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特表2024-540364センターロック式ホイール取外しツール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】センターロック式ホイール取外しツール
(51)【国際特許分類】
   B60B 29/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B60B29/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526862
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2022081006
(87)【国際公開番号】W WO2023079149
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】2116025.4
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522299632
【氏名又は名称】ゴードン・マレー・オートモーティブ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Gordon Murray Automotive Limited
【住所又は居所原語表記】Wharfside, Broadford Park, Shalford, Surrey GU4 8EP United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク, マシュー
(57)【要約】
ホイールハブにねじ係合されたホイールナットを有するセンターロック式ホイールハブからのロック要素の取外しであって、ロック要素は、ホイールバブ及びホイールナットと係合して、それによりホイールハブとホイールナットとの相対回転が防止され、その取外しは、ロック要素の対応する雌ねじとねじ係合される雄ねじ部を有する第1端部と、抽出装置に回転トルクを付与するための係合要素を備えた第2端部と、雄ねじ部の半径方向外側に位置し、雄ねじ部から軸方向に変位してホイールナットに接触する軸受面と、を有する抽出装置を取り付けることにより容易となる。抽出ツールとロック要素との間のねじ係合の軸方向延長長さは、ロック要素とホイールハブ及び/又はホイールナットとの間の係合の軸方向延長長さと少なくとも同じであるべきである。これにより、ロック要素を完全に取り外すことができる。抽出装置は、好ましくは雄ねじ部及び係合要素が設けられる抽出ツールと、軸受面が設けられるスペーサツールと、の2つの部品として提供される。スペーサツールは、適切な寸法の環状要素とすることができる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセンブリは以下を含む:
センターロック式ホイールハブ、
前記ホイールハブにねじ係合するホイールナット、
前記ホイールハブ及び前記ホイールナットと係合し、それにより前記ホイールハブ及び前記ホイールナットの相対的な回転を防止するロック要素、及び
以下を有する抽出装置;
前記ロック要素の対応する雌ねじとねじ係合された、雄ねじ部を有する第1端部;
前記抽出装置に回転トルクを付与するための係合要素を備えた第2端部;
前記雄ねじ部の半径方向外側に位置し、前記雄ねじ部から軸方向に変位し、前記ホイールナットに接触する軸受面。
【請求項2】
前記ロック要素は、前記ホイールハブ及び/又は前記ホイールナット上のスプラインに対応する少なくとも1つのスプラインを備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記抽出ツールと前記ロック要素との間のねじ係合の軸方向延長長さが、前記ロック要素と前記ホイールハブ及び/又は前記ホイールナットとの間の係合の軸方向延長長さと少なくとも同じ長さである、先行請求項のうちいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記ホイールナットに接触する前記軸受面が、軸方向に同心円状の円形溝を含み、当該円形溝に前記ホイールナットの外縁部が突出可能である、先行請求項のうちいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記ホイールハブに取り付けられ、少なくとも前記ホイールナットによって所定の位置に保持されるホイールを更に含む、先行請求項のうちいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記係合要素が、取外しを補助するために、前記ホイールナットの軸方向外側に突出する、先行請求項のうちいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記軸受面が、軸方向において前記雄ねじ部と前記係合要素との間に配置される、先行請求項のうちいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記抽出装置は、前記雄ねじ部及び前記係合要素が設けられた抽出ツールと、前記軸受面が設けられたスペーサツールと、の2つの部品として提供される、先行請求項のうちいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記スペーサツールが環状である、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記係合要素が、限定的な回転対称性を有する凹部である、先行請求項のうちいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記凹部が正方形断面を有する、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
以下を有するセンターロック式ホイールハブアセンブリのロック要素用の抽出装置;
ロック要素の対応する雌ねじと係合するための、雄ねじ部を有する第1端部;
装置に回転トルクを付与するための係合要素を備えた第2端部;
ホイールナットに接触するために、雄ねじ部の半径方向外側に位置し、雄ねじ部から軸方向に変位する軸受面。
【請求項13】
前記係合要素が、限定的な回転対称性を有する凹部である、請求項12に記載の抽出装置。
【請求項14】
前記凹部が正方形断面を有する、請求項13に記載の抽出装置。
【請求項15】
前記軸受面は、軸方向において前記雄ねじ部と前記係合要素との間に配置される、請求項12から請求項14のうちいずれか1項に記載の抽出装置。
【請求項16】
前記雄ねじ部及び前記係合要素が設けられた抽出ツールと、前記軸受面が設けられたスペーサツールと、の2つの部品として提供される、請求項12から請求項15のうちいずれか1項に記載の抽出装置。
【請求項17】
センターロック式ホイールハブアセンブリからホイールを取り外す方法であって、
前記ハブアセンブリは、前記ホールハブとねじ係合されたホイールナットと、前記ホールハブ及び前記ホイールナットに係合するロック要素と、を含み、それにより、前記ホイールハブと前記ホイールナットとの相対回転が防止され、
前記方法は以下の工程を含む:
・ロック要素とねじ係合可能な抽出ツールを提供し、
・前記ホイールナットに接触するための軸受面と、前記抽出ツールに接触するための軸受面とを有し、それにより両者の間の最小軸方向距離を維持するスペーサツールを提供し、
・前記スペーサツールを前記ホイールナットと前記抽出ツールとの間に配置した状態で前記抽出ツールを前記ロック要素にねじ係合させ、
・ロック要素とのねじ係合を継続し、ロック要素と抽出ツールとを相対的に軸方向移動するために抽出ツールを回転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターロック式ホイール(センターロック式ホイールとしても知られている)を取り外すためのツールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のホイールは、特に車両ブレーキシステムに関して、整備点検及び修理作業が実行されることを可能にするために、且つ車両タイヤの交換のために、取外し可能である必要がある。そのような交換は、摩耗や、冬/夏タイヤ又はロード/トラックタイヤなどの異なる特性を有する別のタイヤに交換するために、時々必要である。殆どのロードカー及びバンは、5本又は4本のボルトシステムを使用しており、このシステムでは、ホイールハブは、ホイールが保持される対向面の周りに五角形又は正方形のパターンで均等に配置されたねじ付きソケットを有する;一組のホイールボルトは、ホイールの対応する開口部を通してソケットに固定される。いくつかの車両において、ハブには雄ねじ付きスタッドが設けられ、その上にホイールが取り付けられ、ホイールを所定の位置に保持するためにホイールナットがスタッド上に固定される。
【0003】
これは、簡単で一般的に信頼できるアプローチである。しかしながら、固定機構のためにホイールの中心から半径方向に妥当な距離を確保する必要があり、ブレーキディスクの可能な寸法が制限される。センターロック式ホイールは、1つのホイールにつき1つの固定具を操作するだけでよいため、ピットストップ時に素早く脱着でき、大型のブレーキディスクを装着するためのスペースを確保したハブ設計が可能で、適切に装着された場合には強度が増すことから、モータースポーツの世界では長い歴史を有する。したがって、いくつかの自動車メーカー及びチューナーはこれらの利点を確保するために、センターロック式ホイール及びハブシステムを公道走行のスポーツカー及びパフォーマンスカーに搭載する。センターロック式ホイールは、Porsche、Koenigsegg及びLamborghiniなどの製造業者によって現在使用されている。
【0004】
センターロック式ホイールは、ホイールの中心でホイールハブとねじ係合するナットを、ホイールごとに1つ使用する。「ナット」と称されるものの、ホイールハブに設けられた雌ねじとの係合のために雄ねじ加工がされる場合もあるが、問題の要素の形態から、それは通常「ナット」と記載され、ここではこの記載法を用いる。センターロック式ホイールの明らかな難点は、当然ながら、ホイールを所定の位置に保持しているナットと同じ軸を中心にホイール自体が回転していることであり、そのため、ホイールの回転運動によってナットが緩み、ホイールが外れてしまう危険性があることである。
【0005】
そのような脱落は壊滅的になりうる。したがって、それが生じないことを確実にするための予防措置がとられる。単純明快な予防措置は、ホイールが前方向へ回転すると、ナットが緩むのでなくむしろ締まる傾向となるようにアレンジすることである。これは、車両の片側が従来の時計回りの締め付けねじを有し、もう片側が逆回転又は反時計回りのねじを有することを必要とする。また、トルクがナットを介して直接伝達されないように、ハブは、ホイールとハブとの間に何らかのインターロック係合機構を有することも一般的である。古いレーシングカーは車軸上にスプラインを使用し、このスプライン上にホイールが取り付けられ、ホイールの内部の対応するスプラインを介して係合していた。現在のポルシェスポーツカーは、ホイールハブ上に突出する突起を設置し、この突起は、ホイール上の対応する凹部内に突出する。
【0006】
しかしながら、主に、公道用車両のための最新のセンターロック式装置は、外部スプライン型のロックピンを使用しており、これがナットとハブとをブリッジし、かつ両方の内部スプラインと係合して相対的な回転を防止している。ロックピンは、ハブとナットとの両方に適合する単一のスプラインを有する場合があり、ハブに適合するスプライン及びナットに適合するスプラインの2つのスプラインの間に段差を有する場合がある。これは、ホイールが取り付けられ、ナットにトルクがかけられた後、所定の位置に挿入され、相対的な回転を防止する。ホイールを取り外すには、ナットが取り外せるようにロックピンを抜き取る必要がある。
【0007】
ポルシェは、ホイールハブの一部を構成するスプリング式の格納式ロックピンを採用しており、これはセンターロック式ナットに適合する特注ソケット上の特殊な突起によってハブ内に押し込まれる;ナットからソケットを取り外すと、ロックピンは、そのスプラインがナットとハブとをブリッジする位置まで、そのばね付勢によって伸びることが可能になる;メカニックは、そのロックピンが十分に伸びたことを視覚的にチェックしなければならない。他のセンターロック式装置は、外側からナットを通してホイールハブ内に両者の中心軸に沿って挿入され、両者のスプラインと係合するピンを採用する。そして、摩擦やスナップフィットキャップによって保持され得る。
【0008】
このような外部挿入ピンは、ホイールナットを緩める前に取り外す必要がある。しかしながら、偶発的な脱落を防止するために、理想的には緊密に嵌合され、またホイールハブに対してナットがわずかに移動することで、ロックピンがさらに緊密に係合され得る。そのため、通常、ロックピンにねじ込むことができ、かつロックピンの取外しを可能にするスライドハンマーの適切な固定ポイントを提供するアダプターを備えた、取外しツールが提供される。
【発明の概要】
【0009】
スライドハンマーは、ロックピンを取り外すには非常に不十分な方法である。それは、本質的に望ましくない衝撃荷重を加える。それは、物理的に大きく、騒音を発し、重く、操作するためにかなりの体力を必要とする。さらに、スライドハンマーは容易に持ち運べず、あまりにも多くのスペースを占め、あまりにも重量過多であるため、車両に搭載することができない。場合によっては、タイヤに欠陥や損傷がある車両を専門修理業者に回収させる必要があり、路上修理が可能であったはずのエンドユーザに不便を与える。
【0010】
したがって本発明は、ホイールハブにねじ係合されたホイールナットを有するセンターロック式ホイールハブからロック要素を取り外すことを提案し、ここにおいて、抽出装置を取り付けることにより、ロック要素はホイールハブとホイールナットとに係合し、それによりホイールハブとホイールナットとの相対回転を防止し、抽出装置は、ロック要素の対応する雌ねじとねじ係合する雄ねじ部を有する第1端部と、抽出装置に回転トルクを付与するための係合要素を備えた第2端部と、雄ねじ部の半径方向外側に位置し、雄ねじ部から軸方向に変位してホイールナットに接触する軸受面と、を有する。
【0011】
ひとたびこのアセンブリが、抽出装置をロック要素に規定された方法で取り付けられることにより完成すると、抽出装置は係合要素を介して回転することができ、そして、ロック要素をねじ係合上に引き寄せる。抽出装置は、軸受面がホイールナットと接触するとすぐに、内側に引っ張られることが防止される。したがって、ロック要素は、制御された方法でハブから着実に引き抜かれる。
【0012】
ロック要素は、典型的にはホイールハブ及び/又はホイールナット上のスプラインに対応する少なくとも1つのスプラインを備える。多くの場合、ホイールハブと係合するスプラインと、ホイールナットと係合する別個のスプラインとがある。
【0013】
抽出ツールとロック要素との間のねじ係合の軸方向延長長さは、ロック要素とホイールハブ及び/又はホイールナットとの間の係合の軸方向延長長さと少なくとも同じであることが好ましい。これにより、ロック要素を完全に取り外すことができる。
【0014】
ホイールナットに接触する軸受面は、軸方向に同心円状の円形溝を備えることができ、この溝にホイールナットの外縁部が突出することができる。これは、軸受面のための確実な位置を提供する。それは、軸方向において、雄ねじ部と係合要素との間に配置されることが好ましい。
【0015】
もちろん、通常、ホイールハブにホイールが取り付けられ、少なくともホイールナットによって所定の位置に保持される。
【0016】
係合要素がホイールナットの軸方向外側に突出する場合、取り外しはより容易になる;そうすれば、より幅広い種類のツールが係合要素と都合よく係合する。
【0017】
抽出装置は好ましくは2つの部品として設けられ、雄ねじ部及び係合要素が設けられる抽出ツールと、軸受面が設けられるスペーサツールである。スペーサツールは、適切な寸法の環状要素とすることができる。
【0018】
係合要素は、好ましくは正方形断面などのように、限定的な回転対称性を有する凹部である。
【0019】
本発明はまた、センターロック式ホイールハブアセンブリのロック要素のための抽出装置に関し、抽出装置は、ロック要素の対応する雌ねじと係合するための雄ねじ部を有する第1端部と、装置に回転トルクを付与するための係合要素を備えた第2端部と、ホイールナットに接触するため、雄ねじ部の半径方向外側に位置し、雄ねじ部から軸方向に変位する軸受面とを有する。
【0020】
最後に、本発明は、センターロック式ホイールハブアセンブリからホイールを取り外す方法を提供し、ハブアセンブリは、ホイールハブとねじ係合するホイールナットとホイールハブ及びホイールナットに係合するロック要素を含み、それによりホイールハブとホイールナットとの相対的な回転を防止され、この方法は、ロック要素とねじ係合可能な抽出ツールを提供する工程と、ホイールナットに接触するための軸受面と抽出ツールに接触するための軸受面とを有してそれにより両者の間の最小軸方向距離を維持するスペーサツールを提供する工程と、スペーサツールをホイールナットと抽出ツールとの間に配置した状態で抽出ツールをロック要素にねじ係合する工程と、ロック要素とのねじ係合を継続し、ロック要素と抽出ツールとを相対的に軸方向移動するために抽出ツールを回転させる工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例示的に説明する。
図1図1は、センターロック式ハブを有する車両ホイールの中央領域を示す。
図2図2は、本発明の取外しツールが取り付けられた図1のセンターロック式ハブを示す。
図3図3は、図2のセンターロック式ハブであって、ロックピン用のすべての取外しツールが取り付けられた状態を示す。
図4図4は、例示の目的で、ホイールナットがない状態の図1のホイールハブを示す。
図5図5は、ロックピンを取り外す直前のホイールハブの断面図を示す。
図6図6は、ロックピンを取り外す際のホイールハブの断面図を示す。
図7図7は、本発明の取外しツールを通した等角図を示す。
図8図8は、本発明の取外しツールを通した下面図を示す。
図9図9は、本発明の取外しツールを通した側面図を示す。
図10図10は、本発明の取外しツールを通した断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、センターロック式ホイールナットを使用する車両ホイールの中央部分を示す。ホイール10は、車両の一部を形成するホイールハブアセンブリ24に取り付けられた中央ボス22から広がる5つのスポーク12、14、16、18、20を有する。従来の方法では、ハブアセンブリ24は、ホイールに動力トルクを提供するための駆動シャフト、回転するホイール10及びハブ24のパーツが車両のサスペンション上に担持されることを可能にする軸受、ブレーキディスクやブレーキキャリパなどのブレーキ部品のための取付けポイント、及びハブ24及びホイール10を実質的に(しかし、通常は完全でなく)垂直軸の周りを回転させて、車両を操舵可能とするステアリング部品のための(通常、フロントハブ上の)取付けポイントを組み込むことができる。ホイール10は、ホイールハブ24上のスタブ軸(図1には不図示)と係合するホイールナット26によって、ハブ24上の所定の位置に保持され、ボス22をハブ24に対して付勢する。ボス22は、ホイールが所定の位置にしっかりと保持されるように、スタブ軸の周りにぴったりと嵌合するように成形され、ホイールナット26はスタブ軸とねじ係合する。ホイールナット26の外周28には、ホイールナット26をスタブ軸から取り外すために、適切な形状のソケットがホイールナット26に係合して回転できるように、ローレット加工が施されている。
ホイールナット26は、重量を低減し、ロックピン(後述)の挿入を可能にするために中空(円筒形の形態を有する)であり、美観上許容可能な外観を提供し、かつ車両の使用中にホイールハブアセンブリの内部部品を清浄に保つために、中空中央部は使用時にトリム要素30で覆われる。
【0023】
この構造は、基準軸を簡易に設定するために役立つ。以下では、「軸方向」とはハブ24上のホイール10の回転軸と一致する方向である。その軸に沿った「内」方向及び「外」方向は、それぞれ車両の中心線に向かう方向及び車両の中心線から離れる方向である。
【0024】
図2及び図3は、図1の配置を示すが、ホイール10がなく(図2)、更にホイールナット26がない(図3)。これは、ホイールナット26がハブ24上のスタブ軸32に取り付けられているが、ホイール10が存在せず、実際には明らかに通常でない配置であろう。しかしながら、これは、関与する構造的詳細を説明するために有用である。このように、ハブ24は、ホイール交換中にブレーキディスク(これもまた図2にない)を所定の位置に保持するための固定ポイント34と、ホイールボス22の内面上で、ブレーキディスクの対応する開口を通過して凹部36内に延びる突起を受容するための凹部36と、を有することが分かる。このようにして、ホイール10、ハブ24及びブレーキディスクの相対的な回転が防止される。これらは、車両のサスペンションに取り付けられたハブアセンブリ24の残りの部分40内の軸受(不図示)上に取り付けられたハブ24の回転可能部38に設けられている。
【0025】
スタブ軸32は、ハブ24の回転可能部38から中空円筒状に突出した形をしている。スタブ軸の端部は、対応する雌ねじを有するホイールナット26を受け入れるように、雄ねじ32aが切られている。また、図2及び図3には、通常はトリム要素30の下に隠されているロックピン42が示されている。これは、スタブ軸32の中央中空空間内に位置し、かつスタブ軸32及びホイールナット26上の対応する内部スプライン形状に適合する外部スプライン形成44を有する、環状要素である。このように、軸方向内向きに挿入されると、スプラインが係合し、ロックピンがスタブ軸32からホイールナット26にブリッジすることで、相対的な回転を防止し、かつホイールナット26をスタブ軸32に係合した状態に保つ。
【0026】
後は、ホイール10(つまり、ホイールナット26)を取り外す必要が生じたときに、ロックピン42を取り外す方法を見つけるだけである。これを可能にするために、図2に示されるスペーサツール46が、ホイールナット26上に軸方向に位置する環状円板の形態で提供される。その内面上には、ホイールナット26の摩耗を最小限に抑えるように形成されたホイールナット26に接触する軸受面がある。スペーサツール46の環状円板形状は、中心穴48を画定し、この中心穴を通って係合ツール50を延ばすことができる。これは、ロックピン42上の対応する雌ねじと係合可能な雄ねじと、(この例では)標準サイズのラチェットツールやブレーカーバーなどを受け入れることができる正方形断面の凹部とされた外部からアクセス可能な係合要素52と、を有する。このタイプの係合ツール50は、通常、ロックピン42を強制的に取り外すことができるスライドハンマーなどのための確実な取付けポイントを提供するために、ロックピン42にねじ込むのに使用される。
【0027】
スライドハンマーを介して付与される衝撃荷重によってロックピン42を取り外す代わりに、図5及び図6は、ロックピン42をより容易に、かつ損傷の可能性がより少ない状態で取り外すことができる方法を示す。ロックピン42の抜き取りを開始する準備ができた時点で、断面図に示されるアセンブリでは、ホイールナット26はスタブ軸32に嵌合され、ホイールナット26の雌ねじ26aはスタブ軸32の雄ねじ32aと緊密に係合する。ロックピン42は、中空スタブ軸32及びホイールナット26によって画定される環状内部空間内の所定の位置にあり、外部スプライン44a及び44bは、スタブ軸32及びホイールナット26上の対応する内部スプラインと係合する。なお、この例では、2つのスプライン44a,44bは、段部54を挟んで大きさが異なり、スタブ軸32に係合するスプライン44bは、ホイールナット26に係合するスプライン44aよりも狭くなっている。しかしながら、これは必ずしもその必要はなく、スタブ軸及びホイールナット上の適合する内部スプラインを通って延在するロックピン上の1つの外部スプラインを使用する、という他の構成も可能である。
【0028】
係合ツール50は、ロックピン42の中心軸内に延在し、ロックピン42の内側円筒面上の雌ねじ56とほぼ係合した雄ねじ54を有する。係合ツール50の外側部分に向かって、ツールは、段部58を含んで広がり、この段部58は軸受面を画定し、その背後にはスペーサツール46が挟まれている。
【0029】
上述のように、スペーサツール46は、ホイールナット26の外端に接触する内側軸受面60と、段部58に接触する外側軸受面62と、を有する円板状である。係合ツール50のねじ54が完全ではないが充分に係合した状態で、スペーサツール46は所定の位置にぴったりと挟まれる。これを達成するために、スペーサツールは、図5に示される他の要素の寸法に照らして適切に寸法決めされる。
【0030】
ひとたびこの構成となると、ラチェットスパナ、ブレーカーバー、エアガンなど、トルク源を係合ツール50の係合要素52に接続することができる。また、係合ツール50の回転は、そのねじ54をロックピン42のねじ56にさらに係合する。ホイールナット26及び段部58に当接するスペーサツール46が存在するために、係合ツール50がアセンブリ内に更に引き込むことができず、代わりにロックピン42をスタブ軸32及びホイールナット26から引き抜かなければならない。図6は更なる回転の後の配置を示し、ロックピン42は充分に引き抜かれ、スプライン44aはホイールナット26と完全に係合を解除され、スプライン44bはスタブ軸32とほぼ係合を解除されている。この時点で、係合ツール50を引っ張るだけで、ロックピン42は比較的自由にかつ容易に取り外すことができるはずである。
【0031】
重要なことに、ロックピン42は、係合ツール50とのねじ係合によって生じる安定した引っ張りによって取り外される。関与するレバレッジの程度は、使用されるねじのピッチを設定することによって任意に調整することができる。突発的な衝撃荷重は完全に回避される。
【0032】
本発明の別の利点は、標準的な係合ツール50及びホイールハブ、ナット等の他の要素の寸法を考慮しつつ必要に応じてスペーサツールの寸法を選択するだけで、標準的な係合ツール50をプロセス内での使用を可能とする単純で、安価で、かつ軽量なスペーサツール46を提供できることである。そのような係合ツールは、工具店や修理スタッフに提供され、車両に提供されるツールキット内に組み込まれ得る。スペーサツールは、車両ツールキット内に提供されるのに充分なほど小さく、かつ軽量であり、したがって、例えば、タイヤが損傷して車両が立ち往生したときでも常に利用できる。
【0033】
スペーサツール46は、図示された態様とすることができ、すなわち、係合ツール50と協働する別個のディスクとすることができる。代替的に、スペーサツール46は、係合ツール50上にその永久的又は半永久的な部品として保持され得る。このように組み合わされたスペーサツール及び係合ツールは、一体のボディであってもよく、又はスペーサツールは係合ツールの周りで自由に回転可能であってもよい。一般的に後者が好まれるが、これは後者がスペーサツールがホイールナットに対して静止することを可能にし、それによりホイールナットに対する摩耗や同様の損傷を防止するからである。
【0034】
図7図10は、スペーサツール46をより詳細に示す。一般に環状円板の形態では、スペーサツール46は中央開口64を有し、その周りにプロファイルディスクが円周方向に延在する。その最外面又は上面には、中央開口64のすぐ周りに突出リップ66があり、その先端は、係合ツール50の更なる内側への移動に対向して支持するために、使用時に係合ツール50の段部58が当接する外側軸受面62を画定する。スペーサツール46の最内面又は下側には、ディスクの周囲に、その半径方向外側の端部に近接して延びる円周方向凹部がある。これは、スペーサツール46の更なる内側への移動に対向して支持するために、使用時にホイールナット26の外端部が当接する内側軸受面60を画定する。
【0035】
内側軸受面60は、スペーサツール46がホイールナット26の最外先端部に対してぴったりと静止することを可能にするために円周方向凹部の形態で画定され、ホイールナット26の先端が円周方向凹部に嵌合するとスペーサツール46はホイールハブ軸上に正確に配置される。この積極的な配置を補助するために、凹部の半径方向内側縁部はディスクの周りで円周方向に延びる直立隆起部68によって画定され、これは(使用時に)ホイールナット26内にぴったりと嵌合することができる。
【0036】
内側軸受面60及び外側軸受面62は、ロックピン42及び係合ツール50の各々のねじが係合するのに充分に小さい距離だが、ロックピン42が完全に引き抜かれるのに充分に大きい距離だけ、軸方向に離間される。
【0037】
ディスクの半径方向における内側軸受面60と外側軸受面62との間にある部分には、複数の軽量化貫通孔が設けられている。これらは円周方向に離間され、可能な限り重量を排除しつつ、スペーサ工具46に充分な強度をもたらすのに充分な材料を残す大きさとなっている。これにより、スペーサツール46が軽量スポーツカーのツールキット内で運搬されることを可能となる。
【0038】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して多くの変形がなされ得ることが理解されるのであろう。
図1
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図10
【国際調査報告】