(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電着塗料組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C09D 5/44 20060101AFI20241024BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20241024BHJP
C08G 18/58 20060101ALI20241024BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20241024BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20241024BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C09D5/44 A
C08G18/80
C08G18/58
C08G18/10
C09D175/04
C09D163/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526855
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2022078909
(87)【国際公開番号】W WO2023078664
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/128756
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】タイル,フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リン
(72)【発明者】
【氏名】シン,スー チエ
(72)【発明者】
【氏名】タンビジットサクル,パッタラサイ
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034CA02
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
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(57)【要約】
本発明は、(A)カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂、(B)中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートであって、以下の工程、(i)イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーを、オキシム、ピラゾール及び活性メチレン化合物から選択される少なくとも1種のブロック剤と反応させて、部分的にブロック化されたポリイソシアネートを提供する工程と、(ii)部分的にブロック化されたポリイソシアネート中の残りのイソシアネート基を、活性水素を有するアミン化合物と反応させて、アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを提供する工程と、(iii)アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを酸で中和する工程とを含むプロセスによって得ることができる又は得られる、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート、及び(C)硬化触媒を含む、カソード電着塗装組成物を提供する。本発明はまた、カソード電着塗装組成物を調製する方法、及びカソード電着塗装組成物を含むカソード電着用のコーティング浴を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂、
(B)中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートであって、以下の工程
(i)イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを、オキシム、ピラゾール及び活性メチレン化合物から選択される少なくとも1種のブロック剤と反応させて、部分的にブロック化されたポリイソシアネートを提供する工程と、
(ii)部分的にブロック化されたポリイソシアネート中の残りのイソシアネート基を、活性水素を有するアミン化合物と反応させて、アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを提供する工程と、
(iii)アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを酸で中和する工程と
を含むプロセスによって得ることができる又は得られる、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート、及び
(C)硬化触媒
を含む、カソード電着塗装組成物。
【請求項2】
イソシアネート基を有する前記ポリウレタンプレポリマーが、ポリイソシアネートとポリオールとの反応により得ることができる又は得られる、請求項1に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項3】
工程(i)の前記部分的にブロック化されたポリイソシアネートが、以下の工程、
(i-1)ポリイソシアネートをポリオールと反応させることにより、イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを調製する工程、及び
(i-2)工程(i-1)から得られたイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを、オキシム、ピラゾール及び活性メチレン化合物から選択される少なくとも1種のブロック剤と反応させる工程、
含むプロセスによって得ることができる又は得られる、請求項1又は2に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項4】
前記ブロック剤が、ホルムアミドオキシム、アセタルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、ジエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノキシム、シクロペンタノンオキシム及びシクロヘキサノンオキシムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族、脂環式及び芳香族ジイソシアネート、及び1個の分子当たり少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートから選択される少なくとも1種である、請求項2に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネートが、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、及び2,2-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネートのモノマー、異性体及びオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項7】
イソシアネート基を有する前記ポリウレタンプレポリマーが、前記ポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート基及びウレタン基の総量に基づいて、70モル%~90モル%、好ましくは70モル%~80モル%の範囲のイソシアネート基の含有量を有する、請求項1又は2に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項8】
前記部分的にブロック化されたポリイソシアネートが、前記部分的にブロック化されたポリイソシアネートに含有される残りのブロック化されたポリイソシアネート基及びウレタン基の総量に基づいて、10モル%~25モル%、好ましくは10モル%~20モル%の範囲の残りのイソシアネート基の含有量を有する、請求項1又は2に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項9】
前記硬化触媒が、好ましくは金属触媒、より好ましくは水酸化トリフェニルスズ、スタノイン酸ブチル、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛、ビスマス、鉛、インジウム、スズ、銅及びイットリウムの酸化物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項10】
前記硬化触媒が、粉砕樹脂、顔料、フィラー及び触媒を含むペーストの形態で提供される、請求項9記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項11】
前記中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート以外の硬化剤(D)をさらに含む、請求項1又は2に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項12】
前記中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートが、前記中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート及び硬化剤(D)の総量に基づいて、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%の含有量を有する、請求項9に記載のカソード電着塗装組成物。
【請求項13】
前記カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂を含む水性分散液、前記中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートを含む水性分散液、及び触媒を混合する工程を含む、請求項1又は2に記載の前記カソード電着塗装組成物を調製する方法。
【請求項14】
前記カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂を含む前記水性分散液が、アミノ含有エポキシ樹脂を酸で中和し、水に分散させることにより調製される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
硬化剤(D)中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートが前記カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂を含む前記水性分散液に添加される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のカソード電着塗装組成物を含む、カソード電着用のコーティング浴。
【請求項17】
請求項13に記載の方法により調製されたカソード電着塗装組成物を含む、カソード電着用のコーティング浴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己乳化型ブロック化ポリイソシアネートを含むカソード電着塗装材料、及び自己乳化型ブロック化ポリイソシアネートの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン電着塗装材料は、その優れた適用性能と得られる塗膜の優れた特性により、様々な分野で広く使用されている。カチオン電着塗装材料は、一般に、水性媒体中に樹脂成分(例えば、カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂)及び硬化剤成分(例えば、ブロック化ポリイソシアネート)を含むバインダー分散液の一部、及び顔料ペーストの一部を含む。バインダー分散液は、一般に、樹脂成分と硬化剤成分を混合し、その後、水性媒体中で中和し、分散することにより調製される。中和された樹脂成分及び硬化剤は一緒に、バインダー分散液中で帯電したミセルの形態で存在する。カチオン電着塗料組成物の保管中、及び電着塗装浴の長期循環中に、2つの成分が互いに反応する可能性は十分にある。
【0003】
電着塗装中では、コーティングされる基材をカソードとして使用する。カソードと対極としてのアノードの間に電流を印加し、コーティング浴中に中和した樹脂成分及び硬化成分を含有するミセルを金属基材上に析出させてコーティング膜を形成する。コーティング膜を硬化させるために、その後、コーティングされた基材は、通常160℃を超える温度で加熱することに供される。
【0004】
近年、低温での硬化が可能なカソード電着塗装材料(すなわち、低温硬化性カソード電着塗装材料)に対する需要が、特に自動車分野の相手先商標製品製造業者から高まっている。一般に、低温で反応性を示すことができる硬化剤を含む低温硬化性カチオン電着塗装材料は当技術分野で知られている。硬化剤は、例えば、JPH10120947A及びJPH07300698Aに記載されているようなオキシムブロック化ポリイソシアネートである。
【0005】
しかしながら、電着塗装材料の改善された反応性は、ひいては、安定性、例えば、長期保存安定性及び/又は電着塗装中の作業安定性の低下をもたらすことがある。得られたコーティング膜の外観及び特性が悪くなることもある。この問題に対する解決策が提案されている。例えば、EP3415574Bには、低温で硬化性を有する電着塗装組成物を製造する方法が記載されている。この特許文献の電着塗装組成物は、アミノ基含有エポキシ樹脂の水性分散液(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物の水性分散液(B)、及び顔料分散ペースト(C)を混合することによって調製され、ここで、ブロック化ポリイソシアネート化合物の水性分散液(B)を提供するために乳化剤が必要である。
【0006】
保存安定性及び作業安定性が改善された低温硬化性カチオン電着塗装材料は、依然として求められている。また、低温硬化性カチオン電着塗装材料は、さらにスローパワー及びVOCなどの向上した塗布性能を有し、耐食性などの優れた特性を有するコーティング膜を生成することができることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】JPH10120947A
【特許文献2】JPH07300698A
【特許文献3】EP3415574B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、160℃より低い温度で硬化させることができ、改善された安定性、好ましくは改善され塗布性能を有し、耐食性などの優れたコーティング膜特性を提供することができるカソード電着塗装材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、この目的は、中和したアミンを有する自己乳化型ブロック化ポリイソシアネートをカソード電着塗装材料に使用することによって達成されることが判明した。
【0010】
したがって、本発明は、
(A)カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂、
(B)中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートであって、以下の工程
(i)ポリイソシアネートとしてイソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーを、オキシム、ピラゾール及び活性メチレン化合物から選択されるブロック剤と反応させて、部分的にブロック化されたポリイソシアネートを提供する工程と、
(ii)部分的にブロック化されたポリイソシアネート中の残りのイソシアネート基を、活性水素を有するアミン化合物と反応させて、アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを提供する工程と、
(iii)アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを酸で中和する工程と
を含むプロセスによって得ることができる又は得られる、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート、及び
(C)硬化触媒
を含むカソード電着塗装組成物を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、(A)カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂を含む水性分散液を、(B)中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートを含む水性分散液と混合することを含む、カソード電着塗装組成物の調製方法を提供する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、本発明カソード電着塗装組成物又は本発明方法によって調製されたカソード電着塗装組成物を含むカソード電着用のコーティング浴を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、多くの異なる方法で具体化され、本明細書に記載された実施形態に限定されるものとして解釈されないことが理解されるものとする。特に言及しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0014】
本明細書において、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含む。
【0015】
「含む」、「含み」等の用語は、「含有する」、「含有し」等と互換的に使用され、非限定的でオープンな形で解釈される。すなわち、例えば、さらなる成分又は要素が存在してもよい。「からなる」又は「本質的にからなる」又は同義語の表現は、「含む」又は同義語に包含されてもよい。
【0016】
本明細書において、ブロック化ポリイソシアネートの文脈で使用される「自己乳化性」という用語は、ブロック化ポリイソシアネートが、乳化剤又は分散剤のような添加された界面活性剤を使用する必要なく、安定な分散液を形成できることを意味することを意図する。
【0017】
本明細書で使用される「プレポリマー」という用語は、反応性基によってさらに重合して完全に硬化した高分子量状態にすることができる中間分子量状態に反応させたモノマー又はモノマーのシステムを指す。
【0018】
カチオン電着塗装組成物
(A)カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂
電着に必要な正電荷を有するカチオン性アミノ含有エポキシ樹脂は、カソード電着塗装組成物においてバインダーとして使用される。正電荷は、アミノ含有エポキシ樹脂を水溶性酸で中和することにより生成することができる。
【0019】
好適なアミノ含有エポキシ樹脂は、例えばEP 1171530 A1、US 5236564 A、US 5236564 A及びUS 6274649 Bに記載されているように、未修飾又は修飾したポリエポキシドと一級又は二級アミンとの付加物であってもよい。
【0020】
好適なポリエポキシドの例には、ポリフェノール及びエピハロヒドリン、より特にエピクロロヒドリンから得られるポリグリシジルエーテルが含まれる。好ましいポリフェノールは、より特にビスフェノールA及びビスフェノールFである。好適なポリフェノールには、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-tert-ブチルフェニル)プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、及びフェノールノボラック樹脂も含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
好適なポリエポキシドには、多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセロール、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、イソフタル酸、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸のポリグリシジルエステル;ヒダントインエポキシド、エポキシ化ポリブタジエン、及びオレフィン性不飽和脂肪族化合物をエポキシ化することによって得られるポリエポキシド化合物も含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
修飾したポリエポキシドは、反応性基の一部が修飾化合物と反応したポリエポキシドである。修飾化合物の例には、例えば
i)カルボキシル基を含有する化合物、例えば飽和又は不飽和モノカルボン酸、例えば安息香酸、2-エチルヘキサン酸、バーサチック酸;異なる鎖長の脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ジカルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸又はポリ(メタ)アクリル酸、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、脂肪酸又はダイマー脂肪酸;ヒドロキシアルキルカルボン酸、例えば乳酸、ジメチロールプロピオン酸;及びカルボキシル含有ポリエステル、又は
ii)アミノ基を含有する化合物、例えば、ジエチルアミン、エチルヘキシルアミン、二級アミノ基を有するジアミン、例えばN,N’-ジアルキルアルキレンジアミン(例えばジメチルエチレンジアミン)、N,N’-ジアルキルポリオキシアルキレンジアミン(例えばN,N’-ジメチルポリオキシプロピレンジアミン)、シアノアルキル化アルキレンジアミン(例えばN,N’-ビス(シアノエチル)エチレンジアミン)、シアノアルキル化ポリオキシアルキレンジアミン(例え例えば、N,N’-ビス(シアノエチル)ポリオキシプロピレンジアミン)、ポリアミノアミド、例えばジアミン、ポリカルボン酸、及びモノカルボン酸のアミノ末端化反応生成物、又は1モルのジアミノヘキサンと2モルのモノグリシジルエーテル又はモノグリシジルエステルとの反応生成物、特にバーサチック酸のようなα-分岐脂肪酸のグリシジルエステル、又は
iii)ヒドロキシル基を含有する化合物、例えばネオペンチルグリコール、ビスエトキシル化ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ジメチルヒダントイン-N,N’-ジエタノール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,1-イソプロピリデンビス(p-フェノキシ)-2-プロパノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、又はアミノアルコール、例えばトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、又はヒドロキシル含有アルキルケチミン、例えばアミノメチルプロパン-1,3-ジオールメチルイソブチルケチミン又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンシクロヘキサノンケチミン、及びまた官能性及び分子量の異なるポリグリコールエーテル、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、及びポリカプロラクタムポリオール、又は
iv)ナトリウムメトキシドの存在下、エポキシ樹脂のヒドロキシル基とエステル交換される飽和又は不飽和脂肪酸メチルエステル
が含まれる。
【0023】
ポリエポキシドとの付加物を形成するのに適した一級及び/又は二級アミンとしては、モノ-及びジアルキルアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びメチルブチルアミン;アルカノールアミン、例えばメチルエタノールアミン及びジエタノールアミン;ジアルキルアミノアルキルアミン、例えばジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン及びジメチルアミノプロピルアミン;アルキレンポリアミン、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
アミンは他の基を含んでいてもよいが、それらの基はアミンとエポキシド基との反応を阻害せず、反応混合物のゲル化を引き起こさないことが条件である。二級アミンは、ポリエポキシドとの付加物を形成するのに特に適している。
【0025】
本発明において、ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択される改質剤で修飾されたアミノ含有エポキシ樹脂が特に好適である。改質剤の量に特に制限はなく、例えば、アミノ含有エポキシ樹脂の固形分に基づいて、好ましくは0.1質量%~30質量%、より好ましくは1質量%~20質量%であることができる。
【0026】
アミノ含有エポキシ樹脂を中和するのに適した酸は、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸、過塩素酸などの無機酸であってもよい。好適な酸はまた、有機酸、例えば、任意にヒドロキシル基で置換されたモノ-又はポリ-カルボン酸であってもよい。特に、有機酸は、C1~C10-モノカルボン酸、C1~C10-ジカルボン酸、C1~C10-トリカルボン酸、C1~C10-ヒドロキシモノカルボン酸、C1~C10-ヒドロキシジカルボン酸、C1~C10-ヒドロキシトリカルボン酸、及びそれらの任意の組み合わせであってもよい。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシイソブタン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタル酸、クエン酸。酒石酸、フマル酸、安息香酸、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機酸は特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、安息香酸、及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0027】
カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂は、水性分散液の形態で本発明によるカソード電着塗装組成物に導入することができる。
【0028】
本発明によるカソード電着塗装組成物は、カソード電着塗装組成物の固形分に基づいて、30質量%~85質量%、好ましくは40質量%~70質量%のカチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)を含んでもよい。
【0029】
(B)中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート
中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートは、カソード電着塗装組成物に使用され、これは、水性分散液の形態で本発明によるカソード電着塗装組成物に導入される。水性分散液は、以下の工程、
(i)ポリイソシアネートとしてイソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーを、オキシム、ピラゾール及び活性メチレン化合物から選択されるブロック剤と反応させて、部分的にブロック化されたポリイソシアネートを提供する工程と、
(ii)部分的にブロック化されたポリイソシアネート中の残りのイソシアネート基を、活性水素を有するアミン化合物と反応させて、アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを提供する工程と、
(iii)アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを酸で中和し、水に分散させる工程と
を含むプロセスによって調製される。
【0030】
工程(i)におけるポリイソシアネートとしてのイソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート化合物及びポリオールに由来するものであってもよい。
【0031】
イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーを誘導するために有用なポリイソシアネート化合物には、脂肪族、脂環式及び芳香族ジイソシアネート、及び1個の分子当たり3個以上のイソシアネート基を含有するポリイソシアネートが含まれる。
【0032】
脂肪族ジイソシアネートの例としては、1,3-トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、1-メチルトリメチレンジイソシアネート、2-メチルペタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、それらの異性体及びオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
脂環式ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、それらの異性体及びオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
芳香族ジイソシアネートの例には、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、それらの異性体及びオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
トリイソシアネートの例としては、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシアナトメチル)オクタン、リジントリイソシアネート、それらの異性体及びオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
上記のオリゴマーは、例えば、二量体、二量体、三量体、及び四量体、五量体、六量体などの高次オリゴマー、又はそれらの混合物であってもよい。
【0037】
本発明によれば、ポリウレタンプレポリマーを誘導するために特に好適なポリイソシアネート化合物は、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート及び2,2-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネートの1種以上のオリゴマーを含むものである。
【0038】
好ましくは、イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートの1種以上のオリゴマーを含むポリイソシアネート化合物に由来する。
【0039】
イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーを誘導するために、ポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0040】
イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーを誘導するためのポリオールとしては、例えば、多価アルカノール、多価フェノール、(ポリ)エーテルポリオール、(ポリ)エステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールを挙げることができる。
【0041】
多価アルカノールの例としては、グリコール、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-n-ヘキサデカン-1,2-エチレングリコール、2-n-エイコサン-1,2-エチレングリコール及び2-n-オクタコサン-1,2-エチレングリコール、水素化ビスフェノールA;及び3価以上の多価アルカノール、例えばグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びマンニトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
多価フェノールの例は、例えばポリフェノールである。好適なポリフェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びそれらのポリアルコキシル化誘導体、例えばポリエトキシル化ビスフェノールAが挙げられるが、これらに限定されない。また、好適なポリフェノールとしては、4,4‘-ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-tert-ブチルフェニル)プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、及びこれらのポリアルコキシル化誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
(ポリ)エーテルポリオールの例としては、オリゴマーエーテルポリオール、例えばジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセロール、トリグリセロール及びジペンタエリスリトール、ポリエーテルポリオール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン(ポリTHF)が挙げられ(これらに限定されない)、ここで、ポリエーテルポリオールは、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、最も好ましくは700以下の平均分子量(Mn)を有する。
【0044】
(ポリ)エステルジオールの例としては、多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,6-ヘキサンジオール、フランジメタノール及びシクロヘキサンジメタノールと、ポリカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸ジメチル、ダイマー酸及びそれらの誘導体との(ポリ)縮合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
ポリカーボネートポリオールの例としては、C2~C20-ポリオールと、ジアリールカーボネート又はジアルキルカーボネート、例えばジフェニルカーボネート及びジメチルカーボネート、又はホスゲンとの反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。C2~C20-ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
市販のポリカーボネートポリオールの例としては、Desmophen(登録商標)C 2100、Desmophen(登録商標)C 2200、Desmophen(登録商標)C XP 2613、Desmophen(登録商標)C 3100 XP、Desmophen(登録商標)C 3200 XP、及びDesmophen(登録商標)C XP 2716の商品名で入手可能なBayer Material Science AGの製品が挙げられる。
【0047】
本明細書に記載のイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーは、市販されていてもよいし、工程(i)でブロック剤と反応させる前にその場で調製されてもよい。
【0048】
好適なイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーは、前記ポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート基及びウレタン基の総量に基づいて、70モル%~90モル%、好ましくは70モル%~80モル%の範囲のイソシアネート基の含有量を有することができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、その場で調製されるイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーは、工程(i)においてブロック剤と反応させるために使用される。特に、ポリウレタンプレポリマーは、上記のようなポリオールを、一定の期間にわたってポリイソシアネート化合物に投与することによって調製することができる。ポリウレタンを調製するために公知の触媒及び有機溶媒は、特に制限なく使用することができる。
【0050】
この場合、工程(i)は、(i-1)ポリイソシアネート化合物とポリオールからイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーを調製するサブ工程、及び(i-2)ポリイソシアネートとしてサブ工程(i-1)からのイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーを、オキシム、ピラゾール及び活性メチレン化合物から選択されるブロック剤と反応させて、部分的にブロック化されたポリイソシアネートを提供するサブ工程を含む。
【0051】
したがって、好ましい実施形態において、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートは、以下の工程、
(i-1)ポリイソシアネート化合物及びポリオールからイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーを調製する工程と、
(i-2)ポリイソシアネートとして工程(i-1)からのイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーを、オキシム、ピラゾール及び活性メチレン化合物から選択されるブロック剤と反応させて、部分的にブロック化されたポリイソシアネートを提供する工程と、
(ii)部分的にブロック化されたポリイソシアネート中の残りのイソシアネート基を、活性水素を有するアミン化合物と反応させて、アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを提供する工程と、
(iii)アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを酸で中和し、水に分散させる工程と
を含むプロセスによって得られる。
【0052】
好ましくは、工程(i-1)において、ポリオールは、一定の期間にわたってポリイソシアネート化合物に投与される。ポリウレタンを調製するための公知のあらゆる触媒及び有機溶媒は、特に制限されることなく、工程(i-1)で使用することができる。工程(i-1)において使用されるポリオール及びポリイソシアネート化合物は、本明細書において上述したようなものである。
【0053】
工程(i-1)から得られるイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーは、前記ポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート基及びウレタン基の総量に基づいて、70モル%~90モル%、好ましくは70モル%~80モル%の範囲のイソシアネート基の含有量を有することができる。
【0054】
工程(i)又は(i-2)におけるブロック剤は、オキシムから選択することができる。有用なオキシムの例としては、ホルムアミドオキシム、アセタルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、ジエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、メチルエチルケトキシムがブロック剤として使用される。
【0055】
工程(i)又は(i-2)におけるブロック剤は、ピラゾールから選択することができる。有用なピラゾールの例としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、メチル5-メチルピラゾール-3-カルボキシレート、3-メチル-5-フェニルピラゾール及び3,5-ジメチルピラゾール-4-カルボキサニリドを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0056】
工程(i)又は(i-2)におけるブロック剤は、活性メチレン化合物から選択することができる。有用な活性メチレン化合物の例としては、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジイソプロピルマロネート、エチルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート及びアセチルアセトンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0057】
ポリイソシアネートとブロック剤との反応は通常、好ましくはブロック剤を一定の期間にわたってポリイソシアネートに投与することによって行うことができる。ポリイソシアネートとブロック剤との反応を促進するために、例えばブロック剤の投与の完了後に、反応混合物に加熱を適用してもよい。
【0058】
好ましくは、工程(i)又は(i-2)から得られる部分的にブロック化されたポリイソシアネートは、前記部分的にブロック化されたポリイソシアネート中のイソシアネート基、ブロック化されたポリイソシアネート基及びウレタン基の総量に基づいて、10モル%~25モル%、好ましくは10モル%~20モル%の範囲の残りのイソシアネート基の含有量を有することができる。
【0059】
工程(ii)で使用される活性水素を有するアミン化合物は、活性水素を有するC3~C20-アミン化合物、例えば、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン(MDEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、ジエチルエタノールアミン(DEEA)、3-ジメチルアミノプロパン-1,2-ジオール(DMAPD)、3-ジエチルアミノプロパン-1,2-ジオール(DEAPD)、2-ジメチルアミノプロパン-1,3-ジオール、2-ジエチルアミノプロパン-1,3-ジオール、2-(ヒドロキシエチル)-2-ジメチルアミノプロパン-1,3-ジオール(DMTA)、2-(ヒドロキシエチル)-2-ジエチルアミノプロパン-1,3-ジオール(DETA)、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシプロピル)アミン(DMPA)、t-ブトキシアミノエトキシエタノール(TBAEE)、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール(DMAEA)、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン(TMAEEA)、テトラ(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)、2-(2-アミノエチルアミン)エタノール、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアミン(DMAPA)、ビス-(3-ジメチルアミノプロピルアミン)(BDMAPA)、又はそれらの組み合わせから選択することができる。好ましくは、活性水素を有するアミン化合物は、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン(MDEA)、2-[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール(DMAEA)、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアミン(DMAPA)、ビス-(3-ジメチルアミノプロピルアミン)(BDMAPA)、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0060】
部分的にブロック化されたポリイソシアネートと活性水素を有するアミン化合物との反応は通常、好ましくは部分的にブロック化されたポリイソシアネートを、活性水素を有するアミン化合物に一定の期間にわたって投与することによって行うことができる。部分的にブロック化されたポリイソシアネートと活性水素を有するアミン化合物との反応を促進するために、例えば投与の完了後、反応混合物に加熱を適用してもよい。
【0061】
工程(ii)で得られるアミン含有ブロック化ポリイソシアネートは、実質的にイソシアネート基を含まず、特に検出可能なイソシアネート基を含まない。
【0062】
工程(ii)では、部分的にブロックされたポリイソシアネートと活性水素を有するアミン化合物との反応に公知のあらゆる好適な有機溶媒及び任意に触媒を使用することができる。
【0063】
工程(i)(又は工程(i-1)及び(i-2))及び工程(ii)における反応は、同一又は異なる有機溶媒又は溶媒混合物中で行うことができる。特に、工程(i)(又は工程(i-1)及び(i-2))及び工程(ii)における反応は、同一の有機溶媒又は溶媒混合物中で行われる。好適な溶媒は、例えば、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、及びC1~C4-アルキル-C1~C4-アルカノエート、及びそれらの組み合わせであってもよい。有機溶媒又は溶媒混合物は、工程(単数又は複数)で使用される場合、工程(単数又は複数)から得られる反応混合物から除去されないことがあり、したがって、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートの水性分散液に含まれる。
【0064】
工程(ii)で得られるアミン含有ブロック化ポリイソシアネートは、固形分に基づいて計算して、アミン含有ブロック化ポリイソシアネートの100g当たり、30~200、好ましくは50~180ミリモル(mmol)のアミン構成単位を含有することができる。
【0065】
アミン含有ブロック化ポリイソシアネートは、工程(iii)において、中和剤として任意の無機酸又は有機酸で中和することができる。好適な無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸及び過塩素酸が挙げられる。好適な有機酸としては、例えば、ヒドロキシル基で任意に置換されたモノ-又はポリ-カルボン酸が挙げられる。特に、有機酸としては、C1~C10-モノカルボン酸、C1~C10-ジカルボン酸、C1~C10-トリカルボン酸、C1~C10-ヒドロキシモノカルボン酸、C1~C10-ヒドロキシジカルボン酸、C1~C10-ヒドロキシトリカルボン酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシイソブタン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、安息香酸、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機酸は特に、ギ酸、酢酸、プロパン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、シュウ酸、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、安息香酸、及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0066】
中和は、例えば、中和剤としての酸をその水溶液の形で導入することにより、水の存在下で実施することができる。
【0067】
中和は、アミン含有ブロック化ポリイソシアネート中のアミノ基のモル量に基づいて、20%~125%、好ましくは30%~100%、より好ましくは30%~90%の範囲の当量の酸を用いて行うことができる。
【0068】
工程(iii)における水中への分散は通常、例えば攪拌によって行うことができる。分散は、中和中又は中和後に行われてもよいことが理解されたい。好ましくは、中和後に別の分散操作を行う。
【0069】
本発明によれば、分散に乳化剤又は分散剤は必ずしも使用する必要はない。
【0070】
いくつかの実施形態において、工程(iii)における分散は、添加された乳化剤又は分散剤の非存在下で、中和した混合物を水と混合することによって行われる。
【0071】
添加された乳化剤又は分散剤が分散液の安定性を向上させると考えられ、従って、工程(iii)における分散は、添加された乳化剤又は分散剤の存在下で行われてもよいが、乳化剤又は分散剤は必須ではない。この場合、本発明による中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートの水性分散液は、乳化剤又は分散剤を含むことになる。
【0072】
ブロック化ポリイソシアネートの水性分散液を調製するためのあらゆる従来の乳化剤又は分散剤を使用することができ、これには、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性の乳化剤又は分散剤が含まれる。特に、非イオン性乳化剤又は分散剤を挙げることができる。好適な非イオン性乳化剤又は分散剤は、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド、エトキシル化又はプロポキシル化脂肪アルコール、エトキシル化又はプロポキシル化アルキルフェノール、エトキシル化又はプロポキシル化脂肪酸、エトキシル化又はプロポキシル化脂肪エステル、ソルビタン誘導体、スクロースエステル及び誘導体、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー、フッ素化アルキルポリオキシエチレンエタノール、及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0073】
本発明による中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートの水性分散液は、追加成分、例えば有機溶媒、着色剤又は顔料、粘度調整剤、レベリング剤、ゲル形成防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、無機又は有機フィラー、可塑剤、滑剤、軟化剤、帯電防止剤、補強剤、及びそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0074】
追加成分は、含まれる場合、工程(ii)の後、例えば、工程(iii)における中和の前、工程(iii)における中和と分散との間、又は工程(iii)における分散中に、本発明による中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートの水性分散液に導入されてもよい。
【0075】
本発明による中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートの水性分散液は、以下の特性の1つ以上を有することができる、
i)DIN 55659-1に従って20℃で測定した3.0~8.0、好ましくは3.5~8.0、より好ましくは4.0~8.0の範囲のpH;
ii)DIN EN ISO 15091に従って20℃で測定した、2~10mS/cm、好ましくは3~8mS/cmの範囲の導電率;
iii)DIN ISO 13321に従って測定した、60~200nm、好ましくは60~160nmの範囲のZ平均粒径;
iv)DIN ISO 13321に従って測定した、0.2未満の、粒径分布の指標である多分散性指数(PDI);
v)DIN EN ISO 3251に従って130℃で60分間測定した、10質量%~40質量%、好ましくは15質量%~35質量%の固形分;
vi)DIN EN ISO 15880に従って測定した、20~150mmol/100g、好ましくは30~120mmol/100gの範囲の酸のモル当量(MEQ-A);及び
vii)DIN EN ISO 15880に従って測定した、30~200mmol/100g、好ましくは50~180mmol/100gの範囲の塩基のモル当量(MEQ-B)。
【0076】
成分(B)、すなわち中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートは、本発明によるカソード電着塗装組成物中の硬化剤の100質量%を占めることができる。あるいは、本発明によるカソード電着塗装組成物は、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート以外の硬化剤(D)を含んでもよい。
【0077】
(C)硬化触媒
カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)と、中和したアミン構成単位を有するブロック化ポリイソシアネート(B)との反応を促進するために、硬化触媒が必要である。電着塗装に一般的に使用されるあらゆる硬化触媒を使用することができる。好ましくは、金属触媒、例えば、水酸化トリフェニルスズ、スタノイン酸ブチル、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛、ビスマス、鉛、インジウム、スズ、銅及びイットリウムの酸化物を使用することができる。
【0078】
硬化触媒は、粉砕樹脂、顔料、フィラー及び触媒を含むペーストの形態で、本発明によるカソード電着塗装組成物に導入することができる。前記ペーストは、例えば、顔料を顔料分散用粉砕樹脂及び中和剤と混合することにより調製することができる。好適な顔料分散用粉砕樹脂の例としては、ヒドロキシ基及びカチオン性基を有するエポキシ樹脂、ヒドロキシル基及びカチオン性基を有するアクリル樹脂、3級アミン型、4級アンモニウム塩型及び3級スルホニウム塩型のエポキシ樹脂、及び3級アミン型、4級アンモニウム塩型及び3級スルホニウム塩型のアクリル樹脂を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0079】
好適な顔料の例としては、白色顔料、例えば二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びケイ酸マグネシウム;黒色顔料、例えばカーボンブラック、又は着色顔料が挙げられるが、これらに限定されない。着色顔料としては、例えば、無機着色顔料、例えば酸化鉄又は酸化クロム、有機着色顔料、例えばアゾ顔料、トリフェニルメタン顔料、インジゴイド顔料、金属錯体顔料、イソインドリノン顔料、アントラキノン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、ジオキサジン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール又はピラゾロキナゾロン顔料を挙げることができる。
【0080】
硬化触媒は、カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)及び中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)及び任意の硬化剤(D)とは別個に存在してもよく、カソード電着塗装プロセスにおける適用の直前に、成分(A)、(B)及び任意の(D)と混合される。
【0081】
一般に、本発明によるカソード電着塗装組成物は、カソード電着塗装組成物の総質量に基づいて、0.01質量%~2質量%、好ましくは0.05質量%~1質量%の量の硬化触媒(C)を含むことができる。
【0082】
(D)硬化剤
任意に、カソード電着塗装組成物は、追加の硬化剤を含んでもよい。中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートと組み合わせて使用することができる任意の硬化剤には特に制限はない。
【0083】
本発明によるカソード電着塗装組成物における任意の硬化剤としては、あらゆる従来のブロック化ポリイソシアネート、例えば、ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応生成物、及び任意にブロック剤以外の活性水素含有化合物を使用することができる。
【0084】
好適なポリイソシアネート化合物の例としては、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートについて上述したものが挙げられる。
【0085】
好適なブロック剤の例は、脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、クロロエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、3,5,5-トリメチルヘキサノールデカノール及びラウリルアルコール;脂環式アルコール、例えばシクロペンタノール及びシクロヘキサノール、及び芳香族アルキルアルコール、例えばフェニルカルビノール及びメチルフェニルカルビノールから選択されてもよい。他の好適なブロック剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、例えばエタノールアミン、オキシム、例えばメチルエチルケトンオキシム、アセトンオキシム及びシクロヘキサノンオキシム、又はアミン、例えばジブチルアミン及びジイソプロピルアミンが挙げられる。
【0086】
本発明によるカソード電着塗装組成物は、カソード電着塗装組成物の固形分に基づいて、合計で10質量%~40質量%、好ましくは15質量%~35質量%の、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)及び任意の硬化剤(D)を含む硬化剤を含んでもよい。
【0087】
中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)は、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)と任意の硬化剤(D)との総量の少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%を占めることができる。
【0088】
したがって、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)は、本発明によるカソード電着塗装組成物中に、カソード電着塗装組成物の固形分に基づいて、2質量%~40質量%、より好ましくは3質量%~35質量%の量で存在することができる。
【0089】
硬化剤(D)は、本発明によるカソード電着塗装組成物中に、カソード電着塗装組成物の固形分に基づいて、38質量%以下、好ましくは32質量%以下の量で存在することができる。
【0090】
本発明によるカソード電着塗装組成物は、さらなる添加剤、例えば顔料、可塑剤、フィラー、湿潤剤及び触媒を含んでもよい。特に、カソード電着塗装組成物は顔料を含んでもよい。
【0091】
カソード電着塗装組成物の調製方法
本発明は、カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)を含む水性分散液と、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)及び硬化触媒(C)を含む水性分散液とを混合することを含む、カソード電着塗装組成物を調製する方法を提供する。
【0092】
カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)は、上述の通りである。カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)を含む水性分散液は、アミノ含有エポキシ樹脂を酸で中和し、水に分散させることにより調製することができる。任意に、水性分散液は、添加剤、例えば中和剤、乳化剤、触媒、及びカチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)以外の樹脂成分を含んでもよい。
【0093】
中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)を含む水性分散液は、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートを得るための、本明細書に記載されるプロセスによって調製することができる。中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートの水性分散液に関する上述の説明及び好ましい事項は、ここに適用することができる。
【0094】
硬化触媒(C)は上述の通りである。
【0095】
カソード電着塗装組成物の調製方法は、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート以外の硬化剤を任意に含んでもよい。追加の硬化剤は、硬化剤(D)について上述した通りである。例えば、追加の硬化剤は、カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)と一緒にカソード電着塗装組成物に組み込むことができる。
【0096】
特に、追加の硬化剤は、中和前のアミノ含有エポキシ樹脂と一緒に混合し、中和して分散させてもよい。この場合、カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)を含む水性分散液は、追加の硬化剤も含み、追加の硬化剤に塩基性基が含まれる場合には、中和されてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下の工程、
(1)アミノ含有エポキシ樹脂を、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)以外の硬化剤と混合し、中和し、水中に分散させて、カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)及び追加の硬化剤を含む水性分散液を提供する工程と、
(2)得られたカチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)及び追加の硬化剤を含む水性分散液を、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)を含む水性分散液と混合する工程と、
(3)カソード電着塗装プロセスで適用する直前に、カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂(A)を含む水性分散液、及び中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート(B)を含む水性分散液を、硬化触媒(C)と混合する工程と
を含む、カソード電着塗装組成物を調製する方法を提供する。
【0098】
硬化触媒は、粉砕樹脂、顔料、フィラー及び触媒を含むペーストの形態で、本発明によるカソード電着塗装組成物に導入することができる。
【0099】
さらに、本発明は、本発明のカソード電着塗装組成物、又は本発明の方法により調製されたカソード電着塗装組成物を含むカソード電着塗装用のコーティング浴を提供する。
【0100】
実施形態
様々な実施形態を以下に列挙する。以下に列挙する実施形態は、本発明の範囲に従って、全ての態様及び他の実施形態と組み合わせることができることが理解されるであろう。
【0101】
実施形態1
(A)カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂、
(B)中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートであって、以下の工程
(i)イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを、オキシム、ピラゾール及び活性メチレン化合物から選択される少なくとも1種のブロック剤と反応させて、部分的にブロック化されたポリイソシアネートを提供する工程と、
(ii)部分的にブロック化されたポリイソシアネート中の残りのイソシアネート基を、活性水素を有するアミン化合物と反応させて、アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを提供する工程と、
(iii)アミン含有ブロック化ポリイソシアネートを酸で中和する工程と
を含むプロセスによって得ることができる又は得られる、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート、及び
(C)硬化触媒
を含む、カソード電着塗装組成物。
【0102】
実施形態2
イソシアネート基を有する前記ポリウレタンプレポリマーが、ポリイソシアネートとポリオールとの反応により得ることができる又は得られる、実施形態1に記載のカソード電着塗装組成物。
【0103】
実施形態3
前記部分的にブロック化されたポリイソシアネートが、以下の工程、
(i-1)ポリイソシアネートをポリオールと反応させることにより、イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを調製する工程、及び
(i-2)工程(i-1)から得られたイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを、オキシム、ピラゾール及び活性メチレン化合物から選択される少なくとも1種のブロック剤と反応させる工程、
含むプロセスによって得ることができる又は得られる、実施態様1又は2に記載のカソード電着塗装組成物。
【0104】
実施形態4
前記ブロック剤が、ホルムアミドオキシム、アセタルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、ジエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノキシム、シクロペンタノンオキシム及びシクロヘキサノンオキシムからなる群から選択される少なくとも1種である、実施形態1から3のいずれか一項に記載のカソード電着塗装組成物。
【0105】
実施形態5
前記ポリイソシアネートが、脂肪族、脂環式及び芳香族ジイソシアネート、及び1個の分子当たり少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートから選択される少なくとも1種である、実施形態2から4のいずれか一項に記載のカソード電着塗装組成物。
【0106】
実施形態6
前記ポリイソシアネートが、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、及び2,2-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネートのモノマー、異性体及びオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種である、実施形態5に記載のカソード電着塗装組成物。
【0107】
実施形態7
イソシアネート基を有する前記ポリウレタンプレポリマーが、前記ポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート基及びウレタン基の総量に基づいて、70モル%~90モル%、好ましくは70モル%~80モル%の範囲のイソシアネート基の含有量を有する、実施形態1から6のいずれか一項に記載のカソード電着塗装組成物。
【0108】
実施形態8
前記部分的にブロック化されたポリイソシアネートが、前記部分的にブロック化されたポリイソシアネートに含有される残りのブロック化されたポリイソシアネート基及びウレタン基の総量に基づいて、10モル%~25モル%、好ましくは10モル%~20モル%の範囲の残りのイソシアネート基の含有量を有する、実施形態1から7のいずれか一項に記載のカソード電着塗装組成物。
【0109】
実施形態9
前記硬化触媒が、好ましくは金属触媒、より好ましくは水酸化トリフェニルスズ、スタノイン酸ブチル、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛、ビスマス、鉛、インジウム、スズ、銅及びイットリウムの酸化物からなる群から選択される少なくとも1種である、実施形態1から8のいずれか一項に記載のカソード電着塗装組成物。
【0110】
実施形態10
前記硬化触媒が、粉砕樹脂、顔料、フィラー及び触媒を含むペーストの形態で提供される、実施形態9記載のカソード電着塗装組成物。
【0111】
実施形態11
前記中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート以外の硬化剤(D)をさらに含む、実施形態1から10のいずれか一項に記載のカソード電着塗装組成物。
【0112】
実施形態12
前記中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートが、前記中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネート及び硬化剤(D)の総量に基づいて、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%の含有量を有する、請求項9に記載のカソード電着塗装組成物。
【0113】
実施形態13
前記カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂を含む水性分散液、前記中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートを含む水性分散液、及び触媒を混合する工程を含む、実施形態1から12のいずれか一項に記載の前記カソード電着塗装組成物を調製する方法。
【0114】
実施形態14
前記カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂を含む前記水性分散液が、アミノ含有エポキシ樹脂を酸で中和し、水に分散させることにより調製される、実施形態13に記載の方法。
【0115】
実施形態15
硬化剤(D)が前記カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂を含む前記水性分散液に添加される、実施形態13又は14に記載の方法。
【0116】
実施形態16
実施形態1から12のいずれか一項に記載のカソード電着塗装組成物を含む、カソード電着用のコーティング浴。
【0117】
実施形態17
請求項13から15のいずれか一項に記載の方法により調製されたカソード電着塗装組成物を含む、カソード電着用のコーティング浴。
【実施例】
【0118】
本発明は、特に有利な実施形態を示す以下の実施例によってさらに説明される。実施例は本発明を説明するために提供されるが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0119】
材料及び測定の説明
材料:
Lupranate(登録商標)M20S:オリゴマー及び異性体を含有する4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとした無溶剤ポリマー製品であり、平均官能価は約2.7であり、ASTM D 5155によるNCO含有量が31.5g/100gであり、BASF社から入手可能;
CathodGuard(登録商標)800:2つの別個のパッケージ、すなわち、65質量%の固形分を有する顔料ペーストの第1パッケージ、及び37.5質量%の固形分を有するカチオン性アミノ含有エポキシ樹脂と硬化剤の水性バインダー分散液の第2パッケージを含む電着塗料のセット、BASF社から入手可能;
Pluriol(登録商標)C 1651:ジブトキシエトキシホルマール、BASF社から入手可能;
BE-188EL:約188g/molのエポキシ当量を有する液体ビスフェノールAエポキシ樹脂、Chang Chun Groupから入手可能;
PPG 900:BASF社から入手可能なPluriol(登録商標)P 900;
ビスフェノールA 6EO:3個のEO/フェノールを有するビスフェノールAエトキシレート、Sigma-Alrdrichから入手可能;
MIBK:メチルイソブチルケトン、溶媒;
MEKO:メチルエチルケトキシム、ブロック剤;
MDEA:N-メチルジエタノールアミン;
DMAPA:N,N-ジメチルアミノプロピルアミン。
【0120】
測定:
実施例の測定には、以下の表に記載した方法と装置を使用した。
【0121】
【0122】
I.調製例
実施例1:ブチルグリコールブロック化ポリイソシアネート(従来品)の調製
494.8質量部のメチルイソブチルケトン(MIBK)、789.1質量部のブチルグリコール、及び0.90質量部のジブチルスズジラウレート(DBTL)を、凝縮器、窒素ガス入口及び窒素ガス出口を備えた反応器に装入した。初期装入物を50℃に加熱し、そこに933.8質量部のLupranate(登録商標)M20Sを、連続撹拌しながら60分間かけてゆっくりと反応器に投入した。添加終了後、続いて、溶媒として175.2質量部のフェノキシプロパノール(POP)を反応器に添加した。ブチルグリコールブロック化ポリイソシアネート硬化剤が得られた。
【0123】
実施例2:アミン構成ブロック(未中和)を含有するMEKOブロック化ポリイソシアネートの調製
900質量部のLupranate(登録商標)M20S、218.6質量部のMIBK、及び0.18質量部のDBTLを、凝縮器、窒素ガス入口及び窒素ガス出口を備えた反応器に装入した。初期装入物を30℃に加熱し、そこに56.2質量部の1,2-プロパンジオールを、連続攪拌しながら60分間かけて均一な速度で反応器に投入した。その後、546.5質量部のMIBKを反応器に添加し、反応器内の内容物を30℃に冷却した。30℃で、343.4質量部のMEKOを20分間かけてゆっくりと反応器に投入した。MEKOの投入終了後、反応を60℃まで上昇させ、さらに30分間続けた。得られた中間体を直ちに滴下漏斗に移し、その後、凝縮器、窒素ガス入口及び窒素ガス出口を備えた第2の清潔な反応器に取り付けた。120.8質量部のDMAPAを最初に第2反応器に装入し、30℃に加熱した。その後、滴下漏斗内の中間体を、連続攪拌しながら60分間かけて反応器に均一な速度で投入した。投入終了30分後、反応混合物を60℃まで昇温し、さらに15分間撹拌した。未中和のアミン構成単位を含有するMEKOブロック化ポリイソシアネート硬化剤が得られた。
【0124】
実施例3:自己乳化型硬化剤-中和したアミン構成ブロックを含有するMEKOブロック化ポリイソシアネートの調製
150.9質量部のMEKO、19.7質量部の1,2-プロパンジオール、408質量部のメチルイソブチルケトン(MIBK)及び0.18質量部のジブチルスズジラウレート(DBTL)を、凝縮器、窒素ガス入口及び窒素ガス出口を備えた反応器に装入した。この初期装入物を30℃に加熱した。その後、60分間かけて、400質量部のLupranate(登録商標)M20Sを、連続撹拌しながら均一な速度で反応器に投入した。投入終了後、反応温度を60℃まで冷却し、さらに60分間撹拌した。その後、30℃まで冷却した後、温度が80℃より高くならないような投入速度で41.3質量部のMDEAを反応器に投入した。投入終了30分後、反応混合物を80℃の温度まで上昇させ、さらに60分間撹拌し、アミン含有MEKOブロック化ポリイソシアネートを含む有機システムを得た。その後、510質量部の水と23.1質量部のギ酸(86%)の混合物を、激しい撹拌で有機システムに添加して、中和したアミンを有するブロック化ポリイソシアネートの水性分散液を得た。得られた水性分散液の特性を下記表1に示している。
【0125】
実施例4:自己乳化型硬化剤-中和したアミン構成ブロックを含有するMEKOブロック化ポリイソシアネートの調製
500質量部のLupranate(登録商標)M20S、121.4質量部のMIBK及び0.23質量部のDBTLを、凝縮器、窒素ガス入口及び窒素ガス出口を備えた反応器に装入した。この初期装入物を30℃に加熱した。その後、31.2質量部の1,2-プロパンジオールを、連続撹拌しながら60分間かけて均一な速度で反応器に投入した。その後、303.6質量部のMIBKを反応器に添加し、反応器内の内容物を30℃に冷却した。30℃で、190.8質量部のMEKOを20分間かけてゆっくりと反応器に投入した。MEKOの投入終了後、反応を60℃の温度まで昇温し、さらに30分間続けた。得られた中間体を直ちに滴下漏斗に移し、凝縮器、窒素ガス入口及び窒素ガス出口を備えた第2の清潔な反応器に取り付けた。67.1質量部のDMAPAを最初に第2反応器に装入し、30℃に加熱した。その後、滴下漏斗内の中間体を、連続撹拌しながら60分間かけて反応器に均一な速度で投入した。投入終了30分後、反応混合物を60℃まで昇温し、さらに15分間撹拌した。得られた有機システムをプラスチック容器に移した。その後、36.9質量部の水と19.9gのギ酸(86%)の混合物をその有機システムにゆっくりと添加して、油相中に水を作った。その後、さらに1700質量部の水を投入し、水中油相への相転換を行った。得られた水性分散液の特性を以下の表1に示している。
【0126】
実施例5:自己乳化型硬化剤-中和したアミン構成ブロックを含有するMEKOブロック化ポリイソシアネートの調製
450質量部のLupranate(登録商標)M20S、131.6質量部のMIBK、及び0.20質量部のDBTLを、凝縮器、窒素ガス入口及び窒素ガス出口を備えた反応器に装入した。初期装入物を30℃に加熱した。その後、309.0質量部のビスフェノールA 6EOを、連続撹拌しながら60分間かけて均一な速度で反応器に投入した。続いて、328.9質量部のMIBKを反応器に添加し、反応器内の内容物を30℃に冷却した。30℃で、171.0質量部のMEKOを20分間かけてゆっくりと反応器に投入した。MEKOの投入終了後、反応を60℃の温度まで昇温し、さらに30分間続けた。得られた中間体を直ちに滴下漏斗に移し、凝縮器、窒素ガス入口及び窒素ガス出口を備えた第2の清潔な反応器に取り付けた。60.2質量部のDMAPAをこの第2反応器に最初に装入し、30℃に加熱した。その後、滴下漏斗内の中間体を、連続撹拌しながら60分間かけて反応器に均一な速度で投入した。投入終了30分後、反応混合物を再び60℃に昇温し、さらに15分間撹拌した。得られた有機システムをプラスチック容器に移した。その後、35.8質量部の水と18.9質量部のギ酸(86%)の混合物をその有機システムにゆっくりと添加して、油相中に水を作った。その後、さらに2050質量部の水を投入し、水中油相への相転換を行った。得られた水性分散液の特性を以下の表1に示している。
【0127】
実施例6:自己乳化型硬化剤-中和したアミン構成ブロックを含有するMEKOブロック化ポリイソシアネートの調製
500質量部のLupranate(登録商標)M20S、112.3質量部のMIBK、及び0.23質量部のDBTLを、凝縮器、窒素ガス入口及び窒素ガス出口を備えた反応器に装入した。初期装入物を30℃に加熱し、そこに30.9質量部の1,2-プロパンジオールを反応器に素早く添加した。反応は60℃で連続攪拌しながら60分間継続した。続いて、224.7質量部のMIBKを反応器に添加し、反応器内の内容物を30℃に冷却した。30℃で、188.8質量部のMEKOを20分間かけてゆっくりと反応器に投入した。MEKOの投入終了後、反応を再び60℃まで上昇させ、さらに30分間続けた。30℃に冷却した後、66.4質量部のDMAPAを反応器に素早く投入した。投入終了20分後、反応混合物を60℃まで昇温し、さらに30分間撹拌した。得られた有機システムをプラスチック容器に移した。その後、38.9質量部の水と20.9質量部のギ酸(86%)の混合物を有機システムにゆっくりと添加して、油相中に水を作った。その後、さらに1960.5質量部の水を投入し、水中油相への相転換を行った。得られた水性分散液の特性を以下の表1に示している。
【0128】
【0129】
実施例7:カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂の水性分散液の調製
US 6274649B1の第9欄15行~35行を参照して、アミノ含有エポキシ樹脂を調製した。1128質量部の液体ビスフェノールAエポキシ樹脂(BE-188EL)、262質量部のドデシルフェノール、31.4質量部のキシレン及び228質量部のビスフェノールAを、撹拌機、還流冷却器、温度計及び不活性ガス入口を備えた反応器に装入した。反応器を127℃に加熱し、そこに窒素下で攪拌しながら1.6gのトリフェニルホスフィンを添加して発熱反応を開始させ、160℃まで昇温した。混合物を再び130℃まで冷却し、その後、エポキシド含有量を確認した。エポキシド含有量が98%超のフェノールOH基が反応したことを示したら、その後、297.5質量部のPPG 900を同時に冷却しながら添加した。5分間後、さらに冷却しながら120℃で131.25質量部のジエタノールアミン(DEOLA)を添加した。温度が110℃まで下がったとき、63.75質量部のN,N-ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)を添加した。短時間の発熱(140℃のTmax)の後、粘度が一定になるまで混合物を130℃で2時間さらに反応させて、アミノ含有エポキシ樹脂を含む有機システムを得た。
【0130】
その後、アミノ含有エポキシ樹脂を含む有機システムを、3840質量部の水と48.8質量部のギ酸(86%)の混合物を含有するプラスチック容器に、撹拌しながら直ちに移して、カチオン性アミノ含有エポキシ樹脂の水性分散液を得た。得られた分散液の特性を以下の表2に示している。
【0131】
【0132】
実施例8:従来の硬化剤を含むバインダー分散液の調製
実施例7で中間調製したアミノ含有エポキシ樹脂を含む有機システム1353質量部に、実施例1で調製したブチルグリコールブロック化ポリイソシアネート硬化剤470.6質量部を添加し、20分間撹拌して均一に混合した。その後、得られた有機混合物を、2609.1質量部の水と30.4質量部のギ酸(86%)の混合物を含有するプラスチック容器に直ちに移した。樹脂成分及び従来の硬化剤成分を含むバインダー分散液を得た。この分散液の特性を以下の表3に示している。
【0133】
実施例9:従来の硬化剤を含むバインダー分散液の調製
実施例7で中間調製したアミノ含有エポキシ樹脂を含む有機システム1353質量部に、実施例1で調製したブチルグリコールブロック化ポリイソシアネート硬化剤294.1質量部を添加し、20分間撹拌して均一に混合した。得られた有機混合物を、2475.1質量部の水と30.9質量部のギ酸(86%)の混合物を含有するプラスチック容器に直ちに移した。樹脂成分及び従来の硬化剤成分を含むバインダー分散液が得られた。この分散液の特性を以下の表3に示している。
【0134】
実施例10:従来の硬化剤を含むバインダー分散液の調製
実施例7で中間調製したアミノ含有エポキシ樹脂を含む有機システム1353質量部に、実施例1で調製したブチルグリコールブロック化ポリイソシアネート硬化剤117.6質量部を添加し、20分間撹拌して均一に混合した。得られた有機混合物を、2341.6質量部の水と31.8質量部のギ酸(86%)の混合物を含有するプラスチック容器に直ちに移した。樹脂成分及び従来の硬化剤成分を含むバインダー分散液が得られた。この分散液の特性を以下の表3に示している。
【0135】
実施例11:非中和アミン構成単位を含有するMEKOブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含むバインダー分散液の調製
実施例7で中間調製したアミノ含有エポキシ樹脂を含む有機システム680.8質量部に、111.1質量部のMIBKを、実施例2で調製した未中和アミン構成単位を含有するMEKOブロック化ポリイソシアネート硬化剤413.9質量部と共に75℃で添加し、20分間撹拌して均一に混合した。得られた有機混合物を、1632.8質量部の水と15.3質量部のギ酸(86%)の混合物を含有するプラスチック容器に直ちに移した。樹脂成分及び本発明によらない硬化剤成分を含むバインダー分散液が得られた。この分散液の特性を以下の表3に示している。
【0136】
【0137】
実施例12~14:自己乳化型硬化剤成分を含むバインダー分散液の調製
実施例3~5で調製した自己乳化型硬化剤分散液と、実施例7で調製したカチオン性アミノ含有エポキシ樹脂の水性分散液(すなわち、樹脂分散液)を、適度に攪拌しながら混合して、均一な混合物を得た。このようにして1Kバインダー分散液を得た。1Kバインダー分散液の配合と特性を以下の表4及び表5に示している。
【0138】
【0139】
【0140】
実施例15~20:自己乳化型硬化剤及び従来の硬化剤を含むバインダー分散液の調製
自己乳化型硬化剤分散液の一部と、実施例8~10で調製した樹脂及び従来の硬化剤を含む分散液の一部とを、適度に攪拌しながら混合して、均一な混合物を得た。このようにして1Kバインダー分散液を得た。この1Kバインダー分散液の配合及び特性を以下の表6及び表7に示している。
【0141】
【0142】
【0143】
II.応用例
II.a 配合
実施例B1~B5
表8に示す配合に従って、水性バインダー分散液、水性顔料ペースト及び脱イオン水を組み合わせることにより、比較用及び本発明のカソード電着塗装(Eコート)材料を調製した。攪拌しながら、まずバインダー分散液を脱イオン水で希釈し、次いで顔料ペーストを導入することにより、組み合わせを行った。Eコート材料B1~B5を得た。
【0144】
【0145】
実施例B6及びB7
表9に示す配合に従って、水性バインダー分散液、水性顔料ペースト及び脱イオン水を組み合わせることにより、比較用及び本発明のカソード電着塗装(Eコート)材料を調製した。攪拌しながら、まずバインダー分散液を脱イオン水で希釈し、次に顔料ペーストを導入し、次にPluriol(登録商標)C 1651を導入することにより、組み合わせを行った。Eコート材料B6及びB7を得た。
【0146】
【0147】
実施例B8~B11
表10に示す配合に従って、水性バインダー分散液、水性顔料ペースト及び脱イオン水を組み合わせて、比較用及び本発明のカソード電着塗装(Eコート)材料を調製した。攪拌しながら、まずバインダー分散液を脱イオン水で希釈し、次に顔料ペーストを導入し、次にPluriol(登録商標)C 1651を導入することにより、組み合わせを行った。Eコート材料B8~B11を得た。
【0148】
【0149】
実施例B12~B17
表11に示す配合に従って、水性バインダー分散液、水性顔料ペースト及び脱イオン水を組み合わせることにより、比較用及び本発明のカソード電着塗装(Eコート)材料を調製した。攪拌しながら、まずバインダー分散液を脱イオン水で希釈し、次いで顔料ペーストを導入することにより、組み合わせを行った。Eコート材料B12~B17を得た。
【0150】
【0151】
II.b 測定
(1).カソード電着塗装の一般的な手順
特に指定がない限り、コーティング浴としてのEコート材料を、室温で攪拌しながら1日間エージングした。カソード接続されたリン酸亜鉛処理スチール試験パネル(26S/6800/OC又は26/1/6800 MBZ)上に、260ボルトの堆積電圧、約30℃の浴温で2分間かけて成膜した。特に指定がない限り一般試験では、堆積した膜を脱イオン水ですすぎ、その後、175℃(基材温度15分間)で焼成した。
【0152】
(2).動的機械分析(DMA)試験
Eコート材B1~B5をTA instruments社製のDMA Q800動的機械分析装置で試験した。試験設定を以下にまとめ、結果を表12に示している。
【0153】
オンセット温度試験の設定:
フィルム/ファイバー引張クランプ;
サンプルサイズ:10mm(L)×6.5mm(W);
ひずみ:0.05%、周波数:1Hz;及び
2℃/分で110℃まで昇温;1.3℃/分で205まで昇温。
【0154】
オフセット時間試験の設定:
フィルム/ファイバー引張クランプ;
サンプルサイズ:10mm(L)×6.5mm(W);
ひずみ:0.05%、周波数:1Hz;及び
Ramp(T-25)/10℃/分、その後、所定の温度で60分間等温。
【0155】
【0156】
表12に示すように、自己乳化型硬化剤を含むすべてのサンプルB2、B3、B4及びB5において、Eコート膜のゲル化は120℃より低い温度で起こり、膜は140℃でそれぞれ36.03分、22.13分、18.73分及び16.88分以内に良好に硬化させることができる。対照的に、自己乳化型硬化剤を含まないサンプルB1は、140℃で硬化させることができなかった。
【0157】
(3).示差走査熱量測定(DSC)による安定性試験
サンプルB5について、エージング安定性の試験を行った。新鮮な状態のサンプルB5、2週間エージング後のサンプルB5、及び4週間エージング後のサンプルB5をコーティング浴として使用して、上述の一般的な手順に従ってEコート膜を調製した。Eコート膜は、以下の表13にまとめた異なる温度及び異なる期間で焼成した。焼成したEコート膜のTgを試験し、結果を表13に示している。
【0158】
【0159】
明らかに、低い硬化温度条件下で、新鮮な状態の浴、2週間エージングした浴、及び4週間エージングした浴からの焼成したEコート膜のTgの有意な増加はなく、これは浴の長期エージング中にゲル化が起こらないことを意味する。換言すれば、本発明によるEコート材料は、少なくとも4週間の良好なエージング安定性を有する。
【0160】
(4).粗さ測定による安定性試験
Eコート材料のエージング安定性は、Eコート膜の外観変化によっても監視することができる。エージング安定性が良いほど粗さの変化は少なく、エージング安定性が悪いほど粗さの変化は大きくなる。サンプルB6及びサンプルB7をコーティング浴として使用して、上述の一般的な手順に従って、26/1/6800 MBZパネル上にEコート膜を作製した。膜の粗さ変化を測定し、試験結果を表14に示している。
【0161】
【0162】
明らかに、2週間エージングした後のサンプルB6から調製された膜は、新鮮な状態のサンプルB6からの膜よりも著しく高いRa値を有する。対照的に、新鮮な状態及び2週間エージングした後のサンプルB7から調製された膜は、Ra値の有意な変化を有さない。本発明によるEコート材料は、アミノ含有エポキシ樹脂及び硬化剤(中和し、一緒に分散している)を含むEコート材料と比較して、エージング安定性が向上している。
【0163】
(5).その他の性能試験
適用性能も、上述の一般的な手順に従ってサンプルB8~B17から調製したEコート膜について試験した。試験結果を表15及び表16に示している。
【0164】
【0165】
【0166】
本発明によるカソード電着塗装組成物は、向上した安定性を有し、同時に、望ましいフィルム特性、例えばより高い又は同等の柔軟性、より高い耐食性、及び著しく低減されたVOC及びより高いスローパワーのような望ましい適用性能を提供することがわかる。
【国際調査報告】