(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 5/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A46B5/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526824
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2022080884
(87)【国際公開番号】W WO2023079121
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315010950
【氏名又は名称】ヘイリオン ユーケー アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー,ハンス
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202BA02
3B202BB04
3B202DA10
3B202DB01
(57)【要約】
取手と、少なくとも1つの洗浄ゾーンと、少なくとも1つの変形可能要素と、を有する歯ブラシであって、変形可能要素は、相対的に洗浄ゾーンに向かって配置された第1の可撓性アームと、相対的に洗浄ゾーンから離れて配置された第2の可撓性アームとを有する。変形可能要素は、第1のアームが実質的に平坦であり、取手と整列している静止位置から、第1のアームおよび洗浄ゾーンが歯列の表面の湾曲を採用する洗浄位置まで移動することができ、アームは、変形可能要素の一端で互いに接続され、変形可能要素の他端で互いから離れているくさび形を形成する。第1および第2のアームは、洗浄ゾーンに圧力が加えられると第1および第2のアームに対して傾斜可能な少なくとも2つのブリッジによって連結され、アームおよびブリッジは、空隙空間を囲む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取手(1)と、少なくとも1つの洗浄ゾーン(2)と、少なくとも1つの変形可能要素(3)と、を有する歯ブラシであって、前記変形可能要素(3)は、相対的に前記洗浄ゾーン(2)に向かって配置された第1の可撓性アーム(31)と、相対的に前記洗浄ゾーン(2)から離れて配置された第2の可撓性アーム(32)とを有し、前記変形可能要素(3)は、前記第1の可撓性アーム(31)が実質的に平坦であり、前記取手(1)と整列している静止位置から、前記第1の可撓性アーム(31)および前記洗浄ゾーン(2)が歯列(40)の表面の湾曲を適用する洗浄位置まで移動することができ、前記第1および第2の可撓性アーム(31、32)は、前記変形可能要素の一端(33)で互いに接続され、前記変形可能要素の他端(34)で互いから離れているくさび形を形成し、前記第1および第2の可撓性アーム(31、32)は、前記洗浄ゾーン(2)に圧力が加えられると前記第1および第2の可撓性アーム(31、32)に対して傾斜可能な少なくとも2つのブリッジ(35、35’、35’’)によって連結され、前記第1および第2の可撓性アーム(31、32)およびブリッジ(35、35’、35’’)は、空隙空間(36、36’、36’’、36’’’)を囲む、歯ブラシ。
【請求項2】
前記第1および第2の可撓性アーム(31、32)および前記ブリッジ(35)が、射出成形によって一体的に形成されている、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記第1および第2の可撓性アーム(31、32)および前記ブリッジ(35、35’、35’’)が、熱可塑性エラストマー(TPE)材料から作られている、請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記TPE材料が、約50~66、好ましくは約54~62、より好ましくは約56~60、最も好ましくは約58のショアD硬さを有する、請求項3に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記ブリッジ(35、35’、35’’)が、前記ブリッジ(35、35’、35’’)を前記第1および第2の可撓性アーム(31、32)に可撓的に接続するヒンジ(38)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記ヒンジ(38)が一体型ヒンジである、請求項5に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記一体型ヒンジ(38)が、前記歯ブラシの長手方向において約0.2~0.4mmの厚さを有する、請求項6に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記変形可能要素の近位端(34)における前記第1および第2の可撓性アーム(31、32)間の距離(I’’’)が、約3mm~5mm、好ましくは3.5~4.5mmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
隣り合うブリッジ間の長手方向距離(D
2、D
3)が、約5~9mm、好ましくは7~8mmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項10】
前記変形可能要素(3)が、前記洗浄ゾーン(2)の長さの150%以下、好ましくは前記洗浄ゾーン(2)の長さの130%以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項11】
前記変形可能要素(3)が、2~7個のブリッジ(35、35’、35’’)、好ましくは3~5個のブリッジ(35、35’、35’’)、最も好ましくは3個のブリッジ(35、35’、35’’)を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項12】
前記取手(1)がポリプロピレン骨格を備え、射出成形によって前記変形可能要素(3)と一体的に1つの部品に形成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項13】
前記変形可能要素(3)が、500~800%、好ましくは600~750%、より好ましくは650~700%の破断伸びを有する材料で構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項14】
前記ブリッジ(35、35’、35’’)と前記アーム(31、32)との間の角度(α)が、前記静止位置において約90°であり、前記洗浄ゾーン(2)に圧力が加えられると、約95°~110°、好ましくは約97°~105°である、請求項1から13のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯ブラシに関する。特に、本発明は、歯の表面の形状に適合させることができる洗浄ゾーンを有する歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシは公知の道具であり、一般に、歯ブラシが保持される取手と、歯洗浄要素が配置され、洗浄中に歯に対して洗浄圧力で押し付けられる洗浄ゾーン(一般に「ヘッド」として知られている)とを備える。ヘッドおよび取手は、歯ブラシの取手-ヘッドの長手方向を画定し、ヘッドと取手との間には長手方向にネックが設けられている。歯洗浄要素は通常、長手方向を横断する方向に洗浄ゾーンから突出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
国際公開第2006/089784号に開示された歯ブラシは、洗浄ゾーンと、使用者により洗浄圧力が加えられると歯の表面の形状にこの洗浄ゾーンを適合させることができる変形可能要素とを備える。歯ブラシの変形可能要素は、相対的に洗浄ゾーンへ向かって配置された第1の可撓性ウイングと、相対的に洗浄ゾーンから離れて配置された第2の可撓性ウイングとを少なくとも有し、またウイングと一体的に形成された少なくとも1つの案内要素を有し、第1および第2のウイングは、弾性材料、ゲル、または流体で少なくとも部分的に満たされたくさび状空間を保持している。この解決手段は、使用する材料およびくさび状空間への充填により、満足な変形能力を有していない。
【0004】
現在、歯の表面の形状に適合し、したがって、破損のリスクや製造の難しさを低減しながら歯を効果的に洗浄する、改良された歯ブラシに対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、取手と、少なくとも1つの洗浄ゾーンと、少なくとも1つの変形可能要素とを有する歯ブラシを提供し、前記変形可能要素は、相対的に前記洗浄ゾーンに向かって配置された第1の可撓性アームと、相対的に前記洗浄ゾーンから離れて配置された第2の可撓性アームとを有する。本発明によれば、前記変形可能要素は、前記第1のアームが実質的に平坦であり、前記取手と整列している静止位置から、前記第1のアームおよび前記洗浄ゾーンが歯列の表面の湾曲を採用する洗浄位置まで移動することができる。本発明によれば、前記アームは、一端で互いに接続され、他端で互いから離れているくさび形を形成し、前記第1および第2のアームは、前記洗浄ゾーンに圧力が加えられると前記第1および第2のアームに対して傾斜可能な少なくとも2つのブリッジによって連結され、前記アームおよびブリッジは、空隙空間を囲む。ブリッジがアームに対して傾斜可能であるため、変形可能要素は、洗浄ゾーンに圧力が加えられたときに歯列の表面の湾曲を採用することができる。変形可能要素内のアームおよびブリッジの配置は、結合組織によって連結されたくさび形に配置された2つの骨を有する魚のヒレの構造を想起させる。魚のヒレの分析に着想を得て、生物学者のレイフ・クニーゼ(Leif Kniese)は、ヒレのような構造に力を加えると、基部および先端が加えられた力に向かって変形する、フィンレイ(登録商標)効果(FIN RAY effect)を発見した。この技術は、すなわちロボットグリッパに使用されてきたが、口腔衛生全般の領域や歯ブラシ全般には使用されていない。アームとブリッジとの間に空隙空間を含めることにより、本発明の変形可能要素が洗浄位置において加えられた負荷に向かって容易に曲がることが可能になる。変形可能要素内に空隙空間を提供することによって、歯ブラシの製造の複雑性も低減される。これは、この特徴が、空隙を弾性材料、ジェル、または流体で満たすなどの付加的な製造工程の必要性を取り除くからである。
【0006】
一実施形態では、前記アームおよび前記ブリッジが、射出成形によって一体的に形成されている。これは、製造を特に効率的にし、使用中のアームとブリッジとの分離のリスクを低減する。
【0007】
一実施形態では、前記アームおよび前記ブリッジが、熱可塑性エラストマー(TPE)材料から作られている。TPEは、所望の可撓性および固体性を提供する熱可塑性およびエラストマー性の両方の特性を有する高分子材料の種類である。
【0008】
好ましい実施形態によれば、前記TPE材料が、約50~66、好ましくは約54~62、より好ましくは約56~60、最も好ましくは約58のショアD硬さを有する。このようなTPE材料の使用は、洗浄ゾーンに力が加えられたときに洗浄位置に移動するために十分な可撓性を変形可能要素に与える一方で、大きな規模での製造の容易さも提供する。さらに、ゲルパッドへの確実な接着を得ることができる。
【0009】
一実施形態では、前記ブリッジが、前記ブリッジを前記アームに可撓的に接続するヒンジを有する。このようなヒンジは、必要な傾斜を可能にする。好ましくは、ブリッジとアームとの間の角度が静止位置において約90°であり、洗浄ゾーンに圧力が加えられ、ブリッジがアームに対して傾斜すると、角度は約95°~110°、好ましくは約97°~105°に増大する。
【0010】
好ましい実施形態によれば、前記ヒンジは一体型ヒンジであり、すなわち、ヒンジは、製造プロセス中に、接続するアームおよびブリッジと一体的に形成され、好ましくは射出成形プロセス中に同じ材料から作られる。これは、傾斜角度および製造の容易さの点で特に有利であり、破損のリスクを低減する。
【0011】
好ましい実施形態によれば、前記一体型ヒンジが、前記歯ブラシの長手方向において約0.2~0.4mmの厚さを有する。これは、一体型ヒンジが必要とされる可撓性を有する一方で、破損のリスクも最小限に抑えるので有利である。これは、54~62のショアD硬さを有するTPE材料を使用する場合に特に有利である。
【0012】
一実施形態では、前記変形可能要素の近位端における前記アーム間の距離が、約3mm~5mm、好ましくは3.5mm~4.5mmである。これは、破損のリスクを低減し、洗浄の効率を高め、洗浄中に使用者の口に快適に適合するために十分にコンパクトであるため、有利である。
【0013】
一実施形態では、ブリッジ間の長手方向距離が、約5~9mm、好ましくは7~8mmである。さらに、歯ブラシのヘッドの先端に最も近いブリッジと先端との間の長手方向距離も、好ましくは5~9mm、好ましくは7~8mmである。好ましくは、取手に最も近いブリッジと変形可能要素の端部との間の長手方向距離、すなわち、歯ブラシの取手に最も近い空隙の長さは、好ましくはブリッジ間の長手方向距離よりも小さく、例えば、5~6mmである。様々な試験により、これらの寸法が、すなわち3個のブリッジの使用との併用で、変形性および洗浄性能の点で最適な結果をもたらすことが示されている。
【0014】
一実施形態では、前記変形可能要素が、前記洗浄ゾーンの長さの150%以下、好ましくは前記洗浄ゾーンの長さの130%以下である。消費者テストでは、過度に長い変形可能要素が使用者の口内に不快な感覚を生じることが示されている。洗浄ゾーンの長さの130%以下である変形可能要素はまた、成形製造プロセスの難しさおよび使用中の破損の可能性を低下させる。
【0015】
一実施形態では、前記変形可能要素が、2~7個のブリッジ、好ましくは3~5個のブリッジ、最も好ましくは3個のブリッジを有する。3個未満のブリッジでは所望の変形特性を提供しないことがわかっており、すなわち、変形可能要素は、2個のブリッジのみでは依然として剛性が高すぎる。一方、消費者テストでは、消費者が、歯ブラシの変形可能要素内に過度に多くのブリッジを有することを好まないことが示されている。過剰な数のブリッジは、多くの場合、より長い変形可能要素も必要とするが、ブラッシング中に不快な感覚を生じる。追加のブリッジに伴うより大きな空隙空間はまた、練り歯磨きで満たされやすく、したがって、追加のブラッシング後の洗浄を必要とし得る。3個のブリッジを有する歯ブラシが好ましいが、これは、このような歯ブラシが、使用者の不快感および空隙空間のサイズを最小限に抑えながら、すなわち洗浄特性の点で最適な機能性を有するからである。
【0016】
一実施形態では、前記取手がポリプロピレン骨格を備え、射出成形によって前記変形可能要素と一体的に1つの部品に形成されている。
【0017】
一実施形態では、前記変形可能要素が、500~800%、好ましくは600~750%、より好ましくは650~700%の破断伸びを有する材料、好ましくはTPEで構成されている。この特性を有する材料は、必要とされる可撓性を提供し、使用中の破損のリスクを低減する。
【0018】
別の好ましい実施形態では、変形可能要素が、25~36MPa、好ましくは30~33MPa、より好ましくは31~32MPaの引張強度を有する材料、好ましくはTPEで構成されている。引張強度は、接着特性および物理的特性に影響を及ぼし、これらの範囲内の数値は、変形可能要素のゲルパッドへの接着性に関して、および破損のリスクに関して、最良の成果をもたらした。
【発明の効果】
【0019】
本発明の歯ブラシは、カスケード射出成形プロセスによって形成される。金型内の単一のキャビティにTPEを射出して変形可能要素およびネック領域を形成し、一方でポリプロピレン(PP)を射出して取手領域用の骨格を製造する。所望の表面感触およびグリップを提供するために、異なるTPE材料がPP骨格の上部または周囲に射出される。変形可能要素および取手のTPEおよびPP材料は、接触ゾーンにおいて互いに混合され、使用される全ての材料は、このバイインジェクション成形プロセス(bi-injection moulding process)において、他の材料と互いに接着する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】使用されていないときの歯ブラシのネックおよびヘッド部の側面図を示す。
【
図2】歯列のブラッシング中の歯ブラシのネックおよび洗浄ゾーンの側面図を示す。挿入図は、歯ブラシのブリッジおよびヒンジの詳細図を示す。
【
図3】歯ブラシの側面切断図を示し、切断部は洗浄ゾーン-取手の長手方向に沿っている。
【
図4】
図3の図に垂直な平面に沿った、静止位置における歯ブラシのヘッドを通る切断図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の実施形態による歯ブラシのヘッドおよびネック部の側面図を示す。歯ブラシは、洗浄ゾーン2および変形可能要素3で構成されているヘッド5と、ヘッド5を取手1(
図4参照、
図1には図示せず)に連結する歯ブラシのネック12とを備える。洗浄ゾーン2は、洗浄要素21を保持するゲルパッド22を有する。描かれている歯ブラシの洗浄要素21は、歯ブラシでは一般的なように、房状に配置された剛毛(房は図には示されていない)である。ゲルパッド22は、洗浄ゾーン2-取手1の長手方向において幅12mmおよび長さ27mm程度であり、ショアA硬さ28を有するTPE材料、すなわち、可撓性のあるゲル型材料から作られている。
【0022】
変形可能要素3は、洗浄ゾーン2が載置される第1の可撓性アーム31を有し、可撓性アーム31の表面にはゲルパッド22が配置されている。さらに、変形可能要素3は、相対的に洗浄ゾーン2から離れて配置された第2の可撓性アーム32を有する。第1および第2のアーム31、32は、くさび形(V字形)を形成し、これにより、アームは、遠位端33において互いに接続され、変形可能要素3の近位端34において、ネックゾーン12および取手1に対して互いから離れている。変形可能要素3の近位端34における第1および第2のアーム31、32の間の距離I’’’は、約3.5mm程度である。第1および第2のアーム31、32は変形可能要素3の遠位端33に向かって収束するので、アーム間の距離は、
図1のI、I’およびI’’によってそれぞれ示すように減少する。第1および第2のアーム31、32は、取手1の長手方向に垂直な方向に延びる3個のブリッジ35、35’、35’’によって互いに接続されている。各ブリッジ35、35’、35’’は、一体型ヒンジ38を介して第1および第2の可撓性アーム31、32に連結され、一体型ヒンジ38は、
図2に描かれた洗浄位置に示すように、ブリッジが第1および第2のアーム31、32に対して傾斜することを可能にする。ブラッシング中に洗浄ゾーンに圧力が加えられると、ブリッジ35、35’、35’’が傾斜し、これによって変形可能要素3の湾曲を引き起こし、2本の可撓性アーム31、32がそれらの近位端34において互いに近づく。これによって、歯ブラシのヘッド5の洗浄ゾーン2は歯列40の湾曲を採用し、これは、複数の歯にわたってより均一に圧力が加えられ、歯肉の炎症のリスクを減らすことにつながる。ブリッジ35、35’、35’’は、取手1の軸の長手方向軸を横断する方向に、アーム31、32の間の距離I、I’、I’’、およびI’’’と平行な長さを有し、これは遠位のブリッジ35から近位のブリッジ35’’まで増加し、これらの長さは約2mm~3.5mmの範囲である。アーム31、32およびブリッジ35、35’、35’’は、複数の空隙空間36、36’、36’’、36’’’を囲む(
図1および2参照)。取手1の長手方向におけるこれらの空隙空間36、36’、36’’、36’’’の長さは、5~8mmの間であり、
図1にD1、D2、D3およびD4として示されている。ヘッド5の先端33により近い、3つの遠位の空隙36、36’、36’’は、長さD1、D2、D3と同様または等しく、全てが洗浄ゾーン2の下方に延びているが、近位の空隙36’’’は、より短い長さD4を有し、ネック12に向かって洗浄ゾーン2を越えて延びている。変形可能要素3の近位端34とS字屈曲ゾーン14との間の領域を本明細書ではネック12と呼ぶ。S字屈曲ゾーン14は、消費者にとって望ましい設計要素としての機能を果たし、本発明の歯ブラシに追加の機能性、特に可撓性の増加を提供しない。
【0023】
図2は、歯列40の表面のブラッシング中、すなわち、洗浄に圧力が加えられたときの、歯ブラシのネック12およびヘッド5の側面図を示す。ゲルパッド22に取り付けられた洗浄要素21は、ブラッシング中に歯列40の表面に接触し、洗浄ゾーン2に力を加え、すでに上述したように、変形可能要素3に歯列40の表面の湾曲を採用させる。挿入図は、変形可能要素3のブリッジ35’’の1つの詳細図を示す。ブリッジ35’’は、図中w
2で示すように、取手方向の長手方向において約0.9mmの厚さを有する。詳細図は、ブリッジ35’’が2つのヒンジ38を介して2本の可撓性アーム31、32に接続されていることを示している。これらのヒンジ38は、挿入図に示すブリッジ35’’と一体的に形成されており(3つのブリッジ35、35’、35’’全てについて同様)、図中w
1で示すように、厚さが約0.3mmである。一体型ヒンジ38は、ブリッジ35、35’、35’’を第1および第2のアーム31、32に可撓的に接続するため、変形可能要素3は、すでに上記で説明したように、使用者によって力が加えられたときに、歯列40の表面の湾曲を採用することができる。変形可能要素3が加えられた力を受けて変形すると、ブリッジ35、35’、35’’のヒンジ38は、第1および第2のアーム31、32に対して角度αで傾斜し、角度αは、圧力が加えられていないときの90°から、圧力が加えられたときの洗浄中の120°まで、好ましくは110°まで変化する。
【0024】
図3は、歯ブラシの側面切断図を示し、切断部は取手1の長手方向に沿っており、ゲルパッド22の平面に垂直である。歯ブラシは、カスケード射出成形プロセスによって形成され、それによって、金型内の単一のキャビティにTPE材が射出されて変形可能要素3およびネック12の一部が形成される。変形可能要素に使用されるTPE材料は、約50~66、好ましくは約54~62、より好ましくは約56~60のショアD硬さを有する。図に示すこの好ましい実施形態では、ショアD硬さは約58である。S字屈曲ゾーン14の下方に取手1の骨格を製造するために、ポリプロピレンPPが射出され、両方の材料がS字屈曲ゾーン14内で混合される。TPEおよびPPは、このバイインジェクション成形プロセスにおいて互いに接着する。
【0025】
図4は、ブリッジ35、35’、35’’に垂直であり、それらを貫通する平面を通るヘッド5の切断部を示し、歯ブラシは静止位置にあり、すなわち、ゲルパッド22は平坦である。変形可能要素3は、
図1および2に示すように、ネック12および取手1に対して近位端34に向かう約7.2mmのw
5で示す幅を有し、w
5は、遠位端33に向かって延びるにつれてわずかに狭くなる。変形可能要素3の3つのブリッジ35、35’、35’’は、丸みを帯びた縁部を有する矩形断面を有する。
図2に示すように、取手1の長手方向におけるブリッジ35、35’、35’’の幅は、約0.3mmであり、ここではw
2として示されている。横断方向におけるブリッジ35の幅は、約4.4~5mmの間であり、ここではw
4、w
4’、およびw
4’’で示されている。ゲルパッド22は、背面図において変形可能要素3の後ろに位置して示されている。ゲルパッド(22)は、丸みを帯びた端部を有するカプセル形状を有し、取手1に垂直な方向に変形可能要素3の幅を越えて延びる幅を有する。変形可能要素3は、射出成形によって1つの部品として製造され、熱可塑性エラストマー(TPE)材料から作られる。
【0026】
変形可能要素に使用されるTPE材料は、上述のように、58のショアD硬さを有する。さらに、TPE材料は、25~36MPa、好ましくは30~33MPa、より好ましくは31~32MPaの引張強度を有する。図に示す好ましい実施形態では、TPE材料は約31MPaの引張強度を有する。変形可能要素に使用されるTPO材料は、さらに、好ましくは500~800%、好ましくは600~750%、より好ましくは650~700%の破断伸びを有する。この好ましい実施形態において、TPO材料は686%の破断伸びを有する。破断伸びはISO37標準試験を用いて測定したが、標準試験プロコトルから逸脱して、標準試験片S2を200mm/分の移動速度で試験した。取手1の骨格に使用されるPP材料は、歯ブラシの取手に頻繁に使用されるので、従来のPP材料である。
【国際調査報告】