IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッドの特許一覧

特表2024-540395COVID-19を治療及び予防するための組成物
<>
  • 特表-COVID-19を治療及び予防するための組成物 図1
  • 特表-COVID-19を治療及び予防するための組成物 図2
  • 特表-COVID-19を治療及び予防するための組成物 図3
  • 特表-COVID-19を治療及び予防するための組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】COVID-19を治療及び予防するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K39/395 S
A61K39/395 D
A61P31/14
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/08
C07K16/10 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526964
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 EP2022080837
(87)【国際公開番号】W WO2023079086
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,410
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300022113
【氏名又は名称】アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】1 Francis Crick Avenue, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AA, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】シュメルザー,アルバート
(72)【発明者】
【氏名】パテル,サジャル
(72)【発明者】
【氏名】メディナ,アネット
(72)【発明者】
【氏名】ガレゴス,オースティン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB15
4C076CC07
4C076CC35
4C076DD46
4C076DD51Z
4C076DD67
4C076EE30
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA71
4C085EE01
4C085GG03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、対象のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を予防及び治療するための、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する第1の抗体又はその抗原結合フラグメント、及び任意選択的にSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する第2の抗体又はその抗原結合フラグメントと、
(b)ヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩と、
(c)アルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩又はスクロースと、
(d)ポリソルベートと、
を含む医薬製剤であって、
前記製剤が、約5.5~6.5のpHを有する、医薬製剤。
【請求項2】
前記製剤が、約15mM~約25mMの(b)を含み、任意選択的に、前記製剤が、約20mMの(b)を含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
(b)が、ヒスチジン/ヒスチジンHClである、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記製剤が、約200~約250mMの(c)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
(c)が、アルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
(c)が、アルギニン/アルギニンHClである、請求項5に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記製剤が、約220mMの(c)を含む、請求項5又は6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
(c)が、スクロースである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記製剤が、約240mMの(c)を含む、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記製剤が、約0.03%~約0.05%(w/v)の(d)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
(d)が、ポリソルベート80である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記製剤が、約6.0のpHを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
(a)SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する第1の抗体又はその抗原結合フラグメント、及びSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する第2の抗体又はその抗原結合フラグメントと、
(b)約20mMのヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩と、
(c)約220mMのアルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩と、
(d)約0.04%(w/v)のポリソルベート80と、
を含む、医薬製剤であって、
前記製剤が、約6.0のpHを有する、医薬製剤。
【請求項14】
前記製剤が、約135mg/mL~約165mg/mLの(a)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記製剤が、約150mg/mLの(a)を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記製剤が、約1:1比率の前記第1の抗体又はその抗原結合フラグメント及び前記第2の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記製剤が、約2mLである、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記製剤が、約300mgの(a)を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1と、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含み、且つ/又は
前記第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVH CDR1と、配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号12のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号13のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含み、並びに/又は、前記第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項21】
前記第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、IgGであり、且つ/又は前記第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、IgGである、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、IgG1であり、且つ/又は前記第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、IgG1である、請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項23】
前記第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、YTE変異であり、且つ/又は前記第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、YTE変異である、請求項1~22のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項24】
前記第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、TM変異であり、且つ/又は前記第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、TM変異である、請求項1~23のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項25】
前記第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号17のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、且つ/又は前記第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号19のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項26】
(a)SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと、
(b)約20mMのヒスチジン/ヒスチジンHClと、
(c)約240mMのスクロースと、
(d)約0.04%(w/v)のポリソルベート80と、
を含む、医薬製剤であって、
前記製剤が、約6.0のpHを有する、医薬製剤。
【請求項27】
前記製剤が、約100mg/mLの(a)を含む、請求項1~12及び26のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項28】
前記製剤が、約1.5mLである、請求項1~12、26、及び27のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項29】
前記製剤が、約150mgの(a)を含む、請求項1~12及び26~28のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項30】
前記抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1と、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含むか、又は
前記抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号12のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号13のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含む、
請求項1~12及び26~29のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項31】
前記抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含むか、又は
前記抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含む、
請求項1~12及び26~30のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項32】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、IgGである、請求項1~12及び26~31のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項33】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、IgG1である、請求項1~12及び26~32のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項34】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、YTE変異である、請求項1~12及び26~33のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項35】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、TM変異である、請求項1~12及び26~34のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項36】
前記抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号17のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むか、又は
前記抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、配列番号19のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、
請求項1~12及び26~35のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項37】
筋肉内注射用に製剤化されている、請求項1~36のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項38】
大腿外側、臀部背側、又は臀部腹側への直接注射用に製剤化されている、請求項1~37のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項39】
前記製剤が、2~8℃で少なくとも12ヵ月間安定である、請求項1~38のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記製剤が、室温で少なくとも1週間又は少なくとも2週間安定である、請求項1~39のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項41】
請求項1~40のいずれか一項に記載の医薬製剤を含むバイアル。
【請求項42】
請求項1~40のいずれか一項に記載の医薬製剤を含むシリンジ。
【請求項43】
前記第1の製剤が、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1と、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含む抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、
前記第2の製剤が、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号12のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号13のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含む抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、
請求項1~12及び26~40のいずれか一項に記載の第1の医薬製剤と、請求項1~12及び26~40のいずれか一項に記載の第2の医薬製剤とを含むキット。
【請求項44】
前記第1の製剤が、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含む抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含むか、又は
前記第2の製剤が、配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含む抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含む、
請求項43に記載のキット。
【請求項45】
前記第1の製剤が、配列番号17のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含むか、又は
前記第2の製剤が、配列番号19のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含む、
請求項43又は44に記載のキット。
【請求項46】
対象のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を治療及び予防する方法で用いるための、請求項1~45のいずれか一項に記載の医薬製剤、バイアル、シリンジ、又はキット。
【請求項47】
対象のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を治療及び予防する方法であって、請求項1~45のいずれか一項に記載の医薬製剤、バイアル、シリンジ、又はキットを、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項48】
前記方法が、COVID-19の1つ以上の症状の重症度を予防又は低減させる、請求項46又は47に記載の医薬製剤、バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【請求項49】
前記対象が、SARS-CoV-2に暴露されたことがある、請求項45~48のいずれか一項に記載の医薬製剤、バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【請求項50】
前記対象が、SARS-CoV-2に暴露されたことがあるか不明である、請求項45~48のいずれか一項に記載の医薬製剤バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【請求項51】
前記対象が、70kg未満である、請求項45~50のいずれか一項に記載の医薬製剤バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【請求項52】
前記対象が、少なくとも70kg及び80kg未満である、請求項45~50のいずれか一項に記載の医薬製剤バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【請求項53】
前記対象が、少なくとも80kgである、請求項45~50のいずれか一項に記載の医薬製剤バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【請求項54】
前記対象が、抗SARS-CoV-2ワクチン接種を受けている、請求項45~53のいずれか一項に記載の医薬製剤バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【請求項55】
前記対象が、少なくとも2つの抗SARS-CoV-2ワクチン接種を受けている、請求項45~54のいずれか一項に記載の医薬製剤バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【請求項56】
前記対象が、抗SARS-CoV-2ワクチン接種を受けていない、請求項45~53のいずれか一項に記載の医薬製剤バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【請求項57】
前記対象が、18~30kg/m2のBMIを有する、請求項45~56のいずれか一項に記載の医薬製剤バイアル、シリンジ、キット、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月5日に出願された米国仮特許出願第63/276,410号明細書の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
2.電子書式で提出した配列表の参照
本願とともに提出された、電子書式で提出された配列表(名称:2943_206PC01_Seqlisting_ST26;サイズ:25,608バイト;及び作成日:2022年10月7日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
3.分野
本開示は、一般に、対象のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を予防及び治療するための抗体及びその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
4.概要
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する1つ以上の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤が本明細書で提供される。いくつかの態様では、(a)SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する第1の抗体又はその抗原結合フラグメント、及び任意選択的にSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する第2の抗体又はその抗原結合フラグメントと、(b)ヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩と、(c)アルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩又はスクロースと、(d)ポリソルベートと、を含む医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約5.5~6.5のpHを有する。
【0005】
いくつかの態様では、本明細書に記載される製剤は、約15mM~約25mMの(b)を含み、任意選択的に、製剤は、約20mMの(b)を含む。いくつかの態様では、(b)は、ヒスチジン/ヒスチジンHClである。
【0006】
いくつかの態様では、本明細書に記載される製剤は、約200~約250mMの(c)を含む。いくつかの態様では、(c)は、アルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、(c)は、アルギニン/アルギニンHClである。いくつかの態様では、製剤は、約220mMの(c)を含む。いくつかの態様では、(c)は、スクロースである。いくつかの態様では、製剤は、約240mMの(c)を含む。
【0007】
いくつかの態様では、本明細書に記載される製剤は、約0.03%~約0.05%(w/v)の(d)を含む。いくつかの態様では、(d)は、ポリソルベート80である。
【0008】
いくつかの態様では、本明細書に記載される製剤は、約6.0のpHを有する。
【0009】
いくつかの態様では、(a)SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する第1の抗体又はその抗原結合フラグメント、及びSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する第2の抗体又はその抗原結合フラグメントと、(b)約20mMのヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩と、(c)約220mMのアルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩と、(d)約0.04%(w/v)のポリソルベート80と、を含む医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約6.0のpHを有する。
【0010】
いくつかの態様では、製剤は、約135mg/mL~約165mg/mLの(a)を含む。いくつかの態様では、製剤は、約150mg/mLの(a)を含む。
【0011】
本明細書に記載される医薬製剤の、いくつかの態様では、製剤は、約1:1比率の第1の抗体又はその抗原結合フラグメント及び第2の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0012】
いくつかの態様では、製剤は、約2mLである。
【0013】
いくつかの態様では、製剤は、約300mgの(a)を含む。
【0014】
本明細書に記載される医薬製剤のいくつかの態様では、第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1と、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含み、且つ/又は第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号9のアミノ酸配列を含むVH CDR1と、配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号12のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号13のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含む。
【0015】
本明細書に記載される医薬製剤のいくつかの態様では、第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含み、且つ/又は第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含む。
【0016】
いくつかの態様では、第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、IgGであり、且つ/又は第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、IgGである。いくつかの態様では、第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、IgG1であり、且つ/又は第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、IgG1である。いくつかの態様では、第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、YTE変異を含み、且つ/又は第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、YTE変異を含む。
【0017】
本明細書に記載される医薬製剤のいくつかの態様では、第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号17のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、且つ/又は第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号19のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0018】
いくつかの態様では、(a)SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと、(b)約20mMのヒスチジン/ヒスチジンHClと、(c)約240mMのスクロースと、(d)約0.04%(w/v)のポリソルベート80と、を含む医薬製剤が本明細書で提供され、製剤は、約6.0のpHを有する。
【0019】
いくつかの態様では、製剤は、約100mg/mLの(a)を含む。いくつかの態様では、製剤は、約150mgの(a)を含む。
【0020】
いくつかの態様では、製剤は、約1.5mLである。
【0021】
本明細書に記載される医薬製剤のいくつかの態様では、抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1と、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含むか、又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号12のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号13のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含む。
【0022】
いくつかの態様では、抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含むか、又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含む。
【0023】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgGである。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1である。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、YTE変異を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、TM変異を含む。
【0024】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号17のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むか、又は抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号17のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0025】
いくつかの態様では、医薬製剤は、筋肉内注射用に製剤化されている。いくつかの態様では、医薬製剤は、大腿外側、臀部背側、又は臀部腹側への直接注射用に製剤化されている。
【0026】
本明細書に記載される医薬製剤のいくつかの態様では、製剤は、2~8℃で少なくとも12ヵ月間安定である。いくつかの態様では、製剤は、室温で少なくとも1週間又は少なくとも2週間安定である。
【0027】
いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤を含むバイアルの開示が提供される。いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤を含むシリンジの開示が提供される。
【0028】
いくつかの態様では、第1の医薬製剤及び第2の医薬製剤を含むキットが本明細書に開示され、第1の製剤は、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1と、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含む抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、第2の製剤は、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR2と、配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR3と、配列番号12のアミノ酸配列を含むVL CDR1と、配列番号13のアミノ酸配列を含むVL CDR2と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL CDR3とを含む抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0029】
本明細書に開示されるキットのいくつかの態様では、第1の製剤は、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含む抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含むか、又は第2の製剤は、配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含む抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含む。
【0030】
本明細書に開示されるキットのいくつかの態様では、第1の製剤は、配列番号17のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含むか、又は第2の製剤は、配列番号17のアミノ酸1~460を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体若しくはその抗原結合フラグメントを含む。
【0031】
いくつかの態様では、対象のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を治療又は予防する方法で用いるための医薬製剤、バイアル、シリンジ、又は医薬製剤を含むキットが本明細書で提供される。
【0032】
いくつかの態様では、対象のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を治療又は予防する方法が本明細書で提供され、本明細書に記載される医薬製剤、バイアル、シリンジ、又はキットを、対象に投与することを含む。いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤、バイアル、シリンジ、キット、又は方法は、COVID-19の1つ以上の症状の重症度を予防又は低減させる。いくつかの態様では、対象は、SARS-CoV-2に暴露されたことがある。いくつかの態様では、対象は、SARS-CoV-2に暴露されたことがあるか不明である。
【0033】
いくつかの態様では、対象は、70kg未満である。いくつかの態様では、対象は、少なくとも70kg及び80kg未満である。いくつかの態様では、対象は、少なくとも80kgである。
【0034】
いくつかの態様では、対象は、抗SARS-CoV-2ワクチン接種を受けている。いくつかの態様では、対象は、抗SARS-CoV-2に対する少なくとも2回の抗SARS-CoV-2ワクチン接種を受けている。いくつかの態様では、対象は、抗SARS-CoV-2ワクチン接種を受けていない。いくつかの態様では、対象は、18~30kg/m2のBMIを有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】抗SARS-CoV-2抗体製剤の粘度を示す。
図2】抗SARS-CoV-2抗体製剤の粘度を最小化するアルギニンの有効性を示す。
図3】スクロース(緩衝液1)又はアルギニン(緩衝液2)を含む抗SARS-CoV-2抗体製剤のNUV CDプロファイルを示す。
図4】スクロース(B1)又はアルギニン(B2)を含む抗SARS-CoV-2抗体製剤の立体構造的安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
例えば、COVID-19を治療及び予防するための、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤が本明細書で提供される。
【0037】
6.1 用語
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子であって、この免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1か所の抗原認識部位を介して、標的(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質又は前述の組み合わせ)を認識して特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、当該抗体が所望の生物学的活性を示す限り、インタクトポリクローナル抗体、インタクトモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体を含む融合タンパク質、及び他の任意の修飾免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM又はそれらのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)(それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれる重鎖定常ドメインの同一性に基づく)のいずれかであり得る。免疫グロブリンの異なるクラスは、異なる周知のサブユニット構造及び3次元立体配置を有する。抗体は裸抗体であっても、毒素、放射性同位体などの他の分子にコンジュゲートされていてもよい。
【0038】
用語「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の一部分を指す。「抗原結合フラグメント」、「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合領域」は、抗原に結合するインタクト抗体の一部分を指す。抗原結合フラグメントは、インタクト抗体の抗原決定領域(例えば、相補性決定領域(CDR))を含み得る。抗体の抗原結合フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント、直鎖抗体、並びに単鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体の抗原結合フラグメントは、げっ歯類(例えば、マウス、ラット又はハムスター)及びヒトなどの任意の動物種から得ることができるか、又は人工的に作製することができる。
【0039】
用語「抗SARS-CoV-2」、「SARS-CoV-2抗体」及び「SARS-CoV-2に結合する抗体」は、本明細書において互換的に用いられ、SARS-CoV-2に結合することができる抗体を指す。無関係の非SARS-CoV-2スパイクタンパク質へのSARS-CoV-2抗体の結合の程度は、例えばForteBio又はBiacoreを用いて測定した場合、SARS-CoV-2への抗体の結合の約10%未満であり得る。本明細書で提供されるいくつかの態様では、SARS-CoV-2抗体は、SARS-1にも結合することができる。本明細書で提供されるいくつかの態様では、SARS-CoV-2抗体は、SARS-1に結合しない。
【0040】
用語「SARS-CoV-2抗体の抗スパイクタンパク質」、「SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗体」及び「SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する抗体」は、本明細書において互換的に用いられ、SARS-CoV-2を標的化する際に抗体が診断剤及び/又は治療剤として有用となるように十分な親和性を有する、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合可能な抗体を指す。無関係の非SARS-CoV-2スパイクタンパク質へのSARS-CoV-2スパイクタンパク質抗体の結合の程度は、例えばForteBio又はBiacoreを用いて測定した場合、SARS-CoV-2スパイクタンパク質への抗体の結合の約10%未満であり得る。本明細書で提供されるいくつかの態様では、SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗体は、SARS-1のスパイクタンパク質にも結合することができる。本明細書で提供されるいくつかの態様では、SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗体は、SARS-1のスパイクタンパク質に結合しない。
【0041】
「モノクローナル」抗体又はその抗原結合フラグメントは、単一の抗原決定基又はエピトープを高度に特異的に認識して結合することに関与する均質な抗体又は抗原結合フラグメントの集団を指す。このことは、典型的には異なる抗原決定基に対して異なる抗体を含むポリクローナル抗体とは対照的である。用語「モノクローナル」抗体又はその抗原結合フラグメントは、インタクト及び完全長モノクローナル抗体の両方、並びに抗体フラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(scFv)変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の改変免疫グロブリン分子を包含する。さらに、「モノクローナル」抗体又はその抗原結合フラグメントは、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、及びトランスジェニック動物によるものが挙げられるがこれらに限定されない任意の数の方法で製造されるような抗体及びその抗原結合フラグメントを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、互換的に用いられ、当該技術分野において一般的である。可変領域は、典型的には抗体の一部分、一般に、軽鎖又は重鎖の一部分、典型的には成熟重鎖中のアミノ末端の約110~120個のアミノ酸又は110~125個のアミノ酸、及び成熟軽鎖中の約90~115個のアミノ酸を指し、これらは抗体間で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する特定の抗体の結合性及び特異性において用いられる。配列の可変性は、相補性決定領域(CDR)と称される領域に集中しているが、可変ドメイン中のより高度に保存された領域はフレームワーク領域(FR)と称される。いかなる特定の機序又は理論にも縛られることを望むものではないが、軽鎖及び重鎖のCDRは、主に抗体と抗原との相互作用及び特異性に関与するものと考えられる。いくつかの態様では、可変領域は、ヒト可変領域である。いくつかの態様では、可変領域は、げっ歯類又はネズミ科のCDR、及びヒトのフレームワーク領域(FR)を含む。いくつかの態様では、可変領域は、霊長類(例えば非ヒト霊長類)の可変領域である。いくつかの態様では、可変領域は、げっ歯類又はネズミ科のCDR、及び霊長類(例えば非ヒト霊長類)のフレームワーク領域(FR)を含む。
【0043】
本明細書で使用する用語「相補性決定領域」又は「CDR」は、配列が超可変性であり、且つ/又は構造的に明確なループ(超可変ループ)を形成し、且つ/又は抗原接触残基を含む抗体可変ドメインの領域の各々を指す。抗体は、6つのCDR(例えばVHに3つ及びVLに3つ)を含み得る。
【0044】
用語「VL」及び「VLドメイン」は、互換的に用いられ、抗体の軽鎖可変領域を指す。
【0045】
用語「VH」及び「VHドメイン」は、互換的に用いられ、抗体の重鎖可変領域を指す。
【0046】
用語「Kabat付番」及び同様の用語は、当該技術分野において認識されており、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域又はそれらの抗原結合フラグメントのアミノ酸残基を付番する方式を指す。いくつかの態様では、CDRは、Kabat付番方式に従って決定することができる(例えば、Kabat EA & Wu TT(1971)Ann NY Acad Sci 190:382-391及びKabat EA et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)。Kabat付番方式を使用すると、抗体重鎖分子内のCDRは、典型的には、アミノ酸31位~35位(35位の後に続く1つ又は2つの追加のアミノ酸(Kabat付番スキームでは35A及び35Bと称する)を任意選択的に含み得る)(CDR1)、アミノ酸50位~65位(CDR2)及びアミノ酸95位~102位(CDR3)に存在する。Kabat付番方式を使用すると、抗体軽鎖分子内のCDRは、典型的には、アミノ酸24位~34位(CDR1)、アミノ酸50位~56位(CDR2)及びアミノ酸89位~97位(CDR3)に存在する。
【0047】
その代わりに、Chothiaは、構造ループの位置を参照するものである(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat付番規則を使用して付番した場合のChothia CDR-H1ループの末端は、このループの長さに応じてH32~H34で変化する(これは、Kabat付番方式がH35A及びH35Bに挿入を置くためであり、35Aも35Bも存在しない場合、このループは32で終わり、35Aのみが存在する場合、このループは33で終わり、35A及び35Bの両方が存在する場合、このループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの妥協案を示しており、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。
【0048】
【表1】
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「定常領域」又は「定常ドメイン」は、互換的であり、当該技術分野における一般的な意味を有する。定常領域は、抗体部分、例えば、抗体が抗原に結合するのに直接関与しないが、Fc受容体との相互作用などの様々なエフェクター機能を示し得る、軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシル末端部分である。免疫グロブリン分子の定常領域は、一般に、免疫グロブリン可変ドメインと比較してより保存されたアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、抗体又は抗原結合フラグメントは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に十分な定常領域又はその一部分を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「重鎖」は、抗体に関して使用する場合、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、任意の別個のタイプ、例えば、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)を指すことができ、これにより、IgGのサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む、抗体のIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMクラスがそれぞれ生じる。重鎖アミノ酸配列は、当該技術分野においてよく知られている。いくつかの態様では、重鎖は、ヒト重鎖である。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「軽鎖」は、抗体に関して使用する場合、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、任意の別個のタイプ、例えばκ(カッパ)又はλ(ラムダ)を指すことができる。軽鎖アミノ酸配列は、当該技術分野においてよく知られている。いくつかの態様では、軽鎖は、ヒト軽鎖である。
【0052】
用語「キメラ」抗体又はその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体又はその抗原結合フラグメントを指す。典型的には、軽鎖及び重鎖双方の可変領域は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)の一種に由来する、所望される特異性、親和性、及び能力を有する抗体又はその抗原結合フラグメントの可変領域に対応する一方で、定常領域は、別の種(通常はヒト)における免疫応答を誘発することを回避するために、その種に由来する抗体又はその抗原結合フラグメント内の配列に相同である。
【0053】
用語「ヒト化」抗体又はその抗原結合フラグメントは、最小限の非ヒト(例えばマウス)配列を含有する、特定の免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン、又はそのフラグメントである非ヒト(例えばマウス)抗体又は抗原結合フラグメントの形態を指す。典型的には、ヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントは、相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDR由来の残基によって置換されている(「CDRグラフト化」)ヒト免疫グロブリンである(Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536(1988))。いくつかの態様では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、所望される特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種由来の抗体又はフラグメント内の対応する残基で置換されている。ヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントはさらに、Fvフレームワーク領域にある、且つ/又は置換された非ヒト残基内にある追加の残基の置換によって修飾され、抗体又はその抗原結合フラグメントの特異性、親和性、及び/又は能力を洗練して最適化することができる。一般に、ヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントは、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域の全て又は実質的に全てを含有する少なくとも1つ、典型的には2つ又は3つの可変ドメインの実質的に全てを含むこととなるが、FR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。また、ヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントは、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含み得る。ヒト化抗体を生成するのに用いられる方法の例は、米国特許第5,225,539号明細書、Roguska et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91(3):969-973(1994)及びRoguska et al.,Protein Eng.9(10):895-904(1996)に記載されている。いくつかの態様では、「ヒト化抗体」は、再表面化抗体(resurfaced antibody)である。
【0054】
用語「ヒト」抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト免疫グロブリン遺伝子座に由来するアミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合フラグメントを意味し、そのような抗体又は抗原結合フラグメントは、当該技術分野において知られている任意の技術を用いて製造される。ヒト抗体又はその抗原結合フラグメントのこの定義は、インタクトな抗体又は完全長の抗体、及びそれらのフラグメントを含む。
【0055】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば抗体又はその抗原結合フラグメント)の単一の結合部位と、その結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合性の相互作用の合計の強度を指す。特に指定されない限り、本明細書で使用される「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメントと抗原)間の1:1相互作用を反映する内因性結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(K)によって表され得る。親和性は、当該技術分野において知られている多くの方法、例えば平衡解離定数(K)及び平衡結合定数(K)(これらに限定されない)で測定され、且つ/又は表され得る。Kはkoff/konの商から計算される一方、Kはkon/koffの商から計算される。konは、例えば抗体又はその抗原結合フラグメントの抗原に対する結合速度定数を指し、koffは、例えば抗体又はその抗原結合フラグメントの抗原からの解離を指す。kon及びkoffは、当業者に知られている技術、例えばBIAcore(登録商標)又はKinExAによって決定することができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」及び「特異的に認識する」は、抗体又はその抗原結合フラグメントの文脈では類似の用語である。これらの用語は、抗体又はその抗原結合フラグメントがその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、及び結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間にいくらかの相補性を必要とすることを示している。したがって、いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に「特異的に結合する」抗体は、1つ以上の関連するウイルス(例えばSARS-1)のスパイクタンパク質にも結合することができ、且つ/又は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のバリアントにも結合することができるが、関連しない非SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する結合の程度は、例えばForteBio又はBiacoreを用いて測定した場合、SARS-CoV-のスパイクタンパク質に対する抗体の結合の約10%未満である。
【0057】
「単離」されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、天然に見られない形態のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物である。単離ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物としては、もはや天然に見られる形態でなくなる程度に精製されているものが挙げられる。いくつかの態様では、単離された抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、実質的に純粋である。本明細書で使用される「実質的に純粋」は、少なくとも50%純粋(即ち、夾雑物を含まない)、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも98%純粋、又は少なくとも99%純粋な材料を指す。
【0058】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書において互換的に用いられ、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは直鎖であっても又は分枝鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。この用語は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば標識成分とのコンジュゲーションにより、天然に又は介在により修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、アミノ酸の1つ又は複数の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)及び当該技術分野において知られている他の修飾を含有するポリペプチドも定義の範囲に含まれる。本発明のポリペプチドは抗体に基づくため、いくつかの態様では、ポリペプチドは単鎖又は結合鎖として存在し得ることが理解される。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、任意の種類の細胞、例えば初代細胞、培養細胞、又は細胞株由来細胞であってよい。いくつかの態様では、用語「宿主細胞」は、核酸分子でトランスフェクトされた細胞、及びそのような細胞の後代又は潜在的後代を指す。このような細胞の後代は、例えば、後続世代において、又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組み込みにおいて生じ得る変異又は環境の影響のために、核酸分子でトランスフェクトされた親細胞と同一でない場合がある。
【0060】
用語「医薬製剤」は、活性成分の生物活性が有効となることを可能にするような形態をし、且つ配合物が投与される対象に対して許容できないほど毒性の高い追加の成分を含有しない製剤を指す。製剤は、無菌であり得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「投与する(administer)」、「投与すること(administering)」、「投与(administration)」などは、薬剤、例えば、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントの組み合わせを、所望の生物学的作用部位に送達することができるように使用され得る方法(例えば、静脈内投与)を指す。本明細書に記載される薬剤及び方法と共に用いることのできる投与技法は、例えば、Goodman and Gilman,The Pharmacological Basis of Therapeutics,current edition,Pergamon;及びRemington’s,Pharmaceutical Sciences,current edition,Mack Publishing Co.,Easton,Paに見出される。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は、互換的に用いられる。対象は動物であってよい。いくつかの態様では、対象は、哺乳動物、例えば非ヒト動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、マウス、サル又は他の霊長類など)である。いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0063】
用語「治療有効量」は、対象の疾患又は障害を治療するのに有効な薬物、例えば抗体又はその抗原結合フラグメントの組み合わせの量を指す。
【0064】
「治療する(treating)」若しくは「治療(treatment)」若しくは「治療すること(to treat)」又は「軽減する(alleviating)」若しくは「軽減すること(to alleviate)」などの用語は、診断された病状又は障害を治癒し、減速し、その症状を緩和し、且つ/又はその進行を停止させる治療的手段を指す。したがって、治療を必要とする者には、障害を有すると既に診断されたか又は障害を有することが疑われる者が含まれる。治療を必要とする患者又は対象には、コロナウイルス2019(COVID-19)と診断された者、及び重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)に感染している者が含まれ得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「COVID-19」は、SARS-CoV-2による感染症を指す。COVID-19を有する対象は、症候性であってもよく、又は無症候性であってもよい。
【0066】
本明細書で使用される場合、「抗SARS-CoV-2ワクチン接種を受けている」対象は、少なくとも1回の投与又は抗SARS-CoV-2ワクチンを受けている対象を指す。ワクチンは、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン又はDNAワクチンであり得る。本明細書で使用される場合、「少なくとも2回の抗SARS-CoV-2ワクチン接種を受けている」対象は、少なくとも2回の抗SARS-CoV-2ワクチン投与を受けている対象を指す。2回の投与は、同じワクチン投与又は異なるワクチン投与であり得る。
【0067】
或いは、薬理学的及び/又は生理学的な効果は予防的なものであってよく、即ち、この効果は、疾患又はその症状を完全又は部分的に予防する。この点に関して、開示される方法は、「予防有効量」の薬物(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメントの組み合わせ)を投与することを含む。「予防有効量」は、所望の予防結果(例えば、COVID-19又はSARS-CoV-2感染症の予防)を達成するのに必要な投与量及び期間において有効な量を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「組み合わせ」及び「組み合わせて投与される」は、本明細書に記載される1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを、本明細書に記載される別の抗体又はその抗原結合フラグメントと共に投与することを指す。組み合わせにおける抗体又はその抗原結合フラグメントは、同時に又は連続的に投与することができる。組み合わせにおける抗体又はその抗原結合フラグメントは、同一又は異なる組成物中で投与することができる。
【0069】
本明細書で提供される、組み合わせにおける「第1の」抗体又はその抗原結合フラグメント及び「第2の」抗体又は抗原結合フラグメントは、投与の順番を指すものではない。「第1の抗体又はその抗原結合フラグメント」は、「第2の抗体又はその抗原結合フラグメント」の前又は後のいずれかで投与することができる。
【0070】
本開示及び特許請求の範囲で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数形を含む。
【0071】
態様が「含む(comprising)」という語と共に本明細書に記載される場合は必ず、用語「からなる(consisting of)」及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」で別途記載される類似の態様も提供されることが理解される。本開示において、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有している(containing)」及び「有している(having)」などは、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」などの意味を有することができ、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「本質的になる(consists essentially)」はオープンエンドであり、列挙されるものの基本的又は新規な特性が、列挙されるもの以外の存在によって変化しない限りにおいて、列挙されるもの以外の存在を許容するが、先行技術の態様は除外する。
【0072】
特に明記されず、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、用語「又は」は、包括的であることが理解される。本明細書において「A及び/又はB」などの語句で使用される用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A」、及び「B」の両方を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句で使用される用語「及び/又は」は、以下の態様のそれぞれを包含することが意図される:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「約」及び「およそ」は、数値又は数の範囲を修飾するのに用いられる場合、当該値又は範囲から上回って10%まで、下回って10%までの偏差が、引用される値又は範囲の意図される意味の範囲内に留まることを示す。態様が、語「約」又は「およそ」の数値又は範囲を伴って本明細書に記載される場合は必ず、(「約」を含まない)その特定の数値又は範囲に言及したそれ以外の類似の態様も提供されることが理解される。
【0074】
本明細書で提供される組成物又は方法はいずれも、本明細書で提供される他の組成物及び方法のいずれかの1つ以上と組み合わせることができる。
【0075】
6.2 抗SARS-CoV-2抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物
対象のCOVID-19(即ち、SARS-CoV-2感染症)を治療又は予防する方法で用いるための抗SARS-CoV-2抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物が本明細書で提供される。いくつかの態様では、方法は、本明細書に記載される1つ以上の医薬製剤中の第1及び第2の抗SARS-CoV-2抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0076】
本明細書で提供される、医薬製剤は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含み得る。いくつかの態様では、医薬製剤は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する1つ以下の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、2つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、各抗体又はその抗原結合フラグメントは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する。
【0077】
本明細書で提供される、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤は、ヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩をさらに含み得る。いくつかの態様では、薬学的に許容される塩は、HClである。したがって、医薬製剤は、ヒスチジン/ヒスチジン-HClを含み得る。いくつかの態様では、医薬製剤は、約15nM~約25mMのヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、約15nM~約25mMのヒスチジン/ヒスチジンHCl)を含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約15nM~約20mMのヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、約15nM~約20mMのヒスチジン/ヒスチジンHCl)を含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約20nM~約25mMのヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、約20nM~約25mMのヒスチジン/ヒスチジンHCl)を含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約18nM~約22mMのヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、約18nM~約22mMのヒスチジン/ヒスチジンHCl)を含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約20mMのヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、約20mMのヒスチジン/ヒスチジンHCl)を含む。
【0078】
本明細書で提供されるように、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤は、アルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩をさらに含み得る。いくつかの態様では、薬学的に許容される塩は、HClである。したがって、医薬製剤は、アルギニン/アルギニンHClを含み得る。いくつかの態様では、医薬製剤は、約200nM~約250mMのアルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、約200nM~約250mMのアルギニン/アルギニンHCl)を含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約210nM~約230mMのアルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、約210nM~約230mMのアルギニン/アルギニンHCl)を含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約220mMのアルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、約220mMのアルギニン/アルギニンHCl)を含む。
【0079】
本明細書で提供される、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤は、スクロースをさらに含み得る。いくつかの態様では、医薬製剤は、約200nM~約250mMのスクロースを含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約230nM~約250mMのスクロースを含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約240mMのスクロースを含む。
【0080】
本明細書で提供される、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤は、ポリソルベートをさらに含み得る。いくつかの態様では、医薬製剤は、ポリソルベート80を含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約0.03%~約0.05%(w/v)のポリソルベート(例えば、約0.03%~約0.05%(w/v)のポリソルベート80)を含む。いくつかの態様では、医薬製剤は、約0.04%(w/v)のポリソルベート(例えば、約0.04%(w/v)のポリソルベート80)を含む。
【0081】
本明細書で提供される医薬組成物は、約5.5~約6.5のpHを有し得る。いくつかの態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、約5.8~約6.2のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、約5.5~約6.0のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、約5.8~約6.0のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、約6.0~約6.5のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、約6.0~約6.2のpHを有する。
【0082】
本明細書で提供されるいくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤は、ヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩と、アルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩と、ポリソルベートとをさらに含む。いくつかの態様では、そのような医薬製剤は、約5.5~約6.5のpHを有する。いくつかの態様では、pHは、約pH6.0である。
【0083】
本明細書で提供されるいくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤は、約15mM~約25mMのヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、ヒスチジン/ヒスチジンHCl)と、約220mMのアルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、アルギニン/アルギニンHCl)と、約0.03%~約0.05%(w/v)のポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)とをさらに含む。いくつかの態様では、そのような医薬製剤は、約5.5~約6.5のpHを有する。いくつかの態様では、pHは、約pH6.0である。
【0084】
本明細書で提供されるいくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤は、約20mMのヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、ヒスチジン/ヒスチジンHCl)と、約220mMのアルギニン及び/又はその薬学的に許容される塩(例えば、アルギニン/アルギニンHCl)と、約0.04%(w/v)のポリソルベート(ポリソルベート80)とをさらに含む。いくつかの態様では、そのような医薬製剤は、約5.5~約6.5のpHを有する。いくつかの態様では、pHは、約pH6.0である。
【0085】
本明細書で提供されるいくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤は、ヒスチジン及び/又はその薬学的に許容される塩、スクロース、並びにポリソルベートをさらに含む。いくつかの態様では、そのような医薬製剤は、約5.5~約6.5のpHを有する。いくつかの態様では、pHは、約pH6.0である。
【0086】
本明細書で提供されるいくつかの態様では、医薬製剤は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する約135mg/mL~約165mg/mLの少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。本明細書で提供されるいくつかの態様では、医薬製剤は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する約135mg/mL~約165mg/mLの2つの抗体又はその抗原結合フラグメントの混合物を含む。混合物は、約1:1比率の第1の抗体又はその抗原結合フラグメント及び第2の抗体又はその抗原結合フラグメントを含み得る。
【0087】
本明細書で提供されるいくつかの態様では、医薬製剤は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する約150mg/mLの少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。本明細書で提供されるいくつかの態様では、医薬製剤は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する約150mg/mLの2つの抗体又はその抗原結合フラグメントの混合物を含む。混合物は、約1:1比率の第1の抗体又はその抗原結合フラグメント及び第2の抗体又はその抗原結合フラグメントを含み得る。
【0088】
本明細書で提供されるいくつかの態様では、医薬製剤は、約1.5mLである。本明細書で提供されるいくつかの態様では、医薬製剤は、約2mLである。
【0089】
本明細書で提供されるいくつかの態様では、医薬製剤は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する約150mgの抗体又はその抗原結合フラグメントの混合物を含む。本明細書で提供されるいくつかの態様では、医薬製剤は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する約300mgの2つの抗体又はその抗原結合フラグメントの混合物を含む。
【0090】
本明細書で提供されるいくつかの態様では、医薬製剤は、筋肉内注射用に製剤化されている。筋肉内注射は、大腿外側、臀部背側、又は臀部腹側に向けてであり得る。
【0091】
本明細書で提供される医薬製剤を含むバイアル及びシリンジも本明細書で提供される。
【0092】
6.3 抗体及びその抗原結合フラグメント
いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する抗体(例えば、ヒト抗体などのモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤が本明細書で提供される。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号22に示される:
【化1】
【0093】
配列番号22のアミノ酸1~12は、スパイクタンパク質のシグナルペプチドである。したがって、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の成熟したバージョンには、配列番号22のアミノ酸13~1273が含まれる。配列番号22のアミノ酸13~1213は細胞外ドメインに対応し、アミノ酸1214~1234は膜貫通ドメインに対応し、アミノ酸1235~1273は細胞質ドメインに対応する。
【0094】
いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメント、即ち、第1の抗体若しくはその抗原結合フラグメント及び/又は第2の抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合し、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合する。
【0095】
いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための第1の抗体又はその抗原結合フラグメント及び本明細書に記載される第2の抗体又はその抗原結合フラグメントは各々、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD上の別個の重複しないエピトープに結合する。
【0096】
いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための第1の抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体クローン2196である。いくつかの態様では、第2の抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体クローン2130である。
【0097】
いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合する、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントは、SARS-CoVと交差反応する。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合する、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントは、SARS-CoVと交差反応しない。
【0098】
いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合し、表1に列挙される抗体の6つのCDR(即ち、抗体の3つのVH CDR及び同抗体の3つのVL CDR)を含む。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための第1の抗体又はその抗原結合フラグメント及び本明細書に記載される第2の抗体又はその抗原結合フラグメントは各々、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合し、表1に列挙される抗体の2つのVH及び2つのVLを含む。
【0102】
いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントは、その3つのVL CDR及び/又は又はその3つのVH CDRによって記載され得る。
【0103】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントのCDRを、免疫グロブリン構造ループの位置を指すChothia付番方式に従って決定することができる(例えば、Chothia C & Lesk AM,(1987),J Mol Biol 196:901-917;Al-Lazikani B et al.,(1997)J Mol Biol 273:927-948;Chothia C et al.,(1992)J Mol Biol 227:799-817;Tramontano A et al.,(1990)J Mol Biol 215(1):175-82;及び米国特許第7,709,226号明細書を参照されたい)。典型的には、Kabat付番規則を使用する場合、Chothia CDR-H1ループは重鎖アミノ酸26~32、33、又は34に存在し、Chothia CDR-H2ループは重鎖アミノ酸52~56に存在し、Chothia CDR-H3ループは重鎖アミノ酸95~102に存在し、一方、Chothia CDR-L1ループは軽鎖アミノ酸24~34に存在し、Chothia CDR-L2ループは軽鎖アミノ酸50~56に存在し、Chothia CDR-L3ループは軽鎖アミノ酸89~97に存在する。Kabat付番規則を使用して付番した場合のChothia CDR-H1ループの末端は、このループの長さに応じてH32~H34で変化する(これは、Kabat付番方式がH35A及びH35Bに挿入を置くためであり、35Aも35Bも存在しない場合、このループは32で終わり、35Aのみが存在する場合、このループは33で終わり、35A及び35Bの両方が存在する場合、このループは34で終わる)。
【0104】
いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合し、表1に列挙される抗体のChothia VH及びVL CDRを含む抗体及びその抗原結合フラグメントを含む医薬製剤が本明細書で提供される。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、1つ以上のCDRを含み、ここでChothia及びKabat CDRは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合し、Kabat CDR及びChothia CDRの組み合わせを含む抗体及びその抗原結合フラグメントが本明細書で提供される。
【0105】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントのCDRを、Lefranc M-P,(1999)The Immunologist 7:132-136及びLefranc M-P et al.,(1999)Nucleic Acids Res 27:209-212に記載されるように、IMGT付番方式に従って決定することができる。IMGT付番スキームによれば、VH-CDR1は26位~35位であり、VH-CDR2は51位~57位であり、VH-CDR3は93位~102位であり、VL-CDR1は27位~32位であり、VL-CDR2は50位~52位であり、VL-CDR3は89位~97位である。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合し、例えば、上記のLefranc M-P(1999)及び上記のLefranc M-P et al.,(1999))に記載されるような、表1に列挙される抗体のIMGT VH及びVL CDRを含む抗体及びその抗原結合フラグメントが本明細書で提供される。
【0106】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントのCDRは、MacCallum RM et al.,(1996)J Mol Biol 262:732-745に従って決定することができる。例えば、Martin A.“Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains,”in Antibody Engineering,Kontermann and Duebel,eds.,Chapter 31,pp.422-439,Springer-Verlag,Berlin(2001)も参照されたい。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合し、MacCallum RM et al.における方法によって決定されるような、表1に列挙される抗体のVH及びVL CDRを含む抗体又はその抗原結合フラグメントが本明細書で提供される。
【0107】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントのCDRは、Kabat CDRとChothia構造ループの間を取ったものであるAbM超可変領域を参照し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(Oxford Molecular Group,Inc.)で使用されるAbM付番スキームに従って決定することができる。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合し、AbM付番スキームによって決定されるような、表1に列挙される抗体のVH及びVL CDRを含む抗体又はその抗原結合フラグメントが本明細書で提供される。
【0108】
いくつかの態様では、重鎖及び軽鎖を含む抗体が本明細書で提供される。ヒト定常領域配列の非限定的な例は、当該技術分野で説明されており、例えば、米国特許第5,693,780号明細書及び上記のKabat EA et al.,(1991)を参照されたい。
【0109】
重鎖に関して、いくつかの態様では、本明細書に記載される抗体の重鎖は、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)又はミュー(μ)重鎖であり得る。いくつかの態様では、記載される抗体の重鎖は、ヒトアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)又はミュー(μ)重鎖を含み得る。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に免疫特異的に結合する本明細書に記載される抗体は、重鎖を含み、VHドメインのアミノ酸配列が、表1に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖の定常領域が、ヒトガンマ(γ)重鎖定常領域(例えば、ヒトIgG1重鎖定常領域)のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合する本明細書に記載される抗体は、重鎖を含み、VHドメインのアミノ酸配列が、表1に記載される配列を含み、重鎖の定常領域が、本明細書に記載されるか、又は当該技術分野において知られているヒト重鎖のアミノ酸を含む。
【0110】
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖は、ヒトカッパ軽鎖又はヒトラムダ軽鎖である。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に免疫特異的に結合する本明細書に記載される抗体は、軽鎖を含み、VLドメインのアミノ酸配列は、表1に記載される配列を含み、軽鎖の定常領域は、ヒトカッパ又はラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0111】
いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に免疫特異的に結合する本明細書に記載される抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖を含み、VLドメインのアミノ酸配列は、表1に記載される配列を含み、軽鎖の定常領域は、ヒトカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0112】
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗体の軽鎖は、ラムダ軽鎖である。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に免疫特異的に結合する本明細書に記載される抗体は、軽鎖を含み、VLドメインのアミノ酸配列は、表1に記載される配列を含み、軽鎖の定常領域は、ヒトラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0113】
いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に免疫特異的に結合する、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載される任意のアミノ酸配列を含むVHドメイン及びVLドメインを含み、定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、若しくはIgY免疫グロブリン分子又はヒトIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、若しくはIgY免疫グロブリン分子の定常領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に免疫特異的に結合する、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体は、本明細書に記載される任意のアミノ酸配列を含むVHドメイン及びVLドメインを含み、定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、若しくはIgY免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)の定常領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、定常領域は、ヒトIgG、IgE、IgM、IgD、IgA若しくはIgY免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)の定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0114】
Fc領域の遺伝子操作は、例えば治療用抗体及びその抗原結合フラグメントの半減期を延長し、且つインビボでの分解を防ぐために当該技術分野で使用されている。いくつかの態様では、IgGの異化作用を媒介し、IgG分子を分解から防ぐ胎児性Fc受容体(FcRn)に対するIgG分子の親和性を高めるために、IgG抗体又は抗原結合フラグメントのFc領域を改変してもよい。好適なFc領域アミノ酸置換又は改変は、当該技術分野において知られており、例えば、三重置換M252Y/S254T/T256Eが挙げられる(「YTE」と呼ばれる)(例えば、米国特許第7,658,921号明細書;米国特許出願公開第2014/0302058号明細書;及びYu et al.,Antimicrob.Agents Chemother.,61(1):e01020-16(2017)を参照されたい)。いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する抗体又は抗原結合結合フラグメント(例えば、モノクローナル抗体又はフラグメント)は、YTE変異を含むFc領域から構成される。
【0115】
三重変異(TM)L234F/L235E/P331S(欧州連合付番規則に従う;Sazinsky et al.Proc Natl Acad Sci USA,105:20167-20172(2008))は、IgGエフェクター機能を著しく低下させることができる。いくつかの態様では、三重変異を含むIgG1配列は、配列番号21を含む。
【化2】
【0116】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントの1つ以上の機能特性、例えば血清半減期、補体結合性、Fc受容体結合性、及び/又は抗原依存性細胞傷害性を変化させるために、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントのFc領域(例えば、Kabat付番方式(例えばKabatにおけるEUインデックス)に従って付番した、CH2ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)、及び/若しくはCH3ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)、並びに/又はヒンジ領域)に、1つ、2つ、又はそれ以上の変異(例えばアミノ酸置換)が導入される。
【0117】
いくつかの態様では、例えば米国特許第5,677,425号明細書に記載されるように、Fc領域(CH1ドメイン)のヒンジ領域に、1つ、2つ又はそれ以上の変異(例えばアミノ酸置換)を導入して、ヒンジ領域のシステイン残基数を変更(例えば、増加又は減少)するようにしてもよい。CH1ドメインのヒンジ領域のシステイン残基数を変更して、例えば軽鎖及び重鎖の会合を促進してもよく、又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントの安定性を変化(例えば増大又は低減)させてもよい。
【0118】
いくつかの態様では、エフェクター細胞の表面のFc受容体(例えば、活性化Fc受容体)に対する抗体又はその抗原結合フラグメントの親和性を増大又は低減させるために、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントのFc領域(例えば、Kabat付番方式(例えばKabatにおけるEUインデックス)に従って付番した、CH2ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)、及び/若しくはCH3ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)、並びに/又はヒンジ領域)に、1つ、2つ又はそれ以上の変異(例えばアミノ酸置換)が導入される。Fc受容体に対する親和性を低減又は増大させるFc領域の変異、及びそのような変異をFc受容体又はそのフラグメントに導入するための手法は当業者に知られている。Fc受容体に対する抗体又はその抗原結合フラグメントの親和性を変化させることができるFc受容体の変異の例は、例えばSmith P et al.,(2012)PNAS 109:6181-6186、米国特許第6,737,056号明細書、並びに国際公開第02/060919号パンフレット;国際公開第98/23289号パンフレット;及び国際公開第97/34631号パンフレットに記載されており、これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0119】
いくつかの態様では、インビボでの抗体又はその抗原結合フラグメントの半減期を変化(例えば、短縮又は延長)させるために、IgG定常ドメイン又はそのFcRn結合フラグメント(好ましくは、Fc又はヒンジ-Fcドメインフラグメント)に、1つ、2つ又はそれ以上のアミノ酸変異(即ち、置換、挿入又は欠失)が導入される。インビボでの抗体又はその抗原結合フラグメントの半減期を変化(例えば、短縮又は延長)させる変異の例については、例えば、国際公開第02/060919号パンフレット;国際公開第98/23289号パンフレット;及び国際公開第97/34631号パンフレット;並びに米国特許第5,869,046号明細書、同第6,121,022号明細書、同第6,277,375号明細書及び同第6,165,745号明細書を参照されたい。いくつかの態様では、インビボでの抗体又はその抗原結合フラグメントの半減期を短縮させるために、IgG定常ドメイン又はそのFcRn結合フラグメント(好ましくは、Fc又はヒンジ-Fcドメインフラグメント)に、1つ、2つ又はそれ以上のアミノ酸変異(即ち、置換、挿入又は欠失)が導入される。いくつかの態様では、インビボでの抗体又はその抗原結合フラグメントの半減期を増加させるために、IgG定常ドメイン、又はそのFcRn結合フラグメント(好ましくは、Fc又はヒンジ-Fcドメインフラグメント)に、1つ、2つ又はそれ以上のアミノ酸変異(即ち、置換、挿入、又は欠失)が導入される。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、KabatにおけるEUインデックス(上記のKabat EA et al.,(1991))に従って付番した、第2の定常(CH2)ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)及び/又は第3の定常(CH3)ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)に、1つ以上のアミノ酸変異(例えば、置換)を有し得る。いくつかの態様では、IgG1の定常領域は、KabatにおけるようなEUインデックスに従って付番された、252位におけるメチオニン(M)からチロシン(Y)への置換、254位におけるセリン(S)からスレオニン(T)への置換、及び256位におけるスレオニン(T)からグルタミン酸(E)への置換を含む。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,658,921号明細書を参照されたい。「YTE変異体」と称されるこの種の変異体IgGは、同抗体の野生型バージョンと比較して、4倍の半減期の増加を呈することが示されている(Dall’Acqua WF et al.,(2006)J.Biol.Chem.281:23514-24を参照されたい)。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、KabatにおけるEUインデックスに従って付番された、251~257、285~290、308~314、385~389、及び428~436位におけるようなアミノ酸残基の1つ、2つ、3つ又はそれ以上のアミノ酸置換を含むIgG定常ドメインから構成される。
【0120】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントのエフェクター機能を変化させるために、1つ、2つ又はそれ以上のアミノ酸置換がIgG定常ドメインのFc領域に導入される。例えば、KabatにおけるようなEUインデックスに従って付番したアミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320及び322から選択される1つ以上のアミノ酸を、抗体又はその抗原結合フラグメントのエフェクターリガンドに対する親和性は変化するが、親抗体の抗原結合能は保持するように、異なるアミノ酸残基で置換することができる。親和性を変化させるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体のC1成分であり得る。この手法は、米国特許第5,624,821号明細書及び同第5,648,260号明細書でさらに詳細に記載されている。いくつかの態様では、定常領域ドメインを(点突然変異又は他の手段によって)欠失又は不活性化させることにより、循環抗体又はその抗原結合フラグメントのFc受容体結合を低減させてもよく、それによって腫瘍局在化が増大する。定常ドメインを欠失又は不活性化することによって腫瘍局在化を増大させる変異についての説明は、例えば、米国特許第5,585,097号明細書及び同第8,591,886号明細書を参照されたい。いくつかの態様では、1つ以上のアミノ酸置換をFc領域に導入して、Fc領域上の潜在的なグリコシル化部位を除去することが可能であり、それによってFc受容体結合を低減させてもよい(例えば、Shields RL et al.,(2001)J Biol Chem 276:6591-604を参照されたい)。
【0121】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合フラグメントが、変化したC1q結合性及び/又は低減若しくは無効化した補体依存性細胞傷害(CDC)を有するように、KabatにおけるようなEUインデックスに従って付番した定常領域のアミノ酸残基322、329及び331から選択される1つ以上のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基で置換してもよい。この手法は、米国特許第6,194,551号明細書(Idusogieら)にさらに詳細に記載されている。いくつかの態様では、CH2ドメインのN末端領域のアミノ酸231位~238位内の1つ以上のアミノ酸残基を改変し、それによって抗体の補体に結合する能力を変化させる。この手法は、さらに国際公開第94/29351号パンフレットに記載されている。いくつかの態様では、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体又はその抗原結合フラグメントの能力を向上させ、且つ/或いは、KabatにおけるようなEUインデックスに従って付番される下記の位置:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、328、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438、又は439で1つ以上のアミノ酸を変異させること(例えば、アミノ酸置換を導入すること)によって抗体又はその抗原結合フラグメントのFcγ受容体に対する親和性を増大させるために、Fc領域が改変される。この手法は、さらに国際公開第00/42072号パンフレットに記載されている。
【0122】
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合フラグメントは、KabatにおけるようなEUインデックスに従って付番された、267位、328位、又はその組み合わせに変異(例えば、置換)を有するIgG1の定常ドメインを含む。いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントは、S267E、L328F、及びその組み合わせからなる群から選択される変異(例えば、置換)を有するIgG1の定常ドメインを含む。いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントは、S267E/L328F変異(例えば、置換)を有するIgG1の定常ドメインを含む。いくつかの態様では、S267E/L328F変異(例えば、置換)を有するIgG1の定常ドメインを含む、本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントは、FcγRIIA、FcγRIIB、又はFcγRIIA及びFcγRIIBに対して増大した結合親和性を有する。
【0123】
遺伝子操作されたグリコフォームは、種々の目的、例として、限定されるものではないが、エフェクター機能の向上又は低減に有用であり得る。本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントに遺伝子操作されたグリコフォームを生成するための方法としては、例えば、Umana P et al.,(1999)Nat Biotechnol 17:176-180;Davies J et al.,(2001)Biotechnol Bioeng 74:288-294;Shields RL et al.,(2002)J Biol Chem 277:26733-26740;Shinkawa T et al.,(2003)J Biol Chem 278:3466-3473;Niwa R et al.,(2004)Clin Cancer Res 1:6248-6255;Presta LG et al.,(2002)Biochem Soc Trans 30:487-490;Kanda Y et al.,(2007)Glycobiology 17:104-118;米国特許第6,602,684号明細書;同第6,946,292号明細書;及び同第7,214,775号明細書;米国特許出願公開第2007/0248600号明細書;同第2007/0178551号明細書;同第2008/0060092号明細書;及び同第2006/0253928号明細書;国際公開第00/61739号パンフレット;国際公開第01/292246号パンフレット;国際公開第02/311140号パンフレット;及び国際公開第02/30954号パンフレット;Potillegent(商標)technology(Biowa,Inc.Princeton,N.J.);並びにGlycoMAb(登録商標)glycosylation engineering technology(Glycart biotechnology AG、Zurich,Switzerland)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Ferrara C et al.,(2006)Biotechnol Bioeng 93:851-861;国際公開第07/039818号パンフレット;国際公開第12/130831号パンフレット;国際公開第99/054342号パンフレット;国際公開第03/011878号パンフレット;及び国際公開第04/065540号パンフレットも参照されたい。
【0124】
いくつかの態様では、本明細書に記載される定常領域の変異又は改変のいずれかを、2つの重鎖定常領域を有する本明細書に記載される医薬製剤で用いるための抗体又はその抗原結合フラグメントの一方又は両方の重鎖定常領域に導入してもよい。
【0125】
いくつかの態様では、第1の抗体又はその抗原結合フラグメント及び第2の抗体又はその抗原結合フラグメントはそれぞれ、SARS-CoV-2がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合するのを阻害する。
【0126】
いくつかの態様では、第1の抗体又はその抗原結合フラグメント及び第2の抗体又はその抗原結合フラグメントはそれぞれ、SARS-CoV-2を中和する。
【0127】
いくつかの態様では、本明細書に開示される第1及び第2の抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fv、V-NARドメイン、IgNar、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、シングルドメイン抗体、(scFv)2、又はscFv-Fcを含む。
【0128】
いくつかの態様では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合する、本明細書に記載されるような抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)、及びscFvからなる群から選択され、Fab、Fab’、F(ab’)、又はscFvは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2に特異的に結合する、抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む。Fab、Fab’、F(ab’)、又はscFvは、当業者に既知の任意の技法によって生成することができる。いくつかの態様では、Fab、Fab’、F(ab’)、又はscFvは、インビボで抗体の半減期を延長させる部分をさらに含む。この部分は、「半減期延長部分」とも称される。インビボでFab、Fab’、F(ab’)、又はscFvの半減期を延長させるための当業者に既知の任意の部分が使用され得る。例えば、半減期延長部分としては、Fc領域、ポリマー、アルブミン、又はアルブミン結合タンパク質若しくは化合物が挙げられ得る。ポリマーとしては、天然の又は合成の、任意選択的に置換された直鎖又は分枝鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン、ポリオキシアルキレン、多糖、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、メトキシポリエチレングリコール、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン、又はこれらの誘導体が挙げられ得る。置換基としては、1つ以上のヒドロキシ基、メチル基、又はメトキシ基が挙げられ得る。いくつかの態様では、Fab、Fab’、F(ab’)、又はscFvは、半減期延長部分を結合させるために、1つ以上のC末端アミノ酸を加えることによって改変することができる。いくつかの態様では、半減期延長部分は、ポリエチレングリコール又はヒト血清アルブミンである。いくつかの態様では、Fab、Fab’、F(ab’)、又はscFvは、Fc領域に融合されている。
【0129】
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、検出可能な標識又は物質に融合又はコンジュゲート(例えば共有結合又は非共有結合)させることができる。検出可能な標識又は物質の例としては、グルコースオキシダーゼなどの酵素標識;ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(H)、インジウム(121In)、及びテクネチウム(99Tc)などの放射性同位体;ルミノールなどの発光標識;並びにフルオレセイン及びローダミンなどの蛍光標識、並びにビオチンが挙げられる。そのような標識抗体又はその抗原結合フラグメントを使用して、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2を検出することができる。
【0130】
以下の実施例は例証として提供され、制限は意図されない。
【実施例
【0131】
実施例セクション(及び対応する図)で使用される2196抗体は、配列番号17のアミノ酸1~460を含む重鎖と、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。実施例セクション(及び対応する図)で使用される2130抗体は、配列番号19のアミノ酸1~460を含む重鎖と、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0132】
実施例1:抗SARS-CoV-2抗体の製剤
併用療法で用いるために、2196+2130抗体を選択した(本明細書では「2196+2130」と称される)。2196抗体及び2130抗体は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン上の別個の重複しない部位に結合する。これらの部位のいずれかに結合することによって、ヒト細胞受容体であるACE2へのウイルスの結合能が遮断される。2196+2130は、ウイルスのヒト細胞への侵入を遮断することによって、SARS-CoV-2感染症に起因する病気であるCOVID-19を予防又は治療することができる。
【0133】
2196抗体及び2130抗体を別々の医薬製剤で投与するための製剤と、単一の製剤で一緒に投与するための製剤が開発された。
【0134】
検査された製剤の粘度を図1に示す。これらのデータは、合剤が2130の粘度を緩和することを示す。図2のデータは、粘度がアルギニンによってさらに緩和され、180mMを超えるアルギニン濃度が2196+2130合剤の粘度に対する最小限の影響を及ぼすことを示す。さらに、合剤の粘度に対するpHの影響は観察されなかった。加えて、近紫外円偏光二色性(CD(図3)分析は、合剤による局所構造の変化はないことを示し、DSCデータ(図4)は、合剤による立体構造安定性の変化はないことを示す。低いCH2ドメインの融解温度は、YTE変異及びTM変異によって引き起こされた。融解温度のさらなるシフトは、アルギニン(スクロースと比較して)及び低いpHによって引き起こされた。各抗体は、DLSで測定した場合、良好な自己会合特性を示した(kD>/約20+mL/gm)。
【0135】
これらのアッセイに基づいて、抗体を単一の製剤(治療A)又は2つの別々の製剤(治療B)で一緒に投与するために、以下の製剤を調製した:
【0136】
【表4】
【0137】
実施例2:抗SARS-CoV-2抗体を含む医薬製剤の投与
試験を行い、健康な成人参加者において、筋肉内投与後の2196+2130合剤の(i)薬物動態学的暴露及び(ii)血清中の抗重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)中和抗体濃度を、個々のモノクローナル抗体の2つの別々のバイアルから2196及び2130を投与した場合と比較する。
【0138】
合剤及び別々のバイアルの投与は、健康なボランティア(男性又は女性、年齢が≧18歳、体重が≧50~≦110kg、肥満度指数が≧18~≦30kg/m)に投与される。参加者は、抗COVID-19ワクチン接種の有無について尋ねられる。参加者は、SARS-CoV-2感染症に対してワクチン非接種であるか、又は投与の少なくとも60暦日前に最終ワクチンを受けてワクチン接種を完了しているかのいずれかである。参加者は、以下の基準を満たす:
・18歳以上の男性及び女性の参加者、SARS-CoV-2に対してワクチン接種完了又は非接種であり、カニュレーション又は反復静脈穿刺に適した静脈を有すること。ワクチン接種を受けた参加者は、IMP投与の少なくとも60暦日前(1日目)に最終ワクチン接種を受けている;
・参加者は、SARS-CoV-2 RT-PCR検査の結果が陰性であり、ワクチン非接種の参加者は、ランダム化前の2週間以内の血清検査の結果が陰性である。参加者は、SARS-CoV-2感染症に対してワクチン非接種であるか、又はIMP投与の少なくとも60暦日前(1日目)に最終ワクチンを受けてワクチン接種を完了しているかのいずれかである;及び
・スクリーニング時の体重が≧50kg~≦110kg、スクリーニング来院時のBMIが≧18.0~≦30kg/m
【0139】
患者は、大腿外側(外側広筋)、臀部背側、臀部腹側の注射部位に注射を受ける。治療Aを受けている参加者は、1つの製剤バイアルから単回IM注射で投与される。治療Bを受けている参加者は、2196又は2130を含む別々の製剤バイアルから、各々2回に分けてIM注射で投与される。2196が最初に投与され、続いて2130が投与される。
【0140】
2196抗体及び2130抗体の発生率及び力価を評価し、2つの抗体の合剤の投与又は2つの抗体の別々の医薬製剤の投与が、COVID-19の予防及び治療に有効であることを示す。
【0141】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によってその範囲を限定されるべきではない。実際、記載されたものだけでなく、本発明の様々な変更形態が前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0142】
本明細書で引用される全ての参考文献(例えば、公報又は特許若しくは特許出願)は、それぞれの個々の参考文献(例えば、公報又は特許若しくは特許出願)が、任意の目的のためにその全体が参照により組み込まれると具体的且つ個別に示されるのと同じ程度に、任意の目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
以下の特許請求の範囲内には他の実施形態が含まれる。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024540395000001.xml
【国際調査報告】