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特表2024-540414解像度が高く、粗さが小さい部品を製造するためのポリマー粉末
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  • 特表-解像度が高く、粗さが小さい部品を製造するためのポリマー粉末 図1
  • 特表-解像度が高く、粗さが小さい部品を製造するためのポリマー粉末 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】解像度が高く、粗さが小さい部品を製造するためのポリマー粉末
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20241024BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241024BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241024BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241024BHJP
【FI】
B29C64/314
B33Y70/00
B29C64/153
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527170
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022081129
(87)【国際公開番号】W WO2023083809
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】2111866
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カマージュ, ジョフロワ
(72)【発明者】
【氏名】ステル, エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ルメトル, アルノー
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA04
4F213AA11
4F213AA13
4F213AA15
4F213AA21
4F213AA23
4F213AA24
4F213AA28
4F213AA29
4F213AA32
4F213AA45
4F213AB07
4F213AC04
4F213AR12
4F213AR15
4F213AR17
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL26
4F213WL92
(57)【要約】
本発明は、主に、選択的溶融による積層造形のための適切な熱可塑性ポリマー粉末の組成物を対象とし、このポリマー粉末は、以下を特徴とする粒度を有し、すなわち、〇体積平均径Dv<55μm、および〇スパン1.20未満であり、また、d比が0.40~0.55で、このd比が、以下の式:
[数10]
(式(1))であり、ここでdは、ISO787-11:1981規格に従って測定された粉末の見かけ密度であり、dは、ISO1183-1規格により溶融後の粉末で測定された材料密度である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的溶融による積層造形に適した熱可塑性ポリマー粉末の組成物であって、ポリマー粉末が、
以下を特徴とする粒度を有し、
〇ISO13319-1:2021規格に従って、たとえばコールター・カウンター-マルチサイザー3(ベックマン コールター)粒子カウンタで測定されるような体積平均径Dv<55μm、および
〇スパン1.20未満であり、このスパンを計算するために使用される体積平均径が、ISO13319-1:2021規格に従って、たとえばコールター・カウンター-マルチサイザー3(ベックマン コールター)粒子カウンタで同様に測定され、
d比が0.40~0.55で、このd比が、以下の式:
[数9]
であり、ここでdは、ISO787-11:1981規格に従って測定された粉末の見かけ密度であり、
は、ISO1183-1規格により溶融後の粉末で測定された材料密度である、
組成物。
【請求項2】
熱可塑性ポリマーが、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ-(N-メチルメタクトルミド、PMMI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アイオノマー、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミドなどの熱可塑性エラストマー、PAEK、ならびにそれらの混合物からなる群の中から選択される熱可塑性ポリマーを含み、またはそれらから構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
熱可塑性ポリマーが、PA11、PA12、PA11/10Tなどの半芳香族ポリアミド、PEBAまたは、PEKK、PEEK、PEEK-PEDEKおよびPEEK-PEmEKなどのPAEKを含み、またはそれらから構成される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
流動助剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマー粉末が1.00未満のスパンを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマー粉末が0.90未満のスパンを有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ポリマー粉末が、0.45~0.55のd比を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ポリマー粉末が、0.47~0.51のd比を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ISO307:2019規格に従ってウベローデ型粘度計で測定したとき、溶媒としてm-クレゾールを温度20℃で使用する場合を除き、ポリマー粉末が0.65~1.50、好ましくは0.85~1.40、より好ましくは1.00~1.30の固有粘度を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1から10のいずれか一項に記載の粉末組成物の製造方法であって、
(i)熱可塑性ポリマーの1つ以上のモノマーの予備重合とそれに続く粒状化工程;
(ii)粉砕して粉末にする工程;
(iii)必要な場合には、得られたプレポリマー粉末をその後篩い分けする工程;および
(iv)得られたプレポリマー粉末を固相重縮合させてポリマー粉末を得る工程
を含む、方法。
【請求項11】
選択的溶融を用いた積層造形による物品の製造のための、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物の使用、または請求項10に記載の方法で得られた組成物の使用。
【請求項12】
積層造形が、選択的レーザ焼結(SLS)、マルチジェットフュージョン(MJF)タイプの焼結、および高速タイプの焼結(HSS)の中から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物の選択的溶融による積層造形で得られる物品、または請求項10に記載の方法で製造可能な物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、解像度が高く、粗さが小さい部品を積層造形するための熱可塑性ポリマー粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマー粉末の選択的溶融(SLS、MJF、HSSなど)による3Dプリンティングにより、複雑な形状の部品を作製することができる。しかしながら、このようにプリントされた部品の解像度ならびにそれらの表面粗さは、まだ完全に満足のいくものではない。
【0003】
物理的および/または化学的処理による選択的溶融によって、作製された部品の表面状態を改善することが知られている。しかし、これらの処理により生産時間が大幅に延びるため、部品の製造コストが上がる。
【0004】
3Dプリンティングで使用されるポリマー粉末を処理するいくつかの方法も記載されている。したがって、欧州特許第1742986B1号明細書は、溶融エンタルピーおよび結晶化温度からかけ離れた溶融温度を有するポリアミド粉末によって、選択的溶融により作製された部品の解像度を改善可能であることを開示している。
【0005】
欧州特許第1413595B1号明細書は、ポリアミドの以下の2つのパラメータすなわち(i)融点および(ii)溶融エンタルピーΔHfのうちの、少なくとも一方を増加させる方法を記載しており、この方法では、上記増加を行うのに十分な時間にわたって、固体状態のポリアミドを結晶化温度Tcに近い温度で水または水蒸気と接触させ、次いで、ポリアミドから水(または水蒸気)を分離し、ポリアミドを乾燥させている。
【0006】
さらに、欧州特許第2115043B1号および欧州特許第2627687B1号明細書は、PAEK(ポリアリルエーテルケトン)粉末の熱処理によって、作製された部品の解像度を改善可能であることを開示している。
【0007】
しかし、これらの方法は、特定のポリマーに特有のものであり、しかも、常に完全な満足が得られるとは限らない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、選択的溶融により作製された部品の解像度と表面の外観とを改善できるポリマー粉末を提供することにある。
【0009】
実際、本発明は、適切な形態で適度な粒度を有する粉末によって部品の解像度が向上し、選択的溶融による3Dプリンティング法で生産される物品の表面粗さの低減が確認されたことに基づいている。
【0010】
具体的には、微粒子が少なく粒度分布が狭い粉末によって、隣接する粒子の溶融リスクが減るという点で、対象とされる粒子の溶融を最適化できるので、したがって、作製された部品の解像度が改善することが確認されている。さらに、大粒の粒子の濃度が低いので表面のテクスチャリングが制限され、その結果、これによって生じうる解像度の低下や表面粗さが制限される。
【0011】
また、材料の見かけ密度との比が0.40~0.55に相当する粉末を使用すると、部品の解像度を最適化できることが確認された。粉末の見かけ密度は、特に粉末の形態に応じて変化するが、結晶化度にも応じて変化する。そのうえ、このような粉末によって、良好な生産性を維持しながら、部品、特に丸い部品や傾いた部品の構造欠陥を回避することができる。
【0012】
したがって、第1の側面によれば、本発明は、選択的溶融による積層造形のための適切な熱可塑性ポリマー粉末の組成物を対象とし、このポリマー粉末は、
-以下を特徴とする粒度を有し、すなわち、
〇体積平均径Dv<55μm、および
〇スパン1.2未満であり、
-d比が0.40~0.55で、このd比が、以下の式:
[数1]
であり、ここでdは、ISO787-11:1981規格に従って測定された粉末の見かけ密度であり、
は、ISO1183-1規格により溶融後の粉末で測定された材料の密度である。
【0013】
一つの実施形態によれば、熱可塑性ポリマーが、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ-(N-メチルメタクトルミド、PMMI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アイオノマー、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミドなどの熱可塑性エラストマー、PAEK、ならびにそれらの混合物からなる群の中から選択される熱可塑性ポリマーを含み、またはそれらから構成され、特に、PA11、PA12、PA11/10Tなどの半芳香族ポリアミド、PEBAまたは、PEKK、PEEK、PEEK-PEDEKおよびPEEK-PEmEKなどのPAEKを含み、またはそれらから構成される。
【0014】
一つの実施形態によれば、組成物はさらに流動助剤を含む。
【0015】
有利には、ポリマー粉末は1.00未満、好ましくは0.90未満のスパンを有する。
【0016】
好ましくは、ポリマー粉末は0.45~0.55、特に0.47~0.51のd比を有する。
【0017】
有利には、ポリマー粉末はまた、0.65~1.50、好ましくは0.85~1.40、さらに好ましくは1.00~1.30の固有粘度を有する。
【0018】
第2の側面によれば、本発明は、上記粉末組成物の製造方法を対象とし、この方法は、
(i)熱可塑性ポリマーの1つ以上のモノマーの予備重合とそれに続く粒状化工程;
(ii)粉砕して粉末にする工程;
(iii)必要な場合には、得られたプレポリマー粉末をその後篩い分けする工程;および
(iv)得られたプレポリマー粉末を固相重縮合させてポリマー粉末を得る工程
を含む。
【0019】
第3の側面によれば、本発明は、特にSLS、MJFおよびHSSの中から選択された選択的溶融による積層造形によって物品を製造するために、上記の方法に従って記載または得られる組成物の使用を対象とする。
【0020】
最後に第4の側面によれば、本発明は、記載された組成物、または記載された方法に従って得られた組成物の選択的溶融による積層造形によって得られる物品を対象とする。
【0021】
本発明は、以下の説明および図面を参照すれば、いっそう理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】SLS型焼結(英語の「Selective Laser Sintering」(選択的レーザ焼結)の頭字語)による3Dプリンティング装置を示す図である。
図2】レーザ焼結による作製でそれぞれ100μmである層の数nに応じて照射溶融後に堆積された粉末の厚さeの変化を、d比0.3(●)、0.5(■)、0.7(◆)の粉末に対して計算したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
用語の定義
「熱可塑性ポリマー」という用語は、十分に加熱すると軟化し、冷却すると再び硬くなる特性を有するポリマーを示すものと理解される。このポリマーは、CES(サイズ排除クロマトグラフィー)によって測定した場合、5000g/モルを超えるモル質量を有する。
【0024】
また、「体積平均径」または「Dv」という用語は、ISO13319-1:2021規格に従って、たとえばコールター・カウンター-マルチサイザー3(ベックマン コールター)粒子カウンタで測定された、粉末材料の体積平均径を意味する。様々な直径が区別される。より具体的には、Dv50は体積基準のメディアン径を示し、Dv10およびDv90はそれぞれ、10体積%または90体積%の粒子がこれらの直径以下に位置する直径を示す。
【0025】
「スパン」という用語は、粉末の粒度分布の幅を表す比を示し、
[数2]
ここで:
Dv10は、ポリマー粉末の粒子の10体積%がこの直径以下に存在する直径、
Dv50は、ポリマー粉末の粒子の50体積%がこの直径以下に存在する直径(定義上、Dv50はまたメディアン径でもある)、および
Dv90は、ポリマー粉末の粒子の90体積%がこの直径以下に存在する直径を示す。
これらの直径は上記のように測定される。
【0026】
さらに、「焼結による3Dプリンティング」という用語は、ポリマー粉末の層に電磁放射線(たとえばレーザビーム、赤外線放射線、UV放射線)を照射して、放射線の影響を受けた粉末粒子を選択的に溶融する方法を意味する。溶融した粒子は合体して凝固し、固体の塊を形成する。この方法では、新しく塗布された一連の粉末層を繰り返し照射することで3D物品を生産することができる。
【0027】
「表面粗さ」という用語は、たとえばPERTHOMETER S8P装置を用いた、ISO4287:1997規格によるサンプルの表面プロファイルの算術平均偏差Raを示すものと理解される。3Dプリンティングの場合、ビルドの向きが粗さに影響を与える可能性があるため、物品の上下を区別することが有効な場合があり、下部は最初のビルド層に対応し、上部は最後のビルド層に対応する。
【0028】
「粘度」という用語は、ISO307:2019規格に従ってウベローデ型粘度計で測定される固有粘度を指す。ただし、溶剤としてm-クレゾールを温度20℃で使用する場合を除く。固有粘度の次元は濃度の逆数であり、相対粘度の自然対数を、溶媒に溶解したポリマーの濃度で割ったものに等しくなる。
【0029】
ポリアミドを表すために使用される命名法は、ISO1874-1規格に従う。特に、PA(ポリアミド)X表記では、Xはアミノ酸またはラクタムの縮合から生じるポリアミド単位の炭素原子数を表す。ジアミンとジカルボン酸または二官能性を有する酸誘導体との縮合から得られるポリアミドを示すPA XY表記では、Xはジアミンの炭素原子数を示し、Yはジカルボン酸または酸誘導体の炭素原子数を示す。PA X/Y、PA X/Y/Zなどの表記は、コポリアミドを指し、X、Y、Zなどが上記のようなホモポリアミド単位を示す。
【0030】
広義には、本発明は、選択的溶融による積層造形のための適切な熱可塑性ポリマー粉末組成物を提案するものであり、ポリマー粉末は、平均直径Dv<55μmで特定の粒度分布を特徴とし、スパンが1.2未満、さらに粉末の密度と材料の密度とのd比が0.40~0.55であることを特徴とする。
【0031】
低いd比の粉末を使用すると、特に機械的強度の点で、多くの場合、構築される物品の特性が損なわれる。そのうえ、このような粉末は、粒子の粉末挙動により変形しにくい。さらに、そのような粉末床は構築中の物品の重量を支えることができない。その場合、プリンティング中に物品が崩れてしまい、完成できなくなる。高いd比の粉末を使用すると、より優れた機械的特性を達成することができる。しかしながら、そのような粉末には大粒の粒子が含まれており、構築された物品はしばしば大きな粗さを示す。したがって、先に定義したd比は、粗さと機械的特性の2つの要件の間で良好な妥協点を構成することが判明した。
【0032】
さらに、このようなd比を有する粉末は、焼結位置における粉末の収縮に関連する構築開始時の粉末層の厚さの違いを、より迅速に吸収できることが確認された。このような厚さの違いは部品に様々な制約を生じる可能性があり、さらに、ポリマーを溶解して完全な合体を保証するのにレーザの出力が十分でない場合、部品の品質に影響を与える可能性がある。こうした欠陥の数々は、機械的特性を劣化させるリスクのある多孔性を生じうる。
【0033】
さらに、3D構造で構築された物品の表面粗さRaは、使用する粉末の粒度特性、特に平均径Dvに直接関係している場合、構築層のスパン、厚さep、および粉末の密度と材料の密度との比dにも同様に依存することが確認された。複数のポリアミドでは、次のような相関関係が見つかった。
[数3]
【0034】
粗さに対するd比の影響は特に予想外であった。
【0035】
全体として、本発明による熱可塑性ポリマー粉末組成物によって、粗さが小さい部品が得られ、さらには、良好な生産性を維持しながら、特に丸い部品や傾斜した部品の構造欠陥を回避することができる。
【0036】
A.熱可塑性ポリマー粉末組成物
本発明により提案される熱可塑性ポリマー粉末組成物は、
-以下を特徴とする粒度すなわち:
〇体積平均径Dv<55μm、および
〇スパン1.20未満であり、また、
-d比が0.40~0.55で、このd比が、以下の式:
[数4]
であるポリマー粉末を含み、
ここで
は、ISO787-11:1981規格に従って測定された粉末の見かけ密度であり、
は、ISO1183-1規格に従って水中(21℃)で垂直推力により溶融後の粉末で測定した材料密度である。
【0037】
本発明によれば、熱可塑性ポリマー粉末は特定の粒度を有する。
【0038】
実際、本発明の熱可塑性ポリマー粉末は、55μm未満の体積平均径Dvを有する。特定の実施形態によれば、熱可塑性ポリマー粉末は、30~55μm、特に35~50μm、特に40~45μmの体積平均径Dvを有する。
【0039】
平均径だけでなく、熱可塑性ポリマー粉末の粒度分布も焼結による3Dプリンティングのパフォーマンスに大きな影響を与える可能性がある。
【0040】
したがって、本発明によれば、熱可塑性ポリマー粉末は、1.2未満、特に1未満、特に0.9未満の、上で定義したようなスパンを有する。一つの実施形態によれば、熱可塑性ポリマー粉末のスパンは、0.20~1.20、または0.30~1.10、または0.35~1.00、または0.40~0.90である。
【0041】
一つの実施形態によれば、粉末の体積径Dv10が15μmより大きいことが好ましい。特定の実施形態によれば、熱可塑性ポリマー粉末は、15~50μm、または25~45μm、または30~40μmの体積径Dv10を有する。
【0042】
一つの実施形態によれば、粉末の体積径Dv50が30~60μmであることが好ましい。特定の実施形態によれば、熱可塑性ポリマー粉末は、35~55μm、または40~50μmの体積径Dv50を有する。
【0043】
一つの実施形態によれば、熱可塑性ポリマー粉末は、120μm未満、特に100μm未満、特に90μmの体積径Dv90を有する。特定の実施形態によれば、熱可塑性ポリマー粉末は、40~120μm、または45~100μm、または50~80μmの体積径Dv90を有する。
【0044】
本発明による組成物中の熱可塑性ポリマー粉末はまた、0.40~0.55の特定のd比によって特徴付けられる。d比は次の式で表される。
[数5]
【0045】
前述のように、特定されたd比は、一方では粉末の最大密度、したがって高いd比を追及することと、そのような粉末が粗さの大きな物品を生成するので構築開始時の密度差から生じる厚さの違いを吸収するのにより多くの層(構築された物品では8~10層すなわち、ほぼ1mm、図2参照)を要するという事実との間で、本発明により提案された妥協点を表している。したがって、d比が0.40~0.55であれば、プリントされた物品の良好な機械的特性をめざして高密度の粉末を得ることの利点と、構築開始時の制約および欠陥を制限するためにあまり高密度でない粉末を得ることの利点とを最も良く調和できることが分かった。
【0046】
熱可塑性ポリマー粉末の見かけの密度dは、その粒度に加えて、特に粒子の形状、多孔度および結晶構造に依存する。熱可塑性ポリマー粉末は、0.200~0.600、好ましくは0.300~0.550、特に好ましくは0.400~0.500の見かけ密度dを有することが好ましい。
【0047】
熱可塑性ポリマーの密度dは、考慮されるポリマーに依存し、一般に0.850~1.850、好ましくは0.900~1.450、きわめて好ましくは0.950~1.150である。
【0048】
本発明の範囲で使用可能な熱可塑性ポリマーは、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ-(N-メチルメタクルイミド、PMMI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アイオノマー、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)などの熱可塑性エラストマー、PAEK、ならびにそれらのコポリマーと混合物の中から特に選択することができる。
【0049】
ポリアミドの中では、PA6、PA6.6、PA11およびPA12、ならびにそれらのコポリマーなどの脂肪族ポリアミドと、たとえばPA11/10Tなどの半芳香族ポリアミドとが特に挙げられる。
【0050】
PAEKポリマーの中では、特に、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)とそれらのコポリマー、たとえばポリエーテルエーテルケトン-ポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEEK-PEDEK)およびポリエーテルエーテルケトン-ポリエーテルメタエーテルケトン(PEEK-PEmEK)を挙げることができる。
【0051】
一つの実施形態によれば、ポリマーは、ポリアミド、特にPA11、PA12、PEBA、またはPA11/10Tなどの半芳香族ポリアミド、またはPEKKなどのPAEK、およびそれらの混合物またはコポリマーを含み、またはそれらから構成される。
【0052】
熱可塑性ポリマー粉末は一般に、粉末の総重量に対して少なくとも50重量%の熱可塑性ポリマーを含む。
【0053】
特定の実施形態によれば、粉末は、本発明の粉末熱可塑性ポリマー粉末の総重量に対して少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも92.5重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも97.5重量%、または少なくとも98重量%、または少なくとも98.5重量%、または少なくとも99重量%、または少なくとも99.5重量%の熱可塑性ポリマーを含む。
【0054】
特定の実施形態によれば、熱可塑性ポリマー粉末は、単一の熱可塑性ポリマー、たとえばポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、PEBAまたはPAEKのみを含んでもよい。特定の実施形態によれば、本発明による粉末は、少なくとも1つの特性が異なる複数のポリマーを含む。これらの特性は、特にモル質量、結晶化度だけではなく、熱特性または粒度とすることもできる。
【0055】
特定の実施形態によれば、熱可塑性ポリマー粉末は、0.65~1.50、好ましくは0.85~1.40、さらに好ましくは1.00~1.30の粘度を有する。これらの粘度範囲は特に有利であり、焼結時の良好な凝集特性(十分に低い粘度)と焼結後の物体の良好な機械的特性(十分に高い粘度)の両方を得るために良好な妥協点を得られる。
【0056】
さらに、熱可塑性ポリマー粉末は、1つ以上の熱可塑性ポリマーに加えて、1つ以上の通常の添加剤およびフィラーを含んでもよい。
【0057】
添加剤は一般に、組成物の総重量に対して5重量%未満に相当する。好ましくは、添加剤は粉末総重量の1重量%未満に相当する。添加剤としては、流動助剤、安定剤(光、特に紫外線および熱)、蛍光増白剤、染料、顔料、エネルギー吸収剤添加剤(紫外線吸収剤を含む)を挙げることができる。
【0058】
流動助剤の中では、たとえば、親水性または疎水性シリカを挙げることができる。有利には、流動助剤は、組成物の総重量に対して0.01~0.4重量%に相当する。他の実施形態では、粉末組成物が流動助剤を含まない。
【0059】
熱可塑性ポリマー粉末はまた、1つ以上のフィラーを含んでもよい。フィラーは、一般に、最終粉末の総重量に対して50重量%未満、好ましくは40重量%未満に相当する。フィラーの中では、強化フィラー、特にカーボンブラック、タルクなどの鉱物フィラー、カーボンまたはそれ以外のナノチューブおよび、繊維、特にガラスファイバまたはカーボンファイバ(粉砕または非粉砕)、あるいはまた別の形状たとえばフレーク状もしくは球状のガラス(中空または非中空)が挙げられる。
【0060】
B.熱可塑性ポリマー粉末の製造方法
熱可塑性ポリマー粉末は、特に、従来の技術に従って、押出顆粒またはフレークの形態に熱可塑性ポリマーを粉砕することによって得られる。
【0061】
粉砕は、この目的で公知の装置、たとえば、逆回転ピンを備えたミル(pin mill:「ピンミル」)、ハンマーを備えたミル(:hammer mill:「ハンマーミル」)、または渦巻きミル(whirl mill「ワールミル」)を用いて行うことができる。
【0062】
粉末が複数のポリマーおよび/または特定の添加剤および/または特定の強化フィラーを含む場合、溶融状態で混合することによって、たとえば押出(配合)および顆粒化に続く顆粒の粉砕によって、一部またはすべてを混入することができる。あるいは、他のポリマーおよび/または特定の添加剤および/または特定の強化フィラーを乾式混合(「dry blend」)によって添加することも可能である。好ましくは、流動助剤は乾式混合によって添加される。
【0063】
特にポリアミドのための一つの実施形態によれば、粉末組成物の製造方法は、以下の工程すなわち:
(i)熱可塑性ポリマーの1つ以上のモノマーの予備重合とそれに続く粒状化工程;
(ii)粉砕して粉末にする工程;
(iii)必要な場合には、得られたプレポリマー粉末をその後篩い分けする工程;
(iv)得られたプレポリマー粉末を固相重縮合させてポリマー粉末を得る工程
を含む。
【0064】
次いで、添加剤および/または強化フィラーを、工程(i)と(ii)の間の溶融混合(配合)もしくは乾式混合によって、またはその後の乾式混合によって、プレポリマーに添加することができる。
【0065】
C.粉末の使用
上述のポリマー粉末組成物は、焼結による3Dプリンティング方法で利用するのに特に有用である。好ましくは、本発明の組成物は、選択的レーザ焼結(SLS、英語でSelective Laser Sintering)方法、MJF(Multi Jet Fusion:マルチジェットフュージョン)タイプの焼結方法、またはHSS(High Speed Sintering:高速焼結)タイプの焼結方法で使用される。
【0066】
SLS方法は広く知られている。これに関連して、特に米国特許第6,136,948号明細書および国際公開第96/06881号明細書を参照することができる。
【0067】
このタイプの方法では、構築温度と呼ばれる温度に加熱された筐体内に保持された水平プレート上に粉末の薄層が堆積される。ほとんどの場合、構築温度までの加熱は、一般に750nm~1250nmの波長の最大発光を有するIR放射ランプ、たとえばハロゲンランプを用いて行われる。構築温度とは、構築中の三次元物品の構成層の粉末床が、粉末の層ごとの焼結プロセス中に加熱される温度を指す。続いて、たとえばレーザの形態を呈する電磁放射線が、たとえば物体の形状を記憶しているコンピュータを使用して、物体に対応する形状に従って粉末層の様々な地点で粉末粒子を焼結するのに必要なエネルギーを供給し、この形状をスライス状に復元する。次に、水平プレートを粉末の1つの層の厚さに相当する高さだけ下げ、同様に新たな粉末の層を広げ、加熱し、焼結する。この手順は、物体が製造されるまで繰り返される。
【0068】
水平プレート上に堆積された粉末の層は、焼結前に、たとえば20~200μm、好ましくは50~150μmの厚さを有することができる。焼結後の凝集材料の層の厚さは若干薄くなり、たとえば10~150μm、好ましくは30~100μmの厚さになりうる。
【0069】
MJFおよびHSS方法では、構築材料の層全体が放射線にさらされるが、溶融剤で覆われた部分のみが溶融して3D部品の1つの層になる。溶融剤は、放射線を吸収して熱エネルギーに変換できる化合物であり、たとえば黒インクである。これは、構築材料の選択された領域に選択的に塗布される。溶融剤は構築材料の層に浸透することができ、吸収したエネルギーを隣接する構築材料に伝達し、それによって構築材料を溶融または焼結させる。構築材料の各層を溶融し、結合し、その後で硬化させることによって、物体が形成される。
【0070】
MJFの特定のケースでは、部品の解像度をいっそう高くすることができるように、溶融する領域のエッジにも微細化剤が添加される。
【0071】
有利には、これらの方法における本発明のポリマー粉末組成物の使用は、いかなる特別な改変も必要としない。前述のように、この使用では、粗さがより小さく、解像度がより高い部品が得られる。
【0072】
本発明によるポリマー粉末組成物は、複数の連続した構造でリサイクルおよび再利用可能である。この場合、単独で再利用することも、あるいは他のリサイクルまたは非リサイクル粉末と混合して再利用することもできる。
【0073】
以下、例として、図1に概略的に示した装置1内で電磁放射線によって引き起こされる焼結により三次元物体を層ごとに構築する方法での、上記の熱可塑性ポリマー粉末組成物の使用について説明する。
【0074】
電磁放射線は、たとえば、赤外線、紫外線、または好ましくはレーザ放射線とすることができる。特に、図1に概略的に示した装置1では、電磁放射線は、赤外線放射100とレーザ放射200の組み合わせを含むことができる。
【0075】
焼結方法は、三次元物体80を構築するための層ごとの製造方法である。
【0076】
装置1は、熱可塑性ポリマー粉末を収容する供給トレイ40と可動水平プレート30が中に配置される焼結筐体10を備える。水平プレート30は、構築中の3次元物体80を支持する役割も果たすことができる。しかし、熱可塑性ポリマー粉末から作られた物体は一般に追加の支持を必要とせず、通常は前の層の未焼結粉末によって自己支持することができる。
【0077】
この方法によれば、熱可塑性ポリマー粉末が供給トレイ40から取り出され、水平プレート30上に堆積されて、構築中の三次元物体80を構成する粉末の薄層50が形成される。粉末層50は、赤外線100により加熱されて、所定の最低構築温度Tcに等しい実質的に均一な温度に達する。
【0078】
その後、粉末層50の様々な地点で熱可塑性ポリマー粉末粒子を焼結するのに必要なエネルギーが、物体の形状に対応する形状に従って、平面(xy)で移動するレーザ20からのレーザ放射200により供給される。溶融された粉末は再凝固して焼結部品55を形成するが、層50の残りの部分は未焼結粉末56の形態のままである。粉末を確実に焼結するには、一般には、単一のレーザ放射200の1回のパスで十分である。しかしながら、特定の実施形態では、粉末の焼結を確実にするために、同じ位置を複数回パスし、および/または、複数の電磁放射線を同じ位置に到達させることを検討してもよい。
【0079】
次に、水平プレート30が、粉末層の厚さに対応する距離だけ軸(z)に沿って下降し、新しい層が堆積される。レーザ20は、物体のこの新しいスライスに対応する形状に沿って、粉末粒子を焼結するのに必要なエネルギーを供給し、以下同様に行う。この手順は、物体80が製造されるまで繰り返される。
【0080】
構築中の層の下にある複数層の焼結筐体10内の温度は、構築温度より低くてもよい。しかしながら、この温度は一般に、粉末のガラス転移温度よりも高いか、さらには、はるかに高いままである。筐体の底部の温度を、「トレイの底部温度」と呼ばれる温度Tbに維持し、TbがTcよりも40℃未満、好ましくは25℃未満、さらに好ましくは10℃未満低くなるようにすることが特に有利である。
【0081】
物体80が完成すると、水平プレート30から取り外され、未焼結粉末56は、篩にかけられてから、少なくとも部分的に供給トレイ40に戻されてリサイクル粉末として用いることができる。
【0082】
D.製造可能な部品
したがって、本発明による組成物の使用により、非常に満足のいく表面外観、特に粗さが小さく、正確かつ明確な寸法および輪郭を備えた、高品質の三次元物品の製造が可能になる。
【0083】
熱可塑性ポリマー粉末組成物は、従来の熱可塑性ポリマー粉末と比較して、得られた部品と少なくとも同様の特性、でなければ優れた特性、特に機械的特性を有する部品を、焼結による3Dプリンティングで製造することができる。
【0084】
以下の実施例では、本発明についてさらに詳細に説明する。
【実施例
【0085】
実施例1
次の方法に従ってポリアミド粉末組成物11を調製した。
【0086】
まず、水0.5kg、次亜リン酸5g(力価50%、水溶液中の重量%で表す)、リン酸9.8g(力価75%、水溶液中の重量%で表す)の存在下、11-アミノウンデカン酸1.2kgからポリアミド11(プレポリマー)を合成した。温度が160℃に達するか、または圧力が8.5バールを超えるとすぐに、混合物を撹拌しながら2時間で温度190℃まで加熱した。合成の際、最初に11-アミノウンデカン酸が含まれていた水を、定圧(P=10バール)での蒸発により除去した。430gの量の水を取り出した後、プレポリマーを加圧反応器からダイスを通して抽出した。次に、冷水を循環させながら2つのスチール製ローラを使用して冷却し、凝固冷却してフレーク状に粉砕した。
【0087】
このようにして得られたプレポリマーを、適切な容器内で3.3gのカーボンブラックと混合した。この混合物を二軸押出機に導入し、完全に溶融混合し、その後押出成形した。次に、混合物を、冷水を循環させながら2つのスチール製ローラを使用して冷却し、凝固冷却してフレーク状に粉砕した。
【0088】
次いで、フレークの形態で回収された積層用プレポリマーを、64μmの体積メディアン径Dv50を有する粉末が得られるまで、内部セレクタを備えたハンマーミル中で粉砕した。次に、このように得られた粉末を乾燥機中で真空下、140~155℃で固相重縮合させて、ポリアミドの固有粘度を1.15まで増加させた。
【0089】
次いで、得られた着色ポリアミド粉末11を、80μmの正方形のスクリーンを使用して、超音波で目詰まりを防ぐ振動篩RUSSELタイプFINEX 22で篩い分けした。
【0090】
次いで、得られた粉末組成物について、以下に示すように粒度および密度に関して特徴付けを行った。結果を以下の表1および表2にまとめた。
【0091】
粉末の特徴付け
粒度
粉末の粒度については、ISO13319-1:2021規格を適用してコールター・カウンター-マルチサイザー3(ベックマン コールター)装置で粒度分布を測定することによって特徴付けた。粒度分布から、平均径と粒度分布の第1番目、第5番目、第9番目の十分位数に対応する直径を決定し、その後、次の式に従ってスパンを計算した。
[数6]
【0092】
比d
粉末の見かけ密度dについては、2~2mLの目盛付きで少なくとも50mLの目盛なしの上部を含む250mLの精密ガラス試験管を使用して、ISO787-11:1981規格を適用して測定した。45°に傾けた試験管に粉末をゆっくりと導入した。粉末の体積は220~250mlである。次に、この体積の粉末の重さを量ってかさ密度を計算し、水のかさ密度で割って密度を推定した。
【0093】
材料の密度dについては、粉末を加熱プレス(T>Tf+40℃、圧力2トン)で溶融した後に測定した。得られたフィルムの密度、つまり材料の密度は、密度キットYDK01と共にザルトリウスAC 210P静水天秤を使用し、ISO1183-1規格に従って水中(21℃)で垂直推力により測定した。
【0094】
粉末の見かけ密度dと、溶融後の粉末で測定された材料の密度dとの比dを、次の式に従って計算した。
[数7]
[表1]
[表2]
【0095】
次に、得られたポリマー粉末を使用し、焼結、具体的にはSLSによる3Dプリンティングにより、粉末層の厚さを100μmに調整しながら次の一連のパラメータを用いて、P100マシン(EOS社によって販売)でのレーザ焼結で試験片1BA XY(ISO 527-1BA規格に準拠した1BA試験片、プリンターの水平面にプリントされるため「XY」と呼ばれる)を製造した。
[表3]
【0096】
プリンティングの解像度の観点から試験片を視覚的に評価した。結果を上の表2にまとめた。
【0097】
さらに、PERTHOMETER S8P装置を使用し、ISO4287:1997規格に従ってサンプルの表面プロファイルの算術平均偏差Raを用いた上面および下面の粗さにより、試験片を特徴付けた(結果は3つの異なる基本長さで取得した3つの値の平均値に相当する)。
【0098】
次に、320グリットのエメリー布を備えた研磨機を使用して試験片を機械的に研磨し、その後、これらの試験片の表面粗さの測定を上記と同じ条件で繰り返した。結果を下の表2にまとめた。
【0099】
実施例2
実施例C2で調製された粉末PA11を、80μmの正方形のスクリーンを使用して、超音波で目詰まりを防ぐ振動篩RUSSELタイプFINEX 22で篩い分けした。
【0100】
得られたポリアミド11の粉末の粒度特性を、実施例1に示したのと同様に測定した。結果を上の表1にまとめた。さらに、実施例1で説明したように材料の密度を測定した(上の表2を参照)。
【0101】
得られた粉末を使用して、実施例1に示すように試験片を製造した。その後、これらの試験片を、上部と底部の表面粗さによって特徴付けた。結果を上の表2にまとめた。
【0102】
実施例3
まず、0.1kgの水の存在下、ラウリルラクタム1kgからポリアミド12(プレポリマー)を合成した。温度が160℃に達するか、または圧力が8.5バールを超えるとすぐに、混合物を撹拌しながら4時間で温度260℃まで加熱した。合成の際、最初にラウリルラクタムが含まれていた水を、定圧(P=20バール)での蒸発により除去した。30gの量の水を取り出した後、プレポリマーを加圧反応器からダイスを通して抽出した。次に、冷水を循環させながら2つのスチール製ローラを使用して冷却し、凝固冷却してフレーク状に粉砕した。
【0103】
次いで、フレークの形態で回収されたプレポリマーを、82μmの体積メディアン径Dv50を有する粉末が得られるまで、最も細かい粒子を除去するために出力で第2のダイナミックセレクタを用いながら、内部セレクタを備えたハンマーミル中で粉砕した。次に、このように得られた粉末を乾燥機中で真空下、140~155℃で固相重縮合させて、ポリアミドの固有粘度を1.10まで増加させた。
【0104】
このように得られた粉末を、80μmの正方形のスクリーンを使用して、超音波で目詰まりを防ぐ振動篩RUSSELタイプFINEX 22で篩い分けした。
【0105】
得られたポリアミド12の粉末の粒度特性を、実施例1に示したのと同様に測定した。結果を上の表1にまとめた。さらに、実施例1で説明したように材料の密度を測定した(上の表2を参照)。
【0106】
得られた粉末を使用し、以下の一連のパラメータを用いて、実施例1に示したように試験片を製造した。
[表4]
【0107】
その後、これらの試験片を、上部と底部の表面粗さによって特徴付けた。結果を上の表2にまとめた。
【0108】
実施例C1
次の方法に従ってポリアミド粉末組成物11を調製した。
【0109】
まず、水0.5kg、次亜リン酸5g(力価50%)、リン酸9.8g(力価75%)の存在下、11-アミノウンデカン酸1.2kgから低粘度のポリマー11(以下、「プレポリマー」という)を合成した。温度が160℃に達するか、または圧力が8.5バールを超えるとすぐに、混合物を撹拌しながら2時間で温度190℃まで加熱する。合成の際、最初に11-アミノウンデカン酸が含まれていた水を、定圧(P=10バール)での蒸発により除去する。430gの量の水を取り出した後、プレポリマーを加圧反応器からダイスを通して抽出した。次に、冷水を循環させながら2つのスチール製ローラを使用して冷却し、凝固冷却してフレーク状に粉砕する。
【0110】
次いで、フレークの形態で回収されたプレポリマーを、74μmの体積メディアン径Dv50を有する粉末が得られるまで、内部セレクタを備えたハンマーミル中で粉砕した。次に、このように得られた粉末を乾燥機中で真空下、140~155℃で固相重縮合させて、ポリアミドの粘度を1.18まで増加させた。
【0111】
得られた粉末を使用して、実施例1に示すように試験片を製造した。その後、これらの試験片を、上部と底部の表面粗さによって特徴付けた。結果を上の表2にまとめた。
【0112】
実施例C2
実施例C1でフレークの形態で回収されたプレポリマーPA11を、91μmの体積メディアン径Dv50を有する粉末が得られるまで、最も細かい粒子を除去するために出力で第2のダイナミックセレクタを用いながら、C1と同じ粉砕パラメータで粉砕した。次に、このように得られた粉末を乾燥機中で真空下、140~155℃で固相重縮合させて、ポリアミドの粘度を1.16まで増加させた。上記の表1に示された粒度特性を有する粉末PA11が得られた。
【0113】
得られた粉末を使用して、実施例1に示すように試験片を製造した。その後、これらの試験片を、上部と底部の表面粗さによって特徴付けた。結果を上の表2にまとめた。
【0114】
実施例C3
実施例C1で調製された粉末PA11を、80μmの正方形のスクリーンを使用して、超音波で目詰まりを防ぐ振動篩RUSSELタイプFINEX 22で篩い分けした。上記の表1に示された粒度特性を有する粉末PA11が得られた。
【0115】
得られた粉末を使用して、実施例1に示すように試験片を製造した。その後、これらの試験片を、上部と底部の表面粗さによって特徴付けた。結果を上の表2にまとめた。
【0116】
実施例C4
ポリアミド12(Arkemaが販売するRilsamid(登録商標) AECNO TL)の顆粒を、直径60μmのファイバを得られるダイスを使用して押し出し、これを冷却して、長さ70μmにわたって微粒化可能にした。このようにして得られたポリアミド粉末の固有粘度は1.09であった。
【0117】
得られたポリアミド12の粉末の粒度特性を、実施例1に示したのと同様に測定した。結果を上の表1にまとめた。さらに、実施例1で説明したように材料の密度を測定した(上の表2を参照)。
【0118】
得られた粉末を使用して、実施例3に示すように試験片を製造した。その後、これらの試験片を、上部と底部の表面粗さによって特徴付けた。結果を上の表2にまとめた。
【0119】
実施例C5
中国特許第104356643B号明細書の実施例1に従って、ポリアミド12.12粉末を得た。まず、ドデカン二酸を60℃でエタノールに可溶化し、ドデカンジアミンのエタノール溶液を、pHを監視しながら徐々に導入した。pH=7の場合、溶液には化学量論量のナイロン12.12塩が含まれ、沈殿した。濾過して乾燥した後でこの塩を回収し、オートクレーブに入れ、温度250℃で重合させて固有粘度1.15のPA12.12を得た。次いで、ダイスを通してこれを反応器から抽出し、冷却して顆粒状にした。次に、これらの顆粒を温度140℃、圧力8バールでエタノールに溶解し、冷却することによって粉末の形で直接沈殿させた。この粉末を、脱水および乾燥後に回収した。このようにして得られたポリアミド粉末の固有粘度は1.12であった。
【0120】
得られたポリアミド12.12の粉末の粒度特性を実施例1に示したのと同様に測定した。結果を上の表1にまとめた。さらに、実施例1で説明したように材料の密度を測定した(上の表2を参照)。
【0121】
得られた粉末を使用して、実施例3に示すように試験片を製造した。その後、これらの試験片を、上部と底部の表面粗さによって特徴付けた。結果を上の表2にまとめた。
【0122】
実施例4
実施例C5(中国特許第104356643B号明細書の実施例1)に従って調製された粉末PA12.12を、80μmの正方形のスクリーンを使用して、超音波で目詰まりを防ぐ振動篩RUSSELタイプFINEX 22で篩い分けし、その後、定義した。
【0123】
得られたポリアミド12.12の粉末の粒度特性を実施例1に示したのと同様に測定した。結果を上の表1にまとめた。さらに、実施例1で説明したように材料の密度を測定した(上の表2を参照)。
【0124】
得られた粉末を使用して、実施例3に示すように試験片を製造した。その後、これらの試験片を、上部と底部の表面粗さによって特徴付けた。結果を上の表2にまとめた。
【0125】
すべての結果は、特許請求されている粒度を有する粉末が、この粉末から3Dプリンティングにより得られる部品の粗さを非常に明確に改善できることを明らかにしている。これに関連して、平均径だけでなく、粒度分布の幅を示すスパンも重要である。したがって、実施例1~3の粉末で得られた粗さは、同様の平均径Dv10、Dv50、およびDv90を有する一方でより高いスパンを有する実施例C3の粉末で得られた粗さよりも、著しく低い。
【0126】
この研究からはまた、実施例C2およびC5の粉末から得られる部品に対して大きい粗さが確認される一方で、これらの粉末のスパンの値が非常に小さいことから、平均径の値が好ましい影響を及ぼしていることがうかがえる。
【0127】
さらに、これらの実施例は、粗さが、次の方程式に従って調査されたパラメータと相関していることを明らかにしている。
[数8]
【0128】
本発明による粉末組成物では、最良の妥協点を得られる。
【0129】
引用文献のリスト
欧州特許第1742986B1号明細書
欧州特許第1413595B1号明細書
欧州特許第2115043B1号明細書
欧州特許第2627687B1号明細書
米国特許6,136,948号明細書
国際公開第96/06881号パンフレット
中国特許第104356643B号明細書
図1
図2
【国際調査報告】