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特表2024-540417ルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ
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  • 特表-ルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241024BHJP
   A61K 31/4995 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K31/4995
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527216
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022081155
(87)【国際公開番号】W WO2023079177
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21383013.6
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505404208
【氏名又は名称】ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】PHARMA MAR,S.A.
【住所又は居所原語表記】Poligono Industrial La Mina,Avda.de los Reyes,1,Colmenar Viejo,E-28770 Madrid,SPAIN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ゴンサガ・パス-アレス・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】サンティアゴ・ポンセ・エクス
(72)【発明者】
【氏名】サルヴァドール・フディオ・ムニョス
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC05
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB31
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
ルルビネクテジン及びアテゾリズマブを含む、小細胞肺がんの処置のための組合せ治療が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの処置における使用のためのルルビネクテジンであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せを投与する工程を含み、ルルビネクテジンが3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブが1200mgの用量で投与され、ルルビネクテジン及びアテゾリズマブが21日サイクルの1日目に投与される、使用のためのルルビネクテジン。
【請求項2】
ルルビネクテジン及びアテゾリズマブが、同時に、別々に又は順次に投与され、好ましくはアテゾリズマブが、最初に投与され、直後にルルビネクテジンが投与される、請求項1に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項3】
ルルビネクテジン若しくはアテゾリズマブ、又は両方の複数回投与が行われる、請求項1又は2に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項4】
ルルビネクテジンが、皮下、静脈内又は腹腔内経路、好ましくは静脈内注入によって投与され、任意選択で、ルルビネクテジンが、最大で24時間、1~12時間、1~6時間、最も好ましくは1時間の注入時間で投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項5】
アテゾリズマブが、皮下、静脈内、又は腹腔内経路、好ましくは静脈内注入によって投与され、任意選択で、アテゾリズマブが、1時間の注入時間で投与され、又は2回目以降の注入では、30分の注入時間で投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項6】
方法が、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項7】
G-CSFが、21日サイクルの1日目に投与される、請求項6に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項8】
患者が、各サイクルの1日目から24~72時間後に始まるG-CSF一次予防を5日間受ける、請求項7に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項9】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30又はそれ以上のサイクルを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項10】
がんが固形腫瘍であり、好ましくは固形腫瘍が、前立腺がん、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、黒色腫、膀胱がん、脳/CNSがん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、頭部/頸部がん、腎がん、肝がん、リンパ腫、卵巣がん、膵がん、及び肉腫からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項11】
肺がんが、中皮腫、悪性中皮腫、悪性胸膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫、好ましくは悪性胸膜中皮腫である、請求項10に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項12】
肺がんが非小細胞肺がんであり、又は肺がんが、小細胞肺がん、任意選択で進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)である、請求項10に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項13】
前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せを投与する工程を含み、任意選択で、小細胞肺がんが進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)である、小細胞肺がんの処置における使用のためのルルビネクテジン。
【請求項14】
ルルビネクテジン及びアテゾリズマブが、請求項1から9のいずれか一項に規定のレジメンに従って投与される、請求項13に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項15】
患者が進行した、
任意選択で、患者が一次治療から進行した、かつ/又は
任意選択で、患者が前白金処置から進行した、かつ/又は
任意選択で、患者が免疫療法を受けたことがない、
請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項16】
処置が二次処置である、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項17】
患者が、前免疫療法から進行した、かつ/又は
患者が、標準治療を受けてから進行した、かつ/又は
患者が、免疫療法を含む標準治療を受けてから進行した、
請求項1から16のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項18】
患者が、白金-エトポシド、例えばシスプラチン-エトポシド若しくはカルボプラチン-エトポシド;カルボプラチン-経口トポテカン;シスプラチン-イリノテカン;又はカルボプラチン-ゲムシタビンから進行した、かつ/或いは
患者が、白金剤及びエトポシド;任意選択でカルボプラチン-エトポシド-アテゾリズマブ、又は白金-エトポシド-デュルバルマブと共に免疫チェックポイント阻害薬から進行した、かつ/或いは
患者が、ニボルマブ-イピリムマブから進行した、
請求項1から17のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項19】
処置が、腫瘍サイズの縮小;腫瘍成長の遅延;患者の寿命の延長;疾患進行の遅延;寛解のうちの1つ又は複数をもたらす、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用のためのルルビネクテジン。
【請求項20】
がん細胞増殖を抑制する方法であって、がん細胞をルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せと接触させる工程を含み、前記がん細胞が、小細胞肺がん細胞、任意選択で進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)細胞であり、又はがん細胞が、中皮腫、任意選択で悪性胸膜中皮腫である、方法。
【請求項21】
ルルビネクテジンを、請求項1から20のいずれか一項に規定のアテゾリズマブとの組合せ使用のための指示書と一緒に含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの治療処置、特にがんの処置において有用な投与スケジュールに関する。詳細には、本発明は、ルルビネクテジン及びアテゾリズマブを使用する組合せ治療に関する。
【背景技術】
【0002】
アテゾリズマブ(MPDL3280A)は、2本の重鎖(それぞれ448アミノ酸残基)と2本の軽鎖(それぞれ214アミノ酸残基)からなるヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、チャイニーズハムスター卵巣細胞において産生される。アテゾリズマブは、ヒトPD-L1を標的にし、その受容体であるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びB7.1(CD80、B7-1)とのその相互作用を抑制する。これらの相互作用の両方が、抑制性シグナルをT細胞に提供すると報告されている。アテゾリズマブは、米国及び欧州において、白金含有化学療法の間又は後に進行した転移性NSCLCの患者の処置のために承認されている。
【0003】
PM01183としても知られ、最初はトリプタミシジンと呼ばれたルルビネクテジンは、抗新生物活性を有する合成テトラヒドロピロロ[4,3,2-de]キノリン-8(1H)-オンアルカロイド類似体であり、国際公開第03/014127号の主題である。ルルビネクテジンは、発がん性転写の選択的阻害薬であり、DNA二本鎖切断を誘導して、アポトーシスを引き起こし、腫瘍微小環境をモジュレートする。例えば、腫瘍関連マクロファージにおける活性転写を阻害することによって、ルルビネクテジンは、IL-6、IL-8、CCL2、及びVEGFを下方制御する。
【0004】
ルルビネクテジンの化学構造は、以下の通り表される。
【0005】
【化1】
【0006】
ルルビネクテジンは、固形及び非固形腫瘍細胞株に対して極めて強力なin vitro活性、並びにマウスにおいて乳がん、腎がん及び卵巣がんのもの等いくつかの異種移植ヒト腫瘍細胞株で著しいin vivo活性を明らかにした。それは、多くの腫瘍が特に依存している発がん性転写プログラムの選択的阻害薬である。ルルビネクテジンは、がん細胞に対するその効果と共に、腫瘍関連マクロファージにおいて発がん性転写を阻害し、腫瘍の成長に不可欠なサイトカインの産生を下方制御する。転写への依存性は、それらの疾患において一般に認められた標的であり、それらの疾患の多くには、他の作用しうる標的がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/014127号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】100th AACR Annual Meeting、2009年4月18~22日、 Denver、 CO、 Abstract Nr. 2679
【非特許文献2】100th AACR Annual Meeting、 2009年4月18~22日、 Denver、 CO、 Abstract Nr. 4525
【非特許文献3】Leal JFM他、 Br. J. Pharmacol. 2010年、 161、 1099~1110頁
【非特許文献4】Belgiovine、 C他、 Br. J. Cancer、 2017年; 117(5): 628~638頁
【非特許文献5】Elez、 ME.他、 Clin. Cancer Res. 2014年、 20(8)、 2205~2214頁
【非特許文献6】50th ASCO Annual Meeting、 2014年5月30日~6月3日、 Chicago、 IL、 Abstract 5505
【非特許文献7】26th EORTC - 26th EORTC-NCI-AACR Symposium on Molecular Targets and Cancer Therapeutics;2014年11月18~21日、 Barcelona、Spain;Eur. J. Cancer 2014年、 50 (補遺.6)、13-14頁、 Abs. No. 23に掲載
【非特許文献8】51th ASCO Annual Meeting、 2015年5月29日~6月2日、 2015年、 Chicago、 IL、 Abstract No. TPS2604及びAbstract Nr. 7509;J. Clin. Oncol. 33、 2015年 (補遺)に掲載
【非特許文献9】54th ASCO Annual Meeting、 2018年6月1~5日、Chicago、 IL、 Abstract No. 11519;J. Clin. Oncol. 36、 2018年 (補遺)に掲載
【非特許文献10】Cruz、 C. 他、J. Clin. Oncol. 2018年、 36(31)、 3134~3143頁
【非特許文献11】54th ASCO Annual Meeting、 2018年6月1~5日、Chicago、 IL、Abstract No. 8570;J. Clin. Oncol. 36、 2018年 (補遺)に掲載
【非特許文献12】Xie他、 Lurbinectedin synergizes with immune checkpoint blockade to generate anticancer; immunity ONCOIMMUNOLOGY、 2019年、 8巻、 11号、 e1656502 (9頁)
【非特許文献13】Burger、 「Medicinal Chemistry and Drug Discovery」 第6版. (Donald J. Abraham編、 2001年、 Wiley)
【非特許文献14】「Design and Application of Prodrugs」 (H. Bundgaard編、 1985年、 Harwood Academic Publishers)
【非特許文献15】「Remington's Pharmaceutical Sciences」、E. W. Martin
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
更に効果的ながん治療が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、小細胞肺がんの処置に効果がある、ルルビネクテジン及びアテゾリズマブの用量レジメン(dosing regimen)を決定した。
【0011】
上記に鑑み、本発明の態様において、がんの処置における使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せを投与する工程を含み、ルルビネクテジンが3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブが1200mgの用量で投与され、ルルビネクテジン及びアテゾリズマブが21日サイクルの1日目に投与される、使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブを提供する。
【0012】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置における使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せを投与する工程を含み、任意選択で、小細胞肺がんが進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)である、使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブを提供する。
【0013】
更なる態様において、がんの処置方法であって、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せを投与する工程を含み、ルルビネクテジンが3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブが1200mgの用量で投与され、ルルビネクテジン及びアテゾリズマブが21日サイクルの1日目に投与される、方法を提供する。
【0014】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置方法であって、ルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、任意選択で、小細胞肺がんが進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)である、方法を提供する。
【0015】
更なる態様において、がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジン及びアテゾリズマブの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せを投与する工程を含み、ルルビネクテジンが3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブが1200mgの用量で投与され、ルルビネクテジン及びアテゾリズマブが21日サイクルの1日目に投与される、使用を提供する。
【0016】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジン及びアテゾリズマブの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せを投与する工程を含み、任意選択で、小細胞肺がんが進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)である、使用を提供する。
【0017】
更なる態様において、がん細胞増殖を抑制する方法であって、がん細胞をルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せと接触させる工程を含み、前記がん細胞が、小細胞肺がん細胞、任意選択で進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)細胞である、方法を提供する。
【0018】
更なる態様において、がんの処置方法であって、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与され、それによってがんが処置される、方法を提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0019】
更なる態様において、がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジンの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが、2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用を提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0020】
更なる態様において、がんの処置のための医薬の製造におけるアテゾリズマブの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用を提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0021】
更なる態様において、がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジン及びアテゾリズマブの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用を提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0022】
更なる態様において、がんの処置における使用のためのルルビネクテジンであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのルルビネクテジンを提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0023】
更なる態様において、がんの処置における使用のためのアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのアテゾリズマブを提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0024】
更なる態様において、がんの処置における使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのルルビテクネジン及びアテゾリズマブを提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0025】
更なる態様において、がんの処置における使用のためのルルビネクテジンであって、前記処置において、それを必要とする患者にルルビネクテジンがアテゾリズマブと組み合わされて投与され、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのルルビネクテジンを提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0026】
更なる態様において、がんの処置における使用のためのアテゾリズマブであって、前記処置において、それを必要とする患者にアテゾリズマブがルルビネクテジンと組み合わされて投与され、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのアテゾリズマブを提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0027】
更なる態様において、がんの処置における使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブであって、前記処置において、ルルビネクテジンが、アテゾリズマブと組み合わされてそれを必要とする患者に投与され、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのルルビテクネジン及びアテゾリズマブを提供する。特定の実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mgの用量で投与される。特定の実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0028】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置方法であって、それを必要とする患者、好ましくはヒト患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施し、それによって小細胞肺がんが処置される、方法を提供する。小細胞肺がんは進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)とすることができる。
【0029】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジンの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用を提供する。小細胞肺がんはES-SCLCとすることができる。
【0030】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置のための医薬の製造におけるアテゾリズマブの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用を提供する。小細胞肺がんはES-SCLCとすることができる。
【0031】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジン及びアテゾリズマブの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用を提供する。小細胞肺がんはES-SCLCとすることができる。
【0032】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置における使用のためのルルビネクテジンであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用のためのルルビネクテジンを提供する。小細胞肺がんは進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)とすることができる。
【0033】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置における使用のためのアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用のためのアテゾリズマブを提供する。小細胞肺がんはES-SCLCとすることができる。
【0034】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置における使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブを提供する。小細胞肺がんはES-SCLCとすることができる。
【0035】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置における使用のためのルルビネクテジンであって、前記処置において、ルルビネクテジンが、アテゾリズマブと組み合わされてそれを必要とする患者に投与される、使用のためのルルビネクテジンを提供する。小細胞肺がんはES-SCLCとすることができる。
【0036】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置における使用のためのアテゾリズマブであって、前記処置において、アテゾリズマブが、ルルビネクテジンと組み合わされてそれを必要とする患者に投与される、使用のためのアテゾリズマブを提供する。小細胞肺がんはES-SCLCとすることができる。
【0037】
更なる態様において、小細胞肺がんの処置における使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブであって、前記処置において、ルルビネクテジンが、アテゾリズマブと組み合わされてそれを必要とする患者に投与される、使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブを提供する。小細胞肺がんはES-SCLCとすることができる。
【0038】
剤形、医薬パッケージ及び製剤、並びにキットオブパーツも本発明によって提供される。これらは、小細胞肺がんの処置方法における使用のために包装されたルルビネクテジン及び/又はアテゾリズマブを含むことができ、前記処置が、本発明に従ってそれを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む。剤形、パッケージ、製剤及びキットは、処置を患者に本発明に従って提供するための指示書を更に含むことができる。
【0039】
以下の実施形態は、本発明のすべての態様に当てはまる。
【0040】
ルルビネクテジン及びアテゾリズマブは、同時に、別々に又は順次に投与されうる。ルルビネクテジン若しくはアテゾリズマブ、又は両方の複数回投与が行われうる。
【0041】
ルルビネクテジンは、2.5~3.2mg/m2の用量で投与されうる。好ましい実施形態において、ルルビネクテジンは、2.5mg/m2の用量で、好ましくは2.8mg/m2の用量で、より好ましくは3.0mg/m2の用量で、更により好ましくは3.1mg/m2の用量で、最も好ましくは3.2mg/m2の用量で投与される。好ましい実施形態において、ルルビネクテジンは、2.5~3.2mg/m2、好ましくは2.8~3.2mg/m2、より好ましくは3.0~3.2mg/m2、更により好ましくは3.1~3.2mg/m2、最も好ましくは3.2mg/m2の用量で投与される。
【0042】
ルルビネクテジン及びアテゾリズマブは、1~4週ごとに1回、好ましくは3週ごとに1回又は4週ごとに1回のサイクルで投与されうる。特定の投与サイクルは、21日ごとの投与サイクルである。Day 1 q3wk。
【0043】
いずれか好適な投与経路、例えば皮下、静脈内、腹腔内投与経路が使用されうる。ルルビネクテジン及びアテゾリズマブによって異なる投与経路が使用されうる。
【0044】
ルルビネクテジンは、静脈内注入によって投与されうる。ルルビネクテジンは、アテゾリズマブの後に投与されうる。
【0045】
ルルビネクテジンは、注入液として、好ましくは最大で24時間、1~12時間、1~6時間、最も好ましくは1時間の注入時間で投与されうる。実施形態において、投与は、記載された注入時間の-5分から+20分とすることができる。
【0046】
ルルビネクテジンは、1日目に投与されうる。ルルビネクテジンは、21日サイクルの1日目に投与されうる。+/-2日のウィンドウが、サイクルの1日目における投与のために許容されうる。ウィンドウを1サイクル目に許容することはできない。
【0047】
ルルビネクテジンは、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びアンモニウム塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、N,N-ジアルキレンエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩及び塩基性アミノ酸塩から選択される薬学的に許容される塩の形で投与されうる。
【0048】
アテゾリズマブは、840mg~1680mg、好ましくは900mg~1500mg、1000mg~1400mg、1100mg~1300mgの用量で投与されうる。好ましい実施形態において、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。実施形態において、アテゾリズマブは、2週ごとに840mg、又は3週ごとに1200mg、又は4週ごとに1680mgとして投与されうる。3週ごとに1200mgが特に好ましい。
【0049】
アテゾリズマブは、静脈内注入によって投与されうる。アテゾリズマブは、ルルビネクテジンの前に投与されうる。
【0050】
アテゾリズマブは、注入液として、好ましくは最大で24時間、1~12時間、1~6時間、最も好ましくは60分の注入時間で投与され、又は2回目以降の注入では、30分の注入時間で投与されうる。実施形態において、投与は、記載された注入時間の-5分から+30分とすることができる。
【0051】
アテゾリズマブは、1日目に投与されうる。アテゾリズマブは、21日サイクルの1日目に投与されうる。+/-2日のウィンドウが、サイクルの1日目における投与のために許容されうる。ウィンドウを1サイクル目に許容することはできない。
【0052】
実施形態において、患者は、顆粒球コロニー刺激因子G-CSFを受けることもできる。実施形態において、1サイクル目に、患者は、1サイクル目の1日目から24~72時間後に始まるG-CSF一次予防を5日間受けることができる。別の言い方をすれば、患者は、G-CSFを毎日5日間受けることができ、1回目の投与が1日目から24~72時間後に始まる。更なる実施形態において、更なるサイクルのG-CSF一次予防が、同じレジメンで投与される。更なる実施形態において、更なるサイクルのG-CSF一次予防が、同じレジメンで投与される。
【0053】
多数のサイクルが、本発明に従って使用されうる。実施形態において、処置は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30又はそれ以上のサイクルを含む。
【0054】
本発明は、がんの処置において有用で有利な用法レジメン(dosage regimen)を特定した。
【0055】
がんは、固形腫瘍とすることができる。
【0056】
固形腫瘍は、前立腺がん、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、黒色腫、膀胱がん、脳/CNSがん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、頭部/頸部がん、腎がん、肝がん、リンパ腫、卵巣がん、膵がん、及び肉腫からなる群から選択されうる。
【0057】
肺がんは、中皮腫、悪性中皮腫、悪性胸膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫、好ましくは悪性胸膜中皮腫から選択されうる。
【0058】
肺がんは非小細胞肺がんとすることができる。
【0059】
肺がんは小細胞肺がんとすることができる。
【0060】
小細胞肺がんは進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)とすることができる。
【0061】
患者は、第一選択治療から進行した場合を含めて、進行した可能性がある。患者は前処置患者とすることができる。患者は重度前処置患者とすることができる。患者は進行性患者とすることができる。
【0062】
がんは進行がんとすることができる。
【0063】
患者は、前白金処置から進行した可能性がある。
【0064】
患者は、免疫療法を受けたことがない可能性がある。
【0065】
処置は二次処置とすることができる。
【0066】
処置は、以下のアウトカムのうちの1つ又は複数をもたらすことができる:腫瘍サイズの縮小;腫瘍成長における遅延;患者の寿命の延長;寛解。これらのアウトカムは、処置を受けなかった又は代替処置を受けた対照の対象(又は仮定対照の対象)との比較とすることができる。
【0067】
患者は、前免疫療法から進行した可能性がある。
【0068】
患者は、標準治療から進行した可能性がある。患者は、免疫療法を含む標準治療から進行した可能性がある。
【0069】
患者は、白金-エトポシド、例えばシスプラチン-エトポシド若しくはカルボプラチン-エトポシド;カルボプラチン-経口トポテカン;シスプラチン-イリノテカン;又はカルボプラチン-ゲムシタビンから進行した可能性がある。
【0070】
患者は、免疫チェックポイント阻害薬並びに白金剤及びエトポシドから進行した可能性がある。例としては、カルボプラチン-エトポシド-アテゾリズマブ又は白金-エトポシド-デュルバルマブが挙げられる(が、これらに限定されない)。
【0071】
患者は、ニボルマブ-イピリムマブから進行した可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】白金ベースの化学療法を用いた前治療の後に進行した進行小細胞肺がんにおける無増悪生存期間(PFS)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本出願では、いくつかの一般用語及び語句が使用され、それらは以下の通り解釈されるべきである。
【0074】
本明細書では用語「処置すること」は、別段の指示がない限り、そのような用語が当てはまる疾患若しくは状態又はそのような障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状の進行を逆行、減衰、軽減又は抑制することを意味する。本明細書では用語「処置」は、別段の指示がない限り、「処置すること」が真上に定義されたように処置する行為を指す。
【0075】
「患者」としては、ヒト、非ヒト哺乳類(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シカ等)及び非哺乳類(例えば、トリ等)が挙げられる。
【0076】
「ルルビネクテジン」(PM01183)は、新規の合成テトラヒドロイソキノリンアルカロイドであり、DNA副溝を結合させ、DNA及びタンパク質複合体の空間的歪みを引き起こし、DNA二本鎖切断(DSB)を形成し、したがって細胞周期S/G2期を通してアポトーシスを誘導し、進行を遅延させる。ルルビネクテジンは、以下の構造を有する。
【0077】
【化2】
【0078】
in vitroで、ルルビネクテジンは、腫瘍由来細胞株の幅広い選択に対して細胞傷害効果を明らかにし、半最大阻害濃度(IC50)値は、低いナノモルから非常に低いナノモルの範囲(IC50のほぼ中央値1×10-10M)であった。ルルビネクテジンは、異種移植されたヒト由来腫瘍タイプのさまざまなマウスモデルに対してin vivo抗腫瘍活性も示す。
【0079】
ルルビネクテジンのin vitro抗新生物活性は、さまざまなルルビネクテジン濃度に72時間曝露してからMTT短期アッセイによって生存率についてアッセイを行った固形腫瘍細胞株の一団(その一部をTable 1(表1)に示す)において評価した。
【0080】
【表1】
【0081】
ルルビネクテジンのin vivo抗新生物活性は、異なるいくつかのヒト由来腫瘍タイプの一団、すなわち、乳房、結腸、肺、卵巣及び前立腺において明らかになった(Table 2(表2))。得られた腫瘍感受性は、胸腺欠損マウス中で成長した異種移植片において分析され、そのとき、製剤化されていないルルビネクテジンは、げっ歯類の最大耐用量[0.3mg/kg(0.9mg/m2)]で単回ボーラス静脈内(i.v.)注射として投与された。ルルビネクテジンは、実験中さまざまな時点で乳房、肺及び卵巣の異種移植片に対して統計学的に有意な抗腫瘍活性(p<0.05)を明らかにしたが、膀胱、膵臓及び前立腺に対してより適度な抗腫瘍プロファイルを有した。
【0082】
【表2】
【0083】
ラット及びイヌにおける毒物学研究によって、主要な標的臓器は骨髄及び肝臓であることが示された。心血管系パラメータ[動脈圧(ABP)、心拍数(HR)及び第II誘導心電図(ECG)]に対するPM01183の単回ボーラス注射の効果は、イヌにおいて6時間評価された。この研究は、0.01mg/kg(0.2mg/m2)までの用量のPM01183で処置されたイヌにおいて、心臓、ABP、第II誘導ECG変数(PR、QT、QTcF及びQTcV間隔、及びQRS時間)、ECG肉眼形態又はリズムに効果を及ぼさないことを示した。その上、異なる2つの毒性試験によって、0.05mg/kg(1mg/m2)までの用量のルルビネクテジン単回又は反復投与後に、イヌのHR及びECGにおける電気生理学的変化はないことが明らかになった。
【0084】
臨床データ
上記の肯定的な前臨床結果に基づいて、ルルビネクテジンの臨床開発プログラムは2009年3月に始められた。現在、このプログラムは、4つの第I相単剤研究(固形腫瘍の研究3つ、並びに急性白血病の研究1つ);6つの第Ib相組合せ研究(選択された進行固形腫瘍において、ベバシズマブの有り無しでゲムシタビン、カペシタビン、ドキソルビシン、シスプラチン、イリノテカン、又はパクリタキセルを用いた研究);5つの第II相研究(二次膵がん、BRCA変異又はBRCA非選択転移性乳がん患者、及び白金抵抗性/難治性卵巣がん、更に選択された進行固形腫瘍において、ルルビネクテジンを単剤として用いた研究4つ、並びに進行非小細胞肺がん[NSCLC]において、二次治療としてゲムシタビンと組み合わせて用いた研究1つ);2つの第III相試験(白金抵抗性卵巣がんにおいて、単剤ルルビネクテジン対ペグ化リポソームドキソルビシン[PLD]又はトポテカンを比較する試験、並びに小細胞肺がん[SCLC]において、ルルビネクテジンをドキソルビシンと組み合わせたもの対シクロホスファミド、ドキソルビシン及びビンクリスチン[CAV]又はトポテカンを比較する試験);第二相試験PM1183-B-005-14に既に参加している、正常な心伝導及び心機能、90~150mmHgの収縮期血圧及び正常な血清電解質レベルを有する患者を対象とした1つのQT評価研究;並びに2つの治験責任医師主導研究(IST:進行固形腫瘍において、PM01183をオラパリブと組み合わせたものを用いた研究、及び軟部組織肉腫において、ルルビネクテジンを単独で又はドキソルビシン若しくはゲムシタビンと組み合わせて用いた研究)を含む。2017年1月15日(IB バージョン9.0のカットオフ日)現在で、1515名の患者がルルビネクテジン臨床研究に登録され、1204名がルルビネクテジン含有治療で処置された(第I相試験460名、第二相試験448名、第III相試験234名、IST62名)。
【0085】
完了したPM1183-A-001-08第I相試験は、ヒト患者において初めて静脈内ルルビネクテジンを評価し、そのとき、進行及び難治性固形腫瘍の患者31名において、3週ごと(q3wk)に1時間(h)かけて注入された。これらのうち、15名(48.4%)の患者が定義済み推奨用量(RD)で処置された。第II相研究のRDは、q3wkに4.0mg/m2のPM01183用量と定義され、q3wkに7.0mgの固定用量(FD)に等しい。RDでの処置は、一般に高い忍容性が標準制吐予防と共に認められた。RDにおける最も適切な毒性は、可逆的な短期骨髄抑制であった。1名の患者は、RDで唯一の用量規制毒性(DLT)であるグレード4の血小板減少症を有した。蓄積毒性の徴候は観察されなかった。抗腫瘍活性が、RDで観察された。薬物動態(PK)分析によって、高患者間変動(曲線下面積[AUC]>50.0%)、及びすべての探索された用量全体で直線性が示された。線形回帰分析によって、好中球減少症とAUCの相関性が示された(r2=0.452)。
【0086】
他の2つの第I相試験が完了した。固形腫瘍において、単剤ルルビネクテジンをq3wkに1日目及び8日目のスケジュールで用いた試験(PM1183-A-005-11)、並びに選択された進行固形腫瘍において、ルルビネクテジンをゲムシタビンと組み合わせて用いた試験(PM1183-A-004-10)。抗腫瘍活性が両研究において観察された。
【0087】
更に、リクルートメントが、5つの第I相試験において締め切られた。急性再発/難治性成人性白血病及び骨髄異形成症候群において、単剤ルルビネクテジンを用いた試験(PM1183-A-002-10)、並びに選択された固形腫瘍において、ルルビネクテジンをドキソルビシンと組み合わせて用いた試験(PM1183-A-003-10)、カペシタビンと組み合わせて用いた試験(PM1183-A-006-12)、ベバシズマブの有り無しでパクリタキセルと組み合わせて用いた試験(PM1183-A-007-13)、及びシスプラチンと組み合わせて用いた試験(PM1183-A-008-13)の4つ。リクルートメントが、2つの第I相試験において現在進行中である。切除不能/進行固形腫瘍の日本人患者において、単剤ルルビネクテジンを用いた試験(PM1183-A-013-15)、及び選択された進行固形腫瘍において、ルルビネクテジンをイリノテカンと組み合わせて用いた本研究(PM1183-A-014-15)。
【0088】
5つの第二相試験のうち、ルルビネクテジンを二次処置として、進行膵がん(PM1183-B-001-10)において評価した試験並びに白金抵抗性及び白金難治性卵巣がん(PM1183-B-002-11)において評価した試験の2つが完了した。他の3つの第二相試験は、(1つの試験において、リクルートメントが締め切られているが)進行中であり、ルルビネクテジンを二次処置として、BRCA 1/2関連又は非選択乳がん(PM1183-B-003-11)において、単独で又はゲムシタビンと組み合わせて、NSCLC(PM1183-B-004-13)において、並びにいくつかの選択された進行固形腫瘍:SCLC、頭頸部癌(H&N)、神経内分泌腫瘍(NET)、胆道癌、子宮内膜癌、BRCA 1/2関連転移性乳癌、原発部位不明癌、胚細胞腫瘍(GCT)、及びユーイングファミリー腫瘍(EFT)(PM1183-B-005-14)において評価している。
【0089】
両方の第III相試験が進行中である。リクルートメントが、白金抵抗性卵巣がんにおいて、単剤ルルビネクテジン対PLD又はトポテカンを比較する試験(PM1183-C-004-14[CORAIL])では締め切られ、SCLCにおいて、ルルビネクテジンをドキソルビシンと組み合わせたもの対CAV又はトポテカンを比較する試験(PM1183-C-003-14[ATLANTIS])では進行中である。
【0090】
リクルートメントが、QT評価研究(PM1183-B-005-14-QT)でも締め切られ、両方のIST(進行固形腫瘍でIST POLA/ACOG1401、及び軟部組織肉腫でIST 15-083)において進行中である。
【0091】
第II相データのプールデータロジスティック回帰分析は、グレード3/4の好中球減少症及び血小板減少症が体表面積(BSA)に関連がありうることを示唆した。これらの知見に基づいて、積極的に募集している計画された研究はすべて、ここでBSAベースの投与を使用して、重度骨髄抑制を制限する。本来のRDである4.0mg/m2 q3wkが審査され、同じ理由から3.2mg/m2 q3wkに低減された。
【0092】
ルルビネクテジンの作用機序及びin vivo有効性に関する更なる情報は、100th AACR Annual Meeting、2009年4月18~22日、Denver、 CO、 Abstract Nr. 2679及びAbstract Nr. 4525; Leal JFM他、 Br. J. Pharmacol. 2010年、 161、 1099~1110頁;及びBelgiovine、 C他、 Br. J. Cancer、 2017年; 117(5): 628~638頁で見ることができる。
【0093】
PM01183(ルルビネクテジン)の臨床開発に関する更なる情報は、下記で見ることができる。
- Elez, ME.他、 Clin. Cancer Res. 2014, 20(8), 2205-2214;
- 50th ASCO Annual Meeting、2014年5月30日~6月3日、2014年、Chicago、IL、Abstract 5505;
- 26th EORTC - 26th EORTC-NCI-AACR Symposium on Molecular Targets and Cancer Therapeutics; 2014年11月18~21日、Barcelona、 Spain; Eur. J. Cancer 2014, 50 (補遺.6), pages 13-14, Abs. No. 23に掲載
- 51th ASCO Annual Meeting、2015年5月29日~6月2日、Chicago、IL、Abstract No. TPS2604及びAbstract Nr. 7509;J. Clin. Oncol. 33, 2015 (補遺)に掲載;
- 54th ASCO Annual Meeting、 2018年6月1~5日、Chicago, IL, Abstract No. 11519;J. Clin. Oncol. 36, 2018年(補遺)に掲載;
- Cruz, C.他、 J. Clin. Oncol. 2018年, 36(31), 3134~3143頁;
- 54th ASCO Annual Meeting、 2018年6月1~5日、Chicago, IL、Abstract No. 8570;J. Clin. Oncol. 36, 2018年 (補遺)に掲載。
【0094】
更なる情報は、Xie 他、Lurbinectedin synergizes with immune checkpoint blockade to generate anticancer; immunity ONCOIMMUNOLOGY, 2019年、8巻、11号、e1656502 (9頁)で見ることができる。
【0095】
用語「ルルビネクテジン」はここでは、患者に投与すると、本明細書に記載された化合物を(直接的又は間接的に)提供することができる任意の薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、又は他の任意の化合物を包含するように意図される。しかし、薬学的に許容されない塩も、薬学的に許容される塩の調製において有用でありうるので、本発明の範囲内に入ると認識されている。塩の調製は、当技術分野において公知の方法によって実施されうる。
【0096】
例えば、本明細書で提供される化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含む親化合物から通常の化学的方法によって合成される。一般に、そのような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸又は塩基を水若しくは有機溶媒又は両方の混合物中で化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸付加塩、並びに例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩及びp-トルエンスルホン酸塩等の有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びアンモニウム塩等の無機塩、並びに例えば、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、N,N-ジアルキレンエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩及び塩基性アミノ酸塩等の有機アルカリ塩が挙げられる。
【0097】
ルルビネクテジンのプロドラッグである任意の化合物は、本発明の範囲及び趣旨内である。用語「プロドラッグ」は、その最も広義の意味で使用され、PM01183にin vivoで変換されるそれらの誘導体を包含する。プロドラッグは、生物学的条件下で加水分解、酸化、又はその他の方法で反応して、PM01183を提供することができる。プロドラッグの例としては、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド、及び生加水分解性ホスフェート類似体等の生加水分解性部分を含むPM01183の誘導体及び代謝物が挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグは、典型的にBurger、「Medicinal Chemistry and Drug Discovery」 第6版(Donald J. Abraham編、 2001年、 Wiley)及び「Design and Application of Prodrugs」(H. Bundgaard編、1985年、Harwood Academic Publishers)によって記載された方法等の周知の方法を使用して調製されうる。
【0098】
更に、本明細書に引用された任意の薬物は、遊離化合物又は溶媒和物(例えば、水和物)として結晶形又は非晶形とすることができ、すべての形は本発明の範囲内であることが意図されている。溶媒和の方法は、一般に当技術分野内で知られている。
【0099】
更に、本発明において使用のためのルルビネクテジンは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第03/014127号に開示されたプロセス等の合成プロセスに従って調製されうる。
【0100】
アテゾリズマブ(MPDL3280A)は、2本の重鎖(それぞれ448アミノ酸残基)と2本の軽鎖(それぞれ214アミノ酸残基)からなるヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、チャイニーズハムスター卵巣細胞において産生される。アテゾリズマブは、重鎖の298位における単一アミノ酸置換を介してFc-エフェクター機能をなくすように設計された。それによって、ヒトにおいてFc受容体への最小結合を有し、期待濃度でFc-エフェクター機能を妨げる非グリコシル化抗体が生じる。
【0101】
アテゾリズマブは、ヒトDP-L1を標的にし、その受容体であるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)及びB7.1(CD80、B7-1)とのその相互作用を抑制する。これらの相互作用の両方が、抑制性シグナルをT細胞に提供すると報告されている。
【0102】
アテゾリズマブは、ヒトにおける固形腫瘍及び血液悪性腫瘍に対して強力な治療として調査中である。
【0103】
2016年3月18日に米国FDA及び2017年9月21日にEMAが、アテゾリズマブを、白金含有化学療法の間又は後に進行した転移性NSCLCの患者の処置のために承認した。上皮増殖因子受容体(EGFR)又は未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の腫瘍ゲノム異常を伴う患者は、アテゾリズマブを受ける前にこれらの異常のFDA承認治療中に疾患進行を有するはずである。
【0104】
この承認は、合計1137名のNSCLC患者において有効性及び安全性で一貫した結果を明らかにした2つの国際無作為化非盲検臨床試験(Study GO28915[OAK]及びStudy GO28753[POPLAR])に基づくものであった。
【0105】
2019年、カルボプラチン及びエトポシドと組み合わせたアテゾリズマブは、欧州で進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)の成人患者の一次処置のための承認を受けた。
【0106】
本発明の組合せは、小細胞肺がんの処置において有用であることが見出された。
【0107】
「小細胞肺がん(SCLC)」は、肺がんの増殖の速い形である。それは、燕麦細胞がんと呼ばれることもある。肺がんは、米国では男性でも女性でもがん死亡の主因である。1998年、推定171,500人の新しい症例が診断され、約160,100人の死亡がこの疾患に起因した。女性の肺がんでの死亡は、乳がん、卵巣がん及び子宮がんでの死亡の合計より多く、男性の肺がんでの死亡は、前立腺がんでの死亡の4倍である。
【0108】
肺がんは、悪性(がん)細胞が肺の組織において形成する疾患である。肺がんの主要な2つのタイプは、小細胞肺がん(SCLC)及び非小細胞肺がん(NSCLC)である。SCLCは、診断時にすべての肺がんの約13~15%を構成するだけであるが、肺がんのより侵攻性の形である。SCLCでは、がん細胞は、急速に増殖し、身体の他の部分により容易に移動する、又は転移する傾向がある。その発症率は喫煙に関連しており、患者のほぼ2/3が進行疾患を呈し、化学療法に対する奏効率が高いが、その利点は長続きしない。無処置SCLC患者の生存期間中央値は2~4か月である。最も一般的なレジメンは、シスプラチン又はカルボプラチン及びエトポシドを含む。残念なことに、一次化学療法に対する奏効率が40~90%であるにもかかわらず、患者が化学療法に対する抵抗性を発現し、再発するので、長期生存は普通でない。処置無しで疾患再発後の期待平均全生存期間は、典型的に2~4か月であった。
【0109】
しかし、2019年3月18日、米国FDAは、カルボプラチン及びエトポシドと組み合わせたアテゾリズマブを、進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)の成人患者の一次処置のために承認した。
【0110】
承認は、進展期疾患の前化学療法を受けず、ECOGのパフォーマンスステータスが0又は1であった、403名のES-SCLC患者における無作為化(1:1)多施設二重盲検プラセボ対照試験IMpower133(NCT02763579)に基づくものであった。患者は、以下うちの1つに無作為化された。
・ 各21日サイクルの1日目に、アテゾリズマブ1200mg及びカルボプラチンAUC 5mg/mL/分、並びに1、2及び3日目に、エトポシド100mg/m2を最大4サイクル静脈内投与し、次に、アテゾリズマブ1200mgを、疾患進行若しくは許容できない毒性まで3週ごとに1回静脈内投与する、又は
・ 各21日サイクルの1日目に、プラセボ及びカルボプラチンAUC 5mg/mL/分、並びに1、2及び3日目に、エトポシド100mg/m2を最大4サイクル静脈内投与し、次に、プラセボを、疾患進行若しくは許容できない毒性まで3週ごとに1回静脈内投与する。
【0111】
主要有効性評価項目は、治療企図解析対象集団においてRECIST 1.1に従って治験責任医師によって評価された全生存期間(OS)及び無増悪生存期間(PFS)であった。OS中央値は、アテゾリズマブを化学療法と共に受けている患者では12.3か月(10.8、15.9)であり、プラセボを化学療法と共に受けている患者では10.3か月(9.3、11.3)であった(ハザード比0.70;95% CI:0.54、0.91;p=0.0069)。PFS中央値は、5.2か月(4.4、5.6)であり、それぞれアテゾリズマブ及びプラセボ群における4.3か月(4.2、4.5)と比較した(HR 0.77;0.62、0.96;p=0.0170)。
【0112】
IMpower133でアテゾリズマブを受けた患者の20%以上において報告された最も一般的な有害反応は、疲労/無力症、悪心、脱毛症、便秘及び食欲減退であった。
【0113】
更に、2020年6月に、FDAは、ルルビネクテジンを、白金ベースの化学療法中又は後に疾患進行を伴った転移性小細胞肺がん(SCLC)の成人患者の処置のために承認した。有効性が、白金ベースの化学療法中又は後に疾患進行を有した105名の転移性SCLC患者を登録した多施設非盲検マルチコホート研究PM1183-B-005-14試験(Study B-005;NCT02454972)において明らかになった。患者は、ルルビネクテジン3.2mg/m2を、疾患進行又は許容できない毒性まで21日ごとに静脈内注入によって受けた。主要有効性評価項目は、RECIST 1.1を使用する治験責任医師の評価によって決定された確認済みの全奏効率(ORR)、及び奏効期間であった。105名の患者の間で、ORRは35%であり(95% CI:26%、45%)、奏効期間中央値は5.3か月であった(95% CO:4.1、6.4)。関与している独立した再調査に従ったORRは30%であり(95% CI:22%、40%)、奏効期間中央値は5.1か月であった(95% CI:4.9、6.4)。ルルビネクテジンの推奨用量は、21日ごとに3.2mg/m2である。
【0114】
実施形態において、がんは進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)である。実施形態において、がんは進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)であり、がんが放射線療法で処置されうる単一領域を越えて広がった。それは、胸部内に(肺の全体にわたって広く、片方の肺に、又はがんから更に離れたリンパ節に)、又は身体の他の部分に広がった可能性がある。又は、肺の周りの流体中にがん細胞が存在しうる(悪性胸水)。
【0115】
「悪性中皮腫」は、悪性(がん)細胞が胸膜(胸腔を裏打ちし、両肺を覆う組織の薄層)又は腹膜(腹部を裏打ちし、腹部の器官の大部分を覆う組織の薄層)に見られる疾患である。悪性中皮腫は、心臓又は精巣でも形成しうるが、これは稀である。中皮腫の4つのタイプは、したがって胸膜(肺裏層)、腹膜(腹腔裏層)、心膜(心膜)及び精巣中皮腫である。
【0116】
中皮腫は、類上皮型、肉腫型及び二相型の3つのがん細胞型によって同定することができ、したがって、類上皮型中皮腫(類上皮細胞)、肉腫型中皮腫(肉腫様細胞)又は二相型中皮腫(類上皮細胞及び肉腫様細胞)と定義されうる。胸膜は、最も一般的な中皮腫である。症例の約70%~75%が胸膜において生じる。腹膜疾患は、中皮腫症例の10%~20%を占める。胸膜と比べて、腹膜に関して利用可能な研究は少ないが、しかし、この腫瘍型の予後はよい。心膜中皮腫は極めて稀である。約200症例が医学文献に報告されている。精巣中皮腫は、精巣の裏層に発症する。中皮腫のこの形は最も稀である。100未満の症例が医学文献に報告されている。
【0117】
中皮腫細胞の3種は、上皮型、肉腫型及び二相型である。二相性は、最初の2つの細胞型のミックスである。異なる中皮腫腫瘍は、処置への応答が異なる。上皮又は類上皮細胞は、典型的に処置に最もよく応答し、肉腫様細胞は、典型的に処置に対してより抵抗性である。類上皮型中皮腫は、アスベスト関連中皮腫がんの全症例の約70%~75%を構成する。類上皮細胞は、典型的に最良の予後を有する。それは、侵攻性でない傾向があり、肉腫様及び二相性細胞疾患ほど速く広がらない。胸膜疾患の約50%は、類上皮細胞である。腹膜腫瘍の約75%は、類上皮細胞で構成されている。肉腫様は、極めて稀な中皮腫細胞カテゴリーである。それは、典型的に最も侵攻性で、処置するのが難しい。それは、すべての中皮腫診断の約10%~20%を占める。胸膜腫瘍の約20%が肉腫様であるが、腹膜中皮腫の1%だけが肉腫様である。二相型中皮腫は、上皮及び肉腫様細胞を含む腫瘍を指す。二相型中皮腫の診断後の平均余命は、腫瘍において優勢な細胞に依存する。類上皮細胞が多いほど、一般に予後が良くなることを意味する。腫瘍は、大部分が肉腫様である場合、処置するのが困難になり、平均余命が短くなる。胸膜腫瘍の約30%及び腹膜腫瘍の25%が、二相性細胞である。
【0118】
【表3】
【0119】
医学文献に報告された限定された数の症例に基づいて、心膜中皮腫は、3つの中皮腫細胞型のおよそ同じくらいの分布を示す。精巣中皮腫症例の約2/3は類上皮細胞である。精巣症例の残りは二相性である。純粋に肉腫様細胞疾患の1症例が、精巣中皮腫について報告されているだけである。
【0120】
実施形態において、本発明は、悪性胸膜中皮腫(MPM)の処置において有用である。
【0121】
処置される悪性中皮腫は、類上皮細胞とすることができる。処置される悪性中皮腫は、肉腫様とすることができる。処置される悪性中皮腫は、二相性とすることができる。
【0122】
患者は、免疫療法を受けたことがない可能性がある。
【0123】
患者は、前免疫療法から進行した可能性がある。「前免疫療法から進行した」は、患者が、以前に免疫療法を受けたことがあるということを意味する。
【0124】
免疫療法は、免疫チェックポイント阻害薬とすることができる。免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1阻害薬、例えばペンブロリズマブ、ニボルマブ又はセミプリマブとすることができる(が、これらに限定されない)。免疫チェックポイント阻害薬は、PD-L1阻害薬、例えばアテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブとすることができる(が、これらに限定されない)。免疫チェックポイント阻害薬は、CTLA-4阻害薬、例えばイピリムマブとすることができる(が、これに限定されない)。免疫チェックポイント阻害薬は、LAG-3阻害薬、例えばレラトリマブとすることができる(が、これに限定されない)。
【0125】
処置は二次処置とすることができる。
【0126】
患者は、標準治療を受けてから進行した可能性がある。ES-SCLCの標準治療は、白金-エトポシド、例えばシスプラチン-エトポシド又はカルボプラチン-エトポシド;カルボプラチン-経口トポテカン;シスプラチン-イリノテカン;又はカルボプラチン-ゲムシタビンとすることができる。
【0127】
患者は、白金-エトポシド、例えばシスプラチン-エトポシド又はカルボプラチン-エトポシド;カルボプラチン-経口トポテカン;シスプラチン-イリノテカン;又はカルボプラチン-ゲムシタビンから進行した可能性がある。
【0128】
患者は、免疫療法を含む標準治療を受けてから進行した可能性がある。
【0129】
ES-SCLCの標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬並びに白金剤及びエトポシドとすることができる。例としては、カルボプラチン-エトポシド-アテゾリズマブ、又は白金-エトポシド-デュルバルマブが挙げられる(が、これらに限定されない)。悪性胸膜中皮腫の標準治療は、ニボルマブ-イピリムマブとすることができる。
【0130】
患者は、免疫チェックポイント阻害薬並びに白金剤及びエトポシドから進行した可能性がある。例としては、カルボプラチン-エトポシド-アテゾリズマブ、又は白金-エトポシド-デュルバルマブが挙げられる(が、これらに限定されない)。
【0131】
患者は、ニボルマブ-イピリムマブから進行した可能性がある。
【0132】
実施形態において、本発明は、本明細書に定義されたがんを処置するための投与スケジュールを提供する。
【0133】
好ましい実施形態において、ルルビネクテジンは、2.5mg/m2の用量で、好ましくは2.8mg/m2の用量で、より好ましくは3.0mg/m2の用量で、更により好ましくは3.1mg/m2の用量で、最も好ましくは3.2mg/m2の用量で投与される。
【0134】
好ましい実施形態において、ルルビネクテジンは、2.5~3.2mg/m2、好ましくは2.8~3.2mg/m2、より好ましくは3.0~3.2mg/m2、更により好ましくは3.1~3.2mg/m2、最も好ましくは3.2mg/m2の用量で投与される。
【0135】
好ましい実施形態において、アテゾリズマブは、840mg~1680mg、好ましくは900mg~1500mg、1000mg~1400mg、1100mg~1300mgの用量で投与されうる。特に好ましい実施形態において、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。実施形態において、アテゾリズマブは、2週ごとに840mg、又は3週ごとに1200mg、又は4週ごとに1680mg投与されうる。3週ごとに1200mgが特に好ましい。
【0136】
特に好ましい実施形態において、ルルビネクテジンは、2.5~3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0137】
特に好ましい実施形態において、ルルビネクテジンは、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブは、1200mgの用量で投与される。
【0138】
患者は、本発明において記載された処置を受けながら、予防薬投与を受けることもできる。予防薬投与は、コルチコステロイド及び5-HT3受容体アンタゴニストを含む。特定のコルチコステロイドとしては、デキサメタゾンが挙げられる。特定の5-HT3受容体アンタゴニストとしては、オンダンセトロンが挙げられる。特定の投薬は、デキサメタゾン8mgの静脈内投与(又は等価用量の別の静脈内コルチコステロイド)及びオンダンセトロン8mgの静脈内投与(又は等価用量の別の静脈内5-HT3受容体アンタゴニスト)を含む。予防薬投与は、各サイクルの1日目に投与されうる。更に、更なる予防薬投与が必要に応じて投与されうる。例としては、メトクロプラミド又は等価物が挙げられ、実施形態において、8時間ごとに投与されうる。各サイクルの1日目及び8日目の後、広範囲の経口コルチコステロイド(例えば、20mg/日を超えないデキサメタゾン)及び/又は5-HT3受容体アンタゴニスト(例えば、経口(又は静脈内)オンダンセトロン4~8mg(又は等価物))が投与されうる。
【0139】
患者は、非ペグ化フィルグラスチム等の顆粒球コロニー刺激因子G-CSFも投与されうる。実施形態において、1サイクル目に、患者は、1サイクル目の1日目から24~72時間後に始まるG-CSFを用いた一次予防を5日の間に受けることができる。更なるサイクルのG-CSF一次予防は、同じレジメンで投与されうるが、医師の自由裁量に従って投与されてもよい。
【0140】
ルルビネクテジン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物は、選択された投与経路に応じて製剤化されうる。投与形態の例としては、限定されるものではないが、経口、局所、非経口、舌下、直腸、腟内、点眼及び鼻腔内投与が挙げられる。非経口投与としては、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は注入技法が挙げられる。好ましくは、組成物は非経口投与される。医薬組成物は、組成物を動物、好ましくはヒトに投与すると、化合物が生物学的利用可能になることができるように製剤化されうる。組成物は、1つ又は複数の投与単位の形をとることができ、例えば、錠剤は、単回投与単位とすることができ、化合物の容器は、化合物を液体又はエアロゾルの形で含むことができ、単回又は複数の投与単位を保持することができる。
【0141】
薬学的に許容される担体又はビヒクルは、微粒子とすることができ、したがって組成物が、例えば錠剤又は散剤の形をとる。担体は液体とすることができ、組成物は、例えば経口用シロップ又は注射用液体である。更に、担体は、例えば吸入投与において有用なエアロゾル組成物を提供するように、ガス状又は液体とすることができる。散剤は、吸入剤形にも使用されうる。用語「担体」は、希釈剤、佐剤、又は添加物を指し、それらと共に、本発明による化合物が投与される。そのような医薬用担体は、水や油等の液体とすることができ、油としては、石油、動物、植物又は合成起源の油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等が挙げられる。担体は、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンのり、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素、二糖等とすることができる。更に、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤及び着色剤が使用されうる。一実施形態において、動物に投与されるとき、化合物及び組成物並びに薬学的に許容される担体は無菌である。水は、化合物が静脈内投与されるとき好ましい担体である。生理食塩溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も、液体担体、特に注射用溶液の液体担体として採用されうる。好適な医薬用担体としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等の添加物も挙げられる。本組成物は、望むなら、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含有することができる。
【0142】
経口投与が対象とされるとき、組成物は、好ましくは固体又は液体の形であり、半固体、半液体、懸濁液及びゲルの形は、本明細書で固体又は液体とみなされる形の範囲内に含まれる。
【0143】
経口投与用の固体組成物として、組成物は、散剤、顆粒剤、圧縮錠、丸剤、カプセル剤、チューインガム、ウエハース(wafer)又は同様の形に製剤化されうる。そのような固体組成物は、典型的に1デュ又は複数の不活性希釈剤を含有する。更に、以下のうちの1種又は複数が存在することができる:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、又はゼラチン等の結合剤;デンプン、ラクトース又はデキストリン等の添加物、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トウモロコシデンプン等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動化剤、スクロース又はサッカリン等の甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジフレーバリング等の矯味剤;及び着色剤。
【0144】
組成物は、カプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)の形をとるとき、上記のタイプの材料に加えて、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン又は脂肪油等の液体担体を含有することができる。
【0145】
組成物は、液剤、例えばエリキシル剤、シロップ剤、溶液剤、乳剤又は懸濁剤の形をとることができる。液体は、経口投与又は注射による送達にとって有用でありうる。経口投与が対象とされるとき、組成物は、甘味剤、保存剤、染料/着色料及びフレーバー強化剤のうちの1種又は複数を含むことができる。注射による投与用の組成物には、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤及び等張剤のうちの1種又は複数も含まれうる。
【0146】
好ましい投与経路は非経口投与であり、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、脳内、脳室内、髄腔内、腟内又は経皮投与が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい投与様式は、開業医の自由裁量に委ねられ、一つには病的状態の部位にも依存する。より好ましい実施形態において、本発明による化合物は、静脈内投与される。最大で24時間の注入時間が使用するのに好ましく、1~12時間がより好ましく、1~6時間が更により好ましく、1時間が最も好ましい。病院に一泊することなく処置の実施を可能にする短い注入時間が特に望ましい。しかし、注入は、必要に応じて12~24時間又は更にそれ以上とすることができる。注入は、例えば1~4週間の好適な間隔で、好ましくは3週ごとに1回実施されうる。
【0147】
好ましい実施形態において、アテゾリズマブを1200mgの一定用量で注入60分として静脈内投与(i.v.)し(2回目以降の注入は、30分かけて投与されうる)、次に、ルルビネクテジンを3.2mg/m2の用量で注入1時間として3週ごとに1日目(q3wk)に静脈内投与する。サイクルは、3週間の間隔と定義される。
【0148】
液体組成物は、溶液剤、懸濁剤又は他の同様の形にせよ、以下のものうちの1種を含むこともできる:無菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張食塩水、合成モノ若しくはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン又は他の溶媒等の不揮発油;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗細菌剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の張度調整剤。非経口用組成物は、ガラス、プラスチック又は他の材料で作製されたアンプル、使い捨て注射器又は多回投与バイアルに封入されうる。生理食塩水は好ましい佐剤である。
【0149】
組成物は、好適な用法が得られるように有効量のルルビネクテジン及び/又はアテゾリズマブを含む。投薬は、最大耐用量内で順次又は周期的に実施されうる。
【0150】
具体的な実施形態において、ルルビネクテジン又はアテゾリズマブを処置を必要とする領域に局所投与することが望ましいことがある。一実施形態において、投与は、がん、腫瘍又は新生物若しくは前新生物組織の部位(又は前の部位)において直接注射によって行われうる。
【0151】
経肺投与は、例えば吸入器若しくはネブライザーの使用、及びエアロゾル化剤との製剤化によって、又はフルオロカーボン若しくは合成肺胞表面活性物質の灌流を介して採用されうる。いくつかの実施形態において、ルルビネクテジンは、伝統的な結合剤及びトリグリセリド等の担体と共に坐剤として製剤化されうる。
【0152】
本組成物は、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体を含んでいるカプセル剤、散剤、徐放性製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル剤、噴霧剤、懸濁剤の形、又は使用に適した他の任意の形をとることができる。好適な医薬用担体の他の例については、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、E. W. Martinに記載されている。
【0153】
医薬組成物は、医薬技術分野において周知の方法を使用して調製されうる。例えば、注射によって投与されるように意図された組成物は、溶液を形成するようにルルビネクテジンを水、又はリン酸緩衝食塩水等の他の生理学的に好適な希釈剤と組み合わせることによって調製されうる。界面活性剤が、均質な溶液又は懸濁液の形成を促進するように添加されうる。
【0154】
ルルビネクテジンを含む好ましい組成物としては、下記を挙げることができる。
・ ルルビネクテジン及び二糖を含む医薬組成物。特に好ましい二糖は、ラクトース、トレハロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、イソサッカロース、イソトレハロース、ツラノース、メリビオース、ゲンチオビオース、及びそれらの混合物から選択される。
・ ルルビネクテジン及び二糖を含む凍結乾燥医薬組成物。特に好ましい二糖は、ラクトース、トレハロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、イソサッカロース、イソトレハロース、ツラノース、メリビオース、ゲンチオビオース、及びそれらの混合物から選択される。
【0155】
本発明の実施形態におけるルルビネクテジンの二糖に対する比は、二糖の溶解度に応じて決定され、製剤が凍結乾燥されるときには、二糖の凍結乾燥性に応じても決定される。このルルビネクテジン:二糖の比(w/w)は、一部の実施形態において約1:10、他の実施形態において約1:20、なお更なる実施形態において約1:50とすることができることが想定される。他の実施形態は、約1:5~約1:500の範囲のそのような比を有し、なお更なる実施形態は、約1:10~約1:500の範囲のそのような比を有することが想定される。
【0156】
ルルビネクテジンを含む組成物は、凍結乾燥されうる。ルルビネクテジンを含む組成物は、通常指定された量のそのような化合物を含有するバイアルで提供される。
【0157】
ルルビネクテジンは、4mg/バイアルである注入用溶液のための濃縮物の凍結乾燥粉末とすることができる。使用前に、4mgのバイアルを8mLの滅菌注射用水で再構成して、0.5mg/mLのルルビネクテジンを含有する溶液を得ることができる。患者に静脈内注入として投与する場合、再構成バイアルは、グルコース50mg/mL(5%)又は塩化ナトリウム9mg/mL(0.9%)溶液で注入用に希釈されうる。
【0158】
PM01183 4mgのバイアルの全組成及び再構成溶液/mLは以下の通りとすることができる。
【0159】
【表4】
【0160】
より簡潔な説明を提供するために、本明細書に記載の量的表現のいくつかは、用語「約」を用いて定量化されない。用語「約」が明示的に使用されていてもいなくても、本明細書に記載されたあらゆる量は、記載された実際の値を指すことになっていること、そのような記載された値の実験及び/又は測定条件に起因する等価値及び近似値を含めて、当技術分野における通常の知識に基づいて合理的に推察されるはずのそのような記載された値の近似値を指すことにもなっていることが理解されている。
【0161】
次に、以下の実施例を参照しながら、本発明を更に説明する。
【実施例
【0162】
白金ベースの化学療法を用いた前治療後に進行した進行小細胞肺がんの患者において、PM01183及びアテゾリズマブの安全性、忍容性及び有効性を評価するための第I~II相研究
研究の目的
第I相
主要目的:
・ 白金ダブレット化学療法後に進行している進行SCLC患者におけるアテゾリズマブと組み合わせたPM01183の第II相研究(RD)のための最大耐用量(MTD)及び推奨用量を決定すること。
副次的目的:
・ この組合せの安全性プロファイル及び実現可能性を特徴づけること。
・ PM01183の薬物動態(PK)を特徴づけ、主要な薬物PK相互作用を検出すること。
・ この組合せの臨床抗腫瘍活性に関する予備情報を得ること。
・ DLTが好中球減少症と排他的に関連している場合に、進行SCLC患者におけるG-CSFによる強制的な一次予防を伴うアテゾリズマブと組み合わせたPM01183のMTD及びRDを決定すること。
・ 主要なPKパラメータにおける個々人の変動性を説明することができる因子を同定するために生殖細胞系列DNAにおける薬理遺伝学(PGt)を評価すること。
・ 応答及び/又は抵抗性の潜在的マーカーを同定するために腫瘍及び血液試料における薬理ゲノミクス(PGx)を評価すること。
【0163】
研究デザイン
1つの前白金含有ラインであるが1つ以下の化学療法含有ラインに失敗した(再負荷は許されない)ECOG PS 0~1のSCLC患者における前向き非盲検無比較多施設第I~II研究。この研究は、2つのパートに分けられる:一定用量のアテゾリズマブと組み合わせたPM01183の漸増用量を伴う用量決定第I相、次に第I相において決定されたRDにおける拡大を伴うシングルアーム第II相パート。
【0164】
第I相
患者は、アテゾリズマブを一定用量の1200mgで注入60分として静脈内投与(i.v.)を受け(2回目以降の注入は、30分かけて投与されうる)、次にPM01183を開始用量の2.5mg/m2で注入1時間として3週ごとに1日目(q3wk)に静脈内投与を受ける。サイクルは、3週の間隔と定義される。PM01183の用量は、連続的な患者コホートにおいて、変形Fibonacciスキーム及び古典的3+3デザインに続いて、観察された忍容性及び安全性に応じて漸増される。
【0165】
研究の対象集団
組み入れ基準
1) いずれの特定の研究手順より前に、自主的に署名及び日付を記入された書面によるインフォームドコンセント。
2) 年齢>18歳。
3) 組織学的又は細胞学的に確認された進展型又は限局型SCLCの診断。
4) 一次白金ベースの化学療法への進行。
5) 以前の手術又は生検から入手可能な腫瘍組織ブロック又はスライド。
6) 米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス(PS)スコア≦1。
7) RECIST v.1.1に従って測定可能な疾患 注:照射を受けた病変は、進行が実証されていれば標的になりうる。
8) 最後の(放射線療法を含めて)前抗がん処置、及び米国立がん研究所有害事象共通用語規準(NCI-CTCAE、v.5)に従って、以前の抗がん処置に関連した任意の有害事象(AE)(感覚性神経障害、貧血、無力症及び脱毛症を除く、すべてグレード≦2)からグレード≦1への回復から、少なくとも3週間。
9) 適切な骨髄、腎、肝、及び代謝機能(研究における組み入れ前7日以内に評価):
a) 血小板数≧100×109/L、ヘモグロビン≧9.0g/dL及び好中球絶対数(ANC)≧1.5×109/L。
b) 肝転移の存在に関わりなく、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦3.0×正常上限(ULN)。
c) アルカリホスファターゼ(AP)≦2.5×ULN。
d) 総ビリルビン≦1.5×ULN又は直接ビリルビン≦ULN。
e) 国際標準化比(INR)<1.5(患者が経口抗凝固治療を受けている場合を除く)。
f) (Cockcroft及びGaultの式を使用して)計算されたクレアチニンクリアランス(CrCL)≧30mL/分。
g) クレアチンホスホキナーゼ(CPK)≦2.5×ULN。
h) アルブミン≧3.0g/dL。組み入れ基準を満たすためのアルブミン注入は禁じられている。
i) 施設正常範囲内の甲状腺刺激ホルモン(TSH)。TSHがULNを超える場合、施設正常範囲内の遊離T4が許容される。
10) 妊娠可能な女性(WOCBP)の場合、妊娠していない状態の証拠。女性も男性も、試験の間、最後のアテゾリズマブ投与から少なくとも5か月間、及び最後のPM01183投与から少なくとも6週間(女性)又は4か月間(男性)、極めて効果的な避妊措置を使用することに同意しなければならない。WOCBPのパートナーをもつ生殖力のある男性患者は、試験の間及び処置中止から最大で5か月間、子供の父となること又は精子を提供することを控えることに同意しなければならない。許容される避妊方法としては、禁欲、子宮内避妊具(IUD)、経口避妊薬、皮下インプラント及び/又はダブルバリアが挙げられる。
【0166】
除外基準
1) 活動性又は無処置中枢神経系(CNS)合併症。処置されたCNS転移は、X線写真で安定性を(放射線療法後の脳スキャンから研究登録前に行われた脳スキャンまで少なくとも3週間、CNS進行なしと画定されて)示さなければならず、患者は、脳転移又はRTに付随する神経学的徴候/症状を有するべきでない。いずれのステロイド処置も、研究処置の初回投与の14日以上前に完了されなければならない。
2) 1つより多い前化学療法含有ライン(同じ初期レジメンを用いた再負荷は許されない)。
3) 骨髄の35%超において放射線治療(RT)を受けた患者。
4) 以前の骨髄及び/又は幹細胞移植の病歴。
5) 差し迫ったRTの必要性(例えば、有痛性骨転移及び/又は脊髄圧迫のリスク)。
6) 研究薬又はそれらの添加物のいずれかに対するアレルギー又は過敏症の病歴。
7) PM01183、PD-1、PD-L1、PD-L2、CD137、又は細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)に対する抗体を用いた前治療。
8) 研究処置の開始前30日以内及び処置中における生ワクチン。
9) 皮膚の基底細胞癌、表在性膀胱がん、皮膚の扁平上皮癌、上皮内子宮頸がんを除いて、他の前悪性腫瘍の病歴。他の前の悪性腫瘍を有し、疾患再発が3年間ない患者は適格である。
10) 随伴疾患/状態:
a) 初回研究投与前12か月以内に不安定狭心症、心筋梗塞、マルチゲート取得スキャン(MUGA)若しくは超音波(US)による等価物によって評価して50%未満の異常な左室駆率(LVEF)と定義されたうっ血性心不全、又は臨床的に重大な心臓弁膜症の病歴又は存在。
b) 継続中の処置を必要とする症状性不整脈又は任意の制御されない不整脈。
c) 継続中の慢性アルコール摂取、又はチャイルドピュー分類B若しくはCの肝硬変。
d) 制御されない活動性感染症。重篤な非治癒性創傷、潰瘍又は骨折。
e) 初回研究投与前14日以内に、免疫不全症の診断、又は全身性ステロイド治療(1日当たりプレドニゾン又は等価物の1日量10mgを超える)若しくは他の任意の形の免疫抑制療法を受ける。
f) 全身処置(すなわち、疾患修飾剤、コルチコステロイド及び免疫抑制薬を用いる)をこの2年間に必要とした活動性自己免疫疾患。
白斑又は自然治癒した小児性喘息/アトピーの患者も、気管支拡張薬又は局所ステロイド注射の断続的な使用を必要とする患者、ホルモン補充をして安定な甲状腺機能低下症の患者、インスリン処置して制御された1型糖尿病又はシェーグレン症候群の患者も適格である。
g) 特発性肺線維症、器質化肺炎、薬剤誘起性肺臓炎、特発性肺臓炎の病歴、又は活動性肺臓炎のスクリーニング検査胸部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンによる証拠。照射野における放射線肺臓炎(線維化)の病歴は、無症候性であり、ステロイドを必要としない場合、許可される。
h) 活動性結核(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))の既知の病歴。
i) 継続中の処置を必要とする、任意の起源の非新生物性慢性肝疾患。B型肝炎では、これは、B型肝炎表面抗原(HBsAg)及び定量的B型肝炎ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の両方について陽性試験を含む。C型肝炎では、これは、C型肝炎抗体及び定量的C型肝炎PCRの両方について陽性試験を含む。肝炎関連抗ウイルス治療を初回研究投与前6か月以内に服用した患者も除外される。
j) 公知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症。
k) CPK(1週間隔てて行った異なる2つの決定で、>2.5×ULN)の著しく持続的な上昇を引き起こすミオパチー又は任意の臨床状況。
l) 患者が処置又は追跡手順に従う能力の限界。
m) 治験責任医師の判断で、患者のこの研究への参加に伴うリスクを実質的に高める他の任意の重病。
【0167】
研究の対象集団
予想される患者数
第I相パートにおける患者数は、アテゾリズマブと組み合わせたPM01183に対する忍容性と、MTDを同定するために必要とされる用量レベルの数とに応じて変化する可能性があり、第I相において約24名の患者が推定される。
【0168】
研究薬
製剤
PM01183
PM01183医薬品が、4mgのバイアルにおける注入用溶液のための濃縮物の凍結乾燥粉末として提供される。
【0169】
使用前に、4mgのバイアルを8mLの滅菌注射用水で再構成して、0.5mg/mLのPM01183を含有する溶液を得るべきである。患者にi.v.注入として投与する場合、再構成バイアルを、グルコース50mg/mL(5%)溶液又は塩化ナトリウム9mg/mL(0.9%)溶液で注入用に希釈するべきである。
【0170】
PM01183 4mgバイアルの全組成及び再構成溶液/mLをTable S1(表5)に示す。
【0171】
【表5】
【0172】
アテゾリズマブ
アテゾリズマブ(バイアルごとに1200mg/20mL)を含むバイアルの市販提示物は、適宜提供される。
【0173】
処置スケジュール
アテゾリズマブは、一定用量の1200mgで60分のi.v.注入として(30分かけて2回目以降の注入)、次に、PM01183を1時間のi.v.注入として、双方ともq3wkごとに1日目に投与される。
【0174】
投与経路及び用量
第I相
患者は、以下のものをq3wkごとに1日目に連続して受ける(3週=1回の処置サイクル):
・ アテゾリズマブ:60分かけてi.v.注入(又は30分かけて2回目以降の注入)、直後に下記を行う。
・ PM01183:開始用量2.5mg/m2で、1時間かけて、5%グルコース又は0.9%塩化ナトリウムの最低限の100mL以上の希釈液を(固定速度で)中心ライン(又は末梢ラインが使用される場合、最低限250mLの希釈)を介してポンプデバイスによってi.v.注入。
【0175】
第I相パートの間に、体表面積(BSA)は、DuBois式に従ってサイクルごとに計算される。PM01183用量は、新しいサイクルが始められる前に再計算される。用量は、小数第1位に丸められる。
【0176】
用量漸増スキーム(第I相)
用量漸増スキームは、次表にまとめられているようにDL1で始めて、予め定義された用量レベルに従う。
【0177】
【表6】
【0178】
・ 患者は、完全な初回処置サイクルの間(3週という期間)にDLT(用量規制毒性)について評価される。十分に評価可能でない患者は交替される。
・ 少なくとも3名の十分に評価可能な患者コホートは、最初に各用量レベルで含まれる。
○ ある用量レベルの第1の患者がDLTを有しない場合(3週の期間内)、第2及び第3の患者は同時に含まれうる。
○ 第1の患者がDLTを有する場合、用量レベルの第3の患者は、第2の患者がDLTを有しない場合のみ含まれる。
○ これらの3名の第1の評価可能な患者の1名が1サイクル目の間にDLTを経験する場合、もう3名の評価可能な患者は、その用量レベルで含まれる。
・ DLTが、ある用量レベルで評価可能な患者の1/3より多数において生じない場合、漸増が次の用量レベルに進行する。
・ 所与の用量で評価可能な患者の1/3より多数がDLTを経験する場合、その用量は、MTD(すなわち、評価可能な患者の1/3より多数がDLTを経験する、用量漸増の間に探索された最低用量レベル)と判断される。用量漸増は、所与の用量レベルで生じるすべてのDLTが好中球減少症(すなわち、発熱性好中球減少症、3日間を超えて続くグレード4の好中球減少症、7日間を超えて続くグレード3の好中球減少症、又は好中球減少性敗血症)に関連付けられる場合を除いて終了され、その場合、用量漸増を同じ用量レベルで再開することができるが、強制的なG-CSF一次予防を伴う。
・ MTD(又はMTDに達していない場合DL3)直下の用量レベルは、少なくとも9名の評価可能な患者がその用量レベルで処置されるために拡大される(すなわち、漸増及び拡大を含む)。このレベルは、9名の第1の評価可能な患者の1/3より少数がDLTを経験する場合、RDとして確認される(Table S3(表7))。
【0179】
【表7】
【0180】
観察された毒性に応じて、中間の用量レベルが、適切であると判断された場合探索されうる。
【0181】
患者内用量漸増は、いかなる状況であっても許容されない。
【0182】
DLTについては、周波数の表を使用して、DLTのプロファイルを特徴づけた。まず、AE及びSAEはすべて、Medical Dictionary for Regulatory Activities (MedDRA) and their Preferred Term (PT)のバージョン23.0に従ってコード化した。次いで、周波数表が得られ、それらは用量レベル及び一次G-CSFG予防の使用によって表示された。
【0183】
予防薬投与
各サイクルの1日目に、すべての患者は、任意の研究薬の注入前に以下の予防薬投与を受けなければならない。
・ デキサメタゾン8mg i.v.又は等価物、
・ メトクロプラミド10mg i.v.又は等価物の有り無しで、オンダンセトロン8mg i.v.又は等価物。
【0184】
他の可能な予防薬投与:
・ 必要に応じて治験責任医師の基準で、10mg/日を超えない広範囲の経口プレドニゾン及び/又は経口オンダンセトロン4~8mg若しくは等価物。
・ 追加の制吐薬が、必要に応じて使用されうる。
・ アプレピタント及び等価作用剤(例えば、ホスアプレピタント)は、PM01183で処置された患者において禁じられている。
【0185】
G-CSF一次予防が特定の患者コホートにおいて必要とされる場合、それは、処置注入してから少なくとも24時間後に開始する、連続して5日間の皮下へのG-CSF(非ペグ化フィルグラスチム)300μg/日からなる。
【0186】
許容された薬物投与/治療
・ 疼痛管理を含めて、既存及び処置下で発現した病的状態の治療。
・ 臨床的に適応があれば、血液製剤及び輸血。
・ ビスホスホネート
・ 悪心又は嘔吐の場合、(1日当たりのコルチコステロイドの上記の限度を考慮する)American Society of Clinical Oncology(ASCO)ガイドラインに従った嘔吐の二次予防及び/又は対症療法。
・ ASCOガイドラインに従ったエリスロポエチンの使用。
・ G-CSFの二次予防又は治療的使用。注:第I相研究パートの1サイクル目に重度非発熱性好中球減少症を発症する患者は、好中球減少症のDLT基準が満たされず、又は臨床的に適応がなければ、治療的G-CSFを受けるべきでない。
・ 1サイクル目が完了したら、必要に応じて(例えば、疼痛管理のために)緩和的限定領域骨RT。
・ 食欲刺激のための酢酸メゲストロール。
【0187】
禁止された薬物投与/治療
・ 他の任意の抗新生物治療の同時投与。
・ 他の治験剤。
・ アプレピタント又は直接関連物質(例えば、ホスアプレピタント)。
・ プレドニゾン又は等価物>10mg/日の用量でのコルチコステロイド(化学療法とi.v.の対比のための前薬物投与を除く)。
・ コルチコステロイド以外の免疫抑制治療。
・ 1サイクル目の間にコロニー刺激因子(G-CSF)を用いた一次予防及び/又は処置(一人又は複数の患者が、G-CSF一次予防で用量漸増を再開する特定のコホート内で処置される場合を除き、その場合、使用が許容されるだけでなく必須である)。排他的に発熱性好中球減少症若しくはグレード4の好中球減少症のために又は治験依頼者の同意で、用量低減の代わりに、次のサイクルの間に、必要に応じて、二次予防が許容される。
【0188】
薬物相互作用
ヒトミクロソームのIn vitro研究は、CYP3A4が、PM01183の代謝に関与する主要なCYPアイソフォームであり、次にCYP2E1、CYP2D6及びCYP2C9が続くことを示した。他のCYPアイソザイムのPM01183代謝への推定された寄与は、無視できると判断される。したがって、これらのシトクロムのいずれか、特にCYP3A4を誘導又は抑制する組合せ薬は、可能なときは常に注意深くモニター又は回避されるべきである。
【0189】
アプレピタント(CYP3A4阻害薬)との著しい相互作用は、PM1183-A-008-13研究から利用可能な第I相データによって示唆される。PM01183クリアランスは、アプレピタントの存在下で約50%低減された。すべての患者は最終的に回復したが、アプレピタントの使用は現在すべてのPM01183研究において禁じられている。
【0190】
患者の評価可能性
第I相
この第I相パートの主要目的(すなわち、MTD及びRDの決定)のための評価可能な患者は、アテゾリズマブ及びPM01183の少なくとも1つの完全な注入を受け、少なくとも1回の完全なサイクル(すなわち、3週間=21日)について追跡されるべきであった。早期に中止され、又は投与及び/若しくは臨床的に重要な評価(すなわち、Hematology and Biochemistry-A)を失う/遅延させる患者は、これらの事象が処置に関連した毒性(過敏症反応及び/又は血管外遊走を除く)の結果である場合、評価可能である。
【0191】
評価基準
主要評価項目
第I相
MTD及びRDの決定:
・ MTDは、評価可能な患者の1/3より多数が1サイクル目の間にDLTを経験する、用量漸増の間に探索された最低用量レベルである。
・ RDは、評価可能な患者の1/3より少数が1サイクル目の間にDLTを経験する、用量漸増の間に探索された最高用量レベルである。
【0192】
G-CSF予防なしでPM01183及びアテゾリズマブの組合せで観察されたDLTが排他的に好中球減少症と関係付けられる場合、MTD及びRDはG-CSF一次予防でも決定される。
【0193】
副次的評価項目
・ 安全性:患者は、アテゾリズマブ及びPM01183の少なくとも1つの部分注入を受けた場合、安全性について評価可能である。AEは、米国立がん研究所有害事象共通用語規準(NCI-CTCAE) v.5に従ってグレード付けされる。
・ 有効性:組合せの抗腫瘍活性は、以下の観点から評価される:
○ 登録日からRECIST v.1.1に従って進行又は死亡(死因にかかわらず)が文書に記録された日までの時間と定義された無増悪生存期間。患者が更なる抗腫瘍治療を受け、又はPD前に追跡不能となった場合、PFSは、その後の抗腫瘍性治療日の前で最後の腫瘍評価日に打ち切られる。
○ 奏効期間(DoR)は、RECIST v.1.1に従った応答の最初の文書化日(どちらが最初になるにせよ、完全又は部分奏効)から文書に記録されたPD又は死亡の日まで計算される。PFSについて以上に定義された打ち切り規則が、DoRについて使用される。
○ RECIST v1.1によって定義されているように、完全奏効、部分奏効又は安定状態が3か月以上続く評価可能な患者の百分率と定義される臨床的有用性。
○ 全生存期間(OS):登録日から死亡(死亡事象)又は最後の接触(この場合、生存がその日に打ち切られる)の日まで計算される。
○ 中期及び長期生存(12、18及び24か月におけるOS)は、これらの時点で生きている蓋然性のカプランマイヤー推定値である。
・ 薬物動態:PKパラメータは、血漿中において標準非コンパートメント法によって評価される(コンパートメントモデリングは、適切な場合に行われうる)。
・ 薬理遺伝学:主要PKパラメータにおける個々人の変動性、PM01183の代謝及び/又は輸送に関与しうる生殖細胞系列変異又は遺伝子多型の存在又は非存在を説明する助けとなりうる因子は、抽出された白血球DNAにおいて分析される。
・ 薬理ゲノミクス:PM01183及びアテゾリズマブに対する応答及び/又は抵抗性の予測的/予後的マーカーを決定するために、ベースラインで入手可能な腫瘍検体は、すべての患者において評価される。更に、血液試料(各サイクルの1日目及び処置の終わり)及び生検(処置開始後4週~6週目)からの処置中の腫瘍検体が得られ、PGxサブスタディに同意した患者について評価される。
【0194】
結果
年齢中央値60.6歳の男性患者14名(53.8%)及び女性患者12名(46.2%)を含めて、合計26名の患者を処置した。
【0195】
患者5名が、ルルビネクテジン2.5mg/m2+アテゾリズマブ1200mgを受け、患者3名が、DLTなしで評価可能であった。
【0196】
ルルビネクテジン3.2mg/m2+アテゾリズマブ1200mgを受けた患者21名のうち、患者6名が一次G-CSFを伴い、患者5名(20.8%)がDTLを発症した。:
・ 患者2名 G3 発熱性好中球減少症(9.5%)(患者1名 G4 血小板減少症)
・ 患者2名 72時間より長く続くG4 好中球減少症(9.5%)
・ 患者1名 G4 血小板減少症(4.8%)。
【0197】
DL2コホートにおける最頻の血液系有害事象≧グレード2(患者21名)は、
・ 患者9名 好中球減少症(42.9%)
・ 患者6名 血小板減少症(28.6%)
・ 患者4名 貧血(19.1%)
・ 患者1名 リンパ球減少症(4.8%)
・ 患者1名 発熱性好中球減少症(4.8%)
【0198】
最も一般的な非血液系処置に関連した有害事象≧グレード2は、無力症30.8%(患者8名)であった。Table 1(表1)。処置関連死亡は報告されていない。
【0199】
DLTを経験した患者の割合が1/3(20.8%)未満であったので、MTDは計算することができなかった。
【0200】
客観的応答(ORR)は、完全奏効(CR)患者2名(7.7%)、部分奏効(PR)患者13名(50%)を含めて、患者15名(57.7%)において観察された。安定状態(SD)は、患者7名(26.9%)において観察され、患者3名(11.54%)は、進行性疾患(PD)が認められた。病勢コントロール率(DC)は84.61%であった。
【0201】
患者8名が進行のために打ち切られ、PFS中央値は、4.93か月(3.37~7.47か月の範囲)であった。
【0202】
結論
・ ルルビネクテジン+アテゾリズマブの組合せは、予想外の毒性なしに、忍容性が高かった。
・ 一過性の血液毒性が用量規制毒性であった。
・ RDは、G-CSFと共に、1日目にルルビネクテジン3.2mg/m2+1日目にアテゾリズマブ1200mgである。
・ 予備的抗腫瘍活性は顕著である。
・ 組合せの顕著な抗腫瘍活性は、2名の完全奏効を含めて、すべての患者の半分より多数(RR 57.7%)において観察された。この活性は現在、承認薬を用いたこの集団には期待されない。このデータは、2種の化合物間の相乗作用を裏付けるものである。
【0203】
項目
1. がんの処置方法であって、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが、2.5~3.2mg/m2の用量で投与され、それによってがんが処置される、方法。
2. ルルビネクテジンが、2.5mg/m2の用量で投与される、項目1に記載の方法。
3. ルルビネクテジンが、2.8mg/m2の用量で投与される、項目1に記載の方法。
4. ルルビネクテジンが、3.0mg/m2の用量で投与される、項目1に記載の方法。
5. ルルビネクテジンが、3.1mg/m2の用量で投与される、項目1に記載の方法。
6. ルルビネクテジンが、3.2mg/m2の用量で投与される、項目1に記載の方法。
7. ルルビネクテジンが、2.8~3.2mg/m2、又は3.0~3.2mg/m2、又は3.1~3.2mg/m2で投与される、項目1に記載の方法。
8. アテゾリズマブが、840mg~1680mg、好ましくは900mg~1500mg、1000mg~1400mg、1100mg~1300mg又は1200mgの用量で投与される、項目1から7いずれか一項目に記載の方法。
9. アテゾリズマブが、1200mgの用量で投与される、項目8に記載の方法。
10. ルルビネクテジンが、3.2mg/m2の用量で投与され、アテゾリズマブが、1200mgの用量で投与される、項目1に記載の方法。
11. ルルビネクテジン及びアテゾリズマブが、同時に、別々に又は順次に投与される、項目1から10のいずれか一項目に記載の方法。
12. アテゾリズマブが、最初に投与され、直後にルルビネクテジンが投与される、項目11に記載の方法。
13. ルルビネクテジン若しくはアテゾリズマブ、又は両方の複数回投与が行われる、項目1から12のいずれか一項目に記載の方法。
14. ルルビネクテジンが、皮下、静脈内又は腹腔内経路、好ましくは静脈内注入によって投与される、項目1から13のいずれか一項目に記載の方法。
15. ルルビネクテジンが、最大で24時間、1~12時間、1~6時間、最も好ましくは1時間の注入時間で投与される、項目1から14のいずれか一項目に記載の方法。
16. アテゾリズマブが、皮下、静脈内、又は腹腔内経路、好ましくは静脈内注入によって投与される、項目1から15のいずれか一項目に記載の方法。
17. アテゾリズマブが、1時間の注入時間で投与され、又は2回目以降の注入では、30分の注入時間で投与される、項目1から16のいずれか一項目に記載の方法。
18. 1~4週ごとに1回、好ましくは3週ごと又は4週ごとに1回の投与サイクルを有する、項目1から17のいずれか一項目に記載の方法。
19. 21日ごとに1回の投与サイクルを有する、項目1から18のいずれか一項目に記載の方法。
20. ルルビネクテジンが、サイクルの1日目に投与される、項目1から19のいずれか一項目に記載の方法。
21. アテゾリズマブが、サイクルの1日目に投与される、項目1から20のいずれか一項目に記載の方法。
22. 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を投与する工程を更に含む、項目1から21のいずれか一項目に記載の方法。
23. 1サイクル目に、患者が、1サイクル目の1日目から24~72時間後に始まるG-CSF一次予防を5日間受ける、項目22に記載の方法。
24. G-CSFが、1回又は複数のその後のサイクルにおいて投与される、項目23に記載の方法。
25. がんが固形腫瘍である、項目1から24のいずれか一項目に記載の方法。
26. 固形腫瘍が、前立腺がん、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、黒色腫、膀胱がん、脳/CNSがん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、頭部/頸部がん、腎がん、肝がん、リンパ腫、卵巣がん、膵がん、及び肉腫からなる群から選択される、項目25に記載の方法。
27. 肺がんが、中皮腫、悪性中皮腫、悪性胸膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫、好ましくは悪性胸膜中皮腫である、項目26に記載の方法。
28. 肺がんが非小細胞肺がんである、項目26に記載の方法。
29. 肺がんが小細胞肺がんである、項目26に記載の方法。
30. 小細胞肺がんが進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)である、項目29に記載の方法。
31. 患者が、一次治療から進行したのを含めて、患者が、進行した、項目1から30のいずれか一項目に記載の方法。
32. 患者が、前白金処置から進行した、項目1から31のいずれか一項目に記載の方法。
33. 患者が、免疫療法を受けたことがない、項目1から32のいずれか一項目に記載の方法。
34. 処置が二次処置である、項目1から33のいずれか一項目に記載の方法。
35. 小細胞肺がんの処置方法であって、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施し、それによって小細胞肺がんが処置される工程を含む方法。
36. ルルビネクテジンが、2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、項目35に記載の方法。
37. ルルビネクテジンが、2.5mg/m2の用量で投与される、項目35に記載の方法。
38. ルルビネクテジンが、2.8mg/m2の用量で投与される、項目35に記載の方法。
39. ルルビネクテジンが、3.0mg/m2の用量で投与される、項目35に記載の方法。
40. ルルビネクテジンが、3.1mg/m2の用量で投与される、項目35に記載の方法。
41. ルルビネクテジンが、3.2mg/m2の用量で投与される、項目35に記載の方法。
42. ルルビネクテジンが、2.8~3.2mg/m2、又は3.0~3.2mg/m2、又は3.1~3.2mg/m2で投与される、項目35に記載の方法。
43. アテゾリズマブが、1200mgの用量で投与される、項目35から42のいずれか一項目に記載の方法。
44. 小細胞肺がんが進展期小細胞肺がん(ES-SCLC)である、項目35から43のいずれか一項目に記載の方法。
45. 患者が、一次治療から進行したのを含めて、患者が、進行した、項目35から44のいずれか一項目に記載の方法。
46. 患者が、前白金処置から進行した、項目35から45のいずれか一項目に記載の方法。
47. 患者が、免疫療法を受けたことがない、項目35から46のいずれか一項目に記載の方法。
48. 処置が二次処置である、項目35から47のいずれか一項目に記載の方法。
49. ルルビネクテジン及びアテゾリズマブが、同時に、別々に又は順次に投与される、項目35から48のいずれか一項目に記載の方法。
50. アテゾリズマブが、最初に投与され、直後にルルビネクテジンが投与される、項目49に記載の方法。
51. ルルビネクテジン若しくはアテゾリズマブ、又は両方の複数回投与が行われる、項目35から50のいずれか一項目に記載の方法。
52. ルルビネクテジンが、皮下、静脈内又は腹腔内経路、好ましくは静脈内注入によって投与される、項目35から51のいずれか一項目に記載の方法。
53. ルルビネクテジンが、最大で24時間、1~12時間、1~6時間、最も好ましくは1時間の注入時間で投与される、項目35から52のいずれか一項目に記載の方法。
54. アテゾリズマブが、皮下、静脈内、又は腹腔内経路、好ましくは静脈内注入によって投与される、項目35から53のいずれか一項目に記載の方法。
55. アテゾリズマブが、1時間の注入時間で投与され、又は2回目以降の注入では、30分の注入時間で投与される、項目35から54のいずれか一項目に記載の方法。
56. 1~4週ごとに1回、好ましくは3週ごとに1回の投与サイクルを有する、項目35から55のいずれか一項目に記載の方法。
57. 21日ごとに1回の投与サイクルを有する、項目35から56のいずれか一項目に記載の方法。
58. ルルビネクテジンが、サイクルの1日目に投与される、項目35から57のいずれか一項目に記載の方法。
59. アテゾリズマブが、サイクルの1日目に投与される、項目35から58のいずれか一項目に記載の方法。
60. 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を投与する工程を更に含む、項目35から59のいずれか一項目に記載の方法。
61. 1サイクル目に、患者が、1サイクル目の1日目から24~72時間後に始まるG-CSF一次予防を5日間受ける、項目60に記載の方法。
62. 処置が、腫瘍サイズの縮小;腫瘍成長における遅延;患者の寿命の延長;疾患進行における遅延;寛解のうちの1つ又は複数をもたらす、項目35から61のいずれか一項目に記載の方法。
63. がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジンの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用。
64. がんの処置のための医薬の製造におけるアテゾリズマブの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用。
65. がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジン及びアテゾリズマブの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用。
66. がんの処置における使用のためのルルビネクテジンであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのルルビネクテジン。
67. がんの処置における使用のためのアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのアテゾリズマブ。
68. がんの処置における使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含み、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブ。
69. がんの処置における使用のためのルルビネクテジンであって、前記処置において、それを必要とする患者にルルビネクテジンがアテゾリズマブと組み合わされて投与され、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのルルビネクテジン。
70. がんの処置における使用のためのアテゾリズマブであって、前記処置において、アテゾリズマブが、ルルビネクテジンと組み合わされてそれを必要とする患者に投与され、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、使用のためのアテゾリズマブ。
71. ルルビネクテジン及びアテゾリズマブを、任意選択でそれらの組合せ使用の指示書と一緒に含む医薬パッケージであって、ルルビネクテジンが2.5~3.2mg/m2の用量で投与される、医薬パッケージ。
72. 小細胞肺がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジンの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用。
73. 小細胞肺がんの処置のための医薬の製造におけるアテゾリズマブの使用であって、それを必要とする患者に前記処置が、ルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用。
74. 小細胞肺がんの処置のための医薬の製造におけるルルビネクテジン及びアテゾリズマブの使用であって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用。
75. 小細胞肺がんの処置における使用のためのルルビネクテジンであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用のためのルルビネクテジン。
76. 小細胞肺がんの処置における使用のためのアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用のためのアテゾリズマブ。
77. 小細胞肺がんの処置における使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブであって、前記処置が、それを必要とする患者にルルビネクテジン及びアテゾリズマブの組合せ治療を施す工程を含む、使用のためのルルビネクテジン及びアテゾリズマブ。
78. 小細胞肺がんの処置における使用のためのルルビネクテジンであって、前記処置において、それを必要とする患者にルルビネクテジンがアテゾリズマブと組み合わされて投与される、使用のためのルルビネクテジン。
79. 小細胞肺がんの処置における使用のためのアテゾリズマブであって、前記処置において、それを必要とする患者にアテゾリズマブがルルビネクテジンと組み合わされて投与される、使用のためのアテゾリズマブ。
80. ルルビネクテジン及びアテゾリズマブを、任意選択でそれらの組合せ使用の指示書と一緒に含む、医薬パッケージ。
81. アテゾリズマブを、項目1から80のいずれか一項目に規定のルルビネクテジンとの組合せ使用のための指示書と一緒に含む、キット。
図1
【国際調査報告】