IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーゲン,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-540347記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法
<>
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図1
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図2
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図3
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図4
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図5
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図6
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図7
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図8
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図9
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図10
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図11
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図12
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図13
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図14
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図15
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図16
  • 特表-記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】記憶NK細胞と抗癌性二重特異性分子とによる組み合わせ癌療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20241024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20241024BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241024BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20241024BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241024BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 U
C12N5/0783 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526794
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022079528
(87)【国際公開番号】W WO2023086810
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/277,505
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524016541
【氏名又は名称】ウーゲン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カバキビ,アイマン
(72)【発明者】
【氏名】サリバン,ライアン ピー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065BD39
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB31
4C085DD62
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本明細書には、癌を治療する方法であって、記憶NK細胞と、腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含むモノクローナル抗体との投与を含む方法が開示される。また、本明細書には、治療を必要としている患者の卵巣癌を治療する方法であって、卵巣癌細胞又は胃癌細胞に、記憶NK細胞を抗HER2モノクローナル抗体との組み合わせで接触させることを含む方法も開示される。また、本明細書には、治療を必要としている患者の頭頸部癌又は結腸直腸癌を治療する方法であって、頭頸部癌細胞又は結腸直腸癌細胞に、記憶NK細胞を抗EGFRモノクローナル抗体との組み合わせで接触させることを含む方法も開示される。また、本明細書には、治療を必要としている患者の尿路上皮癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、又は胃癌細胞を治療する方法であって、そうした癌細胞に、記憶NK細胞を抗PDL-1モノクローナル抗体との組み合わせで接触させることを含む方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療を必要としている対象の癌を治療する方法であって、記憶NK細胞と腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含むモノクローナル抗体とを投与することを含む方法。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体が、IgGである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体が、IgG1又はIgG3である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記IgG1モノクローナル抗体のFc部分が、CD16結合親和性が亢進するように突然変異させたものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記IgG1又はIgG3抗体が、抗HER2抗体、抗PDL-1抗体、及び抗EGFR抗体から選択される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記IgG1又はIgG3抗体が、抗HER2モノクローナル抗体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が、卵巣癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記卵巣癌が、明細胞癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記卵巣癌が、類内膜腺癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記卵巣癌が、粘液腺癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記卵巣癌が、漿液性癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記卵巣癌が、間質性腫瘍である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記卵巣癌が、胚細胞腫瘍である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記卵巣癌が、小細胞卵巣癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記癌が、胃癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記抗HER2モノクローナル抗体が、トラスツズマブ及びマルゲツキシマブから選択される、請求項6~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗HER2モノクローナル抗体が、トラスツズマブである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記IgG1抗体が、抗EGFRモノクローナル抗体である、請求項5に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が、頭頸部癌である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記頭頸部癌が、中咽頭癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記頭頸部癌が、下咽頭癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記頭頸部癌が、喉頭癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記頭頸部癌が、口唇・口腔癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記頭頸部癌が、鼻咽腔癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記頭頸部癌が、副鼻腔癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記頭頸部癌が、唾液腺癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記頭頸部癌が、扁平上皮頸部癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記頭頸部癌が、鼻腔癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記頭頸部癌が、軟部組織肉腫である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記頭頸部癌が、甲状腺癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記癌が、結腸直腸癌である、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブ、パニツムマブ、及びネシツムマブから選択される、請求項19~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブである、請求項33に記載の方法。
【請求項34】
前記IgG1又はIgG3抗体が、抗免疫チェックポイントタンパク質抗体である、請求項5に記載の方法。
【請求項35】
前記抗免疫チェックポイントタンパク質抗体が、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体、及び抗CTLA-4モノクローナル抗体から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記癌が、尿路上皮癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、及び胃癌から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体が、抗PD-L1モノクローナル抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗PD-L1モノクローナル抗体が、アベルマブである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記癌が、尿路上皮癌である、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記癌が、頭頸部癌である、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項41】
前記癌が、結腸直腸癌である、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項42】
前記癌が、胃癌である、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体が、抗PD-1モノクローナル抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、及びドスタルリマブから選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体が、抗CTLA-4モノクローナル抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記抗CTLA-4モノクローナルが、抗体イピリムマブである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記抗PD-L1モノクローナル抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、コシベリマブ、及びデュルバルマブから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記抗PD-L1モノクローナル抗体が、アベルマブである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記二重特異性分子が、NK細胞エンゲイジャー又は三重特異性キラー細胞エンゲイジャーである、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記記憶NK細胞が前記抗体の前に投与される、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記記憶NK細胞が前記抗体と同時に投与される、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記記憶NK細胞が前記抗体の後に投与される、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
記憶NK細胞と、腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含むモノクローナル抗体と、治療的に許容可能な担体とを含む免疫治療組成物。
【請求項54】
記憶NK細胞と、腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含むモノクローナル抗体と、任意選択で、癌を患う対象に前記記憶NK細胞と抗体とを同時的又は逐次的組み合わせで投与するよう指示する説明書とを含む免疫療法キット。
【請求項55】
前記モノクローナル抗体が、IgGである、請求項53又は54に記載の組成物又はキット。
【請求項56】
前記モノクローナル抗体が、IgG1である、請求項55に記載の組成物又はキット。
【請求項57】
前記IgG1モノクローナル抗体のFc部分が、CD16結合親和性が亢進するように突然変異させたものである、請求項56に記載の組成物又はキット。
【請求項58】
前記モノクローナル抗体が、抗HER2モノクローナル抗体、抗PDL-1モノクローナル抗体、及び抗EGFRモノクローナル抗体から選択される、請求項55又は56に記載の組成物又はキット。
【請求項59】
前記IgG1抗体が、抗HER2モノクローナル抗体である、請求項58に記載の組成物又はキット。
【請求項60】
前記癌が、卵巣癌である、請求項59に記載の組成物又はキット。
【請求項61】
前記卵巣癌が、明細胞癌である、請求項60に記載の組成物又はキット。
【請求項62】
前記卵巣癌が、類内膜腺癌である、請求項60に記載の組成物又はキット。
【請求項63】
前記卵巣癌が、粘液腺癌である、請求項60に記載の組成物又はキット。
【請求項64】
前記卵巣癌が、漿液性癌である、請求項60に記載の組成物又はキット。
【請求項65】
前記卵巣癌が、間質性腫瘍である、請求項60に記載の組成物又はキット。
【請求項66】
前記卵巣癌が、胚細胞腫瘍である、請求項60に記載の組成物又はキット。
【請求項67】
前記卵巣癌が、小細胞卵巣癌である、請求項60に記載の組成物又はキット。
【請求項68】
前記癌が、胃癌である、請求項59に記載の組成物又はキット。
【請求項69】
前記抗HER2モノクローナル抗体が、トラスツズマブ及びマルゲツキシマブから選択される、請求項59~68のいずれか一項に記載の組成物又はキット。
【請求項70】
前記抗HER2モノクローナル抗体が、トラスツズマブである、請求項69に記載の組成物又はキット。
【請求項71】
前記IgG1抗体が、抗EGFRモノクローナル抗体である、請求項58に記載の組成物又はキット。
【請求項72】
前記癌が、頭頸部癌である、請求項71に記載の組成物又はキット。
【請求項73】
前記頭頸部癌が、中咽頭癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項74】
前記頭頸部癌が、下咽頭癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項75】
前記頭頸部癌が、喉頭癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項76】
前記頭頸部癌が、口唇・口腔癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項77】
前記頭頸部癌が、鼻咽腔癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項78】
前記頭頸部癌が、副鼻腔癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項79】
前記頭頸部癌が、唾液腺癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項80】
前記頭頸部癌が、扁平上皮頸部癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項81】
前記頭頸部癌が、鼻腔癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項82】
前記頭頸部癌が、軟部組織肉腫である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項83】
前記頭頸部癌が、甲状腺癌である、請求項72に記載の組成物又はキット。
【請求項84】
前記癌が、結腸直腸癌である、請求項71に記載の組成物又はキット。
【請求項85】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブ、パニツムマブ、及びネシツムマブから選択される、請求項71~84のいずれか一項に記載の組成物又はキット。
【請求項86】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブである、請求項85に記載の組成物又はキット。
【請求項87】
前記IgG1抗体が、抗免疫チェックポイントタンパク質抗体である、請求項58に記載の組成物又はキット。
【請求項88】
前記抗免疫チェックポイントタンパク質抗体が、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体、及び抗CTLA-4モノクローナル抗体から選択される、請求項87に記載の組成物又はキット。
【請求項89】
前記癌が、尿路上皮癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、及び胃癌から選択される、請求項88に記載の組成物又はキット。
【請求項90】
前記抗体が、抗PD-L1モノクローナル抗体である、請求項89に記載の組成物又はキット。
【請求項91】
前記抗PD-L1モノクローナル抗体が、アベルマブである、請求項90に記載の組成物又はキット。
【請求項92】
前記癌が、尿路上皮癌である、請求項90又は91に記載の組成物又はキット。
【請求項93】
前記癌が、頭頸部癌である、請求項90又は91に記載の組成物又はキット。
【請求項94】
前記癌が、結腸直腸癌である、請求項90又は91に記載の組成物又はキット。
【請求項95】
前記癌が、胃癌である、請求項90又は91に記載の組成物又はキット。
【請求項96】
前記抗体が、抗PD-1モノクローナル抗体である、請求項89に記載の組成物又はキット。
【請求項97】
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、及びドスタルリマブから選択される、請求項96に記載の組成物又はキット。
【請求項98】
前記抗体が、抗CTLA-4モノクローナル抗体である、請求項89に記載の組成物又はキット。
【請求項99】
前記抗CTLA-4モノクローナルが、抗体イピリムマブである、請求項98に記載の組成物又はキット。
【請求項100】
前記抗PD-L1モノクローナル抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、コシベリマブ、及びデュルバルマブから選択される、請求項90に記載の組成物又はキット。
【請求項101】
前記抗PD-L1モノクローナル抗体が、アベルマブである、請求項100に記載の組成物又はキット。
【請求項102】
前記記憶NK細胞が前記抗体の前に投与される、請求項1~101のいずれか一項に記載の方法、組成物、又はキット。
【請求項103】
前記記憶NK細胞が前記抗体と同時に投与される、請求項1~102のいずれか一項に記載の方法、組成物、又はキット。
【請求項104】
前記記憶NK細胞が前記抗体の後に投与される、請求項1~103のいずれか一項に記載の方法、組成物、又はキット。
【請求項105】
前記記憶NK細胞が、正常なNK細胞と比べてCD16の発現の増加を呈する、請求項1~104のいずれか一項に記載の方法、組成物、又はキット。
【請求項106】
正常なNK細胞と比べた前記記憶NK細胞のCD16発現の増加が少なくとも30日間持続する、請求項106に記載の方法、組成物、又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年11月9日に出願された米国仮特許出願第63/277,505号の優先権の利益を主張するものであり、この開示は、その全体が本明細書に書かれたものとして参照により援用される。
【0002】
本開示は、概して、とりわけ、記憶/記憶様及びサイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞、それを作成し及び例えば癌の治療に使用する方法、及び記憶NK細胞と抗癌性モノクローナル抗体による組み合わせ治療によってNK細胞の抗腫瘍特性を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、グランザイム及びパーフォリンを標的に向けて放出することによって抗体依存性細胞毒性を呈する細胞傷害性リンパ球として特徴付けられることの多い一群の自然免疫細胞を構成する。ほとんどのNK細胞は、様々な活性化型及び抑制型受容体の集まりに加え、特異的な細胞表面マーカープロファイル(例えば、CD3、CD56+、CD16+、CD57+、CD8+)を有する。最近になってNK細胞は、ある種の癌治療の重要な構成要素になりつつあるが、全血中のNK細胞の割合は比較的低いため、多量のNK細胞の生成が大きな障害となっている。
【0004】
卵巣癌は、毎年世界で推定30万人が診断され、およそ18万例の死亡原因となっている。2021年には、卵巣癌は米国で約2万1千人が診断され、約1万4千例の死亡原因となることが見込まれ、卵巣癌は婦人科癌による死亡原因の第1位となっている。HER-2受容体を標的とするモノクローナル抗体トラスツズマブ及びポリクローナルNK細胞が、ナイーブSKOV-3卵巣癌細胞の相乗的な殺傷性を示している。しかしながら、治療の経過にわたって治療抵抗性の腫瘍細胞クローンが増殖するため、高頻度で再発につながる。従って、卵巣癌に対するより有効性の高い免疫療法を提供することが求められている。
【0005】
胃癌は、世界の癌特異的死亡率で3番目に多い原因としてランク付けされる。2018年には、米国で合計26,240例の新規胃癌症例が記録されており、同年に記録された死亡は10,800例であった。HER2は、細胞増殖及び癌発生を促進する上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーに属する癌原遺伝子である。胃癌の約22~32%にHER2の発現が認められる。HER2を標的とするトラスツズマブが、第一次及び第二次臨床試験において胃癌の治療に関して評価されている。第一次臨床試験で化学療法とトラスツズマブとを組み合わせると、化学療法のみの対照と比較して患者のOSが11.1から13.8ヵ月に増加することが実証された。しかしながら、最近のT-ACT第二次トラスツズマブ併用試験では、OS生存期間の有意差は認められなかった。腫瘍におけるHER2の消失及び不均一性が依然として課題であり、胃癌適応においてより有効性の高い免疫療法が依然として必要とされている。
【0006】
結腸直腸癌(CRC)は、発生率が全世界で3番目に高く、2018年の新規症例数は180万例を超える。同年、全世界で88万1千例の死亡がCRCによるものであったため、この適応は癌関連死亡原因の第2位となった。予後においては、現在分子検査が推奨されているKRAS/NRAS、BRAF、HER2、NTRK及びMMR/MSを含め、幾つかのCRC突然変異が重要である。現在の治療では、米国でのCRCの5年相対生存率は64.7%であるが、しかしながら好ましくない遺伝子プロファイルを持つ患者については、予後は更に不良である。EGFRは、結腸直腸癌のイニシエーション及びプログレッションにおいて重要な役割を果たす因子であることが公知である。セツキシマブは、10~20%の患者で生存及びクオリティ・オブ・ライフを改善するが、多くの患者は、抗体治療が進むにつれ、薬剤耐性を発症する。この耐性機構は、少なくとも一部には、ADCCの機能障害であると考えられている。従って、こうした患者のセツキシマブ媒介性ADCCを亢進させる戦略の開発が求められている。
【0007】
頭頸部癌(HNC)は、幾つかの異なる種類の癌を含めた総称である。頭頸部癌は、それが始まる場所によって分類される。それには、口(口腔)、喉(咽頭)、発声器(喉頭)、鼻洞及び鼻腔、並びに唾液腺が含まれる。HNCに対しては、EGFRを標的とするモノクローナル抗体が有効であるが、僅か15~20%の患者で有効であるに過ぎない。注目すべきことに、セツキシマブ治療では、NK細胞によるセツキシマブ媒介性ADCCを抑制する腫瘍内Treg細胞の頻度が増加し、その存在は臨床転帰不良と相関する。従って、HNCに対するより有効性の高い免疫療法を提供することが求められている。
【0008】
尿路上皮癌は、最も多く見られる種類の膀胱癌であり、約50%の患者が転移性疾患を発症する。初期段階の疾患は、通常は外科的に治療されるが、転移リスクが上昇している浸潤性尿路上皮癌については、外科手術と併せて他の治療手法が必要となる。PD-L1は、多くの腫瘍に発現するチェックポイントタンパク質であり、チェックポイントとしてT細胞機能を障害する働きをすることにより、細胞が免疫系を回避することを可能にする。PD-L1標的化チェックポイント阻害薬のアベルマブは、最近になって尿路上皮癌での使用が承認された。第二選択療法としてアベルマブで治療された患者は、転移性尿路上皮癌において約17%の全奏効率を実証した。アベルマブの作用機序にはまた、腫瘍標的化ADCC並びにチェックポイント阻害に及ぼすその効果も含まれる。注目すべきことに、諸研究では、アベルマブが腫瘍標的に対するNK細胞媒介毒性を亢進させること、及びPD-L1を高度に発現する腫瘍ほど、アベルマブ媒介性ADCCに対する感受性が高かったことが示されている。従って、尿路上皮癌に対する新規の改良された免疫療法を特定することが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書には、卵巣癌、結腸直腸癌、HNC、胃癌及び尿路上皮癌の治療についての、それらの癌に対して向けられるモノクローナル抗体と組み合わせて記憶NK細胞(時に記憶様又はサイトカイン誘導性記憶様NK細胞と呼ばれることもある)を利用する新規モダリティが開示される。
【0010】
配列の簡単な説明
表1の配列番号1及び2は、例示的な拡大融合タンパク質鎖の配列である。
【0011】
表2の配列番号3~22は、例示的な抗TF抗体(「ATF1」)の配列である。
【0012】
表3の配列番号23及び24は、例示的なプライミング融合タンパク質鎖の配列である。
【0013】
配列番号25~60は、本明細書で考察される特定の抗体の重鎖及び軽鎖及びVH及びVLドメインの配列である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
図1】モノクローナル抗体有り若しくは無しで、又は対照ノンターゲティングアイソタイプ抗体と共に記憶NK細胞を試験する実験計画及びCD16の関与の概略図である。
図2】トラスツズマブと併せた記憶NK細胞の細胞傷害性の結果を示す。トラスツズマブにより、卵巣癌細胞株SKOV-3に対する記憶NK細胞抗体依存性細胞傷害(ADCC)が亢進した。
図3】HNC細胞株SCC-25に対する記憶NK細胞ADCCを亢進させるセツキシマブと併せた記憶NK細胞の細胞傷害性の結果を示す。
図4】THP-1 AML腫瘍モデルにおける注射後少なくとも35日間にわたるマウス血中での記憶NK細胞の持続を示す。
図5】マウスへの注射時点からの記憶NK細胞表面上でのCD16発現の増加及びこの研究の経過全体を通じて持続することを示す。
図6】SCC-25頭頸部癌細胞上でのPD-L1発現のIFNg用量反応を示す。
図7】IFNgによるヒトLoVo結腸癌細胞上でのPD-L1発現の誘導を示す。
図8】記憶NK細胞による治療後の結腸直腸癌細胞株におけるA)腫瘍細胞生存率及びB)PD-L1発現を示す。
図9】CRC細胞株LoVo-GFPに対するセツキシマブ、アベルマブ、及びこれらの組み合わせと併せた記憶NK細胞の細胞傷害性の結果を示す。上のパネルA)は、平均蛍光強度(MFI)として実証した、上のチャンバ内のLoVo細胞上でのPD-L1発現を示し、下のパネルB)は、PD-L1陽性細胞の割合(%)として実証した、上のチャンバ内のLoVo細胞上でのPD-L1発現を示す。
図10】記憶NK細胞とのインキュベーション後のSCC-25細胞(頭頸部癌)上でのPD-L1誘導を、12時間にわたる一次共培養についてのパーセント細胞傷害率として示す。
図11】記憶NK細胞とのインキュベーション後のSCC-25細胞(頭頸部癌)上でのPD-L1誘導を、24時間にわたる一次共培養物についてのパーセント細胞傷害率として示す。
図12】記憶NK細胞とのインキュベーション後のSCC-25細胞(頭頸部癌)上でのPD-L1誘導を、42時間にわたる一次共培養物についてのパーセント細胞傷害率として示す。
図13】馴化培地とのインキュベーション後のSCC-25細胞(頭頸部癌)上でのPD-L1誘導を、12時間にわたる二次馴化共培養物についてのパーセント細胞傷害率として示す。
図14】馴化培地とのインキュベーション後のSCC-25細胞(頭頸部癌)上でのPD-L1誘導を、24時間にわたる二次馴化共培養物についてのパーセント細胞傷害率として示す。
図15】馴化培地とのインキュベーション後のSCC-25細胞(頭頸部癌)上でのPD-L1誘導を、42時間にわたる二次馴化共培養物についてのパーセント細胞傷害率として示す。
図16】記憶NK細胞とのインキュベーション後又は馴化培地とのインキュベーション後のSCC-25細胞(HNC)上でのPD-L1の誘導を示す。
図17】NCI-N87細胞(胃癌細胞)の殺傷に関するアベルマブと記憶NK細胞との共培養の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本明細書には、卵巣癌、結腸直腸癌、HNC、胃癌及び尿路上皮癌に対するより有効性の高い免疫療法を可能にする組成物及び方法が提供される。本組成物は、プライミングして拡大した記憶NK細胞と、抗HER2受容体抗体、抗EGFR抗体又は抗PD-L1抗体から選択されるモノクローナル抗体とを含む。本方法は、卵巣癌細胞、結腸直腸癌細胞、HNC癌細胞、胃癌細胞、又は尿路上皮癌細胞に、プライミングして拡大した記憶NK細胞を、抗HER2受容体抗体、抗EGFR抗体及び抗PD-L1抗体から選択されるモノクローナル抗体と組み合わせて接触させることを含む。記憶NK細胞は、記憶NK細胞を形成するためのNK細胞のプライミングと、所望の分量へ拡大とを同時に行うプロセスで生成することができる。或いは、NK細胞を所望の分量に拡大し、次にプライミングして記憶NK細胞を形成してもよく、又は逆であってもよい。
【0016】
本明細書には、増殖性悪性腫瘍を治療する方法であって、上記の実施形態に係る記憶NK細胞を抗癌性モノクローナル抗体と組み合わせて投与することを含む方法が提供される。
【0017】
一部の実施形態において、増殖性悪性腫瘍は卵巣癌であり、モノクローナル抗体は抗HER2抗体である。一部の実施形態において抗HER2抗体は、トラスツズマブ及びマルゲツキシマブから選択される。一部の実施形態において抗HER2抗体は、トラスツズマブである。一部の実施形態において、卵巣癌は、明細胞癌、類内膜腺癌、粘液腺癌、漿液性癌、間質性腫瘍、胚細胞腫瘍及び小細胞卵巣癌から選択される。
【0018】
一部の実施形態において、増殖性悪性腫瘍は頭頸部癌(HNC)又は胃癌であり、モノクローナル抗体は抗EGFR抗体である。一部の実施形態において、抗EGFR抗体は、セツキシマブ、パニツムマブ、及びネシツムマブから選択される。一部の実施形態において抗EGFR抗体は、セツキシマブである。一部の実施形態において、HNCは、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、口唇・口腔癌、鼻咽腔癌、副鼻腔癌(paransal sinus cancer)、唾液腺癌、扁平上皮頸部癌、鼻腔癌、軟部組織肉腫及び甲状腺癌から選択される。一部の実施形態において、胃癌は、胃腺癌、消化管間質腫瘍、消化管神経内分泌(カルチノイド)腫瘍、リンパ腫、扁平上皮細胞癌、小細胞癌及び平滑筋肉腫から選択される。
【0019】
一部の実施形態において、増殖性悪性腫瘍は尿路上皮癌であり、モノクローナル抗体は抗PD-L1抗体である。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、アベルマブ及びコシベリマブ(coseibelimab)から選択される。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、アベルマブである。一部の実施形態において胃癌は、乳頭癌、扁平癌(flat carcinoma)、扁平上皮細胞腺癌、胃肉腫及び小細胞癌から選択される。
【0020】
本明細書には、癌の治療を必要としている対象の癌を治療する方法であって、記憶NK細胞と腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含む二重特異性分子(例えば、モノクローナル抗体、NK細胞エンゲイジャー、又は三重特異性キラー細胞エンゲイジャー)とを投与することを含む方法が提供される。
【0021】
また、本明細書には、記憶NK細胞と腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含む二重特異性分子(例えば、モノクローナル抗体、NK細胞エンゲイジャー、又は三重特異性キラー細胞エンゲイジャー)と、治療的に許容可能な担体とを含む免疫治療組成物も提供される。
【0022】
また、本明細書には、記憶NK細胞と腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含む二重特異性分子(例えば、モノクローナル抗体、NK細胞エンゲイジャー、又は三重特異性キラー細胞エンゲイジャー)と、任意選択で、癌を患う対象に記憶NK細胞と抗体とを同時的又は逐次的組み合わせで投与するよう指示する説明書とを含む免疫療法キットも提供される。
【0023】
一部の実施形態において、二重特異性分子は、IgG型のモノクローナル抗体である。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、IgG1である。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、IgG3である。一部の実施形態において、IgG1モノクローナル抗体のFc部分は、CD16結合親和性が亢進するように突然変異させたものである。
【0024】
一部の実施形態において、IgG1又はIgG3抗体は、抗HER2抗体、抗PDL-1抗体、及び抗EGFR抗体から選択される。
【0025】
一部の実施形態において、IgG1(又はIgG3)抗体は、抗HER2モノクローナル抗体である。
【0026】
一部の実施形態において、癌は、卵巣癌である。一部の実施形態において、卵巣癌は、明細胞癌である。一部の実施形態において、卵巣癌は、類内膜腺癌である。一部の実施形態において、卵巣癌は、粘液腺癌である。一部の実施形態において、卵巣癌は、漿液性癌である。一部の実施形態において、卵巣癌は、間質性腫瘍である。一部の実施形態において、卵巣癌は、胚細胞腫瘍である。一部の実施形態において、卵巣癌は、小細胞卵巣癌である。
【0027】
一部の実施形態において、癌は、胃癌である。
【0028】
一部の実施形態において、抗HER2モノクローナル抗体は、トラスツズマブ及びマルゲツキシマブから選択され;及び任意選択で、抗体は、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する。一部の実施形態において、抗HER2モノクローナル抗体は、トラスツズマブであり;及び任意選択で、抗体は、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する。
【0029】
一部の実施形態において、IgG1(又はIgG3)抗体は、抗EGFRモノクローナル抗体である。
【0030】
一部の実施形態において、癌は、頭頸部癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、中咽頭癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、下咽頭癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、喉頭癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、口唇・口腔癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、鼻咽腔癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、副鼻腔癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、唾液腺癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、扁平上皮頸部癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、鼻腔癌である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、軟部組織肉腫である。一部の実施形態において、頭頸部癌は、甲状腺癌である。
【0031】
一部の実施形態において、癌は、結腸直腸癌である。
【0032】
一部の実施形態において、抗EGFRモノクローナル抗体は、セツキシマブ、パニツムマブ、及びネシツムマブから選択され;及び任意選択で、抗体は、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する。一部の実施形態において、抗EGFRモノクローナル抗体はセツキシマブであり;及び任意選択で、抗体は、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知の抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する。
【0033】
一部の実施形態において、IgG1抗体は、抗免疫チェックポイントタンパク質抗体である。一部の実施形態において、抗免疫チェックポイントタンパク質抗体は、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体、及び抗CTLA-4モノクローナル抗体から選択される。一部の実施形態において、癌は、尿路上皮癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、及び胃癌から選択される。
【0034】
一部の実施形態において、抗体は、抗PD-L1モノクローナル抗体である。一部の実施形態において、抗PD-L1モノクローナル抗体は、アベルマブである。一部の実施形態において、癌は、尿路上皮癌である。一部の実施形態において、癌は、頭頸部癌である。一部の実施形態において、癌は、結腸直腸癌である。一部の実施形態において、癌は、胃癌である。
【0035】
一部の実施形態において、抗体は、抗PD-1モノクローナル抗体である。一部の実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、及びドスタルリマブから選択され;及び任意選択で、抗体は、これらの抗体に関連する及び当該技術分野において公知の配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する。
【0036】
一部の実施形態において、抗体は、抗CTLA-4モノクローナル抗体である。一部の実施形態において、抗CTLA-4モノクローナルは、抗体イピリムマブであり;及び任意選択で、抗体は、これらの抗体に関連する及び当該技術分野において公知の配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する。
【0037】
一部の実施形態において、抗PD-L1モノクローナル抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、コシベリマブ(coseibelimab)、及びデュルバルマブから選択され;及び任意選択で、抗体は、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する。一部の実施形態において、抗PD-L1モノクローナル抗体はアベルマブであり;及び任意選択で、抗体は、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する。
【0038】
一部の実施形態において、二重特異性分子は、NK細胞エンゲイジャー又は三重特異性キラー細胞エンゲイジャーである。
【0039】
一部の実施形態において、記憶NK細胞は、抗体(又は他の二重特異性分子)の前に投与される。一部の実施形態において、記憶NK細胞は、抗体(又は他の二重特異性分子)と同時に投与される。一部の実施形態において、記憶NK細胞は、抗体(又は他の二重特異性分子)の後に投与される。
【0040】
一部の実施形態において、記憶NK細胞は、正常なNK細胞と比べてCD16発現の増加を呈する。一部の実施形態において、正常なNK細胞と比べた記憶NK細胞のCD16発現の増加は少なくとも30日間持続する。
【0041】
列挙される実施形態
実施形態1.癌の治療を必要としている対象の癌を治療する方法であって、記憶NK細胞と腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含む二重特異性分子(例えば、モノクローナル抗体、NK細胞エンゲイジャー、又は三重特異性キラー細胞エンゲイジャー)とを投与することを含む方法。
【0042】
実施形態2.二重特異性分子が、IgG型のモノクローナル抗体である、実施形態1に記載の方法。
【0043】
実施形態3.モノクローナル抗体が、IgG1である、実施形態2に記載の方法。
【0044】
実施形態4.IgG1モノクローナル抗体のFc部分が、CD16結合親和性が亢進するように突然変異させたものである、実施形態3に記載の方法。
【0045】
実施形態5.IgG1抗体が、抗HER2抗体、抗PDL-1抗体、及び抗EGFR抗体から選択される、実施形態3又は4に記載の方法。
【0046】
実施形態6.IgG1抗体が、抗HER2モノクローナル抗体である、実施形態5に記載の方法。
【0047】
実施形態7.癌が、卵巣癌である、実施形態6に記載の方法。
【0048】
実施形態8.卵巣癌が、明細胞癌である、実施形態7に記載の方法。
【0049】
実施形態9.卵巣癌が、類内膜腺癌である、実施形態7に記載の方法。
【0050】
実施形態10.卵巣癌が、粘液腺癌である、実施形態7に記載の方法。
【0051】
実施形態11.卵巣癌が、漿液性癌である、実施形態7に記載の方法。
【0052】
実施形態12.卵巣癌が、間質性腫瘍である、実施形態7に記載の方法。
【0053】
実施形態13.卵巣癌が、胚細胞腫瘍である、実施形態7に記載の方法。
【0054】
実施形態14.卵巣癌が、小細胞卵巣癌である、実施形態7に記載の方法。
【0055】
実施形態15.癌が、胃癌である、実施形態6に記載の方法。
【0056】
実施形態16.抗HER2モノクローナル抗体が、トラスツズマブ及びマルゲツキシマブから選択され;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態6~15のいずれか一つに記載の方法。
【0057】
実施形態17.抗HER2モノクローナル抗体が、トラスツズマブであり;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態16に記載の方法。
【0058】
実施形態18.IgG1抗体が、抗EGFRモノクローナル抗体である、実施形態5に記載の方法。
【0059】
実施形態19.癌が、頭頸部癌である、実施形態18に記載の方法。
【0060】
実施形態20.頭頸部癌が、中咽頭癌である、実施形態19に記載の方法。
【0061】
実施形態21.頭頸部癌が、下咽頭癌である、実施形態19に記載の方法。
【0062】
実施形態22.頭頸部癌が、喉頭癌である、実施形態19に記載の方法。
【0063】
実施形態23.頭頸部癌が、口唇・口腔癌である、実施形態19に記載の方法。
【0064】
実施形態24.頭頸部癌が、鼻咽腔癌である、実施形態19に記載の方法。
【0065】
実施形態25.頭頸部癌が、副鼻腔癌である、実施形態19に記載の方法。
【0066】
実施形態26.頭頸部癌が、唾液腺癌である、実施形態19に記載の方法。
【0067】
実施形態27.頭頸部癌が、扁平上皮頸部癌である、実施形態19に記載の方法。
【0068】
実施形態28.頭頸部癌が、鼻腔癌である、実施形態19に記載の方法。
【0069】
実施形態29.頭頸部癌が、軟部組織肉腫である、実施形態19に記載の方法。
【0070】
実施形態30.頭頸部癌が、甲状腺癌である、実施形態19に記載の方法。
【0071】
実施形態31.癌が、結腸直腸癌である、実施形態18に記載の方法。
【0072】
実施形態32.抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブ、パニツムマブ、及びネシツムマブから選択され;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態19~31のいずれか一つに記載の方法。
【0073】
実施形態33.抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブであり;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知の抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態33に記載の方法。
【0074】
実施形態34.IgG1抗体が、抗免疫チェックポイントタンパク質抗体である、実施形態5に記載の方法。
【0075】
実施形態35.抗免疫チェックポイントタンパク質抗体が、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体、及び抗CTLA-4モノクローナル抗体から選択される、実施形態34に記載の方法。
【0076】
実施形態36.癌が、尿路上皮癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、及び胃癌から選択される、実施形態34に記載の方法。
【0077】
実施形態37.抗体が、抗PD-L1モノクローナル抗体である、実施形態36に記載の方法。
【0078】
実施形態38.抗PD-L1モノクローナル抗体が、アベルマブである、実施形態37に記載の方法。
【0079】
実施形態39.癌が、尿路上皮癌である、実施形態37又は38に記載の方法。
【0080】
実施形態40.癌が、頭頸部癌である、実施形態37又は38に記載の方法。
【0081】
実施形態41.癌が、結腸直腸癌である、実施形態37又は38に記載の方法。
【0082】
実施形態42.癌が、胃癌である、実施形態37又は38に記載の方法。
【0083】
実施形態43.抗体が、抗PD-1モノクローナル抗体である、実施形態36に記載の方法。
【0084】
実施形態44.抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、及びドスタルリマブから選択され;及び任意選択で、抗体が、これらの抗体に関連する及び当該技術分野において公知の配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態43に記載の方法。
【0085】
実施形態45.抗体が、抗CTLA-4モノクローナル抗体である、実施形態36に記載の方法。
【0086】
実施形態46.抗CTLA-4モノクローナルが、抗体イピリムマブであり;及び任意選択で、抗体が、これらの抗体に関連する及び当該技術分野において公知の配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態45に記載の方法。
【0087】
実施形態47.抗PD-L1モノクローナル抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、コシベリマブ(coseibelimab)、及びデュルバルマブから選択され;及び任意選択で、抗体は、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態37に記載の方法。
【0088】
実施形態48.抗PD-L1モノクローナル抗体が、アベルマブであり;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態47に記載の方法。
【0089】
実施形態49.二重特異性分子が、NK細胞エンゲイジャー又は三重特異性キラー細胞エンゲイジャーである、実施形態1に記載の方法。
【0090】
実施形態50.記憶NK細胞が、抗体(又は他の二重特異性分子)の前に投与される、実施形態1~49のいずれか一つに記載の方法。
【0091】
実施形態51.記憶NK細胞が、抗体(又は他の二重特異性分子)と同時に投与される、実施形態1~50のいずれか一つに記載の方法。
【0092】
実施形態52.記憶NK細胞が、抗体(又は他の二重特異性分子)の後に投与される、実施形態1~51のいずれか一つに記載の方法。
【0093】
実施形態53.記憶NK細胞と腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含む二重特異性分子(例えば、モノクローナル抗体、NK細胞エンゲイジャー、又は三重特異性キラー細胞エンゲイジャー)と、治療的に許容可能な担体とを含む免疫治療組成物。
【0094】
実施形態54.記憶NK細胞と腫瘍抗原結合部分及びCD16結合部分を含む二重特異性分子(例えば、モノクローナル抗体、NK細胞エンゲイジャー、又は三重特異性キラー細胞エンゲイジャー)と、任意選択で、癌を患う対象に記憶NK細胞と抗体とを同時的又は逐次的組み合わせで投与するよう指示する説明書とを含む免疫療法キット。
【0095】
実施形態55.二重特異性分子が、IgG型のモノクローナル抗体である、実施形態53又は54に記載の組成物又はキット。
【0096】
実施形態56.モノクローナル抗体が、IgG1又はIgG3である、実施形態55に記載の組成物又はキット。
【0097】
実施形態57.IgG1モノクローナル抗体のFc部分が、CD16結合親和性が亢進するように突然変異させたものである、実施形態56に記載の組成物又はキット。
【0098】
実施形態58.モノクローナル抗体が、抗HER2モノクローナル抗体、抗PDL-1モノクローナル抗体、及び抗EGFRモノクローナル抗体から選択される、実施形態55又は56に記載の組成物又はキット。
【0099】
実施形態59.IgG1(又はIgG3)抗体が、抗HER2モノクローナル抗体である、実施形態58に記載の組成物又はキット。
【0100】
実施形態60.癌が、卵巣癌である、実施形態59に記載の組成物又はキット。
【0101】
実施形態61.卵巣癌が、明細胞癌である、実施形態60に記載の組成物又はキット。
【0102】
実施形態62.卵巣癌が、類内膜腺癌である、実施形態60に記載の組成物又はキット。
【0103】
実施形態63.卵巣癌が、粘液腺癌である、実施形態60に記載の組成物又はキット。
【0104】
実施形態64.卵巣癌が、漿液性癌である、実施形態60に記載の組成物又はキット。
【0105】
実施形態65.卵巣癌が、間質性腫瘍である、実施形態60に記載の組成物又はキット。
【0106】
実施形態66.卵巣癌が、胚細胞腫瘍である、実施形態60に記載の組成物又はキット。
【0107】
実施形態67.卵巣癌が、小細胞卵巣癌である、実施形態60に記載の組成物又はキット。
【0108】
実施形態68.癌が、胃癌である、実施形態59に記載の組成物又はキット。
【0109】
実施形態69.抗HER2モノクローナル抗体が、トラスツズマブ及びマルゲツキシマブから選択され;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態59~68のいずれか一つに記載の組成物又はキット。
【0110】
実施形態70.抗HER2モノクローナル抗体が、トラスツズマブであり;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知の抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態69に記載の組成物又はキット。
【0111】
実施形態71.IgG1(又はIgG3)抗体が、抗EGFRモノクローナル抗体である、実施形態58に記載の組成物又はキット。
【0112】
実施形態72.癌が、頭頸部癌である、実施形態71に記載の組成物又はキット。
【0113】
実施形態73.頭頸部癌が、中咽頭癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0114】
実施形態74.頭頸部癌が、下咽頭癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0115】
実施形態75.頭頸部癌が、喉頭癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0116】
実施形態76.頭頸部癌が、口唇・口腔癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0117】
実施形態77.頭頸部癌が、鼻咽腔癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0118】
実施形態78.頭頸部癌が、副鼻腔癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0119】
実施形態79.頭頸部癌が、唾液腺癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0120】
実施形態80.頭頸部癌が、扁平上皮頸部癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0121】
実施形態81.頭頸部癌が、鼻腔癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0122】
実施形態82.頭頸部癌が、軟部組織肉腫である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0123】
実施形態83.頭頸部癌が、甲状腺癌である、実施形態72に記載の組成物又はキット。
【0124】
実施形態84.癌が、結腸直腸癌である、実施形態71に記載の組成物又はキット。
【0125】
実施形態85.抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブ、パニツムマブ、及びネシツムマブから選択され;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態71~84のいずれか一つに記載の組成物又はキット。
【0126】
実施形態86.抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブであり;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知の抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態85に記載の組成物又はキット。
【0127】
実施形態87.IgG1(又はIgG3)抗体が、抗免疫チェックポイントタンパク質抗体である、実施形態58に記載の組成物又はキット。
【0128】
実施形態88.抗免疫チェックポイントタンパク質抗体が、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体、及び抗CTLA-4モノクローナル抗体から選択される、実施形態87に記載の組成物又はキット。
【0129】
実施形態89.癌が、尿路上皮癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、及び胃癌から選択される、実施形態88に記載の組成物又はキット。
【0130】
実施形態90.抗体が、抗PD-L1モノクローナル抗体である、実施形態89に記載の組成物又はキット。
【0131】
実施形態91.抗PD-L1モノクローナル抗体が、アベルマブであり;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知の抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態90に記載の組成物又はキット。
【0132】
実施形態92.癌が、尿路上皮癌である、実施形態90又は91に記載の組成物又はキット。
【0133】
実施形態93.癌が、頭頸部癌である、実施形態90又は91に記載の組成物又はキット。
【0134】
実施形態94.癌が、結腸直腸癌である、実施形態90又は91に記載の組成物又はキット。
【0135】
実施形態95.癌が、胃癌である、実施形態90又は91に記載の組成物又はキット。
【0136】
実施形態96.抗体が、抗PD-1モノクローナル抗体である、実施形態89に記載の組成物又はキット。
【0137】
実施形態97.抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、及びドスタルリマブから選択され;及び任意選択で、抗体が、これらの抗体に関連する及び当該技術分野において公知の配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態96に記載の組成物又はキット。
【0138】
実施形態98.抗体が、抗CTLA-4モノクローナル抗体である、実施形態89に記載の組成物又はキット。
【0139】
実施形態99.抗CTLA-4モノクローナルが、抗体イピリムマブであり;及び任意選択で、抗体が、抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する及び当該技術分野において公知の、実施形態98に記載の組成物又はキット。
【0140】
実施形態100.抗PD-L1モノクローナル抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、コシベリマブ(coseibelimab)、及びデュルバルマブから選択され;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のこれらの抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態90に記載の組成物又はキット。
【0141】
実施形態101.抗PD-L1モノクローナル抗体が、アベルマブであり;及び任意選択で、抗体が、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知の抗体に関連する配列番号と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列番号の配列を有する、実施形態100に記載の組成物又はキット。
【0142】
実施形態102.記憶NK細胞が、抗体の前に投与される、実施形態1~101のいずれか一つに記載の方法、組成物、又はキット。
【0143】
実施形態103.記憶NK細胞が、抗体と同時に投与される、実施形態1~102のいずれか一つに記載の方法、組成物、又はキット。
【0144】
実施形態104.記憶NK細胞が、抗体の後に投与される、実施形態1~103のいずれか一つに記載の方法、組成物、又はキット。
【0145】
実施形態105.記憶NK細胞が、正常なNK細胞と比べてCD16の発現の増加を呈する、実施形態1~104のいずれか一つに記載の方法、組成物又はキット。
【0146】
実施形態106.正常なNK細胞と比べた記憶NK細胞のCD16発現の増加が少なくとも30日間持続する、実施形態106に記載の方法、組成物、又はキット。
【0147】
本明細書に開示され、現時点で特許請求されていない実施形態は、公衆に提供することを意図しない。
【0148】
免疫エフェクター細胞の拡大及びプライミング方法
NK細胞のインビトロ拡大は、サイトカイン、又は、好ましくは、サイトカインの機能性断片を含む拡大融合タンパク質、及びその多連鎖複合体を含む拡大剤を使用する濃縮プロセスで実施し得る。例えば、拡大剤は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上、又はこれらの組み合わせ、例えば、IL-7、IL-21、及びIL-15のカクテルを、所望の分量又は拡大倍数のNK細胞を生じさせるのに十分な量で含み得る。かかるサイトカインは、市販品が入手されてもよく、又は当該技術分野において公知の方法により作成されてもよい。又は、例えば、拡大剤は、NK細胞を拡大するのに十分な量で1つ以上の拡大融合タンパク質を含んでもよく、例えば、国際公開第2020047299号、国際公開第202047473号、又は国際公開第2020257639号に開示される多連鎖融合タンパク質複合体、例えば7t15-21sの中から選択されてもよい。7t15-21sの配列を表1に開示する。
【0149】
【表1】
【0150】
拡大は、加えて、上記に開示される融合タンパク質の連結ドメインを標的化する抗体、例えば抗組織因子抗体など、架橋剤の使用によって容易になる。抗組織因子抗体の例は、当該技術分野において公知である。国際公開第202047473号及び国際公開第2020257639号は、使用されることになるa-TF Abを開示している。また、米国特許第8,007,795号及び国際公開第2003037911号、詳細には、H36ハイブリドーマのCDR及びヒト化フレームワーク領域LC-08(この出願の図12)及びHC-09(この出願の図13)を取り込むIgG1ヒト化抗体も参照のこと。以下の表2は、WO’473号及びWO’639号において使用されるものと思われる、US’795号及びWO’911号に開示される、HCW Biologicsから入手される、及び特に指定されない限り以下の実験で使用され、本明細書においてATF1と称されるa-TF Abの配列を開示する。ATF1 HCDR2は、以下の2つの配列のうちの一方である。このように、本明細書に開示されるとおりの拡大剤は、上記に開示されるとおりの1つ以上のサイトカインの組み合わせ又はEFPを、ATF1などの架橋剤(その1つ又は複数の配列を表2に開示する)と一緒に含み得る。更なる抗TF抗体は、当該技術分野において公知であり、商業的供給元から容易に入手することができる。
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
当該技術分野においては代替的な架橋結合方法が公知であり、機能化したマイクロパーティクル(ビーズ)、フィーダー細胞及び細胞膜粒子が挙げられる。多くの場合にフィーダー不要のシステムが好ましい。例えば、抗CD2及び抗NKp46抗体で機能化された溶解可能なアルギン酸ナトリウムマイクロスフェアを利用するR&D SystemsのCloudzヒトNK細胞拡大キットを本明細書に開示されるとおりの拡大サイトカイン(又はその断片、又はそれを含む融合タンパク質)及びその組み合わせと共に、拡大後にマイクロパーティクルを速やかに溶解させて細胞の回収を容易にするための放出緩衝液に加えて使用し得る。
【0154】
記憶様の性質を獲得するためのプライミングは、IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及びIL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上など、刺激性サイトカインの組み合わせを含むプライミング剤で実施される。或いは、プライミング剤は、サイトカインの機能性断片を含むプライミング融合タンパク質、及びその多連鎖複合体を含み得る。例えば、融合タンパク質は、国際公開第2020047299号、国際公開第202047473号、又は国際公開第2020257639号に開示される多連鎖融合タンパク質複合体、例えば18t15-12s(HCW-9201)の中から選択されてもよく、その配列を表3に開示する。
【0155】
【表4】
【0156】
このように、本明細書には、順次、
a)NK細胞の集団を精製すること;
b)NK細胞をプライミングすること;及び
c)NK細胞を拡大すること
によって作製される記憶ナチュラルキラー(NK)細胞が提供される。
【0157】
また、本明細書には、順次、
a)NK細胞の集団を精製すること;
b)NK細胞を拡大すること;及び
c)NK細胞をプライミングすること
によって作製される記憶ナチュラルキラー(NK)細胞も提供される。
【0158】
また、本明細書には、
a)NK細胞の集団を精製すること;及び
b)NK細胞を同時にプライミング及び拡大すること
によって作製される記憶ナチュラルキラー(NK)細胞も提供される。
【0159】
一部の実施形態において、NK細胞集団は、供血、又は新鮮な若しくは予め凍結保存されていた白血球アフェレーシス産物から出発して精製される。一部の実施形態において、精製は、ポジティブ選択(例えば、Miltenyi CliniMACS Prodigyにて)を経て実施される。一部の実施形態において、精製は、ネガティブ選択(例えば、StemCell EasySepのNK細胞濃縮キット)を経て実施される。一部の実施形態において、精製は、ポジティブ選択とネガティブ選択との組み合わせを用いて実施される。一部の実施形態において、NK細胞は、リンパ球前駆細胞から分化させる。
【0160】
一部の実施形態において、NK細胞は、サイトカインの組み合わせ、又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせと、任意選択で架橋剤とを含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0161】
一部の実施形態において、NK細胞は、
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上、又はその機能性断片;又は
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上の機能性断片を含む融合タンパク質;
及び任意選択で架橋剤;又は
・NK細胞架橋抗体及び拡大サイトカインで機能化したマイクロスフェア;
又は前述のいずれかの組み合わせ
を含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0162】
一部の実施形態において、NK細胞は、IL-7、IL-21、及びIL-15の組み合わせ、又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせを含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0163】
一部の実施形態において、NK細胞は、IL-7、IL-21、及びIL-15の機能性断片を含む融合タンパク質を含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0164】
一部の実施形態において、NK細胞は、7t15-21sを含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0165】
一部の実施形態において、拡大剤は架橋剤を含む。一部の実施形態において、架橋剤は架橋抗体である。一部の実施形態において、架橋抗体はATF1である。
【0166】
一部の実施形態において、NK細胞は、7t15-21sとATF1とを含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0167】
一部の実施形態において、NK細胞は、1日~40日間にわたる拡大剤への曝露によって拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、7日~21日間にわたる拡大剤への曝露によって拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、約14日間にわたる拡大剤への曝露によって拡大される。
【0168】
一部の実施形態において、拡大剤は7t15-21sとATF1とを含む。一部の実施形態において、拡大剤は、0.1~300nmの濃度の7t15-21sと、0.01~200nmの濃度のATF1とを含む。一部の実施形態において、拡大剤は、0.2~200nmの濃度の7t15-21sと、0.01~100nmの濃度のATF1とを含む。一部の実施形態において、拡大剤は、約50nmの濃度の7t15-21sと、約25nmの濃度のATF1とを含む。
【0169】
一部の実施形態において、NK細胞は、約14日間にわたる7t15-21s及びATF1への曝露によって拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、約14日間にわたる約50nmの濃度の7t15-21s及び約25nmの濃度のATF1への曝露によって拡大される。
【0170】
一部の実施形態において、NK細胞は、例えば、サイトカインの組み合わせ、又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせから選択されるプライミング剤への曝露によってプライミングされる。
【0171】
一部の実施形態において、NK細胞は、出発数の10倍超に拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、出発数の100倍超に拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、出発数の1000倍超に拡大される。
【0172】
一部の実施形態において、NK細胞は、
・IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及び
・IL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上;
又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせ
を含むプライミング剤への曝露によってプライミングされる。
【0173】
一部の実施形態において、NK細胞は、IL-12、IL-15、及びIL-18の組み合わせを含むプライミング剤への曝露によってプライミングされる。
【0174】
一部の実施形態において、NK細胞は、IL-12、IL-15、及びIL-18の機能性断片を含む融合タンパク質を含むプライミング剤への曝露によってプライミングされる。一部の実施形態において、NK細胞は、融合タンパク質18t15-12sを含むプライミング剤への曝露によってプライミングされる。
【0175】
一部の実施形態において、NK細胞は、200~300nMの濃度の18t15-12sでプライミングされる。一部の実施形態において、NK細胞は、250nmの濃度の18t15-12sでプライミングされる。
【0176】
一部の実施形態において、NK細胞は、1分~24時間にわたってプライミングされる。一部の実施形態において、NK細胞は、0.5~16時間にわたってプライミングされる。一部の実施形態において、NK細胞は、1~3時間にわたってプライミングされる。
【0177】
一部の実施形態において、NK細胞は凍結保存される。
【0178】
一部の実施形態において、記憶様表現型は、細胞表面CD69、CD25、CD16、及び/又はNKG2Aの発現レベルによって指示される。
【0179】
一部の実施形態において、記憶NK細胞には、プライミングされていないNK細胞と比較して、
a)癌細胞に対する細胞傷害性の改善;
b)持続性の改善;
c)抗腫瘍活性の改善;及び/又は
d)サイトカイン産生の増加;
のうちの1つ以上が見られる。
【0180】
一部の実施形態において、産生されるサイトカインは、IFNg、TNFa、GM-CSF、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0181】
上記の列挙される実施形態のいずれかにおいて、記憶NK細胞は、これらの前述の実施形態によって更に限定され得る。
【0182】
免疫エフェクター細胞
本明細書に開示されるとおりの免疫エフェクター細胞には、記憶NK細胞、記憶様(ML)NK細胞、及びサイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞など、NK細胞及びそのサブタイプ、並びにこれらの変異体が含まれ、そのいずれも、末梢血又は臍帯血細胞、幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、及びNK-92細胞などの不死化NK細胞を含めた様々な供給源に由来し得る。
【0183】
NK細胞
ナチュラルキラー(NK)細胞は、従来、異常な又はストレスを受けている細胞を抗原認識又は事前感作によるのでなく、活性化型及び抑制型受容体からのシグナルの組み込みを通じて標的化し、排除することにより病原体に対する宿主防御及び抗腫瘍免疫応答を媒介する自然免疫エフェクターリンパ球と考えられている。ナチュラルキラー(NK)細胞は、それが大きな毒性なく安全に投与されており、移植片対宿主病(GvHD)を引き起こさず、天然で悪性細胞を認識して排除し、及び細胞工学的操作に適しているため、同種異系細胞免疫療法のT細胞に代わるものである。
【0184】
記憶、記憶様、及びCIML NK細胞
その自然の細胞傷害及び免疫刺激活性に加えて、NK細胞は、場合によっては記憶様又はサイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞とも呼ばれる、持続性のある記憶NK集団を含めた、ロバストなリコール反応を生じる異種細胞及び万能細胞サブセットを構成する。記憶NK細胞は、自然の刺激、又は人工的な刺激(「プライミング」)のいずれであれ、炎症誘発性サイトカイン又は活性化型受容体経路による刺激によって作製することができる。サイトカイン活性化によって作製される記憶NK細胞は、白血病免疫療法のセッティングで臨床的に使用されている。
【0185】
CD56、Ki-67、NKG2Aの増加、及び活性化型受容体NKG2D、NKp30、及びNKp44の増加が、インビボで分化した記憶NK細胞において観察されている。加えて、インビボ分化では、CD16及びCD11bの発現中央値の僅かな低下が示された。ML NK細胞では、ACT及びBL NK細胞の両方と比べてTRAIL、CD69、CD62L、NKG2A、及びNKp30陽性NK細胞の頻度の増加が観察された一方、CD27+及びCD127+ NK細胞の頻度は減少した。最後に、インビトロで分化したML NK細胞と異なり、インビボで分化したML NK細胞は、CD25を発現しなかった。
【0186】
サイトカイン誘導性記憶様ナチュラルキラー細胞(CIML-NK)
例えば、インターロイキン-12(IL-12)、IL-15、及びIL-18など、サイトカインの組み合わせによるプライミング(事前の活性化)により、NK細胞を誘導して記憶様表現型を獲得することができる。これらのサイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞(CIML-NK又はCIML)は、サイトカインでの再刺激時又は活性化型受容体による惹起時に反応の亢進を呈する。CIML NK細胞は、IL-12、IL-15、及びIL-18などのサイトカイン及び/又はその近縁のファミリーメンバー、又はその機能性断片、又はその機能性断片を含む融合タンパク質による活性化により作製し得る。
【0187】
記憶NK細胞は典型的には、従来のNK細胞と比較したとき、細胞表面タンパク質発現パターンについて差を呈する。かかる発現パターンは当該技術分野において公知であり、例えば、CIML NK細胞におけるCD56、CD56サブセットCD56dim、CD56サブセットCD56bright、CD16、CD94、NKG2A、NKG2D、CD62L、CD25、NKp30、NKp44、及びNKp46の(対照NK細胞と比較した)増加を含み得る(例えば、Romee et al. Sci Transl Med. 2016 Sep 21;8(357):357を参照のこと)。記憶NK細胞はまた、異種NK細胞集団と比較したときの、細胞傷害性などのエフェクター機能の亢進、持続性の改善、IFN-γ産生の増加など、観察されるインビトロ及びインビボ特性によって同定されてもよい。
【0188】
抗体
本明細書には、本明細書に開示されるポリペプチドを含む抗体が提供される。一部の実施形態において抗体は、本明細書に開示される及び/又は当該技術分野において公知の軽鎖及び重鎖、V鎖及びV鎖、又はCDRのグループ分けを含む。
【0189】
本明細書では、開示される様々な形態の抗体が企図される。例えば、抗体は、アイソタイプ、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、より詳細には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のヒトフレームワーク及び定常領域であって、場合によっては、Fc受容体機能を変化させるか、又はFabアーム交換を防ぐような様々な突然変異を含むもの、又は抗体断片、例えば、F(ab’)2断片、F(ab)断片、単鎖Fv断片(scFv)等を有することができる。
【0190】
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の様々な技法を用いて作製することができる。例えば、ヒト抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成し得る。次にはかかる可変ドメイン配列を所望のヒト定常ドメインと組み合わせ得る。
【0191】
本明細書に提供されるとおりの抗体は、例えば非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)とヒト定常領域とを含むキメラ抗体、又はクラス若しくはサブクラスが親抗体のものから変化している「クラススイッチを起こした」抗体であってもよい。
【0192】
本明細書に提供されるとおりの抗体は、ヒト化抗体であってもよい。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性及び親和性は保ちながらも、ヒトに対する免疫原性を低減するためヒト化される。概して、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(又はその一部分)が非ヒト抗体に由来し、且つFR(又はその一部分)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含むことになる。一部の実施形態において、ヒト化抗体における一部のFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を元に戻すため、又は改善するため、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来である抗体)からの対応する残基に置換される。
【0193】
本明細書に開示される抗体はまた、二重特異性又は三重特異性-即ち、本明細書に開示されるポリペプチドのうちの1つを含む抗原認識ドメインと、別の抗原に結合する1つ以上の他の抗原認識ドメインとを含むものであってもよい。例えば、抗体の一方のアームが、癌細胞上にある抗原の多型と結合してもよく、他方のアームが、EGFR、HER-2、又はPD-L1、又は別の癌細胞標的と結合してもよい。三重特異性抗体の一例では、抗体はまた、動員された記憶NK細胞の活性を亢進するため、CD16など、別の標的とも結合することになり得る。
【0194】
一部の実施形態において、ヒト化抗体は、可変領域に加えて、ヒトアクセプターフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。ヒト化に使用し得るヒトフレームワーク領域としては、限定はされないが、「最良適合」法を用いて選択されるフレームワーク領域、軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域、ヒト成熟(体細胞成熟した)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系列フレームワーク領域、及びFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域が挙げられる。
【0195】
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を備えているモノクローナル抗体である。例えば、結合特異性の一方は、EGFR、HER-2、又はPD-L1に対するものであり、他方は、任意の他の抗原に対するものである。特定の実施形態において、二重特異性抗体は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体はまた、標的抗原を発現する細胞に細胞傷害性薬剤を局在化させるためにも使用し得る。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。多重特異性抗体の作成技法としては、限定はされないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現、「ノブ・イン・ホール」エンジニアリング、静電的ステアリング効果のエンジニアリングによる抗体Fcヘテロ二量体分子の作成、2つ以上の抗体又は断片の架橋、ロイシンジッパーを使用した二重特異性抗体の作製、「ダイアボディ」技術を用いた二重特異性抗体断片の作成、及び単鎖Fv(scFv)二量体の使用が挙げられる。
【0196】
本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改良することが望ましい場合もある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによるか、又はペプチド合成によって調製し得る。かかる修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内にある残基からの欠失、及び/又はそこへの挿入及び/又はその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換を、最終的なコンストラクトに到達するよう任意に組み合わせることができ、但し、最終的なコンストラクトは、所望の特徴、例えば、抗原結合性を備えているものとする。
【0197】
置換突然変異誘発の目的とする部位としては、可変領域及びフレームワーク領域が挙げられる。アミノ酸は、共通の側鎖特性に基づいてグループ化し得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、He;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gin;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0198】
目的とする抗体にアミノ酸置換を導入し、所望の活性、例えば、保持されている/向上した抗原結合、免疫原性の低下、ADCC又はCDCの向上、及び/又は半減期の延長などの薬物動態特性の変化に関して産物をスクリーニングし得る。保存的置換は当該技術分野において公知である。かかる置換の例としては、Fc領域に対するLS及びYTE突然変異が挙げられる。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つにおけるメンバーを別のクラスのものに交換することを伴うことになる。
【0199】
抗体はまた、Asn297など、特定の残基を置換するグリカン鎖に対する修飾も含み得る。例えば、抗体は、ADCCの向上のため非フコシル化するように操作又は処理されてもよい。
【0200】
本明細書に開示される抗体並びに他のタンパク質及びペプチドは、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知のその配列と異なるアミノ酸配列を含み得る、例えば、本明細書に開示される又は当該技術分野において公知の配列と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するか、又はそうした配列を有する。一部の実施形態において、重鎖、軽鎖、Vドメイン、Vドメイン、及び/又はCDRの1つ以上は、記載されるアミノ酸配列のうちの1つと少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0201】
本明細書に開示されるCDR、可変重鎖及び軽鎖を含む抗体は、当該技術分野において公知の方法により作成し得る。例えば、可変抗体ドメインをIgG発現ベクターにクローニングし得る(IgG変換)。重鎖及び軽鎖V-ドメインのPCR増幅したDNA断片をフレームの、例えば、レシピエント哺乳類発現ベクターを持つヒトIgG1定常重鎖に挿入し得る。抗体発現はMPSVプロモーターによってドライブすることができ、転写は、CDSの下流に位置する合成ポリAシグナル配列によって終結させることができる。
【0202】
抗体は、組換え方法及び組成物を用いて作製し得る。本明細書に記載される抗体をコードする核酸が提供される。かかる核酸は、抗体(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)のVを含むアミノ酸配列及び/又はVを含むアミノ酸配列をコードし得る。かかる核酸を含む(即ち、それで形質転換された)発現ベクターが提供され、かかる核酸を含む宿主細胞もまた提供される。一つのかかる実施形態において、宿主細胞は、(1)Vを含むアミノ酸配列とVを含むアミノ酸配列とをコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む。
【0203】
抗体コードベクターのクローニング又は発現に好適な宿主細胞としては、本明細書に記載される他の原核細胞又は真核細胞が挙げられる。例えば、抗体は、詳細にはグリコシル化及びFcエフェクター機能が不要であるとき、細菌(例えば、大腸菌(E.coli))において作製し得る。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母など、真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」されているため部分的又は完全ヒトグリコシル化パターンを持つ抗体が産生されることになる真菌及び酵母株を含め、抗体コードベクターに好適なクローニング又は発現宿主である。グリコシル化された抗体の発現に好適な更なる宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞と併せて使用し得る、特にツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用し得るバキュロウイルス株が数多く同定されている。植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる。一部の実施形態において、宿主細胞は、真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)であってもよい。抗体をコードする核酸を含む宿主細胞は、発現に好適な条件下で培養し、宿主細胞又は培養培地から抗体を回収し得る。
【0204】
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、<ΙμΜ、<100nM、<50nM、<10nM、<5nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<0.001nMの解離定数(Kd)を有し、任意選択で>10-13M(例えば10-8M未満、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。一実施形態において、Kdは、Fabバージョンの目的とする抗体及びその抗原で実施される放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によるか、又は表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される(例えば、国際公開第2015089344号)。
【0205】
本明細書に開示される方法により投与される、及び/又は医薬組成物若しくはキット、又は免疫療法組成物若しくはキットの一部として投与されることになる抗体としては、抗EGFR抗体、抗HER2抗体、抗VEGFR2抗体、及び抗PD-L1抗体、並びにそれらの1つ以上に、及び任意選択でまたNK細胞抗原にも結合する多重特異性抗体など、関連する化合物が挙げられる。これらの抗体の各々の臨床段階の例を以下に提示する;更に多くの前臨床段階のバイオ薬候補抗体及び関連する化合物が当該技術分野において公知であり、様々な開発段階にある。
【0206】
抗EGFR抗体としては、セツキシマブ、パニツムマブ、及びネシツムマブが挙げられる。一部の実施形態において、抗EGFR抗体は、パニツムマブ、ネシツムマブから選択される。
【0207】
抗HER2抗体としては、トラスツズマブ(及びその糖鎖工学的に操作されたFc対応物、チミグツズマブ(timigutuzumab))、マルゲツキシマブ、及び定義の仕方によっては、ペルツズマブが挙げられる。一部の実施形態において、抗HER-2抗体は、トラスツズマブ及びマルゲツキシマブから選択される。
【0208】
チェックポイント阻害薬は、免疫チェックポイント、例えば、PD-1、PD-L1、及びCTLA-4を阻害する化合物である。抗PD-1抗体としては、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、及びドスタルリマブが挙げられる。抗PD-L1抗体としては、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブが挙げられる。抗CTLA-4抗体としては、イピリムマブが挙げられる。一部の実施形態において、抗体は、これらのうちの1つから選択される。一部の実施形態において、抗体は、抗PD-L1抗体、例えばアベルマブである。
【0209】
抗VEGFR2抗体としては、ラムシルマブが挙げられる。一部の実施形態において、抗VEGFR2抗体は、ラムシルマブである。
【0210】
以下には、当該技術分野において公知の、選択された臨床段階の抗体の配列を提供する。
【0211】
セツキシマブ
セツキシマブ及びその調製方法については、例えば、国際公開第2011059762A1号(本明細書によって全体として参照により援用される)を参照することができる。
【0212】
【表5】
【0213】
【表6】
【0214】
【表7】
【0215】
パニツムマブ
パニツムマブ及びその調製方法については、例えば、米国特許第6,235,883号及び同第7,807,798号(これらは本明細書によって全体として参照により援用される)を参照することができる。
【0216】
【表8】
【0217】
【表9】
【0218】
【表10】
【0219】
マルゲツキシマブ
マルゲツキシマブ及びその調製方法については、例えば、国際公開第2021133653A1号(本明細書によって全体として参照により援用される)を参照することができる。
【0220】
【表11】
【0221】
【表12】
【0222】
【表13】
【0223】
アベルマブ
アベルマブ及びその調製方法については、米国特許第11,274,154号(本明細書によって全体として参照により援用される)を参照することができる。
【0224】
【表14】
【0225】
【表15】
【0226】
【表16】
【0227】
ネシツムマブ
ネシツムマブ及びその調製方法については、当該技術分野を参照することができる。
【0228】
【表17】
【0229】
トラスツズマブ
トラスツズマブ及びその調製方法については、当該技術分野を参照することができる。
【0230】
【表18】
【0231】
更なる抗EGFR抗体、抗HER-2抗体、抗VEGFR2抗体、及び抗チェックポイント阻害薬抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体)は、当該技術分野において公知であり、商業的供給元から入手することができる。
【0232】
腫瘍ターゲティングmAbと共に投与したときNK細胞応答を亢進させる戦略
当該技術分野には、癌抗原を標的とするmAbと組み合わせて投与したときNK細胞応答を亢進させることが公知の方法が幾つもある。それらとしては、抗体Fc領域の遺伝子操作又は糖鎖工学によるFcγRファミリーの活性化型及び抑制型メンバーとのそれらの相互作用の調節が挙げられる。例としては、アテゾリズマブに使用されるA297N突然変異、IgG1重鎖のヒンジ領域(例えば、G237とG238との間)における(GGGS)などの短い配列の挿入、及び他の変化が挙げられ、又はフコース残基を除去すると、CD16に対するIgG親和性が増加し、NK細胞媒介性ADCC及び/又はmAbで被覆された複数の標的細胞の連続殺傷が亢進することになる。別の手法には、同じ抗原の2つ以上の異なるエピトープを標的とする多重特異性抗体を利用することが関わる。
【0233】
NK細胞エンゲイジャー及び三重特異性キラー細胞エンゲイジャー(TriKE)。NK細胞エンゲイジャー(NKCE)は、NK細胞表面抗原、例えば、CD16、及び限定なしに、HER2、EGFR、又はPD-L1を含めた癌細胞抗原に結合してNK細胞の細胞傷害性を誘導する二重特異性ポリペプチドである。一部の実施形態において、NK細胞エンゲイジャーは、二重特異性モノクローナル抗体である。TriKEは、NK細胞表面抗原、例えば、CD16、及び限定なしに、HER2、EGFR、CD33、又はPD-L1を含めた2つの異なる癌細胞抗原に結合してNK細胞の細胞傷害性を誘導する三重特異性ポリペプチドである。
【0234】
医薬組成物及び治療方法
また、薬学的に許容可能な担体中に本開示の物質組成物を含む医薬組成物、又は免疫療法組成物も開示される。医薬担体については当業者に公知である。それは最も典型的には、生理的pHの滅菌水、生理食塩水、及び緩衝溶液などの溶液を含め、ヒトへの薬物の投与に標準的な担体となるであろう。典型的には、製剤中には、製剤を等張性にするのに適切な量の薬学的に許容可能な塩が使用される。薬学的に許容可能な担体の例としては、限定はされないが、生理食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、及びより好ましくは約7~約7.5である。溶液は、RNアーゼフリーでなければならない。更なる担体としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスであって、有形の物品、例えば、フィルム、リポソーム又はマイクロパーティクルの形態であるマトリックスなど、徐放製剤が挙げられる。当業者には、例えば、投与される組成物の投与経路及び濃度に応じて、ある種の担体がより好ましいものであり得ることは明らかであろう。
【0235】
医薬組成物は、選択の分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、表面活性剤などを含み得る。医薬組成物はまた、抗微生物剤、抗炎症剤、麻酔薬などの1つ以上の活性成分も含み得る。
【0236】
非経口投与用の製剤には、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルションが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル類である。水性担体としては、水、アルコール溶液/水溶液、エマルション又は懸濁液が、生理食塩水及び緩衝媒体を含め、挙げられる。非経口溶媒としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は固定油が挙げられる。静脈内溶媒としては、体液及び栄養補充液、電解質補充液(リンゲルのデキストロースをベースとするものなど)などが挙げられる。保存剤及び他の添加剤、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどもまた存在し得る。
【0237】
組成物は、例えば、静脈内注入によるか、又は生細胞及び抗体療法薬の送達(一緒又は個別のいずれでも)に適切な任意の他の方法によって投与されてもよい。
【0238】
治療適用
本明細書に開示されるNK細胞は、癌及び骨髄異形成症候群などの増殖性疾患の進行の治療又は予防に使用することができる。癌は、血液学的悪性腫瘍又は固形腫瘍であり得る。
【0239】
血液学的悪性腫瘍には、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、及びこれらの亜型が含まれる。リンパ腫は、様々な方法で、多くの場合に根底にある悪性細胞の種類に基づいて分類することができ、ホジキンリンパ腫(多くの場合にリード・シュテルンベルク細胞の癌であるが、時にまたB細胞で発生することもある;他の全てのリンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である)、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、並びに本明細書に定義し及び当該技術分野において公知であるとおりの他のものが挙げられる。骨髄異形成症候群は、未成熟白血球及び/又は造血幹細胞(HSC)が冒される一群の疾患を含む;MDSはAMLに進行し得る。
【0240】
B細胞リンパ腫としては、限定はされないが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、並びに本明細書に定義し及び当該技術分野において公知であるとおりの他のものが挙げられる。
【0241】
T細胞リンパ腫としては、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、T細胞慢性リンパ球性白血病(T-CLL)、セザリー症候群、並びに本明細書に定義し及び当該技術分野において公知であるとおりの他のものが挙げられる。
【0242】
白血病としては、急性骨髄(又は骨髄性)白血病(AML)、慢性骨髄(又は骨髄性)白血病(CML)、急性リンパ球性(又はリンパ芽球性)白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)ヘアリー細胞白血病(時にリンパ腫として分類される)、並びに本明細書に定義し及び当該技術分野において公知であるとおりの他のものが挙げられる。
【0243】
形質細胞悪性腫瘍としては、リンパ形質細胞性リンパ腫、形質細胞腫、及び多発性骨髄腫が挙げられる。
【0244】
固形腫瘍としては、黒色腫、神経芽細胞腫、神経膠腫又は癌腫、例えば、脳、頭頸部、乳房、肺(例えば、非小細胞肺癌、NSCLC)、生殖管(例えば、卵巣)、上部消化管、胃食道腺癌(GEA、別名、腸癌、結腸癌、又は直腸癌)、膵臓、肝臓、腎臓系(例えば、腎臓)、膀胱、前立腺及び結腸直腸などの腫瘍が挙げられる。
【0245】
頭頸部癌としては、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN、上気道消化管から生じる不均一な一群の上皮性新生物)、軟部組織肉腫、鼻咽腔癌、喉頭癌、副鼻腔癌(paransal sinus cancer)、唾液腺癌、及び鼻腔癌が挙げられる。
【0246】
本明細書に開示される記憶NK細胞とmAbとを含む治療並びに療法用(免疫療法用を含む)組成物及びキットは、いかなる順序で投与されてもよく、又は同時に投与されてもよい。
【0247】
本明細書に記載される方法は、概してそれを必要としている対象に対して実施される。本明細書に記載される治療方法を必要としている対象は、癌を有するか、それと診断されているか、それを有する疑いがあるか、又はそれを発症するリスクがあるか、又はその後期へと進行するリスクがある対象であり得る。治療の必要性の決定は、典型的には、問題となっている疾患又は病態に整合する病歴、理学的診察、又は診断検査によって判定されることになる。本明細書に記載される方法によって治療可能な様々な病態の診断は、当該分野の技能の範囲内にある。対象は、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、マウス、ラット、サル、ハムスター、モルモット、及びヒトなどの哺乳類、又はニワトリなどの他の動物を含め、動物対象であってもよい。例えば、対象はヒト対象であってもよい。概して、ある療法、例えば抗癌性モノクローナル抗体と組み合わせた記憶NK細胞の安全且つ有効な量は、例えば、対象において望ましくない副作用は最小限に抑えつつ所望の治療効果を生じるであろう量である。
【0248】
本明細書に記載される方法によれば、投与は、非経口、肺内、経口、局所、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、腫瘍内、髄腔内、頭蓋内、脳室内、皮下、鼻腔内、硬膜上、眼内、頬側、又は直腸投与であってもよい。製剤が、例えば、生物製剤又は細胞療法である場合、投与様式は、静脈内注射又は注入によることになる可能性が高いであろう。
【0249】
定義
特に定義しない限り、本開示に関連して使用される科学技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。更に、文脈上特に必要でない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、且つ複数形の用語は単数形を含むものとする。概して、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、並びにタンパク質及びオリゴ又はポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法、及びそれらの技法は、当該技術分野で周知の、一般的に使用されているものである。
【0250】
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、特異的結合を付与するのに十分な標準的な免疫グロブリン配列エレメントを含むか、又は例えば、ある特定の標的抗原に免疫反応を示す及び/又はそれに向けられるポリペプチドを指す。当該技術分野において公知のとおり、自然界で産生されるとおりのインタクトな抗体は、2つの同一の重鎖ポリペプチド(各約50kD)及び2つの同一の軽鎖ポリペプチド(各約25kD)が互いに会合して、一般に「Y字型」構造と称されるものとなることで構成される約150kDの四量体薬剤である。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(各約110アミノ酸長)-アミノ末端可変(V)ドメインと、続く3つの定常ドメイン:C1、C2、及びカルボキシ末端C3で構成される。「スイッチ」として公知の短い領域が、重鎖可変領域と定常領域とを結び付けている。「ヒンジ」がC2及びC3ドメインを抗体の残りの部分に結び付ける。インタクトな抗体では、このヒンジ領域における2つのジスルフィド結合が2つの重鎖ポリペプチドを互いに結び付けている。各軽鎖は、別の「スイッチ」によって互いに隔てられている2つのドメイン-アミノ末端可変(V)ドメインと、続くカルボキシ末端定常(C)ドメインで構成される。インタクトな抗体四量体は、2つの重鎖-軽鎖二量体で構成され、ここでは重鎖及び軽鎖が単一のジスルフィド結合によって互いに連結されている;2つの他のジスルフィド結合が重鎖ヒンジ領域を互いに結び付けているため、これらの二量体が互いに結び付けられることになり、四量体が形成される。天然で産生される抗体はまた、典型的にはC2ドメイン上で、グリコシル化されている。天然抗体の各ドメインは、扁平な逆平行βバレルに互いに詰め合わされた2つのβシート(例えば、3本鎖、4本鎖、又は5本鎖シート)で形成される「免疫グロブリンフォールド」によって特徴付けられる構造を有する。各可変ドメインは、「相補性決定領域」として知られる3つの超可変ループ(CDR1、CDR2、及びCDR3)と、4つの幾らかインバリアントな「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)とを持つ。自然抗体が折り畳まれると、FR領域がβシートを形成して、それらがドメインの構造的フレームワークを提供し、重鎖及び軽鎖の両方からのCDRループ領域が三次元空間で一体になることにより、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位が生み出される。天然に存在する抗体のFc領域は補体系のエレメントに結合し、また、例えば細胞傷害性を媒介するエフェクター細胞を含め、エフェクター細胞上の受容体にも結合する。
【0251】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の幾つかの例としては、限定はされないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、線状抗体、単鎖可変断片(scFv)、及び抗体断片で形成される多重特異性抗体が挙げられる。一部の実施形態において、抗体断片は抗原結合断片である。
【0252】
現在の抗体工学及び改良方法のレビューについては、R. Kontermann and S. Dubel, (2010) Antibody Engineering Vols.1 and 2, Springer Protocols, 2nd Edition and W. Strohl and L. Strohl (2012) Therapeutic antibody engineering: Current and future advances driving the strongest growth area in the pharmaceutical industry, Woodhead Publishingを参照することができる。抗体及び抗原結合断片の作製及び精製方法は当該技術分野において周知であり、Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, chapters 5-8 and 15を参照することができる。
【0253】
用語「抗原」は、可溶性であり得るか、又は細胞膜結合型であり得る分子実体、詳細には、限定はされないが、抗体又はTCRを含むがこれらに限定されない適応免疫系、又はトランスジェニックTCR、キメラ抗原受容体(CAR)、scFv又はその多量体、Fab断片又はその多量体、抗体又はその多量体、単鎖抗体又はその多量体、又は構造への結合を高親和性で果たすことのできる任意の他の分子を含むがこれらに限定されない操作された分子による認識を受けることのできる分子実体を指す。
【0254】
本明細書で使用されるとき、用語「結合親和性」は、ある一つの分子が、その分子上のある部位で別の分子に結合する強度を指す。ある特定の分子が別の特定の分子に結合する又は特異的に会合することになる場合、それらの2つの分子は互いに結合親和性を呈すると言われる。結合親和性は、一対の分子についての会合定数及び解離定数に関係するが、これらの定数を測定又は決定することは、本明細書の方法にとって重要でない。むしろ、親和性は、記載される方法の分子間の相互作用を記載するために本明細書で使用されるとき、概して実証的研究で観察される見かけの親和性であり(特に指定されない限り)、これを使用すると、1つの分子(例えば、抗体又は他の特異的結合パートナー)が2つの他の分子(例えば、あるペプチドの2つのバージョン又は変異体)に結合するであろう相対強度を比較することができる。結合親和性、会合定数、及び解離定数の概念は周知である。
【0255】
用語「癌」は、医学的には悪性新生物として公知である。癌は、制御されない細胞成長が関わる幅広い一群の疾患である。癌では、細胞(癌性細胞)が無制御に分裂及び成長して悪性腫瘍を形成し、身体の近接した部位に浸潤する。癌はまた、身体の遠隔の部位にもリンパ系又は血流を通じて広がり得る。ヒトに発症する異なる公知の癌は200種を超える。
【0256】
用語「化学療法」は、標準化されたレジメンの一環としての1つ以上の細胞傷害性抗新生物薬(「化学療法剤」又は「化学療法薬」)による癌(癌性細胞)の治療を指す。化学療法は治癒目的で与えられてもよく、又はそれは寿命を延ばすこと若しくは症状を緩和することを目標としてもよい。これは多くの場合に、放射線療法、手術、及び/又はハイパーサーミア療法など、他の癌治療と併せて用いられる。従来の化学療法剤は、ほとんどの癌細胞の主な特性の一つである、急速に分裂する細胞を殺傷することによって働く。これはつまり、化学療法が、骨髄、消化管、及び毛包の細胞など、正常な状況下で急速に分裂する細胞にもまた害を及ぼすということを意味する。その結果、骨髄抑制(血液細胞の産生低下、ひいてはまた免疫抑制も)、粘膜炎(消化管の内膜の炎症)、及び脱毛症(抜け毛)など、化学療法で最もよく見られる副作用が生じる。
【0257】
用語「組み合わせ免疫療法」は、2つの療法アプローチ、例えば、当該技術分野において癌などの疾患の治療に公知の療法アプローチの協奏的な適用を指す。用語「組み合わせ免疫療法」はまた、抗原認識受容体による治療などの免疫療法と、NK細胞、例えば、記憶NK細胞の移植などの別の療法との協奏的な適用も指し得る。細胞上での抗原の発現とは、抗原が細胞の細胞表面上に十分に存在するため、抗原認識受容体がそれを検出、結合及び/又は認識できることを意味する。
【0258】
用語「サイトカイン誘導性記憶様」、又は、等しく「CIML」は、NK細胞との関連では、「記憶」又は「記憶様」表現型を有することを意味し、プライミング剤を使用して作製される。
【0259】
用語「細胞傷害性」は、本明細書において記憶NK細胞との関連で使用されるとき、細胞が罹患細胞を標的化して殺傷する能力を指す。
【0260】
「罹患細胞」は、細胞、組織又は生物についての正常又は健常な状態から逸脱した、病原体、毒性物質、照射、又は細胞内部調節解除の影響によって生じ得る状態を指す。「罹患細胞」はまた、病原性ウイルスに感染した細胞も指し得る。更に用語「罹患細胞」は、個体の癌を構成し又はそれを生じさせるものであり得る悪性細胞又は新生物細胞を指し得る。
【0261】
用語「操作された細胞」及び「遺伝子修飾された細胞」は、本明細書で使用されるとき、同義的に使用することができる。これらの用語は、外来性遺伝子又は核酸配列を持っている、及び/又はそれを発現すること、又はその天然の形態又は機能から外れるように遺伝子修飾されていて(例えば欠失している又はノックアウトされている遺伝子)、次にはそれが細胞又はその子孫の遺伝子型又は表現型を修飾する遺伝子を持っていることを意味する。細胞は、自然状態ではそうした細胞で発現しないペプチド又はタンパク質を安定に又は一過性に発現するように、当該技術分野において周知の組換え方法により修飾することができる。細胞の遺伝子修飾方法としては、限定されないが、トランスフェクション、電気穿孔、ヌクレオフェクション、形質導入であって、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、非組込み型レトロウイルス又はレンチウイルスベクター、トランスポゾン、デザイナーヌクレアーゼであって、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN又はCRISPR/Casヌクレアーゼを含めたものを用いる形質導入が挙げられる。
【0262】
用語「濃縮する」は、本明細書においてNK細胞との関連で使用されるとき、更なる分析又は使用のために高濃度化し、精製し、又は単離することを意味する。濃縮及び精製された細胞集団は、大多数の所望の細胞と、無視できる割合の他の細胞とを含む。
【0263】
用語「倍数選択的」は、本明細書で使用されるとき、ある一つの標的に対して持つ親和性が、別の標的に対するその親和性の少なくともx倍高いことを意味し、ここでxは少なくとも2であり、及びそれより大きい、例えば、10、20、50、100、又は1000であってもよい。好ましい実施形態において、倍数選択性は治療的に有意味であり、即ち、ある一つの標的を発現する細胞が殺傷され、且つ他の標的を担持する細胞が生き残ることを可能にするのに十分である。
【0264】
用語「遺伝子修飾」又は遺伝子修飾された」は、限定はされないが細胞のゲノムDNAを含め、核酸内容の改変を指す。これには、限定はされないが、核酸配列の単一のヌクレオチド又は断片の交換又は欠失の導入による細胞ゲノムDNA配列の改変が含まれる。この用語はまた、それによって細胞ゲノムDNA配列の直接的又は間接的な改変につながるか否かに関係なく、細胞への核酸の任意の導入も指す。
【0265】
用語「免疫細胞」又は「免疫エフェクター細胞」は、αβT細胞、NK細胞(記憶NK、ML-NK、及びCIML-NKを含む)、NKT細胞(iNKT細胞を含む)、B細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、γδT細胞、間葉系幹細胞又は間葉系間質細胞(MSC)、単球及びマクロファージなど、免疫系の一部であってよい、特定のエフェクター機能を果たす細胞を指す。好ましい免疫細胞は、αβT細胞、NK細胞(記憶NK、ML-NK、及びCIML-NKを含む)、NKT細胞(iNKT細胞を含む)、ILC、CIK細胞、LAK細胞又はγδT細胞など、細胞傷害性エフェクター機能のある細胞である。「エフェクター機能」は、細胞の特殊化した機能を意味し、例えば、NK細胞では、エフェクター機能は細胞溶解活性又はサイトカインの分泌を含めたヘルパー活性であり得る。
【0266】
用語「免疫療法」は、「免疫応答の誘導、亢進、又は抑制による疾患の治療」として定義される医学用語である。免疫応答を引き出し又は増幅するように設計された免疫療法は、活性化免疫療法に分類され、一方、低減し又は抑制する免疫療法は、抑制免疫療法に分類される。活性化型免疫療法としての癌免疫療法は、免疫系を刺激することにより腫瘍を拒絶し及び破壊しようと試みる。養子細胞移入は、細胞ベースの細胞傷害性反応を用いて癌細胞を攻撃する。患者の癌に対して天然の又は遺伝子操作された反応性を有するT細胞などの免疫細胞がインビトロで生成され、次に癌患者に移し戻される。
【0267】
本明細書で使用されるとき、用語「個体」は、動物を指す。優先的には、個体は、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヤギ、ニワトリ、イヌ、サル又はヒトなどの哺乳類である。より優先的には、個体はヒトである。個体は、癌などの疾患に罹患している個体(患者)であってもよいが、対象はまた、健常な対象であってもよい。用語「悪性」又は「悪性腫瘍」は、新生物を構成するか、新生物に由来するか、又は新しい新生物細胞の起源となり得る細胞、細胞群又は組織を表す。この用語は、組織の正常又は健常な細胞との対照での新生物細胞を表して使用される。悪性腫瘍は、非癌性良性腫瘍と比べると、悪性腫瘍がその成長の点で自己限定性でなく、隣接組織に浸潤する能力を有し、及び遠隔の組織に広がる能力を有し得る点で対照をなす。良性腫瘍は、これらの特性のいずれも有しない。悪性腫瘍は、退形成、侵襲性、及び転移並びにゲノム不安定性によって特徴付けられる。用語「前悪性細胞」は、まだ悪性でないが、悪性になろうとしている細胞又は組織を指す。
【0268】
用語「記憶」又は「記憶様」は、NK細胞との関連では、NK細胞の一般集団と比較して細胞傷害性が改善された、且つ長寿命/持続性である活性化された表現型を有することを意味し、典型的には、NK細胞の一般集団と比較して、CD69、CD25、及びNKG2Aの細胞表面発現の増加、並びにCD16の発現の維持を呈する。
【0269】
用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、本開示に記載される抗体に適用されるとき、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンからの単一コピー又はクローンに由来する化合物であり、それが産生される方法ではない。本開示のmAbは、均一な又は実質的に均一な集団で存在し得る。
【0270】
用語「持続性」は、本明細書において使用されるとき、細胞、特に対象に養子移入された細胞が生存し続ける能力を指す。
【0271】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを指して同義的に使用される。これらの用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的模倣体であるようなアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0272】
用語「プライミングする」は、NK細胞との関連では、記憶/記憶様表現型となるようにプライミング剤を使用して刺激し又は活性化させることを意味する。「プライミング剤」は、刺激サイトカインの組み合わせ、例えば、
・IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及び
・IL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上、
又はかかるサイトカインの機能性断片を含む1つ以上の「プライミング融合タンパク質」、又はその1つ以上の多連鎖複合体を含む。かかるタンパク質の例は、本明細書に開示される。
【0273】
一般に、用語「受容体」は、可溶性であっても又は細胞表面膜に付着していてもよい生体分子であって、細胞表面膜に付着していても又は可溶性であってもよい定義付けられた構造体に特異的に結合する生体分子を指す。受容体としては、限定はされないが、抗体及び抗体様構造、接着分子、トランスジェニックの又は天然に存在するTCR又はCARが挙げられる。用語「抗原認識受容体」又は「抗原結合受容体」は、本明細書で使用されるとき、天然TCR、トランスジェニックTCR、CAR、scFv又はその多量体、Fab断片又はその多量体、抗体又はその多量体、二重特異性T細胞エンハンサー(BiTE)、ダイアボディ、又は特異的結合を高親和性で果たすことのできる任意の他の分子など、膜結合型又は可溶性受容体であってもよい。
【0274】
抗原認識受容体に関連して用語「特異的に結合する」又は「~に特異的」又は「特異的に認識する」は、抗原の特異的多型変異体を認識してそれに結合するが、他の変異体は実質的に認識せず又は結合しない抗原認識受容体の抗原結合ドメインを指す。
【0275】
用語「副作用」は、所望の治療アウトカムに加えて起こる抗原認識受容体による免疫療法の任意の合併症、望ましくない又は病的なアウトカムを指す。用語「副作用」は、優先的には、抗原を発現する非標的細胞であって、しかし本明細書に記載されるとおりの罹患細胞ではない細胞上に標的抗原が存在する場合に免疫療法の間に起こる可能性のあるオンターゲットオフ腫瘍毒性を指す。免疫療法の副作用は、移植片対宿主病の発症であり得る。
【0276】
用語「標的」又は「標的抗原」は、標的細胞の表面上に存在する任意の細胞表面タンパク質、糖タンパク質、糖脂質又は任意の他の構造を指す。この用語はまた、標的細胞上に存在する任意の他の構造、詳細には、限定はされないが、抗体又はTCRを含むがこれらに限定されない適応免疫系、又はトランスジェニックTCR、CAR、scFv又はその多量体、Fab断片又はその多量体、抗体又はその多量体、単鎖抗体又はその多量体、又は構造への結合を高親和性で果たすことのできる任意の他の分子を含むがこれらに限定されない操作された分子による認識を受けることのできる構造も指す。
【0277】
用語「標的細胞」は、本明細書で使用されるとき、個体に適用される又は適用されることになる抗原認識受容体によって認識される細胞を指す。
【0278】
用語「治療有効量」は、治療利益を提供する量を意味する。
【0279】
本明細書で使用されるとき、用語「移植」は、対象にドナー細胞、例えばNK細胞の集団を投与することを意味する。
【0280】
用語「治療」は、本明細書で使用されるとき、疾患の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を低減することを意味する。
【実施例
【0281】
実施例
以下の例により、本発明が更に例示される。
【0282】
実施例1.記憶NK細胞のインビトロ培養
材料及び方法:記憶NK細胞は、国際公開第2020047299号、国際公開第202047473号、又は国際公開第2020257639号に記載され、それに開示されるとおり、又は当該技術分野において公知の方法により作製し得る。
【0283】
或いは、記憶NK細胞は、以下のとおり作製してもよい。全血からCD3枯渇及びCD56ポジティブ選択を用いてNK細胞を単離し得る。次に選択されたNK細胞を96ウェルプレートにてNK MACS培地+サプリメント+10%HI-HABで培養し、以下の条件でプライミング/拡大する(ここで、1×7t15-21s及びATF1は、それぞれ200nM及び100nMであり、1×18t15-12sは250nMである;全ての希釈はこれらの値から指示どおりに計算する)。
a)拡大のみ:+7t15-21s及びATF1、指示される濃度において37度、5%CO2で2日間、6日間、又は10日間のいずれか。その後2日毎に、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に指示される濃度まで補充する。
b)プライミング及び拡大:+18t15-12s、指示される濃度において37度、5%CO2で2日間、6日間、又は10日間のいずれか。その後2日毎に、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に指示される濃度まで補充する。
【0284】
実施例2.記憶NK細胞の表現型タイピング
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の表現型を判定するため、適切な時点でNK細胞を回収し、洗浄し、受容体発現に関して、純度及び/又は活性化マーカー、例えば、抗CD56、抗CD3、Live/Dead Yellow、抗NKG2A、抗CD69、抗CD25、及び抗CD16を含むフローパネルで染色することにより判定する。以下のクローンを使用する:
・抗CD45(HI30クローン)
・抗CD56(CMSSBクローン)
・抗CD3(SK7クローン)
・Live/Dead Yellow(Thermo Fisher)
・抗NKG2A(REA110クローン)
・抗CD69(FN50クローン)
・抗CD25(CD25-4E3クローン)
・抗CD16(eBioCD16クローン)
【0285】
Attune NXtフローサイトメーターを使用する。次にデータをFlowjo v10.7において、生存CD56+CD3-細胞をゲーティングし、上述のマーカーの各々の蛍光強度中央値を判定して分析する。CD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持が、記憶NK細胞表現型を指し示している。
【0286】
実施例3.記憶NK細胞のADCC
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の殺傷活性を判定するため、適切な時点で、培養したNK細胞を回収して洗浄し、次に10%ヒトAB型血清(Gibco))含有のNK MACS培地に再懸濁し、96ウェルプレートに10,000個のルシフェラーゼ発現ヒト腫瘍細胞(ATCC)と共に指示されるエフェクター対標的(E:T)比で24~48時間、IL-2(Miltenyi)有り又は無しで加えてもよく、その後ルシフェラーゼ活性(腫瘍生細胞)をルシフェラーゼの読取り(Promega)によって判定する。データは示さず。
【0287】
結果:この例を用いることにより、上記のプロセスによって生成されたNK細胞のインビトロ活性及びフローサイトメトリー表現型を実証し得る。表面タンパク質発現の累積変化倍数、細胞サイズ、及び個々の遺伝子についての蛍光強度中央値を追跡し得る。記憶NK細胞は、正常なNK細胞と比較してADCCの増加を呈する。
【0288】
実施例4.IncuCyteを使用したインビトロADCC細胞傷害性アッセイ
NucLight Redレンチウイルス試薬(NLR;Essen BioScience)を使用して頭頸部癌細胞株(SCC-25)又は卵巣細胞株(SKOV-3)に赤色蛍光タンパク質を形質導入した。腫瘍細胞死滅の動態解析のため、各NLR形質導入細胞株を個別に96ウェル平底プレートに各ウェルそれぞれ3×10又は4×10細胞の濃度で播き、加湿インキュベーターにおいて一晩インキュベートした。翌日、NK細胞を0.5:1~10:1の範囲のエフェクター:標的(E:T)比で加えた。セツキシマブ及びトラスツズマブもまた、それぞれ1及び3ug/mlの濃度で加えた。共培養は全て、それぞれの標的細胞培地にて100U/mlヒトIL-2で実施した。生細胞数を高頻度の蛍光イメージング(3時間毎)により72時間にわたってモニタし、IncuCyte S3ソフトウェア(Essen BioScience)により定量化し、標的細胞のみの対照群に残る生細胞数で正規化した。結果は、図1図2、及び図3に示す。
【0289】
実施例5.記憶NK細胞の持続性及びCD16表面発現
急性骨髄性白血病(AML)モデルでTHP-1細胞モデルを使用して記憶NK細胞の抗腫瘍活性及び持続性を判定した。緑色蛍光タンパク質(GFP)及びコメツキムシ赤色ルシフェラーゼ(CBR)を発現するようにTHP-1細胞(ATCC TIB-202)を操作して、IVISイメージャーを使用した全身生物発光(BLI)の測定によって腫瘍量をモニタすることを可能にした。雌NSGマウス(Jackson Labs;N=5/群)の尾静脈にTHP-1-CBR-GFP細胞(2×10細胞/マウス)をi.v.注射によって接種した。腫瘍を3日間生着させた後、媒体又は記憶NK細胞(1×10細胞/マウス)で尾静脈注射によって治療した。腫瘍進行をイソフルラン麻酔下での全身生物発光(BLI)測定値によって追跡した。EDTA抗凝固薬を使用した顎下腺静脈出血により入手した血液試料を、適切な抗体フルオロフォアコンジュゲート[CD16 PerCP-eF710(ThermoFisher 46-0168-42)、CD45 APC-eF780(ThermoFisher 47-0459-42)、mCD45 BV421(BD Biosciences 563890)、Viability Live/Dead Yellow (ThermoFisher L34968)、CD3 SB780(ThermoFisher 78-0036-42)、CD56 PE-Cy7(ThermoFisher 25-0567-42)、マウスCD16/32 Fc Block(BioLegend 156604)]と共に染色緩衝液(DPBS+2%HI-FBS+2mM EDTA)中で氷上で30分間インキュベートした。染色血液試料を染色緩衝液で洗浄し、次に固定/透過処理緩衝液(ThermoFisher 00-5123-43)と共にインキュベートすることにより赤血球を溶解させて、試料を固定した。溶解後、試料を染色緩衝液で洗浄し、Attune NxTフローサイトメーター(ThermoFisher)でデータを取得した。FCS Express 7ソフトウェアで分析を実施した。集団密度を試料中のCountBright Absoluteカウントビーズ(ThermoFisher C36950)を使用して血液1mL当たりの細胞数に定量化した。結果は図4及び図5に示す。
【0290】
CD16(FcγRIII)は、モノクローナル抗体のFcドメインを免疫細胞に結合させて細胞関連抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を可能にするFc受容体であり、腫瘍殺傷の亢進につながる。記憶NK細胞の表面上のCD16発現は、マウスへの注射時点から増加し、本研究の経過全体を通じて持続する。これにより、モノクローナル抗体のFcドメインが記憶NK細胞に結合することが可能になり、記憶NK細胞療法のADCC活性が亢進する。
【0291】
実施例6.IFNgはSCC-25頭頸部癌細胞上のPD-L1発現を誘導する
10%FBS、1%PenStrep、1%重炭酸ナトリウム、1%HEPES、1%glutamax、1%ピルビン酸ナトリウムを含有するDMEM/F12培地でSCC-25細胞を培養した。細胞を漸増濃度の組換えヒトIFNg(R&D Systems;カタログ番号285-IF-100)と共にインキュベートし、37℃で24時間インキュベートした。次に細胞を回収し、洗浄して、PE抗ヒトCD274(B7-H1、PD-L1)抗体(BioLegendカタログ番号393608)及びAttune NxTフローサイトメーター、Life Technologiesを使用したFACS分析によりPD-L1発現を決定した。SCC-25細胞上のPD-L1発現は、平均蛍光強度(MFI)として表した。結果を図6に示す。
【0292】
実施例7.IFNgはLoVo結腸癌細胞上のPD-L1発現を誘導する
10%FBS、1%PenStrepを含有するF12K培地でLoVo細胞を培養した。細胞を漸増濃度の組換えヒトIFNg(R&D Systems;カタログ番号285-IF-100)で処理し、37℃で24時間インキュベートした。細胞を回収し、洗浄して、PE抗ヒトCD274(B7-H1、PD-L1)抗体(BioLegendカタログ番号393608)及びAttune NxTフローサイトメーター、Life Technologiesを使用したFACS分析によりPD-L1発現を決定した。フルオロフォア対応及びアイソタイプ対応マウス抗体(BioLegendカタログ番号400113)をFACS分析の陰性対照として使用した。結果を図7に示す。
【0293】
実施例8.記憶NK細胞による腫瘍細胞の殺傷によって表面PD-L1発現が増加することから、チェックポイント阻害薬(CPI)を組み合わせる機会が開かれる
本発明者らは、トランズウェルアッセイ(Corning(登録商標)HTS Transwell(登録商標)24ウェルプレートカタログ番号3422、8um細孔径)を用いて、結腸直腸癌細胞株(LoVo)など、固形腫瘍細胞の殺傷性を試験しているが、同じ実験で、本発明者らは、LoVo細胞上でのPD-L1の発現を測定する。初めに、本発明者らは、下のチャンバでLoVo-GFPを記憶NK細胞と種々の比(エフェクター:標的(E:T)0:1、1:1、2.5:1、5:1、10:1、標的細胞数は0.6mL培養培地中25×10個に固定)で共培養した;次に100uL中25×10個のLoVo細胞が入った上のチャンバをそのウェルの中に入れた。24時間後、上のチャンバ及び下のチャンバから細胞を回収し、洗浄して、抗ヒトPD-L1抗体(PE、カタログ番号393608、クローンMIH2)及びLive-Dead固定可能近赤外色素(カタログ番号L34974)によって氷上で30分間染色した。細胞を洗浄し、200uL FACS緩衝液に再懸濁して、フローサイトメーター(Attune NxTフローサイトメーター、Life Technologies)により分析した。腫瘍細胞の生存能力は、LoVo-GFP+生細胞の%として表す。LoVo細胞上でのPD-L1発現は平均蛍光強度(MFI)として表す。結果は図8に示す。
【0294】
これらの知見は、記憶細胞の比率が大きくなると、下のチャンバ内にあるLoVo細胞の殺傷が亢進し、インターフェロンγ(IFN-γ)などのサイトカインの分泌レベルが高くなり、ひいては上のチャンバ内のLoVo細胞におけるPD-L1の表面発現が刺激されることを示唆している。癌細胞上の記憶NK媒介性PD-L1発現は、抗PD1及び抗PDL1抗体などのチェックポイント阻害薬(CPI)との組み合わせ治療の機会を切り開く。
【0295】
実施例9.記憶NK細胞をADCC能のあるmAbと組み合わせると、腫瘍細胞上のPD-L1発現が更に亢進する
本発明者らは、トランズウェルアッセイを用いて、下のチャンバでLoVo-GFPを記憶NK細胞とE:T比2:1(0.6mL完全培養培地中50×10個の記憶NK細胞:25×10個のLoVo細胞)で共培養した;次に本発明者らは、100uL中25×10個のLoVo細胞が入った上のチャンバをそのウェルの中に入れた。ADCC能のあるmAbがPD-L1発現に及ぼす影響を判定するため、本発明者らは、1ug/mlのセツキシマブ(抗EGFR抗体)又はアベルマブ(抗PD-L1抗体)、又はセツキシマブとアベルマブとの組み合わせを下側のウェルの培養培地に加えた。48時間後、本発明者らは上のチャンバからLoVo細胞を回収し、洗浄して、抗ヒトPD-L1抗体(Brilliant Violet 711、カタログ番号329722、クローン29E.2A3)によって氷上で30分間染色した。次に、細胞を洗浄し、200uL FACS緩衝液に再懸濁して、フローサイトメーター(Attune NxTフローサイトメーター、Life Technologies)により試料を分析した。上のチャンバ内のLoVo細胞上でのPD-L1発現は、PD-L1陽性細胞の割合(%)として、及び平均蛍光強度(MFI)として実証する。結果を図9に示す。
【0296】
これらの知見は、記憶NK細胞が下のチャンバのLoVo細胞を殺傷したことにより、IFNgである可能性が最も高い可溶性因子が培養培地中に放出され、それによって上のチャンバ内のLoVo細胞上でのPD-L1の発現が増加したこと、及びセツキシマブ、アベルマブ、又は両方の抗体の組み合わせを加えたことにより、それが亢進したことを実証している。
【0297】
実施例10.記憶NK細胞とのインキュベーション後又は馴化培地とのインキュベーション後にSCC-25細胞(頭頸部癌)上にPD-L1が誘導される
SCC-25細胞を記憶NK細胞と37℃及び0:1、1:1、3:1、又は9:1のE:T比で12時間、24時間、又は42時間共培養した。各時点で上清を収集し、高速でスピンして残留する細胞又は細胞デブリを全て除去し、二次馴化培養のため、新鮮なSCC-25細胞が入ったウェルに移し替えた。一次共培養の残りの細胞は酵素的に回収し、フローサイトメトリー分析に使用して、腫瘍細胞死及び表面PD-L1発現を、それぞれ、Fixable Aqua死細胞染色(Invitrogenカタログ番号34957A)及びPE抗ヒト抗体(BioLegendカタログ番号393608)で染色することにより判定した。二次馴化培養物を24時間成長させた後、細胞を回収し、一次共培養物と同じようにして分析した。結果を図10に示す。
【0298】
一次共培養物によれば、記憶NK細胞が存在した処理は、全てにおいて腫瘍細胞死が起こったことから、PD-L1発現との正の関係が示された。細胞死及びPD-L1発現の両方とも、共培養継続期間及びET比と正の協調関係にあった。しかしながら、一次培養上清中に存在するIFNgを含めた可溶性因子で新鮮なSCC-25細胞を刺激した馴化培養では、PD-L1発現のみが一次共培養物と同様の相関関係を示し、しかし細胞死は示さなかったことから、IFNgが腫瘍細胞死を引き起こさなかったことが指摘される。まとめると、これらの結果から、記憶NK細胞の誘導による細胞死が腫瘍細胞上のPD-L1発現を誘導することが指摘され、これは、記憶NKと組み合わせてADCCにアベルマブなどの抗PDL1抗体を使用することの理論的根拠を裏付けており、ここではアベルマブがT細胞上のPD1と腫瘍細胞上のPDL-1との相互作用を更に破壊するため、T細胞媒介性免疫療法が亢進する。
【0299】
実施例11.NCI-N87細胞(胃癌細胞)+記憶NK細胞の共培養物にアベルマブを加えると、ADCC機構によるNCI-N87細胞の殺傷が亢進する
蛍光標識した胃癌細胞株(NCI-N87)を30ng/mlヒト組換えIFNgで一晩前処理してPD-L1を上方制御した後、単独で培養するか、又は記憶NK細胞と共に(E:T=1:1)培養するかのいずれかで、1ug/mlのアベルマブの存在下又は非存在下に37℃で72時間培養した。蛍光腫瘍生細胞の消失として指示される腫瘍細胞死をIncuCyte S3生細胞分析機器によってモニタした。結果を図11に示す。
【0300】
アベルマブ単独では大きい腫瘍細胞死は誘導されなかったが、記憶NK細胞+NCI-N87共培養細胞にアベルマブを加えると、腫瘍細胞死が大きく亢進したことから、ADCC媒介性腫瘍殺傷が指摘される。
【0301】
上記に示した詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのに役立つよう提供される。しかしながら、本明細書に記載され及び特許請求される本発明は、本明細書に開示される具体的な実施形態によって範囲が限定されるものでなく、なぜならそれらの実施形態は、本発明の幾つかの態様の例示として意図されるためである。任意の均等な実施形態が、本発明の範囲内にあることが意図される。実際、当業者には、前述の記載から、本発明の発見の趣旨又は範囲から逸脱することのない本発明の様々な変形例が、本明細書に図示され及び記載されるものに加えて明らかになるであろう。かかる変形例もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
2024540347000001.xml
【国際調査報告】