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▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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  • 特表-誘導巻線界磁式同期機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】誘導巻線界磁式同期機
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/03 20160101AFI20241024BHJP
   H02K 19/26 20060101ALI20241024BHJP
   H02K 19/36 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H02P25/03
H02K19/26 A
H02K19/36 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526882
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022078935
(87)【国際公開番号】W WO2023078668
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021212548.4
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレル トルステン
(72)【発明者】
【氏名】コズロウスキー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】トパロフ ペンヨ
(72)【発明者】
【氏名】ズィマーシート フィリップ
【テーマコード(参考)】
5H505
5H619
【Fターム(参考)】
5H505AA19
5H505DD06
5H505EE08
5H505EE48
5H505HA07
5H505HB01
5H505JJ03
5H505MM02
5H505MM03
5H619BB01
5H619BB02
5H619BB06
5H619BB13
5H619PP12
5H619PP36
(57)【要約】
回転子磁界を発生する回転子コイル(5)と電気エネルギーを回転子コイル(5)に供給する変圧器2次コイル(6)とを有する回転子(2)と、固定子磁界を発生する固定子コイル(9)と電気エネルギーを各変圧器2次コイル(6)に誘導的に伝送する変圧器1次コイル(10)とを有する固定子(3)と、を有する誘導巻線界磁式同期機(1)に、本発明は関する。回転子コイル(5)の減磁は、減磁回路(19)で改善され得、減磁回路(19)は、固定子コイル(9)に電気的に接続され、減磁回路(19)を作動及び停止させるスイッチング装置(20)と電気エネルギー負荷(22)及び/又は電気エネルギー貯蔵器(23)とを有し、スイッチング装置(20)は、同期機(1)の通常動作中には減磁回路(19)を停止させ、機器故障時には減磁回路(19)を作動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導巻線界磁式同期機(1)であって、
前記同期機は、回転子磁界を発生する少なくとも1つの回転子コイル(5)を有する回転子(2)を備え、
前記同期機は、固定子(3)を備え、前記固定子(3)には、前記回転子(2)が回転軸(8)の周りに回転可能に取り付けられ、前記固定子(3)は、固定子磁界を発生する少なくとも1つの固定子コイル(9)を有し、
前記同期機は、回転変圧器(33)を備え、前記回転変圧器(33)は、前記固定子に固定された少なくとも1つの変圧器1次コイル(10)と、前記回転子に固定され電気エネルギーを前記回転子コイル(5)のそれぞれに供給する少なくとも1つの変圧器2次コイル(6)とを有し、
前記同期機は、同期機制御器(4)を備え、前記同期機制御器(4)は、前記同期機(1)を電動機として及び/又は発電機として動作させるように、前記固定子コイル(9)のそれぞれと、前記変圧器1次コイル(10)のそれぞれとに接続され、
前記同期機(1)のそれぞれは、少なくとも1つの減磁回路(19)を有し、前記減磁回路(19)は、前記固定子コイル(9)のそれぞれと電気的に接続され、前記減磁回路(19)は、前記減磁回路(19)を作動及び停止させるスイッチング装置(20)と、少なくとも1つの電気エネルギー負荷(22)及び/又は少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵器(23)とを有し、
前記スイッチング装置(20)のそれぞれは、前記同期機(1)の通常動作中には関連付けられた前記減磁回路(19)を停止させ、機器故障時には関連付けられた前記減磁回路(19)を作動させるように、構成され及び/又は制御される、
同期機(1)。
【請求項2】
前記スイッチング装置(20)のそれぞれは、ブレーキ回路又はブレーキチョッパとして構成されている、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項3】
前記スイッチング装置(20)のそれぞれは、前記固定子コイル(9)のそれぞれにおいて引き出し可能な電圧に応じて前記減磁回路(19)を作動させるように構成されている、
請求項1又は2に記載の同期機(1)。
【請求項4】
前記スイッチング装置(20)のそれぞれは、前記固定子コイル(9)のそれぞれにおいて引き出される電圧が所定の閾値を超過するときに前記減磁回路(19)を作動させるように構成されている、
請求項3に記載の同期機(1)。
【請求項5】
前記閾値は、前記固定子コイル(9)のそれぞれに与えられる電圧が前記同期機(1)に給電する電気エネルギー源(34)によって供給される電圧より低いままであるように選択される、
請求項4に記載の同期機(1)。
【請求項6】
前記同期機制御器(4)は、前記同期機(1)の通常動作中には関連付けられた前記減磁回路(19)を停止させるために前記スイッチング装置(20)のそれぞれを制御し、機器故障の場合には関連付けられた前記減磁回路(19)を作動させるために前記スイッチング装置(20)のそれぞれを制御するように構成されている、
請求項1-5のいずれか1項に記載の同期機(1)。
【請求項7】
前記減磁回路(19)は、少なくとも1つの整流器(24)を含み、前記整流器(24)は、作動させられた減磁回路(19)とともに、前記固定子コイル(9)のそれぞれに与えられた交流電圧を直流電圧に変換し、前記直流電圧を前記電気エネルギー負荷(22)のそれぞれ及び/又は前記電気エネルギー貯蔵器(23)のそれぞれに供給する、
請求項1-6のいずれか1項に記載の同期機(1)。
【請求項8】
前記同期機制御器(4)は、電気エネルギーを前記固定子コイル(9)のそれぞれに供給するインバータ(11)を備え、前記インバータ(11)は、電気エネルギーを伝送する第1インバータ線(13)及び第2インバータ線(14)を経由して前記固定子コイル(9)のそれぞれに接続され、
前記第1インバータ線(13)は、前記固定子コイル(9)のそれぞれの第1コイル端(29)に電気的に接続され、前記第2インバータ線(14)は、前記固定子コイル(9)のそれぞれの第2コイル端(30)に電気的に接続され、
前記固定子コイル(9)のそれぞれとの電気的接続のための前記減磁回路(19)は、2つの回路線、すなわち第1回路線(27)及び第2回路線(28)を有する回路線対(26)を備える、
請求項1-7のいずれか1項に記載の同期機(1)。
【請求項9】
前記第1回路線(27)は、前記第1インバータ線(13)に電気的に接続され、前記第2回路線(28)は、前記第2インバータ線(14)に電気的に接続されている、
請求項8に記載の同期機(1)。
【請求項10】
前記第1回路線(27)は、前記第1インバータ線(13)に電気的に接続され、前記第2回路線(28)は、前記固定子コイル(9)のそれぞれのコイルタップ(31)に電気的に接続され、前記コイルタップ(31)は、前記第1コイル端(29)と前記第2コイル端(30)との間に配置されている、
請求項8に記載の同期機(1)。
【請求項11】
前記コイルタップ(31)は、前記固定子コイル(9)のそれぞれの範囲内で前記第1コイル端(29)と前記第2コイル端(30)との間の中央を外して配置されている、
請求項10に記載の同期機(1)。
【請求項12】
前記コイルタップ(31)は、前記固定子コイル(9)のそれぞれの範囲内で前記第2コイル端(30)より前記第1コイル端(29)の近くに配置されている、
請求項10又は11に記載の同期機(1)。
【請求項13】
前記同期機(1)は、多相、好ましくは3相構成を有しており、各相(U,V,W)には少なくとも1つの固定子コイル(9)が割り当てられている、
請求項1-12のいずれか1項に記載の同期機(1)。
【請求項14】
各相(U,V,W)に、複数の固定子コイル(9)であるコイル群が割り当てられている、又は互いに正反対の位置に配置された2つの固定子コイル(9)である少なくとも1つのコイル対が割り当てられている、単相又は多相構成を、前記同期機(1)は有する、
請求項1-13のいずれか1項に記載の同期機(1)。
【請求項15】
前記負荷(22)のそれぞれ及び/又は前記貯蔵器(23)のそれぞれは、前記固定子(3)の外面又は前記固定子(3)の外部に配置されている、
請求項1-14のいずれか1項に記載の同期機(1)。
【請求項16】
前記負荷(22)のそれぞれは、前記電気エネルギーを熱に変換する少なくとも1つの熱電素子を備える、
請求項1-15のいずれか1項に記載の同期機(1)。
【請求項17】
前記同期機制御器(4)は、機器故障時に、前記固定子コイル(9)のそれぞれ及び/又は前記変圧器1次コイル(10)のそれぞれへの電気エネルギーの供給を停止する、
請求項1-16のいずれか1項に記載の同期機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の誘導巻線界磁式同期機(induktiv elektrisch erregte Synchronmaschine)に関する。
【背景技術】
【0002】
同期機は、回転電気機器であり、ここで回転子は、動作中に、固定子の回転磁界に同期して回転、つまり動作する。同期機は、電動機として又は発電機として一般に運転され得る。電気的に励磁される、つまり他励式同期機の場合、磁界は、回転子において付加的に電気的に発生させられる。回転子側の磁界を発生させるためには、電気エネルギー、特に直流が供給されなければならないので、少なくとも1つの回転子コイルがここでは用いられる。誘導巻線界磁式同期機の場合、それぞれの回転子コイルへの電気エネルギーの供給は、ブラシレスで行われ、つまり誘導によって行われ得る。よって、誘導巻線界磁式同期機は、ブラシレス他励式電気同期機に対応する。
【0003】
例えばDE 10 2016 207 392 A1から一般的な同期機が知られている。この一般的な同期機は、回転子磁界を発生する少なくとも1つの回転子コイルを有する回転子を備える。この同期機は、加えて固定子を有し、回転子は、回転軸の周りに回転可能なように固定子に取り付けられており、固定子は、固定子磁界を発生する少なくとも1つの固定子コイルを有する。この同期機には、更に回転変圧器が設けられており、この回転変圧器は、固定子に固定して配置された少なくとも1つの変圧器1次コイルと、回転子に固定して配置された少なくとも1つの変圧器2次コイルとを備える。回転変圧器の動作中に、各変圧器2次コイルは、各回転子コイルに電気エネルギーを供給する働きをする。回転変圧器の動作中に、各変圧器1次コイルは、電気エネルギーの各変圧器2次コイルへの誘導伝送を行う働きをする。この目的のために、回転子に固定された整流器が通常更に存在し、整流器は、各変圧器2次コイルの交流を各回転子コイルのための直流に変換するために、各変圧器2次コイルと各回転子コイルとの間に電気的に配置されている。
【0004】
通常、同期機は、同期機を電動機として及び/又は発電機として動作させるために各固定子コイル及び各変圧器1次コイルに接続又は結合された同期機制御器を備え得る。実際には、同期機制御器は、同期機の機器故障の場合に各回転子コイルの減磁を行うように、更に構成され得る。
【発明の概要】
【0005】
同期機の構成要素のうちの1つにおいて、例えば回転子及び固定子のコイル又はインバータを含む同期機制御器の電子回路において起こり得る、機器故障の場合には、同期機はオフにされ又は動作を停止させられる。これは、例えば、各固定子コイル及び各変圧器1次コイルへの電気エネルギーの供給を停止することによって行われる。その過程において固定子内での回転子の急激な遮断、又はコイルにおける非常に危険な電流及び電圧を避けるために、機器故障の場合には、各回転子コイルを減磁することが必要とされている。
【0006】
既知の上述のDE 10 2016 207 392 A1において、回転子側にブレーキ回路を備えることが提案されており、その回路はスイッチング素子、起動回路、及び負荷素子を含む。機器故障の場合にはすぐに、例えば固定子コイルの停止によって、回転子側の電圧が所定の制限値を超え、スイッチング素子が開いて電気エネルギーを負荷素子に導き、負荷素子において電気エネルギーが熱に変換される。そのような回転子側のブレーキ回路において、強力な同期機が高い熱負荷にさらされ、その結果、ブレーキ回路の負荷素子で生成された更なる熱が放散できず、ブレーキ回路の電気素子が容易に過熱し得るというのは、いずれにせよ問題であり得る。
【0007】
本発明は、誘導巻線界磁式同期機用に、改良された、又は少なくとも他の実施形態を示すという問題を扱い、その実施形態では、機器故障の場合に各回転子コイルの減磁が素早く過熱なしに行われ得る。
【0008】
本発明によると、この問題は請求項1の主題を通して解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
本発明は、同期機の固定子側に減磁回路(Entmagnetisierungskreis)を備えるという大まかな考えに基づいており、故障の場合に減磁回路は電気エネルギーを放散し、電気エネルギーは回転子磁界によって、各固定子コイルに誘導され、その結果、各固定子コイルによって各回転子コイルの減磁が行われ得る。減磁回路で、エネルギーは各固定子コイルから直接放散され得る。よって、回転子及び固定子の過熱が回避され得る。
【0010】
実際には、この減磁回路は、例えば固定子コイル又は固定子コイルの部分における電圧のような、望ましくない故障の場合と相関関係があるパラメータを監視する例えば制御ユニット又は制御回路によって内部で制御され得、所定の閾値が超えられると、減磁回路を作動させる。
【0011】
付加的に又は代替として、この減磁回路は、具体的には外から、好ましくは同期機制御器から作動及び停止させられ得るように、外部からの制御が可能なように構成され得る。特に、故障の場合に、減磁回路は、同期機の停止に同期して作動させられ得る。よって、非常に短い応答時間が実現される。したがって、故障の場合に回転子磁界を減少させ、かつ、その過程で変換された電気エネルギーを放散するために、いずれにせよ存在する固定子コイルが、本発明において利用される。
【0012】
詳細には、本発明は、同期機又は同期機制御器に減磁回路を備えることを提案し、減磁回路は、各固定子コイルと電気的に相互接続されており、減磁回路を作動及び停止させるスイッチング装置と、少なくとも1つの電気エネルギー負荷と、少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵器とを備える。更に、各スイッチング装置は、同期機の通常動作中には関連付けられた減磁回路を停止させ、機器故障の際には関連付けられた減磁回路を作動させるように、構成及び/又は制御されている。最も簡単な場合には、減磁回路は、ブレーキ回路として設計され、スイッチング装置と、負荷(Verbraucher)と、制御ユニット又は制御回路とを備える。
【0013】
特に、スイッチング装置はチョッパによって実現され得、チョッパはその過程においてブレーキチョッパのように用いられる。チョッパは、例えば各固定子コイルに現在与えられている電圧に応じて制御され得る。この目的のために、ここでは示されていない各スイッチング装置に統合された制御ユニット又は対応する制御回路は、各電圧を監視し得て、好ましくはパルス幅変調によってチョッパを制御し得る。所定の電圧閾値を超過するとすぐに、チョッパは、減磁回路を作動させるように制御され、その結果、チョッパは導通し、負荷又は貯蔵器は各固定子コイルから電流を引き込み得る。監視された電圧が再び閾値を下回ると、チョッパは、減磁回路を停止させるように制御され、その結果、チョッパは再び遮断し、したがって負荷又は貯蔵器は各固定子コイルから電流を引き込み得ない。
【0014】
実際には、各スイッチング装置は、各固定子コイルで引き出し可能な電圧に応じて、減磁回路を作動させるように構成されている、としてもよい。その過程において、引き出し点のうちの1つは、コイル端と各固定子コイルとの間に配置され得て、その結果、引き出される電圧はコイル電圧の対応する部分によって生成されるに過ぎない。更なる好ましい展開において、各スイッチング装置は、各固定子コイルで引き出された電圧が所定の閾値を超えると減磁回路を作動させるように構成され得る。これは、パワートランジスタ又はチョッパで特に容易に実現され得る。更なる展開が特に有利であり、そこでは各固定子コイルに与えられる電圧又はコイル電圧が、同期機に給電するために電気エネルギー源が供給する電圧又は電源電圧より低く保たれるように、閾値が選択される。
【0015】
付加的又は代替的に、同期機制御器は、各スイッチング装置に接続又は結合され得、同期機の通常動作時には減磁回路を停止させるように各スイッチング装置を制御し、機器故障時には減磁回路を作動させるように各スイッチング装置を制御するように構成され得る。
【0016】
機器故障時には、同期機制御器は、好ましくは固定子コイルを短絡することなく、減磁のために働き、その結果、固定子コイルは、アクティブなままであり、回転子磁界の誘導による放散のために利用され得る。上述のブレーキ回路又はブレーキチョッパとしての実施形態に関連して、これは、故障の場合にインバータが短絡される必要がなく、短絡されることもないということを意味する。そうではなく、インバータは、車両電気システム電圧又は電池電圧を特に矩形波電圧として各固定子コイルに反映するように、単にオフにされる又は開放されるのみである。チョッパは、次に電流を急速に増加させ、各固定子コイルにおける電圧を、減少させ又は低いレベル、好ましくは車両電気システム電圧又は電池電圧に保持し、電池から電流を導く。
【0017】
特に一実施形態において、減磁回路は貯蔵器を含み、減磁回路は少なくとも1つの整流器を更に含み、整流器で減磁回路は各固定子コイルに与えられる交流電圧を直流電圧に変換して、直流電圧を各負荷又は各貯蔵器に供給する。よって、各回転子コイルの減磁中に各固定子コイルに誘導される電気エネルギーは、特に容易に効率的に放散され得る。そのような整流器は、特に貯蔵器が使用されるときに用いられる。負荷の構成によっては、整流器は有利でもあり得る。
【0018】
通常のやり方において、同期機制御器は、電気エネルギーを各固定子コイルに供給するインバータを備え得、インバータは、第1インバータ線及び第2インバータ線を経由して各固定子コイルに接続され得る。第1インバータ線は各固定子コイルの第1コイル端に電気的に接続され、第2インバータ線は各固定子コイルの第2コイル端に電気的に接続されている。インバータ経由で、各固定子コイルは、固定子磁界を生成するための同期機の通常動作のために、通電される。多相同期機において、実際にはスター結線として配置された複数の固定子コイルが備えられている。第1インバータ線は各固定子コイルに各第1コイル端で接続され得、第2インバータ線はスター結線のいわゆるスターポイントに接続されており、スターポイントはこの場合各第2コイル端に対応する。この場合、固定子コイルには自身の第1インバータ線がそれぞれ割り当てられており、その一方、固定子コイルには共通の第2インバータ線が割り当てられている。
【0019】
有利な更なる展開において、各固定子コイルとの電気的相互接続のための減磁回路は、2つの回路線、すなわち、第1回路線及び第2回路線を有する回路線対を備え得る。回路線は各固定子コイルを減磁回路に電気的に接続するために利用され得る。
【0020】
有利な実施形態によると、第1回路線は第1インバータ線、特に第1コイル端に電気的に接続され、第2回路線は第2インバータ線、特に第2コイル端に電気的に接続されている、としてもよい。結果として、減磁回路は各固定子コイルに並列に接続されている。これは減磁回路を固定子に統合することを簡単にする。
【0021】
代替の実施形態において、第1回路線は第1インバータ線、特に第1コイル端に電気的に接続され得、第2回路線は各固定子コイルのコイルタップに電気的に接続されており、コイルタップは固定子コイルの第1コイル端と第2コイル端との間に電気的に配置されている。よって、減磁回路は固定子コイルの全体ではなく、固定子コイルの一部のみを利用する。結果として、故障の場合に各固定子コイルにおいて減磁回路によって引き出される電圧も、按分されて減少する。よって、減磁回路は、比較的低コストの構成要素で実現され得る。内部で制御される減磁回路を用いて、スイッチング装置が比較的低い電圧閾値においてさえ作動させられるということも、対応する制御回路を通して達成され得、その結果、減磁が比較的早く行われる。
【0022】
コイルタップが、各固定子コイルの範囲内で第1コイル端と第2コイル端との間で中央を外して配置される、という更なる展開は、実用的である。特に、コイルタップは、各固定子コイルの範囲内で、第2コイル端より第1コイル端に近いところに配置され得る。結果として、回路線間、又はコイルタップと第2コイル端との間の電圧は、2つのインバータ線間、又は2つのコイル端間の電圧の半分より低い。
【0023】
有利な実施形態において、同期機は多相、好ましくは3相構成を有し得て、各相には少なくとも1つの固定子コイルが割り当てられている。したがって、故障の場合に多くのエネルギーをできるだけ速く放散することが可能であるようにするために、減磁回路は複数の、好ましくは全ての固定子コイルと電気的に相互接続されている。
【0024】
他の実施形態は、同期機が単相又は多相構成のものであることを提案し、各相にはコイル群又は複数の固定子コイルが割り当てられている。そのようなコイル群がちょうど2つの固定子コイルを備えるなら、コイル群はコイル対を形成し得て、コイル対では2つの関連付けられた固定子コイルが好ましくは互いに正反対の位置に配置されている。よって、複数の固定子コイルもここに存在する。この場合も、減磁回路は、故障の場合にエネルギーを効果的に、かつできるだけ速く消散させることができるようにするために、複数の、好ましくは全ての固定子コイルと電気的に相互接続されている。
【0025】
上述の2つの変形例は、互いに結合されることもあり得て、その結果、同期機は多相、好ましくは3相構成のものであり、各相は、互いに正反対の位置に配置された2個の固定子コイルである少なくとも1つのコイル対に割り当てられている。3相同期機では、少なくとも6個の固定子コイルが備えられている。ここでも、減磁回路は、複数の、好ましくは全ての固定子コイルに電気的に接続されている。
【0026】
好ましくは、各負荷又は各貯蔵器は、固定子の外面又は固定子の外部に配置されており、それによって回転子の過熱が効果的に回避され得る。
【0027】
各負荷は、少なくとも1つの熱電素子を備え得、熱電素子は電気エネルギーを熱に変換する。例えば、これは負荷素子であり得、負荷素子は電気抵抗器、サプレッサダイオード、又はツェナーダイオードであり得る。
【0028】
ここで考えられている同期機は、自動車用の、及び/又は100kW-200kW、好ましくは120kW-160kW、特に約140kWの出力の、駆動電動機又は走行用電動機として好ましくは設計され得る。
【0029】
更に、本発明の重要な特徴及び有利な点は、従属請求項、図面、及び関連付けられた図の説明から、図面を介して得られる。
【0030】
上述の、及びまだ以下で説明される特徴は、提示された組合せのそれぞれでのみ用いられ得るのではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組合せにおいて又はそれらの特徴のみでも、用いられ得る。個別に称される例えば設備、機器、又は装置のような上位のユニットの、上述の部品、及びまだ以下で名を挙げられる部品は、図面に表されていても、このユニットの個々の部品又は構成部分を構成し又はこのユニットの一部をなす領域又は部分であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の好ましい例示的実施形態は、図面に示され、以下の説明でより詳細に記載され、ここで同一の参照番号は、同一の又は類似の又は機能的に同一の要素を示す。
図1図1は、誘導巻線界磁式同期機の第1実施形態における高度に簡略化された回路図的な概略図である。
図2図2は、誘導巻線界磁式同期機の第2実施形態における高度に簡略化された回路図的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1及び2によると、誘導巻線界磁式同期機1は、回転子2、固定子3、及び同期機制御器4を備える。回転子2は、回転子磁界を生成するための少なくとも1つの回転子コイル5と、各回転子コイル5に電気エネルギーを供給するための少なくとも1つの変圧器2次コイル6とを有する。実際には回転子2は、整流器7が備え得て、この整流器7は、変圧器2次コイル6から供給される交流を直流に変換し、この直流を回転子コイル5に供給する。回転子2は、回転軸8の周りに回転可能なように固定子3に取り付けられている。固定子3は、固定子磁界を生成するための少なくとも1つの固定子コイル9と、電気エネルギーを各変圧器2次コイル6に誘導伝送するための変圧器1次コイル10とを備える。各変圧器1次コイル10及び各変圧器2次コイル6は、回転変圧器33を構成し、回転変圧器33は、動作中に電気エネルギーを変圧器コイル6と10との間で誘導的に伝送する。回転変圧器33については、図1及び2の表現は概略的にのみ理解されるべきである。特に、具体的な回転変圧器又は具体的な同期機1における変圧器コイル6,10は、回転軸8に関して互いに反対側に位置している。
【0033】
同期機1を電動機として及び/又は発電機として運転するために、同期機制御器4は、各固定子コイル9及び各変圧器1次コイル10に接続されている。この目的のために、同期機制御器4は、少なくとも1つのインバータ11を備え得て、インバータ11は、第1インバータ線13及び第2インバータ線14を経由して、各固定子コイル9に接続されている。図1及び2において、インバータ線13及びインバータ線14は、インバータ線対12として簡略化して示されている。多相同期機1において、通常、スター結線が採用されるのは明らかである。各変圧器1次コイル10にエネルギーを与えるために、同期機制御器4は、対応する変圧器線16を経由して各変圧器1次コイル10に接続された変圧器制御器15を備え得る。変圧器制御器15は、特にインバータ11に統合され得る。加えて、少なくとも1つのCPUを含み得て、制御線18を経由してインバータ11に接続された制御装置17を、同期機制御器4は備え得る。制御装置17は、同様にインバータ11に構造的に統合され得る。
【0034】
図1及び2では、1個のみ及び3個の固定子コイル9がそれぞれ示されているが、固定子3は、2個以上又は4個以上の固定子コイル9を備えることもできる。
【0035】
インバータ11は、例えば電池又は車両電気システムのような電気エネルギー源34に接続され得る。図2において、エネルギー源34は簡単のために省略されている。エネルギー源34は、好ましくは、所定の電圧又は電源電圧を直流電圧として供給する。
【0036】
同期機制御器4又はその制御装置17は、例えば温度、回転速度、電圧、及び/又は電流の過大な値のような特に所定の機器故障に関して同期機1を監視するように構成され得る。機器故障が識別されるとすぐに、同期機制御器4は、各固定子コイル9及び/又は各変圧器1次コイル10への電気エネルギーの供給を停止させる。ここで、これは実際には、インバータ11がオフにされる、又は停止させられる、すなわち、もはや動作しないように制御されることによって達成される。アクティブなインバータ11はコンバータとして動作し、コンバータはエネルギー源34から来る直流電圧を交流電圧に変換して各固定子コイル9に供給する一方、アクティブではないインバータ11は整流器として動作し、整流器は各固定子コイル9から来る交流電圧を直流電圧に変換してエネルギー源34に供給する。好ましくは、各固定子コイル9の短絡は、処理中に生じるべきではない。言い換えると、同期機制御器4は、好ましくは固定子コイルの短絡なしに動作する。
【0037】
更に、同期機制御器4又はその制御装置17は、故障の場合に、具体的には各回転子コイル5の減磁を引き起こすように構成され得る。
【0038】
回転子コイル5を減磁するために、同期機1又はその同期機制御器4は、減磁回路19を備えており、減磁回路19は各固定子コイル9と電気的に相互接続されている。固定子コイル9が複数ある場合、減磁回路19は、実際には複数の固定子コイル9に、好ましくは全ての固定子コイル9に相互接続されている。減磁回路19は、減磁回路19を作動及び停止させるために使用され得るように構成されたスイッチング装置20を備えている。スイッチング装置20は、内部で制御されて擬似的に独立して動作するように構成され得る。これは、例えば、ここには示されていない対応する制御回路又は制御ユニットを通して行われる。例えば、各固定子コイル9に与えられる電圧は、監視され得る。スイッチング装置20を外部から制御する又は動作させるために、同期機制御器4又はその制御装置17は、対応する制御線21を介してスイッチング装置20に接続され得る。減磁回路19は、少なくとも1つの電気エネルギーの消費器22及び/又は少なくとも1つの電気エネルギーの貯蔵器23を更に備えている。複数の固定子コイル9が存在し、減磁回路19が複数の又は全ての固定子コイル9と相互接続されているならば、減磁回路19は、共通のスイッチング装置20と、少なくとも1つの共通の消費器22又は少なくとも1つの共通の貯蔵器23を備え得て、少なくとも1つの共通の消費器22又は少なくとも1つの共通の貯蔵器23は、減磁回路19と相互接続されている全ての固定子コイル9に割り当てられている。スイッチング装置20は、好ましくは、例えばダイオード、トランジスタ、MOSFET、IGBT、又はチョッパによって実現され得る電子的なスイッチである。特に、スイッチング装置20は、ブレーキチョッパとして相互接続されたチョッパによって実現され得、チョッパは、例えば各固定子コイル9に現在与えられている電圧に応じて制御される。この目的のために、ここでは示されていない各スイッチング装置20に統合された制御回路又は制御ユニットは、各電圧を監視し得て、好ましくはパルス幅変調によってチョッパを制御し得る。所定の電圧閾値を超過するとすぐに、チョッパは、減磁回路19を作動させるように制御され、その結果、チョッパは導通し、消費器22又は貯蔵器23は各固定子コイル9から電流を引き込み得る。監視された電圧が再び閾値を下回ると、チョッパは、減磁回路19を停止させるように制御され、その結果、チョッパは再び遮断し、したがって消費器22又は貯蔵器23は各固定子コイル9から電流を引き込み得ない。
【0039】
加えて、同期機制御器4は、同期機1の通常動作中に減磁回路19を停止させるようにスイッチング装置20を制御するよう、任意に設計され得る。しかし、機器故障があるとすぐに、同期機制御器4は、減磁回路19を作動させるようにスイッチング装置20を制御する。固定子コイル9及び各変圧器1次コイル10への電流供給がオフになるとき、残留固定子磁界が依然として存在している。加えて、回転子磁界が依然として存在している。よって、電気エネルギーが固定子コイル9内で誘導される。その時、電気エネルギーが、減磁回路19によって消散され、各消費器22で消費又は各貯蔵器23で貯蔵され得る。減磁回路19を各固定子コイル9に接続することによって、減磁回路19は回転子磁界の結合を疎にするために利用され得て、その結果、減磁回路19を実現するための装置費用が比較的低くなる。その過程において、減磁回路19が固定子側、すなわち、回転子2の外部に配置されていることは注目に値する。回転子コイル5の減磁中に消散されるエネルギーは、よって、回転子2を加熱する働きをし得ない。同期機制御器4によってスイッチング装置20を制御することによって、回転子磁界が、故障の際に固定子コイル9において過剰な電圧を誘導する前に減少され得るということは、更に注目に値する。
【0040】
少なくとも、減磁回路19が貯蔵器23を含む場合には、減磁回路19は整流器24を備え、図1及び2の表現において、整流器24はスイッチング装置20とともにアセンブリ25に形成される。しかし、整流器24は、分離して構成することもされ得る。減磁回路19が作動しているとき、整流器24は、各固定子コイル9に与えられた交流電圧を、次に各消費器22又は各貯蔵器23に供給される直流電圧に変換する。
【0041】
インバータ11は、インバータ線13,14を経由して固定子コイル9に接続される。インバータ11の各固定子コイル9への電気的結合のために、第1インバータ線13は各固定子コイル9の第1コイル端29に電気的に接続され、第2インバータ線14は各固定子コイル9の第2コイル端30に電気的に接続される。各固定子コイル9との電気的相互接続のために、減磁回路19は回路線対26をそれぞれ備え、回路線対26は2つの回路線、すなわち、第1回路線27及び第2回路線28を備える。
【0042】
図1に示された第1実施形態において、各第1回路線27は第1インバータ線13に電気的に接続され、各第2回路線28は第2インバータ線14に電気的に接続されている。よって、減磁回路19が各固定子コイル9に並列に接続されるように、回路線対26はインバータ線13,14に電気的に接続されている。この場合、同期機1がオフになっているときに、各固定子コイル9に誘導される電気エネルギーは、全電圧で減磁回路19によって消散される。
【0043】
図2に示された第2実施形態においては、これとは対照的に、第1回路線27は第1インバータ線13に、例えば第1コイル端29を経由して電気的に接続されるということが記載されている。これとは対照的に、この第2実施形態における第2回路線28は、コイルタップ31に電気的に接続されており、コイルタップ31は、各固定子コイル9に付加的に存在し、第1コイル端29と第2コイル端30との間に配置されている。よって、同期機1がオフになっているときに、各固定子コイル9に誘導される電気エネルギーは、全電圧で減磁回路19によって消散される必要はなく、コイルタップ31の位置に応じた按分された電圧で消散される、ということが達成される。これは特に、スイッチング装置20が回路線27,28の接続、すなわちタップポイント29,30における電圧を監視するときに、スイッチング装置20を自動的に動作させるのに有利である。この場合、電圧閾値は、それに基づいてスイッチング装置20が減磁回路19を作動させるのであるが、比較的低く選択され得る。よって特に、各固定子コイル9に誘導される電圧がエネルギー源34によって供給される電源電圧より低く保たれるということが、達成され得る。
【0044】
図2の例において、コイルタップ31は2つのコイル端の間で中央を外して配置されている。「中央を外して」というのは、電気的な意味において理解されるべきであり、固定子コイル9内の巻線数を参照する。その点で、コイルタップ31が固定子コイル9の範囲内で第2コイル端30より第1コイル端29に近いところに位置する構成が好ましい。したがって、固定子コイル9は、コイルタップ31と第1コイル端29との間に、コイルタップ31と第2コイル端30との間より少ない数の巻線を有する。よって、回路線27,28によって引き出し可能な電圧は、コイル端29,30に与えられる電圧の半分より低い。
【0045】
提示された例において、同期機1は、多相、すなわち、3相構成を有する。個々の相は、図1及び2においてU,V及びWと称されている。各相U,V,Wには少なくとも1つの固定子コイル9が割り当てられている。この場合、各相U,V,Wにはコイル対がそれぞれ割り当てられており、コイル対は2つの固定子コイル9を備え、直径に沿って互いに反対側に配置されている。図1においては、1つの固定子コイル9のみが、全固定子コイル9の代表として、概略的に示されている。図2においては、3個のコイル対のそれぞれについて1つの固定子コイル9のみが、図2における各相U,V,Wの代表として、示されている。
【0046】
固定子3が複数の固定子コイル9を備えるならば、減磁回路19は実際には複数の、好ましくは全ての固定子コイル9に接続されており、これは特に、図1に示された実施形態又は図2に示された実施形態に従って任意に行われ得る。
【0047】
実際には、各消費器22又は各貯蔵器23は、固定子3の外面に、又は固定子3の外部に配置され得る。図2では、固定子ハウジング32は破線で示されている。各消費器22又は各貯蔵器23は、この固定子ハウジング32の外面に配置され得る。各消費器22が少なくとも1つの熱電素子を備えている場合には、各回転子コイル5の減磁の間に消散されるエネルギーは、回転子の外で熱に変換され、その結果、回転子2の過熱が回避され得る。
【0048】
インバータ11及びエネルギー源34、特に電池又は車両電気システム、が存在する場合において、故障の場合にインバータ11を短絡させることは必要ない。むしろ、インバータ11は、オフに、又は開放され得る。各固定子コイル9から反射又は戻って来る電圧は、インバータ11によってエネルギー源34に矩形波電圧として渡される。故障の場合に作動させられた減磁回路19は、電流を各固定子コイル9から離れて消費器22又は貯蔵器23へ向かうように案内する。スイッチング装置20は、例えば上述のように、電圧に応じて制御され、電圧閾値は、各固定子コイル9における電圧が常に所定の限界値より低くなるように、具体的に選択される。好ましくは、この限界値は、エネルギー源34によって提供されるエネルギー源34の電圧より低くあり得る。よって、エネルギー源34の、特に電池又は車両電気システムの効果的な保護が達成され得る。
図1
図2
【国際調査報告】