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特表2024-540426ランタニド元素を抽出するための環境に優しい方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ランタニド元素を抽出するための環境に優しい方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20241024BHJP
   C22B 3/16 20060101ALI20241024BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20241024BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20241024BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C22B59/00
C22B3/16
C22B3/44 101Z
C22B1/02
C22B7/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527237
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2022080774
(87)【国際公開番号】W WO2023079055
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21306559.2
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524169098
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミック エ オー エネルジズ アルタナティヴス
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(71)【出願人】
【識別番号】500379381
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシャルシュ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】Centre National de la Recherche Scientifique
【住所又は居所原語表記】3 rue Michel Ange, FR-75016 Paris, France
(71)【出願人】
【識別番号】524169102
【氏名又は名称】ユニヴェリシテ ドゥ モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER
(71)【出願人】
【識別番号】524167876
【氏名又は名称】エコール ナショナル シュペリユール ドゥ シミ ドゥ モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】ECOLE NATIONALE SUPERIEURE DE CHIMIE DE MONTPELLIER
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】ゼンブ,トマ
(72)【発明者】
【氏名】エル マンガー,アズマエ
(72)【発明者】
【氏名】ペレ-ロステン,ステファヌ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA39
4K001BA22
4K001DB11
4K001DB22
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の第1のランタニド元素、好ましくはランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、及びイッテルビウム(Yb)から選択されるランタニド元素を、前記第1のランタニド元素、(Fe)などの少なくとも1種の廃棄物元素、及び/又は1種以上の他のランタニド元素を含む固体材料から抽出する方法であって、水と、少なくとも1種の有機非プロトン性溶媒と、少なくとも1種の荷電ハイドロトロープとを含む浸出組成物を実装する方法、ランタニド元素、より具体的にはWEEEをリサイクルするための前記組成物の使用、及び溶出液の除染のための前記組成物の使用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量ML1(g/mol)を有する少なくとも1種の第1のランタニド元素を、前記第1のランタニド元素と、分子量ML2(g/mol)を有する第2のランタニド元素、分子量MWE(g/mol)を有する少なくとも1種の廃棄物元素、及びこれらの混合物から選択される1種以上の他の元素とを含む固体材料から抽出する方法であって、
- MWE≦100g/molであり、
- 前記他の元素が第2のランタニド元素であって、最終的に廃棄物元素との混合物であるときに、ML1≧154g/mol、好ましくはML1≧160g/molであり、ML2<154g/molであり、
前記方法は、少なくとも以下の工程:
i)水相と、少なくとも1種の有機非プロトン性溶媒と、少なくとも1種の荷電ハイドロトロープとを含む浸出組成物を調製する工程、
ii)前記第1のランタニド元素を含む浸出液、及び前記1種以上の他の元素を含む固体残渣を形成するように、前記浸出組成物を前記固体材料と混合する工程、
iii)前記浸出液を前記固体残渣から分離する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記荷電ハイドロトロープは、置換安息香酸の塩、非置換安息香酸の塩、置換ベンゼンスルホン酸の塩、及び非置換ベンゼンスルホン酸の塩から選択されるカチオン性ハイドロトロープである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記荷電ハイドロトロープは、前記浸出組成物の全質量に対して、20質量%~50質量%を占める、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機非プロトン性溶媒は、エーテル、エステル、カーボネート及びこれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機非プロトン性溶媒は、前記浸出組成物の全質量に対して、10質量%~40質量%を占める、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水相は、6.5~7.5の範囲のpHを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記固体材料は、WEEE又は永久磁石である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記廃棄物元素は、鉄、銅、コバルト、ホウ素、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、及びバナジウムから選択される遷移金属又は半金属である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記固体材料は、1種以上の廃棄物元素を前記他の元素として含み、前記第1のランタニド元素は、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、及びイッテルビウム(Yb)から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記固体材料は、最終的に1種以上の廃棄物元素との混合物である第2のランタニド元素を他の元素として含み、前記第1のランタニドは、ジスプロシウム(Dy)又はイッテルビウム(Yb)であり、前記第2のランタニド元素は、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、及びユウロピウム(Eu)から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程iii)の後に、
- 前記第1のランタニド元素を含む固体を形成するように、沈殿剤を前記浸出液に添加する、工程iv)、
- 工程iv)の後、前記第1のランタニド元素を含む前記固体を、残りの溶液から分離する、工程v)、及び
- 工程v)の後、前記第1のランタニド元素の酸化形態を形成するように、前記第1のランタニド元素を含む前記固体を焼成する、工程vi)
をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法であって、
- 前記固体材料は、ML3≧154g/molで、ML3<ML1であるような分子量ML3を有する第3のランタニド元素をさらに含み、
- 工程iii)で得た前記浸出液は、第1及び第3のランタニド元素に富み、
且つ前記方法は、工程iii)の後に、
a)前記第1のランタニド元素を含む有機リッチ相、及び前記第3のランタニド元素を含む水リッチ相を含む2相組成物を結果として得るように、請求項1~11の定義による有機非プロトン性溶媒と水とを含む希釈液を、工程iii)で得た前記第1及び第3のランタニド元素を含む前記浸出液と混合する工程、
b)前記第3のランタニド元素を含む前記水リッチ相を回収するように、前記2相を分離する工程、
c)前記第1のランタニド元素を含む水リッチ相、及び有機リッチ相を含む2相組成物を結果として得るように、前記第1のランタニド元素を含む前記有機リッチ相を酸性水溶液と混合する工程、及び
d)前記第1のランタニド元素を含む前記水リッチ相を回収するために前記2相を分離する工程、
に従って、前記第1のランタニド元素を前記第3のランタニド元素に対して選択的に抽出する工程をさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法であって、
前記固体材料は、最終的に1種以上の廃棄物元素との混合物である第2のランタニド元素を他の元素として含み、前記方法は、工程iii)の後に、少なくとも以下の工程I)、II)及びIII):
I)水相と、少なくとも1種の有機非プロトン性溶媒と、少なくとも1種の荷電ハイドロトロープとを含む、浸出組成物を調製する工程、
II)前記第2のランタニド元素を含む浸出液、及び1種以上の他の元素を含む固体残渣を形成するように、工程I)の前記浸出組成物を、工程iii)の前記固体残渣と混合する工程、
III)前記浸出液を前記固体残渣から分離する工程、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
- 前記固体材料は、ML4<154g/molで、ML4<ML2であるような分子量ML4を有する第4のランタニド元素をさらに含み、
- 工程III)で得た前記浸出液は、第2及び第4のランタニド元素に富み、
且つ前記方法は、工程III)の後に、
A)前記第2のランタニド元素を含む有機リッチ相、及び前記第4のランタニド元素を含む水リッチ相を含む2相組成物を結果として得るように、請求項1~13で定義された有機非プロトン性溶媒と水とを含む希釈液を、工程III)で得た前記第2及び第4のランタニド元素を含む前記浸出液と混合する工程、
B)前記第4のランタニド元素を含む前記水リッチ相を回収するように、前記2相を分離する工程、及び
C)前記第2のランタニド元素を含む水リッチ相、及び有機リッチ相を含む2相組成物を結果として得るように、前記第2のランタニド元素含む前記有機リッチ相を酸性水溶液と混合する工程、及び
D)前記第2のランタニド元素を含む前記水リッチ相を回収するように、前記2相を分離する工程、
に従って、第4のランタニド元素に対して第2のランタニド元素を選択的に抽出する工程をさらに含む、方法。
【請求項15】
ランタニド元素、より具体的にはWEEEをリサイクルするための、請求項1~6のいずれか一項に定義された浸出組成物の使用。
【請求項16】
溶出液の除染のための、請求項1~6のいずれか一項に定義された浸出組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、及びイッテルビウム(Yb)から選択される少なくとも1種のランタニド元素を、前記ランタニド元素、鉄(Fe)などの1種以上の廃棄物元素(waste element)及び/又は1種以上の他のランタニド元素を含む固体材料から抽出する方法であって、当該方法は、水と、少なくとも1種の有機非プロトン性溶媒と、少なくとも1種の荷電ハイドロトロープとを含む組成物を実装する、方法に関し、さらにはランタニド元素、より具体的にはWEEEをリサイクルするため、及び溶出液の除染のための、前記組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、より詳細には、限定されないが、電気電子機器廃棄物(WEEE)からの永久磁石のリサイクルを取り扱う。
【0003】
希土類(レアアース)は、類似の特性を特徴とする金属、すなわち、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及び全てのランタニドであり、ランタニドはメンデレーエフの元素周期表に記載されている15の化学元素に対応し、ランタン(La)の57からルテチウム(Lu)の71までの範囲の原子番号を有する。
【0004】
希土類元素(REE)の特性は、その特殊な電子配置、特に、その不飽和4f電子軌道(electronic sublayer)に関連し、これは希土類元素に固有の化学的、構造的及び物理的特性を付与する。これらの特性は、冶金、触媒、ガラス、光学、セラミックス、発光、磁気、エレクトロニクスなど、広範な先進工業分野で使用されている。多くの用途は、REEの物理的特性に大きく依存している。REEは、風力タービンや電気自動車のバッテリーなどのグリーンエネルギー技術関連の用途において特に不可欠である。また、コンピュータや家庭用器具などの、大部分の家電製品にも使用されている。したがって、REEは、技術の進化と共にその重要性が増し、供給が戦略的である、いわゆる「技術的」金属のグループに含まれる。
【0005】
しかし、REEは、これらの特定の金属に対する世界的な需要の増加によって危機にさらされている。さらに、欧州諸国にはREEの初生鉱床がほとんどないことから、これらの元素は重要金属とみなされている。そのため、REEの経済的重要性とその供給に伴うリスクを考慮して、欧州委員会は2010年にREEを重要元素に指定した。
【0006】
希土類は多くの技術機器の製造に使用されているため、これらの機器、特に電気電子機器からの産業廃棄物及び家庭廃棄物(WEEEとしても知られる)は、少なくとも部分的に、欧州諸国におけるREE資源の不足を補うことができる希土類の入手源となる。そのため、希土類を選択的に回収することを目的とした廃棄物の処理が大いに注目されている。
【0007】
この電気電子機器廃棄物は、都市鉱山から、すなわち、消費後廃棄物の回収から生じる、又は産業廃棄物である。永久磁石は、最大トン数のREEを消費し、最も高い市場価値を産む用途である。永久磁石は、風力タービン発電機、コンピュータハードドライブ、エアコンのコンプレッサーなどに使用されている。NdFeB型磁石は、その高い磁気性能により、最も広く使用されているタイプのREE磁石である。これらの磁石は、REEとして、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、及びジスプロシウム(Dy)を含有し、これにスカンジウム、セリウム、ランタン、ガドリニウムなどが追加されることがある。さらに、ホウ素、鉄、並びにコバルト、アルミニウム、銅、チタン、クロム、バナジウム、及び/又はニッケルなどのいくつかの遷移金属も含有する。これらの磁石では、最初の3元素の合計含有量は約30%であり、これはREEの天然鉱石に含まれる含有量よりもはるかに高い。
【0008】
NdFeB永久磁石からREEをリサイクルするための様々な方法が研究されてきた。これらの方法は、直接再利用、デクレピテーション、乾式精錬法、湿式精錬法、及び溶媒冶金法、又はこれらの組み合わせに分類することができる。そのいくつかは、Yang et al.,2017,J.Sustain.Metall.,3,122-149に記載されている。
【0009】
特に注目されているのは湿式精錬処理で、これはNdFeB磁石を周囲条件下、950℃で処理することによってNdFeB磁石を酸化的に焙焼すること、Feを除去するために焙焼NdFeB磁石を塩酸(1.7M)中で浸出(溶解)し、次いでCoを除去するために、塩化トリへキシル(テトラデシル)ホスホニウムイオン液を使用した液-液抽出技術によって浸出液中の金属カチオンを分離すること、及び浸出液へのシュウ酸の添加による沈殿と当該シュウ酸塩の熱処理により、NdFeB磁石の製造に再利用できるREEの混合酸化物を生成することを含む。酸化的焙焼の利益は、浸出プロセス中のFeに対するREE(Nd及びDy)の回収選択性を改善することである。磁石の酸化的焙焼は、プロセスの選択性を改善することに加え、浸出プロセス中の水素発生を制限することもできる。
【0010】
しかし、高純度のREE又はその酸化物を得るためには、REEを互いに分離することも有益である。例えば、ジジミウム(NdとPrとの混合物)及びDyは市場価値が高く、非常に貴重である。実際、Dyは多くの用途で使用されている。例としては、NdFeB永久磁石、ガラス、セラミックス、発光体、メタルハライドランプの製造が挙げられる。ジジミウムについては、NdFeB磁石に再利用されるほか、ガラス吹き職人用保護眼鏡の製造、写真フィルター、分光計の較正材料として、及び石油分解に使用される触媒の製造に使用される。
【0011】
REEを浸出液から分離するために、液-液抽出がよく使用される。この技術は、水相又は水リッチ相(NdFeB磁石からの浸出液)と、溶媒相又は溶媒リッチ相(いわゆる有機相)との2つの不混和相間でのイオン分配に依拠する。溶媒相は、選択的抽出剤(多くの場合、適切な有機希釈剤に溶解されている)を含有する。目的のイオンは溶媒相に抽出され、その後、逆抽出(back-extraction)と呼ばれる類似技術を使用して、清浄な水相に回収することができる。
【0012】
市販の酸性有機リン(HA)抽出剤は、REE間の分離に有効であることが知られている。例えば、NdとDyとの間の分離は、リン酸ジ(2-エチルヘキシル)(HDEHP)を使用して塩酸溶液から実施できる。さらに、NdとPrのような、周期表で隣接するREEの分離は、ホスフィン酸ビス-2,4,4-トリメチルペンチル(Cyanex(登録商標)272の商標名で知られる)を使用すると、より効率的である。しかし、依然として抽出収率は低い。効率的な分離と高い抽出収率を確保するために抽出剤の混合物も検討された。それにもかかわらず、酸性抽出物は、非極性有機相で凝集することが多く、その結果、抽出中に形成されるREE錯体は非解離酸を含み得る。したがって、他の希土類を含む混合物から希土類を抽出することは、一般的に複雑であり、多くの工程の実施を必要とする。実際に、液-液抽出後、逆抽出によって酸性抽出剤からREEを除去しなければならず、その後、水相に回収されたREEを沈殿、ろ過、及び焼成する。
【0013】
液-液抽出は現在、産業規模での希土類元素分離の主要プロセスであり、連続プロセスで実施できる。商業的プロセスは、REEを1つのグループとして他の不純物から分離するように設計された第1の液-液抽出回路を基本として構成される。次に、REEを個別に又は混合して(通常は2種又は3種)生成する第2の回路が実施される。原子価が変わり得るEu2+及びCe4+とは対照的に、他のREEは酸化度が類似している(酸化度+III)ことから、特に元素を個別に生産するために、最後の分離回路で直列に並べた複数のミキサーセトラー(mixer-setters)を必要とする。例えば、ラ・ロシェル(フランス)にあるRhodiaの施設には、個別のREEを生産するために連続する1500台以上のミキサーセトラーがある。使用される抽出剤は、以下のものである:HDEHP、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル(HEHEHP又はPC-88A)、分岐状カルボン酸(バーサチック酸10及び9-11)、リン酸トリブチル(TBP)及び塩トリオクチルメチルアンモニウム(Aliquat336)。しかし、一次回路におけるHDEHPによるREEのグループ抽出はFeの抽出を妨害し、事前の選択的沈殿工程が必要である。さらに、HDEHPによるREE抽出反応は、HDEHP二量体のプロトン化逆抽出中に大量の酸消費(≧4M)を必要とする。TBP、HDEHPなどの有機リン抽出剤は、炭素(C);酸素(O);水素(H)及び窒素(N)のみで構成された溶媒と比較して、追加の処理工程(及び専用の焼却炉)を必要とする複雑な二次廃棄物(リンを含む)を生成し、この二次廃棄物は適正量の空気でしか焼却されず、燃焼生成物は大気に直接排出される。
【0014】
さらに、既知の溶媒を用いた液-液抽出の際に、第3の相の形成(すなわち、金属溶媒に富む重粘性相と希釈剤に富む軽粘性相への有機相の分割)が起こる可能性があり、効率的な液-液抽出プロセスの大きな障害となる。第3相形成は溶媒中の酸及び金属が高濃度の場合に起こる。そのため、酸及び金属の濃度が制限有機濃度(LOCとも呼ばれる)よりも低い条件で作業を進めることを余儀なくされ、市販の溶媒の負荷容量が100g・L-1未満の値に制限される。LOCを上げるために、希釈剤の温度及び極性を高くするなど、いくつかの方法が使用される。しかし、抽出反応は多くの系で発熱的であるため、温度を上げると溶質のLOCは増加するが、抽出効率の低下も起こる。同様に、一部の系では希釈剤の極性を高めると、希釈剤と抽出剤の間に強い相互作用が生じ、REEの抽出に不利になる。LOCを上げるために広く使われている別の方法は、溶媒における相改質剤の使用、例えば、TRUEXプロセスでのN,N,N,N-テトラオクチル-3-オキサペンタンジアミド(TODGA)-ドデカン系におけるN,N-ジへキシルオクタンアミド(DHOA)、又はn-オクチル(フェニル)-N,N-ジイソブチルカルバモイルメチルホスフィンオキシド(CMPO)-ドデカン系におけるTBPの使用である。DHOA又は任意の他の改質剤は、第3相の形成を避けるために溶媒中の酸及び金属錯体の溶解度を増加させるだけで、REEを抽出しないことに注意することが重要である。
【0015】
現在知られている方法は全て、廃液中の大量の酸の中和を必要とし、さらには抽出剤、希釈剤、及び改質剤中に毒性の高い分子が大量に含まれる。抽出剤は大部分がリサイクルされるが、廃液及び生成物中で扱うには溶解度が低い。
【0016】
最近、Chen et al.,2019,Green Chemistry,21,17,4748-4756は、LaとCeを分離するために、カルボン酸とポリオールとをベースとする環境に優しい組成物を使用することを記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、前記先行技術の欠点を克服すること、より具体的には、原料固体材料から1種以上の希土類金属を抽出することを可能にする単純で経済的な方法を提供することであり、当該方法は、複数の希土類金属を互いに分離するように選択的であり、毒性及び/又は刺激性の試薬及び/又は溶媒の使用を回避するか又は少なくとも削減し、より円滑な浸出条件を使用することで、機器の劣化リスク並びに/又は安全、環境、及び健康の問題を低減する。本発明の別の目的は、本方法で使用される主生成物及び/又は溶媒をリサイクルできるように、閉サイクルで実施できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
方法
【0019】
本発明の第1の目的は、分子量ML1(g/mol)を有する少なくとも1種の第1のランタニド元素を、前記第1のランタニド元素と、分子量ML2(g/mol)を有する第2のランタニド元素、分子量MWE(g/mol)を有する少なくとも1種の廃棄物元素、及びこれらの混合物から選択される1種以上の他の元素とを含む固体材料から抽出する方法であって、
- MWE≦100g/molであり、
- 前記他の元素が第2のランタニド元素であって、最終的に廃棄物元素との混合物であるときに、ML1≧154g/mol、好ましくはML1≧160g/molであり、ML2<154g/molであり、
前記方法は、少なくとも以下の工程:
i)水相と、少なくとも1種の有機非プロトン性溶媒と、少なくとも1種の荷電ハイドロトロープとを含む浸出組成物を調製する工程、
ii)前記第1のランタニド元素を含む浸出液、及び前記1種以上の他の元素を含む固体残渣を形成するように、前記浸出組成物を前記固体材料と混合する工程、
iii)前記浸出液を前記固体残渣から分離する工程、
を含む、方法である。
【0020】
本発明の方法は、単純で、経済的で、少なくとも1種の第1のランタニド元素を、第2のランタニド元素などの他の元素及び/又は鉄、銅などの廃棄物元素を含む固体材料から抽出することを可能にする。本方法は、環境に優しく湿式精錬における有毒廃液の削減を可能する非毒性、不揮発性、及び低発火点の反応物と、より円滑な浸出条件を用いたリサイクルとを使用することで、機器劣化のリスク並びに/又は安全、環境及び健康の問題を低減する。前記方法は、原料固体材料、より具体的にはWEEEから1種以上のランタニド元素を抽出することを可能にし、工程i)で調整した浸出組成物により、ランタニド元素抽出の選択性及び有効性を改善する。本発明の方法は、閉サイクルで実施できることから、当該方法で使用される主反応物及び溶媒は、リサイクルしてさらなる抽出方法で再利用することができる。
【0021】
固体材料
【0022】
本発明は、バストネサイト、モナザイト、ゼノタイム、アパタイト、ロパライト、粘土(イオン性鉱物)などのランタニドに富む天然鉱物の濃縮物、又はランタニドに富む鉱物以外の天然鉱石の処理から得られる濃縮物、例えばランタニドを含有する産業廃棄物及び家庭消費財廃棄物、特に電子機機器廃棄物からなる「都市鉱山」の濃縮物、又はランタニドのスクラップ産物の濃縮物のいずれかからランタニド金属を生産するための天然及び/又は産業廃棄物の処理において特に利用される。
【0023】
したがって、前記固体材料は、鉱石又はWEEEのような廃棄物又は永久磁石(例えば、NdFeB型のもの)とすることができる。
【0024】
前記固体材料中の第1のランタニド元素の質量濃度(例えば、本発明の方法を実施する前)は、当該固体材料の全質量に対して、約0.5質量%~約30質量%、好ましくは約1質量%~約10質量%の範囲であり得る。
【0025】
前記固体材料において、第1のランタニド元素(第2のランタニド元素のそれぞれ)は、好ましくは酸化物化合物、炭酸塩化合物、又はリン酸塩化合物の形態、より好ましくは酸化物化合物又はリン酸塩化合物、さらにより好ましくは酸化物化合物の形態である。
【0026】
第2のランタニド元素は、第1のランタニド元素とは異なる。
【0027】
前記固体材料中の第2のランタニド元素の質量濃度(例えば、本発明の方法を実施する前)は、当該固体材料の全質量に対して、約1質量%~約30質量%、好ましくは約18質量%~約26質量%の範囲であり得る。
【0028】
前記固体材料中の前記廃棄物元素の質量濃度(例えば、本発明の方法を実施する前)は、当該固体材料の全質量に対して、約1質量%~約70質量%、好ましくは約10質量%~約40質量%の範囲であり得る。
【0029】
前記廃棄物元素は、鉄、銅、コバルト、ホウ素、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、及びバナジウムから選択される遷移金属又は半金属のような、遷移金属又は半金属であり得る。前記廃棄物元素は、好ましくは鉄である。
【0030】
第1の変形例では、前記固体材料は、1種以上の廃棄物元素を前記他の元素として含む。
【0031】
したがって、本方法は、1種以上の廃棄物元素から第1のランタニド元素を選択的に分離することを目的とする。
【0032】
第1の変形例によれば、前記第1のランタニド元素は、好ましくは、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、及びイッテルビウム(Yb)から選択される。
【0033】
第2の変形例では、前記固体材料は、最終的に1種以上の廃棄物元素との混合物である第2のランタニド元素を他の元素として含む。
【0034】
したがって、本方法は、第2のランタニド元素から、また、存在しているならば1種以上の廃棄物元素から、第1のランタニド元素を選択的に分離することを目的とする。
【0035】
前記第2の変形例によれば、前記第1のランタニドは、好ましくは、ジスプロシウム(Dy)又はイッテルビウム(Yb)であり、前記第2のランタニド元素は、好ましくは、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、及びユウロピウム(Eu)から選択される。
【0036】
1つの好ましい実施形態では、前記固体材料は、第2のランタニド元素と1種以上の廃棄物元素との混合物を前記他の元素として含み、好ましくは、第2のランタニド元素と鉄との混合物を含む。
【0037】
WEは、好ましくは、40g/mol≦MWE≦95g/molであり、より好ましくは、50g/mol≦MWE≦80g/molである。
【0038】
L1及びML2は、好ましくは、[ML1]-[ML2]≧10g/molであり、より好ましくは、≧15g/molである。
【0039】
工程i)
【0040】
浸出組成物
【0041】
浸出組成物は、好ましくは単相組成物(すなわち、1相のみ)である。実際に、単相の特性のおかげで、選択的浸出が実施される。
【0042】
荷電ハイドロトロープ
【0043】
ハイドロトロープは、水に混和する小さな有機分子で、ミセル可溶化以外の方法で疎水性化合物を水溶液に溶解するために使用される。ミセル形成及びベシクル形成界面活性剤とは異なり、ハイドロトロープには、その値を超えると自己凝集が自発的に起こり始める臨界ミセル濃度(cmc)及び臨界ベシクル濃度(cvc)がない。界面活性剤とは対照的に、ハイドロトロープは規則的な構造に凝集しない。ハイドロトロープは、非荷電(例えばエタノール)でも荷電でもあり得る。
【0044】
浸出組成物は、実際には、いずれかの成分の融点よりも低い単一温度で溶融又は凝固する物質の均質混合物と定義される共晶混合物とは明らかに異なる。
【0045】
本発明において、ハイドロトロープは荷電ハイドロトロープである。この荷電特性がより良いイオン交換を可能にする。
【0046】
本発明において、「荷電ハイドロトロープ」という表現は、少なくとも1つの荷電結合を有するハイドロトロープを意味する。言い換えれば、荷電ハイドロトロープは、荷電した有機又は無機の対イオンを伴う荷電有機分子を含む。
【0047】
本発明の荷電ハイドロトロープは、好ましくはカチオン性(正に荷電した)ハイドロトロープである。言い換えれば、正に荷電した有機又は無機の対イオン(又はカチオン)を伴う、主となる負に荷電した(又はアニオン正)有機分子を含む。
【0048】
前記カチオン性ハイドロトロープは、置換安息香酸の塩、非置換安息香酸の塩、置換ベンゼンスルホン酸の塩、及び非置換ベンゼンスルホン酸の塩から選択され得る。
【0049】
前記安息香酸(前記ベンゼンスルホン酸のそれぞれ)は、アルキル基、ヒドロキシ基、芳香族基、アミン基、ニトロ基、アルケニル基、及びアルコキシ基から選択される1以上の基で置換し得る。
【0050】
アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0051】
前記カチオン性ハイドロトロープは、ナトリウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属カチオン、及びアンモニウムから選択されるカチオンの置換安息香酸塩、非置換安息香酸塩、置換ベンゼンスルホン酸塩、又は非置換ベンゼンスルホン酸塩から選択し得る。
【0052】
1つの好ましい実施形態では、前記荷電ハイドロトロープは、サリチル酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、及びトルエンスルホン酸ナトリウムから選択される。
【0053】
前記荷電ハイドロトロープは、前記浸出組成物の全質量に対して、約20質量%~約50質量%、好ましくは約35質量%~約45質量%を占めることができる。
【0054】
有機非プロトン性溶媒
【0055】
前記有機非プロトン性溶媒は、好ましくは低極性又は中極性である。言い換えれば、前記有機非プロトン性溶媒は、好ましくは約0.3~約2.5、より好ましくは約1.0~約2.0の範囲の双極子モーメント(D)を有する。
【0056】
1つの好ましい実施形態では、前記有機非プロトン性溶媒は、エーテル、エステル、炭酸塩、及びこれらの混合物から選択される。
【0057】
例としては、酢酸エチル、炭酸ジエチル、シクロペンチルメチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、γ―バレロラクトン、又はジヒドロールエボグルコセノン(Cyrene)を使用し得る。
【0058】
エステル、特には酢酸エチルが好ましい。
【0059】
前記有機非プロトン性溶媒は、前記浸出組成物の全質量に対して、約10質量%~約40質量%、好ましくは、約20質量%~約30質量%を占めることができる。
【0060】
水相
【0061】
前記水相は好ましくは水である。
【0062】
それは有利には中性pH、すなわち、6.5~7.5の範囲を有する。
【0063】
前記水相は、前記浸出組成物の全質量に対して、約20質量%~約45質量%、好ましくは、約35質量%~約40質量%を占めることができる。
【0064】
工程ii)
【0065】
工程ii)の間に、工程i)で調製された前記浸出組成物は、第1のランタニド元素を含む浸出液を形成するように、前記固体材料と混合される。
【0066】
工程ii)は、好ましくは、前記固体材料の質量濃度が100mLの前記浸出組成物に対して、約1g~約20g、より好ましくは約1g~約10g、さらにより好ましくは約1g~約5gとなるように、前記浸出組成物を前記固体材料と混合することによって実施される。
【0067】
工程ii)は、約15℃~約70℃、好ましくは、約20℃~約50℃の範囲の温度で実施し得る。
【0068】
より詳しくは、工程ii)の温度は、約15℃~約30℃、より好ましくは、約18℃~約25℃の範囲である。
【0069】
工程ii)は、好ましくは約1時間~約5時間、より好ましくは約2時間~約4時間の範囲の時間で実施される。この時間が1時間未満の場合、工程ii)は十分な量の第1のランタニド元素を回収できない。時間が5時間を超えると、特に前記他の元素が第2のランタニド元素である場合、工程ii)は十分に選択的ではなくなる。
【0070】
工程ii)の間に、第1のランタニド元素は、前記第1のランタニド元素を含む浸出液を形成するように、前記浸出組成物に選択的に溶解する。第1のランタニド元素は、85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超の割合で浸出液に溶解する。
【0071】
対照的に、第2のランタニド元素及び/又は廃棄物元素は、25%以下、より好ましくは20%以下、さらにより好ましくは15%以下の割合で浸出液に溶解する。
【0072】
したがって、第1のランタニド元素の実質的に全てが、第2のランタニド元素及び/又は廃棄物元素に対して選択的に溶解する。
【0073】
1つの好ましい実施形態では、第1のランタニド元素はDy及びYbから選択され、前記他の元素(1又は複数)は、La、Nd、Pr、及びEuから選択され、最終的に廃棄物元素との混合物である、第2のランタニド元素である。
【0074】
工程iii)
【0075】
工程iii)は、第1のランタニド元素を、前記固体残渣中に残存する前記他の元素から分離するために行われる。
【0076】
分離は、ろ過により行い得る。
【0077】
工程iii)の終了時に、固体残渣を含まず、第1のランタニド元素に富む浸出液が得られる。
【0078】
したがって、浸出によって鉄に対するランタニドの選択的浸出を最初に進めてランタニドの液体混合物を得て、その後この液体混合物からのランタニドの特異的抽出へと進む最先端の湿式精錬プロセスとは異なり、本発明の方法は、浸出工程i)が実施されるとすぐに、ランタニドと廃棄物元素との混合物を含む固体混合物上で、ランタニド間の選択性と同時に、鉄などの廃棄物元素に関する選択性を可能にする。
【0079】
したがって、長く、複雑で高額なプロセスの間に有毒な抽出分子や有機溶媒などの多数の試薬の使用を必要とする先行技術の方法とは異なり、本発明による方法は、単純で迅速であり、環境に優しい。
【0080】
次いで、第1のランタニド元素を酸化形態などの所望の形態で得られるように、下記のように、前記浸出液を工程iv)と、工程v)及びvi)とに従って処理し得る。
【0081】
工程iv)
【0082】
本発明の方法は、さらに、工程iii)の後に、前記第1のランタニド元素を含む固体を形成するように、沈殿剤を前記浸出液に添加する、工程iv)を含むことができる。
【0083】
前記沈殿剤は、シュウ酸、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物から選択し得る。
【0084】
前記沈殿剤は、前記浸出液の全体積に対して、約10~50mmol/L、好ましくは、約20~30mmol/Lの範囲のモル濃度で使用できる。
【0085】
特に、前記浸出液のpHは、3付近に調節される。
【0086】
工程v)
【0087】
本発明の方法は、さらに、工程iv)の後、前記第1のランタニド元素を含む前記固体を、残りの溶液から分離する、例えば、前記固体をろ過することにより、残りの溶液から分離する、工程v)を含むことができる。
【0088】
工程vi)
【0089】
本発明の方法は、さらに、工程v)の後、前記第1のランタニド元素の酸化形態を形成するように、前記第1のランタニド元素を含む前記固体を焼成する、工程vi)を含むことができる。
【0090】
この方法は、鉄と第2のランタニド元素を前記他の元素として含む固体材料から第1のランタニド元素を選択的に抽出するのに特に有用である。
【0091】
工程ii)で使用された前記固体材料が第1のランタニド元素、第2のランタニド元素、及び少なくとも1種の廃棄物元素(鉄など)を含む場合、工程iii)で得られた前記固体残渣は、第2のランタニド元素と廃棄物元素を含む。
【0092】
前記第2の変形例によれば、すなわち、前記固体材料が、最終的に1種以上の廃棄物元素との混合物である第2のランタニド元素を他の元素として含む場合、前記方法は、さらに、工程iii)の後に、少なくとも以下の工程I)、II)及びIII):
I)水相と、少なくとも1種の有機非プロトン性溶媒と、少なくとも1種の荷電ハイドロトロープとを含む、浸出組成物を調製する工程、
II)前記第2のランタニド元素を含む浸出液、及び1種以上の他の元素を含む固体残渣を形成するように、工程I)の前記浸出組成物を、工程iii)の前記固体残渣と混合する工程、
III)前記浸出液を前記固体残渣から分離する工程、
を含み得る。
【0093】
工程I)、II)及びIII)は、工程iii)で得られた前記固体残渣から第2のランタニド元素を抽出することを可能にする。
【0094】
工程I)は、工程i)と定義は同じである。
【0095】
前記浸出組成物、前記水相、前記有機非プロトン性溶媒、及び前記荷電ハイドロトロープは、本発明で定義されるとおりである。工程I)で調製された前記浸出組成物の組成は、工程i)で調製された前記浸出組成物の組成と同じでも異なっていてもよい。
【0096】
工程II)において、工程I)で調製された前記浸出組成物を工程iii)の前記固体残渣と混合して、第2のランタニド元素を含む浸出液を形成する。
【0097】
工程II)は、好ましくは、工程iii)の前記固体残渣の質量濃度が、100mLの前記浸出組成物に対して、約1g~約20g、より好ましくは約1g~約10gとなるように、前記浸出組成物を前記固体残渣と混合することによって実施される。
【0098】
工程II)は、約15℃~約70℃、好ましくは、約20℃~約50℃の範囲の温度で実施し得る。
【0099】
より詳しくは、工程II)の温度は、約30℃~約50℃、より好ましくは、約35℃~約45℃の範囲である。
【0100】
工程II)は、好ましくは、約1時間~約7時間、より好ましくは、約3時間~約6時間の範囲の時間で実施される。時間が1時間未満であると、十分な量の第2のランタニド元素を回収することができない。時間が7時間超であると、工程II)は、十分に選択的ではない。
【0101】
工程II)の間に、第2のランタニド元素は、当該第2のランタニド元素を含む浸出液を形成するように、前記浸出組成物に選択的に溶解する。第2のランタニド元素は、85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超の割合で前記浸出液に溶解する。
【0102】
対照的に、前記廃棄物元素は、25%以下、より好ましくは20%以下、さらにより好ましくは15%以下の割合で前記浸出液に溶解する。
【0103】
したがって、第2のランタニド元素の実質的に全てが、前記廃棄物元素に対して選択的に溶解する。
【0104】
第2のランタニド元素は、好ましくは、La、Nd、Pr、及びEuから選択される。
【0105】
工程III)は、第2のランタニド元素を前記固体残渣中に残存する前記他の元素から分離するために行われる。
【0106】
分離は、ろ過により行い得る。
【0107】
工程III)の終了時に、前記固体残渣を含まず、第2のランタニド元素に富む浸出液が得られる。
【0108】
次いで、第2のランタニド元素を酸化形態などの所望の形態で得られるように、前記浸出液を、工程IV)と、工程V)及びVI)(それぞれ工程iv)、工程v)及びvi)と同じ定義であるが第2のランタニド元素に適用される)に従って処理する。
【0109】
本発明の第1の目的では、本方法は、固体材料から、第1のランタニド元素の選択的抽出をもたらし[工程i)~vi)]、場合により、第2のランタニド元素の選択的抽出をもたらす[工程i)~iii)、及び工程I)~VI)]。
【0110】
前記固体材料は、ML3≧154g/mol(好ましくはML3≧160g/mol)で、ML3<ML1であるような分子量ML3を有する第3のランタニド元素をさらに含み得る。
【0111】
第3のランタニド元素は、第1及び第2のランタニド元素とは異なる。第2及び第3のランタニド元素は、それらのうち両方又は一方が前記固体材料に存在し得る。
【0112】
前記第3のランタニド元素は、本発明で上に定義した第1のランタニドとして作用することから、第3のランタニド元素は、工程ii)に従って浸出され、工程iii)に従って固体残渣から分離されて、第1及び第3のランタニド元素に富む浸出液を形成する。言い換えれば、工程iii)で得られた浸出液は、第1及び第3のランタニド元素を含む。
【0113】
本発明の方法は、さらに、工程iii)の後に、
a)前記第1のランタニド元素を含む有機リッチ相、及び前記第3のランタニド元素を含む水リッチ相を含む2相組成物を結果として得るように、本発明での定義による有機非プロトン性溶媒と水とを含む希釈液を、工程iii)で得た前記第1及び第3のランタニド元素を含む前記浸出液と混合する工程、
b)前記第3のランタニド元素を含む前記水リッチ相を回収するように、前記2相を分離する工程、
c)前記第1のランタニド元素を含む水リッチ相(逆抽出)、及び有機リッチ相を含む2相組成物を結果として得るように、前記第1のランタニド元素を含む前記有機リッチ相を酸性水溶液と混合する工程、及び
d)前記第1のランタニド元素を含む前記水リッチ相を回収するために前記2相を分離する工程、
に従って、前記第1のランタニド元素を前記第3のランタニド元素に対して選択的に抽出する工程をさらに含むことができる。
【0114】
したがって、本発明の方法により、同じ系(すなわち、荷電ハイドロトロープ、有機非プロトン性溶媒、及び水を含む組成物)を使用して、浸出[前記浸出組成物を用いる工程ii)]と液-液抽出[前記浸出液と前記希釈液とを用いる工程a)及びb)]とが実施される。
【0115】
前記希釈液は、当該希釈液の全質量に対して、約20質量%~約80質量%の水、好ましくは、約50質量%~約60質量%の水を含み得る。
【0116】
前記希釈液は、当該希釈液の全質量に対して、約20質量%~約80質量%の有機非プロトン性溶媒、好ましくは、約40質量%~約50質量%の有機非プロトン性溶媒を含み得る。
【0117】
質量(希釈液)/質量(浸出液)の質量比は、好ましくは、約3.5~約5の範囲である。
【0118】
工程a)は、好ましくは、約20分間~約180分間、好ましくは、約30分間~約60分間実施される。
【0119】
工程a)は、好ましくは、約20℃~約30℃の温度で実施される。
【0120】
工程a)は、好ましくは、撹拌又はロータリー撹拌により実施される。
【0121】
工程b)は、好ましくは、遠心分離により実施される。
【0122】
工程c)では、水に酸性溶液を添加することで酸性水溶液のpHを調整して、前記水溶液を形成することができ、ここで酸性溶液は、好ましくは、塩酸、硝酸及び硫酸の約0.1M~約1M酸性溶液、好ましくは、約0.1M~約0.5M酸性溶液である。
【0123】
工程c)では、V(有機リッチ相)/V(水溶液)の体積比は、好ましくは、約0.7~約1.3の範囲であり、より好ましくは、1に等しい。
【0124】
工程c)は、好ましくは、約10分間~約60分間、好ましくは、約20分間~約30分間実施される。
【0125】
工程c)は、好ましくは、約20℃~約30℃の温度で実施される。
【0126】
工程d)の後、前記第1のランタニド元素を含む水リッチ相は、第1のランタニド元素を酸化形態などの所望の形態で得られるように、以下の工程e)と、工程f)及び工程g)とに従って、処理することができる。
【0127】
工程e)
【0128】
本発明の方法は、工程d)の後に、前記第1のランタニド元素を含む固体を形成するように、前記第1のランタニド元素を含む水リッチ相に沈殿剤を添加する工程e)をさらに含むことができる。
【0129】
前記沈殿剤は、シュウ酸、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物から選択し得る。
【0130】
前記沈殿剤は、前記浸出液の全体積に対して、約10~50mmol/L、好ましくは、約20~30mmol/Lの範囲のモル濃度で使用できる。
【0131】
特に、前記浸出液のpHは、3付近に調節される。
【0132】
工程f)
【0133】
本発明の方法は、工程e)の後に、前記第1のランタニド元素を含む固体を、例えば前記固体のろ過によって、残りの溶液から分離する工程f)をさらに含み得る。
【0134】
工程g)
【0135】
工程f)の後、本方法は、酸化形態の第1のランタニド元素の酸化形態を形成するように、前記第1のランタニド元素を含む固体を焼成する工程g)をさらに含み得る。
【0136】
実際、工程e)、f)及びg)は、上で定義したように、工程iv)、v)及びvi)と似ているが、前記第1のランタニド元素を含む浸出液の代わりに、前記第1のランタニド元素を含む水リッチ相に適用される。
【0137】
工程b)の後、前記第3のランタニド元素を含む水リッチ相は、前記第3のランタニド元素を酸化形態などの所望の形態で得られるように、工程e’)と、工程f’)及び工程g’)(それぞれ工程e)、f)及びg)と同じ定義であるが、前記第3のランタニド元素を含む水リッチ相に適用される。)に従って、処理することができる。
【0138】
前記第1のランタニド元素は、好ましくはYbであり、前記第3のランタニド元素は、好ましくはDyである。
【0139】
前記固体材料は、ML4<154g/molで、ML4<ML2であるような分子量ML4を有する第4のランタニド元素をさらに含み得る。
【0140】
第4のランタニド元素は、第2、第3及び第4のランタニド元素とは異なる。第2、第3及び第4のランタニド元素は、一緒に又はそれらのうち1つだけ又は2つが前記固体材料に存在し得る。
【0141】
前記第4のランタニド元素は、本発明で上に定義した第2のランタニドとして作用することから、第4のランタニド元素は、工程iii)で得られた固体残渣中に第2のランタニド元素と共に残り、工程II)に従って浸出され、工程III)に従って固体残渣から分離されて、第2及び第4のランタニド元素に富む浸出液を形成する。言い換えれば、工程iii)で得られた前記浸出液は、第2及び第4のランタニド元素を含む。
【0142】
本発明の方法は、工程III)の後に、以下の工程:
A)前記第2のランタニド元素を含む有機リッチ相、及び前記第4のランタニド元素を含む水リッチ相を含む2相組成物を結果として得るように、本発明で定義された有機非プロトン性溶媒と水とを含む希釈液を、工程III)で得た前記第2及び第4のランタニド元素を含む前記浸出液と混合する工程、
B)前記第4のランタニド元素を含む前記水リッチ相を回収するように、前記2相を分離する工程、及び
C)前記第2のランタニド元素を含む水リッチ相(逆抽出)、及び有機リッチ相を含む2相組成物を得るように、前記第2のランタニド元素含む前記有機リッチ相を酸性水溶液と混合する工程、及び
D)前記第2のランタニド元素を含む前記水リッチ相を回収するように、前記2相を分離する工程、
に従って、第4のランタニド元素に対して第2のランタニド元素を選択的に抽出する工程をさらに含むことができる。
【0143】
したがって、本発明の方法により、同じ系(すなわち、荷電ハイドロトロープ、有機非プロトン性溶媒、及び水を含む組成物)を使用して、浸出[前記浸出組成物を用いる工程II)]と液-液抽出[前記浸出液と前記希釈液とを用いる工程A)及びB)]とが実施される。
【0144】
前記希釈液は、当該希釈液の全質量に対して、約20質量%~約80質量%の水、好ましくは約21質量%~約31質量%の水を含み得る。
【0145】
前記希釈液は、当該希釈液の全質量に対して、約20質量%~約80質量%の有機非プロトン性溶媒、好ましくは、約69質量%~約79質量%の有機非プロトン性溶媒を含み得る。
【0146】
質量(希釈液)/質量(浸出液)の質量比は、好ましくは、約15~約20の範囲である。
【0147】
工程A)は、好ましくは、撹拌又はロータリー撹拌により実施される。
【0148】
工程A)は、好ましくは、約20分間~約180分間、より好ましくは、約30分間~約60分間実施される。
【0149】
工程A)は、好ましくは、約20℃~約30℃の温度で実施される。
【0150】
工程B)は、好ましくは、遠心分離により実施される。
【0151】
工程C)では、水に酸性溶液を添加することで酸性水溶液のpHを調整して、前記水溶液を形成することができ、ここで酸性溶液は、好ましくは塩酸、硝酸及び硫酸の約0.1M~約1M酸性溶液、好ましくは約0.1M~約0.5M酸性溶液である。
【0152】
工程C)では、V(有機リッチ相)/V(水溶液)の体積比は、好ましくは、約0.7~約1.3の範囲であり、より好ましくは、1に等しい。
【0153】
工程C)は、好ましくは、約10分間~約60分間、好ましくは、約20分間~約30分間実施される。
【0154】
工程C)は、好ましくは、約20℃~約30℃の温度で実施される。
【0155】
工程D)の後、前記第2のランタニド元素を含む水リッチ相は、第2のランタニド元素を酸化形態などの所望の形態で得られるように、工程E)と、工程F)及び工程G)(それぞれ工程e)、f)及びg)と同じ定義であるが、前記第2のランタニド元素を含む水リッチ相に適用される。)に従って、処理することができる。
【0156】
工程B)の後、前記第4のランタニド元素を含む水リッチ相は、第4のランタニド元素を酸化形態などの所望の形態で得られるように、工程E’)と、工程F’)及び工程G’)(それぞれ工程e)、f)及びg)と同じ定義であるが、前記第4のランタニド元素を含む水リッチ相に適用される。)に従って、処理することができる。
【0157】
前記第2のランタニド元素は、好ましくは、Euであり、前記第4のランタニド元素は、好ましくは、Pr、Nd、La又はこれらのうち少なくとも2つの混合物である。
【0158】
したがって、前記浸出液の組成は、重いランタニドを軽いランタニド及び鉄に対して選択的に浸出する、及び/又は選択的に液-液抽出するための重要なパラメータを付与する。
【0159】
本発明の方法は、抽出剤を使用しないことが好ましい。実際、前記抽出剤は、毒性があり、高価である(TOA、HDEHP、ジー及びモノーアミド)。
【0160】
工程I)~III)及び工程a)~d)の順序は独立しており、これらの1つだけ又は両方を工程iii)の後に実施できることに留意されたい。
【0161】
実際には、工程iii)の後に実施される工程は、工程ii)で使用された固体材料中に存在するランタニドの数、及びそれぞれの分子量に応じて異なる。
【0162】
前記第2、第3及び第4のランタニド元素は任意であり、単独で又は2種又は3種のランタニドの組み合わせとして存在し得る。
【0163】
前記固体材料は、さらに第5…などのランタニドを含むことができる。
【0164】
第5のランタニドのタイプに応じて、前述したように、適切な工程の順序となり得る。
【0165】
前記固体材料において、第3のランタニド元素(それぞれ第4、第5…などのランタニド元素)は、好ましくは、酸化物化合物、炭酸塩化合物、又はリン酸塩化合物の形態、より好ましくは、酸化物化合物又はリン酸塩化合物、さらにより好ましくは、酸化物化合物の形態である。
【0166】
本発明の方法は、工程d)の後[それぞれ工程D)の後]に、得られた有機リッチ相を調整するために、工程h)[それぞれ工程H)](組成物調整工程とも呼ばれる工程)をさらに含むことができる。この工程は、工程i)[それぞれ工程I)]で調製された浸出組成物の改質/再形成を目的とする。
【0167】
工程h)[それぞれ工程H)]は、好ましくは、適量の荷電ハイドロトロープ及び水を含む調整組成物を前記有機リッチ相に添加することで実施される。
【0168】
前記調整組成物は、好ましくは、当該調整組成物の全質量に対して、約40質量%~約70質量%の水と約30質量%~約60質量%の荷電ハイドロトロープ、また好ましくは、約50質量%~約60質量%の水と約40質量%~約50質量%の荷電ハイドロトロープを含む。
【0169】
1つの好ましい実施形態では、m(調整組成物)/m(有機リッチ相)の質量比は約2~6の範囲である。
【0170】
工程h)[それぞれ工程H)]は、好ましくは、約20℃~約30℃の温度で実施される。
【0171】
この工程h)又はH)は、閉サイクルでの作業を可能にし、したがって第1サイクルで使用した溶媒及び荷電ハイドロトロープのリサイクルを可能にする。
【0172】
本発明の方法は、原料固体材料中に存在する廃棄物元素及び/又はランタニドの対応する酸化物を得るために、工程i)の前に、酸化条件下で固体材料を熱処理する予備工程i0)をさらに含み得る。実際に、一部の廃棄電気電子機器は非酸化ランタニドを含有する。
【0173】
本発明の方法は、好ましくは大気圧で行われる。
【0174】
本発明の第2の目的は、ランタニド元素、より具体的にはWEEEをリサイクルするための、本発明の第1の目的で定義された前記浸出組成物の使用である。
【0175】
本発明の第3の目的は、溶出液の除染のための、本発明の第1の目的で定義された前記浸出組成物の使用である。
【0176】
本発明は以下の実施例にて、より詳しく説明されるが、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0177】
図1】オールインワンプロセスのフローシートを示す。
図2】永久磁石のリサイクルの工程図を提案している。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0178】
図1は、オールインワンプロセスのフローシートを示す。
【0179】
より具体的には、図1は、本発明の実施様式に従う第1及び第2のランタニド元素の抽出プロセスを示す。
【0180】
本発明で定義される固体材料、より具体的には、La、Nd、Pr、Eu、Dy、Yb及びFeを含む固体材料は、例えば酢酸エチル、水及びサリチル酸ナトリウムを含む浸出単相組成物を調製した[(工程i)]後、20℃で3時間浸出される[工程ii)]。工程iii)によるろ過の後、Dy及びYbに富む浸出液が得られる。次いで、YbをDyから分離するために、この浸出液を、例えば酢酸エチルと水とを含む希釈液で希釈できる[工程a)及びb)]。次いで、水相中のYbを回収し[工程d)]、次いでシュウ酸を添加することによってそれをシュウ酸塩の形態で沈殿させる[工程e)]ために、逆抽出[工程c)]を設ける。ろ過[工程f)]の後、シュウ酸塩を焼成して[工程g)]、当該方法の終了時に酸化イッテルビウムを回収する。
【0181】
工程iii)得られた固体残渣を、例えば酢酸エチル、水及びサリチル酸ナトリウムを含む浸出単相組成物を調製した[工程I)]後、40℃で5時間浸出(工程II))する。ろ過工程[工程III)]の終了時に、Nd、Pr及びEuに富む浸出液が得られる。次いで、Euをジジミウム(Pr+Nd)から分離するために、この浸出液を、例えば酢酸エチルと水とを含む希釈液で希釈できる[工程A)及びB)]。次いで、水相中のEuを回収し[工程D)]、次いでシュウ酸を添加することによってそれをシュウ酸塩の形態で沈殿させる[工程E)]ために、逆抽出[工程C)]を設ける。ろ過[工程F)]の後、シュウ酸塩を焼成して[工程G)]、当該方法の終了時に酸化ユウロピウム(EU)を回収する。
【0182】
得られた固体残基は主にFeの形態のFeであり、顔料の製造に利用できる。
【0183】
実施例1:本発明の方法に従って少なくとも1種の第1の希土類金属を永久磁石粉末から抽出する方法
【0184】
1.1 工程i)水相と、少なくとも1種の有機溶媒と、少なくとも1種の荷電ハイドロトロープとを含む、浸出組成物を調製する工程。
【0185】
40重量%の水、21重量%の酢酸エチル(有機溶媒として)、及び39重量%のサリチル酸ナトリウム(荷電ハイドロトロープとして)を含む浸出単相組成物を調製した。
【0186】
1.2 浸出工程ii)
【0187】
浸出工程ii)は、温度を調整するために、サーモスタット制御された撹拌反応器内で実施した。
【0188】
固体材料として、永久磁石の粉砕から生じた粉末を本発明の方法に使用した。固体材料は、以下の表1に示す組成を有する。
【0189】
【表1】
【0190】
1.1項で調製された浸出組成物10mLを反応器に添加し、次いで0.2gの固体材料を浸出組成物に添加した。
【0191】
浸出工程ii)を、20℃の温度で3時間実施した。
【0192】
次いで、浸出液をろ過した。
【0193】
比較例として、1.2項に記載の方法と同じ方法を、5M硝酸溶液を含む比較浸出組成物を用いて実施した。
【0194】
浸出液及び比較浸出液中のランタニド及び廃棄物元素のモル濃度を、蛍光X線分析装置(XRF)を用いて測定した。
【0195】
以下の表2は、
- 本発明の浸出液で抽出された所与の元素の量(mol%)(100×[浸出液中の所与の元素のモル濃度]/[固体材料中の前記所与の元素のモル濃度])、
- 比較浸出液で抽出された所与の元素の量(mol%)(100×[比較浸出液中の所与の元素のモル濃度]/[固体材料中の前記所与の元素のモル濃度])、
を比較する。
【0196】
【表2】
【0197】
本発明の一部ではない浸出組成物の場合(5M硝酸溶液)、浸出は全ての元素について完全である。したがって、これは非選択的浸出システムである。本発明で定義される浸出組成物により、専用の抽出剤を添加する必要なく、Nd、Pr及び鉄に対してDyを選択的に抽出することができることで、コスト低下をもたらし、時間とコストを節約する。
【0198】
1.3 他の工程
【0199】
本発明による方法は、Dyに富む浸出液と、Nd、Pr及びFeに富む固体残渣とを生じる。
【0200】
ろ過後、浸出液のpHを3に調整した後、25mmol/Lのシュウ酸を浸出液に添加することでDyのシュウ酸塩が沈殿する。沈殿は、一定撹拌下、20℃で実施される。96mol%のジスプロシウムが沈殿し、シュウ酸ジスプロシウムが形成された。浸出液は、新たなNdFeB酸化物粉末の浸出組成物として再利用できる。こうして、残りの希土類がプロセス供給材料に戻されるので、沈殿工程における希土類の損失も回避される。
【0201】
Nd、Pr及びFeに富む固体残渣を、工程1.1で調製した浸出組成物を用いて、固体/液体比1:50(g・mL-1)で、40℃の温度で5時間浸出する。ろ過工程の終了時に、Nd及びPrに富む浸出液が得られる。この工程では、80mol%のNd及び84.3mol%のPrが、浸出液中の鉄から選択的に回収される。次いで、ジジミウム(NdとPrとの混合物)を、25mmol/Lのシュウ酸を用いて、前の沈殿工程と同じ操作条件下で沈殿させる。ろ過の後、94mol%のNd及び97.4mol%のPrがシュウ酸ジジミウムとして沈殿する。酸化ジジミウムは、焼成によって得ることができる。得られる固体残渣は主にFeを含有する。
【0202】
図2は、永久磁石のリサイクルの工程図を提案している。この場合、浸出工程ii)のみで、元素を互いに選択的に分離することができ(液-液抽出の必要なし)、処理段階の数が低減される。

図1
図2
【国際調査報告】