(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】TEAMを分泌する抗メソテリンCART細胞とその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20241024BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20241024BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241024BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241024BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20241024BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20241024BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20241024BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241024BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20241024BHJP
C07K 14/52 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K19/00
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C12N15/867 Z
A61K35/17
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 N
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A61K38/17
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A61K35/76
C07K14/705
C07K14/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526840
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022079284
(87)【国際公開番号】W WO2023081808
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マウス, マルセラ ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェールリ, マーク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
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4B065AA94Y
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4H045AA10
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4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、メソテリンキメラ抗原受容体(CAR)、T細胞エンゲージ分子(TEAM)、任意選択的にTEAMを含む抗メソテリン-CAR T細胞、及びそれらの使用方法に関する。
図12A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種核酸分子を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞であって、異種核酸分子が、
(a)メソテリン又はその一部を含む腫瘍抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン;膜貫通ドメイン;及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする第一のポリヌクレオチド
を含む、CAR T細胞。
【請求項2】
(b)治療薬をコードする第二のポリヌクレオチド
を更に含む、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項3】
第二のポリヌクレオチドが異種核酸分子の一部である、請求項2に記載のCAR T細胞。
【請求項4】
第二のポリヌクレオチドを含む第二の異種核酸分子を更に含む、請求項2に記載のCAR T細胞。
【請求項5】
治療薬が抗体試薬を含む、請求項1から4の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項6】
抗体試薬が単鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含む、請求項5に記載のCAR T細胞。
【請求項7】
抗体試薬が二重特異性抗体試薬を含む、請求項5に記載のCAR T細胞。
【請求項8】
二重特異性抗体試薬がT細胞エンゲージ抗体分子(TEAM)を含む、請求項7に記載のCAR T細胞。
【請求項9】
単一ドメイン抗体がラクダ科動物抗体を含む、請求項6に記載のCAR T細胞。
【請求項10】
治療薬がサイトカインを含む、請求項2から9の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項11】
CARと治療薬が単一ポリペプチドの形態で生成され、それが切断されて別個のCAR及び治療薬分子が生成される、請求項2から10の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項12】
単一ポリペプチドがCARと治療薬の間に切断可能な部分を含む、請求項11に記載のCAR T細胞。
【請求項13】
切断可能な部分が、2Aペプチド、2Aリボソームスキップ配列、又はIRESを含む、請求項12に記載のCAR T細胞。
【請求項14】
2AペプチドがP2A又はT2Aを含む、請求項13に記載のCAR T細胞
【請求項15】
CARと治療薬がそれぞれ構成的に発現される、請求項2から14の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項16】
CARと治療薬の発現が伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターによって駆動される、請求項2から15の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項17】
治療薬が、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である、誘導性プロモーターの制御下で発現される、請求項2から14の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項18】
誘導性プロモーターがNFATプロモーターを含む、請求項17に記載のCAR T細胞。
【請求項19】
CARが構成的プロモーターの制御下で発現され、治療薬が、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である、誘導性プロモーターの制御下で発現される、請求項2から18の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項20】
CARが第一のベクターから発現され、治療薬が第二のベクターから発現される、請求項2から19の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項21】
CARが一又は複数の共刺激ドメインを更に含む、請求項1から20の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項22】
CARの抗原結合ドメインが、抗体、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、又はリガンドを含む、請求項1から21の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項23】
CARの膜貫通ドメインが、任意選択的に配列番号:24の配列又はそのバリアントを含む、CD8ヒンジ/膜貫通ドメインを含む、請求項1から22の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項24】
細胞内シグナル伝達ドメインが、任意選択的に配列番号:26~27の何れか一つの配列又はそのバリアントを含む、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項1から23の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項25】
共刺激ドメインが、任意選択的に配列番号:25の配列又はそのバリアントを含む、4-1BB共刺激ドメインを含む、請求項1から24の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項26】
治療薬が腫瘍抗原に結合する、請求項2から25の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項27】
治療薬が結合する腫瘍抗原が固形腫瘍抗原である、請求項26に記載のCAR T細胞。
【請求項28】
治療薬が結合する腫瘍抗原が活性化線維芽細胞マーカーである、請求項26に記載のCAR T細胞。
【請求項29】
活性化線維芽細胞マーカーが、αSMA(ACTA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、血小板由来増殖因子受容体α及びβ(PDGFRA、PDGFRB)、線維芽細胞特異的タンパク質1(FSP1/S100A4)、エンドグリン(ENG)、トランスジェリン(TAGLN)、テネイシンC(TNC)、ペリオスチン(POSTN)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4又はニューロングリア抗原2(CSPG4/NG2)、ポドプラニン(PDPN)、又はオステオポンチン(SPP1)を含む、請求項28に記載のCAR T細胞。
【請求項30】
活性化線維芽細胞マーカーがFAPを含む、請求項29に記載のCAR T細胞。
【請求項31】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVHが、配列番号:6のアミノ酸配列、又は配列番号:6のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26から30の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項32】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVLが、配列番号:7のアミノ酸配列、又は配列番号:7のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26から31の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項33】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインが、配列番号:8のアミノ酸配列、又は配列番号:8のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26から32の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項34】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVHが、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVLのN末端にある、請求項26から32の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項35】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVLが、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVHのN末端にある、請求項26から32の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項36】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインが、任意選択的に配列番号:8の配列又はそのバリアントを含む、単鎖可変断片(scFv)又は単一ドメイン抗体を含む、請求項31から35の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項37】
抗体試薬がT細胞表面抗原に結合する、請求項5から36の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項38】
T細胞表面抗原が、T細胞受容体(TCR)、TCR複合体成分、又はそれらの何れかの一部を含む、請求項37に記載のCAR T細胞。
【請求項39】
TCR複合体成分が、CD3(例えば、CD3εサブユニット、CD3ζサブユニット、又はCD3γサブユニット)、CD4共受容体、及びCD8共受容体から選択される、請求項38に記載のCAR T細胞。
【請求項40】
TCR複合体成分がCD3である、請求項39に記載のCAR T細胞。
【請求項41】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVHが、配列番号:9のアミノ酸配列、又は配列番号:9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37から40の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項42】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVLが、配列番号:10のアミノ酸配列、又は配列番号:10のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項37から41の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項43】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVHが、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVLのN末端にある、請求項37から42の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項44】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVLが、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVHのN末端にある、請求項37から42の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項45】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインが、任意選択的に配列番号:11~12の何れか一の配列又はそのバリアントを含む、scFv又は単一ドメイン抗体を含む、請求項37から42の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項46】
CARの抗原結合ドメインが、
(a)三つの相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)であって、CDR-H1が、配列番号:13のアミノ酸配列、又は配列番号:13の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-H2が、配列番号:14のアミノ酸配列、又は配列番号:14の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-H3が、配列番号:15のアミノ酸配列、又は配列番号:15の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン(VH)と、
(b)三つの相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)であって、CDR-L1が、配列番号:16のアミノ酸配列、又は配列番号:16の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-L2が、配列番号:17のアミノ酸配列、又は配列番号:17の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-L3が、配列番号:18のアミノ酸配列、又は配列番号:18の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、請求項1から45の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項47】
CARの抗原結合ドメインのVHが、配列番号:19のアミノ酸配列、又は配列番号:19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項46に記載のCAR T細胞。
【請求項48】
CARの抗原結合ドメインのVLが、配列番号:20のアミノ酸配列、又は配列番号:20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項46又は請求項47に記載のCAR T細胞。
【請求項49】
CARの抗原結合ドメインのVHが、CARの抗原結合ドメインのVLのN末端にある、請求項46から48の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項50】
CARの抗原結合ドメインのVLが、CARの抗原結合ドメインのVHのN末端にある、請求項46から48の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項51】
CARの抗原結合ドメインが、任意選択的に配列番号:21又は22、及びそのバリアントからなる群から選択される配列を含む、scFv又は単一ドメイン抗体を含む、請求項46から48の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項52】
CARの抗原結合ドメインが、
(a)相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)であって、CDR-H1が、配列番号:42のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-H2が、配列番号:43のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-H3が、配列番号:44のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン(VH)と、
(b)相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)であって、CDR-L1が、配列番号:45のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-L2が、配列番号:46のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-L3が、配列番号:47のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、請求項1から45の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項53】
CARの抗原結合ドメインのVHが、配列番号:40のSS1重鎖配列、又は配列番号:40のSS1重鎖配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項52に記載のCAR T細胞。
【請求項54】
CARの抗原結合ドメインのVLが、配列番号:41のSS1軽鎖配列、又は配列番号:41のSS1軽鎖配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項52又は請求項53に記載のCAR T細胞。
【請求項55】
CARの抗原結合ドメインのVHが、CARの抗原結合ドメインのVLのN末端にある、請求項52から54の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項56】
CARの抗原結合ドメインのVLが、CARの抗原結合ドメインのVHのN末端にある、請求項52から54の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項57】
CARの抗原結合ドメインが、任意選択的に配列番号:40のSS1 VHアミノ酸配列及び配列番号:41のSS1 VLアミノ酸配列、並びにそれらのバリアントを含む、scFv又は単一ドメイン抗体を含む、請求項52から54の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項58】
異種核酸分子が自殺遺伝子を更に含む、請求項1から57の何れか一項に記載のCAR T細胞。
【請求項59】
(a)メソテリン又はその一部を含む腫瘍抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン、
(b)膜貫通ドメイン、及び
(c)細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項60】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド治療薬を更に含む、請求項59に記載のCAR。
【請求項61】
治療薬が抗体試薬を含む、請求項59又は60の何れかに記載のCAR。
【請求項62】
抗体試薬が単鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含む、請求項61に記載のCAR。
【請求項63】
抗体試薬が二重特異性抗体試薬を含む、請求項62に記載のCAR。
【請求項64】
二重特異性抗体試薬がT細胞エンゲージ分子(TEAM)を含む、請求項63に記載のCAR。
【請求項65】
単一ドメイン抗体がラクダ科動物抗体を含む、請求項62に記載のCAR。
【請求項66】
治療薬がサイトカインを含む、請求項60から65の何れか一項に記載のCAR。
【請求項67】
CARと治療薬が単一ポリペプチドの形態で生成され、それが切断されて別個のCAR及び治療薬分子が生成される、請求項60から66の何れか一項に記載のCAR。
【請求項68】
単一ポリペプチドがCARと治療薬の間に切断可能な部分を含む、請求項67に記載のCAR。
【請求項69】
切断可能な部分が、2Aペプチドを含む、請求項68に記載のCAR。
【請求項70】
2AペプチドがP2A又はT2Aを含む、請求項69に記載のCAR。
【請求項71】
CARと治療薬が構成的に発現される、請求項60から70の何れか一項に記載のCAR。
【請求項72】
CARと治療薬の発現が伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターによって駆動される、請求項60から71の何れか一項に記載のCAR。
【請求項73】
CARと治療薬の発現が、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である、誘導性プロモーターによって駆動される、請求項60から70の何れか一項に記載のCAR。
【請求項74】
誘導性プロモーターがNFATプロモーターを含む、請求項73に記載のCAR。
【請求項75】
CARが構成的プロモーターの制御下で発現され、治療薬が、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である、誘導性プロモーターの制御下で発現される、請求項60から70の何れか一項に記載のCAR。
【請求項76】
CARが一又は複数の共刺激ドメインを更に含む、請求項59から75の何れか一項に記載のCAR。
【請求項77】
CARの抗原結合ドメインが、抗体、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、又はリガンドを含む、請求項59から76の何れか一項に記載のCAR。
【請求項78】
CARの膜貫通ドメインが、任意選択的に配列番号:24の配列、又はそのバリアントを含む、CD8ヒンジ/膜貫通ドメインを含む、請求項59から77の何れか一項に記載のCAR。
【請求項79】
細胞内シグナル伝達ドメインが、任意選択的に配列番号:26~27の配列、又はそのバリアントを含む、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項59から78の何れか一項に記載のCAR。
【請求項80】
共刺激ドメインが、任意選択的に配列番号:25の配列、又はそのバリアントを含む、4-1BB共刺激ドメインを含む、請求項59から79の何れか一項に記載のCAR。
【請求項81】
治療薬が腫瘍抗原に結合する、請求項60から80の何れか一項に記載のCAR。
【請求項82】
治療薬が結合する腫瘍抗原が固形腫瘍抗原である、請求項81に記載のCAR。
【請求項83】
治療薬が結合する腫瘍抗原が活性化線維芽細胞マーカーである、請求項81に記載のCAR。
【請求項84】
活性化線維芽細胞マーカーが、αSMA(ACTA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、血小板由来増殖因子受容体α及びβ(PDGFRA、PDGFRB)、線維芽細胞特異的タンパク質1(FSP1/S100A4)、エンドグリン(ENG)、トランスジェリン(TAGLN)、テネイシンC(TNC)、ペリオスチン(POSTN)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4又はニューロングリア抗原2(CSPG4/NG2)、ポドプラニン(PDPN)、又はオステオポンチン(SPP1)を含む、請求項83に記載のCAR。
【請求項85】
活性化線維芽細胞マーカーがFAPを含む、請求項84に記載のCAR。
【請求項86】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVHが、配列番号:6のアミノ酸配列、又は配列番号:6のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項81から85の何れか一項に記載のCAR。
【請求項87】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVLが、配列番号:7のアミノ酸配列、又は配列番号:7のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項81から86の何れか一項に記載のCAR。
【請求項88】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVHが、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVLのN末端にある、請求項86又は87の何れかに記載のCAR。
【請求項89】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVLが、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVHのN末端にある、請求項86又は87の何れかに記載のCAR。
【請求項90】
抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインが、任意選択的に配列番号:21若しくは22の配列、又はそのバリアントを含む、単鎖可変断片(scFv)又は単一ドメイン抗体を含む、請求項81から89の何れか一項に記載のCAR。
【請求項91】
抗体試薬がT細胞表面抗原に結合する、請求項61から90の何れか一項に記載のCAR。
【請求項92】
T細胞表面抗原が、T細胞受容体(TCR)、TCR複合体成分、又はそれらの何れかの一部を含む、請求項91に記載のCAR。
【請求項93】
TCR複合体成分が、CD3(例えば、CD3εサブユニット、CD3ζサブユニット、又はCD3γサブユニット)、CD4共受容体、及びCD8共受容体から選択される、請求項92に記載のCAR。
【請求項94】
TCR複合体成分がCD3である、請求項93に記載のCAR。
【請求項95】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVHが、配列番号:9のアミノ酸配列、又は配列番号:9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項91から94の何れか一項に記載のCAR。
【請求項96】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVLが、配列番号:10のアミノ酸配列、又は配列番号:10のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項91から95の何れか一項に記載のCAR。
【請求項97】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVHが、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVLのN末端にある、請求項91から96の何れか一項に記載のCAR。
【請求項98】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVLが、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVHのN末端にある、請求項91から96の何れか一項に記載のCAR。
【請求項99】
抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインが、任意選択的に配列番号:11~12の配列又はそのバリアントを含む、scFv又は単一ドメイン抗体を含む、請求項91から96の何れか一項に記載のCAR。
【請求項100】
CARの抗原結合ドメインが、
(a)三つの相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)であって、CDR-H1が、配列番号:13のアミノ酸配列、又は配列番号:13の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-H2が、配列番号:14のアミノ酸配列、又は配列番号:14の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-H3が、配列番号:15のアミノ酸配列、又は配列番号:15の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン(VH)と、
(b)三つの相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)であって、CDR-L1が、配列番号:16のアミノ酸配列、又は配列番号:16の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-L2が、配列番号:17のアミノ酸配列、又は配列番号:17の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-L3が、配列番号:18のアミノ酸配列、又は配列番号:18の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、請求項59から99の何れか一項に記載のCAR。
【請求項101】
CARの抗原結合ドメインのVHが、配列番号:19のアミノ酸配列、又は配列番号:19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項100に記載のCAR。
【請求項102】
CARの抗原結合ドメインのVLが、配列番号:20のアミノ酸配列、又は配列番号:20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項100又は101の何れかに記載のCAR。
【請求項103】
CARの抗原結合ドメインのVHが、CARの抗原結合ドメインのVLのN末端にある、請求項100から102の何れか一項に記載のCAR。
【請求項104】
CARの抗原結合ドメインのVLが、CARの抗原結合ドメインのVHのN末端にある、請求項100から102の何れか一項に記載のCAR。
【請求項105】
CARの抗原結合ドメインが、任意選択的に配列番号:21又は22、及びそのバリアントからなる群から選択される配列を含む、scFv又は単一ドメイン抗体を含む、請求項100から102の何れか一項に記載のCAR。
【請求項106】
配列番号:21又は22のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項100から102の何れか一項に記載のCAR。
【請求項107】
配列番号:21又は22のアミノ酸配列を含む、請求項106に記載のCAR。
【請求項108】
CARの抗原結合ドメインが、
(a)相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)であって、CDR-H1が、配列番号:42のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-H2が、配列番号:43のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-H3が、配列番号:44のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン(VH)と、
(b)相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)であって、CDR-L1が、配列番号:45のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-L2が、配列番号:46のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-L3が、配列番号:47のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、請求項59から99の何れか一項に記載のCAR。
【請求項109】
CARの抗原結合ドメインのVHが、配列番号:40のSS1重鎖配列、又は配列番号:40のSS1重鎖配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項108に記載のCAR。
【請求項110】
CARの抗原結合ドメインのVLが、配列番号:41のSS1軽鎖配列、又は配列番号:41のSS1軽鎖配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項108又は請求項109に記載のCAR。
【請求項111】
CARの抗原結合ドメインのVHが、CARの抗原結合ドメインのVLのN末端にある、請求項108から110の何れか一項に記載のCAR。
【請求項112】
CARの抗原結合ドメインのVLが、CARの抗原結合ドメインのVHのN末端にある、請求項108から110の何れか一項に記載のCAR。
【請求項113】
CARの抗原結合ドメインが、任意選択的に配列番号:40のSS1 VHアミノ酸配列及び配列番号:41のSS1 VLアミノ酸配列、並びにそれらのバリアントを含む、scFv又は単一ドメイン抗体を含む、請求項108から110の何れか一項に記載のCAR。
【請求項114】
配列番号:1~5の何れか一つのアミノ酸配列を含む、請求項59から113の何れか一項に記載のCAR。
【請求項115】
配列番号:1~5の何れか一つのアミノ酸配列からなる、請求項114に記載のCAR。
【請求項116】
自殺遺伝子を更に含む、請求項59から114の何れか一項に記載のCAR。
【請求項117】
請求項59から116の何れか一項に記載のCARポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項118】
プラスミド又はベクターである、請求項117に記載の核酸分子。
【請求項119】
請求項117又は118に記載の核酸分子を含むウイルスベクター。
【請求項120】
レンチウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項119に記載のウイルスベクター。
【請求項121】
請求項1から116の何れか一項に記載のCARポリペプチドと治療薬を含む、CARポリペプチド、又は単一ポリペプチド。
【請求項122】
請求項59から116の何れか一項に記載のCAR又は請求項117から120の何れか一項に記載の核酸分子若しくはウイルスベクターを含むCAR T細胞。
【請求項123】
請求項1から58若しくは122の何れか一項に記載のCAR T細胞、請求項59から116若しくは121の何れか一項に記載のCARポリペプチド、又は請求項117から120の何れか一項に記載の核酸分子若しくはウイルスベクターを含む薬学的組成物。
【請求項124】
請求項1から58若しくは122の何れか一項に記載のCAR T細胞、請求項59から116若しくは121の何れか一項に記載のCARポリペプチド、又は請求項117から120の何れか一項に記載の核酸分子若しくはウイルスベクターの治療有効量を含む薬学的組成物。
【請求項125】
薬学的に許容される添加物を更に含む、請求項123又は124の何れか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項126】
がんを有する患者を治療する方法であって、請求項1から58若しくは122の何れか一項に記載のCAR T細胞、請求項59から116若しくは121の何れか一項に記載のCARポリペプチド、又は請求項117から120の何れか一項に記載の核酸分子若しくはウイルスベクターを含む薬学的組成物、又は請求項123から125の何れか一項に記載の薬学的組成物を患者に投与することを含む、方法。
【請求項127】
腫瘍微小環境を標的とすることにより、全身毒性が低減される、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
がんが、一又は複数の固形腫瘍の存在を特徴とする、請求項126又は127の何れか一項に記載の方法。
【請求項129】
がんが、メソテリンの発現を特徴とする、請求項126から128の何れか一項に記載の方法。
【請求項130】
腫瘍微小環境が、活性化線維芽細胞の存在を特徴とする、請求項126から129の何れか一項に記載の方法。
【請求項131】
腫瘍微小環境が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の存在を特徴とする、請求項126から130の何れか一項に記載の方法。
【請求項132】
がんが、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、胆道がん、胃がん、又は中皮腫である、請求項126から131の何れか一項に記載の方法。
【請求項133】
がんを有する患者を治療する方法であって、腫瘍毒性抗体又はサイトカインを分泌するように遺伝子改変されたCAR T細胞産物を患者に投与することを含み、がん毒性を腫瘍微小環境に局所的に向けることによって全身毒性が低減される、方法。
【請求項134】
CAR T細胞が、活性化線維芽細胞マーカーに対する抗体又は二重特異性抗体を腫瘍微小環境に送達するように遺伝子改変されている、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
CAR T細胞が、メソテリン又はその一部を含む腫瘍抗原に結合する細胞外抗原結合ドメインを含むCARをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項133又は134の何れかに記載の方法。
【請求項136】
二重特異性抗体が、活性化線維芽細胞マーカーとCD3に対するものである、請求項134又は135の何れか一項に記載の方法。
【請求項137】
疾患又は病状を治療するために患者の組織又は臓器に治療薬を送達する方法であって、治療用抗体、毒素、又は薬剤を分泌するように遺伝子改変されたCAR T細胞を前記患者に投与することを含み、治療用抗体、毒素、又は薬剤が、それ自体では組織又は臓器に進入又は浸透することができない、方法。
【請求項138】
組織又は臓器が、消化器系又は内分泌系にある、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
組織が膵臓内にあるか、又は臓器が膵臓である、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
組織又は臓器が、生殖器系内にある、請求項137に記載の方法。
【請求項141】
組織が卵巣内にあるか、又は臓器が卵巣である、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
組織又は臓器が、呼吸器系又は肺器系内にある、請求項137に記載の方法。
【請求項143】
組織が肺内にあるか、又は臓器が肺である、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
治療用抗体が活性化線維芽細胞マーカーに対するものである、請求項137から143の何れか一項に記載の方法。
【請求項145】
CAR T細胞が、請求項1から58若しくは122の何れか一項に記載のCAR T細胞であるか、又はCAR T細胞が、請求項123から125の何れか一項に記載の薬学的組成物内に含まれる、請求項133から144の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
この出願は、それぞれの内容全体が出典明示によりここに援用される、2021年11月4日出願の「TEAMを分泌する抗メソテリンCAR T細胞とその使用方法」と題された米国仮出願第63/275911号、及び2021年11月12日出願の「TEAMを分泌する抗メソテリンCAR T細胞とその使用方法」と題された米国仮出願第63/278825号に対して米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張する。
【0002】
[連邦支援研究]
この発明は、国立がん研究所が授与したR01CA238268及び国立衛生研究所が授与したT32CA009216に基づく政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において所定の権利を有する。
【0003】
[電子配列表への参照]
電子配列表(M105370026WO00-SEQ-ARM.xml;サイズ:50238バイト;作成日:2022年11月3日)の内容は、その全体が出典明示によりここに援用される。
【背景技術】
【0004】
がん及び自己免疫疾患を含む多くの疾患がメソテリンの過剰発現に関連している。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞が、これまで、罹患細胞に特異的に結合して、罹患細胞の死滅をもたらすために使用されてきた。
【発明の概要】
【0005】
ここに記載されるのは、メソテリンを標的とするCAR及びCAR T細胞であり、これらは、例えばがん、形質細胞疾患若しくは障害、又は自己免疫疾患若しくは障害などの疾患若しくは障害を有する対象を治療するのに有用でありうる。またここに提供されるのは、前記CARをコードする核酸及びベクター、並びにここに記載されるCAR、核酸、又はベクターを含む細胞である。またここに提供されるのは、CAR、CAR T細胞、及びここに記載される他の組成物を含む薬学的組成物である。更に提供されるのは、ここに記載される組成物を投与することにより、対象におけるがん又は自己免疫疾患を治療する方法である。
【0006】
従って、一態様では、本開示は、異種核酸分子を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞であって、異種核酸分子が、メソテリン又はその一部を含む腫瘍抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン;膜貫通ドメイン;及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする第一のポリヌクレオチドを含む、CAR T細胞に関する。
【0007】
幾つかの実施態様では、CAR T細胞は、治療薬をコードする第二のポリヌクレオチドを更に含む。幾つかの実施態様では、第二のポリヌクレオチドは異種核酸分子の一部である。幾つかの実施態様では、CAR T細胞は、第二のポリヌクレオチドを含む第二の異種核酸分子を更に含む。
【0008】
別の態様では、本開示は、メソテリン又はその一部を含む腫瘍抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)に関する。幾つかの実施態様では、CARはポリヌクレオチド又はポリペプチド治療薬を含む。
【0009】
幾つかの実施態様では、治療薬は抗体試薬を含む。幾つかの実施態様では、抗体試薬は単鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含む。幾つかの実施態様では、抗体試薬は二重特異性抗体試薬を含む。幾つかの実施態様では、二重特異性抗体試薬はT細胞エンゲージ抗体分子(TEAM)を含む。幾つかの実施態様では、単一ドメイン抗体はラクダ科動物抗体を含む。幾つかの実施態様では、治療薬はサイトカインを含む。
【0010】
幾つかの実施態様では、CARと治療薬は、単一ポリペプチドの形態で生成され、それが切断されて別個のCAR及び治療薬分子が生成される。幾つかの実施態様では、単一ポリペプチドは、CARと治療薬の間に切断可能な部分を含む。幾つかの実施態様では、切断可能な部分は、2Aペプチド、2Aリボソームスキップ配列、又はIRESを含む。幾つかの実施態様では、2AペプチドはP2A又はT2Aを含む。
【0011】
幾つかの実施態様では、CARと治療薬は、それぞれ構成的に発現される。幾つかの実施態様では、CARと治療薬の発現は伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターによって駆動される。幾つかの実施態様では、治療薬は、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である、誘導性プロモーターの制御下で発現される。幾つかの実施態様では、誘導性プロモーターはNFATプロモーターを含む。幾つかの実施態様では、CARは、構成的プロモーターの制御下で発現され、治療薬は、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である、誘導性プロモーターの制御下で発現される。幾つかの実施態様では、CARは第一のベクターから発現され、治療薬は第二のベクターから発現される。
【0012】
幾つかの実施態様では、CARは一又は複数の共刺激ドメインを含む。幾つかの実施態様では、共刺激ドメインは、任意選択的に配列番号:25の配列又はそのバリアントを含む、4-1BB共刺激ドメインを含む。
【0013】
幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインは、抗体、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、又はリガンドを含む。
【0014】
幾つかの実施態様では、CARの膜貫通ドメインは、任意選択的に配列番号:24の配列又はそのバリアントを含む、CD8ヒンジ/膜貫通ドメインを含む。幾つかの実施態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、任意選択的に配列番号:26~27の何れか一つの配列又はそのバリアントを含む、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0015】
幾つかの実施態様では、治療薬は腫瘍抗原に結合する。幾つかの実施態様では、治療薬が結合する腫瘍抗原は固形腫瘍抗原である。幾つかの実施態様では、治療薬が結合する腫瘍抗原は活性化線維芽細胞マーカーである。幾つかの実施態様では、活性化線維芽細胞マーカーは、αSMA(ACTA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、血小板由来増殖因子受容体α及びβ(PDGFRA、PDGFRB)、線維芽細胞特異的タンパク質1(FSP1/S100A4)、エンドグリン(ENG)、トランスジェリン(TAGLN)、テネイシンC(TNC)、ペリオスチン(POSTN)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4又はニューロングリア抗原2(CSPG4/NG2)、ポドプラニン(PDPN)、又はオステオポンチン(SPP1)を含む。幾つかの実施態様では、活性化線維芽細胞マーカーはFAPを含む。
【0016】
幾つかの実施態様では、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVHは、配列番号:6のアミノ酸配列、又は配列番号:6のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVLは、配列番号:7のアミノ酸配列、又は配列番号:7のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインは、配列番号:8のアミノ酸配列、又は配列番号:8のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVHは、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVLのN末端にある。幾つかの実施態様では、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVLは、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインのVHのN末端にある。幾つかの実施態様では、抗体試薬の腫瘍抗原結合ドメインは、任意選択的に配列番号:8の配列又はそのバリアントを含む、単鎖可変断片(scFv)又は単一ドメイン抗体を含む。
【0017】
幾つかの実施態様では、抗体試薬はT細胞表面抗原に結合する。幾つかの実施態様では、T細胞表面抗原は、T細胞受容体(TCR)、TCR複合体成分、又はそれらの何れかの一部を含む。幾つかの実施態様では、TCR複合体成分は、CD3(例えば、CD3εサブユニット、CD3ζサブユニット、又はCD3γサブユニット)、CD4共受容体、及びCD8共受容体から選択される。幾つかの実施態様では、TCR複合体成分はCD3である。
【0018】
幾つかの実施態様では、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVHは、配列番号:9のアミノ酸配列、又は配列番号:9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVLは、配列番号:10のアミノ酸配列、又は配列番号:10のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVHは、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVLのN末端にある。幾つかの実施態様では、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVLは、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインのVHのN末端にある。幾つかの実施態様では、抗体試薬のT細胞表面抗原結合ドメインは、任意選択的に配列番号:11~12の何れか一の配列又はそのバリアントを含む、scFV又は単一ドメイン抗体を含む。
【0019】
幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインは、(a)三つの相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)であって、CDR-H1が、配列番号:13のアミノ酸配列、又は配列番号:13の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-H2が、配列番号:14のアミノ酸配列、又は配列番号:14の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-H3が、配列番号:15のアミノ酸配列、又は配列番号:15の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン(VH)と、(b)三つの相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)であって、CDR-L1が、配列番号:16のアミノ酸配列、又は配列番号:16の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-L2が、配列番号:17のアミノ酸配列、又は配列番号:17の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-L3が、配列番号:18のアミノ酸配列、又は配列番号:18の1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインのVHは、配列番号:19のアミノ酸配列、又は配列番号:19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインのVLは、配列番号:20のアミノ酸配列、又は配列番号:20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインのVHは、CARの抗原結合ドメインのVLのN末端にある。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインのVLは、CARの抗原結合ドメインのVHのN末端にある。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインは、任意選択的に配列番号:21又は22、及びそのバリアントからなる群から選択される配列を含む、scFv又は単一ドメイン抗体を含む。
【0020】
幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインは、(a)相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)であって、CDR-H1が、配列番号:42のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-H2が、配列番号:43のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-H3が、配列番号:44のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン(VH)と、(b)相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)であって、CDR-L1が、配列番号:45のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;CDR-L2が、配列番号:46のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含み;かつCDR-L3が、配列番号:47のアミノ酸配列、又はそれに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインのVHは、配列番号:40のSS1重鎖配列、又は配列番号:40のSS1重鎖配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインのVLは、配列番号:41のSS1軽鎖配列、又は配列番号:41のSS1軽鎖配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインのVHは、CARの抗原結合ドメインのVLのN末端にある。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインのVLは、CARの抗原結合ドメインのVHのN末端にある。幾つかの実施態様では、CARの抗原結合ドメインは、任意選択的に配列番号:40のSS1 VHアミノ酸配列及び配列番号:41のSS1 VLアミノ酸配列、並びにそれらのバリアントを含む、scFv又は単一ドメイン抗体を含む。
【0021】
幾つかの実施態様では、異種核酸分子は自殺遺伝子を更に含む。
【0022】
別の態様では、本開示は、ここに記載のCARポリペプチドをコードする配列を含む核酸分子に関する。幾つかの実施態様では、核酸分子はここに記載の治療薬をコードする配列を更に含む。幾つかの実施態様では、核酸分子はプラスミド又はベクターである。
【0023】
別の態様では、本開示は、ここに記載の核酸分子を含むウイルスベクターに関する。幾つかの実施態様では、ウイルスベクターはレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0024】
別の態様では、本開示は、ここに記載のCAR T細胞、CARポリペプチド、又は核酸分子若しくはウイルスベクターを含む薬学的組成物に関する。幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、ここに記載のCAR T細胞、CARポリペプチド、又は核酸分子若しくはウイルスベクターの治療有効量を含む。幾つかの実施態様では、薬学的組成物は薬学的に許容される添加物を含む。
【0025】
別の態様では、本開示は、がんを有する患者を治療する方法であって、ここに記載の薬学的組成物を患者に投与することを含む方法に関する。幾つかの実施態様では、腫瘍微小環境を標的とすることにより、全身毒性が低減される。幾つかの実施態様では、がんは一又は複数の固形腫瘍の存在を特徴とする。幾つかの実施態様では、がんは、メソテリンの発現を特徴とする。幾つかの実施態様では、腫瘍微小環境は、活性化線維芽細胞の存在を特徴とする。幾つかの実施態様では、腫瘍微小環境は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の存在を特徴とする。幾つかの実施態様では、がんは、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、胆道がん、胃がん、又は中皮腫である。
【0026】
別の態様では、本開示は、がんを有する患者を治療する方法であって、腫瘍毒性抗体又はサイトカインを分泌するように遺伝子改変されたCAR T細胞産物を患者に投与することを含み、がん毒性を腫瘍微小環境に局所的に向けることによって全身毒性が低減される、方法に関する。幾つかの実施態様では、CAR T細胞は、活性化線維芽細胞マーカーに対する抗体又は二重特異性抗体を腫瘍微小環境に送達するように遺伝子改変されている。幾つかの実施態様では、CAR T細胞は、メソテリン又はその一部を含む腫瘍抗原に結合する細胞外抗原結合ドメインを含むCARをコードするポリヌクレオチドを含む。幾つかの実施態様では、二重特異性抗体は、活性化線維芽細胞マーカーとCD3に対するものである。
【0027】
別の態様では、本開示は、疾患又は病状を治療するために患者の組織又は臓器に治療薬を送達する方法であって、治療用抗体、毒素、又は薬剤を分泌するように遺伝子改変されたCAR T細胞を前記患者に投与することを含み、治療用抗体、毒素、又は薬剤が、それ自体では組織又は臓器に進入又は浸透することができない、方法に関する。幾つかの実施態様では、組織又は臓器は、消化器系又は内分泌系にある。幾つかの実施態様では、組織は膵臓内にあるか、又は臓器は膵臓である。幾つかの実施態様では、組織又は臓器は、生殖器系内にある。幾つかの実施態様では、組織は卵巣内にあるか、又は臓器は卵巣である。幾つかの実施態様では、組織又は臓器は、呼吸器系又は肺器系内にある。幾つかの実施態様では、組織は肺内にあるか、又は臓器は肺である。幾つかの実施態様では、治療用抗体は活性化線維芽細胞マーカーに対するものである。
【0028】
ここに記載の方法の幾つかの実施態様では、CAR T細胞は、ここに記載のCAR T細胞であるか、又はCAR T細胞は、ここに記載の薬学的組成物内に含まれる。
【0029】
便宜上、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲において使用される幾つかの用語及び語句の意味を以下に示す。特に明記されていない限り、又は文脈から暗示されていない限り、次の用語及び語句には、以下に示す意味が含まれる。意味は特定の実施態様を説明するのを助けるために提供しており、技術的範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、請求項記載の技術を限定することは意図していない。特に定義されていない限り、ここで使用される全ての技術的及び科学的用語は、この技術が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有している。当該分野における用語の使用法とここに提供したその意味との間に明らかな矛盾がある場合、明細書において提供される意味が優先するものとする。
【0030】
ここで使用される場合、「対象」はヒト又は動物を意味する。通常、動物は、霊長類、齧歯類、家畜、又は狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、例えば、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えば、アカゲザルが含まれる。齧歯類には、例えば、マウス、ラット、マーモット、フェレット、ウサギ及びハムスターが含まれる。家畜及び狩猟動物には、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えば、飼い猫、イヌ種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、及び魚、例えば、マス、ナマズ及びサケが含まれる。幾つかの実施態様では、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。「個体」、「患者」、及び「対象」という用語は、ここでは互換的に使用される。対象は、治療を必要とする状態(例えば、なかでも中皮腫、又は他のタイプのがん)又はそのような状態に関連した一又は複数の合併症と以前に診断されたか、又はそれに罹患しもしくはそれを有していると判定され、場合によっては、その状態又はその状態に関連する一又は複数の合併症に対して治療を既に受けているものでありうる。或いは、対象はまたそのような状態又は関連する合併症を有していると過去には診断されたことがないものでありうる。例えば、対象は、その状態又はその状態に関連する一又は複数の合併症に対する一又は複数の危険因子を示すもの或いは危険因子を示さない対象でありうる。
【0031】
特定の状態の治療を「必要とする対象」は、その状態を有し、その状態を有していると診断され、又はその状態を発症するリスクがある対象でありうる。
【0032】
ここで使用される場合、「腫瘍抗原」及び「がん抗原」という用語は、がん細胞によって差次的に発現され、それによってがん細胞(例えばメソテリン)を標的とするために利用できる抗原を意味するために互換的に使用される。がん抗原は、明らかに腫瘍特異的な免疫反応を潜在的に刺激することができる抗原である。これらの抗原の幾つかは、必ずしも発現されているわけではないが、正常細胞によってコードされている。これらの抗原は、正常細胞では通常サイレントである(すなわち発現されない)もの、分化の所定の段階でのみ発現されるもの、及び胚性及び胎児性抗原などの一過性に発現されるものとして特徴付けることができる。他のがん抗原は、がん遺伝子(例えば、活性化Rasがん遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、変異体p53)、及び内部欠失又は染色体転座から生じる融合タンパク質など、変異細胞遺伝子によってコードされている。更に他のがん抗原は、RNA及びDNA腫瘍ウイルスで運ばれるものなど、ウイルス遺伝子によってコードされうる。多くの腫瘍抗原が、複数の固形腫瘍の点から定義されている:免疫によって定義されたMAGE1、2、及び3;MART-1/Melan-A、gp100、がん胎児性抗原(CEA)、ヒト上皮増殖因子受容体(HER2)、ムチン(すなわち、MUC-1)、前立腺特異的抗原(PSA)、及び前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)。加えて、B型肝炎(HBV)、エプスタインバー(EBV)、及びヒトパピローマ(HPV)によってコードされる幾つかなどのウイルスタンパク質は、それぞれ肝細胞癌、リンパ腫、及び子宮頸がんの発症において重要であることが示されている。幾つかの実施態様では、腫瘍抗原はメソテリンである。腫瘍抗原の例は以下に提供され、例えば、メソテリン、EGFR、EGFRvIII、CD19、PSMA、B細胞成熟抗原(BCMA)、インターロイキン13受容体サブユニットα-2(IL13Ra2)などを含む。幾つかの実施態様では、腫瘍抗原は腫瘍関連抗原である。腫瘍関連抗原は、がん細胞又は腫瘍の近くに存在しうるが、必ずしもがん細胞又は腫瘍に付着している必要はない。例えば、腫瘍関連抗原は、腫瘍を取り囲むか又は腫瘍に隣接する細胞外マトリックスに(例えば、正常組織と比較して増加したレベルで)存在するマーカーでありうる。
【0033】
ここで使用される場合、「キメラ」という用語は、少なくとも二種以上の異なるポリヌクレオチド分子の部分の融合産物を意味する。幾つかの実施態様では、「キメラ」という用語は、既知のエレメント又は他のポリヌクレオチド分子の操作を通して産生される遺伝子発現エレメントを意味する。
【0034】
ここで使用される場合、「T細胞エンゲージ抗体分子」又は「TEAM」という用語は、それぞれがタンデムに連結された単鎖可変断片(scFv)を含むポリペプチドを意味する。任意選択的には、scFvはリンカー(例えば、グリシンリッチリンカー)によって連結される。TEAMの一方のscFvがT細胞表面抗原(例えば、T細胞受容体(TCR)又はその一部(例えば、CD3εサブユニット))に結合し、他方が標的抗原(例えば、腫瘍抗原)に結合する。幾つかの実施態様では、T細胞表面抗原はTreg抗原である。
【0035】
ここで使用される場合、「Treg抗原」又は「Treg関連抗原」は、制御性T(Treg)細胞によって発現される抗原を意味するために互換的に使用される。これらの抗原は、場合によっては、本開示の抗体試薬、抗体コンジュゲート、及び方法によって標的とされうる。Treg抗原の例は以下に提供され、例えば、GARP、LAP、CD25、及びCTLA-4を含む。
【0036】
幾つかの実施態様では、「活性化」は、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されているT細胞の状態を意味しうる。幾つかの実施態様では、活性化は誘導されたサイトカイン産生を意味しうる。他の実施態様では、活性化は、検出可能なエフェクター機能を意味しうる。
【0037】
少なくとも、ここで使用される「活性化されたT細胞」は、増殖性T細胞である。
【0038】
ここで使用される場合、「治療有効量」という用語は、所望の生物学的効果を実現するために必要な又は十分な量を指す。例えば、本開示のCAR、CAR T細胞、又は抗体試薬の治療有効量は、がんの一つ又は複数の症状を改善するのに十分な量でありうる。ここで提供される教示と組み合わせて、様々な活性化合物の中から選択し、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重症度及び好ましい投与方法などの要因を比較検討することにより、実質的な毒性を引き起こさず、特定の対象を治療するのに完全に有効な、効果的な予防又は治療処置レジメンを計画することができる。任意の特定の用途に対する有効量は、治療される疾患若しくは状態、投与される特定の治療化合物、対象のサイズ、又は疾患若しくは状態の重症度などの要因に応じて変化しうる。当業者であれば、過度の実験を必要とせずに、本開示に関連する特定の治療化合物の有効量を経験的に決定することができる。
【0039】
ここで使用される場合、「特異的結合」及び「特異的に結合する」という用語は、第一のエンティティが第二の標的エンティティに、それが非標的である第三のエンティティに結合するよりも大きい特異性及び親和性で結合する、二つの分子、化合物、細胞及び/又は粒子間の物理的相互作用を意味する。幾つかの実施態様では、特異的結合は、同じ条件下で第三の非標的エンティティに対する親和性よりも少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍又はそれ以上大きい、第二の標的エンティティに対する第一のエンティティの親和性を意味しうる。所与の標的に特異的な試薬は、利用されているアッセイの条件下でその標的に対して特異的な結合を示すものである。非限定的な例には、同族結合パートナー(例えば、T細胞上に存在する刺激及び/又は共刺激分子)タンパク質を認識して結合する抗体又はリガンドが含まれる。
【0040】
ここで使用される「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(APC)(例えば、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、人工APCなど)上に存在する場合、T細胞上の同族結合パートナー(ここでは「刺激分子」又は「共刺激分子」と呼ばれる)と特異的に結合することができ、それにより、限定されないが増殖、活性化、免疫応答の開始などを含むT細胞による一次応答を媒介するリガンドを意味する。刺激リガンドは当該技術分野でよく知られており、とりわけ、ペプチドが充填されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0041】
「刺激分子」は、該用語がここで使用される場合、抗原提示細胞上に存在する同族刺激リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を意味する。「共刺激リガンド」は、該用語がここで使用される場合、T細胞上の同族共刺激分子に特異的に結合し、それにより、例えば、ペプチドが充填されたMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合によって提供される一次シグナルに加えて、限定されないが増殖、活性化、分化などを含むT細胞応答を媒介するシグナルを提供するAPC上の分子を含む。共刺激リガンドには、限定されないが、4-1BBL、OX40L、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、3/TR6、IL T3、IL T4、HVEM、Toll様受容体に結合するアゴニスト又は抗体及びB7-H3と特異的に結合するリガンドが含まれうる。共刺激リガンドにはまた、限定されないが、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体、例えば、限定されないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83と特異的に結合するリガンドが含まれうる。
【0042】
「共刺激分子」とは、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、限定されないが増殖などのT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを意味する。共刺激分子には、限定されないが、MHCクラスI分子、BTLA、Toll様受容体、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83が含まれる。
【0043】
幾つかの実施態様では、ここで使用される「改変された」という用語及びその文法的等価語は、核酸、例えば、生物のゲノム内の核酸の一又は複数のヒトデザインの改変を意味しうる。別の実施態様では、改変されたとは、遺伝子の変化、付加、及び/又は欠失を意味しうる。「改変された細胞」は、遺伝子を付加、欠失及び/又は変化させた細胞を意味しうる。
【0044】
ここで使用される「細胞」又は「改変された細胞」という用語及びそれらの文法的等価語は、ヒト又は非ヒト動物由来の細胞を意味しうる。
【0045】
ここで使用される場合、「作用可能に連結された」という用語は、プロモーターなどの第一ポリヌクレオチド分子が、目的の遺伝子などの第二の転写可能なポリヌクレオチド分子に連結され、そこで、ポリヌクレオチド分子が、第一ポリヌクレオチド分子が第二ポリヌクレオチド分子の機能に影響を与えるように配されていることを指す。二つのポリヌクレオチド分子は、単一の近接ポリヌクレオチド分子の一部であってもなくてもよく、隣接してもしていなくてもよい。例えば、プロモーターは、そのプロモーターが細胞内の目的の遺伝子の転写を調節し又は媒介するならば、目的の遺伝子に作用可能に連結されている。
【0046】
ここに記載される様々な実施態様では、記載された特定のポリペプチドの何れかのバリアント(天然に存在するか又は別のバリアント)、対立遺伝子、ホモログ、保存的に修飾されたバリアント、及び/又は保存的置換バリアントが包含されることが更に考えられる。アミノ酸配列に関し、当業者であれば、コードされた配列中の単一のアミノ酸又は僅かな割合のアミノ酸を変化させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列における個々の置換、欠失、又は付加は、その変化が化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらし、ポリペプチドの所望の活性を保持する「保存的修飾バリアント」であることを認識する。そのような保存的修飾バリアントは、開示と一致する多形バリアント、種間ホモログ、及び対立遺伝子に加えられ、それらを排除しない。
【0047】
所与のアミノ酸は、類似の生理化学的特性を持つ残基で置き換えることができ、例えば、ある脂肪族残基を別の脂肪族残基で(例えばIle、Val、Leu、又はAlaを互いに)置換し、又はある極性残基を別の極性残基で(例えばLysとArg;GluとAsp;又はGlnとAsnの間で)置換することができる。他のそのような保存的置換、例えば類似の疎水性特性を有する領域全体の置換はよく知られている。保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドは、ここに記載されるアッセイの何れか一で試験して、天然又は参照ポリペプチドの所望の活性、例えば、リガンド媒介性受容体活性及び特異性が保持されることを確認できる。アミノ酸は、その側鎖の性質の類似性に従ってグループ化できる(A.L.Lehninger,in Biochemistry,2版,pp.73-75,Worth Publishers,New York(1975)):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)無電荷極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。或いは、天然に存在する残基は、共通の側鎖の性質に基づいてグループに分類できる:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。特定の保存的置換には、例えば、AlaをGly又はSerへ;ArgをLysへ;AsnをGln又はHisへ;AspをGluへ;CysをSerへ;GlnをAsnへ;GluをAspへ;GlyをAla又はProへ;HisをAsn又はGlnへ;IleをLeu又はValへ;LeuをIle又はValへ;LysをArg、Gln、又はGluへ;MetをLeu、Tyr又はIleへ;PheをMet、Leu又はTyrへ;SerをThrへ;TyrをSerへ;TrpをTyrへ;TyrをTrpへ;及び/又はPheをVal、Ile又はLeuへの置換が含まれる。
【0048】
幾つかの実施態様では、ここに記載されるポリペプチド(又はそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、ここに記載されるアミノ酸配列の一つの機能的断片でありうる。ここで使用される場合、「機能的断片」とは、当該技術分野において知られ又はここに後述されるアッセイに従って野生型参照ポリペプチドの活性の少なくとも50%を保持するペプチドの断片又はセグメントである。機能的断片は、ここに開示される配列の保存的置換を含みうる。
【0049】
幾つかの実施態様では、ここに記載されるポリペプチドは、ここに記載されるポリペプチド又は分子のバリアントでありうる。幾つかの実施態様では、バリアントは保存的修飾バリアントである。保存的置換バリアントは、例えば、天然ヌクレオチド配列の変異によって得ることができる。ここで言及される「バリアント」は、天然又は参照ポリペプチドと実質的に相同であるが、一又は複数の欠失、挿入、又は置換のために天然又は参照ポリペプチドのものとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。バリアントポリペプチドをコードするDNA配列は、天然又は参照DNA配列と比較した場合、ヌクレオチドの一又は複数の付加、欠失、又は置換を含むが、非バリアントポリペプチドの活性を保持するバリアントタンパク質又はその断片をコードする配列を包含する。多種多様なPCRに基づく部位特異的変異誘発アプローチが当該技術分野において知られており、当業者によって適用されうる。
【0050】
バリアントアミノ酸又はDNA配列は、天然又は参照配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上、同一でありうる。天然配列と変異配列の間の相同性の度合い(同一性パーセント)は、例えば、ワールドワイドウェブでこの目的に一般的に用いられている無料公開のコンピュータープログラムを(例えば、BLASTp又はBLASTnをデフォルト設定で)使用して二つの配列を比較することによって決定できる。
【0051】
天然アミノ酸配列の改変は、当業者に知られている多くの技術の何れかによって達成することができる。変異は、例えば、天然配列の断片へのライゲーションを可能にする制限部位が隣接している変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって、特定の遺伝子座に導入することができる。ライゲーション後、得られた再構築配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換、又は欠失を有するアナログをコードする。或いは、オリゴヌクレオチド指定部位特異的変異誘発手順を用いて、必要とされる置換、欠失、又は挿入に従って改変された特定のコドンを有する改変されたヌクレオチド配列を得ることができる。このような改変を行うための技法は十分に確立されており、例えば、出典明示によりその全体がここに援用される、Walder等(Gene 42:133,1986);Bauer等(Gene 37:73,1985);Craik(BioTechniques,January 1985,12-19);Smith等(Genetic Engineering:Principles and Methods,Plenum Press,1981);及び米国特許第4518584号及び第4737462号に開示されたものが含まれる。ポリペプチドの適切な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基はまた、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防ぐため、一般にセリンで、置換されうる。逆に、システイン結合をポリペプチドに加えて、その安定性を改善し又はオリゴマー化を促進することもできる。
【0052】
「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシドのポリマーを示すために、「核酸分子」と互換的にここでは使用される。典型的には、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合によって結合された、DNA又はRNAに天然に見出されるヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)で構成される。しかしながら、この用語は、天然に存在する核酸に見出されるか否かにかかわらず、化学的又は生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格などを含むヌクレオシド又はヌクレオシドアナログを含む分子を包含し、そのような分子が所定の用途に好ましい場合がある。この出願がポリヌクレオチドに言及する場合、DNA、RNAの両方と、何れの場合にも一本鎖及び二本鎖形態(及び各一本鎖分子の相補鎖)が提供されることが理解される。ここで使用される「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド物質自体及び/又は特定の核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、塩基の略語として使用される一連の文字)を指しうる。幾つかの実施態様では、核酸分子は異種核酸分子である。ここで使用される場合、「異種核酸分子」という用語は、所与の細胞内には天然には存在しない核酸分子を指す。
【0053】
ここに提示されるポリヌクレオチド配列は、他に示されない限り、5’から3’の方向で提示される。
【0054】
ここで使用される「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを意味する。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、ここでは互換的に使用される。ペプチドは、比較的短いポリペプチドであり、典型的には約2から60アミノ酸長である。ここで使用されるポリペプチドは、典型的には、タンパク質に最も一般的に見出される20のL-アミノ酸などのアミノ酸を含む。しかしながら、当該技術分野において知られている他のアミノ酸及び/又はアミノ酸アナログを使用することができる。ポリペプチド内のアミノ酸の一又は複数が、例えば、炭水化物基、リン酸基、脂肪酸基、コンジュゲーションのためのリンカー、官能基などの化学エンティティを加えることによって修飾されうる。非ポリペプチド部分が共有的又は非共有的に結合したポリペプチドは、依然として「ポリペプチド」と考えられる。例示的な修飾には、グリコシル化及びパルミトイル化が含まれる。ポリペプチドは、天然源から精製され、組換えDNA技術を使用して産生され、又は一般的な固相ペプチド合成などの化学的手段によって合成されうる。ここで使用される「ポリペプチド配列」又は「アミノ酸配列」という用語は、ポリペプチド物質自体及び/又はポリペプチドを生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、アミノ酸名の略語として使用される一連の文字又は3文字コード)を指す場合がある。ここに提示されるポリペプチド配列は、他に示されない限り、N末端からC末端の方向で提示される。
【0055】
幾つかの実施態様では、ここに記載されるポリペプチド(例えば、CARポリペプチド)をコードする核酸は、ベクターによって含められる。ここに記載される態様の幾つかでは、ここに記載される所与のポリペプチドをコードする核酸配列又はその任意のモジュールが、ベクターに作用可能に連結される。ここで使用される「ベクター」という用語は、宿主細胞への送達又は異なる宿主細胞間の移動のためにデザインされた核酸コンストラクトを意味する。ここで使用される場合、ベクターは、ウイルス性又は非ウイルス性でありうる。「ベクター」という用語は、適切な調節エレメントと会合されると複製することができ、遺伝子配列を細胞に移すことができる任意の遺伝要素を包含する。ベクターには、限定されないが、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどが含まれうる。
【0056】
ここで使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列からのRNA又はポリペプチドの発現を指示するベクターを意味する。発現される配列は、必ずしもではないが、細胞にとって異種性であることが多い。発現ベクターは追加のエレメントを含み得、例えば、発現ベクターは二種の複製系を有し得、それにより、二種の生物において、例えばヒト細胞において発現のため、また原核生物宿主においてクローニング及び増幅のために、維持されることが可能になる。「発現」という用語は、適用可能であれば、限定されないが、例えば、転写、転写物プロセシング、翻訳及びタンパク質フォールディング、修飾及びプロセシングを含む、RNA及びタンパク質の産生と、適切にはタンパク質の分泌に関与する細胞内プロセスを意味する。「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドが含まれる。
【0057】
「遺伝子」という用語は、適切な調節配列に作用可能に連結された場合にインビトロ又はインビボでRNAに転写(DNA)される核酸配列を意味する。遺伝子は、コード領域の前後の領域、例えば5’非翻訳(5’UTR)又は「リーダー」配列及び3’UTR又は「トレーラー」配列、並びに個々のコード化セグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含んでも含まなくてもよい。
【0058】
ここで使用される場合、「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の少なくとも一のエレメントを含み、ウイルスベクター粒子にパッケージ化される能力を有する核酸ベクターコンストラクトを意味する。ウイルスベクターは、非必須のウイルス遺伝子の代わりに、ここに記載のポリペプチドをコードする核酸を含みうる。ベクター及び/又は粒子は、インビトロ又はインビボの何れかで核酸を細胞に移入する目的のために利用されうる。ウイルスベクターの多くの形態が当該分野において知られている。
【0059】
「組換えベクター」とは、インビボで発現することができる異種核酸配列又は「導入遺伝子」を含むベクターを意味する。ここに記載のベクターは、幾つかの実施態様では、他の適切な組成物及び治療法と組み合わせることができることを理解されたい。幾つかの実施態様では、ベクターはエピソームである。適切なエピソームベクターの使用は、対象において目的のヌクレオチドを高コピー数の染色体外DNAに維持する手段を提供し、それによって染色体への組み込みの潜在的な影響を排除する。
【0060】
ここで使用される場合、「シグナルペプチド」又は「シグナル配列」は、新生タンパク質を小胞体に方向付けるのに役立つ、新規合成タンパク質のN末端のペプチドを意味する。幾つかの実施態様では、シグナルペプチドはCD8又はIgKシグナルペプチドである。
【0061】
ここで使用される場合、「治療する(treat)」、「治療」、「治療する(treating)」、又は「改善」という用語は、目的が、疾患又は障害、例えばがん又は自己免疫疾患に関連する状態の進行又は重症度を逆転させ、緩和し、改善し、阻害し、減速させ、又は停止させることである治療的処置を意味する。「治療する(treating)」という用語は、病気、疾患又は障害の少なくとも一つの副作用又は症状を低減させ又は緩和させることを含む。一又は複数の症状又は臨床マーカーが減少した場合、治療は一般に「効果的」である。或いは、疾患の進行が減少し又は停止した場合、治療は「効果的」である。すなわち、「治療」には、症状又はマーカーの改善だけでなく、治療を行わない場合に予想されうる症状と比較して、症状の進行又は悪化の停止又は少なくとも緩徐化も含まれる。有益な又は望ましい臨床結果には、限定されないが、一又は複数の症状の緩和、疾患の範囲の縮小、疾患の安定した状態(すなわち悪化しないこと)、疾患進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の改善又は緩和、寛解(部分又は完全)、及び/又は死亡率の低下が、検出可能であろうと検出不可能であろうと、含まれる。疾患の「治療」という用語はまた疾患の症状又は副作用からの緩和をもたらすこと(対症的治療を含む)を含む。
【0062】
ここで使用される場合、量に関連して使用される「約」又は「およそ」という用語は、前記量の±1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%、例えば、±1%又は±10%の周辺の値の範囲を指す。
【0063】
ここで使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形の用語は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「又は」という語は、文脈が明確に別のことを示していない限り、「及び」を含むことが意図される。他の用語は、以下に示すように、技術の様々な態様及び実施態様の説明の中で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
添付の図面は、正確な比率で描かれることを意図したものではない。特許又は出願ファイルは、カラーで完成させた少なくとも一つの図面を含む。カラー図面を含むこの特許又は特許出願刊行物のコピーは、請求と必要な料金の支払いに応じて庁から提供される。
【
図1A-1C】
図1A~1Eは、本開示のMGHmeso1 L/H抗メソテリンCARを発現する本開示の例示的なCAR T細胞(白色は未形質導入対照)と比較して、以前から知られている抗メソテリンSS1 CARを発現するSS1抗メソテリンCAR T細胞におけるサイトカイン産生を示すグラフである。
【
図1F】
図1Fは、メソテリン陽性膵臓がん(Capan-2)(上部)又はメソテリン陰性リンパ腫細胞(JeKo-1)細胞株(下部)を用いた一晩のルシフェラーゼベースの殺傷アッセイで評価した細胞溶解のグラフを示す。
【
図2A】
図2A~2Bは、抗メソテリンSS1 CAR又は抗メソテリンMGHmeso1 L/H CARの有効性を評価するために使用された実験マウスプロトコルの概要を示す。
図2Aは、マウスへの膵臓がん細胞(AsPC-1細胞)の投与とそれに続くCAR T細胞の投与のスケジュールを示す。
【
図2B】
図2Bは、CAR T投与量、治療日数、及び治療当たりのマウスの数を示す。
【
図3A-3B】
図3A~3Dは、ASPC1膵臓がん細胞を注射したマウス(灰色はCAR T細胞注射なし)における以前から知られている抗メソテリンSS1 CAR(C)又は本開示の抗メソテリンMGHmeso1 L/H CAR(B)を含む抗メソテリンCAR T細胞を比較している。各実験では、1×10
6(1e6)個のCAR T細胞を投与した。
図3A~3Dのそれぞれには、図のヘッダーにCAR-T用量の投与に関連するフラックス及び生存曲線を示すパネルがある。
図3Aは、がん細胞を注射してから7日後に静脈内(IV)投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図3Bは、がん細胞を注射してから14日後にIV投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図3C-3D】
図3Cは、がん細胞を注射してから7日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図3Dは、がん細胞を注射してから14日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図4A-4B】
図4A~4Dは、ASPC1膵臓がん細胞を注射したマウス(灰色はCAR T細胞注射なし)における以前から知られている抗メソテリンSS1 CAR(C)又は本開示の抗メソテリンMGHmeso1 L/H CAR(B)を含む抗メソテリンCAR T細胞を比較している。各実験では、2×10
6(2e6)個のCAR T細胞を投与した。
図4A~4Dのそれぞれには、図のヘッダーにCAR-T用量の投与に関連するフラックス及び生存曲線を示すパネルがある。
図4Aは、がん細胞を注射してから7日後に静脈内(IV)投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図4Bは、がん細胞を注射してから14日後にIV投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図4C-4D】
図4Cは、がん細胞を注射してから7日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図4Dは、がん細胞を注射してから14日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図5A-5B】
図5A~5Dは、BXPC3膵臓がん細胞を注射したマウス(灰色はCAR T細胞注射なし)における以前から知られている抗メソテリンSS1 CAR(C)又は本開示の抗メソテリンMGHmeso1 L/H CAR(B)を含む抗メソテリンCAR T細胞を比較している。各実験では、1×10
6(1e6)個のCAR T細胞を投与した。
図5A~5Dのそれぞれには、図のヘッダーにCAR-T用量の投与に関連するフラックス及び生存曲線を示すパネルがある。
図5Aは、がん細胞を注射してから7日後に静脈内(IV)投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図5Bは、がん細胞を注射してから14日後にIV投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図5C-5D】
図5Cは、がん細胞を注射してから7日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図5Dは、がん細胞を注射してから14日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図6A-6B】
図6A~6Dは、BXPC3膵臓がん細胞を注射したマウス(灰色はCAR T細胞注射なし)における以前から知られている抗メソテリンSS1 CAR(C)又は本開示の抗メソテリンMGHmeso1 L/H CAR(B)を含む抗メソテリンCAR T細胞を比較している。各実験では、2×10
6(2e6)個のCAR T細胞を投与した。
図6A~6Dのそれぞれには、図のヘッダーにCAR-T用量の投与に関連するフラックス及び生存曲線を示すパネルがある。
図6Aは、がん細胞を注射してから7日後に静脈内(IV)投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図6Bは、がん細胞を注射してから14日後にIV投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図6C-6D】
図6Cは、がん細胞を注射してから7日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図6Dは、がん細胞を注射してから14日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図7A-7B】
図7A~7Dは、PANC1膵臓がん細胞を注射したマウス(灰色はCAR T細胞注射なし)における以前から知られている抗メソテリンSS1 CAR(C)又は本開示の抗メソテリンMGHmeso1 L/H CAR(B)を含む抗メソテリンCAR T細胞を比較している。各実験では、1×10
6(1e6)個のCAR T細胞を投与した。
図7A~7Dのそれぞれには、図のヘッダーにCAR-T用量の投与に関連するフラックス及び生存曲線を示すパネルがある。
図7Aは、がん細胞を注射してから7日後に静脈内(IV)投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図7Bは、がん細胞を注射してから14日後にIV投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図7C-7D】
図7Cは、がん細胞を注射してから7日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図7Dは、がん細胞を注射してから14日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図8A-8B】
図8A~8Dは、PANC1膵臓がん細胞を注射したマウス(灰色はCAR T細胞注射なし)における以前から知られている抗メソテリンSS1 CAR(C)又は本開示の抗メソテリンMGHmeso1 L/H CAR(B)を含む抗メソテリンCAR T細胞を比較している。各実験では、2×10
6(2e6)個のCAR T細胞を投与した。
図8A~8Dのそれぞれには、図のヘッダーにCAR-T用量の投与に関連するフラックス及び生存曲線を示すパネルがある。
図8Aは、がん細胞を注射してから7日後に静脈内(IV)投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図8Bは、がん細胞を注射してから14日後にIV投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図8C-8D】
図8Cは、がん細胞を注射してから7日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図8Dは、がん細胞を注射してから14日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図9A-9B】
図9A~9Dは、CAPAN2膵臓がん細胞を注射したマウス(灰色はCAR T細胞注射なし)における以前から知られている抗メソテリンSS1 CAR(C)又は本開示の抗メソテリンMGHmeso1 L/H CAR(B)を含む抗メソテリンCAR T細胞を比較している。各実験では、2.5×10
5(2.5e5)個のCAR T細胞を投与した。
図9A~9Dのそれぞれには、図のヘッダーにCAR-T用量の投与に関連するフラックス及び生存曲線を示すパネルがある。
図9Aは、がん細胞を注射してから7日後に静脈内(IV)投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図9Bは、がん細胞を注射してから14日後にIV投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図9C-9D】
図9Cは、がん細胞を注射してから7日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図9Dは、がん細胞を注射してから14日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図10A-10B】
図10A~10Dは、CAPAN2膵臓がん細胞を注射したマウス(灰色はCAR T細胞注射なし)における以前から知られている抗メソテリンSS1 CAR(C)又は本開示の抗メソテリンMGHmeso1 L/H CAR(B)を含む抗メソテリンCAR T細胞を比較している。各実験では、5×10
5(5e5)個のCAR T細胞を投与した。
図10A~10Dのそれぞれには、図のヘッダーにCAR-T用量の投与に関連するフラックス及び生存曲線を示すパネルがある。
図10Aは、がん細胞を注射してから7日後に静脈内(IV)投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図10Bは、がん細胞を注射してから14日後にIV投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図10C-10D】
図10Cは、がん細胞を注射してから7日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
図10Dは、がん細胞を注射してから14日後に腹腔内(IP)注射により投与されたSS1 CAR T細胞とMGHmeso1 L/H CAR T細胞を比較している。
【
図11A-11B】
図11A~11Cは、異なるがん細胞株の、41BBz細胞内シグナル伝達ドメイン及び以前から知られているSS1抗メソテリン抗体(C)、本開示のMGHmeso1 L/H抗体(B-1)又は本開示のMGHmeso1 H/L抗体(B-2)を含むCARを有する抗メソテリンCART細胞に特異的な溶解を比較している(UTD対照は白)。
図11Aは、BxPC-3膵臓がん細胞のSS1、MGHmeso1 L/H-BBz、及びMGHmeso1 H/L-BBz特異的溶解を比較している。
図11Bは、Capan-2がん細胞のSS1、MGHmeso1 L/H-BBz、及びMGHmeso1 H/L-BBz CART細胞特異的溶解を比較している。
【
図11C】
図11Cは、NCI-H226肺がん細胞のSS1、MGHmeso1 L/H-BBz、及びMGHmeso1 H/L-BBz特異的溶解を比較している。
【
図12A】
図12A~12Bは、抗メソテリンCAR TEAMコンストラクト及び対照コンストラクトの概略図及び形質導入を示す。
図12Aは、SS1抗メソテリンCAR TEAM FAPコンストラクト及び5種の追加の対照コンストラクトの概略図を示す。
【
図12B】
図12Bは、抗メソテリンSS1 CAR TEAMコンストラクト及び対照コンストラクトの形質導入効率を示す。
【
図13】
図13は、メソテリンを含む(濃い灰色)又は含まない(薄い灰色)プレートでのCART細胞活性化アッセイの結果を示す。メソテリン刺激の6時間後の分類されたCART細胞のCD69発現(14日目)。
【
図14A-14B】
図14A~14Cは、標的細胞に二次Hisタグ標識を施したTEAM分泌CART細胞の上清のフローサイトメトリー解析(ヒストグラム)を示す。
図14AはFAP陽性HFF細胞を示し、
図14BはCD19陽性K562細胞(3人の個々のドナーの代表例、20日目)を示す。
【
図14C】
図14Cは3人の個々の健康なドナーの平均蛍光強度(MFI)比を示す。統計的有意性は、両側対応t検定によって計算した。
【
図15A-15B】
図15A~15Eは、分泌されたTEAMの細胞傷害性効果を定量するためのアッセイを示す。
図15Aは、共培養アッセイのスキームを示す。
図15B、15C、15Eは、TEAMを、ヒト包皮線維芽細胞(
図15B~15CのHFF)に対して1:1の比で、並びにがん関連線維芽細胞(
図15EのCAF-1)に対して1:1の比で、分泌するCARTのインピーダンスベースの細胞傷害性アッセイを示す。
図15Dは、トランスウェルアッセイのスキームを表す。
図15Aのキー:SS1抗メソテリンCAR FAP TEAM(1)、SS1抗メソテリンCAR FAP TEAMの上清(2)、SS1抗メソテリンCAR(3)、及びCD19 CAR(4)。
図15Cのキー:SS1抗メソテリンCAR CD19 TEAM(1)、SS1抗メソテリンCAR(2)、及びCD19 CAR(3)。
図15Eのキー:SS1抗メソテリンCAR FAP TEAM(1)、ヘッドレスCAR FAP TEAM(2)、抗メソテリンCAR(3)CD19 CAR(4)、CD19 CAR FAP TEAM(5)、抗メソテリンCAR CD19 TEAM(6)、及びUTD対照(7)。
【
図16】
図16は、マウスの膵臓腫瘍増殖に対する抗メソテリンCAR FAP TEAMの効果を評価する実験のスケジュール(上)とグラフ(下)を示している。上のパネルは、膵臓モデルがん細胞が治療の3日前にマウスに注入されたことを示している。下のパネルは、抗メソテリンCAR FAP TEAM(水平線を伴う円)、抗メソテリンCAR CD19 TEAM(ジグザグ線を伴う円)、抗CD19 CAR FAP TEAM(垂直線を伴う円)、又はUTD(白抜きの円)による治療後の腫瘍の経時的な増殖を示している。腫瘍サイズは平均値として示され、エラーバーは標準偏差である。統計は、独立t検定で計算され、
*P=0.0192であった。
【
図17】
図17は、FAP TEAM分子の結合活性がT細胞とFAP発現線維芽細胞との間の結合活性を増加させることを示すグラフである。UTD(4、灰色)及びUTD CAR FAP TEAM(1)又は抗メソテリンCAR FAP TEAM(2)と相互作用するHFF発現FAP細胞を、音響力顕微鏡法を使用して分析した。抗CD19 CAR FAP TEAM(3)は対照であった。結合細胞の%は、音響力(pN)の関数として測定した(左パネル)。UTDと比較した結合細胞の増加倍数は、右パネルに示されている(対応t検定、
*P<0.05)。
【発明を実施する形態】
【0065】
ここに提供されるのは、メソテリンを標的とするキメラ抗原受容体(CAR)及びCAR T細胞である。理論に縛られることは望まないが、MSLN(https://www.uniprot.org/uniprot/Q13421)は、一部の組織(胸膜、心膜、腹膜など)の正常中皮細胞に発現され、一部の上皮細胞(卵巣、精巣鞘膜、精巣網、卵管など)に微量に発現されるが、様々ながん細胞には豊富に発現される。例えば、それぞれが出典明示によりここに援用される、Lv,Jiang、及びLi,Peng“Mesothelin as a biomarker for targeted therapy”.Biomark Res.2019;7:18;及びHassan等“Mesothelin Immunotherapy for Cancer:Ready for Prime Time?”J Clin Oncol.2016 Dec 1;34(34):4171-4179を参照のこと。メソテリンは、様々ながんに関連する(例えば、様々ながんで過剰発現される)細胞に対するマーカーとして使用することができ、メソテリン又はその一部に結合するCAR及びCAR T細胞は、例えばメソテリン発現に関連するがんを有する対象を治療するために使用することができる。
【0066】
[キメラ抗原受容体(CAR)]
ここに記載の技術は、免疫療法で使用するための改善されたキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。次では、CARと様々な改善を検討する。
【0067】
ここで使用される「キメラ抗原受容体」又は「CAR」又は「CARs」という用語は、リガンド又は抗原特異性をT細胞(例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞又はその組み合わせ)に移植する改変されたT細胞受容体を意味する。CARは、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、又はキメラ免疫受容体としてもまた知られている。
【0068】
CARは、T細胞受容体分子の膜貫通ドメインと細胞内ドメインを含むコンストラクトに、T細胞応答の標的となる細胞の表面に発現される標的、例えばポリペプチドに特異的に結合するキメラ細胞外抗原結合ドメインを配する。幾つかの実施態様では、キメラ細胞外抗原結合ドメインは、T細胞応答の標的となる細胞上に発現される抗原に特異的に結合する抗体試薬の抗原結合ドメインを含む。幾つかの実施態様では、キメラ細胞外抗原結合ドメインは、T細胞応答の標的となる細胞上に発現される抗原に特異的に結合するリガンドを含む。
【0069】
ここで使用される場合、「CAR T細胞」又は「CAR-T」は、CARを発現するT細胞を意味する。T細胞で発現されると、CARは、T細胞の特異性と反応性を、MHC非拘束の形で選択された標的に向けてリダイレクトし、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用する能力を有する。MHC非拘束の抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングとは独立して抗原を認識する能力を与え、腫瘍エスケープの主要機序を迂回する。
【0070】
幾つかの実施態様では、CARポリペプチドは、配列番号:2~5の何れか一つから選択される配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、CARポリペプチドは、配列番号:2~5の何れか一つのアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、CARポリペプチドは、配列番号:2~5の何れか一つのアミノ酸配列からなる。幾つかの実施態様では、CARは、ここに記載のCD8シグナルペプチドを含まない。当業者によって決定されうるように、これらのCARの様々な機能的に類似又は同等の構成要素を相互に交換又は置換することができ、また、当該技術分野で知られているか又はここに列挙されている他の類似又は機能的に同等の構成要素と交換又は置換することができる。
【0071】
[細胞外抗原結合ドメイン]
ここで使用される場合、「細胞外抗原結合ドメイン」という用語は、標的への結合を促進するのに十分な、細胞の外側に見出されるポリペプチドを意味する。細胞外標的結合ドメインは、その結合パートナー、すなわち標的に特異的に結合する。非限定的な例として、細胞外抗原結合ドメインは、抗体又は抗体試薬の抗原結合ドメイン、又は同族結合パートナータンパク質を認識して結合するリガンドを含みうる。この文脈において、リガンドは、タンパク質及び/又は受容体の一部に特異的に結合する分子である。ここに記載される方法及び組成物において有用なリガンドの同族結合パートナーは、一般に、細胞の表面に見出されうる。リガンド:同族パートナー結合は、リガンドを持つ受容体の変化をもたらし、又は例えばシグナル伝達経路の活性化など、生理学的応答を活性化しうる。幾つかの実施態様では、リガンドはゲノムに対して非天然でありうる。場合によっては、リガンドは、少なくとも二種にわたって保存された機能を有する。
【0072】
任意の細胞表面部分がCARによって標的とされうる。多くの場合、標的は、T細胞応答の標的としたい細胞上で差次的又は優先的に発現されうる細胞表面ポリペプチドである。Tregを標的とするには、抗体試薬を、例えば、糖タンパク質A反復優位(GARP)、潜伏関連ペプチド(LAP)、CD25、CTLA-4、ICOS、TNFR2、GITR、OX40、4-1BB、及びLAG-3に対して標的とすることができる。腫瘍又はがん細胞を標的とするには、抗体ドメインを、ここに記載されるように、例えば、メソテリンに対して標的とすることができる。腫瘍に特異的な腫瘍抗原、例えば、メソテリンを標的とすることは、非腫瘍細胞又は組織への付随的な損傷を回避又は少なくとも制限しながら、腫瘍細胞を標的とする手段を提供することができる。
【0073】
幾つかの実施態様では、CARの標的/抗原はメソテリンである。
【0074】
[ヒンジ及び膜貫通ドメイン]
ここに記載される各CARは、細胞外抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに結合する膜貫通ドメイン、例えば、ヒンジ/膜貫通ドメインを含む。CARの結合ドメインの後には場合によっては一又は複数の「ヒンジドメイン」が続き、これが、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離れて位置させて、適切な細胞/細胞接触、抗原結合及び活性化を可能にする役割を果たす。CARは、場合によっては結合ドメインと膜貫通ドメイン(TM)との間に一又は複数のヒンジドメインを含む。ヒンジドメインは、天然、合成、半合成、又は組換え源の何れかに由来しうる。ヒンジドメインは、天然に存在する免疫グロブリンヒンジ領域又は改変された免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含みうる。ここに記載のCARでの使用に適した例示的なヒンジドメインは、CD8(例えば、CD8α)、CD4、CD28、4-1BB、及びCD7などの1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域を含み、これらはこれら分子からの野生型ヒンジ領域でありうるか又は改変されうる。
【0075】
幾つかの実施態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン様タンパク質(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgM)、CD28、又はCD8のヒンジ領域に由来する。幾つかの実施態様では、ヒンジドメインは、CD8aヒンジ領域を含む。
【0076】
ここで使用される場合、「膜貫通ドメイン」(TMドメイン)とは、細胞外結合部分を、場合によってはヒンジドメインを介して、細胞内部分(例えば、共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメイン)に融合させ、CARを免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定させるCARの部分を指す。膜貫通ドメインは、細胞の細胞膜を通過するCARの一般的に疎水性の領域である。TMドメインは、膜貫通タンパク質(例えば、I型膜貫通タンパク質又は他の膜貫通タンパク質)、人工疎水性配列、又はそれらの組み合わせの膜貫通領域又はその断片でありうる。特定の例がここに提供され、実施例において使用されるが、他の膜貫通ドメインは当業者には明らかであり、技術の代替の実施態様に関連して使用されうる。選択された膜貫通領域又はその断片は、CARの意図された機能を妨害しないことが好ましい。
【0077】
タンパク質又はポリペプチドの膜貫通ドメインに関連して使用される場合、「その断片」は、タンパク質を細胞表面に固定し又は付着させるのに十分な膜貫通ドメインの一部を意味する。
【0078】
幾つかの実施態様では、ここに記載のCARの膜貫通ドメイン又はその断片は、T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、4-1BBL、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Ra、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、及び/又はNKG2Cの膜貫通ドメインから選択される膜貫通ドメインを含む。
【0079】
ここで使用される場合、「ヒンジ/膜貫通ドメイン」とは、ヒンジドメインと膜貫通ドメインの両方を含むドメインを意味する。例えば、ヒンジ/膜貫通ドメインは、CD8、CD28、CD7、又は4-1BBのヒンジ/膜貫通ドメインに由来しうる。幾つかの実施態様では、CAR又はその断片のヒンジ/膜貫通ドメインは、CD8のヒンジ/膜貫通ドメイン(例えば、配列番号:24、又はそれらのバリアントの何れか一)に由来するか、又はそれを含む。CD8は、細胞傷害性Tリンパ球の細胞表面に優先的に見出される抗原である。CD8は免疫系内の細胞間相互作用を媒介し、T細胞の共受容体として作用する。CD8は、アルファ(CD8α又はCD8a)及びベータ(CD813又はCD8b)鎖からなる。CD8a配列は、多くの種、例えば、ヒトCD8a(NCBI遺伝子番号:925)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列NP_001139345.1)及びmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_000002.12)に対して知られている。CD8は、天然に存在するバリアント、分子、及びその対立遺伝子を含む、ヒトCD8を意味しうる。態様の何れかの幾つかの実施態様において、例えば、獣医学的用途では、CD8は、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどのCD8を意味しうる。幾つかの実施態様では、CAR又はその断片のヒンジ/膜貫通ドメインは、CD28のヒンジ/膜貫通ドメインに由来するか、又はCD28のヒンジ/膜貫通ドメインを含む(例えば、配列番号:38のアミノ酸配列又はそのバリアントを含むか、或いは配列番号:39の核酸配列によってコードされる)。
【0080】
ヒトCD8のホモログ及び/又はオルソログは、例えばNCBIオルソログ検索機能を使用して、又は参照CD8配列に類似する配列について所与の種の利用可能な配列データを検索することにより、当業者によってそのような種について容易に同定される。
【0081】
幾つかの実施態様では、CD8ヒンジ及び膜貫通配列は、配列番号:24のアミノ酸配列に対応し;或いは配列番号:24の配列を含み;或いは配列番号:24の配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を持つ配列を含む。
【0082】
[共刺激ドメイン]
ここに記載の各CARは、場合によっては、一又は複数の共刺激分子の細胞内ドメイン又は共刺激ドメインを含む。ここで使用される場合、「共刺激ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを意味する。共刺激分子は、抗原に結合するとTリンパ球の効率的な活性化と機能に必要とされる第二のシグナルを提供する抗原受容体又はFc受容体以外の細胞表面分子である。共刺激ドメインは、例えば、4-1BB、CD27、CD28、又はOX40の共刺激ドメインでありうる。一例では、4-1BB細胞内ドメイン(ICD)を使用することができる(例えば、以下及び配列番号:25、又はそれらのバリアントを参照)。そのような共刺激分子の追加の例示的な例には、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、及びZAP70が含まれる。幾つかの実施態様では、細胞内ドメインは、4-1BBの細胞内ドメインである。4-1BB(CD137;TNFRS9)は、活性化によって誘導される共刺激分子であり、免疫応答の重要な調節因子である。
【0083】
4-1BBは、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーのメンバーである、CD137としても知られる膜受容体タンパク質である。4-1BBは活性化Tリンパ球に発現される。4-1BB配列は、多くの種に対して知られており、例えば、TNFRSF9(NCBI遺伝子25番号:3604)及びmRNA(NCBI参照配列:NM_001561.5)としても知られているヒト4-1BBである。4-1BBは、天然に存在するバリアント、分子、及びそれらの対立遺伝子を含む、ヒト4-1BBを指しうる。態様の何れかの幾つかの実施態様において、例えば、獣医学的用途では、4-1BBは、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ等の4-1BBを指しうる。ヒト4-1BBのホモログ及び/又はオルソログは、例えばNCBIオルソログ検索機能を使用して、又は参照4-1BB配列に類似する配列について所与の種の利用可能な配列データを検索することにより、当業者によってそのような種について容易に同定される。
【0084】
幾つかの実施態様では、細胞内ドメインは4-1BBの細胞内ドメインである。幾つかの実施態様では、4-1BB細胞内ドメインは、配列番号:25から選択されるアミノ酸配列に対応し;或いは配列番号:25から選択される配列を含み;或いは配列番号:25から選択される配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を含む。
【0085】
[細胞内シグナル伝達ドメイン]
CARの細胞内シグナル伝達ドメインの特性は、当該技術分野で知られているように、またここに開示されているように、様々でありうるが、キメラ標的/抗原結合ドメインは、標的細胞の表面上の標的/抗原にキメラ標的/抗原結合ドメインが結合すると、受容体をシグナル伝達活性化に対して感受性にする。
【0086】
細胞内シグナル伝達ドメインに関し、いわゆる「第一世代」CARには、抗原結合時にCD3ゼータシグナルのみを提供するものが含まれる。いわゆる「第二世代」CARには、共刺激(例えば、CD28又はCD137)と活性化(CD3ゼータ)ドメインの両方を提供するものが含まれ、いわゆる「第三世代」CARには、複数の共刺激(例えば、CD28及びCD137)ドメインと活性化ドメイン(例えば、CD3ゼータ)を提供するものが含まれる。様々な実施態様では、CARは、標的/抗原に対して高い親和性又は結合活性を有するように選択され-例えば、抗体由来の標的又は抗原結合ドメインは、天然に存在するT細胞受容体よりも一般に標的抗原に対して高い親和性及び/又は結合活性を有する。この特性は、抗体に対して選択できる高い特異性と相まって、CAR T細胞による高度に特異的なT細胞ターゲティングをもたらす。
【0087】
ここに記載されるCARは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、標的抗原への効果的なCAR結合のメッセージを免疫エフェクター細胞の内部に伝達して、エフェクター細胞機能、例えば活性化、サイトカイン産生、増殖及び細胞傷害性活性、例えばCARに結合した標的細胞への細胞傷害性因子の放出、又は細胞外CARドメインへの抗原結合後に誘発される他の細胞応答を誘発することに関与するCARポリペプチドの部分を意味する。様々な例では、細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ゼータに由来する(例えば、以下を参照)。当該技術において特に有用である免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む細胞内シグナル伝達ドメインの更なる非限定的な例には、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3θ、CD3σ、CD3η、CD3ε、CD3ζ;CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが含まれる。
【0088】
CD3は、適切な共刺激(例えば、共刺激分子の結合)と同時にエンゲージされると、Tリンパ球活性化を促進するT細胞共受容体である。CD3複合体は4つの異なる鎖からなり;哺乳動物CD3は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、及び2つのCD3ε鎖からなる。
【0089】
これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として知られている分子及びCD3ζと会合して、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。完全TCR複合体は、TCR、CD3ζ、及び完全CD3複合体を含む。
【0090】
何れかの態様の幾つかの実施態様では、ここに記載のCARポリペプチドは、例えばITAM変異CD3ζ、CD3η、又はCD3θなどのCD3ζのバリアントを含む、CD3ζ由来の免疫受容活性化チロシンモチーフ又はITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。何れかの態様の幾つかの実施態様では、ITAMは、CD3ζのITAM(ITAM3)の3つのモチーフを含む。何れかの態様の幾つかの実施態様では、CD3ζのITAMの3つのモチーフは変異しておらず、従って、天然又は野生型の配列を含む。幾つかの実施態様では、CD3ζ配列は、ここに提供された配列に記載されているCD3ζの配列、例えば、配列番号:26~27、又はそれらのバリアントの一つのCD3ζ配列を含む。
【0091】
例えば、ここに記載されるCARポリペプチドは、CD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。幾つかの実施態様では、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号:26~27の何れか一つから選択されるアミノ酸配列に対応し;或いは配列番号:26~27の何れか一つから選択される配列を含み;或いは配列番号:26~27の何れか一つから選択される配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を持つ配列を含む。
【0092】
ここに記載される個々のCAR及び他のコンストラクト成分は、当業者によって決定されうるように、互いに一緒に使用され得、ここに記載される様々なコンストラクトに入れ替えられうる。これらの成分のそれぞれは、ここに記載された対応する配列の何れか、又はそれらのバリアントを含みうるか、又はそれらからなりうる。
【0093】
CAR及びCAR T細胞のより詳細な説明は、Maus等,Blood 123:2624-2635,2014;Reardon等,Neuro-Oncology 16:1441-1458,2014;Hoyos等,Haematologica 97:1622,2012;Byrd等,J.Clin.Oncol.32:3039-3047,2014;Maher等,Cancer Res 69:4559-4562,2009;及びTamada等,Clin.Cancer Res.18:6436-6445,2012に見出すことができ;これらの各々はその全体が出典明示によりここに援用される。
【0094】
[シグナルペプチド]
幾つかの実施態様では、ここに記載されるCARポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。シグナルペプチドは、細胞外ドメインを有するか、又は分泌される任意のタンパク質に由来しうる。ここに記載されるCARポリペプチドは、当該技術分野で知られている任意のシグナルペプチドを含みうる。幾つかの実施態様では、CARポリペプチドは、CD8シグナルペプチド、例えば、配列番号:29のアミノ酸配列に対応し、或いは配列番号:29のアミノ酸配列を含み、或いは配列番号:29の配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、CD8シグナルペプチドを含む。
【0095】
更なる実施態様では、ここに記載のCARポリペプチドは、ここに記載のシグナルペプチドの一つ、例えば配列番号:29のCD8シグナルペプチド又は配列番号:30のIgKシグナルペプチドを場合によっては除外しうる。
【0096】
[リンカードメイン]
幾つかの実施態様では、CARは、リンカードメインを更に含む。ここで使用される場合、「リンカードメイン」とは、ここに記載のCARのドメイン/領域の何れかを一緒に連結する、約2から100アミノ酸長のオリゴ又はポリペプチド領域を意味する。幾つかの実施態様では、リンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに対して自由に移動できるように、グリシン及びセリンなどの可動性残基を含むか、又はそれらから構成されうる。本開示のCARに有用なリンカー配列は、2から100アミノ酸長、5から50アミノ酸長、10から15アミノ酸長、15から20アミノ酸長、又は18から20アミノ酸長であり得、当該分野で知られている任意の適切なリンカーを含む。例えば、本開示のCARに有用なリンカー配列は、限定されないが、グリシン/セリンリンカー、例えば、GGGSGGGSGGGS(配列番号:31)及びGly4Ser(G4S)(配列番号:48)リンカー、例えば(G4S)3(GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:32))及び(G4S)4(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:332));その内容がその全体において出典明示によりここに援用されるWhitlow等,Protein Eng.6(8):989-95,1993によって記載されているGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号:34)のリンカー配列;その内容がその全体において出典明示によりここに援用されるAndris-Widhopf等,Cold Spring Harb.Protoc.2011(9),2011によって記載されているGGSSRSSSSGGGGSGGGG(配列番号:35)のリンカー配列;並びにその内容がその全体において出典明示によりここに援用されるSblattero等,Nat.Biotechnol.18(1):75-80,2000によって記載されている、例えば、Cre-Lox組換え部位を含むコード化配列又はエピトープタグのような、機能性が追加されたリンカー配列を含む。二つの隣接ドメインが互いに立体的に干渉しないようにすることが望ましい場合は、より長いリンカーが使用されうる。
【0097】
更に、リンカーは、切断可能又は切断不可能でありうる。切断可能なリンカーの例には、2Aリンカー(例えば、P2A及びT2A(配列番号:37))、2A様リンカー又はそれらの機能的等価物及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0098】
例えば、P2Aリンカー配列は、配列番号:38のアミノ酸配列に対応することができる。様々な例では、ここに記載されている配列を有するリンカー又はそのバリアントが使用される。特定の位置のコンストラクトにおける特定のリンカーの表示は、そのリンカーのみがそこで使用できることを意味しないことを理解されたい。むしろ、当業者により決定されうるように、異なるリンカー配列(例えば、P2A及びT2A)は、(例えば、本発明のコンストラクトの文脈において)互いに交換されうる。幾つかの実施態様では、リンカー領域は、Thosea asignaウイルスに由来するT2Aである。この技術において使用されうるリンカーの非限定的な例には、T2A、P2A、E2A、BmCPV2A、及びBmIFV2Aが含まれる。これらのようなリンカーは、以下に記載するもののようなポリタンパク質の状況において使用できる。例えば、それらは、ポリタンパク質のCAR成分を、ポリタンパク質の治療薬(例えば、scFv、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科動物抗体)、又は二重特異性抗体(例えば、TEAM)などの抗体)成分から分離するために使用されうる(以下を参照)。
【0099】
[レポーター分子]
幾つかの実施態様では、ここに記載されるCARは、場合によっては、例えば、非侵襲的画像化(例えば、陽電子放射断層撮影PETスキャン)を可能にするために、レポーター分子を更に含む。レポーター分子を含む二重特異性CARでは、第一細胞外結合ドメインと第二細胞外結合ドメインは、異なる又は同じレポーター分子を含みうる。二重特異性CART細胞では、第一CARと第二CARは異なる又は同じレポーター分子を発現しうる。別の実施態様では、ここに記載されるCARは、単独で又は基質もしくは化学物質(例えば、9-[4-[18F]フルオロ-3]-(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン([18F]FHBG))と組み合わせて画像化されうるレポーター分子(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hph))を更に含む。別の実施態様では、ここに記載されるCARは、非侵襲的技術(例えば、64Cu2+で機能化された金ナノ粒子(GNP))を使用して容易に画像化できるナノ粒子を更に含む。非侵襲的イメージングのためのCAR T細胞の標識化は、例えば、出典明示によりその全体がここに援用されるBhatnagar等,Integr.Biol.(Camb).5(1):231-238,2013、及びKeu等,Sci.Transl.Med.18;9(373),2017に概説されている。
【0100】
幾つかの実施態様では、GFP及びmCherryを、T細胞(例えば、CAR T細胞)上で発現されたCARを画像化するために蛍光タグとして使用することができる。当該技術分野で知られている本質的に如何なる蛍光タンパク質も、この目的のための蛍光タグとして使用することができることが期待される。臨床応用では、CARに蛍光タグ又は蛍光タンパク質を含める必要はない。従って、ここに提供される特定のコンストラクトのそれぞれの例では、コンストラクト中に存在する任意のマーカーを除去することができる。本開示は、マーカーを伴うか又は伴わないコンストラクトを含む。従って、特定のコンストラクトがここで参照される場合、(例えば、HHHHHH(配列番号:39)のヒスチジンタグなどのヒスチジンタグを含む)マーカー又はタグの有無にかかわらず、本開示に含まれていると考えることができる。
【0101】
[抗体試薬]
様々な実施態様では、ここに記載のCARは、細胞外標的結合ドメインとして抗体試薬又はその抗原結合ドメインを含む。
【0102】
ここで使用される場合、「抗体試薬」という用語は、少なくとも一の免疫グロブリン可変ドメイン又は免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、所与の抗原に特異的に結合するポリペプチドを意味する。幾つかの実施態様では、抗体試薬は、抗体又は抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含みうる。態様の何れかの幾つかの実施態様では、抗体試薬は、モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含みうる。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(ここではVHと略される)と、軽(L)鎖可変領域(ここではVLと略される)を含みうる。幾つかの実施態様では、抗体は、二つの重(H)鎖可変領域と二つの軽(L)鎖可変領域を含む。幾つかの実施態様では、抗体試薬は二重特異性抗体試薬である。
【0103】
「抗体試薬」という用語は、抗体の抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、Fab及びsFab断片、F(ab’)2、Fd断片、Fv断片、scFv、CDR、及びドメイン抗体(dAb)断片(例えば、de Wildt等,Eur.J.Immunol.26(3):629-639,1996を参照のこと;これは出典明示によりその全体がここに援用される))並びに完全抗体を包含する。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、又はIgM(並びにそれらのサブタイプと組み合わせ)の構造的特徴を有しうる。抗体は、マウス、ウサギ、ブタ、ラット、及び霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類)及び霊長類化抗体を含む、任意の供給源由来でありうる。抗体には、ミディボディ、ヒト化抗体、キメラ抗体などもまた含まれる。幾つかの実施態様では、CARは抗体試薬を含む。幾つかの実施態様では、治療薬は抗体試薬を含む。
【0104】
完全ヒト抗体結合ドメインは、例えば、当業者に知られた方法を使用して、ファージディスプレイライブラリーから選択することができる。更に、抗体試薬には、ラクダ科動物抗体などの単一ドメイン抗体が含まれる。
【0105】
VH及びVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれるより保存された領域が散在する、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変性領域に更に分割されうる。フレームワーク領域とCDRの範囲は正確に定義されている(Kabat,E.A.等(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,及びChothia等,J.Mol.Biol.196:901-917,1987を参照のこと;これらのそれぞれは、出典明示によりその全体がここに援用される)。各VH及びVLは、典型的には、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて次の順で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0106】
幾つかの実施態様では、抗体又は抗体試薬はヒト抗体又は抗体試薬ではない(すなわち、抗体又は抗体試薬はマウスである)が、ヒト化されている。「ヒト化抗体又は抗体試薬」とは、タンパク質配列レベルで修飾されて、ヒトにおいて天然に産生される抗体又は抗体試薬バリアントとのその類似性を高める非ヒト抗体又は抗体試薬を意味する。抗体をヒト化する一つのアプローチは、マウス又は他の非ヒトCDRをヒト抗体フレームワークに移植することを採用している。
【0107】
幾つかの実施態様では、CARの細胞外標的結合ドメインは、可動性リンカーペプチドを介して、抗体、一般的にはモノクローナル抗体のVH及びVLドメインを融合することにより作製される単鎖Fv(scFv)断片を含むか、又は本質的にそれからなる。様々な実施態様では、scFvは、膜貫通ドメイン及びT細胞受容体細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、ここに記載されるような改変された細胞内シグナル伝達ドメインに融合される。別の実施態様では、CARの細胞外標的結合ドメインはラクダ科動物抗体を含む。
【0108】
幾つかの実施態様では、CAR、抗体、又は抗原結合ドメインはメソテリンに結合する。メソテリン配列は、多くの種、例えばヒトメソテリン(NCBI遺伝子ID:10232)及びポリペプチド(例えば、プレタンパク質NCBI参照配列:NP_005814.2)について知られている。メソテリンは、その天然に存在するバリアント、分子、及び対立遺伝子を含むヒトメソテリンを意味しうる。ヒトメソテリンのホモログ及び/又はオルソログは、当業者によって、例えばメソテリンオルソログ検索機能を使用するか、又は参照メソテリン配列に類似する配列について所与の種について利用可能な配列データを検索することにより、そのような種について容易に同定される。幾つかの実施態様では、メソテリンに特異的に結合するCAR、抗体、又は抗原結合ドメインは、例えばヒトメソテリンに加えて、ヒトメソテリンのホモログ及び/又はオルソログに特異的に結合する。
【0109】
「抗メソテリン抗体」、「メソテリンに結合する抗体」、及び「メソテリンに特異的に結合する抗体」という用語は、抗体が、メソテリンを標的とすることで予防、診断及び/又は治療薬として有用であるように十分な親和性でメソテリンに結合することができる抗体試薬を指す。一実施態様では、無関係の非メソテリンタンパク質への抗メソテリン抗体の結合の度合いは、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定して、メソテリンへの抗体の結合の約10%未満である。所定の実施態様では、メソテリンに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nM(例えば10-6M以下、10-7M、又は10-8M以下、例えば10-6Mから10-9M)の解離定数(KD)を有する。所定の実施態様では、メソテリンに結合する抗体は、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-9、10-10、10-11、又は10-12M以下、例えば10-9Mから10-12M)の解離定数(KD)を有する。
【0110】
幾つかの実施態様では、抗メソテリン抗体試薬は、MGHmeso1である。幾つかの実施態様では、抗メソテリン抗体試薬は、配列番号:13~18の相補性決定領域(CDR)を含むか、又は配列番号:13~18の所与のCDRに対して1、2、若しくは3以下のアミノ酸置換を有するCDR配列を含む。幾つかの実施態様では、抗メソテリン抗体試薬は、配列番号:19~20の可変重鎖(VH)及び/又は可変軽鎖(VL)を含むか、或いは配列番号:19~20の配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上の配列同一性を有するVH及び/又はVL配列を含む。VHはVLのN末端に配置されうるか、又はVLがVHのN末端に配置されうる。
【0111】
幾つかの実施態様では、抗体試薬は、ダクリズマブ又はその抗原結合断片を含む。抗体試薬は、ここに記載の又は当該技術分野で知られている任意の他の抗原を標的とすることもできる。ここに記載のように、任意選択的に抗体試薬を送達することに加えて、本開示のCART細胞は、限定されないが、サイトカイン及び毒素を含む他の治療薬を送達するために使用することができる。幾つかの実施態様では、治療試薬は、上皮増殖因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、CD19、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、又はIL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)の何れか一つに結合する抗体試薬を含む。幾つかの実施態様では、治療試薬は、上皮増殖因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、CD19、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、又はIL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)のうちの二つ以上に結合する抗体試薬を含む。
【0112】
幾つかの実施態様では、抗体試薬は腫瘍関連抗原に結合する。追加の腫瘍抗原又は目的の他の抗原の非限定的な例には、活性化線維芽細胞マーカー、CD19、CD37、BCMA(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(TNFRSF17);NCBI遺伝子ID:608;NCBI参照配列:NP001183.2及びmRNA(例えば、NCBI参照配列:NM_001192.2))、CEA、未熟ラミニン受容体、TAG-72、HPV E6及びE7、BING-4、カルシウム活性化塩素イオンチャネル2、サイクリンB1、9D7、Ep-CAM、EphA3、15her2/neu、テロメラーゼ、EGFR、EGFRviii SAP-1、サバイビン、BAGEファミリー、CAGEファミリー、GAGEファミリー、MAGEファミリー、SAGEファミリー、XAGEファミリー、NY-ESO-1/LAGE-1、PRAME、SSX-2、Melan-NMART-1、gp100/pmel17、チロシナーゼ、TRP-1/-2、MC1R、BRCA1/2、CDK4、MART-2、p53、Ras、MUC1、TGF-BetaRII、IL-15、IL-13Ra2、及びCSF1Rが含まれる。幾つかの実施態様では、活性化線維芽細胞マーカーは、αSMA(ACTA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、血小板由来増殖因子受容体α及びβ(PDGFRA、PDGFRB)、線維芽細胞特異的タンパク質1(FSP1/S100A4)、エンドグリン(ENG)、トランスジェリン(TAGLN)、テネイシンC(TNC)、ペリオスチン(POSTN)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4又はニューロングリア抗原2(CSPG4/NG2)、ポドプラニン(PDPN)、又はオステオポンチン(SPP1)の何れか一つを含む。
【0113】
[多重特異性抗体試薬]
幾つかの実施態様では、抗体試薬は多重特異性であり、二つ以上の標的抗原に特異的に結合することができる。幾つかの実施態様では、抗体試薬は二重特異性である(すなわち、二重特異性抗体試薬)。幾つかの実施態様では、二重特異性抗体試薬は、第一の抗原(例えば、メソテリン)と第二の抗原に特異的に結合する。幾つかの実施態様では、第二の抗原は腫瘍抗原である。幾つかの実施態様では、第二の抗原は、メソテリン発現がん細胞によって(例えば、その表面上に)発現される。幾つかの実施態様では、第二の抗原は、上皮増殖因子受容体(EGFR)、BCMA、CD19、CD37、癌胎児性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EphA3、Her2/neu、MUC1、TGF-βRII、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、又はここに記載の任意の他の腫瘍抗原である。幾つかの実施態様では、多重特異性抗体試薬は、ここに記載されたような、TEAMである。
【0114】
多重特異性抗体試薬は、第一の抗原(例えば、メソテリン)に結合する全長抗体又はその抗体断片を含む第一の結合ドメインと、第二の抗原(例えば、腫瘍抗原)に結合する異なる全長抗体又はその抗体断片を含む第二の結合ドメインとを含みうる。第一及び第二の結合ドメインは、リンカー配列、例えばここに記載のリンカー配列によって連結されうる。
【0115】
[CAR T細胞によって送達される治療薬]
上記のように、本開示のCAR T細胞は、場合によっては、治療薬、例えば、抗体試薬又は他の治療分子、例えばサイトカインを腫瘍(すなわち、腫瘍微小環境)に送達するために使用されうる。幾つかの実施態様では、サイトカインはインターフェロン、インターロイキン、又は成長因子である。幾つかの実施態様では、治療薬は、CARと同じ核酸分子によってコードされ、従って、CARと治療薬、例えば、抗体試薬又はサイトカインの両方を発現するように、細胞(例えば、T細胞)の形質導入を促進する。そのような例では、治療薬(例えば、抗体試薬又はサイトカイン)は、例えば、切断可能なリンカー配列(例えば、2Aリボソームスキップ配列及び配列内リボソーム進入部位(IRS)、又は2Aリンカー(2Aペプチド)、例えば、P2A又はT2A;上記を参照)によってCAR(及び任意選択的に他のタンパク質、例えばマーカー)から分離されるように発現されうる。幾つかの実施態様では、治療薬は、CARとは異なる核酸分子上にコードされる。
【0116】
幾つかの実施態様では、治療薬(例えば、抗体試薬又はサイトカイン)は、CARと同じプロモーターの制御下で(例えば、EF1αプロモーターにより)発現させることができ、構成的に発現させることができる。幾つかの実施態様では、治療薬(例えば、抗体試薬又はサイトカイン)は、誘導性プロモーター、例えば、T細胞活性化時に発現されるプロモーター(例えば、NFATプロモーター)の制御下で発現される。そのような誘導性プロモーターは、例えば、T細胞活性化時にのみ、よって、例えば、CAR T細胞が、そこでの抗体産生の限定が有利でありうる腫瘍微小環境内にある場合にのみ、抗体が発現されることを確実にするために使用されうる。当該技術分野において理解されているように、CARコード配列は、本開示内の様々なベクターデザインにおいて治療薬(例えば、抗体試薬又はサイトカイン)コード配列に対して5’又は3’でありうる。
【0117】
幾つかの実施態様では、治療薬はIgKシグナルペプチド、例えば、配列番号:30のアミノ酸配列に対応するか、又は配列番号:30のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号:30の配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むIgKシグナルペプチドを含む。
【0118】
様々な例では、治療薬は抗体試薬である。(例えば、CARと同じ核酸分子から)CAR T細胞内で発現される抗体試薬は、ここに記載される、単鎖抗体(例えば、scFv)又は単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科動物抗体)でありうる。単鎖抗体の場合、軽鎖(L)と重鎖(H)はL-H又はH-Lの順(N末端からC末端)であり得、場合によってはリンカー(例えば、グリシン系リンカー)によって互いに分離されうる。更なる例では、抗体試薬は、例えば、以下に記載されるT細胞エンゲージ分子(TEAM)を含む二重特異性抗体である。
【0119】
[T細胞エンゲージ抗体分子(TEAM)]
幾つかの実施態様では、ここに記載のCART細胞によって送達される治療薬は、T細胞エンゲージ分子(TEAM)(文献では二重特異性T細胞エンゲージャー又はBiTETMとも呼ばれる)である。「T細胞エンゲージ分子」、「TEAM抗体コンストラクト」、又は「TEAM」とは、それぞれがタンデムに連結された単鎖可変断片(scFv)を含むポリペプチドを意味する。任意選択的に、scFvはリンカー(例えば、グリシンリッチリンカー)によって連結される。TEAMの一方のscFvがT細胞受容体(TCR)(例えば、CD3£サブユニット)に結合し、他方が標的抗原(例えば、腫瘍抗原)に結合する。そのような分子は、T細胞抗原に結合することによって(例えば、CD3に結合することによって)、並びに標的抗原、例えば腫瘍抗原に結合することによって、T細胞を標的とすることができる。例示的な腫瘍抗原にはメソテリン(以下をまた参照)が含まれる。TEAMは、例えば腫瘍微小環境におけるT細胞応答を増強するために使用できる。TEAMの二つの成分は、ここに記載のリンカー(例えば、グリシン系リンカー)によって場合によっては互いに分離され得、また、例えば、抗標的抗原成分のN末端に抗CD3成分を、又はその逆の何れかの配向で連結されうる。TEAMの抗CD3成分又は抗標的抗原成分には、ここに記載の抗体試薬の何れかを含めることができる。
【0120】
CART細胞が分泌したTEAMは、例えば、CART細胞自体を刺激し、又は非特異的バイスタンダーT細胞を腫瘍に対してリダイレクトすることによってパラ分泌的に作用し、よってCART細胞免疫療法の抗腫瘍効果を増強しうる。CART細胞媒介性TEAM分泌は、腫瘍微小環境にTEAM分泌を方向づけることによって、全身組織における望ましくないTEAM活性のリスクの低減を可能にしうる。例示的なTEAMコンストラクトを以下に提供するが、ここに記載のもの以外のTEAMもまた本開示のCAR T細胞及び方法に有用でありうる。
【0121】
例示的なTEAMは、抗CD19 scFv及び抗CD3 scFvを含む抗CD19 TEAMである(ここではTEAM-CD19とも呼ばれる)。抗CD19 scFvは、VH-VL配向、又はVL-VH配向に配置することができる。所定の実施態様では、抗CD19 scFvは、配列番号:37のアミノ酸配列に対応するか、又は配列番号:37のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号:37のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0122】
幾つかの実施態様では、ここに記載のTEAMの何れかの抗CD3 scFvは、VH-VL配向、又はVL-VH配向に配置することができる。幾つかの実施態様では、抗CD3 VHは、配列番号:9のアミノ酸配列、又は配列番号:9のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、抗CD3 VLは、配列番号:10のアミノ酸配列、又は配列番号:10のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0123】
幾つかの実施態様では、TEAMは、反復優位糖タンパク質A(GARP)、潜在関連ペプチド(LAP)、CD25、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)に結合する抗体を含む。幾つかの実施態様では、TEAMは、配列番号:11~12の何れか一つのアミノ酸配列、又は配列番号:11~12の何れか一つのアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0124】
幾つかの実施態様では、TEAMは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する抗体試薬を含む。
【0125】
幾つかの実施態様では、抗FAP抗体試薬はシブロツズマブである。幾つかの実施態様では、抗FAP抗体試薬は、配列番号:6の可変重鎖(VH)を含むか、又は配列番号:6に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有するVH配列を含む。幾つかの実施態様では、抗FAP抗体試薬は、配列番号:7の可変軽鎖(VL)を含むか、又は配列番号:7の配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有するVL配列を含む。VHはVLのN末端に配置されてもよく、又はVLはVHのN末端に配置されてもよい。幾つかの実施態様では、抗FAP抗体試薬は、配列番号:8を含むか、又は配列番号:8と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含む。
【0126】
幾つかの実施態様では、TEAMは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する抗体試薬と、CD3に結合する抗体試薬とを含む。幾つかの実施態様では、FAP抗体試薬は、CD3 scFvの上流にコードされる。
【0127】
幾つかの実施態様では、CAR及びTEAMは、同じポリペプチド上にコードされる。幾つかの実施態様では、CAR及びTEAMは、同じポリペプチド上にコードされ、上記のようにリンカードメインによって分離される。幾つかの実施態様では、リンカードメインは切断可能である。幾つかの実施態様では、CARは抗メソテリンCARであり、TEAMは線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)及びCD3 TEAMである。幾つかの実施態様では、CARは抗メソテリンCARであり、TEAMは抗FAP scFv及び抗CD3 scFvを含む。幾つかの実施態様では、CAR及びTEAMポリペプチドは、配列番号:1の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、CAR及びTEAMポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号:1を含む。幾つかの実施態様では、CAR及びTEAMポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号:1からなる。
【0128】
幾つかの実施態様では、TEAMは、TEAMが存在しない場合における免疫細胞のがんへの結合と比較して、免疫細胞のがんへの結合を増強する。幾つかの実施態様では、TEAMは、TEAMがなく、免疫細胞上の抗原に結合するCARがない場合における免疫細胞のがんへの結合と比較して、免疫細胞のがんへの結合を増強する。幾つかの実施態様では、TEAMは、免疫細胞のがんへの結合を少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、又は少なくとも250%)増加させる。幾つかの実施態様では、TEAMは、免疫細胞のがんへの結合を、10%~20%、10%~30%、10%~50%、10%~100%、10%~150%、10%~200%、10%~250%、50%~100%、50%~150%、50%~200%、50%~250%、100%~150%、100%~200%、100%~250%、20%~30%、20%~40%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、30%~40%、30%~50%、30%~60%、又は30%~70%増加させる。幾つかの実施態様では、TEAMは、免疫細胞のがんへの結合を20%~40%増加させる。幾つかの実施態様では、TEAMは、免疫細胞のがんへの結合を100%~250%増加させる。幾つかの実施態様では、免疫細胞はT細胞である。幾つかの実施態様では、免疫細胞はCAR T細胞である。幾つかの実施態様では、TEAMはFAP TEAMである。
【0129】
[CAR T細胞]
ここに記載の技術の一態様は、(任意選択的に別の治療薬(例えば、抗体試薬(例えば、scFv、ラクダ科動物抗体、又はTEAM)又はサイトカイン)と一緒に)ここに記載されるCARポリペプチドの何れかを含む哺乳動物細胞;又は(任意選択的に別の治療薬(例えば、抗体試薬(例えば、scFv、ラクダ科動物抗体、又はTEAM)又はサイトカイン)と一緒に)ここに記載のCARポリペプチドの何れかをコードする核酸に関する。幾つかの実施態様では、哺乳動物細胞は、抗体、抗体試薬、その抗原結合部分、ここに記載のCARの何れか、又はサイトカイン、或いはそのような抗体、抗体試薬、その抗原結合部分、ここに記載のCARの何れか、又はサイトカインをコードする核酸を含む。哺乳動物細胞又は組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、齧歯類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ又はネコ由来でありうるが、任意の他の哺乳動物細胞を使用してもよい。何れかの態様の好ましい実施態様では、哺乳動物細胞はヒトである。
【0130】
何れかの態様の幾つかの実施態様では、哺乳動物細胞は免疫細胞である。ここで使用される場合、「免疫細胞」は、免疫応答においてある役割を果たす細胞を意味する。免疫細胞は造血起源であり、リンパ球、例えばB細胞及びT細胞;ナチュラルキラー細胞;骨髄系細胞、例えば単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球を含む。幾つかの実施態様では、免疫細胞は、T細胞;NK細胞;NKT細胞;リンパ球、例えばB細胞及びT細胞;及び骨髄系細胞、例えば単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球である。幾つかの実施態様では、免疫細胞はT細胞である。
【0131】
幾つかの実施態様では、免疫細胞は、がん、形質細胞障害、又は自己免疫疾患を有するか、又は有すると診断された個体から得られる。
【0132】
幾つかの実施態様では、哺乳動物細胞、例えばT細胞は、ここに記載のCARポリペプチドの何れかとここに記載の治療薬;又はここに記載のCARポリペプチドの何れかと治療薬をコードする核酸を含むように改変されうる。T細胞は、当該分野で知られている標準的技術を使用して対象から得ることができる。例えば、T細胞は、ドナー又は患者から採取した末梢血から単離することができる。T細胞は哺乳動物から単離することができる。好ましくは、T細胞はヒトから単離される。
【0133】
幾つかの実施態様では、CAR T細胞は、ここに記載の抗メソテリンCARを含む。幾つかの実施態様では、CAR T細胞は、配列番号:2~5の何れか一つのCAR又は配列番号:1のCAR-TEAMポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0134】
[CAR T及び治療薬核酸配列]
また提供されるのは、CART細胞の産生に使用されるここに記載の(i)CARポリペプチド(例えば、配列番号:2~5の何れか一つ)、又は(ii)CARポリペプチド及び治療薬(例えば、配列番号:1)を含むポリタンパク質をコードする核酸コンストラクト及びベクターである。
【0135】
幾つかの実施態様では、本開示は、それぞれが本開示のCART細胞で発現される複数のタンパク質の別個のコード配列を含むコンストラクトを提供する。これらの別個のコード配列は、ここに記載のように、切断可能なリンカー配列によって互いに分離することができる。例えば、ウイルス2Aタンパク質(例えば、T2A及びP2A)をコードする配列は、別個の遺伝子の間に配置することができ、転写されると、生成されたポリタンパク質の切断を方向付けることができる。上記のように、本開示のコンストラクト及びベクターは、多くの配列の様々な組み合わせの何れかを含みうる。例えば、本開示のコンストラクト又はベクターは、ここに記載されるような一つのCARをコードする配列を、任意選択的にここに記載されるような治療薬(例えば、抗体試薬(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科動物抗体)、又は二重特異性抗体(例えば、TEAM))又はサイトカイン)と組み合わせて、含みうる。
【0136】
ここに記載のCART細胞内でのタンパク質の効率的な発現は、タンパク質をコードする核酸のmRNA、DNA、又は遺伝子産物を検出する標準的なアッセイを使用して評価することができる。例えば、RT-PCR、FAGS、ノーザンブロッティング、ウエスタンブロッティング、ELISA、又は免疫組織化学を使用することができる。ここに記載のタンパク質は、構成的に発現され、又は誘導的に発現されうる。幾つかの実施態様では、タンパク質は、組換え核酸配列によってコードされる。例えば、本開示は、CARをコードする第一のポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供し、CARは、例えば腫瘍抗原又はTreg関連抗原に結合する抗原結合配列を含む細胞外ドメイン、及び任意選択的に、治療薬(例えば、抗体試薬(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科動物抗体)、又は二重特異性抗体(例えば、TEAM))又はサイトカイン)をコードする第二のポリヌクレオチド配列を含む。
【0137】
幾つかの実施態様では、第一のポリヌクレオチド配列と第二のポリヌクレオチド配列は、それぞれプロモーターに作用可能に連結される。幾つかの実施態様では、第一のポリヌクレオチド配列は第一のプロモーターに作用可能に連結され、第二のポリヌクレオチド配列は第二のプロモーターに作用可能に連結される。プロモーターは、構成的に発現されるプロモーター(例えば、EF1αプロモーター)又は誘導的に発現されるプロモーター(例えば、NFATプロモーター)でありうる。
【0138】
幾つかの実施態様では、CARと治療薬の発現は、同じプロモーター、例えば構成的に発現されるプロモーター(例えば、EF1αプロモーター)によって駆動される。他の実施態様では、CARと治療薬の発現は、異なるプロモーターによって駆動される。例えば、CARの発現は構成的に発現されるプロモーター(例えば、EF1αプロモーター)によって駆動されうるが、治療薬の発現は誘導的に発現されるプロモーター(例えば、NFATプロモーター)によって駆動されうる。CARをコードするポリヌクレオチド配列は、治療薬をコードするポリヌクレオチド配列の上流に位置することができ、又は治療薬をコードするポリヌクレオチド配列は、CARをコードするポリヌクレオチド配列の上流に位置することができる。
【0139】
幾つかの実施態様では、ポリヌクレオチドは、自殺遺伝子の発現を含みうる。これは、投与された細胞の外部の薬物媒介制御を促進するためになされうる。例えば、自殺遺伝子を使用することにより、例えば、有害事象の場合に、改変された細胞を患者から枯渇させることができる。幾つかの実施態様では、FK506結合ドメインが、カスパーゼ9プロアポトーシス分子に融合される。このように改変されたT細胞は、免疫抑制薬タクロリムスに対して感受性になる。自殺遺伝子の他の例は、チミジンキナーゼ(TK)、CD20、チミジル酸キナーゼ、切断型前立腺特異的膜抗原(PSMA)、切断型低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)、切断型co・19、及び改変Fasであり、これらは特定の分子(例えば、TK+細胞に対するガンシクロビル)又は抗体又は抗体-薬物コンジュゲートの投与による条件付きアブレーションでトリガーされうる。
【0140】
CAR T細胞で発現されるタンパク質をコードする配列を含むコンストラクトをベクター内に含めることができる。様々な例では、ベクターはレトロウイルスベクターである。レンチウイルスなどのレトロウイルスは、目的の遺伝子又はキメラ遺伝子をコードする核酸配列を送達するための簡便なプラットフォームを提供する。選択された核酸配列は、当該技術分野において知られている技術を使用して、ベクターに挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージ化されうる。ついで、組換えウイルスは単離され、例えば、インビトロ又はエクスビボで細胞に送達されうる。レトロウイルス系は当該技術分野においてよく知られており、その全体が出典明示によりここに援用される、例えば、米国特許第5219740号;Kurth及びBannert(2010)“Retroviruses:Molecular Biology,Genomics and Pathogenesis”Calster Academic Press(ISBN:978-1-90455-55-4);及びHu等,Pharmacological Reviews 52:493-512,2000に記載されている。効率的なDNA送達のためのレンチウイルス系は、OriGene(Rockville,MD)から購入できる。様々な実施態様では、タンパク質は、当該技術分野で知られているベクター及び方法を使用して、タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターのトランスフェクション又はエレクトロポレーションによってT細胞で発現される。幾つかの実施態様では、ベクターはウイルスベクター又は非ウイルスベクターである。
【0141】
幾つかの実施態様では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0142】
幾つかの実施態様では、ベクターを含む組成物は、CARをコードする第一のポリヌクレオチド配列を含み、CARは、腫瘍抗原又はTreg関連抗原に特異的に結合する配列を含む細胞外ドメイン、及び任意選択的に、治療薬をコードする第二のポリヌクレオチド配列を含む。所定の実施態様では、治療薬が抗体試薬(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科動物抗体)、又は二重特異性抗体(例えば、TEAM))である場合、抗体試薬は、腫瘍抗原又はTreg関連抗原に特異的に結合する。
【0143】
[CAR及び治療薬の発現]
何れかの態様の幾つかの実施態様では、ここに記載のCARポリペプチドの何れかは(任意選択的に、ここに記載の抗体試薬又はサイトカインと一緒に)、レンチウイルスベクターから発現される。レンチウイルスベクターは、感染標準技術を使用して、細胞内でCARポリペプチド(及び任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)を発現させるために使用される。
【0144】
レンチウイルスなどのレトロウイルスは、目的の遺伝子又はキメラ遺伝子をコードする核酸配列を送達するための簡便なプラットフォームを提供する。選択された核酸配列は、当該技術分野において知られている技術を使用して、ベクターに挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージ化されうる。ついで、組換えウイルスは単離され、例えば、インビトロ又はエクスビボで細胞に送達されうる。レトロウイルス系は当該技術分野においてよく知られており、その全体が出典明示によりここに援用される、例えば、米国特許第5219740号;Kurth及びBannert(2010)“Retroviruses:Molecular Biology,Genomics and Pathogenesis”Calster Academic Press(ISBN:978-1-90455-55-4);及びHu等,Pharmacological Reviews 52:493-512,2000に記載されている。効率的なDNA送達のためのレンチウイルス系は、OriGene(Rockville,MD)から購入できる。幾つかの実施態様では、ここに記載のCARの何れかのCARポリペプチド(及び任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)は、CARをコードする核酸を含む発現ベクターのトランスフェクション又はエレクトロポレーションを介して哺乳動物細胞内で発現される。
【0145】
トランスフェクション又はエレクトロポレーション法は当該技術分野において知られている。
【0146】
ここに記載のポリペプチドの何れかのCARポリペプチド(及び任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)の効率的な発現は、mRNA、DNA、又はCAR(及び任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)をコードする核酸の遺伝子産物を検出する標準アッセイ、例えばRT-PCR、FACS、ノーザンブロッティング、ウエスタンブロッティング、ELISA、又は免疫組織化学的検査を使用してアッセイされうる。
【0147】
幾つかの実施態様では、ここに記載されるCARポリペプチド(及び任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)は構成的に発現される。他の実施態様では、CARポリペプチドは構成的に発現され、任意選択的な抗体試薬又はサイトカインは誘導的に発現される。幾つかの実施態様では、ここに記載のCARポリペプチド(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)は組換え核酸配列によってコードされる。
【0148】
【0149】
[投与及び治療]
[対象]
ここで使用される場合、「対象」はヒト又は動物を意味する。通常、動物は、霊長類、齧歯類、家畜、又は狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、例えば、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えば、アカゲザルが含まれる。齧歯類には、例えば、マウス、ラット、マーモット、フェレット、ウサギ及びハムスターが含まれる。家畜及び狩猟動物には、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えば、飼い猫、イヌ種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、及び魚、例えば、マス、ナマズ及びサケが含まれる。幾つかの実施態様では、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。「個体」、「患者」、及び「対象」という用語は、ここでは互換的に使用される。好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、又はウシでありうるが、これらの例には限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、がんなどの疾患の動物モデルを表す対象として有利に使用することができる。対象は、雄又は雌でありうる。
【0150】
対象者は、治療を必要とする状態(例えば、なかでも膵臓がん、肺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、胆道がん、胃がん、若しくは中皮腫、又はメソテリンを発現する別の種類のがん)又はそのような状態に関連した一又は複数の合併症と以前に診断されたか、又はそれに罹患しもしくはそれを有していると判定され、場合によっては、その状態又はその状態に関連する一又は複数の合併症に対して治療を既に受けているものでありうる。
【0151】
或いは、対象はまたそのような状態又は関連する合併症を有していると過去には診断されたことがないものでありうる。例えば、対象は、その状態又はその状態に関連する一又は複数の合併症に対する一又は複数の危険因子を示すもの或いは危険因子を示さない対象でありうる。
【0152】
特定の状態の治療を「必要とする対象」は、その状態を有し、その状態を有していると診断され、又はその状態を発症するリスクがある対象でありうる。
【0153】
[薬学的組成物]
ここで使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、薬学的に許容される担体、例えば、製薬業界で一般的に使用される担体と組み合わせた活性剤を意味する。
【0154】
「薬学的に許容される」という語句は、ここでは、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題や合併症を伴わないで、妥当な効果/リスク比に見合って、人間や動物の組織と接触して使用されるのに適した化合物、物質、組成物、及び/又は剤形を指すために用いられる。態様の何れかの幾つかの実施態様では、薬学的に許容される担体は、水以外の担体でありうる。態様の何れかの幾つかの実施態様では、薬学的に許容される担体は、クリーム、エマルジョン、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、及び/又は軟膏でありうる。態様の何れかの幾つかの実施態様では、薬学的に許容される担体は、人工又は改変された担体、例えば、活性成分がその中では天然に生じることが見出されない担体でありうる。
【0155】
本技術の一態様では、ここに記載の技術は、ここに記載の活性化CAR T細胞と、場合によっては薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物に関する。最小限の薬学的組成物の活性成分は、ここに記載される活性化CAR T細胞を含む。幾つかの実施態様では、薬学的組成物の有効成分は、ここに記載される活性化CAR T細胞から本質的になる。幾つかの実施態様では、薬学的組成物の有効成分は、ここに記載される活性化CAR T細胞からなる。細胞ベースの治療製剤のための薬学的に許容される担体には、生理食塩水及び水性緩衝液、リンゲル液、並びに血清成分、例えば血清アルブミン、HDL及びLDLが含まれる。「添加物」、「担体」、「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される添加物」等のような用語は、ここでは互換的に使用される。
【0156】
幾つかの実施態様では、ここに記載される活性化CAR T細胞を含む薬学的組成物は、非経口剤形でありうる。非経口剤形の投与は、典型的には、汚染物質に対する患者の自然防御を回避するので、CAR T細胞自体以外の成分は、好ましくは、無菌であるか、又は患者への投与前に無菌化できる。非経口剤形の例には、限定されないが、注射用の溶液、注射用の薬学的に許容されるビヒクルに溶解又は懸濁される乾燥生成物、注射用の懸濁液、及び乳濁液が含まれる。これらの何れも、投与前に活性化CAR T細胞調製物に加えることができる。開示されている活性化CAR T細胞の非経口剤形を提供するために使用されうる適切なビヒクルは当業者によく知られている。例には、非限定的に、生理食塩水;グルコース溶液;限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射液、乳酸リンゲル注射液を含む水性ビヒクル;限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル;並びに限定されないが、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクルが含まれる。
【0157】
[投薬量]
ここで使用される「単位剤形」という用語は、適切な一回の投与のための投薬量を意味する。例として、単位剤形は、例えばシリンジ又は静脈内点滴バッグなどの送達デバイスに配されたある量の治療薬でありうる。幾つかの実施態様では、単位剤形は単回投与で投与される。別の実施態様では、一を超える単位剤形が同時に投与されうる。
【0158】
幾つかの実施態様では、ここに記載される活性化CAR T細胞は単剤療法として投与され、すなわち、状態に対する他の治療は対象に同時的には施されない。ここに記載のT細胞を含む薬学的組成物は、一般に、104から109細胞/kg体重、場合によっては105から106細胞/kg体重の投薬量で投与でき、それらの範囲内の全ての整数値を含む。必要に応じて、T細胞組成物はこれらの投薬量で複数回投与することもできる。細胞は、免疫療法において一般的に知られている注入技術を使用することによって投与することができる(例えば、Rosenberg等,New Eng.J.Med.319:1676,1988を参照)。
【0159】
所定の態様では、活性化CAR T細胞を対象に投与し、その後血液を再採取(又はアフェレーシスを実施)し、ここに記載のようにそこからT細胞を活性化し、患者にこれらの活性化及び増殖T細胞を再注入することが望ましい場合がある。この方法は、数週間ごとに複数回実行されうる。所定の態様では、T細胞は、35 10ccから400ccの採血から活性化されうる。所定の態様では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、又は100ccの採血から活性化される。
【0160】
[投与]
幾つかの実施態様では、ここに記載の方法は、がん、形質細胞疾患又は障害、又は自己免疫疾患又は障害を有しているか又は有していると診断された対象を、ここに記載のCARポリペプチド(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)の何れか、或いはここに記載のCARポリペプチド(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)の何れかをコードする核酸を含む哺乳動物細胞で治療することに関する。ここに記載のCAR T細胞は、ここに記載のCARポリペプチド(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)の何れか、又はここに記載のCARポリペプチド(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)の何れかをコードする核酸を含む哺乳動物細胞を含む。状態を有する対象は、状態を診断する本方法を使用して医師によって特定されうる。これらの状態を特徴付け、診断を助ける、状態の症状及び/又は合併症は、当該技術分野においてよく知られており、限定されないが、疲労、持続性感染、及び持続性出血が含まれる。例えば、状態の診断に役立ちうる試験には、限定されないが、血液検査及び骨髄検査があり、所与の状態に対して当該分野で知られている。状態の家族歴、又は状態の危険因子への曝露は、対象がその状態を有している可能性が高いかどうかを判断したり、状態の診断を下したりするのにも役立ちうる。
【0161】
ここに記載の組成物は、状態を有するか、又は状態を有すると診断された対象に投与されうる。幾つかの実施態様では、ここに記載される方法は、状態の症状を緩和するために、ここに記載される活性化CAR T細胞の有効量を対象に投与することを含む。ここで使用される場合、「状態の症状を緩和する」とは、任意の状態又は状態に関連する症状を寛解させることである。同等の未処置対照と比較して、そのような減少は、任意の標準技法で測定して、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%又はそれ以上である。ここに記載の組成物を対象に投与するための様々な手段は、当業者に知られている。幾つかの実施態様では、ここに記載の組成物は、全身的又は局所的に投与される。好ましい実施態様では、ここに記載の組成物は静脈内投与される。別の実施態様では、ここに記載の組成物は、腫瘍の部位に投与される。
【0162】
ここで使用される「有効量」という用語は、疾患又は障害の少なくとも一又は複数の症状を緩和するのに必要な活性化CAR T細胞の量を意味し、所望の効果をもたらすのに十分な量の細胞調製物又は組成物に関する。従って、「治療的有効量」という用語は、典型的な対象に投与されると、特定の状態に抗する効果をもたらすのに十分な活性化CAR T細胞の量を意味する。ここで使用される有効量は、様々な状況では、疾患の症状の進行を遅らせ、疾患の症状の経過を変え(例えば、限定されないが、状態の進行を遅らせ)、又は状態の症状を逆転させるのに十分な量をまた含みうる。従って、正確な「有効量」を指定することは一般に現実的ではない。しかしながら、如何なる場合においても、適切な「有効量」は、日常的な実験のみを使用して当業者によって決定されうる。
【0163】
有効量、毒性、及び治療効果は、細胞培養又は実験動物における標準的な製薬手順によって評価されうる。投薬量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて変動しうる。毒性と治療効果の間の用量比は治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す組成物及び方法が好ましい。治療上有効な用量は、最初に細胞培養アッセイから推定できる。また、用量は、細胞培養又は適切な動物モデルにおいて決定されたIC50(すなわち、症状の最大半量阻害を達成する活性化CAR T細胞の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するために、動物モデルで定式化されうる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定の投薬量の効果は、適切なバイオアッセイ、例えば、とりわけ骨髄検査のためのアッセイによって、モニターされうる。投薬量は医師によって決定され、観察された治療効果に合わせて必要に応じて調整されうる。
【0164】
[投与方法]
投与方法は、例えば、静脈内(i.v.)注射又は注入を含みうる。ここに記載の組成物は、患者に経動脈的に、腫瘍内に、節内に、腹腔内に又は髄内に投与されうる。幾つかの実施態様では、T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節、又は感染部位に直接注射されうる。幾つかの実施態様では、ここに記載の組成物は、体腔又は体液(例えば、腹水、胸膜液、腹腔液、又は脳脊髄液)中に投与される。
【0165】
特定の例示的な態様では、対象は白血球除去輸血を受けてもよく、白血球がエクスビボで収集され、濃縮され、又は除去されて、目的の細胞、例えばT細胞を選択及び/又は単離する。これらのT細胞分離株は、人工APC、例えば、抗CD28及び抗CD3 CDRを発現するaAPCとの接触によって増殖され、本技術の一又は複数のCARコンストラクトが導入されうるように処理され、それによってCAR T細胞が作製される。それを必要とする対象は、その後、高用量化学療法による標準治療を受け、その後、末梢血幹細胞移植を受けることができる。移植後又は移植と同時に、対象は増殖CAR T細胞の注入を受けることができる。幾つかの実施態様では、増殖細胞は、手術の前又は後に投与される。幾つかの実施態様では、リンパ球枯渇は、ここに記載される一又は複数のCAR T細胞を投与する前に対象に実施される。そのような実施態様では、リンパ球枯渇は、メルファラン、サイトキサン、シクロホスファミド、及びフルダラビンの一又は複数を投与することを含みうる。患者に投与される上記の治療薬の投薬量は、治療される状態の正確な性質及び治療のレシピエントによって変化するであろう。ヒトへの投与のための投薬量のスケーリングは、当該技術分野で認められている実務に従って実施されうる。
【0166】
幾つかの実施態様では、単一の治療レジメンが必要とされる。他の場合には、一又は複数回のその後の用量又は治療レジメンの投与が実施されうる。例えば、隔週で3か月間治療した後、治療を月に1回、6か月間又は1年以上繰り返すことができる。幾つかの実施態様では、初回治療後に追加の治療は施されない。
【0167】
ここに記載される組成物の投薬量は、医師によって決定され、必要に応じて、観察された治療の効果に適合するように調整されうる。治療の期間と頻度に関して、熟練した臨床医は、治療がいつ治療効果をもたらすかを判断し、更に細胞を投与するか、治療を中止するか、治療を再開するか、又は治療レジメンに対してその他の変更を行うかを決定するために、対象を監視するのが一般的である。投薬量は、サイトカイン放出症候群などの有害な副作用を引き起こすほど多くすべきではない。一般に、投薬量は、患者の年齢、状態、及び性別によって異なり、当業者が決定することができる。投薬量はまた何らかの合併症が発生した場合には、個々の医師によって調整されうる。
【0168】
[併用療法]
ここに記載の活性化CAR T細胞は、場合によっては、当業者により適切であると決定されうるように、互いに、また他の既知の薬剤及び療法と組み合わせて、使用されうる。一例では、異なるTregマーカー(例えば、GARP、LAP、CD25、及び細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)など)を標的とする二種以上のCAR T細胞を組み合わせて投与することができる。別の例では、異なるがん抗原を標的とする二種以上のCAR T細胞が組み合わせて投与される。更なる例では、Tregマーカー(例えば、GARP、LAPなど)を標的とする一又は複数のCAR T細胞と、一又は複数の腫瘍抗原を標的とする一又は複数のCAR T細胞とが組み合わせて投与される。
【0169】
ここで使用される「組み合わせて」投与されるとは、対象の疾患の苦痛の過程中に二種(又はそれ以上)の異なる治療剤が対象に送達されることを意味し、例えば、二種以上の治療剤は対象が障害を持つと診断された後で、障害が治癒され又は排除される前、又は治療が他の理由で中止される前に送達される。幾つかの実施態様では、一回の治療の送達は二回目の送達が開始された時点でまだなされており、投与に関して重複がある。これは、ここではしばしば「同時」又は「同時的送達」と呼ばれる。他の実施態様では、一種の治療剤の送達が、他の種の治療剤の送達が始まる前に終了する。何れかの場合の幾つかの実施態様では、治療は、併用投与のため、より効果的である。例えば、第二の治療剤は、第一の治療剤がない場合に投与された場合に見られるよりも、より効果的で、例えば、第二の治療剤を少なくしても同等の効果が見られ、又は第二の治療剤が症状を大きく低減し、或いは第一の治療剤と類似の状況が見られる。幾つかの実施態様では、送達は、症状又は障害に関連する他のパラメーターの減少が、他の治療剤がない場合に送達された一種の治療剤で観察されるであろうものよりも大きいようなものである。二種の治療剤の効果は、部分的に相加的、完全に相加的、又は相加的よりも大きい場合がある。送達は、送達された第一の治療剤の効果が、第二の治療剤が送達されたときに依然として検出可能であるようなものでありうる。ここに記載の活性化CAR T細胞と少なくとも一種の追加の治療剤は、同時に、同じ又は別々の組成物で、又は逐次的に投与されうる。逐次投与の場合、ここに記載のCAR発現細胞を最初に投与することができ、追加の薬剤を二回目に投与することができ、又は投与の順序を逆にすることができる。CAR T療法及び/又は他の治療剤、手順又はモダリティは、活動性障害の期間中、又は寛解期間もしくは活動性の低い疾患の期間中に施されうる。CAR T療法は、別の治療の前に、治療と同時に、治療後に、又は障害の寛解中に施されうる。
【0170】
組み合わせて投与される場合、活性化CAR T細胞と追加の薬剤(例えば、第二又は第三の薬剤)、又は全てが、例えば単剤療法として、個々に使用される各薬剤の量又は投薬量より多いか、少ないか又は同じである量又は用量で投与されうる。所定の実施態様では、活性化CAR T細胞、追加の薬剤(例えば、第二又は第三の薬剤)、又は全ての投与される量又は投薬量は、個々に使用される各薬剤の量又は投薬量より少ない(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%である)。他の実施態様では、所望の効果(例えば、がんの治療)をもたらす、活性化CAR T細胞、追加の薬剤(例えば、第二又は第三の薬剤)、又は全ての量又は投薬量は、同じ治療効果を達成するために個々に必要とされる各薬剤の量又は投薬量よりも少ない(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%少ない)。更なる実施態様では、ここに記載の活性化CAR T細胞は、外科手術、化学療法、放射線、mTOR経路阻害剤、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノレート、及びFK506、抗体、又は他の免疫除去剤、例えばCAMPATH、抗CD3抗体又は他の抗体療法、サイトキシン、フルダラビン、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、又はペプチドワクチン、例えばIzumoto等,J.Neurosurg.108:963-971,2008に記載されたものと組み合わせた治療レジメンにおいて使用されうる。
【0171】
幾つかの実施態様では、ここに記載の活性化CAR T細胞は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用されうる。例示的なチェックポイント阻害剤には、抗PD-1阻害剤(ニボルマブ、MK-3475、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、AMP-224、AMP-514)、抗CTLA4阻害剤(イピリムマブ及びトレメリムマブ)、抗POL1阻害剤(アテゾリズマブ、アベロマブ、MSB0010718C、MEDI4736、及びMPDL3280A)、及び抗TIM3阻害剤が含まれる。
【0172】
幾つかの実施態様では、ここに記載の活性化CAR T細胞は、化学療法剤と組み合わせて使用されうる。例示的な化学療法剤には、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン(例えば、リポソームドキソルビシン))、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、デカルバジン、メルファラン、イホスファミド、テモゾロミド)、免疫細胞抗体(例えば、アレムツザマブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ)、代謝拮抗剤(例えば、葉酸拮抗薬、ピリミジン類似体、プリン類似体及びアデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、フルダラビン)を含む)、mTOR阻害剤、TNFRグルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト、プロテアソーム阻害剤(例えば、アクラシノマイシンA、グリオトキシン又はボルテゾミブ)、免疫調節剤、例えばサリドマイド又はサリドマイド誘導体(例えば、レナリドマイド)が含まれる。併用療法における使用が考えられる一般的な化学療法剤には、アナストロゾール(アリミデックス(登録商標))、ビカルタミド(カソデックス(登録商標))、硫酸ブレオマイシン(ブレノキサン(Blenoxane)(登録商標))、ブスルファン(ミレラン(登録商標))、ブスルファン注射剤(ブスルフェクス(登録商標))、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(ロイケラン(登録商標))、シスプラチン(プラチノール(登録商標))、クラドリビン(ロイスタチン(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)又はネオサール(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(サイトサール-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射剤(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、コスメガン)、ダウノルビシン塩酸塩(セルビジン(登録商標))、クエン酸ダウノルビシンリポソーム注射剤(DaunoXome(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、ドキソルビシン塩酸塩(アドリアマイシン(登録商標)、ルベックス(登録商標))、エトポシド(ベペシド(登録商標))、リン酸フルダラビン(フルダラ(登録商標))、5-フルオロウラシル(アドルシル(登録商標)、エフデックス(登録商標))、フルタミド(ユーレキシン(Eulexin)(登録商標))、テザシチビン、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(ハイドレア(登録商標))、イダルビシン(イダマイシン)、イフォスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(カンプトサール(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(アルケラン(登録商標))、6-メルカプトプリン(プリネトール(Purinethol)(登録商標))、メトトレキサート(フォーレックス(Folex)(登録商標))、ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標))、マイロターグ、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、フェニックス(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンインプラントを含むポリフェプロサン20(ギリアデル(登録商標))、クエン酸タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標))、テニポシド(ブモン(Vumon)(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(チラゾン(Tirazone)(登録商標))、注射用トポテカン塩酸塩(ハイカムチン(登録商標))、ビンブラスチン(ベルバン(Velban)(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、及びビノレルビン(ナベルビン(登録商標))が含まれる。例示的なアルキル化剤には、限定されないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレア及びトリアゼン);ウラシルマスタード(アミノウラシルマスタード(登録商標)、クロレタミナシル(登録商標)、デメチルドパン(登録商標)、デスメチルドパン(登録商標)、ヘマンタミン(登録商標)、ノルドパン(登録商標)、ウラシルナイトロジェンマスタード(登録商標)、ウラシルロスト(Uracillost)(登録商標)、ウラシルモスターザ(Uracilmostaza)(登録商標)、ウラムスチン(Uramustin)(登録商標)、ウラムスチン(Uramustine)(登録商標))、クロルメチン(マスタージェン(Mustargen)(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)、ネオサール(登録商標)、クラフェン(Clafen)(登録商標)、エンドキサン(登録商標)、プロシトックス(Procytox)(登録商標)、RevimmuneTM)、イホスファミド(ミトキサーナ(Mitoxana)(登録商標)、メルファラン(アルケラン(登録商標))、クロラムブシル(リューケラン(登録商標))、ピポブロマン(アメデル(Amedel)(登録商標)、ベルサイト(Vercyte)(登録商標))、トリエチレンメラミン(へメル(Hemel)(登録商標)、ヘキサレン(登録商標)、ヘキサスタット(Hexastat)(登録商標))、トリエチレンチオホスホラミン、テモゾロミド(テモダール(登録商標))、チオテパ(チオプレックス(Thioplex)(登録商標))、ブスルファン(ブシルベックス(Busilvex)(登録商標)、ミレラン(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(ザノサー(登録商標))、及びダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))が含まれる。追加の例示的なアルキル化剤には、限定されないが、オキサリプラチン(エロキサチン(Eloxatin)(登録商標);テモゾロミド(テモダール(Temodar)(登録商標)及びテモダール(Temodal)(登録商標));ダクチノマイシン(アクチノマイシン-D、コスメゲン(登録商標)としても知られている);メルファラン(L-PAM、L-サルコリシン、及びフェニルアラニンマスタード、アルケラン(登録商標)としても知られている);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、ヘキサレン(登録商標)としても知られている);カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(トレアンダ(登録商標));ブスルファン(ブスルフェックス(登録商標)及びミレラン(登録商標));カルボプラチン(パラプラチン(登録商標));ロムスチン(CCNU、CeeNU(登録商標)としても知られている);シスプラチン(CDDP、プラチノール(登録商標)及びプラチノール(登録商標)-AOとしても知られている);クロラムブシル(リューケラン(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)及びネオサール(登録商標));ダカルバジン(DTIC、DIC及びイミダゾールカルボキサミド、DTIC-Dome(登録商標)としても知られている);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、ヘキサレン(登録商標)としても知られている);イフォスファミド(Ifex(登録商標));プレドヌムスチン;プロカルバジン(マチュレーン(登録商標));メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、ムスチン及び塩酸メクロレタミン、マスタージェン(登録商標)としても知られている);ストレプトゾシン(ザノサー(登録商標));チオテパ(チオホスホアミド、TESPA及びTSPA、チオプレックス(登録商標)としても知られている);シクロホスファミド(エンドキサン(登録商標)、シトキサン(登録商標)、ネオサール(登録商標)、プロシトックス(登録商標)、Revimmune(登録商標));及びベンダムスチンHC1(トレアンダ(登録商標))が含まれる。例示的なmTOR阻害剤には、例えば、テムシロリムス;リダフォロリムス(正式には、AP23573及びMK8669としても知られ、PCT公開番号WO03/064383に記載されている、デフェロリムス(deferolimus)、(lR,2R,45)-4-[(2R)-2[(1R,95,125,15R,16E,18R,19R,21R,235,24E,26E,28Z,305,325,35R)-l,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-2,3,10,14,20-ペンタオキソ-ll,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04’9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル]プロピル]-2-メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネート);エベロリムス(アフィニトール(登録商標)又はRADOOI);ラパマイシン(AY22989、シロリムス(登録商標));シマピモド(simapimod(CAS164301-51-3);エムシロリムス、(5-{2,4-ビス[(35,)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリド[2,3-(i]ピリミジン-7-イル}-2-メトキシフェニル)メタノール(AZD8055);2-アミノ-8-[iraw5,-4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシ-3-ピリジニル)-4-メチル-ピリド[2,3-JJピリミジン-7(8H)-オン(PF04691502、CAS1013101-36-4);及びN2-[1,4-ジオキソ-4-[[4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)モルホリニウム-4-イル]メトキシ]ブチル]-L-アルギニルグリシル-L-a-アスパルチルL-セリン-,内塩(SF1126、CAS936487-67-1)、及びXL765が含まれる。例示的な免疫調節剤には、例えば、アフツズマブ(Roche(登録商標)から入手可能)、ペグフィルグラスチム(ニューラスタ(Neulasta)(登録商標));レナリドミド(CC-5013、レブラミド(登録商標));サリドマイド(サロミド(Thalomid)(登録商標))、アクチミド(CC4047);及びIRX-2(インターロイキン1、インターロイキン2、及びインターフェロンyを含むヒトサイトカイン混合物、CAS951209-71-5、 IRX Therapeuticsから入手可能)が含まれる。例示的なアントラサイクリンには、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)及びルベックス(登録商標));ブレオマイシン(レノキサン(登録商標));ダウノルビシン(ダウノルビシン塩酸塩、ダウノマイシン、及びルビドマイシン塩酸塩、セルビジン(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(クエン酸ダウノルビシンリポソーム、DaunoXome(登録商標));ミトキサントロン(DHAD、ノバントロン(Novantrone)(登録商標));エピルビシン(エレンスTM);イダルビシン(イダマイシン(登録商標)、イダマイシンPFS(登録商標));マイトマイシンC(ムタマイシン(登録商標));ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン;及びデスアセチルラビドマイシンが含まれる。例示的なビンカアルカロイドには、例えば、酒石酸ビノレルビン(ナベルビン(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、及びビンデシン(エルディシン(登録商標));ビンブラスチン(硫酸ビンブラスチン、ビンカロイコブラスチン及びVLB、アルカバンAQ(登録商標)及びベルバン(登録商標)としても知られている);及びビノレルビン(ナベルビン(登録商標))が含まれる。例示的なプロテオソーム阻害剤には、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標));カルフィルゾミブ(PX-171-007、(5)-4-メチル-N-((5)-l-(((5)-4-メチル-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-2-((5,)-2-(2-モルホリノアセトアミド)-4-フェニルブタンアミド)-ペンタンアミド);マリゾミブ(NPT0052);クエン酸イキサゾミブ(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);及びO-メチル-N-
[(2-メチル-5-チアゾリル)カルボニル]-L-セリル-O-メチル-N-[(IIS’)-2-[(2R)-2-メチル-2-オキシラニル]-2-オキソ-1-(フェニルメチル)エチル]-L-セリンアミド(ONX-0912)が含まれる。
【0173】
当業者であれば、使用する化学療法剤を容易に特定することができる(例えば、Physicians’Cancer Chemotherapy Drug Manual 2014,Edward Chu,Vincent T.DeVita Jr.,Jones &Bartlett Learning;Principles of Cancer Therapy,Chapter 85 in Harrison’s Principles of Internal Medicine,18版;Therapeutic Targeting of Cancer Cells:Era of Molecularly Targeted Agents and Cancer Pharmacology,Chapters 28-29 in Abeloff’s Clinical Oncology,2013 Elsevier;及びFischer D.S.(編):The Cancer Chemotherapy Handbook,4版 St.Louis,Mosby-Year Book,2003を参照のこと)。
【0174】
一実施態様では、ここに記載の活性化CAR T細胞は、GITRを標的とし、及び/又はGITR機能を調節する分子のレベル及び/又は活性を低下させる分子、Treg細胞集団を減少させる分子、mTOR阻害剤、GITRアゴニスト、キナーゼ阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ阻害剤、CDK4阻害剤、及び/又はBTK阻害剤と組み合わせて対象に投与される。
【0175】
[有効性]
例えば、ここに記載される状態の治療における、又はここに記載される応答(例えば、がん細胞の減少)を誘導する、活性化CAR T細胞の有効性は、熟練した臨床医により決定されうる。しかし、治療は、ここに記載の方法による治療後に、ここに記載の状態の徴候又は症状の一又は複数が有益な形で変更され、他の臨床的に受け入れられる症状が改善され、寛解さえされ、又は所望の応答が、例えば少なくとも10%まで誘導されるならば、その用語がここで使用されているような「有効な治療」と考えられる。有効性は、例えば、ここに記載の方法によって治療される状態のマーカー、指標、症状、及び/又は発生率或いは任意の他の適切な測定可能なパラメーターを測定することによって、評価することができる。
【0176】
ここに記載の方法による治療は、状態のマーカー又は症状のレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%以上低下させることができる。
【0177】
有効性は、入院によって評価される個体の悪化がないこと、又は医療介入の必要性(すなわち、疾患の進行の停止)によって測定することもできる。これらの指標を測定する方法は、当業者に知られており、及び/又はここに記載されている。治療は、個体又は動物(幾つかの非限定的な例はヒト又は動物を含む)における疾患の任意の治療を含み、(1)疾患の阻害、例えば症状(例えば、痛み又は炎症)の悪化の防止;又は(2)症状の重症度の緩和、例えば症状の後退を生じさせることを含む。疾患の治療のための有効量とは、それを必要とする対象に投与された場合、その疾患に対して、その用語についてここで定義されるような、有効な治療をもたらすのに十分な量を意味する。薬剤の有効性は、状態又は望ましい応答の物理的指標を評価することによって決定されうる。そのようなパラメーターの何れか一、又はパラメーターの任意の組み合わせを測定することにより、投与及び/又は治療の有効性をモニターすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。所与のアプローチの有効性は、ここに記載されている状態の動物モデルにおいて評価することができる。実験動物モデルを使用する場合、マーカーの統計的に有意な変化が観察されると、治療の有効性が証明される。
【0178】
この出願を通して引用される、参照文献、発行済み特許、公開特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む、全ての特許及びその他の刊行物は、例えば、ここに記載される技術に関連して使用されるかもしれないそのような刊行物に記載された方法論を説明し開示する目的で、出典明示によりここに明示的に援用される。これらの刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。この点に関し如何なるものも、発明者等が先の技術の理由で又は任意の他の理由のためにそのような開示に先行する権利がないことの自認と解釈されるべきではない。日付に関する全ての記述又はこれらの文書の内容に関する提示は、出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関して何ら自認を構成するものではない。
【0179】
本開示の実施態様の説明は、網羅的であること又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本開示の特定の実施態様及び実施例を例示目的でここで説明するが、関連分野の当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な均等の変形が可能である。例えば、方法の工程又は機能が所与の順序で提示されているが、代替の実施態様では、異なる順序で機能を実行してもよく、又は機能は実質的に同時に実施されてもよい。ここで提供される開示の教示は、必要に応じて他の手順又は方法に適用することができる。ここで説明される様々な実施態様は、更なる実施態様を提供するために組み合わせることができる。本開示の態様は、必要に応じて、上記の参考文献及び出願の組成物、機能、及び概念を用いて本開示のまた更なる実施態様を提供するように変更することができる。更に、生物学的機能の均等性の考慮により、種類又は量において生物学的又は化学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造に幾らかの変更を加えることができる。詳細な説明に照らして、これらの変更及び他の変更を本開示に加えることができる。そのような変更は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0180】
前述の実施態様の何れかの特定の要素は、他の実施態様の要素と組み合わせるか、又は置き換えることができる。更に、本開示の所定の実施態様に関連する利点をこれら実施態様の文脈において説明したが、他の実施態様もまたそのような利点を示し得、全ての実施態様が本開示の範囲内に入るために必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0181】
ここに記載される技術は、決して更なる限定であると解釈されるべきではない、次の実施例によって更に例証される。
【0182】
[がん]
幾つかの実施態様では、ここに記載のCART TEAMなどのCARを含む免疫細胞(例えば、T細胞)はまた異種抗原発現(例えば、メソテリン発現)を有するがんを治療するために使用することができる。例えば、CART TEAMコンストラクトのCAR成分は、がんによって発現される一つの抗原に結合する細胞外抗原結合ドメインを含み得、CART TEAMコンストラクトのTEAM成分は、T細胞抗原(例えば、CD3)に加えてがんによって発現される第二抗原に結合しうる。ここで使用される「がん」は、その独特の形質、正常な細胞制御の喪失が未制御の成長、分化の欠如、局所組織浸潤、及び転移をもたらす細胞の過剰増殖を意味しうる。例示的ながんには、限定されないが、神経膠芽腫、前立腺がん、神経膠腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、又は固形腫瘍、例えば肺がん及び膵臓がんが含まれる。白血病の非限定的な例には、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、及び慢性リンパ性白血病(CLL)が含まれる。幾つかの実施態様では、がんはALL又はCLLである。リンパ腫の非限定的な例には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、有毛細胞白血病(HCL)、及びT細胞リンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)及び未分化大細胞リンパ腫(ALCL)を含む末梢性T細胞リンパ腫(PTCL))が含まれる。幾つかの実施態様では、がんはDLBCL又は濾胞性リンパ腫である。固形腫瘍の非限定的な例には、副腎皮質腫瘍、胞状軟部肉腫、癌腫、軟骨肉腫、結腸直腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、内胚葉洞腫瘍、類上皮血管内皮腫、ユーイング肉腫、生殖細胞腫瘍(固形腫瘍)、骨及び軟部組織の巨細胞腫瘍、肝芽腫、肝細胞癌、メラノーマ、腎腫、神経芽細胞腫、非横紋筋肉腫軟部肉腫(NRSTS)、骨肉腫、傍脊柱肉腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、及びウィルムス腫瘍が含まれる。
【0183】
固形腫瘍は、骨、筋肉、又は臓器に見出され得、肉腫又は癌腫でありうる。ここに記載の技術の何れかの態様を使用して、本出願に列挙されていないがんを含む全てのタイプのがんを治療することができると考えられる。ここで使用される場合、「腫瘍」という用語は、例えば、悪性タイプ又は良性タイプの細胞又は組織の異常増殖を意味する。
【0184】
表面抗原分類(CD)分子は、白血球上に存在する細胞表面マーカーである。白血球が分化し、成熟すると、そのCDプロファイルが変化する。白血球ががん細胞(すなわち、リンパ腫)になる場合、そのCDプロファイルは疾患の診断に重要である。所定のタイプのがんの治療と予後は、がん細胞のCDプロファイルの決定に依存している。「X」がCDマーカーである「CDX+」は、CDマーカーががん細胞中に存在していることを示し、「CDX-」は、マーカーが存在していないことを示す。当業者は、標準的な技術を使用して、例えば、免疫蛍光を使用して、CD分子に結合した市販の抗体を検出することにより、がん細胞上に存在するCD分子を評価することができる。
【0185】
[自己免疫疾患]
ここで使用される場合、「自己免疫疾患又は障害」は、その免疫系が異質細胞と正常細胞とを区別できないことによって特徴付けられる。これにより、プログラム細胞死のために正常細胞を標的とするその免疫系が生まれる。自己免疫疾患又は障害の非限定的な例には、炎症性関節炎、1型糖尿病、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患、SLE、及び血管炎、アレルギー性炎症、例えばアレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、及び接触過敏症が含まれる。限定されると解釈されるべきではないが、自己免疫関連疾患又は障害の他の例には、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、グレーブス病(甲状腺機能亢進症)、橋本甲状腺炎(甲状腺機能低下症)、セリアック病、クローン病及び潰瘍性大腸炎、ギラン・バレー症候群、原発性胆管硬化症/肝硬変、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、レイノー現象、強皮症、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー肉芽腫症、リウマチ性多発性筋痛、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、慢性疲労症候群(CFS)、乾癬、自己免疫性アジソン病、強直性脊椎炎、急性播種性脳脊髄炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡、悪性貧血、イヌにおける多発性関節炎、ライター症候群、高安動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症及び線維筋痛症(FM)が含まれる。幾つかの実施態様では、哺乳動物細胞は、免疫系の異常に低い活性をもたらす免疫系障害、又は外来物質(例えば、ウイルス又は細菌細胞)と戦う能力を妨げる免疫不全障害を有する患者から得られる。形質細胞は、感染との闘いに必要とされる抗体を産生し放出するように機能するBリンパ球から生成される白血球である。ここで使用される場合、「形質細胞障害又は疾患」は、形質細胞の異常な増殖によって特徴付けられる。異常な形質細胞は、健康な形質細胞を「締め出す」ことができ、ウイルス又は細菌細胞などの異物と戦う能力が低下する。形質細胞障害の非限定的な例には、アミロイドーシス、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、骨硬化性骨髄腫(POEMS症候群)、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、及び形質細胞骨髄腫が含まれる。
【0186】
[CAR T細胞療法]
ここに記載の技術の一態様は、それを必要とする対象におけるがん、形質細胞障害、又は自己免疫疾患の治療方法であって、T細胞表面上にここに記載のCARポリペプチド(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)を含めるようにT細胞を改変することと、ここに記載のCAR T細胞を対象に投与することとを含む、方法に関する。がんの場合、その方法は、診断されたがんの治療、がんの再発の予防、又はアジュバント若しくはネオアジュバント設定での使用のためのものでありうる。幾つかの実施態様では、対象はメソテリンを発現するがんを有する。
【0187】
ここに記載の技術の一態様は、それを必要とする対象におけるがん、形質細胞障害、又は自己免疫疾患の治療方法であって、ここに記載のCARポリペプチドの何れか(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)を含む哺乳動物細胞の何れかの細胞を投与することを含む、方法に関する。態様の何れかの幾つかの実施態様では、改変されたCAR-T細胞が、対象への投与前に刺激され、及び/又は活性化される。
【0188】
幾つかの実施態様では、ここに記載のCART TEAMなどのCARを含む免疫細胞(例えば、T細胞)は、メソテリンを発現するがん、例えば膵臓がん、肺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、胆道がん、胃がん、又は中皮腫を治療するために使用することができる。幾つかの実施態様では、がんはメソテリンを発現する。幾つかの実施態様では、CAR T細胞又はその薬学的組成物は、上記のようにがんを有する対象に投与される。幾つかの実施態様では、がんを有する対象に投与されるCAR T細胞は、抗メソテリンCARを含む。幾つかの実施態様では、がんを有する対象に投与されるCAR T細胞は、抗メソテリンCAR及びFAP TEAMを含む。幾つかの実施態様では、がんを有する対象に投与されるCAR T細胞は、配列番号:1~5の何れか一つのアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0189】
幾つかの実施態様では、ここに記載のCART TEAMなどのCARを含む免疫細胞(例えば、T細胞)は、腫瘍微小環境における、例えばTregによる免疫抑制を防止又は低下させるために使用することができる。更に、このようなCART TEAMは、腫瘍微小環境におけるT細胞の消耗を防止又は低下させるのに有用である。幾つかの実施態様では、CAR T細胞又はその薬学的組成物は、上記の自己免疫疾患を有する対象に投与される。幾つかの実施態様では、がんを有する対象に投与されるCAR T細胞は、配列番号:1~5の何れか一つのアミノ酸配列を含む。幾つかの実施態様では、自己免疫疾患を有する対象に投与されるCAR T細胞は、抗メソテリンCARを含む。幾つかの実施態様では、自己免疫疾患を有する対象に投与されるCAR T細胞は、抗メソテリンCAR及びFAP TEAMを含む。幾つかの実施態様では、自己免疫疾患を有する対象に投与されるCAR T細胞は、配列番号:1~5の何れか一つのアミノ酸配列を含む。
【実施例】
【0190】
実施例1:がんの治療のための抗メソテリンCAR-T細胞
メソテリンは、膵臓がんを含む多くのがんに対する有望な治療標的である。メソテリンを発現するがんを標的とするために、三種の異なるタイプのメソテリンキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を開発した:タイプ1はSS1-BBz CARを発現し、タイプ2はMGHmeso1 L/H-BBz CARを発現し、タイプ3はMGHmeso1 H/L-BBz CARを発現する。開発した各抗メソテリンCARは、CD8リーダー、scFvメソテリン抗体のVH及びVLドメイン、CD8ヒンジ/膜貫通、4-1BBz細胞内ドメイン(ICD)、CD3 ICD、及びT2Aを含む。SS1-BBzは、SS1 scFv抗体のVH及びVLを含む。MGHmeso1 L/Hは、MGHmeso1 scFv抗体のVH及びVLを含み、VLドメインはVHドメインのN末端に位置する。MGHmeso1 H/Lは、MGHmeso1 scFv抗体のVH及びVLを含み、VHドメインはVLドメインのN末端に位置する。
【0191】
開発した抗メソテリンCAR T細胞のがん殺傷効力を、三種の異なるがん細胞株:BxPC-3(膵臓がん)、Capan-2(膵臓がん)、及びNCI-H226(肺がん)で試験した(
図11A~11C)。結果は、三種の抗メソテリンCAR T細胞全てが各タイプのがん細胞の特異的溶解を誘導したことを示した。(L/H配向抗メソテリンCARを含む)MGHmeso1 L/H-41BBzは、一貫して(H/L配向抗メソテリンCARを含む)MGHmeso1 H/L-41BBzと同等かそれ以上の特異的溶解を示したため、MGHmeso1L/H-41BBz CAR T細胞を更なる研究のために選択した。
【0192】
SS1-BBz及びMGHmeso1 L/H-41BBz CAR-T細胞のサイトカイン発現プロファイルを更に解析した(
図1A~1E、n=3複製)。結果は、抗メソテリンCAR(SS1-41BBz及びMGHmeso1 L/H-41BBz)の発現により、CAR T細胞におけるINF-γ、IL-2、GM-CSF、TNF-α、及びグランザイムBの発現が大幅に増加したことを示した。加えて、結果は、SS1-BBz及びMGHmeso1 L/H-41BBzがメソテリン陽性Capan-2細胞を特異的に溶解したが、メソテリン陰性JeKo-1細胞(マントル細胞リンパ腫)は溶解しなかったことを示した(
図1E~1F)。
図1の結果は、SS1-41BBz細胞とMGHmeso1 L/H-41BBz細胞が類似の細胞機能及び細胞傷害性を示すことを証明している。
【0193】
SS1-41BBz及びMGHmeso1 L/H-41BBz CAR T細胞の有効性を、マウスでインビボで更に試験した。
図2A~2Bは、CAR Tをマウスに投与する一連の実験の詳細を示しており、一連の実験の結果は
図3A~10Dに示される。マウスにAsPC-1(膵臓がん)細胞を注射した後、CAR T細胞を、異なる用量、異なる期間(7日又は14日)、異なる方法(静脈内(IV)及び腹腔内注射(IP))で投与した。
【0194】
図3A~3Dは、AsPC-1を注射したマウスへの1e6のSS1-BBz及びMGHmeso1 L/H-BBz CAR-T細胞の投与を比較している。
図3Aは、治療後7日目におけるIV投与後のフラックス及び生存率を比較している。フラックスは1秒当たりの光子として定義され、腫瘍負荷の尺度である。試験したがん細胞株はルシフェラーゼで形質導入されており、D-ルシフェリン基質を注射すると光を発する。
図3Bは、治療後14日目にIV投与した後のフラックス及び生存率を比較している。
図3Cは、治療後7日目にIP投与した後のフラックス及び生存率を比較している。
図3Dは、治療後14日目にIP投与した後のフラックス及び生存率を比較している。総合すると、
図3A~3Dの結果は、IP注射で投与した場合、MGHmeso1 CAR T細胞がSS1 CAR Tよりも効果的であることを示している。これらの結果は、メソテリン発現がんの治療におけるMGHmeso1 CAR T細胞の潜在的な有用性と利点、並びに前記CAR T細胞の投与方法が治療の相対的な有効性の要因となりうることを実証している。
【0195】
図4A~4Dは、AsPC-1を注射され、より高用量(2e6細胞)のSS1-BBz又はMGHmeso1 L/H-BBz CAR-T細胞を投与されたマウスのフラックス及び生存率をまた比較している。
図4A~4Dの結果は、MGHmeso1 CAR T細胞のIP投与がIV投与よりも効果的であり、MGHmeso1 CAR T細胞が7日目に投与された場合、SS1 CAR T細胞よりも有効性が高いことを示している。これらの結果は更に、メソテリン発現がんの治療におけるMGHmeso1 CAR T細胞の潜在的な有用性と利点、並びに前記CAR T細胞の投与のタイミングと投与方法の両方が治療の相対的な有効性の要因でありうることを実証している。
【0196】
図5A~5Dは、異なる膵臓がん細胞株(BXPC3)を注射され、1e6のCAR T細胞の用量でSS1-BBz又はMGHmeso1 L/H-BBz CAR T細胞を投与されたマウスのフラックス及び生存率を比較している。
図5A~5Dの結果は、マウスにおけるマウスBXPC3がんを治療する場合、1e6のMGHmeso1 CAR T細胞のIP投与がIV投与と同等かそれ以上に効果的であることを示している。
図5A~5Dの結果はまた、マウスのBXPC3がんを治療する場合、SS1 CAR T細胞とMGHmeso1 CAR T細胞は14日目には類似の有効性を有するが、SS1 CAR T細胞が7日目に僅かに増加した有効性を有していることを示している。
【0197】
図6A~6Dは、BXPC3膵臓がん細胞を注射し、SS1-BBz又はMGHmeso1 L/H-BBz CAR T細胞を2e6のCAR T細胞の用量で投与したマウスのフラックス及び生存率を比較している。
図6A~6Dの結果は、MGHmeso1 L/H CAR T細胞を、
図5A~5Dと比較してこのより高用量でBXPC3がんを有するマウスにIP注射により投与した場合、SS1 Car T細胞と比較して有効性が向上したことを示している。これらの結果は、メソテリン発現がんをMGHmeso1 CAR T細胞で治療することの利点を証明しており、以前から知られているCAR(SS1)を発現するCAR T細胞に対する用量依存的な改善を示唆している。
【0198】
図7A~7Dは、異なる膵臓がん細胞株(PANC1)を注射され、1e6のCAR T細胞の用量でSS1-BBz又はMGHmeso1 L/H-BBz CAR T細胞を投与されたマウスのフラックス及び生存率を比較している。
図7A~7Dの結果は、MGHmeso1 L/H CAR T細胞は、PANC1がんのマウスにIP注射で投与された場合、SS1 Car T細胞と比較して増加した有効性を有することを示している。これらの結果は、MGHmeso1 CAR T細胞が別のメソテリン発現がんの治療に潜在的有用性と利点があること、並びに前記CAR T細胞の投与方法が治療の相対的有効性の要因となりうることを証明している。
【0199】
図8A~8Dは、PANC1膵臓がん細胞を注射し、SS1-BBz又はMGHmeso1 L/H-BBz CAR T細胞を2e6のCAR T細胞の用量で投与したマウスのフラックス及び生存率を比較している。
図8A~8Dの結果は、MGHmeso1 L/H CAR T細胞は、PANC1がんのマウスにIP注射で投与した場合のSS1 CAR T細胞と比較して、がん細胞注射後14日目に投与した場合の有効性が向上したことを示している。これらの結果は更に、メソテリン発現がんの治療におけるMGHmeso1 CAR T細胞の潜在的な有用性と利点、並びに前記CAR T細胞の投与のタイミングと投与方法の両方が治療の相対的な有効性の要因でありうることを実証している。CAR T細胞の最適な投与量、タイミング、及び投与経路をアッセイするために、一連の実験を実施した(
図9A~10D)。
図9A~9Dは、異なる膵臓がん細胞株(CAPAN2)を注射し、SS1-BBz又はMGHmeso1 L/H-BBz CAR T細胞を2.5e5のCAR T細胞の用量で投与したマウスのフラックス及び生存率を比較している。
図9A~9Dの結果は、SS1 CAR T細胞とMGHmeso1 CAR T細胞がマウスのCAPAN2がんの治療に類似の有効性を有することを示している。
図10A~10Dは、CAPAN2細胞を注射し、SS1-BBz又はMGHmeso1 L/H-BBz CAR T細胞を5e5のCAR T細胞の用量で投与したマウスのフラックス及び生存率を比較している。
図10A~10Dの結果は、SS1 CAR T細胞とMGHmeso1 CAR T細胞がマウスのCAPAN2がんの治療に類似の有効性を有することを示している。
【0200】
総合すると、これらの結果は、メソテリン発現がん、特に膵臓がんの治療におけるMGHmeso1 CAR T細胞の有用性を実証し、IPによるMGHmeso1 CAR-T投与がIVより効果的であることを示唆し、投与のタイミングと方法によってはMGHmeso1 CAR T細胞がSS1より強力でありうることを示唆している。加えて、結果は、MGHmeso1 CAR T療法はSS1 CAR Tに必要な量よりも低い用量でより効果的でありうることを示唆している。結果はまた、2.5e5の腫瘍細胞をマウスに移植でき、数百万個は必要ないことを示唆している。
【0201】
実施例2:TEAM FAPを含む抗メソテリンCAR-T細胞
CAR T細胞は、血液悪性腫瘍の治療に革命をもたらした。しかし、固形がんタイプを標的とすることは、その異質な標的抗原の発現、単一の標的抗原の抗原エスケープ、及び腫瘍微小環境のために、より困難であることが判明している。これらの課題に対処するために、CAR T細胞をリダイレクトし、バイスタンダーT細胞をFAPにリクルートできる線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に対するT細胞エンゲージ分子(TEAM)を分泌するメソテリンに向けられたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞をデザインした。これにより、腫瘍細胞自体よりもむしろ間質及び腫瘍微小環境を標的とすることが可能になる。
【0202】
メソテリンは腫瘍浸潤に関連しており、中皮腫、膵臓がん、胸膜がん、乳がん、卵巣がん、並びに他のタイプのがんなど、様々ながんのタイプで高度に発現される。線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)は、がん関連線維芽細胞(CAF)によって発現され、沈着して細胞外マトリックス(ECM)に分布している。CAFは異なる腫瘍促進機能に関与している。FAPを標的とするTEAMを使用すると、CAFとECM自体を標的とすることが可能になる。
【0203】
抗メソテリンCAR Tコンストラクトを、実施例1のSS1抗メソテリンCAR、FAP scFv抗体試薬シブロツズマブを含むTEAM、及びCD3 scFv抗体試薬(ここでは抗メソテリンCAR FAP TEAMと呼ぶ)を含むようにデザインした(
図12A)。SS1抗メソテリンCAR FAP TEAMは、ドナーT細胞への効率的な形質導入を示した(
図12B);抗メソテリンCAR FAP TEAMでは、19.6%の平均形質導入効率が達成された。潜在的な有効性を決定するために、CD69活性化アッセイを使用してSS1抗メソテリンCAR FAP TEAM T細胞活性化を定量した。結果は、SS1抗メソテリンCAR FAP Team CAR T細胞がメソテリンと接触すると活性化されたことを示し(
図13)、CARが正しく機能していることを示している(n=3の個々のドナー)。
【0204】
SS1抗メソテリンCAR FAP TEAM T細胞もまた、FAPを効率的に分泌することが示された。FAP(ヒト包皮線維芽細胞(HFF)細胞)又はCD19(K562細胞、陰性対照)を発現する細胞を、CAR FAP TEAM T細胞培養物の上清で処理した(
図14A~14C)。結果は、HFF細胞にFAP TEAMが有意に結合したのに対し(
図14A、14C)、K562細胞には結合しなかったことを示している。FAP結合は、TEAMに結合する抗His抗体を使用して検出した。これらの結果は、1)FAP TEAMが適切に産生され分泌されていること、及び2)FAP TEAMがFAP発現細胞に特異的であることを示唆している。
【0205】
SS1抗メソテリンCAR FAP TEAM T細胞は、細胞培養においてHFF細胞に対して細胞傷害性を示した(
図15A~15B、n=3の個々のT細胞ドナー、各ドナーは二重)。対照的に、SS1抗メソテリンCAR CD19 TEAM T細胞はHFF細胞に対して毒性を示さず、FAP TEAMが細胞傷害性に大きく寄与していることを示唆している。インピーダンスベースの細胞傷害性アッセイを使用した共培養系では、バイスタンダーT細胞による腫瘍溶解とCART細胞のリダイレクトを観察することができた。分割細胞培養を使用したインピーダンスアッセイは、SS1抗メソテリンCAR FAP TEAM T細胞との物理的相互作用がない場合でも、FAP TEAMの分泌は活性化バイスタンダーT細胞を産生し、がん関連線維芽細胞(CAF)に対する細胞傷害性を生じるのに十分であることを示唆している(
図15E、n=3の個々のT細胞ドナー、各ドナーは二重)。しかし、CAR FAP TEAM T細胞とがんとの物理的相互作用により、がん細胞が殺される割合が増加する場合がある(
図15A、15E)。
【0206】
SS1抗メソテリンCAR FAP TEAMは、インビボでの膵臓がん増殖をまた減少させた。実験は、その混合物が膵臓がんと腫瘍微小環境(TME)を模倣する、がん関連線維芽細胞(CAF)と混合した皮下移植膵臓がん細胞株のマウスモデルで実施した。抗メソテリンCAR FAP TEAM細胞の注射は、対照コンストラクト及び非形質導入T細胞(UTD)と比較して、優れた腫瘍制御をもたらした(
図16)。これらの結果は、TMEと組み合わせてメソテリン発現がんを治療する際の抗メソテリンCAR FAP TEAMの有効性を実証しており、抗メソテリンCAR FAP TEAMのその有効性はインビボでの使用にまで及ぶ。
【0207】
次に、FAP発現線維芽細胞とCAR T細胞間のFAP TEAM媒介物理的相互作用の強さ(例えば、結合活性)を音響顕微鏡法を使用して定量した。HFF(ヒト包皮線維芽細胞)を、z-Movi Cell Avidity Analyzer(Lumicks)で試験する前に、少なくとも3時間、ポリLリジンをコーティングしたマイクロ流体チップに付着させた。単離したTEAM分子と共に共インキュベートした、CellTrace遠赤色標識(ThermoFisher Scientific)フローサイトメトリーで選別したCAR T細胞又は非形質導入T細胞(UTD)を、音響力を増加させる前に5分間結合させた。実験は、3人の正常ドナーから産生されたTEAM分子と共に共インキュベートしたUTDを含む、二種の異なるCAR T細胞コンストラクトを用いて実施した。結果は、FAP特異的TEAM分子が、UTDと比較して抗メソテリンCAR FAP TEAM細胞の結合活性を高めるだけでなく、FAP特異的分子と共培養されたUTDの結合活性も高めることを示した(
図17)。これらの結果は、FAP TEAMがCARの存在とは無関係にT細胞を補充することができ、免疫系の活性をTMEに標的化するのに広く有用でありうることを示唆している。
【0208】
総合すると、これらの結果は、分泌TEAMSをCAR T細胞に添加することで、更に二つの治療方法が開かれることを示している。第一は、細胞外マトリックスだけでなく、細胞外マトリックス生成がん関連線維芽細胞もまた標的とすること。第二は、CART細胞とバイスタンダーT細胞を補充してリダイレクトすること。これらの結果に基づくと、細胞外マトリックスを標的とするTEAMを分泌するCART細胞は、一般的に固形腫瘍におけるCART細胞の有効性を増加させる可能性がある。
【配列表】
【国際調査報告】