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特表2024-540441分散型光ファイバセンシングを利用した切断ポイントの無いファイバの識別
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】分散型光ファイバセンシングを利用した切断ポイントの無いファイバの識別
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/071 20130101AFI20241024BHJP
【FI】
H04B10/071
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527816
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 US2022050049
(87)【国際公開番号】W WO2023091450
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/280,715
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/291,567
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/987,805
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ミン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジ、 フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102LA06
5K102LA11
5K102LA21
5K102LA31
5K102MH03
5K102MH15
5K102MH22
5K102PA01
(57)【要約】
配備済みのケーブル内に位置する個々のファイバを効率的に識別し、面倒なフィールド作業を低減すると共に、サービス停止時間を短縮するシステム、方法及び構造を提供する。本システム及び方法は、光ファイバを切断することなく、ケーブル内のターゲットファイバの位置を特定し(「ケーブルID」)、DFOS信号アテンションを検出することでターゲットファイバ(「ファイバID」)を識別する。2つの異なる決定、すなわちケーブルIDとファイバIDが行われる。DFOS動作は、センサファイバに沿って発生する振動信号を検出する。実施されるケーブルIDは、センサファイバの経路に沿ってケーブルの位置を自動的に特定する、対話型の機械学習ベースのアルゴリズムである。ファイバIDは、ファイバのグループを分岐して屈曲させることで信号の減衰を検出し、ファイバケーブル内のターゲットの個々のファイバを正確に特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型光ファイバセンシング(DFOS)を利用してファイバの識別を決定するための方法であって、
(a)光ファイバケーブルにおける複数の光ファイバのうちの個別のファイバである光センサファイバと、
光パルスを生成し、生成されたパルスを前記光センサファイバに入力し、前記光センサファイバから後方散乱信号を受信するように構成された、前記光センサファイバと光通信するDFOS/DVSインタロゲータと、
前記DFOS/DVSインタロゲータによって受信されたDFOS/DVSデータを分析し、前記後方散乱信号から前記光センサファイバに沿った場所で発生する振動アクティビティを特定するように構成されたインテリジェントアナライザと、
を含む分散型光ファイバセンシング/分散型振動センシング(DFOS/DVS)システムを備え、
(b)前記DFOS/DVSシステムを動作させ、
(c)フィールドの位置で、前記光ファイバケーブルにおける前記複数の光ファイバを別個の光ファイバのグループに分離し、
(d)前記DFOS/DVSシステムによって前記光センサファイバを含む候補グループが指し示されるまで、前記フィールドで前記別個の光ファイバのグループを1つずつ物理的に振動させ、
(e)前記DFOS/DVSシステムによって前記光センサファイバが指し示されるまで、前記候補グループにおける個々の光ファイバを1本ずつ物理的に振動させ、
(f)前記指し示された前記光センサファイバを特定する、方法。
【請求項2】
前記フィールドの位置はマンホールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記指し示された前記光センサファイバを新規のファイバに接続することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
人の指を用いて前記別個のグループを1つずつ終端することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光ファイバケーブルにおける前記複数の光ファイバのうちの1つまたは複数が破損すると、前記DFOS/DVSシステムによって前記光センサファイバが指し示されるまで、振動クリップが前記光ファイバの破損端に1つずつ取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記振動クリップは予め決められた振動パターンで振動する、請求項5に記載の方。
【請求項7】
前記光ファイバケーブルの遠端に第2のDFOS/DVSシステムをさらに備える、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記DFOS/DVSは、デジタル無線通信を介して前記光センサファイバを指し示す情報を携帯型モバイル装置に提供する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記振動クリップには、振動を与える前に前記光ファイバに複数の物理的な屈曲を与える複数のV型溝が含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記DFOS/DVSが提供する前記指し示す情報は、前記インテリジェントアナライザの一部として含まれる人工知能エンジンによって決定される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には分散型光ファイバセンシング(DFOS:distributed fiber optic sensing)システム、方法及び構造に関する。より具体的には、分散型光ファイバセンシングを利用した切断ポイントの無いファイバの識別技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
第5世代(5G以降)ネットワークをサポートするため、通信事業者やネットワークサービスプロバイダは数百万マイルの光ファイバケーブル設備を配備してきた。保守コストを削減するため、配備済みの電気通信光ファイバケーブルには、設計上の冗長性を提供する数十/数百の個別のファイバが含まれることがよくある。これらの個々のファイバの多くは「ダーク」である。つまり、現時点では電気通信トラフィックを伝送していないが、将来使用する予備のダークファイバである。
【0003】
例えば、個々のファイバが新規の場所をサポートしたり、既存の場所に新規のサービスを提供したりする場合、通信事業者にとって、ファイバケーブル内の個々のファイバの位置を特定して識別することは非常に重要である。多くの場合(常にではないが)、ファイバのレイアウトとファイバのカラーコードは、ケーブルの方向に関する事前の情報と知識に依存する。これらの情報は、構造マップや、施工中に手動で撮影されたメモや写真から取得できる場合がある。この事前の知識が欠如しているか古くなっている場合、保守目的であれ、新規のサービスを開始する目的であれ、光ファイバケーブル内の数十、数百、数千のファイバの中から正しいファイバを見つけて特定することは、オペレータにとって困難である。したがって、多数の個別の光ファイバを含む光ケーブル内において個々の光ファイバの位置を特定することは、産業上非常に重要である。
【発明の概要】
【0004】
サービス停止時間を短縮しつつ、面倒なフィールド作業を有利に削減する、配備済みのケーブル内に位置する個々のファイバを効率的に識別するためのDFOS技術を対象とする本開示の態様により、本技術の進歩がもたらされる。
【0005】
従来技術とは対照的に、本発明のシステム及び方法は、光ファイバを切断することなく、ケーブル内のターゲットファイバの位置を特定し(「ケーブルID」)、DFOS信号アテンションを検出することでターゲットファイバ(「ファイバID」)を識別する。
【0006】
運用に関して、光パワープロファイル解析技術を利用して、ターゲットファイバの端点が自動的に識別される。ターゲットファイバの端点付近の領域を解析することでターゲットファイバの高反射ピークを記録し、それを用いて適切な閾値を設定する。次に、光パワープロファイルが連続して測定され、リアルタイムに閾値と比較され、特定のファイバに関する判定結果が生成される。
【0007】
以下で示し説明するように、本発明のアプローチには、2つの態様、すなわちケーブルIDとファイバIDとが含まれる。DFOSの動作は、センサファイバに沿って発生する振動信号を検出する。実施されると、ケーブルIDは、センサファイバの経路に沿ってケーブルの位置を自動的に特定する、対話型の機械学習ベースのアルゴリズムである。ファイバIDは、ファイバのグループを分岐して屈曲させることで信号の減衰を検出し、ファイバケーブル内のターゲットの個々のファイバを正確に特定する。
【0008】
本開示のより完全な理解は、添付の図面を参照することで実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の態様による、例示的なDFOSシステムを示す概略図である。
【0010】
図2(A)】図2(A)は、本開示の態様による、配備済みの光ファイバケーブルのターゲット光ファイバの位置を特定することに関連する例示的な問題を示す概略図である。
図2(B)】図2(B)は、本開示の態様による、配備済みの光ファイバケーブルのターゲット光ファイバの位置を特定することに関連する例示的な問題を示す概略図である。
【0011】
図3図3は、本開示の態様による、本発明の方法の例示的なアーキテクチャの動作を示す概略図である。
【0012】
図4図4は、本開示の態様による、例示的な動作手順を示す概略図である。
【0013】
図5図5は、本開示の態様による、ケーブル振動オン検出器の動作を示す概略フロー図である。
【0014】
図6図6は、本開示の態様による、ケーブル振動オフ検出器の動作を示す概略フロー図である。
【0015】
図7図7は、本開示の態様による、ウィンドウ位置ファインダの動作を示す概略フロー図である。
【0016】
図8図8は、本開示の態様による、例示的な実験セットアップを示す概略図である。
【0017】
図9図9は、本開示の態様による、全体的な動作を示す概略フロー図である。
【0018】
図10図10は、本開示の態様による、DFOS(DAS/DVS)によるファイバの識別を示す概略フロー図である。
【0019】
図11図11は、本開示の態様による、ケーブル切断復旧に関連する例示的な問題を示す概略図である。
【0020】
図12図12は、本開示の態様による、例示的なシステムレイアウトを示す概略図である。
【0021】
図13図13は、本開示の態様による、例示的なV溝クリップを示す概略図である。
【0022】
図14図14は、本開示の態様による、全体的な動作を示す概略フロー図である。
【0023】
図15図15は、本開示の態様による、DFOS(DAS/DVS)による全体的なファイバピグテールファインダを示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者であれば、本明細書で明示的に説明または図示されていなくても、本開示の主旨及び範囲に含まれる、本開示の原理を具体化する様々な構成を考え出すことができることを理解されたい。
【0025】
さらに、本明細書で挙げる全ての実施例及び条件付き用語は、本開示の原理及び本技術を促進するために本発明者らが提供する概念の理解を助ける教育目的のためだけであることを意味し、具体的に挙げられた実施例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0026】
さらに、本開示の原理、態様及び実施形態、並びにその特定の実施例で挙げる本明細書の全ての記載は、その構成及び機能の均等物の両方を含むことを意味する。さらに、そのような均等物には、現在知られている均等物と、将来開発される均等物、すなわち構成に関係なく同じ機能を実現する、開発された要素の両方を含むことを意味する。
【0027】
したがって、例えば、本明細書の任意のブロック図は、本開示の原理を実施する回路の実例を示す概念図であることが当業者には理解されるであろう。
【0028】
本明細書では、特に明記しない限り、図を含む図面は、正確な縮尺率で描かれていない。
【0029】
追加の背景として、分散型光ファイバセンシング(DFOS)は、光ファイバケーブルに沿った任意の場所の環境条件(温度、振動、音響励起振動、伸張レベル等)を検出するための、重要かつ広く使用されている技術であり、光ファイバケーブルはインタロゲータに接続されていることを最初に指摘しておく。周知のように、現代のインタロゲータは、ファイバに対する入力信号を生成し、反射/散乱されてその後受信する信号を検出/分析するシステムである。該信号は分析され、ファイバに沿って発生する環境条件を示す出力が生成される。受信する信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、ブリルアン後方散乱等のファイバ内の反射によって生じる可能性がある。DFOSでは、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号も使用できる。一般性を失うことなく、以下の説明では反射信号を想定しているが、同じアプローチはフォーワード信号にも適用できる。
【0030】
図1は、一般化された従来のDFOSシステムの概略図である。理解されているように、現代のDFOSシステムには、定期的に光パルス(または任意のコード化された信号)を生成し、それを光ファイバに入力するインタロゲータが含まれている。入力された光パルス信号は光ファイバに沿って伝送される。
【0031】
ファイバに沿った位置において、信号のごく一部が反射され、インタロゲータに返送される。反射信号は、例えば物理的な振動を示すパワーレベルの変化等、インタロゲータが検出のために使用する情報を伝達する。理解及び認識されているように、インタロゲータには、当該技術で知られているコヒーレント受信機の構成を採用できる、コード化されたDFOSシステムを含むことができる。
【0032】
反射信号は電気ドメインに変換され、インタロゲータで処理される。パルスの入力時間と信号が検出された時間とに基づいて、インタロゲータはファイバのどの位置から信号が来ているかを判定し、ファイバの各位置のアクティビティを感知できる。
【0033】
当業者であれば、インタロゲーション信号に信号コーディングを実施することで、より多くの光パワーをファイバに送信できるようになり、レイリー散乱ベースのシステム(例えば、分散型音響センシング、すなわちDAS)及びブリルアン散乱ベースのシステム(例えば、ブリルアン光時間領域反射測定法、すなわちBOTDR)の信号対雑音比(SNR)を有利に改善できることを理解及び認識するであろう。
【0034】
現在多くの現代的な実施態様に実装されているように、光ファイバケーブルにおけるDFOSシステムには専用ファイバが割り当てられ、異なるファイバで伝送される既存の光通信信号とは物理的に分離されている。しかしながら、帯域幅の需要が爆発的に増加していることを考えると、DFOSの運用のためだけに光ファイバを経済的に運用及びメンテナンスすることはますます困難になってきている。その結果、より大きなマルチファイバケーブルの一部である共通ファイバに通信システムとセンシングシステムとを統合することへの関心が高まっている。
【0035】
運用に関して、DFOSシステムは、コーディングの実施を含むレイリー散乱ベースのシステム(例、分散型音響センシングまたはDAS)とブリルアン散乱ベースのシステム(例、ブリルアン光時間領域反射測定法またはBOTDR)とを想定している。このようなコーディング設計により、これらのシステムは、低電力で動作するため、ファイバ通信システムと統合される可能性が高く、光増幅器の応答時間の影響も大きくなる。
【0036】
有利なことに、DFOSの動作は、同じファイバにおけるWDMを介して通信チャネルと統合することもできる。センシングファイバ内では、インタロゲーションシーケンスと返送されたセンシング信号とが、離散型(EDFA/SOA)または分散型(ラマン)方式のいずれかによって光学的に増幅される。返送されたセンシング信号は、増幅及び光バンドパスフィルタで処理された後、コヒーレント受信機に送信される。コヒーレント受信機は、信号の両方の偏波において光場を検出し、アナログ/デジタル変換(ADC)サンプリングとデジタル信号プロセッサ(DSP)の処理のために4つのベースバンドレーンにダウンコンバートする。当業者であれば容易に理解し認識するように、デコード動作はDSPで実行され、ファイバのレイリー応答またはブリルアン応答が生成され、応答の変化が識別されて、センサの読み取り値と見なされる。
【0037】
このような構成では、コード化されたインタロゲーションシーケンスがデジタル処理で生成されるため、帯域外信号もデジタル処理で生成され、その後、DACによって波形が作成される前に、コードシーケンスと結合される。デジタル処理で共に生成された場合、帯域外信号はコードシーケンスの期間外でのみ生成されるため、共に追加されると、結合された波形は一定の振幅になる。
【0038】
当業者であれば理解し認識するように、DFOS/DAS/DVSシステムは、可聴周波数帯域の音響振動を検出し、記録し、聴くことができることが示されている。
【0039】
上述したように、本発明のシステムには、少なくとも2つの発明の態様、すなわちケーブルIDとファイバIDとが含まれる。
【0040】
ケーブルID。
【0041】
ケーブルIDは、ケーブルが振動/揺れるイベントを、フィールドで受ける他の強い振動信号(風の影響を受けやすい架空ケーブル区域を含む場合がある)及び道路交通や建設作業によって生じる埋設ケーブルの振動と区別する人工知能技術(AI)を利用して、ターゲットケーブルを識別する。上述のケーブル識別には、素早く埋設区域と架空区域とを分類することが含まれる。前提条件として、曖昧さを排除してリアルタイムでターゲット信号を確認するマンマシン入力/インタラクション、様々な技術者/オペレータによる振動させる癖や応答時間の不均一性を許容する、特別に設計されたケーブル振動オン検出器を含む。さらに、前提条件は、隣接するセンシングポイントの異なる感度によって発生する散在する振動ポイントを橋渡しするために拡張カーネルが使用され、周囲の交通の影響を全て除去する、特別に設計されたケーブル振動オフ検出器を含む。弛んだケーブルの長さは場所によって異なる場合があり、マンホール/ハンドホール内に存在するコイルの長さが不明でも、ウィンドウロケータ(window locator)はケーブルの振動イベントの場所と影響範囲を検出する。こうして特定されたウィンドウはファイバID用に使用される。
【0042】
ファイバID。
【0043】
ケーブルIDによってターゲットケーブルの位置を特定した後、本発明の方法は、特定されたケーブルの位置と近い位置にあるセンサファイバのパワープロファイルを分析し、さらに特定の関心があるファイバを識別する。本発明の特徴には、パワープロファイルを生成するためのセンサの変更、特定されたケーブル位置からバッファ領域とモニタ領域とを設定し、該モニタ領域における事前終端パワーレベルを記録すること、モニタ領域における平均パワーを連続して監視し、事前終端パワーレベルと比較してテスト対象のファイバが正しいファイバであるか否かを自動的に判定すること等を含む。
【0044】
リアルタイム検出、インタラクション、フィードバック。
【0045】
本発明の方法のリアルタイムな対話型動作は、フィールドの技術者にタイムリーなガイダンスを提供する。
【0046】
図2(A)及び図2(B)は、本開示の態様による、配備済みの光ファイバケーブルのターゲット光ファイバの位置を特定することに関連する例示的な問題を示す概略図である。
【0047】
これらの図を参照すると、図2(A)では、配備済みの通信用光ファイバケーブルには、F1ファイバ(中央オフィスからの主要ファイバケーブル)と、F2ファイバ(FDH(ファイバ分散型ハブ)からのドロップファイバ)とが含まれる。当業者には理解されるように、F1ファイバケーブル内には数百/数千の個別の光ファイバが存在し、F2ファイバケーブル内には数十/数百の個別の光ファイバが存在する。通信事業者/サービスプロバイダは、新規サービスの要求を受信すると、図2(B)で示すように、最も近い接続箇所から光ファイバを接続(ジャンプ)し、新規のサービスのコミュニティに接続する必要がある。当業者にはさらに理解されるように、このような作業では、新規の接続のために個々のターゲット光ファイバを見つけるのが困難であり、時間がかかる。
【0048】
図3は、本発明の態様による、本発明の方法の例示的なアーキテクチャの動作を示す概略図である。
【0049】
この図を参照すると、分散型音響センシング(DAS:distributed acoustic sensing)及び/または分散型振動センシング(DVS:distributed vibration sensing)となり得る分散型光ファイバセンシングシステム(DFOS)(101)が、ケーブルの経路全体をリアルタイムで長期にわたってリモート監視するために中央制御オフィス(CO)/ローカル端末(100)に設置されていることが示されている。DFOSシステムは、フィールドの光センサファイバに接続され、該センサファイバに沿ったセンシング機能を提供する。有利なことに、センシングに使用される光ファイバは、ダーク光ファイバ、あるいは1つまたは複数のサービスプロバイダによって提供される、電気通信サービスをサポートする運用可能な光ファイバがなり得る。
【0050】
新規のサービスの要求を受信すると、次の手順が実行される。
【0051】
ステップ1:ファイバをDFOSシステムに接続する。
【0052】
フィールドの技術者は、ファイバケーブル内のダークファイバまたはターゲットファイバ(新規のコミュニティに接続するファイバ)(202)をDFOSシステムに接続する。
【0053】
モバイル装置を持ってフィールドに行く。
【0054】
技術者は、モバイル装置(305)を持って最も近い接合ポイント/接続ボックス(301)に行く。モバイル装置(305)は、例えば4G/5G信号またはWiFi(登録商標)によってDFOSシステム(101/102)からリアルタイムに信号解析結果を受信する。
【0055】
フィールドにおいてケーブルの位置を特定する(ケーブルID)。
【0056】
フィールドでケーブルの位置を特定するため、技術者はファイバケーブル(201)を振動させる。DFOSシステムは、人(オペレータ)の入力と組み合わせて最適な位置の特定結果を決定し、誤報を低減する。
【0057】
例示的なシステムは、2つのステータス状態、すなわちアイドル状態とアクティブ状態とがあり得る。システムがアイドル状態(デフォルト)の場合、教師なし機械学習アルゴリズムが動作し、光ファイバのどの部分が埋設されているかを判定する。架空ケーブル区間では強い振動信号が発生することが多く、誤報につながる可能性があるため、これは重要である。テスト中、オペレータはファイバポートをアクティブに切り替えてターゲットケーブルを見つけるため、システムがDASの接続経路の特性を素早く学習することが重要である。オペレータがフィールドに到着すると、アルゴリズムはケーブルのどの部分が埋設されているかを判定するのに十分な根拠を既に収集している。結果としてバイナリベクトルが返送される。
【0058】
図4は、本開示の態様による、例示的な動作手順を示す概略図である。
【0059】
オペレータがテストを実行する準備が整うと(例えば、マンホール/ハンドホールを開くと)、システムのステータスがアクティブに変わり、オペレータはソフトウェアで提供される指示に従ってケーブルを振動させる。これは、フィールドの他の強い振動信号と区別するため、人と機械との対話型プロセスとなるように設計されている。最初に、オペレータは、特定の期間中にケーブルを2回振動させ、その間で停止するように求められる。ソフトウェアは、光ファイバケーブルの経路全体をスキャンし、3つの期間全てにわたって経路全体からケーブルの振動信号を探し、3つのテストに対して3つのバイナリベクトルを返送する。正しいケーブルの位置は、3つのテスト全てに合格し、埋設区域として判定される必要がある。まれに、まだ曖昧さが残っている場合、システムは、単一の場所が見つかるまでさらにオン/オフテストを実行するようオペレータに要求するオプションがある。
【0060】
図5は、本発明の態様による、ケーブル振動オン検出器の動作を示す概略フロー図である。
【0061】
図6は、本発明の態様による、ケーブル振動オフ検出器の動作を示す概略フロー図である。
【0062】
ケーブルの振動イベントは、通常、埋設区域の同じ場所で最も強い振動信号を繰り返し生成するため、強度の閾値と発生の閾値とを設定できる。但し、ファイバの不均一な材料構成物とケーブルコイルの形状により、各場所での応答は異なる。その結果、感知された振動マトリックスにおける強い振動パターンが散発的及び離散的になる可能性がある。この問題を解決するため、膨張カーネル(dilation kernel)を初期のバイナリ検出結果に適用する。
【0063】
図7は、本発明の態様による、ウィンドウ位置ファインダの動作を示す概略フロー図である。図7で例示されているように、ソフトウェアは、連続して検出された位置のセットをカバーする範囲で、ケーブルの位置としてウィンドウを報告する。各マンホール/ハンドホールにおける弛んだファイバの長さは異なるため、ケーブルの振動の影響範囲も異なる。このモジュールは、1Dベクトルに確率的ハフ変換(probabilistic progressive Hough transform)を適用することに基づいており、バイナリパターンの連続性に基づいて、いくつかのケーブル位置における個々の検出結果を1つのウィンドウに統合する。検出ウィンドウの中心と幅は、ケーブルの位置とコイルの長さに対応する。
【0064】
ターゲットファイバの位置を特定する(ファイバID)。
【0065】
ケーブルの位置を特定した後、システムはファイバIDモードに切り替わる。技術者は、ペン(303)または指(304)を用いて接続ボックス内のファイバを終端する必要がある。技術者は、モバイル装置(305)がファイバ発見の回答を提供するまで、ファイバをグループで終端し、候補グループを絞り込み、ターゲットファイバを絞り込めばよい。
【0066】
この時点で一連のステップが実行される。まず、センサ設定を変更してパワープロファイルを出力する。
【0067】
次に、先に判定され特定されたケーブルの位置からバッファ領域を設定する。これは、「ケーブルID」のステップ中に振動させられたケーブルが、接続ケースの位置と(近い可能性はあるが)正確に同じではない可能性が高いためである。
【0068】
バッファ領域の後に、モニタ領域を設定する。この領域の平均パワーレベルを「事前終端レベル」として記録する。
【0069】
技術者に、ファイバを1本ずつ、またはグループ毎に終端するように指示する。同時に、「モニタ領域」の平均パワーレベルを連続して監視する。それが「事前終端レベル」の一定のパーセンテージ(例えば、20%)を下回る場合、この終端されたファイバまたはファイバグループが正しいファイバであり、それが特定されていることを意味する。それ以外の場合、終端されたファイバまたはファイバグループが正しいものではないことを意味し、技術者は正しいファイバまたはファイバグループが特定されるまで別のファイバまたはファイバグループに移動すればよい。
【0070】
新規のファイバを新規のコミュニティに接続し、サービスを提供する。
【0071】
ターゲットファイバが特定されると、技術者は該ファイバを切断し、新規のコミュニティに接続してサービスを提供できる。
【0072】
研究室で実験を行った。図8は、本開示の態様による、例示的な実験セットアップを示す概略図である。1kmのファイバスプールが2つ使用される。ファイバスプール内には4本のファイバがある。ファイバを1本ずつ終端するため、テスト用にファイバジャケットを引き出した。いくつかのシナリオ(1)終端無し、(2)弱い(lose)終端及び(3)良好な終端、がシミュレートされた。
【0073】
シナリオ1、終端無し。
【0074】
テストファイバに終端が無い場合、DASが受信する信号はファイバに沿って連続した信号強度を示す。
【0075】
シナリオ2、弱い終端。
【0076】
テストファイバに弱い終端が適用された場合、DASが受信する信号は終端位置で信号強度が低下することを示す。
【0077】
シナリオ3、良好な終端。
【0078】
テストファイバに適切な終端が適用されている場合、DASによって受信される信号はノイズレベルが低下する。
【0079】
図9は、本開示の態様による、全体的な動作を示す概略フロー図である。
【0080】
図10は、本開示の態様による、DFOS(DAS/DVS)によるファイバの識別を示す概略フロー図である。
【0081】
本発明のDFOSファイバ位置特定技術のさらなる応用について説明するため、世界には数百万マイルに及ぶ光ファイバが敷設されていることに改めて留意する。通常、光ファイバは接続され、カスケード接続されて目的の場所に到達する。但し、単一のファイバケーブルには数十/数百/数千のファイバが含まれているため、ファイバケーブルが切断されたときにファイバケーブル内の目的のピグテールを見つけることが重要である。ファイバには色コードが施されている場合もあるが、設置後数年(例:20年)経つと色が消えてしまう場合がある。場合によっては、フィールドの技術者がファイバの切断を修復するために1本のピグテールを見つけるのに何時間も費やす必要がある。したがって、光ケーブル内のファイバピグテールを見つけることは、ファイバ所有者が設備を効率的に維持するために非常に重要である。
【0082】
光ケーブル内のファイバピグテールを見つけるための既存の方法は、ケーブルの一端に赤色光を照射し、切断ポイントで信号を検出することを含む。しかし、この方法は、ファイバ内部での信号伝送損失により距離が制限される。破損個所が中央オフィスから遠い場合、この方法はうまく機能しない。
【0083】
別の方法としては、ファイバを直接つなぎ、OTDRを用いてファイバの長さを測定する方法がある。しかしながら、この方法は時間がかかり、非効率的な作業である。
【0084】
ここで、面倒なフィールド作業を低減する効率的な方法として、配備済みの光ファイバケーブルの光ファイバピグテールを見つける方法を開示する。分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムを採用し、リアルタイムで結果を生成する。
【0085】
ここで説明するように、本発明の方法は、DFOSを利用して光ファイバの開放端からの信号を検出する。光ファイバケーブルが切断されると、空気による約4%の反射により、反射信号は光ファイバケーブルが切断されていないときよりも大きくなる。この場合、増強された反射はファイバの端部におけるセンシング検出に影響する。
【0086】
当業者であれば理解し認識するように、光ファイバケーブル内に配置されたファイバピグテールの位置を特定するには、いくつかの問題を解決する必要がある。
【0087】
ケーブル切断ポイント検出。
【0088】
信号を識別するために、ファイバ端(ファイバ切断位置)の位置を特定する端点位置特定AI法を使用する。
【0089】
ファイバ切断ポイントからの反射信号の低減。
【0090】
光ファイバの開放端からの反射が大きいと、DFOSの感度に影響するため、信号反射を低減する必要がある。このような反射の低減を実現する1つの方法は、光ファイバを終端することである。
【0091】
端点における信号生成。
【0092】
ピグテールがターゲットファイバであることを確実にするため、設計された周波数パターンを有する振動源をファイバ端で使用する。DFOSが同じ周波数パターンを検出した場合、該ファイバピグテールがターゲットファイバである。
【0093】
リアルタイム検出とフィードバック。
【0094】
フィールドにおける配備済みのファイバのファイバピグテールを識別するため、リアルタイムなフィードバックを提供するリモートモバイル装置を採用する。
【0095】
図11は、本発明の態様による、ケーブル切断復旧に関連する例示的な問題を示す概略図である。
【0096】
上述したように、また当業者には理解され認識されるように、光ファイバケーブル内には通常、数十/数百/数千の個別の光ファイバが存在する。ケーブルの切断が発生すると、直ぐに修理が必要な特定のファイバピグテールを見つけることは困難である。多くの場合、フィールドの技術者がファイバ切断ポイントでファイバ全体を短時間で修復することは不可能である。これは、特にフィールドの状況では、個々の光ファイバを接続する作業に時間がかかり、面倒な作業になるためである。通常、技術者は顧客の緊急性に応じて切断されたファイバの修復を試みる。このような状況では、特定のファイバピグテールを迅速に識別することが重要である。
【0097】
図12は、本開示の態様による、V溝クリップの例示的なシステムレイアウト及び分解図を示す概略図である。
【0098】
図13は、本発明の態様による、例示的なV溝クリップを示す概略図である。
【0099】
分散型音響センシング(DAS)及び/または分散型振動センシング(DVS)が可能な分散型光ファイバセンシングシステム(DFOS)(101)は、ケーブル経路全体をリモート監視するために中央制御オフィス(CO)/中央オフィスに設置されている。ファイバピグテールを見つける2つの方向を確保するため、DFOS(101)をWサイドCO(100)に配置し、後でEサイドCO(101)に移動させてもよく、または2つのCOに2つのDFOSシステムを含めてもよい。DFOSシステムは、フィールドの光ファイバに接続され、センシング機能を提供する。ファイバは、ダークファイバまたはサービスプロバイダの運用ファイバがなり得る。
【0100】
ケーブル切断イベントが発生すると、次の手順が実行される。
【0101】
WサイトCOからDFOSシステムにファイバを接続する。
【0102】
フィールドの技術者は、ファイバケーブル(201)内のダークファイバまたはターゲットファイバ(顧客の緊急のニーズにより、ファイバを至急修理する必要がある)(203)を、WサイトCO(100)からDFOSシステムに接続する。
【0103】
EサイトCOからDFOSシステムにファイバを接続する。
【0104】
2つのDFOSシステムが利用可能な場合、技術者はEサイトCO(101)からのファイバを接続する。使用できるDFOSシステムが1つしかない場合、技術者は次の3つの手順を実行してDFOSシステムをEサイトCOに移動する。
【0105】
モバイル装置を持ってフィールドへ行く。
【0106】
4G/5G信号によってDFOSシステム(102/103)と通信し、リアルタイムな信号解析結果を受信できるモバイル装置(301)を携帯する技術者がケーブルの切断場所(300)に派遣される。
【0107】
ファイバをクリップして、目的のファイバピグテールを見つける。
【0108】
V溝クリップを用いてファイバピグテールをクリップすると、V溝によってファイバ損失が誘発され、信号終端が得られる。したがって、反射信号が低減され、DFOSシステムは結果をモバイル装置に送信する。テストするファイバピグテールが(DFOSシステムに接続されている)ターゲットファイバピグテールでない場合、ターゲットファイバピグテールが特定されるまで別のファイバピグテールに変更する。
【0109】
V溝クリップでクリップした後、反射/散乱信号が大幅に減少することが分かる。ほとんどの場合、このステップでターゲットケーブルを識別できる。但し、切り取られたピグテールがターゲットのものであることを確認するために、さらにテストを行ってもよい。
【0110】
振動源。
【0111】
対象となるファイバピグテール(204、205)を見つけた後、技術者は振動源(302)をオンにし、特殊な周波数トーン、時間シーケンスパターンまたは強度シーケンス信号である設計パターンを生成する。この手順により、ファイバピグテールが修復の対象であることを確実にする。
【0112】
ファイバを修復する。
ターゲットファイバピグテール(204、205)を見つけた後、技術者はファイバを接合/修復して、サービスの停止期間を短縮する。
【0113】
図14は、本発明の態様による、全体的な動作を示す概略フロー図である。
【0114】
図15は、本発明の態様による、DFOS(DAS/DVS)による全体的なファイバピグテールファインダを示す概略フロー図である。
【0115】
ここでは、いくつかの具体的な例を用いて本開示を示したが、当業者であれば本教示がそれらに限定されないことを認識するであろう。したがって、本開示は本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2(A)】
図2(B)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】