IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コアントン フェイポン バイオファーマ インコーポレイティドの特許一覧

特表2024-540406IL10単量体融合タンパク質及びその使用
<>
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図1
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図2
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図3
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図4
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図5
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図6
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図7
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図8
  • 特表-IL10単量体融合タンパク質及びその使用 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】IL10単量体融合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241024BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20241024BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/54 ZNA
C07K16/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 K
C12P21/08
C07K16/28
C07K16/24
A61P35/00
A61P29/00
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K38/20
A61K31/7088
A61K48/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527110
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 CN2022128998
(87)【国際公開番号】W WO2023078245
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111286063.4
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524169412
【氏名又は名称】コアントン フェイポン バイオファーマ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ルー ティー
(72)【発明者】
【氏名】フオ ヨンティン
(72)【発明者】
【氏名】チャン イーポー
(72)【発明者】
【氏名】イェン チアチン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG03
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084DA12
4C084MA02
4C084NA13
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
IL10単量体融合タンパク質及びその使用を提供し、生物医学分野に関し、前記融合タンパク質は、抗体と、IL-10単量体と、を含む。本発明に記載の融合タンパク質は、比較的強い標的性を有し、安全性が顕著に向上し、且つ種々の腫瘍又は炎症性疾患の治療又は予防に有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体と、IL-10単量体と、を含み、ここで、前記抗体は、2本の同一の軽鎖と、2本の同一の重鎖と、を含み、1本のIL-10単量体は、前記抗体の重鎖又は軽鎖に接続されており、前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の重鎖のC末端に接続されていない、ことを特徴とする融合タンパク質。
【請求項2】
前記抗体の各軽鎖は、VL領域と、CL領域と、を含み、前記抗体の各重鎖は、VH領域と、CH1領域と、CH2領域と、CH3領域と、を含み、前記抗体の各軽鎖又は各重鎖に1本の前記IL-10単量体が接続されており、
任意に、前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の軽鎖C末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の軽鎖N末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の軽鎖のVL領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の軽鎖のCL領域のN末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の重鎖のN末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の重鎖CH3領域のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記IL-10単量体は、天然IL-10単量体を含む、ことを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記IL-10単量体は、修飾された天然IL-10単量体を含み、前記修飾は、116位と117位のアミノ酸の間に第1接続ペプチドを挿入することを含み、前記第1接続ペプチドは、可撓性接続ペプチドであり、
任意に、前記第1接続ペプチドは、SEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列を有し、
任意に、前記IL-10単量体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖又は軽鎖とは、第2接続ペプチド及び/又は第3接続ペプチドによって接続されており、
任意に、前記第2接続ペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を有し、前記第3接続ペプチドは、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第2接続ペプチドによって接続されており、任意に、
前記第2接続ペプチドのN末端は、前記抗体の軽鎖のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第2接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記抗体の軽鎖のN末端に連結されており、又は
前記第2接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記抗体の重鎖のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第3接続ペプチドによって接続されており、
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記抗体の軽鎖のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記抗体の軽鎖のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記抗体の重鎖のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記軽鎖VL領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記軽鎖CL領域のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記重鎖CH3領域のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の軽鎖のVL領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の軽鎖CL領域のN末端に接続されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH3領域のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記抗体は、免疫細胞系抗体及び腫瘍細胞系抗体からなる群より選ばれ、
任意に、前記抗体は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗Her2抗体、抗CCR8抗体、抗VEGFR2抗体、抗claudin18.2抗体、抗CD39抗体、抗SMA4D抗体、抗GUCY2C抗体、抗CTLA-4抗体、抗TIM3抗体、抗TIGIT抗体、抗CD47抗体又は抗TNFα抗体であり、
任意に、前記抗体は、抗PD-1抗体である、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:9に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:10及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、ことを特徴とする核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含む、ことを特徴とする発現ベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクターを担持するか又は請求項1~11のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現する、ことを特徴とする組換え細胞。
【請求項15】
腫瘍又は炎症性疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター又は請求項14に記載の組換え細胞の使用。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター又は請求項14に記載の組換え細胞を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物は、腫瘍又は炎症性疾患の治療又は予防に用いられる、ことを特徴とする請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、出願番号が202111286063.4で、出願日が2021年11月2日で、発明の名称がIL10単量体融合タンパク質及びその使用である中国発明特許出願の優先権を主張し、その内容の全てが参照によって本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、生物医学分野に関し、具体的には、融合タンパク質及びその使用に関し、より具体的には、融合タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬の製造における前記融合タンパク質又は核酸又は発現ベクター又は組換え細胞の使用及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
インターロイキン10(Interleukin 10、IL-10、又はIL10)は、ヒトサイトカイン合成阻害因子(CSIF)とも呼ばれ、抗炎症性サイトカインであって、ホモ二量体分泌物に属し、現在の臨床上のIL-10タンパク質の安全性に問題があり、少量の天然の二量体化IL-10分子がその受容体であるIL-10Rαに高親和性で結合した後、さらにIL-10Rβに結合し、ヘキサマー複合体を形成して下流シグナルを活性化し、生物学的機能的反応を引き起こす。
【0004】
現在の臨床上のIL-10薬物分子は標的性に乏しく、薬物分子が容易に脱標的化され、且つ副作用を生じ、しかしながら、開発中のIL-10抗体融合タンパク質のほとんどの設計思想は、抗体標的化作用を利用してIL-10を局所環境に導入して機能することである。これらの融合タンパク質分子は、通常のIL-10二量体構造を有する傾向があるが、IL-10二量体がIL-10Rαに高親和性で結合するため、抗体側の標的化作用に影響を与え、それによって設計思想の失敗につながる可能性があり、抗体側の活性のために必要とされる用量が比較的大きい場合、IL-10側の副作用は依然として厄介な問題である。
【0005】
したがって、標的性が強く、副作用が少ないIL-10薬物の積極的な探索が依然として必要であり、その研究方向は腫瘍又は炎症性疾患の予防又は治療に重要な意義を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、以下の課題に関する発明者らの発見及び認識に基づいてなされたものである。
【0007】
現在の臨床上のIL-10薬物は標的性に乏しく、薬物分子が容易に脱標的化され、薬効が発揮されにくいだけでなく、且つ副作用を生じやすく、発明者らはIL-10単量体分子と抗体分子との接続方式を探索することで、IL-10単量体分子と抗体分子とを含む融合タンパク質を製造し、前記融合タンパク質中のIL-10分子は抗体が標的細胞に結合する前にIL-10が単量体形態を呈し、その受容体に結合できず、抗体分子と標的細胞上の抗原との結合を妨害せず、抗体が抗原に結合した後、大量のIL-10単量体分子が凝集することで、互いに近接した2つのIL-10単量体が二量体として機能し、IL-10受容体に結合し、それによって正常な生物学的反応を引き起こし、IL-10薬物の標的性及び安全性を顕著に向上させ、薬効を十分に発揮させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様において、本発明は、融合タンパク質を提案する。本発明の実施例によれば、抗体と、IL-10単量体と、を含み、ここで、前記抗体は、2本の同一の軽鎖と、2本の同一の重鎖と、を含み、1本のIL-10単量体は、抗体重鎖又は軽鎖に接続されており、前記IL-10単量体のN末端は、抗体重鎖のC末端に接続されていない。天然IL-10分子は、二量体形態であり、本発明の実施例による融合タンパク質は、抗体が標的細胞に結合する前にIL-10分子が単量体形態を呈し、その受容体に結合できず、抗体分子と標的細胞との結合を妨害しない。抗体が標的細胞に結合した後、大量のIL-10単量体分子が凝集することで、互いに近接した2つのIL-10単量体が二量体として機能し、IL-10受容体に結合し、それによって正常な生物学的反応を引き起こし、且つIL-10単量体が生物学的機能を誘発することが非常に困難であるため、IL-10単量体融合タンパク質は天然二量体IL-10分子又はその抗体融合タンパク質の投与量の制限を生じず、IL-10単量体融合タンパク質の投与量を顕著に向上させる。前記融合タンパク質は、より多くの抗体分子と組み合わせて用いることができ、融合タンパク質の標的性及び安全性を顕著に向上させ、薬効を十分に発揮させ、且つ種々の腫瘍又は炎症性疾患を治療又は予防することができる。
【0009】
本発明の実施例によれば、上記融合タンパク質は、以下の付加的な技術的特徴の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0010】
本発明の実施例によれば、各抗体軽鎖は、VL領域と、CL領域と、を含み、各抗体重鎖は、VH領域と、CH1領域と、CH2領域と、CH3領域と、を含み、前記IL-10単量体のN末端は、抗体軽鎖C末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のC末端は、抗体軽鎖N末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、軽鎖VL領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、軽鎖CL領域のN末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のC末端は、抗体重鎖のN末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、重鎖CH3領域のN末端に連結されている。
【0011】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体は、天然IL-10単量体を含む。
【0012】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体は、修飾された天然IL-10単量体であり、前記修飾は、(i)天然IL-10単量体のN末端の最初の2つのアミノ酸を除去すること、及び(ii)116位と117位のアミノ酸の間に第1接続ペプチドを挿入し、前記第1接続ペプチドが可撓性接続ペプチドであること、のうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
天然IL-10単量体のN末端の最初の2つのアミノ酸を除去した後、IL-10単量体の安定性が向上すると同時に、IL-10単量体の116位と117位のアミノ酸の間に第1接続ペプチドを挿入した後、前記融合タンパク質中のIL-10単量体分子がブロックされ、閉ループIL-10単量体分子となり(天然IL10二量体の2本のIL10鎖が互いに絡み合って形成され、linkerを挿入することにより改造すると、IL10単量体は独立してドメイン、即ち閉ループ単量体分子を形成することができる)、同一の融合タンパク質中の2つのIL-10単量体は相互接続などの妨害を起こすことがない。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記第1接続ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:21に示される。
【0015】
【化1】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有する。
【0016】
【化2】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体と抗体重鎖又は軽鎖とは、第2接続ペプチド又は/及び第3接続ペプチドによって接続されている。第2接続ペプチド又は/及び第3接続ペプチドを利用して前記IL10単量体と前記抗体重鎖又は軽鎖とを連結した後、前記融合タンパク質中の抗体部分が対応する標的細胞に結合した後、互いに近接した2つの融合タンパク質のIL-10単量体が二量体をより形成しやすく機能し、IL-10受容体に結合する。
【0017】
本発明の実施例によれば、前記第2接続ペプチド又は/及び第3接続ペプチドは、可撓性接続ペプチド又は剛性接続ペプチドであってもよい。
【0018】
本発明の実施例によれば、前記第2接続ペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を有し、前記第3接続ペプチドは、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列を有する。
【0019】
【化3】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第2接続ペプチドによって接続されている。
【0020】
本発明の実施例によれば、前記第2接続ペプチドのN末端は、前記抗体軽鎖のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第2接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記抗体軽鎖のN末端に連結されており、又は前記第2接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記抗体重鎖のN末端に連結されている。
【0021】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第3接続ペプチドによって接続されており、
本発明の実施例によれば、前記第3接続ペプチドのN末端は、前記抗体軽鎖のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記抗体軽鎖のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記抗体重鎖のN末端に連結されている。
【0022】
本発明の実施例によれば、前記第3接続ペプチドのN末端は、前記軽鎖VL領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記軽鎖CL領域のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記重鎖CH3領域のN末端に連結されている。
【0023】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の軽鎖のVL領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の軽鎖CL領域のN末端に接続されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH3領域のN末端に連結されている。
【0024】
本発明の実施例によれば、前記抗体は、免疫細胞系抗体及び腫瘍細胞系抗体からなる群より選ばれる。
【0025】
本発明の実施例によれば、前記抗体は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗-Her2抗体、抗CCR8抗体、抗VEGFR2抗体、抗claudin18.2抗体、抗CD39抗体、抗SMA4D抗体、抗GUCY2C抗体、抗CTLA-4抗体、抗TIM3抗体、抗TIGIT抗体、抗CD47抗体又は抗TNFα抗体である。
【0026】
本発明の実施例によれば、前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:9に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:10及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有する。
【0027】
【化4】
【化5】
【化6】
本発明の第2態様において、本発明は、核酸を提案する。本発明の実施例によれば、前記核酸は、第1態様に記載の融合タンパク質をコードする。本発明の実施例による核酸によってコードされる融合タンパク質中のIL-10分子は、抗体部分が標的細胞に結合する前に単量体形態を呈し、その受容体に結合できず、抗体分子と標的細胞との結合を妨害せず、抗体が標的細胞に結合した後、大量のIL-10単量体分子が凝集することで、互いに近接した2つのIL-10単量体が二量体として機能し、IL-10受容体に結合し、それによって正常な生物学的反応を引き起こし、且つIL-10単量体が生物学的機能を誘発することが非常に困難であるため、IL-10単量体融合タンパク質は天然二量体IL-10分子又はその抗体融合タンパク質の投与量の制限を生じず、IL-10単量体融合タンパク質の投与量を顕著に向上させる。前記融合タンパク質は、より多くの抗体分子と組み合わせて用いることができ、融合タンパク質の標的性及び安全性を顕著に向上させ、薬効を十分に発揮させ、且つ種々の腫瘍又は炎症性疾患を治療又は予防することができる。
【0028】
本発明の実施例によれば、前記核酸分子は、DNA又はRNAである。
【0029】
本発明の第3態様において、本発明は、発現ベクターを提案する。本発明の実施例によれば、前記発現ベクターは、第2態様に記載の核酸を含む。本発明の実施例による発現ベクターは、適切な受容体細胞に導入された後、調節系の介在下で、前述の融合タンパク質の発現を効果的に達成することができ、得られた融合タンパク質中のIL-10分子は、抗体部分が標的細胞に結合する前に単量体形態を呈し、その受容体に結合できず、抗体分子と標的細胞との結合を妨害せず、抗体が標的細胞に結合した後、大量のIL-10単量体分子が凝集することで、互いに近接した2つのIL-10単量体が二量体として機能し、IL-10受容体に結合し、それによって正常な生物学的反応を引き起こし、且つIL-10単量体が生物学的機能を誘発することが非常に困難であるため、IL-10単量体融合タンパク質は天然二量体IL-10分子又はその抗体融合タンパク質の投与量の制限を生じず、IL-10単量体融合タンパク質の投与量を顕著に向上させる。前記融合タンパク質は、より多くの抗体分子と組み合わせて用いることができ、融合タンパク質の標的性及び安全性を顕著に向上させ、薬効を十分に発揮させ、且つ種々の腫瘍又は炎症性疾患を治療又は予防することができる。
【0030】
本発明の第4態様において、本発明は、組換え細胞を提案する。本発明の実施例によれば、前記組換え細胞は、第2態様に記載の核酸、第3態様に記載の発現ベクターを担持するか又は第1態様に記載の融合タンパク質を発現する。本発明の実施例による組換え細胞は、前述の融合タンパク質の発現及び大量取得に用いることができ、得られた融合タンパク質は、抗体部分が標的細胞に結合する前にIL-10分子が単量体形態を呈し、その受容体に結合できず、抗体分子と標的細胞との結合を妨害せず、抗体が標的細胞に結合した後、大量のIL-10単量体分子が凝集することで、互いに近接した2つのIL-10単量体が二量体として機能し、IL-10受容体に結合し、それによって正常な生物学的反応を引き起こし、且つIL-10単量体が生物学的機能を誘発することが非常に困難であるため、IL-10単量体融合タンパク質は天然二量体IL-10分子又はその抗体融合タンパク質の投与量の制限を生じず、IL-10単量体融合タンパク質の投与量を顕著に向上させる。前記融合タンパク質は、より多くの抗体分子と組み合わせて用いることができ、融合タンパク質の標的性及び安全性を顕著に向上させ、薬効を十分に発揮させ、且つ種々の腫瘍又は炎症性疾患を治療又は予防することができる。
【0031】
本発明の第5態様において、本発明は、医薬の製造における、第1態様に記載の融合タンパク質、第2態様に記載の核酸、第3態様に記載の発現ベクター又は第4態様に記載の組換え細胞の使用を提案する。本発明の実施例によれば、前記医薬は、腫瘍又は炎症性疾患の治療又は予防に用いられる。本発明の具体的な実施例によれば、前記医薬は、腫瘍及び炎症性疾患の治療又は緩和に有効であり、且つ安全性が比較的高い。
【0032】
本発明の第6態様において、本発明は、医薬組成物を提案する。本発明の実施例によれば、第1態様に記載の融合タンパク質、第2態様に記載の核酸、第3態様に記載の発現ベクター又は第4態様に記載の組換え細胞を含む。本発明の具体的な実施例による医薬は、腫瘍及び炎症性疾患の治療又は緩和に有効であり、且つ比較的高い安全性を有する。
【0033】
本発明の実施例によれば、上記医薬組成物は、以下の付加的な技術的特徴(i)及び(ii)の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0034】
(i)本発明の実施例によれば、前記医薬組成物は、腫瘍又は炎症性疾患の治療又は予防に用いられる。
【0035】
(ii)本発明の実施例によれば、前記医薬組成物は、安定剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤のうちの少なくとも1つを含む薬学的に許容される補助剤を含むことができ、前記医薬組成物は、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、溶液剤、懸濁剤、凍結乾燥製剤のうちの少なくとも1つである。
【0036】
本発明の第7態様において、本発明は、対象における腫瘍又は炎症性疾患に関連する疾患、病症又は状況を診断、治療、予防又は軽減する方法であって、上記対象に、治療有効量の前記融合タンパク質及び/又は前記医薬組成物を投与することを含む方法を提案する。
【0037】
本発明の追加の態様及び利点は、部分的には以下の説明で与えられ、部分的には以下の説明から明らかになるか、又は本発明の実施によって知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の上記及び/又は追加の態様及び利点は、以下の図面と併せて、実施例の説明から明らかになり、容易に理解されるであろう。
図1】本発明の実施例による天然IL-10分子及びIL-10単量体とIL-10受容体との結合方式の概略図であり、ここで、Aは、天然IL-10分子とIL-10受容体との結合方式の概略図を示し、R1は、IL-10受容体(IL-10Rα)を示し、R2は、IL-10受容体(IL-10Rβ)を示し、Bは、IL-10単量体とIL-10受容体との結合方式の概略図を示し、R1は、IL-10受容体(IL-10Rα)を示し、IL-10M1は、IL-10単量体を示す。
図2】本発明の実施例による融合タンパク質における前記抗体が標的細胞上の抗原に結合し、IL-10単量体がIL-10受容体に結合する概略図であり、IL-10単量体は親和性が比較的弱く、標的化作用が悪いため、抗体側は正常に標的化作用を発揮でき、腫瘍表面を標的化した後、抗体が局所的に濃縮され、IL-10単量体を凝集し、二量体IL-10(M)*2になって機能することが可能である。ここで、IL-10Rは、IL10RαRβ複合体を示し、Her2は、ヒト上皮成長因子受容体を示し、抗体が抗原を標的にする例であり、T-cellは、T細胞を示し、Tumorは、腫瘍を示す。
図3】本発明の実施例によるIL-10単量体が抗体分子に挿入される位置構造概略図であり、ここで、Aは、IL-10単量体の抗体における挿入可能位置(位置1~位置7)を示し、Bは、抗体の各軽鎖のVL、CLの間(即ち位置1)に1本のIL-10単量体を挿入する構造概略図を示し、且つlinker2を用いて接続し、得られた融合タンパク質分子をR0987と命名し、Cは、抗体重鎖のVH、CH1の間(即ち位置2)に1本のIL-10単量体を挿入する構造概略図を示し、且つlinker2を用いて接続し、得られた融合タンパク質分子をR0988と命名し、Dは、抗体重鎖のCH2、CH3の間(即ち位置3)に1本のIL-10単量体を挿入する構造概略図を示し、且つlinker2を用いて接続し、得られた融合タンパク質分子をR0989と命名し、Eは、抗体軽鎖のN末端(即ち位置4)に1本のIL-10単量体を挿入する構造概略図を示し、且つlinker2を用いて接続し、得られた融合タンパク質分子をR0990と命名し、Fは、抗体軽鎖のC末端(即ち位置5)に1本のIL-10単量体を挿入する構造概略図を示し、且つlinker3を用いて接続し、得られた融合タンパク質分子をR0991と命名し、Gは、抗体重鎖のN末端(即ち位置6)に1本のIL-10単量体を挿入する構造概略図を示し、且つlinker3を用いて接続し、得られた融合タンパク質分子をR0992と命名し、Hは、抗体重鎖のC末端(即ち位置7)に1本のIL-10単量体を挿入する構造概略図を示し、且つlinker3を用いて接続し、得られた融合タンパク質分子をR0993と命名し、Iは、本発明の実施例3~5における対照分子(R0428、R0594、R0862、R0676、R0579、R1049)の構造図である。
図4】本発明の実施例による融合タンパク質R0987、R0988、R0989、R0990、R0991、R0992、R0993のSDS-PAGE検出結果図である。
図5】本発明の実施例による融合タンパク質がフローサイトメトリーにより抗体側結合活性を検出する結果図であり、ここで、横軸(Ab conc.Log(nM))は、抗体濃度(nM)を示し、縦軸MFI PEは、平均蛍光強度を示す。
図6】本発明の実施例による融合タンパク質がフローサイトメトリーによりIL-10単量体側結合活性を検出する結果図であり、ここで、横軸(Ab conc.Log(nM))は、抗体濃度(nM)を示し、縦軸MFI PEは、平均蛍光強度を示す。
図7】本発明の実施例による融合タンパク質がレポーター遺伝子法によりIL-10単量体側結合活性を検出する結果図であり、ここで、横軸(Ab conc.Log(μg/mL))は、抗体濃度(μg/mL)を示し、縦軸(Lum)は、Luminescence蛍光強度を示す。
図8】本発明の実施例によるMC38腫瘍モデルマウスの融合タンパク質治療後のマウス体内の腫瘍体積の統計分析結果図であり、ここで、横軸(Days post engraftment)は、マウス移植後の日数を示し、縦軸(Tumor volume)は、腫瘍体積を示す。
図9】本発明の実施例によるCT26腫瘍モデルマウスの融合タンパク質治療後のマウス体内の腫瘍体積の統計分析結果図であり、ここで、横軸(Days post engraftment)は、マウス移植後の日数を示し、縦軸(Tumor volume)は、腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施例を詳細に説明し、前記実施例の例を図面に示す。以下は図面を参照して説明する実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するためのものであり、本発明を限定するものと理解されるべきではない。
【0040】
さらに、「第1」、「第2」という用語は、単に説明の目的のためのものであり、相対的な重要性を示すか、暗示するか、又は示される技術的特徴の数を暗示することを意味するものと理解されるべきではない。したがって、「第1」、「第2」と定義された特徴は、少なくとも1つのその特徴を明示的又は暗示的に含んでもよい。本発明の説明において、「複数」は、特に断りのない限り、少なくとも2つ、例えば2つ、3つなどを意味する。
【0041】
本明細書において、用語「抗体」は、抗原に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。2本の軽い分子量の軽鎖及び2本の重い分子量の重鎖を含み、重鎖(H鎖)及び軽鎖(L鎖)は、ジスルフィド結合で接続されて1つのテトラペプチド鎖分子を形成している。ここで、ペプチド鎖のアミノ末端(N末端)のアミノ酸配列は変化が非常に大きく、可変領域(V領域)と呼ばれ、カルボキシ末端(C末端)が比較的安定的であり、変化が非常に小さく、定常領域(C領域)と呼ばれる。L鎖及びH鎖のV領域は、それぞれVL及びVHと呼ばれ、L鎖のC領域は、CLであり、H鎖のC領域は、CH1領域、CH2領域及びCH3領域を含む。
【0042】
天然IL-10分子は、二量体構造(2本の天然IL-10単量体を含む)であり、天然IL-10分子とIL-10受容体(IL-10R)との結合方式を図1-Aに示し、IL-10単量体のIL-10Rαに対する活性は、天然IL-10二量体よりも10倍弱く(具体的な実験データ参照文献:J Biol Chem.2000 May 5;275(18):13552-7.doi:10.1074/jbc.275.18.13552.)、且つIL-10Rβとのさらなる結合をほとんど媒介できず、したがって下流シグナルを活性化して生物学的機能的反応を引き起こすことが非常に困難であり、IL-10単量体とIL-10受容体との結合方式を図1-Bに示す。
【0043】
したがって、本発明は、IL-10単量体を前記抗体分子の異なる部位(対称又は非対称構造であってもよい)に接続して前記融合タンパク質(IL-10単量体融合タンパク質)を構築し、前記抗体自体の構造の立体障害によってIL-10単量体が隔離され、IL-10単量体融合タンパク質が遊離状態にある場合、IL-10単量体がIL-10Rαに結合しても機能的反応を引き起こすことができず、抗体側が標的細胞に結合して初めて、凝集効果によって、隣接するIL-10単量体-IL-10Rα複合体を集め、さらにIL-10Rβに結合して複合体を形成して下流シグナルを生成し、生物学的機能を誘発し、具体的な結合方式を図2に示し、このように薬物分子が標的部位に到達しない前にIL-10分子が前記抗体の標的性を妨害することを回避することができ、臨床的副作用を生じず、且つIL-10単量体が生物学的機能を誘発することが非常に困難であるため、IL-10単量体融合タンパク質は天然二量体IL-10分子又はその抗体融合タンパク質の投与量の制限を生じず、IL-10単量体融合タンパク質の投与量を顕著に向上させる。同時に、異なる抗体の臨床使用量には差があるため、IL-10分子の使用量が低い場合、IL-10単量体融合タンパク質中の抗体標的の選択を深刻に制限するため、本発明で得られた前記融合タンパク質は、融合した抗体側の機能発揮にさらに広い空間を提供し、それによって前記IL-10単量体融合タンパク質はより多くの抗体分子と組み合わせて用いることができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明は、融合タンパク質を提案し、抗体と、IL-10単量体と、を含み、ここで、前記抗体は、2本の同一の軽鎖と、2本の同一の重鎖と、を含み、1本のIL-10単量体は、抗体重鎖又は軽鎖に接続されており、前記IL-10単量体のN末端は、抗体重鎖のC末端に接続されていない。天然IL-10分子は、二量体形態であり、本発明のいくつかの具体的な実施例による融合タンパク質は、抗体が標的細胞に結合する前にIL-10分子が単量体形態を呈し、その受容体に結合できず、抗体分子と標的細胞との結合を妨害せず、抗体が標的細胞に結合した後、大量のIL-10単量体分子が凝集することで、互いに近接した2つのIL-10単量体が二量体として機能し、IL-10受容体に結合し、それによって正常な生物学的反応を引き起こし、融合タンパク質の標的性及び安全性を顕著に向上させ、薬効を十分に発揮させる。
【0045】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、各抗体軽鎖は、VL領域と、CL領域と、を含み、各抗体重鎖は、VH領域と、CH1領域と、CH2領域と、CH3領域と、を含み、前記IL-10単量体のN末端は、抗体軽鎖C末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のC末端は、抗体軽鎖N末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、軽鎖VL領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、軽鎖CL領域のN末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のC末端は、抗体重鎖のN末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、重鎖CH3領域のN末端に連結されている。
【0046】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記IL-10単量体は、天然IL-10単量体を含み、前記天然IL-10単量体は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を有する。
【0047】
【化7】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記IL-10単量体は、修飾された天然IL-10単量体を含み、前記修飾は、(i)天然IL-10単量体のN末端の最初の2つのアミノ酸を除去すること、及び(ii)116位と117位のアミノ酸の間に第1接続ペプチドを挿入し、前記第1接続ペプチドが可撓性接続ペプチドであること、のうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
天然IL-10単量体のN末端の最初の2つのアミノ酸を除去した後、IL-10単量体の安定性が向上すると同時に、IL-10単量体の116位と117位のアミノ酸の間に第1接続ペプチドを挿入した後、前記融合タンパク質中のIL-10単量体分子が閉ループ単量体分子となり(天然IL10二量体の2本のIL10鎖が互いに絡み合って形成され、linkerを挿入することにより改造すると、IL10単量体は独立してドメイン、即ち閉ループ単量体分子を形成することができる)、同一の融合タンパク質中の2つのIL-10単量体は相互接続などの妨害を起こすことがない。
【0049】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記第1接続ペプチドは、SEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列を有する。
GGGSGG(SEQ ID NO:21)
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記IL-10単量体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有する。
【化8】
【0050】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体と抗体重鎖又は軽鎖とは、第2接続ペプチド又は/及び第3接続ペプチドによって接続されている。第2接続ペプチド又は/及び第3接続ペプチドを利用して前記IL10単量体と前記抗体重鎖又は軽鎖とを連結した後、前記融合タンパク質中の抗体部分が対応する標的細胞に結合した後、互いに近接した2つの融合タンパク質のIL-10単量体が二量体をより形成しやすく機能し、IL-10受容体に結合する。
【0051】
本発明の実施例によれば、前記第2接続ペプチド又は/及び第3接続ペプチドは、特に限定されず、可撓性接続ペプチド又は剛性接続ペプチドのいずれであってもよい。
【0052】
本発明の実施例によれば、前記第2接続ペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を有し、前記第3接続ペプチドは、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列を有する。
【0053】
【化9】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第2接続ペプチドによって接続されている。
【0054】
本発明の実施例によれば、前記第2接続ペプチドのN末端は、前記抗体軽鎖のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第2接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記抗体軽鎖のN末端に連結されており、又は前記第2接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記抗体重鎖のN末端に連結されている。
【0055】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第3接続ペプチドによって接続されており、
本発明の実施例によれば、前記第3接続ペプチドのN末端は、前記抗体軽鎖のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記抗体軽鎖のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記抗体重鎖のN末端に連結されている。
【0056】
本発明の実施例によれば、前記第3接続ペプチドのN末端は、前記軽鎖VL領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記軽鎖CL領域のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記重鎖CH3領域のN末端に連結されている。
【0057】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の軽鎖のVL領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の軽鎖CL領域のN末端に接続されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH3領域のN末端に連結されている。
【0058】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記抗体は、免疫細胞系抗体及び腫瘍細胞系抗体からなる群より選ばれる。
【0059】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記抗体は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗-Her2抗体、抗CCR8抗体、抗VEGFR2抗体、抗claudin18.2抗体、抗CD39抗体、抗SMA4D抗体、抗GUCY2C抗体、抗CTLA-4抗体、抗TIM3抗体、抗TIGIT抗体、抗CD47抗体又は抗TNFα抗体である。
【0060】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:9に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を有し、又は前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:10及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有する。
【0061】
【化10】
【化11】
【化12】
いくつかの実施形態において、本発明は、分離された核酸を提案し、前記核酸は、第1態様に記載の融合タンパク質をコードする。本発明のいくつかの具体的な実施形態による核酸によってコードされる融合タンパク質は、抗体部分が標的細胞に結合する前にIL-10分子が単量体形態を呈し、その受容体に結合できず、抗体分子と標的細胞との結合を妨害せず、抗体が標的細胞に結合した後、大量のIL-10単量体分子が凝集することで、互いに近接した2つのIL-10単量体が二量体として機能し、IL-10受容体に結合し、それによって正常な生物学的反応を引き起こし、且つIL-10単量体が生物学的機能を誘発することが非常に困難であるため、IL-10単量体融合タンパク質は天然二量体IL-10分子又はその抗体融合タンパク質の投与量の制限を生じず、IL-10単量体融合タンパク質の投与量を顕著に向上させる。前記融合タンパク質は、より多くの抗体分子と組み合わせて用いることができ、融合タンパク質の標的性及び安全性を顕著に向上させ、薬効を十分に発揮させ、且つ種々の腫瘍又は炎症性疾患を治療又は予防することができる。
【0062】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記核酸分子は、DNA又はRNAである。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明は、第2態様に記載の核酸を含む発現ベクターを提案する。上記核酸分子をベクターに接続する場合、核酸分子の翻訳や発現などを制御することができる限り、核酸分子をベクター上の制御要素に直接的又は間接的に連結してもよい。もちろん、これらの制御要素は、ベクター自体に直接由来してもよく、外因性であってもよく、即ちベクター自体に直接由来するものではない。もちろん、核酸分子は、制御要素と作動可能に接続されていればよい。本明細書において「作動可能に接続される」とは、外来遺伝子の転写及び翻訳を調節することが期待される機能をベクター内の制御要素、例えば転写制御配列及び翻訳制御配列などが発揮できるように、外来遺伝子をベクターに接続することを意味する。本発明のいくつかの具体的な実施形態による発現ベクターは、適切な受容体細胞に導入された後、調節系の介在下で、前述の融合タンパク質の発現を効果的に達成することができ、得られた融合タンパク質は、抗体部分が標的細胞に結合する前にIL-10分子が単量体形態を呈し、その受容体に結合できず、抗体分子と標的細胞との結合を妨害せず、抗体が標的細胞に結合した後、大量のIL-10単量体分子が凝集することで、互いに近接した2つのIL-10単量体が二量体として機能し、IL-10受容体に結合し、それによって正常な生物学的反応を引き起こし、且つIL-10単量体が生物学的機能を誘発することが非常に困難であるため、IL-10単量体融合タンパク質は天然二量体IL-10分子又はその抗体融合タンパク質の投与量の制限を生じず、IL-10単量体融合タンパク質の投与量を顕著に向上させる。前記融合タンパク質は、より多くの抗体分子と組み合わせて用いることができ、融合タンパク質の標的性及び安全性を顕著に向上させ、薬効を十分に発揮させ、且つ種々の腫瘍又は炎症性疾患を治療又は予防することができる。
【0064】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記発現ベクターは、真核発現ベクターである。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明は、第2態様に記載の核酸、第3態様に記載の発現ベクターを担持するか又は第1態様に記載の融合タンパク質を発現する組換え細胞を提案する。本発明の具体的な実施例による組換え細胞は、前述の融合タンパク質の発現及び大量取得に用いることができ、得られた融合タンパク質は、抗体部分が標的細胞に結合する前にIL-10分子が単量体形態を呈し、その受容体に結合できず、抗体分子と標的細胞との結合を妨害せず、抗体が標的細胞に結合した後、大量のIL-10単量体分子が凝集することで、互いに近接した2つのIL-10単量体が二量体として機能し、IL-10受容体に結合し、それによって正常な生物学的反応を引き起こし、且つIL-10単量体が生物学的機能を誘発することが非常に困難であるため、IL-10単量体融合タンパク質は天然二量体IL-10分子又はその抗体融合タンパク質の投与量の制限を生じず、IL-10単量体融合タンパク質の投与量を顕著に向上させる。前記融合タンパク質は、より多くの抗体分子と組み合わせて用いることができ、融合タンパク質の標的性及び安全性を顕著に向上させ、薬効を十分に発揮させ、且つ種々の腫瘍又は炎症性疾患を治療又は予防することができる。
【0066】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記組換え細胞は、哺乳動物細胞であり、哺乳動物は、例えば、ヒト、サル、ウサギ、イヌ、ウシなどであり、哺乳動物細胞は、例えば、ヒトHEK-293F細胞又はCHO-K1細胞である。
【0067】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記組換え細胞は、動物生殖細胞、受精卵又は胚幹細胞を含まない。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明は、腫瘍又は炎症性疾患の治療又は予防に用いられる医薬の製造における前述の融合タンパク質、核酸、発現ベクター又は組換え細胞の使用を提案する。本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記医薬は、腫瘍及び炎症性疾患の治療又は緩和に有効であり、且つ安全性が比較的高い。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明は、前述の融合タンパク質、核酸、発現ベクター又は組換え細胞を含む医薬組成物を提案する。本発明のいくつかの具体的な実施形態による医薬組成物は、前記医薬組成物に含まれる前記抗体が結合できる標的細胞に正確に結合でき、前記抗体が標的細胞に結合する前に前記医薬組成物におけるIL-10単量体分子とIL-10受容体との結合活性が比較的低く、したがって、前記IL-10単量体は前記医薬組成物に含まれる前記抗体の標的性を妨害せず、且つ前記医薬組成物に含まれる前記抗体が標的細胞に結合した後に薬効を十分に発揮し、腫瘍及び炎症性疾患の治療又は緩和に有効であり、且つ比較的高い安全性を有する。
【0070】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記医薬組成物は、腫瘍又は炎症性疾患の治療又は予防に用いられる。
【0071】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、本発明にて提供される融合タンパク質は、対象への投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。通常、これらの医薬組成物は、本発明にて提供される融合タンパク質を含む。
【0072】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、前記医薬組成物は、特定の目的剤形に適した任意の溶媒、固体賦形剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤又は他の液体賦形剤、分散剤、矯味剤又は懸濁剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤、乳化剤、保存剤、固体結合剤、流動促進剤又は滑沢剤などを含む薬学的に許容されるベクターをさらに含む。本発明の融合タンパク質と不適合な任意の従来のアジュバントの範囲、例えば、あらゆる有害な生物学的効果を生じるか、又は薬学的に許容される組成物の任意の他の成分と有害な方式で相互作用を生じる範囲を除き、それらの使用も本発明の対象とする範囲である。
【0073】
例えば、本発明の融合タンパク質は、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)に適した医薬組成物に組み込むことができる。これらの医薬組成物は、様々な形態に製造されてもよい。例えば、液体、半固体、及び固体の剤形などが挙げられ、液体溶液(例えば、注射溶液及び注入溶液)、分散剤又は懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム、及び坐剤を含むが、これらに限定されない。前記融合タンパク質は、静脈内注射又は筋肉内又は皮下注射によって投与されてもよい。
【0074】
本明細書で用いられる「治療」及び「予防」という用語、ならびに本明細書に由来する用語は、必ずしも100%又は完全な治療又は予防を暗示しない。むしろ、当業者が潜在的利益又は治療効果を有すると考える様々な程度の治療又は予防が存在する。さらに、本発明にて提供される治療又は予防は、がんの1つ又は複数の病気又は症状の治療又は予防などの治療又は予防中の疾患を含むことができる。さらに、本明細書の目的のために、「予防」は、疾患又はその症状又は病気の発症の遅延を包含することができる。
【0075】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、本発明は、対象における腫瘍又は炎症性疾患に関連する疾患、病症又は状況を診断、治療、予防又は軽減する方法であって、上記対象に、治療有効量の前記融合タンパク質及び/又は前記医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0076】
以下、具体的な実施例を参照して本発明を説明し、なお、これらの実施例は単に説明的なものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【0077】
実施例における具体的な技術や条件が明記されていない場合、当該技術分野における文献に記載の技術や条件にしたがって、あるいは、製品仕様にしたがって、行われる。使用する試薬や機器は、メーカーが明記されていない場合、いずれも市販で入手可能な通常のものである。
(実施例1)融合タンパク質の構築
本実施例は、IL-10単量体を抗体分子(本実施例は抗PD-1抗体を例に)の異なる位置に挿入して融合タンパク質を得、ここで、IL-10単量体分子の構築の具体的な実験操作は、主に「分子クローン実験ガイドライン」を参照する。天然IL-10単量体分子配列をSEQ ID NO:1に示し、天然IL-10単量体分子配列の116N、117Kの2つの部位の間にSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列のペプチド断片(即ち、第1接続ペプチド、linker1)を挿入し、同時に天然IL-10単量体のN末端の最初の2つのアミノ酸を除去し、それによって本発明の実施例のIL-10単量体を形成し、その配列をSEQ ID NO:2に示し、前記抗体重鎖をSEQ ID NO:3に示し、抗体軽鎖をSEQ ID NO:6に示す。
【0078】
【化13】
本実施例は、合計7種類の融合タンパク質を構築し、融合タンパク質の具体的な構造を図3に示し(図にIL-10単量体の挿入位置を示す)、前記融合タンパク質におけるIL-10単量体と抗体分子との接続方式を以下のように説明した。
【0079】
R0987:IL-10単量体を抗体軽鎖のVL、CLの間(位置1)に挿入し、且つlinker2(GSGSGSGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:3(重鎖)及びSEQ ID NO:5(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Bに示し、
R0988:IL-10単量体を抗体重鎖のVH、CH1の間(位置2)に挿入し、且つlinker2(GSGSGSGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:4(重鎖)及びSEQ ID NO:6(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Cに示し、
R0989:IL-10単量体を抗体重鎖のCH2、CH3の間(位置3)に挿入し、且つlinker2(GSGSGSGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:7(重鎖)及びSEQ ID NO:6(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Dに示し、
R0990:IL-10単量体をlinkerによって抗体軽鎖のN末端(位置4)に接続し、且つlinker3(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:3(重鎖)及びSEQ ID NO:8(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Eに示し、
R0991:IL-10単量体をlinkerによって抗体軽鎖のC末端(位置5)に接続し、且つlinker3(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:3(重鎖)及びSEQ ID NO:9(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Fに示し、
R0992:IL-10単量体をlinkerによって抗体重鎖のN末端(位置6)に接続し、且つlinker3(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:10(重鎖)及びSEQ ID NO:6(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Gに示し、
R0993:IL-10単量体をlinkerによって抗体重鎖のC末端(位置7)に接続してlinker3(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:11(重鎖)及びSEQ ID NO:6(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Hに示し、
本発明の実施例3~5における対照分子(R0428、R0594、R0862、R0676、R0579、R1049)の構造図を図3Iに示す。
【0080】
前記第2接続ペプチド(linker2)及び第3接続ペプチド(linker3)は、可撓性又は剛性接続ペプチドであり、ここで、前記第2接続ペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を有し、前記第3接続ペプチドは、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列を有し、
上記融合タンパク質の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を以下の表1に示し、ここで、太字斜体でタグ付けされた配列GSGSGSGS(SEQ ID NO:12)は、第2接続ペプチド(linker2)のアミノ酸配列であり、太字のみでタグ付けされた配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG(SEQ ID NO:22)は、第3接続ペプチド(linker3)のアミノ酸配列であり、下線のみでタグ付けされた配列GQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENGGGSGGKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRN(SEQ ID NO:2)は、改造後のIL-10単量体のアミノ酸配列である。
【0081】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0082】
(実施例2)融合タンパク質の製造
目的遺伝子(実施例1における融合タンパク質をコードする)を含むプラスミドを、常法により構築、製造した。目的遺伝子を含むプラスミドをトランスフェクション試薬PEIとカチオン複合体を形成した後、宿主細胞Expi293に導入し、プラスミドが細胞内にある間に、プラスミド上の外来遺伝子が細胞内で転写翻訳を起こし、それによって前記融合タンパク質を得、具体的な実験操作は以下のとおりである。
【0083】
Expi293を37℃、8%二酸化炭素、130rpm条件下で培養し、且つトランスフェクション前に細胞計数により、2E6の細胞を1LL振盪フラスコに接種し、培養系は約300mLであった。トランスフェクション複合体を調製してトランスフェクションを準備する:まず750μgの目的プラスミドを15mLOpti-MEM試薬を含む50mL遠心分離管に加え、軽く均一に混合し、A管と標識し、1.5mgのトランスフェクション試薬PEIを15mLOpti-MEM試薬を含む50mL遠心分離管に加え、軽く均一に混合した後、室温で5minインキュベートし、B管と標識し、B管PEI希釈液をA管DNA希釈液に滴下し、軽く均一に混合した後、室温で15minインキュベートし、インキュベートが終了した後、PEI-目的プラスミド複合体をExpi293細胞に加え、37℃の振盪床に置いて培養を継続し、D5-D10まで培養して、試料を回収した。
【0084】
トランジェント細胞発現液を9000rpm/20minで遠心分離し、上清を収集し、さらに0.22μmフィルター膜で除菌濾過した。精製はProAアフィニティークロマトグラフィーを用いた。過程は、AKTA avant 150クロマトグラフィーデバイスを用いて、少なくとも5CV平衡化緩衝液(10mM PBS)でクロマトグラフィーカラムを平衡化し(例えばMabSelectSuRe LX,GE)、試料をクロマトグラフィーカラムにロードし、目的タンパク質をクロマトグラフィーカラムに吸着させ、他の不純物を破過分離させた。ロード完了後に少なくとも5CV平衡化緩衝液(10mM PBS)でクロマトグラフィーカラムを再度洗浄し、その後、溶出緩衝液(20mM NaAc、pH=3.4)を用いて目的タンパク質を溶出し、収集管に予め中和緩衝液(1M Tris、pH=8.0)を加え、中和緩衝液の加え体積は溶出試料の予測含有量に基づいて決定され、一般的に溶出体積の10%分を加える。
【0085】
IL-10単量体融合タンパク質発現データを表2に示し、R0987の発現量が97.731mg/mLであったことを除いて、残りの融合タンパク質のトランジェント発現量はいずれも100mg/Lよりも大きく、R0990の発現量は194.409mg/Lまで達した。一段階アフィニティー精製後の試料をSEC-HPLCで検出したところ、目標純度はいずれも85%以上であり、R0989の純度は95%超であった。試料をSDS-PAGEで検出したところ、正確な軽重鎖分布を示し、電気泳動の結果を図4に示した。異なる挿入位置のIL-10単量体融合タンパク質は、いずれも良好な生産特性を示すと結論付けられる。
【0086】
【表2】
【0087】
(実施例3)融合タンパク質のインビトロ活性
3.1フローサイトメトリー蛍光選別技術(FACS)による融合タンパク質抗体側、IL-10単量体側の結合活性の検出
3%BSAを含むPBS bufferを用いて全ての融合タンパク質分子、R0428(IL-10を含まない陽性対照抗体、その重鎖アミノ酸配列、軽鎖アミノ酸配列をSEQ ID NO:13、14に示す)又はR0594(IL-10-Fc融合タンパク質対照、そのアミノ酸配列をSEQ ID NO:15に示し、ここでIL-10が天然IL-10の最初の2つのアミノ酸を除去し、第1接続ペプチドを挿入しなかった)タンパク質分子を初期濃度400nMに希釈し、体積180μl、3倍勾配希釈(60μl試料+120μl希釈Buffer)であり、合計11の濃度勾配点を得た。CHO-mPD1又はCHO-hIL-10R細胞を250g条件下で5min遠心分離した後に上清を廃棄し、3%BSAのPBS bufferを用いて細胞密度を2E+06に調整し、100μL/管で96ウェルV型プレートに均等に分配し、上記希釈した融合タンパク質分子を細胞に加え、100μL/ウェルで、2~8℃で0.5hインキュベートし、96ウェルプレートを取り出し、250gで5min遠心分離し、上清を注意深く除去した後、3%BSAのPBS buffer200μl/ウェルを加え、再度250gで5min遠心分離し、上清を注意深く除去し、3%BSAのPBS bufferを用いてPE蛍光二次抗体(1:500希釈)を調製し、100μl/ウェルの体積で対応する96ウェルプレートに添加し、細胞を再懸濁し、2~8℃で30minインキュベートし、96ウェルプレートを取り出し、250gで5min遠心分離し、上清を注意深く除去した後、3%BSAのPBS buffer200μl/ウェルを加え、再度250gで5min遠心分離し、上清を注意深く除去し、1xPBSを用いて100μL/ウェルの体積で再懸濁し、再懸濁後にFACS検出を行った。
【0088】
R0428の重鎖配列:
【化14】
R0428の軽鎖配列:
【化15】
R0594が2つの同一のペプチド鎖を含み、ここで1本の鎖のアミノ酸配列:
【化16】
抗体側の結合活性の検出結果を図5に示し、融合タンパク質R0987、R0988、R0989、R0991抗体側の活性が比較的強く、R0990が最も弱い。IL-10単量体が軽鎖VL、CLの間、又は重鎖VH、CH1の間、重鎖CH2、CH3の間、軽鎖のC末端に挿入された場合、抗体の結合活性に影響を与えないことが示された。
【0089】
IL-10単量体側のIL-10Rαに対する結合活性の検出結果を図6に示し、ここで、融合タンパク質R0989、R0993のIL-10単量体側のIL-10Rαに対する結合活性は明らかに弱く、IL-10単量体の挿入位置がいずれも抗体のC末端部位に近いことに関連する可能性があり、残りの融合タンパク質のIL-10Rαに対する結合活性は比較的近く、陽性対照分子R0594と一致する。抗体ドメインに挿入されたIL-10単量体は、組換え発現を経た後に依然として所望の空間構造を形成することができ、且つIL-10Rαに正常に結合することが示された。
【0090】
3.2レポーター遺伝子法によるIL-10単量体融合タンパク質のIL-10単量体側の活性の検出。
【0091】
1640+10%FBSを用いて全ての融合タンパク質分子及び対照タンパク質分子R0579(IL-10-陽性抗体融合タンパク質対照、その重鎖アミノ酸配列をSEQ ID NO:23に示し、その軽鎖アミノ酸配列をSEQ ID NO:14に示し、ここで前記IL-10が天然IL-10の最初の2つのアミノ酸を除去し、第1接続ペプチドを挿入しなかった)を初期濃度20μg/mLに希釈し、体積450μl、3倍勾配希釈(150μl+300μl)であり、合計9つの濃度を得た。細胞準備:培養中のHEK293-hIL-10-Report gene cell(Cat#GM-C07927,Genomeditech)を取り出して顕微鏡で観察し、細胞が正常に壁に接着し、粒子が透明であり、且つ密度が適切な細胞は実験に用いられるエフェクター細胞とすることができ、上記細胞をTEで消化し、消化を終了した後に300g条件下で4min遠心分離した後に上清を除去し、1%FBS-PBSで再懸濁した後にさらに1回洗浄し、上清を廃棄し、最終的に培地を用いて細胞を再懸濁し、細胞を計数した後に細胞密度を5×10個/mLに調整した。上記実験設計にしたがってまず希釈した薬物を50μL/ウェルの体積で対応するウェルプレートに添加し、さらに上記再懸濁後の細胞も50μL/ウェルの体積で加え、Medium onlyのウェルに100μLの培地を追加し、Cell onlyのウェルにも50μLの培地を追加し、最終的に全てのウェルの最終体積を100μLとした。96ウェルプレートをインキュベータで16h培養し続けた。Bright-LumiTMホタルルシフェラーゼ検出試薬を予め解凍し、室温に平衡化した。細胞を16h培養した後に細胞培養プレートを取り出して室温に10min(30minを超えないことが好ましい)平衡化した。各ウェルに100μLBright-LumiTMホタルルシフェラーゼ検出試薬を加え、室温で5~10minインキュベートした。多機能性マイクロプレートリーダーにおける化学発光パターンを用いて信号を検出した。
【0092】
検出結果を図7に示し、レポーター遺伝子の結果はBinding結果と類似しており、融合タンパク質R0989、R0993のIL-10単量体側の結合活性は比較的低いが、陽性対照R0579の活性は今回検出された融合タンパク質よりも遥かに強い。レポーター遺伝子法の検出結果により、改造後のIL-10単量体結合活性が二量体形態のIL-10分子よりも低いことを示している。
(実施例4)融合タンパク質のMC38腫瘍モデルマウスに対する影響
発明者らは実施例3の検出に基づいてマウス体内実験を行い、具体的な実験操作は以下のとおりである。
【0093】
細胞培養:MC38腫瘍細胞(由来:国家実験細胞資源共有プラットフォーム、資源番号:3111C0001CCC000523)を、10%FBS(inactivated fetal bovine serum、供給元:Gibco、商品番号:10091148)、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM(供給元:Gibco、商品番号:11965084)培地で培養した。インキュベータの温度を37℃に制御し、5%二酸化炭素を補充した。腫瘍細胞を週2回継代し、パンクレアチン-EDTAで消化した。
【0094】
接種:対数増殖期のMC38腫瘍細胞を収集し、消化後に250g条件下で10分間遠心分離した。氷冷したPBSで2回洗浄した後に細胞計数を行い、細胞濃度が3×10個/mLになるようにPBSを調節した。マウスの右側腹部に予め毛を剃って皮を準備し、各マウスに0.1mLの細胞懸濁液を接種し、接種量は即ちマウス当たり3×10個の腫瘍細胞であった。
【0095】
群分け:接種後6~8日目に、全ての動物の腫瘍を測定し且つ秤量した。治療有効性に対する初期腫瘍体積の影響を回避するために、マウスを腫瘍体積に基づいてランダムに群に割り当て、全ての群の平均腫瘍体積が同程度であることを確保し、治療効果がベースラインで比較可能性を有する。
【0096】
観察:接種後、毎日動物の発病率と死亡率を調べた。治療開始後、融合タンパク質R0987、R0988、R0989、R0991、R0992、R0993及びR0862(即ちIsotype、陰性対照抗体、その重鎖アミノ酸配列、軽鎖アミノ酸配列をSEQ ID NO:16、17に示す)、R0428、R0676(IL-10-Fc融合タンパク質対照、そのアミノ酸配列をSEQ ID NO:18に示し、ここで前記IL-10が天然IL-10の最初の2つのアミノ酸を除去し、第1接続ペプチドを挿入しなかった))、R0579タンパク質分子をそれぞれ0.61、0.61、0.61、0.61、0.61、0.61、0.5、0.5、0.3、0.6mg/kgの用量でマウスに腹腔内注射を行い、Q3D×3(3日に1回投与し、合計3回投与する)であり、腫瘍体積を週3回測定し、動物腫瘍の増殖及び治療の正常行動への影響、例えば行動能力、食物と水の消費、体重の増加/損失、目/毛髪/皮膚などへの影響を検査し且つ記録した。
【0097】
R0862の重鎖配列:
【化17】
R0862の軽鎖配列:
【化18】
R0676が2つの同一のペプチド鎖を含み、ここで1本の鎖のアミノ酸配列:
【化19】
R0579の重鎖配列:
QVQLKESGPGLVQPSQTLSLTCTVSGFSLTSYNVHWVRQPPGKGLEWMGGMRYNEDTSYNSALKSRLSISRDTSKNQVFLKMNSLQTDDTGTYYCTRDAVYGGYGGWFAYWGQGTLVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSQTVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVAISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTKPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITNFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGAGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGSPGQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRN (SEQ ID NO:23).
R0579の軽鎖配列:
【化20】
【0098】
実験終点(Endpoints):実験の主な終点は腫瘍増殖が遅延されるか否か又はマウスが治癒されるか否かである。各群の腫瘍体積に基づいてTGI(Tumor Growth Inhibition)を計算した。計算方法:2群の間の比較は独立したサンプルTで検査することができる。3群以上の比較はOne-WayANOVAを適用した。F値に有意差があることを示していれば、複数群間での事後解析が可能となる。データをGraphPad Prismで処理し、p<0.05が統計的有意差を有することを示す。腫瘍体積V=0.5a×b2であり、a及びbはそれぞれ腫瘍の長さ、短径である。腫瘍増殖抑制TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100であり、Tiはi日目の治療群の平均腫瘍体積、T0は治療開始時の治療群の平均腫瘍体積、Viはi日目の溶媒対照群の平均腫瘍体積、V0は治療開始時の溶媒対照群Sの平均腫瘍体積である。TGIで腫瘍増殖抑制に対する薬物の効果を示す。
【0099】
実験結果を図8に示し、融合タンパク質R0987、R0991、R0993で治療した後のマウス体内腫瘍の増殖速度が低下し、腫瘍体積が小さく、モノクローナル抗体又はIL-10融合タンパク質に比べ、融合タンパク質R0987、R0991、R0993はより良好な腫瘍抑制効果を有する。
(実施例5)CT26腫瘍モデルマウスに対する融合タンパク質の影響
発明者らは実施例4で得られた実験結果に基づいて前記融合タンパク質をさらに検証し、具体的な実験操作は以下のとおりである。
【0100】
細胞培養:CT26腫瘍細胞(供給元:中国科学院細胞ライブラリ、商品番号:NA)を、10%FBS(inactivated fetal bovine serum、供給元:Gibco、商品番号:10091148)、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを添加したRPMI-1640(供給元:Gibco、商品番号:11875085)培地で培養した。インキュベータの温度を37℃に制御し、5%二酸化炭素を補充した。腫瘍細胞を週2回継代し、パンクレアチン-EDTAで消化した。
【0101】
接種:対数増殖期の細胞を収集し、消化後に250gで10分間遠心分離した。氷冷したPBSで2回洗浄した後に計数を行い、細胞濃度が1×10/mLになるようにPBSを調節した。マウスの右側腹部に予め毛を剃って皮を準備し、各マウスに0.1mLの細胞懸濁液を接種し、接種量は即ちマウス当たり1×10個の腫瘍細胞であった。
【0102】
群分け:接種後6~8日目に、全ての動物の腫瘍を測定し且つ秤量した。治療有効性に対する初期腫瘍体積の影響を回避するために、マウスを腫瘍体積に基づいてランダムに群に割り当て、全ての群の平均腫瘍体積が同程度であることを確保し、治療効果がベースラインで比較可能性を有する。
【0103】
観察:本研究案に係る動物の使用及び介護は、行う前に広東Fapon Biopharma製薬株式会社動物倫理委員会により審査及び承認された。研究中に、SPF動物ルームの標準的な操作手順に基づいて動物を介護及び使用した。接種後、毎日動物の発病率と死亡率を調べた。治療開始後、融合タンパク質R0987、R0991、R0993及びR0862、R0579、R0676、R1049(抗PD-1のモノクローナル抗体対照、その重鎖アミノ酸配列をSEQ ID NO:19に示し、軽鎖アミノ酸配列をSEQ ID NO:20に示す)タンパク質分子をそれぞれ10、10、10、10、10、5、7.9mg/kgの用量でマウスに腹腔内注射を行い、Q3D×3(3日に1回投与し、合計3回投与する)であり、腫瘍体積を週2回測定し、動物腫瘍の増殖及び治療の正常行動への影響、例えば行動能力、食物と水の消費、体重の増加/損失、目/毛髪/皮膚などへの影響を検査し且つ記録した。
【0104】
R1049重鎖配列:
【化21】
R1049軽鎖配列:
【化22】
実験終点(Endpoints):実験の主な終点は腫瘍増殖が遅延されるか否か又はマウスが治癒されるか否かである。各群の腫瘍体積に基づいてTGI(Tumor Growth Inhibition)を計算し、計算方法:2群の間の比較は独立したサンプルTで検査することができる。3群以上の比較はOne-WayANOVAを適用した。F値に有意差があることを示していれば、複数群間での事後解析が可能となる。データをGraphPad Prismで処理し、p<0.05が統計的有意差を有することを示す。腫瘍体積V=0.5a×b2であり、a及びbはそれぞれ腫瘍の長さ、短径である。腫瘍増殖抑制TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100であり、Tiはi日目の治療群の平均腫瘍体積、T0は治療開始時の治療群の平均腫瘍体積、Viはi日目の溶媒対照群の平均腫瘍体積、V0は治療開始時の溶媒対照群Sの平均腫瘍体積である。TGIで腫瘍増殖抑制に対する薬物の効果を示す。具体的な実験に基づき、生存曲線も薬効を評価する標準の1つとする。
【0105】
実験結果を図9に示し、融合タンパク質R0987、R0993に対して、融合タンパク質R0991で治療した後のマウス体内腫瘍の増殖速度が顕著に低下し、腫瘍体積が小さく、より良好な腫瘍抑制効果を有する。
【0106】
本明細書の説明において、参照用語「1つの実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」などの説明は当該実施例又は例と結び付けて説明した具体的な特徴、構造、材料又は特性が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の概略的な記述は必ずしも同一の実施例又は例を対象としない。且つ、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性はいずれか1つ又は複数の実施例又は例において適切な方式で組み合わせることができる。また、互いに矛盾しない場合、当業者は本明細書に記載された異なる実施例又は例、及び異なる実施例又は例の特徴を結び付け、組み合わせてもよい。
【0107】
以上は本発明の実施例を示して説明したが、理解されるように、上記実施例は例示的なものであり、本発明を限定するものと理解できず、当業者は本発明の範囲内で上記実施例に対して変更、修正、置換及び変形を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【図
図7
【図
図8
図9
【配列表】
2024540406000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
【化3】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第2接続ペプチドによって接続されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
【化9】
本発明の実施例によれば、前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第2接続ペプチドによって接続されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
R0987:IL-10単量体を抗体軽鎖のVL、CLの間(位置1)に挿入し、且つlinker2(GSGSGSGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:3(重鎖)及びSEQ ID NO:5(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Bに示し、
R0988:IL-10単量体を抗体重鎖のVH、CH1の間(位置2)に挿入し、且つlinker2(GSGSGSGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:4(重鎖)及びSEQ ID NO:6(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Cに示し、
R0989:IL-10単量体を抗体重鎖のCH2、CH3の間(位置3)に挿入し、且つlinker2(GSGSGSGS)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:7(重鎖)及びSEQ ID NO:6(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Dに示し、
R0990:IL-10単量体をlinkerによって抗体軽鎖のN末端(位置4)に接続し、且つlinker3(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG SEQ ID NO:22)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:3(重鎖)及びSEQ ID NO:8(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Eに示し、
R0991:IL-10単量体をlinkerによって抗体軽鎖のC末端(位置5)に接続し、且つlinker3(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG SEQ ID NO:22)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:3(重鎖)及びSEQ ID NO:9(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Fに示し、
R0992:IL-10単量体をlinkerによって抗体重鎖のN末端(位置6)に接続し、且つlinker3(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG SEQ ID NO:22)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:10(重鎖)及びSEQ ID NO:6(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Gに示し、
R0993:IL-10単量体をlinkerによって抗体重鎖のC末端(位置7)に接続してlinker3(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG SEQ ID NO:22)を用いて接続し、得られた融合タンパク質は、SEQ ID NO:11(重鎖)及びSEQ ID NO:6(軽鎖)に示されるアミノ酸配列を有し、図3Hに示し、
本発明の実施例3~5における対照分子(R0428、R0594、R0862、R0676、R0579、R1049)の構造図を図3Iに示す。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
R0862の重鎖配列:
【化17】
R0862の軽鎖配列:
【化18】
R0676が2つの同一のペプチド鎖を含み、ここで1本の鎖のアミノ酸配列:
【化19】
R0579の重鎖配列:
【化19-2】
R0579の軽鎖配列:
【化20】
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体と、IL-10単量体と、を含み、ここで、前記抗体は、2本の同一の軽鎖と、2本の同一の重鎖と、を含み、1本のIL-10単量体は、前記抗体の重鎖又は軽鎖に接続されており、前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の重鎖のC末端に接続されていない、ことを特徴とする融合タンパク質。
【請求項2】
前記抗体の各軽鎖は、VL領域と、CL領域と、を含み、前記抗体の各重鎖は、VH領域と、CH1領域と、CH2領域と、CH3領域と、を含み、前記抗体の各軽鎖又は各重鎖に1本の前記IL-10単量体が接続されており、
任意に、前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の軽鎖C末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の軽鎖N末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の軽鎖のVL領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の軽鎖のCL領域のN末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の重鎖のN末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記抗体の重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記抗体の重鎖CH3領域のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記IL-10単量体は、天然IL-10単量体を含む、ことを特徴とする請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記IL-10単量体は、修飾された天然IL-10単量体を含み、前記修飾は、116位と117位のアミノ酸の間に第1接続ペプチドを挿入することを含み、前記第1接続ペプチドは、可撓性接続ペプチドであり、
任意に、前記第1接続ペプチドは、SEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列を有し、
任意に、前記IL-10単量体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖又は軽鎖とは、第2接続ペプチド及び/又は第3接続ペプチドによって接続されており、
任意に、前記第2接続ペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を有し、前記第3接続ペプチドは、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第2接続ペプチドによって接続されており、任意に、
前記第2接続ペプチドのN末端は、前記抗体の軽鎖のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第2接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記抗体の軽鎖のN末端に連結されており、又は
前記第2接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第2接続ペプチドのC末端は、前記抗体の重鎖のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記IL-10単量体と前記抗体の重鎖末端又は軽鎖末端とは、前記第3接続ペプチドによって接続されており、
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記抗体の軽鎖のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記抗体の軽鎖のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記抗体の重鎖のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記軽鎖VL領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記軽鎖CL領域のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記IL-10単量体のN末端に連結されており、又は
前記第3接続ペプチドのN末端は、前記IL-10単量体のC末端に連結されており、前記第3接続ペプチドのC末端は、前記重鎖CH3領域のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の軽鎖のVL領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の軽鎖CL領域のN末端に接続されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖VH領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH1領域のN末端に連結されており、又は
前記IL-10単量体のN末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH2領域のC末端に連結されており、前記IL-10単量体のC末端は、前記第2接続ペプチドによって前記抗体の重鎖CH3領域のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記抗体は、免疫細胞系抗体及び腫瘍細胞系抗体からなる群より選ばれ、
任意に、前記抗体は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗Her2抗体、抗CCR8抗体、抗VEGFR2抗体、抗claudin18.2抗体、抗CD39抗体、抗SMA4D抗体、抗GUCY2C抗体、抗CTLA-4抗体、抗TIM3抗体、抗TIGIT抗体、抗CD47抗体又は抗TNFα抗体であり、
任意に、前記抗体は、抗PD-1抗体である、ことを特徴とする請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:9に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を有し、又は
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:10及びSEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1記載の融合タンパク質をコードする、ことを特徴とする核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含む、ことを特徴とする発現ベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクターを担持するか又は請求項1記載の融合タンパク質を発現する、ことを特徴とする組換え細胞。
【請求項15】
腫瘍又は炎症性疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1記載の融合タンパク質、請求項12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター又は請求項14に記載の組換え細胞の使用。
【請求項16】
請求項1記載の融合タンパク質、請求項12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター又は請求項14に記載の組換え細胞を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物は、腫瘍又は炎症性疾患の治療又は予防に用いられる、ことを特徴とする請求項16に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】