(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】がん胎児性抗原に対するモノクローナル抗体、及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241024BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241024BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20241024BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20241024BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241024BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20241024BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241024BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20241024BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
C12Q1/6886 Z
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K47/68
A61K31/711
A61K48/00
A61K35/76
G01N33/574 E
G01N33/531 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526885
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022079296
(87)【国際公開番号】W WO2023081818
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524166835
【氏名又は名称】アメリカン ダイアグノスティックス アンド セラピー, エルエルシー (エーディーエックスアールエックス)
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルパー, ウズゲ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
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4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
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4H045DA76
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4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、CEAの検出、CEA発現に関連する障害の治療、異常なCEA発現を特徴とするがんの診断、及びがん薬物療法の有効性の予測に使用するための抗がん胎児性抗原(CEA)抗体を提供する。抗CEA抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、抗体コンジュゲート、記載される抗体を含む組成物、及びそれらの使用方法が提供される。
【選択図】
図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1と、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2と、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3と、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1と、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2と、(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む、単離抗体又は抗体断片。
【請求項2】
単離抗体であって、前記抗体が、重鎖可変領域(V
H)及び軽鎖可変領域(V
L)を含み、前記V
Hが、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であり、かつ配列番号3を含むHCDR3を含み、前記V
Lが、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であり、かつ配列番号6を含むLCDR3を含む、単離抗体。
【請求項3】
前記抗体が、重鎖可変領域(V
H)及び軽鎖可変領域(V
L)を含み、前記V
Hが、配列番号7及び配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記V
Lが、配列番号8及び配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の単離抗体。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項5】
前記抗体が、完全ヒト抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項6】
前記抗体が、抗体断片である、先行請求項のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項7】
前記断片が、Fab、Fab’、Fv、scFv、又は(Fab’)
2である、請求項6に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項8】
前記抗体が、全長抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項9】
前記抗体のFc領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG4.1、又はIgG4.2を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
【請求項11】
固相上に固定された、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項12】
検出可能に標識された、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項13】
細胞傷害性放射性核種にコンジュゲートされた、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項14】
細胞傷害性薬物にコンジュゲートされた、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項15】
細胞傷害性タンパク質にコンジュゲートされた、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体断片。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片をコードする、単離DNA配列。
【請求項17】
配列番号11又はその断片を含む、請求項16に記載のDNA。
【請求項18】
配列番号12又はその断片を含む、請求項16に記載のDNA。
【請求項19】
配列番号11又はその断片と、配列番号12又はその断片と、を含む、請求項16に記載のDNA。
【請求項20】
請求項16~19のいずれか一項に記載のDNA配列を含む、ベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項22】
抗体の産生のためのプロセスであって、請求項21に記載の宿主細胞を培養することと、抗体分子を単離することと、を含む、プロセス。
【請求項23】
配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であり、かつ配列番号3を含むV
Hと、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であり、かつ配列番号6を含むV
Lと、を含む、単離抗体。
【請求項24】
がんを治療する方法であって、治療有効量の請求項1~9若しくは13~15のいずれか一項に記載の抗CEA抗体、請求項10に記載の組成物、又は請求項16~20のいずれか一項に記載のDNA若しくはベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項25】
CEA抗原を検出するためのイムノアッセイであって、(a)試料を、有効結合量の請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片と接触させることと、(b)前記CEA抗原への前記抗体の結合を検出することによって、前記抗原を検出することと、を含む、イムノアッセイ。
【請求項26】
前記アッセイが、CEA抗原を発現するがん細胞を検出するために使用される、請求項25に記載のイムノアッセイ。
【請求項27】
前記アッセイが、固形腫瘍を検出するために使用される、請求項25に記載のイムノアッセイ。
【請求項28】
前記がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、請求項26又は27に記載のイムノアッセイ。
【請求項29】
対象におけるがんを検出する方法であって、がんを有する対象又はがんを有する疑いのある対象から単離された試料に、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体を接触させることを含む、方法。
【請求項30】
前記がんが、固形腫瘍である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記固形腫瘍が、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
CEA抗原を発現する細胞を含む固形腫瘍がんの免疫組織化学的検出のためのキットであって、(a)請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体と、(b)検出可能な標識にコンジュゲートされた二次抗体であって、CEA抗原に結合したときに、前記(a)の抗体に結合し、かつそれを検出することができる、二次抗体と、を含む、キット。
【請求項33】
対象における固形腫瘍がんの状態を判定するための方法であって、(a)固形腫瘍がんを有する対象から試料を取り出すことと、(b)前記試料を、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片と接触させ、それによって、CEA抗原と前記抗体又は抗体断片との複合体を形成することと、(c)標本を、抗原-抗体複合体に特異的な標識で標識することと、(d)前記標識を検出することによって、前記抗原-抗体複合体の存在を検出することと、を含む、方法。
【請求項34】
前記固形腫瘍がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記固形腫瘍がんが、膵臓がんである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、がんと診断されており、かつ療法を受けているか、又は受けようとしている、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記試料が、療法開始前に、前記対象から単離される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記試料が、療法開始後に前記対象から単離される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
後の時点で工程(a)~(d)を繰り返すことを更に含む、請求項33~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記後の時点が、前記対象が療法を開始した後である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記後の時点が、前記対象が新しい又は第2の(共)療法を開始した後である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記療法が、化学療法又は放射線である、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記化学療法が、エルロチニブ、フルオロウラシル、又はオキサリプラチンである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記療法が、ホイップル処置、遠位膵摘出術、及び全膵摘出術を含む手術、放射線療法、陽子線療法、定位放射線(SBRT)若しくはサイバーナイフ、免疫療法、標的療法、又は化学療法である、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項45】
CEAレベルが判定され、前記後の時点でより高いCEAレベルが、前記療法が完全に有効ではないことを示し、前記後の時点で同じ又はより低いCEA抗原レベルが、前記療法が少なくとも部分的に有効であることを示す、請求項33~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、寛解状態にある、請求項33~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が寛解状態となった後の時点で工程(a)~(d)を繰り返すことを更に含み、前記CEAレベルが判定され、前記後の時点でより高いCEAレベルが、前記がんがもはや寛解状態ではないことを示し、前記後の時点で同じ又はより低いCEAレベルが、前記療法が少なくとも部分的寛解状態であり続けていることを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記試料が、全血、血清、若しくは血漿を含む血液、組織、又は細胞である、請求項33~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記方法が、コンピュータ断層撮影の代替物である、請求項33~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
CEAの遺伝子産物及びその相同体の発現を特徴とするがんを検出するための方法であって、(a)対象から生体試料を単離することによって、がんを有するヒト患者においてCEAによって発現される遺伝子産物及びその相同体を同定する工程であって、前記試料が、CEA遺伝子が発現された場合に、CEA遺伝子産物を含むものである、同定する工程と、(b)前記生体試料を、請求項1~9若しくは13~15のいずれか一項に記載の抗CEA抗体、又は請求項10に記載の組成物と接触させて、試料-抗体複合体を作製することによって、バイオマーカーとして前記遺伝子産物を利用する工程と、(c)任意の非結合抗体を除去し、次いで、前記試料-抗体複合体を、前記抗体又は試料-抗体複合体に特異的な標識と接触させる工程と、(d)前記標識を検出することによって、前記抗原-抗体複合体の存在を検出する工程であって、前記標識の検出が、がんの検出を示す、検出する工程と、を含む、方法。
【請求項51】
がんを有する対象の状態を判定する方法であって、
(a)対象から試料を得ることと、
(b)前記試料を、請求項1~9若しくは13~15のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗体断片、又は請求項10に記載の組成物と接触させることと、
(c)前記抗体又は抗体断片によって検出されるCEAの量を判定することであって、陽性染色が悪性又は良性のがんを示し、陰性染色が前記細胞ががん性でないことを示す、判定することと、を含む、方法。
【請求項52】
患者における膵臓がんを検出するための方法であって、(a)膵臓がんの疑いがあるか、又は膵臓がんを有する患者から膵臓又は血液の標本を取り出すことと、(b)前記標本を、請求項1~9若しくは13~15のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗体断片、又は請求項10に記載の組成物と接触させ、それによって、前記標本中に抗原-抗体複合体を形成することと、(c)前記工程(b)の抗体が標識されていない場合、前記標本を、前記抗体又は抗原-抗体複合体に特異的な標識で標識することと、(d)前記標識を検出することによって、前記抗原-抗体複合体の存在を検出することと、(e)陰性対照と比較して、CEA抗原レベルを判定することであって、前記陰性対照よりも高いCEA抗原レベルが、膵臓がんを示す、判定することと、を含む、方法。
【請求項53】
前記試料が、膵臓であり、前記陰性対照が、がんを有しない対象由来の同様の膵臓試料である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記試料が、血液であり、前記陰性対照が、分析されたときに0~2.5ng/mLのCEAを有する血液試料である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記方法が、インビトロで実行される、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記膵臓がんが、初期ステージであり、前記方法が、この初期ステージでCEA抗原を検出することができる、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記膵臓がんが、ステージI、II、III、又はIVにあり、前記方法が、この初期ステージでCEA抗原を検出することができる、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
膵臓がんの免疫組織化学的検出のためのキットであって、(a)それぞれ配列番号1、2及び3を含む重鎖のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号4、5及び6を含む軽鎖のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列を有するモノクローナル抗体と、(b)検出可能な標識又は別個のコンジュゲートされていない検出可能な標識にコンジュゲートされた二次抗体であって、前記検出可能な標識又は別個のコンジュゲートされていない検出可能な標識が、前記二次抗体、前記抗体-抗原複合体、又は前記(a)のモノクローナル抗体に結合する、二次抗体と、を含む、キット。
【請求項59】
患者から採取された組織標本中の膵臓がんを検出する免疫組織化学的方法であって、
a)組織標本を得る工程と、
b)前記組織標本を、請求項1~9若しくは13~15のいずれか一項に記載の抗体断片の抗体、又は請求項10に記載の組成物と接触させる工程と、
c)工程b)の後で、前記組織標本を、前記二次抗体、前記抗体-抗原複合体、又は前記抗体に結合する検出可能な標識と接触させる工程と、
d)前記組織標本を、免疫組織化学染色で染色する工程と、を含み、
前記染色が、前記組織標本中の抗体結合及び膵臓がんの存在を示す、免疫組織化学的方法。
【請求項60】
組織標本と、請求項1~9若しくは13~15のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗体断片、又は請求項10に記載の組成物との抗体-抗原複合体と、を含む、組成物であって、前記組織標本が、がんに罹患している患者からのものである、組成物。
【請求項61】
前記がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
がんを検出するための、請求項10に記載の組成物、又は請求項1~9若しくは10~13のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗体断片の、使用。
【請求項63】
前記がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
がんの進行及び/又はがん治療薬の治療有効性を監視するための方法であって、
(a)第1の時点でがんを有するヒト患者から初期試料を得ることと、
(b)前記試料を、請求項1~9若しくは13~15のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗体断片、又は請求項10に記載の組成物と接触させて、抗原-抗体複合体を形成することと、
(c)前記標本を、前記抗原-抗体複合体に特異的な標識で標識することと、
(d)前記標識を検出することによって、前記抗原-抗体複合体の存在を検出することと、
(e)前記抗体又は抗体断片によって検出されたCEA抗原レベルを判定して、前記患者のがんと関連するCEA抗原のベースラインレベルを決定することと、
(f)第2の(後の)時点で第2の試料を得ることであって、任意選択的に、前記第2の時点が、前記対象が療法を受けている期間の後である、得ることと、
(g)工程(b)~(e)を繰り返して、前記患者のがんに関連する第2のCEA抗原レベルを判定することと、
(h)前記第2の時点での前記CEA抗原レベルがベースライン時のレベルよりも高い場合に、前記患者のがんが進行したと判定し、前記第2の時点での前記CEA抗原レベルがベースライン時の前記レベルよりも低い場合に、前記患者のがんが退縮したと判定することと、を含む、方法。
【請求項65】
前記がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記固形腫瘍がんが、膵臓がんである、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記第2の時点での前記CEAの増加が、前記がんの進行を示す、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記第2の時点での前記CEAの減少が、前記がんの退縮を示す、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記第1の時点が、療法前又は初期診断時である、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記第1の時点が、療法後又は初期診断時である、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
前記第2の時点が、療法を受けた後である、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
前記方法が、インビトロで実行される、請求項64に記載の方法。
【請求項73】
前記療法が、ホイップル処理、遠位膵摘出術、及び全膵摘出術を含む手術、放射線療法、陽子線療法、定位放射線(SBRT)又はサイバーナイフ、免疫療法、標的療法、並びに化学療法である、請求項70に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年4月29日に出願された米国出願第63/336,676号及び2021年11月5日に出願された米国出願第63/275,998号に対する優先権を主張し、その内容全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、がん胎児性抗原(本明細書において「CEA」とも称される)を結合するモノクローナル抗体(mAb)及びその抗原結合断片に関する。したがって、本発明は、これらのmAb抗体、特に、CEAを検出するための、並びにがんなどの異常なCEA発現に関連するか、又はそれに関連することが知られる疾患及び状態を診断及び治療するためのそれらの使用を包含する。
【背景技術】
【0003】
がん胎児性抗原(CEA)は、約180,500ダルトン(180kDa)の分子量を有する免疫グロブリンのファミリーに属する。CEAは、発達中の赤ん坊(胎児)のある特定の組織に存在するタンパク質であるが、赤ん坊が生まれるまでにその発現は非常に低いレベルに低下する。成人では、CEAは通常、血中に非常に低いレベルで存在するが、ある特定のタイプのがんでは上昇し得る。CEACAM5又はCD66eとしても知られるCEAは、胃腸管及び膵臓の内胚葉由来上皮の悪性腫瘍において発見された(Gold et al.The Journal of Experimental Medicine 122:467-481(1965))。ほぼ50年前にCEAが発見されて以来、ヒトがん腫の大部分において過剰発現されることが明らかになっている(Gold et al.The Journal of Experimental Medicine 122:467-481(1965)、Blumenthal et al.BMC Cancer 7:1-15(2007))。CEAの機能は、腸、網状内皮系、及び肝実質細胞から体内の全ての増殖細胞に鉄を輸送することである。CEAはまた、血清からのある特定の有機物及びアレルゲンの除去に関与する顆粒球/花粉結合タンパク質(GPBP)としての生理学的役割を有し得、細胞増殖を刺激する更なる役割を有し得る。ヒトCEAは、データベースUniProtKB/Swiss-Prot:P06731に記載されている。CEAは、免疫グロブリン様構造特性を有し、多くのグリコシル化修飾部位を有する(Beauchemin et al.Cancer and Metastasis Reviews 32:643-671(2013))。
CEAはまた、炎症、肝硬変、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、直腸ポリープ、肺気腫、及び良性乳房疾患などのいくつかの非がん関連状態において、並びに喫煙者において過剰に発現され得る。このため、CEAの検出は、一般的ながんスクリーニングツールとしては有用ではなく、むしろがん治療に対する応答を評価するのに有用であると一般的に考えられている。The Dynamic Monitoring of CEA in Response to Chemotherapy and Prognosis of MCRC Patients.Yu,et al.BMC Cancer.(2018)18:1076、及びASCO 2006 Update of Recommendations for the Use of Tumor Markers in Gastrointestinal Cancer.Gershon et al.Journal of Clinical Oncology(2006)24:5313を参照されたい。例えば、個体ががんと診断された場合、CEAに関する初期ベースライン試験が実行され得る。CEAの後続の連続試験は、個体が治療を受けるとき及び/又は個体が寛解状態になるときに、がん進行を監視するために実行され得る。Roberto et al.British Journal of Cancer(2021)124:839を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Gold et al.The Journal of Experimental Medicine 122:467-481(1965)
【非特許文献2】Blumenthal et al.BMC Cancer 7:1-15(2007)
【非特許文献3】Beauchemin et al.Cancer and Metastasis Reviews 32:643-671(2013)
【非特許文献4】The Dynamic Monitoring of CEA in Response to Chemotherapy and Prognosis of MCRC Patients.Yu,et al.BMC Cancer.(2018)18:1076
【非特許文献5】ASCO 2006 Update of Recommendations for the Use of Tumor Markers in Gastrointestinal Cancer.Gershon et al.Journal of Clinical Oncology(2006)24:5313
【非特許文献6】Roberto et al.British Journal of Cancer(2021)124:839
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】ADx-CEAの重鎖のアンプリコンを示す。
【
図2】ADx-CEAの重鎖のNCBI_Ig Blast Tool_IMGTビューを表示する。一文字でコードされたアミノ酸位置、CDR位置、及びヒトIgHVDJ内の相同性を最大化するためのギャップ(*)の組み込みは、IMGTデータベースによるものである。ヌクレオチド及び予測されるタンパク質配列は、V-D-J領域の重鎖について以下に示される。
【
図3】ADx-CEAの軽鎖のNCBI_Ig Tool_IMGT blast試料を表示する。一文字でコードされたアミノ酸位置、CDR位置、及びヒトIgKVJ内の相同性を最大化するためのギャップ(*)の組み込みは、IMGTデータベースによるものである。ヌクレオチド及び予測されるタンパク質配列は、V-J領域のK鎖について以下に示される。
【
図4】単離されたADx-CEAの重鎖及び軽鎖のSDS-PAGE分析を示す。
【
図5】単離されたADx-CEAによって検出されたCEAのウェスタンブロット分析を示す。
【
図6A】点状に小胞内に局在する単離されたADx-CEAによって検出されたCEAの間接免疫蛍光染色の代表的な画像を示す。
図6Aは、位相差画像を示す。
【
図6B】点状に小胞内に局在する単離されたADx-CEAによって検出されたCEAの間接免疫蛍光染色の代表的な画像を示す。
図6Bは、免疫蛍光染色を示す。
【
図7】対照と比較して、患者が膵臓がんを有する、患者試料中の単離されたADx-CEAのウェスタンブロット分析を示す。
【
図8】様々なステージの膵臓がん組織におけるADx-CEAによるIHC染色分析を示す。
【
図9A】ADx-CEAの全体的な感受性及び特異性を示す。
図9Aは、Dako Omnis(Agilent)抗CEA mAb(クローンII-7)と比較した感受性を示す。
【
図9B】ADx-CEAの全体的な感受性及び特異性を示す。
図9Bは、Dako抗体と比較した特異性を示す。
【
図10A】ADx-CEAの初期ステージ(I、II)での感受性及び特異性を示す。
図10Aは、Dako Omnis(Agilent)抗CEA mAb(クローンII-7)と比較した感受性を示す。
【
図10B】ADx-CEAの初期ステージ(I、II)での感受性及び特異性を示す。
図10Bは、Dako Omnis(Agilent)抗CEA mAb(クローンII-7)と比較した特異性を示す。
【
図11A】ADx-CEAの後期ステージ(III、IV)での感受性及び特異性を示す。
図11Aは、Dako Omnis(Agilent)抗CEA mAb(クローンII-7)と比較した感受性を示す。
【
図11B】ADx-CEAの後期ステージ(III、IV)での感受性及び特異性を示す。
図11Bは、Dako Omnis(Agilent)抗CEA mAb(クローンII-7)と比較した特異性を示す。
【
図12A】軟質寒天冠動脈形成及び関連データを示す。
図12Aは、未処理のBxPC-3細胞におけるコロニー形成の代表的な低倍率画像を示す。
【
図12B】軟質寒天冠動脈形成及び関連データを示す。
図12Bは、ADx-CEA処理及び未処理のBxPC-3細胞におけるコロニー形成の代表的な高倍率画像を示す。ウェルの画像は、3つの独立した実験の代表である。
【
図12C】軟質寒天冠動脈形成及び関連データを示す。
図12Cは、ADx-CEA処理後のBxPC-3コロニー数の定量を示す。
【
図13A】IHC染色を介した、様々なホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト組織におけるCEA発現を示す。CEAタンパク質の発現は、ADx-CEAを使用して、健康な個体及びがん患者からの健康な組織及びがん性組織において検証した。膵臓、結腸及び肝臓のがん組織は、CEA発現について陽性の膜及び細胞質染色を示した。
図13Aは、膵臓組織の結果を示す。
【
図13B】IHC染色を介した、様々なホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト組織におけるCEA発現を示す。CEAタンパク質の発現は、ADx-CEAを使用して、健康な個体及びがん患者からの健康な組織及びがん性組織において検証した。膵臓、結腸及び肝臓のがん組織は、CEA発現について陽性の膜及び細胞質染色を示した。
図13Bは、結腸組織の結果を示す。
【
図13C】IHC染色を介した、様々なホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト組織におけるCEA発現を示す。CEAタンパク質の発現は、ADx-CEAを使用して、健康な個体及びがん患者からの健康な組織及びがん性組織において検証した。膵臓、結腸及び肝臓のがん組織は、CEA発現について陽性の膜及び細胞質染色を示した。
図13Cは、肝臓組織の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
I.定義
本出願では、「又は」の使用は、別段明記されない限り、「及び/又は」を意味する。複数の従属請求項の文脈において、「又は」の使用は、代替のみにおいて、2つ以上の先行する独立又は従属請求項に戻ることを指す。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、本明細書中で互換的に使用され得る。本発明によれば、「単離された」分子は、その天然環境から除去された分子である。したがって、「単離された」という用語は、必ずしも分子が精製された程度を反映しているわけではない。
【0007】
本明細書で使用される場合、CEAは、がん胎児性抗原関連細胞接着分子5、CECAM5、細胞接着分子5、及びCD66eとしても知られている。例えば、UniProtKB/Swiss-Prot:P06731.
【0008】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含む様々な抗体構造を包含する。組換え抗体、キメラ抗体、及びヒト化抗体が包含される。
【0009】
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含む、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、これらに限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0010】
「抗原」という用語は、抗体によって結合されることが可能であり、更にその抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するように動物を誘導することができる、1つ以上の分子又は分子の1つ以上の部分を指す。抗原は、1つ以上のエピトープを有してもよい。上記に言及される特異的反応は、抗原が、その対応する抗体とは非常に優先的に反応し、他の抗原によって誘発され得る多数の他の抗体とは反応しないことを示すことを意味する。抗体への抗原の結合は、バックグラウンドレベルを超えていなければならない。
【0011】
「がん」という用語は、異常に高いレベルの増殖及び成長を示す細胞群を指すために本明細書で使用される。がんは、良性(良性腫瘍とも称される)、前悪性、又は悪性であり得る。がん細胞は、固形がん細胞又は白血病性がん細胞であり得る。
【0012】
「相補性決定領域、又はCDR」という用語は、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性を一緒に規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は、各々、3つのCDRを有する。
【0013】
抗体の「クラス」とは、その重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体には、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分けられ得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0014】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書において互換的に使用されて、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、又は本明細書で定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0015】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞によって産生されるか、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0016】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に、類似の構造を有し、各ドメインは、4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい。)単一のVHドメイン又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。更に、特定の抗原を結合する抗体は、それぞれ、相補的なVLドメイン又はVHドメインのライブラリをスクリーニングするために、抗原を結合する抗体からのVHドメイン又はVLドメインを使用して単離されてもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0017】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択における最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからのものである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3におけるようなサブグループである。いくつかの実施形態では、VLについて、サブグループは、Kabat et al.(上記参照)におけるようなサブグループカッパIである。いくつかの実施形態では、VHについて、サブグループは、Kabat et al.(上記参照)におけるようなサブグループIIIである。
【0018】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列が超可変であり(「相補性決定領域」若しくは「CDR」)、かつ/又は構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/又は抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVLにある(L1、L2、L3)。
【0019】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成要素から分離されたものである。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)によって判定されるような95%又は99%を超える純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、例えば、天然に存在する変異を含むか、又はモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能性のあるバリアント抗体を除いて、同一であり、かつ/又は同じエピトープを結合し、そのようなバリアントは、一般に、わずかな量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない、様々な技術によって作製されてもよく、そのような方法及びモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法が本明細書に記載されている。
【0021】
「天然抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合した2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて定常軽(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
【0022】
膵臓がんの「ステージ」とは、米国がん合同委員会(AJCC)の臨床ステージを指す:米国がん合同委員会で定義されているような、0、IA、IB、IIA、IIB、III、及びIV。Exocrine Pancreas.In: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed.New York,NY: Springer;2017:337。本明細書で使用される場合、「初期ステージ」膵臓がんは、ステージI及びIIを指し、「後期ステージ」膵臓がんは、ステージIII及びIVを指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、本明細書で言及されるアッセイ及び検出に関する「陰性対照」は、検出又はアッセイされるアッセイのタイプ及びがんのタイプに関して専門家によって本分野で通常使用される対照を指す。ヒト血液中のCEAレベルの検出の一例では、正常な血液(血漿又は血清)のCEAレベルは、約0~2.5ng/mLであり得る。検出されたCEAレベルがこのレベルよりも高い場合、そのレベルは陰性対照よりも高いと言われ得る。
【0024】
II.組成物及び方法
抗CEA抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、抗体コンジュゲート、記載される抗体を含む組成物、及びそれらの使用方法が提供される。
【0025】
A.例示的な抗CEA抗体
以下の配列表は、本明細書に開示され、特許請求される抗体(ADx-CEA)の配列を提供する。配列番号1~12を参照されたい。
【0026】
本明細書において、ADx-CEA並びにその断片及びバリアントを含む、ヒトCEAに特異的に結合する抗体及び抗体断片が提供される。
【0027】
ある特定の実施形態では、配列番号1、2、及び3をそれぞれ含むVH CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域(「VH」)と、配列番号4、5、及び6のうちのいずれか1つのVL CDR1、CDR2、及び/又はCDR3をそれぞれ含む軽鎖可変領域(「VL」)と、を含む、抗CEA抗体及び抗体断片が提供される。
【0028】
いくつかの実施形態では、以下を含む抗体が提供される:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1(含む、又は含まない)、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(b)重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)であって、VHが、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であり、VLが、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)、又は
(c)重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)であって、VHが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)、又は
(d)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1(含む、又は含まない)、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3、並びに重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)であって、VHが、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であり、VLが、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の単離抗体又は抗体断片は、モノクローナル抗体である。更なる実施形態では、単離抗体又は抗体断片は、完全ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、単離抗体又は抗体断片は、抗体断片である。更なる実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、Fv、scFv、又は(Fab’)2である。いくつかの実施形態では、単離抗体又は抗体断片は、全長抗体である。いくつかの実施形態では、単離抗体又は抗体断片は、Fc領域を含み、抗体のFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG4.1、又はIgG4.2を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物が提供される。
【0031】
いくつかの実施形態では、単離抗体又は抗体断片は、固相上に固定化されている。いくつかの実施形態では、単離抗体又は抗体断片は、検出可能に標識されている。いくつかの実施形態では、単離抗体又は抗体断片は、細胞傷害性放射性核種にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、単離抗体又は抗体断片は、細胞傷害性薬物にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、単離抗体又は抗体断片は、細胞傷害性タンパク質にコンジュゲートされている。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片をコードする、単離DNA配列が提供される。いくつかの実施形態では、DNAは、配列番号11又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、DNAは、配列番号12又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、DNAは、配列番号11又はその断片と、配列番号12又はその断片と、を含む。いくつかの実施形態では、DNAは、配列番号11と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列、又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、DNAは、配列番号12と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列、又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、DNAは、配列番号11又はその断片と、配列番号12又はその断片と、を含む。いくつかの実施形態では、DNAは、配列番号11と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列又はその断片と、配列番号12と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列又はその断片と、を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片をコードするDNA配列を含む、ベクターが提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片をコードするDNA配列を含むベクターで形質転換された、宿主細胞が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗体の産生のためのプロセスであって、抗体又は抗体断片をコードするDNA配列を含むベクターで形質転換された宿主細胞を培養することと、抗体分子を単離することと、を含む、プロセスを提供する。
【0036】
ある特定の実施形態では、抗CEA抗体又は抗体断片は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるVHと、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるVLと、を含む単離抗体を含む。いくつかの実施形態では、この抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2、並びに(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3(含む、又は含まない)を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明は、がんを治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の抗CEA抗体若しくは抗体断片、又はその組成物、又はそのDNA若しくはベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を含む。いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである。
【0038】
ある特定の実施形態では、CEA抗原を検出するためのイムノアッセイであって、(a)試料を、有効結合量のADx-CEAなどの本明細書に記載の抗体又は抗体断片と接触させることと、(b)CEA抗原への抗体の結合を検出することによって、抗原を検出することと、を含む、イムノアッセイが提供される。いくつかの実施形態では、アッセイは、CEA抗原を発現するがん細胞を検出するために使用される。いくつかの実施形態では、アッセイは、固形腫瘍を検出するために使用される。更なる実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象におけるがんを検出する方法であって、がんを有する対象又はがんの疑いのある対象から単離された試料に、本明細書に記載の抗体又は抗体断片を接触させることを含む、方法を含む。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍である。更なる実施形態では、固形腫瘍は、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである。
【0040】
ある特定の実施形態では、本発明は、CEA抗原を発現する細胞を含む固形腫瘍がんの免疫組織化学的検出のためのキットであって、(a)ADx-CEAなどの本明細書に記載の抗体又は抗体断片と、(b)検出可能な標識にコンジュゲートされた二次抗体であって、CEA抗原に結合したときに、(a)の抗体に結合し、かつそれを検出することができる、二次抗体と、を含む、キットを提供する。代替的に、二次抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされておらず、代わりに、二次抗体に結合するか、又は二次抗体と相互作用する標識を検出のために使用する。当該キットを使用してCEAを検出する方法が包含される。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象における固形腫瘍がんの状態を判定するための方法であって、(a)固形腫瘍がんを有する対象から試料を取り出すことと、(b)試料を、ADx-CEAなどの本明細書に記載の抗体又は抗体断片と接触させ、それによって、CEA抗原と抗体又は抗体断片との複合体を形成することと、(c)標本を、抗原-抗体複合体に特異的な標識で標識することと、(d)標識を検出することによって、抗原-抗体複合体の存在を検出することと、を含む、方法である。いくつかの実施形態では、試料は、全血、血清、若しくは血漿を含む血液、又は組織若しくは細胞である。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の工程(a)~(d)は、後の時点で繰り返される。いくつかの実施形態では、この時点は、対象が療法を開始した後である。いくつかの実施形態では、この時点は、対象が新しい又は第2の(共)療法を開始した後である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍がんは、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍がんは、膵臓がんである。いくつかの実施形態では、対象は、がんと診断されており、かつ療法を受けているか、又は受けようとしている。いくつかの実施形態では、試料は、療法開始前に、対象から単離される。いくつかの実施形態では、試料は、療法開始後に対象から単離される。いくつかの実施形態では、療法は、化学療法又は放射線である。いくつかの実施形態では、化学療法は、エルロチニブ、フルオロウラシル、又はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態では、療法は、ホイップル処理、遠位膵摘出術、及び全膵摘出術を含む手術、放射線療法、陽子線療法、定位放射線(SBRT)若しくはサイバーナイフ、免疫療法、標的療法、又は化学療法である。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の対象における固形腫瘍がんの状態を判定するための方法であって、CEAレベルが判定され、後の時点でより高いCEAレベルが、療法が完全に有効ではないことを示し、後の時点で同じ又はより低いCEA抗原レベルが、療法が少なくとも部分的に有効であることを示す、方法を含む。いくつかの実施形態では、対象は、寛解状態にある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象が寛解状態となった後の時点で繰り返され、CEAレベルが判定され、後の時点でより高いCEAレベルは、がんがもはや寛解状態ではないことを示し、後の時点で同じ又はより低いCEAレベルは、がんが寛解状態であり続けていることを示す。いくつかの実施形態では、方法は、コンピュータ断層撮影の代替物である。
【0044】
ある特定の実施形態では、本発明は、CEAの遺伝子産物及びその相同体の発現を特徴とするがんを検出する方法であって、(a)対象から生体試料を単離することによって、がんを有するヒト患者においてCEAによって発現される遺伝子産物及びその相同体を同定する工程であって、試料が、CEA遺伝子が発現された場合に、CEA遺伝子産物を含むものである、同定する工程と、(b)生体試料を、ADx-CEAなどの本明細書に記載の抗CEA抗体若しくは抗体断片、又はその組成物と接触させて、試料-抗体複合体を作製することによって、バイオマーカーとして遺伝子産物を利用する工程と、(c)任意の非結合抗体を除去し、次いで、試料-抗体複合体を、抗体又は試料-抗体複合体に特異的な標識と接触させる工程と、(d)標識を検出することによって、抗原-抗体複合体の存在を検出する工程であって、標識の検出が、がんの検出を示す、検出する工程と、を含む、方法を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明は、試料中の細胞の状態を判定する方法であって、(a)対象から当該試料を得ることと、当該試料を、ADx-CEAなどの本明細書に記載の抗体若しくは抗体断片、又はその組成物と接触させることと、(c)抗体又は抗体断片によって検出されるCEAの量を判定することと、を含む、方法を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者における膵臓がんを検出するための方法であって、(a)膵臓がんの疑いがあるか、又は膵臓がんを有する患者から膵臓又は血液の標本を取り出すことと、(b)標本を、本明細書に記載の抗体若しくは抗体断片、又はその組成物と接触させ、それによって、標本中に抗原-抗体複合体を形成することと、(c)標本を、抗体又は抗原-抗体複合体に特異的な標識で標識することと、(d)標識を検出することによって、抗原-抗体複合体の存在を検出することと、(e)陰性対照と比較して、CEA抗原レベルを判定することであって、陰性対照よりも高いCEA抗原レベルが、膵臓がんを示す、判定することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、インビトロで実行される。更なる実施形態では、膵臓がんは、初期ステージであり、方法は、この初期ステージでCEA抗原を検出することができる。更なる実施形態では、膵臓がんは、ステージI、II、IIA、又はIIBにあり、方法は、この初期ステージでCEA抗原を検出することができる。いくつかの実施形態では、膵臓がんは、ステージII、IIA、又はIIBにある。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明は、がんの検出のためのキットであって、(a)それぞれ配列番号1、2及び3を含む重鎖のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号4、5及び6を含む軽鎖のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列を有する抗体又は抗体断片と、(b)検出可能な標識又は別個のコンジュゲートされていない検出可能な標識にコンジュゲートされた二次抗体であって、検出可能な標識又は別個のコンジュゲートされていない検出可能な標識が、二次抗体、抗体-抗原複合体、又は(a)のモノクローナル抗体に結合する、二次抗体と、を含む、キットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、膵臓がんの免疫組織化学的検出のためのものである。
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者から採取された組織標本中のがんを検出する免疫組織化学的方法であって、(a)組織標本を得る工程と、(b)当該組織標本を、本明細書に記載の抗体断片の抗体、又はその組成物と接触させる工程と、(c)工程(b)の後で、組織標本を、二次抗体、抗体-抗原複合体、又は抗体に結合する検出可能な標識と接触させる工程と、(d)当該組織標本を、免疫組織化学染色で染色する工程と、を含み、当該染色が、当該組織標本中の抗体結合及びがんの存在を示す、免疫組織化学的方法を含む。いくつかの実施形態では、がんは、膵臓がんである。
【0049】
いくつかの実施形態では、組織、細胞、又は血液標本と、明細書に記載の抗体若しくは抗体断片、又はその組成物と、組織、細胞、又は血液試料中のCEA抗原との抗体-抗原複合体と、を含む、組成物であって、当該試料が、がんに罹患している患者からのものである、組成物が提供される。ある特定の実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである。
【0050】
いくつかの実施形態では、がんを検出するための、本明細書に記載の抗体若しくは抗体断片、又はその組成物の使用が提供される。更なる実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである。
【0051】
いくつかの実施形態では、がんの進行及び/又はがん治療薬の治療有効性を監視するための方法であって、(a)第1の時点でがんを有するヒト患者から初期試料を得ることと、(b)試料を、本明細書に記載の抗体若しくは抗体断片、又はその組成物と接触させて、抗原-抗体複合体を形成することと、(c)標本を、抗原-抗体複合体に特異的な標識で標識することと、(d)標識を検出することによって、抗原-抗体複合体の存在を検出することと、(e)抗体又は抗体断片によって検出されたCEA抗原レベルを判定して、患者のがんと関連するCEA抗原のベースラインレベルを決定することと、(f)第2の(後の)時点で第2の試料を得ることであって、任意選択的に、第2の時点が、対象が療法を受けている期間の後である、得ることと、(g)工程(b)~(e)を繰り返して、患者のがんに関連する第2のCEA抗原レベルを判定することと、(h)第2の時点でのCEA抗原レベルがベースライン時のレベルよりも高い場合に、患者のがんが進行したと判定し、第2の時点でのCEA抗原レベルがベースライン時のレベルよりも低い場合に、患者のがんが退縮したと判定することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍がんは、膵臓がんである。いくつかの実施形態では、第2の時点でのCEAの増加は、がんの進行を示す。いくつかの実施形態では、第2の時点でのCEAの減少は、がんの退縮を示す。いくつかの実施形態では、第1の時点は、療法前又は初期診断時である。いくつかの実施形態では、第1の時点は、療法後又は初期診断時である。いくつかの実施形態では、第2の時点は、療法を受けた後である。いくつかの実施形態では、方法は、インビトロで実行される。いくつかの実施形態では、療法は、ホイップル処理、遠位膵摘出術、及び全膵摘出術を含む手術、放射線療法、陽子線療法、定位放射線(SBRT)又はサイバーナイフ、免疫療法、標的療法、並びに化学療法である。
【0052】
B.グリコシル化バリアント
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成され得る。
【0053】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物を改変してもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN連結によって一般的に結合される分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに結合したフコースを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、ある特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作製するために行われ得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、Fc領域に(直接的又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、又は20%~40%であってもよい。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析によって測定されるように、Asn297に結合する全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計と比較して、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。「Asn297」は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指す。しかしながら、Asn297はまた、抗体中のマイナーな配列変異に起因して、297位の約±3アミノ酸上流又は下流、すなわち、294位と300位との間に位置し得る。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号(Presta,L.)、US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第2003/0157108 A1号(Presta,L)、及びWO2004/056312 A1(Adams et al.、特に実施例11において)、並びにアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107)を参照されたい)が挙げられる。
【0055】
抗体バリアントは、二分されたオリゴ糖とともに更に提供され、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖が、GlcNAcによって二分される。かかる抗体バリアントは、低減されたフコシル化機能及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体バリアントの例としては、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、及びUS2005/0123546(Umana et al.)が挙げられる。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)を参照されたい。
【0056】
C.Fc領域バリアント
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入され、それによって、Fc領域バリアントを生成し得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0057】
ある特定の実施形態では、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有する抗体バリアントであって、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要であるか、又は有害である用途に望ましい候補となる、抗体バリアントを企図する。インビトロ及び/又はインビボの細胞傷害性アッセイを実施して、CDC及び/又はADCCの活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体がFcgR結合を欠いている(したがって、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための一次細胞であるNK細胞は、FcgRIIIのみを発現するが、単球は、FcgRI、FcgRII、及びFcgRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464ページの表3に要約される。目的とする分子のADCC活性を評価するインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I. et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986))及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985)、5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載される。代替的に、非放射性アッセイ方法が用いられてもよい(例えば、フローサイトメトリーについては、ACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて評価され得る。C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qを結合することができず、したがってCDC活性を欠いていることを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実行してもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.Blood 101:1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定もまた、当該技術分野で公知の方法を使用して実行することができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい).
【0058】
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体には、アラニンへの残基265及び297の置換を伴ういわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265、269、270、297、及び327位のうちの2つ以上の置換を伴うFc変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0059】
FcRへの結合が改善又は減少したある特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい。)
【0060】
ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334位における置換(残基のEU番号付け)を有するFc領域を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)の改変(すなわち、改善又は減少のいずれか)をもたらす改変がFc領域で行われる。
【0062】
半減期の増加及び母体IgGの胎児への移行を担う新生児Fc受容体(FcRn)への結合の改善を伴う抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。かかるFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、252、254、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(例えば、米国特許第7,371,826号)。
【0063】
また、Fc領域バリアントの他の例に関する、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351号も参照されたい。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列表に従って提供され、アイソタイプは、ヒトIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列表に従って提供され、アイソタイプは、ヒトIgG2である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列表に従って提供され、アイソタイプは、ヒトIgG3である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列表に従って提供され、アイソタイプは、ヒトIgG4である。
【表1-1】
【表1-2】
【0065】
D.システイン操作抗体バリアント
ある特定の実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作抗体、例えば、「チオM抗体(thioMantibodies)」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位に生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書に更に記載されるように、抗体を薬物部分又はリンカー-薬物部分などの他の部分にコンジュゲートして、免疫コンジュゲートを作製するために使用され得る。ある特定の実施形態では、以下の残基のうちのいずれか1つ以上が、システインで置換されてもよい:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0066】
E.抗体誘導体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に利用可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に修飾されてもよい。抗体の誘導体化に適した部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のために、製造において利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であってもよく、分岐鎖又は非分岐鎖であってもよい。抗体に結合したポリマーの数は様々であってもよく、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは、同じ分子であっても異なった分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されないが、改善される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が規定された条件下で治療に使用されるかどうかなどの考慮に基づいて決定され得る。
【0067】
他の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。いくつかの実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。放射線は、任意の波長であってもよく、通常の細胞に害を及ぼさないが、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近接する細胞が殺傷される温度まで加熱する波長が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
F.組換え方法
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるような組換え方法及び組成物を使用して産生されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CEA抗体をコードする単離核酸が提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列、及び/又は抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/若しくは重鎖)をコードしてもよい。更なる実施形態では、このような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。更なる実施形態では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一実施形態では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター、を含む(例えば、それで形質転換されている)。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。いくつかの実施形態では、抗CEA抗体を作製する方法であって、上記で提供されるように、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意選択的に、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収することと、を含む、方法が提供される。
【0069】
抗CEA抗体の組み換え産生のために、例えば、上述のような抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞内での更なるクローニング及び/又は発現のために1つ以上のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定され得る。
【0070】
抗体コードベクターのクローニング又は発現に好適な宿主細胞としては、本明細書に記載される原核細胞又は真核細胞が挙げられる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌において産生され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(また、E.coli中での抗体断片の発現を記載しているCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照されたい。)発現後、抗体は、可溶性画分内で細菌細胞ペーストから単離され得、更に精製されることができる。
【0071】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的又は完全にヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす真菌及び酵母株を含む、抗体コードベクターに適したクローニング又は発現宿主である。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.、Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
【0072】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞及び昆虫細胞が含まれる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併せて使用することができる多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0073】
植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。
【0074】
脊椎動物細胞を、宿主として使用してもよい。例えば、懸濁液中で増殖するように適合された哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol 36:59(1977)に記載される293又は293細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、アフリカグリーンサル腎細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、イヌ腎細胞(MDCK、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、例えば、Mather et al.,Annnals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載のTRI細胞、MRC 5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、並びにY0、NS0、及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0075】
G.免疫コンジュゲート
本発明はまた、1つ以上の他の治療剤又は放射性同位体にコンジュゲートされた本明細書の抗CEA抗体を含む免疫コンジュゲートを提供する。
【0076】
別の実施形態では、免疫コンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて放射性コンジュゲートを形成する、本明細書に記載の抗体を含む。放射性コンジュゲートの産生には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートを検出に使用する場合、放射性コンジュゲートは、例えば、tc99m又はI123のシンチグラフィック研究のための放射性原子、又は再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄などの核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとも呼ばれる)のためのスピンラベルを含み得る。
【0077】
抗体のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジル等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トルエン2,6ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)など様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載のように調製することができる。例えば、炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示のキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞における細胞傷害性薬物の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020号を参照されたい)を使用してもよい。
【0078】
本明細書における免疫コンジュゲート又はADCは、限定されないが、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、並びに市販(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL,U.S.A.から)のSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含む架橋試薬で調製されたかかるコンジュゲートを明示的に企図する。
【0079】
H.薬学的製剤及び組成物
本明細書に記載の抗CEA抗体の薬学的製剤又は組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、所望の純度を有する抗体を、1つ以上の任意選択的な薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって調製される。薬学的に許容される担体、希釈剤、及び賦形剤は、一般に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、滅菌水、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベンなどのパラベンアルキル;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギン若しくはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース若しくはデキストリン;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体としては、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの間質薬物分散剤が更に挙げられる。rHuPH20を含むある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0080】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されているものが挙げられ、後者の製剤としては、ヒスチジン-酢酸塩緩衝液が挙げられる。
【0081】
本明細書の製剤又は組成物はまた、治療されている特定の適応症に必要な2つ以上の活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有し得る。このような活性成分は、好適には、意図する目的に効果的である量で組み合わせて存在する。
【0082】
活性成分は、例えば、液滴形成技術又は界面重合によって調製されたマイクロカプセルに、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)に、又はマクロエマルションに封入される場合がある。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0083】
持続放出調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透明性マトリックスが挙げられ、マトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態である。
【0084】
インビボ投与に使用される製剤又は組成物は、一般に、滅菌である。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通しての濾過によって容易に達成され得る。
【0085】
I.実施形態
以下の実施形態が提供される。
実施形態1.(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1と、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2と、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3と、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1と、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2と、(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む、単離抗体又は抗体断片。
実施形態2.抗体が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であり、VLが、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である、実施形態1の単離抗体。
実施形態3.抗体が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、実施形態1又は2の単離抗体。
実施形態4.単離抗体又は抗体断片であって、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3、並びに重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であり、VLが、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である、単離抗体又は抗体断片。
実施形態5.抗体が、モノクローナル抗体である、先行実施形態のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態6.抗体が、完全ヒト抗体である、先行実施形態のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態7.抗体が、抗体断片である、先行実施形態のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態8.断片が、Fab、Fab’、Fv、scFv、又は(Fab’)2である、実施形態7の単離抗体又は抗体断片。
実施形態9.抗体が、全長抗体である、実施形態1~5のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態10.抗体のFc領域が、存在する場合、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG4.1、又はIgG4.2を含む、実施形態1~9のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態11.実施形態1~10のうちのいずれか1つの抗体又は抗体断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
実施形態12.固相上に固定された、実施形態1~10のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態13.検出可能に標識された、実施形態1~10のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態14.細胞傷害性放射性核種にコンジュゲートされた、実施形態1~10のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態15.細胞傷害性薬物にコンジュゲートされた、実施形態1~10のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態16.細胞傷害性タンパク質にコンジュゲートされた、実施形態1~10のうちのいずれか1つの単離抗体又は抗体断片。
実施形態17.実施形態1~10のうちのいずれか1つの抗体又は抗体断片をコードする、単離DNA配列。
実施形態18.配列番号11若しくはその断片、又は配列番号11と少なくとも80、90、若しくは95%同一である配列を含む、実施形態17のDNA。
実施形態19.配列番号12若しくはその断片、又は配列番号12と少なくとも80、90、若しくは95%同一である配列を含む、実施形態17のDNA。
実施形態20.配列番号11若しくはその断片及び配列番号12若しくはその断片を含むか、又は配列番号11と少なくとも80、90、若しくは95%同一である配列及び配列番号12と少なくとも80、90、若しくは95%同一である配列を含む、実施形態17のDNA。
実施形態21.実施形態17~20のうちのいずれか1つのDNA配列を含む、ベクター。
実施形態22.実施形態21のベクターで形質転換された、宿主細胞。
実施形態23.抗体の産生のためのプロセスであって、実施形態22の宿主細胞を培養することと、抗体分子を単離することと、を含む、プロセス。
実施形態24.配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるVHと、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるVLと、を含む、単離抗体。
実施形態25.がんを治療する方法であって、治療有効量の請求項1~10若しくは14~16のいずれか一項に記載の抗CEA抗体、請求項11に記載の組成物、又は請求項17~21のいずれか一項に記載のDNA若しくはベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
実施形態26.CEA抗原を検出するためのイムノアッセイであって、(a)当該試料を、有効結合量の実施形態1~10のうちのいずれか1つの抗体又は抗体断片と接触させることと、(b)CEA抗原への抗体の結合を検出することによって、当該抗原を検出することと、を含む、イムノアッセイ。
実施形態27.アッセイが、CEA抗原を発現するがん細胞を検出するために使用される、実施形態26のイムノアッセイ。
実施形態28.アッセイが、固形腫瘍を検出するために使用される、実施形態26のイムノアッセイ。
実施形態29.がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、実施形態27又は28のイムノアッセイ。
実施形態30.対象におけるがんを検出する方法であって、がんを有する対象又はがんを有する疑いのある対象から単離された試料に、実施形態1~10のうちのいずれか1つの抗体を接触させることを含む、方法。
実施形態31.がんが、固形腫瘍である、実施形態30の方法。
実施形態32.固形腫瘍が、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、実施形態30の方法。
実施形態33.CEA抗原を発現する細胞を含む固形腫瘍がんの免疫組織化学的検出のためのキットであって、(a)実施形態1~10のうちのいずれか1つに記載の抗体と、(b)検出可能な標識にコンジュゲートされた二次抗体であって、CEA抗原に結合したときに、(a)の抗体に結合し、かつそれを検出することができる、二次抗体と、を含む、キット。
実施形態34.対象における固形腫瘍がんの状態を判定するための方法であって、(a)固形腫瘍がんを有する対象から試料を取り出すことと、(b)試料を、実施形態1~10のうちのいずれか1つの抗体又は抗体断片と接触させ、それによって、CEA抗原と抗体又は抗体断片との複合体を形成することと、(c)標本を、抗原-抗体複合体に特異的な標識で標識することと、(d)標識を検出することによって、抗原-抗体複合体の存在を検出することと、を含む、方法。
実施形態35.固形腫瘍がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、実施形態34の方法。
実施形態36.固形腫瘍がんが、膵臓がんである、実施形態34の方法。
実施形態37.対象が、がんと診断されており、かつ療法を受けているか、又は受けようとしている、実施形態34~36のうちのいずれか1つの方法。
実施形態38.試料が、療法開始前に、対象から単離される、実施形態37の方法。
実施形態39.試料が、療法開始後に対象から単離される、実施形態37の方法。
実施形態40.後の時点で工程(a)~(d)を繰り返すことを更に含む、実施形態34~39のうちのいずれか1つの方法。
実施形態41.後の時点が、対象が療法を開始した後である、実施形態40の方法。
実施形態42.後の時点が、対象が新しい又は第2の(共)療法を開始した後である、実施形態40の方法。
実施形態43.療法が、化学療法又は放射線である、実施形態41又は42の方法。
実施形態44.化学療法が、エルロチニブ、フルオロウラシル、又はオキサリプラチンである、請求項43に記載の方法。
実施形態45.療法が、ホイップル処置、遠位膵摘出術、及び全膵摘出術を含む手術、放射線療法、陽子線療法、定位放射線(SBRT)若しくはサイバーナイフ、免疫療法、標的療法、又は化学療法である、請求項41又は42に記載の方法。
実施形態46.検出されたCEA抗原レベルが判定され、後の時点でより高いCEAレベルが、療法が完全に有効であることを示し、後の時点で同じ又はより低いCEA抗原レベルが、療法が少なくとも部分的に有効であることを示す、実施形態34~45のうちのいずれか1つの方法。
実施形態47.対象が、寛解状態にある、実施形態34~46のうちのいずれか1つの方法。
実施形態48.対象が寛解状態となった後の時点で工程(a)~(d)を繰り返すことを更に含み、CEAレベルが判定され、後の時点でより高いCEAレベルが、がんがもはや寛解状態ではないことを示し、後の時点で同じ又はより低いCEAレベルが、療法が寛解状態であり続けていることを示す、実施形態47に記載の方法。
実施形態49.試料が、全血、血清、若しくは血漿を含む血液、組織、又は細胞である、実施形態34~48のうちのいずれか1つの方法。
実施形態50.方法が、コンピュータ断層撮影の代替物である、実施形態34~49のうちのいずれか1つの方法。
実施形態51.CEAの遺伝子産物及びその相同体の発現を特徴とするがんを検出するための方法であって、(a)対象から生体試料を単離することによって、がんを有するヒト患者においてCEAによって発現される遺伝子産物及びその相同体を同定する工程であって、試料が、CEA遺伝子が発現された場合に、CEA遺伝子産物を含むものである、同定する工程と、(b)生体試料を、請求項1~10若しくは14~16のいずれか一項に記載の抗CEA抗体、又は請求項11に記載の組成物と接触させて、試料-抗体複合体を作製することによって、バイオマーカーとして遺伝子産物を利用する工程と、(c)任意の非結合抗体を除去し、次いで、試料-抗体複合体を、抗体又は試料-抗体複合体に特異的な標識と接触させる工程と、(d)標識を検出することによって、抗原-抗体複合体の存在を検出する工程であって、標識の検出が、がんの検出を示す、検出する工程と、を含む、方法。
実施形態52.試料中の細胞の状態を判定する方法であって、
a.対象から当該試料を得ることと、
b.当該試料を、実施形態1~10若しくは14~16のうちのいずれか1つの抗体若しくは抗体断片、又は実施形態11の組成物と接触させることと、
c.抗体又は抗体断片によって検出されるCEAの量を判定することと、を含む、方法。
実施形態53.患者における膵臓がんを検出するための方法であって、(a)膵臓がんの疑いがあるか、又は膵臓がんを有する患者から膵臓又は血液の標本を取り出すことと、(b)標本を、実施形態1~10若しくは14~16のうちのいずれか1つの抗体若しくは抗体断片、又は請求項11に記載の組成物と接触させ、それによって、標本中に抗原-抗体複合体を形成することと、(c)標本を、抗体又は抗原-抗体複合体に特異的な標識で標識することと、(d)標識を検出することによって、抗原-抗体複合体の存在を検出することと、(e)陰性対照と比較して、CEA抗原レベルを判定することであって、陰性対照よりも高いCEA抗原レベルが、膵臓がんを示す、判定することと、を含む、方法。
実施形態54.方法が、インビトロで実行される、実施形態53の方法。
実施形態55.膵臓がんが、初期ステージであり、方法が、この初期ステージでCEA抗原を検出することができる、実施形態53又は54の方法。
実施形態56.膵臓がんが、ステージI、II、III、又はIVであり、方法が、この初期ステージでCEA抗原を検出することができる、実施形態53~55のうちのいずれかに記載の方法。
実施形態57.膵臓がんの免疫組織化学的検出のためのキットであって、(a)それぞれ配列番号1、2及び3を含む重鎖のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号4、5及び6を含む軽鎖のCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列を有するモノクローナル抗体と、(b)検出可能な標識又は別個のコンジュゲートされていない検出可能な標識にコンジュゲートされた二次抗体であって、検出可能な標識又は別個のコンジュゲートされていない検出可能な標識が、二次抗体、抗体-抗原複合体、又は(a)のモノクローナル抗体に結合する、二次抗体と、を含む、キット。
実施形態58.患者から採取された組織標本中の膵臓がんを検出する免疫組織化学的方法であって、(a)組織標本を得る工程と、(b)組織標本を、実施形態~10若しくは14~16のうちのいずれか1つの抗体断片の抗体、又は請求項11に記載の組成物と接触させる工程と、(c)工程b)の後で、組織標本を、二次抗体、抗体-抗原複合体、又は抗体に結合する検出可能な標識と接触させる工程と、(d)組織標本を、免疫組織化学染色で染色する工程と、を含み、当該染色が、当該組織標本における抗体結合及び膵臓がんの存在を示す、免疫組織化学的方法。
実施形態59.組織標本と、実施形態~10若しくは14~16のうちのいずれか1つの抗体若しくは抗体断片、又は請求項11に記載の組成物との抗体-抗原複合体と、を含む、組成物であって、組織標本が、がんに罹患している患者からのものである、組成物。
実施形態60.がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、実施形態59の組成物。
実施形態61.がんを検出するための、実施形態11の組成物、又は実施形態1~10若しくは11~14のうちのいずれか1つの抗体若しくは抗体断片の、使用。
実施形態62.がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、実施形態61の組成物。
実施形態63.がんの進行及び/又はがん治療薬の治療有効性を監視するための方法であって、第1の時点でがんを有するヒト患者から初期試料を得ることと、試料を、実施形態~10若しくは14~16のうちのいずれか1つの抗体若しくは抗体断片、又は請求項11に記載の組成物と接触させて、抗原-抗体複合体を形成することと、標本を、抗原-抗体複合体に特異的な標識で標識することと、標識を検出することによって、抗原-抗体複合体の存在を検出することと、抗体又は抗体断片によって検出されたCEA抗原レベルを判定して、患者のがんと関連するCEA抗原のベースラインレベルを判定することと、第2の(後の)時点で第2の試料を得ることであって、任意選択的に、第2の時点が、対象が療法を受けている期間の後である、得ることと、工程(b)~(e)を繰り返して、患者のがんに関連する第2のCEA抗原レベルを判定することと、第2の時点でのCEA抗原レベルがベースライン時のレベルよりも高い場合に、患者のがんが進行したと判定し、第2の時点でのCEA抗原レベルがベースライン時のレベルよりも低い場合に、患者のがんが退縮したと判定することと、を含む、方法。
実施形態64.がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、又は膵臓がんである、実施形態63の方法。
実施形態65.固形腫瘍がんが、膵臓がんである、実施形態63の方法。
実施形態66.第2の時点でのCEAの増加が、がんの進行を示す、実施形態63の方法。
実施形態67.第2の時点でのCEAの減少が、がんの退縮を示す、実施形態63の方法。
実施形態68.第1の時点が、療法前又は初期診断時である、実施形態63の方法。
実施形態69.第1の時点が、療法後又は初期診断時である、実施形態63に記載の方法。
実施形態70.第2の時点が、療法を受けた後である、実施形態63の方法。
実施形態71.方法が、インビトロで実行される、実施形態63の方法。
実施形態72.療法が、ホイップル処理、遠位膵摘出術、及び全膵摘出術を含む手術、放射線療法、陽子線療法、定位放射線(SBRT)又はサイバーナイフ、免疫療法、標的療法、並びに化学療法である、実施形態69の方法。
【実施例】
【0086】
実施例1.
免疫原として天然(wt)CEA抗原を使用して抗体を調製し、約19,200のハイブリドーマを産生し、スクリーニングした。約20の有望な候補を更に評価し、最終的に以下のように5つのクローンをフォローアップのために選択した。ハイブリドーマクローンのIgGアイソタイプ(IgG1、G2、G2a、G2b)の判定後、キットの指示に従ってRNA抽出キット(例えば、Qiagen Mini RNeasyキット)を使用することによって、ハイブリドーマ細胞株培養物(2×10
6)から全RNAを抽出した。RNAを、SuperScript(登録商標)III第一ストランド合成システム(ThermoFisher Scientific,Carlsbad,CA,USA)を使用して、相補DNA(cDNA)に逆転写した。各試料由来の1μgのcDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供した。マウスユニバーサルIg重鎖又は軽鎖プライマーを使用して、ハイブリドーマクローン(ADx-CEA)のcDNA試料のV領域を増幅した。ユニバーサルプライマーは、Dattamajumdar,Anupam K.,et al.“Rapid cloning of any rearranged mouse immunoglobulin variable genes.”Immunogenetics 43.3(1996):141-151に記載の高度に保存された領域から設計した。プライマー対H-F及びH-Rを使用して遺伝子Hを増幅し、対K-F及びK-Rを使用して遺伝子Kを増幅した。表2を参照されたい。重鎖のプライマー配列は、以下のとおりであった:VH 5’-tgaggtgcagctggaggagtc-3’(配列番号13)及びJH 5’-gtgaccgtggtcccttggccccag-3’(配列番号14)。軽鎖のプライマー配列は、以下のとおりであった:VK 5’-gacattctgatgacccagtct-3’(配列番号15)及びJK 5’-ttttatttccagcttggtccc-3’(配列番号16)。対を以下の表2に記載する。PCRサイクルは、94℃で15秒、62℃(-1.2℃/サイクル)で30秒、及び72℃で30秒の最初の6サイクルで行い、その後、94℃で15秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒の30サイクルを行った。1つのハイブリドーマを後続試験のためのリードとして選択し、このハイブリドーマは、本明細書に記載されるような、配列番号1~6のCDR、配列番号7のVH、配列番号8のVL、配列番号9の完全重、及び配列番号10の完全軽を有する抗体ADx-CEAを産生した。全体を通して、このリード抗体は、ADx-CEAと称される。ADx-CEAのアンプリコンを
図1に示し、重鎖及び軽鎖は1%アガロース上で約380~500bpで実行される。
【表2-1】
【表2-2】
【0087】
実施例2.
PCR産物を精製し、TAクローニング戦略(ThermoFisher Scientific、Carlsbad、CA,USA))を使用して、製造業者の指示に従って、pCR4-TOPOベクターにクローニングした。3~5個の単一コロニーを選択し、ベクターDNA配列に特異的なプライマーを用いてプラスミドDNAを増幅した。必要に応じてサブクローニングを行った。各コロニー由来のプラスミドを、Miniprep Kit(Qiagen Inc)を使用して単離した。PCRインサートを、EcoR1消化を使用した制限分析によって検証し、蛍光色素ターミネータを用いたサイクル配列決定反応及びキャピラリーベースの電気泳動を使用して、M13ユニバーサルプライマーを使用して両鎖について配列決定した。全ての構築物からのDNA配列データを分析し、重鎖及び軽鎖のコンセンサス配列を決定した。コンセンサス配列を、全ての既知の可変領域配列と比較して、人工物及び/又はプロセス汚染を排除した。次に、コンセンサス配列をオンラインツールを使用して分析して、その配列が生産性のある免疫グロブリンをコード可能であることを検証した。マウス及びヒトデータベース(GenBank)との配列比較は、Kabatデータベース(CDR1及びCDR2を同定するため)及びIMGT/V Quest(CDR3を検出するため)プログラムに対するNCBI(NIH,Bethesda,MD)のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を使用して実行し、クエリは、ADx-CEAクローンのDNA配列であった。ADx-CEAの重鎖及び軽鎖についての代表的なBLAST結果を
図2及び
図3に示す。検証目的のために、及び
図2及び3に示されるように、IGHV4-4*02;IGHV3-33*08及びIGHV4-30-4*01の参照ゲノム配列は、Homo Sapiens Ig生殖系列配列に対してブラストした場合、V領域における相同性を検出するための最も信頼性の高い66~67%)配列であることが判明した。最も信頼性の高い可変(V)遺伝子の一致は、IGHV4-4*02であることが判明し、最も信頼性の高い多様性(D)遺伝子の一致は、IGHD2-8*01であることが判明した。最も信頼性の高い接合(J)遺伝子セグメントの一致は、IGHJ6*02であることが判明した。
【0088】
実施例3.
本明細書で「ADx-CEA」と称される、リード候補モノクローナル抗体を選択した。約1μg及び5μgの精製ADx-CEAをPBS中に懸濁し、還元条件(ベータ-メルカプトエタノール及び10%SDSを含む試料緩衝液中で3分間沸騰させた)下でSDS-PAGEゲルに、及び非還元条件下で10%Bis-Trisゲル(それぞれ、レーン3、5及び7、9)に適用した。ゲルを129ボルトで実行し、次いで、Coomassie Blue R350(0.1w/v)、20%v/vメタノール、及び10%v/v酢酸で染色し、10%v/v酢酸を用いて水中50%v/vメタノールで脱染色した。
【0089】
図4に示すように、レーン3は、1μgのADx-CEA mAb(還元)を含有した。レーン5は、5μgのADx-CEA mAb(還元)を含有した。レーン7は、1μgのADx-CEA mAb(非還元)を含有した。レーン9は、5μgのADx-CEA mAb(非還元)を含有した。変性条件下で、ADx-CEAの重鎖(IgG1カッパ)を約50kDaで検出した。ADx-CEAの軽鎖を約25kDaで検出した(
図4)。
【0090】
実施例4.
50μgの組換えCEA(Mybiosource Carcinoembryonic Recombinant Protein、カタログ番号MBS142843)を含有する25μlの試料緩衝液を3分間沸騰させ、5μlの分子マーカーとともに、4~12%のTris-Glycineゲルにロードした。ゲルを125Vで1.5時間実行した。次いで、ゲルをPVDF膜に移した。膜をADx-CEA mAbとともに4℃で一晩インキュベートした。膜をPBSTですすいだ後、それを二次抗体(ヒツジ抗マウスIgG-HRP、PBSTで1:1000希釈)とともに1時間インキュベートし、PBSTですすいだ。1-Step NBT/BCIP溶液で可視化されたバンド。
【0091】
還元条件下で、製造業者の指示に基づいて、ADx-CEAは、
図5の矢印によって示されるように、16kDa及び25kDaのヒトCEAタンパク質の分子量で2つのバンドを検出した。
図5は、反復実験を表す。
【0092】
実施例5.
PANC-1細胞(導管細胞由来の膵臓がんから単離されたヒト膵臓がん細胞株;ATCCから購入)を、ガラス底のウェル上で18時間培養した。細胞を10%パラホルムアルデヒドで固定し、Triton(登録商標) X-100で透過処理した。細胞をPBSで洗浄し、ADx-CEA(5μg/ml)とともに15分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、続いてFITCコンジュゲートマウスIgG(4μg/ml)とともに15分間インキュベートした。細胞を洗浄し、免疫蛍光顕微鏡下で染色を可視化した。
【0093】
図6A~Bは、点状に小胞内に局在するADx-CEAによって検出されたCEAの間接免疫蛍光染色の代表的な画像を示す。
図6Aは、位相差画像を示す。
図6Bは、免疫蛍光染色画像を示す。
【0094】
実施例6.
健康なドナー(n=9)、及び未治療であり、かつ様々なステージ(IA、IB、IIA、IIB、III、IIIA、IV)の膵臓がんと診断された患者(n=17)からの血漿試料を、PBSで希釈した。試料緩衝液を最終体積25μlで添加し、3分間沸騰させた。試料を、5μlの分子マーカーとともに、4~12%のTris-Glycineゲルにロードした。ゲルを125Vで1.5時間実行した。次いで、ゲルをPVDFメンブレンに移した。膜をADx-CEAとともに4℃で一晩インキュベートした。膜をPBSTですすいだ後、それを二次抗体(ヒツジ抗マウスIgG-HRP、PBSTで1:1000希釈)とともに1時間インキュベートし、PBSTですすいだ。1-Step NBT/BCIP溶液で可視化されたバンド。
【0095】
ADx-CEAは、健康なドナー及び膵臓がんと診断された患者からの血漿血液試料中のCEAタンパク質を検出した。
図7。CEAタンパク質発現は様々なレベルを示し、健康な血液試料(n=9)では低レベルでCEAが検出された。様々なステージで診断された膵臓がん患者の血液分析により、ステージとともにCEAタンパク質のレベルが増加することが示された(n=17)。
【0096】
実施例7.
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片を有する組織アレイスライド(BiocoreUSA製、カタログ番号BC001157)を使用した。スライドをキシレンで脱パラフィン化し、一連のアルコールにより水和した。抗原回収を、スチーマ内でクエン酸塩-EDTA緩衝液(pH6.0)中20分間実行した。スライドをH202で10分間処理し、次いで、Background Sniper(Biocare Medical、カタログ番号BS966)で10分間処理した。一次抗体を、NDBのAntibody Diluent Buffer中で60分間1:50希釈する。抗体染色の検出は、Biocare Mach 3試薬を使用し、各成分について10分間インキュベーションして達成された。Gill’s II Hematoxylinを使用して対抗染色を実行した。次いで、スライドをアルコールで脱水し、キシレンで透明処理し、Permountでマウントした。染色の存在を、Lab Vision IHC 360 Autostainer及びDako Link plus IHC Systemを使用して判定した。
【0097】
ADx-CEAは、初期ステージの膵臓がんを検出した。
図8。
図8に示すように、DAKO抗ヒト市販CEA mAbは、部分的に陽性を示した様々なステージの膵臓がん組織で偽陰性染色を示し、ステージI、III及びIVではなく、ステージII組織のみを染色した。一方、ADx-CEAは、ステージI~IV組織を含む同じ組織で陽性染色を示した。染色は、膜、細胞質、及びパターンを示し、ステージが増加するにつれて検出されたCEAの発現が増加することを示した。病理学者は、染色された組織が膵臓がんと診断されることを確認した。
【0098】
実施例8.
合計215の健康な組織及び膵臓がん組織における病理検査室(John’s Hopkins及びCLIA病理)での免疫組織化学(IHC)染色を使用して、健康な正常なヒト組織(n=19)、及び様々なステージの膵臓がんと診断された患者組織(n=196)を含む、合計215の組織試料において、ADx-CEAを使用して免疫組織化学(IHC)染色を実行し、DAKOからの市販のFDA承認マウス抗ヒトCEA抗体を使用して並行して比較した。
【0099】
ADx-CEAの感受性の計算値は99.5%であったが、市販のmAbは、表3~5及び
図9A~Bに示されるように34%であった。初期ステージ(I、II)の感受性及び特異性を
図10A~Bに示す。後期ステージ(III、IV)の感受性及び特異性を
図11A~Bに示す。
【表3】
【0100】
表4~5は、頻度分布並びに対応する感受性及び特異性を表示する。
【表4】
【0101】
ADx-CEAの感受性(表4のデータを使用して推定):195/196=0.9948×100=99.5%
【0102】
ADx-CEAの特異性(表4のデータを使用して推定):19/19=1.00×100=100%
【表5】
【0103】
DAKO-CEAの感受性(表5のデータを使用して推定):66/196=0.3367×100=34%
【0104】
DAKO-CEAの特異性(表5のデータを使用して推定):19/19=1.00×100=100%
【0105】
実施例9.
ヒトBxPC-3膵臓腺がん細胞株は、American Type Culture Collection(Manassas,VA,USA)から購入した。細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS;Thermostat Scientific,Inc.)を補充したRPMI-1640;American Type Culture Collection,Manassas,VA,USA)中で培養し、5%CO2雰囲気中で37℃で維持した。
【0106】
軟質寒天コロニー形成アッセイ:BxPC-3細胞(2,000細胞)を、10%FBSを補充したRPMI-1640中の0.3%Noble寒天(Difco;BD Biosciences,Franklin Lakes,NJ,USA)中のADx-CEAと、又はPBSのみに懸濁し、12ウェル組織培養プレート中の0.8% Noble寒天に重ねた。コロニーを成長培地で2.5週間成長させ、コロニー形成を観察し、データ分析のためにカウントした。
【0107】
BxPC-3細胞を、ADx-CEAの非存在下(PBSのみ)及び異なる濃度のADx-CEAの存在下で、軟質寒天中で培養した。2.5週間後、倒立顕微鏡を使用してコロニーを画像化した(
図12A~B)。ウェルの画像は、3つの独立した実験の代表である。
【0108】
BxPC-3細胞を、PBS、又は10、25、及び50μg/mLのADx-CEA中の軟質寒天中で成長させた。2.5週間後、70μmを超える個々のコロニーをカウントした。実験を3回繰り返した。対照試料と処理試料との間の総コロニー数差の統計的有意性を、スチューデントt検定によって判定した(*p<0.005)(
図12C)。BxPC-3細胞は、10μg/mL、25μg/mL及び50μg/mLのADx-CEAの存在下でのコロニー形成において、用量依存的に顕著な減少を示した。
【0109】
実施例10.
CEAタンパク質の発現は、IHC染色を使用して、本明細書に記載のADx-CEAを使用して、健康な個体及びがん患者からの健康な組織及びがん性組織において検証した。抗体を、乳房、リンパ、子宮頸部、前立腺、膵臓、卵巣、膀胱、腎臓、子宮、結腸、肝臓、脳、直腸、食道、胃、肺、及び子宮からの組織に対して試験した。膵臓(
図13A)、結腸(
図13B)及び肝臓(
図13C)のがん組織は、CEA発現について陽性の膜性細胞質染色を示した。乳がん及び腎臓がんは弱い染色を示した(データは示さず)。リンパ、子宮頸部、前立腺、卵巣、食道、膀胱、子宮、脳、胃、子宮、肺、及び直腸からの組織は、CEA発現について陰性染色を示した(データは示さず)。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】