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特表2024-540397人工鉱物繊維の製造のための溶融物を調製する方法
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  • 特表-人工鉱物繊維の製造のための溶融物を調製する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】人工鉱物繊維の製造のための溶融物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 3/06 20060101AFI20241024BHJP
   C03C 1/02 20060101ALI20241024BHJP
   C03C 10/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C21B3/06
C03C1/02
C03C10/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526975
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022080868
(87)【国際公開番号】W WO2023079108
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21206795.3
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500336306
【氏名又は名称】ロックウール アクティーゼルスカブ
【住所又は居所原語表記】Hovedgaden 584, 2640 Hedehusene, DENMARK
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルメキルド ハンセン,ラーシュ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ハオシェン
【テーマコード(参考)】
4G062
4K012
【Fターム(参考)】
4G062AA05
4G062BB01
4G062CC01
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4G062DB04
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4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062NN40
4K012AA05
(57)【要約】
本発明は、溶銑炉において鉱物溶融物を調製するためのプロセスであって、上記炉が、上記溶融物が集まるホットゾーンにおいて、複数のセラミック支持体を、上記炉に熱エネルギーを付与する少なくとも1つのプラズマトーチと共に含む、上記プロセスに関する。プラズマトーチ及びセラミック支持体の組み合わせは、上記炉において使用されるコークスの必要性を低減する、又は実質的に排除する。これにより、上記炉のオフガスにおける、環境に有害なガス、例えば、CO及びCOの形成が低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶銑炉において鉱物溶融物を調製するためのプロセスであって、前記溶銑炉が、前記炉の基部でホットゾーン、及び、前記ホットゾーンにおいて溶融物出口を含み、
(i)前記炉が、前記ホットゾーンにおいてプラズマ加熱を付与する少なくとも1つのプラズマトーチを含み;
(ii)炉加熱エネルギーの50%超が、前記少なくとも1つのプラズマトーチによって付与され;
(iii)前記炉が、前記鉱物溶融物が前記溶融物出口を通って前記炉から除去される前に前記鉱物溶融物が集まる前記ホットゾーンのセクションに位置付けられている複数のセラミック支持体を含み、
前記炉に供給される鉱物材料が溶融されて、前記セラミック支持体間のボイドに集まる鉱物溶融物を形成する、プロセス。
【請求項2】
(I)前記溶銑炉加熱エネルギーの60%超、好ましくは70%超、より好ましくは80%超、なおより好ましくは90%超、最も好ましくは全てが、前記少なくとも1つのプラズマトーチによって付与され;及び/又は
(II)加熱が、前記少なくとも1つのプラズマトーチによって単独で前記ホットゾーンにおいて付与される、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記溶銑炉が、前記ホットゾーンの上方に酸化ゾーンを含み、酸素源が、少なくとも1つの羽口及び/又は少なくとも1つの酸素注入口を好ましくは使用して、前記酸化ゾーンに設けられており、
前記酸化ゾーンにおける温度が、600℃~1,400℃、好ましくは600℃~1,300℃、より好ましくは600℃~1,200℃、なおより好ましくは600℃~1,100℃、特に600℃~1,000℃、最も好ましくは600℃~900℃、特に600℃から850℃未満である、
請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
(a)前記ホットゾーンにおける温度が、800℃超、好ましくは900℃超、より好ましくは1,000℃超、より好ましくは1,100℃超、より好ましくは1,200℃超、より好ましくは1,300℃超、より好ましくは1,400℃超であり;及び/又は
(b)水が、温度が750℃超である前記炉のいずれかのゾーンから実質的に除かれる、
先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記複数のセラミック支持体が
(A)少なくとも1,400℃、好ましくは少なくとも1,600℃、より好ましくは少なくとも1,800℃の溶融温度を有し;及び/又は
(B)前記プロセスの際に前記溶銑炉において化学的劣化に耐性を示す、
先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
各セラミック支持体が、前記セラミック支持体の合計重量を基準にして、少なくとも5重量%の量でCr、及び/又は少なくとも5重量%の量でZrOを含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記複数のセラミック支持体が
(I)60mm~250mm、好ましくは70mm~200mm、より好ましくは80mm~150mm、最も好ましくは90mm~110mmの球相当径を有し;及び/又は
(II)前記セラミック支持体がボール形状である、
先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスが連続プロセスであり、更なるセラミック支持体及び更なる鉱物材料が前記溶銑炉に添加され、好ましくは、前記更なるセラミック支持体が、更なるセラミック支持体及び更なる鉱物材料の合計量を基準にして1~5重量%、より好ましくは1~2重量%の量で添加される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプラズマトーチが、キャリアガスとして、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、又はこれらの混合物を使用し、好ましくは、キャリアガスエンタルピーが、2.0~6.0kWh/Nm、より好ましくは3.0~5.0kWh/Nmである、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記鉱物溶融物が、重量%で酸化物として表される以下の組成
SiO 35~50、好ましくは38~48、より好ましくは33~44
Al 12~30、好ましくは15~28、より好ましくは16~24
TiO 最大で2
Fe 2~12
CaO 5~30、好ましくは5~18
MgO 0~15、好ましくは1~8
NaO 0~15
O 0~15
0~3
MnO 0~3
0~3、
を有し、
好ましくは、前記溶融物中のFe(2+)の割合が、合計Feを基準にして80%超であり、合計Feを基準にして好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%である、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記鉱物材料が、鉄の酸化状態を還元する金属アルミニウムを含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
(a)酸素(O)が、窒素を含み1,400℃以上の温度にある前記溶銑炉のゾーンから除かれ、その結果、前記炉が、400体積ppm未満、好ましくは300体積ppm未満、より好ましくは250体積ppm未満、なおより好ましくは200体積ppm未満、より好ましくは150体積ppm未満の量のNOを含むオフガスを生成し;及び/又は
(b)水が、750℃超の温度にある前記炉のいずれかのゾーンから除かれ、その結果、前記炉が、20,000体積ppm未満、好ましくは10,000体積ppm未満、好ましくは5,000体積ppm未満、好ましくは2,000体積ppm未満、好ましくは1,000体積ppm未満、好ましくは500体積ppm未満、好ましくは100体積ppm未満、好ましくは50体積ppm未満の量の水素を含むオフガスを生成し、最も好ましくは、前記オフガスにおいて検出可能な量の水素を含まない、
先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記少なくとも1つのプラズマトーチがキャリアガスを使用し、前記キャリアガスが、前記炉によって生成されるオフガスの少なくとも一成分を含み又はこれからなり、好ましくは、前記オフガスの前記少なくとも一成分が、キャリアガスとしての使用の前にオフガスクリーニングを経て、より好ましくは、前記オフガスクリーニングが、粒子及び/又は
水を除去することである、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
(i)前記鉱物材料が、リサイクル鉱物材料、例えば、廃棄人工ガラス繊維を含むとき、前記鉱物材料の合計重量を基準にして5重量%未満の炭素、好ましくは2重量%未満の炭素を含み;又は
(ii)前記鉱物材料が、リサイクル鉱物材料、例えば、廃棄人工ガラス繊維を含まないとき、前記鉱物材料の合計重量を基準にして1重量%未満の炭素、好ましくは0.5重量%未満の炭素を含み、最も好ましくは、前記鉱物材料が、炭素を実質的に含まない、
先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
人工ガラス繊維(MMVF)を製造するためのプロセスであって
(i)請求項1~14のいずれか一項に定義されているプロセスを使用して溶融物を形成する工程;
(ii)カスケード紡糸機を好ましくは使用して内側又は外側紡糸プロセスによって前記溶融物を繊維化する工程;及び
(iii)形成された繊維を収集する工程
を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑炉において鉱物溶融物を調製するためのプロセスであって、上記炉が、上記溶融物が集まるホットゾーンにおいて、複数のセラミック支持体を、上記炉に熱エネルギーを付与する少なくとも1つのプラズマトーチと共に含む、上記プロセスに関する。プラズマトーチ及びセラミック支持体の組み合わせは、上記炉において使用されるコークスの必要性を低減する、又は実質的に排除する。これにより、上記炉のオフガスにおける、環境に有害なガス、例えば、CO及びCOの形成が低減される。
【背景技術】
【0002】
人工ガラス繊維(MMVF)の製造のための鉱物溶融物を調製する方法は、シャフト炉、例えば、溶銑炉において実施されることが知られている。これらの方法は、コークス及び酸素含有ガスの存在下に鉱物材料を加熱して鉱物溶融物を形成することを含む。コークスの、炉において熱を付与する手段としての、及び、還元剤としての使用は、相当量のCO及びCOを生成し、これらが、環境に負の影響を及ぼす。コークスが鉱物溶融物の形成においてなす役割を考慮すると、CO及びCOの生成を低減した又は実質的に排除した溶銑炉において溶融物を効率的に生成することは困難である。
【0003】
コークスはまた、溶銑炉における鉱物材料(鉱物溶融物を形成するのに使用される原料)のスタックを支持するために使用される。このコークスの支持が無いと、未溶融鉱物材料が、ホットゾーンの底部に集まった又はプールした溶融物において見られることとなり、また、炉から除去される鉱物溶融物を汚染することとなる。
【0004】
溶銑炉は、ホットゾーン、酸化ゾーン、還元ゾーン、及び前加熱ゾーンを含めた広範な温度ゾーンを典型的には含む。
【0005】
溶銑炉の下部は、ホットゾーンを構成する。ホットゾーンは、溶銑炉において形成される鉱物溶融物を含み、この鉱物溶融物は、上記炉の底部で静止して材料を上方に支持するコークス片の間の空間に典型的には位置付けられている。典型的な溶銑炉において、ホットゾーンにおける溶融物温度は1450℃~1550℃の範囲であり、この位置で鉱物溶融物の温度を変化させるのに比較的長い時間がかかる。更に、ホットゾーンの頂部及び底部間の距離は比較的大きい。このことは、伝統的な溶銑炉において正確な酸化ゾーン温度が維持されることを確実にするために必要とされる。
【0006】
酸化ゾーン(燃焼ゾーンとしても知られている)は、ホットゾーンの上方に典型的には存在する。酸化ゾーンの下部は、羽口として知られているガス入口ノズルを通常備えており、これを通して、前加熱された空気又は別の酸素含有ガスが炉内に導入される。加熱は、コークスの燃焼によって通常発生する。コークス燃焼は、鉱物材料に存在し得る他の形態の炭素、例えば、リサイクル材料に含有される油及びバインダの燃焼と一緒になって、炉におけるCOの生成に寄与する。
【0007】
コークス及び他の炭素源の燃焼は、前加熱された空気が酸化ゾーンを通って上に移動する際に起こり、ガス温度が約500℃から約2,000℃に上昇することにより、酸化ゾーンを通って下に移動する鉱物材料をその融点まで加熱させ得る。この溶融された鉱物材料は、溶銑炉の基部又は底部におけるホットゾーン内に流れ落ちる。酸化ゾーンの垂直拡張は、炉内に導入される酸素の量によって決定される。
【0008】
還元ゾーンは、酸化ゾーンの上方にあり、羽口を通して導入された酸素がコークスの燃
焼によって消費されるレベルで始動する。還元ゾーンにおいて、温度が典型的には1,000℃~1,500℃の間である場合、コークスは酸化ゾーンにおいて形成されたCOと反応して、体積基準においてCOの消費量の2倍の量でCOを形成する。
【0009】
この反応は吸熱性であり、酸化ゾーンにおいて燃焼によって放出されるエネルギーの約20~25%をオフガスにおいて潜熱として損失させる。典型的には、オフガスは、前加熱ゾーンにおいて溶銑炉にて溶融されることに起因して鉱物材料を加熱するのに使用され得る。前加熱ゾーンは、還元ゾーンの上方にある。
【0010】
US4,556,418は、一次酸化体としてのエンリッチドエアを使用して、鉄屑、鋼屑、銑鉄、直接還元鉄又はこれらの混合物から溶融鉄を形成するためのプロセスに関する。溶融鉄を形成するのに使用される熱エネルギーは、天然ガス、燃料油、又は粉炭に由来する。溶融金属浴は、炉の下部において生成される。当該溶融浴が鉄鋼材の未溶融部分によって冷却されるのを防止するために、セラミック片は、炉の下部及び溶融金属浴の上方にて、炉シャフト内に、例えば、シャフト炉の内周の周りに位置付けられているショルダー上に位置付けられていてよい。溶融金属は、サイフォンを介して上記浴からタッピングされてよい。セラミック片は、溶融浴内には位置付けられていない。
【0011】
US5,107,517は、セラミック充填体床並びに原料が位置付けられている、燃焼チャンバの上方に設けられた水冷火格子を含む溶融炉を使用する、ミネラルウール製造のための鉱物溶融物を形成するためのプロセスに関する。組み合わせチャンバの底部部分は、シャフトから滴下する溶融物を収集する。この設計による問題は、炉内の高温環境による火格子への損傷を防止するために、炉が使用中であるときには水が火格子を通って流れなければならないことである。熱は、従来のガス(天然若しくは液化)又は油のような液体燃料を使用して燃焼チャンバに付与される。炉を加熱するために更なる電気エネルギーが使用されてよいが、これは、必要とされる合計エネルギーの最大20%に制限される。溶融物は、燃焼チャンバの底部の上方及び水冷火格子のレベルの下方のある一定の高さで設けられているサイフォンを介して集められてよい。
【0012】
JPH10141629は、垂直溶融炉を使用して産業廃棄物及び一般廃棄物を焼却及び熱分解することによって廃棄物を処理するための方法及び装置に関する。かかる廃棄物には、紙又は木くずからなる木材廃棄物、生ゴミ、廃棄自動車からの金属廃棄物など、不燃性廃棄物、例えば、ガラス製品及び磁器製品、並びに廃プラスチック製品が含まれる。US5,107,517のように、炉は、燃焼チャンバの上方で水冷管の使用を必要とし、そこに、耐火物を置く。熱は、水冷管の下方の領域において従来のガスバーナー(電気又はプラズマ加熱については言及されていない)を使用して炉に付与され、この後、廃材を通って上行する。このアレンジメントは、溶融された材料を水冷管に通させて燃焼チャンバ内に滴下させるようにのみ設計されている。
【0013】
US5,107,517及びJPH10141629に記載されている炉による問題の1つに、鉱物溶融物を調製するための標準溶銑炉が、水冷管及び冷却システムを収容するように変更される必要があることである。上記管もまた経時的に劣化することとなり、置き換える必要があり、維持コスト及び上記炉の停止時間を増加させる。
【0014】
EP2284130は、溶銑炉において製造される鉱物溶融物からのミネラルウールの製造に関する。上記炉は、燃焼チャンバの上方に設けられた火格子を含み、鉱物材料が燃焼チャンバに入ることを防止する。溶融物は、液体又はガス燃料バーナーを使用して発生する熱を使用して形成される。上記炉から溶融物を除去するための出口は、燃焼チャンバに位置付けられている。
【0015】
WO2019/201182は、熱がプラズマトーチによって付与される鋳鉄製錬機器に関する。炉内では、鉱物材料が、プラズマによって加熱される高炭素球において支持されている。当該球の組成及び加熱プラズマ内の状態によって、高炭素球が、使用の際に大幅な劣化を経験することとなり、更なる原料と共に更なる高炭素球の添加によって置き換えられることが必要となる。当該球内に含まれる炭素もまた、炉のオフガスにおけるCO及びCOの形成に寄与し得る。
【0016】
コークスは、鉱物溶融物の形成において複数の役割をする。プロセスがコークスに頼ることを低減する又は実質的に排除するプロセスを見出すことは、そうすることについて環境及び経済の両方で有利であるにもかかわらず課題が残る。
【0017】
そのため、鉱物溶融物を形成するのに好適である、より効率的な、環境に優しい溶銑炉、例えば、MMVF、例えば、ガラス繊維又は石繊維を製造するのに使用されるものが必要とされている。炉に存在するコークス及び/又は他の炭素源の量が低減される又は実質的に排除されることは、このことが有害なCO及びCOの生成の低減につながるため望ましい。また、溶銑炉において鉱物溶融物を過熱する、より効率的な方法も必要とされている。
【0018】
この必要性は、鉱物材料(すなわち、鉱物溶融物を形成するのに使用される原料)を加熱するプラズマトーチを、鉱物溶融物が炉から除去される前に集まるホットゾーンのセクションに位置付けられる複数のセラミック支持体と組み合わせて使用することによって満たされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明を実施するのに使用され得る溶銑炉構成の略図を示す。
【発明の概要】
【0020】
本発明の第1態様において、溶銑炉において鉱物溶融物を調製するためのプロセスであって、溶銑炉が、炉の基部でホットゾーン、及び、ホットゾーンにおいて溶融物出口、好ましくは溶融物サイフォンを含み、
(i)上記炉が、ホットゾーンにおいてプラズマ加熱を付与する少なくとも1つのプラズマトーチを含み;
(ii)炉加熱エネルギーの50%超が、少なくとも1つのプラズマトーチによって付与され;
(iii)炉が、鉱物溶融物が溶融物出口を通って炉から除去される前に鉱物溶融物が集まるホットゾーンのセクションに位置付けられている複数のセラミック支持体を含み、
炉に供給される鉱物材料が溶融されて、セラミック支持体間のボイドに集まる鉱物溶融物を形成する、上記プロセスが提供される。
【0021】
本発明の第2態様において、MMVFを製造するためのプロセスであって
(i)本発明の第1態様に定義されているプロセスを使用して溶融物を形成する工程;
(ii)カスケード紡糸機を好ましくは使用して内側又は外側紡糸プロセスによって溶融物を繊維化する工程;及び
(iii)形成された繊維を収集する工程
を含む上記プロセスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の利点は、鉱物溶融物が炉から除去される前に鉱物溶融物が集まるホットゾーンのセクションに位置付けられている複数のセラミック支持体を、ホットゾーンにおいてプラズマ加熱を付与する少なくとも1つのプラズマトーチと共に含む炉の使用によって達成
され得る。このことは、プロセスにおいて使用されるコークスの量が低減され、又は実質的に排除されて、少ないCO及びCOの生成につながり得ることを意味している。
【0023】
セラミック支持体は、好ましくは溶融物サイフォンである溶融物出口を通って鉱物溶融物が炉から除去される前に、鉱物溶融物が集まる又はプールするホットゾーンのセクションに位置付けられている。理想的には、セラミック支持体は、炉の内側基部に置かれるが、これらはまた、内側基部の上方に懸架されていてもよい。重要なことは、セラミック支持体が、鉱物溶融物が一旦形成されたらその除去の前にセラミック支持体間のボイド内に集まる(又はプールする)ように炉に位置付けられるべきであるということである。このことは、鉱物溶融物がセラミック充填体/耐火物を通り越して滴下して炉の基部で集まる、すなわち、鉱物溶融物が炉からの除去の前にセラミック充填体/耐火物間のボイド内に集まらないUS5,107,517及びJPH10141629における炉との重要な差異である。
【0024】
炉におけるセラミック支持体の位置はまた、鉱物材料のかなりの部分が、収集又はプールされた鉱物溶融物と接触することを防止することになる。これに関して、セラミック支持体は、鉱物溶融物を炉から、例えば、溶融物出口、好ましくは溶融物サイフォンを通して除去する前に、上記溶融物を原料から分離するのに使用され得る。これは、鉱物溶融物を作製するのに使用される伝統的な溶銑炉においては、コークスを使用して達成され得る。しかし、この場合、これは、コークスを使用しないプロセスにおいて鉱物溶融物を濾過する効率的な方法であることが見出された。
【0025】
セラミック支持体は、鉱物溶融物、例えば、MMVFの製造に好適なものを過熱するときに熱効率を増加させ得ることも見出された。鉱物溶融物を、次のプロセス段階に、例えば、MMVFを形成するのに使用される紡糸機に、正確な温度で送達することが重要である。炉から除去されたら、鉱物溶融物が冷却し始めるため、鉱物溶融物は、かかる冷却を相殺するために、炉から除去される前に過熱されてよい。鉱物溶融物を過熱する伝統的な方法は、特に、コークスが、プールされた鉱物溶融物に存在して鉱物材料のスタックを支持しているとき、効率が低い。本発明による、プラズマ加熱及びセラミック支持体の組み合わせは、プールされた鉱物溶融物に対する、より効率的な過熱を付与する。理論によって拘束されることを望まないが、このことは、プラズマ加熱及びセラミック支持体を組み合わせることが、より少量のCOが炉において生成され得ることを意味しているからであり得る。オフガスにおけるCOの量の低減は、炉の熱効率を増加させ得、これが、プールされた鉱物溶融物のより効率的な過熱を意味することになる。
【0026】
支持体は、炉内で実験される条件に耐えることができるいずれの好適なセラミック型材料から作製されてもよい。多くのセラミック型材料が、炉において使用されるときに経時的に劣化するにもかかわらず本発明における使用に好適であり得ることが理解される。劣化は、熱的、化学的又は物理的であり得る。典型的には、劣化は、溶融することによる、及び/又は、鉱物溶融物を形成するのに使用される鉱物材料と反応することによるものである。この点に関して、セラミック支持体は、高い溶融温度、並びに/又は化学的及び/若しくは物理的劣化への高い耐性を有することが好ましい。これにより、セラミック支持体の耐久性を増加させ、その結果、かかる支持体を頻繁に取り替える必要がなくなることになる。
【0027】
したがって、セラミック支持体は、少なくとも1,400℃、好ましくは少なくとも1,600℃、より好ましくは少なくとも1,800℃の溶融温度を有することが好ましい。より高い溶融温度を有するセラミック支持体は、炉のホットゾーンにおいて実験される温度において、より遅い速度で劣化することになることが理解される。
【0028】
セラミック支持体は、鉱物溶融物の形成の際に溶銑炉において化学的劣化に耐性を示すことも好ましい。化学的劣化は、セラミック支持体と、鉱物溶融物を形成するのに使用される鉱物材料との反応によって生じ得る。
【0029】
セラミック支持体は、物理的劣化にも耐性を示すことになる。このことは、上記支持体が、これらに適用される力、例えば、鉱物材料のスタックの重量に起因して、操作温度において炉内で、これらの構造的完全性を失うことにならないことを意味している。
【0030】
当業者は、現使用の範囲での用語「セラミック」の範囲を理解するであろう。セラミックは、多くの場合において結晶性であるが、ガラス及び結晶相の組み合わせを含有することもある。支持体を形成するのに使用され得る好適なセラミックは、典型的には、金属酸化物、又はより好ましくは金属酸化物の組み合わせを含む。好適な金属酸化物として、限定されないが、Al、FeO、Fe、SiO、Cr、ZrO、MgO、及びこれらの組み合わせが挙げられる。セラミックの特性は、異なる金属酸化物比を使用することによって調整され得る。特に有用なセラミック支持体として、Al、Fe、SiO、及びCrの組み合わせ、又はAl、SiO、NaO及びZrOの組み合わせが挙げられる。これらの場合において、Cr又はZrOは、セラミック支持体の合計重量を基準にして少なくとも5重量%の量でセラミック支持体に存在することが好ましい。Crを含む好適なセラミック支持体として、名称Durital、例えば、Durital RK10及びRK50(それぞれ10及び50重量%のCrを含む)で販売されているものが挙げられる。ZrOを含む好適なセラミック支持体として、名称SCIMOS Zで販売されているものが挙げられる。これらの材料の典型的な組成を以下の表に概説する。
【0031】
【表1】

【表2】
【0032】
セラミック支持体は、炉の条件に耐えるように設計されている、炉のライニングを作製するのに使用される材料から形成されていてよい。これらは、耐火れんが又は耐火性れんがと一般的に称され、上記のセラミック材料から作製されるれんがを含む。
【0033】
言及されているように、セラミック支持体は、炉において使用されるとき経時的に劣化し得る。かかる分解に起因して、セラミック支持体の成分は、炉から除去される鉱物溶融物中に存在し得る。当業者は、鉱物溶融物の最終組成物におけるセラミック支持体成分の存在を説明することができるであろう。
【0034】
セラミック支持体は、上記の利点を付与することを可能にするいずれの形状のものであってもよい。例えば、上記炉の底部においてスタックされるとき、かかる形状が、個々のセラミック支持体間にボイドを作り出すことになり、好ましくは、そうするためにこれらの構成を事前に決定する必要がない。セラミック支持体の表面積対体積率を低減することも、上記支持体の劣化がこれらの表面で生じる傾向があるため、有利である。セラミック
支持体の形状を幾何学的観点から表現することができる必要はない。実際、これらは、不規則な形状を有していてよい。しかし、これらの全体的形状はシリンダ、ディスク、棒又はボール形状であるとして記載され得る。これに関して、シリンダは、径の0.3~3倍(好ましくは0.5~2倍)である長さを有することが好ましい。棒は、径よりもはるかに長い長さを一般に有する一方で、ディスクは、径よりもはるかに短い長さを一般に有する。これらの形状は、劣化の速度を低減させるのに好適な表面積対体積率を付与する。しかし、セラミック支持体は、シリンダ又はボール形状であることが、これにより表面積対体積率の低下を助けるため、好ましい。シリンダは、製造するのがより容易であり得るという利点を有する一方で、ボール形状のセラミック支持体は、より良好な表面積対体積率を有しており、これらの炉内での劣化の速度がより遅くなり得ることを意味している。セラミック支持体は、0.07~0.21、好ましくは0.08~0.15、より好ましくは0.09~0.13、最も好ましくは0.10~0.11の表面積対体積率を有し得る。
【0035】
セラミック支持体の形状は、「球相当径」として表現されることが好ましい。当該径は、等体積の球形の径であり、いずれかの三次元形状、例えば、シリンダ、棒、並びに偏球及び長球について算出され得る。当該径は、本体の体積を測定し、式を用いて等体積を有する球の径を算出することによって算出されてよい。
【0036】
【数1】
【0037】
式中
d=径(mm)
V=体積(mm
【0038】
本体の体積は、水置換法を使用して測定され得る。この方法においては、本体を水に沈め、その過程で置き換えられる水の体積を、例えば、ユーレカカップ又は同様の容器を使用することによって測定する。
【0039】
セラミック支持体は、60mm~250mm、好ましくは70mm~200mm、より好ましくは80mm~150mm、最も好ましくは90mm~110mmの球相当径を有することが有利であり得る。これらの球相当径のセラミック支持体は、典型的な炉溶融物浴における使用に好適である。理想的には、球相当径は、溶融物浴の深さ未満であるべきであり、その結果、セラミック支持体の複数の層、例えば、2以上の層(好ましくは2又は3層)が、鉱物材料のスタックが鉱物溶融物に部分的に沈められることを防止するのに使用される。溶融物浴の深さは、プロセスの際に炉の内側基部から鉱物溶融物の表面まで測定され得る。実際には、セラミック支持体は、所定の層を形成する組織化された配置として炉中には存在しない場合がある。代わりに、上記支持体は、ランダムに配置される場合がある。そのため、「複数の層」は、炉におけるセラミック支持体の合計高さが上記支持体の球相当径を超えることを本質的に意味している。また、セラミック支持体の合計高さは、鉱物溶融物出口のレベルを超えることとなる。出口がサイフォンであるとき、セラミック支持体の合計高さは、サイフォンへの入口のレベル(鉱物溶融物が鉱物浴を出てサイフォンに入る領域)を超えることになり、セラミック支持体の合計高さについて、サイフォン出口のレベルを超えることが有益であり得る。このことは、鉱物材料のスタックが、鉱物溶融物に部分的に沈められることを防止することを助け得る。
【0040】
上記に定義されているセラミック支持体の使用は、加工性を支援し、かつ、好適にサイジングされたボイドがセラミック支持体間に存在することを確実にすることを助けることになり、鉱物溶融物は、溶融物出口、例えば、サイフォンを通しての除去の前に集まり又はプールし得る。また、セラミック支持体が小さすぎると、鉱物溶融物と共に溶融物出口を通って炉から出る場合があり、又は、溶融物出口を遮断する場合がある。セラミック支持体が大きすぎると、炉において鉱物材料を正確に支持しない場合がある。
【0041】
上記に鑑みて、本発明は、コークスの量が実質的に低減されて又はコークスの使用さえすることなく溶銑炉において鉱物材料を支持する有利な方法を提供し、また、既存の溶銑炉を何ら変更する必要もなく、未溶融鉱物材料が溶融物ストリームにおいて炉から出ることを防止することができる。このことは、水冷管及び冷却システムを収容するために変更される必要がある、US5,107,517及びJPH10141629に記載されている炉に対する実質的な利益である。
【0042】
典型的には、鉱物溶融物を形成するためのプロセスは、供給ホッパーを通して炉内に更なる鉱物材料を供給しながら、鉱物溶融物を炉から溶融物出口を介して連続的に除去する連続プロセスであってよい。セラミック支持体が炉の間に劣化すると、更なるセラミック支持体を更なる鉱物材料と共に炉に添加してよい。鉱物材料が溶融して炉から除去されるにつれ、更なるセラミック支持体がホットゾーンの底部において沈殿するまで炉を通して下行する。セラミック支持体の劣化速度、したがって、上記支持体が更なる鉱物材料と共に炉に添加されることになる速度は、炉を一定期間運転し、炉を冷却させ、残存セラミック支持体を調べることによって経験的に算出されても導き出されてもよい。更なるセラミック支持体は、炉において適度な機能を維持するために任意の好適な量で添加され得る。これは、更なるセラミック支持体及び更なる鉱物材料の合計量を基準にして、典型的には、1~5重量%、より好ましくは1~2重量%の量である。セラミック支持体が、より高い劣化速度を有すると、例えば、セラミック支持体が、より低い質を有すると、更なる鉱物材料と併せて、より高量で炉に添加されることが必要となる。セラミック支持体が、より低い劣化速度を有すると、例えば、セラミック支持体が、より高い質を有すると、更なる鉱物材料と併せて、より低量で炉に添加されることが必要となる。
【0043】
炉は、ホットゾーンにおいてプラズマ加熱を付与する少なくとも1つのプラズマトーチを備える。プラズマトーチは、直流(DC)、交流(AC)、高周波(RF)及び他の放電を使用して熱プラズマを発生させる。熱プラズマは、プラズマトーチにおいて2つの電極間に電気アークを送ることによって生じる熱を付与し、このアークを通してキャリアガスが狭窄開口内に通される。これにより、ガスの温度が、物質の第4状態、すなわち、プラズマに入るポイントまで上昇する。プラズマトーチは、移行であっても非移行であってもよい。非移行プラズマトーチにおいては、電極がトーチのハウジングの内側にある。一方で、移行プラズマトーチにおいては、1つの電極がトーチのハウジングの外側に位置付けられており、アークを、プラズマトーチの外側に、より遠い距離にわたって形成させる。本発明におけるプラズマトーチは非移行プラズマトーチであることが好ましい。最も好ましくは、直流の非移行プラズマトーチである。
【0044】
プラズマトーチは、様々なキャリアガス、例えば、酸素(O)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、空気、水素(H)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、又はこれらの混合物を使用してよい。本発明において、キャリアガスは、N、CO、CO、又はこれらの混合物からなる群から好ましくは選択される。酸素(O)が、窒素を含み1,400℃以上の温度にある溶銑炉のゾーンから除かれるとき、NOの生成が大幅に低減され得ることが見出された。NOの生成を最小にすることを助けるために、キャリアガスは、せいぜい、ほんの微量の酸素しか含まないことになる。このことは、キャリアガスが、キャリアガスの合計重量を基準にして5重量%未満、例え
ば、2重量%未満、好ましくは0.8重量%未満の酸素を含むことを意味している。理想的には、キャリアガスは、酸素を欠いている。
【0045】
本明細書において使用されているとき、別途記述されていない限り、用語「酸素」、「窒素」、「一酸化炭素」、「二酸化炭素」及び「水素」は、それぞれ、O、N、CO、CO、及びHを称する。用語「NO」は、当該分野において公知であり、窒素酸化物、例えば、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO)を含む。
【0046】
プラズマトーチにおいて使用されるキャリアガスのエンタルピーは、好ましくは2.0~6.0kWh/Nm、好ましくは3.0~5.0kWh/Nmである。エンタルピーは、測定キャリアガス流量によって除算された測定電力として算出される。エンタルピーは、溶融物温度及び溶融物生産量を制御するのに適している。
【0047】
本発明のプロセスにおいて有用な溶銑炉は、1つのプラズマトーチを含み得る。代替的には、複数のプラズマトーチ、例えば、2、3、4以上のプラズマトーチを含み得る。本明細書において使用されているとき、「1つの(a)」又は「その(the)」プラズマトーチへの言及は、「1以上のプラズマトーチ」を意味する。各プラズマトーチの電力は、典型的には1~6MWの領域である。
【0048】
プラズマトーチを使用して溶銑炉に熱エネルギーを付与する利益にもかかわらず、熱エネルギーは、代替手段を使用して付与されてもよい。本発明によると、炉加熱エネルギーの50%超がプラズマトーチによって付与される。より多くの量の炉加熱がプラズマトーチによって付与されることが好ましくあり得、例えば、60%超が、好ましくは70%超、より好ましくは80%超、なおより好ましくは90%超である。プラズマ加熱の利点を考慮すると、熱エネルギーの全てがプラズマトーチによって付与されることが優先される。熱は、多くの箇所において炉に付与されてよいが、加熱は、プラズマトーチによって単独でホットゾーンにおいて付与されることが好ましい。
【0049】
炉の加熱がプラズマトーチによって単独で付与されないとき、熱エネルギーの残りは、例えば、伝統的な方法で、すなわち、酸素源において燃料、例えば、天然ガス又はコークスを燃焼させることによって付与されてよい。酸素は、ホットゾーンの上方にある酸化ゾーンにおいて炉に供給される。酸素源は、任意の好適な手段によって、例えば、少なくとも1つの羽口及び/又は少なくとも1つの酸素注入口を使用して付与されてよい。
【0050】
「酸素源」は、酸素ガス、空気又はこれらの組み合わせを含めた任意の好適な源、すなわち、酸素富化空気からのものであってよい。付与される酸素は、以下に記載されているように、鉱物材料又はコークスに存在するいずれの炭素も酸化し得る。
【0051】
羽口は、酸化ゾーンの底部に典型的には位置付けられている。溶銑炉は、1つの羽口、又は複数の羽口、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15以上の羽口を含み得る。使用されるとき、9~13の羽口、最も好ましくは11の羽口があることが好ましい。この場合、羽口は、溶融物出口、例えば、溶融物サイフォンの箇所におけるものを除き、炉の外縁の周りに等しく分布されることが好ましい。いずれの場合にも、プラズマトーチと同じゾーンには羽口が位置付けられていないこと、すなわち、ホットゾーンには羽口がないことが好ましい。このことは、酸素が、1,400℃を超える溶銑炉のゾーンに存在することを回避することを助ける。
【0052】
羽口は、装填1トン当たり70~250Nmの空気のレートで空気を付与し得る。空気が溶銑炉に流れ込む各羽口の口径は、典型的には、プラズマトーチよりも0から最大1炉径だけ大きくして位置付けられている。炉径は、溶銑炉の内側チャンバの内径である。
【0053】
羽口は、典型的には、溶銑炉の外周の周りに位置付けられているため、大きい径を有する炉の中心に酸素を供給することができない場合がある。この場合、少なくとも1つの酸素注入口が、炉の中心への酸素の導入を助けるために炉に存在していてよい。当該分野において公知であるように、酸素注入口は、溶銑炉における適切な箇所に酸素を送達させる管又はパイプであってよい。
【0054】
NOは、高温高圧下で窒素及び酸素に由来し得る。NOの形成を低減するために、溶銑炉の酸化ゾーンにおける温度は、600℃~1,400℃であるべきである。NOの形成をさらに低減するために、酸化ゾーンの温度は、600℃~1,300℃、より好ましくは600℃~1,200℃、なおより好ましくは600℃~1,100℃、特に600℃~1,000℃、最も好ましくは600℃~900℃、特に600℃~850℃未満であることが好ましい。
【0055】
ホットゾーンの温度は、酸化ゾーンの温度よりも高くあるべきである。このことは、ホットゾーンにおける温度が、800℃超、好ましくは900℃超、より好ましくは1,000℃超、より好ましくは1,100℃超、より好ましくは1,200℃超、より好ましくは1,300℃超、より好ましくは1,400℃超であり得ることを意味している。
【0056】
上記に基づいて、本発明のプロセスは、400ppm未満、好ましくは300ppm未満、より好ましくは250ppm未満、なおより好ましくは200ppm未満、より好ましくは150ppm未満の量でNOを含むオフガスを生じ得る。当業者以外にも理解されているように、オフガスのppmは体積ppmである。そのため、本明細書におけるガスのppmへの言及は、体積ppmである。
【0057】
例えば、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、又はこれらの混合物であるキャリアガスを使用するプラズマトーチによってホットゾーンを加熱するさらに予想外の利益は、プラズマトーチ以外の手段によって加熱される対応する溶銑炉と比較してホットゾーンの高さを有意に低減し得るということである。
【0058】
プラズマトーチの使用は、溶銑炉のある特定のゾーンにおける温度、及び、特に、鉱物溶融物の温度を変化させるのに必要とされる応答時間を有意に低減するという点において、なお、更なる利点を有する。典型的には、鉱物溶融物温度は、プラズマトーチを使用するとき、20分以内、好ましくは15分以内、より好ましくは10分以内に変化し得る。これは、他の加熱手段が使用されるときよりも速い温度変化であり得る。
【0059】
水は、750℃超の温度にある炉内のいずれかのゾーンから除かれるべきであることが見出された。これにより、形成されて溶銑炉のオフガスに存在する水素の量が最小になる。炉は、20,000ppm未満、好ましくは10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、好ましくは2,000ppm未満、好ましくは1,000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満の量で水素を含むオフガスを生成することが好ましい。オフガスにおいて検出可能な量の水素を含まないことが最も好ましい。上記に言及されているように、オフガスのppmは体積ppmである。
【0060】
少なくとも1つのプラズマトーチの使用により、溶銑炉において使用されるコークスの量は大幅に低減され、実質的に排除され、又は排除され得る。「大幅に低減される」ために、使用されるコークスの量は、コークス及び鉱物材料の合計量を基準にして5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満であってよい。「実質的に排除される」ために、使用されるコークスの量は、コークス及び鉱物材料の合計量を基準に
して0.5重量%未満であってよい。好ましくは、コークスは添加されず、又はコークスは微量でのみ存在する。この場合、コークスは、プロセスに存在しないと見なされる、すなわち、コークスが排除される。コークスがプロセスに存在しないことが最も好ましい。
【0061】
本明細書に記載されている少なくとも1つのプラズマトーチ及び複数のセラミック支持体の併用は、鉱物溶融物がコークスを使用することなく溶銑炉において形成され得ることを意味している。このことは、オフガスにおけるある一定の排出を低減又は排除する、例えば、オフガスにおいて生成されるCO及び/又はCOが少ないという利点を有する。
【0062】
鉱物溶融物を形成するのに使用される鉱物材料は、炭素を含み得る。例えば、炭素は、鉱物溶融物を形成するのに使用されるリサイクル鉱物材料に存在し得る。リサイクル鉱物材料は、廃棄MMVFを含めた広範な源から得られ得る。MMVFは、典型的には、バインダ及び油を含み、そのタイプは、MMVFの使用目的に依る。バインダは、相当量の炭素(およそ40~70重量%)を通常は含む。油は、最大90重量%以上の炭素を含有し得る。より高い割合のリサイクル材料が鉱物材料として使用されるときには、プロセスにおいて生成されるCO及びCOの量がより高くなる。結果として、リサイクル鉱物材料を使用して鉱物溶融物を形成するとき、鉱物材料は、鉱物材料の合計重量を基準にして5重量%未満の炭素、好ましくは2重量%未満の炭素を含むことが好ましい。このことは、プロセスが、CO又はCOを少量しか生成しないことになることを意味している。
【0063】
上記にかかわらず、リサイクル材料を含有しない鉱物材料は、不純物として炭素を依然として含む場合がある。この場合、鉱物材料は、リサイクル鉱物材料を含まないとき、鉱物材料の合計重量を基準にして1重量%未満の炭素、好ましくは0.5重量%未満の炭素を含む。本発明の目的は、鉱物溶融物の形成において生成されるCO及びCOの量を低減することであり、したがって、鉱物材料が炭素を実質的に含まない、すなわち、鉱物材料には微量の炭素しか存在しないことが最も好ましい。
【0064】
コークスが炉において使用されるとき、又は別の炭素源が鉱物材料に存在するとき、酸素源は、溶銑炉のホットゾーンの上方に設けられて、上記のように酸化ゾーンを形成することになる。
【0065】
Fe3+(Feの形態)又は金属鉄と比較して比較的高い量のFe2+(FeOの形態)を含有することが鉱物溶融物に有益であり得る。鉄の還元は、炭素源、例えば、石炭、コークス又は他の炭素質の粒子状燃料を使用して典型的には達成される。炭素が本プロセスから除かれることが好ましいため、鉄の還元は、金属アルミニウムを使用して達成されてよい。金属アルミニウムは、アルミニウムの形態、例えば、顆粒状アルミニウムであってもよく、又は、アルミニウムドロスであってもよい。アルミニウムドロスは、アルミニウム加工産業からの粒子状廃材であり、およそ0.5~10重量%の金属アルミニウムと共に、(通常50~90重量%)Alを主に含む。アルミニウムは、鉱物溶融物中に所要のFe2+/Fe3+分を形成するのに充分な量で鉱物材料に添加されてよい。典型的には、鉱物材料のおよそ8~12重量%はアルミニウムドロスであり得る。コークス及び鉱物材料の合計重量を基準にしてコークスの使用量が0.5重量%未満であるとき、プロセスにおいて金属アルミニウムを使用することが好ましい。アルミニウムを使用して鉄を還元する更なる利益は、アルミニウムがAlに酸化されることである。これは、多くの場合、鉱物溶融物の必要とされる成分である。
【0066】
プラズマトーチを使用して加熱される溶銑炉からのオフガスは、N、CO、CO、NO及びHを含んでいてよい。オフガスは、更なる成分、例えば、水及び粒子、すなわち、固体物質粒子を含んでいてよい。オフガスは、全体として、又は部分的に、プラズマトーチの1以上のためのキャリアガスにおいて使用されてよい。これに関して、キャリ
アガスは、炉によって生成されるオフガスの少なくとも一成分を含んでいても、これからなっていてもよい。本質的に、オフガスは、リサイクルされて、プラズマ点火のために運ばれるガスとして使用されてよい。オフガスの成分は、キャリアガスとしての使用の前に分離されてよい。オフガスの成分は、互いに分離されてよく、又は、2以上の成分の組み合わせが、他の成分から分離されてよい。このことは、キャリアガスが、オフガスの少なくとも一成分、例えば、オフガスの1、2、3、4、5以上の成分を含んでいてよいことを意味している。キャリアガスは、オフガス成分N、CO、CO又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。代替的には、キャリアガスは、1つのオフガス成分、例えば、N、CO、又はCOを含んでいてよい。
【0067】
オフガスの1以上の成分は、キャリアガスでの使用の前にオフガスクリーニングを経てよい。オフガスクリーニングは、オフガス及び/又は水に懸濁された粒子を除去することが好ましい。オフガスクリーニングは、全体としてのオフガスにおいて、又は、オフガスの残部から一旦分離されたその少なくとも一成分において実施されてよい。
【0068】
キャリアガスは、オフガス、又はオフガスの少なくとも一成分からなっていてよい。代替的には、オフガス、又はオフガスの少なくとも一成分を含んでいてよい。後者の場合、オフガスの一部を形成しない更なるガスが使用前にキャリアガスに添加されてよい。この場合、キャリアガスは、更なるガスと共に「補給される」。
【0069】
本発明のプロセスを介して調製される鉱物溶融物は、MMVF、例えば、ガラス繊維又は石繊維の生成に好適であり得る。形成される鉱物溶融物は、MMVFを形成するための使用に好適であることが好ましい。そのため、本発明の第2態様において、MMVFを製造するためのプロセスであって
(i)本明細書において定義されているプロセスを使用して溶融物を形成する工程;
(ii)カスケード紡糸機を好ましくは使用して内側又は外側紡糸プロセスによって溶融物を繊維化する工程;及び
(iii)形成された繊維を収集する工程
を含む上記プロセスが提供される。
【0070】
繊維、特にMMVFは、従来の方法で鉱物溶融物から作製されてよい。概して、これらの繊維は、遠心分離による繊維形成プロセスによって作製される。例えば、繊維は、紡糸カップにおいて穿孔を通して外側に放たれる紡糸カッププロセスによって形成されてよく、又は、鉱物溶融物が回転円板から放出されてよく、かつ、繊維形成が鉱物溶融物を通ってガスの噴出をブラストすることによって促進されてよい。繊維形成は、カスケード紡糸機において第1のロータ上に鉱物溶融物を注ぐことによって行われてよい。この場合、鉱物溶融物は、2、3、4又はさらに多くのロータの第1のセット上に注がれることが好ましく、ロータは、それぞれが、略水平軸の周りで回転することにより、第1のロータにおける鉱物溶融物は第2の(下方の)ロータ上に主に放たれるが、いくらかは第1のロータから繊維として放出される場合があり、第2のロータにおける鉱物溶融物は繊維として放出されるが、いくらかは、第3の(下方の)ロータなどに向かって放たれる場合などがある。概して、紡糸プロセスはカスケード紡糸機を使用することが好ましい。
【0071】
各紡糸法において使用される鉱物溶融物の必要とされる特性は、当業者に公知であり、鉱物溶融物の組成は、これらの特性を付与するように調整されてよい。例えば、当業者は、溶銑炉に添加されて特定の鉱物溶融物組成物を生成し、これが特定の紡糸プロセスによって紡糸されるように、鉱物材料を選択することができる。
【0072】
繊維化プロセスの際、溶融物から、空気に同伴された繊維の雲が形成され、繊維は、コンベアにおいてウエブとして収集されて、繊維化装置から運び去られる。繊維のウエブは
、次いで強化され、当該強化は、クロスラッピング及び/又は縦方向圧縮及び/又は垂直圧縮及び/又はマンドレルの周囲で巻くことによるパイプ断熱用円筒状製品の製造を含むことができる。他の強化プロセスが実施されてもよい。
【0073】
バインダ組成物は、好ましくは繊維が空気に同伴された雲であるときに、繊維に従来的に適用される。代替的には、コンベアにおける収集後に適用され得るが、これは、あまり好ましくない。ミネラルウール繊維との使用に従来のタイプのバインダを使用してよい。
【0074】
強化後、強化された繊維ウエブを硬化デバイス内に通して、バインダを硬化させる。硬化は、100~300℃、例えば、170~270℃、例えば、180~250℃、例えば、190~230℃の温度で実施されてよい。
【0075】
硬化は、好ましくは150~300℃、例えば、170~270℃、例えば、180~250℃、例えば、190~230℃の温度で操作する、強化されたウエブを通して熱風を吹かせるミネラルウール製造用の従来の硬化オーブンにおいて行われることが好ましい。硬化は、30秒~20分間、例えば、1~15分間、例えば、2~10分間行われてよい。典型的には、硬化は、150~250℃の温度で30秒~20分間行われる。
【0076】
硬化プロセスは、繊維へのバインダの適用の直後に開始してよい。硬化は、バインダ組成物が、物理及び/又は化学反応を経て、化学反応の場合には、通常、バインダ組成物における化合物の分子量を増加させ、これにより、通常はバインダ組成物が固体状態に達するまでバインダ組成物の粘度を増加させるプロセスとして定義されている。硬化されたバインダ組成物は、繊維を結着させて、構造的に密着した繊維マトリックスを形成する。
【0077】
鉱物繊維と接触しているバインダの硬化は、代替的には、熱プレスにおいて行われてよい。熱プレスにおいて鉱物繊維と接触しているバインダの硬化は、高密度製品の製造を可能にするという具体的な利点を有する。
【0078】
概して、繊維、及び繊維が形成される鉱物溶融物は、以下の正常かつ好ましい下及び上限値によって定義される様々な範囲内の元素分析結果(酸化物の重量%として測定)を有し得る。
SiO 35~50、好ましくは38~48、より好ましくは33~44
Al 12~30、好ましくは15~28、より好ましくは16~24
TiO 最大で2
Fe 2~12
CaO 5~30、好ましくは5~18
MgO 0~15、好ましくは1~8
NaO 0~15
O 0~15
0~3
MnO 0~3
0~3。
【0079】
この場合、溶融物がMMVFに形成されるべきであるとき、鉱物溶融物のFe(2+)の割合は、合計Feを基準にして80%超であることが好ましく、合計Feを基準にして好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%である。かかる場合、MMVFは、カスケード紡糸機を使用して作製されることが好ましい。これらの例の鉱物溶融物の更なる詳細は、WO2012/140173(参照により本明細書に組み込まれる)に見られ得る。
【0080】
Fe(2+)及びFe(3+)の量は、「The ferric/ferrous ratio in basalt melts at different oxygen
pressures」、Helgason et a/.,Hyperfine Interact.,45(1989),pp287-294に記載されているメスバウアー法を使用して決定され得る。
【0081】
溶融物又は繊維における全酸化物を基準にした、溶融物又は繊維組成物全体における鉄の合計量は、Feとして算出される。これは、かかるMMVF、装填又は溶融物に存在する鉄の量を見積もる標準的な手段である。存在するFeO及びFeの実際の重量百分率は、酸化鉄比及び/又は溶融物の酸化還元状態に基づいて変動し得る。
【0082】
鉱物溶融物及び得られる繊維の上記例において、鉱物溶融物中の鉄の量は、2~15重量%、好ましくは5~12重量%であることが好ましい。溶銑炉は、特にコークスが使用されると、還元雰囲気を有する傾向があり、結果として、酸化鉄の還元及び金属鉄の形成を生じ得る。好ましくは、金属鉄は、鉱物溶融物及び繊維に混入されず、炉から除去されることになる。そのため、炉における状態は、鉄の過剰な還元を回避するように注意深く制御されてよい。しかし、本発明者らは、相当レベルの酸化鉄を有する最終製品繊維を製造することが可能である。
【0083】
本発明のプロセスは、生理食塩水に可溶であることが示され得る繊維の形成において使用されてよい。本発明のプロセスを使用して有利に作製され得る好適な高アルミニウムの生分解性繊維は、WO96/14454及びWO96/14274に記載されており、他は、WO97/29057、DE-U-2970027及びWO97/30002(参照によって組み込まれる)に記載されている。
【0084】
かかる繊維は、約pH4.5に緩衝された生理食塩水において典型的には行われるインビボ試験又はインビトロ試験において示されているように、肺液に適度な溶解度を好ましくは有する。好適な溶解度は、WO96/14454に記載されている。通常、溶解速度は、生理食塩水中、少なくとも10又は20nm/日である。繊維は、好ましくは、800℃超、より好ましくは1,000℃超の焼結温度を有する。溶融物は、1,400℃の繊維形成温度で5~100ポアズ、好ましくは10~70ポアズの粘度を好ましくは有する。この例の更なる実施形態は、WO99/28252(参照により本明細書に組み込まれる)に見られ得る。
【0085】
好ましくは、鉱物溶融物は、この具体例において、1400℃で10~30ポアズの範囲、より好ましくは15~25ポアズの範囲の粘度を有する。この粘度を選択する利点は、得られるMMVFが、溶融物の粘度がより高いときよりも小さい径を有するということである。更に、所要の操作粘度を達成するために、より低温で溶融物を使用することが可能である。このことは、より低温で溶融物を使用することが可能であるため、エネルギーを節約する。また、溶融物が低温であるほど、引き起こされる摩耗はより少ないため、繊維を製造するのに使用されるロータにおける摩耗も低減する。この例の鉱物溶融物の更なる詳細は、WO2015/055758(参照により本明細書に組み込まれる)に見られ得る。溶融物の粘度は、ASTM C 965-96にしたがって求められてよい。
【0086】
本発明のプロセスにおいて有用な溶銑炉は、以下に加えて、上記の成分及びゾーンを含んでいてよい。通常、鉱物溶融物は、当該溶融物が溶融物出口、例えば、溶融物サイフォンを介して繊維形成プロセスに流出するホットゾーンにおいてプールを形成する。鉱物溶融物は、溶銑炉の基部から、当該溶融物がプールとして集まりかつ繊維形成プロセスへと流出する別のチャンバに流されてよい。
【0087】
原料(鉱物材料)は、ブリケットの形態であってよい。ブリケットは、所望の粒子状材料及びバインダの混合体を所望のブリケット形状に成形すること、並びにバインダを硬化させることによって公知の方法で作製される。
【0088】
バインダは、水硬性バインダ、すなわち、水によって活性化されるもの、例えば、ポートランドセメントであってよい。他の水硬性バインダは、セメントの部分的又は完全な代用物として使用され得、例として、石灰、高炉スラグ粉末、及びある特定の他のスラグ、並びに更にはセメントキルンダスト及び粉砕MMVFショット(JP-A-51075711、US4,662,941及びUS4,724,295、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。代替的なバインダとして、クレイが挙げられる。ブリケットはまた、有機バインダ、例えばモラッセによって、例えばWO95/34514(参照により本明細書に含まれる)に記載されているように形成されてもよい。かかるブリケットは、フォームストーンとして記載されてもよい。
【0089】
MMVFは、上記のようなMMVFを含む接着されたウエブ、又は上記プロセスによって作製されたMMVF、及び硬化されたバインダ組成物として形成されてよい。
【0090】
本発明のプロセスによって形成される溶融物、及びこれから作製される人工繊維(好ましくはMMVF)は、広範な製品、例えば、絶縁要素(断熱及び/又は遮音の両方)、及び耐火要素、並びに植物成長基質における使用に好適であり得る。
【0091】
本発明の第3態様によると、
(A)鉱物材料を支持する、及び、MMVFの製造に好適な鉱物溶融物を生成するために必要とされるコークスの量を低減する;並びに/又は
(B)MMVFの製造に好適な鉱物溶融物を過熱するときに熱効率を増加させる
ための、溶銑炉におけるセラミック支持体の使用が提供される。
【0092】
使用は、上記のプロセスにおいて定義されている通りであってよい。
【0093】
本発明を、本発明によるプロセスを実施するための炉を示す図を参照してさらに詳細に説明する。
【0094】
図1における図は、軸方向に動かすことが可能な錐体4によって構成される底部を有する容器3と連通する供給ホッパー2を有する溶銑炉1を示す。容器3の下方には、水冷ジャケット5によって閉鎖される溶融チャンバがある。溶銑炉1は、その下端において平面炉底部6を含み、底部6の上方の好適な距離で、溶融物出口、例えば、溶融物サイフォン7が設けられている。溶融物出口7が設置されているレベルよりも上方のいくらかの距離で、多数のプラズマトーチ8が炉壁に組み込まれている。酸素源が炉において必要であるときには、より高いレベルにおいて、多数の羽口10及び/又は多数の酸素注入口(示さず)と連通している環状の酸素入口パイプ9が設けられている。溶銑炉1は、ホットゾーンに内側ライニングを有し、れんがから作製されている。ライニングは、少なくとも羽口10までの高さまで炉底部6及び内側炉壁を覆っている。複数のセラミック支持体11は、鉱物溶融物が炉から除去される前に鉱物溶融物が集まるホットゾーンのセクションに位置付けられている。
【0095】
鉱物材料、すなわち、原料は、所望の溶融物の組成に相当する組成を有して、ホッパー2及び容器3を通して溶融チャンバ内に供給され、投与は、錐体4の好適な調整によって行われる。炭素質材料、例えば、コークスは、必要とされるときには、鉱物材料と共に添加されてよい。
【0096】
溶融チャンバの上部は、材料が煤煙ガスによって加熱されるため、前加熱ゾーンとして作用する。前加熱ゾーンから材料が炉を通して、及び、存在する場合には酸化ゾーンを通して下降する。酸化ゾーンの下限は、酸素が羽口10及び/又は酸素注入口(複数可)を通して導入されるレベルで位置付けられている。ある量のコークスが使用されるとき、COを形成するように酸化ゾーンにおいて燃焼される。酸化ゾーンにおける温度は、酸化ゾーンの上端の真上に位置付けられている前加熱ゾーンの部分の温度が、酸化ゾーンにおいて形成されるCOとCOを形成するような炭素との反応を排除又は大幅に低減するように、1000℃を超えないようなレベルで保たれる。実際の溶融は、酸化ゾーンの下方に位置付けられていて強い熱がプラズマトーチ8によって導入される溶融チャンバの部分において行われる。溶融プロセスの際、鉱物材料は、セラミック支持体11によって支持される。形成された溶融物は、セラミック支持体11間のボイドにおいて集まる(プールする)炉の底部に向かって下降する。溶融物は、溶融物出口7を通して排出される。
【実施例
【0097】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【0098】
をキャリアガスとしてプラズマトーチが付与されるプラズマ焼成溶銑炉において鉱物溶融物を形成した。炉はセラミック体を備え、コークスを添加しなかった。溶融物における鉄の酸化状態を、鉱物装填において10重量%のSerox W(Alu-dros)(およそ2重量%の金属アルミニウム)を組み込むことによって調整した。炉において使用した鉱物材料は、オフガスにおけるCO及びCOの存在の主要因となるリサイクルミネラルウール廃棄物を含有するブリケットであった。以下の表において、セラミック支持体を含有せずコークスが鉱物材料と共に添加された理論炉(B欄)に対するセラミック支持体を有する炉(A欄)のパラメータ及び結果を比較する。
【0099】
【表3】
【0100】
データは、コークスを用いずセラミック支持体を使用したときにオフガスにおけるCO及びCOの量が大幅に低減されることを示している。A欄におけるCO及びCOの形成量は、炉において使用されるリサイクルミネラルウール廃棄物(最大で50%が粉砕されたミネラルウール廃棄物)を含有するブリケットに存在する炭素の量を示すとき、ベースラインと見なされてよい。
図1
【国際調査報告】