(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】高容量リチウムイオンアノードならびにリチウムイオンアノードを含むセルおよびバッテリ
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20241024BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241024BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241024BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241024BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20241024BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241024BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241024BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241024BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/134
H01M4/48
H01M4/13
H01M4/36 E
H01M4/485
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527184
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022049324
(87)【国際公開番号】W WO2023081530
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524171013
【氏名又は名称】アドバンスド セル エンジニアリング, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
(72)【発明者】
【氏名】マニヴァンナン, アヤカヌ
(72)【発明者】
【氏名】マデン, トーマス
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050DA03
5H050DA09
5H050EA02
(57)【要約】
本開示は、電解質対向面および集電体対向面を有するアノード活物質含有層を含む、高容量リチウムイオンアノードを提供する。アノード活物質含有層は、黒鉛アノード活物質、ケイ素またはケイ素化合物活物質、およびリチウムリザーバを含有する。アノードは、集電体も含む。本開示は、そのようなアノードを含む高容量リチウムイオンセル、そのようなセルを含むバッテリ、そのようなバッテリを含む車両用バッテリ、および高容量リチウムイオンアノードを形成する方法をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高容量リチウムイオンアノードであって、
電解質対向面および集電体対向面を有するアノード活物質含有層であって、
黒鉛アノード活物質、
ケイ素またはケイ素化合物活物質、および
リチウムリザーバ
を含む、アノード活物質含有層と、
アノード集電体と
を含む、高容量リチウムイオンアノード。
【請求項2】
前記黒鉛アノード活物質が黒鉛粒子を含み、前記ケイ素またはケイ素化合物活物質がケイ素またはケイ素化合物粒子を含む、請求項1に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項3】
前記黒鉛アノード活物質が黒鉛層を含み、前記ケイ素またはケイ素化合物活物質がケイ素またはケイ素化合物層を含む、請求項1に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項4】
前記アノード活物質が、黒鉛またはケイ素に加えてまたはその代わりに、下記のうち少なくとも1種をさらに含み、前記アノード活物質は、黒鉛、天然黒鉛、合成黒鉛、硬質炭素、中間相炭素、適切なカーボンブラック、コークス、フラーレン、リチウム金属、リチウム粉末、ニオブチタン酸化物(TNO) 五酸化ニオブ、金属間合金、ケイ素合金、スズ合金、ケイ素、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、リチウムチタン酸化物、ケイ素官能化グラフェン、ケイ素官能化黒鉛、その他のケイ素官能化炭素、非晶質ケイ素、シリコンナノチューブ、ケイ素化合物、x≦2もしくはx<2であるSiO
x、グラフェン、カーボンナノチューブであって、単層カーボンナノチューブ、硬質炭素、もしくは硬質炭素および非晶質ケイ素もしくはシリコンナノチューブを含むもの、またはこれらの任意の組合せを含み得る、請求項1に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項5】
前記リチウムリザーバがリチウム金属粒子を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項6】
前記リチウムリザーバがリチウム金属シートを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項7】
前記リチウムリザーバがリチウム塩を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項8】
前記リチウム塩が、前記アノード活物質含有層中に自由に分散している、請求項7に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項9】
前記リチウム塩が、前記黒鉛アノード活物質、およびケイ素またはケイ素組成物活物質上に被覆されている、請求項7に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項10】
前記リチウム塩が、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LIFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF
4)、リチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(LiTDI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、ヨウ化リチウム(LiI)、またはこれらの任意の混合物もしくは組合せを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項11】
前記ケイ素化合物が、x≦2であるSiO
xを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項12】
前記黒鉛アノード活物質が、天然黒鉛、合成黒鉛、またはこれらの組合せを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項13】
前記アノードが、リチウム金属リン酸塩をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の高容量リチウムイオンアノード。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の高容量アノードと、
カソード活物質を含むカソードと、電解質と
を含む、高容量リチウムイオンセル。
【請求項15】
請求項14に記載の少なくとも1つのリチウムイオンセルと、
ケーシングと
を含む、バッテリ。
【請求項16】
前記バッテリが、円筒状セル、パウチセル、または角柱状セルである、請求項15に記載のバッテリ。
【請求項17】
請求項15または16のいずれか一項に記載の少なくとも1つのバッテリと、正のコネクタと、
負のコネクタと、
ハウジングと
を含む、車両用バッテリ。
【請求項18】
安全装置、制御装置、またはこれらの任意の組合せをさらに含む、請求項17に記載の車両用バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、参照によりそのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる、“BIPOLAR LITHIUM ION CATHODES AND CELLS AND BATTERIES CONTAINING LITHIUM ION CATHODES”という発明の名称の2021年11月8日に出願された米国仮特許出願第63/277,083号、“BIPOLAR LITHIUM ION CATHODES AND CELLS AND BATTERIES CONTAINING LITHIUM ION CATHODES”という発明の名称の2022年8月23日に出願された米国仮特許出願第63/400,355号、“LITHIUM ION CATHODES AND CELLS SUITABLE FOR LARGE-FORMAT BATTERIES AND LARGE-FORMAT BATTERIES CONTAINING LITHIUM ION CATHODES”という発明の名称の2021年11月8日に出願された米国仮特許出願第63/277,084号、“LITHIUM ION CATHODES AND CELLS SUITABLE FOR LARGE-FORMAT BATTERIES AND LARGE-FORMAT BATTERIES CONTAINING LITHIUM ION CATHODES”という発明の名称の2022年9月27日に出願された米国仮特許出願第63/410,538号、“HIGH CAPACITY LITHIUM ION ANODES AND CELLS AND BATTERIES CONTAINING LITHIUM ION ANODES”という発明の名称の2022年2月16日に出願された米国仮特許出願第63/310,979号、および“SLOT ELECTRODE STACK AND ELECTROCHEMICAL CELLS AND BATTERIES CONTAINING A SLOT ELECTRODE STACK”という発明の名称の2022年5月10日に出願された米国仮特許出願第63/340,353号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、三元物質:黒鉛-ケイ素-リチウムを含む高容量リチウムイオンアノード、高容量リチウムイオンアノードを備えたセルおよびバッテリ、ならびにこれらのアノード、セル、またはバッテリを形成する方法に関する。これらのアノードならびにそれらを含むセルおよびバッテリは、本開示の改変のない類似のアノードよりも高い容量を示すことができる。
【背景技術】
【0003】
背景
リチウムバッテリは、エネルギー密度が比較的高いので、消費者向け家電で広く使用されている。再充電可能なバッテリは二次バッテリとも称され、リチウムイオンバッテリは、典型的には二次バッテリである。リチウムイオン二次バッテリは一般に、リチウムを吸蔵する負極(アノード)材料と、リチウムコバルト酸化物、スピネル構造を有するLiMn2O4、およびオリビン構造を有するLiFePO4などの正極(カソード)材料であって、その結晶構造をほぼ維持しつつ、リチウムを吸蔵し、そして放出するものを有する。
【0004】
従来のリチウムイオンバッテリでは、カソード材料は、電気化学反応に利用可能なリチウムの供給源である。しかしながら、バッテリの第1の充放電サイクル中、電気化学反応に利用可能なリチウムの一部分は、固体電解質界面(SEI)層をアノード上に形成し、その結果、このリチウムは不可逆的に失われ、結果的にバッテリの容量は永続的に減少する。さらに、バッテリがサイクル動作し続けるにつれ、電解質の反応および分解がしばしば、SEI層の肥厚化をもたらし、さらになお、利用可能なリチウムおよびバッテリ容量の損失ももたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本開示は、高容量リチウムイオンアノードであって、電解質対向面および集電体対向面を有するアノード活物質含有層であって、黒鉛アノード活物質、ケイ素またはケイ素化合物活物質、およびリチウムリザーバを含む、アノード活物質含有層と;アノード集電体とを含む、高容量リチウムイオンアノードを提供する。
【0006】
互いにおよび本開示の任意のその他の態様と組み合わせられ得る、より特定の実施形態では、
黒鉛アノード活物質が黒鉛粒子を含み、ケイ素またはケイ素化合物活物質が、ケイ素またはケイ素化合物粒子を含む;
黒鉛アノード活物質が黒鉛層を含み、ケイ素またはケイ素化合物活物質がケイ素またはケイ素化合物層を含む;
アノード活物質がさらに、黒鉛またはケイ素に加えてまたはその代わりに、下記:天然黒鉛、合成黒鉛、硬質炭素、中間相炭素、適切なカーボンブラック、コークス、フラーレン、リチウム金属、リチウム粉末、ニオブチタン酸化物(TNO) 五酸化ニオブ、金属間合金、ケイ素合金、スズ合金、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、リチウムチタン酸化物、ケイ素官能化グラフェン、ケイ素官能化黒鉛、その他のケイ素官能化炭素、非晶質ケイ素、シリコンナノチューブ、ケイ素化合物、SiOx(式中、x≦2またはx<2)、グラフェン、カーボンナノチューブであって、単層カーボンナノチューブ、硬質炭素、もしくは硬質炭素および非晶質ケイ素もしくはシリコンナノチューブを含むもの、またはこれらの任意の組合せのうち少なくとも1種を含んでいてもよい;
リウチウムリザーバが、リチウム金属粒子を含む;
リチウムリザーバが、リチウム金属シートを含む;
リチウムリザーバが、リチウム塩を含む;
リチウム塩が、アノード活物質含有層中に自由に分散している;
リチウム塩が、黒鉛アノード活物質、およびケイ素またはケイ素組成物活物質上に被覆されている;
リチウム塩が、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LIFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(LiTDI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ヨウ化リチウム(LiI)、またはこれらの任意の混合物もしくは組合せを含む;
ケイ素化合物がSiOx(式中、x≦2)を含む;
黒鉛アノード活物質は、天然黒鉛、合成黒鉛、またはこれらの組合せを含む;
アノードは、リチウム金属リン酸塩をさらに含む。
【0007】
本開示は、上述のまたは本明細書のその他の箇所に記載される任意の高容量アノードと;カソード活物質を含むカソードと;電解質とを含む、高容量リチウムイオンセルを提供する。
【0008】
本開示は、上述のまたは本明細書のその他の箇所に記載される少なくとも1つのリチウムイオンセルと;ケーシングとを含む、バッテリを提供する。
【0009】
本開示の任意のその他の態様と組み合わせることができる、より特定の実施形態では、バッテリは、円筒状セル、パウチセル、または角柱状セルである。
【0010】
本開示は、上述のまたは本明細書のその他の箇所に記載される少なくとも1つのバッテリと;正のコネクタと;負のコネクタと;ハウジングとを含む、バッテリモジュールまたはパック、例えば電気自動車用バッテリを提供する。
【0011】
本開示の任意のその他の態様と組み合わせることができる、より特定の実施形態では、自動車用バッテリは、安全装置、制御装置、またはこれらの任意の組合せをさらに含む。
【0012】
本開示は、本開示の実施形態を示す、縮尺を合わせていない以下の図を参照することによって、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、高容量リチウムイオンアノードを有するセルの概略断面図である。
【
図2】
図2は、ゼリーロール構成を有しかつ
図1の高容量リチウムイオンアノードを含む円筒状バッテリの概略切取立面図である。
【
図3】
図3は、
図1の高容量リチウムイオンアノードを含む角柱状セルバッテリの概略部分断面立面図である。
【
図4】
図4は、
図3の角柱状セルバッテリを含む、バッテリモジュールまたはパックを含む電気自動車用バッテリの概略図である。
【
図5A】
図5Aは、リチウムリザーバのない、リチウムイオン黒鉛-ケイ素粒子アノードの概略断面図である。
【
図5B】
図5Bは、アノード活物質含有層の電解質対向面上にリチウム金属シートが位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素粒子アノードの概略断面図である。
【
図5C】
図5Cは、アノード活物質含有層の集電体対向面上にリチウム金属シートが位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素粒子アノードの概略断面図である。
【
図5D】
図5Dは、アノード活物質含有層の電解質対向面上にリチウム金属粒子が位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素粒子アノードの概略断面図である。
【
図5E】
図5Eは、アノード活物質含有層の集電体対向面上にリチウム金属粒子が位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素粒子アノードの概略断面図である。
【
図5F】
図5Fは、アノード活物質含有層中にリチウム塩が自由に分散している、リチウムイオン黒鉛-ケイ素粒子アノードの概略断面図である。
【
図5G】
図5Gは、アノード活物質含有層の黒鉛およびケイ素粒子上にリチウム塩が被覆されている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素粒子アノードの概略断面図である。
【
図6A】
図6Aは、リチウムリザーバなしで、電解質対向ケイ素層を備えたリチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図6B】
図6Bは、電解質対向ケイ素層を持ち、アノード活物質含有層の電解質対向面上にリチウム金属シートが位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図6C】
図6Cは、電解質対向ケイ素層を持ち、アノード活物質含有層の集電体対向面上にリチウム金属シートが位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図6D】
図6Dは、電解質対向ケイ素層を持ち、アノード活物質含有層の電解質対向面上にリチウム金属粒子が位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図6E】
図6Eは、電解質対向ケイ素層を持ち、アノード活物質含有層の集電体対向面上にリチウム金属粒子が位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図7A】
図7Aは、リチウムリザーバなしで、電解質対向黒鉛層を備えたリチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図7B】
図7Bは、電解質対向黒鉛層を持ち、アノード活物質含有層の電解質対向面上にリチウム金属シートが位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図7C】
図7Cは、電解質対向黒鉛層を持ち、アノード活物質含有層の集電体対向面上にリチウム金属シートが位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図7D】
図7Dは、電解質対向黒鉛層を持ち、アノード活物質含有層の電解質対向面上にリチウム金属粒子が位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図7E】
図7Eは、電解質対向黒鉛層を持ち、アノード活物質含有層の集電体対向面上にリチウム金属粒子が位置付けられている、リチウムイオン黒鉛-ケイ素層状アノードの概略断面図である。
【
図8A】
図8Aは、液体リチウム化プロセス中の、リチウム化装置におけるアノードである。
【
図8B】
図8Bは、高温リチウム化プロセス中の、リチウム化装置におけるアノードである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本開示は、高容量リチウムイオンアノード、高容量リチウムイオンアノードを備えるセルおよびバッテリ、ならびにこれらのアノード、セル、またはバッテリを形成する方法に関する。これらの高容量リチウムイオンアノードは一般に、リチウムリザーバと共に、アノード活物質として黒鉛-ケイ素組成物を含む。リチウムリザーバは、様々な実施形態において、アノード中に存在するが黒鉛-ケイ素組成物中に吸蔵されない、リチウム粒子もしくは箔などのリチウム金属、または遊離リチウム塩としてもしくは黒鉛-ケイ素組成物上に被覆されたもののいずれかとしてアノード中に存在するリチウム塩、またはこれらの任意の組合せであり得る。これらの初期アノード構造は、セルもしくはバッテリの組立て前に、および/またはサイクル動作前に、例えばサイクル動作していないセルもしくはバッテリアセンブリ中に存在することが、当業者に理解されよう。
【0015】
本明細書で使用されるように、下記の用語は、下記の意味を有する:
化学的略語は、当技術分野で典型的である通りに用いられる。例えばリチウムイオンはLi+と称されてもよく、電子はe-と称されてもよい。重量%は「wt%」と略されてもよい。
【0016】
「カソード」(「正極」とも呼ばれ得る)は、リチウムイオン電気化学セルの放電中に、そこに電子が流れ、リチウムイオンと結合する電極である(典型的には、リチウムイオンの金属酸化物挿入または脱挿入の文脈において)。電気化学セルの充電中、電子がカソードから流れ、リチウムイオンもカソードから放出される。
【0017】
「カソード活物質」は、リチウムイオンおよび電子を電気化学セルのその他の成分と交換するため、カソードで電気化学反応を受ける化学物質である。
【0018】
「双極性カソード」は、それらのカソード活物質組成が異なる、したがってそれらのエネルギー密度および電力密度も異なる、2つの異なる層を含むカソードである。最も簡単なタイプの双極性カソードでは、第1の層が第1のカソード活物質を含有し、第2の層が第2のカソード活物質を含有し、これは化学組成および少なくとも1つの電気化学特性が第1のカソード活物質とは異なるものである。「双極性カソード」は、従来の双極性バッテリ積層構成を示さない。
【0019】
「アノード」(「負極」とも呼ばれ得る)は、そこから、リチウムイオン電気化学セルの放電中に電子が流れ、そこからリチウムイオンが放出される、電極である。電気化学セルの充電中、電子はアノードに流れ、そこでリチウムイオンと結合して、しばしばリチウム金属(Li)を形成する。
【0020】
「アノード活物質」は、リチウムイオンおよび電子を電気化学セルのその他の成分と交換するようにアノードで電気化学反応を受ける化学物質、またはその表面で、電気化学反応によってリチウム金属がメッキされもしくはリチウムイオンとして除去され、電子が分離され再結合され得る、化学物質である。
【0021】
「集電体」は、電気化学反応を進行させるように、電子を直接または間接的に活物質と交換するカソードまたはアノードの構成要素である。
【0022】
「電解質」は、リチウムイオンをカソードおよびアノードと交換できる物質である。本明細書における多くの実施例は液体電解質に関するが、ゲルまたは固体電解質などの適切な非液体電解質を、本開示により包含される電気化学セルに使用してもよい。
【0023】
「セル」または「電気化学セル」は、セルが外部エネルギーシンクまたはエネルギー源に電気的に接続される場合、完全電気化学反応が生じ得る基本的物理単位である。電気化学セルは、カソードおよびアノードおよび電解質を含む。電解質が、電気的に非伝導性の障壁をアノードとカソードとの間に形成しない限り、電気化学セルは、電気的に非伝導性の障壁をアノードとカソードとの間に形成するセパレータも収容する。電気化学セルは、液体電解質を含むこと、空気もしくは水をセルから排除すること、またはセルの構成要素を物理的損傷から保護することなどによって、物理的ユニットとして電気化学セルを維持する、容器も含む。
【0024】
「バッテリ」は、ハウジングまたは第2のもしくは後続の電気化学セルなど、電気化学セルの一部ではない少なくとも1つのその他の構成要素と組み合わせた少なくとも1つの電気化学セルを含む、より複雑な物理的ユニットである。バッテリは、ベント、空気循環システム、火炎抑制システム、配線またはバーなどの導電体、識別コンポーネント、さらに、例えばバッテリ状態を評価し、バッテリ機能を制御し得る、プロセッサおよび関連メモリなど、その他の構成要素を含んでいてもよい。
【0025】
「サイクル動作していない(uncycled)」とは、一度も充放電されていないセルもしくはバッテリを指し、あるいはセルまたはバッテリ内で一度も充放電されていないアノードもしくはカソードまたはアノード活物質もしくはカソード活物質を指す。
【0026】
「硬質炭素」は、3000℃までの温度での熱処理によって黒鉛に変換することのできない、結果として「非黒鉛化炭素」とも呼ばれ得る、固体形態の炭素である。硬質炭素は、適切な炭素系前駆体を、酸素の不在下、1000℃まで加熱することによって形成され得る。
【0027】
他に指定されない限り、「含む(including)」という用語は、広範な意味で使用され、「~に限定されない」ことを意味する。同様に「または」は、広範に使用され、列挙される選択肢のうちの1つ、および列挙される選択肢のうちの1つより多くのものの組合せ(即ち、および/または)の両方を意味する。「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、1より多くを含む。本明細書で使用される「約」は、1%の変動の範囲内を意味する。
【0028】
数字指定の後にaおよびbが続く場合、数字のみによってまとめて呼ばれ得るものと類似の構成要素を示す。
【0029】
本明細書に開示される全ての列挙項目は、他に指定されない限り、それらの任意の組合せを含むと解釈されるべきである。
【0030】
本明細書に列挙される全ての有界および非有界範囲は、端点値間の全ての値(または場合により非有界範囲については、端点値よりも上もしくは下)、および端点値の、両方を含むと解釈されるべきである。「~からの範囲内」および「~の間」という用語は共に、端点値を含む。
【0031】
高容量アノードセル
次に
図1~4を参照すると、本開示は、一部の実施形態によれば、バッテリ、例えばバッテリ200、バッテリ300、またはバッテリ500内にあり得る電気化学セル10を提供する。電気化学セル10は、カソード20、高容量アノード60、および電解質100を含む。
【0032】
カソード20は、少なくとも1種のカソード活物質50を含有する、少なくとも1つのカソード活物質含有層30を含む。カソード20は、カソード集電体40もさらに含む。
【0033】
アノード60は、アノード活物質90a(黒鉛)および90b(ケイ素またはケイ素化合物)を含有する、アノード活物質含有層70を含む。アノード60は、アノード集電体80を含む。
【0034】
電解質100は、リチウムイオン120を含有する。一部の実施形態では、図示しないが電気化学セル10は、固体電解質100を含む。固体電解質100は、乾燥または架橋形態のポリマー母材を含んでいてもよい。
図2および3に示されるものなどその他の実施形態では、電気化学セル10は液体電解質を含む。
【0035】
セパレータ110は、電気化学セル10内でカソード20をアノード60から電気的に絶縁する。セパレータ110は、その内部で少なくともリチウムイオン120を通過させる。一部の実施形態では、セパレータ110は、ポリエチレン、ポリプロピレン、セラミック被覆ポリマー複合体、またはこれらの任意の組合せを含む。より特定の実施形態では、セパレータはポリエチレン-ポリプロピレン-ポリエチレン三層膜である。
【0036】
一部の実施形態では、セパレータ110は、ガラスなどの電気絶縁性材料をさらに含む。特定の実施形態では、セパレータ100は、ガラス繊維、特に多孔質マットに形成されたガラス繊維を含んでいてもよい。
【0037】
一部の実施形態では、セパレータ110は、片面また両面がセラミック材料で被覆され、より特定の実施形態では、セラミック材料は酸化セラミック、硫化物、Al2O3、Al2O3-SiO2、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0038】
電気化学セル10は、導電性外部回路130に接続されたとき、電子150を、アノードからカソードまでまたはその逆で外部回路130を通過させる。
【0039】
図1に示される実施例では、電気化学セル10は、外部負荷140に電力を与えるように放電されている。電気化学セル10が充電されている場合、AC壁コンセント(DC電力に変換される)などのエネルギー源は、外部負荷140の代わりをする可能性がある。
【0040】
本開示による任意の電気化学セルの電圧は、カソードおよびアノードでの半電池電位間の差であり、カソード活物質およびアノード活物質(複数可)は、相応に選択され得る。電解質は、セル電位での分解を回避しまたはその量を減少させるように選択され得る。
【0041】
高容量アノード
図1~8に示されるアノード60は、アノード活物質90a(黒鉛)および90b(ケイ素)をアノード活物質層70中に含む。一部の実施形態では、アノード層70は、全体的にアノード活物質90で形成されてもよい。他の実施形態では、伝導度向上剤または結合剤などの追加の材料が存在してもよい。一部のより特定の実施形態では、アノード活物質は、硬質炭素と非晶質ケイ素および/またはシリコンナノチューブの組合せであってもよくまたは組合せを含んでいてもよい。
【0042】
一部の実施形態では、アノード活物質はさらに、黒鉛またはケイ素に加えてまたはその代わりに、下記:天然黒鉛、合成黒鉛、硬質炭素、中間相炭素、適切なカーボンブラック、コークス、フラーレン、リチウム金属、リチウム粉末、ニオブチタン酸化物(TNO) 五酸化ニオブ、金属間合金、ケイ素合金、スズ合金、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、リチウムチタン酸化物、ケイ素官能化グラフェン、ケイ素官能化黒鉛、その他のケイ素官能化炭素、非晶質ケイ素、シリコンナノチューブ、ケイ素化合物、SiOx(式中、x≦2またはx<2)、グラフェン、カーボンナノチューブであって、単層カーボンナンチューブ、硬質炭素、もしくは硬質炭素および非晶質ケイ素もしくはシリコンナノチューブを含むもの、またはこれらの任意の組合せのうち少なくとも1種を含んでいてもよい。一部の実施形態では、アノード活物質90は、上記追加または置き換えによる場合であっても、黒鉛またはケイ素のうち少なくとも1種を依然として含有する。
【0043】
一部の実施形態では、黒鉛アノード活物質90aは、全アノード活物質の重量と比較して、約5wt%から約99wt%の間の、端点が約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、92、95、98wt%であるその内部の範囲を含めた重量%(wt%)で存在し得る。一部のより特定の実施形態では、黒鉛アノード活物質90aは、全アノード活物質の重量と比較して、約92wt%から99wt%の間の、端点が約92、93、94、95、96、97、98wt%であるその内部の範囲を含めた重量%(wt%)で存在し得る。一部のより特定の実施形態では、黒鉛アノード活物質90aは、全アノード活物質重量と比較して、約85wt%から99wt%の間の、端点が約86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98wt%であるその内部の範囲を含めた重量%(wt%)で存在し得る。
【0044】
一部の実施形態では、黒鉛アノード活物質90aは、合成黒鉛、天然黒鉛、またはこれらの組合せであり得る。黒鉛アノード活物質90aが、合成黒鉛および天然黒鉛の組合せである場合、合成黒鉛は、全黒鉛アノード活物質90a重量と比較して、約5wt%から約95wt%の間の、端点が約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90wt%であるその内部の範囲を含めた重量%(wt%)で存在し得る。
【0045】
一部の実施形態では、ケイ素アノード活物質90bは、元素状ケイ素(本明細書では、単に「ケイ素」とも呼ばれる)、ケイ素化合物、特にSiOx(式中、x<2またはx≦2)、またはこれらの任意の組合せであり得る。ケイ素アノード活物質90bが、ケイ素とケイ素化合物との組合せである場合、ケイ素は、全ケイ素アノード活物質90b重量と比較して、約5wt%から約95wt%の間の、端点が約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90wt%であるその内部の範囲を含めた重量%(wt%)で存在し得る。ケイ素アノード活物質90bがケイ素化合物を含有する場合、i)x<2である、またはii)x≦2である、SiOxは、全SiOxアノード活物質90b重量と比較して、約5wt%から約95wt%の間の重量の、端点が約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90wt%であるその内部の範囲を含めた重量%(wt%)で存在し得る。特定の実施形態では、ケイ素化合物は、x<2であるSiOxであってもよい。
【0046】
一部の実施形態では、ケイ素との下記の反応が、アノード60で生じ得る:(SiO+Li→Li2O+Lix Si Li2O)(ICL)。
【0047】
一部の実施形態では、ケイ素は粒子の形態で存在し得る。より特定の実施形態では、粒子はナノ粒子であり、900nm、750nm、500nm、250nm、100nm、50nm、もしくは10nm、またはそれよりも小さい、あるいは0.1nmから900nm、0.1nmから750nm、0.1nmから500nm、0.1nmから250nm、0.1nmから100nm、0.1nmから50nm、または0.1nmから10nmの範囲の、平均最長寸法(球状粒子に関する直径、または円筒状粒子に関する長さなど)を有し得る。一部の実施形態では、アノード中のケイ素は、重量で5%から50%の間のケイ素ナノ粒子を含んでいてもよい。ケイ素ナノ粒子を含有するアノードは、サイクル動作中、ケイ素ミクロ粒子を含有するアノードよりも低い体積膨張率を有し得る。
【0048】
アノード活物質含有層70は、サイクル動作していない電気化学セル10内の黒鉛またはケイ素アノード活物質90において吸蔵されていないリチウム金属160またはリチウム塩170を含有するリチウムリザーバをさらに含む。リチウムリザーバは、様々な手法でアノード活物質含有層70に対して位置付けられ得る。例えばリチウムリザーバは、
図5B、5D、6B、6D、7B、および7Dに例示されるように、主にアノード活物質含有層70の電解質対向部分に位置付けられてもよい。リチウムリザーバは、
図5C、5E、6C、6E、7C、および7Eに例示されるように、主にアノード活物質含有層70の集電体対向面に位置付けられてもよい。リチウムリザーバは、
図5Fおよび5Gに例示されるように、アノード活物質含有層70の全体にわたり位置付けられてもよい。
【0049】
一部の実施形態では、サイクル動作の前に、アノード活物質含有層70は、重量で最大20%のリチウム金属、重量で最大15%のリチウム金属、重量で最大10%のリチウム金属、1重量%から20重量%、1重量%から15重量%、1重量%から10重量%、5重量%から20重量%、5重量%から15重量%、または5重量%から10重量%の範囲のリチウム金属を含み得る。
【0050】
アノード活物質含有層70は、様々な手法で構造化されてよい。例えば、黒鉛粒子およびケイ素またはケイ素化合物粒子から形成され得る。これらの粒子は、
図5A~5Gに例示されるように混合され得る。一部の実施形態では、それらは均質に混合されてもよい。他の実施形態では、図示しないが、粒子は混合されてもよいがアノード活物質含有層70の全体にわたる粒子タイプの勾配を持って、例えば集電体対向面から電解質対向面まで勾配を持って、混合されてもよい。やはり図示されず、
図6A~Eおよび
図7A~Eとその構造が類似する、さらに他の実施形態では、黒鉛粒子が黒鉛層に堆積されてもよく、ケイ素またはケイ素化合物粒子はケイ素層に堆積されてもよい。
【0051】
一部の実施形態では、黒鉛粒子は、均一な直径の、したがって粒子の90%が、平均粒子直径の10%以内の直径を有するものであり得る。他の実施形態では、黒鉛粒子は、2つの明確に異なる均一サイズのものであってもよい。例えば黒鉛粒子は、平均直径が、第2の均一サイズの黒鉛粒子の平均直径の少なくとも1.5、2、2.5、3、5、10、または20倍である第1の均一サイズを有していてもよい。
【0052】
一部の実施形態では、ケイ素またはケイ素化合物粒子は、均一な直径の、したがって粒子の90%が、平均粒子直径の10%である直径を有するものであり得る。他の実施形態では、ケイ素またはケイ素化合物粒子は、2つの明確に異なる均一サイズのものであってもよい。例えばケイ素またはケイ素化合物粒子は、平均直径が、第2の均一サイズのケイ素またはケイ素化合物粒子の平均直径の少なくとも1.5、2、2.5、3、5、10、または20倍である第1の均一サイズを有していてもよい。
【0053】
より詳細には、
図5Aは、リチウムリザーバが存在しない、黒鉛粒子90aおよびケイ素粒子90bを含有するアノード活物質含有層70を持つ、アノード60の基本構造を示す。アノード活物質含有層70は、集電体80に隣接する。
図5Bおよび5Cは、
図5Aの場合と同じ基本構造を持つがリチウム金属シート160aのリチウムリザーバを持つアノード60を示す。
図5Bでは、リチウム金属シート160aは、アノード活物質含有層70の電解質対向面上に位置付けられる。
図5Cでは、リチウム金属シート160aは、アノード活物質含有層70の集電体対向面上に位置付けられる。
図5Dおよび5Eもまた、
図5Aの場合と同じ基本構造であるがリチウムリザーバとしてリチウウ金属粒子160bを持つ、アノード60を示す。
図5Dでは、リチウム金属粒子160bが、アノード活物質含有層70の電解質対向面上に位置付けられる。
図5Eでは、リチウム金属粒子160bは、アノード活物質含有層70の集電体対向面上に位置付けられる。
【0054】
アノード活物質含有層70は、
図6A~6Eおよび7A~7Eに例示されるような材料の連続シートであってもよい、黒鉛およびケイ素またはケイ素化合物層の形で構造化されてもよい。層は、主に物理的に一体化された黒鉛、ケイ素、もしくはケイ素化合物で構成されてもよく、または層は、層を形成するようにもしくはその物理的一体性を維持するように結合剤もしくはその他の添加剤などの添加剤を含んでいてもよい。
図6Aおよび7Aは、リチウムリザーバが存在しない、黒鉛層90aおよびケイ素またはケイ素化合物層90bを含有するアノード活物質含有層70を持つ、アノード60の基本構造を示す。アノード活物質含有層70は、集電体80に隣接する。
図6Aでは、ケイ素またはケイ素化合物層90bは、アノード活物質含有層70の電解質対向面上に位置付けられる。
図7Aでは、黒鉛層90aは、アノード活物質含有層70の電解質対向面上に位置付けられる。
図6Bおび7Bでは、リチウム金属シート160aは、アノード活物質含有層70の電解質対向面上に位置付けられる。
図6Cおよび7Cでは、リチウム金属シート160aは、アノード活物質含有層70の集電体対向面上に位置付けられる。
図6Dおよび7Dでは、リチウム金属粒子160bは、アノード活物質含有層70の電解質対向面上に位置付けられる。
図6Eおよび7Eでは、リチウム金属粒子160bは、アノード活物質含有層70の集電体対向面上に位置付けられる。
【0055】
リチウム金属粒子を含有する実施形態では、これらの粒子は、リチウム金属と酸素または水との反応を阻止するコーティングを含んでいてもよい。
【0056】
図は、単層のみのリチウムリザーバを持つ実施形態を示すが、一部の実施形態では、複数の層がアノード60に存在してもよい。さらに、図は1つのみの黒鉛またはケイ素もしくはケイ素化合物層を持つ実施形態を示すが、複数の層がアノード60に存在してもよい。
【0057】
一部の実施形態では、リチウムリザーバは、リチウム塩170の形態をとる。
図5Fに例示されるように、リチウム塩170aは、アノード活物質含有層70中に自由に分散していてもよい。
図5Gに示されるように、リチウム塩170bは、アノード活物質含有層70の黒鉛粒子90aおよびケイ素またはケイ素化合物粒子90b上に被覆されてもよい。実施形態では、黒鉛層90aおよびケイ素またはケイ素化合物層90bが存在する
図6Aおよび7Aに例示されるものと同様に、リチウム塩170aは、層間に分散させることによってアノード活物質含有層70中に依然として自由に分散していてもよく、またはリチウム塩170bは、黒鉛層90aおよびケイ素もしくはケイ素化合物層90b上に被覆されていてもよい。一部の実施形態では、黒鉛活物質90aおよびケイ素またはケイ素化合物活物質90bは共に、リチウム塩170aで被覆されている。
【0058】
リチウム塩170は、特定の実施形態において、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LIFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(LiTDI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ヨウ化リチウム(LiI)、またはこれらの任意の混合物もしくは組合せ、特にLiTFSIと組み合わせた1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであり得る。リチウム塩170は、有機ポリマーコーティングなど、特に標準大気の下、リチウムと酸素との反応を妨げることによって電極安定性を高める化合物を、さらに含んでいてもよい。
【0059】
アノード60に存在し得る、適切な追加の材料は、ポリマー結合剤、伝導度向上剤、およびこれらの組合せを含む。
【0060】
適切な伝導度向上剤には、炭素繊維、例えば気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノロッド、黒鉛、もしくはカーボンブラック、例えばアセチレンブラック、Denkaブラック、Keitjenブラック、硬質炭素、銀/金ナノワイヤもしくは粒子、またはこれらの任意の組合せが含まれる。
【0061】
一部の実施形態では、アノード活物質含有層70は、5wt%またはそれよりも少ない伝導度向上剤を含んでいてもよい。より詳細には、アノード活物質含有層70は、約1wt%から約5wt%の間、約2wt%から約5wt%の間、約1wt%から約4wt%の間、約2wt%から約4wt%の間、または約3wt%から約4wt%の間の伝導度向上剤を含んでいてもよい。
【0062】
適切なポリマー結合剤は、アノード活物質またはリチウムリザーバを、アノード60のその他の構成要素、例えば場合によってはその他の層もしくは粒子に、または集電体80に接着する結合剤を含む。一部の実施形態では、ポリマー結合剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、エチレン-(プロピレン-ジエンモノマー)コポリマー(EPDM)、水溶性結合剤、例えば合成ゴム、特にスチレン-ブタジエンゴム/カルボキシルメチル-セルロース(SBR/CMC)、アルギン酸ナトリウム、またはアクリル酸ナトリウム、伝導性ポリマー、ならびにこれらの任意の混合物およびコポリマーを含んでいてもよい。伝導性ポリマーは、ポリ(3,4)エチレンジオキサンチオフェン(PEDOT)、ポリ-スチレンスルホネート(PSS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ならびにこれらの任意の混合物およびコポリマーを含んでいてもよい。
【0063】
一部の実施形態では、アノード活物質含有層70は、5wt%またはそれよりも低いポリマー結合剤を含んでいてもよい。より詳細には、アノード活物質含有層70は、約1wt%から約5wt%の間、約2wt%から約5wt%の間、約1wt%から約4wt%の間、約2wt%から約4wt%の間、または約3wt%から約4wt%の間のポリマー結合剤を含んでいてもよい。
【0064】
一部の実施形態では、アノード活物質含有層70は、5wt%もしくはそれよりも低い、3wt%もしくはそれよりも低い、0.5から5wt%の間、1から5wt%の間、0.5から3wt%の間、または1から3wt%の間のリチウム金属リン酸塩カソード材料を含んでいてもよく、これは、セル内のカソード材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0065】
一部の実施形態では、第3、第4、またはそれより高次のアノード活物質が存在してもよい。
【0066】
アノード60は、金属箔、金属グリッド、金属スクリーン、金属フォーム、もしくはエキスパンドメタル(実質的な量のカソード活物質を内部に収集させるのに十分な厚さを有する金属グリッドまたは金属スクリーンである)、または少なくとも1つのグラフェン層、典型的には複数のグラフェン層などの、任意の適切な導電性材料であってよいアノード集電体80を含み得る。一部の実施形態では、アノード集電体80は、Ni、Ti、C、Cu、ステンレス鋼、またはこれらの任意の組合せを含んでいてもよい。特定の実施形態では、アノード集電体80は銅であり、より詳細には、銅箔である。一部の実施形態では、集電体が金属を含むまたは金属である場合、集電体は、TiNなどの伝導性かつ耐腐食性のコーティングをさらに含んでいてもよい。
【0067】
一部の実施形態では、アノード活物質含有層70は、約2ミクロンから約8ミクロン、約2ミクロンから約6ミクロン、5約2ミクロンから約4ミクロン、約4ミクロンから約8ミクロン、約4ミクロンから約6ミクロン、約6ミクロンから約8ミクロン、または約2ミクロンから約100ミクロンの間の厚さを有する。
【0068】
一部の実施形態では、図示しないが、アノード60は、アノード活物質含有層70を集電体80の両面上に有していてもよい。より特定の実施形態では、そのようなアノード60は、約2ミクロンから約1000ミクロン、約2ミクロンから約8ミクロン、約2ミクロンから約6ミクロン、約2ミクロンから約4ミクロン、約4ミクロンから約8ミクロン、約4ミクロンから約6ミクロン、約6ミクロンから約8ミクロン、約2ミクロンから約500ミクロン、または約2ミクロンから約100ミクロンの間の厚さを有する。
【0069】
一部の実施形態では、アノード層70は、合計、または両面がカソード活物質を有する場合には面当たり、約1mg/cm2から約100mg/cm2の間の、全アノード活物質90負荷を有する。
【0070】
一部の実施形態では、アノード層70は、約0.5g/mLから約3g/mL、約0.5g/mLから約2.5g/mL、約0.5g/mLから約2g/mL、約1g/mLから約3g/mL、約1g/mLから約2.5g/mL、約1g/mLから約2g/mL、約1g/mLから約100g/mLの間、より詳細には約1g/mLから約75g/mL、約1g/mLから約50g/mL、約1g/mLから約25g/mL、約25g/mLから約100g/mL、約25g/mLから約75g/mL、約25g/mLから約50g/mL、約50g/mLから約100g/mL、約50g/mLから約75g/mL、または約75g/mLから約100g/mLの間の密度を有する。
【0071】
一部の実施形態では、アノード60またはアノード活物質含有層70は、100サイクル後、1重量%未満の、または0.001%から1重量%の範囲のリチウムの損失を示し得る。
【0072】
カソード
カソード活物質50は、黒鉛-ケイ素アノードと適合性である任意の活物質、またはそのような活物質の任意の組合せであってよい。一部の実施形態では、カソード活物質50は、リチウム金属酸化物(LMO)またはリチウム金属リン酸塩(LMP)などのリチウム化合物であってもよい。
【0073】
カソード活物質は一般に、非晶質形態ではなく結晶質形態で存在し得る。特にリチウム金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物の場合に類似する層状結晶構造を示すものであり得、より特には、菱面体格子、六方晶系結晶構造、例えば空間群R-3mのものなどであり得る。リチウム金属リン酸塩は、オリビン構造と呼ばれることもある、空間群Pnmaの斜方晶系結晶構造を示すものであってもよい。一部のカソード活物質は、スピネル構造を有していてもよい。
【0074】
カソード活物質50は、ナノ粒子、ミクロ粒子、または凝集体であり得る粒子の形態をとり得る。粒度は、カソード活物質上に任意のコーティングを含む。複数のカソード活物質が存在する場合、カソード活物質は、ほぼ同じ粒度または異なる粒度を有していてもよく、同様に、凝集されていても凝集されていなくてもよく、または1つの粒子タイプが凝集され得るがその他はそうでない。
【0075】
特定の実施形態では、カソード活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケルアルミニウム酸化物(LiNi/Al/O2)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNi/Mn/CoO2、「NMC」とも呼ばれる)であって、特にその中にNiが、Ni、Mn、およびCoの全重量の少なくとも50wt%で存在するもの、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNi/Co/AlO2、「NCA」とも呼ばれる)、リチウムニッケルマンガンコバルトアルミニウム酸化物(LiNi/Mn/Co/AlO2、NMCAとも呼ばれる)、リチウム鉄リン酸塩(「LFP」とも呼ばれる)、リチウムマンガン鉄リン酸塩(「LMFP」とも呼ばれる)、リチウムマンガンニッケル鉄リン酸塩(「LMNFP」とも呼ばれる)、リチウム鉄コバルトリン酸塩(「LFCP」とも呼ばれる)、またはリチウム鉄マンガンコバルトリン酸塩(「LFMCP」とも呼ばれる)を、任意の組合せで含み得る。
【0076】
特定の実施形態では、NMCは、Niを、Ni、Mn、およびCoの全重量の少なくとも50wt%の量で含有する。
【0077】
他の特定の実施形態では、カソードは、Ni、Mn、およびCoのそれぞれの相対量が異なる2種またはそれよりも多くのNMCの組合せを含んでいてもよい。
【0078】
一部の実施形態では、カソードは、カソード活物質のうちの1種または混合物を含有していてもよい。
【0079】
一部の実施形態では、カソードは、サイクル動作していない状態にあるとき、リチウム化材料に加えて非リチウム化金属リン酸塩などの非リチウム化金属酸化物も含有する。一部の実施形態では、非リチウム化金属酸化物は、リチウムを含まないこと以外、リチウム化金属酸化物(例えば、LiFePO4およびFePO4)と同じ化学組成を有する。他の実施形態では、非リチウム化金属酸化物は、リチウム化金属酸化物とは異なる化学組成を有する(例えば、LiFePO4およびMnFePO4またはLiMn0.2Fe0.8PO4およびMn0.15Fe0.85PO4)。
【0080】
より特定の実施形態では、Liは、約1wt%から約99wt%、約1wt%から約95wt%、約1wt%から約90wt%、約1wt%から約85wt%、約1wt%から約80wt%、約1wt%から約50wt%、約10wt%から約99wt%、約10wt%から約95wt%、約10wt%から約90wt%、約10wt%から約85wt%、約10wt%から約80wt%、約10wt%から約50wt%、約25wt%から約99wt%、約25wt%から約95wt%、約25wt%から約90wt%、約25wt%から約85wt%、約25wt%から約80wt%、約25wt%から約50wt%、約50wt%から約99wt%、約50wt%から約95wt%、約50wt%から約90wt%、約50wt%から約85wt%、約50wt%から約80wt%、約1wt%から約20wt%、約5wt%から約20wt%、約10wt%から約50wt%、または約15wt%から約20wt%の間の量で、カソード活物質中に存在し得る。そのような実施形態では、アノードは、リチウムイオンまたはリチウム金属を含有していなくてもよい。他の実施形態では、アノードは、非リチウム化カソードに含有されないLiを補うための追加のLi源を含有していてもよい。
【0081】
他の実施形態では、カソードは、双極性カソードを形成するため、少なくとも2つの全く異なるカソード活物質またはカソード活物質の混合物を別々のカソード層に含有していてもよい。
【0082】
マンガンを含有するカソード活物質は、セルを通したマンガンの溶解に起因して、特に使用中に、性能の低下または故障を被る可能性がある。本開示のカソード活物質中の非リチウム化金属リン酸塩およびカソードは、セルの使用中のマンガン溶解を低下させるまたは防止する安定化および均衡因子として作用し得る。
【0083】
一部の実施形態では、カソード活物質の1種もしくは複数種、または全ては、コバルトを含有しなくてもよい。毒性であるコバルトとは対照的に、鉄、マンガン、およびニッケルは一般に非毒性であり、バッテリへの損傷により放出された場合であっても、有害な量で身体に取込まれる可能性は非常に低い。さらに、これらのカソード活物質は、熱暴走およびその結果のバッテリまたはセルの損傷および火災を防止するのを助け得る。しかしながら、カソード活物質の1種もしくは複数種、または全てがコバルトを含有する実施形態もまた、本明細書に開示されるようにカソードでの使用に適している。
【0084】
一部の実施形態では、NMCは、一般化学式LiNi1-x-yMnxCoyO2を有し、式中、1-x-y、x、およびyはそれぞれ0よりも大きく、1-x-yは、Niが、Ni、Mn、およびCoの全重量の少なくとも50wt%の量、例えば50wt%から約99wt%の間、50wt%から約95wt%の間、50wt%から約90wt%の間、50wt%から約85wt%の間、約50wt%から約80wt%の間、50wt%から約75wt%の間、50wt%から約70wt%の間、50wt%から約65wt%の間、50wt%から約60wt%の間、または50wt%から約55wt%の間の量で存在するようなものである。一部の実施形態では、1-x-yは、Niが、Ni、Mn、およびCoの全重量の少なくとも80wt%の量で、例えば80wt%から約99wt%の間、80wt%から約95wt%の間、80wt%から約90wt%の間、または80wt%から約85wt%の間の量で存在するようなものである。
【0085】
NMCが一般化学式LiNi1-x-yMnxCoyO2を有する一部の実施形態では、xは、MnがNMCの全重量の最大30wt%の量で存在するようなものである。より特定の実施形態では、Mnは、約1wt%から30wt%、約5wt%から30wt%、約10wt%から30wt%、または約20wt%から30wt%の間の量で存在し得る。
【0086】
より特定の実施形態では、NMCは、化学式LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2を有する。
【0087】
一部の実施形態では、NCAは、一般化学式LiNi1-x-yCoxAlyO2を有し、式中、1-x-y、x、およびyはそれぞれ0よりも大きい。特定の実施形態では、0<x≦0.2、より詳細には0.01≦x≦0.2、0.1≦x≦0.2であり、そして0<y≦0.2、より詳細には0.01≦y≦0.2、0.1≦y≦0.2である。より特定の実施形態では、0.6≦(1-x-y)≦0.99、より詳細には0.6≦(1-x-y)≦0.9、0.6≦(1-x-y)≦0.8、0.6≦(1-x-y)≦0.7である。
【0088】
一部の実施形態では、NCAは、一般化学式LiNi1-x-yCoxAlyO2を有し、1-x-yは、Niが、Ni、Co、およびAlの全重量の少なくとも50wt%の量で、例えば50wt%から約99wt%の間、50wt%から約95wt%の間、50wt%から約90wt%の間、50wt%から約85wt%の間、約50wt%から約80wt%の間、50wt%から約75wt%の間、50wt%から約70wt%の間、50wt%から約65wt%の間、50wt%から約60wt%の間、または50wt%から約55wt%の間の量で存在するようなものである。一部の実施形態では、1-x-yは、Niが、Ni、Co、およびAlの全重量の少なくとも80wt%の量で、例えば80wt%から約99wt%の間、80wt%から約95wt%の間、80wt%から約90wt%の間、または80wt%から約85wt%の間の量で存在するようなものである。
【0089】
一部の実施形態では、NMCAは、一般式LiNi1-x-y-zMnxCoyAlzO2を有し、式中、1-x-y-z、x、y、およびzはそれぞれ0よりも大きい。特定の実施形態では、0<x≦0.2、より詳細には0.01≦x≦0.2、0.1≦x≦0.2であり、0<y≦0.2、より詳細には0.01≦y≦0.2、0.1≦y≦0.2であり、そして0<z≦0.2、より詳細には0.01≦z≦0.2、0.1≦z≦0.2である。より特定の実施形態では、0.4≦(1-x-y-z)≦0.99、より詳細には0.4≦(1-x-y)≦0.9、0.4≦(1-x-y)≦0.8、0.4≦(1-x-y)≦0.7である。
【0090】
一部の実施形態では、NMCAは一般化学式LiNi1-x-y-zMnxCoyAlzO2を有し、式中、1-x-y-zは、Niが、Ni、Mn、Co、およびAlの全重量の少なくとも50wt%の量で、例えば50wt%から約99wt%の間、50wt%から約95wt%の間、50wt%から約90wt%の間、50wt%から約85wt%の間、約50wt%から約80wt%の間、50wt%から約75wt%の間、50wt%から約70wt%の間、50wt%から約65wt%の間、50wt%から約60wt%の間、または50wt%から約55wt%の間の量で存在するようなものである。一部の実施形態では、1-x-y-zは、Niが、Ni、Mn、Co、およびAlの全重量の少なくとも80wt%の量で、例えば80wt%から約99wt%の間、80wt%から約95wt%の間、80wt%から約90wt%の間、または80wt%から約85wt%の間で存在するようなものである。
【0091】
一部の実施形態では、LFPは、一般化学式LiFePO4を有する。
【0092】
リチウム金属リン酸塩カソード活物質50aは、LMFPを含んでいてもよい。一部の実施形態では、これらの材料は、一般化学式LiMnxFe1-xPO4を有し、式中、0.01≦x≦0.95である。
【0093】
より特定の実施形態では、0.01≦x≦0.5、0.01≦x≦0.4、0.01≦x≦0.3、0.01≦x≦0.25、0.01≦x≦0.2、0.01≦x≦0.15、0.01≦x≦0.10、0.01≦x≦0.05、0.05≦x≦0.95、0.05≦x≦0.5、0.05≦x≦0.4、0.05≦x≦0.3、0.05≦x≦0.25、0.05≦x≦0.2、0.05≦x≦0.15、0.05≦x≦0.1、0.1≦x≦0.95、0.1≦x≦0.5、0.1≦x≦0.4、0.1≦x≦0.3、0.1≦x≦0.25、0.1≦x≦0.2、0.1≦x≦0.15、0.15≦x≦0.95、0.15≦x≦0.5、0.15≦x≦0.4、0.15≦x≦0.3、0.15≦x≦0.25、0.15≦x≦0.2、0.2≦x≦0.95、0.2≦x≦0.5、0.2≦x≦0.4、0.2≦x≦0.3、または0.2≦x≦0.25である。より特定の実施形態では、材料は、化学式LiMn0.2Fe0.8PO4を有する。
【0094】
他のより特定の実施形態では、0.5≦x≦0.95、0.5≦x≦0.8、0.5≦x≦0.7、0.5≦x≦0.6、0.6≦x≦0.95、0.6≦x≦0.8、0.6≦x≦0.7、0.7≦x≦0.95、0.7≦x≦0.8、または0.8≦x≦0.95である。より特定の実施形態では、材料は、化学式LiMn0.5Fe0.5PO4およびLiMn0.8Fe0.2PO4を有する。
【0095】
リチウム金属リン酸塩カソード活物質50aは、LMNFPを含んでいてもよい。一部の実施形態では、これらの材料は、一般化学式LiMnxNiyFe1-(x+y)PO4を有し、式中、0<x<1、0<y<1、およびx+y<1である。一部の特定の実施形態では、
a) 0<x≦0.05、より特には0.005≦x≦0.05、0.005≦x≦0.04、0.005≦x≦0.03、0.005≦x≦0.02、0.01≦x≦0.05、0.01≦x≦0.04、0.01≦x≦0.03、0.01≦x≦0.02、0.02≦x≦0.05、0.02≦x≦0.04、0.02≦x≦0.03、0.03≦x≦0.05、03、0.03≦x≦0.04、もしくは0.04≦x≦0.05であり;
b) 0<y≦0.3、より特には0.005≦y≦0.3、0.005≦y≦0.25、0.005≦y≦0.2、0.005≦y≦0.16、0.005≦y≦0.15、0.005≦y≦0.1、0.005≦y≦0.05、0.005≦y≦0.01、0.01≦y≦0.3、0.01≦y≦0.25、0.01≦y≦0.2、0.01≦y≦0.16、0.01≦y≦0.15、0.01≦y≦0.1、0.01≦y≦0.05、0.05≦y≦0.3、0.05≦y≦0.25、0.05≦y≦0.2、0.05≦y≦0.16、0.05≦y≦0.15、0.05≦y≦0.1、0.1≦y≦0.3、0.1≦y≦0.25、0.1≦y≦0.2、0.1≦y≦0.16、0.1≦y≦0.15、0.15≦y≦0.3、0.15≦y≦0.25、0.15≦y≦0.2、0.15≦y≦0.16、0.16≦y≦0.3、0.16≦y≦0.25、0.16≦y≦0.2、0.2≦y≦0.3、0.2≦y≦0.25、もしくは0.25≦y≦0.3であり;または
c) 0<x+y≦0.3、より特には0.005≦x+y≦0.3、0.005≦x+y≦0.25、0.005≦x+y≦0.2、0.005≦x+y≦0.15、0.005≦x+y≦0.1、0.005≦x+y≦0.05、0.005≦x+y≦0.01、0.01≦x+y≦0.3、0.01≦x+y≦0.25、0.01≦x+y≦0.2、0.01≦x+y≦0.15、0.01≦x+y≦0.1、0.01≦x+y≦0.05、0.05≦x+y≦0.3、0.05≦x+y≦0.25、0.05≦x+y≦0.2、0.05≦x+y≦0.15、0.05≦x+y≦0.1、0.1≦x+y≦0.3、0.1≦x+y≦0.25、0.1≦x+y≦0.2、0.1≦x+y≦0.15、0.15≦x+y≦0.3、0.15≦x+y≦0.25、0.15≦x+y≦0.2、0.2≦x+y≦0.3、0.2≦x+y≦0.25、もしくは0.25≦x+y≦0.3である。
【0096】
任意の実施形態では、特にa)、b)、またはc)の場合、x:yの比は、5:1から1:5の間、より特には5:1から1:3の間、5:1から1:1、5:1から3:1、3:1から1:5、3:1から1:3、3:1から1:1、1:1から1:5、1:1から1:3、1:3から1:5の範囲にあり得る。
【0097】
より特定の実施形態では、x:yの比は、1:2から1:5の間、より特には1:2から1:4の間、1:2から1:3、1:3から1:5、1:3から1:4、または1:4から1:5の範囲にあり得る。
【0098】
他のより特定の実施形態では、x:yの比は、5:1から1:2の間、より特には5:1から1:1の間、4:1から1:2、4:1から1:1、3:1から1:2、3:1から1:1、2:1から1:2、および2:1から1:1の範囲にあり得る。
【0099】
より特定の実施形態では、材料は、化学式LiMn0.04Ni0.16Fe0.8PO4を有する。
【0100】
一部の実施形態では、LFCPは、一般化学式LiFe1-xCoxPO4を有し、式中、0<x<1である。一部の特定の実施形態では、x≧0.05、x≧0.1、x≧0.2、x≧0.3、x≧0.4、x≧0.5、x≧0.6、x≧0.7、x≧0.8、x≧0.9、またはx≧0.95である。
【0101】
一部の実施形態では、LFMCPは、一般化学式LiFe1-(x+y)MnxCoyPO4を有し、式中、0<x<1、0<y<1、およびx+y<1である。一部の特定の実施形態では、a)0<x≦0.5、より特には0.05≦x≦0.50、0.05≦x≦0.25、0.05≦x≦0.2、0.05≦x≦0.15、0.05≦x≦0.1、0.1≦x≦0.5、0.1≦x≦0.25、0.1≦x≦0.2、もしくは0.1≦x≦0.15であり;b)0<y≦0.95、より特には0.05≦y≦0.95、0.05≦y≦0.9、0.05≦y≦0.75、0.05≦y≦0.5、0.05≦y≦0.25、0.05≦y≦0.1、0.1≦y≦0.95、0.1≦y≦0.9、0.1≦y≦0.75、0.1≦y≦0.5、もしくは0.1≦y≦0.25であり;またはc)0<x+y≦0.95、より特には0.05≦x+y≦0.95、0.05≦x+y≦0.75、0.05≦x+y≦0.5、0.05≦x+y≦0.25、0.05≦x+y≦0.1、0.1≦x+y≦0.95、0.1≦x+y≦0.9、0.1≦x+y≦0.75、0.1≦x+y≦0.5、もしくは0.1≦x+y≦0.25である。
【0102】
任意の実施形態では、特にa)、b)、またはc)の場合、x:yの比は、5:1から1:5の間、より特には5:1から1:3の間、5:1から1:1、5:1から3:1、3:1から1:5、3:1から1:3、3:1から1:1、1:1から1:5、1:1から1:3、1:3から1:5の範囲にあり得る。
【0103】
より特定の実施形態では、x:yの比は、1:2から1:5の間、より特には1:2から1:4の間、1:2から1:3、1:3から1:5、1:3から1:4、または1:4から1:5の範囲にあり得る。
【0104】
他のより特定の実施形態では、x:yの比は、5:1から1:2の間、より特には5:1から1:1の間、4:1から1:2、4:1から1:1、3:1から1:2、3:1から1:1、2:1から1:2、および2:1から1:1の範囲にあり得る。
【0105】
より特定の実施形態では、材料は、化学式LiMn0.04Ni0.16Fe0.8PO4を有する。
【0106】
一部の実施形態では、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルアルミニウム酸化物、NMC、NCA、NMCA、LFP、LMFP、LMNFP、LFCP、またはLFMCPは、それらの結晶構造に含まれる追加の元素を含んでいてもよい。これらの追加の元素は、カソード活物質の導電率および/またはリチウムイオン吸蔵に影響を及ぼし得る。追加の元素は、結晶構造内で置き換わる元素の電荷状態に等しい電荷状態を有していてもよくまたはそのような電荷状態で存在することが可能であってもよい。例えば鉄は、2+または3+の電荷状態で存在し得る別の元素と置き換えられてもよい。追加の元素はまた、電気化学反応中に1つの電荷から別の電荷に移動することが可能な遷移金属であってもよく、または固定原子価物質、例えば、鉄を置き換える固定原子価2+金属であってもよい。リンも、硫黄またはケイ素が存在する場合にはそれらと置き換えられてもよい。別の金属により置き換えられる遷移金属の量は、10%、5%、2%、1%、0.5%、または0.1%、もしくはそれよりも少なくてもよく、あるいは0.1%から10%、0.1%から5%、0.1%から2%、0.1%から1%、0.1%から0.5%、0.5%から5%、0.5%から2%、0.5%から1%、1%から5%、1%から2%、または2%から5%の範囲にあってもよい。
【0107】
一部の実施形態では、リチウムコバルト酸化物、リチウニッケルアルミニウム酸化物、NMC、NCA、NMCA、LFP、LMFP、LMNFP、LFCP、またはLFMCPは、セル10がサイクル動作していないとき、部分的に非リチウム化され得る。特定の実施形態では、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルアルミニウム酸化物、NMC、NCA、NMCA、LFP、LMFP、LMNFP、LFCP、またはLFMCPは、リチウムを、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルアルミニウム酸化物、NMC、NCA、NMCA、LFP、LMFP、LMNFP、LFCP、またはLFMCPの全重量の最大99%、最大95%、最大90%、最大85%、最大80%、最大50%、または最大20wt%の量で含有し得る。より特定の実施形態では、Liは、カソード活物質中に、約1wt%から約99wt%、約1wt%から約95wt%、約1wt%から約90wt%、約1wt%から約85wt%、約1wt%から約80wt%、約1wt%から約50wt%、約10wt%から約99wt%、約10wt%から約95wt%、約10wt%から約90wt%、約10wt%から約85wt%、約10wt%から約80wt%、約10wt%から約50wt%、約25wt%から約99wt%、約25wt%から約95wt%、約25wt%から約90wt%、約25wt%から約85wt%、約25wt%から約80wt%、約25wt%から約50wt%、約50wt%から約99wt%、約50wt%から約95wt%、約50wt%から約90wt%、約50wt%から約85wt%、約50wt%から約80wt%、約1wt%から約20wt%、約5wt%から約20wt%、約10wt%から約50wt%、または約15wt%から約20wt%の間の量で存在し得る。そのような実施形態では、アノードは、リチウムイオンまたはリチウム金属を含有していなくてもよい。このことは、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルアルミニウム酸化物、NMC、NCA、NMCA、LFP、LMFP、LMNFP、LFCP、またはLFMCPの全てが、セルが完全に放電されたときであっても、通常は完全にはリチウム化されていないセルをもたらす。
【0108】
リチウム化合物は、Fなどのハロゲン化物を含んでいてもよく、またはリチウム化合物材料は、金属フッ化物のような無機フッ化物組成物などの無機ハロゲン化物組成物がドープされていてもよい。
【0109】
カソード活物質50は、例えば金属フッ化物のような無機フッ化物組成物などの無機ハロゲン化物組成物、または炭素などの伝導度向上剤で被覆されていてもよい。
【0110】
より特定の実施形態では、金属フッ化物は、LiF、ZnF2、AlF3、およびこれらの任意の組合せであり得る。AlF3は、その妥当なコストおよび環境への低い悪影響に起因して、特に有用であり得る。
【0111】
さらに他の実施形態では、カソード活物質含有層30は、この測定の目的で、任意のコーティングまたはドーパントを含む少なくとも90wt%のカソード活性化材料50を含んでいてもよい。より詳細には、カソード層30は、約90wt%から約99wt%、約90wt%から約98wt%、約90wt%から約97wt%、約90wt%から約96wt%、または約90wt%から約95wt%の間のカソード活物質50を含んでいてもよい。
【0112】
カソード活物質含有層30は、ポリマー結合剤および伝導度向上剤ならびにこれらの組合せなどの、追加の材料を含有していてもよい。
【0113】
適切な伝導度向上剤は、炭素繊維、例えば気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノロッド、黒鉛、もしくはカーボンブラック、例えばアセチレンブラック、Denkaブラック、Keitjenブラック、硬質炭素、銀/金ナノワイヤもしくは粒子、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0114】
一部の実施形態では、アノードは、伝導度向上剤、ポリマー結合剤、またはその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0115】
適切な伝導度向上剤は、炭素繊維、例えば気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノロッド、黒鉛、もしくはカーボンブラック、例えばアセチレンブラック、Denkaブラック、Keitjenブラック、硬質炭素、銀/金ナノワイヤもしくは粒子、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0116】
一部の実施形態では、ポリマー結合剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、エチレン-(プロピレン-ジエンモノマー)コポリマー(EPDM)、水溶性結合剤、例えば合成ゴム、特にスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエンゴム/カルボキシルメチル-セルロース(SBR/CMC)、アルギン酸ナトリウム、またはアクリル酸ナトリウム、シリコーン、伝導性ポリマー、ならびにこれらの任意の混合物およびコポリマーを含み得る。伝導性ポリマーは、ポリ(3,4)エチレンジオキサンチオフェン(PEDOT)、ポリ-スチレンスルホネート(PSS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ならびにこれらの任意の混合物およびコポリマーを含み得る。
【0117】
より特定の実施形態では、ポリマー結合剤は、約200原子質量単位(AMU)またはそれよりも大きい分子量を有し得る。より詳細には、ポリマー結合剤は、200AMUよりも高い分子量を有し得る。
【0118】
一部の実施形態では、カソード活物質含有層30は、5wt%またはそれよりも少ない伝導度向上剤を含んでいてもよい。より詳細には、カソード活物質含有層30は、約1wt%から約5wt%の間、約2wt%から約5wt%の間、約1wt%から約4wt%、約2wt%から約4wt%、または約3wt%から約4wt%の伝導度向上剤を含んでいてもよい。
【0119】
適切なポリマー結合剤は、カソード活物質を、カソード集電体40などのカソード20のその他の構成要素に接着する結合剤を含む。一部の実施形態では、ポリマー結合剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、エチレン-(プロピレン-ジエンモノマー)コポリマー(EPDM)、水溶性結合剤、例えば合成ゴム、特にスチレン-ブタジエンゴム/カルボキシルメチル-セルロース(SBR/CMC)、アルギン酸ナトリウム、またはアクリル酸ナトリウム、ならびにこれらの任意の混合物およびコポリマーを含み得る。
【0120】
一部の実施形態では、カソード活物質含有層30は、6wt%またはそれよりも少ないポリマー結合剤を含み得る。より詳細には、カソード活物質含有層30は、約1wt%から約6wt%の間、約2wt%から約6wt%の間、約1wt%から約5wt%、約2wt%から約5wt%、または約3wt%から約5wt%のポリマー結合剤を含み得る。
【0121】
カソード20は、金属箔、金属グリッド、金属スクリーン、金属フォーム、もしくはエキスパンドメタル(実質的な量のカソード活物質を内部に収集させるのに十分な厚さを有する金属グリッドまたは金属スクリーンである)、または少なくとも1つのグラフェン層、典型的には複数のグラフェン層などの、任意の適切な導電性材料であり得るカソード集電体40も含む。一部の実施形態では、カソード集電体40は、Al、Ni、Ti、C、ステンレス鋼、またはこれらの任意の組合せを含み得る。特定の実施形態では、カソード集電体40は、アルミニウム、より詳細にはアルミ箔である。一部の実施形態では、集電体が金属を含むまたは金属である場合、集電体は、TiNなどの伝導性および耐腐食性コーティングをさらに含んでいてもよい。
【0122】
一部の実施形態では、示されないが、カソード活物質含有層30がカソード集電体の両面に形成されてもよい。
【0123】
電解質
電解質100は、液体、ゲル、または固体電解質であり得る。
【0124】
電解質100は、電気化学セル10のサイクル動作電圧で実質的に分解しない任意の電解質を含み得る。
【0125】
電解質100は、イオン液体、有機液体、またはこれらの組合せを含み得る。イオン性液体または有機液体がリチウムイオンを供給しない場合、電解質100はリチウム塩を含んでいてもよい。より特定の実施形態では、電解質100は、難燃剤を含んでいてもよい。
【0126】
一部の実施形態では、電解質100は、有機液体、イオン性液体、またはこれらの任意の組合せなど、任意の有機材料であり得る。有機液体がリチウムイオンを供給しない場合、電解質100はリチウム塩も含む。より特定の実施形態では、電解質100は、セル10内での気体創出を低減させるもしくは防止する添加剤、マンガン溶解を低減させるもしくは防止する添加剤、または不動態層を特にアノード上に形成する添加剤、またはそのような添加剤の任意の組合せなどの、添加剤を含んでいてもよい。
【0127】
一部の実施形態では、有機液体は、
エーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,6-ジメチルテトラフドロフラン、テトラヒドロピラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、または1,3-ジオキソラン;
炭酸エステル、例えば炭酸ジメチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、または炭酸メチルフェニル;
環状炭酸エステル、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン2,3-ジメチル、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、または炭酸エチレン2-ビニル;
炭酸フッ素化エチレン;
脂肪族カルボン酸エステル、例えばギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、または酢酸アミル;
芳香族カルボン酸エステル、例えば安息香酸メチル、または安息香酸エチル;
カルボン酸エステル、例えばγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、または5-バレロラクトン;
リン酸エステル、例えばリン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、またはリン酸トリエチル;
ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2-メチルグルタロニトリル、バレロニトリル、ブチロニロリル、またはイソブチロニロリル;
アミド、例えばN-メチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、N-メチルピロリドン、またはN-ビニルピロリドン;
硫黄系化合物、例えばジメチルスルトン、メチルエチルスルトン、ジエチルスルトン、スルホラン、3-メチルスルホラン、または2,4-ジメチルスルホラン;
アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、またはエチレングリコールモノエチルエーテル;
スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、またはジエチルスルホキシド;
芳香族ニトリル、例えばベンゾニトリルまたはトルニトリル;
ニトロメタン;
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;
1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ2(1,H)-ピリミジノン;
3-メチル-2-オキサゾリジノン;あるいはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0128】
一部のより特定の実施形態では、有機液体は、炭酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、カルボン酸エステル、エーテル、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0129】
一部の実施形態では、気体創出を低減させるまたは防止する添加剤は、炭酸ビニレン(VC)、ポリ(メタクリル酸エチル)(PEMA)、ポリエチルフェニルエチルマロンアミド(PEMAO)、Li2Co3、およびこれらの任意の組合せを含み得る。
【0130】
一部の実施形態では、不動態層を形成する添加剤は、VC、例えば炭酸フルオロエチレン(FEC)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(スチレンスルホネート)(PSS)、ポリアクリル酸ビニル(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、およびこれらの任意の組合せを含み得る。
【0131】
一部の実施形態では、Mn溶解を低減させるまたは防止する添加剤は、VC、FEC、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0132】
一部の実施形態では、電解質100は、別の添加剤、例えば無水物、プロパ-1-エン-1,3-スルトン(PES)、またはこれらの組合せを含み得る。
【0133】
電解質100は、任意のまたは全ての添加剤の任意の組合せを含み得る。
【0134】
より特定の実施形態では、添加剤の全重量は、全電解質重量の約5wt%またはそれよりも少なくてもよい。さらにより特定の実施形態では、添加剤の全重量は、約1wt%から約5wt%の間であってもよい。
【0135】
一部の実施形態では、リチウム塩は、LiPF
6、LiFSi、LiTFSI、KFSI、KTFSI、LiBF
4、CH
3COOLi、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li、CF
3COOLi、Li
2B
12F
12、LiBC
4O
8;
一般式R
1-SO
2-NLi-SO
2-R
2を持つ塩(式中、R
1およびR
2は独立して、F、CF
3、CHF
2、CH
2F、C
2HF
4、C
2H
2F
3、C
2H
3F
2、C
2F
5、C
3F
7、C
3H
2F
5、C
3H
4F
3、C
4F
9、C
4H
2F
7、C
4H
4F
5、C
5F
11、C
3F
5OCF
3、C
2F
4OCF
3、C
2H
2F
2OCF
3、またはCF
2OCF
3である);
一般式
【化1】
を持つ塩(式中、Rfは、F、CF
3、CHF
2、CH
2F、C
2HF
4、C
2H
2F
3、C
2H
3F
2、C
2F
5、C
3F
7、C
3H
2F
5、C
3H
4F
3、C
4F
9、C
4H
2F
7、C
4H
4F
5、C
5F
11、C
3F
5OCF
3、C
2F
4OCF
3、C
2H
2F
2OCF
3、またはCF
2OCF
3である);またはこれらの任意の組合せを含む。
【0136】
より特定の実施形態では、電解質100は、約0.5Mから約2Mの間のリチウム塩を含んでいてもよい。
【0137】
他の実施形態では、電解質100は、電解質リチウム塩としてヘキサフルオロリン酸リチウムを含有しない、化学組成物または化学組成物の混合物である。リチウムバッテリの電解質組成物中のヘキサフルオロリン酸リチウムの存在は、フッ化水素酸およびフッ化水素ガスの生成を促進させることが示されており、これらは共に、セルまたはバッテリの劣化の増大をもたらす可能性がある。本明細書に開示される電解質組成物の利点は、それらが、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有するがその他の点では類似している電解質と比較して、セルまたはバッテリでのフッ化水素酸およびフッ化水素ガスの生成を回避しまたは低下させることである。このことはバッテリの安全性を増大させ、サイクル寿命を延ばし得る。
【0138】
一部の実施形態では、イオン性液体は、20℃で液体である、任意のイオン性液体であり得る。より特定の実施形態では、イオン性液体は、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)、イミダゾリウム、リン酸ホスホニウム、チオリン酸ホスホニウム、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0139】
より特定の実施形態では、電解質100は、難燃剤も含んでいてもよい。
【0140】
一部の実施形態では、難燃剤は、パーフルオロカーボン、アルカン、エーテル、ケトン、1個もしくは複数個のアルキル基で置換されたアミン、またはこれらの任意の組合せを含む。より特定の実施形態では、難燃剤は、少なくとも60%フッ素化されていてもよい(即ち、個々の難燃剤分子の60%がフッ素化される)。
【0141】
一部の実施形態では、難燃剤は、一般式R’(C=O)R”を有するケトンを含み、式中、R’はパーフルオロアルキル基であり、R”はパーフルオロアルキル基またはアルキル基である。より詳細には、ケトンは、パーフルオロケトン、例えばドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンである。
【0142】
他の実施形態では、難燃剤は、一般式R’OR”を有するエーテルを含み、式中、R’はパーフルオロアルキル基であり、R”はパーフルオロアルキル基またはアルキル基である。より特定の実施形態では、エーテルは、分離されたヒドロフルオロエーテル、例えばメトキシ-ヘプタフルオロプロパン、メトキシ-ノナフルオロブタン、エトキシ-ノナフルオロブタン、パーフルオロヘキシルメチルエーテル、または2-トリフルオロメチル-3-エトキシドデコフルオロヘキサン(2-trifluoromethyl-3-ethoxydodecofluorohexane)である。
【0143】
一部の実施形態では、難燃剤はエーテルを含有せず、より詳細には、完全にまたは部分的にハロゲン化したエーテルを含有しない。
【0144】
一部の実施形態では、難燃剤は、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、またはパーフルオロ-n-ジブチルメチルアミンなどの、1個または複数個のパーフルオロアルキル基で置換されたアミンを含む。
【0145】
一部の実施形態では、難燃剤は、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、またはパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサンなどの、パーフルオロアルカンを含むことができる。
【0146】
一部の実施形態では、難燃剤は、環状ホスファゼン、より特にはシクロトリホスファゼンなどのホスファゼンを含む。より特定の実施形態では、環状ホスファゼンは、完全にまたは部分的にハロゲン化されている。さらに、より特定の実施形態では、環状ホスファゼンは、完全にまたは部分的にフッ素化されている。さらに他の実施形態では、追加としてまたは代替として、環状ホスファゼンは、直鎖状または環状アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびアリールオキシ基から選択される1個または複数個の置換基を有する。より特定の実施形態では、置換基は、ハロゲン化されていないか、完全にハロゲン化されているか、または部分的にハロゲン化されている。他のより特定の実施形態では、環状ホスファゼンは、ハロゲンで、および直鎖状または環状アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、およびアリールオキシ基などの置換基で、完全に置換されている。
【0147】
電極積層体
本開示は、アノード/セパレータ/カソード/アノード…が交互に配置された積層体など、積層体に配置構成された電極に関する。一部の実施形態では、「スロット電極」または「スロット電極積層体」とも呼ばれ得る、アコーディオン形状のセパレータによって創出されたスロット構造を有する電極積層体である。セパレータがアコーディオン形状に折り畳まれたとき、セパレータは、セパレータの交互に配置された面上にスロットを創出し、そこにはカソードおよびアノードが嵌め込まれて、各カソードまたは各アノードの両面にセパレータが存在するようになされる。それぞれがスロットの端部に位置付けられる、複数の停止点も、セパレータの折畳みによって形成される。これらの停止点は、電極積層体の組立てをより容易にする、または使用中に遥か遠くに電極の位置がシフトするのを防止するのを、助けることができる。
【0148】
一部の実施形態では、電極積層体は、カソード/セパレータ/アノードの交互に配置された層を含み得る。そのような積層体は、電気化学反応が生じることができない領域を創出する、エッジ効果を示す可能性があり、電極積層体を含有するセルまたはバッテリのエネルギー密度を低下させ、おそらくはデンドライト形成ももたらす。これを回避するため、積層体の端部を例えばレーザでカットオフして、より厳密な境界を実現し得る。一部の実施形態では、そのような切断を行うことから得られる傷は、それらが切断された後に境界で、電極積層体の電極の端部に金属を配置することによって修復され得る。一部の実施形態では、積層体の正のおよび負の端部に応じて、アルニウム金属が1つの切断縁に配置されてもよく、銅が、その他の切断縁に配置されてもよい。
【0149】
バッテリ
本開示のバッテリは、本明細書に開示される任意の高容量アノードまたは電気化学セルを含む。本開示のバッテリは、電気化学セル内に位置付けられたときには高容量アノードに、または本明細書に開示される電気化学セルに起因する、電気化学的性質のいずれかを示し得る。
【0150】
一部の実施形態では、バッテリは、ケーシング内の単純な電気化学セルであり得る。他の実施形態では、より複雑な電気化学セルまたは複数のセルを含んでいてもよい。例えば、一部の実施形態では、電極はセパレータによって分離されてもよく、次いで
図2に示されるようにケーシング内に巻かれてもよく、またはケーシング内に積層されてもよい(図示せず)。
【0151】
一部の実施形態では、バッテリのケーシングは、ポリマーフィルム、金属箔、金属缶、またはこれらの任意の組合せであり得る。一部の実施形態では、ケーシングはベントを含んでいてもよい。
【0152】
一部の実施形態では、そのように形成され得るバッテリは、コインもしくはボタンセルバッテリ、円筒状バッテリ、または角柱状セルバッテリ、またはパウチセルバッテリとすることができる。
【0153】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるバッテリは、高度な安全性を提供する活物質を含む。市販のリチウムイオンバッテリは、バッテリが発火する事象に起因して、安全性の懸念を抱えていた。比較的高いエネルギー容量を有する市販のバッテリとは対照的に、本明細書に記載されるバッテリは、市販のバッテリの対応する不安定性を共有せずしたがって著しく低い程度の熱暴走を示しまたは全く熱暴走を示さない、活物質に基づく。一部の実施形態では、本明細書に記載されるバッテリが加熱された場合、それらは発火するよう自発的に反応しない。比較的高いエネルギーの市販のリチウムイオンバッテリは熱暴走を示し、加熱されたセルは反応し、発火する。したがって本明細書に記載されるバッテリは、改善されたエネルギー容量を提供し得ると共に使用中の安全性の増大をもたらし得る。
【0154】
再充電可能なバッテリには、電話などの移動通信デバイス、モバイルエンターテイメントデバイス、ポータブルコンピュータ、広い用途が見出されたこれらのデバイスの組合せ、ならび自動車およびフォークリフトなどの輸送デバイスなど、ある範囲の用途がある。したがって本明細書に記載されるバッテリは、様々な商用形態で使用され得る。
【0155】
図2は、
図1に示される電気化学セル10の原理を使用して動作する、本開示の一部の実施形態による円筒状バッテリ200を示す。バッテリ200は、カソード活物質50をカソード集電体40の両面に有するカソード20と、同様にアノード活物質90をアノード集電体80の両面に有するアノード60の層が交互に配置されたゼリーロールを含む。セパレータ110の層は、カソード20とアノード60の各層の間にある。バッテリ200は、側部210、上部220、および底部230から形成されたケーシング250も含む。電解質(図示せず)は、ケーシング250により含まれる。
【0156】
一部の実施形態では、ケーシング250は、長さLおよび平均直径Dを有する。一部の実施形態では、長さLは、約2cmから約10cm、約3cmから約10cm、約4cmから約10cm、約4.4cmから約10cm、約4.45cmから約10cm、約5cmから約10cm、約5.05cmから約10cm、約6.5cmから約10cm、約2cmから約6.5cm、約4cmから約5.5cm、または約4.4cmから約5.05cmの間であり得、直径Dは、約1cmから約3.5cm、約1.05cmから約3.5cm、約1.45cmから約3.5cm、約1.5cmから約3.5cm、約1cmから約3cm、または約1cmから約2cmの間であり得、これらの範囲の長さおよび直径の任意の組合せにある。
【0157】
他の実施形態では、ケーシング250は、長さLおよび平均直径Dを有する。一部の実施形態では、長さLは、約1cmから約10cm、約5cmから約10cm、約5cmから約8cm、約5cmから約7cm、5cmから約20cm、約5cmから約15cm、約5cmから約10cm、5cmから約1m、約10cmから約1m、約20cmから約1m、または約50cmから約1mの間であり得、直径Dは、約1cmから約10cm、約2cmから約6cm、約2cmから約5cm、約2cmから約10cm、または約5cmから約10cmの間であり得、これらの範囲の長さおよび直径の任意の組合せにある。
【0158】
図3は、
図1に示される電気化学セル10の原理を使用して動作する、本開示の一部の実施形態による角柱状セルバッテリ300を示す。バッテリは、カソード集電体40を含むカソード20、アノード集電体80を含むアノード60、カソード20とアノード60との間にあるセパレータ110を含む。
図3は、簡略化のために1つのみのカソード20およびアノード60を示すが、カソードおよびアノードは、典型的には、それらの間にセパレータがある状態で交互に配置されるように積層される。カソードおよびアノードは、典型的にはそれぞれの集電体の両面に活物質も含む。
【0159】
角柱状セルバッテリ300は、金属パウチとして示されるケーシング310をさらに含む。
【0160】
角柱状セルバッテリ300は、金属パウチとして示されるケーシング310をさらに含む。角柱状セルバッテリ300は、約10cmから約1mの間、約10cmから約500cmの間、約10cmから約100cmの間、約25cmから約1mの間、約25cmから約500cmの間、約25cmから約100cmの間、約50cmから約1mの間、約50cmから約500cmの間、約50cmから約100cmの間、約100cmから約1mの間、または約100cmから約500cmの間であり得る長さL、約2cmから約20cm、約2cmから約10cm、約2cmから約5cm、約5cmから約20cm、または約5cmから約10cmの間であり得る幅W、および約2cmから約50cm、約2cmから約20cm、約2cmから約10cm、約5cmから約50cm、約5cmから約20cm、約5cmから約10cm、約10cmから約50cm、または約10cmから約20cmの間であり得る高さHを、これらの範囲の長さ、幅、および高さの任意の組合せで有し得る。
【0161】
図4は、
図3に例示されるものなどの、または
図3のものに類似するが積層されたカソードおよびアノードを備えた、角柱状セルバッテリ300の積層体420を含む、電気自動車用バッテリなどのバッテリモジュールまたはパック400を示す。積層体420は、ハウジング410内に包封されている。バッテリ300のそれぞれにおけるアノード集電体80およびカソード集電体40は、負のコネクタ430および正のコネクタ440にそれぞれ電気的に接続されている。電子150は、車両450に電力を送るため、または(図示しないが)AC壁コンセントなどのエネルギー源に接続されたときにバッテリ400を充電するために、負のコネクタ430と正のコネクタ440との間を流れてよい。
【0162】
バッテリ400はまた、安全装置450、制御装置460、または両方を含んでいてもよい。安全装置450および制御装置460はハウジング410内に位置付けられてもよく、または安全装置450もしくは制御装置460の全てもしくは部分がハウジング410外に位置付けられていてもよい。一部の実施形態では、安全装置450は、バッテリ300の1つが故障したまたは潜在的にもしくは実際に損傷を引きこした場合に損傷を最小限に抑える装置を含んでいてもよい。例えば安全装置450は、ファンまたは火炎抑制材料および送達システムを含んでいてもよい。一部の実施形態では、制御装置460は、プロセッサおよび関連メモリを含んでいてもよく、このプロセッサは、バッテリ400の1つまたは複数の機能を制御するように、関連メモリに記憶されたプログラムを実行することができるものである。プロセッサはまた、バッテリ400、車両470、またはバッテリ300に関する情報を受信し、そのような情報を使用してバッテリ400の1つまたは複数の機能を制御してもよい。
【0163】
本開示のバッテリは、小型エレクトロニクスとの使用にも適切であり得る。
【0164】
電極、セル、およびバッテリの作製方法
図8Aに示されるように、
図5Gで述べた構造を有するアノード60または類似の対応するアノード60は、
図6Aおよび7Aの一般構造を有し、不活性雰囲気520、およびヘキサン中1.7MのN-ブチルリチウムなどのリチウム塩溶液530を含む槽510を含む、リチウム化チャンバ500a内で形成され得る。非リチウム化アノード60をリチウム塩溶液530中に配置したとき、アノード活物質90はリチウム塩で被覆される。
【0165】
図8Bに示されるように、
図5A~5E、6A~6E、または7A~7Eで述べた構造を有するアノード60は、不活性雰囲気520、および溶融リチウム540(180℃よりも高く加熱されたリチウム金属)を含む槽510を含む、リチウム化チャンバ500bで形成され得る。非リチウム化アノード60が溶融リチウム540中に配置されたとき、リチウムは、アノード活物質90上に堆積される。
【0166】
上述の様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するよう組み合わせることができる。実施形態の態様は、上記詳細な記載に照らして改変することができる。一般に下記の特許請求の範囲では、使用される用語は、本明細書および特許請求の範囲で開示される特定の実施形態に特許請求の範囲を制限すると解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に全ての可能性ある実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって特許請求の範囲は、本開示によって制限されない。
【国際調査報告】