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特表2024-540430犠牲摩耗リングを有する足回りシステム用のアイドラーおよびそのための摩耗リング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】犠牲摩耗リングを有する足回りシステム用のアイドラーおよびそのための摩耗リング
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/14 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B62D55/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527278
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 US2022079995
(87)【国際公開番号】W WO2023091975
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】17/530,284
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャラット、マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】アキンルア、テミトープ オー.
(57)【要約】
トラック型機械(10)における足回りシステム(12)用のアイドラー(20)は、アイドラー回転軸(34)の周りに円周方向に延在し、中央に位置するガイドフランジ(36)を形成する外側リム表面(32)を有するアイドラーリム(30)を含む。外側リム表面(32)は、中央に位置するガイドフランジ(36)の第一の軸方向側面および第二の軸方向側面上に、それぞれ第一のリングチャネル(40)および第二のリングチャネル(42)をさらに形成する。第一の犠牲摩耗リング(44)は、第一のリングチャネル(40)内に位置し、第二の犠牲摩耗リング(46)は、第二のリングチャネル(42)内に位置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラック型機械(10)における足回りシステム(12)用のアイドラー(20)であって、
アイドラー回転軸(34)の周りに円周方向に延在し、中央に位置するガイドフランジ(36)を形成する外側リム表面(32)と、内側リム表面(38)と、を含む、アイドラーリム(30)と、
前記中央に位置するガイドフランジ(36)の第一の軸方向側面上に第一のリングチャネル(40)を、前記中央に位置するガイドフランジ(36)の第二の軸方向側面上に第二のリングチャネル(42)をさらに形成し、前記第一のリングチャネル(40)および前記第二のリングチャネル(42)の各々が、前記アイドラー回転軸(34)の周りに円周方向および連続的に延在する、前記外側リム表面(32)と、
前記第一のリングチャネル(40)内に位置する第一の犠牲摩耗リング(44)と、
前記第二のリングチャネル(42)内に位置する第二の犠牲摩耗リング(46)と、を備える、アイドラー(20)。
【請求項2】
前記第一の犠牲摩耗リング(44)および前記第二の犠牲摩耗リング(46)の各々が、溶接された接合部(47、49)に取り付けられたリング本体端部(80、82)を有する一体リング本体(72)を含み、
前記第一の犠牲摩耗リング(44)および前記第二の犠牲摩耗リング(46)の各々が、前記アイドラーリム(30)に溶接されずに取り付けられる、請求項1に記載のアイドラー(20)。
【請求項3】
前記第一の犠牲摩耗リング(44)および前記第二の犠牲摩耗リング(46)の各々が、円筒形リンク接触面(74)、前記それぞれの第一のリングチャネル(40)または第二のリングチャネル(42)内の前記外側リム表面(32)と接触する内側アイドラー接触面(76)、内側軸方向側面(84)、および外側軸方向側面(86)を含み、
各内側軸方向側面(84)が、前記中央に位置するガイドフランジ(36)の軸方向外側に離間しており、
前記アイドラー(20)が、それぞれ前記外側リム表面(32)から半径方向内側に延在する第一の軸方向端面(48)および第二の軸方向端面(50)をさらに含み、各外側軸方向側面(86)が、前記それぞれの第一の軸方向端面(48)または第二の軸方向端面(50)の軸方向内側に離間している、請求項1または2に記載のアイドラー(20)。
【請求項4】
前記第一の犠牲摩耗リング(44)および前記第二の犠牲摩耗リング(46)の各々が、前記外側リム表面(32)から突き出ている、請求項1~3のいずれかに記載のアイドラー(20)。
【請求項5】
前記第一の犠牲摩耗リング(44)および前記第二の犠牲摩耗リング(46)の各々が、リング幅寸法(RW)およびリング厚さ寸法(RT)を画定し、
RWのRTに対する比は、2.5~5.0であり、
前記第一の犠牲摩耗リング(44)および前記第二の犠牲摩耗リング(46)の各々が、内径寸法(ID)および外径寸法(OD)を画定し、
IDのODに対する比は、0.93~0.95である、請求項1~4のいずれかに記載のアイドラー(20)。
【請求項6】
トラック型機械(10)における足回りシステム(12)用のアイドラー(20)であって、
アイドラー回転軸(34)の周りに円周方向に延在し、中央に位置するガイドフランジ(36)を形成する外側リム表面(32)と、内側リム表面(38)と、第一の軸方向端面(48)と、第二の軸方向端面(50)と、を含む、アイドラーリム(30)と、
それぞれ、第一の犠牲摩耗リング(44)および第二の犠牲摩耗リング(46)を受けるように構造化される第一のリングチャネル(40)および第二のリングチャネル(42)をさらに形成する前記外側リム表面(32)と、
前記アイドラー回転軸(34)の周りに円周方向および連続的に延在し、前記中央に位置するガイドフランジ(36)の軸方向外側に離間した内側チャネル壁(52)と、前記第一の軸方向端面(50)の軸方向内側に離間した外側チャネル壁(54)と、を含む、前記第一のリングチャネル(40)と、
前記アイドラー回転軸(48)の周りに円周方向および連続的に延在し、前記中央に位置するガイドフランジ(36)の軸方向外側に離間した内側チャネル壁と、前記第二の軸方向端面(50)の軸方向内側に離間した外側チャネル壁と、を含む、前記第二のリングチャネル(42)と、を備える、アイドラー(20)。
【請求項7】
各内側チャネル壁(52)および外側チャネル壁(54)は、前記アイドラー回転軸(34)に対して垂直に配向され、前記それぞれの第一のリングチャネル(40)または第二のリングチャネル(42)の円筒形チャネル床(60)に対して半径方向内側に延在し、
外側幅寸法(OW)が、前記中央に位置するガイドフランジ(36)と、それぞれの第一の軸方向端面(48)および第二の軸方向端面(50)との間に画定され、
前記第一のリングチャネル(40)および前記第二のリングチャネル(42)の各々が、チャネル幅寸法(CW)およびチャネル奥行き寸法(CD)を画定し、
CWは、OWの75%超、およびCDの400%超である、請求項6に記載のアイドラー(20)。
【請求項8】
足回りシステム(12)におけるアイドラー(20)用の犠牲摩耗リング(44)であって、
各々が、第一のリング本体端部(80)と第二のリング本体端部(82)との間のリング中心軸(78)の周りに円周方向に延在する、外側リンク接触面(74)および内側アイドラー接触面(76)を含む一体金属リング本体(72)と、
前記リング中心軸(78)に対して垂直に配向され、前記外側リンク接触面(74)から前記内側アイドラー接触面(76)に延在する、第一のリング軸方向側面(84)および第二のリング軸方向側面(86)をさらに含む前記一体金属リング本体(72)と、を備え、
前記一体金属リング本体(72)が、分割ギャップ(88)が前記第一のリング本体端部(80)と前記第二のリング本体端部(82)との間に円周方向に延在する設置構成と、前記第一のリング本体端部(80)および前記第二のリング本体端部(82)が当接し、前記分割ギャップ(88)が閉じている使用構成との間で弾性変形可能であり、
リング幅寸法(RW)が、前記第一のリング軸方向側面(84)と前記第二のリング軸方向側面(86)との間に画定され、
リング厚さ寸法(RT)が、前記外側リンク接触面(74)と前記内側アイドラー接触面(76)との間に画定され、
RWのRTに対する比は、2.5~5.0である、犠牲摩耗リング(44)。
【請求項9】
RWのRTに対する比が2.8~4.6である、請求項8に記載の犠牲摩耗リング(44)。
【請求項10】
前記内側アイドラー接触面(76)が、前記使用構成の内径寸法(ID)を画定し、
前記外側リンク接触面(74)が、前記使用構成の外径寸法(OD)を画定し、
IDのODに対する比は、0.93~0.95であり、
IDが、600ミリメートル超であり、
RTが、20ミリメートル超であり、
前記一体金属リング本体(72)が、鉄を含む均一な材料組成と、前記第一のリング本体端部(80)と前記第二のリング本体端部(82)との間の均一な四角形断面形状とを有する、請求項8または9に記載の犠牲摩耗リング(44)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、トラック型機械における足回りシステム用のアイドラーに関し、より具体的には、アイドラーの外側リム表面のリングチャネル内に位置する犠牲摩耗リングを有するアイドラーに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック型機械は、世界中で非常に多くの異なるオフハイウェイ用途で使用される。典型的な構成では、機械内の二つの地面係合トラックの各々は、一つ以上のアイドラーおよび駆動スプロケットを含む回転要素の周りに延在する二つの平行なトラックチェーン内のトラックリンクの無限ループを含む。グラウサーが一般的に装備されているトラックシューは、トラックチェーンに取り付けられ、基材に接触して、機械を推進および方向付ける。粗い、不均一な、揺れやすい、急勾配の、および/または滑りやすいフィールドサービス環境では、トラック型機械は、多くの活動に不可欠である。
【0003】
基材材料の性質および使用条件により、トラック型機械の足回りシステムにおける構成要素間の摩耗は比較的深刻であり得る。摩耗現象、ならびに一般的に堅牢で洗練されたトラックおよび足回りの構造の必要性を考慮して、足回り部品の検査、点検、および交換は日常的に行われる。上述のように、典型的には、トラックが使用中に前進すると、トラックと接触して受動的に回転する一つ以上のアイドラーが設けられる。アイドラーは一般的に、トラックリンクの平行なチェーンによって形成されるトラックレールと接触して回転するように配置される。経時的に、接触構成要素の材料は摩耗する傾向があり、最終的にアイドラーの交換を必要とする。
【0004】
再利用、修理、その他の方法でアイドラーの耐用年数を延ばすために、様々な提案が知られている。Yelistratovの共同所有の米国特許第8,770,672号では、足回りシステムは、ハブをキャッピングし、比較的高い硬度の金属材料で形成される化合物環状リムを有するアイドラーを含む。比較的高い硬度の金属材料の使用は、明らかに、アイドラーの耐用年数を延ばすことを意図しており、開示された技術は、例えば、使用済みアイドラーにおける摩耗した材料の交換を可能にすることができる。Yelistratovは、様々な用途および利点を有し得るが、代替戦略の改善および開発の余地が常にある。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、トラック型機械における足回りシステム用のアイドラーは、アイドラー回転軸の周りに円周方向に延在し、中央に位置するガイドフランジを形成する外側リム表面を有するアイドラーリムと、内側リム表面と、を含む。外側リム表面は、中央に位置するガイドフランジの第一の軸方向側面上に第一のリングチャネルを形成し、中央に位置するガイドフランジの第二の軸方向側面上に第二のリングチャネルを形成する。第一のリングチャネルおよび第二のリングチャネルの各々は、アイドラー回転軸の周りに円周方向および連続的に延在する。アイドラーは、第一のリングチャネル内に位置する第一の犠牲摩耗リングと、第二のリングチャネル内に位置する第二の犠牲摩耗リングとをさらに含む。
【0006】
別の態様では、トラック型機械における足回りシステム用のアイドラーは、アイドラー回転軸の周りに円周方向に延在し、中央に位置するガイドフランジを形成する外側リム表面を有するアイドラーリム、内側リム表面、第一の軸方向端面、および第二の軸方向端面を含む。外側リム表面は、それぞれ、第一の犠牲摩耗リングおよび第二の犠牲摩耗リングを受けるように構造化される第一のリングチャネルおよび第二のリングチャネルをさらに形成する。第一のリングチャネルは、アイドラー回転軸の周りに円周方向および連続的に延在し、中央に位置するガイドフランジの軸方向外側に離間した内側チャネル壁と、第一の軸方向端面の軸方向内側に離間した外側チャネル壁とを含む。第二のリングチャネルは、アイドラー回転軸の周りに円周方向および連続的に延在し、中央に位置するガイドフランジの軸方向外側に離間した内側チャネル壁と、第二の軸方向端面の軸方向内側に離間した外側チャネル壁とを含む。
【0007】
さらに別の態様では、足回りシステムにおけるアイドラー用の犠牲摩耗リングは、外側リンク接触面と、それぞれが第一のリング本体端部と第二のリング本体端部との間のリング中心軸の周りに円周方向に延在する内側アイドラー接触面とを含む、一体金属リング本体を含む。一体金属リング本体は、リング中心軸に対して垂直に配向され、外側リンク接触面から内側アイドラー接触面に延在する、第一のリング軸方向側面および第二のリング軸方向側面をさらに含む。一体金属リング本体は、分割ギャップが第一のリング本体端部と第二のリング本体端部との間に円周方向に延在する設置構成と、第一のリング本体端部および第二のリング本体端部が当接し、分割ギャップが閉じられる使用構成との間で弾性変形可能である。リング幅寸法(RW)は、第一のリング軸方向側面と第二のリング軸方向側面との間に画定され、リング厚さ寸法(RT)は、外側リンク接触面と内側アイドラー接触面との間に画定される。RWのRTに対する比は、2.5~5.0である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、トラック型機械における足回りシステムの一部分の側面図である。
図2図2は、一実施形態によるアイドラーの概略図である。
図3図3は、一実施形態による、犠牲摩耗リングを備えたアイドラーの概略図である。
図4図4は、一実施形態による、犠牲摩耗リングを備えたアイドラーの一部分の断面概略図である。
図5図5は、一実施形態による、アイドラー用の犠牲摩耗リングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、一実施形態による、足回りシステム12を含むトラック型機械10が示されている。足回りシステム12は、トラックローラフレーム14と、トラック16と、駆動スプロケット18と、アイドラー20と、トラックローラフレーム14に連結された複数のトラックローラ22とを含む。地面係合トラック16は、端と端を一緒に連結された複数のトラックリンク26を含み、様々なトラック接触構成要素の周りに延在する無限ループを形成する。トラックリンク26は、グラウサーを備えたトラックシュー28に取り付けられてもよく、トラックリンクは一緒にトラックレール27を形成する。トラックレール27は、図示した実施形態では、トラックリンク26の二つの平行なトラックチェーンによって形成される二つのトラックレールのうちの一つである。第二の地面係合トラック、アイドラー、駆動スプロケットなどは、示されるものとはトラック型機械の反対の側に従来的に位置付けられてもよい。アイドラー20およびトラックローラ22は、トラック16の前進中にトラックレール27上に乗って、トラック型機械10を推進および/または方向付ける。図示した実施形態では、アイドラー20はバックアイドラーであり、類似または実質的に同一のフロントアイドラーは、トラックローラフレーム14の反対側の端部に位置付けられてもよい。アイドラー26は、アイドラーブロック24内の回転のために支持され、そのうちの一つは図1の図で視認可能である。トラック16は、いわゆる高駆動構成に配置される。他の実施形態では、トラック16は、楕円形構成、またはさらに別の構成を有することができる。足回りシステム12は、トラック型トラクター、トラック型ローダー、または様々な他のタイプのオフハイウェイ機械のいずれかで使用することができる。実用的な実装形態では、機械10は、建設、鉱業、林業、または様々な他の用途に使用され得るトラック型トラクターである。以下の説明を鑑みてさらに明らかであるように、アイドラー20は、足回りシステム12において寿命を延ばすために、交換可能な犠牲摩耗部品で構成される。
【0010】
ここで図2図4も参照すると、アイドラー20は、アイドラー回転軸34の周りに円周方向に延在し、中央に位置するガイドフランジ36を形成する外側リム表面32を有するアイドラーリム30を含む。アイドラーリム30はまた、アイドラー20の第一の軸方向側面と第二の軸方向側面との間に延在するシャフトボアを形成し得る内側リム表面38を含む。アイドラーリム30は、適切な鉄、鋼、または他の合金金属材料の一体鍛造であってもよい。使用中、ガイドフランジ40は、トラックリンク26の並列チェーンの間に受容されてもよく、アイドラー20およびトラック16を所望の配置に維持するのを支援する。アイドラーシャフト71は、アイドラーリム30を貫通し、アイドラーリム30を回転可能にジャーナルする。ジャーナルベアリング、スラストベアリング、およびシールを含む構成要素は、例えば、アイドラーリム30内にあり、アイドラーシャフト71上またはその周りに支持され得る。締付リングまたはプレート73は、複数のボルトによってアイドラーリム30に取り付けられてもよく、別の対応するリングまたはプレートは、図では視界から隠されている。他の実施形態では、アイドラーリム30およびアイドラーシャフト71は、一緒に回転するように固定されてもよく、アイドラーシャフト71は、アイドラーブロック24内、または別の好適な配置で回転するために支持されるライブシャフトである。
【0011】
本明細書で使用される場合、「半径方向内側」および「半径方向外側」という用語は、アイドラー回転軸34に対するそれらの共通の定義に従って使用される。「軸方向内側」および「軸方向外側」という用語は、アイドラー回転軸34と交差するアイドラー20の幾何学的中心点に向かって、およびそこから離れて、それぞれアイドラー回転軸34に沿った、またはアイドラー回転軸34に平行な方向を意味すると理解される。アイドラー20は、アイドラー回転軸34に対して垂直に配向された中央平面の周りに軸方向に対称であってもよく、それゆえ、アイドラー20の一方の側面上の部品、構造、または機能の本明細書の記載および考察は、アイドラー20の別の軸方向側面を指すように類似することによって理解されるべきである。
【0012】
アイドラーリム30は、それぞれが外側リム表面32から半径方向内側に延在する第一の軸方向端面48および第二の軸方向端面50をさらに含む。外側リム表面32は、中央に位置するガイドフランジ36の第一の軸方向側面上に第一のリングチャネル40をさらに形成し、中央に位置するガイドフランジ36の第二の軸方向側面上に第二のリングチャネル42をさらに形成する。第一のリングチャネル40および第二のリングチャネル42は、それぞれ、第一のリングチャネル40内に位置する第一の犠牲摩耗リング44および第二のリングチャネル42内に位置する第二の犠牲摩耗リング46を受けるように構造化される。第一のリングチャネル40および第二のリングチャネル42の各々は、アイドラー回転軸34の周りに円周方向および連続的に途切れることなく延在する。
【0013】
第一のリングチャネル40は、中央に位置するガイドフランジ36の軸方向外側に離間した内側チャネル壁52と、第一の軸方向端面48の軸方向内側に離間した外側チャネル壁54とを含む。第二のリングチャネル42は同様に、中央に位置するガイドフランジ36の軸方向外側に離間した内側チャネル壁(番号付けされていない)と、第二の軸方向端面50の軸方向内側に離間した外側チャネル壁(番号付けされていない)とを含むと理解される。各内側チャネル壁52および外側チャネル壁54は、アイドラー回転軸34に対して垂直に配向されてもよく、それぞれの第一のリングチャネル40または第二のリングチャネル42の円筒形チャネル床60に半径方向内側に延在する。図4に焦点を当てると、アイドラーリム30は、アイドラー20の囲まれた軸方向側面を形成するために、溶接されて取り付けられたエンドプレート58を有する中空リム本体56を含み得る。他の実施形態では、中実の中央ウェブまたはこれに類するものは、一体鍛造またはこれに類するもので、外側リム領域と内側ハブ領域との間に延在し得る。
【0014】
上述のように、アイドラー20は、第一のリングチャネル40内に位置する第一の犠牲摩耗リング44と、第二のリングチャネル42内に位置する第二の犠牲摩耗リング46とを含む。「犠牲」という用語は、本明細書でさらに論じるように、使用中に第一の犠牲摩耗リング44および第二の犠牲摩耗リング46の材料から摩耗することが予想および意図されるものに関連して使用される。第一の犠牲摩耗リング44および第二の犠牲摩耗リング46はそれぞれ、例えば、鍛造によって製造される適切な金属材料の細長い単一部品から形成され得る。第一の犠牲摩耗リング44および第二の犠牲摩耗リング46を形成する材料は、例えば、鉄を含むアイドラーリム30を形成する材料と同じか、または異なる材料であり得る。第一の犠牲摩耗リング44および第二の犠牲摩耗リング46は、一部の実施形態では、別のプロセスによって熱処理または硬化され得る。実用的な実装形態では、第一の犠牲摩耗リング44および第二の犠牲摩耗リング46の各々は、本明細書でさらに論じるように、鉄を含む均一な材料組成、および摩耗リングの端部間の均一な四角形断面形状を有する。
【0015】
ここで図5も参照すると、第一の犠牲摩耗リング44の特徴がさらに詳細に示され、識別される。当然のことながら、第一の犠牲摩耗リング44の説明および考察は、本開示による任意の他の犠牲摩耗リングを例として言及すると理解される。犠牲摩耗リング44は、外側リンク接触面74および内側アイドラー接触面76を含む、第一の犠牲摩耗リング44と互換的に本明細書で時に言及される、一体金属リング本体72を含む。外側リンク接触面74および内側アイドラー接触面76の各々は、第一のリング本体端部80と第二のリング本体端部82との間のリング中心軸78の周りに円周方向に延在する。リング中心軸78は、犠牲摩耗リング44がアイドラーリム30上に使用のために取り付けられるとき、アイドラー回転軸78と同軸に配置され得る。一体金属リング本体72は、それぞれリング中心軸78に対して垂直に配向され、外側リンク接触面74から内側アイドラー接触面76まで延在する、第一のリング軸方向側面84および第二のリング軸方向側面86をさらに含む。外側リンク接触面74は、円筒形であり得る。内側アイドラー接触面76もまた、円筒形であってもよい。リング幅寸法(RW)90は、第一のリング軸方向側面84と第二のリング軸方向側面86との間に画定される。リング厚さ寸法(RT)92は、外側リンク接触面74と内側アイドラー接触面76との間に画定される。一実装形態では、RWのRTに対する比は、2.5~5.0である。精緻には、RW対RTの比は、2.8~4.6である。
【0016】
一体金属リング本体72は、分割ギャップが第一のリング本体端部80と第二のリング本体端部82との間に円周方向に延在する設置構成と、第一のリング本体端部80および第二のリング本体端部82が当接し、分割ギャップ88が閉じられる使用構成との間で弾性変形可能であり得る。設置構成または使用構成のいずれかは、設置構成または使用構成のうちの一方から、設置構成または使用構成のうちの他方への内部ばね付勢と反対に、一体金属リング本体72が変形した、静止構成であり得る。
【0017】
前述の説明から、一体金属リング本体72は、ばね状であってもよく、外側アイドラー面34上に滑り、第一のリングチャネル40内に位置することができることが理解されよう。第二の犠牲摩耗リング46は、同様に設置され得る。それぞれの第一および第二のリングチャネル40および42に取り付けられると、アイドラー20のアセンブリは、リング本体端部80および82を溶接することによって完了することができる。分割ギャップ88は、第一のリング本体端部80と第二のリング本体端部82との間に延在することが想起される。アイドラーリム32上に設置される場合、一体金属リング本体72を閉鎖することができるか、または閉鎖が許容される内部ばね付勢を利用し、第一のリング本体端部80および第二のリング本体端部82を溶接のために当接して配置することができる。図3に示すように、第一の犠牲摩耗リング44は、それぞれのリング本体端部80および82を取り付ける溶接接合部47を含む。第二の犠牲摩耗リング46は、同様に溶接接合部49を含む。また、実用的な実装形態では、第一の犠牲摩耗リング44および第二の犠牲摩耗リング46は、アイドラーリム30に直接または固定的に取り付けられていない。したがって、第一の犠牲摩耗リング44および第二の犠牲摩耗リング46の各々は、アイドラーリム30に溶接されずに取り付けられてもよい。
【0018】
使用のために設置される場合、各内側軸方向側面または第一のリング軸方向側面84は、中央に位置するガイドフランジ36の軸方向外側に離間し得る。各外側軸方向側面または第二のリング軸方向側面86は、それぞれの第一の軸方向端面48または第二の軸方向端面50の軸方向内側に離間し得る。図面、特に図4から分かるように、第一の犠牲摩耗リング44および第二の犠牲摩耗リング46は、外側リム表面32から突き出ていてもよい。
【0019】
第一の犠牲摩耗リング44の寸法および比例属性に戻ると、内側アイドラー接触面76は、一体金属リング本体72が使用構成にあるとき、内径寸法(ID)94を画定し得る。外側リンク接触面74は、使用構成において外径寸法(OD)96を画定し得る。IDとODの比は、0.93~0.95であってもよい。一部の用途では、IDは600ミリメートルより大きい。また、特定の用途では、RTは20ミリメートル超である。
【0020】
図4にも図示されるように、外側幅寸法(OW)64は、中央に位置するガイドフランジ36と、それぞれの第一の軸方向端面48および第二の軸方向端面50との間に画定される。中央に位置するガイドフランジ36は、OWよりも大きい軸方向幅寸法(AW)66を画定する。第一のリングチャネル40および第二のリングチャネル42の各々は、チャネル幅寸法(CW)68およびチャネル奥行き寸法(CD)70を画定する。CWは、一部の実施形態では、OWの75%超、およびCDの400%超であり得る。本明細書に記載される摩耗リング44および46の比例特性および寸法特性は、異なるサイズのトラック型トラクターで使用されるアイドラーサイズの範囲など、アイドラーサイズの範囲にわたってスケーリングされることが予想され得る。
【産業上の利用可能性】
【0021】
概して図面を参照すると、使用中アイドラー20は、トラック16の前進と共に、足回りシステム12内の様々なトラック接触回転可能要素の周りを前方方向または逆方向に回転する。犠牲摩耗リング44および46は、トラックレール27および図1の図では視界から隠されたトラックレールと接触して回転する。摩耗リング44および46の材料、ならびに基体粒子などの間の接触は、摩耗リング44および46の材料を摩耗させる傾向がある。アイドラー20は、外側リム表面32の半径方向外側にある摩耗リング44および46の材料が摩耗し、アイドラーリム30の材料が摩耗し始めることが予想される時まで、少なくとも稼働状態に維持され得ることが企図される。
【0022】
足回りシステム12が所望のまたは所定の摩耗状態に達したとき、足回りシステム12は分解され、アイドラー20が取り外され得る。摩耗リング44および46は、アイドラーリム30から切断および分解することができ、交換用犠牲摩耗リングは、所定の位置に取り替えられ、第一のリングチャネル40および第二のリングチャネル42内に位置する。
【0023】
本明細書は、例示目的のみとし、本開示の範囲をいかなる形でも狭めるように解釈されるべきではない。従って、当業者は、本開示の完全および公正な範囲および趣旨から逸脱することなく、本開示の実施形態にさまざまな修正を行うことができることを理解するであろう。その他の態様、特徴および利点は、添付図面および添付の特許請求の範囲を検討の上で明らかになるであろう。本明細書で使用する冠詞「a」および「an」は、一つ以上の品目を含むことが意図されており、「一つ以上(one or more)」と交換可能に使用され得る。一つの項目のみが意図される場合、用語「一つの(one)」または類似の言い回しが使用される。また、本明細書で使用される「有する(has)」、「有する(have)」、「有する(having)」またはこれに類する用語は、非限定な用語であることが意図される。さらに、語句「~に基づく(based on」は、別段の明示がない限り、「~に少なくとも部分的に基づく(based,at least in part,on」を意味することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】