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  • 特表-変圧器装置及び同期機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】変圧器装置及び同期機
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20241024BHJP
【FI】
H02J50/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526883
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022078936
(87)【国際公開番号】W WO2023078669
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021212549.2
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コズロウスキー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】トパロフ ペンヨ
(72)【発明者】
【氏名】ズィマーシート フィリップ
(57)【要約】
本発明は、電気エネルギーを、直流電圧源(4)から負荷(11)に誘導伝送するために用いられる、変圧器装置(1)の二次側(3)と、変圧器装置(1)の一次側(2)との間でのデータ伝送に関する。二次側(3)から一次側(2)に伝送される予定のデータは、二次側共振周波数を変調させることにより、二次側(3)でエンコードされ、二次共振周波数と相関する一次側パラメータが、一次側(2)で監視及びデコードされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、誘導式の巻線界磁式同期機(30)の、直流電圧源(4)と負荷(11)との間で電気エネルギーを誘導伝送するための変圧器装置(1)であって、
直流電圧源(4)と、インバータ(5)と、一次補償装置(6)と、一次変圧器コイル(7)と、を備える一次側(2)を有し、
二次変圧器コイル(8)と、二次補償装置(9)と、整流器(10)と、負荷(11)と、を備える二次側(3)を有し、
前記インバータ(5)は、入力側(14)が前記直流電圧源(4)に接続され、出力側(15)が、前記一次補償装置(6)を介して前記一次変圧器コイル(7)に接続され、
前記整流器(10)は、入力側(16)が、前記二次補償装置(9)を介して前記二次変圧器コイル(8)に接続され、出力側(17)が前記負荷(11)に接続され、
前記二次補償装置(9)は、二次側共振周波数が変化することができるように、可変的に構成され、
前記二次側(3)は、二次通信装置(18)を備え、前記二次通信装置(18)は、所定のコードに従い二次側のデータをエンコードし、前記二次通信装置(18)は、前記二次側補償装置(9)に結合され、前記二次側共振周波数を変化させるための、前記エンコードされたデータに応じて、前記二次側補償装置(9)を制御し、変化した二次側共振周波数の時間的順序は、前記エンコードされたデータを表し、
前記一次側(2)は、一次通信装置(19)を備え、前記一次通信装置(19)は一次側パラメータを監視し、前記一次側パラメータは、前記二次側共振周波数と相関し、前記エンコードされたデータを認識し、前記コードに従い前記エンコードされたデータをデコードする、
変圧器装置(1)。
【請求項2】
前記一次側(2)は位相測定装置(20)を備え、前記位相測定装置(20)は、前記一次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における、電流と電圧の間の位相ずれ(21)を測定し、
前記一次通信装置(19)は、前記位相測定装置(20)に結合され、前記位相ずれ(21)を、一次側パラメータとして監視し、前記一次側パラメータは前記二次共振周波数と相関する
ことを特徴とする、請求項1に記載の変圧器装置(1)。
【請求項3】
前記一次通信装置(19)は、前記位相ずれ(21)からのデータをデコードすることを特徴とする、請求項2に記載の変圧器装置(1)。
【請求項4】
前記一次側(19)は周波数制御装置(22)を備え、前記周波数制御装置(22)は、前記一次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における周波数を調整することにより、前記一次側の交流電流における、及び/または、前記一次側の交流電圧における、電流と電圧の間の位相ずれ(21)を補正し、
前記一次通信装置(19)は、前記周波数制御装置(22)、及び/又は、前記インバータ(5)に結合され、一次側パラメータとしての、前記一次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における周波数の調整を監視し、前記一次側パラメータは前記二次共振周波数と相関する
ことを特徴とする、請求項1-3のいずれか1項に記載の変圧器装置(1)。
【請求項5】
前記一次通信装置(19)は、前記一次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における周波数の調整の時間的順序からのデータをデコードすることを特徴とする、請求項4に記載の変圧器装置(1)。
【請求項6】
前記一次側の交流電圧における、及び/又は、前記一次側の交流電流における周波数の調整は、前記周波数制御装置(22)の、前記インバータ(5)への制御コマンドにより、又は、前記制御コマンドに基づく、前記インバータ(5)により変化されるパルス変調により、又は、前記一次側の交流電圧における、及び/若しくは、前記一次側の交流電流における周波数により表され、
前記一次通信装置(19)は、前記周波数制御装置(22)の、前記インバータ(5)への制御コマンドの時間的順序の、又は、前記インバータ(5)のパルス変調の時間的順序の、又は、前記一次側の交流電圧における、及び/若しくは、前記一次側の交流電流における周波数の時間的順序のデータをデコードする
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の変圧器装置(1)。
【請求項7】
前記二次補償デバイス(9)は可変キャパシタを備えることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載の変圧器装置(1)。
【請求項8】
前記二次補償デバイス(9)は、平行に接続され、一方がアクティベート可能、及び非アクティベート可能である一方で、他方は常に活性な、2つのキャパシタを備えることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載の変圧器装置(1)。
【請求項9】
前記コードは二進コードであり、
前記二次補償デバイス(9)はしたがって、2つの異なる二次側共振周波数が調整可能となるように構成される
ことを特徴とする、請求項1-8のいずれか1項に記載の変圧器装置(1)。
【請求項10】
前記二次補償デバイス(9)は、前記二次共振周波数が、1%未満の範囲でのみ変化する、及び/又は変化可能となるように構成されることを特徴とする、請求項1-9のいずれか1項に記載の変圧器装置(1)。
【請求項11】
前記二次側(3)は、前記二次側の交流電流における、及び/又は、前記二次側の交流電圧における電流周波数を検出するための、二次側周波数検出装置(28)を備え、
前記一次側の通信装置(19)は、所定のコードに従い一次側データをエンコードし、前記インバータ(5)に結合され、前記一次側の交流電流の、及び/又は、前記一次側の交流電圧の周波数を変化させるための、前記エンコードされたデータに応じて、前記インバータ(5)を制御し、前記一次側の交流電流における変化した周波数の時間的順序は、前記エンコードされたデータを表し、
前記二次側の通信装置(18)は、前記二次側周波数検出装置(28)に結合され、前記二次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における周波数を監視し、前記エンコードされたデータを認識し、前記コードに従い前記エンコードされたデータをデコードする
ことを特徴とする、請求項1-10のいずれか1項に記載の変圧器装置(1)。
【請求項12】
固定子制御装置(32)を備える固定子(31)を有し、
回転子制御装置(34)が配置される回転子(33)を有し、
請求項1-11のいずれか1項に記載の変圧器装置(1)を有する、
誘導式の巻線界磁式同期機(30)であって、
前記変圧器装置(1)の前記一次側(2)は、前記固定子(31)上に配置され、
前記変圧器装置(1)の前記二次側(3)は、前記回転子(33)上に配置され、
前記一次側の通信装置(19)は、前記固定子制御装置(32)に結合され、
前記二次側の通信装置(18)は、前記回転子制御装置(34)に結合される、
誘導式の巻線界磁式同期機(30)。
【請求項13】
前記負荷(11)は、回転子磁界を生み出すための回転子コイル(35)を備えることを特徴とする、請求項12に記載の同期機(30)。
【請求項14】
前記回転子(33)は、回転子磁界を生み出すための回転子コイル(35)を備え、
前記同期機(30)は、電気エネルギーを前記回転子コイル(35)に誘導伝送するための主電源(36)を備え、
前記同期機(30)内の前記変圧器装置(1)は、補助電源(37)を形成し、前記補助電源(37)は、前記電気エネルギーを前記回転子制御装置(34)に誘導伝送し、前記負荷(11)は、前記回転子制御装置(34)を備える
ことを特徴とする、請求項12に記載の同期機(30)。
【請求項15】
電気エネルギーを直流電圧源(4)から負荷(11)に誘導伝送するための変圧器装置(1)の二次側(3)と、前記変圧器装置(1)の一次側(2)との間でのデータ伝送方法であって、
前記二次側(3)から前記一次側(2)に伝送される予定の前記データは、二次側共振周波数の変調により、前記二次側(3)にてエンコードされ、
前記二次共振周波数と相関する一次側パラメータは、前記一次側(2)にて監視及びデコードされる、
データ伝送方法。
【請求項16】
前記一次側(2)から前記二次側(3)に伝送される予定のデータは、前記一次側の交流電流の、及び/又は、前記一次側の交流電圧の周波数の変調により、前記一次側(2)でエンコードされ、
前記二次側(3)で、前記二次側の交流電流の、及び/又は、前記二次側の交流電圧の共振周波数が監視及びデコードされる
ことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記一次側(2)は、直流電圧源(4)と、インバータ(5)と、一次補償装置(6)と、一次変圧器コイル(7)と、を備え、
前記二次側(3)は、二次変圧器コイル(8)と、二次補償装置(9)と、整流器(10)と、負荷(11)と、を備え、
前記インバータ(5)は、入力側(14)が前記直流電圧源(4)に接続され、出力側(15)が、前記一次補償装置(6)を介して前記一次変圧器コイル(7)に接続され、
前記整流器(10)は、入力側(16)が、前記二次補償装置(9)を介して前記二次変圧器コイル(8)に接続され、出力側(17)が前記負荷(11)に接続され、
前記二次補償装置(9)は、二次側共振周波数が変化することができるように、可変的に構成され、
前記二次側(3)は、二次通信装置(18)を備え、前記二次通信装置(18)は、所定のコードに従い前記二次側のデータをエンコードし、前記二次通信装置(18)は、前記二次側補償装置(9)に結合され、前記二次側共振周波数を変化させるための、前記エンコードされたデータに応じて、前記二次側補償装置(9)を制御し、変化した二次側共振周波数の時間的順序は、前記エンコードされたデータを表し、
前記一次側(2)は、一次通信装置(19)を備え、前記一次通信装置(19)は、一次側パラメータを監視し、前記一次側パラメータは、前記二次側共振周波数と相関し、前記エンコードされたデータを認識し、前記コードに従い、前記エンコードされたデータをデコードする
ことを特徴とする、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記一次側(2)は位相測定装置(20)を備え、前記位相測定装置(20)は、前記一次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における、電流と電圧の間の位相ずれ(21)を測定し、
前記一次通信装置(19)は、前記位相測定装置(20)に結合され、前記位相ずれ(21)を、一次側パラメータとして監視し、前記一次側パラメータは前記二次共振周波数と相関する
ことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記一次通信装置(19)は、前記位相ずれ(21)からのデータをデコードすることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記一次側(19)は周波数制御装置(22)を備え、前記周波数制御装置(22)は、前記一次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における周波数を調整することにより、前記一次交流電流における、及び/または、前記一次側の交流電圧における、電流と電圧の間の位相ずれ(21)を補正し、
前記一次通信装置(19)は、前記周波数制御装置(22)、及び/又は、前記インバータ(5)に結合され、一次側パラメータとしての、前記一次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における周波数の調整を監視し、前記一次側パラメータは前記二次共振周波数と相関する
ことを特徴とする、請求項17-19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記一次通信装置(19)は、前記一次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における周波数の調整の時間的順序からのデータをデコードする
ことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記一次側の交流電圧における、及び/又は、前記一次側の交流電流における周波数の調整は、前記周波数制御装置(22)の、前記インバータ(5)への制御コマンドにより、又は、前記制御コマンドに基づく、前記インバータ(5)により変化されるパルス変調により、又は、前記一次側の交流電圧における、及び/若しくは、前記一次側の交流電流における周波数により表され、
前記一次通信装置(19)は、前記周波数制御装置(22)の、前記インバータ(5)への制御コマンドの時間的順序の、又は、前記インバータ(5)のパルス変調の時間的順序の、又は、前記一次側の交流電圧における、及び/若しくは、前記一次側の交流電流における周波数の時間的順序のデータをデコードする
ことを特徴とする、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記二次補償デバイス(9)は可変キャパシタを備えることを特徴とする、請求項17-22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記二次補償デバイス(9)は、平行に接続され、一方がアクティベート可能、及び非アクティベート可能である一方で、他方は常に活性な、2つのキャパシタを備えることを特徴とする、請求項16-22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記コードは二進コードであり、
前記二次補償デバイス(9)は、2つの異なる二次側共振周波数がこのように調整可能となるように構成される
ことを特徴とする、請求項17-24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記二次補償デバイス(9)は、前記二次共振周波数が、1%未満の範囲でのみ変化する、及び/又は変化可能となるように構成されることを特徴とする、請求項17-25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記二次側(3)は、前記二次側の交流電流における、及び/又は、前記二次側の交流電圧における電流周波数を検出するための、二次側周波数検出装置(28)を備え、
前記一次側の通信装置(19)は、所定のコードに従い一次側データをエンコードし、前記インバータ(5)に結合され、前記一次側の交流電流の、及び/又は、前記一次側の交流電圧の周波数を変化させるための、前記エンコードされたデータに応じて、前記インバータ(5)を制御し、前記一次側の交流電流における変化した周波数の時間的順序は、前記エンコードされたデータを表し、
前記二次側の通信装置(18)は、前記二次側周波数検出装置(28)に結合され、前記二次側の交流電流における、及び/又は、前記一次側の交流電圧における周波数を監視し、前記エンコードされたデータを認識し、前記コードに従い前記エンコードされたデータをデコードする
ことを特徴とする、請求項17-26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記変圧器装置(1)は、誘導式の巻線界磁式同期機(30)の一部を形成し、
前記同期機(30)は固定子(31)を備え、前記固定子(31)は固定子制御装置(32)を備え、
前記同期機(30)は回転子(33)を備え、前記回転子(33)の上に回転子制御装置(34)が配置され、
前記変圧器装置(1)の前記一次側(2)は、前記固定子(31)上に配置され、
前記変圧器装置(1)の前記二次側(3)は、前記回転子(33)上に配置され、
前記一次側の通信装置(19)は、前記固定子制御装置(32)に結合され、
前記二次側の通信装置(18)は、前記回転子制御装置(34)に結合される
ことを特徴とする、請求項17-27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記負荷(11)は、回転子磁界を生み出すための回転子コイル(35)を備えることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記回転子(33)は、回転子磁界を生み出すための回転子コイル(35)を備え、
前記同期機(30)は、電気エネルギーを前記回転子コイル(35)に誘導伝送するための主電源(36)を備え、
前記変圧器装置(1)は、前記同期機(30)内で、補助電源(37)を形成し、前記補助電源(37)は、前記電気エネルギーを前記回転子制御装置(34)に誘導伝送するため、前記負荷(11)は、前記回転子制御装置(34)を備える
ことを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧源と電気負荷との間で、電気エネルギーを誘導伝送するための変圧器装置、特に、誘導式の巻線界磁式同期機(elektrisch erregten Synchronmaschine)に関する。さらに、本発明は、このような変圧器装置を備える誘導式の巻線界磁式同期機に関する。加えて、本発明は、電気エネルギーを直流電圧源から負荷(Verbraucher)に誘導伝送する変圧器装置の二次側と、当該変圧器装置の一次側との間での、データ伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同期機は、動作中に、回転子が、固定子の回転磁界と同期して回転する、回転電機である。一般に、同期機は、モータ又は発電機として動作することができる。巻線界磁式同期機又は他励同期機の場合、磁界が、回転子上で更に、電気的に生み出される。この目的のために、少なくとも1つの回転子コイルが用いられ、回転子側の磁界を生成するために、回転子コイルに、特に、直流の形態で電気エネルギーが供給される必要がある。誘導式の巻線界磁式同期機の場合、各回転子コイルへの電気エネルギー供給は、ブラシを必要とすることなく、即ち、誘導によって生じる。誘導式の巻線界磁式同期機は、ブラシを必要としない、他励電気同期機に対応する。
【0003】
このような同期機は、例えば、EP 2 869 316 A1で知られており、回転子磁界を生み出すための回転子コイルと、回転子コイルに電気エネルギーを供給するための二次変圧器コイルと、を備える、回転子を含む。加えて、同期機は、回転子が、回転軸を中心に回転可能に固定され、固定子磁界を生み出すための固定子コイルと、電気エネルギーを二次変圧器コイルに誘導伝送するための一次変圧器コイルと、を備える、固定子を備える。一次及び二次変圧器コイルは、回転変圧器を形成し、これらは、電気エネルギーを誘導伝送するための変圧器装置の一部である。
【発明の概要】
【0004】
このような、誘導式の巻線界磁式同期機において、例えば、制御コマンドなどのデータを、例えば、回転子コイルの励磁を制御又は調節するために、固定子から回転子に伝送することが必要とされている。この目的のために、上述のEP 2 869 316 A1で既知の同期機に通信路が設けられ、これによって、固定子から回転子への、所望のデータ伝送が可能となる。ここで、更なる追加の回転変圧器を用い、固定子側にある、回転変圧器の一次コイルが変調器又はドライバに結合され、回転子側にある、回転変圧器の二次コイルが復調器に結合される。したがって、固定子から回転子への、誘導式の信号伝送又はデータ伝送が可能となる。このような追加の回転変圧器を設けることには、比較的多額の出費が伴う。これとは別に、誘導式の巻線界磁式同期機の付近での、このような追加の回転変圧器による信号伝送は、比較的多くの干渉に曝される。同様のことが、例えば、放射状の相互接続といった、他の方法の無線通信にも当てはまる。このことは、より多くの出力を伴う同期機には、より一層当てはまる。
【0005】
これに加え、逆データ伝送のための、即ち、回転子から固定子へのデータ伝送のための、現代の誘導式の巻線界磁式同期機が、依然として必要とされている。例えば、同期機を制御可能にするために、回転子コイルを実際に流れる電流の重要性が、固定子側の制御装置において増している。上述した例に示すように、従来の通信路は高価であり、干渉の影響を受けやすい。
【0006】
一次側と二次側との間での通信は、例えば、誘導式の巻線界磁式同期機に存在するような、回転型変圧器又は回転変圧器において関心が高まっているだけでなく、直流電圧源と電気負荷との間で電気エネルギーを伝送するための、任意の変圧器装置における基本的なものである。このような変圧器装置としては、回転型変圧器、加えて静止変圧器を挙げることができる。例えば、誘導式の充電装置を、このような変圧器装置に備えることができる。
【0007】
本発明は、直流電圧源と負荷との間で電気エネルギーを誘導伝送するための変圧器装置、特に、このような誘導式の充電装置を備える、誘導式の巻線界磁式同期機に関する道筋を示す課題を取り扱い、これにより、少なくとも、二次側から一次側へのデータ伝送が可能となり、比較的低い出費で実現可能であり、特に、干渉からの影響されやすさの低下を特徴とし、加えて、一次側と二次側との間でのエネルギー伝送障害を回避することができる。
【0008】
本発明によると、この問題は、独立請求項の主題により解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
本発明は、二次側のデータを周波数変調により伝送する、という一般的な着想に基づき、この目的のために、二次側の共振周波数が変調される。変圧器装置内で、一次側と二次側とが、電磁結合した振動系を形成するため、二次共振周波数の変化が、振動系全体、及び故に、一次側にもまた、影響を及ぼす。したがって、二次側の共振周波数と相関する、少なくとも1つの一次側パラメータが存在する。本発明によると、この一次パラメータがここで、一次側にて監視され、これによって、二次共振周波数と相関する一次パラメータから、一次側での二次共振周波数に変調されたデータを復調させることができる。
【0010】
詳細には、本発明は、一次側と、二次側と、を含む変圧器装置を提示する。一次側は、直流電圧源と、インバータと、一次補償装置と、一次変圧器コイルと、を備える。二次側は、二次変圧器コイルと、二次補償装置と、整流器と、電気負荷と、を備える。本文脈では、不定冠詞の「a、an」は、総称的に、即ち、「少なくとも1つの」として理解されるべきである。したがって、複数の直流電圧源が、例えば、一次側に存在することができる。これと同様に、複数の負荷が、例えば、二次側に存在することもまた可能である。これとは異なる、「一次」及び「一次側」という用語は、「二次」及び「二次側」という用語と同様に、同一のものと理解されるべきである。
【0011】
整流器に接続された電気負荷は、直流電流又は直流電圧により動作可能となるように、実際には備えられる。
【0012】
インバータは、入力側が直流電圧源に接続され、出力側が、一次補償装置を介して、一次変圧器コイルに接続される。一次補償装置は、通常の方法で一次変圧器コイルに整合されるため、一次側の交流電流における無効成分が補償される。さらに、一次補償装置及び一次変圧器コイルは、一次共振周波数を有する、一次共振回路を形成する。インバータは、一次共振周波数による最適なエネルギー伝送のためにパルス変調され、そのため、インバータにより生成される交流電圧は、この一次共振周波数を有する。
【0013】
さらに、整流器は、入力側が、二次補償装置を介して二次変圧器コイルに接続され、出力側が、負荷に接続される。ここで、また、二次補償装置及び二次変圧器コイルが互いに整合されることで、二次側の交流電流における無効成分が補償される。同様に、二次補償装置及び二次変圧器コイルは、二次共振回路を形成し、これは、二次共振周波数を有する。最適なエネルギー伝送のために、一次共振周波数に等しい二次共振周波数が、通常選択される。一次及び二次共振周波数は、変圧器装置により形成された振動系の、自然の共振周波数を画定する。
【0014】
本発明によると、二次側の共振周波数に対する補償を変化させることができるように、二次補償装置を可変的に構成することが、ここで提示される。上で説明したとおり、振動系は、二次側共振周波数を変化させることにより離調させることができ、これは、一次側に影響を有し、少なくとも1つの一次側パラメータにより一次側で検出することができ、それに対応して、二次側共振周波数と相関する。
【0015】
二次側と一次側の、望ましい通信のために、二次側は二次通信装置を備えることができ、二次通信装置は、所定のコードに従い二次側データをエンコードし、二次補償装置に結合され、二次共振周波数を変化させるために、エンコードされたデータに応じて、二次補償装置を制御する。制御は、変化した二次共振周波数の時間的順序が、エンコードされたデータを示すように生じる。したがって、周波数変調としてのデータが、二次共振周波数上、若しくは内に変調され、又は、二次共振周波数にエンコードされる。ここで、一次側には、測定可能な一次側パラメータを監視する一次通信装置が備えられ、一次側パラメータは二次側共振周波数と相関し、プロセス内で、エンコードされたデータを認識し、コードに従いこれらをデコードする。二次側共振周波数と一次側パラメータの相関により、二次共振周波数の周波数変調が、二次側から一次側に、変圧器コイルを介して伝送され、二次側において、二次共振周波数は、一次側パラメータにおける周波数変調として検出可能であり、この後、通常の方法で復調又はデコードされることができる。
【0016】
本発明による変圧器装置をここで導入することで、二次側が、エネルギー伝送経路を介して、即ち、一次及び二次変圧器コイルからの振動系により、一次側と通信するため、例えば、追加の変圧器の形態の、追加の伝送経路は必要とされない。一次パラメータを顕著に変化させるためには、二次共振周波数の、比較的微量の変化ですら十分であることが示されてきており、これにより、安全なシグナル伝送が可能となる。さらに、振動系の、このような微量の離調は、一次側と二次側との間での、エネルギー伝送の実質的な障害を、何らもたらさないことが示されている。さらに、特に、変圧器装置の振動系の電磁振動の中では、この周波数変調は、変圧器装置が曝される、他の通常の干渉影響をほぼ受けない。
【0017】
有利な実施形態では、一次側は、一次側における、例えば、インバータにおける、交流電流と交流電圧の位相ずれを測定する、位相測定装置を備えることができ、一次通信装置は位相測定装置に接続され、一次側パラメータとして位相ずれを監視し、一次側パラメータは二次側共振周波数と相関する。本実施形態は、一次側における二次側共振周波数の変化が、電圧と電流の間の位相ずれをもたらすという認識に基づく。測定可能な位相ずれは一般に、インバータの制御周波数と、系における自然の共振周波数との偏差に相関し、これにより、一次側の共振周波数及び二次側の共振周波数により入手される。それによって、最終的に、この位相ずれは二次共振周波数と相関するため、二次共振周波数の周波数変調は、二次共振周波数と相関する一次側の位相ずれの、周波数変調をもたらす。したがって、二次共振周波数によって振動系に変調されたデータは、一次側における位相ずれから復調することができる。好ましい実施形態によると、一次通信装置は特に、位相ずれの時間的順序を監視し、コードに従い、位相ずれにてエンコードされたデータを認識し、デコードする。
【0018】
別の一実施形態では、一次側は、一次側の交流電圧における、又は、一次側の交流電流における周波数を調整することにより、一次側の電流と電圧の間の位相ずれを補正する、周波数制御装置を備えることができる。一次側の交流電圧における、又は、一次側の交流電流における周波数は、インバータにより予め決定される。周波数制御装置をインバータに結合することで、インバータは、測定された位相ずれを補正するように周波数を調整するために制御可能となり、結果として、電流及び電圧が再び、一次側で同期して発振する。例えば、振動系を、例えば温度などの動作条件の変更、及び、電子構成部品の経年徴候に適合させるために、このような周波数制御装置を設けることができる。
【0019】
一次通信装置は、ここで、周波数制御装置及び/又はインバータに結合させることができ、かつ、二次共振周波数と相関する、一次側パラメータとしての、一次側の交流電圧における、又は、一次側交流電流における、周波数の調整を監視することができる。上で説明したとおり、二次共振周波数の変化がもたらされて、一次側において、電流と電圧の間の位相ずれが実現する。したがって、位相ずれは二次共振周波数と相関する。このような位相ずれは、周波数制御装置により補正される。一次側の交流電圧における、又は、一次側の交流電流における周波数の、このような調整は、したがって、位相ずれと、及び、したがって、二次共振周波数と相関する。有利な実施形態によると、一次通信装置は特に、言及した周波数調整の時間的順序を監視し、コードに従い、周波数調整にてエンコードされたデータを認識し、デコードする。
【0020】
一次側の交流電圧における、又は、一次側の交流電流における周波数の調整は、周波数制御装置の、インバータへの制御コマンドにより、又は、制御コマンドに基づく、インバータにより変化されるパルス変調により、及びまた、一次側の交流電圧における、又は、一次側の交流電流における、最終的に測定可能な周波数により、表すことができる。周波数調整、関連する制御信号、及びパルス変調、又は制御周波数は、二次共振周波数と相関する、一次側の測定可能なパラメータを表す。したがって、一次通信装置は、制御信号を監視するために、周波数制御装置に、又は、パルス変調を監視するために、インバータに、又は、代替的に、一次側の交流電圧における周波数を測定するために、若しくは、一次側の交流電流における上記周波数を監視するために、周波数測定装置に、結合されることができる。有利な実施形態によると、一次通信装置はしたがって、言及した制御信号、又は言及したパルス変調、又は言及した周波数の、時間的順序を監視し、コードに従い、制御信号で、又はパルス変調で、又は周波数でエンコードされたデータを認識し、デコードする。
【0021】
二次変圧器コイルはインピーダンスを有する。二次変圧器コイルに整合された二次補償装置は、二次変圧器コイルに適合するキャパシタンスを有する。したがって、二次変圧器コイル及び二次補償装置は、ここでは二次共振周波数と呼ばれる共振周波数を有する、共振回路を形成する。好ましい実施形態によると、ここで、二次補償装置が、少なくとも2つの異なるキャパシタンスを電子的に調整可能な可変キャパシタを備えることを提供することができる。この代わりに、二次補償装置は、平行に接続され、1つが電子的にアクティベート可能、及び非アクティベート可能である一方で、他方は恒久的に活性な、少なくとも2つの不変キャパシタを備えることができる。例えば、二次補償装置は、例えばトランジスタなどの、電子スイッチを備えることができ、電子スイッチは、二次通信装置に結合され、これにより、二次通信装置が、このように二次共振周波数を変化させるために、上記スイッチを介して切り替え可能なキャパシタをアクティベート及び非アクティベートする。二次補償装置のキャパシタンスを変化させることで、補償装置及び変圧器コイルの、共振回路の共振周波数が変化する。
【0022】
有利な実施形態によると、コードは二進コードである。次いで、二次補償装置は、2つの異なる二次側共振周波数が調整可能となるように、構成される。二進コードは、「0」及び「1」で形成される。一の共振周波数は、二進コードの「0」を画定する一方で、他の共振周波数は、二進コードの「1」を形成する。二元変調によって、所望のデータを安全に伝送することができる。
【0023】
別の有利な実施形態は、二次補償装置が、1%未満の範囲でのみ二次共振周波数を変化させることが可能となるように構成されることを提案する。同様に、二次共振周波数が、1%未満の範囲でのみ変化可能であることも想到される。したがって、確実に、信号伝送がエネルギー伝送に全く、又は実質的に影響を及ぼさないほどに、振動系の離調が小さくなる。
【0024】
二次側データは、例えば、二次側の電流に関する、及び/又は、二次側の電圧に関する、及び/又は、少なくとも1つの二次側の構成部品の温度に関する値を含有する、又は提示することができる。
【0025】
別の有利な実施形態では、二次側は、二次側の交流電圧における、又は、二次側の交流電流における電流周波数を捕捉するための、二次側周波数捕捉装置を備えることができる。以下において、図解を簡便にするために、電流周波数のみを考慮するが、電圧周波数にも同様のことが当てはまることは明らかである。ここで、一次側の通信装置は、所定のコードに従い一次側のデータをエンコードするように、構成することができる。さらに、一次側の通信装置は、インバータに結合されることができ、パルス変調又はインバータの制御周波数、及び故に、一次側の交流電圧の周波数を変化させるための、エンコードされたデータに応じて、インバータを制御することができ、そのため、一次側の交流電圧における、変化した周波数の時間的順序は、エンコードされたデータを表す。二次側の通信装置はここで、二次側の周波数検出装置に結合されることができ、二次側の交流電圧における周波数を監視することができ、したがって、エンコードされたデータを認識し、コードに従いこれらをデコードすることができる。二次側の交流電圧における周波数は常に、一次側の交流電圧における周波数に対応する。インバータを適切に制御することで、パルス変調、及び故に、一次側の交流電圧の周波数が変化する場合、対応する周波数の変化は、したがって、二次側の交流電圧において、ほぼ同時に生じる。通常、インバータのパルス変調は、振動系の共振周波数に対応して生じ、これは、二次側の通信装置に対して周知であるため、二次側の通信装置は、この共振周波数からの偏位を認識し、評価することができる。
【0026】
本実施形態により、反対方向への、即ち、一次側から二次側への通信経路が実現する。したがって、制御コマンドなどを、例えば伝送することが可能である。ここで、エネルギー伝送のために設けられる変圧器装置の振動系もまた、データ伝送のために利用される。このような通信を実現するための装置の出費は、これに対応して少ない。
【0027】
本発明による誘導式の巻線界磁式同期機は、固定子と、回転子と、上述した種類の変圧器装置と、を備える。固定子は、固定子制御装置を備える。回転子は、固定子の回転軸を中心に、回転可能に固定され、回転子上に配置された回転子制御装置を備える。変圧器装置の一次側は固定子上に配置され、一方で、変圧器装置の二次側は回転子上に配置される。さらに、一次側の通信装置は、固定子制御装置に電気的に接続され、一方で、二次側の通信装置は、回転子制御装置に電気的に接続される。変圧器装置によって、回転子制御装置と固定子制御装置の通信が可能となる。したがって、回転子制御装置は、例えば、回転子の活性電流、又は他の関連するデータを、変圧器装置を介して固定子制御装置に伝送することができ、次いで、これらを、特に、同期機を制御及び調節するために、利用することができる。同期機は、自動車用の駆動モータ又はトラクションモータとして構成されるのが好ましく、特に、100kW~240kW、好ましくは、120kW~160kW、特に好ましくは、およそ140kWの電力を消費することができる。
【0028】
有利な実施形態によると、変圧器装置の負荷は、回転子磁界を生み出すための回転子コイルを備えることができる。この場合、変圧器装置は、回転子コイルに電気エネルギーを供給するための役割を果たし、同時に、回転子制御装置にもまた、電気エネルギーを供給することができる。
【0029】
代替の実施形態では、回転子は回転子コイルを備え、同期機は、電気エネルギーを回転子コイルに誘導伝送するための主電源を備える。この場合、上述した種類の変圧器装置は、同期機内で補助電源を形成し、これは、電気エネルギーを回転子制御装置に誘導伝送する。この場合、負荷は、回転子制御装置を備えるか、又は、回転子制御装置により形成される。同期機の本実施形態では、回転子制御装置に電気エネルギーを供給する、補助エネルギー伝送経路は、データ伝送のために利用される。回転子コイルに電気エネルギーを供給する、主要エネルギー伝送経路は、補助エネルギー伝送経路の影響を受けないままである。一方での、回転子コイルにおける電圧レベルと、他方での、回転子制御装置における電圧レベルの主たる差によって、回転子制御装置に、別個の補助電源を設けるのが実践的、かつ一層費用対効果が高い可能性があり、補助電源は、上述した種類の変圧器装置により形成され、同時に、信頼のおける、又は確実なデータ伝送のために、利用することができる。
【0030】
直流電圧源から負荷への、電気エネルギーの誘導伝送の役割を果たす、変圧器装置の二次側と、変圧器装置の一次側との間での、本発明によるデータ伝送方法は、二次側から一次側に伝送される予定のデータが、二次側共振周波数の変調により、二次側にてエンコードされること、及び、二次側共振周波数と相関する一次側パラメータが、一次側にて監視され、デコードされることを特徴とする。二次側共振周波数の変調により、振動系の離調がもたらされ、一次側において、電流と電圧の間の位相ずれがもたらされる。故に、この位相ずれは、二次側共振周波数と同じ変調を有し、したがって、データの復調に利用することができる。一次側の交流電圧におけるパルス変調又は周波数を調整することで、電圧と電流の間の位相ずれを補正する周波数制御装置が、一次側に存在する場合、一次側の交流電圧における、インバータのパルス変調の変化、及び、周波数の変化自体と同様に、周波数制御装置の、この制御活動を、エンコードされた信号を認識するためにもまた、利用することができる。
【0031】
有利な更なる開発によると、一次側から二次側に伝送される予定のデータが、一次側の交流電圧の、又は、一次側の交流電流の周波数の変調により、一次側でエンコードされ、二次側において、二次側の交流電圧の、又は、二次側の交流電流の周波数が監視及びデコードされる方法を、更に提供することができる。以下ではまた、説明を簡便にするために、電流周波数のみを論じるが、電圧周波数にも同様のことが当てはまることは明らかである。ここでもまた、通信は反対方向、即ち、一次側から二次側に行われる。この場合、二次側での交流電圧が、一次側での交流電圧と同じ周波数で発振するという認識が用いられる。例えば、インバータのパルス変調の対応する変調によりもたらされることができる、一次交流電圧の周波数の変調は、二次側の交流電圧における周波数の、対応する変調をもたらし、この変調は、データをデコードするために、適した方法で検出及び評価することができる。
【0032】
変圧器装置に関する、及び、同期機に関する、上で導入した様々な実施形態もまた、本明細書で導入した方法により、対応して実現することが可能であり、関連する装置の特徴は、これらに対応する方法の特徴により実現される。
【0033】
本発明の更なる重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び関連付けられた図の説明から、図面を介して得られる。
【0034】
上述した特徴、及び、以下で更に説明される予定の特徴は、記載した対応する組合せにおいて用いることができるだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組合せでもまた、又は、これら自身でもまた、用いることができることと理解されるべきである。高次のユニット、例えば、別個に設計された設備、装置、又は構成の、上で名付けた、及び、以下で名付けられる予定の部品は、図面では異なって示されていたとしても、本ユニットの別個の構成部品を構成することができるか、又は、本ユニットの一体領域若しくは部品であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の好ましい例示的な実施形態を図面に示し、以下の説明で、より詳細に説明する。同じ参照番号は、同一の、又は同様の、又は、機能的に同一の構成部品に関する。
図1図1は、回路図として、変圧器装置の非常に簡略化した概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1によると、変圧器装置1は、一次側2と、二次側3と、を含む。一次側2は、直流電圧源4と、インバータ5と、一次補償装置6と、一次変圧器コイル7と、を備える。二次側3は、二次変圧器コイル8と、二次補償装置9と、整流器10と、負荷11と、を備える。一次変圧器コイル7及び二次変圧器コイル8は、変圧器12を形成する。変圧器12は、静止変圧器12であることができる。好ましくは、変圧器12は、回転型変圧器12又は回転変圧器12であり、この中で、二次変圧器コイル8が回転する間に、一次変圧器コイル7は静止している。実際には、一次変圧器コイル7及び二次変圧器コイル8は、互いに電気的に分離されている。適した直流的な分離が、図1において、破線により示され、13で表されている。
【0037】
一次側2と二次側3との間での、及び、特に、直流電圧源4と負荷11との間での、電気エネルギーの誘導伝送に対して、変圧器装置1は役割を果たす。この目的のために、インバータ5の入力側14が、一次側2にて直流電圧源4に接続され、出力側15が、一次補償装置6を介して一次変圧器コイル7に接続される。二次側3では、整流器10の入力側16が、二次補償装置9を介して二次変圧器コイル8に接続され、出力側17が負荷11に接続される。
【0038】
一次側2と二次側3の、特に、二次側3から一次側2へのデータ通信のために、二次補償装置9は可変式となるように構成される。したがって、二次共振周波数は、二次補償装置9を介して変化することができる。この目的のために、二次共振回路の共振周波数に対応する影響を有する二次補償装置9のキャパシタンスを変更することができ、これは、二次変圧器コイル8及び二次補償装置9により形成される。二次側3には更に、二次通信装置18が備えられ、二次通信装置18は、少なくとも1つの送信機又はトランスミッタを、及び好ましくは受信器もまた備えることができ、これによって、特に、トランシーバを形成する、又は含む。二次通信装置18は、所定のコードに従って二次側のデータをエンコードするように構成される。例えば、二次通信装置18は、例えば、二次側3の活性電流を知り、活性電流を一次側2に伝送しようとする、二次側の制御装置の一部である。二次通信装置18は、二次通信装置18が、二次共振周波数を変化させるために、二次補償装置9を制御することができるように、二次補償装置9に結合される。したがって、二次通信装置18は、エンコードされたデータに応じて、二次共振周波数を変化させるために二次通信装置9を制御することができるため、変化した二次共振周波数の時間的順序が、エンコードされたデータを示す。このようにして、伝送される予定のデータが、二次側3にて、周波数変調として振動系に供給される。
【0039】
一次側2は一次通信装置19を備え、一次通信装置19は、二次側共振周波数と相関する一次側パラメータを監視する。このようにして、一次通信装置19は、コードに従い、振動系に結合された、エンコードされたデータを認識し、デコードすることができる。例えば、一次通信装置19は、一次側の制御装置に結合されることができ、これは次いで、デコードされたデータを受信し、当該データを、変圧器装置1を含むシステム全体を制御するために利用することができる。このようなシステム全体は、例えば、同期機であることができ、これを、以下で更に詳細に説明する。
【0040】
ここで示す例において、一次側2は更に、位相測定装置20を備え、これはインバータ5の出力側15において電流伝導線に結合される。位相測定装置20は、一次側の電流と電圧の間の、即ち、一次側の交流電流における、又は、一次側の交流電圧における、位相ずれ21を測定するように構成される。任意選択的に、一次側2には更に、周波数制御装置22を備えることができ、周波数制御装置22は、位相測定装置20、及びインバータ5に結合され、位相ずれ21を補正する役割を果たす。この目的のために、周波数制御装置22は、位相ずれ21の低減、及び好ましくは除去のために、一次側の交流電流における、又は、一次側の交流電圧における、周波数を変化させるために、そのパルス変調に適切に適応する。
【0041】
一次側の通信装置19はここで、信号線23によって位相測定装置20に結合されることができるため、一次通信装置19は、二次側共振周波数と相関する一次側パラメータとして位相ずれ21を監視する。この代わりに、一次通信装置19は、信号線24によって周波数制御装置22に結合されることができるため、一次通信装置19は、一次側パラメータとして、一次側の交流電圧における、又は、一次側の交流電流における周波数の調整を監視し、一次側パラメータは、二次側共振周波数と相関する。この代わりに、一次通信装置19は、信号線25によってインバータ5に結合されることができ、ここで、二次側共振周波数に対応する一次側信号として、一次側の交流電流における、又は、一次側の交流電圧における、パルス変調又は周波数の調整を監視する。同様に、一次側2に、一次側周波数測定装置(図示せず)を備え、一次側周波数が、二次共振周波数と相関する一次側パラメータとして直接監視可能とすることができることも想到可能である。電流プロファイル及び電圧プロファイルを測定するために、位相測定装置20は、対応する電流タップ26に、及び、対応する電圧タップ27に結合される。
【0042】
ここで示す例において、二次側3は、二次側周波数検出装置28を備えることができ、二次側周波数検出装置28は、例えば、電圧タップ29に結合される。二次周波数検出装置28によって、二次側の交流電圧における、又は、二次側の交流電流における電流周波数を測定することができる。二次側周波数検出装置28は更に、二次側の通信装置18に結合される。
【0043】
一次側の通信装置19はここで、所定のコードに従って、一次側データ、特に、制御コマンドをエンコードするように構成されることができる。インバータ25に適切に結合させることにより、一次側の通信装置19はここで、インバータ5のパルス変調を変化させるための、及び故に、一次側の交流電流の、又は、一次側の交流電圧の周波数を変化させるための、エンコードされたデータに応じて、インバータ25を制御することができる。結果的に、一次側の交流電流における、又は、一次側の交流電圧における、変化した周波数の時間的順序は、エンコードされたデータを表す。換言すれば、一次側のデータは、交流電流の、又は、交流電圧の、一次側周波数に変調される。変圧器12により、二次側の交流電流における、及び、二次側の交流電圧における周波数は、一次側の交流電流における、又は、一次側の交流電圧における周波数に、等しく一致する。これは、周波数変調によって、一次側の交流電流に、又は、一次側の交流電圧に変調されたデータが、二次側の交流電流に、又は、二次側の交流電圧にもまた、変調されることを意味する。二次側の通信装置18は、二次側周波数検出装置28に結合されることによって、二次側の交流電流における、又は、二次側の交流電圧における周波数を監視することができ、したがって、周波数変調もまた識別することができ、故に、エンコードされたデータを検出し、コードに従ってこれらをデコードすることができる。
【0044】
好ましい実施形態によると、ここで導入される変圧器装置1は、ここでは不完全にしか示さない、誘導式の巻線界磁式同期機30の一部であることができ、誘導式の巻線界磁式同期機30は、固定子制御装置32を含む固定子31と、回転子制御装置34を含む回転子33と、を備える。回転子制御装置34は、回転子33上に配置されることで、回転子33と共に回転する。変圧器装置1の一次側2は固定子31上に配置され、一方で、変圧器装置1の二次側3は回転子33上に配置される。一次側の通信装置19は固定子制御装置32に結合され、二次側の通信装置18は回転子制御装置34に結合される。回転子33は、回転子磁界を生み出すための回転子コイル35を備える。簡便な実施形態では、変圧器装置1は、この回転子コイル35に電気エネルギーを供給する役割を果たすことができる。この場合、負荷11は、回転子コイル35を備える。
【0045】
他の好ましい実施形態では、同期機30は、主電源36を備え、主電源36は、回転子コイル35に電気エネルギーを供給する。この場合、変圧器装置1は次いで、同期機30内で、補助エネルギー供給装置37を形成し、補助エネルギー供給装置37は、回転子制御装置34に電気エネルギーを供給する役割を果たす。この場合、負荷11は、回転子制御装置34を備える。ここでは別個に示される、変圧器装置1の、又は、同期機30の、個別の構成部品が、構造上互いに一体化されることができることは明らかである。
【0046】
ここで導入される変圧器装置1は、変圧器12を介する、一次側2と、二次側3との間でのデータ伝送を可能にし、変圧器12は、直流電圧源4から負荷11にエネルギー伝送を行う役割を果たす。この目的のために、二次側3から一次側2に伝送される予定のデータが、二次側共振周波数の変調により、二次側3にてエンコードされる。二次側3は、変圧器12を介して一次側2と結合されるため、電流と電圧の間の位相ずれ21が、一次側の交流電流の一次側2において得られる。この位相ずれ21、又は、位相ずれ21と相関するパラメータ、例えば、インバータ5のパルス変調の、若しくは、一次側の交流電流の周波数の、若しくは、一次側の交流電圧の、一次側での調整などは、二次側共振周波数と相関する一次側信号を形成し、一次側信号は、一次側2において、容易に監視し、デコードすることができる。
【0047】
データが、一次側2から二次側3に伝送される予定の、逆の場合においては、これらのデータは、一次側の交流電流の、又は、一次側の交流電圧の周波数の変調により、一次側2でエンコードされることができる。一次側2及び二次側3における、交流電流又は交流電圧の周波数は同じであるため、一次側2の、交流電流における、又は、交流電圧における周波数変調によって、二次側3の、交流電流において、又は、交流電圧において、一次側と同じ周波数変調が生み出される。したがって、この周波数変調は、二次側の交流電流の、又は、二次側3の交流電圧の周波数を監視することにより、二次側でデコードされることができる。
図1
【国際調査報告】