(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含む薬物の組み合わせ及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/437 20060101AFI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241024BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K31/437
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K31/506
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526984
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 CN2022129946
(87)【国際公開番号】W WO2023078408
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111307051.5
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524117778
【氏名又は名称】ハイファ バイオファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーシアン
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ミャオ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユエ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユエピン
(72)【発明者】
【氏名】スン、トアンホン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、チュン
(72)【発明者】
【氏名】チエン、シン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チウシア
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含む医薬組成物及びその使用である。具体的には、(i)MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤である6-(1-メチル-1H-ピラゾ-ル-4-イル)-1-((6-(1-メチル-1H-ピラゾ-ル-4-イル)イミダゾール[1,2-a]ピリジン-3イル)スルホニル)-1H-ピラゾリン[4,3-b]ピリジン又はその薬学的に許容可能な塩と、EGFR突然変異体阻害剤又はその薬学的に許容可能な塩と、を含む薬物の組み合わせである。前記組み合わせを用いて癌を治療又は予防する方法及び用途である。前記組み合わせは、相乗的相互作用、インビトロ又はインビボでの強力な抗増殖活性及び/又はインビトロ又はインビボでの強力な抗腫瘍応答などの有益な治療特性を有するため、癌の治療に特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤:6-(1-メチル-1H-ピラゾ-ル-4-イル)-1-((6-(1-メチル-1H-ピラゾ-ル-4-イル)イミダゾール[1,2-a]ピリジン-3イル)スルホニル)-1H-ピラゾリン[4,3-b]ピリジン、又はその薬学的に許容可能な塩と、
(ii)EGFR阻害剤と、を含み、
前記EGFR阻害剤は、オシメルチニブ、アルモネルチニブ、フルモネルチニブ、ゲフィチニブ、イコチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ラゼルチニブ、アビチニブ、ラパチニブ、アミバンタマブ、又はその薬学的に許容可能な塩である、薬物の組み合わせ。
【請求項2】
以下の条件のうちの1つ又は複数を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物の組み合わせ、
(1)前記EGFR阻害剤は、オシメルチニブ:N-{2-{[2-(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(l-メチル-lHインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2エナミド、又はその薬学的に許容可能な塩であること、
(2)前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、遊離形態であること、
(3)前記EGFR阻害剤は、遊離形態又はメシル酸塩形態であること、
(4)前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、単一製剤若しくは単位剤形であり、又は、前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、個別の製剤若しくは単位剤形であること、
(5)前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、治療有効量であること、
(6)前記EGFR阻害剤は、治療有効量であること、
(7)前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、経口剤形であること、
(8)前記EGFR阻害剤は、経口剤形であること。
【請求項3】
以下の条件のうちの1つ又は複数を満たす、ことを特徴とする請求項1~2の少なくとも1項に記載の薬物の組み合わせ、
(1)前記METチロシンキナーゼ阻害剤は、遊離形態を採用し、EGFR阻害剤は、メシル酸塩形態であること、
(2)前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、単一製剤若しくは単位剤形であり、前記単一製剤若しくは単位剤形は、(i)前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤と、(ii)EGFR阻害剤と、任意の1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体と、を含み、
又は、前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、個別の製剤若しくは単位剤形であり、前記個別の製剤若しくは単位剤形は、それぞれ、(i)前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、及び任意の1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体と、(ii)EGFR阻害剤、及び任意の1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体を含むこと、
(3)前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤の単回用量は、200~300mg、例えば200mg、250mg又は300mgであり、この量は、1つ又は複数の用量の形態であり得ること。
【請求項4】
EGFRチロシンキナーゼ活性及び/又はMETチロシンキナーゼ活性媒介疾患を治療又は予防する薬物の調製における請求項1~3の少なくとも1項に記載の薬物の組み合わせの使用。
【請求項5】
癌を治療又は予防する薬物の調製における使用である、ことを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記薬物の組み合わせにおいて、前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、別々、同時に又は逐次投与可能であり、好ましくは、EGFR阻害剤は、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤投与後に投与される、請求項4~5の少なくとも1項に記載の使用。
【請求項7】
前記癌は、EGFR阻害剤治療に対して耐性のある又は難治性の癌、例えばEGFR突然変異及び/又はMET異常活性化を持つ癌、また、例えばMETとEGFRの2つの通路がともに異常である癌である、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記薬物の組み合わせにおいて、前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤の含有量は、200mg~300mgから選択され、かつ、この量は、1つ又は複数の用量で1日に1回投与されるのに適し、EGFR阻害剤の含有量は、80mgであり、かつ、この量は、1日に1回投与されるのに適している、請求項4~5の少なくとも1項に記載の使用。
【請求項9】
前記薬物の組み合わせは、特定の期間内に投与され、かつ、一定期間持続して投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項10】
前記癌は、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、舌がん、脳神経膠腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、甲状腺がん、骨がん、慢性骨髄性白血病、膵臓がん、皮膚がん、皮膚及び眼内黒色腫である、請求項5に記載の使用。
【請求項11】
前記癌は、肺癌、好ましくはNSCLCである、請求項5に記載の用途。
【請求項12】
請求項1~3の少なくとも1つで定義された薬物の組み合わせと、1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体と、を含む、医薬組成物又は医薬製剤。
【請求項13】
請求項1~3の少なくとも1項で定義された薬物の組み合わせ又は請求項12に記載の医薬組成物又は医薬製剤と、同時に、別々又は逐次投与することを記載する薬物の組み合わせの取扱書と、を含み、好ましくは、薬物の組み合わせは、薬物用量単位の形態である、ピルケースセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、出願日が2021年11月5日の中国特許出願2021113070515の優先権を主張している。本願は上記の中国特許出願の全文を引用している。
【0002】
本開示は、(i)MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容可能な塩と、(ii)EGFR阻害剤又はその薬学的に許容可能な塩との組み合わせを含む薬物の組み合わせに関する。本開示はまた、前記組み合わせに対応する医薬製剤、組成物、及び前記組み合わせを用いてがんを治療又は予防する方法とその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
EGFR阻害剤
【0004】
今まで肺がんは世界で最も深刻な公共健康問題の1つである。GLOBOCAN 2018のデータによると、肺がんは世界中の新たながん症例の中で第1位(全体の11.6%を占める)であり、がん関連死亡の主な原因(全体の18.4%を占める)となっている。毎年170万人以上が肺がんで亡くなっている。中国では、肺がんの罹患率と死亡率はすべての悪性腫瘍の中で第1位であり、年齢が上がるにつれて罹患率と死亡率は増加する。比較的高齢者(>65歳)の患者群では、死亡率が罹患率に近づく。肺がんの生存率は、診断時の腫瘍の病期及びタイプと高度に相関している。肺がんは病理学的に非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)の2つに大別され、そのうちNSCLCが約80~85%を占める。ステージIのNSCLCの世界的な5年生存率は47%~50%であるが、ステージIVのNSCLCの5年生存率はわずか2%である。患者の大部分は診断された時点で進行期にあり、5年生存率はわずか14%~19.5%である。肺がんの診断と治療に関連する年間費用は、中国の国家経済と国民生活に大きな負担となっている。
【0005】
遠隔転移病巣のない初期段階のNSCLC患者(ほとんどの場合、ステージIA~IIIA)の場合、手術と放射線療法が主な方法であるが、複数の遠隔転移を有する進行期患者(主にステージIIIB~IV)の場合、進行性NSCLC患者は、患者の全身状態、ドライバー遺伝子突然変異の状態、PD-L1の発見レベルによって、ドライバー遺伝子が陽性の患者、ドライバー遺伝子が陰性の患者、プログラムデスレセプターリガンド(PD-L1)発現が高い患者にさらに分類されることが多く、これに基づいて、プラチナ含有の標的2剤併用化学療法又は免疫療法を第一選択及び逐次治療の選択肢として選択する。
【0006】
上皮成長因子受容体(EGFR:Epidermal growth factor receptor)は、肺がん治療における重要な標的であることが証明されており、現在、EGFR突然変異型NSCLC患者に対する第1選択の標準治療は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)であり、例えば、オシメルチニブ、エルロチニブなどがNSCLC治療の第1選択薬として国際的に使用されている。EGFR阻害剤に対するNSCLC患者の臨床感受性は、EGFRの特定の突然変異に関連しており、現在知られているEGFR阻害剤に対する感受性の高い突然変異には、主にエクソン19欠失とL858R突然変異が含まれる。しかし、このような阻害剤の優れた臨床効果にもかかわらず、ほとんどの患者は最終的には再発するか、薬剤耐性を発生させ、一度薬剤耐性や腫瘍の進行が発生すると、患者の予後は不良となり、承認された標準治療以外で利用できる治療選択肢が非常に限られている。
【0007】
既存の研究データは、MET遺伝子の増幅がEGFR阻害剤に対する患者の獲得耐性の発生の理由の1つである可能性を示している。MET遺伝子の増幅は、EGFR突然変異が陽性であり、EGFR阻害剤に対する獲得耐性を発現するNSCLC患者の5~20%に存在する。EGFR阻害剤治療前にMET遺伝子増幅を伴う腫瘍を有する患者は、EGFR阻害剤治療後より短期間で進行する。
【0008】
MET選択的阻害剤
【0009】
グルメチニブ(SCC244)は、経口、ATP競合性、強力かつ選択性の高い間葉-上皮移行因子(MET)受容体チロシンキナーゼ阻害剤で、METキナーゼ活性に対して顕著な阻害作用がある。前臨床研究データは、グルメチニブがMETキナーゼ活性とMETシグナル伝達経路を特異的かつ標的に阻害することにより、G1/S細胞周期停止を誘導し、腫瘍細胞の成長を阻害できることを示している。異常なMET活性化を伴う複数の腫瘍モデルにおいて、グルメチニブのインビボ抗腫瘍活性は、同じ用量のカパチニブ及びクリゾチニブよりも優れていた。
【0010】
さらに、MET活性化はがん細胞の拡散、遊走や浸潤を促進し、それによって腫瘍の転移を促進することが報告されている。さらに、METの活性化は血管内皮細胞の増殖も促進し、それによって血管新生と持続的な腫瘍増殖を促進する。前臨床研究では、グルメチニブががん細胞の拡散、遊走や浸潤、さらには血管内皮細胞の増殖に対しても顕著な阻害作用があることが示されている。
【0011】
現在、がん患者に対する治療の選択肢は数多くある。しかし、腫瘍形成メカニズムの複雑さや異なる薬物間の相互作用の予測不可能性を考慮すると、実現可能であり、単剤よりも優れた効果(症状の緩和、進行の遅延又は症状の抑制、単剤用量の減少、治療中の有害事象(AE)の発生率及び/又は重症度の改善、生活の質の向上、及び/又は相乗作用など)を持たす併用のスキーム及び製品は依然として製薬分野の焦点となっている。たとえば、TYPE IとTYPE II MET阻害剤は、METキナーゼドメインへの結合機構が異なり、MET耐性と感受性の突然変異タイプも大きく異なる。さらに、多くの場合、がんは既存の治療に対する耐性を獲得し、最終的には治療が困難になる。したがって、特に、現在の治療法に対して耐性及び/又は難治性のがんの治療のために、治療剤の効果的かつ安全な組み合わせに対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含む薬物の組み合わせ及びその使用を提供し、この薬物の組み合わせは、組み合わせにおける各活性成分の単剤を単独で使用する場合の治療効果の合計よりも優れており、安全性が高い。
【0013】
本開示は、(i)METチロシンキナーゼ阻害剤:6-(1-メチル-1H-ピラゾ-ル-4-イル)-1-((6-(1-メチル-1H-ピラゾ-ル-4-イル)イミダゾール[1,2-a]ピリジン-3イル)スルホニル)-1H-ピラゾリン[4,3-b]ピリジン(化合物SCC244、グルメチニブとも呼ばれる式(I)で示される化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩と、(ii)EGFR阻害剤と、を含む、薬物の組み合わせに関し、前記EGFR阻害剤は、オシメルチニブ(Osimertinib)、アルモネルチニブ(Almonertinib)、フルモネルチニブ(Furmonertinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、イコチニブ(Icotinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、アファチニブ(afatinib)、ダコミチニブ(Dacomitinib)、ラゼルチニブ(Lazertinib)、アビチニブ(Abivertinib)、ラパチニブ(Lapatinib)、アミバンタマブ(Amivantamab)又はその薬学的に許容可能な塩であってもよい。
【0014】
【0015】
本開示の具体的な実施態様では、前記METチロシンキナーゼ阻害剤は、遊離形態(すなわち、塩ではない)であってもよい。
【0016】
本開示の一実施態様では、前記EGFR阻害剤は、遊離の形態又はメシル酸塩の形態であってもよい。
【0017】
本開示の1つの好ましい実施態様では、EGFR阻害剤は、塩の形態、例えばメシル酸塩の形態を採用する。
【0018】
本開示の別の好ましい実施態様では、前記METチロシンキナーゼ阻害剤は、遊離の形態を採用し、EGFR阻害剤はメシル酸塩の形態である。
【0019】
式(I)化合物は、PCT開示番号WO2014201857に記載されており、前記特許は引用により全体としてここに組み込まれ、その調製方法は、例えばその実施例27に記載されている。
【0020】
好ましくは、前記EGFR阻害剤は、オシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩であり、これは、N-{2-{[2-(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(l-メチル-lHインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2エナミド又はそのメシル酸塩であり、その遊離の形態の構造式は以下の通りである。
【0021】
【0022】
本開示の1つの好ましい実施態様では、本開示は、(i)前記METチロシンキナーゼ阻害剤と、(ii)EGFR阻害剤:オシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、を含む、薬物の組み合わせを提供する。
【0023】
本開示の1つの好ましい実施態様では、EGFR阻害剤は、オシメルチニブであり、好ましくはメシル酸塩の形態を採用する。
【0024】
本開示の別の好ましい実施態様では、前記METチロシンキナーゼ阻害剤は、遊離の形態を採用し、EGFR阻害剤は、オシメルチニブメシル酸塩である。
【0025】
本開示の実施態様における薬物の組み合わせは、総称して「本開示の組み合わせ」と呼ばれ、本開示の組み合わせは、相乗作用を示す。
【0026】
一実施態様では、前記METチロシンキナーゼ阻害剤と本明細書に記載のEGFR阻害剤、例えばオシメルチニブとの組み合わせは、相乗作用を示す。
【0027】
1つの具体的な実施態様では、前記組み合わせにいて、前記METチロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、単一製剤若しくは単位剤形である。前記単一製剤若しくは単位剤形は、(i)前記METチロシンキナーゼ阻害剤と、(ii)EGFR阻害剤と、任意の1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体と、を含んでもよい。
【0028】
1つの具体的な実施態様では、前記組み合わせにいて、前記METチロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、個別の製剤若しくは単位剤形である。前記呈個別の製剤若しくは単位剤形は、それぞれ、(i)前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、及び任意の1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体と、(ii)EGFR阻害剤、任意の1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体と、を含んでもよい。
【0029】
1つの具体的な実施態様では、前記組み合わせにいて、前記METチロシンキナーゼ阻害剤及び/又はEGFR阻害剤は、同時に投与されるか、又は同時に投与されない。好ましくは、EGFR阻害剤は、式(I)で示される化合投与後に投与される。
【0030】
1つの具体的な実施態様では、前記METチロシンキナーゼ阻害剤は、治療有効量のものであり、例えば単回用量は、200~300mg、例えば200mg、250mg又は300mgであり、この量は、1つ又は複数の用量の形態であってもよい。
【0031】
1つの具体的な実施態様では、前記EGFR阻害剤の含有量は、治療有効量であり、例えば単回用量は、80mgであり、この量は、1つ又は複数の用量の形態であってもよい。
【0032】
1つの具体的な実施態様では、前記METチロシンキナーゼ阻害剤の含有量は、200~300mgから選択され、この量は、1つの又は複数の用量で1日に1回投与されるのに適しており、EGFR阻害剤の含有量は80mgであり、この量は、1日に1回投与されるのに適している。
【0033】
1つの具体的な実施態様では、前記METチロシンキナーゼ阻害剤は、好ましくは経口剤形である。
【0034】
1つの具体的な実施態様では、前記EGFR阻害剤は、経口剤形である。
【0035】
本開示は、がんを治療又は予防するための本開示の組み合わせに関する。本開示の組み合わせは、これを必要とする個人に別々、同時に又は逐次投与して、がんを治療又は予防することに用いられ得る。
【0036】
1つの具体的な実施態様では、本開示は、(i)METチロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブ、又はその薬学的に許容可能な塩と、(ii)EGFR阻害剤であるオシメルチニブ、又はその薬学的に許容可能な塩と、を含み、前記薬物の組み合わせは、これを必要とする被験者におけるがんの治療に使用される、薬物の組み合わせに関する。
【0037】
一実施態様では、本開示の組み合わせは、例えば以下のがんに罹患している被験者を治療することができ、前記がんは、EGFR突然変異及び/又はMET異常活性化(MET増幅、高発現、及びMETエクソン14スキッピング突然変異などを含む。)、例えばEGFR突然変異及び/又はMET増幅、特にMETとEGFRの経路の両方の異常を有するがんである。適切ながんとしては、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、舌がん、脳神経膠腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、甲状腺がん、骨がん、慢性骨髄性白血病(CML)、膵臓がん、皮膚がん、皮膚及び眼内黒色腫などが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、前記がんは、肺がん、特に局所進行性又は転移性NSCLCである。
【0038】
別の具体的な実施態様では、本開示は、(i)METチロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブ、又はその薬学的に許容可能な塩と、(ii)EGFR阻害剤、例えばオシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、を含む、薬物の組み合わせに関する。前記薬物の組み合わせは、現在利用可能な治療法に耐性又は難治性で、これを必要とするがん患者の治療に用いられ、前記がん、例えばEGFR突然変異又は/及びMET異常活性化(MET増幅、高発現及びMETエクソン14スキッピング突然変異などを含む。)がんは、例えば、EGFR阻害剤又はEGFR TKI阻害剤による治療に対して耐性又は難治性のがんである。
【0039】
別の具体的な実施態様では、本開示は、METチロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、相乗作用を示すオシメルチニブとの組み合わせを含む。
【0040】
別の態様では、本開示はまた、前述のいずれか1項に記載の薬物の組み合わせと、1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体(賦形剤)と、を含む、医薬組成物又は医薬製剤を提供する。
【0041】
一実施態様では、本開示はまた、(i)前記METチロシンキナーゼ阻害剤と、(ii)EGFR阻害剤と、1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体(賦形剤)と、を含む、医薬組成物又は医薬製剤を提供する。
【0042】
一実施態様では、本開示はさらに、がんの治療に使用される医薬組成物又は医薬製剤に関し、前記医薬組成物又は医薬製剤は、(i)前記METチロシンキナーゼ阻害剤と、(ii)EGFR阻害剤、例えばオシメルチニブと、任意の1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体と、を含む。
【0043】
ある実施態様では、前記医薬組成物又は医薬製剤は、(i)前記METチロシンキナーゼ阻害剤と、(ii)EGFR阻害剤であるオシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体と、を含む。
【0044】
別の実施態様では、本開示は、(i)MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物、及び(ii)個別の医薬組成物としてこれを必要とする被験者に投与されてオシメルチニブを含む医薬組成物に関する。
【0045】
本開示は、これを必要とする個人のがんを治療又は予防する医薬組成物又は薬物(例えば医薬製剤)を調製するための本開示の組み合わせに関する。
【0046】
別の態様では、本開示は、EGFRチロシンキナーゼ活性及び/又はMETチロシンキナーゼ活性媒介疾患、特にがんの治療又は予防における本開示の組み合わせの使用に関する。
【0047】
別の態様では、本開示は、EGFRチロシンキナーゼ活性及び/又はMETチロシンキナーゼ活性媒介疾患を治療又は予防する薬物の調製における本開示の組み合わせの使用に関し、前記組み合わせは、前述の組み合わせのいずれかである。
【0048】
1つの具体的な実施態様では、本開示は、EGFRチロシンキナーゼ活性及び/又はMETチロシンキナーゼ活性媒介疾患、特にがんを治療する薬物又は医薬品の生産における、本開示の組み合わせの使用に関し、本開示の組み合わせは、(i)MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、(ii)EGFR阻害剤、例えばオシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、を含む。
【0049】
1つの具体的な実施態様では、本開示は、がんを治療又は予防する薬物の調製における本開示の組み合わせの使用に関する。
【0050】
特定の態様では、本開示は、これを必要とする個人のがんを治療又は予防する薬物の調製における治療有効量の本開示の組み合わせの使用に関する。
【0051】
前記使用では、前記組み合わせにいて、前記METチロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、単一製剤若しくは単位剤形である。
【0052】
前記使用では、前記組み合わせにいて、前記METチロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、個別の製剤若しくは単位剤形である。
【0053】
前記使用では、前記組み合わせにいて、前記METチロシンキナーゼ阻害剤及び/又はEGFR阻害剤は、同時に投与されるか、又は同時に投与されない。
【0054】
前記使用では、前記組み合わせにいて、前記MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤及びEGFR阻害剤は、別々、同時に又は逐次投与可能であり、好ましくは、EGFR阻害剤は、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤投与後に投与される。
【0055】
前記使用では、前記がんは、EGFR阻害剤による治療に対して耐性又は難治性である。
【0056】
前記使用では、前記がんは、EGFR阻害剤による治療に対して耐性又は難治性のがん、例えばEGFR突然変異及び/又はMET異常活性化を有するがん、また、例えばc-METとEGFRの両方の経路が異常であるがんである。
【0057】
前記使用では、前記METチロシンキナーゼ阻害剤は、200~300mgであり、例えば200mg、250mg又は300mgの用量単位の形態であり、好ましくは経口剤形である。
【0058】
前記使用では、前記METチロシンキナーゼ阻害剤の含有量は、200~300mgから選択され、この量は、1つ又は複数の用量で1日に1回投与されるのに適しており、EGFR阻害剤の含有量は、80mgであり、この量は、1日に1回投与されるのに適している。
【0059】
前記使用では、前記組み合わせは、特定の期間内に投与され、かつ、一定期間持続して投与される。
【0060】
前記使用では、前記がんは、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、舌がん、脳神経膠腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、甲状腺がん、骨がん、慢性骨髄性白血病、膵臓がん、皮膚がん、皮膚及び眼内黒色腫、好ましくは、肺がん、さらに好ましくはNSCLCである。
【0061】
本開示は、がんに罹患している個人を治療又は予防する方法であって、これを必要とする当該個人に有効量の本開示の組み合わせを投与することを含む、方法に関する。
【0062】
別の態様では、本開示は、EGFRチロシンキナーゼ活性及び/又はMETチロシンキナーゼ活性媒介疾患、特にがんを治療する方法に関し、以下の組み合わせを使用する。(i)MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、(ii)EGFR阻害剤、例えばオシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩。
【0063】
本開示はさらに、治療有効量のMET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩を投与することによって、EGFR阻害剤による治療に対して耐性又は難治性のがんを治療する方法を提供する。
【0064】
1つの具体的な実施態様では、本開示は、EGFR阻害剤による以前の治療に対して耐性又は難治性のがんを治療する方法であって、これを必要とする被験者に治療有効量のMET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩、及びEGFR阻害剤、例えばオシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0065】
1つの具体的な実施態様では、本開示は、被験者のがんを治療する方法であって、この治療を必要とする被験者に治療有効量又は用量のMET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、EGFR阻害剤、例えばオシメルチニブとの組み合わせを投与することを含む、方法に関する。
【0066】
別の具体的な実施態様では、本開示は、がんを治療する方法であって、この治療を必要とする被験者に一定量のMET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩、及びEGFR阻害剤、例えばオシメルチニブ、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含み、前記EGFR阻害剤は、前記治療よりも併用治療が有効なものである、方法を提供する。
【0067】
別の具体的な実施態様では、本開示は、EGFRチロシンキナーゼ活性及び/又はMETチロシンキナーゼ活性媒介疾患、特にがんを治療する方法であって、これを必要とする対象、例えば温血動物、特にヒトに有効量の組み合わせ又は組み合わせ製品を投与することを含み、前記組み合わせ又は組み合わせ製品は、(i)MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、(ii)EGFR阻害剤、例えばオシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、を含む、方法に関する。
【0068】
本開示の組み合わせで治療可能ながんのタイプの例としては、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、舌がん、脳神経膠腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、甲状腺がん、骨がん、CML、膵臓がん、皮膚がん、皮膚及び眼内黒色腫などが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、がんは固形腫瘍である。
【0069】
好ましい実施態様では、本開示の組み合わせで治療可能ながんは、肺がん、胃がん、食道がん、舌がん、膵臓がん、胆嚢がん、胆管がん、皮膚がん、皮膚及び眼内黒色腫を含むが、これらに限定されない。
【0070】
いくつかの実施形態では、がんは、EGFR突然変異及び/又はMET異常活性化(MET増幅、高発現及びMETエクソン14スキッピング突然変異などを含む。)を有するがんであり、このようながんは、肺がん、胃がん、結直腸がん、脳神経膠腫、頭頸部扁平上皮がん、腎臓がん、肝臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、甲状腺がん、及び前立腺がんを含むが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態では、がんは、肺がん、例えば局所進行性又は転移性NSCLCである。
【0072】
別の態様では、本開示は、がんを治療するための医薬製剤又は薬剤の調製における、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩とEGFR阻害剤と、を含む薬物の組み合わせの使用を提供する。
【0073】
1つの具体的な実施態様では、本開示はさらに、がんを治療するための医薬製剤又は薬剤の調製における、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤グルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩とEGFR阻害剤とを含む薬物の組み合わせの使用を提供し、前記がんは、EGFR阻害剤又はEGFR TKI阻害剤による治療に対して耐性又は難治性のがんである。
【0074】
1つの具体的な実施態様では、本開示はさらに、EGFR阻害剤による治療に対して耐性又は難治性のがんの治療における、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。好ましくは、前記組み合わせは、特定の期間内に投与され、かつ、一定期間持続して投与される。
【0075】
一実施態様では、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤のグルメチニブは、200~300mg、例えば200mg、250mg又は300mgの用量で投与される。別の実施態様では、オシメルチニブは、80mgの用量で投与され、グルメチニブは、200m~300mgの用量で投与される。
【0076】
一実施態様では、グルメチニブ及びオシメルチニブは、単一製剤若しくは単位剤形である。別の実施態様では、グルメチニブ及びEGFR阻害剤、例えばオシメルチニブは、個別の製剤若しくは単位剤形である。
【0077】
別の実施態様では、グルメチニブ及び/又はEGFR阻害剤、例えばオシメルチニブは、ほぼ同時に投与される。別の実施態様では、グルメチニブ及び/又はEGFR阻害剤、例えばオシメルチニブは、同時に投与されない。別の実施態様では、グルメチニブは、EGFR阻害剤、例えばオシメルチニブを投与する前に被験者に投与される。別の実施態様では、オシメルチニブは、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブを投与する前に被験者に投与される。
【0078】
本開示の具体的な実施形態では、グルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩は、200~300mg、例えば200mg、250mg又は300mgの用量単位の形態であり、好ましくは経口剤形である。
【0079】
本開示の1つの好ましい実施形態では、グルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩の1日用量は、200~300mg、例えば200mg、250mg又は300mgである。
【0080】
本開示の別の好ましい実施形態では、グルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、200~300mgから選択され、この量は、1つ又は複数の用量で1日に1回投与されるのに適しており、EGFR阻害剤であるオシメルチニブの含有量は、80mgであり、この量は、1日に1回投与されるのに適しており、併用周期は21日間とする。
【0081】
別の態様では、本開示は、本開示の内容に係る前記薬物の組み合わせ製品を含み、特に同時に、別々又は逐次使用(特に併用)してEGFRチロシンキナーゼ活性及び/又はMETチロシンキナーゼ活性媒介疾患、特にがんを治療することを指導するための取扱書も含む、薬物製品又は商業用包装に関する。
【0082】
1つの具体的な実施態様では、本開示は、本開示に係る薬物の組み合わせ、医薬組成物又は医薬製剤、及び特に、各薬物の組み合わせを別々又は逐次投与することを説明する取扱書を含み、好ましくは、薬物の組み合わせ(活性化剤)は、薬物用量単位の形態である、ピルケースセットに関する。
【0083】
本願で使用される次の語、語句及び符号は、標準命名法を用いて本開示の化合物を説明するという意味を有する。別段に定義されない限り、本明細書で使用される特定に定義されていない技術用語及び科学用語は、本開示の当業者が一般に理解する意味を有する。
【0084】
本明細書で使用される「薬物の組み合わせ」とは、用量単位の形態の固定組み合わせ、非固定組み合わせ、又は組み合わせて投与するための一部のキットを意味し、ここでは、2つ以上の治療剤が同時に独立して投与されるか、又は一定の時間間隔で別々に投与され得、特にこれらの時間間隔が、組み合わせパートナーが協力的、例えば相乗効果を示すことを可能にする場合である。
【0085】
用語「併用療法」とは、本開示に記載された治療性の病状又は病症を治療するための2種以上の治療剤の投与を意味する。前記「投与」は、これらの治療剤を、一定の割合の活性成分を有する単一のカプセルで、又は各活性成分の複数又は別個の容器(例えば、カプセル及び/又は静脈内製剤)で、実質的に同時に共同投与することを包含する。さらに、前記「投与」は、各タイプの治療剤をほぼ同時に、又は異なる時間に逐次使用することも包含する。
【0086】
本明細書で使用される「EGFR阻害剤」という用語は、上皮成長因子受容体(EGFR)の少なくとも1つの活性を阻害、減少、低減又は低下させる化合物を意味する。EGFR阻害剤の例としては、[6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)-4-キナゾリン-4-イル]-(3-エチニルフェニル)アミン(OSI-774)、CI-1033、AG-1478、CGP-59326、PKI-166、EKB-569、AG490(チロシンリン酸化阻害剤(tyrphostin)の一種)、ARRY-334543、BIBW-2992、EKB-569、ZD6474、BMS-599626、MDX-447、及びオシメルチニブ、アルモネルチニブ、フルモネルチニブ、ゲフィチニブ、イコチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ラゼルチニブ、アビチニブ、ラパチニブ、セツキシマブ又はアミバンタマブが含まれるが、これらに限定されない。例示的なEGFR阻害剤は、オシメルチニブであり、当業者が従来技術に基づいて調製することができる。
【0087】
本明細書で使用される「MET阻害剤」という用語は、METチロシンキナーゼの少なくとも1つの活性を標的化、低減又は阻害する化合物を意味する。本明細書で使用される「METチロシンキナーゼ阻害剤」は、WO2014201857特許に記載された一般式Iで表される5員複素環式ピリジン化合物及びその薬学的に許容可能な塩又は薬学的に許容可能な溶媒和物、好ましくは、本明細書で開示される化合物27(SCC244とも呼ばれる)及びその薬学的に許容可能な塩又は薬学的に許容可能な溶媒和物を含む。前記特許又は特許出願の完全な内容(用語の定義を含む)は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0088】
好ましくは、前記グルメチニブは、その塩の形態を採用する。
【0089】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、合理的な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、アレルギー反応の刺激、及び他の問題の合併症なしに、妥当な利益/リスク比に見合った、温血動物(例えば、哺乳動物又はヒト)の組織との接触に使用するのに適した化合物、抗体、材料、組成物、及び/又は剤形を意味する。
【0090】
本明細書で使用される用語「固定組み合わせ」、「固定用量」、及び「単一剤形」とは、がんの治療において併用療法に有効な2つの治療剤を患者に送達するための単一の担体、媒体又は剤形を指す。単一の媒体は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とともに、各薬剤の一定量を送達するように設計されている。いくつかの実施態様では、媒体は、錠剤、カプセル、丸薬、又は貼付剤である。他の実施態様では、媒体は溶液又は懸濁液である。
【0091】
本明細書で使用される組み合わせが、特定の時間的制限なしに、同時に、併発的に、又は逐次患者に投与され、このような投与は、必要な温血動物において治療上有効なレベルの2つの化合物を提供する。後者はまた、3種以上の活性成分を投与するなどのカクテル療法にも適用される。
【0092】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、本明細書で使用されるように、2種の薬剤を1つの剤形で同時に治療すべき患者に投与することを意味する。いくつかの実施態様では、単位剤形は単一製剤である。いくつかの実施態様では、単位剤形は1種又は複数種の媒体を含み、各媒体は薬学的に許容可能な担体及び賦形剤と共に有効量の少なくとも1種の前記薬剤を含む。いくつかの実施態様では、単位剤形は、患者に同時に投与される1つ又は複数の錠剤、カプセル、丸剤、又は貼付剤である。
【0093】
本明細書で使用される「経口剤形」には、処方された又は経口投与が意図された単位剤形が含まれる。
【0094】
本明細書で使用される「用量単位」とは、ヒト及び他の哺乳動物の単位用量として適切な物理的分散単位を指し、各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性物質及び適切な薬学的に許容可能な賦形剤を含む。
【0095】
本明細書で使用される「併用投与」は、単一患者への選択された活性化剤の投与を包含することを意図しており、活性化剤が必ずしも同じ投与経路又は同時に投与されるわけではない治療計画を包含することを意図している。
【0096】
本明細書で使用される「連続投与」とは、毎日投与することを指す。連続投与の場合には、1日に1回以上、例えば1日1回、1日2回、1日3回、好ましくは1日1回の頻度で投与することができる。
【0097】
本明細書で使用される「周期」とは、通常のスケジュールで繰り返される、日又は週単位の特定の期間を意味する。例えば、本開示の組み合わせが投与される各治療周期(又は予防周期)は14~28日であり、好ましくは各周期は2週間(すなわち14日)、3週間(すなわち21日)、又は4週間(すなわち28日)である。本開示の組み合わせの各活性化剤は、周期内の同日又は異なる日に投与されてもよく、すなわち、本開示の組み合わせの活性化剤は、その周期中に、別々、同時に、又は順次(又は逐次と呼ばれる)投与されてもよい
【0098】
本明細書で使用される「治療」という用語は、本明細書では、被験者における疾患の少なくとも1つの症状を緩和、減少又は軽減することを意味するために使用される。本開示の意味では、用語「治療」はまた、疾患の発症を制御し、遅延させること(すなわち、疾患又は疾患の症状の臨床的な発現に先立つ期間)、及び/又は疾患の症状を進行又は悪化させるリスクを低減することを意味する。
【0099】
本明細書で使用されるような治療剤の組み合わせの「有効量」又は「治療有効量」は、前記組み合わせで治療される病症のベースラインに対して臨床的に観察可能な徴候及び症状の観察可能な改善を提供するのに十分な量である。
【0100】
本明細書で使用されるように、「併用治療が有効」又は「併用治療作用」という用語は、治療剤が、治療対象の温血動物、特にヒトにおいて好ましいこのような時間間隔において、別々(時系列的に交互に、特に順序特異的に)投与され得ることを意味する。なお、(好ましくは相乗的に)相互作用(併用治療作用)を示す。このような状態であるか否かは、血液レベルを追跡することによって特に決定することができ、それにより、2種の化合物のいずれもが、少なくともある時間間隔の間、治療対象者の血液中に存在することが示される。
【0101】
本明細書で使用される「被験者」、「個人」又は「患者」とは、哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物とは、哺乳動物の成員であって、ヒト;非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコなどを含むがこれに限定されないものをいう。「個人」は、特定の年齢や性別を限定するものではない。個人又は患者はヒトであることが好ましい。
【0102】
別段の指摘がない限り、「含む」及び「含有する」という用語は、オープンかつ限定されない意味で本明細書に使用される。
【0103】
「約」又は「おおよそ」という用語は、通常、所与の値又は範囲の20%以内、より好ましくは10%以内、及び最も好ましくは5%以内を意味する。あるいは、特に生物システムでは、用語「約」は、所与の値の約1対数(すなわち、1桁)内、好ましくは2の係数内を意味する。
【0104】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な塩」は、化合物の酸付加塩又はアルカリ付加塩を含むが、これらに限定されない。例えば、化合物SCC244は各種の無機酸と有機酸と各種の異なる塩を形成することができる。本開示のMET受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブの薬学的に許容可能な酸付加塩の製造に有用な酸は、毒性のない酸付加塩(すなわち、塩酸塩、硫酸又はリン酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸、マロン酸、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、臭化物、塩化物、クエン酸塩、フマル酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ素酸塩、乳酸塩、マレイン酸、マンデル酸、硝酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩及び酒石酸塩、ベンゼンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、2-又は3-トルエンスルホン酸、硫酸メチル、硫酸エチルなど、薬学的に許容可能なアニオンを含む塩)を形成する酸である。
【0105】
酸性部分の場合、無機塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属で形成されたものが好ましい。好ましい有機アルカリ塩としては、例えば、アンモニウム、ジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、フェニルエチルベンジルアミン、ジベンジル-エチレンジアミン及び類似の塩が含まれる。酸性部分の他の塩は、例えば、プロカイン、キニーネ及びN-メチルグルソアミン(methylglusoamine)で形成された塩に加えて、グリシン、オルニチン、ヒスチジン、フェニルグリシン、リジン及びアルギニンのようなアルカリ性アミノ酸で形成された塩を含むことができる。特に好ましい塩は、本開示の化合物のナトリウム又はカリウム塩である。
【0106】
アルカリ性部分の場合、好ましい無機塩は、酸性化合物、特に、無機酸で形成されたもの、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などである。このような好ましい有機塩は、例えば、ギ酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、パルミチン酸、コール酸、パモイン酸、粘液酸、D-グルタミン酸、D-カンフル酸、グルタル酸、グリコール酸、フタル酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メシル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ソルビン酸、尿酸(puric)、安息香酸、桂皮酸、及び類似の有機酸で形成された塩を含むことができる。このような特に好ましい塩は、塩酸塩又は硫酸塩である。
【0107】
別段の記載がない限り、又は本明細書により明確に示されていない限り、本開示の併用療法に適した化合物は、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブの遊離アルカリ及びMET受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブのすべての薬学的に許容可能な塩の両方を含むことが言及される。
【0108】
本明細書で使用される「薬剤の組み合わせ」、「本開示の組み合わせ」及び類似の用語は、(i)MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩と、(ii)EGFR阻害剤、例えばオシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩の2種類の薬剤の組み合わせを意味する。
【0109】
本明細書は、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、グルメチニブ)阻害剤とEGFR阻害剤(例えば、オシメルチニブ)とを含む併用療法を提供する。グルメチニブとオシメルチニブとの組み合わせを投与することは、単一製剤又は単位剤形の前記組み合わせを投与すること、前記組み合わせの個々の薬剤を同時に、しかし別々に投与すること、又は任意の適切な経路を介して前記組み合わせの個々の薬剤を逐次投与することを含む。前記組み合わせの個々の薬剤の用量は、前記1種又は複数種の薬剤のうちの1種の薬剤を、その組み合わせの他の1種又は複数種の薬剤と比較してより頻繁に投与することを必要とすることができる。したがって、適切な投与を可能にするために、カプセル化された医薬製品は、薬剤の組み合わせを含む1つ又は複数の剤形と、薬剤の組み合わせの1種を含有するが、前記組み合わせ中の1つ又は複数を含まない剤形とを含有してもよい。
【0110】
本明細書で使用される「がん」とは、制御不能又は不整合な細胞増殖、減少した細胞分化、周囲組織への不適切な侵入、及び/又は他の部位に新たな増殖巣を形成する能力を特徴とする細胞障害をいう。「がん」には、固形腫瘍及び血液学的悪性腫瘍、好ましくは固形腫瘍、より好ましくは進行固形腫瘍、皮膚、組織、器官、骨、軟骨などのがんが含まれるが、これらに限定されない。「がん」の例としては、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、舌がん、脳神経膠腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、甲状腺がん、骨がん、CML、膵臓がん、皮膚がん、皮膚又は眼内黒色腫などが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書に記載のがんは、好ましくは、肺がんであり、より好ましくは、局所進行性又は転移性NSCLCである。
【0112】
本明細書で使用される「がん」には、次のものも含まれる。
【0113】
(1)EGFR阻害剤による治療に失敗した再発転移性非小細胞肺がん;
【0114】
(2)EGFR阻害剤の治療に失敗し、METが異常に活性化されている(MET増幅、高発現、及びMETエクソン14スキッピング突然変異などを含む。)局所進行性又は転移性非小細胞肺がん;
【0115】
(3)EGFR感受性突然変異を有するMETが過剰発現されている局所進行性又は転移性非小細胞肺がん。
【0116】
本明細書で使用される「投与」とは、当業者に知られている複数の方法及び送達システムのいずれかを用いて、本開示の組み合わせにおける各活性化剤を個人に物理的に導入することを意味する。本開示の組み合わせにおける各活性化剤の投与経路は、経口投与、静脈内投与(例えば、輸注、点滴又は注射)、筋内投与、皮下投与、腹膜内投与、脊髄投与、局所投与、又は他の非経口投与経路を含む。本明細書で使用する語句「非経口投与」とは、経口投与と局所投与以外の投与方式を指し、通常は、非制限的に筋内、動脈内、鞘内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹膜内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊柱内、硬膜外と胸骨内の注射と輸注、及び体内の電気穿孔を含む静脈内を通じて投与される。したがって、本開示の組み合わせにおける各活性化剤は、カプセル剤、錠剤、注射剤(輸液又は注射液を含む)、シロップ剤、スプレー剤、錠剤、リポソーム又は座薬などに調製することができる。
【0117】
本明細書で使用される「相乗」という用語は、2種以上の単一活性化剤の累積効果よりも効果的な治療の組み合わせを意味する。相乗作用は、好適な方法を用いて計算することができ、例えば、化合物SCC244又はその薬用塩と、オシメルチニブのような1種又は複数種の他の活性化剤との間の相乗的相互作用の決定は、本明細書に記載のアッセイから得られる結果に基づくことができる。例えば、インビボ抗腫瘍薬効実験を用いて、Conover検定により全群間の2つずつの比較を行うことにより、群間の統計学的差指数pを得ることができ、p<0.05の場合に統計的に有意であると考えられ、例えば、併用群が単剤群と比較してp<0.05の場合には、併用療法が相乗作用を有すると考えられる。さらに、併用群の腫瘍阻害率(TGI)が各群の腫瘍阻害率の合計よりも大きい場合、併用療法は相乗作用を有する。併用療法は「相乗作用」を提供し、「相乗的」であることを証明することができ、すなわち、活性成分を併用した場合に得られる効果は、それぞれの活性成分を単独で使用した場合に得られる効果の単純な累加よりも大きい。活性化剤が次のような場合に相乗効果を得ることができる。(1)2種以上の活性成分を共同で調製し、併用単位剤形で同時に投与又は送達すること、(2)別々若しくは逐次(若しくは順次)送達するか、又は別個の製剤として同時に送達すること、又は(3)他の何らかの計画で投与する。
【0118】
本明細書のすべての数値範囲は、それが具体的に追加的に開示されるか否かにかかわらず、範囲内の各数値及び数値のサブセットを開示するものとして理解されるべきである。例えば、いずれかの数値範囲に言及する場合には、その数値範囲内の各整数等、その数値範囲内の各数値に言及しているものとみなす。本開示は、これらの範囲に含まれるすべての値、より小さい範囲、及び数値の範囲の上限又は下限に関する。
【0119】
用量、投与及び投与計画
【0120】
疾患を治療するために使用される薬剤の組み合わせの最適な用量は、既知の方法を用いて各個人について経験的に決定することができ、疾患の進行度;当該個人の年齢、体重、全体的な健康、性別及び食事;投与時間及び投与経路;及び当該個人が服用している他の薬物を含むがこれらに限定されない複数の要因に依存する。最適な用量は、当分野でよく知られている通常の試験及び工程を用いて確立することができる。
【0121】
担体材料と組み合わせて単一剤形を形成することができる薬剤の組み合わせの量は、治療する個人及び特定の投与方法に依存して変化する。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のような薬剤の組み合わせを含有する単位剤形は、その組み合わせの各薬剤を単独で投与する場合に通常投与される量を含む。
【0122】
投与頻度は、使用される化合物及び治療又は予防すべき特定の病状に依存して変化することができる。一般に、効果的な治療を提供するのに十分な最小限の用量を使用することが好ましい。通常、治療又は予防される病状に適切な測定を使用して、治療の有効性について患者を監視することができ、前記測定は、当業者にはよく知られているものである。
【0123】
剤形は、医薬製剤化学の技術者にとって自明である種々の従来の混合、粉砕及び製造技術によって調製することができる。
【0124】
前記薬剤の組み合わせ又は前記薬剤の組み合わせの個々の薬剤を含有する経口投与剤形は、カプセル(例えばゼラチンカプセル)の内部に封入されたマイクロ錠剤の形態をとることができる。そのためには、ファイザー社から入手可能なCAPSUGELと呼ばれる硬質ゼラチンカプセルのように、製剤に採用されているゼラチンカプセルを用いることができる。
【0125】
本明細書で有用な経口投与剤形の多くは、顆粒の形態の前記薬剤の組み合わせ又は前記薬剤の組み合わせの個々の薬剤を含有する。このような顆粒は、コーティング剤形(例えば、マスキング剤形、押し出しコーティング剤形、又は腸溶性コーティング剤形)のコア要素中に存在する錠剤に加圧されてもよく、又はカプセル、浸透ポンプ剤形、又は他の剤形に含まれてもよい。
【0126】
本開示の併用療法の投与は、症状を軽減する、症状の進行を遅らせる、又は症状を抑制することに関する相乗的な治療作用のような有益な効果をもたらすだけでなく、本開示の組み合わせで使用される医薬活性成分の1種のみを適用する単一療法と比較して、より少ない副作用、改善された生命の質、又は減少した発症率のような他の意外な有益な効果をもたらすことができる。
【0127】
別の利点は、本開示の組み合わせの活性成分をより低い用量で使用することができ、例えば、必要な用量は、しばしばより少ないだけでなく、より低い頻度で適用することができ、これにより、副作用の発生率又は重症度を低減できることである。これは治療対象の患者の希望や要望と一致している。
【0128】
本開示の1つの目的は、EGFR突然変異及び/又はMET異常活性化(MET増幅、高発現、及びMETエクソン14スキッピング突然変異などを含む。)のようながんを効果的に標的化又は予防するための併用治療が可能な、一定量の薬物の組み合わせを提供することである。この組み合わせにおいて、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブと、オシメルチニブなどのEGFR阻害剤とを、1つの組み合わせ単位剤形で、又は2つの個別の単位剤形で、一緒に、連続的に、又は別々に投与することができる。単位剤形はまた、固定組み合わせであってもよい。
【0129】
2種の化合物を別々に(又は非固定用量で)投与するための、又は固定組み合わせ(すなわち、本開示による2種の化合物を含む単一の組成物)で投与するための医薬組成物は、それ自体が既知の方法で調製されてもよく、哺乳動物(温血動物)(ヒトを含む)への経腸(経口又は直腸など)及び非経口投与に適したものであり、前記医薬組成物は、治療有効量の少なくとも1つの薬理学的に活性な組み合わせパートナー(例えば、上記に示されるような)を単独で含むか、又は1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は希釈剤(特に、経腸又は非経口投与に適した)と組み合わせたものである。
【0130】
本明細書に記載された薬物の組み合わせは、医薬製剤の分野の技術者にとって明白な様々な方法で調製することができる。上記のように、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブとEGFR阻害剤であるオシメルチニブとを、同一の医薬組成物に配合してもよいし、別々に投与するための別個の医薬組成物に配合してもよい。好適な製剤には、例えば、錠剤、カプセル、押し出しコーティング製剤、静脈内溶液又は懸濁液、及び他の容易に投与可能な製剤が含まれる。
【0131】
1種又は2種の組み合わせパートナーが、1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体を含む医薬製剤を含んで投与することができる。「担体」という用語は、化合物を投与するために使用される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体を意味する。このような薬物担体は、水、及び例えば石油、動物、植物、又は落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などの合成由来のものを含む無菌液体であってもよい。担体としては、水又は水含有塩水溶液、デキストラン水溶液及びグリセリン水溶液が好ましく、特に注射可能な溶液として用いられる。
【0132】
適切な医薬製剤は、例えば、約0.1%から約99.9%、好ましくは約1%から約60%の1種又は複数種の活性成分を含むことができる。経腸又は非経口投与のための併用療法のための医薬製剤は、例えば、糖コーティング錠剤、錠剤、カプセル、座薬又はアンプル剤のような単位剤形のものである。他の方法で示されていない場合、これらは、従来の混合、造粒、糖コーティング、溶解又は凍結乾燥の方法など、それ自体が既知の方法で調製される。必要な有効量が複数の用量単位を投与することによって達成できるので、各剤形の個々の用量に含まれる組み合わせパートナーの単位含有量自体が有効量を構成する必要はないことが理解されるべきである。
【0133】
本開示によれば、本開示の薬物の組み合わせの組み合わせパートナーの治療有効量を、同時又は逐次かつ任意の順序で投与することができ、前記成分は、個別に、又は固定組み合わせとして投与することができる。あるいは、本開示の組み合わせの各組み合わせパートナーは、併用療法ががんの治療に有効な量で、同時又は逐次かつ任意の順序で投与されてもよく、前記成分は個別に、又は固定組み合わせとして投与されてもよい。
【0134】
例えば、本開示に係る疾患の治療方法は、(i)遊離又は薬学的に許容可能な塩の形態である第1薬剤のMET阻害剤を投与することと、(ii)遊離又は薬学的に許容可能な塩の形態である第2薬剤のEGFR阻害剤を、本明細書に記載された量に対応する毎日の用量又は間欠用量などの併用治療有効量で、好ましくは相乗有効量で、同時に又は任意の順序で逐次投与することと、を含むことができる。本開示の組み合わせの個々の組み合わせパートナーは、治療プロセス中に異なる時間に別々に、又は個別の又は単一の組み合わせの形態で同時に投与され得る。さらに、投与という用語は、インビボで組み合わせパートナー自身に変換される組み合わせパートナーのプロドラッグの使用をも包含する。したがって、本開示は、同時治療又は交互治療のすべてのこのような形態を含むものとして理解されるべきであり、「投与」という用語は、それに応じて解釈されるべきである。
【0135】
本開示の組み合わせにおいて使用される組み合わせパートナーの各有効用量は、使用される特定の化合物又は医薬組成物、投与方法、治療される病状、治療される病状の重症度に依存して変化することができる。したがって、本開示の組み合わせの用量計画は、投与方法及び患者の腎機能や肝機能を含む様々な要因に基づいて選択される。通常の技術の臨床医又は医師は、病状の進行を軽減、対抗又は制御するために必要な有効量の単一の活性成分を容易に決定し、処方することができる。
【0136】
本開示の組み合わせは、医薬組成物又は医薬製剤の形態であり得る。本開示の組み合わせに含まれる活性化剤は、薬物用量単位、例えば、1回の薬物用量単位の形態であり得る。本開示の組み合わせは、糖衣錠、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、坐剤、溶液剤、懸濁剤、注射剤(注射溶液又は注射懸濁液)など、当業者に知られている任意の剤形(例えば、単位剤形)とすることができる。これは、従来の混合、造粒、糖コーティング、溶解又は凍結乾燥などのプロセスによって、それ自体が既知の方法で調製される。必要な有効量が複数の用量単位を投与することによって達成できるので、各剤形の個々の用量に含まれる組み合わせパートナーの単位用量自体が有効量を構成する必要はないことが理解されるべきである。本開示の組み合わせを含有する単位剤形は、前記活性化剤を単独で投与する場合に通常投与される量の活性化剤を含有することができる。
【0137】
本開示の組み合わせは、ピルケースセットの形態をとることができ、その意味で、各活性化剤は、独立して投与されるか、又は異なる量の活性化剤を有する異なる固定組み合わせを使用することができ、すなわち、同時に又は異なる時点で投与され得る。その後、ピルケースセットに含まれる活性化剤は、同時に又は時系列的に交差して投与することができ、すなわち、ピルケースセットの任意の活性成分に関して異なる時点で投与され、投与時間間隔は等しくても等しくなくてもよい。
【0138】
本開示の組み合わせにおける各活性化剤の治療有効量(併用治療有効量、例えば、本明細書に記載された量の1日の用量又は間欠的用量)は、同時に又は任意の順序で投与されてもよく、これらの活性化剤は、別々に又は固定組み合わせとして投与されてもよい。本開示の組み合わせの各活性化剤は、治療の進行中に異なる時間に別々に、又は別々の又は単一の組み合わせの形態で同期的に投与され得る。
【0139】
本開示の組み合わせは、1つ又は複数の以前の治療法で治療されたが、その後に再発又は転移した個人に適用することができる。
【0140】
本開示の組み合わせにおける各活性化剤は、1つ又は複数の用量で所望の個人に投与することができる。
【0141】
本開示の組み合わせの各投与周期は21日(3週間)である。
【0142】
本開示の組み合わせは、少なくとも1つの周期、例えば2~12以上の治療周期適用することができる。
【0143】
本発明において、前記「PO」又は「po」は、経口投与を意味する。「QD」又は「qd」とは、1日に1回のことを意味する。「BID」とは、1日2回のことを意味する。
【0144】
本明細書に記載の方法で使用されるMET受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩は、1日1回使用することができる。グルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩(遊離化合物として)の1日用量は200~300mg、例えば200mg、250mg、300mgである。好ましくは経口投与剤形である。好ましくは、グルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩の開始用量200mg又は300mgを、例えば開始用量200mg QD又は300mg QDで投与する。グルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩を、1日200mg、250mg又は300mg、好ましくは1日1回、各周期で連続的に投与することが好ましい。好ましくは、グルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩は、経口投与により被験者に投与され得る。
【0145】
本明細書に記載の方法で使用されるEGFR阻害剤であるオシメルチニブは、1日1回使用することができる。オシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩の1日(総)用量は80mgであることが好ましく、好ましくは、オシメルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩は、経口投与により被験者に投与され得る。
【0146】
例えば、グルメチニブは、約200~300mg、例えば200mg、250mg、300mgの1日用量でEGFR阻害剤と併用投与される。
【0147】
例えば、グルメチニブとオシメルチニブは、それぞれ200又は300mgの1日用量と80mgの1日用量で併用投与される。好ましくは、グルメチニブ及びオシメルチニブは、それぞれ200mgの用量と80mgの用量で併用投与される。
【0148】
本開示の組み合わせの効果
【0149】
ヒトでは、患者に対する臨床研究の実施の複雑さと費用のため、相乗作用の主要なモデルとしてのこのタイプの試験は非現実的になっている。しかしながら、本明細書に記載されているように、ある種での相乗作用を観察することにより、他の種及び既存の動物モデルでの作用を予測して、相乗作用を測定することができる。また、これらの研究結果を利用して、薬物動態/薬力学的方法を使用することにより、他の種で必要とされる有効用量比の範囲や絶対用量、血漿濃度を予測することも可能である。腫瘍モデルと人体で観察された効果との間の確かな相関は、動物における相乗作用が異種移植モデルによって確認できることを示している。
【0150】
本開示の組み合わせが、上述の有益な効果を得ることができることを、確立されたテストモデルによって示すことができる。当業者は、これらの有益な効果を証明するために関連するテストモデルを選択することが十分に可能である。本開示の組み合わせの薬理学的活性は、以下に主に記載される前臨床腫瘍細胞及び動物腫瘍モデルにおいて、又は臨床研究において確認される。
【0151】
EGFR阻害剤のオシメルチニブとグルメチニブの併用による抗腫瘍活性を、EGFR突然変異とMET増幅を有する肺がん患者由来異種移植腫(PDX)モデルにおいて評価した。グルメチニブ単剤、オシメルチニブ単剤と比べ、グルメチニブとオシメルチニブの2剤併用はより高い抗腫瘍活性を示し、併用投与群のTGIは各単剤群のTGIの合計より大きく、2剤併用は腫瘍の成長を顕著に抑制する作用があり、しかも併用投与群は単剤と比べて極めて有意な差があり、グルメチニブとオシメルチニブの2剤併用は相乗的な抗腫瘍活性があることを示した。
【0152】
本明細書に記載の医薬組成物又は組み合わせ(すなわち、MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤のグルメチニブ又はその薬学的に許容可能な塩、及びオシメルチニブのようなEGFR阻害剤)は、MET改変を有する進行がん患者において実施される関連臨床研究であり得る。例えば、EGFR TKI治療に失敗したEGFR感受性とMET改変を有する進行性NSCLC患者に対して、グルメチニブとオシメルチニブの併用治療を採用し、併用治療の安全性と有効性を評価する。このような研究は、単剤群と比較分析することにより、本開示の組み合わせの活性成分の相乗作用を証明することができ、当業者は、本開示の組み合わせのがんに対する有益な効果を判断することができる。このような研究は、単剤投与に失敗した患者において、2剤併用がまだ有効であるような、活性成分を用いた単一療法と本開示の組み合わせの作用とを比較することに特に適していてもよい。治療の効能は6週間ごとの治療効果評価により決定することができる。
【0153】
以下の実施例は、上述した本開示を例示するが、本開示の範囲をいかなる方法でも制限しない。本開示の組み合わせの有益な効果は、当業者に知られている他のテストモデルによっても決定することができる。
【0154】
本開示の以上及び以下に記載された様々な実施態様/技術的態様、及び様々な実施態様/技術的態様における特徴は、任意に相互に組み合わせられるものとして理解されるべきであり、文脈からそうでないことが明確に示されていない限り、これらの相互に組み合わせられた態様が本明細書において具体的かつ個別に列挙されるように、これらの相互に組み合わせられた各態様が本開示の範囲内に含まれるように理解されるべきである。
【0155】
本発明で使用される試薬及び原料は、いずれも市販されている。
【0156】
本開示の組み合わせを投与することは、有益な効果(例えば、症状の緩和、進行の遅延、又は症状の抑制に関する相乗的な治療効果)だけでなく、本開示の組み合わせで使用される活性化剤の1つのみを投与する単一療法と比較して、より少ない副作用、より持続的な応答性、改善された生命の質、減少した死亡率及び/又は減少した発症率など、予想外の有益な効果を得ることができる。本開示の組み合わせは、相乗的相互作用、インビトロ又はインビボでの強力な抗増殖活性及び/又はインビトロ又はインビボでの強力な抗腫瘍応答などの有益な治療特性を有するため、がんの治療に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【
図1】グルメチニブとオシメルチニブの併用投与によるEGFR突然変異とMET増幅を有するHuPrime(登録商標)肺がんPDXモデルにおける腫瘍体積への影響(PO QD 27日間)を示す。
【0158】
【
図2】グルメチニブとオシメルチニブの併用投与によるEGFR突然変異とMET増幅を有するHuPrime(登録商標)肺がんPDXモデルにおけるマウス体重への影響(PO QD 27日間)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0159】
以下では、実施例によって本発明についてさらに説明するが、本発明は、前記実施例の範囲に限定されるものではない。以下の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常の方法と条件に基づいて、又は商品の取扱書に基づいて選択する。
【0160】
インビボ薬効実験における腫瘍測定及び動物体重
【0161】
腫瘍の成長状態に応じて治療の効果を反映する。腫瘍が触知可能になったら、週に2回、腫瘍体積を評価した。腫瘍体積をデジタルノギスで測定し、全試験で腫瘍体積及び動物体重を週に2回測定した。腫瘍体積Vは、mm3で示され、以下の式:V=0.5a×b2により計算され、a、bは、それぞれ腫瘍の長径と短径である。体重変化BWC(%)は、治療開始時と比較した体重変化の百分率を反映し、その計算式はBWC(%)=(BWn-BW0)/(BW0)×100%であり、BWn、BW0は、それぞれ現在と治療開始時の体重を表す。
【0162】
T/CとTGIは、腫瘍(腫瘍体積)の治療に対する応答を示す指標である。ここで、T/C(%)は、相対腫瘍増殖率を反映し、すなわち腫瘍の治療/対照(T/C)値の百分率を表し、次の式で計算される。
【0163】
T/C(%)=(TRTV/CRTV)×100%(TRTV、CRTVは、それぞれ、治療群と溶媒対照群の治療当日の平均相対腫瘍体積(RTV)を示す。腫瘍測定の結果から相対腫瘍体積(RTV:relative tumor volume)を、式RTV=Vt/V0で計算し、ここで、V0は、群分けして投与する開始時(すなわち、治療初日d0)に測定された平均腫瘍体積、Vtはある測定時の平均腫瘍体積であり、TRTVとCRTVは、同じ日のデータを取る。
【0164】
TGI(%)は、腫瘍成長阻害率を反映する。TGI(%)は次の式により計算される。
【0165】
TGI(%)=(1-T/C)×100%(TとCは、それぞれ、ある特定の時点における治療群と対照群の相対腫瘍体積(RTV)である。)
【0166】
統計分析
【0167】
体内のすべてのデータを平均値の標準誤差(SEM)として表す。腫瘍体積と動物体重は統計分析に用いられ、各群の異なる時点での平均腫瘍体積とSEMを計算した。実施例1では、異なる処置群のある日の腫瘍体積を比較するために、まず、Bartlett検定を用いて全群間の分散の均一性の仮定を検証した。Bartlett検定のp値が0.05以上の場合、すべての群の平均値が等しいかどうかを調べるために、一元配置分散分析が使用された。一元配置分散分析のp値が0.05未満の場合、Tukey HSD検定で全群間の2つずつの比較を行い、又はDunnett’st検定で各治療群と対照群間の2つずつの比較を行った。Bartlett検定のp値が0.05未満の場合、Kruskal Wallis検定で全群の中央値が等しいかどうかを検出した。Kruskal Wallis検定のp値が0.05未満の場合、Conover検定で全群間の2つずつの比較又は各治療群と対照群間の2つずつの比較を行い、多重検定の群数に応じて適切なp値の補正を行った。すべての統計評価に対して、有意性レベルをp<0.05とし、対照群と比較した有意性を報告し、すなわち、p<0.05の場合、統計的に有意であると考えられ、p<0.01の場合、非常に有意な統計的差を示した。
【0168】
以下では、具体的な実施例を参照して、データを参照しながら、本開示についてさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本開示を例示するために過ぎず、本開示の具体的な組み合わせ、製造方法、及びその機能と効果を説明することを意図しており、本開示の範囲をいかなる方式でも限定するものではないことが理解されるべきである。本開示の薬物の組み合わせの有益な効果は、当業者に知られている他のテストモデルからも決定することができる。
【0169】
本開示において、使用された試薬、装置の出所及び商品名は、いずれも最初に表示されたときに表示され、その後に使用された同一の試薬は、特別な説明がなければ、いずれも最初に表示された内容と同一である。このうち、オシメルチニブはBide Pharmatech社から購入し、グルメチニブは上海海和薬物研究開発股フェン有限公司から提供した。
【0170】
実験動物:BALB/cヌードマウス、メス、6~8週齢、体重15~20g(細胞接種時)。北京安凱毅博生物技術有限公司より入手。被験動物は試験日の3~7日前にいずれも試験場所で適応的に飼育された。
【0171】
実施例1
【0172】
HuPrime(登録商標)肺がんLU0858異種移植腫瘍モデルにおけるグルメチニブとオシメルチニブの併用の薬効に関する研究
【0173】
実験方法
【0174】
HuPrime(登録商標)肺がん異種移植腫瘍モデルLU0858(EGFR遺伝子突然変異(L858R)とMET遺伝子の高度増幅(コピー数13.75))を有する担癌マウスから腫瘍組織を採取し、直径2~3mmの腫瘍塊に切断し、無菌条件下でBALB/cヌードマウスの右前肩甲の皮下に接種し、マウス皮下異種移植腫瘍モデルを作成した。腫瘍平均体積が138.8mm3に達すると、腫瘍の大きさに応じて担癌マウスをランダムに6群(8匹ずつ)に分けて投与した。実験は、被験品であるグルメチニブ(5mg/kg、10mg/kg)、陽性薬であるオシメルチニブ(30mg/kg)処置群、グルメチニブ・オキチニブ併用投与群、及び溶媒対照群に分けた。マウスをランダムに8匹ずつ6群に分け、計27日間毎日経口投与し、た。投与開始前及び投与中に、すべての動物の体重を計量し、ノギスを用いて腫瘍体積を測定した。T/C値と腫瘍阻害率(TGI)に基づいて、グルメチニブとオシメルチニブの併用によるインビボでの抗腫瘍効果を評価し、動物の体重変化と死亡状況に基づいて安全性を評価した。各群の動物数や詳細な投与経路、用量及びスキームは次の表1に示される。
【0175】
表1.HuPrime(登録商標)肺がんLU0858動物モデルにおけるグルメチニブとオシメルチニブの併用投与スキーム
【表1】
【0176】
注:1オシメルチニブの溶媒対照はPEG 40%、トウェイン80 5%、DMSO 5%、ddH2O 50%であり、グルメチニブの溶媒対照はプロピレングリコール43%、ポリオキシエチレンヒマシ油53%である。
【0177】
HuPrime(登録商標)肺がんLU0858メスBALB/cヌードマウス異種移植腫瘍モデルにおけるグルメチニブとオシメルチニブの併用の抗腫瘍治療効果は
図1、
図2、及び表2に示され、上記の図及び表における1~6群の研究用量のスキームは表1の1~6群に示された。
図1は、HuPrime(登録商標)肺がん細胞皮下異種移植腫瘍を有するメスBALB/cヌードマウスにグルチメチニブとオシメルチニブを単独又は併用して投与した後の、各治療群の腫瘍体積成長曲線を示し、
図2は、各治療群のマウスの体重の変化を示し、表2は、投与初日の各治療群の平均腫瘍体積、ならびに投与27日後の平均腫瘍体積、治療に対する腫瘍反応の指標であるT/C、TGI、及びp値を示す。
【0178】
表2.HuPrime(登録商標)肺がんLU0858異種移植腫瘍モデルの各実験群における腫瘍体積に対するグルメチニブとオシメルチニブの併用の影響(実験終点での薬効分析)
【表2】
【0179】
注:a.平均値±SEM。
【0180】
b.Bartlett検定値は0(p<0.05)であり、Kruskal Wallis検定値はp<0.05であるため、Conover検定は全群間の2つずつの比較を行うために使用され、p値は絶対腫瘍体積から計算し、p<0.001はこの群が対照群と比べて有意差があることを示す。
【0181】
表2と
図1から、被験品であるグルメチニブ単剤(5mg/kg、10mg/kg)は、用量依存的に腫瘍成長を阻害し、空白溶媒群に比べて腫瘍成長を有意に阻害し(p<0.001)、対応するT/C値はそれぞれ10.5%、4.0%であり、対応する相対腫瘍阻害率TGIは89.5%、96.0%であることがわかった。一方、グルメチニブ10mg/kg投与群では腫瘍の縮小が認められ、1/8(8個中1個)で腫瘍の完全消退が認められたが、オキチニブ30mg/kg単剤では有意な抗腫瘍効果は認められなかった(T/C:106.4%、TGI:-6.4%、p=1)。しかし、オシメルチニブ(30mg/kg)とグルメチニブ(5mg/kg又は10mg/kg)の併用投与群は、より高い腫瘍阻害効果を示した(p<0.001)。対応するT/C値はそれぞれ0.2%、0%であり、対応する相対腫瘍阻害率TGIはそれぞれ99.80%、100%であり、グルメチニブ5mg/kgとオシメルチニブ30mg/kgの併用投与群では7/8腫瘍が完全に消退し、グルメチニブ(10mg/kg)とオシメルチニブ(30mg/kg)の併用投与群では8/8腫瘍が完全に消退したことが認められた。TGIから計算すると、併用群のTGIは単剤群のTGIの合計よりも大きく、例えば、グルメチニブ(10mg/kg)+オシメルチニブ(30mg/kg)併用群(TGI:100%)>(グルメチニブ(10mg/kg)(TGI:96.0%)+オシメルチニブ(30mg/kg)(TGI:-6.4%))、グルメチニブ(5mg/kg)+オシメルチニブ(30mg/kg)併用群(TGI:99.8%)>(グルメチニブ(10mg/kg)(TGI:89.5%)+オシメルチニブ(30mg/kg)(TGI:-6.4%))である。併用薬は腫瘍の成長を相乗的に阻害する作用があることを示した。
【0182】
そのほか、グルメチニブ単剤群、オキチニブ単剤群又は併用群の27日目の腫瘍体積を多重比較により分析し、各群間の有意差を表3に示した。群はそれぞれ同じ表1と同様である。表3から、異なる用量のグルメチニブ(5、10mg/kg)とオシメルチニブ(30mg/kg)を併用投与したところ、併用投与群ではグルメチニブ単剤又はオシメルチニブ単剤のいずれと比べても有意差が認められた(p<0.001)。これらの結果により、グルメチニブとオシメルチニブの併用は肺がんの腫瘍の成長を顕著に相乗的に阻害することができ、2剤併用も臨床において類似の作用があることが示唆された。
【0183】
以上のことから、グルメチニブとオシメルチニブの2剤併用はいずれの単剤よりも強い抗腫瘍効果を示し、併用投与群は単剤と比べて極めて有意な差があり、しかも併用投与群のTGIは各単剤群のTGIの合計よりも大きく、EGFR突然変異、MET増幅の肺がん腫瘍モデルの成長を相乗的に阻害できる。グルメチニブとオシメルチニブの併用投与は、肺がんPDXモデルにおけるMET増幅による薬剤耐性を克服することができ、EGFR活性化突然変異とMET増幅を有する肺がん患者、特にNSCLCに罹患している肺がん患者を対象に臨床的にグルメチニブとオシメルチニブを併用した治療が可能であることが示唆された。
【0184】
表3.HuPrime(登録商標)肺がんLU0858動物モデルの薬力学実験終点における群間の薬効の有意差の分析
【表3】
【0185】
注:a.平均値±SEM。
【0186】
b.Bartlett検定値は0(p<0.05)であり、Kruskal Wallis検定値はp<0.05であるため、Conover検定は全群間の2つずつの比較を行うために使用され、p値は絶対腫瘍体積から計算し、p<0.001はこの群が対照群と比べて有意差があることを示す。
【0187】
HuPrime(登録商標)肺がんLU0858動物モデルにおけるグルメチニブとオシメルチニブの併用の安全性研究の結果によると、治療の全過程において、被験薬治療群では、死亡した動物がなく、明らかな薬物毒性を示さず、治療期間中の耐性は良好であった。治療群と対照群の投与後の体重変化は表4、
図2に示される。
【0188】
表4.HuPrime(登録商標)肺がんLU0858動物モデルにおける各群の体重変化
【表4】
【0189】
以上のように、グルメチニブ(5、10mg/kg)をそれぞれオシメルチニブ(30mg/kg)と併用した2剤併用投与がHuPrime(登録商標)肺がんLU0858動物モデルに対して腫瘍の成長を相乗的に阻害する作用があり、併用投与群のTGIは各単剤群のTGIの合計よりも大きく、しかも併用投与群は単剤群と比べて極めて有意な差があった。さらに、担癌マウスはテスト用量で被験品に対して良好な耐性を示した。
【0190】
実施例2
【0191】
グルメチニブとオシメルチニブの併用の臨床試験
【0192】
臨床試験では、オシメルチニブは市販で入手可能で、Bide Pharmatech社より購入した。グルメチニブ錠剤は上海海和薬物研究開発股フェン有限公司から提供され、前述の固体分散体の粉末又は顆粒と薬用添加剤とを混合して固形製剤を製造する。
【0193】
(1)式(I)化合物と医薬用マトリックスポリマーとを均一に混合し、硬化させて、式(I)化合物を含有する固体分散体を得る。
【0194】
(2)前記均一分散体を硬化させて、式(I)化合物を含有する固体分散体を得、これを薬用添加剤と混合してグルメチニブ固形製剤を製造する。
【0195】
多施設共同、非盲検、単群、連続臨床研究では、第Ib相(用量漸増期及び用量拡大研究)と第II相(治療効果確認期)の2つの部分を含む。第Ib相研究では、グルメチニブとオシメルチニブの併用による安全性と耐性を検討し、MTD(最大許容量)やRP2D(第II相推奨量)などのグルメチニブとオキチニブの併用による安全推奨量が決定される次第、第II相研究を実施した。本研究の用量拡大部では、進行固形腫瘍患者におけるグルメチニブとオシメルチニブの併用投与の薬物-薬物相互作用の可能性の臨床治療効果を評価し、この組み合わせの薬物-薬物相互作用の可能性の事前評価を行い、表5、表6に記載された目標と関連終点を測定することを目的とする。
【0196】
この研究に登録された集団は、EGFR阻害剤治療に失敗し、METが増幅された進行性又は再発性転移性非小細胞肺がん患者、特にEGFR変異を有し、以前の第1世代、第2世代、又は第3世代のEGFR TKI療法に対する耐性を獲得しており、MET増幅を伴う局所進行性又は転移性NSCLC患者である。
【0197】
表5.第Ib相の研究目的及び関連する終点
【表5-1】
【表5-2】
【0198】
表6.第II相の研究目的及び関連する終点
【表6】
【0199】
投与計画
【0200】
試験薬はグルメチニブとオシメルチニブであり、治療法は併用治療である。
【0201】
グルメチニブ:
【0202】
A:開始用量を200mgとし、1日1回(QD)経口投与し、21日間を1周期とする。
【0203】
B:開始用量を250mgとし、1日1回(QD)経口投与し、21日間を1周期とする。
【0204】
C:開始用量を300mgとし、1日1回(QD)経口投与し、21日間を1周期とする。
【0205】
オシメルチニブ:
【0206】
A:開始用量を80mgとし、1日1回(BID)経口投与し、21日間を1周期とする。
【0207】
適応症(登録された腫瘍の種類):
【0208】
EGFR突然変異を有し、以前の第1世代、第2世代又は第3世代のEGFR TKI治療に対して耐性を獲得しており、MET増幅が存在する局所進行性又は転移性NSCLC。
【0209】
治療効果
【0210】
臨床研究によると、グルメチニブとオシメルチニブの併用は総組群(未治療の集団とEGFR-TKI経験のある集団を含む)では治療効果が良く、その中、客観的寛解率(ORR)は60%、寛解持続時間(DoR)は5.8ヶ月、無進展生存期間(PFS)は6.9ヶ月である。以前の第1世代、又は第2世代のEGFR TKI治療に対して耐性を獲得したT790M陰性NSCLC患者では、ORRは73.7%に達した。
【0211】
上記では本発明の具体的な実施形態について説明したが、これらは例示にすぎず、本発明の原理及び主旨から逸脱することなく、これらの実施形態に様々な変更又は修正を加えることができることを当業者は理解する。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められるものとする。
【国際調査報告】