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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】腫瘍選択的がん治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/21 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241024BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241024BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C12N15/21
C12N15/24 ZNA
C12N15/26
C12N15/62 Z
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K48/00
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/21
A61P35/00
A61K47/68
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61P43/00 105
A61P37/04
A61K35/12
A61K35/76
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527196
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022079399
(87)【国際公開番号】W WO2023081885
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,879
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524171611
【氏名又は名称】カーナル バイオロジクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドラギ,モニア
(72)【発明者】
【氏名】クリスマス,ルディ
(72)【発明者】
【氏名】オズデミル,カフェル
(72)【発明者】
【氏名】イルマズ,ブラク
(72)【発明者】
【氏名】エルクル,ユスフ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス,マンフレッド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC29
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA13
4C084AA19
4C084DA01
4C084DA12
4C084DA14
4C084DA21
4C084DA22
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C087AA01
4C087BB65
4C087BC83
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
【解決手段】
本開示は、がんの処置を達成するための技術を提供する。本開示は、治療的関心の高いペイロードをコードするために使用することができる腫瘍選択的構築物設計を使用するがんの処置のための方法および組成物を提供する。本開示は、免疫チェックポイント療法と組み合わせた本開示の操作された核酸が、がんに罹患している個体の処置が特異な利点を提供することを認識する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの治療剤をコードする少なくとも1つの操作された核酸を含む組成物であって、前記少なくとも1つの操作された核酸が、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾を含む、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの治療剤が、少なくとも1つのサイトカインを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのサイトカインが、少なくとも1つのインターロイキンまたは少なくとも1つのインターフェロンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのサイトカインが、少なくとも1つのインターロイキンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのサイトカインが、少なくとも1つのインターフェロンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのサイトカインが、少なくとも1つのインターロイキンおよび少なくとも1つのインターフェロンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのサイトカインが、IL-2およびIFNαを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのサイトカインが、IL-2、IL-12、IL-15、またはIFNαを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのサイトカインが、IL-2、IL-12、IL-15、およびIFNαを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのサイトカインが修飾サイトカインを含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記修飾サイトカインが、分泌型サイトカイン、膜係留サイトカイン、マスクされたサイトカイン、サイトカイン融合、またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記サイトカイン融合が、抗体またはその断片にカップリングしたサイトカインを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記サイトカイン融合が、前記抗体またはその断片のFc領域にカップリングしたサイトカインを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの追加の活性成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの追加の活性成分が、免疫チェックポイント阻害剤を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、GITR、OX40、LAG-3、KIR、TIM-3、TIGIT、BTLA、CBLB、CISH、VISTA、B7-H3、CSF-1R、GITR CD28、CD40、CD137、またはそれらの組合せを標的化する1つ以上の薬剤を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カメリズマブ、カビラリズマブ、ドスタリマブ、シンチルマブ、チセリウムマブ、またはトリパリマブのうちの1つ以上を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの追加の活性成分が、腫瘍溶解性mRNAを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記腫瘍溶解性mRNAが、構成的に活性なGasdermin Dをコードする、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記腫瘍溶解性mRNAが、構成的に活性なRIPK3をコードする、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1つの操作された核酸を脂質と接触させることを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記脂質が脂質ナノ粒子(LNP)を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1つの腫瘍選択的修飾が、腫瘍選択的配列モチーフを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記腫瘍選択的配列モチーフが、配列番号41~110のいずれか1つの核酸配列を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記腫瘍選択的配列モチーフが、配列番号41~110のいずれか1つの組合せを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記操作された核酸が、自殺タンパク質、細胞表面抗原、抗体剤、毒素、サイトカイン、遺伝子修飾タンパク質、またはウイルス複製タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記オープンリーディングフレームが自殺タンパク質をコードする、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記自殺タンパク質がネクロトーシスを誘導する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記少なくとも1つの操作された核酸が、少なくとも1つのメッセンジャーRNA(mRNA)をコードする、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1つの操作された核酸がmRNAを含む、請求項1~28に記載の組成物。
【請求項31】
前記少なくとも1つの操作された核酸が、低減された免疫原性を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
少なくとも1つの腫瘍選択的修飾が、正常細胞における前記少なくとも1つの治療剤の発現と比較して、がん細胞における前記少なくとも1つの治療剤の発現を増加させる、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
少なくとも1つの腫瘍選択的修飾は、細胞における前記少なくとも1つの治療剤の発現と比較して、がん細胞における前記少なくとも1つの治療剤の発現を増加させない、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載の少なくとも1つの操作された核酸をコードするベクター。
【請求項35】
請求項34に記載のベクターまたは請求項1~34のいずれか一項に記載の前記少なくとも1つの操作された核酸を含む細胞。
【請求項36】
自己細胞または同種異系細胞を含む、請求項35に記載の細胞。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか一項に記載の操作された核酸と、少なくとも1つの担体、賦形剤、または希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項38】
前記医薬組成物が、腫瘍内、髄腔内、眼内、硝子体内、網膜内、静脈内、筋肉内、脳室内、脳内、小脳内、脳室内、実質内、皮下、腫瘍内、肺内、気管内、腹腔内、膀胱内、膣内、直腸内、経口、舌下、経皮、またはそれらの組合せで投与するために製剤化される、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記医薬組成物が、疾患または疾病を処置するためのものである、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記疾患または疾病が固形腫瘍を含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記疾患または疾病が、がんを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記がんが、黒色腫、乳がん、基底細胞がん(BCC)、扁平上皮がん(SCC)、皮膚SCC(CSCCまたはCSCC)、頭頸部がん、甲状腺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、腎細胞がん、脳腫瘍、悪性軟部腫瘍、肺がん、またはそれらの組合せを含む、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか一項に記載の少なくとも操作された核酸を対象に投与する方法であって、前記方法は、請求項1~42のいずれか一項に記載の前記少なくとも1つの操作された核酸、請求項34に記載のベクター、請求項35もしくは36に記載の細胞、または請求項37~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項44】
対象における疾患または疾病を処置するための方法であって、前記方法は、請求項1~43のいずれか一項に記載の少なくとも操作された核酸を対象に投与する工程を含み、前記疾患または疾病を処置するために、請求項1~43のいずれか一項に記載の少なくとも操作された核酸、請求項34に記載のベクター、請求項35もしくは36に記載の細胞、または請求項37~42のいずれか一項に記載の医薬組成物の少なくとも操作された核酸を、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項45】
対象における疾患または疾病を処置するための方法であって、前記方法は、前記対象に、少なくとも1つの操作された核酸を投与する工程を含み、前記少なくとも1つの操作された核酸は、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾を含み、および少なくとも1つの治療剤をコードする、方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの治療剤が、少なくとも1つのサイトカインを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つのサイトカインが、少なくとも1つのインターロイキンまたは少なくとも1つのインターフェロンを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つのサイトカインが、少なくとも1つのインターロイキンおよび少なくとも1つのインターフェロンを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1つのサイトカインが、IL-2およびIFNαを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つのサイトカインが、IL-2、IL-12、IL-15、またはIFNαを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つのサイトカインが、IL-2、IL-12、IL-15、およびIFNαを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記疾患または疾病が固形腫瘍を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記疾患または疾病が、がんを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記がんが、黒色腫、乳がん、基底細胞がん(BCC)、扁平上皮がん(SCC)、皮膚SCC(CSCCまたはCSCC)、頭頸部がん、甲状腺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、腎細胞がん、脳腫瘍、悪性軟部腫瘍、肺がん、またはそれらの組合せを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記がんが免疫チェックポイント阻害剤治療に応答しない、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1つの腫瘍選択的修飾が、腫瘍選択的配列モチーフを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの腫瘍選択的修飾が、細胞における前記少なくとも1つの治療剤の発現と比較して、がん細胞における前記少なくとも1つの治療剤の発現を増加させる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記少なくとも1つの腫瘍選択的修飾は、細胞における前記少なくとも1つの治療剤の発現と比較して、がん細胞における前記少なくとも1つの治療剤の発現を増加させない、請求項56に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年11月8日に出願された米国仮出願番号第63/276,879号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
がんの処置については、改善された治療法を開発する必要がある。がん細胞を特異的に標的化するように調整された治療は、固有の処置選択肢の機会を提供し得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、がんの処置のための組成物および方法を提供する。本開示は、操作された核酸と免疫チェックポイント阻害剤との組合せを提供することによって、がんに罹患している対象の処置が改善され得るという発見を包含する。
【0004】
治療目的の核酸の送達は、急成長している強力な分野である。特に翻訳可能なRNA分子(例えばmRNA)を含む核酸の安定化および/または効果的な送達のための技術に関しても、最近この分野で著しい進展があった。本開示は、操作された核酸および免疫チェックポイント阻害剤を組合せた治療が、大きな利益および相乗作用を提供し得ることを認識する。いくつかの実施形態では、本開示は、操作された核酸と免疫チェックポイント阻害剤とを組合せた治療が、免疫チェックポイント阻害剤耐性がんを免疫チェックポイント阻害剤に対して感作し得ることを認識する。
【0005】
本明細書には、いくつかの態様では、少なくとも1つの治療剤をコードする少なくとも1つの操作された核酸を含む組成物が記載され、少なくとも1つの操作された核酸は、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの治療剤は、少なくとも1つのサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、少なくとも1つのインターロイキンまたは少なくとも1つのインターフェロンを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、少なくとも1つのインターロイキンを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、少なくとも1つのインターフェロンを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、少なくとも1つのインターロイキンおよび少なくとも1つのインターフェロンを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、IL-2およびIFNαを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、またはIFNαを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、およびIFNαを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは修飾サイトカインを含む。いくつかの実施形態では、修飾サイトカインは、分泌型サイトカイン、膜係留サイトカイン(membrane tethered cytokine)、マスクされたサイトカイン(maksed cytokine)、サイトカイン融合、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン融合は、抗体またはその断片にカップリングしたサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン融合は、抗体またはその断片のFc領域にカップリングしたサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの追加の活性成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の活性成分は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、GITR、OX40、LAG-3、KIR、TIM-3、TIGIT、BTLA、CBLB、CISH、VISTA、B7-H3、CSF-1R、GITR CD28、CD40、CD137、またはそれらの組合せを標的化する1つ以上の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カメリズマブ、カビラリズマブ、ドスタリマブ、シンチルマブ、チセリウムマブ、またはトリパリマブのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の活性成分は腫瘍溶解性mRNAを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性mRNA(oncolytic mRNA)は、構成的に活性なGasdermin Dをコードする。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性mRNAは、構成的に活性なRIPK3をコードする。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの操作された核酸を脂質と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、脂質は脂質ナノ粒子(LNP)を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾は、腫瘍選択的配列モチーフ(oncoselective sequence motif)を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的配列モチーフは、配列番号41~110のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的配列モチーフは、配列番号41~110のいずれか1つの組合せを含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、自殺タンパク質、細胞表面抗原、抗体剤、毒素、サイトカイン、遺伝子修飾タンパク質、またはウイルス複製タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む。いくつかの実施形態では、オープンリーディングフレームは自殺タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、自殺タンパク質はネクロトーシスを誘導する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの操作された核酸は、少なくとも1つのメッセンジャーRNA(mRNA)をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの操作された核酸は、mRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの操作された核酸は、低減された免疫原性を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾は、正常細胞における少なくとも1つの治療剤の発現と比較して、がん細胞における少なくとも1つの治療剤の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾は、細胞における少なくとも1つの治療剤の発現と比較して、がん細胞における少なくとも1つの治療剤の発現を増加させない。
【0006】
本明細書には、いくつかの態様では、本明細書に記載される少なくとも1つの操作された核酸をコードするベクターが記載される。
【0007】
本明細書には、いくつかの態様では、本明細書に記載されるベクターまたは本明細書に記載される少なくとも1つの操作された核酸を含む細胞が記載される。いくつかの実施形態では、細胞は、自己細胞(autologous cell)または同種異系細胞(allogenic cell)を含む。
【0008】
本明細書には、いくつかの態様では、本明細書に記載される操作された核酸と、少なくとも1つの担体、賦形剤、または希釈剤とを含む医薬組成物が記載される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内、髄腔内、眼内、硝子体内、網膜内、静脈内、筋肉内、脳室内(intraventricularly)、脳内(intracerebrally)、小脳内(intracerebellarly)、脳室内(intracerebroventricularly)、実質内(intraperenchymally,)、皮下、腫瘍内、肺内、気管内、腹腔内、膀胱内、膣内、直腸内、経口、舌下、経皮、またはそれらの組合せで投与するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、疾患または疾病を処置するためのものである。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、疾患または疾病はがんを含む。いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、乳がん、基底細胞がん(BCC)、扁平上皮がん(SCC)、皮膚SCC(cSCCまたはCSCC)、頭頸部がん、甲状腺がん、結腸直腸がん(Colorectal Cancer)、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、腎細胞がん、脳腫瘍、悪性軟部腫瘍、肺がん、またはそれらの組合せを含む。
【0009】
本明細書には、いくつかの態様では、本明細書に記載される少なくとも1つの操作された核酸、本明細書に記載されるベクター、本明細書に記載される細胞、または本明細書に記載される医薬組成物を対象に投与する方法が含まれる。
【0010】
本明細書には、いくつかの態様では、対象における疾患または疾病を処置するための方法が記載され、該方法は、疾患または疾病を処置するために、本明細書に記載される少なくとも1つの操作された核酸、本明細書に記載されるベクター、本明細書に記載される細胞、または本明細書に記載される医薬組成物を対象に投与する工程を含む。
【0011】
本明細書には、いくつかの態様では、対象における疾患または疾病を処置するための方法が記載され、該方法は、対象に、少なくとも1つの操作された核酸を投与する工程を含み、上記少なくとも1つの操作された核酸は、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾を含み、少なくとも1つの治療剤をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの治療剤は、少なくとも1つのサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、少なくとも1つのインターロイキンまたは少なくとも1つのインターフェロンを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、少なくとも1つのインターロイキンおよび少なくとも1つのインターフェロンを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、IL-2およびIFNαを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、またはIFNαを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、およびIFNαを含む。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、がんを含む。いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、乳がん、基底細胞がん(BCC)、扁平上皮がん(SCC)、皮膚SCC(CSCCまたはCSCC)、頭頸部がん、甲状腺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、腎細胞がん、脳腫瘍、悪性軟部腫瘍、肺がん、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、がんは、免疫チェックポイント阻害剤治療に応答しない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾は、腫瘍選択的配列モチーフを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾は、細胞における少なくとも1つの治療剤の発現と比較して、がん細胞における少なくとも1つの治療剤の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾は、細胞における少なくとも1つの治療剤の発現と比較して、がん細胞における少なくとも1つの治療剤の発現を増加させない。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している対象を処置する方法が提供され、該方法は、対象に、1つ以上の操作された核酸および免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程を含み、上記操作された核酸が、腫瘍選択的翻訳配列要素(oncoselective translation sequence element)であるかまたはその相補体である配列要素を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸および免疫チェックポイント阻害剤は、続けて、同時に、または補助的に投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している対象を処置する方法が提供され、該対象は、第1の免疫チェックポイント阻害剤の投与を受けたことがあるか、または投与を受けており、該方法は、該対象に、1つ以上の操作された核酸および第2の免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程を含み、該操作された核酸は、腫瘍選択的翻訳配列要素であるかまたはその相補体である配列要素を含むヌクレオチド配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示の方法および組成物は、がんに罹患している対象の処置に有用である。いくつかの実施形態では、本開示の方法および組成物は、免疫チェックポイント阻害剤療法を受けたことがあるか、または受けている対象の処置に有用である。いくつかの実施形態では、本開示の対象は、免疫チェックポイント阻害剤療法に応答していないか、または不応性である。いくつかの実施形態では、対象は、免疫チェックポイント阻害剤療法後に再発している。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫チェックポイント阻害剤(例えば、第1または第2のいずれか)は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、GITR、OX40、LAG-3、KIR、TIM-3、TIGIT、BTLA、CBLB、CISH、VISTA、B7-H3、CSF-1R、GITR CD28、CD40、またはCD137を標的化する1つ以上の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カメリズマブ、カビラリズマブ、ドスタリマブ、シンチルマブ、チセリウムマブ、またはトリパリマブのうちの1つ以上を含む。
【0016】
本開示は、「腫瘍選択的(oncoselective)」または「がん細胞特異的(cancer cell specific)」として記載される多くの技術が、がんと非がんの文脈の間のわずかな識別しか達成しないことが多いことを評価している。例えば、Wroblewskaらは、細胞内のmiR-21レベルが高く、miR-141、miR-142(3p)およびmiR-146aレベルが低いときに活性化されるmRNA回路を用い、HEK293細胞と比較して、HeLa細胞において、およそ6倍高いin vitroでの殺細胞効果を得た(Nat Biotechnol.2015 Aug;33(8):839-41)。同様に、Jain et al.,2018(Nucleic Acid Ther.2018 Oct 1;28(5):285 96.)は、miR-122およびmiR-142の標的部位への挿入を用いて、肝臓および脾臓において、in vivoでのmRNA活性をそれぞれ89%および85%(約6~10倍の減少に対応する)低下させた。しかし、miRNA標的部位のかなりの部分が腫瘍内に注射された場合、挿入されたmRNAもまた、腫瘍浸潤免疫細胞を含む健常細胞によって取り込まれることが示された(Hewitt et al.,Sci Transl Med.2019 Jan 30;11(477))。免疫細胞におけるこの活性は、細胞死滅タンパク質をコードするmRNAの免疫腫瘍学的適用にとって非生産的であり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、翻訳が、好ましくはがん細胞において起こる場合、適切な比較可能な非がん細胞と比較して、翻訳が「腫瘍選択的(oncoselective)」であるとみなす。例えば、いくつかの実施形態では、翻訳は、適切な比較可能な非がん細胞と比較して、がん細胞(複数可)において少なくとも2倍高いことが観察される場合、腫瘍選択的であると見なされ得、いくつかの実施形態では、腫瘍選択的翻訳(oncoselective translation)は、適切に比較可能な非がん細胞と比較して、がん細胞において少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20倍以上高くなり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、腫瘍選択的翻訳は、腫瘍特異的であるとみなされ得る(例えば、翻訳が、適切な比較可能な非がん細胞において検出可能ではないが、関連するがん細胞において検出可能である場合)。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヌクレオチド配列が、腫瘍選択的翻訳配列要素である(またはその相補体である)配列要素を含む、操作された核酸を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるような腫瘍選択的翻訳配列要素を含み、および/またはそうでなければペイロード配列の腫瘍選択的翻訳を示す翻訳可能な核酸(例えば、RNA、具体的にはmRNA)である技術、または該核酸を送達する技術を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヌクレオチド配列が、腫瘍選択的翻訳配列要素であるか、またはその相補体である配列要素を含む、操作された核酸を提供する。いくつかの実施形態では、操作された核酸のヌクレオチド配列は、オープンリーディングフレームまたはその相補体を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的翻訳配列要素は、オープンリーディングフレーム内またはその上流の腫瘍選択的リードスルーモチーフであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、上流フランキング配列、終止コドン、および下流フランキング配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、VNNNNNNMNNMWK、NNNVWNNKGHHNH、DVHVNNNCWNNNB、MWBNNNNNNNNNN、WGNNSNHNHDNNN、VNNNNNNMNNMWK、またはVMNNWNKNNNNNNを含む群から選択される配列を含み、ここで、VはA、CまたはGを表し、MはAまたはCを表し、WはAまたはT/Uを表し、KはGまたはT/Uを表し、HはA、CまたはT/Uを表し、DはA、GまたはT/Uを表し、BはC、G、またはT/Uを表し、SはGまたはCを表し、Nは、リードスルー終止コドンおよび下流フランキング配列の最初の14ヌクレオチドに及ぶ領域内の任意のヌクレオチドを表す。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、下流側フランキング配列の最初の50ヌクレオチド内に位置するステムループ、バルジループ、プソイドノット、またはそれらの組合せ、および好ましくは停止コドンおよび下流側フランキング配列の最初の16ヌクレオチド内に位置するこのステムループの一部、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、ステムループは、下流フランキング配列の最初の50ヌクレオチド内に20を超える塩基対ヌクレオチドを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、42%超、48%超、好ましくは54%超のGC含量を有する下流フランキング配列を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、プロリン残基をコードするコドンを含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸のオープンリーディングフレームは、自殺タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、低減された免疫原性を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示は、その配列がオープンリーディングフレームまたはその相補体を含む核酸を含み、その前、またはその中に、腫瘍選択的リードスルーモチーフが操作され、このオープンリーディングフレームは、自殺タンパク質、細胞表面抗原、抗体剤、毒素、遺伝子修飾タンパク質、またはウイルス複製タンパク質からなる群から選択されるペイロードタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、本開示は、そのヌクレオチド配列が、腫瘍選択的翻訳配列要素であるか、またはその相補体である配列要素を含む、操作された核酸を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物はナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、医薬組成物の投与がRNAを細胞に送達するように細胞内で発現される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象におけるがんを処置する方法を提供し、該方法は、そのヌクレオチド配列が、腫瘍選択的翻訳配列要素であるかもしくはその相補体である配列要素を含む、操作された核酸、または操作された核酸を含む医薬組成物を治療有効量で投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、処置対象のがんは発がん性リボソームを含む。いくつかの実施形態では、発がん性リボソームは、p53活性の喪失、RB活性の喪失、FBL過剰発現、またはリボソームタンパク質遺伝子のヘミ接合性喪失のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示は、リードスルーコンセンサス配列、高いG-C含量を有する配列、 プロリンをコードするコドン、 ステムループ、 バルジループ、 シュードノット、またはこれらの組合せを含む腫瘍選択的翻訳配列要素を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、腫瘍選択的核酸配列を同定する方法を提供し、該方法は、トランスクリプトームワイドトランスラトーム解析(transcriptome-wide translatome analysis)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、オープンリーディングフレーム内またはその前にリードスルーモチーフを挿入することによって腫瘍選択的核酸を操作する方法を提供する。
【0026】
参照による組み入れ
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願のそれぞれが、参照により、具体的かつ個別に援用されることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に援用される。参照により援用される刊行物および特許または特許出願が、本明細書に含まれる開示と矛盾する程度に、本明細書は、そのような任意の矛盾する材料に取って代わるおよび/または優先することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】腫瘍細胞の腫瘍選択的死滅を示す。
図1B】腫瘍細胞の腫瘍選択的死滅を示す。
図1C】腫瘍細胞の腫瘍選択的死滅を示す。
図2A】マウスモデルにおける腫瘍細胞の腫瘍選択的死滅を示す。
図2B】マウスモデルにおける腫瘍細胞の腫瘍選択的死滅を示す。
図2C】マウスモデルにおける腫瘍細胞の腫瘍選択的死滅を示す。
図3A】マウスモデルにおける腫瘍細胞の腫瘍選択的死滅、および免疫チェックポイント阻害剤処置に対する免疫チェックポイント阻害剤耐性細胞の感作を示す。
図3B】マウスモデルにおける腫瘍細胞の腫瘍選択的死滅、および免疫チェックポイント阻害剤処置に対する免疫チェックポイント阻害剤耐性細胞の感作を示す。
図3C】マウスモデルにおける腫瘍細胞の腫瘍選択的死滅、および免疫チェックポイント阻害剤処置に対する免疫チェックポイント阻害剤耐性細胞の感作を示す。
図4A】mKR-335 LNP(IL-2、IL-12、IL-15およびIFNαをコードするmRNA)および他のmRNA処置の組合せによる、皮下B16-F10黒色腫腫瘍の処置を示す。
図4B】mKR-335、対照mRNA(p<0.0001;Cox回帰)、およびmKR-335からの個々のmRNAを欠く他のmRNA併用処置による処置後の生存率を示す。cut-off 2000 mm.mKR-335:(IL-2、IL-12、IL-15、およびIFNαをコードするmRNA)。対照:非翻訳mCherryをコードするmRNA。mKR-335マイナスmRNA-A:(IL-12、IL-15、およびIFNαをコードするmRNA)。mKR-335マイナスmRNA-B:(IL-2、IL-12、およびIFNαをコードするmRNA)。
図5A】腫瘍内mKR-335 mRNA療法の耐性を示す。図5Aは、合計20mg(~1mg/kg)の対照mRNAまたはmKR-335 LNP(平均+/-SD)を、3日毎に1回、6サイクル(Q3Dx6)で、腫瘍内B16-F10へ投与した後の体重変化のパーセンテージを示す。
図5B】腫瘍内mKR-335 mRNA療法の耐性を示す。図5Bは、肝機能試験:mKR-335の単回または6回投与の24時間後の正常アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)血清レベルを示す。
図6A】全身LNP投与の耐性を示す。雌C57BL/6NCrlマウスを、1mg/kg対照mRNA LNPまたはmKR-335で皮下処置した。図6Aは、単回投与24時間後のH&E断面を示す。
図6B】全身LNP投与の耐性を示す。図6Bは、3日毎に1回、4サイクル(Q3D×4)投与レジメン(平均+/-SD)の間の、体重変化のパーセンテージを示す。
図6C】全身LNP投与の耐性を示す。図6Bは、肝機能試験:mKR-335の単回または4回投与から24時間後、および最後の投与から7日後の正常ASTおよびALT血清レベルを示す。
図7】mKR-335の有効性および用量関係を示す。mKR-335 LNP、対照mRNA LNP、またはmKR-335の抗PD1 mAb処置との組合せによる、皮下B16-F10黒色腫腫瘍の用量滴定処置(200mgをd0、d3、d10にiv投与した)。腫瘍内注射は、0日目に、130mmの平均サイズで定着した腫瘍において開始した。mKR-335処置を、0、2、4、7、9、および11日目に投与した(n=10/群)。
図8】サイトカインmRNA LNPの組合せ(IL-2、IL-12、IL-15、およびIFNα)による、皮下同系マウスMC38-GFP結腸腺がん腫瘍の有効な処置を示す。
図9A】サイトカイン(IL-12、IL-15、IFN-α)および免疫原性細胞死(Gasdermin DまたはRIPK3)mRNA LNPの抗PD1との組合せによる、皮下同系マウスB16-F10黒色腫腫瘍の有効な処置を示す。腫瘍移植後の個々の動物の腫瘍体積。
図9B】サイトカイン(IL-12、IL-15、IFN-α)および免疫原性細胞死(Gasdermin DまたはRIPK3)mRNA LNPの抗PD1との組合せによる、皮下同系マウスB16-F10黒色腫腫瘍の有効な処置を示す。処置開始後の動物の体重変化。値は平均+/-S.D.を表す。
図9C】サイトカイン(IL-12、IL-15、IFN-α)および免疫原性細胞死(Gasdermin DまたはRIPK3)mRNA LNPの抗PD1との組合せによる、皮下同系マウスB16-F10黒色腫腫瘍の有効な処置を示す。腫瘍移植後の動物のKaplan Meier生存曲線。GasD/RIPK3 mRNA処置群と対照群との間の統計的有意値(***)をログランク(Mantel-Cox)検定で得た。n=8/群。
図10】皮下B16-F10黒色腫腫瘍における生理食塩水対LNP中に製剤化されたサイトカイン(IL-12、IL-15、IFN-α)をコードするmRNAの薬力学的分析を示す。対照mRNA LNP:K143-001.サイトカインmRNA LNP:K155-001、K156-001、またはK157-001。生理食塩水中のサイトカインmRNA:LNP製剤を含まないサイトカインmRNA LNPと同じmRNA。
【発明の詳細な説明】
【0028】
概観
がんと闘うことの難しさを考慮すると、がんを効果的に処置するための組成物または方法の継続的な必要性が依然として存在し、この処置は、現在利用可能ながん処置の様式と比較して、がんの進行を減少させるか、がんもしくはがん細胞の存在を減少させるか、またはがんの応答を増加させる。いくつかの態様では、本明細書に記載のがんを処置するための組成物または方法は、操作された核酸の組合せを含み、該操作された核酸は、がんを処置するための少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つのポリペプチドをコードする。いくつかの態様では、操作された核酸は、mRNAを含み得る。例えば、操作された核酸は、がんを腫瘍選択的様式(oncoselective manner)で処置するためのインターロイキンまたはインターフェロンなどの治療剤の発現を増加させることができる(例えば、ポリペプチドの発現の増加は、正常な健康な細胞とは対照的に、腫瘍細胞にのみ存在する)。いくつかの態様では、本明細書に記載されるがんを処置するための組成物または方法は、mRNAの組合せを利用し、該mRNAの組合せは、がんを処置する有効性を増大させる。いくつかの実施形態では、操作された核酸の組合せは、がんを処置する有効性を増大させる一方、有害作用の増大をもたらさない。加えて、操作された核酸の組合せは、がんを処置するための継続中の必要性に対する解決策を提示し、がんが他の処置に対して非応答性である(例えば、従来の処置に対して抵抗性である免疫学的に「冷たい(cold)」としても知られるがんまたは腫瘍)。
【0029】
いくつかの態様では、本明細書に記載のがんを処置するための組成物または方法は、サイトカインまたはインターフェロンを含む少なくとも1つのポリペプチドをコードする操作された核酸の組合せを含む。いくつかの態様では、少なくともポリペプチドは、修飾されたサイトカインを含む。例えば、操作された核酸の組合せによってコードされるサイトカインは、IL-12を含み得、該IL-12は、分泌型IL-12、膜係留IL-12、マスクされたIL-112、Fc融合IL-12、sushi IL-12、またはそれらの組合せであり得る。いくつかの実施形態では、mRNAの組合せは、少なくとも1つのサイトカインまたは少なくとも1つのインターフェロンをコードした。例えば、mRNAの組合せは、IL-2、IL-12、IL-15、またはIFNαをコードし得る。いくつかの態様では、操作された核酸の組合せは、本明細書に記載される腫瘍選択的発現のために修飾されたmRNAを含む。例えば、mRNAは、オープンリーディングフレーム内またはその上流の腫瘍選択的リードスルーモチーフによって修飾することができ、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、上流フランキング配列、終止コドン、および下流フランキング配列を含み、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、VNNNNNNMNNMWK、NNNVWNNKGHHNH、DVHVNNNCWNNNB、MWBNNNNNNNNNN、WGNNSNHNHDNNN、VNNNNNNMNNMWK、またはVMNNWNKNNNNNN、を含む群から選択される配列を含み、ここで、VはA、CまたはGを表し、MはAまたはCを表し、WはAまたはT/Uを表し、KはGまたはT/Uを表し、HはA、CまたはT/Uを表し、DはA、GまたはT/Uを表し、BはC、GまたはT/Uを表し、SはGまたはCを表し、Nはリードスルー終止コドンおよび下流フランキング配列の最初の14ヌクレオチドに及ぶ領域内の任意のヌクレオチドを表し、腫瘍選択的リードスルーモチーフはステムループ、下流フランキング配列の最初の50ヌクレオチド内のバルジループ、シュードノット、またはそれらの組合せ、および好ましくは終止コドン内に位置するこのステムループの一部、および下流フランキング配列の最初の16ヌクレオチド、またはそれらの組合せを含み、ステムループは、下流フランキング配列の最初の50ヌクレオチド内に20を超える塩基対ヌクレオチドを含み、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、42%超、48%超、好ましくは54%超のGC含量を有する下流フランキング配列を含み、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、プロリン残基またはその組合せをコードするコドンを含む。
【0030】
いくつかの態様では、腫瘍選択的修飾を含む操作された核酸が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的修飾は、腫瘍選択的リードスルーモチーフ、5’UTR、3’UTR、またはそれらの組合せを含む腫瘍選択的配列モチーフを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的修飾は、配列番号41~110の核酸配列のいずれか1つの核酸配列を含む(表6)。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的修飾は、配列番号41~110の核酸配列のいずれか1つの少なくとも1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的修飾は、配列番号41~110の核酸配列の少なくとも1つの組合せを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的修飾は、配列番号41~110の核酸配列の2つ以上の組合せを含む。
【0031】
本明細書には、いくつかの態様において、少なくとも1つの治療剤をコードする少なくとも1つの操作された核酸を含む組成物が記載される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの治療剤は、インターロイキンまたはインターフェロンなどのサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの治療剤は、少なくとも1つのインターロイキンおよび少なくともインターフェロンを含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、腫瘍選択的目的のために翻訳を増加させるための少なくとも1つの修飾を含む。例えば、操作された核酸は、腫瘍またはがん細胞における操作された核酸の発現を増加させるための修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、ベクターであり得る。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、mRNAであり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物に製剤化することができる。例えば、医薬組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つの操作された核酸および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物または医薬組成物は、本明細書に記載の方法に利用することができる。いくつかの実施形態では、方法は、操作された核酸を腫瘍またはがん細胞に送達する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、操作された核酸を細胞に送達することによって疾患または疾病を処置する工程を含む。
【0032】
組成物
本明細書には、いくつかの態様において、少なくとも1つの操作された核酸を含む組成物が記載される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの操作された核酸は、少なくとも1つの治療剤をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの操作された核酸は、本明細書に記載される少なくとも1つの腫瘍選択的修飾(例えば、腫瘍選択的翻訳、腫瘍選択的リボソーム、またはそれらの組合せ)を含み、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾は、特定の細胞における少なくとも1つの操作された核酸の発現を増加させる。例えば、腫瘍選択的修飾は、細胞(例えば、非がん性または健康な細胞)における少なくとも1つの治療剤の発現とは対照的に、がん細胞における操作された核酸によってコードされる少なくとも1つの治療剤の発現を増加させることができる。このような腫瘍選択的修飾は、疾患または疾病を処置するのに特に有用であり得、少なくとも1つの治療剤は、中毒性副作用を発揮し、そのような中毒性副作用は、疾患または疾病に罹患した細胞に限定される必要がある。いくつかの実施形態では、疾患または疾病はがんであり、少なくとも1つの腫瘍選択的修飾によって誘導される発現の増加が制限される特定の細胞はがん細胞である。
【0033】
いくつかの実施形態では、操作された核酸は、少なくとも1つの治療剤をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの治療剤は、少なくとも1つのサイトカインを含む。サイトカインの非例は、4-1BBL、アシル化刺激タンパク質、アディポカイン、アルビインターフェロン、APRIL、Arh、BAFF、Bcl-6、CCL1、CCL1/TCA3、CCL11、CCL12/MCP-5、CCL13/MCP-4、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17/TARC、CCL18、CCL19、CCL2、CCL2/MCP-1、CCL20、CCL21、CCL22/MDC、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L3、CCL4、CCL4L1/LAG-1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CD153、CD154、CD178、CD40LG、CD70、CD95L/CD178、Cerberus(タンパク質)、ケモカイン、CLCF1、CNTF、コロニー刺激因子、共通b鎖(CD131)、共通g鎖(CD132)、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CXCL2、CXCL2/MIP-2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、EDA-A1、Epo、エリスロポエチン、FAM19A1、FAM19A2、FAM19A3、FAM19A4、FAM19A5、Flt-3L、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド、Foxp3、GATA-3、GcMAF、G-CSF、GITRL、GM-CSF、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、肝細胞増殖因子、IFNA1、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA2、IFNA4、IFNA5/IFNaG、IFNA7、IFNA8、IFNB1、IFNE、IFNG、IFNZ、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFNω/IFNW1、IL-1、IL-10、IL-10ファミリー、IL-10様、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-17ファミリー、IL-17A-F、IL-18、IL-18BP、IL-19、IL-1A、IL-1B、IL-1F10、IL-1F3/IL-1RA、IL-1F5、IL-1F6、IL-1F7、IL-1F8、IL-1F9、IL-1様、IL-1RA、IL-1RL2、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-28A、IL-28B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36、IL-37、IL-38、IL-39、またはIL-40、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6様、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-9、インフラマソーム、インターフェローム、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、インターフェロンガンマ、インターフェロンI型、インターフェロンII型、インターフェロンIII型、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン8、IRF4、レプチン、白血病阻害因子(LIF)、白血球促進因子、LIGHT、LTA/TNFB、LT-β、リンホカイン、リンホトキシン、リンホトキシンα、リンホトキシンβ、マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージ炎症性タンパク質、マクロファージ活性化因子、M-CSF、MHCクラスIII、種々のヘマトポエチン、モノカイン、MSP、ミオカイン、ミオネクチン、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ、オンコスタチンM(OSM)、オプレルベキン、OX40L、血小板因子4、プロメガポエチン、RANKL、SCF、STAT3、STAT4、STAT6、間質細胞由来因子1、TALL-1、TBX21、TGF-α、TGF-β、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TNF、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF12、TNFSF13、TNFSF14、TNFSF15、TNFSF4、TNFSF8、TNF-α、TNF-β、Tpo、TRAIL、TRANCE、TWEAK、血管内皮増殖阻害剤、XCL1、またはXCL2を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の操作された核酸によってコードされるサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、IFNα、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された核酸によってコードされるサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、およびIFNαである。
【0034】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインは修飾サイトカインを含む。例えば、修飾サイトカインは、分泌型サイトカイン、膜係留サイトカイン、マスクされたサイトカイン、サイトカイン融合、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン融合は、抗体またはその断片にカップリングしたサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン融合は、抗体またはその断片のFc領域にカップリングしたサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの追加の活性成分をさらに含む。例えば、少なくとも1つの追加の活性成分は、免疫チェックポイント阻害剤を含み、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、GITR、OX40、LAG-3、KIR、TIM-3、TIGIT、BTLA、CBLB、CISH、VISTA、B7-H3、CSF-1R、GITR CD28、CD40、CD137、またはそれらの組合せを標的化する1つ以上の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カメリズマブ、カビラリズマブ、ドスタリマブ、シンチルマブ、チセリウムマブ、またはトリパリマブのうちの1つ以上を含む。
【0035】
脂質
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物または医薬組成物は、少なくとも1つの脂質またはその脂質誘導体を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された核酸は、少なくとも1つの脂質または脂質誘導体とカプセル化または複合体化することができる。例えば、組成物または医薬組成物は、リポソーム、リピオイド、脂質ナノ粒子、またはそれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成ポリヌクレオチドまたはベクターは、脂質または脂質誘導体に機能的にカップリング(例えば、架橋)することができる。リポソームの非限定的な例としては、1,2-ジオレイルオキシ-N、N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)リポソーム、DiLa2リポソーム、1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン)(DLin-KC2-DMA)、またはMC3を挙げることができる。いくつかの実施形態では、リポソームは、多層ベシクル(multilamellar vesicle)、小型単細胞ベシクル(small unicellular vesicle)、または大型単層ベシクル(large unilamellar vesicle)などの異なるサイズを含む。いくつかの実施形態では、リポソームは、コレステロールまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)などの中性脂質を含む。いくつかの実施形態では、リポソームは、DLin-MC3-DMA、DLin-DMA、C12-200、またはDLin-KC2-DMAなどのカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、組成物または医薬組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。LNPの非限定的な例としては、PEG-DMG2000、DSPC、またはコレステロールの組合せを挙げることができる。
【0036】
医薬組成物
本明細書に記載の操作された核酸を含む医薬組成物が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容されるものとして、担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示される2つ以上の活性薬剤を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された核酸を含む医薬組成物は、本明細書に記載される疾患または疾病を処置する。いくつかの実施形態では、疾患または疾病はがんを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、腺様嚢胞性がん、副腎がん、副腎皮質がん、成人白血病、AIDS関連リンパ腫、アミロイドーシス、肛門がん、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調症、非定型モル症候群、非定型角化/脳腫瘍、基底細胞がん腫、胆管がん、バート・ホッグ・デュベ症候群、膀胱がん、骨肉腫、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルシノイド腫瘍(胃腸)、未知の原発性がん、心臓(心臓)腫瘍、子宮頸がん、胆管がん、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(Chronic Myelogenous Leukemia)、慢性骨髄性白血病(Chronic Myeloid Leukemia)、慢性骨髄増殖性新生物、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、子宮内膜T細胞リンパ腫、導管性がん、胚細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚葉細胞腫瘍、性腺外胚葉細胞腫瘍、眼がん、ファロピウス管がん、骨の線維性組織球腫、悪性骨肉腫、胆嚢がん、胃がん、胃腸カルシノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、HER2陽性の乳がん、組織球症、ランゲルハンス細胞、ホジキンリンパ腫、咽頭下がん、眼内黒色腫、島細胞腫瘍、若年性ポリポーシス症候群、カポジ肉腫、腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病、脂肪および口腔がん、肝臓がん、小葉がん、肺がん(非小細胞および小細胞)、リンパ腫、骨および骨肉腫の悪性線維性髄膜細胞腫、悪性神経膠腫、黒色腫、眼内黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞がん、中皮腫、悪性、転移性がん、原発不明の転移性頸部扁平上皮がん(metastatic squamous neck cancer with occult primary)、中線乳がん、多発性内分泌腺腹、多発性骨髄腫、形質細胞腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性新生物、慢性、鼻腔および頭蓋鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、脂肪および口腔がんおよび口腔咽頭がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓がん、膵臓神経内分泌腫瘍、乳頭腫症、傍神経節腫、頭蓋鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、腹膜がん、ポイツ・ジェガーズ症候群、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腺腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、真性多血症、妊娠および乳がん、中枢神経系原発悪性(CNS)リンパ腫、原発性腹膜がん、前立腺がん、直腸がん、再発性がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、小腸がん、悪性軟部腫瘍、固形腫瘍、皮膚の扁平上皮がん、扁平上皮頸部がん、閉塞性原発がん、転移性がん、胃がん、T細胞リンパ腫、睾丸がん、咽頭がん、胸腺腫、胸腺がん、甲状腺がん、腎臓骨盤および尿路の移行細胞がん、小児、尿路および腎臓骨盤の異常がん、移行細胞がん、尿道がん、子宮(子宮内膜)がん、子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、外陰がん、ウィルムス腫瘍、またはそれらの組合せを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、がんタイプは、固形がんタイプまたは血液悪性がんタイプである。いくつかの実施形態では、がんタイプは、転移性がんタイプまたは再発性もしくは難治性がんタイプである。いくつかの実施形態では、がんタイプは、急性骨髄性白血病(LAMLまたはAML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、副腎皮質がん(ACC)、膀胱尿路上皮がん(BLCA)、脳幹神経膠腫、脳低悪性度神経膠腫(LGG)、脳腫瘍、乳がん(BRCA)、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、未知の原発部位のがん、カルチノイド腫瘍、未知の原発部位のがん腫、中枢神経系非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚性腫瘍、子宮頸部扁平上皮がん、子宮頸部腺がん(CESC)がん、小児がん、胆管がん(CHOL)、脊索腫(chordoma)、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸(腺がん)がん(COAD)、結腸直腸がん、頭蓋咽頭がん、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、膵臓内分泌島細胞腫、子宮内膜腫瘍、上衣芽腫、上衣芽、食道がん(ESCA)、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外生殖細胞腫瘍、生殖腺外生殖細胞腫瘍、肝外胆管がん、胆嚢がん、胃(胃)がん、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質細胞腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛腫瘍、多形神経膠芽腫(GBM)、毛様細胞白血病、頭頸部がん(HNSD)、心臓がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭がん、口唇がん、肝臓がん、リンパ性新生物びらん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]、悪性線維性組織球腫骨がん、髄芽腫、髄様上皮腫、黒色腫、メルケル細胞がん、メルケル細胞皮膚がん、中皮腫(MESO)、原発性原発性転移性扁平上皮がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚がん、非小細胞肺がん、口腔がん、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、他の脳および脊髄腫瘍、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣生殖細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、乳頭腫症、副鼻腔がん、副甲状腺がん、骨盤がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫および傍神経節腫(PCPG)、中分化の松果体実質腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽細胞腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性肝細胞肝がん、前立腺がん、例えば前立腺がん(PRAD)、直腸がん、腎がん、腎細胞(腎臓)がん、腎細胞がん、気道がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(SARC)、セザリー症候群、皮膚皮膚黒色腫(SKCM)、小細胞肺がん、小腸がん、悪性軟部腫瘍、扁平上皮がん、扁平上皮頸部がん、胃(胃)がん、甲状腺上原始神経外胚葉腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣がん精巣生殖細胞腫瘍(TGCT)、咽頭がん、胸腺がん、胸腺腫(THYM)、甲状腺がん(THCA)、移行上皮がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、栄養芽細胞腫瘍、尿管がん、尿道がん、子宮がん、子宮がん、ブドウ膜黒色腫(UVM)、膣がん、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、またはウィルムス腫瘍を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、がんタイプは、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、膀胱がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、肝内胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、消化管がん、神経膠腫、神経膠芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、リンパ性腫瘍、黒色腫、骨髄性腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、褐色細胞腫および傍神経節腫、前立腺がん、直腸がん、扁平上皮がん、精巣がん、胃がん、または甲状腺がんを含む。
【0039】
in vivo送達のために、操作された核酸は、医薬組成物に製剤化することができ、一般に、硝子体内または非経口的に投与することができる(例えば、筋肉内、皮下、腫瘍内、経皮、髄腔内などの投与経路を介して投与する)。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内、髄腔内、眼内、硝子体内、網膜内、静脈内、筋肉内、脳室内、脳内、小脳内、脳室内、実質内、皮下、腫瘍内、肺内、気管内、腹腔内、膀胱内、膣内、直腸内、経口、舌下、経皮、吸入、吸入噴霧形態、管腔内-GI経路、またはそれらの組合せで、それらを必要とする対象に投与するために製剤化される。
【0040】
投与は、任意の時間量にわたって繰り返すことができる。いくつかの態様では、投与は、1日2回、隔日、週2回、隔月、3ヶ月に1回、月に1回、隔月、半年に1回、毎年、または2年に1回実施される。
【0041】
投薬処置は、単回用量スケジュール(single dose schedule)または複数回用量スケジュール(multiple dose schedule)であり得る。さらに、対象は、必要に応じて多くの用量を投与され得る。当業者は、適切な用量数(number of doses)を容易に決定することができる。いくつかの態様では、医薬組成物は、硝子体内注射、網膜下注射、マイクロインジェクション、または眼上注射により投与される。
【0042】
本明細書に提供される処置または使用の方法の実施において、本明細書に記載される医薬組成物は、処置される疾患、障害、または疾病、例えばがんを有する哺乳動物に治療有効量で投与される。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康状態、使用される治療剤の効力および他の因子に応じて広く変動し得る。治療剤、およびいくつかの場合において、本明細書に記載される組成物は、単独で、または混合物の成分として1つ以上の治療剤と組み合わせて使用され得る。
【0043】
本明細書に記載される医薬組成物は、静脈内、動脈内、経口、非経口、頬側、局所、経皮、直腸、筋肉内、皮下、骨内、経粘膜、吸入、または腹腔内投与経路を含むがこれらに限定されない適切な投与経路によって対象に投与され得る。本明細書に記載される組成物は、水性液体分散物、自己乳化分散物、固溶体、リポソーム分散物、エアロゾル、固形剤形、粉末、即時放出製剤、制御放出製剤、速溶製剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、遅延放出製剤、延長放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、ならびに即時放出製剤および制御放出製剤の混合製剤を含み得るが、これらに限定されない。
【0044】
医薬組成物は、単なる例として、従来の混合、溶解、造粒、懸濁化、乳化、カプセル化、封入または圧縮プロセスなど、従来の方法で製造することができる。
【0045】
特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、微生物活性を阻害するための1つ以上の保存剤を含む。適切な防腐剤としては、例えばメルフェンおよびチオメルサールなどの水銀含有物質、安定化二酸化塩素、ならびに、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および塩化セチルピリジニウムなどの第四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、水性経口分散液、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液、固体経口剤形、エアロゾル、制御放出製剤、速溶製剤、発泡製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、粉末、丸剤、糖衣錠、カプセル、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、ならびに混合即時放出および制御放出製剤を含むが、これらに限定されない任意の適切な剤形に製剤化される。一態様では、本明細書で議論されるような治療剤、例えば治療剤は、筋肉内、皮下、または静脈内注射に適した医薬組成物に製剤化される。一態様では、筋肉内、皮下、または静脈内注射に適した製剤は、生理学的に許容される滅菌水性または非水性溶液、分散液、懸濁液、またはエマルジョン、および滅菌注射用溶液もしくは分散液に再水和するための滅菌粉末を含む。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレン-グリコール、グリセロール、クレモホールなど)、それらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合に必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。いくつかの実施形態では、皮下注射に適した製剤は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの添加剤も含有する。微生物の増殖の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など、様々な抗菌剤および抗真菌剤によって確実にされ得る。いくつかの場合では、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが望ましい。注射可能な薬学的形態の持続的吸収は、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンなど、吸収を遅延させる薬剤の使用によってもたらされ得る。
【0047】
がん
本開示は、とりわけ、がんの処置において、例えば、対象における腫瘍の処置のために有用な方法および組成物を提供する。
【0048】
がんは、世界的に主要な死因の一つであり、2030年までに新たにがんと診断される患者数は2,300万人を超えると予想されている。米国国立がん研究所(the United States National Cancer Institute)によって発表された統計によれば、2018年、米国では新たに170万人以上ががんと診断され、60万人以上がこの病気で死亡した。
【0049】
最も一般的ながんは、多い順に、乳がん、肺および気管支がん、前立腺がん、結腸および直腸がん、皮膚の黒色腫、膀胱がん、非ホジキンリンパ腫、腎臓および腎盂がん、子宮内膜がん、白血病、膵臓がん、甲状腺がん、ならびに肝臓がんである。男性および女性の35%超が、生涯のある時点でがんと診断されると予想される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示による処置に適した腫瘍またはがんには、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質がん、副腎皮質がん、AIDS関連がん(例えば、カポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型ラブドイド腫瘍、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨肉腫、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、がん腫、心臓(心臓)腫瘍、中枢神経系腫瘍、子宮頸がん、胆管がん、絨毛腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、原発性管がん腫(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜がん、子宮内膜肉腫、上衣腫、食道、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚葉細胞腫瘍、性腺外胚葉細胞腫瘍、眼がん、ファロピウス管がん、胆嚢がん、胃(ストーマ)がん、胃腸のカルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、毛様細胞性白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病、脂肪および口腔がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、男性乳がん、悪性線維性組織細胞腫、黒色腫、メルケル細胞がん腫、中皮腫、口腔癌、多発性骨髄腫、形質細胞腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん、口腔がん、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、膵臓神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、傍神経節腫、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、クロム親和性細胞腫、下垂体腫瘍、脳肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性腹膜がん、前立腺がん、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、網膜芽細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、小腸がん、軟部組織胃肉腫、扁平上皮がん、扁平上皮がん、軟部組織胃肉腫精巣がん、精巣がん、喉がん、胸腺がん、胸腺腫、甲状腺がん、尿道がん、子宮肉腫、子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、外陰がん、ワルデンストロームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍が含まれる。いくつかの好ましい実施形態では、本開示による処置に適した腫瘍またはがんは、肺がん(非小細胞肺がんおよび小細胞肺がんの両方)、結腸がん、膵臓がん、頭頸部がん、食道がん、卵巣がん(例えば、高異型度漿液性卵巣がん)、膀胱がん、肝臓がん、胃がん、黒色腫、AML(例えば、治療関連AML、複雑核型AML、17p欠失を有するAML)、慢性骨髄性白血病、およびバーキットリンパ腫を含む、高頻度のp53突然変異または不活性化を有するがんを含む。
【0051】
免疫チェックポイント調節。
免疫チェックポイントは、自己寛容の維持し、かつ生理学的免疫応答の持続時間および振幅の調節することに関与する免疫系の阻害経路を指す。
【0052】
特定のがん細胞は、特に、腫瘍抗原に特異的なT細胞に関して、免疫抵抗性の主要な機構として免疫チェックポイント経路を利用することによって成長する。例えば、特定のがん細胞は、細胞傷害性T細胞応答の阻害に関与する1つ以上の免疫チェックポイントタンパク質を過剰発現し得る。したがって、免疫チェックポイントモジュレーターを投与して、阻害シグナルを克服し、がん細胞に対する免疫攻撃を可能におよび/または増強することができる。免疫チェックポイントモジュレーターは、負の免疫応答調節因子(例えば、CTLA4)によるシグナル伝達を減少させるか、阻害するか、または抑止することによってがん細胞に対する免疫細胞応答を促進し得るか、または免疫応答の正の調節因子(例えば、CD28)のシグナル伝達を刺激もしくは増強し得る。
【0053】
免疫チェックポイント阻害剤を標的化する免疫療法剤は、がん細胞を標的化する免疫攻撃を促進するために投与され得る。免疫療法剤は、免疫チェックポイントモジュレーターを標的化する(例えば、それに特異的である)抗体剤であり得るか、またはそれを含み得る。免疫療法剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)の例には、CTLA-4、PD-1、PD-L1、GITR、OX40、LAG-3、KIR、TIM-3、TIGIT、BTLA、CBLB、CISH、VISTA、B7-H3、CSF-1R、GITR CD28、CD40、またはCD137のうちの1つ以上を標的化する抗体剤が含まれる。
【0054】
抗体剤の具体例としては、モノクローナル抗体が挙げられる。免疫チェックポイントモジュレーターを標的化する特定のモノクローナル抗体が利用可能である。例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カメリズマブ、カビラリズマブ、ドスタリマブ、シンチルマブ、チセリウムマブ、またはトリパリマブである。
【0055】
免疫チェックポイント阻害剤を利用するがんの処置において著しい進歩がなされてきた。しかし、全身性チェックポイント遮断は、かなりの数の患者において効果がない。これらの処置に対して現在不応性である患者における免疫チェックポイント阻害剤応答の深さおよび幅を増加させるために組み合わせることができる新規の治療が必要とされる。
【0056】
腫瘍選択的翻訳
本開示は、1つ以上の操作された核酸を含む方法および組成物を提供する。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、腫瘍選択的翻訳配列要素(oncoselective translation sequence element)であるかまたはその相補体である配列要素を含むヌクレオチド配列を含む。腫瘍選択的翻訳に有用な方法および組成物は、その全体が参照により本明細書に援用されるWO2020/257655に記載されている。
【0057】
発がん性リボソーム
本開示は、研究が、腫瘍の発生および/または進行に関連するリボソームの構造および機能の変化をますます明らかにしていることを評価している。例えば、Bastide and David Oncogenesis 2018 Apr 7(4):34を参照されたい。発がん性リボソームは、劇的に変化した翻訳ランドスケープ(「translatome」)を有する。様々ながん遺伝子をより効果的に翻訳することに加えて、がんリボソームは、低い翻訳忠実度および/または変化したもしくは増加した終止コドンリードスルーによって特徴付けられることが示されている。
【0058】
発がん性リボソームの機能の変化に寄与し得る様々な機構が記載されている。これらには、リボソーム生合成の変化、リボソームタンパク質遺伝子の変異、リボソームタンパク質の発現の変化、rRNAの発現の変化、および/またはrRNAの修飾の変化が含まれる。例えば、BastideおよびDavid Oncogenesis 2018 Apr 7(4):34を参照されたい。rRNA 2’-O-メチル化パターンの変化もがんの進化に関与する。いくつかのがんにおいて、p53不活性化は、FBL過剰発現およびその後のrRNAメチル化ランドスケープの変化を誘発する(Marcel et al.Cancer Cell.2013;24:318-330)。このようなp53不活性化(および/またはFBL過剰発現および/またはrRNAメチル化の変化)は、IRES含有mRNAの翻訳忠実度の低下および翻訳の増加をもたらす。p53タンパク質をコードする遺伝子であるTP53は、最もよく変異するがん抑制遺伝子であり、rRNAの修飾とともに、リボソームタンパク質の変化を通じてリボソームの制御とも密接に関係している。リボソームタンパク質遺伝子ハプロ不全は、全てのがんの約43%に見出される(Ajore et al.,EMBO Mol Med.2017;9(4):498-507)。健常細胞では、任意の必須リボソームタンパク質遺伝子の両方のコピーの喪失は致死的である。しかしながら、リボソームタンパク質遺伝子の単一コピーが失われると、リボソームタンパク質の化学量論が変化し、リボソームタンパク質RPL5およびRPL11は、より高い遊離(非結合)形態を有し、これは、5S rRNAとともに、MDM2に結合し、p53を安定化して、成長停止またはアポトーシスを刺激する。健常細胞におけるこのp53媒介制御機構は、「障害リボソーム生合成チェックポイント(impaired ribosome biogenesis checkpoint)」と呼ばれる(Gentilella et al.Mol Cell.2017;67(1):55-70.e4)TP53に加えて、別の通常変異した腫瘍抑制遺伝子である網膜芽細胞腫(RB1)遺伝子もリボソーム調節に関与し、MYCがん遺伝子形質転換老化ヒト細胞(MYC oncogene-transformed senescent human cells)における翻訳リードスルーを抑制する(del Toro et al.BioRxiv.2019;10.1101/788380)。
【0059】
本開示は、腫瘍選択的リードスルーが、がんの処置のための強力な戦略として利用され得ることを評価している。本開示は、とりわけ、このような核酸に含まれ、および/またはこのような核酸によってコードされるペイロードの発現が、腫瘍細胞において(非腫瘍細胞に対して)選択的または特異的に発現されることを保証する技術を提供することにより、核酸治療薬(特に、mRNA治療薬などのRNAを含む)の分野における広範な研究を基礎とする。
【0060】
真の腫瘍選択的または腫瘍特異的発現を提供することによることにより、本開示は、腫瘍選択的または腫瘍特異的ペイロード発現が達成され得ない状況において必要とされ得る標的化(例えば、腫瘍選択的)送達戦略を開発および/または利用する必要性を低減または除去する。当然ながら、当業者は、本開示を読むと、任意の利用可能なそのような腫瘍選択的送達技術が、いくつかの実施形態では、提供される技術と望ましく組み合わせられ得ることを理解し、それは単に必要なことではない。
【0061】
代替的または追加的に、真の腫瘍選択的または腫瘍特異的発現を提供することによって、本開示は、そのような高度の選択性を伴わずに、不適切であり得るかまたは望ましくなり得ないペイロードを利用する選択肢を創出する。例えば、本明細書で論じられるように、細胞毒性ペイロード(例えば、毒素、ならびにプロネクロトーシスタンパク質、プロピロトーシスタンパク質、およびプロアポトーシスタンパク質など)は、本明細書に記載される程度まで腫瘍選択性を保証することができない技術で利用される場合、許容できない副作用および/または毒性プロファイルを有し得る。
【0062】
腫瘍選択的翻訳配列要素
リードスルーモチーフ
とりわけ、本開示は、異なるリボソーム(例えば、腫瘍細胞中のリボソーム―例えば、発がん性リボソーム―対非腫瘍細胞中のリボソーム―例えば、非発がん性リボソーム)が異なる処理能力および/またはリードスルー特性(例えば、それによる処理能力に影響を及ぼす休止構造および/または停止コドンに対する異なる応答)を有するという認識を包含する。いくつかの実施形態では、発がん性リボソームは、非発がん性リボソームに対してフレームシフトを有する。いくつかの実施形態では、発がん性リボソームによるフレームシフトは、本明細書に記載のペイロード配列の発現をもたらすことができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、発がん性リボソームは、標準的な終止コドンをリードスルーまたはプロセシングする。いくつかの実施形態では、発がんリボソームによる終止コドンのリードスルーは、終止コドンの、新生ポリペプチドに組み込まれたアミノ酸への翻訳をもたらす。いくつかの実施形態では、発がんリボソームによる終止コドンのリードスルーは、その終止コドンに続く下流(3’UTR)配列のいくつかの部分または全ての翻訳をもたらす。
【0064】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本開示は、終止コドンのリボソームリードスルーが、18s rRNAとリボソームによって結合されるRNA(例えば、mRNA)との間の相互作用によって引き起こされ得ることを観察する。例えば、rRNAのヘリックスは、mRNA配列と相互作用し得る。S.cervisaeにおけるrRNAのヘリックス17と、終止コドンリードスルーをもたらすリボソームによって結合されるmRNAとの相互作用を記載するNamy et al.EMBO Rep.2001 Sep 15;2(9):787-793を参照されたい。本開示は、とりわけ、ヒトrRNAのヘリックス37が、終止コドンリードスルーに寄与するmRNAの配列と相互作用し得ることを認識する。
【0065】
代替的または追加的に、腫瘍選択的リボソーム終止コドンリードスルーは、翻訳可能な核酸(例えば、mRNAなどのRNA)に1つ以上の特定の構造的特徴を含むことによって誘導および/または増強することができる。いくつかの実施形態では、翻訳可能な核酸(例えば、mRNAなどのRNA)の1つ以上の一次構造特徴を使用して、腫瘍選択的終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、翻訳可能な核酸(例えば、mRNAなどのRNA)の1つ以上の二次および/または三次構造特徴(例えば、ステムループ、バルジループ、キッシングループ、シュードノット、または分岐ループ)を使用して、腫瘍選択的終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる。いくつかの実施形態では、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる構造的特徴は、下流フランキング配列の最初の50、60、70、80、90、100、110、または120ヌクレオチド内にある。いくつかのさらなる実施形態では、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる構造的特徴の一部は、下流フランキング配列の最初の16ヌクレオチドに含まれる。
【0066】
いくつかの実施形態では、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる構造的特徴は、下流フランキング配列の最初の10、20、30、40、50、60またはそれ以上のヌクレオチド内の10、20、30、40、50またはそれ以上の塩基対形成ヌクレオチドを含む。
【0067】
本開示のいくつかの実施形態によれば、終止コドンリードスルーは、本明細書に記載の腫瘍選択的リードスルーモチーフを用いて誘導および/または増強することができる。
【0068】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、高G-C含量の1つ以上の領域の包含を用いて、腫瘍特異的終止コドンリードスルーを誘導するために使用さることができる。例えば、いくつかの態様では、翻訳可能な核酸(例えば、mRNAなどのRNA)の3’UTRにおける高いG-C含量を用いて、腫瘍特異的終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる。いくつかの態様では、終止コドンに先行するヌクレオチドにおける高いG-C含量を用いて、その終止コドンの腫瘍特異的終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる。いくつかの態様では、終止コドンに先行する60ヌクレオチドにおける高いG-C含量を用いて、その終止コドンの腫瘍特異的終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる。いくつかの実施形態では、終止コドンに続く50ヌクレオチドにおける高いG-C含量を用いて、その終止コドンの腫瘍特異的終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる。いくつかの態様では、終止コドンの後の最初の120ヌクレオチドにおける(すなわち、3’UTRにおける)高いG-C含量を用いて、その終止コドンの腫瘍特異的終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる。いくつかの実施形態では、高いG-C含量は、非リードスルー転写物に対して二項確率の対数オッズが4以上であることを意味する。いくつかの実施形態では、リードスルーモチーフは、下流のフランキング配列において42%超、48%超、好ましくは54%超のGC含量を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、リードスルーモチーフは、アミノ酸配列VNNNNNNMNNMWK(配列番号24)、NNNVWNNKGHHNH(配列番号25)、DVHVNNNCWNNNB(配列番号26)、MWBNNNNNNNNNN(配列番号27)、WGNNSNHNHDNNN(配列番号28)、VNNNNNNMNNMWK(配列番号29)またはVMNNWNKNNNNNN(配列番号30)を含み、VはA、CまたはGを表し、Mは、AまたはCを表し、Wは、AまたはT/Uを表し、Kは、GまたはT/Uを表し、Hは、A、CまたはT/Uを表し、DはA、GまたはT/Uを表し、Bは、C、GまたはT/Uを表し、Sは、GまたはCを表し、Nは、リードスルー終止コドンおよび下流のフランキング配列の最初の14ヌクレオチドに及ぶ領域内における、任意のヌクレオチドを表す。
【0070】
いくつかの態様では、腫瘍選択的修飾は、腫瘍選択的リードスルーモチーフ、5’UTR、3’UTR、またはそれらの組合せを含む腫瘍選択的配列モチーフを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的修飾は、配列番号41~110の核酸配列のいずれか1つの核酸配列を含む(表6)。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的修飾は、配列番号41~110の核酸配列のいずれか1つの少なくとも1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的修飾は、配列番号41~110の核酸配列の少なくとも1つの組合せを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的修飾は、配列番号41~110の核酸配列の2つ以上の組合せを含む。
【0071】
【表1-1】
【0072】
【表1-2】
【0073】
【表1-3】
【0074】
【表1-4】
【0075】
【表1-5】
【0076】
【表1-6】
【0077】
【表1-7】
【0078】
【表1-8】
【0079】
【表1-9】
【0080】
【表1-10】
【0081】
【表1-11】
【0082】
【表1-12】
【0083】
【表1-13】
【0084】
【表1-14】
【0085】
【表1-15】
【0086】
【表1-16】
【0087】
【表1-17】
【0088】
【表1-18】
【0089】
【表1-19】
【0090】
【表1-20】
【0091】
【表1-21】
【0092】
【表1-22】
【0093】
【表1-23】
【0094】
【表1-24】
【0095】
【表1-25】
【0096】
【表1-26】
【0097】
【表1-27】
【0098】
【表1-28】
【0099】
【表1-29】
【0100】
【表1-30】
【0101】
【表1-31】
【0102】
本開示はさらに、新生ポリペプチドへのプロリンの導入をもたらすコドンの包含が、新生ポリペプチドのねじれを誘導し得、そのようなねじれが、腫瘍選択的終止コドンリードスルーを誘導および/または増強するために使用され得るという洞察を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、腫瘍選択的終止コドンリードスルーは、腫瘍選択的終止コドンリードスルーを誘導および/または増強するための本明細書に記載の他の戦略の1つ以上の代わりに、またはそれに加えて、翻訳可能な核酸に1つ以上のプロリンコードコドン(proline-encoding codon)の包含によって誘導および/または増強することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、mRNA中のステムループは、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる。いくつかの実施形態では、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強するステムループは、終止コドンの約20、40、60、80または120ヌクレオチド内にある。いくつかの実施形態では、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強するステムループは、終止コドンの直前のコード配列中にある。いくつかの実施形態では、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強するステムループは、3’UTRにある。いくつかの実施形態では、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強するステムループは、コード領域および3’UTR境界にわたる領域にある。いくつかの実施形態では、mRNA中のバルジループまたはシュードノットは、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強することができる。いくつかの実施形態では、終止コドンリードスルーを誘導および/または増強する核酸構造は、リードスルーをもたらさない核酸構造と比較して、低いギブス自由エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、終止コドンリードスルーを誘導する核酸の3’UTRの最初の25、50、または75ヌクレオチドは、非がん停止コドンリードスルー対応物よりも低い、5kcal/モル、10kcal/モル、15kcal/モル、20kcal/モル、25kcal/モル、30kcal/モルのデルタGを有する。いくつかの実施形態では、核酸誘導性終止コドンリードスルーの3’UTRの最初の25、50、または75ヌクレオチドは、非がん停止コドンリードスルー対応物よりも低い、5kcal/モル~20kcal/モル、5kcal/mole~10kcal/mole、または10kcal/モル~20kcal/モル、25kcal/モル、30kcal/モルの範囲のデルタGを有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン)およびマクロライド(例えば、エリスロマイシン)は、終止コドンリードスルーを誘導することができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、アミノグリコシドは、18s rRNAを結合させることによって終止コドンリードスルーを誘導することができ、マクロライドは、大きなリボソームサブユニット内のペプチドチャネルを結合させることによって終止コドンリードスルーを誘導することができる。いくつかの実施形態では、アミノグリコシドおよびマクロライドは、健常(正常)細胞において終止コドンリードスルーを誘導することができる。いくつかの実施形態では、アミノグリコシドまたはマクロライドで処置される対象は、終止コドンリードスルーモチーフを含む核酸で処置されるべきではない。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示は、腫瘍選択的翻訳配列要素が腫瘍特異的であり得、がん細胞においてのみ翻訳およびペイロード発現をもたらし得る(すなわち、非がん細胞において検出可能な発現はない)という認識を包含する。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、腫瘍選択的翻訳配列要素は、適切に比較可能な非がん細胞と比較して、がん細胞において2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、またはそれ以上高く翻訳される。
【0106】
いくつかの実施形態では、腫瘍選択的翻訳配列要素は、内部リボソーム進入セグメント/部位(IRES)を含み得る。いくつかの実施形態では、発がん性リボソームまたはRNA結合タンパク質は、腫瘍選択的翻訳配列要素中のIRESを優先的に結合させる。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的翻訳配列要素は、翻訳開始RNA結合タンパク質(RBP)によって結合され得るか、または翻訳開始RNA結合タンパク質(RBP)の結合を指向し得る。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的翻訳配列要素は、IRESを含み得、RBPによって結合され得るか、またはRBPの結合を指向し得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リードスルーモチーフは、表1に列挙されるものである。
【0108】
【表2】
【0109】
いくつかの実施形態では、推定上の腫瘍選択的リードスルーモチーフは、表2に列挙されるものである。
【0110】
【表3-1】
【0111】
【表3-2】
【0112】
【表3-3】
【0113】
Onco-333 fLuc配列(UTR配列およびポリA尾部は大文字である)
GAAATAAGAGAGAAAAGAAGAGTAAGAAGAAATATAAGAGCCACCatggaagacgccaaaaacataaagaaaggcccggcgccattctatccgctggaagatggaaccgctggatagcaactgcataaggctatgaagagatacgccctggttcctggaacaattgcttttacagatgcacatatcgaggtggacatcacttacgctgagtacttcgaaatgtccgttcggttggcagaagctatgaaacgatatgggctgaatacaaatcacagaatcgtcgtatgcagtgaaaactctcttcaattctttatgccggtgttgggcgcgttatttatcggagttgcagttgcgcccgcgaacgacatttataatgaacgtgaattgctcaacagtatgggcatttcgcagcctaccgtggtgttcgtttccaaaaaggggttgcaaaaaattttgaacgtgcaaaaaaagctcccaatcatccaaaaaattattatcatggattctaaaacggattaccagggatttcagtcgatgtacacgttcgtcacatctcatctacctcccggttttaatgaatacgattttgtgccagagtccttcgatagggacaagacaattgcactgatcatgaactcctctggatctactggtctgcctaaaggtgtcgctctgcctcatagaactgcctgcgtgagattctcgcatgccagagatcctatttttggcaatcaaatcattccggatactgcgattttaagtgttgttccattccatcacggttttggaatgtttactacactcggatatttgatatgtggatttcgagtcgtcttaatgtatagatttgaagaagagctgtttctgaggagccttcaggattacaagattcaaagtgcgctgctggtgccaaccctattctccttcttcgccaaaagcactctgattgacaaatacgatttatctaatttacacgaaattgcttctggtggcgctcccctctctaaggaagtcggggaagcggttgccaagaggttccatctgccaggtatcaggcaaggatatgggctcactgagactacatcagctattctgattacacccgagggggatgataaaccgggcgcggtcggtaaagttgttccattttttgaagcgaaggttgtggatctggataccgggaaaacgctgggcgttaatcaaagaggcgaactgtgtgtgagaggtcctatgattatgtccggttatgtaaacaatccggaagcgaccaacgccttgattgacaaggatggatggctacattctggagacatagcttactgggacgaagacgaacacttcttcatcgttgaccgcctgaagtctctgattaagtacaaaggctatcaggtggctcccgctgaattggaatccatcttgctccaacaccccaacatcttcgacgcaggtgtcgcaggtcttcccgacgatgacgccggtgaacttcccgccgccgttgttgttttggagcacggaaagacgatgacggaaaaagagatcgtggattacgtcgccagtcaagtaacaaccgcgaaaaagttgcgcggaggagttgtgtttgtggacgaagtaccgaaaggtcttaccggaaaactcgacgcaagaaaaatcagagagatcctcataaaggccaagaagggcggaaagatcgccgtgtaaGCTGCCTTCTGCGGGGCTTGCCTTCTGGCCATGCCCTTCTTCTCTCCCTTGCACCTGTACCTCTTGGTCTTTGAATAAAGCCTGAGTAGGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号22)
【0114】
Onco-333 RTモチーフ:ctatccgctggaagatggaaccgctggaTAGcaactgcataaggctatgaagaga(配列番号23)
【0115】
核酸
とりわけ、核酸本開示は、本明細書に記載されるような腫瘍選択的翻訳に関与するおよび/またはそうでなければ関連する核酸(例えば、操作された核酸)を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、腫瘍選択的リードスルーモチーフを含む翻訳可能な核酸であるか、またはそれを含むか、またはそれを送達する核酸を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、目的のペイロードをコードし、本明細書に記載される腫瘍選択的翻訳配列要素を含む翻訳可能な核酸であるか、またはそれを含むか、またはそれを送達する核酸を提供する。
【0116】
いくつかの実施形態では、提供される操作された核酸は、例えば、細胞に導入されると、転写されるか、または転写される鋳型鎖を生成し、本明細書に記載されるような翻訳可能な核酸(例えば、mRNA等のRNA)を産生するDNA(例えば、一本鎖または二本鎖DNA)であるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、提供される操作された核酸は、RNA(例えば、mRNA)であるか、またはそれを含み得、RNAは、本明細書に記載される翻訳可能な核酸であるか、またはそれを含み得る(またはその相補体であるか、またはそれを含み得る)(例えば、コード配列および腫瘍選択的翻訳配列要素(複数可)であるか、またはそれを含み得る。)
【0117】
いくつかの実施形態では、提供される核酸は、DNAもしくはRNAまたはその両方であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、提供される核酸は、天然に存在するDNAおよび/またはRNAと比べて、化学的に修飾される。いくつかの実施形態では、提供される核酸は、プソイドウリジンで修飾されない。
【0118】
いくつかの実施形態では、提供される核酸は、本明細書中に記載されるような翻訳可能な核酸である。いくつかの実施形態では、提供される核酸は、本明細書中に記載されるような翻訳可能な核酸を生成するために発現可能である(例えば、転写されて発現することができる)。いくつかの実施形態では、提供される核酸は、本明細書に記載の翻訳可能な核酸の相補体、またはそのような翻訳可能な核酸(もしくはその相補体)を生成するために発現可能な核酸の相補体である。
【0119】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、RNA(例えば、mRNA)治療剤の分野における最近の開発を構築し、増強する。いくつかのグループは、例えば、RNAの生産および/または安定性を改善する技術、哺乳動物(例えばヒト)対象へのRNA投与および/または送達を容易にするカプセル化または他のシステムを提供する技術などを開発する重要な仕事をしてきた。BioNTech AG,CureVac AG,Ethris AG,Moderna Therapeutics,Translate Bio,Inc.などの企業による最近の研究は、いくつかの臨床候補、最近では、米国食品医薬品局によって承認された最初のsiRNA治療剤およびmRNAワクチンの開発につながり、当業者は、RNA治療剤の生産、安定性、投与等のための利用可能な技術のいずれかまたは全てが、翻訳可能なRNAを哺乳動物(例えば、ヒト)対象に投与する本開示の実施形態に適用可能であり得、かつ/またはそれらとともに利用され得ることを理解するであろう。
【0120】
同様に、本開示は、例えば、翻訳可能な核酸を哺乳動物(例えば、ヒト)対象において細胞に送達することができるDNAベクターおよび/またはRNAベクターの開発を含む、遺伝子治療の分野における様々な開発を構築し、強化する。腫瘍溶解性ウイルスに関する最近の研究は、様々な悪性腫瘍における効率的な遺伝子送達および細胞死滅を実証している(Raman et al.,Immunotherapy.2019 Jun;11(8):705-723; Mahalingam et al.,Cancers (Basel).2018 May 25;10(6)).加えて、自己増幅mRNAレプリコンに作用する群は、長期のタンパク質発現を伴う、効率的な局所送達および改善された薬物動態プロファイルを実証している(Avogadri et al.,Cancer Immunol Res.2014 May;2(5):448-58;Huysmans et al.,2019 bioRxiv 10.1101/528612)。本開示のいくつかの実施形態では、提供される核酸は、ポリマーまたは脂質ナノ粒子中に製剤化された腫瘍溶解性ウイルス粒子または腫瘍溶解性DNAもしくはRNAまたは自己増幅mRNAを含む。
【0121】
いくつかの態様では、提供される核酸は、対象において導入され、産生され、および/または発現されたときに、(適切な参照と比較して)低いまたは低減された免疫原性を示すように操作される。当業者は、特定の配列要素および/または化学的修飾が、それらを含まない核酸と比較して、それらを含む核酸の免疫原性を増加または減少させ得ることを認識している。多くの実施形態では、提供される核酸は、対象において導入され、産生され、および/もしくは発現されるか、またはそうなるであろう核酸が、低く予想または観察される免疫原性によって特徴付けられるように操作される。例えば、提供されるmRNAは、GC含量を増加させること(Thess et al.,2015,Mol Ther.23:1456-64)またはU含量を減少させること(Kariko &Sahin,2017,WIPO Patent App No:WO 2017/036889 A1;Vaidyanathan,et al.,2018.12:530~542)によって操作することができる。提供されるmRNAは、プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、メトキシ-ウリジン、2-チオウリジンなどの非標準ヌクレオチドのmRNAへの組み込みによって修飾され得る(Kariko,2005,Immunity.23:165-75;Kariko,2008,Mol Ther.16:1833-40;Kormann et al.,2011,Nat Biotechnol.29:154-157;Andries et al.,2015,J Control Release.217:337-344。
【0122】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、翻訳可能なペイロードを含むかまたはそれをコードする提供される核酸は、ペイロードが、対象において導入および/または産生された場合に、比較的低い免疫原性を示すように操作される。例えば、いくつかの実施形態では、免疫原性エピトープは、特定のペイロードについて定義され得、そしてより免疫原性の低い修飾体(例えば、翻訳後修飾のパターンを変化させることなどにより、1つ以上のこのような免疫原性エピトープ内に配列変化を有するか、またはそうでなければその免疫原性に影響を与えるもの)が、本開示に従って利用され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、核酸(例えば、RNA)は、例えば、免疫原性配列モチーフを除去するように操作された配列であり得る。いくつかの実施形態では、核酸は、TLR7またはTLR8刺激モチーフを除去するように操作された配列である。いくつかの実施形態では、核酸は、KNUNDKモチーフ、UCWモチーフ、UNUモチーフ、UWNモチーフ、USUモチーフ、KWUNDKモチーフ、KNUWDKモチーフ、UNUNDKモチーフ、KNUNUKモチーフ、およびこれらの組合せからなる群から選択されるモチーフを除去するように操作された配列である。いくつかの実施形態では、核酸は、WO2020/033720に記載されるように操作された配列であり、この文献はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0124】
コーディングシーケンス
本明細書に記載されるように、本開示は、特に、コード配列(例えば、ペイロードコード配列)および腫瘍選択的翻訳配列要素を含む翻訳可能な核酸に関する。
【0125】
当業者は、本開示を読むことにより、多種多様な有用なペイロード配列が公知であり、本明細書の教示に従って利用することができることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ペイロードは、がん細胞において発現される場合、対象内で生存および/または増殖するそれらの能力を低下させる遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)である。
【0126】
いくつかの実施形態では、ペイロード配列は、細胞に対して毒性であり得、および/または毒性薬剤を(例えば、酵素的に)生成し得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、ペイロード配列は、細胞を免疫学的攻撃および/またはクリアランスに対してより感受性にし得る。例えば、いくつかのそのような実施形態では、ペイロード配列は、対象の免疫系および/または対象に投与されたもしくは投与される予定の免疫学的療法(例えば、CAR-T細胞またはCAR-NK細胞、増殖性T細胞等)にとって特に魅力的な膜貫通タンパク質および/または細胞内シグナル伝達分子(例えば、ITAMまたはコスティミュレイトリー分子エンドドメイン(costimulatory molecule endodomains))に融合した抗原、抗体、抗体フラグメントまたはそれらのキメラ型であるか、またはそれらからなり得る。代替的または追加的に、いくつかのそのような実施形態では、ペイロード配列は、免疫学的チェックポイントを軽減または阻害する薬剤であるか、またはそれを含み得る。
【0128】
本明細書に記載されるように、提供される本開示の1つの特徴は、腫瘍選択的な発現を伴わずに、許容できないおよび/または望ましくないペイロードが有効に利用され得るように、ある程度の腫瘍選択性を達成することである。
【0129】
いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するためのペイロード配列は、がん細胞において、および/または特定の状況下で(例えば、別個の薬剤の存在下で)選択的に活性である。しかし、いくつかの実施形態では、特に本開示によって提供される腫瘍選択性の程度を考慮して、いくつかの実施形態では、ペイロードは、構成的に活性であり、かつ/または切断もしくはリン酸化などの翻訳後修飾を必要としないタンパク質を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、ペイロードは、それが産生される細胞から分泌されない(例えば、翻訳によって)。いくつかの他の実施形態では、ペイロードは、腫瘍微小環境に分泌されるタンパク質である。
【0131】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドペイロードは、抗体、細胞表面タンパク質(例えば、T細胞、NK細胞などの内因性または投与された免疫細胞によって標的化される抗原またはエピトープであるか、またはそれを含む)、酵素、遺伝子修飾タンパク質、自殺タンパク質、毒素、ウイルス複製タンパク質、ウイルス表面抗原などであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドペイロードは、がんの処置のために承認された生物学的薬剤であるか、またはそれを含み得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、リンカーは、腫瘍選択的翻訳配列要素とペイロード配列との間に存在し得る。いくつかの実施形態では、リンカーは2Aリンカーを含む。いくつかの実施形態では、リンカーはPT2Aリンカーを含む。いくつかの実施形態では、リンカーはF2Amリンカーを含む。
抗体剤
がんの処置に有用ないくつかの抗体治療剤が、当技術分野で公知である。mRNA治療分野における最近の開発は、目的の抗体剤をコードする翻訳可能な核酸の送達が、抗体治療剤を投与するための実行可能かつ有効な戦略であり得ることを示している(例えば、Van Hocke & Roose,J.Translational Med.17:54,Feb 22,2019を参照されたい)。本開示を読む当業者は、その教示が治療用抗体剤に適用可能であることを理解し得、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の翻訳可能な核酸は、治療用抗体剤であるか、またはその成分であるポリペプチドをコードする。
【0133】
操作された核酸
本明細書には、いくつかの態様では、操作された核酸が記載される。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、コード核酸配列を含み、コード核酸配列は、タンパク質または抗原またはその断片をコードする。いくつかの実施形態では、操作された核酸はリボ核酸を含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸はmRNAを含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、少なくとも1つの非翻訳領域を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの非翻訳領域は3’-UTRである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの非翻訳領域は、5’非翻訳領域5’-UTRである。くつかの実施形態では、操作された核酸は、3’-UTRおよび5’-UTRの両方を含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、少なくとも1つの核酸修飾を含む。例えば、操作された核酸は、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むことができる。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、変性配列を含む。例えば、操作された核酸は、少なくとも変性コドンを含むことができる。表3は、ヌクレオチドまたは縮重ヌクレオチドの同一性を示す例示的な命名法を示す。
【0134】
【表4】
【0135】
いくつかの実施形態では、操作された核酸はベクターである。いくつかの実施形態では、操作された核酸はウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは発現ベクターである。発現ベクターの文脈では、ベクターは、任意の公知の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、パーティクルボンバードメント法(particle bombardment)、マイクロインジェクション、遺伝子銃(gene gun)、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を作製する方法は、本明細書の方法に適している。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための1つの方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法としては、DNAおよびRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、いくつかの実施形態では、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどに由来する。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、ポックスベクター、パルボウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、または単純ヘルペスウイルスベクター(HSV)が挙げられる。いくつかの例では、レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV、MMLV、MuLV、またはMLV)またはマウス幹細胞ウイルス(MSCV)ゲノムに由来するベクターなどのガンマ-レトロウイルスベクターを含む。いくつかの例では、レトロウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ゲノムに由来するものなどのレンチウイルスベクターも含む。いくつかの例では、ウイルスベクターは、2つ以上のウイルスからのウイルス部分を含む、キメラウイルスベクターである。さらなる例では、ウイルスベクターは組換えウイルスベクターである。
【0136】
いくつかの実施形態では、操作された核酸は、異種配列を含むか、または異種配列に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、異種配列は、エキソン配列、イントロン配列、エキソン-イントロン接合部、スプライスアクセプター-スプライスドナー部位、開始コドン配列、終止コドン配列、プロモーター部位、選択的プロモーター部位、5’調節エレメント、エンハンサー、5’UTR領域、3’UTR領域、ポリアデニル化部位、あるいはポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、ジャイレース、トポイソメラーゼ、メチラーゼまたはメチルトランスフェラーゼ、転写因子の結合部位などを含む。いくつかの実施形態では、異種配列は、プロモーターなどの発現制御配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、タンパク質または抗原またはその断片をコードするコード核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質または抗原またはその断片は、病原体タンパク質またはその断片である。いくつかの実施形態では、病原体タンパク質またはその断片は、ウイルスタンパク質またはその断片である。ウイルスは、DNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。
【0137】
非翻訳領域
いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された核酸は、少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)を含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、3’-UTRを含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、5’-UTRを含む。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、3’-UTRおよび5’-UTRの両方を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのUTRは、天然に存在するUTRである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのUTRは、合成UTRまたは異種UTRである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのUTRは、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、または少なくとも10000ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのUTRは、二次構造またはRNAモチーフなどの少なくとも1つの核酸構造を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのUTRは核酸構造をもたらさない(例えば、少なくとも1つのUTRはRNAモチーフを形成しない)。
【0138】
核酸修飾
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された核酸は、少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの核酸修飾は、1つ以上のヌクレオチドを1つ以上のヌクレオチド類似体で置換することを含む。いくつかの実施形態では、核酸修飾は、A、G、U、またはCリボヌクレオチドを修飾することを含む。いくつかの実施形態では、修飾は、操作された核酸のコード核酸配列に対して行われ得る。いくつかの実施形態では、修飾は、操作された核酸の非コード核酸配列に対して行われ得る。いくつかの実施形態では、修飾は、操作された核酸のコード核酸配列および非コード核酸配列の両方に対して行われ得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの核酸修飾は、操作された核酸のin vivoでの投与後に分解(例えば、加水分解またはヌクレアーゼ消化)に対する耐性を増加させる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの核酸修飾は、操作された核酸によってコードされるタンパク質と同一のタンパク質をコードするコード核酸配列を含む比較可能な核酸配列と比較して、操作された核酸のin vivoでの投与後の免疫原性を減少させる。いくつかの態様では、操作された核酸は、in vivoで投与されると、比較可能な核酸配列によってコードされる同じタンパク質の発現と比較して、操作された核酸によってコードされるタンパク質の発現を増加させる。いくつかの態様では、操作された核酸は、in vivoで投与されると、同じ特定の細胞型における比較可能な核酸配列によってコードされる同じタンパク質の発現と比較して、特定の細胞型における操作された核酸によってコードされるタンパク質の発現を増加させる。
【0139】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの修飾は、3’OH基、5’OH基、糖、核酸塩基、ヌクレオチド間結合、またはそれらの組合せに対する修飾であり得る。核酸修飾は、鎖間または鎖内架橋の天然に存在しないリンカー分子を含むことができる。一態様では、化学的に修飾された核酸は、3’OH基もしくは5’OH基、骨格、糖成分、もしくはヌクレオチド塩基の1つ以上の修飾、または非天然リンカー分子の付加を含む。いくつかの態様では、化学修飾された骨格は、ホスホジエステル骨格以外の骨格を含む。いくつかの態様では、修飾糖は、デオキシリボース以外の糖(修飾DNA中)またはリボース以外の糖(修飾RNA)を含む。いくつかの態様では、修飾塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、またはウラシル以外の塩基を含む。いくつかの態様では、操作された核酸は、少なくとも1つの化学的に修飾された塩基を含む。いくつかの例では、これは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、50、100、またはそれ以上の修飾塩基を含む。いくつかの場合において、塩基部分に対する核酸修飾は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、またはウラシル、およびプリンまたはピリミジン塩基の天然および合成の修飾を含む。例えば、核酸修飾は、操作された核酸の少なくとも1つのウラシルを5’-メトキシウリジンに修飾することを含む。
【0140】
いくつかの態様では、操作された核酸の少なくとも1つの核酸修飾は、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、または2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)を含む2’修飾ヌクレオチドを含む2’修飾ヌクレオチド、 ホスホジエステル骨格結合における非結合リン酸酸素の一方または両方の修飾、 ホスホジエステル骨格結合における1つ以上の連結リン酸酸素の修飾、 リボース糖の構成成分の修飾、 リン酸部分の「脱リン酸」リンカーによる置換、 天然に存在する核酸塩基の修飾または置換、 リボース-リン酸骨格の修飾、 ポリヌクレオチドの5’末端の修飾、 ポリヌクレオチドの3’末端の修飾、 デオキシリボースリン酸骨格の修飾、 リン酸基の置換、 リボリン酸骨格の修飾、 ヌクレオチドの糖に対する修飾、 ヌクレオチドの塩基に対する修飾、 またはヌクレオチドの立体純度(stereopure)のいずれか1つまたは任意の組み合わせの修飾を含む。操作された核酸に対する核酸修飾の非限定的な例としては、ホスホジエステル骨格結合(例えば、硫黄(S)、セレン(Se)、BR3(ここで、Rは、例えば、水素、アルキル、またはアリールであり得る)、C(例えば、アルキル基、アリール基など)、H、NR2(ここで、Rは、例えば、水素、アルキル、またはアリールであり得るか、Rは、例えば、アルキルまたはアリールであり得る)における非結合または結合リン酸酸素の一方または両方の修飾、 リン酸部分の「脱リン酸」リンカーでの置換(例えば、メチルホスホネート、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチル、カルバマート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、またはメチレンオキシメチルイミノでの置き換え)、 天然に存在する核酸塩基の核酸アナログによる修飾または置換、 デオキシリボース-ホスフェートまたはリボース-リン酸骨格の修飾(例えば、リボース-リン酸骨格を修飾してホスホロチオエート、ホスホノチオアセタート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノリン酸エステル、水素ホスホネート、ホスホノカルボキシレート、ホスホロアミデート、アルキルまたはアリールホスホネート、ホスホノアセテート、またはホスホトリエステルを組み込む)、 核酸配列の5’末端(例えば、5’キャップまたは5’キャップ-OHの修飾)または核酸配列の3’末端(3’テールまたは3’末端-OHの修飾)、 メチルホスホネート、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチル、カルバマート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、またはメチレンオキシメチルイミノによるリン酸基の置換、 モルホリノ(ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーPMO)、シクロブチル、ピロリジン、またはペプチド核酸(PNA)ヌクレオシド代用物を組み込むためのリボリン酸骨格の修飾、 ロック核酸(LNA)、アンロック核酸(UNA)、エチレン核酸(ENA)、拘束エチル(cEt)糖、または架橋核酸(BNA)を組み込むためのヌクレオチドの糖への修飾、 リボース糖の構成成分の修飾(例えば、2’-O-メチル、2’-O-メトキシ-エチル(2’-MOE)、2’-フルオロ、2’-アミノエチル、2’-デオキシ-2’-フロアラビノウ-クレイン酸、2’-デオキシ、2’-O-メチル、3’-ホスホロチオエート、3’-ホスホノアセテート(PACE)、または3’-ホスホノチオアセタート(チオPACE))、 (A、T、C、G、またはUの)ヌクレオチドの塩基に対する修飾、 およびヌクレオチドの立体純度(例えば、ホスホロチオエートのS立体配座またはホスホロチオエートのR立体配座)を挙げることができる。
【0141】
いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、操作された核酸のホスホジエステル骨格結合における非連結リン酸酸素原子の一方または両方の少なくとも1つの置換を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の少なくとも1つの核酸修飾は、操作された核酸のホスホジエステル骨格結合における1つ以上の連結リン酸酸素原子の置換を含む。リン酸酸素原子の核酸修飾の非限定的な例は、硫黄原子である。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、操作された核酸のヌクレオチドの糖に対する少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、ヌクレオチドの糖に対する少なくとも1つの核酸修飾を含み、核酸修飾は、少なくとも1つのロック核酸(LNA)を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、少なくとも1つのアンロック核酸(UNA)を含む操作された核酸のヌクレオチドの糖に対する少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、少なくとも1つのエチレン核酸(ENA)を含む操作された核酸のヌクレオチドの糖に対する少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、糖の構成要素の修飾を含む糖に対する少なくとも1つの核酸修飾を含み、糖はリボース糖である。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、2’-O-メチル基を含む操作された核酸のヌクレオチドのリボース糖の構成成分に対する少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、操作された核酸のリン酸部分の脱リン酸リンカーでの置換を含む少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、操作された核酸のリン酸骨格の少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、操作された核酸は、ホスホチオエート基(phosphothioate group)を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、操作された核酸のヌクレオチドの塩基に対する修飾を含む少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、ヌクレオチドの非天然塩基を含む少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、モルホリノ基(例えば、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー、PMO)、シクロブチル基、ピロリジン基、またはペプチド核酸(PNA)ヌクレオシド代用物を含む少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、操作された核酸の核酸修飾は、少なくとも1つの立体純粋な核酸(stereopure nucleic acid)を含む少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの核酸修飾は、操作された核酸の5’末端の近位に位置し得る。いくつかの態様では、少なくとも1つの核酸修飾は、操作された核酸の3’末端の近位に位置し得る。いくつかの態様では、少なくとも1つの核酸修飾は、操作された核酸の5’および3’末端の両方の近位に位置し得る。
【0142】
いくつかの態様では、操作された核酸は、共に共有結合した複数の糖およびリン酸部分を含む骨格を含む。いくつかの場合において、操作された核酸の骨格は、DNA中のデオキシリボースまたはRNA中のリボースの5’炭素上のリン酸基中の第1のヒドロキシル基と、DNA中のデオキシリボースまたはRNA中のリボースの3’炭素上の第2のヒドロキシル基との間のホスホジエステル結合連結(phosphodiester bond linkage)を含む。
【0143】
いくつかの態様では、操作された核酸の骨格は、溶媒に曝露することができる5’還元ヒドロキシル、3’還元ヒドロキシル、またはその両方を欠き得る。いくつかの態様では、操作された核酸の骨格は、ヌクレアーゼに曝露され得る5’還元ヒドロキシル、3’還元ヒドロキシル、またはその両方を欠くことができる。いくつかの態様では、操作された核酸の骨格は、加水分解酵素に曝露され得る5’還元ヒドロキシル、3’還元ヒドロキシル、またはその両方を欠くことができる。いくつかの例では、操作された核酸の骨格は、1つのヌクレオチドが他のヌクレオチドの後に続く環状2次元フォーマット(circular 2-dimensional format)のポリヌクレオチド配列として表すことができる。いくつかの例では、操作された核酸の骨格は、1つのヌクレオチドが他のヌクレオチドの後に続くループ状二次元フォーマット(looped 2-dimensional format)のポリヌクレオチド配列として表すことができる。いくつかの場合では、5’ヒドロキシル、3’ヒドロキシル、またはその両方は、リン-酸素結合を介して結合される。いくつかの場合において、5’ヒドロキシル、3’ヒドロキシル、またはその両方は、リン含有部分を有するホスホエステルに修飾される。
【0144】
いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された核酸は、少なくとも1つの核酸修飾を含む。核酸修飾は、置換、挿入、欠失、核酸修飾、物理的修飾、安定化、精製、またはそれらの任意の組合せであり得る。いくつかの例において、修飾は核酸修飾である。適切な核酸修飾は、5’アデニレート、5’グアノシン-トリホスフェートキャップ、5’N7-メチルグアノシン-トリホスフェートキャップ、5’トリホスフェートキャップ、3’ホスフェート、3’チオホスフェート、5’ホスフェート、5’チオホスフェート、Cis-Synチミジンダイマー、トリマー、C12スペーサー、C3スペーサー、C6スペーサー、dSpacer、PCスペーサー、rSpacer、Spacer18、Spacer9、3’-3’修飾、5’-5’修飾、abasic、アクリジン、アゾベンゼン、ビオチン、ビオチンBB、ビオチンTEG、コレステリルTEG、デスチオビオチンTEG、DNP TEG、DNP-X、DOTA、dT-ビオチン、デュアルビオチン、PCビオチン、ソラレンC2、ソラレンC6、TINA、3’DABCYL、ブラックホールクエンチャー1、ブラックホールクエンチャー2、DABCYL SE、dT-DABCYL、IRDye QC-1、QSY-21、QSY-35、QSY-7、QSY-9、カルボキシルリンカー、チオールリンカー、2’デオキシリボヌクレオシド類似体プリン、2’デオキシリボヌクレオシド類似体ピリミジン、リボヌクレオシド類似体、2’-O-メチルリボヌクレオシド類似体、糖修飾類似体、ゆらぎ/ユニバーサル塩基、蛍光色素標識、2’フルオロRNA、2’O-メチルRNA、メチルホスホネート、ホスホジエステルDNA、ホスホジエステルRNA、ホスホチオエートDNA、ホスホロチオエートRNA、UNA、LNA、cEt、プソイドウリジン-5’-トリホスフェート、5-メチルシチジン-5’-トリホスフェート、2-O-メチル-ホスホロチオエート、またはその任意の組合せのいずれか1つを含む。
【0145】
場合によっては、修飾は恒久的であり得る。他の場合には、修飾は一過性であり得る。いくつかの場合において、複数の修飾が操作された核酸になされる。操作された核酸修飾は、それらの立体構造、極性、疎水性、化学反応性、塩基対合相互作用、またはそれらの任意の組合せなどのヌクレオチドの生理化学的特性を変化させることができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、化学修飾ヌクレオチドのリン酸基は、1つ以上の酸素を異なる置換基で置換することによって修飾することができる。いくつかの態様では、化学的に修飾されたヌクレオチドは、本明細書に記載されるように、非修飾リン酸部分の、修飾リン酸との置換を含むことができる。いくつかの態様では、リン酸骨格の修飾は、非荷電リンカー、または非対称電荷分布を有する荷電リンカーのいずれかをもたらす変更を含むことができる。修飾リン酸基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホノチオアセタート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、水素ホスホネート、ホスホロアミデート、アルキルまたはアリールホスホネートおよびホスホトリエステルを挙げることができる。いくつかの態様では、リン酸骨格部分中の非架橋リン酸酸素原子の1つは、硫黄(S)、セレン(Se)、BR3(ここで、Rは、例えば、水素、アルキルまたはアリールであり得る)、C(例えば、アルキル基、アリール基など)、H、NR2(ここで、Rは、例えば、水素、アルキルまたはアリールであり得る)、or(ここで、Rは、例えば、アルキルまたはアリールであり得る)の基のいずれかによって置換され得る。非修飾リン酸基におけるリン原子は、アキラルであり得る。しかし、非架橋酸素の1つを上記の原子または原子の基の1つと置換することにより、リン原子をキラルにすることができる。このように修飾されたリン酸基におけるリン原子は、立体中心である。不斉リン原子(stereogenic phosphorous atom)は、「R」配置(本明細書ではRp)または「S」配置(本明細書ではSp)のいずれかを有することができる。いくつかの場合では、操作された核酸は、ホスホロチオエートのS立体配座またはホスホロチオエートのR立体配座を含む立体純粋なヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、キラルリン酸塩生成物は、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上のジアステレオマー過剰率で存在する。いくつかの態様では、ホスホロジチオエートの両方の非架橋酸素を硫黄で置換され得る。ホスホロジチオエート中のリン中心は、オリゴリボヌクレオチドジアステレオマーの形成を妨げるアキラルであり得る。いくつかの態様では、一方または両方の非架橋酸素に対する修飾はまた、S、Se、B、C、H、N、およびOR(Rは、例えば、アルキルまたはアリールであり得る)から独立して選択される基での非架橋酸素の置換を含むことができる。いくつかの態様では、リン酸リンカーはまた、架橋酸素(すなわち、リン酸をヌクレオシドに連結する酸素)を、窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)および炭素(架橋メチレンホスホネート)で置換することによって修飾することもできる。置換は、連結酸素のいずれかまたは両方で起こり得る。
【0147】
ある特定の実施形態では、核酸は、連結された核酸を含む。核酸は、任意の核酸間連結を用いて互いに連結することができる。核酸間連結基の2つの主なクラスは、リン原子の有無によって定義される。代表的なリン含有核酸間結合(phosphorus containing inter nucleic acid linkage)としては、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホロアミデート、およびホスホロチオエート(P=S)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な非リン含有核酸間連結基(non-phosphorus containing inter nucleic acid linkage)としては、メチレンメチルイミノ (-CH-N(CH)-O-CH-)、チオジエステル(-O-C(O)-S-)、チオノカルバメート(-O-C(O)(NH)-S-)、シロキサン(-O-Si(H)-O-)、およびN,N-ジメチルヒドラジン (-CH-N(CH)-N(CH))が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、キラル原子を有する核酸間結合は、ラセミ混合物として、別個のエナンチオマ(enantiomer)、例えば、アルキルホスホネートおよびホスホロチオエートとして調製することができる。非天然核酸は、単一の修飾を含み得る。非天然核酸は、1つの部分内または異なる部分間に複数の修飾を含み得る。
【0148】
核酸に対する骨格リン酸修飾としては、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート(架橋または非架橋)、ホスホトリエステル、ホスホロジチオエート、ホスホジチオエート、およびボラノホスフェートが挙げられるが、これらに限定されず、任意の組合せで使用することができる。他の非リン酸結合も使用することができる。
【0149】
いくつかの態様では、骨格修飾(例えば、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロアミデートおよびホスホロジチオエートヌクレオチド間結合)は、修飾核酸に免疫調節活性を与え、および/またはin vivoでのそれらの安定性を高めることができる。
【0150】
いくつかの例では、リン誘導体(または修飾リン酸基)は、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデートなどの糖または糖アナログ部分に結合している。
【0151】
いくつかの場合において、骨格修飾は、ホスホジエステル結合をアニオン性、中性またはカチオン性基などの代替部分で置換することを含む。このような修飾の例には、アニオン性ヌクレオシド間結合、 N3’からP5’へのホスホルアミダイト修飾、 ボラノリン酸DNA、 proengineeredされた核酸、 メチルホスホネートなどの中性ヌクレオシド間結合、 アミド結合DNA、 メチレン(メチルイミノ)結合、 ホルムアセタールおよびチオホルムアセタール結合、 スルホニル基を含有する骨格、 モルホリノオリゴ、 ペプチド核酸(PNA)、 および正に荷電したデオキシリボ核酸グアニジン(DNG)オリゴを含む。修飾核酸は、1つ以上の修飾、例えば、ホスホジエステルおよびホスホロチオエート結合の組合せなどのリン酸結合の組合せを含む、キメラまたは混合骨格を含み得る。
【0152】
リン酸塩の置換としては、例えば、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくはヘテロ環式ヌクレオシド間結合が挙げられる。
これらは、モルホリノ結合を有するもの(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成されるもの)、 シロキサン骨格、 スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格、 ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、 メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、 アルケン含有骨格(alkene containing backbones)、 スルファメート骨格、 メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格、 スルホネートおよびスルホンアミド骨格、 アミド骨格、 ならびに混合されたN、O、SおよびCH成分部分を有する他のものを含む。ヌクレオチド置換において、ヌクレオチドの糖部分およびリン酸部分の両方が、例えばアミド型結合(アミノエチルグリシン)(PNA)によって置換され得ることも理解される。例えば細胞取り込みを増強するために、他のタイプの分子(コンジュゲート)をヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に連結することも可能。コンジュゲートは、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に化学的に連結され得る。このようなコンジュゲートとしては、コレステロール部分などの脂質部分、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム l-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-S-H-ホスホネート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
いくつかの態様では、本明細書に記載の核酸修飾は、リン酸骨格の修飾を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された核酸は、少なくとも1つの化学修飾されたリン酸骨格を含む。リン酸基または骨格の化学修飾の例は、1つ以上の酸素を異なる置換基で置換することを含み得る。さらに、操作された核酸中に存在する修飾ヌクレオチドは、本明細書に記載されるような修飾リン酸による非修飾リン酸部分の置換を含み得る。いくつかの態様では、リン酸骨格の修飾は、非荷電リンカーまたは非対称電荷分布を有する荷電リンカーのいずれかをもたらす変更を含み得る。修飾リン酸基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホノチオアセタート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノリン酸エステル、水素ホスホネート、ホスホロアミデート、アルキルもしくはアリールホスホネートおよびホスホトリエステルを挙げ得る。いくつかの態様では、リン酸骨格部分中の非架橋リン酸酸素原子の1つは、硫黄(S)、セレン(Se)、BR(ここで、Rは、例えば、水素、アルキルまたはアリールであり得る)、C(例えば、アルキル基、アリール基など)、H、NR(ここで、Rは、例えば、水素、アルキルまたはアリールであり得る)、または(ここで、Rは、例えば、アルキルまたはアリールであり得る)の基のいずれかによって置換され得る。非修飾のリン酸基におけるリン原子は、アキラルである。しかし、非架橋酸素の1つを上記の原子または原子の基の1つで置換することにより、リン原子をキラルにすることができ、すなわち、このようにして修飾されたリン酸基におけるリン原子は、立体中心である。不斉リン原子は、「R」配置(本明細書ではRp)または「S」配置(本明細書ではSp)のいずれかを有することができる。そのような場合、化学的に修飾された操作された核酸は、立体純粋であり得る(例えば、SまたはRのconfirmation)。いくつかの場合では、化学修飾された操作された核酸は、立体純粋なリン酸修飾を含む。例えば、化学修飾された操作された核酸は、ホスホロチオエートのS立体配座またはホスホロチオエートのR立体配座を含む。
【0154】
ホスホロジチオエートは、両方の非架橋酸素が硫黄で置換されている。ホスホロジチオエート中のリン中心はアキラルであり、オリゴリボヌクレオチドジアステレオマーの形成を妨げる。いくつかの態様では、一方または両方の非架橋酸素に対する修飾はまた、S、Se、B、C、H、N、およびOR(Rは、例えば、アルキルまたはアリールであり得る)から独立して選択される基による非架橋酸素の置換を含み得る。
【0155】
リン酸リンカーはまた、架橋酸素(すなわち、リン酸をヌクレオシドに連結する酸素)を、窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)および炭素(架橋メチレンホスホネート)で置換することによって修飾することもできる。置換は、連結酸素のいずれかで、または連結酸素の両方で起こり得る。
【0156】
いくつかの局面において、操作された核酸の少なくとも1つのリン酸基は、化学的に修飾され得る。いくつかの態様では、リン酸基は、非リン含有コネクターによって置換され得る。いくつかの態様では、リン酸部分は、脱リン酸リンカーによって置換され得る。いくつかの態様では、荷電リン酸基は中性基で置換され得る。いくつかの場合では、リン酸基は、メチルホスホネート、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチル、カルバマート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾおよびメチレンオキシメチルイミノによって置換され得る。いくつかの態様では、本明細書に記載のヌクレオチド類似体は、リン酸基で修飾することもできる。修飾リン酸基は、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル、ならびに3’-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、ホスホロアミデート(例えば、3’-アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミデート)、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、およびボラノホスフェートによる2つのヌクレオチド間の連結における修飾を含み得る。2つのヌクレオチド間のリン酸または修飾リン酸結合は、3’-5’結合または2’-5’結合を介することができ、結合は、3’-5’から5’-3’または2’-5’から5’-2’などの反転した極性(inverted polarity)を含有する。
【0157】
いくつかの態様では、本明細書に記載の核酸修飾は、リン酸基の置換による修飾を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された核酸は、リン酸基置換または置換を含む少なくとも1つの化学修飾を含む。例示的なリン酸基置換は、非リン含有コネクターを含み得る。いくつかの態様では、リン酸基置換または置換は、荷電リン酸基を中性部分で置換することを含み得る。リン酸基を置換することができる例示的な部分としては、メチルホスホネート、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチル、カルバマート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾおよびメチレンオキシメチルイミノを挙げることができる。
【0158】
いくつかの態様では、本明細書に記載の核酸修飾は、操作された核酸のリボリン酸骨格を修飾することを含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された核酸は、少なくとも1つの化学修飾されたリボリン酸骨格を含む。化学的に修飾されたリボリン酸骨格の例としては、核酸を模倣できる足場が挙げられ、これは、リン酸リンカーおよびリボース糖がヌクレアーゼ耐性ヌクレオシドまたはヌクレオチド代用物に置き換えられて構築されることもできる。いくつかの態様では、核酸塩基は、代用骨格(surrogate backbone)によって係留され得る。例としては、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)などのモルホリノ、シクロブチル、ピロリジンおよびペプチド核酸(PNA)ヌクレオシド代用物を挙げることができる。
【0159】
いくつかの態様では、本明細書に記載の核酸修飾は、糖の修飾を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された核酸は、少なくとも1つの化学修飾された糖を含む。化学修飾された糖の例としては、いくつかの異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾または置換された2’ヒドロキシル基(OH)が挙げられる。いくつかの態様では、2’ヒドロキシル基に対する修飾は、ヒドロキシルがこれ以上脱プロトン化されて2’-アルコキシドイオンを形成することができないので、核酸の安定性を増強することができる。2’-アルコキシドは、リンカーリン原子に対する分子内求核攻撃による分解を触媒することができる。「オキシ」-2’ヒドロキシル基修飾の例としては、アルコキシまたはアリールオキシ(OR、ここで、「R」は、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖であり得る)、 ポリエチレングリコール(PEG)、 O(CHCHO)CH2CHORを挙げることができ、Rは、例えば、Hまたは任意選択で置き換えられたアルキルであり得、nは0~20の整数であり得る。いくつかの態様では、「オキシ」-2’ヒドロキシル基修飾は、(LNA、ここで、2’ヒドロキシルは、例えば、Ci-6アルキレンまたはCj-6ヘテロアルキレン橋によって、同じリボース糖の4’炭素に連結され得、ここで、架橋の例としては、メチレン、プロピレン、エーテルまたはアミノ架橋を含み得る)、 O-アミノ(ここで、アミノは、例えば、NHであり得る)、 アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、またはポリアミノ)およびアミノアルコキシ、O(CH-アミノ、(ここで、アミノは、例えば、NH、 アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、もしくはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、またはポリアミノであり得る)を含み得る。いくつかの態様では、「オキシ」-2’ヒドロキシル基修飾は、メトキシエチル基(MOE)(OCHCHOCH、例えばPEG誘導体)を含むことができる。いくつかの場合では、デオキシ修飾は、水素(すなわち、例えば、部分dsRNAのオーバーハング部分におけるデオキシリボース糖)、 ハロ(例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、またはヨード)、 アミノ(アミノは、例えば、NH、 アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸であり得る)、 NH(CHCHNH)nCHCH-アミノ(アミノは、例えば、本明細書に記載の通りであり得る)、NHC(O)R(ここで、Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖であり得る)、シアノ、 メルカプト、 アルキル-チオ-アルキル、 チオアルコキシ、 およびアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニルおよびアルキニル(これは、例えば、本明細書に記載されるアミノにより、任意選択で置換され得る)を含み得る。いくつかの例では、糖基(sugar group)はまた、リボース中の対応する炭素の立体化学配置とは反対の立体化学配置を有する1つ以上の炭素を含有し得る。したがって、修飾核酸は、糖として、例えば、アラビノースを含有するヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド「モノマー」は、糖のΓ位にアルファ結合、例えば、アルファ-ヌクレオシドを有することができる。修飾核酸はまた、C-において核酸塩基を欠く「脱塩基」糖を含むことができる。脱塩基糖は、構成糖原子(constituent sugar atoms)の1つ以上でさらに修飾することもできる。修飾核酸はまた、L型である1つ以上の糖、例えば、L-ヌクレオシドを含むことができる。いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された核酸は、酸素を有する5員環である糖基リボースを含む。修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドの例としては、リボース中の酸素の置換(例えば、硫黄(S)、セレン(Se)、またはアルキレン、例えば、メチレンまたはエチレンなどによる)、 二重結合の付加(例えば、リボースをシクロペンテニルまたはシクロヘキセニルで置換するため)、 リボースの環収縮(ring contraction)(例えば、シクロブタンまたはオキセタンの4員環を形成するため)、 リボースの環拡張(ring expansion)(例えば、追加の炭素またはヘテロ原子を有する6または7員環、例えば、アンヒドロヘキシトール、アルトリトール、マンニトール、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、およびホスホルアミダイト骨格も有するモルホリノなどを形成するため)が挙げられる。いくつかの態様では、修飾ヌクレオチドは、多環式形態(例えば、トリシクロ、 およびグリコール核酸(GNA)などの「アンロック」形態)(例えば、リボースがホスホジエステル結合に結合したグリコール単位によって置換されているR-GNAまたはS-GNA)、トレオース核酸を含むことができる。いくつかの態様では、操作された核酸の糖に対する修飾は、ロック核酸(LNA)、アンロック核酸(UNA)、エチレン核酸(ENA)、拘束エチル(cEt)糖、または架橋型核酸(BNA)を含むように操作された核酸を修飾することを含む。
【0160】
いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された核酸は、リボース糖の構成成分の少なくとも1つの核酸修飾を含む。いくつかの態様では、リボース糖の構成成分の核酸修飾は、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-フルオロ、2’-アミノエチル、2’-デオキシ-2’-フロアラビノウ-クレイン酸、2’-デオキシ、、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、3’-ホスホロチオエート、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、3’-ホスホノアセテート(PACE)、または3’-ホスホノチオアセタート(チオPACE)を含むことができる。いくつかの態様では、リボース糖の構成成分の核酸修飾は、非天然核酸を含む。いくつかの例では、非天然核酸は、5’-CH-置換2’-O-保護ヌクレオシドなど、糖環の5’位および2’位における修飾を含む。いくつかの場合において、アミド結合ヌクレオシドダイマーを含む非天然核酸は、ダイマー中の3’結合ヌクレオシド(5’~3’)が2’-OCHおよび5’-(S)-CHを含む、操作された核酸への組み込みのために調製されている。非天然核酸は、2’-置換5’-CH(またはO)修飾ヌクレオシドを含み得る。非天然核酸は、5’-メチレンホスホネート DNAおよびRNAモノマー、ならびにダイマーを含み得る。非天然核酸は、2’-置換を有する5’-ホスホネートモノマーおよび他の修飾された5’-ホスホネートモノマーを含み得る。非天然核酸は、5’-修飾メチレンホスホネートモノマーを含み得る。非天然核酸は、5’および/または6’位にヒドロキシル基を含む5’または6’-ホスホネートリボヌクレオシドの類似体を含み得る。非天然核酸は、5’-ホスホネートデオキシリボヌクレオシドモノマー、および5’-ホスフェート基を有するダイマーを含み得る。非天然核酸は、6’-ホスホネート基を有するヌクレオシドを含み得、ここで、5’または/および6’位は、置換されていないか、またはチオ-tert-ブチル基(SC(CH)(およびその類似体)、メチレンアミノ基(CHNH)(およびその類似体)、またはシアノ基(CN)(およびその類似体)で置換されている。
【0161】
いくつかの態様では、非天然核酸はまた、糖部分の修飾を含む。いくつかの場合において、核酸は、糖基が修飾されている1つ以上のヌクレオシドを含む。そのような糖修飾ヌクレオシドは、ヌクレアーゼ安定性の増強、結合親和性の増大、またはいくつかの他の有益な生物学的特性を付与し得る。ある特定の実施形態では、核酸は、化学修飾されたリボフラノース環部分を含む。化学的に修飾されたリボフラノース環の例としては、置換基の付加(5’および/または2’置換基を含む)、 二環式核酸を形成するための2つの環原子の架橋、 S、N(R)、またはC(R)(R)(R=H、C-C12アルキルまたは保護基)によるリボシル環酸素原子の置換、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
いくつかの例では、本明細書に記載の操作された核酸は、修飾された糖または糖類似体を含む。したがって、リボースおよびデオキシリボースに加えて、糖部分は、ペントース、デオキシペントース、ヘキソース、デオキシヘキソース、グルコース、アラビノース、キシロース、リキソースまたは糖「類似体」シクロペンチル基であり得る。糖は、ピラノシルまたはフラノシル形態であり得る。糖部分は、リボース、デオキシリボース、アラビノースまたは2’-O-アルキルリボースのフラノシドであり得、糖は、[α]または[β]アノマー配置のいずれかでそれぞれの複素環式塩基に結合し得る。糖修飾としては、2’-アルコキシ-RNA類似体、2’-アミノ-RNA類似体、2’-フルオロ-DNA、および2’-アルコキシ-、またはアミノ-RNA/DNAキメラが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、糖修飾は2’-O-メチル-ウリジン、または2’-O-メチル-シチジンを含み得る。糖修飾には、2’-O-アルキル-置換デオキシリボヌクレオシド、および2’-O-エチレングリコール様リボヌクレオシドが含まれる。
【0163】
糖部分に対する修飾には、リボースおよびデオキシリボースの天然修飾ならびに非天然修飾が含まれる。糖修飾としては、2’位における以下の修飾、OH、 F、 O-、S-、またはN-アルキル、 O-、S-、またはN-アルケニル、 O-、S-またはN-アルキニル、 または、O-アルキル-O-アルキルが挙げられるが、これらに限定されず、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルが、置換もしくは無置換のC~C10のアルキル基またはC~C10のアルケニルおよびアルキニルである。2’糖修飾としてはまた、-O[(CH)nO]m CH、-O(CHOCH、-O(CHNH、-O(CH)nCH、-O(CH)nONH、および-O(CHON[(CH)n CH)]が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、nおよびmは1~約10である。2’位における他の核酸修飾としては、C~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリール、O-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SO、CH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、操作された核酸の薬物動態特性を改善するための基、または操作された核酸の薬力学特性を改善するための基、および類似の特性を有する他の置換基が挙げられるが、これらに限定されない。同様の修飾はまた、糖上の他の位置、特に、3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位または2’-5’連結操作核酸および5’末端ヌクレオチドの5’位で行われ得る。化学修飾された糖はまた、CHおよびSなど、架橋環酸素に修飾を含有するものを含む。ヌクレオチド糖類似体はまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有し得る。修飾された糖部分を有する核酸の例としては、5’-ビニル、5’-メチル(RまたはS)、4’-S、2’-F、2’-OCH、および2’-O(CH)2OCH置換基を含む核酸が含まれるが、これらに限定されない。2’位の置換基はまた、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、O-(C1-C10アルキル)、OCF3、O(CHSCH、O(CH-O-N(R)(R)、およびO-CH-C(=O)-N(R)(R)から選択することもでき、各RおよびRは、独立して、Hまたは置換もしくは非置換のC-C10アルキルである。
【0164】
特定の実施形態では、本明細書に記載される核酸は、1つ以上の二環式核酸を含む。特定のこのような実施形態では、二環式核酸は、4’リボシル環原子と2’リボシル環原子との間に架橋を含む。ある実施態様において、本明細書に提供される核酸は、架橋が4’~2’二環式核酸を含む、1つ以上の二環式核酸を含む。このような4’~2’二環式核酸の例としては、式4’-(CH)-O-2’(LNA);4’-(CH)-S-2’;4’-(CH)2-O-2’(ENA);4’-CH(CH)-O-2’および4’-CH(CH 2OCH)-O-2’、およびその類似体;4’-C(CH)(CH)-O-2’およびその類似体、うちの1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
いくつかの態様では、本明細書に記載の核酸修飾は、ヌクレオチドの塩基(例えば、核酸塩基)の修飾を含む。核酸塩基の例としては、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を挙げることができる。これらの核酸塩基は、本明細書に記載される操作された核酸において修飾または置換され得る。ヌクレオチドの核酸塩基は、プリン、ピリミジン、プリンまたはピリミジン類似体から独立して選択することができる。いくつかの態様では、核酸塩基は、天然に存在する塩基または塩基の合成誘導体であり得る。
【0166】
免疫チェックポイント阻害剤およびモジュレーター
免疫チェックポイントは、免疫系の調節因子である。それらは、ヒト腫瘍の免疫回避(immune evasion)および逃避(escape)において重要な役割を果たす。それらのモジュレーターは、がん治療分野において有意な有効性を示している(Wei et al.,Cancer Discov. 2018.10.1158/2159-8290を参照)。腫瘍から分泌される場合、そのような免疫モジュレーターの腫瘍内濃度はより高く、それらの全身濃度はより低い。この改善された薬物動態プロファイルは、これらの薬剤に関連する有効性を高め、毒性を低下させることができる。いくつかの実施形態では、ペイロードは、免疫チェックポイント阻害剤、すなわち、免疫チェックポイントタンパク質に対するアンタゴニスト抗体剤、例えば、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA-4、抗TIM3、抗BTLA、抗VISTA、抗LAG-3、抗TIGIT、抗CD39、抗SIRP-αであり得るか、またはそれらを含み得る。いくつかの他の実施形態では、ペイロードは、CD-28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD27に対するアゴニスト抗体であるか、またはそれを含み得る。いくつかの他の実施形態では、ペイロードは、CD80、CD86およびOX40Lなどの共刺激分子である。
【0167】
サイトカイン
サイトカインは、免疫細胞の調節において重要な役割を有する。IL-2およびIFN-アルファは、転移性黒色腫および腎細胞がん(高用量、ボーラスII-2)およびステージIIIの黒色腫(IFN-アルファ)の処置のためにFDAにより承認された最初の2つの免疫療法サイトカインであった(LeeおよびMargolin、Cancers(Basel)。2011 Dec;3(4):3856-3893).しかし、それらの臨床的使用は、全身毒性の問題によって制限される(Rosenberg,J Immunol,2014,192(12)5451-5458)。当業者は、サイトカインの腫瘍選択的産生および分泌がそれらの治療ウインドウを大いに改善し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するためのペイロードは、IL-2、IL-2スーパーカイン/ムテイン、IL-12、IL15、IL15、IL15R-アルファ融合体、Il-23、IL-36、TNF-アルファ、IFN-アルファ、IFN-ガンマ、FLT3リガンド、CCL4、RANTES、GM-CSF、またはそれらの操作された変異体もしくは融合体であり得る。
【0168】
いくつかの態様では、少なくとも1つのmRNAを利用する組成物または方法が本明細書に記載され、mRNAは、少なくとも1つのサイトカイン(例えば、少なくとも1つのインターロイキンまたは少なくとも1つのインターフェロン)をコードする。本明細書に記載のmRNAによってコードされるサイトカインの非限定的な例としては、4-1BBL、アシル化刺激タンパク質、アディポカイン、アルビインターフェロン、APRIL、Arh、BAFF、Bcl-6、CCL1、CCL1/TCA3、CCL11、CCL12/MCP-5、CCL13/MCP-4、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17/TARC、CCL18、CCL19、CCL2、CCL2/MCP-1、CCL20、CCL21、CCL22/MDC、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3、CCL4、CCL4L1/LAG-1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CD153、CD154、CD178、CD40LG、CD70、CD95L/CD178、Cerberus(タンパク質)、ケモカイン、CLCF1、CNTF、コロニー刺激因子、共通b鎖(CD131)、共通g鎖(CD132)、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CXCL2、CXCL2/MIP-2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、EDA-A1、Epo、エリスロポエチン、FAM19A1、FAM19A2、FAM19A3、FAM19A4、FAM19A5、Flt-3L、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド、Foxp3、GATA-3、GcMAF、G-CSF、GITRL、GM-CSF、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、肝細胞増殖因子、IFNA1、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA2、IFNA4、IFNA5/IFNaG、IFNA7、IFNA8、IFNB1、IFNE、IFNG、IFNZ、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFNω/IFNW1、IL-1、IL-10、IL-10ファミリー、IL-10様、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-17ファミリー、IL-17A-F、IL-18、IL-18BP、IL-19、IL-1A、IL-1B、IL-1F10、IL-1F3/IL-1RA、IL-1F5、IL-1F6、IL-1F7、IL-1F8、IL-1F9、IL-1様、IL-1RA、IL-1RL2、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-28A、IL-28B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36、IL-37、IL-38、IL-39またはIL-40、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6様、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-9、インフラマソーム、インターフェローム、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンγ、インターフェロンI型、インターフェロンII型、インターフェロンIII型、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン8、IRF4、レプチン、白血病抑制因子(LIF)、白血球促進因子、LIGHT、LTA/TNFB、LT-β、リンホカイン、リンホトキシン、リンホトキシンα、リンホトキシンβ、マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージ炎症タンパク質、マクロファージ活性化因子、M-CSF、MHCクラスIII、種々の造血タンパク質、モノカイン、MSP、ミオカイン、ミオネクチン、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ、オンコスタチンM(OSM)、オプレルベキン、OX40L、血小板因子4、プロメガポエチン、RANKL、SCF、STAT3、STAT4、STAT6、間質細胞由来因子1、TALL-1、TBX21、TGF-α、TGF-β、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TNF、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF12、TNFSF13、TNFSF14、TNFSF15、TNFSF4、TNFSF8、TNF-α、TNF-β、Tpo、TRAIL、TRANCE、TWEAK、血管内皮増殖阻害剤、XCL1、またはXCL2を挙げることができる.
この実施形態では、本明細書に記載されるmRNAによってコードされるサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、IFNα、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmRNAによってコードされるサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15およびIFNαである。
【0169】
腫瘍微小環境のモジュレーター
ヒトがんにおいて、腫瘍微小環境は、抗腫瘍免疫応答を防止または抑制するために頻繁に変更される(Binnewies et al.,Nature Medicine,24,541-550,2018; Valkenburg et al.,Nature Reviews Clinical Oncology,15,366-381,2018)。細胞外マトリックスを変更して免疫細胞浸潤を増強する、または環境を炎症させて低温腫瘍を高温腫瘍にする腫瘍微小環境の様々なモジュレーターが存在する。これらのモジュレーターのいくつかは、前臨床モデルにおいて有効性の徴候を示した。しかし、他のいくつかのものは、全身毒性の問題により、前臨床または臨床開発中に脱落しなかった(例えば、Ramanathan et. al,Journal of Clinical Oncology,Jan 18-20,2018 36.4_suppl.208を参照されたい)。本開示は、全身効果を最小限に抑えながら腫瘍内活性を増強することができる、そのような免疫モジュレーターの局所分泌を可能にし得る方法を当業者に教示する。いくつかの実施形態では、ペイロードは、キヌレニナーゼ、アデノシンデアミナーゼ(ADA2)、および15-ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ(15-PGDH)などのタンパク質であり得る。いくつかの他の実施形態では、ペイロードは、細胞外マトリックスを分解し、腫瘍間質を変化させる、ヒアルロニダーゼおよびコラゲナーゼなどの酵素であり得る。
【0170】
細胞表面抗原
当業者は、腫瘍細胞の表面上に発現される抗原またはエピトープを免疫学的に標的化することによってがんを処置するために開発された様々な治療技術を認識している。いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するための翻訳可能核酸によってコードされるペイロードは、対象の免疫系によっておよび/または対象に投与される免疫療法(例えば、CAR-TもしくはCAR-NK療法などの細胞療法、または養子免疫療法)によって免疫学的に標的化され得る、そのような抗原またはエピトープをコードする。いくつかの実施形態では、このような細胞表面抗原またはエピトープは、関連するがん細胞によってすでに発現される抗原またはエピトープであるか、またはそれらを含み得、いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本開示は、そのような抗原またはエピトープの発現の増加がその標的化を促進し得ることを提案する。いくつかの実施形態では、このような抗原またはエピトープは、関連する腫瘍細胞によってまだ発現されていないものであり得、いくつかのそのような実施形態では、それは、既存の免疫応答または療法による標的化を可能にするように選択され得る。
【0171】
遺伝子修飾タンパク質
当業者は、本開示を読むことで、遺伝子修飾酵素に対するその教示の関連性、および例えば、がん細胞のゲノム、トランスクリプトームなどの1つ以上の局面を修飾または破壊するためのそれらの使用を認識している。
【0172】
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される翻訳可能な核酸によってコードされるペイロードは、遺伝子修飾タンパク質(例えば、ヌクレアーゼであるか、またはそれを含む)であるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子修飾酵素は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、CRISPRベースの遺伝子修飾システムの1つ以上の構成要素(例えば、Cas酵素)であるか、またはこれらを含み得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、関連するがん細胞において優先的にまたは関連するがん細胞にのみ見られる配列を標的化する遺伝子修飾タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ)である。しかしながら、当業者は、本開示を読むと、遺伝子修飾タンパク質自体ががん細胞においてのみ優先的に発現されるので、達成する腫瘍選択性の程度が、がん細胞に特に特異的でない配列を標的化する遺伝子修飾タンパク質の使用を可能にすることを理解するであろう。
【0174】
自殺タンパク質
当業者は、一般に「自殺タンパク質(suicide proteins)」(「自殺遺伝子(suicide genes)」によってコードされる)と呼ばれる様々なタンパク質を認識しており、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される翻訳可能な核酸に含まれるペイロード配列が自殺タンパク質であるか、または自殺タンパク質を含むことを理解するであろう。
【0175】
いくつかの実施形態では、自殺タンパク質は、細胞死を誘導するタンパク質である。いくつかの実施形態では、自殺タンパク質は、ネクロトーシス、ピロトーシス、またはフェロトーシスなどの免疫原性細胞死を誘導するタンパク質である。本開示は、ネクロトーシスを誘導する特定の自殺タンパク質が本開示による使用に特に有利であり得るという洞察を提供する。例えば、本開示は、ネクロトーシスが適応免疫応答を誘導および/または促進し得ることを観察する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本開示は、ネクロトーシスが、Fas、TNF、およびLPSを含む免疫リガンドに関与し、RIPKの活性化をもたらすことを観察する。Dhuriya and Sharma J Neuroinflammation.2018 Jul 6;15(1):199;Linkermann and Green N Engl J Med.2014 Jan 30;370(5):455-465.本開示は、適応免疫応答を誘導および/または促進し得るネクロトーシス自殺タンパク質の使用が、腫瘍細胞の阻害、破壊および/または除去を促進し得ることを教示する。いくつかの実施形態では、自殺タンパク質は、アポトーシスを誘導し、いくつかのそのような実施形態では、自殺タンパク質は、p53であるか、またはp53媒介性アポトーシス経路に関与するタンパク質(例えば、PUMA、BIM、BAX、BAK、tBID、CASPASE-3、CASPASE-7、CASPASE-8、CASPASE-9)である。
【0176】
いくつかの実施形態では、自殺タンパク質は、それを発現する細胞を別個の薬剤による死滅に対してより感受性にするタンパク質であるか、またはそれを含む。一例を挙げると、当業者は、哺乳動物に天然には見出されず、かつ酵素を発現しない細胞に無害であり得る物質を毒素に変換する特定のウイルスおよび/または細菌酵素を認識している。いくつかの実施形態では、そのような自殺タンパク質は、そうでなければ不活性な薬剤(例えば、薬物)を、例えば核酸合成を阻害する毒性代謝拮抗物質に変換する酵素であるか、またはそれを含む。いくつかのそのような実施形態では、自殺タンパク質はチミジンキナーゼであり、チミジンキナーゼをコードするペイロード配列は、ガンシクロビルまたはバラシクロビル処置と同時に投与されるか、またはその前に投与される。
【0177】
いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するための自殺タンパク質ペイロードは、混合系列キナーゼドメイン様シュードキナーゼ(MLKL)、受容体相互作用セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼ3(RIPK3)、受容体相互作用セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼ1(RIPK1)、Fas関連タンパク質死ドメイン(FADD)、またはガスデルミンD(GSDMD)、システイン-アスパラギン酸プロテアーゼ、システインアスパルターゼまたはシステイン依存性アスパラギン酸指向性プロテアーゼ(CASPASE-1またはCASP-1)、CASPASE-4、CASPASE-5、CASPASE-12、PYCARD/ASC(PYDおよびCARDドメイン含有Fas関連タンパク質と死ドメイン)またはその変異体である。
【0178】
毒素
いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するためのペイロードは、毒素タンパク質であるか、またはそれを含み得る。当業者は、がん細胞を死滅させるのに有用であり得る様々な毒素タンパク質を認識しているであろう。本明細書に記載されるように、達成される腫瘍選択性の程度は、非がん細胞において発現される場合、非常に強力なペイロードが有意な有害効果を有し得るにもかかわらず、非常に強力なペイロードさえも利用され得るようなものであることが、本開示の1つの特徴である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、がん細胞から分泌されない毒素である。
【0179】
いくつかの実施形態では、毒素は、細菌毒素であるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、毒素は、毒物によって産生される毒素であるか、またはそれを含み得る(例えば、Kozlov et al Rec Pat DNA Gene Sequ1:200,2007を参照されたい)。いくつかの実施形態では、毒素は、植物毒素であるか、またはそれを含み得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、本開示に従ってペイロードとして利用され得る毒素は、ホスホリパーゼまたはレシチナーゼであるか、またはそれらを含み得る。いくつかの実施形態では、有用な毒素は、致死性毒素であるか、または致死性毒素を含み得る。いくつかの実施形態では、有用な毒素は、外毒素であるか、または外毒素を含み得る。いくつかの実施形態では、有用な毒素は、膜孔形成毒素であるか、または膜孔形成毒素を含み得る。いくつかの実施形態では、有用な毒素は、発熱性外毒素であるか、または発熱性外毒素を含み得る。
【0181】
いくつかの実施形態では、ペイロードとして利用され得る毒素は、バチルス(例えば、Bacillus anthracis)、ボルタデラ(例えば、Bortadella pertussis)、クロストリジウム(例えば、Clostridium botulinum)、コリネバクテリウム(例えば、コリネバクテリウム(例えば、Corynebacterium diphtheriae)、エシェリシア(例えば、Eschericia coli)、リステリア(例えば、Listeria monocytogenes)、シュードモナス(Pseudomonas aeruginosa)、ブドウ球菌(例えば、Staphylococus aureus)、連鎖球菌(例えば、Streptococcus)、赤痢菌(例えば、Shigella dysenteriae)である。
【0182】
いくつかの実施形態では、毒素は、コレラ毒素(例えば、A-5B)、ジフテリア毒素(例えば、A/B)、パーツシス毒素(例えば、A-5B)、大腸菌熱不安定性毒素LT(例えば、A-5B)、志賀毒素(例えば、A-5B)、シュードモナス外毒素(例えば、A/B)、ボツリヌス毒素(例えば、A/B)、破傷風毒素(例えば、A/B)、炭疽毒素(例えば、致死因子[LF])、黄色ブドウ球菌剥離剤Bであるか、またはそれらを含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、毒素は、毒素は、ペルフリンジオリシン(例えば、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(clostridium perfringens)由来)、ヘモリシン(例えば、eschericia coli由来)、リステリオリシン(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(listeria monocytogenes)由来)、炭疽EF(例えば、炭疽菌(bacillys anthracis)由来)、αトキシン(例えば、黄色ブドウ球(staphylococcus aureaus)菌由来)、ニューモリシン(例えば、肺炎球菌(streptococcus pneumoniae)由来)、ストレプトライシンPO(例えば、化膿レンサ球菌(streptococcus pyogenes)由来)、ロイコサイジン(例えば、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)由来)であるか、または含み得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、毒素は、外毒素の成分(例えば炭疽毒素の致死因子)であり得、それ自体では、哺乳動物細胞に内在化することができない。
【0185】
いくつかの実施形態では、毒素は、リシンまたはアマニチンであるか、またはそれらを含み得る。いくつかの実施形態では、毒素は、α-アマニチンであるか、またはα-アマニチンを含み得る。
【0186】
誘導性または抑制性タンパク質
遺伝子工学および合成生物学における最近の進歩は、小分子モジュレーターを介して誘導性または抑制性であるタンパク質を可能にする。いくつかの実施形態では、抑制性タンパク質をリガンド誘導分解(LID)ドメインに融合させることができ、その結果、小分子Shield-1で処理するとタンパク質がタンパク質分解的に切断される。いくつかの他の実施形態では、誘導性タンパク質は、二量体化による小分子リミデュシド(small molecule rimiducid)によって活性化される誘導性カスパーゼ-9であり得る。活性化されたカスパーゼ-9は、細胞の急速なアポトーシスをもたらす。いくつかの他の実施形態であって、誘導または抑制は、他の分解ドメイン(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素ベースの不安定化ドメイン(dihydrofolate reductase based destabilization domain))または二量体化ドメイン(例えば、FKBP-FRB)および/または他の小分子(例えば、ドキシサイクリン、ラパマイシン、トリメトプリム)を介して達成され得る。いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するためのペイロードは、誘導性または抑制性タンパク質であるか、またはそれを含み得る。
【0187】
ウイルスタンパク質
当業者は、本明細書に記載のペイロードとして有用なタンパク質を産生する様々なウイルスを認識している。いくつかの実施形態では、ペイロードは、ウイルスタンパク質であるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、ペイロードは、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)のLMP1タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、ペイロードは、腫瘍溶解性ウイルスタンパク質であるか、またはそれを含み得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、ペイロードは、ウイルス複製タンパク質であるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、ウイルス複製タンパク質は、ウイルス複製サイクルに必要なタンパク質である。いくつかの実施形態では、ウイルス複製タンパク質は酵素である。いくつかの実施形態では、ウイルス複製タンパク質は、プロテアーゼ、ポリメラーゼ、または転写酵素である。
【0189】
製造
当業者は、本開示を読むことで、本明細書に記載される翻訳可能な核酸を生成するために有用に用いることができる様々な技術が利用可能であることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、このような産生は、ex vivo(すなわち、本明細書に記載されるがん処置を必要とする対象の外部)であり得、いくつかの実施形態では、このような産生はin vivoであり得る。
【0190】
いくつかの実施形態では、翻訳可能な核酸は、化学合成および/または化学修飾(例えば、キャッピング)によって、全体的または部分的に生成され得る
【0191】
いくつかの実施形態では、翻訳可能な核酸は、テンプレート核酸のコピー(例えば、複製または転写を介して)によって、全体的または部分的に生成され得る。いくつかの実施形態では、そのようなコピーはex vivoであり得、いくつかの実施形態では、in vivoであってもよい。
【0192】
送達
当業者は、本開示を読むことで、本開示に従って(少なくとも)がん細胞への翻訳可能な核酸の送達を達成するために様々な技術が利用可能であることを理解し、さらに、送達のいくつかの様式が翻訳可能な核酸(例えば、mRNA)を含む組成物の投与を含むことを理解するであろう、また、送達のいくつかの様式は、(例えば、翻訳可能な核酸をコードまたは鋳型化するベクターの投与を介して)投与後に翻訳可能な核酸が生成される組成物の投与を含む。
【0193】
ナノ粒子送達
本明細書に記載されるように、当業者は、哺乳動物(例えば、ヒト)対象内を含む、細胞への核酸の効果的な送達を達成するために、様々な投与系が開発されていることを認識するであろう。
【0194】
このような利用可能な技術の中には、例えば、ヒドロゲル、脂質、および/またはポリマーナノ粒子技術を含む様々なナノ粒子技術がある。
【0195】
いくつかの実施形態では、核酸は、脂質ナノ粒子(LNP)を使用して本開示に従って対象に送達される。本明細書で使用される場合、語句「脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle)」は、1つ以上の脂質(例えば、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、およびPEG修飾脂質)を含む移送ビヒクルを指す。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、核酸の1つ以上のコピーを1つ以上の標的細胞に送達するように製剤化される。適切な脂質の例としては、例えば、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシド)が挙げられる。
【0196】
いくつかの実施形態では、核酸は、ポリマーナノ粒子を使用して、本開示に従って対象に送達される。適切なポリマーとしては、例えば、ポリアクリレート、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリン、デンドリマーおよびポリエチレンイミンを挙げることができる。
【0197】
いくつかの実施形態では、本発明の核酸の送達に使用するための脂質は、参照により本明細書に援用される国際公開WO2010/053572に記載されているものを含む。特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、例えば、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-(9Z、12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-l-イル)テトラコサ-15,18-ジエン-1-アミン(HGT5000)、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-(9Z、12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-4,15,18-トリエン-l-アミン(HGT5001)、および(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1)-イル)テトラコサ-5,15,18-トリエン-1-アミン(HGT5002)、)など、2012年3月29日に出願された国特許仮出願第61/617,468号(参照により本明細書に援用される)に記載のイオン化可能なカチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子を使用する。
【0198】
いくつかの実施形態では、脂質N-[l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリドまたは「DOTMA」を使用する。(Figner et al.(Proc.Nat’l Acad.Sci.84,7413(1987);U.S.Pat.No.4,897,355).DOTMAは、単独で製剤化することができるか、または中性脂質、ジオレオイルホスファチジル-エタノールアミンまたは「DOPE」または他のカチオン性もしくは非カチオン性脂質と組み合せてリポソーム輸送ビヒクルまたは脂質ナノ粒子にすることができ、そのようなリポソームは、標的細胞への核酸の送達を増強するために使用することができる。他の適切な脂質としては、例えば、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミドまたは「DOGS」、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン)カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパンアミニウムまたは「DOSPA」が挙げられる(Behr et al.Proc.Nat.’l Acad.Sci.86,6982(1989);U.S.Pat.No.5,171,678;U.S.Pat.No.5,334,761))、l,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパンまたは「DODAP」、l,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパンまたは「DOTAP」が挙げられる。企図される脂質はまた、l,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンまたは「DSDMA」、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンまたは「DODMA」、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンまたは「DLinDMA」、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンまたは「DLenDMA」、N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリドまたは「DODAC」、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアルノニウムブロミドまたは「DDAB」を含む、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミドまたは「DMRIE」、3-ジメチルアミノ-2-(コレスタ-5-エン-3-β-オキシブタン-4-オキシ)-l-(cis,cis-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパンまたは「CLinDMA」、2-[5’-(コレスタ-5-エン-3-β-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-l-(cis,cis-9’、l-2’-オクタデカジエンオキシ)プロパンまたは「CpLinDMA」、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミンまたは「DMOBA」、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパンまたは「DOcarbDAP」、2,3-ジリノレオイルオキシ-Ν,Ν-ジメチルプロピルアミンまたは「DLinDAP」、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパンまたは「DLincarbDAP」、,2-ジリノレオイルカルバミル-3- ジメチルアミノプロパンまたは「DLinCDAP」2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソランまたは「DLin- -DMA」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[l,3]-ジオキソランまたは「DLin-K-XTC2-DMA」、および2-(2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,l 2-ジエン-1-イル)-l,3-ジオキソラン-4-イル)-N,N-ジメチルエタンアミン(DLin-KC2-DMA))(WO2010/042877;Semple et al.,Nature Biotech.28:172-176(2010)(Heyes,J.,et al.,J Controlled Release 107:276-287 (2005); Morrissey, DV., et al.,Nat.Biotechnol.23(8):1003-1007(2005); PCT Publication WO2005/121348A1を参照されたい),DLin-MC3-DMA(WO2015199952A1 Tam and Cullis Pharmaceutics.2013 Sep;5(3):498-507を参照されたい)またはそれらの混合物を含む。コレステロールベースのカチオン性脂質の使用もまた、本発明によって企図される。このようなコレステロールベースのカチオン性脂質は、単独で、または他のカチオン性もしくは非カチオン性脂質と組み合わせて使用することができる。適切なコレステロールベースのカチオン性脂質としては、例えば、DC-Cho1(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレステロール)、l,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジン(Gao,et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.179,280(1991);Wolf et al.BioTechniques 23,139(1997);U.S.Pat.No.5,744,335)、またはICEが挙げられる。
【0199】
いくつかの実施形態では、LNPは、(1)「カチオン性」および/またはアミノ(イオン化可能)脂質、(2)リン脂質および/または多価不飽和脂質(ヘルパー脂質)、(3)構造脂質(例えば、ステロール)、および/または(4)ポリエチレングリコール(PEG 脂質)を含有する脂質の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、WO2021026358に記載されるものである。
【0200】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、少なくとも1つのカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのカチオン性イオン化脂質を含むLNPを提供する。いくつかの実施形態では、「カチオン性イオン化脂質」という用語は、電荷(pKa)を獲得することができる窒素原子を有する脂質および脂質様分子を指す。いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するためのカチオン性イオン化可能脂質は、生理学的pHで5、6、7、8、9、10、11のpKaを有する。いくつかの実施形態では、カチオン性イオン化可能脂質は、生理学的pHではプロトン化されるが、5、6、7、8、9、10、11、または12を超えるpHでは脱プロトン化され、電荷を有さない1つ以上の基を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性イオン化可能脂質は、5、6、7、8、9、10、11、または12を超えるpHではプロトン化され、電荷を有する1つ以上の基を含む。いくつかの実施形態では、イオン化可能なカチオン基は、生理学的pHでカチオン基を形成することができる1つ以上のプロトン化可能なアミンを含有し得る。
【0201】
本開示によって提供される1つの洞察は、本明細書に記載される特定の範囲内のpKaを有するカチオン性イオン化可能な脂質の使用が、例えば、本明細書に記載されるLNP調製物における核酸の送達に特に有用であり得ることである。具体的には、いくつかの実施形態では、カチオン性イオン化可能脂質は高いpKAを有する。いくつかの実施形態では、高いpKaは、7より大きいpKaである。いくつかの実施形態では、高いpKaは、7.4より大きいpKaである。いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するためのカチオン性イオン化可能脂質は、7~8、7.5~8.5、8~9、8.5~9.5、9~10のpKaを有する。いくつかの実施形態では、本開示に従って使用するためのカチオン性イオン化可能脂質は、7.2~8.2、7.4~8.4、7.6~8.6、7.8~8.8、8.0~9.0、8.2~9.2、8.4~9.4、8.6~9.6、8.8~9.8、9.0~10.0のpKaを有する。いくつかの実施形態では、有用なカチオン性イオン化可能脂質は、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、または10.0のpKaを有する。この洞察は、pKa>7がLNPペイロード送達に最適ではないという当分野における理解に照らして特に驚くべきことである。Jayaraman et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2012,51,8529-8533を参照されたい。実際に、Jayaramanらは、LNP効力は、pKaが6.2~6.5の範囲外である場合に急速に減少すると述べている。さらに、LNPの筋肉内投与に関して、Hassett et al.,Molecular Therapy:Nucleic Acids Vol.15 April 2019は、6.6~6.9の範囲の脂質pKaが最適であると述べている。
【0202】
いくつかの実施形態では、高いpKA(例えば>7)を有するカチオン性イオン化可能な脂質は、WO2020219876、US20210162053、US20160317676、およびWO2021113365に開示または記載されており、それらの各々は、その全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、高いpKA(例えば、>7)を有するカチオン性イオン化可能な脂質は、表4に列挙されるものから選択されるもの。
【0203】
【表5-1】
【0204】
【表5-2】
【0205】
(K10)DC-コレステロール
とりわけ、本開示は、本明細書に記載されるように、LNPにおける高いpKaのカチオン性イオン化可能な脂質の使用が、肺への核酸の送達を達成するために特に有用であり得ることを実証する。
【0206】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも第1のカチオン性イオン化可能脂質および第2のカチオン性イオン化可能脂質を含むLNPを提供する。いくつかのこのような実施形態では、このような少なくとも第1および第2のカチオン性イオン化可能な脂質のうちの複数(例えば、それぞれ)は、本明細書中に記載されるように、高いpKa(例えば、7超、例えば、7.4超)を有する。あるいは、いくつかのそのような実施形態では、1つ(すなわち、第1の)カチオン性イオン化可能な脂質のみが、本明細書に記載されるような高いpKa(例えば、7超、例えば、7.4超)を有する。いくつかの実施形態では、第2のカチオン性イオン化可能脂質は、非高pKa脂質、例えば、であり、これは、7未満、例えば、約6.8、6.6、6.4、6.2、6.0、5.8、5.6、5.4、5.2、5.0以下のpKaを有する。いくつかの実施形態では、非高pKa脂質(例えば、第2の脂質)は、約6.4以下のpKaを有する。いくつかの実施形態では、非高pKa脂質(例えば、第2の脂質)は、約6.4のpKaを有する。いくつかの実施形態では、非高pKa脂質(例えば、第2の脂質)は、中性pKaを有する。
【0207】
いくつかの実施形態では、非高いpKa(例えば、<7)を有するカチオン性イオン化可能な脂質は、Finn et al.,2018 Cell Reports 22,2227-2235、 Jayaraman et al.,Angew. Chem.Int.Ed.2012,51,8529-8533、 Hassett et al.,Molecular Therapy:Nucleic Acids Vol.15 April 2019、 WO2015074085、 WO2020118041、 WO2020072605、 WO2020252589、 WO2021055849、 WO2018232120、 WO2021030701、 WO2020146805、 WO2019036000、 WO2018200943、 およびWO2018191657に開示または記載され、これらの文献のそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、非高pKA(例えば、<7)を有するカチオン性イオン化可能脂質は、表5に列挙されるものから選択されるものである。
【0208】
【表6-1】
【0209】
【表6-2】
【0210】
いくつかの実施形態では、LNPは、本明細書に記載のように、約0~80mol%の高pKaカチオン性イオン化脂質を含み、いくつかの実施形態では、LNPは、一緒になって、そのようなLNPの0~80mol%を構成する2つ以上の高pKaカチオン性イオン化脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約20~80mol%の高pKaのカチオン性イオン化脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、7-、75、80mol%の高pKaのカチオン性イオン化脂質を含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、LNPは、非高pKa(例えば、約6.4のpKaなどの約7未満のpKa、または中性のpKaを特徴とする)であるカチオン性イオン化可能な脂質を約0~60mol%含み、いくつかの実施形態では、LNPは、一緒になって、そのようなLNPの0~60mol%を構成する2つ以上の非高pKaカチオン性イオン化脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60mol%の非高pKaカチオン性イオン化脂質を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのステロールを含むLNPを提供する。いくつかの実施形態では、LNPは、約0~40mol%のステロールを含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約0、5、10、15、20、25、30、35、40mol%のステロールを含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、ステロールは、コレステロール、またはその変異体もしくは誘導体である。いくつかの実施形態では、コレステロールは修飾され、例えば酸化される。非修飾コレステロールは、酵素によって作用されて、側鎖または環酸化されている変異体を形成することができる。いくつかの実施形態では、コレステロールは、β環構造上または炭化水素尾部構造上で酸化され得る。開示されるLNPにおける使用のために考慮される例示的なコレステロールとしては、25-ヒドロキシコレステロール(25-OH)、20α-ヒドロキシコレステロール(20α-OH)、27-ヒドロキシコレステロール、6-ケト-5α-ヒドロキシコレステロール、7-ケトコレステロール、7β-ヒドロキシコレステロール、7α-ヒドロキシコレステロール、7β-25-ジヒドロキシコレステロール、β-シトステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、側鎖酸化コレステロールは、他のコレステロール変異体と比較して、カーゴ送達を増強することができる。いくつかの実施形態では、コレステロールは非修飾コレステロールである。
【0214】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのヘルパー脂質を含むLNPを提供する。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質はリン脂質である。いくつかの実施形態では、LNPは、約0~20mol%のヘルパー脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約0、5、10、15、20mol%のヘルパー脂質を含む。
【0215】
例示的なリン脂質としては、1,2-distearoyl-snglycero-3-phosphocholine(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロホスホコリン(DUPC)、l-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-0-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル snグリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME16.0PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、1-ステアロイル-2 オレオイルホスファチジルコリン(SOPC)、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、リン脂質はDSPCである。いくつかの実施形態では、リン脂質はDMPCである。
【0216】
いくつかの実施形態では、リン脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(スクシニル)(スクシニル PE、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(スクシニル)(スクシニル-DPPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、またはそれらの組合せを含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのPEG化脂質を含むLNPを提供する。いくつかの実施形態では、LNPは、約0~25mol%のPEG化脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約0、5、10、15、20、25mol%のPEG化脂質を含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、PEG化脂質の包含を使用して、in vitroでの脂質ナノ粒子コロイド安定性およびin vivoでの循環時間を増強することができる。いくつかの実施形態では、PEG化は、PEG部分が血液循環中で徐々に放出されるという点で可逆的である。PEG化脂質の例としては、C6~C20の長さを有する飽和または不飽和アルキル鎖にコンジュゲートしたPEG、PEG-修飾-28-ホスファチジルエタノールアミン、PEG-修飾ホスファチジン酸、PEG-修飾セラミド(PEG-CER)、PEG-修飾ジアルキルアミン、PEG-修飾ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、PEG-修飾ジアルキルグリセロール、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、PEG化脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPE、PEG-DSG、またはPEGDDSPE脂質であり得る。
【0219】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのPEGリガンドを含むLNPを提供する。いくつかの実施形態では、LNPは、約0~2モル%のPEGリガンドを含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約0、0.01、0.05、0.1、0.5、0.75、1、1.5、1.75、2mol%のPEGリガンドを含む。
いくつかの実施形態では、リガンド(例えば、PEGリガンドに含まれるような)は、細胞表面タンパク質を標的化する抗体、ヒアルロン酸、小分子、ペプチド、および/またはインテグリンを標的化するペプチドを含む。
【0220】
ベクター送達
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の翻訳可能な核酸は、翻訳可能な核酸をコードおよび/または鋳型化する核酸ベクターの投与によって対象に送達され得る。いくつかの実施形態では、有用なベクターは、ウイルスベクターであり得、またはウイルスベクターを含み得る。
【0221】
いくつかの実施形態では、ベクター系(例えば、ウイルスベクター系)は、天然に発見される成分および/または配列(すなわち、野生型成分および/または配列)であるか、またはそれらを含み得、いくつかの実施形態では、ベクター系は、操作された成分および/または配列(すなわち、その配列が適切な野生型参照(wild type reference)に対して修飾されている成分および/または野生型参照において共に発見されないが、例えば、複数の異なる供給源からの成分の集合を表し得る成分)であるか、またはそれらを含み得る。
【0222】
当業者は、本開示に従って有用であり得る様々なウイルスベクター系に精通している。
【0223】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクター系は、がん細胞に優先的に感染するウイルス(例えば、腫瘍溶解性ウイルス)の成分であるか、またはそれを含み得る。当業者は、例えば、ワクシニアウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レオウイルス、セネカウイルス、およびアデノウイルスを含む様々な腫瘍溶解性ウイルスを認識している。
【0224】
本開示は、腫瘍溶解性ウイルスベクター系の使用が、例えば、腫瘍細胞を死滅させる相補的機構を潜在的に提供することにおいて、特定の利点を有し得るという洞察を提供する。
【0225】
しかしながら、本明細書に記載されるように、本開示に従って達成される腫瘍選択性の程度は、核酸送達ベクターの腫瘍選択性を本開示の多くの実施形態にとって重要でないものにする。
【0226】
対象
本明細書に記載されるように、本開示は、がんの処置に特に有用な技術を提供する。
【0227】
いくつかの実施形態では、提供される技術は、がんに罹患している対象に適用される。すなわち、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような翻訳可能な核酸(少なくとも1つの腫瘍選択的翻訳配列要素およびペイロードコード配列を含む)は、(例えば、翻訳可能な核酸を含む組成物の投与によって、または翻訳可能な核酸が対象においてまたは対象によって生成されるようにする組成物の投与によって)送達される。
【0228】
いくつかの実施態様では、対象は、他の療法(例えば、がんおよび/またはがんもしくはその処置の1つ以上の副作用を処置するための他の療法)を受けたことがあり、受けていて、および/または受けることになる。いくつかのそのような実施形態では、ペイロードは、他の療法に対する細胞の感受性を増加させるタンパク質であるか、またはそれを含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、対象は、健常細胞において終止コドンリードスルーを引き起こすことが知られている医薬品を受けていない。いくつかの実施形態では、対象は、アミノグリコシドおよび/またはマクロライドを受けていない。
【0230】
いくつかの実施形態では、対象は、嚢胞性線維症および/またはデュシェンヌ型筋ジストロフィー療法(例えば、AtalurenまたはPTC124)を受けていない。
【0231】
いくつかの実施形態では、対象は、ピロナリジンテトラホスフェート(抗マラリア)、およびカリウムパラ-アミノベンゾエート(PABA、ペイロニー病に使用される)、実験化合物RTC13、RTC14、およびNB54、ならびに/またはハーブサプリメントエスシンを受けていない。
【0232】
いくつかの実施形態では、対象は、ダイアモンド-ブラックファン貧血(Diamond-Blackfan anemia)、先天性角化症(Dyskeratosis congenita)、シュワッハマン-ダイアモンド症候群(Shwachman-Diamond syndrome)、5q-骨髄異形成症候群(5q-myelodysplastic syndrome)、トリーチャーコリン症候群(Treacher Collins syndrome)、軟骨‐毛髪形成低下症(Cartilage-hair hypoplasia)、孤立性先天性無症候群(solated congenital asplenia)、ボーエン‐コンラジ症候群(Bowen-Conradi syndrome)、北米インディアン小児肝硬変(North American Indian childhood cirrhosis)などのリボソーム症に罹患していない。
【0233】
がん治療に対する耐性または難治性
いくつかの実施形態では、提供される技術は、処置を受けたかまたは受けている、がんに罹患している対象に適用される。いくつかの実施形態では、対象は、免疫チェックポイント阻害剤療法を受けたことがあるか、または受けている。いくつかの実施形態では、対象は、対象が受けたことがある免疫チェックポイント療法に対して抵抗性または不応性である。いくつかの実施形態では、提供される技術は、がん不応性または免疫チェックポイント療法の診断に基づいて対象に適用される。いくつかの実施形態では、対象は、免疫チェックポイント療法再発(例えば、免疫チェックポイント療法に対する非有益な応答、または進行性疾患)を実証および/または診断されている。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント療法に対して耐性または不応性のがんのバイオマーカーまたは指標は、Ren et al.,Mol Cancer 19,19(2020)and Barrueto et al.,Transl Oncol.2020 Mar;13(3):100738に記載されている。
【0234】
メソッド
供給
操作された核酸は、当技術分野における任意の方法によって、細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、操作された核酸は、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。いくつかの実施形態では、操作された核酸は、リン酸カルシウム沈殿(calcium phosphate precipitation)、リポフェクション(lipofection)、パーティクルボンバードメント法(particle bombardment)、マイクロインジェクション(microinjection)、遺伝子銃(gene gun)、エレクトロポレーション(electroporation)などの物理的方法を介して細胞に送達することができる。
【0235】
操作された核酸コードを細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、パーティクルボンバードメント法、マイクロインジェクション、遺伝子銃、エレクトロポレーションなどが挙げられる。操作された核酸を宿主細胞に導入するための1つの方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0236】
非天然にそれをコードする操作された核酸を細胞に導入するための化学的手段は、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、球状核酸(SNA)、リポソーム、または脂質ナノ粒子を含む脂質ベースの系を含み得る。In vitroおよびin vivoでの送達ビヒクルとして使用するためのコロイド系の例は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。標的化ナノ粒子を有する操作された核酸または操作された核酸をコードするベクターの送達など、最先端の核酸の標的化送達の他の方法が利用可能である。
【0237】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用は、操作された核酸または操作された核酸をコードするベクターの細胞への導入のために企図される(in vitro、ex vivo、またはin vivoによる)。別の態様では、ベクターは脂質と結合(associated)することができる。脂質と結合したベクターは、リポソームの水性内部にカプセル化され、リポソームの脂質二重層内に散在し、リポソームおよび操作された核酸の両方と結合した連結分子を介してリポソームに付着され(attached)、リポソーム中に捕捉され、リポソームと複合体化され、脂質を含有する溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質中の懸濁液として含有されるか、ミセルと含有されるかもしくは複合体化されるか、またはそうでなければ脂質と結合され得る。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、それらは、ミセルとして二層構造で、または「折り畳まれた(collapsed)」構造で存在する。あるいは、それらは単純に溶液中に散在し、おそらくサイズまたは形状が均一でない凝集体を形成する。脂質は、いくつかの実施形態では、天然に存在する脂質または合成脂質である脂肪性物質である。例えば、脂質は、細胞質中に天然に存在する脂肪液滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体、例えば脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドを含有する化合物のクラスを含む。
【0238】
使用に適した脂質は、商業的供給源から得られる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20°Cで保存されることが多い。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム(liposome)」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される様々な単層および多層脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームはしばしば、リン脂質二重層膜および内部水性媒体を有する小胞構造を有すると特徴付けられる。多層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液中に懸濁される場合に自発的に形成される。脂質成分は、閉鎖構造の形成前に自己再配列(self-rearrangement)を受け、脂質二重層間に水および溶解溶質(dissolved solutes)を閉じ込める。しかし、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、いくつかの実施形態では、ミセル構造をとるか、または単に脂質分子の不均一な凝集体として存在する。リポフェクタミン‐核酸複合体も企図される。
【0239】
いくつかの場合において、非ウイルス送達方法は、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、エキソソーム、ポリカチオンまたは脂質:カーゴコンジュゲート(または凝集体)、裸のポリペプチド(例えば、組換えポリペプチド)、裸のDNA、人工ビリオン、およびポリペプチドまたはDNAの薬剤による取り込みを含む。いくつかの実施形態では、送達方法は、本明細書に記載の組成物または操作された核酸を、天然ポリマーまたは合成材料などの少なくとも1つのポリマーとコンジュゲートまたはカプセル化することを含む。ポリマーは、生体適合性または生分解性であり得る。適切な生体適合性、生分解性合成ポリマーの非限定的な例としては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル‐エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、およびポリ(無水物)を挙げることができる。このような合成ポリマーは、複数の異なるモノマー、例えば、乳酸、ラクチド、グリコール酸、グリコリド、ε‐カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p-ジオキサノンなどの2つ以上のホモポリマーまたはコポリマー(例えば、ランダム、ブロック、セグメント化、グラフト)であり得る。例えば、足場は、グリコール酸および乳酸を含むポリマー、例えば、グリコール酸対乳酸の比が90/10または5/95のものから構成され得る。天然に存在する生体適合性の生分解性ポリマー(naturally occurring biocompatible,biodegradable polymers)の非限定的な例としては、糖タンパク質、プロテオグリカン、多糖類、グリコサミノグリカン(GAG)およびこれらの成分に由来する断片、エラスチン、ラミニン、デクロリン、フィブリノーゲン/フィブリン、フィブロネクチン、オステオポンチン、テネイシン、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ORC、カルボキシメチルセルロース、およびキチンを挙げることができる。
【0240】
いくつかの場合では、本明細書に記載される操作された核酸は、パッケージングされ、細胞外小胞を介して細胞に送達され得る。細胞外小胞は、任意の膜結合粒子であり得る。いくつかの実施形態では、細胞外小胞は、少なくとも1つの細胞によって分泌される任意の膜結合粒子であり得る。いくつかの例では、細胞外小胞は、in vitroで合成された任意の膜結合粒子であり得る。いくつかの例では、細胞外小胞は、細胞なしで合成された任意の膜結合粒子であり得る。いくつかの場合では、細胞外ベシクルは、エキソソーム、微小ベシクル、レトロウイルス様粒子、アポトーシス小体、アポトソーム、オンコソーム、エキソフェラー、エンベロープウイルス、エキソメア、または他の非常に大きな細胞外ベシクルであり得る。
【0241】
いくつかの実施形態では、操作された核酸は、DNAおよびRNAベクターの使用などの生物学的方法を介して細胞に送達することができる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用される方法である。他のウイルスベクターは、いくつかの実施形態では、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどに由来する。例示的なウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)、ポックスベクター、パルボウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、または単純ヘルペスウイルスベクター(HSV)が挙げられる。いくつかの例では、レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV、MMLV、MuLV、またはMLV)またはマウス幹細胞ウイルス(MSCV)ゲノムに由来するベクターなどのガンマ‐レトロウイルスベクターを含む。いくつかの例では、レトロウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ゲノムに由来するものなどのレンチウイルスベクターも含む。
【0242】
いくつかの例では、ウイルスベクターは、2つ以上のウイルス由来のウイルス部分を含むキメラウイルスベクターである。さらなる例であって、ウイルスベクターは組換えウイルスベクターである。いくつかの場合では、ベクターは追加の特徴を含む。さらなる特徴は、タグ、シグナル伝達ペプチド、イントロン配列、プロモーター、スタッファー配列などの配列を含み得る。いくつかの場合では、ベクターはシグナル伝達ペプチドを含む。シグナル伝達ペプチドは、シグナル伝達配列、標的化シグナル、局在化シグナル、局在化配列、輸送ペプチド、リーダー配列またはリーダーペプチドと呼ばれることがあり、分泌経路に向けられる新しく合成されたタンパク質の大部分のN末端に存在する短いペプチドである。これらのタンパク質は、特定の小器官(小胞体、ゴルジまたはエンドソーム)内に存在するか、細胞から分泌されるか、またはほとんどの細胞膜に挿入されるタンパク質を含む。いくつかの場合において、本明細書において提供される核酸は、シグナル伝達ペプチドを含み得る。シグナル伝達ペプチドは、任意の長さであり得るが、典型的には15~30アミノ酸長である。シグナル伝達ペプチドは、約10~15、10~20、10~30、15~20、15~25、15~30、20~30、または25~30アミノ酸長である。種々のシグナル伝達ペプチドを利用することができ、ヒト抗体重鎖(Vh)、ヒト抗体軽鎖(Vl)、およびアフリベルセプトを含むが、これらに限定されない。
【0243】
ある実施形態では、ベクターのさらなる特徴はプロモーターを含む。プロモーターは、その下流のDNAから単一のRNAの転写を開始するタンパク質が結合するDNAの配列である。このRNAは、タンパク質をコードし得るか、またはtRNA、mRNA、もしくはrRNAなど、それ自体の機能を有し得る。プロモーターは、DNA上の上流(センス鎖の5’領域に向かって)の遺伝子の転写開始部位の近くに位置する。プロモーターは、約100~1000塩基対の長さであり得る。いくつかの場合では、プロモーターは誘導性プロモーターであり得る。様々なプロモーターが企図され、本開示のベクターにおいて用いることができる。一実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、伸長因子1α(EF1α)プロモーター、サル空胞化ウイルス(SV40)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK1)プロモーター、ユビキチンC(Ubc)プロモーター、ヒトβアクチンプロモーター、CAGプロモーター、テトラサイクリン応答エレメント(TRE)プロモーター、UASプロモーター、アクチン5c(Ac5)プロモーター、ポリヘドロンプロモーター、Ca2+/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKIIa)プロモーター、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、TEF1プロモーター、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GDS)プロモーター、ADH1プロモーター、CaMV35Sプロモーター、Ubiプロモーター、ヒトポリメラーゼIII RNA(H1)プロモーター、U6プロモーター、それらのポリアデニル化構築物、およびそれらの任意の組合せである。いくつかの場合では、プロモーターはCMVプロモーターである。
【0244】
いくつかの実施形態では、ベクターは、2つの異なるプロモーターの発現制御下にある少なくとも2つの発現カセットを含む。そのような配置は、細胞において、2つのシグナル伝達調節因子が同時に、または所望の順番で発現されることを可能にする。
【0245】
処置
本明細書には、本明細書に記載される疾患または疾病を処置する方法が提供される。処置方法は、操作された核酸を必要とする対象に導入することを含み得る。それを必要とする対象に医薬組成物を投与することを含む、疾患または疾病を治療する方法も提供される。医薬組成物は、操作された核酸を含む生物製剤をコードする配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、投与は、全身投与(例えば、静脈内、吸入、硝子体など)を含む任意の適切な投与様式による。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0246】
いくつかの実施形態では、操作された核酸は、ある期間(例えば、2日ごと、週に2回、週に1回、毎週、月に3回、月に2回、月に1回、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、6ヶ月ごと、7ヶ月ごと、8ヶ月ごと、9ヶ月ごと、10ヶ月ごと、11ヶ月ごと、1年に1回)に少なくとも1回投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、ある期間中に2回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、30回、40回、50回、60回、70回、80回、90回、100回)投与される。
【0247】
いくつかの実施形態では、方法は、例えば、腫瘍内、経口、または局所投与を含む様々な形態および経路によって、操作された核酸を治療有効量で投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、腫瘍内、非経口、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内、くも膜下、眼内、胸骨内、眼、内皮、局所、鼻腔内、肺内、直腸、動脈内、くも膜下腔内、吸入、病巣内、皮内、硬膜外、嚢内、被膜下、心臓内、経気管、皮下、くも膜下、または脊髄内投与、例えば注射または注入によって投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、上皮または皮膚粘膜内層を介した吸収によって投与され得る(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜投与)。いくつかの実施形態では、組成物は、複数の投与経路を介して送達される。
【0248】
本開示の薬剤の実際の投与量レベル(例えば、操作された核酸または医薬組成物)は、対象(例えば、免疫化のための対象または処置のための対象)に対して毒性を伴わずに、特定の対象、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成するための薬剤の量を得るように変動され得る。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、排泄速度、治療期間、使用される特定の組成物と組合せて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態および以前の病歴、ならびに医学分野で周知の同様の因子を含む様々な薬物動態因子に依存し得る。
【0249】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療的および/または予防的応答)を提供するように調整され得る。例えば、単回ボーラスを投与され得るか、いくつかの分割用量を経時的に投与され得るか、または治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少もしくは増加させられ得る。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態とは、対象(例えば、免疫のための対象または処置のための対象)に対する単位投与量として適する物理的に離散した単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性剤を含む。本開示の投与単位形態の仕様は、(a)活性薬剤の固有の特性および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体における過敏症の処置のためにそのような活性薬剤を配合する技術に固有の制限によって決定されるか、またそれに直接依存し得る。用量は、環状ポリリボヌクレオチドまたは抗体またはその抗原結合断片の血漿中濃度または局所濃度を参照して決定することができる。用量は、直鎖状ポリリボヌクレオチドまたは抗体またはその抗原結合断片の血漿中濃度または局所濃度を参照して決定することができる。
【0250】
操作された核酸であって、本明細書に記載の操作された核酸を含むベクターまたは医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形であり得る。単位剤形では、製剤は、適切な量の組成物を含有する単位用量に分割され得る。単位剤形では、製剤は、適切な量の1つ以上の直鎖状ポリリボヌクレオチド、抗体もしくはその抗原結合断片、および/または治療剤を含有する単位用量に分割され得る。単位投与量は、製剤の個別の量を含有するパッケージの形態であり得る。非限定的な例は、包装された注射剤、バイアル、およびアンプルである。本明細書に開示される水性懸濁液組成物(aqueous suspension composition)は、単回用量の再閉鎖不可能な容器(non-reclosable container)に包装され得る。複数回用量の再閉鎖可能な容器は、例えば、防腐剤と組合せて、または防腐剤なしで使用され得る。本明細書に開示される注射用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルで、または防腐剤を含む複数回用量容器で存在し得る。
【0251】
絶対的または逐次的な用語、例えば、「will」、「will not」、「shall」、「shall not」、「must」、「must not」、「first」、「initially」、「next」、「successently」、「before」、「after」、「lastly」、および「finally」は、本明細書に開示される本発明の実施形態の範囲を限定するものではなく、例示的なものである。
【0252】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むものとする。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、またはそれらの変形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様に包括的であることが意図される。
【0253】
本明細書で使用される場合、語句「少なくとも1つ(at least one)」、「1つ以上(one or more)」、および「および/または(and/or)」は、動作において結合的および離接的(conjunctive and disjunctive)の両方であるオープンエンド表現である。例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B and C)」、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B,or C)」、「A、BおよびCのうちの1つ以上(one or more of A,B, and C)」、「A、BまたはCのうちの1つ以上(one or more of A,B,or C)」ならびに「A、Bおよび/またはC(A,B,and/or C)」という表現の各々は、A単独、B単独、C単独、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、またはA、BおよびCを共に、を意味する。
【0254】
本明細書で使用される場合、「または(or)」は、「および(and)」、「または(or)」、あるいは「および/または(and/or)」を指し得、排他的および包括的(exclusively and inclusively)の両方で使用され得る。例えば、「AまたはB(A or B)」という用語は、「AまたはB(A or B)」、「AだがBではない(A but not B)」、「BだがAではない(B but not A)」、ならびに「AおよびB(A and B)」を指し得る。場合によっては、文脈は特定の意味を指示し得る。
【0255】
本明細書で説明される任意のシステム、方法、ソフトウェア、およびプラットフォームは、モジュール式である。したがって、「第1の(first)」および「第2の(second)」などの用語は、必ずしも優先順位、重要度の順序、または行為の順序を意味するものではない。
【0256】
「約(about)」という用語は、数または数値範囲に言及する場合、言及される数または数値範囲が、実験変動性内(または統計的実験誤差内)の近似値であることを意味し、数または数値範囲は、例えば、記載される数または数値範囲の1%~15%で変動し得る。実施例では、「約(about)」という用語は、規定の数または値の±10%を指す。
【0257】
「増加した(increased)」、「増加する(increasing)」、または「増加する(increase)」という用語は、本明細書では、概して、静的に有意な量(statically significant amount)だけ増加することを意味するために使用される。いくつかの態様では、「増加した(increased)」または「増加する(increase)」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または最大100%までの増加まで、または参照レベル、標準、もしくは対照と比較して10~100%の間の任意の増加を含む。「増加する(increase)」の他の例は、参照レベルと比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍以上の増加を含む。
【0258】
「減少した(decreased)」、「減少する(decreasing)」、または「減少する(decrease)」という用語は、本明細書では、概して、統計的に有意な量だけ減少することを意味するために使用される。いくつかの態様では、「減少した(decreased)」または「減少する(decrease)」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の減少を意味する、または少なくとも約90%または100%までの減少(例えば、参照レベルと比較した非存在レベルまたは検出不可能なレベル)、または参照レベルと比較した10~100%の間の任意の減少を含む。マーカーまたは症状の文脈では、これらの用語は、そのようなレベルの統計的に有意な減少を意味する。減少は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%またはそれ以上であり得、好ましくは、所与の疾患を有さない個体について正常の範囲内として許容されるレベルまで低下する。
【0259】
実施形態のリスト
本発明の実施形態の以下のリストは、本発明の様々な特徴を開示していると見なされるものであり、これらの特徴は、それらが論じられる特定の実施形態に特有であると見なされ得るか、または他の実施形態に列挙されるような様々な他の特徴と組合せ可能である。したがって、単に特徴が1つの特定の実施形態の下で論じられるので、必ずしもその特徴の使用をその実施形態に限定するものではない。
【0260】
実施形態1.がんに罹患している対象を処置する方法であって、該方法は、上記対象に、1つ以上の操作された核酸および免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程を含み、1つ以上の操作された核酸は、腫瘍選択的翻訳配列要素であるかまたはその相補体である配列要素を含むヌクレオチド配列を含む、方法。
【0261】
実施形態2.がんに罹患している対象を免疫チェックポイント阻害剤療法で処置する方法であって、改善は、1つ以上の操作された核酸および免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含み、1つ以上の操作された核酸は、腫瘍選択的翻訳配列要素であるかまたはその相補体である配列要素を含むヌクレオチド配列を含む、方法。
【0262】
実施形態3.操作された核酸および免疫チェックポイント阻害剤は、続いて、同時に、または補助的に投与される、実施形態1または実施形態2に記載の方法。
【0263】
実施形態4.免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、GITR、OX40、LAG-3、KIR、TIM-3、TIGIT、BTLA、CBLB、CISH、VISTA、B7-H3、CSF-1R、GITR CD28、CD40、またはCD137を標的化する1つ以上の薬剤を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0264】
実施形態5.免疫チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カメリズマブ、カビラリズマブ、ドスタリマブ、シンチルマブ、チセリウムマブ、またはトリパリマブのうちの1つ以上を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
実施形態6.がんに罹患している対象を処置する方法であって、該対象が、第1の免疫チェックポイント阻害剤を受けたことがあるか、または受けていて、該方法は、対象に、1つ以上の操作された核酸および第2の免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程を含み、操作された核酸は、腫瘍選択的翻訳配列要素であるかまたはその相補体である配列要素を含むヌクレオチド配列を含む。
【0266】
実施形態7.第1の免疫チェックポイント阻害剤および第2の免疫チェックポイント阻害剤は同じである、実施形態6に記載の方法。
【0267】
実施形態8.第1の免疫チェックポイント阻害剤および第2の免疫チェックポイント阻害剤は異なる、実施形態6に記載の方法。
【0268】
実施形態9.対象は、第1の免疫チェックポイント阻害剤に応答していない、実施形態6~8のいずれか1つに記載の方法。
【0269】
実施形態10.がんは、応答も進行性疾患も示さない、実施形態6~8のいずれか1つに記載の方法。
【0270】
実施形態11.対象は、再発または抵抗性の徴候を示す、実施形態6~8のいずれか1つに記載の方法。
【0271】
実施形態12.第1または第2の免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、GITR、OX40、LAG-3、KIR、TIM-3、TIGIT、BTLA、CBLB、CISH、VISTA、B7-H3、CSF-1R、GITR CD28、CD40、またはCD137を標的化する1つ以上の薬剤を含む、実施形態6~8のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
実施形態13.第1または第2の免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カメリズマブ、カビラリズマブ、ドスタリマブ、シンチルマブ、チセリウムマブ、またはトリパリマブのうちの1つ以上を含む、実施形態6~8のいずれか1つに記載の方法。
【0273】
実施形態14.操作された核酸は、脂質ナノ粒子(LNP)によって対象に送達される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0274】
実施形態15.腫瘍選択的翻訳配列要素は、オープンリーディングフレーム内またはその上流の腫瘍選択的リードスルーモチーフであるか、またはそれを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0275】
実施形態16.腫瘍選択的リードスルーモチーフは、上流フランキング配列、終止コドン、および下流フランキング配列を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0276】
実施形態17.腫瘍選択的リードスルーモチーフは、VNNNNNNMNNMWK、NNNVWNNKGHHNH、DVHVNNNCWNNNB、MWBNNNNNNNNNN、WGNNSNHNHDNNN、VNNNNNNMNNMWK、またはVMNNWNKNNNNNN含む群から選択される配列を含み、ここで、VはA、CまたはGを表し、MはAまたはCを表し、WはAまたはT/Uを表し、KはGまたはT/Uを表し、HはA、CまたはT/Uを表し、DはA、GまたはT/Uを表し、BはC、GまたはT/U、SはGまたはCを表し、Nは、リードスルーの終止コドンと下流のフランキング配列の最初の14ヌクレオチドにまたがる領域内の任意のヌクレオチドを表す、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0277】
実施形態18.腫瘍選択的リードスルーモチーフは、下流フランキング配列の最初の50ヌクレオチド内のステムループ、バルジループ、シュードノット、またはそれらの組合せ、および好ましくは終止コドンおよび下流フランキング配列の最初の16ヌクレオチド内に位置するこのステムループの一部、またはそれらの組合せを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0278】
実施形態19.ステムループは、下流フランキング配列の最初の50ヌクレオチド内に20超の塩基対ヌクレオチドを含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0279】
実施形態20.腫瘍選択的リードスルーモチーフは、42%超、48%超、好ましくは54%超のGC含量を有する下流フランキング配列を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0280】
実施形態21.腫瘍選択的リードスルーモチーフは、プロリン残基をコードするコドンを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0281】
実施形態22.オープンリーディングフレームは、自殺タンパク質、細胞表面抗原、抗体剤、毒素、サイトカイン、遺伝子修飾タンパク質、またはウイルス複製タンパク質をコードする、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0282】
実施形態23.オープンリーディングフレームは自殺タンパク質をコードする、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0283】
実施形態24.自殺タンパク質はネクロトーシスを誘導する、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0284】
実施形態25.自殺タンパク質は、構成的に活性なMLKLである、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0285】
実施形態26.自殺タンパク質は、ピロトーシスを誘導する、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0286】
実施形態27.自殺タンパク質は、構成的に活性なガスデルミンDである、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0287】
実施形態28.操作された核酸は、低減された免疫原性を有する、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0288】
実施形態29.対象は、アミノグリコシド抗生物質、マクロライド抗生物質、アタローレン、またはイバカフトール、イバカフトール/ルマカフトールを受けていない、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0289】
実施形態30.対象は、ダイアモンド‐ブラックファン貧血、先天性角化異常症、シュワッハマン‐ダイアモンド症候群、5q-骨髄異形成症候群、トリーチャーコリン症候群、軟骨-毛髪形成不全症、孤立性先天性無症候群、ボーエン-コンラジ症候群、または北米インディアン小児肝硬変に罹患していない、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0290】
実施形態31.投与する工程は、複数の用量を投与することを含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0291】
実施形態32.実施形態1~31のいずれか1つに記載の操作された核酸および免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物。
【0292】
実施形態33.実施形態32に記載の医薬組成物による処置のための個体を選択する方法であって、該方法は、免疫チェックポイント阻害剤による耐性に不応性または抵抗性である個体を同定することを含む。
【0293】
定義
投与:本明細書で使用される場合、「投与(administration)」という用語は、典型的には、組成物の対象または系への投与を指す。当業者は、適切な状況において、対象、例えばヒトへの投与に利用され得る様々な経路を認識しているであろう。例えば、いくつかの実施形態では、投与は全身または局所であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、経腸または非経口であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、注射(例えば、筋肉内、静脈内、または皮下注射)によるものであり得る。いくつかの実施形態では、注射は、ボーラス注射、点滴、灌流、または注入を含み得る。いくつかの実施形態では、投与は局所的であり得る。当業者は、例えば、耳の(耳の)、頬、結膜、皮膚、歯、子宮頸管内、洞内、気管内、腸、硬膜外、羊膜外、体外、間質、腹部内、羊膜内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、心臓内、軟骨内、尾内、海綿体内、腔内、大脳内、槽内、角膜内、冠動脈内、海綿体内、皮内、椎間板内、管内、硬膜内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、病巣内、管腔内、リンパ内、髄内、髄膜内、筋肉内、眼内、卵巣内、心膜内、腹腔内、胸膜内、胸膜内、前立腺内、肺内、胸膜内、髄腔内、静脈内、滑膜内、髄腔内、胸腔内、尿細管内、腫瘍内、鼓室内、子宮内、血管内、静脈内、静脈内ボーラス、静脈内点滴、脳室内、硝子体内、喉頭、鼻腔、鼻腔、眼、経口、口腔咽頭、非経口、経皮、関節周囲、硬膜周囲、神経周囲、歯周、直腸、呼吸器(例えば、吸入)、眼球後、軟組織、くも膜下、皮下、舌下、粘膜下、局所経皮、経粘膜、経胎盤、経気管、尿管、尿道、または膣を含む、www.fda.govに列挙されたものの中から、本明細書に記載される特定の療法と共に使用するための適切な投与経路を認識している。いくつかの実施形態では、投与は、電気浸透、血液透析、浸潤、イオン導入、灌注、および/または閉塞性ドレッシングを含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、断続的(例えば、時間的に分離された複数の用量)および/または周期的(例えば、共通の期間によって分離された個々の用量)投与である投与を含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、連続投与を含み得る。
【0294】
薬剤:本明細書で使用される場合、「薬剤(agent)」という用語は、例えば、小分子、ポリペプチド、核酸、糖類、脂質、金属、またはそれらの組合せもしくは複合体を含む、任意の化学クラスの化合物、分子、または実体を指し得る。いくつかの実施形態では、「薬剤(agent)」という用語は、ポリマーを含む化合物、分子、または実体を指し得る。いくつかの実施形態では、この用語は、1つ以上のポリマー部分を含む化合物または実体を指し得る。いくつかの実施形態では、「薬剤(agent)」という用語は、特定のポリマーまたはポリマー部分を実質的に含まない化合物、分子、または実体を指し得る。いくつかの実施形態では、この用語は、任意のポリマーまたはポリマー部分を欠くか、または実質的に含まない化合物、分子、または実体を指し得る。
【0295】
アミノ酸:本明細書で使用される場合、「アミノ酸(amino acid)」という用語は、例えば、1つ以上のペプチド結合の形成を通して、ポリペプチド鎖に組み込まれ得る任意の実体を指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般的な構造HN-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、非天然アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はD-アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はL-アミノ酸である。本明細書で使用される場合、「標準アミノ酸(standard amino acid)」という用語は、天然に存在するペプチドに通常発見される20個のL-アミノ酸のいずれかを指す。「非標準アミノ酸(nonstandard amino acid)」は、天然源(natural source)に発見されるか、または発見され得るかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中のカルボキシ-および/またはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸は、上記の一般構造と比較して構造修飾を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般構造と比較して、メチル化、アミド化、アセチル化、ペグ化、グリコシル化、リン酸化、および/または置換(例えば、アミノ基、カルボン酸基、1つ以上のプロトン、および/またはヒドロキシル基の)によって修飾され得る。いくつかの実施形態では、このような修飾は、例えば、修飾アミノ酸を含有するポリペプチドの安定性または循環半減期を、他の点では同じ非修飾アミノ酸を含有するポリペプチドと比較して変化させ得る。いくつかの実施形態では、そのような修飾は、修飾アミノ酸を含有するポリペプチドの関連活性を、他の点では同じ非修飾アミノ酸を含有するポリペプチドと比較して有意に変化させない。文脈から明らかであるように、いくつかの実施形態では、「アミノ酸(amino acid)」という用語は、遊離アミノ酸を指すために使用され得、いくつかの実施形態では、それは、ポリペプチドのアミノ酸残基、例えば、ポリペプチド内のアミノ酸残基を指すために使用され得る。
【0296】
抗体:本明細書で使用される場合、「抗体(antibody)」という用語は、特定の標的抗原への特異的結合を付与するのに充分な標準的な免疫グロブリン配列要素を含むポリペプチドを指す。当技術分野において公知であるように、天然で産生されるインタクトな抗体は、2つの同一の重鎖ポリペプチド(それぞれ約50kD)および2つの同一の軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kD)から構成されるおよそ150kDのテトラマー剤であり、これらは、一般に「Y字型(Y-shaped)」構造と呼ばれるものへと互いに会合する。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(各々約110アミノ酸長)-アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)、続いて3つの定常ドメイン、CH1、CH2、およびカルボキシ末端CH3(Yのステムの塩基に位置する)から構成される。「スイッチ(switch)」として知られる短い領域は、重鎖可変領域と定常領域を連結する。「ヒンジ(hinge)」は、CHドメインおよびCH3ドメインを抗体の残りに連結する。このヒンジ領域における2つのジスルフィド結合は、インタクトな抗体において2つの重鎖ポリペプチドを互いに連結する。各軽鎖は、2つのドメイン、すなわちアミノ末端可変(VL)ドメイン、それに続くカルボキシ末端定常(CL)ドメインから構成され、別の「スイッチ(switch)」によって互いに隔てられている。インタクトな抗体テトラマーは、重鎖および軽鎖が単一のジスルフィド結合によって互いに連結されている2つの重鎖‐軽鎖ダイマーから構成され、2つの他のジスルフィド結合が重鎖ヒンジ領域を互いに連結し、その結果、ダイマーが互いに連結し、テトラマーが形成される。天然産生抗体(naturally-produced antibodies)はまた、典型的にはCH2ドメイン上でグリコシル化される。天然抗体の各ドメインは、圧縮された逆平行βバレル中で互いにパックされた2つのβシート(例えば、3、4、または5鎖シート)から形成された「免疫グロブリンフォールド(immunoglobulin fold)」によって特徴付けられる構造を有する。各可変ドメインは、「相補性決定領域(complement determining regions)」として知られる3つの超可変ループ(CDR1、CDR2、およびCDR3)および4つのいくらか不変の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含む。天然抗体が折り畳まれる場合、FR領域は、ドメインのための構造フレームワークを提供するβシートを形成し、重鎖および軽鎖の両方からのCDRループ領域は、それらがY構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位を生成するように、三次元空間において合わせられる(brought together)。天然に存在する抗体のFc領域は、補体系の要素に結合し、また、例えば細胞傷害性を媒介するエフェクター細胞を含むエフェクター細胞上の受容体にも結合する。当技術分野において公知であるように、Fc受容体に対するFc領域の親和性および/または他の結合特性は、グリコシル化または他の修飾によって調節することができる。いくつかの実施形態では、本発明に従って産生および/または利用される抗体は、グリコシル化Fcドメインを含み、そのようなグリコシル化が修飾または操作されたFcドメインを含む。本発明の目的のために、特定の実施形態では、天然抗体において見出される充分な免疫グロブリンドメイン配列を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチドの複合体は、そのようなポリペプチドが天然に産生される(例えば、抗原と反応する生物によって産生される)か、または組換え工学、化学合成、もしくは他の人工システムもしくは方法論によって産生されるかにかかわらず、「抗体(antibody)」と呼ばれ、かつ/または使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体はポリクローナルであり、いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒト抗体に特徴的な定常領域配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体配列要素は、当技術分野で知られているように、ヒト化、霊長類化、キメラなどである。さらに、本明細書で使用される「抗体」という用語は、適切な実施形態において(別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り)、代替提示において抗体の構造的および機能的特徴を利用するための当技術分野で公知のまたは開発された構築物またはフォーマットのいずれかを指し得る。例えば、実施形態において、本発明に従って利用される抗体は、インタクトなIgA、IgG、IgEまたはIgM抗体、二重特異性または多重特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)など)、 抗体断片、例えばFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片および単離されたCDRまたはそれらのセット、 単鎖Fvs、 ポリペプチド-Fc融合体、 単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片などのサメ単一ドメイン抗体)、 ラクダ科動物抗体、 マスクされた抗体(例えば、Probodies(登録商標))、 Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPsTM」)、 単鎖またはタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標))、 VHH、 Anticalins(登録商標)、 Nanobodies(登録商標)ミニボディ、 BiTE(登録商標)、 アンキリンリピートタンパク質またはDARPINs(登録商標)、 Avimers(登録商標)、 DART、 TCR様抗体、 Adnectins(登録商標)、 Affilins(登録商標)、 Trans-bodies(登録商標)、 Affibodies(登録商標)、 TrimerX(登録商標)、 マイクロタンパク質、 Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、 およびKALBITOR(登録商標)から選択されるフォーマットであるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体は、天然に産生される場合に有する共有結合修飾(例えば、グリカンの結合)を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカンの結合、ペイロード[例えば、検出可能部分、治療部分、触媒部分など]、または他のペンダント基[例えば、ポリ-エチレングリコールなど]を含有し得る。
【0297】
抗体剤:本明細書で使用する場合、「抗体剤(antibody agent)」という用語は、特定の抗原に特異的に結合する剤を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、特異的結合を付与するのに充分な免疫グロブリン構造要素を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を包含する。例示的な抗体剤には、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体剤は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒト抗体に特徴的な1つ以上の定常領域配列を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体剤は、当技術分野で公知のように、ヒト化、霊長類化、キメラなどの1つ以上の配列要素を含み得る。多くの実施形態では、「抗体剤(antibody agent)」という用語は、代替提示において抗体の構造的および機能的特徴を利用するための当技術分野で公知のまたは開発された構築物またはフォーマットの1つ以上を指すために使用される。例えば、実施形態において、本発明に従って利用される抗体剤は、インタクトなIgA、IgG、IgEまたはIgM抗体、二重特異性または多重特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)など)、 抗体断片、例えばFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片および単離されたCDRまたはそれらのセット、 単鎖Fvs、 ポリペプチド-Fc融合体、 単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片などのサメ単一ドメイン抗体)、 ラクダ科動物抗体、 マスクされた抗体(例えば、Probodies(登録商標))、 Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPsTM」)、 単鎖またはタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標))、 VHH、 Anticalins(登録商標)、 Nanobodies(登録商標)ミニボディ、 BiTE(登録商標)、 アンキリンリピートタンパク質またはDARPINs(登録商標)、 Avimers(登録商標)、 DART、 TCR様抗体、 Adnectins(登録商標)、 Affilins(登録商標)、 Trans-bodies(登録商標)、 Affibodies(登録商標)、 TrimerX(登録商標)、 マイクロタンパク質、 Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、 およびKALBITOR(登録商標)から選択されるフォーマットであるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体は、天然に産生される場合に有する共有結合修飾(例えば、グリカンの結合)を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカンの結合、ペイロード[例えば、検出可能部分、治療部分、触媒部分など]、または他のペンダント基[例えば、ポリ-エチレングリコールなど]を含有し得る。多くの実施形態では、抗体剤は、そのアミノ酸配列が、相補性決定領域(CDR)として当業者によって認識される1つ以上の構造要素を含むポリペプチドであるか、またはそれを含み、いくつかの態様では、抗体剤は、そのアミノ酸配列が、参照抗体において発見されるものと実質的に同一である少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDRおよび/または少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと配列が同一であるか、または参照CDRと比較して1~5個のアミノ酸置換を含有するかのいずれかであるという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの態様では、含まれるCDRは、参照CDRに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの態様では、含まれるCDRは、参照CDRに対して、少なくとも96%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの態様では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が欠失、付加、または置換されているという点で参照CDRと実質的に同一であるが、含まれるCDRは、そうでなければ参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、含まれるCDR内の1~5個のアミノ酸が欠失、付加、または置換されているという点で参照CDRと実質的に同一であるが、含まれるCDRは、そうでなければ参照CDRと同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、含まれるCDRは、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が参照CDRと比較して置換されているという点で参照CDRと実質的に同一であるが、含まれるCDRは、そうでなければ参照CDRのものと同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、含まれるCDR内の1~5個のアミノ酸が欠失、付加、または置換されているという点で参照CDRと実質的に同一であるが、含まれるCDRは、そうでなければ参照CDRと同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体剤は、そのアミノ酸配列が、免疫グロブリン可変ドメインとして当業者によって認識される構造要素を含むポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、抗体剤は、免疫グロブリン結合ドメインと相同または大部分が相同である結合ドメインを有するポリペプチドタンパク質である。
【0298】
がん:本明細書で使用される場合、「がん(cancer)」という用語は、細胞が、細胞増殖の制御の有意な喪失によって特徴付けられる異常に上昇した増殖速度および/または異常な増殖表現型を示すように、細胞が比較的異常な、制御されていない、および/または自律的な増殖(autonomous growth)を示す疾患、障害、または疾病を指す。いくつかの実施形態では、がんは、1つ以上の腫瘍によって特徴付けられ得る。当業者は、例えば、副腎皮質がん、星状細胞腫、基底細胞がん、カルチノイド、心臓、胆管がん、脊索腫、慢性骨髄増殖性新生物、頭蓋咽頭腫、非浸潤がん、上衣腫、眼内黒色腫、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、組織球増殖、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、骨髄性白血病、骨髄性白血病)リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫[非ホジキンリンパ腫]、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、AIDS関連リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、骨髄異形成症候群、乳頭腫症、傍神経節腫、褐色細胞腫、胸膜肺芽細胞腫、網膜芽細胞腫、肉腫(例えばユーイング肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、子宮肉腫、血管肉腫)、ウィルムス腫瘍、および/または副腎皮質、肛門、虫垂、胆管、膀胱、骨、脳、乳房、気管支、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、眼、卵管、胆嚢、胃腸管、生殖細胞のがん、頭頸部、心臓、腸、腎臓(例えば、ウィルムス腫瘍)、喉頭、肝臓、肺(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん)、口、鼻腔、口腔、卵巣、膵臓、直腸、皮膚、胃、精巣、咽頭、甲状腺、陰茎、咽頭、腹膜、下垂体、前立腺、直腸、唾液腺、尿管、尿道、子宮、膣、または外陰部を含む様々な種類のがんを認識している。いくつかの実施形態では、がんは、1つ以上の固形腫瘍であるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、がんは、1つ以上の血液学的腫瘍であるか、またはそれを含み得る。
【0299】
併用療法:本明細書で使用される場合、「併用療法(combination therapy)」という用語は、対象が2つ以上の治療レジメン(例えば、2つ以上の治療剤)に同時に曝露される臨床的介入を指す。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療レジメンは、同時に投与され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療レジメンは、逐次的に投与され得る(例えば、第2のレジメンの任意の用量の投与の前に第1のレジメンが投与される)。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療レジメンは、重複投与レジメンで投与される。いくつかの実施形態では、併用療法の投与は、他の薬剤またはモダリティを受ける対象へ、1つ以上の治療剤またはモダリティを投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、併用療法は、個々の薬剤が単一の組成物中で一緒に投与されることを必ずしも必要としない(または同時に投与されることを必ずしも必要としない)いくつかの実施形態では、2つ以上の治療剤または併用療法のモダリティは、別々に、例えば、別々の組成物で、別々の投与経路を介して(例えば、ある薬剤を経口的に、別の薬剤を静脈内に)、および/または異なる時点で対象に投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療剤は、組合せ組成物中で一緒に、または組合せ化合物(例えば、単一の化学複合体または共有結合性実体の一部として)中でさえ、同じ投与経路を介して、および/または同時に投与され得る。
【0300】
比較可能:本明細書で使用される場合、「比較可能(comparable)」という用語は、2つ以上の薬剤、実体、状況、疾病のセットなどを指し、これらは、互いに同一ではない場合があるが、当業者が観察される差異または類似性に基づいて結論を合理的に引き出すことができるように、それらの間の比較を可能にするのに充分に類似している。いくつかの実施形態では、条件、疾病、個体、または集団の比較可能なセットは、複数の実質的に同一の特徴および1つまたは少数の異なる特徴によって特徴付けられる。当業者は、文脈において、2つ以上のそのような薬剤、実体、状況、疾病のセットが比較可能であると見なされるために、任意の所与の状況においてどの程度の同一性が必要とされるかを理解するであろう。例えば、当業者は、状況、個体、または集団のセットが、実質的に同一の特徴の充分な数およびタイプによって特徴付けられる場合、状況、個体、または集団の異なるセットの下で、あるいはそれとともに得られる結果または観察される現象における差異が、変動する特徴における変動によって引き起こされるか、またはそれを示すという妥当な結論を保証するのに充分な数およびタイプによって特徴付けられる場合、互いに比較可能であることを理解するであろう。
【0301】
対応する:ポリペプチド、核酸、および化学化合物の文脈において本明細書で使用される場合、「に対応する(corresponding to)」という用語は、適切な参照化合物または組成物との比較による、化合物または組成物中の構造要素、例えば、アミノ酸残基、ヌクレオチド残基、または化学部分の位置/同一性を示す。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー中のモノマー残基(例えば、ポリペプチド中のアミノ酸残基またはポリヌクレオチド中の核酸残基)は、適切な参照ポリマー中の残基に「対応する」と同定され得る。例えば、当業者は、簡潔さの目的で、ポリペプチド中の残基はしばしば、参照関連ポリペプチドに基づく標準番号付けシステムを使用して指定され、その結果、190位の残基に「対応する(corresponding to)」アミノ酸は、例えば、実際に特定のアミノ酸鎖中の190番目のアミノ酸である必要はなく、むしろ参照ポリペプチド中の190位に見出される残基に対応することを理解し、当業者は、「対応する(corresponding)」アミノ酸を同定する方法を容易に理解するであろう(例えば、Benson et al.Nucl.Acids Res.(1 January 2013)41(D1):D36-D42;Pearson et al.PNAS Vol.85,pp.2444-2448,April 1988を参照されたい)。当業者は、例えば、BLAST、CS-BLAST、CUSASW++、DIAMOND、FASTA、GGSEARCH/GLSEARCH、Genoogle、HMMER、HHpred/HHsearch、IDF、Infernal、KLAST、USEARCH、parasail、PSI-BLAST、PSI-Search、ScalaBLAST、Sequilab、SAM、SSEARCH、SWAPHI、SWAPHI-LS、SWIMM、またはSWIPEなどのソフトウェアプログラムを含む、様々な配列アラインメント戦略を認識し、本開示に従って、例えば、ポリペプチドおよび/または核酸中の「対応する」残基を同定するために利用することができる。
【0302】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現(expression)」という用語は、核酸配列からの遺伝子産物の生成を指す。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、転写物(例えば、一次転写物またはmRNAなどのプロセシングされた転写物)であり得る。いくつかの実施形態では、遺伝子産物はポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、核酸配列の発現は、(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(例えば、転写による)、(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、および/または3’末端形成による)、(3)RNAのポリペプチドまたはタンパク質への翻訳、および/または(4)ポリペプチドもしくはタンパク質の翻訳後修飾のうちの1つ以上を含む。
【0303】
フランキング配列:本明細書で使用される場合、「フランキング配列(flanking sequence)」という用語は、目的の配列またはドメインに先行または後続する任意の配列を指す。例えば、終止コドンの上流の領域は、「上流フランキング領域(upstream flanking region)」と呼ぶことができる。
【0304】
遺伝子:本明細書で使用される場合、「遺伝子(gene)」という用語は、遺伝子産物(例えば、RNA産物および/またはポリペプチド産物)をコードするDNAまたはRNA配列を指す。いくつかの実施形態では、遺伝子は、コード配列(例えば、特定の遺伝子産物をコードする配列)を含み、いくつかの実施形態では、遺伝子は非コード配列を含む。いくつかの特定の実施形態では、遺伝子は、コード(例えば、エキソン)配列および非コード(例えば、イントロン)配列の両方を含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子は、例えば、遺伝子発現(例えば、細胞型特異的発現、誘導性発現)の1つ以上の側面を制御または影響を及ぼし得る、1つ以上の調節要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、終結シグナル)を含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子は、ゲノム中(例えば、染色体または他の複製可能な核酸中またはそれらの上)に位置または発見される(または位置または発見されるものと同一のヌクレオチド配列を有する)。
【0305】
変異体:本明細書で使用される場合、「変異体(mutant)」という用語は、参照生物、細胞、または生体分子と比較して遺伝的変異を有する生物、細胞、または生体分子(例えば、核酸またはポリペプチド)を指す。例えば、変異核酸またはポリペプチドは、いくつかの実施形態では、例えば、参照核酸分子と比較して、1つ以上の残基の置換(例えば、1つ以上の核酸塩基またはアミノ酸の置換)、1つ以上の残基の欠失(例えば、内部欠失または切断)、1つ以上の残基の挿入、2つ以上の残基の反転などを有し得る。当業者は、そのような核酸またはポリペプチド突然変異体の様々な特定の種類、例えば融合体、インデルなどに精通しているであろう。変異核酸またはポリペプチドを含むかまたは発現する生物または細胞はまた、本明細書において「変異体」とも称される。いくつかの実施形態では、変異体は、遺伝子産物の機能喪失に関連する遺伝子変異体を含む。機能の喪失は、完全な機能の消失、例えば、活性(例えば、結合活性、酵素活性など)の消失、または部分的な機能の喪失、例えば、減少した活性(例えば、結合活性、酵素活性など)であり得る。いくつかの実施形態では、変異体は、適切な参照(例えば、遺伝的変異が存在しない同じ実体)と比較して、機能獲得、例えば、既存の活性の増強、または新しい活性の獲得と関連する遺伝的変異体を含む。いくつかの実施形態では、機能獲得変異体(gain of function mutant)は、特徴または活性の変化を獲得している可能性がある。いくつかの実施形態では、機能獲得変異体は、構成的活性を有し得る。いくつかの実施形態では、機能喪失変異体は、望ましい活性を喪失している(または参照と比較して低下している)可能性がある。いくつかの実施形態では、変異体の構造、レベル、および/または活性が比較される参照の生物、細胞、または生体分子は、野生型の生物、細胞、または生体分子である。
【0306】
核酸:本明細書で使用される場合、「核酸(nucleic acid)」という用語は、少なくとも3ヌクレオチドのポリマーを指す。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAであるか、またはDNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAであるか、またはRNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は二本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、一本鎖部分および二本鎖部分の両方を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のホスホジエステル結合を含む骨格を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合および非ホスホジエステル結合の両方を含む骨格を含む。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、例えば、「ペプチド核酸(peptide nucleic acid)」におけるように、1つ以上のホスホロチオエートまたは5’-N-ホスホロアミダイト結合および/または1つ以上のペプチド結合を含む骨格を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の、または全ての天然残基(例えば、アデニン、シトシン、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、グアニン、チミン、ウラシル)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、非天然残基上またはそれ以上、または全てを含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、0(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、挿入塩基、およびこれらの組合せ)を含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、天然残基中のものと比較して、1つ以上の修飾された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノースおよびヘキソース)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAまたはポリペプチドなどの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のイントロンを含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、天然源からの単離、酵素合成(例えば、相補的鋳型に基づく重合、例えば、in vivoまたはin vitroでの重合による)、組換え細胞もしくは系における複製、または化学合成によって調製され得る。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000またはそれ以上の残基長である。
【0307】
ペプチド:本明細書で使用される場合、「ペプチド(peptide)」という用語は、典型的には比較的短い、例えば、約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、約40アミノ酸未満、約30アミノ酸未満、約25アミノ酸未満、約20アミノ酸未満、約15アミノ酸未満、または10アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドを指す。
【0308】
医薬組成物:本明細書で使用される場合、「医薬組成物(pharmaceutical composition)」という用語は、ヒトまたは動物対象への投与に適した組成物を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体と共に製剤化された活性剤を含む。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、治療レジメンにおける投与に適した単位用量で存在する。いくつかの実施形態において、治療レジメンは、それを必要とする対象または集団に投与されたときに、所望の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示すことが決定されたスケジュールに従って投与される1つ以上の用量を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、以下、経口投与、例えば、水薬(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、頬側、舌下、および全身吸収を標的化するもの、ボーラス、粉末、顆粒、舌への適用のためのペースト、 非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による、例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液または徐放性製剤、 局所適用、例えば、クリーム、軟膏、または皮膚、肺もしくは口腔に適用される制御放出パッチもしくはスプレーとして、 膣内または直腸内、例えば、ペッサリー、クリームまたはフォームとして、 舌下、 眼に、 経皮的、 または鼻、肺、および他の粘膜表面に適用されるものを含む、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ヒト対象への投与を意図し、それに適している。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、無菌および/または実質的に発熱物質を含まない。
【0309】
ポリペプチド:本明細書で使用される場合、「ポリペプチド(polypeptide)」という用語は、少なくとも3つのアミノ酸残基のポリマーを指す。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の、または全ての天然アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の、または全ての非天然アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の、または全てのD-アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の、または全てのL-アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上のペンダント基または他の修飾、例えば、1つ以上のアミノ酸側鎖に、ポリペプチドのN末端に、ポリペプチドのC末端に、またはそれらの任意の組合せで修飾または結合されるものを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、アセチル化、アミド化、アミノエチル化、ビオチン化、カルバミル化、カルボニル化、シトルリン化、脱アミド化、脱イミン化、エリミニル化、グリコシル化、脂質化、メチル化、ペグ化、リン酸化、SUMO化、またはそれらの組合せなどの1つ以上の修飾を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の分子内または分子間ジスルフィド結合に関与し得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは環状であり得、および/または環状部分を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは環状ではなく、かつ/またはいかなる環状部分も含まない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは直鎖状である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ステープルポリペプチド(stapled polypeptide)を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の他のポリペプチドとの非共有結合または共有結合による非共有結合複合体形成に関与する(例えば、抗体におけるように)。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然に存在するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、人間の手の作用によって設計および/または産生されるという点で操作されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、「ポリペプチド(polypeptide)」という用語は、参照ポリペプチド、活性、または構造の名称に付加され得、このような場合、関連する活性または構造を共有し、したがって、同じクラスまたはファミリーのポリペプチドのメンバーであるとみなすことができるポリペプチドを指すことが本明細書で使用される。このような各クラスについて、本明細書は、アミノ酸配列および/または機能が公知であるクラス内の例示的なポリペプチドを提供し、および/または当業者はそれらを認識し、いくつかの実施形態では、このような例示的なポリペプチドは、ポリペプチドクラスまたはファミリーの参照ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドクラスまたはファミリーのメンバーは、そのクラスの参照ポリペプチドと有意な配列相同性または同一性を示すか、共通の配列モチーフ(例えば、特徴的な配列要素)を共有するか、および/または共通の活性(いくつかの実施形態では、比較可能なレベルまたは指定の範囲内)を共有し、いくつかの実施形態では、クラス内のすべてのポリペプチドと共有する。例えば、いくつかの実施形態では、メンバーポリペプチドは、少なくとも約30~40%であり、しばしば約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上である参照ポリペプチドとの配列相同性または同一性の全体的な程度を示し、および/または非常に高い配列同一性、しばしば90%以上、あるいは95%、96%、97%、98%、または99%以上を示す少なくとも1つの領域(例えば、いくつかの実施形態では、特徴的な配列要素を構成し得る保存領域)を含む。このような保存領域は、通常、少なくとも3~4個、しばしば最大20個以上のアミノ酸を包含し、いくつかの実施形態では、保存領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個またはそれ以上の連続アミノ酸の少なくとも1つのストレッチを包含する。いくつかの実施形態では、有用なポリペプチドは、親ポリペプチドの断片を含み得る。いくつかの実施形態では、有用なポリペプチドは、複数の断片を含み得、その各断片は、目的のポリペプチドにおいて発見されるのとは異なる空間的配置で、同じ親ポリペプチドにおいて発見され(例えば、例えば、親ポリペプチドでは直接連結している断片が、目的のポリペプチドでは空間的に離れていたり、その逆であったり、および/または、目的のポリペプチドでは、親ポリペプチドとは異なる順序で断片が存在していたりする)、目的のポリペプチドはその親ポリペプチドの誘導体である。
【0310】
参照:本明細書で使用される場合、「参照(reference)」という用語は、比較が行われる標準または対照を指す。例えば、いくつかの実施形態では、目的の薬剤、動物、個体、集団、試料、配列、または値を、参照または対照の薬剤、動物、個体、集団、試料、配列、または値と比較する。いくつかの実施形態では、参照または対照は、目的の試験または決定と実質的に同時に試験および/または決定される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、任意選択で、有形媒体において具現化される、履歴参照(historical reference)または対照である。典型的には、当業者によって理解されるように、参照または対照は、評価中の条件または状況と比較可能な条件または状況下で決定または特徴付けされる。当業者は、特定の可能性のある参照または対照への依拠および/またはそれらとの比較を正当化するために充分な類似性が存在する場合を理解するであろう。
【0311】
試料:本明細書で使用される場合、「試料(sample)」という用語は、本明細書に記載されるように、目的の供給源から得られるかまたはそれに由来する生物学的試料を指す。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、微生物、植物、動物またはヒトなどの生物であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、生物学的組織もしくは流体、またはその1つ以上の成分であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、生体試料は、骨髄、血液、血液細胞、腹水、組織または生検試料、細胞含有体液、浮遊核酸、痰、唾液、尿、脳脊髄液、腹膜液、胸水、糞便、リンパ、婦人科流体、皮膚綿棒、膣綿棒、経口綿棒、鼻綿棒、管洗浄または気管支肺胞洗浄などの洗浄または洗浄、吸引物、掻き取り、骨髄標本、組織生検標本、手術標本、他の体液、分泌物、および/または排泄物、および/またはそれからの細胞。いくつかの実施形態では、生体試料は、個体から、例えば、ヒトまたは動物対象から得られた細胞を含む。いくつかの実施形態では、得られた細胞は、試料が得られた個体からの細胞であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、試料は、任意の適切な手段によって目的の供給源から直接得られる「一次試料(primary sample)」である。例えば、いくつかの実施形態では、一次生物学的試料は、生検(例えば、細針吸引または組織生検)、手術、体液(例えば、血液、リンパ液、糞便)の収集からなる群から選択される方法によって得られる。いくつかの実施形態では、文脈から明らかであるように、「試料」という用語は、一次試料を処理することによって(例えば、一次試料の1つ以上の成分を除去することによって、および/または一次試料に1つ以上の作用物質を添加することによって)得られる調製物を指す。例えば、半透膜を用いた濾過である。そのような「プロセシングされた試料(processed sample)」は、例えば、試料から抽出された、または一次試料をmRNAの増幅または逆転写、特定の成分の単離および/または精製などの技術に供することによって得られた核酸またはポリペプチドを含み得る。
【0312】
対象:本明細書で使用される場合、「対象(subject)」という用語は、生物、例えば哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、霊長類、実験動物、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、ネコ、イヌ)を指す。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、成人、青年、または小児の対象である。いくつかの実施態様において、対象は、疾患、障害、または疾病、例えば、本明細書に提供される、処置することができる疾患、障害、または疾病、例えば、本明細書に列挙されるがんまたは腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または疾病に感受性があり、いくつかの態様では、感受性がある対象は、疾患、障害、または疾病を発症する素因があり、かつ/またはそのリスクの増加を示す(参照対象または集団において観察される平均リスクと比較して)。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または疾病の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または疾病の特定の症状(例えば、疾患の臨床症状)もしくは特徴を示さない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または疾病のいかなる症状もしくは特徴も示さない。いくつかの実施形態では、対象は患者である。いくつかの実施形態では、対象は、診断および/または治療が投与されているおよび/または投与されている個体である。
【0313】
治療剤:本明細書で使用される場合、「治療剤(therapeutic agent)」という用語は、概して、対象に投与されたときに所望の効果(例えば、所望の生物学的、臨床的、または薬理学的効果)を誘発する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、薬剤は、適切な集団にわたって統計的に有意な効果を示す場合、治療剤であると考えられる。いくつかの実施形態では、適切な集団は、疾患、障害または疾病に罹患しているおよび/または罹患しやすい対象の集団である。いくつかの実施形態では、適切な集団は、モデル生物の集団である。いくつかの実施形態では、適切な集団は、年齢群、性別、遺伝的背景、既存の臨床疾病、治療歴があることなどの1つ以上の基準によって定義することができる。いくつかの実施形態では、治療剤は、有効量で対象に投与された場合に、対象における疾患、障害、および/または疾病の1つ以上の症状または特徴を緩和する、改善する、軽減する、阻害する、予防する、その発症を遅延させる、その重症度を低下させる、および/またはその発生率を低下させる物質である。いくつかの実施形態では、「治療剤(therapeutic agent)」は、ヒトへの投与のために販売され得る前に政府機関によって承認されたか、または承認されることが必要とされる薬剤である。いくつかの実施形態では、「治療剤」は、ヒトへの投与のために医学的処方箋が必要とされる薬剤。いくつかの実施形態では、治療剤は、本明細書に記載のCREBBPアンタゴニストであり得る。
【0314】
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量(therapeutically effective amount)」という用語は、それが投与される対象または集団において所望の効果(例えば、所望の生物学的、臨床的、または薬理学的効果)をもたらす量を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、特定の投与レジメン(例えば、治療的投与レジメン)に従って対象に投与された場合に所望の効果を達成する可能性のある量を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、疾患、障害、および/または疾病に罹患しているおよび/または罹患しやすい集団の少なくとも有意なパーセンテージ(例えば、少なくとも約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上)で効果を生じるのに充分な量を指す。いくつかの実施形態では、治療有効量は、疾患、障害、および/または疾病の1つ以上の症状の発生率および/もしくは重症度を低減する、ならびに/またはその発症を遅延させる量である。当業者であれば、「治療有効量」という用語は、実際には、特定の個体において治療が成功することを要求するものではないことを理解するであろう。むしろ、治療有効量は、そのような治療を必要とする患者、例えば、処置される患者集団内の少なくとも約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上の患者に投与された場合に、相当数の対象において特定の所望の応答を提供する量であり得る。いくつかの実施形態では、治療有効量への言及は、1つ以上の特定の組織(例えば、疾患、障害、または疾病に罹患した組織)または流体(例えば、血液、唾液、血清、汗、涙、尿)において測定されるような所望の効果を誘導するために充分な量への言及であり得る。当業者は、いくつかの実施形態では、特定の薬剤または療法の治療有効量が、単回用量で製剤化および/または投与され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、治療上有効な薬剤は、例えば、投与計画の一部として、複数の用量で製剤化および/または投与され得る。
【0315】
腫瘍:本明細書で使用される場合、「腫瘍(tumor)」という用語は、細胞または組織の異常な増殖を指す。いくつかの実施形態では、腫瘍は、前がん性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、および/または非転移性である細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、腫瘍は、がんと関連しているか、またはがんの兆候である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、分散腫瘍または液体腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍は固形腫瘍であり得る。
【0316】
上流および下流:本明細書で使用される場合、RNAを記載する場合、「上流(upstream)」という用語は、RNA分子の5’末端に向かって、またはその近くを指し、「下流(downstream)」という用語は、RNA分子の3’末端に向かって、またはその近くを指す。DNAを説明する際に本明細書で使用される場合、「上流」はコード鎖の5’末端に向かっており、「下流」はコード鎖の3’末端に向かっている。DNAの逆平行配向のため、これは鋳型鎖の3’末端が上流であり、5’末端が下流であることを意味する。
【0317】
変異体:分子、例えば、核酸、タンパク質、または小分子の文脈において本明細書で使用される場合、「変異体(variant)」という用語は、参照分子に対して有意な構造同一性を示すが、例えば、参照実体と比較して、1つ以上の化学部分の存在下もしくは非存在下またはレベルにおいて、参照分子と構造的に異なる分子を指す。いくつかの実施形態では、変異体はまた、その参照分子と機能的に異なる。一般に、特定の分子が参照分子の「変異体」であると適切にみなされるかどうかは、参照分子との構造的同一性の程度に基づく。当業者によって理解されるように、任意の生物学的または化学的参照分子は、ある特徴的な構造要素を有する。変異体は、定義により、1つ以上のそのような特徴的な構造要素を共有するが、少なくとも1つの態様において参照分子とは異なる別個の分子である。ほんの数例を挙げると、ポリペプチドは、線形空間または三次元空間において、互いに対して指定された位置を有し、かつ/または特定の構造モチーフおよび/もしくは生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸から構成される特徴的な配列要素を有し得、核酸は、線形空間または三次元空間において、互いに対して指定された位置を有する複数のヌクレオチド残基からなる特徴的な配列要素を有し得る。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドまたは核酸は、アミノ酸またはヌクレオチド配列における1つ以上の差異および/またはポリペプチドまたは核酸の共有結合構成要素である(例えば、ポリペプチドまたは核酸骨格に結合される)化学的部分(例えば、炭水化物、脂質、リン酸基)における1つ以上の差異の結果として、参照ポリペプチドまたは核酸と異なり得る。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照ポリペプチドまたは核酸に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または99%の全体的配列同一性を示す。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照ポリペプチドまたは核酸と少なくとも1つの特徴的な配列要素を共有しない。いくつかの実施形態では、参照ポリペプチドまたは核酸は、1つ以上の生物学的活性を有する。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照ポリペプチドまたは核酸の生物学的活性の1つ以上を共有する。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照ポリペプチドまたは核酸の生物学的活性の1つ以上を欠く。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照ポリペプチドまたは核酸と比較して低下したレベルの1つ以上の生物学的活性を示す。いくつかの実施形態では、目的のポリペプチドまたは核酸は、特定の位置に少数の配列変化を有するが参照ポリペプチドまたは核酸と同一であるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する場合、参照ポリペプチドまたは核酸の「変異体」であるとみなされる。典型的には、参照と比較して、変異体中の残基の約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、または約2%未満が置換、挿入、または欠失される。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照と比較して、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2、または約1個の置換残基を含む。しばしば、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照と比較して、非常に少数(例えば、約5、約4、約3、約2、または約1未満)の数の置換、挿入、または欠失された機能的残基(すなわち、特定の生物学的活性に関与する残基)を含む。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照と比較して、約5、約4、約3、約2、または約1以下の付加または欠失を含み、いくつかの実施形態では、付加または欠失を含まない。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照と比較して、約25個未満、約20個未満、約19個未満、約18個未満、約17個未満、約16個未満、約15個未満、約14個未満、約13個未満、約10個未満、約9個未満、約8個未満、約7個未満、約6個未満、および通常、約5個未満、約4個未満、約3個未満、または約2個未満の付加または欠失を含む。いくつかの実施形態では、参照ポリペプチドまたは核酸は、天然に発見されるものである。いくつかの実施形態では、参照ポリペプチドまたは核酸は、ヒトポリペプチドまたは核酸である。
【0318】
絶対的または逐次的な用語、例えば、「will」、「will not」、「shall」、「shall not」、「must」、「must not」、「first」、「initially」、「next」、「subsequently」、「before」、「after」、「lastly」、および「finally」の使用は、本明細書に開示される本発明の実施形態の範囲を限定するものではなく、例示的なものである。
【0319】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」および「the」という単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むものとする。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、またはそれらの変形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様に包括的であることが意図される。
【0320】
本明細書で使用される場合、語句「少なくとも1つ(at least one)」、「1つ以上(one or more)」、および「および/または(and/or)」は、動作において結合的および離接的(conjunctive and disjunctive)の両方であるオープンエンド表現。例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B and C)」、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B,or C)」、「A、BおよびCのうちの1つ以上(one or more of A,B,and C)」、「A、BまたはCのうちの1つ以上(one or more of A,B,or C)」ならびに「A、Bおよび/またはC(A,B,and/or C)」という表現の各々は、A単独、B単独、C単独、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、またはA、BおよびCを共に、を意味する。
【0321】
本明細書で使用されるように、「または」は、「および」、「または」、または「および/または」を指し得、排他的および包括的の両方で使用され得る。例えば、「AまたはB(A or B)」という用語は、「AまたはB(A or B)」、「AだがBではない(A but not B)」、「BだがAではない(B but not A)」、ならびに「AおよびB(A and B)」を指し得る。場合によっては、文脈は特定の意味を指示し得る。
【0322】
本明細書で説明される任意のシステム、方法、ソフトウェア、およびプラットフォームは、モジュール式である。したがって、「第1の(first)」および「第2の(second)」などの用語は、必ずしも優先順位、重要度の順序、または行為の順序を意味するものではない。
【0323】
「約(about)」という用語は、数または数値範囲に言及する場合、言及される数または数値範囲が、実験変動性内(または統計的実験誤差内)の近似値であることを意味し、数または数値範囲は、例えば、記載される数または数値範囲の1%~15%で変動し得る。実施例では、「約(about)」という用語は、規定の数または値の±10%を指す。
【0324】
「増加した(increased)」、「増加する(increasing)」、または「増加する(increase)」という用語は、本明細書では、概して、静的に有意な量(statically significant amount)だけ増加することを意味するために使用される。いくつかの態様では、「増加した(increased)」または「増加する(increase)」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または最大100%までの増加まで、または参照レベル、標準、もしくは対照と比較して10~100%の間の任意の増加を含む。「増加する(increase)」の他の例は、参照レベルと比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍以上の増加を含む。
【0325】
「減少した(decreased)」、「減少する(decreasing)」、または「減少する(decrease)」という用語は、本明細書では、概して、統計的に有意な量だけ減少することを意味するために使用される。いくつかの態様では、「減少した(decreased)」または「減少する(decrease)」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%の減少を意味する、または少なくとも約90%または100%までの減少(例えば、参照レベルと比較した非存在レベルまたは検出不可能なレベル)、または参照レベルと比較した10~100%の間の任意の減少を含む。マーカーまたは症状の文脈では、これらの用語は、そのようなレベルの統計的に有意な減少を意味する。減少は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%またはそれ以上であり得、好ましくは、所与の疾患を有さない個体について正常の範囲内として許容されるレベルまで低下する。
【0326】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような実施形態は例としてのみ提供されることが当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書内に提供される特定の実施例によって限定されることを意図しない。本発明を前述の明細書を参照して説明したが、本明細書における実施形態の説明および図示は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。多数の変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に思い浮かぶであろう。さらに、本発明の全ての態様は、種々の条件および変数に依存する、本明細書に記載される特定の描写、構成、または相対的比率に限定されないことを理解されたい。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実施する際に採用され得ることを理解されたい。したがって、本発明はまた、任意のそのような代替形態、修正形態、変形形態、または均等物を包含するものとすることが企図される。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物がそれによって包含されることが意図される。
【実施例
【0327】
以下の例示的な実施例は、本明細書に記載される刺激、システム、および方法の実施形態を代表するものであり、決して限定することを意図するものではない。
【0328】
実施例1.腫瘍選択的mRNAは、免疫チェックポイント阻害剤耐性腫瘍を縮小させる
本実施例は、本開示の腫瘍選択的核酸が腫瘍細胞の選択的死滅をもたらすことを実証する。さらに、本開示の1つ以上の腫瘍選択的核酸による処置は、免疫チェックポイント阻害剤療法に対して免疫チェックポイント阻害剤耐性腫瘍を再感作させることができる。
【0329】
この実施例は、例示的な腫瘍選択的mRNAの有効性を実証する。KR-333は、免疫原性細胞死(ICD)タンパク質、構成的に活性なGasdermin、(ca-Gasdermin)およびサイトカイン(インターフェロンアルファ(IFN-α))をコードするmRNAカクテルであり、これは、複数の免疫経路の同時誘導を可能にする。腫瘍細胞の免疫原性細胞死を誘発することによって、KR-333は、腫瘍微小環境を炎症させ、かつ抗原提示細胞を活性化する免疫刺激シグナルの放出を引き起こす。腫瘍微小環境では、KR-333 mRNAによってコードされるサイトカインの存在は、最大の免疫細胞浸潤および活性化を可能にし、強固な抗腫瘍応答をもたらす。
【0330】
B16F10腫瘍細胞を、連続希釈した対照mRNAまたはLNPを用いて製剤化された本開示の腫瘍選択的mRNAと共に48時間インキュベートした。細胞生存率は、Cell-Titer glow発光細胞生存率アッセイ(Cell-Titer glow luminescent cell viability assay)を使用して、代謝的に活性な細胞(生存細胞)の指標として存在するATPの定量化によって評価した。結果は、少なくとも3つの独立した実験の代表である。図1Aに見られるように、本開示の腫瘍選択的核酸は、培養物中でB16F10細胞を選択的に死滅させた。しかしながら、腫瘍選択的核酸は健常細胞を死滅させなかった(図1B)。図1Cは、本開示の操作された核酸の腫瘍選択的発現をさらに実証する。LNP製剤化Luc mRNAを、B16F10およびA20皮下腫瘍に腫瘍内投与した。図1Cは、局所投与の18時間後に画像化された腫瘍における全光束(光子/秒)を示す。
【0331】
本開示の腫瘍選択的mRNAは、動物モデルにおいて腫瘍細胞を選択的に死滅させる。雌B16アルビノマウスにB16F10腫瘍細胞を皮下接種した。腫瘍が約50~60mm3に達したとき、マウスは、1日目、3日目、7日目、9日目に対照mRNAまたはLNPと共に製剤化されたKR-333腫瘍選択性mRNAのいずれかの腫瘍内注射を受け、1日目、3日目、9日目、次いで隔週で抗PD1(200μg/マウス)の腹腔内注射を受けた(図2A)。腫瘍体積および体重を週に3回測定した(図2Bおよび図2C)。図2Bに示されるデータは、処置開始から14日間の経過にわたる腫瘍増殖を示す。図2Cに示されるデータは、処置の経過にわたるマウス体重を示す。***P=0.0001、試験の14日目にmRNA対照と腫瘍選択的mRNAを比較した、両側対応のないスチューデント検定(two-tailed unpaired Student’s test)。
【0332】
本開示の操作された核酸の能力をさらに実証するために、腫瘍選択的mRNAを免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与した。雌のB16アルビノマウスを図3Aに説明されるように処置し、生存曲線を図3Bに示す。試験57日目までに無腫瘍のままであったマウスを、ナイーブ年齢適合対照と並行して、反対側の側腹部にB16F10細胞の皮下注射によって再投与した(図3C)。データは、平均+/-SEMを表す。抗PD1免疫療法と組み合わせて、KR-333は、抗PD1/PD-L1遮断に抵抗性の腫瘍モデルにおいて、腫瘍退縮、改善された全生存期間および完全寛解(CR)をもたらす。本開示の腫瘍選択的mRNAプラットフォームは、免疫チェックポイント遮断薬の活性を補完する免疫経路の活性化を可能にし、がん免疫療法における主要な障害である、T細胞浸潤が乏しく免疫抑制性腫瘍微小環境を有する様々ながんを処置する機会を提供する。
【0333】
実施例2.ヒト細胞における腫瘍選択的mRNA
本開示の腫瘍選択的mRNAの有効性をさらに実証するために、特に免疫チェックポイント阻害剤と組み合せて、ヒト腫瘍に対して実験を行う。白血病細胞株、固形腫瘍細胞もしくは細胞株、またはPBMCを、対照mRNAまたは1つ以上の腫瘍選択的mRNA(例えば、構成的に活性なGasderminをコードする腫瘍選択的mRNAおよび/またはIFNαをコードする腫瘍選択的mRNA)を含むLNPと共にインキュベートする
【0334】
実施例3.例示的な腫瘍選択的mRNA構築物およびペイロード
本実施例は、本実施例で使用される腫瘍選択的核酸の配列を提供する。
【0335】
【表7-1】
【0336】
【表7-2】
【0337】
【表7-3】
【0338】
実施例4.腫瘍を処置するための腫瘍選択的組成物
実施例4は、他のmRNA処置の組合せと比較して、IL-2、IL-12、IL-15、およびIFNαをコードする腫瘍選択的mRNAを含む組成物による黒色腫腫瘍の処置を示す。雌C57BL/6NCrlマウス(8~10週齢)に、2.5×10個のB16-F10細胞を右側腹部に皮下移植し、腫瘍サイズに基づいて移植後8日目に処置群(n=10)に無作為化した。マウスは、対照mRNAまたはLNP中で処方された腫瘍選択的組み合わせによるmRNA処置のいずれかを、腫瘍内注射により6回受けた(6サイクルにわたって3日毎に1回、Q3Dx6)。完全寛解(complete responders)(CR)の割合を示す。図4Aは、処置後の日数にわたって測定された腫瘍体積の増加を示す。IL-2、IL-12、IL-15、およびIFNα(mKR-335)をコードする腫瘍選択的mRNAを投与された群は、他の群、非翻訳mCherryをコードするmRNAを投与した対照群、IL-12、IL-15、およびIFNαをコードするmRNAを投与した、mKR-335マイナスmRNA-A群、 IL-2、IL-12、およびIFNαをコードするmRNAを投与したmKR-335マイナスmRNA-B群、ならびにIL-2、IL-12、IL-15、およびIFNαをコードするmRNAを投与した群と比較して、腫瘍体積の増加が遅延し、かつ最も多い完全寛解者数(10人中5人)を含む。図4Bは、mKR-335、対照mRNA(p<0.0001 Cox回帰)、およびmKR-335由来の個々のmRNAを欠く他のmRNA併用処置による処置後の生存を示す。cut-off 2000mm
【0339】
図5A~5Bは、腫瘍内mKR-335 mRNA療法の耐性を示す。図5Aは、対照mRNAまたはmKR-335 LNPを、合計20mg(~1mg/kg)、3日毎に1回の6サイクル(Q3Dx6)にわたる、腫瘍内B16-F10投与後の体重変化のパーセンテージを示す(平均+/-SD)。図5Bは、肝機能試験を示す:mKR-335の単回または6回投与の24時間後の正常アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)血清レベル。体重および肝機能試験の両方において、群間で統計的有意差はなかった。図6は、全身LNP投与の耐性を示す。雌C57BL/6NCrlマウスを1mg/kg対照mRNA LNPまたはmKR-335で皮下処置した。図6Aは、単回投与の24時間後のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)切片を示す。図6Bは、3日毎に1回の4サイクル(Q3D×4)投与レジメンについて、体重変化のパーセンテージを示す(平均+/-SD)。図6Cは、肝機能試験:mKR-335の単回または4回投与の24時間後および最後の投与の7日後の正常ASTおよびALT血清レベルを示す。H&E染色、体重、および肝機能試験において群間で統計的有意差はなかった。図7は、mKR-335の有効性と用量との関係を示す。皮下B16-F10黒色腫腫瘍に、mKR-335 LNP、対照mRNA LNPまたはmKR-335と抗PD1 mAb処置を併用した用量滴定処置:0日目(d0)、3日目(d3)、10日目(d10)に200mgを静脈内投与した。腫瘍内注射は、0日目に、130mmの平均サイズで確立された腫瘍において開始した。mKR-335処置を、0、2、4、7、9、および11日目に投与した(n=10/群)。
【0340】
雌C57BL/6NCrlマウス(8~10週齢)に2.5×10個のMC38-GFP細胞を右側腹部に皮下移植し、移植後8日目に腫瘍サイズに基づいて処置群(n=10)に無作為化した。マウスに、対照mRNA(非翻訳mCherry)またはLNP中で製剤化された併用mRNA処置のいずれかを、1mg/kgで、3日に1回の4サイクル(Q3Dx4)のレジメンで4回、腫瘍内注射された。処置群における腫瘍増殖は、両方の処置群において有意に阻害される。(P<0.001の二元配置分散)。完全寛解(CR)の割合を示す。図8は、サイトカインmRNA LNPの組合せ(IL-2、IL-12、IL-15およびIFNα)による皮下同系マウスMC38-GFP結腸腺がん腫瘍の有効な処置を示す。
【0341】
皮下処置の有効性を調べるために、メスC57BL/6NCrlマウス(8~10週齢)に2.5×10個のB16-F10細胞を右側腹部に皮下移植し、腫瘍サイズに基づいて移植後8日目に処置群(n=10)に無作為化した。マウスに、1mg/kg用量の対照mRNA LNP(非翻訳mCherry)または1mg/kg用量のサイトカインmRNA LNP(d0、d6またはd10に)および0.75mg/kg用量の免疫原性細胞死(GasDまたはRIPK3)mRNA(d3、d9またはd12に)のいずれかの腫瘍内注射を投与した。また、全ての群に、抗PD1 mAbを腹腔内に注射投与した(200mgを、d0、d3、またはd10に投与したInvivogen#mpd1-mAb15)。完全寛解(CR)の割合を示す(図9)。図9は、サイトカイン(IL-12、IL-15、IFN-α)および免疫原性細胞死(Gasdermin DまたはRIPK3)mRNA LNPと抗PD1との併用による、皮下同系マウスB16-F10黒色腫腫瘍の有効な処置を示す。図9Aは、腫瘍移植後の個々の動物の腫瘍体積を示す。図9Bは、処置開始後の動物の体重変化を示す。値は平均+/-S.D.を示す。図9Cは、腫瘍移植後の動物のKaplan-Meie生存曲線を示す。GasD/RIPK3 mRNA処置群と対照群との間の統計的有意値(***)をログランク(Mantel-Cox)検定で得た。n=8/群。
【0342】
サイトカイン(IL-12、IL-15、IFN-α)をコードするmRNAの薬力学的分析を調べるために、メスC57BL/6NCrlマウス(8~10週齢)に2.5×10個のB16-F10細胞を右側腹部に皮下移植し、腫瘍が約50~70mm3の体積に達したときに処置群(n=10)に無作為化した。マウスに、LNPまたは生理食塩水中に製剤化した対照mRNA(非翻訳mCherry)またはサイトカイン(IL-12、IL-15、IFN-αカクテル)mRNA処理のいずれかを、単回、腫瘍内に注射された。6時間後に血清を回収し、サイトカイン測定をELISAアッセイによって行った。IFN-γおよびIP-10を、IL-12 mRNAの代用PDマーカーとして測定した。
【0343】
図10は、皮下B16-F10黒色腫腫瘍における、生理食塩水対LNP中に製剤化されたサイトカイン(IL-12、IL-15、IFN-α)をコードするmRNAの薬力学的分析を示す。対照mRNA LNP:K143-001。サイトカインmRNA LNP:K155-001、K156-001、またはK157-001。生理食塩水中のサイトカインmRNA:LNP製剤なしのサイトカインmRNA LNPと同じmRNA。
【0344】
前述の開示は、明確性および理解の目的のために、ある程度詳細に説明されたが、本開示の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更が行われ得ることが、本開示を読むことから当業者に明白となるであろう。たとえば、上記で説明したすべての技法および装置は、様々な組合せで使用され得る。本出願において引用される全ての刊行物、特許、特許出願、および/または他の文書は、あたかも個々の刊行物、特許、特許出願、および/または他の文書のそれぞれが、あらゆる目的のために参照により援用されることが、個々にかつ別々に示されるのと同程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0345】
同等物
当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、または確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、むしろ以下の特許請求の範囲に記載される通りである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】