かにかかわらず)及びそれらの量を選択する。
【0074】
これらの組成物は、特に、皮膚老化防止効果のために、健康な皮膚、特に、より高齢の健康な皮膚に使用されることが意図される。
【0075】
本発明はまた、(非治療的)美容方法、すなわち皮膚老化防止効果のために健康な皮膚を処置するための美容方法であって、本発明による有効成分を含む組成物の健康な皮膚への局所適用からなる美容方法を対象とする。
【0076】
好ましくは、本発明による美容有効成分を含む組成物は、少なくとも15日間、少なくとも1日1回適用される。
【0077】
皮膚の質、特に皮膚の特性に対するこれらの美容効果を説明するために、以下の実施例及び試験結果を以下に示す。
【実施例
【0078】
実施例1:白色から薄ピンク色の花に由来する液体形態の本発明による有効成分の例。
有効成分は、以下の工程を実施することによって得られる。
-白色から薄ピンク色のHibiscus sinensisの花粉末を水/ブチレングリコール混合物中に可溶化すること、
-可溶性相と不溶性相とを分離して、可溶性相を回収すること
-濾過、
-滅菌濾過。
【0079】
得られた有効成分は、特に、以下の分析特性を有する。
-透明な淡黄色液体、わずかな臭気。
-13g/Lの乾燥含量
-総ポリフェノール含有量0.15g/L、又は乾燥物に対して0.5%
-5.4ppmのN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリン及び163.5ppmのsarmentosinエポキシドの存在。
-64ppmのクエン酸及び27ppmのクエン酸の異性体有機酸の存在。
【0080】
フェノール化合物は、実施例1において、280nmでのLC-MS/MSによって同定した。抽出物の成分を以下の表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例1の本発明による抽出物のポリフェノール化合物は、主にフェノール酸、フラボノイド及びそれらのグリコシド誘導体である。mutabiloside誘導体及びシアニジン-3-サンブビオシドは、ハイビスカス(Hibiscus)種のための質マーカーとして使用される。
【0083】
実施例2:白色の花に由来する液体形態の本発明による有効成分の例
有効成分は、以下の工程を実施することによって得られる。
-白色Hibiscus sinensisの花粉末を水/ブチレングリコール混合物に可溶化する工程、
-可溶性相と不溶性相とを分離して、可溶性相を回収すること
-濾過、
-滅菌濾過。
【0084】
得られた有効成分は、特に、以下の分析特性を有する。
-透明な淡黄色液体、わずかな臭気。
-24.5g/Lの乾燥含量
-総ポリフェノール含有量0.17g/L、又は乾燥物に対して0.7%
-3.2ppmのN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリン及び175.6ppmのsarmentosinエポキシドの存在。
-135ppmのクエン酸及び40ppmのクエン酸の異性体有機酸の存在。
【0085】
実施例3:薄ピンク色の花に由来する液体形態の本発明による有効成分の例。
有効成分は、以下の工程を実施することによって得られる。
-薄ピンク色のHibiscus sinensisの花粉末を水/ブチレングリコール混合物中に可溶化すること、
-可溶性相と不溶性相とを分離して、可溶性相を回収すること
-濾過、
-滅菌濾過。
【0086】
得られた有効成分は、以下の分析特性を有する。
-透明な淡黄色液体、わずかな臭気。
-19.8g/Lの乾燥含量
-総ポリフェノール含有量0.17g/L、又は乾燥物に対して0.9%
-2.4ppmのN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリン及び147.4ppmのsarmentosinエポキシドの存在。
-92ppmのクエン酸及び47ppmのクエン酸の異性体有機酸の存在。
【0087】
実施例4:赤色の花由来の抽出物の例(本発明外)
成分は、以下の工程を実施することによって得られる。
-水/ブチレングリコール混合物中に赤色のHibiscus sinensisの花粉末を可溶化すること、
-可溶性相と不溶性相とを分離して、可溶性相を回収すること
-濾過、
-滅菌濾過。
【0088】
赤色の花の抽出物は、以下の分析特性を有する。
-透明な淡黄色液体、わずかな臭気。
-22.0g/Lの乾燥含量
-総ポリフェノール含有量0.19g/L、又は乾燥物に対して0.9%
-1.5ppmのN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリン及び120.0ppmのsarmentosinエポキシドの存在。
-193ppmのクエン酸及び85ppmのクエン酸の異性体有機酸の存在。
【0089】
実施例5:ピンクの花に由来する抽出物の例(発明外)
成分は、以下の工程を実施することによって得られる。
-ピンク色のHibiscus sinensisの花粉末を水/ブチレングリコール混合物中に可溶化すること、
-可溶性相と不溶性相とを分離して、可溶性相を回収する工程と
-濾過
-滅菌濾過。
【0090】
ピンク色の花の抽出物は、以下の分析特性を有する。
-黄色の透明な液体、弱い臭気。
-20.7g/Lの乾燥含量
-総ポリフェノール含有量0.21g/L、又は乾燥物に対して1.0%
-2ppm未満の-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリン、及び145ppmのsarmentosinエポキシド
-150ppmを超えるクエン酸及び60ppmを超えるクエン酸の異性体有機酸。
【0091】
試験及び結果。
Iを提供する。皮膚再生に対する本発明による有効成分の効果の研究
皮膚再生に対する本発明による有効成分の効果を、いくつかの研究を用いて評価した。
-より高齢の再構築された皮膚への形態学的変化に対して、表皮の厚さ、
-Ki-67マーカーを評価することによる、より高齢の再構築された皮膚における細胞増殖。
-ヒト線維芽細胞の移動。
【0092】
比較のために、赤色の花由来の抽出物(実施例4)の細胞遊走に対する効果も評価した。
【0093】
I.1.皮膚の形態に対する本発明による有効成分の効果
この研究の目的は、より高齢の細胞から作られた再構築皮膚の形態に対する本発明による有効成分の効果を評価することである。
【0094】
本発明の作用は、HES染色によって、表皮の厚さを含む形態学的変化について研究された。
【0095】
操作プロトコルを以下に説明する。
D0:より高齢の、又は若齢ヒトケラチノサイトを、それぞれより高齢の、又は若齢ヒト線維芽細胞を含有する格子上に播種し、37℃でインキュベートする。
数日間の処理の間に、培養培地を除去し、本発明による有効成分を含有する培地と交換する。次に、再構築した皮膚を37℃でインキュベートする。
処置の数日後に、再構築された皮膚を回収し、次いでこれを固定し、脱水し、パラフィン中に含める。ミクロトームを用いて切片を採取する。
ヘマトキシリン-エオシンサフラン(HES)染色によって形態分析を行い、画像解析システムに連結された顕微鏡によって観察を行う。
表皮の厚さを組織切片上で測定する。
【0096】
結果を表2にまとめた。
【0097】
【表2】
【0098】
より高齢の再構築皮膚は、若い再構築皮膚よりも薄い表皮(-21%)を有することがわかる。
【0099】
より高齢の再構築皮膚に対して0.5%で試験すると、本発明による有効成分は、表皮の厚さを88%有意に改善する。
【0100】
I.2 Ki-67合成に対する本発明による有効成分の効果
この研究の目的は、より高齢の細胞から行われた再構築皮膚モデルに対する本発明による有効成分の効果を評価することである。Ki-67は細胞増殖の重要なマーカーの1つである。それは増殖性細胞の核に存在する。
【0101】
細胞増殖に対する本発明の作用は、Ki-67の免疫組織化学的マーキングによって研究されている。
【0102】
操作プロトコルを以下に説明する。
D0:よりお高齢の、又は若齢ヒトケラチノサイトを、それぞれより高齢の、又は若齢ヒト線維芽細胞を含有する格子上に播種し、37℃でインキュベートする。
数日間の処理の間に、培養培地を除去し、本発明による有効成分を含有する培地と交換する。次に、再構築した皮膚を37℃でインキュベートする。
処置の数日後に、再構築された皮膚を回収し、次いでこれを固定し、脱水し、パラフィン中に含める。ミクロトームを用いて切片を採取する。次に、それらの分析を、一次抗体(Ki-67ポリクローナル抗体)及び二次抗体(Alexa Fluor(登録商標)488と結合したIgG抗体)を使用する免疫組織化学的マーキングによって行う。観察は、画像分析システムに連結された顕微鏡によって行われる。
陽性Ki-67細胞の数を、各画像において手動で決定する。
【0103】
結果を表3にまとめた。
【0104】
【表3】
【0105】
若く再構築された皮膚と比較して、より高齢の再構築された皮膚はより少ないKi-67(-37%)を発現することがわかる。
【0106】
より高齢の再構築皮膚に対して0.5%で試験すると、本発明による有効成分は、細胞増殖マーカー、Ki-67の合成を53%有意に改善する。
【0107】
I.3細胞遊走に対する本発明による有効成分の効果
これらの研究の目的は、ヒト線維芽細胞の遊走に対する本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物の効果を評価することである。
【0108】
細胞遊走は、特定の細胞が移動する能力である。In vitro最初は空である表面を覆う細胞の数によって評価される(Kim et al.,2015;Lampugnani,1999)。細胞の遊走能力は年齢と共に減少する(Boulter et al.,2013)。
【0109】
それらの作用を、より高齢のドナー由来のヒト線維芽細胞培養物について研究した。
【0110】
研究の操作プロトコルを以下に記載する。
D0に、ヒト線維芽細胞を播種し、37℃でインキュベートする。
数日間培養した後、挿入物を培養チャンバーから取り出し、創傷を作製する。細胞を、本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物又はN-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリンの溶液で処理し、次いで37℃でインキュベートする。
数日培養した後、細胞を0.5%(M/V)のクリスタルバイオレット溶液で染色する。画像分析システムに連結された顕微鏡を備えたAxioCam MRcカメラを用いて観察を行う。
細胞によって占められる表面比は、ソフトウェアを使用して自動的に計算される。
【0111】
得られた結果を表4及び表5にまとめる。
【0112】
【表4】
【0113】
より高齢の線維芽細胞は、若い線維芽細胞の遊走能力よりも有意に低い遊走能力(-38%)を有することがわかる。
【0114】
より高齢のヒト線維芽細胞に対して1%で試験したところ、赤色の花の抽出物は細胞遊走を活性化することができないが、本発明による有効成分は、白色から薄ピンク色の花、白色の花又は薄ピンク色の花のいずれであっても、細胞遊走をそれぞれ21%、24%及び20%有意に増加させる。
【0115】
この結果は、所望の効力に対する花の選択の重要性を明確に示している。
【0116】
【表5】
【0117】
N-(1-デオキシ-1-フルクトシル)-プロリンを用いて得られた結果は、実際に、2ppmの含量が、細胞移動に対する期待される効果を得ることに関与することを示す。
【0118】
したがって、有利なことに、白色から薄ピンク色の花に由来する本発明による有効成分は、皮膚再生を刺激することができる。特に、それがより高齢の皮膚に適用される場合、それは:
-表皮の形態を改善する。
-Ki-67発現を増加させる、
-細胞遊走を増加させる。
【0119】
したがって、白色から薄ピンク色の花に由来する本発明による有効成分は、より高齢の皮膚の再生を促進する。
【0120】
II.皮膚老化に対する本発明による有効成分の効果
II.1皮膚水和メディエーターに対する本発明による有効成分の効果
皮膚水和メディエーターに対する本発明による有効成分の効果を、2つの試験を用いて評価した。
-再構築されたより高齢の皮膚上で、ヒアルロン酸合成を測定することによる
-より高齢のヒト線維芽細胞に対して、アクアポリン3の発現を評価することによる。
【0121】
比較のために、赤色の花の抽出物のアクアポリン3の発現に対する効果も評価した。
【0122】
II.1.1.ヒアルロン酸合成に対する本発明の有効成分の効果
この研究の目的は、より高齢の細胞を用いて調製された再構築皮膚におけるヒアルロン酸合成を刺激する本発明による有効成分の能力を決定することである。
【0123】
操作プロトコルを以下に説明する。
D0:より高齢の、又は若齢ヒトケラチノサイトを、それぞれより高齢の、又は若齢ヒト線維芽細胞を含有する格子上に播種し、37℃でインキュベートする。
数日間の処理の間に、培養培地を除去し、本発明による有効成分を含有する培地と交換する。次に、再構築した皮膚を37℃でインキュベートする。
処置の数日後に、再構築された皮膚を回収し、次いで固定し、脱水し、パラフィン中に含める。ミクロトームを用いて切片を採取する。
ヒアルロン酸に対する強い親和性を有するビオチン化タンパク質(ヒアルロン酸結合タンパク質)及び二次抗体を使用して、ヒアルロン酸の合成を蛍光緑色で見る。画像の定量分析は、Matlab(登録商標)ソフトウェアを用いて行われる。
【0124】
得られた結果を表6にまとめた。
【0125】
【表6】
【0126】
若く再構築された皮膚と比較して、より高齢の再構築された皮膚は、ヒアルロン酸の合成能力が低下している(-34%)ことがわかる。
【0127】
0.5%で試験すると、本発明による有効成分は、より高齢の再構築皮膚におけるヒアルロン酸の合成を63%有意に増加させる。
【0128】
II.1.2.アクアポリン3発現に対する本発明による有効成分の効果
この研究の目的は、本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物の、より高齢の皮膚細胞におけるアクアポリン3発現を増加させる能力を決定することである。
【0129】
若齢ヒト線維芽細胞(P7)及びより高齢のヒト線維芽細胞(P24)を、本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物をほとんど又は全く含有しない培養培地中で培養する。
【0130】
少なくとも1日の処理後、線維芽細胞を回収し、全RNAを抽出する。アクアポリン3のmRNAを、RSP18のmRNAと並行して分析する。蛍光取り込みの定量化は、サーモサイクラーを用いて連続的に測定され、相対的定量化はソフトウェアを用いて行われる。
【0131】
得られた結果を表7にまとめた。
【0132】
【表7】
【0133】
より高齢の線維芽細胞は、若い線維芽細胞(-64%)と比較して、アクアポリン3を発現する能力が低いことがわかる。
【0134】
0.25%で試験すると、本発明による有効成分は、より高齢の線維芽細胞において、アクアポリン3の発現を22%から41%に増加させる。
【0135】
さらに、赤色の花の抽出物はアクアポリン3の発現に作用しないことがわかる。
【0136】
これらの結果は、所望の効力に対する花のyoungnessの重要性を示している。
【0137】
有利なことに、本発明による有効成分は、白色から薄ピンク色の花の存在により、したがって、これら2つの主要なプレーヤーの産生を刺激することができる。特に、それがより高齢の皮膚に適用される場合、それは以下のように増加する。
-ヒアルロン酸産生
-アクアポリン3発現。
【0138】
したがって、本発明による有効成分は、白色から薄ピンク色の花の存在により、より高齢の皮膚の水和を改善する。
【0139】
II.2.真皮マトリックスに対する本発明による有効成分の効果
皮膚マトリックスのマーカーに対する本発明による有効成分の効果を、いくつかの研究を用いて評価した。
-マトリックスの異なる成分(コラーゲンI、バーシカン)の発現の測定による継代によるより高齢のヒト線維芽細胞に対して;
-基質の異なる成分(ペリオスチン、ビメンチン、インテグリンα2、フィビュリン5)の発現の測定によるより高齢のドナー由来のヒト線維芽細胞に対して;
-プロコラーゲンIの合成を評価することによる、再構築されたより高齢の皮膚。
【0140】
コラーゲンI及びバーシカンの発現の研究において、赤色の花の抽出物の効果も比較した。
【0141】
II.2.1.コラーゲンI及びバーシカン発現に対する本発明による有効成分の効果
この研究の目的は、本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物の、より高齢の皮膚細胞におけるコラーゲンI及びバーシカン発現を増加させる能力を決定することである。
【0142】
細胞外マトリックスは、線維、特にコラーゲン線維の非常に組織化されたネットワークによって形成される複雑な構造である。コラーゲンIは、これらの線維の主要な構造成分である。コラーゲン線維以外に、真皮はプロテオグリカンからも構成されており、その中でもバーシカンは重要な役割を果たす。それは皮膚の堅さを維持するために必要であると記載されている。
【0143】
操作プロトコルを以下に説明する。若齢ヒト線維芽細胞(P7)及びより高齢のヒト線維芽細胞(P24)を、本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物をほとんど又は全く含有しない培養培地中で培養する。
【0144】
少なくとも1日の処理後、線維芽細胞を回収し、全RNAを抽出する。コラーゲンI及びバーシカンのmRNAを、RSP18のmRNAと並行して分析する。蛍光取り込みの定量化は、サーモサイクラーを用いて連続的に測定され、相対的定量化はソフトウェアを用いて行われる。
【0145】
結果を表8にまとめた。
【0146】
【表8】
【0147】
より高齢の線維芽細胞は、若い線維芽細胞より少ないコラーゲンI(-35%)及びバーシカン(-27%)を発現する。
【0148】
より高齢のヒト線維芽細胞に対して0.25%試験したところ、赤色の花の抽出物はコラーゲンI発現を回復せず、一方、白色から薄ピンク色の花の有効成分は、より高齢の線維芽細胞によるコラーゲンI発現を49%から86%に増加させる。
【0149】
より高齢のヒト線維芽細胞に対して0.25%試験したところ、赤色の花の抽出物はバーシカン発現を回復せず、一方、白色から薄ピンク色の花の有効成分は、より高齢の線維芽細胞によるバーシカン発現をそれぞれ56%及び59%増加させる。
【0150】
これらの結果は、所望の効力に対する花のyoungnessの重要性を示している。
【0151】
II.2.2.皮膚利益を送達するための活性分子の含有量に対する花収穫時間の影響
この研究の目的は、プロコラーゲンI産生の増加などの皮膚利益を送達するための活性分子の含有量に対する花の収穫時間の影響を観察することである。同じHibiscus Sinensis種に由来するが、その花の寿命の期間にわたって異なる時間に収穫された3つの異なる抽出物の生物学的活性を評価した。評価された生物学的活性は、皮膚の堅さ、リフティングに重要であるコラーゲンの産生において皮膚細胞を支持する能力、及び線及びしわに対抗する能力である。
【0152】
操作プロトコルを以下に説明する。
【0153】
62歳のドナー由来の正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を6ウェルプレート上に50000細胞/ウェルの密度で播種し、標準条件下(37℃/5%CO)で一晩インキュベートした。線維芽細胞を、10%仔ウシ血清及び1%ペニシリンストレプトマイシンを補充したDMEM培地中で増殖させた。
【0154】
試料を、完全補充培地中0.1%、0.5%又は1%の実施例2、5及び4の有効成分で処理した。プレートを標準条件下(37℃/5%CO)で96時間インキュベートした。インキュベーション後、上清を回収し、-80℃で保存した。
【0155】
96時間のインキュベーション後、上清を回収し、細胞生存率について細胞計数を行った。各試料をPBSで1回洗浄した後、0.25%トリプシンを投与した。細胞を6ウェルプレートから分離した後、培地を各サンプルに投与してトリプシンを中和した。細胞計数をVicellで行った。
【0156】
I型プロコラーゲンELISAを用いてI型コラーゲン産生を評価した。光学密度(OD)を450nmで測定した。
【0157】
Graphpad InStatにおけるダネットのポストテストによる一元配置ANOVAを使用して、全ての試料に対して統計解析を行った。さらに、示されるエラーバーは、Excelの式によって計算された標準誤差を示す(**p<0.01)。
【0158】
結果を表9に要約する:平均細胞数に対して正規化した対照と比較したプロコラーゲンI産生。1%の実施例2の有効成分(白い花)は、実施例5の有効成分(白色から薄ピンク色の花)及び実施例4の有効成分(赤色の花)と比較して、プロコラーゲンI産生の最大の増加を示す。
【0159】
【表9】
【0160】
これらの結果は、植物抽出物に関しては収穫時間が決定的に重要であることを示しており、この正確さは、最良の性能を皮膚に送達するために不可欠である。同じ花種の3つの画分を、花の生涯の初期、中期又は後期のいずれかに収穫された花から同じプロセスで抽出し、初期収穫が成熟皮膚細胞におけるコラーゲン産生を増加させるために必須であることを示した。
【0161】
II.2.3.真皮マトリックスの異なるマーカーの発現に対する本発明による有効成分の効果
この研究の目的は、本発明による有効成分の、より高齢の皮膚細胞におけるペリオスチン、ビメンチン、インテグリンα2及びフィビュリン5の発現を増加させる能力を決定することである。
【0162】
ペリオスチンは、コラーゲンの働きを維持するために必要なタンパク質である。実際、それはコラーゲン原線維の合成に、それらの集合を促進することによって影響を及ぼす。ビメンチンは、中間径フィラメントの形成に関与する細胞内タンパク質である。それは、線維芽細胞の形状及びそれらの細胞質の完全性の維持に関与する。フィビュリン5は、エラスチン前駆体の結合を促進することによって弾性線維の生成に関与する。最後に、インテグリンはコラーゲンの膜受容体である。それは、コラーゲン合成及び新たに合成された細胞外マトリックスの組織化を調節すると記載されている。
【0163】
操作プロトコルを以下に説明する。
【0164】
若齢ドナー(21歳)又はより高齢のドナー(68歳)からの正常ヒト線維芽細胞を、本発明による有効成分をほとんど又は全く含有しない培養培地中で培養する。
【0165】
少なくとも1日の接触後、線維芽細胞を回収し、全RNAを抽出する。ペリオスチン、ビメンチン、インテグリンα2及びフィビュリン5のmRNAを、RSP18のmRNAと並行して分析する。蛍光取り込みの定量化は、サーモサイクラーを用いて連続的に測定され、相対的定量化はソフトウェアを用いて行われる。
【0166】
結果を表10にまとめる。
【0167】
【表10】
【0168】
より高齢の線維芽細胞は、若い線維芽細胞よりも少ないペリオスチン(-45%)、ビメンチン(-11%)、インテグリンα2(-21%)及びフィビュリン5(-21%)を発現する。
【0169】
より高齢のヒト線維芽細胞に対して0.25%で試験すると、本発明による有効成分は、より高齢の線維芽細胞のペリオスチン、ビメンチン、インテグリンα2及びフィビュリン5発現をそれぞれ71%、64%、148%及び29%回復させることを可能にする。
【0170】
II.2.4.プロコラーゲンIの合成に対する本発明による有効成分の効果
プロコラーゲンI合成に対する本発明による有効成分の効果を、より高齢の細胞から行われた再構築皮膚モデルに対する研究を用いて評価した。
【0171】
プロコラーゲンIは、真皮マトリックスの主要な構造成分であるコラーゲンIの前駆体である。
【0172】
操作プロトコルを以下に説明する。
D0:より高齢の、又は若齢ヒトケラチノサイトを、それぞれより高齢の、又は若齢ヒト線維芽細胞を含有する格子上に播種し、37℃でインキュベートする。
数日間の処理の間に、培養培地を除去し、本発明による有効成分を含有する培地と交換する。次に、再構築した皮膚を37℃でインキュベートする。
処置の数日後に、再構築された皮膚を回収し、次いでこれを固定し、脱水し、パラフィン中に含める。ミクロトームを用いて切片を採取する。
次に、それらの分析を、一次抗体(プロコラーゲンI抗体)及び二次抗体(Alexa Fluor 488と結合したIgG抗体)を使用する免疫組織化学的マーキングによって行う。観察は、画像分析システムに連結された顕微鏡によって行われる。
プロコラーゲンI合成は、再構築された皮膚上に存在する蛍光(緑色)の強度に比例する。
【0173】
結果を表11に要約する。
【0174】
【表11】
【0175】
より高齢の再構築皮膚は、若い再構築皮膚よりも少ないプロコラーゲンIを合成することがわかる(-27%)。
【0176】
本発明による有効成分は、より高齢の再構築皮膚に対して0.5%で試験すると、プロコラーゲンIの合成を74%有意に改善することができる。
【0177】
II.3寿命に対する本発明による有効成分の効果
長寿に対する本発明による有効成分の効果を、NRF2及びFOXO3Aの発現を評価することによって、より高齢のヒト線維芽細胞に対する研究を使用して評価した。
【0178】
NRF2は老化調節剤として記載されている。実際、その発現が増加すると、この因子は、フリーラジカルストレス応答経路を含む、寿命を促進する様々な経路を誘導する。FOXO3Aは中心的な転写因子である。それが存在しない場合、細胞老化が有利であると記載されている。
【0179】
この研究の目的は、本発明による有効成分の、より高齢の皮膚細胞におけるNRF2及びFOXO3A発現を増加させる能力を決定することである。
【0180】
操作プロトコルを以下に説明する。
【0181】
若齢ドナー(21歳)又はより高齢のドナー(68歳)からの正常ヒト線維芽細胞を、本発明による有効成分をほとんど又は全く含有しない培養培地中で培養する。
【0182】
少なくとも1日の接触後、線維芽細胞を回収し、全RNAを抽出する。NRF2及びFOXO3AのmRNAを、RSP18のmRNAと並行して分析する。蛍光取り込みの定量化は、サーモサイクラーを用いて連続的に測定され、相対的定量化はソフトウェアを用いて行われる。
【0183】
結果を表12にまとめる。
【0184】
【表12】
【0185】
NRF2及びFOXO3Aを発現するより高齢の線維芽細胞の能力は、若い線維芽細胞と比較してそれぞれ-18%及び33%減少していることがわかる。
【0186】
0.25%で試験すると、本発明による有効成分は、より高齢の線維芽細胞において、NRF2及びFOXO3Aの発現をそれぞれ211%及び73%増加させることを可能にする。
【0187】
III.エピジェネティック因子に対する本発明による有効成分の効果
エピジェネティック因子に対する本発明による有効成分の効果を、SIRT1の発現を評価することによって、より高齢のヒト線維芽細胞に対する研究を用いて評価した。
【0188】
サーチュイン1は、その発現が寿命の増加に関連するデアセチラーゼである。実際、DNAヒストンの脱アセチル化のために、SIRT1はクロマチンを安定化させる。それはまた、特定の遺伝子の発現、特に、細胞寿命に負の影響を有するタンパク質であるp53の発現を調節する。SIRT1は、p53を遮断すると記載されている。
【0189】
この研究の目的は、本発明による有効成分の、より高齢の皮膚細胞におけるSIRT1発現を増加させる能力を決定することである。
【0190】
操作プロトコルを以下に説明する。
若齢ドナー(21歳)又はより高齢のドナー(68歳)からの正常ヒト線維芽細胞を、本発明による有効成分をほとんど又は全く含有しない培養培地中で培養する。
少なくとも1日の接触後、線維芽細胞を回収し、全RNAを抽出する。SIRT1のmRNAを分析する。蛍光取り込みの定量化は、サーモサイクラーを用いて連続的に測定され、相対的定量化はソフトウェアを用いて行われる。
【0191】
結果を表13にまとめる。
【0192】
【表13】
【0193】
SIRT1を発現するより高齢の線維芽細胞の能力は、若い線維芽細胞と比較して12%減少していることがわかる。
【0194】
0.25%で試験すると、本発明による有効成分は、より高齢の線維芽細胞においてSIRT1の発現を475%増加させる。
【0195】
IV.細胞解毒に対する本発明による有効成分の効果
IV.1.抗ラジカル酵素の発現に対する本発明による有効成分の効果
抗ラジカル酵素の発現に対する本発明による有効成分の効果を、SOD1、チオレドキシン及びカタラーゼの発現を評価することによって、より高齢のヒト線維芽細胞に対する研究を使用して評価した。
【0196】
SOD1又はスーパーオキシドジスムターゼ1は、スーパーオキシドラジカルの分解に関与する抗ラジカル酵素である。カタラーゼは、過酸化水素を分解することを可能にする。チオレドキシンは、タンパク質の酸化チオールの再生及びビタミンCの再生を促進する。
【0197】
操作プロトコルを以下に説明する。
この研究の目的は、本発明による有効成分の、より高齢の皮膚細胞におけるSOD1、チオレドキシン及びカタラーゼ発現を増加させる能力を決定することである。より高齢のドナー(68歳)由来の正常ヒト線維芽細胞を、本発明による有効成分をほとんど又は全く含有しない培養培地中で培養する。
少なくとも1日の接触後、線維芽細胞を回収し、全RNAを抽出する。SOD1、チオレドキシン及びカタラーゼのmRNAを、RSP18のmRNAと並行して分析する。蛍光取り込みの定量化は、サーモサイクラーを用いて連続的に測定され、相対的定量化はソフトウェアを用いて行われる。
【0198】
結果を表14に要約する。
【0199】
【表14】
【0200】
1%で試験すると、本発明による有効成分は、より高齢の線維芽細胞において、SOD1、チオレドキシン及びカタラーゼの発現をそれぞれ22%、42%及び20%増加させる。
【0201】
IV.2.ストレス応答の発現による有効成分の効果因子
HSP72、HSP27及びHSP90の発現を評価することによって、より高齢のヒト線維芽細胞に対する研究を使用して、ストレス応答因子の発現に対する本発明による有効成分の効果を評価した。
【0202】
この研究の目的は、本発明による有効成分の、より高齢の皮膚細胞におけるHSP72、HSP27及びHSP90発現を増加させる能力を決定することである。
【0203】
操作プロトコルを以下に説明する。
若齢ドナー(21歳)及びより高齢のドナー(68歳)からの正常ヒト線維芽細胞を、本発明による有効成分をほとんど又は全く含有しない培養培地中で培養する。
少なくとも1日の接触後、線維芽細胞を回収し、全RNAを抽出する。HSP72、HSP27及びHSP90のmRNAを、ハウスキーピング遺伝子(RSP18)のmRNAと並行して分析する。蛍光取り込みの定量化は、サーモサイクラーを用いて連続的に測定され、相対的定量化はソフトウェアを用いて行われる。
【0204】
結果を表15にまとめた。
【0205】
【表15】
【0206】
HSP72、HSP27及びHSP90を発現するより高齢の線維芽細胞の能力は、若い線維芽細胞と比較して、それぞれ15%、22%及び35%減少していることがわかる。
【0207】
0.25%で試験すると、本発明による有効成分は、より高齢の線維芽細胞において、HSP72、HSP27及びHSP90の発現をそれぞれ127%、36%及び49%増加させる。
【0208】
V.皮膚炎症に対する本発明による有効成分の効果
皮膚炎症に対する有効成分の効果を、プロスタグランジンPGE2及びインターロイキンIL-8の合成を評価するヒトケラチノサイト培養物に対して行われた2つの研究によって評価した。
【0209】
この効果は、赤色の花から採取した抽出物と比較することができた。
【0210】
V.1.PGE2の放出に対する有効成分の効果
この研究の目的は、放出されたプロスタグランジンE2(PGE2)レベルを測定することによって、アラキドン酸による攻撃によって引き起こされる炎症を減少させる本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物の能力を決定することである。
【0211】
試験は、以下に記載する操作プロトコルに従って、正常ヒト角化細胞に対して行う。
【0212】
D0に、ヒトケラチノサイトを完全培地に播種する。次に、細胞を37℃でインキュベートする。
【0213】
数日培養した後、細胞をアラキドン酸溶液で3時間、本発明の有効成分又は赤色の花の抽出物の存在下又は非存在下で前処理するか、又は前処理しない。
【0214】
次に、細胞上清を回収する。PGE2のアッセイは、ELISAアッセイキットを用いて行われる。
【0215】
結果を表16に要約する。
【0216】
【表16】
【0217】
アラキドン酸によって引き起こされる炎症の間、ヒトケラチノサイトはプロスタグランジンE2(PGE2)を分泌する。
【0218】
本発明による有効成分は、アラキドン酸によって攻撃された細胞によるPGE2の放出を減少させる。0.25%で試験すると、本発明による有効成分は、放出されたPGE2含量を40%減少させるが、赤色の花の抽出物は、より低いPGE2阻害効果を有する。
【0219】
V.2.インターロイキンIL-8の放出に対する有効成分の効果
この研究の目的は、放出されたインターロイキン8(IL-8)レベルを測定することによって、発作によって引き起こされる炎症を減少させる本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物の能力を決定することである。炎症は、UVBストレスによって引き起こされる。
【0220】
試験は、以下に記載する操作プロトコルに従って、正常ヒト角化細胞に対して行う。
D0に、ヒトケラチノサイトを完全培地に播種する。次に、細胞を37℃でインキュベートする。
数日培養した後、本発明の有効成分又は赤色の花の抽出物の存在下又は非存在下で、細胞にUVBを照射するか又は照射しない。次に、細胞上清を回収する。IL-8のアッセイは、ELISAアッセイキットを用いて行われる。
【0221】
結果を表17にまとめた。
【0222】
【表17】
【0223】
発作によって引き起こされる炎症の間、ヒトケラチノサイトはインターロイキンIL-8を分泌する。
【0224】
UVBによってストレスを受けた細胞に対して0.25%試験したところ、本発明による有効成分は、赤色の花の抽出物(-27%)よりも放出されたIL-8レベルのより大きな減少(-37%)を誘導する。
【0225】
したがって、有利には、白色から薄ピンク色の花に由来する本発明による有効成分は、皮膚炎症を軽減することができる。それは、PGE2及びインターロイキンIL-8の放出を減少させる。
【0226】
V.3.皮膚免疫バリアに対する本発明による有効成分の効果
皮膚免疫バリアに対する本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物の効果を、TLR-2受容体及びhBD2抗菌ペプチドの発現を測定することによって、ヒトケラチノサイト培養物に対して行われた研究を通して評価した。
【0227】
この効果は、赤色の花から採取した抽出物と比較することができた。
【0228】
TLR-2受容体は自然免疫受容体として記載されているが、β-デフェンシン2(hBD2)は皮膚の抗菌ペプチドとして作用する。
【0229】
この研究は、以下に記載される操作プロトコルに従って、正常ヒトケラチノサイトに対して行われた。
【0230】
D0に、ヒトケラチノサイトを完全培地に播種し、細胞を37℃でインキュベートする。
【0231】
次に、細胞を処理する。培養培地を除去し、本発明による有効成分又は赤色の花の抽出物を含有する培地と交換する。
【0232】
次に、細胞を37℃で24時間インキュベートする。
【0233】
処理後、細胞を回収し、全RNAを抽出する。RNAは逆転写産物であり、得られた相補的DNAを定量的PCRによって分析する。蛍光取り込みの定量化は、サーモサイクラーを用いて連続的に測定され、相対的定量化はソフトウェアを用いて行われる。
【0234】
得られた結果を表18に示す。
【0235】
【表18】
【0236】
本発明による有効成分が、TLR2受容体及びhBD2の発現を刺激することがわかる。
【0237】
正常なヒトケラチノサイトに対して0.5%で試験すると、本発明による有効成分は、TLR2の発現を24%、hBD2の発現を37%刺激する。比較すると、赤色の花の抽出物は、TLR2発現を12%、hBD2発現を18%刺激するだけである。
【0238】
有利には、白色から薄ピンク色の花に由来する本発明による有効成分は、したがって、皮膚の免疫防御を刺激することができる。特に、高齢者の皮膚に適用すると、TLR2受容体及びhBD2デフェンシンの発現を増加させる。
【0239】
したがって、白色から薄ピンク色の花に由来する本発明による有効成分は、赤色の花の抽出物の2倍の免疫障壁を強化することができる。
【国際調査報告】