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特表2024-540357プレリチウム化されたカソードを有する充電可能リチウムセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】プレリチウム化されたカソードを有する充電可能リチウムセル
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20241024BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241024BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/66 A
H01M4/587
H01M10/0567
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526831
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 US2022046361
(87)【国際公開番号】W WO2023080998
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/275,054
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513089291
【氏名又は名称】パシフィック インダストリアル デベロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,ユハオ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェフスキー,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ウェイ
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS10
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ15
5H029HJ02
5H029HJ18
5H029HJ19
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050GA16
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
電気化学セルで使用されるセルは、正極と、負極と、不燃性有機電解質か、重合体(polymeric)電解質又はゲル電解質か、無機電解質か、又は、これらの組み合わせとを備えている。正極は、集電体と、プレリチウム化されたカソード活物質と、任意の追加のカソード活物質とを有し、プレリチウム化されたカソード活物質は、Li1+xMnの式F-1に従い、ここで、xは0.1~1.0の範囲である。負極は、集電体と、無視できる容量を示す任意の炭素質材料を有し、ここで、無視できる容量は、炭素質材料とプレリチウム化されたカソード活物質との間の可逆容量比が0.1以下であると定義される。不燃性有機電解質、重合体(polymeric)電解質、ゲル電解質、無機電解質は、リチウムイオンを伝導するように構成されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能な電気化学セルであって、該電気化学セルは、
正極であって、
該正極は、集電体と、プレリチウム化されたカソード活物質とを有し、
前記プレリチウム化されたカソード活物質は、Li1+xMnと、Li1+xNi0.5Mn1.5と、Li1+xNiOと、Li1+xCoOと、Li1+xNiCoMnAlとのうちの1つ以上を含み、
ここで、xは0.1~1.0の範囲であり、a+b+c+d=1、a≧0.5、0≦b≦0.3、0≦c≦0.3、0≦d≦0.05である、
正極と、
負極であって、
該負極は、集電体と、無視できる容量を該負極が示すことを条件とする選択的な材料とを有する、
負極と、
リチウムイオンを伝導するように構成された不燃性電解質と
を備える、
充電可能な電気化学セル。
【請求項2】
請求項1に記載のセルであって、
前記カソード活物質のxは、0.1~0.7の範囲である、
セル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセルであって、
前記カソード活物質のxは、0.3~0.5の範囲である、
セル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のセルであって、
前記カソード活物質は、Li1+xMnである、
セル。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のセルであって、
前記正極は、追加のカソード活物質をさらに有し、
これにより、前記プレリチウム化されたカソード活物質と前記追加のカソード活物質の混合物は、質量比において、100:0よりも大きく10:90以下の範囲にある、
セル。
【請求項6】
請求項5に記載のセルであって、
前記プレリチウム化されたカソード活物質と前記追加のカソード活物質の混合物の質量比は、100:0よりも大きく、51:49までの範囲である、
セル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のセルであって、
前記負極の前記集電体の物質は、Cu、Fe、Ni、又はこれらの混合物又は合金を含む、
セル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のセルであって、
前記正極又は前記負極又はその両方の前記集電体は、銀、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、又はこれらの組み合わせを含む、
セル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のセルであって、
前記負極は、前記選択的な材料を有し、
前記選択的な材料は、炭素質材料を含み、
前記炭素質材料では、前記無視できる容量は、前記選択的な材料と前記プレリチウム化されたカソード活物質との間の可逆容量比が0.1以下であることとして定義される、
セル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のセルであって、
1つ又は複数の前記正極及び前記負極の前記集電体は、リチウムとの合金を形成可能な金属を少なくとも1つ有する、
セル。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のセルであって、
前記電解質は、不燃性有機電解質か、重合体(polymeric)電解質又はゲル電解質か、無機電解質か、又は、これらの組み合わせである、
セル。
【請求項12】
請求項11に記載のセルであって、
前記電解質は、不燃性ゲル電解質である、
セル。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のセルであって、
前記セルは、3.0mAh/cm以上の面積当たりの可逆カソード容量負荷を有する、
セル。
【請求項14】
請求項13に記載のセルであって、
前記セルは、4.5mAh/cm以上の面積当たりの可逆カソード容量負荷を有する、
セル。
【請求項15】
電気自動車で使用する電池パックであって、
請求項1~14のいずれか1項に記載の複数のセルを備え、
前記複数のセルは、全体的な容量を増加させるために、直列構成又は並列構成で配置されている、
電池パック。
【請求項16】
充電可能な電気化学セルであって、該電気化学セルは、
正極であって、
該正極は、集電体と、プレリチウム化されたカソード活物質と、任意の追加のカソード活物質とを有し、
前記プレリチウム化されたカソード活物質は、Li1+xMnの式F-1に従い、ここで、xは0.1~1.0の範囲である、
正極と、
負極であって、
該負極は、集電体と、無視できる容量を示す任意の炭素質材料を有し、
ここで、無視できる容量は、前記炭素質材料と前記プレリチウム化されたカソード活物質との間の可逆容量比が0.1以下であると定義される、
負極と、
不燃性有機電解質か、重合体(polymeric)電解質又はゲル電解質か、無機電解質か、又は、これらの組み合わせと
を備えており、、
前記不燃性有機電解質、前記重合体(polymeric)電解質、前記ゲル電解質、前記無機電解質は、リチウムイオンを伝導するように構成されている、
充電可能な電気化学セル。
【請求項17】
請求項16に記載のセルであって、
前記プレリチウム化されたカソード活物質と前記追加のカソード活物質は、質量比において、100:0よりも大きく10:90以下の範囲にある、
セル。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のセルであって、
前記追加のカソード活物質は、LiMnである、
セル。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか1項に記載のセルであって、
1つ又は複数の前記正極及び前記負極の前記集電体は、リチウムとの合金を形成可能な金属を少なくとも1つ有する、
セル。
【請求項20】
請求項16~19のいずれか1項に記載のセルであって、
前記セルは、3.0mAh/cm以上の面積当たりの可逆カソード容量負荷を有する、
セル。
【請求項21】
請求項16~20のいずれか1項に記載のセルであって、
前記Li1+xMnは、有機溶媒中のLiMnをプレリチウム化試薬でリチウム化することによって調製される、
セル。
【請求項22】
請求項21に記載のセルであって、
前記プレリチウム化試薬は、リチウムナフタレン又はヨウ化リチウムである、
セル。
【請求項23】
請求項21又は22に記載のセルであって、
前記プレリチウム化試薬は、Li/Li+に対して0.3V~2.8Vの範囲の還元電位を有する、
セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月3日に出願された米国仮出願第63/275,054号の、合衆国法典第35巻第119(e)条に基づく出願日の利益を主張する。この米国特許仮出願の内容の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、概して、充電可能な電池に関する。
より具体的には、本開示は、充電可能な電池に使用するための電気化学セルの「アノードフリー」設計について記載する。
【背景技術】
【0003】
本節の記載は、本開示に関連する背景情報を提供するものにすぎず、先行技術を構成しうるものではない。
【0004】
電気自動車(Electric vehicle、EV)は、内燃機関(Internal Combustion Engine、ICE)を搭載した車両に取って代わる可能性のある、次世代の車両になりつつある。電気自動車(EV)の主要部品は電池である。この電池は、車両のコスト、走行距離、安全性の大きな部分を占める。必要なエネルギー量を提供するために、EVで使用される電池は、通常は、複数のセルで構成されている。多くの場合、電池に使用されるセルの数は、数百個から数千個に及ぶ場合がある。充電が必要になるまでの車両の走行距離を伸ばし、且つ、車両の全体的な安全性を向上させるためには、個々のセルレベルでの電池のエネルギー密度と安全性を向上させる必要がある。
【0005】
EV用途で使用される従来のリチウムイオンセルは、アノード(例えばグラファイト等)、カソード(例えばリチウム金属酸化物/リン酸塩等)、LiPFを含む有機電解質を備えている。従来のセルの問題点の1つは、熱暴走時に火災を引き起こす可能性があることであり、これは主に有機電解質とグラファイトアノードとの相互作用に起因する。さらに、アノードに使用されるグラファイト活物質は、限られた量の比容量(すなわち、理論値=372mAh/g)しか示さないため、セルのエネルギー密度が制限される。全体的な安全性を向上させ且つエネルギー密度を増やすために、電池業界は、固体電解質を含む不燃性電解質を使用するリチウム金属セルの開発に関心を持っている。しかし、このタイプのセルの商業化には多くの課題がある。
【0006】
これらの課題の1つは、サイクル中にセルのアノード側で失われるリチウムを補うために、薄いリチウム箔をアノードとして使用することによるコストの増加である。これらの薄いリチウム箔は、一般的に20マイクロメートル(μm)以下であり、リチウム金属の柔らかさと高い反応性のために製造が困難で高価である。
【0007】
製造コストを削減するためには、薄いリチウム金属箔を使用することを避け、「アノードフリー」設計を利用する必要がある。しかし、「アノードフリー」設計のセルは、一般的にサイクル容量が良くない。これは、サイクル中に発生するセルのアノード側のリチウム損失を継続的に補充するリチウムが、存在しないか、少なくとも不十分であるためである。したがって、サイクル中に発生するリチウム損失を補うために、薄いリチウム箔の利用と同様に、アノード集電体にリチウムを供給することができる、低コストの「アノードフリー」電池の開発が継続的に求められている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、概して、充電可能電池に使用するための電気化学セルの「アノードフリー」設計に関する。この充電可能な電気化学セルは、正極と、負極と、リチウムイオンを伝導するように構成された不燃性電解質とを備える。正極は、集電体と、プレリチウム化されたカソード活物質とを有し、プレリチウム化されたカソード活物質は、Li1+xMnと、Li1+xNi0.5Mn1.5と、Li1+xNiOと、Li1+xCoOと、Li1+xNiCoMnAlとのうちの1つ以上を含み、ここで、xは0.1~1.0の範囲であり、a+b+c+d=1、a≧0.5、0≦b≦0.3、0≦c≦0.3、0≦d≦0.05である。負極は、集電体と、無視できる容量を負極が示すことを条件とする選択的な材料とを有する。このセルは、3.0mAh/cm以上の面積当たりの可逆カソード容量負荷を有してもよい。或いは、4.5mAh/cm以上を有してもよい。望ましい場合は、カソード活物質は、xの範囲を0.1~0.7としてもよい。或いは、0.3~0.5としてもよく、又は、カソード活物質は、Li1+xMnの組成を有してもよく、又は、その両方であってもよい。
【0009】
正極は、追加のカソード活物質をさらに有し、これにより、プレリチウム化されたカソード活物質と追加のカソード活物質の混合物は、質量比において、100:0よりも大きく10:90以下の範囲にあってもよい。或いは、質量比は、100:0よりも大きく、51:49までの範囲にある。
【0010】
負極の集電体の物質は、Cu、Fe、Ni、又はこれらの混合物又は合金を含んでもよい。正極又は負極又はその両方の集電体は、銀、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、又はこれらの組み合わせを含む。1つ又は複数の正極及び負極の集電体は、リチウムとの合金を形成可能な金属を少なくとも1つ有してもよい。
【0011】
負極の選択的な材料は、炭素質材料を含んでもよく、炭素質材料では、無視できる容量は、選択的な材料とプレリチウム化されたカソード活物質との間の可逆容量比が0.1以下であることとして定義される。
【0012】
電解質は、不燃性有機電解質か、重合体(polymeric)電解質又はゲル電解質か、無機電解質か、又は、これらの組み合わせであってもよい。或いは、電解質は、不燃性ゲル電解質である。
【0013】
本開示の別の態様によれば、電気自動車で使用する電池パックが提供される。電池パックは、前述し且つここでさらに定義する複数のセルを備えてもよい。複数のセルは、全体的な容量を増加させるために、直列構成又は並列構成で配置されている。
【0014】
本開示の別の態様によれば、充電可能な電気化学セルが提供される。電気化学セルは、通常、正極と、負極と、不燃性有機電解質か、重合体(polymeric)電解質又はゲル電解質か、無機電解質か、又は、これらの組み合わせとを備えている。正極は、集電体と、プレリチウム化されたカソード活物質と、任意の追加のカソード活物質とを有し、プレリチウム化されたカソード活物質は、Li1+xMnの式F-1に従い、ここで、xは0.1~1.0の範囲である。負極は、集電体と、無視できる容量を示す任意の炭素質材料を有し、ここで、無視できる容量は、炭素質材料とプレリチウム化されたカソード活物質との間の可逆容量比が0.1以下であると定義される。不燃性有機電解質、重合体(polymeric)電解質、ゲル電解質、無機電解質は、リチウムイオンを伝導するように構成されている。
【0015】
プレリチウム化されたカソード活物質と追加のカソード活物質は、質量比において、100:0よりも大きく10:90以下の範囲にあってもよい。望ましい場合は、追加のカソード活物質は、LiMnである。
【0016】
セルにおける、1つ又は複数の正極及び負極の集電体は、リチウムとの合金を形成可能な金属を少なくとも1つ有してもよい。セルは、3.0mAh/cm以上の面積当たりの可逆カソード容量負荷を有してもよい。
【0017】
このセルでは、Li1+xMnは、有機溶媒中のLiMnをプレリチウム化試薬でリチウム化することによって調製される。プレリチウム化試薬は、リチウムナフタレン又はヨウ化リチウムであってもよい。プレリチウム化試薬は、Li/Li+に対して0.3V~2.8Vの範囲の還元電位を有してもよい。
【0018】
適用可能なさらなる分野は、ここで与えられる説明から明らかになるであろう。なお、説明及び具体的な例は、説明のみを目的としており、本開示の範囲を制限することを意図したものではない。
【0019】
以下においては、本開示が十分に理解されるように、添付の図面を参照して、例示した本開示の様々な形態を説明する。各図面の構成要素は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、むしろ本発明の原理を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1Aは、アノード、カソード、電解質、及びセパレータを備える電気化学セルの模式図である。
図1B図1Bは、本開示の教示における「アノードフリー」設計の電気化学セルの模式図である。
図1C図1Cは、本開示の「アノードフリー」設計における別の電気化学セルの模式図である。
図2図2は、本開示の教示に従って調製及び使用された、元のLiMnとプレリチウム化されたLi1.3MnのX線回折(XRD)パターンのグラフによる比較である。
図3図3は、本開示の教示に従って、元のLiMn又はプレリチウム化されたLi1.3Mnのカソードを含むセルの、初回の充放電サイクルの比容量の関数としての電圧のグラフプロットである。
図4図4は、本開示の教示に従って、プレリチウム化されたLi1.3Mnと元のLiMnのカソードを含む「アノードフリー」セルの、サイクル安定性の差のグラフプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に記載する図面は、図解の目的のみのものであり、本開示の範囲を限定することが意図されるものでは決してない。説明及び図面全体を通して、対応する参照符号は、類似の又は対応する部分及び特徴を示すことを理解されたい。
【0022】
以下の記載は、本質的に例示にすぎないものであり、いかなる方法においても本開示やその応用又は用途を限定することを意図するものではない。例えば、本明細書に記載された教示に従って調製且つ使用される「アノードフリー」電気化学セルは、電気自動車(EV)で使用するための電池セルとして、本開示全体を通して説明されるものであり、その目的は、各構造要素とその使用をより完全に例示説明するためである。このような「アノードフリー」電気化学セルを他の用途に組み込んで使用することは、「二次電池」等の他の充電可能電池のセルとして限定されることなく、且つ、本開示の範囲内であると考えられる。
【0023】
本明細書で使用される「電池セル」又は「セル」は、電池の基本的な電気化学的装置を指すものであり、電極と、セパレータと、電解質とを含む。対照的に、「電池」又は「電池パック」とは、セルの集合体、例えば1つ又は複数のセルを指し、この電池は、筐体と、電気的な接続と、場合によっては制御及び保護用の電子機器とを備えるものである。
【0024】
本開示の目的上、「約」及び「実質的に」という語は、本明細書においては、測定可能な値及び範囲に関して使用されるものであり、これは、当業者には既知の予想される変動(例えば、測定の限界及び変動性)に起因する。
【0025】
本開示の目的上、ある要素の「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数」という場合は、これらの語は入れ替えて使用することができ、同じ意味を有する場合がある。単数の要素又は複数の要素を包含することを指すこれらの語は、要素の末尾に接尾語「(複数形)」で表すこともできる。例えば、「少なくとも1つの金属」、「1つ又は複数の金属」、及び「金属(複数形)」は、入れ替えて使用することができ、同じ意味を有することが意図される。
【0026】
図1Aに示すように、リチウムイオン電池の二次電池等の従来の電気化学セル1は、一般に、活物質(カソード)5及び集電体7を含む正極10と、リチウムイオン35を含む非水系電解質30と、セパレータ25と、活物質(アノード)15及び集電体17を含む負極20とを備える。これらの構成要素は全て、ケース、エンクロージャ、ポーチ、バッグ、円筒状のシェル等に密封されている(一般に電池の「筐体」と呼ばれる)。セパレータ25は、カソード5をアノード15から電気的に絶縁しながら、リチウムイオンがそれらの間を流れることを可能にする。イオンの流れは、セパレータ(すなわち、固体状態の反応機構を介して)によって導通されてもよく、又は、セパレータ25(膜など)の多数の孔に浸透する液体電解質30が存在することによって導通されてもよい。
【0027】
本開示は、概して、「アノードフリー」設計を有する充電可能リチウムセルにおける、プレリチウム化されたカソード活物質の使用を提供する。図1B及び1Cを参照すると、アノードフリー設計では、電気化学セル1は、集電体7と活物質(カソード、プレリチウム化されたLiMn等)5を有する正極10で構成されており、セル1の負極20側は、通常、集電体17のみを有する。
【0028】
正極10の集電体7は、リチウム電池の電極に使用するために当該技術分野で知られている任意の金属で作製することができ、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、銅、炭素、亜鉛、ガリウム、銀、及び、これらの組み合わせ又はこれらからなる合金が挙げられるが、これらに限定されない。負極20で使用される集電体17は、リチウムイオンと反応しない金属箔であってもよい。このような金属箔のいくつかの例としては、Cu、Fe、Ti、Ni、Mo、W、Zr、Mn、炭素、及びリチウム金属合金が挙げられるが、これらに限定されない。或いは、負極20の集電体17用の金属箔は、Cu、Fe、Ni、又は、これらの混合物又は合金を含む。
【0029】
望ましい場合、「アノードフリー」設計の集電体17は、選択的な材料を含んでもよく、その結果得られる負極20はリチウムイオンと反応することができる。ただし、選択的な材料から形成された基板は、サイクル中にその形状と完全性を維持することができ、非常に低い又は無視できる容量を示す必要がある。選択的な材料を使用して形成されるこのような基板のいくつかの例としては、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維等の炭素質材料で形成された基板が挙げられるが、これらに限定されない。これらの基板は、面積当たりの容量負荷が低く、選択的な材料とカソード活物質の可逆容量比が1:10以下となるようなものである。選択的な材料とカソード活物質の容量比が高い場合、例えば1:1の場合、セルは、より従来のグラファイトのようなセルを表し、アノード活物質を含み、セルの負極側の体積又は質量又はその両方に関して何の利点ももたらさない。「アノードフリー」セルに関連する主な利点は、セルの製造中に集電体にアノード活性層を予め堆積させないことによって、電極の体積又は質量又はその両方をなくすか、少なくとも大幅に削減することである。体積又は質量又はその両方のこの削減は、図1A図1B及び1Cの比較で明らかである。
【0030】
引き続き図1B及び1Cを参照すると、正極10のカソード活物質5は、一般に、F-1に示す化学式を有するプレリチウム化された物質を含む。
Li1+xMn (F-1)
ここで、xは、0.1≦x≦1.0の範囲内である。市販されているLiMnは、一般的にわずかに余分なリチウムを有するように形成されており、通常は最大5%であり、製造工程中に失われるリチウムの量を補うために常に10%よりも大幅に少ない。プレリチウム化されたカソード活物質5を本開示の「アノードレス」セル1で使用するためには、余分なリチウムの量は少なくとも10%以上である必要がある。この場合にのみ、アノードに利用可能な余分なリチウムの量があり、セル1に関連するサイクル寿命を改善又は向上させることができる。これは、例えば、式F-1でx≧0.1となるように、市販されているLiMn中の余分なリチウムの量を増やす必要があることを意味する。
【0031】
式F-1(Li1+xMn)に従ったプレリチウム化された活物質を使用することに加えて、本開示の範囲を超えずに、他のプレリチウム化されたリチウム金属酸化物系物質も単独で又は式F-1の物質と組み合わせて、「アノードフリー」セル設計で使用することができる。これらの他のプレリチウム化されたリチウム金属酸化物系物質としては、Li1+xNi0.5Mn1.5、Li1+xNiO、Li1+xCoO、又はLi1+xNiCoMnAl(x≧0.1、a+b+c+d=1、a≧0.5、0≦b≦0.3、0≦c≦0.3、及び0≦d≦0.05)が挙げられるが、これらに限定されない。セルは、3.0mAh/cm以上の面積当たりの可逆カソード容量を有する必要がある。或いは、4.5mAh/cm以上を有する必要がある。
【0032】
プレリチウム化されたカソード活物質5に10%~100%の余分なリチウムを組み込むと、LiMnの結晶構造がスピネルから正方晶系に変化し、これはサイクル中にスピネルに戻すことができる。プレリチウム化されたカソード活物質5中のリチウム含有量が高すぎる場合(すなわち、式F-1でx>1.0)、充電中にスピネル結晶相に容易に戻すことができない非正方晶系の結晶相が形成され、セル1の可逆容量が低下する。
【0033】
「アノードフリー」セル1の場合、式F-1に対応するもの等のプレリチウム化されたカソード活物質5を含むが、クーロン効率(Coulombic Efficiency、CE)は、以下の表1に示すように、理論的に約91%~50%の範囲であると計算される。電解質との副反応により初回のサイクル中に失われる不可逆容量のため、「アノードフリー」セル1の実際のCEは、計算された理論値よりもわずかに低いと予想される。溶液処理で調製されたLi1.3Mnの組成を有するプレリチウム化されたカソード活物質を使用して形成された「アノードフリー」セル1は、計算された理論値よりも約10%低い67%のクーロン効率(CE)を示した。
【0034】
表1:式F-1:Li1+xMn(0.1≦x≦1.0)に従ったプレリチウム化されたカソード活物質の初回サイクルCEの理論計算
【0035】
【0036】
表1に示すように、カソード活物質のリチウム含有量が増加すると、初回サイクルCEが減少する。この容量の損失は、高リチウム含有量(例えば、xが1.0に近い)を含む酸化物が、空気中で保管された際に容易に水分を吸収できることに起因する。この場合、プレリチウム化されたカソード活物質に使用するために、物質をより容易に処理できるよう、適度な量のリチウムが好ましい。したがって、プレリチウム化されたカソード活物質中のリチウムの量は、0.1≦x≦0.7の範囲であることが好ましく、或いは、より好ましくは、0.3≦x≦0.5の範囲である。
【0037】
プレリチウム化されたカソード活物質は、カソード活物質として単独で使用することも、他のカソード活物質と組み合わせて使用することもできる。このような従来のカソード活物質のいくつかの例としては、元のLiMn、LiFePO、LiFeMnPO(すなわち、x+y=1.0、0.1≧x≦0.5、及び0.5≧y≦0.9)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NCM又はLi-NCM)、LiCoO、LiNi0.5Mn1.5、及び硫黄が挙げられるが、これらに限定されない。プレリチウム化されたカソード物質を他のカソード活物質と組み合わせて使用する場合、プレリチウム化された物質と他の物質(従来の物質等)の質量比は、用途の要件に応じて、約99:1~約10:90の範囲であってもよい。或いは、プレリチウム化された物質と従来の活物質又は他の活物質との質量比は、100:0よりも大きく、10:90以下であり、或いは、約90:10~20:80の間であり、或いは、約80:20~約30:70の範囲であり、或いは、70:30~40:60であり、或いは、約60:40~約50:50であり、或いは、100:0よりも大きく、51:49以下である。
【0038】
プレリチウム化されたカソード活物質の調製は、市販の化合物を比較的穏やかな還元剤に暴露することによって、溶液中で行うことができる。市販の化合物としては、LiMn等が挙げられるが、これらに限定されない。この還元剤としては、ブチルリチウム(例えば、n-BuLi、tert-BuLi)、リチウムナフタレン、又はヨウ化リチウムが挙げられるが、これらに限定されない。ブチルリチウムは、空気に暴露されている際は非常に反応性が高く、火災の危険性があることが知られている。火災の危険性を低減するために、より穏やかな還元剤、例えばリチウムナフタレン等を使用することが、カソード活物質のプレリチウム化においては好ましい。リチウムナフタレンの有機溶液は、空気に暴露されても大量の熱を発生させず、火災の危険性もないため、プレリチウム化されたカソード活物質の製造工程は、ブチルリチウムを使用するプロセスよりも経済的である。リチウムナフタレンは、Li/Li+に対して約0.5Vの還元電位を有してもよく、これは空気中で安定しない。なぜなら、この電位で水分が還元される可能性があるためである。空気中での安定性を向上させるために、比較的高い還元電位を有するが、LiMn中のMn4+をMn3+に還元するのに十分低いプレリチウム化試薬を使用することができる。ヨウ化リチウムは、空気中で安定であるが、LiMnをLi1+xMnに還元することもできる、このようなプレリチウム化試薬の一例であるが、これに限定されない。一般に、プレリチウム化試薬には、Li/Liに対して約0.3V~2.8Vの還元電位が好ましい。
【0039】
これらのプレリチウム化されたカソード活物質を使用した「アノードフリー」セルの初回サイクルCEは、プレリチウム化工程の使用を介してカソード活物質に組み込まれるリチウムの量を制御することによって、90%未満、或いは、80%未満、或いは、70%未満、及び或いは、60%未満であってもよい。この場合、初回サイクルCEが低いほど、カソード活物質の構造内に添加又は堆積されるリチウムの量が増加する。
【0040】
電解質は、任意の不燃性電解質であってもよい。或いは、電解質は、例えば、高濃度のリチウム塩が溶解された有機電解質等の、不燃性有機溶媒を含む液体電解質であってもよい。電解質は、重合体(polymeric)電解質又はゲル電解質であってもよく、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はそれらの混合物にリチウム塩が溶解されたもの等であるが、これらに限定されない。電解質は、無機電解質であってもよく、セラミック酸化物、ガラス、又は硫化物電解質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
リチウム塩のいくつかの具体例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩(LiBOB)、及びリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSi)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのリチウム塩は、有機溶媒と溶液を形成してもよく、いくつか例を挙げると、炭酸エチレン(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ビニレン(VC)、及び炭酸フルオロエチレン(FEC)等がある。電解質の具体的な例としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合物中の1モルのLiPF溶液(EC/DEC=50/50体積%)である。
【0042】
図1A及び図1Bを再び参照し、電解質30は、正極10と負極20との間に位置し且つそれらと接触しており、これにより、電解質30は、負極20と正極10との間におけるリチウムイオンの可逆的な流れを支持する。セパレータ25は、セパレータ25を通るリチウムイオンの可逆的な流れに対して透過性を有しつつも、正極10を負極20から電気的に絶縁するように構成されている。
【0043】
本開示のさらに別の態様によれば、1つ又は複数のアノードフリー電気化学セルを組み合わせて、電気自動車(EV)で使用されるリチウムイオン二次電池等の、より大きな容量の電池又は電池パックを形成することができる。1つ又は複数の電気化学セルは、電池又は電池パックを形成するために、直列、並列、又はそれらの組み合わせで組み込まれてもよい。当業者であれば、リチウムイオン二次電池で「アノードフリー」セルを使用することに加えて、同じ原理を使用して、1つ又は複数の電気化学セルを筐体に封入して、他の用途で使用することができることも理解されよう。
【0044】
筐体は、当該技術分野においてそのような用途に使用されることが公知の任意の材料で構築されてもよく、且つ、特定の用途に必要とされる又は望ましいとされる任意の形状にすることができる。例えば、リチウムイオン電池は、一般に、円筒形、角形、又はソフトパウチの3つの異なる主要な形態又は形状で収容される。円筒形電池の筐体は、アルミニウム、鋼等で作製できる。角形電池は、一般に、円筒形ではなく長方形の筐体を有する。ソフトパウチ筐体は、様々な形状及びサイズで作製できる。これらのソフト筐体は、内側、外側、又はその両方をプラスチックでコーティングされたアルミニウム箔ポーチで構成されていてもよい。ソフト筐体は、重合体(polymeric)型のケースであってもよい。筐体に使用される高分子組成物は、リチウムイオン二次電池に従来使用されている任意の公知の重合体(polymeric)材料であってもよい。多数の中の1つの具体例として、内側にポリオレフィン層及び外側にポリアミド層を有するラミネートパウチを使用することが挙げられる。ソフト筐体は、電池内の「アノードフリー」電池を力学的に保護するように設計する必要がある。
【0045】
本開示で提示する具体例は、本発明の様々な実施形態を例示するためもののであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載された実施形態は、明確で簡潔な明細書を書くことができるように説明してきたが、実施形態を様々に組み合わせたり分けたりしても、本発明から逸脱しないことを意図しており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されている全ての好ましい特徴は、本明細書に記載されている本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0046】
実施例1. Li1.3Mnの合成と試験
【0047】
Li1.3Mnの組成を有するプレリチウム化されたカソード活物質を、溶液処理を使用して調製した。合計0.0576グラムのリチウムを、不活性雰囲気(例えば、N)下で1.062グラムのナフタレンと共に20グラムのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。数時間以内に透明な濃い青色の溶液が得られた。次に、5.0グラムのLiMnを撹拌しながら溶液に添加した。分散液を不活性雰囲気下で一晩(例えば、12~18時間)撹拌した。次に、分散液を不活性雰囲気下から取り出し、空気に暴露しながらろ過した。得られたろ過物質をTHFで数回洗浄した。最後に、洗浄された物質を真空中で室温にて乾燥させ、乾燥粉末を回収した。
【0048】
元のLiMn出発物質と、作製されたプレリチウム化されたLi1.3Mnの両方のX線回折(XRD)パターンを図2に示す。プレリチウム化された電極(EX-1)を作製するために、97重量%のプレリチウム化されたカソード活物質Li1.3Mn、1.5重量%のカーボンナノチューブ(CNT)、及び1.5重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む組成物をアルミニウム箔にコーティングし、カレンダー処理した。プレリチウム化されたカソード活物質の代わりに元のLiMnを使用して、参照電極(REF-1)として使用するための同様の電極を調製した。
【0049】
各電極(EX-1及びREF-1)それぞれを、約C/10にて電圧が3.0V~4.25Vの範囲のCu箔に対して、「アノードフリー」単層パウチセルで試験した。セルを2つのクリップで一緒にクランプした。プレリチウム化された電極(EX-1)と参照電極(REF-1)を有するセルの初回のサイクルでの充放電曲線を図3に示す。プレリチウム化された電極(EX-1)と参照電極(REF-1)を有するセルが示すサイクル安定性の比較を図4に示す。
【0050】
図3を参照すると、「アノードフリー」セルの初回の充放電曲線は、プレリチウム化されたLi1.3Mnカソード活物質を有するセル(EX-1)からのクーロン効率(CE)が、元のLiMnを有するセルよりもはるかに小さいことを示した(すなわち、67%対83%)。図3では、Li1.3Mnからの比充電容量は約150mAh/gであり、その放電容量は約100mAh/gであった。これにより、EX-1のCEは100/150=67%となった。比較として、元のLiMnからの比充電容量は121mAh/gであり、放電容量は100mAh/gであった。したがって、REF-1の元のLiMnのCEは100/121=83%であった。Li1.3Mnからのはるかに大きな比充電容量では、物質がプレリチウム化されており、初回の充電工程中に余分なリチウムを放出したことを確認した。どちらの物質も同様の放電比容量を示し、それによって、プレリチウム化が不可逆容量を低下させなかったことを確認した。元のLiMnカソードを有するセルの比較的低いCE値は、初回の充電工程中にリチウムデンドライトの形成とともにアノード側で発生する電解質分解によるものである。
【0051】
図4を参照すると、サイクル安定性試験は、プレリチウム化されたLi1.3Mnカソード活物質を有するセルの容量保持率が、少なくとも7サイクルの間、元のLiMnカソード活物質を有するセルよりも大きい容量保持率を示すことを実証している。セル間のこの違いは、セルが高圧でクランプされている場合又は電解質が非LiPF電解質に置き換えられている場合又はその両方の場合に、はるかに大きくなる可能性がある。なぜなら、高圧はリチウムデンドライトの成長を制限するために重要であり、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSi)等の非LiPF塩は、リチウム金属セルのサイクル寿命を向上させるためである。
【0052】
本明細書では、実施形態を、明確で簡潔な明細書を書くことができるように説明してきたが、実施形態を様々に組み合わせたり分けたりしても、本発明から逸脱しないことを意図しており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されている全ての好ましい特徴は、本明細書に記載されている本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0053】
当業者は、本開示を鑑みて、本開示の趣旨又は範囲から逸脱又は超過することなく、本明細書に開示される具体的な実施形態において多くの変更を加えることができ、それでもなお同様又は類似の結果を得ることができることを理解するであろう。当業者は、本明細書に報告されているあらゆる特性が、複数の異なる方法で得られる、通常測定される特性を表すことを、さらに理解するであろう。本明細書に記載された方法は、そのような方法の1つを表しており、他の方法を使用しても本開示の範囲を超えることはない。
【0054】
本発明の様々な形態の上記説明は、例示及び説明のために記載されている。上記説明は、網羅的であること、又は本発明を開示されている正確な形態に限定すること、を意図するものではない。上記の教示に照らして、多数の変更又は変形が可能である。本発明の原理及びその実際の応用例を最もよく説明するために、議論された形態が選択され説明されている。これにより、当業者が、企図された特定の用途に適した様々な形態で、様々な修正を加えて本発明を最もよく利用することが可能になる。そのような変更及び変形の全ては、それらが適正に、合法的に、且つ公平に権利を有する範囲に従って解釈される場合に、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲に含まれる。
図3
図4
図5
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能な電気化学セルであって、該電気化学セルは、
正極であって、
該正極は、集電体と、プレリチウム化されたカソード活物質とを有し、
前記プレリチウム化されたカソード活物質は、Li1+xMnと、Li1+xNi0.5Mn1.5と、Li1+xNiOと、Li1+xCoOと、Li1+xNiCoMnAlとのうちの1つ以上を含み、
ここで、xは0.1~1.0の範囲であり、a+b+c+d=1、a≧0.5、0≦b≦0.3、0≦c≦0.3、0≦d≦0.05である、
正極と、
負極であって、
該負極は、集電体と、無視できる容量を該負極が示すことを条件とする選択的な材料とを有する、
負極と、
リチウムイオンを伝導するように構成された不燃性電解質と
を備える、
充電可能な電気化学セル。
【請求項2】
請求項1に記載のセルであって、
前記カソード活物質のxは、0.1~0.7の範囲である、
セル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセルであって、
前記カソード活物質のxは、0.3~0.5の範囲である、
セル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のセルであって、
前記カソード活物質は、Li1+xMnである、
セル。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のセルであって、
前記正極は、追加のカソード活物質をさらに有し、
これにより、前記プレリチウム化されたカソード活物質と前記追加のカソード活物質の混合物は、質量比において、100:0よりも大きく10:90以下の範囲にある、
セル。
【請求項6】
請求項5に記載のセルであって、
前記プレリチウム化されたカソード活物質と前記追加のカソード活物質の混合物の質量比は、100:0よりも大きく、51:49までの範囲である、
セル。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のセルであって、
前記負極の前記集電体の物質は、Cu、Fe、Ni、又はこれらの混合物又は合金を含む、
セル。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のセルであって、
前記正極又は前記負極又はその両方の前記集電体は、銀、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、又はこれらの組み合わせを含む、
セル。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のセルであって、
前記負極は、前記選択的な材料を有し、
前記選択的な材料は、炭素質材料を含み、
前記炭素質材料では、前記無視できる容量は、前記選択的な材料と前記プレリチウム化されたカソード活物質との間の可逆容量比が0.1以下であることとして定義される、
セル。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のセルであって、
1つ又は複数の前記正極及び前記負極の前記集電体は、リチウムとの合金を形成可能な金属を少なくとも1つ有する、
セル。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のセルであって、
前記電解質は、不燃性有機電解質か、重合体(polymeric)電解質又はゲル電解質か、無機電解質か、又は、これらの組み合わせである、
セル。
【請求項12】
請求項11に記載のセルであって、
前記電解質は、不燃性ゲル電解質である、
セル。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のセルであって、
前記セルは、3.0mAh/cm以上の面積当たりの可逆カソード容量負荷を有する、
セル。
【請求項14】
請求項13に記載のセルであって、
前記セルは、4.5mAh/cm以上の面積当たりの可逆カソード容量負荷を有する、
セル。
【請求項15】
電気自動車で使用する電池パックであって、
請求項1又は2に記載の複数のセルを備え、
前記複数のセルは、全体的な容量を増加させるために、直列構成又は並列構成で配置されている、
電池パック。
【請求項16】
充電可能な電気化学セルであって、該電気化学セルは、
正極であって、
該正極は、集電体と、プレリチウム化されたカソード活物質と、任意の追加のカソード活物質とを有し、
前記プレリチウム化されたカソード活物質は、Li1+xMnの式F-1に従い、ここで、xは0.1~1.0の範囲である、
正極と、
負極であって、
該負極は、集電体と、無視できる容量を示す任意の炭素質材料を有し、
ここで、無視できる容量は、前記炭素質材料と前記プレリチウム化されたカソード活物質との間の可逆容量比が0.1以下であると定義される、
負極と、
不燃性有機電解質か、重合体(polymeric)電解質又はゲル電解質か、無機電解質か、又は、これらの組み合わせと
を備えており、、
前記不燃性有機電解質、前記重合体(polymeric)電解質、前記ゲル電解質、前記無機電解質は、リチウムイオンを伝導するように構成されている、
充電可能な電気化学セル。
【請求項17】
請求項16に記載のセルであって、
前記プレリチウム化されたカソード活物質と前記追加のカソード活物質は、質量比において、100:0よりも大きく10:90以下の範囲にある、
セル。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のセルであって、
前記追加のカソード活物質は、LiMnである、
セル。
【請求項19】
請求項16又は17に記載のセルであって、
1つ又は複数の前記正極及び前記負極の前記集電体は、リチウムとの合金を形成可能な金属を少なくとも1つ有する、
セル。
【請求項20】
請求項16又は17に記載のセルであって、
前記セルは、3.0mAh/cm以上の面積当たりの可逆カソード容量負荷を有する、
セル。
【請求項21】
請求項16又は17に記載のセルであって、
前記Li1+xMnは、有機溶媒中のLiMnをプレリチウム化試薬でリチウム化することによって調製される、
セル。
【請求項22】
請求項21に記載のセルであって、
前記プレリチウム化試薬は、リチウムナフタレン又はヨウ化リチウムである、
セル。
【請求項23】
請求項21に記載のセルであって、
前記プレリチウム化試薬は、Li/Li+に対して0.3V~2.8Vの範囲の還元電位を有する、
セル。
【国際調査報告】