(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】とりわけ水素のための圧力容器および蓄圧システムならびにその製造
(51)【国際特許分類】
F17C 1/06 20060101AFI20241024BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20241024BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F17C1/06
F17C13/02 301Z
F16J12/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527776
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022082294
(87)【国際公開番号】W WO2023089038
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】102021130123.8
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524177635
【氏名又は名称】マフンケン・アンド・パートナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】マフンケン,クラウス-リューダー
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA01
3E172BC04
3E172BC05
3E172BC06
3E172BD01
3E172BD03
3E172BD10
3E172DA35
3E172DA36
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA22
3E172EA23
3E172KA02
3E172KA22
3E172KA23
3J046AA09
3J046AA11
3J046BA03
3J046BD02
3J046DA05
(57)【要約】
本発明は、第1の態様では、ガス、とりわけ水素を収容および保存するための圧力容器に関する。この圧力容器は、センサ要素および補強要素を有する外側の被覆を備え、情報および電場の、場合によっては外側の被覆に存在する、送信器および/または受信器を備えた金属製の基体を有する。さらに本発明は、そのような圧力容器を有する相応の蓄圧システムならびに燃料電池および本発明による圧力容器を備えた機構ならびにこの圧力容器の製造方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側にある面がガスと接触する金属製の基体(21)と、少なくとも一部の領域での外側の被覆とを含む、ガス、とりわけ水素を収容および保存するための圧力容器(20)であって、
前記基体(21)が、少なくとも1つの入口(14)および少なくとも1つの出口(14)を有し、かつ、前記圧力容器(20)が、場合によっては少なくとも1つの安全弁(15)を含み、
前記少なくとも一部の領域での外側の被覆が多層被覆であり、
前記多層被覆が、前記基体(21)に配置された第1の層(3)を備えており、
前記第1の層(3)が、状態量を捕捉するための多数のセンサ要素(5)を含み、
前記多数のセンサ要素(5)が、エラストマー(4)の内部で互いに離隔して位置固定されて配置されており、かつ、前記多層被覆が、前記第1の層(3)の外側に配置されている第2の層(6)を備えており、
前記第2の層(6)が、マトリクス(7)および格納されたテンションコード(8)のような補強要素(8)を有し、
場合によっては、前記第1の層(3)および/または第2の層(6)に、情報を受信するための受信器(16)および電磁波の電場を送信するための送信器が配置されており、前記センサ要素(5)と、前記受信器(16)と、前記送信器とが、信号技術によって相互に接続されている、圧力容器(20)。
【請求項2】
永続的な電気接触を有するか、または、前記圧力容器(20)と固定的にもしくは取り外し可能に接続された局所的な電流源を有する、請求項1に記載の圧力容器(20)。
【請求項3】
前記テンションコード(8)がアラミドから形成されており、場合によってはイソシアネート補剛(12)を有する、請求項1または2に記載の圧力容器(20)。
【請求項4】
金属製の前記基体(21)が、鋼製、とりわけ特殊鋼製の基体(21)である、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力容器(20)。
【請求項5】
付着促進層(2)が、センサ要素(5)を内包する第1の層(3)と、前記基体(21)の金属、とりわけ特殊鋼との間に配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の圧力容器(20)。
【請求項6】
前記送信器および/または前記受信器(16)として、前記第2の層(6)に金属ワイヤまたは金属被覆糸(9)が存在しており、場合によっては、前記金属ワイヤまたは金属被覆糸(9)が前記テンションコード(8)の一部である、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧力容器(20)。
【請求項7】
前記テンションコード(8)が、アラミド製の個々のフィラメント(11)の繊維束(10)であり、個々の前記繊維束(10)がイソシアネート(12)によって補剛されており、それだけでなく前記テンションコード(8)が、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス被包(13)を有し、場合によっては前記テンションコード(8)の一部として金属ワイヤまたは金属被覆糸(9)をさらに有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の圧力容器(20)。
【請求項8】
前記被覆が、前記基体(21)を実質的に包囲しており、とりわけ全体的に被覆している、請求項1から7のいずれか1項に記載の圧力容器(20)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の圧力容器(20)を含む蓄圧システム。
【請求項10】
電場を生成または伝送するための装置、とりわけ電場を生成するための交流場発生器をさらに有する、請求項9に記載の蓄圧システム。
【請求項11】
前記センサ要素(5)によって得られたデータを処理するための、とりわけ前記センサ要素(5)の互いに対する位置の相対的な変化を決定するための管理ユニット(17、19)をさらに含む、請求項9または10に記載の蓄圧システム。
【請求項12】
前記蓄圧システムおよび前記センサ要素(5)によって決定された状態量の変化の可視化のための出力ユニットを備えた、請求項9から11のいずれか1項に記載の蓄圧システム。
【請求項13】
とりわけ前記安全弁(15)を介して前記圧力容器(20)の内部にある前記ガスを抜くことを制御するための制御ユニットを包含する機構をさらに含む、請求項9から12のいずれか1項に記載の蓄圧システム。
【請求項14】
水素を貯蔵するための請求項9から13のいずれか1項に記載の蓄圧システム。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか1項に記載の圧力容器(20)の製造方法であって、
a.前記基体(21)を準備すること、
b.前記基体(21)を第1の層(3)で少なくとも部分的に被覆し、前記第1の層(3)が、状態量を捕捉するための多数のセンサ要素(5)を含み、前記多数のセンサ要素(5)が、エラストマー(4)の内部で互いに離隔して位置固定されて配置されており、かつ、前記第1の層(3)が、場合によっては付着促進層(2)によって前記基体(20)の外側にある表面に施されること、
c.前記第1の層(3)を有する前記基体(21)の周りにテンションコード(8)、とりわけアラミドテンションコードを巻き付ける、とりわけ前記テンションコード(8)を交差するように巻くことによって巻き付けること、
d.前記テンションコード(8)に固定用マトリクスおよび包埋剤(7)を施してそれを硬化し、場合によっては前記第2の層(6)に外層を施してそれを硬化すること、を含む製造方法。
【請求項16】
前記基体(21)に施すための前記第1の層(3)が、フィルムに前記多数のセンサ要素(5)を取り付け、続いてエラストマーフィルムを施し、それに続いてそれらを積層処理、例えば加硫することによって得られる、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
燃料電池および請求項1から8のいずれか1項に記載の圧力容器(20)、または、請求項9から14のいずれか1項に記載の蓄圧システムを備えた機構。
【請求項18】
前記機構が燃料電池式駆動装置を有し、とりわけ前記機構が、自動車、商用車、鉄道、船舶、ならびに飛行機およびドローンである、請求項17に記載の機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様では、ガス、とりわけ水素を収容および保存するための圧力容器に関する。この圧力容器は、センサ要素および補強要素を有する外側の被覆を備え、情報および電場の(場合によっては外側の被覆に存在する)送信器および/または受信器を備えた金属製の基体を有する。さらに本発明は、そのような圧力容器を有する相応の蓄圧システムならびに燃料電池および本発明による圧力容器を備えた機構ならびにこの圧力容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの保存が、とりわけ(特に、具体的には)水素を保存するための圧力容器が、知られている。蓄圧システムは、一般的にガス貯蔵およびとりわけ水素貯蔵のために、非常に様々な用途分野で用いられる。これらの用途分野は、車両分野、航空機を含み、しかし工業および医療も含む。これに関し、できるだけ場所をとらないようガスを高圧下で蓄圧器に貯蔵するため、通常はガスが強く圧縮されている。周囲条件、つまり周囲温度および周囲圧力で貯蔵される化石液体燃料とは違い、ガスおよびとりわけ水素は、十分な量のガスを圧力容器に貯蔵するため、非常に高圧で圧縮される。この場合にこの蓄圧システムは、必要な安全規則を満たすために相応に形成されていなければならない。このことが、この蓄圧システムにはなかでも相応の使用状況での非常に様々な機械的、熱的、および化学的な負荷に関して適用される。エレクトロモビリティの枠内で、とりわけ水素を貯蔵する場合、この観点が特に重要である。自動車、商用車、鉄道、船舶、および航空機、例えば飛行機で用いられるような燃料電池式駆動装置は、安全で、軽量で、安定しており、かつ信頼性の高い、圧力容器の形態でのタンク容器を必要とする。
【0003】
高い安全基準をもつ相応の輸送容器および定置式設備も、この高い安全基準を満たす相応の圧力容器を必要とする。この場合、蓄圧システムおよび圧力容器の状態量の相応の変化を捕捉するため、とりわけ、圧力容器および蓄圧システムの永続的な監視が重要である。この状態変化は、様々な事情、例えば機械的、熱的、および化学的な負荷によって発生する可能性があり、これらはとりわけ容器形状の変化を引き起こす。そのような現象、状態、または影響は、危機的状態、とりわけガスの望ましくない流出、圧力容器の割れおよび破裂を回避するために迅速な措置を必要とする。
【0004】
他方で、この蓄圧システムを、最適な空間活用および高い安全基準と共に、できるだけ軽量に、それにもかかわらずロバスト性があるように提供するという必要条件がある。この必要条件は、相応の圧力容器およびその製造に使用される材料への高い基準および要求を生じさせる。貯蔵器内の高圧縮ガスのゆえに、このシステムは強い負荷に曝されており、この容器は、充填中に、しかし保存時にも、例えば高い温度差、荷重変動などに基づく極端な変化を受ける。
【0005】
材料はまた、内包するガスに対して相応の浸透バリアを有するように選択されなければならない。他方で、材料は高圧に耐えなければならない。
【0006】
現在、圧力容器およびここではとりわけ水素貯蔵用圧力容器は、定置式および移動式の使用のための様々なタイプに区別される。これらのタイプは、例えば機械的、熱的、および化学的な特性を維持したままでできるだけ大きな重量削減を得るために、構造および使用される材料が異なっている。水素蓄圧器のタイプは以下のとおりである。
【0007】
タイプ1は、定置式の使用および輸送に適している。これは一般的に、従来の構造方式の肉厚の鋼製ボンベであり、最高200bar(20mPa)の圧力に耐える。
【0008】
タイプ2は、タイプ1の発展形態であり、この場合、金属構造に、炭素繊維またはガラス繊維による所々部分的な平面的な被覆が施されている。このタイプも、輸送および定置式の運用に、しかし特に水素ステーションのための使用に適している。このタイプは、最高1,000bar(100mPa)のより高い圧力下で動作され得る。
【0009】
タイプ3は、複合体が全体に巻き付けられた金属基体を備えており、一般的にはアルミニウム基体と、炭素繊維による被覆とから成る。このタイプは、現在の燃料電池技術で標準的な実施形態であり、350~700bar(35~70mPa)の圧力に対し設計されている。上で挙げたタイプに対するこのタイプの利点は軽い重量であり、したがって対応するタイプの圧力容器は車両での使用に適している。
【0010】
タイプ4は、タイプ3の発展形態であり、この場合、金属基体が、プラスチック、大抵はポリエチレンまたはポリアミドから成るコアと取り替えられている。このタイプも350~700bar(35~70mPa)の圧力に耐えることができ、タイプ3に対して明らかな重量削減が達成される。
【0011】
タイプ5は変形形態であり、これは基体を有さず、樹脂マトリクス中の炭素繊維だけから成っており、このタイプ5も350~700bar(35~70mPa)の圧力に対し形成されている。
【0012】
この区別だけでなく、蓄圧器および圧力容器は、貯蔵媒体および用途によっても区別される。つまり、液化燃料ガス用LPG容器、圧縮天然ガス用CNG容器、および圧縮水素用CHG容器に区別される。相応の用途でも区別され、例えば工業ガス圧力容器、スキューバダイビングタンクおよび呼吸空気圧力容器、液化ガス容器が区別され、例えば水素圧力容器は工業用途と移動式用途でも区別される。
【0013】
とりわけ移動式用途では重量が特に重要である。それゆえ重量削減の際に十分な強度および安全性を保証するため、上で挙げたタイプ3およびとりわけタイプ4の水素圧力容器が移動式分野で適用される。その際、一般的に浸透バリアは金属またはプラスチックをベースとする基体によって引き受けられ、その一方で炭素繊維によって補強された被覆が、とりわけ外部からの圧力負荷および機械的負荷を引き受ける。
【0014】
このような圧力容器は、長期の負荷の際に高い動作安全性を保たなければならず、これに関し圧力容器は絶え間ない負荷変動を受ける。
【0015】
相応の蓄圧システムおよび圧力容器では、現在、ガス圧力を監視するためにガス圧力センサが用いられている。この圧力容器はそれに加え、場合によってはガスを管理下で抜くために安全システムを有する。タイプ3およびタイプ4の容器では、蓄圧器の負荷状態を監視するため、繊維複合材料にセンサが装備され、このセンサは、繊維複合部材に直接的に積層処理されて組み込まれている。DE102006035274B4からは、センサユニットを備えた繊維複合部材、例えば圧力容器が説明されており、このセンサユニットは、部材の繊維複合層の間に完全に組み込まれている。それだけでなく、この容器のための相応の監視システムが知られており、この監視システムでは監視のための相応の圧力センサが用いられる。
【0016】
異なる用途分野、移動式用途、定置式用途、工業用途、車両用途などに基づき、貯蔵システムの安全性への異なる要求が生じる。それだけでなく、蓄圧器の負荷状態を変化させるあり得る影響因子が異なる。とりわけ、車両製造、航空機製造などで用いられるような移動式圧力容器に対する負荷状態に適用される。移動式の実施形態では、目標は、最小の容器重量および大きさで最大の燃料供給を達成することである。これに相応して、曝し得る圧力を維持したままで重量削減を達成するために、様々なタイプが引き続き開発されている。ただし、ここではなかでも、危険な状況を引き起こし得る突然で異常な変化が考慮されなければならない。ここでは例示的に、移動式用途に関し、車両事故、外部からの影響、および接触または衝突などの際の損傷を挙げておく。さらに材料弱化が考慮されなければならず、したがって迅速かつ簡単に状態の変化が捕捉されて、危険な状況が認識されなければならない。とりわけ水素の場合、水素の流出および爆鳴気の形成可能性のような危険な状況を防ぐために、危険な状況の早期の認識および相応の防止策が必要である。
【0017】
これに相応して、被覆を有するかまたはそれどころか全体的にプラスチックと炭素繊維もしくはガラス繊維をベースとする繊維補強材とから成る貯蔵器タイプは、制限的に使用可能である。マトリクスシステムには、機械的、熱的、および化学的な負荷を限定的にしかかけることができない。むしろ、高性能繊維を用いた複合材料は、非常に衝撃に弱くて壊れやすく、安全を脅かすリスクである。繊維、複合材料、または積層体への過負荷、機械的な影響は、場合によっては視覚的に認識できないにもかかわらずリスクである損傷に至り得る。とりわけ、材料のそのような損傷は、動作中に確認できるのではなく、損傷を検出するための解体および高い技術的努力を必要とする。
【0018】
これについて、とりわけ利用時に危機的状況を捕捉するための様々な解決策が提案されている。なかでもDE102018115540A1は、蓄圧システムに作用する荷重、圧力、伸び、または温度を捕捉、記録、および評価するために、接触部を有する抵抗材料から成るピエゾ抵抗特性層をベースとする状況捕捉外被を備えた蓄圧システムを説明している。
【0019】
CN106696315Aは、3次元複合材料のインテリジェント監視のための耐圧ガスボンベおよびその製造方法に関する。WO2007/076026A2は、車載水素保存容器のための安全特性を説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】独国特許発明第102006035274号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102018115540号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第106696315号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/076026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の課題は、伸縮性をもつ水素用の圧力容器、とりわけ安全圧力容器の提供であり、この場合、容器を永続的に監視するための多数のセンサが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様では、ガスおよびとりわけ水素を収容および保存するための圧力容器が提供され、この圧力容器は金属製の基体を含む。この金属の内面が、圧力容器内にあるガスと接触する。この圧力容器はさらに、基体を取り囲む外側の被覆を含む。基体自体が、入口および出口を備えており、それだけでなく場合によっては少なくとも1つの安全弁を有する。入口弁と出口弁は、別々の部品または1つの部品であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
被覆は、金属製の基体の外側で少なくとも一部の領域に形成されており、かつ多層被覆である。これに関し、基体に配置された第1の層は、状態量を捕捉するための多数のセンサ要素を有する層であり、この多数のセンサ要素は、エラストマーの内部で互いに離隔して位置固定されて配置されており、このエラストマーは第1の層の構成要素である。この多層被覆の、第1の層上にあるように配置された第2の層には、マトリクスに格納された補強要素、とりわけテンションコードが存在する。場合によっては、第1および/または第2の層に、電場を送信するための送信器および場合によっては情報を受信するための受信器が配置されており、このセンサ要素と、受信器と、送信器とが、信号技術によって相互に接続されていることが好ましい。これに関し一実施形態では、送信器および/または受信器が、外側の被覆の1つの層または複数の層に存在し得る。別の一実施形態では、送信器および/または受信器が圧力容器の外に配置されており、詳しくは、センサ要素がその情報を信号技術により、この情報を送信器が受け取るように伝え得るよう配置されている。つまり一実施形態では、送信器および受信器が、例えばハウジングまたはその類似物内に配置され得る。これはとりわけ、送信器および/または受信器を交換することなく、圧力容器の交換を可能にする。場合によっては送信器を介してセンサ要素のエネルギー供給が行われてもよい。その代わりに、周囲にあるような、自然に存在しているエネルギーが利用されるので十分であり得る。まさにスマートダストセンサと呼ばれるセンサには、エレクトロスモッグと呼ばれる電場によって与えられるエネルギー供給で十分である。
【0024】
当業者には、送信器および受信器の相応の配置が知られており、とりわけ、圧力容器の外、つまり相応の層の外でのこれら要素の配置も知られている。
【0025】
送信器は、一実施形態では、1つの所定の周波数で送信する送信器であることができ、かつ受信器は、基体の状態についての相応のデータを得るため、周波数変化をセンサによって受け取る受信器であることができる。その代わりに送信器は、圧力容器の状態についてのデータ捕捉を相応に可能にする周波数偏移を検出するため、例えば散乱線として様々な周波数を送信する送信器であり得る。
【0026】
送信器および/または受信器が、層の少なくとも1つに存在している場合、一実施形態では、この送信器および/または受信器は、外側の被覆内に相応の電場を形成する導電構造の形態で存在している。これに相応して、送信器および/または受信器としての金属ワイヤまたは金属被覆構造が存在し得る。これに関し一実施形態では、この送信器および/または受信器が、テンションコードのような補強要素も存在している層に存在している。これに関し一実施形態では、金属ワイヤまたは金属被覆構造のような導電材料が、例えば金属被覆糸であることができ、テンションコード、例えばアラミドテンションコードの一部であることができる。
【0027】
金属製の基体は、とりわけ電場の除電器として、例えば中性線として役立ち得る。つまり金属製の基体は、相応のセンサ要素に例えばエネルギーを供給する交流電場の力線のための基準電位の形成を可能にする。例えば、外部電極と金属基体の間で相応の交流場が形成され、この場合、この金属基体が相応に電荷を除去する。
【0028】
一実施形態では、センサ要素がトランシーバである。トランシーバは、データまたは信号を受信することも送信することもできる装置を意味する。これはとりわけ、トランシーバとして第1の層に多数で存在しているナノセンサである。当業者には、相応のセンサ要素が知られている。このセンサ要素は、一実施形態では、相互に通信し、とりわけ互いに対する位置をやり取りし、かつ受信器に送信するようなセンサ要素である。これに関し受信器へのこの信号伝送は、センサが永続的に互いに対する位置を伝えるか、または位置の変化だけを受信器を介して信号伝送の形態で送信するものであり得る。
【0029】
とりわけ適したセンサ要素は、背景技術で説明したようないわゆるスマートダスト要素である。これは、トランシーバとしてデータを受信、処理、および送信し得るナノサイズのセンサである。この要素へのエネルギー供給は、電気容量性伝送によって簡単に行われ得る。この場合、相応のデータを生成および送信するには、ごく僅かなエネルギー量しか必要ない。一部では、センサに十分なエネルギーを供給するのに、「エレクトロスモッグ」として知られた電場で既に十分である。一実施形態では、エネルギー供給が、交流場発生器を使って行われ、この交流場発生器は数mWの電気エネルギーしか消費しない。例えば10μsごとに交流電場から相応の電荷が伝送される。
【0030】
この少ないエネルギー量、例えば100nAの電流強度およびセンサ要素ごとに約100nWの少ない消費電力により、火花の発生はあり得ない。
【0031】
このセンサ要素は、相互通信により、およびそれによって認識可能な互いに対する位置により、非常に迅速に、圧力容器の状態変化の可能性の通知を可能にする。これにより、圧力の影響、温度の影響、または機械的な影響に基づく容器本体の幾何学的変化および情報、つまり不均一な変形が通知され得る。したがって、圧力容器を安全技術によって全体的に監視することが可能である。
【0032】
このセンサは、センサの幾何学的位置と共に、場合によっては温度および圧力もセンサ捕捉し得る。したがって個々の独立したセンサは必要ない。
【0033】
詳述したように、送信器の使用周波数に依存して、所定の周波数の周波数変化のような追加的な情報およびデータが、センサによって受信器に伝えられ得る。この相応のデータは、例えば温度、圧力、またはそれに類することについての情報をセンサ捕捉し得る。
【0034】
相応のデータは、この場合、受信器を介して転送され、かつ相応に処理される。場合によっては、このデータが安全技術に関する情報、例えば設定された限界値を超える幾何学的変化を伝える場合にだけ、データが伝送され得る。
【0035】
安全技術的に重要なデータの場合、相応の警報信号が計算ユニットおよび監視ユニットに送信され、そしてこれらのユニットがさらなるアクションを作動させる。その際、信号の送信は、通常の周波数を介して外部の本部またはクラウドへ行われ得る。例えば、Dust Network Inc.および日立といった会社の適切なスマートダスト要素が知られている。
【0036】
これに関し一実施形態では、圧力容器の永続的な電気接触が存在しており、場合によっては局所的な電流源が固定的にまたは取り外し可能に圧力容器と接続され得る。詳述したように、「エレクトロスモッグ」として知られる電場も、センサ要素の必要なエネルギー供給には十分であり得る。
【0037】
つまり、送信器/受信器または電源と、圧力容器との間にワイヤレス接続が存在することができ、しかし圧力容器と相応のセンサと管理ユニットとの間の有線接続も形成され得る。
【0038】
一実施形態では、基体は、水素に対して特に耐拡散性である鋼、とりわけ特殊鋼から形成されている。特殊鋼基体は例えば以下のように製造され、つまり、溶接されたおよび絞り加工された円筒の両側に、同様に特殊鋼から仕上げられた半球要素を取り付けて溶接したものが使用される。この特殊鋼基体に、充填するおよび空にするための連結部ならびに緊急排出口、通常は安全弁が付けられる。これに関し、例えば安全弁の形態でのこの緊急排出口は、センサ要素のデータを受信および処理する計算ユニットによって制御され得る。この場合、緊急事態には、安全性に関わる状況を克服するために非常に迅速に相応の圧力放出が実施され得る。
【0039】
金属製の、例えば貴金属製の基体は一般的に伸縮可能であり、この伸縮性は壁厚に依存する。特殊鋼基体は、例えば約200kN/mm2の高い弾性率を有する。
【0040】
とりわけ、基体は一般的に被覆より大きな伸縮または伸縮性を有する。被覆は、容器の安定性の向上に役立つ。基体は、低温および高温に、それも通常の特殊鋼によって達成される-200~250℃の範囲で適性があることが好ましい。水素ガスをタンクに入れる工程では、タンクに充填するために強い冷却が行われるので、低温適性が必要である。同じことが、高い高度で動作する航空機での使用時にも当てはまる。
【0041】
ベース容器またはその入口および/もしくは出口に適切な弁を設置でき、この弁は、危機的状態(臨界状態)の検出の際、容器を、安全弁だけでなくこれらの弁を介しても、開放することができる。つまり圧力容器は、ある程度の限界範囲までは、詳しくは容器の所定の弾性伸び範囲では、危機的状態(臨界状態)に達することなく変形でき、この所定の弾性伸び範囲は、荷重変動および容器内の圧力に基づいて判明する。危機的状態に達して初めて、例えばこの変形の所定の限界値を上回って初めて、相応の修正が管理ユニットを介して行われる。これに関し、この圧力容器に、追加的な別々の独立した圧力センサまたはピエゾ要素または歪みゲージなどを設置しなくてよいことが有利である。容器が危機的瞬間に非気密性にならないので、または全壊前に予め既に水素ガスが抜かれるので、水素検出器も不要である。
【0042】
一実施形態では、さらに、水素の緊急排出の枠内で、追加的に例えば圧力カートリッジの形態で窒素が存在している。それにより、例えば水素が完全にシステムから取り除かれ得る。
【0043】
航空機では、場合によっては高度センサが存在し得ることにより、例えば墜落の場合に、あり得る重力加速度を検出して、的確な自動減圧が管理ユニットを介してまたは直接的に指示される。
【0044】
本発明によれば、基体に配置された第1の層に多数のセンサ要素が存在している。これに関し一実施形態では、基体の金属へのこの第1の層の付着が付着促進層によって行われる。
【0045】
これに関し一実施形態では、センサ要素が第1のフィルム上に分散され、続いて第2の好ましくはエラストマーフィルムによってサンドイッチ状に覆われる。その後、フィルムとセンサ要素のこの組合せが、適切な設備によって、例えば連続エラストマー・テープ・フィルム加硫によって加硫される。これにより、センサ要素が位置固定されて離隔して存在する相応のフィルムまたはマットが得られ、このフィルムによって特殊鋼基体の相応の被覆が行われ得る。このような説明したエラストマーフィルムの適切な付着剤は、例えばLord社のChemosilをベースとする付着剤および/またはイソシアネート接着剤もしくはPU接着剤である。
【0046】
とりわけ、エラストマーとして、EPDM材料またはEPM材料をベースとするエラストマーが適している。これらの接着剤は、秀でた低温安定性および高温安定性を有し、したがって相応の使用が低温でも可能である。
【0047】
しかしその代わりに、HNBRゴムをベースとする材料もエラストマーとして用いられ得る。
【0048】
一実施形態では、補強要素が、例えばベルト技術から知られているようなテンションコードまたはコードである。このような材料は、とりわけ、第1の層の外側に配置された第2の層における補強要素として適している。一実施形態では、このテンションコードが、アラミド繊維を有するかまたはアラミド繊維から成っている。適切なアラミドは、とりわけアラミド、芳香族ポリアミド、例えばメタアラミドまたはパラアラミド、例えばポリ-p-フェニレンテレフタルアミドであり、製造者はなかでもケブラー(登録商標)(DuPont)、トワロン(登録商標)およびテクノーラ(帝人トワロン)(p-アラミド)、ならびに帝人コーネックス(m-アラミド=ポリ-m-フェニレンイソフタルアミド)である。
【0049】
これに関し一実施形態では、このテンションコードが交差するように巻かれ、つまり補強要素、例えばテンションコードの少なくとも2層が形成されている。この巻きの巻き張力および交差角度は、基体の大きさおよび幾何形状に合わせられる。
【0050】
このテンションコードの代わりに、強いフィルムテープ、例えばUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)をベースとするフィルムテープ(例えばEndomaxから入手可能)も用いられ得る。
【0051】
一実施形態では、補強要素を使ってテンションコードを形成する繊維材料が、事前延伸によって所望の伸び寸法にされ得る。ここで適切な方法は当業者に知られている。
【0052】
とりわけアラミドテンションコードの場合、炭素繊維のような現況技術の繊維と同等の秀でた引張強度が達成され得る。ただし炭素繊維に比べてより高い破断伸びを達成でき、したがってアラミドテンションコードが用いられるのが有利である。
【0053】
実際に、とりわけ交差するように巻かれて第2の層に存在する補強要素としてアラミドテンションコードを、および水素圧力容器として特殊鋼基体を備えた実施形態が、本発明に基づいて適している。
【0054】
一実施形態では、この補強要素、例えばテンションコードおよびとりわけアラミド繊維から形成されたテンションコードが、さらに、本発明による送信器および/または受信器として役立ち得る金属ワイヤまたは金属被覆された繊維もしくはワイヤを有し得る。それだけでなくアラミド繊維をベースとする補強要素の耐衝撃性および機械的負荷は、炭素繊維要素に対して改善されており、炭素繊維要素は、圧潰負荷に対して脆弱であり、かつ相応に早期に折れる。これはとりわけ、視覚的にすぐには認識できない損傷の場合に利点を有する。
【0055】
炭素繊維部材はさらに、アラミド繊維を用いた部材より悪いCO2フットプリントを有する。とりわけ炭素繊維部材の製造は、多大な手間をかけて高圧および真空段階によって樹脂マトリクスが繊維束(フィラメント)に注入されなければならず、かつ約400℃の温度が必要なので、非常に費用がかかる。
【0056】
それゆえアラミド繊維の使用は、より安価に、より簡単に実施可能である。この補強要素により、高温および低温の際の高い安定性を達成でき、この補強要素を有する外側の被覆は、秀でたしなり挙動を有する基体の引張強度より高い高引張強度を有する。本発明による材料は、軽量、優れた耐摩性、耐切断性、流れ阻止安定性(Stauungsstabilitat)、優れた衝撃靭性、および衝突エネルギー吸収の場合に、難燃性である。
【0057】
これに関し一実施形態では、ねじられたおよび撚られた実施形態でのマルチフィラメントの形態でのテンションコードが、テンションコードとして第1の層の表面に巻かれ、通常は2~10本のテンション糸が平行に、例えば15~35度の間の角度で交差するように巻かれている。
【0058】
補強要素を固定させるため、適切な固定用マトリクスが用いられる。このようなマトリクスは知られており、例えば、マトリクス包埋剤として用いられる難燃性エポキシ樹脂が適している。難燃性は、場合によっては水酸化アルミニウムのような添加剤によって達成される。適切なエポキシ樹脂は、例えばビスフェノール-A-ジグリシジルエーテルをベースとするエポキシ樹脂である。温度安定性および衝撃靭性をもつプラスチックを、固定されたテンションコードまたは補強要素と共に一般的には留めるため、例えばエピクロロヒドリンおよび硬化剤の添加により、縮合反応が開始される。これはそれだけでなく容器本体全体に高い強度を付与する。場合によってはエポキシ樹脂が黒っぽく染められることにより、テンションコード、例えばアラミドテンションコードが、可視光および不可視光、例えばUV光線の光の作用から保護される。縮合反応では、通常は硬化剤、例えばアミノベンゼン、ジエチルテトラアムテタミン(Diethyltetraamtetamin)、またはヘキサヒドロフタル酸無水物が用いられる。イオン付加反応では、安全部材の高い要求を満たすプラスチックマトリクスが生じ得る。一実施形態では、アラミドテンションコードを使用する場合、アラミドテンションコードがイソシアネートによって補剛されることにより、繊維要素に樹脂マトリクスを浸透させる必要はない。樹脂マトリクスにより良く付着するため、テンションコードが熱硬化TFL層に被包される。被包のためのおよびイソシアネートとしての適切な材料は知られている。
【0059】
場合によってはさらに、ロバスト性をもつ外層、例えばHDIイソシアネートをベースとする外層が存在し得る。この層は並外れた耐摩性および耐衝撃性をもっている。
【0060】
一実施形態では、アラミドテンションコードを補強材として有する相応の圧力容器が存在することができ、この場合、アラミド製の個々のフィラメントの繊維束が存在している。場合によっては、このアラミドテンションコードが追加的に前述の金属ワイヤまたは金属被覆糸を有する。この繊維束は、場合によってはイソシアネートによって補剛され、それに加えてレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス材料で被包される。
【0061】
一実施形態では、被覆が基体を実質的に全体的に包囲する。
【0062】
本発明による圧力容器は、現況技術に対して様々な利点を有し、つまり、とりわけ特殊鋼・アラミド圧力容器として優れた伸縮性および変形性を示す。使用する材料は安価であり、かつ製造は炭素繊維に対して非常に簡略化されている。この圧力容器は、構造に基づいて、とりわけ安全部品としてのセンサ要素の組み込みに適しており、例えば明記されていない車両技術、とりわけ航空機技術においても適している。とりわけ、上記のセンサ要素と、送信器と、受信器とから成る当該システムは、一実施形態では自立的な安全システムであり、このシステムは、危険な状況が発生する前に危機的状況に反応し得る。
【0063】
本発明による圧力容器は、用途に相応に適合させることができ、相応の製造方法をここで説明および詳述する。それゆえ本発明は、さらなる1つの態様では、以下のステップを含む本発明による圧力容器の製造方法に関する。
a.基体を準備するステップ、
b.基体を第1の層で少なくとも部分的に被覆し、この第1の層が、状態量を捕捉するための多数のセンサ要素を含み、この多数のセンサ要素が、エラストマーの内部で互いに離隔して位置固定されて配置されており、かつこの第1の層が、場合によっては付着促進層によって基体の外側にある表面に施されるステップ、
c.第1の層を有するこの基体の周りにテンションコード、とりわけアラミドテンションコードを巻き付ける、とりわけテンションコードを交差するように巻くことによって巻き付けるステップ、
d.テンションコードに固定用マトリクスおよび包埋剤を施してそれを硬化し、場合によっては第2の層に外層を施してそれを硬化するステップ。
【0064】
これに関し1つの態様では、基体に施すための第1の層は、フィルムに多数のセンサ要素を取り付け、続いてエラストマーフィルムを施し、それに続いて例えば加硫により積層処理することによって得られる。
【0065】
センサ要素は、例えば製造者によってPEフィルムに包埋され得る。このフィルムが、加硫の際にエラストマー材料によって全体的に収容および統合され、したがって要素がエラストマーマトリクス中で自由に移動し得る。
【0066】
本発明に基づいてさらに、本発明による圧力容器を含む相応の蓄圧システムが提供される。
【0067】
本発明による圧力容器を含む蓄圧システムは、一実施形態では、電場を生成または伝送するための装置、とりわけ電場を生成するための交流場発生器を有する。それだけでなく、一実施形態では、本発明による蓄圧システムは、センサによって得られたデータを処理するための、とりわけ、センサ要素の互いに対する位置の相対的な変化をベースとしてセンサの互いに対する幾何学的情報および圧力容器の幾何学的挙動を処理するための管理ユニットを有する。場合によってはさらに出力ユニットを有する。この出力ユニットはこの場合、蓄圧システムを、および本発明による圧力容器のセンサ要素によって決定された状態量の変化を可視化するための手段であり得る。
【0068】
さらなる一実施形態では、本発明による蓄圧システムが、とりわけ安全弁を介してまたは出口弁を介して容器の内部にあるガスを抜くことを制御するための制御ユニットを含む機構を有する。したがって本発明によれば、蓄圧システムの安全性に関わる状況では、危険な状況が発生する前に既に、対抗措置、とりわけガス、例えば水素を抜くことが開始され得る。本発明による蓄圧システムは、とりわけ水素を貯蔵するための蓄圧システムである。この蓄圧システムは、とりわけ移動式に用い得る蓄圧システムとして形成されている。つまり本発明により、移動式分野で用いられる圧力容器または蓄圧システムが提供される。本発明により、本発明による蓄圧システムまたは本発明による圧力容器を有する車両のような機構、場合によっては燃料電池を備えた機構が提供される。この機構はとりわけ、自動車、商用車、鉄道、船舶、さらに飛行機、ドローンなどを含む航空機から選択された機構である。添付の図を参照しながら本対象をさらにまたより詳しく解説する。
【0069】
図1は、本発明による圧力容器20の容器壁の断面図である。図示した特殊鋼壁1は、同時に中性線であり得る。この特殊鋼壁1には、本発明により付着促進剤が、第1の付着促進層2を形成するために施されている。この付着促進層2の上には、エラストマー4に包埋されたセンサ要素5を有する第1の層3がある。
【0070】
これに関しセンサ要素5はエラストマー4中で分散している。その外側に、反応性樹脂マトリクス7を有する第2の層6がある。このマトリクス7には、本発明により、イソシアネートによって補剛されたアラミドテンションコード8が存在している。受信器および場合によっては送信器としての適切な金属ワイヤまたは金属被覆糸9も図示されている。
【0071】
図2は、テンションコード、例えばアラミドテンションコード8の基体21への巻きを示している。相応の交差巻き付けが図示されている。この交差巻き付けに、この場合は続いて反応性樹脂マトリクス7が施される。
【0072】
図3は、本発明による使用可能なテンションコード8の断面であり、ここではアラミドテンションコードが図示されている。個々のフィラメント11によるアラミド繊維の繊維束10が認識できる。さらに、アラミド繊維のイソシアネート補剛12が図示されている。このアラミド繊維はRFL外被13によって被包されている。
【0073】
図4は、本発明によるセンサシステムを示している。本発明による被覆と、入口および出口弁14と、安全弁15とを備えた圧力容器20が、その情報をマイクロセンサ要素、とりわけスモールダストセンサを使って受信器16に伝え、受信器16は場合によっては発生器および送信器である。受信器16はこの場合、相応の評価ユニット17と接続されており、評価ユニット17は必要に応じて、相応のポートおよびインターフェイスを介して出口弁または安全弁を調節する。
【0074】
評価ユニットは、相応に弁を管理および制御し、かつクラウド18を介してデータ捕捉部19と接続され得る。
【符号の説明】
【0075】
1 特殊鋼壁
2 付着促進層
3 第1の層
4 エラストマー
5 センサ要素
6 第2の層
7 反応性樹脂マトリクス
8 テンションコード
9 金属ワイヤ、金属糸
10 繊維束
11 フィラメント
12 イソシアネート補剛
13 RFL外被
14 入口/出口弁
15 安全弁
16 受信器
17 評価ユニット
18 クラウド
19 データ捕捉部
20 圧力容器
21 基体
【手続補正書】
【提出日】2024-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側にある面がガスと接触する金属製の基体(21)と、少なくとも一部の領域での外側の被覆とを含む、ガス、とりわけ水素を収容および保存するための圧力容器(20)であって、
前記基体(21)が、少なくとも1つの入口(14)および少なくとも1つの出口(14)を有し、かつ、前記圧力容器(20)が、場合によっては少なくとも1つの安全弁(15)を含み、
前記少なくとも一部の領域での外側の被覆が多層被覆であり、
前記多層被覆が、前記基体(21)に配置された第1の層(3)を備えており、
前記第1の層(3)が、状態量を捕捉するための多数のセンサ要素(5)を含み、
前記多数のセンサ要素(5)が、エラストマー(4)の内部で互いに離隔して位置固定されて配置されており、かつ、前記多層被覆が、前記第1の層(3)の外側に配置されている第2の層(6)を備えており、
前記第2の層(6)が、マトリクス(7)および格納されたテンションコード(8)のような補強要素(8)を有し、
場合によっては、前記第1の層(3)および/または第2の層(6)に、情報を受信するための受信器(16)および電磁波の電場を送信するための送信器が配置されており、前記センサ要素(5)と、前記受信器(16)と、前記送信器とが、信号技術によって相互に接続されている、圧力容器(20)。
【請求項2】
永続的な電気接触を有するか、または、前記圧力容器(20)と固定的にもしくは取り外し可能に接続された局所的な電流源を有する、請求項1に記載の圧力容器(20)。
【請求項3】
前記テンションコード(8)がアラミドから形成されており、場合によってはイソシアネート補剛(12)を有する、
請求項1に記載の圧力容器(20)。
【請求項4】
金属製の前記基体(21)が、鋼製、とりわけ特殊鋼製の基体(21)である、
請求項1に記載の圧力容器(20)。
【請求項5】
付着促進層(2)が、センサ要素(5)を内包する第1の層(3)と、前記基体(21)の金属、とりわけ特殊鋼との間に配置されている、
請求項1に記載の圧力容器(20)。
【請求項6】
前記送信器および/または前記受信器(16)として、前記第2の層(6)に金属ワイヤまたは金属被覆糸(9)が存在しており、場合によっては、前記金属ワイヤまたは金属被覆糸(9)が前記テンションコード(8)の一部である、
請求項1に記載の圧力容器(20)。
【請求項7】
前記テンションコード(8)が、アラミド製の個々のフィラメント(11)の繊維束(10)であり、個々の前記繊維束(10)がイソシアネート(12)によって補剛されており、それだけでなく前記テンションコード(8)が、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス被包(13)を有し、場合によっては前記テンションコード(8)の一部として金属ワイヤまたは金属被覆糸(9)をさらに有する、
請求項1に記載の圧力容器(20)。
【請求項8】
前記被覆が、前記基体(21)を実質的に包囲しており、とりわけ全体的に被覆している、
請求項1に記載の圧力容器(20)。
【請求項9】
請求項1に記載の圧力容器(20)を含む蓄圧システム。
【請求項10】
電場を生成または伝送するための装置、とりわけ電場を生成するための交流場発生器をさらに有する、請求項9に記載の蓄圧システム。
【請求項11】
前記センサ要素(5)によって得られたデータを処理するための、とりわけ前記センサ要素(5)の互いに対する位置の相対的な変化を決定するための管理ユニット(17、19)をさらに含む、
請求項9に記載の蓄圧システム。
【請求項12】
前記蓄圧システムおよび前記センサ要素(5)によって決定された状態量の変化の可視化のための出力ユニットを備えた、
請求項9に記載の蓄圧システム。
【請求項13】
とりわけ前記安全弁(15)を介して前記圧力容器(20)の内部にある前記ガスを抜くことを制御するための制御ユニットを包含する機構をさらに含む、
請求項9に記載の蓄圧システム。
【請求項14】
水素を貯蔵するための
請求項9に記載の蓄圧システム。
【請求項15】
請求項1に記載の圧力容器(20)の製造方法であって、
a.前記基体(21)を準備すること、
b.前記基体(21)を第1の層(3)で少なくとも部分的に被覆し、前記第1の層(3)が、状態量を捕捉するための多数のセンサ要素(5)を含み、前記多数のセンサ要素(5)が、エラストマー(4)の内部で互いに離隔して位置固定されて配置されており、かつ、前記第1の層(3)が、場合によっては付着促進層(2)によって前記基体(20)の外側にある表面に施されること、
c.前記第1の層(3)を有する前記基体(21)の周りにテンションコード(8)、とりわけアラミドテンションコードを巻き付ける、とりわけ前記テンションコード(8)を交差するように巻くことによって巻き付けること、
d.前記テンションコード(8)に固定用マトリクスおよび包埋剤(7)を施してそれを硬化し、場合によっては前記第2の層(6)に外層を施してそれを硬化すること、を含む製造方法。
【請求項16】
前記基体(21)に施すための前記第1の層(3)が、フィルムに前記多数のセンサ要素(5)を取り付け、続いてエラストマーフィルムを施し、それに続いてそれらを積層処理、例えば加硫することによって得られる、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
燃料電池および
請求項1に記載の圧力容器(20)、または、
請求項9に記載の蓄圧システムを備えた機構。
【請求項18】
前記機構が燃料電池式駆動装置を有し、とりわけ前記機構が、自動車、商用車、鉄道、船舶、ならびに飛行機およびドローンである、請求項17に記載の機構。
【国際調査報告】