(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】第XI/XIa因子抗体の投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241024BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20241024BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241024BHJP
C07K 16/36 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K39/395 P
A61P7/02
A61P9/00
C07K16/36 ZNA
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527544
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 US2022080131
(87)【国際公開番号】W WO2023092062
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522243901
【氏名又は名称】アントス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フリードホルム, デブラ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ブルームフィールド, ダニエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】グラスプール, ロイストン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン, ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】クデル, ヤセル
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、抗第XI因子および/または活性化第XI因子(第XIa因子)抗体またはその抗原結合性断片、それを含む医薬製剤、および血栓塞栓性障害または関連する状態の処置における使用のための医薬製剤の投薬レジメンに関する。抗第XI因子および/または活性化第XI因子(第XIa因子)抗体またはその抗原結合性断片の医薬製剤も提供される。血小板減少症を有する患者を、抗第XI因子および/または活性化第XI因子(第XIa因子)抗体またはその抗原結合性断片を用いて処置する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患または障害の処置を必要とする対象において疾患または障害を処置する方法であって、前記対象に、単離された抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片約150mgの1回目の用量を静脈内投与するステップと、前記対象に、前記単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体または前記その抗原結合性断片の2回目の用量を皮下投与するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記2回目の用量が、前記単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体または前記その抗原結合性断片約150mgを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体または前記その抗原結合性断片の前記1回目の用量が、前記抗体または前記その抗原結合性断片約150mgを含む静脈内薬物送達製剤として製剤化されたものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体または前記その抗原結合性断片の前記2回目の用量が、前記抗体または前記その抗原結合性断片約150mgを含む皮下薬物送達製剤として製剤化されたものである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、ヒトIgG1アイソタイプである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合性断片を約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤を含む薬物送達製剤において投与する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合性断片を約220mMの濃度のスクロースを含む薬物送達製剤において投与する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合性断片を約0.04%の濃度のポリソルベート20を含む薬物送達製剤において投与する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合性断片をpH5.5の薬物送達製剤において投与する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合性断片を静脈内薬物送達製剤において投与する場合、前記静脈内薬物送達製剤が、約5%のグルコースをさらに含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、がんを有する、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、胃腸がんおよび尿生殖器がんからなる群より選択されるがんを有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、静脈血栓塞栓症のリスクが高い状態である、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、1回または複数回の以前の静脈血栓塞栓症を有している、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体またはその抗原結合性断片の1回または複数回の追加的な皮下用量をさらに含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体またはその抗原結合性断片の皮下用量を5回投与することを含む、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体またはその抗原結合性断片を約1カ月に1回皮下投与する、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体またはその抗原結合性断片を1日目に静脈内投与し、31日目、61日目、91日目、121日目、および151日目に皮下投与する、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象を約6カ月間処置する、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
がんを有する対象を処置する方法であって、単離された抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片約150mgを含む薬物送達製剤を、それを必要とする前記対象に投与するステップを含み、前記薬物送達製剤を静脈内に1回投与し、その後、約1カ月に1回皮下投与し、前記対象を約6カ月間処置する、方法。
【請求項23】
前記がんが、胃腸がんおよび尿生殖器がんからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
血栓症のリスクがある霊長類対象を処置する方法であって、前記霊長類対象に、
(a)約150mgの濃度の、治療有効量の単離された抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片;
(b)約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;
(c)約220mMの濃度のスクロース;ならびに
(d)約0.04%(v/v)の濃度のポリソルベート20;
(e)グルコースを含む希釈剤
を含むpH5.5の薬物送達製剤の単回用量を投与するステップを含み、
前記投与するステップは、血餅が形成される前または形成される間のものである、
方法。
【請求項25】
前記霊長類対象が、ヒヒである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記霊長類対象が、ヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記血栓症が、実験的に誘導された血栓症である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
前記霊長類対象が、血管グラフト血栓症のリスクがある、請求項24から27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記単回用量が、血栓症を防止するために投与されるものである、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記単回用量が、血栓症を処置するために投与されるものである、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記単回用量が、非経口的または静脈内へのものである、請求項24から30までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記単回用量が、非経口的なものである、請求項24から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記霊長類対象への投与に関して、前記抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片の前記治療有効量が約1mg/kgである、請求項24から25までまたは27から32までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記霊長類対象への投与に関して、前記抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片の前記治療有効量が約150mgである、請求項24、26、または28から32までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
血小板減少症を有する対象を処置する方法であって、前記血小板減少症が、化学療法誘発性血小板減少症、先天性血小板減少症、感染症に関連する血小板減少症、および特発性血小板減少症からなる群より選択され、前記方法が、治療有効量の第XI因子および/または第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片をそれを必要とする前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項36】
血小板減少症を有する前記対象が、がんを有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
血小板減少症を有する前記対象が、硬変症を有する、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
血小板減少症を有する前記対象が、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を有する、請求項35または36に記載の方法。
【請求項39】
化学療法誘発性血小板減少症を有するがん対象を処置する方法であって、治療有効量の第XI因子および/または第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片を、それを必要とする前記がん対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項40】
前記対象または前記がん対象が、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある、請求項35から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9または29における相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19または39における相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、
i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;
ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;
iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;または
iv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1から41までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9、29およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)からなる群より選択されるVH;ならびに配列番号19、39およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)からなる群より選択されるVLを含む、請求項1から42までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9および29からなる群より選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群より選択される軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体が、配列番号31、11およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに配列番号41、21およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1から44までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1から45までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、請求項1から46までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体が、ヒトIgG1アイソタイプである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体またはその抗原結合性断片の前記投与が、前記対象における血小板凝集に、前記投与前の血小板凝集と比較して影響を及ぼさない、請求項1から49までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記血小板凝集が、インピーダンス血小板凝集測定法によって測定される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記血小板凝集が、コラーゲン、アデノシン5’-二リン酸(ADP)、またはトロンビン受容体活性化ペプチド-6(TRAP-6)によって誘導される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記血小板凝集が、ex vivoまたはin vitroにおいて決定される、請求項50から52までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記抗体またはその抗原結合性断片を静脈内投与する、請求項35から53までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記抗体またはその抗原結合性断片を皮下投与する、請求項35から54までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記抗体またはその抗原結合性断片の1回目の用量を静脈内投与し、前記抗体または抗原結合性断片の2回目の用量を皮下投与する、請求項35から55までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記2回目の用量を投与した後に皮下投与される前記抗体またはその抗原結合性断片の1つまたは複数の追加的な用量をさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記抗体またはその抗原結合性断片を1カ月に1回投与する、請求項35から57までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、そのそれぞれの開示全体があらゆる目的に関して参照により本明細書に組み込まれる2021年11月18日出願の米国仮特許出願第63/281,024号、2021年12月9日出願の米国仮特許出願第63/287,633号、および2022年6月24日出願の米国仮特許出願第63/355,314号の利益および米国での優先権を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、電子的に提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表XMLを含む。前記配列表SMLは、2022年10月24日に作成され、ATD-011WO_SL.XMLという名称であり、サイズは52,029バイトである。
【0003】
本開示の分野
本開示は、抗第XI因子および/または活性化第XI因子(第XIa因子)抗体またはその抗原結合性断片、それを含む医薬製剤、および血栓塞栓性障害または関連する状態の処置における使用のための医薬製剤の投薬レジメンに関する。抗第XI因子および/または活性化第XI因子(第XIa因子)抗体またはその抗原結合性断片の医薬製剤も提供される。
【背景技術】
【0004】
背景
血栓塞栓性合併症、例えば、脳卒中、全身性塞栓症、認知機能低下および死亡率を低減するための、有効性が既存の治療で示されるものと同等かまたは改善されており、また、出血のリスクが低い、より安全な治療という大きなまだ対処されていない医学的必要性が存在する。
第XI因子(FXI)は、内因性凝固経路と外因性凝固経路の両方で機能するセリンプロテアーゼである。第XI因子は、チモーゲン形態でホモ二量体として存在する;R369-I370のペプチド結合が切断されると、第XI因子が活性化される(第XIa因子、FXIa)。FXIは、高組織因子環境での正常な止血において果たす役割は重要なものではないが、血栓症においては重要な役割を果たす。遺伝第XI因子欠乏症には、虚血性脳卒中および静脈血栓塞栓性事象の発生率の低下が付随する(Salomon et al. (2008); Salomon, et al. (2011)Thromb Haemost.; 105: 269-73)。第XI因子欠乏症を有する対象における出血顕在化は頻度が低く、多くの場合、軽度であり、傷害または外傷に起因し、また、非常に稀に極めて重要な器官に影響を及ぼす(Salomon et al. (2011))。
第XI因子および/または第XIa因子に結合する抗体が研究されている。例えば、WO2016/207858には、本明細書の表1に抗体1として開示されている、そのような抗第XI因子および/または第XIa因子抗体の1つが記載されている。本開示は、これらの開発に付け加え、特定の血栓塞栓性障害を有する患者を所望の安全性および有効性で処置するために、投薬レジメンを含めたさらなる臨床的方法を提供する。さらに、本開示は、患者への投与に関して十分に安定かつ適切な、そのようなFXIおよび/またはFXIa抗体を含む医薬製剤を提供することにより、当技術分野における以前の開発に付け加える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Salomon, et al. (2011)Thromb Haemost.; 105: 269-73
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本開示は、抗第XI因子および/または第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片、またはそれを含む医薬製剤の投薬レジメンを提供する。
【0008】
したがって、一態様では、それを必要とする対象における疾患または障害を処置する方法であって、対象に、単離された抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片約150mgの1回目の用量を静脈内投与するステップと、対象に、単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の2回目の用量を皮下投与するステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0009】
一部の実施形態では、2回目の用量は、単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片約150mgを含む。一部の実施形態では、単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の1回目の用量は、抗体またはその抗原結合性断片約150mgを含む静脈内薬物送達製剤として製剤化されたものである。一部の実施形態では、単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の2回目の用量は、抗体またはその抗原結合性断片約150mgを含む皮下薬物送達製剤として製剤化されたものである。
【0010】
一部の実施形態では、抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒトIgG1アイソタイプである。一部の実施形態では、抗体は、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む。
【0011】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤を含む薬物送達製剤において投与する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を約220mMの濃度のスクロースを含む薬物送達製剤において投与する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を約0.04%の濃度のポリソルベート20を含む薬物送達製剤において投与する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片をpH5.5の薬物送達製剤において投与する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を静脈内薬物送達製剤において投与し、静脈内薬物送達製剤は、約5%のグルコースをさらに含む。
【0012】
一部の実施形態では、対象は、がんを有する。ある特定の実施形態では、対象は、活動性がんを有する。ある特定の実施形態では、対象は、胃腸がんおよび尿生殖器がんからなる群より選択されるがんを有する。一部の実施形態では、対象は、静脈血栓塞栓症のリスクが高い状態である。一部の実施形態では、対象は、1回または複数回の以前の静脈血栓塞栓症を有している。
【0013】
一部の実施形態では、方法は、抗体またはその抗原結合性断片の1回または複数回の追加的な皮下用量をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、抗体またはその抗原結合性断片の皮下用量を5回投与することを含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を約1カ月に1回皮下投与する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を1日目に静脈内投与し、31日目、61日目、91日目、121日目、および151日目に皮下投与する。一部の実施形態では、対象を約6カ月間処置する。
【0014】
別の態様では、がんを有する対象を処置する方法であって、単離された抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片約150mgを含む薬物送達製剤を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、薬物送達製剤を静脈内に1回投与し、その後、約1カ月に1回皮下投与し、対象を約6カ月間処置する、方法が本明細書に提供される。
【0015】
一部の実施形態では、がんは、胃腸がんおよび尿生殖器がんからなる群より選択される。
【0016】
別の態様では、血栓症のリスクがある霊長類対象を処置する方法であって、霊長類対象に、
(a)約150mgの濃度の、治療有効量の単離された抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片;
(b)約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;
(c)約220mMの濃度のスクロース;ならびに
(d)約0.04%(v/v)の濃度のポリソルベート20;
(e)グルコースを含む希釈剤、
を含むpH5.5の薬物送達製剤の単回用量を投与するステップ
を含み、
投与するステップは、血餅が形成される前または形成される間のものである、
方法が本明細書に提供される。
【0017】
一部の実施形態では、霊長類対象は、ヒヒである。一部の実施形態では、霊長類対象は、ヒトである。一部の実施形態では、血栓症は、実験的に誘導された血栓症である。一部の実施形態では、霊長類対象は、血管グラフト血栓症のリスクがある。一部の実施形態では、単回用量は、血栓症を防止するために投与されるものである。一部の実施形態では、単回用量は、血栓症を処置するために投与されるものである。一部の実施形態では、単回用量は、非経口的または静脈内へのものである。ある特定の実施形態では、単回用量の後に、後の用量を続ける。ある特定の実施形態では、後の用量は、非経口的なものである。
【0018】
一部の実施形態では、霊長類対象への投与に関して、抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量は約1mg/kgである。一部の実施形態では、霊長類対象への投与に関して、抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量は約150mgである。
【0019】
別の態様では、血小板減少症を有する対象を処置する方法であって、血小板減少症が、化学療法誘発性血小板減少症、先天性血小板減少症、感染症に関連する血小板減少症、および特発性血小板減少症からなる群より選択され、方法が、治療有効量の第XI因子および/または第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片をそれを必要とする対象に投与するステップを含む、方法が本明細書に提供される。
【0020】
一部の実施形態では、血小板減少症を有する対象は、がんを有する。
【0021】
一部の実施形態では、血小板減少症を有する対象は、硬変症を有する。
【0022】
一部の実施形態では、血小板減少症を有する対象は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を有する。
【0023】
別の態様では、化学療法誘発性血小板減少症を有するがん対象を処置する方法であって、治療有効量の第XI因子および/または第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片を、それを必要とするがん対象に投与するステップを含む、方法が本明細書に提供される。
【0024】
一部の実施形態では、対象またはがん対象は、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある。
【0025】
上記の態様の一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9または29における相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19または39における相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0026】
上記の態様の一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、
i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;
ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;
iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;または
iv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0027】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9、29およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)からなる群より選択されるVH;ならびに配列番号19、39およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)からなる群より選択されるVLを含む。
【0028】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9および29からなる群より選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群より選択される軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号31、11およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに配列番号41、21およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0029】
一部の実施形態では、抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒトIgG1アイソタイプである。ある特定の実施形態では、抗体は、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む。
【0030】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップは、対象における血小板凝集に対して、投与前の血小板凝集と比較して、影響を及ぼさない。ある特定の実施形態では、血小板凝集は、インピーダンス血小板凝集測定法によって測定される。ある特定の実施形態では、血小板凝集は、コラーゲン、アデノシン5’-二リン酸(ADP)、またはトロンビン受容体活性化ペプチド-6(TRAP-6)によって誘導される。ある特定の実施形態では、血小板凝集は、ex vivoまたはin vitroにおいて決定される。
【0031】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を静脈内投与する。
【0032】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を皮下投与する。
【0033】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片の1回目の用量を静脈内投与し、抗体または抗原結合性断片の2回目の用量を皮下投与する。ある特定の実施形態では、方法は、2回目の用量を投与した後に抗体またはその抗原結合性断片の1つまたは複数の追加的な用量を皮下投与することをさらに含む。
【0034】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片を1カ月に1回投与する。
【0035】
本開示の他の実施形態および詳細が本明細書において下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、ヒヒ4匹における、抗体1を1mg/kgで静脈内投与した後の活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の時間経過を示す線グラフを示す。
【0037】
【
図2】
図2A~2Bは、各動静脈(AV)シャント実験の前およびその間の出血時間(
図2A)および出血体積(
図2B)を示す。
【0038】
【
図3】
図3A~3Bは、コラーゲンコーティング(
図3A)またはコラーゲン+組織因子(TF)コーティング(
図3B)についてのAVシャントの尾部セグメントにおける血小板沈着を示す。縦の点線は、抗体1の投与時点を示し、矢印は、血小板沈着が停止した屈曲点を示す。縦の点線と矢印の間の時間により、薬物投与と血小板沈着速度がマイナスになった時点の間の時間が測定される。
【0039】
【
図4】
図4A~4Fは、処置を受けたヒヒ3匹についてのAVシャントの尾部セグメントにおける血小板沈着を示す。
図4A、
図4B、および
図4Cはコラーゲンコーティングについて示し、
図4D、
図4E、および
図4Fはコラーゲン+TFコーティングについて示す。
【0040】
【
図5】
図5A~5Bは、AVシャントのコラーゲンコーティングセグメント(
図5A)またはコラーゲン+TFコーティングセグメント(
図5B)における血小板沈着を示す。データは、3匹のヒヒの平均である。
【0041】
【
図6】
図6A~6Dは、コラーゲンコーティンググラフト(
図6A)、コラーゲン+TFコーティンググラフト(
図6B)、コラーゲンコーティンググラフトの下流の尾部セグメント(
図6C)、およびコラーゲン+TFコーティンググラフトの下流の尾部セグメント(
図6D)における血栓のフィブリン含有量を示す。
【0042】
【
図7】
図7A~7Bは、コラーゲン(
図7A)またはTRAP-6(
図7B)を用いた誘導後にビヒクル、抗体1、またはアブシキシマブを補充したドナー全血におけるin vitro血小板凝集を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
定義
本発明の理解を容易にするために、多数の用語および句を以下に定義する。
【0044】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、本明細書で使用される場合、「1つまたは複数の(one or more)」を意味し、文脈上適切でない場合を除き、複数を包含する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「FXIタンパク質」、「FXI抗原」、および「FXI」という用語は、互換的に使用され、異なる種における第XI因子タンパク質を指す。第XI因子は、哺乳動物の血漿凝固第XI因子であり、ヒト血漿中に25~30nMの濃度でチモーゲンとして存在する糖タンパク質であり、タンパク質限定加水分解によって活性なセリンプロテアーゼに変換されると、血液凝固の内因性経路に関与する。
【0046】
「FXIaタンパク質」、「FXIa抗原」、および「FXIa」という用語は、互換的に使用され、異なる種における、活性化されたFXIタンパク質を指す。チモーゲン第XI因子は、その活性型である凝固第XIa因子(FXIa)に、血液凝固の接触相を介してか、または血小板表面でのトロンビン媒介性活性化を通じてのいずれかで変換される。この第XI因子の活性化の間、2本の鎖のそれぞれの内部のペプチド結合が切断され、その結果、ジスルフィド結合によって一緒になって保持された2本の重鎖および2本の軽鎖で構成されるセリンプロテアーゼである、活性化された第Xla因子が生じる。このセリンプロテアーゼFXIaが凝固第IX因子をIXaに変換し、それがその後、凝固第X因子を活性化する(Xa)。次いで、Xaは凝固因子II/トロンビン活性化を媒介し得る。例えば、ヒトFXIは、表1(配列番号1)に記載されている配列を有し、以前の報告および文献に記載されている(Mandle RJ Jr, et al. (1979)Blood; 54 (4): 850; NCBI参照配列: AAA51985)。
【0047】
本開示に関しては、「FXI」および「FXIa」(など)の用語は、それぞれ、上記の報告に記載されているネイティブな一次構造(アミノ酸配列)と実質的に同じアミノ酸配列を有する、天然FXIおよびFXIaタンパク質の変異体およびバリアントを包含する。
【0048】
「触媒ドメイン」、「セリンプロテアーゼ触媒ドメイン」という用語、および同様の用語は、本明細書で使用される場合、循環中に存在する成熟タンパク質のN末端のGlu1から数えてアミノ酸Ile370~Val607を意味する。これは、FXIのC末端の残基388~625と記載することもできる。本明細書で使用される場合、「活性部位」という用語は、アミノ酸His413、Asp462およびSer557で構成される触媒三連構造を意味する(Bane and Gailani (2014) Drug Disc. 19 (9))。
【0049】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体全体およびその任意の抗原結合性断片(例えば、「抗原結合性部分」)または単鎖を意味する。抗体全体は、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とで構成される糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLで構成される。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域と、その間に散在する、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRで構成され、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、種々の免疫系の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第1の成分(C1q)を含めた、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。一部の特定の態様では、抗体は、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ科抗体またはキメラ抗体であり得る。抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであってよい。
【0050】
抗原結合性部位のCDRは、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252, 6609-6616 (1977)およびKabat et al., Sequences of protein of immunological interest. (1991)、Chothia et al., J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987)、およびMacCallum et al., J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996)に記載されている方法によって決定することができる。これらの定義の下で決定されるCDRは、一般には、互いに比較した場合にアミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。ある特定の実施形態では、「CDR」という用語は、MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996)およびMartin A., Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains, in Antibody Engineering, Kontermann and Dubel, eds., Chapter 31, pp. 422-439, Springer-Verlag, Berlin (2001)によって定義されるCDRである。ある特定の実施形態では、「CDR」という用語は、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252, 6609-6616 (1977)およびKabat et al., Sequences of protein of immunological interest. (1991) によって定義されるCDRである。ある特定の実施形態では、抗体の重鎖CDRと軽鎖CDRは異なる慣例を使用して定義される。例えば、ある特定の実施形態では、重鎖CDRはMacCallum(上記)に従って定義され、軽鎖CDRはKabat(上記)に従って定義される。CDRH1、CDRH2およびCDRH3は重鎖CDRを表し、CDRL1、CDRL2およびCDRL3は軽鎖CDRを表す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「薬物送達製剤」または「静脈内薬物送達製剤」という用語は、活性薬剤と不活性または活性な担体の組合せを含めてin vivoまたはex vivoにおける診断または治療への使用に特に適した組成物にした、医薬製剤を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書に記載の方法および組成物によって処置される生物体を指す。そのような生物体は、これだけに限定されないが、哺乳動物(例えば、ネズミ(murine)、サル(simian)、ウマ(equine)、ウシ(bovine)、ブタ(porcine)、霊長類、イヌ(canine)、ネコ(feline)など)を含むことが好ましく、ヒトを含むことがより好ましい。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。本明細書で使用される場合、「霊長類対象」は、ヒトおよび非ヒト霊長類のどちらも包含する。ある特定の実施形態では、対象は、例えば、Gruber et al. Blood, 1989 Feb 15; 73(3): 639-42およびCrosby et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol, 2013 Jul; 33 (7): 1670-8に記載されている血栓症のヒヒモデルである。
【0053】
「血栓塞栓性障害」または同様の用語は、本明細書で使用される場合、内因性および/または共通の凝固経路が異常に活性化されているかまたは天然には非活性化されない(例えば、治療手段なしで)、いくつもの状態または疾患を指す。これらの状態には、これだけに限定されないが、血栓塞栓性脳卒中および他の型の虚血性起源の脳卒中、心房細動、心房細動における脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、ならびに肺塞栓症が含まれる。これらには、カテーテルにより血栓が形成されるカテーテル関連血栓症(例えば、腫瘍患者におけるヒックマンカテーテル)、ならびに、チューブおよび膜型人工肺(oxygenation membrane)により血餅が生じる体外式膜型人工肺(ECMO)の防止および処置も含まれる。
【0054】
「血栓塞栓性障害」または同様の用語は、本明細書で使用される場合、任意の数の、本開示の抗FXIおよび/またはFXIa抗体またはその抗原結合性断片を使用して防止または処置することができる以下のものも指し得る:
-発作性、持続的または永続的な心房細動または心房粗動などの心不整脈の疑いがあるかまたは心不整脈が確認されている対象における血栓塞栓症;
-心房細動における脳卒中の防止(SPAF)、この亜集団は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けているAF患者である;
-出血のリスクが高い患者における急性静脈血栓塞栓性事象(VTE)処置および長期の続発性VTEの防止;
-対象が小児対象である、静脈血栓塞栓症(小児VTE);
-一過性脳虚血発作(TIA)後の二次防止中の大脳および心血管事象または活動不能にならない脳卒中、および洞調律を伴う心不全における血栓塞栓性事象の防止;
-出血性脳卒中;
-左心房における血餅形成および心不整脈に対する電気的除細動を受けている対象における血栓塞栓症;
-心不整脈に対するアブレーション手順の前、その間、およびその後の血栓症;
-静脈血栓症、これには、排他的ではないが、下部メンバーまたは上部メンバーにおける深部静脈または浅静脈血栓症、腹部静脈および胸部静脈における血栓症、洞血栓症ならびに頸静脈の血栓症の処置および二次防止が含まれる;
-カテーテル、ペースメーカーワイヤー、合成動脈グラフト;機械的もしくは生物学的心臓弁または左心室補助デバイスのような静脈または動脈内の任意の人工表面における血栓症;
-静脈血栓症を有する患者または静脈血栓症を有さない患者における肺塞栓症;
-慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH);
-破裂した動脈硬化巣における動脈血栓症、動脈内人工器官またはカテーテルにおける血栓症および見かけ上は正常な動脈における血栓症、これには、これだけに限定されないが、急性冠状動脈症候群、ST上昇心筋梗塞、非ST上昇心筋梗塞、不安定狭心症、ステント血栓症、動脈系内の任意の人工表面の血栓症および肺高血圧症を有する対象または肺高血圧症を有さない患者における肺動脈の血栓症が含まれる;
-経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けている患者における血栓症および血栓塞栓症;
-心原性脳卒中および潜因性脳卒中;
-非中枢神経全身性塞栓症(非CNS全身性塞栓症);
-浸潤および非浸潤がん悪性疾患を有する患者における血栓症(例えばCAT);
-留置カテーテル上の血栓症;
-重症の患者における血栓症および血栓塞栓症;
-これだけに限定されないが、心筋梗塞後の心臓血栓症、心室瘤、心筋線維症、心拡大および心不全、心筋炎ならびに人工心臓表面などの状態に関連する心臓血栓症を含めた心臓血栓症および血栓塞栓症;
-心房細動を伴うまたは伴わない心臓弁膜症を有する患者における血栓塞栓症;
-機械的または生物学的人工弁上の血栓塞栓症;
-単純なまたは複雑な心奇形の心臓修復後に、ネイティブなまたは人工心臓パッチ、動脈または静脈導管を有した患者における血栓塞栓症;
-膝関節置換術、人工股関節置換術、および整形外科手術、胸部または腹部外科手術後の静脈血栓症および血栓塞栓症;
-頭蓋内および脊髄介入を含む脳神経外科手術後の動脈または静脈血栓症;
-排他的ではないが、第V因子ライデン、プロトロンビン変異、アンチトロンビンIII、プロテインCおよびプロテインS欠乏症、第XIII因子変異、家族性異常フィブリノゲン血症、先天性プラスミノーゲン欠乏症、第XI因子のレベルの上昇、鎌状赤血球症、抗リン脂質症候群、自己免疫疾患、慢性腸疾患、ネフローゼ症候群、溶血性尿毒症、骨髄増殖性疾患、播種性血管内凝固、発作性夜間ヘモグロビン尿症およびヘパリン起因性血小板減少症を含めた、先天性または後天性血栓形成傾向;
-慢性腎疾患における血栓症および血栓塞栓症;ならびに
-血液透析を受けている患者および体外式膜型人工肺を受けている患者における血栓症および血栓塞栓症。
【0055】
本明細書で使用される場合、という用語「トラフ」または「トラフレベル」は、薬物の次の用量が施行される前に到達する薬物の最低濃度を指す。ある特定の実施形態では、トラフ時の第XI因子/第XIa因子の阻害は、約50%よりも大きい(例えば、約60%よりも大きい、約70%よりも大きい、約80%よりも大きい、または約90%よりも大きい)。ある特定の実施形態では、トラフ時の第XI因子/第XIa因子の阻害は、約80%よりも大きい。ある特定の実施形態では、トラフ時の第XI因子/第XIa因子の阻害は、約90%よりも大きい。
【0056】
「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、または「処置(treatment)」という用語、および他の文法上の等価物は、本開示で使用される場合、疾患、状態もしくは症状を緩和すること、軽減すること、好転させること、もしくは防止すること、追加的な症状を防止すること、症状の基礎をなす代謝的原因を好転させることもしくは防止すること、疾患もしくは状態を阻害すること、例えば、疾患もしくは状態の発生を抑止すること、疾患もしくは状態を和らげること、疾患もしくは状態の退縮を引き起こすこと、疾患もしくは状態によって引き起こされる状態を和らげること、または疾患もしくは状態の症状を止めることを包含し、予防法を含むことが意図されている。この用語は、治療的利益および/または予防的利益を実現することをさらに包含する。「治療的利益」は、処置される基礎をなす障害の根絶または好転を意味する。また、治療的利益は、基礎をなす障害に付随する生理的症状の1つまたは複数の根絶または好転で実現され、したがって、患者が基礎をなす障害に依然として罹患している可能性があるにもかかわらず、患者において改善が観察される。
【0057】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、対象は、処置に関してナイーブである、すなわち、本明細書に記載の抗第XI/XIa因子抗体、例えば抗体1を用いた処置前に、いかなる形態の抗凝固薬治療も受けたことがない。本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、対象は、本明細書に記載の抗第XI/XIa因子抗体、例えば抗体1を用いた処置の前に、例えば新規の経口抗凝固薬(NOAC)の推奨用量での安定な処置を受けたことがある。ある特定の実施形態では、対象は、本明細書に記載の抗第XI/XIa因子抗体、例えば抗体1を用いた処置の前に、例えば直接経口抗凝固薬(DOAC)を受けたことがある。ある特定の実施形態では、対象は、本明細書に記載の抗第XI/XIa因子抗体、例えば抗体1を用いた処置の前に、例えばビタミンKアンタゴニスト(VKA)を受けたことがある。
【0058】
本明細書で使用される場合、「バイアル」という用語は、薬剤を保持する容器を指す。一部の実施形態では、バイアルは、バイアル、バッグ、ペン、またはシリンジであり得る。一部の実施形態では、バイアルは、バイアル、例えば、ガラスバイアルであり得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、本明細書に記載の抗第XI/XIa因子抗体、例えば表1に開示されている抗体1、ならびに賦形剤、例えば、ヒスチジン緩衝剤、糖、およびポリソルベートを指す。
【0060】
「約」という用語は、製剤の調製においておよび疾患または障害の処置において作用物質の有効性を変化させない、作用物質の濃度または量の任意の最小の変更を指す。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、指定の数値またはデータ点の±5%、±10%、または±15%を包含し得る。
【0061】
範囲は、本開示では「約」1つの特定の値から、かつ/または「約」別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表されている場合、別の態様は、1つの特定の値から、かつ/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行する「約」の使用によって概数として表されている場合、特定の値が別の態様を形成することが理解される。さらに、範囲のそれぞれについての終点は他の終点との関連で、および他の終点とは独立してのどちらの意味もあることが理解される。多数の値が本開示において開示されること、および各値が、その値自体に加えて、「約」その特定の値としても開示されることも理解される。本出願全体を通して、データが多数の異なるフォーマットで提示されること、およびこのデータが終点および開始点ならびにデータ点の任意の組合せでの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示される場合、10から15の間だけではなく、10および15よりも大きい、10および15よりも大きいかまたはそれと等しい、10および15よりも小さい、10および15よりも小さいかまたはそれと等しい、ならびに10および15と等しいことも開示されているとみなされることが理解される。2つの特定の単位の間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、および14も開示される。
【0062】
本記載全体を通して、組成物が、特定の成分を有する、含む、もしくはそれらで構成されると記載されている場合、または、プロセスおよび方法が、特定のステップを有する、含む、またはそれらで構成されると記載されている場合、さらに、記載されている成分から本質的になる、またはそれらからなる本発明の組成物が存在すること、および記載されているプロセスステップから本質的になる、またはそれらからなる本発明によるプロセスおよび方法が存在することが意図されている。
【0063】
一般事項として、パーセンテージが指定されている組成は、別段の指定がない限り、重量でのパーセンテージである。さらに、変数に定義が付随しない場合、その変数に関する前の定義に支配される。
抗第XI因子および/または活性化第XI因子(第XIa因子)抗体
【0064】
一部の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体であり、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗体、を含む医薬製剤であって、ヒスチジン緩衝剤;糖または糖アルコール;およびポリソルベートを含み、製剤のpHが、pH5.0~6.0である、医薬製剤を提供する。ある特定の実施形態では、抗体は、配列番号29のアミノ酸配列を有するVHを含む。
【0065】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬製剤であって、バイアル中に含有されており、バイアル中、製剤が、抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を完全に抜き取れるように、過剰充填分の体積を含む、医薬製剤を提供する。ある特定の実施形態では、バイアルは、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体であり、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)を有する、抗体約150mg;約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約220mMの濃度のスクロース;および約0.04%(v/v)の濃度のポリソルベート20を含み、製剤のpHが約pH5.5である、医薬製剤を含有する。
【0066】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体またはその抗原結合性断片であり、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)を有する、抗体またはその抗原結合性断片約1.5mg;約0.20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約2.20mMの濃度のスクロース;約0.0004%(v/v)の濃度のポリソルベート20、および希釈剤(例えば、水中5%ブドウ糖(D5W))を含む静脈内送達医薬製剤を提供し、製剤のpHは約pH5.5である。
【0067】
本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質に特異的に結合する抗体であり、下記の表1に列挙されているVH CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む抗体、の医薬製剤であって、ヒスチジン緩衝剤;糖または糖アルコール;およびポリソルベートを含み、製剤のpHが、pH5.0~6.0である、医薬製剤も提供する。特に、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体であり、下記の表1に列挙されているVH CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、またはそれよりも多くのVH CDRを含む(あるいは、それからなる)抗体、の医薬製剤であって、ヒスチジン緩衝剤;糖または糖アルコール;およびポリソルベートを含み、製剤のpHが、pH5.0~6.0である、医薬製剤を提供する(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月24日に出願され、WO2016/207858として公開されたPCT国際特許出願第PCT/IB2016/053790号を参照されたい)。
【0068】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)における使用のための、FXI/FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体であり、配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体、の医薬製剤であって、ヒスチジン緩衝剤;糖または糖アルコール;およびポリソルベートを含み、製剤のpHが、pH5.0~6.0である、医薬製剤を提供する。ある特定の実施形態では、抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を有するVLを含む。
【0069】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬製剤であって、バイアル中に含有されており、バイアル中、製剤が、抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を完全に抜き取れるように、過剰充填分の体積を含む、医薬製剤を提供する。ある特定の実施形態では、バイアルは、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体であり、配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する、抗体約150mg;約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約220mMの濃度のスクロース;および約0.04%(v/v)の濃度のポリソルベート20を含み、製剤のpHが約pH5.5である、医薬製剤を含有する。
【0070】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体またはその抗原結合性断片であり、配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する、抗体またはその抗原結合性断片約1.5mg;約0.20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約2.20mMの濃度のスクロース;約0.0004%(v/v)の濃度のポリソルベート20、および希釈剤(例えば、水中5%ブドウ糖(D5W))を含み、製剤のpHが約pH5.5である、静脈内送達医薬製剤を提供する。
【0071】
本開示は、本明細書に記載の方法(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)における使用のための、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体であり、下記の表1に列挙されているVL CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む抗体、の医薬製剤であって、ヒスチジン緩衝剤;糖または糖アルコール;およびポリソルベートを含み、製剤のpHが、pH5.0~6.0である、医薬製剤も提供する。FXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体は、下記の表1に列挙されているVL CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、またはそれよりも多くのVL CDRを含み得る(あるいは、それからなり得る)。
【0072】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬製剤であって、バイアル中に含有されており、バイアル中、製剤が、抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を完全に抜き取れるように、過剰充填分の体積を含む、医薬製剤を提供する。ある特定の実施形態では、バイアルは、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体であり、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する、抗体約150mg;約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約220mMの濃度のスクロース;および約0.04%(v/v)の濃度のポリソルベート20を含み、製剤のpHが約pH5.5である、医薬製剤を含有する。
【0073】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体またはその抗原結合性断片であり、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する、抗体またはその抗原結合性断片約1.5mg;約0.20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約2.20mMの濃度のスクロース;約0.0004%(v/v)の濃度のポリソルベート20、および希釈剤(例えば、水中5%ブドウ糖(D5W))を含み、製剤のpHが約pH5.5である、静脈内送達医薬製剤を提供する。
【0074】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬製剤であって、バイアル中に含有されており、バイアル中、製剤が、抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を完全に抜き取れるように、過剰充填分の体積を含む、医薬製剤を提供する。ある特定の実施形態では、バイアルは、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体であり、配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する、抗体約150mg;約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約220mMの濃度のスクロース;および約0.04%(v/v)の濃度のポリソルベート20を含み、製剤のpHが約pH5.5である、医薬製剤を含有する。
【0075】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体またはその抗原結合性断片であり、配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する、抗体またはその抗原結合性断片約1.5mg;約0.20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約2.20mMの濃度のスクロース;約0.0004%(v/v)の濃度のポリソルベート20、および希釈剤(例えば、水中5%ブドウ糖(D5W))を含み、製剤のpHが約pH5.5である、静脈内送達医薬製剤を提供する。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)における使用のための他の抗体は、変異しているが、それでも表1に記載の配列に示されているCDR領域に対して少なくとも60、70、80、85、90または95パーセントのCDR領域の同一性を有するアミノ酸を含む。一部の実施形態では、抗体は、表1中の配列に示されているCDR領域と比較して、CDR領域内のアミノ酸の1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下または5つ以下が変異している、変異アミノ酸配列を含む。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【0077】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法または製剤(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)における使用のための他の抗体は、アミノ酸またはアミノ酸をコードする核酸が変異しているが、それでも表1に記載の配列に対して少なくとも60、65、70、75、80、85、90、または95パーセントの同一性を有する、抗体を含む。一部の実施形態は、表1に記載の配列に示されている可変領域と比較して、可変領域内のアミノ酸の1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下または5つ以下が変異しているが、一方で、実質的に同じ抗原結合活性を保持する、変異アミノ酸配列を含む。
【0078】
これらの抗体のそれぞれがFXIおよび/またはFXIaに結合することができるので、本開示の他のFXIおよび/またはFXIa結合性抗体を創出するためにVH、VL、全長軽鎖、および全長重鎖配列(アミノ酸配列およびアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)を「混合し、調和させる」ことができる。そのような「混合し、調和させた」FXIおよび/またはFXIa結合性抗体を、当技術分野で公知の結合アッセイ(例えば、ELISA、および実施例の節に記載されている他のアッセイ)を使用して試験することができる。これらの鎖を混合し、調和させる場合、特定のVH/VL対合からのVH配列を構造的に類似したVH配列で置き換えるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合からの全長重鎖配列を構造的に類似した全長重鎖配列で置き換えるべきである。同様に、特定のVH/VL対合からのVL配列を構造的に類似したVL配列で置き換えるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合からの全長軽鎖配列を構造的に類似した全長軽鎖配列で置き換えるべきである。
【0079】
したがって、一態様では、本明細書に記載の方法(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)において使用するために、本開示は、配列番号9および29からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、ならびに配列番号19および39からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを有する単離された抗体またはその抗原結合性領域であって、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性領域を提供する。別の態様では、本明細書に記載の製剤(例えば、バイアルに入った製剤、静脈内薬物送達製剤)への使用のために、本開示は、配列番号9および29からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、ならびに配列番号19および39からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを有する単離された抗体またはその抗原結合性領域であって、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性領域を提供する。
【0080】
より詳細には、ある特定の態様では、本開示は、それぞれ配列番号9および29;または19および39から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを有する単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0081】
本明細書に記載の方法(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)における使用のための特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書に記載の製剤(例えば、バイアルに入った製剤、静脈内薬物送達製剤)への使用のための特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0082】
本明細書に記載の方法(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)における使用のための特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書に記載の製剤(例えば、バイアルに入った製剤、静脈内薬物送達製剤)への使用のための特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0083】
本明細書に記載の方法における使用のための別の態様では、本開示は、(i)配列番号11もしくは31からなる群より選択される、哺乳動物細胞における発現のために最適化されたアミノ酸配列を含む全長重鎖、および、配列番号21もしくは41からなる群より選択される、哺乳動物細胞における発現のために最適化されたアミノ酸配列を含む全長軽鎖を有する単離された抗体;または(ii)その抗原結合性部分を含む機能的なタンパク質を提供する。より詳細には、ある特定の態様では、本開示は、それぞれ配列番号11および31;または21および41から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖を有する単離された抗体またはその抗原結合性領域を提供する。別の態様では、本明細書に記載の製剤への使用のための、本開示は、(i)配列番号11もしくは31からなる群より選択される、哺乳動物細胞における発現のために最適化されたアミノ酸配列を含む全長重鎖、および、配列番号21もしくは41からなる群より選択される、哺乳動物細胞における発現のために最適化されたアミノ酸配列を含む全長軽鎖を有する単離された抗体;または(ii)その抗原結合性部分を含む機能的なタンパク質を提供する。より詳細には、ある特定の態様では、本開示は、それぞれ配列番号11および31;または21および41から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖を有する単離された抗体またはその抗原結合性領域を提供する。
【0084】
本明細書に記載の方法における使用のための特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤への使用のための、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0085】
本明細書に記載の方法における使用のための特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の製剤への使用のための、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0086】
「相補性決定領域」、および「CDR」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原特異性および結合親和性を付与する、抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域内に3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)が存在し、各軽鎖可変領域内に3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する。
【0087】
所与のCDRの厳密なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948(「Chothia」番号付けスキーム)、Lefranc et al., (2003)Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77(「IMGT」番号付けスキーム)によって記載されているもの、または「組合せ」系を含めた多数の周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。
【0088】
例えば、Kabatの下では、抗体2のCDRアミノ酸残基は、重鎖可変ドメイン(VH)内のものは31~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~111(HCDR3)と番号付けされ、軽鎖可変ドメイン(VL)内のCDRアミノ酸残基は、22~35(LCDR1)、51~57(LCDR2)、および90~100(LCDR3)と番号付けされる。Chothiaの下では、VH内のCDRアミノ酸は、26~32(HCDR1)、52~57(HCDR2)、および99~111(HCDR3)と番号付けされ、VL内のアミノ酸残基は、25~33(LCDR1)、51~53(LCDR2)、および92~99(LCDR3)と番号付けされる。KabatとChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRは、ヒトVHではアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~111(HCDR3)からなり、ヒトVLではアミノ酸残基22~35(LCDR1)、51~57(LCDR2)、および90~100(LCDR3)からなる。KabatとChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、「組合せ」CDRは、ヒトVHではアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~108(HCDR3)からなり、ヒトVLではアミノ酸残基24~38(LCDR1)、54~60(LCDR2)、および93~101(LCDR3)からなる。別の例として、IMGTの下では、重鎖可変ドメイン(VH)内のCDRアミノ酸残基は、26~33(HCDR1)、51~58(HCDR2)、および97~108(HCDR3)と番号付けされ、軽鎖可変ドメイン(VL)内のCDRアミノ酸残基は、27~36(LCDR1)、54~56(LCDR2)、および93~101(LCDR3)と番号付けされる。表1に、抗FXI/FXIa抗体、例えば抗体2および抗体1についての例示的なKabat、Chothia、組合せ、およびIMGTによるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を提示する。別の態様では、本開示は、表1に記載の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、またはこれらの組合せを含むFXIa結合性抗体を提供する。抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号3および23で示される。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号4および24で示される。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号5および25で示される。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号13および33で示される。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号14および34で示される。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号15および35で示される。これらのCDR領域はKabat系を使用して線引きされたものである。
【0089】
あるいは、Chothia系(Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948)を使用して定義した場合、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号6および26で示される。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号7および27で示される。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号8および28で示される。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号16および36で示される。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列はKNYである。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号18および38で示される。
【0090】
あるいは、組合せ系を使用して定義した場合、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号46で示される。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号4で示される。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号5で示される。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号33で示される。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号14で示される。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号15で示される。
【0091】
あるいは、IMGT番号付けスキームを使用して定義した場合、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号43で示される。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号44で示される。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号45で示される。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号47で示される。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列はKNYである。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号15で示される。
【0092】
これらの抗体のそれぞれがFXIおよび/またはFXIaに結合することができること、ならびに抗原結合特異性が主にCDR1、2および3領域によってもたらされることを考慮すると、VH CDR1、2および3配列およびVL CDR1、2および3配列を「混合し、調和させる」ことができる(例えば、本開示の他のFXIおよび/またはFXIa結合性分子を創出するために、異なる抗体からのCDRを混合し、調和させることができるが、各抗体がVH CDR1、2および3ならびにVL CDR1、2および3を含有することが好ましい)。そのような「混合し、調和させた」FXIおよび/またはFXIa結合性抗体を、当技術分野で公知の結合アッセイおよび実施例に記載されているもの(例えば、ELISA、SET、BIACORE(商標)アッセイ)を使用して試験することができる。VH CDR配列を混合し、調和させる場合、特定のVH配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を構造的に類似したCDR配列(単数または複数)で置き換えるべきである。同様に、VL CDR配列を混合し、調和させる場合、特定のVL配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を構造的に類似したCDR配列(単数または複数)で置き換えるべきである。1つまたは複数のVHおよび/またはVL CDR領域配列を本開示のモノクローナル抗体に関して本明細書に示されているCDR配列からの構造的に類似した配列で置換することにより、新規のVHおよびVL配列を創出することができることが当業者には容易に明らかになろう。上記に加えて、一実施形態では、本明細書に記載の抗体の抗原結合性断片は、VH CDR1、2、および3、またはVL CDR1、2、および3を含み得、ここで、断片は、FXIおよび/またはFXIaに単一の可変ドメインとして結合する。抗体1および抗体2のCDR配列は同一であることに留意する。
【0093】
本開示のある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、表1に記載のFabの重鎖および軽鎖配列を有し得る。より詳細には、抗体またはその抗原結合性断片は、抗体2および抗体1の重鎖および軽鎖配列を有し得る。
【0094】
本開示の他の実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、Kabatによって定義され、表1に記載されている重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、および軽鎖可変領域CDR3を含む。本開示のさらに他の実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、Chothiaによって定義され、表1に記載されている重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、および軽鎖可変領域CDR3を含む。他の実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、組合せ系によって定義され、表1に記載されている重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、および軽鎖可変領域CDR3を含む。本開示のさらに他の実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、IMGTによって定義され、表1に記載されている重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、および軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0095】
本明細書に記載の方法における使用のための特定の実施形態では、本開示は、配列番号3の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号13の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を包含する。
【0096】
特定の実施形態では、本開示は、配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を包含する。
【0097】
特定の実施形態では、本開示は、配列番号6の重鎖可変領域CDR1;配列番号7の重鎖可変領域CDR2;配列番号8の重鎖可変領域CDR3;配列番号16の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号18の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を包含する。
【0098】
特定の実施形態では、本開示は、配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を包含する。
【0099】
特定の実施形態では、配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体が本明細書に提供される。
【0100】
特定の実施形態では、配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体が本発明で提供される。
【0101】
ある特定の実施形態では、本開示は、表1に記載されている、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片を包含する。本明細書に記載の方法における使用のための特定の実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに結合する抗体または抗原結合性断片は、抗体2および抗体1である。
【0102】
本明細書で使用される場合、ヒト抗体は、その抗体の可変領域または全長鎖がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られたものである場合、特定の生殖細胞系列配列「の産物である」または「に由来する」重鎖もしくは軽鎖可変領域または全長重鎖もしくは軽鎖を含む。そのような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを目的の抗原で免疫化すること、またはファージにディスプレイさせたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを目的の抗原でスクリーニングすることを含む。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列「の産物である」または「に由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、ヒト抗体の配列と配列が最も近い(すなわち、%同一性が最大である)ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を選択することにより、そのようなものであると同定することができる。
【0103】
特定のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列「の産物である」または「に由来する」ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞変異または部位特異的変異の意図的な導入に起因して、生殖細胞系列配列と比較してアミノ酸の差異を含有し得る。しかし、VHまたはVLフレームワーク領域において、選択されたヒト抗体は、一般には、アミノ酸配列がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であり、他の種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較した場合に、ヒト抗体がヒトのものであることがそれによって識別されるアミノ酸残基を含有する。ある特定の場合では、ヒト抗体は、アミノ酸配列が生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、または少なくとも95%、またはさらには少なくとも96%、97%、98%、または99%同一であり得る。
【0104】
一般には、組換えヒト抗体は、VHまたはVLフレームワーク領域内で、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10個以下のアミノ酸の差異を示す。ある特定の場合では、ヒト抗体は、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と5個以下、またはさらには4個以下、3個以下、2個以下、または1個以下のアミノ酸の差異を示し得る。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子の例としては、これだけに限定されないが、下記の可変ドメイン生殖細胞系列断片、ならびにDP47およびDPK9が挙げられる。
【0105】
相同な抗体
本明細書に記載の方法(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)において使用するためのさらに他の実施形態では、本開示は、表1に記載の配列(例えば、配列番号29、31、39、または41)と相同であるアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合性断片であって、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に結合し、抗体2および抗体1などの表1に記載の抗体の所望の機能的特性を保持する、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。特定の態様では、そのような相同な抗体は、表1に記載のCDRアミノ酸配列(例えば、Kabat CDR、Chothia CDR、IMGT CDR、または組合せCDR)を保持する。
【0106】
例えば、一部の実施形態では、本開示は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片であって、重鎖可変ドメインが、配列番号9および29からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号19および39からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体が、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に特異的に結合する、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片を提供する。一実施形態では、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、ここで、重鎖可変ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に特異的に結合する。一実施形態では、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、ここで、重鎖可変ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に特異的に結合する。本開示のある特定の態様では、重鎖および軽鎖配列は、Kabatによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号3、4、5、13、14、および15をさらに含む。本開示のある特定の他の態様では、重鎖および軽鎖配列は、Chothiaによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号6、7、8、16、KNY、および18をさらに含む。ある特定の他の態様では、重鎖および軽鎖配列は、組合せ系によって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号46、4、5、33、14、および15をさらに含む。ある特定の他の態様では、重鎖および軽鎖配列は、IMGTによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号43、44、45、47、KNY、および15をさらに含む。
【0107】
本明細書に記載の方法における使用のための他の実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、表1に記載の配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。本明細書に記載の製剤への使用のための他の実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、表1に記載の配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。他の実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下または5つ以下のアミノ酸位におけるアミノ酸置換以外は同一であり得る。表1に記載されているもののVH領域およびVL領域に対して高い(すなわち、80%またはそれよりも大きい)同一性を有するVH領域およびVL領域を有する抗体を、それぞれ配列番号10または30および配列番号20および40をコードする核酸分子の変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR媒介性変異誘発)を行い、その後、コードされる変更された抗体を機能の保持について本明細書に記載の機能アッセイを使用して試験することによって得ることができる。
【0108】
本明細書に記載の方法における使用のための他の実施形態では、全長重鎖および/または全長軽鎖アミノ酸配列は、表1に記載の配列(例えば、配列番号11および/または21、または31および/または41)と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。本明細書に記載の製剤への使用のための他の実施形態では、全長重鎖および/または全長軽鎖アミノ酸配列は、表1に記載の配列(例えば、配列番号11および/または21、または31および/または41)と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。配列番号11または31のいずれかの全長重鎖、および配列番号21または41のいずれかの全長軽鎖に対して高い(例えば、80%またはそれよりも大きい)同一性を有する全長重鎖および全長軽鎖を有する抗体を、そのようなポリペプチドをコードする核酸分子の変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR媒介性変異誘発)を行い、その後、コードされる変更された抗体を機能の保持について本明細書に記載の機能アッセイを使用して試験することによって得ることができる。
【0109】
一態様では、重鎖および軽鎖を含む単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片であって、重鎖が、配列番号11および31からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号21および41からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体が、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に特異的に結合する、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片が本発明で提供される。一実施形態では、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片は、重鎖および軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に特異的に結合する。一実施形態では、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片は、重鎖および軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に特異的に結合する。本開示のある特定の態様では、重鎖および軽鎖配列は、Kabatによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号3、4、5、13、14、および15をさらに含む。本開示のある特定の他の態様では、重鎖および軽鎖配列は、Chothiaによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号6、7、8、16、KNY、および18をさらに含む。ある特定の他の態様では、重鎖および軽鎖配列は、組合せ系によって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号46、4、5、33、14、および15をさらに含む。ある特定の他の態様では、重鎖および軽鎖配列は、IMGTによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号43、44、45、47、KNY、および15をさらに含む。
【0110】
本明細書に記載の方法における使用のための他の実施形態では、全長重鎖および/または全長軽鎖ヌクレオチド配列は、表1に記載の配列(例えば、配列番号12および/または22、または32および/または42)と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。
【0111】
本明細書に記載の方法における使用のための他の実施形態では、重鎖の可変領域および/または軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列は、表1に記載の配列(例えば、配列番号10および/または20、または30および/または40)と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。本明細書に記載の製剤への使用のための他の実施形態では、重鎖の可変領域および/または軽鎖の可変領域ヌクレオチド配列は、表1に記載の配列(例えば、配列番号10および/または20、または30および/または40)と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。
【0112】
本明細書で使用される場合、2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列を最適にアラインメントするために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、それらの配列が共有する同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性は、同一の位置の数/位置の総数×100と等しい)。配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、下の非限定的な例に記載されている通り、数学的アルゴリズムを使用して実現することができる。
【0113】
本明細書に記載の単離された抗FXIおよび/またはFXIa抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体、ヒトもしくはヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、Fv断片、F(ab’)2断片、もしくはscFv断片、および/またはIgGアイソタイプ(例えば、ヒトIgG1などのIgG1)であり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗FXIおよび/または抗FXIa抗体は、組換えヒト抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗FXIおよび/または抗FXIa抗体は、ヒトIgG1/ラムダ(λ)抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗FXIおよび/または抗FXIa抗体は、エフェクター機能(例えば、ADCCおよび/またはCDC)の潜在性が低減するように工学的に操作されたFcドメイン、例えば、D265Aおよび/またはP329A置換を含むヒトFcドメインを含むヒトIgG1/ラムダ(λ)抗体である。
【0114】
それに加えて、またはその代わりに、例えば、関連する配列を同定するために、本開示のタンパク質配列をさらに「クエリ配列」として使用して、公共のデータベースの検索を実施することができる。例えば、そのような検索は、Altschul, et al., 1990 J. Mol. Biol. 215: 403-10のBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。
【0115】
保存的改変を有する抗体
ある特定の他の実施形態では、本明細書に記載の方法(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)における使用のための、本開示の抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここで、これらのCDR配列のうちの1つまたは複数は、本明細書に記載の抗体またはその保存的改変に基づいた特定のアミノ酸配列を有し、抗体は、本開示のFXIa結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。ある特定の他の実施形態では、本明細書に記載の製剤(例えば、バイアルに入った製剤、静脈内薬物送達製剤)への使用のための本開示の抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここで、これらのCDR配列のうちの1つまたは複数は、本明細書に記載の抗体またはその保存的改変に基づいた特定のアミノ酸配列を有し、抗体は、本開示のFXIa結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。
【0116】
したがって、本明細書に記載の方法における使用のために、一部の実施形態では、本開示は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号3および23、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号4および24、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、配列番号5および25、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号13および33、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号14および34、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号15および35、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、抗体またはその抗原結合性断片が、FXIaに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0117】
本明細書に記載の製剤への使用のために、一部の実施形態では、本開示は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号3および23、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号4および24、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、配列番号5および25、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号13および33、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号14および34、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号15および35、ならびにその保存的改変からなる群より選択され、抗体またはその抗原結合性断片が、FXIaに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0118】
一態様では、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群より選択され、重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群より選択され、重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群より選択され、軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群より選択され、軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群より選択され、軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群より選択され、抗体またはその抗原結合性断片が、FXIaに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片が本発明で提供される。
【0119】
本明細書に記載の方法における使用のための他の実施形態では、本開示の抗体は、哺乳動物細胞における発現のために最適化されており、全長重鎖配列および全長軽鎖配列を有し、ここで、これらの配列の1つまたは複数は、本明細書に記載の抗体またはその保存的改変に基づいた特定のアミノ酸配列を有し、抗体は、本開示のFXIa結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。本明細書に記載の製剤への使用のための他の実施形態では、本開示の抗体は、哺乳動物細胞における発現のために最適化されており、全長重鎖配列および全長軽鎖配列を有し、ここで、これらの配列の1つまたは複数は、本明細書に記載の抗体またはその保存的改変に基づいた特定のアミノ酸配列を有し、抗体は、本開示のFXIa結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。したがって、本開示は、哺乳動物細胞における発現のために最適化された、全長重鎖および全長軽鎖からなる単離された抗体であり、全長重鎖が、配列番号11または31、およびその保存的改変の群から選択されるアミノ酸配列を有し、全長軽鎖が、配列番号21または41、およびその保存的改変の群から選択されるアミノ酸配列を有し、抗体が、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIa)に特異的に結合する、単離された抗体を提供する。
【0120】
同じエピトープに結合する抗体
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法(例えば、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある対象を処置するための方法)における使用のための、表1に記載のFXIおよび/またはFXIa結合性抗体と、同じエピトープについて競合する抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の製剤(例えば、バイアルに入った製剤、静脈内薬物送達製剤)への使用のための、表1に記載のFXIおよび/またはFXIa結合性抗体と同じエピトープについて競合する抗体を提供する。したがって、追加的な抗体を、FXIおよび/またはFXIa結合アッセイ(例えば、実施例の節に記載されているものなど)において本開示の他の抗体と競合する(例えば、同じまたは重複するエピトープに結合することにより、結合を、統計的に有意に、競合的に阻害する)それらの能力に基づいて同定することができる。試験抗体の、本開示の抗体のFXIおよび/またはFXIaタンパク質への結合を阻害する能力により、試験抗体が、FXIおよび/またはFXIaへの結合についてその抗体と競合し得ることが実証される;そのような抗体は、非限定的な理論に従って、それが競合する抗体と同じまたは関連する(例えば、構造的に類似したまたは空間的に近位の)FXIおよび/またはFXIaタンパク質上のエピトープに結合し得る。ある特定の実施形態では、本開示の抗体と同じFXIおよび/またはFXIa上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなヒトモノクローナル抗体は、本明細書に記載の通り調製することおよび単離することができる。
【0121】
本明細書で使用される場合、抗体が結合について「競合する」とは、その競合抗体が等モル濃度で存在する場合に、競合抗体が本開示の抗体または抗原結合性断片(例えば抗体1または抗体2)と同じFXIおよび/またはFXIaエピトープに結合し、本開示の抗体または抗原結合性断片のFXIおよび/またはFXIaへの結合を50%よりも大きく(例えば、80%、85%、90%、95%、98%または99%)阻害する場合である。これは、例えば、競合結合アッセイにおいて当業者に周知の方法のいずれかによって決定することができる。
【0122】
本明細書で使用される場合、抗体またはその抗原結合性断片は、前記競合抗体またはその抗原結合性断片が本開示の抗体または抗原結合性断片と同じFXIおよび/もしくはFXIaエピトープ、または重複するFXIおよび/もしくはFXIaエピトープに結合しない限り、本開示のFXIおよび/またはFXIa抗体または抗原結合性断片(例えば抗体1または抗体2)と「競合」しない。本明細書で使用される場合、競合抗体またはその抗原結合性断片は、(i)本開示の抗体もしくは抗原結合性断片のその標的への結合を立体的に遮断するもの(例えば、前記競合抗体が近くの重複しないFXIおよび/もしくはFXIaエピトープに結合し、本開示の抗体もしくは抗原結合性断片のその標的への結合を物理的に妨げる場合);ならびに/または(ii)異なる、重複しないFXIおよび/もしくはFXIaエピトープに結合し、FXIおよび/またはFXIaタンパク質のコンフォメーションの変化を誘導し、その結果、前記タンパク質に本開示のFXIおよび/もしくはFXIa抗体もしくは抗原結合性断片がもはや前記コンフォメーションの変化がない場合に起こるように結合できなくするもの、は包含しない。
【0123】
工学的に操作されたおよび改変された抗体
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法における使用のための、本開示の抗体はさらに、本明細書に示されているVHおよび/またはVL配列のうちの1つまたは複数を有する抗体を、改変された抗体を工学的に操作するための出発材料として使用して調製することができ、ここで、改変された抗体は、出発抗体から変更された特性を有し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の製剤への使用のための、本開示の抗体はさらに、本明細書に示されているVHおよび/またはVL配列のうちの1つまたは複数を有する抗体を、改変された抗体を工学的に操作するための出発材料として使用して調製することができ、ここで、改変された抗体は、出発抗体から変更された特性を有し得る。可変領域の一方または両方(すなわち、VHおよび/またはVL)内、例えば、1つもしくは複数のCDR領域内および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を改変することにより、抗体を工学的に操作することができる。それに加えて、またはその代わりに、例えば、抗体のエフェクター機能(単数または複数)を変更するために、定常領域(単数または複数)内の残基を改変することにより、抗体を工学的に操作することができる。
【0124】
行うことができる可変領域の工学的操作の1つの型は、CDRグラフティングである。抗体は、6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通じて標的抗原と優勢に相互作用する。このような理由で、CDR内のアミノ酸配列は個々の抗体間での多様性がCDRの外側の配列よりも大きい。CDR配列は大多数の抗体-抗原相互作用に関与するので、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが、その特定の天然に存在する抗体のCDR配列を異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列にグラフティングしたものを含む発現ベクターを構築することによって可能である(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332: 323-327; Jones, P. et al., 1986 Nature 321: 522-525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad., U.S.A. 86: 10029-10033; Winterに対する米国特許第5,225,539号、およびQueen et al.に対する米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照されたい)。
【0125】
したがって、本開示の別の実施形態は、それぞれ配列番号3および23からなる群より選択されるアミノ酸配列CDR1配列;配列番号4および24からなる群より選択されるアミノ酸配列CDR2配列;配列番号5および25からなる群より選択されるアミノ酸配列CDR3配列を含む重鎖可変領域;ならびにそれぞれ配列番号13および33からなる群より選択されるアミノ酸配列CDR1配列;配列番号14および34からなる群より選択されるアミノ酸配列CDR2配列;および配列番号15および35からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるCDR3配列を有する軽鎖可変領域を含む単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。したがって、そのような抗体は、モノクローナル抗体のVHおよびVL CDR配列を含有するが、それにもかかわらず、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含有し得る。
【0126】
そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースまたは公開された参考文献から入手することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース、ならびに、それぞれの内容が明白に参照により本明細書に組み込まれるKabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242;Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. Mol. Biol. 227: 776-798;およびCox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24: 827-836に見出すことができる。
【0127】
本開示の抗体への使用のためのフレームワーク配列の例は、本開示の選択された抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似したもの、例えば、本開示のモノクローナル抗体によって使用されるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列である。VH CDR1、2および3配列、ならびにVL CDR1、2および3配列を、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子において見出されるものと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフティングすることができる、または、CDR配列を、生殖細胞系列配列と比較して1つまたは複数の変異を含有するフレームワーク領域にグラフティングすることができる。例えば、ある特定の場合には、抗体の抗原結合能が維持または増強されるように、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが見出されている(例えば、Queen et alに対する米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照されたい)。本明細書に記載の抗体および抗原結合性断片を築くための足場として利用することができるフレームワークとしては、これだけに限定されないが、VH1A、VH1B、VH3、Vk1、Vl2、およびVk2が挙げられる。
【0128】
したがって、本明細書に記載の方法における使用のための、本開示の別の実施形態は、配列番号9および29からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはそのような配列のフレームワーク領域内に1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、配列番号19および39からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはそのような配列のフレームワーク領域内に1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、単離されたFXIa結合性抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0129】
したがって、本明細書に記載の製剤への使用のための、本開示の別の実施形態は、配列番号9および29からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはそのような配列のフレームワーク領域内に1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、配列番号19および39からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはそのような配列のフレームワーク領域内に1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、単離されたFXIa結合性抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0130】
別の型の可変領域改変は、VHおよび/またはVL CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させて、それにより、目的の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、親和性)を改善することであり、これは、「親和性成熟」として公知である。部位特異的変異誘発またはPCR媒介性変異誘発を実施して、変異(単数または複数)を導入することができ、抗体結合性または他の目的の機能特性に対する影響を、本明細書に記載され、実施例の節に提示されるin vitroまたはin vivoアッセイにおいて評価することができる。保存的改変(上記の通り)を導入することができる。変異は、アミノ酸の置換、付加または欠失であり得る。さらに、一般には、CDR領域内の残基の1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下または5つ以下が変更される。
【0131】
したがって、本明細書に記載の方法における使用のための別の実施形態では、本開示は、配列番号3および23を有する群から選択されるアミノ酸配列または配列番号3および23と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号4および24からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号4および24と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号5および25からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号5および25と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号13および33からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号13および33と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号14および34からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号14および34と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;および配列番号15および35からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号15および35と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域からなる単離されたFXIa結合性抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0132】
したがって、本明細書に記載の方法における使用のための別の実施形態では、本開示は、配列番号6および26を有する群から選択されるアミノ酸配列または配列番号6および26と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号7および27からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号7および27と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号8および28からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号8および28と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号16および36からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号16および36と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;KNYというアミノ酸配列またはKNYと比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;および配列番号18および38からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号18および38と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域からなる単離されたFXIa結合性抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0133】
したがって、本明細書に記載の製剤への使用のための別の実施形態では、本開示は、配列番号3および23を有する群から選択されるアミノ酸配列または配列番号3および23と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号4および24からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号4および24と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号5および25からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号5および25と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号13および33からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号13および33と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号14および34からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号14および34と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;および配列番号15および35からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号15および35と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域からなる単離されたFXIa結合性抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0134】
したがって、本明細書に記載の製剤における使用のための別の実施形態では、本開示は、配列番号6および26を有する群から選択されるアミノ酸配列または配列番号6および26と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号7および27からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号7および27と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号8および28からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号8および28と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号16および36からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号16および36と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;KNYというアミノ酸配列またはKNYと比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;および配列番号18および38からなる群より選択されるアミノ酸配列または配列番号18および38と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域からなる単離されたFXIa結合性抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0135】
半減期が延長された抗体
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法または製剤における使用のための、in vivoにおける半減期が延長されたFXIaタンパク質に特異的に結合する抗体を提供する。
【0136】
in vivoにおけるタンパク質の半減期には多くの因子が影響を及ぼし得る。例えば、腎臓濾過、肝臓における代謝、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)による分解、および免疫原性応答(例えば、抗体によるタンパク質中和ならびにマクロファージおよび樹状細胞による取り込み)。種々の戦略を使用して本開示の抗体の半減期を延長することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、reCODE PEG、抗体足場、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合性リガンド、および炭水化物シールドとの化学的連結によって;アルブミンなどの血清タンパク質に結合するタンパク質、IgG、FcRnとの遺伝子融合、および移入によって;血清タンパク質に結合する他の結合性部分、例えば、ナノボディ、Fab、DARPin、アビマー、アフィボディ、およびアンチカリンなどとのカップリング(遺伝学的にまたは化学的に)によって;rPEG、アルブミン、アルブミンのドメイン、アルブミン結合性タンパク質、およびFcとの遺伝子融合によって;またはナノ担体、緩効性製剤、または医療機器への組み入れによって。
【0137】
抗体のin vivoにおける血清循環を長引かせるために、高分子量PEGなどの不活性なポリマー分子を、抗体またはその断片に、多機能性リンカーを用いてまたは用いずに、抗体のN末端もしくはC末端へのPEGの部位特異的コンジュゲーションを通じてか、またはリシン残基に存在するイプシロンアミノ基を介してのいずれかで付着させることができる。抗体をペグ化するために、一般には、抗体またはその断片と、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)を、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に付着する条件下で反応させる。ペグ化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行うことができる。本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-またはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなどの、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている任意の形態のPEGを包含することが意図されている。ある特定の実施形態では、ペグ化される抗体は、グリコシル化されていない抗体である。生物活性の喪失が最小になる直鎖または分枝ポリマー誘導体化を使用する。コンジュゲーションをSDS-PAGEおよび質量分析によって密接にモニタリングして、PEG分子の抗体への適当なコンジュゲーションを確実にすることができる。未反応のPEGを抗体-PEGコンジュゲートからサイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーによって分離することができる。PEGで誘導体化された抗体を、結合活性について、ならびにin vivoにおける有効性について、当業者に周知の方法を使用して、例えば、本明細書に記載のイムノアッセイによって試験することができる。タンパク質をペグ化するための方法は当技術分野で公知であり、本開示の抗体に適用することができる。例えば、Nishimura et al.によるEP 0 154 316およびIshikawa et alによるEP 0 401 384を参照されたい。
【0138】
他の改変されたペグ化技術としては、化学的に指定された側鎖を生合成タンパク質にtRNA合成酵素およびtRNAを含む再構成された系を介して組み入れる、再構成化学的直交性定方向操作技術(ReCODE PEG)が挙げられる。この技術により、E.coli、酵母、および哺乳動物細胞において30個よりも多くの新しいアミノ酸を生合成タンパク質に組み入れることが可能になる。tRNAによりネイティブでないアミノ酸が、アンバーコドンが位置付けられている任意の場所に組み入れられ、アンバーが終止コドンから化学的に指定されたアミノ酸の組み入れをシグナル伝達するコドンに変換される。
【0139】
組換えペグ化技術(rPEG)も血清中半減期の延長に使用することができる。この技術は、300~600アミノ酸の構造化されていないタンパク質尾部を既存の医薬タンパク質と遺伝子融合することを伴う。そのような構造化されていないタンパク質鎖の見かけの分子量は実際の分子量の約15倍であるので、タンパク質の血清中半減期は著しく増大する。化学的コンジュゲーションおよび再精製が必要な従来のPEG化とは対照的に、製造プロセスは著しく簡易化され、生成物は均一である。
【0140】
別の技術はポリシアル酸化であり、これは、天然ポリマーポリシアル酸(PSA)を使用して、活性寿命を引き延ばし、治療用ペプチドおよびタンパク質の安定性を改善するものである。PSAは、シアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質および治療用ペプチド薬物送達のために使用される場合、ポリシアル酸により、コンジュゲーションに保護的な微小環境がもたらされる。これにより、治療用タンパク質の循環中の活性寿命が増大し、また、治療用タンパク質の免疫系による認識が防止される。PSAポリマーはヒトの体内に天然に見出される。PSAポリマーは、数百万年かけて進化したある特定の細菌により、その壁を被覆するために利用された。その結果、これらの天然にポリシアル酸化された細菌は、分子模倣により、体の防御系に箔を裏打ちすることができた。天然の究極のステルス技術であるPSAは、そのような細菌により、多量に、所定の物理的特徴を持たせて、容易に産生させることができる。細菌PSAは、ヒトの体内のPSAと化学的に同一であるので、タンパク質とカップリングした場合であっても完全に非免疫原性である。
【0141】
別の技術としては、抗体と連結したヒドロキシエチルデンプン(「HES」)誘導体の使用が挙げられる。HESは、蝋様トウモロコシデンプンに由来する改変された天然ポリマーであり、体の酵素によって代謝され得る。HES溶液は、通常、不足した血液量を補充し、血液の流体力学的特性を改善するために投与される。抗体のHES化により、分子の安定性を増大させることによって、ならびに腎クリアランスを低減することによって循環半減期を引き延ばし、その結果、生物活性の増大をもたらすことが可能になる。HESの分子量などの種々のパラメータを変動させることにより、広範囲のHES抗体コンジュゲートをカスタマイズすることができる。
【0142】
in vivoにおける半減期が増大した抗体は、IgG定常ドメインまたはそのFcRn結合性断片(好ましくはFcまたはヒンジFcドメイン断片)に1つまたは複数のアミノ酸改変(すなわち、置換、挿入または欠失)を導入して生成することもできる。例えば、国際公開第WO98/23289号;国際公開第WO97/34631号;および米国特許第6,277,375号を参照されたい。
【0143】
さらに、抗体をアルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン;HSA)とコンジュゲートして、in vivoにおいてより安定であるまたはin vivoにおける半減期がより長い抗体または抗体断片を作出することができる。この技法は当技術分野で周知である。例えば、国際特許公開第WO93/15199号、同第WO93/15200号、および同第WO01/77137号;ならびに欧州特許公開第EP 413,622号を参照されたい。さらに、上記の二重特異性抗体に関しては、抗体の特異性を、抗体の1つの結合性ドメインがFXIaに結合し、一方、抗体の第2の結合性ドメインが血清アルブミン、好ましくはHSAに結合するように設計することができる。
【0144】
半減期を増大させるための戦略は、ナノボディ、フィブロネクチンに基づく結合物質、およびin vivoにおける半減期の増大が望まれる他の抗体またはタンパク質に対して特に有用である。
【0145】
抗体コンジュゲート
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法または製剤における使用のための、FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片であって、異種タンパク質またはポリペプチド(またはその断片、好ましくは少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100アミノ酸のポリペプチド)と組換えによって融合したかまたは化学的にコンジュゲートして(共有結合性のコンジュゲーションおよび非共有結合性のコンジュゲーションのどちらも含む)融合タンパク質を生成した、抗体またはその断片を提供する。特に、本開示は、本明細書に記載の抗体の抗原結合性断片(例えば、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメインまたはVL CDR)と、異種タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを抗体または抗体断片と融合またはコンジュゲートするための方法は当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、および同第5,112,946号;欧州特許第EP307,434号および同第EP367,166号;国際公開第WO96/04388号および同第WO91/06570号;Ashkenazi et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539; Zheng et al., 1995, J. Immunol. 154: 5590-5600; およびVil et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 11337-11341を参照されたい。
【0146】
追加的な融合タンパク質を、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エクソンシャッフリング、および/またはコドンシャッフリング(集合的に「DNAシャッフリング」と称される)の技法によって生成することができる。DNAシャッフリングを使用して、本開示の抗体またはその断片の活性を変化させることができる(例えば、親和性がより高く、解離速度がより低い抗体またはその断片)。一般に、米国特許第5,605,793号、同第5,811,238号、同第5,830,721号、同第5,834,252号、および同第5,837,458号;Patten et al., 1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8: 724-33;Harayama,1998, Trends Biotechnol. 16 (2): 76-82;Hansson, et al., 1999, J. Mol. Biol. 287: 265-76;およびLorenzo and Blasco, 1998, Biotechniques 24 (2): 308-313を参照されたい(これらの特許および刊行物はそれぞれの全体がこれによって参照により組み込まれる)。抗体またはその断片、またはコードされる抗体またはその断片を、組換えの前にエラープローンPCR、ランダムなヌクレオチド挿入または他の方法によるランダム変異誘発に供することによって変更することができる。FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを、1つまたは複数の異種分子の1つまたは複数の成分、モチーフ、切片、部分、ドメイン、断片などを用いて組み換えることができる。
【0147】
さらに、精製を容易にするために、抗体またはその断片をペプチドなどのマーカー配列と融合することができる。ある特定の実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、とりわけ、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、CA、91311)で提供されるタグなどのヘキサ-ヒスチジンペプチド(配列番号48)であり、その多くが市販されている。Gentz et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 821-824に記載されている通り、例えば、ヘキサ-ヒスチジン(配列番号48)により、融合タンパク質の都合のよい精製がもたらされる。精製のために有用な他のペプチドタグとしては、これだけに限定されないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する赤血球凝集素(「HA」)タグ(Wilson et al., 1984, Cell 37: 767)、および「flag」タグが挙げられる。
【0148】
他の実施形態では、本開示の抗体またはその断片を診断用または検出可能な作用物質とコンジュゲートする。そのような抗体は、疾患または障害の発症、発生、進行および/または重症度を、例えば、特定の治療の有効性を決定することなど、臨床試験の手順の一部としてモニタリングまたは予後決定するために有用であり得る。そのような診断および検出は、抗体を、これだけに限定されないが、種々の酵素、例えば、これだけに限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなど;補欠分子族、例えば、これだけに限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなど;蛍光材料、例えば、これだけに限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocynate)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリン;発光材料、例えば、これだけに限定されないが、ルミノールなど;生物発光材料、例えば、これだけに限定されないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなど;放射性材料、例えば、これだけに限定されないが、ヨウ素(131I、125I、123I、および121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、および111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117Tinなど;ならびに種々の陽電子放出断層撮影法に使用される陽電子放出性金属、および非放射性常磁性金属イオンを含めた、検出可能な物質とカップリングすることによって達成することができる。
【0149】
一部の実施形態では、本開示は、治療用部分とコンジュゲートした抗体またはその断片の使用をさらに包含する。抗体またはその断片を、細胞毒、例えば、細胞増殖抑制剤または細胞破壊剤、治療剤または放射性金属イオン、例えば、α放射体などの治療用部分とコンジュゲートすることができる。細胞毒または細胞傷害剤は、細胞に対して有害である任意の作用物質を含む。
【0150】
さらに、抗体またはその断片を、所与の生物学的応答を改変させる治療用部分または薬物部分とコンジュゲートすることができる。治療用部分または薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定されるものとは解釈されない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質は、例えば、毒素、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、コレラ毒素、もしくはジフテリア毒素など;タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アポトーシス性作用物質、抗血管新生剤など;または、生物学的反応修飾物質、例えば、リンフォカインなどを包含し得る。
【0151】
さらに、抗体を、これだけに限定されないが、131In、131Lu、131Y、131Ho、131Smを含めた放射性金属イオンをポリペプチドのコンジュゲートに有用な放射性金属イオン、例えば、α放射体、例えば、213Biまたは大環状キレート剤などの治療用部分とコンジュゲートすることができる。ある特定の実施形態では、大環状キレート剤は、リンカー分子を介して抗体に付着させることができる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)である。そのようなリンカー分子は一般に当技術分野で公知であり、また、それぞれの全体が参照により組み込まれるDenardo et al., 1998、Clin Cancer Res. 4 (10): 2483-90;Peterson et al., 1999、Bioconjug. Chem. 10 (4): 553-7;およびZimmerman et al., 1999、Nucl. Med. Biol. 26 (8): 943-50に記載されている。
【0152】
治療用部分と抗体をコンジュゲートするための技法は周知である。例えばArnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); “Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、およびThorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62: 119-58を参照されたい。
【0153】
抗体を固体支持体に付着させることもでき、これは、標的抗原のイムノアッセイまたは精製に特に有用である。そのような固体支持体としては、これだけに限定されないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが挙げられる。
【0154】
医薬製剤
一部の実施形態では、本開示は、治療有効量の本明細書に開示される第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば抗体1)を含有する医薬製剤も提供する。医薬製剤は、1つまたは複数の賦形剤を含み、ある特定のpHで維持される。本明細書で使用される場合、「賦形剤」の非限定的な例として、所望の物理的特性または化学的特性、例えば、pH、容量オスモル濃度、粘度、透明性、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着、または透過をもたらすために製剤に添加される任意の非治療剤が挙げられる。
【0155】
原薬
抗体1は、高親和性の抗ヒト第XI因子モノクローナル抗体である。これは、チャイニーズハムスター卵巣細胞株(CHO-C8TD)において発現される。一部の実施形態では、抗体1原薬は、皮下投与用に完全に製剤化されており(すなわち、さらなる賦形剤は添加されない)、したがって、抗体1薬剤と組成が同一である。一部の実施形態では、静脈内投与用に、抗体1薬剤を適当な担体中にさらに希釈する。一部の実施形態では、抗体1薬剤を、ブドウ糖を含む溶液、例えば、水中5%ブドウ糖(D5W)中に希釈する。
【0156】
賦形剤およびpH
一部の実施形態では、抗体1薬剤に含有される賦形剤は、薬局方グレードの賦形剤である。一部の実施形態では、抗体1薬剤中の賦形剤は、ヒスチジン、ヒスチジン塩、糖、およびポリソルベートを含む。一部の実施形態では、抗体1薬剤中の賦形剤は、L-ヒスチジンおよびL-ヒスチジン塩酸塩一水和物(ヒスチジン緩衝剤)、スクロース、およびポリソルベート20を含む。賦形剤を静脈内投与および皮下投与に対する適合性に関して選択し、必要な安定化能、緩衝能、および張度をもたらすことができる。製剤は、モノクローナル抗体製品の安定性を最大にすることができ、また、皮下投与または静脈内投与に適した滅菌溶液を提供することができるものである。一部の実施形態では、糖(例えば、スクロース)は安定剤として作用する。一部の実施形態では、ヒスチジン(例えば、L-ヒスチジン、L-ヒスチジンHCl一水和物)は緩衝化剤として作用する。一部の実施形態では、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)は安定剤として作用する。一部の実施形態では、製剤を注射用水(WFI)で最終的な体積まで調整する。
【0157】
本発明の医薬製剤中の1つまたは複数の賦形剤は、緩衝化剤を含む。「緩衝化剤」という用語は、本明細書で使用される場合、水溶液に添加した場合に、酸もしくはアルカリを添加した際、または溶媒で希釈した際に溶液をpHの変動から保護することができる1つまたは複数の成分を指す。リン酸緩衝剤に加えて、グリシン酸、炭酸、クエン酸、ヒスチジン緩衝剤などを使用することができ、その場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとしての機能を果し得る。
【0158】
ある特定の実施形態では、緩衝剤または緩衝系は、pH5.0~7.4の範囲と完全にまたは部分的に重複する緩衝範囲を有する少なくとも1つの緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、緩衝剤のpHは、約5.5±0.5である。ある特定の実施形態では、緩衝剤はヒスチジン緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、ヒスチジン緩衝剤は、0.05~10mM、0.1~10mM、0.2~10mM、0.5~10mM、1~10mM、5~10mM、5~100mM、10~100mM、15~100mM、20~100mM、30~100mM、40~100mM、50~100mM、60~100mM、70~100mM、80~100mM、90~100mM、5~90mM、5~80mM、5~70mM、5~60mM、5~50mM、5~40mM、5~30mM、5~20mM、10~50mM、10~40mM、10~30mM、10~20mM、5~25mM、10~25mM、15~25mM、20~25mM、5~20mM、10~20mM、または15~20mMの濃度で存在する。ある特定の実施形態では、ヒスチジンは、約0.1mM、0.2mM、0.5mM、1mM、5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、または約50mMの濃度で存在する。ある特定の実施形態では、ヒスチジン緩衝剤は、約20mMの濃度で存在する。ある特定の実施形態では、ヒスチジン緩衝剤は、約0.20mMの濃度で存在する。ある特定の実施形態では、ヒスチジン緩衝剤のpHは、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、または約7.0である。特定の実施形態では、ヒスチジン緩衝剤のpHは約5.5である。
【0159】
本発明の医薬製剤は、5.0~6.0のpHを有し得る。例えば、ある特定の実施形態では、医薬製剤のpHは、5.0~6.0(すなわち、5.5±0.5)、5.1~5.9(すなわち、5.5±0.4)、5.2~5.8(すなわち、5.5±0.3)、5.3~5.7(すなわち、5.5±0.2)、5.4~5.6(すなわち、5.5±0.1)、または5.45~5.55(すなわち、5.5±0.05)である。ある特定の実施形態では、医薬製剤のpHは、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、または約6.5である。ある特定の実施形態では、医薬製剤のpHは約5.5である。科学的な端数処理の規則の下で、5.45よりも高いかまたはそれと等しく、かつ5.55よりも低いかまたはそれと等しいpHは5.5に端数処理される。
【0160】
ある特定の実施形態では、医薬製剤の緩衝系は、10~30mM、pH5.5±0.2のヒスチジンを含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤の緩衝系は、約20mM、pH5.5±0.2のヒスチジンを含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤の緩衝系は、10~30mM、pH5.5±0.05のヒスチジンを含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤の緩衝系は、約20mM、pH5.5±0.05のヒスチジンを含む。
【0161】
ある特定の実施形態では、医薬製剤の緩衝系は、0.10~0.30mM、pH5.5±0.2のヒスチジンを含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤の緩衝系は、約0.20mM、pH5.5±0.2のヒスチジンを含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤の緩衝系は、0.10~0.30mM、pH5.5±0.05のヒスチジンを含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤の緩衝系は、約0.20mM、pH5.5±0.05のヒスチジンを含む。
【0162】
本発明の医薬製剤中の1つまたは複数の賦形剤は、糖または糖アルコールをさらに含む。糖および糖アルコールは、医薬製剤において熱安定剤として有用である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、糖、例えば、単糖(グルコース、キシロース、またはエリスリトール)、二糖(例えば、スクロース、トレハロース、マルトース、またはガラクトース)、またはオリゴ糖(例えば、スタキオース)を含む。特定の実施形態では、医薬製剤は、スクロースを含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、糖アルコール、例えば、単糖由来の糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール、もしくはキシリトール)、二糖由来の糖アルコール(例えば、ラクチトールもしくはマルチトール)、またはオリゴ糖由来の糖アルコールを含む。特定の実施形態では、医薬製剤は、スクロースを含む。
【0163】
製剤に含有される糖または糖アルコールの量は、製剤が使用される特定の状況および意図された目的に応じて変動し得る。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、50~300mM、50~250mM、100~300mM、100~250mM、150~300mM、150~250mM、200~300mM、200~250mM、または250~300mMの糖または糖アルコールを含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、約50mM、約75mM、約100mM、約125mM、約150mM、約200mM、約220mM、約250mM、または約300mMの糖または糖アルコールを含む。特定の実施形態では、医薬製剤は、約220mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)を含む。
【0164】
製剤に含有される糖または糖アルコールの量は、製剤が使用される特定の状況および意図された目的に応じて変動し得る。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、0.50~3.00mM、0.50~2.50mM、1.00~3.00mM、1.00~2.50mM、1.50~3.00mM、1.50~2.50mM、2.00~3.00mM、2.00~2.50mM、または2.50~3.00mMの糖または糖アルコールを含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、約0.50mM、約0.75mM、約1.00mM、約1.25mM、約1.50mM、約2.00mM、約2.20mM、約2.50mM、または約3.00mMの糖または糖アルコールを含む。特定の実施形態では、医薬製剤は、約2.20mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)を含む。
【0165】
本明細書に開示される医薬製剤中の1つまたは複数の賦形剤は、界面活性物質をさらに含む。「界面活性物質」という用語は、本明細書で使用される場合、疎水性部分(例えば、アルキル鎖)と親水性部分(例えば、カルボキシルおよびカルボキシレート基)の両方を含有する表面活性分子を指す。界面活性物質は、医薬製剤において治療用タンパク質の凝集を低減するために有用である。医薬製剤への使用に適した界面活性物質は、一般に非イオン界面活性物質であり、これだけに限定されないが、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20または80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);ソルビタンエステルおよび誘導体;Triton(登録商標);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチル配糖体ナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン(sulfobetadine);ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-またはステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン;ラウラミドプロピル-コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ココイルメチルタウリンナトリウム、またはオレイルメチルタウリン二ナトリウム;ならびにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.、Paterson、N.J.)、ポリエチレングリコール、ポリプロピルグリコール、およびエチレンとプロピレングリコールの共重合体(例えば、Pluronics(登録商標)、PF68など)が挙げられる。ある特定の実施形態では、界面活性物質はポリソルベートである。ある特定の実施形態では、界面活性物質はポリソルベート20である。
【0166】
本発明の医薬製剤に含有される非イオン界面活性物質の量は、製剤の所望の特定の性質、ならびに製剤が使用されることが意図される特定の状況および目的に応じて変動し得る。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、0.02%~0.06%、0.03%~0.05%、または0.035%~0.045%の非イオン界面活性物質(例えば、ポリソルベート20)を含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、約0.005%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、または約0.1%の非イオン界面活性物質(例えば、ポリソルベート20)を含む。
【0167】
本発明の医薬製剤に含有される非イオン界面活性物質の量は、製剤の所望の特定の性質、ならびに製剤が使用されることが意図される特定の状況および目的に応じて変動し得る。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、0.0002%~0.0006%、0.0003%~0.0005%、または0.00035%~0.00045%の非イオン界面活性物質(例えば、ポリソルベート20)を含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、約0.00005%、約0.0001%、約0.0002%、約0.0003%、約0.0004%、約0.0005%、約0.0006%、約0.0007%、約0.0008%、約0.0009%、または約0.001%の非イオン界面活性物質(例えば、ポリソルベート20)を含む。
【0168】
ある特定の実施形態では、薬剤を、投与経路、例えば静脈内投与に適した水性担体中に希釈する。例示的な担体としては、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌生理食塩溶液、リンゲル液、またはブドウ糖溶液が挙げられる。一実施形態では、医薬製剤を静脈内投与用に調製する場合、医薬製剤を5%ブドウ糖溶液(D5W)中に希釈することができる。
【0169】
例示的な製剤
ある特定の実施形態では、本発明の医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、ヒスチジン緩衝剤、糖または糖アルコール(例えば、スクロース)、ならびにポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含み、pH5.5~6.5である。
【0170】
ある特定の実施形態では、医薬製剤は、100~200mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、10~30mMのヒスチジン緩衝剤、200~300mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)、および0.02%~0.06%のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含み、pH5.0~6.0である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、100~200mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、約20mMのヒスチジン緩衝剤、約220mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)、ならびに約0.04%のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含み、pH5.0~6.0である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、100~200mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体、約20mMのヒスチジン緩衝剤、約220mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)、ならびに約0.04%のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含み、pH5.2~5.8である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、100~200mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、約20mMのヒスチジン緩衝剤、約220mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)、ならびに約0.04%のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含み、pH5.45~5.55である。
【0171】
ある特定の実施形態では、医薬製剤は、1.00~2.00mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、0.10~0.30mMのヒスチジン緩衝剤、2.00~3.00mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)、および0.0002%~0.0006%のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含み、pH5.0~6.0である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、1.00~2.00mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、約0.20mMのヒスチジン緩衝剤、約2.20mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)、ならびに約0.0004%のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含み、pH5.0~6.0である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、1.00~2.00mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、約0.20mMのヒスチジン緩衝剤、約2.20mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)、ならびに約0.0004%のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含み、pH5.2~5.8である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、1.00~2.00mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、約0.20mMのヒスチジン緩衝剤、約2.20mMの糖または糖アルコール(例えば、スクロース)、ならびに約0.0004%のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含み、pH5.45~5.55である。
【0172】
ある特定の実施形態では、医薬製剤は、100~200mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、10~30mMのヒスチジン緩衝剤、200~300mMのスクロース、および0.02%~0.06%のポリソルベート20を含み、pH5.0~6.0である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、100~200mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体、約20mMのヒスチジン緩衝剤、約220mMのスクロース、および約0.04%のポリソルベート20を含み、pH5.0~6.0である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、100~200mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、約20mMのヒスチジン緩衝剤、約220mMのスクロース、および約0.04%のポリソルベート20を含み、pH5.3~5.7である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、100~200mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、約20mMのヒスチジン緩衝剤、約220mMのスクロース、および約0.04%のポリソルベート20を含み、pH5.45~5.55である。
【0173】
ある特定の実施形態では、医薬製剤は、1.00~2.00mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、0.10~0.30mMのヒスチジン緩衝剤、2.00~3.00mMのスクロース、および0.0002%~0.0006%のポリソルベート20を含み、pH5.0~6.0である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、1.00~2.00mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、約0.20mMのヒスチジン緩衝剤、約2.20mMのスクロース、および約0.0004%のポリソルベート20を含み、pH5.0~6.0である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、1.00~2.00mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体、20mMのヒスチジン緩衝剤、約2.20mMのスクロース、および約0.0004%のポリソルベート20を含み、pH5.3~5.7である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、1.00~2.00mg/mLの第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体)、約0.20mMのヒスチジン緩衝剤、約2.20mMのスクロース、および約0.0004%のポリソルベート20を含み、pH5.45~5.55である。
【0174】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬製剤であって、バイアル中に含有されており、バイアル中、製剤が、抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を完全に抜き取れるように、過剰充填分の体積を含む、医薬製剤を提供する。ある特定の実施形態では、バイアルは、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体であり、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する、抗体約150mg;約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約220mMの濃度のスクロース;および約0.04%(v/v)の濃度のポリソルベート20を含む医薬製剤であって、製剤のpHが、約pH5.5である、医薬製剤を含有する。
【0175】
複数の実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、カニクイザル、およびヒヒFXIおよび/またはFXIa)に結合する抗体またはその抗原結合性断片であり、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する、抗体またはその抗原結合性断片約1.5mg;約0.20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;約2.20mMの濃度のスクロース;約0.0004%(v/v)の濃度のポリソルベート20、および希釈剤(例えば、水中5%ブドウ糖(D5W))を含む静脈内送達医薬製剤であって、製剤のpHが、約pH5.5である、静脈内送達医薬製剤を提供する。
【0176】
第XI因子および/または第XIa因子抗体の安定性
本発明の医薬製剤は、高レベルの安定性を示す。医薬製剤は、製剤中の第XI因子および/または第XIa因子抗体が、定義済みの条件下での保管後に許容される程度の物理的特性、化学構造、および/または生物学的機能を保持する場合、安定である。
【0177】
医薬製剤中の第XI因子および/または第XIa因子抗体の安定性を決定するための典型的な方法は、本開示の実施例1に記載されている。さらに、タンパク質の安定性は、第XI因子および/もしくは第XIa因子抗体のその標的に対する結合親和性またはWO2016/207858に記載されているaPTTおよびFXI活性アッセイなどのある特定のin vitroアッセイにおける第XI因子および/もしくは第XIa因子抗体の生物活性を測定することによって評価することができる。
【0178】
医薬製剤は、液体製剤として調製し、保管することができる。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、2~8℃(例えば、4℃)での保管用の液体製剤である。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、4℃、光からの保護下での保管用の液体製剤である。
【0179】
安定性試験により、注射用溶液用の抗体1の150mg/mL濃縮物がその賦形剤および一次包装材料と適合することが見出された。注射用の抗体1の150mg/mL濃縮物は、使い捨てシリンジを用いた、希釈を伴わないかまたは担体緩衝剤、例えば、5%ブドウ糖(D5W)中への希釈を伴う皮下投与に適する。市販の使い捨てシリンジを用いた注射用の濃縮物が、0.5mg/対象から600mg/対象までの用量範囲について実証されている。抗体1と適合することが見出された材料は、ポリプロピレンまたはポリカーボネートで構成される注射用シリンジ、およびステンレス鋼で構成される注射針を含む。抗体1濃縮物の注射用溶液への適合性は、0.5mg/mLから150mg/mLまでの抗体1濃度について、1mLシリンジを用いて実証されている。抗体1濃縮物の注射用溶液への適合性は、150mg/mLの抗体1濃度について、およそ2mLまで充填した3mLシリンジを用いて実証されており、全部で、注射当たり、1mLシリンジについて0.5mgから最大150mgまでの用量範囲、および3mLシリンジ(およそ2mLを充填したもの)について約300mgの用量が包含される。
【0180】
剤形
医薬品としての使用の前に、医薬製剤を、投与経路に適する場合、水性担体中に希釈することができる。静脈内投与に関しては、適切な担体として、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌生理食塩溶液、リンゲル液、またはブドウ糖溶液が挙げられる。例えば、医薬製剤を静脈内投与用に調製する場合、医薬製剤は、5%ブドウ糖溶液(D5W)を含む。ある特定の実施形態では、希釈された医薬製剤は、等張性であり、静脈内注入による投与に適する、例えば、D5Wである。ある特定の実施形態では、製剤を約50mLのD5W、100mLのD5W、150mLのD5W、200mLのD5W、250mLのD5W、300mLのD5W、350mLのD5W、400mLのD5W、450mLのD5W、500mLのD5W、または1LのD5W中に希釈する。
【0181】
医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を保管に適した濃度で含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を100~200mg/mL、100~190mg/mL、100~180mg/mL、100~170mg/mL、100~160mg/mL、110~150mg/mL、120~150mg/mL、130~150mg/mL、140~150mg/mL、140~160mg/mL、140~170mg/mL、140~180mg/mL、140~190mg/mL、150~190mg/mL、150~180mg/mL、150~170mg/mL、または150~160mg/mLの濃度で含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約10mg/mL、約15mg/mL、約25mg/mL、約50mg/mL、約75mg/mL、約100mg/mL、約120mg/mL、約125mg/mL、約130mg/mL、約135mg/mL、約140mg/mL、約145mg/mL、約150mg/mL、約155mg/mL、約160mg/mL、約165mg/mL、約170mg/mL、約175mg/mL、約180mg/mL、約185mg/mL、約190mg/mL、約195mg/mL、または約200mg/mLの濃度で含む。
【0182】
医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を保管に適した濃度で含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を1.00~2.00mg/mL、1.00~1.90mg/mL、1.00~1.80mg/mL、1.00~1.70mg/mL、1.00~1.60mg/mL、1.10~1.50mg/mL、1.20~1.50mg/mL、1.30~1.50mg/mL、1.40~1.50mg/mL、1.40~1.60mg/mL、1.40~1.70mg/mL、1.40~1.80mg/mL、1.40~1.90mg/mL、1.50~1.90mg/mL、1.50~1.80mg/mL、1.50~1.70mg/mL、または1.50~1.60mg/mLの濃度で含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約0.10mg/mL、約0.15mg/mL、約0.25mg/mL、約0.50mg/mL、約0.75mg/mL、約1.00mg/mL、約1.20mg/mL、約1.25mg/mL、約1.30mg/mL、約1.35mg/mL、約1.40mg/mL、約1.45mg/mL、約1.50mg/mL、約1.55mg/mL、約1.60mg/mL、約1.65mg/mL、約1.70mg/mL、約1.75mg/mL、約1.80mg/mL、約1.85mg/mL、約1.90mg/mL、約1.95mg/mL、または約2.00mg/mLの濃度で含む。
【0183】
ある特定の実施形態では、医薬製剤をバイアル(例えば、バイアル、バッグ、ペン、またはシリンジ)に詰める。ある特定の実施形態では、バイアルは、意図された用量を完全に取り出すことを可能にするために、過剰充填分を含む。ある特定の実施形態では、バイアルは、5~35%、10~30%、15~25%、または10~20%の過剰充填分を含む。特定の実施形態では、バイアルは、約20%の過剰充填分を含む。
【0184】
ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であり得る。ある特定の実施形態では、容器中の第XI因子および/または第XIa因子抗体の量は、単回用量としての投与に適したものである。ある特定の実施形態では、容器中の第XI因子および/または第XIa因子抗体の量は、複数回用量での投与に適したものである。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を0.1~200mgの量で含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を1~200mg、10~200mg、20~200mg、50~200mg、100~200mg、200~200mg、500~2000mg、1000~2000mg、0.1~1000mg、1~1000mg、10~1000mg、20~1000mg、50~1000mg、100~1000mg、200~1000mg、500~1000mg、0.1~500mg、1~500mg、10~500mg、20~500mg、50~500mg、100~500mg、200~500mg、0.1~200mg、1~200mg、10~200mg、20~200mg、50~200mg、100~200mg、0.1~100mg、1~100mg、10~100mg、20~100mg、50~100mg、0.1~50mg、1~50mg、10~50mg、20~50mg、0.1~20mg、1~20mg、10~20mg、0.1~10mg、1~10mg、または0.1~1mgの量で含む。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を治療有効量として約0.1mg、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1500mg、または約2000mgの量で含む。
【0185】
投薬レジメンおよび治療的使用
別の態様では、本開示は、血栓塞栓性疾患を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に開示される第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、抗体1)を1カ月に1回投与することを含む、方法を提供する。
【0186】
ある特定の実施形態では、方法は、対象に、最初の処置サイクル後に、第XI因子および/または第XIa因子抗体を、1つまたは複数の月1回の処置サイクルで、例えば、3カ月の期間にわたって投与することをさらに含み、ここで、第XI因子および/または第XIa因子抗体は、1日目、31日目、および61日目に投与される。対象が第XI因子および/または第XIa因子抗体の投与を月に1回受ける、後の処置サイクルは、対象において第XI因子および/または第XIa因子抗体のある特定のレベルが維持されるように設計される。ある特定の実施形態では、対象は、後の処置サイクルを少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15サイクル受ける。一部の実施形態では、対象は生涯処置を受け続ける。
【0187】
一部の実施形態では、方法は、それを必要とする対象における疾患または障害、例えば、血栓塞栓性疾患を処置することを含み、抗FXI/FXIa抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体1)の1回目の用量を静脈内投与すること、および抗FXI/FXIa抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体1)の2回目の用量を皮下投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、3回目の用量を皮下投与することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、4回目の用量を皮下投与することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、5回目の用量を皮下投与することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、6回目の用量を皮下投与することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、7回目の用量を皮下投与することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、8回目の用量を皮下投与することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、9回目の用量を皮下投与することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、10回目の用量を皮下投与することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、11回目の用量を皮下投与することをさらに含む。ある特定の実施形態では、方法は、1回目の用量を静脈内投与し、後の5回の用量を皮下投与することを含む。ある特定の実施形態では、処置の持続時間は約6カ月間である。ある特定の実施形態では、方法は、1回目の用量を静脈内投与し、後の11回の用量を皮下投与することを含む。ある特定の実施形態では、処置の持続時間は約1年間である。ある特定の実施形態では、方法は、1回目の用量を静脈内投与し、その後、対象における疾患もしくは障害が消散するまで、または対象の生存期間にわたって、毎月、皮下用量を投与することを含む。
【0188】
一部の実施形態では、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがあり、外科手技を受ける対象に、静脈内薬物送達製剤を外科手技と同日に投与する。一部の実施形態では、静脈内薬物送達製剤を外科手術後2~10時間の間に投与する。一部の実施形態では、静脈内薬物送達製剤を外科手術後4~8時間の間に投与する。一部の実施形態では、静脈内薬物送達製剤を外科手術の約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約9時間後、または約10時間後に投与する。
【0189】
ある特定の実施形態では、最初の処置サイクルおよび後の処置サイクルにおける1回または複数回の用量は、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、約2.0mg/kg、約2.1mg/kg、約2.2mg/kg、約2.3mg/kg、約2.4mg/kg、約2.5mg/kg、約2.6mg/kg、約2.7mg/kg、約2.8mg/kg、約2.9mg/kg、約3.0mg/kg、約3.1mg/kg、約3.2mg/kg、約3.3mg/kg、約3.4mg/kg、約3.5mg/kg、約3.6mg/kg、約3.7mg/kg、約3.8mg/kg、約3.9mg/kg、約4.0mg/kg、約4.1mg/kg、約4.2mg/kg、約4.3mg/kg、約4.4mg/kg、約4.5mg/kg、約4.6mg/kg、約4.7mg/kg、約4.8mg/kg、約4.9mg/kg、または約5.0mg/kgの用量で皮下投与することを含む。
【0190】
ある特定の実施形態では、最初の処置サイクルおよび後の処置サイクルにおける1回または複数回の用量は、第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、抗体1)を約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、または約200mgの用量で皮下投与することを含む。一部の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約90mgの用量で皮下投与する。一部の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約120mgの用量で皮下投与する。一部の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約150mgの用量で皮下投与する。一部の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約180mgの用量で皮下投与する。上記の実施形態のいずれかでは、第XI因子および/または第XIa因子抗体を毎月皮下投与する。
【0191】
一部の実施形態では、皮下投与後の第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば抗体1)の治療有効用量範囲は、約75mg~約165mg、約80mg~約160mg、約85mg~約155mg、または約90mg~約160mgである。ある特定の実施形態では、皮下投与後の第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば抗体1)の治療有効用量範囲は約90mg~約160mgである。
【0192】
ある特定の実施形態では、最初の処置サイクルおよび後の処置サイクルにおける1回または複数回の用量は、第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば抗体1)を約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、約2.0mg/kg、約2.1mg/kg、約2.2mg/kg、約2.3mg/kg、約2.4mg/kg、約2.5mg/kg、約2.6mg/kg、約2.7mg/kg、約2.8mg/kg、約2.9mg/kg、約3.0mg/kg、約3.1mg/kg、約3.2mg/kg、約3.3mg/kg、約3.4mg/kg、約3.5mg/kg、約3.6mg/kg、約3.7mg/kg、約3.8mg/kg、約3.9mg/kg、約4.0mg/kg、約4.1mg/kg、約4.2mg/kg、約4.3mg/kg、約4.4mg/kg、約4.5mg/kg、約4.6mg/kg、約4.7mg/kg、約4.8mg/kg、約4.9mg/kg、または約5.0mg/kgの用量で静脈内投与することを含む。
【0193】
ある特定の実施形態では、最初の処置サイクルおよび後の処置サイクルにおける1回または複数回の用量は、第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、抗体1)を約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約250mg、約500mg、約750mg、約1000mg、約1250mg、約1500mg、または約2000mgの用量で静脈内投与することを含む。一部の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約30mgの用量で静脈内投与する。一部の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約60mgの用量で静脈内投与する。一部の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約75mgの用量で静脈内投与する。一部の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を約150mgの用量で静脈内投与する。一部の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を単回用量で静脈内投与する。一部の実施形態では、FXI/FXIa抗体(例えば、抗体1)を約150mgの単回用量で投与する。一部の実施形態では、FXI/FXIa抗体(例えば、抗体1)を約1000mgの単回用量で投与する。一部の実施形態では、FXI/FXIa抗体(例えば、抗体1)を約1500mgの単回用量で投与する。一部の実施形態では、FXI/FXIa抗体(例えば、抗体1)を約2000mgの単回用量で投与する。
【0194】
一部の実施形態では、FXI/FXIa抗体(例えば、抗体1)の1回目の用量をある1つの用量で投与し、FXI/FXIa抗体(例えば、抗体1)の2回目の用量を第2の用量で投与する。ある特定の実施形態では、1回目の用量と2回目の用量は同じ(例えば、150mg)である。ある特定の実施形態では、1回目の用量は2回目の用量よりも多い(例えば、1回目の用量は約1000mgであり、2回目の用量は150mgである)。ある特定の実施形態では、方法は、後の用量を2回目の用量と同じ投薬量で投与することをさらに含む。
【0195】
ある特定の実施形態では、FXI/FXIa抗体(例えば、抗体1)の単回用量を投与することにより、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が400時間またはそれよりも長く、例えば、400時間またはそれよりも長く、500時間またはそれよりも長く、または600時間またはそれよりも長く延長される。ある特定の実施形態では、FXI/FXIa抗体(例えば、抗体1)の単回用量を投与することにより、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が約600時間延長される。
【0196】
医師は、医薬組成物に使用された本開示の抗体(例えば抗体1)の用量を、所望の治療効果を実現するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が実現されるまで徐々に投薬量を増加させることができる。一般に、本明細書に記載の血栓塞栓性障害を処置するための本開示の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、投与される他の薬、および処置が予防的なものであるか治療的なものであるかを含めた、多くの異なる因子に応じて変動する。処置投薬量は、安全性および有効性が最適化されるように用量設定することができる。抗体の全身投与に関しては、投薬量は、宿主体重1kg当たり約0.01mgから15mgまでにわたる。抗体の投与(例えば、皮下投与または静脈内投与)に関しては、投薬量は、0.1mgから5mgまで、または1mgから600mgまでにわたり得る。例えば、本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体(例えば抗体1)を約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、約2.0mg/kg、約2.1mg/kg、約2.2mg/kg、約2.3mg/kg、約2.4mg/kg、約2.5mg/kg、約2.6mg/kg、約2.7mg/kg、約2.8mg/kg、約2.9mg/kg、約3.0mg/kg、約3.1mg/kg、約3.2mg/kg、約3.3mg/kg、約3.4mg/kg、約3.5mg/kg、約3.6mg/kg、約3.7mg/kg、約3.8mg/kg、約3.9mg/kg、約4.0mg/kg、約4.1mg/kg、約4.2mg/kg、約4.3mg/kg、約4.4mg/kg、約4.5mg/kg、約4.6mg/kg、約4.7mg/kg、約4.8mg/kg、約4.9mg/kg、または約5.0mg/kgの用量で投与することができる。
【0197】
ある特定の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を静脈内投与する。例えば、ある特定の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を、例えば充填済みバッグ、充填済みペン、または充填済みシリンジを用いて、静脈内注入によって投与する。ある特定の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を、本明細書に開示される医薬製剤内で、投与前に希釈する。例えば、ある特定の実施形態では、医薬製剤を水中5%ブドウ糖(D5W)で希釈し、バッグから静脈内投与する。静脈内注入は約1時間(例えば、50~80分間)にわたり得る。ある特定の実施形態では、バッグを管および/または針を含むチャネルに接続する。
【0198】
ある特定の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を非経口投与する。ある特定の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を1回または複数回の用量で非経口投与する。
【0199】
本明細書に開示される第XI因子および/もしくは第XIa因子抗体または医薬製剤を用いて処置することができる血栓塞栓性障害の型は、これだけに限定されないが本明細書で使用される「血栓塞栓性」または同様の用語を含み、また、いくつもの、本開示の抗FXIおよび/もしくはFXIa抗体またはその抗原結合性断片を使用して防止または処置することができる以下のものも指し得る:発作性、持続的または永続的な心房細動または心房粗動などの心不整脈の疑いがあるかまたは心不整脈が確認されている対象における血栓塞栓症;心房細動における脳卒中の防止(SPAF)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けているAF患者の亜集団;出血のリスクが高い患者における急性静脈血栓塞栓性事象(VTE)の処置および長期の続発性VTEの防止;一過性脳虚血発作(TIA)後の二次防止中の大脳および心血管事象または活動不能にならない脳卒中(non-disabling stroke)および洞調律を伴う心不全における血栓塞栓性事象の防止;小児対象における静脈血栓塞栓症(小児VTE);左心房における血餅形成および心不整脈に対する電気的除細動を受けている対象における血栓塞栓症;心不整脈に対するアブレーション手順の前、その間、およびその後の血栓症;静脈血栓症、これには、排他的ではないが、下部メンバーまたは上部メンバーにおける深部静脈または浅静脈血栓症、腹部静脈および胸部静脈における血栓症、洞血栓症ならびに頸静脈の血栓症の処置および二次防止が含まれる;カテーテル、ペースメーカーワイヤー、合成動脈グラフトのような静脈または動脈内の任意の人工表面における血栓症;動静脈(AV)シャント;機械的もしくは生物学的心臓弁または左心室補助デバイス;静脈血栓症を有する患者または静脈血栓症を有さない患者における肺塞栓症;慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH);破裂した動脈硬化巣における動脈血栓症、動脈内人工器官またはカテーテルにおける血栓症および見かけ上は正常な動脈における血栓症、これには、これだけに限定されないが、急性冠状動脈症候群、ST上昇心筋梗塞、非ST上昇心筋梗塞、不安定狭心症、ステント血栓症、動脈系内の任意の人工表面の血栓症および肺高血圧症を有する対象または肺高血圧症を有さない対象における肺動脈の血栓症が含まれる;経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けている患者における血栓症および血栓塞栓症;心原性脳卒中および潜因性脳卒中;非中枢神経全身性塞栓症(非CNS全身性塞栓症);出血性卒中;浸潤および非浸潤がん悪性疾患(例えば、胃腸がんおよび尿生殖器がん)を有する患者における血栓症;留置カテーテル上の血栓症;重症の患者における血栓症および血栓塞栓症;心臓血栓症および血栓塞栓症、これは、排他的ではないが、心筋梗塞後の心臓血栓症、心室瘤、心筋線維症、心拡大および心不全、心筋炎ならびに人工心臓表面などの状態に関連する心臓血栓症を含む;心房細動を伴うまたは伴わない心臓弁膜症を有する患者における血栓塞栓症;機械的または生物学的人工心臓弁上の血栓塞栓症;単純なまたは複雑な心奇形の心臓修復後に、ネイティブなまたは人工心臓パッチ、動脈または静脈導管を有した患者における血栓塞栓症;膝関節置換術、人工股関節置換術、および整形外科手術、胸部または腹部外科手術後の静脈血栓症および血栓塞栓症;頭蓋内および脊髄介入を含む脳神経外科手術後の動脈または静脈血栓症;排他的ではないが、第V因子ライデン、プロトロンビン変異、アンチトロンビンIII、プロテインCおよびプロテインS欠乏症、第XIII因子変異、家族性異常フィブリノゲン血症、先天性プラスミノーゲン欠乏症、第XI因子のレベルの上昇、鎌状赤血球症、抗リン脂質症候群、自己免疫疾患、慢性腸疾患、ネフローゼ症候群、溶血性尿毒症、骨髄増殖性疾患、播種性血管内凝固、発作性夜間ヘモグロビン尿症およびヘパリン起因性血小板減少症を含めた、先天性または後天性血栓形成傾向;慢性腎疾患における血栓症および血栓塞栓症;ならびに血液透析を受けている患者および体外式膜型人工肺を受けている患者における血栓症および血栓塞栓症。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される第XI因子および/もしくは第XIa因子抗体または医薬製剤を用いた処置を受ける対象は、肥満(例えば、重度の肥満、例えば肥満度指数(BMI)が≧35kg/m2)である。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される第XI因子および/もしくは第XIa因子抗体または医薬製剤を用いた処置を受ける対象は肥満ではない。ある特定の実施形態では、肥満の対象には、肥満ではない対象と同じ用量の第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、抗体1)の投与後により少ない曝露が伴う。ある特定の実施形態では、肥満の対象に関しては、肥満ではない対象と同じ用量の第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、抗体1)の投与後の曝露が約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%少ない。ある特定の実施形態では、肥満の対象には、肥満ではない対象と同じ用量の第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、抗体1)の投与後により短いaPTT延長の持続時間が伴う。ある特定の実施形態では、肥満の対象に関しては、肥満ではない対象と同じ用量の第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、抗体1)の投与後のaPTT延長が約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%短い。
【0200】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を、血小板減少症を有する患者に投与する。「血小板減少症」とは、対象の血小板レベルが正常よりも低い、例えば、特定の集団における平均の生理的血小板レベルよりも低い状態を指す。一部の実施形態では、血小板減少症を有する患者の血小板数は、150×109/L未満である、または正常な血小板数分布の約2.5パーセンタイルである。血小板減少症を有する患者は、出血リスクが上昇しているが、それにもかかわらず、血栓塞栓性障害(例えば、静脈血栓塞栓症(VTE)または脳卒中)のリスクもあり得る。血小板減少症を有する患者を既存の抗凝固治療を用いて処置することは、出血リスクの上昇と血栓塞栓性障害を処置する、それを防止する、またはそのリスクを低下させる必要性のバランスを取る必要があることから、臨床的に困難であり得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を血小板減少症を有する患者に投与することによる出血のリスクは、別の抗凝固治療の投与と比較して低い。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)の投与は、対象における血小板凝集に、投与前の血小板凝集と比較して影響を及ぼさない。血小板凝集は、例えば、これだけに限定することなく、インピーダンス血小板凝集測定法、および当技術分野で公知の他の適切な方法によって決定することができる。
【0201】
一部の実施形態では、血小板減少症は硬変症に関連するものである。硬変症では、凝血原および抗凝固因子の両方の産生が減少し、それにより、硬変症に罹患している患者における出血のリスクおよび/または血栓症のリスクが上昇する恐れがある。以前に低分子量ヘパリン(LMWH)であるエノキサパリンを使用して実証されている通り、第XI因子の阻害(例えば、抗体1による)により、門脈血栓症の発生を防止し、肝代償不全事象(hepatic decompensation event)を低減することができる(Villa et al. (2012). Gastroenterology. 143 (5): 1253-1260)。しかし、硬変症に対するLMWHの使用は、使用者の服薬遵守(例えば、毎日の投与)、および、進行した硬変症には多くの場合に腎不全が合併し、ヘパリンの投与が推奨されないことによるリスクによって限定される。一部の実施形態では、硬変症を有する患者に本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を投与することにより、硬変症の進行が緩徐化する。一部の実施形態では、硬変症を有する患者に本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を投与することにより、肝内微小血栓の出現が防止されるまたはその出現率が低下する。一部の実施形態では、硬変症を有する患者に本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を投与することにより、肝虚血および/または線維症の出現率が低下する。一部の実施形態では、硬変症を有する患者に本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を投与することにより、門脈血栓症の発生が防止されるまたはそのリスクが低下する。一部の実施形態では、硬変症を有する患者に本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を投与することにより、硬変後遺症(例えば、食道静脈瘤および静脈瘤出血)の出現率が、例えば、投与前の患者における硬変後遺症の出現率と比較して低下する。一部の実施形態では、硬変症を有する患者に本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を投与することにより、肝代償不全事象の数が、例えば投与前の患者の肝代償不全事象の数と比較して減少する。
【0202】
一部の実施形態では、血小板減少症は、感染症に関連するものである。ある特定の実施形態では、血小板減少症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはC型肝炎ウイルスに関連するものである。一部の実施形態では、血小板減少症は、先天性である。ある特定の実施形態では、先天性血小板減少症は、ウィスコット・アルドリッチ症候群、橈骨欠損を伴う血小板減少症(thrombocytopenia-absent radii syndrome)、ベルナール・スーリエ、灰色血小板症候群、白血病を伴う家族性血小板減少症(familial-thrombocytopenia-leukemia syndrome)、MYH9関連障害、ファンコニー貧血、先天性無巨核性血小板減少症、または先天性角化不全症である。一部の実施形態では、血小板減少症は、特発性である。一部の実施形態では、特発性血小板減少症は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)である。
【0203】
ある特定の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば、抗体1)を、がんを有する対象に投与する。静脈血栓塞栓症(VTE)は全がん患者の1%~8%に影響を及ぼし、さらに、化学療法を受けている外来患者の2番目に多い主要な死因になっていると推定される。がん患者におけるそのようなVTEの処置には血小板減少症が併発し、これは化学療法を受けているがん患者において広範にみられる(Bannow et al. (2019). Res. Pract. Throm. Haemost., 2: 664-669)。一部の実施形態では、対象、例えば、がん対象は、血小板減少症を有する。本明細書で使用される場合、「がん対象」または「がんを有する対象」は、がんを有すると診断された対象、例えば、ヒト対象である。ある特定の実施形態では、がん対象は、前記がんに対する処置、例えば化学療法を受けている。一部の実施形態では、血小板減少症は、化学療法と関連するものである。一部の実施形態では、血小板減少症は、化学療法によって誘導される。
【0204】
ある特定の実施形態では、がんは、固形腫瘍である。ある特定の他の実施形態では、がんは、脳がん、膀胱がん(bladder cancer)、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、白血病、肺がん、肝がん、黒色腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、胃がん、精巣がん、または子宮がんである。さらに他の実施形態では、がんは、血管新生した腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭がん、耳下腺がん、胆管がん、甲状腺がん、末端部黒子黒色腫、日光角化症、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管がん、肛門がん、肛門直腸がん(anorectum cancer)、星細胞系腫瘍(astrocytic tumor)、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆管がん、骨がん、骨髄のがん、気管支がん、気管支腺癌、カルチノイド、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/癌腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織がん、嚢胞腺腫、消化器系のがん、十二指腸がん、内分泌系のがん、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、内皮細胞がん、上衣がん、上皮細胞がん、ユーイング肉腫、眼および眼窩がん、女性生殖器がん、限局性結節性過形成、胆嚢がん、幽門洞がん、胃底がん、ガストリノーマ、神経膠芽腫、グルカゴノーマ、心臓がん、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝臓腺腫症、肝胆道がん、肝細胞癌、ホジキン病、回腸がん、インスリノーマ、上皮内新形成、上皮内扁平上皮細胞新形成、肝内胆管がん、浸潤性扁平上皮癌、空腸がん、関節がん、カポジ肉腫、骨盤がん(pelvic cancer)、大細胞癌、大腸がん、平滑筋肉腫、悪性黒子黒色腫、リンパ腫、男性生殖器がん、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜がん、中皮がん、転移性癌、口腔がん(mouth cancer)、粘液性類表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉のがん、鼻腔がん、神経系がん、神経上皮腺癌、結節性黒色腫、非上皮性皮膚がん、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起膠細胞がん、口腔がん(oral cavity cancer)、骨肉腫、乳頭状漿液性腺癌、陰茎がん、咽頭がん、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸がん、腎細胞癌、呼吸器系のがん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、洞がん、皮膚がん、小細胞癌、小腸がん、平滑筋がん、軟部組織がん、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎がん、扁平上皮癌、横紋筋がん、中皮下がん(submesothelial cancer)、表在拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌がん、未分化癌、尿管がん、尿道がん、膀胱がん(urinary bladder cancer)、泌尿器系のがん、子宮頸部がん、子宮体がん、ぶどう膜黒色腫、膣がん、疣状癌、VIP産生腫瘍、外陰部がん、高分化癌、またはウィルムス腫瘍である。ある特定の実施形態では、がんは、胃腸がんおよび尿生殖器がんからなる群より選択される。
【0205】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を、例えば、血栓症のリスクがある対象における凝固を防止するために、防止的に投与する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体1)を、例えば、血栓症のリスクがある対象における血餅を処置するために、治療的に投与する。
【0206】
一部の実施形態では、抗FXI/FXIa抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体1)を、がん関連血栓症(CAT)を有する対象に投与する。ある特定の実施形態では、がん関連血栓症を有する対象は、既存の血餅を有する。ある特定の実施形態では、対象は、微小血餅を有する。ある特定の実施形態では、対象は、CATに関連する微小血栓症を有する。
【0207】
CHA2DS2-VAScリスクスコアは、AF患者における血栓塞栓性リスクを予測するため、および抗凝固治療が有益であるはずである患者を同定するための、検証済みの広く使用されている層別化ツールである(LIP 2011; Camm, et al. (2012) Eur Heart J 2012; 33: 2719-2747);蓄積されたエビデンスから、CHA2DS2-VAScが、脳卒中および血栓塞栓症を発生する患者を同定することに関してCHADS2などのスコアと比べて少なくとも同じくらい正確であるかまたは場合によってより良好であること、ならびに「真にリスクが低い」AF患者を同定することに関して決定的に良好であることが示される。CHA2DS2-VAScリスクスコアは、0から最大スコア9までにわたる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される第XI因子および/もしくは第XIa因子抗体または医薬製剤を用いた処置を受ける対象のCHA2DS2-VAScリスクスコアは、男性では0~1であり、女性では1~2である。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される第XI因子および/もしくは第XIa因子抗体または医薬製剤を用いた処置を受ける対象のCHA2DS2-VAScリスクスコアは男性では≧2であり、女性では≧3である。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される第XI因子および/もしくは第XIa因子抗体または医薬製剤を用いた処置を受ける対象は、CHA2DS2-VAScリスクスコアが≧4または≧3であり、抗血小板薬(例えば、アスピリンおよび/またはP2Y12阻害薬)の併用計画またはCockcroft-Gault方程式によってCrCl≦50ml/分のうちの少なくとも1つを有する。
【0208】
本明細書に開示される第XI因子および/または第XIa因子抗体(例えば抗体1)は、単独療法として使用することもでき、1つまたは複数の治療と組み合わせて使用することもできる。そのような組合せ療法は、虚血性脳卒中(心原性塞栓性、血栓性)または全身性塞栓症、AF、AFによる脳卒中防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、急性冠状動脈症候群(ACS)、急性虚血肢、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、または全身性塞栓症)などの血栓塞栓性障害の処置に有用であり得る。ある特定の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を本明細書に開示される投薬レジメンに従って単独療法として使用する。他の実施形態では、第XI因子および/または第XIa因子抗体を1つまたは複数の治療と組み合わせて使用し、ここで、第XI因子および/または第XIa因子抗体を、本明細書に開示される投薬レジメンに従って投与し、1つまたは複数の治療を、特定の障害を有する特定の対象の処置に適することが公知の投薬レジメンに従って投与する。
【0209】
一部の態様では、血栓性および/または血栓塞栓性障害を有する患者を処置するために、スタチン治療を本開示に記載のFXI/FXIa抗体および抗原結合性断片、または前記FXI/FXIa抗体および抗原結合性断片(例えば抗体1)を含む製剤と組み合わせて使用することができる。特定の態様では、本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体(例えば抗体1)と組み合わせた使用に適する治療用活性薬剤の非限定的な例としては、トロンボキサン阻害薬(例えば、アスピリン)、アデノシン二リン酸受容体アンタゴニスト(またはP2Y12阻害薬)例えば、チエノピリジン(例えば、クロピドグレルおよびプラスグレル)および非チエノピリジン(例えば、チカグレロルおよびカングレロル)など、プロテアーゼにより活性化される受容体-1(PAR1)アンタゴニスト(例えば、ボラパクサールおよびアトパキサール)、ならびにプロトンポンプ阻害薬(PPI)(例えば、オメプラゾール、ジアゼパム、フェニトイン、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾール、エソメプラゾール、およびナプロキセン)が挙げられる。組合せ療法におけるPPIの使用は、対象がGI障害を有するかまたはGI障害の履歴、例えば以前のGI出血または消化性潰瘍の前駆症状などを有する場合に適し得る。一態様では、対象は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を用いた処置を受けており、本明細書に記載の抗FXI/FXIa抗体(例えば抗体1)をプロトンポンプ阻害薬(例えば、オメプラゾール、ジアゼパム、フェニトイン、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾール、エソメプラゾール、およびナプロキセン)と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、FXI/FXIa抗体および抗原結合性断片、または前記FXI/FXIa抗体および抗原結合性断片(例えば抗体1)を含む製剤を用いた処置を受ける対象に、直接経口抗凝固薬(DOAC)を処置の持続時間の後(例えば、処置の終了と同日)に投与する。ある特定の実施形態では、FXI/FXIa抗体および抗原結合性断片、または前記FXI/FXIa抗体および抗原結合性断片(例えば抗体1)を含む製剤を用いた処置を受ける対象に、ビタミンKアンタゴニスト(VKA)を処置の持続時間の後(例えば、処置の終了の約5日前、または処置の終了の約3日前)に投与する。
【0210】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される処置方法により、疾患応答または対象もしくは患者の生存の改善がもたらされる。例えば、ある特定の実施形態では、疾患応答は、完全奏効、部分奏効、または安定病態である。ある特定の実施形態では、生存の改善は、無進行生存(PFS)または全生存の改善である。改善(例えば、PFSの改善)は、本開示の処置を開始する前の期間と比べて決定することができる。BTC(例えば、進行したBTC、転移性BTC)、または胆管腫瘍の治療に対する疾患応答(例えば、完全奏効、部分奏効、または安定病態)および患者の生存(例えば、PFS、全生存)を決定する方法は、当技術分野において常套的なものであり、本発明で意図されている。一部の実施形態では、疾患応答を、処置を受けた患者を患部(例えば、胸郭上口の上部区域から恥骨結合までの領域に及ぶ胸部/腹部および骨盤)の造影コンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)に供した後、RECIST 1.1に従って評価する。
実施形態の列挙
1.それを必要とする対象における疾患または障害を処置する方法であって、対象に、単離された抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片約150mgの1回目の用量を静脈内投与するステップと、対象に、単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の2回目の用量を皮下投与するステップとを含む、方法。
2.2回目の用量が、単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片約150mgを含む、実施形態1の方法。
3.単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の1回目の用量が、抗体またはその抗原結合性断片約150mgを含む静脈内薬物送達製剤として製剤化されたものである、実施形態1または2の方法。
4.単離された抗FXIおよび/または抗FXIa抗体またはその抗原結合性断片の2回目の用量が、抗体またはその抗原結合性断片約150mgを含む皮下薬物送達製剤として製剤化されたものである、実施形態1から3までのいずれか1つの方法。
5.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9または29における相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19または39における相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態1から4までのいずれか1つの方法。
6.抗体またはその抗原結合性断片が、
i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;
ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;
iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;または
iv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3
を含む、実施形態1から5までのいずれか1つの方法。
7.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9、29およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)からなる群より選択されるVH;ならびに配列番号19、39およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)からなる群より選択されるVLを含む、実施形態1から6までのいずれか1つの方法。
8.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9および29からなる群より選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群より選択される軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態1から7までのいずれか1つの方法。
9.抗体が、配列番号31、11およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに配列番号41、21およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態1から8までのいずれか1つの方法。
10.抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態1から9までのいずれか1つの方法。
11.抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、実施形態1から10までのいずれか1つの方法。
12.抗体が、ヒトIgG1アイソタイプである、実施形態11の方法。
13.抗体が、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む、実施形態11または12の方法。
14.抗体またはその抗原結合性断片を約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤を含む薬物送達製剤において投与する、実施形態1から13までのいずれか1つの方法。
15.抗体またはその抗原結合性断片を約220mMの濃度のスクロースを含む薬物送達製剤において投与する、実施形態1から14までのいずれか1つの方法。
16.抗体またはその抗原結合性断片を約0.04%の濃度のポリソルベート20を含む薬物送達製剤において投与する、実施形態1から15までのいずれか1つの方法。
17.抗体またはその抗原結合性断片をpH5.5の薬物送達製剤において投与する、実施形態1から16までのいずれか1つの方法。
18.抗体またはその抗原結合性断片を静脈内薬物送達製剤において投与する場合、静脈内薬物送達製剤が、約5%のグルコースをさらに含む、実施形態1から17までのいずれか1つの方法。
19.対象が、がんを有する、実施形態1から18までのいずれか1つの方法。
20.対象が、胃腸がんおよび尿生殖器がんからなる群より選択されるがんを有する、実施形態1から19までのいずれか1つの方法。
21.対象が、静脈血栓塞栓症のリスクが高い状態である、実施形態1から20までのいずれか1つの方法。
22.対象が、1回または複数回の以前の静脈血栓塞栓症を有している、実施形態1から21までのいずれか1つの方法。
23.抗体またはその抗原結合性断片の1回または複数回の追加的な皮下用量をさらに含む、実施形態1から22までのいずれか1つの方法。
24.抗体またはその抗原結合性断片の皮下用量を5回投与することを含む、実施形態1から23までのいずれか1つの方法。
25.抗体またはその抗原結合性断片を約1カ月に1回皮下投与する、実施形態1から24までのいずれか1つの方法。
26.抗体またはその抗原結合性断片を1日目に静脈内投与し、31日目、61日目、91日目、121日目、および151日目に皮下投与する、実施形態1から25までのいずれか1つの方法。
27.対象を約6カ月間処置する、実施形態1から26までのいずれか1つの方法。
28.がんを有する対象を処置する方法であって、単離された抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片約150mgを含む薬物送達製剤を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、薬物送達製剤を静脈内に1回投与し、その後、約1カ月に1回皮下投与し、対象を約6カ月間処置する、方法。
29.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9または29における相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19または39における相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態28の方法。
30.抗体またはその抗原結合性断片が、
i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;
ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;
iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;または
iv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3
を含む、実施形態28から29までのいずれか1つの方法。
31.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9、29およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)からなる群より選択されるVH;ならびに配列番号19、39およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)からなる群より選択されるVLを含む、実施形態28から30までのいずれか1つの方法。
32.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9および29からなる群より選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群より選択される軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態28から31までのいずれか1つの方法。
33.抗体が、配列番号31、11およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに配列番号41、21およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態28から32までのいずれか1つの方法。
34.抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態28から33までのいずれか1つの方法。
35.抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、実施形態28から34までのいずれか1つの方法。
36.抗体が、ヒトIgG1アイソタイプである、実施形態35の方法。
37.抗体が、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む、実施形態35または36の方法。
38.がんが、胃腸がんおよび尿生殖器がんからなる群より選択される、実施形態28から37までのいずれか1つの方法。
39.血栓症のリスクがある霊長類対象を処置する方法であって、霊長類対象に、
(a)約150mgの濃度の、治療有効量の単離された抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片;
(b)約20mMの濃度のヒスチジン緩衝剤;
(c)約220mMの濃度のスクロース;ならびに
(d)約0.04%(v/v)の濃度のポリソルベート20;
(e)グルコースを含む希釈剤
を含む、pH5.5の薬物送達製剤の単回用量を投与するステップを含み、
投与するステップは、血餅が形成される前または形成される間のものである、
方法。
40.霊長類対象が、ヒヒである、実施形態39の方法。
41.霊長類対象が、ヒトである、実施形態39の方法。
42.血栓症が、実験的に誘導された血栓症である、実施形態39または40の方法。
43.霊長類対象が、血管グラフト血栓症のリスクがある、実施形態39から42までのいずれか1つの方法。
44.単回用量が、血栓症を防止するために投与されるものである、実施形態39から43までのいずれか1つの方法。
45.単回用量が、血栓症を処置するために投与されるものである、実施形態39から43までのいずれか1つの方法。
46.単回用量が、非経口的または静脈内へのものである、実施形態39から45までのいずれか1つの方法。
47.単回用量が、非経口的なものである、実施形態39から46までのいずれか1つの方法。
48.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9または29における相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19または39における相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態39から47までのいずれか1つの方法。
49.抗体またはその抗原結合性断片が、
i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;
ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;
iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;または
iv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3
を含む、実施形態39から48までのいずれか1つの方法。
50.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9、29およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)からなる群より選択されるVH;ならびに配列番号19、39およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)からなる群より選択されるVLを含む、実施形態39から49までのいずれか1つの方法。
51.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9および29からなる群より選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群より選択される軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態39から50までのいずれか1つの方法。
52.抗体が、配列番号31、11およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに配列番号41、21およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態39から51までのいずれか1つの方法。
53.抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態39から52までのいずれか1つの方法。
54.抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、実施形態39から53までのいずれか1つの方法。
55.抗体が、ヒトIgG1アイソタイプである、実施形態54の方法。
56.抗体が、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む、実施形態54または55の方法。
57.霊長類対象への投与に関して、抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量が約1mg/kgである、実施形態39から40までまたは42から56までのいずれか1つの方法。
58.霊長類対象への投与に関して、抗第XI因子(FXI)および/または抗活性化第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量が約150mgである、実施形態39、41、または43から56までのいずれか1つの方法。
59.血小板減少症を有する対象を処置する方法であって、血小板減少症が、化学療法誘発性血小板減少症、先天性血小板減少症、感染症に関連する血小板減少症、および特発性血小板減少症からなる群より選択され、方法が、治療有効量の第XI因子および/または第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片をそれを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
60.血小板減少症を有する対象が、がんを有する、実施形態59の方法。
61.血小板減少症を有する対象が、硬変症を有する、実施形態59または60の方法。
62.血小板減少症を有する対象が、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を有する、実施形態59または60の方法。
63.化学療法誘発性血小板減少症を有するがん対象を処置する方法であって、治療有効量の第XI因子および/または第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片を、それを必要とするがん対象に投与するステップを含む、方法。
64.対象またはがん対象が、血栓塞栓性障害に罹患しているか、またはそれが発生するリスクがある、実施形態59から63までのいずれか1つの方法。
65.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9または29における相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19または39における相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態59から64までのいずれか1つの方法。
66.抗体またはその抗原結合性断片が、
i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;
ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;
iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;KNYである軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;または
iv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3
を含む、実施形態59から65までのいずれか1つの方法。
67.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9、29およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)からなる群より選択されるVH;ならびに配列番号19、39およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)からなる群より選択されるVLを含む、実施形態59から66までのいずれか1つの方法。
68.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9および29からなる群より選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群より選択される軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態59から67までのいずれか1つの方法。
69.抗体が、配列番号31、11およびそれらに対して90%の同一性を有する重鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに配列番号41、21およびそれらに対して90%の同一性を有する軽鎖からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態59から68までのいずれか1つの方法。
70.抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態59から69までのいずれか1つの方法。
71.抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、実施形態59から70までのいずれか1つの方法。
72.抗体が、ヒトIgG1アイソタイプである、実施形態71の方法。
73.抗体が、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む、実施形態71または72の方法。
74.前記抗体またはその抗原結合性断片の投与が、対象における血小板凝集に投与前の血小板凝集と比較して影響を及ぼさない、実施形態59から73までのいずれか1つの方法。
75.血小板凝集が、インピーダンス血小板凝集測定法によって測定される、実施形態74の方法。
76.血小板凝集が、コラーゲン、アデノシン5’-二リン酸(ADP)、またはトロンビン受容体活性化ペプチド-6(TRAP-6)によって誘導される、実施形態75の方法。
77.血小板凝集が、ex vivoまたはin vitroにおいて決定される、実施形態74から76までのいずれか1つの方法。
78.抗体またはその抗原結合性断片を静脈内投与する、実施形態59から77までのいずれか1つの方法。
79.抗体またはその抗原結合性断片を皮下投与する、実施形態59から78までのいずれか1つの方法。
80.抗体またはその抗原結合性断片の1回目の用量を静脈内投与し、抗体または抗原結合性断片の2回目の用量を皮下投与する、実施形態59から78までのいずれか1つの方法。
81.2回目の用量を投与した後に皮下投与される抗体またはその抗原結合性断片の1つまたは複数の追加的な用量をさらに含む、実施形態80の方法。
82.抗体またはその抗原結合性断片を1カ月に1回投与する、実施形態59から81までのいずれか1つの方法。
【実施例】
【0211】
ここで、以下の実施例を参照することによって、概して説明されている本開示がより容易に理解されよう。以下の実施例は、ただ単に本開示のある特定の態様および実施形態を例示する目的で含まれ、本開示の範囲をいかようにも限定するものではない。
【0212】
(実施例1)
がん関連血栓塞栓症を有する患者に対する、アピキサバンと比較した、抗体1による処置
目的および理論的根拠
本試験の目的は、がんおよび最近診断されたVTEを有する患者において、抗体1を用いた毎月の処置がアピキサバンの1日2回(bid)の経口投与に対して、静脈血栓塞栓症(VTE)再発の防止に関しては非劣性であるが、出血率に関しては優れているかどうかを評価することである。本試験は、がん関連VTE(がん関連血栓塞栓症)の処置に対する抗体1の世界的規模の登録を支持するものである。CATは、がん患者の推定20%で生じ、悪性疾患を有する患者における2番目に多い主要な死因である。現行の処置は、凝固カスケードにおける1つまたは複数の因子を阻害するものであり、血栓症が有効に防止または処置されるが、一方で止血にも干渉し、その結果、出血のリスクが高まる。出血の恐れおよび利用可能な治療の忍容性の欠如により、著しい処置不十分および転帰不良がもたらされる。
【0213】
現在最も一般的である2つの処置は、低分子量ヘパリン(LMWH)および直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)であり、それぞれに限定がある。LMWHは世界の大多数の地域でSoCであるが、6カ月間にわたって毎日注射する必要がある。残念ながら、LMWHを用いた処置を受ける患者は、他の経口投与処置と比較して治療を持続する可能性が低い。DOACは経口投与され、より許容される代替物であると考えられるが、一部のがん患者は嚥下困難を有するまたは嘔吐が生じ、それによりアドヒアランスが不十分なものになる。
【0214】
CAT、特に、CATを有する、出血のリスクが高い患者に対する新しい処置を開発することの目標は、現行の作用物質と同レベルの有効性は維持しながら、出血を少なくし、忍容性を高めることである。
【0215】
目的および評価項目
本試験の主要目的は、がんおよび最近診断されたVTEを有する患者において、無作為化後6カ月間を通したVTE再発の防止に関して抗体1がアピキサバンに対して非劣性であるかどうかを評価することであり、評価項目は、6カ月間を通した、中央検査機関により決定された(centrally adjudicated)VTE再発の最初の事象までの時間である。
【0216】
本試験の副次的目的は以下の通りである:
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、重大な出血または臨床的に関連する重大ではない(CRNM)出血の複合の発現の防止に関してアピキサバンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、International Society on Thrombosis and Haemostasis(ISTH)により決定された重大なまたはCRNM出血事象の最初の事象までの時間である。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、VTE再発を伴わない生存と定義される正味の臨床上の利益、または重大なもしくはCRNM出血事象に関してアピキサバンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、VTE再発、ISTHにより決定された重大な出血事象またはISTHにより決定されたCRNM出血事象の最初の事象までの時間である。
・無作為化後6カ月の時点で、抗体1が、VTE再発を防止することに関してアピキサバンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、中央検査機関により決定されたVTE再発の最初の事象までの時間である。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、死亡に起因しない永続的試験中止率に関してアピキサバンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、死亡に起因しない永続的試験中止の事象までの時間である。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、CRNM出血事象の発現の防止に関してアピキサバンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、ISTHにより決定されたCRNM出血事象の最初の事象までの時間である。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、重大な出血事象の発現の防止に関してアピキサバンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、ISTHにより決定された重大な出血事象の最初の事象までの時間である。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、GIにおける重大な出血およびGIにおけるCRNM出血の複合の発現の防止に関してアピキサバンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、GIにおけるISTHにより決定された重大な出血事象およびCRNM出血事象の最初の事象までの時間である。
・抗体1の安全性および忍容性を、無作為化後6カ月間を通して、ダルテパリンと比べて評価すること、ならびに、抗体1を用いた処置を受けた患者における注射部位反応、過敏症反応および免疫原性の出現率を評価すること。評価項目は、患者100名・年当たりの率として示される、あらゆる原因による死亡(all-cause death)、血管関連死亡(vascular death)、重篤な有害事象、薬物の中止に至る有害事象、他の有害事象、異常な検査室検査などである。抗体1を用いた処置を受けた患者に関する追加的な評価項目は以下の通りである:
○注射部位反応を有する患者のパーセンテージ
○重症度の状態ごとの、注射部位反応を有する患者のパーセンテージ
○過敏症反応を有する患者のパーセンテージ
○重症度の状態ごとの、過敏症反応を有する患者のパーセンテージ
○ADA形成を有する患者のパーセンテージ
○持続的なADA形成を有する患者のパーセンテージ
○中和抗体(NAb)形成を有する患者のパーセンテージ。
【0217】
本試験の探索的目的は以下の通りである:
・抗体1の効果を、VTE再発、重大な出血事象またはあらゆる原因による死亡の複合に関してアピキサバンと比べて評価すること。評価項目は、VTE再発、重大な出血、またはあらゆる原因による死亡の複合評価項目の最初の事象までの時間である。
・抗体1の効果を、動脈血栓塞栓事象(例えば、脳卒中、心筋梗塞、動脈塞栓事象)に関してアピキサバンと比べて評価すること。評価項目は、虚血性脳卒中、または心筋梗塞または動脈塞栓事象の複合評価項目の最初の事象までの時間である。
・抗体1の効果を、VTE再発に適格とする事象(例えば、下肢遠位DVT、上肢DVT、胸部静脈、頭蓋内大脳静脈または頭蓋外大脳静脈、内臓DVTおよび中心静脈カテーテル関連血栓症)以外の静脈血栓塞栓事象に関してアピキサバンと比べて評価すること。評価項目は、DVT再発または他の静脈血栓塞栓事象と以下の静脈血栓塞栓事象:下肢遠位DVT、上肢DVT、胸部静脈、頭蓋内大脳静脈または頭蓋外大脳静脈、内臓DVTまたは中心静脈カテーテル関連血栓症の最初の事象までの時間という複合評価項目の最初の事象までの時間である。
・抗体1の効果を、手順または出血事象に起因するものではない一時的な処置中断の回数および持続時間に関してアピキサバンと比べて評価すること。評価項目は、手順または出血に起因するものではない一時的な処置中断の回数、および手順または出血に起因するものではない一時的な処置中断の総持続時間である。
・抗体1の有効性および安全性を、予め規定された患者のサブグループ(例えば、性別、年齢、BMI、民族性、がんの位置、偶発的VTEであるか症候性VTEであるか、PEが存在するか否か、無作為化前にSoCを受けていた日数、ECOG)においてアピキサバンと比べて評価すること。評価項目は、予め規定された患者のサブグループにおける、6カ月間を通した、中央検査機関により決定されたVTE再発の最初の事象までの時間、ならびに、予め規定された患者のサブグループにおける、6カ月間を通した、ISTHにより定義される重大な出血事象およびCRNM出血事象の最初の事象までの時間である。
・抗体1の効果を、3カ月時点および6カ月時点における健康関連生活の質(HRQoL)に関してアピキサバンと比べて評価すること、ならびに、疑われるVTE再発および疑われる出血事象を提示している患者においてEQ-5D-5Lの経時的変化を評価すること。評価項目は、総合スコアおよび
○EQ-5D-5L質問票
○EORTC QLQ C30質問票
○TSQM II質問票
のドメインごとのスコアのベースラインからの変化、ならびに疑われるVTE再発および出血事象の後のEQ-5D-5L質問票の経時的連続的変化である。
・抗体1のPKを、患者のサブセットにおいて評価すること。評価項目は、抗体1のランダム、ピークおよびトラフ血漿中濃度である。
・抗体1のPD(遊離および総FXI、FXI:C、aPTT)を、患者のサブセットにおいて評価すること。評価項目は、示されている時点における遊離および総FXI、FXI:CおよびaPTTである。
・抗体1の効果を、患者のサブセットにおいて凝固亢進状態の探索的バイオマーカー(潜在的に、これだけに限定されないが、d-ダイマー、F1.2、TATが含まれる)に関してアピキサバンと比べて評価すること。評価項目は、処置アーム間での、d-ダイマー、F1.2およびTATを含み得る凝固亢進状態のバイオマーカーのベースラインからの変化である。
・VTE費用効果分析(例えば、入院、輸血、止血のためまたはVTEを管理するための手順、外来診察)。評価項目は、医療リソースの利用である。
・薬物標的経路または他の関連性のある遺伝的経路に関する遺伝子の個々の遺伝的変動により抗体1に対する示差的応答が付与されるかどうかを探究するためのDNA評価。評価項目は、遺伝子多型と安全性、有効性、PK、およびPD反応との関連の探索的評価である。
【0218】
試験設計
本試験は、がんを有する患者におけるVTE再発に対する抗体1の効果をアピキサバンと比較する、無作為化、オープンラベル、盲検化評価項目評価(blinded endpoint evaluation)(PROBE)、実薬対照試験(active controlled study)である。
【0219】
組織学的検査および/または妥当なイメージングモダリティによって確定されたがん、ならびに、新たに診断された、客観的に確定された症候性もしくは偶発的近位下肢急性DVTもしくは症候性肺塞栓症(PE)、または区域肺動脈(segmental pulmonary artery)もしくはより近位の肺動脈において偶発的に検出されたPEを有する患者は、VTEの診断から72時間以内の試験参加について適格となる。
【0220】
症状発出(presentation)後、試験参加に同意する患者は、適格性基準の確認のために最長72時間のスクリーニング/導入期間を受けるべきである。スクリーニング/導入期間中は、VTEに対するSoC処置(例えば、推奨用量の直接作用型経口抗凝固薬[DOAC]、未分画ヘパリン[UFH]、LMWHまたはフォンダパリヌクス)を投与すべきである。全ての選択/除外基準に該当し続ける患者を抗体1またはアピキサバンに1:1の比で無作為化する。患者を、試験地域、がんの位置(GI/GUであるかその他であるか)、および症候性VTEであるか偶発的VTEであるかによって層別化する。抗体1に割り当てられた患者は、1日目に抗体1、150mgを静脈内(iv)に受け、その後、iv用量のおよそ30日(±5日)後から1カ月に1回の150mgの皮下(sc)投薬をさらに5カ月間受ける(合計6回の処置)。アピキサバンに割り当てられた患者は、無作為化後すぐに開始し、7日間にわたって経口(po)アピキサバン10mg、1日2回(bid)を受け、次いで、5mg、po、bidを6カ月間の処置の総持続時間にわたって受ける。患者が、スクリーニング中、中断せずにアピキサバンを10mg、bidの用量で受けており、アピキサバン処置アームに無作為化された場合、10mg、bid用量を用いた試験参加中の処置の持続時間を短縮し、すべての患者が全部で7日間を超えてアピキサバン10mg、bid用量を受けることのないようにする。
【0221】
初発VTE事象、疑われる再発VTE事象、死亡、出血事象、動脈血栓塞栓事象、および他の静脈血栓塞栓事象を、臨床事象委員会(Clinical Event Committee)(CEC)が精査する。CECのメンバーは処置割り当てに関して盲検化される。無作為化された患者全員に関して、試験来院終了までに生じる上記の事象の決定を行う。
【0222】
6カ月間の処置を完了したまたは試験処置を早期中止した患者は、最大70日間の追跡調査期間に入る。
【0223】
集団
成人男性または女性対象で、無作為化前の確定された(組織学的検査、妥当なイメージングモダリティ)切除不能GIまたはGUがんおよび急性VTEの症状発出(適格とするVTEの診断から72時間以内)を有し、LMWHを用いた長期間にわたる処置の必要が示されている対象が試験参加に適格となる;およそ1020名の患者が本試験において無作為化される予定である。
【0224】
選択基準
選択/除外基準をスクリーニング時およびベースライン時に確認しなければならない;本試験への組み入れに適格となる患者は、両方の来院時に以下の基準の全てを満たさなければならない:重要な適格性基準には以下が含まれる(スクリーニング来院時および無作為化来院時に以下の全てに合致しなければならない):
・18歳以上または居住国に応じて別の法的成熟年齢以上の男性または女性対象
・以下のうちの1つを伴う、皮膚の基底細胞癌または扁平上皮細胞癌のみ以外のがんの確定診断(組織学的検査または妥当なイメージングモダリティによるもの):
○無作為化時に、局所的に活動性のがん、局部的に浸潤性のがん、もしくは転移性がんのいずれかと定義される活動性がん、および/または
○抗がん治療(放射線療法、化学療法、ホルモン療法、任意の種類の標的化治療もしくは任意の他の抗がん治療)を現在受けている、または過去6カ月間に受けていたこと
・確定された症候性もしくは偶発的近位下肢急性DVT(すなわち、膝窩、大腿、腸骨および/もしくは下大静脈の静脈血栓症)ならびに/または区域肺動脈、もしくはより大きな肺動脈における確定された症候性PE、または偶発的PE。患者は、適格とするVTEの診断から72時間以内であれば適格となる
・少なくとも6カ月にわたる治療用量のDOACを用いた抗凝固治療の必要が示されていること
・書面でのインフォームドコンセントを提出することができること
【0225】
除外基準
以下の基準のいずれかに該当する患者は本試験への組み入れに適格とならない:
・DVTおよび/またはPEの現在の(初発)発現を処置するための血栓除去術、大静脈フィルターの挿入または線維素溶解素の使用
・治療用量のUFH、LMWH、フォンダパリヌクス、DOAC、または他の抗凝固薬を用いた前処置から72時間を超えて経過している場合
・無作為化前のVTE処置のために使用したもの以外の治療用量の抗凝固薬を用いた処置を継続する必要が示されている場合(例えば、心房細動、人工心臓弁(mechanical heart valve)、以前のVTE)
・血小板数が50,000/mm3未満である場合
・不安定な血行動態(収縮期血圧[BP]<90mmHgまたはショック)をもたらすPE
・スクリーニング前4週間以内の急性虚血性または出血性卒中または頭蓋内出血
・スクリーニング前4週間以内の脳外傷、または大脳もしくは脊髄の外科手術
・1日当たり100mgを超える投薬量のアスピリン、または任意の他の抗血小板薬を単独でもしくはアスピリンと組み合わせて必要としている場合
・原発性脳がんまたは処置を受けていない頭蓋内転移
・急性骨髄性またはリンパ性白血病
・無作為化時またはその前の4週間以内の医療上の注意を必要とする出血
・ベースライン時点で大手術の予定がある場合
・スクリーニング時に米国東海岸がん臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)パフォーマンスステータスが3または4である場合
・無作為化時点で平均余命が3カ月未満である場合
・算出されたクレアチニンクリアランス(CrCl)が毎分30mL未満である場合
・ヘモグロビンが8g/dL未満である場合
・急性肝炎、慢性活動性肝炎、肝硬変;または、臨床的な説明がなくアラニンアミノトランスフェラーゼレベルが正常範囲の上限の3倍もしくはそれよりも高い場合および/もしくはビリルビンレベルが正常範囲の上限の2倍もしくはそれよりも高い場合
・コントロール不良の高血圧(降圧処置にもかかわらず収縮期BP>180mm Hgまたは拡張期BP>100mm Hg)
・スクリーニング時点からアピキサバンを用いた最後の処置の3日後までまたは抗体1の投与の100日後までの試験期間中、有効性が高い避妊措置を使用する意思がないまたは使用することができない妊娠可能な女性(WOCBP)
・妊娠可能な性的パートナーをもつ性的に活発な男性は、アピキサバンを用いた最後の処置の3日後までまたは抗体1の投与の100日後までコンドームまたは他の信頼できる避妊措置を使用することに同意しなければならない
・妊娠中または授乳中の女性
・CYP3A4とP-gpの両方の強力な二重誘導物質または阻害物質を受けていることが分かっている患者
・試験薬(アピキサバンを含む)もしくはその賦形剤のいずれか、同様の化学的クラスの薬物、またはアピキサバンのラベルに列挙されている任意の禁忌に対する過敏症歴
・試験担当医師の判断で、対象が試験に参加した場合に危害が及ぶリスクが高い何らかの状態を有する対象
・登録前の5半減期以内または予測される薬力学的効果がベースラインに戻るまでのいずれか長い方の期間内の他の治験(登録されていない)薬物の使用。登録薬の異なる戦略または異なる組合せを試験することを含む学術的非介入または介入試験への参加は許容される
【0226】
投薬量および投与
1日目に患者を以下の処置アームの一方に1:1の比で無作為化する:
・抗体1、150mg、iv、その後、毎月の150mgのsc注射、5カ月間(処置の総持続時間は6カ月である)
・アピキサバン10mg、po、bid、7日間、その後、5mg、po、bid、5.75カ月間(処置の総持続時間は6カ月である)
【0227】
処置群への無作為化を、地域、がんの位置(GI/GUか他の位置か)、およびVTEの症状発出(症候性か偶発的か)によって層別化する。
【0228】
対象を一度層別化および無作為化したら、対象は、対象の処置または投与された用量がその後調整されたとしても、解析目的に関して、その最初の層および無作為化された処置群にとどまる。
【0229】
試験薬剤の配布
抗体1
各試験施設に抗体1が使い捨てバイアルとして供給される。抗体1処置アームに対応するバイアルのラベルに固有のキット番号が印刷されている。患者に使用される試験薬バイアルは、試験担当スタッフがIxRSを接触させ、そのバイアルを含有するキット番号を得ることにより識別される。
【0230】
1日目来院時に、患者に抗体1を試験センターにおいて資格を有する医療関係者による60分間のiv注入によって投与する。この1回目の用量に関しては、あらゆる注入反応、過敏症反応、または他のAEをモニタリングするために、患者は試験薬の投与後少なくとも1時間、試験センターにとどまらなければならない。2回目の用量(最初のsc用量)から開始して、患者は、毎月、試験薬のsc投与を受けるため、および来院手順を完了するために、試験センターを再訪する。
【0231】
アピキサバン
各試験施設にアピキサバン5mg錠剤のカートンが供給される。1日目に、アピキサバンに割り当てられた患者はアピキサバンの供給を受け、当日におよそ12時間空けて2回の10mg用量を服用するよう指示される。患者は、10mg、bid、7日間服用し、その後、残りの処置期間にわたって5mg、bidで服用する。患者がスクリーニング期間中にアピキサバンを服用していた場合、10mg、bidで服用する総日数が7日間を超えないようにすべきである。試験全体を通して、患者が試験来院間に妥当な分量の試験薬を確実に有するように適当な間隔でアピキサバンを配布する。試験期間中、処置遵守をモニタリングする。
【0232】
安全性
身体検査
身体検査には、全身外観、皮膚、頸部(甲状腺を含む)、眼、耳、鼻、のど、肺、心臓、腹部、背中、リンパ節、四肢、筋骨格、血管、および神経の評価を含める。
【0233】
バイタルサイン
バイタルサインには、口腔体温(℃)、BP、および脈拍の収集を含める。
【0234】
検査室評価
ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球(RBC)計数、平均血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、赤血球分布幅(RDW)、分画を伴う白血球(WBC)数、および血小板数を測定する。
【0235】
ナトリウム、カリウム、クレアチニン、BUN/尿素、尿酸、クロライド、アルブミン、カルシウム、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン、バイカーボネート/HCO3、AST、ALT、グルコース、総コレステロール、およびトリグリセリドを測定する。総ビリルビンが>2×ULNの場合、直接および間接反応ビリルビンを区別すべきである。
【0236】
標準的なaPTTならびにプロトロンビン時間/国際標準化比(PT/INR)用の試料を表2に示されている評価スケジュールに記載されている来院時に採取する。
【0237】
比重、タンパク質、グルコース、および血液に関する尿試験紙測定を実施する。尿試験紙検査が異常の場合、顕微鏡検査、WBC、RBC、および沈渣も評価する。
【0238】
主要安全性変数は出血に対するものであり、本試験の副次評価項目として定義され、CECによって決定される。出血事象をISTHガイドラインに従って重大な出血、CRNM出血、および他の出血に分類する。これらの決定された出血事象を副次的目的の評価の一部として要約する。
【0239】
これらの出血事象は、決定にかかわらず、全ての有害作用の一覧および解析にも含める。有害事象(AE)に関して得られた全ての情報を処置群および患者ごとに提示する。AEを処置中期間および処置後期間に関しても提示することができる。AEは患者100名・年当たりの率として示す。
【0240】
心電図(ECG)
ECGをスクリーニング来院、ベースライン来院、EoT来院、およびEoS来院時に実施する。ECGは、試験施設で資格を有する医師が現地で収集し、解釈を行い、適当に署名し、試験施設において保存記録しなければならない。
【0241】
臨床事象
有効性
独立した盲検化されたCECが以下の事象の決定および分類を行う:
・あらゆる原因による死亡
・疑われるDVTおよびPE再発の全エピソード
・疑われる他の動脈血栓塞栓事象(例えば、虚血性脳卒中、TIA、動脈塞栓事象、心筋梗塞[MI])、ならびに下肢遠位DVT、上肢DVT、胸部静脈、大脳頭蓋内または頭蓋外静脈、内臓DVTおよび中心静脈カテーテル関連血栓症などの他のVTE
【0242】
試験の主要転帰(VTE再発)は、以下の確定された(CECにより決定された)VTEの複合からなる:
・下肢、腸骨静脈および/またはIVCの、確定された新規の症候性または偶発的近位DVT
・確定された新規の症候性PE
・区域肺動脈またはより近位の肺動脈に位置する確定された新規の偶発的PE
・致死的PE(PEを除外することができない原因不明の死亡を含む)
【0243】
確定された動脈血栓塞栓事象(例えば、脳卒中、TIA、急性MI、および動脈塞栓事象)ならびに確定された他のVTE(例えば、新規の下肢遠位DVT、上肢DVT、胸部静脈、大脳頭蓋内または頭蓋外静脈、内臓DVT、および中心静脈カテーテル関連血栓症)を試験の探索的評価項目として解析する。
【0244】
偶発的DVTまたはPEとは、DVTまたはPEの疑いでではなく他の理由で実施されたイメージング検査(例えば、がんの病期分類のためのCT)の間に検出された血栓である。腹部または骨盤内CTの際にIVCまたは腸骨静脈において偶発的に検出された新規の血栓は、DVT再発の診断を確立するために妥当であると考えられる。しかし、総大腿静脈またはより遠位の静脈における偶発的に検出された新規の血栓は、CUSまたは静脈造影法によって確定された場合にのみ、DVT再発に適格とし得る。
【0245】
出血
対象によって報告されたか試験担当医師によって観察されたかを問わず、全ての疑われる出血事象を記録すべきである。
【0246】
全ての報告された出血事象の詳細を、評価項目報告ガイドラインに記載されている通りCECに提出する。これらの詳細には、これだけに限定されないが、以下が含まれ得る:
・出血位置
・出血の持続時間
・耳、鼻、もしくはのどの出血に対する耳鼻咽喉科の診察;血尿もしくは尿生殖路の出血に対する泌尿器科の診察;皮膚の出血、軟部組織の出血、もしくは内出血に対する外科の診察;子宮もしくは膣の出血に対する婦人科の診察;頭蓋内出血に対する神経内科もしくは脳神経外科の診察;または眼の出血に対する眼科の診察などの医学的処置の提供元の医療専門家からの推奨の覚書または要約を含めた、出血事象に対する処置
・血液製剤による輸血の回数
・出血の大きさ(例えば、皮膚または皮下血腫の場合はサイズ)
・出血事象時点、最低値、輸血前後の値、および出血事象の消散後のヘモグロビンレベル
・GI出血に対する内視鏡検査などの、出血を評価するために実施されたあらゆる診断検査
・出血を評価するために実施されたあらゆる診断的イメージング、例えば、X線、CT、MRI、または超音波
【0247】
重大な出血事象
重大な出血事象は、以下のうちの少なくとも1つに合致する場合に確定される:
a)致死的出血
b)以下などの重要な領域または器官における症候性出血:
・頭蓋内(硬膜外、硬膜下、くも膜下、脳内、未確定)。
・眼内
・脊髄内
・関節内
・コンパートメント症候群を伴う筋肉内
・心膜
・後腹膜
c)臨床的に明白な出血事象
・ヘモグロビンの2.0g/dL(>1.24mMol/L)もしくはそれよりも大きな減少に関連するもの、または
・2単位以上の赤血球濃厚液もしくは全血の輸血に至るもの
【0248】
臨床的に関連する重大ではない出血事象
出血事象は、出血の何らかの徴候または症状(例えば、イメージング単独で発見された出血を含め、臨床的状況で予測されるよりも多くの出血)が存在するが重大な出血の定義の基準に合致しない場合であっても、以下の基準:
・医療専門家による医療介入が必要である
・入院または介護レベルの上昇に至る
・対面での(すなわち、電話機または電子通信だけでなく)評価が促される
のうちの少なくとも1つに該当する場合は、CRNM出血事象に分類する。
【0249】
軽微な(臨床的に関連しない)出血事象
重大な出血事象の基準にもCRNM出血事象の基準にも該当しない他の明白な出血事象は、軽微な出血事象に分類する。
【0250】
出血なし
他の全ての疑われる出血事象(例えば、上記の通り、さらなる措置を伴わない、明白な出血を伴わないヘモグロビンの減少またはイメージングの際の偶発的所見)は「出血なし」に分類する。
【0251】
他の評価
薬物動態
PK用の血液試料を、抗体1に割り当てられた患者のサブセットから、試験薬の投与前および評価スケジュールにおいて規定されている通り一部の試験来院の間に採取する。予定外来院の間または転帰事象(VTE再発および出血事象)のための入院の間に追加的なPK試料を取得することができる。総抗体1(すなわち、FXIと結合したものまたは結合していないもの)の血漿中濃度を検証された(LCMS/MS)方法によって決定する。
【0252】
薬力学的評価
PD評価用の血液試料を、患者のサブセットに関して、評価スケジュールにおいて規定されている時点で採取する。予定外来院の間または転帰事象(VTE再発および出血事象)のための入院の間に追加的なPD試料を取得することができる。
【0253】
これだけに限定されないが、以下のものを含めたPDバイオマーカーについて試験する:
・遊離FXI-血漿中の抗体1と結合していないFXIを測定する
・総FXI-血漿中の抗体1と結合しているかまたは遊離のFXIを測定する
・aPTT
【0254】
さらに、施設で適当な-70℃/-80℃の冷凍装置が利用可能であるかに基づいて、選択された施設において、患者のサブセットに関してFXI:Cを測定することができる。血漿中のFXI:Cを測定する。
【0255】
免疫原性
イムノアッセイに基づく方法を使用して、抗体1 ADAを検出する。ADA評価用の試料を、試験薬の投与前および評価スケジュールにおいて規定されている通り試験来院時に採取する。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【0256】
追加的なバイオマーカー(血液)
追加的な血液試料を評価スケジュールにおいて規定されている時点で採取し、潜在的な今後の探索的解析のために保管する。
【0257】
追加的なバイオマーカーには、必ずしもこれだけに限定されないが、以下が含まれ得る:
・D-ダイマー、F1.2、TAT
【0258】
試験の実施中、より関連のあるまたは新規のバイオマーカーが発見される可能性があることが認められているので、この一覧を変更するまたはさらに拡張することができる。これは患者のサブセットにおいて実施することができる。
【0259】
健康関連生活の質(HRQOL)
参加することができる国および施設において、3種の患者報告転帰(PRO)手段を使用して、HRQoLを測定する:
・EQ-5D-5L質問票を使用して、疾患およびその処置の、患者の身体的、感情的、および社会的幸福に対する影響に関する情報を収集する。EQ-5D-5Lは、自己施行式の検証された手段であり、5つの観点:移動性(mobility)、セルフケア、ふだんの活動、痛み/不快感および不安/抑うつにわたって一般的なHRQoLを測定するものである。各観点について5レベルの応答が存在する。さらに、この尺度は、回答者の全体的な健康を0~100点のスケールで測定する視覚的アナログスケール(VAS)スケールを含有する。この手段は、臨床試験において、様々な臨床的状態にわたって、および一般集団の間で広く使用されている(Berg et al. 2010)。
・EORTC QLQ-C30は、がん患者の生活の質を評価するために開発された質問票である。EORTC QLQ-C30は、30項目の質問票であり、28項目について4点のリッカートスケールおよび2項目について7点のリッカートスケールが用いられる。EORTC QLQ-C30は、HRQoLを測定する検証された手段である。この手段は100を超える言語で利用可能である(Farge et al. 2018)。
・TSQM IIは、提供された処置に対する患者の満足度を測定するものである。TSQM IIは、11項目からなり、それぞれ5点のリッカートスケールで、処置の効果、処置に関連する副作用、処置の利便性、および処置に対する満足度の観点にわたって測定するものである。この手段は100を超える言語で利用可能である(Atkinson et al. 2004)。
【0260】
全てのPRO手段を評価スケジュールに記載されている時点で電子的に施行する。PROは、患者のサブセットにおいて実施する。さらに、できる限りいつでも、疑われるVTE再発および疑われる出血事象の後の引き続く来院時にEQ-D-5Lを記録する。
【0261】
探索的DNA(遺伝学的)試料
この必要に応じた研究についてインフォームドコンセントを得た患者に関しては、探索的DNA用の血液試料を1日目またはインフォームドコンセントを得た後の任意の時点で取得する。遺伝学的試料の採取は、この試験が保健当局により承認された国に関してのみ適用可能である。
【0262】
SARS-COV2(COVID-19)に関連する潜在的リスク
試験処置は、COVID-19に対する天然の防御機構を変更せず、それに対する免疫を発生させるものでもないと予測される。抗凝固治療には、COVID-19の血栓塞栓性合併症を防止することに関して有益な効果があり得る。本試験に組み入れられる患者は、試験期間中、ソーシャルディスタンスおよび他の全ての保護措置を適用しなければならない;COVID-19に罹患した場合、その患者は通常の医療行為に従って管理されるべきである。COVID-19はAE eCRFに記録すべきである。
【0263】
COVID-19パンデミックにより患者の予定来院または予定外来院が妨げられる場合、患者は試験担当医師に連絡すべきである。処置の中断を防止し、試験転帰を報告するためにあらゆる取り組みを行うべきである。必要であれば、バーチャルおよび在宅来院を選択肢として考えることができる。
【0264】
試験期間中のCOVID-19に対するワクチン接種は許容される。
【0265】
試験完了および中止
ガイドラインでは、CATにおいて6カ月間の抗凝固治療が推奨されている(Streiff et al. 2018、Key et al. 2019、Khorana et al. 2018、Carrier et al.2018、NCCN Guidelines 2020)。本試験で意図されている処置の持続時間は6カ月である。試験担当医師は、無作為化後6カ月時点またはPSDDの場合にはそれより前にEoT来院評価を実施すべきである。全ての患者がEoT来院後およそ70日間の追跡調査期間に移行し、転帰事象、他のAEおよびSAEの報告を継続し、また、ADAおよびPD試験を評価するための血液試料の採取を継続する。
【0266】
一部の患者に関しては追跡調査期間中に抗凝固治療を追跡または再開する必要があり得る。表3に、追跡調査期間中の試験処置以外の抗凝固薬の開始に関するガイダンスを提示する。
【表3】
【0267】
EoS来院をEoT来院のおよそ70日後に行い、これには、血液試料の採取が含まれる。この来院では、患者の本試験への参加を完結させる前に、患者の全体的な健康および安全性確認について評価する。
【0268】
試験処置の中止
患者に対する試験処置の中止は、プロトコルで予定されている持続時間よりも前に試験薬を永続的に止めた場合に起こる。試験薬の中止は患者または試験担当医師のいずれから開始してもよい。
【0269】
試験処置は以下のいずれかにより中止されるべきである:
・患者の要求
・試験薬投与を継続することが患者の最善の利益にならないという試験担当医師の判断
・妊娠
・禁止された薬物療法を受けたおよび/または禁止された薬物療法を継続する必要性が示されている
【0270】
患者が、PSDDになることが予想される何らかを有する場合、その患者はEoT来院手順を完了すべきである。
【0271】
試験処置中止後、最低でも略式来院において、診療所への来院時にまたは電話/ビデオ通話来院によって以下のデータを収集すべきである:
・DVT、PE、出血、他の血栓塞栓事象が示唆される徴候および症状
・新規/併用処置
・AE/SAE
【0272】
(実施例2)
ダルテパリンと比較した、抗体1を用いた胃腸がんまたは尿生殖器がん関連血栓塞栓症を有する患者の処置
目的および理論的根拠
本試験の目的は、胃腸(GI)/尿生殖器(GU)がんおよび最近診断されたVTEを有する患者において、抗体1を用いた毎月の処置がダルテパリンの毎日の投与に対して、VTE再発の防止に関しては非劣性であるが、出血率に関しては優れているかどうかを評価することである。本試験は、CA VTEの処置に関する抗体1の世界的規模の登録を支持するものである。
【0273】
CATは、がん患者の推定20%で生じ、悪性疾患を有する患者における2番目に多い主要な死因である。現行の処置は、凝固カスケードにおける1つまたは複数の因子を阻害するものであり、血栓症が有効に防止または処置されるが、一方で止血にも干渉し、その結果、出血のリスクが高まる。出血の恐れおよび利用可能な治療の忍容性の欠如により、著しい処置不十分および転帰不良がもたらされる。
【0274】
これらの問題は、出血のリスクが高まっているGIおよびGUがんを有する患者に関して特に難しいものになる。実際、現行のガイドラインでは、GIがんを有する患者に対するDOACの使用は、DOACを用いた場合LMWHと比較して出血のリスクが大きいことから、警告とすることが推奨されている。LMWHはGIおよびGU腫瘍を有する患者におけるCATを処置するための標準治療であるが、この型の処置では、6カ月間にわたって毎日注射する必要があり、LMWHを用いた処置を受ける患者が治療を継続する可能性が低い。
【0275】
CAT、特に、CATを有する、出血のリスクが高い患者に対する新しい処置を開発することの目標は、現行の作用物質と同レベルの有効性は維持しながら、出血を少なくし、忍容性を高めることである。
【0276】
目的および評価項目
本試験の主要目的は、GIまたはGUがんおよび最近診断されたVTEを有する患者において、抗体1が、無作為化後6カ月間を通したVTE再発の防止に関してダルテパリンに対して非劣性であるかどうかを評価することであり。評価項目は、6カ月間を通した、中央検査機関により決定されたVTE再発の最初の事象までの時間である。
【0277】
本試験の副次的目的は以下の通りである:
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、重大なまたはCRNM出血の複合の防止に関してダルテパリンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、中央検査機関により決定されたVTE再発の最初の事象までの時間である。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、VTE再発を伴わない生存と定義される正味の臨床上の利益、または重大なもしくはCRNM出血事象に関してダルテパリンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、VTE再発、ISTHにより決定された重大な出血事象またはISTHにより決定されたCRNM出血事象の最初の事象までの時間である。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通したVTE再発の防止に関してダルテパリンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、中央検査機関により決定されたVTE再発の最初の事象までの時間である。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、死亡に起因しない永続的試験中止率に関してダルテパリンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、死亡に起因しない永続的試験中止率に関してダルテパリンよりも優れているかどうかを評価することである。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、CRNM出血事象の発現の防止に関してダルテパリンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、ISTHにより決定されたCRNM出血事象の最初の事象までの時間である。
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、重大な出血事象の発現の防止に関してダルテパリンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、ISTHにより決定された重大な出血事象の最初の事象までの時間である
・抗体1が、無作為化後6カ月間を通した、GIにおける重大な出血およびGIにおけるCRNM出血の複合の発現の防止に関してダルテパリンよりも優れているかどうかを評価すること。評価項目は、6カ月間を通した、GIにおけるISTHにより決定された重大な出血事象およびGI CRNM出血事象の最初の事象までの時間である。
・抗体1の安全性および忍容性を、無作為化後6カ月間を通して、ダルテパリンと比べて評価すること、ならびに、抗体1を用いた処置を受けた患者における注射部位反応、過敏症反応、および免疫原性の出現率を評価すること。評価項目は、患者100名・年当たりの率として示される、あらゆる原因による死亡、血管関連死亡、重篤な有害事象、薬物の中止に至る有害事象、他の有害事象、異常な検査室検査など;ならびに、抗体1を用いた処置を受けた患者に関して、
○注射部位反応を有する患者のパーセンテージ
○重症度の状態ごとの、注射部位反応を有する患者のパーセンテージ
○過敏症反応を有する患者のパーセンテージ
○重症度の状態ごとの、過敏症反応を有する患者のパーセンテージ
○ADA形成を有する患者のパーセンテージ
○持続的なADA形成を有する患者のパーセンテージ
○中和抗体(NAb)形成を有する患者のパーセンテージ
である。
【0278】
本試験の探索的目的は以下の通りである:
・抗体1の効果を、VTE再発、重大な出血事象またはあらゆる原因による死亡の複合に関してダルテパリンと比べて評価すること。評価項目は、VTE再発、重大な出血、またはあらゆる原因による死亡の複合評価項目の最初の事象までの時間である。
・抗体1の効果を、動脈血栓塞栓事象(例えば、脳卒中、心筋梗塞、動脈塞栓事象)に関してダルテパリンと比べて評価すること。評価項目は、虚血性脳卒中、または心筋梗塞または動脈塞栓事象の複合評価項目の最初の事象までの時間である。
・抗体1の効果を、VTE再発に適格とする事象(例えば、下肢遠位DVT、上肢DVT、胸部静脈、頭蓋内大脳静脈または頭蓋外大脳静脈、内臓DVTおよび中心静脈カテーテル関連血栓症)以外の静脈血栓塞栓事象に関してダルテパリンと比べて評価すること。評価項目は、DVT再発または他の静脈血栓塞栓事象と以下の静脈血栓塞栓事象:下肢遠位DVT、上肢DVT、胸部静脈、頭蓋内大脳静脈または頭蓋外大脳静脈、内臓DVTまたは中心静脈カテーテル関連血栓症の最初の事象までの時間という複合評価項目の最初の事象までの時間である。
・抗体1の効果を、手順または出血事象に起因するものではない一時的な処置中断の回数および持続時間に関してダルテパリンと比べて評価すること。評価項目は、手順または出血に起因するものではない一時的な処置中断の回数および手順または出血に起因するものではない一時的な処置中断の総持続時間である。
・抗体1の有効性および安全性を、予め規定された患者のサブグループ(例えば、性別、年齢、BMI、民族性、がんの位置、偶発的VTEであるか症候性VTEであるか、PEが存在するか否か、無作為化前にSoCを受けていた日数、ECOGパフォーマンスステータス)においてダルテパリンと比べて評価すること。評価項目は、予め規定された患者のサブグループにおける、6カ月間を通した、中央検査機関により決定されたVTE再発の最初の事象までの時間、ならびに、予め規定された患者のサブグループにおける、6カ月間を通した、ISTHにより定義される重大な出血事象およびCRNM出血事象の最初の事象までの時間である。
・抗体1の効果を、3カ月時点および6カ月時点におけるHRQoLに関してダルテパリンと比べて評価すること、ならびに疑われるVTE再発および疑われる出血事象を提示している患者においてEQ-5D-5Lの経時的変化をダルテパリンと比べて評価すること。評価項目は、総合スコアのベースラインからの変化およびEQ-5D-5L質問票、EORTC QLQ C30質問票、およびTSQM II質問票のドメインごとのスコア;ならびに疑われるVTE再発および出血事象の後のEQ-5D-5L質問票の経時的連続的変化である。
・抗体1のPKを、患者のサブセットにおいて評価すること。評価項目は、抗体1のランダム、ピークおよびトラフ血漿中濃度である。
・抗体1の薬力学(遊離および総FXI、FXI:C、aPTT)を患者のサブセットにおいて評価すること。評価項目は、示されている時点における遊離および総FXI、FXI:CおよびaPTTである。
・抗体1の効果を、患者のサブセットにおいて凝固亢進状態の探索的バイオマーカー(潜在的に、これだけに限定されないが、d-ダイマー、F1.2、TATが含まれる)に関してダルテパリンと比べて評価すること。評価項目は、処置アーム間での、d-ダイマー、F1.2およびTATを含み得る凝固亢進状態のバイオマーカーのベースラインからの変化である。
・VTE費用効果分析(例えば、入院、輸血、止血のためまたはVTEを管理するための手順、外来診察)。評価項目は、医療リソースの利用である。
・薬物標的経路または他の関連性のある遺伝的経路に関する遺伝子の個々の遺伝的変動により抗体1に対する示差的応答が付与されるかどうかを探究するためのDNA評価。評価項目は、遺伝子多型と安全性、有効性、PK、およびPD反応との関連の探索的評価である。
【0279】
試験設計
本試験は、GIまたはGUがんを有する患者におけるVTE再発に対する抗体1の効果をダルテパリンと比較する、無作為化、オープンラベル、盲検化評価項目評価、第3相試験である。
【0280】
処置群への無作為化を、地域、がんの位置(GIがんかGUがんか)、および症候性血栓塞栓事象か偶発的血栓塞栓事象かによって層別化する。
【0281】
本試験は、以下の3つの期間で構成される:1)スクリーニング(最長3日間[72時間])、2)処置終了(EoT)来院までの試験薬による処置期間、および3)試験終了(EoS)来院までの追跡調査期間。
【0282】
集団
成人男性または女性対象で、無作為化前の確定された(組織学的検査、妥当なイメージングモダリティ)切除不能GIまたはGUがんおよび急性VTEの症状発出(適格とするVTEの診断から72時間以内)を有し、LMWHを用いた長期間にわたる処置の必要が示されている対象が試験参加に適格となる;およそ1020名の患者が本試験において無作為化される予定である。
【0283】
選択基準
選択および除外基準をスクリーニング時およびベースライン時に確認しなければならない;本試験への組み入れに適格となる患者は、両方の来院時に以下の基準の全てを満たさなければならない:
・18歳以上または居住国に応じて他の法的成熟年齢以上の男性または女性対象
・無作為化前に、確定されたGIがん(結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん、食道がん、食道胃接合部がんもしくは肝胆道がん)または確定されたGUがん(腎臓がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、もしくは尿道がん)を有し、以下の場合:
○切除不能、局所的に進行した、転移性、または非転移性GI/GUがん、かつ
○試験期間中に治癒的外科手術が意図されていないこと
・確定された症候性もしくは偶発的近位下肢急性DVT(すなわち、膝窩、大腿、腸骨および/もしくは下大静脈[IVC]血栓症)、ならびに/または区域肺動脈もしくはより大きな肺動脈の確定された症候性もしくは偶発的PE、ならびに/または、区域肺動脈もしくはより大きな肺動脈内の確定された症候性PE、もしくは偶発的PE。患者は、適格とするVTEの診断から72時間以内であれば適格となる
・少なくとも6カ月にわたるLMWHを用いた抗凝固治療の必要が示されていること
・書面でのインフォームドコンセントを提出することができること
【0284】
除外基準
以下の基準のいずれかに該当する患者は本試験への組み入れに適格とならない:
・現在の(初発)DVTおよび/またはPEを処置するための血栓除去術、大静脈フィルターの挿入または線維素溶解素の使用
・治療用量のUFH、LMWH、または他の抗凝固薬を用いた前処置から72時間を超えて経過している場合
・無作為化前のVTE処置のために使用したもの(例えば、AF、人工心臓弁、以前のVTE)以外の治療用量の抗凝固薬を用いた処置を継続する必要が示されている場合
・不安定な血行動態(血圧[BP]<90mmHgまたはショック)をもたらすPE
・スクリーニングの4週間以内の急性虚血性または出血性卒中または頭蓋内出血
・スクリーニングの4週間以内の脳外傷または大脳もしくは脊髄の外科手術
・1日当たり>100mgの投薬量のアスピリン、または任意の他の抗血小板薬を単独で、もしくはアスピリンと組み合わせて必要としている場合
・無作為化時またはその前の4週間以内に医療上の注意を必要とする出血
・ベースライン時点で大手術の予定がある場合
・ヘパリン誘導性血小板減少症歴
・原発性脳がんまたは処置を受けていない頭蓋内転移
・スクリーニング時に米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスが3または4である場合
・無作為化時点で平均余命が3カ月未満である場合
・算出されたクレアチニンクリアランス(CrCl)が毎分30mL未満である場合(コッククロフト・ゴールト式)
・血小板数が50,000/mm3未満である場合
・ヘモグロビンが8g/dL未満である場合
・急性肝炎、慢性活動性肝炎、肝硬変;または、臨床的な説明がなくアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が≧3×正常値上限(ULN)および/もしくはビリルビンが≧2×正常値上限(ULN)である場合
・降圧処置にもかかわらずコントロール不良の高血圧(収縮期BP>180mm Hgまたは拡張期BP>100mm Hg)
・スクリーニングからダルテパリンを用いた最後の処置の最長3日後までまたは抗体1の投与の100日後までの試験期間中、有効性が高い避妊措置を使用する意思がないまたは使用することができない妊娠可能な女性(WOCBP)
・妊娠可能な性的パートナーをもつ性的に活発な男性は、ダルテパリンによる最後の処置の最長3日後または抗体1の投与の100日後まで、コンドームまたは他の信頼できる避妊措置を使用することに同意しなければならない。
・妊娠中または授乳中の女性
・試験薬(ダルテパリンを含む)もしくはその賦形剤のいずれか、同様の化学的クラスの薬物に対する過敏症歴、またはダルテパリンのラベルに列挙されている任意の禁忌
・試験担当医師の判断で対象が試験に参加した場合に危害が及ぶリスクが高い何らかの状態を有する対象
・登録前の5半減期以内または予測されるPD効果がベースラインに戻るまでのいずれか長い方の期間中の他の治験(登録されていない)薬物の使用。登録薬の異なる戦略または異なる組合せを試験する学術的な非介入試験または介入試験への参加は許容される
【0285】
投薬量および投与
1日目に患者を以下の処置アームの一方に1:1の比で無作為化する:
・抗体1、150mg、iv、その後、毎月の150mgのsc注射、5カ月間(処置の総持続時間は6カ月である)
・ダルテパリン200IU/kg/日、scで1カ月間、その後、150IU/kg/日、scで5カ月間。ダルテパリンに関して許容される最大1日用量は18,000IUである(処置の総持続時間は6カ月である)。
【0286】
処置群への無作為化を、地域、がんの位置(GIかGUか)およびVTEの症状発出(症候性か偶発的か)によって層別化する。
【0287】
対象を一度層別化および無作為化したら、対象は、対象の処置または投与された用量がその後調整されたとしても、解析目的に関して、その最初の層および無作為化された処置群にとどまる。
【0288】
安全性
身体検査
身体検査には、全身外観、皮膚、頸部(甲状腺を含む)、眼、耳、鼻、のど、肺、心臓、腹部、背中、リンパ節、四肢、筋骨格、血管、および神経の評価を含める。
【0289】
バイタルサイン
バイタルサインには、口腔体温(℃)、BP、および脈拍の収集を含める。
【0290】
検査室評価
ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球(RBC)計数、平均血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、赤血球分布幅(RDW)、分画を伴う白血球(WBC)数、および血小板数を測定する。
【0291】
ナトリウム、カリウム、クレアチニン、BUN/尿素、尿酸、クロライド、アルブミン、カルシウム、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン、バイカーボネート/HCO3、AST、ALT、グルコース、総コレステロール、およびトリグリセリドを測定する。総ビリルビンが>2×ULNの場合、直接および間接反応ビリルビンを区別すべきである。
【0292】
標準的なaPTTならびにプロトロンビン時間/国際標準化比(PT/INR)用の試料を評価スケジュールに記載されている来院時に採取する。
【0293】
比重、タンパク質、グルコース、および血液に関する尿試験紙測定を実施する。尿試験紙検査が異常の場合、顕微鏡検査、WBC、RBC、および沈渣も評価する。
【0294】
心電図(ECG)
ECGをスクリーニング来院、ベースライン来院、EoT来院、およびEoS来院時に実施する。ECGは、試験施設で資格を有する医師が現地で収集し、解釈を行い、適当に署名し、試験施設において保存記録しなければならない。
【0295】
臨床的評価項目
有効性
独立した盲検化されたCECが以下の事象の決定および分類を行う:
・あらゆる原因による死亡
・疑われるDVTおよびPE再発の全エピソード
・疑われる他の動脈血栓塞栓事象(例えば、虚血性脳卒中、TIA、動脈塞栓事象、心筋梗塞[MI])、ならびに下肢遠位DVT、上肢DVT、胸部静脈、大脳頭蓋内または頭蓋外静脈、内臓DVT、および中心静脈カテーテル関連血栓症などの他のVTE
【0296】
試験の主要転帰(VTE再発)は、以下の確定された(CECにより決定された)VTE事象の複合からなる:
・下肢、腸骨静脈および/またはIVCの、確定された新規の症候性または偶発的近位DVT
・確定された新規の症候性PE
・区域肺動脈またはより近位の肺動脈に位置する確定された新規の偶発的PE
・致死的PE(PEを除外することができない原因不明の死亡を含む)
【0297】
確定された動脈血栓塞栓事象(例えば、脳卒中、TIA、急性MI、および動脈塞栓事象)ならびに確定された他のVTE(例えば、新規の下肢遠位DVT、上肢DVT、胸部静脈、大脳頭蓋内または頭蓋外静脈、内臓DVT、および中心静脈カテーテル関連血栓症)を試験の探索的評価項目として解析する。
【0298】
偶発的DVTまたはPEとは、DVTまたはPEの疑いでではなく他の理由で実施されたイメージング検査(例えば、がんの病期分類のためのCT)の間に検出された血栓である。腹部または骨盤内CTの際にIVCまたは腸骨静脈において偶発的に検出された新規の血栓は、DVT再発の診断を確立するために妥当であると考えられる。しかし、総大腿静脈またはより遠位の静脈における偶発的に検出された新規の血栓は、CUSまたは静脈造影法によって確定された場合にのみ、DVT再発に適格とし得る。
【0299】
初発VTEおよびEoS来院までに発現した転帰事象を、無作為化された患者全員において決定する。
【0300】
出血
対象によって報告されたかものまたは試験担当医師によって観察されたものかにかかわらず全ての疑われる出血事象を記録すべきである。
【0301】
全ての報告された出血事象の詳細を、評価項目報告ガイドラインに記載されている通りCECに提出する。これらの詳細には、これだけに限定されないが、
・出血位置
・出血の持続時間
・耳、鼻、もしくはのどの出血に対する耳鼻咽喉科の診察;血尿もしくは尿生殖路の出血に対する泌尿器科の診察;皮膚の出血、軟部組織の出血、もしくは内出血に対する外科の診察;子宮もしくは膣の出血に対する婦人科の診察;頭蓋内出血に対する神経内科もしくは脳神経外科の診察;または眼の出血に対する眼科の診察などの医学的処置の提供元の医療専門家からの推奨の覚書または要約を含めた、出血事象に対する処置
・血液製剤による輸血の回数
・出血の大きさ(例えば、皮膚または皮下血腫の場合はサイズ)
・出血事象時点、最低値、輸血前後の値、および出血事象の消散後のヘモグロビンレベル
・GI出血に対する内視鏡検査などの、出血を評価するために実施されたあらゆる診断検査
・出血を評価するために実施されたあらゆる診断的イメージング、例えば、X線、CT、MRI、または超音波
・CECによる出血事象の決定に有用であり得る任意の他の情報
が含まれ得る。
【0302】
明白な出血事象は、中央検査機関においてCECにより決定される。CECは出血事象をInternational Society on Thrombosis and Haemostasis(ISTH)の定義およびガイダンス(Kaatz et al. 2015)に従って分類する:
【0303】
重大な出血事象
重大な出血事象は、以下のうちの少なくとも1つに合致する場合に確定される:
a)致死的出血
b)以下などの重要な領域または器官における症候性出血:
・頭蓋内(硬膜外、硬膜下、くも膜下、脳内、未確定)
・眼内
・脊髄内
・関節内
・コンパートメント症候群を伴う筋肉内
・心膜
・後腹膜
c)臨床的に明白な出血事象
・ヘモグロビンの≧2.0g/dL(≧1.24mMol/L)の減少に関連するもの、または
・2単位以上の赤血球濃厚液または全血の輸血に至るもの
【0304】
臨床的に関連する重大ではない出血事象
出血事象は、出血の何らかの徴候または症状(例えば、イメージング単独で発見された出血を含め、臨床的状況で予測されるよりも多くの出血)が存在するが、重大な出血の定義の基準に合致しない場合であっても、以下の基準:
・医療専門家による医療介入が必要である。
・入院または介護レベルの上昇に至る
・対面での(すなわち、電話機または電子通信だけでなく)評価が促される
のうちの少なくとも1つに該当する場合、CRNM出血事象に分類する。
【0305】
軽微な(臨床的に関連しない)出血事象
重大な出血事象の基準にもCRNM出血事象の基準にも該当しない他の明白な出血事象は、軽微な出血事象に分類する。
【0306】
出血無し
他の全ての疑われる出血事象(例えば、上記の通り、さらなる措置を伴わない、明白な出血を伴わないヘモグロビンの減少またはイメージングの際の偶発的所見)は「出血なし」に分類する。
【0307】
他の評価
薬物動態
PK用の血液試料を、抗体1に割り当てられた患者のサブセットから、試験薬の投与前および評価スケジュールにおいて規定されている通り一部の試験来院の間に採取する。予定外来院の間または転帰事象(VTE再発および出血事象)のための入院の間に追加的なPK試料を取得することができる。総抗体1(すなわち、FXIと結合したものまたは結合していないもの)の血漿中濃度を検証されたLCMS/MS法によって決定する。
【0308】
薬力学的評価
PD評価用の血液試料を、患者のサブセットに関して、評価スケジュールにおいて規定されている時点で採取する。予定外来院の間または転帰事象(VTE再発および出血事象)のための入院の間に追加的なPD試料を取得することができる。
【0309】
これだけに限定されないが、以下のものを含めたPDバイオマーカーについて試験する:
・遊離FXI-血漿中の抗体1と結合していないFXIを測定する
・総FXI-血漿中の抗体1と結合しているかまたは遊離のFXIを測定する
・aPTT
【0310】
さらに、施設で適当な-70℃/-80℃の冷凍装置が利用可能であるかに基づいて、選択された施設において、患者のサブセットに関してFXI:Cを測定することができる。血漿中のFXI:Cを測定する。
【0311】
免疫原性
イムノアッセイに基づく方法を使用して、抗体1 ADAを検出する。IG用の血液試料を、表4に示されている評価スケジュールにおいて規定されている通り試験薬の投与前および試験来院時に採取する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【0312】
追加的なバイオマーカー(血液)
追加的な血液試料を評価スケジュールにおいて規定されている時点で採取し、潜在的な今後の探索的解析のために保管する。
【0313】
追加的なバイオマーカーには、必ずしもこれだけに限定されないが、以下が含まれ得る:
・D-ダイマー、F1.2、TAT
【0314】
試験の実施中、より関連のあるまたは新規のバイオマーカーが発見される可能性があることが認められているので、この一覧を変更するまたはさらに拡張することができる。これは患者のサブセットにおいて実施することができる。
【0315】
健康関連生活の質(HRQOL)
参加することができる国および施設において、3種の患者報告転帰(PRO)手段を使用して、HRQoLを測定する:
・EQ-5D-5L質問票を使用して、疾患およびその処置の、患者の身体的、感情的、および社会的幸福に対する影響に関する情報を収集する。EQ-5D-5Lは、自己施行式の検証された手段であり、5つの観点にわたって一般的なHRQoLを測定するものである:移動性、セルフケア、ふだんの活動、痛み/不快感、および不安/抑うつ。各観点について5レベルの応答が存在する。さらに、この尺度は、回答者の全体的な健康を0~100点のスケールで測定する視覚的アナログスケール(VAS)スケールを含有する。この手段は、臨床試験において、様々な臨床的状態にわたって、および一般集団の間で広く使用されている(Berg et al. 2010)。
・EORTC QLQ-C30は、がん患者の生活の質を評価するために開発された質問票である。EORTC QLQ-C30は、30項目の質問票であり、28項目について4点のリッカートスケールおよび2項目について7点のリッカートスケールが用いられる。EORTC QLQ-C30は、HRQoLを測定する検証された手段である。この手段は100を超える言語で利用可能である(Farge et al. 2018)。
・TSQM IIは、提供された処置に対する患者の満足度を測定するものである。TSQM IIは、5点のリッカートスケールでの11項目からなり、処置の効果、処置に関連する副作用、処置の利便性、および処置に対する満足度の観点にわたって測定するものである。この手段は100を超える言語で利用可能である(Atkinson et al. 2004)。
【0316】
全てのPROを評価スケジュールに記載されている時点で電子的に施行する。PROは、患者のサブセットにおいて実施する。さらに、できる限りいつでも、疑われるVTE再発および疑われる出血事象の後の引き続く来院時にEQ-D-5Lを記録する。
【0317】
探索的DNA(遺伝学的)試料
この必要に応じた研究についてのインフォームドコンセントを得た患者に関しては、探索的DNA用の血液試料を1日目またはインフォームドコンセントを得た後の任意の時点で取得する。遺伝学的試料の採取は、この試験が保健当局により承認された国においてのみ適用可能である。
【0318】
SARS-COV2(COVID-19)に関連する潜在的リスク
試験処置は、COVID-19に対する天然の防御機構を変更せず、それに対する免疫を発生させるものでもないと予測される。抗凝固治療には、COVID-19の血栓塞栓性合併症を防止することに関して有益な効果があり得る。本試験に組み入れられる患者は、試験期間中、ソーシャルディスタンスおよび他の全ての保護措置を適用しなければならない;COVID-19に罹患した場合、その患者は通常の医療行為に従って管理されるべきである。COVID-19はAE eCRFに記録すべきである。
【0319】
COVID-19パンデミックにより患者の予定来院または予定外来院が妨げられる場合、患者は試験担当医師に連絡すべきである。処置の中断を防止し、試験転帰を確実に報告するために、あらゆる取り組みを行うべきである。必要であれば、バーチャルおよび在宅来院を選択肢として考えることができる。
【0320】
試験期間中のCOVID-19に対するワクチン接種は許容される。
【0321】
試験完了および中止
試験完了および試験後処置
ガイドラインでは、CATにおいて6カ月間の抗凝固治療が推奨されている(Streiff et al. 2018、Key et al. 2019、Khorana et al. 2018、Carrier et al. 2018、NCCN Guidelines 2020)。本試験で意図されている処置の持続時間は6カ月である。試験担当医師は、無作為化後6カ月時点またはPSDDの場合にはそれより前にEoT来院評価を実施すべきである。全ての患者がEoT来院後およそ70日間の追跡調査期間に移行し、転帰事象、他のAE、およびSAEの報告を継続し、また、ADAおよびPD試験を評価するための血液試料の採取を継続する。
【0322】
一部の患者に関しては追跡調査期間中に抗凝固治療を開始または再開する必要があり得る。表5に、追跡調査期間中の試験処置以外の抗凝固薬の開始に関するガイダンスを提示する。
【表5】
【0323】
EoS来院をEoT来院のおよそ70日後に行い、これには、血液試料の採取が含まれる。この来院では、患者の本試験への参加を完結させる前に、患者の全体的な健康および安全性確認について評価する。
【0324】
試験処置の中止
患者に対する試験処置の中止は、プロトコルで予定されている持続時間よりも前に試験薬を永続的に止めた場合に起こる。試験薬の中止は患者または試験担当医師のいずれから開始してもよい。
【0325】
試験処置は以下のいずれかにより中止されるべきである:
・患者の要求
・試験薬投与を継続することが患者の最善の利益にならないという試験担当医師の判断
・妊娠
・禁止された薬物療法を受けたおよび/または禁止された薬物療法を継続する必要性が示されている
【0326】
患者にPSDDになることが予想される何らかが認められる場合、その患者はEoTを完了すべきである。
【0327】
試験処置中止後、最低でも略式来院において、診療所への来院時にまたは電話/ビデオ通話来院によって以下のデータを収集すべきである:
・DVT、PE、出血、他の血栓塞栓事象が示唆される徴候および症状
・新規/併用処置
・AE/SAE
患者がいずれかの来院(複数可)に参加することができないまたは参加する意思がない場合、試験施設のスタッフは、患者、または患者が予め指名した人との定期的な電話連絡を維持すべきである。
【0328】
(実施例3)
血管グラフト血栓症のヒヒモデルにおける抗体1
本実施例は、抗体1が、確立されたヒヒ大腿動静脈(AV)シャントモデルにおいて活発な血餅形成の前またはその間に投与された場合に、血餅形成および下流の成長の停止に関して有効であるかどうかを試験することを目的とするものである。ヒヒモデルは、例えば、Gruber et al. Blood, 1989 Feb 15; 73 (3): 639-42およびCrosby et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol, 2013 Jul;33 (7): 1670-8に記載されている。
【0329】
若齢の雄ヒヒ(体重8~10kg)に慢性大腿AVシャントを適所に設置した。3匹の動物を薬力学について、およびAVシャント実験に関して試験した;1匹の動物は薬力学についてのみ試験した。7つの実験:2つの無処置対照、血餅開始の30分後に1mg/kgで静脈内投与される抗体1の1つの処置、抗体1から24時間後の1つの防止、抗体1から48時間後の1つの防止、および抗体1から144~216時間後の2つの防止。
【0330】
コラーゲンコーティングまたはコラーゲン+組織因子(TF)コーティング血管グラフトの内側および遠位側の血小板およびフィブリン沈着を測定した。111インジウム標識した血小板および125ヨウ素標識したフィブリノゲンを実験前にヒヒに投与した。血栓成長に対する抗体1の効果を測定するための目的の領域である灌流したコラーゲンコーティンググラフトでは、進行性に増大するシャント内の遠位側血栓が生じた(尾部セグメント)。コラーゲン+TFコーティンググラフトは、止血に対する抗体1の効果を測定するための目的の領域である。さらに、血栓形成デバイス内の放射能のリアルタイムガンマカメラ撮像を行って、血小板沈着の量および速度を決定した。120分の灌流後、グラフトを取り出し、後で111インジウムの減衰後の125ヨウ素放射能を測定してフィブリン沈着を決定するために保管した。
【0331】
さらに、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)およびプロトロンビン時間(PT)を血栓症実験の前およびその間に測定し、ベースラインレベルに戻るまで追跡した。出血時間(BT)および出血体積(BV)を、患者への使用に関してFDAにより承認された方法(Surgicutt(登録商標)device、International Technidyne、Piscataway、NJ)を使用して評価した。各血栓症実験の前およびその間に2つのBT/BV測定値を取得した。
【0332】
1mg/kgのiv用量の抗体1により、すぐにベースラインレベルからおよそ2~2.5倍のaPTT延長がもたらされた。aPTTの延長は薬物投与後600時間に至るまで持続し、次いで、ゆっくりとベースラインまで戻った(
図1)。抗体1投与後にPTの変化は観察されなかった。
【0333】
抗体1の投与後に平均出血時間(
図2A)および出血体積(
図2B)に約10%~15%の増大という小さな増大が観察された。この増大は、抗体1についての既存の臨床試験の安全性データに起因して、臨床的に関連しないと考えられる。
【0334】
抗体1を血栓症の開始から30分後に投与した場合、抗体1の投与により、尾部セグメントにおける血小板沈着が停止した。コラーゲンコーティングセグメントについて
図3Aに示され、コラーゲン+TFコーティングセグメントについて
図3Bに示されている通り、抗体1の抗血栓効果は投与後20分以内に開始したと思われる。抗体1による処置の開始後に血栓症を誘発した場合、抗体1により、血小板沈着が消失した。3匹のヒヒそれぞれについてのコラーゲンコーティングセグメントの血小板沈着が
図4A、
図4B、および
図4Cに示されており、3匹のヒヒそれぞれについてのコラーゲン+TFコーティングセグメントの血小板沈着が
図4D、
図4E、および
図4Fに示されている。3匹のヒヒにおいて血小板沈着の下流の増大の停止における抗体1の効果が一貫して観察された。血小板沈着に対する抗体1の効果は、コーティンググラフトセグメントにおいて、特に、創傷の誘発を模倣するためにコラーゲン+TF(
図5B)を用いて血栓症を誘発した後、小さいものであった(
図5Aにおいてコラーゲンのみ)。コラーゲン+TFコーティングセグメントにおける血小板沈着に対する抗体1の効果の欠如は、抗体1の止血節約潜在性(hemostasis sparing potential)と一致する。
【0335】
抗体1により尾部セグメントにおけるフィブリン沈着も減少し、これにより、血栓症の前または血栓症開始の30分後のいずれに投与した場合にも抗血栓有効性があることが示される(
図6C、
図6D)。グラフトセグメントではフィブリン沈着は変更されず、抗体1の止血節約潜在性が再度示される(
図6A、
図6B)。
【0336】
静脈内抗体1を血栓誘導の30分後に投与することにより、薬物投与後20分以内に下流の血栓成長および血小板沈着の増大が停止した。静脈内抗体1は、血栓症の開始前に投与した場合、下流の血栓増大の防止において非常に有効であった。これは臨床データと一致する。コラーゲン+TFコーティンググラフトに関するデータは、FXIを標的化する止血節約効果の概念を裏付けるものであり、したがって、抗体1が、急性血栓症の安全な処置および/または防止に適したものになる。結論として、上記の試験により、静脈内抗体1によってFXI/FXIaを標的化することの、治療の状況および防止の状況の両方における治療的利益の潜在性が実証される。
【0337】
(実施例4)
血管グラフト血栓症を有する患者の処置
目的および理論的根拠
本試験は、AVシャントを用いて処置されたヒト対象において、抗体1が、活発な血餅形成の前またはその間に投与された場合に、血餅形成および下流の成長の停止において有効であるかどうかを試験することを目的とするものである。
【0338】
方法
AVシャントを用いた処置を受けている患者を、単回用量の抗体1、150mg、静脈内(iv)または対照により適当な投薬レジメンで処置する。薬力学的効果を活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)によって測定する。
【0339】
結果
抗体1の半減期が20~30日であることと一致して、抗体1を150mgの用量で単回IV投与することにより、長続きするaPTT延長がもたらされ得る。
【0340】
これらのデータから、抗体1が、血餅が誘導される前に投与されると、血栓の成長を緩徐化し、また血栓のサイズを縮小させる潜在性を有することが示唆される。そのようなデータから、治療の状況および防止の状況の両方において、FXIを標的とする治療的利益も示される。
【0341】
(実施例5)
血管グラフト血栓症を有する患者の処置
目的および理論的根拠
本試験は、漸増濃度の抗体1の、コラーゲンまたはトロンビン受容体活性化ペプチド-6(TRAP-6)を用いた刺激後の血小板凝集に対する効果を、ビヒクルおよび実薬対照(アブシキシマブ、抗GP2b3a)と比較して試験するため、ならびに両方の作用物質のトロンビン生成に対する効果を決定するために設計された。
【0342】
方法
EDTAおよびシトレート管中に、全血を取得した(6名の健康なドナー)。検体にビヒクル、抗体1(250nM、500nM、または1000nM)、またはアブシキシマブ(50nM)をスパイクした。コラーゲン(1μg/mL)またはTRAP-6(8μM)を使用した誘導後、マルチプレートインピーダンス血小板凝集計を使用して血小板凝集を記録した。血小板凝集についての曲線下面積(AUC)を任意の凝集*時間(AU*min)で決定した。トロンビン生成も、上記の抗体1およびアブシキシマブの濃度で、血小板に富む血漿中、Thrombinoscope CAT(Calibrated Automated Thrombogram;Stago CH S.A.)および組織因子試薬(1pM)を使用して測定した;蛍光を自動化プレートリーダー蛍光光度計によって測定した。
【0343】
結果
抗体1では、コラーゲン(
図7A)またはTRAP-6(
図7B)によって誘導された血小板凝集に対して阻害効果も刺激効果も示されなかった。対照的に、アブシキシマブではコラーゲンにより誘導された血小板凝集の有意な低減が観察された。抗体1により、トロンビン生成の遅延時間およびトロンビン生成のピーク濃度までの時間の有意な遅延がもたらされた;アブシキシマブにはトロンビン生成に対する効果はなかった。
【0344】
重要なことに、これらの結果から、FXI/FXIaを抗体1によって標的化することにより、血小板凝集は影響を受けないが、トロンビン生成が阻害されることが示される。
【配列表】
【国際調査報告】